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Breather

46ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/06(土) 19:18:23 HOST:EM117-55-68-145.emobile.ad.jp




     ごめん、大好き。



「翔くん、さっきはありがと」
「いや、気にしないでください」


 部活が終わり帰ろうとしていた俺に未空先輩が声をかけてくれた。
 ジャージをゆるく着こなす姿はやっぱり可愛くて、よく考えたら部内に陸部の女子もいるけど一番モテてるような気がする。


「俺、このあとコンビニ寄ってくんですけど未空先輩も来ますか?」
「どうしよ……あ、でも新発売のチョコ出たらしいし、行こっかな」


 学校近くにある、東花高校の生徒御用達のコンビニ。
 でもこんな遅くに帰るのは陸部くらいしかないから、ほとんど陸部の部員で貸切できるのだ。


「えへへ、なんか二人ってはずかしいね」
「俺は嬉しいですけどね」


 一瞬、思ってしまったことがある。
 俺って未空先輩のこと好きなのかな、とか。
 ていうか頭が未空先輩のことで染まりかけてる時点でもう好きなんだろうけど。


「未空先輩は彼氏いたりしないんですか?」
「うん、いないしできたこともない」
「まじっすか?!」
「好きな人はいるけどね、実はこれが初恋だったりするんだ」


 未空先輩に一途に思われる人が羨ましくて、妬ましくて仕方なくなった。
 俺は、未空先輩にとってどんな存在なんだろう。
 そんなことを考えているとあっというまにコンビニについて、しばらく二人だけの時間を楽しんでいた。


     ×


「ただいまー」


 家に帰るとなぜかそこに胡桃がいて、ぎゅっと抱きつかれた。


「胡桃……?」
「翔、わたしの傍から離れたりしないよね?」


 俺の苦手な不安そうな目でそういわれて、俺は数秒黙り込んだあとちいさくつぶやいた。


「そうとは言い切れないかな……」


 胡桃の辛い過去を知ったあの不安そうな目よりも――



 俺の頭には、未空先輩の楽しそうな笑顔が思い浮かんだから。



「翔……どうして」
「ずっと笑ってて、幸せでいてほしいって思える人ができたから」
「……わたしはどうなるの?」
「胡桃は大切な存在だよ。今も、これからも」


 そういって、俺は胡桃の横を通りすぎ部屋に向かった。


     -


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