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Breather

127ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/12/01(土) 14:00:15 HOST:EM117-55-68-131.emobile.ad.jp





   大好きな先輩へ




 ふわりと冷たい空気が俺たちを包んだ。
 雪が降り、うっすらと校庭の砂の上に積もり始める。



 今日は、今まで最高学年として俺たちを引っ張ってくれた先輩方の卒業式。




 留年する人――は、いないと思う。
 何せ三年生はみんな笑顔で卒業するっていう目標で一年生のころから団結してきたみたいだし。



 在校生として、卒業生を見送る俺たち。
 学校にはいつもと違うそわそわした落ち着かない雰囲気の生徒がたくさんいて、いつも制服を着崩す人たちも今日ばかりは正しく着こなしていた。
 「苦しい」なんていいながら、シャツを第一ボタンまでしっかりしめてみる。



 ……やっぱり慣れないな。
 それでも、と俺はふたたび制服のチェックをし始めた。



     ×



「なあ瑠夏(るか)、俺変じゃね?」
「どこが?」
「だって……シャツ第一ボタンまでしめてるしズボン腰パンじゃねえし、ネクタイちゃんとしてるし」
「いつものお前より遥かに良い人そうに見えるけどな」
「ひっど」



 チャラいやつとして有名な親友の空(そら)も、今日はちゃんと制服を着ている。
 なんだかやっぱり落ち着かないな。


 そう思ったとき、三年の先輩が二年校舎の廊下を歩いているのを見かけた。



「留奈(るな)先輩!」



 思わず教室から飛び出して声をかけると、留奈先輩はにこにこ笑った。



「瑠夏くんだー!」
「俺もいますよ!」
「空くん! 制服似合わなーい」



 ――留奈先輩は、俺の好きな人だ。
 同じ軽音楽部でボーカルとギターを担当していた留奈先輩。
 いっつも笑顔で、辛いことがあっても笑ってて――でも、ふたりきりになったときに俺だけに弱音を吐いてくれた留奈先輩がいつの間にか大好きになっていた。



「いつのまにか卒業生になっちゃってた」
「留奈先輩留年してくださいよ」
「えー、やだよう」
「俺、留奈先輩ともっといっしょにいたかったです」
「……うん、そうだね」



 寂しそうな留奈先輩の笑顔。
 俺が慰めてあげたいのに。
 もう、こんなことをするのも最後なのかな。



「留奈先輩、卒業式終わったら俺と遊んでください」
「へ?」
「今日……ダメですか?」
「だ、だいじょうぶ! だめじゃない! わたしも留奈くんと遊びたい!」





 じゃあ、そのときにまた。




 微笑み合って、俺は教室に戻った。




「なあ、お前留奈先輩大好きだな」
「うっせ、黙ってろ」



 空に言われたくねえわ。



     -きる-


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