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Breather

34ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/03(水) 17:21:40 HOST:EM117-55-68-162.emobile.ad.jp




     「ありがとう」   ※死ネタ



 ――――ごめん。


 それが、最愛の人と最期に交わした一言だった。



     ×



 彼女が死んだ。
 ずっとずっと愛してきて、大事にしてきて、なによりも一番大切だった彼女が。


 それから俺は、生きることの意味を失ったような気がした。
 心に大きな穴が開いたような感覚。
 毎日していた彼女とのメールは彼女が死んだ日の「今駅についたよ」で途絶え、今は何も送られてこない。


 そして何より、




 俺が、彼女を殺してしまったんだという罪悪感。



 俺が殺したという言い方は少しおかしいかもしれないが、あながち間違ってはいない。
 大型のトラックに轢かれそうだった俺を突き飛ばし、彼女は自分を犠牲にして俺を庇って死んだんだ。



 「守ってやる」




 そう言ったのは俺のほうだったのに。



 守ってもらったのは、俺だった。



     ×



 病院のベッドの上で静かに眠る彼女を見つめた。
 涙さえあふれてこない。


 なんで、どうして。


 そんな感情が、頭の中をぐるぐる回っていた。



「……ユリカ、ごめん」



 そっと彼女の手を握ると、それはとても冷たくぴくりとも動かなかった。
 罪悪感が、あふれだす。



「守ってやれなくてごめん」



 俺なんか、彼氏失格だな。
 どんな声をかけても彼女が目覚めることはなかった。




「なんで……何で俺なんか庇ったんだよ」

(ごめんなさい)



 彼女の声が、聞こえたような気がした。



「ユリカ……いなくなるなよ」

(カイ、泣かないでよ)




「死ぬなよ……なんで死んだんだよ」

(カイに死んでほしくなかった)




「俺、彼氏失格だな」

(そんなことない。わたしはカイに傍にいてもらえてうれしかった)







「なんでっ……」



 最期まで、彼女は笑っていた。
 死ぬ直前まで、俺がごめんなって言うと今までありがとうと笑った。



「……ごめん、ごめんなユリカ」




(わたし、カイに謝られたくて死んだんじゃないよ)



 ユリカの声が、ふいにはっきり聞こえてきたような気がした。





(わたし、カイと付き合えて本当にうれしかった)



 ユリカの求めている言葉がわかったような気がした。
 俺は泣きながら、ぽつりとつぶやく。



「ユリカ、ありがとう」



(わたしこそ、ありがと)





 彼女の声が消えた。
 そのときには不思議と俺の心もサッパリしていて――




 新しい道を歩んでいこう。
 そう、思うことができた。




 ありがとう、ユリカ。





 俺の最愛の人。



     -


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