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しあんいろ

401ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/06(水) 23:11:50 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp


   enjoy!


「か、か、か……」


 爆発しそう。
 つか萌え死にしそうだ。


「かわいいいいぃぃいいいいいぃいいっ!」
「そ、そんな可愛くないってばっ」


 隣で赤面するメイド姿の百合。
 超可愛い!


 ――わたしたちは今勉強そっちのけで街へ来ていて、コスプリ(コスプレプリ)撮ろうよってなって今こうして萌え死にしてるわけだ。
 照れながら微笑む百合の姿を見た瞬間わたしは爆発しそうでした。てかしていい?


「ねえゆーまっ! 百合超可愛くない?!」


 思わずゆーまに振ってしまった。
 ゆーまが執事服(わたしと海と迅が無理矢理着せた)を着心地悪そうに着崩しながら振り向く。
 その瞬間、ゆーまが驚いたのがわかった。あの悪戯好きで意地悪なゆーまが。


「……超可愛い」
「ほ、ほんと?」
「俺嘘つかないし」


 百合がゆーまには否定することなく本当かどうか確認していた。
 意地悪だけどゆーまは嘘つかないんだから、本当に決まってんじゃんっていう若干皮肉めいた気持ちになったわたしはバカップルをよそに花乃の元にいく。


「花乃様わたしを殺してください」
「ああ、わたしもちょうど殺そうと思ってたとこ――どうせなら百合に撲殺されたい?」
「えちょ、殴り殺すんですかていうかマジかよ!」


 焦らしプレイの撲殺は嫌だ!
 自分で言い出したことだけどマジかよとか言ってみた、フフン。


「アンタが遊真のこと好きなことくらいわたしも海も迅も知ってるわよ」
「ええええ? マジ?」
「ああうん、マジ」
「だって遥未わかりやすすぎだし」


 思わず海と迅に確認してみたら二人とも迷いなく頷きやがった。こんちくしょうめ。
 でも、と付け足すように海と迅が話し出す。


「百合の邪魔すんなよ、アイツ傷つきやすいんだから」
「遥未のことだから百合の優しさにつけこんでみたいな行動するんだろうけど奪おうとしてたら俺らは遥未の邪魔するからなー」


 にっこにこのスマイルが憎たらしいねこんちくしょう☆
 ていうかどんだけ信用ないのよわたし☆


「……ああ、うん……はい」
「まあ、落ち込むなよ」


 大人しく頷くと花乃に適当臭く慰められた。
 でもわたしはゆーまが好きって気持ちは引っ込めるって決めたんだし、ねえ?


「あの、えと……」


 え、なんだろう可愛い声が聞こえてきたどうしよう。


「ゆゆゆ百合ちゃん? 聞いてたかな今までのはなし?」
「……ご、ごめんなさいっ」
「別にいいよぉ、わたしあの人のこと好きじゃないから!」
「で、でも……」


 百合の優しさ、好きだよ。
 でも、そんなに優しくして甘く見たりしないでよ。


「そんなに迷うなら、わたしゆーまもらっちゃうよ?! いいの?」


 ああもう前言撤回だ!
 わたし、ゆーまを諦めない!


「百合だって人間なんだから、嫌いなものは嫌いでいいんだよ! 苦手なものは苦手でいいし、譲りたくないものはあげなくていいの!」
「……遥ちゃん、百合ね」


 百合が微笑みながら話し出した。


「遊くんのこと、遥ちゃんに譲れないくらい大好きなの――でもね」


 百合の顔から、笑顔が消えた。
 ていうか、必死に笑おうとしてるけど涙があふれだしちゃってる。


「遥、ちゃんがっ……もっともっとだいすきで……」


 百合は可愛すぎる。
 そういうところがずるいんだ。


「……あーもう、百合には敵わないなぁ」
「え……?」
「しゃーないから今日はここまでにしといてあげる! それまでに心の準備しておきなよー」


 潔く撤退するわたしってかっこいいかも、優しいかも強いかも頼もしいかもー!
 やーばいっ、ヒロインみたーい!


「……わたしが」


 うん、もともとはね。


「わたしがゆーまを好きにならなければこんなに悩まなかったのに、ゆーまの馬鹿」


 ゆーまが悪いんだよ。

     -

402ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/09(土) 18:40:02 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp


   enjoy!


「馬鹿って、お前陰でコソコソ俺のこと馬鹿にしてんじゃねーよ」
「ああああれっ? ゆーま、何でここに……つうか聞かれた!」


 聞きなれた声と偉そうな言葉に振り向くと、そこには今最も会いたくなかった人――ゆーまがいた。
 なんでいんの?! 百合といっしょじゃなかったの? てかユーフォーキャッチャーしに行ったんじゃなかったの?!

 たくさんの疑問が思い浮かぶ中、わたしはゆーまに恐る恐る訊いた。


「その、いろいろアレな話は聞いてないよね……?」
「アレってなんだよ。つーか俺馬鹿って言われたのしか聞いてねーし」
「よ、よかったああああああ!」
「なんだよそれ」


 無愛想でぶっきらぼうなゆーま。
 なんでコイツなんかのこと好きになったんだろ。
 なんか自分で自分が意味わかんなくなってきた。わたしのこと理解できるのってわたし以外にいないんだろうけど。


「……つか、百合はいいの?」
「ああ、百合は花乃とプリ撮ってくるって」
「なにそれ! わたしも撮りたい!」
「お前誘われなかったんだから行くなよ」
「そ、そんなああああああ!」


 酷いよ!
 いくら好きな人が同じだからって百合、酷すぎる!

 わたしの中でもわもわした何かが破裂して、思わず百合といっしょにいるであろう花乃に電話してみてしまった。


「あっ、もしもし花乃!」
『うざい』


 プツッと残酷な音が聞こえたような気がする。
 どうしてうざいの一言できるんだ!

 ヤケクソで百合にも電話してみた。


「百合いいいいぃいいいい!」
『遥ちゃんっ。ごめんね、誘ったんだけど遥ちゃん固まっちゃってたから先行っちゃった……』
「わたしもいっしょにいたい!」
『じゃあ今からそっち行くね――って、え? 花ちゃん?』
「え、なになになに」


 百合の可愛い声が聞こえなくなった。
 なになに? 何が起こったの?


『おい遥未――ガールズトークしてるから来ないでねー』
「え? ちょ、花乃?!」


 百合と花乃が代わったみたいだ。
 ガラの悪いその声にげ、と声を漏らす。


『アンタは遊真と戯れてれば?』


 え、なんだろ。
 さっきうざいできられたときはプツッて音だったのに今回ブツッて音が聞こえたんだけど。

 ツー、ツー、ツー……と虚しくわたしの耳に入る音。
 数秒固まったあと、ずっと見守ってくれてたゆーまに情けなく愚痴る。


「ひどいよね……花乃」
「いや、正しい判断だと思うけど」
「そんなあっ、ゆーま酷い!」
「……酷いっつうんならコレあげなくていいよなー」

403ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/09(土) 18:40:56 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp

   enjoy!


 ゆーまの目つきがかわった。
 そうそう、この目つきのときが好き。

 悪戯っぽくてかっこよくてかわいーの。


 そんなゆーまの手には可愛いくまのぬいぐるみがあった。
 ユーフォーキャッチャーでわたしが千円かけても取れなかったやつだ。コイツ軽々と取りやがって。


「べべべ別に酷いなんて言ってないよ?」
「ふうん……じゃあなんて言ったのかなあ?」
「す、素晴らしいゆーま様って言った」
「そんな長くなかったような気がするんだけどなぁ」
「そ、そんなことないよー」
「まあ、んなこと言わなくてもあげるけど」


 ぽいっとぶっきらぼうに渡されたぬいぐるみ。
 ぎゅうっと抱きしめてみた。

 ゲーセンだからタバコの匂いがするのかと思ったけど、なぜかゆーまの良い香りがしてた。
 もっとぎゅうぎゅうもふもふしてみる。


 くんくんくんっ


「んな匂い堪能すんなよ!」
「ははははいっ」


 楽しい。
 これがもっとつづけばいいのに――と思ったところで、もう一つ薄いピンク色をした可愛いくまのぬいぐるみがあるのに気づいた。


「それは?」
「これは百合にあげようと思って」


 うわ。
 訊かなきゃよかった。

 わたしのは茶色で百合はピンクか。
 しかも百合のくまは赤いハートのクッションをもってて、そこに白の刺繍でLOVEってかいてあるし。


「……」
「なんだよ、訊いといて反応なしかよ」
「べっつにぃ」
「意味わかんねー」


 そう言って頬を掻くゆーまはなんだか嬉しそうだった。
 やっぱり百合が大好きなのかな。
 なんだか妬ましいような皮肉めいた気持ちになったわたしは思いっきりゆーまの手を握ってみた。


「なんだよ」
「いいじゃんいいじゃん、わたしだって寂しいんだよー」
「彼氏いなくて?」
「うん、まあそんな感じ」
「俺で充電すんなよっ、俺には百合が――?!」


 ゆーまが悪いんだからね。
 多分わたし顔真っ赤だと思う。

 だって思わずゆーまにキスしちゃったから。


「……なん、で」


 ゆーまが動揺しているのを見て、なんだか嬉しくなった。
 ドキッてしてくれたのかな。
 顔が赤いゆーまの様子を見てみると、どうやらドキッとしてくれたようだ。


「なんでもなーいっ」


 この流れで「好きだよ」とか「振り向いてよ」とか言えればいいんだけど、ヘタレで弱気なわたしはふいっと顔をそらして誤魔化してしまった。
 まあ、一歩進展できたのかな。……いや、遠ざかったか?


     -

404ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/11(月) 17:15:23 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp


   Flower Meaning


 言葉じゃ伝わらないくらい、君を愛しています。
 わたしは臆病だから思うように言葉にすることができなかったっていうのもあるけど。

 でも、伝えられなかったのは事実。


 わたしの分も、たくさん幸せになってね。


     ×


「花(はな)!」
「ははははいっ」


 教室に先生の怒鳴り声が響いた。
 周りの生徒たちがくすくすとこっちを見て笑っているのがわかる。


「おいお前――俺の授業で寝るとは良い度胸してんなぁ?」
「おおおお褒めいただいて光栄です!」
「……授業が終わったあと外周十周! そのあと部活に来い!」
「えええええっ」
「えええじゃない! 寝てるお前が悪い」


 ったく……、とため息をつきながら教卓へ戻る先生の後ろ姿を見つめながらポツリとつぶやいた。


「外周楽しみだなー」


 だって、彼氏の宇宙(そら)に会えるから。
 宇宙はバスケ部のエースで――とにかくかっこいい。

 バスケ部の外周に混ざっちゃえばこっちのものだよね。
 あ、外周したあと二人で抜け出すのもいいかも!


 いろんな空想をめぐらせたわたしは、授業中当てられたのに気づけなくてまた怒られてしまった。
 でもそんなの耳に入ってないのは言うまでもないだろう。


     ×


「しゅーんっ! いっしょ走ろー」
「あれ? 花も外周? 花吹奏楽部だよな」
「うん、そうなんだけどー……顧問の八木(やぎ)の授業で寝ちゃってー」
「あー、あれ眠いよな」
「地理だったもんでつい……ね」


 二人でわいわいきゃっきゃしながら外に出た。
 クラスは別々だけど今でもこんなに仲が良いんだ。

 何せ小さい頃からずっといっしょの幼馴染でもあるし。


「わ、ここ久し振りに走る」


 さすが、毎日外周してるだけあるなと思った。
 あっというまに半周してるし。

 ――でも。


「つ、つかれた……」


 このペースで行ったらわたしは途中で死んじゃいそうだ。
 よろりとよろけながら走るけど、そんなわたしを迅が気遣ってくれてやる気がアップした。


「大丈夫か?」
「うんっ、へーき! つかがんばる」
「がんばれー! 辛くなったらおんぶしてあげるから、とか――」
「マジで?! おんぶして!」


 ――おんぶしてもらった。
 迅はそのつもりで言ったんじゃないってわたしも気づいてるけど。
 なんか無性に甘えたくなっちゃって。


「はふー、お疲れ迅!」
「楽しかったなー」


 わたしをおんぶして五周以上走ったのに、なんでこんなに力有り余ってるんだろ。
 なんだか急に迅が強くて頼もしく見えてきたわたしは思わず迅に抱きついてしまった。


「?! どうした花、具合悪いのか?」
「ううんー、なんか抱きつきたくなった」


 えへ、と微笑んで見せる。
 やっぱり迅が大好きだなー!って、改めて実感した。


     ×

405ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/11(月) 17:17:00 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp

  上はミスです(^ω^;)
  修正版投稿!


   Flower Meaning


 言葉じゃ伝わらないくらい、君を愛しています。
 わたしは臆病だから思うように言葉にすることができなかったっていうのもあるけど。

 でも、伝えられなかったのは事実。


 わたしの分も、たくさん幸せになってね。


     ×


「花(はな)!」
「ははははいっ」


 教室に先生の怒鳴り声が響いた。
 周りの生徒たちがくすくすとこっちを見て笑っているのがわかる。


「おいお前――俺の授業で寝るとは良い度胸してんなぁ?」
「おおおお褒めいただいて光栄です!」
「……授業が終わったあと外周十周! そのあと部活に来い!」
「えええええっ」
「えええじゃない! 寝てるお前が悪い」


 ったく……、とため息をつきながら教卓へ戻る先生の後ろ姿を見つめながらポツリとつぶやいた。


「外周楽しみだなー」


 だって、彼氏の迅(しゅん)に会えるから。
 迅はバスケ部のエースで――とにかくかっこいい。

 バスケ部の外周に混ざっちゃえばこっちのものだよね。
 あ、外周したあと二人で抜け出すのもいいかも!


 いろんな空想をめぐらせたわたしは、授業中当てられたのに気づけなくてまた怒られてしまった。
 でもそんなの耳に入ってないのは言うまでもないだろう。


     ×


「しゅーんっ! いっしょ走ろー」
「あれ? 花も外周? 花吹奏楽部だよな」
「うん、そうなんだけどー……顧問の八木(やぎ)の授業で寝ちゃってー」
「あー、あれ眠いよな」
「地理だったもんでつい……ね」


 二人でわいわいきゃっきゃしながら外に出た。
 クラスは別々だけど今でもこんなに仲が良いんだ。

 何せ小さい頃からずっといっしょの幼馴染でもあるし。


「わ、ここ久し振りに走る」


 さすが、毎日外周してるだけあるなと思った。
 あっというまに半周してるし。

 ――でも。


「つ、つかれた……」


 このペースで行ったらわたしは途中で死んじゃいそうだ。
 よろりとよろけながら走るけど、そんなわたしを迅が気遣ってくれてやる気がアップした。


「大丈夫か?」
「うんっ、へーき! つかがんばる」
「がんばれー! 辛くなったらおんぶしてあげるから、とか――」
「マジで?! おんぶして!」


 ――おんぶしてもらった。
 迅はそのつもりで言ったんじゃないってわたしも気づいてるけど。
 なんか無性に甘えたくなっちゃって。


「はふー、お疲れ迅!」
「楽しかったなー」


 わたしをおんぶして五周以上走ったのに、なんでこんなに力有り余ってるんだろ。
 なんだか急に迅が強くて頼もしく見えてきたわたしは思わず迅に抱きついてしまった。


「?! どうした花、具合悪いのか?」
「ううんー、なんか抱きつきたくなった」


 えへ、と微笑んで見せる。
 やっぱり迅が大好きだなー!って、改めて実感した。


     × きりまーす

406ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/11(月) 17:18:09 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp

   上のつづきです!

 それはある秋の終わりかけた時期のこと。
 十月の始め、十月一日の出来事だ。

 この日は大好きな迅の誕生日で――誕生花であるチョコレートコスモスをプレゼントした。


「迅は男の子だから花なんかいらないかなって思ったんだけど、何が欲しいかわからなくて」
「いや、花にもらえるなら何でもうれしいし! ――でもこれ、俺枯らせちゃいそうで不安だな」
「ふっふっふ」
「な、なに?」


 よくぞ聞いてくれました! とでも言うかのようにわたしが目をキラキラさせて言った。


「これはねっ、花の愛が詰まってるから枯れないんだよー!」
「マジで?! やった」
「ふふーん」


 迅といると楽しい。
 それを改めて感じたわたしはふふっと微笑んで言った。


「お花、大事にしてね」
「うん、絶対大事にする」


 ぎゅっとそのお花を抱きしめる迅。
 なんだか自分が抱きしめられているような気分になった。


 チョコレートコスモスの香りと同じように、すごく甘い一日を過ごしたのだった。


     ×


 そしてそれから数日後。
 なんだか最近――いや、あの花を渡してからかな。
 急に迅が冷たくなった。

 廊下ですれ違っても何にも言ってくれないし、部活のあともいっしょに帰ってくれない。


 でも今日はめずらしく迅が家に呼んでくれて、わくわくした気分だった。



「……今日はさ、花に渡したいものがあるんだ」
「な、なあに?」



 迅ににこりと微笑みながら渡されたのは黄色い薔薇の花。
 迅の笑顔がいつもより寂しそうな笑顔だったなんてことは忘れて思いっきりはしゃいだ。


「く、くれるの? ほんとに?」
「うん、花にプレゼント」
「ありがとう! うれしい!」


 なあんだ。
 迅が冷たかったのは気のせいだったんじゃん。

 帰りにいっしょに帰ってくれなかったのもこの花を買うためか。


 すっかりもやもやの晴れたわたしはるんるん気分で家に帰っていった。
 お部屋にその薔薇を飾ったのは言うまでもないだろう。


     ×


 その次の日。
 部活が終わったあと迅がいるであろう体育館に行ったら、予想通りバスケ部の部員たちがそこにいた。

 ちょうど終わったみたいで、迅が驚いてわたしに駆け寄る。


「なんでいんの?!」
「ひどっ、いっしょに帰るからに決まってんじゃんもー……」
「え? もういっしょに帰れないって前言ったよね……?」
「……え、でも……薔薇、くれたじゃん」
「いや、それは……」


 迅が気まずそうにポツリと言った。


「黄色い薔薇の花言葉、調べてみて」


     × またきるー!

407ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/11(月) 17:19:28 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp

   つーづきー
   Flower Meaningは最終話です(´・ω・)



 あのあと一人で家に帰ったわたしは迅に言われた通り黄色い薔薇の花言葉を検索していた。


 あなたを恋します、友情、……
 薄らぐ愛、恋に飽きた、嫉妬、誠意がない、不貞――



 「別れよう」



 たくさんの花言葉があったけど、迅が言いたいのはきっとコレだ。
 別れようって意味……?

 どうしてだろう。
 でもわたしにも、思い浮かぶことが一つだけあった。


 チョコレートコスモスの花言葉。
 調べてみると、予想通りのような言葉が載っていた。


「恋の終わり――」


 他にも恋の思い出とかがあったけど、迅が言ってるのはきっとコレのことか。
 どうしよう、と思ったけど今更言い出せなかった。


 でも、いやだ。
 伝えたい――このままじゃだめだ。


 いそいで家を飛び出して迅が歩く帰り道を走る。


「迅っ!」
「花っ?!」


 言葉でなんか、伝えられない。
 伝わらないくらい大好きなのに。


 わたしは携帯につけていた迅からもらったチューリップの花のストラップを外して迅に渡す。


「……信じて」


 それだけポツリと言い残した瞬間――
 迅にぎゅっと抱きしめられた。


「疑ってごめんな」
「ううん、いいの――言葉じゃ伝わらないくらい愛してるから」


 愛の告白、永遠の愛――


     -


 チョコレートコスモスの花言葉:恋の終わり、恋の思い出、移り変わらぬ気持ち
 黄色いバラの花言葉:あなたを恋します、友情、薄らぐ愛、恋に飽きた、嫉妬、誠意がない、不貞、別れよう
 チューリップの花言葉:愛の告白、永遠の愛

 って感じです!
 タイトルは花言葉って意味。


 最初の趣旨とちがうってのは気にしないで←
 久し振りに完結した作品でしたー

 他のも書かなきゃなー(^ω^)

408ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/14(木) 11:45:28 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp

   enjoy!


「花ちゃん――」
「どうしたの? 百合」
「――百合実はね、遊くんと付き合ってなんかないの」


 照れ隠しでゆーまの傍から離れ、ドッキリ的な感じで花乃と百合がプリ撮ってるところに忍び込もうと思っていたところ。
 なぜか、百合が花乃にありえない話をしていた。

 いや冗談だろと思ったけど、その声はどこかさみしそうで――不安そうな声。


「百合ね、遊くんに告白して振られたの――」
「え……?」
「ずっと隠してて、嘘ついててごめんなさいっ」


 ハテナだらけなわたしの頭の中。
 でもどこかで黒いわたしが微笑んでいるような気もして――


「どうしてそんな嘘」
「……遊くんが、遊くんが優しかったから。振られて泣いたわたしを見て、可哀想だと思って付き合ってるふりをしてくれてただけなの」


 花乃の声を聞く限りめずらしく動揺しているようだ。


「遊くん本当は、遥ちゃんが好きだったんだよ」


 そんな、こと。
 そんなこと聞いて、わたしはどうすればいいんだろう。

 あ、でも百合は実際わたしに言ってるんじゃなくて花乃に言ってたのか。


「何で今そんな話するの?」
「……遊くんに、もう恋人ごっこはやめようって――百合は強くなったからもう俺はいらないだろって、振られちゃった」


 百合は泣いているようだった。
 きっと、ごっこでもなんでもゆーまと付き合えてうれしかったんだろう。
 ……どうしても、ゆーまじゃなきゃダメだったんだろう。


 わたしはもう二人の会話を、泣いている百合の声を聞いているのが辛くなって、その場を走り去ってしまった。
 でもわたしだけ何も動かないっていうのは卑怯な気がして――ゆーまの元へ向かった。


     -

409ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/14(木) 11:59:21 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp


   enjoy!


「ゆーまの馬鹿、何やってんだ」
「はぁ? 何の話だよ――つうかお前、さっきのなんだったんだよ」


 あ、ちょっとタイムタイム。
 今のわたしとゆーまの仲を考えてみたら、わたしゆーまにこんな堂々と百合のこと話せる立場じゃなくない?

 わたしゆーまのこと好きだし、さっき思わずキスしちゃったわけだし、百合の話を聞けばゆーまもわたしのこと好きだったみたいだし。
 その好きだったがもし現在進行系だったらわたし、好きな人と両思いなのにそんな相手に違う女のところ行けって言ってることになっちゃうよね。


 ――でも。


 わたしはゆーまより、百合のほうが好きなのかもしれない。
 恋愛より友情のほうが大事なのかな。


「……百合と、別れないであげて」
「なんで遥未がそのこと――」
「さっき花乃と百合が話してんの聞いたの!」


 なんなのわたし。
 ムキになっちゃって、馬鹿みたい。


「百合、泣いてた! 百合はどうしても、ぜったいにゆーまじゃなきゃダメだったの!」
「……俺の好きな人、誰か知ってる?」
「――――わた、し……だったけど、今は百合でしょ?」


 百合であってほしい。
 なのに、ゆーまは微笑みながら残酷なことを言い放った。


「今も前も、ずっと遥未だよ」



 それは、とてもうれしくて泣きそうなほど舞い上がっちゃうようなこと。
 それは、とても残酷で泣きそうなほど悲しいようなこと。



 百合をとるか、わたしをとるか。
 どうしたらいいんだろう。




「俺は遥未に振られたところで百合と付き合うなんてことはしないよ」



 もう百合は、泣くしかないんだと思う。
 それならわたしも、泣いて終わろうか――



「ごめ――」
「待って!」


     -

410ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/06/17(日) 15:20:07 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp


   enjoy!


「ゆ、り……?」


 走ってわたしを探してくれたのだろうか。
 息は荒く、額に汗の玉が浮かんでいた。


「遥ちゃん、百合に教えてくれたじゃん!」
「え……?」


 こんなに必死な百合初めて見た。
 こんなに強気で、遠慮をしない百合を。


「譲りたくないものは譲らなくていいって、嫌いなものは嫌いでいいし苦手なものは苦手でいいって言ってたじゃんっ」


 そうだ、わたし。
 百合にそんなこと言える立場じゃなかったんじゃん。
 この言葉は結局自分にそう言い聞かせたかっただけだったのだろうか。

 ――いや、これは。

 百合にゆーまを諦めてほしくなくて。
 ゆーまに幸せになってほしかったから言ったもので。


「……わたしは、ゆーまに幸せになってほしい」
「なら、百合じゃ無理だよ。遥ちゃんしか遊くんを幸せにはできないの!」


 今度は百合が教えてあげるね、と前置きしてから百合が言った。
 その笑顔はとても可愛くて綺麗で、わたしには眩しすぎるものだったけれど――


 この眩しい笑顔より、わたしを選んだんだ。
 それならわたしもこの笑顔以上に輝きつづけてゆーまを幸せにする役目があるんだから。


「ゆーま、好きだよ」
「俺も、ずっと好きだった」


 
 やっと伝えられた。
 ライバルだと思ってた百合にも助けられちゃったし。


「ありがと百合」
「言ったでしょ、百合。遊くんより遥ちゃんが大好きって」


 わたしはきっと、色んな人に助けられてるんだろうな。
 こうして人生を楽しめることに、突然すごく感謝したくなってきた。


「わたしもみんなだいすきだーっ」


 ちょっと意地悪な花乃も、馬鹿迅もうざキャラな海も優しくて可愛い百合も、かっこよくて悪戯好きなゆーまも。
 わたしにとってはみんなみんな宝物です。
     -

 
 enjoyはここから高校編に突入したいところなんです。
 こんな長く連載するつもりなかったのでよくわかんないけど。


 とりあえず中学生編は一旦おわり。
 ここからつづくのかどうか、それはねここの気分次第です←

411ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/16(月) 20:51:43 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp


   君の隣の笑顔


 ――笑い方を忘れた。
 お笑い番組を見ても友達に面白いギャグを言ってもらっても、何も感じない。
 いつ頃からだろう。
 多分、君が――レンが交通事故に遭ってからだと思う。

 そのときはレンとデートしてて、アタシもレンの隣ですごく楽しそうに笑っていた記憶がある。
 でも、あの時――信号無視したトラックにアタシが轢かれそうになったとき。
 レンはアタシを庇って――


「いやあぁっ!」


 思い出したくない。
 あの日から、あれからレンが倒れて救急車で運ばれてから、涙しかながれない。
 目が腫れてるのがわかる。
 アタシ、レンが隣にいなきゃ笑うなんてことできないよ。


 そのとき、コンコン、とアタシの部屋のドアをノックする音が聞こえた。


「ユリナ、レンくんのお見舞いに行くけど……」
「手術、は」


 レンはたしか手術をしなきゃいけなくて、対面なんてまだ先のはずじゃ――


「それがね、手術は一昨日終わってて、すっかり体調も良くなったんだって」


 レンに会いたい。
 ポンッと浮かんだその思いに答えるように、アタシはすぐ部屋を飛び出て準備した。
 早く行かなきゃ、きっとレンもアタシを待ってる。


     ×


「失礼、します……」


 恐る恐る、レンがいるであろう病室に入るとそこにはレン独特の金色の髪の毛があった。


「レンッ!」


 アタシのこと、待っててくれたかな。
 なんだか不思議そうな表情をするレンの傍に駆け寄った瞬間――


「アンタ誰?」


 レンの口から、ありえない言葉が出てきた。
 アタシは必死にレンに説明する。


「アタシだよ、ユリナ」
「ユリ、ナ?」
「レンの彼女だよ」


 アタシがそう言った瞬間、レンが一瞬固まるのがわかった。
 辛そうに頭を押さえたあと、申し訳なさそうにポツリ。


「ごめん、覚えてない、みたい」


 途切れ途切れに言ったレンの言葉は。
 グサリと、深くアタシの胸に刺さったみたいだ。


「どう、して?」
「事故……までは覚えてる――そのとき、誰かといっしょにいた」
「だれ、と? 女の子だよ、ね?」
「ああ、多分……で、その子が、轢かれそうに、なって」
「う、ん……」


 思い出して、もっと。
 お願いだから、記憶を辿ってアタシにもう一回レンの笑顔を見せてよ。
 笑い方、教えてよ。


「ッ!」
「レン?!」


 やだ、レン。
 ねえ、思い出せないの?
 アタシたちで一生懸命つくった思い出、レンは全部忘れちゃったの?


「ごめ、ん……」
「事故の前の、楽しい思い出とか、ないの?」
「誰かといっしょにいて、すごい、楽しくて――俺、ずっと笑ってた」
「そう、だよぉ……」


 なんで、アタシのこと。
 アタシは思わず、泣き出してしまった。


「なんで?! アタシ、レンが大好きでっ……今、だって! レンの手術が終わってッ、うれしかったのにっ」
「ユリナ、だっけ」
「名前もッ! レン、アタシのことユリって、呼んで、くれたっ」


 レンのばか。
 また笑って、ユリって呼んでよ。


   きります

412ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/16(月) 20:52:31 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp


   君の隣の笑顔


 ――笑い方を忘れた。
 お笑い番組を見ても友達に面白いギャグを言ってもらっても、何も感じない。
 いつ頃からだろう。
 多分、君が――レンが交通事故に遭ってからだと思う。

 そのときはレンとデートしてて、アタシもレンの隣ですごく楽しそうに笑っていた記憶がある。
 でも、あの時――信号無視したトラックにアタシが轢かれそうになったとき。
 レンはアタシを庇って――


「いやあぁっ!」


 思い出したくない。
 あの日から、あれからレンが倒れて救急車で運ばれてから、涙しかながれない。
 目が腫れてるのがわかる。
 アタシ、レンが隣にいなきゃ笑うなんてことできないよ。


 そのとき、コンコン、とアタシの部屋のドアをノックする音が聞こえた。


「ユリナ、レンくんのお見舞いに行くけど……」
「手術、は」


 レンはたしか手術をしなきゃいけなくて、対面なんてまだ先のはずじゃ――


「それがね、手術は一昨日終わってて、すっかり体調も良くなったんだって」


 レンに会いたい。
 ポンッと浮かんだその思いに答えるように、アタシはすぐ部屋を飛び出て準備した。
 早く行かなきゃ、きっとレンもアタシを待ってる。


     ×


「失礼、します……」


 恐る恐る、レンがいるであろう病室に入るとそこにはレン独特の金色の髪の毛があった。


「レンッ!」


 アタシのこと、待っててくれたかな。
 なんだか不思議そうな表情をするレンの傍に駆け寄った瞬間――


「アンタ誰?」


 レンの口から、ありえない言葉が出てきた。
 アタシは必死にレンに説明する。


「アタシだよ、ユリナ」
「ユリ、ナ?」
「レンの彼女だよ」


 アタシがそう言った瞬間、レンが一瞬固まるのがわかった。
 辛そうに頭を押さえたあと、申し訳なさそうにポツリ。


「ごめん、覚えてない、みたい」


 途切れ途切れに言ったレンの言葉は。
 グサリと、深くアタシの胸に刺さったみたいだ。


「どう、して?」
「事故……までは覚えてる――そのとき、誰かといっしょにいた」
「だれ、と? 女の子だよ、ね?」
「ああ、多分……で、その子が、轢かれそうに、なって」
「う、ん……」


 思い出して、もっと。
 お願いだから、記憶を辿ってアタシにもう一回レンの笑顔を見せてよ。
 笑い方、教えてよ。


「ッ!」
「レン?!」


 やだ、レン。
 ねえ、思い出せないの?
 アタシたちで一生懸命つくった思い出、レンは全部忘れちゃったの?


「ごめ、ん……」
「事故の前の、楽しい思い出とか、ないの?」
「誰かといっしょにいて、すごい、楽しくて――俺、ずっと笑ってた」
「そう、だよぉ……」


 なんで、アタシのこと。
 アタシは思わず、泣き出してしまった。


「なんで?! アタシ、レンが大好きでっ……今、だって! レンの手術が終わってッ、うれしかったのにっ」
「ユリナ、だっけ」
「名前もッ! レン、アタシのことユリって、呼んで、くれたっ」


 レンのばか。
 また笑って、ユリって呼んでよ。


   きります

413ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/16(月) 20:53:14 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp



「ユリ!」


 泣き叫ぶアタシの名前を、レンは一生懸命呼んだ。
 アタシは突然名前を呼ばれて思わず黙り込む。


「俺、ユリのこと何も覚えてない……けど、事故の前、あの楽しい思い出のなかにいた子がユリだとしたら――俺はユリをまた好きになるよ」


 レンはとっても一途で、アタシを大事にしてくれて。
 オマケに他の人にも優しくて、でもアタシにはもっともっとすっごく優しくて。
 大好きな人なのに。


「もっともっと、好きになっちゃうよぉ……」


 これ以上好きになっても苦しいだけじゃん。
 辛いし、アタシもう泣きたくないのに。


「もっと好きになっていいよ。俺も、それに負けないくらいユリのこと好きになるから」


 うれしいはずなのに。
 アタシの心には、なぜか迷いがあった。

 もし、レンの記憶がなくなったとしたら――
 他の女の子に恋をしていたかもしれない。
 もっと違う人生を歩んでいて、アタシとは一切関わらなくて済むかもしれない。

 実際レンはアタシのせいで事故に遭ったんだ。
 だからもう、アタシなんかといちゃいけないよ。


「いいよレン……レンはレンの道を歩んで」


 必死につくった、作り笑顔。
 でも、どうしても笑えない――泣きそうになる。
 そんなアタシを、レンはそっと抱きしめてくれた。


「笑え、ないの?」
「レンが、事故に遭ったときから――」
「じゃあさ、俺がまた笑わせてあげるよ」


 ふっと笑みをうかべたレン。
 アタシはうれしくて、笑顔になれた、ような気がする。


 その瞬間、レンが苦しそうに俯き始めた。


「ッ!!!」
「レン?!」


 ねえ、どうしたのレン?
 またアタシの前から、いなくならないで――





「ユ、リ……?」


 レンが、アタシを見つめて不思議そうに言った。
 なんとなく、感覚的に、だけど……


「記憶が戻った……?」


 どうして?
 アタシが笑ったから?


「ユリ、怪我しなかった?!」


 びくん。
 急に肩を掴んでブンブン揺すぶられた。


「だ、だいじょうぶだよ……?」


 よかった。
 涙があふれだす。


「ユリ、泣かないでよ……」
「だって、うれしくてっ」
「嬉しい?」
「レン、アタシの記憶なくしてっ……」


 でも、アタシ、笑い方わかったよ。



「アタシね、レンが傍にいなきゃ笑えないみたい」
「俺も、ユリが傍にいなきゃ楽しくないよ」


「「大好きだよ」」


     ‐


 お久し振りです!
 勝手ながらしあんいろの連載を終了させていただく予定だったのですが、急遽更新してしまいました。
 いやなんか書きたくなって。

 笑い方を忘れたっていう歌詞の曲が流れてきたので、ポンッと浮かんだ作品。
 ユリナってのは元々決まってて、レンはなんか合ってたからつけました←
 まあ、しあんいろ復帰小説的な感じでね!
 またかなり下がったときに書きたくなると思うんで、そのときに書きます!

414ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/20(金) 19:30:07 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp


   enjoy!!


 「佐藤遥未」
 人混みのなかでクラスが書いてある表をじっと見つめながら、あたしはその文字を探した。
 周りの人は「どう?見つかったー?」「まだ、つかあたし合格したっけ」「やった!今年もまた同じクラスだね!」「高校でも彼女と同じクラスになれるなんて……」と、それぞれが思い思いにしゃべっている。

 今更合格したっけかという疑問を持ってもしょうがないのだけれど、あたしはなんとなく自分の名前がクラス表にないことに不安を感じていた。
 たしかにあたしは、花乃やゆーまたちと同じ音羽高校に入学したはずなのだんなだけどな。


「百合いぃ!」
「ど、どーしたの遥ちゃん」
「あたしの、あたしの名前がないよおぉ!!!」


 みんなの視線が一斉に集まるのがわかる。
 さっきまで思い思いにしゃべっていた人も、まだしゃべりつづけながらもコチラをちらりと見ているようだ。


「うそ、あるはずだよ」
「うぅ……あ、百合たちは何組だったの?」
「わたしと遊くんは1−Aで海くんと迅くんと花ちゃんは1−Bだよ」
「ふええぇ、じゃああたしそこ調べればいるかも」


 あたしはもう一度、人混みの中のクラス表に目を通す。
 すると、どこからともなく「遥ちゃん、あったよ!」という声がきこえて、あたしはぐるんと振り向き声がきこえた方向へ向かった。


「どこどこ?!」
「Cクラスの11番」
「C……」


 Cっていえば、あたしだけ仲間はずれじゃないか。
 はあとため息をつきながら、あたしは苦笑して励ましてくれた百合に哀れそうにつぶやいた。


「合格しても馬鹿は仲間はずれのままなんだねー……」
「そんなことないよっ、元気出して?」
「うん、ありがと百合……」


 あたしはあたしなりにがんばるしかない……のか。


     ‐


 enjoy!の高校生verです(`・ω・´)
 つづくかもとかほざいといて実はもうつづけるつもりなんてなかったのですが、最近しあんいろを読み返して文面はともかくenjoy!って結構いい話じゃねってことで続編いきました。
 enjoyのビックリマークが二つになってます。
 まさかの高校生になった瞬間遥未ぼっち計画が立てられかけてますがだいじょうぶです←
 それでは、今時しあんいろを見てくれている人はいないと思いますが、ねここは書き続けます。
 だれかの目に入ることを願って!!!←

415ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/21(土) 16:32:12 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp

   訂正ばん!

   enjoy!!


 「佐藤遥未」
 人混みのなかでクラスが書いてある表をじっと見つめながら、あたしはその文字を探した。
 周りの人は「どう?見つかったー?」「まだ、つかあたし合格したっけ」「やった!今年もまた同じクラスだね!」「高校でも彼女と同じクラスになれるなんて……」と、それぞれが思い思いにしゃべっている。

 今更合格したっけかという疑問を持ってもしょうがないのだけれど、あたしはなんとなく自分の名前がクラス表にないことに不安を感じていた。
 たしかにあたしは、花乃やゆーまたちと同じ音羽高校に入学したはずなんだけどな。


「百合いぃ!」
「ど、どーしたの遥ちゃん」
「あたしの、あたしの名前がないよおぉ!!!」


 みんなの視線が一斉に集まるのがわかる。
 さっきまで思い思いにしゃべっていた人も、まだしゃべりつづけながらもコチラをちらりと見ているようだ。


「うそ、あるはずだよ」
「うぅ……あ、百合たちは何組だったの?」
「わたしと遊くんは1−Aで海くんと迅くんと花ちゃんは1−Bだよ」
「ふええぇ、じゃああたしそこ調べればいるかも」


 あたしはもう一度、人混みの中のクラス表に目を通す。
 すると、どこからともなく「遥ちゃん、あったよ!」という声がきこえて、あたしはぐるんと振り向き声がきこえた方向へ向かった。


「どこどこ?!」
「Cクラスの11番」
「C……」


 Cっていえば、あたしだけ仲間はずれじゃないか。
 はあとため息をつきながら、あたしは苦笑して励ましてくれた百合に哀れそうにつぶやいた。


「合格しても馬鹿は仲間はずれのままなんだねー……」
「そんなことないよっ、元気出して?」
「うん、ありがと百合……」


 あたしはあたしなりにがんばるしかない……のか。


     ‐


 enjoy!の高校生verです(`・ω・´)
 つづくかもとかほざいといて実はもうつづけるつもりなんてなかったのですが、最近しあんいろを読み返して文面はともかくenjoy!って結構いい話じゃねってことで続編いきました。
 enjoyのビックリマークが二つになってます。
 まさかの高校生になった瞬間遥未ぼっち計画が立てられかけてますがだいじょうぶです←
 それでは、今時しあんいろを見てくれている人はいないと思いますが、ねここは書き続けます。
 だれかの目に入ることを願って!!!←

416ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/21(土) 16:33:26 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp


   enjoy!!


「……あ、あのっ」
「なあに?」


 後ろの席の、ちょっとふわっとした可愛い女の子。
 その子に、あたしは思いきって話しかけてみた。
 
 (だってひとりぼっちとか嫌だし、百合たちがいないんだから自力でどうにかするしかないんだもん!)

 心の叫びを声に出さないようにしながら、その子のつまらなさそうな反応を見てちいさな声で言った。


「あたし、佐藤遥未っていって……友達全然いなくて、その」
「あっ、もしかしてあの遥未ちゃん?」
「あの? あのってなになに?」


 意外にも名前に興味を持ったその子にあたしはん?と思った。
 「あの遥未」って、あたし有名人なの?


「男子でね、早速可愛い子ランキングつくったんだって」
「ほへぇ、そりゃつまらんことを」
「それでね、一位が百合ちゃんで二位が花乃ちゃんで三位が遥未ちゃんだったのー!」
「え」


 百合が一位なのはわかる。
 花乃が二位、なのも……認めたくないけどわかるよ。
 なのになんであたし三位?!
 あたし可愛くないし!ブスだしキモイし!


「なんか可愛いなって思ったら、遥未ちゃんだったんだね」
「可愛くないよ!えと、その……名前」
「あ、わたし?わたしは桜(さくら)ってゆーの。よろしくねー」
「よろしく、桜!」


 早速呼び捨てっていう。
 とにかく、気の合いそうな友達ができてよかった!


     ×


「遥遥遥」
「なになになに」
「ねね、あの百合ちゃんって子の隣にいる男子イケメンじゃない?」
「あれって」


 ゆーまじゃん!
 あたしの彼氏だし。
 ていうか百合とゆーまいっしょに購買行ってるんかい!
 別になんとも思わないけどさあ。


「なんかお似合いー」
「ですよね……」


 ――やっぱり。
 あたしとか花乃にはない可愛さというか魅力とかが百合にはあるというか。
 そして海や迅にないかっこよさとか魅力をゆーまは持ち合わせていて。


 そんなふたりがくっついたら、やっぱりお似合いなんだろうな。


「お、遥未じゃん」
「げっ、くんのかよ」
「なになに?知り合いっ?!」


 何も知らずに近寄るゆーま。
 手振ってきてくれる百合は可愛いけど、あたしは思わず本音を漏らしてしまった。
 そしてそれに興味深そうに反応する桜。


「友達できてよかったなー」
「ちょっと!子供扱いしないでよもー」
「ああ、つか帰りさ、百合も海も迅も忙しいから先帰れだと」
「マジか」
「だからふたりでマックでも寄ってこーぜ」
「い、いいけど……」


 こんな人混みのところでわざと大声で言ってるなゆーま!
 あたしたちじろじろ見られてるような気がするんだけど、気のせいかな自意識過剰かなあ?!


「あ、あのっ」
「ん?ああ、遥未の友達?」
「はい、わたし桜っていーます」
「苗字は?」
「高梨(たかなし)です」
「――高梨ね」


 うっわあああああぁあぁ……
 ゆーますっごい態度悪い。
 つか教えてもらってまで苗字呼びするか?ふつー。


「桜って呼んでくれないんですか?」
「ああ――桜がいいの?」
「う、うんっ」


 ぶんぶんと、大きく頷く桜。
 そんな桜に、ゆーまは悪戯っぽい笑顔をみせてから耳元で囁いた。


「桜」


 どうやらゆーまは。
 あたしの受験勉強でおあずけをくらっていた分、しっかりと仕返しを考えているようです。


     ‐

417ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/21(土) 20:48:08 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp


   透きとおった音


 彼女が最期の力を振り絞って言った言葉が、
 今でも鮮明に思い出せる。


     ×


「猫みたい」
「そうかな」


 アタシたちの初めての会話。
 ちょうど次が音楽の時間で、みんな早々と移動して教室にはアタシと彼女しかいなくなったときのことだ。
 他の子みたいに女の子同士仲良くとか、彼氏がどうとか好きな人がどうとかお構いなしに己の道を歩んでる印象だった彼女に、アタシは思わず言ったのだ。「猫みたい」と。
 彼女は不思議そうに、それでもとくに気にしていなさそうな表情でちょっと考えていたが、近くで見てみると本当に猫のようだ。

 さらりとした茶色い毛並み――いや、髪の毛も、綺麗に透きとおった茶色い瞳も。
 マイペースな動きや大人しそうに見える仕草一つ一つが綺麗で、触れたら壊れてしまいそうなほど儚い印象。


「君さ、女子の関係とか嫌いでしょ」
「嫌いっていうか、めんどくさい」
「アタシも面倒臭い女子の一部に入っちゃってる?」
「あなたは――わたしに話しかけてくる時点で変」


 ――酷いなあ。
 アタシは心の中でポツリとつぶやいてみたが、正直彼女との会話が楽しかった、と思う。
 このときの記憶はあまりなくて、ただ彼女のその綺麗さや独特の動きに見惚れていたような気がする。


「話してみたかったんだけど、ダメだった?」
「だめとか、そういうのめんどくさい」
「――じゃあ変えよう。話しかけられて面倒臭い?」
「別に。コミュニケーションとるの苦手なだけで、そっちがリードしてくれるなら問題ない」


 見た目は可愛いのに、言葉だけは可愛気ないヤツ。
 アタシは心でそう思いながら、手に持っていた音楽の教科書を抱きしめて彼女に微笑みかけた。


「あのさ、君のこと詩音(しおん)って呼んでいい?」
「いいよ」
「じゃあ――詩音はアタシのこと、百花(ももか)って呼んで!」


 アタシが自分を指差しながら言った。
 その瞬間、彼女の――詩音の頬が、ポッと桜色に染まるのがわかった。


「もも、か……」


 はずかしそうにアタシの名前を呼んだ詩音の姿こそ、一番鮮明に思い出せる記憶かもしれない。


     ×


「しーおんしおん」
「なに、なんなの」
「もー、懐いてくんないんだから」
「わたし猫じゃないし、あんたに懐きたくないし」


 あれから、あの日アタシたちが初めて会話してからしばらく経ち、アタシたちの仲はとても良くなっていったと思う。
 それに詩音も、コミュニケーションを取るのが上手くなってきて最近は男子からも囲まれちゃうほどのモテモテで人気者だ。


「好きな子とかできたの?あんな毎日囲まれててさあ」
「好きってなに」
「んー、あったかくて抱きしめたくなるような感情とか、あとちゅーしたりぎゅってしたくなったりドキドキしちゃう気持ちのこと」
「よくわかんない」


 詩音はそう無愛想につぶやくと、アタシの傍を離れてしまった。
 アタシは何故か不安になって――


「しおん」
「なに」
「や、その……さ」


 いつもアタシが言葉に詰まると早くしてよと文句を言ってくる詩音だが、今日は何も言わなかった。
 そっと、さみしそうな愛おしそうな目でどこかを見つめながらアタシが話始めるのを待つ。


「何があっても、詩音はアタシの友達、だよね」


 詩音は、
 その言葉をきいた刹那、とても綺麗で残酷な微笑を見せて。


「そうだね」


 儚く舞い散る桜のように、ふわりと駆け出してしまった。


     ‐


 しりあす系。
 とにかく詩音ちゃんが大好きです←

418ピーチ:2012/07/22(日) 10:45:41 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

シリアス読んだよー!!

詩音ちゃん凄い!

あたしもそーゆータイプ書きたいけどなぁ…←文才がないというw

419ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/23(月) 08:52:01 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp

>ピーチ

詩音はお気に入りなのだ←
てかシリアスじゃなくてGLモノになるかも←
ピーチ文才あるじゃないかw

420ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/23(月) 08:52:25 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp


   透きとおった音 ※レズ有りです、キスまでしますのでご注意ください(´・ω・)


 そうだねと言って頷いた詩音の顔が頭から離れない。
 そしてなぜか、詩音といつまでも友達という関係でいたくないと思っている自分がいた。


「……なんで」


 詩音に、傍に居てほしい。
 アタシはそんな思いから、詩音が向かった方向へ走り出した。


     ×


「詩音っ、しおん!」


 がむしゃらに走りつづけてたどり着いたのは近くの海。
 よく、アタシと詩音で来ていた場所だ。
 詩音は海が嫌いだったけれど、浜辺で遊ぶのだけは好きだった。
 だから必死に浜辺を見渡したのだけれど、詩音独特の茶色い髪の毛は見当たらない。


「しおーんっ!!!」


 海に向かって、一叫び。
 その瞬間、後ろから詩音の鈴のような声がきこえてきた。


「大声出したら迷惑だよ、馬鹿」
「ご、ごめん!でも詩音っ!」
「なんなの、わたしの気持ちもわからないくせに」
「ごめんってば!でもアタシ、どうすればいいのかわかんないの」
「馬鹿だからだよ」


 詩音のさみしそうな顔。
 それが、なんだか無性に愛くるしく感じて――


「もしかしてアタシ、詩音のこと好き、かも……」


 思わず言ってしまったのだ。
 でも、詩音といると妙に顔が熱くて、アタシには昔初恋で両思いだった男の子がいるのだけれどその子といっしょにいたとき以上にドキドキしてしまう。
 詩音が、ゆるく二つに結んだ茶色い髪を風で靡(なび)かせながら、ちいさく口を動かした。


「あったかくて抱きしめたくなる感情が好きって気持ちなら」


 詩音が、はずかしそうにうつむいた。


「わたしも、百花のこと好きかも」


 あ、ちょっと無理。
 限界を感じたアタシは思わず詩音に抱きついてしまった。


「百花」
「ごめん……好き」
「――わたしも」


 アタシはこの恋愛が間違っていることだと知って。
 詩音の唇を、アタシのそれと重ねた。
 たった一瞬だけだったけれど、ふにゃっと唇に当たった柔らかい感覚。


「今の」
「キスっていうんだよ」


 詩音は純粋なのか、不思議とキスやハグという言葉までもを知らなかった。
 好きっていう感情さえも、なにもわからない子。
 アタシはそんな詩音の魅力に惹かれていったんだろうけど。


「キス、はじめてじゃない」


 詩音はポツリとつぶやいた。


     ‐


 レズレズ!

421ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/23(月) 12:31:02 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp


   透きとおった音 ※レズの微エロ的な。


「だれと、いつ」


 なんだろう。
 すっごくもやもやする。
 アタシは思わず詩音の肩を力強く掴んでしまっていた。
 詩音の表情が、歪む。


「っ、別に百花に関係ない」
「男子でしょ?いつも詩音を囲んでる」
「関係ないってば」
「俊弥(しゅんや)でしょ!メアドも交換してたし」


 俊弥は、アタシが好きだった人だ。
 誰にでも優しくて面白くて、ノリの良い人。
 ここ最近詩音といっつも話していたけど、人気者で誰からも好かれちゃうような俊弥から女子に近寄るなんて滅多にないもん。


「百花はいいじゃんっ」
「詩音は俊弥が好きなの?!」
「わかんない」
「アタシのこと好きって言ったじゃん!」


 でも、アタシは気づいてた。
 あったかくて抱きしめたくなる感情が、必ずしも好きってわけではないってことに。


「俊弥にドキドキすんの?!」
「……うん」


 詩音はびくんと肩を揺らしながら、それでも頷いた。
 頷いた詩音にもやもやが増えて、不意打ちでキスする。

 さっきみたいな優しいキスじゃなくて、激しくて強引なキス。
 息を求めて詩音が口を開いた瞬間に、アタシが舌をいれる。
 詩音の口内をアタシの舌がめぐった。


 舌と舌が触れ合う。
 アタシは嫌がる詩音を押さえつけて、無理矢理舌を絡めた。
 お互いの吐息を吸って、息をする。


「や、め……」


 アタシは理性が戻って、やっと詩音を放した。
 その頃にはもう詩音は怯えてしまっていて――

 詩音は、息を荒くしながらアタシを不安そうな視線で見つめていた。


「ごめん、なさい……」


 詩音がちいさな声で謝る。
 謝らなきゃいけないのはアタシなのに。


 よろけながらもアタシの目の前から走り去る詩音の華奢で細い背中。
 アタシはそれを見つめながら、ただ立っていることしかできなかった。


     ‐

422ピーチ:2012/07/23(月) 16:29:24 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

うわあぁぁ!!それはちょっと…

うん、あたしには良く分からん!←キッパリ過ぎだw

423ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/23(月) 16:56:25 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp

>ピーチ

なんか最近甘々系書きすぎて溶けそうだからシリアスにしたかっただけです←
透きとおった音は基本見ないほうがいいことしか書いてないね(´・ω・)

424ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/23(月) 17:21:26 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp


   太陽と野良猫さん


「うたうのがすき」


 陽が暖かい。
 あたしの上で眩しく輝く太陽が、自分は燃えているんだということを主張していた。
 そんな、燃えた星の下。
 あたしは気まぐれにそうつぶやいて、屋上のフェンスを越えたところの僅かなコンクリートに座る。


「じゃあいっしょに歌おうよ」


 あたしに話しかけるなんて、変なやつ。
 くるりと振り向くと、そこには案の定阿保っぽい顔をした女の子がいた。
 あたしはめんどくさいのが嫌いだ。
 断るのも悪くないけど、いっしょに歌ってあげよう。


「いいよ」
「せーのっ」


 せーのの合図で彼女は一人で歌いだしてしまった。
 あたしの存在無視かよ、と思いながらそれでもあたしがそれに重ねて歌う。
 あたしにソプラノを歌わせたかったのだろうか。
 彼女は最初はユニゾンだったというのに突然アルトパートを歌いだす。

 ふたりで歌っていると、屋上なんて敷地が無限に広がっていくように感じた。


「楽しかったねえ」


 歌い終わると同時に微笑みだす彼女。
 あたしはそれを不思議そうにみつめたあと、いつもの無愛想な調子で訊いた。


「名前、なに」
「ん? あたし?」
「あんた以外にだれがいんの」


 阿保は話が進まないから嫌いだ。


「んとね、あたしは陽花(はるか)! 君は?」
「あたしは鈴(りん)」


 陽花か。
 あたしは陽花の名前を何度も頭の中で繰り返しながら太陽をみつめた。
 そしてそのあと、陽花をじっとみてみる。


「陽花、太陽みたいな子」


 がむしゃらに燃えつづける阿保みたいな太陽。
 でも、みんなを照らしてくれる太陽。


「えへ、よく言われる」
「そう」
「花音はさ、猫みたいだよね」
「そうかな」


 猫みたい?
 あたしが?

 正直納得できなかったのだが、別に猫というのも悪くない。


「そーだよ。髪の毛さらさらだし、目もくりっとしてて可愛いし、なんか気まぐれマイペースだし、高い所好きみたいだし」
「高い所好きなのは陽花もいっしょでしょ」


 屋上のフェンスを越えたコンクリートなんて、ほんの僅かなところに座れるの。
 それって多分滅多にいないと思う。


「高い所が好きなんじゃなくて、花音が好きなの」
「なにそれ」
「いっつもね、独り言つぶやいて気まぐれに過ごしてる花音をみてた」
「……視線を感じると思ったら」


 陽花はえへー、と笑ったが、それってストーカーとかの犯罪行為に入るんじゃないか。
 まあ、めんどくさいのは嫌いだからそれは無視無視。


「あたし高い所すっごく苦手だったから、花音と同じ土台に立てるようにって一生懸命克服したんだよー」


 他人のために一生懸命になるとか。


「そういうのうざい」
「えっ」
「時間の無駄じゃん」
「そんなことないよ!」


 どこがだよ。


「そのお陰でこうやって花音と話せてる! ずっと陰であこがれてた子と話せてるんだよ?!」


 嗚呼、太陽があつい。
 めらめらと燃えながら、自分は存在しているんだということを主張している。
 陽花もこうして、自分は間違ってないと主張してる。


「やっぱ阿保」
「ほえっ」


 あたし、あんたと話してあげなくもないよ。
 ちいさな声でつぶやいてから、あたしは屋上のフェンスを飛び越えてみんながいるであろう教室に戻ろうとした。


「6時限目、数学1だからまたここくるけど」
「あたしも行くっ」
「つか授業いいの?」
「いーよ、もう終わってるし。花音はいいの?」
「だって数学できるし、つかできない教科とかないから」


 これがあたしたちの出会い、なのかもしれない。

     ‐

425ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/23(月) 18:07:09 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp

太陽と野良猫さんでの訂正。
最初花音の名前が鈴になってますがそこは花音(かのん)に直してください!

426ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/23(月) 18:16:00 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp


   太陽と野良猫さん


「ふんふ〜ん」


 カチャリ、と屋上の扉を開くと、その鼻歌がハッキリと聴こえてきた。
 フェンスを越えたコンクリートに、彼女の、陽花の姿があった。


「あー、花音ちゃん」
「馬鹿、アスファルトなんだから素足で立ったらあついよ」
「心配御無用! あたしあついの大丈夫な人だからー」


 大丈夫とかじゃなくて、とあたしはフェンスの向こうにいる陽花を馬鹿だなあという瞳でみつめた。
 その瞬間、がくっと陽花の膝が折れる。なんで?
 ていうか危ないし。


「あわわわわ、バランス崩した! 落ちる!」
「ちょっと馬鹿」


 あたしはあわててフェンスを飛び越えて陽花の腕を掴んだ。


「落ちないでね」
「ん、がんばるぜ」


 無理矢理引っ張って、陽花が屋上に戻ってきた。


「あんたまじ最悪ふざけんな」
「ごめんよー」
「もういいっ」
「ごめんって」


 こういうめんどくさいのも。
 べつにいいかもしれない。


「……もう落ちたりしないでね」
「うん、わかった」
「落ちても助けてあげないから」
「え、ひどうい」


 あたし、陽花といるの嫌じゃないかも。


「明日もさ、朝から放課後まで話そうね」


 陽花が微笑みながら言う。
 あたしもそれに釣られて微笑んで言った。


「当たり前じゃん」


 太陽と野良猫さんは、
 明日も楽しく歌うのです。


     ‐

 適当さ満載ですみません。
 透きとおった音の詩音みたいな子の話を書きたかったんだけど、詩音っぽい子の目線だとものすごい書きづらい…
 これは陽花目線にすればよかったんだね!
 ってことで何回かチャレンジするかしないかわからない←

427ピーチ:2012/07/23(月) 21:58:15 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

おぉっ!!題名自体が可愛いっ!!花音ちゃんって確かにネコ連想させるわーww

あたしも思いっきり文才ある人間に生まれたかった…((泣

428ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/25(水) 16:52:23 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp


   隣歌


「あの、すみません」
「なに」
「す、数学のプリント……提出期限とっくに過ぎてるんだけどさ」
「――ここ」
「ほえっ?」
「この問題から全部間違ってる」
「マ、マジか」
「隣、座って。教えるから」
「ありがと……てか、え? 教えてくれるの?」
「間違ってる場合はまた返ってくるから」
「そ、そか……それは嫌だ」
「うん、だから座って」


 今思えば、これがあたしたちの初めての会話だったのかもしれない。


     ×


 高一、初夏。
 蒸し暑い教室でみんなしてノートを扇ぐ、恐らく猛暑日と呼ばれる今日。
 そこにあたしたちの姿はなかった。


「みんな暑そうだねえ」
「鈴花(りんか)、あんま乗り出したら落ちるよ」
「そんなことないよー」


 彼女、莉乃(りの)とは数学のプリントを教えてもらったときからすっかり意気投合(ていうか一方的にあたしが引っ張っただけなんだけど)してしまい、今ではいつもいっしょにいるいわゆる「イツメン」というものになってしまった。
 高校一年生ということで、あたしたちは受験も終わり青春真っ盛りのはずなのだが……


「やっぱ合唱だよね」


 あたしの中では青春=恋愛じゃなくて、青春=部活なのだ。
 あたしは合唱部に入っていて、莉乃も同じ部活(ていうか一方的にあたしが引っ張っただけry)だから毎日が楽しい。
 まあ莉乃はモテるから、部長に告られて付き合ってるんだけどさ。


「うたいたい」


 莉乃がポツリとつぶやいた。
 きっと、部長の姿を思い浮かべているんだろう。
 あたしはちょっと悔しくなって、莉乃の腕をぐいっと引っ張った。


「じゃあ歌おう! せーの!」


 ちょっと強引だったかも。
 莉乃は驚いている様子で、それでもあたしといっしょに歌ってくれた。
 莉乃がつくった曲「隣歌」を、ふたりで合唱する。

 あたしはアルトで莉乃がソプラノを歌っていたのだが、支えとなるバスやソプラノを引っ張ってゆくテノールがいなくてそれは間抜けなハーモニーになっていた。
 あたしたちは笑いながら歌う。


 この曲には、大切な人の隣で歌いつづけるという意味が込められているらしい。
 きっと部長を思ってつくった曲なんだろうなあ。
 あたしは自分で考えててちょっと恨めしい気持ちになったから考えるのをやめた。


 それにしても。
 綺麗に透きとおったソプラノ。
 莉乃の声は本当に綺麗だ。
 あたしが一方的に引っ張って入部させただけだというのに、莉乃はいつのまにかあたしより上手くなって、先輩たちにも好かれて。


「……莉乃はさ」


 「隣歌」を歌い終わったあと、あたしは弱気な声で言った。
 こんなのあたしらしくないってわかってるけど、なんだかあたしらしくできない。


「やっぱり部長のことが好き?」
「好きっていうか」


 戸惑う莉乃。
 なんなの、もう。


「こういうときハッキリ好きって言ってくんなきゃ、諦めらんないじゃん!」


 諦めるって、すごく難しい。


「鈴花は遥斗(はると)が好きなの?」


 莉乃はすこし驚いたような様子をみせて、あたしに訊いてきた。
 遥斗っていうのは部長のことだ。


「それは、その……好きっていうかさ」
「ほら、鈴花も言葉濁らせた」


 くすりと笑う、莉乃。


「あたしね、隣歌って曲、鈴花を思ってつくったんだよ」
「え……?」
「なんかみんなとなりうたって呼んでるんだけど、本当はりんかって曲なの」


 そういえば。
 となりうたってみんなが言ったとき、莉乃がちょっとあわてていたような気がする。


「鈴花の隣で歌えますようにって気持ちを込めてつくったの」


 そういって微笑む莉乃が可愛くて。
 なんか、すごいあったかい気持ちになった。


「あとね、遥斗のことは好きなんだけど、その……好きっていうか、鈴花のほうが好きっていうかなんかもういいや」
「えええっ」


 あたしもね、だれよりも莉乃のこと、大好きだよ。

     ‐

429ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/08/11(土) 11:20:34 HOST:EM117-55-68-141.emobile.ad.jp

お久しぶりですねここですどうも!←
おしらせなのですが、なんだか最近長編を完結させるということができなくなったというかできる自信がなくなった((
ような気がするので、長編の更新をおやすみして短編に力をいれたいと思っていますorz
大変自分勝手な決断なのですが、許してっていうかなんかもう本当にすみません!←


一瞬新しい短編作るかとかも考えたので
もしそうなったらよろしくお願いしますorz

430ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/08/11(土) 11:21:44 HOST:EM117-55-68-141.emobile.ad.jp


   I love me .


「ゆーくんだいすき」
「はは、ありがと」


 同い年だというのに周りに比べて大人びた雰囲気をただよわせて大人っぽい口調でしゃべるゆーくん。
 みんなその大人っぽいところが好きって言うけど、わたしはゆーくんはそれほど大人っぽくないと思ってる。


「ゆーくんってばまたみんなに大人っぽく見せようとしてるでしょ」
「別にそんなつもりはないよ」
「えー、うそだあ」
「ていうか莉花、周りの目もあるから離れよっか」


 やだやだ、とわたしはゆーくんの背中に回した腕にぎゅっと力をいれた。
 だってこの腕を放すとゆーくんは自分を受け入れてくれる女の子のほうに言っちゃう。
 そこに行くと、ゆーくんの好きな人に会えるから。


「ゆーくんは大人だから周りの目なんて気にしないでしょ」
「逆、大人ではないけど周りの目を気にしてるんだよ」


 変なの。
 わたしは心の中でぽつんとつぶやいて、ゆーくんに絡めた腕によりいっそう力をいれる。


「莉花、苦しい」
「だって昔のゆーくんと違うんだもん」
「今と昔じゃ違うに決まってるよ」
「わたしの知ってるゆーくんじゃない」


 わたしの知ってるゆーくんは、もっと子供っぽくて、無邪気で。
 わたしのことが大好きなゆーくんなのに。

 ゆーくんは何言ってんの、と小声でつぶやいて、笑いながらわたしの頭を撫でた。
 まるで、わたしを子供扱いするみたいに。
 自分も子供のくせに。


「莉花の知ってる「ゆーくん」はもういないんだよ」


     ×

431ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/08/11(土) 11:22:13 HOST:EM117-55-68-141.emobile.ad.jp


   I love me .


 そうだ、わたしの知ってるゆーくんはとっくの昔に消えていってしまったんだ。
 これはわたしの大好きで、そしてわたしのことが大好きなゆーくんじゃないんだ。

 わたしは絡めていた腕をそっと放すと、笑顔でぽつりとつぶやいた。


「ごめんねゆーくん」
「俺こそごめん」
「……なんでそんなに優しいの」


 わたし、ゆーくんを避けようとしてた。
 それなのにゆーくんは優しくて、最後までわたしの頭を撫でてくれて。


「どうしてわたしのこと、好きじゃなくなっちゃったの」
「俺さ、気づいたんだ」


 今にも儚く消えてしまいそうな存在。
 ゆーくんは、一瞬だけだけどわたしの知ってるゆーくんに戻ったような気がした。
 正直で、素直で、単純で、明るくて馬鹿で、無邪気で我侭で子供っぽい、わたしの大好きなゆーくん。


「俺は莉花のことが好きだったんじゃなくて、自分のことが好きなんだって」


 ――気づいてた。


「莉花に好かれてる自分が好きで、面倒なことがなくて好かれまくる性格になりたいって思ってさ」


 ――ゆーくんの変化に気づいて。
 ――ゆーくんの思いにも気づいてた。


「誰からも愛されて、人気で憧れの存在になれた自分が好きなんだ」


 だから。
 ゆーくんは自分のことを大人っぽいって思わないわたしを嫌うんだ。
 大人っぽいゆーくんを認めて、受け入れてくれる女の子たちの傍に行きたがるんだ。
 ちやほやされる、自分が好きだから。


「……莉花は知ってたでしょ? 俺の好きな人」
「うん」
「でも今考えれば昔、本当に莉花を好きって思ったときがあったと思うんだ」


 それならその時。
 わたしがゆーくんを振り向かせられればよかった。


「ごめんゆーくん」
「莉花は悪くないよ」
「わたしが悪いの」


 涙をこぼしながら、わたしはごめんなさいと何度もつぶやいた。


「――焦ってたんだよね」


 ゆーくんが苦笑を浮かべながらポツリ。
 大人っぽくはあるけど、今はわたしの知っているゆーくんのような気がした。


「莉花はどんどん可愛くなるし、周りの男子も莉花のこと好きになりはじめてさ」
「……なにそれ」
「莉花は俺に振り向いてくれる気配ないし、それが寂しくてそれなら俺が莉花から離れていこうって思ったんだ」


 結局原因はわたしだったんじゃん。
 わたしはゆーくんから放した腕をもう一度背中に絡めて言った。


「わたしはずっとゆーくんが好きだったのに」
「じゃあ付き合ってくれるんだ?」
「へ? だってゆーくんは――」


 ゆーくんが悪戯っぽい無邪気な笑みを浮かべてから、わたしの頬にキスした。


「前言撤回。俺が好きなのは莉花だよ」


 わたしは腕にもっと力を込めて言った。


「ゆーくんだいすき」


 この幸せが、永遠につづきますように!


     −

432ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/08/11(土) 11:26:47 HOST:EM117-55-68-141.emobile.ad.jp


  ▼I love me . のあとがきと言い訳←

 いやなんかほら……
 自分のことが大好きな男の子を書きたくて書いただけなんです←

 だって自分がもしみんなに愛されて、かっこいいとかかわいいって言われてて人気者だったらやっぱり自分大好きになりませんか?!←
 ちょっともう本当に痛い子なんですけどごめんなさい。
 でも周りにちやほやされて自分かっこいいんじゃね?みたいに思わない人は少ないと思いますorz

 莉花の気持ちとしては
 どんどん自分の知ってるゆーくんじゃなくなるのを恐れていたわけであーだこーだなったんです


 とりあえず
 すれ違い的な?★←


 はい、言い訳を終わりますすみませんでした。


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