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しあんいろ

424ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/23(月) 17:21:26 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp


   太陽と野良猫さん


「うたうのがすき」


 陽が暖かい。
 あたしの上で眩しく輝く太陽が、自分は燃えているんだということを主張していた。
 そんな、燃えた星の下。
 あたしは気まぐれにそうつぶやいて、屋上のフェンスを越えたところの僅かなコンクリートに座る。


「じゃあいっしょに歌おうよ」


 あたしに話しかけるなんて、変なやつ。
 くるりと振り向くと、そこには案の定阿保っぽい顔をした女の子がいた。
 あたしはめんどくさいのが嫌いだ。
 断るのも悪くないけど、いっしょに歌ってあげよう。


「いいよ」
「せーのっ」


 せーのの合図で彼女は一人で歌いだしてしまった。
 あたしの存在無視かよ、と思いながらそれでもあたしがそれに重ねて歌う。
 あたしにソプラノを歌わせたかったのだろうか。
 彼女は最初はユニゾンだったというのに突然アルトパートを歌いだす。

 ふたりで歌っていると、屋上なんて敷地が無限に広がっていくように感じた。


「楽しかったねえ」


 歌い終わると同時に微笑みだす彼女。
 あたしはそれを不思議そうにみつめたあと、いつもの無愛想な調子で訊いた。


「名前、なに」
「ん? あたし?」
「あんた以外にだれがいんの」


 阿保は話が進まないから嫌いだ。


「んとね、あたしは陽花(はるか)! 君は?」
「あたしは鈴(りん)」


 陽花か。
 あたしは陽花の名前を何度も頭の中で繰り返しながら太陽をみつめた。
 そしてそのあと、陽花をじっとみてみる。


「陽花、太陽みたいな子」


 がむしゃらに燃えつづける阿保みたいな太陽。
 でも、みんなを照らしてくれる太陽。


「えへ、よく言われる」
「そう」
「花音はさ、猫みたいだよね」
「そうかな」


 猫みたい?
 あたしが?

 正直納得できなかったのだが、別に猫というのも悪くない。


「そーだよ。髪の毛さらさらだし、目もくりっとしてて可愛いし、なんか気まぐれマイペースだし、高い所好きみたいだし」
「高い所好きなのは陽花もいっしょでしょ」


 屋上のフェンスを越えたコンクリートなんて、ほんの僅かなところに座れるの。
 それって多分滅多にいないと思う。


「高い所が好きなんじゃなくて、花音が好きなの」
「なにそれ」
「いっつもね、独り言つぶやいて気まぐれに過ごしてる花音をみてた」
「……視線を感じると思ったら」


 陽花はえへー、と笑ったが、それってストーカーとかの犯罪行為に入るんじゃないか。
 まあ、めんどくさいのは嫌いだからそれは無視無視。


「あたし高い所すっごく苦手だったから、花音と同じ土台に立てるようにって一生懸命克服したんだよー」


 他人のために一生懸命になるとか。


「そういうのうざい」
「えっ」
「時間の無駄じゃん」
「そんなことないよ!」


 どこがだよ。


「そのお陰でこうやって花音と話せてる! ずっと陰であこがれてた子と話せてるんだよ?!」


 嗚呼、太陽があつい。
 めらめらと燃えながら、自分は存在しているんだということを主張している。
 陽花もこうして、自分は間違ってないと主張してる。


「やっぱ阿保」
「ほえっ」


 あたし、あんたと話してあげなくもないよ。
 ちいさな声でつぶやいてから、あたしは屋上のフェンスを飛び越えてみんながいるであろう教室に戻ろうとした。


「6時限目、数学1だからまたここくるけど」
「あたしも行くっ」
「つか授業いいの?」
「いーよ、もう終わってるし。花音はいいの?」
「だって数学できるし、つかできない教科とかないから」


 これがあたしたちの出会い、なのかもしれない。

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