[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
801-
901-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。
獣人総合スレ 避難所
1
:
名無しさん@避難中
:2009/03/17(火) 20:14:12 ID:/1EMMOvM0
獣人ものの一次創作からアニメ、ゲーム等の二次創作までなんでもどうぞ。
ケモキャラ主体のSSや絵、造形物ならなんでもありありです。
なんでもかんでもごった煮なスレ!自重せずどんどん自分の創作物を投下していきましょう!
ただし耳尻尾オンリーは禁止の方向で。
エロはエロの聖地エロパロ板で思う存分に。
獣人スレwiki(自由に編集可能)
http://www19.atwiki.jp/jujin
あぷろだ
http://www6.uploader.jp/home/sousaku/
獣人総合スレ 5もふもふ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1236878746/
【過去スレ】
1:
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220293834/
2:
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1224335168/
3:
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1227489989/
4:
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1231750837/
495
:
そよ風の憧れ
◆TC02kfS2Q2
:2010/06/24(木) 23:25:21 ID:CXf7ZP6k0
「助けてっス!!!ボクの人生最大の危機を助けて欲しいッス!!」
いつもは静かなそよ風吹き抜ける午後の佳望学園の図書室で、けたたましい悲鳴がいきなり広がった。
声の主は保健委員。ケモノの尻尾をふりふりと、ケモノの脚をぶらぶらと、そしてパニくるこえはぎゃあぎゃあと。
他でもない。ちょっと高めの本棚の一番上の本を取ろうとしていただけのことだ。しかし、無理してジャンプしたのがいけなかったのか、
片手を棚に引っ掛けて地上50cmの宙ぶらりん。いつも被っている海賊の帽子もこのときばかりは勇ましさも感じられなかった。
保険委員の声を察知してか、白くて大きな尻尾を揺らしながらやってきたのはイヌの少年・犬上ヒカル。
ついインクの香りに誘われて小説もいいけどエッセイも、と思いながら背表紙の文字だけで今日借りる本を選りすぐっていたところ、
この部屋に似つかわぬ声を耳にした。声の元は、『保健』に関する本棚の方。借りようかと思っている本を手に現場へ向かう。
今、危機に陥っている保健委員を助けなければと、ヒカルは暴れる一方である保健委員の脇を抱えて、そっと母なる大地に下ろしてやった。
「ふう……。助かったっス!ありがとう!ヒカルくん!」
「……図書室では、静かにね」
「分かったッス。で、あのー……ヒカルくんにお願いが」
遥か高く見える本棚の頂上、お目当ての本が取りたくて恐る恐る視線で指差す保健委員。
コスプレの眼帯もこのときばかりはちょっと格好が付かない。ヒカルは保険委員の目を一瞥すると何も言わずに、本棚上段に手をかけた。
「そう、その本っス」
小柄な保健委員が取りたくても取れなかった本を軽々と手にするヒカル。いや、保健委員が小さすぎる為だろう。
ヒカルはじっと注射器や聴診器の絵が描かれた本の表紙を見つめて、大きな尻尾を揺らした。
「そう!ボクの夢は立派な保健委員になることっスよ」
「……」
司書さんが待つカウンターへと、本と志を胸に抱きながら保健委員はヒカルと並んで静かにじゅうたんを踏み鳴らす。
図書室の窓が額縁のように校庭に立つ大きなイチョウを描き、梅雨の合間の光を受けていた。そして、そのおこぼれを頂く一人の子ネコ。
「クロも風に乗ってみたいニャ」
イチョウの枝に腰掛けて、衣替えしたばかりの制服の裾なびかせて、クロネコの佐村井玄子が水無月の風を感じていた。
―――図書館でお気に入りの一冊を借りると、ヒカルと保健委員は好きな本のことを話しながら下駄箱へ向かった。
犬上ヒカルという子は普段は物静かなのだが、本のこととなると話が止まらなくなるらしい。
初めて読んだ絵本、先生に薦められた童話、父から贈られた詩集。高校生になるまでに積み上げてきた小さな読書歴が、春を待ち望んだ花のように咲き誇る。
負けないッスよと保健委員も頷き返しながらアンリ・デュナンやナイチンゲールの偉人伝を思い出す。
幼いころ読み漁った本はいつか思い出と、記憶の糧になるとは誰が言ったのか。
496
:
そよ風の憧れ
◆TC02kfS2Q2
:2010/06/24(木) 23:26:00 ID:CXf7ZP6k0
話に夢中になっていたからか、二人はいつの間にかクロの登っている木の下にやってきていた。
「何してるッス!落っこちたらケガするッスよ!骨折して……」
「……」
保健委員は子ネコが木の登る姿に肝を冷やしているが、冷静に考えれば杞憂に過ぎない。何故ならクロはネコの子。
それを分かっているヒカルは、子ネコを通り越してグラウンドから響く声の方が気になっていた。
いつも聞きなれた中等部の生徒の声に混じって、聞き覚えのある若いお姉さんの声が届いたのだ。
「来てるのかな……」
「誰っスか?」
「杉本さん……」
―――そのころ、グラウンドで小さな巨人・イヌのサン・スーシ先生が『コンダラ』を引っ張ろうとして、空中で足を空回りさせていた。
もっとも『コンダラ』と言う呼び方は正しくないと理解している者は多いと思われるが、おそらく国内では『コンダラ』で通じるアレ。
その『コンダラ』の重量を制しきれず、握り棒を持ったまま宙ぶらりんなサン先生は、ひたすら足を永久機関の如く回し続ける。
「あははは!サンったら本気出せー」
サン先生だって、狙ってやっているわけではない。なのに、笑い声が聞こえてくるなんて、台本なしのコメディ映画が大ヒットするようなもの。
さて、その声の主とはバットを杖代わりにし、ケラケラと笑いながらサン先生の本気ぶりを眺める若い女のネコ。
Tシャツから覗く白い毛並みと、ショートの金色の髪が健康的。すらりと伸びたGパンの脚はお子ちゃま体型のサン先生と対照的。
いや、お子ちゃま体型と言うより「見た目は子ども!」を体現した立派な成獣男子なのだが、如何せん言動がお子ちゃま以上オトナ以下だ。
実際にサン・スーシ先生は、初等部の子たちと比べても大差がない。むしろ先生の誇りといっても差し支えはない。
それに『コンダラ』の握り棒は丁度、サン先生の顔あたりに当たるので『コンダラ』はサン先生を軽く持ち上げることができる。
「まったく、ミナは何しに来たんだよ」
「理由なんか後付で十分だよ」
彼女は学園外部の者。教師にしては自由すぎるし、生徒と考える道筋は、はなから間違え。だが、親しげにサン先生に話しかける。
第三者から見れば凸凹だけど、離れ離れになったピースがぴったりと合うようなネコとイヌは、放課後の佳望学園を賑やかす。
「あのー、サン先生。全然進んでいないんですけど」
「動いてる!動いてる!」
「ちっとも、そうは……」
サン先生、中等部の生徒たちにまで心配されているようじゃ、そろそろ誇りを守ることを考えたほうがよろしゅうございませんか?
ほら、御覧なさい。中等部のお気楽三人組タスク・アキラ・ナガレが手に野球用のグローブをはめて心配そうに見つめる姿が滑稽に映ったのか、
若い女のネコは使い込まれたスニーカーで駆けつけて、意地っ張りな仔犬をからかいにやって来たではないですか。
「ミナはまったくなにしに来たんだよ」
「面白いな、コレ」
「あの、杉本さん……」
「ミナでいいよ!アキラくん」
オトナのオンナノヒトと話が出来ただけで、アキラはちょっと舞い上がった。
オトナのオンナノヒトが笑っているのを見ただけで、タスクはちょっと尻尾が揺れた。
オトナのオンナノヒトのTシャツが捲れただけで、ナガレはちょっと瞬きが多くなった。
弟みたいなオトコノコたちに囲まれて、杉本ミナは少年のような無邪気さを垣間見せる。
497
:
そよ風の憧れ
◆TC02kfS2Q2
:2010/06/24(木) 23:26:29 ID:CXf7ZP6k0
「いい加減、諦めなよ」と、言い終わると同時に空を突き抜ける気持ちの良いサン先生の音。
頭を擦りながらサン先生は目の前で満面の笑みのミナを見上げていた。「コレでも教師だぞ」と抗議するも、ミナには届かず。
手をはたいて『コンダラ』を諦めたサン先生は、両脚揃えてとび跳ねる。
「あの。ボール持って来ました」
「でかしたっ。気の利く男子は女の子にモテモテだ」
バケツ一杯にソフトボールを詰め込んで、両手でふらふらと抱えるイヌの芹沢タスクは、反射的に頬を赤らめた。
グローブに拳を叩き込んで、気合だけはいっちょ前のアキラ。物静かにメガネを光らせるナガレ。そして、生徒以上に生徒なサン・スーシ。
透き通る空と、汗ばむ季節に誘われて。グラウンドに白球の虹を架けてみせると、杉本ミナは意気込んだのだ。
「さあ!みんなバックバック!!わたしの球をキャッチしたいなら、相当後ろに行かないと取れないぞー!」
男子4人組よりも活発で、空色のような声を上げてバケツから球を拾い上げ、軽く上に投げる。腰を落とし、脚に力を込める。
音が出るぐらいの勢いでバットを振ると、ポカチーンと音を立てて白球は大空に吸い込まれた。
タイミングを合わせたように風が吹く。ミナのTシャツの裾が揺れ、白い毛並みのへそが顔を出した。
おっと、健全かつ不健全な思春期の少年にはちょっとこのご褒美は早すぎる。いや、奴らはそれ頃じゃない。
愚直にまっしぐらに、そしてケモノの本能そのままに白球を追い駆けているのだから、そりゃ残念でした!
「タスクくん!走れー!!」
一度地面に落下した球は勢いをそぎ落とし、幾ばくか跳ねながらグラウンドの外へ向かって逃げ出す。
ワイシャツ乱しながらタスクは一心不乱に球を追い駆け、グローブでキャッチ。下手投げでホームのミナに送球するも、
地面を駆け抜けるネコに追われたネズミのように、球は素早く転がっていった。しかし、悔しそうなのはサン先生。
「あ、あれは……ミナが打つのがヘタクソだったんだよな」
「ヘタクソの癖にヘタクソ呼ばわりなんて、サンには千本ノックだよ!!ヘタクソ!」
白い歯を見せて、白い毛並みを揺らし、球を一つ拾い上げて、さあマシンガンの如くミナの千本ノックがサン先生に浴びせ……。
いや、意外にも球はゆっくりと垂直に飛んでいった。地上の一堂、天を仰ぎ各々両手を上げる。
革の響く音!清々しい爽快感!そして、一瞬の静寂!一人だけが浴びることを許された視線!
498
:
そよ風の憧れ
◆TC02kfS2Q2
:2010/06/24(木) 23:26:57 ID:CXf7ZP6k0
「あ……」
マヌケな声を上げたのはタスクだった。両手を挙げて一旦掴んだ球が転がり、頭にコツリ。
「わたし、ヘタクソだから簡単に取られちゃったね!」
「へたくそ!!」
「言ったね……、サン・スーシくん」
ミナの本気がみなぎる。動き出した機械仕掛けの時計のようにゆっくりとバットは地上から天を指し、ボールを持つ手も力が入る。
構えたポーズからはゆらゆらと陽炎のような空気のゆれ。そんなに暑い季節でもないのに、ミナの周りはとみに濃い影が出来ているようにも見えた。
ぱあっ!と天空に放たれたボールは一瞬のうちにミナの振り切るバットに吸い込まれ、この夏いちばん快い音。
取るか?
取れぬか?
取るか?
取れぬか?
取るか?
白い雲に吸い込まれそうなボールを追い駆け、両手を挙げるサン・スーシ。
丸いめがねに丸い球が映る。大きくなりつつある白球。地面のイヌに向かって、すっと……。
―――クロがヒカルの肩に飛び込んだ。
予期せぬ出来事にヒカルは目をちょっとだけ丸くした。初等部の児童とはいえ、いきなり背中にオンナノコが乗ってきたんだから。
「ヒカルくんのお陰で、空を飛べたニャ!!」
ほんのわずかだけど、鳥のように空を独り占めできたクロが珠のような歓喜の声をあげる。ヒカルはその声だけで、全てを許していいとも思った。
あまりにも一瞬の出来事だったので、保健委員も口を開く暇さえなかった事実。クロはヒカルの若々しい白い髪に顔を埋める。
「くんくんするニャ」
「……」
けっしてヒカルは声を荒げることは無い。小さく細いクロの脚がヒカルの両腕に掛かり、くすぐったいクロの手が首筋を擦る。
クロの黒曜石のような毛並みがヒカルの雪に埋まり、ただでさえ小さなクロが小さく見える。
「くんくん……ニャ」
夢は見えた?夢は叶った?
クロは「今度は大空を飛ぶニャよ!」と目をつぶってヒカルに抱きついた。
「おや?ヒカルくんじゃない。これまた背中にかわいい子をおんぶしちゃって」
「あ、あの……。杉本さん」
「ミナでいいよ!」
ヒカルはちょっと頬を緩めた。自分と同じような格好をしているミナとかち合ったのだから、当然と言えば当然だ。
ただ、ミナが背負っていたのは『かわいい子』ではなく、頭にたんこぶ作ったサン・スーシだった。
「たいしたことない!たいしたことない!!」と、大声を出して抵抗するサン・スーシだが、ミナに全てを掌握されて
だだをこねる子ども以上に金切り声をグラウンド一杯に溢れさせていた。後を追う中等部の三人組も見守るだけ。
とみにヒカルの背中が軽くなる。サン先生の声で目を覚ましたクロが、恥ずかしそうな顔をしてヒカルと保健委員の間にぴょんと割り込んだのだ。
499
:
そよ風の憧れ
◆TC02kfS2Q2
:2010/06/24(木) 23:27:22 ID:CXf7ZP6k0
「大変ッス!取り合えず患部を冷却するッスよ!!ヒカルくん、おんぶッス!」
「ええ?」
「ちょ、ちょっと!白先生は勘弁だぁぁ!!」
クロの代わりに今度はサン先生かぁ、とぼやく暇も無くヒカルは暴れるサン・スーシを背負い中等部三人組引き連れて保健委員と共に保健室へと急いだ。
「お姉さん……は、ニャ?」
「先生のお友だちよ」
スカートの裾を引っ張り、背を丸くするクロの目線にミナがしゃがむとミナのTシャツから白い毛並みの背中が見えた。
「もしかして、お姉さん……。わたしをお子さまって思ったニャね!だって、だって、ヒカルくんにおんぶされて!
わたしだって立派な『れでぃー』なんだから、おんぶなんかされても嬉しくないニャだもん!だって……だって」
「ふふふ」
「空を飛びたかったんだもんニャ」
クロのすねたような、恥らうような、爪先立ちの子どもの背伸び。
ミナはクロの目線まで腰を落とし、頭を撫でながらクロをなだめる。
「気持ちよかった?」
「うん」
「そうなんだ、わたしも飛んでみたいなあ」
―――
街が一休みする時間なのに、未だ外は明るい。佳望学園からの坂道を一台のバイクが風を切って下りてゆく。
ちょっと昔のデザインだけど、古さを感じぬミナの愛機。白いヘルメットから顔を出すミナの短い髪が涼しげになびいた。
エンジンの振動は心地よく、夏の香りをかぎ分けながら、目下に映る街を望む。空の雲は白い。
「コイツで空を飛べたらいいのになあ」
風は味方。
風はよき友。
ネコだって、ケモノだって、風さえ心許せば空を飛べる。愛機に乗っていると、そんな錯覚さえ事実だと思い込んでしまう。
「まったく、ミナは何しに来たんだよ!」
後ろからサン・スーシがポケバイに乗って追い駆ける。グランドにいたとき以上にやかましい声を聞きながら、杉本ミナはスロットルを噴かす。
「理由なんか後付けで十分だよ」
おしまい。
500
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/06/24(木) 23:29:29 ID:CXf7ZP6k0
投下はおしまい。
お気楽中等部とクロをお借りしましたが、なんだかクロが書いているうちに愛しくなってきた!
501
:
名無しさん@避難中
:2010/06/24(木) 23:59:39 ID:Vpb9d.qkO
>>500
乙。一日二話とはやるのう。
しかし……。ヒカル……クロ……ハァハァ
502
:
名無しさん@避難中
:2010/06/25(金) 01:40:18 ID:ZsdJ59ggO
なんでも無い日常をなんだか愛しいものに書き起こすわんこ氏の才能に嫉妬
素晴らしいぜチクショー
503
:
名無しさん@避難中
:2010/06/25(金) 21:21:28 ID:FiHKkiHgO
クロかわゆいのう
モフモフしてる2人を想像するだけでハァハァしてくるわ
ミナは相変わらず気持ちのいいお姉さんだ
504
:
名無しさん@避難中
:2010/06/28(月) 11:32:52 ID:pb1SdTK.0
>>498
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1190.jpg
>>499
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1191.jpg
505
:
名無しさん@避難中
:2010/06/28(月) 12:17:43 ID:.RnDL856O
>>504
まぁ………///
506
:
名無しさん@避難中
:2010/06/28(月) 19:49:44 ID:4.wBBNDoO
クロちっこいなあハァハァ
507
:
名無しさん@避難中
:2010/06/29(火) 06:14:21 ID:OsZOSERUO
クロ可愛いなもう
てかはせやんやクロがくんかくんかしたくなるヒカルきゅんのかほりを嗅いでみたいぜ
ミナさんあぶっ、あぶねっ
508
:
名無しさん@避難中
:2010/06/29(火) 19:12:48 ID:3/rzbajc0
見れません><。うわああ
509
:
名無しさん@避難中
:2010/06/29(火) 22:11:04 ID:ZEOiXft60
残念、見れない。
510
:
名無しさん@避難中
:2010/06/30(水) 15:20:13 ID:JKpUq3HYO
えー…何で絵削除したん…?(´・ω・`)
511
:
名無しさん@避難中
:2010/06/30(水) 21:25:38 ID:LqkRGij.0
うう…。いくらやっても「ヒカルきゅん」のもふもふが見れない。
何でだよ、くそー。ってか、何で見れたの?逆に。
512
:
名無しさん@避難中
:2010/06/30(水) 21:54:55 ID:yan5YKoQ0
>>511
アップされてた日は見れたけど、ろだ見たら削除されてたよ
513
:
名無しさん@避難中
:2010/07/03(土) 21:52:03 ID:AbwR9E020
すいません、一寸思うところが有って削除してありましたが、再度あげました。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1205.jpg
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1206.jpg
514
:
◆/zsiCmwdl.
:2010/07/04(日) 13:00:39 ID:0CE1gt2.0
修正点があったのでここで。
×頭一盃に疑問符を浮かべる私へ言いながら、盃にサイダーを注ぎ始めるゆみみ。
○頭一杯に疑問符を浮かべる私へ言いながら、盃にサイダーを注ぎ始めるゆみみ。
それと、美作 更紗の、『更紗』である部分を『更級』と間違えてました。今更それに気付くとはギギギギ
面倒ですが、Wik収録時は上記の間違えを修正して頂けるとありがたいですorz
515
:
名無しさん@避難中
:2010/07/16(金) 12:26:54 ID:DlyCDjik0
絵師の人が来なくなったな・・・何かの用事で忙しいのかな?
516
:
名無しさん@避難中
:2010/07/16(金) 20:49:45 ID:xRZUgft.O
ちゃんと板に居るよ?絵師さんもSS職人さんも。
ケモスレは過疎だからちょい離れがちだけど。
517
:
名無しさん@避難中
:2010/07/17(土) 20:09:27 ID:H43KZg7I0
以前、絵師さんが乗せて頂いた相関図の絵を使って、ケモ学SSガイドを作ってみました。
相関図を見て「登場キャラが多い」と感じられる方もいらっしゃるようで、主要キャラ中心に
初期作品をまとめました。よく出るキャラは多くはないので、初めてケモ学に触れる方の力になれば幸いです。
また、事後になってしまいますが、いつもの絵師さんの絵を使用させていただきました。すいません。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1246
518
:
名無しさん@避難中
:2010/07/17(土) 21:43:47 ID:HHWnD8fI0
これはまた面白いですね。判り易いし。
相関図用元画は、元々こんな感じに汎用的に誰でも使っていただけるようにと描きました
ので、ご自由にどしどしとお使い下さい。
ちょっとコントラストが低いかな? 少し上げたものを再アップしたほうが良いかしら?
519
:
名無しさん@避難中
:2010/07/19(月) 15:11:01 ID:xfYwc8K20
http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/868.html
の冒頭を勝手に絵コンテ切ってみた。
http://loda.jp/mitemite/?id=1251
520
:
名無しさん@避難中
:2010/07/31(土) 20:35:44 ID:3Pt/Oed6O
ちょっと質問、既出だったらごめん
祥子さんの苗字って「れいの」?
ウィキの紹介文が「ふだの」になってたけど
札野という苗字は「れいの」「ふだの」どっちも実在するっぽいんだが
名前のモトネタから「れいの」だよな……
俺の勘違いかもしれん?
521
:
名無しさん@避難中
:2010/08/01(日) 00:35:06 ID:wuCiE1GI0
あれはれいの、ですね……。名簿やら紹介やらはコピペしてwikiに乗せてしまったので、生みの親なのに気付かなかったです……。
522
:
名無しさん@避難中
:2010/08/01(日) 21:35:08 ID:sKUz/C6w0
書き込めない人へ
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1277458036/
523
:
名無しさん@避難中
:2010/08/02(月) 07:09:20 ID:zkHQaH2s0
移転はいいけどさぁ…スレ落ちた…
524
:
名無しさん@避難中
:2010/08/02(月) 18:20:13 ID:XnRGpqps0
いつの間にか消えてる!!
525
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/08/03(火) 17:40:51 ID:fKdkN0eQ0
本スレがアレな状況だからこそ!投下する!
526
:
きつねの子
◆TC02kfS2Q2
:2010/08/03(火) 17:41:30 ID:fKdkN0eQ0
最悪だ。
カレーうどんのつゆが、わたしの手にはねた。
母さんが弁当を作り忘れたから、たまに学食に行くとコレだ。ほっておとくと、取れなくなるからたちが悪い。
「風紀委員長であるわたしとしたことがー。あーん!!」
自慢の白く柔らかいウサギの毛並みが、カレーの香りとともに染み付いて午後の授業のための集中力を奪ってしまう。
とろみの付いたうどんのつゆは、なかなか冷めずわたしのメガネをいたずらに白くするだけ。カレーの風味もどこかへ消えてしまった。
今日は毎月楽しみにしている『コミック・モッフ』の発売日だから、きっと浮かれてしまっていたのだろう。
返却口に食器を返すとすぐさまに、学食側の洗面所へとはせ参じた。誰かが見ているような気がして、落ち着かない。
無駄だと思いつつ、洗面所で染まった箇所を洗うが、悲しくも事態は前と変わることはなかった。
ただ、手が冷たいだけ。ただ、濡れた毛並みが情けないほどわたしの体にへばりついているだけだった。
「あ……」
誰もいないと思っていた洗面所に、誰かが使っている気配がする。あれは同級生の小野悠里。
大きなキツネの尻尾を揺らし、銀色の艶かしい髪を片手で掻きあげ、そして胸元からははみ出さんばかりの豊かな胸。
鏡を前に歯ブラシを咥え、また熱心に歯を磨いている。ブラシの音が洗面所に微かに響き渡っていた。
歯磨きをしているというだけなのに、図り底得ない色気を感じ、よからぬ妄想図がわたしのメガネに焼きつく。
彼女は本当にわたしと同じ高等部の生徒なのか、と誰も得しない自問自答を繰り返しながら、自分のお情け程度の胸に手を当てる。
何もかも正反対なわたしは、小野の不思議な魅力に取り付かれたのか、何故か彼女をじっと見つめていた。
ハッカのような歯磨きチューブの香りが、わたしの瞳を半開きにさせる。
「小野さん?」
ハンカチで手を拭きながら、わたしの呼びかけに振り向いた小野は、ちょっと頷くと再び鏡の方を向く。
歯ブラシを口から出すとともに、磨いたばかりの白い泡がたらりと口からこぼれる。糸を引いた白い泡が彼女の口を汚す。
流しに垂れた泡の音をわたしは聞き逃すはずが無い。むしろ、その音に理由なき色気を感じたのだ。
手持ちの赤いコップで小野は口をゆすぐと、再び口からぷくぷくと白い泡を細い口元からこぼしていた。
「委員長だ。リオちゃん、珍しいね。ここで会うなんて」
「ちょ、ちょっとね。お弁当を忘れて学食で食べたんだけど……」
「いつもお弁当だもんね、委員長は。ンフフ」
そういえば、小野と面と向かって話すのは、これが初めてかもしれない。
小野悠里。キツネの高等部女子生徒。実家がお寺で弟が一人。わたしの持つ彼女に関するパーソナルデータはこのくらい。
そして、横から彼女を見ると、制服からでもやゆん、よゆんとたわわに実った胸が誇らしく見える。きっと柔らかい。
「わたしとちょっと、あそばない?」だなんて言葉が口癖でも不思議じゃない、学園の妖女。
仮に同じセリフで男子を誘惑しても、わたしなら「ぷっ」と一笑されるだけかもしれないが、彼女なら化かされたように
男子は彼女の後を付いてゆくのであろう。はいはい、男子なんかそういう生き物なんだよっ、バーカ。
「小野さんは、いつも……」
「あら、『小野さん』だなんて。『悠里』でいいわよ、リオちゃん」
使った後の歯ブラシを洗いながら、悠里はわたしより遥かに年上っぽい声で、わたしを同級生と認めてくれた。
コップとお揃いの歯ブラシケースは、お年頃の女の子のもの。水気を切ってポーチに収めると、悠里はわたしを教室へと誘った。
527
:
きつねの子
◆TC02kfS2Q2
:2010/08/03(火) 17:41:58 ID:fKdkN0eQ0
悠里といっしょに歩くと、女のわたしでも男子の気持ちが分かる気がする。
一歩ごとに大きな尻尾は揺れて、わたしの純真な乙女心を落ち着かせない。見慣れている二次元の世界では、ここまでの色気は出せない。リアルの勝利か。
銀色の髪の毛は、ミステリアスな彼女の雰囲気とよく似合い、例えば悠里の為にお小遣いをすっからかんにされても後悔は無い。
「そうだわ。今日の放課後、わたしとご一緒出来ないかしら。りんごちゃんは吹奏楽部、翔子はバイトなんだって」
もちろん、わたしは無言で首を縦に振っていた。悠里のことに、俄然興味が湧いてきたのだ。
わたしと悠里との共通である友人は、わたしと同じウサギの星野りんごだ。
りんご曰く「年下でも年上でも、うぶな男子をからかうのが趣味」だとか。悠里とつるむことの多い翔子は、
そのことにやや苦心しているようだが、悠里の側に立って御覧なさい。理由はすぐに分かるから。
放課後、約束どおりに悠里とわたしは、帰り道を共にした。彼女がローファーを履く姿に見とれる。
足を靴に入れる仕草、屈むとふわりと顔を覆う前髪、スカートから覗く太腿、そして母なる大地を思い起こさせる胸がゆらり。
悠里の一つ一つの仕草が、どうしても色っぽくわたしの胸に訴えてくるのだ。足音さえ、大人を感じさせると思わないか。
とんとん!とつま先を床で叩くと同時に二つの豊かな胸が声を合わせるように揺れている。夏服のせいか著しく見える。
それを見ながら、わたしは自分の小さな胸を触ってみたが、何かが起こるということはなかった。
そうだ。出かけたことは無いけれど、デートに行くとしたら男子は、きっとこういう気持ちになるのだろう。
言葉で表すにはもったいないほどなのだけど、あえて言うなら「どぎまぎ」「はふはふ」「くらくら」そして「ふわふわ」。
まるで綿菓子の上を歩いているような感じ。雲ではなくて綿菓子だ。ここだけはどうしても譲ることは出来ない。
ちらりと横目で悠里を覗き見するわたしは、周りからはどう見てもおかしな子のようにしか映らないのだろう。
スタイルが良い悠里は、制服の着こなしが洒落ている。白いソックスが、キツネの細い脚によく似合う。
普段はどんな格好をしているのだろう。トップスも大人びたものも似合うんだろうし、スカートも短くても格好が付く。
流行のサンダルもちゃっかり履きこなして、世の『オトコノコ』たちを独り占めするんだろうな。
勝手に悠里を着せ替え人形にしてしまったわたしは、彼女の潤んだ目を見るのが少し恥ずかしくなった。
「お気に入りの店に行こうかと思ってね。誰かを誘おうと思ったんだけど、ごめんなさいね。リオも委員会がなくてよかったね」
「そうね、うん!うん……。わたしもさ、お……悠里と話したいなぁ!って思っててさ!ね!ね!」
悠里から誘われなければ、彼女の服装のことでやかましくお小言をしていたのかもしれない。
ただ、今は、悠里に興味津々。悠里の気になる店とは、一体どのような店なのか期待が高まるとともに、果たして自分が来店しても
一人で浮いてしまわないのだろうかと、少々心配になってきた。大人の世界にいてもおかしくない悠里のお気に入りの店だもの。
だってさ、銀座のおしゃれなカフェで「ガリ○リくん」をかじるようなものじゃないか。
この間は教室で落雁を食べていた。どうやらお取り寄せで手に入れた『鱚屋』の落雁。甘い物にはぬかりの無い
わたしたちの年代の子にしては、なかなか大人びた選択だ。上目遣いで甘えて来る洋菓子もいいが、三つ指付いて迎え出る和菓子もいい。
街の書店の脇を通り過ぎるが、悠里といっしょなので『コミック・モッフ』の表紙を直に見ることが出来ない。
今月の表紙『若頭』なのになぁ。むっはー!
「ここなのよ。ここ」
郊外へと伸びる私鉄の乗換駅前。わたしたちと同じ学生の姿も多い。悠里が指を差した店舗は、出来たばかりのものだった。
だが、すこしばかり「今日の」わたしには、ちょっと足止めしたくない店なのは致し方ない。
なぜなら、看板には『しの田のうどん』と書かれていたのだから。
528
:
きつねの子
◆TC02kfS2Q2
:2010/08/03(火) 17:43:00 ID:fKdkN0eQ0
店内に入ると学生で一杯だった。
わたしたちの通う佳望学園のほか、隣町の学校、海岸沿いの女子高の生徒が多い。寄り道してまで食べてみたいということか。
壁際の席に座ったわたしたちは、さっそくオーダーを決めようとしたところ、悠里はすぐさまオーダーの伝票に書き込み始めた。
ここでは、お客が自らメニューが書かれた伝票に印をつけて、オーダーするシステムのようだ。
「きつねうどんねー。リオちゃんは?」
少し考える演技をする。お昼のトラウマを若干蘇らせながら、わたしはつゆがはねても少々平気である
悠里と同じきつねうどんにすることにした。それに、出来上がる時間も同じだから待つこと無い。なんて聡明なわたし。
「ここの油揚げは最高ね。豆腐はたんぱく質たっぷりだから、美容にもいいし」
「もしや!」
じっと、悠里の胸元を凝視するわたしはもうだめかもしれない。彼女が手を拭くたびに、二つの胸が揺れてどうも目を困らせる。
しかし、もっとわたしを困らせるものが目に入ってしまったのだ。毎日顔を会わせてる、ソイツの顔。
(う……。マオのやつ。朝のことは覚えてろよ、この愚弟が)
わたしと違う天秤町学園に通う中学生の弟のマオ。どうやら帰り道、友人たちといっしょにここに来ていたらしい。
いつも利用する私鉄の乗換駅だから、ここに来ていても不思議は無いが、せめてわたしがいない時間か日に来て欲しかった。
呑気にうどんをすすりながら、友人たちと談笑しているマオは、もしかしてわたしの悪口でも言っているのだろうか。
あちらが笑えば笑うほど、わたしは取り残されたような孤独感を抱いてやまないのだよ。
「お待たせさまでした」
二つどんぶりが並んでわたしたちのテーブルの上に並ぶ。熱々の湯気が夕飯前のわたしたちの食欲をかっさらい、
それに答えてわたしは油揚げが麺の上に浮かぶ姿に見とれる。すうっと息を飲み込むと、出汁の効いた風味が鼻腔をくすぐる。
揺れるつゆの香りと、油揚げの甘い香りが混ざる独特の風味なら、わたしの体の一部であるメガネを曇らせる価値が十二分にある。
つゆに浮かぶ葱はゆっくりと回転し、麺と葱の色合いが食欲を誘った。悠里は丁寧に割り箸を割ると、手を合わせていた。
「い、いただきます!」
割り箸で摘んだ麺は程よい硬さ。やや少なめにわたしは口にすると、わたしの口に麺の腰の強さが伝わる。
つるっと暖かい麺を一口ですすると、先からつゆがはねてわたしのメガネに張り付いた。
油揚げを口に咥えると、甘い汁があふれ出て口いっぱいに広がりつつも、熱さで少し舌が痛い。
半分に噛み切られた油揚げは、つゆに浮かんで丼の中でくるりと葱といっしょにまわっていた。
「やっぱり、ここの油揚げはいいでしょ?あら、そうだ。リオちゃん、お冷を汲んでくるね」
悠里は開いたコップを片手に席を外すと、尻尾を揺らしてお会計そばの冷水機へと向かっていった。
一人取り残されたわたしは、マオをじっと監視し続けた。ヘンな気持ちは無いけれど、アイツがヘンにさせるんだ。
529
:
きつねの子
◆TC02kfS2Q2
:2010/08/03(火) 17:43:24 ID:fKdkN0eQ0
悠里が自分のコップで水を汲む。こんこんと糸のように冷水湧き出る機械の前で、彼女は大きな尻尾を揺らしていた。
ここで言うのもなんだが、悔しい。何だか悔しい。悠里の後姿は、色気の溢れる大人のシルエットだったのだ。
ローファーを鳴らして冷水機に向かう姿、一歩進むたびに尻尾がやゆん、よゆんと揺れて、ふわりとスカートもつられている。
お年頃の青少年だったら、かどわかされても「それじゃあ、仕方ないね」と呆れられるオチ。
オンナノコに甘い幻想を抱いて、本物の女の子を知って壊れることを恐れる世代の「オトコノコ」の考えることって!!そんな「オトコノコ」が、
妖しい色香を漂わせるわたしの同級生と冷水機の前でかち合った。ソイツは、毎日会っているウサギの少年だった。
「お先にどうぞ」
悠里はわたしの弟のマオに、順番を譲り一歩下がってマオを立てた。コップ片手にマオは、会釈をする。
とくとくと冷水機は白い糸を描きながら、のどを潤す水を湛えていた。その時間は短いようで、意外と長い。
「あ、ありがとうございます」
「いいのよ、ボク。どうもね」
悠里はマオの後に続いて冷水機から水を注ぎ始めたのだが、わたしはふと星野りんごの言葉を思い出した。
「年下でも年上でも、うぶな男子をからかうのが趣味」
きっと、悠里はマオと目を合わせたと同時に、りんごの言葉を如実に現すスイッチを入れているだろう。
イヌ科独特の尻尾のゆれを御覧なさい。マオのような少年は、きっと尻尾を見ているだけで、よからぬ妄想を抱くのだ。
マオが喜んで読んでいる少年マンガ誌で連載されてた『ているずLOVE』でも、やたら尻尾の描写がリアルだったじゃないか。
マオはそういう「ぱんつはいてない!」的な作品は読み飛ばしていた(と思う。多分)。そういう文化を小バカにするヤツなんだ。
だけど、女のわたしが読んでも萌えたというのに、弟ぐらいの中学生が見たら……。おっと、ジャッジメント!!
「あっ」
わたしと悠里が同時に同じ言葉を呟く。
悠里は冷水機からの水を不注意で溢れさせ、手を濡らしてしまったのだ。いや、不注意では無いことは、わたしにだってわかる。
濡れた手で持っていたコップを側の机に置くと、ぶんぶんと手首を振って、真珠のような水滴を飛ばす。
ケモノの手は一度濡れると後始末が悪い。ハンカチを探そうと(している振りの)悠里を見てマオが彼女の甘露溢れる蜘蛛の巣へ。
「いけない。ハンカチがバッグに……」
「お姉さん、コレをお使いください!!!」
手持ちのコップをすぐさま置いて、自分のポケットからハンカチをすっと渡すマオは、ここだけ見れば非常に紳士的であり、
騎士道を重んじる勇者のようだ。しかし、経験値の足りない勇者は魔女のまやかしに玩ばされるんだ。
530
:
きつねの子
◆TC02kfS2Q2
:2010/08/03(火) 17:43:49 ID:fKdkN0eQ0
「ありがとう。助かったわ」
「は、はい」
机の上には、冷たい水が湛えられたコップが並んでいる。
片方は悠里のもの。もう片方はマオのもの。ぱっと見、どちらが誰のものか分からない。
悠里のコップは、年上のお姉さんの甘い口元触れた、オトナの甘味。甘くて、イケなくて、そして甘くて……。
「えっと……。どちらでしたっけ?」
「……えっと…」
弟は悠里の甘い口元を気にしながら、自分のコップを思いだそうとしていた。
きんきんに冷えた水。年上のお姉さんの口元。そして、彼女の口元が触れたかもしれないコップ……。
「ふふふ……。どうぞ?」
弟はじっと並んだコップを見つめながら、悠里の口元を想像していたに違いない。バーカ。
「そうだ、こっちだったね。ごめんね」
わたしが見つめていたから間違いないが、確実に悠里は悠里のコップを拾い上げ、マオに微笑みかけた後わたしの席に戻ってきた。
マオは自分のコップだというのに、恐る恐る残ったコップを掴み明らかに動揺した足つきで友人の待つテーブルへと戻る。
せめて、悠里が今日の日のことを忘れるまで、あのウサギがわたしの愚弟だとバレませんように!
悠里とさよならをして、自宅に戻ると残念ながら弟は帰宅していなかった。
わたしの高貴な趣味をバカにして、リア充街道まっしぐらの因幡マオ。この間、楽しく汚れなき二次元少女を愛でていたら、
渋柿を十食べたような顔をされた。彼に一矢報いるために、わたしはあの光景を目に焼き付けてきたんだ。
清く正しい少年も、妖艶な女子にとってはおもちゃ同然なんですよって。わたしだって!わたしだって!
弟の帰宅が待ち遠しい。制服のまま、居間で待つわたしのおもちゃになっておくれ。リアルに「コレなんて○○?」だよ。
くんくんと開きたての文庫(ラノベですが)を匂う。結構気に入っているスカートを揺らす。ニーソックスの脚をバタつかせる。
白く雪のような毛並みがはためくスカートから見えるじゃない?そうよ、わたしってば、みんな大好き女子高生だよ。
オトナの色香漂う悠里と同じだよ。おまけに頭に『文学』ってつけていいんだから。希少価値!
弟の声が玄関からゆっくりと響く。おかえり!わたしのおとうとくん!
「ただいまー」
おしまい。
531
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/08/03(火) 17:44:28 ID:fKdkN0eQ0
悠里さんをお借りしました。こんこん。
投下おしまい。
532
:
名無しさん@避難中
:2010/08/03(火) 19:16:15 ID:shch4MEM0
うわよく見てんなあリオ。描写すげー
キツネ…もといキツネうどんが食べたくなったわ
困った状況だからこそ投下する姿勢はまさに創作者の鑑だ
533
:
名無しさん@避難中
:2010/08/03(火) 20:49:54 ID:T32PuGtgO
悠理お姉さんとコンコンしたい
534
:
名無しさん@避難中
:2010/08/03(火) 21:15:31 ID:Kwz1GkLIO
リオはもうなんか発情しすぎだろうww
チンコ生えてんじゃねーか?w
535
:
名無しさん@避難中
:2010/08/04(水) 00:42:52 ID:.AwHQb3g0
しっぽぽぽー
(尻が少し見えてますが、アウトですかね)
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1281.jpg
536
:
名無しさん@避難中
:2010/08/04(水) 00:46:37 ID:vUinpDfY0
>>535
ちょwwww
ぎりぎり具合がいい!
537
:
名無しさん@避難中
:2010/08/04(水) 04:56:51 ID:DIdei0KsO
っくあぁ!読みてええぇ!!
538
:
名無しさん@避難中
:2010/08/04(水) 13:33:45 ID:f6o40vEg0
チラ裏のやつですかいw
539
:
名無しさん@避難中
:2010/08/04(水) 23:42:26 ID:4PxxBy2I0
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1282.jpg
540
:
名無しさん@避難中
:2010/08/05(木) 07:16:20 ID:l9atDP.o0
これは… ゴクリ。
後姿でも随分とせくしー!
541
:
名無しさん@避難中
:2010/08/05(木) 23:02:22 ID:os7Hk/.UO
うわあああ尻尾もふもふしたい
542
:
名無しさん@避難中
:2010/08/06(金) 18:45:57 ID:Qta.GqPw0
板が復活したから本スレ立て直してきた
獣人総合スレ 10もふもふ
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281087600/
543
:
名無しさん@避難中
:2010/08/06(金) 19:30:55 ID:Fi7x8nGM0
>>542
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1283.jpg
またこのタイミングで巻き添え規制、なのでこっちからで失礼。
544
:
名無しさん@避難中
:2010/08/06(金) 19:34:30 ID:Qta.GqPw0
ツンデレかわいいよツンデレ
545
:
名無しさん@避難中
:2010/08/06(金) 23:34:11 ID:Fi7x8nGM0
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1284.jpg
546
:
名無しさん@避難中
:2010/08/06(金) 23:36:39 ID:Qta.GqPw0
鎌田www
547
:
名無しさん@避難中
:2010/08/06(金) 23:44:48 ID:aGA56nqYO
これはwww
小学生と勘違いされてた先生じゃないかw
548
:
名無しさん@避難中
:2010/08/07(土) 00:46:16 ID:RtVDjFWMO
サン先生はヤンチャやのうw
549
:
名無しさん@避難中
:2010/08/07(土) 20:39:24 ID:Z6V69uyE0
変身?つーことは変身前の姿もあるとか!?
ないないw
550
:
名無しさん@避難中
:2010/08/07(土) 21:14:19 ID:Us2Os4KMO
>>549
鎌田は最近、能力者だらけの別スレに飛ばされて大変な目にあってたりする。
551
:
名無しさん@避難中
:2010/08/09(月) 17:04:37 ID:TpYK1FJcO
本スレ11
この二人の関係いいなあ。いい友達だ。
優しすぎるはせやんの教え子になりたい。
552
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/08/15(日) 00:30:19 ID:dX3QTLsM0
この日に投下したいので。
553
:
夏の海から
◆TC02kfS2Q2
:2010/08/15(日) 00:30:58 ID:dX3QTLsM0
港に城が現れた。鉄(くろがね)で組み立てられ、街のどの建物と比べても大きく見える。
人々は仕事の手を休め、安らぎを忘れ、じっとその城を見ていた。
「帰って来たぞ!」
「おかえり!」
「いつ振りかねえ。『双葉』が帰って来たのは」
街の人々と、港の城は顔見知り。この街で生まれ、この国で育まれ、この大洋を駆け巡る、八嶋の国の自慢の戦艦『双葉』。
海軍工廠の建物と並び、波は白い泡を立てて洗い、船は長旅の疲れを癒しているかのように人々の目に映った。
「おかあさん!軍艦が帰って来たよ!」
「そうね。それじゃ、和豊さんも帰って来たのかね。この間絵はがきが届いてたしね」
丘の上に立つ小さな家屋。屋根に上ったネコの少年は、土間で回覧板を隅々まで読んでいた母親に「軍艦、軍艦」と叫ぶ。
屋根の下の畳の部屋では、少年の姉が小さな手帳に短くなった鉛筆で、せっせと書き込んでいた。
久しぶりにご馳走が食べられると、少年は目を輝かしながら屋根の上でピョンと飛び跳ねる。
青い空に少年の毛並みの白さが、雲と重なっていた。眩しい夏の光を全身に受けて。
「この間さ、笠置のねーちゃんが港の近くを飛んでて、憲兵さんに怒られたんだって」
「久しぶりのお天気だから、翼が黙ってなかったんだろうね。ハヤブサって子は」
「でも、笠置のねーちゃんが軍の機密を……」
と、言いかけた途端に母親の視線を感じ、ヘビに睨まれたカエルのように固まる。
ずり落ちそうな足を踏ん張りながら、なんとか話題を変えようと。
「この間のご飯はお腹いっぱいだった!」
「まずかったよね」
縁側に顔を出した姉が耳をたたんで目を細めた。
手にしている手帳にはぎっしりと文字が並んでいた。
「何言ってるんだよ。あれは『楠公飯』ってね、少ないお米であんたたちをお腹いっぱいにする不思議なご飯なんだよ」
「お母さん。あれ、手間は掛かるけど……あんまりね、味は」
強火で玄米を倍の水でそのまま炊き上げ、一晩寝かす。そしてさらに炊くと乏しい食事事情の時代でも、満腹になる『楠公飯』の出来上がり。
だが、味の保障はない。毎日は到底食べられない、とスズ子は大地の有り難味に愚痴る。
でも、人々は船の帰りや大海原に安らぎが訪れることを祈り続けていたことは、変わらないのであった。
「スズちゃん!読み物書いている暇があったら、回覧板を早くお隣に回してちょうだい。小説なんてね!あんた……」
「はーい。でもさあ……いずれね、この国は読み物でいっぱいになる時代が来るよ。きっと」
ゆらゆらと母親の尻尾が、五つの大洋を駆け抜ける艦隊の旗のように揺れていた。
―――その日の夕方、父母、姉弟は揃って夕方の涼しい風に当っていた。
縁側から居間に風が吹きぬける。虫が誤って入ってきた。姉弟揃って虫を追い駆けて天井を見上げるが、そこには板はない。
爆撃弾が引っ掛かるのを防ぐ為だ。この間、傷めた腰を庇いながら父親が取り払ったのだ。
時間が経つのを感じながら、誰かの帰りを待ち続け、夜空と星に浮かんだ『双葉』の影を遠くに望む。
554
:
夏の海から
◆TC02kfS2Q2
:2010/08/15(日) 00:31:22 ID:dX3QTLsM0
「泊瀬谷一等兵、帰宅しました」
子供たちが若々しい声を聞くなり、玄関に駆け出す。彼らが飛んでいった先には、海軍の軍服姿の若人が姿勢を正して玄関で敬礼をしていた。
その脇で父の姉が彼の側に申し訳なさそうに立って、同じように小さく敬礼。
「和豊、お帰り」
「お兄ちゃん!ねえ、アレやってよ!アレ!」
少年は和豊の尻尾に飛び掛るや否や姉に自分の尻尾をつかまれる。
「春男、和豊さんは入湯上陸で帰って来たんだから、ゆっくりさせてあげなさい」
「お姉ちゃんも見たいくせに!バーカ!」
べーっ、と舌を出して姉のスズ子は弟をあしらうが、和豊には微笑ましく映った。
潮風に洗われた和豊の毛並みは、不思議と垢抜けて見えた。
その日の夕飯はいつもと比べて格別に豪華だった。居間を包む香りがいつもとは違う。
真っ白いご飯に、野菜を煮たもの。どれも、彩が豊か。子供たちも争っておかずに群がるが、母親から尻尾をつかまれる。
和豊にとってはご馳走続きの一日だ。なぜなら、昼は昼でカフェにおいて『入港ぜんざい』を口にしたからだ。
しかし、このことは子どもたちに知られるとうるさいので、泊瀬谷家では「機密事項」である。
「和豊、軍艦はどうだ」
「仲間も上官も、みな良い人ばかりです」
久しぶりに実家に戻った和豊は兄の横顔を伺う。もう、どのくらい会っていないんだろうか。
地面が揺れていないなんて、和豊にとっては海軍学校を卒業して以来のことだった。
一方、兄は国民学校の教師だ。腰を痛めているので、地上で黙々と働くことが彼にとっては誇り。
この瑞穂の国を背負うお子たちを育て、教鞭を振り、繁栄させるのだと、兄は口にはしないが目で語っていた。
夕飯も終えて、それぞれがゆっくりとした時間を過ごしていると、家の外を出ると一つも物音さえしない夏の夜が広がっていた。
折角だからと家に帰って来た和豊と兄は、配給で少しばかり手に入れた酒を酌み交わしていた。
「ネコに入湯上陸だなんて、上官も洒落たことを賜りますね」
「海軍は昔から洒落ているのだ」
水の貴重な軍艦では風呂に入るために、上陸を許可する。それを『入湯上陸』と呼ぶ。
部屋の奥から「お風呂が沸きましたよ」と、声が飛んでくる。和豊はこの言葉でさえ懐かしい。
そのころ、和豊の姉が和室に蚊帳を広げていた。
スズ子は相変わらず手帳に文字を書き続け、春男は和豊の尻尾に絡み付いていた。
天に白鳥が羽ばたき、星の一粒一粒が眩い。誰もが星空が恒久に変わらぬことを願いつつ、『双葉』に一筋の願いを託していた。
「まあ、お前は海軍で散々使われるんだな」
「兄さん、ひどいですよ。ぼくが三毛猫だからって」
「お誂えだよ。『オスの三毛猫が船に乗ると沈まない』って昔から言うからさ」
兄に酒をゆっくりと酌みながら、和豊は頬を赤らめた。
「じきにお前はすぐに出世するよ」
「ご冗談を」
「教師は昔から洒落ているのだ」
また、ご馳走を食べたいなと願いつつ、子供たちは蚊帳の中に潜っていった。
和豊は自慢の三色の毛並みを夏の風に揺らして、風呂場に向かう。
おしまい。
555
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2010/08/15(日) 00:33:14 ID:dX3QTLsM0
投下終了。ですよ。
556
:
名無しさん@避難中
:2010/08/15(日) 20:52:59 ID:hoNycA2IO
ケモノ達も戦争とかするのかー
平和になると良いのう
557
:
名無しさん@避難中
:2010/08/23(月) 00:01:25 ID:34.QbA5sO
藪田ネタで極悪非道の超ド外道が出る話を妄想してたけどあまりにケモスレと毛色が違うんで封印したというのを思い出した。
558
:
名無しさん@避難中
:2010/08/23(月) 21:25:04 ID:ZBGCHK96O
おお清志郎君だ
なんかかわいい顔してんなー
この世界の陸上競技って一体どんなレベルなんだろうな
559
:
名無しさん@避難中
:2010/08/29(日) 10:42:45 ID:fq3ezfG.0
ぬーん、いろいろ代理投下したけどチラ裏で済ませたほうがいいのか本スレに落としたほうがいいのか迷うものがちらほら……。
投下する際にはチラ裏か代理希望か明記してくれたらいいかなぁ、と思います。
560
:
名無しさん@避難中
:2010/08/29(日) 12:35:31 ID:aPIBOmKc0
本スレに投下するには何だか忍びないし(ネタが)、人もあまり居ないなあと
思ってしまい、ついチラ裏に。避難所に投下した絵は本スレに貼っても
大丈夫です。必要であればチラ裏の文章も。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1278173977/109
561
:
名無しさん@避難中
:2010/08/30(月) 21:23:26 ID:U1p.V7jMO
英先生素敵やー
夏は本当に大変そうだよね
562
:
名無しさん@避難中
:2010/09/10(金) 05:25:48 ID:KoVNe6eQ0
―― 昼休み、部屋中に響くサン先生の大きな声。
「……でさあ、ボクが『明日、臨時の健康診断があるよ』って言った時のいのりんの顔ったら!」
エアコンの良く効いた室内で、昼食を済ませた教師たちが話に花を咲かせる、
そんないつもの職員室である。そこにはいつもの、リラックスした空気が流れていた。
外では相変わらず蝉の声が響き渡り、まだまだ夏が続いている事を感じさせる。
サン先生の天敵女性教師2人は何かの用で席を外しており、しばらくの間は
サン先生のターンが続きそうな気配であった。
「他にも何人か危なさそうなヒトもいるんじゃないの?」
「おや、私の事ですか?」
そんな空気の流れる職員室での会話に口を、いや長いヒゲを挟んできたのは、
地学(地質学・プレートテクトニクス専門)担当の要石震次郎(かなめいししんじろう)先生である。
「私ももうすぐ五十ですからねえ、健康に気を遣わないとなあ」
「あれ?要石先生がこっちに来るなんて珍しいじゃないですか」
「この暑さじゃフィールドワークも大変でしてねえ、さすがに少し涼みに来ようかな、と」
「先生もいい年なんですから、あまり無理なさらない方が」
この要石先生、自分が受け持ちの授業は生徒を引っ張りまわしてのフィールドワークが多い。
そのため佳望学園高等部の生徒たちは、学園周辺の地質について必要以上に詳しくなっていた。
その性格は顔相応に温厚。しかし怒らせると非常に怖いらしい。
はるか昔、彼が学生だった頃。
何かのいざこざで彼が体育館の裏に呼び出されたことがあったそうなのだが、
怒った彼の尾が地面を一打ち。その途端、周辺の部室小屋が半分以上倒壊したという
伝説が残っているとか。他にも「佳望学園の現校舎(築27年)が現在の形になったのには、
若き日の彼が一枚噛んでいた」という噂も……
そんな闖入者に、帆崎先生が声を掛けた。
「ええ、今じゃ昔のように地中に潜って活断層の探索、なんて芸当はとても」
「最近の暑さで英先生も気が立ってますから、自重してくださいよ?」
話が若干危険な方向に向きかかる。
そんな危険な気配を感じてか、単なるネコの気まぐれか。
563
:
名無しさん@避難中
:2010/09/10(金) 05:27:23 ID:KoVNe6eQ0
「そういえば、要石先生は水泳部の顧問じゃないんですね」
泊瀬谷先生が話題を逸らした。その視線の先には、窓を通して見える校庭のプール。
そしてそこで水しぶきを上げている、がっちりむっちりした体格の影がひとつ。
「いやあ、引き受けたいのは山々なんですが、どうにもプールの塩素がキツくてねえ」
唐突な話題の転換に、要石先生が応えた。
「体表を保護しようとして粘液が出ちゃうから『プールに入るな』って、生徒から不評なんですよ」
要石先生の体表は普段から微妙な光沢を放っており、触ると妙にしっとりとした感触である。
生魚のようなぬらぬらした感触では無いし、低い体温もあって鬱陶しい感じはしないのだが、
いかんせん全体に湿り気を帯びている。満員電車で隣に来て欲しい相手ではないだろう。
それにプールに入ると消毒用の塩素の刺激で粘液が過剰に出てしまうのは避けられない。
魚人や両生人の生徒がプールで泳ぐ際には全身を覆う水泳ウェアを着用する事も多いのだが、
当然の事ながら動きにくい。それを嫌ってプールに入らないことを要石先生は選択したのだった。
「そうなんですか…」
「水泳部は水島先生が引っ張ってらっしゃるし、私には漕艇部がありますから」
「そうてい…部?」
“そうていぶ”の意味が分からず、首を傾げる泊瀬谷先生。
「あー、そういえばそんなのあったよね!競艇部!」
「部活動でギャンブルやったらマズいでしょう」
混ぜっ返すサン先生に、すかさず帆崎先生がツッコミを入れたが、
「でもザッキーさ、この間塚本くんと競走馬の名前で盛り上がって」
「あ、あれは!古文の単語を塚本に分かりやすく教えるのにですね!」
サン先生の返り討ちに遭った帆崎先生。そしてそのまま2人は普段の会話に戻っていった。
一方、要石先生はそれを気にするでもなく話し続け、
「皆、川の水で毛皮を濡らすのが嫌みたいでねえ。魚人と両生人ばかりの弱小チームですよ」
「はあ…」
泊瀬谷先生は今ひとつ事情を飲み込めていないようだった。
564
:
名無しさん@避難中
:2010/09/10(金) 05:28:43 ID:KoVNe6eQ0
そこへ掛けられた声ひとつ。
「し、失礼します…要石先生は、こちらに…」
職員室の入り口に高等部の制服を着た生徒が一人、立っていた。
「お、噂をすれば。平庭くん、こっちこっち」
と要石先生が手招き(ヒレ招き?)する。
「はい……」
やってきたのは、気弱そうな声に似合わず凶悪な顔をした小柄な魚人。
喉元は赤く染まり、緑色をした短めの髪はラメでも散らしたようにキラキラと光っている。
そんな彼がおどおどと、辺りを見渡しながら近付いてきた。
「この子が漕艇部の1年生エースでね、平庭輝男(ひらにわてるお)くん」
「ひ、平庭です…」
声の調子といい、その振る舞いといい、明らかに彼は怯えているようだった。
傍目にはどう見ても運動部のエース、という感じではない。
「で、何か用?」
「あ、新しいオールがぶ部室に届いたので…ほ報告してこいと先輩から言われましてその」
「ああオール届いたか。報告ありがとうって、皆に伝えといて」
「はいっ、し失礼しますっ」
周りの教員たちにもぺこぺこ礼をしながら、平庭くんは去っていった。
平庭くんの様子を見ていた泊瀬谷先生が心配そうに尋ねる。
「あの子、他の生徒からいじめを受けていたり、してないですよね…?」
「なに大丈夫ですよ。あの子は人見知りする子でしてねえ、部活の時は元気一杯なんですが」
要石先生は笑いながら言った。
それでも泊瀬谷先生、心配そうに
「大丈夫なのかなぁ……」
とつぶやくのだった。
565
:
名無しさん@避難中
:2010/09/10(金) 05:29:58 ID:KoVNe6eQ0
その日の放課後、学校の下を流れる佳望川の築堤の上に泊瀬谷先生の姿があった。
河川敷では漕艇部員たちと思しき生徒たちが20人ほど、準備運動をしている。
彼らを眺めていた麦わら帽子姿の要石先生が、歩いてくる泊瀬谷先生に気付いて声を掛けた。
「おや泊瀬谷先生、見学ですか」
「ええ、少しだけ」
「まあ大した事もやっていませんが、そちらの木陰へどうぞ」
蝉の音が響く中で要石先生が示したのは、川岸に生えた柳の群落の下である。
そこには“佳望学園漕艇部”と書かれた大きなクーラーボックスが幾つか置かれていた。
照りつける日差しを受け止めて優しい影を落とす木陰に、思わずほっと一息。
「そのボックスに入ってる水、勝手に飲んじゃって構いませんので」
「すいません、いただきます」
クーラーボックスの中から水の入った広口のペットボトルを取り出す泊瀬谷先生。
ひんやりと肉球に気持ち良い感触。少し口をつけてみる。普通の、けれどもおいしい水だった。
ふと思う。魚人や両生人の運動部員だと、こんなに水が必要になるんだ……
準備運動を終えた部員たちが築堤を越えて細長いボートやオールなどを運び始めると、
要石先生は部長らしい蛙人の生徒と話をしながら柳の下へやってくる。
泊瀬谷先生の方をちらりと見た後、要石先生はクーラーボックスから水を一本取り出した。
そして、「残りは持って行っちゃって良いよ」と蛙くんに声を掛け、麦わら帽を脱いで腰を下ろす。
蛙くんは泊瀬谷先生に会釈してボックスを持って行き、中身を部員に配り始めた。
自転車で上流へ向かう部員、水分を補給する部員、その間を蛙部長が歩き回っている。
どうやら、しばらくの間は部長の彼に任せても大丈夫らしい。
「特等席、ですね」
「眺めが良いでしょう?夏場は暑いので、この木陰には助けられています」
そう言うと、要石先生はペットボトルの水を一気に飲み干した。
川面を撫でる風が木陰を吹き抜ける。泊瀬谷先生は思わずつぶやいていた。
「風が気持ち良い…」
要石先生は少し微笑み、部員たちの動きを眺めている。しばしの沈黙が流れた。
566
:
名無しさん@避難中
:2010/09/10(金) 05:31:51 ID:KoVNe6eQ0
「……この川は昔、河川改良工事で大きく流れを変えられたんですよ」
「はあ」
「三面コンクリート張りのそれは、まるで巨大な排水溝のようでした」
まるで独り言のように、要石先生は話し始めた。
「ところが後になって、自然の回復という号令の下、川を固めていたコンクリートが除かれた」
「はい」
「洪水防止のため築堤は残りましたが、ひとが手を入れるのは最小限に止められたんです」
「そんな話を聞いたことはあります…」
確か、今から半世紀ほど前の話だと学生の頃に聞いたような……
「それから時間は経ちましたが、まだまだ先は長いし、それでも完全に元に戻る事は無いでしょう」
「どうして…ですか?」
「ひとの生活がありますからね、どこかで折り合いを付けなければいけません」
「いちど失ってしまったものは、取り戻す事ができないんですね……」
泊瀬谷先生が少し悲しそうにつぶやく。また風が吹いた。柳の葉が音を立てる。
「それでもね、泊瀬谷先生。まだまだ先は長いんですよ」
「え…どういう事ですか?」
「自然が止まる事はありません。あと何万年かしたら、ここは地層の中ですよ」
「はあ…」
「私たちは“未来の地層”の数ミリメートル、その中に立っているんです」
「未来の地層……」
「その頃には私たちの学校はどうなっているんでしょうね?何の痕跡も残っていないのか、
それとも過去の遺跡として発掘されているか、あるいは数万年後も立派に残っているのか」
「…それを目にするのは、どんなひと達なんでしょうね」
「もちろん“人知れず埋れたまま”という事もありえますよ?」
「あら怖い」
「一つだけ確かな事は、私たちの力なんて自分で思っているよりもちっぽけなものだ、って事です」
「…はい」
「川は時間を大地に刻んでいくんです。私たちが何かしたところで、全てを消し去れる訳じゃありません」
「すごくスケールの大きいお話ですね……」
「ははは、百武先生の活動領域に比べれば可愛いもんですよ」
少し強く風が吹き抜ける。
エアコンの効いた室内とは違う涼しさに、泊瀬谷先生は要石先生の今の気持ちが
少しだけ分かったような気がした。塩素で清潔に保たれた私たちのプールよりも
太古の昔から母なる大地を流れ続けているこの川を、要石先生が愛している理由が。
567
:
名無しさん@避難中
:2010/09/10(金) 05:33:47 ID:KoVNe6eQ0
「先生ー!こっちも構ってくださいよー!」
水上の4人乗り艇から声が掛かる。
教師2人が話していたのはせいぜい20分、そろそろ要石先生の出番らしい。
「心配するな宗田!今日は鰹節が大好物な先生も来ているから、気合入れていけよ!」
と要石先生が返すと、艇上の彼は急に落ち着かない様子になった。
要石先生は麦わら帽子をかぶりなおし、トランシーバーを手にして川岸の方へ歩いて行く。
泊瀬谷先生はこのまま木陰に居ても良かったのかもしれないが、後についていく事にした。
水のペットボトルが汗をかき始めていたので、ハンカチ越しに持ちなおす。肉球が冷たい。
その後数分の内に2艇が上流に向けてスタートを切り、残るは平庭くんの艇のみだ。
「彼は基本的に、個人種目のシングルスカルと2人で漕ぐダブルスカルをやっています」
泊瀬谷先生に説明する要石先生。川岸を吹く風を受け、その長いヒゲは楽しそうに揺れている。
やや下流の方を見れば、細長い2人乗りのボートに乗るライフジャケット姿の平庭くん。
彼は相方と息を合わせて、相変わらず神経質そうな動きでゆっくりと艇を漕いでいた。
川縁のところどころで、白いススキが訪れつつある秋の気配を感じさせている。
泊瀬谷先生には風に揺られるそれが、彼女が良く知る生徒の尻尾のようにも見えるのだった。
どうやら準備は整ったらしく、要石先生が川岸から声を掛ける。
「平庭ー!分かってると思うが、池田の体力も考えろよ!」
艇上の2人がそれに答えるように、オールをこちらに向けて振った。
平庭くんの髪が風に揺れ、キラキラと緑色に光った。
568
:
名無しさん@避難中
:2010/09/10(金) 05:34:59 ID:KoVNe6eQ0
艇上の相方が平庭くんに合図する。
「それじゃいくぞ、オー…エス!」
オールが水面を叩き、辺りに水音が響いた瞬間。平庭くんの表情は変わった。
全身で闘志をむき出しに。力強く、なおかつ凄まじい勢いでオールを漕いでいる。
喉元の赤い色も心なしか濃くなっており、さながら返り血を浴びたよう。
「オラオラ池田ァ、スタートが遅いぞォ!もっと速く漕げェ!」
「ハァ…ハァ…分かってるよ…分かってるけど……」
池田と呼ばれた鯉の彼もかなりのピッチで漕いでいるのだが、明らかに平庭くんに
ピッチを合わせるのに精一杯という様子だった。
「オラオラもっとアゲていくぞぉォ!」
「ひいぃぃ……」
未来の地層の中に立つ2人の教師の前を、猛スピードで艇が通り過ぎていく。
トランシーバーでゴール地点との連絡を取っていた要石先生は、通信を終えると
「あの通り実力はあるんですが、ペアの相手と息を合わせるのが大変でしてねえ」
苦笑しながらヒゲを撫で、少し悩むように言った。
「やっぱりシングルに絞った方が良いかなぁ…?」
「そ、そうなんですか……」
平庭くんの性格の変わりように、泊瀬谷先生はただ呆然とするばかり。
思わず手に持ったペットボトルがずり落ちそうになって、慌てて持ち直した。
川面を通り過ぎた風は、少しだけ秋の気配を含んで涼しかった。
とりあえずおしまい
569
:
名無しさん@避難中
:2010/09/10(金) 05:36:07 ID:KoVNe6eQ0
いちおう脊椎動物だけどケモノとは呼ばないしでも外骨格のヒトも市民権得てるみたいだし
自分では納得できてもお借りしたキャラがキャラ崩壊してたら迷惑かかるし……
などと、本家に投下すべきか迷ったので、とりあえずこっちに。
もしお借りしたキャラクターで描写のおかしい所などありましたら、平にご容赦を……
あと一応キャラ紹介。
平庭くんはピラニア。
いつもは臆病だけど、血の匂いとか水面を叩く音に反応して性格が変わります。
要石先生はナマズ。
普段は岩の隙間でボーっとしてるんだけど、実は顔に似合わず結構凶悪だったり。
以上、お目汚し失礼しました
570
:
名無しさん@避難中
:2010/09/10(金) 23:58:32 ID:/i.BHO1k0
新規さんかな?面白かったよー、おつ!
571
:
名無しさん@避難中
:2010/09/11(土) 03:59:23 ID:JqZTtiJ6O
要石先生素敵じゃないか
こういうお爺ちゃん好きだぜ
572
:
名無しさん@避難中
:2010/09/11(土) 18:26:43 ID:oEnbLKDUO
素敵なお話だ。
要石先生、いいなあ。
水分が欠かせないとか、細かい設定が上手いなあ。
573
:
名無しさん@避難中
:2010/09/12(日) 22:25:58 ID:EvKXo3pU0
>>569
http://loda.jp/mitemite/?id=1378.jpg
骨格を無視するのでなかなか難しいですね。
574
:
名無しさん@避難中
:2010/09/12(日) 22:48:01 ID:vtzeyzeQO
>>573
うおおすげえイラスト化したよ!
なるほどよいおじいちゃんだ
575
:
573
:2010/09/12(日) 23:01:00 ID:EvKXo3pU0
読み返したら私の文章は何やら否定的に読めます、申し訳ないです。
今日の夕刻にNHKでレガッタの放送が有ったのですが、この動きをするには人間の骨格そ
の物じゃなくっちゃだめだなーと悩みつつ描いてみましたところ、わたしの技術ではここ
まででした。 生物は陸上に上がったときに変わってしまったんですね。
地学担当だと百武そら先生と同じかな。おじいちゃん先生って、良いですよね。
576
:
名無しさん@避難中
:2010/09/13(月) 00:02:28 ID:RD1ATwK.0
要石せんせーーーー!おれだーーーー!カッコイイです。
577
:
名無しさん@避難中
:2010/09/13(月) 21:37:00 ID:yTFQUnPI0
>>573
SSよりも要石先生の雰囲気が出ていて、イメージが広がりました。
老先生の枯れた感じというか、人生の先輩みたいな雰囲気には憧れますよね。
我が駄文がこんなに素晴らしい絵になるなんて夢のような……
本当にありがとうございます!
百武先生は天文が専門分野みたいですし、ナマズの先生ならやっぱり断層とか
プレートとか詳しそうなので一つの教科に分野別の先生がいても良いかな、と。
魚人の骨格とかについては、歩行のための骨格構造だのヒレの強度だの考え始めたら
いつしか思考の迷宮に迷い込んでしまったので、結局は人間の骨格をベースにするのが
手っ取り早いという前提で書いてます。イルカとかクジラ系の獣人はどうなるんだろう?
578
:
名無しさん@避難中
:2010/09/13(月) 23:03:14 ID:RD1ATwK.0
要石先生と百武先生がいれば怖いものなし!
ああ、蛙部長とリオとの部費を巡ってのバトルもいいな……
579
:
名無しさん@避難中
:2010/09/14(火) 21:31:30 ID:WT5/bqls0
http://loda.jp/mitemite/?id=1387.jpg
より、佐々山先輩。
http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/579.html
http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/576.html
580
:
名無しさん@避難中
:2010/09/14(火) 22:07:31 ID:WT5/bqls0
あ、コピペミスで日本語がヘンになってたorz
581
:
名無しさん@避難中
:2010/09/30(木) 00:43:19 ID:9NIv.WY20
「……という訳で、認められた部費を考えると、アレの購入に回せる費用はこれだけだ」
「これって……今回も?」
「ああ、残念だが各人の自発的協力を願わざるを得ないだろうな。皆、すまん」
佳望学園漕艇部の部室内には重苦しい空気が立ち込めていた。
普段は練習メニューなどが大書されているホワイトボードには、数字の列が並んでいる。
その前に部長の雨宮 跳(あめみや ちょう)が立ち、顔を青くしていた。
……まあ元から青緑色なんだが。
このような重苦しいミーティングが開かれているのには理由がある。
彼らにとっては非常に重要な戦略物資の供給に、大きな問題が生じていたのだ。
―― 龍川大学(りゅうせんだいがく)生協限定、ドラゴンマークの高濃度酸素水。
同大学研究室謹製のそれは溶存酸素量が多く、主に魚人族や両生人族の間では
パフォーマンス向上効果が高いとされ、運動部所属の彼らにとって垂涎の的となっている。
それに容器のペットボトルも広口で、飲みやすい形状なのが嬉しい。
その一方で、魚人や両生人も肺呼吸である以上、その期待される効果に科学的根拠が乏しいという
意見も存在し、水の加工品である事から法令上のカテゴリは炭酸水と同じように「清涼飲料水」。
「ミネラルウォーター」に比べてなんとなく軽薄な印象を受ける言葉の響きではある。
しかも価格が価格であり、唯一の入手場所である龍川大学へのアクセスも良いとは言えない。
佳望学園の最寄り駅から電車を乗り継いだ場合、片道45分。自動車なら倍近く。
しかし幸いにして「美味しいもののためなら協力は惜しまないよ」との要石先生の発言もあり、
自動車による運搬は可能である。佳望学園所有のマイクロバスに満載して運べば、2ヶ月は持つだろう。
従って問題は、購入費用と移動時間の確保、要するに周囲の理解を得る事にあった。
……この場合「周囲の理解」というのは、部活動の予算に対する認可、という事である。
そしてその理解が得られない事が、部室内に漂う重苦しい空気の原因なのだった。
582
:
名無しさん@避難中
:2010/09/30(木) 00:44:10 ID:9NIv.WY20
「俺も嫌というほど説明したんだがな……あの堅物委員長、今回も意見を曲げなかった」
「って事は当然、バスも動かせないのか?」
「ああ、龍川大漕艇部との交流行事でもせん事には、バスで乗り付けるなんて夢のまた夢だな」
「あの強豪大学とウチみたいな弱小が交流?」
「他所のチームと合同でなら……いやそれだと生協前がえらいことになるな」
「だいいち、部員の大半があのバスに乗ることになる訳だから……」
「あ、そっか……俺らで背負って帰るのと大して違わなくなりそうだな……」
佳望学園の保有するマイクロバスは26人乗りであり、もし漕艇部員が全員乗り込めば
余分のスペースはそう多くない。まあ確かに背負ったり自転車で運んだりするよりは
効率的と言えるかもしれないが、そこまでするのは必死杉だろ……という判断が働いたのである。
そんな訳でこの日のミーティングは、毎四半期恒例の「戦略物資確保作戦会議」へと
切り替わったのだった。
「やっぱ遊撃買出し部隊か?」
「小口輸送を断続的に、って事だな」
「いつも通り、一人あたり25kgってところか」
「うわー、キツそうだな」
「ああ今月の小遣いが……」
「まあ、これもロードワークだと思えば」
「電車に乗るロードワークなんて聞いたことないぞ」
「じゃあ走って帰るか?俺は嫌だけど」
「なるほど、ロードワークを名目にすれば大義名分も……」
「ちょwおまw殺す気かwww」
「晴れた日なら干物になれる自信があるぞ」
「当然、買出し部隊には特配があるんだろうな?」
「何?そんなもん自腹に決まってるだろ」
「ああ俺のコミック・モッフ……」
室内には部員たちの発言が飛び交い、ちょっとした混乱が起こっていた。
「あー、こんな予算押し付けてくる委員会が恨めしい」
「先生の自家用車は使えないの?」
「あの年季の入ったジムニーに積める量を考えるとな……先生にそこまでさせる訳にはいかんよ」
「確かに、俺たちで行った場合と大して変わらないかもな」
「そっか……それもそうだよね」
「じゃあ皆、いつもの通りクジ引きで」
「……せーの」
583
:
名無しさん@避難中
:2010/09/30(木) 00:44:56 ID:9NIv.WY20
―― そんな訳で数日後、部長本人を含めて運の悪かった5人から成る小部隊が電車に揺られていた。
隊長は雨宮。彼が率いるのは三年の鮫島。二年の桝川、井森。そして一年の鰻田である。
目的地はもちろん龍川大学。電車を降りて長い坂道を登った先の門を入る。
その目の前に広がるのは、名門の名も高い龍川大学のメインキャンパスである。
そこを闊歩する高校生5人。既に勝手知ったる本部棟で、生協のおばちゃんとも顔馴染みである。
「こんちはー」
『あら。今日あたり来ると思ってたら、やっぱりね』
「いつもの500mlボトルを48本ずつ、5人分お願いします」
『いつもありがとうねぇ。間仕切り板は要る?』
「はい、お願いします」
『荷造りはそこの空いてる所でね、分かってると思うけど』
「分かってますよー。この生協についてなら、ここの新入生よりも詳しいんですから」
「雨宮ー、そんなに常連なら価格交渉とかやらないのかー」
「何を言う、今でも便宜を図ってもらっているんだぞ?これ以上要求できるか」
『あら物分りの良い子ねぇ、おばちゃん嬉しいわ』
幸いにして“本日に限っては”、龍川大学生協の水の在庫は豊富であり、
佳望漕艇部・買出し部隊の半個分隊は当初予定通りの戦果を挙げる事ができた。
それどころか、部隊長たる雨宮がこう言い出したのである。
「よし!この際だから追加調達といくか」
「えーと、それって……」
「うむ、ついては皆に調達資金の分担を願いたい。あ、おばちゃん!12リットル分追加ね」
「おいちょっと待て俺たちはまだ同意した訳j」
『はーい、毎度ありがとうねぇ』
「……オケラになった……」
「ああ俺のコミック・モッフ……」
「帰りの電車賃、残ってるかな……」
「部長……酷いよ」
「心配するな、追加分は俺が担ぐ。お前らは24kg、俺は36kgだ。文句あるまい」
「いやそういう問題じゃなくて……いや、もうやめよう」
「そうか、それじゃ話がまとまったところで帰るぞ。おばちゃん、また2週間後は頼むよ!」
『はいはい、分かってますよ!』
―― かくして特攻野郎Fチームの面々は意気揚々と引き上げるのであった。
……全5人中、約4人を除いては。
584
:
名無しさん@避難中
:2010/09/30(木) 00:47:16 ID:9NIv.WY20
かなり大きな荷物を連れて帰る電車の中、雨宮は仲間たちを落ち着かせようとしていた。
「そう怒るな、追加分だって後で部員全員で負担するんだから」
「だからといって俺たちの同意も得ずに……」
「まあ聞け。夏の大会が終わってその後だ。学園祭の前には秋の大会が始まるよな?」
「大会前の練習と大会での消費を見込んで、ですか」
「そしてその後には冬が来る」
「ふむ、冬場へ向けての備蓄という意味合いもあるのか」
少し納得した様子の4人。変温動物かつ体表の湿度が高い生徒が多い佳望漕艇部にとって、
寒くて空気が乾燥する冬場は試練の季節である。
「……冬、か。嫌な響きだ」
「……確かに去年の冬は地獄だったな」
「毎年の事とはいえ、寒さと乾燥のダブルパンチは厳しいよなあ」
「あの寒さの中で動ける奴は池田と桝川と俺くらいだったもんな……」
「屋内練習での気合の入らなさは覚えているだろ?」
「ああ、部長も冬眠しかかってたな」
「……冬眠で済むヒトたちが羨ましいですよ」
「確かに、熱帯出身の奴だと寒さが命に関わるもんな」
「でも鰻田さー、お前は体にプラグでも着けて発電すれば」
「……井森先輩?ガルバーニの実験、もう一回体験したいんですか?」
「いや、遠慮しとく」
「冬」という単語で嫌な記憶が蘇った一人から声が漏れ、それに呼応するように話が進んだ。
「そこで、だ」
「ん?」
「今度の大会で少しでも良い成績を残せば、次の部活動費会議でも皆の心証を良くできる」
「……そうなれば部活動費の認可も下り易くなる。あわよくば暖房費の手当てを、ってところか」
「つまり士気向上のために水を多く仕入れたのか?」
「お察しの通り」
「雨宮、お前ってホント策士だな」
「どうも。それから買い増した分は要石先生に保管してもらうので、そのつもりでな」
ここで電車が駅に到着、荷物の中身が“ちゃぽん”と声を挙げた。
5人は荷物を背負ってホームへ降り立つ。
合計132リットルの水の重みと夏の日差しが5人の背中にのしかかった。
―― そのまま部室まで帰るはずだったのだが、その途中での事。
彼らは思わぬものを目にする事になる。
585
:
名無しさん@避難中
:2010/09/30(木) 00:48:13 ID:9NIv.WY20
「おい、あれって風紀委員長じゃ」
「あ、本当だ」
「普段の真面目そうな格好とは雰囲気違うなぁ、ああいうのも結構可愛いかも」
「おい鮫島そういう問題じゃ……ってアイツ何やってるんだ?」
「え?普通に本屋へ入っていっただけじゃ」
「それにしては妙に周囲を警戒していると思わんか?」
「そう言われれば確かに……」
「よし、俺が確かめに行く。荷物は頼む」
「あっ!雨宮ズルいぞ!」
「何を言う、奴と交渉するのには俺が一番慣れているんだ。それじゃ後は頼んだぞ!」
「……行っちまいやがった。なんて面の皮が厚い奴だ」
「そりゃ部長には何を言ったって『蛙の面に何とやら』って奴ですよ」
「確かに、蛙だもんな」
「……ここで突っ立ってても仕方ない、行くか」
「チクショー、重たいなー」
「今日ばっかりは雨宮と買出しに来たのを後悔するな」
「うちのチームじゃ1・2を争うパワーの持ち主ですしね……」
「それに交渉も上手いし。伊達に部長やってません、って事か」
かくして運の悪かった部員4人は各々33kgの重荷を背負って、部室までの道を
辿っていったのである。
「この先3ヶ月はこんな事を繰り返すのか……」
「じゃあ今度、はづきちか風間に自走台車作ってくれって頼んでおくか?」
「そりゃ良い。丁度ここにパワープラントもいる事dあばばばば」
「……イモリの黒焼き、一丁あがり」
その一方。単身本屋に潜入した部長の雨宮はというと……
586
:
名無しさん@避難中
:2010/09/30(木) 00:49:25 ID:9NIv.WY20
「よう、風紀委員長じゃないか」
「っ!?……あ、ああ、漕艇部の」
雨宮は確信した。なんとか取り繕ってはいるが、この慌てっぷり。何かがあるに違いない。
これは思わぬ金鉱を掘り当てたのかもしれんな。鮫島には礼を言わねば……
「それで、私に何か用でも?」
「いや、たまたま見かけたんで声を、な。確かその先は漫画本のコーナーだったな」
「……そうみたいね」
目の色が一瞬変わったように見えたのは気のせいだろうか。
それに後ろに回した両手、何を持っているのやら。この線で少し攻めてみるか……
「そういや、今日はコミック・モッフの発売日だ、って鮫島がはしゃいでたな」
「……そう」
「ファンとしては、発売日に買いたいのが当然の心理なのかな」
「……人によるんじゃないかしら」
ふむ、当たり障りの無い返答だ。しかし、この話題から逃げたがっているような印象。
少し別方向から攻めてみて様子を……
「俺も部長やってるから、部員の言動には気を配らなきゃいけないんだよな」
「それは良い心掛けね」
「まあ一年生部員も落ち着いたし、安心して秋季大会に臨めるって訳だ」
「そう、せいぜいがんばって」
少し安心したか?きっと、ここからが見ものだぞ。
「鮫島の奴、お前の事が気になるみたいだったぜ?」
「……それで?」
「お前ら、良いカップルになれるかもな」
「なっ何言ってんのよ?」
「まあ似たもの同士って奴だな」
「っどっどこが似てるって言うのよ!」
思ったとおり、安心した所へ放り込んだ球がストライクだったらしい。
ここまで慌てるか。しかし後ろに持った荷物をこちらに見せないとは、良く訓練された奴だ。
あまり追い詰めるのも可哀想だから、この辺で手を緩めるか。
「ま、風紀委員長も周りに気を配る事だな」
「……いつもやってるわよ」
「それじゃ、今度の予算委員会、またよろしく」
雨宮は心の中で小躍りしていた。
どうやら風紀委員長は他人には知られたくない趣味を持っているらしい。
その事を知っているらしい相手に対し、どこまで強気になれるかな……?
これはますます大会で良い成績を収めなければならんな。
587
:
名無しさん@避難中
:2010/09/30(木) 00:50:31 ID:9NIv.WY20
―― ある晴れた秋の日の放課後、佳望学園の一室で開かれた会議。
四半期ごとに行なわれる、部活動費に関する小委員会である。
この会議には、風紀委員や教師陣からも数名がメンバーとして参加していた。
「……それでは次、漕艇部ですね。代表者は」
「はい、いつも通り部長の雨宮です」
今回提出された要望書は次のようなものだった。
1.漕艇部が屋内トレーニング場を使用する時間を多めに割り当ててもらいたい
2.部員の体調管理に関して、学校側の協力を願いたい。ある程度の費用を補助できないか
3.部室のロッカーがかなり錆びているので、新しいものと入れ替えたい
4.新たに屋外用の高機能保温服を導入したいが、その費用の一部を学校に補助してもらいたい
この要望に対し、委員会のメンバーとの質疑応答が始まった。要望が認められるかどうかは
会議の数日後に返答が来るのだが、雨宮には目的のものを手に入れる自信があった。
「第2項に部員の体調管理に関する協力とありますが、具体的には」
「主に屋内の暖房です。ご存知の通り、我が部は寒さに弱いメンバーが多いものですから」
「では、なぜ暖房と書かないのですか?」
「それに、この希望額は何です。温室でも作るんですか?」
「そんな贅沢は言いませんよ。他にも体調管理のための諸経費を見込んであります」
「しかし要望の別項には“高機能保温服の購入補助”といったものが見られますね」
「部員の体調管理とは別なのですか?明確な説明をお願いします」
「それは屋外用の保温服です。屋内練習での体調管理とは分けておきました」
―― その理由を尋ねられた雨宮は説明した。
これまで冬場は厚着をして屋外練習をしているが、ボートを漕ぐような激しい動きをするのが
難しい事。問題の保温服は宇宙用素材を使っているため薄手で軽くて動きやすいが、
高価である事。従って部員全員分の保温服を用意するのは難しいであろう事。
よって、冬場は屋外練習所時間を減らし、屋内トレーニング場の器具を使った体力作りと
部室小屋内での練習を主に行う計画である事。
そこで、第1項ではトレーニング場の使用時間の割り当てを望んだ事。
その他にも部室小屋の屋内環境を整えるのが重要であり、それを第2項に盛り込んだ事。
そして屋内練習での要望に関する第2項を優先し、保温服に関しては別項とした事。
彼の説明には説得力があり、委員会のメンバーも一応納得した様子ではあった。
588
:
名無しさん@避難中
:2010/09/30(木) 00:51:35 ID:9NIv.WY20
「……言いたい事はだいたい分かりました」
「では問題の第2項ですが、内訳を」
「まあ大部分は空調費ですね。我々の場合は湿度も重要ですから、その分の費用も見込んで」
「部室にエアコンと加湿器を付けろ、という事ですか?」
「まあそういう事です。夏の暑さが苦手な部員は少ないですから、ストーブでも構いませんよ。
. できれば温度20℃以上、湿度75〜80%は欲しいですね」
「それから?」
「あと水分補給も欠かせませんね、我々の場合は。秋季大会の事は覚えて頂いてるでしょうか?」
「……団体で4位入賞、部門別で優勝と3位がそれぞれ一つ、でしたね」
「この好成績も選手の体調管理、特に水分補給で妥協しなかったからこそだと、私は考えています」
「では部活動費の内、水分補給に関する予算はどの程度を見込んでいるのですか?」
「まあ、全体の1割から2割ってところでしょうか。何しろ気候による変動が大きいもので」
「その他には」
「ちょっと汚い話で恐縮なんですが、実は部室小屋のトイレの修繕費用なんかも含まれています。
. 換気扇が壊れてしまったので、その交換費用。あと配管の水漏れ修理費用なんかですね」
「……あちこち壊れているみたいですねえ」
「そりゃまあ、あの部室小屋も相当古いですから。この際一緒に直しておきたいな、と。
. それに我々の場合、微量のアンモニアでも皮膚の炎症を起こすには充分ですので」
「検討しておきましょう」
「ところで秋季大会での水分補給についてなんですが、特に重要な点g」
そのとき、部屋の反対側から声が挙がった。
「あんまり無茶な要望は考えもんどすぇ?」
「……あ、ああ新聞部の烏丸部長ですか」
「あんさんにも色々と考えはおありでっしゃろうけど、悪い事だけは考えたらあきまへん」
「悪い事、ですか?」
「良からぬ企み事とかは、どないに隠そうかてバレてしまうのが世の常」
「ええ、まったくで」
「そないな企み事があったら、この烏丸京子が見逃しまへんからなぁ」
「……ええ、分かってますとも」
そう、彼は忘れていた。神出鬼没の天駆ける黒い影の事を……
その日の放課後もだいぶ遅くなった頃、部室に現れた雨宮部長の顔はいつになく青かったという。
……まあ元から青緑色なんだが。
589
:
名無しさん@避難中
:2010/09/30(木) 00:53:23 ID:9NIv.WY20
その後の通知によると、漕艇部の屋内トレーニング場の使用時間は確保された。
もちろん暖房も使える。これで暖かい室内で体力作りに励める訳だ。
部室小屋のトイレも修繕され、臭う事はなくなった。錆びたロッカーはペンキを塗り直され、
蝶番には油も差された。見た目には新品そのものである。
部室の一角にはダルマストーブが設置された。もちろん燃料は学校側が用意してくれる。
冬になればストーブの上でヤカンが湯気を立ち上らせ、部室内の湿度を上げる事だろう。
さらに、壁には良く目立つ温湿度計が掛けられた。これで部員の体調管理も大丈夫である。
部活動費に関しては、いつものように増額は認められず。
むろん高価な保温服など導入できるはずもなく、今年も着膨れした部員が目立ち始めた。
戦略物資の確保のため龍川大学に泣きながら足繁く通う彼らの姿は、当面消えそうにない。
590
:
名無しさん@避難中
:2010/09/30(木) 00:55:57 ID:9NIv.WY20
以上投下終了。リオさんと烏丸部長をお借りしました。
どこか変なところがあったら、見なかったことにしておいて下さい……
大気湿度低下→皮膚からの水分蒸発量増加→体温低下のコンボは最強。
いっそ冬場は電熱服でも着せるべきか……
あと、「戦略物資」の価格は山小屋のソフトドリンクくらいを想定してます。
今はヘリで運ぶのがほとんどだけど、昔は山小屋まで100kg近くの物資を背負って
運び上げる専門職があったとか。それに比べれば雨宮部長の背負った36kgなんて軽い……よね?
591
:
名無しさん@避難中
:2010/10/01(金) 08:51:03 ID:lW4IV4CYO
虫さん大変だけど魚さんたちもっと大変だなオイ
会議とかすげーリアルだ
592
:
名無しさん@避難中
:2010/10/09(土) 13:11:26 ID:JNKmpIDQO
今VIPのケモナースレで本スレが晒されてる…
杞憂で終わるといいけど件のスレがまとめられると嵐が来るかもしれない
というわけで今からスルー力の強化を推奨します
593
:
名無しさん@避難中
:2010/10/09(土) 23:42:46 ID:vt/4CwI60
http://loda.jp/mitemite/?id=1454.jpg
また、描いてみた。
594
:
名無しさん@避難中
:2010/10/10(日) 17:31:59 ID:oYtmbv9Y0
何これ素敵
何やってんのさ白先生ww
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板