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獣人総合スレ 避難所

566名無しさん@避難中:2010/09/10(金) 05:31:51 ID:KoVNe6eQ0
「……この川は昔、河川改良工事で大きく流れを変えられたんですよ」
「はあ」
「三面コンクリート張りのそれは、まるで巨大な排水溝のようでした」

まるで独り言のように、要石先生は話し始めた。

「ところが後になって、自然の回復という号令の下、川を固めていたコンクリートが除かれた」
「はい」
「洪水防止のため築堤は残りましたが、ひとが手を入れるのは最小限に止められたんです」
「そんな話を聞いたことはあります…」

確か、今から半世紀ほど前の話だと学生の頃に聞いたような……

「それから時間は経ちましたが、まだまだ先は長いし、それでも完全に元に戻る事は無いでしょう」
「どうして…ですか?」
「ひとの生活がありますからね、どこかで折り合いを付けなければいけません」
「いちど失ってしまったものは、取り戻す事ができないんですね……」

泊瀬谷先生が少し悲しそうにつぶやく。また風が吹いた。柳の葉が音を立てる。


「それでもね、泊瀬谷先生。まだまだ先は長いんですよ」
「え…どういう事ですか?」
「自然が止まる事はありません。あと何万年かしたら、ここは地層の中ですよ」
「はあ…」
「私たちは“未来の地層”の数ミリメートル、その中に立っているんです」
「未来の地層……」
「その頃には私たちの学校はどうなっているんでしょうね?何の痕跡も残っていないのか、
 それとも過去の遺跡として発掘されているか、あるいは数万年後も立派に残っているのか」
「…それを目にするのは、どんなひと達なんでしょうね」
「もちろん“人知れず埋れたまま”という事もありえますよ?」
「あら怖い」
「一つだけ確かな事は、私たちの力なんて自分で思っているよりもちっぽけなものだ、って事です」
「…はい」
「川は時間を大地に刻んでいくんです。私たちが何かしたところで、全てを消し去れる訳じゃありません」
「すごくスケールの大きいお話ですね……」
「ははは、百武先生の活動領域に比べれば可愛いもんですよ」

少し強く風が吹き抜ける。


 エアコンの効いた室内とは違う涼しさに、泊瀬谷先生は要石先生の今の気持ちが
少しだけ分かったような気がした。塩素で清潔に保たれた私たちのプールよりも
太古の昔から母なる大地を流れ続けているこの川を、要石先生が愛している理由が。


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