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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部
571
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/11(火) 12:26:12
復帰早々時間が取れなくなってしまったので、
おまけ更新のみとします。
オマケ更新「マーチャンvs機械兵」
マーチャン「覚えたよ。」
ハル「ゲゲェー!マーチャンのヤツ、機械の壊し方だけじゃなくて修理方法と組み立て方法まで覚えてるーー!!
しかも新しく作った機械兵を味方につけてるーー!!!」
マーチャン「行くのよ!田辺!加賀!佐々木!」
ハル「いやいやいや、さっきジャスミン、クレマチス、ミモザって名付けてたじゃん。」
リカコ「(^o^)?」
572
:
名無し募集中。。。
:2016/10/11(火) 15:26:32
マーガレット親衛隊w
復帰早々お疲れ様です。気長にお待ちしております。
573
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/12(水) 12:56:26
「あ、君たちがアンジュ王国の番長?話は聞いてるよ〜
クマイチャンを苦戦させたり、マイミの特訓に耐えたりしたんだってね……なかなかやるじゃん。」
チナミが話しているのは先日の選挙戦でのことだ。
確かに言っていることに間違いは無いのだが、少なからず語弊もある。
クマイチャンを困惑させはしたものの倒しきることは出来なかったし、
マイミともガチの決闘をしていたら今ごろ命は無かったはずだ。
つまりは番長の力を持ってしても食卓の騎士を倒した実績はゼロだということ。
それほどまでに困難なことを彼女らは行おうとしているのである。
そんな中で、最も若いリカコ・シッツレイの様子がおかしくなってきた。
表情はグシャグシャになっているし、過呼吸になったように息が乱れている。
伝説の存在の1人と戦わねばならない状況に押し潰されたのか、今にも泣き出してしまいそうだ。
「うっ……ぐっ……」
そんなリカコの背中をサヤシが優しく撫でる。
敵の恐ろしさを知っているサヤシだからこそ、今のリカコに暖かく接することが出来るのだろう。
「落ち着くんじゃ。大丈夫。君の先輩たちはとても強い。」
リカコとサヤシの数歩前では、カナナンとリナプーとメイの3人が凛とした顔で立ち構えていた。
3人が3人とも、先輩であるマロ・テスクから教わった化粧を施している。
ガリ勉タイプ、道端タイプ、ヤンキータイプ、これらの化粧は彼女らの持つ潜在能力を更に引き出すことが出来るのである。
そんなリナプーがリカコの方をチラリと向いて、低めの声で言い放った。
その声色にはいつものような気だるさは感じられなかった。
「リカコ、"カクゴして"」
その一言にリナプーは以下のような思いを込めていた。
『
覚悟が無いならお止しなさい。(機械では無いと)生身の女子には敵わない。
経験不足なんて問題ない。勇気を見せて欲しいだけ。
完全無欠なんて関係ない。傷だらけカッコイイでしょ。
真剣なら痛いくらいでもいいわ。
正々堂々とやりましょ。怖くて当たり前でしょ。
負ける気は無いわ。でも期待してるわ。
君の声聞かせて。
』
その思いに応えるように、リカコは涙を手で拭いながら声を発した。
「泣いて……無いし!」
574
:
名無し募集中。。。
:2016/10/13(木) 11:29:28
"カクゴして"か…アンジュルムは良曲揃いだなぁ〜次はどの曲使うのか楽しみ♪
575
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/13(木) 12:46:18
番長らの覚悟も決まって、さぁ戦おうと言ったその時
不思議なことが起こった。
最大限に警戒しているはずのメイの顔面に向かってチナミが手を伸ばしたかと思えば、
いとも簡単に顔に装着されたガラスの仮面を奪い取ってしまったのだ。
「これが君の武器か〜。ちょっと見せてよ!」
「え……!?」
その略奪行為があまりにも自然過ぎたため、メイだけでなく他の番長までも反応することが出来なかった。
このような現象を起こした秘密はチナミの手脚の長さにある。
クマイチャン程では無いにせよ、チナミの体格はかなり恵まれている。
一歩の距離が常人より長いし、手を伸ばせば思ったよりも前に届く。
ゆえに、大袈裟なモーション無しで大きな行動をとることが出来るのである。
だからこそメイは自身の仮面が盗られることに対して処置することが出来なかった。
「透き通ってて綺麗なガラスで出来てるね!
これを着けていれば演技力が上がる……んだったっけ?
凄いなぁ。きっと私が着けたところで何にも変わらないんだろうなぁ……
でも、ちょっと力を加えただけで割れちゃいそう……」
「か、返して!」
「あははは、心配しなくてもすぐ返すよ。ほら!」
そう言うとチナミはメイに対してポイと投げ放った。
慌ててキャッチしてガラスの仮面の状態を確認するメイだったが、
そこに損傷のようなものはまるで見当たらなかった。
どうやらチナミは本当にただ見たかっただけのようだ。
「"仮面"、"ソロバン"、"犬"、それと"石鹸"か。
面白いよね。そんなのが本当に武器になっちゃうんだ。
今度はその武器を使っているところを間近で見せてよ!
一通り見終わって満足したら、1つ残らず壊してあげるからさ……」
576
:
名無し募集中。。。
:2016/10/13(木) 21:00:23
チナミが満面の笑顔で「壊してあげるからさ」って言ってる姿想像して恐怖を覚えた…
577
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/14(金) 12:52:05
武器を壊す、と言った発言に一同はピクリとした。
おかしな武器とは言っても長年使用しているために愛着は人一倍感じている。
その愛用品を破壊されるのかもしれないのだなら穏やかではいられないだろう。
特にリナプーの愛犬ププとクランは生物だ。
壊すとは一体どういうことなのか……想像するだけで辛くなってくる。
だが、ここで尻尾を巻いて逃げ出すワケにはいかない。
「お望み通り見せてやろうやないか。アンジュ王国の武器をなぁ!」
カナナンが指をパチンと鳴らすのと同時に、リカコがバケツ一杯分の量に相当する石鹸水をチナミにぶっかけた。
チナミだけでなく、その両腕に装着された筒状の大砲までビショビショだ。
「なんだこれ!くぅ〜〜、目が痛い!」
この攻撃を避けられてしまったら幸先悪かったが、幸いにもチナミはまるで避けようとしていなかった。
武器性能を確認したいという好奇心からか、それとも格下相手には絶対負けないという自信からか、
そもそも攻撃を回避するつもりが無いように見えている。
番長たちのプライドが傷つかないと言えば嘘になるが、今はその慢心につけ込むしか道はない。
「石鹸水なんやからそりゃ痛いでしょう……そんな状態でリナプーの姿を追えますか?……」
「うわ……クマイチャンの言ってた通りだ……リナプーも、犬も、全然見えない……」
リナプーとププ、クランは暗示効果を利用して自らの姿を非常に見えにくくした。
これで透明化というアドバンテージを活かして優位に立ち回ることが出来る。
もっとも、食卓の騎士相手にはそれだけでは足りないだろう。
「メイ、頼むで!」
「任せて……全身全霊の演技を見せつけてあげるんだから。」
メイ・オールウェーズコーダーは勇敢にもチナミに向かって突撃していった。
ここ最近の彼女の勝ち筋と言えば、過去に見た食卓の騎士をほんの一瞬だけ真似る「1秒演技」を繰り出すことであったが、
シミハムが周囲一帯のオーラを無とする以上、その効果は薄いと考えている。
ならばメイは更なる奥の手を見せるのみ。
キャスト総勢10名、感動のスペクタル超大作。
メイの必殺技「1人ミュージカル」が幕を開ける。
578
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/15(土) 11:41:22
「うーん……やっぱりここはちゃんとしなきゃダメなんだろなぁ……」
チナミは右腕に着けたバズーカの発射口を向かってくるメイの腹に合わせた。
火薬の爆発力によって発射される砲弾の威力は凄まじく、
フルアーマーのカノンをたった4発で倒した実績だってある。
生身の人間が直接受ければ死もあり得るが、
ヤンキータイプのメイの我慢強さはマイミのラッシュにも耐えられる程であると過去にチナミは聞いていた。
「1発くらいが丁度いいのかな? もっとずっと見ていたかったけど、しょうがないよね。」
開いていた手のひらをギュッと閉じる。これが砲弾発射のトリガーとなっている。
たったそれだけのお手軽操作で凶悪な砲弾が射出されるような仕組みになっているのだ。
これでもうメイはリタイア……と思われたが、
一向に弾は発射されない。
何かしらのトラブルが発生していることにチナミはすぐに気づいた。
「あ!さっき水をぶっかけられた時に火薬が湿気っちゃったのかぁ!これはヤバい!」
答えはチナミの思った通りだ。
リカコが多量の石鹸水をかけたことによって銃火器をダメにしたのである。
これでチナミは武器のメンテナンスを行うか、あるいは肉弾戦に応じるしかなくなる。
どちらにせよ一時的に戦力が大きくダウンすることは確定だろう。
となればメイにもチャンスが生じてくる。
しかしメイ・オールウェーズコーダーは番長の中では長身の部類に入ると言え、
体躯に恵まれたチナミから見たら小柄な少女に過ぎない。
長い脚によって繰り出される強烈なキックでも当てれば簡単にすっ転んでしまうに違いない。
そう考えたチナミは、突進してくるメイのお腹につま先をぶち当てた。
その一撃は全くブレれこともなく、クリーンヒットする。
「あれれ……なーんか、話と違うんだけど……」
結論から言うと、メイはチナミのキックに耐えていた。
それはまぁ良い。 ヤンキータイプのメイの根性ならそう言うこともあるかもしれない。
だが、話に聞いていた限りでは
メイがマイミのパンチを我慢していた時の表情はとても苦しそうなものだったはずだ。
だというのに今の彼女はそのような顔を全くしていない。
まるで、痛みそのものを感じていないような無表情だ。
サイボーグのように無痛状態になっているのだろうか。
579
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/17(月) 12:55:35
メイがチナミを驚かせたのは耐久力だけではなかった。
2人の身長差から考えるとチナミが攻撃を受ける可能性があるのは脚部から胸部までの範囲内。
ゆえに頭部をガードする意識は持たなくても問題はないはず。
そう思っていた矢先にカナナンが叫び始めたのだ。
「跳べ!!」
仲間の指示が来るのと同時にメイは地面を強く蹴って跳び上がった。
そしてカンフーでもしているかのような雄叫びをあげてチナミの顔面を蹴っ飛ばしたのである。
「ほぁちゃあああ!!!」
「!?……痛ったぁ〜〜〜い!!」
いくら食卓の騎士でも、ノーガードで顔を蹴られたら痛くてしょうがない。
白兵戦に特化したスキルを持ち合わせていないチナミならなおさらだ。
だが、この一撃でチナミはやっと理解することが出来た。
メイ・オールウェーズコーダーの必殺技「1人ミュージカル」の全貌を把握したのだ。
(えっと、このメイって子は他の戦士の能力をコピーするのを得意としていたはず。
最初に無表情でキックに耐えてたのは、きっとマナカちゃんが言ってたアレだ。
サイボーグのように痛みを無くしちゃうカリンをマネしたんだ。
で、その次のアチャーってのはサユキの自己流カンフーだよね。間違いない。)
チナミの中で全てが繋がった。
「1人ミュージカル」とは複数人の演技を同時に行う技なのだ。
おそらくは小技程度しか連結できないのであろうが、それでもバリエーションの広さを考えると恐ろしい。
(う〜〜〜ん……いったい何人分まで同時に演技出来るっていうの?
まさか100人とか言わないよね?だったら末恐ろしすぎるんだけど……)
チナミが体勢を整えるよりも早く、メイは自分の顔につけていたガラスの仮面を取り外していた。
それでは演技力が落ちてしまうのではないかと思うかもしれないが、ご心配は要らない。
これも演技に必要な小道具なのである。
「光を……集める!!」
「ギャ!眩しい!」
メイはオダ・プロジドリがやったように、ガラスの仮面に太陽光を集めて反射させた。
その矛先はもちろんチナミの目だ。
いくら太陽のオーラを持つチナミであろうと、日光から目を守る術は持ち合わせていなかったようだ。
ここまでうまくいっている事を確信したカナナンは、次の石鹸を準備していたリカコに指示を出す。
「リカコ! 今がチャンスや。 メイと協力して思いっきりスベらしたれ!!」
「はい\(^o^)/」
580
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/18(火) 02:40:39
℃-uteの新曲、夢幻クライマックスいい曲ですね。
タイトルも「ムゲン魂」と「クライマックスフォーム」を合わせたようでいかにも最強フォームっぽいです。
……仮面ライダーイクタの続編は生田が在籍しているうちに書けるのでしょうか
581
:
名無し募集中。。。
:2016/10/18(火) 11:03:54
流石に卒業しちゃったら難しいなぁ…仮面ライダーイクタも読みたい!でもマーサー王も続いて欲しい…わがままな読者でごめんなさいね♪
582
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/18(火) 12:59:17
配役をアユミンに変えたメイは強烈なスライディングで地面をツルツルに均してしまった。
その一帯にリカコが石鹸水を流し込むものだから、チナミはもうまともには立っていられない。
生まれたての子鹿のようにプルプル震えながら自立するのがやっとだ。
それに対して、メイはウィンタースポーツの魔法を使用可能なエリポンになりきる事で
このスベりやすい地面でも耐えることの出来る安定感を確保していた。
メイの演技の恐ろしいのは、過去にエリポンがウィンタースポーツをやっているところを見たことがないのに演じているところにある。
「エリポンならこれくらいは出来るだろう」とイメージして、それを再現しているのだ。
女優には想像力も必要ということなのだろう。
「仕上げや!これを使え!!」
カナナンはメイに対して2つのソロバンと、1つの鉄球を投げつけた。
前者のソロバンはカナナン本人が愛用しているものであり、鉄球は同期タケから預かっている代物だ。
これによりメイは相手が強大な存在でも通用する攻撃手段を取ることができるようになる。
「まさか、タケとカナナンの演技を同時に?……」
「いいえ、ダブルキャストじゃまだ足りない……これから魅せるはトリプルキャスト!!!」
両足の裏にソロバンをセットしたメイは、更に自身の太ももにグググッと力を入れ始めた。
この挙動はモーニング帝国現帝王フクが見せた「フク・ダッシュ」。
ただでさえ高速なスケート移動に、ダッシュによる爆発的な加速力まで加えようとしているのである。
そして、そこからなる鉄球の投球は165km/hやそこらじゃ済まない域に達することとなる。
まさに爆速。強者が何重にも重なったからこそこの威力が出せたのだ。
……しかし、それでもチナミには届かなかった。
「あぶな〜〜〜〜い!ギリギリ間に合ったぁ!!」
なんとチナミは素手の右手で豪速球をキャッチしてみせたのである。
純粋な戦闘タイプではないとは言え、やはり食卓の騎士。
これくらいは出来て当然といったところだろうか。
だが、メイの表情に曇りはなかった。
「さすがねカナナン。」
メイが投球したタイミングから少し遅れて、カナナンも綺麗なフォームで鉄球をチナミに投げつけていた。
それもチナミがよろめく位置を計算して、確実に命中するように仕向けていたのである。
その結果として見事チナミに当てることができた。
ただし、その当たった箇所はチナミの左の手のひらだ。
「これも危なかった……よく反応できたなー私……」
何度も言うが、やはりチナミは食卓の騎士。
カナナンとメイ、リカコの3人の力を持ってしても両手しか塞ぐことが出来なかったというわけだ。
583
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/19(水) 12:52:40
メイとカナナンの鉄球を受け止めたチナミの両手は、現在どちらも塞がっている。
そしてボールを放す間も無く、両足までも封じられることとなる。
今まさに、透明な二頭の獣に足首を噛まれてしまったのだ。
「あ!!……」
何故か忘却していたもう1人の番長の存在を思い出すよりも速く、
背後から刃物のように鋭い殺気が発せられるのをチナミは感じた。
今すぐこの場から去らないとソイツの鋭利な牙に噛まれてしまうと、本能が警告しているのがよく伝わってくる。
だが既に退路は断たれていた。
両手も両足も自由に動かせないために
いくら頭に警戒アラームが鳴り響こうとも、
いくら長年の勘が警鐘を鳴らし続けようとも、
相手の必殺技を甘んじて受け止めることしか出来なかったのだ。
「"Back Warner(後ろの警告者)"」
誰にも聞こえないような小さい声でリナプー・コワオールドは技名を呟いた。
そしてその後は間髪入れずに、チナミの背中を容赦なく喰いちぎるのであった。
いくらリナプーが存在を希薄に出来るとは言え、熟練の戦士相手に背後をとることは難しい。
それを可能にさせてくれたのが、味方の存在だ。
カナナンが、メイが、そしてリカコが目一杯目立ってくれたからこそ、
リナプーは相対的に影を薄くすることが出来たのである。
もちろん優れたその実力は埋まることなく、だ。
「やったなリナプー!!」
見事に決めてくれたリナプーを見て、他の番長らは歓喜した。
大技は確実にヒットしている。そして、背を千切られたチナミの出血量は尋常ではない。
ここまで来れば勝利は目前だ。
よほどの大番狂わせが無い限りは勝てるだろうとカナナン達は信じていた。
せっかくだからここで断言してしまおう。この戦いに番狂わせは存在しない!
壮大などんでん返しも、
圧巻のどんでん返しも、
運命の大逆転劇も、ここからは何もかも発生しないのだ!
全ては最初の筋書き通り。
「あ〜〜、やっぱりミーティングで聞いた通りだ。」
スッと姿勢を伸ばし、平気な顔をするチナミを見た番長一同は固まってしまった。
確かにリナプーの必殺技は決まったはず。
ならば何故にチナミはまだ立っていられるのか?
「"帝国剣士、番長、KASTは思ったよりも強い。"……うんうんそうだよね。身をもって感じたよ。」
言葉を続けながら、チナミはリナプーの頭を鷲掴みにした。
今のリナプーには返り血がベットリついているため容易に視認可能になっているのだが、
そんなことよりもリナプーが恐怖で少しも動けていないことの方が深刻だ。
「"思ったよりも強い。でも、想像を超えるほどじゃあ無い。"……全くその通りだ。」
チナミは力を下方向に入れて、リナプーを地面に一気に叩きつけた。
地面のコンディションが著しく滑りやすくなっているため、リナプーは少しも踏ん張ることが出来ず、
無抵抗で頭から落ちてしまう。
「よしっ! 一転び目!!」
他の番長らの声量はすっかり失われていた。
さっきまで優勢だったと言うのに、急に逆転されてしまったのだから無理もないだろう。
いや、厳密に言えばこれは逆転などではない。
そもそも番長らが優勢になったタイミングなど、一度も存在していないのだから。
「よーし、あと三転びいくよー!」
もう一度宣言しよう。
この戦いに番狂わせは存在しない。
584
:
名無し募集中。。。
:2016/10/19(水) 22:58:35
壮大な逆ドンデンガエシ…しかもこの後残り六転びさせられるのか…恐
最後にあの曲がきてくれる事を祈ろう。。。
585
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/21(金) 12:57:24
「おっと、その前に……」
チナミはその場でしゃがみこみ、リナプーに駆け寄るププとクランの頭をそっと撫でた。
その瞬間から2匹の犬はひどく震えて、立っていられなくなってしまう。
「君たちは武器なんだよね?……だったら足止めなんかに使われるのはもったいないなぁ。
ご主人様が目を覚ましたら教えてあげなよ。自分たちをもっと有効活用した方がいいってさ!」
何やら助言のようなことを言うチナミだったが、2匹は既に地に転がっていた。
お腹を敵に見せると言う「降伏」のポーズをとっているのである。
何をしようが敵わないことを動物の勘で理解し、戦意喪失したのだろう。
「あ、壊れちゃったか、じゃあもういいや。」
続いてチナミは残りの番長3人の方を見た。
今すぐにでもリナプーと同じ目に遭わせるつもりなのかもしれない。
だがチナミと番長らの間にはツルツルに磨かれた地面がある。
この位置関係を維持している限りはそう簡単には追いつかれないだろう。
「やっぱこの地面邪魔だなぁ〜、よし!吹き飛ばしちゃお!!」
「「「!?」」」
チナミは両腕に装着していた小型大砲を取り外したかと思えば、
携帯用の工具を用いて神業の如きスピードで分解し始めた。
それもただ分解しているだけではない。
リカコにぶっかけられた石鹸水をふき取ったり、不具合の生じた箇所を補修したり
と言った作業をほんの10秒で完了させてしまったのである。
しかもこれから放つ必殺技のためにカスタマイズしたというオマケ付きでだ。
「大爆発(オードン)"派生・ピストンベリーズ"!!!」
小型大砲の両筒から合計11発もの炎弾が放たれた。
1発1発がサッカーボールほどの大きさを誇る火炎はたちまち地面を焼き払い、
あっという間に更地にしてしまった。
もちろんリカコの泡も完全に蒸発したため、もう滑ることはない。
「ば、化け物……」
兵器の威力もさることながら、修理とモデルチェンジを短時間で終えてしまったことが人間離れし過ぎている。
身体能力だけ見ても怪物。
武器を使えばさらに怪物。
どのようにすれば倒せるのか、もはや分からなくなってしまった。
586
:
名無し募集中。。。
:2016/10/22(土) 10:20:40
ほぅ、イナイレ3までチェック済みとは流石ですな
587
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/22(土) 23:50:09
こうなったらもうチナミの独壇場だ。
たった数歩だけ脚を前に進めただけで、番長らに手が届くところにまで来てしまった。
もはや逃げても無駄。どれだけ遠くに行っても追いつかれるに違いない。
もっとも、番長3人は元より交戦する心構えが出来ていた。
カナナンにはソロバンがある。
メイにはガラスの仮面がある。
リカコには固形石鹸がある。
リナプーも含めて番長のほとんどが過去に「変わってるね」と嘲笑われ、
「よく言われるの」そっと笑い返した経験があると言う。
心の中じゃ牙を剥いて、だ。
普通と違った所があるならいっそ磨いて武器に変えてやればいい。
試練は尽きないが動き出さねば変わらないそれが人生だ!
「メイ!リカコ!ここからは気合い入れて……」
「あ、ちょっと借りるよ。」
掛け声を出そうとしたカナナンの出鼻をくじくように、チナミはメイとリカコの武器を取り上げた。
戦士の命よりも大事な武器を、いとも簡単に奪い取ってしまったのである。
特にメイは前にもガラスの仮面を取られた経験があるため別段警戒していたのだが、
そんな厳重体制も御構い無しに、チナミは友人から鉛筆でも借りるかのように掴み取っている。
また今回もすぐに返してくれれば嬉しいのだが、
残念なことにそうはいかなかった。
「可哀想とは思うけどさ、壊させてもらうよ。」
右手に持ったガラスの仮面と、左手に持った固形石鹸を、
チナミは勢いよく硬い地面に叩きつけた。
通常の人間のそれを遥かに超えたスペックの彼女がそんなことをするものだから
ガラスの仮面も固形石鹸も粉々になってしまった。
比喩表現とかではなく、衝撃力が強すぎるあまり本当に粉になったのである。
その光景を目の当たりにしたメイとリカコはショックを隠せないようだ。
「あ、ああ……」
しかしいくら武器が破壊されたとは言ってもまったく戦えないという訳では無いだろう。
ガラスの仮面をつけると演技力が上がるというのはつまるところ思い込みであるため、物理的な戦闘能力は変わらないはずだし、
リカコに至ってはカバンの中にまだたくさんの固形石鹸を詰め込んでいる。
要するに何も心配することは無いのである。
しかし、彼女らは簡単に割り切ることは出来なかった。
自らの信念とも言える武器をたった一瞬で砕かれた映像が目に焼き付いて離れない。
もうドン底に堕ちたような気分だ。
故にメイとリカコの耳にはカナナンの警告が入らず、
チナミに強くスネを蹴られて転倒してしまった。
起き上がる気力は、もはや無い。
「よーし、二転び目と三転び目!」
「メイ!!リカコ!!!……嘘やろ……」
588
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/22(土) 23:52:25
イナズマイレブンはゲームまではやりませんでしたが、
アニメの方はベリーズの影響もあって結構見てましたね。
589
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/27(木) 13:58:58
「嘘だろ……」
カナナンと同じような発言を、同じように青ざめながらする者が付近に立っていた。
それは天気組の雷の剣士、ハル・チェ・ドゥーだ。
同じく天気組の曇り剣士、マーチャン・エコーチームと共にこの場までやって来ていたのである。
加勢するつもりだったのだが、番長が秒殺されていく様を見て完全に震え上がってしまった。
それでも、苦しむ仲間を見ては黙っていられない。
「か、カナナン!今から助けに……」
「……いや、要らん。むしろ手を出さないで欲しい。」
「へ!?」
救助の要請を出すどころか、ハッキリと拒否の意を示したカナナンにハルは驚いた。
今のカナナンは誰がどう見ても絶体絶命。
要救助者に決まっている。
「おいカナナン!まさか番長が負けたことに責任を感じてそんなこと言ってるんじゃないだろうな!
変な気を使うなよ!ハル達は仲間なんだからさ!!
それともなんだ?ハルとマーチャンが加勢しても意味が無いとか言うんじゃ……」
「違う!!」
"違う"とカナナンは言ったが、実際問題ほとんど違ってはいなかった。
カナナンが責任を感じてチナミの攻撃を引き付けたいと思っているのも事実だし、
ハルとマーチャンの戦力を持ってしてもチナミに対抗できないことだって事実だ。
ただ、カナナンには一点だけ主張したいことがあった。
「手は出さないでいい……その代わりな、一部始終をマーチャンに見て欲しいんや。
全部覚えるまでカナが必死で耐え抜く!……せやからな、その眼で死ぬ気で見て欲しい。」
「!!」
なんとなくだが、ハルにはカナナンの考えが理解できた。
しかしそれを実現するには大きすぎる問題がある。
「カナナン!お前っ……1人で戦えるのかよ!?」
590
:
名無し募集中。。。
:2016/10/28(金) 01:03:05
カナナンカッコいい・・・マーチャンの超記憶がどこまで通じるか
591
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/28(金) 22:09:28
まだ番長が表も裏も含めて6人だった頃。
カナナン、タケ、リナプー、メイの同期4名は死を覚悟するほどに過酷な訓練を受けたことがあった。
「アヤチョにはあなた達がピンクの仏像を壊したって嘘ついておいたから、後は頑張って。」
「「「「え?」」」」
怒り狂う鬼神アヤチョ王を倒す。
それがマロ・テスクの課したミッションだった。
とは言ってもそんな状態のアヤチョとまともに戦えるはずがなく、
たったの一撃でタケがやられ、
二撃目でメイもやられ、
そしてこっそり逃げようとしたリナプーも蹴り飛ばされてしまった。
となればあと数秒で訓練そのものが終わるだろうと思われたが、
なんとカナナンはそこから十数分もアヤチョの猛攻を耐えきったのだ。
とは言ってもモーニングのカノンのように鉄壁の防御力を持ち合わせている訳ではない。
全ての攻撃をギリギリで見切って、死に物狂いで回避したのである。
カナナンの暗算力をもってすれば、初動さえ見ればどこに攻撃が到達するのかを算出することが出来る。
そこで、そろばんローラースケートによる機動力を活かすことでなんとか逃げたというわけだ。
十数分も経てば一撃を受けて倒れた味方は回復するし、
ムラっ気の強いアヤチョ王のチカラも弱まる周期に突入する。
そのタイミングを見極めて一斉攻撃を仕掛けることで番長4名は見事アヤチョに勝利したのだった。
(あの時の感覚を思い出せば……カナは無敵になれる!)
ソロバンを取り上げようとするチナミの長い手を、カナナンは思惑通りに交わした。
その後も近距離では蹴りを、遠距離では砲弾を食らいそうになったが
全て例外無く回避することが出来ている。
「なるほどねー……生半可な攻撃は当たらないってことか……じゃあどうしよっかな。」
カナナンの特性は確かに厄介ではあるが、チナミにはいくらでもやりようがあった。
例えば超高速で放たれる銃弾なら避けられないし、
そもそも周囲の地面ごと爆破してしまえば避ける意味もない。
それでも、チナミはそのような手をとることはしなかった。
その方が彼女にとっては都合が良いのである。
「マーチャン、だっけ?……せっかくだからもっと近くで見ていきなよ。
もっと楽しいモノをたくさん見せてあげるからさ。」
592
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/10/31(月) 12:55:21
「やっ、やぁぁぁ!!」
せっかくチナミが誘ってくれたと言うのに、マーチャンはつれなかった。
ひどく怯えた顔をしながら反対側の方を見ようとしている。
これからその眼で見なくてはならない対象がどれだけ恐ろしい存在なのか、肌で感じ取ったのだろう。
そんなマーチャンの顔をハルがしっかりと掴み、無理矢理にでもチナミの方を向けさせる。
「やだやだやだやだ!ドゥー!やめて!」
「ワガママ言うなよマーチャン……ちゃんと見ないと、カナナンの頑張りが無駄になるだろ!
ハルもここで一緒に見てやるからさ、マーチャンも頑張ってくれよぉ!!」
「ドゥー……」
ここでマーチャンはハルが大粒の涙をボロボロ流していることに初めて気がついた。
彼女だってマーチャン同様に怖くて仕方がないのだ。
リナプー、メイ、そしてリカコのようにいつ自分だって化け物に叩き潰されるのか分かったものではない。
可能であれば今すぐにこの場から立ち去りたいという思いを必死に抑え込んでいるのである。
それを感じたマーチャンは、少しだけ頑張ることを決意した。
「分かったよドゥー……マー、覚える。」
「そうだその意気だ!マーチャンに覚えられないものなんて無いんだからさ!!」
話がまとまったのを見届けてから、チナミはいくつかの工具を取り出した。
そして先ほど見せたような高速の手捌きで自身の小型大砲に手を入れていく。
「よーし、今造るとしたらやっぱりこれだよね……大爆発(オードン)"派生・metamorphose"……なーんちゃって。」
「は?……」
「え?……」
作業完了後に作り上がったものを見たカナナンとハルは、こんな状況だというのに、思わず呆けてしまった。
だって仕方がないじゃないか。
さっきまで小型大砲だったものが「鉄仮面」に変わっていたのだから。
「なっ……それはいったい……どういう……」
小型大砲にチナミが高速で手を加えているところまではギリギリ目視できていた。
だが、完了の瞬間がよく分からない。
いつの間にか鉄仮面に置き換わっていたのである。
もう技術力どうこうではなく、印象としては手品に近かった。
そんな風に呆然とする2人を気にすることなく、チナミは自前の鉄仮面をスチャッと装着する。
「いいでしょ〜。これを装着すると私でも演技力が上がりそうな気がしない?
それにさ、余った部品で"犬用の鉤爪"と"石鹸銃"なんてのも作って見たんだけどさ……マーチャン見てた?」
593
:
名無し募集中。。。
:2016/11/02(水) 00:46:45
春ツアーはノナカ・チェル・マキコマレルの独壇場となるのか…
https://pbs.twimg.com/media/CwKnhl2UAAAnrzR.jpg
594
:
名無し募集中。。。
:2016/11/02(水) 06:44:06
>>593
ごめん『JKニンジャガール』こぶしの舞台だった…が!これはこれでマーサー王的には面白いかもしれないw
595
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/11/02(水) 12:46:13
おおー
なんだか演劇女子部というよりはゲキハロっぽいタイトルですね。
フジー、アヤノなどのメンバーは戦闘スタイルまでカッチリ決めちゃってますが、
ふわっとしているのも何人か居るので、気づけば忍者っぽくなってるかもしれませんね。
ただ、それでも刀や手裏剣を持たせることは無いとは思います。都合上。
更新の時間が取れてないので今回はオマケ更新にします。
オマケ更新「明日やろうはバカやろう」
※アンジュ王国にて
ムロタン「マロさん美味しそうなの食べてますね。なんですかそれ?」
マロ「ナンでもライスでもめちゃ美味しいカレー。」
マロ「カツカレー大盛りにすれば良かった。それでも美味しいわぁ、ここの。」
596
:
名無し募集中。。。
:2016/11/02(水) 23:36:54
たぐっち・れなこ・らっこがまだ出てないんだっけ?たぐっちが○○の術とかいって色々翻弄してくれそう…愛理BDで何か面白いネタあるかなw
597
:
名無し募集中。。。
:2016/11/03(木) 09:16:34
出てる
598
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/11/04(金) 12:54:02
「ふあっ……」
気づけばマーチャンは右の鼻から血を流していた。
あまりにも不可解なチナミの動きに対して、脳が処理しきれなかったのだ。
心では「覚えたい」と願っていたとしても、肝心の頭にかかる負担が大きすぎる。
このまま見続ければマーチャンの脳はパンクしてしまうかもしれない。
「マーチャン!!だ、大丈夫なのか!?」
「だい……じょう……ぶ……」
ただ見ているだけでその眼は虚ろになっている。
誰がどう見ても大丈夫なワケがない。
そんなマーチャンに対してハルがしてやれるのは、自身の袖で鼻血を拭ってやることくらいだった。
「ごめんなマーチャン……無理して欲しくないけど、今は無理をしてくれ……」
「だいじょうぶだってば……」
ハルとマーチャンが話しているうちに、チナミはカナナンに対して飛びかかっていた。
顔には鉄仮面、右手には肉を裂くカギ爪、左手には石鹸水が射出される水鉄砲を構えているため
その姿はとても奇抜だった。赤い人ではないが〜異形〜と言っても良い程だ。
銃撃戦から肉弾戦に切り替えたチナミにカナナンは少し戸惑ったが、
それでもやること自体は変わらない。
(心を乱されたら負けや!敵がどんな武器や姿形で来ようとも、絶対に逃げ切る!)
時間を稼ぐためカナナンはお馴染みのソロバンローラースケートで後方に下がろうとする。
しかし、そのように逃走することはチナミにバレていた。
新武器の銃による石鹸水は、すでに地面にブチまけられている。
(やっぱりアレはリカコと同じ戦法を取るための武器!……す、スベる!!)
599
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/11/04(金) 12:54:59
はい、こぶしファクトリーっぽいような人たちは8人登場してますね。
600
:
名無し募集中。。。
:2016/11/05(土) 17:07:58
また戦士が1人いなくなるようだね
601
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/11/06(日) 09:23:26
カントリーをいつか卒業するのはなんとなく想像できてましたが
まさか芸能界までとは……
あくまで控える、なので
カントリーガールズ、Buono!、そしてBerryz工房の再開が何年後かにあることを期待しますか
602
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/11/25(金) 12:40:47
更新がストップしていてすいません、来週月曜には更新できそうです。
書かなかった理由は熱が冷めたとかではなく単に忙しかったからです。
ハローの情報はちゃんとチェックしてますよ!
ムキダシで向き合っての歌詞は、マーサー王第3部に色々使えそうだなとか思ってます。
603
:
名無し募集中。。。
:2016/11/25(金) 15:42:53
良かった〜ももち引退ショックで書けなくなったのかと…
更新お待ちしてますね〜
604
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/11/28(月) 23:46:14
カナナンは物凄い勢いですっ転んだ。
先ほど一転び、二転び、三転びさせられたリナプー、メイ、リカコの比では無い。
石鹸水で滑りの良くなった地面のせいで、カナナンはお腹を軸にグルグルと超高速でスピンしてしまっている。
それだけ派手に「四転び」させられてしまったのである。
食卓の騎士相手にここまでよく耐えたものだが、
こうも勢いよく転倒すれば気を失うのは必至だろう。
カナナンを含め、アンジュの番長は全滅……ということになる。
「さて、じゃあ次はキミかな。」
カナナンに興味をなくしたチナミは、次の相手としてハル・チェ・ドゥーを指名した。
鋭い爪の先を向けていることからも、その意思は十分に伝わる。
「う……やるしか……ないのか……」
いつもはビビりがちなハルも、ここは覚悟を決めるしかなかった。
本音を言えばマーチャンに代わりに戦ってもらいたいところだが、彼女は今、大事な仕事の真っ最中だ。
覚えるのに十分な時間を稼ぐために、震える足を前に出さねばならない。
「そんなに怖がらなくてもいいよ。潰す時は一瞬だから。」
「……!!!」
この時のハルは、目を剥いて驚いていた。
その表情の変化を恐怖からくるものだとチナミは予測していたが、
実のところはそうではなかった。
ハルは、信じがたい動きをする物体に驚愕していたのである。
その物体は、超高速でスピンしながらチナミの脚に衝突する。
「うわっ!!な、なんなの!?」
後方からいきなりフクラハギをぶっ叩かれたため、チナミはバランスを崩してしまった。
屈強とは言えない細脚の持ち主であるチナミは、
ソイツのインパクトに耐えきれず顔面から地面に突っ込んでいく。
そう、転ばされたのである。
「痛ーーーっ!!なにーーー!?」
鼻を打ったチナミは涙を少し流しながら後ろを振り返った。
新たな相手が不意打ちを食らわせて来たのかと予想をしたが、
その見通しは見事に外れていた。
勢いが弱まるにつれて、その回転物の正体も明らかになる。
「えっ……カナナン?……」
コマのようにグルグル回ってチナミを転ばせたのは、ついさっき戦闘不能になったばかりのカナナンだった。
白目を剥いているため、意識を失っていることは明らかだ。
それではそんな彼女が何故こんな強烈な攻撃を繰り出すことが出来たのか?
その要因はチナミの創り出した石鹸水がリカコのものと相違ないところにあった。
「そっか……再現しすぎちゃったのか。」
チナミの銃から発せられる液体が、リカコが愛用する石鹸水と同等のものであることにカナナンはすぐ気づいていた。
ならばどのようにスベれば、どのように転倒するのかは容易に計算できる。
自身の身体を武器にして、チナミにスピン攻撃をぶつける最適なすっ転び方だって難なく算出できたのである。
「すげぇ……カナナンのヤツ、一矢報いやがった……」
依然、最悪な状況であることは事実だし、
ハルが大ピンチだということは、1ミクロンも変わりゃしない。
事実、今もハル・チェ・ドゥーは震えている。
だが、その震えている箇所は身体や脚などではない。
震えているのは、心だ、
ハルの心は熱く、熱く滾っていた。
敵が強大な存在だろうと、対抗し得ることが出来ると知ったのだ。
605
:
名無し募集中。。。
:2016/11/29(火) 10:59:18
カナナン死して一矢報いるとは…流石だ
ついにヘタレチワワが狂犬に変わるときが来るか!?w
606
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/11/30(水) 13:07:49
「それにしても凄い計算力だなー……」
チナミは起き上がるまでのほんの僅かな時間で石鹸銃を弄くり回し、ソロバンへと作り変えてしまった。
それもカナナンが使用するものよりも桁が多く、且つ軽量に出来ている。
「まぁ、私も円周率の計算なら誰にも負けないんだけどさ、
これを使ったらもっとgenius!になれそうじゃない?そう思うでしょ?」
マジックのように武器を改造する手捌きにはハルも今さら驚かない。
自身の眼でそれを目撃したマーチャンが苦しんでいるのが気掛かりではあるが
介抱してやる余裕も無いのだ。
「……もうおしゃべりは辞めにしませんか」
「ん?」
「決着をつけてやるって言ってるんだよっ!!!」
「……そっか。」
ハルが自身を無理矢理にでも鼓舞しようとしていることが、チナミにはすぐ分かった。
そんな相手をいなすことはとても容易い。
だがそれでは面白く無いし、本来すべきことからも反する。
どうしたものかと考えたところで、とある少女の声が聞こえてきた。
「ハル!私たちも加勢するよ!」
「アユミン!?……あれ、みんなも!?」
気づけばハルの周囲には仲間達が集っていた。
モーニング帝国剣士のエリポン、サヤシ、アユミン、オダだけでなく
KASTのサユキ、カリン、アーリーまでいる。
さっきまで機械兵と戦っていたはずの彼女らが何故ここにいるのか。
その答えは1つしか無かった。
「……全滅させられちゃったか。」
そう、総勢1000体の兵隊は若き戦士らの手によって1つ残らず破壊されてしまったのである。
となれば残るはあと1人。
チナミ本人を叩くのみだ。
「そっかそっか……番長たちもそうだけど、みんな思っていた以上に結構やるんだね。
う〜ん、う〜ん、どうすればいいのかな〜!」
うんうんと唸っていてはいるが、その表情は全く困っているようには見えない。
その後ニカッとした笑顔で結論をすぐに出したのも、はなから悩んでなどいなかった証拠だろう。
「よし!刀狩りだ!」
607
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/12/05(月) 12:54:17
チナミが若い戦士たちと対峙している頃、
キュート+トモと、ベリーズ達は激戦を繰り広げていた。
オーラこそ可視化されなくなったが、ただならぬ気迫は色褪せてはいなかった。
「団長!一気に決めるぞオラアッ!!」
「よぅし!挟み撃ちだな!!」
瞬足のオカールとマイミは瞬き一回ほどの短時間でモモコの前後に陣取って見せた。
奇妙で不可思議なワザばかり使うモモコは後に残すと面倒なので、
早々に潰してやろうとの判断なのである。
いくらモモコが達人でも、達人級2人相手では分が悪い。
だが、こう来るであろうことはベリーズ側も承知の上だった。
「ぬあ゛あ゛あ゛ああっ!!!」
「げっ!クマイチャン!」
モモコの背後、つまりはオカールが到達するであろう地点に向けて
クマイチャンは既に長刀を振り下ろしていたのである。
長い得物ゆえに重量たっぷり。遠心力も十二分にかかっている。
こんな一撃をまともに受けたらどんなヤツだって御陀仏だろう。
「喰らってられっかよ!!」
オカールは落ちてくる長刀に対して、両手に着けたジャマダハルを秒間あたり数十回も叩きつけた。
一撃での威力で負けるなら何十何百何千回も当ててやれば良い。
そしてオカールの回転力ならそれが可能になるのだ。
同様にマイミに向けてもシミハムの重い棍が降りかかっていたが、
腕の先が見えなくなるほどの高速連打で凌いでいる。
破壊力で言えばベリーズ優勢だが、キュートは圧倒的な運動量でカバーしているのである。
しかし、今のマイミとオカールは身に降る攻撃を防ぐのに集中しすぎるあまり隙が生じていた。
そのため本来のターゲットであるモモコに逆に狙われてしまう。
「ガラ空きじゃないの。それじゃ遠慮なく……うっ!」
マイミに何か仕掛けようとしたモモコだったが、瞬時に思い直して中断した。
アイリがこちらを見ていることに気づいたのだ。
「怖っ!……はいはい分かりました。黙ってまーす。」
608
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/12/12(月) 12:58:35
(やっぱり……次元が違う……!)
トモ・フェアリークォーツはひどく疲弊していた。
まだ戦闘開始してから何もしていないというのに、心が疲れきってしまったのだ。
口の中はカラカラだし、目はグルグルと回っている。
弓と矢を掴む手だってさっきから震えっぱなしだ。
これでは弓道家が取るべきとされている「残心」をきちんと行えそうにない。
しかも、トモの心はここから更に乱されることとなる。
「ヒッ!?」
WARNING WARNING WARNING WARNING
トモの頭には未来で起こりうる危機の警報、
すなわちWarning〜未来警報〜がうるさく響いていた。
化け物揃いのベリーズの中でも一目も二目も置かれているミヤビが自身目掛けて一直線に走ってきたものだから
トモのパニックは尋常ではなかった。
(うわ〜〜〜!なんで私なんかのところに!?)
この場にいる戦士の中でトモが最弱だというのは紛れも無い事実。
だが、ミヤビはそんなトモを低く見たりはしていなかった。
ここに居るからにはそれなりの理由があるはず。
そう考えたからこそ最優先に潰すべき対象として選んだのである。
ミヤビの仕込み刀と脇差の切れ味はチェーンソー級。
回避しきれなかった時点で真っ二つにされることも十分ありえる。
トモが死をも覚悟しかけたその時、
モモコのマークについていたはずのアイリがトモを護るように棍棒でミヤビの刃を受け止めた。
「アイリ様!?」
ヒーローの登場にトモはホッとした。
確かにミヤビは実力者。だがアイリだってそれに匹敵する力の持ち主なのだ。
簡単に切り捨てられるようなことは有り得ない。
「ん……今はアイリとやり合うつもりは無いんだけど」
「いやいや、そう簡単にあの子を切らせるわけにはいかないからね。」
「モモコのヤツをフリーにしたとしても守る価値があるってこと?」
「一つ正解、一つは間違い。」
「へぇ?」
「守る価値があるというのは大正解。 そしてモモコがフリーになったというのは……残念大ハズレ。」
609
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/12/13(火) 01:59:50
オマケ更新「未来の剣士」
‐フクが帝王になってから数日後の出来事
ハルナン「マリアって、研修生の中ではトップの実力だったんですよね?」
エリポン「うん、そう聞いてる。」
ハルナン「ということは残りの研修生の実力はそれ以下ということなんでしょうか」
エリポン「そうなるっちゃね……」
ハルナン「だとすると将来が不安ですね……」
フク「ふっふっふ……」
エリポン「なん?どうしたと?」
フク「確かにマリアは成績トップだったけど、肩を並べるくらい凄い子がいるんだよ。」
ハルナン「そうなんですか?初耳です。」
エリポン「ウチらのような外部の人間は研修生には詳しくないけんね……」
フク「マリアは調子に並があるけど、その剣道家は常に安定している感じ。
派手な活躍は耳に入らないだろうけど多くの後輩に慕われているらしいよ。」
ハルナン「剣道家と言いました?ということは、ハルのように竹刀を武器に?……」
フク「ううん、違うよ。」
エリポン「意味が分からん、じゃあ木刀?それとも真剣?……」
フク「それも違う。彼女はね、剣士だけど、剣士じゃないんだ。」
ハルナン・エリポン「???」
フク「まぁ、将来のお楽しみかな」
ハルナン「それ何か月後になるんですかね」
610
:
◆V9ncA8v9YI
:2016/12/13(火) 02:00:09
オマケ更新「未来の剣士」
‐フクが帝王になってから数日後の出来事
ハルナン「マリアって、研修生の中ではトップの実力だったんですよね?」
エリポン「うん、そう聞いてる。」
ハルナン「ということは残りの研修生の実力はそれ以下ということなんでしょうか」
エリポン「そうなるっちゃね……」
ハルナン「だとすると将来が不安ですね……」
フク「ふっふっふ……」
エリポン「なん?どうしたと?」
フク「確かにマリアは成績トップだったけど、肩を並べるくらい凄い子がいるんだよ。」
ハルナン「そうなんですか?初耳です。」
エリポン「ウチらのような外部の人間は研修生には詳しくないけんね……」
フク「マリアは調子に並があるけど、その剣道家は常に安定している感じ。
派手な活躍は耳に入らないだろうけど多くの後輩に慕われているらしいよ。」
ハルナン「剣道家と言いました?ということは、ハルのように竹刀を武器に?……」
フク「ううん、違うよ。」
エリポン「意味が分からん、じゃあ木刀?それとも真剣?……」
フク「それも違う。彼女はね、剣士だけど、剣士じゃないんだ。」
ハルナン・エリポン「???」
フク「まぁ、将来のお楽しみかな」
ハルナン「それ何か月後になるんですかね」
611
:
名無し募集中。。。
:2016/12/13(火) 05:36:30
更新キテター
アイリの発言にワクワクドキドキ!
リアルの世界でもワクワクドキドキ!
612
:
名無し募集中。。。
:2017/01/03(火) 09:46:46
ホント再開何ヶ月後になっちゃうんだろうか?作者さん元気にしてるんだろうか?
613
:
名無し募集中。。。
:2017/01/04(水) 13:01:41
やっとたどり着いたこのスレ
正月で全部読んじまったわ
続きはよ
614
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/01/04(水) 19:53:21
長らく更新できてなくて本当にすいません……
今夜の遅い時間なら書けそうです。
615
:
名無し募集中。。。
:2017/01/04(水) 20:49:51
おお!作者さん生存確認!!お待ちしております
616
:
名無し募集中。。。
:2017/01/04(水) 21:21:10
宣伝不足じゃね
めっちゃ面白いんだけど
617
:
名無し募集中。。。
:2017/01/04(水) 22:51:23
>>616
是非前作も読むことお勧めします
より楽しくなりますよ
作者さんの過去ログ(制作中)
http://hellomatome.html.xdomain.jp/index.html
マーサー王物語まとめサイト(6章まで)
http://ifs.nog.cc/ookami-bc.hp.infoseek.co.jp/txt/kingdom.html
マーサー王物語Wiki(6章〜最終章)
https://www29.atwiki.jp/masao001/sp/pages/62.html
618
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/01/05(木) 04:08:35
「お、マーク外れた?そいじゃ遠慮なく……」
自身がアイリの視線から外れたことに気づいたモモコは、
己の10指に巻き付けられている"糸"をたぐり寄せようとした。
暗器使いであるモモコの現在のマイブームはこの"糸"。
一般的なイメージ通りの「か細く」「頼りない」代物などでは無いことは言うまでもない。
(まずはキュートの脚を奪う。その次は首……と行きたいところだけど、そう簡単には行かないよね。)
その糸は髪の毛よりも細いが、硬度は鉄線以上。
しかも既に辺り一帯の石やら瓦礫やらに結びつけてあるために、
少し引っ張るだけでそれは「罠」にもなり、「凶器」にもなり得るのだ。
モモコはこの場にいる味方や相手のように激しく動いて汗を流す必要などない。
ただ指先をほんの少しばかり動かすだけで十分な攻撃を行うことが出来るのである。
しかし、思惑通りにはなかなか行かなかった。
「確変"派生・秩父鉄道"!!!」
モモコが糸を引くよりも速く、ナカサキが超高速でタックルを仕掛けてきた。
その突進力はまるで汽車そのもの。
確変による身体強化を脚部に集中させたからこそ、この馬力が実現できている。
「ぐっ……!!」
モモコのヒラヒラとした服の中には重量感たっぷりの鎧が隠されているが
それでもナカサキの突撃には不意を打たれ、いくらかのダメージを受けてしまった。
体制を立て直すまではこのまま劣勢が続くのかもと思ったが、
モモコのすぐそばには心強い味方が駆けつけてくれていた。
「ナカサキ!よくもモモを……喰らえ!『ロングライトニングポール"派生・枝(ブランチ)"』!!」
その味方は巨人・クマイチャンだった。
長刀を勢いよく下方向に突き刺し、地面に亀裂を生じさせている。
クマイチャンの愛刀を幹として、枝分かれするかのように次々と地が避けていく。
もはやこの規模の災害は「地割れ」と言うのが相応しいのかもしれない。
これだけ地面が荒れてしまえばナカサキはもうSLの如く走り回ることは出来ないだろう。
「うう……流石クマイチャンね。でもこれで終わりと思わないでよねっ!」
「向こうは派手にやってるね……クマイチャンとナカサキが戦っているんだから、無理ないか。」
「ミヤビ、余所見をしている暇があるの?私はもう貴方の弱点を見抜いていると言うのに。」
アイリは自身の"眼"でミヤビを見ていた。
以前にも触れたが、アイリの眼にはヒト、そしてモノの弱点がハッキリと見えている。
更にアイリはそれだけでなく必殺技をも使用しているし、ミヤビもそれに気づいている。
「どう見えている?……"何打"で倒せると?」
「生憎パープレイとはいかないね。私の見積もりだとダブルボギーか、トリプルボギー……」
「ゴルフとかいうスポーツには詳しくないから、分かりやすく説明してもらえるかな?」
「簡単に言えば、腕や脚を2,3本犠牲にすれば勝利を掴める、ってこと。」
「へぇ……倒せる気でいるんだ。」
この時のミヤビの低い声を聴いたトモは、恐怖で心臓が止まりそうになってしまった。。
シミハムの能力でオーラの類は見えなくなったが、純粋な気迫そのものはかき消せないようだ。
トモがひどくビビったのを感じ取ったミヤビは、少し表情を和らげてからアイリに質問を投げつける。
「でもいいの?犠牲が少し大きすぎるような気がするけども。」
「うん、それなんだけどね……さっき言ったトリプルボギーというのは私一人で戦った場合の話なの。」
「アイリ一人の場合?……ということは……」
「そう、選手とキャディーが協力すればパーどころかバーディも狙える……私の眼にはそう見えてる。」
619
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/01/05(木) 04:13:50
宣伝は確かに積極的には行ってませんねw
でもこうして新しく読んでくれる方も増えているので、
興味をもってくれた方が集まってくれれば良いかな、とは考えています。
そのためには過去ログの更新もせねば……
620
:
名無し募集中。。。
:2017/01/11(水) 22:58:05
>>617
ありがとう!仕事忙しいけど
一週間でやっと読み終えたわw
一つ気になってるところが有るんだけど
何でモモコはメグが味方だと気付いたんだ?
自分が読み落としてるだけかも知れんけど気になる
621
:
名無し募集中。。。
:2017/01/11(水) 23:00:38
>>619
過去ログは大分読めたけど
出だしから六章までの
皆の反応が見れないのが残念だな
宣伝は良いんじゃない
荒れても嫌です
622
:
名無し募集中。。。
:2017/01/11(水) 23:04:41
あと過去ログでRHYMESTER好き?
日本語ラップ好きの人が
かなりの頻度で書き込んでるのに
スルーされまくっててワロタ
623
:
名無し募集中。。。
:2017/01/11(水) 23:05:18
あと一応上げとく
624
:
名無し募集中。。。
:2017/01/12(木) 01:28:13
>>620
凄い!一週間で読み終えるなんてw
確か一部ログが抜けていたところあったんじゃないかな?でも、うろ覚えなんで…きっと作者さんが答えてくれるはず!w
625
:
名無し募集中。。。
:2017/01/12(木) 01:46:01
>>621
『マーサー王 2ch』とかでググれば過去ログ出てくるから、DAT落ちしたスレを読めるツール(Chromeの2chRevival等)で開ければリンクからさかのぼっていけるよ
626
:
名無し募集中。。。
:2017/01/12(木) 20:30:40
>>625
おーありがとう!
新作の方も早く続き読みたいっす
作者カモーン
627
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/01/13(金) 12:51:26
前作を書いたのはかなり前のことなので理由は覚えてませんねw
過去ログ整理するときに読み返すので、そのときに思い出すかも、、、
次の更新は今夜遅くになりそうです
628
:
名無し募集中。。。
:2017/01/13(金) 13:22:24
流石に作者さんも覚えてないかw
更新楽しみにしてます
629
:
名無し募集中。。。
:2017/01/13(金) 20:31:04
マジかよー
一番気になる伏線だったのに
最後まで出てこないからモヤモヤするわ
あとキャラクター紹介も全員分読みたい
名前の由来とか
630
:
名無し募集中。。。
:2017/01/14(土) 01:14:09
キャラクター紹介は全員では無いけどどこかで作者さん書いてたはず二部のメンバーはまだだったかな?
631
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/01/14(土) 06:29:36
力尽きたので更新はまた後になります、、、
第一部登場キャラの由来は前スレ後半にありますね。
第二部登場キャラの由来はそのうち、、、
632
:
◆wnfFWrhuHc
:2017/01/14(土) 17:30:51
ゴルフに疎いミヤビも、キャディーという言葉なら聞いたことがあった。
要は選手が気持ちよくプレイするためにサポートする役回りのことだ。
アイリを選手、トモをキャディーと位置づけるとすれば、
トモ・フェアリークォーツの支援によりアイリが戦いやすくなると言いたいのだろう。
「そうか分かった、じゃあその大事なサポート役を死ぬ気で守ってみな!!」
ミヤビは脇差を抜いてトモへと斬りかかった。
勿論ミヤビもここでの攻撃がそう簡単に通るとは思っていない。
重要なキーパーソンであるトモが狙われるのだから、先ほどのように阻止してくるだろう。
実際、すぐにでもアイリは棍棒で地面の石を叩いて飛ばしてきた。
来ることが分かっているからこそ、ミヤビは即時に対応できる。
(トモ・フェアリークォーツを狙うのはあくまで"フリ"だよ、本命はカウンター狙い。
それもとても強烈なね!『猟奇的殺人鋸"派生・美異夢(びいむ)"』!!)
今の今までトモを向いていたミヤビは
アイリの方へと急激に方向転換する勢いを利用して、脇差を強く素早く振り切った。
そうして発生した衝撃波の威力は斬撃そのものに匹敵し、
飛んできた石を弾くどころか、少しばかり離れたところにいるアイリに対して光線のように到達する。
「くっ……」
まったく目に見えない攻撃ではあったが、アイリは正確に棍棒で防いでみせた。
それでもガードした武具が破壊されてしまうほどに強い技を放ったつもりではあったので、
多少傷みこそしたものの元の形状を保っていた棍棒を見て、ミヤビはほんの少しだけ驚いた。
「ん……スッパ切れると思ってたんだけども。」
「生憎様、こっちにも優秀な整備士が付いているの。」
「なるほどマーチャンのことか、ああ見えてなかなか結構な腕を持ってるんだね…………ハッ!?」
何かに勘づいたミヤビはトモの方へと慌てて向きを変えた。
その時には既にトモは矢を射抜いた後だった。
怯え切った顔をしながらも強大な敵に向かって牙を向いていたのである。
この矢を受けたのが「背中」だったならば流石のミヤビも危うかった。
しかし、方向を変えてしまった今、攻撃が当たるのは「胸」となる。
見た目にはほとんど差が無いが、ミヤビの胸部には鋼鉄の板が埋められているため
矢が当たってもほとんどダメージは無かった。
「あっ……そんな……」
「上手く殺気を消せていた。ちょっと気づくのが遅ければ危ないところだったよ。
でも、結局は通用しない。 キャディーだったらキャディーらしくサポートに徹したほうが身のためじゃないかな?」
「……」
渾身の一撃を防がれてしまったので、トモはまたも落ち込んでしまう。
思えば橋の上での戦いの時もトモの矢はミヤビの鋼鉄の胸に阻まれていた。
やはり伝説の戦士との差は大きすぎるため、何度トライしてもダメなものはダメなのではないだろうか。
そう思っていたところに、いつの間にか背後にまで移動したアイリの声が聞こえてきていた。
「ミヤビ……あなた、何か勘違いをしているのでは?」
「勘違い?」
「私は一度もトモがキャディーだなんて言った覚えは無いよ。」
「えっ?……」
アイリはトモの首にそっと触れては、こう言い放った。
「私と同じ景色を見せてあげる。それがキャディーとしての私の務め。」
633
:
名無し募集中。。。
:2017/01/16(月) 21:56:54
愛理のゴルフ動画懐かしいなー
あのグダグダなやつ
そういえば何で愛理の武器って棍棒なの?
ゴルフクラブのウッドって事?
634
:
名無し募集中。。。
:2017/01/16(月) 22:00:36
ゴルフ漫画の風の大地のラストページみたいな
大阪弁ポエムを愛理が朗読するも
フガフガ過ぎて聞き取れない展開希望
635
:
名無し募集中。。。
:2017/01/16(月) 22:00:56
これ
http://i.imgur.com/v8wOHDE.jpg
636
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/01(水) 12:32:09
アイリに首筋を触られたその瞬間、トモの全身に電流が走った。
とは言っても高圧電流のような強力なものではない。
微弱ではあるが、ピリッとしたSHOCK!を与えてくれる。
そう。例えるならば、それは「まるで静電気」。
瞬く間に惹かれ合い、気持ちが+(プラス)へなだれていく。
(え!?ええ!?こ、これは!!)
トモの目の前には、
いや、トモの「眼」の前には信じられない光景が広がっていた。
自身の手に持つ弓の傷んでいる箇所や、
(先ほどのクマイチャンの技の影響で)地面が脆くなっている部分、
そして目の前にいるミヤビの『弱点』等々が手に取るようにわかるのだ。
この摩訶不思議なビジョンに、トモは覚えがあった。
知識として知っていたのだ。
「これが……アイリ様がいつも見ている光景……」
「ふふふ、そう。 驚かせちゃってごめんなさいね。」
対象の弱点を見抜くアイリの眼。
アイリの身体に触れている間だけ、その能力がトモにも宿ったのである。
一流のキャディーは芝のコンディションや風の状態に気を配り、
プレイヤーに対して有益な情報を提供すると言うが、
敵の弱点を見抜く眼をそっくりそのまま譲るなんて世界中のどこのキャディーがマネ出来ると言うのだろうか。
「凄い……凄すぎます……アイリ様は他人に対して眼を与えることまで出来るのですね……」
「誰にでも、ってわけじゃないのよ。」
「え?」
「よっぽどフィーリングが合わないと無理。
どこにもいないのよ、ただただ、あなただけ。」
トモは何年も前からアイリを自身のヒーローとして慕ってきていた。
だからこそアイリの経歴や戦い方をよく理解している。
そして先日初めて出会ってから以降は、一緒にお茶するなどして親密度も上げていた。
そこまでしたからこそ、トモはアイリと通じる資格を得ることが出来たのである。
感激のあまり涙を流しそうになったトモだったが、そこはグッと堪えた。
涙なんかで視界を遮るワケにはいかないのだ。
ミヤビの弱点を、しっかりと観察しなくてはならない。
(それにしても弱点って……本当にそこなの? 信じられない……どういうこと?
いや、理由なんてどうでもいい。
そこに対して矢をぶち当てる事だけを考えなきゃ!!)
弱点に攻撃を当てるまでのプロセスについて、
アイリはゴルフをプレイする時の打数に例えている。
先の4打で相手のガードをこじ開けて、5打目でトドメを指す……といった具合だ。
それに対してトモは「将棋」をイメージしていた。
この将棋とは果実の国で大流行しているボードゲームであり、
複雑なCHOICEとCHANCEを迫られるため、戦略的な思考を養えるとして、戦士も嗜むことが推奨されていた。
アーリー・ザマシランは苦手にしていたようだが、トモはユカニャ王にこそ及ばないもののかなりの実力を誇っている。
(見えた……この方法なら"詰み"に持っていける。)
637
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/01(水) 12:34:40
アイリの武器はまさにゴルフのドライバーをイメージしています。
単なる棒ではなく、球が上がりやすくなるように微妙な角度がついてるのかもしれませんね。
638
:
名無し募集中。。。
:2017/02/01(水) 20:39:12
更新キテターー
作者さんのハロプロネタ入れ込むセンス好きやな
639
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/03(金) 12:18:27
「眼を与える?……そんなことが出来るなんて初耳なんだけど……」
トモにアイリの眼が宿ったなんて、にわかには信じ難いとミヤビは感じた。
少なくとも自軍の"眼"持ちである人魚姫(マーメイド)からは聞いたことのない情報だ。
(ま、あの子はあの調子だからそんな使い方に気づいてなくても不思議じゃないか。
そもそも、トモが私の弱点を見抜けるようになったとしても大した問題じゃない。
2人まとめて斬り捨てることに変わりは無いんだから。)
ミヤビは前に踏み出し、トモの首筋に接するアイリの手を切断せんとした。
そのために使う得物は自身のオーラに負けず劣らずの凶々しさを見せる脇差だ。
刃渡りこそ短いが、その鋭利さは人間1人の手首を切り落とすには十分すぎるほど。
アイリとトモの縁を強制的に断ち切ってやろうとしたが、
それをアイリが甘んじるはずもなかった。
「させない!!」
手に持つ棍棒をビリヤードのキューのように扱い、ミヤビの胸へと強打する。
「短い脇差」と「両手を伸ばしたほどの長さの棍棒」ならリーチが段違い。
ミヤビの胸にはご存知の通り鉄板が埋め込まれているため打撃の痛みを感じることはなかったが、
衝撃が強かったので後ろに押し出されてしまう。
「うっ……」
この一連の流れに、トモは感動に近い感情を覚えていた。
トモが考えた「詰み」への道筋の通りにアイリが行動してくれたことが嬉しいのだ。
それはつまり自分の考えとアイリの考えがピッタリ一致したということ。
こんなに嬉しいことはない。
(ひょっとしてだけど、アイリ様の能力か何かで私の思考がコントロールされてるとか?
……うん、それでもいい。
二人の思いが通じて、勝利することが出来るんだったらなんだっていい。)
640
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/04(土) 14:18:41
今のトモには色々なものが見えていた。
ミヤビが普段より息を荒げているのも、意外にも多くの汗をかいているのも、
全部が弱点情報としてトモの眼に入ってきている。
頭の中の考えを100%読み取ることまでは流石に不可能だが、
ある程度の心理状態を判断したり、次の行動を予測することなら出来そうだ。
ではミヤビが次に何をするのかと言うと……
「邪魔な棒だなぁっ!!」
ミヤビは一度アイリの手首付近にまで伸ばした脇差を手前へと引き寄せて、
己の胸を叩いた棍棒に対して上から斬りつけようとした。
しかし、刀を引くまでの僅かなタイムロスが達人同士の決闘では致命的だった。
アイリはその間に迎撃準備を整えており、上から降る刃を弾くように棒を操作した。
これがミヤビを倒すための「二打目」。
マーチャンによって修繕された棍棒なら、扱い方次第では刀にも競り負けないことは実証済みだ。
「遅い!」
(くそっ……力の込もってない斬撃じゃ、やっぱり跳ね除けられるか。)
この攻防が開始する直前のトモは、ミヤビが脇差ではなく自身の顎に埋められた鋭利な刃物で棍棒を斬るだろうと予測していた。
剣を引き寄せて斬るよりは、顎を直に振り下ろした方が圧倒的に早いと考えたからだ。
だが、そのすぐ後に「眼」でよく見ることで考えを改めた。
ミヤビの顎の刃には細かな傷が無数に入っていたのだ。
その程度の傷が弱点だとは到底言えないが、メンテが行き届いているのは脇差の方であるのは明らかだ。
ベリーズにはチナミという凄腕の技師が存在するが、
流石の彼女もミヤビの肉体に直接埋め込まれている武具に限っては、
簡単に手渡すことの可能な脇差と同等のペースでメンテすることは困難だったのかもしれない。
(つまり、顎の刃よりも脇差の方を信頼しているってことなんだ。
アイリ様には整備がより行き届いている方の武器じゃないと通用しないと考えたのかも……
そして、もしそうだとしたら私の考えた「詰み」への道筋の説得力が増すことになる。
そのためにはアイリ様任せにしないで私も挑まなきゃ!!)
これまでの二打はどちらもキャディーが打ち込んでいた。
それではダメだ。本当に活躍すべきはプレイヤーで無くてはならない。
だからこそトモは弓を引いた。
手を伸ばせば届く程度の超至近距離からミヤビの弱点に当ててやろうとしているのだ。
641
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/07(火) 12:55:01
ミヤビの弱点を狙ってトモは矢を放った。
今のトモはとても集中しており、且つ二人の距離も近いため
絶対に当たることを確信していた。
「通用しない……というのがまだ分からないのかな?」
殺気を瞬時に察知したミヤビは、矢が放たれる直前に身体をトモの方へと向けた。
胸の鉄板による防御を謀ったのだ。
いくらトモの射撃が強かろうとも、こうして鉄板に阻まれてはミヤビの肉体にダメージを与えることが出来ない。
(やっぱり……私の矢は鉄板で防がれる。100発打っても全部が全部そうなる。)
「私を倒すなら顎と胸以外に当てるといい。そっちは生身だからね。
でもそう易々と当てさせてあげるつもりは無いよ。
どんな攻撃でも顎と胸と剣の三点で防いでみせる!
そう、このアイリの攻撃のように!!!」
トモが矢を射ってミヤビがそれを胸で防いでいるうちに、アイリは棍棒をブチ込む準備をしていた。
大きめのスイングで勢いをつけて、ミヤビを叩こうとしたのだ。
しかしそれだけの攻撃なのだからコッソリやろうにも目立ちすぎていた。
そのため、これもミヤビの強固で平坦な胸板でガードされてしまう。
「アイリ、振りの速度がいつもより遅いんじゃないか?」
「そんなことは……」
「いや遅い。 何故だと思う?……それはね、棍棒を片手で持っているからだよ。
トモに触れている手を今すぐ放して、両手で棒を持ち直した方が勝率上がるんじゃない?」
ミヤビの発言は、トモの精神に影響を与えるようなものにも思えた。
心が弱ければ、責任を感じるあまり潰れてしまうかもしれない。
しかしそれでも、トモの表情は少しも歪むことが無かった。
ここまでミヤビに当ててきた「一打目」から「四打目」までの全てが自身の想定と一致していたので
むしろ自信を持つことが出来たのである。
(トドメの五打目は私が射抜く!!
狙いはそこ以外に有り得ない。 絶対に穿つ!!)
642
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/08(水) 12:28:59
トモがまたも弓を構えたので、ミヤビはそれを受け止めるための体勢をとった。
さっきから幾度も繰り返している防御法によって、
矢による攻撃は無駄だと言うことを知らしめようとしたのだ。
これによってミヤビの肉体は守られる。
そのはずだった。
ドスッ
どこからか鈍い音が聞こえてきる。
その音の出所が自身の体内ということに気づくまで、そう時間はかからなかった。
そう、トモによって放たれた矢がミヤビの胸に突き刺さったのである。
胸に埋められた鉄板を突き破って、だ。
(何故……矢の威力が……急に強く?……
いや違う……矢が強くなったんじゃない。)
勉強が苦手なミヤビではあるが、頭の回転は速い。
これまでのアイリとトモの行動から、今回のような結末を迎えた原因を導き出した。
「胸の鉄板……ここが私の弱点だったというワケか……」
顎の刃が脇差と比べてメンテが出来ていないのは前に述べた通りだ。
簡単に取り外せないため、チナミも高い頻度で整備することが出来ないのである。
そしてそれは胸の鉄板も同じ。
しかもミヤビは昨日のゲートブリッジの戦いでもトモの矢を胸で受けている。
その時に生じた僅かなヒズミが、小さな小さな弱点として今日この場まで残ってしまったのである。
(思えばアイリの攻撃も、トモの攻撃も私の胸にばかり当たっていた。
私が胸で受け止めるしかないように攻撃してきたのか……)
本来なら戦闘に影響の無いような傷でも、ここまで徹底的に痛めつけられたら拡がりもする。
強固であることが自慢の鉄板を少しずつ壊していくことで
矢による射撃が通用する程の耐久力にまで落としてみせたのだ。
そうなったことは持ち主のミヤビにも気づくことが出来ない。
理解できたのは、「眼」を持つアイリとトモだけ。
「認めるよ。確かに若手は足手まといではなかった……脅威に立ち向かうためには必要……だ……」
ミヤビも底力を発揮すれば、ここからの逆転劇を見せれたかもしれない。
でも、それは今の本意では無い。
安心したような顔をしながら地に落ちていった。
643
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/10(金) 12:45:18
「勝った?……」
トモは弓を構えたままの姿勢でしばらく固まっていた。
自分の攻撃が伝説の存在に通用し、しかも撃破まで出来たことが信じられないのだ。
それでも手応えはしっかりと残っている。
矢がミヤビの胸を貫いたのは紛れも無い事実。
「あなたがやったのよ、自信を持って。」
「アイリ様……!」
頭の中ではちゃんと分かっていた。
自分がここまでやれたのはアイリの全面的なサポートが有ったからこそ。
その助けもなしにミヤビに挑んでいたら秒速で切り捨てられていたことだろう。
でも、
それでもやっぱり、嬉しいは嬉しい。
同じKASTのサユキやカリン、アーリーがどんどん力をつけていく一方で、
自分だけは活躍しきれていないと感じていた。
変な話になるが、足手まといになっていないかと悩む日もあった。
だがそれももう過去の話だ。
「やったんだ……私は勝ったんだ……」
過程はどうあれ、KASTだけでなくモーニング帝国剣士や番長らを含めてたとしても
ベリーズを倒した者はトモ・フェアリークォーツだけだ。
唯一の存在だ。
これ以上に誇れる事などそうそう無いのではないだろうか。
嬉しさを噛みしめるトモに対して、アイリは優しい声をかけていく。
「本当によくやったと思いますよ。」
「アイリ様、有り難う御座います!」
「でもね、少し体を休めた方がいいんじゃない?疲れたでしょう。」
「え?でもアイリ様が守ってくれたおかげで大怪我はしていませんし、
残りのベリーズを倒すためにまだまだ頑張れますよ!」
「いえ、疲れているのは"心"の方。」
「!」
ミヤビと対峙するだけでトモの神経は相当削り取られていた。
ぶっちゃけて言えば立っているだけでしんどかったはずだ。
アイリはトモの心の弱点を見抜き、労いの心をかけたのである。
「あはは……アイリ様の眼にはそんなところまで見えてるんですね……」
「ミヤビを倒しただけでトモは大金星。後は寝てても誰も文句は言わないはずよ。
ベリーズはキュートが責任を持ってなんとかするから、ゆっくりしててね。」
「あ、はい、じゃあすいません、少し寝ます……」
この瞬間までトモはアイリに触れていたため
実を言うと「アイリの心の弱点」がバッチリと見えていた。
つまりは、アイリが嘘をついていることに気づいたのだ。
(本当に迷惑をかけてごめんなさい、私はとっとと寝ます。
だからアイリ様もすぐに身体を休めてください。
眼を譲るのって、私には想像もつかないくらい負担がかかるみたいですね。
なのに最後まで私に触れてくれて……感謝以外の思いが浮かびません。)
トモが眼を閉じてから数秒後、アイリは気を失うように地に倒れていった。
その時の息づかいや発汗量は、眼を持つ者ではなくても弱っていると見抜ける程だった。
644
:
名無し募集中。。。
:2017/02/12(日) 08:51:59
雅ちゃん中々勝てないな
645
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/14(火) 12:39:16
ミヤビとアイリ、そしてトモが倒れたことには他の食卓の騎士らもすぐに気づいていた。
そしてちょっと一瞥しただけで戦いを再開する。
生死をかけて戦ってる以上は倒し倒されることは当然起こりうるため、構ってられないのである。
それにベリーズとキュートの実力は拮抗しているため、少しも隙を見せることが出来ない。
キュートのマイミ、ナカサキ、オカールと
ベリーズのシミハム、モモコ、クマイチャン。
それぞれ3名ずつであるため、ここからは誰か一人でも欠けたら戦況が大きく動くことだろう。
「でもさ、減らすのは大変だけど……増やすことなら簡単に出来ちゃうのよね。」
オカールの連撃をヒラリヒラリと交わしながらモモコが呟いた。
そして少し離れたところで見ているカントリーの面々を見つけては、
大きな声を投げかけていく。
「おーい!みんな見てるんでしょーっ? そんなに離れてないでこっちに来なよーっ。」
急に呼ばれたリサ・ロードリソースら4名はドキリとした。
今回の作戦ではカントリーは戦いに不参加のはずだったのだが、
モモコの気が変わってしまったのだろうか。
達人達の「気」に当てられながら、マナカが苦笑いで答える。
「えーっと……ひょっとして私たちも戦わないといけないんですか?……
いえ、マナカも本心はモモち先輩と共に戦いたいと思ってます!
でも肝心の動物たちが負傷中で……いま元気なのはリサちゃんのカエルくらいなんですよ。」
「ちょ、ちょっと!!」
カントリー達がパニックになる中、モモコは冷たく「そういうのはいいから早く来て」と言い放った。
機械のように冷徹になったかと思えば、
お次は子供をあやす保母のように「みんなは戦わなくていいの。近くで見てるだけで良いからねー。」と安心感のある言葉をかけていく。
ここで面白くないのはオカールだ。
自分との決闘は後輩と会話しながらでも務まると思っているのが容赦ならない。
オカールは気合を込めた渾身の一撃をぶち込んでいく。
「無視すんなよっ!!」
だが、しかし
オカールの強烈な突きは通らなかった。
何やらとても硬いものに防がれてしまったのだ。
そして、その硬いものには見覚えがあった。
信じられないが、彼女は確かにそこにいる。
「ミ、ミヤビちゃん!?」
646
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/15(水) 12:35:25
オカールの攻撃はミヤビの胸で防がれていた。
トモによって貫かれた穴では無い箇所で、ジャマダハルを受け止めたのだ。
初めは精巧な人形のようなものでガードされたのかと思ったが、
近くで見れば分かるリアルすぎる質感は作り物では再現することが出来ない。
攻撃を受けたミヤビの目が依然として閉じられていることから、
オカールは一つの答えを導き出した。
「マジかよ……気絶してるミヤビちゃん、いや、ミヤビを糸かなんかで操ってやがるのか。」
「せいかーい。クイズが苦手なオカールでも流石に分かったみたいね。」
「やさしくねぇなぁ……コマイ真似しやがつて!」
オカールの推察通り、モモコは指から伸びる糸をミヤビの四肢に結びつけ、
この場まで引き寄せて盾にしたのである。
ミヤビの意識が有る時には(いろんな意味で)絶対に出来ない芸当だ。
これにはカントリーの4人もドン引きしている。
「モモち先輩……いくらなんでもそれは……」
「ね、ねぇリサちゃん。」
「チぃ?どうしたの?」
「えっと、なんでモモち先輩はミヤビ様を盾にしたのかな。」
「なんでって、そりゃミヤビ様が硬いお胸をお持ちだからでしょ……」
「でも、モモち先輩への攻撃を防ぐだけならアイリ様やトモって人を盾にしてもいいはずだよね?
ジャマダハルが人の体を貫通するとは思えないもん。
なのにどうして、お仲間のミヤビ様をわざわざ連れて来たんだろう……」
「あ……確かに……」
647
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/16(木) 20:59:35
真偽は不明ですが、
福田花音が仮面ライダーイクサ(音也)と公開の噂があるようですね。
648
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/02/22(水) 12:35:07
「え?なになに?どうしてみんな引いちゃってるの?
あ!そうか!私がミヤビを許可無く操ってると思ってるんだ!
心配しないで。ちゃーんと打ち合わせ済みなんだから。」
少し離れた場所でキュートと戦っているシミハムとクマイチャンは心の中で「嘘だな」と思った。
その2人どころかカントリーやオカールも全然信用していない。
事実、モモコは一つの相談もなくミヤビを操っているのだからそう思われても仕方ないだろう。
「ま、そんなことはどーだっていいじゃない。
大事なのはここで勝つことなんだからさ。」
今しがたモモコが引っ張った糸には、ミヤビの右手と脇差がガチガチに固く結び付けられている。
それを素早く動かせば、オカールを切り裂く斬撃にもなるのだ。
血が通っていないような無機質の攻撃にオカールは少し驚いたが、
所詮は操り人形がとる動きの延長戦でしかない。
本来のミヤビの鋭さには程遠いため、両手のジャマダハルで簡単に受け止めてみせた。
しかし、その次が続かない。
「くっ……」
「オカールどうしたの?防御ばっかりで攻めて来ないの?」
「うるせぇ!今やってやるよ!!」
「うふふ。」
オカールの戦闘に対するモチベーションは明らかに低下していた。
実はこれこそがミヤビを操ったモモコの狙いだったのである。
オカールはこの数年で見違えるほどに強くなったが、
高みに達するほどに、おなじ食卓の騎士のミヤビの戦闘センスの高さを痛感していっていた。
そしてその感情はいつしか憧れになり、
マイミ以外に敬意を示していなかったはずのオカールが、ミヤビのことをミヤビちゃんと呼ぶようにもなったのだ。
そんなミヤビと決闘する機会が有ればオカールは全身全霊で挑むだろう。
それこそ死ぬ気で殺す気で戦うに違いない。
だが今の状況はどうか。
ミヤビと顔を合わせてはいても、対峙しているとは呼べないのではないか。
憧れの存在と真剣勝負をさせてもらえないという、なんとも言えぬ歯痒い状況は
オカールの戦意をものすごい速度で奪っていっていた。
ちなみにモモコがアイリやトモを盾にしなかった理由は、
オカールならその二人を平気で切り捨ててしまうからに他ならない。
649
:
名無し募集中。。。
:2017/03/03(金) 20:45:15
岡井ちゃんとももちもっと絡んで欲しいなー
現実で
650
:
名無し募集中。。。
:2017/03/08(水) 20:38:58
やっと追いついたー!スマホ壊れたついでに最初から読み直してきたけど…意外と進んでなかったorz
作者さん忙しいのかぁ…とこで一部読み返して気になったんだけど
> そしてマーサー王国を束ねる若き女王、マーサー王その人であった。
前作では最後まで性別明言しなかったけどマーサー王は『女』って事で良いの?
651
:
名無し募集中。。。
:2017/04/22(土) 16:54:48
もう2ヶ月か…
652
:
名無し募集中。。。
:2017/05/12(金) 22:59:28
おいおい…『拳』本格的に活躍する前に卒業だなんて
こぶしファクトリー 藤井梨央に関するお知らせ
http://www.helloproject.com/news/7016/
653
:
◆wnfFWrhuHc
:2017/05/16(火) 00:12:20
長らくお待たせしてしまい、申し訳ございませんでした。
とりあえずは復帰という形をとれそうです……
また失踪するかもしれませんが第三部完走までは必ず戻ってきます。
>>650
ご想像にお任せします、と言いたいですが書いちゃってますねw
>>652
工藤、藤井の卒業発表は衝撃的でした。
どちらか片方は三部で大活躍する予定で話を作っているので
今更変えることはできませんね。
654
:
名無し募集中。。。
:2017/05/16(火) 01:02:37
>>653
お帰りなさい!ほんとーーーーに!!お待ちしていましたw
やっぱり無意識に書いちゃってたのねマーサー王の性別は取りあえず見なかったことにしておきますw
その二人も衝撃的だったけど帝国データバンク剣士か番長かはたまたファクトリーに人が追加される可能性も…CMで出すにしても肝心のあの人が離脱中だし…
何はともあれ続き楽しみに待ってますね
655
:
名無し募集中。。。
:2017/05/16(火) 01:05:48
>>654
CMはDJの方だから出来るね…素で勘違いしてたorz
656
:
◆wnfFWrhuHc
:2017/05/16(火) 08:53:41
(どうすりゃモモコのヤツを斬れるのかね……)
鉄壁ミヤビに阻まれることなくモモコに攻撃を当てる方法は無いものか、
オカールは普段あまり使わない頭脳をグルグル回して考えた。
目にも止まらぬフットワークでモモコの背後に回り込み、
ミヤビによる防御が間に合わぬうちに斬るのはどうか?
いや、あのモモコが死角対策を怠ってるとも思えない。
下手すれば返り討ち。甘い罠にかけられるところだろう。
では目には目を歯には歯を、の要領で自分も人質を取るのはどうか?
その辺で無用心に立っているカントリーの誰か(チサキが適任か)を捕まえて、ミヤビと人質交換……
(いや、やめよう、絶対に応じてくんないだろーし)
前に書いたが、モモコがアイリあるいはトモを壁とした場合もオカールは容赦なく斬るつもりでいた。
非情なワケではない。食卓の騎士同士の戦いにはそれだけの覚悟が必要なのだ。
例え模擬戦のような訓練だろうと実戦を想定した空気感の中で戦いに望まなくてはならない。
特にクマイチャンやナカサキはこれまでずっとずっとそのような姿勢で闘い続けていた。
オカールだってそうだし、モモコだってそうだろう。
例えオカールがカントリーの4人全員を人質にとったところでモモコは動揺せずに普段通り動くに違いない。
(あーもうめんどくせえ!結局、正面突破しかないじゃん!!)
オカールはジャマダハルを構え、怖い顔をしてキッと前を睨みつけた。
あれこれ策を講じるのをやめにしてゴリゴリのゴリ押しで現状を打破すると決めたのである。
しかし忘れてはならない。オカールには今のミヤビ相手にはモチベーションが上がらないという懸念要素が残っている。
この戦意喪失をなんとかしないと勝ち目なんか無いのだが、
オカールにはちゃんと自身を鼓舞する自己流の方法が用意されていた。
(本当に情けねぇよなぁ……倒すべき相手がすぐそこに居るのに立ち止まっちまうなんてよ……
何が食卓の騎士だってハナシだよ、本当に。
そんな俺は、こうでもしなきゃ分からないのかね!!)
オカールは刃を己の横っ腹に突きつけ、そのままザシュッと刺していった。
薄皮をちょっぴり切ったとかそういうレベルではない。
引き抜いたジャマダハルの刀身ほとんどが紅く染まっていたことから
相当深くまで入っていたことがよく分かる。
カントリー4名はその行為の異常さに恐れ慄いたが、
モモコだけはあいも変わらず普通の顔をしていた。
「ワオ、気つけのつもり?」
「追い込んだんだよ、俺自身をな!」
「ふーん、背水の陣ってヤツ。怖い怖い。」
657
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/05/16(火) 08:57:37
(トリップ忘れたので色々試します)
研修生3人の所属先はとても気になりますね。
現実の展開次第で3部に登場するかもです。
658
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/05/17(水) 12:58:19
オカールの腹からは血がドクドクと流れ出している。
このペースで流血し続ければものの数分で動けなくなってしまうことだろう。
こうしてオカールはやらねばならない状況を作り上げた。
もはや立ち止まっている暇は無い。
「秒殺でカタをつける!!」
モモコ目掛けてオカールは突進していった。
ウェイトがそこそこ増えたので、かつてのような高速移動は出来なくなったが
その代わり有り余るほどの貫禄と威圧感を持って走っている。
これをノーガードで受けてはひとたまりもないと感じたモモコは、ミヤビの腕と刀に括り付けられた糸を操作した。
鋭い斬撃によって、突っ込んでくるオカールを斬り捨ててやろうとしているのである。
その行為にはオカールもすぐに理解し、
両手のジャマダハルで降りかかる刃を受け止めていく。
「効かねえよっ!!」
オカールは腕に力を加えて、ミヤビの攻撃を強く跳ね返した。
いくら「ミヤビの身体」と「ミヤビの刀」からなる攻撃であろうと
そこに「ミヤビの心」が無ければその威力は何段階も落ちる。
ならば深手を負っている今のオカールでも十分対処可能だ。
「俺は今、モモコと戦ってるんだ……どいてくれよ!!」
意識無きミヤビに対して、オカールは強めの蹴りをぶつけようとした。
邪魔をしてくる障害物はなんであろうと跳ね除けようと思ったのだ。
しかし、ここで予想外のことが起きる。
それはオカールにとって予想外なだけでなく、カントリーの4名にとっても思っていないことだった。
「嘘でしょ!?」
「なんか、意外な展開だね……」
結論から言うとオカールの蹴りはミヤビに届かなかった。
気を失っているミヤビをかばい、攻撃を肩代わりする者が現れたのだ。
その者の行動の意味が、オカールには全く理解できなかった。
「は?……どういうことだ?……どうしてお前がミヤビちゃんを守ってるんだよ!?」
659
:
名無し募集中。。。
:2017/05/17(水) 13:22:45
>>657
おー!さっそく更新来てる!!ミヤビを守ったのは誰なんだろう?普通に考えれば某自称リーダーなんだろうけど…
きっと斜め上いって爆○王がカナトモそっちのけでミヤビを守る展開とみた!(違w
660
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/05/18(木) 13:07:00
オカールの蹴りを代わりに受けたのはモモコだった。
"モモコが仲間のミヤビを守った"と書けば別段おかしなことはないように思えるが、
前提として、彼女は気を失っているミヤビを盾のように扱ってきている。
だと言うのにそんなミヤビを今更かばいだしたので、
支離滅裂な行動をとっているようにしか見えないのだ。
そして、カントリーの面々も普段のモモコからは考えられない動きに戸惑いを見せている。
「モモち先輩……実は優しい人だったの?……いや、でも……」
チサキは過去のモモコが行って来た非人道的な仕打ちを思い出していた。
お菓子はカレンダー上で4のつく日にしか食べてはならないとか、
規則を破ったものにはセロリを強制的に食べさせるとか、
想像するだけで鳥肌が立つほどにおぞましい鬼畜の如き所業モモコは行って来たのだ。
今回もただの優しさなどではなく、何か裏があるに決まっている。
「でも、理由はどうあれミヤビ様をモモち先輩が守ったのは事実なんだよね……」
「マナカちゃん……」
カントリーらが混乱しているようだが、今この場で最も取り乱しているのは他でもないオカールだ。
相手の真意が見えぬまま、フリーズしてしまっている。
モモコはモモコで攻撃が全く聞いていないようなポーカーフェイスを維持しながら、
静止するオカールの隙を見ては、背後へとトコトコ歩いていった。
「ねぇオカール、ここまでの接近を許してよかったの?」
「……はっ!!」
モモコの持ち味は暗器による、あらゆる距離からの攻撃だが
だからと言って接近戦が苦手というわけではない。
モーニング帝国の訓練場でクマイチャンに大打撃を与えた時のように、
モモコには超至近距離でも実現可能な攻撃手段が備わっているのだ。
オカールが今更そのことに気付こうがもう遅い。
モモコは既に、オカールと背中合わせになるような立ち位置に陣取っている。
「モモアタック!!」
661
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/05/19(金) 13:04:58
モモコは他の食卓の騎士のような超パワーや超スピードを備えてはいない。
それでも長年戦士をやっているだけあって、
若手と比べたら十分化け物と呼べるくらいの身体能力は持ち合わせている。
そんな彼女の筋肉の中でも特に発達しているのが尻の筋肉だ。
そして更に、モモコの服の中には内部からの衝撃に反応して鋭い刃を外部に突き出す装置が仕込まれている。
これらが合わさった結果としてモモコのヒップアタック、通称モモアタックは激痛を伴う攻撃手段となっているのだ。
もしも仮に近隣諸国の戦士を集めた大運動会でも開催されるのであれば、
尻相撲の優勝者はモモコで確定と言って良いかもしれない。
「くあっっ……!!」
ノーガードでモモアタックを受けたオカールはその場に倒れこんでしまった。
流石に気を失うとまではいかなかったが、
鋭く重い衝撃をモロに受け止めた結果として、足腰の骨に異常をきたしてしまったのだ。
これではそう簡単には起き上がれない。
オカールの腹からは血が流れ続けているので一刻も早くケリをつけたいところだが、
こんな身体では「立ち上がれ乙女達」とはいかないのである。
涼しい顔でオカールをここまで痛めつけるモモコを見て、リサ・ロードリソースは頭の中であれこれ考えていた。
(やっぱりモモち先輩は強い。 ミヤビ様を庇ったのも、全てはモモアタックをオカール様に当てるため?……
いや、やっぱりまだ理解できない。
モモアタックを当てるだけなら他にも手段はあったはず。
なのにどうして、わざわざ敵の蹴りを受けるなんていうリスクの大きい方法を選択したの?……
これじゃあまるで、「私は身体を張ってでもミヤビを守りますよ」ってあからさまにアピールをしているみたい。
でも、そんなことを誰にアピールする必要があるの?
ベリーズのお仲間に?
オカール様に?
それとも……私たちに?)
662
:
名無し募集中。。。
:2017/05/19(金) 13:16:59
さすがハロプロ運動会尻相撲優勝者なだけはあるw
体はって後輩達に何かを伝えようとしているのか・・・
663
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/05/22(月) 12:42:21
「クソッタレが……ここで終わってたまるかよ……」
機動力を奪われたとしてもオカールは止まらない。
クマイチャンの起こした地割れによって足場がガタガタになっていると言うのに、
這ってでもモモコの元へと向かおうとしている。
こんなコンディションでモモコに勝てるのかどうかは疑問だが、
動くことすら諦めたら、その瞬間に勝率は0パーセントとなってしまう。
だからこそオカールは執念と根性を見せて、前進し続けたのである。
いざ、進め!Steady go!の精神を忘れなかったからか、
ここで強力な援軍が駆けつけてくれた。
「加勢、するよ。」
「なんだ……ナカサキかよ」
隣にナカサキが並んだことに気付いた時点で、オカールはわざとらしく溜息をついた。
「自分一人でもモモコに勝てたのに」と言いたげだが、
内心はとても心強く感じている。
「しゃあねぇな、一緒に戦いたいなら共闘してやってもいいけどよ。」
「ふふっ、お願い。」
「でもさ、あっちは放っておいていいのか?シミハムとクマイチャンに二人がかりりで来られたら……」
「団長は絶対に負けない、でしょ?」
「ハッ、違いないや。」
会話をしているうちに、ナカサキはオカールをおんぶしていた。
壊れたオカールの脚の代わりになろうとしているのである。
「うっ重……でも気にしないでね、下半身を確変させたらこのくらいなんともなくなるから!」
「あ、今ムカッときた」
絶体絶命のピンチだったが、前進を諦めなかった結果としてオカールは勝利の可能性を潰さずに済んだ。
今回のケースではそれで良かったのかもしれないが、
同時刻の異なる場所にいる集団は、いくら「前へ前へ」と思い続けていてもどうにもならなかったようだ。
「さーて、これで全部折り終わったかな?」
そこに立っているのはベリーズのチナミただ一人だけ
帝国剣士、番長、KASTら若手戦士らは一人残らず地に寝かされている。
チナミの刀狩りによって、なにもかもを折られてしまったのだ。
664
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/05/24(水) 12:28:25
書く時間を取れてないので
ひとまずオマケ更新にします。
オマケ更新
もしも近隣国の大運動会が本当に開催されたら
サユキ「たいへん!カリンが前の競技で怪我しちゃった!」
アーリー「えー!じゃあ国別対抗リレーはどうなるん!?」
トモ「ランナーが揃ってない以上棄権するしかないだろうな……悔しいけど」
ユカニャ「諦めるのはまだ早いわ!」
AST「「「!?」」」
ユカニャ「あのお方に代走を頼むよ……みんなついてきて!」
トモ「ま、まさか……」
この続きはDVDマガジンを見てください。
665
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/05/24(水) 12:32:43
この後はこうなります(DVDマガジンのネタバレ注意)
http://livedoor.blogimg.jp/cutesokuhou/imgs/c/e/cefee43a.jpg
666
:
名無し募集中。。。
:2017/05/24(水) 14:52:33
こっちの世界のマイミに頼むなんて…なんて命知らずなw
負けたりした日には地獄の特訓が…
667
:
名無し募集中。。。
:2017/05/25(木) 22:23:13
それぞれの戦い方や特徴的に
オカールをおぶるよりもナカサキ自身が攻めていった方がモモコに勝つ可能性はあると思うんだけど
その辺ナカサキはオカールをどう使うのか…
今後も目が離せないな
668
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/02(金) 08:36:05
チナミは物理的なものと精神的なものの、計2つを破壊していた。
そのうちの1つ目は「武器」だ。
武器職人の彼女にとっては、相手の得物を折ることなど赤子の手をひねるように容易く行うことが出来る。
そうしてサヤシの居合刀を、アユミンの太刀を、ハルの竹刀を、オダのブロードソードを、
サユキのヌンチャクを、カリンの釵を、アーリーのトンファーを真っ二つにしてみせたのである。
しかもそれらの自慢の武器を壊してみせたのが、つい先ほどにほんの短納期で作った「鉤爪」なのだから衝撃は大きい。
唯一、エリポンの打刀だけはその重厚さゆえか刀身を切断できていなかったが、
長い腕と暴力的なまでの身体能力差で強引に奪い取っては、刀をその辺に投げ捨てていた。
自分より力強かった戦士が簡単にあしらわれたため、アーリーが感じるショックは計り知れなかっただろう。
「そんな……エリポンさんまで……」
武器が壊されたりしたら大抵の戦士は、戦闘能力が半減する。
特に、剣術を扱うモーニング帝国剣士にとっては戦う術そのものを奪われてしまったに等しいだろう。
だが、KASTは違った。
彼女ら果実の国の戦闘集団は(今この場に居ないトモも含めて)戦うのに武器を必須としない。
「だったら!ウチがやったるわ!!!!」
恐怖からなる涙で顔をぐちゃぐちゃにしながらも、アーリーは勇気を振り絞ってチナミに飛びかかった。
そして今出せる全力のパワーで抱きしめるのだった。
アーリーが力でエリポンに遅れをとっていたのはもう昔の話。
220を越える実戦経験で鍛えられたアーリーの膂力は、過去の何倍にも強化されていたのだ。
「"Full Squeeeeeeeeeze"!!!!」
固い柱だろうと、鉄の機械兵だろうと、なんでも圧してしまうアーリーの必殺技が決まった。
そして、KASTの猛攻はこれで止まりはしない。
アーリーがチナミを抑えているうちに、
サユキは大空を飛翔し、カリンは大地をしっかりと踏みつけながら倒すべき敵に接近していたのだ。
サユキは強烈な蹴りを首にぶち当てて、
カリンは得意の高速行動でチナミの細い足を数十発もの突きで壊そうとした。
「二人とも今や!!」
「「たぁーーーー!!!」」
669
:
名無し募集中。。。
:2017/06/03(土) 20:45:28
やったか!?
670
:
◆V9ncA8v9YI
:2017/06/06(火) 13:00:16
「痛ーーーーーーーーっ!!」
KAS(カリン・アーリー・サユキ)の猛攻を浴びたチナミは、たまらずに苦痛の叫びをあげていた。
これだけ苦しんでるのだから、この息もつかせぬ波状攻撃は有効だったのだろう。
これにはKASだけでなく帝国剣士らも手応えを感じている。
しかしそんな中で、ハル・チェ・ドゥーは険しい顔を続けていた。
「これじゃダメだ……さっきと一緒だ……」
ハルはアンジュの番長たちがチナミと戦う様をその目で見ていた。
さっきだって番長らの攻撃は効いたように見えたし、
チナミだって苦しみ悶えていた。
それでも、勝てなかったのだ。
今回もチナミは右手にとっておきを隠し持っている。
この一瞬のうちに、新たな武器を精製していたのである。
「あぁ危なかった、団長が三節棍を使ってなかったらどうなることだったか」
チナミの持つ武器は、二つのヌンチャクをドッキングさせたような「四節棍」だった。
多節棍の整備に手馴れていたチナミは、
アーリーにギューっと締め付けられた状態でもこの武器を作り上げてしまったのだ。
依然変わらずアーリーにホールドされたまま、手首のスナップを効かせるだけで連結ヌンチャクをヒョイと操っていく。
狙いは蹴りを決めた後に地面に着地せんとする、サユキの顔面だ。
四つも棍があるのだから、ちょっとやそっと離れていようが届くのである。
「そりゃ!」
「!!!」
最も破壊力のある棍の先端をぶつけられたサユキは、たまらずノビてしまった。
まさかこの状況からチナミからの反撃が来るとは考えにくかったし、
覚悟できていたとしても空中での防御はどうしても不十分になる。
ゆえにほぼノーガードで連結ヌンチャクによる手痛い打撃を受けることになったのだ。
「だ、大丈夫!?」
これに動揺したのはアーリーだ。
仲間がやられてもチナミを抱きしめ続ける任務遂行意識は立派だが、
そこに若干の緩みが生じてしまった。
そのちょっとの隙間なら、細身のチナミは抜けられる。
「やった!これで自由の身だーー!!」
「あっ!!」
焦ったアーリーがもう一度チナミを捕捉しようとしたが、
その時点で、敵は既に攻撃の構えをとっていた。
連結を解放し、元の二つのヌンチャクに戻して両方の手で持ったうえで、
まるでトンファーを扱うかのようにグルグルと回転させ始めたのである。
おさらいになるが、このヌンチャクはさっきまでカギ爪だったものをチナミの超絶技術力で加工したものだ。
ゆえに鉄製。
鉄の硬度に回転力が加わり、さらに長身かつ腕の長いチナミが高くから振り下ろしたのだから、
アーリーの両肩にかかる衝撃は弱いはずがなかった。
「うぐっ……」
肉をエグられたかのような痛みに耐え切れず、アーリーの脳は意識を遮断してしまう。
となればKASで残されたのはカリンのみ。
頼れる味方が次々と倒れゆくのは辛いが、ここは一人でやるしかない。
必殺技の超スピードで圧倒することだけをカリンは考えている。
「"早送りスタート"!……ああっっ!!」
必殺技を使おうとした瞬間、カリンの全身に激痛が走った。
戦闘時のカリンはアドレナリンの効果で痛みを感じにくいはずなのだが、
この痛みはそのガードすらもブチ破って襲って来る。
カリンの「早送りスタート」は肉体の限界を超えて行動の速度を一時的に加速させる必殺技。
しかし無理のある技ゆえに発動にはある程度のインターバルを必要とするのだ。
機械兵を倒す際に一度使ってしまったため、
いざここで「早送りスタート」を行おうとしても、身体が言うことを聞かないのである。
痛みに苦しむカリンを見て、チナミが共感する。
「分かる〜!私もいますっごく身体が痛いんだ! そこのアーリーって子にハグされてから腕の筋肉がブチブチ言ってて……
こんな時はさ、治療するに限るよね!」
そう言ってチナミはどこからともなく細かな針を数十個取り出した。
そして次の瞬間、信じられないような行動をとったのだ。
「仲良しの、頭がすっごく良いお医者さんに教わったんだけどさ、この針治療ってのが効くんだよ。」
「!!?」
チナミはなんと自身の両腕に細かな針を次々と刺していったのだ。
これは明らかな自傷行為。頭のネジがどこかに飛んでしまったのかと思ったが、
チナミはいたって真面目。
「うーん効く〜〜!! 元気百倍!これでまだまだ戦えるね。」
「えっ!?ど、どういうこと?……」
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