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( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。 双
1
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:37:04 ID:w.OycBSI0
お久しぶりです。2年ほど放置してしまいました。すみません。
VIPはすぐ落ちるとのことなので、こちらをお借りさせていただきます。
今回は最終話一つ前の第7話です。遅かったくせにすみません。
ご存じない方は、下記URLを参考ください。
ブーン文丸新聞 様
第一部 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/retire/retire.htm
第二部完結編 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/retire2/retire2.htm
では、開始します。
2
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:38:24 ID:w.OycBSI0
/ ,' 3「…来たかい、ロマネスク君」
( ФωФ)「ハッ!」
王都『NEET』
VIP大陸の中枢にして、最堅の城塞都市だ。
都市の周りは高い城壁で囲まれており、空中にも結界が張り巡らされている。
唯一出入りの出来る門は、選りすぐりの小隊が守っておりセキュリティ面でも万全。
街並みは古きよき文化の伝統を受け継いだままだが、所々で魔法による影響により発達した文明が頭角を現している。
手紙のやり取りは伝書鳩ではなく、文面そのものを相手の家へ送信する『電報魔法』の普及によりスピーディとなり
火炎魔法と物質変換魔法の応用によって、都市の内部の移動は『鉄道』で出来るようになった。
魔法が使える者も、そうでないものも皆平等にその利便さを満喫できるよう、文化革命が起こっている。
その中心にあるのが、この王都NEETなのだ。
さて、
そんな都市のど真ん中に、高くそびえる城がある。
ステンドグラスやコリントの装飾が施されている柱。
ピラミッドを作るように土台から最上階まで面積が狭くなるつくりの古代式の城
そこがこの大陸の最高権力者、スカルチノフ王が住むNEET城である。
3
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:39:52 ID:w.OycBSI0
急な電報魔法を受けたロマネスクは、遠く離れた王都へ馬車を走らせ一日かけてたどり着いた。
そして今、謁見の間にて膝をつき頭を垂れて王と対峙しているのだ。
/ ,' 3「急ですまないね。
聖騎士でもあり、養成学校の教官でもある君を呼び出すのは忍びないことだったのじゃが…」
( ФωФ)「いえ、王の命より大事なことはございません。
して、私に一体何の用でございましょうか…?」
/ ,' 3「うむ。一年ほど前からかの。彼を感じるのじゃよ」
( ФωФ)「彼…?」
/ ,' 3「あれほどの魔力、そして独特の波動を持つ人間は二人とおるまい」
ロマネスク王は蓄えられた髭を撫でながら、小さな悪戯でもするかのように勿体ぶってから言った。
/ ,' 3「モララー=レンデセイバーの魔法の発動を感じるのじゃ」
(; ФωФ)「モララー殿のっ!?」
思わず立ち上がって驚いてしまうロマネスク。
慌ててその愚行に気づき、再び跪くが、スカルチノフは立ち上がることを許す。
今日は近衛騎士や魔術師も傍に置いていない。
戦前からよく目をつけられ、年齢差はあれども『友』として認められていたからこその対応だ。
故にスカルチノフは、ロマネスクを何度も近衛騎士へと昇格させようとしたが、ロマネスク自身がそれを拒否した。
常に戦線の最先端へ、そして街にも目を張り巡らせるためには近衛騎士ではなく聖騎士で十分なのだ。
破格の給与、栄誉が与えられるというのに、それを蹴り大陸のことを思った心身ともに立派な騎士の考えを無下には出来ない。
そう考え、スカルチノフも彼の意思を重んじ聖騎士のまま、それでありこれからも友人であることを約束させ戦後の措置を行ったのだった。
4
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:41:07 ID:w.OycBSI0
/ ,' 3「近衛魔術師ぐらいしか使えぬ空間転移魔法の発動。
一度きりじゃったが、物質認識転移魔法も感じた。あれは彼オリジナルの魔法じゃ、間違えるはずもない」
/ ,' 3「そして、つい先日のことじゃ。大魔法の発動を感じたよ」
( ФωФ)「大魔法の…?」
/ ,' 3「あぁ。ワシでもまだ上手く扱えない大魔法を軽々と使っておったみたいじゃよ…。それも連発での」
( ФωФ)「……して、王様。私を呼び出した理由とは?」
/ ,' 3「うむ。話が長くなってすまんの」
今度は、真摯に真面目にロマネスクは共へ頼みごとをした。
/ ,' 3「簡単な理由じゃよ。ワシと一緒に、とある場所へ来て欲しいのじゃ」
( ФωФ)「とある場所…?」
―――
―――――
―――――――
5
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:41:55 ID:w.OycBSI0
(; ∀ )「……」
秋風の吹く山間の開拓地。
一年間かけて、ただの荒野を畑へと変貌させたその土地で彼は今日も畑仕事に精を出す。
流れる汗も、身体にまとわりつくシャツも、振り上げられる鍬もいつも通り。
ただ一つ、違う所がある。
いつだって絶やさなかったその笑顔が……そこにはないのだ。
すぐ側にはトソンが同じように手伝っている。
誰かが居るとき、彼は決して自分の心の内を顔には出さなかった。
怒っている時だって、嘆いている時だって
彼は薄ら笑みを浮かべで、そのすべてを達観するようにして立っていた。
先日撃退した、ラウンジ大陸最強の武士、毒田ドクオとの激戦以降
モララーの中から『余裕』という言葉が消えてしまったのだった……。
第7話『少年の悩み』
6
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:43:24 ID:w.OycBSI0
(゚、゚;トソン「ふぅ…そろそろ休憩にしませんか?」
軍手をつけたまま、首にかけたタオルで顔を拭きながらトソンが問う。
涼しくなってきたとはいえ、農業のような重労働をすれば汗は自ずと垂れてくる。
この一年で季節ごとの太陽の動きを覚えていたトソンはお昼時だと判断し、お腹の虫との決議も経てその提案をモララーにしたのだった。
(; ∀ )「…あぁ、そうだね。僕はもうちょっとやれそうだから、先に休んでくれてていいよ」
(゚、゚;トソン「……そうですか」
言葉通りにトソンは行動を開始する。
農具は一度その場に置き、軍手を外して小屋の方へと歩いていく。
(゚、゚トソン(最近、どうも一人になりたがってるみたいなんですよね…)
現在では、一番近しい者だからこそ気づく違和感。
食事も極力一緒に取りたがらず、行動は同じでも言葉で交わろうとしてくれない。
( 、 トソン(何か嫌われるようなことをしてしまったのでしょうか…)
別段、おかしなことをした記憶は無い。
大事な物や記憶に触れたり、無神経な台詞を投げかけたこともない。
明確にわかっていることは、自分が熱を出した期間からこうなってしまったことだ。
もしかすると…寝言で素性をバラしてしまったのか?
疑問は更なる疑問を生む。
結局は、答案を見なければ悩み続けるだけだというのだが…その勇気はまだ持てない。
理由は単純。
今の関係が壊れてしまうのが怖いから。
7
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:44:21 ID:w.OycBSI0
自分は彼の傍に居たいし、離れるつもりもない。
記憶喪失したまま、ただのラウンジ大陸民という設定でこれからも付き合っていきたいと心から願っている。
たとえ心の広いモララーといえども、自分を目標にした暗殺者が傍にいてのうのうと暮らしている、と知ったら拒絶することは必至だろう。
それが嫌だから、トソンはいつまでも記憶が戻っていないフリを続けていた。
(゚、゚トソン「……」
でも、こうなってからは薄々思ってしまう。
彼は優しい人だ。
発熱時、自分が素性を話してしまったとしてもすぐには言ってこないだろう。
何よりもっと単純に。彼は至高の魔法使いだ。
気になって魔法を使えば、武士である自分には全く気付かれず全てを知ることなんて簡単なことだろう。
一人になりたがるのは、そのことに対して悩んでいるからだろうか…。
ふと、視界に入っている森の奥が青白く光る。
そういえば今日は休日だっけ。
朝早くではなく、お昼頃にわざわざ来るのは彼らなりの気遣いなのだろうか。
( ^ω^)「こんにちはーだお」
いつものように、声の大きいブーンが一番前に立ち大きく手を振って歩いてくる。
後ろにはツンとショボン。珍しくツーも今日は来ていた。
8
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:45:21 ID:w.OycBSI0
(゚、゚トソン「いらっしゃい。モララーさんもすぐ来るから、入って待ってて」
ニコリと笑顔を浮かべてトソンは小屋へと子供たちを案内した。
ガチャリ。戸の開ける音を立てて、モララーは静かに小屋へ入ってきた。
( ^ω^)「あ、モララーさん! こんにちはだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「こんにちは。お邪魔してます」
(*゚∀゚)「よーモララー兄ちゃん!」
(´・ω・`)「今日は随分と精が出ていたみたいですね」
(; ∀ )「……」
みんなの言葉をモララーは無言で受け止める。
そして、彼はそれに対して何か反応をすることなく、入ってきた時のように静かに屋根裏へと足を進めた。
余りの今までとの反応の違いに、子ども達はしばし放心する。
ブーンはツンと見つめあってから首をかしげ、
ツーは食べかけのお茶菓子をフォークに突き刺したまま停止、
ショボンはそんな彼らを見て、自分なりに何かわからないかと分析しようとしていた。
(゚、゚トソン「……あの、もしかして体調でも悪いんですか?」
心配になったトソンは、汗のついた服も変えずにベッドに身を投げ出していたモララーを気遣った。
( ∀ )「……いや、そんなことはないよ。心配をかけてごめんね」
9
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:46:19 ID:w.OycBSI0
腕で目を覆いながら、モララーは若干のラグを作ってから問いに答える。
そして、再び間を置いてから言葉を紡いだ。
( ∀ )「本当に申し訳ないんだけど……ちょっとだけ静かにしていて欲しいんだ」
(゚、゚トソン「……わかりました」
トソンは少し考えてから、階下に降りていく。
その言葉の意味を理解し、トソンは優しく子どもたちにお願いをした。
(゚、゚トソン「ごめんね、モララーさんちょっとだけ疲れてるみたいなの。
少し休めば回復するみたいだから、今日は外でピクニックでもしましょうか」
(*゚∀゚)「おー! いいな、それ!」
ξ゚⊿゚)ξ「疲れてるって……本当に大丈夫なんですか? モララーさん」
(゚、゚トソン「心配はいらないから、行こうか。今日はお天気もいいし!」
(´・ω・`)「まぁ、外はびっくりするくらいの曇天ですけどね」
(^、^;トソン「と、とにかく行こう!」
( ^ω^)(……大魔法を使ったから疲れたのかお?
いや、モララーさんがそれくらいで疲れるわけないおね)
ξ゚⊿゚)ξ(じゃあ、もっと別の……?)
(´・ω・`)(何にせよ、そっとしておくのが守られた側の礼儀だろうね)
トソンに背中を押されながら、先日の死闘を見ていた子ども達は各々理由を探しながら外へ出た。
何も知らないツーだけが、年相応らしく外へと駆け出して行ったのだった……。
(゚、゚トソン(……)
その時、子どもの背を押しているトソン自身は――――
10
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:47:20 ID:w.OycBSI0
( ∀ )(……僕は……)
扉の閉まる音が聞こえると、静寂が訪れた。
少しの間、子ども達の喧騒も聞こえていたが数分もすればそれも無くなる。
風の音すら聞こえない、完全な無音空間。
いつ以来だろう。一人になるのは……。
戦争を終えてから、数ヶ月。ここを見つけて、僕は居住を始めた。
それから約10年。ただひたすら孤独だった。
実際は、ツーちゃんの所に行ったりして交流自体はあったが……家に帰れば一人だった。
そもそも、何で僕は独りを望んだんだっけ?
名誉を受け、お城で豪華絢爛な生活もあり得た。
そうでなくとも、十分な賞与をもらってどこかに自分の街を造ることだって可能だったはずだ。
それでも、それすらも蹴って僕は何故独りを願ったんだ?
人付き合いが苦手だから? お金が嫌いだから? 富も名誉も必要ないから?
――――――違う。
11
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:48:39 ID:w.OycBSI0
怖いんだ。
怖かったんだ。
僕は、戦争の功績者だ。しかし、それを裏返せば、ラウンジ大陸にとって最高の仇敵でもある。
つまり、常に命を狙われる立場なんだ。それは決して敵対大陸だけの問題じゃない。
シャキンさんのような野心家だって、たくさん見て来た。
僕の立場を利用する人だってたくさん出てくるだろう。
齢15で戦線に立った僕は、政(まつりごと)にそこまで詳しいわけじゃない。
下手をすれば、知らずにとんでもない殺戮に手を貸すかもしれない。反乱だってありうる。
人の世は、結局は醜悪だったんだ。それは、あの戦争を一番前で見て来た僕が一番知っているじゃないか。
だからこそ、たかが一人の若造である僕が知った、わずかな世界の知識を元に出した結論が……
独りになることだったんだ。
何でそうなるかなんて、当たり前だ。
僕は、まだ若い。いや、正しくは青いんだ。
魔術に関する知識は長けていても、人間社会の知識は一般人未満だ。
力ばかり持っている自分が、何かを手元に置いてそれを守りきれるだろうか。
膨大な力に惹かれた人間を前にして、僕はちゃんと守りたいものを守れるのだろうか。
―――――――無理だ。無理なんだ。
そこまで僕は出来た人間じゃない。全然完成されていない。
ケツロン
だから、出した甘っちょろい幻想が孤独だったんだ。
どうして、それを僕は忘れてしまったのだろう。
なんで、一年以上も僕は考えなしに彼らを受け入れてしまったのだろう。
――――――今も、トソンさんと同じ屋根の下で共に暮らしている理由は何なんだろう……。
12
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:49:32 ID:w.OycBSI0
わからない?
いや、わかってる。
知ってるんだ。
悪辣な世の中であっても、パンドラの箱のように一握りの希望がある。
僕はあの戦争で、醜さと一緒に人の温かさを知ったんだ。
ロマネスクさん、デレさん、ミルナさん、他にもたくさんたくさん……
あぁ、特に僕のことを、多分……誰よりも欲し、誰よりも好くしてくれたのは、他でもないスカルチノフ国王だった。
全てを持っているのに国王は、僕を一人の孫のように扱ってくれた。
だからこそ、独りになりたいという僕の言葉を、少し悲しそうに、けど喜んで聞いてくれた。
本当に嬉しかった。国をあげてでも引き止められる、くらいの覚悟はしていたのに……本当に、ありがたい。
そうなんだ。結局はそうなんだよ。
禁断の果実を口にした原初の人間のように、知ってしまったら抗えない。
僕は、人付き合いが怖くて嫌いな癖に……大好きなんだ。
( ∀ )「……はは」
乾いた笑いが思わず零れる。
なんだそれ。矛盾してる。怖くて嫌いな癖に好きなのかよ。
どうかしてるよ。
(゚、゚トソン「……あの」
(; ・∀・)「うわっ!?」
13
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:50:37 ID:w.OycBSI0
突然声をかけられたモララーは、普段ならあり得ないような声を出して飛びのいた。
いつの間にか、目の前にはトソンが立っていたのだ。
(; ・∀・)「ど、どうしたの? みんなは?」
(゚、゚トソン「忘れ物を取りに、と言って一旦戻ってきただけです。すぐに戻りますよ
あ、あと勝手に入ったわけではなく、ノックもしましたし何度か声はかけていたんですが……」
(; ・∀・)「そうなんだ……気づかなくてゴメン」
(゚、゚トソン「いえ……」
(; ・∀・)「……」
(゚、゚トソン「……」
沈黙が訪れる。
忘れ物を取りに来たなら、さっさとそれを取って戻ればいいじゃないか。
……と無粋なことを考えてしまうが、モララーはその言い訳が本心でないことはとっくに気づいている。
そもそも、外へ出て行ったのですら大した理由もないピクニックなんだ。
何を忘れるものがあるのだ。
トソンは、モララーに何かを言いに戻ってきた。それぐらいは、鈍感であるモララーだってわかっていた。
しかし、中々口を開かないトソンに対してモララーは出方を窺う以外に対処法がなかったのだ。
ただ、ベッドに腰をかけたまま俯いて固まるだけ。
(゚、゚トソン「あの、隣、良いですか?」
( ・∀・)「……どうぞ」
腰を少しズラして、座るスペースをモララーは作る。
その行動に対し、トソンは軽くお礼を言ってから、失礼しますと小さく言いモララーの横へ移動した。
14
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:51:21 ID:w.OycBSI0
(゚、゚トソン「……」
( ・∀・)「……」
時計の音すら聞こえない。彼の家に時計はないから。
ただただ、重い静寂だけが屋内を満たしている。
こんな空間を作っているのは果たして誰なのか。
モララーが勝手にそうしているのか。トソンが知らずに作っているのか。
考えを張り巡らせようとしたその時、トソンがゆっくり口を開いた。
(゚、゚トソン「……私が寝込んでいた時のことですけど」
( ・∀・)「……うん」
(゚、゚トソン「実は、何が起こっていたのか、ブーン君たちに聞きました」
( ・∀・)「……そっか」
(゚、゚トソン「ただ寝ていただけで、何も出来ませんでしたけど……
何をしてもらったかは、わかってます」
トソンはそう言うと、膝の上で固く結ばれていたモララーの拳に手を乗せた。
そして、優しく包み込むように握る。
行動の唐突さに、少し動揺したモララーがトソンを見る。
それに対し、トソンは微笑みながら心を込めて、ずっと前から言いたかった言葉をモララーに伝えた。
(-、-トソン「私を助けてくれて、ありがとうございました」
15
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:52:22 ID:w.OycBSI0
( ∀ )「……!」
(゚、゚トソン「何をどうやって、どうしてそうなったか何てものは知りません。あえて言います、知りたくないです。
それでも、モララーさんが私を、子ども達を、その身を呈して命がけで守ってくれたこと、それだけは事実です」
(゚、゚トソン「今回だけではないです。
初めて会った時も、しっかりお礼を言っていなかったので……随分遅くなってしまいましたが
本当に本当に感謝しているんです。私に生きる道を与えてくれて……」
( ∀ )「……トソンさん」
(゚、゚トソン「はい」
( ∀ )「僕は、そんな立派な人間じゃないよ。生きる道を与えたなんて、そんなことはしてない。
それはキミ自身が持ってる強さだよ。僕は、何もしてなんかいない」
いつになく、いつもより……いや、本当はいつだって。
モララーは弱弱しく言った。
自分は立派な人間じゃない。
ただの殺戮人形だってことを、誰よりも一番コンプレックスにしているからこそ。
志も、祈りも、それは、そんな自分を遠ざけないでくれ、という彼の心の叫びだったんだ。
( ・∀・)「助かったのは、キミの力だよ、トソンさん」
(゚、゚トソン「…………いいえ」
( ・∀・)「え?」
(゚、゚トソン「違います。まぎれもなく、あなたは私を、私たちを救いました。
それは事実です。あなたがそれを否定しても、その倍、私は肯定します」
( ・∀・)「トソンさん……」
(゚、゚トソン「卑下しないでください。弱気にならないでください。後悔しないでください。
例え、間違ったことがあったとしても、結果的に私たちは救われているんです。」
(゚、゚トソン「だから、そんなに自分を拒絶しないでください。
モララーさんは、自分で思っているより、ずっと、ずっと」
(^、^トソン「ずーっと、素敵な人なんですよ」
16
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:53:15 ID:w.OycBSI0
( ∀ )「トソン……さん……」
優しい笑顔をモララーは凝視できなかった。
眩しすぎた。いや、そんな崇高な理由じゃない。
単純だ。
嬉しかったんだ。ありがかったんだ。
『知らない』とはいえ、彼女はラウンジ大陸の人。
そんな人に、こうやって心から感謝される日が来るなんて思ってなかったから。
何よりも。
他人が、他人が、と遠ざけていたのは……自分だったのだ。
怖いから、嫌いになって欲しくないから。その気持ちが、逆に働いていた。
なんて滑稽なことなのだろう。自分を殴りつけたくなる衝動をモララーは抑える。
……それに、いつまで虚勢を張ってるんだ。
モララーは、やっと本心に気づく。
ツーに、ブーンに、ツンに、ショボンに、ロマネスクに、デレに、ミランに
誰に言われるのでもない。
都村トソン、という女性にそう言われたのが何より嬉しいんだ。
モララーは、拳をほどくと、農業によって少し日焼けをしているその小さな手を握る。
17
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:54:21 ID:w.OycBSI0
( ・∀・)「トソンさん」
(゚、゚トソン「はい」
( ・∀・)「ありがとう。未熟で、薄弱な僕だけど……」
( ・∀・)「これからも、そういって貰える人を、一人でも増やすため僕は、頑張るよ」
(゚、゚トソン「えぇ」
(: ∀ )「……だから、その」
(゚、゚トソン「はい」
( ・∀・)「こ――――」
その先の言葉をモララーは紡げなかった。
遮られたのだ。扉を叩く音によって。
(゚、゚トソン「……誰でしょう?」
余りに無粋なタイミングだったが、すぐに現実に戻ったトソンが至極当然の疑問を口にする。
子ども達だろうか? だったら、すぐさま声をかければいい。
だが、言葉は聞こえてこない。
代わりに、規則的な音が小屋内に響いている。
それだけで、何か物が当たったわけではないことがわかった。
間違いなく、そこに人が居る。知らない誰かが。
( ・∀・)「……トソンさん。そこを動かないようにね」
(゚、゚トソン「はい」
18
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:56:23 ID:w.OycBSI0
モララーは立ち上がり、扉へ近づく。
ノックをする、ということはラウンジの人間ではないことはわかっている。
彼らには扉を叩く風習がない。
扉……彼らの場合は、戸の前に立ち、いきなり声をあげて自分の所在を知らせるのだ。
と、すればやはり以前のようにラウンジの人間が来たわけではないだろう。
子ども達でもない、ラウンジの人間でもない。
つまり、VIP大陸の何者かがここに来たのだ。
ブーンのように漂流人だろうか?
何にせよ警戒を怠ってはいけないだろう。
( ´∀`) =3 ポンッ!
モララーは最も得意な人へ、変化の呪文をかけた。
体格も人相も、全てが他人。
初老の男性、モナーへと変化した彼は、そっとドアノブに手をかけようとした。
その時だった。
「ほっほっほ。やはり、キミだったか」
19
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:58:00 ID:w.OycBSI0
(: ´∀`)「!」
こちらから出る前に、入り口にいる人間から声をかけてきた。
モナーのように、皺枯れた男性の声。
声だけ聴けば、何の変哲もない声だったろう。
しかし、それでもモナー、いやモララーには体中に電撃が走るほどの衝撃だった。
(: ・∀・) =3(まさか……!?)
慌てて変化の魔法を解きながら、モララーは勢いよく扉を開けた。
/ ,' 3「久しぶりじゃね、モララーくん」
(: ・∀・)「スカルチノフ……国王……!」
最終話へつづく……
20
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/12(木) 22:58:54 ID:w.OycBSI0
時間を置いたわりに短くてすみません。
最終話は今月中にはあげるので、よろしくお願いします。
普通にVIPであげた方が良かったかもですね。
21
:
名も無きAAのようです
:2012/07/12(木) 23:27:45 ID:EOwA7npU0
嘘だろ・・・続きが読める日がくるとは・・・お帰り!
22
:
名も無きAAのようです
:2012/07/12(木) 23:38:21 ID:BUR6wMUkO
続き待ってた!乙
23
:
名も無きAAのようです
:2012/07/12(木) 23:39:19 ID:qjnFtbgE0
お帰り
乙
24
:
名も無きAAのようです
:2012/07/12(木) 23:50:28 ID:NmtzNv0E0
正直、諦めていた…
戻ってきてくれて有難う、有難う
25
:
名も無きAAのようです
:2012/07/13(金) 00:40:47 ID:1PYxIUCkO
乙だが、ミランって誰?ミルナの誤字?
26
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/13(金) 00:49:39 ID:nBcM8dA60
>>25
誤字ですね。ミルナ、と書くべきところでした。
設定上ですが、ミルナの本名がミランです。すみません。
そして、3年も経ってまだ覚えていてくださる方々がいて嬉しいです。
あと一話だけですが、頑張ります。ありがとうございます。
27
:
名も無きAAのようです
:2012/07/13(金) 00:52:59 ID:q5jVELg.0
乙!
復活してくれて嬉しい
28
:
名も無きAAのようです
:2012/07/13(金) 01:43:48 ID:KzLmjJs2O
帰ってくるとは…
最終話も楽しみにしてる
29
:
名も無きAAのようです
:2012/07/13(金) 11:33:35 ID:hDLBQLEYO
ちょうどこの前読み返したばかりだった
乙
30
:
名も無きAAのようです
:2012/07/13(金) 13:30:34 ID:GnRk7CWE0
まじでかよ
スレ覧で衝撃受けた
乙
31
:
名も無きAAのようです
:2012/07/13(金) 15:24:03 ID:pbsZ5HSMO
タイトルは知ってたけど読んでなかった
前作から読んできたよ
32
:
名も無きAAのようです
:2012/07/13(金) 18:12:28 ID:KE6afMLMO
ブログ更新しないのか
33
:
名も無きAAのようです
:2012/07/14(土) 05:34:28 ID:Rh1S/2rUO
懐かしすぎワロタ
おかえり
34
:
名も無きAAのようです
:2012/07/14(土) 08:08:24 ID:N6thy2two
貴様ァァ
何回戻ってきて欲しいスレに書いたと思ってんだ!
俺は嬉しいぞ!
乙
35
:
名も無きAAのようです
:2012/07/14(土) 21:00:11 ID:4OtYrMxc0
おかえりぃぃぃぃ!!!
乙です
36
:
名も無きAAのようです
:2012/07/15(日) 04:15:51 ID:0Duv4Uds0
まじか!おかえりいいいいいいい!
37
:
名も無きAAのようです
:2012/07/16(月) 19:24:54 ID:52tJgaj.0
うほ
38
:
名も無きAAのようです
:2012/07/17(火) 06:01:10 ID:78hjOusw0
素晴らしい
39
:
名も無きAAのようです
:2012/07/17(火) 07:02:50 ID:kzCrd4TIO
そういやAll for one〜はどうすんのアレ完結してないよね?
40
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/17(火) 13:08:42 ID:yA095mk60
>>39
そちらも勿論書いていきます。再開までは、ちょっと時間がかかるかもしれませんが……。投げっぱなしはしたくないので。
もともと、長い一話を投下する作品ではないので、波に乗れば更新頻度は早くいけると思います。
41
:
名も無きAAのようです
:2012/07/17(火) 21:51:16 ID:kzCrd4TIO
>>40
うおーマジか
楽しみにしてる
42
:
名も無きAAのようです
:2012/07/18(水) 00:11:19 ID:S2wU4SkgO
おかえりー!
待ってたー
43
:
名も無きAAのようです
:2012/07/18(水) 00:15:30 ID:2h.uvt.oO
Afoofの人だったのか!!
あの作品ずっと待ってるんだから更新してくれ!!
もちろんツンルートで
44
:
名も無きAAのようです
:2012/07/20(金) 00:15:30 ID:bKGRityQ0
待ってたぜ!乙!
45
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:31:38 ID:VC0QHqzQ0
私のミスで、新しくスレを立ててしまいました。
こちらで投下しますので、ご注意ください。
では、最終話いきます。
46
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:33:04 ID:VC0QHqzQ0
/ ,' 3「久方ぶりじゃのう、モララーくん」
枯れた喉から発されたのは、柔らかくも気高さを感じさせる言葉。
懐旧のこもったその言葉にはどこか優しさも覚える。
(; ・∀・)「何故……こちらが……?」
/ ,' 3「まぁ、それは追々話すとしよう。立ち話もなんじゃ、キミさえよければ上がらせて頂きたいのじゃが」
ドアノブを手にしたまま、半身になってモララーは対応していた。
その余りの不敬さに、モララーは自分を恥じると同時に謝罪の言葉を紡ぐ。
(; ・∀・)「し、失礼しました。どうぞ、何分窮屈な場所でございますが……」
/ ,' 3「そこまでかしこまらなくて結構じゃよ。
ワシはキミに、国王と匹敵するほどの位、大魔術師の称号を捧げたつもりじゃ。
昔のように、盟友(とも)として接してくれればよいぞ」
ほっほっほっ、とスカルチノフ国王は、嫌味さを感じさせない笑いでモララーを許した。
いや、元より不敬などとは、彼は思ってもいない。
立場上、その厳しさを見せることはあれ、平時の彼は王ではなく一人の老人なのだ。
( ・∀・)「……ありがとうございます。では、改めて。いらっしゃいませ」
/ ,' 3「うむ。お、そうじゃ。ロマネスクくん、キミも入りなさい」
( ФωФ)「ハッ!」
キレのある返事と共に、扉の影からヌッと大男が出てきた。
黒騎士に与えられる、金の装飾が入った墨色の全身鎧を着こんでいる。背にはVIP大陸の紋章が刻まれたマントも着用していた。
背中には身の丈ほどもある大剣を携えた彼は、有事のロマネスク・ホライゾネルに他ならない。
47
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:34:44 ID:VC0QHqzQ0
王衣も羽織らず、動きやすい普段着のスカルチノフに対し、彼の格好はとんでもなく場違いにさえ見えた。
しかし、ここまでの道のりや他の護衛がない以上は、それくらいの準備は当然のこと。スカルチノフもそれを踏まえて、彼に重曹をさせた。
裏を返せば、彼一人で一個師団ほどの実力があると信頼をしてのこと。
実際に近衛の位を預かっている騎士より動かしやすく、それでいて匹敵する屈強さを備えているロマネスクを、スカルチノフは非常に気に入っていた。
( ・∀・)「ロマネスク団長まで……。お久しぶりでございます」
と、礼節を持って接そうとしたモララーが頭を下げるより早く
ロマネスクはモララーの前に跪き、深々と頭を垂れた。
( ФωФ)「こちらこそ。お懐かしゅうございます。大魔術師、モララー=レンデセイバー殿」
(; ・∀・)「ちょっ……!? ロ、ロマネスクさん!?」
突然の対応にモララーは焦る。
年下であろうと、敬意を払うべき者には徹底的に。
それを地で行くロマネスクだが、ここまでの行為は今まで見たことがなかった。
以前のような、フランクなやり取りを望んでいたモララーとしては、経年劣化のように、ロマネスクが遠い人になってしまったようで寂しさも覚えた。
( ФωФ)「……というのは、冗談である」
(; ・∀・)「え?」
顔をあげ、少しいじわるそうな笑顔を見せたロマネスクは、重量のある金属鎧を纏ってるにも関わらず
衣服でも着込んでいるかのように、軽々と身体を持ち上げてモララーに手を差し出した。
( ФωФ)「とはいえ、本来階級上ではこれくらいの行為は当然なのである。
お主が知らないだけで、吾輩は常に、お主のことをこれぐらいの気持ちで接していたことだけは、知って欲しかったのである」
( ・∀・)「ロマネスクさん……」
( ФωФ)「堅苦しい挨拶はここまでである。モララー殿、本当に久しぶりである。会えて嬉しいのである」
( ・∀・)「こちらこそ。僕も会えて嬉しいです」
かつての戦友(とも)達は、かつてのようにがっちりと熱い握手を交わした。
48
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:35:33 ID:VC0QHqzQ0
フタ
最終話「双つの肩」
49
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:38:16 ID:VC0QHqzQ0
( ・∀・)「お待たせいたしました」
/ ,' 3「おぉ、すまないね」
この大陸で最も大きく、産業も農業も全てが主要である王都NEETの主の前に、シルムの紅茶が置かれた。
柑橘系の、甘くも酸味を含んだ空気をその鼻腔へと吸入する。香りを楽しんだ後、王はゆっくりとカップに口をつけて茶を嚥下した。
たったそれだけの動作なのだが、その中に気品さ優雅さを感じさせる空気が、彼から発せられていた。
( ・∀・)「お口に合うか自信がありませんが……」
/ ,' 3「良いのじゃ。キミがもてなしの心を込めて振る舞ってくれたものを、何故美味い不味いの範疇で語るのじゃ?
どんなものでも、ワシは喜んで飲むよ」
( ・∀・)「国王……」
( ФωФ)「国王様。ゆっくりと歓談する時間は、私も望んでおります。
ですが余り長時間、国を留守にするのは……」
/ ,' 3「ほっほっほっ。わかっておるよ、ロマネスクくん、わかっておるよ。わかっておる」
少し乾いた笑いをあげてから、国王はカップをゆっくりと置いた。
そして、それから対面に座っているモララーの目を優しく、覗き込むように見据える。
/ ,' 3「本題に入る前に。まず、今キミが何をやっているのか、それを聞かせてほしい。
もちろん、差支えの無い程度で構わんよ。言いたいこと、言いたくないことは誰にだってあるじゃろう。
話せる範囲で、しかし出来るだけ伝わるように、お願いできるかな?」
( ・∀・)「…………わかりました」
モララーは、目をそらさずに答えた。
答えに少し時間を要したのは、拒否反応があったわけではない。
どれだけ話そうか、どれだけ話せるか。それを考えていただけ。
話さない、という選択肢はこの人の前では存在しえなかった。
50
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:40:45 ID:VC0QHqzQ0
( ・∀・)「まずは、王都を出てからのお話をしましょう」
と、結局モララーは洗いざらい話すことにした。
何故、どうして、を偶に省くことはあったけれど、事細かにこの空白の11年のことを話した。
しかし、内容自体は非常に簡潔だった。
役目が終わったから、城を出たこと。それから、この山中で暮らすことにしたこと。
そこから10年余りは、非常に無味乾燥な話だったのだ。
野菜を作ると決めたこと、城下町で売るようにしたこと。それだけを話すのに数分の所要時間で良かった。
そして一年前。
そう、ここから彼の生活は一気に色を帯びる。
あえて、モララーは誰と会ったのかまでは隠した。目の前にロマネスクが居たことによる配慮なのだろうか。
それでも、彼の語り口調は楽しげであった。
子どもの世界のこと、大人の世界のこと。未だに、悪を掲げる者がいること。
( ・∀・)「とりあえず、騒がれないように彼らはラウンジ大陸に返しておきました。
多分、もう二度と現れはしないでしょう」
と、あえて重い話は軽く話した。これは、先日の毒田ドクオとの死闘の後日談だ。
話し終えて、モララーは一息つく。話した。話せることは全て。
後は一つだけ。話すか、話すまいか。
/ ,' 3「それが大魔法の発生だったわけか……。
まったく、スペルキャンセラーを空間ごと張るなんぞキミにしか出来ん芸当じゃの」
( ФωФ)「しかし、大魔法を打ち消せるほどの具足とは……ラウンジ大陸も恐ろしい武具を発明したものである。
何より、使い手はあの毒田ドクオ……うむむ。うかうかしていられないのである」
51
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:43:35 ID:VC0QHqzQ0
かつて、戦い敗れたことのあるロマネスクは真剣に悩んだ。
今の自分で、果たして勝てるのだろうか。モララーが撃退してくれたのは嬉しい限りだが、果たして後継者などは存在するのか。
たった一つの戦闘から炙り出された心配事はたくさんあった。
/ ,' 3「なぁに。大丈夫じゃろう。その戦闘狂とやらも心が折れておる。特注の具足ということは、つまり高コストの製品じゃろう。
正直に言うが、ラウンジ大陸の文明力よりも我々VIP大陸の方が文明は栄えておる。
それほど高コストの製品を量産できるほど文明が発達しているとは到底思えぬよ」
( ФωФ)「……そうですね。少なく見積もっても、文明の差は10年以上は見受けられますから心配には及びませんね」
/ ,' 3「さて、続きはもうないのかね?」
ロマネスクと安否の話をしていたスカルチノフは、ふいにモララーへ話を振った。
モララーは一瞬のうちに、考える。
言うか、言わざるべきか。
――――ところで、彼が一体何を話していないのか、だが……。
それは、都村トソンのことだった。
何故話さないのか、といえば至極当然。
彼女はラウンジの人間だからだ。
記憶を失っているとはいえ……というところがある。
間違いなく、容姿を見せるだけで国王とロマネスクならば一発でわかるだろう。
この大陸の人間はない、と。
どんな反応を示すだろうか。無条件に忌み嫌っている人たちと違い、哀しき戦争の最前線に立った人たちだ。
少なくとも、拒否反応は示してくるはず。それをどう言いつくろえばいいのだろう。
そして、再び思うのだ。
例えば、話したとしよう。包み隠さずに。
……で、どうして欲しいのだろう。
52
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:45:32 ID:VC0QHqzQ0
そもそも、何で言いにくいんだ?
ラウンジの人だから? 記憶を失っているから、言い訳が難しいから?
……違う。そんなんじゃないはず。
じゃあ、どうして?
( ∀ )「…………」
/ ,' 3「……」
( ФωФ)「? どうしたのであるか、モララー殿?」
モララーは黙ってしまった。
本当は間髪入れずに、何かを話して適当に言いつくろうはずだったのに……言葉が出ない。
何でなんだろう。
何で話したくないんだろう?
……もし、この相手が、例えばシャキンさんだとしたら、多分僕は簡単にさらりと話したであろう。
他にも、あの人やあの人だったら話せるはずだ。
……うん、そうだ。
僕は相手がこの人たちだから話しにくいんだ。
仲がいいからこそ、何か話しにくいものがあるんだ。
でも、じゃあ、それはどうして?
/ ,' 3「モララーくん」
( ∀ )「……はい」
53
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:47:35 ID:VC0QHqzQ0
沈黙を先に破ったのはスカルチノフだった。
手で目を覆うようにしていたモララーは、そのまま答える。
/ ,' 3「あえて言わなかったのじゃが。やはり、どうしても気になることがあっての」
( ・∀・)「……なんでしょう」
/ ,' 3「二階に居る方はどちら様かの?」
(; ・∀・)「!!」
( ФωФ)「二階?」
ロマネスクは周りを一望する。確かに、このテーブルのすぐ脇に階段はある。
それは知っているが、そこの先に人影なんてない。少なくともこの角度からじゃ全く見えない。
更に、ロマネスクよりも体躯の小さいスカルチノフだ。見えるはずがない。
しかし、スカルチノフの指摘は全くもって正解だった。
見えない角度だが、二階のベッドに潜り込んで隠れている女性が居るのだ。
ラウンジ大陸の、都村トソンが。
( -∀-)「……そういえば、忘れていました」
と、観念したかのようにモララーは立ち上がった。
忘れていたのはトソンのことではない。スカルチノフのことだ。
国王スカルチノフは、魔術師でもあった。しかし、戦闘特化ではない。
ちょうど、ツンが似たような能力を持っていたが……要は魔術感覚が非常に優れた人間である。
視覚聴覚などが、生まれつき秀でている。更に、魔術の発生にも敏感であった。
これにより、スカルチノフはモララーの居場所などを見事当てて見せたのだ。
では、何故武士であるトソンが居ることがバレてしまったのか。
54
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:49:47 ID:VC0QHqzQ0
それは、言語変換魔法だ。
初めてトソンに会った時、ラウンジの言葉は全くもって通じなかった。
それをいち早く察知したモララーは、彼女へ言語変換の魔法をかけていたのだ。
常時発動型の魔法であるそれは、今も尚トソンにかかっている。
発生魔力自体は非常に微量であっても、スカルチノフにとっては警笛でも鳴らしていることと同然であったのだ。
トントンと階段を上がっていくモララー。
ベッドのシーツに包まっている人型の隆起に向かって、彼は声をかける。
( ・∀・)「トソンさん。もう、良いですよ」
(゚、゚トソン「……はい」
内容は筒抜けだったし、気配も感じていた。
だからトソンはゆっくりと衣擦れの音を立てつつシーツを捲り、立ち上がった。
モララーはその動作を確認すると、振り返ってゆっくりと階段へ向かい、降りて行った。
その後ろを、トソンはついていく。
少し、怯えながら。
( ・∀・)「ご紹介が遅れて大変申し訳ありません。彼女は都村トソンといいます」
テーブルの前に立ち、手のひらをトソンへ向けながらモララーは紹介をした。
それ以上、言葉は要らなかった。それだけで、一体何者なのか戦争経験者の二人にはわかったはず。
スカルチノフは、黙ってトソンを見ていた。
ロマネスクは、階段から降りてくる時点で既に目を見張り、口をポカンと開けていた。
そして、名前を聞いたと同時にその表情を変える。気づいたのだ。
55
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:52:26 ID:VC0QHqzQ0
( ФωФ)「……ラウンジの方であるか?」
( ・∀・)「えぇ」
( ФωФ)「先ほどのお主の経歴では、彼女の事は出てこなかったのである」
( ・∀・)「意図的に避けていましたから」
( ФωФ)「何故であるか?」
( ・∀・)「……何故ですかね」
( ФωФ)「…………それはお主でないとわからないことである」
( ・∀・)「でしょうね」
/ ,' 3「……ワシには何となくわかるがの」
二人の会話にスカルチノフが割って入る。
視線の先はいつの間にか、トソンではなくモララーに変わっていた。
/ ,' 3「ラウンジ大陸との関係はまだ良くなってはおらん。
更に、ワシらのように戦争経験者からすれば、ラウンジの人間というだけで少し気持ちが揺らでしまうものじゃ
それを配慮してくれたんじゃろう」
もっともらしく、でも正確に。スカルチノフはモララーの心情を語って見せた。
( ФωФ)「そうなのであるか?」
( ・∀・)「……えぇ、そうですね」
56
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:55:26 ID:VC0QHqzQ0
肯定をしたモララーだが、しかし沈黙が挟まれる。
目を閉じて、その内なる心を再度見直し、続ける。
( ・∀・)「でも、それだけではないと思います」
( ФωФ)「……では、再度聞きたいのである。何故なのであるか?」
まるで、父親のように優しい言葉でロマネスクは問う。
( ・∀・)(……あぁ、そっか)
その優しさと慈愛に満ちた言葉、態度を見てモララーはやっとわかった。
何でここまでして、自分は隠したがっていたのか。
( ・∀・)「……純粋に」
そう、ただそれだけなんだ。
(* -∀-)「純粋に、女性を紹介するのが恥ずかしかったんです」
57
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 21:58:02 ID:VC0QHqzQ0
(゚、゚;トソン「えっ!?」
思いがけない言葉に間髪入れず反応を示したのはトソンだった。
それもそうである。
立派な人格者で、大陸の、いや世界の英雄であるモララー=レンデセイバーにしては、とんでもなく幼稚な理由だったからだ。
( ФωФ)「……」
/ ,' 3「……ふふ」
( ФωФ)「……王様、いくらなんでも失礼かと」
/ ,' 3「そういうお主も、口元が緩んでおるぞ」
( ФωФ)「おや……それは大変失礼を……」
と、二人は必至で笑いを堪えるように会話をしていた。
(* -∀-)「わ、笑うこと……なんですかね?」
その結論にモララー自身もビックリしていたから。思わず質問をしてしまう。
/ ,' 3「いやいや、う、嬉しいんじゃよ、モララー君」
笑いを止めようとするが、まだ止まらない。
ロマネスクは君主の前でいつまでも笑っていては失礼と思い、気合で笑いを止める。
そして、同じように思っていたであろうことを代わりに言った。
( ФωФ)「お主は大事な青春時代を、世界の為に全て投資して戦い、守ってくれたのである。
そんなお主が、まるで子どものように、隠した宝物が見つかってしまったかのように」
( ФωФ)「余りにも普通の理由なことが、吾輩たちは嬉しいのであるよ」
58
:
名も無きAAのようです
:2012/07/28(土) 21:58:32 ID:Ky/Fncb60
うふふ
59
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:00:38 ID:VC0QHqzQ0
魔術に長け、誰にも負けず、一切の隙を見せない。
そんな冷酷にすら思えそうな、圧倒的な魔力を持っているモララー。
いつの間にか、忘れて……いや、知らずに通り過ぎてしまったモララー自身の『心』
街を歩いている快活な青年たちと等しく、それを持ち、表してくれた。
それが、まるで保護者の代わりである彼らは嬉しくて堪らなかったのだ。
(* ・∀・)「おかしくないですか?」
/ ,' 3「おかしくない。普通じゃ。至極当たり前過ぎて、忘れてしまう位じゃ……」
一息つけたスカルチノフはそれだけ言うと、黙り込んでしまった。
そして、何かを思索するかのに中空を見上げた。
数刻にも思える沈黙が続いた後、モララーへ再度顔を向ける。
その表情は、硬くて厳しくて……老人ではなく一介の王としての顔つきになっていた。
/ ,' 3「…………モララー君、一つ尋ねる」
( ・∀・)「はい」
/ ,' 3「現在、取り決められている両大陸間の法律では
原則として許可証の持った人間しか、他大陸には居住出来ないことになっておる」
/ ,' 3「彼女は、それを持っているのかね?」
(゚、゚;トソン「あ……そ、その……」
トソンは焦った。
持っているわけがない。
侵入自体が不法だったし、何より本来の責務で考えるならば、こうやって他大陸の人間に顔を見られることすら禁忌なのだ。
60
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:02:50 ID:VC0QHqzQ0
顔を知られた場合、彼女らの作戦では即刻口封じとして息の根を止めることになっている。
しかし、他大陸でも名ぐらいは聞いたことのある黒騎士ロマネスク=ホライゾネルと
大魔術師モララー=レンデセイバーの口を同時に封じることなど不可能。
トソンはその作戦などすっかり諦めて、一般市民としての仮面をかぶって出てくることを決意していた。
いや、もう彼女自身。その仮面はいつしか、本物の顔となっていた。
モララー暗殺に失敗したその日から、嘘を本当と思い込み、そう勤めて生きて、そして死のうと決意している。
( ・∀・)「言い忘れていましたね。彼女はここに来るまでの記憶がありません
会ったのは近辺の河川ですので、持ち物も同時に紛失してしまったのでしょう」
/ ,' 3「そうだったのか……。では、仕方ないの」
( ФωФ)「規定に従うのであれば、身元確認の為にラウンジに帰ってもらうことになるのである」
( ФωФ)「その方が、彼女の為でもあるし、何よりモララー殿も安心できるであろう」
/ ,' 3「違うかね?」
(゚、゚トソン「……」
( ・∀・)「……」
トソンはモララーを見た。
黙って、二人を見ている。
どうするだろう。
普通に考えれば……負担でしかない自分を、置いておく理由はない。
元々、独りになるためにこんな苦行の道を選んでいるのだ。
邪魔な……はず。
61
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:05:31 ID:VC0QHqzQ0
トソンは諦めた。
モララーの口添えがあれば、多分処罰はないであろう。
安全に、無事に祖国へ送り届けてくれるに違いない。
でも……
でも、それでも……
( ・∀・)「それは嫌です」
(゚、゚トソン「!」
自分の気持ちを代弁するように、モララーが口を開いた。
( ・∀・)「規定だろうと、何だろうと。僕は、ここで彼女と共に過ごすことを決めました。」
( ・∀・)「騎士隊長でしょうが、国王でしょうが、法律でしょうが」
( ・∀・)「僕は、従いません」
(゚、゚;トソン「わっ」
力強く言葉を放つと同時に、モララーはトソンの肩を抱き寄せた。
口を真一文字に噤み、力強い意志を視線に込めた。
それでも、彼の姿はまるで子どもが初めて駄々を捏ねるようで、不安がつり上げた眉を震わせていた。
/ ,' 3「……」
( ФωФ)「……」
(; ・∀・)「……」
(゚、゚;トソン「……」
62
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:08:10 ID:VC0QHqzQ0
/ ,' 3「……よう言うた」
( ・∀・)「えっ……」
/ ,' 3「ワシはな、言われるがままの殺戮狂としてキミを戦線に送り込んだことを、ずっと悔いていたんじゃ」
/ ,' 3「結果的に、世界は平穏になった。それでも、ワシはキミという個人そのものの人生を破綻させてしまったんじゃ。
国として、民の傀儡として、冷酷な命令を下すしかなかったんじゃ。」
/ ,' 3「それが今でも、ワシを縛り付けておる……」
( ・∀・)「国王……」
/ ,' 3「じゃが、キミは立派に成長した。大人としてではない、『人間』として、当たり前の青年になってくれた。」
/ ,' 3「それが嬉しくて仕方ないのじゃよ」
国王は決して、誰にも見せたことのない表情をしていた。
一生懸命、目に浮かぶ涙が頬を伝うことのないように我慢し、震えていた。
/ ,' 3「キミには、大した賞与を与えておらんかったからの……。
良い。それぐらい、良い。」
/ ,' 3「キミがそれで幸せに暮らせるというのならば、法律ぐらいなんじゃ。
民を護るのが法律ならば、今ここではそれは適用されん。キミを傷つける為に法律はあるわけじゃないのだからの」
/ ,' 3「特別賞与として、許す。受け取ってくれるな、大魔術師モララー=レンデセイバーよ」
( ・∀・)「……はい!」
( ・∀・)「ありがとうございます、スカルチノフ国王!」
モララーは深くお辞儀をした。
つられて、トソンもお辞儀をする。
/ ,' 3「うむ。では、行こうかの、ロマネスク隊長」
63
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:10:54 ID:VC0QHqzQ0
( ФωФ)「……」
ロマネスクは返事をしない。
少し悩み、罰の悪そうな顔を一瞬だけ見せてから、厳しい顔つきになって席を立ちあがった。
( ФωФ)「国王、吾輩もそうしたいのが山々ではあります。
ですが、吾輩も軍人であります。
最低限、義務として行わなければならないことを果たさせて頂きたいのであります」
/ ,' 3「なんじゃ、せっかく丸く収まるかと思ったのに……」
( ФωФ)「堅苦しいけれども、決めたことはせめて実行に移すまで諦めたくないのであります」
/ ,' 3「……わかった」
何の会話をしているのかわからないモララーとトソンが、頭に疑問符を浮かべていると
ロマネスクが、キッとモララーを睨むように見た。
( ФωФ)「大魔術師モララー=レンデセイバー殿。スカルチノフ=R=マキシス王、直々の厳命である!」
( ФωФ)「我が大陸、我が国、我が民の為! 即刻、王都に戻り、最高権威者として仕えよ!」
(; ・∀・)「!」
スカルチノフのサインが書かれた文書を示しながら、ロマネスクは騎士らしく凛然とした態度で命を告げた。
それを見て気づく。そう、彼らがここに来た本来の理由はこれだったのだ。
隠れて存在の安否を詮索にさせるのではなく、堂々とその存在そのものを脅威としてたらしめる。
城に連れ戻すため、二人はモララーを訪ねたのだ。
(゚、゚トソン(……凄いなぁ)
と状況に似つかわしくない呑気なことをトソンは考えていた。
自分の国でも、多分こんなやりとりは滅多に見られないであろう。
最高権力者が最高権力者の引き抜きを行っている場面。これからの人生では二度と、お目にかかれないであろう。
64
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:13:17 ID:VC0QHqzQ0
それだけ凄い、ということを他文化のトソンですら感じられるのだ。
当の本人であるモララーは……
( ・∀・)「……もしも、それをお断りしたら?」
変わらぬ態度で、決意を更に深くしたかのように答えていた。
( ФωФ)「現法律において、王の命、調印を破棄及び拒絶した場合、最高位の涜神行為に当たるのである」
( ・∀・)「つまり、僕を国賊と見なすわけですね」
( ФωФ)「そうなのである。国賊は確認次第取り押さえ、王立の監獄で幽閉なのである」
ロマネスクは背中の剣に手をかけた。
その眼は紛れもなく本気で、やろうとしていることに一切の迷いはなかった。
( -∀-)「……わかりました」
( ・∀・)「とはいえ、僕としてもそう簡単に従えはしません。
黒騎士ロマネスク=ホライゾネル。あなたが僕を取り押さえられるようでしたら、喜んで投獄されましょう」
( ФωФ)「……良いのである。では、外へ出るのである」
( ・∀・)「了解です」
二人の戦士は、先ほどまでの和やかなムードとは打って変わり
ピリピリと、その闘気だけで焦げ付いてしまいそうなくらいの空気を作っていた。
そのまま小屋を出た二人は、なるべく被害の出ない場所へと黙したまま歩いていく。
小屋には、トソンとスカルチノフだけが残されていた。
(゚、゚;トソン「……」
65
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:15:21 ID:VC0QHqzQ0
正直、置いていけぼり感が半端ないトソンは無言でいるしかなかった。
いきなり国王がやってきて、モララーと楽しく話をし、特例を認めると思ったら
次は突然、造反者として処罰を与えると言ってきた。
展開についていけない。
/ ,' 3「お嬢さん」
(゚、゚;トソン「は、はい!? なんでしょうか!?」
/ ,' 3「ほっほっほっ。良いVIP語じゃの。モララー君の言語変換魔法は完璧じゃな。
大抵、微妙なイントネーションなどが違うはずなんじゃが……」
(゚、゚;トソン「はぁ」
/ ,' 3「……心配かね?」
(゚、゚トソン「……というより、何がしたいのか良くわかりません」
/ ,' 3「それもそうじゃろうな。王が許したと思いきや、次は王が別の命令を下したわけじゃからの」
(゚、゚トソン「結局、どうしたいのですか?」
/ ,' 3「どうもこうも。ただ、ワシらは納得したいだけなんじゃ」
(゚、゚トソン「納得?」
/ ,' 3「うむ。彼の意志、彼の想い、彼の心。それらを全て知り、そして自由にしてあげたい。
それが、ワシらが今日、ここに来た理由じゃよ」
66
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:17:54 ID:VC0QHqzQ0
(゚、゚トソン「でも、それは先ほど……」
/ ,' 3「ほっほっほっ。そうじゃがの。次に納得できていないのはモララー君じゃない。
ロマネスクじゃ。あやつもあやつで頑固者でな。やはり、最も信頼し敬愛している者が傍に居てほしいんじゃよ」
/ ,' 3「だから、今度は全身全霊を持って。言葉でダメならば、力をもって、モララー君と話がしたいんじゃよ」
(゚、゚トソン「……」
/ ,' 3「安心せい。すぐに終わるじゃろうて」
不安そうに窓から二人を見据えるトソンの後ろで、国王は優雅に紅茶を啜っていた。
( ФωФ)「先に言っておくのである。お主を殺すつもりは毛頭ないのである」
( ・∀・)「えぇ、それはこちらも同じです」
小屋から少し離れた、森の近くの傍。
以前、ドクオと戦った地で二人は向き合っていた。
( ФωФ)「純粋に、吾輩は騎士の誇りにかけて、お主を倒すのである」
( ・∀・)「わかりました。では、それ相応の敬意をもって僕も対峙しましょう」
モララーは、手を横へ伸ばした。
すると、モララーの肘から先が同時に発生していた白い魔方陣に飲み込まれた。
数回、手先を動かすような仕草をした後に、大魔術師は一本の剣を取り出した。
67
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:19:46 ID:VC0QHqzQ0
長くもなく短くもない。ブロードソードと呼ばれる、銘もない一般的な剣だ。
黒騎士、それも実力だけでいうならば近衛騎士と変わらないロマネスクに対し、この武器の選択は愚の骨頂である。
が、それも何かの作戦なのかと考えロマネスクは行動する。
( ФωФ)「……吾輩はこれを使わせてもらうのである」
そう言いながら、背中の大剣を引き抜いた。
蒼穹を秘めているかのような美しい刀身。無骨な作りではあるが、さぞや名のある武器であることは一目でわかった。
戦後であっても手入れの欠かしたことのない、彼の愛剣である。
お互いの得物を確認すると、そのまま剣先をギリギリ触れ合わないように突き出した
( ・∀・)「では……いざ、尋常に!」
( ФωФ)「勝負である!」
掛け声と同時に、二人は剣先を鉢合わせる。
一瞬だけ飛び散った火花が、決闘の合図だ。
モララーはそのまま、一足飛びで距離を置いた。
しかし、それを読んでいたかのようにロマネスクは前進をしていた。
( ФωФ)「ふっ!」
( ・∀・)「よっ!」
最低限の動きで、しかし最速の斬撃をロマネスクは繰り出した。
刀身ごとたたき折りそうな袈裟斬りをモララーは、軽々といなした。
( ・∀・)「エアロ!」
空いていた左手で、突風を巻き起こす。
たまらずロマネスクは、その場で踏みとどまってしまった。
68
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:21:28 ID:VC0QHqzQ0
( ・∀・)「フレアボム!」
すかさず連唱。
ロマネスクの周囲に、小さな火球が無数に発生した。
モララーが開いていた手を閉じる仕草をすると、それらは一斉に爆発を巻き起こす!
( ФωФ)「これしき!」
留まる事を知らないかのように、ロマネスクは爆風に耐えて突貫してきた。
距離を置かれることを恐れた黒騎士は、そのまま倒れこむかのように横薙ぎを払う。
( ・∀・)「甘いですよ!」
ギリギリ範囲であったが、モララーはまたも軽く受け流した。
予想違わず転んだロマネスクの、一瞬の隙をついてモララーは魔法を唱える。
( ・∀・)「ブリザードランス!」
今度は氷で出来た槍が3本、ロマネスク目掛けて飛んでいく。
立ち上がり、迎撃するには時間が足りない。
( ФωФ)「わけがないのである!」
大きく重量のある鎧、武器共に前転をした。
重さなど微塵も感じさせない軽やかな動きで体勢を立て直したロマネスクは、飛んでくる氷の刃を一瞬にして撃砕する。
( ・∀・)「……やはり、一筋縄ではいかないですね」
( ФωФ)「当然である。手加減をしたお主に後れを取るほど、吾輩は衰えていないのである」
69
:
名も無きAAのようです
:2012/07/28(土) 22:22:01 ID:htD3oa8.0
最終話来てたか
支援
70
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:23:10 ID:VC0QHqzQ0
ロマネスクの発言の通り。
モララーは手加減していた。とはいえドクオの時のような、全力全開を求めているわけではない。
あれは、間違いなく敵を殺すための魔法だ。それを今から使え、と挑発しているとも違う。
使っている魔法が下級過ぎるのだ。
片手程度で使える弱い魔法で、ロマネスクを倒せるわけがない。
もちろん、先ほどから魔術師としてあるまじき身体能力は、魔法による効果だが……。
( ФωФ)「……何を笑っているのであるか?」
( ・∀・)「え?」
指摘されたモララーは、自らの口元に手を当ててみた。
頬が吊り上っている。なるほど、確かにこれは笑顔だ。
何故、無意識にそんな表情になってしまっているか。それは考えるまでもなく、気づいていた。
( ・∀・)「あなたと手合せ出来ることが、嬉しいんですよ」
( ФωФ)「え?」
( ・∀・)「ずっとずっと、僕の家族のように接してくれたロマネスクさんと……
自分の大切なものを賭けて戦い、そして越えて見せる」
( ・∀・)「こんな嬉しいことがありますか?」
( ФωФ)「……お主も、大概であるな。戦いは嫌いなのかとばかり思っていたのである」
( ・∀・)「嫌いですよ。大嫌いです。けど、それは命のやり取りだからですよ。
力比べをして、相手を打ち負かすことに関しては、僕は後ろめたさを持ってはいません」
( ФωФ)「お主らしい、答えであるな。なるほど。確かに、そう考えれば吾輩も心躍るのである。
世界最強の魔術師を相手に手合せ出来ることは、騎士として誇りなのである」
( ・∀・)「わかりました。それでは、僕もそれに応えるとしましょう」
71
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:25:54 ID:VC0QHqzQ0
( ФωФ)「うむ!」
( ・∀・)「いきますよ!」
モララーは手に持った剣を思い切り振りかぶり、横へ払う。
そこは紛れもなく虚空だったのだが、まるで金属が切り裂かれるような甲高い音が鳴った。
( ФωФ)「!?」
切り裂いた線を中心に、視界がズレた。
ロマネスクの捉えている景色は滅茶苦茶だった。モララーの下半身と上半身がかみ合っていないのだ。
その後ろの見える木々さえも、一致していない。
が、それを確認する前に黒騎士は気配に気づく。
目の前の不可解な現象より、もっと確実な存在感が背後にあった。
( ФωФ)「ふんっ!」
敵意と判断すると、大剣を使うより早く後ろに蹴りを入れる。
手ごたえはあった。しかし、有りすぎた。
(; ФωФ)「な!?」
蹴りは、後ろの気配の腹部を貫通し背中まで突出してしまっていた。
けれど、その気配はモララーではなかった。リアルだけれども、そうではない彼の煙による幻術。
モララー自身は、最初からずっと。景色を切り裂いた、まやかしの後ろに居たのだ。
そのまま距離を詰め、ロマネスクの懐に飛び込んでいた。
( ・∀・)「!」
剣を振りかぶるより早く、ロマネスクは体勢を再び整えていた。
蹴りこんだ足を、軸足にして大剣を上段に構えている。
72
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:27:30 ID:VC0QHqzQ0
この距離では下手に回避すると危ない。
モララーは攻撃を変更し、そのまま肘を突き出した。
(; ФωФ)「ぐおっ!」
肘先を硬質化させ、簡易的な爆風魔法で急加速。
固い鎧ごと、ロマネスクは吹き飛ばされた。
そのまま追撃が来る。
雷の魔法がモララーの剣先から発せられた。
規模は大きくなくとも、電撃は体を痺れさせる効果もある。
しかし、騎士のロマネスクでは空中で回避の出来る術はない。
だが回避はせずとも、防ぐことはできた。
振り上げた大剣をそのまま地面に突き刺し、手を放す。
ロマネスクの眼前で、大剣が激しく稲光をあげた。
クルリと空中で身軽に回転をし、着地をすると捻転を利用したままロマネスクは走り出す。
大剣を加速中に、引き抜き一気に距離を詰める!
(# ФωФ)「はぁあああ!!」
今までと同じではいけない。どうせ距離を取られるだけだ。
ならばこそ。ロマネスクは刃圏外で大剣を振り下ろした。
( ・∀・)「うわっと!」
力任せに振り下ろした大地が弾け、モララーに襲い掛かる。
けれど、そんなもの意味がない。一瞬でそれらは砕け散り、モララーには届くことがなかった。
73
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:30:01 ID:VC0QHqzQ0
が、その一瞬があれば充分であった。
ロマネスクはその一瞬で、一足飛びをしてモララーを攻撃範囲内に収めることが出来たのだ。
(# ФωФ)「うぉおおおお!!!」
( -∀・)「!」
ギィン、と高くも鈍い音が鳴った。
騎士による大剣の横薙ぎは、モララーが手に持っていた凡剣を叩き折ったのだ。
二人の間に、土と金属のかけらが舞っている。
一瞬の隙だと思った。
モララーはそれらに見とれていたと思った。
ロマネスクは最後のチャンスだと思い、手首のみで切っ先を返し再び斬撃を振るった。
……はずだった。
(; ФωФ)「な……に……?」
腕が動かなくなっていた。
いや、腕だけではない。足も首も手先も腰も。何もかもが動かない。
正しくは動かないのではない、抗えないのであった。
先ほど砕いた刃と土。
それが紐のような物へ変形し、まるで未知の物質になったかのようにロマネスクの全身を拘束していたのだ。
( ・∀・)「僕の勝ちでいいでしょうか?」
微動だに出来ないロマネスクの首元へ、モララーが人差し指をそっと当てた。
74
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:33:39 ID:VC0QHqzQ0
(; ФωФ)「く……」
もう一度、破れないかと全力を込めた。
けど無駄だった。力が奪われていってしまうかのごとく、ピクリともしない。
魔術師らしい、細身の体がすぐ傍にあるのに……それには決して届かないのだ。
(; ФωФ)「……まったく、お主とはまともな勝負にならないのである」
ため息をつき、ロマネスクは悔しそうに笑いながら、降参した。
――――。
/ ,' 3「気は済んだかね」
( ФωФ)「はい。ありがとうございました。ご迷惑をかけてしまって申し訳ありません」
小屋に戻り、ロマネスクは礼と謝罪を述べた。
ただのわがままであることは、最初からわかっていたのだから。
/ ,' 3「ちなみにあえて聞くが、勝てたのかの?」
( ФωФ)「いえいえ。一太刀も入りませんでしたよ」
/ ,' 3「ほっほっほっ。相変わらず無敵じゃのモララー君は」
( ・∀・)「いえいえ。ロマネスクさんの身体能力には驚かされました。
まさか、剣を折られるとは思ってなかったので」
(゚、゚トソン(本当にすぐ終わっちゃった……)
談笑している三人を見つつトソンはそう思う。
体感としては、来客二人が来てからの話よりずっと短かった。
見ただけで、かなりの腕前と思えるロマネスク相手に短時間で勝利するなんて……。
75
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:36:14 ID:VC0QHqzQ0
( ・∀・)「ところで、この場合は処罰は如何様に?」
/ ,' 3「もちろん、無効じゃな。処刑失敗というところかの」
( ФωФ)「この令状も必要ないのである」
先ほどの紙を懐から取り出すロマネスク。
その手から何気なくスカルチノフが紙を奪うと、火の魔法を使って燃やしてしまった。
/ ,' 3「さて、満足したことじゃ。これで帰るとするかの」
( ФωФ)「えぇ。そうしましょう」
スカルチノフが離席しようとしたので、黒騎士は優しく椅子を下げる。
ゆっくりと国王は立ち上がると、モララーを見た。
/ ,' 3「モララー君。ワシは今日、大魔術師モララー=レンデセイバーを捜索しにきた」
( ・∀・)「!」
/ ,' 3「しかし、それも叶わず捜査は失敗。森の中を彷徨うだけでおわりじゃ」
/ ,' 3「もしかしたら、もう二度と会えないかもしれない。会うこともないかもしれない」
/ ,' 3「でも、それでもワシは……今日もどこかで、モララーという青年が世界の為に生きていると」
/ ,' 3「そう確信しておる」
( ・∀・)「……おじい様……」
と、うっかり昔の呼び方をしてしまったモララーが慌てて訂正をしようとした。
76
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:39:48 ID:VC0QHqzQ0
/ ,' 3「ほっ? まだその呼び方をしてくれるのかね?
すっかり忘れてしまったものかと思っておったんじゃが……」
( ・∀・)「忘れるわけがありませんよ。ただ、歳月が経っていたので……その……」
/ ,' 3「良いのじゃ。時が流れても、場所が離れていても。ワシはキミを家族と思っておる」
( ・∀・)「……はい」
/ ,' 3「寂しくなったら、いつでも来るがよいぞ」
スカルチノフは皺のついた手を伸ばしてモララーの頭を撫でる。
恥ずかしそうに、でも誇らしく青年はそれを受け入れた。
( ФωФ)「そうであった」
小屋を出て、転移魔法で王都まで送ると決めた時だった。
( ФωФ)「モララー殿。吾輩の息子のことである」
( ・∀・)「ブーン君ですか?」
( ФωФ)「うむ。あの子は本物の戦を知らない。
強くなろうと一生懸命なのは良いが、まだ心が未熟なのである」
( ・∀・)「……そうでしょうか?」
( ФωФ)「これからも、ご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げたロマネスク。
スカルチノフにも再度お礼を言い、モララーは転移魔法を発動し二人の恩人を見送った。
77
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:42:26 ID:VC0QHqzQ0
(゚、゚トソン「何だか、嵐のような方々でしたね」
( ・∀・)「そうだね」
時分は既に夕方だった。
伸びた草地が、さらさらと風でなびいていく。
日中の熱は既に沈静化を始めており、涼やかな風が体を打った。
(; ^ω^)「あ、あのー……」
( ・∀・)「おや、キミたち一体どこに居たんだい?」
小屋の影から、子ども達が出てきた。
何か割り込んではいけなさそうな空気だったので、ずっと自重して隠れていたのだ。
(´・ω・‘)「結構前からここに居たんですけどね」
ξ゚⊿゚)ξ「具体的に言うのならば、国王様がいらっしゃった辺りから」
(*゚∀゚)「いやービックリしたわ。ホライゾネル隊長も生で見たの初めてだったし!
更にスカルチノフ国王だぜ? 焦ったわー!!」
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「どうしたんだい?」
やっと普段通りの声で話せると興奮している子ども達の中で、ブーン一人だけしょんぼりしていた。
( ^ω^)「あの、父ちゃんとの戦いも見ていたんですお」
( ・∀・)「そうなんだ」
78
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:45:32 ID:VC0QHqzQ0
(; ^ω^)「……なんというか、少しでも父ちゃんに近づいたと思ってたんですけど……
思い上がりでしたお。全然雲の上でしたお」
( ・∀・)「……」
( ^ω^)「何だか、自分が恥ずかしいですお。勝手に知った気になっていたんですお。
もっともっと修行して、強くなりたいと思ったんですお」
( ・∀・)「ブーン君」
( ^ω^)「はい?」
( ・∀・)「僕は、キミが未熟だなんて思っていないよ」
( ^ω^)「え?」
( -∀-)「あの戦いの中で、それだけの実力を見極められて、尚且つ意気消沈せずに
更に高みを目指そうとしているキミが、未熟なんてことはない」
( ・∀・)「もっと自信を持っていいよ。キミは強いんだから」
(* ^ω^)「そ、そうですかお? モララーさんに褒められるなんて……とっても嬉しいですお!」
照れくさそうに笑う少年。
後ろで楽しげに話す少年少女。
本当は、教えられた僕自身だったんだ。
彼らと出会い、様々な出来事を経験することで……僕はおじい様やロマネスクさんと討論することができた。
もしも、大戦後何もなく独りで生きていたら……きっと今頃王都で偉そうに指図をしていることだろう。
79
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:47:52 ID:VC0QHqzQ0
本当に、本当に。
キミたちと出会えて、良かった。
ありがとう。
――――。
時刻も時刻ということで、そろそろお開きとなった。
面倒事に巻き込んですまない、と謝ってからモララー達は子どもを見送った。
(゚、゚トソン「あの」
小屋に戻り、一息つこうと椅子に座った時だった。
トソンは立ったまま入り口のところでモララーに声をかけた。
(゚、゚トソン「……正直に聞いて良いですか?」
( ・∀・)「何でしょうか?」
(゚、゚トソン「ここで生活するより、王都で過ごされた方がずっと有意義だと思います」
( ・∀・)「そうだね」
(゚、゚トソン「経済力、権力。共に揃っているなら、無魔法野菜の栽培など一瞬で叶う夢ですよね」
( ・∀・)「かもね」
(゚、゚トソン「おかしいじゃないですか。何でも出来るのに、何でそれほどまで自己犠牲が出来るんですか!?」
80
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:50:50 ID:VC0QHqzQ0
( -∀-)「……」
トソンの質問は、ずっと前から抱いていたものだった。
暗殺を企てたあの馬小屋での夜。その精神の崇高さに打ちひしがれ、彼女はモララーと生きていくと決めた。
けど、その根源は一体なんなのか。それがさっぱりわからない。
( ・∀・)「……そうだね。以前の僕なら、こう答えるよ」
( ・∀・)「それが僕の罪滅ぼしだから。権力など使わず、ただ一人の人間として世界に抗いたいから」
( ・∀・)「こんな感じだろうね」
(゚、゚トソン「……では、今は違うんですか?」
( ・∀・)「うん。違う。全然違うよ」
(゚、゚トソン「……それは?」
モララーは立ち上がり、そしてトソンの正面に立ち。
恥ずかしそうに、けれど真剣に。
言った。
( ・∀・)「キミと居たいから」
(゚、゚トソン「へ?」
( -∀-)「優雅に暮らすより、ここで気兼ねなくキミと過ごしたい。
自分の心で決めた女性と、これからもずっと生きていきたい」
( ・∀・)「それが実現できないならば、僕は富も権力もいらない。だから、断ったんだ」
81
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:53:33 ID:VC0QHqzQ0
(゚、゚*トソン「あ、え……と……」
( ・∀・)「……ダメかな?」
( 、 *トソン「…………ダメなわけがないです」
(* -∀-)「……良かった」
( ・∀・)
(゚、゚トソン
思わず安堵してしまい。ふと見詰め合う二人。
どちらかが何かを言い出すわけでもなく。でも、何か間の悪そうに。
じっと見つめあい。そして、少しずつ距離を詰めていき
息すらかかってしまいそうなほど近くに寄っていた。
( ・∀・) (゚、゚トソン
ガチャ (*゚∀゚)「ちょいとゴメンなー! 忘れもん取りにきたz」
82
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:56:16 ID:VC0QHqzQ0
( ・∀・)(゚、゚トソン
( ・∀・ )( ゚、゚トソン
(*゚∀゚)
(*゚∀゚*)
83
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 22:59:12 ID:VC0QHqzQ0
(゚∀゚*)「みんなぁあああ!!! モララー兄ちゃんとトソン姉ちゃんがチューしてっぞぉおおおお!!!」
(* ^ω^)「な、なんだってーーー!!!??」
ξ*゚⊿゚)ξ「ちょ、まだ夜には早いわよ!?」
(*´・ω・‘)「き、キミたち! あ、あわわ慌て過ぎでしょ? 何をどどど動揺してんだい?」
(* ・∀・)「ちょ、ちょっとちょっと! な、何で? え?」
(*゚∀゚)「や、だから忘れ物取りにきたんだって」
(* ^ω^)「いやー。しかし遂にですかお。待ち焦がれましたお。
二人とも何かそういうの鈍チンだから、心配してたんですお」
ξ゚⊿゚)ξ「ま、あんたも大概だけどね」
( ^ω^)「? どういうことだお」
ξ-⊿-)ξ「そういうことよ」
(´・ω・‘)「ともあれ、お邪魔してすみませんでした」
( 、 *トソン「いえ……まぁ……」
(*゚∀゚)「で? 結局二人はどういう関係になったわけ?」
( ・∀・)「そういう関係だよ」
( ^ω^)「おー。マジですかお!」
ξ゚⊿゚)ξ「トソンさんも、もちろんそれでいいんですよね?」
(゚、゚*トソン「……うん」
84
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 23:01:32 ID:VC0QHqzQ0
(´・ω・‘)「尚更、ボク達はお邪魔みたいだね。さっさと帰ろうか」
用事を済ませ、今度こそとモララーはしっかり転移魔法を使って子どもたちを家に送った。
(゚、゚トソン「……」
( ・∀・)「トソンさん」
(゚、゚トソン「はい」
( ・∀・)「僕は、世界中を救うなんて力は持ってない」
( ・∀・)「でも、それでも。僕はこの目に見える小さな幸せだけは。何があっても守っていくよ」
( ・∀・)「だから、これからも一緒に居てくれるかな?」
(゚、゚*トソン「……勿論ですよ。私も、そうしたいです。」
(* ・∀・)「じゃ、改めて。不束ものですが今後とも、よろしくね」
(^、^*トソン「はい! こちらこそ!」
扉を閉じ、二人はぼんやりと明かりの灯った小屋へと入っていった。
85
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 23:02:45 ID:VC0QHqzQ0
それから
世界最強の魔術師モララー=レンデセイバーは
小さな幸せを生涯、守り続けていったそうだ。
その人里離れた山奥の小屋では
双つの肩が、いつも楽しげに寄り添っていたという。
( ・∀・)モララーは隠居暮らしのようです。 双
完
86
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/28(土) 23:05:14 ID:VC0QHqzQ0
というわけでおしまいです。
完結まで長々とかかってしまいすみませんでした。
前回はまだ続けられるかと思いましたが、今回は本当に完結です。続きはないです。
お付き合い頂いた方々に厚く御礼申し上げます。
連載中のall for〜の方も出来るだけ早く投稿していきたいと思います。
87
:
名も無きAAのようです
:2012/07/28(土) 23:18:02 ID:htD3oa8.0
乙乙
続きが読めるとは思ってなかったんで、復活は嬉しかったよ
お疲れさんす
88
:
名も無きAAのようです
:2012/07/28(土) 23:31:26 ID:Ky/Fncb60
乙
モララーさん流石やでぇ
89
:
名も無きAAのようです
:2012/07/29(日) 00:29:55 ID:4vBKmxtI0
乙です
90
:
名も無きAAのようです
:2012/07/29(日) 01:22:39 ID:rF.ASPZ60
乙
ロマネスクって聖騎士じゃなかったっけ
91
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/29(日) 01:36:39 ID:V4WD5D5w0
……あ、本当ですね
致命的すぎる。全部書き直したいレベル!!
脳内保管でオネシャス! 黒騎士の部分は聖騎士で!!
92
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/29(日) 01:51:30 ID:V4WD5D5w0
作者が全て勘違いしてるなんて恥ずかしいですな。
鎧も黒で統一させてるってことは、完璧にやっちまってます。
それらの記述だけ、再度書き直したい。悔しい。というか情けない!!
93
:
名も無きAAのようです
:2012/07/29(日) 03:07:48 ID:AQhY5JyMO
作者が復帰してから読みはじめたので
他の方とは違い自分のなかでは起承転結すぐだった
(゚、゚トソンのメインもしくはヒロインのやつはうるうるさせるね
94
:
名も無きAAのようです
:2012/07/29(日) 06:13:35 ID:a39CYh3.O
乙乙
楽しかった
95
:
名も無きAAのようです
:2012/07/29(日) 08:48:01 ID:Ed/V319MO
最初から最後まで楽しく読めたよ!
何より完結させてくれたことが本当に嬉しい
乙でした
96
:
名も無きAAのようです
:2012/07/29(日) 08:57:22 ID:yuv0NXOQ0
乙!乙乙!
97
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/29(日) 09:32:07 ID:V4WD5D5w0
/ ,' 3「久方ぶりじゃのう、モララーくん」
枯れた喉から発されたのは、柔らかくも気高さを感じさせる言葉。
懐旧のこもったその言葉にはどこか優しさも覚える。
(; ・∀・)「何故……こちらが……?」
/ ,' 3「まぁ、それは追々話すとしよう。立ち話もなんじゃ、キミさえよければ上がらせて頂きたいのじゃが」
ドアノブを手にしたまま、半身になってモララーは対応していた。
その余りの不敬さに、モララーは自分を恥じると同時に謝罪の言葉を紡ぐ。
(; ・∀・)「し、失礼しました。どうぞ、何分窮屈な場所でございますが……」
/ ,' 3「そこまでかしこまらなくて結構じゃよ。
ワシはキミに、国王と匹敵するほどの位、大魔術師の称号を捧げたつもりじゃ。
昔のように、盟友(とも)として接してくれればよいぞ」
ほっほっほっ、とスカルチノフ国王は、嫌味さを感じさせない笑いでモララーを許した。
いや、元より不敬などとは、彼は思ってもいない。
立場上、その厳しさを見せることはあれ、平時の彼は王ではなく一人の老人なのだ。
( ・∀・)「……ありがとうございます。では、改めて。いらっしゃいませ」
/ ,' 3「うむ。お、そうじゃ。ロマネスクくん、キミも入りなさい」
( ФωФ)「ハッ!」
キレのある返事と共に、扉の影からヌッと大男が出てきた。
聖騎士に与えられる、金の装飾が入った白銀の全身鎧を着こんでいる。背にはVIP大陸の紋章が刻まれたマントも着用していた。
背中には身の丈ほどもある大剣を携えた彼は、有事のロマネスク・ホライゾネルに他ならない。
98
:
名も無きAAのようです
:2012/07/31(火) 19:08:38 ID:0ATSMtLAO
結局電撃の選考どうなったんだ?
99
:
◆hCHNY2GnWQ
:2012/07/31(火) 19:34:23 ID:NvoWlxrU0
>>98
結局、落ちました。でも講評をもらえたので嬉しかったです。
ストーリーはつまらんけど、キャラクターが活き活きしてるね、と何ともいえない評価でした。
プロの道は険しいです。
100
:
名も無きAAのようです
:2012/08/01(水) 00:58:01 ID:WjAIrc2w0
何次まで進んだの?
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