今週月曜日のNHK「フランス語会話」での「パトリスの文学館」のコーナーで、
アルジェリア系のフランス女性作家 ソニア・ムーメン(Sonia Moumen)の作品
"Mon père est un petit bicot"「私の父親 プティ・ビコ」
が紹介されていました。フランスに帰化したアルジェリア人の父を誇りに思っている
というような内容です。最近はフランスに帰化したムスリム・アラブの二世たちの
作品が世間に紹介されつつありますが、彼らの世代はイスラームとカトリックの
境界を乗り越えようという意気込みを感じます。
>>15-16
>« sale Arabe »
>「これだからアラブ人は・・・」
その箇所は人種差別の話題なので、訳者が露骨に表現せずに意訳したのでしょう。
sale は辞書的には「汚い、不潔な」とか「卑劣な、嫌な」「卑猥な」などと訳されます。
(英語になじみのない仏語話者が日本の商店で「sale」の宣伝文句を見たらどう思うか?)
罵倒語というか、侮蔑的な文句を投げかけているわけなので、ある程度の意訳は可でしょう。
「これだからアラブ人は・・・」は穏便な訳だと思います。
Parmi les participants, on trouve un garçon d’origine marocaine.
(番組の)参加者の中には、モロッコ出身の少年がいました。
Un garçon lui a dit « sale Arabe » pendant une discussion.
討論の間に、ある少年が彼に「アラブ野郎」と言いました。
「المجزرة الإسلامية 」(イスラーム肉屋/屠殺屋)という看板を見て
「この看板はアラビア語で書かれています。アラブ人街ですから。」
とはしゃぐアナンダ。住民は1950年代以降に北アフリカから渡仏した
人々が中心。毎週土曜の市場はにぎわい、北アフリカ産のナツメヤシ、
クスクスの粉、水たばこのパイプ、ミントティーのポットなどの食材・雑貨が売られている模様。
物価が安いので、イスラーム教徒のアラブ人だけでなく普通のフランス人も買い物に来るようです。
そしてアラブ人街の目玉が「パリの大モスク(la Grande Mosquée de Paris)」。
パリにはいくつものイスラーム礼拝所(モスク)があるようですが、この大モスクは
1920年代に北アフリカ諸国との友好のためにフランス政府が援助して建てられた物。
アラベスク装飾が壮麗な大モスクですが、ティーサロン、レストラン、ハマームもあり、
それらはイスラーム教徒ではない一般人も利用できるそうです。
とくにティーサロン(le salon de thé)はモロッコ産のミントの葉で
入れたミントティーやモロッコのお菓子があるので、イスラーム教徒以外の
一般のフランス人の憩いの場にもなっているようです。
9・11や米イラク侵攻後、洋書でも中東情勢やアラブ事情・アラビア語の書籍が
かなり増えました。私は、上記の本と千夜一夜の仏訳ダイジェスト版
"Les Mille et Une Nuits - Contes shoisis I", par Jamel Eddine Bencheikh et André Miquel, Gallimard
ISBN 978-2-07-038399-3
を買いました。
なお、クセジュ文庫の近刊(中近東関連)では以下のものが出ていました。
いずれもまだ邦訳(白水社)は出ていないと思います。
『ヘブライ人の歴史』 Histoire du peuple hébreu (André Lemaire) ISBN 978-2-13-056635-9
『現代のイスラーム』 L'Islam contemporain (Ali Mérad) ISBN 978-2-13-056531-4
『アラブ人の歴史』 Histoire des Arabes (Dominique Sourdel) ISBN 978-2-13-056490-4
『アラビア語』 L'arabe (Djamel Eddine Kouloughli) ISBN 978-2-13-055961-0
『コーラン』 Le Coran (François Déroche) ISBN 978-2-13-054152-3
『アラブの思想』 La Pensée arabe (Mohammed Arkoun) ISBN 978-2-13-053359-7
『イスラーム単語集』 Vocabulaire de l'Islam (Dominique Sourdel, Janine Sourdel-Thomine) ISBN 978-2-13-053216-3
男性器を指す文語(書き言葉)アラビア語はふつうはカディーブ(قضيب)ですが、
アイル(أيرまたはإيرなどと表記される)という単語が用いられることもあるようです。
ハンス・ヴェーアのアラビア語-ドイツ語辞書と、日本でもおなじみのその英訳版
(The Hans Wehr Dictionary of Modern Written Arabic)には
アイル(اير);複数形はウユール(ايور) として載っており、
これが口語の三人称所有格形ではエロー(ايرو)になるのかも知れません。