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美
9
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:31:49 ID:JC05D13o0
ノパ⊿゚) 誰かと行ったの、彼女とか?
('A`) もっと特別な存在だ
ノパ⊿゚) ...
ミセ*゚ー゚)リ 播院、だよね
ミセ*゚ー゚)リ ずっと昔に、会ったことがある。妹の友達で
ミセ*゚ー゚)リ 妹は、彼女とあなたと...大変だったよね
('A`) やばい目に遭ったよ。今まで生きてきた中で、一番
('A`) それに...あいつはもう播院じゃない。今は違う
ミセ*゚ー゚)リ どういうこと?
('A`) 別人になったのさ。というか、前よりずっと人らしくなった。変わったのは俺もそうだが...
ノパ⊿゚;) ちょっと待って
ノパ⊿゚;) え、あたしだけ知らないの?この話
ミセ*゚ー゚)リ いや、私もよく知らないんだ...妹からちょっと聞いただけで
('A`) 今度話すよ
('A`) ...今まで居た自分が、あいつの中に全部持ってかれちまったんだ。あの時以来、俺は別人になった
ノパ⊿゚) ....ふーん
('A`) 四威は元気か
ミセ*゚ー゚)リ うん。播院にもたまに会ってるって
('A`) そうか....
10
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:32:35 ID:JC05D13o0
('A`) 正直、姉妹共々迷惑かけた。これからも何かあったら言ってくれよ
ミセ*゚ー゚)リ いいよ。私はそんな...四威の方は心配だけど
ノパ⊿゚) そんな思いして、独生は怖くないの
('A`) え、怖いって?
ノパ⊿゚) いや...なんかさ。自分が失われてく感覚とか、怖くて。あたしだったらもう二度とする気になれないよ
('A`) ...あー
('A`) 残酷かもしれないけど、もう変わってしまったものは元に戻らないっていうか...変わってしまったら、そのことに恐怖なんて感じない
('A`) それは彼女も同じだ。彼女はあれ以降もうやめちまったが...
('A`) そういえば、お前はちょっと似てるな
ノパ⊿゚) あたしが?その播院って子に?
ミセ*゚ー゚)リ ....
('A`) ごめん、言い過ぎかな..ちょっと違うな
ミセ*゚ー゚)リ 似てた、と思う
('A`) そうそう、似てたな
ノパ⊿゚) な、なんだよ。私に分からないところで意思疎通し合って
('A`) ごめん。今日あんま時間なくて。今度ゆっくり話したい
ノパ⊿゚) ...急いでるとこ悪いんだけど、今日は他に用事があって来てて
ノパ⊿゚) お風呂借りてもいい?
('A`) いいけど。やるのか?
ノパ⊿゚) うん。二本ちょうだい
('A`) 俺がいなくても誰かに頼むから気にすんなよ。あ、これは貸しだぞ
ノパ⊿゚) ありがとう
11
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:34:35 ID:JC05D13o0
独生たちの入浴スタイルは、こうだ。
二つのドラム缶をくっつけた手製の浴槽に、汲んできた水を浅めに注ぐ。
んで、下から火でしばらく熱してる間に、廃品のラックを周りに設置して、布で覆いを作る。
...いや、浅いのは、端から入浴と思われてなかったからか。
あたしたちが水を使うのは、一緒に行くためだ。
お互いに水を通して繋がりあう。
あたしから生まれた波紋はみっちゃんから生まれた波紋と交差して、ひとつの波紋を生み出す。
正午の柔らかな光が、割れた窓ガラスから入ってきて、布と布の間からも入ってきて、水をきらきら光らせる。
あぁ....久しぶりの水だ。そして懐かしいこの感じ....
あたしからみっちゃんの方へ腕が伸びる。
みっちゃんのほうからあたしの方へも腕が伸びる。魚のように白くて透明な腕。
あたしは市場の水槽にごちゃ混ぜになって浮いてる魚たちの死骸を思い出した。透明な肌に、毒々しい赤色、血の色、暗黒の海の中に浮いてる。官能的で、神秘的で、だけど、そこにはなんにもない。
数日前に真っ黒だった二人の腕はすっかり元に戻っていて、でも毒々しい跡は一箇所に集中して残っている。みっちゃんはいつからやってたの?
チャプ チャプ チャプ
ミセ*゚ー゚)リ ...ひーと
ノパ⊿゚) ...怖い?
12
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:35:09 ID:JC05D13o0
ミセ*゚ー゚)リ
ノパ⊿゚) ...大丈夫だよ。あたしにもできること、あるよ
ノパ⊿゚) 安心して。目閉じて
インジェクターを取り出し、みっちゃんの腕をきつく縛る。細い腕だ。わかりやすく浮き出た静脈にあたしは薬を注入した。彼女はすぐにぼーーっとし始めて、あたしの肩に頭を預けた。
みっちゃんの心臓の音が聞こえる。早い。でも、段々遅くなってく。二人にまとわりつく水がゆっくりと揺れる。肌が、内臓が一緒に揺さぶられてる。二人でゆらゆら揺れて、これから一つになっていく。
あたしもみっちゃんにやったことと同じことを自分にして、どんどん意識は薄れていった。
キーーーーンという澄んだ音が辺りに響く。遠くから清浄な響きが微かに聴こえてくる。どうしようもなく「肉」だった感覚がどんどん無機化して、青緑がかって、コントラストが薄くなって、霞んで行って....
空気が断片化していく。まるで透明な空気が、全部ガラスだった、というような。全部バラバラに割れてく。ガラス漬けになったあたしたちも、世界も全部、砕けて散って、隙間が開く。
真っ黒な裂け目。先が真っ暗だった、あの廊下と同じ闇。
開いた隙間から、紺碧の世界がやってくる。あぁ、青い、雲....
.
13
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:36:44 ID:JC05D13o0
あたしの記憶では、紺碧の世界に、青い雲が浮いていて、その上に青い宮殿があった。
あたしたちはそれを空中の、同じ高さから眺めていた。それ以上近付くことも、遠ざかることもできない。静止画のような宮殿。
ディズニー映画のはじまりを、永遠に観ているようだ。それはとても安心したし、ワクワクしたし、ずっと懐かしかった。
隣にはみっちゃんがいる。それはわかっているのに、隣を向くこともできない。
ただスクリーンに映し出された宮殿を眺めているような感覚。
驚いた。いまや、あたしたちは雲の上に居た。宮殿はすぐ目の前に聳え立っていた。
しかも、何の感覚もなかったあの時とは全然違う。風が吹いてる。強い風がぶつかってくる。
青い嵐。
みっちゃんを見ようと、隣を向こうと思ったけど、できなかった。
...本当はできたのに。ただのくだらない、迷い。
彼女の世界が壊れる様を、あたしは見たいんだろうか。
多分、次ここに来た時には、宮殿の中だろう。中はどうなっているの?人は底が知れない。
それが嬉しいけど、何かを失うのは怖い。
怖いだけなんだ。何も変えられないことが.....
思考がぐるぐる回って、
いつしか離れていった。
あ
チャプチャプ
チャプチャプ
チャプチャプ
チャプチャプ
チャプチャプ
チャプチャプ
.....
14
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:38:07 ID:JC05D13o0
チャプチャプ
ノパ⊿゚)
ノパ⊿゚) ...みっちゃん!
ミセ*ー)リ ひーと
ノパ⊿゚)
ノパ⊿゚) 泣いてんの...?
ミセ*ー)リ 結局...私が変えるしかないんだよね
ミセ*ー)リ 一緒に居れば、なんとかなると思ってた
ミセ*ー)リ 世界で一番美しくて、私が私であるための絶対条件だったのに...それを手放す覚悟が
ミセ*ー)リ 私には、無い
ノパ⊿゚) ....ここにいるよ
ノパ⊿゚) 正直言うと...あたしには何もできない。あなたの苦しみも、それをあなたがどうしようもできないことも、知ってるのに
ミセ*ー)リ ...ごめん。ワガママだよね
15
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:38:33 ID:JC05D13o0
ノパ⊿゚) ....多分さ
ノパ⊿゚) 全部終わってから、そこからがあたしの使命なんだよ
ノパ⊿゚) それが、みっちゃんと出逢えた意味
ミセ*ー)リ 終わりたくないよ...
ミセ*ー)リ 美を失うくらいなら、死んだ方がまし...
ノパ⊿゚) 美はひとつじゃないんだよ
ミセ*ー)リ ...本当に?
ノパ⊿゚)
ミセ*ー)リ 美はひとつだよ...
ミセ*ー)リ きっと、世界もひとつだ
.
16
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:39:31 ID:JC05D13o0
これは、美の物語だ。
あたしとみっちゃんと、その他大勢...全世界の人間の物語だ。
幾千のあなたに向けて。
美は、感覚だ。言葉じゃない。私は感覚をここに残していく。
美はここに残る。老いもしないし、病みもしないんだ。
決して終わらない物語。始まってもいない、物語を、ここに記す。
.
17
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:40:45 ID:JC05D13o0
美
.
18
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:41:09 ID:JC05D13o0
一, 了
19
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 13:51:04 ID:GKbn7Zr60
ワクワク
支援!
20
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 14:01:34 ID:E9hZ6Lsg0
乙期待
21
:
名無しさん
:2021/03/23(火) 15:42:05 ID:GUHYCZYQ0
ジャスミンの人じゃないか!支援支援
22
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 02:15:55 ID:FM3q1P0U0
乙!荒廃と幻覚?の落差で鳥肌立った、これは続きが気になる
23
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:40:41 ID:TpDVya8A0
誰....?
昼過ぎに一回やった。いつも通りね。多分数時間眠り込んで、
もう日が落ちるころだろう。
私の世界は真っ黒だ。
扉が音もなく開いた。ドアノブについた水滴が下に落ちて
音を立てた。鉄板を貼り合わせただけの粗末な部屋だった。
闇の中で気配がする。こちらを見つめている!
あたしは布団の中で、息を潜めた。
まただ。また私のいない間に、あいつが来たんだ。
そいつは、初めて私に口をきいた。
初めて知った、そいつは、女だった。
.
24
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:41:25 ID:TpDVya8A0
ノパ⊿゚)
ミセ*゚ー゚)リ
彼女の持っている懐中電灯が、布団から出た私の顔を照らしていた。
ノパ⊿゚) あなた...だったの?
ミセ*゚ー゚)リ え?
ノパ⊿゚) ...なんでもない
ミセ*゚ー゚)リ はじめまして。私は診競。非記の紹介で、ここに
ミセ*゚ー゚)リ ごめん、邪魔しちゃったよね
ノパ⊿゚) ああ、いや....丁度戻ってきたところだし
ノパ⊿゚) あたしは脾都。よろしくね、診競
.
25
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:41:58 ID:TpDVya8A0
ノパ⊿゚) 真っ暗だね…火、つける
ボッ
ノパ⊿゚) あなたはどこから来たの
ミセ*゚ー゚)リ ...ティンプラから
ノパ⊿゚) あたしは、どこでもない...親の顔も知らないし、どこで産まれたのかも知らない
ミセ*゚ー゚)リ そうなんだ....
ミセ*゚ー゚)リ おんなじだよ。私も
ミセ*゚ー゚)リ 私の証明はどこにもない
ノパ⊿゚)
あたしが歩いた道。それは何だったんだろう。振り向いてもわからないよ。
道なんてどこにもなかった。
パタタタタタタタタタ、と、雨が降り始めた。
次第にどんどん強くなっていって、死んだような、この金属質な世界を埋めていった。雨漏りが、キャンドルの火を掻き消した。
再び、世界が闇に沈んでいった。
26
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:42:51 ID:TpDVya8A0
「...証明はただ、私の中にだけあるの」
「中?」
「そう。私の中にある、誰も触れられない世界」
「私でさえ、そこに手が届かないの」
「....へえ」
「今日ここに来たのも、それを確かめるためなの。一緒に、見る?」
「一緒?」
「今日は2本持ってきたんだ。見せてあげる。外に出よう」
「外って、どしゃ降りだよ」
「水が無いと駄目なの」
「はは、何それ」
「いいから」
.
27
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:44:25 ID:TpDVya8A0
その日、人生で初めて、薬の間隔のルールを破った。
そして初めて、「一緒に」行くということを知った。
それからあたしは....美を知った。
彼女の「宮殿」を見て、全てがひっくり返ったようだった。あたしが何も持ってないこと、未来でも何も持つことはないだろうこと、死を免れ得ないこと。そんなのは物心つく頃から分かってた。あたしは「ふつう」の幸せなんか絶対に手に入れられないし、そんなものに憧れを抱く気持ちすら、小さい頃から消えてしまった。
でも、美の前ではそんなことどうでもいい、関係ないんだって、気付いた。
その時の感想は、とてもじゃないけど言葉にできなかった。
言葉にできないことが、この世にあったんだ。
ミセ*゚ー゚)リ ...これが私の証明。
ノパ⊿゚) ...すごい
ノパ⊿゚) すごいよ、診競
ノパ⊿゚) あなたは、本当に素晴らしい人間だよ
ミセ*゚ー゚)リ そんなことない。誰にでもできることなんだよ。脾都にだって
ノパ⊿゚) そんな....あなたが居なかったら、一生気付けなかったよ
診競から学んだことは沢山ある。
一番は「美は誰でも持っている」ってこと。
これは本当だった。それから、人間を見る目が...いや、あらゆる自然を見る目が変わった。
あたしたちのほとんどは中にある美に気付いていない。
だから彼女は、伝道師だ。このろくでもない世界に生まれた奇跡の子だと、
本気でそう思った。
あの日の出会いから、あたしは彼女とずっと一緒にいる。彼女の呼び名は「みっちゃん」になった。本当に美しいものは心の中に秘めておきたくて、それから一緒に宮殿に行くことはしなかった。彼女も同じように考えてた。
非記がビジネスを新しく始めるようになると、あたしたちはVIP市のボロ屋を離れて、この国の首都である「奏柵」に移り住んだ。
28
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:45:14 ID:TpDVya8A0
....
夢を見てたようだ。夜中に起きちゃった。
今日も、あの日と同じように雨が降っている。
あたしたちの住処は独生のとこから数ブロックの、地域の会館だった。
周りにはあたしたちと同じように帰る場所のない人々、がバラバラになって眠っている。皆顔見知りだ。
隣で寝ころぶみっちゃんを眺める。
全然変わってない。色素の薄い肌に、薄く散ったそばかす。長い睫毛。
静かに眠る姿は人魚のように穏やかだった。
でも...あたしの世界は、大きく変わった。
彼女は奇跡の子なんかじゃない。あたしの勝手な期待。
彼女の世界が揺るぎ始める前から気付いてた。
ノパ⊿゚) ....
ミセ*-ー-)リ スースー
あたしはボロボロの傘を持って外へ出た。
外はずぶ濡れで、雑居ビルの明かりが床に反射して揺れていた。
ある時、雨は心をかき乱す。ある時は、鎮める。
水が、いつどうなるか、あたしの手に負えるものではない。
29
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:47:23 ID:TpDVya8A0
ぶらぶらと歩いてると、道の片隅に座り込んでる男を見つけた。ずぶ濡れだ。
片方の袖は高くめくり挙げられていて、
全身が脱力しきって、瞳は虚ろだった。
あたしは男の様子を見て、すぐに察した。彼は今、「行っている」。
( ´_ゝ`)...てんだよ....ボソボソ...したら....sなj...
30
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:47:45 ID:TpDVya8A0
ぶらぶらと歩いてると、道の片隅に座り込んでる男を見つけた。ずぶ濡れだ。
片方の袖は高くめくり挙げられていて、
全身が脱力しきって、瞳は虚ろだった。
あたしは男の様子を見て、すぐに察した。彼は今、「行っている」。
( ´_ゝ`)...てんだよ....ボソボソ...したら....sなj...
31
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:49:51 ID:TpDVya8A0
ノパ⊿゚) ねえ。
ノパ⊿゚) 死んじゃうよ...こんなとこで
( ´_ゝ`)ん...dhdh...ボソボソ....
ノパ⊿゚) ....しょうがないなぁ
ズルッ ズルッ
ノパ⊿゚) ここなら、雨も凌げるでしょ
ノパ⊿゚) じゃあね
ノパ⊿゚)
32
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:50:25 ID:TpDVya8A0
( ´_ゝ`)ん.....
( ´_ゝ`)あれ、俺...どこだ
ノパ⊿゚) おはよう
( ´_ゝ`)
( ´_ゝ`)あんたは?
ノパ⊿゚) あなたと同類
ノパ⊿゚) まぁ、あんなとこでおっ始める程バカじゃないけど
( ´_ゝ`)あぁ...そういうこと
( ´_ゝ`)俺になんか用?
ノパ⊿゚) ありがとうは?
( ´_ゝ`)死なねーよ。あの程度で
ノパ⊿゚) あたしがあなたをここに引っ張ってきたのは
ノパ⊿゚) ...どんな世界に行ってたんだろって。思ったから
ノパ⊿゚) あなたの、美に興味があるの
( ´_ゝ`)び....?
ノパ⊿゚) わからないか...
( ´_ゝ`)いや、わかるよ。多分近い意味で、俺らは「ビジョン」って呼んでる
( ´_ゝ`)いいぜ。話してやるよ
33
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:51:05 ID:TpDVya8A0
( ´_ゝ`)あ、名乗ってなかったな。俺は亜丹。あんたは?
ノパ⊿゚) 脾都
( ´_ゝ`)ビジョンを言葉で説明すんのは難しいだろ
ノパ⊿゚) うん
( ´_ゝ`)だから、全部伝えられるかは、分からないけど
34
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:52:51 ID:TpDVya8A0
俺は、高速道路を逆走して、ずっと生身で走ってたんだ。
真っ青で、もうすぐ黒くなりそうなくらい色の濃い空の下、辺り一面、
西日のオレンジ色に染まっている。
俺の足は軽くて、疲れを知らない。前から無数に近付いてくるギラギラした車と車の間に俺の体が勝手に滑り込んでいく。
右上....そう、漠然と右上の方に俺が走ってきた距離がリアルタイムで更新されていって、永遠に桁が上がっていくんだ。
俺は永遠とも呼べるような時間、終わらないハイウェイを走り続けていた。
こちら側に戻ってくるとか、あちら側に行くとか、そんなことは全く頭になかった。
俺の中にはその世界しかなくなるんだ。
西日も永遠に沈まない。ずっと同じ居場所で、世界を照らし続けている。
俺が目を覚ますのは、思考が麻痺するような無限の疾走の中で、唐突に、小型車に跳ね飛ばされたときだ。
物凄い衝撃が全身に襲いかかって、天と地が何十回もぐるぐる回って、俺と一緒に走ってきた、世界の法則も、悪も善も、
あらゆる対立構造がその立場を何度も何度も入れ替わって、次第に境界がなくなって、ひとつになるんだ。
回って、混ざって、一つの円になる。
円は、地球でもあり、俺の目玉でもある。俺の視界でもある。
そして、俺の視界だと、思った瞬間に、その視界はこっち側に戻ってきた俺が見ている現実だと気付くんだ。
35
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:54:14 ID:TpDVya8A0
( ´_ゝ`)そして、その視界の中に、あんたがいた
ノパ⊿゚) ....
ノパ⊿゚) すごいよ
( ´_ゝ`)...え
ノパ⊿゚) 最高だ
( ´_ゝ`)...他人に、そんなこと言われたの、初めてだよ
( ´_ゝ`)俺は、俺の中にある最高なことを、俺が知ってさえいればそれで十分だと思ってたけど
( ´_ゝ`)...嬉しいな。なんて日だ、今日は
( ´_ゝ`)俺たち兄弟は...社会の底辺で、誰にも見向きもされないで育った
ノパ⊿゚) あたしもだよ。ていうか、今もそうだけど
( ´_ゝ`)...こんな風に生きてる連中は、人の愛し方も何も知らないだろ?
( ´_ゝ`)支え合って生きてたって、結局、お互いのことなんて何一つ見えてないままなんだ
( ´_ゝ`)なのに、何であんたは
ノパ⊿゚) あたしは、価値のない人間なんていないと思う
ノパ⊿゚) あたしにそれを教えてくれた人がいる
( ´_ゝ`)....
ノパ⊿゚) あたしたちは、どの人にもあるものを、美って呼んでる
( ´_ゝ`)俺は普通の人間が考えてることなんて知らない...だけど、最高なものは誰にもあるわけじゃないだろ
ノパ⊿゚) あるよ。でも、世の中にはそれに気付いてない奴ばっか
36
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:55:54 ID:TpDVya8A0
( ´_ゝ`)俺には、弟が居た
( ´_ゝ`)でも、あいつは1ヶ月前、先に自殺した
( ´_ゝ`)こんなクソみたいな人生、生きてても死んでも変わらないって、言って
( ´_ゝ`)あんたにもわかるだろ?俺たちには、今この瞬間以外、何も見えないんだ
ノパ⊿゚) ...わかるよ
ノパ⊿゚) ...あたしも、いつ死んでもいいと思ってた。その時を待ってた
( ´_ゝ`)俺も今日は、死ぬつもりだった
( ´_ゝ`)でも、あんたのおかげで、何かに気付いた
( ´_ゝ`)うまく言えないけど
( ´_ゝ`)変なこというようだけど、俺は今、人生とか、この世界とか、そんなものは紛い物だってわかった気がするんだ
ノパ⊿゚)
37
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 20:59:38 ID:TpDVya8A0
ノハ ⊿ ) もし、美なんてなかったら
ノハ ⊿ )
ノハ ⊿ ) もうあたしは、生きていけない....
( ´_ゝ`).....
( ´_ゝ`)俺は、自分の感覚を信じたい
( ´_ゝ`)だから、あんたも信じろよ
ノハ ⊿ )
( ´_ゝ`)...また会おう。この恩は忘れない
( ´_ゝ`)それと、君の彼女にも会わせてくれよ
ノハ ⊿ ) 約束する
( ´_ゝ`)...じゃあ、な。俺は行かなくちゃ
ノハ ⊿ ) うん
38
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 21:01:04 ID:TpDVya8A0
ギュッ
ミセ* ー )リ ひーと...?
ミセ* ー )リ なんで、ずぶ濡れなの
ノハ ⊿ ) ...みっちゃんは、暖かいね。いつだって
ミセ* ー )リ ひーとが、冷たいんだよ
ミセ* ー )リ 私から離れないで。私が、あなたを守るから
39
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 21:03:07 ID:TpDVya8A0
雨は、より一層強さを増していた。
あたしは、傘もささずにその場を後にして、帰路についた。
この行為は、あたしが濡れるための手段で、目的は、水を持ち帰ることだった。
雨があたしから奪った体温を、あたしは彼女から奪おうと思った。
今晩の出会いで、あたしは、自分の意思に気付いた。何も見えていなかった。だから、水に踊らされるのだ。あたしは水を従えようとした。
診競を、あたしは変えられる。変えなければいけない。
あたしは彼女に覆い被さり、冷え切ったその身体を、彼女の身体に密着させた。
全身から、冷たい雨が槍のように彼女に突き刺さった。あたしの身体は彼女の熱で焼けただれていった。
40
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 21:03:44 ID:TpDVya8A0
霧のような吐息があたしたちを包み込んだころ、
彼女の両眼からも、雨が降りはじめた。
雨はとめどなく、朝になるまで降り続けた。
.
41
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 21:04:12 ID:TpDVya8A0
二,了
42
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 21:08:03 ID:bSN7byho0
乙乙
43
:
名無しさん
:2021/03/24(水) 21:13:51 ID:TpDVya8A0
抜け補完
>>36
と
>>37
の間
( ´_ゝ`)いや...もう少し上手く説明できたらいいんだけど
( ´_ゝ`)最高なものは、俺の人生の範疇にもはや収まってないっていうか
ノパ⊿゚) わかるよ
( ´_ゝ`)俺はそれに生かされてて、俺はそれのために生きているんだ
( ´_ゝ`)あんたのいう美は...そういうことか?
ノパ⊿゚) ...ああ
ノパ⊿゚) あたしの彼女の、受け売りに過ぎないけど、きっとそうだと思う
( ´_ゝ`)彼女?
ノパ⊿゚) あたしに美を教えてくれた人。でも今は彼女自身が、美の重みに耐え切れなくなってる
ノパ⊿゚) でも
ノパ⊿゚) ...正直、あたしにもよくわからないんだ。美が、本当にあるのか、ないのか
44
:
名無しさん
:2021/03/25(木) 00:37:45 ID:PHWSYwu60
乙!
45
:
名無しさん
:2021/03/25(木) 13:00:32 ID:kbZ2uxVA0
乙
この特有な感じ大好き
46
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 10:59:41 ID:l0jDGPJo0
美
.
47
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 11:00:14 ID:l0jDGPJo0
夜通し降りしきっていた雨が、止んだ。
光が薄いカーテンを貫き、辺尼に注ぐ。
十時間。彼女は夢も見ず寝ていた。
見ると、携帯のロック画面が午前7時を示していた。
簡素な朝食を済まし、辺尼は部屋を覆わんばかりの多肉植物たちに水をやる。
彼女が精神的に追い詰められるたびに、増えていったものだ。
湿り気を帯びた、青白い部屋。
机、ベッド、食器棚、鏡...最低限のものだけで生み出された空白。
しかしそこは植物で埋め尽くされていた。
彼女はそこで着替え、支度を済ますと辺りを見渡した。
酸素が失われるため、窓は常に開いたままにしてある。
('、`*川 ...行ってきます
48
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 11:01:37 ID:l0jDGPJo0
奏柵 第1区所在 行政庁舎 麻薬取締課
(´・_ゝ・`) おはよう辺尼。ここ最近忙しかったからね、昨日はよく眠れたかい
('、`*川 おはようございます手視先輩。おかげさまで
(´・_ゝ・`) コーヒー淹れといたよ。はい
つ日
('、`*川 感謝します
つ日
(´・_ゝ・`) 君の働きの甲斐あって、ルートが特定できたよ
(´・_ゝ・`) しかも、彼らが使ってる器具も抑えた
(´・_ゝ・`)
つ<>-[ ]]]]]-
('、`*川 ...妙な形ですね。しかも金属性とは...
(´・_ゝ・`) ああ。彼らは「インジェクター」と呼んでるらしい
49
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 11:03:13 ID:l0jDGPJo0
(´・_ゝ・`) 見た通り、ただの注射器じゃない。どうやら内容物の装填で繰り返し利用できるようだ
(´・_ゝ・`) しかも、電動...針を刺して注入するまで、ここを押すだけで可能という仕組みだ
('、`*川 ルートはどうだったんですか?
(´・_ゝ・`) あらかた予想はついてたんだが、裏付けが取れたという感じかな...君が目星を付けてた輩を尋問して、拠点がはっきりした。
(´・_ゝ・`) 第5区にある雑居ビルの1フロアまるごと、彼らの「家」になってる。そこで取引と使用が行われてると見ていい
('、`*川 では、動き出しますか?
(´・_ゝ・`) いや。少し泳がせよう。そこから辿っていけばもっと引っ張り出せるしな
('、`*川 しかし、今のうちに行動しなければ勘付かれるおそれが
(´・_ゝ・`) それはある。だが幸い関係者の顔と住所まで特定してるんだ。他の者に張り付かせてる
(´・_ゝ・`) 彼らの情報を統合して、できる限り流れを探る。時機を見て叩く
('、`*川 了解です
(´・_ゝ・`) ネットの方からも詮索はしてるんだが、残念ながらまだ成果はない状態だ
(´・_ゝ・`) まぁ、根気よくやる。君には針という男を張ってもらう。いいね
('、`*川 はい
50
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 11:04:43 ID:l0jDGPJo0
('、`*川 しかし、禁断症状がない新薬というのは聞いたことがありませんね
(´・_ゝ・`) ...そうだな。強い幻覚作用とのことだが
(´・_ゝ・`) それだけで何故ここまで急速に広まったんだ...
('、`*川 他の薬の代用として、でしょうか?
(´・_ゝ・`) いや。どうやら他の薬と併用すると効果がほぼ0まで薄まるそうだ
(´・_ゝ・`) そして、使用者は他の薬物の経験がない若者だ。よくわからない。現実逃避とかかね
('、`*川 ……そうですね。私もそうだと思います
(´-_ゝ-`) ...僕たちのころは、若者はそこまで弱くなかったんだが、な
('、`*川
(´・_ゝ・`) ま、理由が何であれ、それは研究者の仕事だ。僕たちは言われたことをやるだけ
51
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 11:11:47 ID:l0jDGPJo0
(´・_ゝ・`) 乱用者の臨床像も極めて特殊だ
(´-_ゝ-`) ある意味最も恐ろしい薬かもしれないな
(´-_ゝ-`) 多分、根絶するのは、他のどの薬よりも厄介だ...
.
52
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 11:12:48 ID:l0jDGPJo0
奏柵 第5区
( ・-・ )
正午。
手視と辺尼を乗せた車は、針の住むマンションの付近に張り込んでいた。
(´・_ゝ・`) 辺尼、見えるか。あれが針だ
('、`*川 はい
(´・_ゝ・`) 僕は時期を見て次の現場に向かう
('、`*川 はい
('、`*川 ...先輩。心配していただけるのはありがたいのですが、私は大丈夫です
(´・_ゝ・`) いや、油断は禁物なんだよ。一度気付かれたら、女はなめられるから
(´^_ゝ^`) 逆にそれが、上手くいく場合もあるんだけど。念のため余裕があれば一人つかせるようにはする
('、`*川 わかりました
53
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 11:14:35 ID:l0jDGPJo0
針は車に気付くそぶりは見せず、マンションから去っていった。
のち、手視が車から去った。
辺尼は針が帰宅するまでの間をどう過ごすか考えた。もちろん、他の捜査官の連絡を待つことである。
車種や位置も隙を見て変えなければならない。
思考を巡らせるも、今朝からの手視との会話が引っかかって離れなかった。
禁断症状のない幻覚剤。鎮静作用も、興奮作用も、ない。
なぜ、そんなものが流通する様になったのか。
利用者の多くは住所不定無職の若者たちだ。
明らかに、状況が数十年前とは違うのだ。まず当時は家を持たぬ若者など、滅多にいなかったろう。
...今は、家庭が地獄になる時代だ。
辺尼の父親は幼い時に蒸発し、母からは虐待を受けて育ってきた。
彼女が成長し自立してくると、それは軽減していった。というよりも、必要最低限以外は、家に帰らなくなった。
まともな繋がりなどあるはずがなかった。
彼女の周りにも薬物に溺れていく若者はいた。その多くは、
彼女と同様、あるいはもっと劣悪な家庭環境に身を置いていた。
いつしかその経験が正義感へと変わり、彼女を現在の職務へと進ませた。
54
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 11:15:17 ID:l0jDGPJo0
これまでにない状況だ。
しかし、手視が言うように若者は現実逃避のためだけに薬物は使わない。特に今回の仕事においては、それは一端に過ぎないと感じていた。
彼女には薬物に溺れていく心理がなんとなく理解できる気がしていた。
だが否定したかった。
彼女は己の責務を全うできなくなることを恐れていた。
あくまでも、それは彼らの選択と、薬を仲介する犯罪者の悪しき心によるものであると思いたかった。
そしてその代償は当然存在するはずだとも。
('、`*;川 ……ッ!
辺尼はふと、車外から何者かの視線を感じた。
針に悟られたか。
しかし辺りを見回しても、彼の姿はない。
('、`*;川 (思い詰めてるのね、きっと...)
彼女は、そこで思考を停止した。
これ以上は、きっと任務に支障をきたす。
その後針が25時ごろに帰宅するまで、時間はただ流れていった。
彼は305号室に住んでいた。手視に報告し、その日はかなり遅い帰宅をした。
55
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 11:17:02 ID:l0jDGPJo0
一週間の張り込みにより、針の出入りのパターンが把握された。
平日・休日問わず正午から外出し、帰宅は25時ごろ。
パターンが予測されてきてからは、張り込みは昼/夜で交代制となったため、辺尼の帰宅時間は大幅に早くなった。
(´・_ゝ・`) 皆、張り込みお疲れ様...各ターゲットの外出先の動向もしばしば尾行させてもらったが、やはり中間に他の売人がいるようだ
(´・_ゝ・`) 辿っていけば、恐らく大きな組織が絡んでるだろう。しかし、実態が未だに掴めない...国内で生産されているのか、海外から輸入しているのかもこの状態ではわからないな
(´・_ゝ・`) ネット上での捜査も上手くいっていない。やはりここらで潮時だと思う。「家」を叩こう
(´・_ゝ・`) 出入りしている他の売人も全員わかった。あとは、内部偵察はやっとくべきだろう
(´・_ゝ・`) 僕は危険が大きいから、誰か別の人間に頼もうと思ってるんだが…
( `ー´)俺がやる
(´・_ゝ・`) 頼んだぞ、捻野
56
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 11:18:57 ID:l0jDGPJo0
('、`*川 私も同行します
(´・_ゝ・`) いや、辺尼は
(´・_ゝ・`)
(´・_ゝ・`) わかった
(´・_ゝ・`) では、二人は「家」に潜入だ。状況証拠として、ブツの確保と、室内の状態、人の出入りを頼む
(´・_ゝ・`) 他は引き続き民間の情報提供と、ネット上で捜査を続けてくれ。以上!
57
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 11:20:45 ID:l0jDGPJo0
…
「家」に向かう道中、車内にて
( `ー´)...お前、こういう潜入は初めてじゃねーの。大丈夫か
('、`*川 はい。...少し緊張しています
( `ー´)あいつらは基本的に疑り深い。だから俺はお前をツレか彼女ってことにするぞ
( `ー´)んで、1フロア丸ごと使ってるってことは...そのまま打つ部屋があるんだろう。そこから先一緒に居られるかはわからねーが、もし別々になった場合は、頑張ってくれ
('、`*川 了解です
( `ー´)女が潜入してくるなんざ普通考えられねぇからな。騙せるといいが...
( `ー´)なんでお前はこの任務を?
('、`*川 …何故でしょうね。私は、現場をこの目で見てみたいのかもしれません
('、`*川 本来、現場を抑えるのは警察の仕事ですし、私は容疑者を取調室から見ることしかできませんから
58
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 11:21:17 ID:l0jDGPJo0
( `ー´)...手視は迷ってたな
( `ー´)あいつは深入りするなと常に言ってる。そうしなきゃ痛い目に会うからだ
('、`*川 はい
( `ー´)...お前、彼氏とかいるのか?
('、`*川 ...いいえ。仕事が優先でしょうから。家族とも疎遠です
( `ー´)そうか...しかし、それならもっと心配するべきだ
('、`*川 ...そうですね
( `ー´)...見えてきたぜ。あいつらの「家」とやらがよ
('、`*川 必ず、捕まえましょう
( `ー´)ああ
59
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 11:22:27 ID:l0jDGPJo0
車から出ると、太陽が真上から二人を照らす。
影は青く、道は霞んでいた。
捻野と辺尼は古ぼけた黒いコートに身を包み、ビルに入っていく。
一階には各室の郵便受けと旧式のエレベーターがあるのみだった。
('、`*川 ....何か、嫌な予感がします
( `ー´)あぁ...こんな案件、今までに無いからな
( `ー´)行くぞ
大きな音をたてて、扉が開く。
重たい、犯罪の匂いがした。
内部は落書きで埋め尽くされており、緑がかった蛍光灯が妖しく輝いていた。
捻野は3階と4階を同時に押した。
エレベーターは3階と4階の間で停止し、扉が開いた。
.
60
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 11:23:41 ID:l0jDGPJo0
三,了
61
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 12:43:29 ID:l0jDGPJo0
補足
名と読み(姓は存在しない)
脾都 ヒート
診競 ミセリ
非記 ヒキ
独生 ドクオ
四威 シイ
播院 ハイン
辺尼 ペニ
手視 デミ
捻野 ネノ
62
:
名無しさん
:2021/03/30(火) 13:14:23 ID:OxWZvti20
乙です
63
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 21:32:58 ID:wy4i2d9M0
10分後に投下します
64
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 21:47:42 ID:wy4i2d9M0
美̷̼̚
.
65
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 21:48:26 ID:wy4i2d9M0
引っ張り上げられた。
朱殷の革、ソファの上であたしは目が醒めた。
薄暗い部屋のボロボロの天井がぐるぐる回っていた。しばらくすると止まった。
視界の端に、女の影。
彼女は緊張した面持ちで向かいの席に坐していた。
ノパ⊿゚) ....
ノパ⊿゚) (初めて見る顔だ)
('、`*川 .....
ノパ⊿゚) あの
ノパ⊿゚) 今、何時かわかる?
('、`*川 …16時20分よ
ノパ⊿゚) もうそんな時間か....ありがとう
('、`*川
ノパ⊿゚)
ノパ⊿゚) 今、引っ張ったのって、あなた?
('、`*川 え、私は何もしてないけど...
('、`*川 引っ張った?
ノパ⊿゚) いや。なんか....そんな感じがして
66
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 21:49:42 ID:wy4i2d9M0
('、`*川 名前は何ていうの
ノパ⊿゚) あたしは脾都。あなたは
('、`*川 私は翠
ノパ⊿゚) すい...よろしくね
('、`*川 ええ
('、`*川 あなたはいつからここに?
ノパ⊿゚) ...2年くらい前かな。日課なんだ
('、`*川 ...そう
ノパ⊿゚) あなたは?
('、`*川 私は初めてよ。ここに来たのは
('、`*川 友人に「家」があるって誘われて
ノパ⊿゚) ふぅん...
ノパ⊿゚) どうだった?
ノパ⊿゚) 聞かせてよ。何を見たの?
67
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 21:50:39 ID:wy4i2d9M0
そう問うと、彼女の目が暗くなった。
様子を見る限り、その友達に初めて誘われたという感じだった。
('、`*川 私は…
目。
あたしに向けられた眼差しには、確かに警戒が宿っている。
冷たい目。
不幸な冷たさだ。彼女は俯くとソファに深く座りなおし、あたしとの距離を取ろうとした。
部屋の電気が明滅した。
机の上には、未使用のインジェクターがあった。
('、`*川 …正直言うと、不安なの
('、`*川 先に話、聞いてもいいかな...あなたは何を見たの?
ノパ⊿゚) あたしは....何も見てないよ
('、`*川 え
('、`*川 でも、この薬はビジョンを見せるんでしょ?
68
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 21:51:39 ID:wy4i2d9M0
ノパ⊿゚) ビジョンは、もっと抽象的なものなの
ノパ⊿゚) 感じるのは、目に見えるものだけじゃない。匂いだったり、感触だったり、音だったり
ノパ⊿゚) 感覚よりもっと抽象的で、何かの....概念?みたいなものだったりもするの
('、`*川 ...へぇ
('、`*川 あと
ノパ⊿゚) ?
('、`*川 どうして、この薬には呼び名がないの
ノパ⊿゚) …それは、これがただの薬じゃないから、かな
ノパ⊿゚) これは苦痛を紛らわしたり、気持ち良くさせたりはしないんだ
('、`*川 どういうこと?
ノパ⊿゚) これは鏡なの。あたしたちが世界をどのように見ているか、嘘偽りなく現れる
ノパ⊿゚) あたしはそれを全部、美だと思ってる
('、`*川 もし、それが辛いことでも
ノパ⊿゚) うん。すごく感覚的で、言葉では説明できないけど...いった先がどんなに最悪な場所でも、
ノパ⊿゚) それは美なんだよ
ノパ⊿゚) だから、この薬は決してあたしたちが「使う」ものじゃないの。それが名前がない理由
69
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 21:53:40 ID:wy4i2d9M0
彼女は、全く予想だにしていない答えを聞いた、というような顔をしていた。
電圧が不安定なのか、灯が何度も点滅している。
何かあったわけじゃない。だけど静かで...いやにヒリヒリした空気が辺りに満ちていた。
('、`*川 …そう
('、`*川 じゃああなたは、美のために生きてるのね
ノパ⊿゚) うん
ノパ⊿゚) じゃああなたは、何のために生きてるの?
('、`*川 …
('、`*川 …それは、難しい質問ね
ノパ⊿゚) 難しくなんかないんだよ。本当はね
70
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 21:54:14 ID:wy4i2d9M0
ノパ⊿゚) …結局どうするの。ソレ
('、`*川
つ<>-[ ]]]]]-
彼女はインジェクターを手に取り、針先を眺めていた。
もし行ったとしたら、あたしが一番に彼女の話を聞こう。そう思っていたが。
彼女は静かにそれを机の上に置き直した。
71
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 21:55:29 ID:wy4i2d9M0
('、`*川 私には、まだやるべきことがある
ノパ⊿゚) ……わかった
('、`*川 あなたとは、また会うことになるかもね
ノパ⊿゚) あたしはここに居るよ。毎日
あたしは彼女の目を見て、敢えてそう言った。
彼女が何者なのか、そんなのは知ったことじゃなかった。
少し話してみて気付いたことだが、友人に誘われた、というのも多分嘘だ。
彼女とはいつか再会すると確信していた。
そして、その時...会うのはきっとここではない。
72
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 21:55:58 ID:wy4i2d9M0
('、`*川 近いうちに、ここは潰れるわ
ノパ⊿゚) え?
('、`*川 さっきひとつ、嘘をついた
('、`*川 …私の名前は翠じゃなくて、辺尼
('、`*川 私がここにいるのは、正義のため
ノパ⊿゚;) !
ノパ⊿゚;) それって……
('、`*川 …せいぜい、気を付けることね
('、`*川 いつかまた話しましょう
73
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 21:58:50 ID:wy4i2d9M0
……
車内
( `ー´)辺尼。大丈夫だったか?
('、`*川 はい。部屋に一人居ましたが、意識がないうちに証拠は押さえました
( ;`ー´)人が居たのか……危ないところだったな
( `ー´)ひとまず今日はここまでだ。後日また違う奴らに任せよう
('、`*川 そうですね
('、`*川 (仕事に私情は禁物、なのに...)
('、`*川 (何言ってるんだろ私)
74
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 21:59:36 ID:wy4i2d9M0
捻野と辺尼の潜入から約一週間。
非記の「家」は壊滅した。
.
75
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 22:00:29 ID:wy4i2d9M0
(´・_ゝ・`) 今回の逮捕人数は8人。うち5人が売人だった
(´・_ゝ・`) しかし...「家」を所有していた非記という男は未だ消息が掴めていない
(´・_ゝ・`) こちらについては今他の者が追っているところだ。とにかく、皆ご苦労だった
(´・_ゝ・`) 辺尼と捻野は後で話がある。連絡は以上、解散!
76
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 22:01:59 ID:wy4i2d9M0
…
(´・_ゝ・`) 辺尼
('、`*川 はい
(´・_ゝ・`) ひとつ、気になってることがあってね
(´・_ゝ・`) 君の写真に写ってるこの赤髪の女についてなんだけど
('、`*川 …ああ
(´・_ゝ・`) 彼女とは話したかい
('、`*川 はい、少しだけ。脾都と名乗っていました
(´・_ゝ・`) そうか...いや、彼女について調べさせていたんだが、どうやら非記とも親しいようだ
(´・_ゝ・`) 君には、彼女と再度接触してほしい。翠、だっけ?彼女にはそう言ってるんだろう
('、`*川 …はい
('、`*川 つまり、彼女達から非記に関する情報を引き出すと
(´・_ゝ・`) そういうことだ。必要とあらば聴取に同行してもらってもいいから
('、`*川 了解しました
77
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 22:03:21 ID:wy4i2d9M0
('、`*川 …あの、先輩
(´・_ゝ・`) なんだい?
('、`*川 個人的な話で恐縮なんですけど、脾都と話した内容で少し
………
(´・_ゝ・`) ...へぇ
('、`*川 どう考えればいいか、分からないんです。あんな会話、初めてでしたから
(´・_ゝ・`)
('、`*川 ...件の薬とは何なのでしょう
(´-_ゝ-`)
78
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 22:06:06 ID:wy4i2d9M0
カチ..... パラ......
ポシャ..... チチ....
カチ......
ポシャ....
チチ......
パラ.....
カチ..... パラ......
ポシャ..... チチ....
カチ......
ポシャ....
チチ......
パラ.....
カチ..... パラ......
ポシャ..... チチ....
カチ......
ポシャ....
チチ......
パラ.....
カチ..... パラ......
ポシャ..... チチ....
.
79
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 22:07:50 ID:wy4i2d9M0
(´・_ゝ・`) 私見だがね、結局のところ、それは彼らなりの言葉で装飾された、薬物への逃避行動だ
(´・_ゝ・`) 僕にはそうとしか思えない。専門家でもないから
('、`*川 ...そう、ですか。そうですよね
(´・_ゝ・`) 確かに今回のケースは特殊だが、しかし薬物を使用するというのはそういうことだよ
(´・_ゝ・`) 「美」というのも...聞こえはいいが恐らくは仲間内での共同幻想の世界の類だろうね
('、`*川 ...はい
(´・_ゝ・`) 辺尼。先輩である僕から忠告しておくけど、深追いは禁物だよ
(´・_ゝ・`) 輩の考えてることに付き合うと、こちらの調子まで狂ってきてしまう。彼らは人間だが、それ以前に犯罪者で、僕らはそれを取り締まる役割を担ってる
('、`*川 先輩は、過去に何か
(´・_ゝ・`) ああ。そういう時期もあった。彼らが更生してまともな生活に戻ることは正直、ほとんどないからさ
(´・_ゝ・`) やるせない仕事だと思ってた。原因を考えたかった。でも、結局どうにもならない
(´・_ゝ・`) 辺尼。僕たちにできることはないんだ。考え込むな
('、`*川 ...はい
(´・_ゝ・`) もう時間も遅いし、今日はもう帰れ。気を付けろよ
('、`*川 お疲れ様です
(´・_ゝ・`) あ、
(´・_ゝ・`) ...迷惑じゃなけりゃ、送ってくよ
('、`*川 ...いえ、私は大丈夫です。ありがとうございます
80
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 22:09:01 ID:wy4i2d9M0
通り過ぎる、轟音。
辺尼は闇に包まれた高架下を歩きながら、自宅へと向かっていた。
彼女は、得体の知れない不安に襲われていた。
その原因は、脾都との会話か、先刻の手視の言葉か。
何もわからぬまま、ただ立つ地をじわじわと崩されていくような感覚。
「美」とは幻想。
「美」は毒。
「美」は依存。
「美」すなわち破滅。
ならば、美を失うとどうなる?
深追いするな、できることはないと手視は言っていた。
彼女に受け入れ難い言葉だった。
81
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 22:10:20 ID:wy4i2d9M0
辺尼が考えていることは、水路の中にあった。
水路が塞がれてしまえば、彼女が何者であるか、何故生きているか、全てわからなくなる。
或いは、とうに流れは絶たれているのかもしれない。
それに気付いてしまうのが、彼女には甚だ不穏に思えるのだった。
彼女は、鞄からインジェクターを取り出した。
あの日、密かに持ち帰り誰にも伝えていないものだ。
('、`;川 (…何、考えてるの)
我に帰り、鞄に急いで戻す。
誰か見てはいまいか、彼女が辺りを見回すと、
いた。
.
82
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 22:11:27 ID:wy4i2d9M0
辺尼は気付いた。
後方15mほど先、電柱の影で誰かが見ている。
('、`;川 ひッ.......
気付いた時には足が動き始めていた。
彼女は自宅より数ブロック先まで歩き、そこで角を曲がり、それから可能な限りの速さで自宅まで走った。
('、` ;川 はぁっ....はぁっ....!
('、`;川 (何なのよあの男.....!?私を見てた.....!)
玄関の鍵を閉め、チェーンを乱雑にかけると逃げるようにリビングルームまで走る。
電気を点けると、部屋一面の植物が彼女を迎えた。
何故かはわからない。普段は彼女を慰めていたそれらが、
非常に不穏な雰囲気を湛えていた。
83
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 22:12:28 ID:wy4i2d9M0
ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
と音をたてて、開けっ放しの窓から風が入り込んだ。
カーテンが揺れる。
窓の外は真っ暗だった。壁に、真っ黒な四角が張り付いているようだった。
.
84
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 22:13:50 ID:wy4i2d9M0
-
アマ
「クソ女....」
.
85
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 22:14:18 ID:wy4i2d9M0
四,了
86
:
名無しさん
:2021/04/04(日) 22:35:03 ID:Um/UfDp.0
乙。。。
87
:
名無しさん
:2021/04/07(水) 00:55:57 ID:Gr4TwS5Q0
きてた乙
88
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 09:59:15 ID:L5sUrxV.0
暫くは脾都と辺尼のパートを交互に進めていきます
今日か近日に五を投下します
89
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 18:45:20 ID:L5sUrxV.0
今夜投下します
90
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 19:23:50 ID:QHexV.s60
!
91
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 19:30:17 ID:wVprUr520
わくわく
92
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 19:52:04 ID:L5sUrxV.0
どす黒い雲、地平線は真朱に染まっている。
暖かい雨がシャワーみたいに降り注ぐ。
ずぶ濡れのあたし、診競、独生、その他大勢。
日の当たらない道。
誰かがひとり、ふたり、幽霊のように現れては、消えていった。
今日は埋め尽くさんばかりの幽霊たちがここにいて、彼を見下ろしている。
暖かい雨が、彼にも降り注ぐ。
ノハ ⊿ ) ミセ ー )リ ( A ) ( ) ( ) ( ) 从 ∀从(* ー )( ω )( )
幽霊たちは何も言わない。
永遠のように長い時が流れた。
.
93
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 19:53:03 ID:L5sUrxV.0
(゜_゜)
.
94
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 19:54:14 ID:L5sUrxV.0
非記が死んだ。
.
95
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 19:55:15 ID:L5sUrxV.0
美
.
96
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 19:57:59 ID:L5sUrxV.0
死体は、独生の知り合いに預けられた。
そのあと...色々あったけど、殆ど覚えていない。
気付けば夜になっていて、あたしが知ってる人、知らない人、10人以上が独生の住処に集まった。
深く深く、重く重く垂れ込めた闇が、あたしたちを包んでいた。
最初に口を開いたのは、四威だった。
ジッ.....
シュー....
(*゚ー゚) ここは電気が通ってないから...蝋燭しかなくてごめん
(*゚ー゚) みんな、今日は集まってくれてありがとう
(*゚ー゚) ....これからのことを話し合わなきゃ
(*゚ー゚) でしょ、独生...
( A )...俺が見つけた時、非記はまだ生きてた
( A ) けど、間に合わなかった。もう少し俺が早く行ってれば
(*゚ー゚) …独生は、何も悪くないよ
( A ) ...
( A ) ...俺がしっかりしてなきゃ、ダメだよな
97
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 19:58:55 ID:L5sUrxV.0
ミセ ー )リ フルフル
(;*゚ー゚) 姉さん
ミセ ー )リ
ミセ ー )リ なんで...非記は死んだの
('A`)
('A`) 「家」がやられて、非記だけが逃げた。殺されたんだ
('A`) そうとしか考えられねえ
ミセ ー )リ
ノパ⊿゚) 殺されたって...誰に
('A`) ...組織の人間に
('A`) 非記はそいつらと取引してた。多分、口封じで...
ノパ⊿゚)
98
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 20:00:10 ID:L5sUrxV.0
( ‘∀‘)許せねえ...そいつは、俺が殺す
( ´ー`) バカ。あいつらと関わったらおしまいだよ
(# ‘∀‘)
( ´ー`)
(# ‘∀‘)...ひよってんじゃねえよ
( ´ー`) ひよってるのはお前だろ
('A`) おい、やめろ。仲間が死んだんだぞ
(# ‘∀‘)く...
( ´ー`) ...。
('A`) 臥名。頭を冷やせ。捻余の言ってることは正しい
( A ) 俺だってあいつらが憎いさ。だけど...
( A ) ...俺たちは弱すぎる
99
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 20:02:03 ID:L5sUrxV.0
さっきからずっとだ。みっちゃんが震えている。
繋いでいる彼女の手は、いつになく冷たい。
明確な恐怖。
彼女はこの世界の悪全てに目を見開いているから。
それで、目を背けることを、知らないんだ。
ノパ⊿゚) 大丈夫?
ミセ ー )リ フルフル
ノパ⊿゚) 外、行く?
ミセ ー )リ ..私は大丈夫、だから
ノパ⊿゚) ...無理してる
ミセ ー )リ フルフル
ノパ⊿゚) ...っ
ギュッ
('A`) 診競、大丈夫か
ノパ⊿ミセ ー )リ いいの...続けて
('A`) ...わかった
100
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 20:02:30 ID:L5sUrxV.0
('A`) これから先だけど...
('A`) 捻余...どう思う?
( ´ー`) 手視が動き始めてるって噂だよ。非記を追って
('A`) !
('A`) もうじき、俺らのことも勘付かれるか...
( ´ー`) 非記の死体、隠してよかったのかよ。いっそ警察に見付けさせて組織に注意を向けさせたほうが
('A`) それは考えた
('A`) だけど、俺たちの手で弔いたいんだ
('A`) 非記は大切な存在だった...俺たちに居場所と、生きる希望をくれた
( ‘∀‘)...同意だ。警察にやるなんて、あんまりだろ
( ‘∀‘)だが。このまま何もしないってのも、俺は納得できない
101
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 20:03:45 ID:L5sUrxV.0
ノパ⊿゚)セ ー )リ...なんとかしないと、あたしらも危ない、よね
('A`) ...そうだな
( ´ー`) 「家」がなくなって、非記も死んだ。俺の仲間も捕まった
( ´ー`) このまま警察が俺たちのことを嗅ぎつけたら、最悪...全員ムショ行きだよ
(*゚ー゚) ....っ
('A`) ...わかってる
( ‘∀‘)捻余。例の組織はどうするんだ
( ´ー`) 俺ら何の関係もないだろ?ほっとけよ
(*゚ー゚)
102
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 20:04:18 ID:L5sUrxV.0
(*゚ー゚) もうこれ以上誰かが居なくなるのは、いや
(*゚ー゚) 皆で一緒に逃げよう
('A`) ...ああ
('A`) 俺と、捻余は残るよ
(*゚ー゚) なんで
('A`) やるべきことがある。皆を守るためにな
('A`) 捕まるとしたら....俺らで十分だ
('A`) 脾都、診競、四威、臥名、播院、文...皆、俺が助ける
( ‘∀‘)俺も残らせてくれ
( ´ー`) ...無駄に捕まるだけだよ
( ‘∀‘)...いい。何か役に立てれば、それでいい
( ´ー`) 役に立たないまま捕まるんだよ。よくねーよ
('A`) いいんだ捻余。わかった
('A`) 一週間。時間をくれ。またここに集まって、三人以外は奏柵から出られるようにしておく
('A`) ...脾都と診競は後で少し話がある。皆、今日はありがとう
103
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 20:06:01 ID:L5sUrxV.0
独生がそう言ってから、不思議と、場の糸が切れたようになった。
蝋燭が生み出した、微かな灯りから、人が一人、二人、減っていく。
皆、生きているのに、死んだように静かに...音もなく闇に消えた。
あたしは震える診競を抱きしめながら、その様子を見ていた。
場を包む残酷な静謐に、彼女の息が弱々しく混ざっていく。
(*゚ー゚) ...ねぇ。独生、私も居ていい?
(*゚ー゚) 姉さんが心配で
('A`) ...ああ。大丈夫だ。お前も関係ある話だ
('A`) 診競...大丈夫か
ミセ ー )リ ...少し。落ち着いてきた
ミセ ー )リ ごめん...いつも...
('A`) 気にすんな
('A`) ...話っていうのは
104
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 20:06:52 ID:L5sUrxV.0
('A`) 播院のことについてだ
(*゚ー゚) !
('A`) 俺は、もうお前らと会えなくなるかもしれねえ...だから、奏柵から移動する前に、伝えておきたい
('A`) 播院を頼む
ノパ⊿゚) 播院って、さっき居たあの子のこと
('A`) ああ。あと、一緒にいたやつは文だ
从 ∀从 ω )
播院は、さっき大柄の男の隣に居た、あたしと同じ赤髪の美人だった。
顔は青白く、痩せすぎた印象も受けた。
二人は一言も喋らなかった。
('A`) ...今日は無理だが、近い日に播院も、文も呼んで話をしよう
('A`) 四威も、来てくれるか?
(*゚ー゚) ...うん
('A`) ありがとう
105
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 20:08:49 ID:L5sUrxV.0
('A`) んで...大丈夫か。診競も、脾都も
ノパ⊿゚) ...みっちゃんが
ミセ ー )リ フルフル
('A`) ....っ
ノパ⊿゚) 宮殿、見たことあるでしょ
('A`) ...ああ
ノパ⊿゚) もう...随分変わって...「近く」なったんだ
( A )
( A ) ...クソ。どうしたらいいんだよ
( A ) 診競が背負ってるのは大きすぎて、俺には何もできない....
ミセ ー )リ ...ありがとう
106
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 20:09:35 ID:L5sUrxV.0
ミセ ー )リ 非記に会わせてほしい
ミセ ー )リ 私は、救い出せなかった
( A )
ミセ ー )リ 私は、彼の絶望をどうにもできなかった
ミセ ー )リ 自分の美でさえ、上手く操れない
ノパ⊿゚) ...でも、みっちゃんは多くの人を救ったでしょ
ノパ⊿゚) 四威だって、独生だって、皆あなたを尊敬してるよ
ミセ ー )リ ...ダメだよ
ミセ ー )リ 私は...
.
107
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 20:12:26 ID:L5sUrxV.0
ミセ ー )リ 私は...今まで全部やってきたこと、後悔するのが怖いの
ミセ ∀ )リ だって...それじゃぁただの、クズでしょ....?
ミセ ∀ )リ 私は世界を信じなきゃ、美を信じなきゃ。そうじゃないとドロドロのクズに
ノパ⊿゚)
あたしは、この時最も彼女に言うべきだったことを、言い損なった。
あたしは、臆病だった。
こんなこと言ったって、絶対に彼女を救えない、なんて思って。
頭に浮かんだけど、すぐにどっか消えた。
皆、臆病だ。しょうがないよね。
だってあたしたちには、なんにもないんだ。
.
108
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 20:13:16 ID:L5sUrxV.0
(;'A`) ...そんな
(*゚ー゚) ...姉さんは、凄いよ
(*゚ー゚) でも...背負い込み過ぎてる
ミセ ー )リ
(*゚ー゚) 非記さんだって...きっとあなたにそんなこと、願ってない
ミセ ー )リ 四威は黙っててよ。一緒に暮らしたこともないのに
(*゚ー゚) ....っ
(*゚ー゚) なんで、姉さんは私に何も教えてくれないの
ミセ ー )リ
(*゚ー゚) なんで、いつも黙るの
ノパ⊿゚) 四威ちゃん
ミセ ー )リ ...ごめん。分からない
ミセ ー )リ 頭が、まとまらない...本当にごめん
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