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∵ Three dot ∴

3 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 09:42:21 ID:9OubR0lk0






















4 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 09:44:14 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



(´・ω・`)「……」

<ヽ`∀´>「遅いニダね……」

(´・ω・`)「ったく、どこで油売ってんだよ……」

<ヽ;`∀´>「旅費の調達は彼次第だからね……気が気じゃないニダ」


学生の夏は、日数から見れば長いように見えるが、体感は矢の如し
酒とタバコが楽しめるようになれば、その特別な時間は幾ばくも残されてはいない
ピザの空箱にマウンテン・デューの缶の山が転がる彼らの狭い居住室では、ギチギチに詰め込まれた旅行鞄とキャンプ道具が持ち主と共に出発の時を待つ


(´・ω・`)「有り金全部注ぎ込んだんだからよ。勝ってくれなきゃ困るぜ」

<ヽ;`∀´>「ウリは余り気乗りしない方法ニダ……」

(´・ω・`)「ベビー・シッターで稼げる額なんざタカが知れてらぁ。それとも、ウォルター・ホワイト先生を見習うか?」

<ヽ;`∀´>「ヤクは御法度ニダ」


アジア系の若者、『ニダー』は困ったように眦を下げ
それを見たルームメイトの『ショボン』は、鼻で笑ってテレビのリモコンを手に取った


(´・ω・`)「いくら誠実に生きようとな、どっかで博打を打つ時は来るもんだぜ?」

<ヽ`∀´>「誰の言葉ニカ?」

(´・ω・`)「兄貴。『Fortnite』のパックを課金する時はいつもこう言ってた」

<ヽ;`∀´>「途端に安く聞こえてくるニダ……」

(´・ω・`)「俺もそう思う」

5 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 09:45:15 ID:9OubR0lk0
持て余す待機時間を潰そうと、テレビを付けたは良いものの
明け方のチャンネルはどこも退屈なニュース番組しかやっていない。ショボンは舌打ちしてリモコンをソファーに放り投げた


(´・ω・`)「おっせえなぁ……」

<ヽ`∀´>「……様子、見に行く?」

(´・ω・`)「やだよめんどくせえ絡まれたくねえもん」

<ヽ;`∀´>「だよね……」


ショボンが手持ち無沙汰にスマホを弄り始め、ニダーは会話を切り上げテレビを注視する
と言っても、眠たげな表情をした中年キャスターが、何処の政治家が汚職をしただの、深夜に保健所のトラックが事故を起こしただのと
取り立てて興味を引くネタは取り扱っていない。コーヒーでも淹れようかと腰を上げた瞬間


「テメッ……しつけえなオラァッ!!!!」


乱暴な怒鳴り声と共に、鈍い衝突音が床を震わせた

6 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 09:47:56 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「よっしゃ、行くか」

<ヽ;`∀´>「ああ……うん」


最早、日常とも言うべきハプニングだったが、ニダーの心臓は早鐘を打つ
カレッジから近いものの、治安が悪い地域。大家も慣れているのか、これだけ騒ぎを起こして追い出されないのは怪我の功名というべきだろう

(#'A`)「クソがッ!!」


ドアを蹴破らんばかりに勢い良く開け放った、お世辞にも色男とは呼べない青年『ドク』は
一目散にキッチンの冷蔵庫を開け、ビールの栓を抜いて一息に半分ほど飲み干した


(´・ω・`)「おかえり」

(#'A`)「なぁ信じられるかオイ!?対戦相手の取り巻きが俺の試合を『サマ』だって因縁付けてきたんだぜ!?」

(´・ω・`)「まぁお前、顔面がザコだからな。戦果は?」

(#'A`)「ほらよ!!」


小汚い肩掛けバッグから丸く纏められた百ドル札の束をそれぞれに投げ渡す。ジッパーの中には、それが後五つほど入っている
彼が地下格闘技の試合で稼いできた資金だ。『旅費は任せな』と大口を叩くだけはあった
一般的なサラリーマン三か月分の給料に相当するだろうか。旅費には十二分に事足りた

7 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 09:49:49 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「あー、『お友達』は?」


ドアの向こうでは、恐らくぶん殴られて気絶したであろうドクの『ツレ』の腕がビクン、ビクンと痙攣している
救急車を呼ぶべきだろうが、せっかくの旅を前に面倒事に巻き込まれたく無い気持ちの方が強かった


(#'A`)「ほっとけ!!」

<ヽ;`∀´>「旅から帰ってきたら部屋が荒らされてるなんて、僕は御免ニダよ?」

(´・ω・`)「まぁそん時はそん時シバき回しゃいいじゃん」

('A`)「良い事言うな。よし、追手が来る前に出るぞ」

<ヽ;`∀´>そ「まだ残りがいるニカ!?」

('A`)「どっかのチンピラ集団っぽかったからな」

<ヽ;`∀´>「あーもー!!」


ドクは残ったビールを唇の端から溢しながら腹に納め、旅行鞄とテントを手に取って真っ先に部屋を出る
慌ただしい出発に、ショボンとニダーは顔を見合わせ苦笑いをした


<ヽ;`∀´>「前途多難、ニダ」

(´・ω・`)「金作った本人を前に文句も言えねえしな。旅の滑り出しとしちゃ、中々テンポの良い導入だと思うぜ?」


「何してんだ!!サッサと行こうぜ!!」


階下からせっつかれる声に誘われ、二人も荷物を手に取った
テレビの電源を消し、ガス栓を確かめ、ブレーカーも落とす
一月程の別れとなる住み慣れた部屋に短く別れを告げ、気絶する男を跨いで廊下に出た
最後に戸締りをして、アパートの前で待つ友の下へと足早に向かう



目指すは精霊の棲む楽園、伝説の地『スリー・ドット』


心弾む大冒険の幕が開けたのであった――――

8 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 09:50:48 ID:9OubR0lk0




『∵ Three dot ∴』



.

9 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 09:53:06 ID:9OubR0lk0
事の始まりは、ショボンが持ち出した一冊の資料だった


(´・ω・`)「フィールドワークだ」

('A`)「は?」

<ヽ`∀´>「何処へ?」

(´・ω・`)「精霊が棲まう地、『スリー・ドット』」


民俗学を専攻している身としては、伝説、伝承も研究の一環となる
ファンタジーやオカルトを信じない者なら一笑に伏すような与太話でも、彼らにとっては興味を引く対象だった


(´・ω・`)「シタラバの山岳地帯に住む先住民と深い関わりがあるらしい土地でな。なんでも、その妖精は『Rebel』と呼ばれるものらしい」

('A`)「『反乱』?穏やかじゃねえな」

<ヽ`∀´>「何かを司る存在ニカ?」

(´・ω・`)「詳しい事はまだ解明されていないが……万物が決して抗えないモノに唯一抗える精霊なんだと」

('A`)「神とか悪魔か?」

<ヽ`∀´>「天災の類もあり得るニダね。もしくは……」

(´・ω・`)「不老不死」

('A`)「あー……精霊ならその線も考えられるな。で?そこに向かおうってか?」

(´・ω・`)「夏の間は例年通り暇だろ?それに、論文のネタにもなる」

('A`)「ご機嫌だな。旅費なら俺に資金預けてくれりゃチャチャっと稼いでやるよ」

<ヽ;`∀´>「まっ……」


大学の静かな図書室。話が耳に入ったであろう学生の視線を感じたニダーは、声を潜めた
ただでさえ素行不良の問題児とつるんでいるのだ。悪い噂をこれ以上起こしたくはない

10 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 09:55:16 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「また非合法な格闘技ニカ?」

('A`)「それが一番手っ取りばえーもん」

(´・ω・`)「確かに」

<ヽ;`∀´>「命が幾つあっても足りないニダよ……それに、山岳地帯だなんておいそれと踏み入れていい場所じゃ……」

(´・ω・`)「行く気ねえのか?」

<ヽ;`∀´>「そ、そりゃ、僕だって興味はあるニダ……」


小心者の自覚はあるが、膨れ上がる好奇心は臆病など何処ふく風だ


(´・ω・`)「『冒険』だぜニダー?俺たちは誰も見たことがない世界を求めてこの学校で勉学に励んでんだろうが」

<ヽ;`∀´>「うむむ……そもそもその資料、何処から仕入れてきたニカ?」

(´・ω・`)「持ち出し禁止の資料庫からな。年増の女教授を一晩悦ばせた収穫としちゃ上々よ」

('A`)「いよっ!!節操無しのオチンコ野郎!!」

(´^ω^`)「よせよせよせよせ!!」


囃し立てるルームメイトを余所に、真面目なニダーは頭を抱えた
これでも勉学と研究には真摯に取り組む二人だが、余りの破天荒さに誰も信じてはくれない
歴史に名だたる芸術家や学者を鑑みれば、勤勉と人格は必ずしも吊り合うとは限らないものの
実際にこんな友人達と付き合うと、その彼らに振り回された周りの人々の苦悩や疲労が身に染みてわかる

11 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 09:55:45 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「し……」


持ち出した資料の信憑性を問おうとして、咄嗟に考えを改める
『確実』な冒険など、何が面白いと言うのだろう。『既知』を目指す探検家など、何処にいると言うのだろう


<ヽ;`∀´>「は……はは」


どうやら、自分もまた『彼ら』と同類らしい。臆病風は零れた笑いの吐息と共に溶けて消えた
身を焦がすようなスリル。この世界に存在する数多の謎への挑戦。ああ、『冒険、冒険、大冒険!!』


<ヽ;`∀´>「乗った」


短い同意に、破天荒な二人はニヤリと笑う。ニダーもまた、映し鑑のように口角を上げた


『挑む者』の、不敵な笑みであった

12 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 09:57:54 ID:9OubR0lk0
それから夏休みまでの短い期間、勉学と並行して旅の準備は着々と進められた
ショボンとニダーは『足』の調達とルート、日程の計画。必要な道具と予算の算出を
ドクは『危ない人脈』と『大人の遊び場』を使った資金繰りを

結局、旅費に関しては出発ギリギリまで時間を要した上、『多少の問題』までオマケされたが、用意は出来た


(;'A`)「ハァー……クッソ、シャワー浴びる暇くらい欲しかったぜ……」

(´・ω・`)「くっさ」

('A`)「臭くない。フレグランスな香り」

<ヽ`∀´>「腕上げないで欲しいニダ」

('A`)「腋からフレグランスな香り」


ショボンが用意した『足』は、年季の入ったオンボロだが、HENTAIコミックと物の品質は世界一であるジパング製のミニバン
トランクに荷物を手早く積み込む様はまるで夜逃げの準備のようであった為か、『多少の問題』も相まってニダーは思わず苦笑いを浮かべた


(´・ω・`)「まずは買い出しするから、その間にどっかの多目的トイレで身体洗っとけよ」

('A`)「多目的トイレで身体洗った奴とこれからしばらく旅してーのかお前。素直にコインシャワー使うわ」

<ヽ`∀´>「壊しそう」

('A`)「金返せテメーら」

13 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 09:58:55 ID:9OubR0lk0
いつも通りの減らず口を叩き合いながらも、三人の気分は昂揚していた
誰もが『旅』を前にすれば、例えるなら、飛行機の出発をコーヒーを飲みながら待つ空港での一時のようなワクワク感を禁じ得ない
しかも、型に嵌らない未知の地域。それも伝説を追い求める冒険ならば、感情はより一層の盛り上がりを見せる


('A`)「レンタルか?」

(´・ω・`)「いや、兄貴の車。壊しても構わん」

('A`)「構うだろ」

<ヽ`∀´>「許可は?」

(´・ω・`)「オウイエチャントトッタゼェイェアァハン?」

<ヽ;`∀´>「……」

('A`)「……まぁ、怒られんのはお前だからどうなろうと俺の知ったこっちゃねえんだけどよ」


ショボンは悪びれた素振りも見せず肩を竦めると、颯爽と運転席に乗り込んだ――――

14 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:00:47 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



さぁて、どうしたものか


「ゴェェェェエエエエ!!!!」

「ゴェエエエエエエエ!!!!」


そうがなり立てないでくれないか?いくら私が愛くるしいとはいえ、出来ることの限度ってものはある
いや、約束を違えるつもりはさらさら無いがね。私の自由と引き換えに、キミらを故郷に送り届ける。ああ、わかってる。必ず成し遂げてやるとも
しかし私は一介の犬に過ぎない。万が一『カネ』とやらを手にしても『ミセ』とやらで食事を得ることも出来ないし
プニプニの肉球と保健所職員から逃げるために鍛え抜かれた我が健脚を持ってしても、『車』の速度と持久力には敵わない
それに、衰弱していく『彼女』を回復させる術も持っちゃいないんだ。キミらは犬を過信しすぎてはいないか?


「ゴェ……」

「ゴェェェエエエ……」


『助け』?いやいや、誰がこんな一行の面倒を見るもの好きな人間がいるものか
愛らしい私はともかく、小汚n……失礼。身元不明の少女と未確認生命体が二人もいるのだよ?
産まれ落ちてから二年もこの世界を生き抜いた私が断言するが、そんな人間など絶対に現れない。間違いない


「ゴェ!!」

「ゴェ!!」


『着いてこい』だって?頼もしいね。私が三歩ほど歩けばすぐさま立場が逆転してしまいそうなキミたちは


「ゴェエ!!!!!」

「ゴェクソイヌェェ!!!!」


わかったわかった怒らないでくれ。今クソ犬っつったかオイ?
全く……ほら、乗った乗った。何処へ連れていくのか知らないが、現状が好転してくれることを祈るよ

15 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:01:11 ID:9OubR0lk0
















.

16 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:03:09 ID:9OubR0lk0
(⁻A⁻)「フゴゴッ……ガッ、ムニャムニャ……もう食べられないよぉ……」

<ヽ`∀´>「……」

(´・ω・`)「……そこにティッシュあるだろ」

<ヽ`∀´>「うん」

(´・ω・`)「穴という穴に詰めとけ。俺今手ぇ離せねえから」

<ヽ;`∀´>「死ぬニダ……」


試合の疲れは、ビール一本分のアルコールでも瞬く間に眠りへと誘う
住み慣れた街から離れ、『西』へ向かう車中。後部座席では寝袋を枕にドクが豪快にいびきをあげていた


(´・ω・`)「車で行こうっつったのは確かに俺だがよ。こうもグースカ寝られるとむかっ腹も立たぁな」

<ヽ`∀´>「まぁまぁ、お金稼いでくれたのは彼なんだし」

(´・ω・`)「それを言われちゃあな……ん?」


連なるブレーキランプの列に、ショボンはジワリと速度を緩めた


<ヽ`∀´>「渋滞?そんな混む時間でも無いだろうに」

(´・ω・`)「確かにな……ああ、なんか検問っぽい」

<ヽ`∀´>「検問?事件でもあったニカ?」

(´・ω・`)「飲酒運転かヤクの取り締まりじゃねーの……幸先の悪ぃ出だしだな」


ショボンはパワーウインドウを開けると、胸ポケットから煙草を取り出し火を着ける


<ヽ`∀´>「ダッシュボードにハッパ残ってるとか無いニダね?」

(´・ω・`)「ああ、吸い切った」

<ヽ;`∀´>「キミさぁ……」

(´・ω・`)「冗談だよ……兄貴にそんなもん買う度胸なんかねえし、使わなくても常時キマってる」

17 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:04:45 ID:9OubR0lk0
一抹の不安を覚えたが、今更あたふたと確認しては余計怪しまれるというもの
ニダーは鼻先に漂う副流煙の臭いを、先ほど購入したアイスコーヒーの香りでかき消し、タブレットを開いて旅程の確認をする


<ヽ`∀´>「ブンマル、ブンゲー、オムライスを経由して……国境をなぞるように聳え立つセブンクロスへ。順調にいけば三日ほどで着くニダね」

(´・ω・`)「まぁそう急ぐこともねえよ。時間も金も余裕があるんだし、観光がてらのんびり向かおうぜ」

<ヽ`∀´>「……」

(´^ω^`)「ブンマルのカジノで一発当て一発ヌくのもあr」

<ヽ`∀´>「前」

(´・ω・`)そ「おっと」


エンジンを吹かし、車はまた十数メートル進んで待機に入る。列の先では、渋滞にイラついた男が警察官に怒鳴り散らしていた


(´・ω・`)「あーあー。人間、ああはなりたくねえな」

<ヽ`∀´>「全くニダ」

(#´゚ω゚`)「テメッ後ろ詰まってんだからイチャモン付けてねえでとっとと消えろオラァン!!!!!!!!」プップーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!

<ヽ;`∀´>「キミさぁ」

18 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:07:57 ID:9OubR0lk0
牛歩の歩みの末、ようやく先頭に到着した頃、ショボンはタバコを三本吸い切り、ニダーはコーヒーを飲み干していた
運転席の窓から顔を覗かせる妙齢の警察官は、炎天下で浮かんだ汗を拭いながら申し訳なさそうに一礼をする


(;´∀`)「ソーリー、薬物取締強化週間でしてね。身分証の提示と荷物検査にご協力頂けますか?」

(´・ω・`)「勿論です。どうぞ」

(;´∀`)「ご協力感謝致します。では、トランクを拝見しても?」

(´・ω・`)「ニダー、開けてやれ」

<ヽ`∀´>「了解ニダ」


ニダーが助手席を降り、シェパードを連れた警官と共に荷物検査へと向かう
その間、ショボンは免許証を腰の低い警官へと提出し、質疑に答えた


( ´∀`)「随分と大荷物ですが、これからご旅行で?」

(´・ω・`)「ええ、街々を巡ってキャンプを張ろうかと」

( ´∀`)「いいですねぇ。私も若い頃は『愛馬』に跨ってシタラバ各地を転々としたものです。タバコを拝見しても?」

(´・ω・`)「どうぞ。何の変哲もないベストセラー『シタラバ・スピリッツ』ですが」

( ´∀`)「……確かに。いや、失礼を致しました。何分、規則なものでして」

(´・ω・`)「いえいえ、我々がこうして暢気な旅に出られるのもあなた方のご活躍あってのものですので」

( ´∀`)「そう言っていただけると、此方もより一層仕事に身が入りますよ……終わったようだ。異常無し、ですね」

(´・ω・`)「当然ですよ。危険なブツなら後部座席でグースカ寝てるブサイクくらいでウッ」


背もたれをガンと蹴られ、思わず言葉に詰まる。恨めかしく視線を向けると、『危険なブツ』はまたわざとらしい寝息を立て始めた


( ´∀`)「ハハ、愉快なお友達ですね……おっと、長話をしてしまっては皆様に申し訳ない。最後に此方を」

(´・ω・`)「はい……?」

19 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:09:41 ID:9OubR0lk0
手渡された一枚の紙には、何頭かの犬の写真。それと、薄汚れた『女の子』の顔写真が載っていた


<ヽ;`∀´>「ふぃー、緊張したニダ……何ですかこれ?」

( ´∀`)「数日前に55号線で保健所の車が事故を起こしましてね。脱走した犬達です。病気の類は持っていないそうなんですが、危険な野良犬には変わりませんので見かけたらご一報ください」

<ヽ;`∀´>「この、女の子は?」

( ´∀`)「ああ、彼女も数日前に捜索願を出されたばかりでしてね。我々も総力を挙げて探してはいるのですが、力及ばず……」

(´・ω・`)「……わかりました。もしも出先で見かけたなら、ご連絡を致します」

( ´∀`)「助かります。お時間を取らせて申し訳ありませんでした。良き旅を」

(´・ω・`)「良い一日を」


挨拶を済ませ、『待ちくたびれた』とでも言わんばかりにエンジンが唸りを上げてタイヤを回す
バックミラーにパトランプの点滅が見えなくなった頃、ようやくニダーが会話を切り出した


<ヽ;`∀´>「……こんな作りのビラ、あるニカ?」

(´・ω・`)「見たことも聞いたこともねえな。犬と女の子同列に扱うようなビラなんてよ。経費削減にしても酷すぎる」

<ヽ;`∀´>「だよね……」

('A`)「見せてくれ」


ニダーからビラを受け取ったドクは軽く一瞥し、首を傾げてこめかみを軽く掻く


<ヽ`∀´>「何か引っかかるニカ?」

('A`)「ん……55線っつってたな?」

(´・ω・`)「ああ」

('A`)「その道の先にも後にも保健所はねえ」

<ヽ;`∀´>「え……いやでも、捕獲の最中だったかもしれないし……」

('A`)「犬を乗せてんなら収容が先だろ。これだけの数なら『満員』だった可能性もある」

20 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:11:23 ID:9OubR0lk0
´・ω・`)「野良犬の捜索を警察が請け負うのもなーんか臭うよな。お前の体臭みたいに」

('A`)「フレグランス。まぁ、そこはポカやらかした保健所がテメーの尻拭いすんのが筋だろうな」

<ヽ`∀´>「陰謀めいたものを感じるニダね……」

(´・ω・`)「……」

('A`)「……」

<ヽ`∀´>「……」


それぞれが想い想いの妄想を頭の中で繰り広げる。同年代の学生と比べ、夢見がちな彼らは
日常の些細な出来事一つでも、余計な肉付けをした話を一晩中繰り広げられる一種の悪癖があった


('A`)「に、しても」


しかし、今日ばかりは。『冒険』初日の今日に到っては。彼らの悪癖よりも『現実』が勝った


('A`)「この犬のツラときたら、間抜けったらねえや」

(´・ω・`)「お前が言うな」

<ヽ`∀´>「お前が言うな」


ドクは運転席と助手席の背もたれを蹴り飛ばすと、両名が同時に息を詰まらせる


(#´゚ω゚`)「っぶねえな事故ったらどうすんだブサイク!!!!!!」

('A`)「そんときゃ犬と一緒にビラに載せてもらえよ」

<ヽ;`∀´>「失踪するの前提?」

22 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:14:31 ID:9OubR0lk0






('A`)「ショボンお前……輪郭が……」

∩´^ω^`)「イッケネ☆」

<ヽ;`∀´>そ「え!?どうなってんの今の!?ヤバくないニカ!?」






.

23 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:17:00 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



|゚ノ ^∀^)「アンタさぁ、いつもいつも思うんだけどぉ……そのファッションどうにかなんない?」


ブンマルから凡そ七十キロ地点。長距離ドライバーが主なお得意様の古びたダイナーに似つかわしくない『女性客』が三人、ボックス席を占拠していた
一人は、ブロンドの髪を緩い三つ編みにして、ラズベリー・パイを突きながらぼやくカウ・ガール風の衣装に身を包む胸の薄い女


川д川「な、な、なに……も、文句、ある?」


一人は、夏にも関わらず黒一色のファッションをキめ、ジパング・ホラーの幽霊のような長い前髪で顔を覆い隠し
リボンの代わりに、正面の人間に『ピースサイン』を見せる何とも可愛げのない人形の髪飾りを着ける胸の薄い女


(゚、゚トソン「突っかからなくていいですよ。貴女の偏愛は常人には理解しがたいものですので」


タイトなスーツスカートから覗く脚を組み替えながら、音も立てずに熱いコーヒーを啜る胸の薄い女


川д川「わ、わ、わ、私は、インドアなのよ?そ、それなのに、こ、こ、こんな汚い場所まで連れ回して……」

|゚ノ ^∀^)「ウチだってアンタみたいな陰気女とドライブなんてまっぴら御免よ」

川д川「バカスカ撃つことしか能のないトリガージャンキーの分際で……」

|゚ノ ^∀^)「あーら、色気も膂力もないオタクの僻みかしら?」

(゚、゚トソン「やめなさいみっともない。それよりサダコ、この辺りに『いる』のは確かでしょうね?」

川д川「う、う、疑うの?わ、私の『愛』を?」

(゚、゚トソン「いいえ。浮気性ではありますが、貴女の『超常保護対象』への愛は私もレモナも認めています」

|゚ノ ^∀^)「キモいけどね」

(⁼、⁼トソン「レモナ、謹んで」

|゚ノ ^∀^)「はいはい。我らが偉大なるリーダー、トソン女王陛下」

24 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:17:58 ID:9OubR0lk0
サダコと呼ばれた黒尽くめのナード女は、髪飾りの人形を取り外し、うっとりとした表情で眺める

川*д川「はぅ……『予知夢』でこの子たちの夢を見てからずっと頭から離れない……」

|゚ノ ^∀^)「『頭から離れた』じゃない」

川#д川「こんな贋作とは別物よ!!!!!!」


ヒステリックな叫びと、テーブルに拳を叩き付ける音に、まばらな客の視線が一斉に集まる


(゚、゚トソン「何か?」


しかしそれも、鋭い視線と毅然とした口調によって逸らされてしまった


(゚、゚トソン「二人とも、他のお客様のご迷惑になります。自重なさい」

|゚ノ ^∀^)「はぁーい」

川;д川「っ……これだから頭空っぽのブロンドは……」

(゚、゚トソン「サダコ、三度目はありませんよ」

川;д川そ「ヒィッ……」

(⁻、⁻トソン「ハァ……それで、まだ正確な位置は掴めないのですか?」

川;д川「ち、近いのは確かよ……もう一眠りさえすれば、確実に居場所を割り出せる……筈」

(゚、゚トソン「筈?」

25 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:19:07 ID:9OubR0lk0
グロスを塗った艶やかな唇に運ばれたマグカップがピタリと止まり、サダコは慌てて矢継ぎ早に言い訳を繰り出す


川;д川「わ、わ、私が探り出せるのは、超常保護対象の『姿』と『居場所』のみ!!の、の、能力に到っては実際に出逢うまでわからない!!そ、そ、その為に『あなた達』がいるんじゃない!!」

(゚、゚トソン「……つまり、『逃げ隠れ』が上手い可能性があると?」

川;д川「そ、そ、そうよ!!だ、だ、だから私が、わざわざ出向いてきたんじゃない!!」

(゚、゚トソン「引き篭りがちな貴女が『出動』に応じた事には素直に称賛を贈ります。ですが、我々のモットーは『迅速、確実』。時間のロスは世間の混乱を招きかねません」

|゚ノ ^∀^)「はいはいストップストップ」

(゚、゚トソン「むぐ……!!」


トソンの口に突っ込んだフォークを引き抜き、くるりと回してパイに刺す


|゚ノ ^∀^)「そりゃ焦る気持ちもわかるけどさ、『急いては事を仕損じる』とも言うじゃん?」

川д川「クソビ……レモナ……」

|゚ノ ^∀^)「今のフォロー無かったことにしてもいいのよ?」


トソンは口内に広がるホイップクリームの甘さとラズベリーの甘酸っぱさを、上品な咀嚼で噛み砕いてコーヒーで洗い流す
驚きか、それとも甘い物が得意ではない事に依るものか。眉間には皺が寄っていた


|゚ノ ^∀^)「『逃げ隠れ』が得意なら、有意は探査能力に優れるサダコがいるウチらにある。今回もきっとスンナリと終わるわよ」

(゚、゚トソン「……全てを肯定するわけではないですが、一理ありますね。サダコ、失礼を」

川д川「わ、わ……わかればいいのよ、うん」

|゚ノ ^∀^)「にしても」

川;д川そ「あっ!?」


サダコの手から一体の人形を奪い取り、彼女の手の届かない位置へと掲げる
丸めた糸で縫い付けられた小さな『黒点』の目が、面白そうに笑みを浮かべるレモナを見下ろした

26 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:20:09 ID:9OubR0lk0
|゚ノ ^∀^)「ほんっと、笑えるほど特徴の無い保護対象よねー」

川;д川「返しなさい!!返せ!!このっ!!」

(⁻、⁻;トソン「ハァ……」


四頭身あるかないかの全長に、子供の落書きのような、手足や衣服、生殖器を伴わないつるりとした四肢
頭部に髪は無く、顎や頬の輪郭は見られない『円型』。その中心部に、顔と思わしき――――



【 ( ∵) 】

【 ( ∴) 】



『三つの点』が、それぞれ上下逆さまに付けられていた

27 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:22:17 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



「ハァ……ハァ……」


「ゴエエ!!」

「ゴェエエエ!!!!!」


なかなか酷だねキミ達も。そりゃあ私の健脚は未だ健在だがね
衰弱した少女を日が暮れるまで歩かせ続けるのは犬の私でもどうかと思うよ?


「ゴエエ」


『あと少しだ』?やれやれ、何度聞いたかなそのセリフ。もしかして、私とキミ達では時間と距離の感覚に若干の差異が生じているんじゃあないか?
それに、助けを求めたいのならもっと人気のある場所を歩くべきとも思うがね。人っ子一人いやしない道路など歩く意味があるのかい?


「ゴエエ!!!!!」


痛……くはないが、どうしたんだい急に?耳を引っ張らないでくれないか?
あの灯りを目指せ?あれは……あー、確か……そう、『モーテル』と言ったかな。人間共が交尾をする場所と聞いたことがある
違う?まぁ、なんでもいいさ。ようやくゴールなら、私も一息つけると言うものだ

28 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:23:03 ID:9OubR0lk0
「ハァ……ハァ……ハ……」


ん?オイオイ、目前で倒れてしまったよ。人間とは数が多い割に体力が伴っていないな


「ゴェエエエ!!!!!」

「ゴエエエエエエエ!!!!!」


また無茶を仰る。運べると思うかい?彼女のサイズの半分にも満たない私が
こうしていつまでも無為な問答を続けるよりも、とっとと『助け』とやらを呼びに行く方が建設的ではないかね?違うか?ん?


「クソイヌ」

「クソイヌ」


オイ今ハッキリクソ犬っつったな?餌にすんぞオラ
……時間の無駄だな。良いだろう、キミ達の案内に彼女の命運を賭けてみようじゃないか
下等な人間と言えども、目の前で死なれては私も少々目覚めが悪いからな。急ごうか

29 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:23:50 ID:9OubR0lk0















.

30 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:25:39 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「疲っっっかれたぁ……」

('A`)「そうか?」

(#´゚ω゚`)「ッメっと寝ったろっがッソアアン!!!!!??????」

<ヽ;`∀´>「どうどう……怒りのあまり言葉が追いついてないニダ」

('A`)「俺ぁオメーらが寝てる間に、デカブツと殴り合って稼いでたんだよ。文句あんなら金返せ」

(#´゚ω゚`)「あーーーーーーーーん!!!!?????ならテメーだけ歩いてセブンクロスまで向かうかオラァァァン!!!!!!??????」


埒が明かないと諦めたニダーは、必要最低限の荷物だけ持ってフロントに向かう
今晩の宿は、ブンマルまで五十キロ地点の寂れたモーテルだ。もう少し無理をして辿り着くことも出来たが
初日から疲労を溜めるわけにもいかないという判断から、早めに休みを取ることにしたのだ


(#'A`)「オンコラ……」

(#´゚ω゚`)「スッゾオラ……」

<ヽ;`∀´>「いつまでやってるニダ……メシ抜きにされたいニカ?」

(^A^)「わぁい!!ニダーのご飯大好き!!」

(´^ω^`)「僕、おかわりしちゃうぞぉ!!」

<ヽ;`∀´>「うわキツ……鍵開けてくるから、荷物持ってくるニダ」


用意された部屋は角の四人部屋。上等とは言えないが、このモーテルでは最も値が張る部屋だ
ドアプレートには『スイートルーム』と刻まれていて、余りの似合わなさにニダーは思わずクスリと笑った

31 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:35:30 ID:9OubR0lk0
『スリー・ドット』

広大なシタラバ領の内、セブンクロス山脈、アルファ密林、オッパイモミタイ海にそれぞれ点在する三つのポイントを指す

セブンクロスは『苦痛』
アルファは『平等』
オッパイモミタイ海は『快楽』

人が一生の内に請け負うこれらの要素を、人の姿を為す妖精『Rebel』が司る

また、『Rebel』は『Travel』から派生した名称という説もある
彼らは世界中を廻り、神の気紛れによって人へ『余分』に与えられた三大要素を身に引き受け、一定の周期で『スリー・ドット』から創造主に還すのだ


('A`)「で、その周期ってのが今年の夏……『Rebel』を信仰の対象とする原住民達の祭事がセブンクロスで行われると」

(´・ω・`)「ハハ、散々調べた事を何を今更偉そうにくっちゃべってんだ気持ち悪いな顔が主に」

('A`)「お前今日外で寝るか?」

<ヽ;`∀´>「まぁまぁ、復習は大事ニダよ」

('A`)「しかし、改めて見返してみると『反乱』っつーより『Pay back』って感じはするよな。ニダーこのヌードル美味えよ」

<ヽ;`∀´>「あ、うん、どうも……考察の途中で急に褒められると気持ち悪いニダ顔が主に」

('A`)「お前今日土の中で寝るか?」

32 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:37:35 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「にしても、『平等』はともかく、『苦痛』『快楽』は穏やかじゃないというか……」

('A`)「そん中で一番物騒な『苦痛』から攻めるんだから俺ら命知らず青春ボーイズだよな」

(´・ω・`)「……まぁ、詳細は現地に行ってみねーとわからねーが、『引き受ける』っつーんだからそんなに身構えなくてもいいんじゃねーかな」

('A`)「おいおい随分と楽観的じゃねえかよ。お前『快楽』奪われて生きていけんのか?」

(´^ω^`)「死!!!!!!!!!!!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「『余分』って書いてるくらいだから、全て奪われるワケじゃないと思うニダ……」


大まかではあるが、ショボンが持ち出した資料から読み取れた情報はここまでであった
しかしスリー・ドットの各地点には書物やネットにも『先住民は今も実在する』という信憑性の高い情報は残されている
詳細な場所まではわからなかったが、そこから先は机よりも現地に向かって確認する他ない


(´・ω・`)「とにかく、『先住民』と出逢わなきゃフィールドワークもクソもねえ。セブンクロスに着くまでは無理せず『よく食って寝る』!!これは徹底しよう」

('A`)「だな。身体壊しちゃ元も子もねえ」

<ヽ`∀´>「おかわりいる人」

(´^ω^`)「はい!!!!!」

('A`)「はい!!!!!」


ニダーが二人から空の皿を受け取り、母直伝の『焼きヌードル』を盛りに行こうと腰を上げた瞬間
モーテルのドアから、ノックではなく『カリカリ』と引っ掻くような音が聴こえてきた

33 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:39:21 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「ん?」

('A`)「客か?オメーデリヘルでも呼んだのかよ言ってる事とヤる事違うじゃねえか」

(´・ω・`)「馬鹿野郎だったらお前らがいねー内に済ますわ。こりゃ犬か猫の……」


頭からスッポリと抜け落ちていたが、『犬』という言葉と共に警官から受け取った『ビラ』の存在を思い出す


(´・ω・`)「……まさかな。結構進んだし、こんな場所まで逃げ出した犬がいるわけねえ」

('A`)「俺知ってるぜ?それフラグって言うんだろ。ニダー、シカトしとけ」

<ヽ;`∀´>「いやでも……ずっとカリカリされても困るニダ」

('A`)「悪い病気とか持ってたらどうすんだよ……フロントに電話するか?」

<ヽ;`∀´>「管理人さん、受付した段階でベロンベロンだったから出るかどうか……」

('A`)「どういう危機管理意識してんだよビビるわ」

(´・ω・`)「あーもー適当に追っ払っちまおうぜ」

34 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:40:18 ID:9OubR0lk0
両手が皿で塞がっているニダーに変わって、痺れを切らしたショボンがドアを開く。その瞬間


(∪^ω^)「わんわんお!!!!!!!!」

(´゚ω゚`)そ「うおっ!?」


堰を切ったかのように、一匹の野良犬が部屋の中に飛び込んだ


(;'A゚)「おい何入れてんだオメー!!」

(´゚ω゚`)「うるせえサッサと追い出せ!!」

<ヽ;`∀´>「うわわ、おっと!?」


(∪^ω^)「わんわんお!!わんわんお!!」


犬は必死な男達を嘲笑うかのように部屋を駆けずり回り、テーブルの上に飛び乗る
溢れた食事のカケラなど目にも留めず、ある『重要な物』を口に咥えた


(;´゚ω゚`)「アッーーーーーーーーーーー!!!!!!こいつクルルァのキーを!!!!!!!」

(;'A`)「ドア閉めろ!!逃すなよ!!」

<ヽ;`∀´>「わかっ……たぁあ!?」


テーブルから飛び込んできた犬を、ニダーは反射的に避けてしまう
犬はそのまま開け放しのドアから外へと一目散に飛び出した


(#´゚ω゚`)「何避けてんだテメーーーーーーーーー!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「避けるってあれは!!結構ビビるって!!」

(;'A`)「揉めてる場合か!!追うぞ!!」

35 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:42:41 ID:9OubR0lk0
(#´゚ω゚`)「待ちやがれクソ犬がーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

(#'A`)「保健所に引き渡すまでもなくここでぶち殺したらぁ!!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「ま、待ってニダーーーーーーーーーーー!!!!!」


(∪^ω^)「わんわんおwwwwwwwww」


(#'A`)「速ぇえええええええええええええ!!!!!!!」

(#´゚ω゚`)「せめて見失うなァァァ!!!!!!車がなきゃ俺らの旅は終わりだぞォォォ!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「待……足遅ぇなお前ら!!!!!」


外灯の少ない夜道を、野良犬は『付かず離れず』といった速度で駆け抜けていく
凡そ三百メートルほど進んだ辺りで、草むらの中へと飛び込んだ


<ヽ;`∀´>「ええー……こわ……」

(#'A`)「逃すかァァッ!!!!!」

(#´゚ω゚`)「待てオラ!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「ちょ、キミら躊躇いもなく……ああもう!!」


せめて明かりをと、ニダーはスマホのライトを着けておずおずと草むらを跨ぐ


<ヽ;`∀´>「つ、捕まえ……」

(´・ω・`)「……」

('A`)「……」

<ヽ;`∀´>そ「うわ急に落ち着いてる気持ち悪っ!!何が……」

36 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:44:11 ID:9OubR0lk0
散々喚き散らしていた二人が足を止めた理由は、ライトの明かりがすぐさま示していた


(# ;;- )「……」


<ヽ;`∀´>「子供……?」


生きているのか死んでいるのか、微動だにせず倒れ込む『傷だらけの子供』の側で


(∪^ω^)「ヘッヘッヘッヘッ」


舌を垂らして息を整えながら、足下に涎でベトベトになったキーを置いて
『おすわり』をして嘆願するかのように、人騒がせな野良犬はジッと三人を見上げていた

37 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:47:22 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「ニダー、ドクも。照らしてくれ」

('A`)「ああ、息はあるか?」

(´・ω・`)「辛うじて、だな。救急車を呼ぶ」


(∪#^ω^)「グルルルルル!!!!!」


ショボンがスマホを取り出した瞬間……と、言うより、『救急車』というワードを聞いた瞬間
野良犬は直前までの行儀の良さが嘘のように唸り声をあげて威嚇した


(;´・ω・`)「こいっ……つ、ご主人が死んでも良いってのか!?ドク、抑えてろ!!」

('A`)「待て」

(;´・ω・`)「何だよ悠長に!!」

('A`)「よく見ろ。『見覚え』がねえか?」

<ヽ;`∀´>「っ……ビラの」


ビラに載っていた、逃げ出した犬と行方不明の少女の顔写真が三人の頭に浮かぶ
写真にはこれほど凄まじい傷跡は残っていなかったが、あどけない顔付きは一致している


(´・ω・`)「マっ……ジかよ……」

<ヽ;`∀´>「……警察に」

(∪#^ω^)「ヴルルルルルルル!!!!!」

<ヽ;`∀´>そ「わぁ!?」

('A`)「……助けを求めてるのは確かだが、然るべき機関への連絡は許さないってか。いい根性してんじゃねえか」


ドクは携帯を仕舞うと、女の子をそっと抱きかかえる
犬は唸りこそ上げなかったものの、眉間には皺が寄り、肉食獣特有の鋭い牙を剥き出しに警戒を解かない


('A`)「テメーの人選だ。最善は尽くすがどうなろうと文句は言うんじゃねえぞ犬公」

(∪^ω^)「……」


返事の代わりに、足元のキーを前脚で蹴り出す。『太々しい野郎だ』と、ドクは鼻で笑った

38 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:49:18 ID:9OubR0lk0
幸いにも、モーテルの宿泊客は彼ら以外おらず、管理人も酔って眠っていた為、誰にも見られる事なく部屋まで戻ることが出来た
ようやくまともな灯りに辿り着けた事で、女の子の身なりが明らかになる。歳は八つか九つか。泥と血で汚れたワンピースを、褐色の肌の上に纏う
頬に刻まれた網目状の刀傷跡を筆頭に、手足の末端に到るまで大小様々な傷跡が残されており、『痛々しい』以外の言葉が見つからなかった


<ヽ;`∀´>「そこのベッドに寝かせるニダ。ショボン、車から救急キットを」

('A`)「あいよっ」

(´・ω・`)「オーライ」


付け焼き刃ではあるが、多少の医学知識を持つニダーが簡単に診察を始める。やはり目を引くのは、夥しい『古傷』の痕


<ヽ;`∀´>「酷い……弾痕や刺し傷まで……縫合すらされていない……」

('A`)「ガキをここまでボロクソにするのも凄まじいが、生きてられるか普通?」

<ヽ;`∀´>「……普通、じゃないかも」

('A`)「見りゃわかる」

<ヽ;`∀´>「違う、ここを」


ニダーは土に汚れた足裏を指す。外気に触れる事が少ないこの箇所にも、細かな傷の跡が残っていた


<ヽ;`∀´>「この子、『何も履いてなかった』ニダね?」

('A`)「ああ、素足のまま歩いてたんじゃねえかな」

<ヽ;`∀´>「だったら、『生傷』があっても可笑しくはないニダ……お湯とタオル!!」

(;'A`)「お、おお」


ぬるま湯で湿らせたタオルで足の裏を拭う
汚れの下に隠されていた古傷が露わになるが『治りかけの傷』は一つも見当たらない


<ヽ;`∀´>「外傷の痕があるのに、『外傷なし』……?」

(´・ω・`)「取ってき……どうしたオイ」

('A`)「ああ、その救急キットいらねえって話をな」

(´・ω・`)「は?」

39 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:50:29 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)<グーペコ!!!!!!!!!


('A`)「必要なのは怪我の手当てより栄養じゃねえか?この汚え犬も含めてな」

(´・ω・`)「病人食やドッグフードなんて買ってねえぞ」

('A`)「あるもん食わせりゃいいんだよ。『わんわん物語』でもスパゲティやってただろ」

(´・ω・`)「お前そのツラでわんわん物語とか観てたの?」

('A`)「名作にツラは関係ねえだろ。ニダー、その子はどうする?」

<ヽ;`∀´>「……」


ニダーはチラリと背後を窺う。『犬』に聞かれたくない話だと察したドクは、屈んで顔を寄せた
ショボンもショボンで『ご馳走』を用意し、犬の気を引く。餌の気配を察してか、尻尾を振って配膳を待っていた


<ヽ;`∀´>「正直、手の出しようが無いニダ。この子がどれだけの期間『外』にいたかは知らないけど、『脱水』の症状が見られない」

('A`)「は?じゃあなんで意識ねえんだよ」

<ヽ;`∀´>「単なる栄養不足……だと思う」

('A`)「曖昧だな」

<ヽ;`∀´>「僕にはこれが限界ニダ。意識がない以上、食べ物や飲み物を無理に口に突っ込むワケにもいかない。最善は『点滴』による栄養補給ニダ」

('A`)「……『そこ』に任せるのが一番ってか」


あえて言葉を濁したが、彼女の身を案じるのならばやはり『病院』へ連れていくのが最善だろう
しかし、犬の態度や身体の異常が、彼らの常識に警鐘を鳴らす。『本当に任せても良いのか』と

40 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:52:58 ID:9OubR0lk0
('A`)「……s (;´゚ω゚`)「うおおおおおおおおお何こいつうおおおおおおおおおお!!!!!!!????????」


(#'A゚)「っるせぇなチンカス野郎今シリアスやってんだろうが!!!!!!!!!!!」


突然の叫び声と、キャンプ用の銀皿がかき鳴らす金属音に二人は振り返る
騒ぎを起こした本人は、突然目の前に『宇宙人』でも現れたかのように血走った目を見開いていた


<ヽ;`∀´>「どうしt……」

(#'A`)「ただのゴキブリだったらお前……」


その視線の先にいた『モノ』を目の当たりにし、二人の言葉は失われる
床にぶち撒けられたヌードルを一心不乱に、犬と


( ∵)「ゴェェェエエエエ!!!!!」

( ∴)「ゴェェェエエエエ!!!!!」


体長十センチにも満たない、『動く人形』が貪っていたのだから

41 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:54:06 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>そ「うおお何それ!!!!?????いつ!!!!!?????どこで!!!!!!!??????」

(;´゚ω゚`)「知るかよなんか知らん間に皿の上乗ってたわ!!!!!!!!」

('A`)「飯に不思議なキノコでも入れてたのかよ。ガンギマリじゃねーかオイ」

<ヽ;`∀´>「入れるかァ!!しっかりするニダ!!」


取り乱す三人を他所に、一匹と二体はお世辞にも上品とは言えない食事を続ける
内、一体は満腹になったのか。ドクとニダーの方を振り向き


( ∴)「ゴェェェエエエエ!!!!」


まるで首を絞められた鶏のような汚い鳴き声を上げた

<ヽ;`∀´>「な、何……?」

('A`)「わかんね……っとぉ!?」


二人の背後から、両脇を押し除けて


(#゚;;-゚)「っ、っ!!」


目を覚ました女の子が、一目散に『食事』に向かう
床に這い蹲り、ヌードルに手を伸ばした所を、ショボンが咄嗟に抑え込んだ

42 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:55:04 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「馬鹿野郎!!腹壊すぞ!!ニダー、他の食いもん寄越せ!!」

<ヽ;`∀´>「あっあっ、これを!!」

(#゚;;-゚)「っ……!!」


梱包紙を破ったシリアルバーを目の前に差し出すと、誰にも奪われまいと口の中へと突っ込んでいく
その姿は、およそ栄養不足で倒れていた少女とは思えないほど、野性味と力強さに溢れていた


(#゚;;-゚)「っ……ング」

('A`)「栄養問題は解決したな。今の内にもうちょい気の利いたご馳走でも作ってやれや」

<ヽ;`∀´>「わ、わかった……」


ドクはシリアルバーをもう一本、そしてコップに注いだ水を女の子に差し出す
彼女は暫し三人を見上げた後、今度は少し落ち着いた様子でシリアルバーを齧った

43 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 10:56:58 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「っ……ハァ、何から突っ込めば良い事やら……お嬢ちゃん、お名前は?」

(#゚;;-゚)「……」


ドカリと椅子に腰を下ろしたショボンに、咀嚼をしながら顔を向ける
しかし一向に、その口から質問の答えが出ることは無かった。痺れを切らしたショボンは内容を変える


(´・ω・`)「パパやママは?」

(#゚;;-゚)「……」

(´・ω・`)「どこから来た?」

(#゚;;-゚)「……」

(´・ω・`)「ウチは何処だ?」

(#゚;;-゚)「……」


(´・ω・`)「女の子にここまでシカトされんの初めてで泣きそうなんだが」

('A`)「そうか。俺は慣れてる」

(´・ω・`)「自分で言ってて悲しくならないか?」

('A`)「自虐もユーモアさ。アプローチを変えよう。お嬢ちゃん、『喋れるか?』」


(#゚;;-゚)「……」


静かに首を横へ振った。ドクは深呼吸を置き、紙とペンを差し出す


('A`)「文字は書けるか?」

(#゚;;-゚)「……」


『否定』。彼女の意思疎通の方法は『ボディランケージ』に限られる

('A`)「……参ったな、こりゃ」

(´・ω・`)「話せない、書けない……だが耳は聴こえてるし、話の内容は理解している。迂闊に猥談も出来ねえな」

('A`)「お前まだキマってんのかよ問題はそこじゃねえだろ」

44 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:00:12 ID:9OubR0lk0
詳しい事情を聞けるかと期待した分、事態は余計に混迷を極める。二人が頭を悩ませているその時、今度はニダーが驚きの声を上げた


<ヽ;`∀´>「ちょ、駄目ニダ!!二人とも!!」

(;´・ω・`)「なん……オイ何してんだてめえらクソが!!!!!!!」


(∪^ω^)「フンフンフンフン」

( ∵)「ゴェェェエエエエ」

( ∴)「ゴェェェエエエエ」


新たな餌を求めてか、一匹と二体はショボンのバッグに頭を突っ込んで掻き回す
慌てて犬の胴を掴んで持ち上げると、後脚で股間を蹴り上げられ悶絶した


(#´゚ω゚`)「クソ犬……ドク!!その生き物捻りあげろ!!」

('A`)「触って良いもんかこれ?」

(#´゚ω゚`)「ッメーーーーーーの身より俺の荷物!!!!!!!」

('A`)「うーん、人間クズ」


やや躊躇いはしたが、片手に一体ずつ人形を掴んで持ち上げる
しっとりと柔らかい赤児の肌のような手触りと、『骨』を感じさせない掴み心地に、ゾワリと鳥肌が立った


(;'A`)「マジで生き物かよこれ……あーあーなんか引っ張り出しやがって」

( ∵)「ゴェェェエエエエ」

( ∴)「ゴェェェエエエエ」


悪戯が好きなのか、二体は引っ張り出した紙束をばら撒き、やや高くなった声色で『笑う』かのように鳴いた
ドクは手に持ったそれを改めて観察する。皮膚に毛はなく、雄雌の判断はつかない
顔には『目』と『口』と思わしき黒点が付いているが、鼻や唇による起伏はない
違う点を挙げるならば、それぞれの肌色の違いと、黒点の位置が逆さまなくらいだろう

45 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:01:28 ID:9OubR0lk0
( ∵)「ゴェェェエエエエ」

('A`)「緑と」

( ∴)「ゴェェェエエエエカオキモ」

('A`)「ピンk……今喋った?」

(;´・ω・`)「あーあーもう大事な資料をばら撒きやがってクソが……ニダー!!『サシミ』にしてしまおうぜ!!」

<ヽ;`∀´>「え、やだ」

(;´・ω・`)「根性なしが……大体、何なんだよこの生き……」




(´・ω・`)「……『生き物』?」




驚愕の連続で、型に嵌められていた『常識』が、ショボンの頭からすっぽ抜ける
元々『伝説』を追う旅。マトモな思考の持ち主ならば、寝物語か笑い話で済ませる類のものだ

46 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:02:17 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「スリー……ドット……」


資料のタイトルと、ドクの手に収まる珍妙な『生き物』を見比べる
『スリー・ドット』、『三つの点』。シタラバに位置する三つの地点
生き物の顔に位置する黒点が描く正三角形。伝説の地に生息する精霊
その場所へ向かう者達の前に現れ、数ある荷物の中からそれらを記された資料を引っ張り出した事実


(´゚ω゚`)「……『Rebel』?」


(#゚;;-゚)「……」


(∪^ω^)「わんわんお!!!!!」

( ∵)「ゴェェェエエエエ!!!!!」

( ∴)「ゴェェェエエエエ!!!!!」


『ビンゴ!!』


奇妙な御一行の鳴き声の意味が、ショボンにはハッキリと伝わったのであった

47 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:03:52 ID:9OubR0lk0
――――――
―――



<ヽ`∀´>「お水ニダ」

(∪^ω^)「わんお」


美味い食事に清潔な水。そして使える下僕共!!キミ達を信じて着いてきて正解だったよ。恩に着る


( ∵)「フンス」

( ∴)「ハンス」


調子乗っ……まぁいい。暖かい寝床に免じて今日の所は大目に見てやろう


( ∵)「ゴェェェエエエエ!!」ビチャチャチャ

( ∴)「ゴェェェエエエエ!!」ビッチャビッチャ


それ私の飲み水だぞ水浴びすんじゃねえ噛み殺すぞオモチャ共


('A`)「いやでもよぉ、そんな美味い話があるか?」

(´・ω・`)「そうとしか考えられねえだろ。現に、この子には『生傷』がねえんだろ?セブンクロスのRebelは『苦痛』を請け負う。裸足で外歩き回った怪我を治したんなら説明も付くだろ」

('A`)「これにそんな力があるたぁとても思えねえが……」

(´・ω・`)「『精霊』だぞ?お前と同じで珍妙な見た目に決まってらぁ」

('A`)「よせやい誰がティンカー・ベルだ」


ギャーギャー喧しい連中だな。こっちは疲れているんだ。少しは気を使って貰いたいものだ
まぁ人間如きの低知能生命体にそこまで求めるのは酷か。やれやれ、ここは私が我慢してやるか

48 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:07:14 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「うーん……」

(∪^ω^)「わん?」


なんださっきからこの男ジロジロ見やがって。私の愛らしさに見惚れたのか?
悪いが男に撫でられる趣味はない。あの煩い二人と比べれば少しはマシな野郎とは思うがね


<ヽ`∀´>「汚いニダね……」

(∪^ω^)「お……?」


なんだテメェこの野郎失礼じゃねえかその平べったい鼻噛みちぎるぞオオン??????


<ヽ`∀´>「ショボン、ドク!!ちょっとこの子達にシャワー浴びさせてくるニダ!!」

(#゚;;-゚)「……」

('A`)「お?おー……」

(´^ω^`)「変な事すんじゃねえぞ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

<ヽ`∀´>「誰かと違って子供に欲情するほどクズじゃないニダ」

('A`)「真っ先にその言葉出てくる辺りマージ気持ち悪いわ。死ねよ」

(´・ω・`)「冗談じゃん……」


(∪^ω^)「わん?」


ちょっと待て、シャワー?今こいつシャワーって言ったか?

49 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:09:12 ID:9OubR0lk0
(∪;^ω^)「わんわわんわんわんわわん!!!!!!!」ダバババババ!!!!


<ヽ;`∀´>「ちょ……暴れちゃダメニダ!!綺麗にしないと!!傷だってあるかもしれないのに!!」


余計なお世話だこのダボがぁ!!!!!!!その謎の粘液を私に擦りつけるんじゃねえフレグランスな体臭が落ちるだろうがァ!!!!!!!


(∪;^ω^)「ウォウウォウォウォ……」

<ヽ;`∀´>「どんな感情したらそんな鳴き声出るニカ……?」

( ∵)「ゴェェェエエエエ♪」ワッシャワッシャ

( ∴)「ゴェェェエエエエ♪」ワシャワッシャ

<ヽ;`∀´>「キミらはノリノリニダね……ちゃんと身体洗えるんだ……」


チクショウこいつらは降り注ぐ熱湯に耐え切れるどころか楽しめると言うのか!!
人間の頭の悪い行為など良く真似が出来るものだ!!呆れて言葉も出ないな!!!!


(∪;^ω^)「ピィーーーーピィピィピィ……」

<ヽ;`∀´>「せつなっ……すぐ終わるから……」


早く終わらせろ!!!!!カスが!!!!!!!!!!!!!!!!


<ヽ;`∀´>「……」

(∪;^ω^)「ピィ?」

私の愛されボディを汚い手で弄りながら何処を見ているこの男?ああ……


(#゚;;-゚)「……」


『バスタブ』とかいう拷問器具に沈めたあの子か。子供と言えどメスだ。はしたない人間はすぐに欲情すると聞く
やれやれ、交尾に発展しようものなら少々痛い目を見てもらうとするか

50 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:10:18 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「……キミらは、一体どこから」

(∪;>ω<)そ「ギャウッ!?」

<ヽ;`∀´>そ「あっ!?」


目ぇあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?????????????????


( ∵)「ゴエッエッェwwwwww」

( ∴)「クサwwwwwwwwwwwwwwwww」


<ヽ;`∀´>そ「今喋っ……あ、泡が目に入ったニダね!?ごめん直ぐに……」

(∪#^ω^)「ギャウウウウウウウ!!!!!」ガブゥ!!!!

<ヽ;`∀´>そ「いでででででで!!!!!!」


全く人間とはロクな事をしない!!仕返しに手に噛みついてやったが、私の億分の一程度の痛みで泣き叫ぶとはなんと情けない!!
まぁ私は寛大だし?飯の恩もあるし?下僕の粗相をこの程度で済ませてやった私に感謝して欲しいみたいな?


<ヽ;`∀´>「っつ〜〜〜〜……ご、ごめんニダ……」

(∪^ω^)「……フスッ」


おや、身の程を弁えている下僕だな。これまで私が噛みつこうものなら手や足や、場合によっては棒なんかが飛んできたものだが
犬に個性があるように、人も様々と言う事だろうか。これは一つ発見だな。下等種族も日々進化しているらしい

51 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:12:04 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「あーあー……バスルームで良かったニダ」

( ∵)「ゴェ……」

( ∴)「ゴェ!!」

<ヽ;`∀´>「とりあえず洗って消毒……」


(#゚;;-゚)「!!」ザパァッ


<ヽ;`∀´>「えっ?」

(∪^ω^)「……」


おやおや、もうネタばらしか。粗相してしまったのはどうやら私のようだ
せっかく都合の良さそうな下僕が見つかったというのに、これじゃ元の木阿弥だ


<ヽ;`∀´>「ど、どうしたニカ?」

(#゚;;-゚)「……」


少女が下僕の手を掴む。私も一度救われた『力』。行く先々で何度か目の当たりにしたが
『怯えなかった人間』は一人もいなかった。これも例外ではないのだろう

52 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:12:53 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「ッ……!?」

(#;゚;;- )「っ……っっ……!!」


あの感覚は、何と言うのだろうな……『巻き戻った』か。痛みが傷を受けた直後の『最大値』に巻き戻され、すぐさま無痛となる


<ヽ;`∀´>「傷が……!!」


するとどうだ?何事も無かったかのように『消えてなくなる』
私も『事故』による致命傷を受けて、このように元気で愛らしく生きていられるのも彼女の力によるものだ。但し――――


(#゚;;- )「っ……っっ〜〜〜〜……!!」

<ヽ;`∀´>そ「ああっ!?」


その傷は全て、力を使った『彼女』の身へ還る事となる

53 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:15:44 ID:9OubR0lk0
(# ;;- )「フーッ……フーッ……」

<ヽ;`∀´>「……キミが……って、大丈夫ニカ!?」


(∪^ω^)「?」


おや、これまでの人間とは一味違う反応だな?


<ヽ;`∀´>「血が……あれ、でも、止まってる……傷もそこまで大きくない……けど」

(#゚;;-゚)「……」

( ∵)b「ゴェエエ」

( ∴)b「ゴェェェェエ」

<ヽ;`∀´>「……『苦痛』を、請け負う、精霊……」


ふむ……『コレ』の正体を見抜いたクズと同じく、異常事態に対して冷静さを欠かず頭を回せる人間のようだな
これまで声をかけてきた連中は、どれもこれも取り乱したり腰を抜かすばかりで役に立ちはしなかった


<ヽ;`∀´>「……」

(∪^ω^)「……」


( ∵)「!?」

( ∴)「ゴェッ!!ゴエッ!!」


<ヽ;`∀´>そ「うわっ!?ど、どうしたニカ!?」


おっと、どうやら今夜はゆっくりと眠れそうにない。少し怖いが、この鬱陶しい泡を取ってしまわねば


(∪^ω^)「わんお!!」ダッパァン!!


<ヽ;`∀´>そ「おぎゃあ!?なんなのキミらさっきから!?」


バスタブの熱湯でサッと『水浴び』をして、水気を『ブルブル』で取っ払う。お?なんか毛並みが軽い
グズグズしてる場合では無くなった。これは『警鐘』の鳴き声だ。恐らく直に……

54 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:16:12 ID:9OubR0lk0






『ピンポン♪』





ほら、おいでなすった

55 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:17:43 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



部屋に響くチャイムの音に、これからどうするかを話し合っていた二人は身構える


(;´・ω・`)「……」

('A`)「……俺が出る」


『間』の悪さ、あるいは『良さ』に、否が応でも警戒心は湧いて出るものだ
ただの強盗なら、腕に自信があるドク一人でも、『ある物』を持ったショボン一人でも対処が出来る
ドクが自ら申し出たのは、踏んだ場数が育んだ度胸によるポーカーフェイスが効力を発揮すると踏んだからである


('A`)「はいよー、どちらさん?」


平静を装いながら扉を開けると、片田舎のモーテルには相応しくない美女が二人
如何にも『あからさま』な訪問者に、彼の口角はヒクリと歪んだ


(゚、゚トソン「こんばんわ。夜分遅くに申し訳ございません」

('A`)「あー……ピザは頼んでないし、新興宗教なら興味ない。受け付けならあっちだおやすみ良い夜を」

56 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:19:31 ID:9OubR0lk0
一方的に話を切り上げ扉を閉めようとしたが、ブロンドの女が強引に足を入れてこじ開ける
右腿に吊り下げられた『ホルスター』が、ただの一般人では無い事を如実に表していた


|゚ノ ^∀^)「あらあら?こんな真っ暗闇の中、訪ねて来た女性二人を蔑ろにするワケ?」

('A`)「ホラー映画の見過ぎでな。色気に惑わされてどっかの『ホステル』に連れ去られたくはないんでね」

|゚ノ ^∀^)「ふぅん?」

(゚、゚トソン「お時間は取らせません。単刀直入にお伺いします。こんな姿をした『生き物』を拾いになられたのではないでしょうか?」


【 ( ∵) 】

【 ( ∴) 】


差し向けられたスマホの画面には、正しく議題の中心となっている珍妙な生き物の、最も特徴的な部分が映し出されていた

57 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:21:28 ID:9OubR0lk0
('A`)「最近の逆ナンは斬新だな」

(゚、゚トソン「迅速な回答を。此方も余計な時間を使ってはいられませんので」

('A`)「知らねえよ。イカレに構ってるほど暇じゃねえんだ」

(⁻、⁻トソン「……そうですか。残念です」


一軒一軒、身元も明かさず必要最低限の質問を投げかけているのではないのだろう
恐らく何らかの方法で『確証』を持って、ピンポイントで訪ねて来たに違いないと踏んだドクは
彼女たちが打つ『次の一手』を迎え撃つ心構えをした


|゚ノ ^∀^)「ふぅ……骨折り損ね。帰ろっ……か!!」


右手がホルスターに伸びる『予想通り』の行動。拳銃を抜かせない事も出来たが
正当防衛の大義名分を得るために、あえて『握らせる』所までは見逃した


(#'A`)「シッ!!」

|゚ノ;^∀^)そ「!?」


持ち上げた瞬間、肩口に容赦なく打ち込まれた拳に面食らう。腕は大きく振り下がり、掌から拳銃が離れてアスファルトを滑る
ドクは襟首と袖を掴んで身体を引き寄せ、ブロンドの頭を扉に叩き付け手早く失神させた


(゚、゚;トソン「フリーz」

('A`)「断る」


ワンテンポ出遅れたもう一人の拳銃の標準が定まるのを待たず、スライドを掴んで捻り取る


(#'A`)「そらよっ!!」


裏拳を顎先に掠めるように打ち込むと、此方も膝から崩れ落ち意識を失った

58 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:23:20 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「口ほどにもない奴め」

('A`)「それ俺のセリフ。一晩と経たず追手が現れるたぁな」

(´・ω・`)「身元を調べるか?」

('A`)「いや、とっとと逃げた方が良いかもしれねえ。荷物を纏めろ。それと……まぁこれは車内で話す」

(´・ω・`)「違和感か?」

('A`)「ああ、ちょっとした相違点をな」


<ヽ;`∀´>「今の音な……ちょっと待って身体拭かせて!!」

(∪^ω^)「わんわんお!!!!!!」


騒ぎを聞いてか、バスルームから飛び出したニダーと犬に、思わず二人の気が抜ける


(´・ω・`)「今夜はゆっくり寝れそうにねえ。直ぐに出るからお前は拾いモンを連れてこい」

<ヽ;`∀´>「え?わ、わかったニダ。ドライヤー使う時間は?」

(´・ω・`)「ねえよアホ。ドク、車回して来てくれ」

('A`)「オーケイ」

59 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:23:45 ID:9OubR0lk0
投げ渡されたキーを片手でキャッチし、倒れた女を跨いで駐車場へと向かう
そこにはもう一台、見覚えのないキャデラックが停まっていた


('A`)「ふむ……」


エンジンは掛かっておらず、スモーク仕様のパワーウィンドウも閉じられている
中の様子は覗う事は出来ないが、しばらくジッと観察していると車体が僅かに揺れた
表には出てこなかった『三人目』が、見つからないよう座席の下にでも隠れたのだろうと推察したドクは


('A`)「ハァー……」


そのキャデラックに近づき


(#'A`)「オルァッ!!!!!!!」


ガラスが突き破れるほどの乱暴な『ノック』をした

60 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:24:48 ID:9OubR0lk0
川;д川「ひぃッ!?」


脅しにしては少し酷だろうか。座席の下で頭を抱えて蹲る女を見て、ドクは僅かな反省をした
しかし、身元も明かさず銃を突きつけようとした連中に向ける優しさなど持ち合わせていないと、すぐさま払拭する
ロックを解除せず、ドア越しで勘弁してやるだけ温情だが、掛ける言葉には最大限の『圧』を加えなければならない


('A`)「お仲間に伝えとけ。何の因縁で追っかけてくるかは知らねえが、ここから先は怪我だけじゃ済まさねえ。とっとと帰って『バチェラー』でも観とけってな」

川;д川「ヒッ……ハヒ……」

(#'A゚)「返事はァッ!!!!!????」

川;д川「わか、わかりましたァ!!」


声色にも態度にも『演技』の色は見えない。何故この女があの二人と同行しているのかが気になったが
今は何よりこの場から離れるのが先決と、ドクはミニバンのロックを解除して運転席に乗り込んだ


('A`)「……」


歯に物が挟まったような気持ち悪さは、拭えぬ一方であった

61 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:35:09 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



ブンマルに到着したのは午前三時頃。女の子と犬、そして『人形もどき』はスヤスヤと寝息を立てていたが
図らずも厄介な事件に巻き込まれた三人はとてもじゃないが眠れるような状態ではなく
一先ず二十四時間営業のダイナーに身を寄せ、車内にてドクとニダーが話したそれぞれの『異常』について会議を開く事にした


(;´・ω・`)「えーと……女の目当ては女の子と犬じゃなく、あの謎の生き物……っつったな?」

('A`)「ああ、的確な似顔絵まで見せつけてきてな」

(;´・ω・`)「そんでそっちが……『Rebel』は謎の生き物じゃなく女の子の方……と?」

<ヽ;`∀´>「犬に咬まれた傷が女の子の方へ移ったニダ……あの傷跡の多さも、恐らく他人の傷を請け負ったんじゃないかって……」

(;´⁻ω⁻`)「あー……やべえ頭働かねえー……」


疲労と非現実感が集中力を奪い取る。角砂糖を五つ入れた甘いコーヒーは大した効力を発揮しなかった
何はともあれ、彼らは『受け入れ』『抵抗し』『逃げ出した』。早急に答えを出し、行動に移さねばならないのだ


('A`)「『Rebel』があの女の子として……じゃあアレはなんだってなるよな」

<ヽ`∀´>「犬と謎生物」

('A`)「……犬とはあながち無関係じゃねえかもな」

(;´⁻ω⁻`)「ハァーン……?」

('A`)「事故を起こした保健所の車の、『乗客』の一人だとしたら?」


行方不明者と、逃げ出した野良犬。ビラに載っていた、凡そ同列に扱うべきではない両名が
もしも『同じ車』に乗って、『同じ場所』に連れられようとし、『同じタイミング』で逃げ出したとしたら


('A`)「55号線沿いには保健所は無いっつったよな?つまり、犬は拘置及び殺処分以外の目的でどこかに連れて行かれようとしてたのかもしれない」

(´・ω・`)「女の子も一緒にか」

('A`)「ああ。そう考えると同じビラに載っていた理由もある程度の説明が付くし、野良犬と共に行動しているのも納得が出来る」

62 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:36:51 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「何処へ、何をしに……は、考えてもわからないから置いておくとして、あの女の人たちは『謎生物』を探してたニダね?」

('A`)「そこも解せねえ点の一つだな。捜索願が出されてる方はともかく、傍から見りゃメルヘン拗らせた探しモンを大真面目に、それこそ拳銃突き付けてまで聞き出そうとしてたんだ」


来客を告げるドアベルに釣られ、背後をチラリと振り返る。常連であろうくたびれたドライバーが、ため息交じりに店主に挨拶を投げかけていた
脅しの効果か、それともまだ目を覚ましていないのか。追手の気配は未だ感じられない。窓辺から見えるミニバンにも動きは無かった


('A`)「連中の目当てが『Rebel』の女の子だとしたら、それに付属する生き物を尋ねるのはまぁーお門違いだ。それなら警察騙って怪しい野郎三人が部屋に女の子連れ込んだ云々と問い詰めた方がマシだろうよ」

(´・ω・`)「そうしなかったのは……あのビッチ共は女の子と犬については何も知らねえのかもしれないな」

<ヽ;`∀´>「『別件』扱いになってるって事ニカ?」

(´・ω・`)「かもな。そんで、ビラの製作者とも無関係の可能性すらある。検問も怪しいぜ?薬物取締っつーんなら、荷物漁るより尿検査した方が手っ取り早いしな」

('A`)「トランクを検めたのは、『隠し子』を見つける為か。確かに混雑してるとはいえ、雑な仕事ぶりだったな」

<ヽ;`∀´>「つまり……僕らは今現在、二つの組織に追われる身になった?」

(´^ω^`)「頭賢いなお前ェ!!!!!!!!!」

('∀`)「まぁ内一つは俺が事態をややこしくしたようなもんだけどなぁ!!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「アハハハハハ出発して一日も経ってないのに既に拗れてる!!!!!!!!」


一頻りゲラゲラと笑った後、三人はスンと押し黙る。談笑していた店主とドライバーの訝しげな視線を感じたが、構っている余裕はなかった
未知とロマンを求める旅の筈だったが、ゴールに辿り着くよりも遥かに早く向こうから出向いてくるとは思いもしなかったのだから
そして何かしらの良からぬ事情と物騒な追手まで付いてくる。彼らの許容値を遥かに上回っている。だからこそ


('A`)「『らしくなってきたじゃねえか』」


三人は『笑った』

63 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:38:15 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「全くだ。これくらいのスリルがねえとやり甲斐がねえ」


彼らは、危険が間近に迫った所で、怯えて逃げ隠れするような子供では無く


<ヽ`∀´>「何方にしろ、僕らを頼ってきたのなら応えてやらなきゃ男が廃るニダ」


厄介ごとを他所に放り投げて危機回避するほど、賢い大人でも無かった


('A`)「成し遂げて、見届けようぜ。『伝説』の行末をな」


危険とスリルあってこその『冒険』。心配や恐れといった後ろ向きな感情が入る余地などない
彼らの心身を支配するのは、『眠気』さえ吹き飛ばすような高揚感
握り締めた拳が歓喜に震えるほど、『待ち望んでいたシチュエーション』だった


(´・ω・`)「そうと決まりゃ、道草食ってる場合じゃねえな」

<ヽ`∀´>「うん。最短距離でセブンクロスに向かうニダ」

('A`)「よっしゃ、行くか」


テーブルに代金とチップを置いて、スタートラインを切るような気持ちで店を出た
白み始めた空すら突き抜けそうなほどの、期待感を胸中に抱きながら―――――

64 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:40:47 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



|゚ノ #^∀^)「あんのブサイクよくもやってくれたわね……」

苛立たしくハンドルを指で叩き、アクセルをベタ踏みしながら吐いた悪態は
『拳で突き破ったかのように』割れた窓から吸い込まれ、朝の空気と混ざって消える
右肩と頭はまだズキズキと痛み、それが余計に神経を逆撫でした


|゚ノ #^∀^)「追いついたら徹底的に痛めつけた後に『ハロー』に引き渡してやるんだから!!クソッ!!クソッ!!」

(゚、゚トソン「窓に当たるのはやめなさい。これ以上風通しを良くしなくても結構です」

|゚ノ ^∀^)「っるっさいわねぇ!!ボスからの指示はまだなの!?」

(゚、゚トソン「たった今届いたばかりですが、そう頭に血が昇っては話もロクに理解できないでしょう?先に落ち着いてください」


助手席の相方をジロリと睨みつけたが、極めて冷静な視線に貫かれ怒りを収めようと努力を始める
鼻息荒く深呼吸を行い、法定速度を二十キロ近くオーバーしている車のスピードを緩めた


|゚ノ ^∀^)「……オーケー、フゥ、もう大丈夫。話して」

(゚、゚トソン「結構。対象確保の為に『12シスターズ』全員の出動を許可されました。配置については我々に一任されています」

|゚ノ ^∀^)「ワーォ、大ごとじゃない。そこまで躍起になるような代物なの?」

(゚、゚トソン「女性とはいえ、拳銃を持つ相手に先手を取って昏倒させるような男性はそうそういませんし」

|゚ノ ^∀^)「車まで傷物にされたしね。身元は?割れたの?」

(゚、゚トソン「はい」

65 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:43:02 ID:9OubR0lk0
タブレットには、本部に調査依頼を出した『三名』の資料が映し出されている
犯罪歴のない一般人の情報だ。検索には多少の時間が掛かると踏んでいたが、異例のスピードで送られてきた


(゚、゚トソン「『ドク・オーツ』。シタラバ最大の格闘道場を構えていたオーツ家の三男ですね」

|゚ノ ^∀^)「あ、それヒートから聞いたことあるかも。確か三年前に閉館したんじゃなかったっけ?」

(゚、゚トソン「ええ。経営方針の転換が主な理由と囁かれていますが、実際は『身内による道場破り』に依るものです」

|゚ノ ^∀^)「……つまり、そいつが家族全員叩きのめしたって事?」

(゚、゚トソン「進路について揉めていたらしく、会長である祖父、師範の父、免許皆伝の二人の兄を、心が折れるほど徹底的に『説き伏せた』そうです」

|゚ノ ^∀^)「とんでもない脳筋家族ね……もう一人の色男は?」

(゚、゚トソン「『ショボン・バーデラス』。シタラバでも有数の大牧場『バーデラスファーム』の次男です」

|゚ノ ^∀^)「さっきからビックネームが続くわね……」

(゚、゚トソン「驚くべきはそこではありません。兄の『シャキン・バーデラス』はイエローリストに登録されている要注意人物です」

|゚ノ ^∀^)「っ……なるほど、ボスが『変人集団』の総動員を許可するわけね」

(゚、゚トソン「あら、まるで自分は違うとでも言いたげな口振りですね」

|゚ノ ^∀^)「そーいうとこ意地悪だなぁ」


単に返事が愉快だったのか、自嘲が込められていたのか、『変人集団』のリーダーはクスリと微笑みを漏らす
しかしすぐさま何時もの涼しい表情を取り戻し、話を続けた

66 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:44:23 ID:9OubR0lk0
(゚、゚トソン「彼に関しては二年前に消息を絶っています。上層部は『死亡』扱いにしていますが、ボスは水面下で活動していると確信しているようですね」

|゚ノ ^∀^)「イエロー止まりなのは、お上のボンクラ共による慢心ってワケね。これじゃウチらも報われないわ」

(゚、゚トソン「あの三人の行動がシャキン・バーデラスの指示に従ったものである可能性は高いでしょう。サダコが目覚め次第、待ち伏せを配備させます」

|゚ノ ^∀^)「追うウチらと待ち伏せる子達。挟み討ちの形になるわね。シャワーを浴びていたもう一人は?」

(゚、゚トソン「顔こそ見ていませんが、ルームシェア相手の『ニダー・コクソン』に間違い無いかと」

|゚ノ ^∀^)「変わった名前ね。シタラバ人じゃないの?」

(゚、゚トソン「いえ、国籍はシタラバです。血筋は南コリャーですが」

|゚ノ ^∀^)「ふーん。で、その子は?」

(゚、゚トソン「ごく普通の家庭に産まれた、ごく普通の男です。経歴はね」

|゚ノ ^∀^)「じゃー、他に何かあるワケ?」

(゚、゚トソン「面白い特技をお持ちのようでしてね……あら?」

67 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:46:05 ID:9OubR0lk0
川д川「……」

|゚ノ ^∀^)「おはよう眠り姫さん。馬車の揺れ心地はいかが?」

川д川「スピード出し過ぎ……」


後部座席で眠っていたサダコが、掛けられていた毛布を丁寧に畳んで座席に置く
トソンはいつものように、タブレットの地図アプリを起動させて、タッチペンと共に手渡した


(゚、゚トソン「目的地は?」

川д川「セブンクロス……経由地はここ、ここと、ここ……」


丸で印を付けられた街は『ブンマル』『ブンゲー』『オムライス』の三地点
タブレットを受け取り、確認したトソンはもう一点、オムライスからセブンクロス山脈へ向かう唯一のルートにチェックを入れた


(゚、゚トソン「ブンマルには既に到着済みでしょうね……」

川д川「でも……発ってはいないんじゃないかしら……多分……」

(゚、゚トソン「それは朗報です。幸い、近くに待機班がいるので対応を依頼しましょう。立ち寄る場所などはわかりますか?」

川д川「ええ……私からしょ、詳細を伝えるわ……」


『12シスターズ』随一の予知能力に、レモナは関心したかのように口笛を吹く
これまでも行方知れずの超常保護対象を見つけ、その道取を予め『夢』で見てきたのだ
魔法もファンタジーも幻想の生物もいない、退屈で平穏な世界を維持する為には無くてはならない人員だった


|゚ノ ^∀^)「さっすがぁ☆これで見た目が根暗のナードじゃなきゃ様になんのにね」

川#д川「一言多い!!」

(゚、゚トソン「二人とも、気を引き締めなさい。私たちは彼らに一度出し抜かれているのです。これ以上の失態を重ねればボスに顔向けできません」


表情は険しく、視線は獲物を狙う『狩人』のように鋭く前を見据える
抑え込んでいた静かな『怒り』が漏れ出し、サダコは思わず寒気に身震いをした


(゚、゚トソン「反撃開始です。人々の安寧を護る者の挟持を、思い知らせて差し上げましょう」

68 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:51:13 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



成功と破滅が同居する、シタラバが誇るギャンブル都市『ブンマル』
かつては『金塊を求める者』達が足を休める砂漠のオアシスに過ぎなかったこの土地は、賭博合法化による莫大な収益を目論んだマフィア達によってカジノやホテルが乱立
後に法律と取り締まりの強化により、裏社会の人間はそれらの経営から手を引くが、大手不動産や大富豪が引き継ぎ現在に到る
賭博、観光、ホテルによる利益は世界でもトップクラスであり、ある者は一晩のスリルと幸運を求めて。ある者は人生の一発逆転を目論んで
煌々と光るネオンは、年中無休で人々の歓声と悲鳴を聴き続けている


('A`)「こんなもんかな」


その中心街から少し離れた商業エリア。日頃から世話になっている大手チェーンマーケットで買い物を済ませたドクは、両手いっぱいの紙袋を抱えて自動ドアを潜った
主に女の子の衣服や野良犬の餌。予定外の出費だが、懐は大して痛まなかった


('A`)「異常なしっと」


両腕からずれ落ちそうになった荷物を抱えなおす。立体駐車場へ踏み出す前に、軽く辺りを見回したが特に目立った異変は見当たらない
行動するにあたって、街中では出来るだけ人気の多い場所を行こうと決めたのは彼だ。古い言葉にもあるように、『木を隠すなら森の中』だ
加えて、人の目が集まる往来では騒ぎは起こしにくいだろうという魂胆もある

69 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:52:11 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「ほい、お帰り」

('A`)「おう、サンキュー」


車内から後部座席のドアが開かれ、ニダーに紙袋を渡す。ショボンは運転席でアイマスクとイヤホンを付け眠っていた


('A`)「異常なしか?」

<ヽ`∀´>「御覧の通り」


(∪^ω^)「グフーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!グフーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

(#゚;;-゚)「……」

( ∵)「ゴエエエエエエエエエエ」

( ∴)「ゴエエエエエエエエエエ」


('A`)「いやわかんない」

<ヽ`∀´>「いびき」

('A`)「ああいびき……太々しいなこいつら」

70 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:53:54 ID:9OubR0lk0
暢気な『拾い物』達とは裏腹に、三人はこれから襲い来る大きな負担に頭を悩ませていた
得体の知れない組織に追われ、逃げるという経験など、恐らく殆どの人間が経験したことのない事態だ
計画の変更に休憩時間の配分。どこから現れるかわからない刺客への警戒。四六時中気を張り詰めなければならない緊張感
どれもこれも三人にとっては未知の領域だ。一晩明けてようやく、この『チャレンジ』の過酷さが身に染みていた


('A`)「奴さんは今頃躍起になって俺らを探し回ってる頃かね……」


紙袋からモンスター・エナジーを取り出し、一息に煽る。独特な匂いと強烈な甘みに、思わず顔を顰めた


(;'A`)「まっじぃ……」

<ヽ;`∀´>「なんで買ったニカ……」

(;'A`)「効くかなって……所でお嬢の服だが、こんなもんでいいか?」


七分丈の夏物ジーンズに、コンバースのスニーカー、無地のTシャツと長袖のサマーニット、鍔広のブリムハット
やや厚着ではあるが、全身の傷跡を隠すには必要最低限と思われる服装を見繕っていた


<ヽ`∀´>「上々ニダ。いつまでも男物のシャツ着せるわけにもいかないしね」

('A`)「俺らなんか悪い事してるんじゃねえかって思えてきた」

<ヽ`∀´>「それを言うな。『ディ』、自分で着れるニカ?」


(#゚;;-゚)「……」


女の子、『ディ』は買い与えられた服を胸元に引き寄せ、小さく頷いた
着替えを見るのは野暮と、男二人は目を逸らし、ドアを閉めようとする。すると―――


(∪^ω^)「ウォフッ」

('A`)「おっと、オメーもか『ビィ』」

( ∵)「ゴエエエエエエエ!!!!!!!!」

( ∴)「ゴエ!!!!!!」

<ヽ;`∀´>そ「キミらは出ちゃまずいって!!『ビコ』、『ゼア』!!」


不思議な生き物、『ビコ』と『ゼア』を背に乗せた『ビィ』が、スルリと車を降りた

71 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 11:55:26 ID:9OubR0lk0
女の子と犬の『仮名』の由来は、シリアルバーのメーカー『B&D』から
生き物たちは顔の三つの点が、それぞれ数学記号の『∵(何故ならば)』『∴(故に)』に見えることから
気に入っているのかどうかはわからないが、それぞれが自身に付けられた名前であると認識はしていた


('A`)「ジッとしてろってのも酷だぜ?こいつらだって小便もクソもしてえだろうしな」

<ヽ;`∀´>「そ、それもそうニダね……ディも着替えたら連れて行かないと」

('A`)「俺が見とくよ。オメーはこいつらとちょっと息抜きしてこい」

<ヽ;`∀´>「……体よく面倒を押し付けようとしてない?」

('A`)「おおよくわかったな。フンは持ち帰れよ」

<ヽ;`∀´>「ハァ……アイ・サー」


(∪^ω^)「フスッ」


『行くぞ』とでも言いたげに鼻を鳴らしたビィに続き、ニダーは助手席から自身の手荷物を持って街へ向かう
その背中を、ドクは車にもたれ掛かり姿が見えなくなるまで見送った


('A`)「……」


買い物客が車に乗って、出口のスロープまで走らせる。入り口側からは、駐車スペースを探す別の買い物客がカーブを曲がった
賑やかな街の喧騒と、店内から漏れ出すポップなオリジナルBGM、出ては入る車のエンジン音に耳を傾け


('A`)「……そろそろ良いだろ」


他人の姿が見えなくなった時を見計らい、ドクは『何者か』に語りかけた

72 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:03:05 ID:9OubR0lk0
('A`)「どうやら、俺に御用のようだな。話なら手短に頼むぜ?寝不足が祟って居眠りしちまうかもしんねえからな」


階を記す『3F』のパネルが貼り付けられた柱の影が揺れ、『何者か』はゆっくりと姿を現せた

ノパ⊿゚)「……」


跳ねっけが強く、炎のような赤髪に、気合の入った鉢巻を締め
同じく赤いタンクトップと短いボトムを、女性特有のしなやかな筋肉に纏っている
一見、コスプレイヤーの類にも見えるが、拳のバンテージの巻き方は素人に容易く行えるものでは無かった


('A`)「……」

ノパ⊿゚)「押忍!!」

('A`)「押忍じゃねえ」


多少の変人である事は覚悟の上だったが、『ストリート・ファイター』にでも出てきそうな女だったのは想定外で
いつもの軽口も頭からすっぽ抜けてしまい、ごく普通の返ししか出来なかったのを悔いた


('A`)「あいや、失礼。コミコンの会場はここじゃねえぞ」

ノパ⊿゚)「ドク・オーツ!!!!!!!!」


見ず知らずの他人、それもあからさまに『格闘技やってます』とアピールしているような手合いに本名を呼ばれる
ドク個人にとって、それは面倒ごとの前触れであった。不快感を洗い流そうとモンエナで口内を満たすが、気に入らない味はより一層の増長を促した


ノパ⊿゚)「並びに、ショボン・バーデラス!!!!!!ニダー・コクソン!!!!!我らがボス『C』の名において、速やかな投降を求める!!!!!!!」

('A`)「知らねえカノジョに着いてっちゃいけねえってママに教わったんでな。そりゃ聞けねえよ。それに、ニダーは今し方散歩に出かけたばっかだぜ?」

ノパ⊿゚)「承知!!!!!!!我に下された指令はドク・オーツ!!!!!!!!お前の無力化だからだ!!!!!!!後の事は『ハイン・タカオカ』に任せてある!!!!!!心配無用!!!!!!!!」

('A`)「……仲間の名前、ベラベラ喋ってもいいんか?」

ノハ;゚⊿゚)「しまったあああああああああああああああああああッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」


『なんでこんなアホを俺に寄越したんだろう』。ドクは自身が軽く見られているように思えて酷く心外であった

73 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:04:53 ID:9OubR0lk0
ノハ#゚⊿゚)「おのれェ!!!!格闘家にあるまじき卑劣な誘導尋問!!!!!恥を知れ!!!!!!」

('A`)「格闘家なんざ名乗った覚えはねえし、今のはアンタの自爆だろうが」

ノハ#゚⊿゚)「問答無用!!!!!!」

('A`)「最初から問答する気には見えなかったがなぁ」


彼女の顔は見る見るうちに髪と同じ色に染まっていく。煽り易い人間だった。それ故に、大した面白味も無い
『やぁ、困ったぞ』と旋毛を中指で掻きながら、ドクはこのけったいな女を送った組織について推理をする
正直な話、人海戦術に任せて多勢で攻められた方が此方としては厄介であった。そうしなかったのは、単純に『人数が少ない』から
『少数精鋭』とも言い換えられる。モーテルでの出来事にしろ、現状にしろ、これほど的確に居場所を特定出来るなら、それほど人手を割く必要もない


ノハ#゚⊿゚)「悪党はよく口の廻るモノ!!!!!!これ以上貴様のお喋りに付き合ってやる義理もなし!!!!!!!」


ダン、と一歩踏み締め、空手の構えを取る。コンクリートの床に僅かなヒビが走った
頭は賢くないようだが、自身の生い立ちを知って挑むだけの実力と自信はあるらしい
『少数精鋭』の線は濃くなった。ニダーを追う『ハイン・タカオカ』とやらも、何かしらの特技を持っているに違いない


('A`)「ちょっと待て」

ノハ#゚⊿゚)「命乞いか!?」

('A`)「ちげーよ」


ドクはポケットからスマホと財布を取り出し、助手席のドアを開いて投げ入れる
ついでに、飲みかけのモンエナをドリンクホルダーに納めた。ふと、運転席に目をやると、アイマスクから寝ぼけ眼が覗いていた

74 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:06:18 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「……異常か?」

('A`)「いんや、別に?」

(´・ω・`)「そうか」


短くそれだけ交わすと、ショボンは再び仮眠へと戻る。後部座席では、着替えを済ませたディが行儀良く座っていた


('A`)「少し待ってな。野暮用済ませたらアイスでも食いにいこうぜ」

(#゚;;-゚)「……」


相変わらず返事はなく、女のいる方とは逆の窓に目を向けて、代わり映えしない景色を眺めた
何事に対しても興味は薄いらしい。ドクは気まずそうに瞳を流すと、助手席のドアを軽く閉じた


ノハ#゚⊿゚)「その少女は何者だ!!!!?????ゆ、誘拐したのか!!!!!?????」

('A`)「悪いな。ガッコのセンセじゃねえもんで、なんでもかんでも教えてやれねえんだ」

ノハ#゚⊿゚)「っ……戯言をッ!!!!!!!」


『やはり』。頭は悪いが、彼女は有力な情報を与えてくれた
ディとビィについては認知されていない。追っているのは、ビコとゼアに絞られる
的確な探索能力も、恐らくあの二体を起因にしたものだろう

75 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:08:01 ID:9OubR0lk0
('A`)「とっとと済ませちまおうぜ。この後、デートの予定があるんだ」

ノハ#゚⊿゚)「フン!!!!!貴様のような醜男に、靡く女がいるものか!!!!!」


心無い言葉に、ようやくドクの神経がピキリと苛立つ
売り言葉に買い言葉と言ってしまえばそれまでだが、気の合う友人でもない初対面の女に容姿を貶されるのは、誰だって快いものではない
頭も悪ければ、礼儀すら知らない。『女性だから』という理由で手心を加える義理はたった今失くなった



('A`)「ハァー……聞いてるか聞いてないか知らねえけどよ、俺はアンタらのお仲間に『追ってくるなら容赦しねえ』って忠告してやったんだぜ?」

ノハ#゚⊿゚)「フン!!!!!!容赦しないのは此方のセリフだ!!!!!!大人しく身柄を引き渡せば痛い目に遭わず済んだものを!!!!!!」

('A`)「ハハ、恐いねえ。一度も拳を合わせてない相手に対して、根拠の無い自信を振りかざせる傲慢さがよ」

ノパ⊿゚)「……根拠が無いかどうか、試してみるか?」


意外にも、彼女の血の気は急激に引いていく。このまま激昂させようとしたが、オンオフの使い分けは出来るらしい
『少数精鋭』。人数の少なさをカバーし、更に凌駕するだけの実力を持った選ばれし部隊。只者ではないのは、肌感覚で伝わってくる


('A`)「……ああ、それも良いかもな」

76 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:09:18 ID:9OubR0lk0
車から離れ柱を背にすると、右腕を前、左腕を後、掌は握らず自然に開かせた
肩幅と踵を揃え、腰から背骨にかけては真っ直ぐ伸ばし、膝はやや曲げる
『空手』と同じく東洋の武術。世界最大の人口と歴史を誇る『チャイニー』発祥の――――


ノパ⊿゚)「『詠春拳』」

('A`)「……まぁ、それを元にしたオリジナルだけどな」


移民国家であるシタラバには、血と同じく多くの文化も流れ着く。『格闘技』もその中の一つであり
ドクの曾祖父が独自の解釈を加えて編み上げたのが『オーツ流格闘術』である


ノパ⊿゚)「……偉大な格闘家の血を引き継ぎながら、先祖代々築き上げた道場の幕を引いた男が」


ズリ、ズリと、互いに摺り足で距離を詰める


ノハ#゚⊿゚)「この期に及んでッ!!親兄弟より授かった技を使い続けるなどッ!!恥さらしも良いところだ!!」

('A`)「アンタの価値観なんざ知ったこっちゃねえしどうでもいい。聞く気もねえしすぐ忘れるからな」

ノハ#゚⊿゚)「……今だけは、『仕事』よりも優先しよう。貴様の師とッ!!『武』を学ぶ居場所を奪われた格闘家候補生達の無念を晴らすことをッ!!!!!」

('A`)「そりゃご立派で」

ノハ#゚⊿゚)「『ヒート・バニング』ッ!!参るッ!!!!!!!!!!!!」

77 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:10:57 ID:9OubR0lk0
拳の射程圏内に入るとすぐさま『ヒート』が仕掛ける。中段、正拳突き


('A`)「……」


真正面から受け止めるようなことはせず、大きく真横へ逃げる
鋭い『拳筋』がTシャツと、その下の薄皮を切り裂く。通り過ぎた拳骨は、鉄筋コンクリートの柱に小さなクレーターを作った


('A`)「ヒュゥッ!!やるじゃねえか!!」

ノハ#゚⊿゚)「フン!!今のはほんの小手調べに過ぎない!!上手く逃げたようだが、次の一撃で貴様は我が『鉄塊拳』によって地獄へ墜ちるのだからな!!!!!!」

('A`)「なるほど」


なんと口の軽い女だろうか。それも自信の裏付けなのだろう
『鉄塊拳』。気を練り上げ、人体に行き渡らせることで筋肉を『鉄』のように硬化させる武術。当然、格闘技の世界に身を置いていたドクもその名に聞き覚えはあった
しかし『気』などという曖昧なエネルギーを真に理解する者は少なく、実戦で使用するには莫大な歳月を要するとも聞く
才能もあるだろうが、やはり鍛錬によって積み重ねられた納得の一撃。ドクは素直に称賛を贈りたい気分だった


('A`)「いや、思わず避けちまうほどの迫力だったんでな。次は真面目に食らってやるよ」

ノハ#゚⊿゚)「……『傲慢』など、よくも嘯けたものだな!!貴様に似合いの言葉だ!!」

('A`)「さっきから待ってんだけどまだ打たないの?」

ノハ#゚⊿゚)「ッ……この一撃でッ!!!!!その減らず口ごと打ち砕いてくれるわッ!!!!!!!!!!」


再び、中段正拳突き。肋骨中央部に向かって真っすぐ進んでくる。宣言通り『真面目に食らえば』、ドクと言えど重傷は免れない
だが彼は誇り高い格闘漫画の主人公でもなければ、試合中のアスリートでもない。頭にあるのは無傷で、労力を使わず、最短で、この『無駄な時間』を終わらせる事だけ

78 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:11:19 ID:9OubR0lk0
('A`)「シッ!!」

ノハ;゚⊿゚)そ「!?」


右手で手首を掴み、力と速度に逆らわず身体を捻りつつ斜めに『流す』。ヒートの身体はズルリと引っ張られる形となった
引いた右腕の遠心力により、左肩は前に出る。伸びきった彼女の右肘に、自身の左肘を当て――――


('A`)「よっ」

ノハ; ⊿ )そ「うっ……!!!!!」


『押し出す』。ポコポコンと気の抜けた音に反して


ノハ; ⊿ )「あああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!!!!」


『脱臼』により肘が逆方向に曲がったヒートは、悲痛な叫び声を上げた

79 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:12:28 ID:9OubR0lk0
('A`)「……オーツ流武術、『骨抜き』」


手首を放すと、外された橈骨の先端が、肉と皮膚を下から突き上げ隆起を形成していた
踏み込みによる体重移動を、小さな『支点』に集中させて間接を外すオーツ流のサブミッションである


:ノハ; ⊿ ):「なっ……ハッ、ヒィ、なっ……」


浅い呼吸を繰り返し、蹲って力の入らなくなった右腕を抑える彼女に、先ほどまでの威勢は全く見られない
『何故?』という言葉一つすらまともに話せないヒートに向かって、ドクは変わらない声色でネタばらしをした


('A`)「鉄塊拳。いや、見事な出来栄えだったよ。だがアンタ、『鉄』っつーもんを理解してねえ」

:ノハ; ⊿ ):「……?」

('A`)「案外な、脆いんだよ。硬ければ硬いほど、力を加えれば簡単に折れちまうほどにな。アンタ真面目そうだから多分、徹底的に『硬さ』を追求したんじゃねえのか?」

:ノハ; ⊿ ):「っ……うう……!!」

('A`)「鉄塊拳は『サムライ・ブレード』のように、硬い外の『皮金』と柔らかな内の『心金』が揃って初めて他に類を見ない攻撃と防御が可能になる。つまり、『良い加減』で硬さの鍛錬は止めとくべきだった」

:ノハ; ⊿ ):「うううううう……!!!!」


痛みか、それとも軽蔑していた相手に教えを説かれる悔しさからか。足下にはポツリポツリと水玉が出来上がる
ドクはヒートに近づくと、屈んで視線を合わせた。それは決して、スポーツマンシップに則った言葉を贈る為では無く

80 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:13:04 ID:9OubR0lk0






('A`)「よくもまぁ、その程度の腕前で『無念を晴らす』とイキれたもんだ」


ノハ; ⊿ )そ「ッ!!」








宣言通り、『怪我だけでは済ませない』為であった

81 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:14:21 ID:9OubR0lk0
('A`)「ご立派だよ。格闘家を代表して『恥さらし』の俺に目に物を見せてやろうした姿勢はな。相手の力量も計れず、根拠のねえ自信を抱いて、テメーの手の内をベラベラとくっちゃべりながら、それでも勝てると踏んだんだろう。尊敬するよ、その厚顔無恥な生き様に」

:ノハ; ⊿ ):「違っ……」

('A`)「いるんだよなたまに。俺のクソ家族と直接の関わりもねえ『誇り高きファイター』が、アンタと同じように『無念無念』と息巻きながら喧嘩売ってくんの。足りねえ頭じゃ、他所の家庭事情にズカズカと踏み込んでくるのはタブーだってわかんねえか?なぁ?」

:ノハ; ⊿ ):「……」

('A`)「逆に教えて欲しいんだがよ、やりてぇ事を否定され、親兄弟が決めた将来を強制させられたら、アンタらならどうする?黙って言いなりになるか?ならねえよな。人を殴る事しか能のねえ連中が、素直に聞き入れるわけねえもんな」

('A`)「俺は格闘家じゃなくて『学生』で、『冒険家』だ。世界で一番強くなりたいわけじゃねえし、熱いバトルとライバルとの友情も望んじゃいねえ。格闘術は手段の一つであって目標じゃねえ。お家を潰したのも、俺が俺のしたいようにする為に『仕方なく』やったに過ぎねえ」

('A`)「わざわざ説明すんのも面倒だから、二度と歯向かう気が起きねえくらい完膚なきまでに叩き潰すんだがよ。アンタしつこそうだし頭も悪いから懇切丁寧に教えてやるぜ」


ドクはヒートの髪を鷲掴みにし、無理やり顔を上げさせる
涙と鼻水でグチャグチャになった顔面に、唾でも吐きかけんばかりの侮蔑の表情を向けてこう言い放った


('A`)「喧嘩の一つもマトモに出来ねえ雑魚が、俺らに関わってくんじゃねえ」

:ノハ ;⊿;):「ッ……う、あああああああああああああ!!!!!!」


『格闘家』のプライドは、全て自らの強さに乗っかるものだ
彼らの心を折るには、『敗北』だけでは事足りない。そこに『言葉』を上乗せしなければ、更に強くなろうと研鑽するからだ
ヒートがもしも、対戦相手に敬意を払い、謙虚な精神を持っていたならば、言葉による効果も薄れただろう。だが


:ノハ ;⊿;):「あ、あ、ああああああああああああ!!!!!!」


傲慢な『心』で臨み、付け焼き刃の『技』に傲り、努力の方向性を違えた『体』で挑んだ彼女にとって
ドクの言葉は、脱臼の痛みを遥かに上回る『激痛』となって、プライドをズタズタに切り裂いた

82 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:15:55 ID:9OubR0lk0
('A`)「失せろコスプレガール」


投げ棄てるように髪を放すと、シャツの切れ具合を確かめながら車へと戻る。お気に入りではないが、もう着れそうには無かった
ドアを閉めると、ショボンはアイマスクを取ってエンジンを吹かす。長居すれば面倒になる
現に、ちらほらと野次馬は増えていた。警備員が駆けつけるのも時間の問題だろう


(´・ω・`)「相変わらずえげつねえな」

('A`)「安静にしてりゃ直に治る怪我だ。後遺症だって残らねえよ」

(´・ω・`)「モテねえワケだよ」

('A`)「やかましい」


スマホを手に取って簡単なメッセージをニダーへ送ると、窓辺に肘を突いて小さく蹲るヒートを眺めた
心を折った手応えはあった筈だが、意外にも此方へ向けてくる視線は怒りと怨嗟が込められている
だからと言って、特に深い感慨もない。ドクにとっては路端の石ころを蹴飛ばしたら、爪先に跳ね返ってきたようなものだからだ
冷めた表情を崩さぬまま、彼はマーケットから出た時と同じ言葉を呟いた


('A`)「異常なしっと」


『くわ』と欠伸をして、残ったモンエナを流し込み、しかめ面をした
分かり易い待ち伏せをしていた刺客より、不味い飲料の方が彼にとっては脅威であった

83 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:17:33 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



車は好かない。乗っていなくとも、アレは尻から嗅ぐに堪えない『屁』をずっと放き続けているからだ
それにデカくて速くてすぐには止まれない。前に一度、喧嘩相手が車に衝突されて二度と動かなくなった
奴の迂闊さによる自業自得ではあるが、あの時ばかりは少々不憫に思えたものだ


(∪^ω^)「ヘッヘッヘッ」

<ヽ`∀´>「あっついニダね……」


当然、賢い私はそのような無様を晒すような真似はしないし
首輪とリードを着けられないとまともに外も歩けないような駄犬とも違う
ビュンビュンと通り過ぎる車を横目に、初めて通る街並みを優雅に散歩するなど造作も無い


( ∵)「ゴエエエエエエエ!!!!」

( ∴)「ゴエッエ!!!!」


テメーらは自分で歩けよ


(∪^ω^)「フスッ」


「やだー、何あの子かわいいー♪」

「よく出来た人形だなぁ」

「お兄さん、写真撮っていい?」

<ヽ;`∀´>「えっ、あっ、ごめんなさい!!」


と、ここで私の愛くるしさに魅了された見る目だけはあるクソ人間共が何人か話しかけてきたが
この不躾な男は慌てた様子で私達を抱き上げ走り出す。なんだお前私を独り占めする気か?


<ヽ;`∀´>「ヤバいヤバい堂々と歩いてたら大丈夫と思ってたけど絶対SNSに投稿される!!」

(∪#^ω^)「ヴルルルル……」

<ヽ;`∀´>そ「ちょっと我慢して!!」

84 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:18:18 ID:9OubR0lk0
人気のない路地裏に身を隠すと、ニダーと名乗る男は息を切らせながら腰を下ろした
車以上の乗り心地の悪さだった。不快感を振り払う為に身震いをする。毛が軽いな水責めも悪くない


<ヽ;`∀´>「ちょっと油断し過ぎニダね……ビコ、ゼア、鞄に入ってて貰えないニカ?」

(∵ )ミ「ゴエッ!!」プイッ

(∴ )ミ「ゴエッ!!」プイッ

<ヽ;`∀´>「嫌そう……」

(∪^ω^)「フヌッ……」


私はウンコをした


( ∵)「エンガチョ」

( ∴)「センエンガチョ」


なんだその鳴き声

85 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:19:30 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「わんお」


砂は無いが、一応脚で地面を掻き上げて『儀式』を済ます
ウンコが原因で人間に追われる事もあるのだ。したら、隠す。これが出来る名犬の嗜みだ


<ヽ;`∀´>「よいしょっ……すげーするじゃんキミ」


なんでこの男は私のウンコを袋に入れたのだろうか。後で食べるのだろうか
私はとんでもない変態共を下僕にしてしまったようだ。これは教育の必要があるな


( ∵)「ゴエッ!!」

( ∴)「ゴエゴエ!!」


(∪^ω^)「?」


なんだ急に?空なんて見上げて。フライドチキンでも降ってくるわけじゃあるまいし……


「いっただきぃ!!」


<ヽ;`∀´>そ「えっ!?」


雌の声と共に、砂埃が巻き上がる。目が痛い!!!!!
前脚で必死に拭って彼らに向き直ると、先程までいた場所から忽然と消えていた


<ヽ;`∀´>「な、ななななな……」


「フフ、フハハハハ!!何者かと問われれば、答えぬワケにはいくまいな!!」


人間の『毛皮』に疎い私でも、この騒々しい街中に似合わないとわかる格好をした頭の可笑しそうな女は
手に持つ『友人』を高々と掲げて、呆気に取られる私と下僕に向かってこう吠えた

86 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:20:28 ID:9OubR0lk0




「闇に生き、闇に溶け、闇を愛する暗黒のアサシン!!ジパング産まれシタラバ育ちの俺の名を、とくと心に刻み込め!!!!!」



从 ゚∀从「我こそはニンジャ、『ハイン・タカオカ』!!!!!明日の平和を守る為、この超常保護対象は頂戴致す!!!!!!」ドッカァァァン!!!!!!!!!!



<ヽ;`∀´>「……」

(∪^ω^)「……」


変態のお手本みたいな奴が出た

87 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:21:56 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「いや、あの……今、お昼過ぎニダ」

从 ゚∀从「そうだな!!!!!」

<ヽ;`∀´>「ごめん思った以上に混乱してる今の無し。ご用件は?」

从 ゚∀从「用件ならたった今済んだ所だ!!!!呆気なかったがな!!!!ノコノコとお散歩なんてしてるからだヴァーーーーーーーーーーーーーーーカ!!!!!!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「どうしようビィ、返す言葉がない」


知らんがな


从 ゚∀从「我々にとって一番の脅威である『ドク・オーツ』と目標が分断されたのは幸運だった!!と言っても、今頃『12シスターズ』屈指の燃えて萌える格闘ガール『ヒート・バニング』にコテンパンにされているだろうがな!!!!」

<ヽ`∀´>「えっ?もしかして、ドク相手に刺客送った?」

从 ゚∀从「その通りさ!!!!ざまぁみろヴァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーカ!!!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「今すぐ呼び戻した方が良いニダ!!」

从 ゚∀从「世迷い言をほざくくらいならお友達の心配した方が良いぜ!!」

<ヽ;`∀´>「ドクを喧嘩が出来るだけのブサイクだと思ってるならお門違いニダ!!あいつの一番ヤバい所は顔m……二度と立ち上がれないくらい心をバキ折る口の悪さニダ!!」


(∪^ω^)「……」


確かに奴は犬の私からしてみても可哀想なくらい醜いが、仮にも友人の事をすげー罵るじゃんこいつ


从 ゚∀从「そっか!!!!あの子『奴には格闘家としてわからせないといけない』ってメスガキに舐められる竿役おじさんみたいな事言ってたけど逆に……」

从;゚∀从そ「み……操の危機!!!!!!?????」

<ヽ;`∀´>「そこまでクズじゃないニダ!!」


喋ってねえで早くあいつら取り戻せよ

88 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:23:13 ID:9OubR0lk0
从;゚∀从そ「ハッ!?そもそもあの子が勝てば何の問題もない話じゃんか!!危うく薄い本展開に発展してしまう所だ!!」

<ヽ;`∀´>「ねぇキミさっきから何の話してんの!?ジパングの呪文!?」

从;゚∀从「ちょ、ちょっと待ってろ!!電話して確認するから!!」

<ヽ;`∀´>「え、あの、その子たち返して……」


( ∵)「……」

( ∴)「……」


何を顎杖着いてんだあいつら余裕か?


<ヽ;`∀´>「ど、どうしようか……?」

(∪^ω^)「ウルン」


私に訊くなよ

89 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:23:46 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「と、とにかく、こっちからも連絡を……」


下僕はポケットから『スマホ』と呼ばれる板を取り出すと、一目見て瞼を閉じた


<ヽ;´∀`>「遅かった〜〜〜〜〜……」

(∪^ω^)「わんお」


どうやら危惧していた事態は既に終わっていたらしい。ブサイクにボコボコに打ち負かされて言い負かされるのってどんな気持ちなのだろう


从;゚∀从「ひ、ヒーちゃん!?ねえ大丈夫!?酷い事されてない!?え!?脱臼!!!!?????」

<ヽ;´∀`>「わぁ……」

(∪^ω^)「ウォウ?」

<ヽ;´∀`>「すげー痛い怪我ニダ」

(∪^ω^)「フスッ」


多分まともな方法で『つがい』は見つからないんだろうなあの男

90 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:25:27 ID:9OubR0lk0
从;゚∀从「うん……うん……わかった。こっちは上手くやるから」


向こうの話も終わったらしい。さっきまでのやかましさは何処へ行ったのだろうか
そんなに酷い目に遭わされたのだろうか。顔も酷ければやる事も酷いとは。やはり人間はクソ


从;゚∀从「……」

<ヽ;´∀`>「その……お気の毒に……」

从;゚∀从「いや……此方こそ失礼があったみたいで……」


(∪^ω^)「……」


何だこの時間


从;゚∀从「申し訳ないんだけど急いで戻らないと……ごめんね!!今度埋め合わせするから!!」

<ヽ;`∀´>「う、うん!!気にしないで!!此方こそご迷惑かけてごめんニダ!!」

从;゚∀从「じゃっ!!」ビャッ!!

<ヽ;`∀´>「その方に謝っといてー……って」


<ヽ#`∀´>「ビコとゼアは置いてくニダァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」ダッ!!!!!!!


<チクショウこのままビャッと逃げられると思ったのによォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!


(∪^ω^)「……」


なるほど、これが『茶番』か。私はまた一つ賢くなった

91 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:26:07 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「グゥ」


人間どもはあっという間に走り去り、見えなくなる。どんくさい男だと思っていたが、存外足が速い
さて、私はどうするか。正直な話、義理は果たした。これ以上彼らの面倒を見ずとも責められはしまい


(∪^ω^)「……」


反対側へと歩き出そうとしたが、何故だか前足は進まない
私ともあろう犬が、情に絆されたか?フン、まさか。ただもう少し―――――


(∪^ω^)「わんわんお!!!!!」


もう少しだけ付き合ってやった方が、『面白そうだ』と思っただけさ!!!!!!

92 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:28:36 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208777/47_rxablb.jpg


<ヽ;`∀´>「ごめんなさいごめんなさい!!通して!!」


お気に入りの革靴は、全力疾走に向いていない。ニダーは『ハイン・タカオカ』たる女性を見失わないので精いっぱいだった
言い訳をしても仕方が無いのは重々承知だが、せめていつもの『シューズ』に履き替えておくべきだったと後悔する
ギャンブルで稼いだ金を回収するブランド店が立ち並ぶショップ街を、『忍衣装』の女は場違いな恰好も気にせず駆けていた


从 ゚∀从「案外しつこいアンちゃんだねぇ……ついて来れるもんならッ!!」

<ヽ;`∀´>そ「赤信号っ……!!」


歩道の信号が『赤』に代わり、値段と燃費がバカ高い高級車が環境に悪臭を吐いて左右から発進する


从 ゚∀从「追いついてみなァッ!!」


『勝手に赤になった信号が悪い』とでも言わんばかりに、遠慮なく横断歩道を通り抜ける
クラクションと怒号が鳴り響き、急ブレーキを踏んだ車が新たな障害物となって立ち塞がった


<ヽ;`∀´>「ったく!!」


ニダーは速度を落とさず、車のボンネットに手を突き飛び越える
目を丸くさせる運転手と目が合うが、一言謝罪する間も無く対向車が迫る


<ヽ;`∀´>そ「うわわっ!!」


着地と同時に強く踏み込み、大きく跳躍。踵がバンパーに掠ったが、歩道へと無事に辿り着く
その代償として、慌ててハンドルを切った車が消化栓に衝突し、破損部から激しく水が噴き出した


<ヽ;`∀´>「ま、待てーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


誰もが目を引く派手な事故だったが、『盗難』を大義名分にニダーはその場から更に早く走り去ったのであった

93 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:29:54 ID:9OubR0lk0
从 ゚∀从「やるぅ!!そんじゃあお次は……!!」


街灯のポールに飛びつき、スルスルと上る。頂上に辿り着くと、建物の屋根に飛び移った


<ヽ;`∀´>「猿じゃあるまいし……!!」

从 ゚∀从「じゃーなー!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「クソッ!!」


『ニンジャ』の恰好と名は伊達ではないらしい。多少のロスになるが、テラスのあるカフェテリアのタープを使って後を追おうとして


<ヽ;`∀´>「ッ!?」


ピタリと立ち止まった。彼女が登った街灯の根元に、見覚えのある色が転がっていたからだ


( ∵)「……」

( ∴)「……」

<ヽ;`∀´>「えっ……?」

( ∵)「アホゴエ」

( ∴)「アホ」

<ヽ;`∀´>「……」


落としてた


<ヽ;`∀´>「アホで助かった!!!!!」

<あああああああああああああああああああああああああああああああ落としちまったああああああ!!!!!!」

<ヽ;`∀´>そ「ほら早く逃げるニダよ!!」


立場は一瞬にして入れ替わった。ビコとゼアを胸ポケットにねじ込んで、今度は逃げる為に走り始めた

94 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:31:17 ID:9OubR0lk0
从#゚∀从「この野郎!!人の物を取ったら泥棒なんだぞ!!」

<ヽ;`∀´>「どの口が言うニダ!!」


盗人猛々しいセリフに言い返すついでに、ニダーは振り返って距離を確認した
間隔は十メートル強。足の速さは向こうが若干勝る。その上身軽で臆さないと来た


<ヽ;`∀´>「捕まるのはっ……時間の問題ニダね」


ただ道を突っ走るだけではいずれ距離を詰められるだろう。完全に撒くためには『立体的』な逃走経路が求められる
土地勘が無い場所では出たとこ勝負でやるしかない。幸いにも、目星は間近に迫っていた
改修工事中であろう四階建てビル。『組立足場』が張り巡らされたそこはニダーにとっては得意なステージだった


<ヽ;`∀´>「失礼します!!」


コーヒーとタバコで休憩中の作業員に謝りを入れ、鉄パイプに手と足を掛け外側を這い上る
瞬く間に三階まで到達すると、両足から骨組の隙間に身体を滑り込ませ内側へと侵入し、開け放しの窓からビルの中へと入った


从#゚∀从「待てオラ!!」

<ヽ;`∀´>そ「うわぁやっぱ速い!?」


中はレストランのリフォーム中なのだろう。若干のシンナー臭と、壁の保護の為にビニールが貼られている
バーカウンターを飛び越し、奥にある観音開きのドアを体当たり気味に開く。ここはまだ手がつけられていないのか、油と食材の臭いが染みついたままだった


从#゚∀从「食らえ!!」

<ヽ;`∀´>そ「ッ!?」


咄嗟にコールドテーブルに身を隠すと、頭上を特徴的な『星形』が通り過ぎる
三つほど飛翔したそれは、壁に刺さってキンと甲高く空気を震わせる


<ヽ;`∀´>「手裏剣!?殺す気ニカ!?」

从#゚∀从「死にゃしねえよ!!ただちょっと毒で身体の自由が利かなくなるだけだ!!」

<ヽ;`∀´>そ「どっちにしろタチ悪い!!」

从#゚∀从「とか言ってる間に確保ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

95 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:32:55 ID:9OubR0lk0
当たりはしなかったが、結果的に足は止めてしまった。追い付いたハインの手にはいつの間にか鉤爪が装着されている
『死にはしない』と言った割には全力で殺しにきている。身の危険を更に感じたニダーは、タイミングを合わせ


<ヽ#`∀´>「させるかァッ!!」

从;゚∀从そ「あ痛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーだぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!???????」


コールドテーブルのドアを勢いよく開け、脛にぶち当てた


<ヽ#`∀´>「ヴァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーカ!!!!!!!!!!!!!」

从; ∀从「ぐおお……俺の台詞だぞ!!!!!!」


従業員用の厨房出入口へ駆け込み、階段を駆け上る。ハインも追ってきているが、脚のダメージからかやや引きずっている
一気に最上階まで駆け上がり、屋上に続く扉を開ける。乾いた風がシャツの内側に入り込み、汗ばむ身体を冷やした


<ヽ;`∀´>「よし、よし!!」


隣の建物とは三メートルほどの間隔が置かれている。ただし高低差は五メートル。人が一息に飛び越えられる高さではない
外階段やバルコニーはなく、排水パイプと幾つかの小さな窓が等間隔ではめ込まれているだけの、ほぼ断崖絶壁に近い壁が反り立っている

96 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:33:19 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「おおおおおおおおっしゃあああああああああああ!!!!!!」


助走を付け、一片たりとも躊躇せずビルの縁から跳躍


<ヽ;`∀´>「っとォ!!」


窓辺を両手で掴み、両足で壁を踏みつけブレーキを掛ける


<ヽ;`∀´>「フッ!!」


今度は右側にあるパイプに飛び移り、抱き着くようにしっかりと掴む。すると


从#゚∀从「逃がさねえぞダボがァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>そ「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!!??????」


跳躍し、鉤爪を振り上げるハインがすぐ背後まで迫っていた

97 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:35:00 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「いっよいしょぉ!!!!!!!!」


パイプから更に右側の窓枠へと跳び移り、ギリギリの所で回避。繰り出された鉤爪はビルの壁に深々と刺さる


<ヽ;`∀´>「殺す気ニカ!?」

从#゚∀从「乙女だから勢い余る事もあるんだよ!!!!」

<ヽ;`∀´>「それで殺されちゃ堪ったもんじゃねえニダ!!!!!!!」

从#゚∀从そ「あっやべえ抜けねぇ!!ちょっと待ってろ!!」

<ヽ;`∀´>「誰が待つかヴァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーカ!!!!!!!!!!」

从#゚∀从「ムカつく〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」


千載一遇のチャンスだったが、パイプを伝って階下に降りるプランは潰された
再び工事中のビルへと戻るのも手だが、騒ぎを起こした後だ。作業員に捕まる可能性もある
結果、ニダーは窓を伝ってこのビルの屋上に上がることを選択。斜め上の窓辺へと跳躍し、右、左とジグザグに上がる


从;゚∀从「クソッ、聞いてた通り『パルクール』じゃ名の馳せたユーチューバーだってのは嘘じゃねえみてえだな!!」

<ヽ;`∀´>そ「わぁ黒歴史!!!!!人の事情どこまで把握してるニカ!?」


かつてのハイスクール時代の思い出が蘇り、ニダーは表情を渋くさせる
ハイスクール時代にイキって危険な場所や立ち入り区域で撮影を行い、匿名で動画を投稿していたのだ
結局、特徴的な口調から身元がバレてしまい、親や教師にボロクソに叱られあわや退学寸前まで追い込まれたのは今でも苦い思い出だ


<ヽ;`∀´>「昔の趣味が……こんな形で役立つと……はっ!!」


屋上の縁を掴み、上半身を乗せて転がるように登りきる。階下を確認すると


从#゚∀从「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!忍術、壁登り!!!!!!!!!!!!」


鉤爪を壁に突き刺しながら、気合と根性、そして力業でハインが迫ってきていた

98 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:36:07 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「怖ぇよもう!!」


休む間もなく立ち上がり、階段室の扉へと向かうが


<ヽ;`∀´>「Fack!!!!」


内側から鍵が掛けられているのか、ドアノブは硬く回らなかった


( ∵)「ゴエ!!」

( ∴)「ゴエエ!!」


<ヽ;`∀´>「何!?」


パニックになりかけたニダーの胸を、小さな生き物はポンポンと叩く
二体は同時に、同じ方角へと腕を指し伸ばしていた。ハインが上る壁とは、反対側の位置


<ヽ;`∀´>「っ……この際何でも!!」


神にも縋る気持ちで走り寄り、下を覗く。そして


<ヽ;`∀´>「は……はは」


乾いた笑いが漏れ出した


从#゚∀从「オラァ甘寧一番乗りィ!!」


苛立ちで疲労をかき消しながら、登りきったハインへとゆっくりと振り返る
呼吸を整えながら、即席で『台本』を考える。安っぽくても構わない。目の前の女を『慌てさせれば』良いだけだ

99 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:37:11 ID:9OubR0lk0
从#゚∀从「なんだァ?もう観念したのかよ?」

<ヽ`∀´>「別に。ただ、飽きちゃっただけニダ」

从#゚∀从「そーかいそーかい。だったらサッサとそいつを寄越しな」

<ヽ`∀´>「フゥ……」


胸ポケットから、ビコーズとゼアフォーを抜き取る。二体はしっかりと手を繋ぎ合い、ニダーに向かって『頷いた』
この『お膳立て』を予想していたかのような素振りに、抜け目のない奴らだと鼻で笑い―――


<ヽ`∀´>「取りに行けよ」

从;゚∀从そ「なっ……お前!!」


空き缶でも投げ捨てるかのように、階下へと放り投げた


从;゚∀从「馬鹿野郎ォォォーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」


地上まで凡そ二十メートル。人ですら落ちればタダでは済まない高さだ
彼女の脳裏には地面と激突し、破裂した二体のイメージが鮮明に浮かび上がっているに違いない
現に、彼女はニダーに脇目も振らず、全力疾走で屋上から飛び出した。が


<ヽ#`∀´>「フンッ!!」

从;゚∀从そ「おわっ!?」


足首を掴まれ、決死のヘッドダイビングは空中で止まる。そして――――


从; ∀从・'.。゜「ガビラッ!?」


振り子運動の要領で、顔面から壁に激突。逆さまの状態で気を失った

100 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:38:27 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「重っ……ぐぬぬぬ!!」


勿論、このまま頭から落ちれば命は無い。引き上げるのに、この日一番の気合と体力を使った


<ヽ;`∀´>「ふぅ……恨むなよ。勝手に飛び込んだのはアンタの方ニダ」


クタリと力の抜けた彼女を、エアコンの室外機にもたれ掛からせる
すると、忍装束の懐から覗いていたスマホがポップな着信音と共に震え始めた
画面には『トソン・バートン』の名前と、顔写真が表示されている。ドクが気絶させた女の顔と一致していた


<ヽ`∀´>「……」


まさか追手がここまで愉快な連中だとは思っていなかったが、苦戦は強いられた
それに、ハインは属するであろう組織を『12シスターズ』と名乗っていた。単純にこれがメンバーの数だとしたら


<ヽ`∀´>「残り七人……?」


『道行く先々でこのように面白い格好した危ない女に襲われるのか』。暑さの所為では断じて無い、ささやかな頭痛に襲われた


<わんわんお!!


<ヽ`∀´>「おっと」


『立役者』の鳴き声に呼ばれ、ニダーは階下を覗き込む


(∪^ω^)「わんわんお!!」

( ∵)「ゴエエエエエエエエエエエエ!!!!!」

( ∴)「ゴエエエエエエエエエエエ!!!!!」


<ヽ`∀´>「ハハ……ナイスキャッチ」

101 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:39:31 ID:9OubR0lk0
地上で『ビィ』が待機していたのには驚いたが、元より賢い犬だ。臭いか騒ぎを追って来たのだろう
ビコとゼアが彼の存在を知らせた時、そして彼を見た時、この即席の策を思いついた
二体は互いに、空中で離れないように手を繋ぎ合う。落下時にはスカイダイビングのように両手を繋ぎ合わせ、全身を広げて空気抵抗を受けながら落下
ビィは落下位置を予測しながら移動し、背中をクッションにして受け止める。
衝撃によるダメージが気になったが、両者共に元気な鳴き声を上げているのを見るに、懸念で済んだようだ


<ヽ`∀´>「あ」


ビィの傍らには、追い、逃げるのに必死でいつの間にか手放していたニダーのバッグが鎮座している
手厚いアフターサービスに、思わず敬服の念を抱く。なんてしっかりした犬だ。ルームメイトにも見習って欲しい。と


(∪#^ω^)「わんお!!!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「わ、わかったわかった!!すぐ降りるニダ!!」


もはや犬にすら頭の上がらない自身の情けなさに辟易しながら、降りる手段を探す


<ヽ;`∀´>「あ」


すると、屋上の端に外付けの螺旋階段があるのに気づく。危険を冒さずとも、まだ逃げられたのだ
機転を利かせて上手く撃退出来たとは言え、焦りから周りが見えていなかった事を反省した


<ヽ;`∀´>「うーん……ま、結果オーライニダね」


今だ流れ続ける着信音を背に、『早く降りろ』といきり立つ彼らの下へと足早に向かう
ビルの間を飛び越えずとも、安全に地上へ降りれる『階段』の恩恵を、しっかりと足下に感じながら――――

102 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:40:56 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



<ヽ;`∀´>「気づいてたんなら忠告くらいしろニダ!!」

('A`)「わり。アイス食えよ」


迎えに来たバンの扉を開き、怒りを込めた第一声に、ドクはチョコチップとラムレーズンのダブルアイスで返答した
傍らにはうっすらと血が染みついたTシャツがビニール袋に詰め込まれているが、青痣や切り傷と言った目立った怪我は見当たらない
安堵するよりも先に、ニダーはストロベリー・アイスを舐める少女に目を向けた。他者の傷を吸い取り、自らの物にする不思議な力を持つディに


<ヽ;`∀´>「お前ッ!!」

('A`)「ちゃんと断った。擦り傷みてーなもんだすぐ治るってな」

<ヽ;`∀´>「っ……悪い。治して貰った僕が言えた立場じゃないニダ」

('A`)「気にし過ぎだ。アイス食えよ。お前らはこっちな」


非人間用に用意していたカップアイスを、それぞれに差し出す
ベチャベチャと品のない音を立てながら貪り食うのを見て、ようやくニダーも冷たい甘みを舌に乗せた


(´・ω・`)「相手は?」

<ヽ`∀´>「ハイン・タカオカって名前の女ニンジャだったニダ」

(´・ω・`)「『クノイチ』か。一度オプションで頼んだことあるわ」

<ヽ;`∀´>「何のオプションかは説明しなくていい。そっちは?」

('A`)「ああ、格闘家を名乗るただのオタクだった」

(´・ω・`)「ただのオタクはコンクリ粉砕しない」

<ヽ;`∀´>「やっぱボロクソにしたニダね……」

103 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:42:41 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「そんで、収穫はあったか?」


シェイクを片手にハンドルを切るショボンに、ニダーは肩をすかせて応える


<ヽ`∀´>「『12シスターズ』。そう名乗ってたニダ」

('A`)「まだ七人残ってんのかよ。もう次は折るぞ」

<ヽ;`∀´>「折んな。そっちは?」

('A`)「憶測に過ぎんが、少数精鋭なんじゃねえかと。それと、やっぱ狙いはビコとゼアだな。ディについては把握してなかった」

('A`)「あー、後、俺の家庭事情とかも掴んでたな。それでイラついてパキョっとやっちまったんだが」

<ヽ;`∀´>「相手さんドン引きしてたニダよ?にしても、昨日の今日でこうも的確に居場所を特定されるのは厄介ニダね。GPSニカ?」

(´・ω・`)「いんや、車を軽く調べてみたがその手のもんは見つからなかった。ドクとも話し合ったんだがよ、これだけ正確ならそんなもんに頼るまでもない探索手段を持ってんのかもしれねえってな」

('A`)「それかもしくは、『こいつらの腹の中』にそれらしき機器が埋め込まれてる、とかな」


( ∵)「ネェエエエエエ!!!!」

( ∴)「ネェエエエエエ!!!!!」


('A`)「ねえってよ」

(´・ω・`)「バケモノ同士意思疎通出来んのか。すげえな、顔が」

('A`)「脱臼ってどんくらい痛いか試すか?」

(´・ω・`)「ま、とにかくコソコソしたってしょうがねえってこったよ」


大きな通りに出ると、アクセルを踏み込む。行き先の案内標識には、『ブンゲー』と記載されていた
ホテルやカジノ場は瞬く間に後ろへと流れていく。元より、一介の学生である彼らには縁の無い場所だ。長居はしていられない


(´^ω^`)「顔上げて胸張って堂々と進もうぜ!!それが奴らにとって一番の煽りにならぁ!!」


『ドクもドクだが、こいつも大概性格がクソだな』。指摘しようか迷ったが、冷えた舌を回すのが煩わしかったので、心の内に留めておいた―――――

104 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:43:56 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



从;'ー'从「はわわ〜、酷い怪我ですぅ〜!!」


新緑色の修道服を着た女の鼻にかかった甘い声に、レモナは小さく舌打ちをした
それを窘めるように、トソンは脇腹を肘で突く。ファンデーションで隠されているが、疲れの色は『目の下』に浮かんでいた


(゚、゚;トソン「たった数人に……などと言えた立場ではありませんが、まさかここまで手酷くしてやられるとは想定外ですね」

从;⁻∀从「面目ねえよ……だけど、あいつら結構『慣れてる連中』だった。ちょっと痛い目見てもらおうとしたらこのザマさ」

|゚ノ ^∀^)「重症なのは、アンタよりヒートの方ね……」


ノハ ⊿ )「……」


自由の利かない右手を抱えながら、一言も話さず俯いたまま動かずにいる
修道女は心配そうにのぞき込むと、掌を合わせて擦り合わせる。すると、摩擦部から徐々に光が溢れ出す


从;'ー'从「はい、これ見て〜」


掌を開くと、光は『球体』となってぼんやりと浮かんでいる。ヒートがそれに目を向けると、酩酊したかのように気が抜けた表情になった
サダコと同じく超能力を持つ彼女は、この球体による『催眠術』を得手としている。ただし人を意のままに操るなどと言った便利なものではなく
意識を朧気にして痛みを感じなくさせる、所謂『麻酔』の効果に限られている


从;'ー'从「入れるよ〜?せぇ〜のぉ〜!!」


間延びした声とは裏腹に、外された手首と肘の間接を一息に繋ぎ治してしまう
彼女の真骨頂は催眠能力ではなく、この類稀なる『治療技術』であった

105 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:45:27 ID:9OubR0lk0
|゚ノ ^∀^)「それでー……女の子と、犬を連れていたって話だけど」

从;゚∀从「ああ、ヒーちゃんは車内に女の子を。俺はニダーって野郎が犬と一緒に歩いてるのを見てる。オメーらからの報告には無かったが、どういう事だ?」

|゚ノ ^∀^)「ウチらもモーテルの室内に上がり込んだワケじゃないからねー。サダコの予知夢にも現れてないみたいだし」

(゚、゚トソン「その点に関しましては、既に調査依頼を出しました。そもそも、サダコは病的なまでの『異形フェチ』。見た目が普通の女の子や犬ならば、歯牙にもかけないでしょう」

从 ゚∀从「当のサっちんはどこにいんだよ?」

|゚ノ ^∀^)「趣味の悪い店でお買い物よ。調査結果は?」

(゚、゚トソン「『ソウサク』にて、警察が女の子と犬をいっしょくたに載せたビラを配布していたそうです。ハイン、此方に見覚えは」


タブレット端末を受け取ったハインは、一目見て力強く頷く


从 ゚∀从「この子だ。アホそうに見えて意外とクレバーな犬だった」

|゚ノ ^∀^)「女の子の方は?」

从 ゚∀从「そっちは直接見ちゃいねえからな……ただ、ヒーちゃんが言うには『目立つ傷跡があった』って話だ」

|゚ノ ^∀^)「傷跡、ねぇ……」


【 (,,゚-゚) 】


ビラに写る少女は、不愛想ではあるがヒートが証言した『目立つ傷跡があった』という特徴とは一致しない
もしも件の三人組が、女の子を誘拐して『傷物』にするような連中であるならば、猶更確保を急がねばならないだろう
しかし、レモナの焦燥とは相反して、彼女たちのリーダーは『別の懸念』に注視していた


(゚、゚トソン「これらの犬は事故を起こした保健所の輸送車から脱走したものらしいのですが、不思議な事に『作業員』は全治半年の重傷を負ったにも関わらず、負傷、もしくは死亡した犬は一匹も見当たらなかったそうです」

从;゚∀从「お、おお……そりゃ喜ばしいけどよ、野良犬だろ?足引きずって逃げたとかじゃねえの?」

(゚、゚トソン「かもしれませんね。所で、ニュースは御覧になりましたか?まだでしたら此方を」


ニュースサイトから事故現場の写真を拡大し、二人の前に差し出す
横転した輸送車が左車線を塞ぎ、長い渋滞を作り出す原因となっている。あわや炎上一歩手前といった悲惨さだ

106 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:46:33 ID:9OubR0lk0
从;゚∀从「お、おお……結構な、アレだな」

(゚、゚トソン「他に思う所は?」

从;゚∀从「え?うーん……」

|゚ノ ^∀^)「左車線」

(゚、゚トソン「ご明察」


答えを聞いてもいまいちピンと来ないハインに『やれやれ』とため息を吐きながら、レモナは説明を始める


|゚ノ ^∀^)「いい?もし対向車が車線を外れて突っ込んできたら、どっちにハンドルを切る?」

从 ゚∀从「そりゃー……右だな」

|゚ノ ^∀^)「そう。歩道があろうとも、反射的に『逆側』にハンドルを切るものなのよ。危機回避の為にね」

从 ゚∀从「でもよ、それなら歩道からの飛び出しもあり得るだろ?」

(゚、゚トソン「ええ、可能性としてはありますでしょう。ただ、ハンドルを『左に切らざるを得ない状況』がもう一つあるんです」

从 ゚∀从「え?わかんない」

|゚ノ;^∀^)「アンタ本当に考えてる?」

从;゚∀从「頭使うのはオメーらの仕事だろォ!?早く教えろよ!!」

(゚、゚トソン「背後からの、襲撃です」

107 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:47:18 ID:9OubR0lk0
(゚、゚トソン「前部座席の間から運転手へと襲い掛かった場合、身体は必ず逆方向へ逃げようとします。その弾みにハンドルを切ったとしてもなんら可笑しな話ではありません」

从;゚∀从「つまり……?」

(゚、゚トソン「車内にいた誰か、もしくは『何か』に襲われた結果、事故に繋がった可能性もあると言う事です」


単なる不注意、あるいは『檻のロックの締め忘れ』で片づけられる事故ではあるが
三人組が捜索中の『犬』を引き連れている事実は、単なる偶然で起こったものでは無いとトソンは確信していた


|゚ノ ^∀^)「ウチらが負う超常保護対象と関りがある存在かもね」

(゚、゚トソン「ええ。捜索願が出されているにも関わらず、警察に届け出ない点も不審です。何にせよ、彼らの目的が達成される前に確保せねばなりません」

从;゚∀从「じゃあこんなとこで油売ってる場合じゃねえだろ!!」

(゚、゚トソン「当然、ちゃんと手は打ってあります。元より、サダコの予知夢で彼らの通過点は既に確認済み」


と、ここでタブレットにメッセージ着信の通知タブが浮かぶ
残りの『12シスターズ』メンバーが、配置に着いたという報告であった


(゚、゚トソン「執拗な追跡と予測不可能の襲撃。疲弊した所で美味しく掻っ攫う……」


手ごたえのある相手に、彼女のもう一つの側面が顔を覗かせる


(^、^トソン「これ則ち、『狩りの基本』ですよ。ハイン」


細く、緩やかな曲線を描いた瞼の奥の瞳は、真夏の太陽すら凍てつかせるような輝きを放つ
ハインは生唾をゴクリと飲み込んだが、付き合いの長いレモナはもう一度溜息を吐いた


|゚ノ ^∀^)「大人しく従っとけば、恐い目に遭わずに済んだものを……」


獲物の三人組に、ほんの僅かな同情を抱きながら――――

108 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:50:09 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



('A`)「作戦変更?」

(´・ω・`)「ああ」


ブンマルを出発してから丸一日が経過。ブンゲーまで残り数十キロ地点のガスステーションにて
ショボンはカフェテリアで購入した朝食のミラノサンドを齧りながら、傍らのドクへと提案した


(´・ω・`)「俺らは『追われてる』立場。だからこそ急いでセブンクロスに向かわなきゃならない。これが当初の予定だったな」

('A`)「まぁ……そうだな」

(´・ω・`)「逆にだぞ?もう先に潰しちまえば後はゆっくり向かってもいいんじゃねえかって思ったんだよ」

('A`)「エンカウントしてからバタバタするより、常に迎撃する心持で居るって事か?」

(´・ω・`)「間違いじゃねえが、もっと具体的な方法だ。『あえて待つ』んだよ」


ドクは顎を擦りながら、ウウムと唸って首を傾げる。攻めに転ずる姿勢は嫌いではないが、ブンマルでは『待ち構えられていた』
この作戦はむしろ彼方が取っている作戦であり、その為の舞台を追われている側の自分たちが用意するのは難しいのではないかと


('A`)「アテはあるのか?」

(´・ω・`)「実家」

('A`)「実家……あー……あ?」

(´・ω・`)「実はもう連絡もしてある」

(;'A`)「いやっ……ちょ、許可取れたのか?」

(´・ω・`)「おいおい誰の親父だと思ってんだ?」

109 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:50:29 ID:9OubR0lk0





_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> (´^ω^`)「頭可笑しいから二つ返事に決まっとるやろがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!」 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄




(;'A`)「お前の家系どうなってんの?」

110 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:52:57 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「知っての通り、俺ん家はシタラバでも有数の牧場主。それだけに意味わからん組織も手を出しづらい……」

(´^ω^`)「……んじゃないかな!!知らんけど!!」

(;'A`)「オイオイ……」

(´・ω・`)「いや別に根拠が無いわけじゃねえよ。実際、あいつらは俺らの身元を調べておきながら『家族を人質』にする方法は今の所取っていない」

('A`)「ああ……」


ヒートにしろハインにしろ、モーテルでのやり取りにしろ、彼女達は真正面からビコとゼアを奪いに来ている
家族とは絶縁となったドクは兎も角として、ニダーとショボンに関しては『人質』という方法はある程度の効力は発揮するだろう
そうしないのは、血縁と言えど無関係の者達への配慮か。それとも、彼らが知らぬ内に既に手を回しているのか
少なくとも、ショボンの反応から見るに、後者の可能性は薄いとドクは前向きに捉えることにした


('A`)「確かに……あの女は俺の事を『悪党』呼ばわりした。どちらかと言うと、『義は我に在り』って感じの集団かも知れねえな」

(´・ω・`)「だろ?それに、あの格好も『ヒーロー』を意識してるようにも見える。様式美にこだわりを持っているなら、汚い手は使い辛い」

('A`)「俺が相手した奴も、ニダーが出会ったクノイチとやらも、わざわざ名乗りを挙げてるしな……そう考えると、俺らとんでもなく頭ハッピーセットな組織に追われてんじゃねえか?」

(´・ω・`)「まぁ面白……若干厄介なのは間違いないんだがよ」

('A`)「本音よ」


ミラノサンドを食べ終えたショボンは、包み紙を丸めてくず入れへと投げ入れる
ソースとパンくずを包んだ即席のボールは、『ゴール』の縁に当たって地面へと落ちた


('A`)「はずれ」

(´・ω・`)「Fuck」

('A`)「先に車戻ってるぞ」

(´・ω・`)「あー」

111 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 12:54:16 ID:9OubR0lk0
ゴミを拾おうと身を屈めた瞬間、くらりと眩暈が襲う。ここ数日の寝不足のツケが回っていた


(;´⁻ω⁻`)「っ……」


『よく食って寝る』。モーテルで発言した自身の言葉が身に沁みる
追手を迎え撃つというこの作戦には、比較的安全な場所で十分な休息を取るという目的も隠されている
刺客を撃退したドクやニダーの実力には信頼を置いている。しかし『疲労』には誰も勝つことが出来ないのだ


(;´・ω・`)「案外、疲れるもんだな……」


ゴミを確実に捨て、眉間を指で揉み解しながら車内へと戻ろうとしたその時


<ぎゃあ!!

<ぐあっ!?


(;´・ω・`)そ「ッ!?」


あちこちで、短い悲鳴が立て続けに響いた

112 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:04:39 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「……」


売店に目を向けると、従業員と利用客がカウンターや地面に平伏し、動いていない
『ここでも待ち伏せされていたか』。ヒーロー気取りの連中とタカを括っていた考えを改める
安否が気がかりだが、この現象の原因を知らぬまま近づくのは危うい


(;´・ω・`)「……ド」


車に戻った友人の名前を呼ぼうとしたが、『コツン』と踵に何かが当たって言葉を詰まらせる
見ると、拳大の色鮮やかな橙色の『ボール』。誰しも口にした事がある果実、『オレンジ』であった


(;´・ω・`)「……」


スーパーマーケットならともかく、ガススタンドに置かれているような物ではない
蹴飛ばすのも気味が悪いので、そっと離れようとしたその時


(;´・ω・`)そ「うおっ!?」


なんの前振りもなく、ショボンの顎を目掛けてオレンジが勢い良く『跳ねた』
身体を引いていたのが幸いして、前髪を掠めただけで済んだものの、まともに食らえばオレンジといえど一撃で卒倒する速度だった


(;´・ω・`)「ふざっ……けんなよ!!B級映画かっての!!」


トマトが襲いかかってくるカルト映画を思い出し、ショボンは車へと一目散に走ろうとするが


(;´・ω・`)「ぐっ……!!」


その通り道を、いくつものオレンジが転がり塞いだ

113 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:05:28 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「ドkうおお!?」


大砲も無く砲弾が、一斉に射出。補給機の影に転がり込んでやり過ごす
盾となった補給機は、ボコボコと鈍い打撃音をたてながら凹んでいく


(;´・ω・`)「ああそうだよな!!不思議が一個あんなら他にも沢山あるだろうよ!!」


ドクが相手した格闘家は『鉄塊拳』。ニダーが追われたニンジャは『身軽さ』を武器にしていた
しかしそれは、才能の有無も関わるだろうが訓練次第では誰でも手に入る代物だ。だからこそ『見誤った』
超常の存在を追い求める者が、『超常の能力』とは無縁と限らないのだから


(;´・ω・`)「『超能力の持ち主』だって……いるだろうさ!!」


売店の窓ガラスが割れ、オレンジが飛来する。頭を抱えながらその場から飛び出す
補給機にまた一つ、新しいクレーターが出来上がる。故障と異常を検知したのか、ガスステーションの看板に備え付けられたパトランプが光った

114 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:06:35 ID:9OubR0lk0
(;'A`)「ショボ……うおッ!?」

(;´・ω・`)そ「くっ……!!」


異変に気付いたドクが助手席から呼びかけてきたが、また別のオレンジが妨害をするように扉に衝突する
丸く凹んだ板金が、その威力を思い知らせる。運転席のニダーがエンジンを掛けて車を寄せようとしたが


(;´・ω・`)「来るなッ!!離れろ!!」

(;'A`)そ「ハァ!?」


ショボンはあえて『拒んだ』


(;´・ω・`)「車がオシャカになったらそこでもう『詰み』だ!!」

(;'A`)「ッ!!」


12シスターズの目的は『ビコとゼアの確保』であり、三人の身柄ではない
つまり『オレンジを操る超能力者』は最低でも足止めさえ達成してしまえば、事を優位に運べるのだ


(;'A`)「チッ……わかった!!とっとと済ませてこい!!」

(;´^ω^`)「おお余裕だぜぶっ殺してやらぁ!!!!!!!」


狙いを読まれた焦りからか、オレンジはUターンする車に目標を変えて弾け跳んだ
リアにいくつもの凹みを作ったが、走行の妨害までには至らず車は走り去る
ガスステーションの敷地外に出た段階で、オレンジは射出を止めて目標を再びショボンへと戻した


(;´・ω・`)「やっべ!!」


補給機から移動し、停まっている車の影に身を隠す。サイドミラーが果汁と共に吹き飛び、床を舞う


(;´・ω・`)「クソ、クソ……フゥー……」


呼吸を整え、動悸を抑え込む。『落ち着け、俺の番が来ただけだ』と自分に言い聞かせ、冷静さを取り戻していく

115 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:07:52 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「フゥー……」


オレンジの猛襲が、嵐が過ぎ去ったように止まる。フロント越しに観察してみると


(´・ω・`)「ん……?」


ラジコンのように不規則な動きで敷地内を転がっている。目標を見失っているようにも見えた
補給機を盾にした時は迷いなく襲ってきた。この『違い』を見極めれば、勝機はある


(´・ω・`)「探知の基準は何だ……?」


頭の中でざっと候補を挙げてみる。『視覚』『聴覚』『触覚』『温度感知』。その中から一つずつ選択肢を絞る
『触覚』。例えば空気の動きに反応するとしたら、無差別な方向へと射出して狙いが定めにくいのではないか?
『温度感知』。高温に反応するとしたら、日光に曝されている地面や車のボンネット。エンジンの方を優先するはず
『聴覚』。的を『話し声』など人間が発するモノに絞れば無い事はない。しかし今しがた走り去る車に向かっていったばかりだ


(´・ω・`)「となればやっぱり……」


『視覚』。それも、ガスステーション内に限られる。操作範囲の限界とも捉えられるが、この敷地内限定で有効な確認手段がある


(´・ω・`)「『監視カメラ』」


補給機を見下す形で設置されたカメラは、何かを探すかのように首を左右させている
ショボンが逃げ込んだ車の影は、偶然にもカメラの視覚外に位置していた


(´・ω・`)「すると……」


カメラの映像を頼りにしているのならば、自ずと敵の居場所は突きとめられる。恐らく売店の中にある『バックヤード』
気絶させた従業員をロッカーにでも放り込んでポテチでも摘まみながら『モニター』を注視しているに違いない
しかし『ミスリード』という可能性も捨てきれない。売店に踏み込めば最後、オレンジの集中砲火を受けてあえなくリタイアなんて事も在り得る

116 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:08:57 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「……」


だがこうも思考の時間を与えられるのも腑に落ちない。死角に逃げ込んだのは向こうにもわかっている筈
車に攻撃を与え続けて表に出ざるを負えない状況を作り出す事も出来るだろう。そうしないのは何故か?『それが出来ない』のは何故か?


(´・ω・`)「『弾数』に限りがある」


サイドミラーを破壊したオレンジは、果肉と果汁を曝け出して爽やかな香りを放ちながら微動だにしない
『球体』の形を保て無くなれば、操作は出来ないのではないだろうか?もしそうなら、彼方も『無駄撃ち』は出来ない
操れるオレンジを全て『撃ち尽くせば』、後に残るのは果物で遊んだ罰当たりな痕跡だけだ


(´・ω・`)「だとすると……俺から動く必要もねえな」


『虎穴に入らずんば云々』という諺があるが、手に入れたい『虎児』も居ないのに突っ込むのは自殺行為に他ならない
元より、焦っているのは『能力者』の方なのだ。こうして膠着している間にも、目的は遠くへと逃げている
コソコソと隠れて様子を窺い続けているよりかは、直接確認してオレンジを叩きこんだ方が手っ取り早い


(´・ω・`)「……」


それに、『補給機』の故障から警備会社、もしくは警察に警報が届いた可能性もある
此方は『襲われている』立場なのだ。その何方かが到着すれば、堂々とその庇護に収まればいい
向こうもすっとぼける事は出来るだろうが、このままFPSのスナイパーのように『芋っていれば』言い逃れも出来なくなる


(´・ω・`)「ハハ。なんだよ、ジッとしてりゃ勝つなんて楽な戦いだぜ」


このまま何事も無く時間が過ぎれば、目論見通りこの戦いはある意味での『不戦勝』を迎える
能力者は連行されるかコッソリと逃げるかの二択を迫られてしまうだろう。当然、向こうもそれを理解している


(´・ω・`)「まぁ……そう上手くはいかねえよな」


売店から聞こえた『ガラスを踏みしめる音』が、淡い期待を打ち砕く
顔こそ見ていないが、しっかりとした足取りから件の能力者だと察した

117 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:10:21 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「……」


「出てこいっぽ」


(´・ω・`)「断る、と言ったら?」


返答の代わりに、背にもたれ掛かる車に『ドン』と強くオレンジが衝突する


(´・ω・`)「おーおー、有無をも言わせねえってか」


ショボンはスマホを取り出し、素早く画面をタップして尻ポケットに収めた
そして両手を上げながら、ゆっくりと車の影から抜け出す。オレンジ襲い掛かってくることは無かったが、代わりに『一つの場所』に集まっていた


(*‘ω‘ *)「……」

(´・ω・`)「ワオ、こいつは眩しいな。太陽が女の形をしたらアンタみたいになるだろうよ」


悪魔的な赤い唇と、刺激的なモカの日焼け肌。ビキニとホットパンツといった刺激的なスタイルに、ショボンは思わず口笛を吹く
半ば本音と欲望を交えた口説き文句に、女は短く刈り上げた髪をサッと掻き上げて受け流した。足下には、二十を超えるオレンジが雛鳥のように寄り添っている

118 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:11:54 ID:9OubR0lk0
(*‘ω‘ *)「悪いけど、ナンパに付き合う暇はないっぽ。大人しく人質になるならば、大怪我は勘弁してやるっぽ」

(´^ω^`)「いーいねぇ〜〜〜〜〜!!!!強引な女は最高に好みだ!!一晩じっくり苛めてくれるなら考えてやっても」

(*‘ω‘ *)「チッ!!」

(;´゚ω゚`)そ「うおおあっぶねえ!!!!!!!!!!!」


股下を通り抜けたオレンジは、料金機に衝突して弾け飛ぶ。当たれば同じように『潰れて』いたに違いない


(#´゚ω゚`)「何しやがんだクソアマァッ!!!!!!!!!!優秀な遺伝子殺す気かオオ!!!!!??????」

(*‘ω‘ *)「フン。ゲスな男を抱く趣味はないっぽ。次は確実に当てる」

(;´・ω・`)「ま、待て待て!!悪かったよ真剣になる!!な、何が望みだ!?金か!?」

(*‘ω‘ *)「知れた事。お前たちが『ビコ』『ゼア』と呼ぶ超常保護対象。並びに、女の子と犬。その身柄っぽ」

(;´・ω・`)「ハァ!?ディとビィもか!?関係ないんじゃねえのか!?」

(*‘ω‘ *)「答える必要はない」

(;´・ω・`)「オイオイ見くびって貰っちゃ困るぜ。俺ァ確かにゲスだが、得体の知れねえ組織に追われているかも知れないガキと犬を『はいそうですか』と渡す程クズ」



(;´゚ω゚`)・'.。゜「ジャゴホォ!?」

119 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:12:54 ID:9OubR0lk0
ショボンの鳩尾に衝突したオレンジは、役目を終えたと言わんばかりに地面を転がる
痛みと呼吸困難により、腹を抱えてその場に蹲る。女は抵抗出来なくなったショボンに近づくと、ブーツの底で頭を踏みにじる


(*‘ω‘ *)「お前の人間性などどうでもいい。ただ一言、『渡す』と言ってお友達を呼び戻せ」

(;´ ω `)「ゲホッ、ゴホッ!!」

(*‘ω‘ *)「それとも、渡せない事情があるのかっぽ?『お兄ちゃん』が、関わっているとか」

(;´ ω `)「ッ!!」

(*‘ω‘ *)「おっと」


『お兄ちゃん』という単語に反応を示したショボンの頭を、警告の意味も込めて更に強く踏みしめる


(*‘ω‘ *)「心当たりがあるようだな。そう、お前の兄には超常保護対象の私的利用疑惑が懸けられているっぽ」

(;´ ω `)「……」

(*‘ω‘ *)「沈黙は肯定と受け取るっぽ。何が目的で、どのような利益に目が眩んで愚行を犯したのかは、『一晩じっくり虐めて』聞き出してやるっぽ」

(;´ ω `)「……」

(*‘ω‘ *)「まぁ、協力次第では手心を加えてやらんでもない。色男のまま日常に戻りたいのなら……」


オレンジが一つ、ショボンの目と鼻の先へと転がる。何の変哲もない果実が、銃口にも似た恐ろしさを放っていた


(*‘ω‘ *)「『奴らを呼び戻せ』」

(;´ ω `)「わかった」


.

120 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:15:19 ID:9OubR0lk0
いとも呆気なく要求に応じ、女は目を丸くさせた。確かにこれまでも我が身可愛さにあっさりと超常保護対象を手放した連中は数多い
しかし、ショボンの一言にはこれまでとは違う、『奥の手』を感じさせる力強さが籠っていた


(*‘ω‘ *)「……何を企んでいるっぽ?」

(;´ ω `)「『シャキン・バーデラス』は贖罪の機会を求めている」

(*;‘ω‘ *)そ「!?」


支離滅裂な返答は、彼女たちが危険視する人物の『核心』に触れる発言だった
女の反応など構わずショボンは話を進めていく


(;´ ω `)「アホの兄貴がアンタらに迷惑を掛けたん事については、弟として心から謝罪する」

(*;‘ω‘ *)「そんっ……なの、どうだっていいっぽ!!贖罪とは一体なんだ!?」

(;´ ω `)「さぁな。知ったこっちゃねえよ。ただ、俺達家族の元に届いたのは、『スリー・ドット』の資料と『必ず送り届けろ』っつー短いメッセージだけ」

(*;‘ω‘ *)「スリー・ドット!?何の、何の話をしている!?」

(;´ ω `)「さぁな。それを追い求めて俺は行動を起こした」

(*;‘ω‘ *)「ッ……ならば猶更、我らが保護すべき存在だっぽ!!」

(;´ ω `)「お前らが悪意の無い団体と証明できるのか?有無を言わさず襲い掛かって来た、お前らが?」

(*;‘ω‘ *)「黙れ!!」

(;´ ω `)「ハハ……ハハハハハ!!」

(*;‘ω‘ *)「何が可笑しい!?」


笑わずにはいられなかった。これだから、女を手玉に取るのはやめられない
それが無様に地べたに這いつくばり、頭まで踏みつけられる屈辱の極みにいるのなら猶更だ。と

121 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:22:35 ID:9OubR0lk0
(;´^ω^`)「奴らを呼び戻せ?言われるまでもねえ。迎えに来てもらわねえと俺は先に進めねえからな」

(*;‘ω‘ *)「この期に及んで、アタイに勝つ気でいると?」

(;´^ω^`)「その通りさミス・オレンジ!!ハンサムの華麗な逆転劇で、物語の中盤を艶やかに彩ってやるよ!!」

(*;‘ω‘ *)「……付き合って、られないっぽ。シャキン・バーデラスについては身体に直接聞くことにする」


目の前のオレンジが、独りでに楕円状に変形した。発射前の『クラウチング』の姿勢に見て取れた
至近距離で弾丸が放たれようというのに、ショボンは尚もヘラヘラとした薄気味悪い笑顔を止めようとはしない
女は不快感と共に不気味さを覚え、自身の能力で手早く片を付けようとし――――


(*; ω *)そ「ッ!?」


ストンと膝を着き、倒れた


(´・ω・`)「いてて……ナイスタイミング」


拘束から逃れられたショボンに手が差し伸べられる。それをしっかりと握り、土ぼこりを払いながら立ち上がる
彼を起こした張本人は、額に浮かんだ汗を拭い、止めていた息を大きく吐く。荒く呼吸を繰り返し、地面に唾を吐いた


(;'A`)「ハァー、ハァー……『走って戻ってこい』なんて、無茶な注文だぜ」

(´^ω^`)「めんごめんご!!!!!!!」

('A`)「置いて行けば良かった」

(´^ω^`)「悪かったってオレンジ食えよ!!」

('A`)「いらねえ……」


ショボンは女と対峙する直前、ドクに『走って戻ってこい』とメッセージを送信していた
自身が残った時点で、女の目的が『確保』から『人質による交渉』に切り替わったのは目に見えていた
そこであえて目立つ抵抗は行わず会話による時間稼ぎを行い、特定のワードを小出しにすることで冷静さを欠かせ
格闘術に優れるドクが背後から忍び寄る隙を作って無力化させる、他力本願の心理戦に打って出たのだ

122 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:23:44 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「いやはや、持つべきもんは友達だなぁオイ」

('A`)「たまたま上手くいったがよ、俺らが遠くに逃げてったらどうするつもりだったんだよ」

(´・ω・`)「『逃げろ』とは、一言も言った覚えねえぞ?」

(;'A`)「良い根性してるぜ……」


当然、信頼が無ければ一か八かの作戦に打って出れない。実際、ショボンの意図を読み取れず遠くまで逃げてしまったかもしれない
だが彼らは直前でこう会話を交わしたのだ。『先に潰してしまえば、後はゆっくり進める』と


(´・ω・`)「どっちにしろ『逃げる』なんて選択肢、最初から頭に無かっただろ」

('A`)「まぁな……」


『叩き潰す』。このスタンスを予め共有していたからこそ、ドクは『逃げる』を良しとはしなかった


('A`)「で、こいつはどうするよ?」

(´・ω・`)「ほっとこうぜ。証人なら幾らでも『寝ている』からな。それに、カメラの映像が残っているなら俺らの正当性は主張できる」

('A`)「ハッ、お優しいこって」

(´・ω・`)「時間があったらガバガバにしてたけどな」

('A`)「何がとは聞かない。サッサとフケるぜ。面倒ごとが増える前にな」

(´・ω・`)「そうだな。急ごうか」

123 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:24:07 ID:9OubR0lk0
足早にガスステーションを去ろうとし、一度だけ振り返る


(* ω  *)「」


(´・ω・`)「……良いもん見せて貰ったよ」


夢でも見ていたかのような数分間だったが、腹に残る鈍い痛みは紛れもない現実のもの
初めて目の当たりにした『超能力』は、心躍らせるに相応しい体験だった


(´・ω・`)「じゃあな。太陽の女」


ガスステーションから出ると、早速タバコを取り出して火を着ける。煙を存分に吸い込むと、まだ胸に残る興奮と共に
『オレンジ』のような太陽に目を眩ませながら吐き出したのであった―――――

124 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:25:15 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



ブンゲーには三つの顔がある。一つは『黄金』、一つは『西部劇』、そしてもう一つは『牧場』である
元々は黄金を求める開拓者達の集落であったが、ゴールドラッシュの時代が終わると産業を『映画』にシフトした
当時に雰囲気を色濃く残す街並みは、かの名作『荒野の用心棒』や『ペイルライダー』『許されざる者』と言った数多くの西部劇の舞台セットとして使用された
アメコミ映画が大規模な売り上げを記録する昨今に置いても、西部劇は一定の層に需要がある。全盛期と比べて数は減った物の、撮影は頻繁に行われているという


<ヽ`∀´>「元から帰る気はあったニカ?」

(´・ω・`)「軽く顔出す程度に留めるつもりだったがな。事情が事情だ」

('A`)「クッソ広ぇー……これ全部お前んちの土地か?」

(´^ω^`)「金持ち金持ち!!!!!!!!!!!金持ち最高!!!!!!!!!」

('A`)「じゃあ旅費も出せるしルームシェアしなくても良いとこ住めるだろ」

(´・ω・`)「生活費に関してはバイトで稼げって言われてんだよ。クソだろウチの親」

('A`)「俺みたいにボコって必要経費カツアゲしたらよかったのに」

<ヽ`∀´>「キミらどんな家庭環境で育ったら肉親相手にそこまで非情になれるの?」


その中心街から更に車を走らせること数十分。車外には柵で囲われた牧場が見渡す限り広がっている
馬の群れが並走して駆ける姿を、ディとビィは静かに。ビコとゼアは相変わらず奇怪な鳴き声を上げながら騒がしく眺めていた


('A`)「良いとこだな」

(´・ω・`)「シティボーイにとっちゃな。隣の芝生は青いもんだぜ?」

('A`)「ああ……それでデビューに失敗してそんなんになっちまったのか」

(´・ω・`)「隙あらば俺の人格を攻め立てるのやめろ」

125 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:26:06 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「到着っと。ようこそ我が家へ」


『バーデラスファーム』の看板が掲げられたログハウスは、広大な土地と比べると随分と小ぢんまりとした佇まいだったが
隣接するガレージには財力を誇示するように嫌味ったらしく高級車が並べられ、素朴な家屋とのミスマッチを演出していた


('A`)「あー……」

<ヽ`∀´>「あー……」

(´・ω・`)「何を納得してんのか知らねえが俺だってやめて欲しいよこのクソみてーな展示」


<ドジャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!!!!!!!


(∪^ω^)そ「ワフッ!?」

(#゚;;-゚)そ「!!」


外付けのスピーカーから、耳がキンと鳴るほどの大音量でBGMが流れ出し、車を降りた全員が顔を顰める


<バーデラスバーデラスバーデラスファーム♪肉とか牛乳とかいっぱい作るー♪


<ヽ;`∀´>「何!?怖い!!」

(´・ω・`)「ウチのテーマソング」


<シタラバ市場の食肉、乳製品の約三十パーセントはウチの製品ー♪キミの街のスーパーにも並んでるぜイェイェイウォウォ♪

<フンフーンフンフフーン♪


('A`)「おいうろ覚えじゃねえか」

(´・ω・`)「親父がふざけてんだろ……親父ーーーーーーーーーーー!!!!!」

126 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:26:52 ID:9OubR0lk0





(´^_ゝ^`)「なーーーーーーーーーーーーーーにーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!??????????」ドッドドドドドッカァアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!






ログハウスのドアを蹴飛ばし、マイクスタンドを手に現れたショボンの父親
もとい、バーデラスファーム代表取締役『デミタス・バーデラス』のファーストインプレッションは


('A`)「遺伝か……」

<ヽ`∀´>「遺伝か……」


『間違いなくショボンの親父だわ』であった

127 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:27:47 ID:9OubR0lk0



(´^_ゝ^`)「パパだよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」



(´・ω・`)「……」

('A`)「……」

<ヽ`∀´>「……」

(∪^ω^)「フンフンフンフン」

(#゚;;-゚)「……」

( ∵)「ウルサ」

( ∴)「キモ」


(´^_ゝ^`)「……」


冷たい視線に、髪の薄い頭も冷えたのか。マイクスタンドを戸口に立てかけると


(´・_ゝ・`)「ンンッ、待っていたよ。遠い所を遥々とよく来たね」


と、取り繕った

128 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:28:23 ID:9OubR0lk0
('A`)「いや、もう手遅れっす」

<ヽ`∀´>「ドン引きです」

(´・_ゝ・`)「目上の億万長者に失礼とは思わんのか?」

('A`)「やっぱクズは遺伝だったんすね!!」

<ヽ`∀´>「子が子なら親も親ニダ!!」

(´・_ゝ・`)「オイどうなってんだショボンオラ。これが初対面の友人の父親に対する態度か?」

(´・ω・`)「先ず気づいて欲しいんだが、テメーの奇行で俺にまで飛び火してんだよ」

('A`)「いや日頃の行いだろ」

<ヽ`∀´>「父親の所為にすんな」

129 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:29:20 ID:9OubR0lk0
(´^_ゝ^`)「うーーーーーーーーん父として恥ずかしい生き方をしてるようで何よりだ!!人を殺しても俺はびた一文保釈金を払わんからな!!」

(´・ω・`)「そいつはどーも。上がるぜ。一晩世話になる」

(´^_ゝ^`)「お前んちだ世話もクソもあるか。さ、キミらも上がってくれ。お茶を淹れよう」


( ∵)「ゴエエエエエエエエエエエ!!!!!!」

( ∴)「ゴエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!」


(´^_ゝ^`)「うんうんゴエゴエ!!!!!!!!何その生き物こっわ」


家内に通されて最初に彼らを迎えたのは数多くのムービースターとのツーショットとサインが入った額縁の数々
ドクとニダーは思わず立ち止まり、ポカンと口を開けて見上げていると、デミタスがグラスに並々と注がれた琥珀色の液体を二人に差し出した


(´^_ゝ^`)「ウェルカムドリンクだ!!!!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「あ、ああ……お気持ちだけ」

('A`)「どうも」


ドクは一息で呑み切ると、ニダーの分も立て続けに流し込む
空になったグラスを突き返されたデミタスは、余りに機械的で躊躇いの無い飲酒に目を丸くした


('A`)「お茶は?」

(;´^_ゝ^`)「お、おお……まだ飲むの?」

('A`)「いや別にウィスキーでも構わないけど」

<ヽ`∀´>「所で……あー、バーデラスさん」

(´^_ゝ^`)「水臭ぇなデミーで良いよ!!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「あ、いや、そこまで親しくなるつもりはないんで遠慮しときます」

(´^_ゝ^`)「ショボンーーーーーーーーーーー!!!!!こいつぶん殴っていいかーーーーーーーーー!!!!!????」


<親父が悪い


(´・_ゝ・`)「お前ら俺が嫌いか?」

130 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:30:08 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「その、従業員の方はいらっしゃらないのですか?見た所、ここは事務所も兼ねているように思えるのですが」

(´・_ゝ・`)「ああ、今日はもう全員上がって貰った」

('A`)「牧場ってそれで回んの?」

(´・_ゝ・`)「回んねえけど……?まぁお産の畜生もいないし……」

('A`)「畜生て」

<ヽ;`∀´>「畜産農家が吐いていい台詞じゃないニダ」

(´・_ゝ・`)「いや、喧嘩すんだろ?ここで」


二人は同時に応えようとして、言葉に詰まる。話が早すぎて、頭が着いて行かなかったのだ
そんな彼らを興味深そうに眺めたデミタスは、ポンと背中を押して奥へと案内する


(´・_ゝ・`)「ちゃんとワケは話すよ。その上で、キミ達を巻き込んだ事を謝罪させてくれ」

('A`)「……」

<ヽ`∀´>「いえ、そんな……」

(´^_ゝ^`)「え!!!!!??????許すって!!!!!!!?????」

<ヽ`∀´>「そういう所」


リビングに通されると、既にショボンは暖炉の前のソファーに深々と座って寛いでいる
ディとビコ、ゼアはテーブルでドーナツとミルクを。ビィはその下でジャーキーを楽しんでいた


(´⁻ω⁻`)「ハァー……」

(´・_ゝ・`)「キミらも自由にしてくれ。紅茶で構わないかな?」

<ヽ`∀´>「はい」

(´^_ゝ^`)「オーケー。とびきり美味いお茶を振舞おう」

131 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:32:25 ID:9OubR0lk0
遅れて来た二人も、テーブルの空いた席に腰を下ろす。ドクはビコとゼアが溢したドーナツのカスを摘まみ上げ、空いた皿に落とした
手持無沙汰になったニダーは、どうにも落ち着けずリビングを見渡す。すると、暖炉の上にある写真立てが目に入った


【 (´^ω^`)凸 凸(`^ω^´) 】


<ヽ;`∀´>「……」


カメラに向かって中指を立てる子供の頃のショボンと、彼によく似た年上の少年の姿
家族写真にしては少々刺激的な『ピースサイン』も気になったが、恐らくショボンの『兄』らしき人物に話の焦点を当てることにした


<ヽ`∀´>「お兄さんニカ?」

(´⁻ω・`)「あ?まぁな……もう三年くらい行方不明だが」

('A`)「……何をしでかしたんだ?」

(´⁻ω・`)「……」


ショボンは灰皿を引き寄せると、タバコを取り出して一服を始める
天井に紫煙がうっすらと立ち込め、鼻腔がキュッとしまるような臭いが漂い始めた頃、ようやく語り始めた

132 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:33:15 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「まぁ……兄貴個人が起こした問題じゃ、ねぇとは思うんだけどよ……兄貴が通ってた大学では、ちょっとした学生運動が盛んでな。所謂、アクティビズムって奴だ」

('A`)「要望通すために絶食するバカが集まるサークルか。もしくは、使命感で頭キラキラ股ユルユルの女との乱交スポットか」

(´・ω・`)「多分、どっちにも属するんだろうよ。で、当時付き合ってた彼女がそいつにズップシハマっちまってな」

(´・_ゝ・`)「表立っては言えなかったけど、正直クソアマだったねアリャ。はい、お茶だよ」

<ヽ;`∀´>「あ、ありがとうございます……それで?」

(´・_ゝ・`)「その頃、連中の矛先はブンゲーに向けられていてね。ゴールドラッシュ時代、シタラバ先住民を迫害して得た土地と財産を彼らに返せとSNSや動画サイトで抗議を行っていた」

(´・ω・`)「遥々ウチの牧場で大騒ぎするバカもいてな。親父も俺もアレだから何回かぶっ殺そうとしたんだが、その度に兄貴が仲裁に入った」

('A`)「堪ったもんじゃねえな……」

<ヽ`∀´>「ですが、迫害に関しての謝罪と賠償は既に済んでいる筈です。現存するシタラバ先住民が更なる要求をしただなんて話も聞きませんし」

(´・_ゝ・`)「あの手の活動は大概が自己陶酔か利権絡みだ。クラブで酒飲んで騒いでるのと殆ど変わらないよ」

<ヽ;`∀´>「偏見入ってません?」

('A`)「で……その頭ハッピーセットサークルと『俺らを巻き込んだ』って話はどう関係してんだよ」

133 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:35:06 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「ある日、兄貴から連絡があった。『セブンクロスの先住民と話を付けに行った彼女含むメンバーが帰ってこない』と」

('A`)「やったじゃん」

<ヽ;`∀´>「不謹慎ニダ!!」

(´・ω・`)「いや、俺らもドクと同じ返事をした。辟易してたからな。今夜からは枕を高くして寝れると喜んだ」

(´^_ゝ^`)「その日の酒は格別だったよ!!!!!」

<ヽ;`∀´>「ほんっとクズ親子だなアンタら!!!!!」

(´・ω・`)「まぁ、それで兄貴が納得するわけがなくてな。俺らの制止も聞かず、単身セブンクロスに乗り込んだ。それがちょうど三年前だ」


ショボンはここまで語り終えると、タバコを揉み消し、口の中を紅茶で洗い流す


('A`)「訊くまでも無いが……警察には?」

(´・_ゝ・`)「勿論、捜索を出して貰ったさ。僕も私財を投じて隊を送った。だけど、今日に到るまで一向に手がかりは掴めなかった」

<ヽ`∀´>「だけど、それだけ大規模な行方不明者が出ているならニュースになって然るべき事件です。隠蔽が?」

(´・_ゝ・`)「ああ、あったんだろうね。大学は元より、メンバーの家族、友人ですら口を噤み始めた。まるで最初から居なかったかのように振舞った」

(´・ω・`)「連中と兄貴の相違点を上げるとするならば、兄貴はグループに在籍しておらず、セブンクロスにも『後続』という形で出向いた。だから、俺ら家族だけはずっと納得いかないままだった」

('A`)「……それが、『スリー・ドット』に関連していると?」

(´⁻ω⁻`)「ああ……白状しよう。あの資料は大学からパクって来たもんじゃねえ。兄貴から送られたものだ」


いつも騒がしいビコとゼアが空気を読むほど、室内はシンと静まり返る
口火を切ったのは、意外にも


<ヽ`∀´>「あ、やっぱそうニカ?」


あっけらかんと返事をしたニダーだった

134 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:36:34 ID:9OubR0lk0
(´・_ゝ・`)「え?」

<ヽ`∀´>「え?」

('A`)「どういう事だニダー?」

<ヽ`∀´>「え?いやだって資料庫から持ち出したって言ってたけど、どこにも大学の印が押されてなかったし、資料にしちゃ文章がちょっと稚拙だったし」

(´・ω・`)「気づいてたのかよ」

<ヽ`∀´>「嘘が下手ニダ。それと、出発直後のキミはどこか『セブンクロスに着きたくなさそうな』雰囲気があった。話を持ち掛けて来たにも関わらず、『観光がてらのんびり行こう』だなんて口走ったり」

(;´⁻ω・`)「あー……しくったな。女は兎も角、野郎をだまくらかすスキルは備わって無かった」

<ヽ`∀´>「やかましいわ」

135 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:37:38 ID:9OubR0lk0
('A`)「それで……お前ら家族は、兄貴の足取りを掴むために俺らを巻き込んだと?」

(´・ω・`)「半分正解で、半分間違いだ」

('A`)「そうか」


返事は軽かったが、ドクの持つマグカップの取っ手がビキリと音を立てて捥ぎ取れる
思わず『高いんだぞ!!!!!!!』と文句を言おうとしたデミタスも、無言の圧力に口を閉ざす他なかった


(´・ω・`)「確かに仲間は欲しかったさ。親父に頼めば傭兵だって用意してくれた。お前らの実力を頼りにしてたのも確かだ。打算が無いと言えば嘘になる。だがな……」


ショボンはもう一度、噛み締めるように『だがな』を繰り返すと、いつもの腹立たしい笑顔を浮かべた


(´^ω^`)「何よりも、面白ぇ連中と一緒に危ねぇ橋を渡りたかった。それが一番の理由だ」


理由としては傍若無人で自分勝手であり、事実この数日間で何回も襲われている
ハッキリ言って納得出来る理由ではなく、信頼関係の崩壊も在り得る態度に、デミタスは白目を剥いた


(´ ゚_ゝ゚ `)「ピィ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

(#゚;;-゚)そ ビクッ


しかし、人を小馬鹿にしたような理由を口走ったショボンに対し、当の二人は


('∀`)「はは……はっはっはっはっはっはっは!!!!!!!!」

<ヽ*`∀´>「はははははははははは!!!!!!!!」


大いに『笑った』

136 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:38:50 ID:9OubR0lk0
(´^ω^`)「文句あるか!?ええ!?」

('∀`)「いいや、無いね!!一言でも謝罪すりゃぶん殴ってた所さ!!!!」

<ヽ*`∀´>「それでこそ、僕らの良く知る『ショボン・バーデラス』ニダ!!!!」

(´^ω^`)「だっるぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!?????」


遠くなったデミタスの意識は、三人の若者の馬鹿笑いによって引き戻される
薄れていく驚愕と、家族の問題に巻き込んでしまった無関係の友人二人に対する罪の意識は、安心感と納得に変わっていった


(´・_ゝ・`)「……」


最初から、息子にはこの展開が見えていた。だからこそ、正直に『スリー・ドット』の出先について打ち明けたのだろう
人との繋がりとは、恐らく誰もが一生を懸けても解けない謎だ。女によって行方不明になった兄もいれば


(´^ω^`)「だーーーーーーーーーーーーーーーーーっはっはっはっはっは!!!!!!!!」


信頼と友情を築き上げた仲間と共に、その行方を追う弟もいる


(´^_ゝ^`)「ハハ……」


これまで息子たちに優劣を着けた事は一度も無かったが、この一点だけはショボンに軍配が上がった
弟が得た、『友』という心強い武器は、兄には得られなかったモノだったからだ


(´^_ゝ^`)「……」


しかしこうも考える。もしもシャキンが生きていて、何か大きな存在に必死に抗っている最中ならば
願わくば、あの気持ちの良い若者二人と同等の仲間と共に在って欲しい。とも―――――

137 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:39:36 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



(∪^ω^)「ゲフゥ」


ああ、これはいけない。鼻と舌が贅沢を覚えてしまった
しかし誰が抗えると言うのだろうが。目の前に差し出された、肉汁と脂滴る極上のステーキに!!


( ∵)「ゴエ」

( ∴)「エ」


私と同じく、腹を存分に膨らませた彼らも、その余韻を噛み締めている
無理もない。あの『デミタス』とか言う男、素行はともかく美味い肉を振舞うだけの甲斐性はあるらしい
この誇り高い私が思わず『この家の犬になっちゃうワン』と媚を売る所だ。まぁ?向こうがその気ならやぶさかじゃないけど??????


      ゚
(#‐;; -)゚ 「……」


(´・ω・`)「おっと、お姫様はオネムと来たか。ベッドに運んでくる」

('A`)「死ねよ……」

(´・ω・`)「なんで今のでアウトになるんだよお前が死ね」


ディが寝床に運ばれていく。まぁ奴もこの期に及んで交尾なんて馬鹿はしでかさないだろう
私も用意されたフワフワクッションで一眠りしよう。飢えと凍えの心配なく眠れるこの贅沢を享受しない手は無い

138 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:40:20 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「フスッ」

( ∴)「ゴエエエ」


何だよ寝ようとしてたのにうるせえなボケナス


( ∴)「ゴエ!!!!!」

(∪^ω^)「?」


ああ、なるほど。何処からかパクってきた『頭のリボン』を自慢しにきたのか
彼らにオスメスの概念があるのか疑問だが、人のメスは交尾の為に着飾るのが好きとも聞く
ええと確か……『オシャレ』と言ったか。ビコが一向に興味を示さないのを見るに、きっとゼアは『彼女』に当たるのだろう


(∪^ω^)「わんお」

( ∴)「ゴエ!!!!!」


『見分けが付きやすくなって良かったじゃないか』と伝えると、満足したのかビコの下へ帰っていく。やれやれ、ようやく眠れる


(∪^ω^)「……」


いや、なんだか催してきたな。先に出すもん出しに行くか

139 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:40:57 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「わんお」

<ヽ`∀´>「ん、どう……トイレニカ?」


おっ、中々わかるようになってきたじゃないか下僕一号
この家のドアは小柄な私には開けられないからな。こういう時こそ役に立って貰わねば


(´・ω・`)「お、どこ行くんだ?」

<ヽ`∀´>「彼のお手洗いついでに、外の空気を吸いに」

(´・ω・`)「ああ……付き合っても?」

<ヽ`∀´>「それはビィに訊いて欲しいニダ」


(∪^ω^)「わんお」


なんだこいつら雁首揃えて。そんなに私の排泄が見たいのか
変態の性癖に付き合わされて堪るか。来るんじゃねえ死ね


(´・ω・`)「良いってさ」


やっぱ人間ってクソだわ

140 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:42:15 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「はい、どうぞ」

(∪^ω^)「わんわんお」


着いてきたら半殺しにしてやろうと思ったが、奴らは棲み処の前に置かれてある椅子に腰を下ろした
変態趣味は無いようでホッとしたが、これはこれで逆になんか腹が立つ。やっぱり人間はクソ


(∪^ω^)「フヌッ……」


私はウンコした


<ヽ`∀´>「糞の始末は?」

(´・ω・`)「牧場だぜ?」

<ヽ`∀´>「ああ、そう……」


用を足して戻ったが、どうやらこいつらはしばらく戻る気は無いらしい。ショボンはあの臭い棒に火を点した
私としてはサッサとあのフカフカクッションに沈み込みたかったが……ふむ、だがこの場所の匂いと涼しさはまた心地良い
今まで『自動車』の屁と人間の喧しさが支配する環境に身を置いていたのだ。静寂を楽しむのもまた一興だろう

141 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:42:46 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「……」

(´・ω・`)「フゥー……」

(∪^ω^)「……」


<ヽ`∀´>「……セブンクロスに」

(´・ω・`)「ん?」

<ヽ`∀´>「セブンクロスに向かうのが、今でも怖いニカ?」

(´・ω・`)「……そうだな」


ショボンが吐いた煙が、部屋と月の灯りに照らされ、夜空へと消えていく
あの臭いだけはどうにも気に食わないが、見る分には面白いものだ


(´・ω・`)「やっぱ……確証ってもんは掴めなかったからな。家から遠く離れた大学で、資料を基に一から調べ上げても、得られたのは仮説だけだ」

<ヽ`∀´>「……」

(´・ω・`)「もしかすると、資料は兄貴からのもんじゃなくて只の悪戯だったかもしれないし、セブンクロスに辿り着いたとしても、そこには何も無いかもしれない」

(´・ω・`)「だから……言い出せなかった。純粋に冒険を望んでいるお前らに、無粋な問題を背負わせちまうんじゃねえかってな。だがよ」

142 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:44:11 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「このワン公がモーテルを訪れて……ディを介抱して、ビコとゼアが資料を引っ張り出したあの時、俺は神と兄貴に感謝したよ」

(´・ω・`)「俺は自信を持って、『未知』へ挑戦してもいいと言って貰えた気がした。あの瞬間から怖さは熱意へと変わったし、こうしてお前らにも打ち明けることが出来た」

<ヽ`∀´>「ハハ、とんだお調子者ニダ」

(´^ω^`)「勘違いしてもらっちゃ困るが、俺だって冒険はしたかったんだぜ?こんな事言っちゃアレだが、兄貴が行方不明になったお陰とも言える」

<ヽ`∀´>「いやそれは人として終わってる」

(∪^ω^)「わんお」


何を今更


(´^ω^`)「ダハハハハ!!だから俺ァ、無事に兄貴と再会したら面と向かってこう言ってやるんだよ!!『楽しい冒険だった』ってな!!」

<ヽ`∀´>「そりゃ……ゴキゲンなエンディングになりそうニダ」

(∪^ω^)「……」


『冒険』か。そう言えば、私もこいつらと同行してから、街中のゴミ溜めで暮らしていた時とは違う……なんというか、食事や交尾以外の『快感』を得られている気がする
だからこそだろうか。人間嫌いの私がここまで着いてこれたのは。ああ、ダメだダメだ。静寂なんてやはり性に合わない。余計な事まで考えてしまう

143 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:44:31 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「わんお!!」

(´・ω・`)「おっと……少し肌寒くなってきた。今日は早めに休もう。見張りなら親父がしてくれる」

<ヽ`∀´>「そうニダね。久々のベッドニダ」


腰を上げた連中に続いて、私も家の中へ戻ろうとした


(∪^ω^)そ「ッ!!」

<ヽ`∀´>「どうしたニカ?」

(∪^ω^)「……」


『いる』な。だが、まだ仕掛ける気は無いらしい。やれやれ、熟睡できると思ったのだがな


(∪^ω^)「フスッ」


今夜は私も、少々気張らねばならないみたいだ――――

144 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:46:35 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



(;´・_ゝ・`)「……」


デミタス・バーデラスはこれまで三度の命の危機を経験している
一つは幼少の頃、馬の尻の穴を火掻き棒で突いたら後ろ足で腹を強く蹴られた時
二つは学生時代、四股した『恋人たち』に拉致監禁され、睾丸を切り取られそうになった時
三つはショボンが生まれて間もない頃、妻が財産目当てに殺し屋を送り付けた時

いずれも持ち前の強運と根性で乗り切ってきたが、今夜ばかりは――――


(;´・_ゝ・`)「ふぇえ……こわぃぃ……」


『ボンテージファッション』のメガネ美女と、ゴシックロリータ姿の少女二人に詰め寄られている今夜ばかりは
大牧場を経営する代表取締役という権力と財力を以てしても、その余りの現実味の無さに『いよいよ年貢の納め時』と観念する他なかった


⌒*リ´・-・リ「動くななの」

*(‘‘)*「フリーズですの」


音も無く現れた侵入者に対し、せめてもの抵抗として向けようとした散弾銃は飴細工のように折り曲げられ今やただのオブジェクトとしてしか機能しない
それをいとも容易く行った二人の少女は、身の丈ほどもある『斧』と『剣』を、処刑人よろしくデミタスの喉元へと沿わせていた


(´;^_ゝ^`)「め、滅相もございませんでゲス!!お、お金なら用意いたしますでゲス!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「ン〜……」


ボンテージファッションの女は、『プレイには適さない』一本鞭の柄先で頬をなぞる


ハハ ロ -ロ)ハ「ミスター・バーデラス。やり手の経営者と聞いていましたガ、駆け引きは上手じゃないようですネ」

(´;^_ゝ^`)「ゲヘヘヘ、面目ないでゲスゥ」

ハハ ロ -ロ)ハ「シッ!!」

145 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:47:20 ID:9OubR0lk0
鞭がしなり、デミタスは思わず目を瞑る。しかし、音速を超える事で生じる破裂音は聞こえず


(´;^_ゝ・`)「な、なにぃ〜?」

ハハ ロ -ロ)ハ「ふむ……『犬の毛』」


『巻き取られた』であろうクッションが、彼女の手に収まっていた


ハハ ロ -ロ)ハ「それと乾ききってない涎の跡ガ、彼らがここに訪れていたという揺ぎ無き証拠でス」

(´;^_ゝ^`)「いやぁ〜〜〜〜〜〜〜?????何のことかさっぱりでゲスなぁ〜〜〜〜〜〜〜??????」

ハハ ロ -ロ)ハ「どこに隠しましたカ?」

(´;^_ゝ^`)「ゥチわかんなぃ。マヂムリ。通報しょ……」

ハハ ロ -ロ)ハ「ヘリ」

*(‘‘)*「はいですのオ゙ッッッラ゙ァ!!!!!!!!」


野太い声と共に振り落とされた斧は、テーブルと床を粉砕。高級家具がもはや薪にしか役立たない木片と化した


(´;^_ゝ^`)「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」

ハハ ロ -ロ)ハ「我々の手に掛かれば、貴方の住まいをキャンプファイアーの組み木にしてしまうなどオチャンコサイライなのでス」

⌒*リ´・-・リ「このあばら家ぶっ壊して隅から隅まで探し出してやるの」

*(‘‘)*「それが終わったらガレージの車ですの」

(´;^_ゝ^`)「あひぃご勘弁くださいでゲス〜〜〜〜〜〜〜!!!!!あれ壊されるくらいなら息子の命の方が安いんでゲス〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「Good!!では居場所を教えてくださイ。ミスター・バーデラス。彼らの車も表に停まっていル。この家から出ていないのはわかっているのでス」

146 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:50:03 ID:9OubR0lk0
(´;^_ゝ^`)「アッアッアッアッ……あの、多分何か勘違いされていらっしゃると思うんでゲスがね……」

ハハ ロ -ロ)ハ「What's?」

(´;^_ゝ^`)「恐らく貴女方、下調べも無しに時間帯だけを狙って侵入して来た輩でゲス?だからちょいとレクチャーをさせて欲しいのでゲス」

⌒*リ´・-・リ「腕行くの」

*(‘‘)*「はいですの」

(´;^_ゝ^`)そ「ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーォヘイヘイヘイストップストップ!!すぐ!!すぐ教えるから!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「Hurry up!!」

(´;^_ゝ^`)「急いだ方がいいのはアンタらの方だぜボンテージ・クイーン。ゴールドラッシュ時代、我が一族は金を求める連中の『食』を支えるために牧場を立ち上げた」
ハハ ロ -ロ)ハ「?」

(´;^_ゝ^`)「だがそれを良しとしない連中も多くてな。ならず者から命を狙われるなんてしょっちゅうよ。だからこそ牧場を、ひいては命を守るために策と『逃げ道』を作った」


『ヒヒン』と馬が上げた嘶きを聞いて、ボンテージは舌打ちをする
表に停めっぱなしだったミニバンはブラフ。彼らは何らかの『抜け道』からコッソリと逃げ出し、『牧場ならでは』の移動手段に切り替えたのだと気づいたのだ


(´^_ゝ^`)「さぁどうする?ここでおじさんと遊んでても良いが、その間にもあいつらは先に進んでいくぜ?」

ハハ;ロ -ロ)ハ「Hory Shit!!出し抜かれましタ!!追いますヨ!!リリ、ヘリ!!」

⌒*リ´・-・リ「ハロー、オッサンの息の根は止めないの?」

*(‘‘)*「ミンチですの」

ハハ;ロ -ロ)ハ「そんなノ後で幾らでもできまス!!せっかく奴らが足を止めたのに逃がしたとあってハ、我ら『サディスティック・スリー』の名折れでス!!」

(´^_ゝ^`)「だっさ」

ハハ#ロ -ロ)ハ「フゥン!!」

(´ ゚_ゝ゚ `)そ「あ゙っっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!」


今度こそ鞭の先端は音速を超え、破裂音と共にデミタスの頬がパックリと裂けた

147 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:51:17 ID:9OubR0lk0
(´ ゚_ゝ゚ `)「あっ……が……」

ハハ#ロ -ロ)ハ「食わせ者ガ!!貴様は後でじっくり可愛がってやル!!」

(´ ゚_ゝ゚ `)「ぐぅ……!!」

ハハ#ロ -ロ)ハ「追うゾ!!」

⌒*リ´・-・リ「はいなの!!」

*(‘‘)*「了解ですの!!」


デミタスの拘束を解いた三人は慌ただしく部屋を出た
残されたデミタスは、ボタボタと溢れ出す血を、カーテンで抑えて止血を施し


(´;^_ゝ^`)「ハ、ハハ……クソガキ共が、よくもこの俺を出汁に使いやがって……」


喉の奥から、『心底面白そうに』クツクツと笑った


(´;^_ゝ^`)「存分に暴れやがれ『冒険者』共。ここは俺の牧場、俺の街だ……一つ、盛り上げてやるぜ」


血で染まる指でPCを立ち上げ、ミュージックアプリをクリックする
選んだ選曲は、映画『ボヘミアン・ラプソティ』で再ブームメント巻き起こした『Queen』の名曲






♪Queen - Don't Stop Me Now
https://www.youtube.com/watch?v=HgzGwKwLmgM







外のスピーカーから、夜明け前の牧場へと響き渡った―――――

148 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:52:15 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



(´・ω・`)「チャイニーの軍師曰く、『兵は詭道なり』」

('A`)「なんだいきなり」

<ヽ`∀´>「今更賢いアピールしても遅いニダ」

(´・ω・`)「話は最後まで聞けウンコマン共。『戦争に置ける勝利の決め手は、敵をだまし、欺き、敵の兵力を疲弊させる事』だ。この家で奴らを罠に掛ける」

<ヽ`∀´>「閉じ込める気ニカ?」

(´・ω・`)「いいや、『焦らせる』んだ。今までの傾向から見て、奴らは俺らの動向をなんらかの形で予測している。だが……」

('A`)「正確じゃない」

(´・ω・`)「ああ。物理的な罠を仕掛けず人員を送り込んでいるのは恐らくこれが理由だ。正確じゃないからこそ、人の目で確かめる必要があると見た」

('A`)「付け入る隙、だな。だが奴らの襲撃タイミングに合わせられるか?」

<ヽ`∀´>「出来なくは無いニダ。こっちには優秀な見張りがいるニダ」

( ∵)b「ゴエエエエエエエエエ!!!!!」

( ∴)b「ゴエエエエエエエエエエエ!!!!!」

(´・ω・`)「本当に大丈夫かな」※Aqua Timez『虹』

<ヽ;`∀´>「ま、まぁ……ニンジャの時もオレンジの時も結構ギリギリでの警告だったけど……目安にはなるニダ」

('A`)「どう出し抜く?」

(´・ω・`)「地下室から牛舎まで抜けられる抜け道があってな。そこから抜け出して牧場から逃げる『振り』をする。出来る限り目立つようにな」

(´・ω・`)「あと親父とか使う」

(´・_ゝ・`)「えっ?」

(´^ω^`)「パパお願ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

(´^_ゝ^`)「しょうがねえなクソガキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!一肌脱いじゃうぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!」

('A`)「仲いいなこいつら」

<ヽ`∀´>「仲……いいニカ?これ」

149 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:52:35 ID:9OubR0lk0


 ̄ヽ、   _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´


('A`) と、思い返すドク・オーツだった

150 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:53:37 ID:9OubR0lk0
('A`)「ドンピシャだな」


ドクの独り言は、ゴキゲンなピアノとフレディ・マーキュリーの力強い歌声にかき消される
ログハウスの屋根裏の窓からポーチの屋根へと抜け出した彼は、出入り口から『目標』が飛び出すのを待ち構えた
鋭い鞭の音とデミタスの呻き声が気がかりだったが、先ずは脅威の排除を優先する


('A`)「さて」


侵入してきた時とは違い、慌ただしく扉が開く音が響く。ポーチの屋根を軽く蹴って飛び降り、頭上から奇襲を仕掛けた


ハハ#ロ -ロ)ハ「ッ!!!!!!見くびるナァ!!!!!!!」

('A`)そ「お゛!? お゛ぉ゛!?」


思わず下痢便が漏れ出しそうな声を上げたドクは、足首に巻き付いた鞭に振り回され――――


(;'A`)「っととぉ!!」


肩から地面へと落下。受け身を取って衝撃を和らげた


(;'A`)「なんだよ読まれてたか」

ハハ#ロ -ロ)ハ「豚の気配を探るなド、クイーンたるワタシにとっては呼吸に等しイ!!」

('A`)「そうか。デミのオッサンに豚の飼育量を増やして貰おう」

ハハ#ロ -ロ)ハ「やレ!!リリ!!」

⌒*リ´・-・リ「任せろなの!!どっっっっっっずごぉおおおおおおい゙!!!!!!!!!!!!!!」

(;'A`)そ「声野太っ!?」


振り落とされた一刀を、身を捩って躱す。背中に伝わる剣圧と衝撃は、小柄な少女に放てるものでは無かった


(;'A`)「っぶねえ殺す気か!?」

⌒*リ´・-・リ「その通りなの!!」

(;'A`)「ああそうだよなテメーらは話の通じる連中じゃなかった!!」

151 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:54:44 ID:9OubR0lk0
ハハ#ロ -ロ)ハ「その醜イ……マジ醜イ豚の相手は任せましタ!!私は車を用意しまス!!ヘリは馬を見失わないよう二!!」

*(;‘‘)*そ「しんどい方をヘリに任すなですの!!でもまぁやったるですの!!」

('A`)「おーおー慌てとる慌てとる」

⌒*リ´・-・リ「ブサイクは死ぬの!!!!!!」

(;'A`)そ「うおっとぉ!?」


足の鞭が解かれたドクは、後転して剣を躱す。素早く立ち直ると、構えを取った


('A`)「『兵は詭道なり』……か。教養は身を助けるな」

⌒*リ´・-・リ「何をブツブツいってるの……ブサイクな顔でマジキモいの」

('A`)「言ったなオイ?ガキだからって俺は一切容赦しねえぜ?」

⌒*リ´・-・リ「ブサイクは心の中も醜いの!!」

('A`)「……」


『疲れる』。容姿の罵倒など今やちっぽけな心の傷にもならないが
こうもバリエーションとユーモアに乏しければ与えられるのは虚無と疲労感だけだ


('A`)「お仲間の合流したけりゃサッサとそのなまくらで両断したらどうだおチビちゃん?言葉のナイフじゃ俺は殺せないぜ?」

⌒*リ´・-・リ「言われるまでもないの!!ぞっっっっお゙お゙お゙い!!!!!!」


銀に輝く半月が、ドクを『二枚下ろし』にせんと迫る


('A`)「……」


不意打ちを防がれ、鞭に不覚を取った。しかし、『それだけ』だった
ドクにとって巨大な剣を振り回す怪力少女など、取るに足らぬ小事であった―――――

152 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:56:13 ID:9OubR0lk0
*(‘‘)*「うりゃうりゃうりゃうりゃーーーーーー!!!!!」


一方、ヘリという少女は斧を肩に乗せ、走り去る蹄の音を必死に追いかけていた
足音は重く、進む一歩は走り幅跳びもかくやと言った距離。常人を遥かに超える速度で走っていたが、やはり馬の速度には敵わない


*(;‘‘)*「うおーーーーーーーーーーーー!!!!!速いですのーーーーーーーーーーーー!!!!!」


それでも健気に食らいつく彼女は、もう一種類の『蹄の音』に気付くのが遅れた


*(;‘‘)*そ「ですの!?」


(∪; ゚ω゚ )「おうおうおうおうおわんおうおうおうお!!!!!!」


側面から犬と


( ∵)「ハイヨーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

( ∴)「シルバーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


その背に乗った『超常保護対象』が

153 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:56:48 ID:9OubR0lk0




/フフ  A_A   ム`ヽ
/ ノ) ⊂ ・ ・⊃   ) ヽ
゙/ |  / (__ω)ノ⌒(ゝ._,ノ <ンモーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!
/ ノ⌒7⌒ヽーく  \ /
丶_ ノ 。   ノ、  。|/
`ヽ `ー-'´_人`ー'ノ           ※AAはイメージです
丶  ̄ _人'彡ノ
*    ノ  r'十ヽ/
\ /`ヽ_/ 十∨



*(;‘‘)*そ「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!??????」


暴走する牛の群れを引き連れ、此方に向かってきていたのだ


(∪; ゚ω゚ )「おおおおおおおおおおおおおお!!!??????」

*(;‘‘)*「ひぃいいいいいいいいこっちくんなですの!!!!!!!!」


これには怪力自慢も踵を返す他なく、彼女は文字通り『保身』に走る。背を見せたタイミングで、ビィは積み上げられた干し草の山に飛び込んだ
ビィが消えた事により、牛の誘導先はヘリへと移り変わる。マタドールにしては、随分と情けの無い姿であった


(∪; ゚ω゚ )「ゼッゼッ、ハァハァ……」

( ∵)b「ナイスラン」

( ∴)b「ナイスガッツ」


背中のビコとゼアが労いの言葉を掛けるが、ビィは少しも報われた気がしなかった
むしろ戻ったらこの作戦を言い渡したあのクソショボ眉毛の眉毛を噛み千切ろうと固く決意したのであった

154 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:57:53 ID:9OubR0lk0
時を同じくして、車を取りに走ったボンテージ・クイーンこと『ハロー』は


ハハ;ロ -ロ)ハ「……」

(´・ω・`)「よう」

(#゚;;-゚)「……」


『馬』で逃げ去ったと思われた『ショボン・バーデラス』と対峙していた
傍らには、リーダーから伝えられた回収目標の少女であるディの姿もある


ハハ;ロ -ロ)ハ「まんまト、分断させられたと言うワケカ」

(´・ω・`)「功を急いだなネエちゃん」

ハハ ロ -ロ)ハ「ふン。だが、ドク・オーツならまだしも、貴様が私に勝てる道理などあるまイ」

(´・ω・`)「どうかな」

ハハ ロ -ロ)ハ「すぐに思い知ルだろウ」


ハローは鞭をしならせると、二回、三回と地面を打ち鳴らす。生じた抉れが、その威力を証明していた
ショボンはディを下がらせると、後ろ手に隠し持っていた自身の『得物』を前に出す


ハハ ロ -ロ)ハ「それハ……?」

(´・ω・`)「おや、よくご存じの筈だぜ?アンタの商売道具でもあるだろうしな」


先端を輪の形に結んだ『投げ縄』であった


ハハ ロ -ロ)ハ「カウボーイ気取りカ?」

(´・ω・`)「オイオイオイ俺をどこの誰だと思ってやがる?大牧場の御曹司だぜ?正真正銘の『カウボーイ』さ」


円状に巻いた縄を右手で引き延ばして十分な長さを確保する。そして、『ヒュン、ヒュン』と横手に回転させた


(´・ω・`)「西部劇のガンマン風に言うなら……」

ハハ ロ -ロ)ハ「……」

(´・ω・`)「『撃ちな!!どっちが速いか勝負してみようぜ』っつー奴だ」

155 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 13:58:59 ID:9OubR0lk0
ハハ ロ -ロ)ハ「……見くびられタものダ」

(´・ω・`)「試してみないとわからねえだろ?」


鞭と縄。奇しくも似た性質を持つそれぞれの武器ではあるが、『用途』に歴然とした差がある
確かに縄は縛る、吊るす、結ぶと言った多種多様の機能性を持つ。しかし『人を痛めつける』事に特化した鞭のように、『これ』といった決定打はない
『無謀』だと、ハローはほくそ笑んだ。それは超人部隊の一員としての揺ぎ無い自信と、産まれながらの嗜虐性癖による高慢さによるものだった


ハハ ロ -ロ)ハ「でハ……貴方の父親と、同じ部位に……」


狙いはデミタスと同じく『頬』。目の前の憎き男が、苦痛で悲鳴を上げ、血を滴らせる姿を脳裏に浮かべただけで下腹部に『熱』が生じる


ハハ ロ∀ロ)ハ「傷をつけて差し上げましょウ!!!!!!」


興奮を燃料に、ハローは鞭を高々と振り上げた。その時――――


(´^ω^`)「アホめ」

ハハ; ∀ )ハそ「What a fuck!!?」


顔面が『ベチン』と叩かれ、メガネを落とす。予期せぬ不意打ちに、鞭の軌道は明後日の方向へと反れた
アンダースローで投げられた縄の結び目は、牛を捕まえるための『投げ縄結び』ではなく、根本を纏めた『硬結び』だった
ショボンの狙いは縄による『捕獲』ではなく、投擲による『目くらまし』だったのだ


ハハ;3 -3)ハ「はワワ、メガネメガネ……」

(´^ω^`)「かーらーのォッ!!!!!!!!!!!!!」

ハハ;3Д3)ハそ「あばばばばばばばぁぁああばばばば!!!!!?????」


露出の高いボンテージファッションが災いし、『スタンガン』は素肌に押し付けられた
筋肉は電流により強制的に収縮し、絶頂したかのように全身を痙攣させる
ショボンはスタンガンを放すと、銃口から立ち上る硝煙を吹き消す真似をして、尻ポケットという名のホルスターに仕舞った

156 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:00:07 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「サディストは煽り易くて助かる」


縄で身体をギチギチに縛り上げると、鞭を拾って茂みへと投げ捨てた
今までなら退治した後は放置で良かったが、ここは彼の実家。沙汰に頭を悩ませていると


(;'A`)「ショボン、無事か!?」


『無傷』ではあるが、焦った様子のドクが駆けつけてきた


(´^ω^`)「おおこの通りピンピンしてらぁ!!!!!!手伝ってくれこいつ親父に任せるから」

(;'A`)「マズいことになった」

(´^ω^`)「漏らしたのか?」

(;'A`)「ニダーが連れ去られた」


ショボンの顔から一瞬にして笑顔が消えた。ドクは自身のスマホを差し出すと、そこには


【 <ヽ ∀ >  】


車内にて気を失ったニダーの画像が写し出されている
彼にはビィ、ビコ、ゼアと共に牛舎にて『牛追い』の役目を任せていたのだ


(;´・ω・`)「別働隊かっ……!!」


限られた人数での『分断作戦』。地の利こそあったが、条件は彼方と『同じ』になる
真正面から目立つ形で現れた三人組は12シスターズ側のブラフであり、ショボン達はそれにまんまと乗せられてしまったのだ

157 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:01:09 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「ビィ達は?」

('A`)「……」


ドクのポケットがもぞりと蠢き


( ∵)「ゴエ……」


元気のないゼアが顔を覗かせる


('A`)「気を失った斧のガキと、こいつだけが牛に乗って戻ってきてな。俺もそれで異常に気付いた」

(#゚;;-゚)「……」


袖を引かれ、ドクはポケットからビコを取り出してディに差し出す
彼女は相変わらず無表情であったが、心底大事そうに胸へ抱きしめた


(;´・ω・`)「クソッ……悪い、俺の判断ミスだ」

('A`)「謝るな。今まで上手くやってけた方がどうかしてたんだ。それにまだ終わりじゃねえ」

(;´・ω・`)「……ああ、勿論だ」


ドクのスマホに送られたのは写真だけではない。短くメッセージも添えられている
『ホライゾンで待つ』。どの道、行先は変わらなかった

158 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:01:51 ID:9OubR0lk0
('A`)「それとだな……」


何かを言い籠り、チラリとディに目を向ける。ショボンはそれでドクの言わんとする事を察した


(;´・ω・`)「……親父か」

('A`)「……死にはしない傷だ。だが酷いのに変わりない」

(;´・ω・`)「……そう、っ?」


(#゚;;-゚)「……」


(´・ω・`)「ディ!!待て!!」


駆け出そうとしたディを咄嗟に引き止める。しようとせん事は既にわかっていた
だが、既に傷だらけの少女にそれを求められるワケがなかった


(;´・ω・`)「お前が背負う必要はない!!責任は吹っ掛けた俺にあるんだ!!」

(#゚;;-゚)「!!」

(;´・ω・`)「ディ……!!」


これまで見せた事ない力強い抵抗に、戸惑いながらも更に強く抑え込む。すると


(#∵)「ゴ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ エ ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !」

(;´・ω・`)そ「っ!?」


喋れない彼女の感情を代弁するかのように、ビコが雄叫びを上げた
耳を劈く声量に、思わず拘束の力が緩む。その隙にディはログハウスへと駆け出した

159 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:02:26 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「……」

('A`)「……」


放心するショボンの背中を、ドクは力強く叩く


('A`)「せめて見届けるのが俺らの『責任』だ。ケジメは親父さんに着けて貰おう」

(´・ω・`)「……ああ、わかった」


少女の後に続き、彼らもログハウスへと重い足取りで戻る
旅立ちから初めての、『敗北感』を胸に抱きながら

160 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:03:22 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



(;´・ω・`)「おy」

(#´・_ゝ・`)「テメェ!!!!!!!」


リビングに入るや否や、血に染まったデミタスがショボンの胸倉を掴んで壁に押し付ける
ドクから『頬に酷い裂傷がある』と聞いていた物の、生乾きの血の下にはそれらしい傷は無い。代わりに


:(# ;;- ):「……っ」


頬に新たな傷が生まれたディが、傷口を抑えて蹲っていた


(#´・_ゝ・`)「どういう事だ……誰がこんな真似しろっつった!!」

(;´・ω・`)「……他でもない、その子だ」

(#´・_ゝ・`)「っ……」

(;´・ω・`)「親父……」


デミタスはショボンを突き放すと、自身の治療の為に使ったのであろう救急箱を引っ掴みディに駆け寄る


(#´・_ゝ・`)「……ニダ坊は?」

(;´⁻ω⁻`)「……連れ去られた。ビィとゼアも」

(#´・_ゝ・`)「そうか……見せなさい」

(# ;;- )「……」

(;´・_ゝ・`)そ「っ!?おい!!」

161 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:04:03 ID:9OubR0lk0
二人は最初、デミタスの反応はディの傷が塞がっている事に対しての驚きだと思ったが


(;∵)「ゴエッ!!ゴエッ!!」


ビコの喚き声と、クタリと力のないディを見て只事ではないと悟る


(;´・ω・`)「ディ!?」

(;´・_ゝ・`)「彼女を拾ってからこの症状は!?」

(;´・ω・`)「無かった……脈はあるな!!ドク!!」

('A`)「ああ、すぐ発とう。親父さん、迷惑を掛けたな」

(;´・_ゝ・`)「待て!!すぐに医者を呼ぶ!!」

(#∵)「ゴエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」

(;´・_ゝ・`)そ「うわっ!?」

('A`)「病院と警察がどうしても嫌いだそうで」

(;´・ω・`)「回復の当てがあるなら『スリー・ドット』しかない……ドク!!あの三人を詰め込め!!」

('A`)「オーライ。親父さん、手伝ってくれ」

(;´・_ゝ・`)「っ……」


『行かせていいのか?』と、迷いが生じた。伝説の地を目指したとしても、間に合わないかもしれない
その上、彼らの友人が得体の知れない組織に連れ去られている。ここから先は大人と警察と医師の領分では無いのだろうかと
だからこそデミタスはドクの要求にこう応えた


(;´・_ゝ・`)「……わかった!!」


大人であるからこそ、『大人の手間』を痛いほど知っている。警察はすぐ動いてくれるかわからない。医師はディを治療できるかどうか定かではない
そこに到るまでの時間と手続きは、『手遅れ』というバッドエンドに繋がり兼ねない。だったら、危険を承知で迷いなく突き進む息子たちに賭けた方が良いのではないか
親として無責任な考えである事は重々承知している。だが、子の想いと行動を信じて後押しするのもまた親の責務なのだ

162 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:05:18 ID:9OubR0lk0
準備は十分も掛からず終わる。後部座席にはロープで拘束した『交渉材料』を三人
二列目の座席にディを寝かせ、転げ落ちないように座高を荷物で埋める


('A`)「オムライスまでは?」

(;´・ω・`)「休憩なしで三、四時間って所だ……クソ、追う側に回るとはな」


運転席にショボンが座り、シートベルトを締める。最後に父親に挨拶をしようとパワーウィンドウを開けた


(;´・ω・`)「親父、行ってくる!!」

(´・_ゝ・`)「待て!!」

(;´・ω・`)「なんだよ急いでん……」


ログハウスからデミタスが持ち出した物を見て絶句する
凹凸が限りなく少ないシンプルかつ漆黒の銃身と、三十二連の『ドラムマガジン』
映画、『エクスペンダブルズ』でも活躍したフルオートショットガン『AA—12』であった


(´・_ゝ・`)「持ってけ」

(;´・ω・`)そ「持ってけねえよアホか!!!!!!扱えるわけねえだろそんなもん!!!!!!」

(´・_ゝ・`)「安心しろ。非殺傷弾だ」

(;´・ω・`)「そういう問題じゃ……無理やり詰め込むんじゃねえ痛ぇよハゲ!!!!!!」

(´・_ゝ・`)「お前もいずれ禿げる」

(#´゚ω゚`)「やめろや!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


窓越しに無理やり突っ込まれ、なし崩し的に持っていかざるを得なくなる
デミタスは最後に息子の肩を掴み、今までにないほど真剣な眼差しを向けた

163 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:05:53 ID:9OubR0lk0
(´・_ゝ・`)「ニダ坊とビィ、ゼアを取り戻して、必ず嬢ちゃんを送り届けろ」

(´・ω・`)「わかってる」

(´・_ゝ・`)「それだけじゃねえ。必ず無事に帰ってこい。それで初めて『完全勝利』だ」

(´・ω・`)「言われるまでもねえよ。なぁドク!!」

('A`)「当然」

(´^_ゝ^`)「……よし、行ってこい!!」


力強い後押しを受け、ショボンはアクセルを踏む
乗せる人数は増えたが、静かになった車内。バックミラー越しに父親の姿を確かめると


(´・_ゝ・`)「……」


高々と拳を掲げ、激励を送っていた―――――

164 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:07:39 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



<ヽ`∀´>「……それで」


男に生まれたからには、一度は『ハーレム』に憧れる。彼も例外では無く、多感なジュニアハイスクール時代には学友と妄想を馳せらせたものだ
しかし成長するにつれ、自身の身の程を知った今となっては、限られた時間と脳のリソースを『叶わぬ夢』に注ぎ込む事は無くなった
しかし人生とはわからぬもので、意外な形で『妄想』は現実となった。良いか悪いかは別として―――――


<ヽ`∀´>「綺麗どころが男を囲んで、一体何をおっ始める気ニカ?」


『多勢の女性に囲まれる』という願いが叶ったのは事実なのだから


(゚、゚トソン「……ホステルを観たことは?」

<ヽ;`∀´>「えっ、ちょ、ホントやめてマジで」

(゚、゚トソン「冗談です。目的さえ達成すれば、無事にお帰しします」


キツいジョークに愛想笑いを返し、ニダーは窮屈そうに身を捩った
牛舎で気を失い、目覚めた時には既にこの『廃工場』の中で拘束されていた
椅子に座らされ、両腕には手錠。脚には足枷が掛けられており、一歩も進めそうに無い
そもそも、抜け出せた所で『超人ポンコツ集団』から逃げられるとは限らない。ニダーは早々に脱出を諦め、迎えを待つことにした

165 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:08:03 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「手錠は何の為にある?」

(゚、゚トソン「はい?」


キャスターが壊れた事務椅子に座り、クルクルと回っていた『ニンジャ』が手を上げる
このセリフはジパング発祥のコミックからの引用であり、彼女にとっては馴染み深いものだろう


从 ゚∀从「逃がさない為にあるんじゃあない!!屈服させる為にある!!」

<ヽ`∀´>「知ってるニカ?」

从 ゚∀从「へへ、当然さ。『ジョジョ』だろ?」

|゚ノ ^∀^)「何それ」

从 ゚∀从「ジパングで一番面白いコミックだよ。今度貸してやるぜ。百巻以上あるけどな」

|゚ノ;^∀^)「それだけ多いと幾ら面白くても読む気が失せるわね……」

166 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:09:40 ID:9OubR0lk0
(゚、゚トソン「そのコミックが何か?知識を披露したいだけですか?」

<ヽ`∀´>「いや、アンタ方の思惑を表してるようだなって思っただけニダ」

(゚、゚トソン「ふむ……ええ、そう言われると間違ってはいない気がします」


今の状況は、ショボンが自宅の牧場を使った作戦と酷似している
これまで単独での待ち伏せと襲撃が多かったが、今回は地の利と数的有利を揃えての迎撃だ。攫われた自分と


(∪#^ω^)「ウウウウウ……」


鬱陶しそうに首輪を後脚で弄るビィ


川*д川「はぁああああああああんかわいいぃぃぃいいいいいい!!!!!」

(;∴)ノシ「ゴエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!」


そして『ナード』という言葉を体現したかのようなオタク女に強烈な頬擦りをされ続けるゼアを餌に
ショボン、そして最大の脅威であるドクを『屈服』させる為に用意された舞台なのだ


|゚ノ ^∀^)「心配しなくても殺しはしないわよ……」

<ヽ`∀´>「銃を弄りながら言われても説得力がないニダ」

|゚ノ ^∀^)「ウチらは別に殺し屋じゃないしねー。弾もゴム弾だから『死ぬほど痛い』程度で済むし」

<ヽ`∀´>「そりゃお優しい。所でブンマルでそこのニンジャに手裏剣やら鉤爪でぶっ殺されそうになった事に対する弁明はあるニカ?」

从 ゚∀从「乙女だから」

<ヽ`∀´>「なんでもかんでもそれで男が許すと思うなよ?」

167 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:10:46 ID:9OubR0lk0
从'ー'从「ご安心を〜。例えぇ、致命傷を負ったとしてもぉ、私がちゃーんと治して差し上げますからぁ〜」


背後からすり寄ってきた女が、ニダーの耳元に顔を寄せて吐息と共に囁きかける。ゾワリと鳥肌が立ち、思わず仰け反った


<ヽ;`∀´>「ヒィィ世界で一番信用できないタイプの女!!」

|゚ノ ^∀^)「ブフッwwwwwwww」


ワザとらしい吹き出し笑いを聴いて、ニダーの肩に女の指が力強くめり込む


<ヽ;`∀´>そ「いたた痛い痛い!!治療とは真逆のことしてる今!!!!」

从^ー^从「フフフ〜」

<ヽ;`∀´>「助けてビィ!!」

(∪#^ω^)「わんお……」

<ヽ;`∀´>「露骨に嫌そうに鳴かないで!!」

(゚、゚トソン「アヤカ、その辺で。そろそろ彼らも到着するようですし、貴方は下がっていてください」

|゚ノ ^∀^)「ウチは別に構わないけどねー」

从'ー'从「はい〜、お言葉に甘えます〜。ロクに狙いも定められない×××の流れ弾が此方へ飛んでこないとも限りませんし〜」


甘ったるい声色はそのままに、差別用語を投げつけて『アヤカ』は工場の奥へと歩き去る
レモナは軽く聞き流したかのように見えたが、右手はいつでもその後ろ姿を撃ち抜かんと、ホルスターに収まる銃のグリップに触れていた

168 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:12:34 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「怖い……」

(゚、゚トソン「お気になさらず。いつもの事でして」

<ヽ;`∀´>「心労をお察しするニダ」

(゚ー゚トソン「フフ、いえ。楽しい職場ですよ」


冷徹だと思っていた美女が微笑みで表情を崩す瞬間というものは、時と場合がどうあれ男ならグッと来るものがある
胸と股間に込み上げた熱を堪えて、ニダーは気を引き締め直した。『ストックホルム』の二の舞だけは絶対に避けねばならぬと


<ヽ`∀´>「……超常保護対象と、言っていたニダね。アンタらの仕事って、UMA版動物愛護団体ニカ?」

(゚、゚トソン「概ねその通りです。UMA、都市伝説、怪異等、世界の在り方を変えてしまいかねないモノを『超常保護対象』と呼び、我々はそれらを世間の明るみに出ないよう保護、及び隠蔽を施します」

<ヽ`∀´>「どちらかと言えば……MIB?」

|゚ノ ^∀^)「そっちの方がしっくり来るわね。もっとも、あんな暑苦しいスーツ姿はゴメンだけど」

<ヽ;`∀´>「いや……」


ニンジャとか格闘ゲームキャラのコスプレするよりかはマシじゃないかと言いそうになったのを堪える

169 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:14:22 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「……悪用を目的にした組織では、無いニカ?」

(゚、゚トソン「真逆です。『悪用させない為に』我々は存在しています。保護も一時的な物で、ある程度のデータを取り終えれば安全な棲家へと返します。有名な例で言えばネッシーやビックフッドですね」

<ヽ;`∀´>「実在するニカ?」

|゚ノ ^∀^)「まぁウチらが担当したワケじゃないけどね。産まれてないし」

<ヽ;`∀´>「……Jesus」

(゚、゚トソン「驚くべきことでも無いでしょう?あなた方は既に彼らと遭遇し、ここまで旅をしてきたのです」

<ヽ;`∀´>「……」


世界の裏側を覗いている気分であったが、それ以上の不安が湧き上がってくる。『どうして敵対している筈の相手にここまで正直に話してくれるのか』
彼女たちは『殺しはしない』と言った。その言葉に嘘があるとは思えない。だが、超常保護対象を世間から『隠蔽』しているというのなら、自らの素性を打ち明けるべきではない


<ヽ;`∀´>「……関わった人間は、どう処理してきたニカ?」

(⁻、⁻トソン「……皆さん、大抵はそこに行きつきます。彼らの末路は主に三つ」


一つ、人差し指を立てる


(゚、゚トソン「記憶処理を施し、これまでと同じく平穏な生活に戻る」


二つ、中指を立てる


(゚、゚トソン「優秀な能力持ち主……例えば、超常保護対象『そのもの』や、使役している場合は、組織の傘下に加わってもらう」


三つ、薬指を立てる


(゚、゚トソン「超常保護対象の使用目的が悪質だった、もしくは見逃せない犯罪歴を持っている場合、然るべき機関へと引き渡す。以上です」

170 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:15:13 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「……僕たちは、どれに該当するニカ?」

(゚、゚トソン「あなた次第ですよ、ニダー・コクソン。時間も限られていますし、今度は此方から質問させて頂きます」


トソンの両手がニダーの頬を掴む。一見すると煽情的なシーンだったが、真夏だというのに氷のように冷たい指に
背筋まで鷲掴みにされたかのような悪寒が身体中を駆け巡る


(゚、゚トソン「『アレ』の正体を、『女の子と犬』を引き連れている理由を、そしてあなた方の目的を、正直に話してください」

<ヽ;`∀´>「……」


鋭い視線に射抜かれ、ニダーは懸命に思考を巡らせた。『大した理由が無いからだ』
確かにブンゲーで『ショボンの兄の手がかりを探す』という目的が新たに発生した。しかしニダーにとってそれは副次的なモノに過ぎない
『行きたいから』『見たいから』。旅立ったのにそれ以上の理由は無いし、ディやビィ、ビコとゼアと出会ったのも成り行きに過ぎない
計画的に連れ去ったワケでも無く、悪意と欲望を以てセブンクロスへと向かっているワケでも無い。それを正直に伝えた所で、彼女たちは納得するだろうか


<ヽ`∀´>「……」


いや、ただ一つ明確な目的は残っていた。あのモーテルで奇妙な拾い物をした瞬間から
成り行きであろうとも、追われる身になろうとも、三人で成し遂げようと決めた目標があった


<ヽ`∀´>「『セブンクロス』に、彼らを送り届ける」

(゚、゚トソン「……『シャキン・バーデラス』の指示で、ですか?」

<ヽ`∀´>「……アンタら、悪い人じゃ無さそうだから正直に話すニダ。『それもある』」

|゚ノ ^∀^)「ふぅん……?」

<ヽ`∀´>「だけどそれ以上に、僕らが『そうしたいから』。彼らが助けを求めたのはアンタらじゃなくて、僕らニダ」

从 ⁻∀从「……」

<ヽ`∀´>「聞き飽きた説得かもしれないし、そもそもあれだけ派手に抵抗して今更何をとも憤慨するかもしれない。だけど、僕にはこれ以上の言い訳はない」

171 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:16:33 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「そして……出来る事ならば、僕らにそれを達成させて欲しい。罰なら後で幾らでも受ける。だから……」


(゚、゚トソン「もう結構です」


顔を放され、ニダーは息を大きく吐いた。その瞬間


<ヽ;`∀ >・'.。゜「うぐっ……!!」


胸板を、『ヒールの先端』が強く抉った。椅子は後ろへと倒れ、受け身も取れぬまま後頭部を強く打つ


从;゚∀从「何やってんだよトソン!!」

|゚ノ ^∀^)「黙って」


ハインの抗議は、眉間に突き付けられた銃口によって遮られる


:<ヽ; ∀ >:「アガッ……」

(゚、゚トソン「『聞き飽きた』。ええ、その通りです。命乞いも、身の潔白も、私にとっては全て戯言に過ぎない。いっその事、悪逆の限りを暴露してくれた方がよっぽど信頼できました」

:<ヽ; ∀ >:「っ……」

(゚、゚トソン「信じれば足下を掬われるのがこの世界です。だったら、正当性を聞き入れるよりも最初から最後まで疑ってかかった方が余程安全ですからね」

:<ヽ; ∀ >:「っ、なら、どう……して……?」

(゚、゚トソン「『どうして弁明の余地を与えたか』、ですか?フフ、別に大した理由はございません。ええ、ございませんとも」


ヒールが倒れこむニダーの頬に突き刺さり、皮膚を捩じる。苦痛に呻く声が、廃工業に広く響き渡った


(^、^トソン「ただの『憂さ晴らし』ですよ。ミスター・コクソン」

:<ヽ; ∀ >:「ぐっ、が……」

(゚、゚トソン「まだ何か囀りますか?」

:<ヽ; ∀ >:「っ……Fuck You……Bitch……!!」

(^、^トソン「お里が知れますね。シタラバ人を騙る劣等民族が」

172 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:17:11 ID:9OubR0lk0
从#゚∀从「っ……おい!!やりすぎだぞ!!」

|゚ノ#^∀^)「黙ってって言ってるでしょ!!」

从#゚∀从「黙れるかよ!!」


額に押し当てられた銃口に、怯むどころか一歩踏み出す。怯んだのは優位に立つ筈のレモナの方であった


从#゚∀从「俺にはお前らほどのキャリアはねえ!!頭だって悪いし、騙されて割りを食う事だってある!!でもなぁ!!人として何が正しくて、何が間違ってるかくらいの区別がつく!!」

(゚、゚トソン「はて……?私は間違っていますか?」

从#゚∀从「ッ……!!」


キョトンと首を傾げるトソンに対して、レモナは唇をキツく結ぶ


从#゚∀从「そりゃ確かにそいつらには散々な目に遭わされた!!だけどよ、その気なら命だって奪えたはずだ!!俺も、お前らも、他の奴らだってそうだ!!見逃されてんだよ俺達は!!」

|゚ノ#^∀^)「それが信用に値する行為とでも言いたいの!?ヒートは大怪我負ったのよ!?」

从#゚∀从「でも殺されちゃいねえ!!こいつらはただ『防衛』しただけだ!!俺が言えた義理じゃねえけど、最初から素直に協力を申し入れれば大事にならなかったかもしれねえ!!」

(゚、゚トソン「ハァ……常日頃から頭が悪いと思っていましたが、まさかここまでとは」

从#゚∀从「ああそうさ!!だけどな、真摯な人間の言葉を聞き分けられないほど愚かじゃねえんだよ!!レモナ!!お前はどうなんだ!!」

|゚ノ#^∀^)「っ……人を信じた瞬間、後ろから撃たれた絶望がアンタにわかる!?見返りに身体を要求された瞬間の不快感は!?子どもに悪魔でも見るような眼を向けられた瞬間は!?」

从#゚∀从「わかるかよ!!関係ねえだろこいつらには!!俺に取っちゃ今のお前らの方が歪んで見えるぜ!!」

(゚、゚トソン「レモナ。泥の味を知らぬ者に言って聞かせるなど、時間と労力の無駄です」

|゚ノ; ∀ )「……」

(゚、゚トソン「足手まといになるようならば、暫く眠ってもらう他ありません。さ、早急に処置を」


銃口から、レモナの震えが伝わってくる。トソンからは見えないが、目には涙が浮かび、唇の端から一筋の血が垂れる
トソンとは違い、迷い揺れている。ハインはそれ以上言葉を重ねることなく――――


从#⁻∀从「……」


ただ静かに、目を瞑った

173 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:19:11 ID:9OubR0lk0
(゚、゚トソン「レモナ……?貴女も、私を失望させるのですか?」

|゚ノ; ∀ )「違う!!そんなワケない!!」

(^、^トソン「そうですよね。貴女だけは、ずっと私の味方でいると仰ってくれたのですから」

|゚ノ; ∀ )「……」

(^、^トソン「さぁ、引き金を。仕事が終われば、気の迷いが生じたハインに休養と『研修』を与えましょう。そしてこれまで通りっ……!?」


顔を踏みつける足が、段差を踏み外したかのようにバランスを崩す。確かめると―――


<ヽ#`∀´>「ぺっ……不味……」


『噛み折ったヒールを吐き出した』ニダーが、怒りの眼差しで見上げていた


(゚、゚トソン「おやおや、口も悪ければ行儀も悪いのですか?」

<ヽ#`∀´>「不愉快ニダ」

(^、^トソン「あら、ようやく本性を現しましたか。それで?何が不愉快なのでしょう?」

<ヽ#`∀´>「ダチの言葉すら受け入れない、テメーの甘え切った性根ニダ」

(^、^トソン「……お門違いでは?私は超常保護対象の保護の為、引いては人類の平穏と安寧の為に最善を尽くしているまでです。あの日、あなた方が素直に我々の要求を、何も言わず受け入れて貰えれば、我々もこうして揉めずに済んだ」

<ヽ#`∀´>「いいや、僕達の判断は……ドクの抵抗は、間違っていなかった。ダチにダチを撃たせるような真似する奴に、ビコとゼアを……ビィとディを任せられるワケが無い」

(^、^トソン「ほぅ?それで?」

<ヽ#`∀´>「アンタがこの仕事に就いて、どれだけ辛い目に遭ったのかは僕には想像もつかない。もし同じ境遇を味わったのなら、人を信じられなくなるかもしれない……でもな」


|゚ノ; ∀ )「……」

从 ⁻∀从「……」


<ヽ#`∀´>「少しは可笑しいと思えよ!!仲間が仲間に銃を向ける、今の状況を!!!!」

174 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:20:38 ID:9OubR0lk0
(^、^トソン「……レモナ、まだですか?」

|゚ノ; ∀ )「……」

(^、^トソン「レモナ、お急ぎを」

|゚ノ; ∀ )「……」

(^、^トソン「聞こえているのでしょう?レモn」



「そこまでにしとけっぽ」



工場の扉が、耳を劈くような軋みを上げて開かれる。ニダーは差し込む太陽の光に目を眩ませたが


<ヽ`∀´>「……ご到着、ニダか」


よく見知った姿は、しっかりと捉えていた


(´・ω・`)「……」

('A`)「空気おっも」


二人は工場の中ほどまで進むと、ドクは両手に抱えていたゴシックファッションの少女二人を
ショボンは背に負ったボンテージ・クイーンを。それぞれ乱雑に落とす


⌒*リ;´・-・リそ「痛いの!!」

*(;‘‘)*「レディの扱いじゃないですの!!」

ハハ;ロ -ロ)ハ「お尻打ちましタ……ヘイ、ヒート!!解いテ下さイ!!」

ノハ;゚⊿゚)「お、おう……」



ぶつくさと文句を言う三人の縄を、工場の外でオレンジの女と見張りに就いていたヒートが解きに掛かる
工場内の会話が聞こえていたのか、気まずい空気に戸惑いを隠しきれてはいなかった

175 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:21:46 ID:9OubR0lk0
(*‘ω‘ *)「そこのボクの言う通りっぽ。どうしてもと言うなら、レモナじゃなくアンタがケジメするべきっぽ」

(^、^トソン「何故です?私と彼女は一心同体。ならばどちらが手を下そうが一緒じゃないですか」

(*‘ω‘ *)「アタイにはそうは見えないっぽ。一心同体と言うのなら、レモナと同じく苦しんでいる姿を見せたらどうっぽ?」

|゚ノ; ∀ )「やめて!!トソンは何も悪くないの!!」

('A`)「ようショボン、こういうシリアスな場面に立ち会うと腹が痛くならねーか?」

(´・ω・`)「わかる。そういうのは部外者のいないところでやって欲しい」

<ヽ`∀´>「いや空気読むことを覚えて?頑張って?」

(#´゚ω゚`)「お前が連れ去られへんかったらこんな場面に遭遇せんでも良かったんやろがーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「ごめんて!!!!!!!」


(*‘ω‘ *)「……」


('A`)「あ、ごめん続けて?」

(*‘ω‘ *)「無茶言うなっぽ」

(´・ω・`)「まー、各々言いたい事はあるだろうがよ……」


ショボンはバッグを広げながらトソン達へと近づいていく。レモナは左手でもう一丁の拳銃を抜いて向けた
彼は脅しに臆することなく歩き進め、三メートルほど手前で立ち止まった


(´・ω・`)「取引と行こう。ここに俺らの目指す先『スリー・ドット』の資料と、ビコ、ゼア、ディの特性についてまとめたデータがある」

(゚、゚トソン「……それで手を引けと?」

(´・ω・`)「車内で連中から色々と聞いたよ。別に危ない……いやまぁオレンジぶつけられたり鞭でシバかれそうになったりしたけど……危ない連中じゃねーか」

<ヽ;`∀´>「ちょっと我慢して」

(´・ω・`)「あーあーうるせえボケナス。とにかく、あいつらの存在を公にせず丸く収めれば納得すんだろ?この情報と引き換えに、後は俺らに任せて欲しいんだよ」

176 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:23:31 ID:9OubR0lk0
(゚、゚トソン「情報はありがたく頂戴致します。ですが、その要求は飲めません」

(´・ω・`)「わがままし放題か????????」

(゚、゚トソン「あなたの行動がシャキン・バーデラスの指示による物だとするならば、自由に行動させるにはリスクが伴います。彼に悪意がない事を証明できないでしょう?」

(´・ω・`)「あー……まぁ、身内贔屓になっちまうかな。居場所もわかんねえし、そりゃ本人に訊いてくれとしか言えねえ。そこで転がってるアホみたく虐めたとしても、出てくるのは喘ぎ声だけだ」


⌒*リ´・-・リ「キショイの!!」

*(‘‘)*「ドン引きですの!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「虐げる価値も無イゴミクズ!!」

('A`)「仮性包茎!!」


(#´゚ω゚`)「るせーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!ドクてめえ後でケツの穴増やすからな!!!!!!!!!」

从;⁻∀从「なんか気ぃ抜けるんだけど……」

(゚、゚トソン「ふぅ……困りますね。聞き分けてくださいよ。あなた達の領分では無いのですよ?」

(´・ω・`)「それを決めるのはお前じゃねえし、誰にも決める権利はねえ。それと、こっちも急いでんだよ。ディが危篤でな」

<ヽ;`∀´>「本当ニカ!?」

(´・ω・`)「ああ、ディの傷跡は恐らく『キャパシティ』を表してる。だから帰る必要があったんだ。役目を、終えようとしているんだ」

(゚、゚トソン「何を勝手に納得しているのかは知りませんが……此方にはまだ人質が残っているのですよ?聞き入れないと言うならば……」


トソンは懐から手帳サイズに折りたたまれた器具を取り出し、軽く振って展開する
バネ仕掛けが作動し、瞬く間に『弓』の形へと変貌を遂げた。続けて、胸ポケットのボールペンを引きぬき、三回続けてノックを行う
するとこれも特殊警棒のように勢いよく伸び、即席の『矢』へと変化する。それを番えると、ニダーの頭へと向けた


(゚、゚トソン「少々の犠牲を覚悟して貰わねばなr(´・ω・`)「射てよ」最後まで聞いてくださいません?」


<ヽ`∀´>「躊躇いなさ過ぎて引く」

177 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:24:19 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「『人々の平穏と安寧を守る』……ご立派なキャッチコピーだが」


ショボンはいつものようにタバコを取り出し、火を着ける。最早レモナは、彼の一挙手一投足に警告すらしない
『無気力』が似合う姿を横目に眺めながら、いつものペースを崩さずに語り掛けた


(´・ω・`)「今この場に置いて、アンタが一番平穏と安寧に程遠い真似してんぜ?」

(゚、゚トソン「……そんなこと、ない、ないですよ」


誰の目にも明らかなほど、狂った女は動揺を見せた。ニダーは彼女の人格を責めたが、これほどの効力は無かった
対し、女を手玉に取る事に長けたショボンはトソンの『プライド』を突く発言をした
幸いにも、ホライゾン到着まで『三時間』という猶予があった。捕らえた三人組から情報を聞き出すには充分な時間であり
それはショボンが得意とする『会話による心理戦』の武器を調達するまたとないチャンスであった


(´・ω・`)「どうした?早く射て。アンタの気は多少晴れるだろうが、後に残されるのは人を殺した後悔と毎晩枕元に立つニダーの怨霊だ。平穏と安寧から最も程遠い場所で一生を過ごす覚悟があんのなら、早く射てよ」


人格が破綻していようとも、人は誰しも譲れないプライドを持つ。トソンにとっては仕事に対する姿勢だ
そこを攻めれば、如何に頑固な者でも多少なりの心の揺らぎが生じる。『平穏』『安寧』。この二つのキーワードを繰り返し、その揺らぎを大きくしていく
加えて、内輪揉めを起こしている今の状況は、ショボンにとって強く働いた。互いに違う主張の衝突。つまりは相手を『説き伏せたい』と考えている者が、向こう側の組織に少なからず存在する
『味方』が多い今この時こそ、この旅に置ける最大の刺客を退ける『好機』なのだ

178 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:25:10 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「それとも、その役目もお友達に代わってもらうか?」

(゚、゚トソン「……れ」


一つ、この作戦には大きなリスクがある


(´^ω^`)「いいじゃん代わって貰えって!!どうせテメーじゃ何も出来ねえんだから、おんぶに抱っこしてもらえよ!!そんでアンタは安全な場所から人々の『平穏と安寧』を眺めて満足してりゃ良いじゃねえか!!」

(゚、 トソン「黙れ……」

(´^ω^`)「俺ら三人をぶっ殺してめでたしめでたし!!人々は何も知らず『裸の王様』によって与えられたふつーの生活を末永くアホみたいに過ごしましたってな!!ギャハハハハハハ!!!!!!!」


心の揺らぎが、奥底のマグマを引き起こし――――




(゚Д゚#トソン「黙れぇぇええええええええええええ!!!!!!!」




凄まじいヘイトが、ショボン自身へと向かってしまう事だ

179 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:26:44 ID:9OubR0lk0
矢尻の先はショボンの顔面へと向けられ、張り詰めた弦が解き放たれる
携帯式の弓とは言え、初速は毎秒六十メートル近い。たった数歩分の距離から躱すのは、余程の事がなければ不可能だ


『だからショボンは賭けに出た』


(;´^ω^`)そ「ごるぱァ!?」


側面から『空気』による強烈なタックルが、彼の身体を押し倒す
紙を掠めた矢は背後へと通り過ぎ、斜線上に居たドクを目掛けて真っ直ぐに飛ぶ


('A`)「あぶねっ」


それを何なく掴んで止めたドクは、驚きで目を見開くヒートに見せつけるかのようにクルクルと指先で回した


<ヽ;`∀´>「あれは……」


ニダーの視界は確かにショボンと、その周辺を捉えていた。そこに、彼を救った『存在』は見えていなかった
しかしその『正体』は知っていた。牛舎で彼とビィ達を連れ去ったのは、残された『12シスターズ』のメンバーだったからだ
意図的に存在感を失くす能力。そこに居てもまるで空気のように『気にならない』、これまでで一番恐ろしい能力者の一人がショボンを救った


ξ#゚⊿゚)ξ「ほんっ……とうに、他力本願のクズなのね!!アンタ!!」

(´^ω^`)「いやぁ面目ないガハハハハハ!!!!」


アラビアンな踊り子の衣装に身を包んだ女が、忌々しく舌打ちをしながら身体を起こす。ショボンの『賭け』。それはトソンの『仲間』に救って貰う事であった
一部過激なメンバーがいるものの、根っからの悪人でもなく、むしろ正義に準して行動している組織であるならば
例え競争相手であろうとも、危機が迫れば『助けに入る』。意見の衝突による内輪揉めの最中なら尚更可能性は跳ね上がる
ショボンは『博打』に見事勝利し、命の危機を回避した。それだけに止まらない。トソンは切ってはいけない口火を『切ってしまった』

180 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:27:39 ID:9OubR0lk0
('A`)「返すぜ。そらよっ」


ドクは受け止めた矢をダーツのようにトソンへと投げ返す。当たった所で小さな怪我をするだけで済む速度のそれを


|゚ノ;^∀^)「ッ!?」


冷静さを欠いたレモナが撃ち落とした。視線と意識が逸れた瞬間を


从#゚∀从「おらっしゃあ!!!!!」

|゚ノ;^∀^)「ぐっ!?」


『対立する者』は見逃さない。銃身を掴んで捻ると、肩の関節を極めて床へと押し倒した


(゚、゚;トソン「レモナッ!!」

(∪#^ω^)「わんお!!」


新たな矢を引き抜こうとしたトソンは、側面から襲いかかってきた『犬』を反射的に避ける
鬱陶しがっていた首輪と縄は解かれ、背中には


( ∴)「ゴエエエエエエエエエエッッハアアアアアアアアア!!!!!!!!!」


オタク女の魔の手から逃れたゼアが雄叫びを上げていた

181 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:34:24 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「はわわ」

「落ち着いてください、今解放しますから!!」


またもや『空気』がニダーに語りかけると、手脚の錠が音を鳴らして外れる
彼の身体を起こしたのは、ショボンを救った女とよく似た容姿の女。強いて違いを挙げるとするならば
表情は柔らかく、片割れと比べて一部分が『豊満』である事だろうか


ζ(゚ー゚;ζ「さぁ、逃げて!!」

<ヽ;`∀´>「あ、あり、ありがとうございますニダ!!」

ζ(^ー^;ζ「いえ、貴方の言葉、心に響きました。御武運を!!」

(゚、゚#トソン「デレ!!貴女……逃すか……っ!?」


今度は飛来した『オレンジ』が、トソンの弓を叩き落とす。邪魔をした本人は肩を竦めてため息を吐いた


(*‘ω‘ *)「行けっぽ。アタイらの負けだ」

('A`)「良いのか?」

(*‘ω‘ *)「あんな立ち回り見せられちゃ、やる気も失せるっぽ」

('A`)「そんじゃ、遠慮無く。じゃあなストリートファイター」

ノハ#゚⊿゚)「フン!!貴様とはいずれ決着を着けてやる!!」

('A`)「おお、思ったより懲りてなくて何よりだな。まぁ精々精進しろや。トンズラすんぜテメーら!!」

(´^ω^`)「おおよ!!サンキューなお姉ちゃん!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「うるさい人でなし!!」

(∪^ω^)「わんお!!」

( ∴)「ヒンチチ!!!!!!!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「やっぱ待ちなさいそこの超常保護対象ォ!!!!!!!!」

182 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:35:21 ID:9OubR0lk0
数日間に渡る争奪戦はここにて終わり、ショボン一行は廃工場を後にする
最後に、ニダーだけが背後を振り返った。トソンは絶望したのか、その場にへたり込んで項垂れていた


('A`)「……こっから先はあいつらの問題だ。俺らの出る幕じゃねえ」

<ヽ`∀´>「……わかってるニダ。時間を取らせて悪かった」

('A`)「謝罪ならディに言うんだな。急ごう。恐らく猶予はあと少しだ」


エンジンを掛けっぱなしの車に乗り込むと、間髪入れずに出発する
後部座席では数時間ぶりの再会を果たしたビコとゼアが歓喜で踊り、『舞台』になっていたビィが鬱陶しそうに振り落とした


<ヽ;`∀´>「ディ……」

(#゚;;- )「……」


ディは目を覚ましてはいるが、身体を起こす気力は残っていない。顔色も青白に近づいていた
それでも、ニダーの顔の『傷』を請け負おうと手を伸ばす。彼はその手を優しく握ると、そっと彼女の腹の上へと戻した


(´・ω・`)「ここからセブンクロスの『入り口』まではすぐだ。だが肝心のスリー・ドットの正確な位置はまだ掴めてねえ」

<ヽ;`∀´>「……間に合うニカ?」

(´・ω・`)「少なくとも『案内役』は元気いっぱいだ。あとは俺らの『脚』次第だろう」

( ∵)b「ゴエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!」

( ∴)b「ゴエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!」


二体は『任せろ』と言わんばかりに親指らしきものを立てる
それだけで、ニダーの不安は多少解消された


('A`)「さぁ、伝説を拝みに行こうぜ」


気合の籠もった一声に、二人は強く頷き返す
冒険の『ゴール』が聳える山々は既に視界に捉えていた―――――

183 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:36:26 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



シタラバと、隣国『ソーサク』の国境をなぞるように聳え立つ山脈、『セブンクロス』
乾ききった空気と土、そして水の入手手段の厳しさから、別名『拒絶の山々』と呼ばれるその場所は
細々とした一本道が延々と続くだけで、ソーサクの国境沿いまで街らしき街は存在しない


(´・ω・`)「強行軍だな……」


ビコとゼアの知らせで車を停めた時には既に、辺りは夕焼けに染まっていた
本来ならばキャンプを張って明日に備えるべきだが、ディの容態がそれを許さない


('A`)「夜の山を歩いて進むとか正気じゃねえな……ニダー、本当に大丈夫か?」

<ヽ`∀´>「問題ないニダ。バランス感覚なら僕が一番優れてるし、キミらはキミらで役割がある」


ニダーの背中にはディが背負われており、両手を使う為にスリングでしっかりと固定されている
何度か屈伸をして重量による負荷を確かめると、そのまま準備体操を始めた
持ってきたキャンプ道具は全て車の中へと残している。元より探索による長期滞在の為に用意したものだ
『明確にその場所へと導いてくれる』ビコとゼアがいる今となっては、余計な荷物に他ならない


('A`)「頼もしいね。脚を滑らせて二人諸共真っ逆さまとか夢見が悪くなるからやめてくれよ」

<ヽ`∀´>「お前ほんと嫌な性格してんな顔面と性格ブサイク」

('A`)「ママァ!!!!!!ニダーが酷い事言ったァ!!!!!!!!!」

(´・ω・`)「お前の口がブサイクだからだろブサイク」

('A`)「俺の母親と同じくらい酷ぇなお前」

(´・ω・`)「間男と一緒に親父殺して遺産手にしようとした俺のお袋よりマシじゃん」

<ヽ;`∀´>「キミらどういう家庭環境で育ったの?」

184 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:37:25 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「灯りも心許ないな……オメーらの案内が頼りだ。頼むぜちびっ子コンビ」

( ∵)「ゴエ!!」

( ∴)「ゴエ!!」

(∪^ω^)「わんお!!」

(´^ω^`)「勿論オメーも頼りにしてるぜワン公!!」


ショボンは父親からの『餞別』を抱えなおすと、目の前に立ちはだかる『最後の難関』を見上げた
『兄が消えた山』であり、その原因となった『先住民』が棲む魔境。彼の膝は小刻みに『ふるえ』を起こした


:(´^ω^`):「……クク、参ったぜ」


ただし、臆病風に吹かれた『震え』ではなく、高揚による『奮え』である


(´・ω・`)「っしゃ……」


ガツガツとブーツの底で地面を蹴り、奮えを身体中に馴染ませる


(#´゚ω゚`)「行くぞォオオオオオオアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」


冒険者の雄叫びは、人を拒む山々にぶつかり反響し


(#'A`)<ヽ#`∀´>「「オオッッッ!!!!!!!!!!!!!」」

(#∵)(#∴)「「ゴエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!」」

(∪#^ω^)「わんわんおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」


それに応える咆哮が後に続いた


(# ;;- )「……」


目指すは『スリー・ドット』。精霊の、故郷である

185 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:39:02 ID:9OubR0lk0
( ∵)「ゴエ!!」

( ∴)「ゴエ!!」

(∪^ω^)「わんおわんお」


暗くなり始めた山道を、ビコとゼアを乗せたビィの先導で突き進む
ありったけのライトやランタンで照らしているとは言え、やはり視界が悪く足下が覚束ない
しかし、その場で『最も安全なルート』を選んでいるらしく、窪みに足を取られたり躓いたりなどのトラブルは起きなかった


(;´・ω・`)「ハァ、クソ、重ぇな……俺ぁ別に海兵隊志望じゃねえってのに……」

('A`)「鉄の塊抱えながら山道なんて歩くことねえもんな……置いてくりゃ良かったじゃねえか」

(;´・ω・`)「襲われないとも限らねえだろ。ここで十数人が失踪してんだぜ?」

('A`)「まぁそうだがよ」

<ヽ`∀´>「その、先住民って悪い人らニカ?」

('A`)「何言ってんだお前。グリーン・インフェルノの二の舞もあり得るんだぜ?」

(´^ω^`)「密林じゃねえからこの場合『ロック・インフェルノ』だな!!ガハハ!!」

<ヽ;`∀´>「的確に最悪なチョイスを……そうじゃなくて、僕達は今『Rebel』を連れているじゃん。それの祭事が行われているなら、むしろ歓迎されるべきじゃないニカ?」

('A`)「あー……楽観的に考えりゃそうだな。どうなんだ?」

(´・ω・`)「わかんねえけど……先住民ってよ、マサイ族みてーに文化その物を観光業にしてる連中ならまだしも、マイナーになればなるほど『排他的』になる傾向があるんだ」

('A`)「学者が入る隙もねえって事か。それか、狭いコミュニティで築かれた同族の絆と縄張り意識」

(´・ω・`)「そう。余所からの『血』を取り入れる必要が無く、彼らだけのコミュニティで完結していたとする。その場合懸念されるのは……」

<ヽ`∀´>「外の世界からの侵略ニダね」

(´・ω・`)「その通り。彼らが俺達と同じ社会に参加しなかった理由の一つは、極端に『外』を恐れているからってのがある」

<ヽ`∀´>「……善悪関係は無く、『外から来た』と言うだけで迫害に値する。か」

('A`)「触らぬ神とやらだな……俺らは今、余計な世話を焼いて消えちまった連中と同じ道を辿ってんだな」

186 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:40:17 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「……避けるべきなんだろうな。お互いの為にも」


『冒険』とは『開拓』だ。世界の謎を解き明かす為に旅をして、研究を行う。だがその行為を、必ずしも全ての人間こ歓迎されるワケでは無い
かのクリストファー・コロンブスが、新大陸の原住民に対して虐殺と略奪を行ったように、これまで穏やかに過ごしていた人々へと災厄を運ぶ悪魔に成り得るかもしれない
好奇心や知識欲は必ずしも悪性を秘めてはいない。しかし『最悪』の事態を引き起こす『種』となる事はある
それを芽吹かせてしまうくらいなら、不可侵を突き通すべきなのだろう。だが――――


<ヽ`∀´>「そうも、言ってられないニダね」

('A`)「何があろうとも、『答え』は見つかるだろうしな」


そこに『家族』が関わっているならば、例え危険が伴おうとも踏み入れなければならない


(´・ω・`)「その通りだ……いざとなったらお前らを犠牲にして俺だけ逃げる」

('A`)「いやそれはねーよ」

<ヽ`∀´>「この期に及んでクズを貫き通すな」

(´^ω^`)「ぬぅん!!信念!!」


三人は疲労をかき消すかのようにゲラゲラと笑い合った。その時――――


(∪^ω^)「わんわんお!!」


何かを知らせるかのように、ビィが勢いよく吠えた


(´・ω・`)「っ……」

('A`)「ニダー、下がれ」

<ヽ;`∀´>「おっ、おう」


ショボンはAA—12を構え、ドクは深く息を吐いて呼吸を整える。二人はディを背負うニダーを庇うように前に出た

187 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:41:10 ID:9OubR0lk0
(∪#^ω^)「ウルルルルルル……」


姿勢を低くし唸り声を上げる。誰の目にも明らかにビィは『威嚇』していた


(;∵)「……」

(;∴)「……」


いつも騒がしいビコとゼアですら、静かに押し黙って互いを抱きしめ合っている
何度も『脅威』の存在を知らせていた彼らが『怯えていた』。火のない所に煙は立たない。何もなく見えようとも、そこには怯えるに値する存在が居る


<ヽ;`∀´>「……下がるニカ?」

('A`)「いや……多分これ『詰んで』んな。ショボン、お前ならどうする?」

(´・ω・`)「……退路を、断つだろうぜ」

<ヽ;`∀´>「……」


ニダーは唾を飲み込むと、背後を確認した。すると、『岩肌』が蠢き始める


(;´・ω・`)「おいおいおいおい……ダッチ少佐かよ」


『岩肌』は一つ、二つと立ち上がる。ライトの灯りに照らされたその姿は、肌を保護色に塗った人の形をしていた
各々が槍や弓など原始的な武器を手に、『外からの侵略者』を取り囲んでいく。僅かな風にすらかき消される足音は『捕食者』を連想させた


「ユメナラバ ドレホド ヨカッタデショ」

「イマダニアナタノコトヲ ユメニミル」


(;'A`)「なんて?」

(;´・ω・`)「分かるワケねえだろ……」


母国語では決して無い、彼ら独自の言語がヒソヒソと囁かれる。包囲網は徐々に狭まって行き、逃げ場は無くなる
どれほどの楽観主義者でも、『歓迎されている』とは思えないだろう。取るべき行動は二つ、『抵抗』か『服従』か

188 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:42:23 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「……どうする?」

(;´・ω・`)「……」


不意を突かずこうして取り囲むと言う事は、侵略者に対して何かしらの『目当て』を抱いている可能性が高い
それは個人が有する財産の略奪ではなく、『身体』や『命』に関連する物事ではないかとショボンは推理した
つまり、今ここですぐさま『殺される事は無い』。だったら、無暗に抵抗をして刺激するべきでは無いだろう


(;´・ω・`)「……従っとくぞ。今はな」

<ヽ;`∀´>「了解……」


「アナタ フラフラフラフラミンゴ」


(;´・ω・`)「お、おお……武器かい?ほらよ」

(;'A`)「渡していいのか?」

(;´・ω・`)「弾は抜いてある。ただのこけおどしだ」

(;'A`)「ほんっと良い根性してやがる」


原住民の一人にAA—12を手渡すと、彼はそれを興味深げに弄繰り回した後、部下と思わしき人物へと渡した
グリップを握り、トリガーを指で引いたのを見るに、『銃』の知識はあるらしい
しかし散弾銃の中でもかなりの特異体であるAA-12の扱いそのものには疎いと見た


「オサ!!オサ!!チハイノチナリ!!」


<ヽ;`∀´>「何する……やめろ!!」


後方の一人が、ニダーからディを引き剥がそうとする。無抵抗を選んだ身だが、譲れない者は守らねばならない


「オオン!!ジョジョリオン!!デビリオン!!」


<ヽ;`∀ >・'.。゜「うっぐ……!!」


腹に『棍棒』が叩きこまれ、ニダーはその場に膝を着いてしまう

189 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:43:21 ID:9OubR0lk0
(#'A`)「てめっ……!!」


「ベルモンドバンデラスダレヤネン!!ダレパンテェテェ!!」


激昂して掴みかかろうとしたドクに、『Freeze』の意味を込めて何本もの槍の穂先が向けられる
ディを取り上げた先住民は、身体中に刻まれた傷跡を確認すると――――


「『Rebel』」


と、三人にも明確に伝わる、『精霊の名前』を高々と口にした


(;´・ω・`)「今……!!」


「コヨイ!!ボクタチハトモダチノヨウニ!!ウタウダロウ!!」


「「「ウーハァ!!!!!」」」


リーダーの号令に、先住民たちは一斉に色めき立つ。彼らは縄を取り出すと、三人を拘束せんと詰め寄る


(∪#^ω^)「わんわんお!!ウルルルルル!!」


人の事情など知った事じゃないビィは、手を差し伸べた一人に対して牙を剥くが、首根っこをヒョイと掴み上げられると


(∪#^ω^)「わんわんわんわんお!!わんお!!」


『背負い籠』の中へと収納され、上から蓋を閉められた

190 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:44:09 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「痛ってぇ……おいドク見たか?」

(;'A`)「ああ……ぐっ……居なかった」


縛られながらもその様を確認していた二人は、逆転になり得る『変化』を見逃さなかった
『ビコとゼア』の姿が、ビィの背中から消えていたのだ。先住民たちの様子を見るに、その事に気づいてはいない


(;'A`)「どう捉える?」

(;´^ω^`)「それを聞くか?」


『逃げた』など、『見捨てられた』など、微塵も思わなかった。不気味で喧しく、生意気で滑稽
そして頼もしく可愛げのある彼らは既に、三人にとってかけがえのない『友』となっていたのだ。疑うなど、最初から頭に無かった


(;´^ω^`)「耐え忍ぶのもまた冒険だ。信じようぜあいつらを」

(;'∀`)「へっ……言われるまでもねえや。さぁ!!天国だろうと地獄だろうと何処へでも連れてけや原始人共ォ!!」


「オレンジアームズ!!!!ハナミチ オン ステージ!!!!!」


両手を後ろに回され縛り付けられた彼らは、先導役を変えて再び歩き始める
太陽は深く沈み、数多に光る星々だけが、彼らの行く末を見守っているのであった―――――

191 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:45:04 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



「ウンメイノ ヤキニクロード」

「イカリノデスロード」


凡そ三十分ほど、柄で突かれながら進んだ先に『洞窟の入り口』に辿り着く
リーダーはその場にいた見張りに短く事情を説明すると、彼は三人と雑に抱えられているディを見てニヤリと笑った


「コチラガワノ ドコカラデモアケラレ マス」


松明に火打ち石で火を灯すと、洞窟の内部へと先導する
道は石を切り崩し整備され、山道と比べて格段に歩きやすかった
壁には恐らく『糞』を燃料とした灯りが等間隔で設置されている


('A`)「奴らの住居にご案内ってか。スイートルームは期待できなさそうだな」

(´・ω・`)「わかんねえぜ?Wi-Fiが使えるかもしれねえ」

<ヽ;`∀´>「これで生活水準高かったらシタラバ語話してても可笑しくないニダ……」


軽口を叩き合いながら洞窟内を『降って』いく。時間帯もあるだろうが、山の内部は熱帯夜とは無縁な程に肌寒く、汗ばんでいた身体を凍えさせる
光源は進むほどに増えていく。その反面、道幅は徐々に萎んでいく。『行き止まりなのではないか?』と不安が過るが


「イッショウニイチドハ イッテミタイナ オマエヲシアワセニシテヤルテ」


その際奥に、一般住居の扉ほどのサイズの『穴』、言わば『入り口』が待っていた

192 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:46:08 ID:9OubR0lk0
「シャナナナナナ!!アンタノシアワセガイチバン!!」


(´・ω・`)「入れってね、はいはい……」


背中をドンと押され、三人はその入り口を潜る。内部を目の辺りにした瞬間、それぞれが息を飲んだ


(;'A`)「こりゃすげえ……」


山の内部を丸々繰りぬいたかのような広大な半球状の空間。そこはまるで、天然が作り出した『野球ドーム』であった
壁際には石を掘り出した住居が点在し、窓穴からは暖色の光が溢れ出している
軒には商店や飲食店と思しき店舗が並び、動物の皮や串焼きなどの取引を、何かしらの『通貨』を使用して行なっていた
太陽や月の光の届かない山の奥底であるが、火の灯りだけを頼りにしている割には明るい
光源に磨き上げた『鉱石』を設置する事で反射による光の増幅を施していた


(´・ω・`)「思っていたより……文明は進んでるな。21世期にしちゃだいぶ遅れているが」

<ヽ;`∀´>「だけど……やっぱりこのコミュニティで完結している。アレを見るニダ」


ニダーが顎で指し示した先には、どこからか引いてきた『水』の貯水槽
岩をくり抜いて作られたであろうその場所から、何本もの溝に沿って流れていく


<ヽ;`∀´>「『水道』ニダ。人が生活するには厳しい筈のこの場所で、安定して水を得られる手段、そしてそれを分配する方法を彼らだけが知っている」

('A`)「となると……畜産及び農業も安定して行われていると考えるべきか。こいつら、こんなカスカスの土地だってのに結構『体格が良い』。さぞかし良いもん食ってんだろうよ」

(´・ω・`)「……」

('A`)「どうした?」

(´・ω・`)「いや……あいつらが使ってる『カネ』みたいなもん……」


「ドトールウジマッチャラテ!!」


(;´・ω・`)「あーはいはい!!静かにしますよ!!」

(´^ω^`)「尻穴チンポ野郎野郎が」

<ヽ;`∀´>「言葉が通じないからって滅茶苦茶言うじゃん……」

193 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:48:01 ID:9OubR0lk0
入り口から奥へ奥へと進み、反対側の壁際へと到着する
他の住居よりも一際大きく、派手な装飾も施されていることから『族長の豪邸』であると読み取れた


「ビバアフター スクール イェイイェイ」

「ハイハイハイピース」


召使らしき人物が、リーダーとディを抱えた先住民、それと三人を中へと招き入れる
室内へと入った瞬間、洞窟の中にも関わらず三人は『目を眩ませた』


(;'A`)「なんの冗談だよ……」

<ヽ;`∀´>「あれって……?」

(;´・ω・`)「やっぱそうかよ……」


天井にぶら下げられているのは、煌びやかな鉱石で造られた『シャンデリア』
素人目から見ても安っぽい代物ではなく、権力と財力を誇示するかのように光り輝いている
部屋の最奥には『狼』の毛皮が縫い込まれた『玉座』に、これまた装飾品を鎖帷子のように着飾った『老人』が鎮座している
傍らには三人を拘束した先住民よりも遥かに体格の良い大男が直立不動の姿勢で佇んでおり、外敵を厳しい視線で睨めつけた


「チンチンボウヤ Rebel セックスオンザビーチ」


傅いたリーダーが報告をすると、族長は腫れぼったい瞼をカッと見開かせた
グワと大きく開かれた口には、シャンデリアや装飾品と同じ『鉱石』で造られた差し歯が入れ込まれている
趣味が良いとは言えないファッションに、ドクは小さく「うわ成金趣味キッモ」と呟いた


/ ,' 3「Rebel!!!!マイッチングマチコセンセ!!!!!クックドゥドゥルドゥ!!!!!」

( ゚∋゚)「ウーハァ!!!!!!!!!」


族長の呼びかけに大男が応える。リーダーや召使達はその姿を、さながら『ヒーロー』でも見るかのように目を輝かせた

194 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:48:36 ID:9OubR0lk0
/ ,' 3「スギヤケンシ ヤッテヤロウジャネエカ コノヤロウ!!」

「ウーハァ!!」


族長が下した指示に低頭で応えると、三人を強引に部屋から連れ出した


(;'A`)「テンポ早えよ何だってんだ……ッ!?」


この中で唯一、『殺気』を感じ取れるドクは族長たちの方を振り返る


( ゚∋゚)「……」


それを放った張本人は、明確にドクだけを見つめ


( ゚∋゚)「……」


人差し指で、首筋を掻き切るジェスチャーをした


('A`)「……」


言葉は通じずとも、ボディランゲージはコミュニケーションの手段となる
意味するところは分かりやすく『生贄』か、それとも『戦い』か。いずれにせよ、ドクは自分自身が最も『死』に近いのだと確信し――――


('∀`)「へっ……」

( ゚∋゚)「!!」


『余裕の笑み』を返した

195 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:49:39 ID:9OubR0lk0
('∀`)「首洗って待ってろってか。上等じゃねえか」


彼は『心を折る』手段をよく知っていた。それ故に、『折る側』に有効な態度も熟知していた
恐れを表に出さず、なんてことないと受け流す『胆力』。攻められながらも、相手を見下す『受け手の反撃』


(#゚∋゚)「ヒカキンティビィー!!!!!ギンイロノヤツ!!!!!!センエイジャシュ!!!!!!」


効果は絶大だったようで、大男は口角から泡を飛ばしながら激昂し、召使たちが慌てて宥めかけた


(;´・ω・`)「おいなんであいつあんなキレてんだ?」

('A`)「さぁな?乳酸菌取ってねえんじゃねえの?」

<ヽ;`∀´>「どうしてそう人を煽って壊す事だけに長けてるニダ……」


これから何が起こるか。三人の中でドクだけが肌感覚で予測できていた
事態を対処できるのは、ショボンでもニダーでもなく、腕っぷしに自信がある自分以外に無い


('A`)「……」


ドクは更に強く『覚悟』を決めた。『死』に対するものではなく、今まで通り『勝ち』『生き残る』覚悟を
それが彼の生き様であり、誰にも踏みにじられる事のない『強者』としての誇りであった

196 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:50:59 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



(´・ω・`)「ドク、スイートルームだ」

('A`)「ああ、硬いベッドに岩の檻、フレグランスな香りのトリプル7。ジャックポッドだな」


移された場所は、生活圏より『下層』にある牢。灯りは僅かで薄暗く、うっすらと糞尿の臭いが漂っている
縄の拘束から解放されたものの、自由からは程遠い。装備品は全て取り上げられ、成す術もない


(∪#^ω^)「わんわんわんわんお!!!!!!!!!」

「イギー!!!!ザ フール!!!!!」

<ヽ;`∀´>「気持ちはわかるけど落ち着くニダ……疲れるだけニダよ」


同じく籠から解放されたビィは、『看守』に向かって怒りをぶつける。鳴声は狭い檻の中で反響し、鼓膜が僅かに痛んだ


('A`)「ビィよ、今は堪える時だぜ?後でギャフンと言わせた方が楽しいじゃねえか」

<ヽ`∀´>「陰湿極まってるニダ」

(∪#^ω^)「ブス……」

('A`)そ「ビィが喋った!?」

(´・ω・`)「被害妄想乙。それより、状況を整理しようぜ」

197 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:53:01 ID:9OubR0lk0
見張りに背を向けるように三人と一匹は円を組み、声を潜めて会議を始める
最初の話題は、ショボンが気づいた先住民の『通貨』についてだった


(´・ω・`)「ダイヤモンドだ」

<ヽ;`∀´>「は?」

(´・ω・`)「奴らは取引にダイヤモンドを使っている。それと族長の家のシャンデリアや装飾品、灯りの増幅にも使われている」

<ヽ;`∀´>「え、えと……え?見間違いとかじゃなくて?」

('A`)「いや、俺もそうだと睨んだ。ウチのババアが身に着けてるもんとよく似ていた。ショボン、お前は?」

(´・ω・`)「俺ァ……ガキの頃に親父が見つけたお袋の『ヘソクリ』だな。水切りの石に使わせてもらった」

<ヽ;`∀´>「えー、ええ……なにこの……金持ちと庶民のギャップ……」


ダイヤモンドの産地として有名なのは、北の大国『シベリア』や、南国『ワカンダ』などが挙げられるが
彼らの母国であるこのシタラバでも産出されている。中にはダイヤモンドを掘る事の出来る州立公園があるほどだ
しかしながら、狭いコミュニティとは言え『通貨』として使用できるほどの潤沢な産出量は未だかつて報告されておらず
もしもこの場所が公に知られるようになれば、『拒絶の山々』は『宝の山々』と名前を変えることになる


('A`)「思わぬ財宝が見つかったが、スリー・ドットと関連があるとは思えねえぞ?」

(´・ω・`)「いや、そうでもねえ。ダイヤモンドの発生原因の一つに、『太古の時代に地球に飛来した隕石の衝突』というものがある」

<ヽ;`∀´>「ッ!!それって……」

(´・ω・`)「Rebel……ディの祖先は『宇宙』からやって来たんじゃないかと思う」

(;'A`)「なるほど……辻褄は合うな」


(∪^ω^)「フンフンフン……」

(^ω^∪)「?」

198 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:53:54 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「……ビコとゼアは?」

(´゚ω゚`)そ「アーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!確かにそっちの方がそれっぽい!!!!!!!!!」


「ゴウランガ!!!!ニンジャコロスベシ!!!!」


(#´゚ω゚`)「っるっせえぞチンカス野郎が今盛り上がってんだから水を差すんじゃねえ殺すぞ!!!!!!!!!」


「……」シュン


(#'A`)「ちょっと男子!!見張り泣いちゃったじゃん!!」

<ヽ`∀´>「……」

('A`)「さぁ」

<ヽ`∀´>「乗らねーからな」

('A`)「ノリ悪の民か?だが、ニダーの説も一理ある。あいつらが一体何の為に行動しているかはわからないままだからな」

<ヽ`∀´>「すると……先住民はダイヤモンドという『恵み』を齎したRebelを『精霊』として奉っている。と」

(´・ω・`)「それも辻褄が合うが……『苦痛』とは関係なくないか?」

<ヽ;`∀´>「た、確かに……」

('A`)「その点に付いては俺に憶測がある」


(^ω^∪)「フンフンフン……わんお」


('A`)「わんおわんお。後にしてくれ」


(∪^ω^)「ブス」


(;'A`)そ「ぜぇーーーーーーったい喋ってるって!!!!」

(´・ω・`)「どうでもいいから早く話せよブス」

<ヽ`∀´>「合ってんだから一々突っかかるなブス」

199 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:55:00 ID:9OubR0lk0
('A`)「恐らくこの後確実に、俺はあの大男と対峙する羽目になる」

<ヽ;`∀´>そ「なっ……なんで?」

('A`)「さぁな……でもまぁ、『見抜いてる』感じはしたよ。この中じゃ俺が一番強いってな」


手持無沙汰になったのか、ドクは小石を指で弄び始める


('A`)「そんで……『殺害予告』もされたよ。お前の首を刈るってな」

(;´・ω・`)「オイ待てよ……だったら落ち着いてる場合じゃねえだろ!!」

('A`)「直ぐには殺されねえだろうよ。だってあいつは『強い奴』を選んだ。生贄にするなら別に誰だっていいだろ」

<ヽ;`∀´>「『戦う』と?」

('A`)「恐らくな。ありゃ結構強いわ。コスプレ・ガールには及ばねえがな」

(;´・ω・`)「ッ……それで『苦痛』か!!」

('A`)「ああ。このコミュニティで最も勇敢な『戦士』と、外敵である『俺』を戦わせて、『苦痛』を精霊に捧げる……多分、そういう意味合いを持つ祭なんだろう」
l
<ヽ;`∀´>「でもそれって実質『生贄』となんら変わりゃしない!!ここは彼らの『ホーム』で、『外敵』を勝たせるような真似を許すはずがないニダ!!」

('A`)「そうだな、だけど……」


指先で小石を地面へと押し付け


('A`)「『俺の方が強い』」


そのまま『押し潰す』。粉微塵となった石の残骸を、フッと吹き飛ばした


('A`)「それに、心配するのは俺じゃなくて『ディ』の方だ。奴らがRebelの特性を知っているならば、あいつらはきっと――――」

200 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:56:49 ID:9OubR0lk0



「いででででで!!!!!」




(;´・ω・`)そ「うおっ!?」


牢の奥から突如聞こえて来た『男の悲鳴』に、三人は思わず身構える
か細い灯りが届かぬその場所からぼんやりと、何かを引きずるビィの尻が見えた


(;^Д^)「何だよこいつ痛ぇ痛ぇって!!クソ犬が!!」

(∪#^ω^)「ウルルルルル!!」


『シタラバ語』で悪態を吐く薄汚れた身なりの男。伸び放題の髭と髪が、この場にいた年月を思わせる
若者はビィを振りほどくと、あんぐりと口を開ける三人に気付いて言葉を失った


(;^Д^)「え……は、え?」

<ヽ;`∀´>「ビィ、こっちに!!」

(∪^ω^)「わんお」フンス


ニダーはビィを抱きかかえると、警戒し後ろへと下がる
男は瞬きを繰り返し、目を擦って反芻するかのように三人と一匹の存在を確かめると


(;^Д^)「ああ、ああ……シタラバ人だ!!シタラバ人だろアンタら!!」


一番近くにいたドクの足にしがみ付いた


(;'A`)「ようようよう落ち着け兄さん。アンタ誰だ?いつからここに?」

(;^Д^)「た、助けに来てくれたんだろう!?ああ、良かった!!もう限界だ、沢山だ!!年月なんてとうに忘れた!!馬鹿共はみんな殺されちまって、残りは俺だけだったんだ!!」

(;'A`)「え?何?どういう事?」

(´・ω・`)「ドク」

(;'A`)「ショボンどうするこのひ……と……」

201 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:57:59 ID:9OubR0lk0
ショボンの冷たい声色に、ドクもニダーも察しが付く


(´・ω・`)「……プギャー・スマイリィ。学生運動サークルのリーダーだ。よく覚えてるぜ、そのムカつく面構え」

(;'A`)「こいつが……?」


名前を呼ばれた『プギャー』はショボンの顔を見上げ、『ヤニ』にまみれた瞼を見開かせる。そして


(;^Д^)「は、はは……あ、あの、バーデラスの、弟か……」


唇を戦慄かせながら、彼の『兄』を口にした


(;^Д^)「な、なぁ……あいつは!?あいつの指示で助けに来たんだろう!?いつ出れる!?いつ帰れる!?」

(´・ω・`)「……残念ながら、兄貴は行方不明だ。俺らもアンタと同じく捕まって、沙汰を待ってる」

(;^Д^)「は……?冗談だろ?オイ……」

(´・ω・`)「俺にとっちゃ兄貴じゃなくてアンタがここに居る事こそが一番の冗談だ」

(#^Д^)「ふざっ……けんじゃねえぞガキコラァ!!!!!!!」


激昂して掴みかかろうとしたプギャーを、ドクが軽く突き飛ばす
元より衰弱していたのか、簡単に地面を転がった彼は咽び泣きながら地面を殴った


(#;Д;)「こんなのって……ヒグッ、あるかよ……兄弟揃ってボンクラの役立たずなんざ……」


(;'A`)「あー……元からこういう性格?」

(´・ω・`)「いや、プライドと声がデカい自信家だった。根がクズなのは変わりないようだがな」

('A`)「じゃあ同情の余地ねえな」

<ヽ;`∀´>「自業自得だけど、ちょっとは手心加えてやるニダ……」

202 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 14:59:22 ID:9OubR0lk0
(´・ω・`)「まぁ、手がかりが生き残ってたってのは思わぬ幸運だな。神に感謝だ。アーメン」


大げさに十字を切ると、プギャーの胸倉を掴み上げ壁に押しやる
見張りは注意しようとしたが、眼を飛ばすと気まずそうに見てみぬ振りをした


(#´・ω・`)「何故ここへ来た?何が起こった?兄貴は来たのか?全て洗いざらい話せ。直ぐに!!」

(;^Д^)「ハッ、ハッ……Son of a bitch……!!」

(#´゚ω゚`)「オッルァア!!!!」

(;^Д )・'.。゜「ゴフッ!?」


腹に拳を打ち、蹲った所を、脂まみれの髪を掴み地面へと叩き付ける
激情に任せた『拷問』に、友は誰一人として止めようとしなかった。満場一致で『そうされて当然の人物だ』と判断したのだ


(;^Д^)「話す!!やめ、やめてくれ!!頼む、頼む……!!」

(#´・ω・`)「ああ話せ!!それ以外にテメーの価値なんざねえ!!」


惨めな男は手を組んで懇願する。その姿すらも、ショボンの癪に障った


(;^Д^)「わ、わ、悪いのは、あの女だ……あいつが、お、俺に、セブンクロスの『秘密』を教えてくれた……」

<ヽ;`∀´>「女って……」

(;^Д^)「バーデラス……しゃ、シャキン・バーデラスの女だ……あ、あいつは俺をベッドに誘って、『致した後』にその話を持ち掛けた……」

('A`)「……」

(;^Д^)「せ、セブンクロスの先住民は、大量のダイヤを所有しているってな……ど、ど、どうせ価値なんざわかんねえんだから、『手土産』と交換しに行こうと提案して、俺はそれに乗った……」

(´⁻ω⁻`)「……手土産とは?」

(;^Д^)「へ、へへ、決まってんだろ……声を上げりゃ世界が変わると本気で思ってる、ば、馬鹿共だよ……!!」

203 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:01:07 ID:9OubR0lk0
('A`)「なるほど……先住民を救うなどと大義名分を掲げて、アンタはまんまと『人身売買』に乗り出したってんだな」

<ヽ;`∀´>「バカげてる!!リスクがありすぎるニダ!!例え成功しても彼らにだって『家族』がいる!!糾弾は避けられない!!」

(;^Д^)「い、居なくなったとしても、『俺の所為じゃない』。イカレの先住民が他の連中を殺して、俺は命からがら逃げだしたって、世間に伝えりゃ良いだけだからな」

<ヽ;`∀´>「……本物のクズニダ」

(´⁻ω⁻`)「……続けろ」


男が抱いていた恐怖が『狂気』へと変わったのか、血みどろの顔を歪ませてヘラヘラと笑い始める


(;^Д^)「お、女は『嘘』は吐いていなかった。お前らも見ての通り、ここはシタラバで最大量の『ダイヤモンド』を保有してる。だが!!だがあいつは!!」


と、思いきや、今度は怒りで身を震わせた


(#^Д^)「事もあろうに『俺』まで取引材料として使って、一人だけとんずらしやがった!!あの女は最低の悪魔だ!!俺を身体と口車で騙した、最低最悪の売女だ!!」

('A`)「どの口が言えんだよ。お前がしようとしてた事と一緒じゃねえか。これじゃ犠牲になった脳内お花畑の連中も報われねえな」

(#^Д^)「お前に何がわかる!?ああ!?信じてた奴に裏切られ、周りの連中は次々死んでいき、俺一人だけがここに取り残される苦しみがわかるか!?」

('A`)「ダメだ。あの『スペシャル・フォース』以上に話が通じねえ野郎だぜこいつ」

<ヽ;`∀´>「彼女が……トソンさんが人を信じられなくなるのも、わかる気がするニダ」

(´・ω・`)「……概ねの事情は把握した。それで、兄貴は来たのか?」

(#^Д^)「シャキンか!?シャキン・バーデラスかァ!?ああ、来たさ!!奴の忌々しい顔面が、俺に取っちゃ救いのヒーローに見えた!!」


『だがあいつはァ!!』。嗚咽が混じった悲痛な金切り声だったが、誰一人として心は動かない


(#^Д^)「俺のことなんざ無視して、先住民のガキを一人攫ってとっとと帰りやがった!!信じられるか!?なぁ!!」

('A`)「ガキ……?」

(´・ω・`)「……ディだろうな」

204 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:03:42 ID:9OubR0lk0
(#^Д^)「なんだ?知ってんのか?じゃあ良い話を教えてやるよ!!あのガキ、死ぬぜェ!!それもただ死ぬんじゃねえ、『お前らに刻まれた苦痛』を引き受けて、苦しみながら死ぬんだ!!」

<ヽ;`∀´>「っ、それって、どういうことニカ!?」

(#^Д^)「俺は見てんだよ……へへ、へへへ、レベルだかラベルだか呼ばれてるガキが、無駄に傷つけられた馬鹿共の傷を吸ってる所を……」


掠れた笑い声は、喉では飽き足らず腹から込みあがっている
まるでこれから三人が辿る末路を、心底『面白がっている』ように


(#^Д^)「治った奴はまた何度も何度も何度も痛めつけられ、その度にまた治される!!心が壊れるまでずぅーっとな!!何の反応も示さなくなったら、サクッと殺して家畜の餌だ!!」

<ヽ;`∀´>「……奉っているんじゃ、ない、ニダ……」


ニダーは立っていられなくなり、その場にへたり込んだ。『祭事』と言うだけで、先住民は精霊を崇め奉っているワケでは無かった
ただ、『自分たちの娯楽の為』にRebelと犠牲者を捕まえ、繰り返し嬲って楽しんでいる。だからこそ、彼女の故郷である『スリー・ドット』の近くに集落を作った
鳥に帰巣本能があるように、いずれ旅を終えて戻ってくるRebelを捕えて、『イベント』として盛り上がるためだけに―――


(#^Д^)「なぁ、まさかお前ら、そのガキと一緒に来たんじゃねえだろうな!?兄貴の、手がかりを探して!?ええ!?」

(´⁻ω⁻`)「……」

(#^Д^)「は、は、ハハハハハ!!!!ハハッ、ハハハハハ!!ざっ、ざまぁねえぜ!!バーデラスの野郎も報われねえなぁオイ!!こっ、こんな間抜け共がノコノコと餌になりに来ただなんて!!」

(#^Д^)「ガキが居なくなってから俺の番は回ってこなかったが、どうやら今回のメインはお前らが先みたいだぜ!!とっ、特等席で!!お前らの心が死んでいく姿を楽しっ……」


大きくあけられた口に、ショボンのつま先が蹴りこまれる
折れた歯の欠片が飛び散り、壁に頭を打ち付けたプギャーは血を吐き出しながら喘いだ


(;^Д^)「ハヒィー!!ハヒィー!!ハガ……ハガ!!」

(#´・ω・`)「イラつくぜ。こんな大事な情報をッ!!資料から抜いたあのッ!!アホの兄貴になッ!!」


容赦なく顔面を靴底で踏みつけていく。やはり誰も止める者はいない
プギャーは細腕で防ごうと努力したがそれも虚しく、四度目の蹴りで呆気なく意識を失った

205 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:04:53 ID:9OubR0lk0
(#´・ω・`)「俺以上のクズが……」


ベトリと靴に着いたプギャーの血を、こびり付いた犬のクソを払拭するかのように地面へと擦り付ける
辛うじて息はあった。このまま殺してしまう事も出来たが、『生き地獄』を味わわせた方が彼にとっては死ぬ以上の苦しみだろう


('A`)「……慰めにはなんねーかもしれねえけど」

(#´・ω・`)「言うな、わかってる、兄貴も俺らもその『女』にハメられただけかも知れねえ。情報に穴があった理由もそれで説明が付く」

<ヽ;`∀´>「それよりディが!!い、いや、僕達だって、サークルメンバーと同じ末路を」

('A`)「落ち着け。俺らにはまだ希望がある」

<ヽ;`∀´>「だけど!!」

('A`)「ニダー」


怒鳴りつけるワケでも無く、ドクは静かに友の名を呼んだ
『明鏡止水』。絶体絶命のこの状況に置いて、怒りも焦りも感じられない態度は


<ヽ;`∀´>「っ……」


ゾクリとした『恐ろしさ』と、『落ち着き』を与えた


('A`)「あいつらはやれる連中だ。それはお前だってよく知ってるだろ」

<ヽ;`∀´>「……ああ」

(∪^ω^)「わんおわんお!!」


ブンマルでは、彼らとビィが居たからこそ危機を脱することが出来た。いつだって、『任せろ』と自信に満ち溢れていた
シンプルが過ぎるあの顔を思い出し、ニダーは臭う空気を吸い込み、やや肺に留めてから吐き出す


<ヽ`∀´>「勿論、信じているニダ」

('A`)「それでいい。時間なら俺が幾らでも稼ぐ。お前らは『特等席』とやらで、俺の活躍を楽しめ」

(´^ω^`)「くっ、クク……尊大不遜もここまでくりゃ才能だな」

206 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:05:54 ID:9OubR0lk0
三人は拳を突き合せようとして、ふと足下を確かめた


(∪^ω^)「……」


じぃと顔を見上げるビィが、物欲しそうに尻尾を振っている。生意気な犬が初めて見せた可愛げに、三人は鼻で笑った


(´^ω^`)「ほらよ、お前も」


ビィが届くようにしゃがみ込むと、彼は頭を差し出した
種族は違う、言葉も先住民以上に通じない。それでも、この行為を行う『意味』を知っている


(´・ω・`)「『勝つぞ』ッ!!」

('A`)「オオッ!!」

<ヽ`∀´>「オオッ!!」

(∪^ω^)「わんわんお!!」


ゴツリと合わさった拳と頭。更に深まった団結は、彼らの心身に力を漲らせた


「ゴルバチョフ ジムソウチョウ!!」


それを見計らったかのように、『迎え』が到着する。祭の準備は整ったらしい
檻の錠が解かれ、三人と一匹は先住民の手によって連れ出された


(  Д )「」


誰一人として、『クズ』へと振り返る者はいなかった―――――

207 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:08:01 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



先住民の生活圏の中央。『広場』と思われるその場所に、決戦の舞台は整えられていた
八角形のリングを、ロープに替わって太い蔓を編み込んだ『網』で取り囲む
総合格闘技団体UFCに置いて使用されるリング、『オクタゴン』と類似していた
その周りをグルリと、ローマの『コロッセオ』のように観客席が用意され、先住民達が血気盛んに囃し立てる
一際目立つ最上段の席には族長が、屈強な男達を護衛に踏ん反り返っている。その足下には、布に包まれたディが寝転がっていた


('A`)「……」


ドクの目論見通り、彼一人だけがその祭壇へと押しやられた
他の二人とビィは、リング袖に設置された背の高い木製の檻に放り込まれる。さながら『控室』の有様であった


(´・ω・`)「本当に、趣味の悪い連中だ……」

('A`)「だな。これからこいつらが吠え面かく羽目になると思うと最高の気分だぜ」

(´^ω^`)「こんな時でも変わんねえなぁお前ェ!!!!!」

<ヽ`∀´>「キモ」

(∪^ω^)「わんお」

('A`)「よーしニダーはここに置いていこう」


軽口を叩き合いながら、ドクは網に手をかけ柔軟体操をする。同時に、『強度』を確かめた
本家本元で使用される金網と比べて、植物特有の柔軟性がある。強度こそ劣るだろうが、人の手で引き千切れる代物ではない

208 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:09:06 ID:9OubR0lk0



「「「「「クックドゥドゥルドゥ!!クックドゥドゥルドゥ!!」」」」」


('A`)「ん?」


観客の声援が一纏めになる。ドクの『対戦相手』が、ゆっくりと歩きながら両手を掲げて応えていた


( ゚∋゚)「ウーハァ!!」


「「「「「ウーハァ!!!!!!!!」」」」」


プロレスで言うところの、『ベビーフェイス』。ヒーローの到着に、『ヒール』であるドクは口角を上げた
『まさかここまでお膳立てしてくれるとは』。ドス黒い彼の嗜虐心が、ムラムラと燃え上がる


( ゚∋゚)「ハウス!!ウコンノチカラ!!バアチャンノクチグセ!!!!」

( ゚∋゚)「ニンニクランオウーーーーーーーーー!!!!!」


('A`)「ハハッ、何言ってんのかわかんねーよデカブツ」


ドクを指を差し、祭事の口上を高々と叫ぶ大男に、『早く上がれ』と指を折り曲げて挑発する
やはり煽り耐性がないのか、彼の顔は怒りで赤黒く染まる。そして『レフェリー』や『セコンド』と思しき数人と共にオクタゴンへと上がった


(#゚∋゚)「フーッ、フーッ……!!」

('A`)「ワォ、情熱的だな。そんなに見つめられると恥ずかしくってテレちまうぜ」

(#゚∋゚)「……ククッ」

('A`)「?」


僅かに、しかし確かに、クックドゥドゥルドゥは『嗤った』。ドクの愚かしさを嘲笑うかのように
すると、同行した先住民達がドクの身体を羽交い締めにする。両腕の自由を奪われたドクの前に、『布』に包まれた何かを手にしたレフェリーが立つ

209 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:10:28 ID:9OubR0lk0
(#゚∋゚)「オサカナテンゴク オスシヒトサラヒャクジュウエン」

(;'A`)「何を……グッ!?」


腹部に鋭い激痛が奔る。ドクにそれを与えたレフェリーは、『刃物』を引き抜くと意地の悪い笑みを浮かべた


<ヽ;`∀´>「ドク!!」

(;'A゚)「あっ、が……ッ!!」


身体は解放されたが、溢れ出す血と痛みで罵声すら飛ばせない。意地で膝を付くことだけは堪えたものの
今まで味わった事のない『死に近づく苦痛』は、彼の中から一切の余裕を奪い去った


「クックドゥドゥルドゥ」

( ゚∋゚)「ウーハァ!!」


レフェリーは大男に向き直ると、ドクの血で染まる刃物で『ちっぽけな傷』をつけた
大袈裟に痛がる素振りをし、観客はその姿にわざとらしい嘆きを投げかける
『これで対等』とでも言いたいのだろう。しかし、アウェーの人間が納得するはずがない


(#´゚ω゚`)「汚えぞテメエらァァァ!!!!!!!」

(∪#^ω^)「わんわんお!!!!!」


怒りの慟哭に、観客はゲラゲラと爆笑した。これは彼らの祭事であり、『万が一』があってはならない
『対戦』の場もあくまで形式上のものであり、最初から全て仕込まれた『出来レース』なのだ

210 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:11:31 ID:9OubR0lk0
( ゚∋゚)「チンチン ボウヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

(;'A゚)「……」


族長を意味する言葉が叫ばれ、観客はシンと静まり返る
ドクは傷口を抑えながら、今の内に出来る限り呼吸を整えようとした。しかし肺は酸素を拒み、深く吸い込めない


/ ,' 3「ポルノグラフティ!!!!カナブーン!!!!Rebelスキャットビート!!!!クックドゥドゥルドゥーーーーーーーー!!!!!」

( ゚∋゚)「ウーハァ!!」


『勇者』には声援と歓声が贈られ


/ ,' 3「スマホタロウ!!!!!オレマタナンカヤッチャイマシタ!!!!!チキチキマシンモウ!!!!レース!!!!!!!」

(;'A゚)「……ッッッ」


『外敵』には、ブーイングが投げつけられる


/ ,' 3「オシャベリクソジュウダイ!!シンヤラップバトル!!イイタビユメキブン!!」


『セコンド』と『レフェリー』はオクタゴンを降り、ドクと大男だけが残された
観客は待ってましたと言わんばかりに足を踏み鳴らす。族長は片手を高々と掲げ――――


/#,' 3「オシッコ!!!!!」


『開戦』の合図を送った

211 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:13:08 ID:9OubR0lk0
(#゚∋゚)「ウウウウウウウアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

(;'A゚)そ「チッ!!」


堰を切ったかのように、大振りで放たれた拳を側面へ転がり避ける
派手に動いたからか、傷口から更に多量の血が溢れ出た


(;'A゚)「っ……ぐ、アアッ」

(#゚∋゚)「ウンティ!!!!!」


足裏の蹴り出しを身を捩って躱す。メシメシと音を鳴らして破れた網が、その威力を思い知らせる
ドクは軸脚にしがみ付き倒そうとしたが、大地に根が張った大木のように動く気配がない


(;'A゚)「っの、野郎……!!」


万全であるならば、ここからマウントを取る事だって充分に可能であった
刺し傷による膂力の低下は著しく、身体を思い通りに動かすことすら儘ならない


( ^∋^)「ハハーハハハ!!!!チッチッチッ!!」


みっともなくしがみつくドクへ直様追撃せず、子どもと戯れ合うかのように舌を鳴らす
観客席から下品な嗤い声が響き、時折『指笛』が飛び交った


(#´゚ω゚`)「クソ共がァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「ドク!!離れるニダ!!」

(;'A゚)そ「っ……グアッ!?」


振り下ろされた拳がドクの頬を打つ。脚から手はズレ落ち、ドクの血で化粧が施される
グラリと歪んだ視界に、大男の凶悪な表情が映る。網を蹴り破った脚は振り上げられ


(#゚∋゚)「キャプツバ!!!!」

(;'A゚)・'.。゜「っ……ガァアアアアアアアアアア!!!!!!!!??????」


ドクの傷口を、爪先が深々と抉った

212 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:14:59 ID:9OubR0lk0
:(;'A゚):「ッ……ツッ……!!!!」

オクタゴンがドクの血で彩られていく。鉄の臭いは、手も足も出せない二人と一匹まで届いた
身体の熱が血と共に流れ出る感覚が、寒気と『走馬灯』を呼び起こした


:(; A ):「ハッ、アアッ……」


格闘技界の名家に産まれ、才能と引き換えに腐った家族と醜い顔を押し付けられた
親からは疎まれ、兄弟達からは僻みを受けてきた。それでも手放されなかったのは、『利用価値』が残っていたから
『才能』だけは愛されていたのかもしれない。だからこそ、道場の『師範』という道だけは用意されていた


:(; A ):「グッ……ギギ……」


『御免』だった。友人も居らず、孤独だった彼を支えたのは銀幕やテレビの中の物語
抜群の閃きと行動力を武器に、数多の難関に立ち向かう『冒険者』の姿は、幼い彼にとって憧れの象徴だった
『夢の為に家族を犠牲に出来るか?』。常人ならば頭を悩ませるジレンマは、彼にとっては障害にすらなり得ない
縁を切るきっかけとなった『死合』に置いても、一切の手心を加えず家族を半殺しにした


:(# A ):「……!!」


新たに得たのは、初めての『友』と夢への茨道。産まれてきて良かったと思える程の、最高の日々
そして、一人の友が持ち出した『スリー・ドット』からの挑戦状。物語に引けを取らない今日この時までの『旅』は
彼の人生の中で一番に光り輝く、眩い星のような体験だった


(# A )「……ま、すんじゃ、ねえよ……!!」

(;゚∋゚)そ「!!」


彼は『立ち上がる』。見守る友と、信じた友の為。そして何より


(#'A゚)「邪魔ァ……すんじゃねえよ!!!!」


手を伸ばせば届く場所まで到達した、自分自身の夢の為に
彼は最後まで、産まれながらの強者らしく『戦い続ける』事を選んだ

213 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:16:20 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「ドク……」

<ヽ;`∀´>「ショボン、ビィ」

(∪;^ω^)「クゥン?」

<ヽ;`∀´>「『盛り上げる』ニダ!!陰湿なあいつらしく、連中に嫌な気分を味わせてやるニダ!!」


『友』は彼の戦意に応える。悲痛を抑え、無理矢理笑顔を作り出し、声を張り上げた


(#´^ω^`)「やっちまえブサイクーーーーーーーーー!!!!!!お前それで負けたら取り柄無くなんぞオラァン!!!!!?????」

<ヽ#`∀´>「デカい口叩いてその体たらくはなんだ!?ガッカリさせるんじゃねえニダ!!!!!!!」

(∪#^ω^)「ブス!!!!!ブス!!!!!!」


(#'∀`)「へ、へへ……」


いつも通りの罵倒が飛び交う。それが何より、ドクの痛みを和らげ、力を取り戻させた
初めて、容姿を茶化されても嫌な気分にならなかった。いつだって友は、自分を対等な立場として接してくれた


(#'∀`)「ハ、ハンデはこれくらいで充分だ……そうだろお前らァ!!!!!!」


(#´^ω^`)「ったりめーだバッキャローーーーーーーー!!!!!!」

<ヽ#`∀´>「ぶちのめすニダァァァ!!!!!!」

(∪#^ω^)「わんわんお!!!!!!」


ドクは構えを取る。心底憎い家族に、彼が唯一感謝を捧げた『格闘術』の指南
障害を打ち砕き、友を救う為に鍛え続けた身体と『拳』。その真髄は、致命傷を負った所でへし折れるものではない


(;゚∋゚)「……」

(#'∀`)「どうしたデカブツ……『退ってるぜ』。お前」

(;゚∋゚)「!?」


気迫に押されたのか、圧倒的優位に立つ筈の大男は無意識に後ずさっていた
これまで『嬲るだけ』だった手負いの相手。故に、出会った事が無いのだろう。見たことが無かったのだろう

214 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:16:55 ID:9OubR0lk0






(#'A゚)「かかって来いやァァァアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!」








本物の闘士が、こうも勇しく、戦いの意思を示すその様を

215 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:18:27 ID:9OubR0lk0
(#゚∋゚)「バ……ロック!!!!!!!」

(#'A`)「ッ!!」


『勝算』はあった。牢でプギャーに出会い、彼の話を聞けた事はドクにとって僥倖であった
先住民は外敵を『嬲る』事を目的とし、心が壊れるその時まで『殺し』はしない。つまり向こうには『手加減』をしなければならない縛りがある


(#゚∋゚)「ホイコーローテイショク!!!!!」

(#'A`)「シッ!!」


組みつこうと突進する大男をスウェーで躱し、掌の『ポケット』に溜めておいた血を顔面に投げつける


(; ∋ )そ「ベホイミ!?」


『目くらまし』を食らった大男は、勢い余って網へと衝突する。観客席から息を飲む音が溢れた


(#'A`)「スゥー……」


勝算は確かにある。しかし長く打ち合う余力は無い。一撃、多くても『二撃』で決着を着けねばならない
『骨抜き』を初めとした技術を伴う攻撃も繰り出す余裕はない。求められるのは『シンプル』かつ『強力』な、最短最速の拳


(; ∋ )「タネヅケ オジサン!!!!!」

(#'A`)「……ッ!!」


目に入った血を拭いながら、やたらめったらに振り回す腕を掻い潜って懐に潜り込む
狙いは胸部ど真ん中。筋肉と脂肪で覆われているが、人体の急所に違いは無い
予備動作、僅か『1インチ』。密接した状態から最大の威力を放つこの拳技は


『詠春拳』を学び、後に『截拳道』を編み出したアクションスター、『ブルース・リー』が得意とした奥義――――


(#'A゚)「シュアッッッ!!!!!!!」

(;゚∋ )・'.。゜「カッッッ……!!!!!!」


『寸勁』。またの名を、『ワンインチパンチ』である

216 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:19:53 ID:9OubR0lk0
(; ∋ )「っ……っつ……!!」


ドクの身長より頭二つ分ほど上回る大男は、吹き飛びこそしなかったが打たれた鳩尾を抑えてよろよろと後ずさる
腰は引け、目は泳ぎ、口は陸に揚げられた魚のようにパクつかせている。客席は水を打ったかのように静まり返り
オクタゴンの『闘士』と『道化師』の、荒い息遣いだけが辺りを支配した


(;゚∋ )「……エゴサ……アンチツイート……」

(#'A`)「……」


『言葉は通じずとも、ボディランゲージはコミュニケーションの手段となる』
掌を向け、首を横に振るその様は、例え彼らの言語がわからなくとも何が言いたいかくらい伝わった


(;゚∋ )「 『待ってくれ!!』 」


懇願、命乞い。嬲り、蹂躙し、奪い続けた『悪魔』のような大男に対する返答は


(#'A`)「 『嫌だね』 」


毅然と切り捨てる、『拒否』であった


(;゚∋ )そ「ミ……ミクミクダンス!!」


頭を掴んで接近を拒もうとした腕を払い除け、『同じ個所』に拳を向ける
大男の背中は『網』に阻まれ、これ以上退がる事を許さなかった


(#'A`)「スーッ……」


ありったけの『死力』を、身体中に巡らせる。そして――――



(#'A゚)「ヴェアッ!!!!!!!!!!!!!」



決定的な『二撃目』を、初撃を上回る威力で放った

217 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:20:54 ID:9OubR0lk0
(; ∋ )・'.。゜「ッッッ……!!!!!!!!」


網は大男の身体に押され、縫い目の糸がブチブチと解れていく。編み目が崩壊した個所から囲いは破れ、オクタゴンの場外へと押し出された
口からは内臓を傷つけた事による『血泡』が吹かれ、全身はピクピクと小刻みに痙攣をする。眼球は虚ろに『上』を剥き、意識を示さない


(; A )「っっ……ハァッ!!」


誰も声を上げず、先住民も彼の友ですら、言葉を失う。しかしその意味は真逆であり、現に彼らは


(´゚ω゚`)「……!!」

<ヽ;`∀´>「っ……!!」

(∪*^ω^)「……!!」


誰の目に見ても明らかなほど、見事な逆転勝利に強く拳を握っていた


(; A )「お、おお……」


たった二回の攻撃で、ドクは体力を使い果たしてしまった。しかし、やるべきことが残っている
身体を壊せば次は心。敗北を今だ飲み込めてない連中に向けて仕掛ける次の一手





(#'A゚)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




『勝鬨』による勝利宣言を、『洞窟の外』にまで響き渡るように高々と吼えた

218 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:21:46 ID:9OubR0lk0
(#´゚ω゚`)「うらああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

<ヽ#`∀´>「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

(∪#^ω^)「わんわんおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!!!!」


彼の勝利を信じ抜いた友もそれに続く。客席は、祭事始まって以来であろう『異常事態』に騒めき始めた。そんな中


/#,' 3「イップマンフォァ!!!!!!!!ミタカッタナァ!!!!!!!!」


『敗北』を認めない族長が、青筋を浮かべていきり立った


/#,' 3「コロナゲキジョウヘイサ!!!!マジクソファッキウイルス!!!!!!」


(;'∀`)「あァ……クソ、俺としたことが……」


族長の喚声と怒りは先住民たちに伝染する。兵士達は武器を手に、祭事を台無しにした者どもを八つ裂きにせんと目を血走らせる
ドクに抵抗する力は残っておらず、ようやく彼は両膝を着いた。しかし、顔は満足げに笑っている


(;'∀`)「わり……時間稼ぐっつっといてこのザマだわ……」

(´^ω^`)「何言ってんだ馬鹿野郎が!!最高にスカッとしたぜオイ!!」

<ヽ`∀´>「ナイスファイトニダ!!」


死に直面しているにも関わらず、二人はドクにありったけの称賛を贈った


(;'∀`)「……?」


しかしドクの視線は、自分の意志とは関係なく、『ビィ』へと向けられた


(^ω^∪)「……」


何かを発見したかのように、明後日の方向を見つめるビィの姿に

219 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:22:28 ID:9OubR0lk0
(;'∀`)「……ハ」


ビィの視線の先を確かめた瞬間、ドクは自分の仕事は功を奏したと気づく
だが、それは余りにも『予想外』の出来事で、夢でも見ているかのように現実味が無かった


(;'∀`)「……ニダー、言っただろ?」

<ヽ;`∀´>「え?何?」

(;'∀`)「あいつらは『やれる連中』だってよ」

220 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:22:56 ID:9OubR0lk0








「「ゴエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!」」







「全隊員に告ぐッ!!!!!!!!!!」







.

221 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:24:16 ID:9OubR0lk0
洞窟内に響き渡る奇怪な鳴き声と、凛とした女性の『シタラバ語』。ダイヤモンドが放つ灯りに照らされて


(;´・ω・`)そ「なっ、オイまさか……!!」

<ヽ;`∀´>「……これは、驚いた」


『12人の姉妹たち』は







(゚、゚#トソン「要人の救助及び、脅威の排除を遂行せよッ!!!!!!!!」

https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208775/3_zb6qc2.jpg







地の獄へ、彼らを救いに舞い降りたのであった

222 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:25:36 ID:9OubR0lk0
/#,' 3「ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!アーヤシロキズク!!ウ!!ウ!!」


「「「ウーハァ!!」」」


新たな侵入者に怒髪天を突いた族長は、真っ先に彼女達の抹殺を命じる
兵士達は槍、斧、棍棒。各々の武器を手に、怒涛の勢いで疾走する


(゚、゚#トソン「レモナ!!合わせて!!」

|゚ノ#^∀^)「ええ!!食らいなさいッ!!」


衣装を新たに、腹部に大きく切れ込みが入ったタイツスーツと翼を模した髪飾りを着飾ったトソンが二矢同時に弓を放つ
地面に突き刺さった矢の間には細い『ワイヤー』が仕込まれており、先頭集団は躓いて転倒。突進の勢いは落ちた
続けざまに二丁拳銃によるゴム弾の嵐が撃ち込まれる。どの弾も正確に眉間を強く打ち、先住民は次々と失神していく


(゚、゚#トソン「存分に暴れなさい!!『サディスティック・スリー』!!」

⌒*リ´・-・リ「待ちわびたの!!」

*(‘‘)*「了解ですの!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「ご褒美を差し上げましょウ!!」


少女が斧と刀を振るうと、嵐に見舞われたかのように先住民は宙を舞う
女王が鞭を振るうと、蠢く『大蛇』の尾が素肌に傷を付け、苦痛に狂い悶える


(*‘ω‘ *)「武器の貯蔵は十分っぽ!!」


オレンジの弾幕が苛烈に襲い掛かる。見たことも無ない『魔法』に恐怖した瞬間、彼らは衝撃で意識を手放した

223 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:26:30 ID:9OubR0lk0
敵は多勢。しかし数を物ともしない超人集団の実力に、それを退けた筈の三人は呆気に取られる


(;´・ω・`)「すげえ……こいつら、こんな強かったんだな……」


「何をぼんやりしてんのよ!!」


(´゚ω゚`)そ「ファッ!?」


『空気』が近場の先住民を手早く失神させ、檻の錠を叩き壊す


ξ#゚⊿゚)ξ「サッサと出てきなさい!!まだ『冒険』は終わってないんでしょ!!」

(;´^ω^`)「ね、姉ちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「アンタみたいな弟、死んでもお断りよ!!デレ!!そいつは!?」


オクタゴン上では、姉と同じく『存在感』を露わにした妹が、『世界で一番信用できないタイプの女』と共にドクの介抱を行っている


ζ(゚ー゚;ζ「酷い怪我だよお姉ちゃん!!生きてるのが不思議なくらい!!」

从;'ー'从「死なせないのがぁ、私の仕事〜。はい、これ見て〜?」

(;'A`)「え、お、な……」


『アヤカ』が浮かび上がらせた緑の玉を目の当たりにした瞬間


(;'q`)「あびゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜ひかりきれい〜〜〜〜〜〜〜???????」


酷く酒に酔ったかのような痴態を曝した。その間に


从;'ー'从「はい、はい、はいぃ〜!!そしてはい!!」


傷口を医療用ホッチキスで塞ぎ、粘着性の高い液体で消毒を施し、テープで上から蓋をする
三十秒も掛けずに応急処置を完了させた彼女は、すぐさま『催眠』を解いた

224 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:27:42 ID:9OubR0lk0
(;'A゚)そ「いでででででで!!!!?????え!!!!????は????????」

从;'ー'从「応急処置かんりょ……デレちゃん!!」

ζ(゚ー゚;ζ「え……ハッ!?」


「リゼアンテェテェ!!!!!!!」


気を取られていた隙を突き、ドクに刺し傷を与えた『レフェリー』の凶刃がデレに襲い掛かる


ξ;゚⊿゚)ξ「デ……!!」


出遅れた姉に代わって


(∪#^ω^)「ヴルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

「イチカラッ!?」


ビィが腕に噛みつき軌道を逸らし


<ヽ#`Д´>「チ ン カ ス 野 郎 が ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ! ! ! ! ! !」

「イワナガァ!?」


渾身の怒りを込めた『パルクールプレーヤー』の飛び蹴りが、頬を穿った


<ヽ#`Д´>「このッ!!クソが!!クソが!!オラッ!!」

(∪#^ω^)「わんおわんお!!ヴルルルルル!!」


ドクを刺した相手に対する報復をたっぷりと与えた後、ドク達へ振り返る


<ヽ#`∀´>「そいつを頼みますニダ!!」

ζ(゚ー゚;ζ「え、はっ、はい!!その、何方へ!?」

<ヽ#`∀´>「決まってる!!」

225 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:28:55 ID:9OubR0lk0
ニダーの視線は客席の、一番目立つ場所へと向けられた


/;,' 3「!!」


ディの居る、族長の席へと


<ヽ#`∀´>「大事な友達をもう一人、取り返すニダ!!」

(´・ω・`)「ああ、その通り!!」


ショボンはオクタゴンの部材として使われていた『縄』を手繰り寄せ、肩に掛ける


(´^ω^`)「ここから先は俺らが請け負う!!お前は少しでも休んでなドク!!取り返したら『スリー・ドット』へ直行だ!!」


从;'ー'从「え、ええ〜?彼はもう絶対あn(#´゚ω゚`)「だぁってろ世界で一番信用できないタイプのクソアマァ!!!!!」ふええ〜」


(;'∀`)「ク、クク……」


込み上げた笑いが傷口に障る。しかし、悪くない気分だった
『吠え面』を掻く連中に囲まれて、友が奮闘に応えようというのだ。『冥利に尽きる』とは正にこの事


(;'∀`)「とっとと済ませてこい!!」


後押しを受け、二人は乱戦の最中へと飛び込んでいく
解き放たれた新たな『闘士』の背中に、これ以上ないエールを贈った

226 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:30:19 ID:9OubR0lk0
<ヽ#`∀´>「ウルルァッ!!!!!!」

(#´゚ω゚`)「道を開けろ雑魚共がァッ!!!!!」


ニダーが持ち前の身軽さで先住民を翻弄し、ローキックで顔面から倒れこませる
ショボンは縄をピンと張り、襲い掛かって来た敵の腕を絡め取って背中から地面へと叩きつけた


(#´゚ω゚`)「クソが!!埒が明かねえ!!ニダー、先行しろ!!」

<ヽ#`∀´>「おう……よッ!!」


ニダーは襲い掛かって来た先住民を蹴りで迎撃。そのまま踏み台にして跳躍
前方から向かってくる敵の肩を、因幡の白兎のように素早く蹴り渡っていく


(#´゚ω゚`)「さぁどっからでもかかってこいやァ!!!!!!!」


「「「ベガルタセンダイ!!!!!」」」


(;´゚ω゚`)そ「やだぁやっぱ量多い!!」


<せえええええええええええええええええええええええええッ!!!!!!


(;´゚ω゚`)そ「うるさっ!?何!?」


鮮やかな『紅』が、ショボンを横切り敵へと向かう


ノハ#゚⊿゚)「『鉄塊拳』ッ!!!!!!」


コンクリートをも砕く『鉄の拳』が、大勢の先住民を巻き込み吹き飛ばした

227 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:31:34 ID:9OubR0lk0
(;´^ω^`)「つええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」

ノハ#゚⊿゚)「当然ッ!!貴様も向かえ!!」

(;´^ω^`)「ありがたくっと!!」


怯んだ後続を避けるように観客席へと走り抜ける。その背後では再び、気合の籠った技名が炸裂した


/;,' 3「グロースグコワレル!!バッテリートカトクニ!!」


向かってくる二人の姿に、族長はそそくさと退散しようとする
屈強な男の一人は迎撃に、もう一人はディを担ぎ上げて族長の護衛に付く


<ヽ#`Д´>「逃がすかァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

「ドクズホンシャァ!!!!!」


客席を駆け上がるニダーに向かって、岩を削り取って作った『座席』を持ち上げ投げようとする
その瞬間、側面から『手裏剣』が飛来し、脇腹に突き刺さった

228 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:31:56 ID:9OubR0lk0
「ホ……ホマーニ……?」


切っ先が浅く刺さっただけだが、男の全身から力が抜け、持ち上げた座席の下敷きになった


从 ゚∀从「援護するぜ!!」

<ヽ#`∀´>「助かる!!」


放った張本人は、鉤爪を装着しニダーと合流した。即席コンビは風のように族長の元へと奔る


/;,' 3そ「ヒビキ!!」

「ウーハァ!!」


『Rebel』より、自らの身を案じたのか。護衛に短く指示を伝えると


「ナルニアノタメニーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」


大きく振りかぶって、『ディ』を宙へと投げ捨てた

229 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:32:41 ID:9OubR0lk0
从;゚∀从そ「バッ……」

<ヽ#`∀´>「大丈夫ニダ!!!!」


衰弱したディがこのまま落下して地面に叩き付けられれば、いくら精霊と言えど命は無い
だがニダーは確信していた。『階下』で待機している、もう一人の友が


(#´^ω^`)「イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッハアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」


必ず、彼女を救うと


(#´^ω^`)「っしゃああああああああああああああああああいッ!!!!!」


頭から落ちていくディに向かって投げつけた『縄』。その輪の中へとすっぽりと納まったタイミングで


(#´゚ω゚`)「うっおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」


縄を勢いよく引く。輪は締まり、彼女の身体を確実に捕える
軌道は変わり、慣性に従ってショボンの元へと飛んでいく。彼はそれを――――


(#´^ω^`)「いよぉナイキャッチィィィ!!!!!!!!!」


しっかりと、落とさぬように抱き留めた

230 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:33:23 ID:9OubR0lk0







(#´゚ω゚`)「落とし前着けたれやァ!!ニダァァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!!!!」






<ヽ#`Д´>「任せろォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」





.

231 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:33:54 ID:9OubR0lk0
一際高く跳躍。拳の射程圏内に、族長を捉えた


「ホロライブ!!!!!」

从#゚∀从「邪魔すんじゃねえ!!!!!!」


迎え撃とうとした護衛は、鉤爪の餌食となる。守る者が居なくなった族長は


/;,' 3「ラッコナベエエエエエエエエエ!!!????」


迫る『外敵』に、恐怖の悲鳴を上げた


<ヽ#`Д´>「ウルアァァァァッ!!!!!!!!!!」

/;  3・'.。゜「スバルッ!!!!?????」


老人であろうと容赦なく顔面に叩き込まれた拳は、ダイヤモンドの差し歯を呆気なくへし折った


<ヽ#`Д´>「いっ……!!」


族長は吹き飛ぶが、ニダーは空中で抜群のバランス感覚を活かし体勢を立て直して着地
ドクとは違い人を殴り慣れていない彼は、ジンと痛む拳を擦った


<ヽ#`∀´>「まぁまぁ痛い!!」

从;⁼∀从「格好つかねえなぁ」


なんとも間抜けな闘士を前に、ニンジャは護衛を足蹴に呆れた溜息を吐いた

232 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:34:44 ID:9OubR0lk0
从 ゚∀从「さぁ、後片付けは俺らに任せな。アンタらはサッサとあの子送り届けろ」

<ヽ;`∀´>そ「おっ、おお!!あ、ちょ、一個だけ!!どうしてここに!?」

从 ⁼∀从「いやぁ、あの後ボスを交えて反省会してさぁ。で、『仕事はまだ終わってない』って怒られて後を追ったんだよ。そしたらあの面白生物が慌てた様子で現れたからなんかあったなって思ってさぁ」

<ヽ;`∀´>「ボ、ボス!?」

从 ゚∀从「ああ、ちょうどあそこに」


ニンジャが鉤爪で差す先は、ドクとビィが待機するオクタゴン。族長の撃破に気付いてない先住民たちが周囲を『取り囲んでいる』
正確には、『取り囲んでいた』。数十人はいたであろう兵士たちは、皆一様に地に伏せ、立っているものはまばらだった
その中央でたった一人、キレのある『マーシャルアーツ』で相手をなぎ倒す『黒髪長髪』の女の姿


<ヽ;`∀´>「は?」


ニダーの見間違いで無ければ、ゼアを異常に可愛がっていた『ナード女』だった
『?』を頭に浮かべるニダーに向かって、ニンジャは心底面白そうにクスクスと笑う


从 ^∀从「行きゃわかるよ。きっと驚くぜ」

<ヽ;`∀´>「う、うん……じゃあ、僕ら行くニダ」

从 ^∀从「おうっ!!しっかりな!!冒険者!!」


バンと強く背中を叩かれ、ニダーは客席を駆け下りる。ショボンは既にオクタゴンの方へと退避していた

233 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:35:28 ID:9OubR0lk0
<ヽ;`∀´>「ハァッ、ハァ……これは一体?」


ニダーがその場に到着すると、黒髪の女は拳に付着した先住民の血を払い、髪をかき上げる


川 ゚ -゚)「来たか」


『本当に同一人物か?』と疑って掛かるくらい、精悍な美貌を持つ女性。前髪の有無など関係なく、まるで別人のような立ち振る舞いだった
あれだけ過剰な反応を示していたビコとゼアには見向きもしない。いつものようにビィの背に乗る彼らは


(*∵)ノシ「ゴエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!」

(*∴)ノシ「ゴエエエエエエエエエエエ!!!!!!」


大きく手を振って、再会を喜んだ


川 ゚ -゚)「護衛は私が引き継ぐ。ツン、貴様らは残りの連中を片付けておけ」

ξ゚⊿゚)ξ「了解、ボス。プギャー・スマイリィの身柄はどうするの?」

川 ゚ -゚)「腐ったゴミでも重要参考人だ。四肢をへし折って連れてこい」

ξ゚⊿゚)ξ「はーいよ」

(;´・ω・`)「ちょ、オイ、待てよ!!」

川 ゚ -゚)「立ち止まっている時間が残されているか?その子、もう猶予がないぞ」

(;´・ω・`)そ「ッ……!!」


(# ;;- )「」


顔色に血の気は無く、唇は紫色に染まっている。ショボンが頬に触れると、死人のように冷たかった
それでも辛うじて『息』はある。『ボス』の言う通り、ここで問答をしてる余裕は無かった

234 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:36:55 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「ビコ、ゼア!!早速で悪いが急ぎ案内を!!」

( ∵)b「ゴエ!!」

( ∴)b「ゴエ!!」

(∪^ω^)「わんわんお!!」


彼らの誘導に従い、ビィは倒れる先住民を踏みにじりながら前進する


<ヽ;`∀´>「ドク、まだ歩けるニカ?」

(;'∀`)「ったりめえよ……!!」


ニダーはドクに肩を貸し、後に続く


(;´・ω・`)「アンタ、着いてくる気か?」

川 ゚ -゚)「この後に脅威が残されていないとは限るまい?人手は必要だと思うがね」

(;´・ω・`)「そりゃありがたいね……どうせ俺らは拒める立場じゃねえ」

川 ゚ -゚)「重畳。話は道すがら行おう。此方も聞きたい事情が山ほどあるからな」

235 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:38:35 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



( ∵)「ゴエ!!」

( ∴)「ゴエ!!」


先住民の居住区までは、幾つかのルートが存在しているらしい
ショボン達が通った入口は一本道だったが、ビコとゼアが選んだ穴の道のりは、迷路のように複雑に分かれていた
居住区から近い通路には、倉庫も兼ねているのか木材や食料、中にはダイヤが詰まった革袋まで積まれていた


川 ゚ -゚)「ふむ……衛星の届かぬ範囲に森でもあるのだろうな」

(;'A`)「ハァッ……ハァッ……そんな場所、あんのかい?」

川 ゚ -゚)「磁場が特に強い場所なんかはな。ネット上で公開される衛星写真は、悪戯に人が立ち入らぬよう加工をされている」

<ヽ;`∀´>「その……所で貴女、『サダコ』さんですよね?」


廃工場で監禁されている分、ニダーは12シスターズと面識がある。背丈や髪の長さ。そして趣味の悪いまっ黒な服は間違いなく彼女の特徴と一致する
表情を隠していた前髪の下までは確認できなかったが、声色は低く、背筋もピンと伸びている。ナードの雰囲気は微塵も感じず、『ボス』らしき風格に溢れていた


川 ゚ -゚)「ああ、身体はな。血の繋がりがある分、こいつの肉体は乗っ取り易い」

(;´・ω・`)「乗っ取る?アンタそりゃ……電子生命体か幽霊かって口ぶりだが?」

川 ゚ -゚)「実際その通りだからな。自己紹介をしよう。私は『C』。霊体のまま成長した『超常保護対象』だ」

(;´・ω・`)「何言ってんだこいつ」

川 ゚ -゚)「言葉の通りに捉えろ。死んだ赤子の霊が、人と変わらぬ成長速度で大人になっただけの事だ」

(;'A`)「それがわかんねえっつってんだよ……」

<ヽ;`∀´>「そ、そう言えば、トソンさんは超常保護対象自体も組織に参入させるとかなんとか言ってたニダ。貴女もそうニカ?」

236 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:39:38 ID:9OubR0lk0
川 ゚ -゚)「ああ、妹の『サダコ』と一緒にな。以後、トソンを初めとした部下を揃えて超人集団の一部隊を率いる立場だ。足下、気を付けろ」

(;´・ω・`)「おっと、どうも……するとアンタは今、妹に『憑依』してるって事か?」

川 ゚ -゚)「そうだ。サダコは引きこもりがちの運動嫌いでな。だからこうして、たまに乗っ取っては身体を動かすのさ」


(∪^ω^)「わんお?」

( ∵)「ゴエ」

( ∴)「ゴエイエ」

(∪^ω^)「わんわんお」


二股に分かれた道の右手を指し示す。その奥から、僅かにだが風の通り抜ける音が聞こえてきた


川 ゚ -゚)「スリー・ドットの資料……拝見させて貰ったよ。彼らの特性もな」

(´・ω・`)「お役に立てそうかい?」

川 ゚ -゚)「ああ。こういった申し出は少ないからな。有効活用させて貰うよ」

(´・ω・`)「だが……アンタら、超常保護対象とやらを調査する立場なんだろ?この事については何も知らなかったのか?」

川 ゚ -゚)「恥ずかしながら、な。何分、世界には謎と不思議が多すぎる。サダコの『予知夢』で対象をサーチして、調査と保護を並行して行う安定しない稼業だ」

<ヽ`∀´>「スポンサーは?」

川 ゚ー゚)「聞いて驚け。『映画スタジオ』だ」

<ヽ;`∀´>そ「映……うわっ!?」

(;'A゚)「うおお気ぃつけて歩けやこちとら重傷者だぞ!!!!!!!!!!」


躓いて転びそうになった二人を、Cは難なく受け止める


川 ゚ -゚)「あれだけ出血したにも関わらず、そこまで喚ける元気があるとは驚きだな」

(;'A`)「空元気だよ。驚く気力もねーや。ありがとよ」

川 ゚ -゚)「礼には及ばん」

237 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:40:37 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「あー……大体読めて来た。つまりアンタらは『元ネタ』を提供して、スタジオから資金提供してもらっていると」

川 ゚ -゚)「その通り。誰もが一度は観た事があるファンタジーやホラー作品。あれらはほとんど我々が調査した、実在する超常保護対象だ」

<ヽ;`∀´>「スケールが大きすぎて開いた口も塞がらないニダ……」

('A`)「閃いた」

<ヽ`∀´>「置いてくぞ」

川 ゚ー゚)「フフッ」

(´・ω・`)「……兄貴については、何処で知った?」


下品なジョークに笑い返した彼女は、キュッと表情を引き締める。笑いごとで済むような話では無いらしい


川 ゚ -゚)「……我々がマークしている団体の傘下で暗躍していると、匿名からの通報があった」

(´・ω・`)「それだけで、危険人物と?」

川 ゚ -゚)「理由はいくつかある。プギャー・スマイリィを発端にしたセブンクロスの集団学生失踪事件に関与している疑いが一つ。これは直に晴れるだろう」

(´・ω・`)「……他には?」

川 ゚ -゚)「『消息が掴めなかった』。世界中の監視カメラ、並びに空港の関所や国境に到るまで、すべての監視機関に引っかからなかったんだ」

(;'A`)「整形とかじゃねーのか?」

川 ゚ -゚)「整形にも限界がある。顔を変えられても骨格を変えるのは難しい。DNAや無意識の癖、仕草などもな。だからこそ上層部は彼を『死亡扱い』にした」

(´・ω・`)「……」

川 ゚ -゚)「だがこうして、弟のキミやその友人たちが、彼の遺した資料を手がかりに活動をしている。これは彼の居所を掴むチャンスだと私は考えた」

238 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:41:28 ID:9OubR0lk0
川 ゚ -゚)「結果は……見ての通り空回り、だったかな。トソンにも過度の期待を寄せすぎて、暴走を招く羽目になった。本当に申し訳ない」

<ヽ`∀´>「いえ、貴女方が居なければ、僕達今頃あいつらに八つ裂きにされていました」

('A`)「へっ、いきなり銃を突きつけられた時はちょっぴり焦ったがな」

川 ゚ -゚)「……言い訳にならないかも知れないが、我々にも薄暗い過去がある。これまでの積み重ねが、強行という手段を取ってしまった」

(´・ω・`)「もういいっつってんだろ。こっちは助けられたんだ。だから、俺らがこう言うべきだ。『ありがとう、恩に着る』ってな」


Cは何かを言おうと口を開いたが、そのまま少しの時間考え直し


川 ゚ー゚)「どういたしまして」


感謝を、素直に受け入れた


川 ゚ -゚)「だが『シャキン・バーデラス』は引き続き警戒される立場にある。キミの身内だからと言って、手心は加えんぞ」

(;´・ω・`)「あーあー好きにしてくれ。あのアホが腐った真似してやがったら俺も親父も容赦しねーよ」

川 ゚ー゚)「言ったな?もう撤回は出来んぞ」

(;´・ω・`)「しつけえな!!いいっつってんだろ!!!!!」

239 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:42:04 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「わんわんお!!!!」


先行していたビィが、通路の奥から明るい声色で人間たちを呼び寄せる


('A`)「いよいよか……」

<ヽ`∀´>「うん……ディは?」

(´・ω・`)「大丈夫、大丈夫だ」


半ば自分に言い聞かせるように応え、ショボンは腕の中のディに呼びかける


(´・ω・`)「もうすぐだぞ。それまで、絶対に持ちこたえろ」


(# ;;- )「」


頷き返しも出来ない彼女を強く抱きしめ、誰よりも早く先頭へと向かった

240 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:43:32 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



私には『時計』と言うものは理解できない。だが、朝の太陽の匂いを嗅ぎ分けられる
ネズミの肛門のようにちっぽけな光は、近づくほどに強さと大きさを増す。色々な事があってクタクタだった筈の身体は
『早く、早く』と脚を急かせる。薄暗い洞窟に慣れたのか、出口の先は光で真っ白にしか見えない


( ∵)「ゴエ!!」

( ∴)「ゴエ!!」


ああ行くとも!!誰が躊躇うものか!!こんな腐った洞窟なんて、一刻も早く抜けてやる!!


(∪^ω^)「わんわんお!!!!」


硬い岩の地面を一際大きく蹴り、私は光の中へと飛び込んだ






https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208775/4_hu9ekx.jpg






自慢の肉球を、柔らかな草が包み込む。空は高く澄み渡り、色鮮やかな緑の絨毯がどこまでも続いている
吹き抜ける風が、甘い花の香りを運んでくる。何の種族かわからないが、角の生えた動物がのどかな食事を止めて此方を見ていた

241 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:44:11 ID:9OubR0lk0
(*∵)「ゴエエエエエエエエエエエエ!!!!ゴエッ!!ゴエエエエエエエエエ!!!!」

(*∴)「ゴエエエエエエエエエ!!!!ゴゴエエエエエエエエ!!!!」

(∪^ω^)「……」


そうか、ここが


(∪^ω^)「ヘッヘッヘッ」


キミ達の、『故郷』か


(∪^ω^)「わんわんおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


ああ、なんて気持ちがいい!!吼えずにはいられない!!腐りきっていると思っていた世界に、こんな素晴らしい場所が残っていたなんて!!


(;´・ω⁻`)そ「うおっ眩しっ……!!」


下僕共も追いついたようだ。顔を見るに、私と同じように『感動』しているのだろう


(;'∀`)「こいつぁ……ハハッ、ダイヤなんかよりよっぽどの財宝じゃねえか」

<ヽ;`∀´>「驚いた……乾燥気候のセブンクロスに、これほど緑豊かな土地があるなんて……」

川 ゚ -゚)「ふむ……どうやら、一種のエネルギースポットとして機能しているらしいな。先住民共はここを頼りに生活していたか」

(;´・ω・`)そ「って、惚けてる場合じゃねえぞ!!ビコ!!ゼア!!どうすりゃいいんだ!!」


( ∵)「ゴエエエエエエ!!!!」

( ∴)「ゴエエエエエエ!!!!」

(∪^ω^)「……」


どうやら、ここからまた歩かなければならないみたいだ

242 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:45:09 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「わんわんお!!」


奴らを呼び、また彼らの案内に従う。そう遠くはないと言った。きっと間に合うだろう


(;´・ω・`)「行くぞッ!!」

(;'A`)「ああ!!アンタは!?」

川 ゚ -゚)「ここで待っているよ。これはキミ達の旅だ」

<ヽ;`∀´>「心遣い、ありがたく!!」


どうやら、あの別人のように変身したキモ女は着いてこないらしい。元に戻られたら嫌だから普通にありがたかった
行き先の目印は分かりやすく、大きな一本の大樹。そこにさえ到達すればディは助かると言ったが……


(∪^ω^)「ヘッヘッヘッ……」


( ∵)「……」

( ∴)「……」


一足先に到着し、その樹を見上げる。枝葉は大きな雲のように太陽の日差しを遮り、心地よい日陰を作り出している
生息する動物たちの休憩所にもなっているのか、先ほどの角が生えた草食動物の親子がゆったりと寝そべっていた


( ∵)「……」

( ∴)「……」


(∪^ω^)「?」


彼らは私から降りると、樹の根元へと近づいていく。気になって確かめてみると


(∪^ω^)「……」


横たわった姿のまま白骨化した獣の死骸が遺されていた

243 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:45:47 ID:9OubR0lk0
(;´・ω・`)「ハァ、ハァ……んぐっ、ここか?」

( ∵)「ゴエ」

( ∴)「ゴエ」

(;´・ω・`)「ここに寝かせればいいのk……なんだこりゃ骨か?」

(#∵)「ゴエエエエエエエエエエエエ!!!!!!」

(#∴)「ゴエエ!!!!!」

(;´・ω・`)そ「わぁわぁわかったよ悪かった!!ほら、これでいいのか!?」


アホの下僕は急かされて、ようやくディを骨と寄り添わせるように寝かせた
下僕一号と死にかけ下僕も遅れて到着し、その姿を見守る


(;'A`)「……」

<ヽ;`∀´>「……」


(# ;;- )「」


変化はない。最早、私の耳にも息遣いすら聞こえない


(;´・ω・`)「っ……く、っ……!!」


『間に合わなかった』。誰もがそう認識し、悔しさを地面へと叩きつけようとした瞬間


(∪;>ω<)そ「キャイン!?」


太陽の光すら超越する、強烈な閃光が『ディ』から放たれた

244 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:46:16 ID:9OubR0lk0
(;´ ω `)そ「うおおっ!?」

(; A )そ「目ぇええええええええええ!?」

<ヽ; ∀ >「っ……ディ!!」


:(∪>ω<):「おおおおおおお……」


何も見えねえ!!!!!!!!


:(∪>ω<):「お゛!? お゛ぉ゛!?」


しばし悶絶していると、ベロリと顔面を大きくて湿った柔らかいものが撫でた


(∪^ω^)「お、おお……?」


視界がすぐさま回復し、その正体を目の当たりにする。『舌』だった
生え揃えた牙は鋭く、顔付きは精悍。逞しい四肢と、木漏れ日に照らされて光り輝く『銀』の毛並み
私の身長を遥かに越すその獣は、正しく私の偉大なる先祖である――――


「……」


『狼』であった

245 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:47:22 ID:9OubR0lk0
(;´゚ω゚`)そ「うおおおおおなんじゃああ!?かっけえ!!!!!!」

(;'A`)そ「うわ本当だクソかっけええええええええ!!!!!」


語彙力無いのかこいつら


<ヽ;`∀´>「ひょ……として、ディ、ニカ?」


「……」


狼は答えない。しかし『人』であるディの姿が無いのが何よりの証拠だった


「……」


(;'A`)「お?なんだどうしtうわわわわわわ」


ブサイク下僕の、血が染みついた個所をベロリと舐める。すると


('A`)そ「お゛!? お゛ぉ゛!?」


ずっともたれ掛かったままだった下僕一号を解放し、腹を弄る


(;'A`)「な、な……治ってるーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

(;´゚ω゚`)そ「何ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!??????」

<ヽ;`∀´>「うるさ……テンション落とせ!!」


目も当てられないほど酷い傷が、文字通り綺麗さっぱり無くなっていた

246 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:49:06 ID:9OubR0lk0
(;'A`)「し、しかもなんか貧血も治ってる気がする!!」

(;´・ω・`)「気がするじゃなくてそうなんだよ!!顔色めっちゃいいぞお前!!」

(;'A`)そ「イケメンになった!?」

(´・ω・`)「あっ、顔はそのまま」

<ヽ`∀´>「ブサイクのまま」

(うA`)「夢見せてくれてもいいじゃんか……」


では、これまでと同じく吸い取った傷はどうなったのか?


(;´・ω・`)「おい見ろ!!」


ディの舌の上には、ブサイクの物だった傷がそっくりそのまま貼り付いている
それを『フッ』と吹き飛ばすと、穏やかな光に代わって空へと昇る


(∪^ω^)「!!」


これまで彼女が請け負ってきた『沢山の苦痛』も同じく、幾千の光と変わって大樹の天辺へと向かっていた


<ヽ;`∀´>「Rebel……『反逆』……還すんだ……人から請け負った苦痛を、神に……」

(;´・ω・`)「……いや、もしかしたら……『再分配』じゃねえか?」

<ヽ;`∀´>「え?」

(;´・ω・`)「ディの身体に刻まれた傷跡の多くは……言っちまえば、『過度の苦痛』に相当する致命傷ばかりだった。だから、『余分』を引き受けていた」

(;'A`)「いやでも、俺の怪我はともかく、ニダーの噛み傷や親父さんの怪我は?」

(;´・ω・`)「それは『サービス』だったんじゃねえか?成り行きとは言え、俺らは送り届ける役目を担ってたからな」

<ヽ;`∀´>「それでキャパオーバーを起こして、行動出来なくなった……」

247 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:50:04 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「……」


光は空へと立ち上ると風に乗って散り散りになっていく。人間の話は難しくて私にはよくわからない
でもきっと、悪い現象ではないのだろう。無口だが、思いやりのある彼女が、先住民共と同じような真似などしない


(´・ω・`)「苦痛……痛みってのは、人間の危険信号だ。それが無ければ手遅れになって死んじまう、必要不可欠なものだ」

(´・ω・`)「だからこうして……Rebelは『神』、もしくはそれに準ずる存在が『一定量』分配した苦痛のバランスを取る役割を担っていた……これが、俺の仮説だ」

<ヽ`∀´>「……結構、荒唐無稽ニダね」

(´^ω^`)「答え合わせなんざ出来やしねえよ!!それこそ、神とディのみぞ知るってな!!」


彼女は相変わらず無口だ。正しかろうと間違っていようと、否定も肯定もしない
冒険の終着点など、結構曖昧に終わってしまうものなのだろうか。だが、この胸に満ちた満足感だけは本物だ


('A`)「それで……残った謎だが」


そう言えば、さっきからビコとゼアは喋らない。故郷に着いたのだから、大はしゃぎしてもいいだろうに


( ∵)「……」

( ∴)「……」


彼らはずっと、眠る『狼』の傍に寄り添っている。それはまるで、人間がよくやる『祈り』とやらによく似ていた


「……」


( ∵)「ゴエ」

( ∴)「ゴエ」


ディが骨へと近づき、彼らの隣へと座る。そして顔を近づけ、愛おしそうに『骨づくろい』をした

248 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:51:19 ID:9OubR0lk0
(∪^ω^)「……わんお」

「……ピィ」


か細く鼻を鳴らす。同族の私には、彼女の『感情』を深く理解できた


(∪^ω^)「……」


『悼み』だ。ディと同じく、『Rebel』とやらだった狼の死を悼んでいる
それが彼女の『親』だったのか、『友人』だったのかまではわからない。だけど


(∪^ω^)「わんお……」


癒す事の出来ない『苦痛』は、それこそ痛いほど伝わった


(´・ω・`)「……オメーらの、友達か?」

( ∵)「ゴエ」

( ∴)「ゴエ」

(´⁻ω⁻`)「……そうか。お前らは、『忘れ形見』を届けたかったのか」


三人も、そして私もその場に座り、今は無き『Rebel』に祈りを捧げた
悲しみによる『苦痛』もまた、私たちには必要なのだろう。決して忘れないために、最期のその時まで想い続けるために―――――

249 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:52:06 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



(´・ω・`)「……」

('A`)「……」

<ヽ`∀´>「……」

(∪^ω^)「……」

( ∵)「……」

( ∴)「……」


「……」


(´・ω・`)「名残惜しいが……行くか」

('A`)「……そうだな」

<ヽ`∀´>「……」

(∪^ω^)「……」


ここに、目的は達した。『スリー・ドットに到達し』『精霊Rebelと出会う』。彼らの冒険は幕を閉じたのだ


(;´・ω⁻`)「……っあー!!湿っぽいのは苦手だ!!」


ショボンはパンパンと頬を叩くと、いつもの腹の立つ笑顔を浮かべた


(´^ω^`)「楽しかったぜ!!元気で過ごせ!!オメーのガキが旅をして帰る時は、また俺らを頼れ!!絶対に送り届けてやるからよ!!」


狼、『ディ』の頭をワシャワシャと乱暴に撫でる。乱れた毛並みを直すかのように一度大きく頭を振るうと
仕返しと言わんばかりに軽く頭突きを返す。次はドクが、彼女の顎下を指で掻いた

250 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:52:59 ID:9OubR0lk0
('A`)「命の恩人だ。感謝してもしきれねえよ。次に来るときは、山ほどのシリアルバーを手土産にしてくる。約束だ」


ドクの掌に頬を擦り付け、親愛の返答をする。変わってニダーは、太く逞しくなった首を優しく抱きしめた


<ヽ`∀´>「寂しくなるニダ。ビコとゼアをよろしく」


見えない涙を拭うかのように、頬を舐める。彼が離れると、ディは頭を小さく勇敢な『同族』の位置まで下げた


(∪^ω^)「わんわんお!!」

「ワ……ワンワン、オ」


三人が「おおっ」と囃し立てる。精悍な狼が間抜けな鳴き声を真似る様は少し可笑しくて、愛おしかった


(∪^ω^)「……」

( ∵)「ゴエ!!」

( ∴)「ゴエ!!」


この場に残るもう一つの『珍妙な生命体』は、握り拳を作りグッと差し出した
種族は違う、言葉も先住民以上に通じない。そもそも、地球上で生まれた生命体かもわからない。それでも、この行為を行う『意味』を知っていた

251 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:53:46 ID:9OubR0lk0
<ヽ`∀´>「フフッ……」

(´^ω^`)「へッ」

('∀`)「ハハッ」


彼らのサイズに合わせ、三人は『人差し指』を付け


「……」


ディはその上に遠慮がちに前脚を乗せ


(∪^ω^)「わんわんお!!」


その上から遠慮なくビィも前脚を置いた

252 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:54:16 ID:9OubR0lk0
(´^ω^`)「ここまでの『冒険』に!!」


('∀`)「身を焦がす『スリル』に!!」


<ヽ`∀´>「永遠の『友情』に!!」


( ∵)「ゴエ!!」


( ∴)「ゴエ!!」


(∪^ω^)「わんわんおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!」




「ウ……ウォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!」




遠く遠く澄み渡る空へ、困難を分かち合った仲間を讃える『遠吠え』が響き渡った―――――

253 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:56:17 ID:9OubR0lk0












―――――
―――



川 ゚ -゚)「本当にいいんだな?」

(´^ω^`)「なぁに、十分よ!!燃料も入れて貰ったし、これ以上はバチが当たるってもんだ!!」


セブンクロス道路沿いは、通報を受けた『組織』の追加人員と輸送車、輸送ヘリでごった返していた
長い年月、Rebelを利用して旅人や登山者を誘拐し嬲り続けて来た先住民の移送及び収監もあるが
恐らく本命は彼らが所有していた『ダイヤモンド』の方だろう。重労働にも関わらず、職員の誰もが目を輝かせていた


川 ゚ -゚)「謙虚だな。プギャー・スマイリィが先行していたとは言え、発見者はキミ達だ。もっと『取り分』を要求しても文句は言われまい」

('A`)「ガキにゃ過ぎた大金だって。当面の資金になりゃそれでいい」

<ヽ;`∀´>「いや結構あるニダよ?これ」


三人はそれぞれ、掌に収まるサイズの小袋一つ分のダイヤモンドを協力報酬として受け取った
ニダーは今まで感じた事のない『大金』の重みに戦々恐々としていたが、資産家の息子達はあっけらかんとしている
Cはヘリでブンゲーのバーデラス農場までの送る事も提案したが、彼らはそれも断った


(´^ω^`)「バタバタしちまって観光もクソも無かったからな!!のんびり帰るよ!!」

川 ゚ー゚)「そうか。いや、逞しくて何よりだな」

(´・ω・`)「それより、あのクソ野郎の事だが……」

254 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:57:30 ID:9OubR0lk0
『プギャー・スマイリィ』は指示通り四肢をへし折られた状態で救急車に搬送された
余りに痛々しい姿に救急隊員は表情を歪ませたが、当の本人は


(* ^Д^)「へ、へへへ、へへへへへへへへ!!!!」


とにかく先住民の支配から逃れられたことが嬉しいらしく、ヘラヘラと嗤い続けていた


川 ゚ -゚)「勿論、シャキン・バーデラスの手がかりが分かり次第キミ達に報告する。其方も頼むぞ」

(´・ω・`)「ああ、残りの『スリー・ドット』の情報が掴めたらそっちに送るよ」

川 ゚ -゚)「……組織へ加入する気は、やはりないか?」


三人は顔を見合わせ、噴き出した


('∀`)「無いね。誰かに従うなんざ性に合わねえし、何より……」

<ヽ`∀´>「自由がない、ニダ」

(´・ω・`)「とのことだ。ああ、協力はするぜ?世界の平穏と安寧を守るためにな」


近くで調査員に報告をしていたトソンが、『キーワード』を聞いてボールペンを片手でへし折る
何か粗相があったのかと、調査員は今にも漏らしだしそうな顔で怯える。そこにレモナが苦笑いを浮かべてフォローに入った


川 ゚ー゚)「余り虐めてやるな。ちゃんと反省はしているさ」

(´^ω^`)「あっれーーーーーーーー!!!!????そんなつもり毛頭なかったんだけどなぁーーーーーーー!!!!????自意識過剰なんじゃないーーーーーーー!!!!!????」


<ブッッッッッッッ殺す!!!!!!!!!!!!!レモナ、放してください!!!!!!

<良いってほっときなって!!一々相手してらんないわよ!!


(´^ω^`)「ハハ、おもろ」

川;゚ー゚)「……聞いていた通り、良い根性をしているな」

('A`)「いや今のは只のクズ」

<ヽ`∀´>「人間クズ」

(∪^ω^)「わんお」

255 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 15:58:54 ID:9OubR0lk0
川 ゚ -゚)「では、私はこれで……ああ、そうそう、一つ聞き忘れていた。『その犬』は?」

(∪^ω^)「わんお?」


Cに質問され、三人は今まですっかり忘れていた状況を思い出す
病院、警察を過剰なまでに拒否する理由や、ビコやゼア、ディと共に行動していた理由など、彼には数多くの謎が遺されている
しかし、一つの山を無事に越えたばかりの彼らは、これ以上思考を巡らせる余裕はなく――――


(´・ω・`)「仲間だよ。立派な戦力だ」

('A`)「文句あるか」

<ヽ`∀´>「喧嘩腰になるな」


確かにハッキリしている事実だけを述べた


川 ゚ー゚)「フ……相分かった。ではな、冒険者たち」


それ以上の追及は無粋と感じたのか、Cは手を振って踵を返す
余りに様になっている『ボス』の姿に、ニダーは溜息を吐いた


<ヽ;`∀´>「中身が違うだけであんなに差があるニダね……」

('A`)「思えば『サダコ』が廃工場でゼアを手放した時から入れ替わってたんじゃねえの?」

(´・ω・`)「あの集団にずっと憑いてたのかもな……さて、引くほど大量の収穫もあったし、帰ろうか」

('A`)「よっし!!ニダー、運転頼む!!」

<ヽ;`∀´>「『よっし』って気合は何?それ運転を申し出る奴がするやつニダ」

(#´^ω^`)「うるせえ喧嘩すんじゃねえお子様共!!俺が運転してやらぁ!!」

('∀`)「クズ……」

<ヽ*`∀´>「クズ……」

(´・ω・`)「お前らだけ歩いて帰れ」

256 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 16:00:20 ID:9OubR0lk0
('A`)「冗談だよ。ほれ、帰るぜビィ」

(∪^ω^)「わんお!!」

<ヽ`∀´>「ウチのアパートってペットオッケーだったっけ?」

(´・ω・`)「あー、実はあのアパートの大家、親父にデカい借りがあるからよ。ちょっと脅せばオールオッケー」

(;'A`)そ「ハァ!?初耳だぞ!?」

(´・ω・`)「言ってなかったからな」

<ヽ;`∀´>「通りで家賃格安で結構な頻度でチンピラが殴りこんできても文句言われないワケニダ……」


割としょうもない衝撃の事実に妙な納得をすると、三人と一匹は車へと乗りこんだ
女の子一人と、人形二つ分のスペースが空いた車内に一抹の寂しさを抱くが――――


<……オオオ…ウォォォーーーーー……

<ゴエエエ……

<……エエエ……


見送りの『遠吠え』に、呆気なく掻き消えた。確かに彼女たちは『セブンクロス』にいる
いつか再会出来る希望を胸に、ショボンは車のキーを回した


(´^ω^`)「さぁて、こっからは凱旋だ!!たらふく食って、しこたま寝て!!バカみてーに遊ぼうぜ!!」

('∀`)「よっしゃあ!!ちょっとはご褒美がねえとな!!」

<ヽ`∀´>「英気を養って、次の冒険に備えるニダ!!」

(∪^ω^)「わんわんお!!わんわんお!!」


疲れを吹き飛ばすほど大きく騒ぎ、車はセブンクロスを発つ
沢山の思い出と、思いがけない出会いと、次の冒険への期待を乗せて――――

257 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 16:00:47 ID:9OubR0lk0
























.

258 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 16:02:26 ID:9OubR0lk0
―――――
―――



学生の夏は、日数から見れば長いように見えるが、体感は矢の如し
酒とタバコが楽しめるようになれば、その特別な時間は幾ばくも残されてはいない


<ヽ`∀´>「えーと、これはもう纏めた……これ……うん、これニダ」


あの胸躍る旅から二か月余りが経ち、大学の授業が再開された
『超常保護対象』と出会ってから劇的に彼らの生活が変わったワケではなく、これまで通りの日々が続いている
強いて言うなら、娯楽作品に向ける目が少し特殊なモノになった事くらいだろうか


「テメッ……クソがオラァァァ!!!!!」


<ヽ`∀´>「またやってるニダ……」


壁がドンと『何か』にぶつかり、積み上げた書籍が衝撃で崩れ落ちる
そろそろ引っ越し時とも考える事があるが、やはりアクセスの良さと家賃が魅力的で中々手放せない


(#'A゚)「クソが!!!!!!よぉ聞いてくれよニダー!!俺がもう地下格闘技やらねえっつったらあいつらぶっ殺そうとして来やがったんだぜ!!!!!!!!???????」

<ヽ`∀´>「それ、どうしたニカ?」

(#'A゚)「地下格闘技の施設ごとぶっ壊してきた!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「どんどん規模が大きくなる……」

259 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 16:03:32 ID:9OubR0lk0
(#'A`)「飲まないとやってらんねえよチクショウめ……ショボンとビィは?」

<ヽ`∀´>「散歩。あと買い出し」

('A`)「あー、今日はあいつが当番だったか」


ドクは冷蔵庫からビールを取り出し、閂を使わず指で栓ををこじ開ける
ソファーに転がっていたリモコンを手に取り、電源を入れた


『(´^_ゝ^`)「バーデラスバーデラスバーデラスファーム♪」』


('A`)「……」


直ぐに消した


('A`)「……耳に、残るんだよな」

<ヽ;`∀´>「いや……わかるけど、お世話になってんだし……」

('A`)「それとこれとは話が別じゃん?」


事情を知る『デミタス・バーデラス』には持ち帰ったダイヤの売却と、それにより生じた資金の貯蓄を依頼している
息子の行方に光明が見え始めた彼は、三人に更なる支援と協力を約束してくれたのだ
最近では『C』がコンタクトを取ったらしく、彼は息子に


『 (´^_ゝ^`)「新しいママ欲しくない!!!!!!!!!????????」 』


と、確認を取ったらしい。勿論、すぐさまその話はショボンからCへと報告され、以後は接触を控えているそうだ

260 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 16:04:47 ID:9OubR0lk0
('A`)「しっかし、散々調べても次の『スリー・ドット』の手がかりは見つかんねえな」

<ヽ;`∀´>「セブンクロスも居場所と『苦痛のRebel』以外は結構ぼんやりとした感じだったしね。やっぱ自力で超常保護対象と接触するのは困難ニダ」

('A`)「あのねーちゃんからも連絡はねーしな……」


消極的な薄暗い空気が部屋に充満する。『これじゃいけない』とニダーが気合を入れなおそうとしたその時


<わんわんお!!わんわんお!!

<てぇへんだてぇへんだ!!!!!!!


階下からドタバタと慌ただしい足音と喋り声が聞こえて来た


(∪;^ω^)そ「わんおぉっ!?」ドンガラガッシャァン!!!!

(;´・ω・`)そ「ビィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!ドクてめえまたゴミ野郎持って帰って来たのかよ!!」

('A`)「持って帰って来たんじゃねえ着いて来ただけだ」


ビィはドクが殴り倒した『ゴミ野郎』に躓き、顎で廊下を滑っていく
新しい『家族』はすぐに新しい環境に慣れ、飼い犬生活を謳歌している。ただし首輪と綱だけはプライドが許さないらしく、装着していない


(´^ω^`)「へへっ、ビッグニュースが二つある!!どっちから先に聞きたい!?」

<ヽ`∀´>「性病?」

('A`)「包茎手術?」

(´^ω^`)「どっちも聞きたくねーのか?????お?????」

261 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 16:05:39 ID:9OubR0lk0
('A`)「いやだって、良い悪いのニュースならわかるけど……なぁ?」

<ヽ`∀´>「ビッグニュースってどっちも一緒の意味ニダ。後先もお前の裁量次第ニダ」

(´^ω^`)「オーケーわかった俺が悪かった。勿体ぶらずに教えよう!!こいつだ!!」


後ろ手に隠し持っていた『封筒』を、二人の目の前に差し出す


(´^ω^`)「二つ目の『スリー・ドット』の居場所を掴んだ組織からの資料だ!!」

<ヽ;`∀´>「え!?は!?郵送で!?」

(´・ω・`)「なワケねーだろいつの間にか買い物かごに入ってたんだよチビるかと思ったわ」

(;'A`)「お、おお……ちょうど今その話をしてたんだ。噂をすりゃあって奴だな」

(´・ω・`)「と、まぁ……これは前座で」


資料は雑にジーパンの中へと捻じ込まれる。二人はいよいよクズが脳に回って狂ったのかと思った


('A`)「クズが脳に回って狂ったか?」

<ヽ`∀´>「クズが脳に回って狂ったニカ?」

(´^ω^`)「オメーらそんな口利けるのも今の内だぞ後でクッソシバくからな????????」


とは言いつつも、ショボンの表情はウキウキの笑顔で彩られている
これ以上のニュースがあるのかと、二人は首を傾げた。その答えは直ぐに

262 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 16:06:47 ID:9OubR0lk0









<ゴエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!

<ゴエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!






(;'A`)そ「ッ!?」

<ヽ;`∀´>そ「!?」


廊下の奥から聞こえて来た、『珍妙な鳴き声』が提示した


(´^ω^`)「な?」

(;'∀`)「は、はは……こりゃ確かにビッグニュースだ」

<ヽ;`∀´>「いつ発つニカ?」

(´^ω^`)「決まってんだろ!!!!!」




(´^ω^`)「今すぐだ!!!!!!!!」





.

263 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 16:07:35 ID:9OubR0lk0
('∀`)「そうこなくちゃあなぁ!!!」


衣服が詰め込まれた旅行鞄を引っ掴み


<ヽ*`∀´>「待ち望んだニダ!!」


独学でまとめ上げた資料ファイルを脇に抱え


(´^ω^`)「さぁ行くぜ野郎ども!!」


上着をマントのように翻し、袖を通した






(´^ω^`)「冒険再開だッ!!!!!!未知に挑むぜテメエらぁッ!!!!!」





('∀`)<ヽ*`∀´>「「オオッ!!!!!!!!」」

<わ、わんわんお……

<ゴエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!

<ゴエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!





素早く支度を済ませると、冒険者たちはアジトを飛び出した
また、新たなるロマンとスリル。そして夢を追い求める旅の幕が開けたのであった―――――

264名無しさん:2020/05/06(水) 20:10:50 ID:uaUvnWBM0
乙!
めっちゃめっちゃ面白かった!!
わくわくしながら読み進めたよ!

265名無しさん:2020/05/06(水) 20:51:46 ID:DPY26iT60
乙。。。

266 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 22:51:46 ID:9OubR0lk0






https://www.youtube.com/watch?v=9UzJFDRz_f4





.

267 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 22:52:13 ID:9OubR0lk0
CAST


m9(´^ω^`)9m ショボン・バーデラス



(#'A゚) ドク・オーツ



<ヽ;`Д´> ニダー・コクソン


使用イラスト №47
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208777/47_rxablb.jpg

268 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 22:53:14 ID:9OubR0lk0



_人人人人人人人人人_
> 私はウンコした <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

  (∪^ω^) ビィ(わんわんお)


(*∵)ノシ ビコ

(;∴)ノシ ゼア


使用イラスト №4
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208775/4_hu9ekx.jpg



(#゚;;-゚) ディ



.

269 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 22:54:03 ID:9OubR0lk0



(゚Д゚#トソン トソン・バートン

|゚ノ;^∀^) レモナ

ノハ;⊿;) ヒート・バニング

从 ⁼∀从 ハイン・タカオカ

从'ー'从 アヤカ

(*‘ω‘ *) コードネーム オレンジ

ハハ;3 -3)ハ ハロー

⌒*リ´・-・リ<なの リリ

*(‘‘)*<ですの ヘリ

ξ#゚⊿゚)ξ ツン

ζ(^ー^*ζ デレ


川д川 ≒ 川 ゚ -゚) サダコ&C


使用イラスト №3
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208775/3_zb6qc2.jpg

270 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 22:55:17 ID:9OubR0lk0




 彡 ⌒ ミ
(´^_ゝ^`)「また髪の話してる……」


         デミタス・バーデラス



( ゚∋゚) 大男(クックドゥドゥルドゥ)

/ ,' 3 族長(チンチンボウヤ)



.

271 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 22:55:58 ID:9OubR0lk0



使用楽曲


Queen - Don't Stop Me Now
https://www.youtube.com/watch?v=HgzGwKwLmgM



ED theme


BRADIO - HOTELエイリアン
https://www.youtube.com/watch?v=9UzJFDRz_f4



作 ◆UYqRtHH4DY

所属チーム ('A`)VIP国

投下板 ブーン系小説創作板(ファイナル)



.

272 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 22:56:57 ID:9OubR0lk0





( ^ω^) ラノブンピック2020




.

273 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 22:58:43 ID:9OubR0lk0











『∵ Three dot ∴』











.

274 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 22:59:38 ID:9OubR0lk0
























.

275 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 23:00:33 ID:9OubR0lk0
























.

276 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 23:02:34 ID:9OubR0lk0
















「……はい、確かに『Pain』はセブンクロス地区スリー・ドットに送り届けられました。だから言ったでしょう?『放置しても問題は無い』と」


「オムライスで例の『ジャスティス・リーグ』共に捕まった時は少々肝を冷やしましたが……こんなジパングの諺をご存じですか?」


「『災い転じて福となす』。彼らはそれらも味方につけて、見事目的を果たした。我々にとっても、あの『不慮の事故』は怪我の功名と言えるでしょう」


「……」


「『シャキン・バーデラス』の動向だけが気がかりですが……はい、ええ、なんと……それは確かですか?」


「……畏まりました。『Pleasure』の捜索を急ぐと共に、オッパイモミタイ海域スリー・ドットにて、『起動装置』を確保致します」


「して、彼らは……?はい、ええ……では、追加で『エクスキューショナーズ』を派遣し、確実な処置に当たります。それでは、私はこれで」

277 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 23:04:53 ID:9OubR0lk0
通話を終えると、ほぅと大きく息を吐いて緊張を解く。我らがボスながら人使いが荒い
高い給金を頂いているとは言え、雑用から中間管理まで押し付けられるのは堪ったものでは無い。時折、付く側を間違えたかなとも考える事があった


(;´∀`)「ハァ……」


人手を『お借りする』能力は、小心者の自分には過ぎた能力だと思う。『彼』のように人を顎で扱う人物になれるものならなってみたい
だがやはり、大きな仕事をするに当たっては、自分の目と労力を惜しみなく使うべきだ。『事故』のように不測の事態が起こっても、事を滞りなく推し進めるために


(;´∀`)「いやぁ、ありがたいよ本当に……」


その分、彼らは本当に良い仕事をしてくれた。此方の仕事を肩代わりし、尚も『協力』をしてくれるのだからありがたい
正直、あのような若者たちを手に掛けるのは心苦しい。しかし今後、我々の進退を賭けた『プロジェクト』の邪魔になる可能性も捨てがたい
『恨みは無いが死んでもらおう』。そんな、悪党丸出しのセリフを吐くような時が近づいていると思うだけで、胃がキリキリと痛んだ


(;´∀`)「……」


「……」


(;´∀`)「……そんな目で見ないでくれ」


『Pain』がスリー・ドットに到達した瞬間から、『預かり者』は目を覚ました
古く頑丈な腕枷と鉄球付きの足枷は、『どんな工具』を使用しても壊れなかったが、恐らく『Pleasure』の帰還が文字通りの『鍵』となっているのだろう
彼女は私を責めやしないし、話しかけようともしない。容姿こそ『天使』に相応しい美しさだったが、それすらも恐ろしく不気味だ

278 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 23:05:38 ID:9OubR0lk0
(;´∀`)「……時が来るまで、もう一眠りしておいてくれ」


「……」


遂には視線に耐え切れず、私は『檻』の扉に手を掛けた



https://boonnovel2020.web.fc2.com/e/103.jpg



閉ざされていく光の中、『Equality』の真っすぐな眼差しは、最後まで私の身を貫いた
『平等』のRebel。核兵器すら凌駕する恐ろしい力を秘めた存在が、その真価を発揮する時は近い




閉じた扉の音が、世界が変わるまでのタイムリミットを刻む『秒針』に聞こえた―――――




.

279 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 23:06:09 ID:9OubR0lk0










                   To be continued……

280 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/06(水) 23:10:00 ID:9OubR0lk0
終わりです。お疲れさまでした

使用イラストは№3 №4 №47 №103になります

281 ◆S/V.fhvKrE:2020/05/07(木) 00:23:58 ID:vVzl1jQ20
【投下期間終了のお知らせ】

主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。

このレス以降に続きを書いた場合

◆投票開始前の場合:遅刻作品扱い(全票が半分)
◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)

となるのでご注意ください。
(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)

282名無しさん:2020/05/07(木) 00:38:53 ID:8OnpXhnU0
ブラボー!!!最っっっ高のショーをありがとう!

283名無しさん:2020/05/07(木) 15:51:07 ID:4To3/s/M0
いいね

284名無しさん:2020/05/07(木) 19:19:12 ID:6M5shAL.0
やっべぇ、1レス毎が長くて割とレス数も多いのにサクッと読めてめっちゃ面白かった!
心の底から乙!

285名無しさん:2020/05/08(金) 03:24:58 ID:HHLUyWGg0
めちゃくちゃ面白かった!!!!!!!!!

286名無しさん:2020/05/12(火) 21:46:44 ID:Nl1IbQjs0
センスの固まりかよ

287名無しさん:2020/05/13(水) 20:58:57 ID:FuRbYcv20
最高のクソ野郎共に捧げます
https://i.imgur.com/dwWhAh5.jpg

288名無しさん:2020/05/13(水) 21:23:35 ID:ljwvHO9g0
ビコゼアビィかわいいのう
勿体ないから絵投票してやってくれ

289名無しさん:2020/05/16(土) 20:49:45 ID:qyyOZ1cs0
面白かった!!冒険映画だ!

290 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/24(日) 22:10:07 ID:Gpv7CTVo0






『∵ Three dot ∴』





.

291 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/24(日) 22:12:04 ID:Gpv7CTVo0






『∵ Three dot ∴』





・本編 ・チャプター ・字幕/音声 ・特典映像←

292 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/24(日) 22:13:29 ID:Gpv7CTVo0




特典映像


・一括再生←
・監督インタビュー
・出演者インタビュー
・未公開シーン
・NG集&オフショット
・予告編



.

293 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/24(日) 22:16:31 ID:Gpv7CTVo0
『監督インタビュー』



(´・_ゝ・`) 監督、脚本及び『デミタス・バーデラス』役 デミタス・ウッズヒル(ハゲ)


(´・_ゝ・`)「当初の予定では人の黒い面や邪悪さを押し出す作品を撮るつもりだったんだ。『ミッド・サマー』に影響されてね」

(´・_ゝ・`)「だけどやっぱり僕の趣味じゃなかったし、そもそも気分が落ち込んだりするような話を読んでも楽しくはなれない。それが気に入らなくってね」

(´・_ゝ・`)「じゃあどうするかって頭を悩ませている時に、『野生の呼び声』を観てこれだ!!と思ったんだ。他種族間との友情を描いた冒険譚さ。ディズニーも少し意識してファンタジー気味にね」

(´・_ゝ・`)「ちょうどイラストの№4が犬と妖精っぽいイラストだったから、ここに到達するように話を組み立てた。メインとなる人間の主人公をいくつかと、草原はどんな場所か、犬はどんな役割を果たすか、障害はどうしようかってね」

(´・_ゝ・`)「で、ショボン、ドク、ニダーを主軸にディという達成目標を設定した所で新たな問題が生じた。前回の作品である『CARGO!!』と似たようなストーリーになってしまうんだ」

(´・_ゝ・`)「三バカが女の子を拾って、それを送り届ける。パーティにビコーズや犬がいるのも類似点になった。確かに今回は『生きた世界』でのロードムービーではあるがね」

(´・_ゝ・`)「そこで今回はメインの三人の性格をとことん前向きに、頭を悩ませることなく突き進む気持ちのいいバカにした」

(´・_ゝ・`)「『CARGO!!』はゾンビとしてのアイデンティティと常人として持つ愛の間で揺れるドクオの物語がメインで、答えに到るまで仲間との衝突があったけど、Three dotはマイナスイメージに繋がる要素を徹底的に排除した」

(´・_ゝ・`)「徹頭徹尾『一丸』となって目的地であるスリー・ドットへと突き進む男たちの強さをテーマに、とにかく観ていて爽快な作品に仕上げようと思った。特に今は大変な時期だし、『肯定的なパワー』を持つ話がウケるんじゃないかって狙いもあったね」

294 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/24(日) 22:17:34 ID:Gpv7CTVo0
(´・_ゝ・`)「参考にした作品は多々あるね。ドクの武器である『オーツ流武術』の元祖となる『詠春拳』は『イップマン』から」

(´・_ゝ・`)「先住民は作中でもタイトルが挙げられている『グリーン・インフェルノ』が元ネタさ。というか、そこを書くために彼らを登場させたんだ」

(´・_ゝ・`)「犠牲になった学生活動家たちや、その原因を生み出したプギャー・スマイリィもこの映画を参考に作り上げた。良い映画だよアレは。グロいだけじゃなくウンコするしシkオーケーわかったこの話はやめよう」

(´・_ゝ・`)「理不尽に人が犠牲になる……それこそ、『ミッド・サマー』のような胸糞の悪くなる作品にメンタルとフィジカルが最強の連中を放り込んだら惨事になるどころか逆襲するんじゃないかという僕の妄想を形にした」

(´・_ゝ・`)「ドクが腹を刺されてから一騎打ちを強制されるシーンは、『グラディエーター』のオマージュだね。あれは最後sンンッなんでもない」

(´・_ゝ・`)「とまぁ、作中では邪悪な民族として描かれた先住民だが、プロットの段階ではそこまで悪い存在にするつもりはなかった」

(´・_ゝ・`)「ドクと戦わせる所までは同じだが、その後和解して『Rebel』や『シャキン・バーデラス』の情報を伝える……という役割を担っていた」

(´・_ゝ・`)「変更に到った理由だが、ディを送り届けるって段階で『12シスターズ』とはまた別の組織に襲撃させるつもりだった。だが、そこに到るまでのプロセスを加えてしまったら更に長丁場になる」

(´・_ゝ・`)「『12シスターズ』との和解と共闘は必ず入れたかったシーンだ。だから先住民を協力者から最大の脅威へと変更させた。Rebelに対する認識も残虐なモノに変えてね」

(´・_ゝ・`)「結果としては此方の方がスッキリとまとまって、展開的にも面白くなったから結果オーライだね」

(´・_ゝ・`)「ああ、そうそう。先住民のセリフは全編に渡って役者のアドリブだ。それっぽくすれば何言ってもいいと指示してね」

(´・_ゝ・`)「まぁ、みんな結構置きにいった感のある言葉ばかりでそこまで酷い事にはならなかったね。『実は乳首開発中です』とか性癖のカミングアウトがあったらもっと面白かったと思う。お前もそう思うだろ?ハム太郎」


<へけっ☆


(´・_ゝ・`)「うわキモ」

295 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/24(日) 22:19:13 ID:Gpv7CTVo0
(´・_ゝ・`)「一番苦労したのは『12シスターズ』の設定と尺の配分だね。なんせ十二人だ。それを一作分の枠の中にギチギチに詰め込まなきゃならない」

(´・_ゝ・`)「身体技能系のヒートやハインはすんなりと完成したんだけど、ビジュアルにインパクトのあるオレンジやハローは難産だった」

(´・_ゝ・`)「特にしんどかったのはアヤカの能力だ。回復系の見た目をしているが、その役割はすでにディが担ってる。麻酔催眠の医療技巧者という設定に落ち着いたけど、今見ても結構無理があるね。その分、性格に捻りは加えたつもりだが」

(´・_ゝ・`)「ツンとデレの姉妹はオムライスで対峙する予定だったが、締め切りが迫っていたのと能力設定が最後まで決まらなかった事もあって、『存在感を失くす』というチート能力を手に三バカが初めて敗北を喫するターニングポイントとして機能してもらった」

(´・_ゝ・`)「結局、トソンとレモナの能力も明かせず仕舞いだし……ここはもう少し煮詰めるべきだったと反省しているよ。続編、もしくはスピンオフで明かしていきたいね」

(´・_ゝ・`)「続編は勿論意識してるよ。チャプターごとに一つずつ、計『三つの地点』を目指す三部作をイメージした」

(´・_ゝ・`)「違うフィールド、新たな協力者と敵、そして残るRebelの謎とシャキン・バーデラスの目的。ゆくゆくはちゃんとした形にして皆様にお届けしたいね」

(´・_ゝ・`)「おっと、時間だ。ああいや、仕事とかじゃない。メギド72のボーナスタイムが始まったんだ。それでは、失礼するよ」

296 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/24(日) 22:21:17 ID:Gpv7CTVo0
『出演者インタビュー』



(´・ω・`) 『ショボン・バーデラス』役 ショボン・レイノルズ


(´・ω・`)「ショボン・バーデラスは他の二人と比べてフィジカルに目立った面は無いが、度胸とハッタリで場を切り抜ける演じて面白いキャラクターだった」

(´・ω・`)「お気に入りは『オレンジ』との戦闘だな。あそこは『ジョジョ』のスタンド・バトルを意識した。状況を読み解き、敵能力を把握して対処する。近いシチュエーションは第四部の吉良VS隼人の頭脳戦だな」

(´・ω・`)「特に奴はドクのようにドチャクソ強いわけでもなく、ニダーのように逃げ足が速いワケでもない。その上で二人と並ぶスキルが必要だった」

(´・ω・`)「度胸、ハッタリ、そして遠慮なく仲間の力を借りる『図々しさ』。リーダーとしての素質は三人の中の誰よりもあっただろうな」

(´・ω・`)「モデル……という程でもないんだが、参考にした人物は中国の偉人『劉邦』だ。当時最強と言われた項羽を破り、秦の時代を終わらせた彼は部下を頼る事に長けていたらしい」

(´・ω・`)「他にも頭脳キャラらしく『孫氏』の兵法を引用したりな。インテリの演出には持って来いだった」

(´・ω・`)「武器が『縄』ってのも面白い設定だったな。牧場育ちを上手く活かしていた。ただ、訓練に結構難儀してな。使われたシーンは少ない」

(´・ω・`)「実は牧場での戦いは実際に乗馬を行う予定だったんだが、予算と製作期間の都合上ボツになったんだ。縄で捕まえて引き摺り回す、西部劇じゃお馴染みの拷問を行う筈だった」

(´・ω・`)「それをやっちまうと最後の盛り上がりの12シスターズが終結する場面で欠員が出来てしまう。出来る限り軽傷で撃退するってのは難しいもんだったな」

(´・ω・`)「一応、奴は三人の中で唯一『行方不明の兄貴を追う』っつー目的を持っているが、割とこれは二の次でな。他の二人と同じく『冒険』に対する欲求の方が強い」

(´・ω・`)「家族を飛び切り軽視してるワケじゃないってのはプギャー・スマイリィとのシーンでもわかるだろうが、ある程度事態を楽観視してる傾向はある。ドライと言えばドライになるかな」

(´・ω・`)「ただやっぱり兄の影響ってのは確かに残っていて、それが顕著に表されるのは序盤に出た『博打』というワードを何度も使って強調してる所だ。これは奴の生き方そのものにも言える」

(´・ω・`)「スリー・ドットの謎を追う冒険は、奴にとっては兄の安否を賭けた広大なギャンブルであり、それを心から愉しんでいる。クズと呼ばれても仕方のない人物だ」

(´・ω・`)「ただやっぱり、ハゲの作品は一貫して『友情』に重きを置いているから仲間を想う気持ちは行方を晦ませた兄よりも強く持っている。そこのギャップも魅力の一つだろう」

(´・ω・`)「話の中心になる……とまでは行かないだろうが、続編でますます掘り下げが進められるだろうな。演じる俺としても非常に楽しみだ」

297 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/24(日) 22:22:57 ID:Gpv7CTVo0
('A`) 『ドク・オーツ』役 ドクオ・シーノ


('A`)「『CARGO!!』では元々『ドクオ』が持つ『煮え切らなさ』みたいなのを抱えるウジウジとしたキャラクターを演じたが、今回は徹底的に『強者』を演じろとの指示があった。この作品のテーマである『肯定的なパワー』の塊みてーな奴だな」

('A`)「監督の『ギャップへの拘り』は悪癖と呼べるほど強くてな。ヒョロくてザコい、けど何故か美少女との恋愛モノにも多く抜擢される『ドクオ』のイメージを根本からぶっ壊した」

('A`)「喧嘩も酒もバッチバチにキメて、例え相手が女だろうと一切の容赦はしない。心のままに生きる男の格好良さを感じられた」

('A`)「好感が持てるのは『強さ』の裏に陰湿さを持つキャラクターだったって所だ。家族のネグレクトが原因ではあるが、ドクは相手を壊す事に対する快感を抱いている」

('A`)「サディスティック・スリーも似たようなもんだったが、違いはそれを『表に出さなかった』。常に一定の落ち着いたテンションでクールな男だ」

('A`)「これは『正義』に準じて行動している『12シスターズ』との対比だな。悪とまでは言わないが、自分を一番に行動する身勝手な男。個人差はあるだろうが、主人公としてはかなりツボにハマる設定だ」

('A`)「意外だったのはドクが『格闘』という技術をキチンと使い熟すキャラだったとこだな。大体、ハゲの作品はフィジカルのみで圧倒するっつー設定が多かったんだが、今回は『詠春拳』を元にした『オーツ流武術』を用いた」

('A`)「製作期間と尺に余裕があれば、『チェーンパンチ』や棒術なんかも組み込む予定だったが……それは次に持ち越しだな」

('A`)「ワンインチ・パンチでの決着は当初の予定通りだった。ブルース・リーの動画なんかみて勉強してな。『寸頸』の達人は僅かな予備動作で瓦を三十枚割るらしい」

('A`)「手数の多い派手なアクション・シーンも好きだが、ああいった地味だが強力な技での短期決着ってのもドクの『クール』なイメージには合っていた」

('A`)「クールを形成する要因としてはもう一つある。ヒートとは違って格闘家である事に誇りを抱かず、あくまで敵を退ける『手段』として認識している所だ。だからこそ強さに驕らず、徹底的に敵を叩きのめす冷徹なキャラを演じられた」

('A`)「で、これもまた『ギャップ』なんだが、絶体絶命の状況に追い込まれてからグワッと戦意を燃やすシーン。陰湿なクールさを退ける『熱い男』ってのをそこで表現する」

('A`)「で、『醜男』であることがこのギャップを更に際立たせるんだ。醜くとも挟持があれば、人は誰でも輝ける。ドク・オーツはそれを身を持って体現してくれた『漢』だろう」

298 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/24(日) 22:24:29 ID:Gpv7CTVo0
<ヽ`∀´> 『ニダー・コクソン』役 キム・ニダー


<ヽ`∀´>「僕はモブや下っ端の悪役が多いんだけど、今回こうして主役の一角に抜擢されてとても光栄だった。使用したイラストの一枚が決め手だったらしいね」

<ヽ`∀´>「僕が演じた役割は、ぶっ飛んだ性格のショボンやドクのストッパー……と見せかけて、その実はアクセルを更に踏み込むキャラクターだった」

<ヽ`∀´>「序盤の図書館にしてもそうだね。ショボンの提案に彼が乗っかって初めて冒険が始まる。ストッパーよりも『引き金』に近いキャラだったと思うよ」

<ヽ`∀´>「彼は唯一、ごく普通の家庭環境で育った人物でね。その分、性格は穏やかで真っ当だ。ただ少しだけ『火遊び』好きが高じたって感じはしたね」

<ヽ`∀´>「だからこそ12シスターズに拉致されたシーンではしっかりと怒って、先住民達には報復をした。他の二人よりも『普通』であったからこそ、人として当たり前の行為に共感が持てた」

<ヽ`∀´>「それこそ、シスターズとの和解は彼の正直な言葉がきっかけだ。ショボンやドクじゃこうはいかない。ショボンはハッタリ、ドクは暴言とそれぞれ言葉の武器を持っていたけど、恐らくあの状況に持っていけたニダー・コクソンの言葉が最も強力だったんじゃないかな」

<ヽ`∀´>「『パルクール』はイラストから引き出された設定で、対戦相手も12シスターズのハインと決まっていた。あのシーン、実は作中で一番危険な撮影でね。スタントを使わないアクションだったから凄くヒヤヒヤしたよ」

<ヽ`∀´>「でも、ただ逃げるだけだと決め手に欠ける。そこでビィやビコ、ゼアと協力して敵を撃退する。パルクールプレーヤーらしい立体的な戦術には痺れたね」

<ヽ`∀´>「アクションの参考にした映画は『マッハ!!』と『アルティメット』。『逃走』のアクションでこの二つに匹敵する映画はそうそう無い」

<ヽ`∀´>「先住民の肩を踏み台に突破するシーンはマッハのオマージュでもあるしね。これも中々危険だったよ。タイミングは勿論、踏み台側の役者の体幹がしっかりして無いと成立しない。成功した時には彼らと抱き合って喜んだね」

<ヽ`∀´>「惜しむべきは医療知識を披露する場が少なかった事かな。次回作で活かせるかどうかはまだわからないけど、もしかしたら『世界で一番信用できないタイプの女』と協力するシーンがあるかもしれないね」

299 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/24(日) 22:27:17 ID:Gpv7CTVo0
( ^ω^) 『ビィ』役(モーションキャプチャー及び声優) ブーン・ホライゾン


( ^ω^)「メインの三人から物語を牽引する『犬』の役に変わったのはかなり新鮮で、勉強になる事も多かった」

( ^ω^)「今回は特に視点がコロコロと変わる。その中で唯一『一人称』で話を進めるキャラクターってのは面白い試みだ」

( ^ω^)「プライドの高い一匹狼が、冒険を経て人との絆を育む。この設定が嫌いな客はまぁいない。堅苦しい口調が時折崩れるのも、間の抜けた魅力があったね」

( ^ω^)「ビィはかなりしっかりと役割を担っていて、唯一ビコ、ゼアと意思疎通が出来ていた。理由は後々明かされるんじゃないかな。知らんけど」

( ^ω^)「演技指導に当たってくれたのは飼っている愛犬だ。特に風呂のシーンは参考になった。嫌がる時の鳴き声や、怒った時の唸り声。彼らは彼らで多彩な感情を魅せてくれる。そこがまた愛らしいんだよな」

( ^ω^)「スリードットに一番乗りしたシーンは今回のメインとして使われたイラストだ。地獄のような洞窟から、広大な世界へと足を踏み入れた爽快感を上手くマッチさせられたと思う」

( ^ω^)「犬とよくわからんマスコット的存在のトリオは、ハゲが言ってた『ディズニー要素』に一役買っていてな。ファンならよく理解してるだろうが、ディズニー・アニメーションは動物に人の複雑多彩な感情や表情の動きを取り入れている」

( ^ω^)「それこそ作中でも登場した『わんわん物語』や、近年の作品なら『カール爺さんの空飛ぶ家』とかだな。動物がメイン、もしくは動物と共に行動する物語には無くてはならないファクターだ」

( ^ω^)「『野生の呼び声』もそうだな。あれはライオンキングの監督が手掛けた映画で、CGと実写を組み合わせながらも、犬の愛らしさを損ねず豊かな感情を表していた」

( ^ω^)「ビィ、ビコ、ゼア。この三つのマスコットを組み込む事で物語がよりマイルドに仕上がるし、時折ふざけたセリフを挟むことで笑いも生じる。メインの三人にも負けないくらいの存在感を放つ主人公の一角だ」

( ^ω^)「気に入ってるセリフ?それは勿論」



_人人人人人人人人人_
> 私はウンコした <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄


  ( ^ω^)

300 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/24(日) 22:28:16 ID:Gpv7CTVo0
( ∵) 『ビコ ゼア』役(モーションキャプチャー及び声優) ビコーズ・ドットマン


( ∵)「『CARGO!!』に引き続き抜擢されたのは光栄の極みだね。今回はお喋りで可愛らしいキャラを演じさせてくれた」

( ∵)「『Rebel』であると錯覚させ、その実正体は未だ不明というスリードットにも並ぶ謎多く不気味な存在。だがそれを消しとばす程の愛嬌がある彼らは、脚本を見た段階で好きになれたね」

( ∵)「イメージとしては『ガーディアン・オブ・ザ・ギャラクシー2』の子供グルートが一番近い。最序盤の戦闘中に音楽を掛けて踊るような『ひょうきんさ』があった」

( ∵)「それと良く言われるんだが、ビジュアルは『もののけ姫』のコトダマだな。恐らく、アレと対面したら彼らは怖がって近寄らないと思うが。ハハ」

( ∵)「好きになれた理由としては、ビジュアルよりも彼らの性格の方が強い。小さくても頼りになり、仲間がピンチになれば助けを呼び、目標を達成すれば共に喜ぶ。異種族間の友情を重んじる立派な戦力だ」

( ∵)「ただ、危険の報告が結構ギリギリだったり、時折口が悪くなったりと『不安定』な要素もある。だからこそ観客はそんな彼らを好きになるんだ」

( ∵)「身体が小さく、Rebelであるディの面倒も見られない。だからこそ『ゴール』を目指す三人を見つけて頼り、その場所へと誘導する」

( ∵)「足りないピースをお互いに補い合う信頼関係が出来上がっていたからこそ、物語はより一層盛り上がり、キャラクターは愛される。見た目は滑稽でも王道の基本を通したマスコットだったね」

( ∵)「まぁこれの役で喉やって暫く声が出なかったのは辛かったかな。リテイク出しまくったハゲは後で裏な」

301 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/24(日) 22:30:25 ID:Gpv7CTVo0
(#゚;;-゚) 『Rebel ディ』役 ディ・ウツダ


(#゚;;-゚)「寡黙で無表情な精霊を演じるのはすっごく大変でした。彼女の奥底にで潜む好奇心や興味を、言葉や表情を使わずに表現するんですから」

(#゚;;-゚)「人種が違っても、ニコリと笑えば楽しさや好意が。涙を流せば悲しみや恐怖が伝わります。改めて、人の表情ははよく出来ているなぁと感心しました」

(#゚;;-゚)「だけど、常日頃から感情を抑え込んでいるからこそ、誰かが怪我した時に露わになる必死な優しさが強調されて、演じた私も『ディ』に胸を鷲掴みにされました」

(#゚;;-゚)「怖いなーって思ったのは、やっぱり先住民のチャプターですね。族長の椅子に狼の毛皮が施されているのは、先住民が殺した先代のRebelだって設定があって、ゾッとしました」

(#゚;;-゚)「だけどこれは私たち外部の人間から見た目線で、当の本人たちはお祭りを残酷で邪悪な催しとは考えてないんです。それこそ、『ミッド・サマー』のような土着信仰として定着しているものですので」

(#゚;;-゚)「例え誰かが『可笑しい』と思っても、独自の社会性が異議を唱える事を許してはくれない。狭いコミュニティだからこそ矯正されない狂気がありました」

(#^;;-^)「でも先住民のセリフは面白くって、撮影中は笑いを堪えるのに必死になっちゃいましたね。フフフ」

(#゚;;-゚)「あと大変だったのが、身体の傷跡ですね。メイクにすっごく時間が掛かって、最初は三時間座りっぱなしだったりして脚が痺れちゃって」

(#゚;;-゚)「パパに写真を送ったら、何故か仲良しのおじさんから『泡噴いてぶっ倒れたんだけど』とメッセージが返って来ました」


<一回殴りこんできたよねディちゃんのパパ。遥々日本から

<身体から破裂音鳴らす意味わからんくらい鍛え上げられたオッサンだったな

<お前に似てなかった?

<割と。インスタに上げたらクソバズった

<ハゲが風呂場のシーン入れるからだろ

<ハゲって言うな


(#⁼;;-⁼)「その節はご迷惑をお掛けしました……」


<ディちゃん締めて


(#゚;;-゚)「はい。以上、インタビューでした。おしまい!!」

302 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/24(日) 22:31:29 ID:Gpv7CTVo0
『未公開シーン』 先住民ハカ



( ゚∋゚)「アーマキダデオーキー!!!!!!!」


「「「アーカナデ!!カデカオウ!!!!!」」」


( ゚∋゚)「アーカナデ!!!!マテカオウ!!!!」


「「「アーヤシロキズク!!!!!!!!!!!!!」」」


「「「ウ!!!ウ!!!!」」」


( ゚∋゚)「アーファミチキ!!!!バカベティテェ!!!!!!」


「「「アーウタ!!アーウタ!!アーウマデウタフティデ!!!!」」」


( ゚∋゚)「「「ウ!!!!!!!!!!」」」



('A`)「……おいアリャなんの儀式だ?」

(´・ω・`)「知るかよ独特の呪文かなんかじゃねえのか?」

<ヽ`∀´>「ハカでは?」

(∪^ω^)「わんお?」

303 ◆L6OaR8HKlk:2020/05/24(日) 22:33:38 ID:Gpv7CTVo0
とりあえずあとがき代わりの特典映像前半部分です。後半は出来上がり次第投下となります

304名無しさん:2020/05/24(日) 22:44:45 ID:CfvRHIjU0
乙!
あと完全勝利おめでとう!

305名無しさん:2020/05/24(日) 23:15:12 ID:rW/iEwOE0
おつおつ!
後半も期待

306名無しさん:2020/05/25(月) 12:53:27 ID:94.Dw6FE0
特典ムービー最高かよ乙
後編もまってる

307名無しさん:2020/05/26(火) 23:52:18 ID:c4.4p4V.0
良い作品が読めた
ありがとう

308 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:38:56 ID:SyoumBRo0
『NG集&オフショット』


【入れる穴じゃない】>>16


(⁻A⁻)「フゴゴッ……ガッ、ムニャムニャ……もう食べられないよぉ……」

<ヽ`∀´>「……」

(´・ω・`)「……そこにティッシュあるだろ」

<ヽ`∀´>「うん」

(´・ω・`)「アナルの穴に詰めとけ」

<ヽ`∀´>「……グフッwwww」

('A`)「真っ先にそこ?」

(´・ω・`)「え?違う?あっ」

(´^ω^`)「穴という穴か!!!!!!ガハハハハハ!!!!!スマン!!もう一回!!」

309 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:40:13 ID:SyoumBRo0
【痛い】>>51


<ヽ;`∀´>「あーあー……バスルームで良かったニダ。とりあえず洗って消毒……」

(#゚;;-゚)「!!」ザバッゴンッ!!

<ヽ;`∀´>そ「ちょっ……すげえ音した」

:(# ;;- ):「……ちょ、っと待ってもらって、いいですか……?」

<ヽ;`∀´>「い、医療班早くーーーーーーーーーーーーー!!!!!!ディちゃん膝やったーーーーーーーーー!!!!!!!」

310 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:41:18 ID:SyoumBRo0
【ブサイクです】>>65


(゚、゚トソン「『ドク・オーツ』。シタラバ最大の……えっと……ブサイクです」

|゚ノ ^∀^)「ブハッwwwwそれで?」

(゚、゚トソン「『ショボン・バーデラス』。ブサイクです」

|゚ノ ^∀^)「うんwwwwwww」

(゚、゚トソン「『ニダー・コクソン』。ブサイクです」

|゚ノ ^∀^)「あははははははwwwwwwwww」


<ゴリ押したなあいつ

<シタラバ最大のブサイクなのは当たってんじゃん

<お前を最大にしてやろうか?


|゚ノ ^∀^)「飛び火したwwwwwwwwwww」

(゚、゚トソン「ごめんなさいやり直しで」

311 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:43:26 ID:SyoumBRo0
【ファンその①】>>78


('A`)「よっ」

ノハ;゚⊿゚)「うっ……」


<はいカットー!!


ノハ;゚⊿゚)「えっ?」

('A`)「えっ?」

ノハ;゚⊿゚)「お……折るまでやるんじゃないんですか?」

('A`)「ええ……そんなワケなくない……?」

ノハ;゚⊿゚)「ど、ドクオさんに痛めつけて貰えるっていうからオーディションに応募したのに!!」

('A`)「ヤバ……でも気概は買う。よし力抜けよ一息でいくぞ」

ノハ*゚⊿゚)「はいっ!!お願いします!!」


<ダメだよ


('A`)「当たり前だよなぁ」

ノハ;゚⊿゚)「そんなぁ……」

312 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:44:42 ID:SyoumBRo0
【タピオカ】>>86


从 ゚∀从「闇に生き、闇に溶け、闇を愛する暗黒のアサシン!!ジパング産まれシタラバ育ち……タピオカ大好き女子高生!!」

<ヽ`∀´>「えっ?」

从 ゚∀从「我こそはニンジャ、『ハイン・タピオカ』!!モチモチ食感守る為、超常保護対象は頂戴致す!!」

<ヽ;`∀´>「タピオカの妖精さん来ちゃった」


<ワハハハハハハ

<ハインちゃんインスタにタピオカのセルフィーしか上げてないもんな


<ヽ;`∀´>「美味しい?あれ」

从 ゚∀从「うんめえぞ!!」


<台本読み直してもう一回!!

313 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:46:28 ID:SyoumBRo0
【犬役だから】


『お昼休み』


( ^ω^)「俺の昼飯をドッグフードに変えた奴、怒らねえからちょっと裏まで来い」

(´^ω^`)「草」

( ^ω^)「だろうと思ったよ」



『おやつ時』


( ^ω^)「このクッキーエラい味薄いんだけど」

(´^ω^`)「犬用だからな!!!!!!!!」

( ^ω^)「クソ野郎ぶっ殺してやる」



『トイレ』


( ^ω^)「誰かあのスコップと袋持って着いてくるボケをぶっ殺してくれ」

(´^ω^`)「見られると申し訳ない顔するタイプか?」

( ^ω^)「いや撤回する。俺が直接殺す」

314 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:48:09 ID:SyoumBRo0
【ファンその②】


(#゚;;-゚)「あの、サインください」

('A`)「え?いいよ」ムテンカサラサラ

(#゚;;-゚)「あの、えっと、写真も……」

('A`)「いいよ」パシャッ

(#^;;-^)「えへへ……ありがとうございます。パパもシーノさんの大ファンなんです」

('A`)「そりゃ嬉しいな。どんなパパだい?」

(#゚;;-゚)「お尻の筋肉で鉄パイプを両断します」

('A`)「待ってそれ本当に人間?」

(#゚;;-゚)「構成物質は」

('A`)「えっ……ああ、まぁ、凄いパパだな」

315 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:49:10 ID:SyoumBRo0
【玉当て】>>118


(´^ω^`)「いーいねぇ〜〜〜〜〜!!!!強引な女は最高に好みだ!!一晩じっくり苛めてくれるなら考えてやっても」

(*‘ω‘ *)「チッ!!」

(;´゚ω゚`)そ「あっ!!!!!!!!!!!??????????」ドグシィァ!!!!!!!


(´゚ω゚`) ズシャアアアアア……


(*‘ω‘ *)「あ、ごめ、手元が狂ったっぽ」


<股間直撃ナイスゥ!!

<ジャックポッド!!

<ざまぁあああああああああああwwwwwwwwwwwwww


:(;´゚ω゚`):「てめえら覚えてろ……」

316 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:50:14 ID:SyoumBRo0
【兼俳優】>>125 >>126


(´・ω・`)「親父がふざけてんだろ……親父ーーーーーーーーーーー!!!!!」

(´^_ゝ^`)「なーーーーーーーーーーーーーにアッ痛った引っかかった!!!!!!!!!!」ガッゴンドタンバタン!!!!!!!

(´・ω・`)「プロ意識足りてねえんじゃねえの?」

('A`)「これだからハゲは」

<ヽ`∀´>「それでよくリテイク何度も出せるな」

(#゚;;-゚)「カッコ悪……」


<死ねよ

<潔くスキンにしろ


(;´う_ゝ^`)「な、泣いてないもんね……」

317 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:51:26 ID:SyoumBRo0
【三下の演技】>>144


ハハ ロ -ロ)ハ「ミスター・バーデラス。やり手の経営者と聞いていましたガ、駆け引きは上手じゃないようですネ」

(´;^_ゝ^`)「ゲヘヘヘ、面目ないでゲスゥ」

ハハ*ロ -ロ)ハ・'.。゜「ブフッwwwwwwww待ってwwwwwwwwwほんと無理wwwwwwww上手すぎwwwwwwww」

(´^_ゝ^`)「オイこれ褒められてると思うか?」


<褒めてるだろ

<人間性が溢れ出てる

<ザコを演らせたら右に出る者はいない

<よっ、クソザコハゲ虫!!!!!


(;´う_ゝ^`)「スタッフの愛が目に沁みる」

318 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:52:37 ID:SyoumBRo0
【持ってけ】>>162


『Take.1』


(´・_ゝ・`)「ウチのママが作ったミートパイだ。持ってけ」

(;´・ω・`)「え?あ、おお、差し入れ?」

(´^_ゝ^`)「美味いゾ!!」

(´・ω・`)「監督が率先してふざけるのやめな?」


『Take.2』


(´・_ゝ・`)「ハッピーセットのオモチャだ。持ってけ」

(´・ω・`)「何の役に立つんだよ」

(´・_ゝ・`)「ジュースを飲むと喋るストローだ」

(´・ω・`)「スポンジボブのやつだろそれ何年前だよ」


『Take.3』


(´・_ゝ・`)「『CARGO!!』でお前らが千切った僕の腕だ。持ってけ」 ※当時カメオ出演

(´・ω・`)「何で持って来てんだよ」

(´・_ゝ・`)「懐かしいかなって……」

(#*゚;;-゚)「見せてください!!いらないならください!!」

(´・ω・`)「オイ食いついちゃダメな子が一番食いついたぞ」

(´・_ゝ・`)「空港の検査で引っかかるから駄目だよ」

319 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:54:42 ID:SyoumBRo0
【ちょうどいい】>>167


<ヽ;`∀´>そ「いたた痛い痛い!!治療とは真逆のことしてる今!!!!」

从^ー^从「フフフ〜」


<はいカットー!!


<ヽ`∀´>「あーそこちょうどいい」

从'ー'从「この辺ですか〜?」

|゚ノ ^∀^)「後で私もお願い」

从'ー'从「いいよ〜」


<羨ましい

<後で殺そ

<シーノさんに習った関節の外し方試すチャンスじゃん


<ヽ`∀´>「ここのスタッフ血の気が多すぎて怖い」

320 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:55:52 ID:SyoumBRo0
【マゾの多い職場】>>171


(゚、゚トソン「もう結構です」ガッ!!

<ヽ;`∀ >・'.。゜「うぐっ……!!」バターーーーーーーーーーン!!!!!!!!


<カット!!じゃあもう一回!!


<ヽ;`∀´>「もう一回じゃねえ!!!!!結構痛いんだぞ!!!!」


<うるせえ!!!!!!!!!!!!!!!!!羨ましい!!!!!!!!!!!!!

<俺も蹴られてえ!!!!!!!!!!!!!!!!

<踏みにじられてえ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


(゚、゚;トソン「うわ……」

<ヽ;`∀´>「監督が監督ならスタッフもスタッフだよ!!立派なセクハラだからな!?」


<僕関係なくない???????????

321 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:56:45 ID:SyoumBRo0
【チェイン】>>176


⌒*リ´・-・リ「キショイの!!」

*(‘‘)*「ドン引きですの!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「虐げる価値も無イゴミクズ!!」

('A`)「仮性包茎!!」

⌒*リ´・-・リ「ガチャ爆死大使!!」

*(‘‘)*「ロリコン!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「女装趣味!!」

('A`)「『実に、長かった。あまりにも、長すぎた』ってのはチンコの皮のこと言ってるんですか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?????????」



(#´゚ω゚`)「殺ッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」ダッ!!!!!!!



('A`)「走れレディーズ!!!!!!!!!!!!!」ダッ!!

⌒*リ´・-・リ「スタコラサッサなの!!」ダッ!!

*(‘‘)*「三十六計ですの!!」ダッ!!

ハハ ロ -ロ)ハ「逃げるんだよォォォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」ダッ!!

322 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 22:58:45 ID:SyoumBRo0
【アテレコ現場その①】


( ∵)「……」

( ∵)「ヒンチチ!!!!!!!!!!!」

( ∵)「違うな……もっとこう、思わず出ちゃったみたいな……」


( ∵)「ヒンチチ!!!!!!!!!!!!!!!」


( ∵)「ブフッwwwwwwwww」


<あ、ツンさん聞いてらっしゃいます


( ∵)「オーケー無事死んだ俺!!!!!!!!!!!!!」

323 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 23:00:36 ID:SyoumBRo0
【アテレコ現場その②】


( ^ω^)「うーん……」

(メ)∵)「どうした?」

( ^ω^)「いやな、このシーンなんか入れてもいいkお前の顔がどうした??????????」

(メ)∵)「ちょっと猛獣に襲われて。この現場割とアドリブ通るから自由にやっていいんじゃね?」

( ^ω^)「どうしたもんか……」

(メ)∵)「もうありのままに伝えればいいんじゃねえか?」

( ^ω^)「あー……」


<ホライゾンさんお願いしまーす!!


( ^ω^)「じゃあちょっとそんな感じでやってくるわ」

(メ)∵)「おう」


_人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> ( ^ω^)「私はウンコした」 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄


(メ)∵)「流石だぜ……」

324 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 23:01:24 ID:SyoumBRo0
【手土産】>>202


(;^Д^)「せ、セブンクロスの先住民は、大量のダイヤを所有しているってな……ど、ど、どうせ価値なんざわかんねえんだから、『手土産』と交換しに行こうと提案して、俺はそれに乗った……」

(´⁻ω⁻`)「……手土産とは?」

(;^Д^)「へ、へへ、決まってんだろ……ビックマックさ……!!」

(´⁻ω⁻`)・'.。゜「ブフォッwwwwwwwwwwww」


<はいカットwwwwwww


(´^ω^`)「クッソwwwwwwwwwこういうのに弱いんだよ俺wwwwwwwww」

( ^Д^)「知ってますwwwwwwwwwwwww」

(´・ω・`)「https://www.youtube.com/watch?v=JZcOov4d4SA

( ^Д^)「えっ何怖い怖い怖いURLを一言一句違えず言わないでください」

325 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 23:02:41 ID:SyoumBRo0
【耐え切れない】>>210


/ ,' 3「ポルノグラフティ!!!!カナブーン!!!!Rebelスキャットビート!!!!クックドゥドゥルドゥーーーーーーーー!!!!!」

(# ;;- )「ンッwwwwwwwクフッwwwwwwwww」

/ ,' 3「スマホタロウ!!!!!オレマタナンカヤッチャイマシタ!!!!!チキチキマシンモウ!!!!レース!!!!!!!」

:(# ;;- ):「ンンンッwwwwwwwww」

/ ,' 3「オシャベリクソジュウダイ!!シンヤラップバトル!!イイタビユメキブン!!」

:(# ;;- ):「ヒッwwwwwwフヒィwwwwwwwww」



/#,' 3「オシッコ!!!!!」



(#^;;-^)「ブフフッwwwwww無、無理wwwwwwwwww」


/ ,' 3「してやったわいwwwwwwwwwwwwww」


<ジジイ自重しろ

<老害がよ

<息がくせえんだよ

<チンチンボウヤが


/ ,' 3「ワシキレたら何すっかわっかんねえぞ??????????お???????????」

326 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 23:04:08 ID:SyoumBRo0
【ファンその③】>>216 >>217


(#'A`)「スーッ……」


(#'A゚)「ヴェアッ!!!!!!!!!!!!!」


(; ∋ )・'.。゜「ッッッ……!!!!!!!!」


<カット!!パーフェクトだ!!


('A`)「オッケオッケ。立てるか?」

:(; ∋ ):「さ……最高の一撃だ……オーディション受けて良かった……」

('A`)「アンタもアレと同類かよ……」


<次!!私も受けたいです!!!!!!


('A`)「ヤバ……でも気概は買う。上がれ」


<ダメだよ

<なんでですか!?


('A`)「当たり前だよなぁ」

327 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 23:04:54 ID:SyoumBRo0
【それもまた冒険だね】>>223


ξ#゚⊿゚)ξ「サッサと出てきなさい!!まだ『撮影』は終わってないんでしょ!!」

(;´^ω^`)「ね、ん?」

ξ#゚⊿゚)ξ「……」

(;´^ω^`)「……」

ξ#゚⊿゚)ξ「間違ってないでしょ!!」

(;´^ω^`)「キレんな」

328 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 23:06:04 ID:SyoumBRo0
【酷い】 >>223


ζ(゚ー゚;ζ「酷い顔だよお姉ちゃん!!生きてるのが不思議なくらい!!」

从;'ー'从「死っ……フフッwwwwwww」


<ワハハwwwwwwwwww


ζ(゚ー゚;ζ「え?あれ?ま、間違えちゃった?」

从^ー^从「んーんwwwwww合ってるwwwwww」

('A`)「訂正しろや」

329 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 23:07:00 ID:SyoumBRo0
【足下】>>236


川 ゚ -゚)「ああ、妹の『サダコ』と一緒にな。以後、トソンを初めとした部下を揃えて超人集団の一部隊を率いる立場だ。足下、気を付けろ」

(;´・ω・`)「おっと、どうも……するとアンタは今、妹に『憑依』してるって事か?」

川;゚ -゚)「そうだ。サダコは引きこもりがちの運dっとと!?」


<カット!!


川;゚ -゚)「スマン」

(´^ω^`)「オメーが足下気を付けろwwwwwwwww」

330 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 23:07:44 ID:SyoumBRo0
【クランクアップ】>>263




(´^ω^`)「冒険再開だッ!!!!!!未知に挑むぜテメエらぁッ!!!!!」


('∀`)<ヽ*`∀´>「「オオッ!!!!!!!!」」



<カット!!クランクアップ!!



(´^ω^`)「イエス!!!!愛してるぜオメーらァ!!!!!!!!」

('A`)「今夜は飲み放題だ!!!!!!!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>「はぁー……やり遂げたぁ……」



\ワァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!/パチパチパチパチ!!!!!!

331 ◆UYqRtHH4DY:2020/05/31(日) 23:08:21 ID:SyoumBRo0





『∵ Three dot ∴』




.

332 ◆L6OaR8HKlk:2020/05/31(日) 23:09:31 ID:SyoumBRo0
それではまた来週、予告編でお会いしましょう

333名無しさん:2020/05/31(日) 23:48:54 ID:5Ygt62VQ0
NG集楽しすぎる

334 ◆UYqRtHH4DY:2020/06/13(土) 22:55:01 ID:qobD0RVs0
死ぬまでにやりたいことリスト


①ブリー・オルソンのケツにキスをする
②十五メートルのキャンプファイヤーを決行する
③ドラッグと同調圧力のペイガニズムに支配された村を焼き払う


④結婚式の最中、教会の扉を開けて花嫁を連れ去る




(#´゚ω゚`)「その結婚、今すぐやめねえと俺のAA—12が火を噴くぞオッラァン!!!!!!!!!!!!!!?????????????????」バンッ!!!!!!!!!!!!!!!!




尚、花嫁は見知らぬ他人でも構わない事にする―――――

335 ◆UYqRtHH4DY:2020/06/13(土) 22:55:55 ID:qobD0RVs0




◆UYqRtHH4DY


♪Adele - Rolling in the Deep
https://www.youtube.com/watch?v=rYEDA3JcQqw



.

336 ◆UYqRtHH4DY:2020/06/13(土) 22:56:50 ID:qobD0RVs0
セブンクロス到達から二か月


('A`)「一つ確認するがよ、この道沿いでドミニクファミリーが派手なカーチェイスでもやってたか?」

(´・ω・`)「いや別に?」


スリー・ドットとRebelを巡る冒険は


('A`)「そうか、じゃあ質問を変えよう」

(´・ω・`)「うん」


『ハードモード』へと突入する


('A`)「なんで車が目の前で爆発したん?????????????」

(´・ω・`)「なんでやろなぁ……」

<ヽ;`∀´>「暢気にくっちゃべってる場合か!!!!!!!!」

(∪^ω^)「フヌッ……」※私はウンコした

( ∵)「クッサ」

( ∴)「エンガチョ」

337 ◆UYqRtHH4DY:2020/06/13(土) 22:58:24 ID:qobD0RVs0
新たなる仲間!!!!!!!!!!!!!


从 ゚∀从「よぉ、三バカとマスコット共」

<ヽ;`∀´>「え?あれ?お、お久しぶり……」

ノハ;⁻⊿⁻)「……」

(´^ω^`)「めっちゃ嫌そうな顔してる〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」

('A`)「そりゃお前、チンコが本体みたいな奴と会うのなんて嫌に決まってんだろ」

(´^ω^`)「どう考えても間接逆方向に捻じ曲げたテメーだろボケが」


新たなるRebel!!!!!!!!!!!!!!!!


lw´‐ _‐ノv「キミらマフィア連中によく散弾銃なんて向けられたね。ビビるわ」

<ヽ;`∀´>そ「そんなん聞いてないニダ!!」

(´^ω^`)「おお、言ってねえからな!!!!!!!!ガハハ!!!!!!!!」

('A`)「まぁ社会のゴミには変わりねえし……」

从;゚∀从そ「おいやべえぞサッサとズラかれ!!!!ジョン・ウィックみてーなのが出て来たぞ!!!!!」

(´・ω・`)「マジ?見てえ」

('A`)「俺も」

从#゚∀从「よくこんな奴らと生活出来るなニダー!!」

<ヽ;`∀´>「慣れかな……」

338 ◆UYqRtHH4DY:2020/06/13(土) 22:59:30 ID:qobD0RVs0
新たなるコネ!!!!!!!!!!!!!!!!!


(´・_・`)「デミさんには恩があるが、息子のテメーは無関係だ。脛齧りがでけえ顔してお気に入りの店に居座ってんじゃねえ。消えろ」

(#´゚ω゚`)「船出すかテメーの嫁が俺にファックされるかとっとと選べっつってんだよ日焼け肌が似合うおじさんよ……ナマコみてーに貧弱なモノじゃロクに満足させてねえんだろ?おお?」

(#´・_・`)「テメエらァ!!!!!!この三人を可愛がってやれ!!!!!!」

<ヽ`∀´>「え、いや僕ら別に関係ないんで……」

('A`)「シバくならそのクズだけにして」

(´^ω^`)「薄情!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


襲い来る新たなる刺客!!!!!!!!!!!!!!


ノパ⊿゚)「『組織』は半壊滅状態だ。それも、たった五人にしてやられた」

('A`)「は?ザッコ。やめたら正義の味方?」

ノハ#゚⊿゚)「ふぬううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!」

从 ゚∀从「いや冗談抜きであいつらはやべえ。お前らでも太刀打ちできねえぞ」

(´^ω^`)「そんなんやってみなわからんやろがい!!!!!!!!!!」

339 ◆UYqRtHH4DY:2020/06/13(土) 23:03:30 ID:qobD0RVs0
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208813/134_qtr9h4.png
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208813/135_airt7e.png


( ・∀・)「ご注文はなんだったっけ兄さん?」

(・∀ ・)「面倒じゃないよ。粉々に吹っ飛ばせばいいんだよ兄さん」

( ・∀・)「簡単だね。やったやった」

(・∀ ・)「単純だね。やったやった」


(´・ω・`)「うわなんか中高生のオタク女子が好きそうな顔の良い双子の爆弾魔出た。キッッッッッッッツ早急に死ね」

('A`)「ああいうの見ると蕁麻疹が出るんだ。作ってるキャラごと顔面粉砕しよ。前歯折ろ」


https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208813/137_tie3a8.png


川 ゚ 々゚)「あー……あうあ……」

(´^ω^`)「おっぺえだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

<ヽ;`∀´>そ「それよりもっと気になる所あるだろ!!!!!!!!!!!!!!!!!」


https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588211389/133_lfbz4z.png


:(,, Д ):「早く……去れ……!!お前たちを、殺したくは……!!」

(∪^ω^)「ウワ……」

( ∵)「ゴエコジラセテル」

( ∴)「イイトシシテチュウニビョウゴエ」


https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588208812/132_syxud2.png


/ ゚、。 /「お初やないけど、もう一回自己紹介しとこか。『花結び』どす。残り少ない人生やろうけど、あんじょうよろしゅう」

从 ゚∀从「連れねえなぁ。同郷のよしみっつーだろ?じっくり時間かけて語り合おうぜ」

340 ◆UYqRtHH4DY:2020/06/13(土) 23:04:07 ID:qobD0RVs0
https://res.cloudinary.com/boonnovel2020/image/upload/v1588211379/136_vyrdeq.png


(;'A゚)・'.。゜「カッ……!!」

ノハ;゚⊿゚)「オーツ!?」


「大陸屈指の名門を潰した悪鬼と聞いていたが……蓋を開ければタダの餓鬼か」

  _  
( ゚∀゚)「余り老骨を失望させるな。もう二、三分は愉しませてみせろ」

(#'A゚)「ほざけロートル……十字でも切ってろ……ッ!!!!」
  _  
( ゚∀゚)「その大口に見合うだけの奮闘を見せるんだな……若造ォ!!!!!!!」

341 ◆UYqRtHH4DY:2020/06/13(土) 23:05:09 ID:qobD0RVs0
小細工など知らねえ!!!!!!!!!!!!!



(´・ω・`)「まぁいつも通りビャッてやって優勝したら……」

ノハ;゚⊿゚)「策かそれ?」



回り道などめんどくせえ!!!!!!!!!!!!!!!!



<ヽ#`∀´>「突っ込むぞ!!掴まれ!!」ウォン!!

(∪#^ω^)「わんわんお!!!!!!!!!!!!!」

( ∵)「イイイイイイイイイイイイッハァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」

( ∴)「ヒウィゴエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!!!」



とびきりイかれた野郎共の!!!!!!!!!!!



lw´‐ _‐ノv「オイオイまさか『オッパイモミタイ海』の禁域を泳いで渡る気かい?」

('A`)「場合によっては」

从;⁼∀从「場合によってはじゃねえよ」




前しか向かねえ大冒険が再び始まる!!!!!!!!!!!!!!!!

342 ◆UYqRtHH4DY:2020/06/13(土) 23:06:11 ID:qobD0RVs0








:Three dot:IN THE DEEP






.





:Three dot:IN THE DEEP






.

343 ◆UYqRtHH4DY:2020/06/13(土) 23:07:15 ID:qobD0RVs0
lw´‐ _‐ノv「私がなんて呼ばれていたか教えてやろうか?」

(´・ω・`)「うん」

lw´‐ _‐ノv「『厄姫』さ」


(´・ω・`)「……」

<ヽ`∀´>「……」

从 ゚∀从「……」

ノパ⊿゚)「……」

(∪^ω^)「?」

( ∵)「ゴエ」

( ∴)「ゴエエ」

('A`)「何かパクってねえか?」


lw´‐ _‐ノv「完璧なパクリだ」




2021年公開!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

344 ◆L6OaR8HKlk:2020/06/13(土) 23:32:38 ID:qobD0RVs0
以上、あとがき代わりの∵ Three dot ∴特典映像でした。>>342でタイトルが連続で投稿されてるのは単なるミスですYoutubeでBRADIOのMV見てたらミスりました

345名無しさん:2020/06/14(日) 01:45:35 ID:RI6Xlahw0
乙!オチわろた

346名無しさん:2020/06/14(日) 12:18:35 ID:BR.9ER/s0
乙!次回作楽しみです!

347名無しさん:2020/06/20(土) 14:01:27 ID:6DVYKxhU0
今読んだけどここまで出てくんのすげーなあ
めちゃくちゃ笑ったよおつ!!

348名無しさん:2022/05/29(日) 13:11:10 ID:jraO2yKQ0
そういえばこれの続編ってきたん?


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