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昔桃子やベリの学園小説書いてた者だけど〜新狼
201
:
1
:2015/08/25(火) 04:05:30
俺は呆気にとられた。
確かにあの宿泊研修の晩、盛り上がった野郎どもの中には、「明日宮本に絶対告白する」と、息巻いていた連中もいたけれど、
俺が後日聞いた情報では、次の日に実際に告って玉砕したのは、確か俺を入れて3人のはずだったのだが…。
そういえば昨日、植村さんと話した時に、植村さんは「佳林はこの一年で10人くらいから告白された」とか言っていたから、一瞬「おや」とは思っていたのだ。
(実際は1日で15人かよ…)
そこまで考えていると、
「怒ってる…、よね?」と、宮本が恐る恐ると言った感じで、俺の目を覗き込んできた。
202
:
1
:2015/08/25(火) 04:06:06
「怒ってる…、ってゆーか、訳わかんねえ。正直困惑してる」俺が振り絞るように言うと。
「そうだよね…。怒って当然だよね…」と、宮本が泣きそうな顔をしてから、いきなり
「ごめんなさい!!」と深々と頭を下げてきた。
「いや、ちょっと待て…」
「でも、私だって、そうと知っていれば、もっと真剣に考えたもん…。ねえ、私たち、もう一度友達からやり直せないのかな…」
そう言っている途中から、宮本は涙声になってきた。
真っ赤に腫らした目からは、涙がポロポロと…。
「おい、落ち着け、宮本…」
そう言って近寄ろうとした時、教室のドアが勢いよく開いた。
203
:
1
:2015/08/25(火) 04:06:40
顔を真っ赤にして泣いている宮本と、そんな宮本に寄り添おうとしている俺。
こんなところは誰が見ても、「訳あり」にしか見えないだろう。
ドアを開けたのは誰だろうか?
俺は恐る恐る振り向いた。
そこにいたのは清水センセイだった。
清水センセイは俺と宮本を交互に見つめてから、「あら…、お取り込み中だったかしら」とクールな表情で言った。
「いえ、別に…」と言いかける俺を制して、清水センセイは、
「早くしないとみんな来ちゃうよ。じゃ、私はもう一回りしてからくるから」と、訳知り顔で言ってドアを閉じた。
204
:
1
:2015/08/25(火) 04:07:19
(清水センセイ、絶対勘違いしてるだろうな…。いや…、あながち勘違いとも言えないか…)と俺が思ってると、
宮本はポロポロと流れる涙を拭おうともせず、「ねえ、私のこと許してくれる?」と上目遣いで聞いてきた。
ここ数日、ずいぶんいろんな女の子たちの上目遣いを見てきたような気がするが…
これは桁違いに強力、(てゆーか、涙は反則だろ?)と思う俺だった。
「別に、許すも許さないもないけど…」
「けど?」
「ちょっと、写真撮らせろ」
「えっ!? 何それ? ヤダ…、こんな顔で…」
俺は鞄からカメラを取り出すと、パシャパシャと写真を撮った。
戸惑う宮本の顔が、だんだんと笑顔に変わっていく。
涙を流しながら笑う宮本の表情は、これは絶品の可愛さだった。
素晴らしい写真が撮れた手ごたえがあったけれど、(この写真は誰にも見せられないな)と俺は思った。
205
:
名無し募集中。。。
:2015/08/25(火) 06:29:46
ほ
206
:
1
:2015/08/31(月) 04:13:22
ようやく宮本が笑顔に戻ったころに、他の女の子たちがぞろぞろと教室に入ってきた。
どうも他の女の子たちはみんなで一緒にメシを食いに行ってたようだった。
(宮本…、他の女の子たちにハブにされてんじゃないのかな…)と、俺は妙な心配をせずにはいられなかった。
そして、そんな女の子たちを意に介さないように、一人で教室に入ってくる鞘師。
(鞘師は…、強いな)と、やっぱり俺は思わずにはいられなかった。
そのうち清水センセイも戻ってきて、練習が始まった。
207
:
1
:2015/08/31(月) 04:15:08
練習中、俺は宮本のことが気になって、つい何度もチラチラと見てしまった。
そのうち、何度かは宮本の方も気付いて、俺に微笑みかけてくれたりして、俺はいい気分になっていたのだが…。
練習が終わると、鞘師がまっすぐと俺の方に寄ってきて、詰問調で言った。
「一体どうしちゃったの?」
「ん?」
「何か『心ここにあらず』って感じ」
「えっ?」
「朝は結構うまく踊れてたのに、逆戻りしちゃったみたい」
「そ、そうか?」
「あのさ…、ぼんやりと練習するくらいなら、やらない方がいいかも」
まっすぐに俺の目を見つめてくる鞘師だった。
「す、すまん…」
「いや、責めるつもりはないんだけど。気持ちを集中してないと怪我とかすることもあるし…、そうなったら馬鹿らしいじゃん」
「そ、そうだな」
そんな俺と鞘師のやりとりを、清水センセイが見つめているのを感じていた。
208
:
1
:2015/08/31(月) 04:16:22
その日家に帰ってから、ベッドの上に寝転がって、俺はしばらく考え込んだ。
(ここ数日の俺はあまりに軽薄だ。いろんな女の子の間で、少しフラフラしすぎではないか?)
ズッキは「めいめいは〇○クンのことが好きなんじゃないか?」と言った。
確かに、傍から見ればそう思われても仕方ないだろう。
それに昨日雨の中で、田村が俺の腕に飛び込んできたとき、俺の中にも一種の恋愛感情が湧いてきたのは間違いない事実なのだ。
しかし俺は、ズッキと二人でメシを食っている時は、田村のことなどすっかり忘れて、ズッキとの会話を心地よく思っていたのだ。
あれだって、傍から見れば、仲良くデートしているように見えないこともないのではないか。
そして鞘師。
俺のことを守ると言い、現にそういう行動をとってくれている鞘師に対して、俺が何とも思わずにいられる訳がない。
しかし、宮本のことは全くの予想外だった。
ほんの数時間前まで、再び宮本と仲良く話せる日がくるなどあり得ないと思っていたのだ。
さっき宮本は「もう一度友達からやり直せないのかな」と言った。
(友達『から』、その先があるとでもいうのだろうか…)
209
:
1
:2015/08/31(月) 04:17:13
そんなことを考え続けていると、その晩はなかなか眠れなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の朝、目が覚めて時計を見ると、俺は飛び起きた。
(いかん!完全に遅刻だ!)
慌ててクローゼットから制服を出そうとして、
(そうか、今日から夏休みに入ったんだっけ)と俺は気が付いた。
「夏休み中の練習は午後1時から夕方まで」と、昨日、清水センセイが一方的に決めていたのだった。
鞘師は、「午前中はやらないんですか?」と不服そうだったけど、
清水センセイは「そんなに一日中やったって、意味ないって。もっとメリハリつけないと」と、意に介していなかった。
竹内さんたちは「午前中の方が涼しくていいのにね」と、ぶつぶつ言っていたが…
俺は単に、清水センセイが早起きをしたくないだけじゃないか、と睨んでいる。
俺と鞘師の練習も、全体練習が始まる前の、12時ごろからと決めていたのだった。
お昼まではまだだいぶ時間があったが、俺は学校に行くことにした。
昨日撮ったズッキや宮本の写真を現像しておきたかったからだ。
210
:
1
:2015/08/31(月) 04:18:20
学校に着いて、暗室に入ると、中はひんやりとして心地よかった。
とはいえ、やはり夏だ。数日前に作り置きしておいた現像液の温度を測ると、基準の20℃を大きく超えていた。
現像液の温度と言うのは、高すぎると現像が一気に進んで、画質が粗くなったり、ムラができやすくなるのだ。
(さて、どうしたものか…)と、俺はしばらく考えてから、希釈現像をしてみることを思いついた。
希釈現像と言うのは、現像液を水で割り、薄めて使うやり方のことだ。冷たい水で割れば当然、温度は下がる。
しかし、薄めた分、現像する力も落ちるので、現像時間を長くしてやる必要がある。
とはいえ、一口に長くと言っても、その加減は、フィルムの種類や撮影した時の露出、現像液の種類や温度によっても全然変わってくる。
上手く嵌れば、原液の時よりも、諧調が豊かでエッジの利いた画像が得られるはずなのだが、
経験を積んでコツをつかんでないと、失敗する確率も高い。一筋縄ではいかない方法なのだ。
211
:
1
:2015/08/31(月) 04:18:51
正直言って、俺はあまりやったことのない方法だった。
何か参考になるデータはないか、と思って暗室の棚を探ると、山木さんの作ったノートが出てきた。
(確か、山木さんが得意にしていた現像法だったな…)
ページをめくると、山木さんが自分で何度も試した結果をまとめたのか、フイルムの種類や現像時間と温度の関係、
その時のネガの仕上がりなどのデータが、几帳面な字でびっしりと書き込まれていた。
(こいつは助かる…)
212
:
1
:2015/08/31(月) 04:19:18
山木さんのデータを100%信頼して、俺は迷いなく現像を行った。
出来上がったネガは、素晴らしい出来栄えのように見えた。
(とはいえ、ネガシャンってこともあるからな…)と俺は用心した。
「ネガシャン」というのは、ネガで見たときにはすごく良く見えたのに、いざ引き伸ばしてみると大したことない写真のことだ。
(よし、引き伸ばすか…)と思って、暗室の電気を赤いセーフライトに切り替えたとき、トントンと暗室のドアを叩く音が聞こえた。
(誰だろう?)
俺は「ちょっと待って!」と外に向かって叫んでから、いったん印画紙を片づけて、暗室のドアを開けた。
213
:
1
:2015/08/31(月) 04:20:05
ドアを開けると、そこに立っていたのは鞘師だった。
「お…、おっす…。どうした?」と訝しげに聞く俺に、鞘師は「やっぱりここに居た」と小さく微笑んでから、暗室の中を覗きこみ、
「わあ…、暗室の中って本当に暗いんだね…。何で赤い電気なんてついてるの?」と聞いてきた。
「赤い光だけは印画紙に感光しないんだよ。今写真の引き伸ばし始めるところだったから、つけてたんだ」と俺が答えると、
「私、引き伸ばしするところとか、見たことないよ」と鞘師が弾んだ声で言った。
「見てくか?」
「見てく!」
214
:
1
:2015/08/31(月) 04:20:33
鞘師は暗室に入ると、「涼しいね、ここ」と俺を見上げてきた。
「ところで、何か俺に用だったか?」
「あっ、うん。あのね、昨日、練習は12時ごろからにしようって言ったけど…」
「うん」
「よく考えると、それだとお昼ご飯も食べられないよね」
「それもそうだな」
「ちょっと短くなるけど、12時20分ぐらいからでどうかな?って話」
「いいよ」
(それだけを言うために、わざわざこんな時間にきたのかな?)と俺は思った。
215
:
1
:2015/08/31(月) 04:21:09
「鞘師、それならメールででも知らせてくれりゃ良かったのに」と俺が言うと
「あ、あのさ…」と鞘師は少し赤い顔で言い出した。
いや、赤い顔っていうのは、単に赤いライトが当たっているからそう見えただけかもしれないけど。
「どうした?」
「○○クン、今日お弁当とか持ってきた?」
「いや、どっかコンビニでも行って買おうと思ってたけど」
「実は今日、私、おにぎり多めに作ってきたんだけど、一緒に…どうかな?と思って…」
「えっ?」
「あっ、イヤなら別にいいんだよ…。たぶんそんなに美味しくないし…」
216
:
1
:2015/08/31(月) 04:21:42
「イヤだなんてことはないよ。ありがたく頂くけど。でも…」
「でも?」
「ちょっと意外だったわ。鞘師って、そんなイメージなかったから」
「えっ?えっ? どういうこと?」
「いや、その…、結構家庭的なんだなって」
「…」
鞘師が黙り込んでしまったので、俺も言葉が見つからなくなった。
(困ったな…)と思っていると、突然、鞘師が話題を変えるように明るい口調で話し出した。
「ねえ、それより、写真の引き伸ばし見せてよ。何の写真なの?」
「ああ、これか? これは…」
そこまで言って、俺は固まった。
これはズッキとデートしてるところの写真と、宮本が泣いているところの写真なのだ。
217
:
1
:2015/08/31(月) 04:22:17
(何かほかにネガを持っていなかったか!?)
俺の頭はフル回転したけれど、鞄の中にも暗室の棚の中にも、そんな都合のいいネガがあるわけはなかったのだ。
「ああ…。ええと、これはな…」
「何?」
「あのな、ズッキの…」
「えっ? ズッキって…、香音ちゃんのこと?」訝しげに聞く鞘師。
「お、おう…。鞘師とは中学一緒だったんだろ?」
「うん。そうだよ」
「ズッキがカレー食ってるところの写真」
「えーっ!?見たい見たい!」
鞘師の反応に一瞬、俺は胸をなでおろした。
(そうか…。鞘師とズッキは意外に仲がいいんだな。よし。ズッキの写真だけを見せよう。宮本の写真はとても見せられん)と、とっさに俺は思った。
と、同時に、そんな小ズルい計算をする自分がイヤになる俺だった。
218
:
1
:2015/08/31(月) 04:22:53
引き伸ばし機にネガをセットして投影すると、白と黒が反転したズッキの顔がイーゼルマスクに写った。
「えっ?これが香音ちゃん?」と鞘師。
「うん。ネガだからよく分からんだろ。でも、まあ見てろって…」
そう言ってから、印画紙をセットして露光を行い、現像液に浸すと、神妙な表情でカレーを食うズッキの顔がゆらゆらと浮かび上がってきた。
「わっ!すごーい!すごーい!香音ちゃんだ!面白ーい!」
予想外に無邪気にはしゃぐ鞘師を見て、実は俺は結構戸惑った。
「香音ちゃん、いい表情してるね。面白い写真だ…」
「そうか?」
俺は一瞬有頂天になりかけたけど…。
「これって、二人でカレー食べに行ったの?」
冷や水を浴びせるように鞘師が聞いてきた。
219
:
1
:2015/08/31(月) 04:23:26
「えっ、ああ、まあ、それは…」
俺がしどろもどろになりかけた時、トントンと、暗室のドアをノックする音が聞こえた。
(天の助けか!) そう思いながら俺は、「ちょっと待って!」とドアの外に向かって大声を上げた。
急いで印画紙を片づけてドアを開けると、そこにいたのは佐藤優樹だった。
「なんだ、優樹かよ。どした?」と俺が聞くと、優樹は返事もせずに暗室の中を覗きこんだ。
そして、鞘師の姿を見つけると、俺に向き直って、「兄ちゃん、やるじゃん」と、囁いた。
「ばばばば、馬鹿! 何言ってんだお前!」
「キャー! 赤くなった!赤くなった!」
「赤いのは安全灯のせいだろ馬鹿!」
そんな俺たちを、呆気にとられたような顔で鞘師は見つめていた。
220
:
1
:2015/08/31(月) 04:23:54
「あっ、鞘師、コイツはうちの近所のお寺の子で、一学年下の…」 俺がそう言いかけると、
「まーちゃんだよ!」と、優樹が勝手に話に割り込んできた。
「ま、まーちゃん!?」と、たじろぐ鞘師。
「うん。まーちゃん!」と、なぜかドヤ顔の優樹。
「おい、優樹、何しに来たんだよ? 用がないなら帰れ」と、俺が言うと、
「酷ーい! まーちゃん、兄ちゃんに言われた通り、合唱部の写真撮って持ってきたのに!」と、優樹が頬っぺたを膨らませた。
221
:
1
:2015/08/31(月) 04:24:31
「そ、そうか。じゃあ見せろ」と俺が言うと、優樹は「ハイ!」と言って、スマホの画面を俺にかざしてきた。
「こ、これは…」その写真を見て、俺は一瞬言葉を失った。
「えっ?何?」と言って覗き込んできた鞘師も、その写真を見た途端、顔を真っ赤にして黙り込んだ。
そこに写っていたのは、植村さんに歌唱指導をする菅井先生の様子だったのだが…
(体に触るどころか…、舌触ってやがる…!)
<植村さんに歌唱指導する菅井先生の様子・イメージ画像>
http://i.imgur.com/08TmX1S.jpg
222
:
1
:2015/08/31(月) 04:24:59
いくらオカマとはいえ…
ここまでやっていいものなのか。
(宮本…、合唱部辞めて大正解)と、俺が心の中で思ったとき、
「噂には聞いてたけど…、凄いね…」と、呆れたように鞘師が呟いた。
「あのな、優樹」
「なあに兄ちゃん?」
「菅井先生って、みんなにこういうことすんのか?」
「まーちゃんにはしない」
「何で?」
「歌の下手な子にだけするから」
「あのなあ…」
「でも菅井先生来てから、あーりーはすごく歌上手くなったよ」
「お前、ずいぶん上から目線じゃん(笑)」
223
:
1
:2015/08/31(月) 04:25:29
とはいえ…
確かに、植村本人も「菅井ちゃんの指導を受けたら実力がアップする」と真顔で言っていたし、
別に嫌がっている風ではなかったのだ。だとすれば俺たちが口を出す問題ではない。
「優樹、その写真、俺のスマホに送ってくれ」
「わかった」
優樹が俺に写真を転送したのを見届けてから、俺は優樹のスマホを取り上げた。
「あっ! ちょっと!何するの!まーちゃんのスマホ!」
「こっちの写真は消去するからな」
「きゃーっ!やめて!」
「悪いけどな、この写真はボツだ。これが世に出たら、菅井ちゃん叩かれるかもしれんだろ。そしたら一番困るのは植村だ」
「キャーッ!返して!キャーッ!」
優樹のキンキン声に耳をふさぐ鞘師。
224
:
1
:2015/08/31(月) 04:25:57
「酷い!兄ちゃん!勝手にまーちゃんの写真消すなんて最低!」と、優樹は俺に抗議した。
「あのな…、何でもかんでも撮ればいいってもんじゃないんだぞ」
「何でもいいから撮ってこい、って自分で言ったくせに!」
確かにそう言ったのは俺の方だったのだが…
「まあ…、また別なの撮ってこいよ」
「もういい!知らない!」
「でも優樹、写真の構図とかはすごく上手かったぞ」
「そんな見え透いたお世辞言って…」
すると、鞘師が助け舟を出すつもりなのか
「うん。本当に上手かった。表情もよく出てたし」と優樹に言った。
「ホント?」と鞘師を見上げる優樹。
225
:
1
:2015/08/31(月) 04:26:30
優樹はしばらく鞘師の顔をまじまじと見つめてから、
「じゃあいいや。まーちゃん、合唱部のみんなとお昼ご飯食べに行くから戻る!」と言うと、暗室を飛び出していった。
時計を見ると、もうすぐ12時になるところだった。
「鞘師、俺たちもそろそろメシにするか?」
「そだね」
俺が薬品を片づけだすと、鞘師が「ところで、優樹ちゃんの写真消す前に、何で自分のスマホに転送したの?」と聞いてきた。
俺は一瞬たじろいだ。
(植村の舌を触る妄想で、夜のおかずにするため)なんて、正直に言えるわけがなかった。
「ま、まあ…、見ようによっては確かにいい写真だったし…、植村本人には渡しておこうかと思って…」
「そうなんだ」
226
:
1
:2015/08/31(月) 04:27:06
薬品を片づけ終わり、俺たちはメシにすることにした。
暗室の中は涼しくていいのだが、さすがに薬品の臭いのするところでは食欲が湧かない。
俺と鞘師は手近な空き教室でメシを食うことにした。
鞄の中から、いそいそとお握りの包みを取り出した鞘師は、
「口に合うかどうか、分からないけど…」と、赤い顔で俺を見上げてきた。
鞘師の作ってきたお握りは…
正直言って、ちょっと大きすぎたし、形も不恰好で不揃いだった。
(きっとこういうの、あんまり作ったことないんだろうな…。でも、この手で一生懸命握ってくれたんだな…)
俺は思わず鞘師の両手を見つめた。
「えっと…、どうかしたの?」と怪訝そうな顔の鞘師。
俺は慌てて、「んじゃ、いただきます」と、そのうちの一つをつまんだ。
227
:
1
:2015/08/31(月) 04:27:29
俺がおにぎりを食べるのを、鞘師は不安そうな表情で見てから、「どう?」と聞いてきた。
正直言って…
塩味が足りなすぎる。
具のおかかも片方に寄り過ぎいて、こぼれてきそうだった。
俺はそんな気持ちを表情に出さないように頑張りながら、「うん、おいしいよ」と答えた。
「ホント?」
鞘師の表情がパッと明るく花開いた。
228
:
1
:2015/08/31(月) 04:28:00
「でも、鞘師は何でわざわざお握りなんかつくってきてくれたの?」と俺は聞いた。
「かえって迷惑だったかな?」と鞘師。
「いや、すごくうれしいけどさ」と俺。
「ほら、真野センセイに…」
「真野ちゃんに?」
「『○○クンがいい写真撮れるように、私もできることは手伝う』とか、私偉そうに言っちゃったじゃん」
「あー…」
「でも、よく考えたらさ…、私に手伝えることなんか何もないし…」
「そんなこと鞘師が気にせんでも…」
「せめてお弁当でも、って思ったんだけど…、おにぎりくらいしか作れなかったんだよね。ごめん」
俺は目の前のコイツを抱きしめたい衝動に駆られた。
229
:
1
:2015/08/31(月) 04:28:21
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、
鞘師は「さあ、あんまり時間ないから、早く食べて、練習しよう」と俺を促した。
「お、おう…」と俺も応じて、おにぎりをもう一個腹に詰め込んだ。
メシを食い終わって、練習を始めると、鞘師の要求はいつもよりも厳しかった。
「こっちも写真に協力するんだから、○○クンももっと気合入れてダンスの練習してよね」と、
鞘師は冗談とも本気ともつかない顔で俺に言った。
230
:
1
:2015/08/31(月) 04:28:45
二人きりの練習は瞬く間に過ぎ…、
練習が一段落したところで、俺は鞘師に聞いた。
「なあ鞘師…」
「何?」
「俺少しはうまくなってるのかな?」
「…まだ始めたばかりじゃない。焦ることないって」
「だけど、大会なんてすぐだろ。足を引っ張るだけじゃなあ…」
「…やっぱり、ダンス部辞めたいの?」
「そんなことないけど」
「じゃあ、そういうこと言わないの」
231
:
1
:2015/08/31(月) 04:29:17
まるで子供をあやす母親のように俺に言う鞘師の態度に、
俺はちょっと安心して、軽口を叩きたくなった。
「でも俺、自分のことはわからんけど、上手い人のすごさはちょっとずつ分かってきたぞ」
「へえ、どううこと?」
「上手い人って、軸がブレないよな…。鞘師もそうだけど、清水センセイは凄いな」
「あっ、そう思う?」
「うん。それと何ていうか…、清水センセイのダンスは生々しくて…」
「えっ?『生々しい』?」
「うん。うまく言えないんだけど、動きがエロいって言うのか…、清水センセイのダンスを見てるとすごくエッチな気分になる…」
232
:
1
:2015/08/31(月) 04:29:54
鞘師の表情が固まった。
(しまった!調子に乗りすぎたか…)と俺は後悔した。
何て言い訳しようか、と俺が焦っていると、
「やっぱりそういうのってあるのかな…」と、鞘師が真っ赤な顔をしてつぶやいた。
「すまん、何かスケベな話して」
「いや、実は私も薄々感じてはいたんだ。清水先生にはあって、私には決定的に足りない何かがあるって…」
「えっ?」
そこまで言うと、また鞘師は黙り込んだ。
「いや、変なこと言って、本当にゴメン」と、俺が慌てて言うと、
「いいよ。別に気にしてないから。それより、もうすぐ1時になるから、休憩しようか」
と、鞘師は変に取り繕ったような笑顔を見せた。
233
:
1
:2015/08/31(月) 04:30:24
1時の全体練習開始まで、10分くらい休み時間があった。
俺は今のうちに、合唱部が練習している音楽室に行って、
植村に例の優樹が撮った写真を渡しておこうと思った。
まあ、本当はそんなものをわざわざ渡す必要もなかったのだけど、
さっき鞘師に「植村本人に渡す」と言ってしまった以上、
何かの拍子に渡してないことがバレたら、変に勘ぐられるんじゃないかとか、
まあ、童貞特有の被害妄想があったからなのだが…
234
:
1
:2015/08/31(月) 04:31:29
音楽室に行くと、ちょうど合唱部も休み時間だったのか、人影はまばらだった。
俺は中を覗きこんで、まず優樹がいないのを確認すると、少しホッとした。
「あっ、○○君じゃん。何か用?」
後ろから話しかけられて振り向くと、同じクラスの小田さくらが立っていた。
「お、おう、小田か。そういえば、お前も合唱部だったっけ」
「そうだよ」と、ニコニコ笑う小田。
俺は周りを確認すると、思わず声を落として、「あのさ、植村いる?」と聞いた。
小田は一瞬、俺を馬鹿にしたように目を細めて、「ふーん…」と言った。
「『ふーん…』って、何だよ」
「はいはい。ちょっと待ってね」と言うと小田は、いきなり、「植村さーん!」と大声を上げた。
小田に呼ばれて、教室の奥の方から出てきた植村は、
「えっ、○○クンじゃん、何?」
と、ちょっとクールな表情で聞いてきた。
「あのな、実は…」
俺は、優樹が撮った例の写真について説明しながら、スマホの画面を植村に見せた。
怒るかな、と思ったけど、予想に反して、植村は写真を見ると、
「あはははは」と、豪快に笑い出した。
235
:
1
:2015/08/31(月) 04:31:54
「あははは。まさきちゃん、いつ撮ったんだろ?」
植村は手を叩いて爆笑した。
「あいつ、こんな写真撮ってきて…。すまんな。この写真はボツにするから。一応報告に来ただけ」
「えっ?何でボツにしちゃうの? 面白いじゃん」
「えっ?」
あっけらかんとした植村の返事に、俺の方があっけにとられてしまった。
236
:
1
:2015/08/31(月) 04:32:15
「私は別にいいよ。面白いじゃん」と植村は言った。
「そ、そうか? 確かに菅井ちゃんの表情もいいし、面白い写真ではあるんだが…」
「使おうよ」
「でもさ、このレッスン見たら、セクハラって思う人もいるんじゃないか?」
「えーっ?そうなの?」
「うん。それで問題になったりしたら、合唱部にも迷惑かかるんじゃないかと思って…」
「そうかな…?」
あまり納得してない様子の植村だった。
「うん。たぶんそう思う」
俺がそう断定すると、植村は思いもかけないことを言い出した。
237
:
1
:2015/08/31(月) 04:32:49
「なんだ。せっかく展覧会の写真に出してもらえると思ったのに。じゃあさ、
代わりに○○クンが責任とって、私の写真撮って展覧会に出してよ。そしたら許したげる」
そう言って、小悪魔のように俺を見上げる植村の表情に一瞬ドキリとした。
「いや…、そんなのはお安い用だけど…」
「じゃあ、今撮ってよ」
「スマン…。今カメラ、暗室に置いてきちゃって…」
完全に予想外の展開に、俺は焦りまくった。
「あー、ダメだなあ。写真部員ならカメラぐらいいつも持ち歩くんだぞ」と、
俺をからかうように植村は言った。
「す、すまん」
「それじゃ練習何時に終わるの? その後でいいよ」
238
:
1
:2015/08/31(月) 04:33:12
植村とそんな話をしていて、ふと時計を見上げると、もうすぐ1時になる寸前だった。
「やばい、俺戻らんと」
「うん。じゃあ後でね」
植村と別れてダッシュで練習場所に戻ると、すでに全員集まっていて、
清水センセイが話を始めている最中だった。
「あら、遅いじゃない」と清水センセイ。
「す、すみません」慌てて謝る俺。
そんな俺を咎めるような目で見つめている鞘師と、
ニコニコと楽しそうな目で見つめている宮本…。
239
:
1
:2015/08/31(月) 04:33:35
そのあとの数時間…
俺は雑念を振り払って、練習に集中した。
この間みたいに、鞘師に『心ここにあらず』なんて、見抜かれてはたまらない。
そんな俺を見て、
「あら、結構うまくなってきたじゃない」と清水センセイが微笑みかけてきた。
「そうですか?」
俺が思わず笑顔で聞き返すと、横から鞘師が
「いえ、まだまだ全然だと思います。○○君には、こんなレベルで満足されちゃ困ります」
と、冷ややかな口調で割り込んできた。
「えっ、まあ、それはそうだけど…」
鞘師に気圧された感じの清水センセイだった。
俺もまた、シュンとなった。
240
:
1
:2015/08/31(月) 04:34:00
その日の練習が終わると、清水センセイが、
「ところでみんな、明日の練習は休みにするから」と突然言い出した。
顔を見合わせて、ざわざわとする女の子たち。
「先生、明日は日曜でもないのに、何でですか?」と高木さんが聞くと、
「だって、日曜だと千奈美が休めないし…」と、清水センセイは独り言みたいに言った。
女の子たちはキョトンとしていたけど、俺にはすぐにピンときた。
(ははあ…。要するにセンセイや姉ちゃんたち、今晩飲む気なんだな…。それで明日は学校に来たくない、ってことか…)
正直、俺は少し呆れた。
241
:
1
:2015/08/31(月) 04:34:31
清水センセイの一方的な宣言で、練習はお開きになった。
鞘師が何か言いたそうな目で俺を見ていたから、近寄ろうとすると、
「○○クン!」と、俺は後ろから呼び止められた。
宮本だった。
「何?」と、俺は、鞘師の視線を気にしながら聞いたけど、
宮本はそんな俺の様子に気づいた風でもなく、
「あのね、今度の夏祭りなんだけど…」と、早口で話し出した。
その時、教室のドアが開いて、いきなり植村が入ってきた。
植村はまっすぐに俺の方に進んでくると、
「ダンス部練習終わった? こっちも終わったから来たよ。ねえ、どこで写真撮ってくれるの?」
と、ニコニコと微笑みながら聞いてきた。
瞬間、表情を凍りつかせる宮本。
鞘師の方は…、怖くて見られなかった俺だった。
242
:
1
:2015/08/31(月) 04:34:55
植村は宮本に気付くと、
「りんかじゃん! あっ、もしかして、何か話してる途中だった? ごめんごめん、割り込んじゃって。
先にそっちの話済ませちゃってよ」と、屈託のない笑顔で言った。
宮本はぎこちない作り笑いを浮かべながら、
「ううん。もう話済んだから、いいよ。うえむー」と言い出すと、
「じゃあね…」と、足早に教室を出て行ってしまった。
「ゴホン」と、わざとらしく咳払いをして、ゆっくり教室を出ていく鞘師。
ほかの女の子たちは、何事かと、好奇の視線でこちらを見つめている。
「ねえ、ここで撮るの?」と、何も気づかない様子で植村が首をかしげて聞いてきた。
「い、いや…。ちょっと近所の公園にでも行こうか」と、俺は植村を促した。
243
:
1
:2015/08/31(月) 04:35:20
「うん。いいよ」と、
植村はニッコリ笑って、教室の外に向かって歩き出した。
女の子たちの視線から逃れることができて、俺は一瞬ホッとしたけど、
教室の外に一歩出た途端、植村は笑顔を消して、
「ゴメン! 私、空気とか全然読めなくて! なんか悪いことしたみたいだよね?」
と、突然俺に謝りだした。
お気楽に見えたけど、植村だって何も気づいてないなんてことは、なかったのだ。
244
:
1
:2015/08/31(月) 04:35:43
「えっ、いや…、別に植村が謝るようなこと、何もないと思うけど」
「でも、りんかも行っちゃったし、鞘師さんも何か睨んでたし…」
「そ、そうか?」
「うん。〇○クン、りんかと何か話してる途中だったんでしょ? 何の話だったの?」
「いや…、俺もよくわからん」
何の話かはわからんけど、宮本が怒って帰ったのは事実なんだろう。
それに、確かに鞘師も怒っていたのか、呆れていたのか…。
もしかしたら、愛想を尽かされてしまったのかもしれない。
でも、そんなことを植村に言ったって仕方あるまい。
悪いとすれば、俺なのだ。
245
:
1
:2015/08/31(月) 04:36:09
そんなことを考えていると、
「なんか大変そうだね。女の中に男が一人って…」と植村が言った。
「う、うん。まあな…」
俺は言葉を濁した。
「でも、この間さあ、『〇○クンは佳林狙いなの?』とか聞いたけど…」
「ん?」
「なんかさっきは、むしろりんかの方こそ〇○クンに気があるみたいに見えたな」
「おい、待て…」
「りんかもハッキリしたらいいのに。私、りんかに言ってやろうか?」
「言うって、何を?」
「『愛してるわ』と言え、って」
植村が真顔で俺の目を覗き込んできた。
246
:
1
:2015/08/31(月) 04:36:32
「おいおい、いきなり『愛してる』とか、飛躍しすぎだろ…」
俺は慌てた。
「そうかな?でも…」
「でも?」
「そういうことって、はっきり口に出さなきゃ…」
「出さなきゃ?」
「すごいやばい、っていうのか…」
「ちょっと植村、お前何言ってるか分からない」
「あー、もう! 私国語苦手だから、うまく言えないよ!」
公園に向かって、俺の少し前を歩いていた植村が、
そう言うと、ようやく笑顔を見せて振りむいた。
「おっ、いただき!」
俺は思わずカメラのシャッターを切った。
<その時の植村・イメージ画像>
http://i.imgur.com/z6pfa4E.jpg
247
:
1
:2015/08/31(月) 04:38:01
>>245
と
>>246
の間にこれが抜けてた
<その時の俺の脳内イメージソング>
https://www.youtube.com/watch?v=rh8eeteWbHc
248
:
1
:2015/08/31(月) 04:38:31
俺たちは、そこからすぐの公園に移動して、何枚も写真を撮った。
ファインダーを通して見る植村は、可愛いというのか美しいというのか、
それはまあ、最高のモデルだった。
「しかし綺麗だな、植村…」
そんな言葉が、ため息とともに、ごく自然に何度も口をついて出た。
そのたびに植村は「あはははは。褒めすぎだよ」と笑った。
(少し馴れ馴れしいな、俺)と思ったけど、
それでもやはり、「うーん、綺麗だわ…」と、またつぶやいてしまう俺だった。
しばらく撮り続けた後、
「それじゃ、もういいかな? 写真できたら頂戴ね」と植村が微笑んだ。
「お、おう」と俺が返事をすると、植村は「じゃあね」と、電停の方に駆けていった。
249
:
1
:2015/08/31(月) 04:39:49
余韻に浸りながら植村の後ろ姿を見送っていると、
「呆れた…。本っ当に誰にでも『綺麗だ』とか言うんだね」と、後ろから声がした。
「えっ?」
慌てて振り向くと、そこに田村が腕組みをして仁王立ちしていた。
「な、なんだ…、めいかよ。見てたのか?」
「見てたのか、じゃないわよ! あー、もう鼻の下伸ばしちゃって…、見てらんなかったわよ!」
早口でまくし立ててくる田村に対して、俺は必死に言葉を探した。
「でもめい、実際植村綺麗だったろ?」
「そりゃあ、そうだけど…」
「それにな、俺は部活のために写真撮ってるんだ。撮るためならたとえ少々のブスにだって、
『綺麗だ』とか褒めて、気分よくポーズしてもらわんと、作品なんかできんだろ」
「そんなこと言って誤魔化して…! あー、もう、やっぱり頼むのやめようかな…?」
口をとがらせて俺を見上げる田村に、
「『頼む』って何を? 何か俺に用事でもあったの?」
と、俺は聞き返した。
250
:
1
:2015/08/31(月) 04:40:11
「うーん…」と、田村は言いよどんだ。
「まあ、座ろうぜ」と俺は言うと、公園のベンチに腰を下ろした。
少し遅れて、田村が俺の横に並んで座った。
「で、何の用?」
「実はね…、今練習してる演劇なんだけど…」
「うん」
「男の子とデートするシーンがあるんだけどさ…、めい、男の子とデートなんてしたことないから…、
うまく演じられなくて、失敗ばかりして…」
「そなの?」
「そしたら須藤さんが、『誰でもいいから男の子とデートしてこい。○○クンでいいんじゃないの?』って」
「『俺でいい』、だと…?」
「めいじゃなくて、須藤さんにそう言われたの!」
と、田村は耳まで赤くして、怒鳴った。
251
:
1
:2015/08/31(月) 04:40:35
「そりゃまあ…、須藤さんにそう言われたんなら、仕方ねえな…」
俺は照れくさくなって、田村と視線も合わせずに答えると、
「あのね、頼んどいてこう言うのも何だけど、めいだって仕方なくなんだからね!」
と、田村は口をとがらせた。
「須藤さんは、『一緒に花火大会見てこい』って。今度の夏祭りの…」
「ん、ああ…。分かったよ」と俺は返事をした。
そういえば、どこかで何か夏祭りの話を聞いたような気もするのだが、思い出せなかった。
252
:
1
:2015/08/31(月) 04:40:59
これから、例のANGERMEにバイトに行くという田村とは、その場で別れ、
俺は一人で学校に戻った。
今日のうちに、さっきの植村を撮ったフィルムを現像しておきたかったのだ。
誰もいない暗室で、フィルム現像をし終えると、夕方を通り過ぎて、夜になってしまった。
仕上がったネガは満足のいく出来栄えで、俺はすぐに引く伸ばしもしたかったけど、
さすがにそれは、今日は時間的に無理そうだ。それに少々腹も減ってきた。
(今日引き伸ばせなかった宮本の写真と合わせて、また後日にしよう)
と、俺は思った。
宮本と言えば、さっき何か俺に言いたそうにしていたけど、何か用でもあったのかな…。
そんなことを考えながら、俺は暗室の後片付けを済ませて、一人でチャリに乗って家に向かった。
253
:
1
:2015/08/31(月) 04:41:16
家の前は、電気も点いておらず、真っ暗だった。
「誰もいないのか?」と一瞬考えてから、
そういや、両親が今日から旅行に出かけていて、しばらく不在になることを思い出した。
それにさっきの清水センセイの口ぶりだと、千奈美姉ちゃんは、きっと今日、
センセイたちと飲み会なのだろう。帰りは遅くなるに違いない。
「自分でメシを作らなきゃな…」と考えながら、俺は家のカギを開けた。
254
:
1
:2015/09/07(月) 04:22:50
腹が減ってはいるものの、自分でメシを作ることを考えると、やはり億劫だった。
(コンビニにでも行こうかな…、いや、金がもったいないな)
そんなことを考えてダラダラしていると、どんどん時間が過ぎていった。
(もういいや。カップ麺でも食おう。台所の収納の中にあったよな)
部屋を出て、台所に向かおうとしたその時、玄関の方からガラガラと扉を開く音と、
ガヤガヤとした話し声が聞こえてきた。
(何だろう?)
見に行くと、千奈美姉ちゃんと嗣永、清水の両センセイ、須藤さん、
それに、背の高いお姉さんと、金髪のスリムなお姉さん…の、どちらも初めて見るけど、
すごい美人の2人…、全部で6人がぞろぞろと家に入ってくるところだった。
「飲み会やってたんじゃないの?」と俺が聞くと
从*´∇`)<うん。うちで二次会やることなった!
と、姉ちゃんが笑った。
255
:
1
:2015/09/07(月) 04:23:44
「うわー!キミ、ちいの弟さんなんだー、そっくりじゃん!」と、
金髪のお姉さんが俺を見て叫んだ。
「あっ、どうも」と俺が言うと、
「私は雅。ミヤって呼んでいいよ。こっちは熊井ちゃん」と、そのお姉さんがニコニコと笑った。
結構なテンションの高さに、
(ちょっと酔ってるのかな)と俺は思った。
嗣永センセイは俺を見ると、「よっ!邪魔するよ」と言って、笑った。
俺は嗣永センセイに聞いてみた。
「あの、この間見せてもらった写真に写っていた、赤いエプロンの人はいないんですか?」
「えっ、ちゃんりー? ああ、あの子だけ、今日は最初から来なかったんだ」
すると、清水センセイが
「えっ、ちゃんの話? 何で〇○クンがちゃんのこと知ってるの?」と、話に割り込んできた。
「この間、写真見せたら『一番かわいい』って、ちゃんりーを指さして…」と嗣永センセイ。
清水センセイも嗣永センセイも結構酔っぱらってるような雰囲気だった。
こんなところにいつまでもいるのは危険すぎる。
カップ麺のことは諦めて、部屋に戻ろうとしたとき、
从*´∇`)<あっ、焼酎買うの忘れた! ちょっとアンタ! おつかい行ってきてくれない?
と、姉ちゃんが俺を呼び止めた。
256
:
1
:2015/09/07(月) 04:24:10
「えっ、カンベンしてくれよ…」と俺が断ると、
从*´∇`)<いいじゃん、お小遣いあげるから、頼むよ!
と姉ちゃんが言った。
小遣いをくれるというなら、まあ行ってやってもいいのだが…
その時、嗣永センセイと目があった。
「やっぱ姉ちゃん、ダメだよ。未成年が酒なんて買いに行ったらまずいだろ」
と、俺は慌てて断ったけど、
「別に、いんじゃね?」と嗣永センセイ。
「うん。いいよね」と清水センセイ。
从*´∇`)<ほら、教師が二人ともいいって言ってるんだから、買ってきてよ!
と、俺は姉ちゃんに押し切られた。
257
:
1
:2015/09/07(月) 04:24:31
从*´∇`)<じゃあ、大五郎のペットボトルと、生ハムと…
千奈美姉ちゃんが言い出すと、
「私はさきいか!」
「私は抹茶アイス!」
と、あちこちから声が上がった。
俺は「はいはい」と、言いながら紙にメモをとって、家を出た。
258
:
1
:2015/09/07(月) 04:25:22
俺は近所のコンビニに向かって歩いて行った。
そのコンビニはいつも、やる気のないおじさん店長がレジにいて、
俺が未成年と知ってはいても、何にも言わずに酒を売ってくれるのだ。
だから俺は両親や姉ちゃんから、たまに酒のおつかいを頼まれるとここにくるのだ。
まあ、田舎にはよくあることだ。
そのコンビニに入った途端、
「いらっしゃいませー! ただいま、からあげクン揚げ立てでーす!」
と、いきなりかわいい女の子の声が聞こえてきて、俺はびっくりした。
レジを見ると、見たことのないお姉さんが、こちらを見てニコニコしていた。
<コンビニのお姉さん・イメージ画像>
http://i.imgur.com/4Ma9CRK.jpg
259
:
1
:2015/09/07(月) 04:25:57
俺はメモを見ながら、頼まれた品物を探して、かごに入れていった。
全部集めてレジに持って行くと、お姉さんがバーコードで商品を読み取り始めた。
大五郎のペットボトルにバーコードリーダーをかざした時、
「年齢確認が必要な商品です」と、電子音声がレジから聞こえてきた。
俺が何の気なしにタッチパネルを押そうとしたとき、
「ちょっと待って! キミ、高校生じゃないの?」と、
お姉さんが、訝しげな顔つきで聞いてきた。
「はい?」と俺。
「はいじゃないが」とお姉さん。
260
:
1
:2015/09/07(月) 04:26:44
(まいったな…)と、俺が思ってると、
「やっぱり君、高校生なんでしょ? ダメじゃない、お酒なんか」と、
お姉さんが咎めるように言った。
「いや、俺が飲むわけじゃなくて、家族に頼まれて…」と俺が答えると、
「あのね、たとえおつかいでも、未成年には売っちゃダメって決まってるんだよ」
と、お姉さんが、今度は諭すように言ってきた。
「でも、いつもここの店長さん、売ってくれますよ」
「えっ、パパが? 本当? しょうがないなあ…」
呆れたような口調だった。
「『パパ』って、お姉さん、ここの家の娘さんなんですか? 初めて見たけど」
「うん。普段は東京の学校に通ってて、今はたまたま帰省中だから、仕事手伝ってたの」
「あのー、都会の人には分からないかもしれないけど、
この辺じゃ、お酒のおつかいなんて、普通のことなんっすよ」
俺は柔らかくいったつもりだったけど、その一言にお姉さんはカチンときたようだった。
「あのさ…、キミ、どこの高校なの?」
261
:
1
:2015/09/07(月) 04:27:16
何か面倒くさい話になりそうだった。
逃げようか、と一瞬思ったけど、今さらそれもカッコ悪すぎる…。
「××高校ですけど…」と、俺が答えると、
「××高って、愛佳の学校じゃん」と、お姉さんはつぶやいた。
(えっ、愛佳って…、まさか…)
と、考える間もなく、いきなりお姉さんが携帯電話をかけ出した。
「ちょっと愛佳! すぐ来てくれる? 愛佳のところの生徒が、まいにお酒売れって…」
そんな成り行きに、俺が呆気にとられていると、それから10秒も経たないうちに、
店の奥の従業員用の通路のドアが開いて、
「ごるぁーっ!」と、光井センセイが怒鳴り込んできた。
262
:
1
:2015/09/07(月) 04:27:43
「高校生のくせに酒だとっ!? お前か!? お前か!?」
すごい勢いで、光井センセイが俺に詰め寄ってきた。
「ちょっ、センセイ、待って…」
「あっ、○○じゃねえか!? この野郎! 昨日二人乗りして逃げただろっ!?」
俺の胸倉をつかんで、にじり寄る光井センセイだった。
「ご、ごめんなさい、セ、センセイ、苦しいよ…。ちょっと離して…」
「うるさいっ!」
そんな俺を「いい気味」、とでもいいたげな顔で、お姉さんが見つめていた。
263
:
1
:2015/09/07(月) 04:28:13
ようやく手を放してくれた光井センセイに、
「な、何でセンセイがこんなところにいるんですか?」と問いかけると、
「何で、じゃねえだろ」と、俺は頭を小突かれた。
光井センセイの代わりに、お姉さんが、
「愛佳はうちに下宿してるんだよ」と、勝ち誇ったような表情で言った。
うちの近所にこんな鬼門があったとは…。
そう思っていると、
「呆れた…。こんな大きなペットボトルの焼酎、一人で飲むつもりなだったの?」
と、光井センセイがかごの中を覗きこんで言った。
「だーかーらー、俺が飲むんじゃなくて、おつかいで仕方なく来たの!
てゆーか、嗣永センセイや清水センセイも、今俺の家にいて、
うちの姉ちゃんたちと宴会やってるの! いわば俺はセンセイたちに頼まれて、
仕方なく、酒を買いに来たようなもんなんですよ!」
264
:
1
:2015/09/07(月) 04:28:43
俺は必死に弁明したけど、光井センセイは、
「そんなテキトーな出まかせ言って、言い逃れしようとしてるんじゃないでしょうね!?」
と、聞く耳を持たなかった。
「だったら電話して確かめりゃいいでしょ!?」と俺が聞くと、
「嘘だったら承知しないわよ」と言って、光井センセイは電話をかけ出した。
「あっ、嗣永先生? 光井です―。あのね、お宅のクラスの○○クンが…」
光井センセイが電話で話すのを、俺は聞き耳を立てて聞いたけど、向こうの声は聞こえなかった。
しばらく話をして電話を切った光井センセイは、
「嗣永先生も清水先生も、『そんなの知らない』って言ってたわよ」
と、冷たい表情で言った。
(あの二人…、鬼だ…)
と俺は思った。
265
:
1
:2015/09/07(月) 04:29:15
「いや!確かに、あの2人は俺の家に!」と、俺は叫んだ。
光井センセイは「うん。確かに○○の家にいるとは言うてたな。でも、お酒なんか頼んでないってさ」
と、クールな表情を変えずに言った。
「ひ、酷い…」
愕然とする俺に追い打ちをかけるように、光井センセイは、
「こりゃ停学かな…?」と脅かすように言ってきた。
すると、レジのお姉さんが、
「ねえ、愛佳…? それはちょっとかわいそうじゃない? 許してあげたら?」と、助け舟を出してきた。
「まあ、舞がそう言うなら…」と光井センセイ。
俺が「舞さんって言うんですか? きれいな方ですね」と慌ててお世辞を言うと、
「こらあっ!調子乗んなよ!」と、また光井センセイが怒鳴った。
舞さんが俺を見てクスリと笑った。
266
:
1
:2015/09/07(月) 04:29:51
「じゃあ、今回だけは許したるから、もう二度と酒なんか買おうとしちゃアカンよ」
と、光井センセイが俺を睨んだ。
俺は「は、はい」と答えてから、あらためて酒以外の買い物を済ませ、
そそくさと店を出ようとした。
すると、光井センセイが、
「あっ、これウチからの差し入れや。嗣永センセイたちに渡したって」
と、レジに置いたままの大五郎を袋に入れると、俺に突き出してきた。
「えっ?」と俺が驚くと、
「○○は飲んだらアカンよ!」と、凄む光井センセイ。
俺は袋を受け取りつつ、
「あー、だからみっついー好きだわ! 愛してるよ!」と軽口を叩いて、
走って店を飛び出した。
「だから、調子乗んなって言ってるやろ!」と、
光井センセイの叫び声が背中から聞こえてきた。
267
:
1
:2015/09/07(月) 04:30:24
走って家に向かいながら俺は思った。
光井センセイは、嗣永センセイや清水センセイが、本当は俺に酒を買わせるのを黙認してたことなど、
最初からお見通しだったのだろう。分かった上で、一応俺にもお灸を据えようと思ったのだろう。
光井センセイのそういうところは結構好きだ。
それはいい。
しかし、許せないのは嗣永センセイと清水センセイだ。
一体、どうしてくれようか…。
そう思いながら家に着いて玄関を開けると、
从*´∇`)<何やってたの? 遅いー!
と、姉ちゃんが飛び出してきて、出鼻をくじかれた。
「あ、あのなあ…」と反論しようとすると、嗣永センセイたちもぞろぞろと玄関にやってきた。
俺が口を開くよりも早く、
「みっついーに捕まるなんて、要領悪すぎ」と、嗣永センセイ。
「うん。どん臭すぎるよね…」と清水センセイ。
呆気にとられて二の句が継げずにいる俺に、
从*´∇`)<いいから早く家に入ってよ
と、姉ちゃんが言った。
268
:
1
:2015/09/07(月) 04:30:50
「酷えよ、センセイたち!」
俺が大声でそう言いかけたとき、
「ねっ、男の子なんだから、小っちゃなことで怒んないの。そんなことより、こっちおいでよ」
と、いきなり雅さんが俺の腕をつかんで、ぐいぐいと居間の方に連れて行った。
「そうそう」と清水センセイ。
「うんうん」と嗣永センセイ。
須藤さんは「ほら、さっきピザ届いたところだから、○○クンも食べなよ」と、
皿にとりわけて、俺に差し出してきた。
そういえば、すごく腹が減っていた。
「じゃあ…、いただきます」と俺はピザを食いだした。
こんなところにいつまでもいるのは危険すぎる。
俺はさっさと食って、自分の部屋に戻るつもりだった。
ふと見ると、熊井さんはピザ屋の持ってきたチラシを熟読中だった。
269
:
1
:2015/09/07(月) 04:31:22
その時、雅さんが、「○○クン、何か飲む?」と聞いてきたので、
俺は「あっ、それじゃウーロン茶お願いします」と答えながら、残りのピザを食っていた。
「ハイ、お待たせ―」と、雅さんが差し出してきたグラスに口をつけて、
俺は噴き出しそうになった。
「ちょっ、雅さん! これ、焼酎入ってるんじゃ…!?」
「えっ、薄すぎた?」
「いや、無茶苦茶濃いんですけど…」
「まあ、ちょっとくらいいいじゃん」と言う須藤さんに、
「いやいや、俺まだ高校生ですから…」と答えかけると、
「別に、いんじゃね?」と嗣永センセイ。
「うん。いいよね」と清水センセイ。
从*´∇`)<ほら、教師が二人ともいいって言ってるんだから、飲みなよ!
と、俺は姉ちゃんに押し切られた。
熊井さんはまだチラシを熟読中だった。
270
:
1
:2015/09/07(月) 04:32:08
从*´∇`)<そんなことよりアンタ、私に内緒でダンス部なんかに入ってたんだって?
と、姉ちゃんが言い出した。
それは姉ちゃんに報告する義務があったのだろうか…。
嗣永センセイは、「んでダンス部ってどうなの?うまくいってるの?」と、
さきいかをつまみながら、清水センセイに聞いた。
清水センセイが「うん。まあそれなりに上手いやつもいるし…」と言うと、
「鞘師だっけ? あと佳林ちゃんも上手いの?」と嗣永センセイが聞き返した。
俺は思わず姉ちゃんをシカトして、2人のセンセイの会話に耳を傾けた。
「鞘師はねえ…、確かに技術は凄いんだけどさ。何ていうのか、色気が足りないっていうのか、
あれは男を知った方がうまくなると思うんだけどなあ」
清水センセイも結構酔っているのだろうか? 大胆な放言に、俺はドキドキしてきた。
「ふーん。佳林ちゃんは?」
「うん。そこいくと佳林ちゃんの方が色気はあるかな。あの子はもう経験してるかもね…」
俺は焼酎を噴きだした。
从*´∇`)<ちょっとアンタ! 何やってんの!
と、姉ちゃんが叫んだけど、俺の耳には入ってこなかった。
(宮本が経験済み!? そんな馬鹿な!?)
動揺する俺に追い打ちをかけるように、
「あー、そうかもねー」と、ごく当たり前のように嗣永センセイが相槌を打った。
271
:
1
:2015/09/07(月) 04:32:48
(まさかそんな!?まさかそんな!?)
俺が心の中で叫び続けていると、突然清水センセイが俺に向かって言い出した。
「そんなことより〇○クンさあ、鞘師を好きなの?それとも佳林ちゃんを好きなの?
毎日鞘師とラブラブで練習してるかと思ったら、昨日は佳林ちゃん泣かせてたしさあ…」
从*´∇`)<えっ!?何それ!?何それ!?
と、食いつく千奈美姉ちゃん。
「そ、そんな…」と俺が答えるよりも早く、嗣永センセイが、
「えっ○○クン、アンタ、ズッキと付き合ってたんじゃないの?」と、俺の袖を引っ張った。
「い、いや」と弁解しようとしたけれど、今度は須藤さんが、
「ちょっと待った! 『○○クンがめいめいのこと好きみたい』って、りなぷーに聞いたから、
せっかくデートのお膳立てしてやったのに、一体どうなってんのよ?」
と、俺に詰め寄ってきた。
興味津々という顔で俺を見ている雅さん。熊井さんはまだチラシを熟読中だった。
突然、姉ちゃんが、
从*´∇`)<フハハハハハハ
と高笑いした。
272
:
1
:2015/09/07(月) 04:33:09
从*´∇`)<フハハハハ。さすが我が弟! 姉に似てモテモテだな!
と、姉ちゃんが高笑いした。
一瞬の沈黙の後、「でも、優柔不断すぎね?」と須藤さんが言った。
从*´∇`)<おい! 突っ込めよ須藤!
と、姉ちゃんが叫んだ。
「そうよね、優柔不断すぎるよね…」と清水センセイ。
「本当は誰が好きなの?」と嗣永センセイ。
273
:
1
:2015/09/07(月) 04:33:36
「誰が好きとか、そんな…」と俺が答えに窮していると、
ようやく話に加わってきた熊井さんが、「えっ?何?何?、四つ股? うわぁ…、本当!?」
とか、大げさに驚きだした。
「いや、そんなんじゃなくて…」と、オレは必死に否定したけど、
「だけどさ、みんなに粉撒いてるくせに、実際のところ、誰ともうまくいってないんでしょ?」
と、清水センセイが、冷酷で的確な一言をぶつけてきた。
「うっ…」
まさしくその通りだった。
「だめじゃん…」と嗣永センセイ。
「だめだな…」と須藤さん。
俺には返す言葉がなかった。
274
:
1
:2015/09/07(月) 04:34:02
俺が黙っていると、
嗣永センセイが、「よし。ここは恋愛マスターの夏焼センセイの意見を聞こう!」と、
ふざけた顔をして言い出した。
「どうなの、ミヤ?」と、須藤さんも、ふざけた表情で聞いてきた。
「そうね…」と、大真面目な顔で雅さんが話し出した。
「例愛とは…」、と、焼酎のコップを掲げる雅さん。
「恋愛とは?」と、真顔で雅さんを見上げる嗣永センセイたち。
「来た球を打つ!」と、夏焼さんがドヤ顔で言った。
「おー…!」と、清水センセイ。
「○○クンさあ、若いんだから小難しいこと考えずに、成り行きでもなんでもいいから、
好きな子と好きなことすりゃいいのよ」と、雅さんは言った。
从*´∇`)<いや…、それじゃダメだろ…
と、姉ちゃんが言った。
275
:
1
:2015/09/07(月) 04:34:29
俺はようやく気が付いた。
要するに、俺はこのお姉さんたちにからかわれているのだ。
こんな場所からは、早く退散するに限る。
俺はウーロンハイのコップを置くと、「じゃあ、俺はそろそろ自分の部屋に戻って寝ます」と宣言した。
すると、雅さんが、「じゃあ、みやもホテルに戻ろうかな…」と言い出した。
「えっ?」と俺は聞き返した。
夏焼さんは東京でファッション関係の仕事をしていて、今日はたまたま用事で帰ってきていたところに、
飲み会の話があって、急きょ、参戦したのだという。
ほかの4人はうちに泊まっていくみたいだけど、夏焼さんは明日の仕事の関係もあって、
ホテルに戻るのだと言い出した。
「そうですか、それじゃ…」と言いかけた俺に、
「みや、一人で帰るのちょっと怖いな。○○クン、送っていってくれないかな?」
と、夏焼さんが上眼遣いで俺の目を覗き込んできた。
276
:
1
:2015/09/07(月) 04:34:48
从*´∇`)<おい夏焼! そんなこと言って、うちの弟にちょっかい出す気じゃないだろうな!?
と、千奈美姉ちゃんが言ったけど、夏焼さんは、
「ちょっと、千奈美! 馬鹿なこと言わないでよ! 夜道は怖いから頼んでるだけじゃん!」
と、怖い顔をして言い返した。
呆気にとられている俺に、須藤さんが、
「そうね。○○クン、悪いけど、みやをホテルまで送っていってあげてくれるかな?」
と、真面目な顔で言い出した。
277
:
1
:2015/09/07(月) 04:35:08
雅さんと外に出て歩き出すと、雅さんはすぐに俺の腕をギュッと掴んで、思い切り密着してきた。
(ちょっ! くっつきすぎだろ、このお姉さん…!)
即座に息子が反応してしまう、情けない俺。
雅さんからは、清水センセイや嗣永センセイのとは全然違う、
もっと大人っぽい、高級な感じの香水の匂いが濃厚に漂ってきた。
「ねえ、○○クンって、女の子とエッチしたことあるの?」
雅さんがからかうような口調で聞いてきた。
278
:
1
:2015/09/07(月) 04:35:29
その時、電停に市電がやってきたので、俺たちはとりあえず乗り込んだ。
雅さんと2人並んで座席に座ってから、俺は小声でさっきの質問に答えた。
「エッチどころか…、女の子と付き合ったこともありませんけど…」
「えーっ!? じゃあまだ童貞ってことー!?」
酔っぱらっているのか、雅さんが車内中に聞こえるくらいでかい声で言った。
俺は慌てて車内を見回した。
車内には俺たちの他には、前の方に女子大生風のお姉さんが座っているだけだった。
明らかにお姉さんにも聞こえていただろうけど、そのお姉さんは聞こえないふりをしていた。
「ちょっと!雅さん!声がでかすぎですよ!」と、俺は抗議したけど、
雅さんは相変わらずでかい声で、
「そうかー。童貞なんだー。アハハハハ」と笑った。
正直、俺は傷ついた。
279
:
1
:2015/09/07(月) 04:35:54
俺がシュンとなっていると、雅さんは、
「ごめん、○○クン。怒った?」と言って、
俺の肩に手を回しながら、下から俺の顔を見上げるように覗き込んできた。
「別に…、怒りはしませんけど…」と、俺が震え声で強がると、
「そっかー。怒ってないんだ! 良かった!」と、雅さんがあっさりと笑った。
(いや、それは違うだろ…)と、俺が心の中で抗議するいとまもなく、
雅さんは「でも○○クン、高2でしょ? 17でしょ? まだ童貞とか、遅すぎない?」
と、相変わらずの大声で、憐れむように聞いてきた。
いくらなんでも、俺も腹が立ってきた。
「じゃあ雅さんは、いくつの時に経験したって言うんですか?」と聞き返した。
雅さんは、「みやはねえ…」と言いかけてから、
「ちょっと! 何言わせるの! もう!童貞のくせにエッチなんだから!」と、
俺の背中を思い切り叩いてから、けらけらと笑い出した。
280
:
1
:2015/09/07(月) 04:36:20
2人のセンセイや須藤さんもそうだけど、やはりこのお姉さんたちには、
俺みたいな小僧は、きっと最初から敵わないのだ。
俺はそう思って諦めることにした。
(無駄な抵抗はやめて、適当に相手して送って、さっさと家に帰ろう)
そんなことを考えているうちに、電車が駅前の電停に着いた。
電停を降りても、雅さんはまた俺の腕をとって、ぴったりと密着してきた。
電停の目の前には…
そういえば、例のANGERMEがあったのだ。
(もう遅い時間だから、いくら何でも田村やりなぷーはいないと思うけど…)
俺は顔をそむけるようにして、店の前を通り過ぎた。
すると、雅さんは、
「あっ、ココ! ここに私たちの働いていたベリーズ工房があったんだよ!
今は店変わったんだ…。ねえ、ちょっと入っていかない?」とか言い出した。
俺は慌てて、「いや、俺も早く帰らなきゃならないし、まっすぐ行きましょう」
と言って、雅さんを引っ張るように歩き続けた。
雅さんはちょっと不服そうな顔で俺を睨んだ。
281
:
1
:2015/09/07(月) 04:36:39
ホテルに向かって歩き出すと、
「でも、さっきの話だけどさあ…」と、また雅さんが話し出した。
「さっきの話?」
「ホラ、○○クンがモテモテって話。四つ股かけてるとか…」
「あのね…、四つ股なんてかけてませんから。人聞きの悪い…」
「そんなに周りに仲のいい女の子がいっぱいいるのに、何で童貞なの?」
大真面目な顔で聞いてくる雅さんだった。
「あのね、雅さん、いくら仲がいいからって、そんな手当たりしだいにやっちゃうなんて…」
「やっちゃえばいいじゃん」
「ええっ!?」
282
:
1
:2015/09/07(月) 04:36:58
雅さんは大真面目な顔で話し出した。
「全部、自分勝手、自分勝手選べばいいのよ」
「何で、自分勝手って2回も言うんですか?」
「大事なことだから2度言ったの!」
俺が呆気にとられていると、雅さんは、
「○○クンはさあ、単に結果ビビっちゃってるだけでしょ?
あのね、自分で決めたら、『何があったって後悔はしない』って、まず決めるの!
それにね、やらぬ後悔よりも、やっちまった後悔した方がいいんだよ!」
と、ドヤ顔でまくし立ててきた。
「雅さん、やるとかやらないとか、えげつなさすぎます…」
<その時の俺の脳内イメージソング>
https://www.youtube.com/watch?v=XBQ0v95I9RE
283
:
1
:2015/09/07(月) 04:37:19
そんな話をしながら歩いていると、ホテルの前にたどり着いた。
「じゃ、雅さん、俺はここで…」と言いかけた時、
「ダメ! 女の子はちゃんと部屋まで送るものよ!」と、
雅さんが怒ったように言った。
今さらこの人に逆らっても仕方ない。
宿泊客でもないのに、こんな時間に客室に入っていいのかどうか分からなかったけど、
俺は覚悟を決めて、雅さんと一緒にホテルのエントランスをくぐった。
フロントの前を通っても、ホテルの人が何も言わなかったので、ホッとした。
エレベーターに乗り込んで、ドアが閉まった瞬間、
いきなり、雅さんが俺に抱きついて、キスをしてきた。
「!!!」
無様に棒立ちになったまま、雅さんのベロチューを受け入れる俺。
俺の人生初のキスの味は、大五郎のフレーバーだった。
284
:
1
:2015/09/07(月) 04:37:58
童貞の俺が想像していたよりもずっと…、
(キスと言うのは生々しくて、気持ちのいいものだな)と、俺は思った。
目的の階についてドアが開くと、雅さんは俺の手をとってエレベーターを降りた。
俺がまるで、でくの坊のように、雅さんのなすがままに部屋の前までついて来ると、
雅さんはさも当然、という感じで、俺を部屋の中に導いた。
部屋のドアにカギをかけた雅さんは、俺の目を見て悪戯っぽく笑うと、
再びキスをしようとしてきた。
俺は思わず、それを制して、
「あ、あの…、雅さん…」と、問いかけた。
「なあに?」
「雅さんは…、東京に彼氏とかいないんですか?」
「もちろんいるわよ(笑)」
「それなのに…、いいんですか?」
「何が?」
「好きでもない相手と、こんなことして…」
瞬間、雅さんはまじまじと俺の目を覗き込んで、
「あら? ○○クンはみやのこと、好きじゃないの?」と真面目な顔で聞いてきた。
「もちろん、好きです!」と反射的に答えてしまう俺。
「じゃあ、いいじゃん。私も〇○クンのこと、嫌いじゃないわよ」
そういうと、再び雅さんは、俺にねっとりとしたキスをお見舞いしてきた。
285
:
1
:2015/09/07(月) 04:38:19
しばらく俺はまた、かかしのようにぶざまに立ち尽くしていたけれど…、
そのうち、雅さんの体に触りたいという欲求が、猛烈に湧き上がってきた。
すでに俺の愚息は、痛いほどビンビンに勃起しつくしていた。
思い切って雅さんの背中に手を回そうとしたその時、俺より先に、
雅さんの細い指が、いきなり俺の股間をまさぐってきた。
「アッー!」
思わず情けない声を上げて、前かがみになる俺。
「わあ!カチンカチンじゃん。すごーい! やっぱ10代は違うね!」と笑う雅さん。
俺の頭の中で何かが弾けた。
「雅さん!!」
俺が雅さんの体を強く抱きしめながら、ベッドの上に押し倒すと、
「あん!慌てちゃダメ」と、雅さんが甘い声で囁いた。
286
:
1
:2015/09/07(月) 04:39:05
俺にベッドの上に組み伏せられた格好の雅さんは、
「ね、一緒にシャワー浴びようか?」と、下から俺を見上げて笑いかけてきた。
「えっ!?シャワー!? い、一緒に、ですか…!?」
俺がうろたえていると、雅さんは、自分に覆いかぶさっていた俺をスルリと躱して起き上がり、
さっさと自分の着ていた上着とショートパンツを、恥ずかしがる様子もなしに堂々と脱ぎはじめた。
俺が思わず五クりと生唾をのみこんで凝視していると、下着だけの姿になった雅さんは、
バスルームのドアを開けたところで俺を振り返り、
「ほらあ! モタモタしてないで〇○クンもおいでよ!」と、妖しく微笑みかけてきた。
<バスルームに俺を誘う雅さん・イメージ画像>
http://i.imgur.com/LJNTvXk.jpg
287
:
1
:2015/09/07(月) 04:39:27
慌ててジーンズとTシャツを脱ぎだす俺を見て、雅さんが「あはは」と笑った。
パンツ一丁になった俺は、雅さんの後らから抱きつくようにして、バスルームになだれ込んだ。
「雅さん!!」
俺は雅さんの背後から、両手で雅さんの薄い胸を覆った。
「あん…」と甘い声を出す雅さん。
初めて触る女の人のオッパイ。
その柔らかさに陶然となっていると、
「小さいでしょ?」と雅さんが聞いてきた。
「いえ…、そんなこと…」
さすがに、はいそうですね、と答える訳にもいかない俺だった。
「小さいけれど感度はいいのよ」
そんなベタなことを言いながら、首をこちらにむけて、俺にキスしてくる雅さんだった。
288
:
1
:2015/09/07(月) 04:39:44
キスを続けながら、俺は雅さんのチューブトップのブラをずらして、
硬く大きくなっていた、雅さんの乳首をつまんだ。
「はあっ…」と、雅さんが吐息を漏らしながら、俺の腰に手を回すと、
あっという間に、俺のパンツをずり下ろした。
ビンビンに勃起した一物が露出して、思わず「あっ!」とうろたえる俺。
雅さんは俺の腰の前にしゃがみこみながら、俺を上目遣いで見上げてきて、
「ウフッ」と、妖しげに微笑んた。
雅さんは、「童貞のくせに、結構立派な物持ってるんじゃん」と言ってから、
俺の亀頭にチュッと、一瞬キスをした。
「ヒィッ!」と情けない声を上げて、感じる俺。
そんな俺の反応をいちいち楽しむように、雅さんは俺の亀頭に短いキスを繰り返した。
(遊ばれてるな、俺)と、思ったその時、
満を持して、雅さんが俺の一物を深くくわえてきた。
289
:
1
:2015/09/07(月) 04:40:01
「アッー」
思わず頭が真っ白になりかける俺。
今までこんなに勃起したことがあっただろうか、というくらい、
痛いほど硬くなった俺の一物を、雅さんは、ディープキスの時と同じような、
素晴らしい舌遣いで、チュバッ、チュバッといやらしい音を立てながら、攻めたててきた。
「雅さん! ダメです! ダメ! こんなことされたら、すぐに出ちゃいます!」
俺は情けない声で訴えた。
「それより俺の方も…、雅さんを舐めたいです」
290
:
1
:2015/09/07(月) 04:40:21
雅さんは、そんな俺の哀願を無視して、ますます強く早く、俺の一物をしごきつつ、
強烈なバキュームフェラ施してきた。
ジュボジュボジュボジュボ…
「あっ!ホントにいきそうです!ダメっ!」
思わず叫ぶ俺。
あと一しごきで暴発、というその寸前に、雅さんはピタリと動きを止めて、
ニヤニヤしながら俺を上目遣いで見上げてきた。
「ふう…、ふう…、ふう…」
深呼吸して、暴発を回避しようとする俺。
その瞬間、また雅さんが激しく俺の一物を口でしごきだす。
「ひいっ…!」
雅さんのなすがままに弄ばれながら、
(この人、もしかしたらドSなんじゃないか…?)
と、思う俺だった。
291
:
1
:2015/09/07(月) 04:40:42
このまま一方的に弄ばれるだけではたまらない。
俺の方からも、雅さんを攻めたいという気持ちが猛烈に湧き上がってきた。
というよりも、率直に言って、早く雅さんのマ○コをこの目でじっくり見たい。そして舐めたい。
童貞なら、いや、男なら誰しもそう思って当然なのではあるまいか。
「雅さんっ!!」
俺は雅さんのフェラを振り払うようにして、雅さんの下半身に向かって突進した。
しかし、雅さんは、まるで闘牛士のように、俺の突進をヒラリと躱すと、
スクッと立ち上がって、自分からさっさとパンツを脱ぎ捨てた。
(あっ! それ、俺が脱がせたかったのに!)
俺は思わず歯ぎしりした。
292
:
1
:2015/09/07(月) 04:41:01
一糸まとわぬ姿になった雅さんは、バスタブの中に進むと、シャワーのカランを大きくひねって、
全身にお湯を浴びだした。そして、自分の両手で、お腹のあたりから乳房のあたりまで、
ゆっくりとセクシーになぞっていった後、俺の方を見て、「おいで」と笑った。
「は、はい!」
バスタブの中に突進した俺は、
雅さんの丸いお尻の膨らみを両手で抱え込むようにしながらしゃがみこみ、
雅さんの立派な太ももの内側に口をつけた。
「ハァーン」と、甘い声を出す雅さん。
俺は太ももから上の方に向かって、舌を這わせていった。
俺の目の前に、雅さんのアンダーヘアがあった。
こんなところまで脱色しているのか、ヘアの色は、雅さんの髪と同じ金色だった。
そのヘアの奥の方をじっくり見たいのだが…、
雅さんの体をつたって流れてくるお湯が邪魔になって、よく見えないのだ…。
293
:
1
:2015/09/07(月) 04:41:19
俺は両手の親指で、雅さんのそこを押し広げるようにして、下から覗き込んだ。
流れるお湯の反射の中に、ピンク色の突起がちらりと見えた。
(これが女の子の秘密の恋のボタンってやつか…)
五クりと唾をのみこんでから、そこに口づけすると、
雅さんが「アアーッン」とため息をついた。
その声に興奮しながら、俺は猿のようにそこを舐め続けた。
もっと奥の方にどんどん舌を進めていくと、
さらさらとしたお湯の感触が、突然ぬるっとした感じに変わるところに行き当たった。
雅さんの陰毛も口の中に入ってきたけど、もう構わなかった。
「あっ、そこ…。そこ、いい…!」
雅さんがかわいい声であえぎながら、俺の髪の毛をつかんで、
自分に押し付けるような態勢になってきた。
お湯の味が、しょっぱいような味に変わってきた。
294
:
1
:2015/09/07(月) 04:41:36
「はぁん、はぁん…」と、リズミカルにあえぐ雅さん。
(このまま舐め続けて、イカせてやる!!)
と、俺は思ったけど、雅さんは、俺のそんな気持ちを遮るように、
「じゃあ…、ベッドに戻ろうか?」と、聞いてきた。
望むところだった。
俺もベッドに雅さんを押し倒して、もっとじっくりと、
雅さんのマ○コを観察したかったのだ。
「は、はい…!」
俺が返事をすると、雅さんは、バスタオルに身をくるんで、
俺を置いてすたすたとベッドの方に戻っていった。
俺は勃起した一物を持て余しながら、慌ててその後を追った。
295
:
1
:2015/09/07(月) 04:41:54
ベッドの縁に並んで腰かけると、雅さんは、
「ねえ○○クン、ゴム持ってる?」と聞いてきた。
「えっ…? ゴムって…」
「コンドーム」
「い、いや…、持ってないです」
俺がそう答えると、雅さんは呆れたように「はあ…」とため息をついてから、
「あのね○○クン、そういうのは男の子の方が用意しておくのがエチケットなのよ。
ちゃんと普段から持ち歩いてないと、ダメじゃないの!」と、
なじるような口調で言ってきた。
「…ごめんなさい」
俺がそう謝ると、雅さんは「仕方ないわね…」と言いながら、
自分のハンドバックの中を探って、「1個だけなら持ってるけど…」と、
コンドームのパッケージを取り出した。
296
:
1
:2015/09/07(月) 04:42:14
「横になって」
と、雅さんに命令されて、俺は慌ててベッドの上に、マグロのように横たわった。
雅さんはコンドームのパッケージを破ると、ビンビンに怒張したままの俺の一物に、
手慣れた手つきで、コンドームをスルスルと嵌めていった。
結局、主導権は雅さんに握られたままだった。
雅さんは俺の腰の上にまたがる格好で、俺の一物をつかんで自分の秘部にあてがうと、
ゆっくりと腰を下ろしていった。
297
:
1
:2015/09/08(火) 04:29:58
その瞬間は、意外にあっけなく訪れた。
ヌルッ、とした感触とともに、俺の一物は雅さんの下の口に呑み込まれていった。
「あんっ…、太い…」
雅さんが眉根を寄せて、ため息をもらした。
お世辞だとわかっていても、素直に俺は嬉しかった。
とはいえ…
正直なことを言うと、その時の俺の気持ちは、案外冷静だった。
ハッキリ言って、さっき初めてフェラチオしてもらったときの方が、
よっぽど痺れるような陶酔感があったのだ。
つまり、その時の俺は、実際の快感よりも、
「雅さんみたいな最高の女のオマ○コに、今、俺のチンポが奥まで刺さっている」
という、観念による嬉しさの方が勝っていた、とでもいえばいいのだろうか。
(もう、俺は童貞ではないのだ)
そんな気持ちを、俺は噛み締めた。
298
:
1
:2015/09/08(火) 04:30:26
雅さんが、前後にゆっくり体を動かし始めた。
(ふーん…。セックスって、こんなもんか)
と、俺はちょっと余裕をかましながら思った。
後で思えば、愚かであった。いや、愚かすぎた。
全く無警戒になっていた俺に、次の瞬間、
雅さんがギューッと、そこを締め付けてきた。
「アッー!!!」
あまりにも呆気なすぎる終局だった。
三こすり半も持たずに、俺は自分自身を放出してしまったのだ。
「えっ? まさか、もうイッちゃったとか?」
憐れみと不満の入り混じった目で、雅さんが俺を見下ろしてきた。
299
:
1
:2015/09/08(火) 04:30:45
「初めてとはいえ…、いくら何でも、ちょっと早すぎるんじゃない?」
雅さんの口調には、明らかに非難のニュアンスが込められていた。
「ご、ごめんなさい…」
穴があったら入りたい、とはまさにこのことだった。
「できなさすぎるよね…。ちゃんと練習してきたん?」
とは、さすがに雅さんは言わなかったけど、まあそういうことだろう。
「自分ひとりだけイッちゃうなんて、ダメよ、そんな身勝手なの」と、雅さんは言った。
「ごめんなさい。いや、もう一回…! 今度は頑張ります!」
俺がそう言うと、雅さんは、「もう一回って…、もうゴムないじゃん」と、
ちょっと呆れ顔で言った。
「やっぱり…、ゴム無しじゃ駄目ですか…?」
俺がそう聞くと、雅さんは、困ったような顔をして、しばらくの間考え込んでから、
「中で出さない自信あるの?」と、俺を試すような顔で聞いてきた。
300
:
1
:2015/09/08(火) 04:31:03
俺は思わず口ごもった。
「そ、そんな…、自信なんて…。だって、雅さんのあそこ、気持ちよすぎるし…」
俺がそう言うと、雅さんも満更でもなさそうな表情を浮かべて俺を見てきた。
「それに、雅さんに自由に動かれたら、俺すぐイッちゃいますよ…。
でも、俺が上になれば、少しはマシかも…」
雅さんは、じっと俺を見つめた後、
「じゃあさ、○○クンの好きなようにしてもいいよ。今度は頑張ってよね」
と、妖しげに笑った。
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