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男「お願いだ、信じてくれ」白蓮「あらあら」
1
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/01/20(水) 05:32:56 ID:GS4PMXIs
このSSは東方の二次創作であり、
男「どこだよ、ここ」幽香「誰!?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/14562/1388583677/
男「なんでだよ、これ」ぬえ「あう」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1400909334/l50
の続きとなっております。
そちらを先にご覧くださると幸いです。
また、オリジナル設定、オリジナルキャラ、東方キャラクターの死亡などが含まれますので苦手な方はご注意ください。
204
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/11/20(日) 22:06:04 ID:865YO1d2
マミ「我が眷族でも呼べば早いんじゃろうが朝はのう。あやつら寝とるじゃろうて」
男「眷族?」
マミ「ムジナよムジナ。狸と呼んだほうが通りはいいかの?」
あぁ、そういえば化け狸か。でも揺れる尻尾は狸のものではなくアライグマ………いや、化けだぬきだから尻尾も違うのだろう、きっと。たぶん。
男「マミゾウは夜行性じゃないのか?」
マミ「儂か? 儂は人間のほうに合わせておるよ。その方がいろいろと都合が良い」
男「ん、あれは」
マミ「………! 大妖精じゃな」
緑色の髪が草木の中で目立ちにくいが地面にへたり込んでいるのはチルノの親友である大妖精だった。
男「人間がいるのか!?」
彼女を守るために駆け出す。妖精を捕まえるのに使うのは瓶のはずだ。それさえ割ってしまえば
マミ「まて男!」
マミゾウがなぜか制止をする。
205
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/11/20(日) 22:12:20 ID:865YO1d2
大妖精「!!」
その声でこちらに気づいた大妖精が
大妖精「い、いやぁっ!」
叫び声をあげて、這いながら逃げて行った。
マミ「驚かせてどうする! お主も人間じゃろうが!!」
男「そういえば………」
こっちは知っているが向こうにとっては初対面というのはなかなか困ったものだ。とっさの行動に現れる。
大妖精は立ち上がろうとしているようだが上手くいかず、まだ這っている。走ればすぐにでも追いつくだろう。
追いついて事情を説明すれば、と踏み出した足に切られたような痛みを覚え、足元を見る。
氷が俺の足をくるぶしの少し上あたりまで凍らせていた。
チルノ「いじめたな! 大ちゃんをいじめたんだな人間野郎!!」
チルノが両腕を組んで中空に浮いていた。
その瞳は俺が敵であると告げており、パキパキと音をたてながらツララが作られていく。その切っ先はすべて俺に向けられており。
しのぎ切れるかと考えては見る者の動きを封じられた状態でしのげる量では明らかにない。数本ではない。すでに十本以上は向けられており。一つでも刺さればかなりの傷を与えてくるだろうということが容易に想像できた。
チルノ「死んで反省しろ!」
206
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/11/20(日) 22:23:12 ID:865YO1d2
ツララが飛んでくる。一本ずつではなく一斉に。
あ、無理だ。
せめて致命傷は避けなければと思い両腕で頭を隠す。
マミ「えぇいっ!!」
男「マミゾウ!」
飛んできたツララをマミゾウが両腕を振って叩き落す。
マミ「チルノ! ちょいと止まれ!!」
チル「………誰だお前!!」
マミ「冬になって少しは賢くなったと思ったがバカはバカか」
チル「誰がバカだ! 円周率だって20桁まで言えるんだぞ!!」
賢さの説明の仕方がバカであった。
なんて思ってる場合ではない。いくら力をこめようとも氷が食らいついて離さない。
マミ「結局は戦うしかないのか。とりあえず氷は砕いておくから逃げい!」
マミゾウが思い切り地面を踏みしめるとみるみるうちに氷がひび割れていく。
思い切り足を上げると氷は砕け、両足が自由になった。
207
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/11/20(日) 22:37:45 ID:865YO1d2
マミゾウに言われた通り逃げる。わけにはいかない。森の方へ逃げた大妖精を追って走る。
そうするためには立ちはだかったチルノの攻撃をかわし潜り抜けなければならないが。
マミ「前向いて走れ! 儂が相手をしておくから安心せい!」
チルノ「あっ、こらっ。あたいを無視して―――」
マミ「だから相手は儂じゃぞ」
こっちへ手を向けて阻止しようとしたチルノだったがマミゾウ相手によそ見は厳禁で空中のチルノにマミゾウが飛び掛かって地面へ引きずり倒していた。
チルノ「いたぁっ! こらっ、離せぇー はーなーせー!!」
ジタバタと暴れるチルノの横を通り抜け森の中へ入る。まだ遠くに行ってないはずだ。最悪の事態だけは避けなければ。
208
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/11/20(日) 22:41:34 ID:865YO1d2
森の中では大妖精の姿は目立たない。彼女の身長と髪色が森の中へ隠れるからだ。
這っていればなおさらだ。
注意深く、だけど速やかに進まなければならない。
だけれど白蓮さんのようにはいかず、無理やり草木をかき分けた代償として手足に細かな裂傷が生まれていく。
耳に入る情報と折れた枝と落ちた葉を目印にして探す。
折れた枝と落ちた葉の量が多い。どうやら大妖精の移動速度は予想よりも速いようだ。逃げられてしまう可能性もある。
大妖精「きゃぁっ!!」
男「!」
大妖精の叫び声。人間に見つかったのか!?
声のした方へ駆け出そうとした瞬間に衝撃。重いものが俺の体に降ってきて、耐えきれず俺は地面に倒れた。
209
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/11/20(日) 22:42:50 ID:865YO1d2
一体なんだと落ちてきたものを確認すると。
大妖精「い、いたた」
大妖精だった。
男「………やぁ」
大妖精「き、き」
再び叫びだそうとしたその口を両手で抑えた。
なにかとてつもなくしてはいけないようなことをしている気分で、いやその通りなのかもしれないが。
しかしその判断は間違っていたのか大妖精は両手両足を大きく動かし俺から逃れようとする。
何か、何か落ち着かせる方法でもあればいいのだがかける言葉もなにも思い浮かばない。
結果人間に見つからないように彼女を地面に組み伏せ、口を押え体力が切れるまで粘ることにした。
大妖精「んーっ! んうーっ!!」
間違ったことはしてない。
してないはずなんだ。
210
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/11/20(日) 22:43:58 ID:w2A70F8o
男の身長はどのくらいあるんだろう?
211
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/11/20(日) 22:57:08 ID:F.RyXFsY
乙!
東方の妖精はそこそこデカいけど、どうやってビンなんかに入れるんだ?それともそんなデカいビンを量産してんのか?
212
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/11/21(月) 00:37:41 ID:gE6FunJQ
どう見ても事案
しかし他に考えられる方法もなし。語りかけるにしても今の人間不信ではな……今は命蓮寺に世話になってるから、根気よくやってみるのもアリかも知れんが
213
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/11/21(月) 11:18:53 ID:Nq93F8kQ
というか、誰が大妖精を男の方に投げたんだ?
214
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/11/21(月) 15:11:23 ID:w2OWMya2
テレポート
215
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/11/21(月) 17:13:23 ID:Tlh3RJl2
その手があったか(某青ダヌキ風)
216
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/11/30(水) 20:23:54 ID:IuP23BTw
大妖精って筋力は弱いのかな?
217
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/12/05(月) 19:20:29 ID:sbqFdsYc
男「安心してくれ。人間から君を助けに来ただけだから」
なんて説得力のない台詞を吐いては見るが効果はない。
抵抗を続ける大妖精によって地面に落ちた枯れ枝がぺきぺきと音をたて、辺りに響いていく。
おそらく、このままでは
村人「おん? みねぇ顔だがお前さんも妖精狩りかい」
村人2「おぉ! よくやった。そいつはさっき逃げた妖精だ!」
見つかった。
二人組の村人。片方は瓶をいくつも腰にぶら下げており、もう片方は幅が広い鉈を持っていた。その傷つき具合から見て真っ当な使い方はされていないのだろうということが分かる。
瓶の中では小さくなった妖精がこっちを見て必死に瓶を叩いている。しかし音も声も聞こえない。
村人「よぉし。今日はこれで最後だな」
そういって瓶をぶら下げた男が空の瓶の蓋を開き、こちらへ向ける。
どういう理屈かは知らないが向けられただけで妖精が吸い込まれるってことは分かっている。
男「ちょいと待ったっ!」
地面を殴りつけるようにして反動で起き上がり、不意をついて瓶を叩き落とす。
パリンと瓶が地面に落ちて割れた。
218
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/12/05(月) 19:25:27 ID:KH/NXdUQ
http://slow-hand.jp/url/?id=899
219
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/12/05(月) 19:33:36 ID:sbqFdsYc
村人「お?」
突然のことに対応できてない男の襟首を押し、鉈を持った男にぶつける。
村人2「いってぇっ!!」
いけるか。人間二人ならば。
イメージトレーニングはばっちり。二人を近くの木にぶつければいい。蹴りや殴りよりもよっぽど簡単で威力も大きい。だができるのは今この一瞬だけ。
できるか俺。
やれるよな俺。
相手の重心は後ろに向いている。そのちょうど後ろに木。後ろに向いた重心を利用して押すだけだ。
男「恨みはねえが―――いやありまくりだぁっ!!」
チルノを傷つけた二人。今も大妖精を傷つけようとしている二人に怒りを向け突進。
220
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/12/05(月) 19:40:11 ID:sbqFdsYc
村人2「ぎっ」
イメージ通り体は動いてくれた。鉈を持った方は木に頭を強く打ち付け泡を吹いた。問題は瓶の方だ。後ろの男がクッションとなって大したダメージは入っていない。
男「そぉら! もういっちょう!!」
戦いの流れはまだ俺にある。まだ体勢を崩したままの男の頭を両手で掴み勢いをつけて木へ直にたたきつけた。
一度目。まだ意識がある。泡を食って俺に掴みかかろうとしたところに二度目。三度目、四度目、五度目。
男「はぁっ、はぁっ」
ぬるりと男の体が先に倒れた男に重なるようにして崩れ落ちた。木には鮮やかではない赤。俺の手にもべっとりとついたそれは白い煙をあげていた。
大妖精「な、なんで、なんでぇ?」
時間にして十数秒。突然目の前で起きた人間対人間に理解が追い付いていない大妖精が震えた声で疑問符を出す。
男「だから、言ったろ。助けに来たって」
肉体の疲れではなく精神の疲れから俺はその場にへたり込んだ。
パァンッ
男「熱っ」
突然頬に熱を感じた。次に衝撃。続いて痛み。
銃弾が俺の頬を掠めたと気づいたのは衝撃で揺らいだ脳がキィーンとなる耳鳴りの先でカランカランと薬莢が地面に落ちる音を聞いたから。
221
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/12/05(月) 19:47:44 ID:sbqFdsYc
眩暈と耳鳴りからくる吐き気を堪え後ろを振り向いたと同時に二発目を装填する音。
三人目。いたのかよ。知らねぇよ。
猟銃を構えた女が今度こそ外すまいと俺に狙いを付けていた。
それはちょうど女と俺と大妖精を直線で結んでいて、どうすれば二人とも助かるだろうかを考えては見るものの返ってくる答えは不可能であるとの結論だけ。
大妖精は死にはしない。だけれどもそこまで切り捨てる思考を持ってはいない。
マミゾウを呼ぶ。無理だ。いくら速くとも俺が声を出す前に撃たれる。
無理だ。無理だ。無理だ。もう無理だ。
見捨てれば。見捨てれば。見捨てれば。
見捨てれば!!
大妖精「や、やぁ、いやぁ」
―――無理。
222
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2016/12/05(月) 19:51:26 ID:sbqFdsYc
男「逃げろっ!!大―――」
ドンッ
大きな音。だがしかしそれは先ほどの銃声とは明らかに違う。
ならその音の原因は?
男「ようせ―――聖さんっ!?」
真空飛び膝蹴りをかました聖さんが原因だ。
白蓮「待ちましたか?」
男「聖さぁんっ!?」
223
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/12/06(火) 02:14:46 ID:48y6vBN6
銃見ちゃうと無理だよなー。まぁなー
224
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/12/06(火) 09:39:19 ID:NdxONQ7o
謎の瓶の仕組みの謎
225
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/12/07(水) 01:00:45 ID:7Rp36jUQ
ゼルダとポケモンが混ざったみたいな瓶だ
226
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/12/07(水) 08:34:51 ID:sUZsvpRA
さすひじ
227
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2016/12/16(金) 23:02:17 ID:9Sd2luc6
やっぱり聖は強いな。
228
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/01/12(木) 11:10:15 ID:PsP.agmU
すいません。入院してました。
土曜には必ず更新をしますのでよろしくおねがいします
229
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/12(木) 15:50:11 ID:1K1kO59w
瓶の件は俺達が脳内補完するしかないっしょ まぁ、説明してくれるならありがたいが...
230
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/12(木) 19:23:19 ID:c3ke3fcE
年の初めからなんちゅうこっちゃい
231
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/12(木) 22:59:08 ID:RG0AQo3Q
のんびりと待っておきますよ。
232
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/14(土) 05:51:16 ID:49Vua3iA
主さん無理はしないでくださいね応援してます
233
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/01/14(土) 23:28:29 ID:Im.O.suo
膝蹴りを受け飛んで行った女は枯れ木にぶつかり地面に落ちて行った。動く気配はもうないし、動けたところで聖さんの前で何かできるとは思えない。
一輪「はぁっ、はぁっ、あ、姐さぁん!」
遅れて息も絶え絶えになった一輪がやってきた。一輪がやってきた方を見ると草木どころじゃなく細い木々までへし折られてけもの道ができていた。
聖「お怪我は?」
男「大丈夫です。それより」
後ろを向くと砕けた腰で這うように逃げる大妖精の姿。
無理もないとはいえかばったのにと少し傷つく。
マミ「なんじゃ、もうそっちは済んだのか」
心底残念そうに紫煙をはくマミゾウが
チルノ「もごーっ! もごーっ!!」
縛り上げたチルノを抱えていつのまにか立っていた。
大妖精「や、やっぱりぃっ!?」
マミ「そいつも縛り上げようか」
男「話ややこしくしないでくれません?」
234
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/01/14(土) 23:52:00 ID:Im.O.suo
男「あ、そういえば」
気絶した男二人のうち瓶を持っている方から瓶を回収する。
瓶の数は全部で11本。空が5本。中身ありが6本。
男「これ開けちゃっていいんですかね」
開けたら妖精が吸い込まれるってことは知っているが開けたら妖精が出てくるとは限らない。
下手をすればそのまま妖精が消えるなんてことも考えられる。
だって相手は摩訶不思議なのだから。
霊夢ならなんとかしてくれるとは思うができるだけ出会いたくはない。霊夢の行動に影響を与えてしまえば何が起きるかわからない。
一輪「姐さんならなんとかできませんか?」
白蓮「簡易な収縮回路と封印術なので簡単に解けますよ」
そういいながら瓶のふたを数回叩く聖さん。すると蓋が煙のように消え、中から妖精が大きくなりながら飛び出してきた。
聖さん万能説をここに唱えよう。
聖さんがすべての瓶の封印を解き終わると周りには新たに6人の妖精。
つい先ほどまで封印されていたにも関わらず妖精たちは無邪気にはしゃぎまわっていた。
235
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/01/14(土) 23:59:50 ID:Im.O.suo
チルノ「で、なんだお前ら」
縛り上げられていたチルノをほどき話を試みるとむすっとした顔でチルノに睨まれる。
男「妖精を助けに来た、と言えば信じてもらえるか」
チルノ「大ちゃん、なんかこいつに酷いことされてないか?」
大「お、押し倒されて押さえつけられて………」
事実だが誤認である。
一輪の蔑む目。
聖さんのとまどった表情。
さらに睨みつけてくるチルノ。
そして口を押えて笑い転げているマミゾウ。
完全にアウェーになっていた。
今まで何度も思ったが男一人の状況は時として難儀なことを招く。
おそらくここに霊夢がいたならば有無を言わさず鉄拳制裁されているだろう。
せめて、せめてぬえがいたならばと思ったが今、この世界のぬえに蔑まれたならばおそらく俺は死ぬ。
236
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/01/15(日) 00:07:38 ID:b/k4.7bc
男「いや、それは逃げようとするから仕方なく。ほら人間に見つかっちゃうと大変だから」
チルノ「お前人間だろ!」
男「人間だけどそういうことじゃなくてだ」
大「怖かったよぅ、チルノちゃん」
チルノ「やっぱり危ない人間じゃないか!」
チルノに抱き着く大妖精とそれをかばうチルノ。
傍から見たならば明らかに俺は悪い人間なのだろう。
そしてなぜか誰も弁解も助けもくれない。
男「妖精を助けたんだから敵じゃないってことはわかってくれ。大妖精を組み敷いたのだって悪い人間から助けるためだ」
チルノ「確かにそうだけど」
チルノからの疑いの目は晴れない。
チルノ「助ける理由は。見返りを求めてるのか? あたいたち妖精は何も持ってないぞ? ほら、理由がないじゃないか」
助けたいから助けたい。
そんな簡単な理由が簡単に通らない。
人間の戦力増強を防ぐためといえばいいだろうか。だがそれを知っている理由をどう説明する。
237
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/01/15(日) 00:17:45 ID:b/k4.7bc
チルノ「今のあたいはバカじゃないんだ。皆を守れる。守ってみせる。お前らはいらないね」
返答に窮していると続けてチルノが俺を責める。
おそらく、おそらくだがこのチルノに嘘は通じない。
そんな凄みが冷気とともに伝わってくる。
チルノ「で、どうする気だ人間。やるのか。ここで」
チルノの手のひらにみるみるうちに氷の塊が出来上がる。
それを合図に解放した妖精全員が俺に両手を向けじっと見つめていた。
チルノ「助けてくれたことだけには感謝するけど。あたいたちにお前らはいらない」
男「違う」
チルノ「助けてやろうって上から目線が気に食わないよ。あたいたち妖精は弱いけど、妖精は強いんだぞ!」
男「違う!」
助けにきたのは確かだ。
だが上から目線で言ったわけじゃない。消えてほしくないからだ。俺は俺のためにこの幻想郷でおきる悲しみを消さなければならないんだ。
だから
男「助けてもらいたいのは俺のほうなんだ」
238
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/01/15(日) 00:26:25 ID:b/k4.7bc
そうなんだ。
助けてもらいたいから助ける。
そんな単純な理由なんだ。
上下関係なんてない。手をつないでもらえればきっとこの心の震えは収まるから。
男「助けてくれ………っ チルノ……っ!!」
両手をついてチルノに頭を下げる。
俺のその行動に回りの妖精がざわつき始めた。
チルノ「妖精に頭を下げる人間なんて初めて見た。人間に助けを求める人間も初めて見た」
チルノ「どうする大ちゃん。あたいは、あたいはなんとなくだけどちょっと信じてもいいかなって思ってる。理由はなんだかよくわからないけど今あたいはすっごいうれしいんだ」
チルノ「本当にわけがわからないくらい今、あたいはうれしいんだ」
大妖精「チルノちゃん………」
頭を上げる。
そこにいたのは俺が知っているいつものチルノだった。
恥ずかしそうにくすぐったそうに笑うチルノだった。
239
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/01/15(日) 00:46:09 ID:b/k4.7bc
一輪「はぁ、なんだかよくわかんないけど話はまとまった、のかしら?」
白蓮「きっと世界が変わっても変わらないものがあったんですよ。偶然かもしれませんけど」
一輪「そんなもんですかね」
マミ「縁は力よ。今生を超えてもなお続くものよ。袖振合うも多生の縁というじゃろうが」
マミ「きっと変えてくれるよあの若造は」
一輪「マミゾウはなんであいつの事信じれるのよ」
マミ「儂がなぜ奴を信じれるのかって?それはの。ぬふ、ぬふふふふ♪」
一輪「なにその意地の悪い笑い方は」
マミ「秘密よ秘密」
一輪「あ、なにそれ。卑怯じゃない? どう思います姐さん」
白蓮「私は彼を信じていますから」
一輪「姐さんはそういう人ですからね。姐さんの事は尊敬してますけどそのお人よしはどうにかした方がいいと思います」
白蓮「ふふ。ナズーリンにもそう言われます。でも私はこんな私が好きなのです。私はきっと人を疑うほど心が強くない。五濁悪世に飲まれても蓮華の花をただ待つほどに」
一輪「わが身愚鈍なればとて卑下することなかれ、って姐さん昔言ってませんでしたっけ」
白蓮「あら。あらあら。うふふ」
240
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/01/15(日) 00:57:35 ID:b/k4.7bc
チルノ「わかった、あたいはあんたを助ける! 守ってやる!」
男「ありがとう。チルノ」
チルノ「だからお前は今日からあたいの子分だな!」
大妖精「わぁ! よかったねチルノちゃん!」
いつの間にか子分にされ、まわりからの拍手に飲まれる。
子分になるだけでチルノを仲間にできるなら安いものだが。
師匠師匠と呼ばれていたあの時から一転。
まぁいいか。チルノに救われていたのは本当のことだし。
教えてたことも特にないし。
白蓮「では話がまとまったようなので命蓮寺に戻りましょうか」
男「あ、はい。そうですね。子供たちを星さん達に任せっぱなしなのもあれですし」
一輪「ま。子供がさらに増えたんだけどね」
チルノ「あ! 今あたいを馬鹿にしたんだな? そうだな?」
中身はともかく外見は幼いとは言えないチルノである。霊夢よりも大きいし。
241
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/01/15(日) 01:09:15 ID:b/k4.7bc
男「すまないけど人手不足なんだ。チルノにも子供たちの面倒を見るのを手伝ってほしいんだ」
チルノ「仕方ないなぁ。まぁあたいは余裕ってものがあるから手伝ってやろう。新しくできた子分の面倒をみるのもあたいの役目だからな。子分のために、そう子分のために!」
大妖精「きゃー! チルノちゃん素敵!」
チルノ「じゃあお前らはほかの妖精を連れてきてくれ」
「あいあいさー」
チルノの命令によって妖精たちが散り散りに飛んでいく。おそらく人間に捕まることはないと信じたいが。
やはり他の妖精に命令できるほどに今のチルノは強大なのか。妖精が力に従うかどうかはわからないが中心人物となれるなにかがチルノにはあるのは確か。
どこか不思議な魅力を感じるのはチルノの人柄からだろう。
まっすぐで熱い心を持つそんなチルノだからだろう。
白蓮「では帰りましょう。走りますよ」
一輪「待って姐さん。誰もついていけない」
マミ「儂はついていけるぞい?」
一輪「マミゾウだけしかついていけないから!!」
そんな一輪の声はチルノと大妖精を抱えた聖さん、俺を背負ったマミゾウには届かなかったらしく一輪の悲しみの叫びはどんどんと後ろに遠ざかって行った。
242
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/15(日) 12:45:34 ID:TTb/tJSQ
霊夢より大きいって、そマ?
243
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/15(日) 15:24:24 ID:9qPx5smI
冬だから大きくなってるって確か一周目で言ってた
244
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/19(木) 15:47:07 ID:w3a9xUTc
主にどの部分が?
245
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/19(木) 21:47:30 ID:GJjZo9bY
150cmとかになってなかったっけ
246
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/23(月) 11:10:59 ID:X6WMRnvM
来たか
247
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/23(月) 16:36:23 ID:azUzFNCU
信じてもらうために信じる 当たり前だけど、大切なことだよな
248
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/01/30(月) 23:38:07 ID:0PDsz5DM
楽しみ
249
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/18(土) 07:27:18 ID:7m1iADqc
待ってるぞ
そういえばこの展開になって最初は四季映姫がヒロイン感ありまくりだったのに、いつのまにか全く出なくなったね
250
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/02/20(月) 22:29:08 ID:AjS/F5/E
某ゲーム風に例えるとしたら
真の平和主義者ENDを目指しているってとこかな?
251
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/19(日) 15:06:49 ID:XldCc.mk
乙です!
252
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/24(金) 23:40:49 ID:QyxJsnSU
楽しみ
253
:
<削除>
:<削除>
<削除>
254
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/03/28(火) 23:53:32 ID:LXhIelKg
ksk
255
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/04/07(金) 12:23:09 ID:wZJmGfmo
さっさと更新してくれないかな・・・
skypeで連絡しようにも一週間返信ないし・・・
俺に才能さえあれば、乗っ取ってやるんだけど・・・
256
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/04/09(日) 20:06:04 ID:YDMRdf1o
乙です!
257
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/04/16(日) 22:10:24 ID:obr4KIvs
すいません、病院逆戻りになってました
258
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/04/16(日) 22:28:41 ID:obr4KIvs
ナズ「さてさて、ずいぶん人………人なんて君しかいないけどここも手狭になったもんだ」
子供たちと戯れる妖精を身ながらナズーリンが大きくため息をはいた。
手狭も手狭。敷地はある程度あるとはいえ所詮寺。その中に百をも超える数がいれば窮屈に感じるのも当然だ。
男「さて、問題はここからなんだが」
膝の上にのった犬耳娘の頭を撫でながら考える。
犬耳娘「ちょ、ちょっと男お兄さん?」
これだけの人数を移動させるのは難しい。これだけの数が移動したならば確実的に目立つ。妖怪にも人間にも。そのどちらに見つかっても良い結果にはならないはずだ。
ならある程度分けて地底と往復させる?
犬耳娘「くすぐったいよぅ」
間に合うのか? 聖さんたちが亡くなるタイムリミットまでに。
どっちをとってもリスクはある。両者平等に重いリスクがある。どちらが軽いかは運命を見れない俺には分からない。
運命………そういえば霊夢は今頃レミリアのところにいるのだろう。ふざけた魔法使いはきっとフランとパチュリーに倒されている。
レミリアに会いに行けば運命を見てくれるだろうか。いや霊夢がいない今紅魔館に行ってもよくて門前払い、悪くて夕食になるだけか。
犬耳娘「ひゃ、ひゃぁ」
ナズ「変態」
259
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/04/16(日) 22:33:36 ID:obr4KIvs
ふと顔を上げるとナズーリンが前と同じく冷たい目で俺を見ていた。
男「な、なんだよ」
ナズ「変態、変態男、君は私もそういう目で見ているのかい? 汚らわしい」
犬耳娘「わ、わふぅ…」
男「な、なんでいきなりそんなこと言うんだ? 俺は今一生懸命これからのことを考えているっていうのに」
ナズ「じゃあ撫でるのをやめたまえよ。大の大人が少女を抱きかかえて頭をなでるのはいかがわしいのだよ」
―――そういえば撫で続けていた。
撫でるたびにぴこぴこと動く耳が面白くて無意識で撫でてしまっていた。
膝の上でゆでだこになっている犬耳娘を下してナズーリンに弁解をする。
結局ナズーリンへの弁解に時間を使ってしまい考えは纏まらなかった。
260
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/04/16(日) 22:41:49 ID:obr4KIvs
弁解が終わりようやくナズーリンの冷ややかな目から見下した目に変わったのでどうにかできないものかとナズーリンに意見をあおぐ。
帰ってきた答えは単純だが奇奇怪怪、意味不明なものだった。
ナズ「飛べばいいと思うけど」
もちろんここに飛行機なんてものはない。あったとしても滑走路もパイロットもいない。
頭の中に浮かぶはてなに押されて返せた言葉はただ一言
男「―――へ?」
なんて間の抜けた返答だけだった。
ナズ「あぁ、君には言ってなかったね」
ナズ「この寺は船で空を飛ぶんだよ」
再びはてなで埋め尽くされる頭。
寺は船じゃないし船は空を飛ばない。
どっからどうみてもここにあるのは寺で船ではない。
何一つ繋がらない単語に俺は混乱して目を泳がせた。
ナズ「だろうね。外の世界で船は飛ばないらしいからね」
ナズーリンがやれやれと肩をすくめたあと寺の方に向かって「ムラサー」と呼びかけた。
261
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/04/16(日) 22:55:40 ID:obr4KIvs
水蜜「はいはい、私忙しいんだけど?」
白い帽子を左手に持ち、右手で髪をかきながら村紗がやってきた。忙しいという割には全然忙しそうには見えないのだが。
ナズ「口の端に米」
水蜜「嘘!?」
とっさに口の端に手を当てる村紗。それを見てナズーリンはにやにやとした笑みを浮かべ小さい声で笑った。
ナズ「またつまみ食いしたね?」
水蜜「どうか姐さんには、どうか姐さんには〜」
ナズーリンに土下座に近い形で素早く頭を下げる村紗がいた。それを見おろしながらナズーリンがさらににやにやと笑みを浮かべる。
ナズ「ま、今はそんなことはどうでもいいんだよ。とりあえず船長」
水蜜「船長? あぁ聖輦船の話かな? 準備はできてるよ」
立ち上がって力こぶを作るようにポーズをとる村紗。セーラー服の袖がずり落ちて白い二の腕が露わになった。
262
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/04/16(日) 22:57:31 ID:obr4KIvs
いや、二の腕はどうでもいい。準備? なんだそれ。
準備に関してはどうやらナズーリンも初耳だったようで村紗に聞き返した。
水蜜「あれ、ナズーリンも聞いてないの? 姐さんが久しぶりに聖輦船を飛ばすって言うからいろいろ点検してたんだよね。結果全部大丈夫だったから問題なく飛ぶよ」
ナズ「聖はやけに思いきりが良いところがあったけどまさかあの時点で決めてたとはね」
男「まってくれ。やっぱり話についていけない」
ナズ「君はこっちの常識をまだ受け入れられてないのかい? 鬼も天狗もいるこの世界で船が飛ばない道理があるかい?」
あるよ。きっとたぶん。
………ないか。
謎の説得力。なんだここでは俺の常識にとらわれてはいけないのか。
もしかしたらこの世界だと月で兎がもちをついてるんじゃないだろうか。
なんてことはさすがにないか。
263
:
<削除>
:<削除>
<削除>
264
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/04/16(日) 23:11:16 ID:obr4KIvs
ナズ「とにかく君の心配はもうない今想定しうる一番安全な方法が可能となった」
ナズ「人間は空を自由にはできないからね。ある程度不安要素はあるけど地上に比べたらないようなものだよ。それに聖たちもいるから大丈夫さ」
いたずらを自慢する子供のような笑顔―――本当さきほどから碌でもない笑顔しかないがそんな笑顔でナズーリンはこう続けた。
ナズ「まぁ。君は大船に乗った気持ちでいいのさ。毘沙門天の加護ぞありってね」
水蜜「確かに大船だけどナズーリンが威張ることでもないよね。寅の意を借るネズミ? 大船のネズミ? まぁネズミはいくらいても山に登れないしむしろ船底に穴あきそうで怖いなぁ」
ナズ「むっ。うるさいなぁ。こんな時ぐらい悦にいってもいいだろう? ただでさえ私は弱いんだから、さっ!」
水蜜「いだぁいっ」
水を差した村紗の足小指をナズーリンが思いっきり踏み抜く。村紗は踏まれた小指を押え大きく数度飛び跳ねた。
申し訳ないが流れ弾が怖いので擁護するつもりはない。
俺だって皆の意を借りてるようなもんだし、と腕を組んで村紗を睨むナズーリンに対して脳内で言い訳をした。
265
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/04/16(日) 23:30:01 ID:obr4KIvs
水蜜「おー痛い。で、私に用ってそれだけ?」
ナズ「そうだよ。だから君は用無しだ。しっしっ」
水蜜「私の扱い悪くない?」
ナズーリンが村紗の腰を両手で廊下の曲がりまで押して行った。村紗は何度か文句を言っていたがナズーリンは一切耳を貸すことなく最後は村紗を蹴りだしていた。
理不尽なところがナズーリンらしいがそれでいいのだろうか。本人曰く弱いらしいのに。
ナズ「ん? なんだいまた考え事かい?」
男「なんでもない。それより寺……船が飛ぶ話だけど」
ナズ「聖に確認をとってくるよ。君はそこらへんで少女の頭でも撫でているといい」
男「言葉に棘がある」
何かした覚えはないのだが、なぜかナズーリンは不機嫌である。
ててととと廊下をかけていくナズーリンを見送って縁側から庭を見る。
妖精も子供も一緒になって遊ぶ風景。
一旦の平和がそこにあった。
266
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/04/17(月) 16:32:06 ID:P2CxT.7g
それはそうだが、一旦でしかないという……
267
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/04/18(火) 22:45:37 ID:uVQoZB/o
だよなぁ・・・(泣)
268
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/04/20(木) 13:42:03 ID:vZZgShn.
紫のとこの男が死んだのはいつだ?
270
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/04/29(土) 10:41:35 ID:ws7IXqpc
乙です
271
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 12:55:17 ID:sH0k4KCw
白蓮「捕まえてきました」
文「これはどういう状況なのですか!?」
その日の夜。夕食の場に聖さんがいないと少し騒ぎになっていた。
星さんも誰も聖さんを見ていない。寺の外に出て行ったところも誰も見ていないという。
混乱する皆をナズーリンが「まぁ、聖だし大丈夫だろう」の一言で静め、並べられた夕食の前で全員が待機していた。
ぐるると喉を鳴らす星さん。つまみ食いをするぬえと村紗を止める一輪。おとなしく待つ残り。そんな中黒い羽の生えた女性を聖さんが引きずって帰ってきた。
ナズ「………どんな状況なんだろうね」
272
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 13:07:18 ID:sH0k4KCw
話を聞くと夜空を見上げていたところ見知った鴉天狗が飛んでいたので、ジャンプして捕まえたらしい。
にこにこと笑っている聖さんだがその行動はまさに破天荒である。首根っこをつかまれ引きずられた女性は大きな目を何度も瞬かせこの状況を必死に理解しようとしているらしい。
理解できていないのはこっちも一緒で星さん以外は唖然としている。星さんは料理を見つめて喉を鳴らしていた。
白蓮「確か今、地底に暮らしていると伺っています」
文「あやや、確かにそうですが。なぜあなた方が私を………はっまさか人間達の」
ナズ「それは天地がひっくりかえってもありえないよ。私たちは初志貫徹して妖怪と妖怪の味方の味方だ」
一人合点して顔を真っ青に染めた女性にナズーリンが突っ込む。
男「あの、ところでその人、誰なんです?」
文「人間がいる、やはり―――っ」
ナズ「君のところにだって人間はいるだろうに。ほら確か子供と白衣を着た男がいたはずだ」
一輪「なぜ知ってるの?」
ナズ「………それは今はどうでもいいだろう」
水蜜「あっ、ひとりでこっそり温泉に行ったな!?」
ぬえ「うわっ、卑怯」
ナズ「どうでもいいだろう!?」
273
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 13:35:37 ID:sH0k4KCw
ナズーリンが隠れて温泉に行ったという事実に一輪さん達がざわめいたがナズーリンの一喝でしぶしぶと治まる。
ナズ「こほん。それじゃあ紹介するよ。これは鴉天狗の射命丸 文。天狗のくせに今は地底にいるゴシップ三流記者さ」
文「紹介に悪意がありませんか? えーっとご紹介にあずかりました鴉天狗の射命丸 文です。清く正しくをモットーに皆さんが知りたい情報を伝えるしがない文屋でございます」
ナズ「皆が知りたいことに合わせたゴシップだろうに」
文「………いいですけど別に。それで私が連れてこられた理由をいい加減教えてもらえませんか? 私だって暇ではないのです」
白蓮「一つお願いがありまして、ちょっと座ってお話しましょう」
文「では離していただけませんか。逃げませんから」
白蓮「ダメですよ」
聖さんは射命丸さんを片手で持ち上げて自らのひざに座らせた。そのまま後ろから囁く形で話を続ける。
白蓮「私たちも地底に行こうと思うのですが、その使者になってはいただけませんか。いきなり船でいくというのも失礼ですからね」
文「あ、首筋はダメです、あ、あややっ」
首筋に息がかかるたび射命丸さんが悶える。その後射命丸さんが承認するまで白蓮さんは囁き続けた。
本人は無意識らしいが。
274
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 13:52:08 ID:sH0k4KCw
文「ひとつ聞きたいのですが。いや聞きたいことは山積みですけども」
ようやく開放された射命丸さんが正座をした状態で右手を上げた。
文「貴方達は確か中立、というより不干渉でしたよね。そんな貴方達がなぜ?」
もっともな質問だ。だがその質問に返せる答えがぱっと思い浮かばなかった。
ナズーリンが目をそらし聖さんはニコニコと笑う。帰ってこない返事に射命丸は頬を掻いて続けた。
文「貴方達を連れた結果地底が何かの災禍に巻き込まれる可能性はありますよね。あなた方が逃げるぐらいの何かがあるのですか? さっきは負けて了承してしまいましたが流石にその理由を聞かなければ協力はできませんし場合によっては全力であなた方を阻止します」
文「命に代えても、あの人達を危険にさらすわけにはいかないのです!」
射命丸さんの剣幕に気圧される。彼女の言う事は正論であり、ごまかしたり避けたりはできない。もしそうすればきっと信頼など築けないだろう。
文「答えてください。聖さん。いえ、そこの人間でしょうか」
向けていた視線が聖さんから俺に移る。原因が俺にあると考えているのだろう。たしかにその通りだ。
だが一つ訂正するならば逃げるのではない。救いにいくのだ。だがこんなちっぽけな一人の男が救うといっても説得力は微塵もない。
だが一つ、説得できるとしたらばそれは俺ではない。
男「ついてきて、くれますか」
文「その先に納得できるものがあるのならば」
275
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 14:09:54 ID:sH0k4KCw
縁側にでると子供と妖精の騒ぐ声が聞こえる。楽しそうでなによりだ。
文「子供の声?」
男「ついてきてください。こっちです」
子供達がいる部屋とは真逆の部屋。出来るだけ静かにすごせるようにと選んだこの部屋に寝ている人ならば射命丸さんを説得できる。
おそらく、博打ではあるが。
襖を開けると遠くから聞こえる子供達の声に嬉しそうに耳を傾ける女性。
文「あや、あやや? 保母妖怪さんではないですか」
保母妖怪「! あら、その声は…射命丸様、ですか?」
俺を押しのけて射命丸さんが部屋の中に入る。その際さらに大きく開かれた襖から月の光が入り保母妖怪さんを照らした。
文「すみません。理解できません」
文「腕を切られた同胞を見て私になにを思えと?」
保母妖怪「あの、どうしたのですか?」
男「彼女達の命を救おうとした結果です、座ってください。一から話せば納得しますか?」
文「それが納得できるのなら」
276
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 14:21:53 ID:sH0k4KCw
保母妖怪「未来を知っているのですね」
文「いや、そんな馬鹿な話」
保母妖怪さんはあっさりと俺の話を信じてくれた。射命丸さんは当たり前だがそれに対し困惑。
文「なんで貴方はそう簡単に信じているんですか? 見た感じただの人間ですよこの人。巫女でも科学者でもないただの人間ですよたぶん」
保母妖怪「子供達が貴方を信じていますし、私もなぜか貴方を知っている気がしていたんです」
柔らかく保母妖怪さんが微笑む。その後傷口を労わる様に撫でた。
保母妖怪「私を守ってくれたのですよね。男さん」
男「そんなこと無いです。守れなかった。霊夢みたいにはなれなかった、ですからね」
保母妖怪「頑張りましたね」
保母妖怪「頑張ったんですよね」
277
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 14:34:39 ID:sH0k4KCw
文「ダメです。まだ納得できてないです」
保母妖怪「射命丸様」
文「理論も根拠も結局ないではないですか。記者に大事なのは分析して正しい情報を抽出すること」
文「感情論やなんやでほだされる私ではないのです」
ダメだったか。保母妖怪さんが味方をしてくれるならなんとかなったと思ったんだが。
文「一応聞いておきます。前の世界では私たちはどうなったのですか」
男「死にました。詳しくは知りませんが地底にいた全員が死んでしまったそうです」
男「逃げてないです。逃げるために地底にいくのではないのです。皆を救うために地底に行くんです」
文「ありえません。ありえませんね。こっちには私も鬼も土蜘蛛もさとり妖怪もいるのですよ? 幻想郷の嫌われ者が集まった地底が全滅? ふ、ふふふ。情報が足りなかったみたいですね。そんな骨董無形な」
男「死にます」
文「地底にいる『全員』? 人の神経を逆なでするのもいい加減にしてください、よぉ?」
278
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 14:49:56 ID:sH0k4KCw
肩がつかまれる。強く痛いほどに握り締められ、大きく見開かれた目で俺をにらむ。
文「あの人が死んでたまりますか!! あの人が!!」
保母妖怪「射命丸さんっ」
保母妖怪さんが這ってきて射命丸さんを止めようとする。その姿を見て射命丸さんは深く息を吐きながら肩から手をどけた。
文「………すいません。ただやはり信用できそうにないです。ただし保母妖怪さんをここにおいて置くのも気がひけます。子供達も妖精たちもいますからね」
文「聖 白蓮と星 寅丸の両名が私たちに隷属する。その条件付なら認めましょう」
男「無茶を言いますね。俺がここでそれを飲んだところでほかが納得するとは思えませんが」
文「他が納得するかはどうでもいいんです。納得するでしょう? あの二人なら」
確かにその通りだ。聖さんなら受け入れる。星さんも受け入れるだろう。だがそんな条件を飲むわけにはいかない。ひいてもらっている手を鎖につなぐわけにはいかないんだ。
星「構いませんよ」
葛藤している俺の後ろから声がかかった。いつの間にかたっている星さんが俺の頭に手を当て撫でる。
星「しかし、私だけでいいでしょう?」
男「ダメですよ、星さん。そんなこと」
星「いいではないですか。時には皆を助けさせてください。私の意味を遂げさせてくださいな」
くしゃくしゃと星さんが俺の頭を撫で反論を封ずる。
279
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 18:38:14 ID:sH0k4KCw
文「分かりました。不躾ですみませんね」
星「いいのです。私も貴方の立場は分かってるつもりですから」
文「時間ですが明日の明朝にここを出ます。私が先導しますがそちら見張りを何人かつけてください。流石に目立ちますから」
星「私は向こうでどうすればいいのですか?」
文「言い方は悪いですが人質です。おとなしくしてくれれば何も言いません」
二人の間で次々となされていく決まりごとや予定。それに口が挟めず俺は軽く項垂れた。
自分の思うこと全てがその通りに行くわけがない。
神も仏も誰も彼も俺を特別扱いしてくれるわけじゃない。
いくら未来を知っているからといっても小説の主人公ほど完全無欠にはなれない。
なろうと努力はしているといっても結果が出なければそれは言い訳にしかならないのではないだろうか。
もし、もし俺がもっと強くて特別で、未来は知らなくても皆を守れるほどの力を持っていればもっと楽だったのだろう。そしたら星さんだって。保母妖怪さんだって。
だがそうではなく、犠牲が一人増えた。
次の犠牲は―――誰なんだろう。
280
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 18:58:52 ID:sH0k4KCw
早朝。まだ日も顔を見せてない時間にナズーリンに起こされる。
遠くの音を聞くと幾人かが慌しく駆けていることが分かった。
寝床から這い出るといつにもまして冷たい空気。眠気は一瞬で吹き飛ばされた。
ナズ「準備をしたまえ、といっても君になんの期待もしていないから彼女、保母妖怪のところで労わってあげるといい。出発は少しゆれるからね」
それだけ行ってナズーリンも慌しく部屋を出て行った。残された俺は急いで服を着替え外へ出る。
水蜜「マスト立ててー」
一輪「雲山よろしく」
そのとき俺は目を疑った。
今まで見ていた寺がなくなっていた。いや、寺はある。しかし寺の中央に大きく刺されたマスト。
これを見て誰が寺だと思うのだろうか。
281
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 19:30:05 ID:sH0k4KCw
々と張られていく帆。並べられた巨大なオール。それはまだいい。
地面が無い。昨日まで土があり、子供達が走り回っていたところにあるのは木板。
遠くに見えるのが海ではなく変わらぬ森だということに安心はしたけどこれからどうなるんだ。
やっぱり飛ぶのか。飛ぶんだろうなぁ。
ナズーリンの言っていた出発するときには揺れるということ。つまりやっぱり飛ぶのか。
なら早く保母妖怪さんのところに行ったほうがいいだろう。
慌しい空気の中に身を投じて保母妖怪さんの部屋へ向かう。
その途中大部屋から弾むような寝息が聞こえて少し笑う。
なんだかさわやかな朝だ。
このさわやかな気分が続けばいいのだが。
なんて後ろ向きな考えはやめよう。
場所も変わって心機一転、昨日のことは悔いはしたが引き摺れば進歩はない。
それが昨日俯いた俺に対し星さんが言ったことだ
282
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 19:51:26 ID:sH0k4KCw
保母妖怪さんは静かに寝ていて、痛みに呻いてないことに安心する。
起こすわけにはいかないので中央に敷かれた布団にゆっくりと近寄る。
出発に備えて対処できる距離。すなわち布団のすぐ傍。
規則正しく上下する胸から視線を動かすと安らかな寝顔。射命丸さんよりは年上に見えるが聞いたところによると年下らしい。というか射命丸さんは天狗の中でもかなり年上のほうらしい。
そのことに言及すると嫌な予感がしたので言わなかったが。
文さんほど華やかではないがしっかり整った顔。地味な印象は受けたが子供と一緒にいるときの笑顔はかなりのものだ。
きっと将来いいお嫁さんになるのだろうなと下世話な意見を浮かべる。
………ぬえと仲直りできないかなぁ。
仲たがいしたわけではないけども。
283
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 20:04:42 ID:sH0k4KCw
っと、そんなことは今はどうでもいい。
いつ出発しても良い様に構えていないとな、と思っていると床から微かに振動が伝わった。
飛ぶのだろう。保母妖怪さんが転げないように布団の上から抑える。
保母妖怪「あの、なにを?」
男「今から―――」
何か勘違いされている気がする、せめて弁解をと思った瞬間にひときわ大きな振動。
地響きを立て体が左右に揺さぶられる。その直後に気持ちの悪い浮遊感が襲ってきた。
保母妖怪「あぁ、そうなんですね」
耐える俺と違って平気な顔をして納得している保母妖怪さん。が、振動が傷に響いたらしく顔をゆがめた。
男「大丈夫ですか? 保母妖怪さん」
保母妖怪「えぇ、なんとか。それより男さんのほうが辛そうですが」
男「大丈夫です。平気です」
とは言うものの血液が揺さぶられる感覚。貧血のような気持ち悪さに襲われている俺はちゃんと笑えているのだろうか。
284
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 20:43:35 ID:sH0k4KCw
「よぉそろー!!」
振動がある程度収まり浮遊感もある程度軽くなる。
どうやら離陸には成功したらしい。布団を押さえている手をどけ、座ったまま背伸びをする。
保母妖怪「子供達は大丈夫でしょうか」
心配そうな保母妖怪さんの声の後に聞こえる喝采に保母妖怪さんは顔を綻ばせた。
保母妖怪「まだ満足に飛べない子がほとんどですから楽しいのでしょうね」
保母妖怪「男さんも見てきたらどうですか?」
男「すいません、俺高いところ苦手なんで」
主に幽香のせいで。
とりあえず久々にゆっくりできそうだからゆっくりさせていただこう。
まだ朝日も出ていない。まどろむには十分で保母妖怪さんの横で座ったまま目をつぶる。
久しぶりに良い夢が見れそうな、なんだかそんな気が―――
285
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/05/01(月) 20:51:43 ID:TuceY1Fw
前回とは違う展開で面白い。
286
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 20:52:33 ID:sH0k4KCw
???「お久しぶりですね」
気がついたら闇の中にいた。
そしていつものように目の前に暗闇なのになぜか見える鱗の人。
男「またあんたか」
???「はい、いつも苦労をおかけします」
男「って思うならもう少し情報をくれ」
???「これで聖 白蓮たちの命は救われましたね。これが霊夢のためになればいいのですが」
男「話聞いてる?」
???「! もう、ダメですか」
男「ねぇ」
???「引き続き頑張ってください。貴方だけが頼りなのです―――」
男「おい」
287
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 21:01:50 ID:sH0k4KCw
男「何か教えてくれよ」
何か教えてくれってなんだよ」
どうやら寝ぼけているらしい。周りを見渡すと少し驚いた顔でこっちを見ている保母妖怪さん。
保母妖怪「なんだかうなされていましたが」
男「悪い夢、ではなかったはずなんですけど。良い夢でなかった気もするけど」
つまり普通の夢。覚えていない夢の感想なんてそんなもんだ。
男「着きました?」
保母妖怪「まだみたいですね。見てきてはいかがですか?」
思い出にある空はいつも吹っ飛ぶような速度で後ろに消えていく。
思い出すだけで寒気がするがもうそろそろその思い出を書き直してもいい頃だろう。
男「そうですね。言ってきます」
保母妖怪「あのっ」
男「? なんですか?」
保母妖怪「私も連れていってくれませんか?」
288
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/05/01(月) 21:18:19 ID:sH0k4KCw
外に出ると強い風。部屋の中では分からないのが不思議なほどの風だった。
ナズ「はいはい、子供は部屋にって、男かい」
男「ナズーリン。あとどれくらいなんだ?」
ナズ「一時間もかからないよ。だけど何回か妖怪に襲われているから部屋に戻りなよ」
男「他の人はどこに?」
ナズ「村紗は操舵、射命丸と聖はびっくりして襲い掛かってくる妖怪の迎撃。私は見回りだよ。たまに妖精が逃げ出すからね」
ナズ「そうだ、君はどうせ暇だろう? 妖精たちの相手をしててくれないか?」
と決め付けられ仕事を与えられる、確かに暇だから構わないが。
出来ることはする。出来ることがすくないからやる。
男「了解です」
おどけて敬礼してみるとナズーリンは満足そうな顔をして去っていった。
外見が子供に近いからそんな仕草も可愛らし………くはないな、やっぱり。
289
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/05/04(木) 19:07:02 ID:QDyZkuPE
乙です!
290
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/05/06(土) 23:26:48 ID:nhxzyPqI
おつ!
291
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/05/07(日) 00:21:41 ID:OM9pv.2k
乙!
292
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/05/09(火) 01:24:57 ID:ts7eQVt2
頑張ってくれ
293
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/05/30(火) 19:39:09 ID:5Kc/IUx6
やっぱ面白いなあ
294
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/06/02(金) 14:46:42 ID:qGWYXiCc
星「いやはや」
部屋に入ると星さんの声がした。しかし声はしても姿は見えない。
その代わりにあるのが子供と妖精でつくられた団子。何かに子供達が群がっていた。
多分、おそらく、いや確実にあの子供達の中にいるのは星さんだろう。子供達の声の合間を縫って困った声が聞こえてくる。
男「おい、あれなんだ?」
犬耳娘「ひゃい!?」
子供達の中に混ざらず一人で人形遊びしていた犬耳娘に事情を聞く。
話によると星さんが用意したおもちゃに子供達が群がっているらしい。
男「犬耳娘はいいのか?」
犬耳娘「わ、わたしはこれがあるから」
そういって汚れた、いや年季の入った人形の頭を撫でる。ここまでボロボロなのに大切にしているということはなんらかの事情があるのだろう。
男「可愛い人形だな。さて、星さん助けてくるかな」
犬耳娘「が、頑張って」
応援してくれる犬耳娘に力こぶをつくって笑って見せるがさてあれだけの子供と妖精をどうすればいいのかは分からない。
295
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/06/02(金) 14:56:17 ID:qGWYXiCc
男「大丈夫ですか星さん」
星「その声は男さんですか。いや子供達も暇でしょうと思っておもちゃを持ち込んだのが運の尽きでしたね。子供達の数に対して用意したおもちゃの数が足りなかったのです。結果おもちゃを出せといわれこうなってます」
なんてたちの悪い。子供達の喧騒を聞いてみると確かにおもちゃという単語が拾える。
ねこにマタタビ。子供におもちゃ。効果は抜群だけど抜群すぎる。デパートなんかでおもちゃが欲しくて暴れまわる子供もいるぐらいだからなぁ。
男「ほーら、星さんが困ってるだろう」
チルノ「うわっ。何をするんだー!」
手を突っ込んで適当に引っこ抜くと子供というには大きな体。チルノだった。
男「なんでお前まで混ざってるんだよ」
チルノ「あたいだっておもちゃが欲しい」
なぜか誇らしげにそう言うチルノにでこピンを一発かます。
チルノ「ふぎゃっ。生意気だぞ人間!」
間髪いれずにもう一発。
男「星さんにいくら言ってもおもちゃは出てこないだろ。ほらお前ら解散解散」
手当たりしだいにでこピンをかますと子供達はわらわらと散っていく。ようやく見えた星さんの姿は髪も服も乱れ、神様たる威厳はどこにもなかった。
星「助かりました。ありがとうございます」
296
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/06/02(金) 15:15:21 ID:qGWYXiCc
チルノ「うー。あたいだっておもちゃが欲しかった」
大妖精「チルノちゃん。しかたないよ。向こうで私と遊ぼう?」
星「………施せば施されなかった人が不平等になる。私もまだまだですね」
男「でもその親切に喜ぶ人がいることは確かですよ。皆そろって平等の不幸よりは誰かを幸せに出来たほうがいいんじゃないですかね」
俺自身いろいろな人に助けてもらったんだ。その親切が無かったほうがいいだなんて思えない。確かに不平等と思う人がいるかもしれないが確かに俺は救われている。
なんてエゴイズムあふれた考えになるのだろうか。神も仏も信じてこなかった俺にその答えは見つかりそうにない。
星「おもちゃはもう無いですし、今私が持っているものといえば」
星さんが腕を小刻みに振るうと、そのたび何かが袖口から転がり落ちてきた。その小さく輝くものは―――
星「宝石ぐらいですね」
チルノ「うおーっ、すげーっ。大ちゃんこれすっごいピカピカしてるぞ!!」
―――ルビーにサファイアその他もろもろ。透き通ったあれは水晶かダイアか。
どちらにせよ普段お目にかかることがないものたちでチルノの声に引かれて子供達がなんだなんだと集まってくる。
星「………あれ?」
不思議そうに首をかしげる星さん。まるで宝石がただの石であるかのようだ。いや、実際石ころで価値を決めたのは人間ではあるのだが。
その通りで子供達は転がる宝石を拾って遊び始める。転がしたり眺めたりぶつけたり。
297
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/06/02(金) 15:24:19 ID:qGWYXiCc
男「子供達は光るものが好きですからね」
俺だって好きだ。主に価値が。
星「子供達が喜ぶのなら良い事だったのでしょう」
子供にとっては遊べるもの全てがおもちゃでなんて平和な世界なのだろう。
男「えぇ。そうですね」
何を施せばいいかなんてこっちが考えてるほど向こうは期待していない。いやそもそも基準が違うものに何を送ればいいかだなんて悩むほうが無意味でいざやってみれば成功することも多くある。なんて人生を分かったような考えを浮かべ一人笑う。
その価値基準の間を埋めていければ世界は平和にはなるのだろうけどそれは到底無理なことで世界はいろいろな視点に溢れているから楽しくて面白くて悲しくて非情。
幻想郷はそんな全てを受け入れるから残酷で―――
ずきり
頭が痛むと同時に幻聴。
かちりかちりと時計が進むような音。
声
足音
風の音
霊夢の声
298
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/06/02(金) 15:35:20 ID:qGWYXiCc
―ねぇ、本当なの?
――えぇ、本当よ。昨日からずっと―――
――――う、嘘だっ―――ちゃんの嘘つきっ――
――――――行ってあげなさいよ
―――あ―――待ちなさいよっ―――ねぇっ―――
――おーい――たんだ?今――が走って―――けど。
―知らな――ん――ばか――
―――それより―――もいいか?―――
――あげて――喜ぶから―――
――――でも本当に―――――信じられない
―――だって――が言ってたもの――当よ
―――あいつ――つきだし、信じられ――――たくねぇな
――まぁね―――探し―――お願――見て――
母さんを―――――
299
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/06/02(金) 15:47:02 ID:qGWYXiCc
星「男さん?」
星さんがいる。
畳の部屋に子供達と星さんがいる。
男「あ――はい」
星「大丈夫ですか。いきなり動かなくなってましたけど」
男「大丈夫です」
とはいうものの頭の整理が追いついていない。
俺はさっきまで木々の木漏れ日の下で霊夢を見てた。
霊夢と………………
痛い痛い痛い痛い。思い出そうとすると頭が痛い。
良く出来た白昼夢に脳が蝕まれているようで、脳の奥底で誰かがのこぎりを振り回しているかのような強烈な痛み。
痛みに思わず眼球が明後日の方向へ向き呼吸が止まる。
大妖精「ひぃっ」
考えるのをやめ、ようやく痛みが引く。
なんだったのかは分からないがどうやら触れないほうがいいらしい。
300
:
ぬえ
◆ufIVXIVlPg
:2017/06/02(金) 15:55:03 ID:qGWYXiCc
星「本当に大丈夫ですか? 大丈夫そうには見えないのですが」
男「人間は……空を飛べませんからそのせいです………気圧が」
変に返した言い訳に星さんは良くわからないまま頷く。
何度か深呼吸をし無理やり体を落ち着ける。もう痛みは嘘のように消えていた。
ナズ「もうすぐ着くから中にいるやつは皆何かに掴まりなよー」
外からナズーリンの注意が聞こえる。その声が聞こえた子供達から近くにいる大人に駆け寄り抱きついてきた。つまり俺と星さんに。
男「あぶっ」
星「はぁ…」
流石妖怪の子。抱きついてくる力は半端じゃなくいろんな骨が軋みをあげる。頭痛に比べればだいぶマシだけどそれでも
痛い痛い痛い痛い痛い痛い
301
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/06/02(金) 20:08:09 ID:7djFoOf2
物語が進んでいてうれしい
302
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/06/02(金) 21:43:53 ID:bo6Htd/U
和みますねぇ
303
:
以下、名無しが深夜にお送りします
:2017/06/02(金) 22:39:24 ID:ATy9nIn2
http://bit.ly/2q4mPE6
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