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これを魔女の九九というようです
1
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 09:59:57 ID:SOhsxYKs0
汝、会得せよ。
.
2
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:00:40 ID:SOhsxYKs0
一を十と成せ
.
3
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:01:35 ID:SOhsxYKs0
じぃじく、じぃじくと切れかけの白い照明が悲鳴をあげる。
小煩いその声は、真夜中のトンネル内に静かに響いた。
ほんの百数メートルほどの短いトンネル。
車がやっと二台すれ違えるほどの狭いトンネル。
ああ、息苦しい。
思わず僕は溜め息を吐きたくなった。
トンネルの上はちょっとした小山になっていて、都市部へと通じる電鉄の線路が張り巡らされている。
山ばかりのこの町に、初めてまともな交通機関が出来た時には皆大喜びでそれを祝ったという。
しかし間もなくしてそれは苦情へと変わっていった。
一日に通る電車の本数が多すぎたのだ。
今まで電車がなかった町、交通機関といえば市営バスに自家用車、それから自転車と徒歩くらいなもの。
結果開かずの踏み切りによってあちこちの道が隔たれ、大渋滞が発生してしまった。
こうなると開通祝いなどと言ってられず、電鉄は慌てて線路の立体化に励んだのだという。
そして唯一踏み切りもなく反対側に通れる道がこのトンネルだったというわけだ。
若者の肝試しくらいにしか使われていないトンネルにも、役に立った時代はあったのだ。
で、さっきからどうしてこんな話をしているのかというと僕はここから動けないのであった。
いきなり轢き逃げされたのだ。
背後から、ドンと一息に。
おかげさまで手足はあらぬ方向に折れ曲がり、首はそっぽを向いていた。
よれよれのスーツは血を吸ってさぞかし重くなっているだろう。
まったくもって馬鹿らしい話だが、きっとこうだ。
季節外れの肝試しに来た誰かが、僕を幽霊と勘違いしたのだろう。
残業帰りで疲れきっている僕を、わざわざアクセル全開で!
悪意しか感じられない仕業である。
馬鹿だ、本当に馬鹿だ。
オカルトなど信じない主義の僕からすると、よく見てから轢けと言いたくなるくらいの馬鹿だ。
ああまったく、腹に据えかねる。
4
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:02:37 ID:SOhsxYKs0
(´・_ゝ・`)「…………」
側溝に積もった落ち葉しか眺めるものがないというのは実に退屈であった。
いったい何時間こうしているのだろう。
朝になるまで誰にも見つけてもらえないんだろうか。
昼間ですら人通りが少ないのに?
いやでもきっと誰かが見つけてくれるだろう、ほら多分犬の散歩してる人とか。
……待てよ、一昨日から近所で工事の看板を見かけたな。
トンネルを抜けてすぐそこで、水道管だかガス管の工事とかなんとか。
もしかして皆さん、迂回してここのトンネルを通らないんじゃないか?
出勤するにしろ帰ってくるにしろ、工事してる場面を見たことがなかったもんだからすっかり失念していた。
なんてこったい、ずっとこのままだっていうのか?
たしか工事が終わるの二ヶ月後だったぞ。
二ヶ月もこんなところで腐っていられるかよ。
物理的にも、精神的にも。
じぃじく、じぃじく。
ああ、この点滅している照明が鬱陶しい。
というかなぜ僕は成仏しないんだ。
そんなに日頃の行いが悪かったのか?
いつも駅前のスーパーで見切り品の弁当を買っているからか?
あまつさえ見切り品のシールが貼られていない弁当を差し出して、貼ってくれと店員に催促したのがいけないのか?
というか今日の弁当はカキフライだったんだぞ。
給料日だから奮発したっていうのにどうして一口も食べられぬまま轢き逃げになんかあうんだ。
なんでだ。
ふつふつと怒りが湧いてくる。
どうしてこんなことになってしまったのだろう、そればかりが頭の中を駆け巡った。
5
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:03:56 ID:SOhsxYKs0
なんて、理不尽なのだろう。
理不尽だ!と叫びたくなったその時であった。
「見つけた」
不釣り合いな少女の声がした。
僕が死んでいる事などまったくどうでも良さそうな、冷徹で気まぐれさを孕んだ声だった。
それを聞き、はたと冷静になった。
こんな時間にいったい誰が、ここに?
さり、さり、と歩く音。
少女は問う。
「これ、あなたのお夕飯だったの?」
そうだ、カキフライを食べながらビールでも飲もうとしたんだ。
糖質控えめの発泡酒だけれども。
口がきけたなら、僕はそう返していただろう。
しかし生憎それはできない話であった。
「首、折れちゃってるのね」
視界が少し揺れた。
どうやら少女がしゃがみこみ、僕の首を触ったようだった。
おそらく血塗れであろうに、触るのに抵抗はないらしい。
肝っ玉が据わっているなと思った。
6
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:04:44 ID:SOhsxYKs0
再び視界が揺れ、少女の手は僕の体から離れていったようだった。
しかし代わりに今度はボソボソとした声が聞こえてきた。
「 、 、 」
一体何を話しているのだろうか。
聞き取ろうとしたが、それは無理だった。
耳から脳へと介す過程で、霧散してしまうような感じがしたのだ。
(´・_ゝ・`)「……………」
ひんやりとした熱が足首を包んでいた。
今までなんの感覚もなかったというのに。
そのうち、ひくりと、喉がなった。
喉を通り、水が胃へと落ちていく。
(´・_ゝ・`)「あ……?」
声が出た!
(´・_ゝ・`)「えっ、えぇ?」
掠れた声と息が口から漏れていく。
「で、できた……!」
安心したような、驚くような声。
状況が飲み込めなかった。
無意識に僕はねじ切れそうになっていた首を動かし、その声の主を探した。
7
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:05:44 ID:SOhsxYKs0
(´・_ゝ・`)「うわ、」
動いてしまった。
まるで生きているかのように。
さっきまで死んでいたというのに!
ものすごい衝撃であった。
僕は混乱しつつ、思い出したかのように瞬きをした。
乾きつつあった眼球に、ほんの少し潤いが戻る。
ひどく目がしばしばする。
思わず目薬が欲しくなりつつも、何度も瞬きをするうちにそれは和らいでいった。
さて、ようやく起き上がった僕はようやく少女と対面することができた。
彼女はなぜか僕の足首を握りしめ、じっとこちらの様子を伺っていた。
年は十六才くらいだろうか。
長い黒髪に混ざる赤い髪の毛は、わざと染めたものなのだろうか。
血のように赤いそれは、不思議と似合っていた。
('、`*川「こんばんは、死体さん」
(´・_ゝ・`)「死体じゃないよ。いや、死んでたけどさ」
自分でも訳のわからないことを口走りながら、僕は息を吸った。
意識して呼吸をしないと、忘れてしまうような気がしたのだ。
現に少し息苦しくて、少し噎せてしまった。
('、`*川「大丈夫?」
(´・_ゝ・`)「お気遣いなく」
咳払いを一つして、ようやくそれは治まった。
8
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:07:11 ID:SOhsxYKs0
(´・_ゝ・`)「いったいどんな魔法を使ったんだ?」
からかうように言うと、少女の眉がつり上がった。
驚いたようだった。
('、`*川「どうして魔法だとわかったの?」
(´・_ゝ・`)「え?冗談だったんだけど」
ほんの一瞬、間が空く。
肯定された気持ちになり、僕はどう反応しようか思案した。
今度は少女が咳払いをした。
('、`*川「自己紹介がまだだったわね」
(´・_ゝ・`)「名前よりも気になることが多すぎるんだけど」
('、`*川「それは順を追って説明するわ。わたしは魔女のペニサス」
(´・_ゝ・`)「魔女」
いきなりファンタジーな言葉が出てきた。
面食らう僕に構わずペニサスこと魔女は滔々と喋り出した。
曰く彼女は魔女であるが、あまりにも未熟で師匠に半人前以下の扱いをされていること。
どうにか認めてもらうために独学でまほうの勉強をしていること。
箔をつけるために使い魔を作ろうと思ったこと。
使い魔を探すために眠い目をこすって夜な夜な街に繰り出していたこと。
今日、どこかで人が死ぬ予感がしたこと。
それを信じ、探していたら死んでいた僕を見つけたこと。
9
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:08:06 ID:SOhsxYKs0
('、`*川「……というわけなんだけど、わたしの使い魔にならない?死体さん」
(´・_ゝ・`)「死体さんっていうの止めてくれないかなぁ」
などと返しながら、僕はペニサスの話を反芻した。
とんでもない事に巻き込まれてしまった、というのが正直な感想であった。
普通ならありえないこととして一蹴しているが、現に僕は蘇っている。
やはりこれは彼女の言う通り魔法のおかげなのであろう。
しかし生き返ったところでどうするのだろう。
僕は途方に暮れていた。
そもそも僕は生前の仕事にも人間関係にも、疲れ切っていた。
毎日同じことの繰り返しで、うんざりしながら生きていた。
カキフライが食べられなかったくらいしか未練がないような人間だ。
生き返ったところで楽しみを見出せるような希望もなにもない。
ならもう一度死んでしまっても、別にいいんじゃなかろうか。
そう結論付けて、断ろうとした時だった。
('、`*川「使い魔になるの、嫌かしら?」
(´・_ゝ・`)「嫌というか、なんというかねえ」
('、`*川「あなた見るからにおじさんだもの、こんな若い娘にパシられるの癪に触るんでしょ?」
(´・_ゝ・`)「癪に触るんじゃなくて……」
('、`*川「うーんじゃあこうしましょ。そうしたらわたしがあなたを殺そうとした犯人を見つけるわ!復讐の協力もする!」
(´・_ゝ・`)「いやそんな復讐なんて、」
と断りかけて気付く。
10
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:10:11 ID:SOhsxYKs0
僕を殺そうとした犯人……?
('、`*川「あなた、殺されたのよ。これは事故じゃないわ」
ペニサスの視線と言葉が僕を貫く。
おそらく今の僕はひどく間抜けな顔をしているだろう。
('、`*川「よく思い出して、轢かれた時のことを」
(´・_ゝ・`)「……………………」
閑静なトンネルを歩く僕。
背後からうなるようなエンジンの音がする。
こんな時間に車が通るだなんて珍しいと思っていた。
音はどんどん近付いてくる。
一度も速度を落とさずに、むしろより加速をした。
僕を狙うように。
そして––––。
('、`*川「そもそもふつー幽霊だったとしても、それを轢こうとする人なんかいると思う?」
(´・_ゝ・`)「いないかな?」
('、`*川「轢いたら祟られそうじゃない、それこそ」
(´・_ゝ・`)「一理ある」
('、`*川「というか今は春だし」
11
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:11:45 ID:SOhsxYKs0
肝試しには早すぎるわ、などと言いながらペニサスはカーディガンのポケットを探った。
そこから出てきたのは個包の飴だった。
('、`*川「食べる?」
(´・_ゝ・`)「ああ、うん」
ぼんやりと返事をして、僕は飴を受け取った。
白い不透明な包みにくるまったそれは、なんだか怪しいものに見えた。
ちらりとペニサスを伺い見ると、彼女は器用に片手と口でそれを広げ、中の飴を頬張った。
(´・_ゝ・`)「両手を使えばいいのに」
未だ掴まれている僕の足首を眺めながら、僕もそれを頬張った。
ひどい酸味と苦味がして、思いっきり眉間に皺が寄る。
はっきり言ってまずかった。
('、`*川「こうして直接触ってないと、魔法が消えちゃうんだもの」
つまり彼女が手放せば、もう一回死んでしまうということだ。
(´・_ゝ・`)「じゃあ僕は君に触れられていないとこれからは生きていけないのか?」
('、`*川「使い魔になると魔女と精神的な結びつきが強くなるから、それで魔法が継続して掛かるようになるらしいわよ」
たぶん、と語尾に付け加えると同時に、ペニサスは飴を噛み砕いた。
僕の飴は一向に口の中で溶けず、苦々しい気持ちになった。
12
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:13:42 ID:SOhsxYKs0
(´・_ゝ・`)「……君は魔女になってどうしたいの?」
面接官のような言葉を思わず投げ掛ける。
('、`*川「どうもなにも、魔女になりたいの」
(´・_ゝ・`)「なるのが夢なの?」
('、`*川「そうねえ、そうなんだと思うわ」
(´・_ゝ・`)「魔女になった後のことって考えてないのか」
('、`*川「そんな先のこと、わかんないわよ」
案外無鉄砲であった、幼かった。
しかし同時に、そこまで夢中になれるものがある彼女が眩しく見えた。
ペニサスは、どこへ行くのだろうか。
(´・_ゝ・`)「なってもいいよ」
('、`*川「え?」
(´・_ゝ・`)「使い魔になってもいい、復讐とかはどうでもいいけど」
('、`*川「……犯人とか気にならないの?多分頑張って魔法使えば分かるわよ!」
(´・_ゝ・`)「ふむ」
もし仮に、本当に殺されたとするならば、と僕は考える。
別にやりたいことがあったわけでもなく、失ってもなにも惜しいと思うもののない人生であった。
しかし、そんな人生を送ってきた僕に明確な殺意を抱く人物って、一体どんな奴なのだろうか。
こう言うのもあれだが、本当に当たり障りのない、凪いだ人生だった。
恨みなんぞ抱かれるとは思っていなかったから、気になって仕方がなかった。
13
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:14:47 ID:SOhsxYKs0
(´・_ゝ・`)「では犯人探しだけは手伝ってくれ」
するとペニサスはニヤリと笑って、こう言った。
('、`*川「契約成立ね」
足首から手を離し、ペニサスは問う。
('、`*川「あなた、名前は?」
(´・_ゝ・`)「盛岡だ」
すると少し怪訝そうな顔をした。
('、`*川「下の名前は?」
(´・_ゝ・`)「ああ……、デミタス。デミタスって言うんだ」
下の名前を言うのはずいぶん久しぶりであった。
会社では苗字か部長としか呼ばれないし、友人などいなかった。
('、`*川「よろしくね、デミタス」
(´・_ゝ・`)「よろしく、ペニサス君」
('、`*川「……そこって様付けとかじゃないの?」
(´・_ゝ・`)「様付けしたほうがおかしいんじゃないかな」
('、`*川「どーせ半人前以下ですよ」
14
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:15:48 ID:SOhsxYKs0
くるりと背を向け、ペニサスは歩き出した。
慌てて立ち上がり、僕は後を追う。
('、`*川「もう少ししたら夜が明けちゃうわね」
欠伸をし、ペニサスはまた飴を口に放り込んだ。
('、`*川「家に帰ったらまず寝なきゃ……」
(´・_ゝ・`)「家までどれくらい掛かるんだ?」
('、`*川「んー、ゆっくり漕いだら小一時間かかるかしら」
(´・_ゝ・`)「漕いだら?」
('、`*川「ん」
とろんとした目つきのペニサスが指差した先には、ママチャリが一台停まっていた。
(´・_ゝ・`)「箒じゃないのか……」
('、`*川「まだ飛べないんだもの」
自転車の鍵を突き出し、彼女は悔しそうにそう言った。
(´・_ゝ・`)「それで、何処まで行けばいいんだい?」
解錠し、スタンドをあげてサドルに跨った。
彼女は眠そうに目を擦りながら荷台に座り、こういった。
15
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:16:41 ID:SOhsxYKs0
('、`*川「とりあえず日府の図書館まで行って」
それきり黙ってしまい、すうすうと寝息が聞こえてきた。
(´・_ゝ・`)「やれやれ」
思わずそう漏らし、僕は自転車を漕ぎ始めた。
自転車に乗るのは久しぶりであった。
腰に回された手が緩みはしないかと気が気で仕方なかったが、案外しっかりそれは結ばれているようだった。
(´・_ゝ・`)(日府の図書館に着いたら起こそう)
それまで人とすれ違わないといいが、と僕は心配した。
空の彼方は微かに白み始めていた。
16
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:17:32 ID:SOhsxYKs0
一を十と成せ 了
.
17
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:18:23 ID:SOhsxYKs0
登場人物紹介
(´・_ゝ・`) 盛岡 デミタス
一応部長さん。死因は頚椎骨折
('、`*川 ペニサス
一応魔女さん。カキフライは嫌い
カキフライ
デミタスの好物。福神漬け入りのマヨネーズと中濃ソースをかけて食べると美味
18
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 10:49:37 ID:Uh3c9lwA0
乙
期待してる
19
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 11:09:29 ID:FOjWt1fcO
乙!
面白いな。続きも期待!
20
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 11:19:53 ID:yv9dV3a60
乙、なにこれおもしろい
21
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 11:46:16 ID:JGTR3MQw0
この文体好き
22
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 12:13:39 ID:Dh96t07.0
乙、カキフライ食べたくなってきた
23
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 18:01:22 ID:H.1twdY20
これは期待
乙乙
24
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 19:51:13 ID:jNiUVDNE0
乙カキフライ
25
:
名も無きAAのようです
:2015/04/28(火) 23:13:11 ID:6tkjfzTs0
乙
26
:
名も無きAAのようです
:2015/04/29(水) 05:33:15 ID:gqgV7.Q.0
いいんでないの?
27
:
名も無きAAのようです
:2015/04/29(水) 10:43:48 ID:KVKQJUaE0
乙乙、この気だるげな雰囲気がええなぁ!
ひんやりした熱って表現にセンス感じた。
次回も楽しみにしてる
28
:
名も無きAAのようです
:2015/04/29(水) 11:22:15 ID:BM7x6hGY0
福神漬け入りのマヨネーズが気になるカキフライ食いたい乙
29
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:06:34 ID:q9TyRmLg0
二を去るにまかせよ
.
30
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:08:29 ID:q9TyRmLg0
案外人というものは何処でも眠れるものだな、と僕は初めて知った。
何度か立ち止まり、道を聞くたびにペニサスは億劫そうにその目を開けた。
そうしてむにゃむにゃと寝言まじりに次の到達点を告げ、僕は放り出されたそのパズルを解くのに必死になっていた。
要するに、ずいぶん時間が掛かったということだ。
着いた頃には小一時間どころかその倍の時間は経ってしまっていた。
彼女の家、もとい正しくは師匠の家は高級ベッドタウンの一角にあった。
日当たり良好、二階建ての一軒家。
ただし外観はさっぱりわからなかった。
家を取り囲むように藤の木がぐるりと天然物の塀を作り出していて、要塞のような威圧感を放っていた。
枝垂れた紫は、どこか毒々しいものに見えて心穏やかになることを許してくれなかった。
そして、その壁の向こうに見える家もなんだかよくわからない植物に覆われていた。
家ではなく怪物の住処に来た気分だった。
(´・_ゝ・`)「ペニサス君」
勝手に入るのもまずいだろうと僕は彼女をたたき起こした。
('、`*川「ん……」
とろんとした眼は何回かの瞬きを経て、はっきりとした光を得た。
('、`*川「ついたのね」
ありがとう、と言いながらペニサスは慣れた手つきで門扉を開けた。
(´・_ゝ・`)「自転車は?」
('、`*川「そのまま持ち上げて庭に持って来ちゃって」
31
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:09:53 ID:q9TyRmLg0
短い階段をとんとんと駆け上りながら、ペニサスは言う。
そんなに重いものではなかったが、わざわざこの階段を上り下りするのは不便だったに違いない。
何度かペダルに脛を蹴られながら、僕はそう思った。
中に入ると、ますます家の異様さが際立った。
家に絡みついていたのは、木香薔薇と羽衣素馨であった。
柔らかいクリーム色の花と、強い芳香を放つ薄桃色の花が押し合いへし合い咲く様は浮世離れしていた。
ところどころ庭に落ちた影は、侵略痕のように感ぜられた。
彼らは家だけでは飽き足らず、庭にまで手を伸ばしているのだ。
('、`*川「なにしてるの?」
ペニサスはきょとんとした様子で、僕を見ていた。
(´・_ゝ・`)「あ、いや……。見事な花だなと思って」
当たり障りのないようにそう返すと、ペニサスは嬉しそうに笑った。
('、`*川「師匠が全部植えたのよ」
(´・_ゝ・`)「お師匠さんの趣味か」
('、`*川「たくさんお花を植えると、そのエネルギーを分けてもらえるんですって」
にこにこと笑いつつ、ペニサスは足元に咲き誇る花を踏み潰しながら、僕のそばによってきた。
パンジーだのポピーだの、色とりどりのそれはくちゃくちゃに丸められた紙屑のようになってしまった。
少し気の毒になった。
32
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:11:08 ID:q9TyRmLg0
('、`*川「自転車はこっち」
右手側の隅っこに、これまた花に覆われたガレージがあった。
('、`*川「今度からはデミタスが運転してね」
(´・_ゝ・`)「はいはい」
ふと思い立ったように、彼女は上着のポケットを漁った。
('、`*川「飴食べる?」
(´・_ゝ・`)「いや要らない」
ペニサスは、そう、と返してまた例の飴を頬張った。
見ているだけであの味が舌に蘇ってきて、僕は少し眉間に皺をよせた。
あれだけの植物に覆われていたのだから、中は閉塞感がすごいだろうと僕は身構えていた。
しかしどういうわけか、不思議と清々しい空気に満ちていた。
僕は一足踏み入れただけで、この家をすっかり気に入ってしまった。
('、`*川「靴は棚の空いてるところならどこでも入れていいから」
靴を箱に収めながら、ペニサスはそう言った。
(´・_ゝ・`)「ちょっといいかな」
('、`*川「なに?」
(´・_ゝ・`)「君の靴、変じゃないか?」
今更気づいたが、彼女の靴はちぐはぐであった。
片方は金色、もう片方は銀色のラメが輝くバレエシューズ。
なにか意味はあるんだろうか?
33
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:12:34 ID:q9TyRmLg0
('、`*川「魔女は境界線に立つことを意識しなきゃいけないの」
(´・_ゝ・`)「境界線?」
('、`*川「そ、境界線。魔女はそれを跨ぐ存在なの」
死と生、朝と夜、赤と青、日常と非日常……。
世の中にはたくさんの境界線が張り巡らされているが、人々はそれを意識することなく暮らしている。
それを意識し、越えようとしたり跨いだり見つめたりすることが修行の一環なのだという。
把握する境界線が多ければ多いほど、魔女の自分と人間の自分を分断する要素が増えていく。
人格の乖離こそが、魔力の要なのだそうだ。
('、`*川「だからこれも一つのおまじない」
魔法を使う時と使わない時とで身につける物を変えることで、細かく境界線を増やしているのだ、とペニサスは教えてくれた。
('、`*川「とは言っても、それで増える魔力なんてたかが知れてるけど」
大事そうに箱を閉じ、ペニサスは棚の中にそれを仕舞った。
魔女というものを、僕はまだまだ理解しきれていない。
しかしその断片は、とても魅力的でどこか危うさを感じさせるものだった。
もしも人間であった時の自分があまりにも遠くに行ってしまったら。
忘れてしまったら、その魔女はどうなってしまうのだろうか。
34
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:13:28 ID:q9TyRmLg0
('、`*川「まずお風呂に入らなきゃね」
(´・_ゝ・`)「え?ああ、うん」
生返事をしながら、僕はペニサスの後をついていく。
('、`*川「スーツ、捨てちゃってもいいよね」
(´・_ゝ・`)「お願いするよ」
それなりの値段はしたが、どう見てももう着れそうになかった。
というかよくこんな格好で自転車を漕いでて職質されなかったなと僕は唸った。
早朝で人通りが少なかったとはいえ、血みどろのスーツを着た男が少女を連れ回していたら怪しいにもほどがあっただろうに。
('、`*川「そこがお風呂、石鹸とかは好きに使っていいから。お湯も溜めていいわ。これタオルね」
手際よくカゴから引っ張り出されたタオルは、次々僕の手に渡された。
('、`*川「スーツはこの袋に入れてね。着替えは今探してくるから」
(´・_ゝ・`)「……すまないね」
これではどっちが従者なのやら。
と思っているのが伝わったのかはわからないが、ペニサスは少し拗ねたように言った。
('、`*川「今日だけよ、お客さん扱いするのは」
明日からはわたしがパシるんだからー!などと言いながら、彼女は脱衣所のカーテンを勢いよく閉めていった。
僕は若干途方に暮れながら、ようやく服を脱ぐことにした。
35
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:14:42 ID:q9TyRmLg0
風呂場は思ったよりも大きく、立派であった。
(´・_ゝ・`)「猫足のバスタブなんか初めて見たな」
思わず口に出しながら、僕は蛇口をひねって湯を溜めた。
その間に体を洗うことにした。
しかしやたらボトルが多く、どれを使えばいいのか僕はさっぱり見当がつかなかった。
好きに使っていいと言われたが、こうも選択肢が多いと選び辛かった。
(´・_ゝ・`)「おお」
と、ここで僕は見慣れたものを発見した。
牛乳石鹸。
これさえあればとりあえず頭でも体でも洗ってもいいだろうという謎の安心感がある石鹸。
子供の頃にかじってあまりの苦さに涙目で吐き出した覚えもあった。
牛乳で出来てるならきっとおいしいだろうと僕は思ったのである。
そんなはずはないのに。
適当にしゃかしゃかと泡立てて、頭に乗せる。
ところどころじんわりと痛む箇所やかさかさに乾いた血がべろりと剥がれるような感触がした。
さっきまで死んでいたという証拠が、少しずつ消え失せていく。
思ったより、死ぬというのはなんともないものだったな、と僕は考える。
ほぼ即死だったせいか、痛みに苦しむ間もなかった。
ただあのままどうすることも出来ずに、寝転がっていたのはどうにも落ち着かない気分であった。
一本の映画が終わり、エンドロールも流れ切ってしまったのに、照明がつかない映画館に一人取り残されたらああいう気分になるのかもしれなかった。
どうするんだ、僕はどうしたらいいんだ。
このまま待てばいいのか、それとも動くべきなのか。
しかし真っ暗な映画館で立ち上がるのは、なんとなく気が引けてずっと座らざるを得ない。
結果そのまま一人でゆらゆらと揺れる「Fin」の文字を見つめ続ける羽目になるのだ。
36
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:16:00 ID:q9TyRmLg0
(´・_ゝ・`)「あちっ」
どうやら設定温度を間違えたらしい。
少しお湯が温かったからといって、適当にいじりすぎたのだろう。
しかし火傷するほどの温度でもなかった。
僕は手探りでかちかちとダイヤルをまわした。
(´・_ゝ・`)「え」
丁度いい、と感じたその水温は、五十三度。
結構熱いはずなのに、僕はそれを心地いいとすら感じていた。
(´・_ゝ・`)「……火傷もしてない」
普通だったらヒリヒリしてたまらないだろうに、それもなく、僕はやはり死んでいるのだなと実感した。
きっと死んでいるから、生身とは勝手が違うのだろう。
呆然としながらも、僕はタオルを手に取りまた泡立て始めた。
今ならこの石鹸を齧っても、苦くないかもしれなかった。
37
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:17:02 ID:q9TyRmLg0
風呂から上がると、着替えと思しき服が置いてあった。
が、しかし。
(´・_ゝ・`)「貴族のコスプレかな……? これは……」
まず一番最初に目に付いたのは、胸元にフリルがついたシャツと朱色のネクタイ。
その次に置かれていたのはダークチョコレート色のベスト。
唯一平常心で履けそうなのは真っ黒なスラックスくらいであった。
フリル付きのシャツが一番着るのに抵抗があったが、仕方ない。
出されたものに文句を言うのは少し図々しい気がしたのだ。
僕は諦めて袖を通すことにした。
いったいどんなセンスをしているんだか……。
僕はペニサスが少し恐ろしくなった。
しかし案外着てみると、不思議なことにそれはしっくりと僕の体に馴染んでしまった。
まるでそれが当たり前だったように。
(´・_ゝ・`)「ペニサス君」
少し心細くなり、僕は彼女を探した。
彼女は、居間と思しき部屋にいた。
(´・_ゝ・`)「寝ちゃってるよ……」
ソファーで横たわる彼女はどこからどう見ても熟睡していた。
ロココ調の白家具とリラックマの着ぐるみを着た魔女。
なんともいえない組み合わせである。
(´・_ゝ・`)「風邪ひくよ」
揺さぶるものの、ペニサスは起きない。
僕は途方にくれながら、せめて毛布でも探そうと家の中を探すことにした。
38
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:21:10 ID:q9TyRmLg0
居間のすぐ隣はキッチンであった。
綺麗に整頓されていて、生活感はあまり感じられなかった。
間違ってショールームにでも来てしまったかのような気分になった。
ペニサスは、ちゃんと食事をとっているのだろうか。
料理出来ない四十路手前の男は考える。
もし料理を作ってくれと言われたらどうしようか。
インスタント食品と惣菜が主食の僕は、目玉焼き一個作るのがやっとなのだ。
(´・_ゝ・`)「ん……?」
と、僕は奇妙なものを発見した。
洗いカゴの中に放置されているそれは、実験室で見たことがあるものだった。
ビーカー、乳鉢、乳棒。
料理するのに使うものとは到底思えなかった。
一体何をしているんだろうか、ペニサスは。
後で聞いてみようと思いつつ、僕はキッチンを後にした。
廊下をうろうろしていると、二階へ続く階段のスペースを利用した物置を見つけた。
もしかするとその中に毛布があるかもしれない。
そう思い扉を開けようとしたが、鍵がかかっていた。
見られたくないものが入っているのかもしれない。
仕方なくそのまま二階へ上がることにした。
39
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:22:15 ID:q9TyRmLg0
階段は狭く、かなり急勾配であった。
手すりに掴まっていないと上がるのは難しく、壁か何かを登っている気分になった。
(´・_ゝ・`)「つ、疲れるなこの家は……」
上りきった頃には息が切れ、運動不足を実感することとなった。
さて二階には三つ部屋があった。
一つは書斎だったが、本棚に収まりきらなかった本が床に雪崩れているのを見て僕は中に入るのを止めてしまった。
もう一つは鍵がかかっていたので、中の様子は分からなかった。
書斎のすぐ隣にあったので、もしかするとペニサスの師匠の部屋なのかもしれないと僕は考えた。
最後の部屋は、ペニサスの部屋であった。
天蓋付きのベッドに、小振りなシャンデリア。
メープル色の机には、鬼灯を模したランプ。
チェストの上には小振りの釜と黒曜石の鏡が僕の顔を映していた。
白を基調とした壁には、青紫色のテッセンの絵が直接描かれていた。
小さな部屋なのに様々な情報が凝縮されている気がして、思わず目眩がした。
(´・_ゝ・`)「毛布を……」
無意識に一言漏らし、ベッドに近付く。
薄い掛け布団を手に取り、僕は逃げるようにしてその部屋から去った。
そしてソファーで眠るペニサスにそれを被せた後、僕の意識はぷっつりと途切れてしまった。
40
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:23:01 ID:q9TyRmLg0
起きた頃にはとっぷりと日が暮れていて、僕の体はあちこち軋んで悲鳴をあげていた。
('、`*川「床でなんか寝るからよ」
先ほどまでうたた寝していたソファーに腰掛けるペニサスは、憎たらしくそう言った。
僕は少しカチンとしながら、その隣に座った。
(´・_ゝ・`)「起こしたら君が怒るかと思って」
('、`*川「うぐ」
言葉に詰まったペニサスは、やおらその傍に置いてあった紙袋を差し出した。
('、`*川「ドーナツ食べる?」
(´・_ゝ・`)「もらおうか」
紙袋を覗くと、ピンクのチョコレートやしゃりしゃりしたグレーズのかかったドーナツが見えた。
それよりも僕はオーソドックスなオールドファッションが好きなのだが、残念なことにそれは今ペニサスの口に収まってしまった。
仕方ないのでもちもちした食感が売りのドーナツを食べることにした。
('、`*川「一個でいいの?」
(´・_ゝ・`)「食べたら考える」
('、`*川「じゃあイチゴのはもらっちゃうから」
細い指がピンク色のそれをつまみ上げる。
人工的な色合いをした食べ物が苦手な僕には、ありがたい選択であった。
41
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:24:24 ID:q9TyRmLg0
('、`*川「これ食べたら、轢き逃げ犯を探すわ」
(´・_ゝ・`)「あ、ああうん」
急に聞こえてきた物騒な単語に、僕は少し面食らった。
(´・_ゝ・`)「どうやって探すんだい?」
('、`*川「スクライングするの」
(´・_ゝ・`)「スク……なんだって?」
ごくんと最後のひとかけらを飲み込み、ペニサスはどこか誇らしげに説明し始めた。
とはいえ例の寝間着のままなので格好はつかないのだが。
('、`*川「占いとかでよく水晶玉とか覗いて予言したりするでしょう?あれやるのよ!」
(´・_ゝ・`)「あー……」
紫色のベールで顔を隠した怪しげな老婆が巨大な水晶玉相手に手で覆う様を思い浮かべ、僕は頷いた。
('、`*川「わたしの部屋から黒い鏡持ってきて」
入ったから分かるでしょ、とペニサスは畳んだ掛け布団を僕に託した。
(´・_ゝ・`)「ついでにこれも戻して来いと」
('、`*川「話が早くて助かるわ」
早速僕はペニサスの部屋へ向かった。
いよいよ犯人が分かる。
自然と気分が高揚し、僕は滑るように階段を駆け上がった。
そしてあの真っ黒い鏡を手にして、慎重に階段を降りた。
黒曜石は言ってみれば天然のガラスである。
落としたらきっと粉々に砕けてしまうだろう。
42
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:25:35 ID:q9TyRmLg0
しかし本当にこんなもので分かるのだろうか?
正直半信半疑であった。
(´・_ゝ・`)「おっと」
部屋に戻ると、ペニサスは真っ黒なコルセットスカートと格闘していた。
いつ用意したのだろうか。
('、`*川「あ、ちょうどよかった」
これつけてくれない?とペニサスはペンダントを差し出した。
血のように赤い石がついていて、その中には細い針のような黒がいくつか入っていた。
(´・_ゝ・`)「はい」
('、`*川「ありがと」
そう言うペニサスは、すっかりさっきとは違う面持ちであった。
(´・_ゝ・`)「着替えるのも境界線を増やすためかい?」
('、`*川「そうよ。さっきの着ぐるみもほんとは着たくないんだけど、メリハリをつけたほうがいいって友達が言うから……」
(´・_ゝ・`)「君、友達いたの?」
思わずそう言うとペニサスはあからさまに機嫌が悪くなった。
('、`*川「いるわよ」
(´・_ゝ・`)「てっきり学校に行ってなさそうだからいないのかと」
慌てて弁解するも、彼女の唇はとがりっぱなしだった。
43
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名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:26:15 ID:q9TyRmLg0
('、`*川「魔女には魔女なりのネットワークがあるんですぅー」
そう言って、彼女はテーブルに置かれた鏡と対峙した。
('、`*川「…… 、 、…………。 」
微かな声が僅かに部屋に響く。
相変わらず僕には何を言っているのか理解できなかった。
歌うようなその呪文は延々と長く続き、麻痺した時間が淀むように部屋を支配していった。
しかし終わりは唐突にやってきた。
('、`*川「……見えない」
焦ったようにペニサスは言った。
(´・_ゝ・`)「見えない?出来ないじゃなくて?」
('、`*川「今まではちゃんと出来たもん!」
むすっとした表情でペニサスは食ってかかった。
('、`*川「ちょっとした探し物とか占いとか……。それこそデミタスが死んだこともスクライングしなかったらわたし知らなかったもの!」
(´・_ゝ・`)「それは、その……。すまなかった」
少し傷付いたような表情は、僕の良心をちくりと抉っていった。
しかしできなかったのは事実なのだ。
僕は少しペニサスの能力を疑い始めていた。
('、`*川「もう一回やってみる」
そう言って鏡と向き合ったが、結局それを三回繰り返して彼女は諦めた。
44
:
名も無きAAのようです
:2015/04/30(木) 17:27:22 ID:q9TyRmLg0
(´・_ゝ・`)「たまたま調子が悪かったのかもしれないよ」
('、`*川「そんなのなんの慰めにもならないわよ……。基礎中の基礎なのに」
聞けばこんなことが起きたのは初めてなのだという。
ペニサス自身も戸惑っているのだろう。
僕はどう励ませばいいのかすっかり困っていた。
(´・_ゝ・`)「とりあえず……」
うーん、と考えて、僕は思い出す。
(´・_ゝ・`)「お菓子でも食べようよ」
('、`*川「今からコンビニ行くの?」
キョトンとした顔でペニサスは問う。
(´・_ゝ・`)「会社に私物のお菓子が随分残ってるのを思い出したんだよ」
('、`*川「え、会社に行くの?デミタスの?」
(´・_ゝ・`)「うん」
('、`*川「……これから?」
(´・_ゝ・`)「これから」
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