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これを魔女の九九というようです

3名も無きAAのようです:2015/04/28(火) 10:01:35 ID:SOhsxYKs0
じぃじく、じぃじくと切れかけの白い照明が悲鳴をあげる。
小煩いその声は、真夜中のトンネル内に静かに響いた。
ほんの百数メートルほどの短いトンネル。
車がやっと二台すれ違えるほどの狭いトンネル。
ああ、息苦しい。
思わず僕は溜め息を吐きたくなった。

トンネルの上はちょっとした小山になっていて、都市部へと通じる電鉄の線路が張り巡らされている。
山ばかりのこの町に、初めてまともな交通機関が出来た時には皆大喜びでそれを祝ったという。

しかし間もなくしてそれは苦情へと変わっていった。
一日に通る電車の本数が多すぎたのだ。
今まで電車がなかった町、交通機関といえば市営バスに自家用車、それから自転車と徒歩くらいなもの。
結果開かずの踏み切りによってあちこちの道が隔たれ、大渋滞が発生してしまった。
こうなると開通祝いなどと言ってられず、電鉄は慌てて線路の立体化に励んだのだという。
そして唯一踏み切りもなく反対側に通れる道がこのトンネルだったというわけだ。
若者の肝試しくらいにしか使われていないトンネルにも、役に立った時代はあったのだ。

で、さっきからどうしてこんな話をしているのかというと僕はここから動けないのであった。
いきなり轢き逃げされたのだ。
背後から、ドンと一息に。
おかげさまで手足はあらぬ方向に折れ曲がり、首はそっぽを向いていた。
よれよれのスーツは血を吸ってさぞかし重くなっているだろう。

まったくもって馬鹿らしい話だが、きっとこうだ。
季節外れの肝試しに来た誰かが、僕を幽霊と勘違いしたのだろう。
残業帰りで疲れきっている僕を、わざわざアクセル全開で!
悪意しか感じられない仕業である。
馬鹿だ、本当に馬鹿だ。
オカルトなど信じない主義の僕からすると、よく見てから轢けと言いたくなるくらいの馬鹿だ。
ああまったく、腹に据えかねる。


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