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▼・ェ・▼その男、所詮、『犬』のようです。
233
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 19:55:39 ID:2kE5XV2E0
では、西の角にある教会の力だろうか?
確かにアメリカ合衆国ではクリスチャンが多いので、ソウサクシティーにも当てはまるだろう。
だが教会といってもちっぽけでボロボロのほったて小屋のような建物な訳で、威厳などさらさら無い。
そもそもソウサクシティーのクリスチャンの全員が熱心に毎週教会に祈りを捧げる訳でもなく、精々死にかけた時にジーザス!と大袈裟に叫ぶ程度だ。
この腐った街の住人の殆どは教会に行くくらいなら娼館や酒場に。
祈りを捧げる時間があったら金儲けの方法を考えるような人間ばかりの世界なのだから。
234
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 19:56:37 ID:2kE5XV2E0
ここで再び最初の問題に戻る。
警察でもなく、教会でもない。
では一体何の力をもってこの台風の目のような安全地帯を作り出しているのか。
それは、南角にある小さな喫茶店『カフェ・パトロン』にいるある男の力。
気がつけばほぼ毎日のようにテラスに座り、そして常にコーヒーを飲んでいる、ある1人の男の力だった。
(´・_ゝ・`)「んー……エスプレッソ……」
真っ黒なスーツに白いシャツ。そしてまた真っ黒なネクタイ。
トレンチコートも同じく真っ黒で、深めに被った背の低い中折れハットも言うまでもなく真っ黒で。
おまけにソックスや革靴まで当然のように真っ黒。
235
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 19:58:20 ID:2kE5XV2E0
夏の日も冬の日も、雨が降ろうが風が吹こうが全身を黒に包んだこの格好がトレードマークのこの男。
中肉中背。そして顔つきは見事なまでに平々凡々。
(*´ー _ゝー`)「この苦味、この深味、そしてこの黒さ……エスプレッソ……」
その職業、情報屋。
名を『デミタス』というこの男、ソウサクシティーに似合わぬこの紳士風の男を、その見た目から人はこう呼ぶのだ。
――『ジョニーウォーカー』と。
.
236
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:02:16 ID:2kE5XV2E0
(*´・_ゝ・`)「うーん……やっぱりコーヒーはエスプレッソだよねー。あっ、ドルシアちゃーんお代わり頂戴なー」
$$*゚-゚/$ ドルシア「はいはーい。ちなみに次で丁度10杯目ですからねー♪」
ソウサクシティー唯一の喫茶店『カフェ・パトロン』の女店主が見惚れる程に上品な笑顔でコーヒーのお代わりを運んで来る。
その見た目はアウトローの街に似合わぬ癒しをまとったものだった。
ふわふわの金の巻髪を揺らし、同じく金色のくりくりとした瞳。
花は高く、唇はふんわりと柔らかく、全体的に化粧は薄め。
白いシャツブラウスに青いスキニー、それから動きやすい黒いスニーカーという地味めな服装。
唯一目立つのはパトロンという店名の刺繍が入った黄色いエプロンの存在と、左耳に揺れるドルマークをモチーフにした大きめのゴールドイヤリングのみ。
それがパトロンの看板娘兼、店長である『シャルトリューズ・ドルシア』だ。
237
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:03:44 ID:2kE5XV2E0
(*´・_ゝー`)「いやはや、ここのコーヒーは美味し過ぎちゃってねーどうにも止まらない。
いけないねー、こうやって何杯も飲んでたら財布がスッカラカンになってしまうよ」
$$*゚-゚/$「あらら。でも店側としては嬉しいんですけどね。はい、エスプレッソ」
白いクロスが置かれたテーブルに白いカップセットが静かに置かれる。
そしてその中身は当然ながら真っ黒の液体が並々注がれており、その色を際立てるかのように白い湯気がふわふわと漂う。
デミタスはその光景に満足げな表情を浮かべ、カップに口をつけた。
238
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:05:47 ID:2kE5XV2E0
(*´ー_ゝー`)「あぁ……エスプレッソ。いいね、愛しのエスプレッソだ。
ああ、確かにこのままだとスッカラカンになってしまうかもしれないなあ。
でもね、僕は信じてるんだ。ドルシアちゃん。君と、このカフェ・パトロンをね」
至福の味に酔いしれながら、デミタスは瞳を閉じて語り続けた。
(´ー_ゝー`)「優しいドルシアちゃんなら、ほぼ毎日のようにここに通っている、僕には特別に。そう、きっと特別にだ」
(´・_ゝ・`)「いつも本当にありがとうございます。だなんて感謝の言葉と共にだね、きっと1杯くらいエスプレッソをサービスしてくれ$$*゚-゚/$「しませんよ」あっ、はい、ごめんなさい」
239
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:08:23 ID:2kE5XV2E0
『カフェ・パトロン』はテラス席をメインとしたこじんまりとしたオープンカフェスタイルの店構えだ。
彼女1人で経営していることもあり、テーブルは4つ、席はそれぞれ3つ。
店内は彼女が栽培している数多くの野菜やハーブで溢れ、その奥には自慢のキッチン。
基本的に雨天時は臨時休業というかなり自由なスタイルでの営業のためなのか、1品1品のメニューがなかなか『いいお値段』なのだ。
(;´・_ゝ・`)「いや、ねえ? でもちょっと聴いてよドルシアちゃん。
いくらなんでもコーヒー1杯15ドルって言うのはご立派なお値段過ぎないかなー?
もっと安かったら沢山常連だって出来そうなんだけども」
$$*^-^/$「大丈夫ですよ。どんなにお客さんが少なくても、その分とびっきり美味しい常連さんのデミさんがいるんですから」
(´^_ゝ^`)「わあお! とびっきりの笑顔で搾取する気満々宣言してきたぞーこの鬼畜娘ったらー」
240
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:10:07 ID:2kE5XV2E0
デミタスはカップを置くとやれやれというジェスチャーをしてみせた。
小さな店構えのカフェ・パトロンの唯一の常連客(と言うか基本的に毎日いる)である彼は、何度も何度も値引き交渉をしているのだがそれが聞き入れられた事は1度として無かった。
ドルシアのイヤリングが主張するかのように輝いた。
上品で、気立てもよく、優しい、そして美人。
女としてほぼ完璧とも言える彼女の唯一の欠点は異常なまでに逞しい商魂。
$$*゚-゚/$
……まあ要するに、早い話がお金が大好きなのだ。
241
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:12:36 ID:2kE5XV2E0
$$*゚-゚/$「あっ、そう言えば新作のアップルパイがあるんですよ!
コーヒー好きのデミタスさんにピッタリのスペシャルレシピ!!」
(*´・_ゝ・`)「ほほーう。そんな嬉しいことを聴いたら注文せずにはいられないじゃないの」
$$*^-^/$「毎度ありがとうございます。特製アップルパイは1皿50ドルでーす♪」
(´^_ゝ^`)「はっはっはっ。この鬼畜守銭奴女め」
$$*^-^/$「そこまで言うならとりあえず3皿分ぐらい作っちゃいますねー♪」
(´・_ゝ・`)「やめてください、しんでしまいます」
財布への打撃は深刻ながら、この和やかで平和な時間は何事にも変えがたい。
キッチンへ消えていくドルシアのヒップを眺めながらエスプレッソを味わう。
まさに、そんな時だった。
242
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:14:24 ID:2kE5XV2E0
「ジョニーウォーカー!!!」
南の方から怒気を孕んだ大きな声が響いた。
その声にデミタスがコーヒー片手に振り向くと、そこには1人の若い男が必死の形相でこちらに向かって走ってくるのが見えた。
めんどうだな、と思いつつもエスプレッソを味わいながらデミタスは軽い感じで挨拶をしてみせた。
(´・_ゝ・`)「やあやあ、南東側の『プレイボーイクラブ』のニュックン氏じゃないか。
お久しぶりー。あっ、コーヒー飲む?
やっぱりモーニングはエスプレッソだよねー」
(# ^ν^)「何がお久しぶりだ! この裏切り物の黒服野郎が!!」
現れた金髪の若者、『ノチェロ・ニュックン』はデミタスの挨拶など聞く気がないのか、食ってかからんばかりに身を乗りだし、怒りの声をあげた。
243
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:15:40 ID:2kE5XV2E0
(# ^ν^)「テメエのせいで俺達は『クリムゾンヘッド』に目つけられちまったんだよ!
テメエ長い物に巻かれて俺達の情報を吐きやがったな!!」
怒りの形相を浮かべる男とは対照的にデミタスはポカンとした顔でニュックンを見つめた。
「こいつは何を言ってんだ?」と言わんばかりの表情で。
やがて諦めたような表情でカップを置きながら小さく溜め息を漏らす。
それから諭すような口調で、あのねー。と切り出した。
244
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:16:26 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝ・`)「裏切り物って言われてもね、僕はそもそも、情報屋なんだよ?
この交差点で1人コーヒーを嗜む『ジョニーウォーカー』は何処にも属さないフリーの情報屋さ」
(´・_ゝ・`)「確かに僕はクリムゾンヘッドのお偉い様にに君達プレイボーイクラブの情報を売ったよ。
まあ、それだけじゃないけどね。顧客の要望は最近活発に動いている小さいチームの名称と現在地の全ての情報だった訳だし」
確かにデミタスはニュックンの言っている事に心当たりがあった。
今からちょうど2週間前、南を牛耳っていたチャイニーズマフィア『ドラゴン』の首領、『杏露・シナー』が何者かに暗殺された。
245
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:17:47 ID:2kE5XV2E0
それによって南側でひっそりと息を潜めていた小さなグループが返り咲かんとばかりに一気に暴れ始める。
それに目をつけたクリムゾンヘッドの女首領、ハインリッヒは小さなチームを全て喰らい尽くすために、右腕にあたるフィレンクトを通じてデミタスに情報を求めたのだ。
(´・_ゝ・`)「モララー氏率いる『ホワイトカラー』にシナー氏の実の娘、スニフィ嬢率いる『ウルボロス』。
それからつい最近結成されたばかりでリーダーを持たない『ザ・バンド』」
(´・_ゝ・`)「そして君達、プレイボーイクラブだ。
あ、そう言えばリーダーの『三月兎』ことラビット氏は元気ー?
それとも君がそこまで焦ってるって事はクリムゾンヘッドの誰かに殺されちゃったのかしら?」
246
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:19:55 ID:2kE5XV2E0
(# ^ν^)「ざけんじゃねえ!!」
ニュックンは怒声をあげながらデミタスの向かいの席のチェアーを蹴飛ばした。
そして懐から兎のように真っ白に塗装された拳銃を取りだし、デミタスの眉間に向けて突き付けた。
(# ^ν^)「リーダーはまだくたばっちゃいねえ!!
あの人が俺らを残して死んだりする訳がねえんだよ!!」
怒りに震えながら精一杯に叫んでいるところを見るや、プレイボーイクラブのリーダーとやらは随分と慕われているらしい。
もっとも、あらゆる情報を把握しているデミタスとしては彼がとある小さな病院で既に虫の息であることも把握していたので、割とどうでもいいことだったのだが。
247
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:21:16 ID:2kE5XV2E0
(# ^ν^)「いいか! クリムゾンヘッドの弱点を教えろ!! 何でもいいからとっとと吐け!!」
憤怒で顔を真っ赤にしながらニュックンはデミタスに食ってかかる。
だが当のデミタスはその怒声を右から左へ聞き流すかのように、涼しい顔のままカップを手に取り、静かにエスプレッソを堪能する。
そして空になったカップを静かに置いて、小さく微笑むような表情でニュックンに向かいあった。
(´・_ゝ・`)「もちろん僕は中立の立場にいる情報屋だからね。
ニュックン氏のお望みの情報だってしっかりと握っているさ」
( ^ν^)「なら……」
安堵したようなニュックンの表情を確認したデミタスはニッコリと微笑んで
248
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:22:43 ID:2kE5XV2E0
(´^_ゝ^`)「15万ドルになります」
と言った。
( ^ν^)「……は?」
(´・_ゝ・`)「あれ? 聴こえなかった? 15万ドルだよ。じゅ・う・ご・ま・ん・ど・る。
もちろん後で揉めないように安心安全の現金払いで完全前金制ね」
249
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:23:36 ID:2kE5XV2E0
(# ^ν^)「ざっけんじゃねえ黒服野郎が!! そんな大金払える訳ねーだろうが!!」
(´・_ゝ・`)「んー? それじゃあ教えられないよ。 僕にとって情報は大事な商品なんだからねー」
間延びした口調でふぅ、と溜め息を吐くデミタス。
小馬鹿にしたような目の前の男の態度にニュックンは静かに切れた。
カチャリ。と撃鉄を起こす音が小鳥のさえずりと噴水の水音が響く青空に静かに交じった。
(# ^ν^)「いいか。糞野郎が、よく聴きやがれ」
静かに、それでいて低く。
殺意を込めたニュックンの声が響く。
250
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:26:50 ID:2kE5XV2E0
(# ^ν^)「これは、マジだ。大マジだ。脅しでもねーマジな話だ。
テメエは大人しく吐け、さもなきゃ」
(# ゚ν ゚)「プレイボーイクラブの白い弾丸がテメエの頭を弾き飛ばす!!」
ニュックンの人指し指は既に引き金にかかり、何時でも目の前の男を処刑する準備は出来ている。
先程の彼の言葉は脅しでも何でもなく、目的の情報が得られないくらいだったら目の前にいる憎きエセ紳士を処分する腹積もりだった。
だが当のデミタスは銃口を向けられているにも関わらず、先程から表情を変えることなく、またやれやれと言ったジェスチャーをしてニュックンを挑発する。
必死の思いで引き金にかかった人指し指を抑える金髪の男の心情を知ってか知らずか、デミタスは少々めんどくさそうに口を開いた。
251
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:28:10 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝー`)「んー、まあ確かにね。こんな距離で弾丸なんか喰らっちゃったらさあ。
そりゃあ、いくら僕でも死んじゃうよね?
うん、分かるよー分かる分かる」
(´・_ゝ・`)「でもさ、ニュックン氏。僕はどうしても君に1つ聞きたいことがあるんだよ」
(# ^ν^)「……んだよ、ごら」
殺気と怒気を隠そうとしないニュックンの言葉などまるで気にしない素振りでデミタスは続けた。
それは彼が今まで潜り抜けて来た修羅場の数を表しているようにも見えるし、そもそも何も考えていないような阿呆のようにも見える。
もっとも、常に何処かしこで鉛玉が飛び交うソウサクシティーの古株である彼にとっては、こんな状況など修羅場にすらなり得ないのかもしれないが。
252
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:29:27 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝ・`)「いやはや、簡単な事なんだよ。
君はつい先程『白い弾丸がテメエの頭を弾き飛ばす』って言った訳なんだけどもね?」
(´ー_ゝー`)「僕と致しましてはね、んー、やっぱりさー。
そこら辺がちょいとばかし、不思議に思っちゃうんだよねー」
(# ^ν^)「……何が言いてえ」
質問の意図が全く読み取れないニュックンを諭すようにデミタスは続けた。
まるで、大人が悪ガキに仕方なく説教をするみたいに。
253
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:31:10 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝ・`)「いやはや、だからね。本当に単純な疑問なんですけどねー」
(´・_ゝ・`)「ニュックン氏はどうやって、その弾丸を僕に撃ち込むつもりなんですかねー?」
そして、デミタスのめんどくさそうな表情がすっかりと変わり、ニヤリと音がなりそうな嫌な笑みを浮かべ、こう告げるのだ。
.
254
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:32:03 ID:2kE5XV2E0
―――「『銃も持っていない』のにさあ?」
と。
255
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:33:27 ID:2kE5XV2E0
( ^ν^)「……は?」
ニュックンの表情から怒りが消えた。
そしてその顔はみるみると青ざめ、額から脂汗がだらりと落ちる。
やがて身体が震え始め、気が付いたら2、3歩ほど後ろに後ずさっていた。
(; ゚ ν ゚)「なっ……なんで!?」
ニュックンの頭の中は疑問でいっぱいだった。
何故このエセ紳士は銃を突き付けられても涼しい顔だったのか?
何故こいつは意味の分からない質問をしたのか。
そして何より重要な事。
それは何故しっかりと握っていた愛用の白いベレッタが『一瞬で消えてしまった』のかと。
256
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:34:15 ID:2kE5XV2E0
驚きと困惑の表情を浮かべるニュックンを横目で眺めたデミタスはさて、ゆっくりと立ち上がりながら口を開く。
(´・_ゝ・`)「ニュックン氏や。ソウサクシティーに根付いたばかりの君に、このジョニーウォーカーこと、イケメン紳士のデミタス氏が特別に良い事を教えてあげるよ」
人の良さそうな、いかにも紳士という言葉が似合うデミタスの笑み。
先程まで神経を逆なでして仕方なかったそれが、今のニュックンには何かとても恐ろしい物に見えた。
257
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:35:24 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝ・`)「ここ、ソウサクシティーは喰うか喰われるかの無法地帯。
それでも皆が怖れ、その怒りを買わないように努める『ヤバイ人間』が3人いるんだ」
落ち着いた声でデミタスは握っていた右手の人指し指だけをニュックンによく見えるように開いて、先ず1人目だ。と言った。
(´・_ゝ・`)「『ゴッドファーザー』こと西のイエローモンキーの首領『リシャール・ニダー』氏だ。
まさに昔気質のマフィアのドンである、彼の怒りを買う事がどんなに恐ろしいかは言うまでもないでしょ?」
(;´^_ゝ^`)「温厚で必要以上の争いを好まない彼がぶちギレたら……あはは、想像したらオシッコちびっちゃいそうだよねー」
258
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:36:30 ID:2kE5XV2E0
にこやかに笑いながデミタスは2本目の指を静かに開く。
(´・_ゝ・`)「そして2人目は君がつい先程まで情報を聞き出そうとしたクリムゾンヘッドの女首領『MM・ハインリッヒ』嬢。
典型的なサディストである彼女の拷問は、それはそれは恐ろしいらしくてね?」
(´・_ゝ・`)「なんでもいっそのこと殺してくれ!!
と叫ぶ可哀想な人達をあえて死なないように絶妙なテクニックを発揮して、たっぷり楽しむように3日間もかけて、ぐちゃぐちゃにしてしまうんだとか。
おっそろしい話だよねー」
「ああ、そう言えば新しい拷問の方法を教えてくれと頼まれた事もあったよ」とデミタスは何か愉快な事を思い出すかのようにクスリと笑って見せる。
やがて思い出したかのように、目の前の怯える若者の瞳をしっかりと見つめると3つめの指を開く。
259
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:37:30 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝ・`)「そして最後に3人目だ」
少しもったいぶるように、余韻たっぷりで語り出す。
(´・_ゝ・`)「ソイツはコーヒーと平和と秩序を愛する、平々凡々な男なんだ。
なーんの特徴もない、氏がない情報屋」
(´・_ゝー`)「だけど不思議な事があってだね。
誰も彼も、彼のあだ名や下の名前を知っているっていうのに。
フルネームだけは、みーんな知らないんだよ。それは何故か?」
チッチッチッと舌を鳴らしながら右手の人指し指を振る。
三流俳優のようなこの演技が、どうしたことか、彼には異様な程にしっくりとマッチしていた。
260
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:38:22 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝ・`)「それはね、ソイツの中で、あるルールを決めているからなんだよ。
ソイツは過去に悪い事をやり過ぎちゃったからね、昔を思い出さないように出来るだけ、フルネームを名乗らないようにしたんだよ」
(´・_ゝ・`)「でも、どうしても、ソイツのフルネームを名乗らなきゃいけない時があるとするだろう?
それでもソイツは名前を知られたくない訳なんだよ。
するとソイツはどんな行動をすると思う?」
ニュックンの汗が顎に流れ、褐色のレンガで作られた地面に小さなシミを作った。
目の前の紳士が、何か恐ろしい黒い化物のように感じたのだ。
261
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:39:15 ID:2kE5XV2E0
(´・_ゝ・`)「答えはね、存外、単純な話でさ、消すんだよ。
自己紹介を済ました後に、相手の存在をすっかり消しちゃうんだってさ。
まあ、早い話が暗殺だよねー。
あ? 何でそんなことするか気になる?」
(´^_ゝ^`)「だってさ、知らない間にソイツの名前が色んな人に伝わってしまったらさあ、何だか恐いだろう?
だからソイツはさ、フルネームを名乗る時っていうのは、相手を殺す時だけ。っていうルールを決めているんだよね」
小さく震えすらみせているニュックンにデミタスはニッコリと微笑む。
そして見せびらかすように開いていた人指し指を閉じると、そのままゆっくりと右手をトレンチコートのポケットに忍ばせた。
262
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:40:06 ID:2kE5XV2E0
(´^_ゝ^`)「ねえ、弱小チーム、プレイボーイクラブのお馬鹿なお馬鹿なノチェロ・ニュックン氏。君は……」
そして目にも止まらぬ早さで右手を引き抜き『白いベレッタ』を目の前の男に突き付けた。
263
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:40:54 ID:2kE5XV2E0
(´ _ゝ・`)「僕の名前を聴く覚悟は、出来てるかい?」
.
264
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:42:43 ID:2kE5XV2E0
$$*゚-゚/$「アップルパイお待たせしましたー……ってあれ?椅子が壊れてる!?」
(´ー_ゝー`)「ああ、ごめんねー。ちょっとお客さんと揉めちゃってさ。
しっかりと弁償するから」
青空の下、ジョニーウォーカーことデミタスは椅子に浅く腰掛けながら、ぐったりとした笑顔をドルシアに見せた。
(´・_ゝー`)「そんなことより、コーヒーのお代わり頼むよ。こんな美味しそうなアップルパイをコーヒー抜きで味わうだなんて考えたくもないからね」
$$;*゚-゚/$「まったく、もう。デミさんは荒事ばっかり持ち込むんだから」
265
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:43:35 ID:2kE5XV2E0
ぷりぷりと怒りながらキッチンに消えていくドルシアのヒップを見送りながら、デミタスは心地よい小鳥のさえずりに耳をすませる。
そして、シナモンとアップルの甘い香りがふわふわと漂う特製のアップルパイを器用にフォークとナイフで切り分ける。
トロトロと溢れ出るジャムのような黄金の蜜。
それからゴロゴロと大粒にカットされた果肉の輝きたるいなや。
なるほど、これは、たまらない。
$$*゚-゚/$「はい、エスプレッソですよ」
ありがとう。と軽く礼をして、カップに口をつける。
そしてコーヒーの余韻が漂う中に、カリカリのパイ生地を放り込む。
ああ、これは……
266
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:44:40 ID:2kE5XV2E0
(*´^_ゝ^`)「美味しいね、いや、本当に」
$$*^-^/$「あら、嬉しい」
正義が枯れ果てたスラムの街。
それでも、この街もまだまだ捨てたものじゃないよね。
そんな事を考えながら、ジョニーウォーカーは今日もこの交差点の平和を守りつつ、至福の一時を堪能するのだった……
.
267
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:46:44 ID:2kE5XV2E0
$$*^-^/$「あっ、因みに椅子の弁償金は2000ドルになります♪」
(#´・_ゝ・`)「鬼! 悪魔! ドルシア!!」
$$#*゚-゚/$「アップルパイ5つ追加ありがとうございまーす♪」
(´;_ゝ;`)「マジでごめんなさい!!」
『交差点』は今日もそれなりに平和である。
268
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:47:51 ID:2kE5XV2E0
以上、中編に続く。
シリアス0でごめんなさい。中編から頑張ります!
269
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:49:03 ID:YAdQmzVg0
乙!
ドルシアちゃんがオリジナル?
かわええ!!
270
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 20:51:35 ID:9fBq5g7k0
おもしれー!!
続きが楽しみだ��
271
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 21:14:45 ID:ieFxtA5M0
ああ、これはほのぼのだわ(白目)
272
:
名も無きAAのようです
:2015/02/28(土) 21:26:07 ID:gQZRzWfY0
おつ
びっちは下ネタしかなくて苦手だったけどこっちは面白い
273
:
名も無きAAのようです
:2015/03/01(日) 00:42:10 ID:FrKb9p.s0
おつ
274
:
名も無きAAのようです
:2015/03/01(日) 11:10:46 ID:.JRTdebo0
>>269
ドルシアがオリジナルですね。ちょくちょくデミタスとのセットで登場する予定です。
乙や支援、またVIPの感想スレでの感想ありがとうございました。
今日の深夜、もしくは明日の夜に中編を投下します。
徐々にシリアスになれるように頑張ります。
275
:
名も無きAAのようです
:2015/03/01(日) 11:21:11 ID:2Cmwm4ik0
読み終わって乙を言おうとしたら既に次回投下予告があるっていうね
楽しみにしてます乙
276
:
名も無きAAのようです
:2015/03/01(日) 11:28:47 ID:xziuJA8w0
いいじゃんドルシア
いいじゃん
277
:
名も無きAAのようです
:2015/03/01(日) 19:34:39 ID:Ooaa8zH20
ごめんなさい……現在カキダメ中なのですが構想に迷っています。
1…スニフィ、ビロード、ニダー バトル重視
ルート、もしくは
2…ヒート、クール、ニダー、ビロード ストーリー重視
で苦悩しており、カキダメが進みませんので、申し訳ないのですが次の方の安価
>>278
にお任せします。
1か2で選んで下さい
278
:
名も無きAAのようです
:2015/03/01(日) 19:42:19 ID:D726RzJA0
2のストーリー重視希望
がんばれ!
279
:
名も無きAAのようです
:2015/03/02(月) 00:23:33 ID:N/0UWHsg0
ビロードがこういう作品でどういう感じになるかたのしみ
2希望してます
280
:
名も無きAAのようです
:2015/03/02(月) 10:37:05 ID:VN6wb7hM0
278だけど、いざとなったら安価なんか無視しちゃってくだせぇ
無理せず焦らずに。のんびり待ってますぜ!
281
:
名も無きAAのようです
:2015/03/02(月) 12:24:48 ID:XrK8.HNs0
>>278
>>279
安価ありがとうございます。
ストーリーよりも少しキャラ付けに手間取っているだけですので大丈夫ですよ。
今夜、もしくは深夜には投下できるかと思います。
282
:
名も無きAAのようです
:2015/03/02(月) 19:08:37 ID:9.M2fcrA0
今夜0時に中編投下します。
283
:
名も無きAAのようです
:2015/03/02(月) 23:38:13 ID:pPqCFOfg0
わくてか
284
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:00:45 ID:q7v0AJSc0
かなーりゆっくり投下します。
途中からながらになります。
285
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:03:16 ID:q7v0AJSc0
(>< )
『僕』がいる。
(>< )
無限に広がる暗闇に、『僕』がいる。
偉大なる父のモニュメントを背に置いて、虹色のステンドグラスから漏れる七色の光を、まるで後光みたいにして纏う、『僕』がいる。
でもその僕っていうのは、『本当の僕』じゃないっていうのは、いくら僕でも分かってるんです。
( ><)(>< )
まるで、鏡。
286
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:05:47 ID:q7v0AJSc0
姿形は全く同じなのに、その奥に隠れている瞳に写らない、とっても大切なものはプラスチックみたいに冷たくて、そして、空洞なのが見てすぐに分かった。
何でそんな事が見ただけで分かったのか?
って聞かれたら、やっぱり「わかんないんです」って答えちゃうけど、それでもやっぱり、僕には分かる。
僕の事だから、『僕じゃない僕』の事もすぐに分かるんです。
でも、『僕じゃない僕』が、一体何者なのかはやっぱり馬鹿な僕には、わかんないんです。
(>< )
僕がいる。
ちっぽけな虹みたいな光。
でもそれでいて、この無限に続くような暗闇にとっては、とってもとっても眩しい七色の光の下に。
287
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:08:23 ID:q7v0AJSc0
磔刑に処せられ、顔を伏せる我らが父の足元に、まるで、幽霊みたいな『僕』がいる。
( ><)「ねえ、どうして君は、そんなに冷たい顔をしているんですか?」
勇気を出して僕が尋ねてみても、『僕じゃない僕』は、口を閉じたまま、僕の方をじぃっと見つめるだけ。
結局、僕が何を言っても応えてはくれない。
寂しいし、何よりも少しだけ、恐かった。
暗闇にぼんやりと浮かぶ、我らが父の姿。
キラキラと輝く、虹色の幻想。
それから、簡素な作りの真っ白な修道服に身を包む僕。
そして、対照的な真っ黒なローブに身を包んだ、『冷たい僕』。
288
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:11:33 ID:q7v0AJSc0
僕は右手をゆっくりと伸ばして、恐る恐る目の前の『僕じゃない僕』の頬に触れる。
僕じゃない筈の、目の前の『僕』の身体は、やっぱり僕自身とは全く違くて、とっても冷たい。
それから、痛かった。
触れただけなのに、僕の心の中の、何か大事なものがキリキリと締め付けられるようで、とっても痛かった。
右手越しに伝わる、その手触りも、無機質な冷たさも。
それから1番大切な、触れているだけで底冷えする、何か言葉では言い表せない、ココロそのものみたいな、鼓動が伝わらなくて。
だから、『目の前の僕』っていうのは、まるで死体のように感じられて、僕は知らず知らずの内に涙を流していました。
289
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:12:20 ID:q7v0AJSc0
その涙が、同情の涙なのか。それとも、キリキリと締め付けられる僕の心の奥が悲鳴を上げているからなのか。
それすら分からなかったけれど、気が付いたら涙が止まらなかった。
気が付くと、目の前の『僕じゃない僕』の瞳からもスーっと涙が流れていました。
でも、その涙は僕なんかのソレとは全く違かったんです。
(。><)「あ……」
『僕じゃない僕』の瞳から音もなく零れ落ちていく、真っ赤に染まった涙の雫。
それは、ずーっと昔に僕が見た、赤い赤い、とっても悲しい奇跡の涙。
290
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:14:02 ID:q7v0AJSc0
奥に浮かぶ父の瞳からも。
それから、露出した脇腹にある聖なる傷痕からも、赤いソレがどんどんどんどんと流れていく。
(。><)「あ……あ……」
僕が動く。
違う。僕じゃない。
『僕じゃない僕』の身体が、微かに動いた。
痙攣するように身体を震わせ、無表情だったその瞳に、光が宿る。
291
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:16:11 ID:q7v0AJSc0
『僕』の身体はやがて、ミチミチと肉を裂くような、とっても痛々しい音を立てながら、その姿を徐々に変えていく。
すっかり怯えきった僕を嘲笑うかのように、『僕』がほんの少しだけ笑った気がした。
そして、肩の辺りがまるで爆発でもするかのようにボコッと膨らんだ時、それは生まれていたんです。
(。><)「あ……」
バサッと何かが翻る音がした。
そして、純白の、白い羽が僕の目の前のにふわふわと揺れ動きながら落ちていく。
292
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:17:32 ID:q7v0AJSc0
気が付くいた時には、暗闇には何十何百といった純白の羽が、まるで雪のように舞い落ちていたんです。
そして、その中心には、優しく微笑む『僕』の姿が。
(。><)「天使……?」
『僕じゃない僕』からは、とても大きな翼が姿を現していたのです。
聖書を詠みながら何度も何度も想像していた、純白で美しく。穢れ無き、無垢なる天使の象徴。
『僕』の背に雄大に広がる、その翼を見た時、そして、そっと微笑みかける『僕』の表情を見た時。
僕は心の底から救われた気がしました。
293
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:18:14 ID:q7v0AJSc0
――――だけど、それだけじゃなかった。
.
294
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:19:19 ID:q7v0AJSc0
(。><)「あ……あ……!」
『僕』の右肩からから生えている美しい白い翼。
その姿は、誰がどう見ようと天使そのものに写る事でしょう。
(;。><)「な……んで……?」
『僕』は微笑んでいました。
右に天使の翼を広げて。
そして、左に獣の翼を広げて。
295
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:20:19 ID:q7v0AJSc0
(;><)「ち……がう……ちがうんです……」
『僕』の左肩から生えているソレは、獣のような短くて黒っぽい体毛にビッチリと覆われていて、ところどころ、血と、骨とが露出していました。
まるでボロボロのローブから穴っぽこが空いて、チラホラと中が見え隠れするようです。
翼の先には何か、牙や爪みたいなものがギラギラと輝いていて、その輝きはとてもじゃないけど神聖なものではありません。
邪悪、そのものが閉じ込められたような翼の象徴。
まるで、それは。
僕が昔に、ほんの一瞬だけ想像した……
(;><)「悪魔……?」
296
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:22:18 ID:q7v0AJSc0
瞬間、全てを焼き払うような巨大な雷が轟いたんです。
稲妻はまるで悲鳴のような唸りを上げて、宙に浮かぶ父の首を焼き払う。
目も眩むようなその閃光は、ステンドグラスの虹色の輝きすら音を立てて粉々に弾き飛ばしてしまった。
(;><)「あ……あ……!」
(><* )
『僕』がいる。
天使と悪魔の翼を持ち、静かに微笑みかける『僕じゃない僕』がいる。
暗闇にはもう、愛しき父の姿も、七色に輝くステンドグラスも何もない。
(;><)(><* )
僕と『僕』だけだ。
297
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:23:05 ID:q7v0AJSc0
僕は『僕』の視線に堪えきれなくて、いつの間にか小さく震えていた。
身体が寒くて寒くて、仕方が無くて。
心の中が痛くて痛くて、仕方が無くて。
それに、僕は『僕』が恐くて恐くて、仕方が無かったから。
何が?
僕は、『僕』の何が、怖いの?
……わかんないんです。
298
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:23:59 ID:q7v0AJSc0
―――だって『僕』は僕自身じゃないんですか?
.
299
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:24:51 ID:q7v0AJSc0
(><* )「――――。」
『僕』が僕に優しく微笑みかけながら、語り出す。
その言葉は天恵のように神聖で、それでいて誘惑のように甘い。
『僕』の視線が、僕に訴える。
僕の身体を暖かい何かが包みこんで、それと同時に冷たい何かが僕の心を蝕んでいく。
(><* )「――――。」
違う。それは僕じゃない。
それは僕じゃなくて『僕』なんだ。
300
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:25:55 ID:q7v0AJSc0
(><* )「――――。」
僕は『僕』じゃない!
『僕』が僕自身だと笑いかけても、それは違う。絶対に違う!
(><* )「――――。」
天使、誘惑、悪魔、天恵、違う、僕が、『僕』だから、違う、違う、違う、獣の、神の、父の定め、違う、僕は、天使、違う、悪魔、違う、違う、裁き、違う。
301
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:27:55 ID:q7v0AJSc0
「――――。」
(;><)「違う!」
(><* )「――――。」
(;><)「違うんです!!」
(><* )「――――。」
(# ><)「違うってば!!」
(><* )「――――。」
(# ><)「違うのおお!!」
(><* )「――――。」
(# )「あああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ!!」
302
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:28:51 ID:q7v0AJSc0
叫びました。
気が付いたら僕は目の前にいる、僕の形をした『化物』の首に手を掛け、無我夢中で暗闇の中に押し倒していました。
天使のような微笑みを浮かべ、悪魔の誘惑を語り掛ける憎き『僕』の胸元に狙いを定めます。
右手に巻いたロザリオを、何度も何度もつっかえながらも必死で左手で引きちぎるようにほどいて構え、十字架の部分をナイフに見立てて思いっきり振りかぶり。
(# ><)「ちがあああああああああああああああああああああああああああああああああああう!!」
そして、力いっぱい突き刺しました。
303
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:30:27 ID:q7v0AJSc0
( ∀ )「――――」
その瞬間、胸元に十字架が刺さった『彼』は。
口が裂ける程の醜悪な笑みを作り、牙を剥き出しにして。
( ∀ )「――れ――は――前―身の願――うなんだよ」
と言った違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!
304
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:32:00 ID:q7v0AJSc0
(# ><)「違う違う違う違うちがあああああああう!!」
暗闇に浮かぶ、七色の破片。
首を失った、無惨な父の象徴。
それから、笑顔のまま、死んだ。
翼の生えた『僕』。
( ><)
それから、血まみれの、僕。
305
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:34:54 ID:q7v0AJSc0
(# )「僕はあああ!!」
暗闇に、祈った。
泣き叫びながら、祈った。
答えなんて知っている。
これが僕の定めで、天恵なんだって事も。
僕は神の子で、父のためにもそうしなきゃいけない事も。
(# ;)「僕はあああああぁぁぁぁ!!」
それでも、叫ばずにはいられなかった。
声が枯れるまで叫ばずにいられなかった。
もし、僕が泣き叫ぶ事すら赦されないというなら、父はどうして僕にこのような受難を与えたというのか。
僕は、僕は、僕は。
306
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:36:39 ID:q7v0AJSc0
(# ;;)「僕は悪魔なんかじゃないいいいいいいいいいいいい!!」
流した涙は、広がり、湖になり、やがて鏡になりました。
そこに映っていたのは、顔をぐじゃぐじゃにした僕。
右の背には純白の翼を携えた僕。
左の背には血濡れた獣の翼を携えた僕。
それから
( <●><(# ;;)
黒い、瞳の、彼が。
307
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:37:52 ID:q7v0AJSc0
―――ねえ、お父さん。僕は一体、誰なんですか?
.
308
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:39:20 ID:q7v0AJSc0
そうして、彼は。
( <●><●>)
すぅっと、近付いて。
( <●><●>)
僕の『右頬』に。
( <●><●>)
優しく、優しく……
.
309
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:41:51 ID:q7v0AJSc0
( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( ∀ )( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)
310
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 00:42:37 ID:q7v0AJSc0
―――――――――――――――――
.
311
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:14:42 ID:q7v0AJSc0
大きな木製扉の両脇に、2人の女性が門番のように立っていた。
向かって右側の白人の女性は直立不動という言葉がぴったりで、呼吸によってわずかに上下する胸元を見なければ、新手の現代彫刻かと疑いたくなるほど、一切の動きも無く、それでいて美しい。
対して左側に立つ女の肌は黒く、その体勢はすでに壁によりかかっており、表情からは退屈が見てとれる。
先の女性の魅力が神秘的なものとするならば、こちらの女の魅力は健康的なエロスとワイルドさと言ったところだろうか。
ノパ⊿゚)「なあ」
黒人の女、ヒートが小さく口を開く。
その口の右端には、火のついていない葉巻が咥えられているにも関わらず、器用に語りかける。
312
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:16:08 ID:q7v0AJSc0
ノパ⊿゚)「結局よお、親父はまだ籠もってやがんのか?」
川 ゚ -゚)「ああ」
白人の女、クールがぴしっと直立した状態のまま肯定する。
ヒートの方をチラと覗く事もなく、表情も、顔の向きも、一切ぶれる事はなかった。
川 ゚ -゚)「まだ、考え込んでいらっしゃるようだな」
姉のその言葉に、ヒートは舌打ちをしながら顔をしかめた。
口に咥えたコイーバを右手で弄びながら、やってらんねえとばかりに溜め息をつく。
そして先程よりもさらに体勢をだらしなく崩すと、両腕を頭の後ろに組み枕代わりにするように再び壁に寄りかかった。
313
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:40:30 ID:q7v0AJSc0
一瞬、クールの冷たい視線を感じたヒートだったが、殆ど物心ついた時からの付き合いである『義姉』のお堅い思考にはすっかり慣れていた彼女はあえて無視をした。
堅い思考や回りくどい事は苦手だ。
考えるくらいなら動いた方が早いし、理屈っぽいのは馬鹿な自分にはどうにも合わない。
リシャール・ニダーの『左目』と称される『ラーセン・ヒート』という人間は非常に短絡的な人間だった。
髪は赤く全体的に短いが、前髪の一部から右側頭部にかけてはアシンメトリーを描くように長く、中途半端に伸びた後ろ髪は、いわゆるポニーテールという形で後ろの方で縛っている。
314
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:41:20 ID:q7v0AJSc0
つい1週間ほど前に、酔った勢いでセルフカットした結果、この奇妙な髪型に落ち着いたのだ。
ちなみに姉妹からは散々からかわれたが、ヒート自身は結構気に入っているのため、しばらくカットする予定は無い。
顔立ちは整っており、瞳は切れ長でまるで虎のようにギラギラと輝く瞳は、本人の肌の色との対比でエキゾチックな魅力を存分に引き出している。
鼻も高く、その唇は黒人らしくぷっくりと膨らんでおり、ふとした時に見えるその犬歯はまるで牙のように鋭いものだから、そのワイルドでありながらどこか官能的な魅力も存分に引き出しているのだろう。
315
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:42:23 ID:q7v0AJSc0
背は高く、筋肉質で大柄。
服装はところどころに破れや解れが目立つ飾り気の無い、ボルドー色のつなぎ。
背中にはデカデカとイエローモンキーと書かれた英字のロゴと、ポップなタッチで描かれた大きな猿が水着の美女を食い殺すというショッキングなイラストが描かれている。
両腕の部分は7分のところで引きちぎられたかのように乱雑に裁断されており、露出した黒い肌からはトライバル模様のタトゥーが至るところに彫られている。
そして、何と言っても目立つ彼女の胸元を押し上げるように主張するウォーターメロンボールは、どうしてもつなぎに収まりきらないようで、ジッパーは腰元までしか閉じておらず、胸元は白いサラシで乱雑にぐるぐる巻きにされていた。
316
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:44:12 ID:q7v0AJSc0
ノパ⊿゚)y‐「考えたってよ、どうしようもならねーじゃねえかよ。もう、とうの昔に他人になった人間なんだからよ」
川# ゚ -゚)「おい」
『義妹』の拗ねたようなその言葉に『右目』と呼ばれる『ヘネシー・クール』が始めてヒートの方をしっかりと向いて怒気を孕んだ抗議の声をあげる。
外見から判断するに、ヒートとは何もかもが対照的な彼女だが、それは内面にも言える事だった。
粗暴で喧嘩っ早い(悪く言うならば、馬鹿)のヒートの面倒を幼い頃から見ていたクールは、幼少期から、常に冷静沈着で、しっかりと計画や計算をしてから物事にとりかかる人間だった。
317
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:44:55 ID:q7v0AJSc0
ヒートとは対照的な陶磁器のように白い肌を持つ彼女の美しさは神話に出てくる天使や女神を思わせた。
髪はセミロングでその色はしっかりと染色された艶のある黒。
瞳は青く、アーモンドのように大きく、魅力的だ。
高い鼻筋に、桜色の唇は彼女の白い肌に絶妙にマッチングしている。
清楚な白いシャツブラウスに、黒いパンツスーツに身をつつむ彼女の姿。
それはマフィアやギャングと言うよりも、SPや警察関係者と言った方がどこかしっくりとくるだろう。
318
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:47:40 ID:q7v0AJSc0
一見、フォーマルな装いに身を包んだ地味めな服装の彼女だが、強いて目立つ所があるとするならば、ジャケットの胸ポケットの部分に小さく英字で刺繍されている金色のロゴマークだろう。
「イエローモンキー」と縫われたそれは、控え目ながらも、彼女が北を征するニダーの子飼いである証としてしっかりと主張している。
足元はポピュラーな黒い革靴。
そしてパンツに隠れたくるぶしの辺りにホルスター。
両足にあるので、計2丁の拳銃を隠し持っている事となる。
もっとも、念には念を入れて装備しているだけで、グループ1の実力を誇る彼女が使った事は今まで1度も無かったのだが。
319
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:49:21 ID:q7v0AJSc0
背は女性にしては高めだが、常にヒートと並んで行動しているため、特別高くは見えない(ヒートは180センチ、クールは168センチ)。
体型はモデルのように細いが、その身体は数多くの修羅場で鍛えられた、しなやかな筋肉が全身を被っており、彼女もまたソウサクシティに根付く戦士の1人であることの証のようでもあった。
川# ゚ -゚)「ヒート。お前にもお父様の苦悩は分かるだろうが。お父様はつい先日、愛する息子を亡くしたばかりなんだぞ?」
ノハー⊿゚)y‐「そりゃあ、よお。俺だってシナーの兄貴は好きだったぜ?
親父と比べりゃあアホみてーだったけど、それでも歴としたファミリーの一員には変わりねー」
320
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:51:27 ID:q7v0AJSc0
ノハー⊿゚)y‐「でもよ、兄貴は……シナーの奴はもう『イエローモンキー』からとっくに離れた人間だぜ? そんなやつのために親父が塞ぎ込んじまったらよお」
ノハ;ー⊿ー)y‐「俺ら、ファミリーは、どうすりゃいいんだよ……」
ヒートは珍しく弱気な表情をクールに見せたあと、バツが悪そうに顔を伏せた。
川 ゚ -゚)「……」
クールの表情からわずかに戸惑いの色が見えた。
彼女は『義父』であるニダーと同じくらい、この愚直なまでに素直な妹を愛しているのだから。
321
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:52:45 ID:q7v0AJSc0
( `ハ´)
チャイニーズマフィア、ドラゴンの首領だったシナーは約8年までニダーのファミリーの一員として『イエローモンキー』に所属していた。
お調子者で、おおよそ裏の世界ではやっていけそうも無い程に気の弱いシナー。
太っちょでノロマ、要領もあまり良くない。
上司の使いっぱしりにされ、散々馬鹿にされてきた彼だったが、ある1点に関しては他の追随を許さぬ程の天才的な実力を持っていた。
それが、拳銃の腕だ。
.
322
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:53:54 ID:q7v0AJSc0
当時ソウサクシティに普及していた一般的な小形拳銃ではどんな凄腕のガンマンでも約50メーター以上の距離では通用しなかったと言われる。
しかし、小太りで汗っかきなひょうきん者の中国人。
杏露・シナーはその常識を不敵な笑みと共に覆してみせた。
彼がイエローモンキーのファミリーに入団して、約半年後の出来事だった。
当時ソウサクシティの南東を支配していた『ウビィーツァ』というロシアンマフィアと、人気の無い廃工場で薬の取り引きをさはていた時の話だ。
順調に進んでいた取り引きだったが、終了する直前に潜んでいた敵に奇襲をかけられる。
つまり、ハメられたのだ。
323
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:55:33 ID:q7v0AJSc0
圧倒的な物量、そして別件によりニダーを始めとする幹部達が居ない現状。
次々と死んでいく味方達。
まさに絶望的な状況により、窮地に陥るイエローモンキーだったが、その流れをたった1人の男が見事に変えてみせた。
それが、当初下っ端としてドライバーをやっていた杏露・シナーだった。
元々臆病者だった彼は突然の襲撃に気付くと同時に全力でその場から逃亡。
一見情けなく、とても誇り高きマフィアグループ、イエローモンキーの所業とは思えない行動。
しかし、彼とてファミリーをみすみす見捨てるような薄情者では無かった。
324
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:56:35 ID:q7v0AJSc0
彼はその場から離れると廃工場の向かいにある見晴らしのいい建物の3階に隠れた。
そして当時から愛用していた、特殊な改造を施した2丁の回転式拳銃『ピースメーカー』を両手に構える。
戦場からの距離、目測、約120メーター。
小形拳銃では全く役に立たないと言われる50メートルの距離の壁の、さらに倍以上の距離。
銃に知識がある者なら総じて「無謀だ」と鼻で笑うであろう挑戦を、杏露シナーはやってのけた。
まるで、彼の中に眠っていた龍の魂を解き放つかのように。
325
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:57:44 ID:q7v0AJSc0
彼が愛用している改造済みピースメーカー2丁の装弾数は6+12で18発。
風向き、南から約3メートル。
風を裂くような乾いた銃声が唸るように響き、彼の両手から薬莢が踊るように飛び出し、閃光が弾け飛ぶ。
120メートルの無謀な距離。
龍にとって、無意味。
18発の弾丸は寸分の狂いもなく18人の眉間に命中。
奇襲をかけたにも関わらず、スナイパーに狙撃されたと慌てた敵方は総崩れ。
かくして、この絶望的な状況を杏露・シナーは見事に救い、異例の大出世を遂げてみせたのだ。
326
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 01:59:18 ID:q7v0AJSc0
見た目からは想像できない実力に、いざという時の適格な判断力に行動力。
そして臆病でありながら愛嬌もあり、部下にも上司にも分け隔てなく丁寧にせっしていたシナーは首領であるニダーに大変気に入られ、実の息子のように可愛がられた。
シナーが結婚した時はニダーは涙を流しながら自分の事のように喜び、娘が産まれた時は名付け親にもなった。
マフィアグループというのは、総じて悪人だ。
社会のルールに従えない、落ちこぼれのクズの集まりには違いない。
だが、それでもイエローモンキーというファミリー達は、死と隣り合わせの厳しい悪の世界に身を起きながらも、確かに幸せであったのだ。
327
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:25:08 ID:q7v0AJSc0
―――しかし、8年前。全てが変わってしまったのだ。
328
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:25:56 ID:q7v0AJSc0
ニダーがファミリーの幹部と庭で食事をしていた時だった。
青空の下、談笑を楽しんでいた彼らに当時、北西に領土を広げていたコロンビアマフィア『ハイハット』が奇襲を仕掛けてきたのだ。
団欒の幸せな温もりが一瞬にして戦場と化す。
首領であるニダーの長年の経験とそのカリスマとも言えるリーダーシップが功を制し、なんとか劣勢を覆して攻勢に転じるイエローモンキー一行だったがここで不幸な偶然が起きる。
フルオートのライフルに指をかけたまま頭を撃ち抜かれた敵兵の弾丸が手下を庇ったニダーの両目に掠ったのだ。
すぐさま緊急手術が行われるも、手の施しようもなく、彼は視力を失い、永遠の暗闇に閉じ込められてしまったのだ。
329
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:26:43 ID:q7v0AJSc0
その後、辛くも勝利を治めたイエローモンキーだったが、代償は大きく、ファミリーへの精神的ダメージ、ニダーへの物理的ダメージと、かなりの痛手を負う事となってしまったのだ。
盲目となったニダーの世話をファミリーは嫌がる事なく、進んで行った。
例え目が見えなくなろうが、脚が立たなくなろうが、ファミリーにとってリシャール・ニダーはイエローモンキーの『偉大なる父親(ゴッドファーザー)』なのだから。
無論、言うまでもなくそのファミリーの輪の中にはシナーの姿もあった。
ニダーを実の父親以上に慕っていたシナーは彼の目となり、手となり、足となった。
彼の言うことにいつも忠実に従い、彼の事だけを考えて行動した。
330
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:27:37 ID:q7v0AJSc0
父の為、ファミリーの為なら何だってやった。
武器を捌き、女を拐い薬浸けにし、殺しだってやった。
それでもシナーは幸せだった。
ファミリーに尽くし、父に尽くす人生が幸せだった。
父の、あの一言を聴くまでは。
<ヽ`∀´>「私は、この見えない瞳に、神を見た。信仰に目覚めた。」
首領、リシャール・ニダーのこの一言を。
331
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:28:23 ID:q7v0AJSc0
ある者はとうとうボケたのかと落胆した。
そしてある者は薬のやり過ぎで気狂ったのだと罵った。
ある者は盲目に落ちて命が惜しくなったのだろうと同情し、ある者は見切りを付けるようにそっとファミリーを去った。
結果、ソウサクシティ1の団結力を見せていたイエローモンキーファミリーは大きな内部分裂を起こす事となる。
ニダーはそれまで手を染めていた、ドラッグの売買と売春の斡旋等を全て放棄すると宣言した。
善人にとっては尊敬に値する宣言かもしれないが、悪人からするとまさに気狂った発言でしかない。
薬もダメ、女もダメ。
残った武器の売買と領土の場所代だけで今までの生活が出来るだろうか?
否、出来る訳がない。
332
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:29:14 ID:q7v0AJSc0
当然、シナーは猛反対した。
金銭的な問題も大前提だったが、それ以上に親愛なる父であるニダーが若い連中に嘲笑され、見下されている現状がどうしても我慢ならなかったのだ。
自分を含め、いかにファミリーがニダーを愛しているかを説きながら、何日も何週間も、何ヵ月もかけて彼を説得をした。
しかし、ニダーは断固たる決意で宣言を覆す事をしなかった。
そしてついにシナーはイエローモンキーファミリーから絶縁を決意。
その後、ニダーの元を去るつもりだったファミリーの若い連中を中心に引き抜き、西を去る。
そして程なくして、中国人を中心とした多国籍チャイニーズマフィア『ドラゴン』を南に結成したのである。
333
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:30:31 ID:q7v0AJSc0
つまり、要点をかいつまんで語るとするなら
ば、シナー率いるドラゴンの人間は、父であるニダーを信じてイエローモンキーに尽くし続けたヒートやクールからすると、言い逃れの出来ない『裏切者』なのだ。
しかし、それでもクールはニダーを父親以上に慕い、愛していたシナーの事が嫌いになれなかった。
もちろん父であるニダーだって同じ気持ちであろうことは、賢い彼女には容易に想像できた。
川 ゚ -゚)「……お父様にとってはシナー氏は息子も同然なんだよ」
川 ゚ -゚)「例え、血縁も、思想も、そしてチームも。何もかもが違っても、お父様の中では、な」
334
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:32:38 ID:q7v0AJSc0
クールの言葉にヒートはまた舌打ちをしてバツの悪そうな顔をした。
ヒートもまた、シナーの事をどこか嫌いになりきれない部分があるのだろう。
クールもそれはしっかりと分かっていた。
ノハー⊿゚)y‐「あー、ところでよー。シューの奴はどうなんだよ」
嫌な沈黙を打ち消すためか、ヒートが少々強引に話題を変えてきた。
彼女のこういう不器用なところを何度も見てきたクールは特に突っかかる事なく、自然に返す。
川 ゚ -゚)「昨日、様子を見に行ったが進展は無さそうだったな。3日程寝てないようだったので流石に今朝、無理矢理にでも寝かせたよ」
ノパ⊿゚)y‐「奇人変人のアイツのレーダーにも犯人は引っ掛からねーか。しっかし3徹とはなあ、アイツもシナーのケツ拭いてやろうと必死なんだな」
335
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:34:15 ID:q7v0AJSc0
川; ゚ -゚)「いや、犯人の捜索は最初の1日だけで匙を投げ、残りの2日間は取り憑かれたようになんか意味の解らん踊りを踊っていたようだが」
ノハ;ー⊿ー)y‐「……アイツはよお、本当に何考えてんだか分かんねーわ。うん、マジで」
ちなみに話に出てきたシュールとはクールとヒートの末の妹で『第三の目』と呼ばれる日系アメリカ人の少女である。
彼女は所謂、天才と呼ばれる人間で武器やトラップの発明やハッキング、クラッキングなど、メカニック関係や、サイバー関係に関するものならば何でもこなし、何でも作り、何でも壊してみせるチートのような存在。
言うなれば電脳世界の十徳ナイフのような存在が『マーテル・シュール』という天才少女だった。
336
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:35:54 ID:q7v0AJSc0
ただ、あまりにも天才過ぎたためなのか、それとも単に彼女の性格なのかは不明だが、度々常人には理解しえない『奇行』を起こす事があり、その世界観はかなり独特である。
先天性の白皮症を患っている為、滅多に外に出ることが無く、目立たない存在だが、彼女もまた父を愛し、2人の『義姉』を愛し、ファミリーを愛する人間の1人なのだ。
川 ゚ -゚)「シュールも情報は集めているみたいだがな、芳しくないのだろう。
いざとなったら、私達も協力して人海戦術であたるしかなるまい」
ノパ⊿゚)y‐「頭失った『ドラゴン』の残党どもが反発するぜ? 何てったって親父が葬儀に参加する事を拒んだ低能野郎の集まりだからな」
川# ゚ -゚)「おい」
ノハー⊿゚)y‐「ああ、悪かったって」
337
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:36:51 ID:q7v0AJSc0
挑発するようなヒートの言葉にクールが怒りを露わにする。
いかにも適当な謝罪を返すヒートの視線は向かいの壁をボーっと眺め、当時のニダーのもの悲しげな背中を思いだしていた。
そして、再び2人の間に沈黙が訪れた。
(;・∀ ・)「クール様! クール様!!」
沈黙に身を委ねる2人を叩き起こすかののように1人の青年がドタバタと廊下を掛け上がってきた。
その様子から察するに随分と慌てているようだ。
338
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:38:52 ID:q7v0AJSc0
川 ゚ -゚)「一体何事だ。お父様の私室の前で慌ただしい」
(;・∀ ・)「もっ、申し訳御座いません! ですが至急お伝えしたいことが……」
バッタのようにペコペコと頭を下げる青年は恐る恐るといった様子でクールに何やら耳打ちをした。
すると、クールの眉がピクリと動き少し考えたような素振りをした後「通せ」と命じた。
かしこまりましたっ! と軍人のような大声を上げてまたドタバタと廊下の奥に消えて行った。
それを見送るとクールは後を追うように静かに歩きだした。
339
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:40:47 ID:q7v0AJSc0
川 ゚ -゚)「何をしている、ヒート。お前も客人を迎える準備をしろ」
ノハ#゚⊿゚)y‐「はあ!? 客人!? 親父があんな状態だっつーのにわざわざ顔突っ込んで来る奴がいんのかよ!?」
一体誰だ! とわめき散らす妹をたしなめるように、クールは静かに口を開く。
川 ゚ -゚)「娘さんだよ」
ノハ#゚⊿゚)y‐「あぁ!? 娘だあぁ!?」
川 ゚ -゚)「ああ。今訪ねて来たのはシナー氏の実の娘の……」
340
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:41:28 ID:q7v0AJSc0
川 ゚ -゚)「杏露・スニフィ嬢だ」
.
341
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 02:42:54 ID:q7v0AJSc0
くっそ長くなって申し訳ないです。
以上です。でもまだ続きますんで次回は中編其の二に続くって事でご勘弁下さい。
342
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 05:58:58 ID:E88LCn1U0
zzz…
343
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 06:15:52 ID:03lr9tZs0
おつ
344
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 10:02:45 ID:5Pr1ee1A0
おつです!
続きが楽しみ
345
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 12:36:55 ID:K04xzxP20
>>345
眠たくさせる程に退屈でしたら申し訳ありませんでした
取り敢えず今日の深夜を目処に投下します。
346
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 14:20:50 ID:5Fp.T6EM0
待ってるよ
347
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 14:27:04 ID:hIQ3a3/.0
スニフィ来たっ!!!
wktkしながら待ってます
348
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 20:42:48 ID:MbI9BFr60
ビロードいいキャラしてた
投下楽しみ
349
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 21:18:39 ID:K04xzxP20
支援感想ありがとうございます。
深夜0〜1時に投下します。
350
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 22:40:29 ID:qTomjgUY0
>>1
は構想を安価で決めることがあるがそれで全体のストーリーも変わるんだろうか
個人的には1回目の安価では西、2回目ではシリアスって偶然にも自分が読みたいストーリーになってるんだが
バトルバージョンも読んでみたかった
351
:
名も無きAAのようです
:2015/03/03(火) 23:02:53 ID:AWLW82No0
>>350
もの凄くガッツリ変わります。
ストーリーによって敵味方ガッツリ変わりますし、東ルートではシナーはまだ生きている予定ですし。
バトルバージョンだとスニフィが前編から登場してガッツリとバトルさせるつもりでした。
安価や投票に参加頂いている皆様、ありがとうございます。
352
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:01:44 ID:HiScNp2.0
ゆっくりと投下していきます。
353
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:03:23 ID:HiScNp2.0
服装はワインレッドのスーツに白いシャツ。
マスタードイエローのネクタイには英字でイエローモンキーの刺繍。
ベルトと靴は同じクロコダイル革のマホガニー色の物だ。
そして右腕には長めに作られた杖が握られている。
よくよく観察すると、かなり細かいハングル文字でなにやら文章が彫られているようだったがそれを解読するような余裕は、無理を言って押し掛けたスニフィには無かった。
「声を聞かせてくれて、本当に嬉しいニダ」
「恐縮です」
ニダーはもの静かな口調で客人を迎えると、密かに微笑んでみせた。
その両脇にボディーガードとしてよ控えるヒートとクールは久々に父親の笑った顔を見たような気がして、少し心が軽くなった。
354
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:04:08 ID:HiScNp2.0
>>353
誤爆 無かった事にして下さい
355
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:06:10 ID:HiScNp2.0
全体をウォールナットの色に統一された、広い室内。
広さの割にインテリアなどは殆ど無く、大きな長方形のデスク。
それから今は主の影に隠れたチェアーのみで、暖かみのある色彩で統一された室内にしては少々寂しさを覚える程にストイックな部屋だった。
デスクの上には木目模様の着色がされた大きめのライトスタンドと、写真立てが3つきちんと並べられている。
対して机と同じ色の大きめのヒュミドールや、バカラのロックグラスに殆ど中身の減っていないリシャールのクリスタルデキャンタなどは無造作に端の方に追いやられており、わずかにホコリすら被っている。
356
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:13:06 ID:HiScNp2.0
自分が一緒に住んでいた時は、ブランデーと葉巻が手離せない人間だったのに。と、スニフィはなんとなく昔を思い出しつつ、目の前にいる部屋の主に深々と頭を下げた。
Σz ゚ー )リ「突然のご訪問、お許し頂きまして感謝の言葉も御座いません」
<ヽ`∀´>「スニフィ、頭を上げて欲しいニダ」
部屋の主、リシャール・ニダーは今年で63になる盲目の老人だ。
真っ白に染まった頭髪はポマードを擦りつけるようにしてオールバックにされ、顔に深く刻み込まれた皺と合わせ、年齢と共に醸し出される、穏和な雰囲気と独特の緊張感を見るものに与えている。
瞳は常に閉じられ、口元には立派な顎髭を蓄えていて、こちらも髪の色と同様、見事な白色である。
357
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:14:24 ID:HiScNp2.0
服装はワインレッドのスーツに白いシャツ。
マスタードイエローのネクタイには英字でイエローモンキーの刺繍。
ベルトと靴は同じクロコダイル革のマホガニー色の物だ。
そして右腕には長めに作られた杖が握られている。
よくよく観察すると、かなり細かいハングル文字でなにやら文章が彫られているようだったがそれを解読するような余裕は、無理を言って押し掛けたスニフィには無かった。
<ヽ`∀´>「声を聞かせてくれて、本当に嬉しいニダ」
Σz ゚ー )リ「恐縮です」
ニダーはもの静かな口調で客人を迎えると、密かに微笑んでみせた。
その両脇にボディーガードとして控えるヒートとクールは久々に父親の笑った顔を見たような気がして、少し心が軽くなった。
358
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:16:21 ID:HiScNp2.0
ノハー⊿゚)y‐(しっかしよー。こいつって、いつ見ても……)
ニダーの左側に控えているヒートは出来るだけ威圧感を与えないように注意しながら、成長したかつてファミリーの一員だったスニフィをジィっと監察した。
Σz ゚ー )リ
その瞳は黒く、アジア人というよりもクールのような白人寄りの大粒のアーモンド状。
鼻は高く筋が通り、唇は赤みの強いルージュがしっとりとした艶を出しており、言うまでも無い美人顔。
七三に分けられた長めの黒髪は右耳の後ろ辺りに団子のように纏められており、竜を模したであろうカンザシでしっかりと止められていた。
359
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:19:06 ID:HiScNp2.0
服装はボディラインを強調する、いわゆるチャイナドレスやマンダリンドレスと言われるそれで、全体的に黒地で纏められた絹の生地に金色の龍の刺繍が這うようにして縫われている。
右の腿の辺りから深く、大胆に開いたスリットからは黒いストッキングに包まれた細い美脚が姿を見せており、くるぶしにはクールのように黒いホルスター。
そして足下には黒いピンヒールといった出で立ち。
ヒート程では無いが平均よりはかなり大きめのバストや、細い腰元を余計に強調するような膨らみを見せるヒップ。
彼女の恵まれたスタイルとその服装は、世の男を魅了するような、艶やかなものだった。
360
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:20:46 ID:HiScNp2.0
ノパ⊿゚)y‐(シナーと顔似てねーよなー。いや、マジで)
しかし、そのファッションセンスはヒートには理解出来るものでは無かったようだ。
ノハ;゚⊿゚)y‐(つーか何だあのド派手で露出だらけの服? あいつ普段からあんな派手なもん着てんのかよ)
ノハ;ー⊿゚)y‐(いきなり奇襲とかに合ってドンパチやってる時に、あんな薄着じゃあ色々と不味くね? いや、マジで)
ヒートとスニフィは、過去にこの館でファミリーとして暮らした間柄だ。
だが、年上ながら色気付いた話に縁が無ければ興味も無いヒートから見たら、スニフィの美的価値観やセンスは理解出来ないものだった。
361
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:21:40 ID:HiScNp2.0
もっとも、年柄年中ショッキングなイラストが描かれた武骨なつなぎを愛用している、全身トライバルタトゥーに身を包んだ大柄な黒人女と、過剰なまでの色気を振り撒く勝ち気な中国女のどちらがマシかと言われても、なかなか解答には困るだろうが。
コイーバを唇で器用に弄びながら『左目』のヒートがそんなどうでもいい事を考えている中、スニフィはその艶やかな唇を開き、用件を切り出していた。
Σz ゚ー )リ「本日はニダー様に、こちらをお渡ししに来ました」
スニフィが右手に抱えた小さな箱をニダーの前に静かに置いた。
ボロボロになり、とても贈り物としては不適切であろう革製の、その小さな入れ物をニダーの右側に控えていたクールが静かに開いた。
362
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:23:36 ID:HiScNp2.0
川 ゚ -゚)(……銃か)
そこには銀色に輝くリボルバーが収まっていた。
クールが丁寧な手付きで主の手元に手渡すと、ニダーはおぼつかない手付きで銃の輪郭を確かめるようになぞり始める。
3秒程、無言で銃をなで回していたニダーがやがて静かに口を開いた。
<ヽ`∀´>「……シナーの形見の『白龍』、か」
Σz ゚ー )リ「ええ」
『白竜』と『黄龍』。
シナーが愛用していた、改造済み回転式拳銃の愛称だ。
363
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:25:44 ID:HiScNp2.0
装弾数を通常の倍に改造した、銀色の塗装に龍の彫り物が入った物が白竜。
殺傷能力を極限まで高める改造を施し、黄金の塗装に同じく龍の彫刻が目印の黄龍。
シナーはこの2丁の銃をイエローモンキーのファミリーに在籍していたか時から使っていた。
Σz ゚ー )リ「お渡しした白竜の方は、私室に置き忘れていたそうで、殆ど汚れはありませんでした」
<ヽ`∀´>「あそこまで銃を愛していたシナーが。か」
Σz ー、 )リ「ええ。就寝時に奇襲を受けたようで……よほど慌てていたのでしょう」
スニフィは静かに俯いた。
その表情から察するに父を失った悲しみはしばらく消える事は無いだろう。
例え最低の悪人でも、娘にとってはかけがえの無い父親なのだから。
364
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:27:59 ID:HiScNp2.0
<ヽ`∀´>「『黄龍』の方はスニフィが?」
Σz ゚ー )リ「ええ。唯一の片身ですから。黄龍は亡骸の側に落ちていました」
Σz ゚ー )リ「首領の……父の、血と臓物にまみれて暫くは触る事も出来ませんでしたが」
<ヽ`∀´>「……そうか」
シナーの遺体を最初に発見したのはスニフィだったそうだ。
彼女は、血と臓物を撒き散らした父の屍を見て、一体どんな気持ちになったのだろうか。
ニダーの右側に控えているクールの顔が少しだけ歪んだ。
向かい側のヒートも、何か言いたそうな顔をしながらスニフィから視線を外し、無言で葉巻をいじっていた。
365
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:28:50 ID:HiScNp2.0
Σz ゚ー )リ「用件は、もう1つあります」
気まずい雰囲気を切り崩すように再びスニフィが口を開いた。
Σz ゚ー )リ「今回は、こちらをお渡しする他にニダー様に『ご忠告』があって参りました」
眉をしかめたヒートの視線がスニフィに戻る。
やけにハキハキと物を言うスニフィの口調や、忠告という言葉に少し違和感を感じたからだ。
スニフィはニダーの見えない両目を射抜くように見詰めると突き放すようにこう言った
366
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:30:04 ID:HiScNp2.0
Σz ゚ー )リ「今回の父の一軒ですが、『元』ファミリーであるイエローモンキーには、一切関わらないように。と元ドラゴンのNo2としてご忠告に参りました」
.
367
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:32:21 ID:HiScNp2.0
その挑発的な言葉にヒートの瞳がカッと開き、葉巻が落ちることも気にせずスニフィに怒鳴りかかった。
ノハ#゚⊿゚)「んだとテメエ!?」
川; ゚ -゚)「よせ、ヒート」
掴みかからんとばかりに憤るヒートをクールがたしなめる。
一瞬にしてピンと音が鳴りそうな程の緊張感が張りつめた室内で、ニダーだけは無言のままスニフィの言葉の続きを待っていた。
スニフィは獣のように牙を剥き出しにするヒートなど眼中に無いのか、ただニダーのみを見詰めて、こう続けた。
368
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:34:56 ID:HiScNp2.0
Σz ゚ー )リ「もちろんニダー様には父、シナーが大変お世話になり、そして娘の私共々可愛がって頂いた事も承知の上です。そのご恩は一生忘れる事はありません」
Σz ゚ー )リ「ですが、それはあくまで私達がファミリー『だった頃』の、過去の話です」
挑発的なスニフィの言葉にヒートの身体にグッと力が入るが、クールが視線で牽制をかける。
一触即発とはまさにこの事だろう。
それでもドラゴンが元首領、シナーの娘、スニフィは怯まなかった。
Σz ゚ー )リ「短い間でしたが、私もニダー様の元で育った人間です。
家族想いのニダー様が『元』息子を亡くした時どのように考えるか」
Σz ゚ー )リ「また、どのような『報復』に出るかは、まだまだ青い私にでも容易に推測できます」
369
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:39:04 ID:HiScNp2.0
スニフィは知っていた。
目の前にいる優しき大悪党が裏切者となった父、シナーの事を心の隅で気に掛けている事を。
毎週日曜の礼拝では、自分のファミリーだけでなくシナーや娘である自分の加護を祈っていたことを。
そして、どうしようもなく自分達を愛していくれた事を。
Σz ゚ー )リ「ニダー様のお力を借りれば父の仇を討つことは容易でしょう。
敵方も今頃は元イエローモンキーのファミリーに手を出した事に気付き、ゴッドファーザーの報復に怯えているやもしれません」
Σz ー )リ「ですが、それでも。例え愚か者だと嘲笑されようが、例え恩知らずと罵られようが、父の敵は……」
Σz#゚ー )リ「このスニフィの手で討ちたいのです!!」
370
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:40:07 ID:HiScNp2.0
その時、ニダーの見えない瞳には確かに見えた。
陽光のように輝く黄金の覚悟の光。
真っ赤に染まる憎き仇へのマグマのような怒り。
それら全てを堂々と喰らい、静かに牙を覗かせる、巨大で、もはや神々しくすらある、黄金に輝く龍の影を。
確かに、リシャール・ニダーは見たのだ。
Σz#゚ー )リ「失礼は承知の上です! ですがこの一件に関しては、どうか私に全ての片をつけさせて下さい!!」
スニフィは叫ぶように声を張り上げると、先ほどとは比べ物にならない勢いで深々と頭を下げた。
371
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:41:48 ID:HiScNp2.0
忠告などという挑発的な宣言をした彼女の願いは、むしろ赦しを乞うような不器用な彼女なりのケジメのつけかただった。
ニダーは悟った。
例え、自分がどんなに引き留めようが、懇願しようがこの龍の魂をもった戦士は死地に行くのだろう、と。
それでこそ、親愛なる自分の『ファミリー』なのだ。と。
再び室内に沈黙が訪れる。
頭を下げたまま動かないスニフィ。
そしてそれを盲目の瞳で眺め、静かに決断しようとするニダー。
そんな父を見守るクール。
だが沈黙を破ったのは……
372
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:50:47 ID:HiScNp2.0
ノハ#゚⊿゚)「ざっけんじゃねえぞスニフィィィィィィィィ!!」
イエローモンキー1の腕っぷしを誇り、ニダーから自身の『左目』と称される女。
またの名を『赤い虎』と恐れられる暴君、『ラーセン・ヒート』の割れんばかりの怒声だった。
373
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:55:13 ID:HiScNp2.0
その表情は憤怒に取り付かれ、まさに虎のようにギラギラと瞳を光らせ、獣のような犬歯を剥き出しにしている。
下手な男など比べ物にならないぐらい鍛えあげられた彼女の肉体からは無数の血管がミミズのように浮き上がり、ぐぐっと音でも立てるような勢いで全身の筋肉が震えながら隆起していく。
ノハ# ⊿゚)「マジで……!」
瞬間、ヒートの周囲だけ急激に温度が下がった。
やがて、パキパキと何かが割れるような音が彼女の周りから響き出し、全身から溢れ出る冷気がその鍛えあげられた右腕に吸い込まれるように集められていく。
374
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:56:24 ID:HiScNp2.0
ノハ# ⊿ー)「マジでえぇ……!!」
やがて目に見えない冷気は形を作り、バキバキと先程よりも激しい音を立てながら彼女の右手に『赤く染まった氷結』を形成していく。
彼女の逞しい黒い右腕がルビーのような結晶にしっかり覆い尽くされたと思った時には、あっという間に長さ1メーター程の氷の槍に形を変えていた。
そして驚きの表情を浮かべるスニフィを鋭い眼球で睨みつけ……
ノハ# ⊿ )「マジで粉々にすんぞダボがあああああぁぁぁぁぁ!!」
咆哮。
正しく、虎の、咆哮。
.
375
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 01:58:37 ID:HiScNp2.0
そのまま飛び掛からんとするヒートを瞬時に飛び出したクールが背中から慌てて取り押さえ、なんとか宥めようとするも、真っ赤な結晶に染まりつつある巨大な虎の怒りは収まらない。
ノハ#゚⊿゚)「テメェら『ドラゴン』のダボ共は親父にどんだけ恥かかしゃあ気が住むんだよ!? わざわざ丸腰でテメェらの大将の葬式に出向いた親父を門前払いしたかと思ったら今度はこれ以上関わるなだああ!?」
ノハ#゚⊿゚)「あんまりナマ言ってんとテメェの身体凍りつかしてマジで粉々にしちまうぞダボハゼがあああぁぁ!!」
川; ゚ -゚)「よせ! ヒート!!」
376
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:00:28 ID:HiScNp2.0
食ってかからんとするヒートの左腕を全力で掴み、顔を歪ませながらも必死に引き留めるクールだったが、それでもヒートの勢いは止まらない。
彼女がここまで憤っている理由。
それはスニフィの忠告(という名の懇願)に腹を立てているだけでは無く、むしろ原因はそれ以前にドラゴンの残党達から受けた、父に対する冷遇が原因だった。
ノハ#゚⊿゚)「姉貴! 悔しくねえのかよ!? こいつらドラゴンは裏切者なんだぜ!? それでも親父は必死に見えない目ん玉見開いて、こいつら見守ってたんだ!!」
シナーが何者かに惨殺された知らせを聞いたニダーは、静かに涙を流し、神に祈っていた。
そして葬儀の日程が決まるとろくに武器も持たずに幹部連中のみを引き連れ、会場となった南側にある簡素な教会にすぐさま向かった。
377
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:01:58 ID:HiScNp2.0
しかし、ドラゴンの面々は他のマフィアグループであるニダーの参列を拒否。
せめて花1本だけでも手向けさせてくれと必死に食い下がるニダーを何か憐れなものを見るような視線で追い返したのだ。
ニダー自身は仕方がないと諦めをつけ、納得した振りをしていた。
それに習い他の幹部達もそれに黙って従っていたが、父が左目、ラーセン・ヒートだけは違った。
ノハ#゚⊿゚)「金だって支援して、組のまとめ方だって全て親父が教えてきたようなもんじゃねえかよ!! 親父は間違いなくシナーの、ドラゴンの連中の恩人に違いねえじゃねえかよ!!」
曲がったことはぶん殴って訂正し、邪魔するやつはぶん殴って道を切り開く。
考え込むような無駄な時間を過ごす位だったら、取り敢えず殴り込みに行く。
そんな短絡的かつ、愚直なまでに自分自身に素直な信条を持っていた彼女には、最愛の父親に向けて理不尽な態度で嘲笑するドラゴンの残党共が許せなかったのだ。
378
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:03:19 ID:HiScNp2.0
ノハ# ⊿゚)「なのに……!」
結局、後日単身ドラゴンの舘へ殴り込みに行こうとしたところをクールとシュールに見付かり、力づくで抑えつけられはしたものの、その遺恨は決して潰える事はなく、彼女の中で火種として燻っていたのだ。
ノハ# ⊿ )「なのにこのダボはあああぁぁぁぁ!!!」
ヒートが再び咆哮。
抑えつけていたクールを力任せに振りほどき両足に力を込め、獲物に飛び掛かるために姿勢を低く構える。
彼女はこの時、かつてのファミリーだったスニフィに明確な殺意を燃やしていた。
379
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:06:19 ID:HiScNp2.0
Σz; ゚ー )リ「……!」
今にも飛び掛からんとするヒートの殺気に押され気味だったスニフィは瞬時に頭を切り替えると、ヒートの獣のような瞳を睨み返しつつ強烈なカウンターを打ち込む為に、構えを取る。
川; ゚ -゚)「……ッチ」
時を同じくして、ヒートによって強引に振りほどかれたクールが瞬時に体勢を整え、左腕に力を込める。
暴走する妹を止める為に己の力を解放し、その腕に『青白い光』を徐々にまとう。
そんな混沌とした喧騒は一瞬にして静まりかえる事となる。
380
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:10:25 ID:HiScNp2.0
<ヽ ∀ >「止めなさい」
『偉大なる父(ゴッドファーザー)』。
リシャール・ニダーの、重く、力強い一言によって。
.
381
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:12:27 ID:HiScNp2.0
<ヽ`∀´>「スニフィ」
ニダーは杖を支えにおぼつかない脚でゆっくりと立ち上がり、スニフィの前までよたよたと歩みを進め、やがて静かに頭を下げた。
<ヽ`∀´>「娘が、失礼な事をしたニダ。許して欲しい」
Σz; ゚ー )リ「あっ……いや、私は別に」
親愛なる父が、裏切者である筈のスニフィに、頭を深々と下げている。
一瞬、ポカンとした表情で停止していたヒートだったが、状況を飲み込んだ瞬間、先程のような激憤が沸き上がり、抗議の叫びをあげた。
382
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:14:20 ID:HiScNp2.0
ノハ#゚⊿゚)「何でだよ親父いいぃぃ!?」
興奮のあまり、父にも食ってかかろうとするヒートに割って入るようにクールが遮りながら、冷めたような口調で口を開く。
川 ゚ -゚)「いい加減に落ち着けヒート」
ノハ#゚⊿゚)「姉貴……だってよお……?」
川 ゚ -゚)「ヒート」
ノハ#゚⊿゚)「だって……だってよお!?」
我を通さんと訴え続ける妹にクールは顔をしかめながら、底冷えするような低い声色で静かに怒りを露わにした。
383
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:16:00 ID:HiScNp2.0
川#゚ -゚)「お父様の声が聞こえなかったのか? 我が妹、ラーセン・ヒート……!」
姉の射殺さんばかりの冷たい眼差しを至近距離で浴びたヒートは、バツが悪そうな顔で何か言いたそうにモゴモゴと口を動かし、頭を掻きむしる。
やがて声にならない唸り声を上げながらその場で地団駄を踏み始めたかと思うと癇癪を起こすように「ああー!!」と大声を出しながら、氷の槍の輪郭を一瞬で消失させた。
そしていかにも機嫌が悪いとアピールするような乱雑な動作で、落とした葉巻をむんずと拾いあげると舌打ち1つ残して姉に背を向け、ズンズンと扉の方に歩みを進めた。
384
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:18:12 ID:HiScNp2.0
川#゚ -゚)「おい! 話の途中で何処に行くつもりだ!」
ノハ#゚⊿゚)y‐「るっせえ!! 腹が冷えたから便所行くんだよ!!」
呼び止める姉の声を無視して扉を勢いよく蹴飛ばして開くと、ヒートは大きな足跡を鳴らしながらそのまま退室していってしまった。
蹴りの反動で品の良さそうな赤茶色の、木製扉がキィッと悲鳴のような音を立てながら内側に戻り、やがて静かに閉じた。
妹の粗暴な態度にクールは頭が痛いと言わんばかりに大袈裟に頭を抱えながら「オマエが腹を冷やす訳が無いだろうが……」呟きと同時に小さなため息をもらす。
そしてスニフィの方に向き直ると父の動作に習うように彼女に深々と頭を下げた。
385
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:20:07 ID:HiScNp2.0
川; ー -ー)「申し訳無い、スニフィ嬢。妹の不躾な態度、姉の私が代わりに詫びさせて頂く」
Σz; ゚ー )リ「ニダー様もクール様も頭を上げて下さいよ! 元々失礼な事を言ったのはこちらなんですから!!」
深々と頭を下げるニダーてクールに、スニフィは少し困ったような顔でわたわたと頭を上げるように懇願する。
今でこそ違えど、彼女もまたイエローモンキーのファミリーだった人間。
ヒートの心情も、十分に理解していたし、イエローモンキーのファミリーがどれ程に深い絆で結ばれているかも知っていた。
なぜなら彼女自身も、この家族がたまらなく好きだったのだから。
386
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:21:36 ID:HiScNp2.0
<ヽ`∀´>「スニフィ」
クールの手を借りながら再び席についたニダーが、彼女に顔をしっかりと向けて口を開いた。
<ヽ`∀´>「敵の目星はついているニダ?」
ニダーのその言葉にスニフィは短く、はい。とだけ答えた。
多くを語らないあたり、やはりニダーに仇の正体を教えるつもりは無いようだ。
<ヽ`∀´>「その、敵についての情報源はどこからニダ?」
Σz ゚ー )リ「それはいくらニダー様でも教えられません」
<ヽ`∀´>「ジョニーウォーカーか?」
Σz ゚ー )リ「……」
<ヽ`∀´>「そうか」
387
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:22:36 ID:HiScNp2.0
無言を貫くスニフィの態度に、1人納得したような、態度で静かにニダーは頷いた。
そして、自分の顎髭を弄りながら何か考えるような動作をしたあと、またスニフィの方向に顔を向け、口を開いた。
<ヽ`∀´>「スニフィ。君の言う通り、この老いぼれは大人しく傍観させて頂く事にするニダ」
<ヽ`∀´>「けれど、1つだけ。1つだけ約束して欲しい事があるニダ。」
ニダーは真剣な声色でスニフィに語りかける。
彼女の方に顔を向けるニダーの瞳はもちろん閉じられている。
それでも、スニフィはまるでニダーから心の奥底まで見詰められているような気がして、なんとも言えないプレッシャーが彼女の身体を覆った。
388
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:34:25 ID:HiScNp2.0
<ヽ`∀´>「シナーのように生き急ぐな。我武者羅に突っ走って、どうか、どうかその命を散らすような事だけはしないでくれ」
<ヽ`∀´>「それだけニダ。それだけでいいニダ。どうかそれだけは、この死に損ないの爺の我儘を聞き入れて、どうか約束してくれ」
祈るようなニダーの言葉にスニフィは彼の瞳をじっと見つめる。
絡み合う事の無い視線が今、確かに繋がりあった気がした。
Σz ^ー )リ「ご心配は無用です」
スニフィは笑顔で、ニダーに答えた。
389
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:36:32 ID:HiScNp2.0
彼女はまるで踊るようにその場で勢いよく回転すると、太股に隠していた第3のホルスターから拳銃を取りだし、右手にしっかりと握ってニダーの見えない瞳に見せつけるかのように突きだした。
彼女の手に握られた、黄金に輝くリボルバー。
今は亡き、父親の形見。その名は……
<ヽ`∀´>「……黄龍」
龍が彫られた黄金色のシナーの忘れ形見は、ニダーの言葉に呼応するかのようにキラリと輝いた。
そしてニダーの言葉に肯定の意味を込め微笑みを見せたスニフィは、真剣な眼差しで声高らかに宣言する。
390
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:40:41 ID:HiScNp2.0
Σz#゚ー )リ「『ドラゴン』が首領、『杏露・シナー』が娘『杏露・スニフィ』」
Σz#゚ー )リ「その志、引き継ぎ、私は弱い自分と決別します!!」
Σz#゚ー )リ「我が名は『アブソリュート・スニフィ』! 『ウルボロス』が首領、アブソリュート・スニフィ!」
Σz#゚ー )リ「決して潰える事の無い、誇り高き龍の魂をここに示さんが為に!!」
Σz#゚ー )リ「そして万物をも屈伏させる絶対的な龍の力を示す為に!!私は……私は……!!」
Σz#゚Д )リ「父の仇を討ってみせる!!」
暗闇に飲み込まれた瞳の奥、ニダーの瞳は確かにその姿を見た。
蒼い息吹を小さく漏らし、見るもの全てを屈服させる、黄金に輝く、龍の姿を。
そしてその龍を従える、誇り高き彼女の姿。
天高く届けと黄金の拳銃を突き上げる、まさに、戦乙女の姿を。
391
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:42:17 ID:HiScNp2.0
Σz ゚ー )リ「再見、翁翁(さようなら、お祖父様)」
チャイナドレスを小さく翻し、足音を鳴らしながらスニフィは颯爽と歩き出して行く。
その、凛々しき佇まいは、まるで龍の如く、気品高く、美しいものであった。
<ヽ`∀´>「また会おう、愛しき孫娘」
ニダーはゆっくりと瞳を閉じながら静かに呟く。
龍の魂を引き継ぐ、親愛なる『孫娘』を。
スニフィを信じ、そして、小さく、強く、願った。
<ヽ`∀´>(龍の魂を持つ戦士に、神の御加護があらんことを……)
.
392
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:44:11 ID:HiScNp2.0
―――その願いが、無惨に破れさる事も知らずに。
.
393
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 02:44:59 ID:HiScNp2.0
―――――――――――――――――
.
394
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 03:05:51 ID:HiScNp2.0
雲がかかった三日月照らすスラム街。
とある西部の薄汚れた路地裏で1人の年老いたホームレスがディナーを探し、ダストボックスを漁っていた。
汚物を掻き分ける事、約10分。
殆ど形の残っているチキンの残骸に顔をほころばせる浮浪者に、小さく黒い影が飛び掛かる。
/# ,' 3「うわっ……この糞ねずみが!!」
食い物の匂いに釣られ路地裏にやってきた1匹のドブネズミがチキン目掛けて飛び出したのだ。
/# ,' 3「このっ! このっ! どっか行けや!!」
395
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 03:07:07 ID:HiScNp2.0
しかし身体の大きい人間には敵わず、チュウチュウとかん高い鳴き声をあげながらと逃げ出していく。
ダストボックスから離れたネズミは道なりにスラムの路地裏チョロチョロと音を立てながらを突き進む。
そしてゴミ山の辺りを通りかかったところで……
―――暗がりから矢のように飛び出した人間の手によって一瞬で握り潰された。
.
396
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 03:09:26 ID:HiScNp2.0
叫び声を上げる事すら許されなかったドブネズミの亡骸は吸い込まれるようにゴミ山の中へと消えていく。
やがてゴミ山の奥に広がる、腐臭ただよう暗がりから、ボリボリと何かを噛み砕くような音が鳴り出す。
やがてその音が、ぐちゅぐちゅと言った生々しいものに変わると同時に、小さな鳴き声のようなものが微かに響いた。
―――――わふぅん。
と。
397
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 03:10:18 ID:HiScNp2.0
以上、後半に続く。
ありがとうございました。
398
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 03:38:45 ID:RVbECozcO
乙。面白いよ
399
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 06:57:08 ID:ebWx9iMI0
おつ
400
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 13:16:38 ID:W044AsTI0
犬の出番が少ないことが不穏でしかない
401
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 14:32:33 ID:uUO.3mPc0
漫画でも主人公不在は多いからな
402
:
名も無きAAのようです
:2015/03/04(水) 19:08:40 ID:J9s8HNg20
今回も乙
ビーグル怖いです
403
:
名も無きAAのようです
:2015/03/05(木) 05:01:48 ID:SVoDhe0s0
乙や感想ありがとうございます。
2日以内に後編を投下します。
また2話完結後に番外編についての投票or安価を行いますのでご了承下さい
404
:
名も無きAAのようです
:2015/03/06(金) 19:31:25 ID:09HVQ3sE0
お、番外編もあるのか!
楽しみ。待ってるぜ
405
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 03:45:52 ID:3GImjMyI0
1です。
今夜の深夜0〜1時に後編を投下します。
またこれにて第2話完結となりますので予告していた番外編の投票を開始します。
番外編は前後編無しの1話完結。
本編で拾い切れなかったキャラを中心にやって来たいと思います。
今回は、東、南&北、交差点の3択になりますので、よろしかったら投票お願いいたします。
406
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 03:49:05 ID:ynTTJU7s0
乙
楽しみにしてる
東に投票しよう
407
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 03:49:53 ID:3GImjMyI0
東…1.5話 拷問
ハインリッヒ、ツー、フィレンクト
アマレット・ツーが目覚めると、そこは薄暗い地下室のようだった。
自分の両手両脚は壁に張り付けられるように完全に拘束され、口にはギャグボール。
混乱するツーの目の前に、やがて2人の男女が現れる。
それはサディストと恐れられた女、東のクリムゾンヘッドが首領ハインリッヒと、その右腕のフィレンクトだった。
次第に状況を把握し、己の運命にすすり泣くツー。
そしてハインリッヒはそんなツーを宥めるかのように、落ち着いた表情でこう告げる。
「まあ、実のところ、お前は今から死ぬんだけどよお」
ソウサクシティ1のサディストによる悪夢のような拷問が、今、始まる……
ギャグ☆
シリアス☆☆☆
エロ☆
グロ☆☆☆☆☆
408
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 03:52:15 ID:3GImjMyI0
南&北…2.5話 龍
スニフィ、ペニサス
とある筋から父、シナーの仇は北のナインテールの者だと掴んだスニフィ。
ドラゴンの残党の中でも、誇り高く、また強者のみを厳選し新しく発足した新グループ『ウルボロス』の面々を引き連れ、北の領土に仇討ちに向かう。
圧倒的な力を見せ付け、全てを焼き払わんとする龍の魂を胸に突き進むウルボロスの前に、偶然にもある1人の女が立ち塞がる。
ボサボサの黒髪にすっぴん。あくび混じりの何ともやる気の無い表情を見せるジャージ姿の女『カリラ・ペニサス』。
ナインテールの幹部だと名乗る女に対し、闘志を剥き出しで襲いかかるウルボロスの面々。
50対1という圧倒的な戦力差。だがスニフィの胸には漠然とした、嫌な予感が広がっていた……
ギャグ☆
シリアス☆☆☆☆
エロ☆
グロ☆
409
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 03:53:33 ID:3GImjMyI0
交差点…2.5話 紳士
デミタス、ドルシア、ニュックン
ジョニーウォーカーことデミタスに不思議な力を見せ付けられ、すごすごと逃げ帰ったニュックン。
だが逆恨みした彼はジョニーウォーカーと、彼と親しい女性であるドルシアを抹殺する計画を立てる。
そしてその夜、ドルシアが1人で店仕舞いをしているのを確認したニュックンは大勢の仲間達と共に報復に向かう。
だが彼はまだ知らなかったのだ。
コーヒーと平和と秩序を愛する、黒い紳士を敵に回すことが、どれだけ恐ろしいかと言う事を……
ギャグ☆☆
シリアス☆☆☆☆
エロ☆
グロ☆☆
410
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 03:54:52 ID:3GImjMyI0
以上の3択になります。
投票よろしくお願いいたします。
411
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 06:37:18 ID:tAwus6aA0
交差点
412
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 07:07:03 ID:n.McMSOs0
東に一票
413
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 07:11:56 ID:xXD/MTTo0
交差点!!
414
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 07:47:44 ID:Oe8lhscM0
交差点
いつも楽しみに見てるよ
415
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 08:02:53 ID:tq.8jyIg0
交差点に一票
416
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 08:08:52 ID:y.20NHD20
おお、ニュッくんは無事逃げて生き延びてたのか。
交差点で
417
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 08:50:37 ID:45N8lII60
交差点!
418
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 09:44:49 ID:j93vH49E0
ヤバい全部見たい
2話前編見た後にシナー生存ルートがあったぐらいのさらっとでいいからボツになった話教えて欲しい
419
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 10:28:28 ID:RcNfU/LY0
交差点に一票
420
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 10:35:59 ID:RGOVKMGM0
交差点!
421
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 10:37:14 ID:qM6HKVwYO
リョナリョナ期待の東一択
422
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 10:44:33 ID:43pyUaI.0
南&北が読みたいです
423
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 12:51:16 ID:LbMyB8Gc0
南北
424
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 13:26:16 ID:XASJMEoA0
交差点に一票
425
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 14:57:33 ID:pb1Gf4h60
>>418
第3話まで西ルートですので、そこまで完結したらザックリと説明致します。
登場キャラの関係で今はまだ詳しくは……申し訳ありません。
ちなみに第4話以降はまた投票で決める予定です。
1です。
仕事の関係で投下が丸1日遅れます、申し訳ありません。
投票に関しましては本日の21時を〆切とさせて頂きます。
426
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 17:12:42 ID:HPqvlYuQ0
東
427
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 19:18:30 ID:zTx18nJQ0
ひがし
428
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 20:23:51 ID:Eb7Y8wM.0
交差点
429
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 21:22:37 ID:43pyUaI.0
趣向ってあると思うけど
安価で1回目は西
>>277
の安価では2
今回のは南&北を見たいって思った俺はどんだけ西が好きなんだよと思う
430
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 21:44:24 ID:GN3mGkH20
スニフィの良さも分かる。
ペニサスが気になるのも分かる。
ツーリョナに心惹かれるも分かる。
だがな、俺はどうしてもドルシアの笑顔とジョニーウォーカーの本気がみたいんだ。
悪いな兄弟。
431
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 21:54:54 ID:PnGgqBYYO
だいぶ迷ったけど交差点で
432
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 22:53:31 ID:XYM1QxMo0
つーのリョナ見たいんで東で
433
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 22:55:15 ID:qb.FD8Ng0
東
434
:
名も無きAAのようです
:2015/03/07(土) 23:29:40 ID:RZiQzZU20
これはスニフィ
435
:
名も無きAAのようです
:2015/03/08(日) 00:06:35 ID:B.r6.niI0
東
436
:
名も無きAAのようです
:2015/03/08(日) 00:51:03 ID:05IwwxK20
交差点で頼む
437
:
名も無きAAのようです
:2015/03/08(日) 04:21:08 ID:V7OJHe8Y0
東
ネタがあるなら人気ある順にどれも書いても大丈夫じゃね?
と言うかお願いしますお願いします
438
:
名も無きAAのようです
:2015/03/08(日) 06:59:52 ID:4AnMlR8.0
もう締め切ってんぞ
439
:
名も無きAAのようです
:2015/03/08(日) 07:16:45 ID:3paBfXzk0
>>437
私もやりたいのは山々なのですが、そうすると本編がいつまで経っても終わらない計算になってしまうのでちょっと無理っぽいです。
沢山の投票ありがとうございました。
番外編は交差点が舞台の2.5話『紳士』に決定致しました。
第2話投下完了後に少し短めですが投下させて頂きます。
ご協力ありがとうございました。
440
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 02:36:24 ID:ahzEFXIY0
朝5〜6時から投下します。
441
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:00:55 ID:ahzEFXIY0
長くなりますのでゆっくりと投下します。
442
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:02:58 ID:ahzEFXIY0
青空の下、小鳥のさえずりが響く。
吹きだまりのスラム街と言えど、永遠に曇り空が覆っている訳もなく、その日の空模様は快晴。
くすんだ町並みに同化するソウサクシティの住人達もどこか晴れやかな気分だった。
そんな爽やかな晴天の下、小さな少年がヨタヨタとふらつきながら大通りを歩いている。
(;><)「あうあうー……ちょっと貰い過ぎちゃったんです……」
背丈は150あるか、無いかと言ったところ。
その腕もその脚も、強く握ってしまえば折れてしまいそうな程に細く、くすみの無い白に染められた肌の色が、その儚さみたいなものを強調している。
443
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:04:28 ID:ahzEFXIY0
頭にはかなりオーバーサイズと思われる茶色のキャスケットをすっぽり被り、そこから、はみ出るようにして顔を出すくるくるとカールしたふわふわの金髪は、まるで童話やら神話やらに出てくる小さな天使を思わせるそれで、お日様の輝きに応えるようにきらきらと輝いている。
顔つきは幼く、どことなく女性っぽい。
細目の奥からは宝石のように青い瞳が小さく輝き、目元から羽のように生える長めの睫の色はヘアーと同色のきらきらとした小麦のような金。
鼻は少々低めで、唇はぷっくりとふくらみ、わずかにピンク色をおびている。
頬はぷっくりと膨らみ、リンゴほっぺという形容詞がぴったりで、この天使のような少年の幼さを全体的に強調させているようだ。
444
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:05:44 ID:ahzEFXIY0
ところどころに汚れが目立つ白いシャツに、サスペンダー付きのチェックのハーフパンツ。
首もとにはチープな服装とは対照的に高級感の溢れるワインレッドとシルバーのロザリオが垂れ下がるように輝いている。
しっかりとふくらはぎの辺りまで伸ばした白いソックス、それからパッと見ても少し傷みが目立つ黒いスニーカー。
そして両手で抱えるようにしてしっかりと抱えた大きめの茶色い紙袋。
その口の方からは少年が歩く度にひょこひょこと焦げ茶色のクロワッサンが顔を出し、危うく落っこちそうにならないかと見ているものを不安にさせることだろう。
まるで天使のように愛らしい。と皆が口を揃えながら庇護欲や母性を掻き立てる。
そんな魅力が、この金髪の小さな少年『フランジェリコ・ビロード』には確かにあった。
445
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:06:31 ID:ahzEFXIY0
(;><)「ベーカリーのお姉さん、優しくていっぱいオマケしてくれるのは嬉しいんですけど……」
2、3歩進めば右によろよろと寄り。
2、3歩進めば今度は左によろよろと。
すれ違ったスラムの住人の張り積めた顔が思わずほころんでしまうような微笑ましい光景。
だが、本人的にかなりはいっぱいいっぱいの状況のようで、額からは汗も浮かんでいる。
(;><)「いくらなんでも多すぎるんです! 100ドル分のクロワッサンを下さいって言ったのに、これは明らかに300ドル分ぐらい入ってるんです!」
446
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:07:17 ID:ahzEFXIY0
いきつけのベーカリーのお姉さんは気前がいい。
彼女にショタコンの気質があるのか、それとも単に幼い顔つきのビロードに母性をくすぐられるのかは定かでは無いが、いつもいつもビロードがパンを買いに行くたびに沢山のオマケをして貰う。
だが、今回ばかりはお姉さんの善意が裏目に出てしまったらしく、紙袋にほとんど遮られた視界を必死に凝らしながはビロードはヨタヨタと歩みを進めていた。
しかし、前へ前へと注意を向けていると足下がお留守になるもので、彼の右足がレンガの窪みに引っ掛かる。
(;><)そ「ふみゃああ!?」
バタンと音を立てながらスッ転ぶ。
せっかくの美味しいクロワッサンを落とさん、と両手で紙袋をしっかりと庇っていたものだから顔面から勢いよく大地にキス。
幸い大きな怪我は無かったものの、鼻の辺りを打ち付け軽く擦り傷を作ってしまった。
447
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:09:00 ID:ahzEFXIY0
(;><)「あうあうー……痛いんです……」
小さめな鼻の頭を擦りながら涙目で立ち上がるビロード。
ただでさえ低めの鼻がさらに潰れたりしてないだろうか。
そんな心配事に頭を悩ませている時、彼の視界にころころと転がる茶色い物体が横切った。
(;><)「あっ!? クロワッサン!!」
ビロードの必死のファインプレーのお陰で奇跡的に紙袋内の戦利品には大きな被害が出なかったようだが、それでも勢いあまって1匹だけころころと逃げ出してしまったらしい。
不規則に揺らめくように転がっていくこんがりクロワッサンは斜面に従って下に下にと転がり、やがて引き寄せられるかのように小さな路地裏に入ってしまった。
448
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:10:02 ID:ahzEFXIY0
(;><)「あぁ!? 待って欲しいんです!」
ビロードはパタパタと慌てた様子で曲がり角に消えたクロワッサンを追いかけていった。
.
449
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:10:49 ID:ahzEFXIY0
(;><)「あうう……汚れちゃったんです」
路地裏に入って5メーター程のところでようやく停止したクロワッサンは全体に砂ぼこりを被っており、とても食べられる品物ではなかった。
ガックシといった表情で両手でクロワッサンを優しく掴み、引き返そうとするビロードだったが、彼の足は聞きなれない大声に引き留められる事となった。
「目障りなんだよこの死に損ないが!!」
若い、男の声だった。
路地裏の奥の方から、男の怒鳴り声。
450
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:12:12 ID:ahzEFXIY0
( ><)「今のは……?」
一瞬、怒気を孕んでいるだろう大声に恐怖で固まったビロードだったが胸元のロザリオを左手でぎゅっと掴むと、恐る恐る声のした方向に進んで行った。
声のする方に近づく度に、若い男達の笑い声と、何かを打ち付けるような鈍い音が聞こえてきた。
足音を立てないよう、道なりに進むと、やがて薄暗く、滅多に人が近寄らないであろう曲がり角に突き当たった。
( ><)(この先から声がするんです)
壁に身体を張り付けるようにして支え、恐る恐る覗き込む。
451
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:13:50 ID:ahzEFXIY0
彼の視線の先には3人の若い男、それからボロボロの黒いローブに身を包んだ男がうずくまっているのが見えた。
( ノAヽ)「おら! 悲鳴の1つでもあげてみろよホームレス!!」
( `ー´)「俺ら楽しませないと殺しちゃうよーん?」
( )「……!」
暴力だった。
純粋な少年の目に写っていたのは、鉄パイプやらナイフやらを持った若者が、無抵抗のホームレスを殴り、蹴り、いたぶる。
まさに純粋なる暴力の現場だった。
(;><)(何であんな事……!?)
452
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:15:47 ID:ahzEFXIY0
このような事は大して珍しい事ではない。
晴れやかな青空の下でも街の何処かでは銃声が鳴り響き、また何処かでは若い女が強姦されて捨てられる。
そういった、どす黒い日常が当たり前になったこのソウサクシティでは暴力行為などまさに日常茶飯事。
さらに言うなら住所も市民権も剥奪されたホームレスは理不尽な暴力の対象にはうってつけで、ほぼ毎日のペースで誰かしらがリンチにあい、殺され、放置される。
それが、腐りきった吹き溜まりの『当たり前』の光景だった。
しかしそれでも、暴力から遠ざけられ、スラム街の数少ない良心によって育てられた無垢なる少年、ビロードにとってその光景はあまりにもショッキングで、あまりにも赦しがたい光景だった。
453
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:16:36 ID:ahzEFXIY0
(;><)(酷過ぎるんです……このままだったらあの人、死んじゃうかもしれないんです!)
恐怖でカタカタと小さい身体を震わせながら、必死で目の前の悪行から目を背けまいと葛藤するビロード。
しかし、まさに最悪のタイミングで男の1人が笑いながらこう言った。
( ゚¥゚)「うーし。飽きてきたし、そろそろ殺すか」
ビロードは自分の耳を疑った。
あんな何でもないような笑顔で、今あの男は目の前の弱者を殺すと言ったのだ。
そして男はうずくまるホームレスにサッカーボールを蹴飛ばすようなキックを1発入れると、右手に握っていた鉄パイプのようなものをゆっくりと振り上げた。
454
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:17:21 ID:ahzEFXIY0
(;><)(嘘……嘘……!)
(;><)(止めてよ……止めてよ……!!)
やがて若者の手にしっかりと握られた、その細長い鉄の固まりがゆっくりと浮かび上がり、やがて宙で静止した。
そして得物を握り締めた男は自身の足元に無様に崩れ落ちる浮浪者に、まさに汚物を見るような表情で吐き捨てるように死刑宣告を告げた。
( ゚¥゚)「死ね」
男の右腕に力が入り、うずくまる男の脳天をかち割る為に勢いよく鉄パイプを降り下ろす。
その瞬間……
455
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:21:11 ID:ahzEFXIY0
(# ><)「止めて下さい!!」
薄汚い路地裏に、少年の天使のようなボーイソプラノが響き渡った。
目の前で繰り広げられる明らかに理不尽な暴力の現場に、信仰深き少年、フランジェリコ・ビロードは堪えきれずに飛び出したのだ。
(# ><)「何でそんな酷いことをするんですか!! 僕にはわかんないんです!!」
(# ><)「あなた達の兄弟に謝りなさい! あなた達の両親にあやまりなさい! 偉大なる父にあやまりなさい!」
(# ><)「それから何よりも! その男の人にいっぱい謝りなさい!!」
456
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:22:38 ID:ahzEFXIY0
うずくまるホームレスを指差し、幼い顔立ちに必死に怒りの形相を浮かべ男達に詰め寄るビロード。
いきなり登場して、かん高い声で必死に叫ぶ少年に、最初はポカンとした様子で停止していた男達だったが次第にその表情が怒りで赤く染まり、ビロードを取り囲むように近付いていった。
(# ノAヽ)「テメェ、ガキ、こら? 誰に向かって口聞いてんだ?」
(# ><)「僕はガキじゃないんです! 『平和な交差点(クロスロード)』にある教会の1人息子のフランジェリコ・ビロードなんです!!」
(# `ー´)「交差点? あのボロボロの馬小屋みたいな教会のガキか」
(;><)「馬小屋じゃないんです!! た……確かにちょっと古いけど、お馬さんはいないんです!!」
(# ゚¥゚)「あーうるせうるせ!」
457
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:23:27 ID:ahzEFXIY0
痺れを切らした男の1人が持っていた鉄パイプを地面に激しく打ち付けた。
骨に響くような無機質な打撃音と、大地を通して伝わるその衝撃にビロードの身体が小さく震えた。
( # ゚¥゚)「テメェが安全地帯の交差点に住んでるガキだからって、俺らが手出し出来ないと思ってる訳?」
もう一度、打撃音。
今度は先程よりも大きく、そして怒りを込めた一撃。
男達と少年の距離が、また1歩縮っていく。
458
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:25:12 ID:ahzEFXIY0
( ノAヽ)「つーかよ? このガキ女みてえな顔してんな? バラす前に廻す?」
(;><)「なっ……なにを!?」
( `ー´)「いいねいいねー。汁まみれにした生首だけ教会の前にプレゼントってどうよ?」
( ノAヽ)「おっ! それいいじゃん!! んじゃ……」
( ゚¥゚)「決まりだな」
男達の鋭い眼光にビロードは声にならない悲鳴を上げながら後ずさる。
だが2、3歩後退したところで自分自身の足にもつれ、そのまま引っ掛かるように尻餅をついてしまう。
小さな悲鳴を上げるも、獣のような表情と色欲を露わにした男達の歩みは止まらない。
459
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:26:37 ID:ahzEFXIY0
(。><)「や……止めて下さい!! そんな愚かな行為は父が悲しみます!!
だから、だからとにかく止めて下さい!!」
精一杯の虚勢をあげるビロードだったが、その身体はガクガクと震え、涙目で男達を見上げるばかり。
少女と見間違えてもおかしくない美少年のその表情や仕種は、男達のサディズムを煽るだけで下品な笑い声が小さく漏れた。
( `ー´)「んじゃ、まあ、とりあえずは」
( ゚¥゚)「お楽しみって事で」
(。><)「やっ……やだぁ……!」
ニヤついた笑みを浮かべる男の腕がゆっくりとビロードの肩にかかる、その瞬間……
460
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:27:28 ID:ahzEFXIY0
―――男の身体は弾丸の如くぶっ飛んでいた。
.
461
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:30:59 ID:ahzEFXIY0
(。><)「え?」
( ノAヽ)「は?」
( `ー´)「あ?」
唖然。
その瞬間、見事に、唖然。
ビロードに手を伸ばそうとした鉄パイプを構えた若者は、何かの衝撃に強く弾かれ顔面からキスをするように向かいの壁にぶっ飛び、そのまま激突。
何かが砕けるような轟音をたて、壁に血しぶきを撒き散らし、ずるりと間抜けな顔で地面に横たわる。
462
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:31:57 ID:ahzEFXIY0
男は吹き飛んだ衝撃で気を失い、鼻は無様に陥没。
前歯を始め、何本もの白い歯が所々に四散している。
激突した壁には部分的ながら小さなクレーターが生まれていて、その速度の異常さを物語っている。
(。><)「……ふぇ?」
男2人も、ビロードもあまりに突飛で現実離れした光景に固まっていた。
この世界、特に不法地帯の吹き溜まりのソウサクシティには不思議な力を持つ人間が数多く集まる。
例を上げるなら『赤い悪魔』と恐れられるクリムゾンヘッドの女首領、『MM・ハインリッヒ』を始め、平和の交差点の秩序を守る謎の『紳士』であるジョニーウォーカーこと『デミタス』。
南の新勢力として名を轟かすウルボロスがリーダー『龍戦士』の『アブソリュート・スニフィ』など。
463
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:32:52 ID:ahzEFXIY0
彼らは理屈で片付けられない、非化学的な『超能力』とでも言えるべき力を扱う。
その存在はアウトローの住人達に、噂や都市伝説のような不確かな存在として伝わっていた。
現にマフィア同士の抗争では、選ばれた力を持つ者達が、圧倒的な力をもって戦場を死地へと変貌させる光景を何度も繰り広げて来た。
だがしかし、キャスケットをかぶった小さな少年、フランジェリコ・ビロードにはそんな驚異的な力は無い。
ただ人より、ほんの少しだけ正義感が強く、幼い頃から教会で育てられた為、人よりも信仰心が厚いだけの、ひ弱で無垢な少年だ。
おまけに今年で15才に迎えたというのに、その背丈は150あるか無いかで手足も棒っ切れのように細く、見るからに重いものを持ち上げるような筋力など無い。
464
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:33:36 ID:ahzEFXIY0
そんな少女のような見た目の彼が、自分より明らかに30センチ近く背の高い荒くれものの男を、自分の後方に勢いよくぶん投げるような荒業が出来るわけが無い。
では他の2人はどうだろうか?
ぶっ飛んだ男の仲間である2人は、ガタイも良ければ、腐ってもソウサクシティ育ちの人間、そこら辺のチンピラよりもよっぽどケンカ慣れしており、実のところ既に5人以上の人間を殺害している立派な悪人である。
とは言え、大の大人を弾丸のような速度でぶっ飛ばす人間離れした筋力を持っている訳でも無ければ武道の心得も無い彼らにそのような芸当は出来るはずも無いし、そもそもこのタイミングで仲間割れを起こし、わざわざ相棒を再起不能にする理由が無い。
465
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:46:51 ID:ahzEFXIY0
つまり少し考えれば、この場にいる3人には大の大人を一瞬で吹き飛ばし、壁にぶち当てるという奇妙な荒業は不可能という事になる。
では、この異様な蛮行の犯人は誰なのか?
ビロードに若者2人、さらに間抜け面を晒しながら気絶している被害者を除き、この場にいた人間。
これらの条件を考慮した上で必然的に導き出される解答は?
( ><)「あ……」
466
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:47:38 ID:ahzEFXIY0
ビロードが掠れた声を搾り出しながら、何か恐ろしいものを見るように男達の後方をゆっくりと指差した。
それにつられるように勢いよく振り向いた男達の視線の先にいたのは、もぞもぞと蠢きながら立ち上がる何か黒い塊。
( )「……」
そう。
先ほどまで彼らが暴行をはたらいていた、黒いローブに身を包んだホームレス。
所々に血や砂ぼこりにまみれたボロボロのローブに顔をスッポリと隠した細身の男が、ゆらゆらと不規則に揺らめく陽炎のように立ち尽くしていた。
その表情をしっかりと目視する事は出来なかったが恐らく口元であろう部分から、童話に出てくるチェシャ猫のようなギザギザとした白い牙が妖しく輝き、かすかに左右に揺れるその身体はどこか笑いに身を震わせているようにも見える。
それを認識した男達の行動は速かった。
467
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:48:24 ID:ahzEFXIY0
(# `ー´)「テメェ!!」
いち早く男の犯行に気付いた、細身の若者が右手にナイフを構え、懐に飛び込もうと構えをとる。
そして跳躍するかのように大股の1歩を踏み出すと同時に構えた右腕を横に振り払い、浮浪者の喉元を切り裂こうと狙いを定める。
だが伸びきった若者の右腕に握られたバタフライナイフが黒いローブの喉元に触れる直前に、ローブを翻しながら矢のような勢いで伸ばされた青白く筋ばった細腕がその右手首をしっかりと掴み上げ、瞬時に異様な力で内側に思いっきり捻り上げた。
468
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:49:22 ID:ahzEFXIY0
(;`ー゚)「いぎゃっ!?」
身体ごと持ってかれるような怪力を間接の1点に受けた若者はあまりの激痛にかん高い声で鳴く。
あっという間にナイフを落とし、そのまま倒れるかのように体勢を崩した男の鳩尾に、まるで突き刺さるかのように浮浪者の右膝が打ち込まれる。
その威力、強大。
平均的な成人男子以上の体つきをした若者の身体が膝蹴りの衝撃だけで、身体をくの字に折り曲げながら霧のように吐血。
足下はちょうど50センチ程、地面から浮いており、出血の具合と白目を向いた表情から察するに彼の内臓の一部は確実に破裂している事だろう。
469
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:50:24 ID:ahzEFXIY0
(; ゚ 3゚)「ごぶっ……!!」
豚のような悲鳴を上げながら、ローブの男の膝を台座にするように宙に浮く男。
1秒にも満たないその僅かな虚をつくように浮浪者の皮を被った怪物の追撃が始まった。
まるでスローモーションのように浮かび上がる若者の首根っこをがっちりと左手で掴むと
、既に宙に浮いている身体をさらに高く浮かび上がらせるように力任せに引っ張り上げる。
そして彼のリーチの限界と思われる、約2メーター弱の高さまで失神寸前の若者の身体を持ち上げた瞬間、引力をターボ代わりに、伸びきった左腕をまるでバレーのスマッシュのように勢いよく振り下ろし、そのまま後方の地面に叩き付けるようにぶん投げた。
470
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:51:46 ID:ahzEFXIY0
(####゚)「……!!」
その衝撃で辺りの大地は地震が起きたかのように僅かに軋み、肝心の若者の顔面はもはや生死を判別する事が不可能な程に崩壊。
辺りに血しぶきが舞い、崩れたレンガ状の地面の一部が衝撃で埃のように立ち上がる。
(;ノAヽ)「ひぃっ!?」
仲間の身体が一瞬で破壊された光景を目の当たりにした、もう1人の若者は小さく悲鳴を上げながら身を翻し逃亡を図る。
表情は恐怖一色に染まり、左手に構えていた金属バットも投げ捨て、一目散に逃げ出そうとする。
471
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:53:28 ID:ahzEFXIY0
( )「……」
ローブの男はまるで大地を滑るように、必死の形相でスタートダッシュを切った若者との距離を一瞬でつめる。
低くした体勢を跳ね上げるかのような加速をつけながら、背を向ける男の股間を右足で思いっきり蹴り上げる。
『黒いベルトブーツ』におおわれたその爪先は薄汚い若者の大ぶりの睾丸の右側を見事に捉え、ぐちゅっと生々しい音を立て、文字通り潰してみせた。
(; ノA゚)「ぺぎょっ……!!」
もはや声にならない悲鳴を上げながら股間を庇おうと四つん這いになる若者。
だがこの隙だらけの瞬間を見逃す訳もなく、ローブの男は崩れ落ちる若者の右足をがっちりと掴む。
瞬間、まるで農家が根菜を思いっきり引っこ抜くかのようなフォームで、右腕1本で強引に若者の身体を持ち上げてみせた。
472
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:54:27 ID:ahzEFXIY0
(; ノA゚)「ひぃ……!?」
ローブの男は右足を軸に身体を大きくツイストさせる。
悲鳴を上げる若者をまるで棒切れでも振り回すかのような勢いのまま、自身を中心に宙に弧を描くかのように振り下ろし、後方の地面に思いっきり叩き付けた。
地面がわずかに抉れ、前歯と思われる白い物がその光景をただ茫然と眺めるビロードの目の前に飛んでいった。
一方的な蹂躙を見せ付けてみせた妖しいローブの男。
ゆっくりと振り向き、茫然と立ちすくむ無垢なる少年ビロードの方へ視線を向ける。
473
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:55:43 ID:ahzEFXIY0
(;><)「……」
( )「……」
やがて路地裏に大きな風が吹く。
辺りに転がる汚物やゴミが宙に舞い、腐臭が立ち込める。
そして、そのスラムの風は顔をスッポリと覆っているローブさえも拐って行った。
フードに隠れた怪人の素顔が、立ちすくむビロードの眼下に、晴天の下に、静かに晒された。
474
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:58:50 ID:ahzEFXIY0
▼・ェ・▼
犬。
▼・ェ・▼
犬だった。
475
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 06:59:38 ID:ahzEFXIY0
( ><)「……」
▼・ェ・▼「……」
( ><)「……」
▼・ェ・▼「……」
( ><)「……」
▼・ェ・▼「……」
風が吹く。
カラカラと、金属製の何か小さいパーツのような物が転がる音だけが響き、風が止むと共にまた静寂が訪れる。
476
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:00:29 ID:ahzEFXIY0
( ><)「……」
「……」
無言。
この2人、無言。
やがてその静寂に、少年のボーイソプラノが響いた。
(* ><)「ワンちゃんなんです!!」
▼・ェ・▼「……」
(* ><)「貴方はワンちゃんの妖精さんなんですか!?」
▼・ェ・▼「……」
( ><)「……」
▼・ェ・▼「……」
▼・ェ・▼「……ちがうよ?」
(;><)そ「違ったんです!!」
477
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:01:27 ID:ahzEFXIY0
後に、ソウサクシティに嵐と混乱を巻き起こす事になる希代の変態『犬』。
後に、ソウサクシティに恐怖と不幸をもたらす事になる無垢なる少年『フランジェリコ・ビロード』
腐った吹き溜まりであるこの街に、自身が大きな衝撃を引き起こす事を彼らはまだ知らない。
これが、『天使』と『狂犬』、2人の出会いだった。
.
478
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:02:26 ID:ahzEFXIY0
――――――――――――――――――――
.
479
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:16:58 ID:ahzEFXIY0
ソウサクシティの東側。
娼館が数多く立ち並ぶ事で有名な東でも、最低限必要な店というものはある。
コンビニやドラッグストアに酒場、銃器の専門販売店などだ。
腐りきったこの街では武器や薬なしでは出歩けない。
そこらで鉛玉と血飛沫が飛び交うこの街では当然、怪我人の数も半端ではない。
つまり、必然的に怪我人を治療する大きな施設が必要になるのである。
.
480
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:18:17 ID:ahzEFXIY0
室内は白で統一されており、スモークガラス状の窓ガラスからわずかに日の光が射し込んでいる。
治療器具の電子音が規則的に小さく鳴り響く室内に1人の怪我人と1人の見舞い客が会話をしていた。
<_プー゚)フ「なあなあビコったん。俺さあ、ものスッゴい不思議な事に気付いたんだ」
( ∵)「……」
<_プー゚)フ「ほら、俺ってさあ、言うまでもなく超ROCKでROLLなイケメンな訳じゃん?」
( ∵)「……」
<_プー゚)フ「なのになーんでいつまでもガールフレンドが出来ねーんだろ? 俺ってばこんなにROCKでROLLなバリヤバなミュージシャンだっつーのにさー」
( ∵)「……」
<_プー゚)フ「マジで不思議だよな? やっぱりあれか?
俺ってばあんまりにもROCK'N ROLL極め過ぎちゃって眩しすぎる存在になっちまった系かな?」
481
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:19:11 ID:ahzEFXIY0
時代錯誤も甚だしいリーゼントと長いモミアゲが特徴の男は、明るい口調で自分自身を賛美するような台詞をペラペラと語り続ける。
その身体はベッドに横たわり、身体中のあちこちに包帯が巻かれ、隙間から生々しい傷跡が見え隠れしている。
ヘラヘラとした態度の裏には、数多くの修羅場を潜り抜けてきた者独特の、ある一種の『凄み』みたいなものが滲み出ている。
( ∵)「……」
そして、入り口近くの丸椅子に腰掛ける小さな『男にも女にも見える』坊主頭の人間は真っ赤な仮面がなんとも特徴的だった。
ボーリングのボールのように規則正しく空けられた3つの穴からはその表情は伺えない。
仮面の下でどのような顔を浮かべているかは不明だが、ベッドに横たわる相棒の不毛な自慢話を、ひたすら無言で聴いていた。
482
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:20:57 ID:ahzEFXIY0
<_プ∀<)フ「っかああぁ! だとしたらパネェな俺! もはや直視できねーくらいバリヤバのROCKでROLLな太陽のような男になっちまったって訳か!!」
( ∵)「……」
<_プー゚)フ「ん? どしたんだビコったん。そんな捨てられた子猫のような目で俺の事見つめてさ」
( ∵)「……」
<_プー゚)フ「ははぁん。分かってる。分かってるぜビコったん。いいさ、皆まで言うな」
<_プー゚)フ「俺があんまりにもパネェから、自分が置いてかれねーかって不安になってんだなー?」
( ∵)「……」
<_プー゚)フ「心配すんなよ……確かに俺はビコったんよりバリヤバでイケメンの超パネェROCKでROLLな男さ」
483
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:22:46 ID:ahzEFXIY0
<_プー゚)フ「だがな、俺の相棒はいつまでもビコったん1人なんだよ。俺の旋律に着いて来れるのはビコったんだけなんだ」
<_プー゚)フ「ビコったんこそ、最高にCOOLでROCKな俺の永遠のパートナーなんだよ!!」
( ∵)「……」
<_プー゚)フ「ふふっ……分かるぜビコったん。この俺の熱いエールでCOOLなビコったんの魂がたぎっている事が」
<_プー゚)フ「それでこそROCKでROLLな俺様にふさわしい相棒だぜ!! だがな……ビコったん」
<_プー゚)フ「1つだけ、1つだけ忠告しとかにゃあいけねえ事があるんだ。いいかビコったん、よく聴けよ……」
<_プー゚)フ「『ROCK'N ROLLの申し子』こと、『JD(ジャックダニエル)・エクストプラズマン』。もし火傷したくなきゃ……」
<_プー゚)フ+「俺に惚れるなよ!」
.
484
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:24:44 ID:ahzEFXIY0
( ∵)「……」
( ∵)「……」
( ∵)「……」
( ∵)「……」
訂正。
もしかしたら聴いていないかもしれない。
485
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:25:46 ID:ahzEFXIY0
<_プー゚)フ「ふっ……やっぱり俺はパネェな。最高にROCKでROLLな男だぜ」
仮面の下で(恐らく)呆れた表情を浮かべているであろうビコったんと呼ばれた人は、とてとてと特徴的な足音を立てながらエクストが寝ているベッドの奥、壁際に移動した。
<_プー゚)フ「ん? どしたビコったん? わざわざ壁際の方にまで来て……ははぁん分かったぜ」
<_プー゚)フ「そんなにこの俺の顔を近くで」
「眺めていたいのか?」とは続かなかった。
なぜなら病室の入口にある扉が音を立てぶっ飛び、寝ているエクストを押し潰すように倒れて来たからだ。
486
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:28:04 ID:ahzEFXIY0
<_プー;)フ「ひぎぃっ!?」
情けない悲鳴をあげながら痛みに悶えるエクスト越しに仮面を被った『JB(ジムビーム)・ビコーズ』が入り口を覗き込むと、予想した通りのライダースジャケットをビシッと着こなした赤髪(クリムゾンヘッド)の女と、どこか怯えたような表情を浮かべたその右腕が立っていた。
从#゚Д从「fuckfuckfuckfuckfuckfuck!!」
部下を押し潰すドアを片腕で力任せにどかすハインリッヒの機嫌は最高に最低だった。
額には青筋が浮かび、右手に抱えたメーカーズマークの中味は殆ど空になっている。
痛みに半泣きになりながら悶えていたエクストは本能的に危険を察知して、苦々しい作り笑いを浮かべる。
487
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:29:58 ID:ahzEFXIY0
<_;プー゚)フ「やっ……やあ姉御、なかなかROCKな登場じゃないか。これはこの俺も見習わなきゃ……」
从#゚Д从「やかましいわこのモミアゲがー!!」
瞬間、ハインリッヒの長い右脚が天井に向かってピンと立つかのように振り上げられ、あっという間にエクストの左膝に隕石のように落下。
ちなみにエクストは約7ヶ所複雑骨折しており、当然ながら包帯に包まれているその左脚も例外ではない。
何が言いたいかというと、折れたところに踵落しされると……
<_プ;Д;)フ「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ!!」
もの凄く痛いのだ。
488
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:33:52 ID:ahzEFXIY0
从#゚Д从「古参幹部の癖してぼろ負けして病院送りとか俺にケンカ売ってんのかファッキンモミアゲ野郎があああぁぁぁぁ!!」
<_フ;Д;)フ「姉御ー! そこ折れてるからあぁぁ! くっつきかけてる俺の左足がまた折れちゃうからあああぁぁぁ!!」
从#゚Д从「fuckfuckfuckfuckfuck!!」
<_フ;Д;)フ「痛い痛い痛い痛いいぃぃぃ助けてビコったーん!!」
( ∵)「……」
( ∵)「……」
( ∵)「Zzz……」
<_フ;Д;)フ「ね て る しいいいぃぃぃぃ!?」
从#゚Д从「こんの役立たずのモミアゲがああああぁぁぁぁ!!」
<_フ;Д;)フ「ノオオオオォォォォ!!」
東の『クリムゾンヘッド』が女首領、MM・ハインリッヒによる部下への仕置きという名の八つ当たりは、約15分間続いた。
489
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:36:23 ID:ahzEFXIY0
<_フ;Д;)フ「痛い……折れたあ、今度は絶対粉砕骨折したよビコったああぁん」
( ∵)「」ヨシヨシ
(;‘_L’)「あの、大丈夫ですか? エクストさん」
<_フ;ー;)フ「ありがとうフィレちゃん。俺の味方はビコったんとフィレちゃんだけだよ……ぐすん」
ぼろ泣きするリーゼント男を仮面をつけた性別不詳の小さい人間と、スーツを着た妙齢の男が慰めるという何ともシュールな光景。
忌々しげにそれを眺め、2本目のバーボンに口をつけるハインリッヒは怒気を孕んだ声で口を開いた。
从#゚∀从「おいこらモミアゲ」
<_フ;ー;)フ「モミアゲって……酷いよ姉御」
从#゚∀从「うるせえ無駄口叩くな」
490
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 07:39:12 ID:ahzEFXIY0
ハインリッヒの視線が真剣なものとなり、和やかだった室内の空気が次第に張りつめたものと化していく。
从#゚∀从「テメェ誰に負けた」
ギロリと音でもなりそうな鋭い視線をエクストに突きつける。
自らが所属するグループのリーダー『赤い悪魔』の真剣な眼差しに、エクストの表情からお茶らけた明るさが消え、真剣な顔つきとなった。
<_プー゚)フ「……スニフィって女だ」
从#゚∀从「女?」
(;‘_L’)「確か、シナーの娘で『ウルボロス』のリーダーだったかと」
顔をしかめるハインリッヒにフィレンクトが注釈を入れる。
その言葉にエクストは静かに頷き、こう続けた。
491
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:17:21 ID:1okLl5Cs0
わくてか
492
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:18:17 ID:ahzEFXIY0
<_プー゚)フ「俺も正直言って甘く見てた。ぶっちゃけ、向こうの方が頭数は居るとは言え、俺とビコったんのコンビなら、いつもみたいに勝てると高をくくってたんだ」
<_プー゚)フ「あの女……娼婦みてーに色っぽい格好してた癖によ、マジでパネェぜ。
下手したら、俺よりもROCK'N ROLL極めてるかもな」
<_フ-ー-)フ「いや、ありゃあ人間じゃねえよ。マジでパネェんだわ。
バリヤバでパネェよ、その結果が、アレさ」
エクストが指を指した先には、壁に立て掛けるように置かれたボロボロのエレキギターがあった。
黒いボディに白いペイントででジャックダニエルと英字のロゴが描かれた6弦は、ネックの辺りでポッキリと折れている。
自称、『ROCK'N ROLLの申し子』であるエクスト愛用の楽器であると同時に、クリムゾンヘッドの幹部として数多くの敵を葬ってきた『得物』は無惨にもへし折られたのだ。
ハインリッヒの舌打ちが室内に響いた。
493
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:21:03 ID:ahzEFXIY0
从 ゚∀从「テメェらにつけた30の兵隊はどうした?」
<_フ-ー-)フ「悪い、全滅だ」
从#゚∀从「fuck!」
ハインリッヒはイラついた表情で近くに置いてあった医療器具を蹴飛ばし、滑るように向こうの壁まで飛んでいく。
隣で控えているフィレンクトが慌てて位置を元に戻す様を眺めながら、エクストは静かに続けた。
<_プー゚)フ「リーダーの女もマジでROCKだけどよ、あそこの兵隊もパネェな。100人くらい居たのを半分くらいには減らしたと思うがよ」
<_プー゚)フ「ただよ、やっぱり強いんだわ。どいつもこいつもそこら辺の傭兵とは比べものになんねーくらいROCKだったぜ」
494
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:21:56 ID:ahzEFXIY0
从 -∀从「テメェとビコーズぶつけて半分まで削るのがやっとかよ……こりゃマジでヤバイな」
<_プー゚)フ「マジな話、ビコったん居なかったら死んでたわ。久々に、バトってる最中に死ぬ覚悟決めちまったくらいだ」
ヘラヘラと笑うエクストを前にしたハインリッヒの表情は暗い。
彼女の目の前でベッドに横たわるこの大馬鹿勘違いミュージシャンとその相棒であるミニマム鉄仮面の実力は、首領である彼女自身が一番よく知っている。
そのエクストがこうも簡単に返り討ちにあう程の実力者がいるグループが敵になったとなると、かなり不味い事になる。
ハインリッヒは静かにメーカーズマークに口をつけ、2、3度喉を鳴らすとイソイソと器具を直す自身の右腕に命令を下した。
495
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:23:32 ID:ahzEFXIY0
从 ゚∀从「おい、種無し!! ジョニーウォーカーを呼び出せ!!」
(;‘_L’)「はっ、はい!! ただいま」
ハインリッヒの一声に、軍人のようにピシッと直立したフィレンクトはジャケットのポケットからスマートフォンを取り出し、街一番の情報屋にすぐさま電話をかけた。
(‘_L’)「あっどうも、ご無沙汰しておりますフィレンクトで御座いますー、先日はお世話になりまして……はい、はいー。」
<_;プー゚)フ(フィレちゃん、なんかサラリーマンみたいだな)
(‘_L’)「はい、はい……あっ、今はいつもの廃病院に。はい、はい。あっ、部屋ですか? 3階の6号室に……あっ、ありがとうございますー」
496
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:27:58 ID:ahzEFXIY0
電話越しにも終始ペコペコと頭を下げていたフィレンクトは携帯をしまうと同時にハインリッヒの方に向き直り「すぐ来るそうです」と告げた。
しかし、その言葉を聴いた彼女は見るからに機嫌が悪くなり、フィレンクトの胸ぐらを掴み怒鳴り散らした。
从#゚∀从「あぁん!? 『すぐ』だあぁ!?」
(;‘_L’)「ひぃっ!? そ、そう言ってましたよ!?」
从#゚∀从「ざっけんじゃねえぞファッキン種無し木偶の坊が!! テメェは何年俺の『右腕』やってんだよ!!」
从#゚∀从「俺は『すぐ』だとか『そのうち』だとか曖昧な言葉が大嫌いなんだよ!! いいか!? 今すぐもう一回電話して何分以内に来るのかとっとと……「もう着いたよ」
497
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:30:23 ID:ahzEFXIY0
興奮したハインリッヒの声を遮るかのように、室内にフィレンクトでもエクストでもない、第三者の男の声が響いた。
(´・_ゝ・`)
ハインリッヒとフィレンクトが偶然にも同じタイミングで振り向くと、そこには優雅にコーヒーを飲みながら目の前に立つ、デミタスの姿があった。
ただし、その位置はベッドに横たわるエクストの腹の上だったのだが。
<_フ;Д;)フ「痛い痛い痛い痛いってばデミちゃん! 早くどいてくれよー!!」
(;´・_ゝ・`)「あっ、ちょ!? エクスト氏! そんなに揺らすとコーヒーがこぼれっ……ちゃったね」
<_フ;Д;)フ「アチッアチャチャチャッ……ノオオオオォォォォ!!」
498
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:31:58 ID:ahzEFXIY0
从;゚∀从「……何コントやってんだテメェら?」
<_フ;Д;)フ「姉御ーツッこんでないでタオル取って―――!!」
余談だが、エクストの退院予定日は3日後だった。
しかし、その日程が無駄に延長した事は言うまでもないだろう。
.
499
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:33:31 ID:ahzEFXIY0
(;´・_ゝ・`)「いやあ、申し訳ないねー。あんまり来ないところだと、『位置』と『距離』がちょっと掴みづらくてねー」
エクストの腹の上から無事に降り立ったジョニーウォーカーことデミタスは余りのベッドに腰掛けながら優雅にコーヒーを味わっている。
カップから漂う白い湯気を嗅ぎながら一人満足そうに頷いていた。
(;‘_L’)「しかし……相変わらず凄い力ですねデミタスさん」
<_プー゚)フ「本当だよなー。『瞬間移動』とかマジでパネェよな。バリヤバだぜ」
(´・_ゝ・`)「いやあ、まあ、厳密に言うとそれだけじゃないんだけどねー」
500
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:35:03 ID:ahzEFXIY0
デミタスは基本的に『交差点』のカフェ・パトロンから動かない。
それでいて彼がソウサクシティ内のあらゆる情報を掴むことの出来る理由は、『位置や距離を無視』して移動する事が出来るという、まさに反則じみた超能力のおかげだった。
例えば、先日襲いかかって来た無知な若者の白い拳銃の位置を『敵の右手から自分のポケットに瞬間移動』させた時のように。
例えば今のようにコーヒータイムの最中にも関わらず『カフェ・パトロンから800メーター程も離れたこの病院に瞬間移動』してみせたりなど。
常人ならその力を聞いただけで怯むであろう、まさにチート級の能力を用いて、この街に暗躍する情報屋。
それが黒い紳士、ジョニーウォーカーことデミタスなのだ。
501
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:36:30 ID:ahzEFXIY0
(´・_ゝ・`)「あっ、ところでハインリッヒ嬢、今日のご用件は?」
从 ゚∀从「種無し、説明しろ」
(;‘_L’)「あっはい、ウルボロスに関する情報と、スニフィに関する情報を」
(´・_ゝ・`)「ああ、ウルボロス関係ねーはいはい」
フィレンクトの言葉にどこか納得したような表情で頷きながら、デミタスはカップに口をつける。
どうにも掴み所の無い飄々とした紳士の態度にハインリッヒはイラついたような顔で口を開いた。
502
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:38:04 ID:ahzEFXIY0
从#゚∀从「ファッキン黒服野郎が。今回はどんだけ踏んだくって行くつもりなんだ? 1000か? 5000か? 10000か?」
(´・_ゝ・`)「んー8000! と言いたいところなんだけど」
ズズズッとコーヒーを啜る音が響く。
やがて空になったのかカップを置くとちょっと困ったような顔でこめかみの辺りをポリポリとかきながら、こう続けた。
(;´・_ゝー`)「事情が色々ありましてねー、このコーヒー代の15ドルで結構です」
その言葉にハインリッヒの表情がますます曇る。
釈然としない。口にせずとも、そう訴えていた。
503
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:39:46 ID:ahzEFXIY0
从#゚∀从「おい、どういう事だ? ぼったくり上等のファッキン黒服野郎が、何でそんなクズみたいな金で動く」
ハインリッヒの鋭い視線に肩をすくめて、やれやれとジェスチャーするデミタス。
その表情はどこか子供っぽくて、悪戯めいた雰囲気を出していた。
(´・_ゝ・`)「んーいやあ、あくまで僕の予想なんだけどね、スニフィ嬢の情報って、もうすぐ価値が無くなると思うんだよね」
从#゚∀从「ああ?」
(;‘_L’)「それって、一体……」
(´ー_ゝー`)「んーまあ、ほら何て言うかな?」
訳が分からないと言った表情を浮かべるクリムゾンヘッド一行に、デミタスは余裕たっぷりの笑みで、ゆっくりと。
マジックの種明かしでもするように、たっぷりとタメを作ってから、こう切り出した。
504
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:40:56 ID:ahzEFXIY0
(´^_ゝ^`)「どうせこれから死んじゃう人の情報なんて、価値が無くなっちゃうでしょ?」
.
505
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:41:40 ID:ahzEFXIY0
デミタスが不適に笑ったこの5日後。
そしてニダーがスニフィを送り出したちょうど、2週間後。
とある廃工場でアブソリュート・スニフィの遺体が発見された。
18才の若さだった。
.
506
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:42:28 ID:ahzEFXIY0
以上ですめっちゃ長かったー……ありがとうございました。
507
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 08:59:48 ID:ahzEFXIY0
Character File No.3
【$$*゚-゚/$】
『シャルトリューズ・ドルシア』
身長体重…154/43
年齢…22
性別…女
出身…アメリカ
所属グループ…無所属
2つ名…特に無し
好きな物…料理前半、ハーブや野菜の栽培、お金の計算、兄
嫌いな物…雨、拳銃、運動
能力名…無能力者
『平和な交差点(クロスワード)』で街唯一の喫茶店『カフェ・パトロン』を経営している若き女店主。
料理の腕、バリスタの腕共にかなりの実力があり、特にスパイスや酒を使ったオリジナルレシピにはかなりの自身がある。
美人で気立てのよい理想的女性だが、商魂逞しすぎるため未だに恋人は居ない。
メニュー設定がかなり高価なため、常連客は殆どいないが、その分デミタスから搾取しているため経営は安定している。
ソウサクシティに住む人間にしては、珍しく社会的常識があり、犯罪を嫌う人種で何故そんな常識人の彼女がこんな治安の悪い街にいるかは不明。
国外にマニーという大富豪の兄がおり、関係は良好。
ちなみに、シャルトリューズとはハーブリキュールの最高峰と称されるリキュール。緑と黄色の2種類がある。
508
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 09:16:34 ID:1okLl5Cs0
ええ死んだのかいスニフィ!
509
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 10:20:15 ID:r3YaA9OA0
乙!
わんちゃんの妖精に笑ったww
そしてスニフィが逝ってしまった……
南&北の短編の予告からしてペニサスに負けたんだろうな……
510
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 10:26:10 ID:wuN//SU.0
犬って忘れてたけど普通に喋るんだよな…
511
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 10:38:22 ID:FCac7Ld2O
>>510
最初シャベッタアアアって思ったけど、そういや普通にしゃべるんだったな…
512
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 12:17:26 ID:FgTuV./k0
おつ!
犬ってそう言えば喋るな
わふぅんしか頭になかった
ビロードかわいい
513
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 13:20:14 ID:RyIsU9sw0
裏でも物語が展開していてわくわくする
514
:
名も無きAAのようです
:2015/03/10(火) 20:00:43 ID:DFMWZ.Ro0
おつおつ全部読んできた
スニフィあっさり過ぎやろ……
次の展開にわくわくする
515
:
名も無きAAのようです
:2015/03/11(水) 06:38:18 ID:aG.D7I3Q0
Character File No.4
【( `ハ´)】
『杏露・シナー』
身長体重…165/87
年齢…38
性別…男
出身…中国
所属グループ…『ドラゴン』
2つ名…『南の龍』
好きな物…四川料理、拳銃の改造、拳銃のコレクション、クラシック観賞
嫌いな物…無益な争い、甘いもの、毛虫
能力名…無能力者
ソウサクシティ南部で猛威を奮った多国籍チャイニーズマフィア『ドラゴン』の首領。
もともとは北部の『イエローモンキー』の幹部だったがニダーの怪我をきっかけに決別した。
マフィアにしては、気が小さく、臆病で、無益な殺人や争いも好まない珍しいタイプ。
ただし、リーダーとしての素質には恵まれず、若い衆が勝手に他所のグループと揉め事を起こしてはその後の処理に追われていた。
結局、彼の最期も部下が命令を無視して北部の『ナインテール』に進行したために報復によって殺害されるという、なんとも下らないものとなってしまった。
拳銃の扱いに長けており、リボルバーを使った狙撃技術はピカイチ。
『黄龍』と『白竜』という2丁の改造拳銃を相棒に何度も窮地を逃れて来た。
ちなみに妻子持ちであったが妻は彼が若い時に殺害されている。
516
:
名も無きAAのようです
:2015/03/11(水) 07:02:13 ID:aG.D7I3Q0
Character File No.5
【Σz ゚ー )リ】
『アブソリュート・スニフィ』
身長体重…163/45
年齢…18
性別…女
出身…中国
所属グループ…『ウルボロス』
2つ名…『南の女龍』、『龍戦士』
好きな物…家族、四川料理、洋裁、チャイナブルー、ライチ、男の視線、硝煙の香り
嫌いな物…無能な部下、尊敬に値しない上司、虫全般
能力名…『ドラゴンレディ』
右半身を変体させ、龍の力を手にいれる。
思考能力と容姿の美しさは劣化するが圧倒的な破壊力とスピードが手に入り、さらに高熱であらゆるものを焼きつくす咆哮(ドラゴンブレス)を放てるようになる。
セクシーなチャイナドレスがトレードマークの中国娘でありながら、『ドラゴン』残党の中でも選りすぐりのエリートで結成された新鋭組織『ウルボロス』の若き女首領である。
ちなみに、シナーの実の娘である。
その実力は高く、純粋な戦闘力だけなら父を軽くしのぎ、『イエローモンキー』のヒートと同格では無いかと恐れられている。
作中では殆ど登場していないが、東の『クリムゾンヘッド』の古参幹部であるエクストとビコーズのコンビも返り討ちにしており、その実力の程が伺える。
父の仇を討つために北部の『ナインテール』に進行するも返り討ちにあい10代の若さで殺害されてしまう。
勝ち気な性格だが家族思いでリーダーとしての素質も申し分無い。
戦闘スタイルは独特で、マーシャルアーツをベースにした接近戦と父から受け継いだリボルバー『黄龍』による狙撃、さらに自身の変身能力を組み合わせたトリッキーな戦法を得意としている。
517
:
名も無きAAのようです
:2015/03/11(水) 08:15:32 ID:ssiGFktA0
スニフィの能力すげえな
518
:
名も無きAAのようです
:2015/03/11(水) 08:27:29 ID:HrgOumbo0
能力の取得の仕方が気になるな
519
:
名も無きAAのようです
:2015/03/11(水) 08:55:32 ID:IMrLjQjQ0
スニフィ強かったのに…
520
:
名も無きAAのようです
:2015/03/12(木) 06:38:01 ID:ug3UAme20
乙や感想ありがとうございました。
スニフィは西ルートでは割とサクッと死んじゃう可哀想なキャラになっちゃいまして……
本日深夜0〜1時よりデミタスがメインの番外編を投下します。
521
:
名も無きAAのようです
:2015/03/12(木) 08:34:46 ID:TmhKI5Tc0
乙乙、楽しみにしてる!
522
:
名も無きAAのようです
:2015/03/13(金) 07:25:10 ID:8TD4G7vY0
乙
スニフィ……
523
:
名も無きAAのようです
:2015/03/13(金) 19:15:44 ID:vhMlvUlc0
まだ来てないか
今日の深夜かな?
524
:
名も無きAAのようです
:2015/03/15(日) 12:27:45 ID:sVWMbkvs0
多少遅れても大丈夫だぜ、
待ってるぜい!
525
:
名も無きAAのようです
:2015/03/20(金) 05:52:44 ID:5jtvs7vU0
投下の順番変更します
3話→2.5話(交差点の番外編)→投票→投票→3.5話(番外編、未定)→4話とします。勝手に変えてごめんなさい。
3話以降バトル多くなります。
4話以降、グロ、もしくはアブノーマル的なエロ描写(投票によってはスカトロ、拷問、ペド、自傷など)多くなりますのでご注意下さい
526
:
名も無きAAのようです
:2015/03/20(金) 09:59:56 ID:.JD1KOt.0
おけおけ!
順番なんて好きなように変えちゃってくだせぇ!
ペドか、実に素晴らしい。
527
:
名も無きAAのようです
:2015/03/20(金) 20:57:08 ID:vrybLPTcO
ペドって何ぞ?
528
:
名も無きAAのようです
:2015/03/20(金) 21:05:22 ID:9PIoLj9A0
ペドフェリア、ロリのグレートアップ……いや、グレートダウンというか、
平たく言ってしまえば女性でなく少女でなく幼女を犯す事に性的興奮を覚える人たちである
529
:
名も無きAAのようです
:2015/03/20(金) 22:27:00 ID:zsoVqS5Y0
小児性愛家、本来的には女児じゃなくて男児も含む
対象年齢は12以下だが、日本では小学校以前が主に対象だな、高くても一桁
530
:
名も無きAAのようです
:2015/03/23(月) 13:35:01 ID:qQQOAIWk0
1です。ご無沙汰していました。
明日の深夜に投下致します。
予告していた通りバトルメインとなります。
沢山のキャラが登場して沢山死ぬ予定です。
グロテスクな表現やカニバリズム的表現が多数出てきますのでご注意下さい。
531
:
名も無きAAのようです
:2015/03/25(水) 18:56:29 ID:VJ5vBua.0
駄目だこりゃ
532
:
名も無きAAのようです
:2015/03/25(水) 20:36:26 ID:ZdvZEgaQ0
うるせぇ!俺は待つぞ!
533
:
名も無きAAのようです
:2015/03/25(水) 20:39:06 ID:dwzOgTiU0
俺も待つぞ!
1ヶ月は余裕で許容範囲じゃぼけぇ!
534
:
名も無きAAのようです
:2015/03/25(水) 22:14:10 ID:WISUgdRY0
馬鹿野郎!こんな所で諦めてんじゃねーぞ!
535
:
名も無きAAのようです
:2015/03/25(水) 22:38:34 ID:Cb7WuZcs0
なりすましだろ、常識的に考えて
536
:
名も無きAAのようです
:2015/04/02(木) 22:18:27 ID:E5HJyGgU0
へいへへいへへい?
537
:
名も無きAAのようです
:2015/04/06(月) 21:47:43 ID:6XEUSqt20
逃亡
538
:
名も無きAAのようです
:2015/04/18(土) 07:32:16 ID:eZfq/WIg0
😭
539
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 11:07:23 ID:/AJbG6Og0
逃亡……だと?
私は、それを、否定する!
だから、あえて、宣言しよう!
今日の22時に、第三話の前編を投下すると!
そしてこの第三話はやけに「お〇んちん」という単語が沢山出てくる回だと!
あ、はい。頑張りまーす。
540
:
名も無きAAのようです
:2015/05/17(日) 11:19:52 ID:UTq6y46k0
わーいたのしみ
541
:
名も無きAAのようです
:2015/05/17(日) 12:32:07 ID:krpOPOvQ0
おまんちん!?
542
:
名も無きAAのようです
:2015/05/17(日) 12:38:27 ID:KmWHGduQ0
おちんちんびろーん
543
:
名も無きAAのようです
:2015/05/17(日) 13:11:10 ID:u9tYHa7E0
これは嬉しいね
544
:
名も無きAAのようです
:2015/05/17(日) 13:28:33 ID:d.hWfBo60
期待
545
:
名も無きAAのようです
:2015/05/17(日) 13:38:46 ID:adIl1gFc0
まんちかん?
546
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 21:52:38 ID:/AJbG6Og0
ごめん……3つに分けたデータの2番目な消えた……ほんとご免なさい。
今日は途中までになります……
547
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:08:55 ID:/AJbG6Og0
・参考BGM『蜉蝣 所詮、自分は犬であります』
・参考BGM『蜉蝣 R指定』
.
548
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:11:11 ID:/AJbG6Og0
R指定な物
R指定な脳
R指定な唄
R指定な種
R指定な猫
R指定な声
R指定な餌
R指定な猿……
.
549
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:13:50 ID:/AJbG6Og0
「ハァハァ……いいよ」
「最高だ! ああ、やっぱり最高だよ君は!」
「ずっとずっと前から君を見てたんだ」
「この美貌、この身体。堪らない! 極上のbadyだ!!」
「ああ……キツキツだぁ……そしてぐぢゅぐぢゅと僕のおちんちんに絡み付くぅ!!」
「いい! いいよ!! 最高だよ!! ああ気持ちいい!!」
「女はやっぱり……ウフフッ」
「冷たいのに限るううぅぅぅ!!」
ぐちゅぐちゅ。
ねちょねちょ。
ばしんばしん。
550
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:16:29 ID:/AJbG6Og0
―――――――ぐにゅっ。
.
551
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:17:11 ID:/AJbG6Og0
( ><)「ん……」
年期の入った、お世辞にも綺麗とは言えない木製の建物。
その一室のくたびれたベッドの上で少年は目を覚ました。
もともとクルクルと渦を巻くほどに癖の強い金髪は寝癖のせいであちらこちらに跳ね回り、水色のパジャマからはだけた胸元には汗の雫が浮かんでいる。
小動物のような仕草で目をこするビロードの姿は、その趣味の人から見たら堪らないほど官能的だったことだろう。
しかし当の本人の顔色は、快適な目覚めとは程遠い曇ったものだった。
( ><)「……なんか変な夢を見た気がするんです」
どんな夢だったかは覚えていない。
だが妙に気味悪く、それでいて薄ら寒い。
思い出そうとしても欠片も思い出せない癖に、なぜか怒りにも似た不快感を残す。
そんな後味の悪い夢を見た気がした。
552
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:18:32 ID:/AJbG6Og0
(;><)そ「いつっ!?」
起き上がろうとしたビロードの身体にピキンと音が鳴るような衝撃が走り、一瞬小さな身体が強ばった。
(;><)「あうぅ……また、肩が痛いんです」
ここ最近はいつもそうだった。
自分自身を刺し殺すという奇妙な悪夢を見たあの日から、寝起きの度に肩から背中にかけて、まるで骨に何かが刺さったような痛みに襲われるのだ。
何度も病院に行こうかと悩んだのだが、決まって2、3分で治まってしまうので未だに放置しているものの、やはり気持ちいいものでは無い。
553
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:19:15 ID:/AJbG6Og0
(;><)「何だろう。僕まだ子供なのになぁ」
ふいに最近腰が痛いと口癖のようにボヤく自身の親代わりの顔が頭に浮かぶ。
この平和の交差点にある小さな教会の神父、『カルーア・ショボーン』は今年で50歳になる。
ビロードから見ている分には特に年をとったとは思えなかったが、やはり身体の事は本人が一番分かっているらしく、ここ最近はいつも年は取りたくないものだ。と憂いをおびたため息を漏らしている。
もちろんビロードからしてみれば、孤児だった自分を育ててくれたショボーンが老いぼれになろうがなるまいが、愛しい大切な父親代わりであることは変わらないのだが。
ビロードはそんなような事を考えながらベッドを整えながらバスルームでパシャパシャと音をたてながら顔を洗う。
鏡に映る自分の姿はいつ見ても幼く、どことなく脆く感じる。
落ち葉が風にさらわれて、あっという間に吹き飛んでしまうような。そんな、弱く、脆いイメージが。
554
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:20:06 ID:/AJbG6Og0
( ><)(あの『ワンちゃんのお兄さん』みたいに、僕も強くなりたいんです……)
軽くため息を吐きながら、寝起き独特のトテトテと覚束無い足取りで礼拝堂へ向かう。
敷地も小さく、言ってしまえばかなりボロい教会ではあるが、礼拝堂だけは神父やビロードが1日も欠かさず掃除をしているので存外、小綺麗なのだ。
(* ><)「おはようございます、神父様!」
礼拝堂にビロードの元気な声が響いた。
しかし、それに答えてくれるものが居ない。
555
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:21:06 ID:/AJbG6Og0
( ><)「あれ?」
不思議な事に、礼拝堂には誰も居なかった。
いつもこの時間には既に起床して、軽い掃除をしている筈のショボーンの姿はどこにも見えない。
どこかに出掛けるにしては早すぎる時間だし、行き場所にも心当たりは無い。
( ><)「神父様……?」
古びた礼拝堂の中、ビロードのどこか寂しげなボーイソプラノがポツリと響く。
何となく嫌な予感を抱えながら、少年は神父の帰りを待つことにした。
よりによって、今日は肩の痛みが治るのに1時間ほどかかり、余計に彼の心をキリキリとしめつける。
そして、2時間待っても、3時間待っても。
ついには神父、カルーア・ショボーンが帰って来ることは無かった。
556
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:21:55 ID:/AJbG6Og0
第3話 猿
.
557
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:26:07 ID:/AJbG6Og0
ビロードがショボーンの帰りを涙目になりながら待っていたその日の夜。
人々が酒に酔い、騒ぎだし、辺りが喧騒に包まれるソウサクシティの夜。
爪;A;)「お願い! お願いよ……!」
そんな夜からまるで溢れるように沈黙が蔓延る薄暗い路地裏で、一人の不幸な女が前触れもなく襲い掛かった恐怖と対峙していた。
爪;A;)「助けて……許して……」
顔つきから考えるに、年はまだ10代か20代前半。
服装をシャツドレスからヒールまでパステルイエローで綺麗に統一した、やけに派手な格好をした小柄な黒人娼婦だった。
そんな彼女は今、頭から血を流しながら路地裏の壁にほとんど倒れかかる状態で寄りかかり、涙ながらに目の前の恐怖に命乞いをしていた。
558
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:27:33 ID:/AJbG6Og0
爪;A;)「お願い。ねぇ……助けてよ!」
( ゚"_ゞ゚)「……」
女は声を震わせながら目の前に立ち塞がる長身の男を見上げながら文字通り懇願する。
しかし、とうの男はまるで女にさほど関心が無いかのように冷めた視線を送るだけだった。
( ゚"_ゞ゚)
頭には目がチカチカするようなチェス番を斜めにしたようなチェック模様のシルクハット。
羽織っているジャケットは黒と白の切り替えが目に残る、ダブルの燕尾服。
スラックスの色も右が黒、左が白とモノトーンながら派手な出で立ちで、クロコダイル製の革で作られたであろうシューズも、ハットと同じような模様に着色されている。
559
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:29:01 ID:/AJbG6Og0
右腕にな真っ黒な杖。
反対の方には革製の固定ベルトでくくりつけたと思われる巨大な棺桶を背負っており、その風貌はどこか時代遅れの異国の葬儀屋や死化粧氏を思わせた。
身の丈は190があるか無いかと言った大柄で、洋服の上からでも、その引き締まった肉体美が透けて見えるようだった。
時代遅れでありながら紳士的な服装と、彼のたくましい肉体とのギャップがどこか異質で、対面に座り込む娼婦にさらなる恐怖を与えていることに関しては、説明するまでも無いだろう。
( ゚"_ゞ゚)「Ah……」
やがて男は芝居がかった動作でゆっくりと、それでいて大袈裟に首もとの白と黒であしらわれたタイを閉め直し、ハットの鍔を軽く弄る。
560
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:29:50 ID:/AJbG6Og0
そして左腕を挙げながら、さながら弁士を気取るかのように、相変わらず冷めた視線のまま目の前の女に悠々と語りだした。
( ゚"_ゞ゚)「君はきっと今、とても不思議な気持ちだろう。そうだろうさ、何故なら君はこの路地裏をただ。ただただ、一人で歩いていただけなのだから」
( ゚"_ゞ゚)「君には何の罪もない。そうさ、その通りさ。大体にして私は君みたいな潰れたウジ虫のような顔面をした肥溜めに落ちた糞ったれの糞ビッチの糞マンコになんか微塵も興味は無い。いや、むしろ不愉快ですらあるよ、醜いのは罪だ罪だ罪だ。ああ、もう死ねばいいのにこいつ」
男の声はやたらにハスキーで、聴いたもの耳にこびりつくように残るようだった。
だがその声色よりも特徴的なのはその口調だろう。
561
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:30:38 ID:/AJbG6Og0
一目見ただけではおおよそ紳士的で落ち着いた風貌の(もちろん、血濡れの娼婦の前で気色悪い程に冷静で冷徹なこの男が紳士である訳が無いのだが)その男からは想像もできない程に早口で、言葉使いもかなり独特だ。
いわゆるキマってるだとか、ラリってるだとか。
そういう状態の人間の口調となんとなく似通ってはいるが、その蒼い瞳はしっかりと座り込んだ娼婦を見据えており、とてもヤク中には見えなかった。
( ゚"_ゞ゚)「だがだが、だががが待ちたまえ。人間というのはどんなクズにも1つくらい美点と言うものがあるんだよ。美点だよ美点、つまり美しいところだよ分かるかい分かるよねむしろ分かれ」
562
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:32:10 ID:/AJbG6Og0
( ゚"_ゞ゚)「私はね、まず君を見かけた時にこう思ったんだよ。『ああ、なんて、不細工、な、女、なんだろう。しかも不細工な分際であんな露出過多な布切れをヒラヒラさせてまさに公害だよ公害関わりたくないどころか見ているだけで目が腐るじゃないか、あれ、これ頑張れば慰謝料とか取れるレベルの公害じゃね!?』と」
男の言葉に熱がこもり、その速度を上げ、手足がまるで踊るかのように動き始める。
次第に冷たいだけだった蒼い瞳は白目の部分が赤くひび割れるかのように充血を始め、彼の身体全身にも、まるで怒るかのように力が込められていく。
その光景に、不幸な娼婦はガタガタと震えながら嗚咽を漏らすしかないのだが、それすらも無視するかのように長身の紳士は早口言葉のように語り続ける。
(# ゚"_ゞ゚)「だが、しぃかぁしぃ!! 私は、私は私はこの私そんな君の中から!! 潰れたウジ虫の君の中から、半分腐ったロバの死体の中で発酵している肝臓に棲みつく寄生虫がウネウネとダンシングしているような君の中から、美しい輝きを見つけたのだよ!! 」
( ー"_ゞー)「そう! それは……!!」
563
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:34:53 ID:/AJbG6Og0
まるで演劇でもするように手足を派手に動かしながら、後ろを向いたり横を向いたりと慌ただしく動き回っていた男の姿がピタリと止まった。
ちょうど女に背を向ける形で綺麗に直立している。
爪;A;)(今なら……!)
今しかチャンスは無い。
そう確信した彼女が隙をついて逃げ出そうと、地面を這うためにに右手を掛けた時……
(# ゚"皿ゞ゚)「君の『腰』だあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
爪;A;)「ひぃっ!?」
男は絶叫しながら、まるで奇怪な人形のように勢いよく上半身だけツイストして女を睨み付けた。
564
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/17(日) 22:37:46 ID:/AJbG6Og0
ごめん……データ消えたからとりあえずここまで。
ちかいうちにおちんちんラッシュなので許して下さい!
565
:
名も無きAAのようです
:2015/05/17(日) 22:39:23 ID:YylfDHq20
乙!楽しみに待ってる
566
:
名も無きAAのようです
:2015/05/17(日) 22:59:11 ID:1s84Lomw0
乙!相変わらず猟奇的な表現うまいな
続き待ってるで
567
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/18(月) 08:03:24 ID:hClMBRYE0
乙ありがとうございます!
今週には前半完結できるよ!
ところで誰かネタになるような面白い能力教えて下さい(´・ω・`)
568
:
名も無きAAのようです
:2015/05/18(月) 11:33:56 ID:ROqGXO6o0
>>567
ニコニコ大百科の超能力を持つキャラクターの一覧?だっけな。あれ参考になる。個々の能力よりも、能力の分類の仕方(○○使い)が閃くきっかけになる。
569
:
名も無きAAのようです
:2015/05/18(月) 18:58:36 ID:PI5BpgbU0
精神寄生とかどうよ
用途は作り手の器量次第だけど
570
:
名も無きAAのようです
:2015/05/18(月) 21:22:19 ID:0c.GL.K.0
単純に全てを凌駕するパワーとかどうだろう。シンプルなだけに使いやすいかと思うけど。
571
:
名も無きAAのようです
:2015/05/18(月) 23:06:53 ID:gy/Gro0o0
色んな能力を吸収していつでも自在に扱える能力
足の裏に衝撃が入ると地面から刃が出てくる能力。衝撃が強い程刃の種類や数が多くなる。
みつめあうと素直にお喋り出来なくなる能力
572
:
名も無きAAのようです
:2015/05/19(火) 00:39:33 ID:RwhHOiRE0
自分が液体化する能力
573
:
名も無きAAのようです
:2015/05/19(火) 01:03:39 ID:rp0rSy6k0
能力はチームとかコンビでバランスやら欠点考えると楽しい
火力弱い炎使いを風使いと組ませて火災旋風アタックただ室内戦雑魚、分断されても雑魚
人形使いと千里眼と爆弾魔で遠隔爆破テロただし全員引きこもりで見つかるとアウト
その欠点をどう誤魔化したり対策してるかとか
ただこの考え方雑魚敵作りで強キャラバトルには向いて無いかも
574
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/19(火) 06:59:22 ID:D8jK220M0
>>568
ありがとう! 見てみるわ!
>>569
>>570
まだ登場してないけど既にいるんだ……
>>571
最後で吹いたわwwいつか使いたいww
>>572
おお! それいいかも!
>>573
後半はチームバトルがメインになるよ。
一応ギャングチームのバトルだから。
キャラ多いから能力も無駄に多く必要なんだよなぁ……
575
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/19(火) 08:07:33 ID:D8jK220M0
今後はビッチ→犬前半→ビッチ→ビッチ→犬中編的な感じで
576
:
名も無きAAのようです
:2015/05/20(水) 19:13:33 ID:WAqW52s20
こういう能力募集とか荒れる原因になるからやめなよ
577
:
名も無きAAのようです
:2015/05/20(水) 19:20:09 ID:0il4NZrs0
別に荒れそうな感じもしないけど
まぁ、「なんで俺の言った能力を採用してくれなかったんだ!」とか言い出す輩が出てくるなら別だけど
578
:
名も無きAAのようです
:2015/05/20(水) 20:24:17 ID:EsT/ShRs0
フワッフワのパンケーキでも連想したんだろ
579
:
名も無きAAのようです
:2015/05/21(木) 23:09:40 ID:AkNw4eRg0
おちんちんマダー?
580
:
◆eOod7XM/js
:2015/05/21(木) 23:30:58 ID:7IREwk020
おちんちん土曜〜日曜なの(´・ω・`)
581
:
名も無きAAのようです
:2015/05/23(土) 14:53:10 ID:p.pPzUCE0
おちんちんで会話成立わろた
582
:
名も無きAAのようです
:2015/05/27(水) 22:05:31 ID:f/1RRrrE0
おちんちん(´・ω・`)
583
:
◆eOod7XM/js
:2015/07/25(土) 18:52:24 ID:uyBI1d2k0
書きダメおわた
明日19時〜21時とうか
584
:
名も無きAAのようです
:2015/07/25(土) 18:58:50 ID:C30LuTEI0
っしゃ!楽しみにしてる
585
:
名も無きAAのようです
:2015/07/26(日) 09:38:15 ID:prKqP5Fg0
やったあああああああああああああああ
586
:
◆eOod7XM/js
:2015/07/26(日) 17:55:23 ID:tJNNr50I0
ごめす仕事入ったわ
587
:
名も無きAAのようです
:2015/07/26(日) 18:48:52 ID:SKKWrr9s0
所詮は社会の犬か
588
:
名も無きAAのようです
:2015/07/26(日) 19:11:54 ID:prKqP5Fg0
待ちます
589
:
名も無きAAのようです
:2015/07/26(日) 20:25:58 ID:P/G6dilk0
こいつの言葉は信じたら駄目なんだよなwww
590
:
名も無きAAのようです
:2015/07/27(月) 16:49:41 ID:YOzvenEoO
これは、つまり、おちんちんが焦らされている……?
591
:
名も無きAAのようです
:2015/08/20(木) 21:38:36 ID:6WeBPV.Q0
へいへいへい
592
:
名も無きAAのようです
:2015/08/21(金) 06:39:08 ID:4vimHyF.0
あげんなしね
593
:
名も無きAAのようです
:2015/09/23(水) 00:44:57 ID:fSH1p2kc0
おちんちんまだぁ?
http://i.imgur.com/BkmKi7L.jpg
594
:
名も無きAAのようです
:2015/09/23(水) 01:25:50 ID:VB9N3jrc0
>>593
すげぇのがきた
595
:
名も無きAAのようです
:2015/09/25(金) 00:22:34 ID:j8i3/9160
>>593
おちんちん!おちんちんんんんんん
596
:
◆DDAJclyWXI
:2015/09/27(日) 22:52:07 ID:hqlz3cjQ0
>>593
すんばらしい絵をありがとう。
まさに想像通りだわ。
ちょっと逃亡も考えてたけど、ちゃんと書かせてもらいます。
こんな凄い支援絵頂いたら、やるしかないよね!
本当にありがとうございます!
597
:
名も無きAAのようです
:2015/09/28(月) 00:47:41 ID:rb6dZugw0
やったー!
待ってるおちんちん!
598
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 18:40:18 ID:MTzjxDyQ0
本日0時、3話前編追加修正の後、投下。
599
:
名も無きAAのようです
:2015/10/08(木) 19:07:24 ID:cgDZ6mNk0
おお犬更新か
全裸待機しとこ
600
:
名も無きAAのようです
:2015/10/08(木) 20:30:03 ID:BhFoxWU.0
おちんちんクルー
601
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:00:34 ID:T9UmXfFg0
・参考BGM『蜉蝣 所詮、自分は犬であります』
・参考BGM『蜉蝣 R指定』
.
602
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:01:19 ID:T9UmXfFg0
R指定な物
R指定な脳
R指定な唄
R指定な種
R指定な猫
R指定な声
R指定な餌
R指定な猿……
.
603
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:02:03 ID:T9UmXfFg0
「ハァハァ……いいよ」
「最高だ! ああ、やっぱり最高だよ君は!」
「ずっとずっと前から君を見てたんだ」
「この美貌、この身体。堪らない! 極上のbadyだ!!」
「ああ……キツキツだぁ……そしてぐぢゅぐぢゅと僕のおちんちんに絡み付くぅ!!」
「いい! いいよ!! 最高だよ!! ああ気持ちいい!!」
「女はやっぱり……ウフフッ」
「冷たいのに限るううぅぅぅ!!」
ぐちゅぐちゅ。
ねちょねちょ。
ばしんばしん。
604
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:02:45 ID:T9UmXfFg0
―――――――ぐにゅっ。
.
605
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:03:29 ID:T9UmXfFg0
( ><)「ん……」
年期の入った、お世辞にも綺麗とは言えない木製の建物。
その一室のくたびれたベッドの上で少年は目を覚ました。
もともとクルクルと渦を巻くほどに癖の強い金髪は寝癖のせいであちらこちらに跳ね回り、水色のパジャマからはだけた胸元には汗の雫が浮かんでいる。
小動物のような仕草で目をこするビロードの姿は、その趣味の人から見たら堪らないほど官能的だったことだろう。
しかし当の本人の顔色は、快適な目覚めとは程遠い曇ったものだった。
606
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:04:32 ID:T9UmXfFg0
( ><)「……なんか変な夢を見た気がするんです」
どんな夢だったかは覚えていない。
だが妙に気味悪く、それでいて薄ら寒い。
思い出そうとしても欠片も思い出せない癖に、なぜか怒りにも似た不快感を残す。
そんな後味の悪い夢を見た気がした。
(;><)そ「いつっ!?」
起き上がろうとしたビロードの身体にピキンと音が鳴るような衝撃が走り、一瞬小さな身体が強ばった。
607
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:05:21 ID:T9UmXfFg0
この平和の交差点にある小さな教会の神父、『カルーア・ショボーン』は今年で50歳になる。
ビロードから見ている分には特に年をとったとは思えなかったが、やはり身体の事は本人が一番分かっているらしく、ここ最近はいつも年は取りたくないものだ。と憂いをおびたため息を漏らしている。
もちろんビロードからしてみれば、孤児だった自分を育ててくれたショボーンが老いぼれになろうがなるまいが、愛しい大切な父親代わりであることは変わらないのだが。
ビロードはそんなような事を考えながらベッドを整えながらバスルームでパシャパシャと音をたてながら顔を洗う。
水滴越しに鏡に映る自分の姿はいつ見ても幼く、どことなく脆く感じる。
落ち葉が風にさらわれて、あっという間に吹き飛んでしまうような。そんな、弱く、脆いイメージが。
608
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:06:03 ID:T9UmXfFg0
( ><)(あの『ワンちゃんのお兄さん』みたいに、僕も強くなりたいんです……)
軽くため息を吐きながら、寝起き独特のトテトテと覚束無い足取りで礼拝堂へ向かう。
敷地も小さく、言ってしまえばかなりボロい教会ではあるが、礼拝堂だけは神父やビロードが1日も欠かさず掃除をしているので存外、小綺麗なのだ。
(* ><)「おはようございます、神父様!」
礼拝堂にビロードの元気な声が響いた。
しかし、それに答えてくれるものが居ない。
( ><)「あれ?」
609
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:06:48 ID:T9UmXfFg0
不思議な事に、礼拝堂には誰も居なかった。
いつもこの時間には既に起床して、軽い掃除をしている筈のショボーンの姿はどこにも見えない。
どこかに出掛けるにしては早すぎる時間だし、行き場所にも心当たりは無い。
( ><)「神父様……?」
古びた礼拝堂の中、ビロードのどこか寂しげなボーイソプラノがポツリと響く。
何となく嫌な予感を抱えながら、少年は神父の帰りを待つことにした。
よりによって、今日は肩の痛みが治るのに1時間ほどかかり、余計に彼の心をキリキリとしめつける。
610
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:07:51 ID:T9UmXfFg0
そして、2時間待っても、3時間待っても。
ついには神父、カルーア・ショボーンが帰って来ることは無かった。
.
611
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:08:38 ID:T9UmXfFg0
第3話 猿
.
612
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:09:26 ID:T9UmXfFg0
ビロードがショボーンの帰りを涙目になりながら待っていたその日の夜。
人々が酒に酔い、騒ぎだし、辺りが喧騒に包まれるソウサクシティの夜。
爪;A;)「お願い! お願いよ……!」
夜からまるで滲み出るようにして、沈黙が支配していた薄暗い路地裏で、一人の不幸な女が前触れもなく襲い掛かった理不尽な恐怖と対峙し、うわずった声で許しを請うていた。
爪;A;)「助けて……許して……」
顔つきから考えるに、年はまだ10代か20代前半。
ワンピースタイプのシャツドレスから長めのピンヒールまでパステルイエローで綺麗に統一した、やけに派手な格好をした小柄な黒人娼婦だった。
そんな彼女は今、頭から血を流しながら路地裏の壁にほとんど倒れかかる状態で寄りかかり、涙ながらに目の前の『ソレ』に命乞いをしていた。
613
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:10:26 ID:T9UmXfFg0
爪;A;)「お願い。ねぇ……助けてよ!」
( ゚"_ゞ゚)「……」
女は声を震わせながら目の前に立ち塞がる長身の男を見上げながら文字通り懇願する。
しかし、とうの男はまるで女にさほど関心が無いかのように冷めた視線を送り、左手に持った杖の頭を撫でたり擦ったりするだけだった。
( ゚"_ゞ゚)
その男、異様。
頭にはチェス番を斜めにしたようなチェック模様の、目がチカチカするシルクハット。
羽織っているジャケットは黒と白の切り替えが目に残る、ダブルの燕尾服でこれもまたモノトーンながら目に残る色彩だ。
スラックスの色も右が黒、左が白とモノトーンながら派手な出で立ちで、クロコダイル製の革で作られたであろうシューズも、ハットと同じような模様に着色されている。
614
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:11:11 ID:T9UmXfFg0
左手に握る細身の杖も、まるでピンドットのように細かくなった市松模様で彼の異様な出で立ちと妙にマッチングしており、反対の方には革製の固定ベルトでくくりつけた鈍く黒光りする巨大な棺桶を背負っている。
その風貌はどこか時代遅れの異国の葬儀屋や死化粧師をモダンにアレンジしたファッションモデルのようであった。
身の丈は190があるか無いかと言った大柄で、洋服の上からでも、その引き締まった肉体美が透けて見える。
どこか場違いでありながら紳士的な服装と、彼のたくましい肉体とのギャップが絶妙にミスマッチしており、対面に座り込む娼婦にさらなる恐怖を与えていることに関してはもはや説明するまでも無い。
615
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:11:55 ID:T9UmXfFg0
( ゚"_ゞ゚)「Ah……」
やがて男は芝居がかった動作でゆっくりと。
それでいて目の前の少女に見せ付けるような大袈裟な動きで首もとのタイ(言うまでもなく、白と黒の、あのチカチカする模様の)を閉め直し、ハットの鍔を軽く弄る。
そして左腕をゆっくりと挙げながら、さながら舞台役者を気取るかのような大袈裟かつ、堂々とした態度で視線のまま目の前の女に悠々と語りだした。
( ゚"_ゞ゚)「君はきっと今、とても不思議な気持ちだろう。そうだろうさ、何故なら君はこの路地裏をただ。ただただ、一人で歩いていただけなのだから」
616
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:12:41 ID:T9UmXfFg0
( ゚"_ゞ゚)「君には何の罪もない。そうさ、その通りさ。大体にして私は君みたいな潰れたウジ虫のような顔面をした肥溜めに落ちた糞ったれの糞ビッチの糞マンコになんか微塵も興味は無い。いや、むしろ不愉快ですらあるよ、醜いのは罪だ罪だ罪だ。ああ、もう死ねばいいのにこいつ」
男の声はやたらにハスキーで太く、その動作も相まって、やはりどこか役者のように遠くまでしっかりと響く。
それでいて、聴いたもの耳にこびりつくように残る声色だったが、それよりも特徴的なのはその口調だろう。
一目見ただけではおおよそ紳士的で落ち着いた風貌のその男からは想像もできない程に早口で、言葉使いもかなり独特だ。
617
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:13:50 ID:T9UmXfFg0
いわゆるキマってるだとか、ラリってるだとか。
そういう状態の人間の口調となんとなく似通ってはいるが、その蒼い瞳はしっかりと座り込んだ娼婦を見据えており、とてもヤク中には見えなかった。
( ゚"_ゞ゚)「だがだが、だががが待ちたまえ。人間というのはどんなクズにも1つくらい美点と言うものがあるんだよ。美点だよ美点、つまり美しいところだよ分かるかい分かるよねむしろ分かれ」
( ゚"_ゞ゚)「私はね、まず君を見かけた時にこう思ったんだよ。『ああ、なんて、不細工、な、女、なんだろう。しかも不細工な分際であんな露出過多な布切れをヒラヒラさせてまさに公害だよ公害関わりたくないどころか見ているだけで目が腐るじゃないか、あれ、これ頑張れば慰謝料とか取れるレベルの公害じゃね!?』と」
男の言葉に熱がこもり、その速度が上がる。
手足がまるで踊るかのように跳ね回り、たった一人の観客の為に、雄大かつ繊細に動き始める。
618
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:14:45 ID:T9UmXfFg0
次第に冷たいだけだった蒼い瞳は白目の部分が赤くひび割れるかのように充血を始め、彼の身体全身にも、まるで怒るかのように力が込められていく。
その光景に、不幸な娼婦はガタガタと震えながら嗚咽を漏らすしかないのだが、それすらも彼の眼中には入っておらず、長身の紳士は早口言葉のようにさらに熱く語り続けた。
(#゚"_ゞ゚)「だが、しぃかぁしぃ!! 私は、私は私はこの私そんな君の中から!! 潰れたウジ虫の君の中から、半分腐ったロバの死体の中で発酵している肝臓に棲みつく寄生虫がウネウネとダンシングしているような君の中から、美しい輝きを見つけたのだよ!! 」
( ー"_ゞー)「そう! それは……!!」
あちらこちらと動き回り、踊るように手足を派手に動かしていた男の動きがピタリと止まる。
再び沈黙が闇を支配し始めた時、己の不幸に絶望していた娼婦に、ほんの一筋の希望が見えた。
そう、男は停止している。
ちょうど、彼女に背を向ける形で綺麗に直立しているのだ。
619
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:15:27 ID:T9UmXfFg0
爪;A;)(今なら……!)
今しかチャンスは無い。
そう確信した彼女が隙をついて逃げ出そうと、震える右手を地に付けた瞬間……
(#゚"皿ゞ゚)「君の『腰』だあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
爪;A;)「ひぃっ!?」
男は絶叫しながら、まるで奇怪な人形のように勢いよく『上半身だけ』ツイストして女を睨み付けた。
620
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:16:12 ID:T9UmXfFg0
(#゚"皿ゞ゚)「腰だよ腰腰腰腰腰腰腰腰腰ウェスト―――!! 私はねぇ、君が身に付けている低俗で下品なその薄っぺらい布地からヒラリと見えたその美しい腰を見たとき、まるで雷にでも射たれたような衝撃を受けたんだよ!!」
(#゚"_ゞ゚)「君の腰は宝だ!! まさに宝石!! まさに紫水晶の輝き!! まさに天使の羽!! まさに聖母の一滴!! まさにアフロデティの忘れ形見!!」
(#゚"_ゞ゚)「Yes!! 最高だよ、とにかく最高なんだ!! それは、理想。むしろ、至高! まさに……」
(#゚"_ゞ゚)「『Marvelous(マーベラス!!)』」
息を荒げながら絶叫する男の瞳は既に真っ赤に充血し、ブンバブンバと踊るように跳ね回す手足はプルプルと細かく震えている。
激しく興奮した様子を隠すこともなく全身で表す男の狂気的な様子に、女は腰を抜かしてヒィッと間の抜けた悲鳴をあげるしかない。
621
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:16:52 ID:T9UmXfFg0
しかし、その様子を知ってか知らずか棺桶の男は派手に大きく見せびらかすように動かしていたその巨体を、次第にモジモジと擦り合わせるように小さく動かし始める。
まるで内気な少女が愛の告白に挑むかのような、とてもでは無いがその場に似合わぬ動きを見せ付けながら、その表情には愉しくて堪らないといった感情であふれ、やがてそのまま語り続けた。
(*゚"_ゞ゚)「あぁ、もう、堪らないよ。ウフフッ……ダメだ、もう我慢できないよ。だって、実のところ、君の、その、腰を見たその時から。私は……私は……!」
自分で自分を抱き締め、少しでも自分の、
身体を小さくみせる。
そんな奇怪な動きを見せていた男は突如、弾けるように身体を広げ、反らし、見せ付けた。
622
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:18:26 ID:T9UmXfFg0
(*゚"_ゞ゚)「ンホォ――――!! あまりの衝撃に私のおちんちんが勃起っ起しちゃうの――!! 興奮のあまりおちんちんがErectしちゃうの――私のおちんちんがえれくちんちんになっちゃうの――!!」
黒く、勃起した。
その男性器を。
.
623
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:19:13 ID:T9UmXfFg0
(*゚"_ゞ゚)「Marvelous!! 見てるだけでオーガズムを迎えてしまいそうな、その、魅惑の腰は、まさにMarvelous!!」
(*゚"皿ゞ゚)「 Yes! Yes! Yes!! Marvelous!! 」
男の叫びが暗闇に響き荒々しい呼吸の音と、女の小さな泣き声が場を支配した。
沈黙。
束の間の、沈黙。
(*゚"_ゞ゚)「ウフフッ……そう。だからこそ。だからこそ、ですよ、ねえ? 貴女」
一歩。
棺桶の男は娼婦に近付いた。
まるで彼のペニスの猛りを模写したかのような好色的な表情で。
624
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:19:59 ID:T9UmXfFg0
( ゚"_ゞ゚)「そんなMarvelousなパーツは、ねえ」
一歩。一歩。そして、また、一歩。
( ゚"_ゞ゚)「『彼女』が持つに」
( ー"_ゞー)「相応しいとは」
( ー"_ゞ゚)「思いませんか?」
爪;A;)「ひっ……」
徐々に。しかし確実に縮まっていくその距離は1メーター程になったところで停止する。
殆ど倒れこむようにして壁に寄り掛かる黒人女の顔が更なる恐怖に染まる。
625
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:20:43 ID:T9UmXfFg0
見上げれば珍妙な成りをした2メートル近い背丈の狂人。
そんなシチュエーションで恐怖を感じぬ人間など要るのだろうか?
だからきっと。彼女の下半身から生暖かいアンモニア臭が漏れ出る事も、きっと仕方が無いことなのだ。
( ゚"_ゞ゚)「だから、ねえ? ウフッ。つまり、ね。その、腰は、さあ?」
クスクスと小さく笑う男は左手に持つ杖の頭を愛おしそうに撫でた。
やがてスクリューキャップを開けるかのような動作でその頭を捻り、引き抜く。
スラリとした刀身のソレが、鈍く、重く。
月光を反射した。
626
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:21:24 ID:T9UmXfFg0
( "_ゞ゚)「貴女なんかに勿体無い、よ、ねぇ?」
.
627
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:22:21 ID:T9UmXfFg0
(*゚"_ゞ゚)「あぁ……美しい」
モノトーンで統一されていた男の色彩に少量で無い紅が差し込む。
飛び散った返り血が頬にまで付着していたが、棺桶の男はそれを気に止める事なく、蕩けた様な表情で両手に抱えたその部品(パーツ)を眺めていた。
黒い革靴を汚すのは、ポタリポタリと切断面から垂れ流す赤い血液だけでは無い。
赤く、太く、激しく猛る、己の男性器から漏れ出した、粘性のある透明な液体だ。
(*ー"_ゞー)「抱えるだけで止めどなくカウパーが溢れていく……この、色! この手触り! この曲線! なにもかもがMarvelous!!」
堪らないといった表情で、未だ温もりの残る部品ヘソにキスをした。
そしてほぉっと小さな息を吐いた後、ゆっくりと頬擦りをする。
628
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:23:34 ID:T9UmXfFg0
5分程、幸せの余韻に浸っていた男だったが、先程まで彼が背負っていた棺桶の方に視線を向けると、まるで反射したかのようにパッと部品から顔を離し、壁に立て掛けた自らの宝物に歩を進めていく。
棺の扉を金属同士が擦れる、悲鳴のような音を立てながら開くと、男はそこにいる『彼女』に向けてにこやかに語り始める、、
( ゚"_ゞ゚)「あぁでも待って待って待って待って誤解しないで誤解しないで。これは、君へのプレゼント」
(*゚"_ゞ゚)「ウフフッ……この腰は『君』に相応しい。やはり君こそが至高だ。君の存在そのものがMarvelousだよ……」
『彼女』は何も答えない。
しかし、男の頭には彼女の声が確かに響いており、幸せで堪らないといった顔で一方的かつ奇妙な『談笑』を心から楽しんでいた。
629
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:24:20 ID:T9UmXfFg0
(*゚"_ゞ゚)「ンフフッ……もうすぐ君はきっと起き上がるよね。そうともさ、君はもうすぐ完成されるんだ。君こそが私だけの天使なんだ。あぁ堪らないよ。君の事を考えるだけで私のおちんちんは、えれくちおんさ」
(*゚"_ゞ゚)「心配しないでも大丈夫さ。嫉妬なんかしないでおくれよマイ・スイート・エンゼル。僕の純潔は君だけに捧げるんだからね、こんな薄汚い糞の糞の糞のさらに糞なマンコになんか突っ込んだりなんてノット・ジェントルな真似はしないよ」
男は視線をチラと後方にくれてやる。
そこにはかつてパステルイエローの衣装に身を包んだ、人間だった物が間接ごとに切断され、ゴミの山のように粗末に積まれていた。
無論、そこには肋骨から臀部に到っての部品だけ存在していない。
630
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:25:20 ID:T9UmXfFg0
(*ー"_ゞ゚)「私はいつだって夢見てるんだ。完成された君と僕とが柔らかなシーツの上でまるで融けるように、混ざり、愛、ながら。まるでマーブル模様になるように、蕩け、愛、ながら。」
(*ー"_ゞー)「お互いの純潔を捧げ……私と君と。お互いのジュースで、甘い、甘い、初めての『イチゴミルク』作ることを……ウフフッ……ウフッ」
(*ー"_ゞー)「ウフフッ……ウフフフフフフフフ!!」
男は身を震わせ笑みを漏らす。
やがてその震えと声は大きくなり、路地裏に反響していく。
631
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:26:18 ID:T9UmXfFg0
そして限界まで高まった男のテンションは爆発。
身体を海老のように激しく反らせ、ハットが落ちることすら気にも止めず大きく身体を広げ、叫び出した。
(*゚"_ゞ゚)「ンッホォ―――――!! もう我慢できない――!! 堪え性の無いおちんちんにご褒美タイム突入しちゃうの―――!!」
左手は広げしっかりと手にいれた部品を掴み、右手で散々にお預けをされていた自身の太いペニスを掴み、ピストン運動。
パンパンに張りつめ、激しい手淫に震えるその亀頭は月明かりに照らせれ、まるで珊瑚の宝玉のように滑らかに輝く。
やがて夜空を仰ぐように反らした身体を勢い良く持ち上げ、先程までの舞台役者のような大袈裟な一挙一動で『彼女』にアピールをする。
632
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:27:08 ID:T9UmXfFg0
(*゚"_ゞ゚)「見て! 見て!! 僕を見てよマイ・エンゼル!! この高鳴りは、この欲望は、このミルクは!! 君の事を考えながら! 君だけの事を考えながら発射するからあああぁぁ!!」
右手の動きは次第に加速し、絶え間なく漏れ出す先走りのせいか、ヌチョヌチョと水っぽい音を生み出している。
(*゚"_ゞ゚)「Oh……Yes! Yes! Yes!!」
(*゚"_ゞ゚)「Yes!! Yes!! Yes!! Yes!! Yes!!」
(*゚"皿ゞ゚)「YesYesYesYesYesYesYesYesYesYes!!」
(* "_ゞ゚)「Oh……!!」
男は今日日、一番の激しい動きで身体をを大きく弓なりに反らせると、目を見開き、大口を開け、絶叫した。
633
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:27:54 ID:T9UmXfFg0
(*゚"皿ゞ゚)「Marvelous!!」
夜空に放たれた白い精液は天高く延び、満月と重なった。
息を荒げながら恍惚の表情で月に欲望をぶちまけ、快感の余韻に浸る男の胸ポケットから一枚の写真がヒラリと落ちる。
重力に従い落下した白濁液はまるで引き寄せられるかのように、その写真にボタボタと落ちていく。
634
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:28:42 ID:T9UmXfFg0
『蒼い龍』、『偉大なる父の右目』と呼ばれた、気高き戦士。
『川 ゚ -゚)』
写真に写るイエローモンキーがNo2。
ヘネシー・クールの見惚れるような美しい横顔は汚らわしい白濁に陵辱されたのだった。
.
635
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/08(木) 23:29:38 ID:T9UmXfFg0
おしまいける。中編につづく。
636
:
名も無きAAのようです
:2015/10/08(木) 23:38:18 ID:zMlJ2tAE0
これはひどいwww
637
:
名も無きAAのようです
:2015/10/09(金) 00:19:59 ID:5E5KdG2I0
そもそもbadyってなんやねん、と
638
:
名も無きAAのようです
:2015/10/09(金) 00:27:55 ID:CfhjuGWg0
オサム狂ってやがるな……
今回もおもしろかった乙!
639
:
名も無きAAのようです
:2015/10/09(金) 01:00:48 ID:xtIKoQCk0
あれ?
640
:
名も無きAAのようです
:2015/10/09(金) 01:37:08 ID:fsyjJ/OQ0
おちんちんキターーー!!
うーむCrazy
641
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/09(金) 07:39:00 ID:nlQUGgQA0
乙や感想ありがとうございます。
すぺしゃるせんくす
>>189
アマレット・ツー
>>593
犬
3連休中に中編其の1を投下。
バトルの連チャンだあぁー
642
:
名も無きAAのようです
:2015/10/09(金) 11:44:40 ID:gHTjsGGU0
おつ!
643
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/11(日) 13:44:21 ID:ExqxYE.Y0
酔い潰れなかったら夜〜深夜に投下。
カニバリズム微注意。
644
:
名も無きAAのようです
:2015/10/11(日) 14:53:33 ID:BwAf7Rx.0
またドクターストップかからないように気を付けてなw
645
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/25(日) 00:11:41 ID:i2XaXEzg0
おまんこおまんこおまんまん。
1…交差点end
2…西ルートend
>>647
の選択で
※どっちみちいっぱい死にます
646
:
名も無きAAのようです
:2015/10/25(日) 00:13:15 ID:TxwCUfq60
交差点
647
:
名も無きAAのようです
:2015/10/25(日) 00:15:59 ID:qOZ9iAco0
1
648
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/25(日) 00:18:45 ID:i2XaXEzg0
交差点endに決定しました。
今後、番外編以外での投票または安価はいたしませんのでご注意下さい。
以下、別ルート選択時の簡単な説明
649
:
名も無きAAのようです
:2015/10/25(日) 00:23:22 ID:TxwCUfq60
ヤッター
650
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/25(日) 00:23:38 ID:i2XaXEzg0
東ルート
流石兄弟がクリムゾンヘッドの傭兵として雇われる→犬がクリムゾンヘッドに加入→犬がハインを主人として無双→最後の最後にハインが西のクールに殺される→ハインの子宮を食べた犬は新しい主人を探しに行く。
北ルート
犬がペニサスと合流→タカラらゆるものを払いのけるペニサスの力に感服する→少しずつながら北のナインテールがソウサクシティを掌握していく→犬はペニサスに一生遣える。
651
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/25(日) 00:26:19 ID:i2XaXEzg0
西ルート
ニダーが死ぬ→西のイエローモンキーが 東と北に宣戦布告→ヒートとクール以外死ぬ
ルート分岐→ヒート……ヒートと友に犬は生きていく。
ルート分岐→クール……クールを殺して犬は自殺する
652
:
名も無きAAのようです
:2015/10/25(日) 00:26:39 ID:5k0KbRUM0
東ルートがやべぇことになってる
653
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/25(日) 00:33:36 ID:i2XaXEzg0
交差点
ジョニーウォーカー闇を跳ぶ。
全7話。
1月31日。
完結。
所詮、自分は
犬で、あります。
.
654
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/25(日) 00:37:41 ID:i2XaXEzg0
人は神を目指して生きるのだから。
犬が主人を探して生きる事を、どうして非難できようか。
彼は神を探して歩く。
そして殺して、犯して、
吠える。
まるで自分の存在を呪うかのように。
何故なら彼は結局は、
所詮、哀れな
犬なのだから。
.
655
:
◆DDAJclyWXI
:2015/10/25(日) 00:38:33 ID:i2XaXEzg0
ぉちんちん。
656
:
名も無きAAのようです
:2015/10/25(日) 00:44:45 ID:5k0KbRUM0
( ^ω^)……
657
:
名も無きAAのようです
:2015/10/25(日) 06:59:50 ID:ZAyOCmKc0
つまり年内はお預けってことなのかよ!?
658
:
名も無きAAのようです
:2015/10/25(日) 07:03:34 ID:EYXY9FQc0
>>657
違うだろ
659
:
名も無きAAのようです
:2015/10/25(日) 21:35:22 ID:ndCPO9Jg0
正直、このスレは一年後ぐらいに見にくればいいとおもうよ
660
:
名も無きAAのようです
:2015/10/25(日) 21:39:00 ID:DnCxvX9Q0
>>659
はい、お一人でどうぞ
661
:
名も無きAAのようです
:2015/10/26(月) 19:07:12 ID:E7Y/ht6.0
どれだけ暇なんだよwww
こんなもん一年後だって完結するわけないわな
662
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 15:32:18 ID:BhkOODio0
今夜投下ー
663
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 16:22:02 ID:6jtpD6sI0
まじかよヒャッホイ
664
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 18:47:47 ID:mOeDwODg0
マ?
665
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:23:27 ID:BhkOODio0
ごめん。犬しばらく出ないわ
666
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:24:08 ID:BhkOODio0
ミ,,゚Д゚彡「なあ、ギコ。最強の能力って何だか分かるか?」
半ばただの宴会と化したウルボロスの決起集会。
喧騒から少し離れた小さなテラス席で髭面の大男、ズブロッカ・フサが前触れも無く対面の弟分に語りかける。
黙々とエールを飲んでいたギコがその質問の意図を計りかね無言で顔をしかめていると、フサは何故か満足そうな顔を浮かべ、エールをグイっと飲み干す。
そして近くにいた部下に代えの酒を注文すると、少し悪戯めいたような喜色を浮かべながら口を開いた。
667
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:25:02 ID:BhkOODio0
ミ,,゚Д゚彡「訳わかんねぇって顔してんな?」
(,,゚Д゚)「実際、訳わかんねぇよ。兄貴。 何だってんだよ、急に」
ミ,,ーД゚彡「何、そんな難しい話じゃあ無えんだよ」
立派に蓄えた顎鬚を撫でつけるフサの顔色は先程と変わらない。
困り顔のギコの顔にむしろ満足したような様子で諭すように続けた。
ミ,,゚Д゚彡「相性とか、もちろんあるさ。使い手自身の身体能力とか、知恵とかも…よ」
ミ,,゚Д゚彡「そう言うの抜きにしてよ。純粋に能力の価値だけの強さで考えた時の話だよ」
668
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:25:45 ID:BhkOODio0
(,,゚Д゚)「ふぅん、あれか? 『時を止める』とか? かの有名なデトロイトのマフィアグループは時間を操るとか聞いたことあるぜ?」
ミ,,ーД゚彡「デトロイトの『DOM』か? まあ、あそこの『ベネディクティン・ファミリー』の力も確かにすげぇ」
あてずっぽうで適当な答えを出し、ギコはすっかりぬるくなったエールを口に含む。
何となく横に視線を向けてると、喧騒の中に新しくボスとなったスニフィ嬢の白い肌が見える。
豊かなバストに引き締まったウェスト。
流れるような美しいボディライン、そして後ろの方で束ねた黒髪が映える美しい顔立ち。
まさにアジアンビューティーという言葉がピッタリではないだろうか。
669
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:26:31 ID:BhkOODio0
(,,ーД゚)(あんな娼婦のようなナリだっていうのに、化物じみた強さを持っているとは、ねえ)
自分の身体を堅牢な鱗でおおい、大型のハ虫類(本人曰く龍だそうだが、ギコには変にデカいトカゲにしか見えなかった)に変体。
さらには火まで吹くという、ファンタジー小説のキャラクターのような力を持つ人間アブソリュート・スニフィが彼の視線の先にいる。
初めて彼女の力を目の当たりにした時は大層驚いたものだ。
ソウサクシティの裏の人間にはそんな力を持つものが、ごまんと居る。
もちろん、彼が所属する『ウルボロス』の中にも珍しくは無い。
仮に対決することになったとして、真っ正面からスニフィと立ち向かうには無謀だろうが、やり方によってはなかなか良い勝負ができる力を持つもつ者もいるだろう。
そう考えると、最強の能力を持つ猛者と言うのは案外近くにいるのかもしれない。
ギコはそんな事を考えていた。
670
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:27:19 ID:BhkOODio0
ミ,,゚Д゚彡「だが、違う」
半ば無意識にスニフィをぼおっと見つめていたギコの視線が、唐突なフサの否定の声に反応して慌てて対面に向き直る。
兄貴分の大男はギコの様子を咎めるでもなく、視線がこちらに戻るのを待っていたかのような笑みを浮かべながら雄弁に騙りだした。
671
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:28:01 ID:BhkOODio0
ミ,,゚Д゚彡「違うな、違う。確かにデトロイトのやつらも強い。もっと言うならお前が夢中なスニフィ嬢の力もハンパねぇ」
(;,,゚Д゚)「いや、そういう訳じゃ……」
ミ,,゚Д゚彡「まあ、聞けや。それに、西のヒートにクール。それに東のハインの力も強い」
うんうん、と頷きながら語り続けるフサの顔はどことなく赤い。
そう言えば見かけによらずに下戸だったか。
半ば呆れるような考えを浮かべ、ぼんやりとフサの顔を眺めていたが、ふいに彼の瞳がギロリと光った。
ミ,,゚Д゚彡「だが最強じゃあ、無え」
.
672
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:29:23 ID:BhkOODio0
フサは代えのエールを一息で飲み干すと、前のめりの姿勢でむんずとギコの方に顔を寄せた。
その顔からは先程までのどこか悪戯めいた笑みはすっかり消えている。
ミ,,゚Д゚彡「いいか、ギコ? よく聞きやがれ。最強っつうのは『先が見える力』だ」
ミ,,ーДー彡「どんなに絶望的な未来が待ってようがそれが分かってればいくらでも逃げれるし、対策も立てれる」
ミ,,ーД゚彡「つまりは無敵さ」
喧騒から離れた、むさ苦しい男2人の密かな晩餐。
もし彼らの仲間がどこかでこの会話を盗み聴いていたならば、恐らく嫌悪の表情を浮かべていた事だろう。
理由は単純だ。
この髭面の大男であるズブロッカ・フサが持つ能力は『未来予知』。
予知できる範囲や確定性にはムラがあるらしいが、それでも戦いにおいて有利になる力ではある。
673
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:30:25 ID:BhkOODio0
第三者から見たら、彼は子分に酒の席にて自慢話をしている嫌なやつに見えた事だろう。
だが真剣な眼差しで兄貴分の言葉に聞き入っているギコは、その話の真意に気付いていた。
ミ,,゚Д゚彡「いいか、よく聞けよ。ギコ?」
ミ,,゚Д゚彡「先が見えるやつは最強だ、絶対に負けやしねぇ」
ミ,,ーД゚彡「俺は……いや、つまり」
ミ,,ーДー彡「『俺達』は」
ミ,,^Д^彡「無敵だ」
ニカッと音が出そうな満面の笑みを浮かべたフサは話の終わりを告げるかのように、4杯目のエールを大きくグイッと飲み干し、豪快に笑いだした。
674
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:35:05 ID:BhkOODio0
なるほど、どうやら最強の能力を持っている人間というのは想像以上に近くにいたらしい。
しかも自分の目では鏡を介さないと、顔を拝めないくらい近くにだ。
目の前で上機嫌に酒を注文する大男を眺めながらギコは静かに思案する。
自分に迫り来る危機を事前に察知し、未来を視る力。
第7感『セブンス・ヘブン』を持った男『ストリチナヤ・ギコ』。
どうやら、彼は無敵らしい。
.
675
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:35:55 ID:BhkOODio0
――瞬間。ギコの視界に自分の姿が写った。
頭蓋が割れ、出来の悪い前衛アートのようにへしゃげた頭の中から脳髄が弾けるようこぼれ出している。
つまり、これは。
――――――――死
.
676
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:37:59 ID:BhkOODio0
(#,,゚Д゚)「うおおおおおおぉぉぉ!!」
本能的に右側に激しく跳躍。
すると、氷水を浴びたような強烈な寒気と暴風のような荒ぶる殺気を身にまとった血まみれの獣が、先程まで彼の頭があった地点を凪ぎ払うように通りすぎた。
受け身も満足に取れず、ただでさえ先の戦闘で傷だらけとなった身体に追い討ちをかけるかのように重い鈍痛が走るが構うことは無い。
どんなに無様に転げ回る事になろうが、フサは自身が『視た』死という名の未来を変える事が出来たのだから。
(;,,゚Д゚)「畜生……!」
薄暗い廃墟にギコの荒い吐息と、悪態が響く。
辺りを見回せば、彼の仲間達だった物がそこら辺に散らばっており、気を抜いたら今にでも嘔吐してしまいそうだった。
677
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:39:05 ID:BhkOODio0
13の若さから裏の世界に堕ち、それから10年以上も地獄と言われるべき光景を見てきた。
暴力、殺人、理不尽。まさにヘドが出るような悪意をヘドが出るほど経験してきた。
だが、そのどれもがこの圧倒的暴力による虐殺処分と比べるに値しない。
泣きたい、叫びたい。逃げたい。
だが一瞬でも隙を見せれば目の前の化物に身体をバラバラに引き裂かれるであろう。
そんなものはわざわざ『視なくても』分かる。分かってしまう。
最強であり、無敵だった筈の男。
ズブロッカ・ギコは今まさに絶望の淵に追いやられていたのだ。
( ゚∀゚ )「うぅん……?」
ゆらり、ゆらり。
そんな擬音が鳴り出しそうなゆったりとした動作で獣は二度三度と首を捻る?
678
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:39:57 ID:BhkOODio0
眉をしかめ、唸りながら何かを思案するその姿は、幼さの残る顔立ちと相まってこの地獄とのギャップが際立つ。
やがて男は足下に落ちていた女性のものと思われる白い右腕を拾い上げて、フライドチキンでも食べるかのような、ごく自然な動作でかぶり付いた。
小腹が空いたからなんとなく。そんな感じで人肉を頬張る姿は、グロテスクという領域を越え、いっそシュールですらあった。
そしてまたゆらりとした動作で、腰に巻き付けてた、まるでリボルバーのような風変わりなボトルケースから1本酒を抜き取り、そのままゴクゴクと喉を鳴らして流し込む。
(; ー∀゚ )「うぅん……? なぁんでだろうなぁ……?」
いつの間にか、まさに骨の髄までしゃぶりつくした餌だったものを無造作に投げ捨て、酒焼けした声で唸る。
679
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:40:48 ID:BhkOODio0
そして『黒く色付いた吐息』を吐き出しながら、もう一度ウィスキーを味わうと、これまたゆらりとした鈍い動作で目の前で傷だらけの身体を庇いながらこちらを睨み付けるギコの方に視線を向けた。
( ゚∀゚ )
その男、存外に平凡。
顔立ちは幼く、体格も小柄。
服装も腰に巻いたボトルケースを兼ねた風変わりなベルトを除けば、どこにでもいる青年である。
ミディアムロングの前髪から見え隠れする瞳には赤と黄色が混じったような独特な濁りが出ているが、それもスラム育ちの人間ならば特出する程に珍しい事では無い。
680
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:41:28 ID:BhkOODio0
サイズオーバーのパーカーから覗ける手首は少女のようにか細く、パッと見ただけではこの腐った町の薬づけのよくいる若者。と判断されるだろう。
どこにでもいる、ありふれた弱者、負け組、塵、屑。
彼の風貌はそう思わせる。
特徴的なものが何一つ無い、小柄な青年。それで終わりだ。
その身がおびただしい血液と臓物にまみれていなければ。だが。
.
681
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:43:05 ID:BhkOODio0
(# ゚∀゚ )「アッヒャアアアアアアァァァァ!!」
奇声を上げながら男は飛び出した。
人間離れしたその跳躍速度は猫科の肉食獣の如く、20メートル以上あった筈のギコとの間合いを一瞬で詰め、瞬速の手刀を首筋に見舞う。
しかしその動きを『視ていた』必要最低限の動きだけで首を僅かに捻り回避。
(; ゚∀゚ )「アヒャッ!?」
男は攻撃を回避された事に動揺してか、勢い余ってギコを追い抜かすようかのように飛び抜けた。
そんなスキを見逃す筈無く、ギコは無防備な背中に向かって発砲。
発射された三発の弾丸はどれも獣の背中に風穴を開ける。
心臓は外したものの、常人なら痛みにうめき声をあげながら倒れ込む致命傷だ。
682
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:43:51 ID:d9aA43n.0
http://ssks.jp/url/?id=348
683
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:43:52 ID:BhkOODio0
(;,,゚Д゚)「またかよ畜生……!!」
しかし、目の前の獣野郎は倒れ込むどころか声一つあげること無く、またゆらりとした動作でこちらに振り返る。
そしてまた何か考え込むようにして首を捻りながらうんうんと顔をしかめる。
(;,,゚Д゚)(さっきから何発も何発もぶちこんでるっつうのに……!)
戦いは一方的な筈だった。
首領を殺害された事に対する北への報復。
そこには仁義も礼節も糞も無い。
684
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:44:38 ID:BhkOODio0
自軍28対敵は1人、という圧倒的な数の差。
さらに全員が裏ルートから仕入れた防弾チョッキにベレッタ2丁の完全武装という圧倒的な武力の差。
もはや戦いとも呼べないただの『処刑』が始まる筈だったのだ。
その男が、ただの人間だったのならば。
.
685
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:45:36 ID:BhkOODio0
(; ゚∀゚ )「うぅん。やっぱ、わっかんねえんだよなぁ……?」
男はガリガリと頭をかきむしりながら非難の意を込めたジットリとした視線をギコに送る。
その動作の1つ1つは、彼の容姿以上に幼さをが目立ち、彼がいわゆる健常者とは違うことを感じさせた。
( ゚∀゚ )「俺はさ、何回も何回もさ、アンタを殺すためにさ」
(* ゚∀゚ )「こう、ビュバーンてなぁ? 飛び掛かって引きちぎろうとしてんだけどよ」
(; ゚∀゚ )「なぁんでかアンタはヒョイヒョイ避けるんだよなぁ……っかしいなぁ? 俺、結構強いんだけどなぁ?」
.
686
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:46:29 ID:BhkOODio0
その男、平凡。
その男、幼稚。
だがその男……
(;,,゚Д゚)(こいつが……北の『食人鬼(グルメマン)』)
(;,,゚Д゚)(不死身の化物、『ラフロイグ・アヒャ』!!)
――――――只の人間に在らず。
.
687
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:48:51 ID:BhkOODio0
ごめん酒のんでくる
688
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 20:57:09 ID:6jtpD6sI0
いてら
689
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 21:14:20 ID:f/Q8iKQk0
おお
690
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 21:39:37 ID:HtcvkzHI0
スターオブボンベイ飲みながら待ってる
フサとギコは同一人物?
691
:
名も無きAAのようです
:2016/01/30(土) 22:31:54 ID:d9aA43n.0
http://ssks.jp/url/?id=348
692
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 03:52:32 ID:7H8VBN/c0
ギコの能力がフサみたいな感じなのかな?
693
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 14:26:24 ID:B3tiLes60
今日中に完結するのかこれ
694
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 15:49:12 ID:gPtxL/Z60
>>693
え?
695
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 19:14:42 ID:smmq1ixM0
どこにも2016年の1月31日とは書いていない!
696
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 19:43:43 ID:kKKh0RIM0
ちゃんと見返せあほ
697
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 20:14:00 ID:1n6sRPrE0
____________
ヾミ || || || || || || || ,l,,l,,l 川〃彡|
V~~''-山┴''''""~ ヾニニ彡| 書く・・・・・・!
/ 二ー―''二 ヾニニ┤ 書くが・・・
<'-.,  ̄ ̄ _,,,..-‐、 〉ニニ| 今回 まだ その時と場所の
/"''-ニ,‐l l`__ニ-‐'''""` /ニ二| 指定まではしていない
| ===、! `=====、 l =lべ=|
. | `ー゚‐'/ `ー‐゚―' l.=lへ|~| そのことを
|`ー‐/ `ー―― H<,〉|=| どうか諸君らも
| / 、 l|__ノー| 思い出していただきたい
. | /`ー ~ ′ \ .|ヾ.ニ|ヽ
|l 下王l王l王l王lヲ| | ヾ_,| \ つまり・・・・
. | ≡ | `l \__ 作者がその気になれば
!、 _,,..-'′ /l | ~''' 所詮犬の完結は
‐''" ̄| `iー-..,,,_,,,,,....-‐'''" / | | 10年後 20年後ということも
-―| |\ / | | 可能だろう・・・・・・・・・・ということ・・・・!
| | \ / | |
698
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 20:17:03 ID:B3tiLes60
つまり今日来なかったら来年以降ってことですかァーッ!?
699
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 20:18:49 ID:kZL1MkRY0
まあ、そうなるな
700
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 21:22:27 ID:N4Nyq1Is0
11時に投下するからちょいまっちょ
701
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:20:17 ID:N4Nyq1Is0
ソウサクシティの北を征する『ナインテール』。
創設から一番年が若い新鋭の組織なのだが、他のマフィアグループ達とは決定的な違いがある。
それは構成メンバーの人数だ。
数は力。とはまさに言葉通りで、組織を大きくするにはまず人員が必要だ。
数を揃えて組織を大きくすることで、そのグループは強大な後ろ楯になり、その力を頼ってまた人が集まる。
数多くの傭兵をうまく使っているため、純粋なグループメンバーが殆ど居なくても成り立つ東の巨大グループ『クリムゾンヘッド』ですら30人以上の構成員を持っている。
702
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:21:45 ID:N4Nyq1Is0
にも拘らず、北の『ナインテール』はその首領である『アードベッグ・フォックス』を含め、わずか3人しかメンバーが居ない。
あぶれ者達が集い、小さな悪事を働くような小さなグループならまだしも、北側の広大なシマを牛耳る組織としてはまさに異常。
しかも噂では首領である筈のフォックスに関しては、そこらにいるような一般人と戦闘力が変わらないと言われている。
普通に考えればそんな弱小な男がまとめるような組織など一瞬で潰されてしまう事であろう。
では何故そんな吹けば飛ぶような無力な男が作り上げた組織が、北を代表する巨大な力を得たのか。
703
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:25:44 ID:N4Nyq1Is0
それは彼の優秀な2人の部下。
姿形は平凡そのものだが、どんな大軍も無惨に殲滅し、なおかつ自身は全く傷を負わない。
そんな不死身の『魔女』と『食人鬼』の存在だ。
(; ゚∀゚ )「うぅん……困ったなぁ。俺ぇ、早く帰って、ディナーの支度をしなきゃいけねぇんだけどなぁ」
ゆらり、ゆらり。
酩酊するかのように身体を揺らしながらぶつぶつと呟く様はどこか不気味である。
食人鬼の詳しい能力は一切不明だ。
ただ、決して死なず。
そして圧倒的なスピードで敵陣を駆け回り、その怪力で全てを引き裂き、そして手頃な獲物をエサとして食すのだそうだ。
704
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:26:41 ID:7E0kyBMY0
http://ssks.jp/url/?id=348
705
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:27:05 ID:N4Nyq1Is0
(* ゚∀゚ )「今夜はなぁ、日本料理を作るんだよ。アンタ、知ってっかぁ? 日本食って、ヘルシーで美味いんだぜぇ? アヒャヒャヒャ……」
まるで友人にでも語りかけるような軽い口取りは食人鬼の二つ名とは似ても似つかない。
だかしかし、ギコは今後自分にふりかかるであろう執拗なまでの獣からの攻撃がしっかりと『視えて』おり、静かに戦慄していた。
( ゚∀゚ )「まぁ、だからさぁ? 時間も無ぇことだしぃ? 」
( ∀ )「そろそろ本当に……」
(;,,゚Д゚)(来るか……!!)
瞬間、空気が氷つく。
どす黒く色付いた殺気がアヒャの身体から勢いよく吹き出した。
706
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:28:58 ID:N4Nyq1Is0
(# ゚Д゚ )「死んでくれやああああああぁぁぁぁぁ!!」
瞬間、迫る死の影。
(#,,゚Д゚)(糞!!)
神速、その一撃。
まさに神速。
まともに避けようにも、常人には目にも止まらぬ毒手がギコに襲い掛かる。
予めアヒャが首を狙うことを『視ていた』彼は体勢をくずしながらも強引にバックステップを取る。
同時に、鎌鼬のような手刀がギコの目の前で吹き荒び、彼のくすんだ金髪がヒラリと何本か舞った。
707
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:31:59 ID:N4Nyq1Is0
その威力と速度に息を飲む間もなく、今度は心臓を狙った左手による突き。
身体を思いっきり捻り、どうにか直撃は免れたものの、風を裂く食人鬼の左腕は僅かにギコの身体を切り裂き、霧のような血液が空を舞う。
痛みに歯を食い縛るギコの視界に、今度は右脚を砕かれた自分の姿が『視えた』。
大きくしゃがみこんだアヒャが遠心力をいっぱいいっぱいに使った回し蹴りがまるで草木を刈るかのように彼の脚を破壊する光景が。
(;,,゚Д゚)(この流れで脚は不味い!!)
圧倒的な破壊力の差の前に、逃げの一手に回るしかないギコにとって脚を失う事はまさに死と同義であろう。
強引に距離を取ろうとするも、先程までの戦闘のダメージがここになって一気に響いたのか、ギコの身体から力がフッと消え、そのまた倒れこむようにグラリと体勢を崩した。
708
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:32:53 ID:N4Nyq1Is0
(;,,゚Д゚)「しまっ……!?」
瞳が見開かれ、全身の毛穴という毛穴が開き、途方もない量の汗が吹き出し、やがて身体が凍りつく。
これは、紛れもない。
死の予感。
( ∀゚ )「死んじゃえ」
無慈悲なまでに無邪気な、低くしゃがれた食人鬼の一言と共に、虚空に弾けるように血の雨が吹き出した。
709
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:34:58 ID:N4Nyq1Is0
―――――そう。
(;,,゚Д゚)(なっ……!?)
(; Д,, )「………ごばっ!?」
―――食人鬼、ラフロイグ・アヒャの首筋から。
.
710
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:35:43 ID:N4Nyq1Is0
(;,,゚Д゚)(何が……!?)
首筋を庇うように両手で覆うアヒャの表情は驚愕に染まっている。
九死に一生を得たギコだったがあまりに突然の出来事に一瞬、身動きが取れなくなる。
しかしこの機会を逃すまいと瞬時に悶え苦しむ食人鬼から距離を取ると、即座に辺りを見回し警戒する。
(;,,ーД゚)(一体誰が……!?)
必死の形相で辺りを見回すギコの耳に、悶絶するアヒャの声にもならない悲鳴に混じり、革靴がアスファルトを叩く足音が響いた。
711
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:36:39 ID:N4Nyq1Is0
「……北の、食人鬼。か」
暗闇の向こうから、足跡と共に機械のように冷淡な男の声が響いた。
(; ∀゚ )「あっ……あんだ……っ!?」
暗闇から徐々に大きくなる足音の向こうに、自分の首を刻んだ奴がいる。
第三者の声にアヒャが殺意の籠った視線を向けた。
だがそれと同時に……
712
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:38:32 ID:HuFl1.pw0
(; Д,, )「………ごがっ!?」
(;,,゚Д゚)「なっ!?」
再度、『見えない何者か』による攻撃。
必死に喉を庇っていた両手ごと切り裂かれ、アヒャの小さな身体が痛みと驚愕に震えだした。
「貴様に問う。北の敵が南だけだと思っていたのか?」
響く足音と共に、前触れもなく再び、一閃。
不可視の斬撃。
見えない刃はアヒャの両目を一文字に切り裂き、一瞬で彼の世界から色を奪い取る。
耳をつんざくような悲鳴を上げる彼に追い打ちをかけるかのように、謎の刃はアヒャの両足を深く抉り、腱を切る。
たまらず冷たいアスファルトに転げ回る彼だが、その喉元と瞳の傷はすでに黒い煙を患部から吹き出しながら、徐々に回復の兆しを見せていた。
713
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:41:21 ID:HuFl1.pw0
(; ∀ ゚ )「だっ……誰だぁ……?」
眼球を見事に切断された事により微妙に中心線からズレ出した眼球で、必死に暗闇から声の主を睨み付けるアヒャの形相はまさに人ならざる者の姿であった。
それと同時に、第三者による、全く視る事の出来ない謎の攻撃の恐ろしさを間近で観察していたギコも、思わず息を飲んでいた。
(;,,゚Д゚)(見えなかったぞ!? あんな距離から一瞬で!?)
(;,,゚Д゚)(急所を確実に、しかも同時に何ヵ所も切断だと?)
714
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:42:20 ID:HuFl1.pw0
不可視の攻撃。
その時点で、まず常識では考えられない程の驚異である。
しかもこの地獄への乱入者はそれを遠距離から可能にしてみせたのだ。
もしこの攻撃の矛先が自分に向かったら……
そう考えた瞬間、ギコの全身が一気に凍りついた。
「ふむ。人に名を訊ねる時はまず自分から……というのが一般論なのだが?」
コツゥン、コツゥン。
不可視の者の、足跡が響く。
715
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:43:02 ID:HuFl1.pw0
( ゚д゚ )
闇から這い出るように現れたその影は、鋭い眼光を持ったスーツ姿の長身の男だった。金色の髪はオールバックで纏められてあり、全体的にストイックに纏められたスーツスタイルも相まって、とても腐ったスラム街の人間には見えない。
右手に、これ見よがしと握ってある大振りのククリナイフさえ無ければ、一流企業に勤めるエリートと説明されれば誰しもが納得するだろう。
(; ∀゚ )「お、俺ぇ……馬鹿だからよぉ。よくわっかんねっけど」
弱者を見下ろすような、スーツ姿の男の冷めた視線を受け、地面に伏していた食人鬼がゆらりと立ち上がった。
その身体からつい先程までの痛々しい傷痕はすっかりと消えており、炯々と不気味に濁り、輝く瞳からは獲物を狙う獣の魂が見てとれた。
716
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:43:55 ID:HuFl1.pw0
( ∀゚ )「まぁ、要はぁ? 早い話がぁ……」
ドンッとまるで爆発するかのようにアスファルトが割れる音が響いた。
その瞬間、すでに血に飢えた食人鬼は砲弾のような勢いで宙に飛び出し、まさに怪物のように乱入者に飛びかかる。
(# Д゚ )「テメエも敵かあああああああぁぁぁぁ!!」
(;,,゚Д゚)(早っ……!?)
先程までのギコとの戦闘よりも鬼気迫る表情で飛び掛かるアヒャの勢いは、まさに獣を越えた化物そのもの。
瞬きをする間に男の頭上に達したアヒャがその口を勝利を確信した愉悦の色に歪め、まさに必殺の毒手を男の頭蓋に降り下ろす!
717
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:45:03 ID:HuFl1.pw0
( ゚д゚ )「『スリー・ミラー』」
その直前。
(; Д )「………がっ……!?」
切断。
一撃が届くかと思われた、その刹那の瞬間。
男の一言と、それと同時に繰り出された見えない斬撃によって、アヒャの、右手が、右腕が、そして首が。
動力を失った肉の塊が間抜けなまでに、見事に宙に放り出され、やがてボトボトと無様に地に落ちていった。
718
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:46:08 ID:HuFl1.pw0
( ーд゚ )「ふむ。名を名乗る前に殺してしまったか……まあ、だが礼節は重んじねばならぬな」
処刑。
その男、一歩も動くことなく、見事に処刑。
( ゚д゚ )「私の名はミルナ。西の『イエローモンキー』幹部『デュキャスタン・ミルナ』だ」
( ゚д゚ )「今回は偉大なる父、リシャール・ニダー様の代理である美しきヘネシー・クール様の命により馳せ参じた」
( ーд゚ )「北の『食人鬼』か。貴様も強者を名乗るなら己の身の程を弁えて行動すべきだったな。まあ、もう聴こえないだろうが1つ、貴様に金言をくれてやろう」
719
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:46:53 ID:HuFl1.pw0
口をポカンと開けたまま地面を転げまわる食人鬼の生首を見下ろすようにして、乱入者デュキャスタン・ミルナは無機質なまでに冷たく、こう言い放った。
( ゚д゚ )「『She・more・glass』。もっと、鏡、ちゃん。と、視るべきだったな」
デュキャスタン・ミルナ。
その二つ名は『暗殺』
決して銃を使わず、右手に握った鏡のように磨きあげられた特性のククリナイフ 1本でありとあらゆる敵を瞬殺。
決して自らが『仕事』を行う瞬間を誰にも目撃されたことが無いという、不可視の一撃を得意とする。
彼こそが、西の『イエローモンキー』に所属する、ありとあらゆる敵を確実に処刑してきた暗殺のプロフェッショナルなのである。
720
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:47:47 ID:HuFl1.pw0
( ーд゚ )「……さて」
(;,,゚Д゚)「……!?」
( ゚д゚ )「ああ、警戒しないでくれ。私は貴殿の味方だよ」
だからこそ、気付かなかったのであろう。
( ∀ )
すっかり興味を失った生首に背を向け、警戒するギコに語りかけるその瞬間。
721
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:48:44 ID:HuFl1.pw0
( ∀ )
( ∀ )
( ( ∀゚ ))
切り離され、無様に地に転がる食人鬼の瞳がギロリと動いた事に。
.
722
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:49:56 ID:HuFl1.pw0
おしまいける。
中編2に続く
723
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 22:54:51 ID:wq4YpTOI0
おつん
724
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 23:36:55 ID:K5wQqThE0
おつんつん
前話で白い右腕が〜とかあっていやまさかねーなんて思ってるけど、もしかしてスニフィさんもう死んでる?
725
:
名も無きAAのようです
:2016/01/31(日) 23:39:51 ID:HuFl1.pw0
>>724
スニフィさん結構前に死んでる。ジョニーウォーカーの台詞あたりで
726
:
名も無きAAのようです
:2016/02/01(月) 00:32:53 ID:JqKuKVDE0
>>724
>>505
>>516
727
:
名も無きAAのようです
:2016/02/01(月) 02:02:22 ID:YO/SRDr60
あれ、ギコさっきスニフィ見てたよね?
728
:
名も無きAAのようです
:2016/02/01(月) 03:31:03 ID:Kx6Z7wnM0
おつー
最後のアヒャこわいな
729
:
名も無きAAのようです
:2016/02/02(火) 03:09:12 ID:FtIs24Jg0
今更読んだけどこういうの好きだな
つーの命乞い?が叔父に処女奪われた時のそれだったらリョナ的に捗る
プロット見る限り犬の主人になる候補は結構いるんだな
つーは戦闘時になんかの理由で除外されたんかね
730
:
名も無きAAのようです
:2016/02/02(火) 08:04:38 ID:qFeVY.HQ0
>>727
ウルボロスの決起集会の時は回想シーンなんだ。分かりづらくてごめんね。
週末に中編2を投下するんだけど、最初に言っとく。
スカトロ微注意。
731
:
名も無きAAのようです
:2016/02/02(火) 09:05:42 ID:rR1flly60
バナナフィッシュ俺も好きだよ
もっかい読み返してくるか……
732
:
名も無きAAのようです
:2016/02/04(木) 03:27:10 ID:ZF8zzexs0
訂正
>>677
誤……最強であり、無敵だった筈の男。
ズブロッカ・ギコは今まさに絶望の淵に追いやられていたのだ。
正…最強であり、無敵だった筈の男。
ストリチナヤ・ギコは今まさに絶望の淵に追いやられていたのだ。
誤字脱字だらけだがこれはアカンやつや.
733
:
名も無きAAのようです
:2016/02/04(木) 04:19:18 ID:wy0hcyrE0
《《《《号 外》》》》
こんな情報を入手しました!
極秘情報です。
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734
:
名も無きAAのようです
:2016/02/04(木) 04:34:51 ID:wy0hcyrE0
☆★☆★号 外★☆★☆
この中に昔の過去が見れる。
探してね!
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735
:
名も無きAAのようです
:2016/02/16(火) 09:01:44 ID:CPW9f4UM0
あれこっちは?
736
:
名も無きAAのようです
:2016/02/19(金) 22:16:05 ID:pEPVpCNg0
>>735
いや、ほら、忘れてたとかそういんじゃなくて? ね? ほら……
明日投下するから、うん……
と言うわけで明日の23時に投下。
酔い潰れてなかったら
737
:
名も無きAAのようです
:2016/02/19(金) 22:18:11 ID:6OohGY5E0
酒を断て
738
:
名も無きAAのようです
:2016/02/19(金) 22:39:45 ID:pEPVpCNg0
>>737
死んでも無理
739
:
名も無きAAのようです
:2016/02/19(金) 22:53:31 ID:2kEWHzg60
その意気やよし
740
:
名も無きAAのようです
:2016/02/19(金) 23:02:02 ID:OyFy3zHE0
ドクターストップの期間もやっぱり飲んでた?
741
:
名も無きAAのようです
:2016/02/19(金) 23:04:09 ID:pEPVpCNg0
>>740
そもそも私の場合は量が問題だったから飲んでたけど量を減らしてた。2日に1本ジャックダニエル買ってた時点でお察しよ
742
:
名も無きAAのようです
:2016/02/19(金) 23:30:18 ID:APFwVL4Q0
マジでアヒャみたいな飲み方してたんだな……そら体壊すや
743
:
名も無きAAのようです
:2016/02/20(土) 20:51:33 ID:H/Jdx.tc0
36 名前:同志名無しさん :2016/02/20(土) 20:25:06
投下は11時や!
酔ってるで! 途中ながらや!
酔ってんじゃねーよハゲ!!!!
744
:
名も無きAAのようです
:2016/03/10(木) 12:17:15 ID:dWZh/skI0
まとめがついたぞおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!
クールライターさんだぞおおおおおぉぉぉぉ!!
マジでありがとうございますうううううぅぅぅ!!
http://coollighter.blog.fc2.com/blog-entry-353.html
まあ次回更新は未定なんだけどな。
745
:
名も無きAAのようです
:2016/03/10(木) 12:39:30 ID:EmNhJy/k0
http://is.gd/bM4zjX
746
:
名も無きAAのようです
:2016/03/10(木) 12:54:09 ID:6A0/r9ck0
これぞ!必見!!
http://bit.ly/1WaCFHn
747
:
名も無きAAのようです
:2016/03/10(木) 19:52:15 ID:Eko.OCZY0
デスノート 2016
fine-fashion.net/diec
748
:
名も無きAAのようです
:2016/03/11(金) 12:32:07 ID:Q4bcWAwc0
ワロタwww
749
:
名も無きAAのようです
:2016/03/11(金) 15:01:39 ID:CbXp.tvQ0
10年後の1/31には完結するんだろ?
750
:
名も無きAAのようです
:2016/03/24(木) 17:26:16 ID:YFLL.tAk0
無理だろ
751
:
名も無きAAのようです
:2016/07/28(木) 23:17:54 ID:5szWrKZs0
日曜に投下するのはマジなのか
頼むぞ
752
:
名も無きAAのようです
:2016/07/28(木) 23:32:19 ID:aplQnQRM0
嘘です
753
:
アル中
◆LtBsWry6Fo
:2016/07/31(日) 13:27:57 ID:BzRM8wn60
>>751
投下は金曜の夜です
754
:
名も無きAAのようです
:2016/07/31(日) 16:58:34 ID:ISDwD42I0
言質は取った
信じるぞ
755
:
名も無きAAのようです
:2016/07/31(日) 17:42:56 ID:MH.Xh6qk0
でもアル中だよ?
756
:
名も無きAAのようです
:2016/07/31(日) 20:44:39 ID:2guSAsCg0
金曜(今週とは言っていない)
757
:
名も無きAAのようです
:2016/08/05(金) 23:46:55 ID:LFFdqs3M0
信じてるぞ
758
:
名も無きAAのようです
:2016/08/06(土) 00:39:32 ID:63u8qmF60
▼・ェ・▼その男、所詮、『アル中』のようです。
759
:
名も無きAAのようです
:2016/08/06(土) 02:32:03 ID:P4d6bpNQ0
ほらな
760
:
名も無きAAのようです
:2016/09/09(金) 22:43:58 ID:5PwoTdNI0
これ今年度の一月三十一日も完結無理そうだな
761
:
名も無きAAのようです
:2016/09/09(金) 22:46:02 ID:jwU3jztU0
そりゃ無理に決まってんだろ
762
:
名も無きAAのようです
:2017/01/18(水) 23:38:01 ID:aFre80s60
今年の1月31日を楽しみにしてる
763
:
名も無きAAのようです
:2019/05/08(水) 21:37:11 ID:BTF6tduA0
マダー????
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