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( ^ω^)百物語のようです2013( ω )
1
:
◆Rsp62tAaew
:2013/06/28(金) 14:17:25 ID:PjQGMrTo0
( ^ω^)おいすー。ここは夏の祭り、百物語専用スレだお!
祭り開催まではルールの確認等自由に使ってほしいお!
( ^ω^)とりあえず今決まっているルールは
以下の通りだお!
・開催日は八月九日(金)から十八日(日)まで
※ただし投下できるのは金土日のみ。投下期間以外の本スレは作品の感想などご自由に使用してください
・作品はホラーでなくても幽霊、妖怪、人外などが出るならギャグでもなんでも可
・レス制限は一作品30レスまで。それ以上は個別スレ建てをお願いします。
・ながらはNG。個別スレを建ててそこでやるのは可。
※個別スレ参加の場合
レス制限無し。
スレ立て
↓
百物語スレにて投下開始報告、URLを貼る
↓
投下終了後、百物語スレにて投下終了報告(その際、前の人の数字を引き継いで話数宣言)
・1人何話でも投下可!
※連続投下→次に投下する人がいないか確認を取り、無ければOK
※作品の投下間隔についてはルールはありませんが少し間を開けることを推奨します
・イラストでの参加も可!一話としてカウントします。
※ただし作品への支援絵は作品としてカウントしない
・開催時間は18時から翌朝7時まで
・話が終わったら本スレ(自分でスレを立てた人はそのスレでも可)で蝋燭のAAを貼る
前回百物語のスレ
( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω )
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1344607128/
( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω )
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1345353530/
( ^ω^)他に変更点、疑問点ある方はなんでもいってほしいお!
279
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 18:30:48 ID:L8EnzUKE0
そうか、俺は行方不明だったのか
280
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 20:14:13 ID:MpiqjW.k0
おいまだ七本目だぞ
こんな調子で百いくのか?
281
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 20:24:22 ID:7ZGwsD7I0
これはアレだ、最終日付近でどかっと投下があるパターンだろう
282
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 20:41:40 ID:vIbiF2zE0
おいおいどうした
なんだよこの人のいなさは
283
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 20:44:01 ID:L8EnzUKE0
人はいるが作品は無い
まあこんな時もあるさ
284
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 20:54:14 ID:BUDFfaqo0
じゃあ後でいいかととっといた俺の作品を投下するか
285
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 20:54:57 ID:Hyt2ts1c0
作品出来上がらない人ばっか集まってんだな
俺とか
286
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 20:58:41 ID:Zfm9nmZ2O
八本目投下します。
閲覧注意。
.,、
(i,)
|_|
287
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:00:16 ID:Zfm9nmZ2O
――北の山には絶対に行ってはいけないよ。
どうして?
――鬼がいるからさ。
鬼? 鬼って、お伽噺に出てくる?
――そうさ。お前はまだ子供だからね。鬼に会ったら最後、ぺろりと食べられてしまうよ。
ふーん。
――信じていないだろう。
うん。
――ばあちゃんもな、昔、怖い思いをしたからきつく言ってるんだよ。
…………。
――さあ、もうそろそろ友達の来る頃だろう。
( ゚д゚ )「遊びに行っておいで、ツン」
ξ゚⊿゚)ξ「うん!」
私はお婆ちゃんに手を振って部屋を飛び出した。
ξ゚⊿゚)ξ人と鬼の異文化交流のようです(^ω^ )
.
288
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:02:34 ID:Zfm9nmZ2O
庭に面した長い廊下を走る。
今日は雨だから湿っぽい。
でも今年は雨が少ないみたいだから、これで米が育つとお父さんたちは喜んでいた。
(;'A`)「ちょっとツンさま、廊下は走らないでくださいって言ってるじゃないですかー!」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ、あんたも来る? 今からクーと遊ぶんだけど」
私を止めたドクオは箒を持っている。
ここに来た頃は貧相すぎる体付きにちゃんと働けるのか心配だったけれど、それは心配しすぎだったらしい。
奉公人のドクオは、今では立派な働き手で私の友達だ。
だから誘ったんだけど、私は箒を見落としていた。
うちはあまり使用人に厳しくないが、遊び惚けるのはドクオの立場を悪くする、らしい。
ドクオには悪いことをしてしまった。
('A`)「ありがとうございます。もうすぐ終わりますのでお供します」
ξ゚⊿゚)ξ「え……」
('A`)「間抜けな顔してどうしました?」
ξ゚⊿゚)ξ「いや……ドクオがいいならいいんだけど、ね」
そういえば使用人の頭のモナーさんはドクオに優しかった。
都に住んでいる孫に少しだけ似ていると言っていた。
289
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:03:45 ID:Zfm9nmZ2O
('A`)「あまりツンさまの誘いを断ってるとモナーさんに怒られるんです。
『子供は風の子、もっと外で遊ぶモナー!』って」
ξ*゚⊿゚)ξ「やっぱり、モナーさんのお墨付きなのね。なら遠慮なく遊びにいきましょ!」
私は嬉しかった。
変に真面目なドクオは私の誘いを断ることも多い。
久しぶりに一緒に出かけられる。
三日前には新しい傘を買ってもらったばかりだ。
ドクオとクーにたっぷり自慢しよう。
しとしと、小雨が降っている。
門のすぐ外にはクーがいた。
真っ黒な傘は烏の羽のような色だ。
川 ゚ -゚)「おや、今日はドクオもいるのか。ツンのお守りは大変じゃないか?」
(;'A`)「いや、そんなことは……」
ξ゚⊿゚)ξ「クー、せめて私の前では言わないでよ」
川 ゚ -゚)「冗談だよ、冗談」
クーは手を口元に当てて控え目に笑った。
傘から水滴が落ちる。
290
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:04:55 ID:Zfm9nmZ2O
川 ゚ -゚)「今日の傘はいつもと違うな。新調したか?」
ξ*゚⊿゚)ξ「うん! 蛇の目っていってね、都で流行ってる柄なんだって」
川 ゚ -゚)「きれいだな。ツンによく似合ってる」
ξ*゚⊿゚)ξ「そ、そう? あんまり褒めてもなんも出ないわよ?」
クーは話上手で褒め上手だ。
読書や算術も得意で頭の回転が早いと大人たちによく褒められている。
それに素直に思ったことを口にしてくれるから、一緒にいて気楽だ。
川 ゚ -゚)「それにしても……今日は雨だが、どこに行く?」
ξ゚⊿゚)ξ「北の山の方よ。この前きれいな花が咲いてるのを見つけたの」
川 ゚ -゚)「それは楽しみだ。でも地面がぬかるんでるからゆっくり行こうな」
ξ゚⊿゚)ξ「もちろんよ」
私とクーは並んで歩きだした。
後ろにはドクオ、つかず離れずついてくる。
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオも隣歩きなさいよ」
('A`)「この先、道が狭いじゃないですか。三人では並べませんよ」
川 ゚ -゚)「今は広いだろう。君は私たちの友人だろう、そんな遠慮されると気持ち悪い」
そう言って、クーは強引にドクオの手をとった。
291
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:05:55 ID:K5cYOggE0
ミルナがばあさまか
292
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:06:19 ID:Zfm9nmZ2O
(;'A`)「うわっ……!」
川 ゚ -゚)「しっかりしろ」
ぬかるんだ地面にふらついたドクオをクーが支える。
クーの方が背も高いし、二人は友達というより姉弟みたいだ。
ξ゚⊿゚)ξ「もう少しよ」
ドクオを真ん中にして三人で並んで歩く。
晴れていたら手を繋ぎたかった。
きっともっと互いを近くに感じられて楽しい気分になれたのに。
道が狭くなる頃には縦一列で歩いていた。
花の場所を知る私が先頭だ。
真ん中を歩くクーが私やドクオの知らない面白い話をたくさんしてくれた。
('A`)「ツンさま、どこまで行くんです?」
一番後ろのドクオが言った。
雨にかき消されないように大きな声だ。
ξ゚⊿゚)ξ「たぶんあと少しー」
私も大声で返す。
この辺りは私の庭みたいなものだから迷うはずはない。
今歩いているのもよく知った道だ。
心当たりを見渡す。
たしかに咲いていた、炎のような真っ赤な花。
鮮やかできれいで、大好きな二人に見せたかった。
293
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:07:38 ID:Zfm9nmZ2O
川 ゚ -゚)「たしかにこの辺りなのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「そのはずなんだけどなぁ……」
いくら見渡しても花はない。
その代わり、私は変なものに気付いた。
ξ゚⊿゚)ξ「……?」
目の前には小さな横穴がある。
あれは見慣れたものだ。
お婆ちゃんが小さい頃からあると言っていた。
だけどその横穴の近くに、何かがあった。
('A`)「ツンさま?」
ξ゚⊿゚)ξ「しー! 何かいるかも」
ドクオとクーは顔を見合わせて首をひねった。
でも私には見える。
横穴の前の浅い水溜まりの中に、足跡が。
そろりと、足音を立てないように動きだす。
クーたちもそれに倣ってくれる。
しとしとと降り続く雨、空は暗い。
横穴の中は真っ暗なはずだ。
近くで確認すると、それはやっぱり足跡だった。
294
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:08:44 ID:Zfm9nmZ2O
ξ゚⊿゚)ξ「……!」
さらに近づいて、私はついに横穴を覗き込んだ。
そして息をのむ。
中には何か、私たちと歳は変わらなそうな子供がいた。
でもそれは普通の子供じゃなかった。
まるい頭の上には二つの突起がついていた。
川;゚ -゚)「な、なんだあれは……」
クーは小声だった。
雨音にかき消されそうな小さな声だった。
( ^ω^)「……」
なのに横穴のそいつはくるりと振り返った。
(;'A`)「ひっ!」
ドクオが小さな悲鳴をあげる。
( ^ω^)「……君たち、誰だお?」
目があった。
私は乾いた喉をなんとか動かして、言った。
ξ゚⊿゚)ξ「ツン、私の名前はツンよ。……あなたは?」
( ^ω^)「僕は……」
.
295
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:09:59 ID:Zfm9nmZ2O
頭に小さな角を持つ子供はブーンと名乗った。
クーとドクオもおそるおそる自己紹介をして、私たちはブーンのことを知った。
ブーンは気付いたらここにいたらしい。
自分は角を持つ忌み子なのだと言っていた。
忌み子というのは村の嫌われ者のことだとクーが教えてくれた。
たまに大人が食べ物を運んでくる、ブーンはそれを食べているらしい。
ブーンのことは絶対に秘密で、それを知った私たちは殺されてしまうかもしれないと言われた。
ξ゚⊿゚)ξ「そんなの、ひどい」
それが私の感想だ。
ブーンは私より年下かもしれない。
なのに、ずっとひとりぼっちだったなんて。
( ^ω^)「ひどい、のかお?」
川 ゚ -゚)「ああ、ひどいさ。君は何も悪いことをしていないんだろう?
ならこんな場所にいなければならない理由なんてないさ」
クーは右手を差し出して笑った。
川 ゚ー゚)「君の隣には私たちが立とう」
振り返って、私とドクオに向けて手を差し出す。
296
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:11:25 ID:Zfm9nmZ2O
ξ゚⊿゚)ξ「そうね」
('A`)「……」
私はドクオと手を繋いでブーンを見る。
ブーンはなにがなんだか分かっていないようだ。
ξ*゚ー゚)ξ「ブーン、友達になりましょう」
ブーンは迷って、ついに私たちの手を取った。
.
297
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:13:01 ID:Zfm9nmZ2O
それから私たちは四人で遊ぶようになった。
雨の日はみんなで横穴で過ごした。
クーの好きな書物の話を聞いたけれど、私には難しかった。
ブーンはすぐにクーの話が分かったようだった。
梅雨が終わってから沢に行った。
そこにいる小さな蟹がおいしいのだと教えてあげた。
ブーンは誰よりも蟹を捕まえるのが上手になった。
みんなでブーンの家になっている横穴を掃除した。
ドクオはさすがな箒さばきだった。
ブーンも熱心に壁の汚れを落としていた。
毎日のようにブーンと遊んだ。
クーとドクオはいないこともあったけれど、どちらかが会う時に私は必ずブーンに会った。
山の木々は黄や紅に染まっていた。
最近風が肌寒い。
よく晴れた日に、私とクーとドクオはブーンに会いに行った。
( ^ω^)「こんにちはだお! 今日は何して遊ぶお?」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしようかなぁ……」
落ち葉を足で払いながら考える。
昨日は歌をうたった。
一昨日は鬼ごっこをした。
その前はお手玉で遊んだ。
298
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:14:11 ID:Zfm9nmZ2O
川 ゚ -゚)「久しぶりにかくれんぼなんてどうだろう?」
('A`)「かくれんぼって……クーさん、前は事前に穴掘ってましたよね」
川 ゚ -゚)「今日はなんの準備もしていないぞ。正々堂々勝負だ」
クーは何をするにしても、ひとりでこっそり準備をしていたりする。
だからドクオは嫌がったのだけど、クーは正直者だ。
今回は本当に何もしていないだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「私はいいわよ。ブーンは?」
( ^ω^)「僕もいいお。今日こそ最後まで見つからないように頑張るお!」
私とクーとブーンは賛成だ。
三人でドクオをじっと見つめる。
('A`)「三人がやりたいなら俺は反対しません。いいですよ」
私は知っている。
ドクオは絶対に私とクーには逆らわない。
だからクーがかくれんぼを提案した時、何をするかは決まっていたのと変わらない。
最初の鬼は言い出しっぺのクーに決めて、私たちは散り散りに隠れ場所を探した。
日はすっかり落ちて、空は橙色。
最後の鬼のブーンが全員を見つけて私たちはまた集まった。
299
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:15:28 ID:Zfm9nmZ2O
(*^ω^)「今日は楽しかったお!」
ブーンは全身で喜びを表現してくれた。
ξ*゚⊿゚)ξ「そうね。今日のクーは弱かったもんね」
川 ゚ -゚)「たまたまだ。私の真の実力はこんなものじゃないぞ」
('A`)「小細工なしで勝ってから言ってください」
いつものようなやりとりをして、私たちはブーンと別れた。
もう秋だ。
ブーンと出会った頃に比べると夕方は少し冷える。
私は着物の袖に手を引っ込めて体を擦りながら先頭を歩いた。
狭い一本道を真ん中くらいまで進んだ頃、ドクオは唐突に立ち止まった。
それに気付いたクーに肩をたたかれて私も立ち止まる。
川 ゚ -゚)「どうした?」
('A`)「忘れ物をしたみたいです」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ、手ぶらじゃなかった?」
みんなで遊ぶ時は基本的に手ぶらだった。
最初の頃こそブーンにいろいろなものを持っていったが、もう持っていくものが思いつかない。
ブーンの住む横穴には私たちの思い出がたくさん詰まっている。
300
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:17:08 ID:Zfm9nmZ2O
('A`)「お屋敷の蔵の鍵を預かっていたんですけど……」
ξ゚⊿゚)ξ「ああ、ドクオ、あそこの掃除任されてるもんね」
うちには大きな蔵がある。
一度お父さんに連れられて入ったことがあるけれど、面白そうなものはなくてがっかりしたのを覚えている。
難しそうな書物がたくさんあったから、もしかしたらクーには楽しめるかもしれない。
とにかく蔵には大量にいろんなものがしまわれている。
屋敷の使用人のうちモナーさんが任命した三人には合鍵が渡されて、いつでも掃除をできるようになっている。
ξ゚⊿゚)ξ「あそこの鍵ならモナーさんたちも持ってるじゃない」
('A`)「そのモナーさんが信用して預けてくれた鍵です。そう簡単になくせません」
ドクオは下を向く。
影になって顔は見えない。
川 ゚ -゚)「なら私も一緒に戻ろう。もっと暗くなったら道を見失いかねないからな」
('A`)「それは出来ません。ここいらは獣もいます。俺は対処できますから、絶対についてこないでください」
ξ゚⊿゚)ξ「あ……」
私が伸ばした手が触れる前に、ドクオは走りだしてしまった。
川 ゚ -゚)「珍しいな。ドクオが私たちに、あんなはっきりものを言うなんて」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
301
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:18:29 ID:Zfm9nmZ2O
赤くて暗い森の向こうにドクオの影が消えていく。
川 ゚ -゚)「どうした、ツン?」
ξ゚⊿゚)ξ「なんでもない」
寒気がした。
まるで山にドクオが食べられてしまうようだった。
そう考えてしまう自分が嫌だ。
追い掛けようか、そう思ったけれど、ドクオの態度を見たらそれはいけないように感じた。
クーと顔を見合わせて、二人で帰り道を急いだ。
だんだん暗くなるのが、初めて怖いと思った。
結局その日、ドクオは帰ってこなかった。
.
302
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:20:03 ID:Zfm9nmZ2O
三日後に会ったクーの顔色は悪かった。
川 ゚ -゚)「なあツン、一度、ブーンに会ってみないか?」
ξ゚⊿゚)ξ「……そうね」
大人たちが手分けして探してもドクオは見つからなかった。
事情を聞かれた私とクーは、ブーンのこと以外は全部素直に話した。
私たちも子供同士で集団になって探すのを手伝ったけれど駄目だった。
だけどこの間、私たちはブーンのもとへは行かなかった。
ドクオが戻ったのはブーンの住む横穴の方向だった。
私たちは死ぬのが怖かった。
ブーンにされた話を忘れられなかった。
でも、もうそんなことは言ってられない。
もし遭難していたら、そろそろ大変なことになると大人たちが言っていたのを聞いた。
川 ゚ -゚)「大丈夫、誰にも会わずにあそこへ行く道を見つけたんだ」
こんな時でもクーは頼もしい。
ξ゚⊿゚)ξ「私、役立たずね……」
呟きはクーには聞こえなかったらしい。
クーは私に手を伸ばして言った。
303
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:21:43 ID:Zfm9nmZ2O
川 ゚ -゚)「ほら、烏が鳴く前に帰ってこないと怒られるぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「……うん」
私はクーの手を掴んだ。
じゃないと、もう一緒にいられないような気がした。
まだ明るい時間なのに、横穴の近くは生き物なんていたいみたいに静かだった。
(;^ω^)「三日間もみんな来ないから心配したお!」
私とクーの姿を見るなりブーンが言った。
裸足で走りよるブーンに、私はなぜか涙が止まらなかった。
ξ;⊿;)ξ「ひっく……ぅ……。ブーン、どうしよう……私、私のせいで、ドクオ……!」
クーが背中をさすってくれる。
それでも止まらない。
( ^ω^)「ドクオに、何かあったのかお?」
ξ;⊿;)ξ「いなく、なっちゃった。私が止めてれば……」
304
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:23:19 ID:Zfm9nmZ2O
川 ゚ -゚)「ブーン、詳しい話は私がしよう。一度君の家に上げてくれないか?」
( ^ω^)「……わかったお」
クーが全部話してくれた。
わかりやすく、簡潔に。
(;^ω^)「うーん……僕はみんなと別れたきりドクオには会ってないお」
ブーンは頭の角をさすりながら言った。
考える時の癖だというのには最近気付いた。
( ^ω^)「人の声も獣の声もしなかった、静かな日だったお」
川 ゚ -゚)「人さらいや山賊ではない、獣でもない。ドクオはどこを探しても、手掛かりひとつ見つからない」
クーまで考え始めてしまった。
ドクオが私たちと別れた場所からブーンのうちまでは遠くない。
何かあったなら聞こえるはずだ。
川 ゚ -゚)「ツン、君のおばあさんは、この山に鬼が棲むと言ったな」
ξ゚⊿゚)ξ「え、う、うん……」
305
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:23:30 ID:4jk8staU0
dkdk
306
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:24:50 ID:Zfm9nmZ2O
私は涙を拭きながら答えた。
おばあちゃんはしつこいくらいに、毎日のように不気味な話をした。
まるで、私がここに来ているのを知っているかのように。
川 ゚ -゚)「私は最初……申し訳ないが鬼とは、ブーンのことだと思っていた。しかしそれはおかしいんだ」
( ^ω^)「どういうことだお?」
川 ゚ -゚)「彼女は私たちが物心つく頃からあの話をしていた。しかしブーンは私たちより年下に見える」
私はブーンの顔を見た。
最初の印象と同じ、私より年下に見える。
川 ゚ -゚)「それだけなら鬼は人と違う、年をとらない、そう言えるのだが」
ξ゚⊿゚)ξ「あ」
クーの言いたいことがわかった。
川 ゚ -゚)「ブーンは成長している。事実、ツンとブーンの身長差は初めて会ったときより縮んでいる」
ξ゚⊿゚)ξ「私たちが物心ついた頃、ブーンも年は変わらなかった。だからブーンが人を襲っていたとは思えない」
川 ゚ -゚)「その通り。だから私は、この山には別の鬼がいるのではと考えたわけだ」
クーの言うことが正しいのなら、ドクオは。
( ^ω^)「人でも獣でもなく、鬼に襲われていなくなった、ということかお?」
307
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:26:00 ID:Zfm9nmZ2O
クーは頷いた。
川 ゚ -゚)「そうでない証拠がない以上否定はできない。私はこの目で見ないからとすべてを否定したりはしない」
寒い。
風が中まで入ってくる。
私は膝を抱える。
( ^ω^)「僕もドクオを探すの手伝うお」
川 ゚ -゚)「よろしく頼むよ。私たちはそろそろ帰らないと」
私はクーに手を引かれて立ち上がった。
お気に入りの着物の裾が少し汚れたけれど気にしない。
ドクオの行方以上に、今の私の興味を引くものはない。
横穴の外は真っ赤だった。
夕日があの日みたいだ。
( ^ω^)「二人とも、いなくなったりしないでくれお」
川 ゚ -゚)「もちろんだ」
少し前に進む。
そしてクーはもう一度振り返った。
川 ゚ -゚)「鬼に、喰われたりするなよ」
.
308
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:27:02 ID:Zfm9nmZ2O
家に帰った私に、おばあちゃんが抱きついてきた。
(;゚д゚ )「ツン、どこに行っていたんだい!?
ぎゅっとしがみつかれて少し苦しい。
ξ゚⊿゚)ξ「クーがうちに来てね、一緒にドクオ探してた」
( ゚д゚ )「……そうかい。外は危ない。次に神隠しにあうのがお前なんて、私は嫌だからね」
ξ゚⊿゚)ξ「神隠し……」
神隠し、か。
隠すのが鬼でも神隠しというのだろうか。
そもそもドクオの本当の消えた理由はなんだろう。
( ゚д゚ )「ツン、悲しいがドクオはもう戻ってこない。だけどツン、おまえはいなくならないで」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
おばあちゃん、そういうこと言うのか。
ξ゚⊿゚)ξ「私はドクオが帰ってくるのを信じる。……おばあちゃんなんて」
わかってる、言ったらだめだって。
だけど止まらない。
309
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:28:41 ID:Zfm9nmZ2O
ξ#゚⊿゚)ξ「大っ嫌い!」
私はおばあちゃんを突き飛ばした。
そのまま横を通り過ぎて自分の部屋にこもる。
「ツン……」
引き戸の向こうからおばあちゃんの声が聞こえる。
でも無視をする。
ξ ⊿ )ξ「ごめん……」
私はドクオが好きだった。
私には三人しかいない友達の一人だった。
だから、ドクオが戻ってくることを信じないおばあちゃんが許せない。
敷きっぱなしの布団に潜り込んだ。
着物も髪もぐちゃぐちゃだけど気にしない。
目を閉じると、じんわり涙があふれてきた。
.
310
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:29:49 ID:Zfm9nmZ2O
ξ゚⊿゚)ξ「……」
信じられない。
起きたばかりの私に、おばあちゃんはなんて言ったのだろう。
( ゚д゚ )「ツン、もう一度言うよ」
嫌だ、嫌だ。
その先は聞きたくない。
耳をふさぎたいのに腕が上がらない。
( ゚д゚ )「クーが」
やめて。
言わないで。
( ゚д゚ )「昨日から行方不明だ」
ξ゚⊿゚)ξ「……っ」
寒い。
気温ではない。
体が冷えて冷えて、だから寒い。
ξ゚⊿゚)ξ「……なきゃ」
( ゚д゚ )「ん?」
311
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:31:00 ID:Zfm9nmZ2O
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンに、知らせなきゃ……」
(;゚д゚ )「ツン!」
おばあちゃんが伸ばした腕をかわし、私は家を飛び出した。
おばあちゃんの声が聞こえる。
「ツン、あんた、北の山に行ったね……!」
おばあちゃんはやっぱり知っていた。
だからあんな話をしつこく聞かせていたんだ。
いつもの横穴。
こんな朝早くに来るのは初めてだ。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン、いる……?」
まだ寝ているかもしれない。
だけど、どうしても無事を確認したかった。
もしかしたらドクオとクーはここにいるかもしれないと、淡い期待もあった。
ブーンの返事はない。
私はゆっくりと中に入っていった。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン」
312
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:31:54 ID:Zfm9nmZ2O
( ^ω^)「おはよう、ツン」
ブーンは、いた。
いつものように私に挨拶をしてきた。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
様子がおかしい。
何がおかしいかというと、手だった。
ブーンは、何かを両手で抱えていた。
ξ゚⊿゚)ξ「……」
それに、本当は一目見てわかった。
ブーンの口元、手、着物。
全部、よく見なくてもわかる。
私はそれを見たことがある。
だから知っている。
暗くても異様な存在感。
それは、誰がどう見ても。
313
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:32:48 ID:Zfm9nmZ2O
ξ゚⊿゚)ξ「……血」
生臭い匂いが一気に鼻から入ってくる。
ξ;゚⊿゚)ξ「ぅ……」
気持ち悪い。
喉を通って、昨日の食事が吐き出される。
ξ; ⊿ )ξ「ぐ、ぅ……。は、……ぅぅ……」
ブーンは球体のものを持っていた。
そのてっぺんから、つやのある黒い糸のようなものが垂れ下がっている。
下からは血が流れている。
( ^ω^)「うーん……ドクオよりはましだけど、ちょっと物足りないお」
ブーンはわきに球体を置いて、今度は別のものを口元に運んだ。
ξ; ⊿ )ξ「ぁ……それ、は……」
( ^ω^)「見てのとおり、腕、だお。クーのね」
ブーンは食べていた。
腕、を。
口のまわりを真っ赤にして。
腕からは白いもの、赤い何かが見える。
うそ。
なんで、ブーンが。
314
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:32:50 ID:qTTYbP260
おい
315
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:33:23 ID:iL85mscs0
あぁ…
316
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:34:44 ID:T6ICzcAM0
予想はしてたけど…
317
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:35:24 ID:Zfm9nmZ2O
おかしい、ブーンはドクオ探しに協力してくれると言った。
クーは私と帰ったはずなのに。
おかしい、私にはわからない。
なんにも。
( ^ω^)「僕ね、お楽しみは最後にとっておくって決めてるんだお」
ブーンは笑っている。
楽しそうに。
ブーンは、おかしい。
逃げなきゃいけない。
わかっているのに、私はすっかり腰が抜けて動けない。
ブーンが、真っ赤なブーンが、ゆっくり近づいてくる。
ξ;゚⊿゚)ξ「……」
( ^ω^)「ツン、ふたつ、お話を聞かせてあげるお。きっと君が一番聞きたい話だと思うから」
ブーンは喋れない私を無視して話し始めた。
ドクオとクーのことだった。
( ^ω^)「ドクオは、あんまりおいしくなかったお。骨と皮ばかりで。
しいて言えば、久しぶりに食べた感動はあったかもしれないおね」
耳をふさぐことも忘れていた。
寒い。
がくがくと全身が震える。
気持ち悪い。
318
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:36:57 ID:Zfm9nmZ2O
( ^ω^)「ツンとクーの安全を約束すると言ったら抵抗もしなかったお。
あれじゃあ友達というより、君とクーの忠実な下僕か何かみたいだお。僕はそういうところ、嫌いじゃなかったけど」
ブーンは口元の血をぺろりと舐めとって話を続ける。
涙が出てきて、私の視界は悪い。
( ^ω^)「クーは……なんだお? 僕がドクオを隠したって、三日後に気付いて問い詰めてきたお。勘が良すぎて気持ち悪いお」
ブーンは一口、かじりついた。
たらたらと血が落ちる。
地面は真っ赤だった。
( ^ω^)「ツンと一緒に来た時の話は、僕を油断させるためだったんだお。夜にクーはやって来た。僕は殺されかけたお」
ブーンは一度奥に行き、何かを拾い上げた。
刃物だった。
クーのお父さんの形見の短刀だった。
( ^ω^)「まあ僕は返り討ちできたし、それなりにおいしかったからよしとしとくお」
ブーンはずっと笑顔だった。
( ^ω^)「ツン、一応言っておくけど、別にドクオとクーが嫌いなわけじゃなかったお。でも僕も何か食べないと死んじゃうお」
一歩、二歩。
私に近付いたブーンは、ゆっくりしゃがんだ。
目が合う。
いつもと同じ笑顔だ。
319
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:38:55 ID:Zfm9nmZ2O
( ^ω^)「あ、それともう一つ。僕ね、実は一度死んでるから、見た目なんてどうとでもなるんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「ぇ……」
やっと出た声は情けなく震えていた。
ブーンは私の目の前にいた。
大きく開けた口には、鋭い牙がふたつ。
今まで気付かなかった。
( ^ω^)「いただきます」
ξ;゚⊿゚)ξ「……っ!」
ξ; ⊿ )ξ「ぁ、いやあああああああ!!」
結局ブーンは鬼で、私たちとわかり合うことはできなかったらしい。
終
320
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:41:23 ID:Zfm9nmZ2O
以上です。ありがとうございました。
(
)
i フッ
|_|
321
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:41:29 ID:iL85mscs0
乙
救いがねぇな…
322
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:44:10 ID:K5cYOggE0
乙
うわぁ。切ないなぁ。
わかり合えたと思ってただけに、この結末はきつい・・・・・・
323
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:44:10 ID:ijMzp3hI0
乙乙。この鬱っぽい空気も百物語の醍醐味か……
324
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:44:19 ID:d6ClzGvY0
うわぁ……えげつないな……
いいぞもっとやれ
325
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:44:28 ID:4jk8staU0
乙
ドキドキした
326
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:48:38 ID:I65o5vOg0
乙!
せめてツンが美味しいといいね
327
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:52:16 ID:ijMzp3hI0
それじゃあ九本目行かせてもらうかな
.,、
(i,)
|_|
328
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:53:13 ID:ijMzp3hI0
少女たちの談話のようです
329
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:54:31 ID:ijMzp3hI0
ξ゚撿゚)ξ「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
ξ゚撿゚)ξ「……暇ねぇ」
ζ(゚ー゚*ζ「……そだね、お姉ちゃん」
ξ゚撿゚)ξ「なんか面白い話ない?」
ζ(゚ー゚*ζ「んー、特に……」
ξ゚撿゚)ξ「そうよねぇ……」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
ξ゚撿゚)ξ「……」
330
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:55:51 ID:ijMzp3hI0
川д川「ちわーっ」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、貞ちゃん。ちょうどいいとこに来た」
ξ゚撿゚)ξ「あのさ、私たち今ちょうど暇してたとこだったんだけど、なんか退屈が紛れるような面白い話知らない?」
川д川「んー……面白い話か分からないけど、二人に聞きたいことはあるかなー」
ξ゚撿゚)ξ「何、それ?」
川д川「今日たまたま聞いちゃったんだけど、階段の踊り場に幽霊が出るって噂、知ってます?」
ξ゚撿゚)ξ「んーん、知らない」
ζ(゚ー゚*ζ「そんな噂あるんだ。知らなかった」
川д川「なんかその噂、二人のどっちかが原因な気がして……」
ξ゚撿゚)ξ「どういうこと?」
331
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:57:21 ID:ijMzp3hI0
川д川「私の聞いた話だと、放課後に校舎西の階段の踊り場で、躍り狂う女の子の霊が出るって……」
ζ(゚ー゚*ζ「それがどうして私たちに繋がるの?」
川д川「その幽霊、金髪ツインテで長い髪の毛がドリルみたいにくるくる巻いてるんだって……」
ζ(゚ー゚*ζ「えー?まんま私たちの特徴と一緒じゃん。そんなことしてないのに」
ξ゚撿゚)ξ「……あー、ごめん。多分それ私だ」
川д川「ツンさんが?」
ζ(゚ー゚*ζ「ちょ、お姉ちゃん何してるのwww」
ξ゚撿゚)ξ「だって、なんか妙にテンション上がっちゃって……楽しくなっちゃったのよ」
川д川「ツンさんかわいいwww」
ξ゚撿゚)ξ「るっさい!人に見られてるって知ってたらやらなかったわよ!」
332
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 21:59:23 ID:ijMzp3hI0
ζ(゚ー゚*ζ「ちなみにその時、何を踊ってたの?」
ξ゚撿゚)ξ「……ソーラン節」
川д川「ちょwww怪談が一気に金八先生にwwww」
ζ(゚ー゚*ζ「いくらテンション上がっててもソーラン節はないわーwww」
ξ゚撿゚)ξ「っさい!デレだって雨の日になると変なことするじゃん!」
ζ(゚ー゚*ζ「え?それ言っちゃう?」
川д川「何ですか?何をしでかしちゃうんですか?」
ξ゚撿゚)ξ「この子、雨の日になると家庭科室の姿見の前ウロウロしてんのよ」
ζ(゚ー゚*ζ「あれはほら、仕方ないとこあるし……」
川д川「あれですか。女の子だから身だしなみが気になっちゃう的な?」
ζ(゚ー゚*ζ「いやほら、私たち髪の毛こんなだから、湿気が強いとどうもね……」
ξ゚撿゚)ξ「私はそうでもないんだけど、デレは巻きが私より強いから雨になると……」
川д川「あぁー、そういう……」
333
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 22:00:49 ID:ijMzp3hI0
ξ゚撿゚)ξ「おかげさまでこの学校の七不思議に、『家庭科室で無念の死を遂げたOさん』なんてのが出来ちゃう始末でさぁ」
川д川「なんというはた迷惑wwwww」
ζ(゚ー゚*ζ「こういう髪型だと、ちょっとの湿気ですぐ髪が乱れるから大変なんだよぉ?」
川д川「へぇー。髪の毛多くて野暮ったい私には羨ましい話ですわー」
ξ゚撿゚)ξ「うちらからしたら、貞ちゃんの黒髪のが羨ましいよ」
川д川「いやいやそんな……重たいし染めらんないし、いいとこないっすよー」
ζ(゚ー゚*ζ「……そういえば、黒髪で私も思い出したけど」
ξ゚撿゚)ξ「ん?何を?」
ζ(゚ー゚*ζ「貞ちゃん、最近誰かに泣くとこ見られなかった?」
川д川「え……なんで?」
ζ(゚ー゚*ζ「噂で聞いた話だったからすっかり忘れてたけど、私も変な怪談聞いたことあったのよ」
ξ゚撿゚)ξ「というと?」
334
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 22:02:18 ID:ijMzp3hI0
ζ(゚ー゚*ζ「校庭の真ん中で真夜中に泣いてる黒髪少女、その女の子に声をかけたら……ってヤツ」
ξ゚撿゚)ξ「でも、うちらと違って黒髪の女なんていくらでもいるじゃん?」
川д川「そうだよ。それを私と関連づけるのは、ちょっと無理があるんじゃない?」
ζ(゚ー゚*ζ「そっかなぁ……」
川д川「そーそー」
ξ゚撿゚)ξ「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
川д川「……」
ξ゚撿゚)ξ「で、本当んとこは?」
川д川「私ですwwwww」
ζ(゚ー゚*ζ「ちょwwwww」
ξ゚撿゚)ξ「やっぱりwwwww」
335
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 22:03:35 ID:ijMzp3hI0
ζ(゚ー゚*ζ「ちなみになんで校庭のど真ん中で泣いてたの?www」
川д川「いやー、逆睫毛が目に入って痛くってさぁ……www」
ξ゚撿゚)ξ「なぜ校庭の真ん中で逆睫毛wwwww」
ζ(゚ー゚*ζ「何してたのwwwww一人運動会?wwwww」
川д川「にゃんこ追っかけてましたwwwww」
ξ゚撿゚)ξ「猫自重wwwww」
ζ(゚ー゚*ζ「そんなほのぼのしてたら怪談にならないwwwww」
川д川「別に怪談になる必要ないしwwwww」
ξ゚撿゚)ξ「wwwww」
ζ(゚ー゚*ζ「wwwww」
川д川「wwwww」
336
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 22:04:53 ID:ijMzp3hI0
ξ゚撿゚)ξ「はぁー、面白い……」
川д川「意外に盛り上がりましたねー」
ζ(゚ー゚*ζ「でもさぁ、本当、人間ってそそっかしいよねぇ」
ξ゚撿゚)ξ「そうね。私たちに驚かすつもりなんて、全然ないのにね」
川д川「ですよねー……あっ」
ξ゚撿゚)ξ「どしたの、貞ちゃん?」
川д川「いけない。誰か来たみたいです」
ξ゚撿゚)ξ「マジで?」
ζ(゚ー゚*ζ「こんな時間に迷惑な……」
川д川「まぁ仕方ないですよ。今日のとこは解散ってことで」
ξ゚撿゚)ξ「そうね。続きはまた明日にしようかしら」
ζ(゚ー゚*ζ「楽しかったねー、貞ちゃん」
川д川「ですねー。明日も遊びに来ますから」
337
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 22:05:55 ID:ijMzp3hI0
川д川ノシ「じゃー二人とも、明日までお元気でー」
ξ゚撿゚)ξ「じゃーねー貞ちゃん」
ζ(゚ー゚*ζ「またねー」
...:::;:д川 フッ
...:::;.撿゚)ξ フッ
...:::;;ー゚*ζ フッ
ガラガラッ
(#^ω^)「全く、貸してやったエロゲ学校に忘れるとかどんな神経してんだお!?」
('∀`)「へへ、面目ねぇ。ブーンが用務員さん丸め込んでくれなかったら、いらん恥かくとこだったぜ」
( ^ω^)「夜の学校なんて不気味なだけだし、さっさと取ってさっさと帰るお」
('A`)「おk、把握」
338
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 22:07:07 ID:ijMzp3hI0
('A`)「……?」キョロキョロ
( ^ω^)「どうしたお。そこドクオの机じゃないお」
('A`)「いや……なんかここ、人のいた気配がしね?」
( ^ω^)「んな訳あるかお。もう7時過ぎてんだお?」
('A`)「そうだけど……そういえば、こんな噂聞いたことあるか?」
('A`)「『夜、誰もいないはずの教室に忍び込むと、女の子の幽霊が談笑してる姿が見れる』って」
( ^ω^)「聞いたことねーお。美少女なら見てみたいけど不細工は勘弁だお」
('A`)「だよなー。お、発見」ゴソゴソ
( ^ω^)「取るもん取ったらはよ帰るお」
('A`)「うーす」
ーーークスクス
('A`)「……ん?」
339
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 22:08:29 ID:ijMzp3hI0
ーーークスクス
ーーーアハハハッ
ーーーウフフフフ
(;'A`)「……おい、ブーン。なんか人の笑い声が……」
( ^ω^)「ビビりもいい加減にしろお。はよせんかいドクオ」
(;'A`)「お、おう……」
(;'A`)(気のせい……か?)
ガラガラッ、バタンッ
…………
………
……
340
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 22:09:41 ID:ijMzp3hI0
ーーー本当、そそっかしいよねぇ、『人間』って……
ーーーそうね。私たち『幽霊』に、驚かすつもりなんて、全然ないのにね……
ーーーでも、さっきみたいに全部勘違いだと思われるのも、それはそれでなんだか寂しいですね……
ーーーそうね……
ーーーそうだね……
341
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 22:10:59 ID:ijMzp3hI0
日の落ちた教室へ忘れ物を取りに行く時は、少女たちの談話に水を差さないよう、くれぐれも気をつけて……。
ーーークスクス
ーーーアハハハッ
ーーーウフフフフ
(了)
342
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 22:12:18 ID:iL85mscs0
ほのぼの可愛い幽霊っ娘め
乙
343
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 22:13:06 ID:ijMzp3hI0
終わりです
(
)
i フッ
|_|
総合で頂いたお題を元に書きました。
・踊り場
・小雨
・泣く女
344
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 22:22:32 ID:K5cYOggE0
乙
三人娘がかわいくて和んだ
話の余韻もいいなぁ
345
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 22:37:35 ID:L8EnzUKE0
乙
面白かったから許すけどもう貰ったお題忘れんなよ!!
346
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 22:59:50 ID:89ZizsXIO
では賑やかしの十本目
.,、
(i,)
|_|
347
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:00:55 ID:89ZizsXIO
隣町の片隅、林道の途中にあるトンネルに幽霊が出る。ありがちな噂だ。
オカ板の常駐スレがこの時期にしては過疎気味だったから、ちょっとしたネタ提供のつもりだった。
年季の入った車に鞭打って砂利道を上ること20分。
現れたトンネルは、乗用車1台通るのがぎりぎりなくらいの幅しかなかった。
ヘッドライトをつけても奥は見通せず、むきだしの岩肌が暗がりへと溶けている。
夜半から降り続く雨のせいか、霧がたちこめはじめていた。安いデジカメでもイイ写真が撮れそうだ。
( ^ω^)「いざ突入、だお」
入り口を一枚撮って、車に乗り込んだ。
彼は帰りたいようです
中も砂利道が続いていた。
50mも進めば視界は岩壁と闇に閉ざされる。
エアコンの効きが悪いようで、フロントガラスがじりじりと曇ってきていた。
窓を開けるとじっとりとした冷たい空気が流れ込む。
( ^ω^)「崩落事故で死者が出たっていうけど……」
そもそもがこの狭さだ、どこぞのダムのような大規模なものではあるまい。
だが見たところ、壁も天井も一枚岩をくり抜いたような堅牢さだ。
湿度の不快さと圧迫感があいまって、嫌に鮮明なイメージが浮かぶ。
348
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:02:29 ID:89ZizsXIO
突然天井から剥離する巨石。折り畳まれるようにして見えなくなる人影。足下の砂利を這う赤黒い液体。
堅く重い岩は少しずつ削ることでしか退けられない。その間にも血は洗われ、肉は朽ち、骨は砕けて遺体は回収できないまま――
(;^ω^)「――おっ、」
不意にトンネルが広くなった。
すれ違うための退避所、なのだろう。
偶然とは知りつつも、想像を裏付けるようなタイミングに寒気がした。
一際歪な天井と、打ち捨てられたつるはしを撮る。
再び車を発進させ、あとはひたすらに出口を目指した。
ますます曇ったガラスと霧で二重に煙る先に光が見えた時は思わず息を吐く。
トンネル自体は全長数百mなのだろうが、視界の悪さと低速で走るしかないもどかしさで永遠に続くような気がしていた。
抜けた先でまた1枚撮る。崖の下に見える貯水池もついでに。
帰りは少し気が楽だった。視界が悪いだけで、幽霊が出るどころか寒気も異音もない。
少し残念ではあるけれど、雰囲気あふれる写真がとれたからよしとしよう。
ふと思いついて、トンネルの出口が見えた頃、ガタガタと揺れる車内で手を後ろに伸ばしてシャッターを切った。
349
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:03:31 ID:89ZizsXIO
林道を少し下ったところで車を止める。
最後の一枚の出来映えを確認したかった。が、そのまえにタオルをひっつかんで外に出る。
フロントガラスの曇りがとれない。
降りかかる雨粒と一緒にタオルを滑らせ――そこで気づいた。
今の今までワイパーを動かしていたのだ。
外側に水蒸気の曇りが残るわけがない。
じゃあ、このガラスの白濁は?
違う。
違うガラスだけじゃないボンネットにもサイドミラーにもべたべたと塗り重ねられたこれはおぞましい数の、
(;゚ω゚)「これ、て、が――手形?」
喉が引き絞られる。身体が強ばって背筋が軋む。
すこしだけ開いた運転席の窓に、その内側に、指の跡がついていて、
助手席においてあるデジカメには、先ほど撮った写真には車内の様子もその向こうのトンネルも写っておらずそこには
350
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:04:12 ID:89ZizsXIO
. ⌒ヽ
{ ィ==、.'.
'.{圭ニハ'.
. - ミ V圭ニ{ '.
{ ィz.\ V圭ニ .}
'. {圭tz ヽ {圭圭.|
\`寸圭t.\ {圭圭'.
ヽ`孑圭z \ '圭圭.}
` 、寸圭z、ヽ }圭圭'.
` 、孑イz\ !圭圭゛.
ヽ`寸圭\_ ,ハ圭圭ハ
r━―‐- . _ \寸圭ニ彡夭圭.八
、 (圭圭≧ニ=- ̄二ニ=- ._ノ)、圭圭圭圭圭: Y
゛ <二三圭圭圭圭圭≧ニ=‐゛圭圭圭斗圭圭y∧
 ̄¨ ==ニニ、圭圭圭,.ィ聿圭圭圭豹.ヽ、
},圭圭圭圭圭圭圭圭圭弋\
_ . . ≦夭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭z`z―、__
_ ..≦z=圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭!圭{圭≧=≧- ._
,.ィ≦=圭圭圭沙ニ=‐''´゛ー―、寸圭尨>≦圭圭沙个ー-<圭圭圭圭) ヽ
ー=-‐''´ ̄ ≧<_..イ ` =――‐ ′
351
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:05:33 ID:89ZizsXIO
おいていかないで
352
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:08:56 ID:89ZizsXIO
昔テレビでやってた心霊体験再現ビデオのイメージで
(
)
i フッ
|_|
353
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:13:22 ID:8eQt.atQ0
うおお……乙
354
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:14:07 ID:ijMzp3hI0
いやあああああ!!乙乙!!
ブーンは助かったのかな……
ところで
>>350
の大型AAってD-グレが元画像だったりする?
355
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:14:38 ID:YZ6D633c0
おつ…
大型AAは本気で怖いんだよ…なんなんだよその手は…
356
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:17:47 ID:K5cYOggE0
乙
急に大型AAが出てくるとびくっとするな
357
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:20:09 ID:89ZizsXIO
>>354
適当にAA倉庫サイトからそれっぽいのを引っ張ってきた
こういうのに頼らなくてもいいくらいの文章力つけたいですマジで
358
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:23:54 ID:ijMzp3hI0
>>357
そっか、なんかそれっぽく見えたから気になって
359
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:30:02 ID:BUDFfaqo0
じゃあこの流れのまま11本目行っちゃうか!
つい先刻出来たばっかのホヤホヤですが
.,、
(i,)
|_|
360
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:31:26 ID:BUDFfaqo0
川゚ -゚)の初恋のようです
.
361
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:32:21 ID:BUDFfaqo0
川゚ -゚)「……」
始まりは、とても昔だった。もう朧げにしか覚えてはいない
この村も、昔はもっと活気があって、子供の頃の私も、たくさんの子供たちと遊んでいた。
当時は鳩の鳴き真似をするのが流行っていて、ぽぽぽ、ぽぽぽと皆で言い合い笑い合っていたものだ。
川゚ -゚)「ぽぽぽ…」
しかしいつの頃からだろうか、子供たちは皆遊んでくれなくなり、私は遊び場であった空き地に一人、いつまでも待ち続けるようになった。
誰も遊んでくれない、誰も振り向いてくれない。
必死で続けた鳩の鳴き真似も、いつしか廃り、村も徐々に人が減っていった。
川゚ -゚)「ぽ…」
いつまでも待ち続けているうちに、空き地は農地になって、私はそのあぜ道にポツンと佇み続けた。
いつまでも待ち続けているうちに、農地は立派な家になって、私はその生垣の脇にポツンと佇み続けた。
いつまでも待ち続けているうちに、立派な家には車のついた不思議な鉄の塊がやってきて、私はそれを来る日も来る日も見送った。
いつまでも待ち続けているうちに、その不思議な鉄の塊――人々が口にする言葉から、それの名前は「じどうしゃ」だと分かった――に乗る人の中に、昔の、一緒に鳩の鳴き真似をしていた子供達に似た子がやってきた。
川゚ -゚)「ぽぽ」
遊ぼう。そう思って子供に近づいても、その子は気味悪がって逃げてしまった。
川゚ -゚)「……ぽぽ」
自分の姿を見た。ぼろぼろのもんぺ姿だった。
これでは怖がってしまうことも頷けた。私はそう思って、見よう見まねで綺麗な女の人の服装を着繕ってみた。
白い帽子と、白いワンピース。しかし似合わない。
それもそうだ、これを着ているのは大人の女性だ。背の小さかった私には、到底似合わなかった。
川゚ -゚)「ぽ…」
となりの立派な家から、声が聞こえる。
『モテる女性の秘訣は、背を高く、スレンダーに見せること』
後から知ったことだが、その声の主は「てれび」というものだったらしい。
川゚ -゚)「ぽー…」
背が高くて…「すれんだー」の意味はわからなかった。
取り敢えず、背が高くなりたくて、私は背伸びを続けた。毎日、毎日。
そうしたらいつの間にか、見上げるほどだった生垣が、向こうを見渡せるようになった。
立派な家の庭も見わたせた。
背が高くなって、見えるものが変わった。私は嬉しくなって、村を歩き始めた。
いつの間にか、地面は黒々とした一枚の石でどこまでも伸びており、「じどうしゃ」が時折そこを往来していた。
村の多くは農地となって、田園地帯が広がっていた。
川゚ -゚)「ぽ」
これはこれでいいものだ。私は慣れ親しんだ鳩の物真似を「ぽぽぽ」と口づさみ、村を練り歩いた。毎日、毎日。
362
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:34:38 ID:BUDFfaqo0
川゚ -゚)「ぽぽぽ」
時折、子供に出会った。
遊ぼう。そう思って近づこうとしたが、子供は変な顔をしてどこかへ行ってしまった。
しかし、嫌がられていた様子ではなかった。私は嬉しくなって、あまり見ない子供を見かけるたびに、遊ぼうと近づいた。
しかし、その度に子供はどこかへ行ってしまった。それどころか、子供たちは大人に囲まれどこかへ行ってしまうこともあった。
そんなことが続く内、街のはずれに不思議なお地蔵様が置かれた。はじめは気にも留めなかったが、どうもあのお地蔵様には近づけないようだった。
川゚ -゚)「ぽー…」
外に出てみたい気持ちもあったが、お地蔵様にはどうしても近づけず、仕方がないといつもの生垣の脇に佇んでいた。
それから秋が終わり、冬を過ぎ、春が来て、一層強い日差しが照りつけるようになった頃。また不思議な、車が二つだけついた乗り物に跨った人がやってきた。
( ^ω^)
川゚ -゚)「ぽ…」
私はその姿をぼんやりと追いかけた。
その人は数日後に、また同じ道を通って行った。
そして日差しが弱まり、その年の初雪が舞い始めた翌日に、また彼は来た。
二輪の乗り物にまたがって、鼻歌を歌いながら。
( ^ω^)「〜♪」
川゚ -゚)「ぽ…」
そして数日後に、また帰っていった。
私はそれからというもの、彼が来る日を毎日、毎日待ち続けた。
何故かはよくわからなかった、けど彼に会いたかった。
363
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:35:50 ID:BUDFfaqo0
それから何度目かの春。
彼はまた私の前を通りすぎていった。次に会うのは数日後…。
しかし、次の日に、彼は私の前に現れた。
(*^ω^)「いい天気だおー…」
となりの立派な家の縁側で、彼が寝ていた。
川゚ -゚)「…!ぽ、ぽぽ、ぽぽぽぽ」
思わず慌ててしまった。今までいなかったのに、なぜこの家に?
( ^ω^)「おっ?」
川゚ -゚)「ぽぽ、ぽ…ぽ?」
彼がこちらを見た。生垣から覗く私を
慌てて帽子を押さえて顔を隠し、その場から退散してしまった。
しかし、私の姿を見れたのは子供たちだけのようだったのに、なぜ彼は見れたのだろう。
彼は見かけでは15、6歳くらいだったはずだ。これまでそんな事はなかった。
しばらくして、立派な家の中が少し騒々しくなった。
どうやら、以前からここは彼の家だったらしい。今まで全く気付かなかったのは、おそらくここから見えるこの家などほんの一部分だけに過ぎなかったからだろう。
ただでさえ彼がここに居る時間は少ないのだから、今まで気づかなかったのも至極当然と言えた。
さて、家の中は騒々しい、いつもの場所に私は戻り、ひょいと覗いてみる。
(;ФωФ)「生垣から頭が出るほどの女…間違いのう、八尺様じゃ…ワシはモナーさんを呼んどくるから、ばあさんはブーンの事を頼む」
lw;´‐ _‐ノv「まさかブーンが魅入られるとは思わなんだね…」
家の主であるお爺さんとお婆さんが何やら話をしていた。かと思えば、お爺さんは「じどうしゃ」に乗ってどこかへ
お婆さんも家の中へ消えてしまった。
364
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:37:37 ID:BUDFfaqo0
川゚ -゚)「ぽぽ…ぽっぽ」
気になった私は、家の周りをウロウロと回る。さすがに入る自信はない
しかし中は見えない、そうこうしているうちにお爺さんは戻ってきて、日も暮れてしまった。
川゚ -゚)「ぽ…」キョロキョロ
周囲を見渡す、人の姿はない、家の中からは、"彼"の気配がする。どうも、とてもとても怖がっているようなのが感じ取れた。
そんな彼の状態にいてもたっても居られなくなり、私は思い切って立派な屋敷へ足を踏み入れた。
川゚ -゚)「ぽ…ぽぽぽ…」
彼のいる部屋を探す、どうやら二階のようだ。「てれび」の声が聞こえた。彼はまだ怖がっているようだった。
川゚ -゚)「ぽ、ぽぽぽ、ぽぽぽぽ」コン、コン
精一杯背伸びをして、窓を叩く。
ヒッ、という彼の悲鳴が聞こえた。
川゚ -゚)「ぽぽ、ぽぽぽぽ」コンコン、コンコン
大丈夫だよ、私がいるよ。と再び窓を叩く
「助けてくれお…助けて…」
川゚ -゚)「ぽ、ぽぽぽ」
ここだよ、大丈夫。何も怖くないよ。と必死で伝えるが、彼は「てれび」の声に混じって「助けて」と呟くばかり
しかしその呟きもいつしか消え、彼の寝息がかすかに聞こえ始めた。
川゚ -゚)「ぽ…」
よかった。と胸を撫で下ろし、私はそこを後にする。うっすらと夜が明けていたが、私がずっと佇んでいたどの時間よりも、その時間は濃密で、長いものに感じられた。
夜が完全に明けたころ、彼が玄関先に現れた。
365
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:39:12 ID:BUDFfaqo0
( ´ω`)
やつれた様子の彼は、うつむき加減にお爺さんについて歩いていた
(;ФωФ)「モナーさん、頼むのである」
( ´∀`)「わーっちょるモナ…ブーンくん、車に乗ってるあいだは絶対に目を開けるなモナ」
( ´ω`)「はいですお…」
川゚ -゚)「ぽぽ…」
彼の名前はブーンというらしい
ブーンはうつむき加減のまま、お爺さんとモナーさんに連れられて「じどうしゃ」に乗り込む。
私が追いかけようとすると、「じどうしゃ」はあっという間に走り去っていく
川;゚ -゚)「ぽ、ぽぽぽ!」
待って、どこへ行くの。私は「じどうしゃ」を追いかけた。
このまま彼を見失ったら、もう会えないかもしれない。漠然とそう思っていた。
必死に車に追いついて、中を覗く。ブーンは真ん中にいるようだったが、周囲を他の人たちで囲われていてよく見えない
川゚ -゚)「ぽぽ、ぽぽぽ」
顔を上げて、私を見て。そう伝えようと「じどうしゃ」を揺らすけれど、彼は顔を上げない。
そうこうしているうちに、車は村はずれのお地蔵様のところまでやってきて
川゚ -゚)「ぽ…」
私はそれ以上行けなくて、「じどうしゃ」は彼を乗せて走り去ってしまった。
366
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:40:06 ID:BUDFfaqo0
それからというもの、もうブーンが来ることはなくなった。
しかし、どうしても会いたい。会って、話がしたい。
お地蔵様には悪いけれど、私は行くことに決めた。
川゚ -゚)「ぽぽぽ…」
慣れ親しんだ鳩の鳴き真似をしながら、彼の街へと軽い足取りで歩みをすすめる。
お地蔵様、帰ってきたらちゃんと綺麗に元通りにしてあげますから、今は、ごめんなさい。
367
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:43:10 ID:BUDFfaqo0
以上。オカルト板の伝説的怪談「八尺様」を元にしたちょっとほんわかなストーリー。
でもそこは八尺様、そこはかとない気味悪さをちょっとブレンド。
最後の"お地蔵様を壊した"と取れる描写からは彼女が一種のヤンデレに近い状況にあることが伺えます。
(
)
i フッ
|_|
368
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:45:27 ID:YZ6D633c0
おつ
純愛にみせかけてブーン目線だとめっちゃこわいぞこれ
369
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:52:51 ID:ijMzp3hI0
本編だとじっちゃんの声を真似て部屋の外に誘き出そうとするよね
ブーンを安心させるためにじっちゃんの声真似をしたとかあっても良かったかも
乙乙
370
:
名も無きAAのようです
:2013/08/10(土) 23:55:28 ID:MpiqjW.k0
こんなに可愛い八尺様だったら大歓迎なのになぁ
371
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 00:03:06 ID:SCbVaW820
>>369
川゚ -゚)のセリフを「ぽ」以外を出したらなんか気味悪さが半減しちゃったんで、最初はそこも書いてたんだけどカットしちゃったんだよな〜、ちょっともったいなかったか
372
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 00:12:28 ID:TRIFJEEs0
>>371
なるほど確かにそうかもな
373
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 00:38:07 ID:vnffkKXE0
少し解釈変えるだけでほんわかになるとは
374
:
名も無きAAのようです
:2013/08/11(日) 01:19:44 ID:NE1qcFrg0
ちょっと質問なんだが、
閲覧注意が必要な作品はここに投下していいんだっけ?
状況を想像したらやばいってホラーだったら大体全部に言えてしまうんだけど、
自分で書いてて何度か賢者タイムに陥るようなやつなんだが
375
:
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:24:55 ID:d3t9MV8U0
12本目をいただきます。
.,、
(i,)
|_|
376
:
( ^ω^)カウントダウンのようです 1/23
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:27:53 ID:d3t9MV8U0
海沿いの小さな町で彼は産まれた。
そのまま成長し、小学生となった。
月曜日。
彼は異変に気付いた。
川д川
ベットから起き上がると、目の前に女の人がいた。
Σ(;^ω^)「うおお!?」
叫んでしばらく動けなかった。
しかしその女性はただベットの上に座っているだけだった。
特に何をする様子もない。
それどころか、今は自分の体の上にいるのにまったく重さを感じなかった。
恐る恐る女性の足元を見る。
本来足がある場所に何もなかった。
腰から上の部分しかないのである。
つまりこの女性は、いわゆる幽霊と言うものなのだろうか。
377
:
( ^ω^)カウントダウンのようです 2/23
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:28:56 ID:d3t9MV8U0
J( 'ー`)し「おはよう、ブーン」
( ^ω^)「おはようだお、かーちゃ……ん?」
ふと耳に何か聞こえてくる。
振り向くと、女性が母を指さして何かを呟いていた。
J( 'ー`)し「ブーン? どうしたの?」
(;^ω^)「ああ、いや」
どうやら母にはこの女性の姿は見えていないらしい。
そのとき、女性の発する言葉の一部がはっきりと聞えた。
「……3……………」
その後、今にも消え入りそうな、掠れきった笑い声。
(;^ω^)「えっ」
ブーンは思わず声を出した。
378
:
( ^ω^)カウントダウンのようです 3/23
◆MgfCBKfMmo
:2013/08/11(日) 01:29:57 ID:d3t9MV8U0
3とは、いったいどういう意味なのだ。
幽霊を見ても、にやにや笑うだけ。
目元はそもそも隠れていてよくわからない。
母親が不審そうに見つめてくる。
J( 'ー`)し「どうしたのブーン、3って?」
(;^ω^)「い、いや、何でもないお!」
J( 'ー`)し「まだ寝ぼけているのかしら」
(;^ω^)「本当に、なんでもない、お」
寝ぼけているならまだいい。
この不気味な半身の幽霊が本当に見えているならば、自分はおかしくなったに違いない。
いっそのことまだ寝ぼけていて、これが幻覚だとわかってくれればよかった。
J( 'ー`)し「はやくご飯食べなさい」
朝の会話はそれきりだった。
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