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ミセ*゚ー゚)リ 怪異の由々しき問題集のようです

485名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:36:03 ID:kLA0APMA0

 素直な方が良いってことはカミジョーさんに説教されるまでもなく分かっているんだけど、ねぇ?

 寂しがり屋のくせに、他人に率直な好意を向けられるのは怖い。
 気づかないフリをする。
 聞こえないフリをする。
 逃げる。茶化す。誤魔化す。拒絶する。
 自分は好かれてなどいないのだと、自分の心にさえ嘘を吐く。



ミセ* ー)リ「……あ〜あ」



 社交的でポジティブな方だと思ってたんだけど。
 私もなつるも、友達を作る部活である隣人部にでも入って人との付き合い方の練習をした方が良いのかも。

 一人で進む廊下は、何故か二人の時とは違って妙に冷たく見えた。

486名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:37:03 ID:kLA0APMA0
【―― 5 ――】


 ぼんやりとした曇天のような心持ちで下駄箱まで辿り着き、靴を履き替えて外に出たところで誰かにぶつかった。
 明らかに私の不注意だったので「あ、すみません」と一歩下がりつつ頭を下げる。

 と、見ると。


(#^;;-^)「いえ、大丈夫なのです。こちらこそ申し訳なかったのです」


 そう言って私の前で笑っていたのはでぃちゃんだった。
 ……笑う、というより微笑む、か。
 彼女が声を出して笑う時は、なんとなくの単なるイメージだけど、「おほほほ」という感じで手どころか扇子で口元を隠しそうだ。

 お淑やかというか……お嬢様っぽい?
 あはははと笑ってバシバシ机とか人の背中とかを叩いちゃう私とは大違いだ。

 閑話休題。


ミセ*゚ー゚)リ「でぃちゃんまだ帰ってなかったの?」

(;#゚;;-゚)「今し方、少し気になるものを見たので、どうしようかとごしゅ……お兄ちゃんと相談していたのです」

487名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:38:04 ID:kLA0APMA0

 ……無理に直さなくてもいいんじゃないかなあ。
 そう思って、でもすぐに流石に公共の場、しかも学校で「ご主人様」はマズいかなと思い直す。
 今の「お兄ちゃん」もそこはかとなく犯罪的だけど。

 世話焼きな妹みたいな感じがするもんね、でぃちゃん。
 正直に言うとロリっぽい。


 そんな妹キャラの後ろから、彼女のお兄ちゃんことギコさんが目を細めながらやって来た。
 難しそうな顔をしていてもその童顔の所為であまり深刻そうには見えない。
 この人は甘えん坊の末っ子が似合いそうだ。

 彼は一息ついて、話し出した。


(,,-Д-)「ん……なんて言うかさ、僕個人としては気にする程ではないと思うんだけど、周囲との関係的にはポーズだけでも必要かなって」

ミセ*゚ー゚)リ「?」


 キョトンとする私を見て「縄張りの関係だよ」と付け加える。
 多くを語らないことから察するに(そして心なし嫌そうなのを推し量るに)お仕事のことなんだろう。

488名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:39:15 ID:kLA0APMA0

 朝比奈擬古という名の彼はただの神道系の大学に通う大学生ではなく、同時に非正規の家業である妖怪変化の専門家でもあるのだ。
 それが好きでやっていることなのか嫌々やっていることなのかは置いておくとしてもとりあえず事実ではある。
 ……優秀かどうかはちょっと分からないけれど。

 至極一般的な女子高生である私はこないだまで怪異が現実に存在すること自体知らなかったのだ、専門家として有能かどうかなんて分かるわけがない。


 より正確には、怪異が引き起こした現象を、一度は確かに目にしていたのに私は信じようとしなかった。
 訳の分からないことを――問題を、そのままにしておいた。

 そう言えば、とこうして世界の裏側を垣間見、自分の問題を解決しようと思い始めた今は改めて疑問に感じる。
 あの時私を助けてくれた、あの剣士さんは退魔師か何かだったのだろうかと。
 もうロクに顔も思い出すことはできず、姿かたちも朧気にしか覚えていないけれど、刃のように鋭い目付きと携えていた長い日本刀はちゃんと記憶に残っている。

 「名乗るほどの者ではない」なんてカッコ付けたことを格好も付けず言っていた彼女は今も生きているのだろうか。


ミセ*゚ー゚)リ「ちなみに今日はどんな問題なんですか?」


 いつか機会があれば彼女のことも訊いてみよう。
 そんなことを思いつつ、私は目の前の専門家さんに問いかけてみる。

489名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:40:12 ID:kLA0APMA0

 ギコお兄さんは口ごもりながら答える。


(,,-Д゚)「『問題』とも言えない問題、かな。存在の基準……うーんと、セイヨウタンポポはあって良いかみたいな」


 なんだそれ。


(,,-Д-)「俺は好きだから別にあっても良いと思うんだけど、でも世の中には外来種なら迷わず処理する人もいて……」

ミセ*゚ー゚)リ「ふむふむ」

(,,゚Д゚)「別にそれはそれで正しいけど、俺はちょっと嫌だから、なんて言うか『ここは俺の持ち場です』と周囲に主張して……」


 全く分からない。
 話は途中から聞き流していた。

 最近になって気づいたことだけど擬古さんはあまり頭の良く回る方ではないみたいだ。
 今も一人称が「僕」から「俺」になってしまっているし、どうやらこの末っ子キャラは根本的に小難しいことが苦手らしい。
 当然、説明するのも上手いとは言えない。

490名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:41:14 ID:kLA0APMA0

 九尾の時、私に「でぃちゃんと友達になって下さい」なんて説明せず巻き込むような形にしたのは、単に説明するのが苦手だったからなのかも、なんて。


ミセ*゚ー゚)リ「……んー」


 クラスメイトの方を見遣る。
 こちらに気づいた彼女は私を一瞥すると、すぐに視線を前に――校門の方へ――戻す。
 そうして、


(#゚;;-゚)「分からないのなら、『分からない』で良いですよ」


 一言、静かな口調で告げた。


(;-Д-)「ごめんね……。俺、説明下手だからさ……」

ミセ*^ー^)リ「いえいえ。私も理解するの遅い方なんで、おあいこです」

(;#゚;;-゚)「それにミセリさんには馴染みのない話で…………!」

491名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:42:03 ID:kLA0APMA0

 そこまで言って。
 でぃちゃんが、唐突に言葉と動きを止めた。

 両目と瞳孔が限界まで広がっていた。
 まるで信じられないものを見たような――たとえば普通の人が、怪異を見てしまったような、そんな感じ。
 彼女自身が人外である以上それはありえないが、そう思わせるくらいに、彼女は。

 一瞬の後、驚きで身を小刻みに震えさせた。



(;#゚;;-゚)「ご、主人さ、ま……。あ、そこ……!!」



 呼び方を繕うのも忘れ、震える手で指を指す。
 ギコさんはその言葉で全てを悟ったのか勢い良く振り向いた。

 そして、

492名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:43:06 ID:kLA0APMA0

(,, Д)「……!」



 震えこそしなかったがでぃちゃんと同じように動きを止めた。
 目を見開き、それを見ていた。

 私も咄嗟にその視線を辿ったがただ普通の風景が広がっているだけだった。
 生徒達が各々友達と、あるいは今日に限っては両親と仲良さげに帰っていくその光景。
 普段ではありえない風景だが、それでも特筆すべきところはない…………いや、ちょっと待て。


 ―――また不釣合いな人が一人いる。
 和やかな風景にそぐわぬ、妙な風体の奴が。



「……」



 校門の外に立つその男は妙にガタイが良かった。
 筋肉質な身体にジーパンにジャケット。
 ライオンのように逆立っている濃い茶色の髪の毛も相俟って、見るものに野生的な印象を抱かせる。

493名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:44:04 ID:kLA0APMA0

 笑みを浮かべる男の立ち姿で最も特徴的なのが、肩にストールのようにかけられている毛皮だ。
 髪と同じ色合いのその毛皮を見ると、なんか紀元前のバーサーカーにしか見えない。
 いやその服装も冬ならまだ分かるけど今梅雨だぞ。


ミセ*゚ー゚)リ「……? あの人が、何か?」

(,,-Д-)「…………うん」


 軽く手を振ってくる男。
 ギコさんは何故か悲しそうに「俺の知り合いだよ」と言った。

 そうして、あるいは、と前置き。



(,,゚Д゚)「―――あるいは俺の家族だよ」



 と、沈痛な面持ちで、言った。
 本当の家族なのか、それとも義兄弟という意味での家族なのかは分からなかったが、深い関係であることは分かった。

494名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:45:15 ID:kLA0APMA0

 だから、私は。


ミセ*゚ー゚)リ「その問題は問題じゃないんですよね? 気になるだけで」

(,,゚Д゚)「え?」

ミセ*^ー^)リ「それで、あの人は『家族』――なんですよね。だったら、行かないと」

(# ;;-)「…………」


 行ってあげないと。
 次にいつ会えるかも分からないんだから。
 もう会えないかもしれないんだから。

 ……縁起でもないけどね。

495名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:46:12 ID:kLA0APMA0

 暫く悩んでいたギコさんだったけど、でぃちゃんに袖を引かれて、彼女の縋るような目を見ると「分かった」と小さく頷いた。
 心配性なでぃちゃんが無視しても良いレベルと判断した、家族の方を優先したいと思う程度の問題なのだ。
 きっと大したことはない、誰に危険が及ぶでもない、本当にちょっとしたことだったのだろう。

 そして。


ミセ*^ー^)リ「それじゃ」


 私は背中を押すようにそれだけを言って。


(#^;;-^)「はい」

(,,-Д-)「ありがとう、ミセリちゃん」


 走っていく二人を見送った。
 その関係性が家族だというのなら、きっと積もる話があるはずだ。

496名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:47:24 ID:kLA0APMA0
【―― 6 ――】


 さて、と二人を見送ってこれからどうしようかと伸びをしたその時に、私は視界の端に気になるものを捉えた。

 来客用の玄関から校舎に入っていく背の高い女性。
 ハイヒールを履いてシックな色合いの服に身を包んでいる、白い肌と黒い髪のコントラストが美しい彼女を私は知っていた。
 硝子細工のように美しい、その人を。


ミセ*゚ -゚)リ「定子さん……?」


 その女性は、件のなつるの母親。
 彼の義理のお母さんである定子さんだったのだ。

 尤も、なつる本人は「お母さん」なんて絶対に呼ばないけれど。


ミセ*゚ -゚)リ「授業参観……? あれ、でももう終わったしなあ……」


 授業を見に来たのであれば三十分ほど遅かった。
 そうでないのなら何故ここにいるのかが分からない。

497名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:48:08 ID:kLA0APMA0

 ……うん。
 多分、時間を勘違いしていたのだろう。
 彼女はそういううっかりしたところもある人だ。

 しかし折角病身を押してここまで来てくれたのだ。
 授業はもう終わっているけど、子供と一緒に帰るくらいはしても良い。


ミセ*-ー-)リ「……なつるは、嫌がるかな」


 どうだろう。
 それが本心からのものでない、照れ隠しであると良いんだけど。


 ……少し考えて、私は定子さんの後を付けることにした。
 好奇心の為ではなく私の為。
 幼馴染がどういう風に義理の母親と付き合うかを見ることで自分も考えようと……そういうこと。

 半分は、その理由。
 もう半分は単純に心配だからだった。

498名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:49:08 ID:kLA0APMA0

 なつるは他人だけど、なつるのことは他人事ではない。


ミセ*-ー-)リ「結婚したら私の母親にもなるんだしね」


 結婚の約束だけならもう交わしてあった。
 「家族になろう」という指切り。
 授業参観の思い出と同じくらい古い出来事をアイツは覚えているだろうか。

 まあ、覚えてなくたって良い。
 改めて結べばいいだけの話。

 そんな馬鹿なことを、バカップルみたいで子供地味たことを呟きつつ、私は踵を巡らす。

499名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:50:14 ID:kLA0APMA0
【―― 7 ――】


 授業参観が終わった後の校舎はいつもよりも明らかに人が少ない。
 ほとんどの部活は今日は休みなので(教師陣が会議なのだ)生徒は家族と一緒に帰るか、それか早く帰れることを喜んで友達と遊びに行くかのどちらか。

 それでも、一部の熱心なクラブは活動しているらしく、廊下や教室にはチラホラと人が見えた。


 構内に響く様々な楽器のチューニング音が私の耳に届く。
 あと十分もすれば今校舎中で行われているこのパートごとの基礎練習が終わるので、演奏会用の楽曲練習が始まるのだろう。
 聞いた話では、次の公演はまだ一ヶ月以上先らしいのに真摯な人達だ。

 その間を縫うようにし聞こえてくるのは教室に残ってお喋りをする女の子の笑い声。
 何処に遊びに行こうか、なんてことを雑談しながら相談している内に時間がなくなってしまうのだ。
 それで結局は何も変わったことをせず、いつもと同じように笑いながら帰る。

 友達と一緒にいるだけで楽しい私達にはよくある日常だ。


ミセ*-ー-)リ「……♪」


 ふと、窓の外を伺ってみれば、部活が休みのはずの野球部とサッカー部の自主練組が争っている。
 ……キックベースで。

500名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:51:20 ID:kLA0APMA0

 こういう多くの運動部が休みの日には自主練組はよくキックベースをしている。 
 理由はと言えば、単に楽しいからではない。
 練習場所が同じ野球部とサッカー部は、ああして勝負してどちらがグラウンドを使うのかを決めているのだそうだ。
 交互に使ったり半分にしたりしない辺りが体育会系的な馬鹿さ(部活に対する熱心さと考えのなさ)が垣間見える。

 見た感じでは、今日は野球部側が勝っているらしい。
 負けた方は自動的にランニングや筋トレといったつまらない練習になるので両方共必死だ。


 まさに蒼い春といった感じの情景。
 五感が学校中に満ちる若々しさを拾ってくる。



ミセ;゚ー゚)リ「……あれ、」



 と。
 そんなことを考えていたら定子さんの姿を見失った。


ミセ;゚ー゚)リ「あれ、あっれー……?」

501名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:52:12 ID:kLA0APMA0

 階段を上った辺りまでは前にいたのに、ちょっと目を話した隙に影も形もなくなっていた。
 我ながら自分の注意力散漫具合に呆れてしまう。

 やれやれだ、"Not again"。


 諦めるかどうかを本気で検討し始める一歩手前で、廊下の掲示板にポスターを貼り付けている新聞部を見つけた。
 学園モノでよくあるそれとは違い、この学校の新聞部は情報通はいないし噂好きというわけでもないしというか活動をほとんどしていない。
 基本的な活動は今やっているような校内の掲示物の貼り替えと行事の宣伝だ。

 吹奏楽部の演奏会のことだって私は新聞部が作ったポスターで知った。

 ……しかしそれは本来、教師がやるべき仕事なんじゃないかな?
 そんなことを思いながらも、黙々と作業を続けている部員に話しかける。


ミセ*゚ー゚)リ「あのー……」

/ ゚、。 /「はい?」


 長身ながら人に威圧感を与えない、穏やかそうな顔をしたこの先輩はなんて名前だったっけ。
 三年生で……。
 前まではよく同じ新聞部の小さな人と一緒にいた……。

502名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:53:04 ID:kLA0APMA0

 「名前なんて別にどうでもいいか」と思い直して私は訊ねた。
 なんなら後で生徒会長に訊けばいいんだし。


ミセ*゚ー゚)リ「さっき、この辺りでハイヒールを履いた黒っぽい服の女の人を見なかったですか?」

/ -、_ /「うーん……ごめんなさい、分からない」


 名も知らない先輩は本当に申し訳なさそうにそう言って、直後に近くの教室から出てきた女子生徒に事情を話した。
 画鋲を取りに行っていたらしいそっちの人の方は私も知っている。


li イ*^ー^ノl|「水無月さん、お久しぶり」

ミセ*>ー<)リ「お久しぶりですっ!」


 やや垂れ目で、半ばから緩やかにカーブした長い黒髪を持つ彼女は「幽屋氷柱」という三年生の先輩だ。
 去年の運動会で組分けが同じでお世話になった。

 弓道部であるはずの彼女が何故新聞部を手伝っているのかは氷柱先輩の双子の姉が関係している。
 お姉さんの方は「幽屋哀朱」という名前で、双子だからと言って必ずしも似ているとは限らないということを教えてくれる、落ち着いた氷柱先輩とは違うとても明るい人だ。
 よくは知らないけれど、何かの事情があって彼女もたまに新聞部を手伝っている。

503名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:54:08 ID:kLA0APMA0

 長身の先輩から事情を聞いて、氷柱先輩は私に訊ねた。


li イ*゚ー゚ノl|「その女の人っていうのは、ご父兄の方ですよね?」

ミセ;゚ー゚)リ「はい。多分、授業参観に来たんだと……。終わっちゃったけど……」


 じゃあ、と氷柱先輩は言った。



li イ*^ー^ノl|「息子さんか、娘さんの教室に向かったんじゃないかな」

ミセ;゚ー゚)リ「…………あ」



 …………。
 それもそうだ。

 どうやら私には注意力だけではなく他にも色々な物が足りないらしい。

504名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:55:04 ID:kLA0APMA0
【―― 8 ――】


 そっと教室の中を覗い、人影が一つしかないのを確認して中に入った。
 その影、なつるは私と別れた時と変わらずぼんやりと窓の外を眺めている。

 まだ定子さんはやって来ていないらしい。


( ・∇・)「……どうした?」

ミセ*^ー^)リ「いやちょっと、気になっちゃって」


 私の言葉になつるは「ふぅん?」なんて言って訝しむような表情をし、やがてまた視線を窓の外に移す。
 心なしか彼が嬉しそうに見えるのは目の錯覚だろうか。
 そうであるとしたなら一体どうして、何について喜んでいるんだろう。

 まさか、私が戻ってきたことにかな?
 そろそろそういうデレがあっても良い頃なんだけど。

 "It is time +主語+仮定法過去"。

505名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:56:14 ID:kLA0APMA0

( -∇-)「なあ、ミセリ」

ミセ*^ー^)リ「なに?」


 弾む声音を抑えながらの返答にも彼はこちらを見ない。
 代わりに指先をちょいちょい、と動かして「こっちに来いよ」という意思を表す。

 私は黙って彼の隣に座った。
 ひょっとしたらキスでもされるかな?と思ったけど、そうはならず、どうやらただ単に傍にいて欲しいだけだったみたいだ。
 それは単純に身体を重ねることよりも嬉しい、親愛の証左。

 そうして、私の幼馴染はぽつりぽつりと話し出す。


( -∇-)「お前さ……伯父さんとは、どう?」

ミセ*-ー-)リ「どうって?」


 少し考えて、彼は再び問いかける。

506名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:57:23 ID:kLA0APMA0

( ・∇・)「どんな話、するんだ?」


 気が付いた。
 なつるが変だった理由。
 授業が終わった後もこうしてずっと待ち続けている理由が。


ミセ*゚ー゚)リ「色々だよ」

( ・∇・)「色々って、その色々を訊いてんだよ」

ミセ*-ー-)リ「友達と話すような内容」

( ・∇・)「お前は俺に義母に向かって『今日暇ならお前ん家でヤろうぜ?』とか言えってか」


 克服しようとしてるんだ。
 埋めようとしているんだ。 

 お母さんとの、どうしようもない距離を、どうにかしようと思ってるんだ。

507名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:58:43 ID:kLA0APMA0

ミセ*^ー^)リ「私に言う台詞じゃなくて、普通の友達に言う台詞だよ」

(;-∇-)「『今度映画行こう』って? 映画はなあ……」

ミセ;゚ー゚)リ「別にそっくりそのまま使わなくてもいいんだよ? 細部は変えてもいいんだよ?」


 何が彼の考えを変えたのかは分からない。
 でも今確かに彼は、折り合いの悪かった母親と話そうと努力している。

 親子だから。
 家族だから。
 かけがえのないものだから。

 最初はそうでなかったんだとしても――今、そうなろうとしている。


ミセ*^ー^)リ「今日学校でこんなことあったよー、とかさ!」

( ・∇・)「小学生か。ってか、お前は伯父さんとそんな話するのか」

ミセ*゚ー゚)リ「しないけど」

(;-∇-)「いい加減なこと言うなよお前……」

508名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 03:59:24 ID:kLA0APMA0

ミセ*゚ー゚)リ「それより唐突にどうしたの? 心変わり?」

(  ∇)「いや……今日、来るらしいからさ……。遅れるかもしれないけど、って……。だから……」


 他人はいつ、家族に変わるんだろう。
 抱き続けてきた疑問の答えが出たような気がした。


ミセ*^ー^)リ「テキトーでいいんだよ、そんなの。話したいことを話せばさ」


 コツコツコツコツ……。

 コツコツと、足音が聞こえる。
 チューニングが途絶えた静かな校舎の中にハイヒールの音が響く。
 音が段々と近付いてくる。

 定子さんはハイヒールを履いていた。
 きっと、この足音はあの人の生み出したもの。


ミセ*-ー-)リ「いいんだよ、適当で。家族なんだから……変に気を使わなくても、いいんだ」

509名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:00:32 ID:kLA0APMA0

 カツカツや、カッカッというような強く踏み締める感じではない。
 人柄を表しているかのような優しく、控えめな靴音。

 そして。



ミセ*゚ー゚)リ「ほら――来たよ」



 その足音が止んだ時。
 私達は扉の方へ振り返った。

510名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:01:14 ID:kLA0APMA0
【―― 9 ――】


 控えめな微笑みが――見えた。



川ー川



 少し長過ぎる感じもあるロングヘアーの間から彼女の笑みが覗いてる。
 目にはとても優しい光が宿っていた。
 脆く儚い美しさの中には母性が見え隠れする。

 彼女は手を、振る。


(; ∇)「あ、えっと……」


 ガタリと腰掛けていた椅子を倒しながら立ち上がった少年は、とても小さな、消え入りそうな声で。
 でも確かに声に出してその言葉を言った。

 「かあさん」――と。

511名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:02:06 ID:kLA0APMA0

川*ー川



 血の繋がらない息子から初めて母親と認められたその人はまた微笑んだ。
 今度は控えめなそれではない、本当に嬉しそうな笑顔だった。

 唇が僅かに、動く。


 紡ぎ出されたのはたったの一言。
 五文字の言葉。
 声にならないその想いを息子はちゃんと受け取った。

 ……彼女はこう言っていた。

512名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:03:09 ID:kLA0APMA0



  あ
 
  り

  が

  と

  う
   


 ―――「ありがとう」と。



.

513名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:04:04 ID:kLA0APMA0

 本当に嬉しそうに。
 今までのすれ違いが全部帳消しになってしまったかのような幸せそうな表情で。

 頬の一筋の涙が流れるのが見えた。
 彼女は堪えられないという風に口元を抑え、眉間に皺を刻み、上を向いた。
 けれど感情の欠片は留まることを知らないで幾筋もの涙として現れる。

 私も泣いてしまいそうだった。
 隣にいる彼はきっと泣いていた。



川*ー川



 最後にもう一度、彼女は泣き笑いをしながら頷いて、また何かを言った。

 今度も声にはならなかった。
 今度は唇さえも見えなかった。

 けれど、私達には彼女が何を伝えたかったのかが分かった。

514名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:05:03 ID:kLA0APMA0

 ―――本当に、ありがとう。

 彼女はそう言っていた。
 鼓膜を揺らす言葉ではなく、心を揺らす想いで以て。



 そして急に彼女は踵を返した。
 涙の粒が舞って、キラキラと宝石のように輝き落ちた。

 恥ずかしくなったのかもしれない。
 みっともなく思ったのかもしれない。
 何か思うところがあったのだろう。 

 彼女の姿が、視界から消えた。



 息子は手で涙を拭うと母親を追いかけるように走り出した。

 私もその後を追った。

515名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:06:19 ID:kLA0APMA0

 教室の外に出て、辺りを見回した。

 彼女は何処にもいなかった。

 まるで最初から存在していなかったかのように、影も形も見当たらなかった。



 そして、携帯が鳴った。




(  ∇)「…………え?」




 彼女の足音はもう聞こえない。

 先程まで彼女が立っていた場所には、落ちた涙の雫があるだけだった。

516名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:07:07 ID:kLA0APMA0
【―― 10 ――】


 病室のベッドに横たわる彼女――定子さんは、なつるが来た時にはもう冷たくなり始めていた。
 白く美しい肌は生前と同じで、その硝子細工のような美しさは命が絶えた今となっても全く変わることがなかった。 

 昨日までは、元気だったという。
 病院側が外出の許可まで出せるほどに。
 ……授業参観に行くという約束ができるほどに。

 それが消え去る前に一際強く輝く炎と同じだとは誰も気付くことはできなかった。


(  ∇)「…………」


 けれど、だとするならば私達が見た定子さんは幻覚だったのだろうか。 
 少なくとも、幽霊……ではないだろう。

 足があるとか涙の雫が残っていたとかいうことではなく――“彼女が息を引き取ったのは、携帯が震えたすぐ後だったのだから”。

 ハンガーラックに綺麗に掛けられたシックなレディーススーツはクリーニング屋から受け取った時のままのようだ。
 その下に置いてある箱の中身はあのハイヒールだろう。
 戸棚に化粧品が見えることからも、本当に直前まで授業参観に行くつもりだったということが分かった。

517名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:08:08 ID:kLA0APMA0

ミセ* -)リ「…………なつる」

(  ∇)「悪い……」


 涙声で彼は言った。
 「一人にしてくれ」と。

 なつるは跪いて、母親の手を取った。
 まだ暖かさの残るその右手を。
 本当ならば今日一緒に学校から帰る時に繋ぐはずだった――彼女の手を。

 生きているうちは結局一度も握ることはなかった、その右手を。



 病室から出て、扉を閉めた。
 ……それでも静かに啜り泣く声は私の耳に届いた。

518名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:09:05 ID:kLA0APMA0
【―― 11 ――】


(,,-Д-)「―――『面影』」


 病室の外、病院の廊下には家族との再会を終えて戻って来たギコさんが立っている。
 彼の言葉に私は「面影に立つ」という慣用句を思い出す。
 今、目に見えないはずの誰かの姿を見る、という意味のその言葉を。


(,,-Д-)「日本の東北地方の一部に伝わっている伝承でさ。その幽霊は足がある、って言われてる」


 幽霊と言うか実は生霊なんだけどね、と補足を加えた。


(,,゚Д゚)「誰かが死ぬ直前に……重病患者とかが多いらしいんだけど、そういう人達が死ぬ直前に親しい間柄の誰かの前に現れる」

ミセ* ー)リ「…………」


 そうして。
 “ふと現れた彼等は手を振ったり、下駄の音を立てたりする”――らしい。
 微笑んで見せることも、あるらしい。

519名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:10:23 ID:kLA0APMA0

 死期を悟った人間が怪異として今生の別れを告げる。


(,,-Д-)「死後の未練を果たす為に幽霊になる話は多いけど、死ぬ直前で怪異となるのは珍しいよね」


 だから。
 きっと。
 それほどまでに彼女は息子のことを想っていたのだ。

 血が繋がらない、短い付き合いの相手だとしても。
 最後の瞬間に「約束を果たしたい」と願った。

 ギコさんは言った。



(,, Д)「本当に……大切に想っていたんだと思う。一人の『家族』として、彼女も彼のことを」



 言葉は、ただの気休めかもしれなかった。
 やはり現れた彼女は、ただの幻覚なのかもしれなかった。

520名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:11:14 ID:kLA0APMA0

 だけど、定子さんは言ったのだ。
 「ありがとう」――と。
 泣きながら、涙を流しながら笑顔を浮かべて。

 自分のことを母親と認めてくれたなつるに向かって――「本当にありがとう」と。


ミセ* ー)リ「母親っていうのは……強いなあ」


 呟きながら、なつるに話してあげようと思った。
 気休めでもいいからきっと言おうと。
 間に合ったんだと、言葉には遂にすることはできなかったけど、お互いに想い合っていたんだと。

 なんて言えば上手く伝わるだとうかと、考えて。
 その時にやっと私は、目の前にいたギコさんだけじゃなく自分も泣いていることに気がついた。



 血は繋がっておらずとも母親は母親。
 家族は、家族だった。

 それは最後の瞬間だけだったかもしれないけれど、それでも確かにあの二人は『家族』だったんだ―――。

521名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:12:11 ID:kLA0APMA0
【―― 0 ――】


「―――『人一日に千里を往くこと能わず、魂能く一日に千里をも往く』っと」


 会長さんはいつものように窓の外を見ながら、いつものように知った風に呟いた。

 彼女の嫌いな儒教の説話の一節だ、「范巨卿鷄黍死生交」という話に出てくる言葉。
 ……もしかすると会長さんとしては漢語文学ではなく、古文の作品の方から引用したつもりなのかもしれない。
 その漢文を元にした物語――『雨月物語』より「菊花の約」。

 それはある男が親友と会うという約束を果たす為に幽霊となるお話だった。
 情と約束の重さを教える為の草紙。


li イ*^ー^ノl|「儒教は嫌いなんじゃなかったんですか?」

「嫌いとは言ってないよ。僕には合わないと思ってるだけ」


 言葉の意味は、自分以外の人には合う人間もいるだろう、ということ。
 会長さんが思い浮かべている彼等のように。

522名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:13:06 ID:kLA0APMA0

「ここの言葉での『千里』は漠然と遠い距離を表すらしいケド、当時は友情に男色も混じってたんだってね」


 次いで、今も混じってるのかな、と言い笑う。


「でもさ、そもそも感情って『○○だ』とか『××だ』とかはっきり言えないものなんじゃないかな?」

li イ*-ー-ノl|「……かもしれません」


 私が実の兄に抱く感情は本当に恋慕なのだろうか。
 たまに、分からなくなる。

 ……ああ。
 そう言えば、その兄の知り合いがいつだったかこんなことを言っていた。
 「愛情は人によって違って、相手によって違うんだ」と。

 本来は絶対に伝わらないはずのたった一つの愛を、どうにか伝えようとして――人は人を愛するのだと。


li イ*゚ー゚ノl|「実際は、曖昧なものなのかもしれませんね」

523名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:14:04 ID:kLA0APMA0

 愛のような、恋のような。
 情のような、あるいは他の“何か”のような。

 何かはよく分からないけど、大切な何か。


 ……そんな風に漠然と思った私の心を読み取ったのかもしれない。
 会長さんは私の方に振り返り、悪戯好きそうな笑みを浮かべてこう言った。

 『家族』と同じように?――と。


li イ*゚ー゚ノl|「……会長さんは『家族』ってなんだと思うんですか?」


 私は、積み上げた時間と想いが家族である証明だと思っている。
 私に訊ねてきた彼女はどう思っているのかと気になった。


「決まってるよ」


 と。

524名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:15:02 ID:kLA0APMA0

 彼女は、そう言って。
 私が予想していた「分からない」とか「知らない」とか「どうでもいい」ではない答えを、また知ったように口遊ぶ。



「『家族』っていうのは――結局、“家族である”ってことだよ。それだけでしょ?」



 ……なるほど。
 それは同語反復でしかなく、循環定義でしかないけれど、真理だった。


 元より不完全な存在である人間は、何を定義するにしてもその根幹の部分で「○○だから○○」という言葉を使わざるを得ない。 
 「××だから○○」と定義できるのは二次以降の概念だけなのだ。
 定義自体を定義することは不可能だし、最小単位を分割することも同じく不可能。

 ならば、儒学において人間関係の基礎と考えられた『家族』を改めて定義したり説明したりする必要は何処にもない。
 どう思うかは様々だとしても、どうであるかは唯一だ。

525名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:16:07 ID:kLA0APMA0

 つまり――『家族』は“家族”だ、と。


li イ*-ー-ノl|「…………」

「より簡単に、現実に即した形で直すとすれば、『家族とはお互いが「家族」と思っている関係のこと』になるんじゃないのかな」


 血が繋がっていなかったとしても。
 どんなに短い時間の間柄でも。
 本人達が、お互いのことを『家族』と認めるのなら――それは家族。

 家族のような人間関係――は『家族』だし。
 家族みたいな人間関係――も『家族』なのだ。

 改めて確認するまでもなく、それは確かに『家族』なのだ。


「だから、多分ね」

526名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:17:03 ID:kLA0APMA0

 彼女が次に何を言うのかは自然に分かった。
 きっと「他人はいつ『家族』になるのか?」という問いの答え。

 そして――それは。



li イ*^ー^ノl|「他人同士がお互いに『家族になろう』と思った時……既に彼等は『家族』になっている、でしょ?」

「あー、もう僕の台詞取らないでよっ!!」



 あの幽霊さんが言葉を声に出さなかったのは当たり前だ。
 だって家族というものは、想いが言わなくても伝わるからこそ、『家族』なんだから。






【――――そこまで。第六問、終わり】

527名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 04:18:03 ID:kLA0APMA0


 「音に聞きて 一人で探る 君の影」


【歌意】
あなたのことを噂で耳にして、私は一人であなたの影を探し求めています。

【語法文法】
『音に聞き』は「音に聞く」という言い回しを連用形に変化させたものである。
意味としては「噂で耳にする」「噂に高い」のどちらかだが、今回は前者。
次の『て』は連用形に繋がる接続助詞。単純接続・原因・理由・逆接などの用法があるのだが、多くの場合は現代語の「〜て」のように訳せる。
『一人』は現代語と同じく「ひとり」や「独身」。稀に副詞として「自然に」という風にも使われる。
続く『で』は格助詞。厳密には四種類程度に分類できるが、先ほどの『て』と同じく大抵は現代語と同じように訳せる。
『探る』はラ行四段活用「探る」の連体形。終止形も同じく「探る」なものの接続されているのが体言なので連体形と分かる。
これは「指先で触って調べる」「尋ね求める」ような意味。
体言の『君』は代名詞で現代語と同じく「あなた」。名詞の場合は「主君」「天皇」と訳す。ただ和歌の場合は前者のことが圧倒的に多い。
『の』は格助詞で、これも現代語の「の」と同じ。
古語では最後の『影』の意味がかなり多く、バリエーションとしては「空間に浮かぶ姿」「姿形」「面影」「陰影」「光」「霊魂」など。
現代語でも同じく様々なニュアンスを有する単語なのであえて上記でも訳していない。

【特記】
参考にした歌は特にない。元々は「おとに聞き 一人で探す 君の影」という現代語の川柳だった。
現代語と同じ意味の言葉が多く出てきているのはその為である。

528作者。:2013/08/05(月) 04:19:10 ID:kLA0APMA0


この作品の原案を書いたのは一年以上前なのですが、改めて見ると、よく人が死ぬ話だなあと。
冷静に考えるとなつる君はここ二ヶ月くらいの間に先輩達と義母を失くしているわけで凄く災難な子ですね。
ちなみに次の話でも人が死にます。

そんなわけで第六話でした。
探せば色々とリンクネタが見つかると思いますが、本編にはほぼ関係ないので気にしないでください。



次は前後編ですが、もしかしたら一話、書き下ろしで一話完結の話を書くかもしれません。
……しかし話が重いからエロを入れる場所がないなあ。

529名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 10:54:17 ID:LZ5EUbFM0
おつ!

530名も無きAAのようです:2013/08/05(月) 14:18:22 ID:7GDiotRYO
乙。なつるん…。

531名も無きAAのようです:2013/08/06(火) 23:16:29 ID:R8DfhT1QO
ひっさびさのフサだぜい


生きてたんだな(笑)


ってかこのニーイチワールド、各キャラの年齢、整合性ある?
微妙にズレとらんかや?

532名も無きAAのようです:2013/08/09(金) 06:17:04 ID:eBS2hVw20



 第六問。
 模範解答。



.

533名も無きAAのようです:2013/08/09(金) 06:18:12 ID:eBS2hVw20

・《面影》
 秋田県に伝わる生霊。
 人が死ぬ直前にその魂が本人そのものの姿になって親しい間柄の相手の元に現れたり下駄の音を立てたりするという。
 またこれは幽霊でありながら足のある姿で現れるとされる。
 似た伝承は岩手県や青森県にも伝わっており、特に戦争中などでは盛んに噂されていた。

 現実的に解釈をすれば、戦地や病院にいる大切な人のことを考えているうちに街を往く他人にその人の姿を重ねてしまって……というものなのだろう。
 だがなんにせよ人の情や絆を思わせるロマンチックな伝承ではある。 
 もしかすると、ここにいないはずの誰かの姿を見るという意味の慣用句「面影に立つ」はこの霊が由来なのかもしれない。
 

・《菊花の約》
 上田秋成によって著された妖怪小説「雨月物語」に納められた話の一つ。
 漢語作品の「范巨卿鷄黍死生交」という説話を原案に持つ。
 時代設定や人物は変更されているがどちらも友人と会う約束を果たす為に命を絶つ男の物語である。
 作中で引用されている「人一日に千里を往くこと能わず、魂能く一日に千里をも往く」はそれに関係している。

 この作品の主題は「交りは軽薄の人と結ぶことなかれ」という原作中の一文の通りである。
 軽薄な者と親交を持つべきではない(≒親交を持つのは約束を必ず守るような誠実な相手が良い)ということでその為に重い友情の比喩としても使われる。

534名も無きAAのようです:2013/08/09(金) 06:19:04 ID:eBS2hVw20

・《家族》
 住居を共にし纏まりを形成した親族集団。
 血縁関係を基礎にして成立する小集団。
 辞書的な定義では、上記のようになっている。

 社会を構成する基本単位ではあるが、この『家族』という概念は今も研究が続いている。
 そもそも類型すらないのではないかという意見もある――家族は家族なのだ。


・《怪異》
 この作品『怪異の由々しき問題集』のテーマの一つ。
 化物、妖、物の怪などとほぼ同じニュアンスで使われる。
 妖怪というものが存在しないと仮定して考えると、このような諸々の伝承は自然に対する畏敬や感謝の念、若しくは人の想いあるいは勘違いが形となったものであると言える。

 伝承は科学的視点や合理的根拠が欠かれたものが殆どであるのだが、教訓や背景を持つ話も多い。
 例えば「夜に口笛を吹くと悪いものが来る」という伝承は、一説ではかつて人身売買の売人を呼ぶ合図が夜中に口笛を吹くことだったため、とされる。
 また口裂け女などの都市伝説が広がった背景には、遅くまで塾に通うようになった子ども達に寄り道せず早く家に帰ってきて欲しいという家族の願いがあるとも言われている。
 怪異は科学的でも合理的でもないが、それを広める人間や社会は説明できることも多い。

 この作品においては、当然、怪異は存在する。
 が、現実でのその背景を考えつつ楽しんで頂ければ幸いである。

535作者。:2013/08/09(金) 06:34:22 ID:eBS2hVw20

自分の好きな言葉に「パスカルの賭け」というものがあるのですが、この第六話のタイトルを変えるとすれば、それだと思います。

この作品は怪異と人間の交流や妖怪との戦い、あるいは人間の悪い面やそれに対する皮肉のような、そういうものを描く妖怪モノではありません。
怪異はテーマの一つですが、やはり人間や社会や科学のようなSFでテーマにされることの多いものをメインに書いているつもりです。
そういうのが伝わっていたら嬉しいなーと思います。



>>531
数ヶ月単位のズレ(誕生日の設定ミス)などはあると思いますが、年齡自体はそんなにズレてないはずです。
でもミスってるかもしれないので気付いたことがあればご指摘頂ければ。

……ただ、明らかに年齡がおかしい場合は伏線の可能性もあります。
・未来の話だと思っていたら過去だった
・AAや喋り方が同じで同一人物だったと思ったらクローンだった
とか、そういう感じの。

536名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 17:27:30 ID:vyIz1Uz6O
読み終わった、乙ンコ

537作者。:2013/08/31(土) 22:53:52 ID:6/P2h5hQ0

お久しぶりです。
突然ですが最近忙しいので続きの投下は遅れそうです。

この『怪異の由々しき問題集』の次の投下は九月の中旬になると思います。

次はブログで公開していたあの話なので、多分、早めに投下できるかと。
ではまた。

538名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:32:09 ID:tz0ayHZc0




 落書き。 
 益体もない些細な出来事。

 「奥様は女子高生」





.

539名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:33:15 ID:tz0ayHZc0
【―― 0 ――】


「―――あまり知られていないことだけど、常時性交渉が可能で、かつ自慰行為をする生物ってヒトだけらしいね」


 何処かのクラスの男子生徒から没収してきたというエロ本をパラパラと捲りながら会長は呟いた。
 神様が誤植したかのような蠱惑的な美貌は今日も今日とて顕在だ。
 どちらかと言えば「軽い女」に属する私からすれば、この人が持つ魅力は、そういうものが存在することが信じられなくて、興味があった。

 それは手を伸ばすことさえ躊躇われるような、凄惨な美しさ。
 花を手折ろうとする奴ははいても、太陽を手中に収めようとする人間は何処にもいない。


ミセ*-3-)リ「人間ってえっちな生き物なんですね〜」

「事はそう単純でもないんだよね」


 私の言葉に返答して、本を引き出しに仕舞うと(!?)会長はその引き締まった腕を組んだ。
 その双丘を支えるように。
 あるいは大きな胸を強調するように。

 ……うーん。
 それにしても、この人もかなり豊かだなあ……。

540名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:34:14 ID:tz0ayHZc0

ミセ*-ー-)リ「(サイズ的には変わらないかもしれないけど――他が引き締まってる分、余計に大きく見える)」


 おまけに手足もスラリとしていて、背も高い。
 きっと会長のお母さんはスレンダーな人だったのだろう。
 多分父親も相当な美少年だ。

 ところで、と彼女は思い出したかのように言った。


「こないだね、ある生徒が女の子に『おっぱい揉ませてー』と声かけまくってたから、『じゃあどうぞ』って割り込んだら……逃げて行っちゃった」

ミセ;゚ー゚)リ「えぇ?」


 なんでだろうね、とおかしそうに笑う。
 実に不思議そうに。

 いや。
 いやいやいやいや……本当に不思議なのはその男子の行動ではなく、会長の行動なんだけど。
 この人、何やってるんだ。

541名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:35:09 ID:tz0ayHZc0

「……ひょっとして小さい方が好きだったのかな?」

ミセ;-ー-)リ「そうじゃなくてですね……」


 天然かこの人。


ミセ*゚ -゚)リ「会長、そういうことしてるといつか心ない人達に襲われますよ?」

「どぉして?」

ミセ;゚ー゚)リ「どうしてって言われても……」


 口篭る私を見て再度会長は笑った。
 そうして、言う――「襲われたら襲われただよ」なんて。
 ……それは自分に頓着がないということではなく、ただ誰であろうと負ける気はないという自信の表れだ。

 さて、と話を戻す。

542名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:36:05 ID:tz0ayHZc0

「実は哺乳類の中で胸が――乳房が常に大きい生物って、少ないんだよ」

ミセ*゚ -゚)リ「そうなんですか?」

「うん、らしいよ」


 次いで、それを気持ち良くなる為にしか使っていない君は分かりにくいだろうけど、とシニカルに言った。
 否定できないのが悔しいけど、否定するつもりもない。


「君のも、僕のも……本来的には授乳の為の部位なんだから、常時膨らんでる必要はない」


 お乳が必要な時だけ。
 つまり子供を産んで育てる時だけ、機能していれば良い。
 生物としては、それが普通。

 けど。


ミセ*゚ー゚)リ「だけど人間はいつも大きくて柔らかいですよね?」

「小さくて堅い人もいるけど、そうだね」

543名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:37:08 ID:tz0ayHZc0

 駄乳キャラが聞いたらキレそうな相槌を打つ会長。


「知っているかな? 小さな子供がいるメスはほとんど排卵が起こらない」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

「正しくは妊娠前後は、だけど。授乳の時に分泌されるプロラクチンが影響して、排卵が起きず発情もしないんだって」
 

 ……考えてみよう。
 常識や倫理を捨てて生物学的な視点で考察してみよう。

 オスが狩りに出掛けていて、巣にはメスとその子が残っている。
 その時、他のオスが巣にやって来た。
 理由は「自分の遺伝子を残す為」だけど、肝心のメスは排卵も発情もしない。

 “さてこの場合、そのオスは大人しく帰ってくれるだろうか?”


「当たり前だけどそのオスは子を殺すことで強制的に発情させようとする。繁殖戦略だね」


 残酷とか言わないでよ?と会長は続けた。
 ……私は何も言えなかった。

544名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:38:08 ID:tz0ayHZc0

「でも、もし常時乳房が膨らんでいたら。他の動物のように、相手が発情しているかどうかが分からなかったら」


 そうか。
 分かった、そういうことか。



「“他のオスに子を殺される可能性が限りなく低くなり、かつ、交尾をしたところで受精はしない”――ということになるわけだね」



 まるで推理小説のような。
 ここぞとばかりに相手を騙し出し抜くトリック。
 手品じみたシステム。

 私達が持つこの脂肪の塊は無駄ではなかった。
 快楽を得る為とか、見栄えが良いとかは関係なくて、純粋に理に適った進化の結果だった。


「ま、その所為で現代のメスは常に貞操の危機に晒されるというディスアドバンテージも得ちゃったケド……それにしても、凄いよね」

ミセ*-ー-)リ「……そうですね」

545名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:39:05 ID:tz0ayHZc0

 女は強い、とよく言われる。
 私は女だけど、強いかどうかはよく分からない。
 でも。

 けれど、女は強くなかったとしても――きっと母は強いのだ。
 紛れもなく。


「……まあここまで言っちゃったケド」


 と、会長は知ったような笑みを浮かべ、言う。


「結局、これは『ヒト』の話で『人間』の話じゃないから、あんまり間に受けないほうがいいかもね」

ミセ*-3-)リ「えー……」


 いい話だったのに。
 うーん……まあ、そこそこに?

546名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:40:14 ID:tz0ayHZc0

「『子供は自分で思っているより賢くはないが、大人が思うよりずっと賢いもの』っと」


 淳高五階、時計塔旧生徒会室。
 何かの台詞を引用したのか、私に背を向け窓から校門の辺りを見下ろしながら彼女はそう言った。
 似たような台詞をラノベで見たことがあるけど……多分、似てるだけで違うものだろう。

 そんなことを思っている私を知ってか知らずか。
 会長は、その引用したらしき台詞を改変してこんなことを言った。



「だとするなら、きっと人間もそうだよね――『人間は自分で考えているほど立派ではないが、自分で感じているほど愚劣でもない』」



 白黒つけようとしても、できない。
 この世には白も黒もなく、この世に存在しているものは、全部灰色なんだ。


「より文学的な言葉にするなら『人間は神と悪魔の間に浮遊する』かな。これはパスカルの言葉だね」

547名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:41:12 ID:tz0ayHZc0

 さて、と。
 前置いて彼女は大きく伸びをした。
 その豊かな胸を揺らしつつ。

 そうして最後に、今日の雑談を纏めるように言った。



「誰かと付き合い始めた女の子の胸が急に大きくなるのは……愉悦による堕落の証左か、それとも母としての自覚、芽生えた愛の証拠か」



 どっちなんだろうね?と会長は言った。
 きっとそれは、「どちらもなんだろうね」と同義の言葉だった。
 知ったような結論だった。

 今日会長が見ていた子はどちらの比率が大きいんだろう。
 そして私はどうなんだろう。

 ……けど私は、堕落だって立派な愛の証明だと思うけどなあ―――。

548名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:42:09 ID:tz0ayHZc0
【―― 1 ――】※閲覧注意


 ―――りぃん、りぃんと鈴の音が聞こえた。


 頭が溶けてしまいそうで。
 身体が壊れてしまいそうで。

 私は必死で歯を噛み締め口を両手で覆ってそれに堪えようとする。
 けど、ご主人様が。
 今は私の「恋人」になった彼が大きく腰を前後させるだけで、私は、あっさりと。


(;#// -/)「やっ、らっ――ひぅぅぅっっ!!!」


 内蔵がグチャグチャにされて引き摺り出されたような感覚。
 直後に陰茎が押し込まれ子宮が揺れる感覚。
 その強烈な刺激が悲鳴を隠せないほどの鋭い感覚を身体全体に送り、精神を蹂躙し、腰を跳ね上がらせる。

 一際大きく――鈴が鳴った。

549名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:43:10 ID:tz0ayHZc0

 「逃げよう」と思っても、全然、力が入らない。
 そもそも「逃げよう」なんて考えられない。

 身体が、心も、正直に――悦んでしまっているのだから。


( *-Д-)「……ねえ、でぃちゃん」

(#// -/)「はっ……あ、う……」


 彼が私の胸を、勃起した乳首を弄ぶ。
 触れるか触れないかの優しい手つきで円を描くように。
 撫で上げられる度にぞわり、ぞわりと背中に快感が溜まっていく。


( * Д)「―――聞こえてる?」


 返事がないことに不服だったのか。
 唐突にご主人様は興奮して敏感になっている私の乳首をきゅう、と摘んで上に引き上げた。

 キモチイイが――弾けた。

550名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:44:05 ID:tz0ayHZc0

:(#// -/):「ひっ……はぁぁぁっん!!」


 乳房が持ち上がってしまうほどの強さで引かれ、身体を弓なりに仰け反らせながら、痛みと快感で私は幾度目かの絶頂を迎えた。
 連鎖するように、膣内が収縮し彼のモノをより強く締め付ける。

 形が分かってしまうほどに、ギュッと。
 まるで「もっと犯してください」と懇願しているかのように。
 子宮にまで届いた振動で陰茎が震えたのが分かった。


( * Д)「っ――ふ、あ……」


 ご主人様は射精してしまいそうになるのをどうにか堪えたらしく。
 それは、このお仕置きがまだまだ続くことを意味していた。


 ……私は今、「お仕置き」の真っ最中だった。
 着ていた制服をほとんど剥ぎ取るように脱がされ、ベッドに転がされ、両手首を掴まれ啄むようなキスを唇や首筋にされた後――いきなり挿入された。

 痛みはほとんどなかった。
 日々の躾によって、私の恥知らずな部分は……キスをされるだけで濡れるように開発されていたから。
 彼ではなく私自身が望んで、そんな身体になっていたから。

551名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:45:16 ID:tz0ayHZc0

 最初にベットに押し倒されたのも、耳を舐めるだけで身体全体の力が抜けてしまう反射を利用されてだった。
 体内を蹂躙する彼のモノの刺激に耐えながら、私はこういうのを「パブロフの犬」と言うんだっけ、とぼんやりと思っていた。

 犬じゃなくて、猫なのに。
 私はご主人様の猫だ。
 ……今もまた猫の耳と尾を出しながら久しぶりにあの首輪を付けられている。

 私が悶える度に、嘲笑するように鈴の音が響く。


( *-Д-)「ねえ、でぃちゃん」

(;#// -/)「っ……。は、ぃ……」


 ご主人様の問いかけ。
 小さいながら、今度はちゃんと返事をすることができた。
 ご褒美として顕現している猫の耳を撫でられる。


(#// -/)「ぁ……はぁ、ん……っ」

552名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:46:58 ID:tz0ayHZc0

 ……この状態で何分が経っただろう。
 体位としては股を大きく開いた正常位だ。私がベッドの上で、彼は腰が大きく動かせるようベッドのすぐ脇に立っていた。
 私は逃げることもできずに、反り返るほどに勃起した彼の硬い陰茎で……ずっと身体を貫かれている。

 抵抗しようとする度に先程のように大きくピストンをされるか、乳首や陰核と言った敏感な部分を刺激される。
 もう、何分経ったのかも、何度イッたのかも分からない。

 珍しくご主人様が積極的な理由は分かっている(恥ずべきことだがいつもは私から誘っている)。


( * Д)「……でぃちゃん。なんで今日、俺のこと『お兄ちゃん』って、言ったの?」

(;#// -/)「そ、れは……っ!」


 言葉に、詰まる。

 私達は以前のような主従関係ではなく――いや最初から上下なんてなかったけれど――とにかく恋人同士。
 そしてもう、少し前に婚姻届も出している紛れもない夫婦だ。

 けれど私は今日、学校の人達の前でご主人様のことを『お兄ちゃん』と紹介した。
 それは無駄な混乱を招かないようにする為であり、余計な詮索をされないようにする為だった。
 別に嫌いになったとか、そういうのじゃない。

553名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:48:06 ID:tz0ayHZc0

 けど。


( * Д)「俺を『恋人だ』って紹介するの……嫌だったの?」

(;#// -/)「ひっ……! ち、が……っ」


 う、までは聞いてくれなかった。
 ご主人様はもう一度、一際大きく腰を動かし私にお仕置きをする。

 して――くださる。

 私のやらしい身体を貫いていたモノが、膣壁を削るようにし変形させながら一気に十五センチほど引き出され。
 また直後に脳天まで貫通してしまいそうな勢いで――子宮口まで、押し込まれる。



:(#// -/):「だッ……ああッ、い――ぃひぐぅぅぅぅうううっ!!!」



 腰を掴まれていたから何処にも逃げられず、私は獣のような声を上げて――またイッた。
 ……あろうことか、失禁までしてしまいながら。

554名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:49:15 ID:tz0ayHZc0

 だらしなく舌を出していた。口の端から涎が垂れているのが分かった。
 潤んだ両目には、焦点が上手く合わないけど、薄暗い部屋の中で私を見下ろすご主人様の姿が映っている。
 りぃんりぃんと脳に直接鈴の音が響き、ドクンドクンという彼のモノが脈打つ音が身体に直接響く。


(#// -/)「はぁ……。やぁ、ん……っ」


 好きな人に、こんな姿を見られたくない―――。
 そう思って顔を覆い隠そうとしても両腕は動いてくれない。
 力が上手く入らず痙攣するばかり。

 分かってるんだ。
 こういうのが、好きってことが。

 私は、こんな惨めでみっともなくいやらしい姿をご主人様に見られて、発情している―――。


(#// -/)「は、っ……。私、は……」


 だから言わないと。
 彼に――私の、大切な人に。

555名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:50:07 ID:tz0ayHZc0

(#// -/)「私は……んっ……。恥ずかしかった、んです……」

( * Д)「…………それで?」

(#// -/)「でも……」


 でも。
 でもそれは、嫌いになったわけじゃ、ないんです


(#// -/)「それは……他の人に、知られるのが、嫌だっただけで……。ふぅ、はぁ……! だから……」


 だって、私は―――。



(#// -/)「私の全ては――ちゃんと、ご主人様のモノ、です……」



 だから安心してください。
 私はいなくなったりしません。
 私が終わる時は――あなたの傍ですから。

556名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:51:19 ID:tz0ayHZc0

 私の現在も過去も未来も言葉も感情も身体も精神も良いところも悪いところもちゃんとした部分もやらしい部分も――全部。
 私の首はあなたの首輪を付ける為のもの。
 私の右手はあなたと繋ぐ為のもの。
 私の左手はあなたを守る為のもの。
 私の両足はあなたと歩む為のもの。
 私の両目はあなたの向かう方向を見る為のもの。
 私の口はあなたに口付けてもらう為のもの。
 私の両耳はあなたの声を聞く為のもの。
 私の身体はあなたに抱かれる為のもの。

 他の、恥ずかしくて言えないような部分は……ご主人様に愛してもらう為のもの、です。

 だから安心してください。
 私はあなたが、大好きです―――。


( *-Д-)「…………そっか」


 彼は久しぶりに子供のような声で呟いた。
 「ありがとう、安心した」――と。
 そして抱きかかえるようにして私をぎゅっと抱き締めた。

 更に深くまで私を感じるように。
 自分のモノとするように。

557名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:52:09 ID:tz0ayHZc0

(#// -/)「はぁっ……や、ん……」

( *-Д-)「ごめんね……でぃちゃん。……で、俺そろそろ、限界なんだけど……」


 申し訳なさそうに彼が言った。
 私は精一杯笑って、こう返す。


(#// -/)「どうぞ、私で気持ち良くなって、私の中に好きなだけ出してください――あなた専用ですから」


 あなたのモノで。
 あなたの恋人で。
 あなたの妻――ですから。


( * Д)「ありがとう。それじゃ……本気でいくよ?」

(;#// -/)「えっ、あ、ちょっとは手加減して――ひっ、らめぇぇっっ!!」


 私の要求は聞き入れられずご主人様は思い切り腰を使い始めた。
 あどけない顔つきに似合わない凶悪なモノが、私の身体を刺し抜くように乱暴に、内蔵を掻き回すように何度も何度も出入りする。

558名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:53:17 ID:tz0ayHZc0

:(#// -/):「ああッ、あッ、ぐぅっ……やあぁっ!」


 鈴の音が鳴る。
 水音も。
 指先までキモチイイが伝わって、身体が溶ける。


( * Д)「はっ、ふ……。でぃちゃん……気持ちいい?」

:(#// -/):「ああッ、ううあああッ! あっ、らめっ……うぅっ!!」

( * Д)「何処が気持ちいい? ねえ――」

:(#// -/):「うううっ!あっ、からだっ、壊れちゃうぅぅぅ!!」


 意地悪な問い。
 私の反応を見て気持ちいい所を探りながら、ご主人様が問いかける。


( * Д)「また俺の声……聞こえなくなっちゃった!?」

(;#// -/)「えっ、違っ――はぁッ、うぅぅぅ!!?」

559名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:54:19 ID:tz0ayHZc0

 勃起した乳首を今度は両方共いっぺんに抓り上げられた。
 そのままクリクリと、人差し指と親指で潰される。
 突かれるのとは違う鋭い痛みと快感が走って神経がより敏感になっていく。


:(#// -/):「いぃ!気持ちいいです! あああっ!ううああぁっ!! もっと――もっと滅茶苦茶にしてくださぃっ、ご主人様ぁッ!!」


 嫌だ。
 恥ずかしい。
 許して。
 ごめんなさい。

 そして……気持ちいい。
 もっと痛く、激しく、私に――お仕置きして、ください。


( * Д)「―――よくできました」


 鈴の音と、彼の声が聞こえた。
 一際強いキモチイイのが身体中を襲った。

560名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:55:07 ID:tz0ayHZc0


(#// -/)「や、やだッ!やッああああああっ!! あッ、ああ、ぃくううぅぅぅぅ――ッ!!!」



 ご主人様のモノが脈打って、大量の精液が私の中に広がって。
 真っ白な感覚――それを最後にして。

 私の意識は途切れた。

561名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:55:41 ID:7uystHCM0
エロいな、支援

562名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:56:22 ID:tz0ayHZc0
【―― 2 ――】


 俺の横では彼女が死んだように眠っていた。
 眠っている、というよりは、正しくは気絶してしまっていた。


(#// -/)「はぁ……。やっ……ん……」

( *-Д-)「…………ふぅ」


 ……やり過ぎたかな?
 そんな風に思うものの、虚ろな目で下腹部に手を当てたまま眠る彼女はとても幸せそうで、そうでもなかったかなとも感じる。

 ドロリとヒクつく穴の奥部分から白い液体が流れ出た。
 「ありがとう」という意味のキスを彼女の唇にして、身体を拭こうとタオルを取りに行く。
 制服くらいはちゃんと脱がせてあげれば良かったと今更に思う。

 でもこういう肌蹴た服装が男としては堪らないのだ。
 まあ俺の彼女もそういう変な嗜好はありそう――って、俺よりあるみたいだけど。


(;-Д-)「結構変態なんだよなあ……。可愛い顔に似合わず」

563名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:57:31 ID:tz0ayHZc0

 ぬるま湯で絞ったタオルで彼女の身体を拭きながら呟いた。
 幼い感じも残していた彼女は、いつの間にかぐっと大人っぽくなっていた。
 顔は清楚であどけないけど……その、胸とかが。

 ちょっと前では平たい感じだったのに、知らない内に良い感じに俺の手に収まるような大きさに……。
 サイズはCか……Dかな?

 そんなことを思いながら、彼女の控えめだけど整った、柔らかい胸を拭くと悩ましげな吐息が漏れた。
 思わず二回戦目に突入したくなったけど、流石に悪いかなと自重する。
 今日は乱暴なことばっかりしちゃったから明日は彼女の言うことをなんでも聞いてあげることにしよう。

 ホントにごめんね、でぃちゃん。
 でも……ありがとう。


(#// -/)「はぁ……ふぅ……」

( *-Д-)「(……あ、でもおっぱいちょっと触ったりするくらいならいいかな……)」


 吸ったり、甘噛みしたり、頬擦りしたり。
 またお願いして色々させてもらおう。
 彼女は「あなた専用」と言っていたけど――俺だって、「でぃちゃん専用」なんだから。

564名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:58:49 ID:tz0ayHZc0

 でも、触りたいなあ……。


(# ;;-)「…………いいですよ」

(;゚Д゚)「えっ?」


 唐突に聞こえた声に背筋が凍った。
 でも声の主は優しい……女の子という感じでもなく、女という感じでもない優しい声で。
 母親のような――声音で。



(#// -/)「あなたの為に頑張って大きくしたんですから……。触りたいなら、幾らでも……」



 その代わり敏感になってるので優しくしてくださいね?と俺の奥さんは言った。
 俺は「分かった、ありがとう」なんて言いながら、どうせノッてきたら「もっと激しくして」とか言うんだろうなあ、と内心笑っていた。

565名も無きAAのようです:2013/09/15(日) 23:59:57 ID:tz0ayHZc0

 ……ああ、もう。

 本当に。
 俺の彼女は、



( *-Д-)「可愛いなあ……」



 俺の猫耳と尻尾が付いてて、少し礼儀正し過ぎて、結構変態で、優しくて可愛い彼女。
 まさしく彼女が――「俺の嫁」だよね?

566名も無きAAのようです:2013/09/16(月) 00:01:09 ID:PCvdVUJg0
【―― 0 ――】


「―――ところでさ。ヒトの胸が常に膨らんでいるのには、さっき言った話以外の説もあるんだよね」


 そろそろ帰ろうかと生徒会室の扉を開けた、その時だった。
 巨乳僕っ娘の生徒会長が、いつものように知ったような口調で補足を加えてきた。

 振り返ってみる。
 彼女の目線はいつもとは違って、遠くを見ていた。
 商店街の方だろうか?


ミセ*゚ー゚)リ「それはいい話なんですか?」


 訝しむような私の問いに会長は「いい話だよ?」と微笑みながら答える。
 そうして直後に、ただし都合の良い話だけどね、なんて言葉遊び。


ミセ*-3-)リ「じゃあ聞きませんよ〜っだ」

567名も無きAAのようです:2013/09/16(月) 00:02:05 ID:PCvdVUJg0

「んー。でも君はこっちの方が気に入ると思うよ?」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」


 会長は瞳を伏せて、何故かさもおかしそうに笑って言った。


「“人間の女の乳房が常に大きいのは『他の女の所に行かず、ちゃんと私の所に帰って来てね?』というメッセージである”……みたいな話」


 どういうことかは分かるよね?と続ける。
 もちろん分かる。
 それはそう、「いつだって発情してるから他のメスの所になんて行くな」ってことだ。

 言い方に品がないのならこう変えよう。


「『いつだってあなたと愛し合う準備はできているから、ずっと一緒にいてね?』――なんてねっ。オス側に都合が良過ぎて、綺麗過ぎるかな?」


 それは確かに都合が良過ぎで綺麗過ぎな解釈だった。
 けれど、会長は言っていた――“人間の女”と。
 さっきは“ヒトのメス”と言っていたのに、今は『ヒト』じゃなくて『人間』だと。

568名も無きAAのようです:2013/09/16(月) 00:03:07 ID:PCvdVUJg0

 だから私も『人間』の話であるなら……ありなんじゃないかなあ、と思う。
 反実仮想でも不可能願望でもなく、ただそうであって欲しいと願う。


ミセ*^ー^)リ「……良い話ですね」

「でしょ?」

ミセ*-ー-)リ「はい。とても、良い話だと思います」


 素直にそう思ったから正直にそう答えて、私は部屋を後にした。
 後ろでに会長の笑い声が聞こえた。

 彼女には誰か、好きな人がいるのだろうか?
 そんなことが気になった。 
 もしあの会長にもそんな相手がいるのなら、いつか、恋バナをするのも良いかもしれない。

569名も無きAAのようです:2013/09/16(月) 00:04:07 ID:PCvdVUJg0

 真実は一つじゃない。
 人間はいつだって好きな真実を選び取って生きている。
 だから私も、後者の説を信じようと思う。

 論理的でなくても、合理的でなくても、退廃的であったとしても。
 信じるのは私の勝手で、そっちの方がロマンチックだから。

 だって私も人間の女ですもの♪


 ずっと恋して。
 ずっと愛して。
 一生傍にいて。

 私もいつか、そういう風な物語の終わりみたいな結婚が――できるといいなあ。






【――――落書き、終わり】

570名も無きAAのようです:2013/09/16(月) 00:05:15 ID:PCvdVUJg0

エロ分補給のおまけでした。
別に投下しなくても良いかなーと思っていたのですが割と大事な伏線がいくつもある回だったので投下しました。
十八禁的なの嫌いな方は飛ばしてくださって結構です。

主題はエロなのに無駄に小難しい話があったりしてごめんなさい。

次は一転して、シリアスな話です。
九月中か、もしかしたら十月に二話連続で投下するかもしれません。

571名も無きAAのようです:2013/09/16(月) 00:10:02 ID:QxMMn.Lk0

次も待ってる。
エロかった。

572名も無きAAのようです:2013/09/17(火) 14:29:00 ID:/gX5BODgO
駄乳なんて言葉聞いたら、あいつが怒りそう

573名も無きAAのようです:2013/09/19(木) 03:54:20 ID:QwDmC5Uo0




ミセ*゚ー゚)リ 怪異の由々しき問題集のようです



※この作品には性的な描写が(たまに)出てきます。
※この作品は『天使と悪魔と人間と、』他幾つかの作品と世界観を共有しています。
※この作品は推理小説っぽいですが、単なる娯楽作品です。
※この作品はフィクションです。実在の逸話を下敷きにした記述が存在しますが現実とは一切関係ありません。





.

574名も無きAAのようです:2013/09/19(木) 03:55:07 ID:QwDmC5Uo0




 第七問。
 選択問題編。

 「幽屋氷柱の殺人」





.

575名も無きAAのようです:2013/09/19(木) 03:56:08 ID:QwDmC5Uo0




 霧れる雨 ふる我が思ひ もぞ知るる





576名も無きAAのようです:2013/09/19(木) 03:57:07 ID:QwDmC5Uo0
【―― 0 ――】


「―――恐ろしいことに他殺ではなく事故死でもなく、もちろん寿命その他が原因ではない不審死は自動的に『自殺』になるらしいよ?」


 一つ例を挙げると、
 「火の気のない玄関で人体自然発火現象を起こして燃え尽きるまで気管に煤が入らないようじっと息を止めて焼身自殺(東京)」など。

 本当の事例かどうかは浅学な私には分からないが、もし本当だとするなら世界でも随一という日本の警察も信用ならない。
 そんな死に方は常識的に考えてありえないのだから。
 どう考えても、私には理解もできないようなトリックか、あるいは常人ではまず不可能な大掛かりな仕掛けの元で達成されたに決まっている。


「そしてこの世界には魔法がある。けれど、大部分の人はそれを知らない」

リパ -ノゝ「…………まだしも陰謀論の方が救われる話ですね、」


 知った風に話すそれにすげなく言い放つ。
 そして携えていた長刀をちらと見た。
 『人斬り』と呼ばれる私達の、ほんの些細な決まり事を思い出した。

 それは“自分(絣)に殺されたと分かるように殺す”――ということ。
 だから私達は、「殺したのか?」と訊かれた際に嘘を吐かない。

577名も無きAAのようです:2013/09/19(木) 03:58:08 ID:QwDmC5Uo0

 けれど、魔法は。


リパ -ノゝ「…………あなたは魔術師達が、大衆が奇跡の存在を知らないのを良いことに、私利私欲の為に魔法を使ってきたと?」

「だからこその君達なんじゃないかな? 違った?」


 違わない。


リパ -ノゝ「…………『魔法』というものが公的に存在しないことになっている以上、犯罪として立証もできません、」

「今更世界レベルで社会システムを変えるわけにもいかないしねっ」


 数こそ少なくなってしまったが、現在も魔法は世界に存在している。
 言うまでもなくそれを使って成される犯罪も。

 いや――犯罪ではない、のか。
 立証できなかった犯罪は法学上では罪ではない。
 ただの結果だ。

 それは例えば「人が一人殺された」という、それだけの事実。

578名も無きAAのようです:2013/09/19(木) 03:59:09 ID:QwDmC5Uo0

リパ -ノゝ「…………しかしだからこその私達です。尋常ならざる犯罪相当行為を雪ぐ、公儀隠密です、」

「うん、凄いね」


 両手の親指と人差し指で長方形を作り、ちょうどカメラマンの方が構図を決める時のように辺りを見る。
 制服を身に纏ったそれは、ここ――淳機関付属VIP州西部淳中高一貫教育校の屋上に申し訳程度に設置された鉄柵に座っていた。
 常識知らずにもほどがある、両足を中空に投げ出すような形でだ。

 今背中を押せば、これを殺せる?
 いや、そんな簡単な相手ではないだろう。

 この化物女は。


「けどさぁ……ユキちゃん」

リパ -ノゝ「あなたにそんな親しげに呼ばれる筋合いはありません」


 「おーこっちゃって」なんて嘲笑するように言った彼女が狂気的な笑みを浮かべたことが分かった。
 早朝の日差しに照らされる姿はまるで全身に血を浴びたようで。
 そして、いつかの日々と同じように、幻想的で破滅的な美しさを有していた。

579名も無きAAのようです:2013/09/19(木) 04:00:07 ID:QwDmC5Uo0

「話戻しちゃうけど、それって結局魔術師達がやってることと変わらないんじゃないかな?」

リパ -ノゝ「………………」

「私利私欲の為ではないにせよ、大多数の人間の与り知らぬところで、しかも存在しないはずの手段で以て世界に干渉する」


 君達は本質的には君達が憎むべき敵と同一なんだよ、と。
 歌うように、そして謳うようにそれは言う。

 私に、揺さぶりをかけるように。


「今日も近くで誰かが人を殺したらしいケド……君はどうするのかな?」

リパ -ノゝ「無論、その罪を雪ぎます」

「あははっ。上から目線だねー」

リパ -ノゝ「存在する位相が違うだけです」

580名も無きAAのようです:2013/09/19(木) 04:01:13 ID:QwDmC5Uo0

「違うのはレベルじゃないかな? 『人間は自分のレベルに応じた形でしか世界を見ることができない』って」

リパ -ノゝ「レベルではなくステージでしょう。あるいは定位か」

「自分で分かってもない言葉を使っちゃダメだよ? 馬鹿に見えるから」

リパ -ノゝ「人を殺すことしかできない人間を馬鹿者でないとするのならこの世に馬鹿者は存在しませんね」


 まだ君は『人間』を名乗るんだね、と彼女は笑った。
 まだあなたは『化物』でありたいんですね、と私は笑わなかった。


「人間だの化物――人外だのって、結局そんなことは本人の認識次第だと思うケド」

リパ -ノゝ「それに関しては私も同じ意見ですが」


 人間。
 人外。
 誰かにとって、私達は何に見えるのだろう。

581名も無きAAのようです:2013/09/19(木) 04:02:07 ID:QwDmC5Uo0

リパ -ノゝ「…………なんにせよ、私の動揺を誘っても無駄ですよ、」


 踵を返し、背を向けつつ私は言った。
 夕陽と彼女の視線が背中に当たっているのを感じた。
 後者は気のせいかもしれなかった。


「君は、どうして人を殺すのかな?」


 彼女は問いを投げかけた。


リパ -ノゝ「仕事だからです。……少なくとも公的には」


 私はその飽きる程問いかけられた質問に当たり前のように返した。
 そして、次いで私は言った。



リハ -ノゝ「――――あなたとまた遭えることを、私は心の底から祈っています」

582名も無きAAのようです:2013/09/19(木) 04:03:07 ID:QwDmC5Uo0

 それは。
 我ながら珍しい言葉だった。
 普段なら、ありえない言葉だった。

 けれどそれは――彼女は大して気にする風でもなく「そう」と上機嫌な様子で言い。
 直後に呟くようなとても小さな声で、でも明らかに私に向けたと分かるような声音で、口遊ぶ。



「…………あの人はどぉして人を殺したんだろうね?」



 そんなことは知ったことではなかった。
 知らなかった。
 知るべきことでもなかっただろう。

 今のこの世界で私がやるべきことは秩序を乱した尋常ならざる人殺し共を一人残らず駆逐すること。
 つまりは、遥か昔からやってきたことと大方変わらない仕事だった。

583名も無きAAのようです:2013/09/19(木) 04:04:07 ID:QwDmC5Uo0
【―― 1 ――】


 梅雨らしい梅雨になった。
 六月が梅雨らしくない、あまり雨の降らない雨季だったことに関係しているのか、今、七月の始めは雨が降りまくる梅雨らしい梅雨だ。
 この夏らしくない初夏が終われば夏らしい夏がやってくるのだろう。

 雨の通学路、並んで歩む二つの傘。
 隣を歩いていた幼馴染、魚群なつるに考えていたことを言うとこんな言葉が返ってきた。


( -∇-)「お前、『いしあたまな石頭』みたいな言葉を使う感覚的に生きてる人間だな。つーか頭が悪い」


 ……とりあえず、中途半端にワックスがつけてある頭をグシャグシャと掻き回しておいた。
 いつの間にか二人の間には結構な身長差ができてしまっていたので、背伸びをして、覆い被さるような形になっての強襲だ。


 先月義理の母親を亡くしたなつるは一週間ほどは落ち込んでいたものの、案外早く立ち直り普通に戻った。
 「死んだ母さんが望んでない、なんて言うつもりはないけど、もうすぐ俺の季節だから」だそう。
 果たして誕生日が近いことが元気を取り戻す理由になりえるのかと言えば、それはかなり疑問なとこだけど。

 いやならないだろう。
 反語表現。

584名も無きAAのようです:2013/09/19(木) 04:05:07 ID:QwDmC5Uo0

 そう言えばコイツの名前って「夏が流れる」と書いて「夏流(ナツル)」なんだよなあ、なんて。


ミセ*゚ー゚)リ「……アレ、夏が流れるんなら夏じゃないんじゃない?」

( ・∇・)「初夏に生まれたから夏が巡って来て広がって行くって意味で『夏流』なんだよ」


 面倒そうに夏男は言った。

 なるほど、そう考えると「夏流」も中々に雅やかな名前だ。
 「水無月ミセリ」も「水無月美芹」と書けば結構……いやでも芹って草だしなあ。
 前にあの病葉先生が言っていたような意味があるとしても私だって恋が叶わない名前なんて嫌だ。
 
 と、そこまで考えてふと思う。
 隣の席の女の子のことを。


ミセ*-3-)リ「……『朝比奈でぃ』」

( ・∇・)「ん?」

ミセ*゚ー゚)リ「いや、でぃちゃんはなんででぃちゃんって言うのかなって」


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