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イベント優先スレ
1
:
名無しさん
:2011/05/01(日) 01:39:06 ID:???
・イベントの無い時はここも使えます。
・イベントの開催はここと「雑談用スレ」にイベント情報を貼り付けて告知すると親切。
2
:
波旬
:2011/05/23(月) 21:44:32 ID:???
「さぁーて、ここが『良い』かなぁ・・・?」
高い尖塔の天辺より、煌びやかに輝く眠らぬ町を見下ろす波旬。
その欲望の密集した空気は、この魔王にとって実に心地の良いものだった。
「・・・なかなか『良い』街だねぇ、欲望が浮き出ててさぁ!」
ゆっくりと立ち上がる、波旬。
白い麻の神子服が、熱気を帯びた風にはためいていた。
瞳を閉じて、発動する・・・“貪欲”の波動。
「一つ二つ三つ・・・結構居るなぁ・・・。
ふむ、なるほどねぇ・・・。露希ちゃんの考え通り、ここが奴等の巣食ってる場所かぁ・・・」
ニタリと無邪気に微笑む。
まるで昆虫の実験を始めようとするような、ワクワクとした子供の眼だった・・・。
「異物は取り除かなきゃね、異天空間・道切り断世!」
その瞬間、町の・・・妖怪だけが忽然と姿を消した。
否、引き込まれたのだ。
道切り地蔵、その歪んだ神格の力すらも・・・更に強力に都合よく使いこなしていた。
彼らが行き着く先は、欲望渦巻く・・・魔界。
世界から断絶した、異形の空間。
3
:
フォード「」&澪『』
:2011/05/23(月) 21:53:50 ID:HbHPxpxY
この二人は、なんの縁もない。が、今回の出来事が縁となるだろう。
『ここって・・・』
「お主もここへ来たようだな。」
来たのは元・紫狂の澪と正体不明の老人だった。
『何か、嫌な予感がします・・・あの時の、窮奇の時のような・・・』
「窮奇・・・か。(コヤツが噂の大蛇か。)」
4
:
波旬
:2011/05/23(月) 22:02:19 ID:???
>>3
辺りは異界と化していた。
先ほどまで煌びやかなネオンライトに彩られていた、ビルディングは紫に輝く苔に覆われている。
アスファルトからは樹海の根が生い茂り、地面を穿っている。
「・・・お呼びじゃない奴等が来ているねぇ」
そこに降り立った、窮奇の生き写しのような少女。
いや、年はおろか性別ですらこの者には何の意味もなさないのだろう。
デュアル・クロス・アルエット
「・・・キミ達は別に欲しくないから消えろよ、二重十字の雲雀姫」
白い閃光が、二人の眼前に迫りくる・・・。
5
:
夜行集団
:2011/05/23(月) 22:12:17 ID:ajFsrEio
>>3
、
>>4
街は知らない、彼らが消えた事を。
そして彼等も知らなかった。自分達が魔王の標的になっていた事を。
そしてなによりも喜劇的なほどに悲劇的な無知は、
夜行集団の氷亜の想い人が、現在どんな境遇になっているかを彼が知らない事である。
だから夜行集団が転送された時、驚かなかった者はいなかった。
全員が驚愕し、戦慄し、全員が一か所集まって自分達の身に起きた事を知ろうとした。
その為には情報収集だ。そう言ってこの異様な空間を進んでいったのは
氷亜、虚冥、穂産姉妹であった。
そう、つまりこの二人の戦闘に入ってきたのはこの四つの妖怪だけだ。
6
:
名無しさん
:2011/05/23(月) 22:22:07 ID:HbHPxpxY
>>4
『【天血弾銃・神殺】』
澪の元に現れた2丁の銃、撃つと大蛇が2頭出てくる。そして、その攻撃を免れる。
「おお、凄い力だな。」
老人はどこか怪しげな表情を浮かべながら、笑顔だった。
>>5
『僕一人では敵いません、あいつをお願いします。僕はこの老人を・・・』
「わしを守ってくれるのか、感謝する。」
今回、この二人はメインでない。メインは夜行集団。
澪は戦いを止め、今から起ころうとすることを見ることにした。
7
:
波旬
:2011/05/23(月) 22:45:21 ID:???
>>5
「・・・! 来たね」
グルリと首を回し、目を見開く波旬。
その子供染みた動作と、瞳孔の奥の狂喜があまりに対照的で異様だった。
異常な跳躍と共に、おぞましい笑いが響き渡る。
氷亜の眼前に、波旬が降り立った。
貪欲の波長が、辺り一面を覆いつくす。
無邪気な恐怖が辺りに浸透した。
「・・・やっぱり、なかなか『良い』なぁ!! キミ達の力は非常に便利で頼もしいね!!」
波旬の妖気が膨れ上がっていく。
その右腕は、雪の結晶のような形状をした弩弓になっていた!!
ヴァニティズエリア・トリプルゼロ
「3倍写取・・・【 温もり無き空間・0^3K 】!!」
極寒の、本物の絶対零度の矢が放たれた。
その白銀の稲妻は地面に当たると同時に、大気すらも液化させ!
空気中の水分は辺り一面から集約し! 強固な氷の城となった!!
氷亜を隔離したのだ。
わざわざ皆から見えるように、透き通った檻の中に。
「やぁやぁ、いらっしゃい氷亜くん」
氷の大広間にて波旬がニヤニヤとしながら笑っている。
自慢気に、愉しげに・・・己の力について語っていく。
「私の力は“貪欲”と言ってね。相手の魂を解析して、その『良い』ところ・・・。
欲しい部分だけを倍化して修得するんだ。まぁ、簡単に言うと《心が読めて誰にでも成れる》」
ニタリと微笑む。
どこか幼くて、活発で、それでいて妖艶な瞳を湛えている・・・。
その顔は、氷亜の永久凍土の最も奥にある・・・あの顔だった。
「『あの時はよくもやってくれたね』とか言ってみたり!!」
雪花の顔・・・、だが似ても似つかない。
瞳の奥が、紫ですらない・・・おどろおどしいドドメ色だった。
8
:
夜行集団
:2011/05/23(月) 23:01:07 ID:ajFsrEio
>>7
貪欲、波旬にあったときに感じたそれは全員の神経をざらつかせる不快感であった。
しかし誰もそれに顔をしかめた者はいない。当たり前である、
なぜなら彼らもまた、百鬼夜行の主への欲望を胸に持つ強欲の者たちだからだ。
しかし不快になっているかいないか、顔をしかめているかいないか、
そんな事はこの場において、一切の価値も意味も持たない。
それは目の前からやってきた氷の恐怖の方が、今から戦闘がおこるのであろうと予期している彼等にとっては重要だからだ。
彼等は咄嗟に各々の防御態勢を取った。
土、霊、氷、しかしそれもまた一切の価値も意味も持たない。
「やれやれ僕を御指名かい?子猫ちゃん」
自分の仲間の方を見た氷亜は、彼らが自分とよく似た特質の氷によって遮断されているということを知り、
少しめんどくさそうに頭を軽く描いて波旬のもとに歩きだす。
「これはご丁寧に自分の能力を教えてくれたね。
馬鹿か、それとも知られても問題ないか・・・まあ後者だろうね。」
そんなこんなでふらふらと話していると氷亜の目に映るのはかつての記憶の投射、
自分が殺め、蔑み消した彼の初恋となったかもしれない優しい感情の種の残骸。
しかし彼の心は一切動かなかった。
なぜなら彼にとってその記憶はただの記憶であって、
氷が解けたその今も、後悔はあってもやはりどうでもいいことなのだ。
「別に何とも思ってないけど・・・まあ懐かしい顔になってくれたんだ。
ありがとう。」
そして氷亜は、手に握ったその冷度によって強固になった氷の槍を投げた。
9
:
フォード「」&澪『』
:2011/05/23(月) 23:09:11 ID:HbHPxpxY
『おじさん、いつ何が起こるか分からないから・・・気をつけて・・・。』
「うむ、ありがとう。
(さてと、見せて貰おうか、夜行集団と言う力を。その力、どこまで貫けるか。)」
澪は常に警戒体制であり、いつでも乱入は出来る。
10
:
波旬(ver雪花)
:2011/05/23(月) 23:10:40 ID:???
>>8
「どういたしまして!」
あの顔で、ニッコリと無邪気に微笑む。
弓を携えていない、左手で氷の槍を易々と掴んで。
「じゃあついでにもっと『良い』ことを教えてあげよう! 私がこの顔になったのはね・・・。
別にキミの心を揺さぶって心の隙を作りたいとかそんなんじゃない・・・」
目が三日月に歪む。
その顔はやはり雪花の生き写しだが、決して雪花のモノではなかった。
「キミが負けた時、一番悔しくなって欲しいからさ・・・!」
掲げられ、撃ち抜かれる氷の弾弓。
白銀を巡るブリザードのような音がした、雪崩を起こす直前のような・・・恐ろしいプレッシャーがあった。
その力も、速度も・・・氷亜の槍をはるかに上回っている!!
「奇しくもこの前と逆の状況だよねぇ!!」
11
:
夜行集団
:2011/05/23(月) 23:16:41 ID:ajFsrEio
>>10
「悔しく?
なんだか分からないな。」
何か来る、それを轟音により感じた氷亜はいち早く、あの方の姿、恩を仇で返した恩人、
氷猩猩の姿になった。
ちなみにこの姿はただ氷亜が憑依しているだけで、氷猩猩の力が直接使用されているのではない。
波旬の能力ではこの不安定な概念は真似できないのだ。
「むしろ僕は雪花に消される事こそ正しさだと思うけどね。」
一度破壊されただけでそれがどうした。
そういってさらに氷槍を怪力によってさらに強力に打ち出す。
12
:
波旬(ver雪花)
:2011/05/23(月) 23:42:42 ID:???
>>11
「わっかんないかなぁーーーーー!?
そういうのじゃダメなんだってばーーーーッ!!」
更に大口開けて笑い出す。
その眼には若干の苛立ち、そして昂ぶり。
波旬の右腕は筋張り、筋力細胞が異常な形に蠢くのが見える。
「わかる? 私はただのモノマネじゃない。倍加して写し取るんだ!
つまるところキミが強ければ強いほどっ、力の差は大きく開いていくんだよ!!」
一通り話し終えた後、小さく息を吐く。
「そうだね・・・、キミはやる気が無いみたいだから挑発してあげよう」
右手を掲げ、2匹の白竜を呼び出す。
それは常に露希の傍らにいた・・・あの白竜。
それが意味するものは、それらが語るものは・・・。
「露希ちゃんは私が壊した、信じられないなら見せてあげよう」
懐から小さな羽根を取り出す。
それはあの時、魂から無理矢理抉り出した・・・露希の記憶、想い。
投げられた小さな羽根は・・・氷亜の胸の辺りで優しく溶ける。
心に溶け込む、優しくて、愛おしくて、悲痛で、切ないくらい暖かい言葉。
『そっか。氷亜さんの事大切にしなきゃ。』
『なんて言えばいいか分からないけど…氷亜さんと一緒に居たいんです。』
『でもその気持ち、負けませんよ?ボクだってそれくらい、いやもっと氷亜さんの事が好きです!』
次々と、溢れてくる・・・想い。
今となっては叶うはずのない、恋心・・・。
しかし、その声はいきなり途切れ。
途端に耳を劈く様な悲痛な声が響き渡る。
『そんな・・・っ・・・。お願いだから止めてっ・・・、皆大切な人たちなんだ!!お願い・・・』
その声が聞き取れた最後の言葉だった・・・。
後には延々と、氷の心を持っていたとしても・・・耳を塞ぎたくなるほどの。苦しむような全てを抉り出されたような。
激痛と呻く断末魔が響く。挙句には狂骨のような怨念のような嘆きそのものの感情だかなんだか分からないものの声が徐々に小さくなっていき・・・消えてなくなった。
「ね、どう? ねぇねぇ今どんな気持ち? それでもまだクールぶってられる?」
ワクワクと、期待に満ちた嬉しそうな表情で。
波旬は氷亜の顔を覗いていた。
13
:
夜行集団
:2011/05/23(月) 23:53:11 ID:ajFsrEio
>>12
「おい、アネさんアニさん。」
「分かってます。もう既に防空壕はここに。」
『たく・・・なにものなんだアイツは・・・めんどくさいことやって・・・』
氷亜と波旬の間に起こった事を傍から見た虚冥達は、
いち早く防空壕を作り、そこに逃げ込んだ。
「露希・・・?」
彼の目の前に映し出された光景。
自分の目の前で言ってくれた言葉、違う人の前でも言ってくれていた言葉、
嘘ではないのだろう。事実なのだろう。
「何の事言ってんだか?露希が死ぬはずがないじゃないか!」
しかしそれは氷亜の心が破壊されたり取り乱したりはしなかった。
彼はヤンデレ。それは愛の普通を根本から覆すほどの愚かしい愛。
露希が死ぬ事。そんな事は氷亜の中では、
太陽が西から昇るような、空が落ちてくるような、それと並ぶほどの杞憂であった。
むしろ彼は笑っている。ありえないなんて言う事は無い。
太陽は西から昇らない、空は落ちない、そして、露希は死なない。
そんな彼の心はなにかもうひとつ決定的な事が無い限り、変化は見られないであろう。
そして今度に氷亜が繰り出したのは、直径1メートル程の大きな氷塊。
それが怪力によって剛スピードで波旬に襲いかかる。
14
:
波旬(ver露希)
:2011/05/24(火) 00:00:30 ID:???
>>13
「やめて、氷亜さん! ボクだよ!!」
いけしゃあしゃあと、
波旬は露希へと変化する。
その妖気は、その雰囲気は、その声は。
露希の“何倍も”露希らしかった・・・。
15
:
夜行集団
:2011/05/24(火) 00:09:49 ID:ajFsrEio
>>14
波旬が露希へと変化した時、氷亜ははっとしたように我に帰った。
しかしこの我に帰ったというのは氷亜目線での事で、傍から見れば術中にはまったというのが正しいが。
だが氷亜はそんな事にも気付かず、自分の投げたその氷塊を、
後から高スピードで投げた氷の槍で打ち砕く。
「なんだ・・・露希・・・君はちゃんといるじゃないか・・・。」
両手を膝の上において安心したようなポーズになった氷亜は波旬に笑いかける。
気付いていないのか。あれほどいっしょにいたのに。何倍程度露希らしいと言うだけで。
「何処かに言っちゃんたんだけどさ・・・さっきいた妖怪がね、君が殺されたなんて言うんだ。
笑っちゃうよね。だって君が死ぬはずないんだから。」
その両手を後ろに周し、完全にリラックスしたポーズになった。
もう既に彼からはもしかしたら戦闘態勢なんて言うものは無いのかもしれない。
16
:
波旬(ver露希)
:2011/05/24(火) 00:31:08 ID:tElbSrz.
>>15
「大丈夫ですよ! ボクはどこにも行きません」
少し顔を赤らめて、巨大な狒々となった氷亜の袂に寄り添っていく。
無防備に、さも自分は心寄せていると言いたげに。
「だってずっと氷亜さんと一緒に居たいから///」
不自然が際立つ・・・。
何倍も露希らしいのに、全然露希らしくない・・・。
だが、心を見透かす貪欲の前には。
そんなこと、無意味極まる。なぜなら氷亜の心は手に入れているんだから。
「寂しかったんですよね、氷亜さんは心を手放したんじゃなくて・・・。
心を持っていられなかったんじゃないかなと思うんです。
誰も気づいてくれないから、誰も触れてくれないから・・・。
寂しくて、辛くて・・・初めから無かったことにしたかったんじゃないかな・・・」
でもね、と顔を上げて微笑みかける。
「雪に埋もれた蕾も、ちゃんと生きているように・・・私はちゃんと知ってますよ。
傷だらけでボロボロだけど、すっかり雪の下で冷たくなっちゃったけど。
それでも、優しくて温かい・・・氷亜さんの心、ちゃんと見つけましたよ!」
その手は氷亜の胸を貫き、心臓を握っていた。
露希の顔は微笑んでこそ居るが、その心の内にあるのは・・・ただの侮蔑。
「このコミュ障ロリコンが」
奇しくも・・・あの時と真逆の状況だった・・・。
17
:
夜行集団
:2011/05/24(火) 00:45:43 ID:ajFsrEio
>>16
温かい言葉、なによりも氷亜の事を思ってくれている。
優しい声、なによりも氷亜の心を落ち着かせる。
少し恥ずかしげに赤くなる顔、なによりも、愛おしい。
そしてそれら全ての露希が、波旬によって存在する露希によって下回る。
本物のロキ=イノセントよりも何倍もロキ=イノセントらしく。
氷亜は抱きしめる。何よりも愛おしい彼女よりも彼女らしいその体。
小さくも強い露希よりもちいさく強い彼女を。
強く抱きしめる、そして胸には大きな風穴があいた。
「露希よりも露希らしい・・・
いつものも、だ・・・痛いよ・・・痛い・・・痛いよ・・・」
貫かれた彼の顔は、愛した者に罵られ貫かれた雪花の絶望とは違っていた。
笑っていた。笑っていた。
そしてその氷亜の愛した露希よりも露希らしい波旬の露希のその手を堅く握っていた。
「波旬・・・君はバカだ・・・。
だって露希は・・・露希×1で露希だよ・・・。
下でもない上でもない、近似値もない、最大値もない、露希で露希なんだよ」
理解した。だから彼はこの手を絶対に離さない。
いくら波旬が振り払っても、彼はまた見えもしない速度で握り返す。
そして、知ってしまったのだ。太陽は西から昇ったのだ、空が落ちたのだ、露希が、死んだのだ。
「え?あ、あれ?・・・・あれ?
じゃ、じゃあ露希は・・・露希は・・・?
そういう・・・イヤイヤあり得な・・・あれ・・・どういう・・・いやだ・・・。
違うよ露希は死なな・・・どこに?・・・嫌だ・・・だって露希は生き続け・・・だってそこにも・・・。
待てよ僕!!・・・いやだ!!・・・認めるな・・・嫌だ・・・認めるな・・・認めるなってナニヲ?
嫌だ・・・露希・・・いやだ・・・死・・・いやだ・・・僕は・・・・だって・・。
露希が今・・・・今そこに・・・いやだ・・・いやだ・・・!いやだ・・・露希!!」
「いやだぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
しかし氷亜が笑っていられたのは少しの間だけ。
そこからはこの空間に彼の悲鳴が響き渡るだけであった。
嘆く彼の体から異様なほどの冷気がほとばしる。それは波旬が上にいっても、
一緒により速く凍るだけなのだから。
18
:
名無しさん
:2011/05/24(火) 00:53:29 ID:HbHPxpxY
誰かに向けられた言葉ではない。でも聞こえる物には聞こえたはず、彼女の声が。
本物を上回る偽物を遥かに越えて。
「あなたたちに会えたこと、それはボクの一生の思い出。ありがとう。」
露希と言う天使は、消えた。誰にもみとられることなく。それは彼女の望み。
誰も悲しませたくないと言う思い。伝わればいい、この気持ち。
19
:
波旬(ver露希)
:2011/05/24(火) 01:38:19 ID:tElbSrz.
>>17
「ひっ!!」
必死で振り払うが、何度も握り返して来る。
力はずっと上回ってるはずなのに・・・なんなんだこのしつこさは!
「ちっ・・・この・・・ッ!!」
それは波旬が氷亜を写し取ったとき、わざわざ切り捨てた弱みだった。
恐い、嫌だ、認めたくない・・・そんな非効率的で無駄で害にしかならない恐怖というモノに。
たった今、自分は恐怖し! 危機に貶められている!!
波旬は知らなかった、いや知る気も必要も無かったのだ。
“何か”の『良い』ところだけ取り出して、いかにそれを増やそうとも。
絶対に“何か”に成ることなどできないということを。
何かは『良い』所も『悪い』所も含めて何かなのだから。
何かの『良い』所だけを何倍にも増やしたら、それは既に何かではないのだから。
「クソッ! どいつもこいつも舐めやがって!!」
母上・・・いや! あの女もそうだ!!
隙あらば全部奪ってやろうと思ったのに! アイツの気持ち悪い触手に阻まれて結局アイツの心は取れなかった!! 108年前! アイツは私を逆らえないように作りやがった!!
信用を得れば・・・、いやコイツ等の力を全部使えば!!
アイツに一撃をかましてやれると思ったのに! 百鬼の主の力を写し取れば、あの女が喰い付くと思ったのに!!
いや・・・今度こそあの女を潰してやる!!
私は誰でもないが、誰よりも強い! 誰よりも優れている!!
「離れろこの野郎ッ!!!」
自らの腕を引き千切り、氷の城を砕いて脱出する。
その顔は・・・本来の基礎としたあの窮奇に似た顔になっていた。
「今すぐ叩き潰してやるよ! 『良い』所の絞りカス共がぁああああああ!!!」
巨大な黒い六方星が空に浮かび上がった。
その中央に、人の形の上半身が残っている。
「水・金・地・日・土・冥!!!」
六方星の一角づつに巨大な弓が浮かび上がる!
氷亜、フォード、わいら、太陽光、穂産姉妹、虚冥をコピーした力だった!!
「まとめて消しとべぇエエエエエエエエ!!!!」
【星を落とす魔法・惑星直列】!!!
圧倒する、無限大の・・・トバリを吹き飛ばすほどの力が!!
空から数多に降り注いだ!!
20
:
ミナクチ
:2011/05/24(火) 01:38:41 ID:???
>>17
>>18
(まだ直接に、あなた達へのお礼が出来ていませんでしたね)
ぱしゃん、と露希の心は水に包まれた。
柔らかく、いかなる形のものでも許容し受け入れる水が、露希の魂を洗う。
(涙はもう十分に役割を終えたでしょう)
だから今ある悲しみを流しつくして飲み込んで、私は消えよう…。
大丈夫、まだ囚われたままでも、半分を残しているのだから。
そっと、小さな蛇神の幻が微笑んだ。
ぱしゃり
水がはじけ、無事な姿の露希がそこに。
そして氷亜の傷を半分だけ癒して、水はみるみる凍り付いていった。
21
:
夜行集団
:2011/05/24(火) 01:58:08 ID:ajFsrEio
>>19
、
>>20
波旬が手を切断した事で、氷亜による氷の呪いは効かなくなったであろう。
しかし氷亜はまだあきらめていない、もう声はでなくなって、涙を流す目も凍りついた。
ただ泣き顔で凍ったままの表情で、波旬の後を追おうと飛び上がる。
しかし運命の神は、氷亜に味方しなかった。
氷亜の持っていた生命力が凍りつき、大した高さも跳べずに地面に叩きつけられる。
そしてそのまま氷亜は息を引き取る。
筈だった。たしかに運命の神は氷亜に味方しなかった。
しかしどうやら、水の神は彼に味方したようで。
もう動けない、動きたくない、動きたいけど体はもうただの氷だ。
しかし彼は死ななかった。傷は塞がり、心臓の所は凍ったまま、俗に言うコールドスリープ状態であった。
だがそんな氷亜の姿を見て、虚冥、穂産姉妹達が普通の精神状態でいられるだろうか。
それは不可能と言うものだ。虚冥はすでに狂骨と変化し、何度も氷を破壊しようとしている。
穂産日子神はどうしようもなく泣き崩れ、
穂産雨子神は自分の無力さに、拳が血でにじむほど壁を殴っていた。骨は折れなくとも、心は。
なんという悲劇的な情景なのだろうか。なんという無力感の空間なのだろうか。
しかしその悲惨な光景が、いとも簡単的に、瞬間的に、不条理的に、
あっさりとその火を纏った砂利の応酬に破壊されるまで、あと二行後。
そしてこの空間にある概念が発生した。俺だ。
この天狗が、波旬のトバリを切り裂き、理不尽に介入した。
波旬の空間は、その圧倒的過ぎる上に絶対的過ぎる≪存在感≫によって満たされる。
それは窮奇の≪悪意≫のようであり、それは青行燈の≪狂気≫のようであり、
それは波旬の≪強欲≫のようであり、それは桔梗姫の≪幸福≫のようであり、
それはアリサの≪魅了≫ようであり、それは滝霊王の≪潔癖≫のようであり、
それらと同じ、その空間を一色に染め上げる様なオーラーにも似たプレッシャーで、
しかしそれらとは全く違った性質のものだ。
「不遜的、この我が輩を差し置いて一戦を始めているとは。」
誰もが気になる。理由は無い。ただただ気になる。
圧倒されるのだ、僕のそのどこまでも覇者の威厳と言うものに。
私が見る限り、どうやら悲劇がここで起こっていたようだ。空間が凍りつき。
氷亜が凍りつき、この泣き声は氷亜のものであったか、そして俺の威圧感に埋もれる前にあったのは、
氷亜の愛したあの小さな者のソレか。
「久方的だな、波旬。
しかし貴様の妖気はなぜか以前と変化しているように見えるぞ。」
しばらく見ていたら懐かしい顔があったので、某は波旬に話しかけた。
世間話なぞする気は毛頭ないが、やはり声は掛けたくなるものだ。
しかし、ここまでの展開があまりにも都合が良すぎる。
運がいいと言っても、あまりにも不条理すぎる。ありえない。
そう、都合がよく運が良い。ありえないが当たり前である。彼女がいるのだから。
全ての条理など無視して幸福にし。流れなど無視して安らかにしてしまう。
夜行集団の主、桔梗姫がいるのだから。
私めの天狗は、うえのその大きすぎる力をみた。
やはり先代の主。その力はけた違いだ。
だが僕達の集団も負けているつもりはない。もう既に穂産姉妹、骨、姫、
そして俺も充填完了だ。
だミー達は負けない。波旬の力には劣るが、しかし形は同じ。
なによりも、今現在、桔梗姫が全開の状態でいる以上、負ける筈がないのだ。
だから夜行集団は撃った。その大きすぎる力へと。
22
:
フォード&澪
:2011/05/24(火) 02:02:51 ID:HbHPxpxY
「これはこれは・・・」
『これが本物・・・なのか。【戮水刃蛇・山切】』
高圧縮された水の刃を無数に作ると、それは蛇の形となる。
澪はそれを解き放つ
23
:
波旬(verヘキサグラム)
:2011/05/24(火) 02:21:09 ID:tElbSrz.
>>21
「あぁん!? 天狗ぅ! 鼻高々にしやがって何が傲慢だ!!」
波旬と天狗・・・。
流派は違えど、時代は違えど、存在軸は違えど。
同じ窮奇・・・。いや、スサノオの影たる天逆毎から生まれた兄妹関係である。
「妖気の質? 転生体に決まってんだろ、長生きしすぎてボケたか!?」
辺り一面を凍りつかせ、地盤の底に沈め、金属が張り、
焼き尽くされ、岩石が噴き出し、怨念が漂う!!
その全て、その破壊力はまさに一人で百鬼夜行そのものたる存在のようだった!
「馬鹿が! 私は長所はなんでも奪えるんだよぉ!!
私は何でも手に入る! 誰にだって成れる! だから何したって無駄だッ!!」
天狗の力を写し取り、更に姫の幸福の力までも写し取る。
写し取ってしまった・・・。
「――カッ!?」
そう、満たす力。
波旬は頭を抱え、六方星の中で悶え始める。
欲する力と与える力、相反する特性は波旬にとって猛毒そのものだった。
「〜〜〜! チクショウ、こんな・・・こんないらないモノのせいでッ!!」
満たされた欲望は脆く、惰弱。
それすらも姫の幸福の力なのか、それとも貪欲の果ての破滅なのか。
答えは運命の女神のみぞ知る。
「覚えてろよ・・・あの女以上に・・・お前らの事が殺したくなったぞぉ!」
数多の波動は貪欲を満たし、破裂させ、押し通す。
天を覆おう、黒い六方星を撃ち抜き・・・異天の世界が崩れていった。
24
:
夜行集団
:2011/05/24(火) 02:40:17 ID:ajFsrEio
>>23
あの一撃は夜行集団としても前代未聞の威力であった。
今まで無かったし、彼等はこれからも絶対にやりたくはないであろう。
なぜならこの一撃で穂産姉妹は力を使い切り、倒れている。
流石の天狗もやはり息が荒く、片膝をついている。
桔梗姫に至っては、その反動で姿を5歳児のものとしてしまうほどであった。
トバリが破られ、この世界に心地よい太陽の光が注ぐ。
まるで夜行集団や澪たちの勝利を祝っているようだ、と言ったらいささか傲慢かもしれないが、
それでもやはり彼等はその日光を、安らかな勝利のマントの様な心持で浴びていた。
仰向けに倒れながら波旬のいる天を見つめる狂骨。
彼もやはり苦しそうだが、ただこの一言は波旬に言いたかった。
「波旬、お前は運が良い。
もしあの攻撃で姫の力がお前に入っていなかったら、お前は間違いなく俺の狂骨の力に蝕まれていた。
俺の力は、おそらくお前のその傲慢さすら飲みこんで、誰かになりたかった思いも汚して、
目的すら忘れさせて、お前はなにも異議も意味の無い感情の塊にさせるものだ。
俺の力はたしかに強いかもしれない。傍から見ればうらやましいかもしれない。
でもお前も知ってるだろう。誰かがそれだけの力を得るって事は、それだけの負債も背負いこむことだってことくらい。」
だからやっぱり姫は凄いんだ、そう言い残してから狂骨はそのまま眠りに落ちた。
25
:
零&フォード
:2011/05/24(火) 06:59:52 ID:HbHPxpxY
「やっとこの空間へ入れた。フォード様、夜行集団の力は分かりました?」
『流石だな、あの集団は。仲間の絆とか、強く思う心とか、すべて引っくるめて奇跡を生み出したんだな。』
「私は傷付いた皆さんを手当てしてきます。」
『そうじゃな。わしも手伝うぞ。』
見せつけられた力は、この老人に何を与えたのか。
そして、妹がこの場にいないと言うことにどう思ったか、誰も知るよしはない。
26
:
波旬
:2011/05/24(火) 16:47:57 ID:tElbSrz.
>>24
「チクショウ、あの搾りカス共が・・・偉そうなこと言いやがって」
繁華街よりしばらく離れた路地にて。
暗い森の中を歩く、満身創痍の魔王。
「なーにが、『力には負債が伴う』だ・・・! そんな下らないこと解析した時点で知ってたよ!
私はそんないらない負債だって切り捨てて、力だけを手に入れることができるってのによぉ!」
何一つ間違ったことは言っていない。
虚冥が正気を保ったまま力を使っていたように、
狂気を抑える力だって倍化して手に入れることができるのだ。
否・・・、使用者への邪念すら伴わぬソレは。便利な部分だけを写し取ったソレは。
もはや虚冥の力とは完全に別物とすらいえたのだ。
全て上回っていた・・・。
あらゆる弱点も、相手以上に克服していた。
しかし・・・
「なんで勝てないんだよぉオオオオオ!!!」
咆哮が木霊する。
なにが悪かったのか、運が悪かったのか。
慢心していたのか、姫の幸福の力なのか・・・。
波旬は・・・いまだに気づかない。
27
:
伊吹 & 悪樓 & 窮奇
:2011/05/27(金) 20:58:59 ID:tElbSrz.
「GYWAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
大きく仰け反り、荒れ狂う怪魚。
その形相は鬼面の様であった。
触手に絡め取られながらも、嵐を呼び寄せ。
竜宮の内部は雨風や暴風で酷く荒らされる。
「GEYSHOU!!」
大きく唸りを上げると、口の中から数多の毒銛を吐き出し、
魚雷のようにオオダコの眼に放たれる!!
かつて八十八人の神々を毒した、猛毒の牙である!!
「ミヅチ! なにをもたもたしている!」
『主、窮奇の姦計に図られてご乱心しておいでの様子。その命令は聞けませぬ』
「なっ・・・!・」
ミヅチの反目、もはや伊吹は竜宮内で完全に孤立していた。
頼みの伽耶野姫もこれはヤバいとさっさと傍観者に転じている。
「あぁ・・・ああああああッ!!!
磯臭ぇんだよテメェ等ぁああああああ!! 俺、海より山派だってのによぉおおおお!!!」
辺りを掻き毟り、とうとう頭角を現す伊吹。
しかしその姿はヤマタノオロチではなく・・・何かもっと別の。
強いて言うなら西洋のヒュドラのような、禍々しい姿だった!
もはや八ツ首ではなく、三ツ首の毒竜は猛毒の潮を吹きながら。
蟹達を蹴散らし、天業雲のある部屋へと猛進する。
伊吹の魂や妖気の波長は完全に別のモノになっていた。
そう強いて言うなら・・・落ちぶれて妖怪化した神のような!
不恰好で禍々しい妖気である!!
なにかされている、もはや魂は完全に別物となっている。
28
:
叡肖『』 古蛸「」 解峯〔〕
:2011/05/27(金) 21:37:50 ID:1gBuqmPQ
>>27
「くふぅ、これはいい痛みぞ、おぬし!久々に楽しい相撲になりそうじゃのぉ!」
悪樓に足を一本食いちぎられ、青い血を流しながらも大蛸は楽しげに笑っていた。
真っ赤に輝くその身体にぬらりと青く輝く目は、蜘蛛であったころの名残なのか八つある。
そのうちの三つが毒の銛で光を失った。
「ふふ、毒かの。流石に痛みはするが、この程度の量ではわしをどうこうするにはまだ足らぬわ。
なにより、かつての主様のものに比べたら、どうという事も無いわい」
冷たい海の軟体動物は毒の回りも遅いようだ。なによりアッコロカムイは巨体なのである。
(…とはいえ、この毒が回る前に事を片付けねばの)
悪樓の上下の顎を、半ばから先を食いちぎられた太い触腕の根元の吸盤が捕らえ、その開閉を封じる。
さらに3本の触腕が悪樓の身体に絡み、厳重に巻き付けて引き寄せようとする。
古蛸の足の中央、その嘴のような尖った刃のある口が、ガチガチと音を立てて悪樓を迎え入れようとした。
『こんなことは予測済みなんだってばよっ!』
主が毒持ちなのは承知していた。
衣蛸は八本の筆に墨を含ませ、蟹達の甲羅に解毒の文字を次々と記す。
衣蛸自身の身体にも、色素胞による同じ文字がうっすらと浮かび上がっていた。
〔主様に剣を渡してはいけない!!止めるのだ!〕
解峯に指揮されて衛士の朱蟹が十数匹、伊吹の後を追って走る。
毒竜と化した主の尾に取り付く蟹の数は、刻一刻と増えてゆく。
その重みを引きずって、伊吹は部屋へと走らねばならない。
『やい海牛!この前てめぇに着せた恩あるだろ、今返しやがれ!!』
にたりと笑った叡肖の筆が、逃げ損ねて転がる太った神格に『菖蒲』と記した。
その妖力を吸って、その背に蓑のように菖蒲が一叢生えた。
『おらてめぇ、さっさと主様に縋りに行きやがれ!』
あろう事か叡肖は、海牛を伊吹の向かう部屋の方へと投げ飛ばしたのだ。
その背に生えた、菖蒲の叢ごと。
情け無い声を上げながら、海流に飲まれてきりきりまいした神格は、ぺしゃりと落ちた。
その毒竜の足元へと。
「孫や、わしの解毒もしてくれんかのぅ」
『無茶言うなって!だれが今の爺ィに近寄るかよ!』
アッコロカムイに踏み潰される気はないのだ。
黒蔵は解峯に任せて、衣蛸は窮奇のほうへと走った。
『この退屈な役所を中々楽しい事にしてくれたよな、そこんとこは感謝するわ』
筆を舐めながら窮奇に向かう衣蛸は、実に楽しげである。
その八本の腕にも、色素胞の『力』の文字がうっすらと浮かび上がっていた。
29
:
伊吹 & 悪樓 & 窮奇
:2011/05/27(金) 21:57:58 ID:tElbSrz.
>>28
「えぇい! クソッ、離せ!!」
鱗がボロボロと剥がれ落ち、
ながらも蟹に挟まれどんどん素早さを失っていく。
そして、あの菖蒲のウミウシを・・・
「ああああああああ!! なんだ、なんだお前はぁああああッ!!
キモ、気持ち悪ッ!! は、離せ・・・離れろぉおおおおおお!!」
しかしいくら猛毒をはきかけたり、振り回したりしても。
ウミウシは紫の墨を吐くばかりである。
「く、クソがッ!!」
中央の口から2m程の蛇が這い出し、凄まじい速さで這い進んでいく!
脱皮! もはや形振りなどまったく気にしていない。
「GYHA!? GYUAAAAAAA!!」
口を塞がれながらも、更に暴れ狂う怪魚。
ガチガチと蠢く牙を前に、祖の眼は更に光を燃やす!
「GYUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
自らの身体を引き千切り!
頭だけになった怪魚は自ら大蛸の口の中へと飛び込んでいく!!
その牙の隙間から、数百本の毒銛を噴き出しながら!!
「えー、キミからいわれてもさっぱり嬉しくないんだけどー」
さもつまらなそうな目で、窮奇は叡肖を眺めていた。
逆心が叡肖の心を覗いたとき、くるりと背を向ける。
「『悪い』けどキミなんて1秒も相手にしたくないな」
そのまま蟹やウミウシともみくちゃになる伊吹の下へと駆け出した。
30
:
叡肖『』 古蛸「」 解峯〔〕
:2011/05/27(金) 22:23:07 ID:1gBuqmPQ
>>29
〔よし、第二陣かかれ!第三陣待機!〕
伸びた黒蔵を担いだままの解峯がきびきびと蟹たちの指揮を執る。
その目が海牛に気づいた。
〔第三陣、海牛殿の援護に回れ。必要に応じて菖蒲の使用を許可する!
主様を止める事を第一とせよ!〕
朱蟹達が駆け寄り、毒竜の足元を駆け回り、いくらかは踏み潰されながらも
菖蒲の一部を鋏で切り取るとバケツリレーのように手渡しで仲間の蟹に分配し始めた。
蟹たちは一枚づつ菖蒲の葉を持つと、脱皮してなお走る伊吹の下へと駆け寄ってゆく。
「…なんじゃ、いつも可愛がってやってるのにつれないのぅ」
叡肖に袖にされた古蛸は、その口の中に飛び込んできた毒銛ごと悪樓の頭を噛み砕いた。
毒が嘴状の歯の間からごぼりと溢れ、さしものアッコロカムイも苦しげに咳き込む。
太い触腕が宙を震えながらうねり、赤く輝く巨体が揺れた。
「孫や、わしは少し休むぞ。遊ぶのも程ほどにな」
巨大な蛸は、その身体に取り付いてきた部下の蛸達に、しばし身をゆだねた。
しかしその青い目は尚、戦いの行方を追っている。
『あははっ、『悪い』けど俺、君みたいな『良い』女の尻は追っかける性質なんだ』
筆で投げキスでもするように、窮奇に向かって墨の雫を飛ばしながら追いかける叡肖。
なぜか飛んでゆく黒い雫は綺麗にハート型。
フ○コちゃんを追いかけまわすルパ○三世状態なのだが。
『キューウちゃーん♪』
笑った表情で窮奇を追う衣蛸の、その目だけは据わっていた。
31
:
伊吹 & 窮奇
:2011/05/27(金) 22:38:00 ID:tElbSrz.
>>30
「・・・」
その目は完全に叡肖をシカトし、
逆心の触手だけが叡肖を絡めとった。
叡肖の方向感覚は反転し、今しがた窮奇とは真逆の方向へ駆け出してしまっている。
腕に浮かび上がった『力』の文字は『弱』という字に反転されていた。
「あーぁ、やってられないよ。もう」
蟹に追いすがられる伊吹を見つめると、
窮奇はヤレヤレとため息をついた。
そのまま結界を破り、何処かへと消えていく。
蟹達の追撃も虚しく、とうとう伊吹は竜宮のあの部屋の扉に手をかけた。
「あ・・・はは! ついに」
32
:
叡肖『』 古蛸「」 解峯〔〕
:2011/05/27(金) 23:14:22 ID:1gBuqmPQ
>>31
「遊びすぎじゃ、この馬鹿者」
『うぇ?逃げられた?』
〔……お前な〕
いきなり方向転換した衣蛸を、古蛸の赤い触腕が救い上げてずいと押し返した。
その腕にはあまり余力がないようで、孫を押し出した古蛸の腕は伸びたままであった。
「おいたわしや、のう、主様」
伊吹の背に声をかけた赤い巨体は縮み、古蛸は何時ものとおり、赤い衣の壮年の人物の姿を取った。
その片目は瞑れ、手の指は数本がちぎれて青く染まっている。
部下の蛸たちがその身体を支え、傷の手当てをしながら指示通り、伊吹の方へと運んだ。
気がついた叡肖が慌てて解毒の文字を祖父の身体に記したが、
心配ないと告げる古蛸のその声は割れてしゃがれていた。
「まだ悪あがきなさるおつもりか、主様。
窮奇に誑かされたとて、我らは主様だからこそ慕いもし、従って居るのですぞ」
しばし咳き込んで、古蛸は言葉を継ぐ。毒の雫がその唇からぽたりと落ちた。
「磯臭い竜宮が面白くないこともありましたろう。山が恋しくもありましたろう。
それを知っているからこそ我ら海の者どもは、ある程度の主様の自由が聞くように
極力その荷が重くならぬように、我ら自身でこの竜宮を支えてきたのです」
先ほど伊吹の放った、竜宮への苛立ちの言葉が本物なのは傍に居たこの大臣にも判る。
なにも竜宮を私物化するために古蛸は大臣となった訳ではない。
一大事が起こっても対応できるよう、組織の維持や整備にも努めては来たのだ。
単に力あるだけでは、命ひしめく海を束ねる竜宮の維持などできはしない。
主である伊吹にどれほどの負担が掛かっているかは、古蛸も目の当たりにしてきたのだ。
「主様や、本当にそれが主様の願みなのですか?」
どこか寂しげにそう呟くと、伊吹が部屋の扉をあけるのを、あえて古蛸は止めはしなかった。
33
:
伊吹
:2011/05/27(金) 23:49:13 ID:tElbSrz.
>>32
「カ・・・ムイ・・・?」
扉を開けた、その時。
大蛸の言葉にふと、静かな声を上げた・・・。
「私・・・は・・・?」
三千年前の怨念そのものである悪樓が消えた影響なのだろう・・・。
ふと手を止め、大蛸の言葉に振り返った。
荒れ果てた竜宮と鬼気迫る海の役人達を見渡し、
ふと疑問を呟く。
「これは・・・私がやったのか?」
その眼は穏やかな燈に戻っていた。
凪のように静かな、普段の伊吹である・・・。
「!? あの女は! あの女はどこに行った!?」
慌てて辺りに叫びだす。
なにやら辺りを走り出した。
「あやつは逃がしてはいけない! アレは神界を引き落とす力を持っている!!」
ミヅチや伽耶野もにも聴いて回る。
その姿はさっきほど天業雲を探す様より何倍も必死だった。
「天逆毎・・・いや窮奇! どこだ!?」
「はーい、ここでーす!」
突如、背後から声がした。
その瞬間、翠の長剣が伊吹の胸を貫いていた。
「き・・・貴様・・・!」
「お探し物はこれでしょー? ついでにもう一回言ってあげよう」
山から海に恵みを齎す河川のように、
穏やかで暖かかった伊吹の妖気が、再び先ほどの毒竜のように禍々しく変貌していく!
「ハッピーバースデー! 伊吹くん!!」
伊吹を貫いた天業雲が、ズブズブと吸収されていく。
その怨念が再び、発露し・・・妖気が膨れ上がっていく。
3匹の悪樓が、ツングースの怨念そのものである怪魚が。
竜宮の壁を突き破り、再び暴れんとする。
「カムイ・・・済まん・・・」
【四魂反転】、これが百鬼の主の新しい力である。
暴れ狂う妖怪は、神として昇華するのはままある話。
窮奇はその真逆のことを行えるのだ・・・。
「皆の衆、頼む・・・。私を・・・殺してくれ」
猛毒の竜が、唸りを上げて竜宮に現れた。
その首は1つ、だがその巨体は竜宮の城を蹂躙する。
蛇足とはとても言えない、太く筋骨隆々の四本の足。
コウモリのような翼が、竜宮の海面を覆いつくし、まるで絵の具が解けるように翼から緑の液体が滲み始める。
さきほどの大蛸の数倍はあるような巨体が、唸りを上げて辺りの海に多量の毒の潮を流し始めた。
それは酸化銅・・・金属練成の歴史の末端にして。
河川や海の者共を全滅させる恐るべき毒である!!
−妖怪目録−
【 毒竜 -どくりゅう- 】
中国の竜の中でも西洋の概念を含む竜。
そこに神聖は無く、絶対悪たる存在である。
その性質は非情に凶暴。
34
:
叡肖『』 古蛸「」 解峯〔〕
:2011/05/28(土) 00:14:40 ID:1gBuqmPQ
>>33
「ご安心なされい、この荒れぶりの半分はわしがやらかしましたでの」
自分がやったのかという伊吹の問いに枯れた声で笑ってみせたあたり、
この古蛸は爺ィと言えども蛸族特有のお茶目さは持ち合わせているらしかった。
落ち着いたかのように見えた主に、一同が安堵したその時。
再び慌て始めた伊吹を、窮奇が剣で貫いた。
誰かが悲鳴をあげ、解峯が気色ばむ。
「孫や、解毒の用意をせい。わしは紡ぐぞ。解峯、引き役としてお前の部下の手を借りたい。
久方ぶりなので、上手くいくかはわからんがの。
伽耶野殿。この毒が広がらぬように、そしてこの魚が逃げぬように異天空間に封じてもらえぬだろうか」
蛸の大臣は、そう指示を出した。
『うへぇ、俺の墨、足りっかな?他の蛸の墨と筆も借りなくちゃ』
叡肖は蛸達に指示をだし、解峯が選んだ蟹たちの甲に解毒の文字を施した。
「主様のご命令とあらば」
殺してくれと頼む伊吹に答え、先ほどの戦いでちぎれて青い血に汚れた指先を、
アッコロカムイは己の唇に当てた。
35
:
伊吹 & 悪樓×3
:2011/05/28(土) 00:37:15 ID:tElbSrz.
>>34
「ウィ、了解であります。Mr.スパイダーオールドマン」
伽耶野姫、別の名は妖怪・野槌。
水ではなく、山と土の蛇神信仰の存在である。
豹変した元・友人をチラリと見据えた後、テキパキと避難指示を打ち出す。
見るからに無力そうな者共は次々と異天空間へと飲み込まれていく。
「貴方も避難シルププレ?」
結界の中に囚われた、巴津火を見据え。
ポツリと声をかけた。
3匹の悪樓は荒れ狂いながら、襲い掛かる。
蟹の兵士達を噛み砕くもの、ひたすら竜宮を破壊するもの、蛸に牙をむく者共だ。
ただこの3匹ですら手におえないというのに・・・。
「毒せよ! 殺せよ! ここは我等が平家の滅ぼされた海!!
我等は蹂躙された! スサノオの治める海など・・・。
勝つ者だけにを味方する非道な神の納める海など! みんな腐ってしまえ!!」
怨念に塗れた竜は咆哮し、毒を撒き散らす。
その首をかしげ、足下の蟹やカムイを見据えた。
鋭い爪の生えた巨腕が、竜宮の者達を薙ぎ払わんとする!
36
:
叡肖『』 古蛸「」 解峯〔〕
:2011/05/28(土) 00:55:07 ID:1gBuqmPQ
>>36
「そうじゃの、今は殿下を伽耶野殿に頼もうか」
古蛸は伽耶野姫に頷くと、巴津火を封じた黒蔵をその手に委ねさせた。
手の空いた解峯は、これで伊吹の抑えに向かう事が出来る。
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり…」
(今の主様を送るには、ウポポよりはこの方が良いのであろうな)
アッコロカムイが唇から歌とともに紡ぎだした細い筋は、傷ついた指先でその血にて青く染まり、
六の六の六倍の本数に広がって大きな網を形作り、広がった。
(糸の紡ぎ方はまだ覚えて居るが、さて、強さは持つじゃろうか)
かつてこの古蛸は蜘蛛であった。
蛸の血の染みた網はその意思を反映し、自在に広がってゆく。
海に着てから久しく糸を紡ぐ事は無かったが、その網が3匹の怪魚を捕らえんと広がる。
細く頼りなげに見える糸の網、それは巨大な陣の形を成していた。
〔タコ、準備はいいか?〕
『いいぞ蟹ちゃん、バッチこい!』
古蛸が紡ぐ間に、それを薙ぎ払おうとする毒竜と化した主の腕を、
解峯がその二股の矛で受け止めようとする。
その抑えにあわせて、毒竜に文字を記そうと、叡肖が筆を構えて待ち受けていた。
37
:
伊吹 & 悪樓×3
:2011/05/28(土) 01:10:18 ID:tElbSrz.
>>36
「オーライ、殿下の御入城でありマス」
巴津火を飲み込むと、伽耶野自身も異天空間の中へと入り込んだ。
糸に絡められた悪樓は酷く暴れ回るが、
動けば動くほどに身体に糸が絡まっていく。
しかし、そこから逃れた一匹が!
まだに解毒の文字の記されていない蟹へ向けて毒銛を噴き出した!
受け止められる、鋼鉄の爪。
しかし、蟹とは群れて初めて力を成す者。
その巨体に一人で挑むのは、あまりに無謀・・・。
キチン質の甲羅にヒビが入り、その巨体が踏み潰そうとした。
咆哮が木霊する。
ギョロリと筆を持つ蛸を睨み、その字すら消し飛ばす猛毒の息吹を吐き出した!
38
:
叡肖『』 古蛸「」 解峯〔〕
:2011/05/28(土) 01:30:28 ID:1gBuqmPQ
>>37
『ぐっ!!』
解峯に向かって飛んできた毒銛を、叡肖はとっさに袖で払おうとした。
しかし衣蛸の硬い殻であるはずのその袖に、ざくりと毒銛は突き刺さっていた。
からん、と筆の一本が叡肖の手から落ちる。
〔おい!〕
『まだっ!』
一本の筆を咥え、開いた腕で叡肖はその殻が刺さったままの袖から毒銛を抜き取った。
袖は二つに裂けている。
(くそ、割れたな)
身体に解毒の文字を浮かばせる間もなく、毒竜に蟹の身体が踏まれた。
そして猛毒の息吹がこの文官を吹き飛ばそうとする。
それはとっさの行動だった。
筆の代わりに抜いたばかりの毒銛を握っていた叡肖は、吹き飛ばされまいと慌てて、
手にした毒銛を毒竜に突き刺していたのだ。
39
:
叡肖『』 古蛸「」 解峯〔〕
:2011/05/28(土) 01:41:51 ID:1gBuqmPQ
//表記ミス訂正
×その殻が刺さったままの袖から毒銛を抜き取った。
○その殻である袖にささったままの毒銛を抜き取った。
40
:
伊吹 & 悪樓×3
:2011/05/28(土) 01:46:24 ID:tElbSrz.
>>38
怨念の毒の潮が叡肖を吹き飛ばすと同時に、
毒竜が傷みに叫び声を上げた。
「ゴァアアアアアアアア!!!」
放たれた銛は、毒竜の右目に突き刺さっていた。
残っていた悪樓の毒が回りはじめる。
「グッ、ガァアアアアアアアアアアアアア!!」
しかし頭を振って、解峯を完全に踏み抜く。
ツングースと平家、類は違えど。
滅ぼされた2つの一族の怨念背負うこの執念は深かった。
さらによりにもよって、その2つの破滅の縁の地である竜宮に仕えることなど。
この上ない屈辱と苦痛だった。
反転した魂の中で降り積もった夥しい量の怨念は、猛毒となって海を毒していく。
翼をはためかせ、緑の海流を広げようとする。
凄まじい質量が圧縮されたそれが開放され、辺りに流出すれば。
ここら一帯の海は死に果てるだろう。
「GYAUSYHAAAA!!」
悪樓が唸りを上げ、大蛸に止めを刺そうと口をあけて突進する!
41
:
叡肖『』 古蛸「」 解峯〔〕
:2011/05/28(土) 02:11:23 ID:1gBuqmPQ
>>40
「よし引けェい!」
控えていた蟹たちに指示が飛んだ。屈強な兵士たちが一斉に網を引く。
アッコロカムイの糸の網は、単に怪魚をからめ取る網ではない。
絡んだものの記憶を引きずり出すのである。
窮奇にゆがめられた記憶、こじれた怨念を手繰り解き、正す作業が始まった。
「主様。平家を滅ぼしたのは、ご自身の意思ではなかったか?」
ヤマタノオロチは平家を滅ぼす事で、奪われた剣を取り返してもいるのだ。
「滅ぼされた部族も、もともとは人間の争い。
無関係な我ら海の者どもにそれを向けることも御座らぬのではないかね。
それ、そこの蟹どもの中には、平家に使えていた者たちもおりまするぞ」
海に没した武将の怨念が転じたという、いわゆる平家蟹たちである。
無残に踏み潰された蟹の骸には、それと判る鎧兜を付けた者もいる。
「のう、主様や。怒りをぶつけるのは本当に、この海の者達で良いのですか?」
蛸の血の染みた糸は、狂った主の心を氷の浮かぶ北の海の冷たさでからめとり、冷やそうとした。
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