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32叡肖『』 古蛸「」 解峯〔〕:2011/05/27(金) 23:14:22 ID:1gBuqmPQ
>>31
「遊びすぎじゃ、この馬鹿者」
『うぇ?逃げられた?』
〔……お前な〕

いきなり方向転換した衣蛸を、古蛸の赤い触腕が救い上げてずいと押し返した。
その腕にはあまり余力がないようで、孫を押し出した古蛸の腕は伸びたままであった。

「おいたわしや、のう、主様」

伊吹の背に声をかけた赤い巨体は縮み、古蛸は何時ものとおり、赤い衣の壮年の人物の姿を取った。
その片目は瞑れ、手の指は数本がちぎれて青く染まっている。
部下の蛸たちがその身体を支え、傷の手当てをしながら指示通り、伊吹の方へと運んだ。
気がついた叡肖が慌てて解毒の文字を祖父の身体に記したが、
心配ないと告げる古蛸のその声は割れてしゃがれていた。

「まだ悪あがきなさるおつもりか、主様。
 窮奇に誑かされたとて、我らは主様だからこそ慕いもし、従って居るのですぞ」

しばし咳き込んで、古蛸は言葉を継ぐ。毒の雫がその唇からぽたりと落ちた。

「磯臭い竜宮が面白くないこともありましたろう。山が恋しくもありましたろう。
 それを知っているからこそ我ら海の者どもは、ある程度の主様の自由が聞くように
 極力その荷が重くならぬように、我ら自身でこの竜宮を支えてきたのです」

先ほど伊吹の放った、竜宮への苛立ちの言葉が本物なのは傍に居たこの大臣にも判る。
なにも竜宮を私物化するために古蛸は大臣となった訳ではない。
一大事が起こっても対応できるよう、組織の維持や整備にも努めては来たのだ。
単に力あるだけでは、命ひしめく海を束ねる竜宮の維持などできはしない。

主である伊吹にどれほどの負担が掛かっているかは、古蛸も目の当たりにしてきたのだ。

「主様や、本当にそれが主様の願みなのですか?」

どこか寂しげにそう呟くと、伊吹が部屋の扉をあけるのを、あえて古蛸は止めはしなかった。


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