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大河×竜児ラブラブ妄想スレ 新避難所

1まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY:2009/06/16(火) 03:01:04
ここは とらドラ! の主人公、逢坂大河と高須竜児のカップリングについて様々な妄想をするスレの避難所です。
アクセス規制で本スレに書けない、とかスレに書けないような18禁のエロエロ話を投下したい時とかに
お使いください。

42◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/17(水) 21:13:36 ID:tPFwIwb.0
「……おう」
 竜児は微笑んで、届く大河の額にキスをしてやる。そして、右手の指を……
 指、を?
「……どうしたの? 竜児。いいよ、続けて……?」
「ああ、いや、なんていうか。もう、ぜんぶ入ってるみたいだ」
「ぜ、ぜんぶ?」
「そう、ぜんぶ。三本とも、指の付け根まで」
「え……うそ、三本とも、って」
 大河の頭の上から、こんな感じの、と、竜児は左手の指を三本、揃えて見せる。大河は寄り目で確認。
「うそ、そんなの……」
 想像しちゃった様子の大河はまたもぶるぶるっと。竜児の指をぎゅうぎゅう締め付けて。反射なのか内もももぴっちり閉じてしまって、竜児の手を股間でぎゅうっと。
 待て大河、何をしたい? そんなふうにしたら、ますます。
「あうっ! ふ、深い……っ!」
 そりゃそうだ。そりゃそうなる。
 なんだかよくわからないが竜児も観念した。ゆっくり馴染ませながらここまで指を深く沈めるつもりだったが、いつのまにかそうなっていたということで、つまりはショートカット。挿入した指で大河の好きな裏のところを押してやる。
「あーっ! そ、それするの……っ?」
「するよ、大河。イってぎゅって締めろ。太さに馴染ませるんだ」
「そ、そんな、もう、いいじゃない……っ? ね、りゅうじ……っ、も、もう拡がった、よ? 私の、もう、拡がったの……っ! そこっ! そこっ!」
「駄目だよ、俺のはもうちょっと太いんだから」
「えーっ! も、もっと太いの……っ!? そ、そんなの……指で、こ、こんなに……こんなにっ! すごいっ! すごい……のにっ! 私……っ!」
 竜児は左手で大河の手をとって、自分の股間に導いてやる。大河は竜児の滾ったものを握り締める。大河の手はやっぱり特別で、握られたところにきつい快感が爆ぜて、竜児は呻き、吐息せずにはおれない。
「ふ、太い、竜児の、太い……おっきい……心臓みたいに、どくどくして……っ」
「そう、だよ、大河……イったら、これ、ハメてやるから……」
 応えて大河の股間が跳ねて、竜児の手を突き上げる。竜児の指をきつく締めつけて、
「あーっ!」
 それは大河にも快感をもたらすようで、ひときわ甘い声をあげる。竜児は大河の穴を指でくじりながら、大河の淡色の髪に鼻をうずめて、ちいさな耳元で命令するように囁く。
「さあ、大河、イくんだ。イっちゃえ、イけ」
「ひっ、ひど……っ! そ、そんな……あっ! あーっ! おかし、い……わ、私、イっちゃう、の……りゅうじ、にっ……命令されて、イく娘に、なっちゃ……うっ!」
 足を上げて空を掻き、腰弓をぐっとそらして浮かせ、大河はぎゅっと瞳をつぶって、
「っく! っく!」
 絶頂する。
 足指の先をシーツに突き立てるように下ろし、一息に腹筋をしめて丸まるようにして股間を突き上げる。淡色の髪が揺れて、甘やかな大河の匂いも色濃く立ち上る。汗が玉となって散る。恥丘を突き上げるたびに二度、三度、おしっこを噴出して、竜児の手の中を熱く濡らす。
 大河の膣は搾るように断続的に竜児の指を締めつけ続ける。それは挿入された男性器から精液を搾り取るための反射。いやらしい、動物の穴だった。指を搾られながら竜児は期待を禁じることができない。大河のこの熱くてきつい穴に、イくと締まるいやらしい穴に、この後、俺はこれをハメることができるのだ。期待に股間は驚くほど漲り、大河の手の中で跳ねようとするのを止められはしない。竜児のそこもまた、動物のものなのだった。
「り、りゅう、じ……っ」
 痙攣に抗って、大河が竜児を呼ぶ。揺れる瞳、震える唇で呼びかけてくる。
「お、おねが、い……が……ある、の……っ」
「なんだ、大河」
 竜児は優しい声を出す。なんだって叶えてやる、と思う。おまえの、大河の願いなら。
 だけどその、大河の願い、とは――
「おね、がい、りゅ、りゅうじ……っ。は、はじめて、は……なに、も……つけ、ないで……して……っ!」

(10章おわり、11章につづく)

43sage:2009/06/17(水) 22:16:33 ID:GcTiD1Ik0
新作きたー!!

鼻血とまりません><

44高須家の名無しさん:2009/06/17(水) 22:20:39 ID:GcTiD1Ik0
sage間違えた・・・orz

45◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 00:19:25 ID:.DHi/QdQ0
>>43
反応ありがとう! 一発目にはいつも救われます。いやエロい意味でなく。
鼻血止まりましたか……?

>>44
間違えましたか……or2
まあ、ここはsage無くても大丈夫、なのかな?


なんてか本スレにもいろいろ面白い投稿があるのに、
レスが付けられないのが悲しい色やねん(´;ω;`)

46高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 00:29:53 ID:LDuLLikw0
あっ名無しが変わってるぞ
ID強制にしたのか

>>36
Styleはオープンソースじゃなくなったけどね
結構いろいろ悶着とかあったんだよ

>>44
専ブラ使おうぜ

>>45
二つしかスレ無いのにsageの意味無いしね

あとレスつけたいなら代理投稿したるねん

47高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 00:39:28 ID:LDuLLikw0
一応まとめ人にも伝えておきます
したらばは最大10000レスまで設定が出来ます
容量の上限は正直わかりません
たいていの管理者は1000に設定しているようですが、
実はそれだと専ブラがエラーを起こすので1001に設定した方が良さげです

個人的にはIDは任意の方が良かったなー

48まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY:2009/06/18(木) 02:08:29 ID:???
>>47
1スレの最大レス数を1001に設定、そしてIDを任意にしました。
アドバイスありがとうございましたー。使いながら覚えている最中ですわ…

>◆eaLbsriOas
まったくエロすぎるザマス!

49◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 02:28:03 ID:???
>>46
>あとレスつけたいなら代理投稿したるねん
ありがとう! いずれその時は、よろしくお願いしまっす<(_ _)>

>>48
>まったくエロすぎるザマス!
ありがとう!
あ、いや、でも、ほら、笑えたり、下手するとちょっと感動したりするところもあるよね……?

ガチエロじゃなく、ドエロコメと自称するのは、そんな気持ちの表現だったり。
ドエロコメつまり超弩級エロコメ。

50高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 02:41:46 ID:???
>>49
頻繁に投下するとネタ練るのも大変だろけど末永くSS描き続けて欲しい
続き待ってるよ!

51高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 08:39:04 ID:zQ/qkISA
>>44
ありがたいのですがレス指定URLを貼られると
マウスカーソルが重なっただけでポップアップしてしまうのです
ttp://sakuratan.ddo.jp/uploader/source/date113204.jpg
こうなるとすんげー見づらいし

避難所へはまとめサイトからも行けますし
もうみなさん避難所のURLをブックマークするなり登録するなりしてるので
告知が来たことを知らせるだけに留めておいてください

携帯の人はこちらのURLをブックマークしてください
http://jbbs.m.livedoor.jp/b/i.cgi/anime/7850/
避難所の板URLです

52高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 08:39:25 ID:zQ/qkISA
本スレに書くやつを誤爆したぜ

53高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 08:41:26 ID:zQ/qkISA
>>48
俺は常にアゲアゲだしここは管理人にリモホ見えるからID隠して自演はしてもしょうがないけどねw
もっともそんなことする人はまずいないか

54高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 09:20:28 ID:CXrvzkGU
>>49
感想なら代理投稿じゃなくて自分の携帯で書けばいいじゃない
定額にしてないとか、携帯持って無いとか、使い方自体がわからないとか、
2chの携帯メニューへの行き方がわからないとか、そもそも携帯で書き込むという発想が無かったとか
いろいろな理由は考えられますがね

55◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 09:37:25 ID:???
おはようございます、◆eaLbsriOasです。いや、もっと早く起きてましたよ? ほんと。

>>50
ありがとう!
今週中は「竜虎並び寝る」を毎晩うpるのでフィバってますが、大丈夫です。
末永く、は望みたいとこだけど、こればかりはどーなるものか……人間だもの。
ただ、お別れを言っていなくなったりはしないつもりなのでご安心を。

消えるときは大河みたいに消えます。

>>51
実はJane導入して一番最初にびびった出来事がこの、
私のSSの全画面ポップアップw

おとといの夜に、おかげさまでまとめサイトからリンクも張られたので、
本スレへの告知をして頂く時にも、もう、URL無しで
「読みたい方はまとめサイトのリンクから新避難所へ」
とかで、充分ありがたいです。


てかあんだけドエロコメだって言ったのに「ガ・チ・エ・ロ」とか言って本スレに
告知したのは誰じゃあ――――いっっっ!?
……告知は、ありがと。

56◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 10:13:37 ID:???
>>54
あ、そーか、携帯からレスつけるって手があるのね。教えてくれてありがとう!

アク禁にまきこまれていることが判明して、並び寝るをどーしようかと思っていた時、
携帯にSSをメルって直接投稿するとかは最後の手段として考えていたけれど、
レスつけるという発想はなぜか浮かびませんでしたw

とはいえ携帯打つの苦手なので、そのうち名無しでGJ!とかだけレスるのに
使おうかな……

57◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 10:33:02 ID:???
◆eaLbsriOasです。いつ来るかわからないあなたのためになごみSSS
第4弾は、梅雨どきだしちょっとしっとり。

***

・あいあい傘なんて

「雨だね……」
「雨だな……」
「傘、一本だね……」
「ほら。どうせ奪う気だったんだろ? おまえ使え。俺は走るからさ」
「……おまえ使え! 私が走るっ!」
「ちょっ、待てって!」
「っ!? 気安く触んじゃないよ痴漢犬……っ! どうしたの竜児? 頭押さえて、痛いの……?」
「いや。思い出したんだ。……俺、小学生の時さ、帰りに雨に降られて。やっぱ傘、無くてさ。
 そしたら同じクラスの女の子が、入れたげようか、って言ってくれてさ。嬉しかった」
「う、うん……よかったね……?」
「ところがさ、すぐにその子、『あいあい傘になるからやっぱやだ。じゃあね』って、行っちまった」
「げ……」
「喜んだ分、すげえ悲しくなってさ。別に、好きでもなんでもない子だった。けど、嬉しくて
 ……悲しくて。あいあい傘って、その時初めて知ったんだ。後で、くだらねえって、思った。
 もっと大事なこと、あるだろ? って……なぁ、大河」
「……うん」
「傘、一緒に入っていこう」
「……うん、わかった。さあ行こう竜児! その傘を開くがいいっ! そして入れ!」
「おう! って入るのはおまえだよ……」
「行くぞ! あいあい傘なんかくそくらえだ!」
「っそうだ! 誤解する奴なんかくそくらえだ!」


・夕食後

 ごろごろごろ……
「ひ〜ま〜だ〜ね〜え〜……っと」
「っ!? おまえひっつくなよ、腰熱いっ」
「はーお腹あったか……冷やすと痛くなるんだもん、あっためないと」
「おう、そうか……なら仕方ねえけどよ……」
「そーそー。仕方ない仕方ない。飼い主の体調管理は犬の仕事!」
「逆だろそれ……なあ、大河。腹巻きとかいるか?」
「はあ? 何それだっさ。いらない」
「腹冷えないぞ? あったかいぞ?」
「いらないってば」
「おしゃれなやつ作ってやるからさ。ダサくないようにさ」
「いらないって言ってるでしょ!?」
「なんでキレんだよ!? せっかく俺が作ってやるって」
「うっさい黙れ。ずっと私の腹巻きしてろ……馬鹿犬」

58◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 10:34:01 ID:???
忘れてた。上の、代理投稿歓迎、です。お世話になります……

59高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 11:28:32 ID:???
2++では他掲示板を登録するときに板名を入れないといけないんだが、
とりあえず竜虎ギシアンと入れてみた。
板一覧の中で異彩を放っているw

60高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 12:36:10 ID:???
>>56
携帯で長文はきっついしね
てかネット自体初心者か!!

61高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 12:40:42 ID:???
>>59
本スレに代理投稿するとかえってうざがられやしないだろうかと思ったり思わなかったり
この板登録してこのスレをお気に入りに入れて新着来たらすぐにわかるようにしてる人もいるしね

でもあえてしてくるの

>>59
俺は 大河×竜児 でStyleに登録した

62高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 12:51:42 ID:GnzvRAHA
>>57
(*´Д`)ポワワ

63◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 14:08:59 ID:???
>>59
アク禁の清純派向けのスレとか立てといた方がいいのかしらと。

>>60
いえ、ネット暦0079、いやネット歴は長いんです。だから逆に、
携帯でネット見る習慣がほぼ無い……。

>>61
代理投稿ありがとうなの!

本スレ住人でこっちは絶対覗かない嫌エロのひととかかなりいそうなので、
エロでないSSの時はやっぱり代理投稿ありがたいです。

>>62
ありがとう!
いままでのSSSと違って今回のは萌えが隠され気味なので、
でもしっかり仕込んだつもりなので、読み解いてポワワして頂けるとありがたく。

64高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 18:22:25 ID:???
>>63
あっしは10年前に契約した携帯がネットライフの始まりやよ
当時はまだ定額制無くてきつかった
その2年後にPCでのネット生活の始まり
2chはさらにその3年後

65◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 20:15:33 ID:???
さて、「竜虎並び寝る」11章、いきます。
後半、ついに大河の語り(地の文)登場。可愛いんだぜ。

本スレへの告知誘導のみ、よろしくお願いいたします。

--テンプレ--
◆eaLbsriOas氏のSS「竜虎並び寝る」11章、投稿されました。
ドエロコメですので、読みたい方だけ
まとめサイトの新避難所のリンクから、どうぞ。
-----------

自分で氏とかつけてますが、なんてか慣習ということで失礼……。
ではいきます。

66◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 20:16:31 ID:???
  11

「だーめだ」
 足もちいさいのだった。本当に人形のようだと、竜児は思う。足の指もちいさくて、その先に大河の手の指の爪と同じ色をした、けれど竜児のどの指の爪よりもちいさな、桜色の爪がちゃんと生えている。
 竜児は捧げ持つようにして、大河の足の指にキスをする。
「いいじゃないケチ……あっ」
 口づけするほどに近づいた竜児から見れば、それはミルク色の細くなめらかな柱。立てられた脚の向こうに拡がる淡い色の髪の雲に浮いて、大河が薔薇色の唇をとがらせて不服そうな表情を向けている。
「ケチとかそういう問題じゃねえだろ」
「いいじゃない減るもんじゃなし……だめだってば、そこ、汚い……っ」
「おまえに汚いところなんかひとっつもねえ。……減るもんじゃなし、なんて、普通男が言うセリフだろ……」
「差別、ヨクナイ……キ、キスだけでいいでしょ? しゃぶっちゃだめだってばっ。あう……っ。……もー、いいもん、右手の匂い嗅いでやる」
「は? 右手の匂いって……わっ、バカ、おまえ、よせ!」
「ふんがふんがふんがふんがふんが……はー……竜児のソレの匂いがするわ……」
「嘘っ、マジで!? バカやめろ汚いっ」
「あんたに汚いところなんてひとっつもないんだぜ」
 そう言って大河は、ニヤリと。
 議論中、なのだった。二人は。これでも、一応。



 お願い竜児、初めては何もつけないでして……そう、甘やかにも切れぎれに、大河は竜児に懇願したのだった。避妊具を、ゴムを、つまりはコンドームを、最初はつけないで竜児のを挿入してくれと、そういうことだった。
 大河はしかもそれを、挿入予定の穴で竜児の指をぎゅうぎゅう締めつけて、あのいかにも大河らしく滅茶苦茶でやらしくて可愛らしい、イく姿を晒しながら頼んできたのだから、たまらなかった。竜児は本当に、脳裏にせめぎあう天使と悪魔を見た気がする。
 ねえねえ竜児、このえっちな穴にナマでハメるとすっごい気持ちいいんだって! 射精もオッケーだってさ! いこいこ!……と、文字通り手乗りサイズの裸の大河の姿をした悪魔が言い。
 だだだだめだっての! ちゃんと避妊しないと赤ちゃんができちゃうでしょ!?……や、やぶさかではないけど……そう言う、やっぱり超ちっこい天使の大河の方は全身ピンクのあやしいラバースーツを着ていた。なんか逆じゃねえ!? とすかさずつっこんだ竜児だったが、逆ではないのかと一人で納得した。
 やがておちついた大河にさっそく問いただしたところ、竜児の早合点があったことも発覚した。
 大河のお願いは正確にはこういうものだった。
 最初に挿入する時だけゴムをつけないで欲しい。そしたらすぐ抜いて欲しい――つまり中で射精してはいけないのである。当然だよな当然ははははははは……そう空笑いした竜児だったが、むしろ当然中出しかと最初に考えてしまっていた自分の欲望の深さに内心、恥じ入るばかりであった。
 さてそこで問題なのは、ゴム無しで挿入して射精せず抜いた場合、それも避妊したことになるかどうかだった。
 遺憾なことに(?)、大河も竜児もその答えを知っていた。いわゆる膣外射精と呼ばれるその行為は、避妊とはとても呼べない確率で妊娠することもあるのである。勃起した男性器の先からにじみ出てくる透明な分泌液(大河に吸われた……)、透明な蜜みたいと大河が呼んださっきのあれ(大河に吸われたんだよ……)、あれにも精子が混じっているからだ、と二人の知識も一致していた。
 さてそこで議論になった。
 大河は、処女を捧げるのにゴム越しなのは抵抗がある、妊娠の確率もちょっとは下がるだろうしいいのではないか、と主張し。
 竜児は、処女ゴム云々についての大河の気持ちもわかるが、やはり避妊とはとても呼べないやり方はよくない、と主張した。
 そんな意見の違いはあれど、それでもやっぱりどうしてもつながりたい、そこは二人は共有していて。
 どうしてもつながりたいから、いちゃいちゃは止められなくて。
 自然と、ながら議論になっていた。

67◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 20:17:24 ID:???
 かくして変態爆発竜児の大河全身清掃、もとい、全身キス責めの続き(特に下半身)は着々と進む一方、議論の方は平行線、遅々として進まないのである。



「ねえ、ちょっとだけ。ちょっとだけだから。先っぽだけでもいいから。大丈夫、中で出さなきゃ妊娠しないから」
「だーめだ、って。可能性あるのおまえも知ってるだろうに。てかだからそれ完全に男側のセリフだろ!?」
 筋肉も美しい、流れ落ちるミルクのような大河の細っこいふくらはぎに口づけしながら、竜児の凶眼は狂おしく火花を散らす。大河のこの白い脚を流れる血潮に牙を突き立てたいと、吸血鬼としての眠れる本性があらわになったわけではない。食べちゃいたいくらい可愛いとは思っているが、たんに困惑しているだけなのだ。
 争う天使と悪魔を見たと思った竜児たが、実際のところ目の前には悪魔しかいないのだった。しかもこの悪魔もやっぱり裸で、やたらと小柄だが元気で可愛い。そんな降臨した裸の悪魔こと大河は、堂々巡りに踊る議論のはしばしで、
「お願い、初めては竜児をナマで感じたいの……」
 とかと、祈るみたいに両手を組んではちいさな乳にぷにゅと押し付け、さらにはその大きな瞳を、腹黒美少女としてお馴染みのどっかの悪友ばりにキラキラキューンと輝かせたりなんぞしてまで、哀願してくるのだから竜児には厳しい。惚れた弱みにつけこむとはまさにこのこと。脳裏にお住まいの方の悪魔な大河ミニさんまで「お願いりゅうじぃ〜」なんて復唱してきてこれじゃ二対一じゃねえかと。あやうし竜児、なのである。
 実はむしろ、大河がまだふざけ半分に腹黒様のマネとかしているうちはマシなのだ。それがわかる分、竜児としても冷静になれるというものだった。だけど、もし。
 普通に、素の大河にあの寂しそうな切なそうなツラで同じ言葉を吐かれた日には――本当に俺は狂ってしまうかもしれない、と竜児は思う。それを思うと、おまえどこまで本気なんだ……なんて引き金を引くようなことは、怖くて訊けたものではないのである。
 とはいえ、それとこれとは話は別とばかり、竜児は大河の足の裏にだって唇を捧げる。せっせとちゅっちゅと。
「あひゃひゃひゃひゃひゃ! くすぐったいわバカタレ!」
 大河は身をよじり足をひっこめようとするが、竜児は両腕で足をがっちりホールド。もう片方の足でげしげし蹴られようとひるまない。なにせそんな大河の蹴りからは普段の暴虐の力がすっかり抜けていて、
「……もう、竜児の変態……っ」
 かわりに大河の声には切ない乙女の響きが宿ったりもするのだ。なんだかんだで大河は大河なりに竜児に「手込め」にされてしまっているのである。
「だいたいコ……コンドーム買ってきたのはおまえじゃねえか」
「だから後でそれもちゃんと使ってって、言ってるじゃない。それに買ってこなかったら、竜児はえっちなんかしようとしないでしょ? なんか見てると辛くって」
「当然だ。……って、何だって? 見てると辛い? 俺をか?」
「そう、竜児を。だーってさ、もうずっと。竜児ったら、手は握ったら汗だく、目は血走ったまま、そのくせ私のこと盗み見しまくり。ちょっとでも近寄ったら顔は真っ赤にするし、鼻息は荒くするし、なんかハァハァしてるし。私にやらしいことしたい、えっちがしたい――――っっっ!……って、バレバレなんだもん」
 手が、と言われては手を離し、目が、と言われては目を手で隠し、顔が鼻息がハァハァがと言われては隠しようもなくなった竜児は大河の足元で丸まって貝になる。もし生まれ変わることが出来たなら、俺は貝になりたい。大河とえっちが出来ないような貝に……それは嫌だ! と自己完結して、引きこもるすんでのところで貝殻の隙間から気管のように話すための唇を出す。
「……俺、そんな、だったか?」
「うん! すっごくそんな感じ! まあ、嬉しかったんだけどねへへへ……って、こーら貝、閉じるな。ちゃんと人の話を聞け」
 力も抜けているためかひどく優しい具合で、大河は竜児の頭にこんこんと踵を下さる。
「……ほっておいてください。俺は深海の一介の貝。大河さまをえっちな目で見まくった罰で、貝に生まれ変わったのです。ほっておいてください……」
 はあ……と大河がため息をつくのが聞こえる。やれやれ……ともおっしゃられたかもしれません。

68◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 20:18:00 ID:???
「それじゃあ、私も貝にならないとね」
 そうおおせになって、大河さまも貝に……って、
「え?」
 つい、竜児は貝殻をわずかに開いて聞き耳を鋭くする。
「私も、竜児のこと、えっちな目で見てたもん。貝にならなきゃ。竜児と一緒に」
「大河……」
「竜児が私のこと意識してるの、観察している時はわりと平気なの。嬉しいな、楽しいな、って……からかう余裕もあるくらい……だけど、それ以外の時は、だめ」
 そこで言葉を区切って、つい大河は唇をそっと噛んでしまう。伏せ目にした長い睫毛も震わせ、大河は少し迷ってから勇気を出して言葉を続ける。
「竜児が物思いにふけっている時とか……竜児は何考えてるんだろうって、竜児のことわかりたいって、思うんだけど、気づいたら竜児の唇を見てるの。竜児の唇のことばかり考えてるの。髪の毛を見て、触りたい、って思うの。腕を見て、抱っこされたい、って思うの。手を見て、撫でられたい、って思うの。背中を見て、しがみつきたい、って思うの。竜児のこと、ぜんぶぜんぶぜんぶ欲しいって……そう思うの」
 だから、私も貝にならなきゃね……なんて、大河は言う。
 大河のひとつひとつの欲望の告白を聞くたびに、胸があたたかくなるのを竜児は感じる。少しもいやらしいなどとは思わなかった。竜児は嬉しかった。自分のこの、なんのへんてつもない身体を、美しくもなければ取り柄もないこの身体を、その髪の毛の先までをも、大河は欲してくれるのだった。狂おしいほどに恋人の身体を求めることが、自然なことかどうかなんてわからない。けれど、好きなひとから求められることは、心から幸せなことだと竜児は知る。だから貝になる必要なんてないのだ、大河も……そして、自分も。
「貝になんてならなくていい」
「竜児……」
「嬉しいよ、大河……」
 竜児の殻が割れる。顔を覆う手を解き、顔をあげた竜児は目の前の光景を見て、
「……大河さまが貝になられた……」
 ちょっと狂っていた。
「ヘ? 私が貝?……あんた貝ってまさか!?」
 顎を引いた大河は見た。
 大河の股間に鼻を突っ込むようにして見入っている、寄り目も血走って鼻息も荒い凶悪犯ヅラの最低男(恋人・17)の姿を。
「貝とか死ねこの変態っ!」
 危機を察知した動物の本能が人間の愛を越えた悲しい瞬間であった。迷わぬ罵倒に振り上げた足を一閃、大河の渾身の踵落としが竜児の後頭部に決まる。だが、しかし。
「あひっ!」
 叫んで意識が飛びそうになったのは大河の方だった。渾身のはずの一撃はやはり脱力していて、竜児の頭を後ろから押す格好、竜児の顔面を大河の股間に突っ込ませたのだ。しかも鼻先はモロに大河の秘貝(命名・竜児)に突っ込んでいた。そのうえ。
 何をされたのかはわからないまま、どうなっているのかはわかった竜児は、やっぱりちょっと狂っていたのかもしれない。
「……」
 竜児は無言のまま、ぺろり、と。
「あはっ!」
 口からも鼻からも盛大に息を吐いて大河は悶絶。一度だけ腰を跳ねさせる。二度目が無いのは、大河のふとももを竜児が両腕で下からがっしりホールドしてしまったからだ。
「……なぁ大河、ここ、キスまだだった。キスしていいか?」
「ななな舐めてから言うなっ! やだだめだめ絶対汚いからだってそこ」
 ぺろん。
「あひゃっ!」
 格別に変な声が出てしまうのだった。跳ねるはずの腰が固定されているものだから、腹筋をするように大河の上半身が逆に跳ねてしまう。
 上体を起こしたまま静止するという腹筋運動じみた姿勢で、大河は触りたかった竜児の髪を存分にわしづかみして、押しはがそうとする。

69◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 20:18:44 ID:???
「だ、だめだってば竜児! そこおしっこするところだしそれにそれに」
 ぺろん。
「あーっ! 違うの舐めて欲しいとこ言ったんじゃないおしっこの穴舐めちゃだめ」
 ぽかぽかと竜児の頭を叩くけれど、どんどん力が入らなくなっていく。
 ぺろぺろ。
「あーっ! あーっ! へ、へんたいっ、りゅうじの、へんたい……っ!」
 そんなとこを舐められるなんて、大河は想像すらしたことはなかった。恥ずかしすぎた。そこがこんなに気持ちいいなんてことも、知らなかった。もう一度竜児の髪を掴もうとするけれど、嬉しくてもっとしてって撫でているみたいにしかならない。違うの、って言おう。言わないと。おしっこの穴を舐められるのが好きな変態だって、大好きな竜児に思われちゃう。
「ち、違うの、りゅうじ……」
 大河の茂みに鼻をうずめるようにしていた竜児が目を開く。そんな光景も恥ずかしすぎた。大河は大きな瞳を開いたまま竜児の視線を受け止めるのも辛くて、つい目をそらしてしまう。
「おう、そうか。すまん……」
 大河の言葉は通じたのだろうか、竜児は謝ってくる。べつに謝らなくていいのに、って思う。
 竜児は大河のふとももを抱えたまま、右手の親指を恥丘の茂みの下に押し当てる。大河は震えて、なにをされるのか気になって、盗み見てしまう。きっと竜児にえっちなことをされると、教えるように奥のところが甘く鋭く疼いて、切なくなる。その時、竜児の親指が持ち上げるようにわずかに動いて。
「……っ!」
 大河は剥かれてしまった。もう裸なのに、もう一度丸裸にされてしまったかのようだった。大河は驚いて息をするのも忘れて、煌く瞳をめいっぱい大きくする。大河からは見えないけれど、そこがひんやりとした空気に触れて、剥き出されていることがわかる。竜児がそこをじっと見ていて、殺したいほど恥ずかしい。まだ熱くなれたのかと驚くほど顔中がほてって、耳まで熱い。そこはさっき包む皮の上から竜児の指にさんざん弄ばれたところ。大河の、クリトリス。
 そんなこと竜児にされるなんて、信じられない。さっきお風呂に入った時、ちゃんと綺麗にできていただろうか。でなきゃ死んじゃう。竜児はじっと見つめるばかりで、黙っていて、大河は怖くて何も言えない。あんな変なところ、竜児の目にどう映るかなんて。もし褒められたって、信じない。真珠なんて言ったら殺してやる。
 竜児の口が動く。お願い何も言わないで!
 ふっ。
「はあっ!」
 大河の身体が跳ねる。身体は快感が爆ぜたように反応して意識が薄れてしまうけれど、なんて……なんてなんてなんて屈辱。
 ふっ、ってされた。竜児にそこを、ふってされた。息を吹きかけられた。ふってふってふってふってふって!
 なんなの? 馬鹿にされたの? それともそれも愛撫なの? 優しい目をして微笑んだって駄目! もう決めた。もう決めた絶対決めた竜児を殺して私も死ぬ。
 大河は本物の殺意をこめて竜児を睨みつける。竜児が何を言ったって駄目。二人で死ぬのこれ決定。問答無用、聞く耳はもたない。
「大河……ここにキスしたい」
 もうやだ。なんなのこのカラダ。その言葉を聞いた途端、そこの奥がずきずきずきずきっ、って熱く疼いてたえられない。がくがく震えて止まらない。聞く耳もたないって何なの? 意味ないじゃん私聞いたし聞こえちゃったし。竜児が私のそこにキスしたいって。可愛がりたい、愛したいって。そこ変なとこなのに。頭がぼうってする。だって、キスなんて、
「キスなんて……っ」
 駄目って言わないと。だってずきずき止まらないんだもん。もう溶けてるみたいなんだもん。竜児は可愛いなんて言ってくれるけど今も変な声が出そうなんだもん。まだキスされてないのに。キスされたい。うっさい黙れ! もうこんなに溶けてるのにキスなんかされたら私だけ死んじゃう。そんなのずるい。竜児も一緒に死んでくれないんならやだ。やでしょ?! キスされたい。だから駄目って言うの。キスして。だから駄目って!
「だ、め……っ!!」
 い、え、た、よ……?
 竜児は大河のクリトリスにキスしていた。唇をすぼめてわずかに開き、唇にはさむように。ちゅっ、と。そして唇を離して様子を見る。
「……っ! ……っ!」
 大河は瞳をぎゅっと閉じて息も詰めて、竜児の頭を抱えるようにして何度も跳ねた。淡色の髪が揺れ、肌に結んでいた汗が飛び散る。

70◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 20:19:44 ID:???
 竜児に剥かれたそこを、キスされたのだった。ぜんぶしてね、と大河は言った。ぜんぶあげる、と大河は言った。でも、そこを剥かれてキスされるなんて、考えてさえなかった。でも何かをあきらめて、大河は嬉しかったのだ。そこも竜児のものになったんだって、思う。もっとキスしていいよって、思う。だってもう、そこも竜児のものだもん。でもやっぱり駄目かも。だって、そこ。
 ちゅっ。
「あうっ! そこ、すご……っ!」
 ……すごいの。一瞬、頭の中真っ白になる。身体が勝手にあばれちゃう。竜児が悪いの。竜児の唇が特別なの。気持ちいいとかそんな穏やかなのじゃない。触れたら熱くて甘くて中毒になる。もっとして欲しくなる。もっとして欲しくて、同じところを捧げてしまう。カラダが勝手に大河の股間を竜児に突き出してしまう。知らない筋肉が動いて、息するみたいにそこを何度も疼かせる。おねだりするいやらしい身体。なのに。
 なのに、竜児は、キスをやめてそこを見ているだけ。
「や、やめちゃう、の……?」
 大河は言ってしまう。言って、おねだりに聞こえたろうかと心配になる。すぐに、どうして竜児はやめたのかと不安になる。今までの時は、駄目と言ってもやめないで、最後まで……イクまで、可愛がってくれたのに。これが竜児の意地悪だったらいい。でも、もし。
 嫌になったのだとしたら。
 嫌になったのだろうか。やっぱり変なところだから。だってまだ竜児、褒めてくれてない。可愛いって言ってくれてない。綺麗だよって言ってくれてない。真珠みたいだ、なんて言ってくれてない。別な涙が瞳にあふれそうになる。要らないと思っていた言葉が今は欲しい。キスがだめなら息ででもいいから可愛がって欲しい。
 だって好きだから、怖いんだもん。
 とうとう竜児は、目をぎゅっとつぶってしまった。
「りゅ、竜児……?」
 大河は焦った。ぜんぶひっくり返ってしまう。息でもいいから愛撫が欲しくて、なんでもいいから褒めて欲しくて。そして今は、せめて見ていて欲しいのだった。でも竜児はぜんぶ止めてしまった。でもどうしたらいいのかわからない。怖い。もう、竜児の中断は意地悪なんかじゃない。もし、嫌になったのだとしたら……嫌にならないで、なんて、言えない。言っても意味がない。どうしたらいいのかわからなくて、大河は名前を呼ぶしかなくなる。
「竜児……」
「駄目だよ、大河……」
 苦しそうな竜児の声。
 駄目って、竜児は言った。駄目って、駄目って。やっぱりそうなんだ。とうとう涙があふれてしまった。瞳をめいっぱい拡げたのに、溜めておけない。嫌われたんだ、竜児に、あそこ、変なところ……大事な、ところ。身体からは力が抜けてしまっていた。涙を流す機械になった。何も考えられなくて、きっと私、消えてしまいたい……。
 違う。私、こんな子じゃなかった。しくしく泣いて消え入ろうとするような娘じゃなかった。変えられてしまった。竜児のせいだ。私は怒る子だったのに。どうしたらいいのかわからなくて怒る子だったのに。そうだ。
 大河は、怒る子。
「駄目なんて駄目えっ!」
「大河……!? うわなんでおまえ泣いてるんだ泣くな泣くな!」
 声に驚いて竜児が目を開けると、大河はものっすごい睨み目でしかもどばどば泣いていた。竜児は大河のももを抱えていた腕を解いて、焦って大河の身体を駆け上がる。顔に顔を寄せる。睨む大河に竜児の凶眼、はたから見れば竜虎抗争勃発、流血必死逃げろや逃げろのガンつけである。
「どうした大河、泣くなよ……」
「うるっさいっ! 嫌われたら泣きもするわ! なんで見ないのよせめて息吹きかけろ真珠とか言え! 駄目とか許さん変えた責任をとれ責任を! よっしゃなんか元気出てきたあっ!」
 大河が言うことは滅茶苦茶だった。
「おう、元気になったなら嬉しいが、おまえが何を言っているのかさっぱり意味がわからねえ」
「なら考えて! シンク! 間違えたら噛む! ……目をそらすなっ!」
 噛むなよ……と思いながら、何と言われたか記憶をまさぐろうとして、竜児が目を斜め上にそらすのも大河は許さない。大河はその間も竜児の目をねめつけ、間違えるなよ、間違えるなよ、と繰り返しては、こうだとばかりにちいさく並んだ綺麗な歯をカチンカチン噛み鳴らすのだから、何かを考えるにはこれ以下はない最悪の環境だった。

71◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 20:20:23 ID:???
 だがここは是非とも俺にお答えいただきたい。大事な大事な……大河、は。
「……嫌われた、とか言ってたな、おまえ」
「ちっ、正解……そうよ、あんた嫌いになったんでしょ私の……あそこを。だからキスもやめて……だから駄目なんでしょ……うぐぐ」
 泣くのがくやしくて、歯を食いしばって我慢するけれど、大河の瞳は星を揺らして涙を落とす。それでも一切ごまかされはしないと、視界に揺らめく竜児を睨みつける。けれど。
 竜児は笑いも、苦笑も、微笑みもしなかった。
 謝りもしなかった。褒めもしなかった。まして怒ったりもしなかった。
 ただ竜児は頬を赤くして、ぼそっと。
「おまえのを見てると、つながりたくてたまらなくなるんだよ」
「嘘っ! ……ん、ん?」
「おまえのにキスすると、気が狂いそうになるんだよ、俺は」
「んんん……? もうちょっとわかりやすく言って」
「おう……つまりだな、なんもつけないでいきなり、ハメ、たくなるんだよ」
「……そうすればいいんじゃない?」
「だから、俺はちゃんと避妊したいの。なのにそうしたらおかしいだろ? それじゃ俺が狂ったっていうことになるだろ?」
「……おお、なるほど」
 左手を臼に、右手を杵にして、大河はポンと手を打つ。
「わかったか?」
「いやちょっと待ってくださいよ……?」
 と、大河は今度は右の人差し指を額に当てて推理の構え。別に俺は犯人でもなければ、クイズも出しちゃいねえよな……? と、竜児は思わずにはいられない。
 やがて探偵大河は竜児に人差し指を突きつけて。
「……するとあんたは別に私のあそこを嫌いになってない、と?」
「と?じゃねえ。嫌いなわけねえじゃねえか」
「『嫌いな、わけねえ、じゃねえ、か』?……嫌い、否定、否定、疑問……難しいっ! 好きか嫌いかでどうぞ!」
「好きだよ」
「……ほんと? あ、じゃなくって。あの、特にその、最後にキスしてたあたりなんかは?」
「最後に、って……す、好きだぞ?」
「おお……っ。ちなみにたとえて言うと何? 比較的いい感じのが嬉しいんだけど。宝石とか素敵なのがいい」
「大河……おまえは一体何を言って」
「あーっとひとつ忘れてたあ! こっち大事かもこっち優先で。ねぇ竜児、何が駄目なの?」
「おう……すまん、今度は俺だ。もうちょっとわかりやすく言ってくれ……」
「察しの悪いボンクラねえ……だからさ、竜児が私のあそこにキスするのやめて、駄目だ、とかなんとか言ったでしょ? あれ何?」
「そこに戻るのかよ!? ……だから、俺がおまえのにキスするだろ?」
「ふんふん」
「おまえは可愛い声とか出すだろ?」
「ふんふん……っ」
「おまえは可愛く震えたりするだろ?」
「ふっ、ふんふん……っ」
「すると俺の、が、すごく勃起するだろ?」
「……そ、そうなの?」
「そうなの。……すると俺はまさにそれをハメるところにキスしてるわけだろ?」
「……っ」
「唇で触れているところ、目の前がそうなわけだろ?」
「……」
「そんなとこにキスしてたら我慢できなくなるだろ? 議論の結論も出てねえのに」
「……」
「だからキスはしたいけど出来ない、だからもう駄目だ、と。ほらつながった」
「……」
 ところどころで律儀にふるふる震えたりしながら、大河は竜児の説明をおとなしく聞いていた。毒気は完全に抜けてしまっていた。あそこが嫌われたわけではないと知って、嬉しかった。けれど。
 元気も消えてしまっていた。竜児にそんなに我慢させていたということも、知ってしまったから。

72◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 20:20:59 ID:???
「そんな顔するな」
 竜児はそれでも微笑んでくれる。竜児の我慢を大河は勘違いして、ドジな早合点して、変な難癖に付き合せたのに。
「嫌われたなんて思ったのか、バカだなおまえ……」
 バカと言われて、やっと大河の気持ちは少し軽くなる。竜児は頭を撫でてくれて、大河の額にキスしてくれたから、やっと大河も唇をむにゅむにゅ波に結んで、微笑むことができる。やっぱりこのひとが世界で一番、私を上手に可愛がってくれる、って思う。
「もっといっぱいキスしたかったよ、大河。おまえのに」
 大河はつい竜児の唇を見てしまう。思い出して、すぐにへその下がずきずきと甘く疼き出す。顔がほてって、つい鼻息を漏らしてしまう。
「おまえはどこもかしこも可愛くて……可愛すぎて、俺にはもったいないくらいだ」
 はっとして、大河は瞳を大きくする。せっかく竜児が止めてくれたのに、また涙があふれてしまう。なんて泣き虫。
「そんなことない! 何度言ったらわかるの!? 竜児じゃなきゃだめだもん! 竜児じゃなきゃ、私……っ!」
 大河はとうとう絶句してしまう。いっぱいいっぱいいっぱい伝えたいことがあるはずなのに、胸につかえて出てきてくれない。どれも的外れに感じてしまう、あいまいな言葉の雲みたいなところから、ようやく思い浮かんだことを、大河は唇をとがらせて、ひとつ呟くのがやっと。
「……何度もなんども好きになるの、竜児だけだもん……」
 竜児は涙で頬にはりついた大河の髪を指で梳き取って、親指で目元を拭ってくれる。
「あんまり泣くな、頭痛くなるぞ」
「あんま泣かせんな、竜児のバカ」
 言って、悪口だけは快調なのに、って、大河は思う。そして思いつくのはぜんぜん関係のないことばかり。
「ねぇ竜児。のど渇いた」
「おう、そりゃそうだろ。お茶とってやる」
 そうしてよつんばいになってペットボトルに手を伸ばした竜児を見て、また大河はそれとあまり関係のないことを思いついたから、言ってみる。
「あのね、竜児」
「おう」
「ゴムつけて、していいよ」
 竜児の手からペットボトルが落ちた。

(11章おわり、12章につづく)

73高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 20:52:36 ID:???
やっぱり凄いわ。竜児がちゃんと竜児してる。
意味はエロパロ住人ならわかると思うw

74高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 21:08:29 ID:???
はい新作きたー!!

結論:エロスは愛

75高須家の名無しさん:2009/06/18(木) 22:50:18 ID:???
愛があってこそのエロス

76◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/18(木) 23:58:30 ID:???
>>73
素敵な褒め言葉をありがとう!
どこまでも竜児らしく大河らしく、というのが目標なので、
最高の褒め言葉かも。

>意味はエロパロ住人ならわかると思うw
これは、かつてそんな議論とかがそこであったりしたとか……?

>>74
ありがとう!
エロと愛って分けちゃいけないと思うのだけどね……。

エロがあるから読まないと斬り捨てるには、ちょっとはもったいないようなことも、
書いているつもりなんだけどなー……ばっさばっさ斬られましたがw

>>75
ありがとう!
愛がなかったら、あそこらへんは神経学的にはわりと鈍感な部分だった
ような気がするので、それ相応の快感しかないですよね。

愛のかわりに心理的な支えになるのが妄想でもよかったりするところがアレですがw

77高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 00:05:25 ID:???
大河と竜児だからこそだよ

78◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 00:12:51 ID:???
そうだ、どなたかわからないけれど、
可愛い大河のAA付きで本スレに告知出して下さった方、
ほんとうにありがとうございました!

大河のAAって可愛いのが多くていいよね……。
ある意味一番大事なはずの、スレの看板にも使われている
竜児と大河のAAの出来が微妙なのが、ときどき思い出したように
くやしいです!! だが嫌いにはなれない……

79高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 00:17:12 ID:???
>>76
いやー、他のSSで中田氏してるのとか見るとね。違うだろうと。
それを言っちゃ同人誌一般もだけど・・・。

80高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 00:50:36 ID:???
>>78
あれ前スレでまとめ人が使ったやつそのままコピペしただけだお
あとスレトップのAAは顔文字板のアニメAAスレで作られたやつで
アニメで大河が昇降口で北村におーはーってやったやつ
もう11スレも続いてるし変えると文句言うやつ出そうなのでそのままにしてるんだが
案外あのスレの住人なら意見を募れば変えても大丈夫そうな気がする
良くも悪くも2chに毒されきってない一般の人間が多いからなあ

あとJane Style導入したとのことなのでこれあげる
ttp://sakuratan.ddo.jp/uploader/source/date113243.zip

これは解凍すればわかるけど本スレのJane用datとidxファイルだ
まず一度Styleを終了させてJane.exeをインストールしてあるディレクトリに
「Logs」ってフォルダがあるからそこの中にある2ch→漫画小説等とあるから
その中のアニキャラ(個別)ってフォルダ内にファイルをぶちこんでください

参照画像 都合によりJane Viewでの表示だがJane系なら全部適用
ttp://sakuratan.ddo.jp/uploader/source/date113244.jpg

これでJane上で過去スレを読めます
余談だけどログ保存ディレクトリは設定で変更可能

さらに余談だけどJane用のdatファイルはなぜかギコナビでも読めます

>>79
正直ゴムはつけて欲しいですwwww

俺の妄想設定だと竜児は絶対に安全日にしかセックスしない上に絶対ゴム装着する性格のはず!
そして初めての生性交は結婚してからで目的も赤ちゃんを作るためのはず!

81◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 02:22:57 ID:???
>>77
大河と竜児のキャラを大事にしたいところ。
てか別人になってると私がつまんないんで。

>>79
中田氏させるにはいろいろ用意周到な準備がないと
特に竜児のキャラが割れて、ただの同名別人になりそうですもんね。

まあ、大事なのはたくさんとらドラ!SSが書かれることなので、
ハードルは低いほどいいと思ってるんですが。

>>80
なるほど、おっはーが元とは気づかなかった。
教えてくれてありがとう!

ログもありがとうございました。ぶちこんでみました。
問題は見れないということ……_ノ乙(、ン、)_見方がわからなくてw

82高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 09:32:22 ID:LOqeDkDQ
>>81
datとidx両方入れた?
datだけじゃスレ一覧に表示されないよ
あとファイル入れるディレクトリ間違えてるとか
まさか解凍しないで圧縮ファイルだけ入れたとか言わないでしょうね

83高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 09:32:39 ID:LOqeDkDQ
>>81
datとidx両方入れた?
datだけじゃスレ一覧に表示されないよ
あとファイル入れるディレクトリ間違えてるとか
まさか解凍しないで圧縮ファイルだけ入れたとか言わないでしょうね

84◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 11:12:41 ID:???
>>82
そこらへんは出来てます。素直なんだぜ。

で、Jane立ち上げて、ログを見ようと
板一覧>漫画・小説等>アニキャラ個別
とクリックして、リストを出すと、
今現在2chからひろえるログだけが出て、
フォルダに入れた頂いたログが出ない←イマココ

とかまあ。ていう。
アドバイスストレスなどお感じにならず、
のほほんと教えてやって下さいましまし。ラーメン二郎(食べたことない

85高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 11:24:39 ID:LOqeDkDQ
午前中なんだから仕事しろよw>俺

>>84
ログ保存ディレクトリはデフォルトのままなんですね?
「既得スレ」でソートしても出ないなら現行スレの過去ログリンクを開いてみて
一番楽なのは現行スレにある過去スレリンクを範囲選択→右クリック→選択範囲のURLを全て開く
でやってみて

86◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 11:28:28 ID:???
◆eaLbsriOasです。暑くなるのが嫌なあなたに贈るSS。2レス使用。でも。
アツくなれよ! 代理投稿歓迎。

・本当はこわいの

「……」
「……あ」
「なに? 見つけたの? どこどこどこ?」
「この電車が通る直前のとこ。踏み切りのむこう側。待て、今リプレイくるだろ……来た来た。
 ナレーション怖えよだから……あ来た!」
「え、なに、どこ……っこわっ!!」
「こぉわっ!! こえー! ははは、笑っちゃうな!? あーこわ! ははは」
「……」
「ん? どした大河?」
「……私、おしっこ」
「ブッ! ゲホッ! だ、だからおまえ宣言すんのやめろって言ったろ!? 女子が!
 おまえ最近幼児化しすぎだぞ!?」
「……」
「……まあいいよ、行って来いよ。DVD止めといてやるから、耳もふさいでるから」
「うん……」
「……どうした? 早く行って来いって」
「……ついてきて」
「おう……ってトイレにか!? ままマジでか!? ……っは〜ん、わかったぞ、おまえこわ……」
「……」
「わかった言わねえわかった! 睨みながら泣くな! な!? ついていくから!」
「……うん」
 とことことこ……
「ったく、ウチじゃ3メートルもねえのに」
「……」
「3メートルも……だめなのか? だめなんだな? だから睨みながら泣くなって。
 わかった行く行く……ほれ、来たぞ」
「……」
「おう、どした。早くドア閉めろ」
「……閉めない。後ろ向いてて」
「っ!? マジか!? トイレのドア開けとくのか!? ……ま、じ、なんだな……?
 はあ……わかった。ようし後ろ向いた! 耳もふさいだぞ!」
「……」
「っておまっ!? 背中つっつくな! マジでびびったぞ!?」
「だって耳ふさいでるから」
「おう、まあ、そうか……しょうがないか……で? 今度はなんだ?」
「こっち向いてて。目つぶってて」
「うっへええええっっっ!? なんでだよっ!? 俺の背中見えてるだろ! いいじゃねえかよ!?」
「だって振り向いたら竜児じゃなかったらどうすんのよっ!? こわいでしょ!?」
「んなわけあるか!! あ、あー……あああ……わかった。お願いだからその顔やめてくれ、な?
 泣くなよ、それ弱いんだよ……」

87◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 11:29:04 ID:???
「泣いて、ない、もんっ……ね……竜児、お願い……」
「あーもーだめ! だめだ。わかった。まいった。負けた。なーんでも言うこと聞く。
 なーんでも叶えちゃう。……よし! おまえの方、向いた! 目も、つぶった! 耳も」
「ありが……」
「ふさいだ! ん? なんだ? なんか言ったか? いいんだな? ……はーもう喋っちゃう!
 竜児くん喋っちゃうわ! 大サービスだ! ったくおまえさあ、俺のこと男だと思ってねえだろ?
 思ってなさすぎなんだよ! 気づいたけど心臓すげえぞ俺? どくどくどくどくって早すぎ!
 やばいわ! さっきのDVDよりよっぽどこっちのがこええよ! あーいや、こわくない! 
 こわくないぞ大河! 俺ここにいるからな! 見えてるだろ!? 大丈夫だ! 大丈夫だぞー?
 ……おーい、大河? ……終わったかあ? やべえな。合図決めんの忘れてた。はあ……
 大河ぁ、終わったらさあ、適当に俺の身体つっついてくれよ。っとやさしくな! やさしくだぞ?
 ……ん? なんだ。おまえ今、胸のあたり触ったか? 触ったんならもっかい頼むわ。
 ……触ったな? 触ったな? やさしすぎんだよ。極端なんだよおまえは。……よし触った!
 絶対触った! 目ぇあけるぞ! 耳も……おう、大河。近いな……」
「……なによ」
「おまえ、顔、あか……いいやなんでもねえ! まったくなんでもねえ!
 おまえは怖がっちゃあいねえ! ……そうだ、胸触ったのおまえだよな?」
「……」
「え? おまえだよな? 私じゃないとか言うなよマジで! こええから! そういうのナシ!」
「……うん、私」
「はー……よかった。そうだよな幽霊なんかいるわきゃ……って、げえっ!?
 なんか濡れてるぞシャツの胸んとこ!? こ、ここここだよな? これおまえだよな!?」
「うん、そう」
「ふー……そうか、ならいい……いくねえよ! なんで濡れてんだよ!?」
「お礼」
「はあ? お礼?」
「そ、ご褒美」
「ご褒美? ご褒美でなんで濡らすんだよ? わっけわかんねえ……これ何の水だ?」
「……手洗う水」
「うわっ、きったね!! なにがご褒美だよ!? っざけんな! ……ったく……笑いやがって……」
「竜児だって、笑ってるじゃない……さ、とっとと、そこどきなさいよ駄犬」
「はあ……はいはい。戻ろもどろ。ちゃんと手拭けよおまえ。……ったく、どっこいしょとか
 言っちゃうわ。なんかすげえ疲れた……おーい大河。どした?」
「なんでもなーい、待っててえ?」
「……おまえ、なんでまたもう一回手洗ってんだ? ……あ、くっそ。嘘か。
 手洗いの水じゃねえんだな、これ。なんなんだ……?」
「……な、に、してんのあんた……っ! そこ、嗅いだのっ!?」
「おう、大河。おまえ嘘ついただろ、これ……どうした大河? なんで、突っ立ってんだ?
 唇なんか……押さえて……」

88高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 11:54:22 ID:???
JaneSでしょ?
datとidx入れたら
11スレでいいから過去スレURLクリックしてみ?
一度読み込まれないと一覧に出ないぞ

89◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 12:34:07 ID:???
>>85
仕事中なのにありがとう!

>>88
ありがとう!

匠たちの指示通り、過去スレURLをクリックして開くと……
なんということでしょう、
そこには、dat落ちしていたはずの過去ログの全貌もあらわに。

大河と竜児の妄想SSがあますことなくちりばめられた過去ログは、
まるで宝石箱のよう。不毛な議論などひとつも無いのです……

真新しい過去ログに感動する私の前に、匠たちが現れます。
「どうですか?」「気に入って、頂けましたか?」
「ありがとうございます! 祖父のSSまで残して頂いて……!」
匠たちの手をとり握手する私。
子どもたちははしゃぎ、祖母は涙をこらえられないのです……


おわれ。

90高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 12:39:49 ID:???
>>85の操作の参照画像
ttp://sakuratan.ddo.jp/uploader/source/date113265.jpg

91高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 12:40:35 ID:???
>>86-87
涙をふいたのですね
わかります

92高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 12:41:13 ID:???
>>89
お前も仕事しろよw

やっと見れたか
良かったなり

93高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 13:43:13 ID:???
>>89
そのボキャブラリを仕事に活かしてくれ頼むw

94高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 13:50:28 ID:???
仕事したら負けかなと思っている(24歳・ニート)

彼女を泣かせたら負けかなと思っている(17歳・主婦高校生)

べ、別に泣いてなんかいないんだから!(17歳・手乗りタイガー)

95高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 13:56:02 ID:???
結婚したら負けとか思わなきゃやってらんねえ(30歳・教師)

96高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 15:44:11 ID:TWnINBRQ
>>89
童話語りワロスwwww

97◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 19:30:21 ID:???
>>90
ありがとう! 一足遅く、ひとつずつ開いてしまいまんたが(ノ∀`)

>>91
意地悪さんめが! まあでも、涙でもわりといいよね。
顔面押し付けることになるので触覚で気づかれないようにするのは難しそうだけど。
ともあれコメありがとう!

>>92
仕事はしているつもり。つもりだけなら負けないぜ!

>>93
活かしているつもり。つもりだけな(ry

>>94
泣かせると負けます。

>>95
だけどいつかは、ちゃんとそれを見つけられる。
そういう夫婦が出来ている。

>>96
ありがとう! しかもナイス指摘。
元ネタはテレ朝系列の住宅改造番組「大改造!!劇的ビフォーアフター」の
ナレーション。とらドラ!原作小説4巻の冒頭にも使われたネタですが。

しかしそのナレーション自体が元にしているのは確かに童話の語りですね。
言われてむしろ初めて気づいた鈍感さん☆

98高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 20:06:11 ID:???
>>97
画像大量に開くときこの選択範囲全部開くコマンドは重宝する

99◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 21:03:58 ID:???
ほいほい、「竜虎並び寝る」12章、いきます。
ついにふたりは秘境ギシアンにたどりつくことができるのか!?

本スレへの告知誘導のみ、よろしくお願いいたします。

--テンプレ--
◆eaLbsriOas氏のSS「竜虎並び寝る」12章、投稿されました。
ドエロコメですので、読みたい方だけ
まとめサイトの新避難所のリンクから、どうぞ。
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100◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 21:05:13 ID:???
  12

「うっふ〜ん」
「……」
「あっは〜ん……」
「……」
「りゅ〜うじぃいいいいん……どう、上手くいった?」
「……いや、だめだ。これもう使えねえな……」
 がっくりと竜児は肩を落とす。ついでといってはなんだが股間の手乗り竜児もしょんぼりしている。そんな竜児の手には裏も表も無くぐにょぐにょと丸まって使えなくなったコンドーム。これで2個目であった。
 ゴムなんて当然のごとく今まで一度も着けたことなどない絶賛童貞中の竜児である。
 ゴム着きで挿入して良い――大河の許しをついに得て、竜児はドキドキワクワク、意気揚々と、装着すべく箱を開け、はやる気持ちを抑えながらしっかり説明書を読んだ。それでもその時までは股間のミニ竜児だって意気揚々としていたのである。ところが。
 袋を切ってゴムを手に取り、竜児がいざ勃起した自分のモノへと乗せてかぶせようとすると、なんだか上手くいかないのだった。上手く着けられないから萎えるのか、萎えるから上手く着けられないのか、とにかくと焦れば焦るほど、萎えてしまって失敗する。後に残るゼリーでべたべたするゴムの情けない残骸がまた、おのれ自身のさまを思わせて、竜児にはひときわ物悲しい。
 そこで「よし、私もひと肌脱ぐわ!」と協力を申し出たのは、ひと肌も脱ぐものとてないまっぱの恋人、大河であった。「私の性的魅力であんたのおちんちんを勃起させ続けてあげる! それはもうビンビンにね!」と、恋人の口から聞くにはいささかキツい表現ではあったが、それでもそんな大河の気持ちに竜児は素直に感動していた。「おう、頼んだぞ!」なんて、竜児も元気に応えたのだった。
 そして、その結果が、さっきの「うふ〜んあは〜ん」なのだった。棒読みではないにせよ、そんな如何ともしがたく紋切り型のヨガリ声を上げながら、竜児の前で大河がとるポーズもまた、どこかのギャグマンガにでも出てきそうな紋切り型のセクシーポーズ。この上さらに大河の性知識の仕入先まで心配することになった竜児である。
 こいつのする「協力」ってそういえばそんなだったな……と、お互いに別の恋を応援しあっていたあの頃の大河クオリティを思い出す竜児は感慨もひとしおだが、そんな感慨では当然、勃起しないのである。今や大河と相思相愛、大河にメロメロ(つられて紋切り型)の竜児だから、やばいエロ人形みたいになっている大河を見ても、こいつすごく可愛い、くらいは思う。写メで仮撮りしまくりデジカメで永久保存したいとも思う。思うが、それもやっぱり勃起の方向からはななめにズレているのだった。
「……なあ、大河。協力してもらっているところ悪いんだが、せめてその『うふ〜んあは〜ん』だけでもなんとかならないか?」
「なによ。私にこんな恥ずかしいことさせといて、その上注文するって言うの? あんた何様のつもり? 婚約者? 恋人? 私のご主人様?」
「おう……『様』はともかく、だいたいそこらへんではあるようだぞ」
「ちっ……どうすればいいわけ」
「本当にありがたいと思ってるんだ、大河。だからそうヘソを曲げるなよ……なんていうか、いつものおまえの可愛い声でいいんだが」
 竜児の言った「可愛い」の言葉に律儀にふるふるして、でも大河は不服そうに言い張る。
「じゃあさっきのでいいんじゃない」
「おまえは『うふ〜んあは〜ん』なんて言ってなかったぞ……?」
「そんなこと言われたって、よくわかんないもん」
 言って、大河は薔薇色の唇をつんと蕾にとんがらせる。

101◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 21:05:51 ID:???
 そういうもんなのか……と竜児はひと思案して、
「おいで、大河」
 優しく声を落として、手をさしのべる。
 なにやら大河は急に頬を上気させて、唇は蕾からむにゅむにゅと波形に、照れたように瞳も伏せてしまう。ああ、この顔なんだよな……と竜児は思う。
 片手で胸を隠しながらにじにじと膝歩きしてきた大河を、竜児はその大河の熱い両腋に手を差し入れ、ひょいとお人形のように持ち上げて、あぐらをかいた自分の膝に横座りさせる。ちいさな尻まで隠すほど長い大河の淡色の髪が、竜児の太ももをふわふわと撫でて心地よくくすぐる。
 いったいなにがそんなに嬉しいのか、さっきまでのお冠はどこへやら、大河は頭を竜児の首もとに、ごんすりすり……と頭突きアンド擦りつけの猫コンボで懐いてくる。もちろん竜児だって嬉しいのだが。
「大河、ちょっといいか?」
 言って、竜児は手ブラをしている大河の細い腕をそっと掴む。見上げてくる大河の、長い睫毛に縁取られた、鳶色がかった煌く瞳を、竜児は夕空に向ければカラスをぼとぼと落とせそうな禍々しい眼光で眺める。優しく見つめ返しているのだ。もちろんそれは大河も知っているはずで、コクンとうなずき、
「あんまり見ないでよね……」
 そう言って大河は、胸を隠す腕を解く。薄く可愛くふくらんだ、ミルク色の胸があらわになる。竜児は大河の華奢というにも細い腰を抱き寄せて、反らせたその胸に顔を寄せる。予感に震える大河の、つんと上を向いた桜色の乳先をそっと唇に含む。
「あっ」
 竜児は胸から顔を離して、大河の顔を見て言う。
「その声だよ、大河」
「えっ……よく聞いてなかった、から……もう一回……」
 竜児は微笑んで。
 ちゅっ。
「あっ!」
 ふたたび、腰を跳ねさせる大河の顔をうかがう。
「お、覚えるから……もう一回……」
 ちゅっ、ちゅっ。
「あっ! あっ! りゅうじ……っ」
「その声……その顔だ。可愛いよ、大河……覚えたか?」
「……も、もうちょっと練習するから……もうちょっと……」
「……おまえわざとやってるだろ」
「ん……えへへ」
 途中からおねだりしていた大河はバツの悪そうに舌をぺろっと出して照れ笑いするが、
「あっ、竜児!」
 と、竜児の股間を指さすや、ぴょんと竜児の膝から跳び降りて、
「わーい、勃った勃った! 竜児が勃った!」
 にわかにお下劣なアルプスの少女・大河になっていた。
「さ、竜児、早く!」
「おう!」
 はしゃぐ大河にうながされ、竜児はこれが最後と三つ目の袋を開けて、ゴムを装着しようとする。
 ああ、だが、しかし。
 先端に載せて、輪のように丸めてあるゴムの端を竿に沿って降ろそうと焦るほどに。
 膝をそろえて屈み、わくわくと覗き込む大河の目の前で。
 しくじって、やがて竜児の男根は硬さを失い。
 しおしおと、おちんちん形態に。
 オゥマイガッ……。
 ジーズ……。
 シッ……。
「……」
 がっくりと竜児は肩を落とす。振り出しに戻っていた。
 振り出しどころか、箱に入っていた最後のゴムが死んでいた。
 終わり、なのだった。

102◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 21:06:34 ID:???
「竜児……」
 首も折れよと俯いた竜児の顔を、下から覗き込んでくる大河の、心配そうなツラがまたこたえる。まだ失望や軽蔑を向けられる方がマシだった。何も面白いものなどないのに、細かく吐くように竜児は笑っていた。
「はは……いいんだぞ、大河。罵ってくれて。いつもみたいに、言ってくれよ。このグズ、ノロマ、不器用……不器用……はは、おまえはすごいや。俺なんにも思いつかねえ……」
 竜児の顔は正真正銘、ひどい顔であった。歯を軋るほどに噛み締めた唇は引き攣れ、涙をこらえて凶眼はゆがみ、星の断末魔にも似た滅茶苦茶な光を四方八方へと放つ。一人の男の思いが遂げられなかったのなら、全世界はそれに対して涙すべきだ、そしてこれ以降の歴史において一切の詩を歌うことは野蛮である……なにがなんだかよくわからないが、ものすごくそんな感じだ。
「竜児、泣かないで……」
「大河……な、泣かねえ。泣かねえぞ畜生……俺は幸せなんだ、おまえがいるから。最高の、幸せ者なんだ、俺は。泣くわけがねえ。決めたんだ、俺は。これから先、あとは、もう、おまえのためにしか泣かねえ、って。……でも、畜生……最後だった。最後を駄目にした、俺は。俺が、駄目に」
「最後……?」
「最後の、ゴムだった……駄目にした。大河……」
 もう限界だった。両手で顔を覆う前に、せめてひと目と竜児は揺らめく視界に大好きな大河を捕らえて、
「大河、俺、おまえとつながりたかったよお……っ!」
 はらわたを搾るようにして言った。そして顔を覆おうと、竜児は手を持ち上げようとするのに、手は震えて、どこまでも馬鹿にするように不器用になって、満足に持ち上がりもしないのだ。
「最後じゃないよ、竜児……」
 大河はそう言ってくれる。また今度がある、そういうことだろうか。もちろんそうだ。また今度がある。しかし愛しい女のその約束すらも、とてもすぐには慰めになりそうもなかった。
 また今度はある、だがそれは今夜ではない。
 それが我慢ならないほどに、自分を追い詰めてしまった自分を竜児は感じていた。その時。
 大河はその、震える竜児の手の上に、白くてちいさな両の手をのせるようにして。
 だけど、その大河の両手のひらは上を向いていて。
 そこには、箱が――ゴムの箱が、二つ、も?
「ほら、竜児。まだあるよ? まだ、いっぱい」
 綺麗な顔を子どものようにあどけなくして、大河は教えてくれた。
「あ、ある……のか?」
 うんうん、と大河はうなずく。
「あのね、いっぱい買っておいたの。棚にあるだけぜんぶ買ったの。竜児が失敗するなんて考えてなかったけど。念のため……でもなくて。ていうかなにも考えてなかったの。いっぱいいっぱい買わなきゃ、って、それだけしか覚えてない」
「そうか……そうか……そうかあ……」
 そればかり繰り返して、竜児はもう、鼻と口からゆるゆると息を吐くばかり。
「ごめんね。意地悪するつもりなんてなかったの。竜児がどうしてそんなに落ち込んでるのかわかんなくって。最後、って言うの聞いて、ようやくわかったの。……えっと、私どうしたらよかっ」
 言葉尻ごと、竜児は大河を抱きしめていた。
「よかった……よかったああああああああ……っっっ!」
 大河のつむじに頬を寄せて、安堵の息をこれでもかと吐きかける。唐突に掻き抱かれた大河は戸惑って。
「お、おこってない?」
「怒るもなにも……もう、おまえ……っ。よかった……うああ、すげえよかった……」
 助かった、助かった……竜児は馬鹿みたいに繰り返す。

103◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 21:07:41 ID:???
「助かった……?」
「そーうだよ、助かった……大河……でかした……おまえ最高だ……」
 安堵のあまり息切れしながら竜児は言葉を吐き出していた。
 望みがつながった。今夜、大河とつながるという望みが。エロガキと呼びたければ呼べ。発情しやがってと罵りたければ罵れ。セックスしたいだけだろうと嘲るなら嘲れ――そう竜児は思う。
 ただつながりたいという思いだけで、竜児と大河はここまで来たのだった。それだけはふたりで見失わないようにして、眠れば消え去る一夜を長く引き伸ばして、初めて得た熱く儚い炎を絶やさぬように、炎を手と手で覆い守るようにして、ふたりはここまで来たのだ。
 涙の雨にも負けず、悲しみの風にも負けず、シラケの雪にも混乱の狂熱にも負けないよう、何度も互いのカラダに火をともし、欲しがり、怒りも微笑みに変えて、ふたりでここまで来たのだ。生半可な欲望なら、未熟なふたりがいつ転げ落ちてもおかしくはなかった狭い谷だった。ふたりが育ててきた互いへの想いが、心に刻んだ永遠の誓いが、支えてくれていなければ消えてしまう杣道をたどって、ふたりはここまで来たのだった。
 心に刻んだ永遠の誓いを、身体にも刻むために。なぜなら。
 なぜなら――
「竜児……」
 竜児の心を呼び止める声がした。
 暗がりに差すひとすじの日の光に咲いた花のように、大河の顔がそこにあった。竜児が自分に気づいたことを喜ぶように微笑んで。そして大河は薔薇色の唇を寄せて、
「大河……」
 竜児の左目の目蓋に、右目の目蓋に、キスをする。お返しよ……なんて言って、少し驚いている竜児にまた笑いかける。幸せそうに、目を細める。はたして、
「……ありがとうね、竜児。私、幸せだ……」
 そう、大河は言うのだ。言って、目蓋を伏せて、薄紅に染めた頬に長い睫毛の影を落とす。
「ふたりとも初めてなんて、どうなるんだろうって思ってた。もっと滅茶苦茶で、慌てて、少し乱暴にされて、痛くて、気まずくて……でもそれでもいいのって……相手が竜児だから、それでもいいことなんだって……好きなんだから我慢しなくちゃ、って……そんな感じかもって、思ってた」
 そこで大河は言葉を区切って、言葉を捜すようにして。伏せた大きな瞳が見つけたのは、言葉ではなくて、竜児の手。
 大河はその、竜児の手をとって、大切なもののようにそっとキスをする。愛しそうに、頬を寄せる。
「竜児の手……お料理してくれる手……お裁縫、してくれる手。髪を梳いてくれる手。頭を撫でてくれて、手を握ってくれる手……私を、抱きしめてくれる手。優しい、手……私のことを知ってくれてる、優しい手……」
 そして大河の身体が気づいたように震える。
「……びっくり、しちゃった。ちっとも乱暴じゃなくて、少しも痛くなくて……いっぱい撫でられて、頭がぼうって、なっちゃう。竜児ったら、めちゃくちゃ緊張してるくせに……私のこと一生懸命、可愛がってくれて……口も……」
「口?」
 問い返す、まさにその竜児の口もとを、上目遣いに大河は見つめる。
「ん……そう。その口も……竜児の口も、大好き。素敵なこと、いっぱい言ってくれるの……びっくりするくらい」
「……俺、なんか、素敵なことなんて言ったか?」
 聞いて大河は、こらえきれず、ぷっと吹き出す。クスクスと笑う。なんとか笑いを飲み込んで、はー……と一息をつける。
「あんたって……ヤバイね、竜児は。これからは気をつけさせないと、この女こましさんには」
「スケコマシって、おまえね……俺がモテない奴だってことくらい、おまえなら十二分に知ってるだろうに」
「……ま、そういうことにしといた方がいいか」
 ふたたび吹き出しそうになるのをこらえるように顎をしゃくって、かわりに大河は不敵な笑みを竜児に向ける。
 まだ何か言い返そうとして息で胸を張らせた竜児は、けれど口を噤み、目も伏せて胸も落として、あきらめたように呟くしかない。
「仕方ねえ……おまえのそんな意地悪そうなツラだって、もう俺は気に入っちまってる」
 大河の口もとから笑みが消えて、入れ替わるように頬の白に朱が混じる。瞑想するように瞳を閉じるや、ぶつぶつと呟いて、
「……やばい、ほんとにやばい、やばいやばいわこいつ、早くなんとかしないと……ええいっ、とにかく!」
 いきなり大河はくわっと瞳を見開く。
「竜児、私は幸せよ!」
「おう! 俺もだ、大河!」

104◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 21:08:19 ID:???
「さあつながりましょう! 竜児!」
「おう! つなが……つなが、って……いや、つながりたいんだが、これじゃあ……」
「大丈夫! 一生懸命ゴムをつけようとして連続失敗するあんたも素敵よ!」
「おう、そうか!……そうかあ?」
「そうなの。さあ、がんばってゴムつけよう! 私も協力するから!」
「おうっ、またやってくれるのか!?」
「あったりまえじゃないっ!」
 竜児は感激していた。とてもことに及ぼうとしている男女の会話とは思えない勇ましさだったが、それでも感激したのだ。
 行為を始め出したころとは違って、もはや中断はないと信じて、怖れてはいなかった竜児だが、男がこんな情けない事態に陥っても白けることなくノリノリで臨んで来てくれる女、大河の不屈の気概が、ありがたくて嬉しくてならない。やっぱり大河も俺と心を同じくしてくれていたんだと再確認。俺たちゃ同志だ、一心同体だ、なんて感動する。
「よし! じゃあ頼んだぞ、大河!」
「まっかせとき!」
 そう言って大河は、やおらむんずと竜児のふにゃちんを掴んだ。
 驚きすぎて凶眼も白黒させ、声もあげられない竜児を一顧だにせず、大河は残る片手で頬にかかる前髪を押さえ、口をあーんとめいっぱい拡げて――
 食われる!?
 逃れようと身をよじる竜児の自己防衛の本能よりも、大河の猛獣としての本能の方がやっぱりどうにも速かった。声が出るのも遅すぎた。大河は竜児のふにゃちんを、
「ひっ!?」
 ぱくっ、と。
 予想外、であった。てっきり竜児は、大河はまた「うふ〜ん、あは〜ん」の改良版で協力してくれるつもりだとばかり思っていたのだ。ちっとも一心同体なんかではなかった。いや、咥えられているから同体ではあるかもしれないが、むしろ二心なのだった。だが、しかし。
 痛みはなかった。最初の恐怖の時も過ぎ去って、よくよく下半身の感覚を確認すれば、大河はちゃんと歯も立てず、ただ竜児のを口に含んだだけなのだった。大河の口のなかは暖かくて、ぬちゅぬちゅと濡れた感じがして、驚いたからかまだ勃起前だからか、鋭い快感こそないが、不快なわけではもちろんない。そこだけをぬるいお風呂につけたらこんな具合だろうか、なんてつい竜児は思ってしまう。
 ともあれ大河を信じたいものの、一抹の恐怖というか不安を拭い去れない竜児は、あぐらをかいたおのれの股間の上に大河のふわふわの髪が生えて豊かに広がっているという、地球大紀行ばりの神秘の光景を眼下にしながら、神秘の根源たる大河のつむじに向かって、一応言っておくことにする。
「い、痛くするなよ……あと無理もするな」
 お約束、であった。
「はいひょうふひょ、はんほひおふふふはは」
「……大丈夫よ、ちゃんと気をつけるから、か?」
 大河はわずかにコクコク頭を振る。
 さすがの竜児は驚きもしなかった。咥えたまま喋るな、とも言わなかった。大河とはこういう奴なのである。舌の上で竜児のふにゃちんを躍らせて、しかしお見事に歯で痛めることもなく、大河は咥えたまま喋ったのだった。
 けれど大河は竜児のその沈黙を全肯定の意味とでもとったものか、なおも、
「ひひはは、はんふぁふぁひうひうひへへ」
 咥えたまま喋りまくりである。
「わかった、俺も集中するから。もうおまえも咥えたまま喋らないでくれ……」
 ぐっ、と親指を立て、それにサムズアップで返す大河。

105◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 21:09:24 ID:???
 まだ竜児のが小さいのもあって、大河はそれを根もとまで咥えてくれていた。大河の鼻息が、薄くはない竜児の陰毛を揺らしてくすぐる。嬉しいかといえば、嬉しいに決まっていた。フェラチオ、とかいう、言葉はあまり好きになれないその行為があることは、竜児も当然知っていたし、映像で見たことならあった。しかしそれを好きな女に、大河に、してもらおうなどとは望むべくも無かった。なにせそれが気持ちいいかどうかもわからないのである。望むどころかほとんど念頭にすら無かったのだ。
 竜児が気持ちを落ち着かせるのと、それはひきかえだった。
 大河はおもむろに、竜児のそれを舌にまっすぐ載せるようにして、口腔の天井と挟むようにして、ちゅっちゅと吸い出したのだ。
「おう!?」
 驚いた。にわかに気持ちいいのである。自分のものが漲ってくるのを竜児は感じる。
「おまえ……そんなやり方、どこで」
 問われた大河は、ちょいちょいと上の方、竜児の顔あたりを指差してくる。
「……俺?」
 竜児を指しているのだとすれば、意味がわからない。しかし大河もそれ以上はジェスチャーでは答えられないらしく、あきらめて、またちゅっちゅと。
 巧い、と言うべきなのだろうか。本格的に、よくなってくる。竜児は大河にそのことを伝えたくなる。なるのだが。
「ああ……大河……」
 溜息して、呼んで、大河の淡色の髪をやさしく撫でるのが、竜児にはせいいっぱいだった。いいよ、の一言がまだどうにも恥ずかしい。
「大河……ああ……たい、が?」
 なにやら大河がぺちぺちと竜児の胸を叩いてくる。気づけば、淡色の髪からのぞく小さな耳は毒々しいほどに真っ赤。陰毛にくすぐったかった鼻息も感じない。胸を叩く力はにわかに強まりべちべちべち!べち!と……これは。
「……タップ、か? いでえっ!?」
 べっちーん! とすごい力で胸を突き飛ばされる。ふとんへと仰向けに倒れこみながら、竜児は見た。目もとにうっすら涙を浮かべて赤鬼のように睨んでくる大河の口から、いったいその小さな顎のどこに収まっていたというのか、勃起した竜児の陰茎がずろろとばかりに吐き出されたのを。年明けてわずかふた月あまり、早くも今年度の衝撃映像ベストワンが決まった瞬間であった。
「っぷはあっ! はー……っ! じぬがどおぼっどわっ! はーっ!」
 もう何も咥えていないのに、大河の言葉は翻訳が必要なのだった。
「……死ぬかと思った、か? じゃねえっ! 無理するなと言っただろう俺おまえ……っ! ひょっとして俺、おまえの頭抑えちまってたか?」
「黙れ下郎っ! ふおお……貴様のミスではない、私のミスだっ! だが衷心はありがたく思う! はーっ!」
 握った竜児の勃起が棍棒がわり、赤鬼大将軍・大河閣下の降臨であった。
 すると竜児の胸に赫かくと残るもみじの痕は、さながら地獄行きの通行手形か。しかし竜児はその痛みも忘れて、ひたすら大河が心配でならない。赤鬼大将軍様の正体は、ただ真っ赤になってはあはあ息を切らした愛くるしい少女なのだと、竜児は知っているから。腹筋だけで起き上がり、大河を抱こうと両手をオロオロとさまよわせ、
「だ、大丈夫かほんとに、おまえもう……いだあっ!?」
 べっちーん! ともう一発、胸をはたかれ竜児はふたたび仰向けになる。左右の胸に仲良く並んだ手形は二つ、地獄にだって二度行けるんである。一度たりとも行きたくはないが。
「ふー……大丈夫だってば。気持ち良かったんでしょ? 竜児。私嬉しいの。大丈夫、続けさせて?」
 息切れと一緒に赤鬼様も去って(棍棒がわりの竜児の勃起は残っている)、そこには頬もぷにっとリンゴ色にした、いつもの上機嫌の大河がいるのだった。竜児を大きな瞳で眺めるその微笑みからは、たしかに無理からくる痛々しさのようなものは微塵も感じられないのだが。
「おう……でももう、充分じゃねえか? おまえのおかげで、ちゃんと勃……」
 そう言って起き上がろうとしかけた竜児を、片手を上げて大河が制する。さすがの竜児も胸のもみじを三つにはしたくないので、ここはひとまずと退いて、素直に寝に戻った。どうせ三度なら地獄ではなく仏の顔を拝みに行きたいではないか。
「駄目よ。竜児の勃起はまだ完全体じゃない。続けさせて。大丈夫、もう無理はしないから」

106◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 21:10:22 ID:???
 竜児のそれを人造最強生物みたいに呼んではいるものの、大河の表情は真剣そのもの。大きな瞳に星を散らせてまっすぐ竜児を見つめてくる。これは、竜児にはお手上げの目つきであった。
「……わかった。頼むよ」
 竜児の答えを聞いて、すぐに大河は目を細め、えっへへ〜♪ なんて笑いながら、さっそく竜児の勃起にちゅっとキスをくれたりなんぞする。よかったな、おまえ大河に気に入られたみたいだぞ……竜児はつい、大河に握られてキス責めされている手乗りドラゴン(たぶん第2形態)に心の声で語りかけてしまう。嫉妬はしていないとも……たぶん。
 しかし、これは。
 勃起と戯れている大河の顔を眺めていて、竜児はわかったような気がした。もちろん大河の手は特別で、その唇も特別で、触られれば格別な快感を感じるのは確かだが、わかった。これは眺めだと。この眺めが精神的に来るのである。背筋がなにやらゾクゾクとする。
 なにしろ自分の股間に顔をうずめているのは、好きな女、惚れた女、大河なのである。宝石のように煌く瞳を半ばうっとりと目蓋で隠し、優美なラインで彫られた鼻をこすりつけ、薄い花びらのような薔薇色の唇から桜色の小さな舌を一生懸命伸ばして舐め上げ、薄紅に染めた頬を可愛らしくふくらませたりすぼませたりして、せっせと頑張る大河はそれはもう美少女なのだった。くんかくんかと、竜児の陰毛に鼻をうずめて付け根の匂いを嗅いでも……、
「わあ嗅ぐなっ!」
「ん……臭いといえば臭いような……不思議と嫌いになれないような」
 気持ちとろんと微笑んだりしてちょっと変態の気があるにせよ、大河はすごい美少女なのだ。
 いやもうこの際はっきり言おう、この世で一番美しくて一番綺麗で一番可愛い娘なのだ、大河は。ちっこいけど、ちっこいから一番なのだ。ちっぱいけど、ちっぱいから一番なのだ。惚れた欲目なんじゃない。大河流に言えば、絶対絶対絶対絶対ずぅえぇええええぇ――――――っっっ!たいにっ!!そうなのだ。本当なのだ。マジなのだ。と、竜児は思う、とかは無しなのだ。
 その大河が、である。その、神の造物の奇跡、降り来たった天空の花嫁、息づく結晶となった無限の慈悲の証、真理も正義も頭を垂れるべき美の天使……もういいか? まあ、そんな可愛い可愛い大河が頬擦りしたり舐めたり咥えちゃったりしているのは、持ち主の竜児からしても、なんでおまえはそうなった、と、昔は可愛かったじゃないか、と、それが今や鬼の棍棒もそう遠くない馬色の青筋も馬並みなのね、と、お父さん僕のおちんちんはどこに行ってしまったんでしょうね、と、パパドゥユーリメンバー、と、本当にそれくらい凶悪な感じに勃起した男根、肉棒、まあそんなものなわけである。
 最愛のお姫様があろうことかおのれの股間に跪き、聖なるものであるかのように凶悪醜悪な肉棒にかしずくというこのコントラスト。この眺め、これがたまらないのだ、たぶん。主人と奴隷の反転、めまいを覚えるほどの美醜の無限の弁証法。しかも大河は小柄なお姫様で、背徳感もサイズの逆比例の二乗で増加するというもの。竜児。何をいっているのかなんだかよくわからないが、何かを考えていないといけないのだ俺は。竜児。意味はこの際、二の次だ。そうでもしてないとやばい感じがするんだ。「竜児」なんだ大河、俺を呼ぶな。俺は我慢しているんだ……!
「な、な、なんだ、大河……?」
「だから、さっきの答え。おちんちんの舐め方、竜児がえっちなキスで教えてくれたんじゃない」
「お、おう、そうか……と、ところで大河、もうそろそろ……おおぅ……っ!」
 薔薇の唇も半開き、桜色の舌をめいっぱい伸ばして、大河は竜児の肉棒を根もとから先端まで、つぅーっと舐め上げる。しかもうっとりと瞳を流し目にして、竜児の顔をうかがいながら、つつぅーっと。
「そ、それは反則だ大河っ……こっちを見ながらなんて……俺はそんなのは教えてないぞ……っ!」
 大河は小悪魔みたいにクスクス笑って、
「だって、竜児の反応見てないと、どうされるのが好きなのか知りようがないじゃない? これもあんたが教えてくれたことだけど」
 いい生徒でしょ、私……なんて微笑みながらのたまって。ああっ、また……っ! つつぅー……っ。こ、こっち見んな!
 逆だった。お姫様が奴隷のようにかしづく、のじゃなかった。どう見ても今や竜児は大河に支配されていた。やっぱりお姫様はお姫様で、下男は弄ばれるばかりなのだ。いけない、その認識はそれとして、変な喜びが湧いてきそうになって竜児は背筋がゾクゾクしてしまう。このゾクゾクが快感でないと信じたい……。

107◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 21:11:15 ID:???
 それはともかく、思考の抽象的で清浄な天界から、肉体の具体的で淫靡な下界へと、こっち見んな大河に引きずりおろされた竜児はいきなり大ピンチなのだった。
 男の腰の奥のどこかにあるような無いような、入ったら最後の発射スイッチこそまだオンされてないが、大河はまるでそのスイッチのまわりでくるくる回って踊ってヘヘイ!な踊り子状態。いつスイッチをカチリと踏んで、あらやだ、3、2、1、爆射! 遺憾だわ殺す方向で……となってもおかしくない。言いたいことをなんとかお察し頂きたい。その時。
 察しの悪い踊り子に身をやつしたお姫様こと大河が、あーん、と大口を開けて――やばい、ここで先っぽをパクり、なんぞされたら――
「大河さま!」
 叫んだ竜児は言い間違い、下僕そのものになっていた。
「……さま?」
 パックリ寸前で大口を閉じて、大河がけげんそうに訊き返す。ひとまず助かったと竜児は思う。大河、と普通に呼びかけていたらそのままパックリの後、はひ?、とでも先っぽを口の中で転がされていたかもしれない。怪我の功名であった。
「あ、いや、なんでもねえ……っなんでもねえんじゃねえ、大河っ!」
 あっそ、と、やり直しとばかりあーんと大口を開けた大河をあわてて呼び止める。
「なによ」
「いや、もう、本当にいいんじゃないか? もう……そうだ、完全体! 完全体になったぞ俺は、大河!」
「えーっ。ほんとう?」
「本当だ、だからもうゴムを、をををおまえそれやばいいいい……っっっ!」
「だってこうしてないと維持できないじゃん、完全体」
 そう言って大河は、小さな手で握り具合も絶妙に、竜児のをゆっくりしごきあげる。このわずかな時間でさまざまなノウハウを開発、吸収して、完全体へと近づいているのはむしろ大河の方なんじゃないのかと竜児は思う。面白くなって来たところなのに……なんて、唇を蕾に尖らせて、末恐ろしいことまで、進化する大河さまはおっしゃる。
「いやだから……これ以上はもう、本当に、やばいんだって。完全体どころじゃなくて……」
 そこまで言ったところで、あの言葉を口にしたものかと、竜児の舌は重くなるのだったが、
「わかった! 竜児イキそうなのね? 射精しそうなのね!?」
 大河はいきなり察しもよく、その言葉を迷い無しに言い切って、ぱあっと笑顔の花を咲かせる。よりにもよって大河、本日一番の笑顔であった。しかも、はしゃぐついでに竜児のを、りゅんりゅんとしごくのだからたまらない。
「そ、そうだよ……だからやばいやばいやばいっ! だからもう止めよう、ゴムつけよう……っ!」
「えーっ。私見たいなー竜児のイクとこ。竜児の射精。見たーい見たーい私見たーい。ううん、見たいのは私だけじゃない。きっと誰もが見たがるはずよ。真のヒロインになるチャンス!」
 なんて一気にたたみかけて来る大河の言うことは、さっきの竜児の思考をも越える意味不明ぶりだった。
「射精したらそれはヒロインじゃねえだろ……とにかく、な? ひとまず止めにしようぜ。後でいくらでも見せてやるから……」
「えー、ほんとう? 後っていつ? 何時何分何秒? ていうか一回くらいいいじゃないよ、ねぇ? 竜児、あんたってさあ、ときどきずるいよね……私のはいっぱい見たくせに。ケチよねケチケチケチケチドケチ」
 痛いところを大河は突いてきた。たしかに大河はイクところを竜児に見られまくっていた。それからすると不公平なのは明らかだった。だがその不公平をここはなんとしても通したい竜児である。そこでなんとか論理のアクロバットを探すのだが、大河の手にりゅんりゅんされている刺激もあいまって、竜児の考えはなかなか焦点を結ばない。
 そうして黙ってしまった竜児を見て、長考は許さないということか、たんにしびれを切らしたのか、大河がふたたび口を使うべく、あーん、と……!
 窮地のさなかに開かれた、その大河の口の中を、竜児が見た時だった。
「待て大河! 最初はおまえの中で射精したい。おまえの中でイキたいんだよ!」

108◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 21:12:12 ID:???
 大河は動きをとめて、きょとんと。
「最初は、私の、中で……?」
「そうだ。最初は、おまえの、中で」
 大河の大きな瞳を覗き込んで、竜児は慎重に言葉を区切って繰り返す。通じるか、はたして――
 大河の頬に朱が散る。瞳を開けているのも辛そうに目蓋をふるわせて、薔薇色の唇は小波に結んで何かを耐えるよう。
 通じた! 竜児は心で快哉を上げる。これは大河がほだされた時の表情、無意識に胸を片手で押さえるのはときめきの証。よつんばいになっていた大河は小さな尻すら跳ねさせて、
「ひゃっ! な、なんで……? 竜児を責めてる時は、平気だったのに……っ!」
 ふるふると震えだし、跳ねる尻を抑えられなくて困りだす。
「く、くやしいけど……わ、私も限界、だったみたい……こ、興奮、してたみたい……っ」
 竜児にしてみれば、してやったり、なのである。優しい声を作ってみせるも、魔界の欲情大浴場の番台に座っている若手ナンバーワン詐欺師のように凶眼がギラついているのは、今ここにおいては誤解だとはとても言えない。
「そうか……嬉しいよ、大河。さ、早くゴムをつけさせ」
「待って!」
 きっ、と大河は、驚くべき気丈さでもって竜児を睨みつけて言う。
「私にさせて。ゴムつけるの私にさせて」
「お、おう、そりゃかまわないが。おまえそんな状態じゃ……」
「大丈夫」
 そう断言して、震える大河はぎゅっと目を閉じる。竜児のモノもぎゅっと握り直す。
「おう……っ」
 漏れてしまった竜児の声は快感のものか感嘆のものか。どちらともつかぬ早さで大河の震えがぴたりと止まった。人体の不思議を目の当たりにして竜児は驚く。大河の瞳がすうっと開き、
「……ね!」
 竜児を見つけて確かな輝きを宿す。かっこいい、とすら竜児は思ってしまった。
「おう……すげえな、おまえ」
「まあ、そういうものだということよ。さ、竜児、袋を切って、ゴムを載せて。後は私がやる」
「お、おう」
 進化の止まらぬ大河の得た、新しい悟りの中身も気にはなったが、とりあえず竜児は言われるまま、ゴムを取り出し、精子袋をねじって勃起の先端にかぶせる。ここからが難しい……
「オッケー。後はまかせて」
 神技、であった。
 大河はまず空いた片手で筒を作って、上から下へするりと輪になったゴムを落とす。そのまま根もとを握っていた手とスイッチして空けた手でまた上からするり。その手をスイッチしてまたするり。するりするりと五回こすって、最後に始めに握っていた手を戻して、完成。
「おおう……っ!」
 竜児の勃起は薄いゴムに見事に包まれていた。罵倒と暴力と身だしなみのほかに、コンドーム着けが新たに大河の得意技に加わった瞬間であった。
「おおおおおう……っっっ!」
 感嘆するほかない。パチ、パチ、パチパチパチ……やがて竜児は拍手さえしていた。
「どう?」
 得意気に顎をしゃくった大河は、どうだ見たかと言わんばかりの表情で竜児を眺める。
「……すげえ」
「すごい?」
「すげえ! すげえなおまえ! なんだ、なんなんだどうやった!?」
「先にあんたのトライを見てたからね、きっとこうかなって。でなきゃ無理だったかも」
 なんと竜児のフォローまで忘れない、冴えまくりの大河は、
「惚れた?」
「おう、惚れた! 惚れ直した!」
 ふにゃんと目を細めて微笑む。そして大河はなぜか頭を垂れてつむじを竜児に向けてくる。

109◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/19(金) 21:12:55 ID:???
「……どうした、大河?」
「撫でて」
「お、おう!」
 竜児は慌てて、だけど優しく、淡色の髪に包まれた大河の頭を撫でてやる。
「もっと。いいこいいこして」
「おう、よーしよし。いいこだ、いいこだなー、大河は」
 竜児は犬か猫にするように両手で撫でてやる。大河も髪が乱れるのも気にせず竜児の両手にぐりぐりと頭を押しつけてくる。ほどなくふたりは、
「よーしよしよしよしよし、かーわいいですねー、可愛い虎ですねー……」
「うー……ぐるぐるぐる……」
 ムツゴロウと、あやされてのどを鳴らす虎になり果てていた。
 やがてようやく満足したのか、顔を上げた大河は満面の笑み。それを迎えた竜児も、絶対にスキは見せない、俺はおまえの上位の獣なのだ、従え! と、無法な地下サーカスの若手ナンバーワン調教師の鋭い眼で見つめ返す。微笑んでいるのだ。
 もう頼むことも頼まれることも要らない。
 竜児はくしゃくしゃになった大河の淡色の髪に何度も指を入れて、丁寧に梳きおろしてやる。大河はその間、瞳を閉じて髪を竜児にゆだねる。充分に梳いて、竜児は大河の頭にぽんと手を下ろして仕上がりを伝える。
「よし、いいぞ」
 長い睫毛に縁取られた目蓋を開けて、星振る瞳で竜児を見つけた大河は微笑む。
 瞳が語って言葉は要らない。どちらともなくお互いに顔を寄せて、口づけを交わす。二度、三度、唇をついばみあうけれど、それ以上、深いキスはしない。それでよかった。
 唇を離して、見つめあう。閉じそうになる目蓋を必死で支える。頬に薄紅が差す。高鳴る心臓。きっと。
 あんたも。
 おまえも。
 そしてもう、言葉は、
「して、竜児」
「しよう、大河」
 それだけで、いい。

(12章おわり、13章につづく)

110高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 22:44:22 ID:???
俺「…して///」

111高須家の名無しさん:2009/06/19(金) 23:10:07 ID:???
規制で書けない
こっちで何か書こうかな

112◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 01:03:06 ID:???
>>110
黒マッスル「やら(ry
あ、ありがとう……?

>>111
おおーついに職人さんが。いらっしゃいましまし。
ぜひぜひどうぞっ

113◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 10:36:48 ID:???
◆eaLbsriOasです。思いついたら止まらない、それが恋心に似たSS心。
他意は無いの。代理投稿歓迎。

***

・避難所

「避難所にいるぞ」
「避難所……」
「避難所にいる。エロも書いてやる。今までみたいに、うちに来い。なごむSSも書くし、
 朝は寝ているけれど。だから、」
「なにを言ってるの!? そんなことしたら、また誤解されるじゃない! 嫌エロの人はまだ、
 納得し切ってないんだから! あんた、本当に嫌エロの人にどう思われてもいいの!?」
「いいよ。そうしたら今度は俺が暴れるから。まとめ人もいるところで、
 俺が誤解を解くために暴れてやる。アク禁にまきこまれて本スレには書けねえけど」
「な……な、んでよ……っ? なんで、そんなこと、するの! ……もうエロだけじゃない
 って言ってるじゃない! そんなこと、する必要はないんだったら!」
「……俺にだって、わからねえよ。でも、そうしたいんだ。……おまえ、泣くから。
 放っておけねえよ。SS腹へらしてないかとか、心配でたまらないんだよ。
 優しい避難所くんとしては」
「なっ……なによ、それ! 誰が、そんなこと頼んだ!? 子どもじゃないんだから
 放っておいてよ! 別に心配なんかしてほしくないっ!」
「――ああ、そうか。俺はエロだけじゃないから。……だから、おまえの傍にいるんだ」
「……はあ!?」
「エロだけじゃ、本当にはおまえの傍にはいられないんだぞ。俺は……
 俺は、避難所だ。おまえは、本スレだ。――本スレと並び立つものは、昔から
 避難所だと決まってる。だから、俺は避難所でやる。おまえの傍らに居続ける」

 本スレと並び立つために、避難所でやる。そう決めたのだ。笑われたって、
 バカにされたって――だが。

「……本、スレ……?」

 誰もバカになどしなかった。笑っている奴もいなかった。
 それじゃむしろ困るんだよな……と、避難所にいる奴は思った

114高須家の名無しさん:2009/06/20(土) 10:41:25 ID:???
>>109
いつもGJ
最初から読み直してみたけど、こいつら泰子の実家の2Fって状況を忘れているんだろうか…?

襖│∀・)ニヤニヤ ←泰子
襖│∀・)ニヤニヤ ←園子
襖│∀・)ニヤニヤ ←清児

115高須家の名無しさん:2009/06/20(土) 11:12:15 ID:???
>>113
登場人物がさっぱりわからないのwww

116◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 14:27:06 ID:???
>>114
こんな長いの、最初から読み直してくれたなんて嬉しすぎる。
本当にほんとうにありがとう!

ちなみに私は推敲がてら何度もなんども読み直して、
おもしれーとか自画自賛しているw

>こいつら泰子の実家の2Fって状況を忘れているんだろうか…?
大河と竜児は途中から忘れてる、っていうかそのことを考えたくないみたい。
考えようとしないから。

ちなみに私は忘れていませんw

つまりなんというか、このSS、大河と竜児が勝手にいろいろやっているw
私は方向を指示する種をあたえて、あとは大河と竜児が勝手に展開してる。

基本的には脳内でシミュレートされているし、脳内だけで会話させることも
できるんだけど。感覚的には、大河と竜児は、私の指先とキーボードの間
あたりに棲んでいる感じ。

>>115
避難所くん(避難所にいる)と本スレちゃん(本スレにいる)w
スレチの可能性大w

117◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 14:36:25 ID:???
まあ、というわけで、

>>113

のSS「避難所」は代理投稿しないでやってください。

たんに思いついて書いてみたらツボったんで、
避難所のみんなに見てもらいたくなっただけ、ということで。

やっぱまだほとぼりさめてないのかもしれないしね……。
失敬いたしました。

そうそう、大事なことを書き遅れていました。
昨夜、「並び寝る」12章の告知を本スレに
して下さった方、ほんとうにありがとうございました!

118高須家の名無しさん:2009/06/20(土) 16:21:01 ID:???
>つまりなんというか、このSS、大河と竜児が勝手にいろいろやっているw
>私は方向を指示する種をあたえて、あとは大河と竜児が勝手に展開してる。

恥ずかしいセリフ禁止!
でもいいぞもっとやれw

119高須家の名無しさん:2009/06/20(土) 19:22:00 ID:???
でも基本的に登場人物がいろいろやってくれる方が筆は乗りやすい

120◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 20:48:40 ID:???
◆eaLbsriOasです。「竜虎並び寝る」13章をお贈りいたします。
いよいよ終わりも近づいてまいりました。泣かせるかも。

本スレへの告知誘導のみ、よろしくお願いいたします。

--テンプレ--
◆eaLbsriOas氏のSS「竜虎並び寝る」13章、投稿されました。
ドエロコメですので、読みたい方だけ
まとめサイトの新避難所のリンクから、どうぞ。
-----------

121◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 20:49:20 ID:???
  13

「いだあっ!」
「いでえっ!」
 ふたりとも、同時に叫んでいた。それで竜児の動きも止まるのだから、やっぱり言葉は必要なのだ。
 驚いたのは、むしろ大河の方。
「えっ、竜児も痛いの?」
「いや、痛い、わけねえよな。何で俺、痛かったんだ……?」
「はあ? 何言ってるの? 意味わかんない。痛いから痛いって言ったんでしょ?」
「いや、でも、別にこいつが痛んだわけじゃねえし……」
 と、竜児はゴムに包まれた自分の勃起を見下ろす。
「ごたくはもういいわ。あんたが痛かろうと私が痛かろうと、そんなの我慢あるのみ。さあ来い犬っころ!」
 カモーン、なんて猪木ばりに両手で誘い、大河は威勢も良く竜児を犬呼ばわりする。とてもムードなんてあったものではない大河は、でも。
 痛みもあって涙目なのだ。恥もあって真っ赤なのだ。猪木だろうと犬呼ばわりされようと、もう竜児にはぜんぶひっくるめて大河が愛しくてたまらない。ムードなんか要らなかった。いや、これでムードは満点なのだった。
 ただ、なかなか、上手く挿入できないだけで。
「大河、脚、ひろげるぞ」
「お、オッケー!」
 竜児の目の前で仰向けになって、ふとんに広がった淡色の髪の小さな海原に浮かんだ大河は、恥ずかしさからか自然と膝を胸に寄せて折りたたんでしまっていた両脚を、ふたたび竜児の手にゆだねる。
 強く握れば壊れてしまうんじゃないかと怖くなる、白くて細い足首だった。竜児の手首ほどの太さもない、その左右の足首をそれぞれの手に握って、竜児は大河の脚を開く。眼下に、大河のミルク色の股間が、恥丘の淡色の茂みが、舌の色に似た桜色の秘唇が、あらわになる。
 ひとつ甘やかに吐息して、大河は竜児から瞳をそらす。
 最初に大河の裸身を見たときもそうだったと、今夜のことなのに遠いことのように竜児は思い出す。今はもう、なぜ大河が目をそらしたのかがわかる。恥ずかしくてたまらないから、ときめいてたまらないから、大河はそうするのだ。竜児を翻弄していた最初から、すでに大河は可愛かったと知ってしまう。だから竜児は、つい、
「可愛いよ、大河……」
 こぼしてしまう。大河を震えさせてしまう。
「も、もういいから……っ」
 大河は睨んでくるけれど、愛しくてたまらなくなる。
 竜児はふたたび大河の股間に視線を落として、大河の両脚を押し広げて。そして。
 そして、やはり戸惑う。
 繰り返し鍛えたはずのおのれの妄想も及ばぬところに、竜児は来てしまっていた。だから。
 どうすればいいのかが、よくわからない。
 たとえば、今。挿入するためには両手で両脚を広げていなければならないのに、挿入するためにはさらに手で自分の勃起を支えなければならない。どう考えても、手がもう一本必要ではないか。手が三本要る……そんな馬鹿な話はない。きっとやり方があるのだ。しかし。
 どうしてこんな大事なことを、大人たちはちゃんと教えてくれなかったのかと竜児は苛立つ。大河なのだから――大切な、誰よりも大切な女なのだから、初めから大事に扱いたいに決まっているというのに、誰もそのやり方を、竜児には教えてくれなかった。あるのは曖昧な教育と、猥雑な画像や動画、商品のようなものばかり。この先、大学に行ったところで、そしてその先であっても、それはきっと変わらないような気がする。無知な清い身体でいろと言う。そしてそんなふたりならば、痛めあうほかないとでもいうのか。
 無知な清い身体同士だから、ふたりで見つけるしかない。
 苛立ちを優しさに変える、魔法の力をふるうしかない。

122◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 20:50:03 ID:???
「大河、左脚、持っててくれるか? 自分で」
「う、うん……」
 竜児は右手でつかんでいたミルク色の大河の脚をゆだねて、大河に膝をかかえさせて。そうして自由になった右手で、竜児は自分の勃起をつかむ。快感など無く、膝でいざって、ゴムで包まれた勃起の先端を大河の股間の秘めた花唇にあてがう。あてがえばもう、秘唇は勃起の先に隠れてまったく見えなくなる。大河の身体がびくりと震える。そして、
「いくよ、大河」
「うんっ……」
 ぐっ、と。
「痛っ」
「いてっ」
 ほぼ同時に小さく叫んで、ふたりは顔を見合わせる。
「また……?」
 それだけで、大河の言いたいことは竜児に充分伝わった。
 また、あんたも痛かったの? と。
 そして、今度は竜児も見つけたことがあった。
「わかった、大河。どうも、おまえが痛いと、俺も痛いらしい」
「……なに、それ……?」
「だから、おまえが痛むと、駄目なんだよ俺。どこがって、わけじゃねえ……強いて言えば、胸のあたりかどっかが。ぎゅっとなる。しめつけられたみたいに、なる」
「そんな……そんなこと、嘘でしょ……?」
「ところが嘘じゃねえんだ。なんだろうな? 思い出した。たまにしか無いからか。だけど、もう、だいぶ前から、俺はおまえが痛いと駄目なんだ……それがわかると、駄目なんだよ……」
 そしてそれが、俺には嬉しいんだ……とは、竜児は口にはしなかった。
 大河が、静かに泣き出したからだった。笑っているような、困っているような、そんな顔をして。竜児を見つめて、鼻をすすりながら言う。
「もう、やだ……やだよ竜児……あんた変。今日、あんた、おかしいよ……やめてよ……なんで、なんでそんな、素敵なことばっかり言うの……?」
「大河……」
「……言ったでしょ? 私、もう、落ちてるって……ずっと、ずっと前に、私もう落ちてたって。だから、もう、口説かなくていいんだってば……誘惑、しないでよ……私、おかしくなっちゃう」
「口説いてなんかいねえぞ、ただの事実だ」
「ほら……っ! もーっ! ……はあ、だめだ。あんたバカなんだった。思い出した。何言っても無駄だ。そーだった、うん。竜児ってバカなんだった」
 バカバカ、と繰り返して、大河は空いているちいさな右手の甲で涙をぬぐうものだから、
「素敵とか、バカとか。おまえ滅茶苦茶だぞ、言ってること」
 つい、竜児は薄い唇を尖らせてしまう。
 いつの間にか泣き止んでいた大河は、まだ濡れている瞳の星を縮めて、そんな竜児に微笑みかける。
「そんな顔しないでよ。怒んないで、ね? 竜児のそんなとこも、ぜんぶ、私、気に入ってるんだからさ」
 なんて言って、大河はひと瞬き、薔薇色の唇を蕾に変えて、ちゅっ、とキスまで飛ばしてみせるのだ。
「っ!? バカっ!」
 焦ってしまう。竜児は耳まで赤くしてしまう。
「ふふん、おあいにくさま。私はバカじゃないね。まあ……そんなこと、いいからさ……ねぇ、竜児、とどめをさしてよ、私に」
 偉そうに顎をしゃくってみせてから、大河はそんなことを言って、また竜児に耳を疑わせる。
「おう、と、とどめ!?」

123◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 20:50:40 ID:???
「そ、とどめ。私がおかしくなっちゃう前に……もう、おかしくなってるんだけど……とどめ、さしてよ。ちょっとくらい痛いのなんて、我慢するから。だから竜児のを、ね? こう、おりゃっ! と」
「おりゃっ……と!?」
「そう、ずぶっ! と」
「ず、ずぶっ……と!?」
「そう。そんな風にして。私に、挿して……ね、つながろ? 私、つながりたいの、竜児と。すごく、すごく、すっごくすっごくすっごく、つながりたいの。もう、それが夢みたいになってるの……ううん、夢なの、竜児。だからお願い、叶えて? とどめをさして? ねぇ、お願い。お願いなの、竜児……私と……つながって、下さい……」
 下さい……と、明るかった声音もやがて切なくして、儚くして。大河のそれは確かにお願いだった。
 大河にお願いされたことなら、竜児には何度もあった。重く、切々としたお願いだって、その中にはあった。しかし、下さい、なんて……と竜児は驚く。
 それは初めてのはずだった。そんな言葉を、大河が口にしたのは。大河のことだから、それは最後なのかもしれなかった。こんな大河の瞳は見たことがないと感じた。一生に一度の、お願いなのかもしれなかった。
 とてもそんな途方もないことに、返す言葉など竜児に用意があるはずもなかった。この世のどこにも、そんな言葉はないように竜児には思えた。もちろん。
 答えは、決まっていたにせよ。
 おう、とだけ、竜児は言ったのかもしれない。それは口ぐせ。もしそれが口をついて出ていたのだとしら、それはきっと大河のために――きっと大河に応えるためだけに、竜児を作った者が竜児にしつらえておいてくれた言葉のはずだった。だから、きっと。
 仕掛けが働いてくれたのだろう、大河は満足そうに微笑むのだ。
 だから竜児も、微笑みを返すことができる。頷いてみせる。
 もう一度、竜児は手にとった自分の勃起の先を大河の秘唇にあてがう。大河はやはり震えて、息を大きく吸い込む。けれど。
 今度は、竜児は腰を進めない。進めずに、ゴムに包まれた勃起の先端で、大河の秘唇を優しく割るようにして、そこを優しくこすりはじめる。
 大河は痛まない。
「……えっ、えっ? 何……っ?」
 かわりに大河は甘い驚きの声をあげて、腰を跳ねさせる。
 大河の中を隠す泉から湧き出た、白い蜜をすくうようにして勃起の先に絡めて。むしろからめるために、竜児は勃起の先端で優しく秘唇を縦に舐め上げて、舐め下ろす。秘唇の上の方の敏感なところがくじられて、大河が腰を跳ねさせても、丹念にする。
「あっ! あっ! りゅうじっ、ひどいっ! そんなの、そんなの……っ! とどめ、さしてくれるって、言ったのに……っ!」
 大河の抗議も甘やかな声に、中毒になってしまった竜児は脳髄を痺れさせる。手の中で勃起が漲るのを感じる。
「ゴムが、引っかかるんだ、濡れてないと……きっと、たぶん。それでおまえが痛むんだ」
「そ……っ。う、うん……わかった」
 目を伏せて作業を眺める竜児の視界の端で、愛撫の意図を理解した大河が睨みを解くのが見える。
「角度も、あるのかもしれない」
 喘ぐのは止められずに、大河は訊きかえす。
「はっ、はっ……かく、ど……?」
「ああ、つまり……挿入する、角度だ。それが、わからねえ。誰も教えちゃくれなかった。俺が、自分で、見つけるしかねえ」
 言いながら、苛立ちが蘇るのを竜児は止めることができない。
「……私たちで、でしょ?」

124◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 20:51:12 ID:???
 大河の言葉にはっとして、竜児は顔を上げる。苛立ちが刻んでいた眉根のひそみが、散って消えていくのを竜児は感じる。大河の言葉が沁みたからだった。大河の表情を見たからだった。
 竜児はもちろん一人ではなかった。そこには、傍には大河がいるのだった。大河は穏やかな顔をして竜児を見上げてくれていた。羞恥と快感に頬を桃に染めて、震えていたとしても、それは大河が竜児を信じてくれている顔、信じてゆだねてくれている顔。竜児の知っている、ありがたい表情だった。
 俺の方が、何度もなんども好きになってしまうよ、と、竜児は思う。
「腰、もっと上げたほうがいいのかな……?」
「えっ、おう、そうか。まあ、そうか、そうだな……」
 大河の尻はまだ敷ぶとんに近い低い位置にあった。だから大河の言うとおり、上げる以外にそこの角度を変える方向はないのだけれど。
「ふんっ」
 と大河は鼻息一発、薔薇の唇もへの字にして、腹筋を搾って宙にかがむように腰を折り上げる。
「おう……上げすぎ上げすぎ」
 途端に空へと晒された大河の股間の、今まで尻肉の内側に隠されていた秘唇の下向こうまで見えたような気がして、今さらながら目のやり場に困った竜児は、視線を宙にさまよわせてしまう。
「そう? じゃあ、こんくらい……?」
 大河は溜めた息をそろそろと吐きながら、尻を微妙な位置まで降ろして。さすがというべきか、ビタリと止めてみせる。
「むむ……これ結構キツイ……腹筋使うよね……」
「これでどうだ?」
 竜児は掴んでいた大河の右足首を、少し大河の頭の方に押すようにする。思い出したように、大河が脚に力を込めたのがわかる。
「おお……楽かも……」
 大河のそんな声に、まるで組体操でもしているような気持ちになって、つい竜児は笑ってしまって。それを大河に咎められる。
「なによ。笑うんじゃないよ」
「……いや。楽しくってさ。楽しくなっちまって、つい」
「楽しい……?」
 まだ、大河は瞳を眇めてくる。
「うん、楽しい……おまえといると楽しいよ、大河。いつでも……今でも」
 それは本当に竜児が思ったことで。思っていることで。そして、間違った言い訳では無かったようだった。
 反応も早く、大河は眇目も笑みの瞳に変えて、ちょっと鼻の下を伸ばすように唇も小波に結んで。照れているのか、ちょっと挙動不審に頭を揺らして、
「わ、私もっ……私も、竜児といると楽しいよ? 今だって……いつだって……っ」
 竜児を見つめて、なにか頑張るようにして言う。本当に頑張ったのかもしれなかった。なにせこいつは、俺の好きなひとは――大河は素直じゃない奴なのだ。だからいっそう、稀に見せてくれる素直さが、嬉しくもあるのだけど。
 その、嬉しさを携えるようにして、竜児は、
「よし、じゃあ、またやるぞ?」
「うん、さあ来いっ」
 勃起を秘唇にあてがった。
 もう一度、こすりつけるつもりだったのだ。大河も、そうだと思って返事をしたはずだった。なのに。
 魔法は、いつふるわれていたのだろう。
 無知の苛立ちを、ふたりで優しさに変える魔法は、いつ。
「おう……」
「は……っ」
 入って、いた。

125◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 20:52:25 ID:???
 滑らかに、ひっかかりもなく。勃起の先は大河の秘唇を丸く押し広げ、その、中に埋まっていた。未知の感触。竜児は見た。むしろ見て確認できたのだった。顔を跳ね上げて大河を見た。
 はっ、はっ、と、薔薇色の唇をせいいっぱい大きく開けて、子犬のように細かい息を吐きながら。驚きに見開かれた大きな瞳の星も散らして、大河もまた、竜児を見返しているのだった。大河にはわかるのかと、竜児は思う。見ることなく、感覚で、大河には入ったことがわかるのか。
 竜児を見返して、大河は、細かく首を横に振る。
 伝わる。わかる。
 けれど、竜児は訊かないではいられない。
「痛く、ないか?」
「うん……痛く、ないよ……キツいみたい、だけど……痛くない……」
「そうか……よかった」
「入って、るの?」
 子犬のように喘ぎながら、大河は訊き返してくる。
「ああ、入った」
「……やったね」
 なんて、大河は言う。微笑む。嬉しいな、なんて言う。
 竜児もまた喜びながら、だが、しかし。
 なぜなんだろう、と思わずにはいられない。さっきまでの苦労が嘘のようだった。あまりに滑らかに挿入に成功していた。ゴムを濡らしたせいか、角度を変えたせいなのか。ふたりが交わした穏やかなやりとりで、勃起の漲りが少し緩んでいたことも、幸いしているのかもしれなかった。
 ともあれ、これを失うわけにはいかない。
「じゃあ、いくよ」
 言って、竜児は大河のうなずきを見て確認、腰を進める。
「はっ!」
 跳ねた大河の声に、竜児はわかった。今度は痛いのだ。腰を止める。戻そうと
「駄目っ!!」
 するのを、竜児を驚かせてすべての動きを止めるほどに、鋭い声で大河が叱咤する。
「駄目、駄目、駄目駄目駄目駄目駄目駄目っ! 駄目よっ! やめちゃ駄目っ!!」
 叱る声が、息がさえもが、中に埋まった竜児をキツく締めつけてくる。それはただの事実の感触。快感は無かった。竜児は大河の叱咤に意識を集中していた。叱咤を充分に心に沁み込ませながら、身体の不思議に馳せられる思いもあることを竜児は感じる。
「大河……」
「やめちゃ駄目……竜児、やめないで。やめたら、私、許さない」
 燃えるような、瞳だった。
 真剣、という。
 真剣となった大河の瞳は、だが、怖くはなく、ただ、絶対の覚悟となって竜児の目から心までをも貫く。折り返されて、竜児は自分の目にも真剣が宿るのを感じる。
「わかった。やめない」
 言って、なんて女だと竜児は舌を巻く。大きな瞳に光る真剣を宿したまま、大河は薔薇の唇を端に引いて笑ってみせるのだ。そして、こんなことまで言ってくる。
「よし、それでこそ私の竜児。さあ、言って。私はどうすればいい?」
「……そうだな、なるべく力を抜いてくれ。息を吐くと、いいと思う」
「わかった」
 言って、大河はすっと息を吸って、はあ……っ、と吐いてみせる。
「よし、いく」
 とだけ竜児は言って、勃起の先に意識を集中する。指を進めた時のことを思い出して、かすかな弛緩をうかがう、けれど。そこはひたすらにキツく狭く、そんな弛緩などは気配も見えない。
 迷いをふりはらい、竜児はむしろ大河が息を吐くのを読んで、そのタイミングで。
 押し進める。

126◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 20:53:04 ID:???
「はっ! はっ!」
 伝わる。痛みがある。竜児は歯を食いしばってこらえる。大河にもらった真剣で、弱る心を斬り伏せる。鼓動は高鳴り、鼻息を荒くする。
「大河……息を吐いて……」
 出したためしの無い汗が竜児の額に結ぶ。すぐに雫となって、顎まで滑って大河の白い腹に落ちる。竜児は固唾を呑んで、大河が息を吐くのを読んで。
 また進める。
「はっ!」
 大河の吐息が跳ねる。痛い。辛い。
 おのれが杭か、針になったように竜児は感じる。虫を……美しい蝶と刺し止めるピンに。一切のロマンも無く、ただ酷薄な認識として、そう感じてしまう。
 そこは狭い。そこは熱い。大河の中に挿し込んだおのれから、幻のように大河の鼓動すら感じられるような気がする。幻ではないのかもしれないと、大河の小さな腹を見る。心臓までわずか20センチもあるか知れない。それを刺し止める……馬鹿なと首を振る。怖気づきそうになるのを真剣で払って、返した刀を大河に届ける優しい声に変えてみせる。
「息を吐いて……大河……息を吐いて」
「はっ、は……りう゛じ……」
 痛む声とも違う、吐きしぼるような妙な声。見れば、
「……た、大河?」
 はたして大河は顔面蒼白。いっそ青いほどで、
「も゛、も゛う゛、はげない゛……」
 もう、ハゲない……もう、吐けない、か?
「馬鹿っ! 吸っていいんだ! 吸え吸え! 息しろ!」
「い゛い゛の゛? ……っすー……うう……ううう……うううううう」
「吸ったら……吐くんだぞ? 忘れるなよ? 吐けよ?」
 薄い胸も小鳩のように膨らませて、大河は竜児を見てコクコクと。
「……うっ。っんはああああ〜〜〜〜っっっ! すうっっっ、はーっ! ふいーっ。はぁ……助かったんだぜ、竜児……ぐっじょぶ……」
 助けても、グッジョブも、ねえだろと。しかし。
 こいつは、ほんとに……竜児は思わずにはいられない。こいつは、ほんとに、こいつは、ほんとに、こいつは、ほんとに……。吹き出そうになる笑いを、折れた真剣の最後の仕事とばかり、なんとか斬り伏せて。切られた欠片を微笑みにして。
「よく、頑張ったな、大河」
 言ってやる。大河がどれだけお馬鹿でも、それは本当なのだから。
 だから竜児は大河を撫でてやりたい。右手を勃起から離し、さしのべて。なんともいえないいい笑顔でニコニコしている大河が、さあ撫でれ!とばかりに、あごを引いてつむじをその手に寄せるの見て、竜児は気づいた。
「あ、やべ……手……」
 気づいて、右手のひらを見る。勃起はつかんでいたけれど、見た目に汚れは無い。見た目、には。
「汚れちゃ、いねえけど」
「じゃあ気にすんな。気にしない。許可する。さあ、この頭を撫でるがいい! 撫でろ!」
「はいはい……」
 お馬鹿な上に偉そうで、でも痛みに耐えてよく頑張った大河の頭を、竜児だって感動して、撫でてやるのだ。
「返事は一回っ!」
 大河は叱るのも上機嫌な声音。

127◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 20:54:04 ID:???
「おう……はい」
 そう叱られても、気をつけて返事しないと、なぜかはいはいと繰り返してしまいそうになるのを、竜児はなんとか一回に収める。そして撫でなで。
「よしよし、いい子だ。いい子だな、大河は」
「きゅーん……」
 なんと聞いたことのない声まで出してくる。本当に可愛いのだった。
 ほどなく大河は顔を上げて、竜児が撫でるにはその頭は遠くなる。満足するにはまだ早かったんじゃないのかというタイミングで。すると大河は、
「あのね竜児、ご褒美、足りないと思うの」
 子どものようにあどけない顔を竜児に向けて、そんなことを言う。
「おう……」
「あのね竜児、ちゅうとかあるべきだと思うの、ご褒美」
 頬すら赤らめず、ひたすらにあどけなく、大河はそんな恥ずかしいおねだりを平気でしてくる。
「お、おう……ちゅう……」
 赤面が移されたのか、かわりに竜児が倍は赤くなる。ついでに馬鹿も移されたのか、ちゅう……なんて復唱までする。
「ねぇ竜児、お願い」
 桜色の舌先をぺろと出して、乾いた唇を潤して薔薇の艶めきを取り戻させて、大河は準備万端よ、と。
 思わず固唾を呑んで、くやしく心臓をドキドキさせながら。それでも竜児は大事なことを確認しなければと思う。
 竜児の股間を、そしてそれとつながった大河の股間を、見る。
 勃起は半分ほども、埋まっただろうか。
 指の長さほどは、入っているようだった。
 大河の奥がどこまでなのかも、知れない。ひとまずこんなところではないかと、竜児も思う。
 幸いなことかもしれない。小さな大河の狭くてキツいそこは、それでも――勃起の先半分ほどでも、がっちりホールドしてくれているように感じる。なんというか、結合部さえこの位置で維持できれば、すぐに抜けるものでもないように、竜児にも思われた。
 この位置、この角度で、維持できれば。
「大河、枕、取ってくれ」
「へっ? ……枕?」
 いいかげんしびれでも切らしていたのか、薔薇の唇も蕾にして突き出し、うちゅ〜っ、とでもいうように、アピールタイムに入りかけていた大河は、まったく予期していなかったのだろう、竜児の依頼に一瞬、目を白黒させる。復唱してようやくわかったのか、これ? と自分の頭にしいた枕を右手で逆手ぎみに掴んでみせる。
「いや、隣の俺の……は、無理か、逆か。いや、大河、こっちの脚を持っててくれ、右手で。そう。それで、かわりに左の脚を俺が持つから、手を離して……そう。その左手で、届くか? 左の、俺の方の枕」
 ふたりでなにをやってんだか、だが、竜児が言ったとおりのことをふたりでやっているのである。
 ていていっ、と、股間を竜児に縫いとめられた大河は、左手を伸ばして隣のふとんの枕を掴もうとする。つかまえる。
「届いたっ!」
「よし……ああまて! ゆっくりだ、ゆっくり俺に渡してくれ……」
 細腕とも思われぬ力で、この枕であんたをぶっ叩いたろかいっ、的な速度で持ち上がった枕の勢いを、竜児は声で制して、自分の左手で譲り受ける。ふたりの股間が微妙につながっている今は、叩かれてはマズイのである。もちろん、普段だって叩かれたくは無いのだが。
「大河、こっちの脚も持っててくれ。そう、両手で、両脚とも……」
 いたって真剣ではあるのだ。あるのだが、大河のその格好を見て、連想の記憶というやつ、竜児の脳裏をやらしい言葉のカケラがふとよぎる。たしかそれは、まんぐり……まんぐり……なんとか。つまり今の大河の格好は、まんぐり……なんとか、のちっこいバージョン……いやいや、と竜児は首を振って妙な言葉を追い払う。
 自由になった両手で、竜児は浮いている大河の尻の下に枕を差し入れる。枕を両側から押して硬くし、しっかりと大河の尻を宙に支えられるようにする。
「よし、これでいい。大河」

128◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 20:54:54 ID:???
「うん……」
 竜児の意図を知って、大河もそろそろと力を抜いて、枕に腰をゆだねてみる。薔薇の唇を結んだ大河は、ときどき、ふっ、ふっ、と鼻息を漏らす。わずかな具合の変化が大河にもたらすのは、痛みなのか、それとも。
 大河の動きに竜児も付き合って、膝を左右にいざり開いて、大河とのつながりを保つようにする。
 枕はちゃんと大河の腰を浮かし支えてくれたようだった。
「よし……」
 そうして竜児は、ようやく、上体を大河の方に倒していく。つながりの具合にあまり響かないように、腹筋と背筋に力を込めて、傾いていく。筋肉だけで支える限界が来る前に、竜児は大河の両わきに広がる淡色の髪海を手でかき分けて、髪を踏まないように手をつく。
 すべて今夜学んだことを竜児は生かす。
 ひたすらに大河を痛めないようにする。
 両手をついた自分の影に、光る大河が収まる。
 ちいさくて、綺麗で、可愛い大河。竜児の大河は、影の中でも煌く瞳を少し潤ませて、竜児を見上げて、
「おかえりなさい、竜児……」
 言って、微笑で迎えてくれるのだ。
 だから竜児は少し驚いて。
 素敵なこと言ってくれるじゃねえか、なんて思って。
 微笑みを返して、おう、ただいま、大河、なんて言って。
 ちょっとキメてやろう、なんて思ったのだ。
 なのに。
 ぼとぼとぼとっ、と音を立てて、大河の額に大粒の雨が降った。
 なんで雨がと、思う竜児の視界が急に歪む。
 可愛い大河をもっとよく見たいのに、これじゃ困るじゃねえかと思う。
 気づかせてくれたのは、優しい、優しい大河の声。
「泣かないで、竜児……」
「えっ? 俺、泣いてるのか……?」
 言われてみれば、肺が熱くて喘いでいるのだ。まるで泣いた時のように。
 泣いているのだ。俺は泣いているようだ。
 わけがわからない。
 泣く理由がない。
「あれ? 泣いてるなあ、俺。なんでだ……?」
 間抜けな声を出す。声はまだ、泣き声じゃないのに。
「泣かないで? 泣かないで? 竜児……」
 大河の声音が心配の色を帯びだす。そっちの方が竜児にはよっぽど気がかりだった。
 ぼたぼたと、まだ雨は降り止まない。たしかに、竜児は泣いていたけれど、
「おう、大河。気にするな。俺は泣いているみたいだけど平気だ」
 そんなことを言って、われながら変なことを言っているな、とすら余裕で思えるのだ。
 余裕で、だから、竜児は思い出す。
「おうそうだ、大河、俺、おまえに言わなきゃ」
 今度こそ、キメるのだ。なんか泣いているみたいだけど、俺は。
 言うんだ。
 ただいま、大河。
 これを。
 そう思って、言おうとして。
 急に喘ぎがきつくなった気がした。

129◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 20:55:36 ID:???
「た、ただい、っは、はっ、はっ、はあっ! ああっ! うう、ううう……うぐううううう……っ!」
 雨が、どしゃぶりになった。
 もう、竜児は喘ぐか、呻くことしか出来ない。呻いて、呻いて、呻いて。
 ――大河、って、呼びたい。
 大河、って、呼ばなきゃ。
 でないとこいつ、心配しちまう。
 こいつまで、泣き出しちまう。
 こいつ泣き虫だから。
 俺は平気だって、伝えなきゃ。
 そうだ、キス。
 大河、って、優しく呼んで。
 俺はキスをするんだ。そして大河を、安心させる。
 呻きは、収まった。
 雨はまだ降っているけど、喘いでいるだけ。
「た」
 喘いだせいで、のどがへばりついていた。固唾を呑んで、のどをなんとかする。
「た、大河……」
 ようやく、そう呼んで。
 ひじを曲げて、背中も丸めて、大河に顔を近づける。
「竜児……だいじょうぶ……?」
 不思議と雨も止んで、視界が開ける。
 大河は慌てたような、心配そうなツラをして、涙目にこそなっていたけれど、大丈夫。
「よかった……間に合った。まだ泣いちゃいねえな?」
「っ!? 馬鹿っ! なに私の心配してんのよ!」
「いや、俺、ほんとに平気なんだ。なんだったんだろな……?」
 謎だよな、怪現象だな……なんてさも不思議そうに、あっけらかんと言って、竜児は大河を唖然とさせる。
「そうだ、おまえ、痛くないか? 大丈夫か?」
 さすがの大河も、これには、はああ……と盛大にため息するほかない。
「あんたさあ、いいかげんにしなさいよ? 私の心配はもういいっての。だからさ……だから、竜児……だから……」
 ちょっとは私にも、あんたのこと心配させてよ……そう、大河は言い募って、言葉のしまいには、もう、ほろほろと泣き出していた。
 大河のその言葉を聞いて、竜児には、なにかわかったような気がした。
「大河……」
「ね、竜児……もう、一人で、頑張んないでよ……私の、ために、だから、嬉しいけど……やだよ……だって、だって、ふたりで、生きていくって、決めたんだもん……っ!」
 大河が、手を自分の脚から離した。わかって、竜児は大河の頭を抱えるように抱きしめる。大河が竜児の胴に両手をまわしてしがみつく。熱い熱い額を、竜児の首に押しつける。
「大河……」
「ふ、ふううっ……ふ、ふた、ふたりで、生きていくんでしょ! 私たち、ふたりで、生きていくんでしょ! 私、ドジだし、乱暴だし、ろ、料理も、出来ないし、なんにも、なんにも出来ないけど! でも、頼ってよ! お願いだから、頼りにならないけど、頼ってよ……っ! 心配、あんたのこと、私にっ、心配、させ、てよ……っ!」
「大河……大河。大丈夫だよ、大丈夫……」
 泣いて、喘いで、それでもさっきの自分なんかよりもよっぽどちゃんと言葉を紡いで、吐き出してくる大河に、竜児がかけた言葉は、しかしいっそう大河の怒りに火をともしてしまう。
 大河の泣き声を、怒りの声音が塗りつぶす。
「だい、じょう、ぶ、なんかじゃ、ないっ! 大丈夫じゃ、ないっ! 違うのっ! 違うでしょっ!? 私の心配をするんじゃないっ!」

130◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 20:56:27 ID:???
「ちがうちがう、大河、ちがうんだ」
「なにっ! なにが違うっていうのっ!? 違ってないっ! 適当なこと言うなこの……ばっ! ……だっ! ……あっ! えっ! ……りゅっ! ううう……なんかどれもイマイチなんだわ……」
 いきなり何の発声練習かと思いきや、大河はどうやら竜児を罵る呼び方の候補を探しては、この場ではいまいちと、順に放棄していたらしい。おいなんか最後、俺の本名までそのイマイチに入ってなかったか……? と竜児は思わずにはいられなかったのだけれど。
 これでも竜児は名うての、いや世界で一番の猛獣使い。まっすぐに、一言。
「頼ってるよ、大河」
「だから頼ってなんか……っ!? た、なに? 頼って、るの?」
 急に大河の声はあどけなく、可愛くなる。
 竜児は少し、身体を起こして。あごを引いて、暖かい大河の顔を覗き込む。一生懸命にあごを上げた大河が、また涙でぐしゃぐしゃにした大きな瞳を上目遣いにして、やはりあどけない顔をして竜児を見返している。
 ふたりの間で温められた暖かく湿った空気の中に、竜児は言葉をしっかりと送り出す。
「頼ってるよ、大河。もう、頼ってるんだよ」
「うそ……だって……っ。私……嘘つきは嫌いよ……? 竜児でも……」
「嘘じゃないよ。なあ、大河。俺、さっき、すげえ泣いただろ?」
「うん……泣いた。さっきあんた、死ぬほど泣いてた。うん。それは嘘じゃないね……」
「なんで泣いたのか、俺、わかんないって、言ってただろ?」
「うん……言ってた。それも、嘘じゃないね……」
「なんか俺、なんで泣いたのか、わかったような気がする」
「おお……それはすごいね。実に、興味深いね……じゃなくて、ほんとう? 聞かせてよ!」
「おまえが、おかえりなさいって、言ってくれたからだよ」
 ついと大河は瞳を眇める。
「えーっ? ……またまた、このスケコマシが。天然ジゴロ犬が。私を喜ばせようったってそうはいかないっての。……はっ、そうだ! あった! あったんじゃんまだ!」
「な、何がだ?」
「あんたを罵る言葉よ。このスケコマシ! ジゴロ犬! ……なによ、余裕で笑ってんじゃないよ。婚約ってのはこうもひとを変えるものかねえ」
 やだやだ、こわいこわいねえ婚姻制度は……なんて大河は言う。立っていれば、きっと外人みたいに肩をすくめて首を振っていたところか。
「……いや、悪い。まあ、俺の話を最後まで聞いてくれよ。……あの時、おまえにさ、おかえりなさいって言われてさ……おまえが言ってくれてさ、俺、すごく嬉しかったんだよ」
 大河が怒りと違う紅潮を頬にのぼらせる。それでも瞳は眇めたままで、今度は搦め手から来たよ、なんて言う。
 竜児はまた少し、ウケて笑って。
「搦め手じゃねえ、って……それでさ、俺は、おまえにしちゃあ素敵なこと言うじゃねえか、なんて思ってさ。だから俺も、ちょっとカッコつけて、おう、ただいま、って言おうとしたんだよ。そうしたら、そのかわりに……言えないかわりに、涙がどばっと出てきた」
「おお……それはすごい。ほんとに不思議……」
 頬を染めたまま、今度は大河も素直に大きな瞳をまあるくする。
「泣いてても、気分はさ、平気なんだよ。嬉しいだけで……嬉しすぎて泣いた、ってんでもなくて。そう、穏やかに、嬉しいだけでさ。でもまあ、どばどば涙が出てきて。それでまあ、平気だから、思い出して、もう一回、言おうとしたんだ。ただいま、大河、って。そしたらあれだ。本降り。どしゃぶり。また言えなくて、すげえ呻き声しか出てこねえ」

131◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 20:57:52 ID:???
「そうだったそうだった。すっごいびっくりしたんだから! こいつとうとう狂ったか!? って」
「狂ったはひでえな……まあ、そんなだったわけだよ。しかも号泣してても、気分は平気なんだ。むしろおまえがつられて泣くことの方が心配だったりしてさ」
「奇怪千万……あとあんたいいひとすぎ」
「まったくだ……いや、奇怪千万の方な? でな、つまり……俺、頑張ってたんだよ、自分で言うのもなんだけど……さっきまで。おまえが裂けたりしないように、って。つながりたいけど、ちっこいおまえが、痛くなんかならないように、って」
 聞いて、もう、茶々入れもできず、大河はとろけてしまう。
「竜児……」
「おう、俺、おまえのその顔、大好きだぞ。たまらないよ……あれ? なんだ、どこまで話した?」
「えと……ちっこい私が、痛くならないように、って」
「そう、そうだ。ずっと、ずうっと、この夜の初めから、俺、頑張ってきたみたいなんだよ。……口説いてんじゃ、ねえぞ? ただの本当の話だぞ?」
「うん……うん……」
「うわあ、だめだ。その顔、おまえ、すげえ好きになる。あれ? ちょっとまて、なんだ、バカか俺は。悪い、どこまで話した?」
「ん……初めからね、ずっと頑張ってきた、って」
「そうそう。ほらな、すげえ頼りになるじゃん、おまえ。……あっぶね。また忘れるとこだ……でさ、まあ、自分でも気づいていないほど、頑張ってたんだろうな。気づいてたけど、それ以上に。でさ、それがさ、ようやくこうしてつながって……おまえと、つながることが出来て、さ……そうしてようやく、おまえに……ちょっと泣くぞ……心配すんなよ……いや適当に心配しろ……心配してくれ、ほどよく」
「うんっ……うんっ……」
「……おまえに、さ、帰ってきて、さ。わかるよな? 傍にいたけど、ずっとくっついていたけど、それでも、おまえに帰ってきて。帰ってきたらさ、おまえ、ちゃんと、っは、は、はあっ、はあっ、そのこと……っは……わかってたみたいに、さ、ぜんぶ、言ってもいねえのに、ぜんぶ、知っててくれたみたいに……!」
 大河は涙に抗うようにして微笑んで、しっかりと、やさしく、言ってくれるのだ。
「わかってたよ……知ってたよ……竜児……」
「そっ、そうか……っ。そうだよ、な、おまえ、ぜんぶ、わかってて、知ってて、くれて。だから、おかえりって、言って、くれて、俺、ただいまって、言おうと、して……あ、あ、あっ、あっ、あっ」
 なんだ、またかよ……言わせて、くれよ……
「あ、愛してるんだ、大河……っ!」
 大河はどうしたらよかったのだろう。
 私も愛してるって、言わなくちゃと、思って。


 でも、唇は、震えて、震えて。
 ふたりは、ようやく。


 キスを、するだけ。


(13章おわり、14章につづく)

132◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/20(土) 21:06:36 ID:???
泣いた子は素直に自己申告するように。

……はーい!(゚д゚)/

>>118
やばい、自分が言ったことのどこが恥ずかしいセリフだったのか
わかんない……天然じゃないはずなんだぜ。

>>119
そんなこと言うあなたも職人さんね!?
よーまーせーてーくーれーろー。

133高須家の名無しさん:2009/06/20(土) 21:07:49 ID:???
>>132
読ませてあげたいのはやまやまだが光景が降りてこなくてねぇ

134高須家の名無しさん:2009/06/21(日) 00:24:51 ID:???
           ノノノノノ
       ≡ ☆ノ゛゛゛゛ヽ
       ≡.ノノ*∂Д∂'ル <えっちだぁーーーーーああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!
       ≡. ⊂   ,,O
       ≡. ⊂\_)

135高須家の名無しさん:2009/06/21(日) 08:16:14 ID:???
>>132
こんな朝から昇り竜・・・
なんてことをしてくれるんだ!

136◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/21(日) 10:38:02 ID:???
雨でどんよりですのう。

まとめ人さん、まとめ作業お疲れ様でした。
まとめサイトへの収蔵、ありがとうございまーす!


>>133
光景で入るタイプでしたか。私は言葉とか出来事とか、かなー

>>134
落涙必至の感動編のはずが……ありがとう!

>>135
ラスト際なのにあんまえっちでなくて逆に不安だったんですが、
まったくの杞憂というやつだったようで……ありがとう!

137高須家の名無しさん:2009/06/21(日) 11:11:24 ID:???
>>132
ナマ挿入中出しはまだですか(´;ω;`)

138高須家の名無しさん:2009/06/21(日) 14:43:59 ID:???
>>137
りうじはそんなことする子じゃありません(´・ω・`)
いや待てよ、結婚後の猛烈ラブラブがあってもいいはず…!

なっ、中で出すまでやめないんだから!w

139◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/21(日) 18:08:42 ID:???
中田氏、それは男の欲望番外地……

>>137
「並び寝る」内ではそれは無いのう。すまんのうすまんのう。

>>138
結婚後とかに、まあ、なりますよね。婚前で、という設定の場合の
奥の手もいくつか無くは無いんですけどね……

でも今のとこは「並び寝る」終わったらエロ書く予定は中田氏、
いや無かったり。

140◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/21(日) 18:10:15 ID:???
・もんじゃ焼きタイガー

「なんかゲロみたい」
「どうもすいません。すいません。ちょっと残念な子なんで、ええ。本当にすいませんでした。
 ……ほらみろ、隣のお客さん吹いちまったじゃねえか。おまえ絶対言うと思ってたけど、
 迷いなく店内に響き渡る声で言うとは思わなかったわ……」
「なんか食べる気なくなった」
「自業自得すぎるだろ……だいいち、おまえが、もんじゃ食ったこと無い食べたい食べたいーっ、
 って言うから来たんだろ!? まあ、ためしに食ってみろって。美味いから」
「いい。ぜんぶあんたにあげる」
「おまえ一度に6つも頼んどいてそりゃねえだろ!? そうだなあ……見た目か……そうだ、大河、
 おまえちょっと目つぶってみろ」
「な、なんでよ。はっ、わかった、あんた私の唇を奪う気ね!? あんたってなんて色情狂犬病なの。
 しかもこんな油っくさい場所に誘い込んでだなんて。今日ほどあんたの異常性欲に
 驚かされたことはないわ、このオイルプレイマニアのダーティドッグ淫蕩犬!」
「ただの勘違いのせいで死にたい気分にまでなるのは嫌だからやめてくれ……。
 まあ、いいから、目つぶってみろって、騙されたと思って」
「騙すんならせめてもっとムードのあるところにしてよっ!?」
「だからキスなんかしねえって!」
「なんでキスしないのよ!?」
「して欲しいのかよ!?」
「あんたがしたいんでしょ!?」
「あー……ほら、まあ、頼む、落ち着いてくれ。どう見ても俺たち迷惑系だ。
 店員見てる。追い出される。なあ、俺も、いや、俺が悪かった。後でデザートもおごるから」
「……わかったわ。ホテルのデザートで手打ちよ。パークハイアットの展望ラウンジ。
 あそこすっごく眺めがいいの! 夜がいいかも! そこでなら……考えてあげてもよいわ……」
「真っ赤になって上目遣いか……大変貴重なものが見られてまことにありがたいが、
 絶賛勘違い継続中なのはわかった。……まあ、さておき、もんじゃだ。とにかく目を……
 いや、この際、鼻でいい。鼻に意識を集中してみろ。美味そうな匂いがするから」
「鼻!? あんたってどこまで変態……くん、くん、くんくんくん……っ」
「そう、そうだ。プレイじゃないぞ。匂いを嗅げ」
「くんくん、くんかくんかくんかくんかくんか……っはー……くんかくんかくんか……」
「そーう、そう。目もつぶってもっとちゃんと……ようしいい子だ、いい子だなー大河は。
 美味しそうな匂いだねー? 美味しそうな匂いがするねー? いーい子だ!」
「くんかくんか……はーっ……する……美味しそうな匂い……する……食いもの……」
「美味しいぞー? 食べるともっと美味しいぞー? 大河は、おこげのとことか好きだろう?」
「うん……好き……おこげ……美味しいよね……石焼ビビンパ……はっ、わかったわ竜児!
 私、石焼ビビンパが食べたい! カルビのつ」
「はいそこでストップ! ビビンパはまた今度な。今はもんじゃ焼きだ。おこげが好きな
 おませな少女のおまえに教えてやろう大河、もんじゃ焼きとはな、すべてがおこげだ!」
「おお……すべて……」
「そうだ。これがぜんぶおこげ。美味しいおこげだけで満腹したいという人類の夢をかなえた
 偉大なB級グルメだ!」
「おお……だけで……もはや神だね、考えたひとは……食べよ! 竜児! 早く食べたい!
 ほら早くっ! 世紀の大魔術に成功してマフィアのボスどもから万来の拍手を浴びて恍惚に
 うち震えるアングラ奇術師みたいな顔してないでさ!」
「お……おう、そうだな。食べよう、大河!」
「うんっ! ……で、どうやって食べるの、これ?」
「おう、食べ方な。それはこのヘラを使って……ああまて、いいか、まず俺が何回か、
 手本を見せるから、ちゃんと見て覚えてから、おまえもまねて食べること。
 そして絶対忘れちゃいけねえことは、火傷に注意すること、これだ。いいな?」
「うんっ、わかった!」
「よし、じゃあ、見ててくれ。このヘラで、まずこうして……火傷に注意な、押さえて……
 こうくるっと返して、熱いからふーっふーっとしてから、ぱくっと……うん、美味いなこの店」
「あう……ずるい竜児っ」

141◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/21(日) 18:11:55 ID:???
「ずるいっておまえ、手本なんだからしょうがねえだろ。いいか、もっかいやるぞ。
 よく見てろよ……こうして……火傷に注意な、絶対な……こう、ふーふー、ぱく」
「あー……も、もう、わかったよ! 完璧! 私も食べる!」
「待て! 念のためもう一回! 最後の手本だ!」
「えーっ!? うう……ひどい……変態……サド犬……っ」
「わあ泣くな泣くなおまえ! おまえのためだ! おまえが火傷するなんて俺は嫌なんだよ!
 な? な? ……よし、最後の一回、よく見とけよ……こう、火傷に注意して、こう、ぱく。
 わかったか?」
「ひっく……わ、わかった……」
「よし! じゃあ食べてよし! 火傷に注意な」
「わーいっ! うんっ! いっただっきまーす! っとこうしてこうあっっちゃああああっっ
 っってんめえふざけんなこのクソ餓鬼ゃあっっっ!? 訴えてやるっっっ!!」
「ダチョウ倶楽部か!! 馬鹿っおまえ火傷してないかちょっ手見せてみろ!
 あー赤い、やったな。ほら、俺の水飲んでないからこれに指つけろ。
 すいませーん! 店員さん! お水いただけますか? 氷入れて下さい!」
「うう……だ、大丈夫よこれくらい」
「いや、駄目だ。いいから冷やせ。火傷は最初が肝心なんだよ。……あ、すいません。
 ありがとうございます。……ほら」
「えっ、なに?」
「チェンジ。こっちのが冷ますのにいい。ちょっと冷たいだろうけどしばらく我慢だ。
 ……そう、赤くなったとこ、ちゃんと浸けとけ」
「うん……。えっ!? あんた、その水、飲むの? 替えてもらったら?」
「おう、なんでだ?」
「え、だ、だってその水、指、浸けたし……私の」
「俺はべつにかまわねえよ、おまえなら」
「っ!」
「……あ、それともあれか、おまえが嫌なのか? なら替えるか。ってもう口つけちまったけど」
「そんなことない! もん……嫌とかじゃ、ないもん。竜児がいいなら、いい。
 ……あのね竜児」
「おう、なんだ?」
「わ、私もっ……私も、ね? 今度、竜児が火傷したら、その指冷やしたお水、飲む」
「おう……べつにそんな無理することは」
「無理じゃない、もん……べつに……」
「そ、そうか……よし! じゃあ気をとりなおして、もんじゃ食べようぜ。早く食わないと、
 ほんとに焦げちまう」
「うん……でも私、もういいから。手、こんなだし……竜児食べて」
「……こうして、こうして、こう、ふーっふーっ」
「……」
「ふーっ、っと、ほら、大河」
「えっ、なに?」
「なにじゃねえよ。口あけろ。あーんしろ」
「っ! でも、これ……いいの……?」
「いいに決まってるだろ。俺一人じゃ食い切れねえし、それに……
 なんだよ、大河、おまえらしくもねえ。さ、いつもみたいに命令してくれよ、俺にさ。
 偉そうに、おまえらしく」
「う、うん。そうね、わかった。えと……りゅ、竜児っ! あ、ああああんたなんか……あれ?
 んと……かっ、飼い主の私が指を火傷したら、したら……その……
 すっ、素早くお水で冷やしてくれて……えと……てっ、店員さん呼んで、その……
 お水も気にしないで飲んでくれて……そ、それで、それで、
 あーんとかして、優しく食べさせてくれるの……」


***おしまい***

◆eaLbsriOasでした。代理投稿歓迎。


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