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大河×竜児ラブラブ妄想スレ 新避難所
102
:
◇eaLbsriOas
◆dvuHYisf.g
:2009/06/19(金) 21:06:34 ID:???
「竜児……」
首も折れよと俯いた竜児の顔を、下から覗き込んでくる大河の、心配そうなツラがまたこたえる。まだ失望や軽蔑を向けられる方がマシだった。何も面白いものなどないのに、細かく吐くように竜児は笑っていた。
「はは……いいんだぞ、大河。罵ってくれて。いつもみたいに、言ってくれよ。このグズ、ノロマ、不器用……不器用……はは、おまえはすごいや。俺なんにも思いつかねえ……」
竜児の顔は正真正銘、ひどい顔であった。歯を軋るほどに噛み締めた唇は引き攣れ、涙をこらえて凶眼はゆがみ、星の断末魔にも似た滅茶苦茶な光を四方八方へと放つ。一人の男の思いが遂げられなかったのなら、全世界はそれに対して涙すべきだ、そしてこれ以降の歴史において一切の詩を歌うことは野蛮である……なにがなんだかよくわからないが、ものすごくそんな感じだ。
「竜児、泣かないで……」
「大河……な、泣かねえ。泣かねえぞ畜生……俺は幸せなんだ、おまえがいるから。最高の、幸せ者なんだ、俺は。泣くわけがねえ。決めたんだ、俺は。これから先、あとは、もう、おまえのためにしか泣かねえ、って。……でも、畜生……最後だった。最後を駄目にした、俺は。俺が、駄目に」
「最後……?」
「最後の、ゴムだった……駄目にした。大河……」
もう限界だった。両手で顔を覆う前に、せめてひと目と竜児は揺らめく視界に大好きな大河を捕らえて、
「大河、俺、おまえとつながりたかったよお……っ!」
はらわたを搾るようにして言った。そして顔を覆おうと、竜児は手を持ち上げようとするのに、手は震えて、どこまでも馬鹿にするように不器用になって、満足に持ち上がりもしないのだ。
「最後じゃないよ、竜児……」
大河はそう言ってくれる。また今度がある、そういうことだろうか。もちろんそうだ。また今度がある。しかし愛しい女のその約束すらも、とてもすぐには慰めになりそうもなかった。
また今度はある、だがそれは今夜ではない。
それが我慢ならないほどに、自分を追い詰めてしまった自分を竜児は感じていた。その時。
大河はその、震える竜児の手の上に、白くてちいさな両の手をのせるようにして。
だけど、その大河の両手のひらは上を向いていて。
そこには、箱が――ゴムの箱が、二つ、も?
「ほら、竜児。まだあるよ? まだ、いっぱい」
綺麗な顔を子どものようにあどけなくして、大河は教えてくれた。
「あ、ある……のか?」
うんうん、と大河はうなずく。
「あのね、いっぱい買っておいたの。棚にあるだけぜんぶ買ったの。竜児が失敗するなんて考えてなかったけど。念のため……でもなくて。ていうかなにも考えてなかったの。いっぱいいっぱい買わなきゃ、って、それだけしか覚えてない」
「そうか……そうか……そうかあ……」
そればかり繰り返して、竜児はもう、鼻と口からゆるゆると息を吐くばかり。
「ごめんね。意地悪するつもりなんてなかったの。竜児がどうしてそんなに落ち込んでるのかわかんなくって。最後、って言うの聞いて、ようやくわかったの。……えっと、私どうしたらよかっ」
言葉尻ごと、竜児は大河を抱きしめていた。
「よかった……よかったああああああああ……っっっ!」
大河のつむじに頬を寄せて、安堵の息をこれでもかと吐きかける。唐突に掻き抱かれた大河は戸惑って。
「お、おこってない?」
「怒るもなにも……もう、おまえ……っ。よかった……うああ、すげえよかった……」
助かった、助かった……竜児は馬鹿みたいに繰り返す。
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