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( ^ω^) 剣と魔法と大五郎のようです
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懐かしい夢を見た。
体も心もまだ幼くて、それでも、だからこそ幸せだった頃の記憶。
ξ゚⊿゚)ξ (……)
薄暗闇の中、天井に手を翳す。
思えば遠くに来た。
それは、物理的な距離ではなくて。
ξ゚⊿゚)ξ (……)
体のいたるところに出来た傷跡を、死んでしまった両親が見たらどう思うだろうか。
きっと怒るのだろう。そして、悲しむのだろう。
傷を作ったことでは無くて、傷を作るに至った理由を。
ξ゚ー゚)ξ (……ふふ)
いつもそうだった。
二人の心配を無視して怪我をして、母親の手痛い拳骨を貰ったものだ。
よくよく考えれば、きっとあの頃から成長なんてしていない。
ξ ⊿)ξ =3
脳裏にちらつくあらゆる感情を息と共に吐き出して、硬く目を閉じる。
迂闊にあの頃を思ったりしないように。
幸せな夢を、もう見てしまわないように。
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主武器であるハルベルトを構えたまま、周囲をぐるりと睨む。
敵は、ぞろぞろと現れた十余人。しかし、並ぶ顔ぶれは、憎らしいほどに豪華だ。
ヨコホリ、逆さ男の他に、
爪'ー`)y‐~ 「やれやれ、すごい気迫だ……どちらが罠に嵌ったのか分からないねえ……」
イ(゚、ナリ从 「……だんちょ、森の中で煙草は危ない」
山幻旅団筆頭フォックスと、側近の娘、イナリ。
この四人だけでも十分すぎる戦力だ。
個人間で比べれば、彼らとまともな勝負になるのはィシしかいないだろう。
状況は芳しくない。
人数は相手に分があり、さらに待ち伏せにより地の利を取られている。
しかし、それは初めから予想出来たことだ。
罠であることは予想できたが、だからこそチャンスであるとも思った。
ヨコホリは釣り餌であるからこそ、ィシたちががっちりと食いつくまでは下げられ無い。
ィシは、胸元に手を当てる。
食いつくための準備はいくらでもしてきた。
糸を千切り、針を捩じり、竿をへし折るその準備。
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ヨコホリが魔法を放ち、シーンが分解したのをきっかけに、両者が動いた。
相手も手練れではあるが、こちらも雑魚では無い。
一旦武器をかち合わせてしまえば、そこらの傭兵など軽くしのぐ猛者たちだ。
戦況は、一気に乱戦へ。
地元の農夫たちが手入れをしているお蔭か、近辺の足場はある程度開けているが、木は当然多い。
幸いにしてこの窮屈さが、数の差を埋めてくれていた。
敵の主力四人がまだ様子見していることも、大きい
腹が立つほど余裕の態度ではあるが、その分踏みにじり甲斐がある。
〈::゚−゚〉 「!!」
立ち位置さえ注意すれば、ィシの腕ならばハルベルトも問題なく扱える。
ィシは大きく踏み込み、自身に迫ってきていた二人の敵を武器で薙いだ。
斧刃が一人目の腹を大きく抉り、その体を刃に絡めたまま勢いでもう一人も払い退ける。
巻き込まれた枝葉が、抵抗も敵わず舞い散った。
刃を直接受けた方は今の一撃でほぼ即死。
巻き込まれ突き飛ばされた方は、身動きしなくなった仲間にのしかかられ、自由に動けない。
この機会を逃すことなく、ィシはその男の頭に斧刃を落とす。
頭蓋が割れ、脳漿と血液が噴き出した。
自らの服にはねた赤を気にする様子も無く、ィシはハルベルトを引き、刃の穢れを払う。
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〈::゚−゚〉 「我々は大五郎とは違う」
未だ血のこべりつくハルベルトを脇に構え、ィシが一歩前へ。
無表情でありながら、その気迫が肌を震わせるようであった。
迎え撃とうとしていた敵兵の足が、自然に二歩後ずさる。
〈::゚−゚〉 「失うものなど何もない。故に、貴様らに容赦もしない」
ィシの奮起を目にし、禁恨党員たちが戦意を取り戻し始めた。
士気さえ釣り合えば、人数差を埋める十分な実力はある。
いくらかの余裕を見せていた根絶法側に緊張感が走った。
〈::゚−゚〉 「我々に武器を構えたからには、死ぬと思え」
根絶法側が有利なことには変わりない。
しかし、決して安全な勝負では無い。
初老でありながら、女でありながら重量武器を振るうィシの姿は、畏怖を覚えさせるに十分な迫を持っていた。
雄叫びをあげ、禁酒党の男が手斧を振り上げィシに襲い掛かる。
背後、死角の位置。
自らを奮起させるための雄叫びが攻撃を悟らせはしたが、十分に奇襲の役を果たしている。
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〈::゚−゚〉 「……」
ィシは頭だけを振り向かせ、その姿を確認。
手斧のリーチは短いが、威力は高い。
喰らえば相当に致命的な傷を負うだろう。
しかし問題は無い。
〈::゚−゚〉 「……」
ィシは、左足を一歩、後ろへ引く。
爪先は横向き。それに従い体もやや開く。
この時点で既に、ィシの上体はハルベルトを振るう準備を終えていた。
「?!」
迫る男の脇、あばらに向けてィシはハルベルトを振り上げる。
敵の攻撃も、回避も間に合いはしない。
斧刃が男の肋を捉えた。
骨が割れ、肉が裂かれ、内臓が潰れ。
それでも重厚の刃は止まらない。
両手から片手に移行しながらも、ィシは完全に得物を振り抜いた。
男の体が宙に浮き、鮮血が吹き上がる。
ほぼ即死したその体が衝撃で回転するのに従って、血が生臭い螺旋を描いた。
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爪;'ー`)y‐、 ~ 「……人間か?」
イ(゚、ナリ从 「だんちょ、ちびりそう」
爪;'ー`)y‐ 「安心しな。俺なんか既にちびったよ」
(//‰ ゚) 「俺が言うのもなンだが、人間じゃねえな」
〈;;(。个。)〉 「ヨコホリ、フォックス、予定通り行くぞ」
爪;'ー`)σ ⌒ 、 「あーあ、こんなんならニダの旦那の方行けばよかったな」
逆さ男が前へ。後ろにヨコホリが続きフォックスとイナリはその場にとどまる。
ィシが腰の剣を投げつけさらに一人を討ち、いくらか情勢を持ち直した禁恨党。
目の前の一人を危なげしかない動きで何とか切り伏せたミンクスが、ィシの横につく。
〈::゚−゚〉 「……ミンクス」
ミ;´・w・ン 「言わないでくださいよ。俺だって、意地はあるんです」
〈::゚−゚〉 「せめて一人は、引きつけろよ。そして、危なくなったらすぐに逃げろ」
ミ;´・w・ン 「……ゥス」
-
〈;;(。个。)〉 「……行くぞ」
飛び立つ燕のようであった。
音も無く逆さ男の姿が残像に変わり、ィシへ迫る。
空中へ飛翔。全身のばねを利用し、鋼鉄の脚甲でィシを薙ぎ払った。
ハルベルトの柄を引き揚げ、これを受け止めるィシ。
互いの衣服が衝撃で靡き、足が地面に深く食い込む。
逆さ男の手には輝く指輪があった。
魔道具だ。これによって身体能力を強化している。
脚甲をつけていることもあり、直撃であれば必殺に近い破壊力だ。
逆さ男は蹴り終わりの着地と同時に後転。
反撃に振るわれたィシのハルベルトをやり過ごす。
振り切られた武器を剛力で制動し、ィシは踏み込んで追撃の刺突を放った。
空気がうねりをあげるこの一撃を、逆さ男は飛び越えて回避。
胴を軸に数度の回転を加え、体重の乗った蹴りをィシの頭へ叩き付ける。
〈::゚−゚〉 「フンッ」
〈;;(。个。)〉 「ッ?!」
鉄槌のごとき一撃を受けたのは、頭蓋では無く、筋肉の隆起する二本の腕。
ィシがハルベルトを手放し、素早く防御に回したのだ。
骨が砕けても不思議は無いというのに、まるで巨木を叩いたようにびくともしない。
-
〈::゚−゚〉 「ぬうん!!」
着地でバランスを崩した逆さ男の服をィシの手が掴んだ。
振りほどこうとする抵抗を無視し、片腕で軽々と振り上げる。
〈::゚−゚〉 「ハァ!!」
〈;;(。个。)〉 「グッ!?」
ィシは、持ち上げた逆さ男を、メンコで遊ぶかのように地面に叩き付けた。
地面は柔らかい腐葉土。
しかしそれでいても、2m弱の高さから受け身も取らず叩き付けられれば。
〈;;(。个。)〉 「……ッ……、恐ろしく強い」
ダメージは相当なものになる。
叩き付けからすぐさま転がって距離を取った逆さ男ではあったが、その足取りはいささか頼りない。
指輪の輝きはいつの間にか消え、彼が魔法の補助を失っていることを示す。
〈;;(。个。)〉 「……なるほど、魔法を解除されるというのは、なかなか厄介だ」
( ・−・ )
逆さ男の視線の先には、魔法使いシーン=ショット。
蹴りを放った時点で、身体強化は解けていた。
この援護が無ければもう少しまともなダメージを通せただろう。
-
(//‰ ゚) 「ハッハァ!!」
逆さ男がィシを引きつけている内に、ヨコホリはシーンに迫っていた。
魔法分解の能力を除いてもシーンは優秀な魔法使いだが、正面からヨコホリの相手をするだけの技量は無い。
割って入った数人の禁恨党員を吹き飛ばし、鋼鉄の腕をギシリと鳴った。
シーンはィシの援護にで魔法分解を行っており、ヨコホリへの対処が遅れている。
下がって間合いを取りながら、ヨコホリの「心臓」の魔法の解析を始めるが、接近の方が早い。
ミ;´・w・ン 「させないって!!」
割って入るミンクス。実力差は歴然だが、僅かな時間稼ぎにはなる。
シーンは魔法を展開。
丸めて背中に括っていた魔道具の布を、大きく広げる。
布は蛇の如く揺らめき、ヨコホリの体に絡みつく。
ミンクスを捻りつぶそうとしていた腕が寸前で止まった。
狙ったのは関節。万力を誇る“サイボーグ”の体であっても要所を抑えれば拘束は可能だ。
(//‰ ゚) 「チィッ!せこいマネ…………ヲッ?!」
悪態をつく彼の背後迫るィシ。
反応したヨコホリだが、布に動きを邪魔され対応が間に合わない。
大きく振りかぶったィシの裏拳がヨコホリの頭を側面から殴り抜く。
金属が砕ける音とは、ここまで響きがよいものか。
ヨコホリの体は鞠のように跳ねて転がり、木に激突して止まった。
轟音と共に彼の体を受け止めた木が、軋みを立てて傾いていく。
-
〈::゚−゚〉 「……」
ィシがヨコホリを跳ね飛ばすと同時、がら空きの背中に逆さ男が躍りかかる。
再び強化魔法を発動していたが、すぐにシーンによって強制解除された。
それでも勢いのまィシの背中を蹴り抜く。
〈:: − 〉 「ぐっ!」
蹴りの衝撃は分厚い胸部を駆け貫く。
ィシは苦しげに呻くも、すぐさま反撃の体勢。
振り向きざまに裏拳を放ったが、逆さ男はひらりと飛びのいてやり過ごす。
(//‰ ゚) 「おィィ……逆さァ……しっかりひきつけといてくれよォ……」
ヨコホリが魔法布を引き千切りながら立ち上がる。
頭の形が変形している上に、よく見れば首は横に折れているだけでなく180度捩じれていた。
それを、自身の両手で挟み、ゴキゴキと整形しなおす。
(//‰ ゚) 「俺も不死身じゃねえンだ。死ンじまうぞ」
〈;;(。个。)〉 「想像以上の戦力だ」
(//‰ ゚) 「こいつ、なンかやってやがるぜ、気ィつけな」
余裕は未だあるようだが、ダメージがゼロでは無かったらしい。
少しばかり、彼の醸す空気に真剣みが混じり始めている。
-
爪'ー`)y 「……イナリ、もう大丈夫だ。お前も旦那たちに加勢しなさい」
イ(゚、ナリ从 「わかった。だんちょ、わたしが離れてる間に死ぬなよ」
爪;'ー`)y 「いやははは……厳しいねイナリは」
逆さ男たちから離れて後方、フォックスとイナリ。
フォックスは逆さ男がィシに仕掛けた時点から魔法の展開を開始し、イナリはそれをずっと守護していた。
現在魔法は無事に発動し、フォックスの周りには青みがかった煙が滞留している。
フォックスの言葉に従い、イナリは得物である剣を構えて飛び出した。
獣の如くとはこのことで思慮も策略も無く真正面から切り込んでゆく。
部下の背中を笑顔で見送り、フォックスもゆっくりと前に出た。
武器も持たず、まるで散策するように歩く彼を、禁恨党の兵士は見逃さない。
それまで刃を合わせていた敵を力ずくではじくと、フォックスに襲い掛かった。
爪'ー`)y‐ 「やれやれ」
怪しげに揺れ漂う煙が兵士を迎え入れる。
爪'ー`)y‐ 「良い夢をごらんよ」
その次の瞬間、唐突に兵士が膝をついた。
白目を剥き、口をだらしなく開けて、そのまま地面に倒れ込む。
死んではいないが、意識を取り戻す様子も無い。
-
爪'ー`)y‐~ 「ふむ、どうやら何か魔道具を使っているね」
フォックスが煙草に火を点け、乱戦するィシたちに歩み寄る。
それに伴って魔法の煙が周囲に拡散し、敵性の兵士のみを次々と不能にしていった。
ィシの奮闘で均等になっていた力のバランスが、一気に根絶法側に傾く。
爪'ー`)y‐~ 「だがまあ、脳があるなら問題ない」
ィシの体は、元よりも一回りほどパンプアップしていた。
動ける禁恨党の兵士は、既にィシ、ミンクス、シーンの三人のみ。
それでいても押し切れないのは、彼女の能力がいよいよ人知を凌駕し始めていたからである。
〈::゚−゚〉 「ォォォォオオオ!!!」
混戦の中取り戻したハルベルトを、豪快に振り回す。
接近していたイナリは守りに構えた武器ごと弾き飛ばされた。
ヨコホリが安全圏から魔法で攻撃するも、全てシーンに無効化される。
〈;;(。个。)〉 「フォックス!」
爪'ー`)y‐~ 「わかっている。あの化け物にどれだけ効くか分からないけどね」
周囲に散っていた煙が、意志を持ってィシたちの周囲に集まる。
ミンクスが抵抗し剣を振るうが、もちろん意味は無い。
-
( ・−・ ) !
爪'ー`)y‐~ 「君の分解は防ぎようがないけどね。手間をかけさせるくらいなら簡単さ」
煙には複数のダミーの魔法式が含まれていた。
主となる魔法式への介入を防ぐ性質があり、シーンの分解を妨害する。
魔法同士が干渉し合い、空中に激しい閃光の粒が生まれたが、肝心の煙は全く減らなかった。
ミ;´・w・ン 「やられる前にやるしかないっしょぉ!!」
ミンクスが口元を腕で抑え、煙を低い姿勢でフォックスへ。
意志をもって持続させるこのタイプの魔法は術者を落とすのが一番手っ取り早い。
もちろん、敵もそれは十分に理解しているため。
イ(゚、ナリ从 「させねっし」
イナリの持った鉤爪のような剣がミンクスを薙ぐ。
持ち前の臆病さでこれに気づいていたミンクスは大げさに転がって逃げた。
他の主力三人はミンクスの相手はイナリ一人で十分と判断したのか、ィシとシーンに迫っている。
( ・−・ )
爪;'ー`)y‐~ 「いやあ虚しくなるなあ……もう見破ったのかい」
シーンは、驚くべき速さで煙の魔法を看破していた。
すべてを消し去ることは叶っていないが、それでも自分たちに絡みつこうとしている部分は片っ端から消されていく。
-
だが、結果的にそれは、シーンを封じる役目となった。
魔力を注いだ分だけ増幅する魔法の煙は、消しても消しても後を絶たない。
発動者であるフォックスの保持する魔法式を瓦解できればよいのだが、煙に対処しながらできることでは無かった。
(//‰ ゚) 「カカカカァッ!!」
〈::゚−゚〉 「くッ」
分解される恐れの薄まったヨコホリは、思う存分に魔法を放つ。
無論シーンの援護は成り立たない。
ィシはハルベルトで土を舞い上げ、魔法攻撃を防ぐ煙幕とした。
炸裂し拡散する衝撃波で、互いに弾き飛ばされる。
ヨコホリが次の魔法を放つまでの隙を埋めるように間合いを詰める逆さ男。
彼は指輪の強化魔法を思う存分に使い、膂力を増していた。
地に足をついた状態で放たれたハイキックは、防御のために引き上げられたハルベルトの柄をゆがませる。
〈;;(。个。)〉 「これだけのメンツを集めて、成果なしとはいかんのでね」
〈::゚−゚〉 「……」
〈;;(。个。)〉 「貴様一人が優秀でも、この差は覆せん」
足を引き戻してからの、連撃。
激しく重い追撃はガードを突き抜けて体に響く。
強化魔法により倍近くまで引き上げられた脚力は、乱打にも関わらず大槌での殴打を思わせる。
-
振り抜きの強打を一撃、逆さ男が飛び跳ねて離脱した。
これで終わりではない。
むしろ。
(//‰ ゚) 「ラァ!!」
入れ替わりに、ヨコホリが右手を突き出し接近する。
格闘の間合いであるが、掌が僅かに輝くのをィシは見逃さない。
弓のように体を横にしならせ、放たれた魔法を回避。
倒れた姿勢のまま、腕力のみでハルベルトを振り上げる。
先端が鋼鉄の腕を弾き上げ、体はその慣性を利用して起き上がり。
腕を弾くために振り上げた武器は、そのまま攻撃への予備動作へと、流れるようにつながった。
しかし。
〈;;(。个。)〉 「ハッ」
剛力で振り下ろされたハルベルトは、黒鉄の脚甲に払われる。
鈍い音を立てて柄が弾け折れた。
飛んでいった先端の行方を気にする余裕は無い。
腕を弾かれた勢いで後退したヨコホリが、十分に立て直している。
突き出される右腕。照準は紛れも無くィシ。
飛翔蹴りから着地した逆さ男がすぐさま距離を取る。
(//‰ ゚) 「カカカッ」
-
〈::゚−゚〉 「――――――ッ!!」
輝くヨコホリの腕。
掌に生み出された無数の魔法弾が、花火のように飛び散った。
空気が歪み、蜃気楼のような帯が伸びる。
数え切れぬ魔法の榴弾は、小粒ながらも十分な破壊力。
ィシは咄嗟に折れたハルベルトの柄をバトンのように回転させて投げた。
だが、藁ほどの助けにもならず、数発で砕かれ盾の役目は果たさない。
強化された体が魔法の暴威に食い荒らされてゆく。
歪む視界。
頭にもらった一発が頭蓋を抉り取ってゆく。
視界の端で、ミンクスが切り伏せられるのが見えた。
膝が折れる。
シーンの姿は見えない。
彼は、どこにいる。
ィシの探し出した、切り札だ。
仲間であり、友であり、実の家族のような存在。
まだ失うわけにはいかない。
何度も何度も奪われるわけにはいかない。
-
〈;゙゙−゚〉 「……グッ、ハァァッ!!」
倒れかかった体を、背骨と腹筋で強引に持ち直す。
頭から、ごぽりと血が零れた。
熱いのに、冷たい。しかし、不思議と痛みは無かった。
(//‰ ゚) 「…………人間辞めすぎだぜェ」
飽きれるヨコホリを殴ろうとして、右腕が無いことに気がついた。
左腕はあった。指が無いため拳は握られないが、手刀の形で強引に叩き付ける。
(//‰ ゚) 「ナッ?!」
回避されるも、ヨコホリには普段のキレが無い。
戸惑っている?あるいは、怯んでいる?
ィシは左腕を振るった力を制御せず、そのまま頭からヨコホリに飛び込む。
額はヨコホリの鼻っ柱を捉えた。
自身の頭に走る痛烈な痺れに、目の前が白と黒の明滅を繰り返す。
何はともあれ、ヨコホリに隙を作った。
今ならば、分解が通用するはずだ。
ィシは振り返る。
声が出ないので、視線でシーンに指示を飛ばすつもりだった。
-
〈:;゙゙−゚〉
( − )
〈:;゙゙−゚〉
ああ。
.
-
シーンには、左腕が無かった。
ィシを外れた流れ弾が吹き飛ばしたのだろう。
そして、目は白を剥き、地面に半身を沈めていた。
集中力を失い、フォックスの魔法に飲まれたのだろう。
〈:;゙゙−゚〉
ィシは、膝から崩れ落ちる。
終りだ。
復讐のために積み上げてきた戦力はすべて失われた。
無謀だった。
無策だった。
何より無能だった。
大五郎への襲撃など、黙って見逃せばよかった。
罠にわざと食いつくことなどせずに身を潜め、虎視眈々と隙を伺うべきだった。
そうできなかったのは、おのれの甘さに他ならない。
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(//‰ ゚) 「……」
〈;;(。个。)〉 「……ヨコホリ、もういい」
(//‰ ゚) 「まだ息があル。止めを刺すまで安心はできねェ」
〈;;(。个。)〉 「不要だといっている。既に治る傷では無い」
(//‰ ゚) 「……逆さァ、お前のそれは情けでも仁義でもねえ。ただの侮辱だ」
〈;;(。个。)〉 「……」
地面に膝を折ったィシの頭に、ヨコホリが右手を押し付ける。
これで終わりだ。頭を吹き飛ばされて終わりだ。
夫のもとへ行ける。
散々苦労を掛けた同胞たちと共に行ける。
(//‰ ゚) 「あんたとは、長い付き合いだったなァ。あばよ……」
〈:: − 〉
ああ。
だけれど。
(//‰ ゚) 「?!」
この男を遺していくことだけは、やはり出来ない。
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今まさに魔法を放とうとしていたヨコホリの腕を、ィシの左腕が鷲掴む。
指を失っていたはずの手には、歪な木の枝が生え、鋼鉄の腕をギリギリと締め上げた。
反射的にヨコホリが魔法を放つ。
力づくで射線をずらされた魔法弾は、地面を炸裂させるに終わる。
(//‰ ゚) 「何事だよ、こりゃあ」
ヨコホリが言うが早いか、ィシはその体をいとも簡単に振り上げた。
そして、高い位置からの叩き付け。
逆さ男に行ったような、一度限りのものでは無い。
何度も、何度も執拗に地面に叩き付けヨコホリの体を痛めつける。
逆さ男が蹴りかかったのをヨコホリの体を投げつけることで迎え撃った。
爪;'ー`)y‐ 「おいおいおい。嘘だろう?!」
イ(゚、ナリ从 「だんちょ!ダメだ逃げろ!」
フォックスの魔法煙がィシに絡みついたが、彼女の動きは止まらない。
虫を追い払うような雑な動きでフォックスに体引き千切った欠片を投げつける。
間一髪飛びついたイナリによって直撃は避けたが、射線にあった木の幹が大きな音と罅を作った。
-
(//‰ ゚) 「あの、胸…………糞がァッ!」
起き上がったヨコホリの視線の先。
体を再生し、一歩一歩地面を貫くように歩み寄るィシの胸元。
破れた服の隙間から、赤黒い木片のような物が覘いている。
木片はィシの皮膚に根を張り、鼓動に呼応して生き物のように脈を打つ。
見れば彼女の体表は、木の皮のように変貌をはじめ、もはや人間のそれでは無くなっていた。
(//‰ ゚) 「成程なァ。ババアとは思えねえ戦闘力、逆さの蹴りが通じねえ頑丈さ。そう言うことか」
ィシの右の肩口から先が割れて尖った木の枝が三本張り出す。
それはギシギシと軋みを立て、先端をヨコホリへ。
完全に向き直ると同時に、バリスタの如く高速で射出された。
〈;;(。个。)〉 「ッ!一体、何が起きている」
二本をヨコホリが魔法で。
一本を傍らにいた逆さ男が蹴りで軌道を変えた。
ィシは立ち止まり、ヨコホリを睨みつける。
ただそうしているわけでは無い。
周囲に落ちていた木の枝や木の葉などを足から取り込み、体表を作り替えてゆく。
-
〈;;(。个。)〉 「あの赤い木片、魔道具か?」
(//‰ ゚) 「魔道具なんて甘いもンじゃねえ」
ィシが大口を開けて吠えた。
既に人間の声では無い。
よだれが飛び散り、口の奥から猪の牙のように木の枝が伸びる。
抉れていた頭部も、もがれていた腕も節張った木の肌として再生。
さらに一回り大きくなり、元の名残はどこにも無い。
(//‰ ゚) 「魔女の呪具だ。俺と同じく、体内に埋め込ンで、体そのものを変えちまう」
〈;;(。个。)〉 「……」
(//‰ ゚) 「あそこまでなったらもう元には戻らン。あの女、本当に人間を辞めやがった」
人の輪郭を失い、上半身が以上に発達した姿。
ィシ、だったそれは、ヨコホリを見据えもう一度大きく吠える。
その姿には、知性も、心も、人間であった面影は一切残ってはいなかった。
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おわりんこ
次は年内目標で。
まあできるだけ早く来る気概だけは忘れず
あとこんだけ間開けてんのに支援とか絵とか貰えるのは相当嬉しいッス
ほんならまた。次回も予告スレをsageていくスタイルで
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乙乙!
やっぱり戦闘シーンかっこいいなー
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乙!!ブーンの奥義にワロタwww
相変わらずの戦闘シーンだうめぇ…
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うへあおつ
-
おつ面白い。
ィシ…
-
強すぎるィシは身を滅ぼす
のび太
-
おつ
緊張感ある戦闘が熱い
ィシ辛いな…
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待ってた!乙!
ィシも魔女の被害者なのか…
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おつおつ 面白い
ブーンは安定してるなあ
-
乙 今回特に面白かった
-
いやあ…凄いな色々と
ィシはいつから赤い木片入れてたんだ?
-
漫画5
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1309.zip
6は未定
-
>>167
相変わらずの再現度で自分が書いた話なのに若干興奮する
いつも本当に乙ッス
-
>>167
復活かよくっそ嬉しい
この作品は脳内で映像浮かべて見てるからこういうのありがたい
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諸事情で延期
明日夕方以降に
-
期待
-
待機
-
6話の内容に関して質問があります
185 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/09/16(日) 18:55:24 ID:uUx1ZvuU0
ξ;;⊿゚)ξ「“ただ、天の意思のままに―――”」
更に二匹、蛇の接近。
にじり下がりながら魔法式を展開、発動まで後一歩に漕ぎ着ける。
しかし、そこへ二匹の蛇が飛び掛った。
ξ;;⊿゚)ξ「“―――マリオット”!!!」
上記の場面でツンの使用した魔法「マリオット」は「マリオネット」の誤りではないでしょうか?
些細な事なんですけど回答してもらえるとありがたいです
-
>>173
質問とか誤字の指摘は割と歓迎っス
確かに「マリオネット」が元だけれど語感の好みと、「操り人形」モチーフの魔法が別にあるので、そのままにせず「ネ」をぶっこ抜きました
さらにいえば最初は「マリオ」だけだったんですがマンマミーヤー過ぎたのでこの半端な改変にしました
目処ついたんで今日の21時以降に来ますNE
-
マンマミーヤーワロタ
-
* * *
まどろみの中に似ていた。
意識の動きは鈍く停滞しているが、不思議と不快では無い。
体の中に渦巻く、自身もよくわからぬ感情は、いつの間にか五歩ほど離れた場所にある。
実に、穏やかな心地であった。
もうよいのだと、優しい誰かに体を抱かれているようだ。
それが母親であるのか、愛した男であるのか、それとも命を預け合った友であるのか。
見当もつかないが、しかし。
あまりに心地よく、穏やかで、体の芯が溶けてしまいそうだということは、間違いない。
怖い。
手を伸ばし、切り離された感情の坩堝に触れる。
電流であり、炎であり、刃のようでも、毒のようでもあった。
ただひたすらに、痛い。苦しい。そして、重たい。
ああ、だけれど。
無くしてはいけないはずの物なのだ。
これは。
人生の内のいくらかを、これらと共に生きた。
幸福とは程遠い時間であったがそれでも、自身の、成した、残した、大切なもの。
記憶がめぐる。
これを走馬灯と呼ぶのだろうと、自嘲気味に笑った。
* * *
-
ξ;゚⊿゚)ξ 「…………はぁ。クッソ」
ロミスに捕まり、どれだけの時間を消耗したか。
魔力は特に使わなかったが、体力を多きく失ったように思う。
その内訳は、主に精神的なもの。
£凄惨) 「………………聞いていた以上の…………強さ……」
ξ;゚⊿゚)ξ 「なんで、気絶しないのよ……」
£凄惨) 「…………我がしつこさは永久に不滅」
ξ;゚⊿゚)ξ 「結界も消える気配が無いし、クソッ」
£凄惨) 「…………一つ、教えよう」
ξ;゚⊿゚)ξ 「何よ」
£凄惨) 「…………この結界…………我がものでは無い…………」
ξ゚⊿゚)ξ 「は?」
£凄惨) 「…………我は発動の合図を送っただけ…………我を伸しても障壁は消えん」
ξ゚⊿゚)ξ
ツンは殺す勢いの蹴りをロミスに叩き込んだ。
-
ξ#゚⊿゚)ξ 「なんじゃそりゃぁ!!」
£壊滅) 「…………我が役目は…………障壁の破壊の…………妨害」
ξ#゚⊿゚)ξ 「くっそぁ……はめられた!」
£壊滅) 「…………だから…………肋骨三本目折れたあたりで…………いっそ死にたかった」
緊張が解けたのか、本当の限界を迎えたのか、ロミスが地に伏した。
言葉の通り、障壁が消えることは無い。
これだけの強度の障壁、なんの補助も無しに発動しているとは思わなかったが、
まさかまったく関与していないとも思わなかった。
ξ;゚⊿゚)ξ 「ってことは本物の術者は外か……くそ、結局自力で何とか壊すしかないや」
もう少し早くわかっていればロミスを放置して取りかかっていたのだが、仕方がない。
こうなればもう天叢雲を使うしかないだろう。
避けたい手法だったが、このまま手間取って他の足止めが現れても厄介だ。
幸い、ツンの監禁が続いているという事実が、まだ全てのことが済んでいないという証明になっている。
ヨコホリが同じ場所にいるかはともかく、早くここを出て味方の援護に向かわねばならない
-
ξ;゚⊿゚)ξ (なるべく、小さく、素早く、無駄なく)
言い聞かせながら魔法式を展開。
相変わらず複雑で面倒な式だ。
散々ロミスにかき乱され集中を欠いているため、組み立てには少々難儀する。
ξ;゚⊿゚)ξ 「“こい―――天叢雲!!”」
障壁の隙間から雲が侵入し、掌に剣が生み出される。
ツンは即座に剣を振り、障壁を自分が通れる程度まで切り裂いた。
再生を防ぐため切った部分を蹴り飛ばし、すぐさま外へ。
そこへ来てやっと、天叢雲を解除する。
ξ;゚⊿゚)ξ 「クソ、これしか使ってないのに、やっぱり結構持ってかれた……」
魔力は戦闘で消費した分も含めて半分ほどまで減っている。
おまけにブーツの魔法もストックを二つ使ってしまい残り一回。
ヨコホリや、その他の手練れを相手にするとなると少々心もとない。
ξ;゚⊿゚)ξ 「今のうち、一つだけでも装填しておこう」
周囲に敵の姿が無いことを把握。
ツンが脱出した時点では数人の気配があったが、既に逃げたようだ。
十分に時間は稼がれたということか。元から戦闘向きの配置では無かったのか。
-
ξ;゚⊿゚)ξ 「……?!」
ブーツに魔法式を組み込んでいるその最中。
突然に腹を揺すぶられるような轟音が響いた。
地鳴りの類とは違う、地面の震るえる感情を持った音。
それが獣の咆哮らしいことに気づいたのは、二度目が聞こえた時だった。
ξ;゚⊿゚)ξ (何が起きてんの?)
響いてきたのは、それだけではない。
禍々しい魔力の波動。
攻撃魔法の類ではなく、何か別の、もっと複雑な魔法による余波であることだけがわかる。
魔法の感性が零の者ですら何かしらを感じ取りそうな濃厚な魔力だ。
肌に触れているだけで、不安に胸をくすぐられる。
ξ;゚⊿゚)ξ 「“――――韋駄天招”!!」
タリズマンへ魔法式の組み込みを手早く終え、立ち上がる。
禍々しい魔力の根源は、恐らくヨコホリがいたはずの方向だ。
濃度のせいでかなりわかりにくいが、恐らく間違いないだろう。
ξ;゚⊿゚)ξ「なんだ、なんでこんなに嫌な予感がするの」
ナイフを持ったまま、ツンは走り出す。
木々をすり抜け、枯れ枝を踏み抜き、山を駆け上った。
-
再度、咆哮が聞こえた。
それに伴い戦闘を行っているようなノイズと、怒鳴るような人の声も聞こえる。
もうすぐたどり着くというところで、視界に見えていた木の一本が弾け飛んだ。
幹を粉砕され、支えを失った上部が少し浮遊して地面に突き刺さる。
周囲にあったもう一本の木が、寄りかかられて軋みを立てた。
ξ;゚⊿゚)ξ 「何が起きてるっての?」
ただならぬ殺気というか、危険な臭いを感じペースを落とす。
太い幹を盾にしながら、それでもできうる限り間を置かずに接近を試みた。
念のため、ニョロに魔法を展開させる。
ξ;゚⊿゚)ξ 「―――なによ、これ」
辿り着いた、その現場。
初めに目に飛び込んだ光景に、ツンは一瞬凍り付いた。
そこにいたのは、人の形を模した巨大な猪、のような何かだった。
前に伸びた長い鼻と、大きく裂けた口。
頬の際から延びているのは、これまた木製と思しき立派な牙だ。
体表は木で覆われているが、まるで皮膚かのような柔軟性を持って動いている。
上半身は頑強と剛力を思わせる隆々しさ。
下半身は上半身に対してやや心もとないものの、やはり膂力の高さを思わせる、引き締まった筋肉の線が見える。
-
支援
-
ξ;゚⊿゚)ξ
似たような者を、何度か見た。
見た目では無く、本質的な存在が似通っている者を、だ。
一つ目は巨大な狼の体に蛇を生やした異形。
二つ目は海獣の下半身を持った大山犬。
そして、恐らく。これも同系列の存在。
魔女だ。魔女がらみの何かだ。
そうであれば、この吐き気を催す薄気味悪い魔力にも納得できる。
(//‰ ゚) 「ォオ?!ディレートリィィ!!よく来たなァ!!」
ξ゚⊿゚)ξ 「ニョロ!」
(//‰ ) 「グェッ」
反射的にニョロに魔法を放たせた。
声をかけてきた男、ヨコホリ=エレキブランは顔面に直撃を受けて大きく仰け反る。
どうにも様子がおかしい。
今までならば躱されるか、弾かれるか、当たってもロクに効果が無かったはずだ。
(//‰ ゚) 「……ディレェェトリィィ、可愛がってやりってェがァ、今はそれどころじゃねえンだ」
体を後ろに九十度のけぞらせたままヨコホリが魔法を放った。
手のひらを飛び出した空弾が、迫っていた木片を破壊する。
壊しきれなかった最後の一つは起き上がると同時に腕で弾き飛ばした。
-
状況の把握を優先し周囲に素早く目を走らせる。
ヨコホリの他に立っているのは、皆根絶法関連の人間ばかりだ。
武器を構え、切迫しているところを見るに猪の化け物と友好的な関係では無いらしい。
ツンが周囲をうかがっている間にも、一人の兵士が頭を穿たれて吹き飛んだ。
無骨な木の槍が頭蓋を貫き、衝撃に吹き飛ばされ木に叩き付けられる。
即死だろう。びくびくと痙攣するだけでまともに動く気配はない。
ξ;゚⊿゚)ξ 「……!ミンクス?!」
吹き飛ばされた死体の傍に、見慣れた顔を見つける。
ミンクスだ。倒れているので気付かなかった。
見ると、肩口から斜めに刀傷を負っている。
一見して致命傷のようだが、辛うじて生きている気配があった。
ツンは応急処置の魔法を展開しながら、彼のもとへ走る。
イ(゚、ナリ从 「!新手……!」
爪;'ー`) 「放っておきなさいイナリ。それよりも今は」
イ(゚、ナリ从 「チィッ」
猪は方向と共に体の各部から木片を飛ばし続けている。
当たれば即死が約束されていることは先ほど見た。
ツンは足元を抉り飛ばした一撃を飛んでやり過ごし、着地の勢いのまま転がってミンクスにたどり着く。
-
ξ;゚⊿゚)ξ 「ミンクス!ミンクス!ちょっと!」
ミ´ w ン 「ディレー……トリ……?」
ξ;゚⊿゚)ξ 「なんつー傷……!“痛いの痛いの、飛んでけー”!!」
大きく深い傷に、応急処置の魔法を施し出血を抑える。
既に大量の血が流出しているのは明らかで、まだ意識があるのが不思議なくらいだ。
裂傷が内臓に届いていなかったのは幸いだが、このままではどちらにせよ死ぬ。
ξ;゚⊿゚)ξ 「クソ!なにがどうなってんの!!」
再度見渡せば、倒れている者の約半数は禁恨党のメンツだった。
猪の傍には、シーンの姿もある。
全員意識を失うなり死ぬなりしているらしく、この騒ぎの中ピクリとも動かない。
ξ;゚⊿゚)ξ 「……ッ、ィシさん、ィシさんは?」
柄の折れたハルベルトの刃が転がっているだけでどこにもィシの姿が無い。
逃げたか、あるいは既に殺されて遠くに吹き飛ばされたのか。
前者は恐らく無い。後者については、あり得るが、望む結果とは異なる。
-
猪の攻撃は未だ続いていた。
眼中に無いのかツンの元には飛来しないが、ヨコホリと激しい打ち合いの応酬を行っている。
どちらも、生命の常識を超えていた。
ヨコホリは襲い来る木片の砲弾を的確に迎撃し、僅かな隙に反撃を撃ちこむ。
猪の方は回避や防御は一切行わず、ただひたすらに攻撃を続ける。
攻撃を受けて破損した体はすぐさま再生し、被害があるようには見えない。
逆さ男、フォックス、イナリその他も援護を行っているが、ほぼ無意味。
ヨコホリよりも頻度は少ないが攻撃に曝され、回避で手いっぱいといった様子だ。
ミ´ w ン 「ディレー……トリ……とめ……てくれ……」
ξ;゚⊿゚)ξ 「わかったから、喋んないで!止まるものも止まらないわ!」
流れ弾への警戒をしながら、ミンクスの傷に応急処置の魔法を重ねがけし、何とか出血を止めた。
これで、失血による死亡はかなり遅らせられるはずだ。
あとは、魔法の効果があるうちに血をぶち込んで傷を塞ぐことさえ出来れば。
咆哮が響く。
特に傷を負っていないツンですら、皮膚がビリビリと震えた。
ミンクスが呻くと同時に、じんわりと血が滲み出る。
ξ;゚⊿゚)ξ 「とりあえず、安全なところに……」
魔法の応急処置は脆い。
大きな衝撃を与えれば、すぐに出血は再開してしまうだろう。
ツン一人の力で遠くへ運ぶのはいくらか無理があった。
-
いつ猪の意識がこちらへ向くかという不安と焦りが、ツンの集中を欠けさせる。
ミンクスを運ぶこともできず、ただ少し離れたところへ引きずるしかできない。
それだけで出血は再開し苦しげな息が胸を上下させた。
ξ;゚⊿゚)ξ 「……くそ、リッヒのところまで運ぶなんて、到底無理だ」
三度の応急処置の魔法。
痛みどめとしての効果で、何とか体力の消耗を抑えなければ。
背後で戦闘の残響が幾度となく響く。
戦況がどちら有利なのか、ツンには分からない。
そういった感覚で推し量れる状況を逸脱しているというべきか。
もし仮に、あの猪のような何かが、蛇頭や怪獣のキメラ並みの不死性を誇るとしたら。
あくまで人間である根絶法指示勢には苦しい相手だろう。
ヨコホリ自体も化け物染みてはいるが、この場だけを見ればはるかに人間らしい。
ミ´ w ン 「止め、てくれ」
ξ;゚⊿゚)ξ 「大丈夫、血はもう止まったから、とにかく安静に……」
ミ´ w ン 「……違…う……あね……さんを、とめて、くれ」
ξ;゚⊿゚)ξ 「ィシさんを?」
-
ィシさんなんて、どこに。
そう聞き返そうとしたツンの脳みそが、急速に回転を速める。
折れたハルベルトの先端があったことを見るに、ィシがこの場にいたことは間違いない。
禁恨党のメンバーが勢ぞろいしている状況を見ても、確定していいだろう。
なら、彼女はどこにいる。
逃げたのか?あの人が、仲間を置いて?
死んだのか?死体が残らないほど粉砕されて?
そして、この場において、最も重要で、最も不確定な存在の猪。
こいつは、なぜここにいる?
最近は人外と遭遇する確率が異常に高かったため、それほど深く考えなかった。
どうせ魔女がまた、適当な理由で置いて行ったのだろうとしか思わなかった。
ツンやミンクスに攻撃が来ないのも、敵意の無いものには興味が無いとか、そんなところだろうと。
ならなぜ。
無遠慮に周囲に木槍をばら撒いておきながら、禁恨党の党員は、誰一人その一撃を受けていないのか。
同じく死体になっていた敵側の兵士は、既に数発の流れ弾を受け、酷く損壊しているというのに。
なぜ、禁恨党員だけを避けて、攻撃をしているのか。
-
ξ;゚⊿゚)ξ (いや、まさか)
禁酒党の兵士が、胸を穿たれて絶命する。
これでの残るは、主要戦力の四人だけとなった。
猪が、木片による掃討攻撃を辞めた。
周囲の木々は悉く破壊され、森の中に猪を中心とした広場が出来上がっている。
足元の不安定さをどうにかすれば戦闘を行うに十分な領域であった。
ξ;゚⊿゚)ξ (そんなわけ、無い)
猪が離れた場所のハルベルトを見た。
折れた斧刃に地面から伸びた木が絡みつき、そのまま飲み込んでゆく。
最終的には、斧刃の柄が修復され、元よりはいくらか歪んだハルベルトが現れた。
猪は、迷いなくそれを手に取る。
巨体には少々小さいが、扱いは手馴れていた。
ξ;゚⊿゚)ξ (……違う)
猪が中途半端に体から延びた木の根を引き千切り、ヨコホリへ猪突猛進する。
見たことがある形だ。
何度か救われた力だ。
だが、あまりにも、違いすぎる。
-
(//‰ ゚) 「チィィッ!!」
上半身に比重のあるバランスの悪い体系であるにも関わらず、猪の動きは軽快だった。
一歩で間合いを詰め、もう一歩でハルベルトを振りかぶる。
ヨコホリが放った魔法を受け、少し動きが鈍ったが、それも一時的なもの。
次の瞬間には、ハルベルトの斧刃が、ヨコホリの体を薙ぎ払っていた。
(//‰ ゚) 「グゥッ!」
耳に痛い金属音。鼓膜を突き抜け、脳を直接痺れさせる。
ヨコホリは、大きく吹き飛ばされていた。
斬撃自体はガードを間に合わせたが、あまりの衝撃に足が地面を失う。
低い姿勢で着地したそこへ、猪の追撃。
振り切ったハルベルトをそのまま強引に、今度は逆に向かって叩き付ける。
これまた右腕で受けるヨコホリだが、あまりの力差に耐えられず地面を転がった。
(//‰ ゚) 「クソが、厄介なババアだ……」
〈;;(。个。)〉 「!」
ヨコホリに意識を集中していた猪の首に逆さ男が飛び掛かる。
体を軸に回転、遠心力と体重を乗せた蹴りで、その巨大な頭を蹴り抜いた。
重い音が爆発のように響き渡る。
山が震え木々が葉を落とし、しかし猪の巨体は揺るがない。
-
逆さ男の着地際を狙い、腕を振るう。
これを、脚甲の足の裏で受け、器用に跳躍し勢いを殺す逆さ男。
再び着地すると、耐えかねて膝を折った。
並であれば死んでいておかしくは無い。
あの程度で抑えたのはさすがというべきか。
ξ;゚⊿゚)ξ (……)
ツンは、今までに戦った二頭のキメラを思い出す。
どちらも、今目の前にいる猪と同じく、強大な力を持ち、人間であるツンたちを圧倒した。
しかし、目の前にいるこれは、彼らとは決定的な違いがある。
この猪型の化け物は、「技」を持ってるのだ。
目標に対し持っている力をぶつけるだけだったキメラたちには無かった「戦闘の経験」というべきか。
武器を扱っているのがその証拠。
ハルベルトは数種の型を持つ多機能の武器ではあるが、その分扱いは難しい。
ただ力のある者が使っただけでは、刃を合わせることすらロクに出来ないだろう。
それを、この獣は。
的確にヨコホリの急所を狙い、刃を合わせ、その膂力を余すことなく振るっている。
-
腕と、ハルベルトで体を守った猪だが、傷は深く大きい。
木製かと思われたその体の奥から、赤いものが染み出している。
すぐさま身体が蠢き傷を塞ぐも、確かにあれは血だった。
(//‰ ゚) 「流石にコイツは通るみてェだな、安心したぜ」
再び、今度は縦に腕を振るうヨコホリ。
放たれた巨大な鎌鼬は猪を両断すべく、容赦なく襲いかかる。
森ごと割れるかと思う一刀が、地面の土を巻き上げながらハヤテのごとく突き抜けた。
〈;;(。个。)〉 「……恐れ入る」
風の刃は、遠くにあった木を縦に切り裂き、さらに後ろにあった木を粉砕して消えた。
対象であったはずの猪はハルベルトを構え、悠然とヨコホリを見据えている。
武器と体裁きによって体表の一部すら切り裂かせず、無傷のままやり過ごしたのだ。
一撃見ただけで技を見切り、最小限の動きで回避するなどただの剛力にできることでは無い。
-
〈;;(。个。)〉 「変貌しても中身はィシ=ロックスというわけか」
(//‰ ゚) 「それどころじゃねェやな。体がタフになって余裕が出た分、技がキレまくってやがル」
ξ;゚⊿゚)ξ 「……
一瞬の間に交わされた二人の会話を、ツンは聞いてしまっていた。
聞くまでも無く、導き出されていたことだ。
ただ、まだ予測の範囲であると、ごまかすことが出来ていた。
しかし、答え合わせを聞いてしまった。
ミ´ w ン 「たの、む……ディレ―……トリ」
ξ゚⊿゚)ξ
ミ´ w ン 「姉御……を、助けて……やって…くれ
悪夢にうなされているかのように、ミンクスが繰り返す。
ツンは答えない。
ハルベルトを振り上げる、猪の化け物。
その姿の中に見つけてしまったィシの名残を、ツンはただ、見ていることしかできなかった。
* * *
-
(;'A`) (おうおうっ、予想以上にヤバいのがいるっぽいな)
ブーンの感じ取った魔女の気配を目指し、ドクオが飛行している途中。
目指す森の木が、次々と倒されていく。
与作がヘイヘイホーと切り倒しているというような穏やかさでないことは、その勢いからしてわかった。
( ^ω^) 『何がいるか見えるかお?』
(;'A`) (…………わからん。魔力が乱れすぎててサーチもロクに効かねえ)
( ^ω^) 『……』
(;'A`) (どうする?距離を取って魔法で狙撃する手もあるぞ)
( ^ω^) 『……いや。状況が把握できない限り、それは危ないお。僕がやるから、現場へ』
(;'A`) (言うと思ったよ、ったくよー)
ドクオはさらに加速。
木が倒れ広場となった地点へと急ぐ。
(;'A`) 「居た!一旦預けるぞ!」
( ^ω^) 「任せるお」
目標を目で確認。
上空でドクオとブーンが入れ替わる。
-
( ^ω^) 「?!」
ククリ刀を構え、落下。
その間にもはっきりと見えるようになったそれは、獣でありながら、獣では無かった。
( ^ω^) 「!!」
慣性を十全に乗せた、中空での居合切り。
刃が鳴り対象を切り裂くが手ごたえが悪い。
まるで年輪の詰まった巨木を斬りつけたようだ。音も硬く鈍い。
(;'A`) 『何だこいつぁ?!』
割愛すると、木で出来た猪。
幻想物語に登場する猪頭人の魔獣、オークのような造形だ。
手に持ったハルベルトが小さく見えるほどには体が大きい。
( ^ω^) 「無刀の型―――」
落下の衝撃を転がって殺し、すぐさま立ち上がる。
猪の意識はブーンに向き、滑らかな動作でハルベルトを横に振りかぶった。
( ;^ω^) 「かげッ…陽送り!」
人間の振るう斬撃とは格が違った。
ククリの柄尻を合わせて逸らし、辛うじて直撃を防ぐ。
しかし、腕が痺れ体も大きく流された。反撃に移る余裕は無い。
-
( ;^ω^) 「ちょ、やば……」
侮っていたわけでは無いが、予想以上だった。
高い膂力を持っていることはもちろん、それを無駄なく攻撃に生かしている。
単なる腕力だけならばさらに強いものと対峙したことがあるが、質が違う。
左から右へとブーンを払ったハルベルトが、体を捩じった振り終わりの体勢から、クルリと向き変った。
そうしてそのまま、往復の斬撃。
一撃目でその威力を体感しているブーンは大きく飛びのいて回避する。
頬をなでる風が、肌を引き千切るようだ。
真っ向から受け止めていたら、防御の上からでも死ぬかもしれない。
ξ;゚⊿゚)ξ 「ブーン!!」
( ^ω^) 「お?」
〈;;(。个。)〉 「……ここでオルトロスとはな」
(//‰ ゚) 「なンだァ?こりゃサプライズパーティかなンかか?」
名を呼ばれ、ツンの存在に気づく。
恐らくは味方側であるだろう兵士を抱え、焦りの濃い表情をしていた。
こんなところで無防備にしていては、すぐに殺されてしまうだろうに。
-
(//‰ ゚) 「敵か?」
〈;;(。个。)〉 「敵の味方ではありそうだが、敵の敵でもあるようだ」
猪が左腕をブーンへ、右腕をヨコホリへと向ける。
腕の甲がささくれ立ち、そこから小ぶりの、矢ほどの木片が頭を覗かせた。
咆哮と同時にそれらが発射。
ブーンはツンとは逆へ走って回避。
サイボーグは数回に分けて放った風の刃ですべてを切り払う。
ξ;゚⊿゚)ξ 「ブーン、その人、私の知り合いなの!!」
( ^ω^) 「おーん?!」
ξ;゚⊿゚)ξ 「だから!味方なのよ!!」
( ^ω^) 「……マジで?」
ブーンが伏せる。
その頭上に、指数本の間を開けてハルベルトが過ぎ去ってゆく。
危うく頭蓋を器に味噌汁(生)がお粗末様してしまうところだった。
( ^ω^) 「めっちゃ狙われてるんですけど」
(;'A`) 『いきなり斬りつけちゃったしNE!!』
-
猪が再び往復の斬撃を放つ。
一辺倒かつ、単純だが、非常に効果的だ。
この連撃を躱すのは、見た目のシンプルさ以上に辛い。
一撃目の回避で体勢を崩せば、二撃目に確実に捕まるだろう。
ハルベルトの間合いでこれをやられると厄介この上ない。
欠点であるはずの重量は、高い腕力のせいでむしろ破壊力へと変換されている。
的確だ。
読めたところで簡単に反撃に移ることが出来ない。
これを繰り返せば、受ける側は間違いなく消耗する。
(//‰ ゚) 「よくわからンが、頭数が増えるなら歓迎だ」
サイボーグの放つ、袈裟斬りの鎌鼬。
ブーンに意識を向けていた猪の脇腹を狙う。
だが、腕だけで強引に振るわれハルベルトがこれを迎え撃った。
空気とは思えぬ甲高い残響と共に鎌鼬が爆ぜ、周囲に小さな刃をまき散らす。
猪の体表に無数の傷が出来たが、直撃とは雲泥の差だ。
ついでにいくつか、傍にいたブーンも巻き添えを喰らった。
(//‰ ゚) 「別にオルトロスはどうなってもいいンだろ?」
〈;;(。个。)〉 「特に気遣う必要はない」
( ;^ω^) 「くぅ〜〜〜」
-
獣の如く跳ねて距離を取るブーン。
半端な間合いは危険だ。
一太刀目の手応えから言って、懐へ潜り込んでも活路はない。
ブーンが攻撃圏内から離れた途端に、猪はサイボーグへと突進。
右腕一本でハルベルトを振りかぶり、左腕の木を増量し盾の如く構える。
猪、叩きおろしの一撃。
ヨコホリは右腕を刃に合わせ力を僅かに反らす。
見事だ。斧は地面を深く抉り、ヨコホリには当たらない。
自ら作り出したこの隙に、ヨコホリは流した体を予備動作に繋げ、魔法を発動する。
対する猪は、この攻撃を読んでいた。あるいは、超速で反応した。
鋼鉄の腕が振るわれ始めのその一瞬に、開いていた左腕をコンパクトに振るう。
この視界の外からのジャブはヨコホリの脇を捉え、軽々と弾き飛ばした。
水切石の如く地面を跳ね、四つん這いで止まるヨコホリ。
赤黒い唾液が、その口からぼたぼたと零れる。
〈;;(。个。)〉 「……」
黒づくめに仮面を身に着けた男。
特徴を見るに、ツンに聞いた逆さ男であろう。
彼は身体強化の魔道具である指輪を発動し地を蹴った。
付随するように、鎌のような刀を持った女も猪の死角へと走る。
-
〈;;(。个。)〉 「!!」
正面切って迫る逆さ男に対し、猪はハルベルトの刺突。
これはフェイク。
本命は先ほどと同じく左腕の追撃だ。
逆さ男は回転し紙一重で回避。
向かって左に流れ、猪自身の腕が作る死角に潜り込む。
猪は逆さ男の位置を予想して左腕を振るった。
これは、狙いの通り。
強引な一発を期待していた逆さ男は、すかさず跳躍し躱す。
飛び立つカラスを思わせる軽い身のこなしで猪の体を蹴り、後ろへ回り込んだ。
猪は反射的に向き直り、ハルベルトを横に振り回す。
しかし、これもまた逆さ男の狙い通りだ。
ハルベルトは空を斬り、代わりに猪の目の前にいたのは、
イ(゚、ナ#リ从 「ァァッ!」
全身の筋肉を隆起させ飛び上がった、剣の女。
剣を両腕で振り上げ、他のメンツに負けず劣らずの剛力で振り下ろす。
鉤になった先端は、甲高い音色と共に見事狙いの眉間へと深く食い込んだ。
それでいても、手ごたえがない。
ほぼ無意味に終わったことを悟ると同時に、女は剣を離し軽やかに飛び退く。
-
女の着地を待たず、再び逆さ男が前へ。
ハルベルトギリギリの間合いで跳躍の予備動作を取る。
直前何度かの経験で飛翔からの展開を警戒し、猪の意識が上へ向いた。
その一瞬を、逃さない。
逆さ男はやや屈んだ姿勢からそのまま懐へすべり込み、密着する窮屈な間合いから、
〈;;(。个。)〉 「ふッ」
真上、猪の顎へと脚甲を突き上げる。
力だけでなく、恐るべき柔軟性だ。
不意のこの一撃に、猪は巨体を、僅かではあるが仰け反らせる。
(//‰ ゚) 「ガァァッ!!」
この好機に飛び込んだのは、再起したヨコホリ。
目を剥き血走らせ、余剰魔力が煙となって吹出す右腕を、大きく振り上げる。
もはや魔法の間合いでは無い。
放たれた真空の大剣は爆発と違うほどの轟音を持って、猪の体を肩口から真っ二つに切り裂いた。
衝撃で割れた体内に、内臓が覘く。
猪の悲鳴は音にはならず、代わりに真っ黒の血反吐を吐き出した。
-
膝から崩れる猪。
まだ、絶命はしてはいない。既に再生が始まっている
一切の油断なくサイボーグが追撃へ。
魔法の巻き添えを避けていた逆さ男と剣の女の両名も前へ出る。
しかし。
ξ#゚⊿゚)ξ 「“シュート=インパクト”!!」
〈;;(。个。)〉 「?!」
ツンの放った衝撃波の魔法が、サイボーグの足を止めさせ。
その間にニョロの放った嵐の魔法がイナリと逆さ男を巻き込んで吹き飛ばす。
機敏な反応でダメージを避けた二人だが、代わりに大きく距離が開いた。
(//‰ ゚) 「グッ?!」
体勢を崩したサイボーグへツンは自ら飛び込む。
魔法を発動し、加速した足の裏でその横っ面を思いっきり蹴り飛ばした。
ブーンが見た限りでも二度目。マリオネットのように体を歪ませながら吹き飛ばされていく。
(//‰ ゚) 「……ナァァンのつもりだァァ、ディレェェトリィィィ!」
ξ゚⊿゚)ξ 「……ィシさんを、やらせたりはしない」
-
( ^ω^) 「……」
魔女の魔力によって生み出されたであろうこの猪の能力を探るべく。
そしてツンの「味方」という発言で様子見を決め込んでいたブーンだったが、改めて剣を握りなおす。
ツンは、正直なところ思慮深い性格では無い。
直情的だし、すぐ突っ込むし、後先考えないし、もうちょっと脳みそに仕事させてほしいと思うことが何度もあった。
だがしかし、今現在、生半可な覚悟でこの選択肢を導き出したわけでないだろうことは、分かる。
その意志を、できれば踏みにじりたくはない
無論、だからといって魔女の関わった「力」に対する警戒心を捨てたわけではない。
(;'A`) 『……できうる限り、元に戻す方法を考えてみる……だが……』
ただし、猪の力の矛先が、しかるべき目標を見失ったその時は、容赦は出来ない。
制御を失った強大な力が一体どれほどの被害を生むか、ブーンは嫌というほど知っている。
ξ゚⊿゚)ξ 「ィシさん、そいつは、ブーンは敵じゃないから、攻撃しなくても大丈夫」
ブーンが一歩近づいただけで腕を突き出し、木片を放つ動きを見せていた猪、ィシ=ロックス。
ツンのその一言を聞き、僅かに逡巡する間を置いて腕を下した。
少なからず驚く。
ここまで変貌してなお、人語を理解し行動を律する精神が残っているとは。
-
〈;;(。个。)〉 「厄介な展開になったな」
イ(゚、ナリ从 「だから早めにあいつぶっころべきだった。だんちょのせい」
爪;'ー`)y‐~ 「やははは、厳しいね……でもまあ、人間相手なら俺も役には立てるかな」
ィシを挟み、ツンはサイボーグと、ブーンは逆さ男、剣の女イナリ、そしてだんちょ、フォックスと向かい合う。
単純な数では三対四。現状のィシが超人の能力を持っていることを考えれば、不利なバランスでは無い。
危惧すべきは、ィシがどこまで味方でいてくれるか、だ。
現段階ではブーンやツンに危害を加えることは無いが、魔女の力に飲まれている以上安心するべきではない。
いざというときはィシ、ヨコホリたちの双方からツンを守らなければならなくなるだろう。
ィシの雄叫び。
ぱっくりと体を割いていた傷はもう修復が済んでいた。
あの咄嗟の一瞬に正中線を躱していたのは、この再生力を自ら知らなかったのか、それとも。
人間だったころの名残といえばそうかもしれないが、注視しておく必要はありそうだ。
ブーンはドクオに猪の観察を任せ、逆さ男たちにククリを突き出した。
〈;;(。个。)〉 「……貴様、大五郎には関係ないと聞いていたが」
( ^ω^) 「大五郎の関係者では無く、この場を見かねて飛び込んだ正義の味方ってことで頼むお」
〈;;(。个。)〉 「……正義か。嫌味な言葉を使う」
( ^ω^) (この臭いは……)
-
イ(゚、ナリ从 「だんちょ、煙早く!!」
言うが早いか、イナリが前へ。
剣はィシが引っこ抜き、明後日の方へ投げ飛ばしていたが、拾う気はないらしい。
太腿のホルダーに差してあった投具を抜き取り、近い間合いから振りかぶって投げつける。
ブーンは冷静に射線を見切り、ククリの先端を合わせて弾く。
軌道をずらされた小型の刃は錐もみ回転しながら森の中へ消える。
進行方向を横に変え、イナリがもう一本の投具を放つ。これもブーンは最小限の動きで弾いた。
この間、逆さ男が弧を描いて接近。
ィシとブーン、どちらも狙える位置を取っている。
ちらりと後方を確認するブーン。
ィシはその場から動かず、ヨコホリを木片で狙撃。
ツンは巻き添えを食わぬように横へ流れながらヨコホリに格闘を挑んでいる。
ヨコホリを二人に任せ、自らは逆さ男へ。
迷いなく顎を砕きに来た前蹴りを、仰け反って避ける。
当たれば口中の歯列ごと砕かれるだろう。表情には出さないが、背筋に冷たい電流が走る。
振り切られた男の足は、引き戻されるかと思いきやブーンの左腕に絡みついた。
腕の上側にふくらはぎを乗せ、角度と足首のひねりで、つま先だけを下側に回し込み引っ掛ける。
蹴りを放った後とは思えない精密な動作。
ブーンが右手のククリを振るおうとするよりも早く、逆さ男が右足に体重を乗せた。
絡めとられた腕を押し下げられ、肩の関節が悲鳴を上げる。
-
( ;^ω^) 「?!」
ブーンが何とか押し返そうと力を込めた瞬間に逆さ男は体を後ろへ倒す。
自らの力も利用され、ブーンはあっさりと引きつけられた。
巴投げの要領。
咄嗟に判断し、何とか堪えようとしたブーンの鳩尾を、軸足であったはずの左足が蹴り抜いた。
重さは、それほどではない。それでも一瞬意識を白濁させるには十分。
左足の爪先はさらに食い込み、ブーンの体を持ち上げる。
地面に肩を突き、全身のバネで足を振り切った逆さ男の力に空中で逆らうこともできず。
落ち着きのない空中浮遊を楽しむ暇も無く、離れた木の根に直接叩き付けられた。
(;'A`) 『足だけの投げ技なんて初めて見た……』
( ;^ω^) 「……喰らってみる?」
(;'A`) 『また今度ね』
小ボケを楽しむ余裕すら逆さ男は与えない。
地面に肩をついた姿勢から、腕の力でクルリと体を向き直し、起き上がる勢いでそのままブーンへ接近する。
体操選手かよ、死ね。という悪態もそこそこ、ブーンもダメージ色濃く残る体で迎撃を体勢を取った。
その向こうで、イナリが落ちていた手斧を拾い、ィシへ向かうのが見える。
-
逆さ男のスタイルはブーンが今までかつて体験したことの無い型だ。
負ける気はないが、楽勝というには今のブーンでは苦しいだろう。
(;'A`) 『ブーン、仕方ねえ使え』
( ^ω^) (……僕も、そう思ったところだお)
小さな踏み込み。
ククリの先端を土に食い込ませ、撒き上げる。
逆さ男は舞い上げられた土を、体幹の回転で円の軌道を描き回避。
この僅かに稼いだ時間に、ブーンは逆へ距離を取る。
そして右手の袖をまくり、手首を露出させた。
太く力強いそこに嵌っていたのは、大きな銀のブレスレット。
ドクオの師の元にあった、魔道具の一つ。
形態としては星。現在封じられている魔法は。
( ^ω^)( 'A`) 「『“我、永遠喰らう者―――汝を、蹂躙す”!!』」
ドクオが使える中で、最も効果の高い身体強化魔法。
腕輪から吹き出した炎の帯がブーンの体にまとわりつき、全身の筋力を増強してゆく。
初手を取ろうと蹴りを構えていた逆さ男は、咄嗟に距離を取る。
ブーンから溢れだす圧力が、普段の比では無くなっていた。
本人からすれば、本来の能力にもまだ至らない、不完全なものではあるが。
-
(;'A`) 『副作用は相変わらずだ。無理はすんなよ』
( ^ω^) 「……お」
ゆらりと、ブーンが前へ。
余計な力が篭っていない。
力む必要が無いからだ。
〈;;(。个。)〉 「?!」
( ^ω^) 「杉浦双刀流変式一刀の型―――」
ブーンが気配を消す。
逆さ男程の相手に使うには、動揺の見える今しかない。
軽やかに地を蹴り、間合いを詰める。
逆さ男は既にブーンへ意識を戻していた。
だがそれは、早いが、遅い。
( ^ω^) 「“攫い百舌鳥”」
左脇へ居合抜きの構えから放たれたのは、左の貫き手。
当然斬撃を回避する意識であった逆さ男は面食らう。
後退し身を捩じって交わすも、反撃を放つには不十分な姿勢へ。
ブーンの動きは止まらない。
貫き手を放った勢いのまま、一回転。軸足が瞬時に入れ替わり、重心が滑らかに移動する。
-
〈;;(。个。)〉 「……くッ」
回転を活かした振り上げから、倒れるような踏み込みによる音速の斬撃。
逆さ男はこの一太刀を強引に避ける。
完全にとはいかない。先端が服と皮膚を浅くではあるが、切り裂いた。
( ^ω゚) 「ッ」
細く糸を引く逆さ男の血液。
ブーンは振り切ったククリをすぐさま引き戻し、獣を思わせる荒々しさで間を詰める。
逆さ男は崩れた体勢から前蹴りを放つが、ブーンの反応はそれを軽く回避。
腹の脇で蹴り足を掴まえ、そのまま強引に推す。
もはや崩れ切った体勢の逆さ男の体はいともたやすく浮き上がった。
ギリギリと足を締め付ける剛力は、脚甲が無ければ骨を折るほどだ。
地面に逆さ男を叩きつける。
足を離さぬまま押さえつけ、ククリを首を断つ形で一文字に放つ。
逆さ男はこれを腕で防御した。
袖の中のロンググローブに仕込んだ鉄板が切断を防ぐ。
( ω゚) 「ッ!!」
連続で、頭へ向かって振り下ろされるククリ。
逆さ男は辛うじて鉄板で受け、致命傷を防ぐ。
ブーンの動きは振るうというよりも、鍔元で殴りつけるような直線の動き。
勢いはないが、増強された身体能力により、すさまじい音が鳴り響く。
-
このまま逆さ男が惨殺されるのは時間の問題かと思われたが、ブーンが何かに気づき逆さ男を解放した。
野性的な動きでその場を飛びのき、一気に距離を取る。
ブーンがマウントを取っていた逆さ男の上を、鞭のような青白い何かが揺らめく。
それは細く伸びる煙の筋であった。
爪;'ー`)y‐~~ 「いやぁ、待たせたね旦那。生きてる?」
〈;;(。个。)〉 「……この通りだ」
フォックスの魔法の煙が糸のように逆さ男の周囲を囲む。
具体的な効果はわからないが、危険な臭がプンプンする。
(;'A`) 『大丈夫か、一瞬飛んでただろ』
( ;^ω^) (……すまん……お、どうも、火の強化魔法は苦手だお)
(;'A`) 『興奮の副作用がお前には厄介すぎるな……辛いようなら解除しろよ』
( ;^ω^) (魔法なしでやるには、相手がちょっと悪いおね……)
爪'ー`)y‐ 「さーて、あんたも大概人外の臭いがするけど俺の魔法は効くのかな?」
煙が意志を持って揺らめく。
速度は無いが、確実にブーンへ迫っていた。
-
(;'A`) 『魔法毒……いや、色が薄いな……精神干渉……』
( ;^ω^) (当たったらどうなる?)
(;'A`) 『……たぶん、無傷で倒れている奴らと同じ感じに』
( ;^ω^) (囲まれちゃったネ)
(;'A`) 『……ブーン、代われ策がある』
( ;^ω^) (……)
(;'A`) 『先生のタリズマンがある。簡単にやられたりはしない』
返事もそこそこにブーンの姿がドクオへと変わる。
フォックスは僅かに驚きを見せたが、逆さ男はすぐに対応。
魔法を使わせまいと一気に間合いを詰める。
(;'A`) 「“―――盾よ”!!」
ドクオの詠唱に呼応したのは、胸元に下げたタリズマン。
元から持っていた月の他にもう一つ、小さい指輪が括り付けられている。
弱い斥力効果を持つだけの障壁魔法式が刻まれた大地の。
魔力に適合性があるドクオしか使うことが出来ないが、発動スピードは他の魔法を圧倒的に凌ぐ。
-
躍りかかる逆さ男の前に表れた六角形の障壁。
突然のことに避けきれず触れた彼の体は、眩しい発光と共にはじき返される。
逆さ男を一旦撃退するだけの任を全うして、障壁はすぐに消え去った。
爪'ー`)y‐~~ 「よくわからないけど、仕留める方向でいいんだね」
様子見で漂っていた煙がドクオへ迫る。
これに関しては物理面に重きを置いた盾の魔法では対抗できない。
既に――まだドクオであれば抵抗できるレベルではあるが――魔法が浸蝕してきている。
ドクオは逆さ男に意識を配りながらも、煙の薄い方へ走った。
あからさまな誘導だ。それにはドクオも気づいている。
しかし、なんにせよ間合いは詰めなければこの策は成り立たない。
(;'A`) 「“盾よ”!!」
〈;;(。个。)〉 「……ッ」
迫る逆さ男を足止め。
盾を複数同時に生み出して、横への移動も制限する。
爪'ー`)y‐~~ 「お兄さん、戦い方がせこいねえ」
(;'A`) 「お前みたいなタイプには言われたか無いね」
爪'ー`)y‐~~ 「まあ、それも終わりさね」
-
煙は、完全にドクオを囲んでいた。
しかし、まだやられるとは限らない。
精神干渉の魔法などは、魔法使いなど魔力の扱いに長けた者ならば抵抗することが出来る。
万全である今のドクオであれば十分耐えられるはずだ。
その隙に手に持ったククリでぶん殴れば勝てる。
格闘は苦手だが、今は筋力がちょっと増しているし、強化魔法の効果もあるので十分効く、と思う。たぶん。きっと。恐らく。お願い。
爪'ー`)y‐~~ 「言っておくけど、我慢なんてしない方がいい。辛いだけだ」
ドクオが耐えようとしていることを、フォックスも当然見抜いている。
だからこそ、拡散した煙で襲うのではなく、自らの近くまで誘い込んだのだ。
フォックスの手に現れた、濃密な煙の剣。
単に濃いだけでなく、追加の魔法式によって効果が大きく上昇している。
そのためフワフワと漂わせて操ることは困難になるので、扱いは易いようにこうしてまとめているのだ。
(;'A`) 「でえええ!!」
ドクオがダメもとで切りかかる。
しかしフォックスの動きはそれよりも早く、魔法の剣はドクオの胸を横に切り裂いていた。
痛みはない。ただ、ハーブ類のもたらす清涼感に似た冷たさがあった。
頭が一瞬、強く揺さぶられる。
眩暈だ。強烈な、目の前が一時見えなくなるほどの。
-
眩暈の収まったドクオの目に留まったのは、荒れ果てた森の中の風景では無かった。
フォックスも、逆さ男も、分かれて戦っていたツンたちの姿も無い。
背の低い草が茂るなだらかな丘と、収穫され幹だけになった桑の畑が広がっている。
最近も立ち寄った、ドクオの故郷、クシンダの風景だ。ただ、少し古い。
フォックスの術に嵌った。そう判断した思考すら、すぐに意識の中から消え去った。
ドクオの立つ丘の頂上へ、誰かが歩いてくる。
女性だ。ロングのスカートに濃紺のカーディガン。手には食料品の入ったバスケットを持っている。
風が草を、スカートを靡かせた。ドクオは彼女のことを、よく知っている。
(;'A`) 「先生、ダメじゃないですか、町へ下りたりしちゃ」
川 ゚ -゚) 「大丈夫だよ、今日は体調がいいんだ」
(;'A`) 「そんなこと言ったって、もし何かあったら」
川 ゚ -゚) 「ふふ、ドクオは心配性だな」
女性の、先生の手がドクオの頭を撫でた。
まだ十代の前半で、その上発育の悪いドクオの頭は、女性の先生にも見下ろされる位置にある。
それが一人の男としてはもどかしいし、同時に優しく頭を撫でられることにこの上ない幸福を感じてしまう。
川 ゚ -゚) 「今日は、ドクオの好きなチキンのマリネだ」
(*'A`) 「本当ですか?やった!!」
痩せた先生の体に寄り添い支え、ドクオは暮らす家へと帰る。
これから口にするであろう、先生の美味しいマリネの味に、期待を膨らませながら。
なぜだか失ってしまったような気がしていた幸せを、じんわりと噛みしめながら。
-
爪'ー`)y‐~~ 「ふぅー。魔法使い相手にも効いてよかった」
〈;;(。个。)〉 「落したのか」
爪'ー`)y‐~~ 「ああ、念入れて強力にしたから、もう戻ってこられないかもしれないけど」
〈;;(。个。)〉 「……」
爪'ー`)y‐~~ 「ま、心地いい夢を見ながら死ねるなら、幸せでしょう」
〈;;(。个。)〉 「ヨコホリの援護へ行くぞ留めはあとでいい」
爪;'ー`)y‐~~ 「ちゃー、俺で役に立てるかねぇ……」
地面に膝を突き、ぽろぽろと涙をこぼすドクオ。
その意識は既になく、逆さ男が触れても何の反応も見せなかった。
魔法使いの方であれば耐えられる可能性があると考えたようだが、無意味だったなと、逆さ男は息を吐く。
言葉の通り、逆さ男とフォックスは激しい戦闘を続けるヨコホリたちの方へ。
逆さ男が前に出て、フォックスが後方で援護の陣形。
( ^ω^) 「―――無刀の型」
爪;'ー`)y‐、~ 「?!」
( ^ω^)「“囚人殺し”」
-
油断しきっていたフォックスの背中。
肋骨の隙間に、ブーンの両拳から突き出した中指が食い込んでいる。
声にならぬ嗚咽を漏らしながら、フォックスは地面に倒れた。
四つん這いの姿勢で何とか息をしようとしているが、無駄だ。
突き抜けた指の刺突は、肺に著しい損傷を与え、しばらくの呼吸を奪う。
漂っていた煙が中空に消えたのに僅かに遅れ、フォックスも泡を吹いて意識を失った。
〈;;(。个。)〉 「貴様、フォックスの術に……」
( ^ω^) 「かかったのは、ドッグの方。僕は問題無いお」
ドクオの策は、これだった。
精神、つまりは脳に干渉する術ならば、その後に入れ替われば、もう片方には影響がない。
ブーンとドクオは合成され、神感応系の魔法によってリンクはしているが、存在としては個別のままなのである。
入れ替わった後でもそれぞれに自我を保っていられるのがその証拠だ。
故に、この特性を活かし、ドクオを囮にして無力化されたと思い込ませ、隙を作り。
ブーンがどちらでもいいから、討つ。
その作戦は見事に決まった。
問題があるとすれば、深層に引っ込んだドクオの意識が未だフォックスの術に囚われたままだということだが。
-
( ^ω^) (ドッグ。ドッグ…………ダメか)
フォックスの首根っこを掴み、巻き添えを喰らわないように投げ飛ばす。
逆さ男は再びブーンを攻撃の対象として構えていた。
奥に見えるツンとィシの戦闘はほぼ五分か。
ィシは強いが、魔女の呪具により著しく知性を欠損している。
無意識レベルまで体に刷り込まれた技は使うことが出来たとしても、連携や罠への対処はどうしても直感や本能便りになっていた。
それでも十分恐ろしい性能を持っているが、ヨコホリの性能もまた人外の域にある。
( ^ω^) (……追い詰められて完全に自我を失う可能性もある……早めに援護したいけれど)
テンポよくステップを踏む逆さ男。
ここまでの地に足をつけた安定感のあるスタイルから一転、軽やかに小刻みな跳躍を繰り返す。
( ^ω^) (斬る気で行かなきゃ、推し負ける)
腕輪の魔法の効果はまだ続いている。
効果が切れてしまう前にせめて逆さ男を倒さなければ。
もう一回残ってはいるが何度も使いたい代物では無い。
〈;;(。个。)〉
睨みあうこと十数秒。
逆さ男が助走をつけるような無防備さでブーンに駆け寄る。
この力みのなさに、逆に強い警戒を覚えた。
-
逆さ男の体がふわりと浮き上がり、右の回し蹴りを放つ。
頭を狙ったこれを、ブーンは伏せて躱した。
逆さ男は振り切った右に次いで、左の逆回し蹴り。
コンパクトな振りで顔面を狙いに来る。
ブーンはあえて回避せず、腕を折りたたむようにククリを振り上げた。
盾として構えられた刃と脚甲がぶつかり合う。
衝撃が体を突き抜け地面にまで届くが、なんとか耐えられない重さでは無い。
狭い間合いから弾かれたのは逆さ男。
馬力についてはやはりブーンに分がある。
さすがに微動だにしないというわけにもいかなかったが想定の範囲内だ。
ブーンが体勢を整えるのと、逆さ男の着地はほぼ同時。
挙動の速さは、僅かに逆さ男が先行した。
体を屈めた状態から一歩踏み込み、足に力を溜める。
体が浮くその瞬間を狙うため、ブーンはククリを脇に構えた。
しかし、目の前にいたはずの逆さ男の姿が、消える。
逆さ男は跳躍と全く同じ予備動作から、膝を折り地に伏せたのだ。
単純なフェイクではあるが、刹那の判断を繰り返す中では絶大な効果を発揮する。
下方への意識が薄れていたブーンの足を、鞭のような蹴りが刈り取りにかかった。
-
間一髪。
跳躍による回避が間に合う。
蹴りを見たわけでは無い。
逆さ男の攻撃へ対応するためにとりあえず距離を取ろうとしただけだ。
伏せ、地面に着いた両腕を軋ませ、逆さ男は体を持ち上げる。
慣性に腕力を追加し、逆さまの状態から跳躍。
体の上下を捻って戻しながらの、乱気流の如き連続の回転蹴りでブーンを襲う。
予想外の位置からの追撃にブーンはさらに後退。
重さと速さを兼ね備えた逆さ男の蹴りは、たとえ身体強化された今であっても迂闊に手を出せない。
着地の瞬間を狙い、ブーンは前へ。
空中で既に体勢を整えていた逆さ男は、着地と同時に先手を打つ。
折り曲げ引き上げた足を延ばし振り上げるだけの、素早い足刀。
ただし、ブーンはこれをいなす十分な体勢を整えていた。
( ^ω^) 「“陽炎送り”」
前へ出る姿勢から一転、半歩後退しながら、左の手刀を合わせての受け流し。
自身の力を付与し、上へ力を流すことで逆さ男のバランスを大きく崩す。
軸足の浮き上がったところを軽く足で払うと、逆さ男の上下は簡単に入れ替わった。
-
地面に背中から落ちる。
咄嗟に頭を強打させることは防いだが、それでもダメージはあった。
だからと言って落下の衝撃に呻く暇はない。
ブーンは、四股を踏むように大きく足を振り上げた。
逆さ男はすぐさま横へ転がる。
地面に叩き付けられたブーンの足を何とかやり過ごした。
そのまま数度転がり、勢いづけて立ち上がる。
半端な姿勢のところへブーンが切りかかるが、背後へ後転し刃を躱す。
〈;;(。个。)〉 (……)
( ^ω^) 「!」
闘志を高め、踏み込もうとしたブーンの動きが止まる。
互いの闘気とは異なる感覚が二人を襲い、ビリビリと肌が痺れた。
瞬間的な判断で、ブーンと逆さ男は距離を取る。
二人のいた、丁度中間の付近に、巨大な木片が落下し突き刺さった。
ィシの持っていたハルベルトだ。
腕ごともぎ取られ、ここまで吹き飛んできたのだろう。
( ^ω^) 「……」
〈;;(。个。)〉 「どうやら、いつまでも小競り合いをしている場合では無いようだ」
-
ィシたちへ走る二人の視線。
自分たちの戦闘に集中するあまり、ほとんど気にかけることが出来ていなかった。
腕を吹き飛ばされたィシに、ヨコホリが迫っている。
巨大な木槌と化した左腕での迎撃は空を切った。
頭を下げ、腰元に右腕を構えていたヨコホリ。
体を起こすと同時に、開いた掌でィシの体を撫で上げた。
無論、ただ触れただけでは無い。
指先に生み出された鎌鼬が、ィシの体を駆ける。
大きく、深い。
さすがの巨体も、風の猛襲に揺らいだ。
(//‰ ゚) 「……」
振り上げた腕を、捻り腕甲を開く。
瞬く間に内部のタリズマンを差し替え、閉じた。
手早く、流れるよう。手の平は既に、バランスを立て直したィシへと向いていた。
ξ;゚⊿゚)ξ 「ィシさん!!」
連射された五つの風の榴弾。
二つはィシが左腕で防ぐ。
頑丈な腕は、表面を砕かれ罅を走らせたが、破壊しつくされることは無い。
しかし。後続の三つはヨコホリの操作によって防御をすり抜け、体へと直撃する。
-
ただ当たっただけならば、問題は無かった。
通常よりも強固な体は、このレベルの砲撃であれば十分に耐えられるのだ。
しかしながら、風の砲弾が捉えたのは鎌鼬によって切り裂かれた体のその深部。
そうなれば、話は変わる。
くぐもった爆音。
木片が爆ぜて飛び、ィシが悲鳴を上げた。
狭い裂傷の中で行き場の限定された爆風は、体表よりも脆い内部を荒々しく蹂躙する。
大きく抉れた肩口が、腕の重みでさらに引き裂かれる。
再生を始めようとしたそこへ、ヨコホリは再び砲撃をおこなった。
既に破壊を受け強度を下げた体は、木端へと変貌する。
ィシはすさまじい雄叫びをあげ、鋭い木片を周囲へとまき散らし反撃する。
威力はそれなりだが、急所でも無ければ当たったところで死にはしないだろう。
一応は味方であるブーンの目から見ても、ただの悪あがきであった。
木片は、ただ悪戯に周囲の戦闘不能の者たちばかりを傷つける。
ブーンも含め、動ける者たちは皆弾くなり回避するなりして無傷だった。
(//‰ ゚) 「面倒な力だったが、これならまだ、人間のままの方がヤバかったゼ、糞ババア」
大きなゴミを片付ける。
ヨコホリの顔に見えたのは、そんな気だるさだった。
既に勝負は着いたのだ。あと数発魔法を叩き込めば、胴を遺しただけの体は容易く破壊されるだろう。
-
しかし、絡まり合ったィシと魔女の怨念は。
それほど容易い存在ではなかった。
(//‰ ゚) 「?!」
何者かがヨコホリの腕に飛び掛かる。
直後放たれた魔法弾は目標をそれ、地面の土を頭上高く舞い上げた。
( ^ω^) (危惧していたよりも、不味い事態かも……)
ヨコホリの腕にしがみついていたのは、禁酒党の兵士だ。
ィシに屠られ、死んだはずの、いわば死体である。
それが動き、あまつさえ味方であるはずのヨコホリの攻撃を妨害した。
敵味方問わず、戦慄が走る。
死体であるはずの彼がなぜ動いたのか、一目でわかったからだ。
彼の頭には、木片が突き刺さっていた。
そこから根が伸び、申し訳程度の葉をつけた枝も生え始めている。
先ほど木片をばら撒いたのは、生きている者を殺すためでは無かった。
既に死んだものを、蘇らせるためだったのだ。
〈;;(。个。)〉 「……ッ」
放置されていた死人たちが、次々と立ち上がる。
逆さ男たちの味方ばかりでは無い。
禁恨党の兵士たちも分け隔てなく、体に木片を宿している。
逃れたのは、ブーンが投げ捨てたフォックスと、ツンが木の陰に隠した瀕死の青年のみ。
-
(//‰ ゚) 「チィッ!!」
ヨコホリが腕を真上へ振り上げた。
しがみついていた一体は、払われ空中に投げ出される。
そうして何も出来ぬまま、放たれた風の榴弾二発により胴を破砕され、頭のみで地面へと帰る。
小刻みに痙攣していたが、再び回復し動き出すことは無く。
そのまま動きを停止した。
(//‰ ゚) 「どこまでも、どこまでも胸糞の悪ィ呪具だ」
一斉に飛び掛かる、元禁酒党の兵士たち。
ただ単に雇い主が同じだけのヨコホリに、容赦はない。
魔法で、拳で、次々と粉砕する。
彼らは体を一部破壊した程度では死ななかった。
一体目同様体を完全に破壊しつくすか、頭を吹き飛ばしてやっと活動を止める。
不死身ではないが、厄介な性質だ。
恐らくは、彼らの動きはィシが統率している。
ヨコホリの援護に向かおうとしていた逆さ男にも、二人が割り振られた。
口をだらしなく開き、体に根を張り巡らされた兵士。
容赦は情けにならぬとばかり、一瞬で鋼鉄の足がその頭を蹴り飛ばす、
残りの一体は急激な伏せからの足払いで転倒させ。
跳躍から頭部を踏み砕く。どちらもしばし痙攣したのち、再び死体へと戻った。
-
イ(゚、ナリ从 「逆さ!!だんちょ!」
〈;;(。个。)〉 「ッ、向こうで伸びている」
イ(゚、ナリ从 「こういうときこそ出番だろやくたたづ!!」
両手で持った手斧で、目の前に迫った一体の頭部を斬り砕くイナリ。
木化した体表と、肉のままの脳がまぜこぜに飛び散る。
( ^ω^) 「……」
どうする?
ィシの攻撃対象は、未だ根絶法側の人間に留まっている。
傀儡化した死体達も、戦闘に用いているのは敵側の物ばかり。
禁恨党のメンツたちはィシの周囲に集まり、少なくとも捨て駒としては使われていない。
意志はどこまで残っているのか。
仮に残っていたとして、ここまで人外化してしまっているこの状況、何とかできるものなのか。
魔法専門のドクオの意見を聞きたいところではあったが、未だ戻っては来ない。
-
ブーンが迷いを捨てきれない中、ィシが新たに生やした細い腕で、兵士の一人を掴み上げた。
少女がお気に入りの人形を抱くような優しさとぞんざいな扱いで胸に押し付ける。
魔法使い風のその兵士は力なく四肢を垂らし、そのまま、
( ;^ω^)
ξ;゚⊿゚)ξ 「なっ……」
つるりと、ィシの体の中に飲み込まれた。
胸の中心に巨大な洞が開き、それがまるで口のように喰らったのだ。
その行動に思考が停止する間にも、兵士たちは次々とィシに取り込まれて行った。
ただ単に吸収して、体を肥大化させているわけでは無い。
胃が動くのと同じく、ィシの体がポンプのように収縮する。
同時に、一番最初に取り込んだ兵士の顔が、ィシの胸の中心に表れた。
一人に留まらず、取り込まれた物が次々と、木が芽吹くのと同じくィシの体に頭を生やす。
( ;^ω^) (解説のドクオさーん!ドクオさーん!)
相変わらずドクオからの応答はない。
ドクオだからといって状況を理解できるとは限らないが、少なくともブーンよりは適応できるはずだ。
現時点で、ブーンが考えられることとと言えば、頭をどの順番で叩き潰すかくらいのことである。
-
(//‰ ゚) 「なァ逆さ、面倒になった。逃げていいか?」
〈;;(。个。)〉 「死ぬまでここにいろ」
(//‰ ゚) 「ゲェー」
〈;;(。个。)〉 「……この有様を見ても、まだそちらに与するのかオルトロス!!」
( ;^ω^) 「……」
〈;;(。个。)〉 「今はヨコホリへの敵意があるからまだ無事だが、此奴が街に下ったらどうするつもりだ」
(//‰ ゚) 「この傀儡の能力を街中で、それも脳筋バカどもが山ほどいる場所で使われたら手が付けられねえな」
逆さ男の言葉は、彼らが襲撃者側であるという前提を除けば、正当であった。
殺しても死なず、むしろ再生の度に周りを巻き込む。
今は僅かに残った自我か怨念かでヨコホリへの攻撃が中心になっているが、いつまで続くかわからない。
もしヨコホリが死ぬか、上手く逃げおおせたとしたら。
この暴威の矛先は、一体どこに向かうのか。
ξ;゚⊿゚)ξ 「ブーン?」
ツンの肩口には、イナリの投具が突き刺さっていた。
恐らく彼女の乱入によってィシを援護しきれなくなったのだろう。
-
( ^ω^) 「……ツン、この人は、多分もうだめだ」
ξ;゚⊿゚)ξ 「……」
( ^ω^) 「僕は魔女の力が人を傷つけるさまを、これ以上見たくない」
ξ; ⊿ )ξ 「……ィシさんはまだ、魔女の力に飲まれてなんかいない」
( ^ω^) 「……」
ィシの兵士吸収は、すでに終わっている。
異様な、異常な光景であった。
ヨコホリに破壊される前よりも一回り大きくなった体に、ィシ本来の物を含めて頭が八つ。
一つ放った咆哮に合わせ、全ての頭の目が開いた。
魔力由来の朱い光が穏やかに輝く瞳。
少なくとも、もう人では無い。
ξ ⊿ )ξ 「……そもそも!」
-
ξ# ⊿)ξ 「そもそもあんたたちのせいじゃない!!闇雲に人を殺して!!追い込んで!!」
〈;;(。个。)〉 「……」
ξ#゚⊿゚)ξ 「あんたたちがいなければ!ィシさんがこんなことになることも無かったのに!!」
ξ#゚⊿゚)ξ 「それを今更!人を気遣うような言葉を吐いてッ!!!」
ツンの叫びに、ィシの咆哮が被さった。
失ったハルベルトの代わりに、腕から木製の剣を生やす。
切れ味はよくなさそうだが、鈍器の役目も果たすと考えれば、十分武器になりうるだろう。
完全にプッツンしてしまったツンは、ナイフを構えィシの前に立ちはだかる。
本気であることは目を見ればわかった。
ξ#゚⊿゚)ξ 「ブーン。あんたが、魔女の力を嫌っているのも、倒すために旅しているのも、知ってる」
ξ#゚⊿゚)ξ 「だけど、ごめん。ィシさんが私の背中を攻撃するその瞬間まで、私はィシさんの味方をする」
( ^ω^) 「……そうかお」
ツンの体を風の鎧が包む。
ニョロも彼女の怒りに同調するように口を大きく開いた。
ξ#゚⊿゚)ξ 「……かかってきなさいよ糞野郎ども!!全員、ぶっ飛ばしてやるわ!!!」
-
ここまでっす
続きはまた年内を目指して
ではまた
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乙でした! あと質問の回答ありがとうございます
激闘に次ぐ激闘に毎回興奮させてもらってます
杉浦双刀流の新技も密かな楽しみです
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ドクオードクオー起きてー!
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ィシが元に戻れることを願う!
-
乙、ヨコホリくっそ強いな
やばすぎだろ
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ィシさんは最後に人として逝けるのかな…
-
ツンのヒロイン力がすげえ、かっこいい
乙
-
これで本来の能力に至らないとか
ブーンも相当化け物やでぇ
-
乙。純粋な一対一なら猪に勝てるレベルなのかヨコホリ
-
乙
杉浦双刀流のまとめが欲しくなってきた
10種類ぐらい出てきてる気がする
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横堀とブーンが頭ひとつ抜けてる感じか
あと
>>192
この前抜けてない?
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>>240
まじや、ミスってんね
>>192の前に↓入ります
(//‰ ゚) 「ったく、とんでもネエぜこりゃァ」
ヨコホリが右腕を眼前に構え、勢いよく手首を甲側へ倒す。
それに連動し静脈側の装甲がパカリと開いた。
溢れる蒸気でぼやけるその内側に、生身の肉体は無い。
代わりにあるのは、複雑に編み込まれた金属繊維の筋肉と、その中心に突き刺さった四角い何か。
恐らくはタリズマン。ヨコホリは左手でそれを抜き取ると、口に咥え。
代わりに懐から取り出した同じ形状のものを、同じ場所に差し込んだ。
開いた時を逆回しにした動きで腕の装甲を閉じると、調子を確かめるように腕をぐるぐると回す。
(//‰ ゚) 「行くぜェ」
猪に絡みついていた逆さ男とイナリが、大きく飛びのく。
邪魔者が離れ、余裕を取り戻した猪が見たのは、右腕を左に振りかぶるヨコホリの姿。
(//‰ ゚) 「シィィッ!!」
横一線。何もない空間に全力で振るわれたヨコホリの剛腕。
ほんの、瞬き程度も無い間を置いて、巨大な真空の刃が生み出された。
ツンやニョロの扱うのと同じ鎌鼬の魔法だ。
だが威力と範囲の桁が違う。
放たれた荒れ狂う無色の刃は、猪の体を真一文字に切り裂き、
それでも勢い衰えず、背後に、周囲にあった木の幾本かをすっぱりと切り払った。
-
かっこ良いヨコホリのかっこ良い場面が飛んでいたなんてwww
気付かずに読み進めてしまっていた('A`)
-
魔力補充したってことか
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ω`)ブーンもツンもヨコホリに喰われてるなw
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(性的な意味で)
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まだかな
-
横堀と魔女の関係って語られてたっけ
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ω・)多分まだ
-
> ヨコホリ=エレキブラン。別名、サイボーグ。
> 魔女によって半身を奪われ、代わりにタリズマンを埋め込まれハーフゴーレムとなった元暗殺者だそうだ。
こんくらいだな
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ω・)流石も気になるな
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( ^ω^)再開はよ
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次は年内にって書いてあるが
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漫画6 いつものうpロダが何故か使えなかったので
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4733303.zip.html
パスは daigoro
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>>253
毎度ながらのGJ
心なしかブーンさんがイケメンになっておられる
-
そういえば大五郎の漫画をまとめ忘れていたなぁということに気付き、
いざzipを落とさんとURLを踏んだのですが時すでに遅し404を突き付けられました、ブンツンドーです。
>>253
そういうワケありで、たかだか一まとめの都合のために厚かましい申し出だとは思いますが、
もしよろしければ、再度ファイルを上げていただけると大変助かります……。
-
>>255
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4778209.zip.html
パスは daigoro
あけましておめでとうございます
七話の出来は半分程度です 順調に予定より遅れております
それにしてもPHPうpろだは何故zipを受け付けなくなったのだろうか・・・
あまりうpロダを知らないんだが、また流れたらどうしよう
-
>>256
お手数おかけしましてスミマセン、無事に落とせました。
ありがとうございました!
-
o川*゚ー゚)σ゙ 「〜〜♪」
暗く湿った砦の中。
手を濡らしながら何かをこねる少女の姿が、魔法の柔らかな光に浮かび上がる。
薄らと笑みの浮かぶ口から、小さな歌が零れた。
少女特有の甲高い軽やかな声。
それが、世を知り尽くした妙齢の女の静けさを持って空気に広がってゆく。
生きている者の姿は彼女しか存在しない。
死した者の姿は、周囲に山のように積み重なっていた。
川*゚ ,゚) 「……うーん」
d
捏ねていた何かから手を離し、俯瞰から眺める。
ねっとりとした液体に塗れた手を、人差し指をピンと立て口元に寄せ、思案のポーズ。
赤黒い液体は、這いずるナメクジのように、ゆっくりと腕へと垂れてゆく。
川*゚ ,゚) 「もう少し盛った方がいいかな……」
d
川*゚ ,゚) 「でも、バランス悪くなるとなぁ……」
d
川*゚ ,゚) 「……お腹の筋肉ちょっと盛ろう」
d
-
o川*゚ー゚) 「えっと……」
少女の手が傍らにあった死体の山を弄り始める。
亡骸どもは多くが原形を留めておらず、動かされるたびに濡れた音を立てた。
o川*゚ー゚)oζ 「あったあった☆」
笑顔で肉の山から引き抜かれたのは、細長い、蛇のようなものの死骸だった。
あらゆる血にまみれてはいるが、体表には獣の毛が生えそろっている。
少女はおもむろにその蛇の尻尾を掴み、
o川*゚ー゚)o 「えいっ」
牛の乳を絞るかのように優しく、握りつぶす。
汁に浸った麺を啜る音、というと印象に近い。
大きく空いた蛇の口から、“蛇の肉”が勢いよく吐き出された。
少女は逆の手でそれを掴み、手の中に残った細長い袋状の毛皮を後ろ手に放り投げる。
細長い身体は、うっすらと血に塗れ、しかし新鮮であることが分かる色合いをしていた。
皮が無いことを除けば、今にも脈動を始めそうな、生体と違わぬ姿。
少女はその蛇を再び握り、今度は内臓と骨を吐き出させる。
内臓と骨には用が無いのか、残ったぶよぶよの肉を丹念に見て回す。
桃色の肉に、所々筋と脂肪の線が入った蛇の身体。
少女は時々指を振るい、不要である脂肪を丁寧に抉り飛ばしていった。
-
o川*゚ー゚)o 「このまま焼いて食べても結構おいしいんだよね〜〜」
もはやただの純粋な肉となったその亡骸を、丁寧に折り畳み、両手で包むように持つ。
紅葉ほどの小さな手にはいくらか余る量であったが、本人は気にも留めない。
川*゚ ,゚) 「えっと……形は……」
o@o
目の前の大きな何かと、手の内の肉を慎重に見比べる。
何度かそれを繰り返し、やっと目的が定まると。
川*゚ー゚) 「よいしょー」
.`oo 、´
蛇の体を、両手で思い切り握り潰す。
指の間から血が零れ、親指同士の隙間からは、包みきれなかった肉がはみ出している。
ほんのりと魔法の光を帯びる手。
両の掌の中で、蛇だったものがブルブルと震え始めた。
耳に不快な音を立てながら、時々血を吹き出しながら、徐々に小さくなってゆく。
はみ出していた部分も、その過程でちゅるりと掌の中に飲み込まれていった。
o川*゚ー゚)o 「出来た〜☆」
最終的に、少女の手に収まるほどまで小さくなった、肉の塊。
掌がゆっくりと開かれると、白い湯気を伴って、二つの肉片が現れた。
それまでのぷるりとした質感は無くなり、引き絞られた筋肉の硬質さを思わせる。
-
o川*‐ ,゚)σ゚ 「そーっと……」
二つの内の片割れを、少女は慎重に何かの中に押し込んでゆく。
始めは反発し合った肉同士が、少女の手が淡く光るのをきっかけに抵抗をやめた。
肉片はするりと飲み込まれ、何かの一部となる。
もうひとかけの結合も終え、少女は両腕を組んだ。
しげしげと全体をまんべんなく眺める。
肉を集めた大きな何かは、概ね人の形をしていた。
椅子に座らせられている姿勢のためはっきりとはしないが、身長はさほど高くない。
頑強さを見て取れる体型に、バランスの取れた筋肉。
膂力の高さが見て取れる。
今はぐったりと猫背であるが、この肉塊は確かに戦士の趣を湛えていた。
いくらか通常の人間と異なるのは、全身に皮膚が無いことと。
頭蓋から首にかけてがぱっかりと左右に開き、その中に脳と思しきものが全く存在しないこと。
o川*゚ー゚)o 「いいや、試作だしこれでけってーい!」
次の作業に戻るべく、少女が指を鳴らす。
壁の向こうで水音がしたかと思うと、少女の傍らに頭でっかちな人間が現れた。
起立状態で糸につられたような姿であったが、力を失い地面に崩れ落ちる。
-
( uФωU) 「……わがは……わが……」
o川*゚ー゚)o 「よっこいしょー」
蹲りうわ言のように何かをつぶやく彼の後頭部に、少女は手を突っ込んだ。
小柄な体がびくりと大きく震え、少女が手を動かすのに合わせて諤々と痙攣する。
言葉はますます明確さを失い、唾液で出来た泡が混ざり始めていた。
o
o川*゚ー゚) ミ 「どっこせーい!」
少女が勢いよく引き抜いた手に握られていたのは、脳。
釣り上げた魚のようにビチビチと脳髄が暴れていた。
気にする様子も無く、少女はその灰色の知能を、物言わぬ肉体の頭部に差し込んで行く。
脳は暴れながらも、巣に逃げ込むような迷いの無さで体に潜り込んだ。
千切れた脳髄の先端が、肉体の脊椎に届くと、自動的に割れていた頭蓋が元の形へ。
瞼の無い眼窩の中で、血走った眼球がぐるぐると動き回った。
o川*゚ー゚)o 「体の具合は、どう?試作ちゃん」
(;;;¢w¢) 「ゔぉえあ」
o川*゚ー゚)o 「あちゃー、舌が上手く回らない?それとも顎かな」
-
o川*゚ー゚)o 「うーん。人間足りないからって熊ちゃんのべろ使ったのが失敗だったかな」
(;;;¢w¢) 「べぁ」
o川*゚ー゚)o 「あーもう、だらしないからちゃんとしまって」
(;;;¢w¢) 「??」
川*゚ ,゚) 「むむ……一番質が良くないのだったとはいえ、もうちょっと考えないとな……」
b
(;;;¢w¢) 「?」
o川*゚ー゚)o 「まあいいや。ベロ丁度良くしてあげるから、あーんして、あーん」
(;;;¢Д¢) 「えあ」
川*゚ ,゚) 「んー。半分ぐらい切り落として見る?」
d
て
(;;;¢w¢)そ 「ぇ゙う?!」
o川*゚ー゚)o 「あー、閉じちゃダメだって、痛くしないから」
(;;;¢w¢) 「ゔー」
o川*゚ ,゚)o 「むむむ……もう少し大人になってからでもよかったかな……」
-
o川*゚ー゚)o 「ま!概ね上手くいったってことでいっか!」
(;;;¢w¢) 「あぃ゙」
o川*゚ー゚)o 「ベロはあとで調整するとして、皮も作らないと」
(;;;¢w¢) 「ゔー?」
o川*゚ー゚)b゙ 「えいしゃー!」
少女が振った指の動きに合わせて、「試作ちゃん」の体表が毛羽立ち始める。
元々皮膚が無く、血の粘液で濡れていただけのそこに、うっすらと皮膚らしきものが見え始めた。
真皮が染みのように広がり全身に行き渡ると、内側から押し出されるように盛り上がり、表皮を形作ってゆく。
当の「試作ちゃん」は、高速で細胞が代謝する苦痛に呻き、床に這いつくばった。
皮膚の再生というよりも、黴や苔に繁殖されているようですらある。
肌が作られ体表が隆起するほど、彼の呻きはより苦しげなものになっていった。
そして、全身を淡い色の皮膚が覆い尽くす
( ;;;Фωφ) 「……う、あ」
o川*゚ー゚)o 「まだちょっと突っ張る?」
( ;;;Фωφ) 「うんむ」
-
o川*゚ー゚)o 「まあ、もう少しすれば馴染むと思うから、我慢してね」
( ;;;Фωφ) 「うんむ」
o川*゚ー゚)o 「あ、ちょっと口大きく開けて見て」
( ;;;ФДφ) 「うんあ?」
o川*゚ー゚)σ 「えい☆」
試作ちゃんの口が大きく空いたその一瞬、少女が指を振るった。
同時にだらしなく垂れた舌に切れ目が入り、余分な肉と表面が地面に落ちた。
残された口内の方は、すぐ傷が塞がり血の一滴も零れることが無い。
( ;;;Фωφ) 「??」
o川*゚ー゚)o 「おっけー。なんか喋って見て」
( ;;;Фωφ) 「…ギュゥド」
o川*^ー^)o 「……んふふ、はぁい☆」
( ;;;Фωφ) 「おなが、ずいだ」
o川*゚ー゚)o 「あ、そっか。まだ何も食べてなかったもんね」
-
o川*゚ー゚)o 「とりあえず、上においで。ご飯準備してるから」
( ;;;Фωφ) 「うむ」
布を服代わりに体に巻き、試作ちゃんと少女は上階へ移動する。
出来立ての皮膚は柔軟性が足りず、ふとした拍子に破け血を溢した。
痛みに鈍いのか、特に反応が無いため、少女も特別処置を施したりはしない。
o川*゚ー゚)o 「そこのソファに座ってって。すぐ準備するから」
元々砦として建設されたこの建物は、今もその名残を多く残している。
しかし、この部屋だけはいくらか趣が違った。
カーテン、照明、ベッド、ソファにテーブルに、敷き詰められた絨毯。
全ての家財は少女趣味な色合いで統一され、まるでおとぎ話の姫が暮らす場所を思わせる。
天蓋付きのベッドには、三頭の大型犬が丸くなって眠っていた。
試作ちゃんは少女の言葉通り、中央からやや外れた位置のソファへ座る。
柔らかくほんのりと温かい。
うまく動かない体が勢いのままに倒れてしまうと、近づいた耳元からかすかに鼓動が聞こえた。
興味を持ってビシバシと掌で叩く試作ちゃん。
ソファは打たれるたびに、衝撃とは別の弱弱しい震えを見せる。
-
川*゚ー゚) 「あーもう、ソファのこといじめないでよね」
o―‐o
( ;;;Фωφ) 「む?」
川*゚ー゚) 「ケルたんに食べられちゃって新しいのに変えたばっかりなんだから」
o―‐o
( ;;;Фωφ) 「むー?」
o川*゚ー゚)o 「まあいいや、はい、クマちゃんのステーキ!!」
(;;*Фωφ) 「おー!!」
目の前のテーブルに置かれた品良く装飾の施された鉄板の上で音を立てる巨大な一枚肉。
脂身の少ない赤身肉はこんがりと色づき、見た目にも美味しそうだ。
ただし、その野性味ある独特な臭いが、やや鼻に突く。
味付けはシンプルに塩。
香草をいくらか振りかけてはあるが、肉の総量に対しては足りていない。
o川*゚ー゚)o 「焼きたてだから、気を付けてね」
試作ちゃんに与えられたのは、ごく一般的なナイフとフォーク。
少女は彼がどうやってそれを使うのか眺めるように、床に座り込んでテーブルに頬杖をついた。
-
( ;;;Фωφ) 「いだだきまふ」
試作ちゃんが右手に持ったのは、ナイフ。
フォークには目もくれず、小さく振りかぶり。
手先が消えたと見紛うほどの速さで、肉を切り裂いた。
肉は綺麗に分かたれ、僅かな肉汁が鉄板に流れ落ちる。
ナイフを突き刺して持ち上げた肉の下の鉄板には傷一つ付いていない。
的確に肉だけを斬って見せたのだ。
刃物と呼ぶにはあまりに鈍い、食事用のナイフで。
o川*^ー^)o 「……ふふふ」
試作ちゃんは持ち上げた肉を、一口でほおばった。
切り分けたとはいえ決して小さい塊では無かったが気にもしていない。
満足げに顎を動かし、目元を満足げに持ち上げる。
気持ち程度の咀嚼を済ませると、上を向いて飲み下した。
食道の中ほどでつまりそうになったのを、体を揺さぶって胃に落とし込む。
o川*゚ー゚)o 「美味しい?」
( ;;;Фωφ) 「むぅごぼんがえぐ?」
o川*゚ー゚)o 「んーん、私は別に食べたから食べちゃっていいよ」
(;;*Фωφ) 〜♪
-
少女は嬉しそうに、試作ちゃんの食事を眺めていた。
一枚目が無くなると、手早く次の肉を鉄板に乗せ、一瞬でちょうどいい具合に焼き上げる。
試作ちゃんの肌は食事が進むにつれて少しずつ改善されていった。
火傷の痕のような光沢のあった皮膚が、人間本来のものへと治ってゆく。
伴って、裂けていた傷も塞がれていた。もう、動くたびに割れるようなことも無い。
o川*゚ー゚)o 「……ん?」
試作ちゃんの食事が肉四枚目に差し掛かったころ、少女の前髪の一部が上へはねた。
意志を持つようにプルプルと震え落ち着かない。
少女は指を振って、ベッドサイドに置かれていた水晶球を手元へ呼び寄せる。
不思議そうにしている試作ちゃんの向かいにそれを置き、再び指を振るった。
透明の水晶が白く濁り、少しの間を置いてどこか森の中の景色を映し出した。
o川*゚ー゚)o 「……ふーん」
木々がなぎ倒され、荒れ果てた森の中。
巨大な猪と鋼鉄の腕を持つ男が殴り合い、その周囲で数人の人間が武器を振るっている。
猪が誰であるか、すぐに分かった。
あれは、少女が与えた力だ。
歳を取り、戦うには不十分になってゆく体を補うための、ささやかなプレゼントであった。
o川*゚ー゚)o 「……そっか。ダメだったんだねおばさん」
ほんの一瞬であったが、少女の目が哀しみに曇った。
すぐに気楽な色を取り戻したが、直前まで程の明るさは無い。
-
o川*゚ー゚)o 「…………あ、ブーンがいる!」
o川*゚ー゚)o 「……ふふ、結構順調だね☆」
( ;;;Фωφ) 「……」
o川*゚ー゚)o 「ん?」
食事を続けていた試作ちゃんの動きが唐突に止まる。
左右不揃いな目が見つめるのは、水晶に映る一人の剣士。
正確には彼が扱う技に、並々ならぬ関心を見せている。
( ;;;Фωφ) 「ぎゅぅど」
o川*゚ー゚)o 「なあに?」
( ;;;Фωφ) 「わがはいの、がたなは?」
o川*゚ー゚)o 「……ふふ、ふふふ」
少女が指を鳴らした。
空中に突然剣が二つ、現れる。
二刀共に、反りのある片刃の剣。
片方は黒光りする鞘に、銀装飾を施された、芸術品としても通用しそうな麗刀。
もう一方は拵えすらなく、細い布を巻きつけただけの赤茶けた幅広の錆剣。
試作ちゃんは自らそれを手に取り、まじまじと見つめた。
-
o川*゚ー゚)o 「どう?私は刀剣の利きはできないから、とりあえずで選んだんだけど」
( ;;;Фωφ) 「…………うむ」
試作ちゃんは先ず銀ごしらえの刀を抜き放った。
音叉を鳴らしたような、澄んだ音色。
仄かに青を帯びた刃はさながら穏やかに宙を舐める紫煙のようであった。
ハチミネサルシゲナミ
( ;;;Фωφ) 「……八棟申茂南」
試作ちゃんは、ゆったりと数度振るい、一連の流れのまま、鞘へ戻す。
その顔は、どこか満足気。
続いて入れ替えて錆塗れの剣を手に取った。
布をほどいて現れたのは、柄と同じく赤黒い刀身。
赤錆に表面を覆われ、刃もボロボロだ。
一見して粗悪な骨董品でしかない。
しかし、これを見る試作ちゃんの目は、先ほどよりも鋭くなっている。
( ;;;Фωφ) 「……」
振るわず、布を巻き直し、ソファに立てかける。
不思議なことに、試作ちゃんの手にも、床の絨毯にも錆の零れ一つない。
-
o川*゚ー゚)o 「気に入ってくれたみたいでよかった」
( ;;;Фωφ) 「うむ。あと、ふくほしい」
o川*゚ー゚)o 「それは準備してあるから、ご飯終わったらね」
( ;;;Фωφ) 「うむ」
再び食事に戻る試作ちゃん。
しかしその眼は、以前水晶の映像に向けられている。
気になるのだろう。時折手が止まり、食い入るようだ。
o川*゚ー゚)o 「あ、またこの子いる。へっぽこピーなのにがんばるなあ」
o川*゚ ,゚)o 「……まどろっこしいな。私が行ってバーンってやっちゃおうか……」
o川*゚ ,゚)o 「でも、あの二人のこともあるからなぁ……うーん、ちょこっとだけならいいかな……?」
( ;;;Фωφ) 「……ギュゥド、おがわり」
o川*゚ー゚)o 「あ、ハイハーイ」
o川*゚ー゚)o 「……ま、いっか。わたしが手を出しちゃったらつまらないもんね♪」
* * *
-
足し算。
算術の中で最も基本にして、最も単純。
たとえ人間程の知恵を持たぬ猿であっても、「2」と「2」が合わされば「4」になるということを感覚として理解している。
その、集めればより大きな存在になるという式を、その魔物は如実に表していた。
(//‰ ゚) 「……」
ィシが体内に取り込んだ兵士は六人。
すべてが頭部のみをィシの体生やしている。
そして、どうやらその一つ一つが意識を持って、周囲を観察していた。
もちろん彼らの頭はただあるだけでは無い。
イ(゚、ナリ从 「?!」
隙を見て背後に回り、ィシの首を狙っていたイナリに木片が放たれる。
発射口は肩甲骨付近生えた兵士の口。
死角に対し、臭いや気配で察知したにしてはあまりに的確な攻撃だ。
( ;^ω^) (まさか、あの一つ一つが独立して行動できるとか?)
体を穿たれる寸前で回避したイナリを、木片の射撃が正確に追いかける。
猪の頭部は今にも襲い掛かりそうな気迫でヨコホリと睨みあっていた。
ィシ本体が彼を操作して、という様子では無い。
-
(//‰ ゚) 「雑魚を取り込ンだくれェで、調子に乗ンじゃねェ!」
ヨコホリの空弾。
連続して三つ放たれるが、ィシは防御すらしない。
代わりに、魔法弾がシャボンが割れるように中空で消えた。
ブーンはいまいち状況が分からなかったが、他のメンツは全てを悟る。
猪の、ィシの胸部の中心に据えられた頭。
魔法使いにして、魔法分解のスペシャリスト、シーン=ショット。
彼が、ィシの体に取り込まれながらもその能力をもってヨコホリの魔法を分解したのだ。
そのキレは本来のものと何ら遜色無く。
むしろ自身が狙われる警戒の必要が無くなったことにより、対応がより機敏になっている。
(//‰ ゚) 「……勘弁してくれ」
試すように、ヨコホリが射線を散らして魔法を三発。
シーンの目がキョロキョロと動き、全てが一瞬の内に消えた。
このあたりでブーンも何が起きているのかを薄ら理解する。
ただ、理解したがために正直帰りたい気持ちでいっぱいになった。
これは単に「ィシが強くなった」という情報以上の危険をブーンに悟らせる。
取り込まれた人間が、元々の能力を発揮できるならば。
もし仮に、例えばこの場でいう伸びているフォックスをィシが取り込んだら。
あの糞ほど厄介な魔法を、ィシが使えるようになってしまうということでは無いのか
-
(//‰ ゚) 「シィッ!!」
ヨコホリが魔法弾を放ちながらィシへ接近。
当然これは全て消える。
一度見せた魔法は通用しないと考えるべきだろう。
ξ#゚⊿゚)ξ 「でぇい!!」
あえての正面から、ツンが切りかかる。
こめかみに太い青筋を浮かべて、何とも愛らしい。
ヨコホリ的には抱き留めて頭を撫でてやりたいところだが、足元に魔法弾を撃ち込むことでその動作を牽制した。
攻撃が止んだ隙を、ィシは見逃さない。
ツンに覆いかぶさる形で、ヨコホリに迫る。
右腕の甲から生えた木剣を振りおろし、同時に左腕でツンを庇う。
大きく後退したヨコホリへ、肩口から生えた木槍が放たれた。
その動作を管轄したのは、同じく肩口に生えた兵士の頭。
ィシが単体で放っていた時よりも的確な攻撃となっている。
ヨコホリはさすがの反応を見せ、素早く右手を翳した。
そこから放たれた魔法弾が、槍の飛来を破壊―――しない。
(//‰ ) 「グッ!」
掌に表れた空弾はその瞬間にかき消され。
破壊されるはずだった槍の切っ先がヨコホリの胸板を捉える。
雑に切り出された粗末な槍だが、重量故に威力は高く、服を割いて深々と突き刺さった。
-
衝撃で吹き飛ぶヨコホリ。
ツンをそっと横にどかし、ィシは追撃に走る。
巨体。一歩が大地を揺らし、その身が風を切るだけで空間が歪んで見える。
低い跳躍と同時に剣を振り上げた。
着地の衝撃を全て込めた、渾身の一撃。
辛うじて身を起こしたヨコホリは、槍を抜き捨てた流れで、右腕を防御に差し出した。
衝突の音は鼓膜を痺れさせた。
木剣は根元から折れ、木片がすさまじい勢いで宙に散る。
受けたヨコホリは、腕こそ傷は無いが槍を受けた傷から血が噴き出していた。
防御したとは思えないほどのダメージだ。
〈;;(。个。)〉 「!!」
援護に走ろうとした逆さ男の前にツンが立ちはだかる。
一瞬で倒すか、無視してすり抜けるか。逆さ男の逡巡。
後者はダメだ。魔法を使われれば、僅かだがツンの方が速い。
それに、この女に背中を向けるのは赤子に包丁を持たせるよりも危険。
本当に何をしてくるか予想が出来ない。
-
〈;;(。个。)〉 「イナリ、ヨコホリの援護を。あの娘は俺がかまっておく」
イ(゚、ナリ从 「おう、しっかりやれよ」
ヨコホリは辛うじて耐えている。だが、分は明らかに悪い。
イナリは直接ィシに走り、逆さ男はその場で低く姿勢をとった。
正面から落ち着いて戦えば、無理のある相手では無い。
が、誤算はまだまだ付きまとう。
( ;^ω^) 「!」
〈;;(。个。)〉 「ッ」
身構えるツンと、攻めに動いた逆さ男の間にブーンが割って入った。
牽制に振るわれたククリ刀を腕に仕込んだ鋼鉄の腕甲で受け止める
この瞬間に、ツンは二人を無視しイナリへと走った。
〈;;(。个。)〉 「……貴様は一体何がしたい、オルトロス」
( ;´ω`) 「いやぁー―……ほんと僕もどうしたもんかと……」
互いに一歩後退し、すぐさま攻撃に移る。
数度打ち合う刃と脚甲。
眩しい火花が散り、ククリの破片がブーンの耳を掠めて切った。
-
その気になれば、ツンを斬り倒してィシとの戦闘に集中することはできた。
自分の中にそう言った冷徹さがあることを自覚している。
実力としても、それは一瞬で済むだろう。
( ;^ω^) (あ〜〜くそっ!!)
逆さ男との間合いが僅かに開いた一瞬。
ブーンはククリ刀をヨコホリへ向かって投擲する。
頭部を正確に狙い定めたこの一撃は、ツンを殴り倒そうとしていたヨコホリを防御へと回らせる。
( ;^ω^) 「ツンさん!お願いだからこっちに回って!それかどっか行って!」
ξ#゚⊿゚)ξ 「やだ!!」
( ;^ω^) 「ぅえ〜〜い」
〈;;(。个。)〉 「……」
逆さ男の回し蹴りが一閃、ブーンの首を刈る。
寸前で体をのけぞらせたブーンはそのまま後転。
近くに落ちていた剣を拾った。
細身の部類に入る、両刃剣。
業物では無いが手入れは悪くない。
激しく打ち合ったのか刃こぼれは多いものの、使用には足りそうだ。
-
両手で剣を持ち、脇構え。姿勢を低く逆さ男に突進する。
勢いを利用し、まずは薙ぎの一撃。
逆さ男も素直に応対。
鋼鉄の脚甲を軽々と振り回し剣を迎え撃つ。
悲鳴を思わせる、金属音。
鳴り響く音は振動となって肌を震わせた。
〈;;(。个。)〉 「あの小娘を庇うつもりならば」
( ^ω^) 「お?」
〈;;(。个。)〉 「むしろ俺か貴様が早めに落とした方がいい。向こうの二人は、邪魔になったら殺すぞ」
( ^ω^) 「……あんたも中途半端だおね」
〈;;(。个。)〉 「あの化け物を倒すには、貴様の協力が不可欠だ。貴様の協力を得るならば、あの娘に手を出すわけにはいかん」
( ^ω^) 「……」
-
〈;;(。个。)〉 「オルトロス。貴様ならあれを倒すことはできるか?」
( ^ω^) 「お?現状一番効きそうな技はあるけど」
〈;;(。个。)〉 「……俺が、あの娘を数秒抑える。その隙決められるか」
( ^ω^) 「……」
〈;;(。个。)〉 「貴様と俺が戦うのは、無駄だ。娘に傷を負わせるような事態は控える」
( ^ω^) 「……」
ちらりと、ィシを見る。
魔法をほぼ使えない現状、ヨコホリ側の不利は否めない。
防御を気にする必要のないィシの猛攻は、見ているだけで失禁してしまいそうだ。
〈;;(。个。)〉 「奴には魔法が使えん。恐らく、通用するのは貴様の技くらいだろう」
( ^ω^) 「……」
〈;;(。个。)〉 「頼む。俺たちの撒いた種であることは、自覚している。だからこそあれをあのままにはできない」
逆さ男もまた、危惧している。
ヨコホリが死ぬのは手痛いが、問題はそこではない。
少なくとも人間であったころほどの理性を持っていないィシが、最も重きを置いているヨコホリを倒したとき、どうなるか。
その予想は、大よそブーンと同じだ。
-
魔女の力は、尋常では無い。
ヨコホリのようにある程度コントロールしている例もあるにはある。
しかし、窮地に立たされたが故にその力に頼り飲まれてしまったィシはむしろ真逆。
今は憎しみと使命感が理性に似た形で制御を行っているが、ヨコホリがいなくなればそれも無くなる。
超常の獣と化したィシは、「ヨコホリ倒したから大人しくします」とはならないだろう。
否、なるかもしれないが、ならなかった場合の危険性があまりに高すぎる。
有機物を吸収し回復、人間までも取り込んでその力を利用する。
手練れの一人でもィシの傀儡になればもはや手が付けられない。
それが街に降り、無差別に人を襲い始めたとしたら。
兵士と、木造建築に溢れるサロンはィシの戦力補給施設でしかなくなる。
場合によっては、間接的にではあるものの「魔女に滅ぼされた四つ目の街」になりかねない。
( ^ω^) 「……正直、あんたたちに協力するのはいい気分じゃないんだけお」
〈;;(。个。)〉 「それは……こちらもだ」
( ゚ω ) 「……変なマネをすれば、その場で殺す」
〈;;(。个。)〉 「……了解ということで、いいか」
-
すぐにも衝突しそうな殺気の中で行われた算段。
ブーンは剣を構える。
その対象は逆さ男では無く、猛威を振るうィシ=ロックス。
( ^ω^) (せめてツンにも攻撃してくれてれば、もう少し躊躇いなく行けるんだけど)
( ^ω^) (……そうなってからじゃ、遅い)
猪に背を預けるツン。
一切の警戒が無い。
それはィシが最後の理性を失わないようにという願懸けにも見えた。
合図は送らない。
素直に一直線でィシへと向かう。
ツンが反応した。
ィシ自身の攻撃範囲が広いため、かなり余裕がある様子。
剣を構えるブーンを見た目に宿ったのは戸惑いか。すぐに戦意が輝いたためもう分からない。
構えられたナイフ。
戦士としては華奢な、少女としては屈強な腕に力が篭る。
-
しかし、彼女の相手をするのはブーンの役目では無い。
ブーンの倍に近い速度で脇を駆け抜けた逆さ男がツンに跳び蹴りを放つ。
殺気が無い。明らかな牽制だ。
それでもツンの意識はブーンからずれた。
条件は十分。
ブーンは持っていた剣を、思いっきり高く放り投げる。
その瞬間に、場にいた者たちの意識から、ブーンの姿は消え去った。
ィシの体から生えた二つの頭が、一瞬ぽかんと呆けた顔をする。
準備していた木槍は穿つ対象を失い適当な地面に突き刺さった。
( ω ) 「“我、永遠喰らう者―――”」
気配を消す、とブーンは称している。
あらゆる技術を駆使し、相手の意識から自分を排除、あるいは優先順位を著しく下げる。
上手く行けば、相手はまるでブーンが消えたかのような錯覚を思えるのだ。
当然、永遠には続かない。
効果はほんの一瞬。
だがその一瞬こそ、複数の意識に守られたィシへたどり着く、僅かな道筋。
( ゚ω ) 「“―――汝を、蹂躙す”」
-
背面を守っていた頭が、真っ先にブーンの姿を捉えた。
その目は爛々とィシの背中を見据え、地面に片手を突き体勢を整える。
タリズマンから吹き出した魔法の炎が闘気と混ざり、空気がぐにゃりと揺れた。
ィシ本体も、他の頭も、まだブーンの存在を追い切れていない。
背中の頭は、素早い判断で口から木の槍を吐き出した。
狙いは的確。
外れたのは、ブーンがそれ以上であったに過ぎない。
( ゚ω ) 「“杉浦双刀流―――”」
立ち上がりざま、足一つ分重心をずらしただけの回避。
矛先は、ブーンの耳を掠めた。
体勢に崩れは無く、構えられた両拳は自ら潰れそうなほど硬く握られている。
( ゚ω゚) 「“鐘砕き!!”」
振るった瞬間に、音が割れた。
目に消えるほどくっきりと空気に広がる衝撃の波紋。
すべてを置き去りにしたブーンの拳は、確りと、確りとィシの背中を捉える。
亀裂。
蜘蛛の巣のように方々へ広がり、音と血しぶきが噴出。
深い。撃たれたのが背面であるのに、罅が正面にまで表れているのがその証拠。
-
ィシの口からどす黒い血が吐かれる。
それまで機敏に動いていた上半身が、ぴたりと動きを止めた。
体表の頭たちを含めて損傷は大きい。
好機だ。
ツンを除く全員が、この事態をそう取った。
ヨコホリは右腕に魔力を込め。イナリは全身の筋肉を倍ほどまで隆起させ。
逆さ男は強化魔法発動と同時にツンをすり抜け、ブーンは落ちて地面に刺さった剣を手に取る。
ξ;゚⊿゚)ξ 「ィシさん!」
ツンの叫びか、怨念か。
ィシたちは意識を取り戻す。
ほんの刹那の先行であった。
ヨコホリの放った魔法弾を消去。
直近、死角である真後ろへ右足を蹴りあげる。
防御で何とかそれを受けるブーン。その体は軽々と浮き上がり吹き飛ばされた。
そのまま前傾。左足で跳躍し空中で前転する。
短い浮遊。自由になった両腕を、左右へ開く。
掌にはそれぞれ兵士の顔。ギョロリと動く目玉が狙いを定め、木槍でイナリと逆さ男を穿つ。
-
( ;^ω^) (あの傷と、あの巨体でこの動き!)
イ(゚、ナリ从 「ッ……チィ」
地響きが空まで届く着地。
戻した両手を拳にして四足とし、脚部にかかる負担を緩和。
体重を腕に乗せ、正面でヨコホリを見据えた。
掌にあった兵士の顔が、腕をずるずると這い登って肩へと移動する。
ヨコホリの放った乳白色の魔法弾。
シャボン玉のように弾け、全て威力を発揮すること無く消えた。
応射するィシ。両肩から張り出した片側二本の木製の筒がヨコホリを向く。
大の男の腕ほどの太さを持つそこから、丁寧に削り出された木片が射出される。
これまでの狙撃とは比にならない速度と正確性。
ヨコホリは横へ走り回避。腕だけを向けさらに反撃を放つが、やはり効果は無い。
射撃を中止し、ィシは四つん這いでヨコホリへ走る。
速い。巨体はそのまま一歩の大きさ。一瞬と呼べる時間の内にヨコホリへ肉薄した。
(//‰ ゚) 「ガッ……!」
飛び掛かる勢いのまま、拳を叩き付けるィシ。
その威力、もはや山崩れの落石を受けるのと大差はない
僅かに耐えることもできず、ヨコホリは粉じんをあげながら地面へとめり込まされる。
-
(//‰ ゚) 「クソッタレェ!!」
ィシが追撃のため一時腕を引き揚げた瞬間、ヨコホリが体で勢いをつけ腕の力で飛びのいた。
再び振り下ろされた拳は、空振り。
山に拳が突き立てられ、もはや恒例になり始めている地響きを鳴らす。
(//‰ ゚) 「いい加減にしろクッソババァ!!!」
常人ならば死んでいる。
常人で無いから、『サイボーグ』。
魔法攻撃を諦め、ヨコホリが拳を振りかぶる。
ィシは攻撃の後。隙は大きい。
渾身の拳打を、ブーンが作り出した体の亀裂へ。
鋼鉄の拳であれば、槌に並ぶ破壊力が期待できる。
しかし、だからこそィシに、この一撃を大人しく受ける選択は無い。
(//‰ ゚) 「ッ?!」
ヒットの寸前、ィシの体から生えた二本の腕が鋼鉄の腕を挟み掴む。
そのまま木の手同士が癒着、一つの幹となりヨコホリを捕まえた。
〈;;(。个。)〉 「下がれヨコホリ!!」
無理だ。
ィシの頑強な拳が、動けないヨコホリを中心に打ち合わされる。
木同士の打ち合う音に、言語に訳せない、水気のある粉砕音が混じる。
-
開かれたィシの腕。
ヨコホリは、死んではいない。
ただし、それだけだ。
口から血がボタボタ零れ、胸部は骨が砕け歪に歪んでいる
攻撃と防御の起点になる右腕が封じられ、絶体絶命。
シーンの魔法分解が云々以前に、手の向きが固定されィシに向かって魔法を放つことが出来なくなっていた。
〈;;(。个。)〉 「くっ」
逆さ男が動く。
先ほどの攻撃で左足に槍を受けており、動作に機敏さが無い。
同じく攻撃を受けていたイナリも駆けだす。
全身から血を溢しているが、そもそもの作りが違うのかダメージを感じさせない。
ξ゚⊿゚)ξ 「!」
ツンは迷わずイナリの妨害に向かった。
仮に攻撃に移れたとして、蹴り技が主軸の逆さ男は脅威でないという判断。
イナリは手に持った斧を使わず、逆の手で投具を放つ。
標的は迫るツンでは無く、ィシ。
人間であればともかく、現状のィシは投具なんぞ無意味だ。
ツンもィシ本人もこれを気にすることは無く、突き刺さった小さな刃はやはりダメージを生むことは無い。
-
ξ#゚⊿゚)ξ 「ラァ!」
今が好機なのは、ツンも同様だった。
比較的平気に見えるイナリも、全く平常とおりとは行くまい。
ナイフを構え姿勢を低く、確実に一撃を与えることに集中する。
対するイナリは、小さな動作で、手斧をなげた。
完全に虚を突かれ、ツンの動作が鈍る。
力は篭ってない。しかし、激突すればそれなりのダメージを受けるだろう。
身を捻って、回避。
体のキレが、瞬時の判断能力が高まっているからこその、刹那の行動。
だがそれが、この時ばかりはイナリの罠に嵌る形になった。
ξ;゚⊿゚)ξ 「!」
イ(゚、ナリ从 「ふッ」
迫るイナリに対し咄嗟に突き出したナイフ。
握る右手の手首、浮き出た腱の隙間にイナリの指が食い込んだ。
痺れるような痛み。ツンはついナイフを手から落としてしまう。
イナリの手は、そのまま跳ね上がってツンの顔面へ。
対処が間に合わない。
決して万全の一撃では無いが、手の甲の直撃を受け、ツンは後ずさった。
鼻を押さえた手の、指の隙間から血がぽたりと落ちる。
-
イナリは間髪を挟ませず、ツンの髪を左手で鷲掴み、引き寄せた。
頭髪を強引に扱われる痛みと、抵抗しようとする反射がツンを無防備な体勢で停止させる。
そこへ、飛び込みの膝蹴り。
男にも勝る筋骨を持つイナリの膝が、鳩尾へ食い込む。
固めた腹筋を衝撃が容易く貫いた。
口が開き、嗚咽と胃液が漏れた。膝の力が火に水をかけたように消えてゆく。
イナリは完全に止めを刺そうと、髪を掴んだまま投具を引き抜いた。
しかし、何かに気づくとすぐに身をひるがえしてその場から離れる。
( ^ω^) 「……」
イ(゚、ナリ从 「おい。今の避けなかったら死んでた。クソ犬」
ツンを救ったのは、ブーンが振り切った白刃。
あえて殺気をむき出しに、全力で振り切ることで回避を優先させた。
イナリを斬ることが目的でない以上、ツンが殺された上でイナリを殺しても意味がない。
ツンを庇うように立ち、イナリを睨むブーン。
強者であるイナリだからこそ、これに切りかかる愚を知っている。
( ^ω^) 「さっさと向こうの援護に行くといいお」
イ(゚、ナリ从 「……あとで、ギッタン」
-
イナリがツンの相手をしている間、逆さ男は怪我を堪えィシの背中へ迫っていた。
再度打ち合わされたィシの両腕。
ヨコホリは悲鳴の一つ上げないが、響き渡る音はその威力を如実に語っている。
〈;;(。个。)〉 「……」
逆さ男の接近には、背中の頭が既に気づいている。
肩に生えていた射撃用の筒が、剥離するような音を立てて、180度後ろへ。
逆さ男に狙いを定める。
木端が削れ散る白い煙が吹き出し、木片が射出された。
数は無数。正確さのみならず、威力と連射性も伴っている。
逆さ男は、強化魔法を発動し高く跳躍。
すぐに魔法は解除されてしまったが、これで十分だ。
大きく射線を逸れた逆さ男を、照準が追いかける。
しかし、遅い。やっと追いついた時点で、逆さ男の落下が始まっていた。
飛来する木の礫に曝され防塵繊維で出来た衣服が容易く千切れ飛んで行く。
その中に、僅かにだが血と皮膚が混じった。
体を錐もみ回転させ、できうる限りの回避で応じる。
砲撃の雨を掻い潜っての、着地。
空中で生んだ回転の勢いそのまま、駒の如く体を一回転させる。
軸足の傷が血を吹いたが、止まりはしない。
-
背中、逆さ男の真正面の顔が大きく口を開く。
攻撃が来る。
シンプル故に確実な破壊力の木槍。
鋭い先端を、回転の流れで身を倒し、躱す。
先端が掠める。思いのほか深い。肉が引き裂かれたが、一時だけならば我慢が効くレベル。
逆さ男はこれを受けた衝撃でも大きく体勢を崩すことなく、むしろベストの体重移動へと繋げた。
逆回し蹴りを、木槍に対しクロスカウンターの要領。
振り回し、慣性の乗った鋼鉄の足の裏が、イナリが突き刺した投具へと叩き付けられた。
甲高い金属音。
投具の刃が楔となり、蹴りの威力を体の内部へと響かせる。
ィシの動きが止まった。何度目か分からないシンバリングのために開いた腕が、激痛に強張る。
出血が大きい。
十分な役目を果たしたことだけ確認し、逆さ男は後方へ転がる様に下がる。
(//‰ ゚) 「ガァッ!!」
このチャンスに、ヨコホリは足元に落ちていた手斧を拾う。
素早く振り上げ、自分の手を固定している木の一部を強引に叩き割った。
ある程度自由を取り戻し、手の平をィシの体へ向け、魔法弾を撃ち出す。
-
木片が飛び散り、ヨコホリは完全に自由に。
魔法弾を受けたィシの腹部は大きく抉れ、血を滴らせていた。
平然と動いて見せてはいたが、ブーンの一撃は確実に頑強な体を破壊している。
本来ならば耐える攻撃にもダメージを受けてしまうのがその証拠。
回復よりも攻撃を優先した判断は決して悪手ではないが、見込みが少々甘い。
後方へ下がりながら、ヨコホリは追撃を放つ。
辛うじて意識を取り戻したシーンが全て消去し、不発に収める。
(//‰ ゚) 「はあ、クッソ、しんどいぜ」
ある程度安全な距離。
ヨコホリは足をもつれさせ、尻を地面に着いた。
彼についても、生きて動けるのが奇跡な状態である。
今転んだのも、足が普段よりも外側にひしゃげていて感覚がくるったからだ。
ヨコホリを逃したィシの背後。
蹴りを放ち、有効打を与えたものの、足に受けた傷が深く体勢を崩していた逆さ男。
その肩を足場に飛び上がり、イナリが手斧を振り下ろす。
狙いは、肩から生えた砲身を操る兵士の内、右の頭部。
本体のダメージで動きが鈍っていることに加え、逆さ男の陰から現れたイナリへの対処は間に合わない。
-
イ(゚、ナリ从 「ダラァッ!!」
木肌を叩き割り、めり込む手斧。
兵士の頭が半分に開き、潰れた脳が脳漿に交じり吹き出した。
着地と同時にもう一方を狙おうとしたイナリだったが、唐突に横へ吹き飛ばされた。
ィシが絡みつく敵を払う為に、強引に体を回転させたのだ。
太い腕は、イナリの体を容易く砕いた。
回転を終えたィシは、勢い余って体勢を崩し横に倒れる。
大きく裂けた口から洩れる苦しげな呼気。
すぐに動くことが出来ず、体から軋む音がするばかりだ。
ヨコホリは半壊、死んではいないが動くことはできず。
逆さ男は全身に傷に加え、度重なる身体強化によって能力を落としている。
イナリも同様。雑に振るわれた攻撃も破壊力は十分で、動くことはできない。
ブーンに抱えられたツン。
イナリに決められた膝は意識を混濁させるほどの威力を持っていた。
顔からは鼻血と唾液の混ざった液体を垂らし、息も絶え絶え。
さしもの根性も、身体機能そのものを潰されては発揮出来ない。
( ;^ω^) (おうふ、マジ死屍累々)
その他、一度殺されその上でィシに一度支配され、さらに二度目の体験した屍たち。
まともな山中の光景では無い。
自殺の名所ですらもう少しつつましい死体の転がり方をしている。
-
一見して傷の少ないブーンも、二回の強化魔法による肉体の酷使が濁りとして体に蓄積している。
戦闘不能でこそないが、不安要素としてその存在感は十分すぎた。
この状況、最も立ち直りが早かったのは。
〈;;(。个。)〉 「……チィ」
イ(゚、ナ,リ从 「ゴキブリ並め
(//‰ ゚) 「女の執念はこええナァ」
当然、ィシ=ロックス。
体に生まれていた傷は一応とはいえ塞がれ、既に立ち上がっている。
キリがない。
ドクオが準備したタリズマンの強化魔法も既に打ち止め。
何より、あの瞬間の一撃は、現状ィシに通じうる最大の攻撃であった。
ィシは、経験だけで言えば、ブーンよりも上手。
その上に、人間を超えた高い身体能力。
一つ手をしくじるたびに、こちらが打つべき手は確実に潰され、不死を思わせる再生力のお蔭で先が見えない。
その焦りは、今までの敵に感じたものとは別の畏れをブーンの中に蓄積させていた
勝てるのか。この状態で、この魔物に。
-
『おいおい、珍しく弱気じゃねえかブーン」
( ^ω^) 「!」
-
体の入れ替わりに気づいたのは、その声が内側から聞こえたものだと認識したのと同時だった。
剣と拳が能のブーンに対し、絶大な魔法の力を持つ頼れる相棒。
敵の術に捕らえられていた彼が、ようやっと復活したのだ。
('A ) 「ちょいと遅くなったが、どうやら俺の出番みてえだな」
メランコリーズ=ロンリードック。
才無くも、高みを望む孤高の魔法使い。
('A ) 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「ドクオ……」
('A ) 「今の俺は、ちょっと虫の居所がよろしくねえ。悪いが、八つ当たりさせてもらうぜ」
ドクオの足元に魔法陣が現れた。
魔力が光の粒となって立ち上り、空間そのものが細やかに振動を始める。
ィシの目がドクオを向いた。
ただならぬ気配に体を向き直し警戒心をあらわにする。
('A ) 「行くぜ……、ショータイムだ!!」
-
おお!?
-
おわり
どうやら世間一般的には2014年が始まったらしいですが、
ガキ使も紅白もカウントダウンもyktskrtsも見てないしそばを食った記憶も無いのでまだまだ2013は終わってないはず
やったね
次話は一月中を目指しつつ、伸びても二月頭までには投下したいという心意気
-
乙
寝こけてたドックが活躍しそうな超熱い展開
今日は2013年12月44日ですよね
12月62日までに来てくれるんですね
-
乙!
ヨコホリ流石に死ぬかと思いきやしぶといな
ロマネスクが出来上がるシーンもゾクゾクした
次回のドクオのターンに期待
-
乙おつ!
禁酒党組がかわいそうになってきた…
-
待ってたで
-
おつ!
最初のキュートこえぇ…
ドッグ期待してんぞー
-
ロマネスク強そうだな…
-
乙!どっくんktkr!
-
ω・)乙。魔法きくのか?
-
大魔童貞師無双wktk
-
毎回今度は誰が死ぬのかとハラハラして読んでる
グロも陰惨な展開も苦手なのに、続きを読まずにいられない
登場人物の全員に常に死亡フラグが立ってるように見える。死相の濃淡の差しかない。でもそこがいい
毎度ながら面白い、乙。
-
乙乙。キュートがロマネスクに二本の刀を渡したことと
ブーンの杉浦双刀流って流派名を合わせて考えると……
-
そういうのやめロッテ!
-
考えると…じゃねえよカス
-
明るい美少女とグロの組み合わせは正義
イナリが腹立つけどかっけーけど腹立つわ
そんだけ感情移入してるってだけだけど
乙
-
おつ
ィシさんもヤバいがヨコホリもかなりヤバいよなぁ
ヨコホリさんどうやったら死ぬんですかね…敵勢力だけに恐ろしいな
-
おつおつ
-
ツンちゃん鼻血出してとうとうリタイヤかと思ったら
最後のレスでもう復活してるとは流石だぜ
-
('A`)の魔法でイシもヨコボリも元の身体にならないかな
-
ω・)そんなのできるならすでに自分にやってると思うが…
-
何が恐ろしいって、ィシも魔女の玩具に過ぎないのが
-
強さ的には
猪イシ+α>>>ブーン>>ヨコホリ>>逆さ男>>>イナリ>>>>>>ツン
てとこかな
-
漫画7
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4848928.zip.html
-
>>321
密かにどんな風に絵にしてもらえるんだと楽しみなシーンだったのもあって楽しく読めたっす
ブーンの動きもそうですし、キメラのおぞましい感じとかね、かなり嬉し楽しいっす
なお次話なんですが、諸々あって遅々としてますがそこそこ書けてはいるのでそう遠くない内に
-
取り込んだシーンでヨコホリ分解しろよって思ったけど
取り込まれると柔軟性とかがなくなるのか
-
シーン取り込んでィシさんがチートの域に
-
鯨のチート具合も大概やばかったのに次々上が現れるな
-
なお魔女にとってはオモチャの模様
-
このSSのキュートは倒せる気しない
-
待ってるぞー
-
追い付いた
読んでるよー
-
漫画8
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org5026417.zip.html
-
>>330
パス付きとは中々挑んでくるな
着実にクオリティ上がってるし二刃一瘡使うコマかっけえ
-
予告まじか
楽しみにしてる
-
なんの話やと思ったら向こうだけで宣言してたのか
-
ω・)はやく読みたいな
-
漫画9
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org5080682.zip.html
原作的には6話に突入しました
キメラとの戦いに集中して次回で終わりたいと思います
24話の投下前の暇つぶしにお楽しみ頂ければ幸いです
-
曰
| |
ノ__丶
||大||
||五||
||郎||
-
('A ) 「よう、ツン。ひっでえ顔だな」
ドクオは、腕に抱えたツンを、そっと地面に下す。
勢いでブーンと入れ替わったはいいものの、彼女を支えていたことをすっかり忘れていた。
急激な体格の変化により襲い掛かった重力の猛攻で、なんか大事な腕の筋を結構不味い感じに痛めている。
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
魔法の展開を続けながら、ツンの顔をマントの裾で優しく拭う。
その姿たるや、まさに大魔法使いと呼ぶにふさわしい余裕である。
ただし腕が痛いせいでめちゃくちゃ手がプルプルしていた。
ィシの目がドクオを見据える。
彼女の中ではドクオはまだ敵性の存在としては認識されていない。
むしろツンを優しく支える行為は味方であるとすら思わせただろう。
('A ) (ブーン、何となく状況は察した。あいつ、倒すんだな)
( ^ω^) 『うん。でも―――』
('A ) (任せろ。修行の成果を見せる時だ)
ドクオと目が合ったその瞬間にィシが吠えた。
敵意を感じ取ったのだ。
-
('A ) 「―――残念、展開はもう終わる」
ドクオの周囲に浮き上がった魔法陣が強く発光した。
脈動する力強い魔力の余波が、並ならぬ魔法であることを周囲に悟らせる。
('A ) 「行くぜ、この瞬間がお前のフィナーレだ!!」
ドクオのかっこいいセリフに合わせ、魔法陣が大きく歪む。
バチバチと耳にも目にも障るスパークを起こして二秒。
注ぎ込んだ魔力をすべてまき散らし、何事も無かったかのようにきれいさっぱり消え去った。
('A )
( ^ω^)
('A )
('A ) 「フィナーレだ!!!」
〈:: − 〉
('A )
( ^ω^)
('A ) 「えっ?」
-
( ^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ
〈;;(。个。)〉
イ(゚、ナリ从
( −・ )
('A ) 「えっ」
( ^ω^) 『……ドッグあのね、すごくいいにくいんだけど』
('A ) (おう)
( ^ω^) 『アレ、魔法消せるみたいなんだお』
('A )
('A`) 「死ぬ」
-
動きの止まったドクオに、容赦ない木片の射撃が襲い掛かる。
完全にドクオの方がフィナーレである。
ツンがなけなしの力を振り絞って足を払うことで、なんとか直撃は回避した。
だが、地面に倒れたドクオはそのまま顔をうずめて動かない。
ξ;゚⊿゚)ξ 「ちょっと、ぼさっとしてないで、早く!」
('A`) 「もういい。俺死ぬよ。蛆虫以下だよ」
( ;^ω^) 『諦め早ッ!つーかわかっててドヤ顔決めてたんじゃないの?!対策ばっちりじゃなかったの?!』
('A`) 「だって知らないもん。さっきまで夢の中だったし。マジ、ピンチに現れた俺のカッコよさに酔いまくってただけだし」
( ;^ω^) 『お願い!拗ねてもいいから動いて!せめて体かえして!』
追って襲い来る射撃の嵐。
即座にドクオと入れ替わったブーンは全身をバネに素早くその場を飛びのいた。
想像以上に役に立たなかった相棒に文句を垂れる暇もない。
ブーンの戦力を警戒したのか、ィシは集中的な攻撃をあびせ掛ける。
回避で手いっぱい。
躱しきれない木片を剣で逸らし堪えるが時間の問題だ。
あとなんかよくわからないが腕の筋が妙に痛くて防御の度に響いて辛い。
-
( ;^ω^) (ドッグ、とりあえず対策を練りたいお!僕の記憶覗いていいから、奴の情報を少しでも)
('A`) 『うん。わかった』
( ;^ω^) (お願いだから元気出して!マジで余裕ないから!)
('A`) 『うん。がんばる』
木片の射撃がブーンの足を掠める。
動けなくなるほどでは無い。が、楽観できる状況でもない。
ィシは徐々にブーンの動きを読み始めている。
射撃も闇雲に狙ってくるわけでは無く、射線を散らすことでブーンの行動を制限するような意図が見えた。
その上での被弾だ。
逃げに回るだけでは確実に負ける。
何とか攻めなければ。
頭への木片を首だけで回避し、ブーンは前へ出た。
逆さ男がブーンに合わせィシ自身の死角へ回り込むのが見える。
('A`) 『オーライブーン、状況は何となく把握出来た』
( ^ω^) (早い!流石!よ!大魔法使い!)
('A`) 『余計傷つくから気を使わないで』
( ^ω^) (ゥス)
-
('A`) 『第一に、あの状態から元の人間に戻すのは不可能だ』
逆さ男の、潜り込む体勢からの蹴り上げ。
ダメージは無いが、ブーンに対する攻撃が緩んだ。
この好機にブーンはさらに前進する。
('A`) 『脳や一部の主要器官を除いて、全ての体細胞が変質させられてると見た』
('A`) 『可能性は0じゃないが、リッヒクラスの魔法使いが5、6人は要るだろう。現実的じゃない』
ダメージからいくらか回復し、イナリも動き出す。
猛攻を受け下がらざるをえなくなった逆さ男に変わり、斧を持って突進する。
意識が逸れた。ブーンは気配を消し、一気に懐へ。
('A`) 『なら、倒すしかない。放置すれば恐らくお前の危惧通りの結果に繋がるだろうからな』
ィシは既にブーンの気配消しにも対応を始めている。
これまでならあと一歩踏み込めたところを、腕の木剣に薙ぎ払われる。
剣で防御はしたが弾き飛ばされ、各部の関節に痺れる傷みがまとわりつく。
('A`) 『結論から言えば、コイツは殺せる。不死身では無い』
( ^ω^) 「!」
-
('A`) 『見ろ、あの女が斧で叩き割った背面の頭』
( ^ω^) 「……!」
('A`) 『再生してないだろ。正確には、「意識を持つ脳」としては再生していない』
イナリをあしらうィシの肩口。
叩き割られた兵士の頭は元に戻ることなく、その他の体表と同じく木肌として再生している。
ドクオの言葉の通りだ。眼窩や鼻腔などの名残はあるが、少なくとも頭では無い。
('A`) 『傀儡になった兵士たちも元々頭部欠損のある個体は操られていないし、頭を破壊されると死んでいた』
('A`) 『恐らくあの呪具は、脳までは再生できないんだ。稼働する肉体は可能でも、脳を再現する能力は無い』
('A`) 『脳だ。あいつの弱点は。さらには、脳を維持するために保たれている、その他の器官も、な』
( ^ω^) 「……」
つまりは今までのキメラよりはまだ生物らしい段階にあるということだろう。
ただ、それが分かれば重畳、とも言えないのが虚しいところ。
ィシは現状ブーンが出しうる最大の威力の技を受けても死ぬことは無かった。
そして、今使える限りであの威力を超える技は、無い。
-
('A`) 『ブーン、体貸せ』
( ^ω^) (大丈夫なのかお?)
('A`) 『魔法が消されたのは、吸収された兵士一人の「技術」だった。だとすれば、俺は一人の魔法使いとして負けられねえ』
( ^ω^) (わかった。危なくなったらすぐに入れ替わるお』
('A`) 「サンキュー」
ドクオに入れ替わってすぐに、剣を手放す。
同時に魔法の展開。
先ほどと違い、魔法式の組み立てを隠匿し読まれないように工夫する。
通常の展開に比べれば手間と時間がかかるが、相手の技量を考えれば惜しんではいられない。
( −・ )
魔法の気配に対するビビットな反応。
逆さ男、イナリの両名を相手取るィシの体を、シーンの顔が這いずる。
その目線はすぐさまドクオへ、展開する魔法式へ向けられた。
-
( 'A)つ Σ |バリア| そ (−・ )
ドクオはまずシーンの介入を防ぐための防護魔法を展開、発動した。
生み出された魔法の防壁は自動で魔法式が変動し、分解の手間を増やすことが出来る。
◎ て
( 'A)つ ◎ |バ**|そ ←ブンカイ― (−・ )
シーンはすぐさま防壁の分解に入った。
これまで同系統の魔法を多く破ってきたシーンだが、これはドクオの改良版。
初見の魔法ゆえにすんなり分解というわけにはいかず、やや手を焼く。
防壁で時間を稼ぐ内にドクオは同時に二つの魔法式を展開。
この時点でドクオは実質三つの魔法を維持していることになる。
◎ \ │ /
( 'A)つ ◎ ←ブンカイ― と(−・ )
/ │ \
本来であれば数十秒はかかる分解を、シーン十秒とかからず終えた。
ドクオの展開はまだ終了していない。
同時展開だけあって普段よりも時間を食っている。
-
◎
( 'A)つ ‐` 、´←ブンカイ― (−・ )
シーンの分解魔法がドクオの展開式の片方を捉える。
魔法の展開は繊細な作業だ。
干渉され、別の魔力が介入した時点で続行が不可能なほど崩壊する。
◎ ブ ン
( 'A)つ ―分解→ カ Σ(−・ )
イ
しかし、ここまではドクオの想定通り。
分解された魔法式は瞬く間に変容し、介入するシーンの魔力へ逆流。
介入を行っていたシーンの魔力を逆に分解する。
ドクオが分解されることを想定して用意した、逆分解のトラップ。
繊細なのは敵方の魔法も同じだ。奇襲であれば、たとえ真っ向勝負で敵わなくとも対抗できる。。
再び必要な魔力を捻出し介入を行うのはシーンであっても数秒かかるはずだ。
そしてこの数秒はドクオにとって、一つの組みかけの魔法を完成させるのに
('A゚) 「“―――我、汝を―――焼排す”!!」
余るほどの時間である。
-
ドクオの目の前に現れた紫の魔法陣。
その中で循環し、混ざり合い、高濃度の熱エネルギーと化す蒼紅二色の炎。
仕上げの途中だった先ほどとは違う。
一度発動してしまった魔法を0に戻すには、解析から始めなければならない。
何度も見た魔法ならともかく、初見の上級魔法に対しそれを行うのは、いくらシーンであっても困難だ。
その上、ドクオは発動した火炎魔法を操作しながら、シーンの分解に対し逆に分解を仕掛ける。
純粋に分解の力比べとなれば勝ち目はないが、それでも本命の魔法への手出しを防ぐことは出来る。
〈;;(。个。)〉 「イナリ!」
イ(゚、ナリ从 「……スタコラっ」
収束し、魔法陣から放たれる濃密な紫の雫。
甘いキャンディのような愛らしい姿の中に、誰もが悪魔の暴虐性を見つける。
分解が間に合わぬと悟り、ィシは槍を放った。
直撃よりはマシと相殺を狙ったのだ。
('A゚)
しかしこれに対してもまた、ドクオが一枚上手。
一直線にィシを目指していた魔法弾が、プルリと回転し木槍を躱す。
ドクオの指先の動きに合わせ、続く迎撃も受けることなく掻い潜る。
-
軌跡が熱で歪んでいた。
魔法弾は迎撃のすべてを抜け、ィシ本体を捉える距離へ。
ィシは跳躍し上へ逃げた。
待ってましたとばかりにドクオは指をファッキン。
上を向いたその指標に従い魔法弾はィシを追う。
飛行能力の無いィシは、空中では逃げ場がない。
魔法弾は確実にその巨体を捉える、はずだった。
ィシが吠える。
腰元から蔦が二本射出。
丁度ドクオの両脇にあった木の株へ突き刺さった。
跳躍の勢いがゼロになり、魔法の着弾の寸前。
ィシはその蔦を力強く引きつける。
蔦の先端は瞬く間に切株に根を張り、頑丈に癒着している。
その状態で蔦を引けば、当然前へ。
ィシの体は、空中で魔法の追跡を躱す。
それのみでない。
前進したその力を着地で殺さず、ドクオへと突進する。
魔法の操作をしていたドクオは、全くの無防備。
-
ξ;゚⊿゚)ξ 「!」
ィシは両腕を振り上げ、棒立ちのドクオへ体ごと倒れ込んだ。
攻撃というには雑だが、範囲は広く、巨体のエネルギーは十分な破壊力を生む。
そして、ドクオにはこれを躱しきるポテンシャルが存在しない。
腹を越して脊椎まで響く振動。
そろそろ山がぱっかり割れてもおかしくはない。
土やらなんやらが高く舞い上がり、ィシの体は半分が地面に埋もれた。
ξ;゚⊿゚)ξ 「……!」
( ;^ω^) 「おっおー、間一髪」
ドクオたちは死んではいなかった。
紙一重でブーンに入れ替わり、跳躍して飛び越えるように避けたのだ。
だが、これでは魔法がお釈迦になってしまう、のかというとそうではない。
魔法自体は発動した時点で十分に魔力も充てんされ、たとえ術者が死んでも当たれば効力を発揮する。
途切れたのは、操作の魔法。
その程度であれば、ドクオはすぐに繋ぎなおす。
( 'A) σ
着地と同時に入れ替わったブーンとドクオ。
その指は上半身を振り返らせるのと同時に、ィシへと向けられた。
-
読んでる支援
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楽しみ
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高く飛び上がった上空から、紫の流星が一直閃。
起き上がろうとしていたィシが木槍を放つもやはり当たらない。
( 'A) σ 「チェックメイト」
着弾と同時、吹き出すように紫白色の火柱が天を貫く。
それに伴い空気を歪めるすさまじい爆音。
熱波が嵐の荒々しさで周囲にまき散らされ、人も木も関係なく吹き飛ばした。
あえて衝撃波に身を任せ吹き飛ばされたドクオの目線の先。
紫の光を煌々と生み出す、白い火柱。
周囲の木の葉や木くずは瞬時に形を失い塵へと変わる。
火柱を中心に、渦を巻き引きつけるような風が吹き始めた。
余りに高温の白炎が急激な気圧の変化を生じさせているのだ。
次々に屑が巻き込まれ、焼き尽くされて行く。
一応生きている人間たちは肌を焼く光と熱波に耐えつつ、地面や切り株にしがみついてその光景を見ていた。
魔法でなければ、たとえ魔法であってもそうそう見る機会のない上級の破壊力。
風と炎が織りなす低音の響きが、体をしびれさせる。
ξ;゚⊿゚)ξ 「いくらなんでも、これじゃ……」
荒々しくも美しい灼熱猛火の大樹。
ィシ=ロックスは逃げることもできず、間違いなくこの死の炎に飲み込まれていた。
-
魔法の炎は、その後しばらく燃え続け、細まり、消えた。
しかし、周囲に散った火により森の木々があちこちで燻りだしている。
もとより戦闘によって荒れ、普段よりも燃えやすくなっている森だ。
放っておけば山全体を焼く火事になりかねない。
(;'A`) 「……あとのこと考えてなかった」
( ;^ω^) 『オウフ』
(;'A`) 「どうしよ、俺水系の魔法は全く使えないんだけど」
ξ ⊿)ξ 「……私がやるわ」
(;'A`) 「ツン」
ξ ⊿)ξ 「雨雲招きの魔法なら、一応使えるから」
(;'A`) 「……スマン」
ツンが魔法を唱え始めた。
慣れていないのか、それとも集中しきれていないのか覚束ない展開。
ドクオと一切目を合わせようとはしないその背中には、さまざまな感情が渦巻いているように見えた。
-
ξ ⊿)ξ 「“―――降り注げ数多の恩恵―――レインコール”」
空が、ぼんやりと暗くなる。
もとよりドクオの火炎魔法の影響で雲が生み出されていたところに、さらに灰色の雲が加わってゆく。
雨粒が降り出すのは時間の問題だろう。
〈;;(。个。)〉 「……一先ずは落着か」
ξ ⊿)ξ 「落着?何が落着したっての?」
(;'A`)
p日
大五郎(焼酎の銘柄を指す)を補給するドクオの首筋を、冷たい殺気が舐めた。
スキットルの中身を一気に飲み下し、懐に収めなおす。
ξ#゚⊿)ξ 「何も終わってないわ。ィシさんの代りに私がなるだけよ」
〈;;(。个。)〉 「……」
ぽつりと、最初の雨が落ちた。
すぐに激しさを増し、広がりかけていた炎は見る見るうちに勢いを弱めていく。
-
視覚的にも面白い!
支援
-
(;'A`) 「ツン」
ξ#゚⊿)ξ 「……別にあんたを恨んだりしてない。あんたもブーンも、きっと正しいことをしたんだ」
(;'A`) 「……」
ξ#゚⊿)ξ 「でも、どうしても許せない奴らがいるの。邪魔しないで」
右手にナイフを握り絞めツンが前へ出る。
首にまきついたニョロは、ひたすらに彼女のことを案じているようだった。
足取りは覚束ない。
イナリに受けた攻撃のダメージは確実に残っている。
( ^ω^) 『ドッグ、代わって。いざとなったら僕が援護に……』
ブーンの提案を聞ききる前に、ドクオは振り返った。
( ^ω^) 『ドッグ?』
ドクオだけでは無かった。
怒りと憎悪に満ちたツン以外の全員が、その背筋を凍らせる気配に、気付いていた。
-
(;'A`) 「嘘だろ」
確かに死体は確認しなかった。
確認するまでも無く、消し炭になったと思っていたからだ。
当然だ。あの炎の中で燃え尽きずにいられる生物など、存在するはずがない。
〈;;(。个。)〉 「……ヨコホリ、いい加減に起きろ」
(//‰ ゚) 「……やれやれ。ゆっくり修復なんてやってる場合じゃネエナ」
黒く焼け焦げ、深い窪地になったそこから、手が生えた。
手はそのまま地面にしがみ付き、もう一本腕が生えた。
その次に頭だ、つるりとした、人間の頭蓋そのものの形状をしている。
( ;^ω^) 『ドッグ、えっと、これは?』
(;'A`) (えーっとね、吸収と再生を繰り返しながら栄養たっぷりな地面に潜って耐えたって感じ?)
( ;^ω^) 『ドグさんさっきすっっっっげえ決め顔で「チェックメイト」とか言ってませんでした?』
(;'A`) (言ったんですけどね〜全然チェックもメイトもしてなかったみたいっすね〜)
地面から完全に体を脱したそれは、通常の人間よりも身長が高かった。
2メートル半弱ほどだろうか。体つきも身長に見合ったがっちりとしたものだ。
そしてそこはかとなく見えるその特徴は、まぎれも無く女性のもの。
雨で土が流れ露わになった頭部には、確かにィシ=ロックスの名残があった。
-
ィシの体には、相変わらず兵士達の頭部が生えていた。
胸に埋もれるようにシーン。
背面、肩甲骨上左右から、まるで丸めた翼のように二つ。
そして、腰の両脇にぶら下げるように一つずつ。
形状は、猪のときよりもより人間に近づいた。
しかし、なぜか。
明らかに異形であったあの姿よりも、今のこの姿に異様さを感じるのは。
ィシは、その場で地面から木の長刀を作り出し、ゆっくりと歩み出した。
ぐしゃりぐしゃりと足音。誰もが動かない。動けない。
本能が動いてはならないと、警告を放っている。
雨粒を体で弾き、白い霧を生み出しながら、一歩、また一歩。
湿った地面を踏みしめる音が、雨音の中でもはっきりと聞こえた。
そうして、十分な距離にたどり着いた瞬間。
( ;^ω^) 『ドッグ!!!』
ィシの姿が消えた。
少なくとも最も近くにいたドクオにはそう感じられた。
「あ」と声を発する暇もない。
宙に飛び上がり、大きく振り上げるィシ。
ドクオの頭に、鞭のようにしなった木の棒が叩き付けられる。
-
( ; ω) 「“陽炎おっぐぅっ!!」
辛うじて、入れ替わりと防御が間に合った。
振り下ろされる木剣に、右手を合わせ、横へ流す。
腕にすさまじい衝撃と痺れ。
斬撃はブーンの体を逸れたが、攻撃に合わせた小指の付け根が血を吹いた。
杉浦双刀流無刀の型、陽炎送り。
本来は相手の攻撃に自身の手刀を合わせ逸らしながらさらに力を付与することで、隙を作る技である。
しかし、今の一撃に対しては、手を犠牲に攻撃を逸らすので一杯であった。
速く、そして強い。
ドクオとの入れ替わりがもっと早くに済み、受けの準備が整っていたとして、問題無く流せていたかどうか。
動きの鈍ったブーンに対し、ィシは回し蹴りを放つ。
回避は不可能。ブーンは咄嗟に腕を盾に。後方へ飛び、蹴りの衝撃を可能な限り流す。
凄まじい威力。体は重力を引きちぎって吹き飛び、着地もままならず地面を跳ねて転がった。
( ;^ω ) 「……ぐぶっ……マジで、ヤバいかも、しんないお」
(;'A`) 『ねえブーンさんそれ平気なの?いけるの?傷口なんか白っぽいの覗いてるんだけど!』
( ;^ω ) (手が付けられないほど、速い。ダメージが無くてもついていけるかどうかのレベルだ)
-
ィシの動きは、人間の時とも猪の時とも一線を画していた。
巨体を動かしていた膂力が、そのまま軽量化された体に活きている。
豊富な体組織を利用した各種遠距離攻撃こそできなくなったようだが、
反面手に入れた機動力はブーンをあっさりと置き去りにするほど。
ィシ=ロックスという戦士の性質を考えれば、この姿がある意味最も完成に近い形なのかもしれない。
ブーンが吹き飛ばされたのをきっかけに躍りかかった逆さ男、イナリの両名をあっさりと払いのけ、ィシはヨコホリと戦闘を行っている。
ハーフゴーレムである彼の力を持っても、真正面からの殴り合いでは分が悪い。
シーンの能力は健在で魔法は全て封じられているためなおさら打つ手が無いのだ。
ブーンは手近に武器を探す。しかし、無い。
仕方なしに腰の刀の片方を抜き取った。
刀身が中ほどで折れている。ドクオの故郷で色々あってぽっきりと折れてしまったのだ。
(;'A`) 『その刀で大丈夫なのか?』
( ;^ω^) (何もないよりは)
ヨコホリも、弾き飛ばされた。
鋼鉄を身に取り付けているとは思えないほど軽々と宙を舞い、荒れた木々の中に落下した。
その場に残ったのはィシと、呆然と立ち尽くすツンのみ。
そしてィシは、ゆっくりとツンに歩み寄る。
-
ξ;゚⊿゚)ξ 「ィシ、さん?」
〈:: − 〉
ツンが顔を見上げる。
確かにィシであるが、彼女の自意識が残っているようには見えない。
白く濁った眼でツンを見下げ、口のような切れ目から白い霧を溢している。
頬を滴る雨が涙に見えたのは、恐らくツンの幻想であった。
( ;^ω^) 「ッ!ツン!逃げ……ッ」
体をギリギリと捩じり、手に持った長刀状の棒切れを振りかぶる。
そして、弾けるように放った薙ぎの一閃は、
ξ ⊿ )ξ 「ッッ!!」
ツンの軽い身体を、血しぶきと共に斬り飛ばす。
( ゚ω゚) 「!!」
ニョロの発動した障壁魔法がダメージを軽減した、があくまでそれだけだ。
受け身も無く薙ぎの一撃を受けたツンの体はあっさりと宙に浮き、濡れた地面の上を転がり、焦げた木の幹に衝突した。
胸元から零れた血は、雨に流されるまま、地面へと零れてゆく。
-
右手の折れた刀を構え、ブーンがィシへ突進する。
まだ距離のある位置から、地面を蹴り一気に飛び掛かった。
( ゚ω゚) 「ぉぉぉおおッ!!」
半分の刀身で斬りかかる。
荒々しいそのさまは、もはや斬撃というより、殴打だ。
ィシは半歩横へ。
高速で接近したブーンの胴を、更なる高速で切り払う。
( ゚ω゚) 「がはっ!」
右腰に差していた刀の柄が、直撃を防いだ。しかし、内臓が衝撃と不快感を吐き気として訴える。
何とか着地したブーンの背へ、ィシが無機質な一撃を振り下した。
ブーンは振り返りざまに刀で棒を横へ。
衝撃で腕が痺れる。薙がれたダメージもある。しかし、よろめいている余裕は無い。
最小限の予備動作、振りで繰り出されるィシの追撃。
ブーンは短い刀身で何とか受け流すが、間に合わない。
連続する猛攻。
鋼と木のぶつかり合いにも関わらず、削れているのはブーンの刀の方だ。
( ω゚) 「くっ」
甲高い金属音と共に、ブーンの刀が弾き飛ばされた。
ィシは無防備なブーンの頭を狙い、棒を小さく振り上げる。
-
( ゚ω) 「!」
振りおろしに合わせ、ブーンはィシの懐へ飛び込んだ。
右手は、残していたもう一本の刀へ。
逆手で引き抜き、踏み込んだと同時にそのままィシの腹に突き刺す。
刃としての機能は半ば死んでいる。
当身の要領で体重を乗せ何とか刺したが、ダメージは怪しい。
それでも構わない。元からさほど期待していなかった。
間合いを詰めてィシの斬撃の威力を殺すのが主要な目的で、刀はついでだ。
攻撃と同時に肩に受けた長刀の柄は、ダメージらしいダメージには至らずに済んだ。
すぐさま下がり後転して距離を取る。
一瞬前までブーンが居た場所にィシの膝が振り上げられた。
間一髪。無造作な殴打でさえ、戦闘不能につながる一撃たりうる。
(;'A`) 『ブーン、行けるのか?』
( ;^ω^) (……真面な格闘戦で優位を取るのは厳しい…だ、けど)
(;'A`) 『けど?』
( ;^ω^) (攻撃は多少通じる。何とか重いのを撃ちこめれば……)
ィシは刀を引き抜き、捨てた。
すぐに前へ。地面を抉る飛び込みでブーンへと間合いを詰める。
突き出される長刀の乱打。躱し、流し直撃を避けるも、服が破れ皮膚が切り裂かれた。
-
僅かな隙に、気配を消し、脇をすり抜ける。
しかし、腰元の頭にすぐさま捕捉され薙ぎ払いの追撃が来た。
頭を伏せ回避。そのまま前転し、起き上がり次第まっすぐ走って逃げる。
(;'A`) 『どうする気だ』
( ;^ω^) (……)
現状のィシは、人型に近づいたことにより、猪体系よりも防御力が落ちている。
全力の攻撃であれば、十分なダメージを見込めるだろう。
その上で問題なのは、装甲を引き換えに解き放たれた機動力。
生半可な攻撃は回避されるし、何よりそもそも攻撃をできるコンディションに移れない。
本来であればこういう時こそ切り札に出来るはずの気配消しは、複数の目と意識によって半ば破られている。
何度か見せてしまったため、ィシ本体に攻略法を見出されてしまったといった方が正確か。
本体がィシほどの手練れでなければ、目がいくつあってもそうそう対応されはしなかった。
ィシであっても複数の目が無ければ、簡単に破れるものでは無かった。
臍を噛む思いだ。呪具と使用者が噛み合いすぎている。
過去戦ってきた強敵の全てを思い返しても、上位と言って過言でない。
( ;^ω^) (やるしかない)
背後に、強烈な気配。
振り返らず、地面を蹴って目の前の木の幹に靴底を合わせる。
そこから更なる跳躍。後方へ、後転しながら、迫っていたィシを飛び越える。
視線の先で、ィシの振るった木の長刀が煤けた幹を叩き砕いた。
-
( ; ω ) 「“杉浦双刀流―――”」
着地。同時に精神を統一する。
ィシはすぐに振り返る。だからこそ慌ててはならない。
失敗すれば、現状ブーンの出しうる策は全て潰える。
とはいえ、これも策と呼ぶに足らない、力技ではあるのだが。
ダットソウ
( ;゚ω゚) 「“無刀極型、猿より……―――奥義、奪屠葬”!!!」
叫び。ブーンの意識の中に会った細い糸がプツプツと切れ、代わりに凶暴な獣が咢を開く。
全身の筋肉が膨らみ、それがさらに音が鳴るほど引き絞られる。
袖口から覗くブーンの腕は、まるで鉄造のように、硬く強靭な者へ変貌していた。
振り返りざまにィシが振るう横なぎの一撃を掻い潜り、懐へ飛び込む。
( ; ω ) 「―――門通し!」
脇腹に体全体の捻りで打ちこむ右手掌底。
破砕では無く衝撃の透過を目的とした鎧どおしの一撃だ。
堅牢なィシの体表を無視した掌打の力が、ィシの体を抜け背の木肌を剥し飛ばす。
( ; ω ) 「―――瓦抜き!」
ほんの一瞬揺らいだ隙に、左の掌底でィシの顎を下から打ちぬく。
これもまた鎧どおし。腕を伸ばし切らず衝撃だけ送り込み、脳を揺らす。
予備動作が小さく、打ち終わりの隙も微小。しかし、今のブーンの膂力ならば、十分な破壊力。
-
( ; ω ) 「―――鐘砕き!」
一瞬の間の三撃目。脳を揺らされ鈍るィシの無防備な上腹部へ、拳による同時攻撃。
掌底が鎧を抜く技であれば、こちらは鎧ごと破砕する技。
痛烈な破砕音と共にィシの体に大きな罅が入った。
苦し紛れの体捌きでやや威力を殺されたが十分。シーンの顔が歪み、鼻腔から血を吹く。
すぐさま後退。
連打をここで一旦止めるのにはわけがある。この後退もまた、連撃の基の一つ。
ィシの目がブーンを見たその瞬間に、前へ。
連続で攻撃を受けたィシは反射的に武器を振るう。
咄嗟ゆえに、十全の力は乗っていない。だから、
( ; ω ) 「―――陽炎送り!」
この技が通じる。
不十分な体勢からの大振りに、さらに力を乗せ、思いっきり流す。
ィシの体が崩れた。脳と胴へのダメージもあり、体が大きく開く。
これ以上無い隙。ブーンは素早く、小さく、されど確実に両腕に力を込めた。
( ; ω ) 「―――城崩し!!」
左右、開いた花のように合わせた両の掌打による鎧通し。
インパクトの瞬間に、左右の掌を内へ回転。
堅いはずのィシの体表を波紋が走った。先の攻撃で生まれた罅から血が噴き出す。
一撃目の波紋が消えぬ刹那の合間に更なる追撃。
内へ回した掌打を、さらに外へ捩じり突き出す。
生み出された衝撃は体内を蹂躙し、吹き出す血液と共に背中へと吐き出された。
-
ィシの口から血が零れ、よろめいた。
ブーンはまだ止まらない。
懐に詰め寄り、ィシの脇を抱え上げるように挟み掴む。
身長差があるため、ブーンがぶら下がる形になったが、問題は無い。
腕力を駆使して、ィシの体を強引にひきつける。
自身は大きく上半身をのけぞらせ、力強い踏み込を地面へ。
( ; ω ) 「―――かち合い車ァ!!」
全体重の乗った頭突きが、甲高い音をあげてィシの胸板を粉砕する。
シーンの頭が体内へ逃げたが、ィシ自身へのダメージは相当なものだ。
豹変したブーンへの認識を改め、ィシは不十分な体勢から拳を突き出す。
武器は既に捨てている。そもそも武器を使うのは人の名残。
今のィシの拳は、軽く振るうだけで十分に兵器たりうる。
しかし。
( ; ω ) 「―――観音宥め!!」
ィシの攻撃は、ことごとくブーンの手に防がれた。
否、防がれたのではなく、封じられた。
拳を振るうその脇に、蹴りを放つその上半身と軸足に、ブーンは的確に掌底を合わせる。
動作の起点、あるいは体重移動を妨害され、攻撃はただの「動き」へと格落ちし。
代わりに、チクチクと鎧通しの掌底によるダメージがィシの体に蓄積してゆく。
より強い力、より大きな体を持ちながら、ィシはこの時確かに、ブーンにその脅威性を超えられていた。
-
(;'A`) 『すげえ、これが、本当の奥義……』
ィシが密着を嫌い、下がろうとする。
その軸足の爪先を、ブーンは素早く踏みつけた。
バランスを崩す、木製の長身。
ブーンは自身の両手で、左右それぞれのィシの腕を外へ弾く。
同時に跳躍。胸筋が膨らみ、背筋が引き絞られ、腹筋が軋みを立てる。
腰元に構えられた両拳に込められた力は、これまでの比では無い。
( ; ω ) 「―――金剛喝ッs―――」
鋼の礫と化したブーンの拳が、体勢を崩し無防備となったィシの頭を粉砕する。
と、誰もが予想したその瞬間。
ブチブチと縄を引き千切るような音が、ブーンの体中に響き渡った。
空中で構えの姿勢のまま、ブーンの体に篭っていた闘気が霧散する。
(;'A`) 『ブ』
ーンと続けることすら、できなかった。
この大きすぎる隙にすぐさま体勢を立て直したィシが、着地間際のブーンの襟を鷲掴む。
一度振り上げ、地面に叩き付ける。
重い音が響き渡る。ブーンは、既に死んでいるかのように動かない。
ィシは、空中へ高くブーンを放り投げた。
軽々と浮き、そして落ちる。ドクオが精神の中で何度も声をかけるが、ブーンの反応は無い。
-
落ちてきたブーンの体に対し、ィシは右足を振り上げる。
風を切り、鞭のようにしなる音速の蹴り。
すさまじい破砕音を響かせ、ブーンの体を薙ぎ払った。
吹き飛び、跳ね、転がるブーンの体。
防御のために辛うじて引き上げた二本の鞘が粉々に砕け、その軌跡に舞う。
さらに攻撃を加えようと前へ出たィシの体が揺らいだ。
膝を折り、苦しげに手を着く。罅からは血液のみならず、白い霧も漏れ出していた。
ブーンの連撃は、確実にその生命を削り取っている。
しかし、あと一歩が足りていない。ィシのダメージはさほど時間をかけず再生してしまう。
今すぐに追撃を仕掛けねば、全てが無駄になる。
(;'A`) 『おい!ブーン!大丈夫なのか?!』
( ; ω ) (ドッグ、表に出てきちゃダメだお……100%失神するから)
(;'A`) 『お、おう、任せとけ。最初からそのつもりだ』
ブーンの使用した奥義『奪屠葬』はその他の技とはやや性質が異なる。
その他の杉浦双刀流が「動作」であるならば、奪屠葬は「状態」。
脳のリミッターを外し、理性を制限する代わりに超人的な五感と膂力を得る、一種の身体強化技術なのだ。
故に体への負荷は大きく、時間をかけ、技を使えば使うほどすぐに限界が来る。
今回は弱体化を補うため、本来以上に肉体の限界を引き出したため予想よりも早く悲鳴を上げた。
空中で響き渡ったあの音は、ブーンの至る所の筋繊維が多量に断裂したのを表すものである。
蹴りをもろに受けたダメージも加わり、今は指先を軽く動かすことすらままならない。
ィシの目は、地に伏せたブーンをまじまじと見ている。
図っているのだ。死んだのかどうか、生きていたとして、もう一度自分に歯向かう余力があるのかどうかを。
-
( ; ω ) (せめて、最後の技で、頭を潰せていれば……)
何とか立とうとするブーンであったが、体がうまく動かない。
断裂した筋繊維が不十分に運動しようとするため、上半身が小刻みに痙攣する。
仮に立てても、戦力足りえない。
奥義を使えば戦闘不能に陥ることは十分に予測していた。
だからできうる限り使用せずに戦った。
他に手が浮かばなくなって、やむなく使うことを決めた時点で、絶対に止めを刺さなければならなかった。
( ; ω ) (……ぐ)
仮にドクオが奥義の反動によるこの痛みに耐え、魔法を使うことが出来たとして。
彼が魔法の展開に使ういくらかの時間を稼ぐ人間がいない。
シーンの分解云々以前の問題だ。ドクオの頭が木端微塵にされて終わりである。
打つ手がない。
ブーンの出しうる全てが魔物と化したィシを止めるには足りなかった。
このまま、自我を失ったィシが、サロンの街へ下りたとしたら、どうなる。
手練れの中の手練れであるこの場の人間がかかっても勝つことが敵わなかった彼女を止められる人間はいるのか。
恐らくは、いない。
皆、殺されるか取り込まれるかしてしまうだろう。
敗走してくれればまだマシな結果なくらいだ。
もし、タカラやニダーなどの、常人よりも秀でた技術を持つものが取り込まれ、その力を利用されたとしたら。
背筋が寒くなる。
加えてこの場の者たちだって、ィシは操ることが出来るのだ。
-
ィシが掌に、小さな木の礫を作り出した。
はっきりと断言はできないが恐らく、兵士たちを操った時に使用したものと同じだ。
( ;^ω ) (ドッグ、あれ……)
(;'A`) 『……焦るな焦るなよ、焦っちゃダメだぞ』
( ;^ω ) (落ち着いてお)
(;'A`) 『アレは、脳神経に介入して支配するタイプのもんだ。頭に喰らわなければ簡単に操られたりはしない』
(;'A`) 『仮に喰らっても、意識を失わなければ対抗はできるはずだ。直接取り込まれたら、アウトなんだが』
( ;^ω ) (でも)
今のブーンに回避は不可能だ。
対抗できるといっても、あれを撃ち込まれる前に殺されてしまえば意味は無い。
ィシの掌が、ブーンを向く。
何とか立ち上がろうとするが、激痛以前に体が反応してくれない。
操られればどうなるか分からない。
一度死んだ兵士たちが動いたということは、今のブーンも再生され動くことが出来るようになるやもしれない。
そしてその時、ブーンは一体誰にその力を向けるのか。
( ;^ω ) 「……ッ!!」
ィシの手の平から、礫が放たれる。
それは、一切の揺らぎなく、ブーンの頭を射線上に捉えていた。
-
ここまで。
長きに渡る逃亡生活に終止符が打たれました。
勝てるんかコイツ(通算二度目)
次は未定。気概だけは梅雨晴れるころまでに。
>>335
ひゃっほう、ツンさんがかっこよくて非常に喜んでいます
絵で表現されるというのは真素晴らしいですね
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支援
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信じてたで作者
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DAT送クソかっけえ
頭ん中でアニメで再生されるわ
乙
-
乙
無茶苦茶ピンチで気になるとこで中断しよって許さん
続き楽しみすぎ
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無刀技の大判振る舞いに痺れた!
そしてそれでも仕留めきれない絶望感・・・
次回が待ちきれない
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あいかわらず戦闘くそかっこいいぜおつ!
そして本当に勝てるんかこいつ・・・
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ブーンがやられそうになったら
自分が出て行ってやっつける
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ω・)乙。ヨコホリ達加勢せろやwwww
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乙
勝てる気がしないよ
-
乙、フィナーレクソワロタ
見応えあるバトルも良いがこういう息抜きもすごい楽しみ
脱兎走がちゃんと奥義になっててちょっと感動した
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BB2Cで見てんだけど、前スレのラスト24レスがどんだけ読み込んでもみれないんだけど、なんで?
スレチだったらゴメン。
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>>383
荒らしか何かに埋め立てられてレスは削除されてた記憶
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やったー!杉浦双刀流の技一覧表できたよー!
杉浦双刀流
├― 無刀の型――――――――無刀奥義
| ├─ 鐘砕き ├─脱兎走
| ├─ 陽炎送り └─奪屠葬
| ├─ 囚人殺し
| ├─ 門通し
| ├─ 瓦抜き
| ├─ 城崩し
| ├─ かち合い車
| ├─ 観音宥め
| └─ 金剛喝ッs(正式名称不明)
|
|
├― 二刀の型
| └─二刃一瘡
|
|
├― 返し一刀の型
| └─回し篭手
|
|
├―変式一刀の型
| ├─ 渡り燕
| └─ 攫い百舌鳥
|
└―変式抜刀の型
└─ 螺旋錠破
双刀流なのにこの無刀の型の豊富である
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ズレすぎ
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ズレてないが
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ズレてないじゃん
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ちゃんとした刀が揃ってないから無手になるだけだよきっと
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拳と魔法と大五郎
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スマホからだと驚くほどずれてないぞ
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だって武器刺したら刺さりっぱなしだもんな
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杉浦を倒せるのは魂の込められた拳のみだから仕方ない
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確かに無刀おおいwwww
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すげー面白いけどたまにはブーンに文字通り無双してもらいたいw
個人的心境として
(こうやって考えちゃうのはきっとハマってる状態だわw)
考えてみると昔のライトノベル(といってもスレイヤーズやオーフェンあたりの時代)は
うまく敵とのパワーバランスが調整されてたんだなと感じる
主人公が強くて敵はさらに強くて、子供ながらにどーやって倒すのこれwwな展開をいろいろクリアしてたわ
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弱体化してこれである
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ドクオはあれで才能ないのかよw
それとツンちゃんの乙女の秘密>>>ドクオの筋力な件
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面白いし、どーすんだこれ
時間かけただけあるわ
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久々きたら投下されてるー!
勝てるんかこれ…って毎戦闘思ってるんだよなぁ
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漫画10
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org5247414.zip.html
なんとか終わりました
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激しく乙!
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まさかカラーとは
終わりと思うと寂しいが盛大に乙!
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一気読みしてツンちゃんの可愛さにのめりこみました。ツンちゃんかわいい。
続き待ってます!
現在主に戦っているメンバー集合的な。
http://vippic.mine.nu/up/img/vp145688.jpg
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>>403
クオリティやべええwww
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>>403
素晴らしい
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>>403
すげえええ
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>>403
すげぇ!
ツンちゃんのかっこよさよ
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ここまで支援絵に恵まれた作品はなかなかないな
・・・そろそろ話の続きが読みたい!
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どれが誰だか
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>>409
一応どれが誰かというのはなんとなくわかるかと思いましたが
どれが誰か、という表記のを念のため作っておきましたのでドゾ。
http://vippic.mine.nu/up/img/vp145789.jpg
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ハインはこの作品じゃ男じゃなかったっけ?
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わからないよ
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トンファーはミルナの武器やで
ジョルジュめっちゃ様になってるしこっちもかっこいいけどな
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ィシとか完全におっさんじゃないか
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ィシ自体そういうフォルムで作品に出てるからむしろうまい具合だと思うけどなー
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横堀が好き
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>>413
ギャァァ普通に勘違いしてましたぁぁああギャァァアア
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支援絵で盛り上がっていたらまさかの投下予告
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前回のあらすじ
┗(^ω^ )┛
___ ┗┃ ヽヾ\
|←勝利| ヽ\\
 ̄ || ̄ 三二=
|| 三二=
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | ̄ ̄ ̄ ̄
∧∧∧∧∧∧∧∧
___
|←勝利|
 ̄ || ̄ ┗(^ω^ )┓三 彡
|| ┏┗ 三
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∧∧∧∧∧∧∧∧
◎
◎ ◎
◎ ◎ ティウンティウンティウンティウン
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=≡ ,;:''":::: ・゙゙゙・、 ◎
=≡≡ 〜;',;; ,;;;; ,;,;;ク⑪ク ◎
=≡≡ `>ゾ~>ゾ>ソ ◎
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∧∧∧∧∧∧∧∧
22:30 開始目安でゆきます
-
グッバイブーン
-
胸の傷は、意外に痛まなかった。
あの瞬間ニョロが障壁を張ってくれたのだ。
おかげで即死はせずに済んだ。
それだけでない、傷口が魔法で保護されている。
応急処置の魔法。
自分でかけたものではものでは無い。
ξ ー )ξ 「……アンタ、本当に賢いね。この魔法も覚えちゃったの?」
ほっぺたを撫でる心地のいい感触。
目でそちらを見ると、ニョロが心配げな顔で擦り寄っている。
いつでも可愛らしい奴だ。手でそっと撫でた。
尻尾が激しく左右に動く。
傷みで、これ以上体が動かない。
いや、違う。大きな傷を負ったことは何度もあった。
これ以上に激しい痛みの中戦ったことは何度もあった。
今、体が動かないのは、もっと別の理由がある。
ξ ⊿ )ξ 「……魔法、組まなきゃ……」
風の強化魔法を組み始める。
これを使えばまだ体を動かせる。
だけれど。
-
どうしたらいいのか分からない。
ドクオが攻撃したってことは、ィシはもう元に戻らないんだろう。
あの紫の魔法は、蛇のキメラを倒したのと同じもの。
足止めや一時的な拘束の為に使うような代物ではなかった。
彼はヘタレで甘いから、助けられる方法があるのなら、そちらを優先していたはず。
だからと言って、ィシを殺すのか。
大切な人を奪われて、同じ境遇の人間に手を差し伸べて戦ってきたあの人を。
もっと倒すべき他の敵を差し置いて、殺さなければならないのか。
気づけば、魔法で降らせた雨は止んでいた。
戦いの音がする。
ブーンだ。すさまじい音を立ててィシを圧倒している。
強い。
あれくらい強ければ、こんな事態になることを防げたかもしれない。
悔しかった。
また、弱いままだ。
目の前で壊れていく物を、ただ見ているしかできない。
なんと、無様なことか。
粋がり師の元を飛び出し、結局はこの有様だ。
あの時と、何も変わってはいない。
雨は止んだが、頬が濡れた。
ニョロが、床が鳴るようなか細い声で鳴く。
-
優勢だったブーンの動きが、途端に停止した。
操り人形の糸が切れたようだ。
そのままィシ洒落にならない勢いで弾き飛ばされる。
死んだかもしれない、と肝を冷やしたが、一応は生きているようだ。
ィシが手に木の礫を作り始める。
まだ射撃系の攻撃が出来たのか。
とにかく、あれを喰らえば、ブーンはただですまないだろう。
意識がはっきりとしないツンの視界にの端、捲れ上がった木の根の陰に、ヨコホリの姿が見えた。
ツンより先にィシにぶん殴られていたが、やはり死んではいなかったようだ。
それに加え何か怪しい動きをしている。
まだ生きているのか。
多くの人を殺し、ィシがこんなになるまで追い込んで。
それでもなお、魔女に与えられた力でのうのうと無事でいる。
体の中に渦巻く悔いと悲しみが、フツフツと湧き上がって怒りに変わってゆく。
ξ# ⊿゚)ξ 「“……ただ、天の意思のままに―――”」
なにがどうなろうと、あの男を倒さなければならないことに変わりはない。
ならば答えははシンプルだ。
らしくない悩みは、その辺の穴に捨ててしまえ。
ィシが、木の礫を放つ。
その時点ですでに、ツンの体の重さは消えていた。
-
「“―――マリオット”!!!」
.
-
全身を風が覆う。
考える間もなくツンは地を蹴った。
全てがスローモーに見える。
二歩目。地面が爆発したように弾け、ツンはさらに加速する。
放たれた礫は螺旋の回転を帯び、一直線にブーンの頭へ。
ξ#゚⊿゚)ξ 「ッらぁぁああ!!!」
三歩め、走るのではなく、跳んだ。
間に合う。精一杯手を伸ばした。
手の甲にすさまじい衝撃。
風の鎧を手に集中することで勢いを殺すが、相殺しきれない。
鋭い先端が、僅かにだが皮膚を破り肉に突き刺さる。
歯を食いしばって耐え、跳んだ勢いのまま転がった。
地面の水が飛沫になり、枯葉や土で体が塗れる。
木片は食い込んだ先からツンの手に根を張ってゆくが、引き剥がしている暇はない。
ξ#゚⊿゚)ξ 「ブーン!無事!?」
( ;^ω ) 「えっあっ、はい」
ξ#゚⊿゚)ξ 「迷惑かけてごめん、後は任せて」
( ;^ω ) 「任せてって、どうす……」
ξ#゚⊿゚)ξ 「今から考えるッ!!!」
-
ξ#゚⊿゚)ξ 「ヨコホリ=エレキブラン!!!」
遠くでこそこそとしていたヨコホリを指さす。
ツンに襲い掛かろうとしていたィシがその気迫に気圧され動きを止めた。
名前を呼ばれた彼は気怠そうにツンを見る。
ξ#゚⊿゚)ξ 「ィシさん、思い出して!!倒すべきはあいつ!!戦わなきゃいけないのは、あの糞野郎!!!」
(//‰ ゚) 「……やれやれ。どうやったらしおらしくなるンだあの娘は」
ヨコホリはため息を吐くが姿を見せない。
姿を見えないものを敵と認識できないのか、言葉虚しくィシは槍を手にツンへ。
動けないブーンよりも先に、動くツンを狙っている。
前傾の踏み込みからの、全身で振りかぶっての武器攻撃。
ツンは強化された膂力で飛びのく。
やはり容赦がない。反応が遅れれば確実にもらっている。
ξ゚⊿゚)ξ 「ニョロ、この魔法と同じのを、あの人に、いいね?」
指示が通ったことを尻尾の動きで確認。
自身は、動けずに芋虫と化しているブーンの襟首を鷲掴みにする。
( ;^ω ) 「ツンさん―――?」
ξ#゚⊿゚)ξ 「危ないから退いてて!!」
魔法の力を全開にし、ブーンを一度ぐるりと振り回し、勢いをつけて遠くに放り投げる。
落下と同時にブーンは屁のような声を吹いた。
そのまま勢い死なず転がっていく。少々荒っぽかったが、距離は取れた
これで巻き込む心配はないだろう。ツンちゃんはとても優しいのだ。
-
しかし、同時に大きな隙も生まれた。
投げ終りでバランスを崩すツンヘ、ィシの槍が横薙ぎに振るわれる。
横に活路は無い。上か下か後ろか。
ξ#゚⊿゚)ξ 「ふぬ!!」
風の魔法で強制的に体を仰け反らせ、後退。
目の前を木の尖った切っ先が過ってゆく。
風圧だけで鼻の先が折れそうだ。真面に受ければ頭が木端微塵になってしまう。
ツンは後転しさらに距離を取ろうとする。しかし、追うィシはさらに速い。
先ほどの攻撃の終わりから、小さめの歩幅で二歩。
この間に武器を振るう準備を終える。
ツンの背筋を、氷の舌が這い上がった。
横へ転んだのは、本能的な反射でしかない。
先ほどまでツンのいた場所に、ィシの一撃が振り下ろされる。
空振った矛先は地面に叩き付けられ、地面を抉り、へし折れて土と共に炸裂する。
今の回避はあまりの殺気に体が勝手に動いただけ。
喰らわなかっただけで、実質負けのようなものだ。
現にツンの本能は敗北を自覚し、逃走すべしとアラートを鳴らしまくっている。
ξ;゚⊿゚)ξ (本気どころの話じゃない……!)
このまま避けるだけでは掴まる。
しかし攻撃する気も無ければ、できるような隙も無い。
ほぼ、詰みだ。
-
再び迫るィシから全力で距離を取る。
その際、ニョロの尻尾が激しく動く。合図だ。
ξ#゚⊿゚)ξ 「ニョロ!」
ニョロが強化魔法『マリオット』を発動する。
しかし、対象はツンでは無い。ィシだ。
密度の高い風がィシの四肢に絡みつく。
それにバランスを取られ、ィシの動きが大幅に鈍った。
風の外骨格によって助力を得るこの魔法。
他者に発動すれば拘束具としての利用もできる。
完全に動きを封じることはできずとも、大幅に性能を抑えることは可能だ。
しかし。
ィシが体を大の字に開くと同時に、風の鎧が弾け飛んだ。
集まっていた風が、ツンも巻き込んで方々へ散る。
拘束が破られた。
元来封印術などでは無いので強い反発を受ければ破られことは承知の上である。
だが、まさかこんなにも早く、分解に頼らぬ力技の選択をしてくるとは。
ツンは大きく体勢を崩す。
外骨格の魔法が、同系統の魔法の破片に干渉されてしまい統制を失った。
この隙をィシは見逃さない。
身動きの取れないツンに、ィシが肉薄する。
-
ξ#゚⊿゚)ξ 「どっっっせええええええい!!!!」
刹那、ツンは自らが纏う風をィシに向かって解き放った。
その反動で後方へ飛び退き、間合いの確保を図った。
だが、ィシは強風をものともせず、さらに数歩の踏み込みを追加。
着地してバランスを崩しているツンヘ、中段突きを放つ。
硬い感触が、ツンの肩を捉える。肉に食い込む、頑強な拳。
骨が軋み、口から唾液と息が漏れた。風の余力で浮きかけていたツンの体は軽々宙を舞う。
吹っ飛んだのは、逆にセーフだ。真面に喰らっていたら弾かれる前に体が砕けていただろう。
ξ;゚⊿)ξ 「いっつぅぅ……」
転がり受け身を取って這いつくばる。
立ち上がろうとするが、腕に力が入らない。
拳を受けた側だ。折れた、とは違う。脱臼。幸だ。
右手と体勢を利用して、無理やり骨をはめる。
電流の通った木槌で殴られたような、独特の痛みに目がちかちかしたが、へたっている余裕は無い。
立ち上がろうとして、左手に刺さったままの木片に気づく。
そういえば抜いていなかった。痛みが無いので忘れていた。
ξ゚⊿゚)ξ (コレ、死んだみんなを操るのにつかったやつ?)
麻酔を受けたように感覚が薄れている。
皮膚の下に根を張られながらも気付かなかったのはそのせいだ。
-
ξ゚⊿゚)ξ 「……あ」
声を漏らすと同時、自分の影に別の影が重なるのに気付いた。
見るまでも無い。横に転がると、頭のあった場所にィシの足が突き刺さる。
飛びのいて逃げる。ィシの目は、ツンを捉えて逃さない。
ξ;゚⊿゚)ξ (これ、もしかしたら……)
肉薄するィシ。
折れた槍の柄で脇構えからの突き。
ツンは身を捻って何とか躱す。
しかし、それで終わらない。ィシはさらに一歩前へ。
突き出した腕を開く形で、ツンが逃れた方向へ払う。
既に体勢は崩れている。
ささくれた木の先端がツンの肩を薙いだ。
強引な連撃だ。力は万全でない。ただし、あくまで剛力を誇るィシにしては、という話。
シャツを裂かれ、体を捻られながら、ツンは吹き飛ばされた。
地面を転がる。ダメージが大きい。すぐには動けない。
ィシが一呼吸で体勢を整え、ツンの脇腹を蹴りあげる。
ニョロが防壁を張った。防ぐためでなく緩和するためだ。
体が浮いて転がされた。内臓がせり上がるが、何とか体内に押し留める。
ξ;゚⊿)ξ (ダメだ、悩んでる暇なんて無い)
地面に爪をたて、踏ん張る。
伸びをする猫のような体勢。
ツンは、立ち上がるでも、武器を構えるでもなく、手の甲から生える木の礫を鷲掴んだ。
そして。
-
ξ#゚皿゚)ξ 「ふんっ……ぬっ!!」
力強く引っこ抜く。
皮膚が破れ血が溢れ出した。
失せていた傷みが、再燃した火のように神経を駆けあがる。
血に塗れる根には、付着した脂肪の粒。
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
自身の血と肉片がこべりついたそれを、ツンは睨みつけた。
この木片は、人の神経に介入する。
死人の頭に刺されば生き返ったかのように再び動き出すし、生きている人間に刺されば感覚を奪う。
そして恐らくはィシ本体の意識とリンクしている。
確証こそないが、自律していたにしては統率がとれ過ぎていた死体を見ても間違いは無いだろう。
ξ゚⊿゚)ξ (原理は知らないけど、じゃあ……)
襲い来るィシを転がって躱す。視線は礫に向けたまま。
ツンはその場に膝立ちで、礫を両手で握りしめた。
鋭利な先端を自分の方へ向け、頭は後ろへ仰け反り勢いをつける。
そして、覚悟を固める。あるかも分からない可能性の為に。
ξ#゚⊿゚)ξ (こっちからの干渉だって、出来たっていいでしょ!!)
( ;^ω^) !!??
自らの手で、木片をこめかみに突き刺した。
頭中に音が響く。鋭い痛みと鈍い痛みの二重苦が、意識を激しく揺さぶる。
先端が頭蓋に触れる感触があった。
根が皮膚の下を這ってゆく感覚も、すぐにぼやけて認識できなくなったが、あった。
-
ィシが迫った。
ツンはこめかみに両手をあてたまま、俯いている。
振り上げれれる槍。
濁ったィシの目に映っているのは、ツンでは無い。
壊さなければならない肉の塊だ。
容赦も情けも一切ない。
ただこの槍を突き刺し、殺し壊し、己の肉と―――
ξ# ⊿ )ξ 「止まれ!!!!」
振り下ろされた槍。
空気が爆ぜる。
目に見える波紋となって空間をしびれさせる。
木の葉が舞った。
血が一筋、尾を引いて落ちてゆく。
槍の先端は、止まることなくツンの体を貫いた。
ただし、耳の、ほんの少し皮膚よりも深いだけのところを。
僅かな血の付いた槍は、ツンの頭に添うように止まっていた。
握りしめるィシも、ただの木になってしまったかのように、動くのを止める。
〈:: − 〉
静かな時間が唐突に訪れる。
雨に塗れた森は、風に舞う木の葉もなく、ただただ静寂だった。
-
ィシは戸惑っていた。
不可思議な憎悪を放つだけの肉塊だったこれが、突然見知った少女に変わった。
彼女を殺すわけにはいかないし、攻撃するなどもっての他なのに、なぜ自分は槍を突きつけようとしていたのか。
俯いたツンの上半身がゆっくりと起きる。
それに合わせてィシも槍を引いた。
完全に顔が上を向いて、顔を合わせた。
ツンのこめかみには、角のような木が生えていた。
皮膚の下に根が広がり、それが脳のあたりにまで及んでいることは、なぜか考えるまでも無くわかった。
ξ ⊿゚)ξ 「ィシさん」
〈:: − 〉 「……ディレー……トリ」
( ;^ω^) (喋った!!!)
(;'A`) 『馬鹿な!あの状態じゃ意識なんて……』
ィシの左手が伸びて、ツンの頬に触れた。
慈愛に満ちた手つきでツンの顔に付着した泥を拭う。
先ほどまで満ち溢れていた敵意は、一切消えていた。
ξ゚⊿゚)ξ 「……倒すよ、ィシさん。あいつを。そして、全てに片を付けるの」
〈 ::゚−〉 「……ァア」
-
ィシが槍をクルリと回し、向き直る。
ツンと共に睨む視線の先に居るのは、
(//‰ ゚) 「どういうコった。完全に理性はトんだと思ったンだが」
サイボーグ、ヨコホリ=エレキブラン。
ここまでの間に傷の修復を終えた彼は、最も万全に近い状態で立っていた。
逃げるつもりだったのか、失神した逆さ男を抱えている。
(//‰ ゚) 「悪いなディレートリ、そいつの相手は割に合わン。五月蠅いのも大人しくなったし、俺はトンズラ……」
手をひらひらとさせて余裕を見せていたヨコホリの胸に、木槍が突き刺さる。
ィシが投げたのだ。ブーンですら一瞬見失うほど速く、鋭く。
(//‰ ) 「ガッ……」
よろけ、担いでいた逆さ男が地面に落ちた。
槍はヨコホリの胸の中心を背中まで貫通している。
常人なら確実に致命傷。即死であってもおかしくは無いが、彼は倒れない。
笑みにも取れる形相で歯を食いしばり、槍を引き抜く。
吹き出していた血はすぐに収まった。
鋼鉄の繊維が破れた皮膚の間から覗くも、すぐに塞がって見えなくなる。
(//‰ ゚) 「どういう訳かはしらンが、俺に取っちゃ嬉しくない事態になった見てえだな……」
-
腕を構えるヨコホリ。
風が生み出され、魔法弾が複数射出された。
しかし、この全ては霧散して消える。
ィシの胸元で、シーンが目を光らせている。ブーンに受けたダメージはほとんど回復してしまったらしい。
他の頭も、僅かではあるが動き、ヨコホリを睨みつけている。
ξ ゚⊿)ξ 「ィシさん、思いっきりやっちゃって」
ツンへの返事は、そのまま行動となって表れた。
高い身長を活かした高速の駆け足で、ィシはヨコホリへ肉薄する。
ヨコホリは一歩前へ出て迎撃の体勢。
魔法は発動する様子なく、あくまで拳を主体に戦うつもりのようだ。
対しィシは急激な減速。
あと数歩と言うところで、振り上げた足を地面に叩き付ける。
大地が揺れ、鼓膜が痺れる。しかし、ィシの目的は震脚による牽制などでは無い。
(//‰ ゚) 「!?!!?」
ィシの足が突き刺さった地面から、木の蔓が飛び出し、そのままヨコホリに絡みついた。
槍を作るのと同じ原理だ。地面の有機物に干渉し、変形させて操った。
予想外の攻撃にヨコホリは対応は後手となる。
鋭い手刀で切り払うが、続けて襲い来る蔦の猛襲にあっけなく体を絡め取られる。
( ;^ω^) (あんな使い方出来たのか……!)
肝が冷えっぱなしである。
もしブーンに対して同じことをされていたら、さらに苦しい戦況を強いられただろう。
-
木の蔓は、ィシの元のみならずヨコホリの傍からも生え出し、密に絡まってゆく。
いくら剛力を誇るヨコホリであってもこれだけ束縛された状態からの脱出は困難。
魔法で吹き飛ばそうにも、腕が明後日の方向に向けられているため狙いが定まらない。
ヨコホリの拘束が済み、ィシは足を引き抜く。
すぐに接近はせず、ゆっくりと近づいた。
(//‰ ゚) 「こんの、糞アマァ!!」
拳の届く間合い。
蔓はヨコホリの顔までは覆っていない。つまり、ここ以外に攻撃する部分はほぼない。
ヨコホリが腕を固定されたまま風の榴弾を放つ。
通常の物に追尾性をプラスした特殊弾。
宙空に放たれたそれは弧を描き、ブーメランのように転回。
拳を構えるィシの頭部を狙う。
だが、これだけ悠長に飛んでくる魔法をシーンが分解できないわけがない。
魔法は全て消え、ィシを止めるものは何一つなくなった。
全身を使った伸びのある拳が、ヨコホリの顔面をとらえる。
拘束され、衝撃を逃がすことさえできないヨコホリ。
凄まじい金属音が鳴り、響き何かの破片が宙を舞った。
鼻と頬が陥没し、引いたィシの拳に血が糸を引く。
これで終わりでは無い。
左右を入れ替えるように左の拳。
今度はフックのかかった軌道でヨコホリの顎を横に跳ね上げる。
頭が捩じれ、首の骨が千切れる音が、離れたブーンの耳にも聞こえた。
-
まだまだ終わらず。
さらに半身を切り替えての拳打。
前の攻撃をそのまま予備動作に繋げた、大きな振りかぶりの打ち下ろし。
もはや耳に馴染みそうな金属音に、肉の水っぽさが混じる。
粘度の高い血が飛び散り、雨に飲まれて地に落ちる。
さらに追撃。
しっかりと体勢を整え、左の拳を腰元に。
はちきれんばかりに力を蓄え、力強い踏み込み。
全身の体重を乗せた正拳突きが、ヨコホリの頭部をまっすぐに打ちぬいた。
一連の攻撃に、蔓の方が耐えられず引き千切られる。
ヨコホリの体が投げ出され。血の尾を引いて地面に転がった。
すぐに動き出す気配は無い。しかし油断もできない。
彼は、巨体であった猪状態の拳での圧撃にすら耐えきった。
頭部をピンポイントで破壊したとはいえ、生きている可能性は高い。
(;'A`) 『心なしか、やり口がテクニカルになってねえか?』
ドクオの言う通りだ。
ィシの攻撃は元から力任せというわけでは無かったが、
それでも組み合わせや用法においての知性がやや欠如している印象があった。
あくまで僅かな隙程度の単純さではあったのだが、それがさらに小さくなっている。
-
ィシは拘束に使っていた木の蔓の塊に触れた。
蔦がずるずると渦を巻き、一つの木へと変化してゆく。
出来上がったのは巨大な槌。体を丸めた大人一人程に大きいそれを、ィシは軽々と持ち上げた。
(//‰ ゚) 「ガッァ……てめえ……!!」
横に薙ぐ。
起き上がろうとしたヨコホリの体は跳ね飛ばされる。
実に軽々だ。
鋼鉄を纏うヨコホリはかなりの重量があるのだが、ィシの前ではただの人間と大差ない。
振り切った槌を難なく制動し、ィシはヨコホリを追う。
ヨコホリは修復も間に合わず動作が緩慢。
起き上がりかけの胴に、高い位置から巨大な木の槌が叩き付けられた。
槌の衝撃が土と水を爆発させ、高く舞い上げる。
潰されたヨコホリの体は地面へ押し込まれ、はみ出した四肢が槌を抱くように跳ねあがる。
強烈な音だ。地崩れの一つ、すぐに起きてもおかしくは無い。
( ;^ω^) 「ツン、これは一体……」
ξ ⊿)ξ 「……ちょっと、黙ってて。気を抜くと、私まで飲まれそうなる」
立ったまま傍観していたツンだったが、体をよろめかせ膝をついた。
額の木がさらに大きくなっている。
表情も非常に苦しそうだ。脂汗を滲ませ、土を握りしめて耐えている。
怪我のせい、では無いだろう。
時折プルプルと震えているあの木が、ツンに何かをしているのだ。
-
(;'A`) 『……まさか、あのバカ!!』
( ;^ω^) (何、なんかわかったのかお?)
(;'A`) 『あの木だ。ツンの奴、あの木の機能使って、逆に本体に干渉してるんだ』
( ;^ω^) (そんなこと出来るのかお?)
(;'A`) 『じゃねえと、いきなり自我を取り戻した理由に説明がつかねえ』
ドクオの予想はおおよそ正解だった。
ツンの頭に刺さっているのは、本体と交信するための呪具の断片だ。
主にィシの側からの命令を伝えるためのものだが、操られている側の五感の送信も行われている。
ツンはこの機能を用いてィシの精神に逆介入。
呪具の精神汚染に飲まれたィシ本来の意識を呼び起こした。
しかし、簡単な話では無い。
干渉に耐え、逆に干渉するだけの精神力が必須となり、激しい消耗を生む。
しかも、一度救えばそれで終わりともいかず。
既に呪具の効力は限界近くまで発揮されており、ツンが介入を辞めた時点で状態は逆戻り。
彼女が自我を持ってヨコホリと戦っていられるのは、呪具の精神汚染が妨げられているから。
ツンはフィルターだ。精神汚染を無くしたのではなく一時的に肩代わりしているだけ。
今彼女が意識を失うなどすれば、ィシは再び理性のない魔物へと化す。そして今度こそあらゆる対象を蹂躙する。
-
ξ ⊿)ξ 「……くっ、は」
木の角が根を深めてゆく。
物理的に脳へ侵攻して干渉を容易くしようとしている。
ツンは根の周囲に自身の魔力を集め抑制する盾としているが、やはり魔女の呪具の方が馬力は上だ。
ξ ⊿)ξ (もう少し……もう少し……)
ィシは執拗に木の槌をヨコホリに叩き付けている。
接触面には血がこべりつき相当に破壊されていることを物語っていた。
シーンが分解するよりも、安全で確実だ。
ヨコホリの魔法攻撃は初動が早く、彼の性格もあってタイミングが読めない。
ィシの力で止めを刺せるのならば、シーンは魔法の警戒に回る方が安全。
ξ ⊿)ξ (せめて、此奴を倒さないと)
もう何十と殴っただろうか。
ヨコホリの反応が希薄になったのを確認し、木の蔓でその体を持ち上げた。
四肢がだらりと垂れ、鋼鉄の体の隙間からは血が流れだしている。
戦闘不能だ。むしろまだ微かに息があるのが脅威である。
体を見ると、肌の下に金属の繊維が張り巡らされており、これでいくらかダメージを緩和していたのだろう。
(//‰ ) 「が、ハ……、」
ヨコホリの右腕が動いた。
即座に蔓が巻き付き、拘束。放たれた魔法は全く関係の無い方向へ飛んでいった。
ィシが落ちていた剣の一つを、木の蔓で手元へ引き寄せる。
これで首を落とす。いくら生命力が強くとも、頭と胴を切り離せば生きてはいられまい。
-
両手で剣を構え、振りかぶるィシ。
体を捩じり力を溜め、足を振り上げる。
踏み出す足。
前へ移動する重心。
力は鋼の切っ先に乗り、空気を割いてヨコホリの首へ。
(//‰ ) 「……ナァ、ィシ=ロックス」
ヨコホリの首を捉えた剣が、耳に痛い音を立てて折れ飛んだ。
切っ先がクルクルと回り、ひっくり返った切り株に突き刺さる。
(//‰ ) 「そんな呪具で、本当に俺を殺せると思ったのか」
ヨコホリの首が、鋼になっていた。
正確には、鋼鉄に覆われていた。
右腕の鎧状のものとは異なり、編まれた繊維が皮膚のように体に張り巡らされている。
これが、斬撃を弾き、砕いた。
(//‰ ) 「お前はよ、あくまで人間として俺に立ち向かい、人間として死ぬべきだったんだよ」
仮面の右目が魔法陣を宿し赤く輝いていた。
濃く、不気味で鮮烈な魔力の波が、漏れ出し空気を犯してゆく。
ィシは咄嗟に後退。
明らかに、これまでとは違う。
ヨコホリを拘束していた木の蔓が黒く変色し崩れ落ちた。
露わになった彼の体は、首から広がる鋼鉄の皮に覆われて行く。
破壊しつくした顔面も、鉄線が内側に張り巡らされることで瞬く間に再建された。
-
(//‰ ゚) 「見てみろ。化け物になって、分別も理性も無くし」
ヨコホリが前へ。ゆらりと、倒れるような力みのない動きだった。
消えたと見紛うほどの速さでィシに肉薄し、反射的な抵抗をすり抜け、その首を掴み上げる。
圧迫された木の肌が割れて捲れ、鋼鉄の指が深々と食い込んだ。
(//‰ ゚) 「自分の半分も生きていねえガキに、体を張って支えられているてめえの現状を」
ィシの手は、ヨコホリの腕を掴み外そうとしたが、すぐに思考を切り替え攻撃に転じる。
ダメージは皆無。逆にィシの手に罅が入る。
繰り返し何度も拳を叩き付けるも、悪あがき程度の効果すら見えない。
(//‰ ゚) 「俺はお前が怖かったんだよ。気概と冷徹さについちゃ、他の雑魚とは一線を画してた」
(//‰ ゚) 「そんなお前が、意志を抜き取った木偶になって何が出来る。力だけに縋り頼って、何が出来る」
ィシの首が音を立てて歪む。
鷲掴むヨコホリの指に、一切の容赦はない。
ξ#゚⊿゚)ξ 「おらぁぁぁあ!!!」
ツンが、真横からヨコホリに飛び掛かった。
狙いは首。全体重を乗せたナイフで、あの鉄の皮を破る。
ぶつかり合う鉄と鉄。毀れたのは、ツンのナイフのみ。
ヨコホリの方には、僅かに引っ掻き傷がついたかどうかといった状態。
着地したツンは、諦めない。
屈んだ姿勢から、そのまま脇腹へナイフを向ける。
-
支援
-
ヨコホリは、乱雑にィシをツンヘ投げつけた。
二人は共に吹き飛ばされ、地面を滑る。
(//‰ ゚) 「なあ、ディレートリ。そんな奴の為に体を張るのはよせ」
ξ゚⊿゚)ξ 「黙れ」
(//‰ ゚) 「そいつは諦めたんだよ、自分の力で戦うことを。お前が、その体を侵されてまで庇う価値はねえ」
ξ# ⊿ )ξ 「黙れ!!」
ツンの怒声に合わせ、ィシが立ち上がる。
大きく開く口から吐き出される雄叫び。
木の破片や、戦闘に巻き込まれて損壊した死体のパーツが地面から飛び出し、ィシへ飛来。
損傷した個所が修復され、死体の比較的新鮮な肉を吸収する。
補給は十分。ィシは自ら前へ出た。
飛び上がってからの、蹴りによる首刈り。
ヨコホリは防御をせず、そのまま受け止めた。
響く打撃音。激しさとは裏腹、ヨコホリは微動だにしない。
代わりに、超至近距離から魔法弾を放つ。
飛びのきながら分解。
しかし、立て続けに放たれる魔法にやや押され始める。
一つ一つの威力が上がり、連射の間隔も短くなった。
分解に頼り切るのは危険だ。
直線的に狙われれば応対できるが、奇手を打たれた時点で詰む可能性がある。
-
ξ゚⊿゚)ξ (打撃も、斬撃もあの体の前には通用しない。なら……)
生命魔法の分解。
元々ィシが切り札としていた手だ。
しかし、魔法攻撃が激しすぎてその隙が一切ない。
ィシの足で回避し続けられればいいが、この乱撃の前では困難を極める。
ヨコホリが右手の狙撃を続けながら、左手を大きく振りかぶった。
鉄の繊維で作られた鉤爪が、空気の揺らぎを湛える。
(//‰ ゚) 「ァァ!!」
何もない空間を爪で切り裂く。
生み出された真空が空気を掻き乱し、風の刃となってィシを急襲した。
指と同じ、五つの風の刃。
迅い。すべての分解は間に合わない。範囲が広く、横への回避も間に合わない。
ξ゚⊿゚)ξ 「ッ!!」
ツンとシーンの判断は必然的に一致した。
風の刃の内、内側の二本を分解。
余波の風だけになったその空間をへ、ィシは体滑り込ませるように跳躍。
体表のささくれが削れるほどの場所を、必殺級の鎌鼬が過ってゆく。
回避に成功し、着地。続けて襲い来る風の爪も、紙一重のところをすり抜ける。
せめてもの足しになればと吸収した死体の残骸は、意外にもィシの膂力を大幅に回復させてくれた。
元々のィシの戦闘センスも込みで考えれば、十分渡り合える。
問題は、どう殺すか。
これは、ツンに一つの案があった。
-
ξ゚⊿゚)ξ (何とか時間を……でも、逃げに回れば限界が来る)
さらなる追撃を待たず、ィシは地面を蹴って前へ。
ヨコホリは相変わらずの余裕。ィシの接近にも一切動じない。
喰らっても大したことは無い。
そう考えているのだろう。それが甘い。
それがありがたい。
ヨコホリが手を突き出す。当然の流れで魔法弾が生み出される。
この瞬間に、ィシは最大限の加速を行った。
限界まで体を前にのめらせ、地面を足で深く蹴り抉る
魔法弾の発射と同時に、ヨコホリの右腕を左の腕で横へ流す。
懐を、取った。
ξ#゚⊿゚)ξ (……見よう見まねで……“門通し”!!)
右の掌底を腰元に構える。
上半身を捩じり、腕を固め、体重を乗せ、防御を一切取らないヨコホリの鳩尾へ。
インパクトの瞬間に腕を捻り、突き出す。
ィシからヨコホリへと伝わったゆったりとした力の波は、鋼鉄の皮膚と反発しあわず、
(//‰ ) 「ご、ガッ?!」
波打つほどに衝撃となってヨコホリの体内を突き抜ける。
( ;^ω^) 「今の、」
(;'A`) 『ちと違うような気もしたが、ブーンの、杉浦の無刀技だよな?』
-
そう、ィシは自らが受けたブーンの鎧通しの技を模倣してヨコホリに使用したのだ。
単なる真似事では無い。
外部から見ていたツンの記憶。自身と同化した兵士たち分の技を喰らった感覚と記憶。
拳法の心得があった仲間の脳から抽出した経験。
それらを用いて総括し再現するに足りうるィシの技量と、精密かつ力強い身体。
すべてが噛み合って初めて、再現できた。
鎧通しに揺らいだヨコホリだったが、すぐにィシを睨みつけた。
倒れ掛かった体勢から、左腕で風の爪を放つ。
広範囲を対象とする魔法だが、目の前であれば十分躱せる。
仰け反って回避したィシは、追撃を諦め後転。
無理に距離を取らずにすぐさま体勢を整える。
しかし、厄介だ。
効きはしたがやはり殺すには至らない。
せめて、鎧通しを警戒してくれれば、時間稼ぎにもなるのだが。
魔法弾による狙撃をやめ、ヨコホリは拳を構えた。
一足で間合いを詰め、正拳の一撃。
自らも打って出ようとしていたィシは、やむなくこれを受けた。
両手を重ね盾とし、体を柔軟に力を吸収する。
それでもなお、衝撃はィシの体を突き抜けた。
重さが違う。受けという選択肢は、極力避けなければならない。
-
拳の打ち終り、ヨコホリは体を引かず、そのまま指を開いた。
掌にぱっくりと空いた魔法の射出口が、ィシの胸を向く。
即座に魔法が発動。
超至近距離から魔法弾が放たれる。
反射的に下がるィシ。一発目、二発目は辛うじてシーンが分解した。
分解が間に合うか怪しかった三発目は、咄嗟に薙いだ右足で腕を左に弾いて回避。
しかし安心している間は皆無。
やや崩れた体勢の脇腹目がけて、風を纏ったヨコホリの左手が振るわれる。
雷光の如き逡巡。
シーンの対応は、早く、正確だった。
指五本全部の消去は間に合わないと即座に判断し、減衰させる方向で分解を開始。
ィシ本体は蹴った体勢からそのまま上半身で勢いをつけ、背を向けながら後方へ体を逸らす。
風の刃は本来の威力を失い、向けられたィシの背中を引き裂いた。
血飛沫が吹き出し、木片が宙に舞う。
決して楽観できるダメージでは無い。だが、真面に喰らうよりははるかにマシ。
ィシは回避の流れのまま両手を地面に突き、体を持ち上げ後転。
一気に距離を取る。
当然追ってきた魔法弾は全て分解し、傷を瞬く間に治癒させる。
(//‰ ゚) 「キリがねえな、大人しくさっさと死ね!!」
ヨコホリの周囲に風が渦巻く。
舞い上がった木の葉が一瞬で木端微塵になるのをツンは見た。
魔力が大量に注がれた鎌鼬の魔法。
それが、数え切れないほど大量に、まるで普通の風のように揺らめき渦を巻く。
-
不味い。数が多すぎる。
今も既に分解を開始しているが、流動的な上に次々生み出されるそれへの対処は、全く間に合っていない。
(//‰ ゚) 「飲まれろ!!」
吹き荒む突風。
目に見えるほどに密度を持った空気それぞれが、凄まじい切れ味を持つ刃となる。
ィシは、横へ跳び、駆けた。
この魔法を一つ一つ避けることなどできない。
砂嵐の中で砂粒に当たるなと言っているようなものだ。
その上、不規則な軌道。
いくつかを分解して掻い潜るというようなことを出来るレベルでは無い。
刃の嵐は、執拗にィシを追う。
実際、ィシは逃げきれてはいなかった。
辛うじて躱し、体を裂かれ、辛うじて分解し、体を刻まれる。
膝を切り裂かれ足が鈍ったと同時に、ィシは風に飲み込まれた。
幸いなのことに爪に纏わせて放つものよりも威力が低いが、それでも生半可なダメージでは無かった。
仲間の頭部を守る様に体を丸め、体に木の鎧を纏って耐えるが瞬く間に削り剥されてゆく。
いくらシーンが分解しようとしても、数が多すぎた。分解消去はおろか、弱体化ですら手が足りていない。
ξ;゚⊿゚)ξ 「くっ!」
ツンはこれまで、シーンが楽に魔法の分解を行っていると思っていた。
技術の限界はあるだろうが、可能な範囲でならば、何の問題も無くすべてをこなしていると。
だが、ィシを通して思考をリンクさせて初めて分かった。
彼はいつでも怯え、焦り、仲間を死地から救うために必死に魔法を分解している。
既に解析を終え、即座に分解できる魔法であったとしても、至近距離で放たれるときなどは背筋が凍るようだった。
今も、自分の力の無さに精神を焼かれながら、諦めずに殺意の猛風に立ち向かっている。
-
どれほど続いたか、風が止んだ。
ヨコホリの体は各部から湯気を吹き出している。
魔法の行使を長く続けたからか、どこか疲労感が見えた。
一方のィシは。
ξ;゚⊿゚)ξ 「ィシさん!!」
〈 ::゚−〉
生きてはいる。
しかし、全身いたるところに、「いくつも」という表現ですら足りないほどの切り傷。
急速に再生を繰り返したが故に、傷の無い部位も歪に変質している。
ダメだ。戦える状態じゃない。
判断と同時にツンは援護に出ようとしたが、体が動か唐突に固まった。
呪具を通してィシがツンの体に干渉し、行動を制限している。
同時に「動くな」という思念も伝わってきた。
体を開きィシが立ち上がる。
痛々しい姿だ。一応四肢は付いているものの、ほとんどが歪にひしゃげている。
まるで、ただの木になってしまったように動きもぎこちない。
ヨコホリの眼は、そんなィシを心から蔑む暗さを持っていた。
-
(//‰ ゚) 「…………もう、全く怖くねえな。今のあんたは、惰性で生かされるだけの死体だ」
〈::゚−゚〉 「…………そうだ」
(//‰ ゚) 「あ?」
〈::゚−゚〉 「お前の言う通りだ。私は魔女に、呪具に縋った。老い衰退してゆく身体を嘆いて、人間であることを辞めた」
(//‰ ゚) 「……」
〈::゚−゚〉 「実に醜い。実に醜いよ。この身体も、生も、縋りついた私の弱さも、恥じらいが過ぎて直ぐにも死にたいくらいだ」
〈::゚−゚〉 「だが、ただでは滅びん。お前は、お前が蔑む私の道連れになって、死ぬ」
(//‰ ゚) 「……やってみやがれ」
-
ヨコホリが全身から魔力を溢れさせる。
魔力は帯になり、捩じれ紡がれ光の糸になり、規則的な紋様を空中に描く。
魔法式の展開。古典的な方法だが正確で異様に速い。
シーンが干渉しようとしたが、すぐに弾かれる。
妨害の魔法が組まれていたのではなく、単純に魔力が濃すぎてシーンの魔力が負けたのだ。
こうなっては、組み上がってから解析して分解するしかない。
しかし。
瞬く間にヨコホリの背後表れた巨大で緻密な魔法陣。
恐らくは天叢雲と同格かそれを超える領域。
しかも、ツンが扱う簡易化した劣化版ではなく、師が扱う本来の精度を持ったものだ。
どんな魔法かまではわからないが、その場で分解できる代物では無い。
少なくとも、シーン一人では無理だ。
(//‰ ゚) 「……俺がいっぺんに放出できる最大魔力の魔法だ。惜しみなく死ね」
魔法陣が、激しく発光。
青とも、緑ともつかない鮮烈な光だ。
ィシが自ら前へ。
しかし、攻撃する余裕も無く、魔法の余波に弾き飛ばされた。
ξ;゚⊿゚)ξ 「ィシさん!!逃げて!!!」
(//‰ ゚) 「“――――四風絶界”」
-
瞬間、ツンの視界は白に包まれた。
魔法陣から現れた四つ女性型の魔力の塊が、ヨコホリの目の前で邂逅。
混ざり合い歪み膨らみ、縮み、女の悲鳴のような音を爆発させながら弾ける。
白濁する衝撃の津波がィシを飲み込んだところまでは見えた。
そのあとは、凄まじい衝撃波に吹き飛ばされ何が何だか分からない。
耳が裂けるかと思うほどの轟音で耳は痺れているし、
ロクに受け身を取られなかったせいでありとあらゆる場所が痛む。
自分が這いつくばっていることに気づいて、ツンは顔を上げた。
魔法によって乱された大気が、白い靄を生み出し、それがまだ残っている。
ツンには何が起きているか全く見えず、風の凪いだ空間は、異様なまでに静かだった。
(//‰ ゚) 「……」
靄が晴れはじめて見えたのは、変わらず鋼鉄を纏ったヨコホリの姿。
そこから少しずつ前方へ視界が開けてゆく。
地面が、巨大な杓子で掬ったかのように抉れている。
それはィシが居た方向へ行くにつれて、深く広くなっていった。
非情なまでの破壊力。
木の根も何も関係なく全てが破壊されている。
抉れた土の範囲は、家一つを吹き飛ばす程度の大きさでは済まない。
-
だけれど。
靄が完全に晴れたそこに、
〈::゚−゚〉 「……」
ィシ=ロックスは確かに立っていた。
目は爛々と赤く光り、ヨコホリをにらみつけている。
体の数か所を損傷し、左腕の肘から先がなくなっていたが、魔法の威力を考えれば軽傷だ。
(;'A`) 『……ほんとに不死身かよ』
使った本人を除けば、最もこの魔法を理解していたのはドクオだった。
真空と超高気圧の暴風を異常な密度で共存させる、空間破壊の魔法。
本来ならば絶対に存在しない気圧差の群れに飲み込まれれば、たとえ鉄でも原形を留めてはいられない。
人や木などでは、跡形も無くなる。
それを耐えた。超高速で再生したなんてレベルでは済まないはずだ。
一体何が起きているのか。
状況を理解できていたドクオだからこそ、まったく状況が理解できない。
(//‰ ゚) 「……何をしやがった。いや、『どうやりやがった』と、聞いた方がいいか?」
見れば、深く抉れていた筈の地面が、ィシを境目に表面が浅く削られた程度になっていた。
明らかに途中で威力が減衰している。
こんなことを可能にするには、同等以上の魔法で対抗するか、分解するしかない。
ヨコホリの魔法発動時、別の魔法が発動した様子は見られなかった。
ならば、可能性はもう一つ。
-
ξ;゚⊿゚)ξ 「間に、あったんだ」
ツンが地面に屁垂れ込んだ。
絶望や諦めからではない。
ただ、安心した。
ィシの身体から吸収された頭たちが外へ伸びてゆく。
最早頭骨と脳と目が辛うじて残っているような状態であったが、全てが間違いなく生きていた。
虚ろな表情で、ィシから放射状に生える五つの頭。
ィシ本人とシーンを合わせて脳は七つ。
紅く輝く14の瞳が、ヨコホリを見つめる。
(//‰ ゚) 「……しゃらくせえ。せめて楽に死ねたのによぉ!!」
なにが起こったかまでは理解できなくとも、魔法が通じなかったことはわかる。
ヨコホリは前へ。
頭の中に、拳でィシの頭を殴り砕くイメージを浮かべる。
そしてそれは、今のヨコホリであれば難なく実行できるはずだった。
突然、ヨコホリの動きが止まる。
地面を蹴り、跳躍し、殴りかからんとするその一瞬前の動作で硬直し動けない。
本人も何が起きているのか困惑の表情。
理由も分からぬ内にヨコホリの胸に、赤い魔法陣が浮かび上がった。
掌ほどの大きさ。どこか錠前を思わせる幾何学模様が描かれている。
それを見るまでも無く、ヨコホリは叫んだ。
気づいた。理解した。
自分を蝕むその感覚を、ヨコホリは確かに感じたことがある。
-
ξ;゚⊿゚)ξ 「間に、あったんだ」
ツンが地面に屁垂れ込んだ。
絶望や諦めからではない。
ただ、安心した。
ィシの身体から吸収された頭たちが外へ伸びてゆく。
最早頭骨と脳と目が辛うじて残っているような状態であったが、全てが間違いなく生きていた。
虚ろな表情で、ィシから放射状に生える五つの頭。
ィシ本人とシーンを合わせて脳は七つ。
紅く輝く14の瞳が、ヨコホリを見つめる。
(//‰ ゚) 「……しゃらくせえ。せめて楽に死ねたのによぉ!!」
なにが起こったかまでは理解できなくとも、魔法が通じなかったことはわかる。
ヨコホリは前へ。
頭の中に、拳でィシの頭を殴り砕くイメージを浮かべる。
そしてそれは、今のヨコホリであれば難なく実行できるはずだった。
突然、ヨコホリの動きが止まる。
地面を蹴り、跳躍し、殴りかからんとするその一瞬前の動作で硬直し動けない。
本人も何が起きているのか困惑の表情。
理由も分からぬ内にヨコホリの胸に、赤い魔法陣が浮かび上がった。
掌ほどの大きさ。どこか錠前を思わせる幾何学模様が描かれている。
それを見るまでも無く、ヨコホリは叫んだ。
気づいた。理解した。
自分を蝕むその感覚を、ヨコホリは確かに感じたことがある。
-
(//‰ ゚) 「てめええ!!」
辛うじて動いた右腕で、魔法の榴弾を放つ。
目標は、人頭が咲く不気味な木と化したィシと同胞たち。
しかし、瞬く間に消え失せる。続けて撃った数発も、発動すらしなかったかの如く消滅する。
魔法の分解。
この戦闘において当然の如く行われた繰り返されたその行為。
しかし、この場においては、それは当然の域には無かった。
(//‰ ゚) 「やりやがった!やりやがったな!てめえ!!!」
ヨコホリの胸の魔法陣が180度回転する。
見た目の通り鍵が開いたかのように、その後ろから別の魔法陣が現れた。
二つ目の魔法陣には、ツンもドクオも見覚えがある。
ゴーレムの魔法の一部。つまりは、ヨコホリの命の片鱗。
(//‰ ゚) 「小僧の、魔法の知識を!!」
二つ目の魔法陣は、構成する線がスライドパズルのように複雑に動き、模様を代えてゆく。
数秒も眺めぬ内に、幾何学模様だったそれは、意味を感じさせない歪な陣に書き換えられている。
(//‰ ゚) 「他の頭に複写しやがった!!」
ここまで叫び、ヨコホリは血を吐いた。
胸の魔法陣は三つめが浮き上がり、それも瞬く間に形状が変化。
怖ろしいスピードだ。シーンの分解はそもそも速かったが、その数倍の速さでことが進行している。
-
全てはヨコホリの言葉の通りであった。
ィシは呪具の同調機能を使いシーンの持つ「知識」「経験」「感覚」をその他の頭に複写。
体内に宿る脳のすべてを、シーンと同等の魔法分解の使い手に仕立て上げたのだ。
発案者はツン。
自分自身が呪具の力を体感しているからこそ思いついた。
直接感覚や記憶を共有できるのならば、魔法の能力も同期出来るのではないか、と。
目論見は全てハマっている。
様々な記憶の複合体としてのシーンの能力を同期他人に複写するのは時間を食ったが、それでも間に合った。
ヨコホリの魔法を弱体化できたのもこのお蔭だ。
(//‰ ) 「がぐが、ぁあああああ!!」
魔法陣は四つめ。
ヨコホリは苦しみのあまり天を仰いで失神しかけていた。
心臓を直接掴まれ、針を一本ずつ刺しこまれているような状態だ。
その苦しみは想像し難い。
しかし容赦はしない。
シーン本人と合わせて六人で同時進行する魔法分解。
ただ六人寄り集まったわけでなく、統制された意識を持ってそれぞれに役割を分担している。
故に無駄もムラも無い。理想的な*6の速度を持って、ヨコホリの殺害は進められている。
あと幾つ分解すれば終わりなのか、はたから見ているツンには分からない。
意識を共有させればシーンが見ている魔法の解析図が見られるが、今は不要な干渉は避けたい。
分解は繊細な作業だ。その上相手は魔女が施した高難度の魔法。
のぞき見程度の意識の同調ですら妨げになる。
-
分解は、七つ目の魔法式入っていた。
書き換えを終えた魔法陣が、歪な形状でヨコホリの体の周りに浮いている
噴出した血飛沫のようでもあり、彼岸花のようでもあった。
六つ目に差し掛かったあたりから、一つにかかる時間が伸びている。
シーン達の分解速度が落ちているのではない、魔法がより複雑な部分に食い込んでいるのだ。
間違いなくヨコホリの命の根幹に近づいている。
最期の瞬間は近い。
七つ目の魔法陣が、ただの線の集合体へ変容した。
同時にシーンはさらに深淵の魔法を引きずり出そうとする。
が、これまでのようにすんなりとはいかない。
最終セーフティのような、防護の魔法が組み込まれていたらしい。
分解の対象が生命の魔法から防護魔法へと切り替わった。
こちらもすぐに終わる。しかしこの間、ヨコホリは命を分解される苦しみから解き放たれる。
(//‰ ゚) 「クソアマぁぁあああああ!!!」
ヨコホリが、ィシへ飛び掛かる。
動きは精彩を欠いているが、膂力はまだ残っているようだ。
対するィシは先のダメージにより、まともな戦闘力はほぼ失っている。
-
ξ#゚⊿゚)ξ 「ニョロ!!」
自分の体が封じられて居るからこそ、ツンはニョロに魔法を組ませていた。
障壁の魔法がィシとヨコホリの間に生み出される。
突然の障害にヨコホリは衝突し、攻撃は未然に防がれた。
これで十分。
障壁を破ろうと拳を振り上げたヨコホリの身体から、八つ目の魔法陣が引きずり出される。
(//‰ ) 「こぁ、が」
これまでの物からさらに異なる、異様な文様。
ツンの知る魔法陣のパターンのどれにも当てはまらない。
ただ、存在そのものが痛烈に印象付けてくるので、はっきりとわかった。
これが、ヨコホリの生命そのもの。
幾重の魔法に守られ、庇われ、維持されてきた最後の魔法。
ヨコホリの絶叫。
魔法陣が激しい火花を上げる。
分解に、シーンの干渉に魔法自体が反発しているのだ。
構わず半ば強引に魔法の分解は続く。
耳の奥に直接触るような、甲高い音が鳴り始めた。
ヨコホリの叫びに紛れ乍ら、その大きさは徐々に増してゆく。
悲鳴だ。魔法が死に浸食され、怯え、泣き叫んでいる。
-
胸熱展開!!支援!!
イシさんチートや…
-
ヨコホリの体が、周囲に乱雑に伸びる魔法陣のなれの果てが、強烈に発光を始めた。
伴って耳障りな音はさらに大きさを増し、地震が起きたかのように大地が震動する。
天へ伸びる紅い光は直視できないほど強くなった。
ツンはたまらず顔を背ける。
しかし、最後、瞼が瞳を隠すその直前に確かに見た。
ヨコホリの魔法陣に、大きな罅が走る瞬間を。
(//‰ ) 「――――――ッ!!」
瞼を貫く鮮烈な光。
金属が割れ弾ける、甲高い音が響き渡る。
やけに濃厚な温い風がツンの髪を靡かせた。
それを境に周囲は一転静寂に包まれる。
ツンは、恐る恐る目を開けた。
ξ;゚⊿゚)ξ 「……やった、んだ」
ヨコホリは、完全に停止していた。
分解される苦しみに悶え、天を仰ぎ絶叫したままの姿で、ピクリとも動かない。
空中には完全に散り散りになった魔力の残滓が、羽毛のように漂っている。
シーンが探りを入れる。拍動、呼吸共に停止。
死んでいる。
ィシは、目の前に居るヨコホリの身体を、腕で思いっきり薙ぎ払った。
硬い音。転がる鋼鉄の身体。余りに強く殴ったため、ィシの腕は砕けてしまった。
転がったヨコホリはやはり動かない。
見開かれた目は白を剥いたまま、薄曇りの空を見ていた。
-
( ;^ω^) (……確かに、あの人の目的は、達成されたのかもしれない、でも)
(;'A`) 『問題は、ここからだな』
ヨコホリ討たれた今、この場にィシを倒せるものはいなくなった。
再び凶暴化すれば止める手段は無い。
ツンが呪具の力を逆手にとって抑え込むのも、必ず無理が来るだろう。
が、ツンとィシの間ではそれは既に問題では無くなっていた。
ィシの身体から生えていた兵士たちの頭が、根元から千切れて地面に落ちる。
一つ、一つ。人の頭部にしては軽い音と共に、落ちて死ぬ。
その顔はどれも穏やかで、呪縛から解き放たれた仏のようであった。
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
〈::゚−゚〉 「……あとは、頼んだ。ディレートリ」
ξ ⊿ )ξ 「……“大地薙ぎ、灘を断つ―――”]
シーンが笑顔を見せた後に身体から剥離し、地面へ。
これで残りはィシだけとなった。
ィシは、自分の体を木の蔓で何重にも拘束してゆく。
ミノムシのように、たとえツンの干渉が切れても、すぐに動き出せぬように。
こうすると決めていた。
ィシが自我を取戻し、状況を把握したその瞬間に。
もう戻ることのできない人の身。
無差別に破壊を繰り返す魔物の躰。
ならばせめて、怨敵を討ち滅ぼしてから、己の命を絶つと。
-
支援
-
〈::゚−゚〉 「魔法の発動と同時に、その『芽』を君の脳から外す、そうしたら……」
ξ ⊿ )ξ 「大丈夫。苦しまないよう、一瞬で終わらせるから」
本当は、ィシが全て自分でやると決めていた。
剛力を持って頭を破壊すればすべてが終わることは自分でよくわかっていた。
しかし、想像以上に苦戦を強いられたため、それすらできないほどに消耗してしまっている。
〈::゚−゚〉 「……ありがとう、ディレートリ。キミのお蔭だ」
ξ ⊿ )ξ 「“天突く刃は、勇士の証―――”」
〈::゚−゚〉 「人としての生を捨て、それでも成すことの出来なかった復讐を遂げられたのは、すべて、君の」
ξ ⊿ )ξ 「“邪より生まれし聖(ヒジリ)の剣よ―――”」
〈::゚−゚〉 「そして、すまない。嫌な役回りをさせることを、許してくれ」
既に死を覚悟した顔で、ィシはポツポツと言葉を漏らした。
ツンは、聞こえないふりをして、魔法を紡ぐ。
いつもはあれほど面倒で、難しくて、上手くいかなくて苛立っている魔法式の展開が、こんな時はやけに上手くゆく。
どこかで失敗すればいいのに。魔力が途中で切れてしまえばいいのに。
自分自身で止めるわけにはいかないから、止むを得ない何かで、止まってしまえばいいのに。
ξ ⊿ )ξ 「“曇天導き、今我が元へ参らん―――”」
願いは虚しく、今までのどんな状況よりも美しい魔法式が出来上がってゆく。
故に魔力の消耗もいくらか抑えられ、残りの仕上げを終えればすぐにでも発動が可能となる。
-
ξ ⊿ )ξ 「“―――来い”」
天井で蜷局を撒く濃密な雲が、八つの滝となってツンに降り注ぐ。
渦巻き、集い、濃密な水と風の塊となってツンの手に。
アメノ
ξ ⊿ )ξ 「“天―――」
パシン。
雲が剣の形を成そうとしたその時、俯いていたツンの耳に、その音は聞こえた。
僅かに遅れて、何かが体に降りかかる。
木端と、生暖かい黒の雫。
反射的に顔を上げた。
目に移るィシの顔。
それは、左側の半分が抉れて無くなっていた。
何が起きたのか分からず、全ての思考が停止した。
ィシ自身も、残った半分の顔が、鼻と口から血を溢しながらも呆然とした表情を見せている。
ィシが、振り返ろうとする。
その瞬間に残りの頭も弾け、血飛沫に変わった。
呪具によって変質した黒い血が、ツンの顔にぴしゃりと張り付く。
( ;゚ω゚) 「ツン逃げろッ!!!」
ξ;;⊿゚)ξ 「え?」
続けて起きる数度の爆発と共に、次々とィシの身体が木端と肉片に。
砂で出来た像のように脆く、ツンの目の前でィシが消えて行く。
爆ぜた木片が頬を掠め、皮膚を切り裂いた。
-
ξ;;⊿゚)ξ 「―――あ」
無くなってしまう。
反射的に、ィシの身体へ手を伸ばそうとする。
しかし、何者かに飛びつかれ、妨げられた。
尻餅を突き、抑え込まれて身動きが取れない。
手を伸ばしたが届くことは無く、ィシの身体は足首から下を遺して、完全に塵となった。
ξ;;⊿゚)ξ 「なに―――」
混乱するツンは、二秒間を置き、自分の頭が熱い血液で膨らんでゆくのを自覚した。
見えてしまった。その男が。
右腕を構え、こちらを睨むヨコホリ=エレキブランの姿が。
(//‰ ゚) 「……ざまァ、見やがレ」
ξ#;;⊿゚)ξ 「あ、あ、あ、ああああああああああ!!!!!」
ツンが叫ぶ。
自分を抑え込んでいた誰かを強引に押しのけ、体の痛みも忘れ、地を蹴った。
ξ#;;⊿゚)ξ 「“天叢雲”!!」
剣と化した、高密度の雲。
しかし、半端な発動状態を続けたツンの魔力は既に限界だった。
-
天叢雲は霧散し、ツンは激しい眩暈と吐き気でその場に膝をついた。
しかし、闘志は、怒りは萎えない。
ふらりとよろけるヨコホリを、ツンは睨みつけた。
涙を、鼻水を、涎を、垂れ流しながら、言葉にならない叫びをあげる。
なぜ、なぜ生きている。
シーンたちの分解は完全だった。
体の生体反応も消失しているのを確認した
だから、ィシは仲間たちを呪いの生から解放した。
自らの命を、なるべく人に近い状態で終わらせようとした。
なのに。
(//‰ ゚) 「……俺が、俺が、散々命を狙われて、なンの対策も練らねェと、思ってたのか?」
(//‰ ゚) 「正直、本当に、必要になるとは思って無かったがナァ……」
-
ヨコホリの胸には、掌程度の青い魔法陣が浮かび上がっていた。
最後に分解した生命の魔法にそっくり、あるいは丸写ししたような紋様。
(//‰ ゚) 「独立した場所に、此奴を仕込んでおいたンだよ。死んでから二分後に作動するようにしてな」
力ない顔で、グググと笑う。
通常よりもはるかに弱弱しい。
が、生きている。
死んでいない。
その事実は、ツンの脳をあらゆる負の感情で埋め尽くした。
ξ#;;;;;;゚)ξ 「殺す!」
(//‰ ゚) 「吠えるなよ、ディレートリ。俺だって、死にたかねえのさ」
ξ#;;;;;;゚)ξ 「殺す!!」
魔力切れで動かない体を、強引に立たせようとするが、すぐに地面に伏した。
歯を食いしばる。
体は応えない。
ヨコホリは、無機質な目でツンを見下ろす。
ニョロがツンに変わって空弾を放ったが、ヨコホリの腕に軽く払われた。
-
〈;;(。个。)〉 「……ヨコホリ」
(//‰ ゚) 「……やっと起きたか。肝心要の時に居眠りこきやがって」
〈;;(。个。)〉 「すまない。……全て、片付いたのか」
(//‰ ゚) 「一応はな。お前の望み通り、アレが街をおそうこたァねェ」
気絶していた逆さ男が覚醒した。
頭を押さえ、気分がすぐれない様子だが足取りはしっかりしている。
服は数か所破れていたが、こちらも命を奪うレベルまでは至っていなかった。
〈;;(。个。)〉 「了解した。あとは引くぞ。街の方は大五郎の応援が着いたようでもあるし、長居は無用だ。」
(//‰ ゚) 「願ったりかなったりだな」
〈;;(。个。)〉 「俺はイナリを持ってゆく、お前はフォックスを……」
ξ#;;;;;;゚)ξ 「待て!!」
〈;;(。个。)〉 「……行くぞ。こちらにまで増援が来られたら、不味い」
(//‰ ゚) 「つーわけだァ、ディレートリ。俺に会いたかったら、いつでも来ナ」
逆さ男と、ヨコホリは、気絶した二人の仲間を担ぎ、足早に山を駆けて行く。
二人とも本来よりもかなり弱っているが、足取りに特別問題は見られなかった。
増援や救助の類が来る頃にはとっくに逃げおおせているだろう。
-
ヨコホリェ…
-
勝てる気がしなぃ…
-
ξ#;;;;;;;゚)ξ 「待て!!!!」
二人の姿はすぐに見えなくなった。
それでも、何度も叫ぶ。
繰り返し声を吐き出すごとに、言葉の明確さは消え、ただの咆哮と化してゆく。
いつの間にか止んでいいた雨が、また降りだす。
天叢雲が解けた時に散った雲が、そのまま積乱雲となったのだ。
粒の大きい雨は、瞬く間に勢いを増し、荒れ果てた山の景色を白い濁りで埋め尽くす。
溢れた血は流れ、木片は叩かれ土に混じる。
ツンの声も、全て雨に飲まれた。
既に、声らしい声を出せなくなっていたけれど、それでも口を開いた。
( ^ω^) 「……」
('A`) 『……』
地面に拳を叩き付けることも、掻き毟ることも出来ず、ツンはただただ蹲り雨に打たれる。
声も潰えた。
それでも叫ぶ。
掠れた声で喉が痛む。
心配げに、ニョロがツンの頬にすり寄る。
雨は止まない。
敗北の事実だけが残った荒れ果てた山の中。
ツンはただ、叫ぶことしか出来ずにいた。
-
おわりんこ
またまた久々の投下でした
梅雨が明ける頃とか言ったけど心には悲しみの雨が降り続けているので何ら問題ありません
勝てるんかコイツ(随時更新)
一先ずィシ戦は終わりな感じで
支援等は毎度嬉しく感じながらやってます
次回は遅くともハロウィンくらいまでには
>>400
長いことお疲れ様でした
途中から完全に一人の読者として楽しんでいたのでなんかありがとうというのも変な感じです
バトルの描写、力を入れた分だけ再現してもらえているようでうれしかったです
>>403
このキューさんになら頭吹き飛ばされて死んでもいい
実にベネ、かなりのやる気につながったッス
-
>>474
終わったー
勝てなくね?しかもここまで追い込まれたからまた別の対策してくるだろ…
乙でした
-
いやまじで勝てるんかコイツ・・・これでヨコホリ仕留められないってどうすりゃいいんや・・・
もうィシとか全体的に辛すぎる。うおおおおィシ・・・
相変わらず戦闘かっこよすぎ。脳内再生余裕ですわこれ
まじおつ。ハロウィンってあと一か月ちょっとしかないが楽しみにしてる
-
乙です!
まさかリアルタイム遭遇出来るとは思ってもみなかったw
それにしてもヨコホリに勝てる気がしない…
-
乙ー。ヨコホリしぶとすぎ!
-
毎度ながらの凄まじい戦闘描写に熱くなった
異常なまでの打たれ強さをもつヨコホリを攻略できるのかという不安よりも
ツンがダークサイドに堕ちないかが心配になってきた・・・
-
乙!面白すぎる!
ヨコホリめちゃくちゃやな
ヴォルデモートかよ…
-
乙。戦闘描写は突き抜けてうまいけど、どうも敵の強さばかり引き立てる感じがな。ブーンとか最近かませになってるし
-
そういうコンセプトなんじゃないか?
-
そりゃお前、物語の序盤でオルトロスだの百戦錬磨だの魔犬だのあれだけ持ち上げられたやつがかませにならん訳がない
強いままだったら俺ツエーだけの劣等生のお兄様みたいになる
-
合体して個々の力が弱体化する前のブーン・ドクオコンビならもっと無双できてるはず……
-
それを圧倒するキューちゃん
-
昨日読みはじめて、今追いついた!
ィシ戦読み応えあった
ツンのこれからが凄い気になるな
乙
-
ツン狙いでいけばもっと楽に勝てたんじゃね?
って思うのは野暮か おつ
-
名作の予感しかしないな…頑張って完結してくれよ〜。
-
ヨコホリ倒せるのキューちゃんくらいしかいねーだろこれ
萎えたわ
-
鉄って堅いね
-
来たか!!乙
そろそろブーンにまともな刀を持たせてあげてください
-
なんで折れたんだろうな
-
激戦続きで万全な状態じゃないってのもあるしな
分離して万全な状態のブーン&ドクオを早く見てみたいもんだ
-
分離したらタイトルの意味が微妙に
-
ィシもヨコホリも凄いけどツンちゃんの精神力も大概チートだな
-
このままの強さバランスだとストーリー的には確実に行き詰まると思うけどな。
-
なんでヨコホリたちは満身創痍のツンとブーンを仕留めずに帰ったんだ??
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リレイズがかかったとしても瀕死だろ?
しかも相手は常に絶望的状況から意味のわからない反撃をして仕留めてくるツンちゃんだろ?
俺だって、死にたかねぇのさ
-
>>496
昔こんなかんじで見事収拾つけたスレイヤーズというものがあってだな
-
>>499
あれはチート魔法のギガスレイブがあっただろ
-
おもしろい
-
投下待ちドキドキ
-
桑畑の広がるなだらかな丘陵地帯の中にぽつぽつと民家が見えた。
長閑な田舎町。真っ先に浮かぶ印象はそれだ。
クシンダ。
養蚕と農作を主な産業とする、辺境の小さな町である。
( ゚д゚ ) ガサッ
深緑の葉をつける桑の間から、頭が生えた。
周囲をきょろりきょろりと確認し、再び畑の中に消える。
( ゚д゚ ) ガサッ
少し離れた場所に、再び現れる頭。
やはり首を左右に振り回して、また引っ込む。
( ゚д゚ ) ガサッ (゚A゚* )
( ゚д゚) キョロッ (゚A゚* )
.
-
( ゚д゚ )
(゚A゚* )
( ゚д゚ )
(゚A゚* )
( ゚д゚ )
(゚A゚* )
( ゚д゚ )+ 「やあ、こんにちはお嬢さん」 キラーン
oσ(゚A゚* )
( ゚д゚ ) 「まあ待て。それは狼やクマが出た時に吹く笛だ」
(゚A゚* ) 「へんな人に会った時も吹けっておかーちゃんが言ってた」
( ゚д゚ ) 「全然変じゃないが」
(゚A゚* ) 「自覚ナシはなおさら悪質やで」
-
ミルナ=スコッチはこの程度では動揺しない。
忍として生きる彼の行動が凡人に理解されないのは世の常。
本来交わらぬ世界の童が彼を不審者と称したところで、それは必然なのである。
だが、むやみに騒がれては困るので。
三( ゚д゚ ) ササッ
(゚A゚* ) 「!?」
一瞬の隙に少女の背後に回り込み、首元に優しい手刀を放つ。
体の自由を奪うが、痛みを与えたり命に支障の出ない程度の威力。
ゴキブリが体液を漏らすことも無く死に絶える絶妙な力加減。
( ゚д゚ ) 「さて」
少女が意識を混濁している間に、ワイヤーで手足を拘束。
もちろん使う気はないが、騒がれないように手には短刀を持っておいた。
そこまで安全を確保してから、少女に事情を説明する。
( ゚д゚ ) 「―――と、言うわけで拙者は善良なる隠密であり、全く持って怪しい存在では無いのだ。理解したか?」
(゚A゚* ) (これホンマにアカン奴や……)
-
うお初遭遇!支援
-
( ゚д゚ ) 「で、だ」
思いのほか肝の据わった少女である。
これなら態々身柄を拘束した甲斐もあるというもの。
( ゚д゚ ) 「お嬢さん、最近二刀を腰に差した剣士を見たりはしなかったか?」
(゚A゚* ) 「剣士?」
( ゚д゚ ) 「うむ。ブーン=N=ホライゾン。拙者の尋ね人なのだが、この町に来ていたらしい」
(゚A゚* ) 「剣士なー。……それって魔法使いでもええの?」
( ゚д゚ ) 「!」
(゚A゚* ) 「ウチがしっとるんは、剣二つ持ってた魔法使いなんやけど」
( ゚д゚ ) 「むしろビンゴだ」
人口密度の低い田舎に置いて、目撃情報はあまり期待していなかったが、幸先が良い。
二刀の剣士を尋ねて、二刀の魔法使いの回答を得る。
恐らく間違いない。この微妙な誤差を生むのは彼らに他ならないだろう。
-
(゚A゚* ) 「…………でな、この先の森の中にな、ドッグのセンセの家があるんや」
( ゚д゚ ) (経歴に不詳の多い男だったが……なるほどここが故郷か)
(゚A゚* ) 「ほら、あそこや。今は誰もすんどらん」
少女の案内で訪れたのは桑の畑も疎らになる、丘を登った森との境目。
一件の小さな小屋が、木を背負うようにひっそりと立っていた。
窓は板で塞がれ、扉には頑丈そうな錠が掛けられている。
中々年季が入っているが、一見した限りは手入れが行き届いているようだった。
(゚A゚* ) 「ウチらがな、ドッグに頼まれて時々掃除に来とんねん」
( ゚д゚ ) 「お嬢さんと山田……ロンリードッグ氏とはいかなる関係で?」
(゚A゚* ) 「関係っちゅーかな、こんな小さい町やし、皆家族みたいなもんや」
( ゚д゚ ) 「……なるほど」
(゚A゚* ) 「まあ、ドッグはちょっと特殊やねんけどな」
( ゚д゚ ) 「特殊?」
(゚A゚* ) 「そうや……っと、あったあった」
少女は、小屋の入口の傍にある割れた植木鉢を持ち上げた。
見ると小さな木箱が埋まっている。
蓋を開けると、中には真鍮製の鍵。少女はそれを錠へ差し込み、閂を外した。
-
(゚A゚* ) 「ほら、入られるで」
( ゚д゚ ) 「うむ」
応えながらも、ミルナは短刀で窓に打ち付けられた板を引っぺがし、そこから中に入る。
少女は唖然とそれを見ていた。
(゚A゚* ) 「なにしてん」
( ゚д゚ ) 「中に入ったんだが」
(゚A゚* ) 「開けたやん」
( ゚д゚ ) 「残念ながら、そこは拙者にとって入口では無い」
(゚A゚* ) (マジモンのキッチガイや……)
小屋の中は暗く、少々湿った空気が漂っていたが、黴の臭いなどは無い。
少女は慣れた様子でテーブルに乗ったランタンに火をつけた。
扉とミルナがこじ開けた窓から差し込む光に加え、朱い光が室内を照らす。
小さな小屋だ。
入ってすぐに炊事場とテーブル。
奥には寝室と思われる扉が一つあるだけ。
誰も住んでいないという言葉の通り、家財の類はほとんど無い。
-
しかし何か違和を感じる。
ミルナだからこそ分かる微弱な物ではあるのだが。
( ゚д゚ ) 「で、先の話の続きであるが……」
(゚A゚* ) 「ああ、ドッグはな、元はクシンダの生まれや無いんや」
( ゚д゚ ) 「む?」
(゚A゚* ) 「ウチも詳しいことは知らんねんけど、ドッグのセンセがな、都会の方で路頭に迷ってたのを連れてきたんや」
( ゚д゚ ) 「孤児ということか」
(゚A゚* ) 「せや、何でも都会で魔法ガッコに通ってたらしいんやけど、おかーちゃんたちが死んでもうて、行き場失ったとか」
( ゚д゚ ) 「……」
(゚A゚* ) 「で、この通りここにはなんも無いで。ドッグが出てくときにほとんど処分してったし」
-
(゚A゚* ) 「ところで変態のにーやん」
( ゚д゚ ) 「変態じゃないが」
(゚A゚* ) 「ドッグに用だったんちゃうの?さっき言ったけどいくらか前に出てったで」
( ゚д゚ ) 「そうなのだが、もののついでにな。何か飯の種があればと」
(゚A゚* ) 「なーなー、何の用だったん?」
( ゚д゚ ) 「それは言えん」
(゚A゚* ) 「ええやん。ウチは色々教えてあげたやん」
( ゚д゚ ) 「……拙者の元締めに当たる男に人探しの依頼があった。追加の情報があったので、伝えるために追っていたのだが」
(゚A゚* ) 「あー、そりゃ災難やな。ドッグはなんか、サロン?に行く言っとったで」
( ゚д゚ ) 「サロン……結果的に行き違ったか」
ドッグことメランコリーズ=ロンリードッグは魔法を用いて移動を行っている。
いくら足に自信のあるミルナでも、その直線的な高速移動に追いつくのは骨だ。
その上ふらり次へ行くので行き先の調査にかかる時間もプラスされる。
情報を得てから大分時間が経った。
もとより鮮度が命だった情報だ。この時点で価値はほぼ死んでいる。
( ゚д゚ ) (これだから一匹狼気取りは……)
他人が接触に来ることを全く考慮していない。
情報屋にコンタクトを取った時くらい何かしらの標を残せというものだ。
-
( ゚д゚ ) (……サロンで待っていれば……しかし、すぐに戻る保証も無かったしな)
国境跨いでの大移動を四半日もかけずにあちらと、不眠不休で馬や足を駆使しても一日二日を要するこちら。
いくら魔法の痕跡などで追うことが出来ても、差は開くばかりだ。
気を利かせて早く伝えようとした結果がこれだよ。
( ゚д゚ ) (まあいい。上級の魔法を当然の如く使いこなす無名の魔法使いのルーツ。調べておいて損はあるまい)
ミルナは少女を放って家探しを始めた。
奥の寝室も開けて覗く。
やはり何もない。床にはベッドが置かれていたらしい跡があるが、それだけだ。
( ゚д゚ ) 「お嬢さん、先生と言うのは、当然魔法の?」
(゚A゚* ) 「せやで。ウチは詳し無いんやけど、すごい人やったらしいな」
それにしては。
ミルナはもう一度小屋の内部を見て回る。
( ゚д゚ ) (……本棚……資料や魔道書を保管に利用していただろうスペースが無い)
室内はあまりに殺風景で、本や魔道具を置くような場所が一切ない。
物自体は「処分してった」としても、棚や物入れを全て片っ端から廃棄するようなことをするだろうか。
仮にしたとしても、床にあるベッドの痕跡のように何かしらの名残があるはず。
それすら一切ない。これは少々おかしい。
-
( ゚д゚ ) 「……臭うな」
(゚A゚* ) 「ああ、麓のおっちゃんが牛飼っててな。時々風に乗って臭うんや」
( ゚д゚ ) 「ちゃうねん」
引退して魔法に関するもの一切を持っていなかったという可能性もある。
しかしそれならばなぜロンリードッグはここに立ち寄ったのか。
それに、入ってからずっと感じる違和感。
これは彼の魔力の気配だ。
僅かとはいえ、数日経っても残滓が残るほどの魔法を行使する必要があったのか。
( ゚д゚ ) 「実に面白い。……お嬢さん、少し下がっていろ」
ミルナは手で印を組む。
魔力が体を巡り、粒子となって全身から立ち上った。
( ゚д゚ ) 「“隠遁、足跡洗い”」
(゚A゚* ) 「おわ、なんかめっちゃ光っとる」
術の発動に合わせ、魔法の粒子が方々へ散った。
ミルナの魔力が空間の、より濃い魔力に反応して淡く発光する。
本来は魔力の痕跡を消去する隠匿用の術なのだが、こういった場所で使えば痕跡を探ることも出来るというわけだ。
( ゚д゚ ) 「そこか」
寝室の床の中心により多く反応が見られる。
目を凝らして見ると、床板の隙間から漏れ出しているのが分かった。
十秒程度で術の発動は終わり、同時に魔力の気配が綺麗に消えた。
-
ミルナは改めて反応の強かった床を探る。
間違いない。一度消し去ったはずの魔力の気配が、極極微量に漂い始めている。
床をノック。
他の場所とも比べ、丹念に聞き分ける。
違う。こうして耳を押し付けなければわからない程小さな違いだ。
これでは上を歩いた際の足音などでは気付けない。
( ゚д゚ ) 「本来何かの仕掛けがあるのだろうが、そこまで気を使えん」
(゚A゚* ) 「ちょ、なにしてん?!」
床板の隙間に小刀を差し込み強引に捲る。
少女が止めるのを無視して作業を進めると、現れたのは。
( ゚д゚ ) 「ビンゴ」
さらにもう一枚板で蓋をされた、地下への洞穴。
井戸のように石組みで補強され、人が上り下りできるように縄梯子がかかっている。
(゚A゚*;) 「なんやこれ、たまげたな……」
( ゚д゚ ) 「魔法使いならよくあることだ。研究用に隠し部屋を持つというのはな」
懐から投具を取り出し、落とす。
少し間をあけて硬い金属の音。深さは7メートルほどか。
罠の類は無いらしい。
ミルナは念のため小刀を手に持ったまま、するりと穴の中に飛び降りた。
-
着地と同時に、突然明りが点る。
魔法による青みを帯びた白い光。
( ゚д゚ ) 「……なんだこれは」
地下の空間は、想像よりもはるかに広かった。
上の小屋の二倍はあるだろうか。
木の柱と石組みで構成さている。
予想に反してここにも物はほとんど無いが、奥にさらに扉があった。
しかし、それより気になる者にミルナの目は止まる。
(゚A゚* ) 「なんやこれ?!」
追って降りてきた少女が驚いた。
ミルナもほぼ同意。
中々目にできる代物では無い。
金属で出来た、人型のゴーレム。
鎧状の体表と繊維や鉄骨で出来た内部機構。
数あるゴーレムのタイプの中でもかなり精密な絡繰り式だ。
作り手の技術の高さがうかがえる。
( ゚д゚ ) 「番人、のようなものか。となるとブーン氏たちはこれと……?」
-
扉の脇の壁に凭れて停止しているゴーレムに近づく。
体表にはいくつもの傷。恐らく剣の攻撃によるものだろう。
他よりも弱い関節を的確に斬りつけられているのを見るに、戦ったのはかなりの手練れ。
状況から読んでブーン=N=ホライゾンに間違いは無いだろう。
そして。
( ゚д゚ ) 「一体何をどうすれば、こんなことが出来る」
ゴーレムの胸の中心に、背中まで通ずる穴が開いていた。
丁度ミルナの頭が通るほどの大きさで一定の幅。
鉄が歪んで捲れたような跡はなく、この部分だけがきれいさっぱりくり抜かれている。
まるで元から無かったかのようだ。
触れてみる。
どう見ても鋼鉄製。
鎧一枚分ならまだしも、内部までをもいっぺんにとなると、人力とは考えられない。
( ゚д゚ ) (魔法……しかし、こんな不自然極まりない破壊を出来る魔法?)
魔法というと、馴染みない者からすればなんでも出来るように思えるが、超法則的な中にも限界は存在する。
少なくとも人が魔法式を組んで行う限りでは。
鋼鉄に穴をうがつ方法は確かにある。
火属性で熔かすなり、風や水属性で削り切るなり方法は複数挙げられる。
しかし、思いつく範囲の魔法ではこの状態にはつながらない。
-
(゚A゚* ) 「これうごくん?」
( ゚д゚ ) 「……元は動いただろうが、核をくり抜かれている。動くことはないだろう」
(゚A゚* ) 「へー……センセの家にこんなんあるなんてなあ」
少女がつんつんとゴーレムの体をつつく。
厚い鋼鉄の鎧に、可動域を広く取られた関節。
手には幅の広い短剣を持ち、逆の手の甲には魔法攻撃用の射出口がある。
動いているところを確認したわけではないが戦闘の機能があると見て間違いない。
ミルナの知る限り下級のゴーレムほど粗雑で巨大な傾向にある。
小型であるということは、すなわち高い技術の証明だ。戦闘用ならば弱いということは無いだろう。
( ゚д゚ ) 「この扉の奥には、相当なものがありそうだな」
恐らくロンリードッグたちの目的はそれ。
ここまで来てこの扉を開けないなどという選択肢はあり得ない。
ミルナは罠を警戒しつつ、ゆっくりと扉を開けた。
が。
(゚A゚* ) 「なんやこれ、行き止まりやん」
( ゚д゚ ) 「いや、恐らくはこの魔法陣を発動させることで、別空間へ行けるはず」
扉を開けた先にあったのは、板張りの壁と、そこに描かれた緻密な魔法陣。
発動させることで全く別の空間に転移することが出来る魔法の扉だ。
過去に似たような仕掛けを通じて侵入したことがあるので分かる。
-
これまたそんじょそこらの魔法使いに出来ることではない。
ゴーレムも含め、ここにある魔法の仕掛け自体が重要な知的財産になりうるのだが。
(゚A゚* ) 「でも、めっちゃ傷ついとるで」
そうなのだ。
描かれた魔法陣を消すかのように、大きなバツ印の傷がついている。
この魔法陣はタリズマンを原料にした塗料によって描かれ、自体が魔法式、魔道具として機能している。
傷がついているということは、機能が破壊されているということ。
宿っていた魔法自体が失われているので、魔法陣を掻きなおせばいいという話でも無い。
よって、転移魔法によって行けるはずっだったこの先の部屋には、立ち入ることが出来なくなっっているのだ。
傷は板の状態に対しかなり新しい。
恐らく、ロンリードッグが用を済ませた後に、封印代わりに魔法を破壊したのだろう。
( ゚д゚ ) (これは流石に……拙者でも無理だな……)
諦めざるを得まい。
強固な鍵や封印魔法なら意地でもこじ開けるが、これについては道そのものが無くなっている。
その上行き先がどこなのかも分からないのでは手の出しようがない。
( ゚д゚ ) (しかし、見たかったものだな)
( ゚д゚ ) (これほどのゴーレムが守り、こんな方法でゴーレムを殺す魔法使いが求め、
その両者を生み出した者が遺した『なにか』が一体どれほどのものなのかを)
* * *
-
VIPとサロンの間に広がる荒野にはかつて「ハイエナ」と呼ばれる盗賊部族が存在した。
残虐にして周到。その手並みはまさにハイエナそのもの。
当時今ほど武装化の整っていなかったVIPやサロンは幾度も彼らの襲撃を受け、いくつもの財を奪われた。
しかし、ある時彼らの襲撃がぱたりと止む。
毎日の如く襲撃があったのだから、人々はこれに困惑した。
二日三日と平穏な日が続くと「何かの企みではないか」と不安は逆に増してゆく。
状況に痺れを切らしたのは、サロンの農業関係者と契約を結んでいたとある商人旅団だった。
彼らは護衛に雇った傭兵やサロンの若者たちと共に「ハイエナ」の集落の調査を開始した。
何かの理由があって荒野を去ったならば重畳。
逆に、大掛かりな何かを仕掛けようと準備をしているのであれば、こちらも準備をしなければならない。
が、ようやっと「ハイエナ」の集落を発見した商人たちが目にしたのはそのどちらとも異なる結果だった。
「ハイエナ」たちは死んでいた。
彼らの構成人数など知らない商人たちでさえ、一目で「全滅しているに違いない」と判断するほどに凄惨な状況だったという。
レンガを組み赤土を固めた住居の壁には、さらに赤い血が塗りたくられ。
およそ人間の力で行われたとは考えられない損壊をした死体が転がっていた。
しかもそのそれぞれが、死後数日たっているだろうにも関わらず、鳥獣に全く食われていない。
事の異常性を察した商人の長は、仲間たちと共に「ハイエナ」を手厚く葬りこの一帯を立ち入り禁止とした。
のちに禁を破り「ハイエナ」の残した財宝に引かれて集落跡を訪れた者たちは全て消息不明となっている。
以後、この地は呪いの地と噂され、事件から長く経った今でも避けられ、怖れられている。
-
(//‰ ゚) 「そんな噂のお蔭でここには人が来たりはしねエ。絶好の隠れ家だ」
ヨコホリ=エレキブランは、一通りこの場の由来を話してから笑って見せた。
力の無い笑みだ。彼と知り合ってからそれなりの年数が経つが、ここまで弱っているのを見たことが無い。
(//‰ ゚) 「まあ、危ねえのは事実なンだがな」
ヨコホリの横たわるベッドの周囲を、「目に見えない何か」が飛び回っている。
それも、複数。羽虫の類とは絶対に異なる禍々しい存在感。
流れ出るヨコホリの魔力に牽制され近づいては来ないが、接触が好ましくないことは予想できる。
(//‰ ゚) 「人間の思念……いわば経験と知識の蓄積によって形成された『人格』を魔力そのものに定着させてるンだ。
脳の中で起きている電気信号の働きを、魔力によって再現する。まあ、魔法で作られたゴーストってトコだな」
ヨコホリは接近してきたゴーストを、気だるそうに振り払う。
濃密な魔力を嫌ってか、すぐに部屋の隅へと離れていった。
(//‰ ゚) 「魔力の扱いになれてりゃ追い払うのは楽だし、今は俺が居るから安全だがナ」
_
( ゚∀゚) 「……それよりも、体の状態はどうなんだ」
(//‰ ゚) 「どうもこうもあるかァ、見ての通りだ」
ジョルジュは、ヨコホリの胸元に視線を落とした。
掌ほどの大きさの魔法陣が、か弱い明滅と共に浮かんでいる。
これが、今のヨコホリの命そのもの。
本来の何重にも守られた環境から比べればあまりにも無防備な状態だ。
-
(//‰ ゚) 「全部ガッタガタだよ。俺の「生命」を司る魔法の大体9割が破壊されてンだ」
ついでに言えば、残りの一割も急造した粗悪品だ。
元々並でない生命力のこの男でなければ死んでいただろう。
否、事実この男は一度完全に死んだのだ。
今一応生きているのは、自身の掛けた保険のお蔭に他ならない。
_
( ゚∀゚) 「自分で組み直したりはできないのか?その予備の魔法を使ったように」
(//‰ ゚) 「あのなァ……お前、魔女の技術をそうそう簡単にマネできると思うのか?ン?」
ヨコホリは、通常のゴーレムと異なりまだ人体の部分が多く残されている。
故にゴーレムに用いる単純な(それでもかなり高度な)魔法式だけでは足りないのだ。
あくまで人間の部分は人間として生かさねばならない。
そのために、魔女は膨大な数の魔法式をヨコホリに仕込んだ。
人間の生体機能と同じだけの魔法が存在するといえば、それがどれだけ途方もない行為か理解されるだろうか。
シーンはその機能を取りまとめる「節」の魔法を狙う個々の分解の手間を省いたのだが、組み直すとなればそうはいかない。
ハーフゴーレムとして生かす魔法と言っても、実質は人を一人生み出すのと変わらない行程が必要なのだ。
(//‰ ゚) 「コイツだって、べらぼうに質の良いタリズマンに無理やり焼き写しただけで、俺自身の技術云々じゃねェンだ」
_
( ゚∀゚) 「そうか、ならば」
(//‰ ゚) 「おう、魔女が気まぐれにさっさと来てくれることを願うばっかりだナ」
-
ヨコホリの体調は、時間が経つにつれてみるみる悪くなっている。
予備の魔法だけでは生命の維持機能が足りていないのだ。
発動の直後は、分解されながらも残っていた魔法の断片を集めることで代用できたが、今はそれも完全に失われている。
魔女が来なければ確実に死ぬ。
すぐにでは無いが、流石に数週はもたないだろう。
さらに言えば、魔法や魔具等の魔力を帯びた攻撃を一発喰らうだけでも魔法が乱れて死ぬ。
今のヨコホリの耐久度は、そこらの虫と同程度まで落ちているのだ。
(//‰ ゚) 「その後、魔女からリアクションは?」
_
( ゚∀゚) 「無い。また何か、碌でもない戯れに興じているらしい」
(//‰ ゚) 「カーッ!勘弁してほしいぜ。一度飽きた玩具にゃ興味ねえってか」
o川*゚ ,゚)o 「そんなことないんですけど。失礼しちゃうな」
(//‰ ゚)
_
( ゚∀゚)
o川*゚ ,゚)o
(//‰ ゚)
_
( ゚∀゚)
o川*゚ー゚)v 「ブイッ」
(//‰ ゚) 「………………………………………ッめえはホントによォ〜!!」
-
o川*゚ー゚)o 「何々??ホントに可愛いって??」
_,
( ‐∀‐)
ジョルジュは静かに眉間の皺を揉み解す。
突如現れたその少女は、彼らの動揺も全く意に介さず小首を傾げて微笑んだ。
絹のごとき艶やかな髪がさらりと揺れ、光の粒が宙を舞う。
正体を知らなければ、知っていてなお不覚にも見惚れる美しさ。
噂をすればなんとやら。
ヨコホリをゴーレム化させた張本人、『魔女』の登場である。
o川*゚ー゚)o 「緊急だっていうから出来る限り急いできたのにさ、いきなり陰口なんて酷くない?」
(//‰ ゚) 「あのナ………………いや、いい。悪いのが俺でいいからさっさと直してくれ」
ヨコホリがここまで大人しくなる光景など、滅多に見るものでは無い。
不遜な口調は相変わらずではあるが、どこか緊張が感じられる。
魔女もそれは御見通しといったところで、ヨコホリに向かって満面の笑みを見せた。
o川*゚ー゚)o 「はいは〜い、一度飽きた玩具(強調)を頑張ってなおしま〜す」
(//‰ ゚) 「…………ナガオカ、俺にも胃薬くれ」
_
( ゚∀゚) 「断る。既に俺の分が足りなくなる可能性が濃厚だ」
o川*゚ ,゚)o 「本人目の前にして二人とも酷くない??????」
-
唇を尖らせながらもヨコホリの修復に入った魔女。
ヨコホリ内部の状態を診察して益々口を尖らせた。
o川*゚ ,゚)o 「……回路がズタボロどころか真っ白じゃん」
(//‰ ゚) 「大体お前のせいだろ」
o川*゚ ,゚)o 「えー?ヨコっちの自業自得でしょ?」
(//‰ ゚) 「チッ」
魔女がヨコホリの体に浮かぶ魔法陣に手を翳した。
所々出来ていた綻びが瞬く間に修繕されてゆく。
o川*゚ー゚)o 「どう?」
(//‰ ゚) 「……大分楽になった」
o川*゚ー゚)o 「うん、根幹はこのままこれを使えばいっかな。あとは……」
魔法陣がくるりと回転し、ヨコホリの身体へと沈む。
これだけでも相当楽になったのか、ヨコホリの表情が和らいだ。
o川*゚ー゚)o 「結構痛いと思うけど、がまんしてね☆」
(//‰ ゚) 「……チッ」
-
魔女の姿が少女から妖艶な大人のそれへと成長した。
伴って身に着けていた衣類も、ローブから背中の大きく開いたドレスに代わる。
面影は残しているが、変化の瞬間を見逃せば同一人物だとは思えないだろう。
魔女の周囲に濃密な魔力が渦巻き始めた。
ジョルジュは危険を感じ壁際まで後退。
魔力の奔流はさらに激しさを増し、ゴーストたちが慌てて室内から逃げてゆく。
o川* ー )o 「……………“――――――オープン”」
魔女は光を灯らせた指をクルクルと回し、頭上に掲げる。
その動きに呼応し、室内に溢れた魔力は、魔女の足元で魔法陣へと変貌した。
巻き起こった突風がローブと髪を舞い上げ、光の粒子が弾けて舞う。
見たことも無い様式の魔法陣だ。
古典的な呪術に用いる梵の紋様と、現代的な幾何学模様を合わせたような図式。
目を凝らせば、魔法陣を構成する線の一本一本もまた非常に細かな魔法陣の連なりであると分かる。
並ならぬ緻密さ。この魔法陣に一体どれだけの魔法を生み出す機能があるのか、ジョルジュにはもうわからない。
o川*゚ー゚)o 「今回の反省を兼ねて、ちょっとパワーアップする?」
(//‰ ゚) 「……どうでもいいからさっさとしてくれ」
o川*゚ー゚)o 「そんなに怖がらないの。男の子でしょ?」
魔女が地面に手を翳し、鍵盤を叩くかのように指を動かす。
指が動いた数だけ魔法陣から小さな魔法陣が独立して浮き上がり、魔女の周囲に待機してゆく。
-
o川*゚ー゚)o 「よーし、準備オッケー!」
ジョルジュが数えただけでも百を軽く超えた魔法陣。
薄暗かった室内はそれらの放つ独特の反応光によって明るく満たされている。
魔女は空間をかき混ぜるように、頭上で腕を一振り。
かき混ぜられた魔法陣の群れは竜巻の如く回転し、瞬く間にヨコホリの胸の上に一列に重なった。
横から見ていると、光る丸太を胸におしつけられているようだ。
o川*゚ー゚)o 「じゃ、行くよ」
(//‰ ゚) 「……おう」
魔女が指を鳴らした。
下部の魔法陣がくるりと回転し、ヨコホリに沈み込む。
その瞬間ヨコホリの身体が跳ねた。
叫びをあげ、体を捩らせようとする。
魔女は変わらぬ涼しげな顔で手を翳し、目に見えぬ力でそれを制す。
(//‰ ) 「――――――――――――――ッッッ!!!!!!」
そうしている間に次の魔法陣が回転、ヨコホリへ浸入。
電流に似た煌めきが全身に波及し、耳障りな音が爆ぜる。
一瞬落ち着いたかに見えたヨコホリが、再び断末魔のごとき雄叫びを上げた。
人間のままの片目は大きく見開かれ、今にも眼球が飛び出しそうだ。
どれほどの苦痛が駆け巡っているのか、はたから見ているだけでは想像がつかない。
-
時間にして、一時間弱ほど。
合間に少しの休憩を挟みつつ、ヨコホリの「修理」は一応終了した。
後は安定化と誤差修正の作業のみであり、ヨコホリはそのために魔法の繭に包まれて眠っている。
作業中とは打って変わって静かなものだ。
ジョルジュもふっと息を吐き、壁に凭れかかる。
大の男の、それも普段は飄々とする彼が錯乱し絶叫する様は見ていて気分が良いものでは無かった。
o川*゚ー゚)o 「ふー、ちょっとつかれたー」
_
( ゚∀゚) 「…………ここまで、壮絶なものなのだな」
o川*゚ー゚)o 「んー?まあねー」
人間部分、といっても何の手も加えられぬ人のままというわけでは無い。
ゴーレムの部位を物理的にも魔法的にも支えるための著しい改造が必要となる。
ヨコホリの場合は専用の魔法を定着させることによってその条件を満たしているのだが。
o川*゚ー゚)o 「魔法を生身の体に定着させる時ってさ「定着させたい魔法」と「定着させるための魔法」の二つが必要なのね」
o川*゚ー゚)o 「この「定着させるための魔法」が半端ないんだよね。
その人間の「存在」そのものに介入して、本来異物である魔法と無理やり縫い付けるわけだから」
o川*゚ー゚)o 「正直ヨコっちレベルのタフさが無かったらショック死もんだよ」
「ヨコっちでもこの有様だけど」とため息混じりに呟いて、魔女は椅子に凭れかかった。
魔女はすっかり元の少女の姿に戻っている。
小さな足をプラプラとさせる様子からは、魔法を行使した疲労よりも退屈さばかりが伝わってくる。
-
少しして、魔法の繭がハラハラとほどけ、ヨコホリの姿が現れた。
死人のように動かないが、肌の色などは幾分生気を取り戻している。
_,
( ゚∀゚) 「……なんだ、これは」
一応心配してヨコホリの顔を覗き、ジョルジュは眉をしかめた。
鋼鉄の面を被せられたのとは逆の顔。
生身のままのヨコホリの左目が、焦点を定めずにグリグリと動いている。
とても意志をもっているようには見えない。
時々瞳孔が眼窩の奥の方まで回転し、普段は隠れている血管や神経の束が目の端から覗いた。
苦痛のあまりに狂った。先ほどまでの状況を見ていた者として、ジョルジュは即座にそう判断した。
o川*゚ー゚)o 「あ、大丈夫。脳にかけた魔法のせいで記憶が混乱してるのね。
走馬灯とか、夢を見てるのと同じ状態だから、すぐに収まると思う」
_
( ゚∀゚) 「走馬灯の時点でダメそうなのだが」
魔女の言葉通り、目の暴走が止んでヨコホリが身を起こした。
左手で頭を押さえ、どこかぼんやりとしている。
が、少し様子を見る内に、口角が吊り上がり、引き攣るような笑いが漏れ始めた。
(//‰ ) 「グッ……グッグッグッ……なるほど、『しそ屋』ね……思い出したぜェ…………グッグッグっ……」
_,
( ゚∀゚) 「……?」
(//‰ ゚) 「グググググッ……コイツぁ面白れェ…………赤い糸ってのはこういう事なんだろうなァ」
-
(//‰ ゚) 「ああ、居たな、いたよ……あの時俺たちは、確かに小娘を一人見逃した」
(//‰ ) 「あの癖の入った金の髪…………言われてみりゃ、なるほど面影だらけだァ…………」
惚けたような独り言。混じる笑い声は徐々に音量を増す。
不審げに見つめるジョルジュや魔女のことなど完全に眼中にない。
瞳孔の開き切った彼の眼に映っているのは、この場にはいない一人の少女。
(//‰ ) 「そうかそうか……そうだよなァ……、親殺されて、そのままのうのうと生きるなんてできねえやなァ」
長く同じような毎日を過ごしているうちに埋没していた記憶。
それでも残って居たのは、それなりに印象強い相手だったからだ。
あの時に戦った炎を操る女の魔法使い。
潰した店の名前など言われなければ思い出しもしなかったが、逃げ去った娘との間に立ちはだかる姿だけは覚えている。
顔を手で覆っていたヨコホリは、笑いを収め、息を調えた。
無表情のままではあるが、目に点った光は爛々と狂喜を溢れさせている。
(//‰ ゚) 「ナガオカ、これから暫く暇を寄越せ」
_,
( ゚∀゚) 「…………なにをする気だ」
(//‰ ゚) 「なァに、ちょっとな」
ベッドから立つヨコホリ。
体をほぐす動きを見るに、もう問題は無い様だ。
(//‰ ゚) 「俺を殺すために人生奉げた女の『愛』に、応える準備をするだけよ」
* * *
-
('A`) 『……暇だ』
(//^三ミ) (ぼくの方が暇だお)
('A`) 『俺なんて景色眺めることすらできないんだぞ』
(//^三ミ) (じゃあ代わる?)
('A`) 『代わりません』
ィシとヨコホリの勝負が決してからまる二日。
ブーン達はハインリッヒの診療所に居た。
居た、と言えばまだ聞こえがいいが、その実情はほぼ軟禁に近い。
ロクな治療魔法もかけて貰えないまま全身を包帯で固定されベッドに放置されている。
以降は定時にハインリッヒが食事を口に詰め込んでいく以外、碌な行動がとられない。
排泄ばかりは声をかければ連れて行って貰えるが、それだけだ。
普段常に体を動かしているブーンにとってはこれが中々辛い。
从 ゚∀从 「ブーン飯だ、口開けろ」
扉が開いて、食事の入った皿を持ったハインリッヒが入ってくる。
ブーンは言われたままに口を大きく開く。
これだけでも首や肩周りの筋肉が軋み、悲鳴を上げる。
焼けるような痛みこそ治まったが、回復とは程遠い不便さだ。
-
从 ゚∀从 「ったく、いい加減にしてほしいもんだな。お前らの世話のために態々戻ってこにゃならん」
文句を垂れながらも。ハインリッヒはブーンの口に食事を放り込んでゆく。
炒った麦と野菜や豆、ひき肉等をごちゃ混ぜにした粥だ。
見た目はまるで離乳食で、あまり食欲を誘うものではないが、口に入れてみるとこれが中々美味い。
ハインリッヒが投下するままに粥を食い、すぐさま食事は終わった。
胃はまだ足りないといっているが、ダメージと疲労を溜め込んだ体に食事の消化で更なる負担をかけるわけにもいかない。
腹六分目。食い足りない分は、食事の回数を増やすことで補っている。
(//^三ミ) 「ツンはまだ?」
从 ゚∀从 「ああ、ピクリともしねえよ」
(//^三ミ) 「……」
从 ゚∀从 「まあ、心配すんな。疲労と脳への過負荷、そこに加えて魔力切れだからな。二日三日眠っててもおかしかねえ」
ブーンは動く範囲で首を動かし、部屋の斜向かいにあるベッドを見た。
カーテンで囲まれているため姿は見えないのだが、そこにはツンが寝かされている。
心身ともに多く大きく傷ついた彼女は、あの決着の後に意識を失ってから以降一度も目を覚ましていない。
ハインリッヒが診察した上での「心配すんな」なのだから大丈夫なのはわかっているのだが、やはり心配だ。
あの時ブーン達は結果としては何もできなかったに等しい。
その時はできうる限りの全力ではあったが、最終的にツンを一人で戦わせることになった。
すべてはブーンの弱さと甘さによるものだ。
-
从 ゚∀从 「お前の方こそ、体の調子はどうだ」
(//^三ミ) 「じっとしていれば痛みは感じないお。ただ、動くと突っ張るっていうか」
从 ゚∀从 「そうか……」
ハインリッヒが手を光らせてブーンの肩に触れる。
触診の魔法だ。僅かにピリピリとするが特に何かをされている感覚は無い。
从 ゚∀从 「……相変わらずふざけた回復力だ。筋繊維の再生はかなり進んでるな」
(//^三ミ) 「これくらいならこんなもんだお」
从 ゚∀从 「……」
ブーンの返事にハインリッヒが眉間に皺を寄せた。
人差し指でしきりに揉み解しているが、よほど深く刻まれているようでなかなか消えない。
まったくもって不憫だ。誰だだこんないい先生を困らせてる迷惑な患者は。
从 ゚∀从 「……まあ、これなら包帯はほどいてもいいだろ」
(//^三ミ) 「いいのかお?」
从 ゚∀从 「代りに自分の世話は自分でしろよ。流石に便所の世話までしてると俺が仕事にならん」
(//^三ミ) 「おっおっ!もちろんだお」
-
( ^ω^) 「ふー、やっと自由になれたおー……」
包帯から解放され、ブーンは体を解す。
少し動かしただけで引き攣る痛みが走るが、拘束されているよりはマシだ。
ひとしきり上半身の可動域を確かめてからベッドを降りる。
久々に自立した床は、ややグラつくような気がした。
从 ゚∀从 「動けそうか」
( ^ω^) 「……んー、まあただ普通に生活するくらいなら」
从 ゚∀从 「あの状態からすりゃ上等だ。俺は往診の残り行ってくるから、大人しくしてろよ」
( ^ω^) 「はいおー」
手早く準備を終え出ていったハインリッヒを見送る。
本当にブーンの世話をする為だけに戻ってきてくれたらしい。
その親切を無駄にする気にもならず、ブーンは言いつけ通り大人しくしていることにした。
こっそり鍛錬するつもりで居たのは秘密である。
とはいえ、再生に伴って体が固まるのだけは避けなければならない。
剣を扱う上で柔軟性は筋力と同じだけ重要だ。
どれだけ強い力があっても、しなやかさが無ければ剣は死ぬ。
筋肉に過剰な負荷をかけ無ければよいのだから、歩く程度ならば平気だ。
そもそも現状のブーンで損傷がひどいのは上半身。
下肢もそれなりにダメージを受けていたが、相対的にはマシであるし、現時点ではほとんど痛みも取れた。
-
手始めにずっと気になっていたツンの様子を見にゆく。
同じ部屋の反対側というだけで一苦労だ。
歩くといっても使うのは下半身だけで無く、普通に行こうとすると上半身のそこかしこに激痛が走る。
ひいこらひいこらいいながらやっとツンのベッドにたどり着いた。
カーテンを少しだけ開け、頭を突っ込んで中を覗く。
( ;^ω^) 「…………これが心配するなな状況?」
(;'A`) 『治療魔法のオンパレードだな……』
ベッドに寝かされていたツンの身体には、至る所に青白い魔法陣が浮かび上がっていた。
特に多いのは頭。次が胸。あとは手や足の末端にもいくつかある。
それぞれ紋様が違い、それぞれの役目が異なっているのだと、魔法に詳しくないブーンにも分かった。
( ;^ω^) 「寝てるだけには見えないんだけど」
(;'A`) 『まあ、大半は保護の魔法っぽいし、見た目の仰々しさほどヤバくはないと思うんだけど』
つまりは、寝たままになっているツンの体が寝たままでことによってダメージを受けないための魔法なのだという。
床ずれ防止や、血流の維持、代謝抑制等々、直接的にツンを再生するために用いられているものでは無い。
ただし、頭部にかけられているのは、もっと複雑な再生補助の魔法式のようだが。
(;'A`) 『体の怪我よりも、呪具と真っ向勝負した後に魔力切れってのが良くなかったんだな』
( ;´ω`) 「も〜、僕よりも無茶なことするんだから……」
肝心の本人は、実に穏やかな表情で眠っていた。
顔色が悪いせいもあり、呼吸の細い音が聞こえなければ死んでいるようにも見える。
-
クルクルと動く魔法陣を何となく見ていると、ツンに掛けられている薄手の布団がモソモソと動いた。
体の隙間から顔を出したのは、獣のような毛を生やした蛇。
ツンのペット(?)のニョロだ。
ニョロはブーンを見つけると舌をチロチロと出して這い寄ってきた。
( ;^ω^) 「お、なんだお」
やや戸惑うブーンに、ニョロは頭を摺りつける。
甘えているようだ。
主であるツンが動かないため彼も暇なのだろう。
( ;^ω^) 「……いっしょにいくかお?」
人語を理解しているのか、ブーンの言葉にニョロは尻尾を振り回して応えた。
恐る恐る伸ばした手に、するりとまきついて這い上る。
むず痒い。それに、なんだか初めて見た頃よりも大分長くなっている気がする。
('A`) 『お前コイツ苦手なの?』
( ;^ω^) (なんちゅーか、キュートのキメラを連想する要素多くて。蛇だし魔法使うし)
(;'A`) 『おいおい、まさかキュートのキメラなんて言わねえよな』
( ;^ω^) (うーん……僕が初めて見た頃には、ほとんどツンの匂いしかしなくなってたからなんとも……)
(;'A`) 『………………めっちゃ懐いてんな』
( ;´ω`) (うん……くすぐったい……)
-
支援
-
初めての遊具でも見つけたかのようにブーンの体を這いまわるニョロをとりあえず放置し、ブーンは部屋を出た。
一先ず目指すは調理場だ。
水や食事は定期的に摂っていたが、大五郎(この場合焼酎の銘柄の意)はあまり口にできていなかった。
特に何もしなければ少量の摂取でも問題ないとはいえ、やはり懐に入れておかないと落ち着かない。
目的の大五郎は、簡単に見つかった。
調理台の上に、どんと小樽が置かれている。
ハインリッヒに金を渡して調達してくれと頼んでおいたのだが、まさかここまでのものを買ってくるとは。
( ^ω^) (リッヒの家にいる限り大五郎切れの心配はないおね)
('A`) 『リッヒもさ、既にここが俺らの拠点であることを受け入れてるよな』
( ^ω^) (うん。諦めって悲しいね)
樽の側面に注ぎ口が突き刺さっていたので、栓を抜いて適当な器に酒を注ぐ。
余り飲むと酔ってしまい、回復しきっていない体に響く。
木製のカップを半分程満たしたところで栓を閉め、漏れが無いかを確かめた。
(*^ω^) (ん〜〜〜安酒とはいえ樽から直で飲むと気分が違うお〜〜〜)
軽く口をつけ、唇を濡らす。
冷たく、そして熱く。鼻に抜けてゆく匂いは、独特の透明感と甘さがあり、自然と喉が鳴った。
すこし啜る。
いつもの大五郎の色気の無い酒の味に、ほんのりと樽の香りが移って、中々悪くない。
我慢できなくなって、そのまま一気に煽り飲む。
ハインリッヒに飲ませてもらうとどうしても少量ずつになるので、この喉から胃へ向かって駆け下る酒の心地は久々だ。
不味いが、美味い。
舌で愛でるのではなく、喉にぶつけるように飲む楽しみはこういった安酒ならではだろう。
-
大五郎を飲み干し上機嫌になったところで、ブーンはリビングの椅子からマントを取った。
療養用の寝間着の上に羽織って外に出る。
サロンの風は穏やかだ。
二日とはいえベッドに縛り付けられていた身としては実に心地よい。
少し歩いて家の前の柵に腰掛ける。
空を小鳥が横切って行った。
遠くから家畜の鳴き声が聞こえる。
耳元を撫ぜる風。
心をざわつかせる音も景色も一切ない。
眺めているだけで気力が回復してくる、実に長閑なサロンらしい風景。
数日前にあれだけ大規模な戦闘が行われたとは思えない。
大五郎、根絶法双方ともに街への必要以上の被害を嫌ったお蔭なのだろう。
なお、今は両軍勢も戦後の処理に追われ小競り合いすらも起こっていない。
( ^ω^) (……正直、大五郎が勝ったのは驚きだおね)
('A`) 『ああ、あの人数差だったもんな』
-
ブーンたちは森に居たので具体的な戦況までは把握していない。
だが、ハインリッヒ伝いに大五郎側が防衛に成功したというのは聞いている。
あの圧倒的な人数差を凌ぎ、本社からの援軍到着まで耐えきったというのだ。
敵の主力級であるニダーと剣を交えたブーンとしては意外以外の何でもない。
サロンにいた兵士は、ブーンが見た限りでツンと同等かいくらか上回る程度が最高値。
個々の戦力だけが勝敗の要因でないとはいえ、人数含め相当に不利だったのは間違いない。
( ^ω^) (指揮はあの支店長さんだったらしいけど……)
(;'A`) 『どうにもそんなタマにはなあ……別の誰かが代理で指揮とってたんじゃねーのか』
( ^ω^) (たぶんね。そもそも戦闘職種じゃないらしいし)
兎に角大五郎サロン支店は現在も無事営業を続けている。
サロンから離れずに大五郎を確保できるのはありがたい話だ。
もし潰されていたとなると、また渡辺に連絡を取って配達してもらうなどしなければならなくなる。
一体どんな策を弄してあの軍勢を退けたのかはわからないが、この際それはまあいいだろう。
金さえあれば気軽に酒が口にできるというのは、ブーンたちにとっては安心できる環境だ。
-
※
主人公たちからみたセント=ジョーンズ像
(’e’) うわぁ〜〜〜〜〜〜〜
実際のセント=ジョーンズ
(’e’) うわぁ〜〜〜〜〜〜〜
.
-
しばらくそよ風に吹かれて空を眺め、ブーンは柵から腰を上げた。
軟禁で辟易していた気分は大分回復したし、自分の体の状態も大よそ把握できた。
これ以上外にいて厄介なのに見つかる前に、部屋に戻ってゆっくり酌でもしようというものだ。
確か地下の貯蔵室にチーズや干し肉があったはずだ。
報告すればある程度自由にしていいと言われていたのでありがたくいただこう。
ブーンはマントを翻して屋内へ戻る。
大五郎を手ごろな瓶に注ぎ、地下に降りてチーズと干し肉を見つくろった。
今の身体で瓶や食料を抱えて階段を上るのは少々しんどいが、部屋に戻ってからのお楽しみがあるので耐えられる。
えっちらおっちらと部屋の前まで戻り、半端に空いていた扉を足で開けて中へ入った。
ξ ⊿ )ξ
( ^ω^)
ξ ⊿ )ξ
入口のすぐ目の前の床で、ツンが倒れていた。
( ^ω^) 「ツンさーん??」
ξ ⊿ )ξ
( ^ω^) 「死んでる????」
返事がない。
-
ブーンは空いていたベッドに抱えていたもの放るように置き、ツンに駆け寄る。
抱き上げると、ぞっとするほど体が冷たく力が無い。
首元からニョロが飛び出し、勢いよくツンの頬に頭を摺りつけたが、やはり反応は無かった。
ツンのベッドを覆っていたカーテンが開いており、奥に見える布団は半分床に落ちている。
恐らくは目を覚まして這いずってきたのだろう。
ハインリッヒがツンにかけていた魔法の一つに、生命器官の働きのほとんどを魔法によって補助し、
代わりに身体の活動をギリギリまで抑えることで回復効率を上げる物がある。
つまりは絶対安静の寝たきりの人間の為の魔法。
その中で無理に動いたものだから、実質の仮死状態に陥っていってしまっているのだ。
心配げに頬ずりするニョロを服の中に押し戻し、ブーンはツンを抱き上げた。
流石に人一人を持ち上げるほど回復はしておらず、全身が激痛に見舞われたが一先ず我慢。
なんとかツンをベッドに寝せ、布団をかぶせる。
ξ ⊿ )ξ 「う、ぅぅ……」
一応生きていた。
ツンが停止したことで魔法も再び効果を発揮している。
とりあえずは大丈夫だろう。
( ^ω^) 「ツン、大丈夫かお?」
ξ ⊿゚)ξ 「…………ブーン」
-
ξ ⊿゚)ξ 「…………ここ。……リッヒの……?」
( ^ω^) 「そうだお。あの戦いの後、僕らここに運ばれたんだお」
ξ ⊿゚)ξ 「……………そう」
ツンの眼が虚ろに天井を見る。
もう少し取り乱すかもしれないと構えていたが、以外にも大人しい。
意識がはっきりしていないのか、魔法のせいか。
なんにせよ、あまりいい気分ではない。
あの山でツンは意識を失うまで呪詛を吐き怒りを吠えていた。
それからこの状態では、何かが切れてしまったのではないかと不安になる。
ξ ⊿゚)ξ 「…………ブーン、ドクオ」
( ^ω^) 「……お?」
ξ ⊿゚)ξ 「私の体が回復したら、私に剣と魔法を教えて」
( ^ω^) 「……」
ξ ⊿゚)ξ 「今の私じゃ、弱すぎる。こんなんじゃ、あの鉄クズ野郎を殺せない」
( ^ω^) 「……ツン?」
もそりとツンの手が動き、自身の頭に触れた。
そこには真新しい傷跡がある。ツンが自ら木の礫を突き刺した場所だ。
-
ξ ⊿゚)ξ 「………ィシさんが死んだとき、沢山の記憶が私の中に入ってきた」
ξ ⊿゚)ξ 「…………全部、分かったの。あの人が何をしたくて禁恨党を率いていたのか」
ξ ⊿゚)ξ 「…………何故、あんな呪具に頼ったのか」
ξ ⊿゚)ξ 「…………私が勝つべき相手が、誰なのか」
ξ ⊿ )ξ 「……全部、全部わかったの」
( ^ω^) 「……」
ξ ⊿゚)ξ 「……あんたたちが、人に技を教えるとか、そういうのを嫌っているのはわかってる」
ξ ⊿゚)ξ 「……でも、私には必要なの。少しでも、僅かでも、今より強くならなくちゃいけないの」
( ^ω^) 「……」
ξ ⊿ )ξ 「……だから、お願い。私に、力を貸して」
ξ ⊿ )ξ 「あの男、ヨコホリ=エレキブランを、倒すために」
* * *
-
( ;;;Фωφ) 「おがえりである、ギュード」
o川*゚ー゚)o 「ただいま、試作ちゃん。良い子にしてた?」
( ;;;Фωφ) 「うむ。わるいやづらいっばいきだがら、たおじた」
ヨコホリの修復を終え、砦のある山に帰った魔女を出迎えたのは、二刀を持った一人の男。
彼女が生み出し、「試作ちゃん」と呼ぶ限りなく人に近いキメラである。
彼の足元には、複数の死体が転がっていた。
原形を留めていないが全員武装している。
恐らくは懸賞金や名声目当ての破落戸だろう。
試作ちゃんの腕ならば、目を瞑ってでも勝てたに違いない。
( ;;;Фωφ) 「ごれ、どずる?」
川*゚ ,゚)o 「んー―――……あんまり優秀には見えないし、素材としては最低ランクかなー――……」
b
しばし死体を眺めて悩んだ結果、これらは破棄することにした。
砦のスペースはまだいくらかゆとりがあるが、だからと言ってなんでもかんでも保管しておくわけにはいかない。
人間の素材は先日のフタバの街で上質なものが集まったし、十分足りているのでなおさらだ。
「えい」という掛け声と同時に、死体に火が灯る。
流れる血にすら広がった赤い炎は瞬く間に数人分の死体をただの焦げ跡へと変貌させた。
-
o川*゚ ,゚)o 「あーあ、もう、こんなのばっかり。やんなっちゃう」
わざと巷に自分の居場所を流して以来、現れるのは身の程知らずの雑魚ばかりだ。
目的の子たちがすぐに来ないのは覚悟していたが、せめてもう少しまともな人に来てもらわなければ。
手間ばかりかかって何の利にもならない。
o川*゚ ,゚)o 「いこ、試作ちゃん」
ため息一つ、魔女は死体の跡へ背を向けた。
砦へ戻って試作ちゃん二号の調整をしなければ。
待ち人は来ずともやるべきことはいくらでもある。
が、魔女の言葉に反し、試作ちゃんは麓の方へ視線を向けたまま動かない。
鞘に納めようとしていた刀を再び引き抜き、構える。
( ;;;Фωφ) 「…………まだ、いる」
o川*゚ ,゚)o 「……?サーチには何もかからないけど……」
魔女が訝しげに試作ちゃんの視線を追う。
展開している広域探知の魔法に反応するのは獣の類のみ。
それもどれも中型未満で、魔力の反応なども無い。
試作ちゃんが刀を構えるほどの相手では無いはずだ。
が、二人が目を向ける方向の空に、黒い点が複数見えた。
鳥では無い。
もっと巨大な何か。
それが太く頑丈な丸太であると気づくころには、既に魔女の眼前まで迫り来ていた。
-
魔女の前に試作ちゃんが躍り出て、飛来する丸太へ刀を振るう。
鈍い金属音。
試作ちゃんの斬撃は丸太の軌道を横へ流す。
魔女を逸れた丸太は地面に激しく衝突し、砕け散りながら跳ね飛んでゆく。
残りの数本も同じく難なくいなす。
重く硬い丸太を受けておきながら、試作ちゃんの刀には刃こぼれ一つない。
o川*゚ー゚)o 「…………びっくりした」
( ;;;Фωφ) 「うむ」
o川*゚ー゚)o 「ありがとね試作ちゃん。あんなの当たったら死んじゃうとこだった」
( ;;;Фωφ) 「うそ」
o川*^ー^)o 「ふふふ」
言葉で危機感を匂わせながらも、魔女は笑顔であった。
砕けた丸太の一片を拾い、眼前へ。
これ自体は何の変哲もないただの木だ。
恐らくは麓のあたりで伐採されたまま放置されていたものだろう。
ただし、木片は指で軽く潰すと水が滲むほどたっぷりと濡れている。
僅かな魔力も感じ取れた。
恐らくは水の魔法を用いてこの丸太を発射、魔女を狙撃したのだ。
-
o川*゚ー゚)o (丸太があった場所を考えると……距離は1km弱ってとこかな?)
o川*゚ー゚)o (これだけ重いものを飛ばすことが出来る水魔法の使い手ってなると、限られてくるよねぇ)
丸太の飛来した方向に、再び何かの影が見えた。
今度は物を撃ち出したのではなく魔法そのものだ。
溝色に濁った水の大蛇が、空を泳ぐが如く高速で迫る。
刀を構え、試作ちゃんが再び前へ。
確かに試作ちゃんならば魔法の攻撃も捌くが出来るだろう。
しかしそれはあくまで中級程度までの話。
さらに言えば物理的な破壊力に重きを置いたものに限る。
故に、この魔法は試作ちゃんでは防ぎきれない。
o川*゚ー゚)o 「ほいさー!」
試作ちゃんを襟首を掴んで引っ張り、障壁を張る。
同時に魔法の蛇が襲来。防壁との衝突の寸前に爆音と共に炸裂した。
白い水煙が視界を覆い、硬質化した水の刃が周囲へ飛び散る。
水を変異させた強力な溶解毒だ。
魔力の障壁は問題なく魔法を防いでいるが、周囲の地面はみるみるケロイド状に変化していく。
真面にこの雨を浴びれば骨すら残らず、地面を流れるヘドロになっていたことだろう。
-
o川*゚ー゚)o 「おっ返しぃ!☆」
溶解毒の魔法をやり過ごしきったと共に、魔女は腕を振るった。
電光に似た魔力の閃が天に走り、巨大な火炎の礫を複数出現させる。
小さな町ならば一つで十分火の海にすることが可能な爆破魔法。
それが、数にして13。
これら炸裂すれば、地上の周囲数kmは蒸発を約束された灼熱と化すだろう。
対して。下方から強い魔法の輝きが爆ぜる。
爆破魔法と同数の水魔法の槍が、それぞれの中心を打ち貫いた。
相対する魔法の邂逅。
真っ先に閃光が目を焼き、天地を揺るがす轟音が次いで鼓膜をしびれさせる。
吐き出された紅蓮の熱は次々に隆起し膨張し、青い空を暁の色に染めた。
( ;;;Фωφ) 「む?」
炎は、麓の一帯を覆いつくしている。
が。地表にまでは届かず、上空で煮えたぎっているばかりだ。
見れば、爆破の範囲よりも広く、濃密な霧が地表を覆い尽くしている。
これが、火炎の侵攻を妨げている。
防御魔法の一種だ。
正面から受け止めるのではなく、柔軟性を活かし力を逸らすタイプ。
直撃であれば破ることが出来たはずだが、先に炸裂させられたため力が足りなくなったらしい。
ついつい、口元が吊り上がる。
ここまで本気で力を高めてきた彼らに失礼なのだけれど、その有能さに心が震えて仕方がない。
魔法が発動してから、数秒程度の間に適切な対応。
単に魔法の能力が高いだけの人間では、魔女の攻撃は防げない
-
o川*゚ー゚)o 「……さ、今の攻撃の意味は伝わったよね」
魔女が再度腕を振ると、未だ残っていた爆炎が、何かに吸い込まれたかのように収束する。
入れ代りに、高濃度の魔力を全力で垂れ流した。
ちょっとしたフェイクだ。探知魔法越しでは、強大な魔法を準備していると判断するだろう。
o川*゚ー゚)o 「いつまでもそんなとこに居ると、周り全部巻き込んで消しちゃうぞ☆」
過激な矢文の返事は、すぐに届いた。
俄かに頭上を覆うどす黒い雲。
魔法による天候操作だが、ただの雨招きなどでは無い。
落ちてきた一つ目の雨粒が、空を見上げていた魔女のローブの裾を裂く。
地面とぶつかる音は、水では無く金属のそれ。
ちらりと視線を向けると、固体化した水の刃が地面に突き刺さっている。
二つ目から次は、滝のような土砂降りであった。
刃の雨が視界を白に染め、けたたましい激音が聴覚を埋め尽くす。
即座に発動した障壁によって魔女と試作ちゃんは守られているが、魔法の傘はすぐに穴だらけになってゆく。
数度に渡って張りなおすことで凌ぎ切り、魔女はボロボロの障壁を破棄した。
o川*゚ー゚)o 「あくまで狙撃戦する気……?」
( ;;;Фωφ) 「ギュード!!」
敵の座標を探り、反撃を打とうとした魔女の背後。
地面に刺さったままであった水の刃の群れが液体に戻り、蔦の形状を取って発射された。
試作ちゃんが即座に切り払ったが、次々放たれる蔦に手数が追いつかず、魔女は四肢と胴を拘束される
煩わしげに振り払おうとした魔女の眼前。
一体いつの間に接近していたのか、二人の人影が襲来する。
ローブを羽織り、フードは目深で顔は見えない。
それぞれに意匠の異なる剣を持ち、線対象に構えながら魔女へ突進する。
長距離を飛行してきた勢いのまま、交叉させる形で魔女の首に刃を叩き付けた。
-
残響。
火花が散り、金属の飛沫が爆ぜる
瞬時に割って入った試作ちゃんの二刀が、双斬を防ぎ弾いた。
二人組は斬りつけたまま脇を抜け、濡れた地面を滑り、手を着いて向き直りながら停止する。
一切の間を置かず、片方がもう一方に剣を投げ渡し魔法式の組み立てを開始。
両手に剣を持った方は、数歩濡れた地面で足を空回りさせつつも、獣の如く駆けだす。
魔女は水の拘束を全て蒸発させ解除。
迫る双剣持ちに、手を翳す。
無色透明、魔力反応も無い、波動の砲撃を二発。
上半身を木端微塵にするつもりだったが、突如現れた水の壁が蒸発しながらも直撃を妨げる。
白い水煙をぬけ、剣士が跳躍。
腕を交叉し、柄尻を胸に押し当てた体勢で、双刃を魔女に。
十分な勢い。
対応は髪の毛数本分遅れる。
そう判断した魔女は、防御でなく攻撃の魔法を選択した。
彼女が捨てた守りは、二刀閃かす試作ちゃんが肩代わりする。
( ;;;Фωφ) 「“二刃一瘡”!!」
試作ちゃんの振るう、連なる二つの斬撃。
飛び掛かっていた双剣の男は、空中でありえない制動をし、急に後退した。
惜しい。今の謎機動が無ければ、試作ちゃんの刃は男の胴を割っていただろう。
自身戸惑う挙動にバランスを崩した男。
魔女は彼に対し魔法を発動する。
拳大の衝撃波を、自分で数えるのも面倒なほど多量に放つ。
今度こそ捕らえた。
その確信を砕くように、もう一方の男が、杖を構えて前に出る。
-
周囲の水が瞬く間に杖の男の背後に集約する。
そこからさらに蛸や烏賊の足のように形を与えられた水の刃が、的確に衝撃波を迎え撃った。
水が爆ぜ、白い霧が視界を荒々しく隠す。
百にも及ぶ魔女の攻撃を、霧と轟音に分解してやり過ごした男は、涼しげな顔のまま、小さく息を吐いた。
攻撃の余波で、二人ともフードが外れている。
表情の違う、同じ顔。
( ´_ゝ`)
剣の方は、静かながらも激情の覗く目元。
(´<_` )
杖の方は、反面感情を漏らさぬ冷たいほどの無表情。
魔女は、追撃を放つことなく、笑った。
口を三日月にし、唇の裏に舌を滑らせる
サスガ兄弟。
ただの人間の領域で言えば最高クラスの魔法使いにして剣士。
魔女に「苦戦した」と思わせた数少ない真人間夫婦の息子たち。
退屈な魔女の人生における、貴重で希少で良質な余興。
素の性能でも及第点の彼らが、万全以上とも言える準備をしてやってきた。
さまざまな目的を失念しそうな程、魔女の心は滾っている。
-
(´<_` ) 「……貴様のことだからどうせ来ることは知っていたのだろうから余計な前置きはいらないはずだ。だから一つだけ聞いておく」
( ´_ゝ`) 「オトジャ、殺せばいいだけの話だ」
(´<_` ) 「……妹の手足はどこだ」
o川*゚ー゚)o 「ああ、イモっちゃんの?それならちゃんと大切に保管してるよ」
魔女が指を鳴らす。
すると、虚空に小さな子供の手足が、綺麗に揃えられた状態で現れた。
滞空するその四肢は、淡い魔力のベールに包み込まれている。
o川*^ー^)o 「ちゃんと、胴体に合わせて成長させてあるから安心してね」
( ´_ゝ`) 「…………」
o川*゚ー゚)o 「この手足に見合う他の素材が中々見つからなくて。いっそイモっちゃんの身体全部使えば早…………」
魔女の言葉を切ったのは、サスガ兄弟の兄、アニジャ=サスガの投げつけた剣だった。
試作ちゃんが受け流し、回転しながら地面を滑ってゆく。
(´<_` ) 「抑えろ、兄者」
( ´_ゝ`) 「……わかってる」
アニジャ本人はその場にとどまってはいるが今にも飛び掛かって来そうだ。
そこまで体を震わせながらも堪えているのは、憤怒の情を爆発させたところで倒せる相手でないと理解しているからだろう。
-
o川*゚ー゚)o 「…………これね、実は存在概念的には胴体とつながったままなの。
私の魔法で無理やり切り離した状態に誤魔化しているから、こうして別々の場所にあるけれど、ね」
魔女が見せびらかすようにイモっちゃんの四肢をクルクルと回した。
付け根、本来胴と繋がっていた断面には綺麗に皮膚が張り、その表面には掘り込みの魔法陣。
今、故郷の町で寝たきりの生活をしている胴体の方にも似た魔法をかけてある。
o川*゚ー゚)o 「だから、私を倒して魔法の効力が切れれば、勝手に元に戻るわ」
現物を見せたところで、魔女は手足を元の保管場所へ転送。その場から避難させた。
o川*゚ー゚)o 「シンプルでいいでしょ?イモっちゃんの手足を気にして、半端なことなんてしなくていいからね」
( ´_ゝ`)
(´<_` )
o川*゚ー゚)o 「と、いうわけで☆」
魔女の姿が、大人の妖艶な肢体へ変化。
今回はいつものドレスの上に、金糸で装飾を施された漆黒の法衣を羽織纏う。
o川*゚ー゚)o 「二人の気兼ねもちゃんと解消したし☆」
( ´_ゝ`)
(´<_` )
o川*^ー^)o 「あらゆる卑劣、あらゆる姑息、惜しまず使ってかかっておいで―――」
-
o川* ー )o 「―――かわいいかわいい、ぼうやたち」
.
-
.
-
終わりんこ
章間&捕捉要素の強い回でした
流石兄弟の戦いはまだ始まったばかりだ
流れ上ごちゃごちゃしそうなところを校正段階で必要最低限に削って後回しにしたりすることが割とあるので
状況・設定の説明足んねーぞく糞がみたいな意見は割と積極的に聞きいてゆくスタンス
そもそも後でちゃんと触れるつもりだったりするし、毎回すぐ次の話でってわけにはいかないかもしれないけどNE
次は未定。
後々を考えると年内にあと二回くらい投下したいところ
-
おっつうううううう!!!
ああああもう流石兄弟かっこよすぎ!どうなんのか気になるまじで負けてほしくない!
死なないでくれ!でも試作ちゃんも気になるし二号もいるのかよ戦力過多だろ魔女!
ツンちゃんとヨコホリの決着が楽しみだし毎回楽しませてくれるぜまったく
次も楽しみにしてる!!まじおつ!!
-
乙でした!
ヨコホリ復活&パワーアップはやべぇ・・・
ツンが勝つには精神と時の部屋的なものにでも入るしかないんじゃね?
ついに動き出した流石兄弟の強襲に余裕のキュート
勝てるとは思えないが一矢報いて欲しい・・・!
-
乙!
相変わらず戦闘描写がカッチョイイからよんでてワクワクがとまらねぇや
-
年内にもう二話分読めるとはありがたいおつ
-
ちゃんと更新が来ることのありがたさよ
乙
-
おつおつ
展開が楽しみで仕方ねぇや
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乙!流石兄弟死なないといいなぁ…
-
乙!次回が楽しみだ
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乙。流石がどこまどおいつめれるか楽しみ
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乙!ツンちゃんとヨコホリがこれからどうなるのか凄く楽しみ!
そして流石兄弟の運命は・・・!次も楽しみにして待ってます!!
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お疲れ様です
ブーンとドクオのコンビでさえ軽くあしらわれて合体とかさせられてんのに
母者たちどんだけ強いんだよ
-
勝てるはずないと思いつつ勝って欲しいという思い
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乙。ミルナパート好き
-
乙!
-
乙乙
-
予告か思うから上げるなw
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時が経つのは早いな
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27話が来ると聞いて
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1681.jpg
-
真ん中はツンさんなのか二刀流だからブーンなのか男前だからツンさんなのか
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真ん中はツインテールだからツンちゃんだな
怒髪天をつくって感じか
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>>576
諸星大二郎みたいな、かなり味のあるタッチだね!乙です。
-
日付代わってからになりそうッス
申し訳ないッス
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待ってるからァー!
-
ゆっくりでよろしいのでお待ちしてます!
-
全裸待機不可避
-
いくよ
かこへんぽいかんじだよ
-
( #´_ゝ`) 「なんでダメなんだよ!!」
∬´_ゝ`) 「……落ち着きなさい、アニジャ」
( #´_ゝ`) 「アネジャは黙ってってくれ。俺は父者と話してるんだ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「……」
アニジャはテーブルに拳を叩き付ける。
向かい合う父はさして驚く様子も無く、冷たい目で兄者を見返した。
そこに親愛の情は一切なく、純粋な侮蔑の意志のみが見て取れる。
それが、まだ幼いアニジャの頭に、更なる血を登らせた。
さらに口を開こうとしたアニジャの前に、手が翳される。
アニジャが鬱陶しそうに視線を向けると、一転冷静に父を見返す、双子の弟の横顔。
(´<_` ) 「……父者、俺も兄者と基本的な考えは同じだ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「やれやれ、オトジャの方はもう少し冷静かと思ったが」
( #´_ゝ`) 「どういう意味だよ!」
(´<_` ) 「兄者、落ち着け。父者、俺は至って冷静だ」
-
荒野の中心に忽然と現れる、オアシスを中心とした酒と娯楽と武力の街、VIP。
その片隅、比較的閑静な住宅街の一軒家にて、その親子喧嘩は行われていた。
家の中心のリビングに居るのは、サスガ家の内四人。
大黒柱であるサスガ=チチジャ、長女のアネジャ、そして双子の兄弟であるアニジャ、オトジャ。
もう二人、母と末っ子の妹が居るのだが、今は席を外している。
一つのテーブルを挟み父と兄弟が向かい合い、姉は壁の傍で両者の動向を監視している。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「異国の内紛に干渉しようと言うのが、冷静な思考の末の提案であると?」
(´<_` ) 「ただの内紛じゃない。奴隷解放を目指す革命だ。力を貸してやるに足る理由はある」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「彼らの国の中で治める問題であることには変わらない。
国として支援することはいいだろうが、直接戦闘に介入するのは領分を越えている」
(´<_` ) 「……チャンネルは、大ぴらにはしていないが、政府側を支援している」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「だろうな」
( #´_ゝ`) 「分かってるならなんで!!」
-
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「何度も言わせるな。アニジャ。領分を越えている」
( #´_ゝ`) 「……」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「確かに私たちが介入すれば、戦争は容易く終息させられるだろう」
(´<_` ) 「……」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「だからこそダメだ。サスガは真理の探究者であって一介の戦争屋であってはならない」
( #´_ゝ`) 「あんただって……!」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「父親に向かってあんたとは何事だ」
( #´_ゝ`) 「あんたで十分だよ、この分からず屋。昔は、あんたたちだって戦争に参加してたんだろ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「それは自国の為であった。それでもなお、私はあの日々を後悔している」
(´<_` ) 「自分の後悔を俺たちに押し付けるわけだ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`) 「そうだ。年長者はそうして、若輩を正しき道に導く役目がある」
-
彡⌒ミ
( #´_ゝ`) 「お前たちのような無能が首を突っ込んで何ができる!!」
ドォッ
(´<_`# ) 「やってみなければ分からぬことはあるはずだ!」
彡⌒ミ
( #´_ゝ`) 「無駄死にして終わりだよ!お前たちは世界の広さも己らの小ささも知らん!」
( #´_ゝ`) 「だから!あんた達の元でそれが分かるってのかよ!」
ゴォオ
彡⌒ミ
( #´_ゝ`) 「いずれ見ることになる!その時を待てと言っているのが分からんのか!!」
(´<_`# ) 「分からんね!」
( #´_ゝ`) 「今俺たちの力を必要としている人が居るかもしれないだろ!!」
彡⌒ミ
( #´_ゝ`) 「大局を見ることも出来ん小僧共が!!」
バチィッ
( #゚'_ゝ゚) 「うっせぇハゲ!」
彡⌒ミ
( #゚'_ゝ゚) 「ハゲてねえよ!!」
ドンッ
(´<_`# ) 「ハゲてはいるだろ!」
∬´_ゝ`) 「……こりゃもうだめね。母者呼んで来よう」
-
魔法を撃ち合い、罵り合いながら空を駆ける三人の阿呆を見上げ、アネジャは頭を掻いた。
こうならないように話し合う機会を設けたのだが逆効果だったようだ。
円滑で穏やかな家庭を望む彼女の気苦労は全く絶えない。
アネジャはV響き渡る魔法の怒号を聞きながら、足早に近所の公園へ向かった。
そこに母と妹がいる。
話し合いの場に居ると弟たちが遠慮するので出かけて貰っていたのだ。
「サスガさんちは今日も仲良しねえ」と空を見上げるご近所さんに頭を下げながら歩くこと、数分。
目的の公園に着くと、母が妹を空高くに放り投げて遊んでいた。
一見して虐待のようだが、投げられている方は満面の笑みで喜んでいる。
∬´_ゝ`) 「母者」
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「分かってるよ。……だから無駄だって言ったんだ」
ドーン!
バゴーン!!
l从・∀・*ノ!リ人 キ キャッキャッ
∬´_ゝ`) 「……早く止めないと、叔父者に迷惑かかっちゃうよ」
-
@@@
@#_、_@
(# ノ`) 「仕方ないね……“紅蓮盛りて―――”」
∬´_ゝ`) 「さぁ、姉者と遊ぼうねイモジャ、あぶないからね〜」
l从・∀・*ノ!リ人 キ キャッキャッ
∬´_ゝ`) 「よく楽しめるわね、この状況……やっぱり血なのかしら……」
火火火
火#_、_火
(# ノ`) 「“―――炎神招来”」
短い魔法式展開の後、ハハジャの体が炎に包まれた。
単に燃えているのではなく、魔法による炎の外骨格を纏っているのだ。
火火火
火#_、_火
(# ノ`) 「アネジャ、イモジャをよろしく頼むよ」
∬´_ゝ`) 「うん」
纏う炎を一際大きく膨らませハハジャは自宅の方向へ飛翔した。
強化した筋力で跳躍、炎の噴射で滞空時間を延ばしているだけなのだが、
中身が母であることもあって人間サイズの隕石にしか見えない。
∬´_ゝ`) 「さて、ゆっくり帰るころには終わるかな」
l从・∀・*ノ!リ人 キ キャッキャッ
-
しばらくして。
∬´_ゝ`) 「ただいま」
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「おかえり」
___ ___ ___
//⌒___ \ //⌒___ \ //⌒___ \
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(( | (( | (( |
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__________/__/_________/__/_______/__/______
∬´_ゝ`) 「さて、晩御飯の用意しなきゃ」
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「今日はカレーにしようかね」
l从・∀・*ノ!リ人 キ キャッキャッ
* * *
-
<_フ;゚ー゚)フ 「じゃあ、何か?それで家飛び出してきたってのか?」
( ´_ゝ`) 「そうだよ」
<_プー゚)フ 「お前ら何歳だっけ?」
(´<_` ) 「もう13歳だ」
<_プ ,゚)フ 「……もうって、俺より一回りも下じゃねえか!」
( ´_ゝ`) 「でもショーグンは戦力になれば誰でも良いって言ってた」
<_プ ,゚)フ 「…………いや、まあ、お前らが役に立つのは散々見たけどよ…………」
(´<_` ) 「エクストは大人なのに弱いよな」
<_プД゚)フ 「よっ……弱くはねえよ!これでも一応隊長やってんだよ!!」
( ´_ゝ`) 「革命軍は人員不足」
(´<_` ) 「ああ、人員不足だな」
<_プ ,゚)フ 「このクソガキ共…………」
-
支援
-
父との喧嘩の二カ月後、双子の兄弟は異国の革命軍のキャンプにいた。
荒野の岩山の麓に出来た洞穴を利用した場所で、いわゆる見張り台としての役割をもっている。
本拠はここからさらに西、本国の人間は知らないオアシスの元の廃墟群にある。
この場に居るのは兄弟と、分隊長であるエクスト=プラズマンと
⌒*リ´・-・リ 「エクストたいちょぉ〜、おばちゃんがくれたよ〜〜」
革命軍により開放され、そのまま革命軍に入った元奴隷のリリ=アウロリ。
本拠へ戻っていた彼女が返ってきたので、丁度四人である。
エクストの部下に当たる兵士は残り三人いるが、今はもう一つのポイントに出張っていて今は居ない。
⌒*リ´・-・リ 「あ、双子ちゃんもいる!食べる?豆の粉で出来た焼き菓子だよ!」
( ´_ゝ`) 「あ、はい」
(´<_` ) 「いただきます」
<_プー゚)フ 「なんでお前らリリには素直なの」
⌒*リ´・-・リ 「リリはお姉さんですから!」
リリは、小柄な胸を精一杯張る。
年齢は兄弟よりも上なのだが、彼女の身体ははるかに年下の少女に見えるほど、不自然に未発達であった。
-
<_プー゚)フ 「リリ何歳だっけ?」
⌒*リ´・-・リ 「14歳!」
<_プー゚)フ 「はぁ〜〜〜、ガキばっかだよなぁ、ウチ」
( ´_ゝ`) 「でもこの中で一番弱いのエクストだよな」
(´<_` ) 「最弱」
⌒*リ´・-・リ 「隊長かっこわるい」
<_プ―゚)フ 「おまえらな……」
⌒*リ´・-・リ 「いいからお菓子食べましょ。はい、隊長」
<_プ―゚)フ 「……おう」
⌒*リ´・-・リ 「よっこいしょっと」
<_プ―゚)フ 「おい、俺に座るな」
⌒*リ´・-・リ 「地面堅い」
<_プ―゚)フ 「わかる」
⌒*リ´・-・リ 「隊長はリリの椅子」
<_プ―゚)フ 「わからない」
-
⌒*リ´・-・リ ポリポリ
つOと
<_プ〜゚)フ ポリポリ
( ´_ゝ`) モグモグ
(´<_` ) モグモグ
⌒*リ´・-・リ 「甘いもの久しぶり〜」
<_プー゚)フ 「な。砂糖どうしたんだろ」
⌒*リ´・-・リ 「どこかから支援があったって聞きましたよ」
<_プー゚)フ 「奇特なトコもあったもんだな。大抵の国が革命の波及を恐れて鎮圧を願ってるだろうに」
⌒*リ´・-・リ 「むずかしい。私たち、自由になりたかっただけなのに」
( ´_ゝ`) モグモグ
(´<_` ) モグモグ
<_プー゚)フ 「大丈夫、勝てるさ。外がどうだって、国内の大半は俺たちの味方なんだ」
( ´_ゝ`) 「…………」
(´<_` ) 「…………」
-
⌒*リ´・-・リ 「じゃ、私向こうの人たちにも持ってくね!」
<_プー゚)フ 「ついて行かなくて大丈夫か?」
⌒*リ´・-・リ 「うん!なんたって私隊長より強いし!」
<_プー゚)フ 「おう。もうちょっと小さい声で言おうな」
( ´_ゝ`) 「今更だろ」
(´<_` ) 「公然の事実」
<_プ ‐゚)フ 「温もりが欲しい」
手を振って出て行くリリを見送る。
小柄で幼く見え、どう捉えても戦闘要員では無いが、事実「隊長より強い」という言葉は冗談では無い。
<_プー゚)フ 「ったく、どんどん生意気になりやがる」
(´<_` ) 「……嬉しそうだが」
<_プー゚)フ 「まあな。ガキが生意気ってのは、健康的で良い」
-
( ´_ゝ`) 「なあ、エクスト」
<_プー゚)フ 「なんだ?」
( ´_ゝ`) 「リリって、奴隷、だったんだよな?」
<_プー゚)フ 「あれ、言ってなかったか?」
(´<_` ) 「ぼんやりとな。詳しくは聞いてない」
<_プー゚)フ 「そっか、すっかり全部知ってるもんだと思ってたわ」
( ´_ゝ`) 「どんな奴隷だったんだ。いくら雑に扱われていても、あんなに傷を負うとは……」
<_プ ,゚)フ 「……あー―……胸糞悪いからあんまり言いたい話でもないんだがな」
(´<_` ) 「それなら……」
<_プ ,゚)フ 「……いや、せっかくだから、聞いてくれ。手短にするからよ」
この国には富豪や貴族など身分の高い人間同士の諍いが起きた場合、
それぞれの所有する奴隷を戦わせその勝敗で落としどころを決める風習がある。
いわば、代理決闘だ。
当人たちの命を懸けずに済むため、些細な諍いでも行われるようになり、
現代ではそれだけが目的の貴族の戯れの一つとなっていた。
リリは、それに使われていたとある富豪の戦闘奴隷の一人である。
金に物を言わせ調教し魔法によって改造し、齢14歳にして、身長140cm未満にして
大型の獣を素手で屠る超人となった。
-
<_プ ,゚)フ 「助け出してすぐは、あんなに表情も豊かじゃなったんだよ。
……やっと、呪縛が取れてきたように思う 」
( ´_ゝ`) 「……」
<_プー゚)フ 「お前らが来てくれたおかげもあると思うんだ。年が近い奴、いなかったからよ」
(´<_` ) 「……役に立てているなら、嬉しいが」
<_プー゚)フ 「んだよ、謙遜か?」
( ´_ゝ`) 「だって、あんまり役に立ててないし……」
<_プ ,゚)フ 「……おら」
( ;´_ゝ`) 「いってぇ!なんで蹴るんだよ」
<_プ ,゚)フ 「腹立つ」
( ;´_ゝ`) 「なんでだよ」
<_プ ,゚)フ 「お前等が役に立ってないんだったら俺は何だ、極潰しか?」
(´<_` ) 「エクストは人が良いから」
( ;´_ゝ`) 「うん」
<_プ ,゚)フ 「生々しいフォローやめろよ」
-
(´<_` ) 「……次の作戦、リリも連れていくのか?」
<_プ ,゚)フ 「ショーグンはそのつもりだ。俺も、アイツの戦力は必要だと思ってる」
( ´_ゝ`) 「……いいのか?」
<_プ ,゚)フ 「なにが」
(´<_` ) 「エクストの、リリへの接し方は、戦力とかそういう観点じゃないように見える」
( ´_ゝ`) 「うん」
<_プ ,゚)フ 「……そりゃお前ら、あいつをただの「武器」とは見られねえだろ」
( ´_ゝ`) 「……」
(´<_` ) 「……」
<_プ ,゚)フ 「なんだよ」
( ´_ゝ`) 「まともな大人だ」
(´<_` ) 「初めて見た」
<_プ ,゚)フ 「お前らやっぱり俺をバカにしてるよな?」
* * *
-
夜。夕刻に一旦仮眠を取った兄弟は、二人で見張りについていた。
昼間は出張していた三人も戻り、他の兵は皆洞穴の奥で眠っている。
荒野の夜は冷える。
アニジャは毛布にくるまり、索敵の魔法を見つめていた。
球形に浮き上がる青いビジョンには、なんの反応も映っていない。
( ´_ゝ`) 「…………寒いな」
(´<_` ) 「兄者、湯を沸かしてきた」
( ´_ゝ`) 「流石だなオトジャ」
(´<_` ) 「……どうだ?」
( ´_ゝ`) 「有視界範囲には接近は無い。探知もとりあえず反応は無いな」
(´<_` ) 「変わろう。わたせ」
( ´_ゝ`) 「おう……」
(´<_` ) 「……接続良好。探知範囲にノイズ無し」
-
静かな夜だった。
空は晴れており、お蔭で気温は低いが、風はさほど強くない。
時折吹くのに身を縮めればよい程度で、この荒野としては穏やかな方である。
アニジャは受け取った湯のカップで指を温めながら。
オトジャは索敵の魔法の精度を高めながら、透明な空気の夜を過ごす。
見惚れては居られないが、星が綺麗だ。
白く曇る息の先に、はっきりとした星屑の靄が見える。
( ´_ゝ`) 「……勝てると思うか」
土嚢に背を預け、空を仰ぎ見ながらアニジャが問う。
本人としてはつい零れてしまった言葉に過ぎなかったのだが、態々取り消す気も起きず、弟の返事を待つ。
(´<_` ) 「……さあ、な」
( ´_ゝ`) 「……正直、難しいと思うんだ。俺は」
(´<_` ) 「……」
-
( ´_ゝ`) 「確かに、今のところ民意は革命に傾いてる。でも、それだけじゃ勝てない」
(´<_` ) 「実際のところ、人も武器も足りてないからな」
( ´_ゝ`) 「俺たちみたいなガキが受け入れられたのだって、結局はそういう背景だ」
(´<_` ) 「そこは、ちゃんと腕を買ってもらったと思おう」
( ´_ゝ`) 「つったって、あんまり役に立ててないしな……」 ズズズッ
つU
(´<_` ) 「……まあ、な」
( ´_ゝ`) 「剣も魔法も、もっと上手に使えるつもりだったんだけどな」
(´<_` ) 「……経験の問題だろう。すぐに慣れるはずだ」
( ´_ゝ`) 「ちゃんとした師匠、欲しいよなー。父者たちは頑なに戦闘用の簡易魔法教えてくれなかったし」
(´<_` ) 「……とはいえそこらの魔法使いじゃ、役に立たんがな」
( ´_ゝ`) 「なーにが、真理の探究者だ。肝心な時に使えなきゃ、魔法なんて何の意味も無いっての」
(´<_` ) 「……」
-
⌒*リ´・-・リ 「……やっほー、双子ちゃん」
(´<_` ) 「リリ?もう交代の時間か?」
⌒*リ´・-・リ 「んーん。何となく眠れないから」
( ´_ゝ`) 「冷えるだろ。中に居た方が良い」
⌒*リ´・-・リ 「へーき、もっと寒い夜に木の根を枕に寝たことだってあるもん」 エッヘン
(´<_` ) 「……兄者」
( ´_ゝ`) 「分かってるよ。ほら、リリ。入れ」
⌒*リ´・-・リ 「大丈夫だって」
(´<_` ) 「出てきた今は平気でも、すぐ寒くなるだろ。入れ」
⌒*リ´・-・リ 「んー―……わかった……」 モゾモゾ
⌒*リ´‐ ,‐リ 「……あったかい」
( ´_ゝ`) ズズッ......
つU
-
⌒*リ´・-・リ 「……ねえ、なに話してたの?」
(´<_` ) 「ん?」
⌒*リ´・-・リ 「二人とも怖い顔してた」
( ´_ゝ`) 「……見張りを笑顔でやる奴なんていないよ」
⌒*リ´・-・リ 「それもそっか……」
それからリリも無言になった。
兄弟の間に挟まりながらも体勢を変え、上を向く。
白い息が風に靡いた。
しばし誰も口を開かず、各々に荒野の地平を見つめる。
リリの視線の先には僅かにぼんやりと灯りの見える、王国の城下町があった。
⌒*リ´・-・リ 「双子ちゃんは、革命に味方したくて、家出してきたって、たいちょーが言ってた」
( ´_ゝ`) 「ああ」
⌒*リ´・-・リ 「なんで?」
( ´_ゝ`) 「なんでって、言われてもな……」
⌒*リ´・-・リ 「私たちが可哀想だから?」
( ´_ゝ`) 「そうじゃないよ。現状なんて、来て初めてちゃんと把握したんだから」
-
(´<_` ) 「……都合がよかったんだよ」
⌒*リ´・-・リ 「つごー?」
( ´_ゝ`) 「オトジャ」
(´<_` ) 「今更リリたちに嘘を言ってどうする」
⌒*リ´・-・リ 「どういうこと?」
(´<_` ) 「自分たちの力を試したかった。そのために、戦場が必要だったんだよ」
( ´_ゝ`) 「……大義名分をもって、心置きなく力を振るえる戦場が、な」
⌒*リ´・-・リ 「それが、革命軍だったの?」
(´<_` ) 「そうだ。世論には支持されているはずが、状況は劣勢の革命軍。これ以上の場所はないと思った」
( ´_ゝ`) 「奴隷制が残ってるのも胸糞が悪いし、敵に対して遠慮しなくて済むと、思ったんだ」
⌒*リ´・-・リ 「……そうだったんだ」
( ´_ゝ`) 「……すまん」
⌒*リ´・-・リ 「……」
(´<_` ) 「……今は、ちゃんとお前たちを勝たせたいと思っている」
⌒*リ´・-・リ 「……」
-
再びの沈黙。
珍しく風がやみ、静けさが耳に痛い程だ。
双子は時折魔法の管理を交換しながら地平に怪しい動きないか目を凝らしている、
どれほどの時間が経っただろうか。
アニジャの持っていた飲み残しの湯が完全に水に戻ったころ、リリの頭が前後に揺れ始める。
顔を見ると、瞼を重たげに今にも寝入ってしまいそうだった。
(´<_` ) 「……リリ」
⌒*リ´ - リ 「……寝てないもん」
( ´_ゝ`) 「……」 ファサッ
⌒*リ´ - リ 「…………アニちゃん、オトちゃん」
( ´_ゝ`) 「なんだ」
⌒*リ´ - リ 「……それでもね、助けに来てくれて、嬉しい」
( ´_ゝ`)
⌒*リ´ - リ 「……ありがとう」
( ´_ゝ`)
(´<_` )
⌒*リ´ , リ スゥー―......
-
( ´_ゝ`) 「……」
(´<_` ) 「……」
⌒*リ´ , リ スヤスヤ......
( ´_ゝ`) 「……来て正解だったと、思うか」
(´<_` ) 「……それはこれから決まることだろ」
( ´_ゝ`) 「……そうだな」
ヒュゥゥゥゥ......
カサササッ......
* * *
-
怒号の響き渡る戦場の中を、エクストは駆けていた。
双子とリリ、よりによって一番気にかけなければいけない子供たちとはぐれてしまった。
他に残っていた部下も既にやられている。
エクスト達が遊撃隊として援護するはずだった本体もほぼ壊滅状態。
最後の望みをかけて行った王都侵攻作戦は、この段階で、事実上の失敗だった。
<_フ;゚Д゚)フ 「ハァッ、ハァッ……、せめて、アイツらをにがさねえと……!」
<_フ;゚Д゚)フ 「……クソッ!いねえ!
<_フ;゚Д゚)フ 「双子が居りゃあ、大丈夫だろうが……」
〈 =oOo〉 「……いたぞ!テロリストの残党だ!」
<_フ;゚Д゚)フ 「……ああ、やってらんねえ……!!」
エクストは戦わずに逃走を選択。
侵攻に失敗した今、優先すべきは一人でも多くの命を連れて逃げること。
それは、作戦開始前にリーダーである元将軍が言っていたことでもある。
-
一方、隊からはぐれた兄弟とリリは、破砕された民家の陰に身を寄せ、息を顰めていた。
兄弟は体の数か所に擦り傷があるのみで、目立った外傷はない。
問題は、リリの方である。
敵の魔法兵の放った爆破魔法から兄弟を庇い、飛び散った家屋の破片を腹に受けてしまったのだ。
絶え間なく敵と遭遇するため真面に処置する余裕が無く、破片は刺さったままになっている。
( ;´_ゝ`) 「エクストは?」
(´<_`; ) 「分からん。あれでも腕は立つから、死んだとは思いたくないが……」
⌒*リ´ - リ 「……ぅ、」
( ;´_ゝ`) 「リリ」
⌒*リ´ - リ 「……ごめん、双子ちゃん……私、お姉ちゃんなのに……」
(´<_`; ) 「喋るな、今傷を……」
( ;´_ゝ`) 「……?!」
魔法による止血を試みようと、オトジャが魔法式を展開する。
しかし、組み上がる前に荒々しい足音が響いた。
敵兵だ。
恐らく、魔法適正のある者に、魔法の気配を察知されたのだ。
-
〈 =oOo〉 「誰かいるのか?!」
( ;´_ゝ`) 「チッ」
〈 =oOo〉 「……おまえらぁ、革命軍のガキだな?」
兜の隙間から、兵士の口が歪むのが分かった。
こちらが子供とみて、油断したのだろう。
あるいは、良からぬ性癖によって喜んだとも取れるが。
しかし、その傲慢は、兄者が間を詰め、鎧の隙間より剣を突き刺すのに十分な時間であった。
〈 =oOo〉 「…………あえ?」
剣を抜くと同時に血が噴き出す。
アニジャは崩れ落ちる敵兵の体を慌てて支え、音が経つのを防いだ。
しかし、力を失った手から剣が落ち、けたたましい音を鳴らす。
「なんだ、今の音は?」
「おいどうした、何があった!」
( ;´_ゝ`) 「……くそ、ここもダメだ」
-
(´<_`; ) 「一先ずここを出よう」
⌒*リ´ - リ ハァッハッ......
( ;´_ゝ`) 「リリ、辛いけど我慢してくれ」
⌒*リ´ - リ 「ごめん、ね…………」
(´<_`; ) 「……急ごう!」
「居たぞ!!」
( ;´_ゝ`) 「!」
移動しようと、建物の陰から顔を覗かせた瞬間を、物音に寄ってきた敵兵に見つかる。
敵は五人。全員がぬかりなくすぐに武器を構えた。
先ほどのような奇襲は難しい。傷を負ったリリを抱えながら正面切って戦うには辛い人数差だ。
( ;´_ゝ`) 「クソ……」
(´<_`; ) 「アニジャ、俺が何とか道を開くからリリを連れて……」
「オトジャァアアアッ!!下がれェエエ」
( ;´_ゝ`) 「「!!?」」(´<_`; )
-
突然の雄叫び。
その方向も定かでないうちに、壁の向こうから人影が飛び出した。
煤焦げた壁の上部を蹴ったその男は、敵兵の前に。
着地と同時に手斧を振り下し、兜ごと敵の頭をかち割った。
動揺する残りの四人のうち、最も手近に居たもう一人に、すぐさま斧を振り上げる。
敵兵は反射的に盾を顔の前に引き上げたが、これはブラフ。
振り上げられた斧は半円を描いて横に滑り、がら空きになった肋骨を肺ごと割り潰す。
( ;´_ゝ`) 「エクスト!!」
突然現れたその男は、はぐれた仲間、遊撃隊隊長のエクストだった。
全身が血と埃にまみれており、相当の修羅場を強引に抜けてきたことが問わずともわかる。
<_フ;゚Д゚)フ 「ガキども!行くぞ!!」
〈 =oOo〉 「残党がァ!させるか!!」
<_フ;゚Д゚)フ 「やるかオラァアアアア!!!」
(´<_`; ) 「“蒼海に潜りて―――碧き刃を振るい―――魚を断つ!!”」
〈 =oOo〉 「?!」
オトジャの放った水の刃が残っていた敵兵の首を切り裂いた。
エクストに気を取られていたせいか防御は無し。断たれた動脈から血飛沫が噴き出す。
-
<_フ;゚ー゚)フ 「……おいおい、俺要らなかったじゃねーか。流石だな」
(´<_`; ) 「いや、助かった。ありがとうエクスト」
<_フ;゚ー゚)フ 「良いから行くぞ、市街に脱出する!」
エクストは再会を喜ぶ余裕も無く、すぐに走り出した。
今は彼の導きに従うしかない。
兄弟もリリを担ぎ、すぐにそのあとを追う。
( ;´_ゝ`) 「どうやって抜けるんだ?どこもかしこも」
<_フ;゚ー゚)フ 「いざって時の隠し通路があるんだ、そこまでいけば……」
(´<_`; ) 「……!?待て!!」
最後尾で魔法による探知を行っていたオトジャが、前を行くエクストとアニジャの襟首を掴む。
あまりに急だったので、二人は首を絞められ、目を白くする。
オトジャはふらついた男達とリリを引っ張り、瓦礫の影に身を隠した。
少し顔を覗かせて睨む先に居たのは敵の兵士たち。
-
〈 =oOo〉 「居たか?」
〈 =oOo〉 「新たに四名の残党を捕縛しました。やはりこの枯れ井戸、地下通路になっているようです」
〈 =oOo〉 「よし、これを餌として罠をはれ!くれぐれも逃がすなよ!!」
敵の数は十余名。
全員が武装しているが、見たところ戦闘の痕跡は無い。
恐らく、残党狩りを任された部隊なのだろう。
複数人で組みながら、近辺の瓦礫の陰などを探っている。
隠れている四人に気付くのは時間の問題だ。
(´<_`; ) 「ダメだ……ここは、もう」
<_フ;゚Д゚)フ 「そんな……嘘だろ……」
⌒*リ´ - リ 「ハァッ、ハッ……ゥグ……」
( ;´_ゝ`) 「……エクスト、離れよう」
<_フ -)フ 「……ああ」
-
<_プ-゚)フ 「……リリの傷はどうだ」
(´<_` ) 「急所は外れてる。少し血を流し過ぎたが、リリなら回復は見込める」
<_プー゚)フ 「……そうか」
目的にしていた集合ポイントから、さらに身を隠し移動したのは、とある民家の地下倉庫だった。
入口に丁度良く瓦礫が覆いかぶさり、入ることは出来るが目立たないようになっている。
ここならば、しばらく敵の目をやり過ごすことが出来るだろう。
( ´_ゝ`) 「……周囲はダメだ、やっぱり王国軍がうじゃうじゃしてる」
(´<_` ) 「……ここまで露骨に残党狩りしてるって、ことは」
<_プ-゚)フ 「……俺たちも、終わりだな」
( ´_ゝ`) 「……」
(´<_` ) 「一体、どうして王国軍はあんなに一気に盛り返したんだ」
<_プ-゚)フ 「数人、変な魔道具を使う兵が居た。あいつらの魔法で、主力の部隊がやられて総崩れだ」
(´<_` ) 「……魔道具か。ものによっては、確かにな」
( ´_ゝ`) 「なんとかできないのか」
(´<_` ) 「……」
-
<_プ-゚)フ 「……お前ら、怪我は?」
( ´_ゝ`) 「大したものは無い。戦闘の継続は可能だ」
(´<_` ) 「同じく。魔力もまだ十分ある」
<_プー゚)フ 「よし、じゃあお前ら二人は逃げろ」
( ´_ゝ`) 「……は?」
<_プー゚)フ 「お前ら二人だけでなら何とか逃げられるだろ。ここを感づかれて囲まれる前に逃げろ」
( ;´_ゝ`) 「そんなこと、出来るわけないだろ!」
<_プー゚)フ 「俺は裏切り者の元国軍兵士だし、リリは奴隷だ。絶対に見逃しちゃもらえないが、お前らは違う」
( ;´_ゝ`) 「違う、そういうことじゃない!そんなこと、やったらダメだって言ってるんだ!」
<_プー゚)フ 「お前らには世話になった。最期まで付き合わせるわけにはいかねえよ」
(´<_` ) 「……あんたはどうするんだ」
<_プー゚)フ 「そうさな……リリを連れて投降。革命軍残党の情報でも嘯いて命乞いしてみるか」
( ;´_ゝ`) 「だめだろそんなの!」
(´<_` ) 「アニジャ声がでかい」
( ;´_ゝ`) 「……万が一制裁を逃れられても奴隷に戻っちゃうんだぞ。いや、むしろ前よりも……」
<_プー゚)フ 「お前らには関係ないことだ。お前らが残ったって結果は同じだしな」
-
( ;´_ゝ`) 「そうかも、しれないけど!」
(´<_` ) 「……待て、二人とも」
潜ませた声でオトジャが二人を制す。
耳を澄ませると、地面を踏む足音が複数。
たまたま通りがかったというには、人数が多すぎる。
(´<_` ) 「気づかれた」
<_プ-゚)フ 「チッ」
(´<_` ) 「……人数は、二十弱か。まだ増えるかもな」
<_プ-゚)フ 「お前らなら何とかぬけられるだろ。俺が囮になるから」
( ´_ゝ`) 「……逃げないよ」
<_プ-゚)フ 「いうこと聞けクソガキ」
( ´_ゝ`) 「お断りだ。俺たちは大人の言うことが聞けないからここに居るんだ」
(´<_` ) 「まったくだな。どうする気だ」
( ´_ゝ`) 「今取り囲んでる兵士を出来るだけ倒して、挑発した上で引きつけて逃げる」
(´<_` ) 「……その隙に、リリを連れて逃げられるかエクスト」
<_プ-゚)フ 「お前ら……」
-
( ´_ゝ`) 「時間が無い、行くぞオトジャ」
(´<_` ) 「ああ」
<_プ-゚)フ 「おい!」
( ´_ゝ`) 「俺たちは自分たちの力を測りたくて。強くなりたくてここに来た」
(´<_` ) 「せめてあんたらだけでも助けられなきゃ、コケンに関わるんだ」
<_プД゚)フ 「だから……」
制止しようとするエクストを無視し、双子は地下室を飛び出した。
間もなく、怒号と剣のぶつかり合う音が響いてくる。
とても二対多とは思えないほど、絶え間なく激しい戦闘の音。
それが、双子がまだ生きている証明であり、これから殺されるかもしれない不安でもあった。
<_プ-゚)フ 「……クソ……ッ!」
⌒*リ´ - リ 「たい……ちょお……?」
-
エクストの腕の中で、リリが意識を取り戻した。
状況を呑み込めていないのか呆けた目で顔を見上げてくる。
そっと、優しく、エクストはその額の脂汗を指で拭った。
<_プ ,゚)フ 「リリ、大丈夫か?」
⌒*リ´ - リ 「……私は、平気。それより双子ちゃん……」
<_プ ,゚)フ 「……」
⌒*リ´ - リ 「わたしも戦うから……双子ちゃんを、助けにいこう」
<_プД゚)フ 「そんな傷で戦ったら死んじまうだろうが」
傷に響かないよう、少しだけ強くリリを抱きしめて窘める。
そんなエクストの頬に、小さな手が伸びた。
傷跡だらけの腕だ。
刃物では無く、鞭や鈍器で作られた引き裂かれたような抉れたような歪な白い蛇行。
エクストはその痕にそっと指を這わせる。
僅かに感じる凹凸は、それがいかに深くリリを苦しめていたかを物語っていた。
-
⌒*リ´ - リ 「……わたしは、ほんとうなら、もうしんでた」
<_プ-゚)フ 「……ッ」
⌒*リ´ - リ 「……あの時たいちょーがきてくれなかったら、きっと……」
<_フ )フ
⌒*リ´ - リ 「……あそこには怖いものしかなかったもの」
<_フ )フ
⌒*リ´ - リ 「だから、これでじゅうぶんだよ。自由を夢見れたそれだけで………」
<_フ )フ
⌒*リ´ - リ 「…………だから」
-
リリの言葉を、轟音が遮った。
落雷の音。ただ、雲もない今日の陽気には、あまりに突拍子の無い音だ。
エクストの頭に、仮面をかぶった敵兵の姿が浮かんだ。
本来であればもっと善戦できたはずの革命軍を壊滅にまで追い込んだ、妙な魔道具を扱う集団。
奴らが用いていたのは、一瞬見ただけではあるが、雷を操る類のものだった。
となると。
⌒*リ´ - リ 「たいちょー、双子ちゃんが……」
<_プ ,゚)フ 「……」
雷鳴を境に、戦闘の音が止んでいた。
立ち去る雑踏も無い。
幾つか聞こえた敵兵の声が聴き間違いでなければ、恐らくあの兄弟は。
<_プ-゚)フ 「……わかった、いくぞ」
⌒*リ´ぅ- リ
<_プ-゚)フ 「ギリギリまで俺を食え、出来るな?
⌒*リ´・-・リ 「……うん!」
* * *
-
〈;;;( ∵)〉 「やれやれ、やっと大人しくなりましたな……」
( ´_ゝ ) 「……クソ」
地下室から飛び出した双子は、実力以上に善戦したといえる。
魔法を撃ち、剣を振るい、倍も生きた大人の兵士たちを鬼気迫る勢いで倒し伏した。
残党を狩るつもりでだらけた敵兵たちはその気迫に圧倒され、一見して兄弟が勝利するかに思えた。
実際に、勝てると確信した。
魔力は十分。士気も、実力も息を合わせた二人の方が十数の敵よりも勝っていたのだから。
が。
〈;;;( ∵)〉 「さぞ名のある親を持つのだろう。その力、凡百のものとは思えん」
( <_` ) 「……」
〈;;;( ∵)〉 「まあ、我らが『雷虎豹』の前では、所詮小童よ。ククク……」
この、仮面の男が現れ戦況は一転した。
腕の魔法具から放たれた痛烈な稲妻が、圧倒的な威力で兄弟を焼き払ったのだ。
辛うじて展開した防御魔法も功を奏すことは無く、アニジャ達は撃で戦闘不能に陥っていた。
仮面の男はくぐもった笑いを漏らす。
アニジャは、痺れと痛みに満ちた体を起こそうとするが、指先すらも動かない。
無様であった。
叫びを上げそうになる。
揚々と家を飛び出し、よその戦場に首を突っ込み、勝利に導くととすらできず。
そして、この有様だ。
格下の兵相手にどれだけ無双しようと、一たび手練れに会えばあっさりと負ける。それでは意味が無い。
父の言葉が、苦痛で鈍る頭の中に反響する。
-
〈;;;( ∵)〉 「もう抵抗も出来ませんでしょう」
〈 =oOo〉 「手を煩わせてすまなんだ。後は我々が処理しよう」
仮面の男に変わり、敵の兵士がアニジャの前へ。
腰の剣を抜き、振り上げる。
〈 =oOo〉 「多く仲間を殺したてめえらは、この場で首を落とす」
〈 =oOo〉 「待て、生きてる者は捕らえよと……」
〈 =oOo〉 「ばれやしねえ!殺さねえと腹の虫が収まらねえんだよ!」
陽光を浴びた剣がぬらりと光る。
アニジャは歯を食いしばり、その鈍色の死を睨むしかできなかった。
〈 =oOo〉 「死ね!」
振り上げられた剣が今まさにアニジャに振り下ろされんと言う時、豪快な破砕音が響き渡った。
地下倉庫への入口に覆いかぶさっていた木の棚が木端微塵になり、空高く舞う。
誰もがその光景を目で追った。
剣を振り上げていた兵も、咄嗟に身を竦めそちらに顔を向けた。
雷撃を受け瀕死となったアニジャとオトジャも、それを見ていた。
そして、心から落胆する。
-
瓦礫を破壊し、地下室から飛び出したのは一人の少女だった。
年は十四。しかしながら身の丈は精々130cmと少しだけ。
リリ=アウロリ。
せめて無事に逃げ延びてほしいと願った彼女は、木端舞い散る中をまるで猫を彷彿とさせるしなやかさで回転する。
多くの視線と意識を引きつけたまま落下し、四足を使っての着地。
そのまま獣の如く、体を屈め縮める。
〈 =oOo〉 「が?!」
全身の力を弾けさせ、リリは最も近くに居た敵兵に飛び掛かった。
俊敏の一言。
取りつかれた兵士が抵抗した数秒の間に、首がへし折られる。
〈 =oOo〉 「改造奴隷か!」
リーダー格が叫ぶのよりも早く、リリは次の獲物へ飛び掛かる。
狙ったのは、アニジャを今まさに殺さんとしていた兵士。
自身が狙われていることに気づいたその兵は、迫るリリに振り上げていた剣を叩き付ける。
-
しかし、遅い。
リリは無秩序ともいえる機動で斬撃を回避。
そのまま兵士の背後を取り。
⌒*リ#´・Д・リ 「がうー!!!」
股間を下方から、思いっきり掴み上げた。
ダメ押しで、手に触れた柔らかい何かを思いっきり握り潰す。
兵士は蛙のような悲鳴で泡を吐き出し、地面に崩れ落ちた。
この光景に、大半の敵兵がたじろぐ。
⌒*リ#´・Д・リ 「アニっちゃん大丈夫?!」
( ´_ゝ ) 「リリ、なんで」
⌒*リ´・-・リ 「貴方たちが私たちを逃がすために戦うって、言ってくれたから」
( ´_ゝ ) 「馬鹿な……」
⌒*リ#´・Д・リつミ 「がおー!!近づいたらタマタマミンチだよ!!!!」
つミ
小柄で、なおかつ歳不相応に童顔のリリに、敵兵たちが気圧される。
金的とは確かに、ただ殺すよりも遥かに戦意を削げる。
-
〈;;;( ∵)〉 「あの小娘、ただの人ではありませんな」
〈 =oOo〉 「魔法で体を弄られた改造人間だ。お偉い方の玩具だよ。あんな成りで大型の獣を素手で殺しやがる」
〈;;;( ∵)〉 「ほう。それはそれは」
仮面の男が、前に出た。
リリの威嚇に迂闊に近づけぬ他の者どもを尻目に、全く怖気ることなくリリに近づく。
黒衣を纏ったその腕には、金輪の魔道具。
( ´_ゝ ) 「リリ、お前、腹の傷……」
⌒*リ#´・Д・リ 「ヘーキ!たいちょーのこと食べたから!!」
言葉とは裏腹に、リリの足を血が伝って落ちる。
応急処置で塞いだ傷が、全てでは無いが開いているのだ。
背を向けられているためアニジャからは良く見えないが、顔色も決して良くは無い。
当然である。
いくら回復力が常人より優れているとはいえ、瓦礫で負った傷は複雑で、そう容易く治癒するものでは無い。
⌒*リ#´・Д・リ 「がうー!!こっち来ないで!!」
〈;;;( ∵)〉 「こわいこわい」
-
仮面の男が手を翳す。
瞬時に雷光が走った。
リリは腕の動きのみでタイミングを見切り回避。
攻め込まずに距離を取り、別の兵士の陰に回って盾とする。
仮面の男は躊躇わず雷撃を放つ。
リリは機敏に逃走。
取り残された敵兵のみが雷に撃たれ白目を剥いて崩れ落ちる。
〈 =oOo〉 「貴様ッ!」
〈;;;( ∵)〉 「おっと、失敬」
尚も雷撃は止まらない。
リリも一切止まらず、跳ねまわって回避を続ける。
戦闘不能に陥るのは敵兵ばかりではあったが、リリの機動力も徐々に落ちていた。
⌒*リ;´・Д・リ 「ハァハァ……」
〈;;;( ∵)〉 「鬼ごっこは、終わりでよろしいかな」
リリが貧血でふらつき、地面に膝をつく。
消耗の差は歴然だ。仮面の男は特に疲労した様子も無く魔道具をリリに向ける。
( ´_ゝ ) 「リリ!」
⌒*リ;´・-・リ 「ッ!」
-
「終りなのは……」
〈;;;( ∵)〉 「ッ?!」
<_フ#゚Д゚)フ 「てめえだオラァァ!!」
柄の悪い雄叫びと共に飛来した斧が、仮面の男の背中を捉えた。
骨の砕ける音が響き渡る。
見事なクリーンヒットだ。仮面の隙間から血を吹き出し、膝を着く。
<_フ#゚Д゚)フ 「所詮道具頼りのてめえが!」
恐らくは、リリが暴れている間に移動していたのだろう。
元隠れていた廃墟とは別の建物から飛び出したエクストが仮面の男に全力で駆けより。
<_フ#゚Д゚)フ 「狩人気取ってんじゃねえぞクソモヤシ!!」
全体重を乗せたドロップキックを頭部にお見舞いする。
仮面の男は受け身なしの状況でその直撃を喰らい、首をありえない角度にへし折られながら吹き飛んだ。
⌒*リ;´・-・リ 「たいちょー、遅い」
<_フ;゚ー゚)フ 「すまん!だけどこれでなんとか……」
三〈;;;( ∵)〉 三〈;;;( ∵)〉 三〈;;;( ∵)〉 三〈;;;( ∵)〉 三〈;;;( ∵)〉 三〈;;;( ∵)〉 三〈;;;( ∵)〉 ゾ゙ロロロロッ!!
<_フ )フ ;゚Д゚ 「一体何人いるんだよ!!!」
-
( ´_ゝ ) 「……チッ」
( <_` ) 「あり得ない展開でも、無かったがな」
⌒*リ´・‐・リ 「そんな……」
虫のように次々現れた魔道具兵が四人を取り囲んだ。
数は十。
皆、先の一人と同じく腕に魔道具を装着している。
リリが、その場にへたり込んだ。
顔を俯くまではしなかったが、その横顔に希望は見えない。
〈;;;( ∵)〉 「遊び過ぎた阿呆とはいえ同胞を殺されては、われわれも大人しく帰るわけにはいかんのだ」
<_プД゚)フ 「クッソ!」
〈;;;( ∵)〉 「まずは、貴様だ」
<_フ )フ 「!!!」
エクストの体が、雷の光と声に呑み込まれた。
激しい明滅。耳を抜けて頭を貫く轟音。
それでも目を背けられず、光の中にエクストの姿を探した少年少女の前に再び現れたのは。
⌒*リ´ Д リ 「たいっ……ちょお……!」
命も面影も奪い去られた、人型の黒。
自重によって地面に崩れ、そのままピクリとも動かない。
-
⌒*リ´ ‐ リ 「……たいちょう」
〈;;;( ∵)〉 「次は、お前」
( ; _ゝ`) 「だめだ逃げろ!」
(´<_ ; ) 「リリ!」
⌒*リ# Д リ 「やだぁ!!!」
リリの全身が、にわかに膨らんだ。
小さな体に似合わぬ、筋肉の膨張。
四足の獣の如く、地面を握り、全身の力で最も近い仮面の男に飛び掛かった。
( ; _ゝ`) 「リリ!!」
伸ばした手の、その指の間。
アニジャはそこから、少女が消え去る瞬間を見た。
本のページを破りとるような、強制的で圧倒的な排除であった。
〈;;;( ∵)〉 「やれやれ、あまりに恐ろしいので焼き過ぎてしまった。臆病ものはこれだからいかんね」
一人がおどけて肩をすくめると、他の数人から顰めた笑いが漏れる。
目の前に倒れるリリの死骸は、それが本当に人であったか疑う程、原形を留めていない。
-
〈;;;( ∵)〉 「さてと、そちらの双子には、さほど恨みは無いのだが……」
〈 =oOo〉 「おい、待て」
〈;;;( ∵)〉 「なにか
〈 =oOo〉 「そいつらは俺たちが捕らえる。貴様らはもう下がれ」
〈;;;( ∵)〉 「……暴れられたら厄介では?」
〈 =oOo〉 「ふん、このざまであれば関係ない。おい、縛れ」
〈 =oOo〉 「殺さないのですか?」
〈 =oOo〉 「捕らえよとの命だ。晒す首は多い方がいい、とな」
〈 =oOo〉 「悪趣味なことで」
〈 =oOo〉 「口が過ぎるぞ」
〈 =oOo〉 「は、ではただちに拘束し、牢へ!」
双子の体に縄が巻かれて行く。
アニジャは、抵抗せず大人しく拘束されていた。
一瞬魔法を組み上げようとしたオトジャも、それを見て抵抗を諦める。
完全に腕を固められ、強引に連れられる最後、アニジャは首だけで振り返った。
兵士に背を突かれ、向き直るまでの一瞬に見えたリリとエクストは、やはり死んでいる。
* * *
-
〈;;;( ∵)〉 「さてと、そちらの双子には、さほど恨みは無いのだが……」
〈 =oOo〉 「おい、待て」
〈;;;( ∵)〉 「なにか
〈 =oOo〉 「そいつらは俺たちが捕らえる。貴様らはもう下がれ」
〈;;;( ∵)〉 「……暴れられたら厄介では?」
〈 =oOo〉 「ふん、このざまであれば関係ない。おい、縛れ」
〈 =oOo〉 「殺さないのですか?」
〈 =oOo〉 「捕らえよとの命だ。晒す首は多い方がいい、とな」
〈 =oOo〉 「悪趣味なことで」
〈 =oOo〉 「口が過ぎるぞ」
〈 =oOo〉 「は、ではただちに拘束し、牢へ!」
双子の体に縄が巻かれて行く。
アニジャは、抵抗せず大人しく拘束されていた。
一瞬魔法を組み上げようとしたオトジャも、それを見て抵抗を諦める。
完全に腕を固められ、強引に連れられる最後、アニジャは首だけで振り返った。
兵士に背を突かれ、向き直るまでの一瞬に見えたリリとエクストは、やはり死んでいる。
* * *
-
連行された兄弟は、他に囚われた革命軍兵士とは別の、石組みの地下牢に放り込まれた。
恐らく、魔法を使えるがための特別扱いだろう。
こんなところに押し込められなくとも、二人に魔法を使って暴れる気力は無かったのだけれど。
〈 =oOo〉 「処刑は明朝だそうだ。楽しみにしておけよ」
兵士はそう言って去っていき、以降まったく姿を見せなかった。
牢には、ネズミの鳴き声以外の音が無い。
遠くから何かの音が聞こえるが、一体それが何に由来するのかはわからないほどに小さかった。
(´<_` ) 「アニジャ、大丈夫か」
( _ゝ )
(´<_` ) 「……」
-
アニジャは、牢の奥の角に座り込み、膝に顔を埋めている。
入れられて暫く、気力の無い目で彷徨った後、ここに収まった。
それから、一言も言葉を発さない。オトジャは意志の疎通を諦め、自身も石の壁に体を凭れた。
冷たさが心地よくすらある。
いずれ寒さに変わると分かってはいるが、雷を受けた体は未だ満足には動かず、その痛みには丁度いい。
連れられて、幾分時間が経った。
どこからか入り込んで来る陽光が赤いので、もう夕刻なのだろう。
他の兵士たちは、どうなっただろうか。
牢にくる道すがら、何人かが捕虜になっているのは見た。
それ以外の人間は、どうなったのか。
逃げ延びて反攻の期を待っているのか、それとも。
エクストと、リリの最期を思い出し、オトジャも顔を覆った。
不意に、何度もリフレインされる。
父や母であれば、あの仮面の男たちにも負けはしないだろう。
どころか、もっと安全で確実な戦略をもたらし、確実な勝利を与えることが出来たはずだ。
オトジャも顔を伏せ、あらゆる敗北を噛みしめる。
-
それからさらに、どれほど時間が経ったろうか。
差し込んでいた光がなくなり、離れたところに座るアニジャがはっきり見えない程度に暗くなる。
( ´_ゝ`) 「……ッ?」
(´<_` ) 「……?」
一向に動かずにいたアニジャが立ち上がり、壁に耳を当てた。
真剣な目つきだ。
一瞬気が違ってしまったのかと心配したが、どうやらそうではない。
(´<_` ) 「どうした」
( ´_ゝ`) 「聞こえないのか、戦闘の音だ」
(´<_` ) 「?」
倣って、オトジャも壁に耳をつけた。
意識を集中すると、確かに何やら騒がしい音が響いてきている。
戦闘というより、オトジャにはもっと違う何かに思えた。
( ´_ゝ`) 「いかなくちゃ……」
(´<_` ) 「どうする気だ」
( ´_ゝ`) 「きっと、残っていた人たちが戦ってるんだ。せめて援軍に行かないと」
(´<_` ) 「何言ってる、仮に残党が居たとしても今の俺たちじゃ」
( ´_ゝ`) 「俺は、諦めるためにあの家を出たんじゃない」
-
止めようとオトジャを無視し、アニジャは魔法を組み始めた。
雷によって全身にダメージを負った今の状態で魔法を使うのは不可能だ。
当然アニジャも途中で展開を誤り、魔力を霧散させ、また最初から組みなおす。
稀に出来上がって放ったとしても、入口を塞ぐ堅牢な檻を破壊することはできない。
何度も、何度も繰り返す。
できそこないの水の刃を打ちつけては無駄にし、また組む。
一発たりとも真面に発動はせず、やがてアニジャの魔力が尽きた。
( ´_ゝ`) 「オトジャ、魔力を貸してくれ」
(´<_` ) 「アニジャ、もうやめろ」
( # _ゝ ) 「だから!俺は…………」
アニジャが叫んだ瞬間に、牢全体が大きく揺れた。
地震、では無い。
腹に響く音と、共に魔力の振動が肌を痺れさせる。
何者かが、魔法でこの牢を含む建物全体を破壊しようとしているのだとすぐに気付いた。
( ´_ゝ`) 「……な、」
戸惑い、天井を見上げると同時、突然に月の輝く夜空が表れた。
続いて、これまでと異なる地鳴り。丁度、大きな建物が倒壊したような音だ。
震動がさらに大きくなり、兄弟はそろって地面に尻をつく。
-
「あーっ、やっぱりここだーっ☆」
( ;´_ゝ`) 「……なん、だ?」
(´<_`; ) 「???」
o川*゚ー゚)o 「魔法の気配がすると思ったら、こんなところにも牢屋があったのね」
砂埃が降り落ちる中、その向こうに居たのは一人の女だった。
月の逆光の中でも何故か顔が見える。
無邪気さを感じさせる笑顔で微笑む彼女は、一瞬全てを忘れて見惚れるほど、美しかった。
o川*゚ー゚)o 「よっこしょ」
女は地下牢に飛び降り、兄弟の前に立った。
近くで見ても、近づいたからこそ目が離せない。
魔法により浮力を得ている余波か、髪の毛が月光に舞い、この世とは異なる世界を見ているよう錯覚に襲われる。
o川*゚ー゚)o 「貴方たちもかくめー軍の捕虜だよね?みんな集まっているから、行きましょ」
膝に手を当て屈み、手を差し伸べてくる女。
優しい笑みだ。
呆然として動けないアニジャを見て、そこに少し淋しさが混じる。
-
o川*゚ー゚)o 「そっか、事情が飲めないよね」
手を引っ込め、今度はアニジャと体が触れるほどに近づいてしゃがみ込む。
伸ばした手は、やはり優しくアニジャの頭を撫でた。
o川*゚ー゚)o 「革命軍は勝ったわ。あなたたちの戦いは終わったの」
( ;´_ゝ`) 「……?」
(´<_`; ) 「それって、どういう」
o川*゚ー゚)o 「そのままの意味☆ さ、だから行きましょ。男の子がそんなしょぼくれた顔するものじゃないわ」
再び差し出される手。
女の言葉は、理解しがたかったが、不思議と信頼出来た。
手を受け取ると、アニジャの身体にも浮力の魔法が纏わり、自然に体が立ち上がる。
o川*゚ー゚)o 「さ、あなたも」
(´<_`; ) 「……うん」
オトジャも同じく、補助を得て立ち上がる。
女はそのまま両手で兄弟を引き連れ、夜空に飛び上がった。
-
女と共に空を駆け、辿り着いたのは王宮前の広場。
空から望む限り、多くの人が集まっている。
その内の一人、小柄な少女がこちらに手を振った。
傍らにいた男も同じく手を上に翳す。
o川*゚ー゚)o 「ほら、あの子が貴方たちが居るはずだから探して、って言ってたのよ」
( ;´_ゝ`) 「な、なん……」
(´<_`; ) 「そんな、だって……」
o川*^ー^)o
⌒*リ*´・-・リ ノシ 「ふたごちゃーん!!!」
( ;´_ゝ`) 「リリ!!」
<_プー゚)フ
(´<_`; ) 「エクスト!!」
三 ⌒*リ*´・Д・リつ 「双子ちゃ〜〜〜ん!!」
三 つ
地面に降り立つと同時に少女、リリが駆け寄り、飛びつき、抱き着く。
二人係で何とか受け止めるもふらついてそのまま倒れた。
リリは気にする様子も無く、倒れ込んだまま、兄弟の体を同時に抱きしめる。
-
⌒*リ*´;-;リ 「よかったぁ、死んじゃってなくて、よかったぁ!」
( ;´_ゝ`) 「え、いや、でも……!」
(´<_`; ) 「おまえら、だって、いや、むしろ!」
<_プー゚)フ 「ああ、俺たちは、確かに死んだらしいよ」
( ;´_ゝ`) 「エクスト」
<_プー゚)フ 「ほれ、リリ、離れな」
⌒*リ´・-・リ 「……うん」
(´<_`; ) 「どういうことなんだ、エクスト」
<_プー゚)フ 「助けられたんだ。あの、魔女さんにな」
エクストが視線で指したのは先ほどの女。
彼女は既に二人の元を離れ、革命軍の兵士たちの感謝を受けながら王宮の方へ歩いて行った。
よく見ると、エクストやリリだけでなく、死んだはずの他の仲間たちまでもが、その中に居た。
<_プー゚)フ 「詳しい事情はわからねえが、あの人が王国軍と、糞王を倒して、俺たちをよみがえらせてくれたんだ」
-
( ;´_ゝ`) 「よみがえらせ、た……?」
信じがたい話ではあったが、目の前に居るのは紛れも無く殺されたはずのエクストだ。
目も合わせないまま、アニジャはオトジャの頬を指でつまみ。
オトジャは額にアニジャの頬を摘まんで、同時に思いっきりつねった。
めちゃくちゃ痛い。
一応は、夢では無いらしい。
⌒*リ´・-・リ 「私たちもね、死ぬと思った次の瞬間、突然この広場の前に居てね」
<_プー゚)フ 「傷は治ってるし、夜になってるしで、全く状況は掴めなかったんだが」
⌒*リ´・-・リ 「魔女さんの声がね、ふわ〜って頭の中に聞こえて、なんか納得しちゃったの!!」
<_プー゚)フ 「実際、目の前で他の殺された奴らが生き返るの見たしな」
( ;´_ゝ`) 「蘇生魔法……」
(´<_`; ) 「それも、遺体が原形すらとどめていない、死後数時間たった死者を……」
⌒*リ´・-・リ 「それよりほら、いこう!これからショーグンが宣言するって!!」
リリの怪力で手を引かれ立ち上がる。
そこで、自分たちの体の傷も修復されていることに気付いた。
痛みも、違和感も無かった。いつの間に掛けられたのかすら分からないが、小さな傷まで含めてすべてが綺麗に消えている。
( ´_ゝ`) (これが、悪名高い)
(´<_` ) (魔女の力)
-
革命軍のリーダーである元将軍の宣言を終え、広場は祝勝ムードに包まれた。
次々に篝火を灯し、酒を持ち合い、笑顔で、あるいは泣きながら勝利を祝い合う。
誰もがすべてを諦めたはずだ。
それを思えば、この逆転が過ぎる勝利は、手放しで喜ばざるを得ないのかもしれない。
例え自分たちの力でなくとも、必死に戦い、足掻居たからこそ起きた奇跡であると、言ってしまっても良いのだろう。
ただそれは、部外者であるサスガの双子には、素直に受け取れない喜びだった。
( ;´_ゝ`) 「気配はこっちだよな?」
(´<_`; ) 「ああ、間違いない。隠そうとはしているが、大きすぎてダダ漏れだ」
人々の間を掻い潜って、兄弟は魔女の姿を探していた。
魔力の気配が強いため居場所は予想できたのだが、人にもまれて中々たどり着けない。
やっと人の群れを抜け、夜の街を二人で駆ける。
魔力の気配は如実に大きくなり、察するに、魔女も二人の接近に気付いたようだ。
o川*゚ー゚)o 「おや、これはこれは頑張り屋と噂の双子くん」
魔女は、廃屋の屋根に座り、景色を眺めていた。
向こう側には空に穴を開けたような月。
どこか黄昏た様な姿に、二人はまた、見惚れそうになる。
-
( ;´_ゝ`) 「あんた、魔女、なんだよな?」
o川*゚ー゚)o 「うん、自分で名乗ったことは無いんだけど、いつの間にかそっちの方が有名になっちゃった」
(´<_`; ) 「俺たち、あんたに聞きたいことがあるんだ」
川*゚ ,゚)o 「ん〜〜〜……?スリーサイズと体重と年齢以外なら答えるけど……」
b
( ;´_ゝ`) 「なんで、俺たちを、革命軍を助けてくれたんだ?」
川*゚ ,゚)o 「あら、そんなこと?」
b
(´<_`; ) 「無礼かもしれんが、俺たちの聞いたあんたの噂は、助けるとか、そんなのとは真逆なことばっかりだったから」
o川*゚ ,゚)o 「あらあら、悪名高いなあ私も」
魔女は屋根を飛び降りた。
手に魔法の光を灯し、丁度三人が収まる程度の明りを生み出す
o川*゚ー゚)o 「噂が違う、ってことじゃないわ。逆の立場から見れば、私は一つの国を滅ぼした大罪人だもの」
( ;´_ゝ`) 「……たしかに……」
o川*゚ー゚)o 「それに、革命軍を助けたって言うのはニュアンスが違うの。私は、修正に来ただけ」
(´<_`; ) 「修正?」
-
o川*゚ー゚)o 「あの仮面のやつらとね、ちょっと因縁有でね」
( ´_ゝ`) 「……」
o川*゚ー゚)o 「あの魔道具も、私を殺すためのものなんだけど、その実験をこの国の内紛でやりはじめたのよね」
(´<_` ) 「……」
o川*゚ー゚)o 「流石にさ〜、そういうのはいまいち気分が悪くてね。
だから、迷惑かけた革命軍の人たちへのお詫びも兼ねて一応、加勢したの」
( ´_ゝ`) 「成程、な」
o川*゚ー゚)o 「もしかしたら自力で勝つかもしれないと思って様子見てたんだけどさ〜。あいつらめっちゃ胸糞悪いもーん」
o川*( ∵))o 「『ククク……らいこひょーこそ真のちから……』」
o川*゚Д゚)o 「とか言ってんだよ?腹立つー!戦ってみたら全然雑魚だし!!」
(´<_` ) (……あの魔法具が、雑魚か)
( ´_ゝ`) (……うん)
仮面の男たちへのヘイトを、身振り手振りを交え喚き始めた魔女を無視し、兄弟は目を合わせる。
これは魔女を探し始めた時点で、二人で相談し決めていたことだ。
-
o川*`皿´)o 「だいたい何なのあのへんな仮面!気持ち悪いし!」
( ´_ゝ`) 「あのさ、魔女さん」
o川*゚ ,゚)o 「……え、あ、ごめんね、ちょっと愚痴をこぼしたいお年頃だから許してね」
(´<_` ) 「それは別にいいんだけど、俺たち、魔女さんにお願いがあるんだ」
o川*゚ ,゚)o 「お願い……?」
( ´_ゝ`) 「うん。たぶん、あんたじゃないとだめなんだ」
o川*゚ ,゚)o 「聞くだけなら、聞いてあげるけど」
再び、兄弟は顔を合わせる。
互いが緊張しているのが表情から分かって、互いに安心する。
( ´_ゝ`) 「じゃあ、さ」
o川*゚ー゚)o 「うん」
( ´_ゝ`) 「俺たちを、あんたの弟子にしてほしいんだ」
o川*゚ ,゚)o 「……………はいぃ??」
* * *
-
少々揉めたのち、魔女の弟子となった兄弟は、各地の戦場を転々とした。
弟子、と言っても魔女は直接二人に教えを授けたわけでは無い。
o川*゚ー゚)o 「私は、いわゆる修験者ではないからさ、人に授けられるような経緯で力を身に着けたわけじゃないの」
o川*゚ー゚)o 「だから、面倒は見てあげるし、魔法使うとこを見せては上げるけど、それ以上は勝手に盗んで」
大よそこんなことを始めに言ってはいたのだが、実際には魔女が自分で力を振るうことはほとんど無く、
目の当たりに出来たのは数えても五回程度だ。
代わりに魔女は兄弟に力に見合った戦場を見つくろい、兄弟はその戦場で全力をとして戦った。
一年ほど過ぎ、いくらか彼らの力が凡人の域を逸脱し始めた頃に、魔女は仮面の男たちの掃討を始めた。
この時も自分では戦わず補助に徹し、実際に敵の軍勢を滅ぼしたのは14をいくらか過ぎた兄弟たちであった。
いくつもの苦難に、兄弟は音を上げず耐えた。
魔女もただ放任するのではなく、そばに立ち二人を補助し続けた。
兄弟は、そうした幾つもの戦場を乗り越え強くなった。
力と比例して、魔女のことを信頼していった。
休息の時には火を囲んで他愛のない話をし、笑いあった。
厳しく、自分たちを認めてくれない父のこと。
ひたすらに怖い母のこと。
母の次に怖いけれど、実は優しい姉のこと。
そして、自分たちをはるかに超えた才を持つ、愛しい妹のこと。
-
そして、兄弟が魔女に弟子入りし、三年後。
彼女と彼らは、袂を分かつことになる。
* * *
-
( ´_ゝ`) 「なあ、キュート」
o川*‐ ,‐)o 「なあに?」
アニジャは星空を眺めていた。
視野の半分が黒い何かに覆いかぶさられ見えないが、特に気にはならない。
頭の下の柔らかさと温もりが心地よかった。
星を見るのをやめ、ゆっくりと瞼を閉じる。
頭を撫でられた。
子ども扱いされているようでもどかしいが、これはこれで悪くないというのが本音だ。
( ´_ゝ`) 「本当に、もう一緒にはいけないのか」
o川*゚ ,゚)o 「ん〜〜……私もさぁ、貴方たちにけっこう愛着湧いてるからさ、一緒にはいたいんだけど」
「だからこそ、ダメってのもあるのよね」と付け加えたのを聞こえなかったことにする。
キュートには、なにか大きな企みがあるのだ。
そのために、兄弟を同行させることができなくなったのだろう。
連れ添った三年で、大よそキュートの性格はわかった。
確かに、かつて噂で聞いたような残虐性、嗜虐性はある。
しかし同時に、いたって普通の女性的な慈愛も持ち合わせているようにアニジャには思えていた。
現に、三年もの間同行していたと言うのに兄弟は何の危害も与えられていない。
それどころかキュートはあの革命軍と同じく、多くの人々を救っている。
残虐性より話題にならないのは、本人が自分の手柄として広めたがらないからに過ぎない。
どちらかと言えば、無意味な残虐行為に及ぶ回数の方が少なかったように思う。
-
( ´_ゝ`) 「そうか」
o川*゚ー゚)o 「あら。なに?寂しい?」
( ´_ゝ`) 「……」
キュートがアニジャの顔を覗き込む。
とある山の中腹。
突き出した岩の上にキュートは腰掛け、アニジャはその太腿に頭を乗せている。
顔が近く、星明りの逆光でも何故かキュートの顔ははっきりと見えた。
気まずくなり、顔をそむける。
o川*゚ー゚)o 「ふふ、大きくなってもまだ子供ね」
( ´_ゝ`) 「っせえな」
アニジャは起き上がり、キュートから離れた。
やっぱり、子供扱いは誰にされても嫌いだ。
それが的を射られているからこそであるということは自覚している。
o川*゚ー゚)o 「あらら、最後の夜なのにいけず〜」
( ´_ゝ`) 「ついてくって言ったらどうする」
o川*゚ー゚)o 「ん?」
( ´_ゝ`) 「着いてく。キュートがこれからやろうとしてることにも、協力する」
-
o川*゚ ,゚)o 「懐いてくれるのは、嬉しいんだけどね」
( ´_ゝ`) 「懐いてるんじゃなくてお前の魔法をもっと盗みたいんだよ」
o川*゚ー゚)o 「照れ屋さん」
( ´_ゝ`) 「……」
o川*゚ ,゚)o 「そもそも、貴方たちの目的は私と一緒に居ることじゃないでしょう」
( ´_ゝ`) 「強くなるために一緒に居ようとしてるだけだ」
o川*゚ ,゚)o 「私、明日からしばらく研究漬けよ。時々材料集めはするけど、それだけ」
( ´_ゝ`) 「……」
o川*゚ー゚)o 「……別に二度と会わないって言ってるわけじゃないのよ。あくまで貴方たちは貴方たちの道を行きなさいってだけ」
o川*゚ー゚)o 「きっと、私の傍に居るよりも、その方が強くなれるわ」
( ´_ゝ`) 「………………わかった」
o川*゚ー゚)o 「よし、いいこいいこしてあげよう」
( ;´_ゝ`) 「要らねーよ!」
o川*゚ 3゚)o 「あ、なんだったらちゅーがいい?ちゅー」
( ;´_ゝ`) 「だから、子ども扱いすんなって」
-
o川*゚ー゚)o 「ってかさー、前々から疑問だったんだけど、なんでそこまで強くなりたいの」
( ´_ゝ`) 「随分今更だな」
o川*゚ー゚)o 「男の子はそういうものだもの。ただ、理由は聞いたことなかったから」
( ´_ゝ`) 「…………妹がいるってのは言ったよな」
o川*゚ー゚)o 「うん」
( ´_ゝ`) 「ああ。妹はさ、俺たちよりもずっと才能があるんだよ」
o川*゚ー゚)o 「うん、それも聞いた」
( ´_ゝ`) 「俺たちなんて比にならない。それこそ兄弟の中でキュートに並べるとしたら、妹くらいだと思う」
o川*゚ー゚)o 「……へ〜〜…………そこまでなんだ」
( ´_ゝ`) 「ああ。確実に俺たちは追い抜かれる。でも、そんなのアニキとして恥ずかしいだろ」
o川*゚ー゚)o 「……」
( ´_ゝ`) 「親共は、妹に魔法と剣術を仕込んで、何かをやらせようとしてる。たぶん、危険なことだ」
o川*゚ー゚)o 「……」
( ´_ゝ`) 「その時に、守ってやれる力が欲しいんだ。そのためには普通に学んでたんじゃ身に付かないレベルの力がいる」
-
( ´_ゝ`) 「キュートと初めて会った、あの革命の時だって。もしキュートがいなかったら俺たちは負けてたし、死んでた」
( ´_ゝ`) 「何もできないのは嫌だ。だから弱いままではいたくない。それは、理由にならないかな」
o川*゚ー゚)o 「……なんだ、結局男の子な理由なのね」
( ´_ゝ`) 「わるかったな、ガキで」
o川*゚ー゚)o 「ま、ガキはガキだと思うけど」
そっぽを向いたアニジャの頭を、キュートが撫でる。
身長は既にアニジャの方が高い。
微笑む彼女の顔は、やや見上げる角度だ。
o川*゚ー゚)o 「いいんじゃない?わたし、そういうのは好きよ」
( ´_ゝ`) 「だから、子ども扱いすんなって」
o川*゚ー゚)o 「照れちゃってまあ、可愛いこと」
( ´_ゝ`) 「照れてねえよ」
o川*゚ー゚)o 「あれ、どこ行くの?」
( ´_ゝ`) 「小便」
o川*゚ ,゚)o 「あらやだ」
-
森の中に入り、適当なところで用を足していると、背後に物音がする。
一瞬警戒したが、相手が分かりすぐに解いた。
木の陰から姿を見せたのは、双子の弟のオトジャである。
どうにも不満げな顔でアニジャを睨んでいた。
(´<_` ) 「……アニジャ」
( ´_ゝ`) 「なんだよ、ションベン中だって」
(´<_` ) 「……魔女に傾倒しすぎだ」
( ´_ゝ`) 「……キュートの使う魔法は、生涯を賭してやっとたどり着くかどうかの物ばっかりだ。傾倒もするさ」
(´<_` ) 「……それは、そうだが」
( ´_ゝ`) 「それに、オトジャだってそう言いながら、キュートのこと、信頼はしてるだろ?」
(´<_` ) 「だから、問題なんだ。あの『魔女』を、無警戒に信頼している今が」
( ´_ゝ`) 「……どっちにしろ今日でおしまいなんだ。オトジャが気にすることじゃない」
(´<_` ) 「……」
( ´_ゝ`) 「ったくさ。オトジャは昔から考え過ぎなんだ。ほんとはキュートに甘えたいと顔に出てる」
(´<_` ) 「…………否定はしないがな」
-
森の中に入り、適当なところで用を足していると、背後に物音がする。
一瞬警戒したが、相手が分かりすぐに解いた。
木の陰から姿を見せたのは、双子の弟のオトジャである。
どうにも不満げな顔でアニジャを睨んでいた。
(´<_` ) 「……アニジャ」
( ´_ゝ`) 「なんだよ、ションベン中だって」
(´<_` ) 「……魔女に傾倒しすぎだ」
( ´_ゝ`) 「……キュートの使う魔法は、生涯を賭してやっとたどり着くかどうかの物ばっかりだ。傾倒もするさ」
(´<_` ) 「……それは、そうだが」
( ´_ゝ`) 「それに、オトジャだってそう言いながら、キュートのこと、信頼はしてるだろ?」
(´<_` ) 「だから、問題なんだ。あの『魔女』を、無警戒に信頼している今が」
( ´_ゝ`) 「……どっちにしろ今日でおしまいなんだ。オトジャが気にすることじゃない」
(´<_` ) 「……」
( ´_ゝ`) 「ったくさ。オトジャは昔から考え過ぎなんだ。ほんとはキュートに甘えたいと顔に出てる」
(´<_` ) 「…………否定はしないがな」
-
( ´_ゝ`) 「……しかし、明日からは二人か。どうするかねえ」
(´<_` ) 「行く先は決めているのか」
( ´_ゝ`) 「オトジャが決めていいよ。どこ行ったってやっていけるだろ、俺たちなら」
(´<_` ) 「……」
オトジャが何か言おうと口を開いた時、枝葉の揺れる音が聞こえた。
視線を音の方向に向けると、きゅーとがひょっこりと顔を出した。
o川*゚ー゚)o 「お、いたいた。二人とも、そろそろ寝ましょ」
( ´_ゝ`) 「ああ」
o川*゚ー゚)o 「あ、何なら三人で川の字でねよっか☆」
( ´_ゝ`) 「あのな……」
(´<_` ) 「……付き合ってられん」
o川*゚Д゚)o 「ちょーっ、ふたりともいけずー!!」
* * *
-
これからさらに四年後。
二人の名が傭兵として広まり、久方ぶりに故郷に帰る直前のこと。
サスガ兄弟の妹イモジャの前に、突如魔女が現れ、その力を振るった。
父も母も兄たちもいない中、姉を庇いながら善戦したイモジャではあったが、魔女には敵わず四肢を奪われる。
久しい帰郷の、その時に見た妹と姉の姿は。
兄弟たちが持っていた信頼を変貌させるに十分以上の光景だった。
そして、現代、旧ジュウシマツ砦前。
* * *
-
空には、鉛を溶かしたように鈍い色の雲が浮かんでいた。
見上げれば大きな雨粒が遠慮も無く頬を叩く。
その冷たさが、火照った体に心地いい。
o川*゚ー゚)o 「あなたたちが招いた雨を浴びるなんて、いつぶりかしら」
掌を目の前へ。
指を閉じて器の形を作る。
絶え間なく降り続く雨は、すぐさま水たまりになり、指の隙間から溢れ零れた。
滴り落ちる、大きな他の雨粒より大きな水の帯。
地面にぶつかり、飛沫が返る。
o川*゚ー゚)o 「もう、懐かしいくらいだわ」
掌を逆さに。
放たれた水の塊は瞬く間に地面を流れる川の一部になる。
o川*゚ー゚)o 「貴方たちはすぐに大きくなって、強くなって、それを傍で見ているのは、思いのほか楽しかった」
言葉に対する返事は無い。
落胆を隠すため、小さく笑む。
彼らはそう言えば、どんな理由であれ笑みを向けられるのが苦手だったなと、昔を懐かしむ。
o川*‐ ,‐)o 「……それじゃあ、おやすみなさい。可愛い、可愛い、坊やたち」
やはり答えは無い。
物言わぬ屍となった双子の身体は、雨を受け、血を流し、ただ静かに眠っているようであった。
-
おわりんこ
続きはたぶん近日
-
乙
-
過去編も現在も驚き…
-
壮絶だった
乙
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あっさりやられたのかw
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勝てる気がしねぇ
おつ
-
乙
今更だが魔女ってホント強いんだな……
しかし兄弟を側に置いた真意が分からん
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おお兄弟
予想外な過去だがキュートはそれなりに二人に愛着持ってたんだな
乙
-
魔女の掘り下げが来るとは
仮面勢といい、謎が増えたな
-
魔女の底知れぬ感ハンパない
乙
-
エクストとリリ達が無事蘇生したように見えるが
果たして本当に無事なのか
-
あ……あああああああああ
きょ、兄弟があああああ!!
乙!過去編魅入ってしまった。魔女怖い
-
おつ
魔女がさっぱりわからなくなった…
-
おつ
流石兄弟が・・・つらい・・・
-
これ、ツンとブーン達じゃどう考えても無理だろwwww
-
ろ、ロンリードッグさんには神様と喧嘩できる魔法あるから……
-
乙乙
-
「いーもーじゃーー〜〜〜〜っ!!」
とっても明るいその声に、イモジャは布団の上に置いた本から視線を上げた。
パタパタと足音が近づいてきて、窓から女の子がひょっこり顔をだす。
ミ*゚∀゚彡 「遊びに来たよ!」
女の子にしては短くて癖の強い髪の毛に、赤く染まったほっぺた。
ちょっと見ただけだと男の子に見える。
この子の名前は、フゥ=イッコモン。
少し前にアネジャと散歩しているときに会って、仲良くなった。
家に引きこもりがちのイモジャにとってはとっても大切な友達だ。
l从・∀・*ノ!リ人 「いらっしゃいなのじゃ!」
ミ*゚∀゚彡 「今日はねー!すごろく持ってきた!!」
フゥは一生懸命背伸びして、大きな紙を広げて見せた。
沢山の色で絵が描いてあって、所々にお話が書いてある。
∬´_ゝ`) 「あら。フゥちゃんいらっしゃい」
ミ*゚∀゚彡 「おねーちゃんこんちわ!!!」
∬´_ゝ`) 「はいこんにちは。中に入って、丁度お菓子焼いたところなの」
ミ*゚∀゚彡 「勝ったッッッッ!!!」
∬´_ゝ`) (何に?)
-
アネジャが焼いてくれたお菓子をそばに置いて、フゥはすごろくの紙を床に広げる。
駒は四つあったけれどアネジャはこれからお出かけなので、二人で遊ぶことになった。
イモジャは専用の座椅子に座らせてもらい、紙を挟んで向こう側にフゥが座る。
ミ*゚∀゚彡 「フゥが先ね!!!」
使う駒を決めて、フゥがさいころを転がす。
出た目の分だけ駒を進めて、またさいころを手に取った。
ミ*゚∀゚彡 「次イモジャ!!」
l从・∀・ノ!リ人 「なのじゃ!」
イモジャがそっと力を込めると、さいころがふわりと浮き上がった。
手も足も無くなってしまったイモジャでも、こうして魔法を使えば簡単なことならできる。
普段はアネジャが使っちゃダメと言っているのだけれど、フーと遊ぶ時は「少しならいいよ」と言ってくれている。
そのままさいころを落として、目を出す。
駒を進めるのは魔法でやろうとすると難しいので、フーがやってくれた。
ミ*゚∀゚彡 「えーっと、2マス、進む」
l从・∀・*ノ!リ人 「やったのじゃ!!
ミ*゚∀゚彡 「負けないもんねー!」 コロコロ
l从・∀・ノ!リ人 「あ、そこ一回休みなのじゃ」
ミ;*゚∀゚彡 「にゃんと?!」
-
一度目のゲームはイモジャが最初のリードを保って勝った。
もともと運が必要なゲームは大得意だ。
ミ*゚∀゚彡 「もっかい!もっかいやろ!」
l从・∀・*ノ!リ人 「いいのじゃ!また勝つのじゃ!」
その後も何度か遊び、イモジャの勝ち越しが続いた。
流石にずっと遊んでいると飽きてきて、さいころを転がすよりもお菓子を齧りながらお話しする方が増えた。
ミ*゚∀゚彡 「ちょっとあきちゃったね」
l从・∀・ノ!リ人 「なのじゃ」
フゥが、何気なしに外を見る。
外で遊びたいのだな、と悟ってしまう。
もともと、初めて会った時もフゥは一人で木登りをして遊んでいて、家の中よりも外で遊ぶ方が好きなはずだ。
「ごめんなのじゃ」と言いそうになってイモジャは我慢した。
言わなくちゃいけないかもしれないけれど、フゥは優しい子だからイモジャが謝ったことをきっと気にしてしまう。
だから、言えない。もしかしたら気まずくなって、フゥが来なくなるかもしれないのが、イモジャは怖い。
ミ*゚∀゚彡 「……にゃ?イモジャ、アレなに? ねこさん?」
l从・∀・ノ!リ人 「? ……ああ、アレはお守りなのじゃ」
フゥが指さしたのは、扉にかけられた五つの小さなぬいぐるみ。
みんな猫の形をしているけれど、色と大きさがそれぞれ違う。
赤くて大きめなのと、紺色で頭だけ白いの、細長いのが青と水色とで二つ、ピンク色でハートマークがついたので、五つ。
イモジャもあんまりかわいいとは思えないのだけれど、とても大事なものだ。
-
ミ*゚∀゚彡 「おまもり?」
l从・∀・ノ!リ人 「そうなのじゃ。父者が作った魔法がかかってて、たいしょーしゃのじょーたいをはあくできるのじゃ!」
ミ*゚∀゚彡 「おー―……?」 ←よくわかってない
l从・∀・ノ!リ人 「イモジャの家族みんなバラバラなのじゃ。でも、あのお守りを見ればみんな元気って分かるのじゃ」
ミ*゚∀゚彡 「……おー!なるほど!!」 ←でもよくわかってない
l从・∀・ノ!リ人 「今日もなにもなってないから、みんな元気なのじゃ!!」
ミ*゚∀゚彡 「ほへー―……イモジャのトーちゃんすごいなー―……」
l从・∀・*ノ!リ人 「えへへー―……」
ミ*゚∀゚彡 「…………それね、フゥがお願いしたら作ってくれるかな?」
l从・∀・ノ!リ人 「たぶん大丈夫なのじゃ!誰のを作りたいのじゃ?」
ミ*゚∀゚彡 「うんとねー、トーちゃん」
l从・∀・ノ!リ人 「フゥの父者なのじゃ?なにしてる人なのじゃ?」
ミ*゚∀゚彡 「今はだいごろうで兵隊さんしてるの。だからね、心配なんだー―……」
-
l从・∀・ノ!リ人 「大五郎なのじゃ?イモジャの叔父者のお店なのじゃ!!」
ミ*゚∀゚彡 「おじさん?」
l从・∀・ノ!リ人 「そうなのじゃ!しゃちょーさんなのじゃ!」
ミ*゚∀゚彡
ミ*゚∀゚彡。o O ( フゥのトーちゃん=やとわれのみ イモジャのおじさん=しゃちょさん)
ミ*゚∀゚彡。o O ( フゥがイモジャを怒らせる→ イモジャがおじさんに報告する→ しゃちょさん怒ってトーちゃんクビになる)
ミ*゚∀゚彡。o O ( トーちゃん失業→ 昨今の就職難→ 生活費なくなる→ 一家離散→ フゥは悪いおじさん売られて強制労働)
_人人 人人_
ミ*゚∀゚彡。o O ( 福利厚生不整備及び労働基準法違反の劣悪な労働環境により衰弱→ > 必然の死 <
 ̄Y^Y^Y^Y ̄
ミ*゚∀゚彡 「これまでのたびかさなるぶれいなにとぞごようしゃいただきたく……」
l从・∀・;ノ!リ人 「この数秒間に何が?!」
このあと何とか説得してフゥには普通に戻ってもらった。
-
ミ*゚∀゚彡 「フゥのトーちゃんはね、すっごいんだよ!!弓矢でね、どこでも当てられるの!」
l从・∀・ノ!リ人 「ほへー、すごいのじゃ」
ミ*゚〜゚彡 「でもね、トーちゃんが強くてかっこいいけどフゥは心配なの。だから、あのねこさん、欲しいなって」
l从・∀・ノ!リ人 「そう言うことなら父者に頼んでみるのじゃ!きっと作ってくれるのじゃ!!」
ミ*゚∀゚彡 「ホント!?やったぁ!!」
l从・∀・ノ!リ人 「でも、イモジャの父者もあんまり帰ってこないから、すぐには無理かもしれないのじゃ……」
ミ*゚∀゚彡 「そっかー―…………イモジャのトーちゃんは何してるの?」
l从・∀・ノ!リ人 「母者と一緒にいろんなところを歩いて魔法の研究してるのじゃ!すごいらしいのじゃ!!」
ミ*゚∀゚彡 「すげー!かっくいい!!」
l从・∀・*ノ!リ人 「えへへー」
ミ*゚∀゚彡 「でも、あんまり帰ってこないとさびしいね」
l从・〜・ノ!リ人 「そうなのじゃ…………」
ミ*゚∀゚彡 「…………よーし!!もっかいやろ!!」
l从・∀・ノ!リ人 「もっかいなのじゃ?」
ミ*゚∀゚彡 「次はねー、色々マスに書き足しちゃうんだー!」
-
イモジャとフゥは再びすごろくを遊び始める。
子供らしい悪ノリでマスのペナルティを次々と増やし、休みの回数はみるみる増えてゆく。
その荒唐無稽なさまが甚く気に入ったらしくペナルティのインフレーションは止まらない。
二人が楽しく、叫びを上げながらさいころを放るその部屋の扉。
フックに吊るされた五つのぬいぐるみの内、二つにじわじわと黒い染みが滲み始めた。
他の三つに一切の変哲は無く、同じ大きさに揃えられた青と水色のそれだけが瞬く間に色をくすませてゆく。
ミ*゚∀゚彡 「やった!!32マス進む!!」
l从・∀・*ノ!リ人 「かかったのじゃ!!余りはゴールでUターンなのじゃ!!そして………」
ミ*゚〜゚彡 「Uターンした先に・・・・・・・・・・・・休むマス・・・・・・!しかも十回・・・・・・・ッ!!」
l从・∀・ノ*!リ人 「イモジャ式封印トラップなのじゃ!!勝った!!」 コロコロ
ミ*゚∀゚彡 「あ、そこイモジャの作った十五回休みマス」
l从・∀・;ノ!リ人 「なんと?!」
僅かずつ、しかし確実に広がる変色。
ぬいぐるみは小刻みに震え、やがて二つ揃って床に落ちた。
l从・∀・ノ!リ人 「しかし最後に勝つのはイモジャなのじゃ!」
ミ*゚∀゚彡 「負けないし!!」
楽しい時間は賑やかに過ぎる。
そのまま二人は、笑顔ですごろく遊びを続けていた。
* * *
-
タカラの娘か
支援
-
( ;;;Фωφ) 「今まででいぢばん、つおいかっだ」
雨でぬれた顔を、鬱陶しげに拭いながら、試作ちゃんが呟iいた。
彼にはキュートが作った人型キメラの中で最良の体を与えている。
知能に若干の欠陥を残すが、戦う分には何の問題も無い。
純粋な剣戟で敵う者はそうそう存在しないだろう。
それが、流石兄弟を強者と認めた。
キュートも異論を唱える気はない。
彼らは実に強かった。
剣士としても、魔法使いとしても。
しかしそれは所詮、人間としては、という話。
( ;;;Фωφ) 「ギュード、がんばっだらおながすいだ」
試作ちゃんが刀を振るって血を払う。
血は流れたものの、脂のこべりつきが目立つ。
水に濡れていることもあるし、砦に戻ってから手入れをさせなければ。
折角手に入れた名刀である。
再現は容易かろうが、無下に扱わせるわけにはいかない。
それが、彼に与えられた「杉浦ロマネスク」としての役割でもある。
o川*゚ー゚)o 「そうね、このまま濡れていたら風邪ひいちゃうし」
( ;;;Фωφ) 「うんむ。かぜよくない。さいあくしぬ」
o川*^ー^)o 「そうそう、体調の管理は気を付けないとね」
-
o川*゚ー゚)o 「……さてと」
キュートの視線は再び兄弟の死体へ。
折角招いた良質な素材である。
これをこのまま捨て置く理由は何一つない。
死んで数分も経たぬ今ならば鮮度も十分。
濡れてしまったのは気がかりだが、若干のダメージならば修復は可能だ。
o川*゚ー゚)o 「…………私に関わったのが間違いだったと、諦めてね」
指を翳す。
まずは骸を雨から保護。
損傷個所を修復の後、細胞を凍結。
あとは、専用の保存液にぶち込んで、これに見合った素材が集まるまで保存すればいいだろう。
( ;;;Фωφ) 「…………むぅ?」
o川*゚ー゚)o 「どうしたの?」
( ;;;Фωφ) 「なんがそれ、いまうごいだ」
o川*゚ ,゚)o 「アニジャたちが……?でも、脈もないし……」
試作ちゃんの言葉に、キュートが視線を逸らした瞬間、伸ばした腕に何か冷たいものが絡みついた。
驚き、反射的に腕を払う。
が、飛んでいったのは体を濡らしていた水滴のみだ。
それ以外には何も無い。
-
ハッピーエンド見えねぇ…
-
o川*゚ ,゚)o 「……?」
( ;;;Фωφ) 「ギュード、なんが、へんながんじ、する」
o川*゚ ,゚)o (魔力の反応は無い……一体何が…………)
キュートは即座に周囲に対し魔力の探知を掛けた。
何かしらの魔法が行われているのならば、すぐに分かるはずだ
o川*゚ ,゚)o 「……いや、違う!」
一つの予感が頭に走り、キュートは魔法を発動。
火炎の魔法を発動し、周囲の雨を、水を振り払った。
轟々と盛る炎が周囲の水を瞬く間に揮発させていく。
先ほどまでのうすら寒い雨濡れの環境が一転、灼熱の空気に肌が痺れた。
( ;;;Фωφ) 「まなつのきせつ」
o川*゚ ,゚)o (よく考えたら、あの子たち、私の探知魔法の環境下にずっと潜んでたのよね……)
ならば、キュートの探知の裏で何かを仕掛けている可能性は高い。
所詮無力な人間だったと見限るよりは、死をもって何か仕掛けてきたと備える方が興も乗る。
そしておそらく。
o川*゚ー゚)o 「……―――ッ!!」
彼らはその期待に応えてくれるのだ。
-
キュートと試作ちゃんを包む球状の炎を、水の刃が切り裂いた。
高位の魔法同士が干渉し合う、鮮烈な反応光。
その眩しさに視界を狭めた一瞬の後、炎の繭が消し飛ばされる。
露わになったのは、先ほどまでと大差のない砦前の景色。
唯一の変化は。
( ;;;Фωφ) 「あえ?どっがいっだ」
あったはずの死体が無い。
最期に存在を確認したのは、火炎魔法を発動したその直前。
恐らくは、キュートが異変に感づき何らかの対策を取ると睨んで、わざとバレバレな干渉をしてきたのだ。
結果として、キュートは兄弟の死体を、その在処を見失った。
o川*゚ー゚)o 「負けて死んだことすら、初めからの『仕込み』ってわけね」
口の端が引き上がる。
きっと醜い笑みだと自覚はしたが、体裁を気にしている余裕は無い。
周囲をぐるりと一瞥。
水を焼き払ったため靄がかかり視界が悪い。
風を巻き起こし吹き飛ばそうとするも、中々流れてゆかない。
これも、意図して張られた煙幕。
多少薄くなり視野は広がったが、ステルスの補強には十分な役を買っている。
-
背後僅かな魔力を感じ、振り返り指を翳す。
すぐにでも魔法が発動できる状態だったが、そこで留めた。
確実に気配を感じたその場所には、既に誰の姿も気配も無い。
o川*゚ ,゚)o 「……思ったより……」
厄介ね、と続く筈だった言葉が途切れた。
背中に走る熱い痛み。
切り裂かれたと気づいた時には、落ちて飛び散る血の音が聞こえていた。
( ;;;Фωφ) 「ギュード!!」
o川*゚ ,゚)o 「っ〜〜〜……やられた〜〜〜〜」
( ;;;Фωφ) 「はやぐなおす。ち、どびどば」
o川*゚ ,゚)o 「これくらいの傷は何ともないけど……」
問題は、傷自体では無く、傷を負わされたという現実。
キュートは常に防御膜の魔法を纏っている。
通常の刀剣類はおろか、攻城戦用の巨大な兵器を受けても傷一つ受けずに済む代物である。
それが容易く切り裂かれた。
しかも、キュート、試作ちゃんの二人係で警戒している中で、だ。
闇雲に強力な魔法を使っただけでは、どちらかが必ず気づいている。
どうやら、彼らへの認識をしっかりと改めねばなるまい。
-
o川*゚ー゚)o 「ちょっとほんきー」
キュートの瞳が、虹の混ざった黄金の輝きを湛えはじめる。
魔力を生み出し過ぎて、体内に収まらない。
溢れた魔力は空気の歪みとなって、火炎の如く揺らめく。
それまで付かず離れずでいた試作ちゃんが、やむなく傍から立ち退いた。
この多量かつ高濃度の魔力は、あらゆる生体にとって毒に他ならない。
多分に耐性を持つ試作ちゃんでも、ここまで濃密になっては危険なのだ。
o川*゚ー゚)o 「“錬成の十二番―――黒剣”」
短い詠唱と同時に、キュートが指を鳴らす。
黒い魔力の粒子が爆ぜ、虚無の空間に剣が現れた。
キュートの白い手に握られたそれは、金細工の拵えが供えられた細身のサーベル。
刀身は、震えるほどの漆黒。
どれだけ塗料で染めたとしても、これほどの「黒」にはなり得ない。
感触を確かめるように二、三度軽く振るう。
余波で生み出された魔力の飛刃により岩が真っ二つに割れた。
上々だ。久々に使った魔法ではあったが、一切の狂いなく再現できている。
( ;;;Фωφ) 「ギュード、わがはいは?」
o川*゚ー゚)o 「う〜ん、とりあえずは自分の身を守ってて。たぶん応対しきれないから」
( ;;;Фωφ) 「なさけない」
o川*^ー^)o 「今回は相手が優秀過ぎただけよ」
-
試作ちゃんに笑顔を向けつつ、キュートは黒剣を肩に担ぐ。
間も置かずに、柄を握る手に衝撃。
凄まじい音だ。耳が痺れて、奥の方が突かれたように痛い。
ちらと目をやると、黒剣の刀身に交差するように、僅かな空気の乱れが見えた。
不可視化によって姿を消した兄弟のどちらかがそこに居る。
恐らくは、剣で斬りかかってきたのだろう。
o川*゚ー゚)o 「立派なステルスだけれど」
右手と黒剣で不可視の剣を受け止めたまま、キュートは脇の下から背後へ掌を翳す。
一拍遅れで黒雷の魔法が発動。
すさまじい音と閃光を迸らせ、周囲を空間ごと焼き切り裂く。
o川*゚ー゚)o 「今の私にはあんまり意味ないかな」
黒雷が過ったとある一点、空間に四角い枠が現れ、切り抜かれたように景色がずり落ちた。
変哲のない岩山の風景が剥がれ現れたのは、同じ景色を背景にして立つ、
( ´_ゝ`) 「……」
双子の兄の方。
水の剣を肩に担ぎ、無感情にも、憎悪に満ちても見える目で魔女を捉えている。
-
キュートはその姿を見て、ぴゅう、と下手な口笛を吹いた。
小ばかにして挑発しているのではない。
むしろ真逆。心の底から、彼に、彼らに感心していた。
o川*゚ー゚)o 「まさか、『神格化』まで使えるようになってるなんてね」
( ´_ゝ`) 「……こうでもなければ、お前は殺せない」
o川*^ー^)o 「それでも、殺せるかわからないよ?」
サスガ=アニジャの身体は、淡い青の光に満ちていた。
冷たく、透き通った、それでいながら生命の力強さを覚えさせる、美しい輝き。
背中から覗いている巨大な片翼は、恐らく魔力の貯蔵庫かつ変換器だろう。
周囲の魔力を変換し蓄え、必要になる分だけ魔力を送り出している。
その魔力の供給管の役を担っているのが、全身に走る白い紋。
幾何学の均一さを持ちながら、生命の体に準じた流動性も感じる。
体表にありながら、骨のようでも、血管のようにも見えた。
美しい。まさか、一度人間として生を受けたハンデを持ちながら、この領域にたどり着くとは。
-
( ´_ゝ`) 「戯言に付き合う義理は無い」
o川*゚ー゚)o 「私はもっとお話ししたいんだけどな〜」
( ´_ゝ`) 「三途の向こうでなら、茶くらい交わしてやる」
アニジャの姿が消えた。
キュートは咄嗟に黒剣を前へ。
痛烈な衝撃。伴って響く、爆発にも似た金属の悲鳴。
体が浮き上がる。
先ほどまで自分が居たところにアニジャがいる。
接近に気付くのが、来るだろう攻撃に防御を合わせるのが手いっぱいだった。
それだけでも驚きだというのに、アニジャにはまだまだ余裕が感じられる。
( ´_ゝ`)「……」
アニジャの姿が再び消え、キュートの背後に現れた。
高速で吹き飛ぶその先だ。反応が間に合うはずもない。
アニジャの右腕が剣と共に消える。
-
風鳴。キュートの体に無数の青い線が走る。
斬られた痛みを自覚する余裕も無い。
青い線から滲む自らの血を見て、キュートはついつい笑ってしまう。
消えたんじゃない。振るったんだ。
キュートの、人としての五感を完全に置き去りにし、知覚も許さずに切り刻んだんだ。
( ;;;Фωφ) 「ギュード!!」
( ´_ゝ`) 「まずは、一回」
血飛沫を振りまき、キュートの身体は崩れ落ちた。
砂の人形がそうするように、体の形を留めず、血と肉の混ざった液体として地面に積み上がる。
( ;;;Фωφ) 「……ッ!“杉浦双刀流―――!!”」
( ´_ゝ`) 「少し黙れ」
試作ちゃんが刀を引き抜こうと腕を振る。
しかし、刀は抜けない。
見れば、掌は柄をしっかりと握っているのに、手と腕が繋がっていなかった。
目の前には、青に染まる青年。
試作ちゃんは動揺よりも先に、本能の叫びを聞く。
-
コイツには、勝てない。
だがそれ以上に、殺さねばならない。
(;;#Фωφ) 「“奪屠葬”!!」
手が無ければ、手が無くとも使える技を。
試作ちゃんの全身の筋肉が、隆起しながらも引き絞られる。
浮き出た筋は指ほどにも太く、その膂力の大きさを表す。
が。
( ;;;Фωφ) 「あえ?」
今度は体が動かない。
せめて数発、腕の骨を直接顔面に突き刺してやるつもりだったのに感覚すらもない。
まるで、地面に埋められてしまったかのようだ。
必死で体を動かそうとする試作ちゃんが意識を途切れさせる最期に見たのは、
灰色の雲に覆われた空と、首から上の無い、自分自身の背中であった。
-
「あーあ、せっかく頑張って作った虎の子だったのに」
( ´_ゝ`) 「……」
o川*゚ー゚)o 「ま、ここで死んじゃったなら、所詮それまでだったってことよね」
( ´_ゝ`) 「……当然のように生き返る」
まき散らされ、地面にこべりついた魔女の肉片が、渦を巻いて一か所に集まる。
グニグニと、混ざり合う動きを数回したのちに、全く無事なキュートの姿へと再生した。
アニジャはすぐさま斬りかかる。
相変わらずの亜光速。目で追うのは不可能だ。
こんなものでも応対しなければならないのが、魔女の辛いところ
キュートは下がりながら剣を合わせた。
見て対処するのではなく、あらゆる軌道を推測し先に斬る。
ぶつかり合う剣。
音が次々と生み出されては置き去りになった。
剣戟は減速を知らず、余波のみを視覚の領域に残しながら、二人は空へと昇る。
-
o川*゚ー゚)o 「二回目まだぁ?」
( ´_ゝ`) 「……ここからだ」
旧ジュウシマツ砦の、はるか上空。
キュートとアニジャは互いの体を弾き、距離を取る。
ただの息継ぎでは無い。
ほぼ同時に、双方が魔法の展開を開始。
ごくごくわずかな時間に、空は悍ましい数の魔法に埋め尽くされた。
アニジャの生み出した、魔力を帯びた水の榴弾が二千九百六十二。
キュートの作り出した、漆黒の槍が三千と四十三。
空を二分し対立する青と黒の勢力。
睨みあうだけで既に世界が軋みを上げている。
アニジャは、背なの片翼を大きく開いた。
応える形でキュートは黒剣を前に振るう。
宙で相対していた二種の魔法の群体が、手を打ち合わせる容易さで邂逅した。
-
まばゆい光が視界を埋めくす。
天の断末魔に、大地が嘆き震えた。
下方にそびえたつ岩山が耐えかねて巨大な亀裂を走らせる。
地鳴りと共に、分裂し、崩れる山。
粉じんは周囲の森や人里にもおよび、穏やかな自然の景色を無機質に破壊した。
リ;;;;;ー゚)o 「…………」
( ´_ゝ`) 「…………」
リ;;;;;ー^)o 「……そっちも二回目ね」
( ´_ゝ`) 「…………」
あらゆる個所に亀裂の入った岩山の上空。
キュートとアニジャは向かい合う。
キュートは爆発により、頭の半分と右腕以外を失い。
アニジャは心臓を八つの角度から貫かれている。
共に、死んでいるが死んでいない。
キュートの身体は先刻に同じく再生。
アニジャも突き刺さった槍を魔力で強引に消滅させ、すぐさま修復を終える。
-
マジで!?
支援支援
-
o川*゚ー゚)o 「ところで、オトジャはどうしたの?死んじゃった?」
( ´_ゝ`) 「……」
o川*゚ー゚)o 「それは無いか。むしろ、貴方たちの常とう手段だものね」
( ´_ゝ`) 「ああ」
o川*゚ー゚)o 「アニジャが前で引きつけて、オトジャが遠くから―――」
魔女が黒剣を振るった。
いつの間にか、いずこからか飛来した閃光の魔法と黒刃が衝突。
目を焼く光がまき散らされ、それに相応しい鳴が響く。
これは恐ろしい。
閃光の威力のあまり黒剣の刀身が消滅してしまった。
o川*゚ー゚)o 「狙撃するってのが、さ」
アニジャに対し隙を見せぬよう、魔法の反応を探る。
流石というべきか、痕跡は全て消されていた。
当然、発射地点などわからない。
-
o川*゚ ,゚)o (この二対一は……)
無数の光の軌跡が空の至る所から現れた。
流星の如きそれらは、一心不乱にキュートを目指す。
即死を約束されているのは一度受けて分かっている。
( ´_ゝ`) 「……」
その上アニジャも剣を手に接近。
愚痴を言わせてもらえば、いくらキュートでも少々重い。
o川*゚ ,゚)o 「やるっきゃないってのが、辛いとこよね」
キュートは魔法を全開にし、その場を高速離脱する。
雨あられと降り注ぐ光線の群れは更なる高速で追尾。
同方向へ飛ぶことで体感の速度を落とし、無数の光線の間を、緻密な機動ですり抜ける。
避けるだけでは追尾される。
逃げ回りながら詠唱し、効力を高めた剣を生成。
これならば、閃光を叩いても消滅はしない。
躱しながら、軌道を変え追ってくる閃光を一つ一つ丁寧に斬り弾く。
あっという間に、全弾は余波の煌めきと化す。
-
これで攻撃が終わったわけでは無い。
閃光が残り二つになっていた時点で、アニジャが肉薄。
最期の一弾を切ったその隙に、水の剣が超音速で迫る。
黒剣の柄でこれを防ぐ。
アニジャがいるのにも関わらず、再び閃光魔法の雨がキュートに降り注いだ。
一旦アニジャと距離を開け、迫る閃光を躱す。
閃光弾を掻い潜りながらアニジャが肉薄。構えた剣が残像に代わる。
キュートは閃光弾を払った流れで、その斬撃を横に受け流して位置関係を入れ替え、距離を取った。
アニジャはすぐに切り替えし再度斬りかかる。
高エネルギーを持つ両者の衝突は、その場での停止を赦さない。
二人は武器がかち合う度に衝撃で弾かれては、また接近する。
それを、何十と繰り返す。
閃光の嵐をすり抜けながら。光と音の余波をまき散らしながら。
息を読み、意志を汲み、それでいて相手を蹂躙するために力を尽くす。
目まぐるしく触れて離れてを繰り返す二人のその姿は、手を取り合い舞いを踏むようであった。
o川*゚ ,゚)o 「ッ!」
辛うじて優位を保ち善戦していたキュートだったが、遂にオトジャの放つ魔法の一つが足先を掠めてしまう。
掠めた、と言っても膝から下が丸々消し飛ぶ衝撃。
動きが鈍る。目の前のアニジャの相手はそれを見逃す無能では無く。
-
まずは黒剣を持つ腕が撥ねられた。
次に、魔法を用いようとした逆の腕が肩口からそぎ落とされ。
切り返した刃に腹を薙がれる。
流れのまま、寝かせた切っ先が眉間に突き刺さり後頭部まで貫通。
捻り、脳をかき混ぜつつ縦に向き直った刃は、そのまま脊椎を股間まで真っ二つに両断した。
そこまで刻み、アニジャは離脱。
入れ替わりにオトジャの魔法が四方八方からキュートに迫り。
穿ち、炸裂し、その体を血の飛沫すらも残さぬほどに蹂躙した。
が。
o川*^ー^)o 「服の再生が面倒になってきちゃった。これでもいいかしら」
まるで判を押すように、キュートは一瞬で蘇る。
それまで几帳面に纏っていた黒いドレスは無く、素肌に直接ローブを羽織った姿。
魔法の余波により乱れ切った気流に裾が靡き、白の肢体が露わになった。
-
川*゚ ,゚) 「おっとっと、坊やたちには刺激が強い?」
b
オトジャの魔法が問答無用でキュートの頭をぶちまける。
o川*゚ー゚)o 「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに」
飛び散り切らぬうちに復元するキュートの頭部。
再生の速度、反応が上がっている。
伴って開き直ったキュートは防御行動をあまり行わなくなっていた。
( ´_ゝ`) 「わかったか、オトジャ」
『予想通りだ。魔女の再生は「存在情報の保護及び上書き」によるものに違いない』
( ´_ゝ`) 「やれるか」
『やらなければならないから、ここまで来た。そうだろ』
( ´_ゝ`) 「流石だよ」
-
アニジャは翼をさらに大きく広げた。
体から発せられる光がさらに強まり、全身をめぐる魔力もより昂ってゆく。
肌に感じる魔力の痺れが、先ほどまでとは比にならない。
o川*゚ー゚)o 「出し惜しみはやめるんだ?」
( ´_ゝ`) 「貴様もそうした方が良い」
o川*^ー^)o 「私はいつでも一生懸命だもの」
( ´_ゝ`) 「……」
アニジャが剣を天に掲げる。
空に未だ分厚く広がっていた雲に魔力が行き渡り、全体がアニジャと同じ青い光を帯びた。
( ´_ゝ`) 「“―――四元の一。生を抱き、死を洗う水霊界の軍勢に告ぐ”」
鈍色の雲はまるで群れた大蛇の如く、煮えたぎる溶岩の如く、重苦しい音と共に蠢き始める。
妨害を図ろうとした途端に、オトジャの狙撃を受け足を停められた。
間に合わない。ならばせめてと、黒剣の純度を上げ、体を包む防御膜をより強力なものに張り替える。
( ´_ゝ`) 「“―――淀みなき勝利を我が手に納めろ”」
雲の至る所から無数、陽光の漏れの如き鮮烈な光の柱が地面に立った。
その一つ一つの中を雲から現れた何かが降りて来る。
-
( ´_ゝ`) 「“――――――― 千兵騎行のウンディーネ”」
それは、水でできていた。
アニジャと同じ青く輝く魔力に満ち、人の形を取っている。
ただの水の人形では無い。剣を、槍を、鎚を、弓を、旗を持った水の精霊兵。
数は裕に百を超えている。
キュートの想像が、悪くも的中しているのならば、これら一体一体が今のアニジャと同等の戦力を持つ。
( ´_ゝ`) 「全軍、かかれ」
旗を持つ唯一の一体が号令を掛けたと同時に、全ての精霊たちがキュートを強襲する。
闇雲に群れて向かってくるのではない。
弓を持つ者たちが矢を放ちキュートを牽制。
その間に剣兵、槍兵が陣を組んで四方から迫る。
統率の取れた動き。
一体ずつでも相当厄介であるのに、これでは。
o川*゚ ,゚)o 「あらら……」
水刃がキュートに振り下ろされる。
魂を持たぬ水の人形にあるまじき憎悪と殺意。
キュートの体が、左の肩口から縦に割れる。
鮮血が吹き出し体が二つに分かれた。
防御魔法など、嗤えるほどに意味が無い。
しかし、想定内だ。想像以上の威力ではあったが、受けたのはあくまでわざと。
斬りつけ来た水の精の背後に回り込む形で、キュートの身体は再生。
同時に、炎熱を付加した黒刃で、十字に切り裂く。
切り裂かれた水の精は爆発的に気化。消滅する。
-
( ´_ゝ`) 「不死身とはつまり、無尽に殺されるということだ」
o川*;゚ー゚)o 「……そうね」
( ´_ゝ`) 「常人ならば一度で済むその苦しみ、何十回でも、何百でも、何千でも味あわせる」
距離を取った、と言っても一呼吸の余裕すらも与えられはしない。
精霊兵たちはすぐ隊列を組み、超音速の進撃を開始。
青い光の尾を引いて迫るその箒星の如き光景は、この最中ですら美しいと思えた。
o川*; ー )o 「ホント、おっかないの育てちゃったし」
先頭の精霊兵の槍が、キュートの腹へ。
これを、すり抜けながら首を落とす。
流れで、次に迫っていた一体の剣を受け、流し、回り込んで背を斬る。
ここで、頭を飛来した槍に吹き飛ばされる。
すぐに再生したが、その時点で精霊兵の軍勢はキュートを取り囲み、得物の切っ先は目前だ
o川*;゚ー゚)o 「敵に回しちゃったかなァ!」
咄嗟に魔法で空間跳躍(テレポート)する。
できれば使いたくなかった魔法だ。
アニジャはこの魔法を知っている。故に、対策はされている。
-
が、この一体を相手にした隙に、背中から胸へ水の矢が貫通した。
振り返ろうして、同時に水の鎚で脇腹を払われる。
吹き飛ばされればそれでもよかったが、高速かつ高密度の鎚の先端は、その場でキュートの体を抉り砕いた。
飛散する自分の血肉を見ながら、キュートは手を翳す。
既に、別の精霊兵が目の前だ。
そいつを炎熱の魔法で吹き飛ばすも、その水蒸気の煙を抜けてさらに別の精霊が迫ってくる。
体を再生しながら、応じるが、振るおうとした剣が手ごと宙を舞った。
遠距離からの槍の投擲を受けたのだ。
威力が高すぎて、刺さるのでは無く触れた部分が弾け散る。
正面から来ていた精霊兵の槍が、喉を穿つ。
口の中に血が満ちた。
槍はそのまま横に滑り、キュートの頭を胴から切り落とす。
分かれた胴と頭の両方に、直近の精霊兵たちが一切の無駄なく武器を叩き付ける。
頭部はメイスにて粉砕。
胴は数多もの矢と槍を受けて血と肉の飛沫となる。
意識が途切れる寸前に、頭を砕かれる確かな感触があった。
脳震盪のあの不快感が光の如き鮮明さで、繋がっていないはずの四肢までをも震わせる。
精霊兵から距離を取り空の中心に再生したキュートの頬を、汗が伝う。
いくらなんでも殺され過ぎだ。痛みの記憶があまりに短時間に積み重なったせいで、精神が参りかけている。
-
( ´_ゝ`) 「不死身とはつまり、無尽に殺されるということだ」
o川*;゚ー゚)o 「……そうね」
( ´_ゝ`) 「常人ならば一度で済むその苦しみ、何十回でも、何百でも、何千でも味あわせる」
距離を取った、と言っても一呼吸の余裕すらも与えられはしない。
精霊兵たちはすぐ隊列を組み、超音速の進撃を開始。
青い光の尾を引いて迫るその箒星の如き光景は、この最中ですら美しいと思えた。
o川*; ー )o 「ホント、おっかないの育てちゃったし」
先頭の精霊兵の槍が、キュートの腹へ。
これを、すり抜けながら首を落とす。
流れで、次に迫っていた一体の剣を受け、流し、回り込んで背を斬る。
ここで、頭を飛来した槍に吹き飛ばされる。
すぐに再生したが、その時点で精霊兵の軍勢はキュートを取り囲み、得物の切っ先は目前だ
o川*;゚ー゚)o 「敵に回しちゃったかなァ!」
咄嗟に魔法で空間跳躍(テレポート)する。
できれば使いたくなかった魔法だ。
アニジャはこの魔法を知っている。故に、対策はされている。
-
現れたその瞬間、キュートは周囲の確認などしている暇も無く腹に槍を受けた。
空間跳躍が読まれたのだ。
周囲に精霊兵を殺した際に散った魔力の残滓が濃く残り、
それがチャフとなって跳躍先が制限され、レーダーとなって跳躍先を把握される。
いっそのこと超長距離跳躍でやり過ごしてしまってもいいのだが、
折角のイベントをスキップするというのはあまりにもったいないし、
何より、大事な材料等が詰まった砦を置いてゆくことはできない。
これは、兄弟を舐め腐って、貴重な物を移動しておかなかったキュートのミス。
舌をちろっと出して笑顔でごまかしてみるけれど、油断した過去の自分を赦す気にはなれない。
小ボケ一発かます間にも視界は青の精霊兵に埋め尽くされる。
反射的に炎熱系の魔法を広範囲に放射してしまった。
精霊兵たちは、赤い波動を受けてもほとんど揺るがない。
魔法の威力がたりていないのだ。
人間相手であれば骨も残さず焼き尽くす魔法ではあるが、相手が悪い。
キュートとほぼ同格まで昇華されている精霊兵たちは、この程度ではぬるま湯にしかならない。
精霊兵を倒すには、最低でも黒剣クラスの魔法が要る。
そして、それらの魔法は、キュートであっても秒以上の展開を要してしまうのだ。
再び体を死で塗りつぶされながら、キュートは笑った。
困ったし、面倒だし、正直ちょっとイライラしてきたけど、だけれど。
o川* ー )o
お行儀悪い、と自戒しながら唇に舌を這わせた。
仕方ないのだ。サスガ兄弟と言う激流は、キュートにこべりついていた終りの見えない退屈を、確かに灌ぎ落としているのだから。
-
空間跳躍と同じく、再生する位置も読まれている。
だから、キュートは再生と同時に空間跳躍。
ばれて反撃を受けるのを覚悟で、精霊兵の支配者であるアニジャを直接狙う。
やはり、アニジャは即座に反応した。
水の剣で現れたばかりのキュートを真一文字に薙ぎ払う。
キュートはこれを黒剣にて受け止め、押し返す。
予想通り精霊兵たちは術者本人が射線に入る攻撃を渋った。
迫ってはいるが、投擲攻撃は無いだろう。
その上精霊兵を管理するためアニジャは若干鈍く、墜すならば今が好機だ。
アニジャに乱撃を打ちこもうとした途端、無数の閃光魔法が放たれた。
弟の援護だ。キュートの口の端が吊り上がる。
本当に、お兄ちゃんが危うくなるとつい手を出しちゃうのよね、あなたは。
黒剣に注意を集中させていたアニジャの腹を蹴り、突き飛ばす。
束の間、一人になったキュートはもう目前まで迫る閃光魔法の全てを見切った。
射角に黒剣を合わせ、滑らせるように、流すように、誘うように、軌道を曲げる。
これを閃光と同じ速さで、同じ回数。
本来の目標を逸れた魔法の閃光は、迫っていた精霊兵たちを数体ずつ貫いて消滅した。
(´<_`; ) (嫌な読み方をする。それに……)
( ´_ゝ`) (さっきまで剣で防ぐので一杯だったあの魔法を流して、しかも目標に当てたか)
(´<_`; ) (この期に及んで、まだ“しろ”があるって言うのか)
-
この兄弟の予測を超えた「防御」は戸惑いとともに大きな時間をキュートに与えた。
閃光魔法によって直近の精霊兵を屠ったことで、これまでよりもはるかに余裕がある。
キュートは新たな魔法を展開。
瞬く間に完成させ、手に持った黒剣を天に掲げる。
o川*゚ ,゚)o 「“魔導の四拾弐――――”」
天井を覆っていた雲が、周囲に散り消滅した。
そこに現れたのは、青空では無く、天球を赤に染める巨大な魔法陣。
激しい明滅を皮切りに、陣の中心が扉の如く開き、そこから―――
o川*゚ ,゚)o 「“――――終焉の一睨み”」
魔とも、神ともつかぬ巨大な「目」が表れた。
音が聞こえそうなほど生々しく周囲を見渡すその瞳孔が、泡の如き光の乱反射を湛える。
(´<_`; ) 「防御ぉぉぉおおお!!!!!」
姿を消したままのオトジャが叫んだ。
瞳の中の光が爆ぜたのと、アニジャが周囲の精霊兵を変形させシェルター化したのはほぼ同時だった。
無数の、本当に数え切れぬほどの炎熱の炸裂が山を埋め尽くした。
水の蒸発する音すらない。風すらも枯れる。
名の通り、終焉以外を望めぬ絶対的な殲滅の煌めきが、乱れ世界を喰らい尽くす。
-
分に満たぬ時間で、魔法の発動は終わりに至った。
閃光と炸裂の奔流が止んでなお、山は紅く滾り、空が揺らめくほどの熱を残している。
生命は何一つとして残ってはいない。
そう、生命は。
( _ゝ`) 「……無事か」
(´<_ ) 「精霊化していなければ、完全に終わりだったな」
兄弟は、この時すでに生命の枠を逸脱している。
双方共に体の大半が揮発し消滅していたが、すぐに再生を開始。
周囲の環境が炎優位に変わってしまったため少々手間取るが、大した時間にはならない。
o川*゚ー゚)o 「はー――……すっきりした」
掃除を終えた、というような軽い満足感を言葉に含ませ、キュートは腰に手を当てた。
相変わらず裸体にローブを羽織っただけの姿。
魔法によって保護され、浮遊する旧ジュウシマツ砦の頂上の一辺に腰掛け下を覗きこんでいる。
o川*゚ー゚)o 「さてしばしの足止めには成功してるみたいだし」
( ´_ゝ`) 「オトジャ、雨を」
(´<_` ) 「もう招いているが、少しかかりそうだ」
o川*゚ー゚)o 「あの子たちをきちんと倒すのには、ただの魔法じゃもうだめね」
-
弱弱しいが、ぽつぽつと雨が降り始めた。
空の雲は異常な速さで濃く大きくなり、伴って雨粒も膨らんでゆく。
地面に触れたと同時に蒸発してしまう。周囲は湯気に包まれた。
( ´_ゝ`) 「ウンディーネたちは、まだいける」
(´<_` ) 「こっち今ので少し乱れてる。調整の為に追加で三分くれ」
( ´_ゝ`) 「……何とかするさ」
アニジャは先ほどの水の精霊の魔法の残滓をかき集める。
魔女によって消し去られたようには見えるが、それぞれが超高位の魔法体。
全てとも、半分ともいかないが、二割程度ならば新たに注ぐ雨水を用いて復活が可能だ。
( ´_ゝ`) 「“行け”」
蒸気が渦となり、雨を巻き込みながら魔女へ突進してゆく。
辿り着く前に人の形に変化。
さらに馬にまたがる騎兵の体を成して、槍を構えキュートに突進する。
数は百足らず。先ほどと比べると心もとないがその分強化されている。
確かに、これまで通りの対処をしたならば、数の減り具合ほど楽にはならないだろう。
だから。
o川*゚ー゚)o 「“魔導の九拾――――――神喰らい”」
特別な魔法でおもてなしだ。
-
黒剣にさらに漆黒の霧が沸き立ち、絡まりついた。。
深淵の魔物が唸りを上げたかのような、低く、不穏な響き。
先ほどの爆熱の魔法とは異なり、実に穏やかな発動であるにも関わらず。
(´<_`; ) 「あれは、まさか」
( ´_ゝ`) 「……」
死を克服した者共すらをも震え上がらせる、恐怖の塊。
どうやら、生易しい魔法でないことくらいは知っているようだ。
o川*゚ー゚)o 「一応、説明はした方が良いのかな?」
突進してきた精霊兵の体を雑に薙ぐ。
剣から伸びた黒の魔力が精霊兵を切り裂き、蒸気すらも残さず消滅させた。
返す刃。
これまた自分で嗤う程雑な大ぶりだが、剣から零れた魔力の余波が精霊兵を消し去った。
青い水の尖兵たちは、最早キュートに近づくことすら叶わない。
( ´_ゝ`) 「……」
o川*゚ー゚)o 「この『世界』を味方に付けようとしたところでさぁ〜」
アニジャが更なる魔法式の追加を始めた。
残っていた精霊兵たちが強化されてゆくのが分かる。
無駄なのに。
舌が口の中でのたうつ。
この意味を成さない足掻きですら、キュートには愛おしくてたまらないのだ。
-
o川*^ー^)o 「それごとぶっ壊せばいいだけなんだよね☆」
姿を消しているオトジャはとりあえず後回し。
まずは前衛役のアニジャを倒す。
キュートが手首のスナップで釣竿の先に括った糸と重石を薙げるように、剣を振るう。
飛翔したのはJ字の針でなく、漆黒の魔力。
一体を貫き消し去ったのに合わせ、手首を返し、次の対象へ。
軽い手首のみの動作で、魔力は鞭のように暴れまわり、キュートに迫っていた精霊兵たちを消去する。
その流れを維持したまま、黒い舌は兄者へ。
途中オトジャの放つ横やりの閃光魔法が黒の魔力を捉えたが、問題は無い。
消え去ったのはオトジャの魔法の方だ。
( ´_ゝ`) 「ッ!」
アニジャは高速の機動でこれを躱す。
のみならず、オトジャと合わせて防御魔法を何重にも張り巡らせた。
が、数十に至る防御のための魔法を一切無視し、キュートの魔法はアニジャの脇腹を浅く薙ぐ。
( _ゝ ) 「―――ッ!!」
未だ経験の無かった、あらゆる不快を詰め込んだような感触に、アニジャは意識を失いかけた。
宙に留まることが出来ず、ぐらりと、あたまから地面へ落ちてゆく。
傷からは、青い魔法の粒子が勢いよく吹き出し、軌跡となった。
-
o川*゚ー゚)o 「驚いた?びっくりした?」
( ´_ゝ ) 「……」
地面に衝突する寸前で意識を取戻し、何とか着地するアニジャ。
傷を手で押さえるが、一向に修復される気配が無い。
むしろ、逆に少しずつ広がってすらいる。
o川*゚ー゚)o 「私はね、『不死殺し』って、呼んでるの、この魔法」
( ´_ゝ ) 「……」
o川*゚ー゚)o 「世界の法則における対象の存在そのものを破壊しちゃうの。そうすると、いくら不死身の再生力でも、ほら、そのとーり」
( ´_ゝ ) 「……なるほどな」
o川*゚ ,゚)o 「本当は使いたくなかったのよ?これは負荷が大きすぎる」
( ´_ゝ ) 「……」
o川*゚ ,゚)o 「だから、大人しく負けを認めてくれるとありがたいんだよね。あなたたちを完全に消し去りたくもないし」
( ´_ゝ ) 「一つ、聞きたい」
o川*゚ー゚)o 「いいよ」
( ´_ゝ ) 「この『不死殺し』、貴様にも通じるのか?」
o川*゚ ,゚)o 「まあ、理論上は?私以外に使える人なんてもういないし、自殺以外ではありえないけど……」
-
( _ゝ ) 「……そうか」
アニジャは崩れるように地面に倒れた。
魔力の流出に比例して、背なの翼の明滅も弱々しくなってゆく
( _ゝ ) 「……それは、よかったよ」
o川*゚ ,゚)o 「?」
キュートは、背後に不気味な魔法の気配を感じ取る。
振り返った視線の先には、先ほど受けたのと同じ閃光の魔法。
兄の窮地に、またもや弟が援護に出た。
自身の感じた予感を裏切り、その程度の認識で済ませてしまったため、つい雑な防御を取った。
黒剣と同じ、高純度の魔力で生成した盾を二枚。
これで十分でしょうと、ため息すら吐きそうになったその胸を、
o川* )o 「――ッ?!」
盾を射抜き現れた閃光が、深々と貫いた。
-
魔法は背まで貫通し、キュートの身体は大きく仰け反った。
口から呻きより先に血が零れる。
見上げた空に飛んでいるのは、貫かれた胸が噴き出す血流か。
自身で受けるのは初めてだが、間違いない。
規模は小さいが「不死殺し」の役を負った攻撃だ。
( _ゝ ) 「……これすら通じなかったら、どうしようかと思っていたところだったんだ」
o川* ー )o 「……っあー―――………一体、いくつ奥の手、あるんだか……」
キュートは起き上がる。
胸の傷は、これまでよりもゆっくりと、しかし確実に塞がってゆく。
不死殺しが効かなかったわけでは無い。
単にキュートの方が法則に対する干渉力が高いため相殺され効力が減衰していただけだ。
(´<_` ) 「一撃で、とはいかんか」
o川* ー゚)o 「水はともかく、そのほかの部分では、譲れないからね」
キュートの視線の先、今度は明確に姿を現したオトジャが居た。
空中に屈み込み、杖の頭を脇に抱え、石突をキュートに向け。
顔を杖に寄せ、狙いを定めている。
石突が輝き、再び閃光の魔法が、正確には閃光の魔法に偽造した不死殺しが放たれる。
魔女たるキュートの力は、いくら魔法によって身体を昇華しているサスガ兄弟とは言っても敵う者では無い。
不意打ちであっても、数発ならば耐えられるだろう。
ただし、受け続ければ何がどう転ぶかは分からない。
-
扱うキュートにとっても「不死殺し」は制御しきれる魔法では無いのだ。
どんな影響がどこでどう出るか、気軽に実験できるものでもないためロクに把握していない。
迫る魔法に、キュートは剣を振るう。
黒い魔力が靡き、完全に相殺した。
(´<_` ) 「容易くは無いか」
o川*゚ー゚)o 「……けっこう本格的に危なくなってきたわね」
剣を振るい、黒の魔力を飛ばす。
狙いはオトジャの右足。
片足を刎ねるだけでも、十二分に魔法の精度を下げられる。
(´<_` ) 「……ッ!」
o川*゚ ,゚)o 「……さすがねぇ
キュートの不死殺しは届かない。
オトジャも、キュートと同じく不死殺しによって相殺したのだ。
ただし、威力の差により、オトジャは僅かにダメージを受けている。
相殺されるのを覚悟で狙い続ければ、いつかは直撃するはずではあるが。
-
o川*゚ー゚)o (……一度軽く頭吹き飛ばして、それからかな)
できうる限り不死殺しの無駄打ちは避けたい。
だから一度物理的に追い込んで、頭部または心臓を破壊。
再生までの時間を用いて、死なない程度に体をばらす。
オトジャが再び不死殺しの閃光を放つ。
相殺。即接近。
逃げようと背を向けた時点で不死殺しで穿つ。
しかし、予想に反してオトジャは動かない。
不死殺しと異なる魔法式を組んでいるようだが、一対一のこの状況でキュートより先んじることなどあり得ない。
キュートは剣を握りなおす。
別の魔法を組んでいる最中の今ならば、不死殺しで一気に殺せる。
o川*゚ ,゚)o 「?!」
剣を振ろうとした瞬間に青い光が走り、斬られた手が宙に舞った。
視線の先には剣を構えたアニジャの姿。
また、笑顔になってしまう。
ただし今回は多分に苦み混じりだ。
まさか、あの状態でまだ挑んで来るなんて。
-
( ´_ゝ ) 「させん」
o川*゚ ,゚)o 「もー!」
既に手負いのアニジャを先に戦闘不能にしようと意識が逸れる。
一撃程度ならば受けても平気と言う驕り。
その驕りに先ほども漬け込まれたことを、キュートは失念していた。
なめて、油断したその時間。
オトジャの目が、光る。
(´<_` ) 「“―――手足を削ぐ”」
o川*゚ ,゚)o 「?!」
青い魔力の矢が、キュートの肩口に刺さった。
不死殺しですらない小さな魔法だ。すぐに再生できる。
はずだったのに。
o川*゚ ,゚)o 「えっ?」
魔法の矢が魔法陣に形状を変え、体に張り付いた。
その明滅に合わせて、キュートの内部をめぐる魔力の流れが急激に鈍る。
これは、攻撃の魔法ですらない。
封印魔法だ。
名の通り、対象の力を抑え込むための魔法。
上の上程度の効力ではあるが、魔力の塊であるキュートには下手な攻撃魔法よりも効果が大きい。
現に魔力の供給が鈍って、黒剣に纏わせていた不死殺しの制御が怪しくなる
この状態で不死殺しのコントロールは安全でない。
すぐさま解いたため自傷することは無かったが、対抗手段も失われた。
封印を喰らってしまったこと自体が、大きすぎる失敗だ。
-
それでも、封印と分かっていれば対応を変えればいい。
失敗はすぐに取り返す。
キュートは一旦アニジャからも距離を取り、封印の解除に力を入れようとした。
その首を、アニジャが斬る。
既に腹部の大半が崩れ去った彼であったが、弟の間に割って入った速さを忘れるべきでなかった。
アニジャは、この状態でもキュートに追いつけたのだ。
首を刎ねられ、ほんのわずかな時間途切れた意識の隙を縫って更なる封印魔法が追加された。
益々力を抑制される。
再生自体は、何とか出来たが。
o川*゚ ,゚)o 「こんのっ!」
( ´_ゝ`) 「効くだろ、こういうシンプルな封印ってさ」
o川*゚ ,゚)o 「生意ッ……き!」
三段階目の追加。
この時点からアニジャも封印の追加に参加した。
倍速で追加される様々な封印式。
既に力を抑制されていることも災いとなって、解除が追いつかない。
-
(´<_` ) 「“―――天恵を祓い”」
( ´_ゝ`) 「“―――怪異に奉じ”」
二人の組み上げる魔法式がこれまでのものと変わった。
そう気づいた時には既にキュートの魔力はそこらの上級魔法使い程度まで抑え込まれている。
これ以上は、そうそう封印できない下限の域。
(´<_` ) 「“―――真を欺き”」
( ´_ゝ`) 「“―――偽に殉じ”」
しかし、サスガ兄弟は手を緩めず魔法式をくみ上げていく。
神格化により大概の魔法を一瞬で扱うことが出来るはずの彼らが、こうまで時間をかける術。
(´<_` ) 「“―――森羅を畏れ”」
( ´_ゝ`) 「“―――万象を封ず”」
o川*゚ ,゚)o 「むぅ〜!!」
既にかけられた十いくつの封印魔法を、九つまで打ち消したところでキュートは封印の解除を諦めた。
ここまで外せば調子がいまいちでないなあ、程度だ。
不死殺しなどと欲張らなければ、攻撃は可能。
せめて二人の術組みを停める。いくら不死化しているとはいえ、一度体を消し飛ばせば魔法式は失敗に終わる
現状放てる最も強力な火炎の魔法を二つ発動。
これなら精霊化した兄弟にも届く。キュートは焦りを堪え、火炎の殺意を放つ。
が。
それすらもが僅かに、遅い。
-
「「“流石流特殊封神術”」」
「「“―――壊式を得る”!!!」」
.
-
ずんっ、と体を揺るがす振動。
頭の中に電流のようなノイズが走り、キュートの目の前が青に埋め尽くされた。
空や海、または宝石の色とは異なる、無機質で均一な、青。
瞬きをしても、いつもの暗転が起こらない。
「何が」と口走ったが、その言葉すらも聞こえない。
魔法を使おうとする。
いつもなら当たり前にある、魔法が発動した際の僅かな反応が無い。
魔力の流れすら、感じられない。
それどころか、今の自分が立っているのか、座っているのか、それとも倒れているのかも分からない。
呼吸は出来ているのか。
心臓は動いているのか。
そこでキュートは気づく。
この青き暗転は視覚にのみ起きているのではない。
脳の全てが、キュートの持つすべての能が、停止させられている。
思わず笑ってしまう。出ているかも分からない声を、必死に出したつもりになる。
そうでもしないと、気が狂いそうだ。
無で埋め尽くされたキュートの意識の中、はっきりと存在を感じられるものがある。
これが「恐怖」。
久しく覚えたことの無い、懐かしさすらある芯の震え。
キュートは知覚する。
自分は死ぬ。殺される。
それだけの準備が、今この時、間違いなく整えられている。
――― ――― ―――
-
……やったか?
-
サスガ=アニジャは、自分の手を見た。
骨ばった長い指。分厚くなった掌の皮。
そして、骨に添うように張り巡らされている青い魔力の根。
そこから供給される魔力と魔法式が、肉を透き通った青に輝かせている。
同様の状態が全身に及んでいる。
背中には周囲から収集変換した魔力を一時的にプールするための、似合わぬ翼まで生えている。
傍からの見た目は、世ほど奇天烈なものだろう。
魔女はこの魔法を「神格化」と呼んだ。
アニジャとその弟オトジャは、この魔法を「精霊化」と呼んでいた。
言葉が異なるだけで、ニュアンスは近い。
一言にしてしまえば、人間を越えた能力を手にする為の魔法だ。
身体能力は勿論、魔法能力も大きく補強される。
水属性の上級程度の魔法ならば、発動後のイメージを頭に浮かべるだけで使えるほどだ。
それは魔女と同じ領域であり、魔女を倒すには辿り着かなければならない頂だった。
この魔法の為に費やしたものは多い。
収集したタリズマンはほとんどこの魔法の準備に使った。
発動した今、魔法の負荷に耐え兼ね、ただの灰と化している。
体にも相当な負荷がかかっているだろう。
上質な大地のタリズマンを粉末化して生成した顔料を用いて特殊な刺青を体に刻むことで軽減している。
してはいるが、あくまで僅かな効果だ。
あと十分と経たず、精霊化の維持は解けるだろう。
そして解けた時にどれだけの副作用が襲い掛かるか、予想は付いていない。
-
これもまた、途方もない過程が必要であった。
発動に必要な魔法式のパーツを他の魔法や攻撃に偽造し、魔女に打ち込み、潜伏させ。
「精霊化」によって飛躍的に向上した魔法能力により、「魔法式を自動で組み上げる魔法」を数個発動し。
それらを統括し、さらに仕上げるための膨大な魔法式を、二人がかりで完成させた。
そうしてやっと、魔女の魔法を完全に封じることに成功した。
ここまでしないと封じられないその能力に改めて慄いてもいる。
一時的に魔女を抑えるために用いた魔法でさえ、上級の魔法使いならば完封できるクラスのものだったのだ。
( ´_ゝ`) 「……」
手に、「不死殺し」の魔法を生み出す。
なるべく濃く、強く、より確実に消滅させるために、入念に魔力を込める。
魔女が健全な状態では相殺されてしまい十分な効果が得られなかった。
だが、今は別だ。
魔女は魔法の一切を、意識的なものも無意識的なものも全て使えない。
不死殺しによって、魔女のあらゆる情報をこの世から消し去る。
そうすれば、魔女は死より空虚な無となり、復活は不能だ。
態々危険を冒して正面から何度か殺し確かめたので間違いない。
魔女本人の口からも聞いている。
不死殺しで魔女は死ぬ。
その瞬間が、サスガ兄弟の勝利。
-
(´<_` ) 「……アニジャ、躊躇うなよ」
( ´_ゝ`) 「……当然だ」
アニジャの右手に、オトジャの左手に、澄んだ藍色の魔力が迸る。
激しい明滅と、煩わしい音。
高出力の魔法は、操作を誤ればアニジャたち本人を消し去りかねない。
( ´_ゝ`) 「“―――神に奉じる”」
(´<_` ) 「“―――磔刑の茨”」
二人が魔女に向かって跳躍。
同時に振りかぶり、魔法の発動を全開にする。
灰色の空が白黒に瞬くほどに強い光を放つ、「不死殺し」。
( ´_ゝ`) 「「“―――魔屠る槍の一投となりて”」」 (´<_` )
意識の無い魔女の胸に、二人の手刀が突き刺さる。
鮮血は吹き出す間もなく消滅し、代わりに殺意の魔法が魔女の体に侵攻すした。
白い肌の輪郭が、激しく毛羽立ち、肉が鳴らすとは思えぬ激しい音をまき散らす。
魔力による抵抗は一切ない。
不死殺しは、肉体のみならずそれを存在させるための法則の世界にまで浸透した。
激しい魔力の明滅の中、兄弟は視線を一瞬合わせた。
不死殺しに、最後の魔法式を追加する。
-
( #゚_ゝ゚) 「「“―――刻を喰らう”」」 (゚<_゚# )
.
-
充填された魔力の全てが、白い光と化した。
視界が一色に染まる。
魔女の身体は内よりその奔流に飲まれ、影を生むことすらない。
そして 魔女は。
-
( ´_ゝ`) 「……」
(´<_` ) 「……」
...: ..::.
. . . ::: :::
(´<_` ) 「……帰ろう、アニジャ」
( ´_ゝ`) 「……ああ」
この世界から、消滅した。
-
やったか!?
-
まじで!?
-
一旦終了。
次から捕捉と言うかこの世界観における魔女がなぜ死ななかったか、
サスガ兄弟の魔法でなぜ消し去ることが出来たかを説明するっす。
本編中で書かれていることが何となくでも分かれば不要なんだけど、
原理とか気になっちゃうひとはサラッと読んでみてね。
-
やったの!?!?
え、うそ!?
-
☆前提
世界は二重に構造となっており、世界の根底を成す「法則の世界」と
法則の世界によって現象として実行されている「現実の世界」の表裏一体で構成されています。
(メタ的に言えば、「法則」は「プログラム」、「現実」は「プログラムに従って出力された映像や音」と言った感じ)
以前の説明にもありますが作中における魔法とは、
「法則の世界」に直接干渉して法則を一時改変し、「現実の世界」に本来ありえない現象を生み出すことを指します。
-
☆普通の場合
現実の世界 法則の世界
┃
( ^ω^) ┃ ( ^ω^)
┃
「現実」と「法則」は表裏一体。
現実で起きたことは、法則でもそう書き換えられます。
例:怪我する
┃
( メω^) ―╂→ ( メω^)
┃
こうして法則にも、「怪我をした」という情報が同期されます。
逆に、法則の側に「怪我をした」情報が書き込まれた場合、今度は現実の方に怪我をした状態が反映されます。
┃
( メω^) ←╂─ ( メω^)
┃
魔女が何度か用いた、相手を問答無用でチョンパしたりする魔法はこれに当たります。
現実と法則が常に同じ状態。
これが原則であり、通常のことです。
※以降の説明のために回りくどいことを言っていますが、特別なことは言ってません。
-
☆「魔女」や「精霊化」等による不死者の場合。
基本的には同じく、二つの世界は同期した状態にあります。
ただし、怪我等の望ましくない状況が起きた場合に少々異なります。
現実の世界 法則の世界
┃
( メ_ゝ`) ―╂→ ( メ_ゝ`)
┃
一旦はこうして怪我をした情報が共有されるのですが……
┃
( メ_ゝ`) ┃ ( ´_ゝ`) キュピーン
┃
法則の世界の方に、怪我をしてない状況の情報を上書きします。
すると……
┃
( ´_ゝ`) ←╂― ( ´_ゝ`)
┃
法則の世界に従い、現実の怪我も治ります。
治療魔法のように代謝を促進し再生させているわけでは無いので、
痕や後遺症、部分的な老化現象なども一切起きません。
魔女たちはこれがオートで行われるので、たとえ頭が吹き飛んで意識が途切れても元に戻ります。
-
☆「不死殺し」とは。
上記のような不死者の場合、法則の世界に健常な状態の記録がある限り死にません。
そこで考えられたのが「法則内の情報そのものを消す」というもの。
これが作中における「不死殺し」です。
現在の情報のみならず、過去に遡って該当者の存在を消去するので、
過去の情報を引き出しての上書きも出来なくなります。
故に、該当者は事実上蘇生不能となり、消え去ります。
特定の状態を別個に保存している場合でも、本体が消し去られてしまえば自動復活は起きません。
魔法には魔力が必須となりますが、本体が完全削除された場合、魔力も全て消えてしまうので魔法が発動しないのです。
なので流石兄弟はまず、封神術で完全に魔法を使えなくし、余計な予防策を練られないうちに
☆法則の世界における「過去の情報」について。
動植物に限らず、世界に存在する物は、過去の状態の情報を一定期間保存されています。
その期間は、人の価値観で表すと約49日です。
故に、たとえ不死殺しを用いなくとも、死んでから49日経過すれば、過去の情報の上書きによる再生は不能になります。
故に、たとえ魔女であっても49日以前の状態を再現することはできません。
※個別に保存している限りはこの限りではありません。
-
「なー―――〜〜んてね☆」
.
-
ですよね
-
うわあああああ
-
ですよねえええええええ!!!
-
( ´_ゝ`) 「!」
その明るい声は、まるで当然のように響き渡った。
振り返ったと同時に、アニジャの右腕が宙を舞う。
それを目で追うと、オトジャの左腕も同じように撥ね飛ばされるのが見えた。
( # _ゝ`) 「なんで……ッ!」
(´<_ ; ) 「……バカな、完全に……」
( # _ゝ`) 「なんで居るんだよ………!」
飛ばされた腕の付け根を抑え歯を食いしばったまま、アニジャは呻くように吠えた。
喰らったのは不死殺し。精霊化を解いてはいなかったが、再生は始まらない。
体を形成している青い水の魔力が、勢いよく吹き出している。
o川*^ー^)o
( # _ゝ゚) 「キュート!」
音も無く、予備動作も無く放たれた不死殺しの黒い閃光が、アニジャの足を吹き飛ばす。
オトジャが反撃の魔法を放とうとするも、それより先に脇腹がこの世から消滅した。
-
o川*゚Д゚)o 「……あ、あー―――……うん……」
o川*゚ー゚)o 「……えーっと、うん。状況は、分かった」
(´<_`; )
o川*゚ー゚)o 「まずは二人とも、良く、ここまで出来たわね」
( #´_ゝ`) 「この……」
o川*゚ー゚)o 「ここまで私を追い込んだのは、神様以来よ。そこは純粋に賞賛するわ」
ごく自然に、何事も無かったかのように立つ、キュート。
相変わらず服を着ず、全身の素肌を晒したままであるが、先に負わせたはずの不死殺しの傷すらも無い。
美しいと称さずにいられないその体には、一切の傷も、穢れも、見られなかった。
キュートは穏やかな笑みで目を伏せ、胸に手を当てる。
川*‐ ,‐) 「本当に、死んでしまうかと思った。怖くて、こわくて、仕方なかった」
ぅ
川*‐ ,‐) 「生きたくて、死にたくなくて、仕方なかった」
ぅ
( #゚_ゝ)、 「がはっ……」
川*^ー^) 「……だから、ありがとう、二人とも。“私を殺してくれて”」
ぅ
魔女は笑う。
その背後に沸き立ったのは、これまでとは比にならぬ、死の魔力だった。
-
☆なぜ魔女は復活できたのか。
現時点で明確な理由は不明です。
-
おわりっす
大体>>727、>>734のせい
次は未定ですが、なるべく早く来たい気概は忘れずに
-
乙
予告が冗談になってなくてワロタ
-
くそ……俺が回復呪文を思わず唱えたせいで……!
乙でした。
ほんとにブーン達勝てるのかコレ
-
乙でした!!まじこれ勝てるんか・・・
-
乙です!
ますますブーン&ドクオが勝てる気がしないぞ・・・
究極回復魔法「やったか?」の重ねがけはいかんよ
-
乙でした
やってくれたぜ兄弟と思ったのに……
-
おつ!なにこのくそかっこいい戦闘熱い展開からの絶望は・・・ブーン勝てないだろこれ・・・
キュートはもともと自分を殺してくれる奴求めてるっぽい感じあったし、それが達成されたってことなのかなー
更に強くなった予感しかしない。ほんとに勝てるんかこれ
-
乙です
なんだこのチート
-
うあああくっそ熱いな乙!アニジャの精霊兵攻撃かっこいい
ここまでしても勝てないのか……兄弟死んでほしくないし妹者の手足取り返してほしいよ
-
ここまで圧倒的な強さの敵は読んでて清々しいレベル
今回も面白かったです
乙!!!
-
まぁじかよ!!魔女ぱねぇーーーーー
-
魔女なめてた!!!うわあああああ
乙
-
もうみんな死のう
-
ここまで無理やろ・・って思うラスボスは大魔王バーン以来だなwww
-
ttp://imgur.com/qeRJMqd.png
魔女こわいよーっ 頑張ってください
-
>>763
100選でホラーのトップ絵書いた人かな?
-
>>764
違うよ すまんな
-
ほがあああ乙!
なんというおそろしい敵だよ…ほんと底が見えねえ
-
キュートはその強さそのミステリアスさで長編スピンオフが一本書けちゃうレベルだなw
なにはともあれ乙乙
-
ロンリードックさんは魔法使いだが剣士の内藤さんは杉浦くんみたいにシュンコロされる未来しか見えない
-
まったくもってかてるきがしないっす
おつ
-
キュートは何が目的なんだ
-
殺された「かった」みたいだけど、どうなんだろうな
-
そういやジョルジュにも願いとして言ってたな
-
魔女 倒す 無理 ワロタ
おもしれー乙!
ちょっと違うけど空の境界思い出した
-
一回死んだんだろ?いもじゃの四肢は戻ったのかよ…
-
二人のぬいぐるみがくすみ始めたタイミングっていつなんだろうな。
精霊化した時かあるいは……
-
法則の世界の「過去の情報」って…魔女倒すためには49日間の情報にまで干渉せなあかんのかい…
神様とか言ってるし存在がもう具体的なもの越えすぎてて、魔女どーして生まれたしって感じwww
でもこれで戦争の時色んな人生き返らせることができた説明はつくね
つくけどもうなんか色々複雑すぎて、ドクオブーンとツンレベルが隅っこすぎてわろえない…
どう戦えばいいんだwww
乙乙ですん
-
あれだよ。ブーンはまだ切り札的なのがあるんだよ・・・(震え声)
-
外が五月蠅かったからFFの好きな戦闘曲流して聴きながら読んだ
戦闘シーン曲合いすぎて熱くて鳥肌立ったわ
妹者とフゥちゃん和んだし精霊化アニジャかっこよすぎるし魔女は強すぎる
-
よく説明見たら最後に、個別に保存している場合はその限りではありませんとかあるんだけど、魔女は過去情報の49日間の制限ないってこと?
もうね、超越しすぎちゃうんかと
魔女、貴様がナンバーワンだ
-
大統領かよ
-
魔法よく練られてるなぁと思ったら、さすおにそのまんまなのね
さすがはキュート様です!
-
あれか、D4Cかキュート。
次も期待してます。
-
質問なんだがブーンとドクオの体型ってどれだけ差があるんだ?
一瞬で変わったらズボンとかずり落ちそうだけど。魔法とかで固定してるとか?
-
>>783
きっと魔法的な伸縮性のある衣服なんだよ
-
>>783
ゴム
-
俺は、勝手に体と一緒に服も若干変わってると思ってた。
-
何回もベルト締めなおす描写あったじゃん
-
いともたやすく行われるアレかと思ったけど殺された時の記憶は持ってる感じか
わかんねー、とりあえずおつ
-
殺してくれてありがとう
ってことは神様と戦った時に死ぬまで解けない呪いでも掛けられてたか
-
>>789
そこは素直に恐怖を思い出す切っ掛けを作ってくれた事に対する感謝じゃね
-
藍染かよ
-
>>790
単に殺してくれなきゃ復活出来なかったから、かと思った
-
>>792
単なる復活とはまた違う気がするんだよなぁ
それに殺されなかったら復活出来なかった、ってそもそも殺されなきゃ復活する必要ない訳で
封印が永遠に続くなら神殺しやる必要ないんだから放置も意味ないだろうし
-
封印した後になんかやらかすのが怖くて神殺ししたが、魔女的には封印で終わってた方がやばいから、ありがとうなのかと思った。
-
支援支援
http://vippic.mine.nu/up/img/vp152705.jpg
ξ゚⊿゚)ξRPGっぽく
場面的には二話でのツンちゃんが大五郎の傭兵に喧嘩売って逃げてる
ところです。背景は素材のをお借りしました。
続き待ってます!
-
>>795
すごいツンさんがかっこいいだと!
-
うめぇwwwwGJ!!
-
>>795
やだ、イケメン…
-
まとめで読み直してメ欄に気付いたので戻ってきた
キューちゃんこわい
-
キュートこえー
-
http://u3.getuploader.com/boonnews/download/81/daigoro_goji.txt
気づいた範囲で誤字と疑わしきものを報告
何かに使えたら使ってください
一部ブンツンドーさんのまとめへの報告も含んでます
-
兄弟対魔女で力を使い果たしたか……
-
もう半年前になるのか…
-
二十八話 魔女対流石兄弟の一幕で漫画描いた
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org578049.zip.html
続きは無いです
-
まず何よりも先にミルナ=スコッチと言う男の紹介をせねばなるまい。
過去に何度も登場した彼を特筆して語るなど、いまさら何をと思うかもしれないが、少々堪えていただきたい。
ミルナ=スコッチ。
とある辺境の地のさらに秘境じみた土地に存在する、隠密の里の生まれ。
幼少より修行に明け暮れた身体は、小柄さを代償に多くの能力を身に着けている。
まずは隠密として必須の能力、身隠しの技である。
彼は地平の望める見晴らしの良い荒野であっても、他者の目を欺き潜伏することが出来る。
さらには特殊な術を用いることで、魔法探知に対しても高い隠密性を確保することが可能だ。
彼が一度本気で姿を消そうとすれば、見つけることが出来る者はそう居まい。
次に、強靭な足腰。
短距離を高速で駆け抜ける走力は勿論、山を一つ越えても衰えない持久力を兼ね備える。
当然単に走るのみならず、限られた領域内での機敏な動作にも優れる。
森や林の中ともなれば、最早彼が地面を踏む必要などなくなるだろう。
さらに、上記二つをもってしても逃れられぬ状況に陥った場合の為に、彼は相応の武力も身に着けている。
好む武器はあれど、扱えぬ武器は無いという程。
特に愛用するトンファーを用いた格闘術は一級品で、並の戦士であれは容易く圧倒できる。
無論、戦闘にならぬことが最善故に優先度は低く、純粋な武の達人には遅れを取ってしまう場合もある。
とはいえ、ある程度渡り合い、逃走の隙を伺う程度であれば十分に可能だ。
と、大まかに三点、彼の優れた部分を紹介させていただいた。
細かく書き出せばまだまだあるのだが、この辺にしておこう。
-
さて、上記した彼のハイスペックさを踏まえたうえで、今の彼の状況の把握に移るとしよう。
チーン
( ゚д゚ )
ノ| ノ|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
地 面
こんな感じである。
-
( ;゚д゚) 「こっちくんな!マジで!来ないで!!お願い!!」
とある森の中にて、ミルナは下半身を地面に埋めた状態で、短刀をがむしゃらに振り回していた。
実にハイスペックさに満ち足りた光景である。
彼の敵は赤黒い血にまみれた異形の人間。
魔法によって再び生を与えられた屍、いわゆる「アンデッド」だ。
新鮮な血肉を求めるが故か、ひっきりなしにミルナに襲い掛かってきている。
なぜ、こんなものと交戦しているのかも、補足せねばなるまい。
人を追っていた彼は、なるべく早く追いつくために山中へと割って入った。
彼にとっては山道といえどさほどの支障も無いため、確実に時間の短縮はできていた。
しかし、ここまでずっと走りづめていたミルナである。
流石に疲労を感じて、少々の休憩を取ろうと安全そうな場所で休憩を取ることにしたのだ。
元々人の手が加わった気配の無い森で、獣避けの術を用いれば落ち着いて体を休めることは可能。
事実、彼の術を無視して接近するほどの猛獣はおらず、この場所は確かに安全だった。
いくらか前に、無数のアンデッドを連れた魔女が、この付近を通ってさえいなければ。
-
そう。
この森の中には、魔女に置いてけぼりにされ行き場を失ったアンデッド達が無数に潜んでいたのだ。
彼らの知能は高くない。
自ら思考し、山を下るマネなどはしなかったので、近隣に被害は無かったが。
( ;゚д゚) 「キャー!キャー!!」
ノコノコとこの男がやってきて、腰を下ろして仮眠なんぞ始めてしまったのである。
新鮮な肉を補充出来ないアンデッド達は、仮死状態となって地面や木の洞にうずまり身を隠していた。
さしものミルナも、息もせず脈動もなく、落葉に埋もれている彼らを「敵」として察することが出来なかったのだ。
だが、初めてその存在を認識した時点ではまだ、ミルナは今ほど取り乱してはいなかった。
唐突に地面より這いだした屍には多少戸惑ったが、戦力を見極め、脅威を感じるほどの相手では無いと判断。
短刀により首を落とした手並みは実に鮮やかだった。思わずキメポーズを取ったくらいである。
が。
ことはそう簡単には終わらない。
滅多に訪れぬ栄養の気配を察知したアンデッド達がワラワラと集まって来てしまったのだ。
アンデッドの戦闘力は予想に反せず並の戦士程度かそれ以下。ミルナの腕があれば問題は無い。
しかし、いかんせん数が多かった。
ざっと見ただけでも十数。まだ増える可能性もある。
やむなし。
当然ながらミルナは逃走の選択を取った。
彼は隠密であって、戦士では無い。無理な戦闘は避けるに限る。
-
その潔さこそがまさに落とし穴だったのだ。
流れ的にも、物理的にも、見事な落とし穴であった。
一見して人の手の入っていない山中ではあったが、かつてはこの森にも狩人が存在した。
もう数年も前のことではあるのだが、彼らは生活の為に獣を捉える罠を複数設置していたのだ。
その中の一つ。
中型の獣を捕まえるための深い竪穴がこの近辺に仕込まれていた。
奇跡的に獣がかかることなく数年を経て、自然に溶け込んでいた深い落とし穴が、
これまでウサギの一匹も捉えられなかった分際で、見事にミルナの足を誘いこんだのである。
重ねられた落葉と、支えの枝を踏み抜いた体は、反応するよりも早く重力に吸い込まれた。
穴の中には雨でぬかるむ泥が満ちている。落ちた衝撃はそのまま深くミルナの体を穴に沈ませた。
あとは周囲の土が呼応するように崩落してしまえば。
チーン
( ゚д゚ )
ノ| ノ|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
KONOARISAMAである。
田舎に帰ろう。無理だよこんな人生。不運と踊っちまいすぎだよ。
いくらなんでも散々だよ。僕らが就職希望した明るい未来はどこに行っちゃったのって心持だった。
-
ミルナwwwww
-
一時本格的に自害を考えたミルナであったが、何とか気を持ち直した。
幸いにして命を奪う仕掛けは無く、時間をかけて掘り返せば十分に脱出できる。
敵も単調な動きで食い掛かってくるだけなので、冷静に応対すれば何とかなるだろう、と考えたのだ。
「アンデッドは首を落とせば死ぬ」という、前提の下で。
当然、そうは問屋が卸さなかった。
実際に迎撃を始めてみると、アンデッドの首を落とそうが、手を落とそうが、自分で拾ってくっつけ直しまた来るではないか。
いくら倒すのが容易くとも、死なないのだから終わりが見えない。
しかも再生するたびに体を乱雑に貼りつけ合わせてくるので、異形さがみるみる増していく。
一番大きい奴など、首のところからまた胴が生え、腕は八つもついていた。
この状況でこの特異な見た目は、さしものミルナも精神衛生を侵されずにはいられない。
接近を拒むべく、ミルナは膝を狙い手裏剣を放った。
手裏剣は見事命中。しかし、アンデッドはよろけて倒れ、体を四散させる。
しかし。
この一瞬の隙に、別のアンデッドが二体、背後に迫っていた。
すぐさま反応。
一体の頭を何とか弾き飛ばす。
しかし、もう一体への攻撃が間に合わず、肩口にかぶりつかれた。
アンデッドの顎の力はすさまじく、歪な歯が纏う装束ごと肉に突き刺さる。
何とも言い難い痛みだ。
すぐさま顎の腱を断って引き剥がしたが、咬撃特有の痺れるような痛みで、腕の回りが著しく悪くなった。
ミルナの冷静さはみるみる失われる。
下半身は身動きが取れず、終りの無い敵の襲撃に晒され、徐々に確実に体力を削られる。
目に入る敵は異形さを増し、周囲にはもはや腐りかけた血肉の臭いしかしない。
これでも何とか凌げているのは、積み重ねてきた修練の賜物と言っていいだろう。
現実的には苦しみを長引かせているだけなのだが、それに気づいた時点で終わりである。
-
「ししょー!こっちにもいますよー!しかもいっぱーい!」
精神的にも肉体的にも限界が見え始めた時、ミルナの耳に少女の声が聞こえた。
明るく快活な、この死に満たされた森の中にはあまりに不似合いな色だ。
ついに、幻聴が聞こえ始めた。もう拙者も終わり。ミルナの手から、短刀を握る力が抜けていく。
「“―――足踏みなどせず、躊躇いなどせず”!」
「“―――刹那に鳴き、光の刻を駆け貫けなさい”!」
「いっけーぇっ!“サンダーショットフレア”ぁ!!」
虚ろにまどろんでいたミルナの視界に、閃光が満ちた。
意識が叩き起こされ、反射的に顔を庇う。
耳に痛い連続する破裂音。これは、雷が疾走する際に爆ぜる轟きだ。
光と音は、数秒の間目と耳を焼き、止んだ。
ミルナが驚きから回復しないまま瞼を開けると、接近していたアンデッド達が湯気を立ち上らせながら崩れ落ちていく。
ζ(^ー^*ζ 「だいしょーりー!」
倒れたアンデッドの向こうに人影が見えた。
小さく跳ねながら、顔に見合った可愛らしいガッツポーズを取っているのは、恐らく十いくつの少女である。
二つに束ねられた金髪がぴょこりと跳ねた。
-
拙者は夢を見ているのだろうか、とミルナは呆ける。
人里より離れた山の中、救援などあり得ないと諦めていたところに、少女は現れた。
容姿は可憐で、血なまぐさいこの場にはあまりに似つかわしくない。
助かったというよりも、これが死後に見る景色なのかと捉えてしまったほどである。
少女は満足気に死体を一瞥した後、ミルナに視線を止めた。
花の、まるで向日葵のような少女だ。
とぼけたような表情からも、明朗快活な性格が滲み出している。
ζ(゚、 ゚*ζ 「―――あ、」
( ゚д゚ )
ζ(゚Д゚*ζ 「まだ残ってた!殺らなきゃ!!」
(゚д゚ )
( ゚д゚)
( ゚д゚ )
( ゚д゚ ) (もしかして:拙者?)
ノ| ノ|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
-
少女は機敏な足運びで二歩距離を取り魔法式の展開を開始した。
恐らく雷属性。
少々雑だが、式の展開は早い。
現在ミルナは返り血や肉片に塗れ、さらに下半身は無くなっているのでアンデッドに間違うのも当然の見てくれだった。
とはいえこのまま大人しく魔法を喰らえば、感電によって脳が蒸し焼きになること請け合いである。
ζ(‐、 ‐*ζ 「“――――雷鳴の射手よ、弦を引き、速く、疾く、卑獣の眉間を射抜きなさい”!」
( ゚д゚ )+ 「待ちたまえお嬢さん」 キラーン
ζ(゚ー´*ζ 「いっけー!“サンダー=ボ………って」
( ゚д゚ )+ 「拙者は生きた人間だ」 キラーン
ζ(゚Д゚;ζ そ 「うわぁしゃべってる?!きもちわるい!!」
( ゚д゚ )
( ゚д゚ ) (つらさ)
ノ| ノ|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
-
ミルナのピンチは続く、と。
支援
-
ζ(゚Д゚*ζ 「って、他のも全然倒せてない!」
雷撃を受け、やっと死んだと思われたアンデッド達が再び立ち上がる。
動きは鈍くなっているが、どうやら食欲は増したらしい。
蒸気を伴う息を吐き、わき目も振らず少女に向かってゆく。
`,ζ(゚、 ゚*;ζ 「こないでよー!えいっ!“サンダーボルト”!」
少女はミルナに使おうとしていた魔法を接近していたアンデッドに発動した。
頭上に小さな魔法陣が現れ細い稲妻が数本降り注ぐ。
雷撃は、全て的中。
アンデッドは全身を痙攣させ膝を突き、しかしすぐに立ち上がった。
少しは効いているようだが、火力が不足している。主要な体組織を焼き尽くせていないのだ。
ζ(゚、 ゚*;ζ 「雷撃じゃだめ……。なら、とお!」
少女は纏うローブの内側に手を入れ、剣を抜き放った。
小剣に類する、刃渡りも幅も控えめの物。
ただし柄は長剣ほどに長く、両手で持って扱いやすく拵えられている。
切り替えが早いのはよいが、魔法でも殺せぬこれらに対して剣を用いるなど悪手に他ならない。
少女は二体ほど切り倒し、すぐに囲まれた。
位置取りや状況の把握が甘い。
あまり実戦慣れしていないと見える。
ζ(゚Д゚*;ζ 「ぎゃー!無理ムリィ!!ししょー!はやくーー!!お手上げーー!!お手あげぇー!!」
-
喚きながら逃げ回る少女。
言葉から察するに仲間がいるのだろうか。
「ししょー」と言うのだから彼女の師に当たる存在であるだろう。
年端もいかぬ少女にこれだけの技能を仕込んだ人物となれば、期待は出来そうだが。
ζ(>Д<:ζ 「ギェー!」
何とか逃げまわていた少女だったが突如足を取られつんのめった。
ショートブーツを履いた足を、千切れたアンデッドの手が掴んでいる
これが原因だ。少女はバランスを崩し、盛大にたたらを踏む。
ζ(゚゚Д゚゚;ζ 「ほぁあ?!」
バタバタと足を動かし、なんとか転ばずに耐えた、と思ったその瞬間、少女の身長が急激に縮む。
否、正確には地面が突如陥没し、下半身が呑み込まれ――――。
チーン
ζ(゚言゚;ζ
( ) ノ| ノ|
| |ヽ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
KONOZAMAである。
ミルナと少女は、見つめ合う。
彼女が言いたいことがミルナには痛い程分かった。目と目で通じ合った。
-
ζ(゚―゚*ζ
( ゚д゚)
ζ(゚―゚*ζ
ウボォォォ......
( ゚д゚)
ζ(゚―゚*ζ
( ゚д゚)
ζ(゚―゚*ζ
グルルルルゥァァ......
( ゚д゚)
ζ(゚―゚*ζ
( ゚д゚)
ζ(゚□゚;ζ 「ししょぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!」
( ;゚'Д゚) 「たすけてぇぇええええ!!!ししょぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
必死である。
-
ヤタノカガミ
「“八咫鏡”」
.
-
その瞬間、世界が停止し、視界から色が消えた。
はるか昔の記憶のように、白と黒の濃淡でのみで映しだされる景色。
ミルナも少女も、反射的に喚くのをやめた。
無音である。
光も存在するはずなのにその温かみを感じない。
( ゚д゚ ) (これ、は……?)
視界の変化に伴い、アンデッド達の体が爆発的に蒸気を吹いて崩れ落ちた。
一体何が起きたのか。肉が炭化し、骨が枯木の如く朽ち果てている。
「まったく、勇んで先走ってなんという様ですか」
ζ(゚ー゚*ζ 「ししょー!!」
|゚ノ ^∀^) 「ししょー!!じゃありません。まったく、あなたももう少し思慮深さを身に付けなさいと言っているでしょう」
視界の色が元に戻り、困惑するミルナの目の前に現れたのは、若い女だった。
これが、「ししょー」。
どう見ても二十代の中ごろ。
浮世離れした神秘的な美しさを感じるものの、とても弟子を取るような歳には見えないが。
-
いや訂正しよう。歳は問題では無い。
ミルナは目の前に崩れたアンデッドの身体だったものを指ですり潰す。
細胞が完全に死滅している。
炭化―――火や電流で焼かれた状態に似ているが、そんな生易しいものではないだろう。
このタイミングで、景色が色を取り戻した。
感じ取れる魔法の名残。
属性は恐らく火と冷だ。相反する属性の魔法を一つの魔法として実行したのだろう。
理屈は予想できるが、それ故に簡単で無いことが分かる。
これほどの腕の魔法使いならば、確かに弟子の一人や二人いて普通だ。
|゚ノ ^∀^) 「そちらの方は、ご無事ですか」
( ゚д゚ ) 「ああ、お蔭さまで、この通り生きている。感謝する」
|゚ノ ^∀^) 「いえいえ、袖振り合うも多生の縁と申しましょう」
周囲にアンデッドの気配は無い。
ミルナは落ち着きを取り戻し、自身の下半身を掘り起こし始めた
少女の方はししょーの女性に手を取られやや強引に引っ張り出されている。
ζ(> < ;ζ 「痛い痛い痛いっ!ししょー、もっと優しく!」
|゚ノ ^∀^) 「自業自得です。反省なさい」
-
( ゚д゚ ) 「拙者、ミルナ=スコッチと申す。危ういところを助けていただき、改めて感謝する」
|゚ノ ^∀^) 「いえ、たまたま通りがかってよかったですわ」
ζ(゚ー゚*ζ 「道に迷ってただけですけどね」
|゚ノ ^∀^) 「お黙り」
( ゚д゚ ) 「失礼だが、名を尋ねても」
|゚ノ ^∀^) 「レモネード=ピルスナーですわ。気軽にレモナとお呼びください。此方は弟子の……」
ζ(゚ー゚*ζ 「っはーい!デレ=ディレートリでーす!」
落とし穴からの脱出を終え、ミルナは改めてレモネード=ピルスナーとデレ=ディレートリを観察する。
レモネードは、やはり二十代の半ば以降だろうか。
ロングのローブをまとい、錫杖を携えた姿は、見た目の割に老齢の気配を匂わせている。
この独特の空気が、彼女がただ者でないというミルナの確信に拍車をかけた。
弟子のデレは、レモナと似たローブを纏っているが、動きやすさを重視してか丈が短い。
内側はシャツにパンツルック。
少女らしい華奢な骨格にしては、やや少年的な印象だ。
そして、それぞれに大きな荷物を背負っている。
いかにも旅の最中と言った風貌だった。
-
( ゚д゚ ) 「レモナ殿、是非礼がしたい。何か拙者に出来ることは無かろうか」
|゚ノ ^∀^) 「そんな、お気になさらず」
( ゚д゚ ) 「このミルナ=スコッチ。命を救われ何も返さぬわけには。なんでもかまわぬので、どうか」
今回はさしものミルナも死を覚悟した。
そこから救われたのだから礼をせぬわけにはいかない。
別に、師弟そろって美人だからとかお近づきになりたいとかそんなんじゃない。本当だ。
ζ(゚ー゚*ζ 「いいじゃないですかししょー、お願いしましょうよ!」
|゚ノ ^∀^) 「まあ、そうね。せっかく言ってくださっているし」
( ゚д゚ ) 「何なりと」
|゚ノ ^∀^) 「ミルナさん、サロンシティの場所をご存じ?」
( ゚д゚ ) 「当然。むしろこれよりサロンに向かう途中であった」
ζ(゚ー゚*ζ 「ホントですかー?やった、ラッキーですねししょー!」
|゚ノ ^∀^) 「私たちも、サロンへ向かっていたのですが、揃ってその、地理に疎いもので……」
( ゚д゚ )+ 「容易い話だ。是非案内させていただこう」 キラーン
-
( ゚д゚ ) 「しかし、拙者こう見えて急ぎの身。少々足早な道中になるやもしれんが……」
|゚ノ ^∀^) 「それなら大丈夫ですわ」
レモナが背負っていた荷物の中から、丸めた布を取りだした。
厚手の敷布。
見たことがある。
飛行魔法に用いやすいようタリズマン粉末を編み込んだ特殊な布だ。
|゚ノ ^∀^) 「長く付き合わせるのも申し訳ないですし、これで手早く向かいましょう」
ζ(´ー`*ζ 「やったー、歩くの疲れたからうれしー」
( ゚д゚ ) 「拙者としてもありがたい」
話はすぐにまとまり、三人は魔法の敷布に乗って森より空へ飛び立った。
風がさほどない穏やかな陽気だ。飛行魔法には適した気候と言える。
ミルナも幾分疲れがたまっていたし、魔法で運んでもらえるとなれば重畳だ。
-
( ゚д゚ ) 「一先ず、あの地平に見える山を目指していただこう」
|゚ノ ^∀^) 「あの山ですわね」
分かりましたわ。と言いながら、レモナは90度違う方向へ敷布を操作し始めた。
何か特別な理由があるのかと、少々様子を見る。
( ゚д゚ )
( ゚д゚ )
( ゚д゚ ) 「レモナどの」
|゚ノ ^∀^) 「はい?」
( ゚д゚ ) 「まったく違う方向へ向かっているが、何か立ち寄る場所が?」
|゚ノ ^∀^) 「いえ?ミルナさんの言う通りの方角へ飛んでいるはずですが」
( ゚д゚ ) 「いや、全く違うが」
ζ(゚ー゚*ζ 「ししょーは超が三つはつく方向音痴なんですよ〜」
( ゚д゚ ) 「いやこれ方向音痴とかのレベルじゃないが」
ζ(゚ー゚*ζ 「超三つですから〜」
* * *
-
∬´_ゝ`) 「―――魔女が、死んだ?」
『ああ、そうだ』
嫌に低い声になっていることを自覚しつつも、アネジャはぬいぐるみに対し問い返す。
ぬいぐるみは肯定の返事をしたあと、考え込むように沈黙している。
当然、ぬいぐるみが意志を持ち喋っているわけでは無い。
普段は妹の部屋の戸に掛けられているこの猫のぬいぐるみには、父と母のものに限り念話の機能が備わっているのだ。
妹がいたずらに使用したがらないように彼女には伏せているし、アネジャ自身も使うのはこれが初である。
普段滅多に使わぬ機能を用い、父に連絡した理由は単純。
ヾl从・∀・*ノ!リ人ノシ 「やったのじゃ!やったのじゃ!!」
ミ*゚∀゚彡 「よかったねイモジャ!!」
l从・∀・ノ!リ人 「うんなのじゃ!」
ミ*゚∀゚彡 「これで一緒にお外で遊べるね!」
l从・∀・ノ!リ人 「なのじゃ!!」
自室で友達と一緒にはしゃぐ、末っ子のイモジャ。
『魔女』に奪われていた彼女の手足が、にわかに元に戻ったのである。
-
『魔法が消えたのではなく、休止状態になったというなら
気まぐれに解除したと言うよりは何らかの理由で魔力供給が不能になったということだろう』
∬´_ゝ`) 「魔力が半無限の魔女がそう言った状態になったってことは」
『そうだ。死んだか、あるいは限りなくそれに近い状態に追い込まれたか』
∬´_ゝ`) 「……」
『手足が戻ってしばらく経ちながらも魔法が再発動して居ないとなると、死んだと考えるのが自然だ』
∬´_ゝ`) 「魔法が完全に消えたわけでは無いみたいだけれど」
『供給が止まっても魔法式そのものが消えないような細工が施されていた。
もし魔女が死んでいるならば、貯蓄された魔力が費え次第、スリープした魔法も消えるだろう』
∬´_ゝ`) 「それじゃ、まだ警戒はした方が良いのね」
『そうだ。私たちもなるべく早く戻る。イモジャにはそれとなく、また失うかもしれないことを伝えておけ』
∬´_ゝ`) 「……わかった」
-
魔法、と言うのは常々減衰するという宿命を負っている。
干渉され改変された情報は、正常であろうとする世界によって復元されるからだ。
この“復元力”は非常に強力で、魔法の維持に多大な魔力を支払わなければならない理由に直結する。
ただし、魔法によって及ぼされた「結果」までは元には戻らない。
たとえば火炎の魔法で薪に火をつけたとすると、発動した魔法の火は消失するが、
その熱が移り燃えだした薪の火はそのまま灯り続ける。
魔法によって作られたキメラが元に戻らないのも同じである。
彼らは基本的に魔法によって遺伝子や身体構造を改造された一個の生命体だ。
「組み替える力」が無くなったとしても「組み替えられた構造」は元に戻らない。
イモジャが受けた魔法は、こういった、物理的に結果を残す魔法では無かった。
あくまで四肢はつながったままで、存在そのものを別の次元にキープされていたのだ。
だから、その場には無くとも胴体と共に成長するし、キープに用いられる魔法が機能しなければ有るべき場所に再現する。
以上の理由から、父はイモジャの手足が戻った事象の原因を「魔女が死んだ」と判断したのだ。
気まぐれなあの女の事であるから、何とはなしに供給を断っただけという可能性は大いにある。
その是非は、他に魔法を受けていたものを調べてみれば分かるだろう。
もし、イモジャに限らず、「魔力供給によって維持されていた魔法」を受けていた者たちが元の状態を取り戻していれば、
魔女が死んだ、と言う父の仮説が真実味を帯びてくる。
-
∬´_ゝ`) (だけど)
と、アネジャは思う。
魔女が死ぬ、ということがあり得るのだろうか。
魔女は、少なくとも半世紀以上前から猛威を振るっている存在だ。
何度か戦った父母の言葉を信じれば、彼女はただ強いという以上に不死身の性質を持つという。
イモジャの手足を奪われた際に対峙した経験を持つアネジャは、それが決して眉唾で無いと確信している。
殺す方法が無いわけでは無い、と父は言っていた。
ただし魔女がその上を行く可能性は大いにあるから慎重にならなければ、とも。
アネジャの知る限り父母は最強の真人間である。
彼らがそれほど警戒する相手を死に至らしめるような現象があったのだろうか。
一瞬脳裏に浮かんだ双子の顔をすぐに否定する。
身内びいきを抜きにしても弟達は優秀だが、かといって父母を超えるほどでは無かったはずだ。
妹の四肢消失に責任を感じ勇んだとて現実的に可能かどうかは別である。
ふと、不安になって妹の部屋に戻る。
父役のぬいぐるみを戻すついでに、弟役のぬいぐるみを改めて観察した。
イモジャの異変に気付き、父に連絡を取ろうとしたとき、双子の役を与えたぬいぐるみは揃って床に落ちていた。
父に通じるのを待つ間、何の気なしに掛け直したが、その時は特に変わった様子は無かったはずだ。
今見ても、双子のぬいぐるみには染みの一つも存在しない。
-
∬´_ゝ`) 「イモジャ、嬉しいのはわかったけど、あんまり騒がしくしないの」
l从・∀・ノ!リ人 「アイサーなのじゃ!」
∬´_ゝ`) 「フーちゃんも帰らないと、さすがにお母さん心配するわよ」
ミ*゚∀゚彡 「いちりある!」
∬´_ゝ`) 「もう暗くなるし、送って行ってあげるわ」
ミ*゚∀゚彡 「おことばにあまえます!」
l从・∀・ノ!リ人 「イモジャも一緒に行くのじゃ!」
∬´_ゝ`) 「……はしゃいで勝手に歩き回っちゃダメよ」
l从・∀・ノ!リ人 「ラジャ―なのじゃ!」
窓の外は、もう日が沈みかけ、東の空は夜の色に染まりかけている。
この付近は比較的治安がいいが、かといってVIPの黄昏を子供一人で歩かせるわけにもいかない。
フゥはイモジャの大切な友達であるし、何よりこんな時間まで帰せずにいたのはこちらの都合だ。
アネジャが送って帰すのが道理である。
-
アネジャを真ん中に、左にフゥ、右にイモジャと並び、手を繋いで黄昏の道を行く。
子供二人は相変わらずの上機嫌だ。
アネジャに窘めれれたため声を抑えてはいるが、まくしたてるように言葉を交わし合っている。
l从・∀・ノ!リ人 「フーちゃん明日も遊ぶのじゃ!」
ミ*゚∀゚彡 「当たりまえだのクラッカー!がってんしょうちのすけ!」
l从・∀・ノ!リ人 「噂にきく『けいどろ』というやつをやりたいのじゃ」
ミ*゚∀゚彡 「じゃあじゃあ!他の子たちもよばないとね!」
l从・∀・ノ!リ人 「イケメンいる?」
ミ*゚∀゚彡 「善処します」
時折激しく動くイモジャの手を、離さぬように、アネジャは優しく力を強めた。
妹の手を引き歩くなどいつぶりだろうか。
本人は、手足のある感覚を全く忘れていなかったらしく、ふらつく様子など一切見せていない。
-
ミ*゚∀゚彡 「それじゃあまた明日ね!」
l从・∀・ノ!リ人 「うんなのじゃ!!」
フゥを無事送り届け、帰路につく姉妹。
空は幾分暗くなってきている。
早目に戻って夕飯を仕上げなければ。
l从・∀・ノ!リ人 「姉者、イモジャのからだ元に戻ったから、皆帰って来るのじゃ?」
∬´_ゝ`) 「……とりあえず父者と母者はなるべく早く戻るって」
l从・∀・ノ!リ人 「アニ兄者とオト兄者は?」
∬´_ゝ`) 「あいつらは…………そうだ、叔父者ならどこにいるか知ってるかも」
l从・∀・ノ!リ人 「じゃあ、皆で一緒にご飯食べられるのじゃ?」
∬´_ゝ`) 「……うん、きっとね」
l从・∀・*ノ!リ人 「やったのじゃ!」
-
∬´_ゝ`) 「……でもね、イモジャ」
l从・∀・ノ!リ人 「じゃ?」
∬´_ゝ`) 「あの魔女が、またイモジャの手と足を、取りに来るかもしれないの」
l从・∀・ノ!リ人 「そうなのじゃ?」
∬´_ゝ`) 「もしかしたら、だけどね」
l从・〜・ノ!リ人 「そしたら、またみんないなくなっちゃうのじゃ……」
∬´_ゝ`) 「……」
l从・∀・ノ!リ人 「!じゃあ、イモジャもっと強くなって、今度は魔女さんに負けないようにするのじゃ!!」
∬´_ゝ`) 「…………あなた、やっぱりあの二人の娘だわ」
l从・∀・*ノ!リ人 「てへへ〜」
∬´_ゝ`) 「私としては複雑だけど……」
l从・∀・ノ!リ人 「そうと決まれば明日からしゅぎょーなのじゃ!休んでたぶんも取り返すのじゃ!」
∬´_ゝ`) 「はいはい、それと字の勉強ね」
l从・∀・ノ!リ人 「しゅぎょーもべんきょうも頑張るから早く兄者たちに会いたいのじゃ!」
∬´_ゝ`) 「ま、あの二人のことだからその内ふらっと帰ってくるわよ」
* * *
-
('A`) 『なあブーン』
( ^ω^) (お?)
('A`) 『ツンに、剣を教えてやらねえか』
( ^ω^) (……)
('A`) 『俺も、魔法教えるし』
( ^ω^) (前は嫌がってたじゃない)
一度目を覚ましたツンが再び安静状態を取り戻してしばらく、ブーンはそのベッド脇の椅子に腰掛け、彼女の寝顔を眺めていた。
子供と言うには精悍で、大人と言うには幼い面立ちは、ハインリッヒの魔法に守られ小さな寝息を立てている。
時々目覚めてはすぐ眠るをしばらく繰り返している。
恐らく山場は越えたのだろう。起きるのはある程度の回復が済んだからで、眠るのは魔法の効力だ。
ξ ⊿゚)ξ 「私の体が回復したら、私に剣と魔法を教えて」
二時間ほど前のツンの顔が頭に浮かぶ。
すぐに返事は出来なかった。
かつてならば、即答で断っただろう。
理由はそれぞれ違えど、弟子を取らないというのがブーンとドクオの主義だ。
だが、自分たちの技術を誰かに授ける気はないという反面、この娘を何とかしてやりたいという情は確かに芽生えている。
-
('A`) 『基礎を仕込んだ師匠がいるならそこで学ぶのが一番なんだ。でも、その師匠は今ここには居ない』
( ^ω^) (……)
('A`) 『それに仇の存在が傍にあり過ぎる。ツンの性格で、挑むなって方が無理だ』
共に戦った分だけ彼女の性格は理解している。
きっと彼女はどんな理由であれ、ヨコホリへの復讐を諦めたりはしないだろう。
例え殺されたとして、頭だけでも喰らいつく気迫と執念が、この少女にはある。
そもそも、しっかりと修練を積んで勝ち目が見えてから挑むなんてことが出来たならば、今ここでこんな目には遭っていないのだ。
この猪突猛進な娘を心配してしまった時点で、根負けしているのと同義。
ツンが突っ走ろうとするその傍らに付き添って援助してやるほかない。
今それをしてやれるのは、恐らくブーンとドクオだけだろう。
やってやれるだけの能力が二人にはあるし、してやりたいと思うだけの情もある。
('A`) 『仮に俺らが断ったとしてアイツは復讐を諦めたりしないだろうし』
( ^ω^) (むしろ、増えちゃったからね。サイボーグを憎む理由)
('A`) 『だからよ、今限りなく0に近い勝率を、なんとか1%くらいにしてやりてえんだよ』
( ^ω^) (……)
('A`) 『だめか?』
( ^ω^) (……わかった。君にまでそう頼まれたら、無下にはできないお)
-
心中での相談が終わり、ブーンはベッドに戻って大五郎(この場合焼酎の銘柄を指す)をちびちびとやり始めた。
ツンをベッドに寝かせるために不用意に体を使いダメージを加算してしまったため、動き回るのは得策でない。
外を眺めながら持ちだした干し肉を噛む。
穏やかな空気だ。せめて回復するまで、この状態が続けばいいのだが。
ドクオは精神の奥に沈んでいつものようにブツブツとやり始めた。
体の優位を譲った状態でよく考え事が出来るものだといつものことながら感心する
逆の立場になるので分かるのだが、優位を譲っている時に存在するのは思考のみだ。
感覚や主導権は表出している方に依存するので、あまり一つのことに集中することも出来ない。
ブーンなんて、今日の晩飯を考えることすら散漫になるほどだ。
魔法の理論を組み立て考察するなどもってのほかである。
ドクオはよく自分を「魔法の才能が無い」と卑下するが、ブーンにはいまいち理解できなかった。
確かに魔力の適性が低ため、他の魔法使いたちよりは不利なのだろうが、劣って見える点などそれくらいだ。
彼の手腕をこえる魔法使いはそうそういない。
現にドクオと合成させられてから戦った難敵の多くは彼の能力なしには切り抜けられなかっただろう。
ドクオにばれないよう、なるべく深く意識しないようにそんなこと考えてしばらく、ツンの呻きが聞こえた。
起きたようだ。
残っていたひとかけの干し肉を口に放り込み、ブーンは彼女の元へ行く。
-
ξ ⊿゚)ξ 「ブーン……?」
( ^ω^) 「調子はどうだお?」
ξ ⊿゚)ξ 「あれ、私……?」
( ^ω^) 「動かない動かない。そのままで居なさい」
どうやら記憶が混乱しているようだ。
無理も無い。
ずっと寝ていたため、夢現で居る時間の方が長かったはずだ。
ξ ⊿゚)ξ 「私、もう、何回か起きた?」
( ^ω^) 「うん」
ξ ⊿゚)ξ 「そっか……」
相変わらず呆けた目で、天井を見ている。
失礼ながら気持ち悪いな、と思った。
飛び起きてぶっ倒れるくらいの方がツンらしい。
-
ξ ⊿゚)ξ 「さっき頼んだの……頼んだと思うこと、どう?剣と魔法を教えてって、言った気がするんだけど……」
( ^ω^) 「……うん。ドッグと相談してね、いいよって、ことになった」
ツンの眼が少し驚いたようにブーンを見た。
また起きようとしたようなので、手でそれを制する。
( ^ω^) 「どうせ君僕らが何言っても突っ込むだろうし」
ξ ⊿゚)ξ 「……ありがとう」
( ^ω^) 「まだ何もしてないし」
ξ ⊿゚)ξ 「……そうね」
( ^ω^) 「そう言うことだから、今は大人しく体を休めなさい」
ξ ⊿゚)ξ 「うん。……ごめん、水って、飲んでも大丈夫なのかな」
( ^ω^) 「あ、大丈夫だと思うお。まっててお、飲ませてやるから……」
ベッドサイドに置かれた水差しを手に取る。
ランプのような形状の、長い吸い口の付いた金属の入れ物だ。
便利なもので寝たままでも水が飲みやすい。
頭の下に手を入れてやり、飲み口を咥えさせる。
傾けると、ツンの喉が動いた。
少しの間続け、手が動いたのを合図に水差しを戻す。ツンの口から、ぷは、と湿気の多い息が漏れた。
-
ξ ⊿゚)ξ 「なんか、意外だわ」
( ^ω^) 「何が?」
ξ ⊿゚)ξ 「ドクオはともかく、あんたが世話焼いてくれるなんて」
( ^ω^) 「そう?」
ξ ⊿゚)ξ 「うん、あんた、にやけた顔してるくせに、案外シビアだし」
( ^ω^) 「そうかな。でも、意外さで言ったら今の君も中々だけど」
ξ ⊿゚)ξ 「そう?」
( ^ω^) 「お。気持ち悪いくらいしおらしい」
ξ ⊿゚)ξ 「まるで普段の私がしおらしくないような言い方ね」
( ^ω^) 「違う?」
ξ ⊿゚)ξ 「合ってる」
( ^ω^) 「でしょ」
ξ ⊿゚)ξ 「でも腹立つ」
( ^ω^) 「らしくなってきたじゃない」
-
ξ ⊿゚)ξ 「あんたたちの方はどうなの?」
( ^ω^) 「まあ、ぼちぼち。ゲロ重い筋肉痛みたいな」
ξ ⊿゚)ξ 「……そう」
沈黙。
ツンの視線は天井に戻り、そのまま動かなくなった。
なにを見ているのか、考えているのか。
保護魔法の陣が、クルクルと回っている。
ξ ⊿゚)ξ 「……申し訳なかったわ」
( ^ω^) 「お?」
ξ ⊿゚)ξ 「あんた達を巻き込んで」
( ^ω^) 「まあ、あそこに行ったのは僕たちの意志だし」
ξ ⊿゚)ξ 「それに、あんた達が倒そうとするのを止めなければ、もっとマシな締めになってたかもしれない」
( ^ω^) 「それはどうだろ。展開が早まっただけで、結果は似たり寄ったりだったと思うお」
ξ ⊿ )ξ 「……結局、ィシさんを助けることはできなかった」
( ^ω^) 「うん」
-
ξ ⊿゚)ξ 「……水、もう一口ちょうだい」
( ^ω^) 「あんまり飲むとトイレ近くなるお。動けないんだから」
ξ ⊿゚)ξ 「別に、尿瓶でいいし」
( ´ω`) 「この男所帯で誰が世話するの……」
ξ ⊿゚)ξ 「あ、そっか」
( ´ω`) 「もう少し恥じらいを持ちなさいよ」
ξ ⊿゚)ξ 「あるよ。みる?」
( ´ω`) 「どこ」
ξ ⊿゚)ξ 「ここらへん」
( ´ω`) 「うわ。ちっっさ。ちっっっさ」
ξ ⊿゚)ξ 「本気で腹立つ」
( ´ω`) 「元気そうで何より」
ξ ⊿゚)ξ 「おかげ様」
-
( ^ω^) 「さてと、そろそろ寝た方が良いお。睡眠状態が一番いいらしいから」
ξ ⊿゚)ξ 「正直、意識は重いけど、眠くは無いのよね」
( ^ω^) 「ずっと寝てたしね」
ξ ⊿゚)ξ 「どうせなら、あんたと話してた方が気がまぎれるわ」
( ^ω^) 「お」
ξ ⊿゚)ξ 「寝ても、碌な夢見ないもの」
( ^ω^) 「そう言うことなら、付き合うお」
ξ ⊿゚)ξ 「ありがと」
( ´ω`) 「ちょっと待ってて、食べ物とか持ってくるから」
よっこいせ、と椅子から立ち上がった。
相変わらずぎこちない身体だ。
まどろっこしさを感じつつも、ブーンは自分のベッドに戻ろうとする。
その瞬間、痛烈な眩暈に襲われ、ブーンは体勢を崩した。
倒れそうになるのを必死でこらえる。
ツンが、心配そうにこちらを見ているのに気がついた。
-
ξ ⊿゚)ξ 「本当に大丈夫なの?」
( ;^ω^) 「いや、うん。そのは…………」
言葉の途中、開きかけの口がぐにゃりと捩じれた。
これには目の前にいたツンも、ブーン自身も驚く。
物理的な力が加わっているわけでは無い。
痛みを感じるということも無いが、ただひたすらに不快だった。
歪みは全身に及び、ブーンの身体はミルクを垂らされたコーヒーの如く周囲の空間と混ざり合っていく。
( ;^@^) (魔法攻撃?)
咄嗟に思いついたのは、其れだった。
あまりに脈絡なく、唐突に起きた特異な事象は大概が敵性魔法使いの攻撃と判断するのが妥当だ。
( ;^@^) (ッ――――――――――――)
応対しようとするが間に合わない。
既に効果が表れている以上、ブーンの技能では無理だ。
ξ; ⊿゚)ξ 「ちょっと、ブー――……」
ツンの呼びかけが終わりきらぬその瞬間。
ブーンの意識は、断たれるように暗転した。
-
おわり
夏も本格化し毎日うだるような暑さが続いていますが皆さんいかがお過ごしでしょうか
書いている奴はパン一で寝ていたらなぜか風邪をひきました。不思議。
>>801
誤字多すぎワロタ
コイツの頭もうダメなんじゃないか
ともかく誤字脱字の指摘はありがたいので今後見直すときの参考にしますありがとう
>>804
おk、その調子でキュートが脱ぐくらいまで行こう
次は今週末か来週の頭には来ます
詳しい日時はまた予告スレにて
-
乙ぅぅぅうううう久しぶりのツンさんんんん次回も楽しみです!
-
乙乙乙
妹者がそうなったということはブーンとドクオもそうなるよな
次回も楽しみにしている
-
乙です
魔女叩くなら今なんだろうがブーンとドクオもこれじゃ動けんな・・・
続きが来週には読めるとは嬉しいね!
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乙!
この作品のツンが一番「ツンさん」って感じ、いや自分でもよく分からないけどそんな感じ
-
乙!
おお!遂に分裂か!!
万全の妹者がどれくらい強いのかも気になる
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おつ!おつ!
-
レモナはドクオよりも能力高そうだな乙!
-
おつ!おつ!まってたぞー!
ミルナくそわろたwwwデレはツンの妹ってことでいいのかね。ししょー実は何歳なんですかね・・・
これ分裂したら大五郎もブシャアアアッって感じででてくるんだろうか。床酒びたしになりそう
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大五郎きたこれ
-
マジで!?待ってた!!超待ってた!!!!
本当ありがとう!そして最大級の乙!!!!
-
乙乙
続きが気になりすぎる
週末マダー?(・∀・)っ/凵チンチン
てか流石夫妻は妹者襲撃のとき以外にも何度か魔女と相対してんのか
夫妻の人外っぷりもやべぇwww
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ししょーがついにきた!
デレがつんの妹だと…
女らしさは全部デレにいってしまったのか…
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誰か夏に突っ込んでやれよ
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作品に集中しすぎて投下予告以外見てなかったわ
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うひゃあいああいああああ待ってたああああああ!
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>>857
全裸余裕だろ
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きた!大五郎きた!これで勝つる!
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え?更新?
最近のんびり読み始めて途中なんだけどマジかよ!?
てっきりもう更新無いものと思ってたからすげー嬉しいわ
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わーい更新来てるやったー
魔力供給止まったてことはつまりどういうことだろう キューちゃん生きてるし普通に魔法も使ってたよね
-
大五郎のξ゚⊿゚)ξさんが大好きでキーホルダーとかあったらいいなと思い
こんなん描きました。続きお待ちしております!支援!
('A`)ξ゚⊿゚)ξ( ^ω^)(擬人化注意)
http://vippic.mine.nu/up/img/vp156312.jpg
-
>>864
製品化確定だな!
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なにそれかわいいほしい
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あっ…
どっくんはべつにいらないかなー
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そういやVIPにプラ板職人が自作品の宣伝兼ねてたまに来てるな
彼に頼んだら作ってもらえんものかしら
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ブーンのストラップはドックンとのリバーシブルにするとか
-
何その抱き合わせ商法
-
>>869
ならブーンの2つ買ってくっつけるわ
-
ドクオになんの恨みが
-
じゅう。と魅惑の音がした。
ハインリッヒの持つフライパンからは、音と共に脂がはぜているのが見える。
香ばしく、濃厚な匂いだ。
鼻から脳へと伝わったそれは、口に唾液を分泌せよとせわしなく指令を送らせる。
从 ゚∀从 「あぶねえからちょっと下がってな」
ξ゚⊿゚)ξ 「はい」
ツン達の目の前にあるのは、これまた熱された鉄板だ。
上でこんがりときつね色の焼けめを見せているのは、軽く潰したポテトと、スライスされたオニオン。
一つまみほど振られた黒コショウが香り立ち、こちらも目に見えぬ幸福で鼻をくすぐる。
うっすらと湯気を立てるポテトとオニオンの上で、フライパンが傾けられた。
熱された縁が、より一層芳しい音を奏でる。
(*^ω^) 「おっ〜〜」
黒鉄のパンから零れたのは、金色の肉汁である。
ハインリッヒの手によってハタハタと降り注ぎ、ポテトとオニオンに沁み込んでゆく。
受け止めた鉄板の淵で脂が泡立つと同時に、これまでとはまた異なる、甘味を持った香りが立ち上った。
一通り肉汁を降り掛け終えたフライパンから、ハインリッヒがトングで持ち上げたのは、
厚くスライスされた豚ばら肉の燻製――――ベーコンである。
しっかりと焼きの差した桃色のそれは、ツン達の目に何よりも輝いて見えた。
-
ハインリッヒはあまりに慈悲深い暴虐さで、ベーコンをポテトの上に横たわらせた。
フライパンから離れてもなお、プチプチと爆ぜる旨みの粒。
もう、この時点で美味。口の中に溢れた唾液は、少し唇を緩ませれば零れてしまいそうだ。
从 ゚∀从 「熱いから、気をつけてな」
つまり、「食ってよし」の合図であった。
真っ先に動いたのはブーンである。
ベーコンの端から数センチの場所をフォークで突き刺し、持ち上げ、口へ運び。
その反抗的な弾力を喜びながら噛み千切る。
数度、顎を動かすと、元よりほころんでいた頬が、更なる堕落を見せた。
すぐさまフォークでポテトとオニオンを一片に掬い取り、こちらも口の中へ。
ベーコン。ポテト。オニオン。
同じく焼かれ焦げ目をつけながら、異なる香りの三重奏。
ブーンは前のめりだった体を、椅子の背もたれに預け直し、深く、長く、そして感慨を帯びた息を洩らす。
美味い。
言葉を聞くまでも無い。
その表情が、雰囲気が、全てを物語っている。
-
満足げなブーンを横に見てツンもフォークを手に取った。
彼女の場合は、まずはポテトだ。
フォークの先でひっかくように少量を掬い取って、薄い唇で咥え、食す。
ほっくりとした優しい口当たり。
滑らかに摺り潰されており咬むまでもなく容易く解れてしまう。
蕩けた食感の代りに、舌に与えられるのは、じんわりと染み渡る、素朴な香りと甘味。
口内に満ちていた唾液が、そのまま柔和な蜜へと変わってゆく。
ポテトを胃へと抱き込み、舌を口内でぐるりとさせてから、たまらずオニオンへ。
火を通されてしっとりとした感触がフォーク越しにも分かる。
しかし、一度口へ運べば、しゃっきりとした触感が、歯を出迎えてくれる。
噛む。
しゃき。
香ばし。
甘し。
絡まった脂の旨みと、黒コショウの刺激的な香りを漏らすことなく活かしきったオニオンの味わいは、
それだけで一つの料理として完成していると、ツンの舌を屈服させてしまったではないか。
-
なんて飯テロ
支援
-
しかし、しかしだ。
まだ負けてしまうわけにはいかない。
確定した敗北の先にも、戦うべき”領域”はあるのである。
ツンのフォークは、果敢にもさらなる強敵へ。
そう。厚切りにされ、これだけ肉汁を溢れさせながらも、未だ瑞々しさを失わぬ驚異の存在。
ベーコン。ベーコン。ベーコン、貴様の番である。
突き刺し、やや持ち上げ、自ら迎えに鉄板へ顔を寄せる。
頬を撫でる熱気。
鼻孔へ満ちる香り。
唾液洪水警報発令だ。
多大な期待と共に、ツンはベーコンへかぶりついた。
弾力に、歯が沈む。
ぷり、と肉が切れ、同時に、じわ、と肉汁が溢れだす。
ξ゚⊿゚)ξ (――――これは)
満たされる塩味。
しかしただしょっぱいだけでは無い。わけが違う。
摺りこまれ、寝かされ、燻製され、熟成し。
長く険しい時を肉とスパイスと共に耐え抜き帰ってきた、まるで老兵の、世捨ての旅人のような深みを持った塩味である。
刺激的で力強い旨みを持ちながら、されどしつこく居座る悪辣さとは無縁。
いずれまたここからいなくなってしまうのだという淋しさを押し殺し、ツンはベーコンを噛みしめる。
ξ゚⊿゚)ξ (―――――おかえりなさい)
その言葉を、胸の中で静かに独り言ちたのは、ごく自然のことであった。
-
開幕飯テロつらい
-
味わいつくしたベーコンを惜しみつつも飲みこみ、ツンは手を震えさせた。
そうだ。
ここまでは、あくまで鉄板に盛られたそれぞれの食材を別々に食したに過ぎない。
この料理の真価は、まだ発揮されていないのだ。
ツンは震える手でフォークを縦にし、ベーコンを丁度良い大きさに切り分ける。
その上に、オニオン、ポテトを、そっと重ねる。
個別でありながらあれだけの力を持っていた彼らを、まさか同時に食さなければならないとは。
正気の沙汰では無い。正常で健全な脳の判断ではありえない。
最早、食への、美味さへの、舌で請け負う幸福への、服従じみた依存にほかならぬ行為だ。
見よ。隣でせわしなくフォークを口へ運ぶブーンの顔を。
かつてオルトロス―――魔犬などと畏れられた覇気も狂気も存在せず。
一心不乱に舌を振り回すその姿は、牙を丸められた愛玩犬の様ではないか。
これを、一たび味わってしまえば、自分もああなってしまうのか。
情けなく、だらしなく、幸福に首をくくられた盲目の犬に。
恐る恐る、口を開く。
黒鉄に焼かれた魅惑の三層を、誘い、閉じる。
ξ゚⊿゚)ξ (――――――――ああ)
その時ツンは、確かに、発するべきあらゆる言葉を、失ってしまったのだ。
-
* * *
从;゚∀从 「そんなに美味いか?」
(*´ω`) 「この鉄板の上でなら死ねる」
从;゚∀从 「そうか、命を大事にな」
時は夕刻。場所はいつも通りサロンの郊外に位置するハインリッヒの自宅である。
往診を終えたハインリッヒが準備した食事を四人で楽しむ最中であった。
内容は至って素朴なものであったが、しばらく専用の栄養食ばかり食べていた彼らにとっては、何にも代えがたい美食だ。
元より食い気の強いブーンのみならず、病み上がり間もないツンまでもがゆっくりながらも止まらずフォークを動かしている。
ちなみに、タカラも来る予定ではあるのだが大五郎での仕事が長引いているらしく、まだ戻ってきていない。
彼は、侵攻の翌日から、ツン達が床に伏せっている間ずっと戦後処理に当たっている。
タカラは器用で要領が良いので、大抵のことをあっさりこなしてしまう。
その上面倒見が良く、人当たりも優れているので、傭兵でありながら店舗運営でも活躍してるらしい。
お蔭さまで連日働きづめ。
彼の働きぶりを簡潔に語ったハインリッヒの眉間には、深々と皺が寄っている。
相変わらずの心配性だ。
髪と寿命が儚く散ってしまいそうで、見ているこっちは彼の方が心配だ。
-
何レス飯に使うんだw
-
(;'A`) 「……ブーン、あんまり食い過ぎんなよ。腹壊れるだろ」
(*^ω^)+ 「心配無用だお。こんなことで負ける僕の胃袋では無い」
(;'A`) 「一応病み上がりなんだからよ……」
ξ゚⊿゚)ξ 「そう言うあんたは食べないの?」
(;'A`) 「いや、これで俺が食ったらわけわからないことになるだろうが」
自分の食事を進めながら、ツンはぼんやりとブーンとドクオを見た。
何度見直しても珍妙だ。
慣れはしたが、気色悪いことには変わらない。
从 ゚∀从 「お前ら、大五郎(焼酎の意。柿の渋抜きにも利用可)は飲まなくていいのか」
( ^ω^) 「昼間飲んだ分で十分だとは思うお」
('A`) 「俺も、この状態じゃあな」
-
そのまましばし食事を続けていると玄関の扉が開いた。
「邪魔するにゃ」と言って入ってきたのは、ご存じの通りタカラ=イッコモン。
彼の登場で、やっといつものメンツになった、と言ったところだ。
( ,,^Д^) 「お、目が覚めたのかにゃ。大丈夫なのかにゃ?」
ξ゚⊿゚)ξ 「うん。ずっと寝てたせいで、鈍って仕方ないくらい」
( ,,^Д^) 「お前さんらしいにゃあ」
(*^ω^) 「おかえりだお!タカラも早く食べるお!おいしいお!」
( ,,^Д^) 「お、ブーンも包帯取れ…………」
( ,,^Д^)
( ,,^Д^)
(*^ω^)゙ 「リッヒ、芋おかわりだお!」
( 'A) 「……」
( ,,^Д^) 「えっ」
タカラが硬直した。
ブーンは彼の表情なぞ気にせず、芋をモグモグと食べ続ける。
他の三人、ツン、ハインリッヒ、ドクオは、「まあ、そうなるよな」という心地でその反応に納得する。
-
( ,,^Д^) 「えっ」
(*^ω^) 「どうしたお?」
( ,,^Д^) 「…………この場合、逝っちまったのは俺の頭なのかにゃ」
从 ゚∀从 「いや、多分お前は正常だ」
( 'A) 「まあ、な」
( ,,^Д^) 「そうか。俺の目がおかしくなったわけじゃにゃーのか」
タカラの困惑は当然であった。
何せ、これまでは二人で一人、入れ替わりに片方しか存在できなかったブーンとドクオの顔が。
( ^ω^) 「あ、これのこと?」
('A`) 「それ以外にないだろ」
二つ並んで、同時に目の前にあるのだから。
-
ただし。
(^ω^Y 'A)
> <
/ ヽ
__(_つ_⊂_)__
胴体は一つであるのが最大の問題である。
オルトロス
ξ゚⊿゚)ξ 「まさに双頭の魔犬よね」
( ,,^Д^) 「オチてないからね?」
-
ななななんだってぇええー!!?
-
ブーンとドクオがこの状態になったのは、この日の夕前。
丁度ツンが目を覚まし、二人に武と魔の教授を乞うた後のことである。
その時優位にいたブーンが俄かに苦しみだし、気絶。
困惑し何も出来ないでいたツンの目の前で、首元が変形しドクオの頭部が顕現したのだ。
目覚めてみると意識が混線するということも無く、この状態に落ち着いている。
ξ゚⊿゚)ξ 「こう、人面疽が膨れるみたいになって、ドクオの頭が生えたのよね」
( ,,^Д^) 「ええ……キモ……」
(ω^* Y ;'A) 「俺らも望んでなったわけじゃないからそう言うなよ……」 ハフッハムッ...モキュモキュモキュッ
( ,,^Д^) 「原因はわかってるのかにゃ?」
(ω^* Y 'A) 「現時点じゃ、魔女に何かあった、とまでしか推測できねえな」 バクッ ホフッ......ムグムグ......
恐らくは、魔女が二人を融合させておくのに用いていた魔法に乱れが生じただろう。
故に二人を同一で居させる力が弱まり、部分的な分離が起きた、とドクオは予想を立てている。
もしかしたら、ただ単に気まぐれを起こした可能性も高いだろう。
それでもドクオが「魔女に何かあった」と優先して考えたのは、以降魔女が彼らに何も干渉してこないからである。
魔女は、自分でやったことは自分がやったと主張せねば気が済まぬ面倒な性格を持っている。
特に、他者とっては迷惑な行為であればあるほど。
気まぐれに何かを仕掛けたのなら、必ずその反応を楽しむため現れるはずだ。
-
( ,,^Д^) 「そのまま元に戻れたりしないのかにゃ?」
(ω^* Y 'A) 「弛みはしたが、魔法自体はまだ生きてる。この状態が限界だろうな」 モゴモゴ......グビッゥ...グビッゥ...
ξ゚⊿゚)ξ 「アンタの魔法で打ち消したりできないの?」
(ω^* Y 'A) 「難しいな。弱ってても魔女の魔法だ。干渉力の桁が違う」 プフゥ...... ハムッ...ムグムグ......
( ,,^Д^) 「……魔女が、またお前たちの前に現れる可能性もあるのかにゃ?」
(ω^* Y 'A) 「恐らく……ちょっと待って」 ガフッ......モッキュモッキュ......
(ω^* Y'A` ) 「ブーン、食べるの後にしろ。話が頭に入らなくなる」 ............ピタッ
(#^ω^Y'A`;) 「話終わるまでのちょっとの間だよ。食うなって言ってんじゃないんだ」
(。´ω`Y'A` ) 「……分かった分かった、手短に終わらせるから。なんだったら優位変わって寝とけ」
i|il('A` ) フッ
( ,,^Д^) 「あ、普通に入れ替わることはできるのかにゃ」
('A`) 「おう。分離できるって言っても、基本的には単一であるように力がかかってるからな」
-
完全に分離したらタイトルの意味が微妙になっちゃうしなぁ
しかしホラー
-
('A`) 「んで、魔女が来る可能性な。まあ、あるだろう」
( ,,^Д^) 「やっぱり」
('A`) 「仕方なく魔法の管理を手放したってんなら、補修に来るはずだからな」
ξ゚⊿゚)ξ 「どうするの?」
(;'A`) 「戦うっきゃねえよ。そもそも、そのつもりで探してんだ」
( ,,^Д^) 「勝てるのかにゃ」
(;'A`) 「……考えはある。が、基本の条件は、前に戦った時よりも悪い」
ξ゚⊿゚)ξ 「手伝う?」
(;'A`) 「いや逃げろよ。絶対逃げろよ。お前が弱いってんじゃなくて、マジでヤバいから」
ξ゚⊿゚)ξ 「あんたは逃げないんでしょ」
(;'A`) 「まあ、な」
ξ゚⊿゚)ξ 「じゃあ、良いでしょ。これから色々教えてもらうのに、見捨てて逃げるってのは性に合わないわ」
(;'A`) 「場合によっては剣と魔法とツンちゃんと大五郎になりかねないんですが……」
ξ゚⊿゚)ξ 「……下着は私に合わせてね」
b
(;'A`) 「やっぱり逃げてください」
ξ゚⊿゚)ξ 「嫌よ。それに、魔女は間接的に私の仇でもある」
-
(;'A`) 「まあ、そうだけどよ」
( ,,^Д^) 「何なら俺もやるかにゃ?」
ξ゚⊿゚)ξ 「あんたはそれこそ逃げなさいよ。家族いるんでしょ」
(;'A`) 「そだよ。気前がいいのはありがてえが、何の因縁も無しに対峙して得になる相手じゃねえ」
( ,,^Д) 「……まあ、無いわけじゃないんだけどにゃ」
从 ‐∀从uq 「……」 ズズ......
ξ゚⊿゚)ξ 「……?そう言えば、一回操られてたわね」
(;'A`) 「つっても、普通の攻撃はほぼ意味ないし……」
( ,,^Д^) 「援護くらいなら。弓と逃げ足には自信あるにゃ」
(;'A`) 「剣と魔法とツンちゃんと弓と大五郎になりかねないんですが……」
ξ゚⊿゚)ξ 「二日に一回は入浴したい」
( ,,^Д^) 「月一くらいで嫁と子供に会いに行っていいかにゃ」
(;'A`) 「お二人ともどうぞお逃げください」
-
一応タカラへの事情説明が済み、ドクオはブーンに優位を返した。
特に会話が必要なくなったからか、先ほどのように頭を生やすことは無い。
他愛のない話をして、夕餉を終える。
早い時間に始めたが、外はもう暗くなってきていた。
( ^ω^) 「お、わかったお」
散々お代りを繰り返し、やっと満足したブーンが、唐突に独り言ちる。
すぐさま入れ替わりにドクオが現れた。
あれほど膨らんでいた腹が何も無かったようにへっこんだが、胃の内容物は共有していないのだろうか。
('A`) 「よし、じゃあツン、やるぞ」
ξ゚⊿゚)ξ 「わかった」
二人の分離騒ぎでうやむやになっていたが、ツンはドクオに魔法の手ほどきや改良の手伝いをされることになっている。
ブーンも静かになったしさっそく取りかかろうというのだろう。
('A`) 「お前がすぐ休めるよう、病室でやるぞ」
ξ゚⊿゚)ξ 「うん」
普段よりもさらに遅いドクオの歩みについて行く。
魔法漬けで眠っていただけあって、体の回復自体はツンの方が進んでいるらしい。
そもそも彼らのダメージは、怪我だけでなく、使った技の副作用もあるので回復が難航している。
-
病室に着いてすぐ、ベッドに入らされた。
ドクオは椅子を引いて、その傍らに座る。
('A`) 「まず、何から見る」
ξ゚⊿゚)ξ 「天叢雲かな。絶対に必要だけど、一番うまく使えない魔法だから」
('A`) 「……わかった。とりあえず、発動はしないで、式を組んでみろ」
言われて、ツンは深呼吸した。
天叢雲は、彼女が使う魔法の中で最強かつ最高難度の魔法だ。
落ち着いた環境であっても、組むのには相応の集中を要する。
ドクオに手を取られた状態で、魔法式を展開する。
目の前に人がいる状態でどうどうと詠唱を唱えるのは気恥ずかしかったので、口の中でもごもごと呟く。
そもそも言わなければよいだろうと思われるかもしれないが、詠唱は完全に癖になっているし、
なにより、重要な魔法式の暗号になっているのでつい唱えてしまうのだ。
-
少し緊張しつつも、式を組み終えた。
これに必要な魔力をつぎ込み、実行の式を組めば灰色の雲が屋根壁ぶち抜いて降りてくるはずだ。
ξ゚⊿゚)ξ 「……どう?」
('A`) 「ん〜」
ξ゚⊿゚)ξ 「師匠が使う時と、私が使う時とじゃ効果の出方が全然違うのよ。単純に魔法の技術の差だと思ってたんだけど」
('A`) 「それもあるんだろうが、魔法式にちょこちょこ変なところがあるな」
ξ゚⊿゚)ξ 「やっぱり?」
('A`) 「珍しい話でもねえ。弟子に強力な魔法を真似されないように、魔法式を偽装してたんだろう」
ξ゚⊿゚)ξ 「何とかできる?」
( ;'A) 「どうだろうな……分析はともかく、偽装された魔法式の復元ってなると……」
ξ゚⊿゚)ξ 「あいつを殺すには、本来の天叢雲の力が絶対に要る」
( 'A) 「……わーってるよ。少なくとも、コスト削減と威力アップぐらいは何とかしてやる」
-
飯テロうめええええ
からの、ええええええ!?
その分裂の仕方にはびっくりだよ
-
('A`) 「ちなみに聞くけどよ」
余計な魔力の消費を抑えるため、解析を終えると直ぐ魔法式を取り消した。
天叢雲は展開の段階から異常な魔力を消費する。
ドクオ曰く、それも天叢雲に仕込まれた、使用を困難にするためのセーフティなのだという。
('A`) 「師匠にもう一度習い直す気は無いのか」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
('A`) 「前から言ってるが、魔法は基礎を仕込んだ師か、近い流派の魔法使いに習うのが一番なんだよ」
('A`) 「俺とお前じゃ、魔力の適性も流派も違うし、してやれることはあんまり多くないんだ」
ξ゚⊿゚)ξ 「……師匠は、私のことを戦わせたくないのよ」
('A`) 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「天叢雲だけじゃない。他の攻撃系の魔法だって、自分から教えてくれたことはなかったわ」
ξ゚⊿゚)ξ 「戻ったって、捕まえられるだけで、魔法を教えてくれたりはしないと思う」
('A`) 「そうか」
ξ゚⊿゚)ξ 「って言うか四肢分断された後大地の裂けめに落とされるかもしれない」
('A`) 「お前の師匠なんなの?邪神??」
-
キモすぎワロタ
-
ツンの師が自ら教えてくれたのは、身を守るための体術と、強化・防護の魔法が中心。
攻撃系の魔法についてはツンが勝手に身につけたものを、安全に使えるように正してくれただけだ。
故に、ツンが「使いこなせる」のは精々中級程度まで。
其れより上の魔法となると、十分な効力を発揮出来なかったり、そもそも発動することが出来ない。
中には、天叢雲と同じく、意図的に弱体化するよう教えられたものもあるのだろう。
('A`) 「……わかった。天叢雲以外にも、使えそうな魔法は考えてみよう」
ξ゚⊿゚)ξ 「出来るの?」
('A`) 「ああ、お前が使えるレベルで収まるかは分かんねえけど」
ξ゚⊿゚)ξ 「そこは、何とかする」
('A`) 「とりあえず、お前の使える魔法を全部教えろ。
その組み合わせで何とかなれば、習熟も早いし、実戦でも使いこなせるだろう」
ξ゚⊿゚)ξ 「わかった」
ツンはすぐに魔法の展開に入った。
慣れているものから一つずつ、名前と大まかな効果をドクオに伝えた。
比較的簡単なものを終え、少し難易度の高いものになると、ドクオの眉間に皺が寄り始める。
解析が難しいのかと思ったが、どうやらそうでは無いらしい。
-
ξ゚⊿゚)ξ 「どうしたの?」
('A`) 「……展開式の構成が独特だ。これもお前の師匠のオリジナルだろう」
ξ゚⊿゚)ξ 「そこまでは聞いてないけど」
魔法とは、本来それぞれの魔法使いたちが独自に研究し、導き出す一つの成果の形だ。
一般に広まり、魔法塾のような場所で当たり前に教えられているものはともかくとして、
オリジナルの魔法と言うのはつまり考案した魔法使いの努力の賜物なのである。
( 'A) 「理由は何であれ、俺は弟子を誑かして、別の魔法使いの研究を盗んでるのと同じだからな」
躊躇う理由が魔法使いとしての生業に誇りを持つ彼らしい。
ツンのみならず、魔法をただの手段としかとらえていない者たちにとっては理解できない感覚だ。
ξ゚⊿゚)ξ 「これが悪いとしても、あんたに責任は無いわよ」
( 'A) 「……」
ξ゚⊿゚)ξ 「それに、師匠はこれくらいの魔法、割とポンポン作ってたし、大丈夫だと思う」
( 'A)
( ;'A) 「マジで?このレベルのを?」
ξ゚⊿゚)ξ 「うん。中級くらいならわりと」
( ;'A) 「それはそれで不満だ」
-
すべての魔法を見せ終える頃には、既に一時間ほどが経っていた。
ξ゚⊿゚)ξ 「……たぶん、これで私の使える魔法は全部見せたと思う」
('A`) 「お疲れさん。俺はこれを元にちょっと案を練ってみるから、お前は休んでろ」
ξ゚⊿゚)ξ 「……うん」
展開だけとはいえ使える魔法を一通り組んだため、ツンの魔力は大幅に減っていた。
元々魔法があまり得意では無いツンにとっては、神経を使う作業でもある。
ドクオに手伝わせておいて自分は休むというのはいくらか気持ちが悪いが、言葉に甘えておくことにした。
ベッドに横になり、掛布を胸元まで引き上げる。
散々寝たてきたというのに、自然と瞼が重くなる。
腹も膨らんでいるし、しばし眠るのも悪くは無いだろう。
ドクオは自分のベッドに戻って、書き留めたメモを睨みながらいろいろと考えているようだった。
彼は、ツンの得意な風魔法の適性は低いはずだが、大丈夫だろうか。
ひとくくりに魔法と称しても、普段扱わぬ属性と言うのは全くの異文化である。
腕前は信頼できるが、慣れない魔法を構築しなおすとなると相当な難題のはずだ。
ξ ⊿゚)ξ (……ま、ドクオなら、大丈夫か……)
意識に靄がかかり、頭が枕に深く沈んでいく。
そうだと自覚した瞬間に、ツンの意識は眠りに落ちた。
-
夢を見た。
見覚えのある景色だけれど、少し違うどこかの街並み。
付随する感情は、悲しみとか怒りとか、そんな感情だった。
景色はどんどん流れてゆく。
歩いていたんだ、と気づいたのはさらに見覚えのある場所に辿り着いた時だった。
荒れ果てた街の一角。
数本の柱を僅かな壁を残して木端微塵になっている建物。
半分に割れて転がる「そ屋」と書かれた看板。
そして、その前に微動だにせず立っている、金髪の少女の背中。
いろんなことを思った。
内容はわからないけれど、とにかくいろんなことを考えたんだと思う。
少女は知人らしい誰かに、半ば強引に連れられてゆくまでずっとそこに立っていた。
手を引かれながらも、何度も振り返り、少女とは思えない眼で、廃墟をにらみつけている。
しばらく眺めて、その少女が自分なのだと、ツンは思い出す。
-
ィシは、呪具に飲まれた後、ツンに意識を呼び覚まさせられた時点で命を絶つことを覚悟していた。
もう人に戻れぬなら、何としてでもヨコホリを屠り、潔く世を去ると。
これは、ツンにも告げられていて、だからこそツンも、ヨコホリを討たせなければと奮闘したのだ。
その裏でィシは、ツンには告げずもう一つ別の準備を進めていた。
自身と、自身が取り込んだ仲間たちの戦闘の記憶の圧縮である。
同化した禁恨党の面々の「戦いの技能」の情報を単純化してまとめ、呪具の思考同期でツンに授けようとしたのだ。
それは、自分たちの死後もきっと戦い続けるだろうツンヘの置き土産。
共に戦うことのできない同胞への、共闘の申し出だった。
一度ヨコホリを倒し、ツンがィシを殺すための魔法を汲み始めた時点で、圧縮された記憶はツンに届けられた。
ツン自身にも気付けぬ、秘匿のプレゼントだ。
就寝時の記憶の整理―――つまり夢を見た際に順次開封、定着されるよう仕組まれていた。
しかし、そこで想定外の事態が起きた。
そう。ヨコホリは狡猾にも自身の命の予備を準備しており、それを用いて復活。
瀕死ながらも、ィシを殺したのだ。
その際、本来ではツンに与えるつもりで無かった、ィシの過去の記憶の一部までもが走馬灯に紛れ送信されてしまったのだ。
そう、これは。
ツンが知るよりも高い視点から、故郷の町を見る記憶は。
ィシ=ロックスが、ツンに知らせずに終わりたかった、彼女らが失った時代の記憶だ。
-
ツンはもう何度もこの夢を見ている。
寝ている間はこの記憶ばかりを繰り返し反芻していた。
一度目は何のことか全く分からなかったが、二度目には、大よそこの夢の意味を理解している。
ィシの夫の仇はヨコホリだとィシの口からきいていた。
ツン自身は幼さゆえにほとんど覚えていなかったが、両親の店が襲われた時に死んだ傭兵は、ィシの夫であった。
だからツンは両親の仇がヨコホリ=エレキブランであると悟った。
ィシは、間違いなくそれを知っていた。
知っていてツンに教えず、全てを先んじて終わらせようとしていたのだ。
ツンはヨコホリが仇と知ればまず間違いなく特攻する。
そして、今頃には殺されるか、少なくとも再起を望めるような状態では済まなくなっていた可能性が高い。
ィシが死に、彼女が隠したかった事実はツンに伝わったが、状況は以前とは違う。
何度も交わした戦闘で思い知った、ヨコホリの強さと己の弱さ。
かつてであれば、構わぬと、死んでもよいと、放たれた矢と同じくツンは駆け出していただろう。
今もそれは変わらない。
だけれど、何とか飛び出すのを堪え、ブーン達に剣と魔法の教えを乞うたのは、
絶対に、確実に、ヨコホリを殺さなければならないという、意地が故。
-
ィシの記憶は、飛び飛びに進んでゆく。
記憶は薄れ、明確さを失っていくものだ。
その上、呪具による転送によってツンに与えられたのはごく一部のものでしかない。
夢に映し出される記憶は、主にィシがより強く記憶していたものがほとんどのようだった。
シーンをはじめとした、禁恨党の面々との出会い。
皆、様々な想いを抱えて、ィシと出会い、同胞となった。
名前しか知らぬ者、其れすらも教え合わなかった者、さらにはツンが出会った時点では死んでしまっていた者もいた。
正味な話、大きな関わり合いの無かった彼らの過去に強い感慨が湧くことは無いのだけれど。
しかしながら改めてその戦う理由を知ることは、決して無意味には感じなかった。
彼らの為に戦うことはできなくとも、せめてその心を知って連れて行くくらいなら出来る。
記憶が新しいものになると、鮮明さが増してゆく。
この頃になると味方を増やすというよりも、そもそも被害者を増やさぬよう、ィシは戦い始めた。
最中で、一人の少年と出会う。
ツンが出会った時よりも数年分幼いが、彼のことは他のメンツよりも知っている。
彼は、ィシたちが潜伏していた隠れ家までこっそりついてきて、見つかってすぐに、あるものを見せた。
それは紐で括られた、金色の髪束だった。
『僕を仲間に入れてください。僕の妹はあいつらに殺されました』
『少しだけれど、剣も使えます。もし、弱くて使えないというなら、雑用だって、人柱だって、なんだってやります』
『だから、僕も一緒に戦わせてください。妹のような、理不尽に殺される人を、少しでも減らす役に立ちたいんです』
彼のその言葉を最後に、記憶の再現は終わる。
少しだけ、深く眠って、それから起きよう。
夢を見るのは、ちょっと疲れた。
-
目を覚ますと、部屋の明かりが落とされていた。
カーテンの隙間から差し込む月光でほんのりと明るい。
一体どれほど寝ていたのだろう、とツンはベッドで身を起こす。
そこで、ベッド脇の椅子に、だれかが座っているのに気付いた。
ドクオやブーン、ハインリッヒやタカラとも体格が違う。
誰かは、少し寝ていたのか、ツンが動いたことに気付き、顔を上げる。
「ああ、ディレートリ。起きたのかい」
「ちょっと待ってて、今ランプをつけるよ」
マッチを鑢に擦り付ける音。
発火剤がはぜて、ぼんやりと朱い光が点る。
その中に知った顔が浮かび上がる。
ミ´・w・ン 「調子はどうだい」
ξ゚⊿゚)ξ 「……ミンクス」
ミ´^w^ン 「おっと、なにも変なことはしてないよ。寝顔は見てたけど」
ランプに火が移りより大きくなった光の中でさらりと気色の悪いことを言ったのはミンクス=フェイクファー。
いつも通りの覇気のない、はにかむような笑顔を見せる。
夢で見た時とは違う雰囲気で、何とも変な感じだ。
-
ξ゚⊿゚)ξ 「ミンクス、ありがと」
ミ´・w・ン 「いやいや、僕はちょっと前に来ただけだから。それまではドクオが看てくれてたんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ 「違う。……あの時、ィシさんが殺された時、あたしのこと庇ってくれたの、あんたでしょ」
ミ´・w・ン 「ああ……そのことか」
ξ゚⊿゚)ξ 「あんたが抑えてくれなかったら、私も一緒に吹っ飛んでたから」
ミ´・w・ン 「感謝されるようなことじゃないよ」
ξ゚⊿゚)ξ
ミ´‐w‐ン 「……本当に、感謝されるようなことじゃ、無い」
ミンクスが言いたいことは、何となくでは有るが悟ることは出来た。
ィシと行動を共にした時間は、彼の方が圧倒的に長い。
抱えた思いは、ツンよりも大きいだろう。
ξ゚⊿゚)ξ 「それにしても、あんた良く生きてたわね」
ミ´・w・ン 「ああ、それはさ、姐さんが助けてくれたんだ」
言いながら、ミンクスが服をおもむろに捲し上げた。
ランプの光に露わになったのは、それなりに締まった体と、肩から脇腹にかけて走る大きな傷跡。
鎌状の剣に斬られた傷だったはずだが、それにしても痕が大きく、歪である。
-
ミ´・w・ン 「姐さんがさ、木の根と、死体の血肉で傷を塞いでくれたんだ」
ξ゚⊿゚)ξ 「いつの間に……」
ミ´・w・ン 「君が僕の傍を離れて暫くしてくらいかな。めちゃくちゃ痛くて意識飛んじゃったんだけどさ」
ξ゚⊿゚)ξ 「そっか……」
ミ´・w・ン 「でさ。ドクオに聞いたんだけど」
ξ゚⊿゚)ξ 「うん」
ミ´・w・ン 「ヨコホリが両親の仇だって、分かっちゃったんだね」
ξ゚⊿゚)ξ 「うん」
ミ´・w・ン 「どうするの」
ξ゚⊿゚)ξ 「戦って、倒す」
ミ´・w・ン 「言うと思った」
ξ゚⊿゚)ξ 「ィシさんが、戦わせたくないって、考えてくれてたのはわかるけど……」
ミ´・w・ン 「僕も一緒に戦うよ」
ξ゚⊿゚)ξ 「……」
-
ミ´・w・ン 「君が一人で戦いたいってのも、僕がそもそも役に立たないってのも分かってる」
ξ゚⊿゚)ξ
ミ´・w・ン 「別に協力して戦おうっていう訳じゃないんだ」
ξ゚⊿゚)ξ
ミ´・w・ン 「アイツは僕にとっても仲間の仇だ。だから、君に便乗して、一矢報いたい」
ξ゚⊿゚)ξ 「……わかった」
ミ´・w・ン 「ありがとう。出来る限り頑張るよ」
ξ゚⊿゚)ξ 「とりあえず迂闊に死んだりしなければ、いいわよ」
何となくミンクスの顔が見づらく感じ、そっぽを向く。
と、同時に首が痛んだ。
全身の状態は、比較的良好になっているが、部分的にはまだ不具合も多い。
一応日常生活が出来る程度に回復しているので、逆に油断してしまう。
ミ´・w・ン 「痛む?先生呼んでこようか」
ξ ;‐⊿)ξ 「ごめん、お願い」
ミ´・w・ン 「いいのいいの。じゃ、ちょっと待っててね」
ミンクスが病室を出てゆく。
ちらとブーン達のベッドを見たが、敷布が捲られており姿が見えない。
時間を聞くのを忘れていたが、まだ就寝時間には早いのだろうか。
-
上半身を起こしたままの状態で、体を軽く捻る。
やはり鈍い。
夕飯を皆と一緒に取ったりと、一応動かしてはみたのだがやはり急には改善されないようだ。
ハインリッヒの許可が出たら、出なくてもこっそりと体を動かしておかなければ。
このままではブーンに稽古をつけてもらう以前の問題だ。
そのまま入念に上半身のストレッチを続ける。
ハインリッヒが気を使ってくれたおかげで身体能力がそこまで落ちたわけでは無いが、健全な状態と比べればやはり劣る。
怪我の回復後である点も含め、早急に体を戻さねばならない。
いや、戻すだけではだめだ。
さらに強くしなければ。
そうでなければ、ツンの殺意を何に乗せたところで、あの男には届かない。
ξ゚⊿゚)ξ (…………来た?)
静かにしてハインリッヒ達を待っていると、何やら声が聞こえた気がする。
やっと来たのだろうか。にしてはなんだか声色が落ち着かない。
ξ゚⊿゚)ξ (違う、これ……ッ)
どうにも変だと思ったのは当然。
その声は、診療所の外から聞こえてきていたのだ。
-
ツンが疑問に思い、窓を見やった瞬間。痛烈な破砕音が響き渡った。
木端が舞い、割れたガラスの破片が床に刺さる。
反射的に目を閉じる前に見えたのは、壁が粉砕されるその瞬間だった。
ξ;゚⊿゚)ξ (襲撃ッ?!)
ランプの明りでは照らしきれない土ぼこりの向こうに、何かの気配がする。
不味い。
今のツンは武器を何も持っていない。
ニョロも傍にはおらず、丸腰だ。
魔力は多少回復しているが、身動きの取れない状態でどう戦えば……。
( ;゚д゚ ) 「っ〜〜、何を、どうすれば、平地に着地しようとして家屋に激突できるというのだ……」
ζ(x、 x ;ζ 「けほっ、だから言ったじゃないですか、超が三つは付く方向音痴だって」
( ;゚д゚ ) 「三つで足りてないから」
ζ(ぅ、 ‐;ζ 「夜で暗かったですし〜〜」 グシグシ
( ;゚д゚ ) 「月明かりあるし照明魔法もばっちりだっただろう……」
土煙の中、吹き飛ばされたように転がり出てきた二人の人影。
片方は、黒っぽい異邦の装束に身を包んだ怪しげな男。
もう一人は、裾を詰めたローブを羽織り、手に照明魔法のかかった杖を持った少女だった。
ツンは、この少女の方を、良く知っている。
-
ξ;゚⊿゚)ξ 「…………デレ??」
ζ(ぅ、 ‐;ζ 「っう〜〜〜、頭打ったせいでおねぇちゃんの声が聞こえる〜〜」
ξ;゚⊿゚)ξ 「なんで、あんた……」
ζ(ぅ、 ゚*ζ 「幻聴でもなつかし〜〜〜……」
ξ;゚⊿゚)ξ
ζ(ぅ、 ゚*ζ
ξ;゚⊿゚)ξ
ζ(゚、 ゚*ζ
ξ;゚⊿゚)ξ
ζ(゚ー゚*ζ
ξ;゚⊿゚)ξ
ζ(゚∀゚*ζ。+
ξ;゚⊿゚)ξ
ζ(゚∀゚*ζ 「おねえちゃん!!!」
-
ツンの顔を見て数秒停止した少女は、満面の笑みを浮かべて、ツンに飛び掛かった。
二人の距離は三メートル弱離れていたが、少女の身体は綺麗な放物線を描き、ツンに向かって落下する。
ξ; ⊿ )ξ 「どっふぁぁぁ?!!」
少女の体重を、ツンは何とか受け止めた。
何とか受け止めたが、なんかいろんな場所がプチピキ言った気がする。
気がするだけ。セーフ。たぶんセーフ。
::ζ( 、 *ζ,, 「おねえちゃぁーん!!」 グイグイグイ....
一方の少女はツンの胴にしっかりと抱き着き、胸部に全力で頭をすり付けている。
引き離したいが、先の衝撃とそもそもの不調で体がいうことを聞かない。
ξ; ⊿゚)ξ 「デレ、デレ!落ち着きなさい!苦しいから離れて!」
ζ(゚ー゚*ζ バッ
と と
ξ;゚⊿゚)ξ
ζ(´〜`*ζ 「えへへぇ〜、ほんもののおねえちゃんだ〜〜」 ギュー......
つ と
-
ξ;゚⊿゚)ξ 「あんた、どうやってここに……」
とりあえず落ち着いてくれた少女―――デレの頭を撫でてやりながら問いかける。
問いかける途中で気づいた。
まだ幼く、物分かりの良いデレが、勝手に一人で師の元を離れるなどあり得ない。
となると。
ぎし、と土煙の中で足音がする。
デレと一緒に現れた男のものでは無い。
彼も状況が読めずに戸惑っているのが顔からわかる。
この診療所に突っ込んできたのは、二人では無かったのだ。
そして、そのもう一人は、恐らく。ツンが今最も出会いたくない人物。
「まさか、たまたま突っ込んだ家が、貴方の隠れ家だったとはね」
その声を聞いた瞬間、ツンの身体は石の如く硬直した。
外から吹き込んだ風で煙が大きく靡く。
土ぼこりが薄くなり、月明かりを背後にして、その姿がシルエットとして見えた。
-
まさか……
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|゚ノ::::::::::::) 「随分、あなたを探して彷徨ってしまったわ」 ギシッ
ξ;゚⊿゚)ξ
|゚ノ::::::::::::) 「さて、」 ギシッ
.::ξ;゚⊿゚)ξ::. ガタガタガタ
|゚ノ#::∀::) 「覚悟はよろしくて……?」 ギシッ
.::ξ;゚Д゚)ξ::. 「し、し、し……」 ガタガタガタ
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄> < ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
> ξ;゚Д゚)ξ 師匠ォだァア――――z____ッ!!! <
> <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
-
おお、師匠だったのか
-
ツンの持つ生命の本能が、けたたましい警告音を鳴らす。
土煙を抜けて現れたのは、一人の女性。
ツンに魔法と体術を仕込んだ師、レモネード=ピルスナーその人である。
|゚ノ#^∀^) 「随分と、苦労をかけさせてくれたくれましたね、ツン」
このレモネード、見てくれは三十路前の美麗な女性であるが、その実、還暦を越えた大魔導士である。
特殊な血脈の末裔が故に肉体は若々しいが、中身は老齢のそれ。
しかも、魔法も体術も衰えるどころか未だに成長しているという。
ツンからすれば、人の形をした化け物である。
過去に戦ったキメラにさほど怖気ずに済んだのは、この女を知っていたからに他ならない。
ξ;゚⊿゚)ξ 「なんで、師匠がここに」
ツンはベッドから這いだそうとする
体がうまく動かない。
ダメージの名残もそうだが、手足が独りでに震えるのだ。
その上デレが抱き着いているので、逃げたくても逃げられなかった。
ζ(゚ー゚*ζ 「色んなところでききこみして、がんばってさがしたんだよ〜」
|゚ノ#^∀^) 「ええ、本当に。色んなところで大暴れしてたようで、足跡を掴むのは簡単だったわ」
-
ξ;゚⊿゚)ξ 「で、でも、私の見込みだとあと一か月は意味不明なところを迷い歩くはず……」
ζ(゚ー゚*ζ 「あのね、ミルナさんが案内してくれたの!」
デレが指さしたのは、一緒に転げてきた装束の男。
成程納得だ。
超が三つは付く方向音痴の師匠でも、方向感覚の優れた案内役が直接方向を示せば幾分マシになる。
余計なことをしやがって。
師匠の特性を思えば、まだ捕まることは無かったのに。
( ゚д゚ )+ 「どうも。ミルナ=スコッチだ」 キラーン
黙れ。
こっちみんな。
|゚ノ#^∀^) 「さて」
師匠の声に、ツンの背筋は震え上がった。
顔は笑っているが、表情と異なる感情を渦巻かせているのが気配でわかる。
死んだ。終わりである。ツン先生の来世にご期待くださいって域だ。
今回ツンは、勝手に師匠の元から飛び出して、しかも師匠の持っていた魔道具や一部の武器を無断で拝借してきた。
現世の命だけで済めばマシと考えていいだろう。場合によっては来世すらも危うい。
-
ミ;´・w・ン「ディレートリ!なにがあったんだい?!」
物音を聞きつけたのか、ミンクスが剣を持って飛び込んできた。
不味い。
万全のブーンとドクオでギリギリだ。ミンクスでは絶対に敵わない。
ミ;´・w・ン 「なんだこの惨状?!」
从;゚∀从 「おいおい、なんだこりゃあ」
ハインリッヒまで来てしまった。
非戦闘員の彼など、指鳴らし一つで存在が消し飛びかねない。
疲労の見えるハインリッヒは、頭を掻きながらこの唐突に乱れた状況の把握を始めた。
レモネードも壁を突き破った負い目からか、彼らに手を出す気は無い様だ。
|゚ノ ^∀^) 「不躾に申し訳ございません。わたくし、レモネード=ピルスナーと申します」
从;゚∀从 「ハインリッヒだ」
|゚ノ ^∀^) 「このお宅の、主さまで?」
从;゚∀从 「まあ、そうだな」
|゚ノ ^∀^) 「壁は必ず修理しますし、お詫びもさせていただきますので、そこの弟子への折檻が終わるまで少々お待ちください」
ハインの目がツンを見た。
「またお前か」と言わんばかりである。
ツンだって別に面倒事を引き起こしたいわけじゃないのである。
面倒事の方が修羅場背負ってやってくるだけなのだ。
-
ξ;゚⊿゚)ξ 「リッヒ!ブーン達は?!」
从;゚∀从 「タカラ送るためにちょっと前に出たぞ」
ξ;゚⊿゚)ξ 「何て間の悪い!」
从;゚∀从 「やばいのか?」
ξ;゚⊿゚)ξ 「殺される!」
从;゚∀从 「……一応俺の患者なんで、できれば殺さないで置いてほしいんだけど」
|゚ノ ^∀^) 「生かさず殺さずには慣れてますから大丈夫ですわ」
从;゚∀从 「……ならいいか」
ξ;゚⊿゚)ξ 「良くない!良くないよリッヒ!!」
|゚ノ ^∀^) 「デレ、離れてなさい」
ζ(゚、 ゚*ζ 「っは〜〜い」
|゚ノ ^∀^) 「さて」
ξ;゚⊿゚)ξ
|゚ノ ^∀^)
ξ;゚⊿゚)ξ
-
ζ(゚ー゚*ζ 「はじめまして。私、ツンおねえちゃんの妹の、デレ=ディレートリです」
ミ´・w・ン 「へえ、妹……」
从;゚∀从 「妹?にしちゃ魔力が……」
ζ(゚ー゚*ζ 「はい、血のつながりは無いんですけど、おねえちゃんはおねえちゃんなので、デレは妹なのです」
从;゚∀从 「なるほどなあ」
ζ(‐ -*ζ 「ししょーとあねがご迷惑をおかけしてます」 ペコリ
从;゚∀从 「いやまあ、慣れてるし諦めてるからいいんだけどよ……あれ、ほっといていいのか?」
ζ(゚ー゚*ζ 「はい!ししょーとおねえちゃんは仲良しさんですから!」
ェ エ ェ ェ エ ェ ェ エ ェ
< ギョ ェ エ エ ェ ェ エ エ ェ ェ エ エ ェ
エ ェ エ エ ェ エ ェ
ェ
ェ
:
:
从;゚∀从 「……まあ、師弟の仲が睦まじいのはいいことだな」 :
ちらと見たハインリッヒの目には、風の魔法により空中に張り付けられ
数々の拷問魔法をぶち込まれているツンの姿が映ったが、そう言うことにしておく。
ツンの悲鳴が響き渡る。
その他の4人は各々に簡単な自己紹介を済まし、師弟の微笑ましい再開の儀式が終わるのを静かに待っていた。
-
ならいいかwwwww
-
おわり
平和なお話が続きますがもうしばらくお付き合いくださいね
>>864
ツンだけでもいいから作ろう
つづきはなるだけ早めに来る気概で
つなぎ的なお話が続くので出来るだけスムーズにね、いきたいね
-
おつおつ!
デレかわいいな!
ツン一人っ子だと思ってたから、血のつながりがないって聞いて納得した。
ニョロも早くまた見たいなー出番来い来い
-
乙
平和かなぁ?
-
乙
-
乙です
平和(絶賛拷問中)
-
超乙!
飯テロに始まり、外見まで双頭の魔犬、師匠登場とは・・・平和ダナー
ヨコホリへの復讐心で闇落ちするかのギリギリをひた走るツンが好き
-
生き死にはなさそうだから平和だな!(混乱)
-
乙でした!ツンデレ姉妹かわゆい!続き楽しみ!!
-
あーくそ
早く追いつきたいのに未だにィシとヨコホリが戦ってる…
こいつしぶと過ぎんよ…
-
キタ!と思って開いたらまさかの飯テロ…
おなかすいた
おつです
-
おつおつ
やっぱ面白い
-
デレには普通に攻撃魔法教えてるっぽいしツンに教えないのはなんでだろうな
とにかく続きが気になるおつ!
-
>>935
火事場に油かぶって火だるまになって突入する性格だからじゃないかな?
-
魔法の強さの問題じゃね
-
どんどんくっついて腕も増えれば強くなるんじゃない?って思ってしまった
-
師匠が還暦ってことが衝撃的過ぎて
-
見た目20代の還暦過ぎ魔法使い
だいぶ魔女に近い性能してそう
-
│ │
│ │
┼ ( ^ω^Y 'A`) ┼
⊂二二二 二二⊃ ≡炎 ≡炎
| /
( ヽノ ブーン
ノ>ノ
三 レレ
-
師匠ならツン全快にしてからギリギリまで拷問再度全快にとかできそう
-
流石兄弟対魔女見た後だとドクオがなにしても無駄に思える……
-
ドクオはまだマシだよ。ブーンの上位互換ぽいロマネスクが瞬殺とか、ブーンどうすんだ、w
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技を使う→筋肉痛になる→回復
の繰り返しで筋力つけて殴ればおk
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>>944
しゅんさつ?
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>>946
魔女>流石兄弟
ロマネスクは流石兄弟に瞬殺
魔女より弱い(と言ってもほぼ同格)の兄弟にやられてるんだから〜って事でしょ
ロマちゃん強キャラ臭凄かったのになぁ
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>>947
あれは試作ちゃんだから…
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>>947
まだつくった(なおした?)ばかりで本気の力を発揮できるほど完全じゃないだけなんじゃね?
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まだロマたんがブーンより上とか決まってないんだから(震え声
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ブーンが使う杉浦双刀流は、杉浦ロマネスクのあみだした流派でその弟子がブーンなわけだろうから・・。わかるな?
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>>951
いやそれは普通に分かるけど…
皆分かった上で話してるんだと思うけど…
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>>951>>952
俺は分からなかったからためになったよ。ありがとう
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読者の強さ議論に明確な答えなんて出ないぞ
そもそも流石兄弟もブーン&ドクオとツンに敗北したがタリズマン大量投入で
魔女と同格まで持っていったんだし
スレも残り少ないんだからちょっと抑えようぜ
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ちゃんと流派のある人が流れになるかな
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分離した場合の力も今とは比べものにならないだろうしな
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今の流行が気になるなら
コチラをチェック
http://ssks.jp/url/?id=287
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流行なんて気にしてたらいつまでたっても自身の洗練なんてできないぜ
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そもそも魔女が作ったものが魔女より強いはずないしな
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何にせよ続きが楽しみだ
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乙ー
大分忘れたてたから全部読みなおしてた
平和な話も好きだからいっぱいやってくれー
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超超超乙
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更新きてたあああ乙!
妹者に手足戻ったのがすごくすごく嬉しい。兄弟が手足取り戻してくれるの何年も待ってた
でも姉者との会話が……フラグにしか……ッ!
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姉者は強いのか弱いのかどっちなんだろ
妹者に守られてたしあまり強くないのかな?
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>>964
魔法適正がないんじゃないのかな?
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>>964
姉者ってパワーゴリラ(強化魔法?)じゃなかったっけ?
ギャグ描写だけど兄弟に手を出せる位の実力はある
妹者と魔女が例外なだけで通常兄弟並の力はあるんじゃない
少なくとも母者達に妹者を任される位にはあるしね
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強い師匠キャラは大体離脱の運命にあるが是非長く居てほしい
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読み直してたら魔女が死ななかった理由が既に見えてる気がする。
もちろん仮説です
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平和な話はとっても楽しいなあ
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そろそろこないかなー
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大五郎は次スレどうすんだろ…
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まだ?
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まだ?
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http://is.gd/4twCxM
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大五郎は今ハゲを持った槍に追いかけられてるよ
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なあ、今更かも知れないがツンに薬を塗ってくれたベルさんってダイお…
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>>976
それ以外に何が…?
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>>977
二回目に読んで気付いたんだよ!
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一読目に何故か逆さ男に気づかなかった俺よかマシよ
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>>979
逆さ男に何かあるのか!?
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逆さは読み返すまで気づいてなかったわ
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明言はしてないけど明らかに特徴同じにして書かれてるしそうだよな
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くそっ!もう一度最初から読まなきゃいかんのか!
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ヒント!ヒントくれ!
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蹴り技得意なのはねぇ、、、
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ざっとレス検索して見てきたわ
確かに蹴り技主体なら彼だな
汚れ仕事もやる男だしな
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http://is.gd/4twCxM
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明言はしてないだけで特に隠そうともしてないよな多分
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思ったより気付いてない人がいたんだな
なんかネタバレっぽくなってしまった申し訳ない
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おまいらのせいで昨日から読み返したわ。
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http://ow.ly/3zsUCx
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前々から気になっててさっき読み終えたんだが飯テロあるとか聞いてないぞ
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はよ
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ほしければ上げてやる
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かもーん!!
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来ないな
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前回はもう半年以上前か
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そろそろこねーかな
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埋めれば来る?
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来ないだろ
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