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第19次 生徒会陣営応援スレ

1はくぐい:2019/01/10(木) 00:21:34
応援はこちらへどうぞ。

2諏訪早苗:2019/01/10(木) 18:41:50
自キャラの諏訪早苗のプロローグSSを書きました。
色々と勝手な設定を作ってしまい、申し訳ありません!
彼の正体についてはこちらでは特に指定しません。アンサーSSを書いても構いません。


(1)
なんでこんなことになったんだろう。
番長グループに行った彼のせいか。
ハルマゲドンを起こした強硬派のせいか。
アウェイクン計画を推し進めた長谷部校長のせいか。
私にはよく分からない。

ただ一つだけ言えることがある。
もう一度、あの人と話したい。


私は父の影響で、小さい頃から鉄道が好きだった。同性の友達に鉄道が好きな子はいなかったが、気にしなかった。

私が魔人に覚醒したのは中学校の頃だ。
初めて一人で宿泊旅行に行こうとしたその日、寝坊をした。これから準備をすると、もう予定の列車には乗ることができない時間だった。
折角お金を貯めて切符を買ったと言うのに列車に乗り遅れるなんて嫌だ!嫌だ!嫌だ!
………
そう思い続けて目を瞑ると、周囲が妙に騒がしかった。変だと思い目を開けると、そこは列車が出る駅だった。しかも予定の列車に間に合った!
その時、私は奇跡が起こったと思った。これが魔人覚醒だと知ったのは、私が学校でその奇跡を話した時だった。

魔人に覚醒した後も、友達は私と変わらず接してくれたのはありがたかった。しかし、魔人覚醒により、進学できる高校が制限されてしまい、私は進学できる高校の一つである魔人学園、希望崎学園へと進学した。

希望崎学園への一般的な評判は悪かったが、魔人差別者が少なく、私にとってみればとても過ごしやすい学校だった。
直接戦闘にはあまり役に立たない能力だったこともあり、生徒会からも番長グループからも声がかからずにずっと平和に過ごしていた。


そんな私に転機が訪れたのは高校3年の春だった。希望崎学園にも鉄道愛好会(交通機関の鉄道を趣味とする者の集まり)はあったものの、部員が男子ばかりで居心地が悪く、私は幽霊部員となっていた。

部活をやっている友達を待つため、無為にベンチで放課後の時間を過ごしていたある日、
「どうしたんですか?」
ある一人の男子に声を掛けられた。いきなり何を言っているんだと私は最初警戒したものの、友達を待っていると答えた。すると、彼も暇らしく、一緒に話をして待ちませんか?と話しかけてきた。

彼との会話は思ったよりも弾み、あっという間に時間は過ぎていった。特に旅の話をすると、とても興味深そうに話を聞いていたのが嬉しかった。
思えばその時から私は彼に好意を持っていたと思う。

彼はその後も時々ベンチに訪れ、その度に一緒に話をした。そのような日々が続き、彼と私との関係はより深まっていったと思う。

3諏訪早苗:2019/01/10(木) 18:42:33
(2)
12月初旬、私が早くに大学への進学を決め、周囲が受験勉強でピリピリする中、比較的ゆったりとした生活を送っていた。すると彼は、今度の旅行は一緒に行きたいと言った。
私はすぐさま快諾し、また次の旅行は、車両の変わった特急あずさに乗り、松本に行くことを決めた。
彼は切符の買い方がよく分からないみたいだったので、彼の分のお金を預かり、自分の分と一緒に切符を買った。

しかし、冬休みに入り、生徒会と番長グループの関係が悪化。遂に私にも生徒会から声がかかった。そしてその日から、彼はベンチに現れなくなった。
彼が番長グループに所属したということは、その数日後に判明した。

どうして彼は番長グループに行ったの!?
どうして彼と陣営が別れてしまったの!?
陣営が別れてしまったら、そう簡単に会える訳ではない。私はショックで生徒会の作戦会議にまともに参加できなかった。
松本への切符も彼に渡せないままに…。


失意の中、校内を歩いていると、たまたま彼を見かけた。思わず声を掛けようと思ったが、その隣には番長グループの女子がいて、一緒に楽しそうに彼と話していた。

私は更なるショックを受け、逃げるようにその場を去った。
もしかしたら単に番長グループの事務的な連絡を話していただけかもしれない。
しかし、彼が浮気したのではないかという疑念は大きかった。

せめて、もう一度話をして、彼との関係を確かめたい…。しかし、このような状況、どうやって彼に会えば…。
彼と乗るつもりだった2枚のあずさの切符を眺めつつ、ある考えが浮かんできた。

「ハルマゲドンに参戦すれば、彼と会えるのでは…!」

当初、私は直接の戦闘メンバーから外れており、戦闘当日は敷地外に出るように指示されていた。しかし、この2枚の切符があれば、自分ともう一人、新宿駅に瞬間移動することができる。この能力があれば、戦闘メンバーとしても活躍できるのではないか。
もっとも、戦闘向けの魔人ではない私が戦闘に出ることは、非常に危険である。命が奪われるかもしれない。
それでも私は、ハルマゲドンに賭けたかった。

私は、その翌日、戦闘メンバーへ志願した。


ハルマゲドンの戦闘直前、いつも彼と会っていたベンチに1枚の手紙を置いた。
怪しまれないため、かの有名なあずさ2号の歌詞を印刷しただけの手紙だ。
しかし、「8時ちょうどのあずさ2号で」のところは、松本旅行で乗るはずだった列車に修正されている。

これが彼に伝わる可能性は著しく低いだろう。
それでも彼が戦闘メンバーに入る可能性を少しでも上げることができるなら…!

もし彼とよりを戻す事ができたなら、私は彼と一緒に新宿駅に行き、特急あずさに乗って松本まで行こうと思う。
それができなければ、能力は彼以外の強力な魔人を戦場から離すために使おうと思う。そして、彼の事は忘れようと思う。


奇しくも、ハルマゲドンの戦闘の日は、松本旅行の予定日であった。

4はくぐい:2019/01/11(金) 19:57:34
>>2-3
4点

5諏訪早苗:2019/01/12(土) 15:22:41
諏訪早苗のイラストです。
tps://twitter.com/dreamphoto_33/status/1083971696636289025

6各務城はりのん:2019/01/13(日) 09:31:36
(各務城玻璃乃プロローグ)

1月9日 水曜日

 嗚呼、私は本読みとして失格だ。

 私は知ってしまった。いかなる物語より
も胸がときめく、禁断の果実の味を。斯様
な果実の甘さに心惹かれる事実が、本読み
として失格であることの証左なのだ。

 図書室に置き去りにされた鞄の持ち主が
誰なのかを知るために、鞄の中を探るのは
図書委員として正当な行為であったことは
主張しておきたい。手帳を見つけて開き、
所有者が見知った名前であることを確認し
た処までならば批難される謂われは一切な
い。

 罪深きはその後である。手帳に綴られて
いた、彼女の日記に興味を覚えた私の手に
は、書と心行くまで向き合う覚悟を決めた
時にしか使わぬ眼鏡が握られていたのだっ
た。私は、知人のプライバシーを蹂躙する
決意を固めていたのである。

 そこには、恋人と出会い、想いを深め合
う過程で如何なる感情の動きがあったのか
が赤裸々に綴られていた。二人の物語は、
唐突に恋人が彼女と距離を置くようになっ
てしまったことを嘆く悲痛な胸の裡を吐露
する場面で途切れている。その結末は、ま
だ紡がれていないのだ。

 窃視趣味の俗物と謗られるのは避けるべ
くもない。私小説というジャンルが脈々と
生き永らえてるのは、他人の私生活を覗き
見る賎しい楽しみが普遍的なものであるか
らではあろう。されど、文学史に誉れ高き
文豪の著した名筆名文よりも、隣人が走り
書きした拙き乱文に強く惹かれているなら
ば、矢張り私は本読み失格なのだ。

7各務城はりのん:2019/01/13(日) 09:32:49
(承前)

1月10日 木曜日

 私の浅ましさには我ながら呆れ返る。知
己の秘密を盗み見る快感を知るやいなや、
貪欲にその快感を追及しようとしているの
だ。

 真っ先に自らの血族に手を掛けようとし
たのだから、手の施しようのない愚者であ
る。家族の所有物ならば、漁っても犯罪に
はならぬと考えた半端な保身には怖気が走
る。

 裏庭にある倉に狙いを付けたのは間違い
ではなかったはずだ。埃を被った書物の山
の中より、一冊の厳重に鎖で封じられた黒
い本を発掘した時には、賎しい興奮で心臓
が壊れんばかりに高鳴っていた。

 私の瞳に妖しい光が宿っていたであろう
ことは、想像に難くない。震える手で眼鏡
を掛けた。すると、黒い本を封じていた鎖
が手も触れぬうちに勝手に解けたのだ。

 この時点で、黒い本が尋常の書でないこ
とは明らかだった。ここで本を手放し、元
の場所に戻すべきだった。しかし、私の指
は、この慄然たる書物を開く以外の動きは
できなかったのだ。

 運命に導かれるように開いた頁に書かれ
ていたのは――全くもって不可解なことで
あるが――私自身の日記、であった。

 忘れていた。

 記憶の底に封印していた。

 消し去ったつもりでいた。

 だが、記憶か消えたわけではなかったの
だ。一度呼び起こされれば、悍ましき記憶
は鮮明に像を結ぶ。

 幼き頃の私が感じた不快感と屈辱感と無
力感と絶望感が、濁流の如く押し寄せた。
這い回る指と舌の感触。容赦なく捩じ込ま
れる穢らわしい異物が身体を引き裂く激し
い痛み。大好きだった先生が、どうしてこ
んなことをするのか。わからなかった。な
んにもわからなかった。ただただつらくて
くるしかった。

 薄暗い倉の床に胃の内容物を吐き出しな
がら、私はこの黒い本の性質を理解した。
これは、三途のこちら側にいる人間が持つ
べき書物ではない。

 だが、嗚呼、私は本読みとして失格だ。

 刈り取られる側の苦しみを知って尚、禁
断の果実を味わいたいと思ってしまってい
るのだから。

8諏訪早苗:2019/01/13(日) 09:34:00
諏訪早苗と各務城玻璃乃のSSです。

諏訪早苗は楽しみにしていた。
今日は図書室に有名作家の鉄道ミステリーの本が置かれる日だったからである。
ずっとリクエストした甲斐があった!早苗は開室時間になるとすぐ図書室の前に向かった。

さすがに開室時間すぐでは図書室の扉は閉じているかと思いきや、開いていた。
「あっ…玻璃乃さん…」
「どうしましたか?早苗先輩」
受付には生徒会で一緒になっている各務城玻璃乃がいた。一緒になっているとは言え、早苗は最近入ったばかりで、しかも作戦会議にまともに参加できていない状態。
…とてもじゃないけど、顔を会わせづらい…!
「い、いや、ちょっと本を借りに来たんだけど…」
「そうですか」
そう言うと、玻璃乃は興味を失ったように手に持っている本に目を向けた。
だ…大丈夫かな…?

少々心配になりつつ、早苗は鉄道ミステリーの本を借りられるだけ持ち、受付に向かった。
「玻璃乃さん、これを借りる手続きをしてもらっていいかな」
「かしこまりました」
そう言うと玻璃乃は淡々とした表情で貸し出しの手続きを始めた。ううっ…やっぱり気まずい…。
そう思っていると、
「早苗先輩は本当に鉄道がお好きなんですね」
いきなり玻璃乃が話しかけてきた。
「えっ、そうかな?」
「借りている本の表紙が電車ばかりでしたので…」
そりゃそうだ、鉄道ミステリーの本なのだから。
「ほら、私って変かな?女子なのに鉄道が好きなんて…」
思わず鉄道好きを責められているような気がして、こう返した。
「別にそんな事は無いと思いますよ。女子鉄や鉄子という言葉もある位ですし。それに趣味に正しいとか変とかは無いと思いますよ」
「うん、ありがとうね」
「早苗先輩はもっと自分の趣味に自信を持ってください。一人で色々なところに行けるなんてそんなにできない事ですから」
「行けるって…一人だと大阪位までしか行った事が無いよ…」
「高校生にしては随分な遠出だと思いますよ」
「そうかな?ははは…」
玻璃乃の声は抑揚に乏しく、ずっと付き合いづらい人だなと早苗は思っていたが、いざ話をしてみるとそんな事は無く、早苗は玻璃乃との会話を楽しんでいた。

「…で、鬼怒川で温泉に入った後、SLに乗ったんだけど」
「鬼怒川にもSLが走っているんですか。色々なところで走っているんですね。
ただ早苗先輩、話が楽しいのはいいのですが、待っている人がいますよ」
「えっ!」
後ろを見ると、貸し出しを待つ男子生徒がちょっと戸惑った様子でこっちを見ていた。
「あっ!すみません!すぐどきますので!」
早苗は受付から離れようとするが、
「早苗先輩、本を忘れていますよ」
肝心の鉄道ミステリーの本を忘れていた。
「ごめんごめん、借りた本を持っていかないとね」
と、本を受けとると、
「今度の松本旅行も彼氏さんと行けるといいですね」
と、小さな声が聞こえた。
「ん?何か言った?」
「いえ、何でも」
そういう玻璃乃の表情は、少し笑っていた。

9はくぐい:2019/01/13(日) 13:22:38
>>5
3点

>>6-7
4点

>>8
5点

10中静鈴鹿:2019/01/16(水) 23:55:57
諏訪早苗
tps://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=72697877

11はくぐい:2019/01/17(木) 00:05:02
>>10
3点

12諏訪早苗:2019/01/17(木) 19:17:35
諏訪早苗とニュクスのSSです。
流血少女CSLiteに出てきたニュクスと同一人物という設定で、CSLiteのキャラもニュクスの話の中に出てきます。


諏訪早苗が彼への手紙をベンチに置いた後、校舎の屋上で暗い表情をしていた。
両陣営の目を潜り抜けるためには、見られても不審がられない内容である必要があった。だからあずさ2号の歌詞を少し改変した手紙を置いたのだが…。
果たして彼はこの手紙の真意を汲み取ってくれるのだろうか?

「どうやら意中の彼について悩んでいるようだの」
いきなり何者かに話しかけられた。振り返るとそこにはニュクスがいた。
「あっ、ニュクスさん…」
ニュクスは夜を司る異形の女神だ。その顔は青い獣の形をしており、初めてその姿を見たとき、少しビビってしまった。
今も少しビビっているけど…。
「そんなにビビらんでもよいだろう。取って喰おうとするつもりは無いぞ。
それともさっき出した恋文とやらのことか心配か?」
ギクッ!こんなにも早くバレるなんて!
「気にせんでもよい。生徒会はそなたの恋愛についてとやかく言うつもりは無い。…一応その恋文の中身は確認させてもらったが、問題のある内容では無さそうだしの、見逃すことにしよう」
「…手紙を読んだんですね」
「ああ、あれはこの世界の歌の歌詞を書いたものであろうか?」
「そうですね。『あずさ2号』という曲です。彼氏に対し未練のある女性が、その彼氏に対し信州へ別の男性と旅をする事を伝えるという内容です」
「なるほど。そなたは今の状況を、そのあずさ2号とやらに出てくる女と重ねているのだな」
「そうかもしれません」
「そして、その彼氏が会いに来てくれるのを願っていると」
「そうですね。あずさ2号の曲も、旅立つと言っておきながら、しっかり8時ちょうどと時間を言っているので、本当は彼に来てほしかったのだと思います。もしかしたら、別の男性とというのも彼女の嘘なのかもしれません」
「ふむ、この世界の人間は、なかなか興味深い歌を書くものだ」
ニュクスはあずさ2号について、感心しているようだった。

「しかし彼氏とハルマゲドンで会うということは、そなたの身だけでなく、彼氏も危険な目に晒しているとは思わないかね」
ニュクスは痛いところを突いてきた。
「…彼が戦闘に参加した時は、真っ先に彼の元へ行こうと思います」
「それは許さぬ。そなたも大事な生徒会の一員だ。無闇な突撃は無駄に命を散らすことになり、生徒会の敗北に繋がるのだ」
「…」
「それに戦況によっては、他のメンバーが彼氏を殺すことになるかもしれない。そなたはそれに耐えられるかの?」
「…」
分かっていた。ハルマゲドンで彼と会おうとすることは、そういう可能性もあるということを。
しかし、実際に他人(?)から言われると、ショックが大きかった。思わず早苗は泣いてしまった。

そんな早苗を見て、ニュクスはこう呟いた。
「…これは私が妃芽薗学園を拠点としていた頃の話だ。当時妃芽薗学園では今と同じようにハルマゲドンが発生しての、私もそれに参加していた。
私と同じ陣営に、片思いのカップルがいたのだ」
片思い!?妃芽薗学園は女子校のはず!いや、噂は聞いたことがある。妃芽薗学園にはそういう関係を結ぶカップルが多いと。
「その片思いしていた方は相当な熱の入れようでの、その人の前では平常心を保ちながら、相手がいない時はその人への想いを延々と語っていたな。
もっとも、その相手にとってみれば大事な仲間の一人としか見ていなかったのだがな」
「それで、その人は…」
「ハルマゲドンで相手の人が死んで、三日三晩泣いていたさ。ま、かつて旅をした世界では、死亡確認と言いつつ実は生きていた例もあるから分からないがね」
「…」
「…私もその死んだ相手を残念に思っているかもしれないね。女神の私が墜ちたものよ」
早苗はニュクスの過去の告白に、泣くのを忘れて黙っていた。

「だから、もしハルマゲドンで彼氏を亡くす事があれば、私の元で思いっきり泣くがよい。その時はそなたの実の母のように慰めてやろう。
…私にはそれしかできぬ」
「…ありがとうございます」
ニュクスの思わぬ提案に、早苗は涙を拭きつつ、お礼を言った。
見た目は異形かもしれないけど、根はきっと仲間思いなのだろう。
気づくと日は傾き、夜も近かった。
「もう時間だ、今日は帰ると良かろう。ここからは私の時間だからな」

早苗の居なくなった屋上で、ニュクスはこう呟いた。
「そう言えば、あのとき死んだメンバーも、鉄道の事が好きだった。私はそのメンバーと早苗を重ねているのかもしれぬな…。
全く、下手に人間と交流と持つとろくなことにならぬ…」

13諏訪早苗:2019/01/17(木) 19:20:39
諏訪早苗と金四郎先生のSSです。


これは諏訪早苗が生徒会に入り、彼が番長グループに入った事を知ってからすぐの話。

早苗はある日、職員室に呼び出された。
しかも、呼び出した相手は追越しのための右側部分はみ出し通行金四郎先生、通称"はみきん先生"だ。
はみきん先生は事あるごとに"全く、最近の若いもんは…"と言うため、生徒からの受けは悪い。そのため、早苗は一体どんな事を言われるかと心配だった。
案の定、はみきん先生は、
「早苗、この前の小テストの結果が随分と悪かったようじゃの?大学を早くに決めたからって油断するでない」
とテストの事を注意してきた。
「申し訳ありません…」
「それとも彼氏と別れたことが原因か?色恋沙汰で成績を落とすとは最近の若いもんは…」
どうやら彼の事ははみきん先生も知っているようだ。その言い方にムッとしたが、特に言い返す事なく、早苗はじっとして聞いていた。
「いいか?わしが大学に通っていた頃、とても愛していた女がいた!当時は毎週のようにデートをし、それはもうラブラブじゃった!
しかしな、その女はわしの後輩に惚れてしまったのじゃ!わしは悔しくなり、後輩と女に問い詰めた。…その時にこっぴどく別れの言葉を言われてしまったわい…」
「はぁ…」
いきなりのはみきん先生の大学時代の告白に、早苗は少々戸惑っていた。
「その後輩をとにかく見返したくて、わしは猛勉強したわい。ところが後輩はわし以上に優秀で、今や教育委員会のお偉いさんよ。その女とも結婚しておる。一方わしは未だに一介の教師で、若い長谷部にも先を越されたわい。
その頃からだったかもしれぬな…。若いもんに先を越されたくないと思ったのは」
「はみきん先生も失恋を経験されたんですね」
「はみきん先生と言うでない!だがそうとも。わしはその経験を乗り越えて猛勉強をし、成長できたと自負しておる。だから早苗も失恋を乗り越えて成長せい!」
言い方にいちいちムッとくるところはあるものの、おそらくはみきん先生は私を励ましたいのだろう。と早苗は思っていた。
その気持ちだけは素直に受け止めよう。
「分かりました。成長できるように精進します」
「その心意気じゃ。入学予定の大学からも課題が出ているのじゃろう。遊ぶのもいいが、くれぐれも忘れぬようにな」
はみきん先生の励ましに、少しだけ元気になって職員室を出た早苗だった。

14はくぐい:2019/01/17(木) 23:07:27
>>12
4点

>>13
4点

15中静鈴鹿:2019/01/18(金) 00:44:08
追越しのための右側部分はみ出し通行 金四郎
tps://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=72713795

16はくぐい:2019/01/18(金) 21:30:59
>>15
4点

17qaz:2019/01/19(土) 00:19:41
追越しのための右側部分はみ出し通行金四郎です。
tps://twitter.com/qazdng/status/1086281473345302528?s=19

18中静鈴鹿:2019/01/19(土) 01:38:17
☆中静鈴鹿プロローグ


私は走るのが好きでした。
風を切るように走るのはとても気持ちがよいものでした。
だから、私は陸上にのめり込んだのです。

レース中、前に誰かがいるのが嫌でした。
誰にも並ばれたくはなかった。
ずっと先頭で走っていたいと願っていました。

だから、逃げたのです。逃げて、逃げて、逃げ続けました。全力で。
より速く。もっともっと前へ。
誰にも私に追いつけないように。
誰よりも速く。限界を超えて。

思えば、私の脚はすでに悲鳴を上げていたのでしょう。
けれど、私はそれを見ないふりをしていて。

そして、あの日―――
私の脚は壊れてしまいました。


サイレンの音が聞こえます。
私はただ痛みにその場で蹲るばかりで。

悲劇のヒロインになんてなりたくはなかった。
ずっとずっと走っていたかった。
誰よりも速く。

ただ、それだけだったというのに。

どうして私の脚はもう動かないのでしょうか?


◆◆◆◆


中静鈴鹿は部屋で目を覚ました。
車椅子のまま、机に伏して眠っていたようだ。

「……またあの日の夢ですか」

鈴鹿にとって忘れられぬ出来事。

車椅子競技への参加を考える今も過去に未練はある。
この脚でまたトラックを駆け抜けられればいいのにと今も思う。
全力で人知を超えた速度で体当たりをしても壊れない今の頑丈さがあの頃の鈴鹿にあれば。

「いえ、あの頃の私が魔人になったとしてもここまで頑丈さを得ることはなかったのでしょう」

魔人とは自己の認識を他者に強制する能力者。
なら、壊れてしまった左足への未練がそれを生み出したのだろうと鈴鹿は思う。


「さて、いつまでも過去のことばかりを考えているわけにもいきませんね」

生徒会長として目の前のハルマゲドンに備えなくてはならない。
魔人の死も厭わない強引な長谷部校長への対策も。
校長がハルマゲドンの裏でいろいろ画策しているという噂も聞くが本当だろうか。
だとしても、もはやハルマゲドンが止まることなどありえないことだが。

19ラムダ:2019/01/19(土) 05:43:26
『戦斗素体の歴史』

ようこそ、お客様。当店舗のアドバイザーを務めております、肥熊 莉音(ひぐま りおん)と申します。
ええ、可愛らしい名前に毛むくじゃらなふっくらボディの私が何でもお答えしますよ。
本日はどのようなご相談でしょうか、それともすでにご希望の「戦斗素体」がおありでしょうか?
ふむふむ、戦斗素体について詳しいお話を聞きたいと。
これはまた珍しいお客さんだ、最近は来店即購入手続きばかりで私もおしゃべり…おっと、ご相談を受けることが無くなりましたから。
それではパンフレットを見ながらご説明いたしましょう。

戦斗素体とは、とある魔人が自らの能力で作った機械人形が元になっておりまして私たちはこれを【第一世代系】と呼んでいます。
機能はスイッチを入れた人物と同じ姿になることができるというものですが自律行動はできず何をするにも指示を与える必要があります。
第一世代系はひとりの魔人による完全オーダーメイド、当然量産も難しく警察や軍隊、一部のプロチームのみが保有できるものでした。

それを魔人能力に頼らず人工的に作ろうとしたものが【第二世代系】です。
さすがに性能や耐久力の面では第一世代系に劣りますがいくらか量産が可能になりプログラムを組み込むことで簡単な自律行動が可能になりました。
ただしまだまだ複雑な設定はできずあくまで遠隔指示の補助程度のものでしたが。

さらに改良は進みAIが発達したことでほぼ本人同様の自律的行動が可能になったのが【第三世代系】。
これは教科書に書かれているほどの革命的な戦斗素体となりました。
生産コストは膨れ上がりましたが多くの企業・団体が戦斗素体のみのチームを編成したほどです。
この頃から魔人のお客様が出てくるようになりましたね。
身代わり、影武者としてこれ以上ない代用品だったのでしょう。

そして、いまこの世界の9割の戦斗素体が現在私たちが扱っている商品、【第四世代系】です。
最大の特徴は今までの戦斗素体と違い本人がスイッチを押す必要がなくデータベースに登録された魔人の情報を入力することで様々な能力者を複製できるようになったことです。
これにより特殊な能力を持たない多くの方々がご購入されるようになりました。
用途は様々ですが多いのはボディーガードや労働力として、中にはハルマゲドンと呼ばれる紛争に巻き込まれ命を失った家族の代わりにと購入していった方もおります。
そうそう、第四世代系は魔人の複製だと先ほど説明しましたが起動する際にいくつか制限をかけることもできます。
特定条件下以外では能力を使えない・本人の記憶を一部消去するといったような感じですね。
かく言う私も「第四世代系 オーク体 +」戦斗素体でして、初めは戸惑いましたが新たな人生として楽しませてもらっていますよ。
……! おっと説明不足でした、今のが市販用戦斗素体の識別コードのようなものでして骨格サイズや性別によって呼び方が違います。
がっしりとした体格の大きな男性が希望ならオーガ体+、小さな女の子が希望ならフェアリー体-、広いニーズにお応えできるよう±や/なども取り揃えております。

もしこれといった希望がないのでしたら「Sample シリーズ」はいかがでしょう?
こちらは過去の購入者統計やアンケートによってあらかじめ入力する魔人情報や機能制限が公開されている戦斗素体です。
一般のお客様はほとんどの方がSample シリーズからご購入されていますね、2000種類以上ある中でも「Sample 875」は特に売れ行きの良い商品ですので是非。

いえいえ、今すぐとは言いませんのでゆっくりご検討いただければ幸いです。
私も久しぶりにたくさんお話ができました、それではまたのご来店お待ちしております。

20白蓮毛玉:2019/01/19(土) 05:59:25
短いですがニュクスと謎の男とアウェイクン計画と怨魂と諏訪早苗の恋人に関する読みにくいSSです。








朦朧とする意識の中、僕の体は何かに惹かれるように屋上へ来ていた。月の光を浴びると、断片的な記憶が蘇る、人だった時の記憶が。

 僕は死んだ。大切な人と離れ離れになった。そして、この争いが始まる前に止めようと躍起になって……

先を思い出そうとすると、頭の中がシェイクされるような感覚に襲われ、巻き戻したビデオテープのように繰り返す。
自分を殺した相手への怒りか、それとも思い出せない事に対する怒りなのか破壊衝動に飲まれそうになった時……

 暖かい……それに月の匂いがする。甘く溶けていくようだ。

体を何かが包むように抱かれているのを感じ、魂が穏やかになっていくのを実感する。
そして、ささやくような声で……

 「迷える魂よ、その怨嗟から解放せん。縛られる魂よ、現世の楔から解き放たれん。星はそなたを受け入れ給う」

言葉が切れると同時に口元へ柔らかい物が当たる感触を覚える、遠い昔に感じた事のある触覚を。

一口、また一口と流れ込む命の元、揉む手から伝う液体が体を包む。満たされると同時に、絡まっていた記憶も紐解かれていく。
校長の計画を各陣営のリーダーに伝える、そうすれば争う理由が無くなる所か彼女とまた一緒になれる。そう確信し、計画に関する資料をカメラに写していた時、
装置が動きだしたのだ。装置からあふれる光に照らされる長谷部敏樹の姿が僕の最後の記憶。最初から探りに来る事を分かっていたんだ、
今回のハルマゲドンも奴の手引きだったに違いない。僕は泳がされていたんだ。

 諏訪さん……約束守れそうにないや。

ニュクスの抱いていた怨魂が光になって星に帰ると、拍手をするスーツの男が1人。
初老の男は手を後ろで組み直すと、散っていった光を見据え。

 ほう、流石はアウェイクン計画のオリジナルですね。怨魂相手とはいえ対象を苦しめずに浄化するとは……
我々の紛い物とは天と地の差ですよ全く。

実に素晴らしい。と歩み寄るスーツの男、行為の直後で身動き出来ず言葉すら発せないニュクスの顎を掴む。

 本当に素晴らしい。ですが同じぐらい憎たらしいですね、獣風情が大人しく我々の研究材料になっていればアウェイクン計画は完璧な物になっていた
んですがねぇ。

まぁ良いでしょう。とニュクスを掴み倒し、ニュクスの着ているスーツに目をやると優越感に浸った表情を見せる。

 どうですか、我々の発明品の着心地は?魔人を超える力を持つ存在を拘束、その力を弱体化しデータベースに送信する半固体の人工生命。
自力での脱衣は不可能、命令を送信すれば宿主にどんな拷問だって出来るはずだったのですが……動作にはまだ改良の余地があるようですね。

道具を扱うようにスーツ部分を弄る男はブツブツと改良点を上げていき、自問が終わると屋上の扉へ向かい始め、振り返ると。

 そうそう、生徒会として貴女には参加するように手配済みですのでそのつもりで。そのスーツがある限り逃げる事は出来ませんからね、
貴女の大切な器官が壊れても良いなら試行して貰っても構いませんよ。それと、太陽の方の妹さんに会ったら伝えてください。

「ご協力ありがとうございました、宿した"ソレ"は時期が来たら我々が母胎ごと回収します」と

               



               閉まる扉の音が夜空に響く
               星空に照らされた影は泣き
               見えない鎖に繋がれた月は
               交わる事のない太陽を想う
               夜の屋上は化け物の影だけ

21ラムダ:2019/01/19(土) 06:11:15
『ラムダ_プロローグ』
2019年1月1日

新しい年を迎えたその瞬間、希望崎学園の裏山に雷が落ちた。
その轟音は人々の歓喜の声にかき消され異変に気付いた者は誰一人としていなかった。

-身体機能 異常無し- -通信機能 タイムラグ有り- -能力使用による各種機能の低下を確認-

落雷によって黒焦げ、真っ二つに割れた大木の前に屈んだ人影がひとつ。

-周囲の安全確認 異常無し- -目標の情報収集を開始 エラー発生- -聴視による探索を推奨-

ゆっくりと立ち上がる全裸の女性。
(衣服は焼失してしまいましたか。それとも『向こう』に置いてきてしまったのでしょうか)
自身の姿をぐるりと見渡すと深呼吸をし目を閉じながらゆっくりと顔を上げる。
すると女性の身体を黒い膜のようなものが覆っていく。
(ナノスキンによるラバースーツを構築、全裸でいるよりは不審がられないでしょう)
フゥッと息を付くとまだ多くの明かりが灯った街に向けて歩き出した。


山道を降りると初日の出を見ようと会話をしながら歩く学生たちの姿があった。

「なー、知ってるか? 校長の噂」
「あれだろ、科学部にすげー額の部費回してるっていうやつ」
「なんか変な実験させてるって話だぜ、業者がでかい機械運んでるの見たやつらもいるし」
「魔人嫌いの長谷部のことでしょ、絶対ロクなことやってないって」
「ナントカ計画がどうとか中二力がどうとか、同じクラスの科学部の子が独り言言ってた」
「あーあ、そんな訳分かんないことより運動部の備品に金使ってくんねーかなー」

(今のは希望崎学園の生徒でしょうか、中二力……魔人覚醒を促すエネルギー)
(もしそのエネルギーを操作できる何かがあるとしたら、ご主人様がいなくなった原因の可能性が高い)

「……調べてみる価値はありそうですね」

暗闇に紛れ希望崎学園校内へ忍び込む。冬休み中、さらに三が日であることが幸いし侵入は容易かった。
だがそんなハレの日にもかかわらず科学部では十数名の部員たちが夜通し作業をしていた。
全員が魔人であったとしてもおそらく身体能力の高い者はごく僅か、奇襲ならば勝ち目はある。
廊下を駆け抜けそのまま突入する……だがそれは謎の球体によって阻まれてしまった。

「廊下は走るなといつも言っているはずなのだが?」

咄嗟に距離を取り声のする方を警戒する、そこには魔法使いのような恰好をした老人が廊下の曲がり角にもたれ掛かっていた。

「生憎、私はこの学園の生徒ではないのです。ご老人」

「でしょうな、わしもアンタのような生徒は見たことがない」

警戒する様子もなく姿を現しこちらと向かい合う老人。

「そこに用があるんじゃろ? わしも奴のやることが気にくわん。できれば行かせてやりたいが・・・」
「わしより先に動かれるのもそれはそれで癪に障るのでな。まずは話を聞いてくれんか」

「……いいでしょう、手短にお願いします」

「わしは長谷部…校長に好き勝手させたくないだけじゃ。アンタは奴の計画を止めに来たんじゃろう」
「じゃがちぃとばかり面倒なことになっていてな、少しでも戦力が欲しい。力を貸してくれんか」

「敵の敵は味方ということですか」

「そんなところだ、難しく考えんでいい。利害の一致、一時的な共闘というやつじゃ」

「分かりました、その話乗りましょう。相手の手の内を知っておくに越したことはありませんから」

「交渉成立。さて、まだ名前を言っておらんかったな、わしは金四郎。この学園で教師をやっとる」

「……ラムダ、そう呼んでいただければ」

「訳ありのようじゃな、安心せい、詮索はせんよ。とりあえず宿直室にでも案内しようか」

そう言い電気の付いていない廊下を歩きだした老人の後を追う。
『アウェイクン計画』の内容、そして「この世界の」ご主人様の存在を確かめた私はハルマゲドンに巻き込まれることとなった。

22ほまりん:2019/01/19(土) 10:30:15
はりのん描きました。眼鏡オフ版とオン版
ttp://twitter.com/homarine/status/1086434995122581504

23諏訪早苗:2019/01/19(土) 10:42:28
各務城玻璃乃を描きました。

tps://twitter.com/dreamphoto_33/status/1086437483020148736

24ほまりん:2019/01/19(土) 11:31:53
早苗さん描きました
ttp://twitter.com/homarine/status/1086450518291959808

25中静鈴鹿:2019/01/19(土) 13:06:16
首領・クルール
tps://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=72733715

26はくぐい:2019/01/19(土) 15:08:21
>>17
4点

>>18
6点(Excellent)

>>19
4点

>>20
5点

>>21
4点

>>22
7点

>>23
3点

>>24
4点

>>25
3点

27はくぐい:2019/01/19(土) 15:10:07
合計71点

28諏訪早苗@Range:2019/01/21(月) 22:26:56
キャンペーンは終了していますが、自キャラの諏訪早苗のエピローグを書きました。

(1)
卒業式を終えた後のある日、諏訪早苗は新宿駅のホームに立っていた。
「間もなく10番線に、特急かいじ1号甲府行きと、特急富士回遊1号河口湖行きが参ります…」
そうアナウンスが入ると、列車がホームに入ってきた。
菫色のラインの入った車両…あのときと同じだ。
ハルマゲドンの日、人喰狼を新宿送りにした後に泣きながら乗った特急あずさと同じ車両だ。


結局、彼はハルマゲドンに現れなかった。
あの手紙は彼に伝わらなかったのだろうか?それとも、彼は怖じ気づいたのだろうか?さまざまな事が頭に浮かんできたが、もう覚悟は決めていた。
番長グループの男子メンバーを新宿に送ろうと。…別に女子でも新宿に送ることが可能ではあったが、男子に限定したのは、ハルマゲドンに現れなかった彼への当て付けだと思う。

ハルマゲドンは早苗の想像を大きく超える修羅場だった。敵味方問わず死んでいく状況、現れる怨魂、ここはまるで地獄だと思った。早苗はすぐさま能力を一人で使い、その場から逃げようとさえ思っていた。

しかし、攻め込んできた人喰狼の不意を突き、新宿駅に移動させることに成功した!
いきなり人混みに放り込まれ、人喰狼が動揺している隙に、早苗は人喰狼から離れ、持っていた切符を使い改札に入った。
特急あずさの発車するホームにたどり着いた時、私はやったんだ!と思うと同時に緊張の糸が切れ、早苗はその場に立ち尽くしていた。そして、
「なんで…彼は…現れなかったの…」
急に涙が溢れ出し、しゃがんで大泣きした。その様子は、近くの駅員が駆けつけ、「大丈夫ですか?」と声をかける程であった。
早苗は駅員に対し、「大丈夫です」と返し、そこに止まっていた特急あずさに乗った。
この気持ちも中央本線を下り、景色を眺めていくにつれ薄れていくだろうと信じ…。

しかし、気持ちはそれでも晴れず、私は車内でも泣いていた。検札に来た車掌に連れられ多目的室に案内され、ようやく落ち着いたのは松本に着いた頃だった。
これ以上悲しんでも仕方がない。彼の事は忘れよう…。松本の街は雪が降り、早苗にはまるで自分の心が街を冷やしているかのように思えてきた。

松本に着いたのは夕方だった。その日はそのまま一泊し、翌日に観光に出掛けるも、早苗の目には街の景色が何処か無味乾燥に見えていた。
さまざまな事で疲れていた早苗は、松本を予定より早い時間の列車で出る事にした。

29諏訪早苗@Range:2019/01/21(月) 22:29:11
(2)
列車が八王子駅を出た辺りで、早苗の携帯電話に連絡が入った。
「…はい、諏訪です」
「中静です。早苗さんですね」
「鈴鹿さん!」
電話の相手は生徒会長の中静鈴鹿だった。
「ハルマゲドンは私達の勝利です。番長グループが白旗を挙げました」
「…ただ、玻璃乃さんや三千川さん、高砂さんは亡くなったんだね」
「…ラムダさんもです」
陣営が勝利したとはいえ、軽くはない犠牲。早苗は黙ってしまった。

「その後、番長小屋を捜索したところ、興味深い資料を見つけました」
「どういうこと?」
「その資料には長谷部校長のアウェイクン計画について書かれていました。資料は書きかけの状態でしたが、もしこれが完成していれば、ハルマゲドンは起きなかったかもしれません。
番長グループにその資料のことを問いただしたところ、資料については何も知らないが、出てきた場所は貴女の彼がいつもいたと言っていました」
彼がアウェイクン計画の資料を作っていた?もしかしたら彼はハルマゲドンを止めたかったのだろうか?
「…彼はどうなったの?」
「番長グループによると、ハルマゲドンの前に殺されており、死体は番長小屋の近くに置かれていたようです」
彼はハルマゲドンの前に殺されていた!?だからハルマゲドンには参戦していなかったのか…。
彼はハルマゲドンにおいて強力な魔人だと認識されていたため、番長グループも彼の死を必死に隠していたのだ。
彼の死が明らかになり、早苗はまた泣いた。もう、彼には会えないんだ…。
その時、列車は丁度立川駅に到着した。立川で降りる乗客は、早苗の姿を見てさまざまな顔を浮かべた。

列車が立川駅を発車すると、鈴鹿は言葉を続けた。
「…彼が亡くなった事に、私もとても残念に思います」
「うん…」
「私も、この事を伝えるか悩んでいました。伝えない方が、貴女にとっては幸せではないだろうかと。
…けど、いつかは貴女もその結論に辿り着くのではないかと思い、すぐに伝える事にしました。旅の途中にごめんなさい。
…今は、心の傷を癒す事に集中してください」
「…うん、分かった。ありがとうね」
「最後に一つ、彼と親しい番長グループのメンバーによると、彼はハルマゲドンが終わったら、彼女と松本に行く約束をしていると言っていたようです。…もしかしたら、彼も貴女のことを忘れていなかったのかもしれませんね」
「…そうなんだ…」
そう言うと、電話は切れた。
彼の死は悲しかったが、同時に彼がハルマゲドンに参戦しなかった理由も分かり、早苗は何処かで安堵していた。


そして3月になり、早苗は再び中央本線を下る事を決めた。
…日帰りで行くから、甲府までしか行けないけど…。
せめて亡くなった彼に車窓を見せてあげようと、彼の写真を持ち、早苗は特急かいじへと乗り込んだ。
これで、彼との約束は果たせたかな…?


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