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第19次 生徒会陣営応援スレ

6各務城はりのん:2019/01/13(日) 09:31:36
(各務城玻璃乃プロローグ)

1月9日 水曜日

 嗚呼、私は本読みとして失格だ。

 私は知ってしまった。いかなる物語より
も胸がときめく、禁断の果実の味を。斯様
な果実の甘さに心惹かれる事実が、本読み
として失格であることの証左なのだ。

 図書室に置き去りにされた鞄の持ち主が
誰なのかを知るために、鞄の中を探るのは
図書委員として正当な行為であったことは
主張しておきたい。手帳を見つけて開き、
所有者が見知った名前であることを確認し
た処までならば批難される謂われは一切な
い。

 罪深きはその後である。手帳に綴られて
いた、彼女の日記に興味を覚えた私の手に
は、書と心行くまで向き合う覚悟を決めた
時にしか使わぬ眼鏡が握られていたのだっ
た。私は、知人のプライバシーを蹂躙する
決意を固めていたのである。

 そこには、恋人と出会い、想いを深め合
う過程で如何なる感情の動きがあったのか
が赤裸々に綴られていた。二人の物語は、
唐突に恋人が彼女と距離を置くようになっ
てしまったことを嘆く悲痛な胸の裡を吐露
する場面で途切れている。その結末は、ま
だ紡がれていないのだ。

 窃視趣味の俗物と謗られるのは避けるべ
くもない。私小説というジャンルが脈々と
生き永らえてるのは、他人の私生活を覗き
見る賎しい楽しみが普遍的なものであるか
らではあろう。されど、文学史に誉れ高き
文豪の著した名筆名文よりも、隣人が走り
書きした拙き乱文に強く惹かれているなら
ば、矢張り私は本読み失格なのだ。


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