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第19次 生徒会陣営応援スレ

7各務城はりのん:2019/01/13(日) 09:32:49
(承前)

1月10日 木曜日

 私の浅ましさには我ながら呆れ返る。知
己の秘密を盗み見る快感を知るやいなや、
貪欲にその快感を追及しようとしているの
だ。

 真っ先に自らの血族に手を掛けようとし
たのだから、手の施しようのない愚者であ
る。家族の所有物ならば、漁っても犯罪に
はならぬと考えた半端な保身には怖気が走
る。

 裏庭にある倉に狙いを付けたのは間違い
ではなかったはずだ。埃を被った書物の山
の中より、一冊の厳重に鎖で封じられた黒
い本を発掘した時には、賎しい興奮で心臓
が壊れんばかりに高鳴っていた。

 私の瞳に妖しい光が宿っていたであろう
ことは、想像に難くない。震える手で眼鏡
を掛けた。すると、黒い本を封じていた鎖
が手も触れぬうちに勝手に解けたのだ。

 この時点で、黒い本が尋常の書でないこ
とは明らかだった。ここで本を手放し、元
の場所に戻すべきだった。しかし、私の指
は、この慄然たる書物を開く以外の動きは
できなかったのだ。

 運命に導かれるように開いた頁に書かれ
ていたのは――全くもって不可解なことで
あるが――私自身の日記、であった。

 忘れていた。

 記憶の底に封印していた。

 消し去ったつもりでいた。

 だが、記憶か消えたわけではなかったの
だ。一度呼び起こされれば、悍ましき記憶
は鮮明に像を結ぶ。

 幼き頃の私が感じた不快感と屈辱感と無
力感と絶望感が、濁流の如く押し寄せた。
這い回る指と舌の感触。容赦なく捩じ込ま
れる穢らわしい異物が身体を引き裂く激し
い痛み。大好きだった先生が、どうしてこ
んなことをするのか。わからなかった。な
んにもわからなかった。ただただつらくて
くるしかった。

 薄暗い倉の床に胃の内容物を吐き出しな
がら、私はこの黒い本の性質を理解した。
これは、三途のこちら側にいる人間が持つ
べき書物ではない。

 だが、嗚呼、私は本読みとして失格だ。

 刈り取られる側の苦しみを知って尚、禁
断の果実を味わいたいと思ってしまってい
るのだから。


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