しかし、それはまさに黒人たちが払拭しようと長年奮闘してきた、奴隷時代に白人の決めた古い価値観である。その価値観があまりに強く植えつけられているため、黒人の間でも、色が濃いか薄いかでコンプレックスがあったりする。1970年代に“ソウルの女王”のアレサ・フランクリンがリリースした「Young, Gifted and Black」 (若く才能豊か、そして黒人)という歌は、正しい価値観を若者たちに訴えかける歌だった。
日本ではまったく受けなかった『クレイジー・リッチ!』(2018年)がアメリカで評価された大きな理由も、それだ。この作品は、アジア系がアジア系として振る舞い、輝いていた映画。それが人種を超えて大ヒットした。「Young, Gifted and Black」ならぬ、「Young, Gifted and Asian」である。今、世の中は、そちらへ向かっているのであり、人々はそれを祝福しているのだ。
問題の発言は、動画配信サービス「Hulu(フールー)」の番組を紹介するコーナーであった。アイヌ女性のドキュメンタリー「Future is MINE ―アイヌ、私の声―」を紹介した後、お笑い芸人の脳みそ夫さんが「この作品とかけまして動物を見つけた時ととく。その心は、あ、犬」と謎かけをした。番組の放送後、SNS上などで「本当に許されないこと」などと批判の声が多く上がった。