・イギリスには16世紀中盤から17世紀頃のブライドウェル王立病院(Bridewell Royal Hospital)やベスレヘム王立病院(Bethlehem Royal Hospital)の当時の記録が現存しているが、記録には、仕事がない浮浪者や窃盗などの軽犯罪者を連れてきて裁いて鞭打ったり、碾き臼などの強制労働を課したり、女王や裁定を下す理事を誹謗中傷したために連れてこられ、収容されたりした人物らの裁定の内容や下された罰が書かれているだけである。
現在、精神病院と邦訳されることがあるベスレヘム王立病院の記録にも、現在の精神病の症状とされるような睡眠障害やうつや慢性的な疲労や頭のぼやけやめまい、怒りっぽさなどの自律神経系の異常が推定できる具体的な症状は何も書かれていない。
・元来、欧州で生まれた"Hospis"や"Hospital"すなわち病院の当時の施設の状況をみると、慈善や風紀や治安維持のために、そういった貧民や浮浪者や軽犯罪者を裁いて労務を課したり、鞭打ちや碾き臼などの罰を与えて閉じ込める監獄であり、現代に病院と聞けば誰もが思い浮かべるような衛生環境が整った治療のための施設とは全く異なるものであることがわかる。
・スペインでは'La casa de locos'(英語で'The Madhouse')または'Manicomio'(英語で'Asylum')・・・邦訳では「狂人の家」と呼ばれる牢獄が、ウィーンには骨格異形などの先天的な障害者を隔離した"Narrenturm"(ナーレントゥルム:Narrは愚者といった意味)があったが、これらも同様に、隔離対象となった者らに共通する具体的な症状についての記録や著述は何もなく、単なる牢獄や監獄である。