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Love the square

127ピーチ:2012/09/09(日) 19:03:46 HOST:nptka405.pcsitebrowser.ne.jp
ねここ〉〉

……あたし、優花ちゃん苦手なタイプだなー

何か勝手な感じ

128ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/09(日) 19:19:59 HOST:EM117-55-68-14.emobile.ad.jp


「健人のばか」


 思わず、口から漏れていた言葉。
 微かに開いた窓からふく風に髪をなびかせながらわたしは健人を見つめた。


「なんで、誰にでも優しいの?」
「ごめん莉乃」
「……謝らないでよ、馬鹿健人」


 此処はわたしの居場所じゃない。
 そう感じて、わたしは音楽室を出て屋上へ行った。


     ×


 この学校にきて健人に一番に案内された場所。
 それが屋上だった。
 健人のお気に入りの場所らしく、わたしもいつのまにか気に入っていた屋上。
 
 あいかわらずの雷と雨に、わたしは場所を変えようか迷ったけれどさっき馬鹿なことを言ってしまった自分を思い出して、居てもたってもいられずに思わず屋上の中心にきてしまった。
 強く雨に打たれると、なんだかそれが逆に心地よい気もした。
 制服がびしょ濡れになって寒く感じながら、わたしはその場に立ちつづける。


 健人のことを思い出して目から涙があふれてきたけれど、雨のおかげでよくわからない。


 突然、屋上のドアが開いた。
 そこには、さっき目にしたばかりの優花ちゃんの姿。


「あなた、さっきの……」
「優花ちゃん?」


 せっかくだし、少し話してみよう。


「二年……ですか」


 優花ちゃんが突然敬語になってしまった。
 でも、そこには触れないでおこう。


「こんなところで何してるんですか? 風邪ひきますよ」


 意外と良い子なのかもしれない。
 茶色より少しうすい、ミルクティーのような色の髪の毛をふわふわさせてわたしを屋根があるところまで誘導してくれた。


「優花ちゃんはどうしてあんなことしたの?」


 直球だけど、思わず聞いてみてしまった。
 コンクリートの壁に寄りかかって座りながら、二人で話す。


「わたし……感情を表に出すのが苦手なんです」
「え……?」
「だからあんなことしちゃったし、それに……ハッキリ言って男の人が苦手で、一緒にいてどうしたらいいかわからなくなっちゃうんです」


 頬を赤らめてはずかしそうに言う優花ちゃんが可愛く思えてきた。
 わたしは思わず微笑みながら言う。


「優花ちゃんって、本当はすごく素直で可愛くていい子なんだね」
「そ、そんなことないです! わたし……ずっと思いつづけてた男の子がいて」


 あわあわと少しあわててから、優花ちゃんが話し出した。


「でもその男の子をわたしの所為で傷つけてしまったんです」
「そう、なんだ」
「……だから、もう人を傷つけたくなくて。それで嫌われなきゃって思って、あんなことしちゃうんです」


 それが理由だったのか。
 しゅんと落ち込んだようにそう話す優花ちゃん。



 わたしもそんな風に。
 一途に人を思いつづけたい。

 そう、思った。


     ‐

129ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/09(日) 19:54:11 HOST:EM117-55-68-14.emobile.ad.jp

>ピーチ

これから優花の性格変化タイムです←
まあ、テンパって自分勝手な子になっちゃってるんだよきっと。

130ピーチ:2012/09/09(日) 21:12:19 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

うわぁい……優花ちゃん案外いい子だった!

あたしって第一印象で好き嫌いを言っちゃうからなぁw

131ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/10(月) 14:03:52 HOST:EM117-55-68-140.emobile.ad.jp


 わたしが屋上に来てから数十分経ったのに、まだ雨は止みそうにない。
 というより逆に強くなっていってる気がして、わたしは優花ちゃんに提案した。


「ねえ、わたしもうちょっと優花ちゃんと話したいから場所変えない?」
「はい! でも莉乃先輩びしょびしょですよ? 大丈夫ですか?」
「わたしは平気だよ」


 微笑んでそう告げ、立ち上がったその瞬間。


 目の前が、真っ暗になった。


     ×


「っ……」


 明かりが眩しい。
 ゆっくりと起き上がると、目の前にはあせった健人の姿があった。


「け、健人? わたし……」
「屋上で倒れたんだよ」


 そういえば、優花ちゃんはどうなったのだろう。
 気になってそっとベットのカーテンを開けてちらりとのぞくと、そこには優花ちゃんと奈々ちゃんと花ちゃんの姿があった。


「莉乃さんの意識失わせたの、優花でしょ? わかってるんだからね!」


 興奮しながら必死にそういう奈々ちゃんに驚いた。
 違う、優花ちゃんの所為じゃない。
 それでも優花ちゃんはさっきのようにみんなにもっと嫌われようと、キツイ口調で言った。


「だったら何よ」
「っ、優花は何がしたいの?!」


 奈々ちゃんにそう聞かれて、優花ちゃんは戸惑っているように見えた。
 今更本当のことを言ったって信じてもらえるはずがない。きっとそう思ってる。
 わたしが優花ちゃんの立場でも、きっとそう思うだろうし。

 わたしはみんながいるところに出てきて、誤解を解こうとした。


「優花ちゃんの所為じゃないよ!」
「莉乃さん……なんでそんなこと言うの? 優花は悪いやつなんだよ?!」


 わたしはハッキリ奈々ちゃんに言う。


「優花ちゃんは……優しいよ」


 優花ちゃんは戸惑ったような目でわたしを見つめた直後、頬を赤らめて俯いてしまった。
 でも奈々ちゃんは認めようとせずに言い返す。


「そんなことない! 莉乃さんは騙されてるだけだよ」



 違うのに。
 どうしたら、信じてもらえるんだろう。


     ‐

132ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/10(月) 18:09:26 HOST:EM117-55-68-42.emobile.ad.jp

>ピーチ

でも、奈々とかにとってはちょっと厄介な子かもw

133ピーチ:2012/09/10(月) 20:43:24 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

あ、確かにw

でも奈々ちゃぁん……根拠ナシに疑うのは止めようよー!?

134ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/12(水) 19:36:14 HOST:EM117-55-68-24.emobile.ad.jp

>ピーチ

奈々は正義感強い子だから、莉乃や健人を傷つけたって思うといてもたってもいられなくなるんだよ←

135ピーチ:2012/09/12(水) 19:48:04 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

あ、なるほどw

奈々ちゃんちょー優しい………!!

136ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/12(水) 20:07:04 HOST:EM117-55-68-24.emobile.ad.jp


「――もういいです、莉乃先輩」


 沈黙をつづけたあと、優花ちゃんが仕方ないと言うように苦笑を浮かべてそう告げた。
 信じてもらえないなら諦めますと小声でつぶやいた優花ちゃんの寂しそうな表情にわたしは思わず大きな声を出す。


「よくないよ!」


 奈々ちゃんがむむむ、と口を尖らせたが、気にせずに優花ちゃんをじっと見る。
 優花ちゃんは泣きそうな目をしながら言い返してきた。


「いいんです! もうこれ以上、わたしに関わらないでくださいっ……」


 そんなこと、わたしにできるわけない。


「無理だよ」
「どうしてっ……」


 優花ちゃんの目からじわりとにじんだ涙を見つめて言った。


「だって優花ちゃんが寂しそうな顔してるから」


 本当は寂しくてたまらないんでしょ?、と聞くと、優花ちゃんは俯いてしまった。
 でもなんとなく、頷いているような気もした。
 わたしは奈々ちゃんに向かって言う。


「ごめんね奈々ちゃん……でも本当に、優花ちゃんは悪い子なんかじゃないの」


 きっと奈々ちゃんも気づいてる。
 花ちゃんは、さっきから薄々感づいてはいたみたいだけど。


「人の前に出ると嫌われなきゃって意識してあんなことしちゃうだけで、悪気なんて全然ないんだよ」


 奈々ちゃんが頷いた。
 優花ちゃんがうれしそうにパアッと顔を明るくさせる。


「ごめんね優花」
「ううん、わたしこそ……素直になれなくてごめんなさい」


 一件落着。


 だと、思いたかったのに。


     ‐

137ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/12(水) 20:25:49 HOST:EM117-55-68-24.emobile.ad.jp


「翔が熱で休み?」
「うん、そーなの!」


 奈々ちゃんと健人と花ちゃんと優花ちゃんとわたしで朝から屋上へ向かったとき。
 いつもより静かだという異変に気づきわたしが奈々ちゃんに問うと、どうやら翔は熱でダウンしてしまったようだ。

 そういえば昨日、路地裏に来たときも風邪気味だった。
 しかも雨が降っていて寒かったのに、持ってきた傘を猫にあげてしまって傘無しで家まで帰っていたからなあ。
 今日、お見舞いにでも行ってあげようかな。


「奈々ちゃんたち、もう翔と会った?」
「会わせてもらえなかったよー」


 ぶー、と口を尖らせる奈々ちゃんに優花ちゃんがつっこんだ。


「奈々ちゃんって翔のこと好きなの?」
「ち、違うよ! てかあたしの彼氏は……あ、えと」


 ちらっとわたしを見て気まずそうにうつむく奈々ちゃんに、わたしは苦笑した。


「あ、いいんだよ気にしなくて」
「うう……あたし空気とか読まないでズバズバ口にしちゃうから……」
「本当にいいの! むしろ気にされたほうが気まずいよ」


 わたしたちのやりとりを見て健人が少し戸惑った直後、花ちゃんと優花ちゃんがにやにやして言った。


「複雑なんだよこの四人組は」
「健人が気持ちハッキリさせちゃえばいいんだよー」


 なぜか健人に話を振り、二人はその反応を楽しみながら微笑んだ。
 健人が全力で戸惑いながらポツリ。


「俺、は……正直よくわかんな「だからダメなのよこのバカ鈍感!」


 健人の言葉をさえぎって怒鳴ったのは優花ちゃんだった。
 うへえ、と奈々ちゃんが不思議な笑い方をする。


「わかんないじゃなくて! 奈々ちゃんも好きだけど、どうせ優柔不断健人のことだから莉乃先輩にも気持ちが揺れてるんでしょばかあ!」
「や、本当すみません……」
「なんで?! なんでそんな優柔不断で恋愛に関してすっごく鈍感なの?! 経験値ゼロなの?!」


 怒鳴って質問攻めする優花ちゃん。
 健人は冷静に苦笑しながら答えていて、なんだか大人だなあと思う。


「経験値ゼロってか、俺高校になって初めて恋したし」


 前言撤回もできないくらい大人っぽいなあ。
 優花ちゃんはぜーはー息を整えてからもう一度怒鳴り攻め。


「本当に経験値ゼロなの?! じゃあ今ここで二人にキスしてみてよ! ドキドキしたほうが健人の真の好きな人ね」


 ええええ、キスされちゃうの?
 別にそんなの昔はふつうだったけど!
 とにかく戸惑った数秒後、それが本当に実践されそうである。


「待って、ふつうに恥ずかしいんだけど」


 健人が苦笑しながら奈々ちゃんにキスしようとしていた手を止めた。
 今度は花ちゃんが健人につっこむ。


「キスできないってことは、愛情がないってこと?」


 ふふっと笑う花ちゃん。
 可愛いけどこわいな!

 そして奈々ちゃんは後回しでわたしに回ってきてしまった。


「莉乃には慣れてるからなあ」
「なっ……健人が慣れててもわたしは慣れてないもん」
「じゃあいくよ?」
「話聞いてよー!」


 あ、どうやらマジのパターンっぽい。
 この人無自覚でどんどんわたしを引き込んでくつもりか!



 ふにゃ。
 一瞬、とはいえないくらいちょっと長めのキスがつづいた。


 離れてからわたしが叫ぶ。


「な、なんでいつもよりちょっと長くしたの?!」
「ごめん、なんとなく」


 ていうかていうか。
 奈々ちゃんの前でこんなことしていいのかな。


「ア、イイヨイイヨー。キニシテナイカラ」


 硬直しながら答える奈々ちゃんにアウトだったと後悔する。
 けど、やっぱりうれしかった。


 いつか健人の気持ちが振り向いてくれればいいなあ。
 翔には、もっといい恋をしてほしいな。


 そうおもいながら、わたしは微笑んだ。


     ‐


 なんか大きな問題をつくりたいけどどうしてもハピエンになってしまう。
 だれを悪役にしようか迷うわ!

138ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/12(水) 20:26:07 HOST:EM117-55-68-24.emobile.ad.jp

>ピーチ

奈々はねー
情熱系だからね←

139ピーチ:2012/09/12(水) 20:44:16 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

奈々ちゃーん!!

良かったよー!二人が和解したよー!!

140ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/13(木) 18:32:37 HOST:EM117-55-68-34.emobile.ad.jp


 学校の帰り道。
 普段なら翔と健人と奈々ちゃんと花ちゃんで帰っているけれど、今日は委員会の所為で遅くなってしまったから一人で帰っている。
 正直、この学校に来て一人で帰るのが初めてだから少し心細い。

 携帯を弄りながら、わたしは自分の家と違う方向へ向かった。


     ×

 チャイムが鳴ると、なんとなくドキドキしてしまった。
 翔の家の前で、誰かが家から出てくるのを待つ。
 きっと翔本人は出てこないだろうと油断していたわたしが馬鹿だった。


「しょ、翔?! なんで翔が……って翔の家なんだし当たり前か」


 自分で言ったことに自分でつっこんじゃうほど余裕ないなんて、わたし本当に馬鹿だな!
 そして翔がいつもと違うテンションなことに気づいたのもそのあとだった。つくづく鈍いなあわたし。


「……しょ、翔? あの、まだ熱あるんじゃ……」
「俺今一人なんだよね」
「え、あ……そういえば共働きなんだっけ?」


 いつもと表情が違うような気がしたけどきっと気のせい?


「それ分かってて来たってことは……どうなるか、分かってるよな?」
「な、なにそれ! わたしただお見舞いに来ただけでっ」
「動揺して、かわいーやつ」


 ちゅ、とわたしの唇にキスをした。
 さっき健人にもキスされたのに、今日キスされすぎじゃないかわたし!

 強引に腕を引っ張られ、翔の部屋まで連れて行かれた。
 ベットに押し倒されるけど、ぜったい翔今日おかしいよどうしよう!


「ちょ、翔! ねえ……やめっ」
「やめてほしいの?」
「あ、あたりまえっ……ていうか翔なんで上脱いだの!」


 上半身裸な翔にもはや変態じゃないかと思いながら叫ぶけど、効果なし。


「やっぱり健人が好きだから? 俺勝ち目ないの?」


 翔はわたしの制服を脱がそうとしていた手を止めて、さみしそうにそう聞いた。


「そん、な……」


 わたしだってわからないよ、そんなこと。


「……わかんない」


 顔を隠してそう答えると、翔はわたしから少し放れたイスに座ってつぶやいた。


「今はなんとも思ってないけど、奈々もだったよな」


 え?、と首をかしげた。


「奈々も莉乃も、俺の好きな女全部健人に取られて……正直、健人を好きになれないよ」


     ‐

141ピーチ:2012/09/13(木) 18:44:56 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

翔くーん!?

梨乃先輩も奈々ちゃんも健人君も何も悪気はないよー!?

幼馴染でしょー!?

142ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/14(金) 19:37:20 HOST:EM117-55-68-162.emobile.ad.jp


「翔……」


 わたしはぽつんと彼の名前を呼んで



 自分が馬鹿だとわかった。


「ごめん翔、そんな思いさせて」


 わたしの自分勝手な判断で翔を振っちゃだめだ。
 そう思ったわたしは、ベットから立ち上がってぎゅっと目をつむり翔の唇に自分のそれを重ねる。


「……り、の?」
「翔、告白の返事なんだけどさ」


 これでいいんだ。
 これで、みんなが納得する。

 そもそもわたしが健人に恋してること自体が間違ってたんだ。


 なんでだかわからないけど、目からは涙があふれてきた。
 それを拭いて、翔に言う。


「付き合おっか」


 何事もなかったかのようにからりと明るくそう言うわたしに驚いていた。
 わたしが健人さえあきらめれば、きっとすべてはうまく回るんだ。


「……同情か?」


 翔が暗い表情でぽつりとそう聞くと、わたしは何と言えばいいかわからなくなって口ごもる。
 でも、わたしが翔を好きになればすべてが解決するのは事実だ。


「これでみんなが幸せになれるなら、わたしはそれが正解だと思うから」


 同情なのかわからない。
 あまり良い言葉ではないけれど、きっとその通りなのかもしれない。
 偽善者って言われたっていいから、これ以上みんなに傷ついてほしくない。


「お前、頭悪いなー」


 翔は突然立ち上がって、わたしの髪の毛をくしゃくしゃと乱暴に撫でた。
 え、頭悪いって。
 翔ほどではないような気もするんだけどなあ。


「みんなが幸せになったら自分が幸せじゃなくてもいいのか?」


 翔は、わたしのことを考えてくれる。
 すごく嬉しいけど、でもそんなの無駄なんだ。


「わたしの幸せはみんなの幸せだからいいの」


 ふっとそう微笑むと、彼は残酷に言い放った。


「今こうしてお前と付き合えても、俺は嬉しくねえし幸せになれねえよ」


 
 そんな。
 どうして?



「……そっか」


 わたしは疑問を抱えてそうつぶやいたまま。
 鞄を手に取り翔の家を出た。


     ‐

143ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/14(金) 19:48:34 HOST:EM117-55-68-162.emobile.ad.jp


 わたしはいったい何をしたいんだろう。
 健人にも振られて、奈々ちゃんともケンカして――今はお互い何も気にしてないけど、たまに気を遣わせてしまう。
 挙げ句の果てにわたしのことを思ってくれていた翔を傷つけて、その意味にさえ気づけなくて。


「わたしって、ほんと馬鹿だなあ……」


 目に浮かぶ涙を拭きながら、何も考えずに路地裏へ向かった。


     ×


「君一人?」
「何で泣いてんのー?」
「俺らが慰めてあげよっか」


 路地裏へ行く途中、人通りの多い大通りで数人の男の人たちに絡まれてしまった。
 いかにも不良って感じの集団だったけど、今のわたしには逃げることもできなくて冷たく言い放つ。


「わたし、急いでるんで」


 さっき時計を見たら時計の針はもう八時をさしていた。
 猫がお腹を空かせて待ってるんだから、急がなくちゃいけないのに。


「彼氏とデート?」


 そんなこと、聞かないでよ。
 わたしの目からはどんどん涙があふれてきて、それを隠すように袖でこすりながら言った。


「ちがい、ます」
「ならいーじゃん、ね?」


 ぐい、と軽く腕を引っ張られて思わず反抗してしまった。


「いや! 路地裏に猫がっ……あ」


 思わず口走ってしまった。
 男の人の集団の数人が、わたしが示した路地裏へニヤニヤしながら歩いていく。


 ――――猫に何かあったら。
 もしかしたら殺されちゃうかもしれない。
 猫が危ない。


 そう思って、反射的に身体が動いていた。


「待ってっ! やめてっ」
「おいおい、暴れんなよお」
「うわ、よく見たらコイツ超可愛いわー」
「もう連れてっちゃってよくね?」


 さっきよりも強く腕が掴まれたのがわかったけれど、わたしは思いっきり振り払って走って猫の元へ行った。


「よかった、まだ大丈夫……」


 男の人たちより早く着いたから、猫は無事だった。
 ぎゅっと抱きしめるが、いずれ男の人たちは此処に来てしまう。
 先は行き止まりだから、もう捕まるしかないのかも。


 でも、猫だけは守り抜いてみせる。
 そう思って、わたしはもう少し強く猫を抱きしめた。


     ‐

144ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/14(金) 19:59:38 HOST:EM117-55-68-162.emobile.ad.jp


「お、行き止まりじゃん」
「猫抱きしめちゃって、かーわい」
「安心しろ、猫もちゃんと可愛がってやるよ」


 怖かった。
 正直わたし一人で猫を守り抜ける自信がなかった。
 でもわたしが此処で頑張らなきゃ、健人や翔との思い出も全部消えちゃうんだ。


「わたしは、わたしはどうなってもいいからっ……猫にだけは、手出さないでっ」


 涙があふれだした。
 もう拭いても拭いても止まりそうにないような気がする。

 男の人たちはじわじわとゆっくりこっちに近づいてきた。


「ほんっとかわいいなー」
「こんな泣いてんだしどうなってもいいって言ってんだから、猫には手出さなくていいよな?」
「でももっと泣かせてえわー」


 もうやだ。
 一人で抱え込んだ自分が馬鹿みたい。
 いっつも周りの目ばかり気にして、周りの人の幸せ願ってばかりで自分のことなんて全然守れないんだ。


「……お願いだから……猫、だけは……」


 男の人たちのリーダーのような人が前に出ていった。


「お前が俺たちの言うことしっかり聞くって言うんなら、猫には手出さねえよ?」
「言うこと聞くから……猫には触らないで」
「ああ、俺たちは約束だけは守るからな」


 お前が破ったら、どうなるかわかってんだろうな?
 そう言う男の人にこくりと頷き、わたしは猫を手放した。

 少しだけ時間をもらって、猫にミルクをあげる。
 今日が最後かもしれない。
 そう思ってこそっと、健人と翔に「猫のこと、よろしく」とメールを送った。


     ×


「んっ……」


 路地裏で無理矢理キスされるが、拒否することは許されなかった。
 泣きながらそれを受け入れる。

 さっきから、色んな人とキスしてばかりだ。
 身体中触られて、気持ち悪い。
 もうやだよ。


「服なんていらねえよなー」


 学校から直で来たから、制服を脱がされそうになった。
 びくんと震えて思わず拒絶してしまったとき、もう一度無理矢理キスされる。


「お前に拒否権なんてねえんだよ」


 制服を破られそうになった瞬間――



「やめろよ」


 彼の、声が聞こえてきた。


     −

145ピーチ:2012/09/14(金) 20:02:08 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

りーのせーんぱーいっ!!

梨乃先輩馬鹿じゃないよ!絶対!

にしても絡んできた男集団が何気にウザイw

146ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/14(金) 20:08:14 HOST:EM117-55-68-162.emobile.ad.jp


 聞きなれた声――
 わたしの、大好きな人だった人の。


 でももう、好きではいけない人の声。


「けん、と……」


 かすれた声でそうつぶやいたとき、健人は不意打ちで男の人に殴られてしまった。
 あくまでも手を出さないつもりなのか、ギリギリのところで避けている。


「健人っ……けんと!」


 そう名前を叫んだとき。
 健人が、ふらりとよろけた。


 わたし、こんなところで何をしているんだろう。
 自分の身くらい守れるようにならなきゃ、周りを幸せになんてできない。
 そう思って、わたしの手を強く掴んでいた男の人の腕を無理矢理振り払う。


「お前っ」


 男の人があせったその瞬間、健人がわたしに謝りながら男の人を殴った。


「ごめん、莉乃はこういうの嫌いかもしれないけど……こうでもしないと助けられない」


 健人のそういうところを好きになってしまったんだ。


「健人……」


 ぽつりと名前を呼んで、小さな声で言った。



「たすけて」


 健人が微笑んで、わたしの周りにいた男の人たちを一気に倒していく。
 そしてわたしの元まできて言った。


「大丈夫?」
「うんっ……」


 思わず健人に抱きついて泣くと、立ち上がった男の人たちが逃げて行った。
 やっと安心できたような気がする。


「突然あんなメールきたから、何かあったのかと思ってさ」
「健人……」


 自分の気持ちに嘘をつくのはやめよう。



「ごめんね。わたしやっぱり、健人のことが好き」



 大好きすぎて。
 あきらめきれないよ。


     ‐


 莉乃ちゃんがんばった!
 そして健人くんの好感度アップを狙いつつ今回も翔の見せ場なし←
 翔くんは莉乃ちゃんが帰ったあと後悔と高熱でダウンしてしまいました。

147ピーチ:2012/09/14(金) 20:27:15 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

え、翔君まさかのダウンですかw

うん、まぁ高熱だからネ、しょーがないよネ

148ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/15(土) 16:24:07 HOST:EM117-55-68-146.emobile.ad.jp

>ピーチ

わわ、投稿のたびにコメントくれてありがとう(´;ω;`)
ねここは全然コメントできてないけど、ちゃんと見てるからね!
ねここの暴走タイムが終わったらピーチのほうにもしっかり遊びに行くので←

莉乃は結局空回りしちゃうからねw
翔は努力が報われないやつ←

149ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/15(土) 16:42:21 HOST:EM117-55-68-146.emobile.ad.jp


「片思いでも報われない恋でもいいから、好きでいさせてください」


 これが、わたしにできる精一杯の告白。
 健人は驚いたように目を丸くさせたが、その直後赤い顔を隠すように俯いて言った。


「わかんねえよ……」
「健人……?」


 心配になって顔をのぞきこんでみた。
 うわ、耳まで真っ赤だ。
 熱でもあるんじゃないかとさらに心配になってしまう。


「莉乃のことが好きなのか、奈々のことが好きなのか……」


 わたしにも、希望はあるんだ。
 でもそしたら奈々ちゃんが悲しむ。
 翔のことも、傷つけてしまう。


 わたしが幸せになるとどうしても傷つく人がいて、それを考えると胸が痛くなってきた。


「もうやだよ……」


 思わずそうつぶやいてしまった。
 わたしが幸せになると傷つく人がいて、でもわたしだって幸せになりたい。
 こんなぐるぐるした思いなんてもういらないのに。


「なんで恋なんかしちゃったんだろ……」


 せめて、ずっと翔だけを思いつづけていられれば。
 そしたら誰も傷つかずにすんだのに。


「莉乃はそればっかりだよな」


 顔をあげた健人が冷たく言い放った。
 冷たい目に、びくんと肩を揺らしてしまう。


「何があっても、周りのこと気にしてばっかで……自分はどうなってもいいのかよ」
「わたし、は……みんなが傷つくのが一番悲しい」


 おそるおそるそういうと、健人にため息をつかれてしまった。
 どうしよう、すごく呆れられてる。


「莉乃がそういうなら、俺だって莉乃が傷つくのは嫌だよ」


 思わず目を丸くさせた。
 なんで、わたしのことを考えるの?


「わたしはいいもんっ」
「それ、きっと翔も奈々も言うと思う」


 ふっと、健人が笑った。
 やっと見られた健人の笑顔に少しほっとする。


「だからさ、莉乃一人で抱え込んでちゃ何も解決しないんだよ」


 健人が優しくそう言った。


「翔にも奈々にも、もちろん俺にも。ちゃんと話せよ? 莉乃のなかで相手が傷つくって決めつけて迷ったって、何も進歩しねえよ」


 わたしは、周りの人のことを考えてるように見えて実は、自分のことしか考えてなかったんだ。
 こんなわたしが翔に思われていいわけがない。
 健人を好きでいていいわけがない。
 そう思ったとき。


「だから、抱え込むなっての!」
「う、ごめんなさい……」
「不安なんだろ? なら言えよ」


 そう微笑む健人は


 やっぱり好きだなって思った。


「ねえ健人ー」
「んー?」
「好きだよっ」


 ふふっと笑ってそう言うと、突然赤くなる健人の顔。


「な、なんで今それを」
「や、健人が思ったこと溜めこまないで言えって言ったんじゃん」


 わたしが正論のようにそういうと、健人は顔を赤くさせたまま言った。


「そういうのは言わなくてもいいんだよ」
「でもわたしが言いたいの。言わなきゃあふれ出てきて大変だもん」


 その瞬間、突然健人にキスされた。



「けん、と……?」
「やばい、可愛い」


 状況がよくわからない。


    ‐


 あまあまあまあま←

150ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/15(土) 17:26:54 HOST:EM117-55-68-146.emobile.ad.jp


「ねえ健人」


 もうこんな中途半端な気持ちは嫌だ。
 そう思って、わたしは一か八かの賭けに出た。


「奈々ちゃんのことが好きなら、わたしのことが好きじゃないなら……もうわたしを期待させるのはやめて」


 キスも、抱きしめることも、今みたいに顔を赤くさせるのも。
 ぜんぶぜんぶ、わたしを思ってしてくれてると思うとどうしても期待してしまう。
 健人がわたしのことを好きじゃないのなら、これ以上好きにさせないで。

 そしてその直後、ふわりと身体が寄せられた。
 一瞬にして、わたしの身体は健人の腕の中にいってしまう。


「け、けんとっ? 話聞いてた?」
「聞いてたよ、だからこうしてるんじゃん」


 ははっと笑う健人の声。
 もしかしてこれは、わたしのことが好きっていう意味?

 健人は抱きしめるのをやめて、わたしに向き直って言った。


「待たせてごめんな」


 いっぱい待ったんだよ。
 わたしの頭を撫でる健人に心の中でそうつぶやく。


「好きだよ、莉乃」


 涙があふれてきた。
 大好きな人と結ばれる瞬間って、こんなにあったかいんだ。


 前は――健人の気持ちがわたしに向いてないことがわかってたからちょっと苦しかった。
 けど、今は全然違う。
 健人に、愛されてるんだ。


「健人、好き……」


 涙をながしながらそう言うと、もう一度ぎゅっと抱きしめられた。



 幸せって、このことをいうのかな。
 それならわたしは、みんなにも幸せになってほしい。
 そのときはもちろん、わたしも今以上に幸せになってたらいいな。


 そう願って、わたしは不意打ちで健人の頬にキスした。


 だいすきだよ。


     ‐


 まず最初に謝罪。
 優柔不断なねここの性格が健人にもうつってしまい、どっちとくっつけようか迷った挙げ句健人までどっちが好きなのか迷ってしまっていました。
 ねここの気持ちはそのまま影響されてしまっているんだなあと改めて実感←
 もやもやさせてしまい本当にすみません!
 そして素直に思う通りに書けない捻くれ者でごめんなさい!

 ですが安心してください。
 ねここの気持ちは落ち着きました←
 何か大きい展開がない限りこの仲はつづくでしょう!
 つづく、よね?←


 そしてそしてー
 奈々ちゃんの気持ちに変化があらわれます!
 からの、翔の今にもあふれ出しそうな莉乃への思い!
 それとかこれとかを、莉乃編で書こうかなと思いますのでぜひぜひお楽しみに!w

151ピーチ:2012/09/15(土) 18:35:11 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

健人君かっこいい、そして梨乃先輩かわいーw

お、遊びに来てくれる?

待ってまーすw

152ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/16(日) 18:42:24 HOST:EM117-55-68-188.emobile.ad.jp

>ピーチ

健人かっこいいって初めて聞いた気がする!←
その言葉が聞けて何よりだw

待ってて←

153ピーチ:2012/09/16(日) 18:53:06 HOST:nptka201.pcsitebrowser.ne.jp
ねここ〉〉

うん、何か頼もしいw

待ってるww

154ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/09/19(水) 09:24:20 HOST:EM117-55-68-43.emobile.ad.jp


 ふわふわと揺らぐ気持ちに戸惑いの色を見せていた健人の表情を思い浮かべ、わたしは寂しげに笑った。
 またあんな表情されたらどうしようって、ずきりと胸が痛んだ。


「……信じなきゃ」


 健人のこと。
 わたしが信じなきゃ、裏切られちゃう。

 精一杯愛して、精一杯気持ちを伝えて、



 精一杯、幸せにする。



 幸せにするなんて、ふつう男の人が言うものなのかもしれないけど。
 わたしは、自分も健人も、周りの人も。


 これ以上ないくらいに、幸せになってほしい。



 そう、心でつぶやいてベットの上で目を閉じた。


     ×


「おはよ」


 奈々ちゃんと翔には悪いけど、今日の朝だけふたりで登校することにした。
 これからどうするか、ちゃんと話し合うために。


「眠そうだね、健人」
「ん、朝弱いから」
「なんか可愛い」
「莉乃には負けるけどね」


 朝からバカップルだなあなんて思う。
 そしてわたしは、バカップルな雰囲気を壊さないようにできるだけ控えめにつぶやいた。


「やっぱり、朝はバラバラでいこう?」


 今まで通りバラバラでいくか、ふたりで行くか。
 昨日ふたりで少し話したのだけど、結論にたどりつくまで時間がかかりそうだったから後回しにしたんだ。


「奈々ちゃんも翔も、何があってもやっぱり三人の時間は大切にしたいって思うんじゃないかな」
「……そうかな」
「わたし前、奈々ちゃんと翔に聞いたんだ」


 健人が寂しそうな顔をしたのに気づき、微笑んで言った。


「どうして毎朝三人でしか行かないの?って。そしたらね、朝は三人で行くって決めてるからって、楽しそうに笑ってた」


 やっぱり三人の中にわたしは入れないのかもって、自信をなくした瞬間。
 三人には揺るぎない絆があるんだって実感して、ちょっと羨ましく感じた瞬間。

 それを思い浮かべるとやっぱり胸がずきりと痛むものがあって表情をゆがめてしまった。


 その瞬間、唇に柔らかいものが触れた。
 たった一瞬だったものの、健人がキスしてきたことがだんだんと明確にわかってゆく。


「け、けんと……?」
「二人は大切だけど、一番は莉乃だからそんな寂しそうな顔すんなよ」


 やっぱり今日の健人はなんだか可愛い。
 かっこいいのもあるけど、拗ねたりぼーっとしたりしてるところはどうしてもかっこいいとはいえないかも。


「今日、緊張するね」
「傷つかないよな……」
「や、傷つきはするでしょ」
「…………」


 奈々ちゃんと翔のことを思い浮かべながら不安そうにつぶやいた。
 でもきっと、あの二人のことだから。


「花ちゃんにも協力してもらわなきゃなあ……」
「言わなくても協力してくれるっしょ」
「……そうだね」


 いつか、幸せそうに笑ってるんだろうな。



「奈々ちゃんが健人を好きで、翔はわたしを好きでいてくれてるのはわかるけど……」






「やっぱり奈々ちゃんには、翔がお似合いだもん」



     ‐

155ピーチ:2012/09/19(水) 17:44:45 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

奈々ちゃん+翔君w

確かにお似合いだw

156ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/07(日) 17:32:14 HOST:EM117-55-68-140.emobile.ad.jp



「花ちゃん花ちゃん」
「なんですか? 莉乃先輩」


 今日も予想通り朝早く来ていた花ちゃんに声をかけると、花ちゃんは楽しげに笑いながら近くまで来てくれた。


「あの、ね……わたしと健人、付き合うことになりました……て、なんか改めて報告するのもはずかしいね」


 へらりと笑いその数秒後、花ちゃんがまるで自分のことのように喜んで言った。


「おめでとうございます! やっぱ健人には莉乃先輩だなって思ってたんで、本当にうれしいです!」


 そんな。
 わたしに健人なんてもったいないくらいなのに。


「それでね、奈々ちゃんと翔にそれを伝えるのに協力してほしいの」
「もちろんです! じゃあ、昼休みに屋上にくるよう伝えておきますね! あたしと優花も行っていいですか?」
「うん、いいよー。ていうかむしろ来てくれるとうれしい」
「じゃあ、楽しみに待ってますね!」


 わたしは楽しみじゃなくて不安なんだけどなあ。
 それでも、楽しそうな花ちゃんを見たら少し楽になった。


 ちゃんと伝えられるといいな。


     ×


 すこし早く来てしまっただろうか。
 そう思って屋上の重いドアを開けると、そこにはもうすでに健人や奈々ちゃんや翔、花ちゃんに優花ちゃんの姿があった。


「みんなっ」
「莉乃、いつ話そうか?」


 健人が真剣な顔をして聞くからちょっと動揺しちゃったけど、早く伝えたほうがいいかと思い微笑んで言った。


「今がいいかな」
「ん、わかった」


 わたしが不安な気持ちだったことを見抜いたのか、健人はわたしの頭を優しく撫でてから奈々ちゃんと翔に向き合った。


「二人に言いたいことがあるの」


 最初に口を開いたのはわたしのほうだった。
 健人にばかり任せてられないって思って。




「わたしと健人、付き合うことになりました」




 はずかしさ紛れで勢いよくそう言うと、なんでだか健人のほうが驚いていた。
 奈々ちゃんと翔はわかりきっていたという表情で微笑んで言う。


「健人にはやっぱり、莉乃ちゃんのほうがお似合いだよ」
「莉乃のこと諦めんのはキツイけど、やっぱその二人が一番だよな」


 なんで。


「なんでそんな優しいのっ……」


 思わず泣き出してしまった。
 きっと奈々ちゃんや翔もつらいんだ。
 わたしが泣くなんておかしいってわかってるのに。





 幸せすぎて、涙が出てきてしまう。


     -

157名無しさん:2012/10/07(日) 17:58:49 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

ひっさびさのこうしーん!!

待ってたよー!!←待ち過ぎてかなり壊れてるww

158ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/07(日) 19:03:49 HOST:EM117-55-68-140.emobile.ad.jp



「なんか、莉乃先輩に泣かれたらあたしまで泣きたくなってきた」
「な、奈々ちゃんっ」


 わたしがいつまでもめそめそ泣きつづけていたらいつのまにか奈々ちゃんまで泣き始めていた。
 失恋の悲しみはわたしも痛いほど知ってるから、罪悪感が残る。


「莉乃先輩っ、幸せになってください」


 泣きながら、奈々ちゃんがわたしをぎゅっと抱きしめた。
 それが嬉しくて、はずかしさまぎれにわたしも抱きしめ返す。


「あ、そういや莉乃」


 翔がわたしたちの青春を止めるように抱きしめていたのを引き裂いて話し始めた。


「前俺健人のこと好きになれないっつったじゃん?」
「あ、うん……て、今ここに健人いるんだけど」


 わたしが軽くつっこむと、健人が翔そんなこと言ったの?というような目線で翔を見ていた。


「あれさ、嫌いになれないの間違いだったわ」
「ほ、ほんとに?」
「んー、前の奈々の莉乃に対する嫌いになりたかっただけと同じみたいな感情だったのかも」


 昔のことは関係ないだろというような冷たい目で奈々ちゃんが翔を見つめたのをみて、思わず微笑んでしまった。
 わたし、この人たちと仲良くなれて本当によかった。



 そう、思うことができた。


     ×


 教室に戻ると数人の女の子たちが話しかけてきた。


「あ、莉乃ー」
「どこいってたのー?」


 普段いっしょにいる萌未(めぐみ)と里咲(りさ)だ。
 萌未はみんなにめぐと呼ばれて慕われているし、里咲もクラスの中心人物みたいな人。
 クラスになかなか馴染めなかったわたしに優しくしてくれたのもこの二人だ。


「ごめんね、ちょっと幸せになってきた」


 ふざけた様子でそういうと、二人は笑いながら言った。


「なにそれ!」
「ていうか莉乃、もしかして後輩くんと付き合うことになった?」


 里咲の勘は鋭い。
 それに比べてめぐは鈍感なんだけどね。


「な、なんでわかったの?」
「幸せになってきたってそれくらいしか思い浮かばなかったからさ」


 里咲が笑ったのを見て、めぐは驚きながらも笑い始めた。


「莉乃って嘘つくの下手だよねー」
「めぐに言われたくない!」


 わたしは今、すごく幸せです。


     -



 めぐと里咲の登場。
 そういえば二年生の人って莉乃しかいないなーって思って!


 せっかく莉乃編なんだし莉乃ちゃんのモテっぷりとか日常も書いちゃいますw

159ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/07(日) 19:04:29 HOST:EM117-55-68-140.emobile.ad.jp


>ピーチ

待たせてごめんねえええ!←
本当久々w

160ピーチ:2012/10/07(日) 19:23:49 HOST:nptka307.pcsitebrowser.ne.jp
ねここ〉〉

うわぁーい!!

待ってたぞー!!

161ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/08(月) 14:05:55 HOST:EM117-55-68-59.emobile.ad.jp



 夏が過ぎ、屋上の風も冷たくなってきた。
 制服は夏服から冬服への移行期間にうつり、すっかり夏の様子が見れなくなったころ。


「なあ莉乃、今度めぐと里咲も誘って六人で遊ばない?」


 普段からそれなりに話しかけてくれる三人の男子が遊ばないかと誘ってくれた。
 今まで健人や翔以外の男子と遊ぶということがあまりなかったから戸惑いはしたけど、彼氏からみてこういうのはどうなんだろう。
 わたしが悩んでいると、里咲がちょうどいいタイミングでやってきてくれた。


「なになにー?」
「今度莉乃とめぐと里咲と俺らの六人で遊ばねー?って話してたとこ」
「全然いいよー! でも莉乃は彼氏いるんだからそこらへん考えてよね」


 雰囲気を崩さないようにふざけた様子でそういうめぐに優しさを感じた。


 健人はなにも思わないかな。
 わたしの考えすぎかもしれないし、少しくらいいいよね。


 わたしは何があっても健人が大好きだもん。


 こうしてめぐと里咲と渓人(けいと)、敦志(あつし)、空(そら)との遊び計画が立てられていったのであった。


     ×


「莉乃、メアド教えて」


 渓人が茶色に染めた髪をふわふわさせて携帯を片手に傍に寄ってきた。
 愛想が良くて人懐っこい渓人は里咲と良いコンビで、二人でよく仲良さそうにしゃべっている。
 本人たちはただの友達だって言ってるんだけど、それでもなんだか渓人と二人でしゃべるのには気が引けた。


「うん、赤外線でいい、よね?」


 緊張っていうか、戸惑いのあまりとぎれとぎれになってしまった言葉。
 渓人はいつもの調子で笑いながら頷いた。


 そういえば渓人って、雰囲気が翔と似てるかも。
 健人は三人の中だったら空に似てるかな、黒髪なところとか。
 敦志は一番チャラチャラしてて赤い髪の毛で、苦手なタイプかと思ったらそれなりに気さくでいい人だ。


「空と敦志にも教えといていい?」
「うん、いいよー」
「んじゃ、帰り気をつけてな!」


 そう手を振りながら帰っていく渓人にあたしも軽く手を振った。
 そしてそこに様子をうかがっていたのかめぐと里咲がわざとらしくたまたま通りかかった感を出して近寄ってきた。


「二人してなんなのその演技」


 冷たいつっこみをいれてあげると、里咲とめぐはぎくっとしたようにつぶやいた。


「だって、メアド交換してたから」
「渓人も楽しそうだったし、莉乃のこと好きなのかなあって」


 何をいっているんだこの二人は。


「め、メアドくらい友達同士でもあるし大体渓人には里咲がいるじゃんかっ」
「あたしだってまだ渓人とメアド交換してないもん!」


 わたしが勢いまかせにそう言った瞬間、里咲がうつむきながら怒鳴るような調子で言った。
 よくよく見たら、俯く里咲の頬は赤くなっている。


「あたしだって……渓人のメアド知りたかった」
「里咲はやっぱり渓人のことが好きなの……?」


 おそるおそるそう聞くと、里咲ははずかしさまぎれに頷いた。
 これはめぐも初耳だったみたいで、驚いた表情を浮かべている。


「じゃあメアド――」
「だからって莉乃から渓人のメアドを聞き出すようなずるい手はつかわないよ」


 里咲は頬を赤らめたままふふっと微笑んだ。


「あたしだって自分から聞いてやる!」


 恋に輝く里咲の姿はとても可愛くて純粋だった。
 めぐも楽しそうに微笑む。


「あたし、応援するよー!」
「わたしも、なにかできることあったらいつでも言ってね!」


 里咲はもう一度、嬉しそうに微笑んでわたしたちにぎゅっと抱きついた。


「ありがとふたりともー!」


 恋っていいな。
 あらためて、そう思った。


     -

162ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/08(月) 14:22:19 HOST:EM117-55-68-59.emobile.ad.jp



「そういえば、めぐの恋バナってあんまり聞かないよね」


 学校帰りにミスドに寄ってドーナツを食べていたら、里咲がつぶやくように言った。


「そうだね、ていうかいつもわたしの恋バナばっかりだった気がする」


 わたしが共感すると、里咲とめぐはほのぼのと笑った。


「だって莉乃の恋愛漫画みたいでおもしろいんだもん」
「なんか応援したくなっちゃうんだよねー」


 よくよく考えたらわたし、人にばっかり話してみんなの話全然聞いてないじゃん。


「ねえめぐ!」
「なあに?」
「めぐは彼氏とかいないの?」
「え、話してなかったっけ。わたし三年の先輩と付き合ってるんだ」


 初耳だよ!!と脳内でつっこみをいれたあと、めぐの話を聞いた。


「全校集会とかでよく目合っててかっこいいなって思ってたらメアド聞かれてね、そこから二人で遊んだりして告白されたの」
「めぐも漫画みたいな恋してるんじゃん!」


 なぜか漫画にこだわる里咲に苦笑した。


「え、じゃあ彼氏いないのあたしだけじゃん」
「まあそういうことになりますねー」


 めぐがほのぼのとそういうと、里咲は一瞬落ち込んだふりをした。
 でもすぐに顔をあげて、ますます気合いが入った様子で言う。


「よし、がんばる!」


 ドーナツを頬張っていると、携帯がバイブ音を鳴らした。
 携帯を開いてみると渓人からメールがきていて、少し戸惑ってしまう。
 二人にばれないようにこそこそとメールを見た。


 ディスプレイに表示されたのは、“二人で会いたい”の文字。



 嫌な予感がした。



 え、なんで?と何も気にかけてないふりをして返信する。


 渓人からの返信はすぐきた。
 “話したいことがあるんだ”って、何を話すんだろう。



 メールか電話じゃだめ?と聞くと、できれば直接がいいと言われて悩んでしまう。


 ここは、二人に打ち明けるべき?
 さらに悩んでいると、めぐに携帯をのぞかれてしまった。


「莉乃だれとメールしてるのー?って、これ……」
「め、めぐ!」


 めぐは渓人とのことを黙っててくれた。


「と、年下の彼氏とメールしてたんだよね」


 それにしても嘘が下手なめぐに、鋭い里咲は気づいてしまったようだ。


「莉乃、隠さなくていいよ。渓人が莉乃に気があることくらいわかりきってるし」
「え、そうなの?」


 鈍感なめぐ。
 とか言ってみるけどそれはわたしも初耳だし!


「そんなことないよ! だって、わたし健人とか翔以外の男子のそんな親しくなかったし」
「渓人はずっと莉乃を見てたよ」


 わたしが黙り込むと、里咲は真剣な顔をしていった。


「あたしの大好きな人なの。ちゃんと向き合ってあげて? じゃなきゃあたしが嫌だ」


 里咲にそう言われて、わたしは頷いた。


 里咲は優しいし強い。
 そう、改めて思った。


     -

163ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/08(月) 15:16:33 HOST:EM117-55-68-59.emobile.ad.jp



「わたし……渓人のところに行ってくるね」


 俯きながらもそう決心すると、里咲は笑顔で見送ってくれた。
 何があるかわからないけど、渓人の元にいくことがわたしが今里咲のためにできることだから。


     ×


「ごめん、待たせちゃって」
「いや、俺も今きたとこだしさ」


 学校近くのコンビニにでわたしと渓人は待ち合わせした。
 予定より少し遅れていたから走っていったら予想通り渓人はそこにいて謝ってみたりする。


「……話したいことってなあに?」


 おそるおそるそう聞くと、渓人は微笑みながら言った。


「本当に伝えたかったことは今伝えると失敗しそうだから今度でいいわ」


 本当に伝えたかったこと?
 その内容を今聞いても教えてくれないんだろうからわたしはふれないでおいた。


「でさ、莉乃に話したいのは里咲のことなんだけど」
「う、うん」


 仲の良い里咲のことを何か言われるとなると、わたしまで緊張してしまう。
 里咲は渓人が好きなんだって渓人は気づいてないのかな。


「里咲って俺のことどう思ってんの?」
「……わ、わかんないよそんなの」


 わたしは必死に誤魔化した。
 これがめぐだったらばればれなんだろうななんて思いながら。


「隠さなくてもわかってるけどな」
「え? どうして……」
「たまたま里咲が告白されてんの見つけてさ、そのときに「渓人が好きだから」って振ったんだよ」


 そんなことがあったんだ。
 友達なのに、わたしなにもわかってあげれてなかった。


「渓人は里咲のこと、好きなの?」
「直球だなー」


 渓人に笑われた。
 わたし今真剣な話してるのに!


「でもまあ、嫌いじゃないよ」
「そ、なんだ……」


 ちょっと安心した。
 その瞬間、渓人が笑いながら言った。


「でも好きじゃないし、恋愛対象でもない」
「なんで……?」
「俺には好きな人がいるから」



 ズキリと、胸が痛んだ。




 わたしじゃないってわかってるのに。
 わたしなはずないのに。



 里咲、わたしどうしたらいい?



     -


 こっちはこっちで四角関係をつくっていこうかなと←
 健人と奈々と翔と花と優花が入ってこなくて別のお話っぽくなっちゃうので、ちょくちょくいれていきたいとは思いますw


 それにしても一年生組と二年生組を合わせるのって結構大変かもね!


 一年生→健人、翔、奈々、花、優花
 二年生→莉乃、里咲、めぐ、渓人、敦志、空


 めぐには高三の彼氏がいるとお話中に書きましたが、その話にも触れたいなって思ってます!
 莉乃編は長くなるかも。

164ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/08(月) 17:26:41 HOST:EM117-55-68-11.emobile.ad.jp



「ん、まあそれだけ」
「そっか……じゃあ、また明日」


 これ以上渓人といるともっと混乱してしまうと思い、わたしは早々とコンビニを立ち去った。

 わたしは、里咲に悲しんでほしくない。
 でも嘘を言って里咲を喜ばせたいとも思わない。
 めぐに相談するのもひとつの手かもしれないけど、里咲より先にめぐに話すっていうのも気が引けた。


「どうしよ……」


 そうつぶやいた瞬間、一瞬だけ視界が暗くなった。
 だれかにぶつかってしまったようだ。


「す、すみません!」
「莉乃?」


 ぺこりと頭をさげて謝ると、聞きなれた声が聞こえてきた。


「空!」
「俺だけじゃなく敦志もいるけどな」
「ご、ごめん敦志。気づかなかった」


 ところでどうしてこんな学校の近くに出現するのだろうかと不思議に思っていると、空は笑いながら答えた。


「渓人が莉乃と会うっていうから、何か仕出かさないか気になって」
「仕出かすって……純粋な友達同士の関係だしまさかそんなことあるわけないよ」


 わたしの言葉に、敦志が楽しそうに反応した。


「え、もしかして莉乃気づいてないの?」
「気づくってなにに? ていうか顔近いよっ」


 疑問だらけだ。
 ていうかわたしをこれ以上混乱させないでほしかった。

 でももう手遅れで、立ちながら話すのもあれだし公園に行こうかという空の提案で半ば強制的に話を聞くことになった。


「――で、本当に莉乃は何もわかんないわけ?」


 敦志が追い込むようにそう聞くと、わたしはおおきくぶんぶんと首を縦に振った。


「敦志が何の話をしようとしてるのかもわかんないよ」
「……前から思ってたけど、莉乃ってめぐに負けないくらい鈍感だよなー」
「そんなことないもん」
「いや、めぐも顔負けだな!」


 いやいや違うし。
 そして何で今めぐが出てくるのだろう。


「敦志ってめぐのこと好きなの?」
「な、なぜそれを!」
「ま、まさか本当だったりするの?」


 黙り込む敦志。
 拗ねた犬みたいでちょっと可愛い。


「でもめぐ彼氏いるよ?」
「は? マジで?」


 落ち込ませてしまっただろうか。
 敦志は驚いてから顔が見えないくらいに俯いてしまった。

 代わりに空がわたしと話をする。


「莉乃、お前本当に気づいてないんだよな?」
「う、うん……」


 もしかして、だけど。


「渓人の好きな人の話、とか?」
「なんだ、わかんじゃん」
「それってだれ?」


 空は言いづらそうに戸惑ったあと、わたしに訊いた。


「知りたいのか?」
「……知りたいわけではないけど、知ってたほうがいいことなら」


 曖昧なわたしの返事に空は悩んだあと、真剣な目で言った。


「俺が教えたこと、渓人には秘密な」


 ふっと笑ったあと、耳元でこそっと囁いた。
 “莉乃”って。


「……わ、たし?」
「ああ」


 それ以外、空は何も言わなかった。
 そんな空にわたしは訊く。


「里咲の気持ちって、知ってるよね?」
「ああ、渓人から話は聞いてるよ」
「渓人は里咲のこと、好きじゃないの?」


 わたしは渓人と里咲がお似合いだと思ってたのに。
 わたしに健人がいるのも渓人は知ってるはずなのに。


「里咲、中学のころ渓人に告白されたんだよ
「そうなの?」
「ああ。でもそのとき里咲は渓人のこと好きじゃなくて振ったんだ」


 そんなことがあったってことでさえ知らなかった。
 なんでわたし、ちゃんと話聞いてあげれなかったんだろう。


「渓人は今ふつうに里咲と話してるけど、本当は辛かったんだ。そして今更好きだと思われたことを――」




「――――恨んでる」



     -

165ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/08(月) 17:47:13 HOST:EM117-55-68-11.emobile.ad.jp



 これが、渓人と里咲の過去。
 そして渓人の里咲に対する思いであり、里咲に振り向かない気持ちの理由だった。


「……里咲にさ、説明してやってくんない?」
「本当のこと教えちゃってもだいじょうぶなのかな」
「いずれ向き合わなきゃいけないことだろうし、早いほうがいいだろ」


 空はそういって、敦志を引きずって公園を出た。
 わたしは二人より少し遅れて公園を出て、きっとまだ里咲とめぐがいるであろうミスドへ向かう。


 少し、緊張した。


     ×


「里咲、めぐ!」
「おかえり莉乃ー!」


 予想通りミスドでガールズトークしていた里咲とめぐ。
 わたしはさっきの位置に座ると、少しドキドキしながらさっきのことを話した。


「あのね――」


 二人はわたしの話をとても真剣に聞いてくれた。
 そんな二人に今まであったことを話すのは怖くて辛くて嫌だったけど、里咲とめぐはちゃんと受け入れてくれた。


「渓人、やっぱり莉乃のことが好きだったんだ」


 そういう里咲の目から涙があふれだすのがわかった。
 わたしが里咲を泣かせているんだと思うと胸が苦しくなる。


「あたし、何であのとき渓人を振ったんだろ」
「里咲は……わたしを恨んだりしないの?」


 わたしがおそるおそる訊くと、里咲は泣きながらも微笑んで言った。


「莉乃はあたしの大事な親友なのに、恨むわけないじゃん」


 わたしまで涙があふれてきてしまった。


「なんで泣くの〜?!」
「うれしくてっ……」


 いつのまにかめぐまで泣いてる。
 周りから見たら変な客なんだろうな。


 そう思ったとき、ミスドに見覚えのある三人組が入ってきたのが見えた。


「健人?」
「莉乃!」


 反射的につぶやいた言葉に気づいたのか、三人組はこっちを向いて驚いたような顔をした。



 ずっと、会いたかった人。


「莉乃ごめん、最近会えなくて」
「ううん、学年違うんだし仕方ないよ」


 実は、制服の移行期間とともに屋上閉鎖の時期になってしまったのだ。
 冬になると雪が積もったり氷がはったりですべって落ちたら危険だからという理由で閉鎖されたらしい。
 もちろん春や夏にはまた開放されるのだが、いっしょにお昼を食べていた屋上が使えないとなると会う機会も少なくなってしまった。


「り、りの?」
「だれこのイケメン」


 めぐと里咲の戸惑った表情に、わたしはあわてて説明した。


「えと、わたしの、その……」
「莉乃の彼氏です。一年の健人っていいます」


 わたしが彼氏という単語をいえずに戸惑っていると、健人は笑いながら言った。
 いっしょにいた奈々と翔も自己紹介する。


「健人の幼馴染の奈々です」
「俺は翔です!」


 里咲の目から伝わるなにこのイケメンビームが痛かった。


「莉乃、あんたどんだけ良い男に振り回されてたの」
「翔くんもかっこいいー」


 里咲がビームを放ちながら言い、めぐは翔の顔をじっと見つめながら言った。


「ていうか莉乃、何で泣いてんの? なんかあったのか?」


 心配そうにそういう健人にわたしはあわてて首を振った。


「ち、違うよ!」
「ん、なんかあったらすぐ相談しろよな」


 ふざけたように笑う彼が愛おしくて、思わず抱きついてしまった。


「莉乃?」
「ずっと会いたかったよ」
「ん、俺も」


 健人がわたしを抱きしめようとしたところで、それは里咲やめぐ、奈々ちゃんと翔の手により強制終了された。


「失恋したあたしの目の前でラブラブしないでよ」
「わたしだって彼氏に会えてないんだから再会のラブラブはよそでお願いします!」
「莉乃先輩恨みますよ?」
「ちょ、健人ずりーぞ!」


 「はーい……」としゅんと落ち込んだ様子で二人で返事した。
 そのあとは六人でいろんな話をして、里咲とめぐと奈々ちゃんはすっかり仲良しになってしまった。



 わたしの周りの人たちは、みんな暖かい人たちばかりだ。
 みんなと出会えて、わたしって幸せ者だなってあらためて思った。


     -


 無理矢理感あるけどがんばって幼馴染三人組と二年メンバー(一部)と会わせてみたよ!

166ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/08(月) 18:16:15 HOST:EM117-55-68-11.emobile.ad.jp



 幸せをあらためて感じていたその瞬間。
 またまた見覚えのある三人組が、ミスドへ入っていくのが見えた。


「……渓人」


 敦志と空もいたけど、反射的にこぼれたのは渓人の名前だった。
 健人が不思議そうな目で三人を見つめる。


「莉乃」


 ふっと笑う渓人にびくっと肩を揺らした。
 怖いわけじゃない。
 嫌いなわけじゃない。
 ただ、逃げなきゃって思ってしまう自分がいる。


「里咲、いいの?」


 めぐがこそっと里咲に聞いたのが聞こえた。
 里咲はあくまでも何も知らないふりを演じなければいけない。


「大丈夫。それに何があっても渓人はわたしの好きな人だから」


 それを聞いて少し安心した。
 里咲が向き合うなら、わたしも逃げたりしないで向き合おうと思えた。


「よ、お前らもミスド来てたんだ」


 チャラチャラした雰囲気でこの場をなごませようと敦志が笑いながら言った。
 空も微笑んで言う。


「そっちの三人は一年?」


 空の質問に、奈々ちゃんが目を光らせて答えた。


「はいっ、あたし奈々っていいます!」


 奈々ちゃん、もしかして空みたいなのがタイプなのかな。
 苦笑をうかべていると、翔も楽しそうに自己紹介した。


「俺は翔っていいます! 奈々とコイツの幼馴染です」


 こいつといいながら健人をちらっと見た。
 健人は怪しげに何かをうかがっている様子だったけど、黙り込んだ数秒後に不機嫌そうにあいさつした。


「健人です。莉乃は俺のなんで、莉乃に変なことしないでくださいね」


 健人の目線はあきらかに渓人にあった。
 もしかして健人、気づいてるのかな。

 渓人はおかしそうに笑いながら、健人に言った。


「何で俺に言うの? ってか余裕なさすぎて縛られてる莉乃が可哀想」


 険悪なムード。
 沈黙がつづいたけどそれをやぶったのはわたしだった。


「わたしは縛られてなんかないし可哀想でもないよ」


 渓人に強くそういうと、健人はため息をついて言った。


「変なことするなって言っただけで縛ってなんかないんですけど。余裕ないのはそっちのほうですね」


 健人、かっこいい。
 そう思ってしまったわたしはやっぱり健人に惚れすぎているのかもしれない。


「莉乃、行こ」
「あ、うん……じゃあみんな、またね」


 健人に腕を引っ張られてミスドを出た。
 出るときに奈々ちゃんと翔が「また明日」と言っていたような気がする。




「ごめん俺、独占欲強くて」


 ミスドを出てしばらくしてから、小さな声で健人が言った。


「わたしは、嫉妬してもらったほうが嬉しい」


 ぎゅっと健人の手を握ると、健人は嬉しそうに微笑んだ。


「ごめんね、渓人の態度悪くて」
「や、悪かったの俺のほうだし」
「でも渓人だって悪いよ」
「とりあえずさ、その渓人って人に俺が謝ってたって伝えといてくんね?」


 健人はいつでも、だれにでも優しかった。
 だからこそ、渓人とあったことも全部話そうと思うこともできた。



     -


 きります!
 渓人vs健人!

 そしてまたもや無理矢理感ありまくりの遭遇っていうw

167ピーチ:2012/10/08(月) 20:03:24 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

うぎゃー!? 今一気読みしてた!←

ちょ、一年vs二年って明らかに二年勝つでしょ!?

168ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/10(水) 17:36:59 HOST:EM117-55-68-185.emobile.ad.jp



「おはよー」


 教室のカーテンが膨らんだり、また戻ったりと風の悪戯をながめていたら、突然隣からにゅっとめぐがでてきて笑いながら手を振ってきた。


「わっ、めぐ!」
「あたしもいるよー」


 めぐの存在に吃驚していると、ひらりと楽しげに手を振って里咲が笑う。
 わたし今完全にぼーっとしてたなあ。


 あのあと健人にちゃんと渓人のことを話して一緒に遊ぶことになったっていうのも言ったんだけど、健人はちょっと不機嫌になってしまった。
 キス一回ですぐ上機嫌になったから可愛いなって思ったけど、健人に嫌な思いさせてるのはわたしだって思うとやっぱりちょっと胸が苦しい。


「ねえ里咲ー」
「うん?」
「渓人よくわかんないよ……」
「あたしも昨日みたいな渓人は初めてだよ」


 里咲は少し間をあけてから、気まずそうに苦笑した。


「渓人の知らない面をああやって引き出せる莉乃がちょっと羨ましいかも」
「な、なにそれ! わたしは里咲のが羨ましいよ」
「あたしのどこが?」
「スタイルよくて性格良いとこ」
「なにそれー」


 そのあと明るめの話題に切り替えて、憂欝な授業もなんとか乗り切ってみせたのだった。


     -


 みじかくてごめんねー!
 スランプやばい。

169ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/10(水) 17:37:46 HOST:EM117-55-68-185.emobile.ad.jp

>ピーチ

でもどれだけ莉乃を愛してるかで勝負したら健人勝つよ←

170ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/10(水) 18:04:09 HOST:EM117-55-68-185.emobile.ad.jp




「よし、ミスド行こう!」


 放課後になった瞬間すぐさまミスドの提案をしたのは里咲だった。
 早くない?とめぐが抗議したけど、それを無視して里咲が言う。


「たまにはマックでもいいかもなー」
「なにお前ら、放課後遊ぶの?」


 里咲の言葉につづけて楽しげに声をかけてきたのは渓人だった。
 空が不安そうにわたしと渓人を交互にみたのを見つけ、ちょっと緊張しながら言う。


「渓人、健人が昨日はすみませんって」
「いやー、俺も大人げなかったわ! 俺こそごめんって伝えといて」


 なんだ、普通の渓人だ。
 ちょっと安心して微笑むと、渓人は笑いながら冷たく言い放った。


「昨日莉乃が帰ってからまじつまんなかったわー」
「え、どうして?」
「可愛い女の子いなくなったじゃん」
「奈々ちゃんもいたし、めぐも里咲もいたじゃん」


 むっとしながら抗議すると、渓人はへらりと笑った。


「奈々って子は空に夢中だし、めぐは敦志と話てっからよー」


 ちょっと待ってよ、里咲は?
 なんて言える強さわたしにはなくて、でもいち早くその場から逃げたくて席を立ちあがった。


「わたし具合悪いから帰る」
「ちょっ、莉乃?」


 めぐが不安そうにわたしの肩に触れたのがわかったけど、走って教室を出てしまった。
 何やってんだろ、わたし。


 とぼとぼと校庭を歩いていると、後ろから渓人が追いかけてきた。
 なんで渓人なのって思ってしまう。


「待てよ莉乃、俺なんか悪いことした?」
「……里咲のこと」


 ぼそりと小さな声でいうと、渓人は苦笑しながら言った。


「里咲は苦手なんだよ」
「だからって目の前であんなこと言うの?」
「……悪かったって、俺だって必死なんだよ」
「なにに……?」


 泣き始めたわたしを見てあわてる渓人。
 わたしが勝手に泣いてるのに、これじゃ渓人が泣かせたみたいだよね。


「……莉乃に、振り向いてほしくて」
「え……?」




 それって告白?なんて聞けるほど強くないわたしはただただ戸惑っていた。




「っ」



 その瞬間に、重なった唇。



「やめてっ……」
「ごめん」
「……渓人わかんない……意味わかんないよ」


 なんでキスしたの?
 なんで謝るの?
 なんで里咲のこと嫌いになろうとするの?



 ぶわっと涙があふれた。



 健人、来てよ。
 そう思ったとき。



「何勝手に俺の莉乃泣かせてるんですか?」



 大好きな、健人の声。



「けん、とっ……」
「莉乃、とりあえず場所かえよっか」


 健人はそれだけいって、涙がとまらないわたしの背中を撫でてくれた。






     -



 ぐだぐーだ。

171ピーチ:2012/10/10(水) 18:24:23 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

健人君の登場格好いい←

続きが気になる展開だww

172ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/11(木) 11:30:52 HOST:EM117-55-68-153.emobile.ad.jp



 健人に連れられてとりあえず学校は出たものの、ちらっと横目で振り返ってみれば呆然と立ち尽くす渓人の姿が見えた。


 罪悪感が残った。


 渓人はわたしを好きでいてくれてるって知っていながら、ひどい態度をとってしまうこと。
 渓人の前で泣いて、たくさん困らせてしまったこと。
 渓人の気持ちにこたえられないこと。

 そしてなにより、




 わたしは健人が大好きなのに、ふいうちとはいえ渓人とキスしてしまったこと。



「……健人」
「ん?」


 歩いていた足を止め、涙を拭いて顔をあげた。
 ふしぎそうにわたしを見る健人に悲しげに微笑みながら告げる。



「やっぱりわたし、健人に釣り合ってないよ」



 声が震えた。
 今まで散々健人に迷惑かけてきたのに、これ以上かけるわけにはいかないから。
 だから別れようって言いたいのに。



「……莉乃、渓人先輩とキスしたことで罪悪感残ってんの?」


 健人はなんでもわかっちゃうんだね。



「だって……わたしといっしょにいると健人まで嫌な目に遭っちゃうじゃん」
「それが莉乃といたことで起こるっていうんなら、それは嫌な目って言わないでしょ」


 それに莉乃といれないなんて、それこそ嫌な目に遭った感じがする。
 そう言いながら微笑む健人を見て拭いたはずの涙がもっとあふれてきた。



「けんと、だいすき」
「俺も莉乃大好き」




 ――渓人とちゃんと向き合わなきゃ。


     -


 風邪で学校おやすみしたのでお昼更新。
 学校いきたいいいいい。

173ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/11(木) 11:32:52 HOST:EM117-55-68-153.emobile.ad.jp


>ピーチ

莉乃視点でいくと健人はかなりかっこよくしなきゃだめなんだ←
莉乃・奈々あたりは健人=かっこよくて優しいって感じだからね!

174ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/11(木) 12:54:25 HOST:EM117-55-68-179.emobile.ad.jp



 あのあと健人に家まで送ってもらって、わたしはちゃんと決心した。
 渓人に告白の返事をしてちゃんと向き合おうって。
 里咲にも渓人とあったことを全部話そうって。


 とりあえず渓人かな。
 そう思って、わたしは渓人に電話してみた。


『もしもし……莉乃?』
「うん、さっきはごめんね」
『や、いいんだけどさ……あれだな、俺莉乃の彼氏に相当嫌われてんな』
「……健人は、簡単に人を嫌うような人じゃないよ」


 小さな声でもごもごといった。
 弱気ではあったけど、渓人をこれ以上傷つけたくないと考えるとどうしても強気になれない。


「それでね、告白の返事なんだけど」
『……わかりきってるけどな』
「わたし、渓人のことは好きだよ。友達として」


 あくまで友達として。
 でも友達にだって、恋人にはない良さがあるんだからそれもまた特別だよね。


「渓人は大事な友達だよ」
『そっか、ありがとな』
「あとね……もうひとつお願いがあるんだけど」
『んー?』


 渓人と健人が重なった。
 なんだかんだいって、二人ってとっても似てるんじゃないだろうか。


「里咲と向き合ってあげて」
『……莉乃はさー、本当友達思いだよな』
「ちがっ、そうしなきゃわたしの気がすまないっていうか……二人が向き合うことでわたしが満足するから、ただの自己満足っていうか」
『まあいいよ、空たちから聞いたんだろ? 俺の過去』
「うん……ごめんね」
『や、莉乃にはいずれ話そうと思ってたし』


 こんなにわたしを大切に思ってくれる人がいて、幸せだなあ。


『今から里咲と会ってちゃんと話そうと思う』
「付き合う、の?」
『や、俺こう見えて結構一途だからさ。莉乃が振り向くの待つか、とにかく今は里咲とは付き合わないよ』
「そっか」


 それが、よく考えてだした渓人の結論ならわたしは間違っていないと思う。
 電話越しの彼に、精一杯の笑顔で言った。


「がんばってきてね!」
『おう!』



 電話が切れた瞬間――
 無性に、健人に会いたくなった。
 ついさっきまで一緒にいたのに、変なの。

 そう思って、わたしは家を出て路地裏に向かった。



     ×


 薄暗くてよく見えないけど、路地裏にふたりくらい人がいるのがわかった。
 なんかこわいなあとか思いながらおそるおそる近づく。


「あの」


 思わず声をかけると、ふたりのうちの一人が大きな声で言った。


「あ、莉乃さんやっときた!」


 ん?
 なんかすごい聞きなれた声だな。


「え、奈々ちゃん? 翔も!」


 視界がはっきりしてきてよく見てみると、猫とじゃれあう奈々ちゃんと翔がいた。
 ふたりはむすっと拗ねた様子を見せて言う。


「健人先帰っちゃうから、事情聴取しようと思って莉乃さんのこと待ってたんだよー」
「この猫おっきくなったなー」


 事情聴取ってなんだよう。
 まあいいや、と思いさっきまでのことを全部話した。



「――やっぱ健人って王子様みたいだよね」
「幼馴染の奈々ちゃんまで王子様って思えるなんて相当だよね」


 わたしたちの発言に翔はあまり楽しくなさそうにつぶやいた。


「俺だって中学のころはモテモテで王子様だったもん」
「ああ、翔のモテっぷりはすごかったけど今は完全健人にとられたよね」
「だよなあ! でも健人は憎めないやつなんだよ」


 翔と奈々ちゃんのやりとりに思わずくすっと笑ってしまった。



「翔も健人もかっこいいと思うけどなー」



 奈々ちゃんがつぶやくようにそういうと、翔はぽっと頬を赤らめた。



「え、あ、まじ? え?」


 あせる翔。
 おもしろいなって思う。



「翔、奈々ちゃんにかっこいいって言われて照れてるんでしょ」



 わたしがそういうと、なぜか奈々ちゃんまで頬を赤くさせてしまった。


「お、俺は奈々も莉乃も可愛いと思うぜ!」



 翔必死だなあ。
 きっとこのふたりはいつか付き合うんだろうな。




「待ち遠しいかも」



 ぽつりとつぶやいた言葉は、ふたりには聞こえていなかったようだ。


     -


 青春ですなあ。←

175ピーチ:2012/10/11(木) 13:45:50 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

読者視点からしてもかっこよく見えるww

え、え、奈々ちゃん達付き合うの??

確かに青春だ←

176ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/11(木) 13:51:19 HOST:EM117-55-68-179.emobile.ad.jp


>ピーチ

かっこいいフィルターかかってますから←
いずれ付き合えればいいなっていうねここと莉乃の願望で、本人たちはとてもヘタレで不器用だからもし付き合うんだとしてもまだ先かなー!
青春いいよねw

177ピーチ:2012/10/11(木) 13:54:36 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

フィルターかい!←

……あのー? ねここさーん?

自分のキャラに対してまた随分な言い方なんじゃ…?

178ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/11(木) 14:11:23 HOST:EM117-55-68-161.emobile.ad.jp




 渓人とも和解して、里咲とはよりいっそう仲が深まった。
 健人とももっともっとラブラブになれたし、大変だったけどなんだかんだいって幸せだったな。


 そして、幸せのつぎについてくるのは「幸せ」でも「不幸」でもなく。




 「風邪」だった。



     ×


『風邪?』
「ん……熱出ちゃったからきょうやすむね……」
『そっか、お大事にー』
「ごめんね里咲……」


 朝からなんだか身体が重いなって思ってたら熱が出ていた。
 三十八度……まあ、学校にいけるわけもなく里咲に電話して休むことを伝えた。

 ふらりとよろけながらベッドに倒れこむと、携帯がバイブ音を鳴らし始める。


「もしもし……けんと?」
『莉乃? 今日学校きてない?』
「ん……熱でやすみ」
『ちょ、莉乃一人で平気か?』
「だい、じょう……」



 目の前が真っ暗になった。
 電話越しに健人の声が聞こえてきた、ような気がする。



     ×


「――の、りの!」
「ん……け、んと?」


 目が覚めるとなぜかそこには健人がいた。


「どうして……」
「莉乃倒れたんだよ。電話も途中でとぎれたから心配で」
「学校さぼったの……?」
「あ、うん」


 うう、なんかくらくらするなあ。
 ふわふわ浮いてる感じ。


「けんとー」
「ん?」
「すきー」


 ぎゅうっと健人に抱きついた。


「え、ちょ……り、莉乃?」
「ちゅーしようよお……」


 半ば強引に健人にキスする。


「り、の……?」
「あつーい」


 部屋着の上を脱ごうとした瞬間に、健人に手をとめられてしまった。


「けーんーとー、はなしてよー」
「や、待って莉乃。理性保てなくなるんだけど」
「りせい?」


 ふいうちでもう一度健人にキスすると、その瞬間ベッドに押し倒されてしまった。


「莉乃、誘ってんの?」
「けんと……?」




 ああ、なんか眠くなってきたかも。
 おやすみ。



     -



 強引な莉乃ちゃんも好きよ!って人がいればいいんだけど←
 熱でおかしくなった莉乃vs理性を保てるか不安でしょうがない健人です!
 理性保てなくなった時点で健人の負けですが、残念ながらもう負けてしまいました←

 あれとかこれとか、ちょっとngなことにはならないから安心してね!

179ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/11(木) 14:12:08 HOST:EM117-55-68-161.emobile.ad.jp


>ピーチ

そそそそんなことないもん←
ヘタレで不器用なのは事実(きり)

180ピーチ:2012/10/11(木) 15:17:37 HOST:nptka404.pcsitebrowser.ne.jp
ねここ〉〉

まさかの風邪か!

ごーいんな莉乃先輩も可愛い←

181ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/11(木) 17:54:02 HOST:EM117-55-68-12.emobile.ad.jp



 それからのことは、よく覚えていない。


     ×


「んー……」
「あ、莉乃! 起きた?」
「健人……なんでここにっ」
「莉乃に電話したら急に電話とぎれたから……ってこれ二回目なんだけど」
「にかいめ……?」


 どうしよう。
 さっきまでの記憶が全然ない。
 健人と電話した覚えもないし、覚えてることっていったら里咲に電話で休むって伝えたことくらいかなあ。


「もしかして莉乃、さっきのこと何も覚えてない?」
「さっきって……わたし何かやっちゃった?」
「んー、まあ俺の理性が耐え抜いたけど」
「え、わたし何したの?」


 健人の様子を見る限り何かやらかしてしまったらしい。
 また迷惑かけちゃった。


「ごめんね健人……」
「いや? 新鮮な莉乃を見れて幸せだったし」
「……本当にわたし何やったの?」
「簡単にいえば誘ってきた」
「誘うってなに……ええええ?!」


 誘うって何を?と聞こうとしたけどやっぱやめた。
 気づいてしまった。
 自分がどんなことをしたか。


「ごめん健人!」
「いやいや、俺は嬉しかったし」
「え……?」
「莉乃が素直に甘えてくれて」


 ちょっとショックだったりもした。
 いつも負担かけたくないからって甘えないでいたのは健人からしたら嫌だったのかな。


「……莉乃?」
「わたし、普段からもっと甘えるから……嫌いにならないで」


 きっとわたしはもう、健人がいなきゃだめなんだと思う。



「え、ちょっと待って莉乃」
「なあに?」
「普段から甘えられたらそれこそ理性保たないんだけど」



 ぼっと一瞬で顔が真っ赤になった。



「健人のばか!」


 わたしが素直に甘えられるのは、もっと先になりそうです。


     -


 甘々莉乃編終了!
 ふつうの莉乃編にもどったところで何かイベントを起こしたい……


 ということで
 渓人、敦志、空、めぐ、里咲、莉乃のメンバーでお泊り会にいくよ!←
 遊園地と無難にゲーセン←
 それでお泊りってマジかよって気がするけどまあ我慢してください←

182ピーチ:2012/10/11(木) 18:19:43 HOST:nptka205.pcsitebrowser.ne.jp
ねここ〉〉

お、健人君凄いこと言った←

莉乃先輩やっぱ可愛いw

183ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/11(木) 18:52:54 HOST:EM117-55-68-12.emobile.ad.jp

>ピーチ

莉乃はかわいいキャラ維持してるよね←

184ピーチ:2012/10/11(木) 18:55:45 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

ねここ様あぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ご相談がありますー!!←退き

梨乃せんぱーい!←

185ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/12(金) 13:01:35 HOST:EM117-55-68-6.emobile.ad.jp

>ピーチ

ははははははいっっっ?!←
ねここ様(笑)
様つけられちゃった★←

186ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/12(金) 13:32:11 HOST:EM117-55-68-6.emobile.ad.jp



 今日から一泊二日の旅行にでかけることになった。
 旅行といっても、千葉県の有名な遊園地のランドとシーに一日ずつ行くだけだしわたしたちが住む東京からだと結構近い。


「じゃあ健人、行ってくるね」


 三連休の二日間、健人とメールのやり取りも少なくなるだろうから集合場所に行く前に健人の家にきていた。
 そろそろ行かなきゃと携帯の時計をみて立ち上がると、拗ねたようにみつめてくる健人。


「やっぱ行かないで」
「え、無理だよー」
「事故とか遭うなよ? 渓人先輩に襲われたらすぐ連絡して!」


 渓人がいっしょだから、きっと健人も不安なんだろうな。
 そう思って、勇気をふりしぼってふいうちで健人にキスしてみた。


「え、りの……?」
「安心して。わたしが健人のこと大好きすぎることくらい健人だって知ってるでしょ?」
「……でも俺の莉乃に対する気持ちのほうが大きいけどな」
「む、それならわたしだって負けないもん」


 ちょこっとふざけて言い争ったあと、おたがい笑い合った。


「いってきます、健人」
「いってらっしゃい、莉乃」


 最後にもう一度キスをして、健人の家を出た。


     ×


「あ、莉乃ー!」
「遅いよもー」


 待ち合わせ場所の駅につくと、めぐと里咲がぶんぶんと手を振ってくれた。
 私服可愛いなあ。


「ごめんねー」
「どうせ健人くんのところにでも行ってたんでしょ」
「う、なんでわかるの……」


 さすが里咲、鋭すぎ。
 そしてその話を聞きながらめぐが羨ましそうな目でみつめてきた。


「いいなあ、わたしも彼氏と会いたかった」


 そっか、めぐの彼氏は受験勉強でいそがしいから会えないんだっけ。
 来年わたしも健人と会えなくなっちゃうのかなあ。


「ま、とりあえずランドとシー楽しもうね!」
「うん! ……ところで男子は?」
「あー、なんか寝坊した敦志の準備手伝ってて遅れるんだと」


 里咲が呆れたようにため息をついた。
 寝坊とか敦志らしいなあ。


 健人と会えないのはちょっとさみしいけど、楽しみだな。


     -

187ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/12(金) 17:13:46 HOST:EM117-55-68-174.emobile.ad.jp



「わっり、遅れた」


 やっと敦志と空と渓人がきて、敦志がチャラチャラした雰囲気で謝ってきた。
 めぐはあまり待つのが好きじゃないから、むっとしながら敦志に言う。


「もう、敦志の馬鹿!」
「え……本当ごめんってば!」


 そういえば敦志はめぐが好きなんだっけ。
 チャラいくせに一途なんだなあ。


「まあいいや、早く行こ!」


 めぐがはりきってずんずん前に進んでいったから、わたしたちは苦笑しながらついていった。
 楽しい旅行になるといいな。


     ×


 荷物をいったんホテルに預けて、必要なものだけ持って待ちに待ったディ○ニーランドにやってきた。


「ひゃっほい! まずはジェットコースターだろ!」


 はしゃぎまくりの敦志。
 さっきまでの落ち込んだテンションはどこにいったんだ。

 とりあえずペア決めになった。
 二人で乗るから、どうせなら男女にしようってなって。
 もちろんわたしとめぐは彼氏がいるし、空にも彼女がいるから三人で拒否したんだけど里咲と敦志に華麗にスルーされた。渓人はどうでもよさそうだったかも。


「俺Aだったわー」
「え、あたしもAだよ」


 まずは渓人と里咲。
 よかった、この二人がいっしょで。
 仲良くなってくれればいいな。


「俺Bだ!」
「え、わたしもBなんだけど。敦志と乗るの?」


 そして敦志とめぐ。
 敦志はすっごいうれしそうだけど、めぐはすごく嫌そうな目をしている。

 てことは。


「じゃあわたしと空だねー」
「ああ、だな」


 よかった、おたがい彼氏か彼女がいるから純粋な友達同士だし。


「じゃあさ、何なら今日一日このペアで行こうぜ!」
「え」


 敦志の提案に里咲と渓人は賛成したけど、めぐだけ不満そうだった。
 まあ、わたしはこのほうがいいかも。


「めぐ、そこは空気読もうよ」
「だってええぇえ」


 里咲につっこまれると不満ありまくりに落ち込むめぐ。


「じゃあ気が向いたときにくじ引きやり直そ?」


 わたしがめぐをあやすように言っているあいだにもうみんなジェットコースターに向かっていた。
 空は隣で待っててくれたけどね。


「ねえ空」
「ん?」
「空の彼女さんってどんな人?」
「天然でふわふわしてて、ちょっとドジな子だよ」


 空が笑いながら話すのを聞いて、ラブラブなんだなあって思った。


「同じ学校?」
「ん、一年の子」


 一年……天然でふわふわって、なんか思いあたるような気がする。


「ちなみに名前は」
「花だよ」


 花って、花ちゃんのことかな。


「未月花ちゃん?」
「あれ、知り合い?」
「健人たちと仲良くて、よく恋愛の相談にのってもらったりしてたの」
「花、世話焼くの好きだからなー」
「彼氏いるって言ってたけど、空のことだったんだー!」


 たしかに、何気に空と花っていいコンビかも。
 なんだかうれしくて頬を緩めた。


「花ちゃんに彼氏ってどんな人って聞いたらね、かっこよくて優しくてわたしの一番大好きな人だって言ってたよ」


 そう言った瞬間、空の顔が赤くなった。
 わー、なんか新鮮。


「ラブラブいいねー」
「や、莉乃もラブラブでしょ」
「えへへ」


 ペアが空で本当によかったって思った。
 敦志だったらチャラすぎるし、渓人だったら気まずいもん。


「わたしくじ運いいかも」
「何でー?」
「ペアが空だったから」
「あ、それ俺も思った」
「え、空はめぐとも里咲ともふつうに仲良くない?」


 長い列に並んでいるけど、なんだかしゃべっていたらあっというまのような気がする。


「俺、あんま女子と話さないからさ」
「そういえば……あんまり話してないよね。告白されてるのは何回か見たことあるけど」
「え、見てたの?」
「たまたま通りかかったら告白されてたから気になって」


 空も顔立ち整ってるし、かっこいいからモテている。
 渓人も敦志もそれなりにモテてるし、里咲もめぐも可愛いし。
 よく考えてみればこのグループってかなりすごいんじゃないだろうか。


     -

 きります;ω;

188ピーチ:2012/10/12(金) 17:35:35 HOST:nptka403.pcsitebrowser.ne.jp
ねここ〉〉

ねここ様ぁー!! 相談いーですかー!?

空君って優しそうなイメージあるよね←

189ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/12(金) 18:36:48 HOST:EM117-55-68-169.emobile.ad.jp



 そんな感じで、しゃべってばかりいたら時間はすぎていった。
 ていうかもう順番がまわってきてしまった。
 今更だけど逃げたくなってくる。


「空、こわくないの?」
「逆に聞くけど莉乃怖いの?」
「こわいに決まってるじゃん」
「お子様ー」


 空に馬鹿にされてしまった。
 もう出発していて、カタカタと順調にのぼっていってる。


「無理無理無理」


 わたしがそう連呼すると、空はぷっと笑って言う。


「今更遅いだろ」
「いやいやいや無理無理わたし帰る!」
「ちょ、てかこれ水かかるやつだろ」


 水かかるとか余計こわいよ。
 そう思っていた瞬間。


 ジェットコースターが急降下して、水でびしょ濡れになってしまった。
 一瞬の出来事でよくわからなかったけどとにかく心臓がばくばくしてる。


 やっとの思いで止まったジェットコースター。


「わ、莉乃びしょぬれじゃん」


 今の季節は秋だから、こんなにぬれるとやっぱり寒い。
 めぐにそういわれてくしゃみをしながらジェットコースターから立ち上がる。


「莉乃、平気?」


 とりあえずベンチに座らせられると、空が顔をのぞきこみながら聞いてきた。
 やばい、本当に寒い。

 そう思った瞬間、空が着ていたパーカーを脱いでわたしにかけてくれた。


「そ、空……濡れちゃうよ」
「それよりも寒いままだと風邪ひくだろ」


 どうしよう。
 みんな楽しみにきたのにわたしのせいで時間とっちゃってる。


「わ、わたしは大丈夫だから! 次行こう?」


 めぐは一番楽しみにしていたくせに、不安そうにちいさくうなずいた。


「めぐ、心配しなくていいから」
「だって莉乃、具合悪そうだし」
「だいじょうぶだよー」


 へらりと笑ってみせる。


「あ、でも空からもらったパーカーは着てなね」


 里咲がきづかってそう言ってくれた。


 ここまできて迷惑かけたくないもん。
 そう思って、ベンチから立ち上がった。


     -


 文章力なさすぎて辛い。

190ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/12(金) 18:37:11 HOST:EM117-55-68-169.emobile.ad.jp

>ピーチ

相談どうぞー!
空は優しいよw

191ピーチ:2012/10/12(金) 18:43:54 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

あんねあんね! 短編で珍しくファンタジーなしの恋愛ものチャレンジしてみたんだけど、文才なさ過ぎて悲しい←

空君やさしー!!←

192ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/12(金) 18:49:16 HOST:EM117-55-68-169.emobile.ad.jp

>ピーチ

文才あるじゃん!
おもしろかったよー!

空と花のコンビが何気好きw

193ピーチ:2012/10/12(金) 19:20:19 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>

読んでくれた!? まさか神様に読んで頂けるとは←

空君と花ちゃんの方も書くの??

194ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/10/20(土) 17:08:30 HOST:EM117-55-68-158.emobile.ad.jp

>ピーチ

読んだ読んだ!
神様じゃないからね!←

空と花は番外編でいつかかければいいなあー!

195ピーチ:2012/10/20(土) 17:17:12 HOST:nptka404.pcsitebrowser.ne.jp
ねここ〉〉

ありがとーうっ!←

十分神じゃん! 空君と花ちゃんみたい!

あたしはちょこちょこ書いてるけど文章力がないから悲しい←


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