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紫の歌×鈴扇霊

1ピーチ:2012/06/22(金) 18:16:24 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここでは主につっきーの小説とのコラボ小説を書こうと思いまーす。

荒らしはスルーでーす。

2ピーチ:2012/06/22(金) 20:00:36 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜瞳が持つ奇跡〜

「―――ソフィア?」
ソフィア、と呼ばれた紫の瞳を持った少女が、声に反応して振り返る。
「どうかした?シュオン?」
同じくして、シュオンと呼ばれた彼も、彼女に向き直る。
「それはこっちの台詞だよ・・・どうしたの?ボーっとして」
シュオンの問いに、ソフィアはその澄んだ瞳を、ほんの少しだけ震わせた。
「何か・・・ヒースの声が聞こえたような気がして・・・」
それで外を見てみたら、ヒースと見知らぬ人間が三人、居たと言う。確かに。彼女の部屋から確認できる。
「でも、大丈夫じゃ―――」
シュオンがそこまで言った時。
「失礼しまーすっ!!!」
そう言って、半ば叫びながら、ドアを蹴飛ばさんばかりの勢いで開けたのは、ソフィアの専属メイドのシェーラ。彼女の持つ青灰色の瞳が、何もない空(くう)を見回している。
「あら・・・どうしたの?そんなに慌てて」
「あの・・・ヒースが」
「大丈夫じゃないかな。ヒースのあの剣術があれば」
笑顔でそう言って、しかし半ば強引にヒースの話題を切り離そうとするシュオン。
―――刹那。
「―――え・・・?」
ソフィアとシェーラの短い悲鳴が、ソフィアの部屋に響き渡った。

「―――何だ、お前ら」
そう言って、包帯を巻いた方の腕を庇いながらも、剣(つるぎ)の切っ先を見知らぬ人間に向けているのは、従僕(フットマン)のヒース。
「何・・・って言われても、ねぇ・・・」
困惑気味に剣の切っ先が向けられている少女が後ろを振り返る。彼女の長い黒髪が、その動きに合わせてゆっくりと踊る。彼女の視線の先には、大学生くらいの二人の青年。三人に向かって、ヒースの持っているその剣の先が、鈍く光っている。
「何をどう説明したらいいのか・・・」
「此処に来た理由は?」
ヒースは、間髪入れずに目の前の少女に向かって尋ねた。
「んー・・・ここに迷い込んだ経緯(いきさつ)話せばいいの?」
「・・・あぁ」
「・・・じゃあ」
そう言った後、彼女はこう切り出した。
「それは省かせて貰います。単刀直入に言いますけど―――この邸の中に異形のモノが入り込みました。入れていただけませんか?」
「・・・はぁ?」
そう言った彼女の瞳は、真剣そのもの。しかし。
「イギョウ・・・って何だよ?」
ヒースの問いに、少女がほんの少しだけ、苛立ちを露にした口調で答えようと、した。
「だから・・・」
そう言った瞬間。
どこか部屋の一室で、誰かの短い悲鳴が木霊した。

3ピーチ:2012/06/22(金) 20:38:20 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜突然の来訪者〜

「い・・・」
「な・・・に、これ・・・」
ソフィアとシェーラが、途切れ途切れになりながら言葉を発する。
彼らの目の前にいた『それ』は。
「少なくとも・・・こんなモノ見たのは、初めてだね・・・」
さすがのシュオンまでもが、少し青ざめながら言った。
そう。真っ黒な毛皮を持ち、しかしその瞳は全てが紅(あか)。その体躯は異常なほど細長く、尖った爪や牙は、人間の身などあっさり切り刻めるだろう。
「良く分からないけど、下手に刺激はしない方がいいかも・・・」
シュオンがそう言った直後、『それ』が動き出した。
「うわ・・・っ!」
その声が聞こえた少し後。その黒い獣の後ろに、うっすらと人影が映った。

「今の悲鳴・・・」
「遅かったか・・・」
くそ・・・っと舌打ちした青年の前にいる少女が、苛立たしげに言った。
「・・・今の悲鳴、聞こえたわよね?もう、ただ事じゃないの」
「だからって・・・どこの誰ともつかねー奴を、ほいほい入れられるかっ!」
「私は神代 天音」
「・・・へ?」
「あの異形を追って来たんだけど・・・ここであなたに足止め食らわされて、その隙に逃げられたのよ」
彼女―――神代 天音は苛立ちを露にして言った。
「それに、“奴ら”は危ない。中に人がいるなら、その人達は外に避難させた方がいい」
天音の横にいた人物―――彼は天神 柊一と名乗り、もう一人は飛鳥井 昇と名乗った―――はそう言って、何やら鈴のようなものを手にしている。
「・・・そ、れは・・・」
さすがのヒースも、ここまで言われると自分が悪者になると思ったのだろう。ゆっくりだが、すっと剣をおろし、
「わぁったよ。ただし、少しでも不審な動きしてみろ―――その時点で斬りつけるぞ」
と、乱暴に言い放った。
「・・・分かったわ。ありがとう」
そう答えると同時、ヒースがくるりと回れ右をしながら、歩き出した。

4ピーチ:2012/06/23(土) 08:20:19 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜〜

「ったた・・・」
そうぼやきながら、シュオンが己の右腕をさすっていた。良く見ると、そこに三本の赤い線が走っている。
「シュ、オン・・・」
「だ、大丈夫ですか!?」
言葉を失っているソフィアとシェーラを見て―――主にソフィアだが―――シュオンは小さく笑った。
「うん。大丈夫だよ、これくらいで済んだから」
「で、でも、手当てした方が・・・」
シェーラのその言葉とほぼ同時。部屋のドアが勢い良く開いた。

「・・・随分と、広いのね・・・」
「・・・あぁ」
「天音・・・」
辺りを見回している天音に、昇が小さくその名を呼んだ。
「分かってるわよ・・・ねぇ」
「あ?」
突然呼ばれ、ヒースは首だけを後ろに向けながら答える。
「あの部屋―――誰か使ってる?」
「・・・え?」
彼女が指したその部屋は。
「―――御嬢様・・・」
ヒースがそう呟いた瞬間。天音が勢い良くそのドアを開け放った。

5月波煌夜:2012/06/23(土) 21:57:53 HOST:proxy10082.docomo.ne.jp
>>ピーチ

新スレ立てお疲れ様!
ああソフィアたちが動いてるよー( ´艸`)

シュオンがソフィアしか見てないのとか、上手く特徴押さえててくれて嬉しい限りです←

続き気になるよー!
これからも応援してるぞ(`・ω・´)

6ピーチ:2012/06/24(日) 00:30:34 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜扇〜

「あ、あれ・・・?」
さすっていた手を止め、慌てていた体勢のまま、シュオン達が呆然と、開け放たれたドアの先にいる少女―――恐らく、三人よりもいくらか上だろう―――を、見つめている。
「・・・見つけた」
それが、彼女が最初に発した言葉だった。
そう呟いて、少女は手にした紅い扇をかざした。
「え?」
事情が飲み込めず、三人揃って問い返す。
「お、おいっ!お前何やって―――」
慌てて飛び込んできたヒースが、即座に少女の手首を掴む。しかし、彼女はそれを、ものともせずに振り払った。
「緋扇(ひせん)に宿りし、時の守官(しゅかん)よ・・・」
小さく一言、そう呟いた。しかし、その声は小さいながらも、どこか威圧感がある。
そして。

「あ、あれ・・・?」
そう呟いた青年のアイスブルーの瞳が、天音の視界を一瞬かすめた。しかし、その瞳はすぐに消え失せる。なぜなら。
「・・・見つけた」
そう呟いて、彼女は手にした扇をかざした。
「え?」
青年達が、状況が飲み込めないように、首を傾ける。
「お、おいっ!お前何やって―――」
そう叫びながら、飛び込んできたヒースが慌てて天音の手首を掴む。しかし、天音はそれを振り切って小さく呟いた。
「緋扇に宿りし時の守官よ―――」
その直後に扇を大きく振りかぶり、その後再び、小さく呟く。
「―――この扇に、新たなるモノを封じ込む力を与えよ」
天音がそう言い、扇を天へと掲げた直後。シュオン達は目を丸くした。
―――消えていたのだ。あの、獣が。

7ピーチ:2012/06/24(日) 00:39:20 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あーっ!コメありがとー!!

あ、忘れてたけど、4番の書き込みの最初は紫の乙女 〜影にいるモノ〜 だよ!!

書き忘れてた。ゴメン・・・

そろそろかなー・・・多分そろそろ、ヒースが暴れ出す頃かもーww

まぁ、作者様として、行き過ぎの場合は注意お願いしますっ!!

8ピーチ:2012/06/24(日) 02:21:43 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜三人だけの確信〜

「・・・間違いないわね・・・」
そう呟いて、少女はふっと扇を一振りする。その一振りで、今まで開いていた扇が閉じる。それを認めてから、彼女も扇をしまう。
「んー・・・これってやっぱり、奴らの?」
「えぇ・・・多分、ね・・・」
「おい・・・それってまずくねぇか?」
「え?」
「だって考えて見ろよ。俺達だって、ここがどこだか分かんないんだぜ?」
そう言った青年は、黒みがかった灰色の瞳で、辺りを見回している。もう一人の、少女と同じ瞳を持つ青年は、あの獣がいた所にだけ視線を向けている。
「―――ダメだ。やっぱりこう言うのは、飛湘とか氷見野さん辺りの専門家に聞かないとなぁ・・・」
「あ、ねぇ」
突然、彼ら三人だけの会話に、シュオンが割り込んできた。
「え?」
「何か良く分からないけど・・・一応、僕達を助けてくれたんだよね?」
「・・・結果的には、そうなるわね」
そう答え、天音は彼を疑わしげに見据えた。その視線に気付いたシュオンが、
「あ、自己紹介がまだだったね。僕はシュオン。で、こっちにいる、この男がヒース。それから・・・」
「あたしはシェーラですっ!で、こちらの方があたしとヒースの主・ソフィア様でーす!!」
「・・・・・・」
勝手に話に割り込み、ソフィアの紹介までもを奪われたシュオンは、顔こそ笑っているものの、そのアイスブルーの瞳は、更に冷たさを増したように深い色になる。
「・・・神代 天音です。こっちにいるのが天神柊一で、こっちは飛鳥井 昇です」
それを悟ったソフィアが、
「・・・まぁとにかく、助けてくれてありがとう」
と、短く礼を言った。しかし。
「まだよ・・・」
天音が、小さいながらも良く透き通る、その声で言った。
「・・・え?」
彼女の、深い闇以上の深さを秘めたその漆黒の髪が、風に揺れるように小さく波打っている。
「・・・天音」
「わかってる。・・・ここら辺、ちょっと破壊されるかも」
ちょっとじゃないかな・・・とぼやきながら、天音がシュオン達の方を向く。
「とにかく・・・一度、外に出てもらえませんか?」
「え?」
「ここは危険です。先程の妖を見ただけで、もうお分かりでしょう?」
「・・・!」
天音の言葉に押され、みんなが部屋を後にする。
たった一人、ヒースを除いて。
「・・・ねぇ、あなたも早く―――」
天音が言った、その直後。
―――黒き豹が、彼女に猛然と襲い掛かった。

9ピーチ:2012/06/24(日) 10:14:32 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜器〜

「わ・・・っ!!」
小さく叫び、天音が咄嗟に避ける。
数メートル先まで飛び退り、そのままその場に着地する。
「・・・何の、つもりよ?」
そう尋ねた天音を見ても、ヒースは無表情のまま、感情を露にしない。
「―――天音」
唐突に昇が声をかけたが、天音はそれを見ることなく返答した。
「分かってるわよ。・・・あの人が、憑依されたことくらいね」
「まぁ・・・一応その手に関しては、天音と俺が一番良く理解してるかも」
柊一がそう呟いて、天音の方を見た。
「・・・で、どうする?このまま滅する?」
「冗談じゃないわよ。悪いのは彼じゃない。あれを器と定めた、あいつが悪いんだから」
罪のない人間を殺す理由がどこにある。そう言って、天音がきっぱりと断言した。
「彼は殺させない。一応とはいえ、私達を中に入れてくれたんだから」
「・・・そうだな」
そう言って、昇が突然部屋を出て行った。しかし、二人とも慌ても騒ぎもしない。彼は彼で、すべきことがあるから。
「さて・・・っと、俺はどうする?」
「・・・とりあえず、昇のサポートに回って」
「了解」
そう答え、柊一も部屋を出て行く。しかし。
「あ・・・っ!!」
天音が、小さく声をあげた。

10月波煌夜:2012/06/24(日) 13:19:39 HOST:proxyag044.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天音ちゃんかっけえ!
黒髪和風美少女ぐっじょぶ( ´艸`)

そして黒豹キター☆
ヒースさんは相変わらず残念な子です…。

11ピーチ:2012/06/24(日) 19:05:29 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

おーっ!天音ちゃんが褒められたー!!サンキュー!!←あほ。

あーでも・・・途中からかなり壊れちゃいます天音ちゃん。

まーそこは運命だからねーww

ちょこっとネタバレしちゃうとねー・・・後でヒースが得意の剣を天音ちゃんに渡さざるをえなくなっちゃうんだよねーww

うん。ゴメンね。ヒース壊しまくって←とゆーか残念にしちゃって。

12ピーチ:2012/06/24(日) 19:16:35 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜闇の豹〜

「あ・・・っ!!」
天音がそう叫んだ時には、ヒース―――正確にはヒースではないが―――が、開いていた部屋の窓から外に飛び出していた。
慌てて、天音もそれを追う。
二人が降り立った場所には。
「―――っ・・・!避けて!!」
そこにいたのは―――先程、部屋を追い出したシュオン達。それに加えて、柊一達もいる。
咄嗟に叫んだ天音の剣幕に押されたか。ソフィアとシェーラがびくりと肩を震わせ、そのまま無意識に後退る。
天音はそんなことお構いなしに、右に構えていた扇をさっと左手に持ち替える。しかし。
「―――させるか」
そう言ったのは。

13ピーチ:2012/06/24(日) 20:27:33 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜〜

「・・・っ・・・!?」
不意に、天音の視界が真っ赤に染まる。その紅が、己の血だと気付くまでに、かなりの時間を有した。
「った・・・」
そう呟いた彼女の左腕からは、真っ赤な鮮血が滴り落ちている。そして、ヒースの持つ剣の先からは、赤い液体が雫となって零れ落ちる。
天音の腕を伝(つた)って、彼女の開いた扇に、鮮やかな紅が彩(いろど)られる。
ソフィアやシェーラが、どんな大声を出したかは分からない。しかし、彼が初めて笑みを作ったのだけは見逃さなかった。
―――品のない、下劣な笑みを。
「・・・ありがとう」
「・・・!?」
「おかげで、ようやく目が覚めたわ・・・」
そう言うや否や。天音が瞬時に、ソフィア達に怒声を浴びせかける。
「安全な場所へ避難して!柊達も一緒だから、問題はないわ!!」
そう言って、自分はそのまま向かってくるヒースの剣をかわしている。
―――刹那。
「・・・え・・・?」
突然、彼の動きが鈍った。そして
「・・・天音。それ、中から追い出そうとしてる」
「へ?」
「その剣持った子が、内側から抵抗してる」
「・・・嘘・・・」
柊一の言葉にそう呟いて、しかし天音は勝利を確信した笑みを作る。
「―――悪いけど」
そう呟いて、彼女は一瞬の隙を突き、ヒースの背後へと回り込んだ。
「それ、あんたの“物”じゃないから。―――返してくれる?」
そう言ったと同時。不意にりん―――と鈴の音がした。それを聞いたヒースは、途端に暴れ出そうとする。それを逃しまいと、天音が彼の首に鈴を巻きつける。
しかし、その鈴は使わずに、彼女は扇を天へと掲げ、小さく囁く。
「―――古(いにしえ)より守られし、光と影」
そう呟き、今度は少しだけ、声を大きくする。
「その共存を望まぬモノなら・・・」
「や・・・・・・めろ・・・」
ヒースが、突然小さくそう言った。しかし、天音は気にする由もない。
「―――桜吹雪の舞にて、闇よりも深き場所へと・・・封印されよ」
天音が唱え終わった途端、ヒースが地面に崩れ落ちた。そして、傍にいた天音が咄嗟に支える。
「・・・っと」
「ヒースっ!!」
そう叫びながら、シェーラがヒースの顔を覗き込む。
「―――・・・もう、大丈夫だと思いますよ。・・・に、してもなぁ・・・」
天音が言わんとしていることを理解したか、昇と柊一がほぼ同時に苦笑を洩らした。
「まぁ・・・確かに」
「あれは凄いよなぁ・・・」
三人がそう言っていた時、ヒースが目を覚ました。

14ピーチ:2012/06/24(日) 21:31:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜黒豹〜

「・・・れ?此処って・・・」
「部屋じゃないわよ。・・・あれだけ暴れ回って、よくそれだけの怪我で済んだわね」
そう言ったのは、間違いなく天音だ。ヒースはその天音を見て、
「・・・はぁ?」
と、小さく疑問を口にするだけだ。
「大丈夫だよ。雑草並みのしぶとさだけが、ヒースの取り柄だもの」
そう言ったのはシュオンである。恐らく、天音達三人に向けての言葉だろう。
「おいシュオン!!どういう意味だよ、それ!?」
ヒースが反論して見せるが、シュオンは一切の同様を見せない。
「え。だってそのままでしょ?」
「少しは気遣いって言葉を知れえぇぇええええ!!!?」
自棄(やけ)を起こしたか。ヒースが、シュオンには到底無理なことを喚き立てる。
「・・・ねぇ、ヒース」
そう言って、シェーラがヒースの顔をじっと見つめた。
「・・・んだよ」
ヒースはそれだけ言って、目を逸らす。
「もう、大丈夫?」
「へ?」
シェーラの言葉を聞いて、ヒースが目を丸くする。
「ちょっと、いい?」
そう言って、天音がヒースの瞳を見つめる。まるで、何かを探っているかのように。
ヒースはと言うと、居心地悪くてたまらないのだろう。それこそ、蛇に睨まれた蛙の状態だ。
「―――無理。分かんないわよ」
そう呟き、天音が昇を見る。
専門家さんは、どう判断する?」
「んー・・・」
指定され、昇がヒースの鴉色の瞳を探るように見据える。そして、
「まぁ、大丈夫なんじゃねーの?」
と、軽く答える。
「・・・じゃあ、大丈夫ね」
「ねぇヒース。一回笑ってみて」
「・・・はぁ!?」
突然シェーラにとんでもないことを言われ、ヒースは大声で返答する。疑問系に。
「も、早くっ!!」
「な、何なんだよ、お前・・・」
ぶつぶつと文句を言いながらも、彼は少しだけ、ぎこちない笑みを作った。その笑みには、邪気などかけらもない。もちろんあの、品のないような笑みも、浮かんではいない。
「よ、かったぁ・・・」
そう言ってしゃがみ込むシェーラを見て、ヒースが状況を飲み込めないような表情をしている。
「じゃあ・・・私達もそろそろ行きましょう?下手したらまた・・・」
「・・・まだ、いる・・・」
「・・・え?」
柊一の言葉に、天音と昇が同時に聞き返す。
「まずい・・・呪詛、受けたかも」
「・・・呪詛・・・!?」
柊一が言ったと同時。突然、目の前に真っ黒い蛇が“降ってきた”。

15月波煌夜:2012/06/24(日) 22:05:36 HOST:proxyag079.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いや、ヒースは元々残念だから大丈夫w安心して暴れさせちゃって!

戦闘シーンも良かったけど、個人的にはシェーラに「笑ってみて」と言われて狼狽しつつもぎこちなく笑うヒースがツボだったぞ!何こいつ我がキャラながら可愛いんだけど( ´艸`)

16ピーチ:2012/06/24(日) 22:21:29 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

え・・・ヒース、そんなに残念だったの!?

まぁいーや!じゃあこれからも暴れて貰う!

あーうん。あたしもシェーラの「笑え」は結構乗り気で書いてたww

でもね!シェーラがわざわざヒースに笑えって言ったのも、ちゃーんと意味があるんだよ!!

ヒースが憑かれた時に、あの変な笑い方したから、笑い方で分かると思ったんだよ、きっと!←きっとって何だww

うーん・・・でもなー、そろそろ、今度は天音ちゃんが大暴走を始める頃だなーww

さてシュオン様達!そろそろ荷物まとめて逃げた方がいーよーww

17ピーチ:2012/06/24(日) 22:58:31 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜呪詛返し〜

「あ・・・っ!!」
そう叫んで、咄嗟に天音が怒鳴る。
「避けて!!下手したら餌にされるわよ!!」
それを聞いたシュオン達が、慌ててその蛇を避ける。
天音達も、何とか避けようとしているが、圧倒的に蛇の数の方が多い。しかし。
「柊・・・」
柊一だけは、その場を動かず、両手を組み合わせじっとしている。一切の動きが、ない。
柊一が行わんとしていることが、天音達には瞬時に理解できた。
「・・・私が、柊の援護に行くわ」
「いや。お前はこっちやっててくれ」
「え?」
そう言って、昇が小さく言った。
「わりぃけど、俺の場合は今は無力に等しい。だったら、柊一一人の援護の方が、ずっと気が楽だよ」
そう言うなり、柊一の周りに寄っている黒い蛇を、一気に払い除けた。それを見た天音は、
「・・・じゃあ、頼むわよ」
そう言って、後はソフィア達の護衛についている。
―――刹那。
 草木(そうもく)深くに呪詛返す
 こちらに参りし悪(あ)しきモノ
今まで一切の動きを封じていた柊一が、不意に小さく言葉を発した。
 我らは要らぬ。受け付けぬ
 ここの草木(くさき)に乗せようぞ
 草木(くさき)に乗せて返そうぞ
ぶつぶつと呟くように唱える柊一の周りには、既に妖しげな風がほんの少し、舞い上がっていた。
「・・・来るわよ。昇」
「・・・りょーかい」
半分おどけながら、昇が答える。
しかし柊一からすれば、彼らの声など、耳にも入らない。
 我らは要らぬ。受け付けぬ
 数を増やして返そうぞ
 我こそは悪しき気魂(けだま)を鎮める者なり。
柊一の周りに集まる風が、段々と大きく、荒くなっていく。
 返しの血花よ 咲き乱れ
 眼(まなこ)に血を帯び呪詛返せ
そこまで唱えた直後、柊一が、その堅く閉じていた瞳を、すっと、ゆっくりと開いた。
 この組み印、今こそ解けしよ。
 ―――今吹き荒れよ。返呪(へんじゅ)の風蛇(かざへび)
直後、今まで柊一の周りでうねり、暴れていた風が、勢い良く邸とは別の方向に飛んで行った。
「・・・いつ見ても凄いわね。ご両親と、どっちが上?」
それを聞いて、柊一が肩で息をしながら答える。
「両親じゃなくて・・・陰陽を受け継いだのは、父さんだけど」
「あら、そうだったわね。ごめんなさい。すっかり忘れてたわ」
「・・・おい。お前ら何とかしろ。この状況」
「え?」
昇に言われ、二人揃って後ろを向く。そこには、シェーラに纏(まと)わりつかれた昇が、うんざりしたような表情でSOSを出していた。
「い、今の何ですか!?え、あなた達何者!?」
「・・・確かに。それは気になるよね」
シュオンも、シェーラのその意見には賛成なのだろう。腕組みをしたような体勢で、天音達を見やる。
「・・・今、君が使ったのって」
「えぇ。この扇」
短く答え、次にこうも言った。
「そこにいる、黒髪君の首に巻きつけたのは、こっちの鈴だけどね」
「な・・・っ!?」
ヒースが、自分を指されていることに気付き、速攻で怒鳴る。
「俺にはヒースって名前がある!!黒髪なんて呼ばれる筋合いはねぇ!!」
・・・そういう問題だろうか。誰もがそう思うだろう。
そして、今の返答の時間。僅か0.1秒。
「・・・じゃあ、ヒース。あなた、自分がどうなってたか、分かってる?」
「・・・え?」
天音の淡々とした口調に、ヒースが一瞬、固まる。
「一回、自分以外の“何か”に憑かれたんじゃない?」
「・・・知らねーよ。気付いたら、お前ら見下ろしてて・・・」
ヒースの言葉に、三人が同時に凍りついた。

18ピーチ:2012/06/24(日) 23:17:40 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

補足→天音ちゃんの仕事上での制服は基本的に着物だよww

着物着て鈴振ったり扇振り回したりする時が一番霊力上がると言うねww

・・・うん。どーでもいいかも。ごめんね。

19ピーチ:2012/06/26(火) 00:22:24 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜対立〜

「―――じゃあやっぱり・・・」
「可能性的には、十分考えられるね・・・」
「どうすんだ?このまま、此処を離れて追ってみるか?」
「・・・そうする?ここは重要件に入れておいて」
「うん。それが一番、妥当かもね」
「んじゃ、決定な」
「おいおいおいおい!?」
三人だけで進んでいく会話についていけず、思わずヒースが口を挟んだ。
「え?」
「何なんだよ!?今の奴!?」
「―――失礼ですが」
ヒースの言葉を完全に無視して、天音が、シュオンとソフィアを真っ直ぐに見据えた。
その彼女の左腕からは、未だに真っ紅な液体が流れている。
「もう、あなた達がこの件に関わる必要はありません。手を引いていただけますか?」
口調そのものはとても柔らかい。しかし、有無を言わさぬ彼女の言い方に一呼吸置いてから、シュオンが首を横に振った。
「いいえ。そう言うわけには行きませんよ」
シュオンの返答に、天音の視線が心なしきつくなった。
「なぜです?本来、あなた方はこんな変なことに巻き込まれる必要はないはずですよ?」
「しかし、その“巻き込まれる必要のない”ことに僕らを巻き込んだのは、他でもないあなた方の方ですから」
天音に負けないくらい、シュオンの口調も柔らかい。しかし、天音もそれくらいで引き下がるはずがない。
「あら・・・人聞きの悪いこと仰らないでいただけます?」
「え?」
「私達はただ、追ってきたモノが偶然こちらに逃げ込んだだけ。ついでに言えば、そこにいる黒髪君がもっと早くに入れていてくれれば、事態は悪化せずに済んだんですよ?」
言っている途中で、“黒髪言うなっ!”と言う声が聞こえたような気がしたが、気のせいにしておこう。
「もし、手を引かないと仰るなら―――」
そう言って、天音がふっとシュオンの背後に回りこむ。これがヒースだったら、簡単には行かないだろうが、シュオンはヒースと違い、全くの隙だらけだ。
「―――ここで、あなたの命が消えますよ?」
残酷に笑い、己の伸ばした爪を彼の首元に巻きつけるようにして、動きを封じる。そして。
「もちろん、あなたの命だけでは済みませんしね・・・?」
と、長い闇色の髪を揺らし、周りを見渡す。
「そうですね・・・どうしても引けないって言うのなら、そこにいる―――紫の目を持った彼女も、この爪にかかることになりますが?」
それを聞いた瞬間。シュオンのアイスブルーの瞳が、一瞬凍った。
その反応を見た天音は、先程よりも更に残酷に笑い、続けた。
「どうします?・・・残念ですが私には、躊躇と言う言葉は・・・一切使いませんよ?」
その言葉で、シュオンが短く息をついて答えようと、した。
しかし。

20月波煌夜:2012/06/26(火) 08:15:12 HOST:proxy10036.docomo.ne.jp
>>ピーチ


おお、シリアスとコメディが上手い具合に入り混じっておる!
黒髪君……字面だけだと真面目っぽいのは何故だw


シュオン、女の子相手だからキレないでねー?
大人になろうねー?

21ピーチ:2012/06/26(火) 23:45:13 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜拒絶〜

「―――っと・・・」
突然、天音がシュオンから飛び退いた。なぜなら。
「・・・さっきから聞いてりゃ勝手なこと言いやがって・・・御嬢様を殺すことなんかできるわけねーだろ!?」
そう言って、手に持っていた剣を前に構え、シュオンの首筋ぎりぎり―――確実に天音の手を狙えるその場所に、それを突きつける。
「・・・へぇ?随分と自信があるみたいだけど。どうして彼女を殺すことはできないのかしら?」
天音の問いに、ヒースは一瞬戸惑ったものの、はっきりと告げた。
「御嬢様が―――≪紫水晶(アメシスト)≫だからだよっ!!」
そう言って、また新たに剣を構える。その隙に。
「―――・・・悪いけど」
「・・・!?」
「敵に隙を見せるのは、どうかと思うわよ?」
それだけ言って、彼女は小鹿色(フォーン)の髪に、青灰色の瞳を持った少女―――シェーラの背後に素早く回りこむ。
「あ・・・っ!?」
「言ったわよね?敵に隙を見せるなって」
そう言って笑みを浮かべる天音を見て、昇が唐突に口を挟んできた。
「あのさぁ・・・んな面倒くさいことせずに、こいつに任せりゃいいんじゃねーの?」
そう言って、彼は柊一を指す。しかし、天音は。
「ダメ。しっかり答えを聞くまでは、私だって引き下がらないわよ」
「・・・そーですかい・・・」
苦笑しながら、それだけ答える。
「・・・悪いけど。これ以上その剣振り回すようなら・・・この女の子、速攻消えるから」
そう言って、天音がシェーラの首筋にその爪をあてがる。
しかし、シェーラは悲鳴をあげなければ悪あがきをしようともしない。ただ呆然と、前を見てるだけ。
そんなシェーラに、天音が小さく何かを囁く。途端、シェーラの表情に感情が戻った。
「・・・なせ・・・」
小さく言った後、ヒースが怒りを露にして怒鳴った。
「今すぐ、そいつを放せ!!」
ヒースの怒声が飛んできても、天音は表情を変えることなく要求する。
「じゃあ・・・その剣、こっちに渡して貰える?」
「え・・・?」
「交換条件。まぁ、別の人借りてもいいけど・・・それだとあなたがうるさいでしょ?」
ヒースの顔から、表情と言う表情が薄れていく。そして
「・・・わぁったよ!ほら」
そう言って、ヒースが自暴自棄になったように剣を投げてよこす。
「んー・・・じゃあ、はい」
ヒースがよこした剣を確認しながら、天音がシェーラを開放する。
「話を戻させて貰うけど・・・今後一切、私達に関わらないで?」
そう言い捨て、さっと天音が踵を返す。それを、ソフィア達はただ呆然と見送っていた。

22ピーチ:2012/06/26(火) 23:49:14 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

シリアスとコメディ、ちゃんと入り混じってる?大丈夫?

うーん・・・確かにww言われて初めて思ったかもww

でもねー、黒髪君はお気に入りなんだよねーww

はい。シュオン様寸前で堪えました。ヒース君途中からぶち切れました。

むー・・・シュオン様は堪えられるタイプかなと思ってのことですが、どうでしょう?

23月波煌夜:2012/06/27(水) 11:01:36 HOST:proxy10075.docomo.ne.jp
>>ピーチ


よしえらい!よく耐えたぞシュオン!
胸中ではどう思ってるか分かんないけどね!

シェーラ人質に取られてマジギレするヒースは、『紫の歌』の方でも結構気に入ってる場面だから再現してくれて嬉しいw

それにしても天音ちゃん声荒げてないのにド迫力だね!
これはあの浮かれメンバーも負けるわww


続き楽しみにしてるよ☆

24ピーチ:2012/06/27(水) 20:54:17 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うーん・・・天音達が目立つとやばいかぁ・・・

うん!じゃあ次はソフィア様を目立たせる!!

そんで、シュオン様は・・・どーしよ・・・

まぁ、テキトーに誤魔化すわww

25ピーチ:2012/06/27(水) 23:33:56 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜一線〜

「・・・っ、おい!?」
「うるさい」
思わず怒鳴りつけようとしたが、それを天音の澄んだ声で制される。
直後。
「―――やっぱり。まだ当分、帰して貰えそうにないわよ・・・どうする?」
「・・・帰す気がないなら」
「それを倒すまで」
不敵に笑った二人を見て、天音も薄く笑みを浮かべる。
「じゃあ―――」
「開始(スタート)」
昇のその声が、火蓋を切った。

「・・・っ、おい!?」
そう言って、天音を怒鳴りつけようとした。が、
「うるさい」
彼女のその一言に、思わず口をつぐむ。
しかし、それも一瞬のこと。すぐに気を取り直して怒鳴ろうとしたが、不意に、後ろから誰かに肩を軽くたたかれた。
「お、御嬢様・・・?」
そう呟いたヒースの黒豹を思わせるその瞳に、紫の瞳が映った。自分の主、ソフィアの瞳の色。
「今は、私達はじっとしていた方がいいと思うわ」
ソフィアの言葉に、ヒースは無理矢理に自分を納得させて黙り込んだ。
「・・・昇」
唐突に、天音が口を開いた。
「あ?」
「できれば、準備しておいてくれないかしら?」
「えー・・・まさか、あれを?」
「えぇ・・・嫌なら、別に構わないけど」
「いいよ、やっとく」
たったそれだけの短い会話を済ませ、昇がふっと片手を挙げる。
「―――これで準備は、終了」
昇がそう言った直後。天音が咄嗟に、ソフィアの前に出た。

26Mako♪:2012/06/28(木) 00:15:51 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
え?天音s、ソフィア様の前にでて、何をするきなんだ!?
気になるぅ!!
更新楽しみにして待ってまーす!

27ピーチ:2012/06/28(木) 20:56:56 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
まこ>>

あっ!つっきー以外のコメが初めてきたっ!!サンキュー!!

あー、天音ちゃんはね・・・そろそろ頑張って更新する!←テスト訂正が溜まりまくりww

うん。頑張ろう。←何の決心だww

28ピーチ:2012/06/29(金) 21:57:45 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜連係プレー〜

「・・・え・・・?」
そう呟いて、ソフィアは己の目を疑った。
「―――これで、準備は終了」
昇がそう呟いた途端、突然天音が彼女の前に飛び出した。
そして、今目の前にいる天音は、誰が見ても分かるほどに目立つ傷を負っている。細い糸できつく巻き上げられたかのような、とても細い傷を。
その傷跡からは所々に紅いものが見て取れる。
「・・・大丈夫か?」
昇が、天音の傷を見てそう尋ねる。
「えぇ・・・問題ないわ。・・・あなたは?大丈夫なの?」
そう言って、彼女はソフィアの方を見る。
見たところ、ソフィアは目立った傷は負っていない。ならば。
「・・・ねぇ、黒髪君」
「だから、黒髪じゃねぇ!!」
「どうでもいいわよ、そんなこと」
ヒースの叫びも虚しく、天音はそんなの気にもせずにソフィアをヒースに押し付ける。
「彼女、だけじゃないけど。彼女と一緒に、あっちにいる二人も守ってて?」
「え?」
問い返したヒースに、天音がふっと微笑んだ。
「今、三人をまとめて守ることができるのは、あなただけでしょう?それとも、できない?」
そう言った天音に、しばらくポカンとしていたヒースが、にっと不敵な笑みを浮かべた。
「・・・んなわけ、ねーだろ?」
それだけ言って、彼は剣を構える。
それを見て、天音が
「・・・大丈夫ね。じゃあ、私はあっちに行くから」
そう言い放ち、天音がすっとその場を離れる。それを見て、ヒースが一瞬慌てたが、それでも剣を持つ手は緩まない。
「何か、良く分かんねぇけど・・・御嬢様、は不用意に動かないようにして下さい」
ヒースの言葉に、ソフィアが小さく頷く。
「シェーラとシュオンも、不用意に動くんじゃねぇぞ」
二人にもそう言って、ヒースは改めて天音に視線を置いた。

29ピーチ:2012/06/30(土) 18:46:14 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜役割分担〜

何の前触れもなく、天音が突然ソフィアの前に飛び出した。それだけならなだしも、その彼女の全身は、たったそれだけのことで傷だらけになっていた。
―――これはもう、偶然でも何でもない。
「ねぇ、ヒース」
とつぜん、シュオンがヒースの名を呼んだ。
「あ?」
ヒースはと言うと、いろいろ考えていた思考をやむなく中断させられ、その声にいささか不機嫌さが見え隠れしている。
「あの女の子、何て言ったの?」
シュオンの問いに、ヒースは少し思案してから、小さく言った。
「―――御嬢様と・・・お前ら二人を守り通せ、だと」
全くふざけている、などと、思わないでもない。しかし。
「こんな所で死なれても・・・後味悪いだけだしなぁ―――?」

30ピーチ:2012/07/01(日) 00:43:21 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜粒子=邪龍〜

そう呟いた瞬間。ヒース目掛けて、何やら“粒子”のような物が飛んで来た。咄嗟に、ヒースがそれを捕らえて剣を振りかぶる。
しかし。
「・・・あれ?」
感覚が、無かった。必ず、何かしらか感じるはずの、あの手応えが。
今度は、飛んで来たそれを手で受け止める。それと同時に、その手に激痛が走った。
「っ・・・!?」
思わず、ヒースが小さく呻く。
手を開いて、そこに。
―――天音の全身に刻まれていた、“細い糸できつく巻き上げた”ような紅い線が、幾重にも走っていた。
「・・・これ・・・って・・・」
「だから言ったでしょう!?“それ”はどこでもいい・・・身体の一部に“確実に”触れるまでは何の痛みも感じないのよ!!」
「な・・・っ!?」
確かに、シュオン達三人を守れ、とは言われた。だが。
「おいっ!んなこと聞いてねぇぞ!?」
「だから今言ったわよ!!」
そう怒鳴りつけ、しかしその“粒子”に瞳の動きをあわせる。
―――刹那。
今までは一つ一つの“粒子”だったものが、まるで崩れたパズルを組み立てるかのように一線に集まってくる。
やがて、“それ”はしっかりとした形を持つものに変わった。
―――とてつもなく大きな、邪龍に。
天音は一度、柊一の背後に隠れる。それを見た柊一がはぁっとため息を吐き、そのままゆっくりと前に進む。
「・・・おい、何やってんだよ?」
ヒースが、あまり声を張らないように、しかし天音にはしっかり届くように尋ねる。対する天音は。
「・・・・・・何でも、ないわよ・・・」
そう呟くように言って、そのままふらりと前に歩みを進める。
「柊・・・大丈夫だから。・・・これは、私が送る」
言うや否や。彼女は何の容赦も無く、その龍を鈴で思い切り締め上げた。

31:2012/07/02(月) 20:28:39 HOST:zaq31fbcb09.zaq.ne.jp
久しぶりに来てみたら、何このコラボ!!?

最強すぎる\(゜ロ\)(/ロ゜)/

最近、読む気ないから読む気なったら読むわ(-_-;)

風邪気味なせいか病んでるので…。

完結まで応援しておきます(p_-)

32ピーチ:2012/07/02(月) 20:34:50 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
りんりん>>

わぉ!とってもとっても久しぶりのりんりんだー!!

・・・え。つっきーのなら分かるけどあたしのが入ってたら・・・つっきーの小説のよさが消えちゃうよ〜((泣

風邪気味!?大丈夫!?

ちゃんと完治させてよー!!

応援どーもでーす!頑張るねー!!

33:2012/07/02(月) 20:40:29 HOST:zaq31fbcb09.zaq.ne.jp
ピーチ>>そんな事ないと思う。

良さとかそんなの関係ないよ。

書きたかったらそれでいい。

書きたかったら書きたいだけ書けばいいんじゃない?

それで相手から批判されれば、それに加えて改善していけば問題ないよ。

って私は思う。

34ピーチ:2012/07/02(月) 20:51:34 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
りんりん>>

そっか〜、そーだよねー(・w・)

うん!分かった!!ありがとう!!

35ピーチ:2012/07/02(月) 20:53:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
〜お知らせ〜

えーっと、明日からしばらく、パソコンそのものが使えなくなるそうなので、しばらく更新できませーん

一応お知らせだけしておきまーす

36玄野計:2012/07/03(火) 12:14:57 HOST:ntfkok244208.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>35
駄作なんて気になるかよ

37ピーチ:2012/07/03(火) 18:53:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
鈴扇霊 〜登場人物〜

・神代 天音(かみしろ あまね)・・・「鈴扇霊」の主人公。紅い鈴と同じ色の扇を使いこなす。彷徨える霊などを行くべき場所へと送り届ける任務を受け持つが、本職的なことは怨霊鎮めと妖退治。神代家伝来の能力を受け継ぐと同時に異能力も生まれつき。裏会の一員。中学生の設定から大学生に。

・天神 柊一(あまかみ しゅうかち)・・・天音の同僚。神代家の親戚一族。天音同様鈴の使い手だが、天音とは違い、真っ黒な鈴を用いる。昔は「天津神」に通じる一族として知られていたらしく、なぜか陰陽術も使える。これも中学生から大学生に。

・飛鳥井 昇(あすかい しょう)・・・天音の同僚。天音達二人とは違い鈴は使わないが、代わりに「聖なるもの」を呼び起こす能力を持つ。それ以外の特技はあまりないが、それを補う形で剣、槍、縄、矢などの特技を持つ。

・奥平 海斗(おくだいら かいと)・・・裏会を仕切っている力量の持ち主。何が元凶か分からないが、天音同様、生まれつき異能力を持っている。

主な登場人物+裏会の長しか載せないけど、とりあえずこれぐらいかな?

後は鈴扇霊の本編見れば分かると思うww

38月波煌夜:2012/07/03(火) 19:38:52 HOST:proxyag068.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとう!
うーん、天音ちゃんだけならノリでいけるかもしれん←
あと、扇と鈴のそれぞれの使い道とか、
天音ちゃんはいつも柊一くんとか昇くんと一緒に行動してるんですかとか、
天音ちゃんの今の服装とか、
詠唱してる呪文みたいなのって場合によって決まってるんですか、とか聞きたい(`・ω・´)


うんごめんね面倒で←


あと“妖”ってどこからかほいほい出没するものなの?



全部じゃなくて良いから、できるかぎりの回答を願う\(^o^)/

39ピーチ:2012/07/03(火) 22:25:22 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うーん、返答(↓)

鈴と扇の使い方→鈴は左手首に巻きつけて振ったり相手に巻き付けたり。(振る時は大抵両手が天を掲げてる)扇も左手に構えてかるーく振る。(力が溜まった時に扇の中心に真っ黒な渦ができる)

天音達が一緒に行動してるか→学校の時にも柊一達が自分達の学校サボって天音の学校来てるから、ほとんど一緒かな←多分

天音ちゃんの服装→基本的に深藍(ふかあい)の着物

詠唱してる呪文→決まってないし、ちょー適当だよーww

妖・・・うーん、主に夜の闇に紛れてとか?それとか、人の負の感情によって開いた異界の戸とか?

これぐらいでいーかな?

40月波煌夜:2012/07/05(木) 17:57:17 HOST:proxy10073.docomo.ne.jp
>>ピーチ

面目ない…(*´д`*)


え、呪文テキトーなの!?
あれで!?
月波はピーチの才能の片鱗を見た…!

あ、じゃあ適当に好き勝手やって良いのかな?←


それから、扇と鈴ってそれぞれどのタイミングで使うの?
なんか決まってる??

41ピーチ:2012/07/05(木) 21:49:51 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ぜーんぜんww

え、あれでって・・・

まぁよっぽど酷い呪文だってことだーww

いやいやいやいや!あたしの才能なんて見えるはずがないんだけど・・・←酷すぎてww

うんっ!どーぞ好き勝手やってくれー!!

あ、鈴と扇を使うタイミングはねー・・・

鈴は基本的にそこら辺彷徨ってる霊を見つけた時で、扇は妖とか死んだこと認めない霊を封じるためだから、基本的に自分の身を守るため??

うん、そんな感じでいーよー←何か適当でごめん。ほんとに・・・

42ピーチ:2012/07/05(木) 23:04:30 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜ジャマモノ〜

天音の突然の行動を見た柊一達は、一瞬顔を見合わせ、その後でにっと笑う。彼女の行動の意味を捉えて。
反対に、シュオン達は。
「な・・・っ!?」
突然のことに声が出ないヒースを見ても、天音は力を緩めない。むしろ、その力は加わる一方だ。
「―――・・・や、めろよ・・・」
一言。たったその一言を言うだけなのに。シュオンやシェーラにはこの上ない程、簡単に言えるのに。
「我が身体は我に在(あ)らず・・・」
突如、天音が小さく何かを呟いた。瞬間、柊一が両手を組み合わせる。
「我が行いを誤りとするモノよ・・・」
「我が声は我の声に在らず」
天音と柊一の声が、ピタリと重なる。しかし、それだけではない。
「我が思考は、我の思考に在らず」
「水の音を聞けよ。雲の声を聞けよ」
二人が二人とも、全く違う言葉を発している。それなのに、その声はとても澄んでいて。まるで、お互いが競っているかのよう。
「天津神よ。我を信じ、我を認めるのなら、その力を我に渡せ」
「我が行動は我の元に在らず」
小さく唱える二人の傍に、小さく黒い、何かの物体が集まってくる。口封じでもしようとしているのだろう。しかし。
「・・・邪魔なんだよなぁ」
そう呟いて、どこから持ってきたか、昇が構えた剣でその黒い物体を切り裂く。その間に、何気なく手元を見たヒースが、
「・・・って、俺の剣が!?」
と叫んでいる。それを聞いて、
「あぁ。わりぃけど今、これ借りてるから」
と、悪びれる様子もなく言ってのけた。
「お、お前なぁ!?」
ヒースも負けじと言い返そうとするが、それよりも早く、昇が言った。
「・・・お前さ、よっぽど強いんだなぁ・・・」
「・・・は?」
「この問題が終わったら、一回手合わせしねぇか?」
昇の思いがけない言葉に、さしものヒースも目を丸くする。
しばらくして。
「・・・あぁ。お前さえ良ければな?」
そういった直後。突然、昇が前方を振り仰いだ。
「―――神の前にして、悪事を働かんとするモノよ」
「闇に紛れし、悪しきモノよ」
二人の声が、重なる。
「神の声を。我に移し・・・」
「汝(なんじ)。仏の本意(ほい)を知れ」
ここまで来ると、もうヒース達には何を言っているのか分からない。昇も同じなのだろう。昇を振り返ると、彼も肩を竦めて見せた。
「我が身体を。我が声を。我が行いを」
「神々よ。仏よ。我に加護を与えよ」
「―――神に、全てを引き渡そう。・・・代わりに、我の身体を依代(よりしろ)とし、その業(ごう)を燃やし尽くせよ」
「天津神。その名を轟かせし一族に通ずる者。その力を唯一受け継ぐ一族。ならば、その力、我が受け継ごう」
二人が同時に言い切った瞬間。龍の首に巻きついていたはずの鈴は、巻きつけるものが無くなったかのようにするりと滑り落ち、天音が同時に膝をつく。
「・・・大丈夫?」
本当は同じ用にきついであろう柊一は、気力で己を立たせていた。
「えぇ・・・でも、ごめんなさい」
大丈夫だと肯定した後、天音が小さく謝った。
「え?」
「私一人でやるはずだったのに・・・結局、柊達まで巻き込んで・・・」
それを聞いた柊一が、しばらく呆然とした後ににっと笑う。
「そんなの、気にしなくていいだろ?仲間なんだから?」
「・・・・・・それもそうね」
そう呟いて、天音が薄く笑う。その笑みが、どこまでも大人のように見える。
「良かったな。・・・って、言いてぇけど・・・」
そう言った昇は、龍が砕け散ったはずの場所を睨みつける。柊一達も、彼に倣って同じ箇所を睨む。
――――――我ラヲ、簡単ニ倒セタト思うナ。
「―――っ!!」
突然、頭が割れそうな痛みが走る。無論これは、霊感が三人の中で尤も優れている天音だけのことだ。
――――――オ前ノ他ニ、ソレ程ノ生命力ヲ持ッタ人間ガイルトハナ・・・ソレモ、二人ト来タ・・・。
「・・・え?」
―――自分以外の、強い生命力の持ち主?
天音が黙り込んだ一瞬の隙を、“奴”は見逃さなかった。
―――刹那。
紫の瞳を持った少女と、漆黒の瞳を持ち合わせた青年が、天音に踊りかかった。

43ピーチ:2012/07/06(金) 00:21:49 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜「紫の瞳」と「天使」〜

「―――っ・・・!?」
天音の、声にならない悲鳴と共に、誰かの声が重なった。
「ソフィア・・・!?」
そう呟いて、シュオンが己の目を瞠る。
とても、少女とは思えない程の力で。それ程の力で、力のほとんどを使い果たした天音の動きを封じる。
「我ラニ・・・逆ラッタガタメニ、コンナコトガ起コッタノダゾ?我ラノ命(メイ)ズル通リニ動イテイレバ、下手ニ命ヲ落トスコトナド、無カッタモノヲ・・・」
そう言って残忍に笑う少女の瞳に見え隠れするものを、天音の漆黒の瞳が捉えることはできない。それ程までに体力的に、精神的に、気力的にも限界に近い。
「待テ・・・コノ者ダケデハ足リナイ。・・・モット、多クノ人間ヲ献上スルベキダ」
ヒースが、否。ヒースの外見だけを見せた“奴”は、にぃっと残酷に笑う。
その笑みは、どんな醜いものよりも醜いと言えるほどの。
「ソウダナ・・・タダデサエ、オ怒リニナラレテイルノダカラ。コノ二人モ、連レテ行クカ・・・」
その言葉を聞き、天音の顔から、表情が消えていく。ダメだ。このままでは。
天音が、思った直後。
「―――今来たれよ。聖界(せいかい)からの使者」
凛と研ぎ澄まされた、力強い言葉が、どこからか聞こえる。その源は。
「幸福を呼ぶ天使よ。我らはそれを望まぬ。それの代わりに、お前達に頼みを託そう」
そう。その言葉を発しているのは、彼の唯一の特技と言っても差し支えのない、昇の、「天呼(てんこ)」の術。
「今の状態(まま)で、この世(せ)が終わるなら、それはこの世界の天命。しかし、我の前にいる者達は天命は、まだ崎のはずである」
凛と響くその声に、思わず奴らの手が緩む。それを見逃すはずのない天音が、思い切り彼女の手を払いのけ、己の首に手を置いている。そして。
「・・・ありがとう」
と一言。かすれた声で呟く。
「礼なんていらねーから。とにかく喋るな」
すっぱりと言ってのけ、昇はそのまま続ける。
「我がために存在する御仏(みほとけ)よ。我に更なる力を与えよ」
そこまで言った瞬間。彼の後ろに、ゆらりと人影が浮かび上がる。
しかし、昇の後ろに浮かんだそれは、人ではなくて。
「―――・・・天使(エンジェル)・・・?」
シュオンの言葉に、柊一と天音が、はっとした表情になる。
そう。彼の背後にいるそれは、真っ白な羽根を持ち、真っ白なワンピースのようなものに身を包んだそれは。
―――天使、だった。
思わず、その場にいた全員が見惚れるような、美貌と神秘さを合わせ持った。
そんな美しさを持った天使は、しかしどこか幼げに笑い。
「―――・・・私を呼び寄せた、この者の意思に。助けたいと言う思うがありました。では、お望み通りの行動を心掛けます」
そう言った天使は。その優しげな笑みを浮かべたままに、ソフィアやヒースを支配する“それ”を引きずり出す。
その後に。
「・・・ありがとう。あなたの心に、感謝します」
それだけ言って、後はふわりとその幼い笑みを残し。獲物を収穫したとばかりにしっかりと、しかし優しく掴むその姿が消えるまで、シュオンもシェーラも、もちろん天音達も。ただただ呆然とし。昇の言葉で、やっと皆が我に返る。
「・・・おーい、そこの二人、大丈夫なのかー?」
その言葉を受け、シュオンが慌てて倒れ伏しているソフィアに駆け寄る。そして一言。
「ヒースの上に倒れるなんて・・・ソフィアが汚れたらどうしよう・・・」
ヒース本人が聞いていたら、「俺はゴミかっ!」と思い切り吠えそうなことを、さらりと口にするシュオンに、シェーラは何とも言えないような表情で、苦笑するばかりだった。

44ピーチ:2012/07/06(金) 00:28:20 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
訂正

まだ崎→×

まだ先→〇

45月波煌夜:2012/07/06(金) 08:38:06 HOST:proxy10082.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天使ー!

ぶふっww ソフィアが汚れたらどうしよう……っ!!

やばいピーチすごすぎだろ!シュオンを月波以上に使いこなしてるじゃないか!
吹いた\(^o^)/


皆さんお疲れ様です!
昇くんは剣得意なのかな??

46ピーチ:2012/07/06(金) 19:03:31 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

天使ー!←なぜ真似るww

あははww笑ってくれたー!!

え、つっきー以上はないと思うww

47月波煌夜:2012/07/06(金) 22:01:08 HOST:proxy10042.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天使天使ー(増やしてみる

いや、月波にはとても思いつかないナイスな一言であった(o^_^o)

48ピーチ:2012/07/06(金) 23:43:47 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

え、何で増えるの!?

うーん・・・つっきーが思いつかなかったのは頭が良すぎるからだよ!絶対!

あ、さっき書き忘れてた。

うん。昇君は基本的に戦いに参加する術を持たない子の設定だからww

「聖なるもの」を呼び寄せる能力は持ってるんだけどね、とんでもなく体力&時間消耗するからよっぽどのことがない限りは使わないのww

それを補う形で、剣とか槍とか弓とか縄とか・・・まぁ他の二人はできなさそうなことを詰め込んでみたww

49ピーチ:2012/07/07(土) 00:07:03 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜“生”“死”〜

倒れたソフィアをシュオンが邸の中へ入れ、彼女の部屋まで運ぼうとする。
同時に。
「・・・あの。良かったら、上がります?」
遠慮がちに尋ねるシェーラを見て、天音達が目を丸くする。
「うん。入れた方が良いんじゃないかな?特に、そっちの髪の長い人は」
シュオンの指す人物を見て取り、柊一と昇が思わず言葉を失う。
「・・・どうする?」
かすれた声で尋ねる天音に、昇があっさりと
「入れてもらえば?」
外に出されるよりかはマシだろ、という昇の意見で、三人が邸の中へ足を踏み込む。
ソフィアと時を同じくして倒れ伏したヒースは。
「ヒースさぁぁぁぁああん!!?」
「どーしたんですかぁぁぁあああ!?」
と恐ろしい程に絶叫されながらも、慕われている兵士に運ばれている。
・・・彼らが叫ぶ度に、ヒースの表情が強張って見えるのは、気のせいだろう。多分。
そして、ヒースも邸の中に運ばれ、とりあえずと言いながら彼の部屋へ運ぶ。
そんな騒ぎが起こっている中。ソフィアの美しい銀の髪が、微かに震えた。
そして。
「―――・・・ソフィア!」
「ソフィア様っ!!」
二人の人間が、同時に叫ぶ。そして、呼ばれた本人は。
「シュ・・・オン?シェーラ?」
と、焦点の定まらない瞳で、必死で空(くう)に目を凝らして見ている。
「・・・天音」
彼女の意識が戻ったことを確認した三人は、しかし天音の言葉で行動を止める。
「ちょっと待って・・・」
「え?」
「・・・黒髪君の意識が戻らないのが気にかかる・・・」
天音の言葉に、昇の表情が一瞬で強張る。
「ま、さか・・・!?」
「分からない。まだ、可能性ってだけの話よ。でも・・・」
感覚は、似ている。
―――生あるものに訪れるものに―――・・・。

50Mako♪:2012/07/07(土) 01:10:14 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
>>ピーチ

え?いやいや、ヒースはあの生命力があるから大丈夫だよね!?
だよね!?
↑この文章打つのに何回もやり直すほどどうようしております。

ヒース!!シェーラを置いて死ぬんじゃないぞー!って勝手すぎますね。すいません☆

ピーチ、頑張ってね☆

51ピーチ:2012/07/07(土) 09:35:51 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
まこ>>

うんっ♪ヒースなら大丈夫!多分!←助けろよww

そ、そんなに動揺するか・・・?

うーん・・・シェーラちゃんがいるからね。勝手に逝くことはないと思うけど←だから助けろってww

はい!頑張ります!

52ピーチ:2012/07/07(土) 09:49:39 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜助ける方法〜

「・・・仮に、この黒髪君がそうなったら。天音はどう対処するつもり?」
柊一の言葉に、天音がふっと視線をめぐらせる。こういった時の彼女の大体の思考は。
「まさか・・・“処分”なんて考えてねぇよな?」
「そんなわけないじゃない」
昇の言葉に力強く返した天音が、でも、と続ける。
「このままじゃ、本気で処分しなきゃいけなくなるかも知れない」
天音が言った直後。シェーラが口を挟んだ。
「処分って・・・どういうことですか?ヒースどうなるんですか!?」
彼女の剣幕に、天音が一瞬、口を閉ざす。しかし。
「ヒース・・・死んだりしませんよね?絶対に大丈夫ですよね?」
「絶対―――ね・・・」
「え・・・?」
そう言った天音の表情が、心なし哀しそうに歪められた。
「ごめんなさい。私・・・“絶対”って言葉は使いたくないの」
「・・・なん、で・・・?」
「―――・・・できもしない約束を、自ら破りに行くようなものだから」
天音の言った言葉に、シェーラがはっとする。
「・・・でも」
まるで、その一言を発するかどうかを、酷く迷ったような。そんな響きが残った、その声は。
「助ける方法は、ある・・・」
―――そう、言った。

53ピーチ:2012/07/07(土) 10:23:30 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜儀式〜

「たすけ、る、方法・・・?」
シェーラが、途切れ途切れになりながら尋ねる。
「えぇ。でも、あなたにも協力して欲しいの」
「え?」
「・・・彼の潜在意識の中に、入る」
天音の言葉を聞き。
「―――は?」
「「え?」」
シェーラのみならず、ソフィアとシュオンまでもが、天音の方を見る。
天音は何気ない表情でどうする、と、その瞳が訴えているし、柊一達は知らん顔を決め込んでいる。
「まぁ本当は・・・私一人の力じゃ絶対に人の潜在意識に入ることなんてできない」
この二人はそれも出来ないんだけど、と呟いて、改めてシェーラを見る。
「それに、今回は私も戦力不足にしかならないから・・・」
「じ、じゃあ、あたしじゃ・・・!?」
「大丈夫」
シェーラの言葉を遮り、天音が呟く。
「あなたなら、彼を説得することができると思うから」
「へ?」
あまりに予想外のことを言われ、シェーラが素っ頓狂な声をあげる。
「ほら、私は結構、手荒な真似してたから・・・」
彼女が言っているのは、シュオンやシェーラに対することだろう。
「それに、あの黒髪君は、あなたには弱いみたいだしね?」
そう言って、天音が悪戯っぽく笑う。
「・・・どう?やってくれない?」
天音の問いに、シェーラは。
「・・・やります」
彼女の言葉に、天音がふっと息を吐いた。

54ピーチ:2012/07/07(土) 17:16:26 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜詠唱〜

―――半刻程過ぎた後。
「・・・じゃあ、始めるわよ」
「・・・はい」
いつもの陽気さはどこへやら。すっかり怯えきった表情のシェーラが、小さく頷く。尤も、彼女の陽気さを知らない天音からすれば、何か思うこともない。
「―――全世に通用する神力を有する神々よ」
天音がふっと唱え出した詠唱に、柊一達の顔色が変わる。それを見たシュオンが、
「・・・どうしたの?」
と、小声で尋ねる。
「・・・あれ、同調(シンクロ)みたいなもんなんだよな・・・」
言葉を失っている柊一の代わりに、昇が呟く。
「生死の狭間を彷徨ってる人間に対して通用する術じゃない・・・下手したら、あの黒髪君だけじゃなくて・・・」
「シェーラ達の命も無いって、こと?」
柊一の言葉を紡ぐ形で、シュオンが続けた。
「そう。でもおかしい・・・天音だって、それくらい分かって・・・」
そう呟いた直後。
「「―――あ・・・っ!?」」
二人の声が重なり、咄嗟に天音達の方を見る。
「・・・遅かったか」
「いや・・・確かに遅かったけど。これはこれで、問題ないと思うよ」
そう呟いて、彼らは既に意識のない天音とシェーラを交互に見やる。
「どうしたの?シェーラ?」
先程から全く微動だにしないシェーラに、心配したソフィアが近寄る。しかし。
「触らないで」
短く制され、伸びかけた手が、反射的に引っ込む。声の主は。
「今の二人に少しでも触れれば、確実に巻き込まれるからね」
二人が発している、その渦に。

55月波煌夜:2012/07/07(土) 18:55:36 HOST:proxy10025.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天音ちゃん鋭いな…!
まぁヒースが分かりやすすぎるからってのもあるだろうけどw

シェーラがんばれ!愛の力で!(ぇ

56ピーチ:2012/07/07(土) 20:31:41 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

え、天音鋭いの!?ヤバイ、どうしよう・・・←つっきーキャラを目立たせないと!

うん!シェーラちゃんにはちょっと努力して貰おうと←え・・・

あのー・・・ちょーっとシェーラちゃんを傷だらけにして宜しいかな?←後でヒースに謝罪させるから!

57月波煌夜:2012/07/07(土) 21:04:34 HOST:proxyag071.docomo.ne.jp
>>ピーチ

お、怪我するの?
別に構わんよー(酷ぇ
女の子なんで顔はできるだけ勘弁w

58ピーチ:2012/07/07(土) 22:08:10 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜闇と意思・前編〜

―――そこは。辺り一面が、真っ暗だった。しかし。
「・・・あなただけは見えるみたいね」
そう言って、気のせいか重く感じる身を起こし、隣にいる少女―――シェーラの姿を捉えて呟いた。
「それから―――あなたもね?・・・黒髪君?」
この言葉に反応する人間と言えば、天音はただの一人しかいない。ヒースだ。
しかし、今の彼はその声に反応しなければ、天音を見てもいない。つまり。
「・・・その彼から、離れてくれる?」
そう言って、天音は左手首に下げた鈴をしっかりと掴む。だが。
≪・・・イイノカァ?≫
不意に、ヒースよりも頭一つ分だけ上に、ゆらりと黒い影が現れる。ただでさえ暗いはずの周りが、いくらか明るく見えるほどに。
・・・その影が、暗すぎた。
「・・・ヒー・・・ス?」
突然聞こえた声に、天音が驚いて振り返る。ヒース―――彼を縛り付けているもの―――も驚いて、天音よりも後方を見る。そこには。
「・・・シェーラ、ちゃん・・・!?」
そう。確か、彼女はシェーラと名乗ったはずだ。自分の記憶があべこべになっていなければ。
「あ・・・っ!!」
天音が小さく叫ぶも、シェーラにその声は聞こえない。すっと天音の横を通り抜け、ヒースの傍へと歩み寄る。
それを見たヒースの顔が、にぃっと歪む。
「・・・っ!?」
いきなり、シェーラの歩みが止まった。そして、彼女の首に何かが下がっている。
≪イイナァ・・・コウヤッテ自分カラ来テクレル人間ハ・・・≫
その声を聞き、シェーラが突然ぱたりと動かなくなった。
「・・・彼女に、何したの・・・!?」
≪別ニ。タダ、コレヲツケタダケダ≫
そう言って、その黒い影が何かを生み出した。
≪コイツヲツケルトサァ、何デモ思イ通リニナルンダヨナァ≫
そして、シェーラのツインテールにまとめた髪を無造作に引っ張り上げ。
≪コノ女ヲ利用スルコトダッテ出来ル≫
その歪ませた顔を更に醜く歪ませ、残忍に笑った。

59ピーチ:2012/07/07(土) 22:12:06 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

どーもでーすっ!!←テキトーすぎだww

あー、顔はナシっ!さすがに!

うん。ちょっと髪引っ張られたりするけど←え。

後は手足にちょっとかすり傷作ろうかと←人のキャラに傷ばっか作るな

60ピーチ:2012/07/08(日) 00:36:13 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜闇と意思・中編〜

その笑みを見て、天音は一つ、たった一つだけ確信したことがあった。
「あなた・・・その黒髪君と波長が合ってないでしょ?」
そう言って、天音がふらりと鈴を取り出す。それを見た影が
≪・・・イイノカァ?≫
と、ほんの少しだけ焦りを帯びた表情で尋ねる。
「えぇ。構わないわよ」
天音の返答に、ヒースの顔から表情が消える。そして。
「私は、あなたを封じるためにこれを使うわけじゃないもの」
そう呟いて、無造作に引き千切った鈴を一つ、シェーラの方に投げつけた。
≪・・・!?≫
言葉を失うヒースに、彼女はうっすらと笑みを湛(たた)えて。
「これは結界・・・まぁ、一定しか保てないけど」
だから、と言った天音の操る扇が低く唸りをあげる。
「―――今此処で、決着つけない?」
≪・・・面白イ。死ンデ後悔スルガイイ!!≫
そう言って、ヒースの構えた剣の切っ先が飛んでくる。天音がそれを交わそうとした、直後。
≪・・・ッ・・・≫
突然、彼の動きが鈍くなった。当然、天音もそれを逃さない。
彼女の持つ紅い緋扇が、影であり実態を持たない“それ”を封じ込もうとした瞬間。
シェーラの周りを囲んでいた結界―――鈴が、勢い良く無散した。
その破片が所々に当たり、彼女の手足が一気に傷だらけになる。
≪邪魔ナンダヨナァ・・・≫
「っ・・・」
≪コノ際、コノ女一人デモ構ワナイダロウ・・・贄トシテ、主ニ献上シテヤル・・・!≫
そう言ったヒースが、シェーラの乱れた髪を引っ張り、無造作に起き上がらせようとする。
しかし。
≪―――!?≫
彼の中で眠る“誰か”が、表に出ている“黒い影”の動きを止めた。

61ピーチ:2012/07/08(日) 01:02:27 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あ、質問いーかな?

あのさ、エインズワーズ家の隣に、バカでっかい邸作っていいかな?

もしダメだったら速攻拒否っていーよーww

62月波煌夜:2012/07/08(日) 10:40:01 HOST:proxy10019.docomo.ne.jp
>>ピーチ

手足だけにしてくれてありがとう☆


構わないけど、エインズワーズ家の屋敷の周りの敷地は馬飛ばさないと端から端まで辿り着けないくらいバカでかいから注意w
あとエインズワーズ邸よりできるだけ小さめでよろしく!
一応エインズワーズさんちは広大な土地を統べる大富豪なので←

63ピーチ:2012/07/08(日) 13:05:12 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

わーっ!!ありがとー!!←馬鹿でごめん・・・

うん、分かった!なるったけ小さい邸ね!

・・・にしても、馬飛ばさないと端から端まで辿り着けない・・・!?

どんだけ広いんだ、エインズワーズ!?

64ピーチ:2012/07/08(日) 14:28:00 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜闇と意思・後編〜

「え・・・」
そう言ったきり、天音は声が出ない。正確には、言葉が出てこない。
―――・・・そいつに、シェーラに触るんじゃねぇ・・・っ!!
そんな声が聞こえ、天音がはっと我に返る。あの声は、恐らくヒースの声だ。
≪・・・人間如キガ・・・邪魔ヲスルナァ!!≫
そうは言うものの、ヒースの足は、地に根でも生えたかのように、全く動かない。
―――・・・人間如き、だぁ?
「・・・人間如き、ですって?」
力強い声と凛とした響きを持つ声。二人の人間の声が重なる。そして。
「その人間如きに足止めを食らわされるような化け物に・・・そんなこと言われる憶えはないわ」
無情に言い放ち、閉じかけた扇を再び開く。しかし。
―――突然、シェーラの周りが大きくうねった。しかも、タイミングの悪いことに。
「ん・・・―――何これー!?」
・・・タイミング良く、いや、無茶苦茶タイミングの悪い所で、シェーラが目を覚ましたのだ。
「ちょ・・・離れてっ!!」
天音の怒号に、シェーラがえ、と呟きながらも、慌てて彼女の方に来る。
「あ、あの・・・?」
シェーラが、己の全身を見て首を傾げている。いつの間に、こんなに切り傷だらけになったのだろうと。
「あぁ・・・ごめんね。後で説明するから」
「・・・?はい・・・?」
シェーラの返答を聞き、天音がすぐにヒースの方に視線を戻す。
「あの・・・どうしたんですか?」
彼女の発している気が気なため、さすがのシェーラでも少し声をかけるのに有期が必要だった。
「―――彼、まだ戻ってない」
さっき、少しだけ“本物のヒース”が出てきた事を教えると、シェーラがとんでもないことを言い出した。
「じゃあ、あたしが説得します」
「――――――は?」
思わず、固まってしまった天音である。
「ち、ちょっと待って?あなた分かってる?今の彼は・・・」
「分かってます。危険だってことくらいは」
「じゃあ何で・・・!?」
「だって、あたしヒースのことなら良く知ってますもん」
そう言う問題じゃない、と言いたいのを必死で堪(こら)え、天音が口を開く。
「分かってるなら、止めた方がいいわよ・・・」
「・・・お願いします」
結局、シェーラの根気に天音が負けて、ほんの少しだけね、との注意を受けながらシェーラがヒースの傍へ歩み寄る。
「ヒース起きてるー?」
唐突に大声でそんなことを言い出したシェーラだが、その目は真剣そのもの。
「もし起きてるんなら、いい加減出て来なさいよー?」
ソフィア様やシュオン様だって待ってるよー、と言っている彼女はまるで笑っているようで。
「ねぇ、早く戻ろう?」
そういった直後―――。
シェーラの周りに、無数の影が現れた。

65ピーチ:2012/07/08(日) 20:41:51 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜救出〜

「―――あ・・・」
シェーラが呆然と呟き、天音が咄嗟に鈴を振る。その鈴達が奏でる涼やかな音色に、彼女を取り巻いている影の集団が驚いて振り返る。
「今の内よ」
「え?」
「え、じゃなくて。・・・彼を呼び起こすんじゃなかったの?」
天音の言葉に、シェーラの瞳に希望の灯(ひ)が灯(とも)る。
「ヒース!今だったら出てこられるでしょ?あんたが出来ないわけないよね?」
そう、挑発的に尋ねるシェーラの言葉に反応するかのように、ヒースの身体がピクリと痙攣する。
―――・・・ったりめぇだろ・・・が・・・!
そう呟いた青年の声が、どこからか聞こえた。
「・・・もう少し」
天音の言葉に頷いて、シェーラが更に挑戦的に言葉を紡ぐ。
「あ、でも・・・ヒースには無理があったかな?」
その言葉を聞いた瞬間。
「んなわけあるかぁ!!!」
そんな怒鳴り声が聞こえ、全身のバネを最大限に生かしながら飛び起きるヒースの姿が視界に映った。
「―――さて、と・・・」
ヒースが飛び起きたと同時に、とてつもなく恐ろしい殺気を放つ天音もまた、シェーラの視界に映る。
「どうやって謝罪してもらおうかしら?彼女を此処まで傷だらけにしてくれたことに対して・・・」
そう言ってにこやかに笑う天音。だが、その瞳は少しも笑っていない。むしろ、殺気に満ち満ちている。
「まぁ、一番手っ取り早い方法は―――やっぱり、」
ふっと呟き、彼女が手に構えた扇を開く。そして。
「―――・・・桜吹雪の桜色よ。向日葵(ひまわり)の黄色よ。鮮やかな銀杏のオレンジ色よ。・・・真っ白な、全ての始まりの色である白よ」
ふらりと、ゆっくりと扇を振り。静かに、ゆっくりとその力を溜めていく。
―――やがて。
「黒き渦よ。全てを飲み込む闇の色よ。その力を、今こそ解放せよ」
言った瞬間。
「「・・・あ・・・」」
シェーラとヒースが、同時に呟く。
≪・・・覚エテロ・・・!!≫
そう言い捨て、その影がふっと姿を消した。
「―――・・・もう、大丈夫。かな・・・」
「え?」
天音の言葉に、ヒースが何が、と言うように問い返す。天音はそれには答えず、
「ちょっと、ごめんね・・・」
そう言い、両手をヒースの腕の前で交差させる。
「これは応急処置だから。後から、改めて傷の手当てはさせてもらうわよ」
それだけ言って、彼女はシェーラに優しく言う。
「さて・・・もう大丈夫だから、私達は戻りましょう?昇達が周りを固めてくれてるはずだから」
「あ・・・はい」
シェーラの方もそう答え、天音の左手に右手を添える。
「じゃあ・・・あなたも後からしっかり起きなさいよ」
最後にそう言い包め、天音達がものの一瞬で消え失せた。

66ピーチ:2012/07/08(日) 22:58:20 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜約束〜

―――天音達の身体に、離れていた魂が戻ってから数分後。
シェーラが、ばちんと言う音が聞こえそうな程に勢い良く目を開け、左手を腰に、右手を天に突きつけながら叫んだ。
「ヒースが元に戻りましたっ!!」
・・・なぜ、そのポーズをとったのかは分からないが。
「・・・あれ、何の意味があるんだ?」
昇の素朴な問いに、柊一は苦笑しながら、
「さぁ・・・」
とだけ答えた。と言うよりも、それしか答えられない。
「良かったわね。・・・ところでシェーラ。あなた、その手足どうしたの?」
「へ?」
彼女の主・ソフィアの問いに、シェーラが首を傾げながら己の手首や足を見る。
「あれぇ?これって・・・」
「言い忘れてたけど、彼の潜在意識の中でついた傷は、こっちにも出るわよ」
額を押さえた状態で、目覚めたばかりの天音が言った。
「おわ。お前、いつ起きた?」
大して驚いてもいないような昇の問いに、天音は短く、
「今」
とだけ答える。そして。
「黒髪君は・・・まだ起きてないみたいね」
そう呟いてから、彼女はシェーラの方を向く。
「・・・髪、乱れてるわよ」
天音の忠告を受け、シェーラが己の頭に手を置く。
「え、何で!?」
どうやら、彼女は気を失っていた時のことを、綺麗さっぱり忘れているらしい。その方が、楽ではあるが。
「とりあえず、傷口見せて」
「え?」
「その傷は、私の方に移しておくから」
そう言ったと思った直後、ヒースの小さな呻き声が聞こえた。
「―――っつ・・・」
「ヒースっ!!」
突然のことに、さすがの天音も反応が遅れる。いきなり怒鳴られたヒース―――ヒースにはそう聞こえた―――は、
「な、何だよ!?いきなり!?」
と、目覚めたばかりにも関わらず、大声を張り上げる。
「・・・大丈夫?」
「・・・へ?」
あまりに唐突なシェーラの問いに、ヒースは逆に困惑する。しかし。
「ちょっと・・・彼女にはちゃんとお礼言っておきなさいよ。あなたを助けるためにって、わざわざ私の協力要請を飲んでくれたんだから」
そう言って軽くヒースを睨みつける天音。それを見て、え、とシェーラを見るヒース。
「・・・そうなのか?」
「うん、あたしが勝手に言ったことだけどね」
あはは、と笑うシぇーラを見て、天音がもう一つ
「それと・・・彼女がそこまで傷だらけになったのも、あなたの潜在意識の中に潜り込んだからよ?」
と付け加える。
「え、ちょ・・・はぁ!?」
さすがに、それに関しては驚きを隠せない様子のヒースが、再びシェーラに確認を取る。
「ま、マジかよ?それ・・・」
「あ、うん・・・」
そう言ったシェーラの青灰色の瞳に、無意識の内に大粒の涙が溜まっていて。
「し、シェーラ・・・?」
突然泣き出したシェーラを見て、ヒースは何があったとうろたえる。
「よか・・・たっ、もし、帰って来なかったら・・・っ!」
泣きながら、途切れ途切れに言うシェーラの言葉に、ヒースが更にうろたえて。
「わ、分かった!俺が悪かったから!だからその、すいません・・・」
などと、最終的には語尾が聞こえなくなっていく始末。
「じゃあ・・・」
次にシェーラの発する言葉がどんなものか気になり、ヒースだけでなく、ソフィア達までもが耳を傾けている。
「絶対、危ないことしないでね?」
「―――え?」
あまりに当たり前すぎることを言われ、ヒースの目が大きな円形になる。
「今回みたいなことは、絶対しないでね」
そう言って、再び青灰色の瞳を潤ませながら、シェーラがそう尋ねる。
「―――あーもう!分かったよ!絶対とは言い切れねぇけど、なるべく注意する」
ヒースの言葉に、シェーラの瞳から、涙が消え去る。
「それで・・・いいだろ?」
そう尋ねるヒースに、シェーラがうんと答えた。

67ピーチ:2012/07/09(月) 01:41:47 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜あだ名〜

「―――ねぇ、黒髪君」
「だから黒髪言うなっ!」
それだけはどうしても認めないようで、天音の言葉に即座に反応する。
「仕方ないじゃない。名前憶えてないんだから」
天音のあっさりとした返答に、ヒースがはぁっと息を吐き出し
「・・・ヒースだ。これで名前も憶えただろ。今後一切、黒髪だけは言うな」
「・・・じゃあ、黒目君」
「お前なぁ!?」
天音の何気ない一言で。
「あ、いいんじゃないかな?それ」
そう言ったシュオンを筆頭に、ソフィアやシェーラが一斉に喚き立てる。
「えぇ。そうかも知れないわね」
「御嬢様ぁー!?」
「じゃあ、あだ名決定ですねー」
ヒースの抗議も虚しく、シェーラの一言で、シュオンのアイスブルーの双眸がふと細められ。
「・・・そう言えばヒース。そっちの二人のどっちかと手合わせするって言ってなかった?」
「・・・へ?」
そうだ。ヒースが憑かれる前に、昇の方から誘いがあったのだ。それを思い出したヒースが、
「じゃ・・・やるか?」
そう言って、己の剣を構える。
「あぁ・・・別に構わねぇけど、だったら剣交換しねーか?」
「は?」
昇の言葉に、ヒースが目を丸くする。昇は昇で、
「だってさ、今の俺の剣とお前の剣とじゃ、明らかに勝敗が見えてる。百パーセント、俺の勝ち」
ときっぱりと断言する。
「な・・・っ」
言われたヒースは、自分以上の人間など、ジル一人で十分だと内心で盛大に毒づく。
「そうね。確かに、勝敗は目に見えてるわ」
天音が唐突に口を挟み、そう呟いた。
「え?」
「昇が今持ち合わせてる剣は、普通の剣じゃないもの。とんでもない魔力がこもっているようなものよ」
そう言った天音の後を、柊一が繋げる。
「だから・・・昇とやりあうなら、対等にってことで」
苦笑しながらそう言い包めた柊一を見て、ヒースが呟く。
「・・・俺、あんたの方も結構強そうに見えるけどなぁ・・・」
「おいおいおいおい」
ヒースの言葉に、柊一が慌てて答える。
「俺は剣なんて全く出来ないよ。一時期、剣道やってくらいだから」
「へぇ・・・まぁいいや。どうする?やるか?」
ヒースの挑発的な言葉に、昇が
「いいんだな?交換しなくて?」
と確認を取る。
「あぁ、構わねぇけど?」
言った後に立ち上がろうとしたヒースが、なぜかふらりとよろめく。
「っと・・・」
そう呟いたヒースをみて、天音が軽く腕組みをした。あれは、恐らく。
「ちょっとごめんね」
そう言って、何の許可もなしに、突然ヒースの腕を捻り上げる。が
「え、お前、何やって・・・」
そう言うだけで、ヒースは痛いと言って叫ぶことをしない。
「―――やっぱり・・・!」
「どーした?」
「・・・何か、軽い毒盛られてたから。とりあえず私に移しておくわ」
言うや否や。ヒースの意思を完全に無視し、彼の右腕に両手を添えた。

68月波煌夜:2012/07/09(月) 09:26:59 HOST:proxy10056.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ヒース生還おめ!
っていうか一番天音ちゃんが苦労してないか…?大丈夫か…?


ヒースはやっと帰ってきたばっかなのに一戦交えちゃうんだね!
って、え、ヒース負けないよね…?最強伝説・ヒースの体裁が…奴の唯一の取り得が…
これからの番外編の内容が揺らぐぞ!?

69ピーチ:2012/07/09(月) 09:39:21 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

どーもっ!

ううん!今回一番苦労したのはヒースでもなく天音でもなく!

シェーラちゃんでございます!

だってあれだよ?普通の何の能力も持たない女の子が人の潜在意識の中に潜り込むんだよ!?

あ、うん!まぁ、ヒースも楽しませる予定だし。結果的には昇が飛び入り参加してきたジルと共にヒースにやられちゃうつもりだからww

ヒースって剣好きだよね・・・?

70ピーチ:2012/07/09(月) 09:59:52 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜浅毒(あさどく)〜

「へ?」
突然、理解不能な状況に陥り、ヒースが素っ頓狂な声をあげる。しかし、天音がそんなことを気にするはずもない。
「黙ってて。傷口の手当てだけするから」
そう言って強引にヒースの右腕を己の左腕に添えさせる。
「き、傷口って・・・何もねぇだろ?」
「あるわよ。あなたがさっきよろめいたのが、その証拠」
いともあっさりと言い放ち、振り返らずにその名を呼ぶ。
「・・・柊」
「ん?」
「悪いけど、他に何かいないか探してきてくれない?」
同じことを何回もやりたくない、を理由にして、柊一にそう頼む。それに対し、彼は
「うん。いいよ」
特に異論も何も唱えず、あっさりと部屋を出て行った。
「―――うん、まぁこんなものかな」
そう独り言を一ついい、ヒースの腕を再び捻(ひね)りあげる。
「って・・・!?」
短く唸(うな)り、その後すぐに
「何すんだよお前!?」
と、速攻で天音に食いつく。しかし、天音はそれには答えず
「うん。大丈夫ね」
などと、何やら一人で納得している。
「もう大丈夫だと思うわよ。・・・どうせ昇に挑むなら、万全な体調の方がいいでしょ?」
そして悪戯っぽく笑い、ヒースに問う。ヒースは、
「・・・ったりめぇだろ?まぁ、俺が負けるわけねーけど?」
と言って、剣を持ち、外に出る。
「早く来いよ。やるんだろ?」
昇に向かって挑戦的にいい、自分はさっさと外へ向かう。ソフィア達も、やはり気になるのかしっかりとついていく。
「あ、こらっ!行くに決まってんだろが!」
慌ててヒースを追っていく昇と入れ替えになる形で柊一が入ってきて。
「もう、何もいなかったよ」
とだけの報告を受ける。
「そう・・・今から始まるみたいよ?」
「そっか・・・観てみようかな」
まるで、スポーツ観戦のように軽く言う柊一を見て、
「・・・スポーツじゃないわよ」
と、一応天音が注意を入れる。
「分かってるって。じゃ、早く行こう?」
「えぇ・・・そうね」
既に残った二人だけの会話が、そこで途切れた。

71月波煌夜:2012/07/09(月) 11:01:42 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ジルも参加するんかい!

…これは結構未来を行っている話だったの…!?

ジルは兵士になってるのかな??じゃあ、元暗殺者二人の説明いる?

72ピーチ:2012/07/09(月) 11:06:43 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うん、暗殺者として参加させるつもりだったのだ〜ww←だからバカでっかい邸の設定を尋ねたww

・・・うん。結局兵士になっちゃってるけどww

そっちの方が面白そうだし〜ww

是非っ!宜しくお願い致します!!

あ、それと、ユーリエちゃんは未だに結構アブナイ感じの設定にするつもりw←ナイフ飛ばしたりとか・・・

73ピーチ:2012/07/09(月) 11:23:47 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜手合わせ〜

「―――じゃあ、始めっぞ?」
そう言ったヒースは、向かい側に立っている昇に尋ねた。
「あぁ、じゃあ・・・」
そう呟いて、昇が片手を挙げる。そして。
「・・・え?」
彼の右手に、今まではなかったはずの剣が、握られている。
昇が持っているそれはまるで、月光の淡い光をそのまま流し込んだかのよう。それを見て、ヒースは。
「っ・・・いいモン、持ってんじゃん?」
と、しかし不敵に笑う。
「まぁな。これは、俺専用だ」
そう、不敵に笑い返す昇を見て、ヒースがぼそりと呟いた。
「んじゃ、始めようぜ?」
「・・・負けて、後悔するなよ?」
昇の言葉を最後に―――。
――――――試合開始(ゲームスタート)の火蓋が、今落とされた。

74月波煌夜:2012/07/09(月) 12:05:19 HOST:proxyag081.docomo.ne.jp
>>ピーチ


じゃあジルたちが解放されてから1ヶ月後くらいのお話ってことで!


簡単でごめんだけど一応↓


○ジル

元暗殺者。
大地色(焦げ茶系)の長めの髪、山吹色(金色に近いオレンジのイメージ)の瞳。
多分26歳くらい。かなり痩せている。
とにかく戦うことが大好きで、正々堂々とした勝負を好む。
現在はエインズワーズに仕える兵士として修練に励んでおり、結構楽しんでいる様子。
超のつく鈍感であり、長い間相棒だったユーリエが抱える、彼への想いに気づく様子はゼロ。

一人称は「オレ」または「オレ様」。口調は……うーん、小さい「ぇ」とか「ぁ」はカタカナになるという独特のもの。詳しくは番外編を見てくれ!



○ユーリエ

赤い髪に金の瞳を持つ美人。
すらりとした体型で、泣きぼくろがある。

元暗殺者。
暗器の扱いを得意とし、よくその類い希な技術を生かしてナイフやら針やらを投げつけてはアホなジルに制裁を加えている(脅すだけで実際には傷つけないが、本気でキレると子供っぽくなり手や足が出る様子)。
しかし本来の性格は温厚で優しいお姉さん。
現在は過去の傷を乗り越え、再びメイドとしてエインズワーズ家で働いている。
25歳(本人覚えてない)。



で、二人の扱いなんだけど、ソフィアとシェーラ、ヒースは超寛大なので全部許して、普通に仲良くやってる。

シュオンもユーリエは許してるけど(女の子にひどいことはできない)ジルをヒース以上にこき使ったり毒を吐いたりしたりしつつもそれなりには認めている様子。




やー、まさかこの二人をピーチに書いてもらうことになるとは思わんかったw

なんか分かんないことあったら遠慮なくどーぞ☆

75ピーチ:2012/07/09(月) 12:17:59 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜弱点〜

剣と剣を交し合う、言葉には表しにくい音が響き渡る。
「・・・っと」
「避けてばっかじゃ・・・試合になんねぇよ」
そう言って一瞬の隙も与えず、相手の至る所を狙って剣を突きつけているヒースに対し、彼の相手である昇は
「まぁな。・・・でも」
と、途中で言葉を切る。
「あ?」
ヒースは、区切られた言葉に対して不満そうに聞き返す。
「なんつーか・・・やっぱり、先に知るものって相手のやり方だよなぁ、と」
瞬間。
カラン―――と音がした。そして。
「―――・・・え?」
ヒースの掌に収まっていたはずの剣が、ない。
「お前さぁ、無意識の内に剣の握りが甘くなってんの。だから、俺如きにやられたわけ」
その指摘を受けたヒースが、思わず自分の両手を見る。滑り落ちた剣を持っていたはずの両手からは、いつの間にか力が抜けていて。
「どーする?その腕、結構堪(こた)えてそうだけど・・・まだやるか?」
昇の問いに、ヒースは
「・・・るに、決まってんだろ・・・」
と、力強く返す。
「よし」
ヒースの返答を聞き、昇が己の剣を、ヒースに投げてよこした。
「へ?」
「それ使えよ。んで、そっち貸せ」
命令口調でそう言って、左手でヒースの剣を渡すよう催促する。
「・・・ほらよ」
ヒースも諦めたか。彼の剣を握り、自分の剣を投げる。
「―――んじゃ」
改めて、開始(スタート)。

76ピーチ:2012/07/09(月) 12:23:12 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あああああありがとう!!ほんとに!!

・・・え、シュオン様がまさかのジルをこき使ってる的な?

じゃーさ、ソフィア様のことはジルはヒースと一緒でいい?←御嬢様

んで、ユーリエちゃんはシェーラちゃんと一緒でいい?←ソフィア様

ごめんね。何か質問ばっかで・・・。

77月波煌夜:2012/07/09(月) 12:45:11 HOST:proxy10053.docomo.ne.jp
>>ピーチ

呼び方一覧(今決めた)


○ジル

「シュオン」
「お嬢様」(ヒースの「御嬢様」は固さを出したくて決めたからね)
「ヒース」
「シェーラちゃん」

全員にたいして敬語はなし。
ごーいんぐまいうぇいです。


○ユーリエ

「シュオン様」
「ソフィアちゃん」(お嬢様っていうよりは可愛い年下の子って感じに捉えてる)
「ヒースくん」(ひらがなよろしく)
「シェーラちゃん」

シュオンにだけちゃんとした敬語\(^o^)/



ヒースがんばれー!

78ピーチ:2012/07/09(月) 13:09:56 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

さんきゅー!これ元に頑張るぞ☆

そろそろジルを登場させるつもりw

79ピーチ:2012/07/09(月) 14:01:26 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜乱入者〜

「おーっと」
そう呟きながらも不敵に笑った昇を他所に、ヒースは額に汗を浮かべながら。
「っそ・・・」
と、荒い息を吐き出す。
「あれ?さっきの威勢はどーした?」
カン―――と音がして、二つの剣が交じり合う。
ふっと笑みを浮かべ、昇が小刻みに剣を揺らす。その度に剣が振動する。剣を握るヒースの手にも、それが伝わる。
「ちょっと昇?あんまり本気出さないでよ?」
軽く注意を促す天音に、冷静な昇の言葉が返ってくる。
「ダメ。勝負は常に真剣に。・・・じゃ、ねーの?」
昇の言葉に、天音がうっと言葉に詰まる。そしてヒースも、
「・・・だな。手加減なんか、絶対にすんじゃねぇぞ・・・」
そう言って、剣を持ち直す。
その時。
―――カラン、と音がして、剣が滑り落ちる。
「「・・・え?」」
ヒースと昇。二人の声が、見事にシンクロした。
滑り落ちた剣は。
「な、んで・・・?」
昇が、空っぽになった両手を呆然と見ている。そこに。
「ちょーっと無理しすぎなんじゃねーの?ヒース?」
そう言った青年は、昇がヒースから借り受け使っていた、弾き飛ばされた剣を持っている。
焦げ茶色の、少し眺めの髪に金を連想させる山吹色の瞳。見た目の年齢よりもかなり痩せて見える彼は、いつの間にか昇の背後に立っていて。
「じ・・・ジル!?」
思わず、ヒースが青年を見て大声を出す。
「お、お前・・・他の兵士と一緒に居たんじゃ・・・」
「まァな。でも、こっちでまた面白そうな音が聞こえてきてよぉ」
来てみたら、案の定ヒースが居た、とのことだそうだ。
「なーんか・・・こいつみてっと暗殺者(アサシン)の頃の血が疼くなぁ」
「やめろ。こいつ馬鹿みたいに強いからやめろ」
「なーに言ってんだよ?オレ様の強さ知ってんだろ?見くびってんの?」
いやそうじゃなくて、と言葉を濁すヒースだが、あっけに取られている昇を見て、小さく言った。
「・・・悪い。勝負に水差しする奴がいて」
「・・・いや、それは構わねぇけど」
そう言って、昇はふっと笑い、
「やっぱり、勝負は一対一、だよな?」
と問うた。

80ピーチ:2012/07/09(月) 15:11:57 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜二人の善人〜

「あっそ」
そう呟いて、如何(いか)にもつまらなさそうに剣を返すジル。
「ったくよ・・・最近、全く楽しみねーよなァ」
「―――ジル。そんなに楽しみたいなら、今すぐ炎の中にぶち込んであげようか?」
満面の笑みを湛え、しかしとてつもなく恐ろしいことをさらりと言ってのけるシュオンを見て、ヒースが
「やめろ。それこそやめろ」
と、焦りまくりながら言う。
「あはは、冗談に決まってるじゃない?」
・・・冗談に聞こえないのが恐ろしい。
「・・・シュオンさァ、何かあっさりと酷いこと言うよなァ」
「え?僕は全然、酷いこと言った覚えなんてないけど?」
にこやかに、しかしはっきりと「自分は何も言っていない」アピールをするシュオンに、ジルが冷めた視線を送る。
「なァ、お嬢様ァ?シュオンに何とか言ってくれよ?」
そう言いながら、ジルがソフィアの方に視線をやる。
「・・・炎の中にぶち込むって言うのは、さすがにどうかと思うわ」
まだ毒薬を口の中に投与した方がマシよ、との意見を述べるソフィアに、シュオンは。
「あ、そうだね。じゃあ、今夜にでも、ジルを実験台にして試してみようかな。新しい毒薬の威力」
ぱっと花が咲いたように、明るい表情になるシュオンに、ヒースが慌てて
「や、やめろおぉぉぉぉおおお!?」
と叫んでいる。さすがのジルも、
「うひゃー・・・シュオンが本気でしないわけねーわな」
と呟いている。
「・・・で、俺はどーすりゃいーの?」
「・・・さぁ。待っとけば?」
昇と柊一が呟いた直後。
「―――何の音?さっきの」
そう言って、出てきたのは。
―――真っ赤な炎を思わせる紅蓮の髪に、美しい金の瞳。すらりとした身体は何一つ無駄がなく。
「ゆ、ユーリエさん!」
そう言ったのは、乱れた髪を整え終えたばかりのシェーラ。そして、ユーリエと呼ばれた彼女はゆっくりとシェーラの方を向いた。

81ピーチ:2012/07/09(月) 20:43:24 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜強さ比べ・前編〜

「シェーラちゃん・・・どうしたの?その髪」
何気なく尋ねるユーリエに、シェーラが言葉を濁しながら
「あー・・・ちょっと、いろいろありまして・・・」
と苦しい誤魔化しを試みている。
「・・・そう。あら?あなた達は?」
そう言って、今度は天音達の方を向く。
「ちょっと・・・いろいろあった人達で」
シェーラがそう答え、天音達は気付かぬふり。
「・・・で、ヒースくん達は何をしてるの?」
「あー・・・ちょっと、な・・・」
ヒースが答え、その後あっと声をあげる。
「え、お前、結局またやんのか?」
「へ?」
ヒースが、左手で腕組みをした昇を指差し、そう尋ねる。
「あ、あぁ・・・別に構わねぇけど・・・」
「じゃあ、もうしばらく相手して貰うぜ・・・」
そう言って、ヒースが再び剣を構える。それを見た昇が
「・・・あぁ、後で泣いて後悔するなよ?」
と言って、同じように剣を構える。
「・・・じゃーな。頑張れよー」
ジルは、つまらなさそうにそう言って、傍にあった木にもたれる。
これは、初めてじゃない。
―――開始(スタート)を知らせる声は、要らない。

82月波煌夜:2012/07/09(月) 21:02:33 HOST:proxy10080.docomo.ne.jp
>>ピーチ

おお…!
まだ月波が書いてない未来の話も無理なく完璧に仕上げているだと…!

もうこの出来事、これからの番外編にもちょこっとだけ自然な感じでいれちゃお(`・ω・´)


それにしてもジル、迷惑極まりねーなw

83ピーチ:2012/07/09(月) 22:05:17 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あぁぁぁ!!ごめん!マジごめんっ!!

どーも未来系書くのが好きで・・・←自分のでもノートには実際に書いてないやつばっかw

え、入れてくれるの!?ありがとー!!

・・・あ、ジルね。まぁジルにも後々ヒースに協力して貰う予定だからw

84ピーチ:2012/07/10(火) 22:35:14 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜強さ比べ・中編〜

試合(ゲーム)が始まってから三十分程が経過した頃。
「っ・・・!?」
今まではある程度の余裕があったように見える昇の剣が、ヒースの剣に勢い良く弾き飛ばされる。
(こいつ・・・)
そう思った後、彼が考えたのはただ一つ。
―――完っ全に俺の弱点掴みやがったな・・・。
昇が自覚している、ただ一つの弱点。それは。
―――間合いが近すぎる時に、その姿を捕らえられなくなること。
今のヒースは、昇の背後に回り込んでいた。当然、昇の視界に映るものはない。
「―――っは・・・」
面白い。
喉の奥で呟き、昇の灰色がかった黒い双眸が、カッと見開かれた。

「・・・っ!?」
今までは、少しの余裕があった昇の表情が、突然崩れた。
「・・・え?」
ヒースの今居る位置は、昇の背後。完璧な真後ろ。その時、今まで焦りの表情しかなかったヒースの顔に、僅かな笑みが漏れた。
「―――分かった」
今までは余裕の笑みを崩さなかった昇のそれが、突然崩れた。
つまりは。
「お前さ―――後ろ弱いんだ?」
そう言って。ヒースが昇の掌に収まっている剣を弾き飛ばした。

85ピーチ:2012/07/11(水) 17:55:58 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜強さ比べ・後編〜

「うわ・・・っ!」
突然のヒースの反撃に、思わず昇の体勢が崩れる。
仮に、単なる遊び(ゲーム)だとしても。真後ろを取られたら打つ手がない。
「・・・しゃーねぇなぁ・・・」
今、彼の手に握られている剣は、ヒースのもの。
そして、ヒースが使っているものが、昇のもの。
―――本当は、こんなことはしたくないけれど。
小さく言い訳をしながら、剣を大きく振りかぶる。
「お前・・・何考えてる?」
ヒースが、いぶかしみながら小さく尋ねる。あれほど強かった彼が、突然こんなに甘くなるはずがない。常に真剣勝負だと、そう言ったのは昇自身だ。
「・・・悪いな」
そう呟き、昇の手がふっと緩む。当然、ヒースの額を狙っていたそれは。
―――なす術もなく、彼の額に落ちて―――
「あ・・・っ!?」
―――来なかった。
「・・・へ?」
落ちる寸前、ヒースの剣を弾き飛ばした何かが、“彼”の掌に収まっていた。
「・・・ジル?」
「ちーっと、油断しすぎなんじゃねェの?ヒース?」
そう言って、“それ”を妖しく黒光りさせているジルが持っているものは。
「・・・悪かったな」
ばつが悪そうに呟くヒースに、ジルがにやりと嘲(わら)う。
「んじゃ、そろそろ仲間に入らせてもらおうかァ?」
言ったと同時。ジルが光らせていた剣を、昇に向けた。

86月波煌夜:2012/07/11(水) 19:16:19 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp
>>ピーチ


すげえ…!
数百単位のプロの兵士を捌くヒースが苦戦しておるよ…!
昇くん最強だな\(^o^)/


ジルの口調もパーフェクトだね!さすがピーチ!

87ピーチ:2012/07/11(水) 22:14:01 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あー・・・またつっきーキャラが目立ってなーい・・・((泣

ほんっとごめんね!!後から目立つ予定なの!ヒースが!!

もーちょいのご辛抱を!←タメと敬語を合わせんなw

88ピーチ:2012/07/12(木) 18:34:14 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜対決・前編〜

「え、何、お前も入んの?」
「いーじゃん。お前だって卑怯な手使ったわけだし?」
ジルの容赦ない一言で、昇がうっと言葉に詰まる。やがて。
「・・・わぁったよ、ただし。こっちは一人なんだから、二人で攻めるのはナシな?」
そう確認を取った昇に対し、ジルが不満そうに表情を歪めた。
「えー?俺様もっと派手にやりてェなァー」
「文句言うな。それにこいつ、かなり強いぞ」
ヒースの言葉に、ジルがにやりと嘲(わら)う。
「俺様に勝てる奴がいるわけ・・・シュオン除いているわけねーだろー?」
律儀に訂正を入れ、再び笑い出す。そんなジルの言葉に、昇は。
(あの金髪に負けた?嘘だろ?)
心の内でそう呟き、彼の言う金髪の青年を見据えた。
―――同時。
「うわっ!?」
突然、昇の視界に、細身の剣が映った。慌てて、それを払った。
が。
「ざんねーん」
ジルの言葉が、頭上から降りかかった。

89ピーチ:2012/07/12(木) 21:11:17 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜対決・中編〜

「ってぇ・・・」
右肩を押さえて小さく呻き、しかし痛みを思わせぬ動きで剣を構える。
「へェ、案外やるじゃん?」
ジルが、昇の動きを見ながら軽く呟く。
昇は、ジルの言葉を無視しながら、勢い良くその構えた剣を光らせる。
しかし。
「お前さ―――段々、いい加減になってねぇ?」
ヒースが呟き、ジルがきりつけた箇所とほぼ同じ位置を斬りつける。当然、今まで押さえていた痛みが倍になるわけで。
「・・・っ!!」
昇が、声にならない悲鳴を発する。それを見て、さすがに天音達も
「ちょっと・・・大丈夫!?」
と、駆け寄りながら尋ねる。
「・・・馬鹿、言ってんじゃねぇ、よ・・・こんぐれぇで、くたばるかっての・・・」
言いながらも。昇は大量の血が吹き出ている右肩を、爪跡が残る程に強く抑えている。
「この場所・・・まさか・・・」
「平気だって、言ってんだろーが・・・」
そう言って、彼が左手で剣の刃を握る。その直後。
―――真っ赤な、鮮血が散った。
「―――っ・・・・・・!!」
息の止まるような感覚に見舞われた昇のその傍では、ジルが己の剣を見て満足そうに笑っている。
「あー、この感じいいなァ。最近、まるで忘れてたぜー」
笑いながら、心の底から満足そうに笑い、改めてそれを振りかぶろうとする。
が。
「・・・おい、もう止めとけ」
不意に、ジルの腕を誰かが掴んだ。ヒースだ。
「あ?邪魔すんの?」
「お前はやりすぎ。殺していい、なんて条件があったか?」
ヒースの言葉に、ジルが心底つまらなさそうに剣を下ろす。が、次の瞬間。
ジルが目を輝かせながら、昇の後ろにいる人間―――柊一を誘(いざな)った。

90ピーチ:2012/07/12(木) 21:30:47 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜対決・後編〜

「なァ。お前、俺様とやんねェ?」
ジルの言葉に、柊一が少し遅れて反応する。
「・・・え?俺?」
「そ。お前が俺様に勝てたら、そいつのことは見逃してやるけど」
「は?」
ジルの言葉の意味が理解できず、思わず柊一が聞き返す。
「だーかーらー。俺様に勝てなかったら、そいつをぼろぼろにするってこと」
それを聞いて、柊一の顔から、表情が消える。同時に、昇も。
尤も、昇の場合は。
「馬鹿止めろ!そいつ尋常じゃねぇぞ!?俺に軽く習ったことがあるくらいのお前が勝てるわけねぇだろ!?」
そう。自分を囮(えさ)に、柊一を殺しかねない。あの男なら、ほぼ百パーセントの確率で。
「絶対無理だって!悪いこと言わねぇから止めとけって!!」
しかし、昇の抗議も虚しく。
「つまり・・・俺が受ければ昇は安全ってことだよね?」
柊一が、そう確認する。つまり。
「・・・やるんだなァ―――?」
ジルの嬉しそうな声に、柊一は薄く笑う。
「うん。まぁ、俺は剣術とかって皆無だけど」
「だから止めろって!!」
昇が言いかけた時、天音が素早く口を挟む。
「動かないで!傷口移すから!!」
そう怒鳴られ、昇がしぶしぶ大人しくなる。
そんなことをしている合間にも。
「・・・んじゃ、始めるぜ?」
にやりと嘲(わら)うジルに対し、柊一もふっと不敵な笑みを浮かべ。
「―――容赦は、してね?」
―――それが、試合開始(ゲームスタート)の合図になる。

91ピーチ:2012/07/13(金) 07:38:07 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜“確実”と“不確実”・前編〜

“―――容赦は、してね?”
柊一が自分で言った通り、間合いも剣の振り方も全てがバラバラ。しかも、ほとんど攻めることがない。ただ避けるだけ。
「へェ・・・こういう所はシュオンそっくりだなァ」
そう呟き、しかし鋭い切っ先を思い切り突きつける。
「―――でもな」
口の端を吊り上げながら、ジルが言う。
「避けてばっかじゃ、俺様を倒すことはできねェぜ?」
言って、容赦なく柊一の持っている剣を弾き飛ば―――
「・・・え?」
―――されなかった。今でも、彼の掌に納まった剣は、しかし少し刃が欠けている。
さすがの昇も、驚いて目を見開いている。ジルもまた同様。
「・・・へェ?さっすが俺様が見込んだだけあるなァ・・・」
ジルが満足そうに呟き、手招きをする。
まるで、柊一に挑戦するかの如く。
「んー・・・悪いけどさ」
手首を軽く回しながら、柊一がふっと笑う。
「俺・・・確実に勝機が回ってきた時しか、手を出さないような性格だから」
そう言い、近寄ってきたジル目掛けて、思い切り剣を振り下ろした。

92ピーチ:2012/07/13(金) 08:00:15 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜“確実”と“不確実”・中編〜

「げ・・・っ」
ジルの小さな声が、やけに響いて聞こえるのは、周りが恐ろしい程に静かな証拠。
もちろん、その声は柊一の耳にも入った。が
「大事な仲間をあんなにされてまで―――俺も黙ってる程、優しくないから」
そう言った柊一の横顔に、心なし狂気に満ちたものが見えたのは、気のせいだろうか。
ぼんやりと思いながら、しかし身体は素早く反応する。
「おわっ」
そう小さく叫び、ジルが咄嗟に己の剣で避ける。しかし。
―――速い。
繰り出す剣の速さ(スピード)が、今までとは比にならない程に、速い。
そして。
「―――っ・・・!?」
思わず、ジルが右肩を押さえて剣を取り落とす。
同時に。
柊一がやっと覚醒したかのように、はっとした表情になり、慌てて尋ねる。
「あ、ごめん・・・大丈夫?」
尋ねる柊一に対し、ジルが脂汗を流しながら答える。
「・・・バーカ。んなこと言ってっと、その内俺様に殺されちゃうぜ?」
「あ、それなら大丈夫」
「「へ?」」
柊一の言葉に、ジルともう一人―――ヒースが、驚いて問い返す。
「一応、天音以上にすばしこいつもりだから。俺」
そう。彼には感覚がある。
剣術はゼロでも、その並外れた感覚がある。
・・・単に、それを「危険察知用アンテナ」と呼ぶ者もいるが。
「結構、妖とかで鍛えてたし」
「・・・あんたの場合、鍛える鍛えないの問題じゃないと思うわよ」
天音の抗議に、柊一が小さく苦笑した。

93ピーチ:2012/07/13(金) 18:48:47 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜“確実”と“不確実”・後編〜

「まぁ、ね・・・」
苦笑しながら呟く柊一を見て、天音もつられて苦笑する。
「とにかく・・・そっちの彼もかなりの傷負ったみたいね・・・」
「いや。天音の方が酷いでしょ、絶対?」
いささか表情を引き攣らせながら、柊一が真っ青になった天音に抗議する。
「これくらい、大丈・・・」
そこまで言って、天音が小さく呻く。その隣には、柊一同様、慌てた昇の姿が映る。
「・・・れ?」
ジルが、驚いた様に目を見開く。
「・・・? どうしたの?」
ジルの声を聞き、シュオンが尋ねる。
「いや・・・何であいつが平気で動けるんだろうと・・・」
彼の言う“あいつ”とは、明らかに昇のこと。確かに、昇はジルにかなりの傷を負わされたはず。
「天音が移してくれたんだよ。自分に」
二人の会話を聞いていた昇が、話に割って入る。
「・・・彼女に、移した?」
黙って成り行きを見守っていたソフィアが、唐突に尋ねる。
「あぁ。俺の傷を自分に移してくれたわけ。だから俺は平気なの」
代わりに天音が酷い目見てるけど、と、少し声を後して言う昇に、天音が呟く。
「・・・それは大丈夫よ。ただ、そっちの人の傷も同じ場所よね?」
「いや止めろ。マジで危ねぇから」
天音の考えていることを察した昇が、すぐさま止めに入った。

94ピーチ:2012/07/13(金) 22:02:36 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜傷口〜

「大丈夫だって、これくらい・・・」
言いつつも、天音が肩を押さえる。その後。
「・・・利き腕じゃないし・・・」
と言うので、昇が大声で怒鳴る。
「そう言う問題じゃねぇよ!!お前の傷口が悪化したらどうすんだ!?」
そう喚く昇の隣で、柊一は静かな怒りを爆発させていた。
「本当にいい加減にしようね?天音?」
「・・・じゃあ、軽い消毒でもさせとけば?」
さすがの天音も柊一の気迫に押され、思わず無言で降参する。
「それならあたしが出来ます!」
元気良く言いながら、シェーラが勢い良く手を上げる。その横で、ヒースが無言でシェーラを軽く睨んでいる。
「そう、ね・・・じゃあ、私達は帰らせて貰おうかしら?」
「いやいやいや」
「え?」
昇の慌てた声に、天音が問い返す。
「悪いけどさ、天音の傷の痛みが引くまでいさせてくれないかな?」
柊一の言葉に、天音の顔色がさっと青ざめる。
「ちょ・・・冗談じゃないわよ!!何で・・・」
「うん。いいよ、別に」
「あ?いいのかよ、シュオン?」
「だって、ソフィアとかヒースを助けてくれたのって、この人達だよ?」
シュオンとヒースの会話が、途切れ途切れに聞こえる。
天音がそう思った直後、昇が慌てた声で何かを言う。
「―――あ、天音!しっかりしろよ?」
「・・・うるさい、わよ・・・」
心にもないことを言いながら、天音がふらりと立ち上がる。それを見て、シェーラが彼女を支える。
「だ、大丈夫ですか?」
シェーラの言葉に、天音が薄く笑いながら答える。
「えぇ・・・大丈夫」
結局、天音達がエインズワース家で休むことになったのは、言うまでもない。

95ピーチ:2012/07/14(土) 22:20:20 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜怪我の後〜

半刻ほど過ぎた後(のち)。
「・・・もう、大丈夫だけど?」
そう呟いた天音を他所に、昇がぶつぶつと呟く。
「あっれー?ここの傷口、もう塞がったのかー?どー思う?柊一?」
昇の問いに、柊一も同じくぶつぶつと答える。
「いや、まだ塞がってないと思うけどなぁ・・・」
「・・・私が残ったら、そっちの傷も移すわよ?その内」
「よし。帰ろう!」
慌てた声で叫び、柊一が勢い良くドアを指差す。
「いやいやいやいや」
柊一の言葉に勢い良く反対し、立ち上がりかけた天音の両肩を掴んで座らせる。
「った・・・」
「もーちょい休んどこうな?天音?」
「な・・・っ!?」
天音が言いかけた言葉を昇が制し、そのまま続ける。
「それに、こっちにまだ“いる”かも知んねぇんだからよ?」
昇の言葉に、柊一の表情が真剣になる。同時に、天音は表情を翳(かげ)らせる。
「もしそうなったら・・・私だけが足手纏いね?」
わざとおどける天音を見て、柊一が優しく言った。
「別に・・・天音は普段からやりすぎなんだから、たまには休んどけって、な?」
柊一の言葉に、天音が俯き加減になりながら答える。
「・・・えぇ。でも、もし危なかったら、私も参加させて貰うわよ?」
天音の言葉に対し、二人がふっと笑った。
「足手纏いにならないように・・・な?」
そう言ってから。

―――≪紫水晶(アメシスト)≫。
今は、あのエインズワース家に保管されてるとか。
なら。
今から、それを拝借しに行こうか・・・。
所詮は、ただの“物”に過ぎない。人間の資格すらない。ただ、幸せを運ぶだけの人形なのだから。
≪紫水晶(アメシスト)≫を使って、必ず、幸福を呼び込ませてやる―――。
狂気に歪んだ一人の男の影(シルエット)が、まるで蝋燭(ろうそく)の炎のように、ゆらゆらと揺らめいた。

96月波煌夜:2012/07/14(土) 22:38:20 HOST:proxyag087.docomo.ne.jp
>>ピーチ


やっぱり天音ちゃんが苦労してるじゃないかーっ!

大丈夫ですかー(つд`)


おおう、侯爵の影が…w
いい感じに雰囲気出てるな(・∀・)

97ピーチ:2012/07/14(土) 22:41:51 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやいや、天音からすればいつも通りの出来事だからw←え・・・

へーきへーき!帰ったら他の裏組織に属してる友達が治療してくれるもん!

うん、公爵の影は出したんだけどね・・・名前に出てくる「ウ」が書けないから・・・

とりあえず名前変えて「ソルファール」ってしてもいいかな?←ごめんね、勝手で・・・

98ピーチ:2012/07/15(日) 11:13:20 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜狙われた“人形”・前編〜

「―――ところでさァ」
唐突に、ジルが話題を振る。
「そっちの黒髪、俺様に負けたわけだよな?」
そっちの黒髪、と言いながらジルが指したのは、昇の方だ。
「…飛び入り参加の奴に負けたのは、屈辱だな」
昇が、ばつが悪そうにふいと顔を背ける。しかし。
「でもまぁ、そっちの黒髪には勝てたから。それでいいや」
と、ヒースに向かって軽く言う。
「だから黒髪言うなぁっ!!」
「でーも俺様もなァ、そっちの如何にも優しそうな奴に負けたのは屈辱だなァ」
そう言って、今度は柊一の方を見る。
「いや。俺、優しくないし?」
ジルの視線に気付き、慌てて柊一が言う。
「あーあ、お前みてーな奴をぼろっぼろにすんのも面白そうだと思ったのになァ」
「いやいやいや。それ冗談抜きで怖いからね?」
下手したら妖よりも怖いかも、と苦笑する柊一に、昇が賛同の意見を述べる。
「まぁな。多分、お前があいつの剣もろに受けてたら、俺以上の怪我負ってたかも」
「…それは遠慮したいな」
真面目に青ざめながら、柊一がぼそりと呟く。それに対し、
「それにしても、お前だったらジルさえも打ち負かすかと思ったけど…油断でもしてたのか?」
ヒースの問いに、昇が軽く腕組みをしながら答える。
「ん…油断って言うより、ちょっとあれ、って思ったのかな」
「はぁ?」
「いや、最初にお前とやった時と比べて、明らかに隙だらけだったから。そんなの、どうぞ狙って下さいって言ってるようなもんだろ?」
昇の言葉に、ジルが思い出したようにあぁと呟いた。
その直後。
「―――失礼しますよ?」
たったそれだけの断りを入れて。一人の男が、ソフィアの部屋に入ってきた。

99ピーチ:2012/07/15(日) 15:26:27 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜狙われた“人形”・中編〜

「―――…ソルファール、公爵?」
「おや。お久しぶりですね、シュオン様」
年齢(とし)は明らかにシュオンの方が下。しかし、貴族の位としては、圧倒的にシュオンの方が上である。
「…どうかしたんですか?わざわざ部屋の中ま―――」
で、入ってこようとは?とシュオンが尋ねる前に、ソルファール公爵と呼ばれた男が、大地色の瞳でじっと何かを見据える。その先にいる者は。
「―――やっと、見つけた」
そう呟いた後。にやりと嘲(わら)い、視線の先にいるものを指す。
「失礼ですが、この少女が≪紫水晶(アメシスト)≫ですよね?」
柔らかい物腰で尋ねる公爵の言葉に、指された少女―――ソフィアはピシリとその場に硬直する。
「…≪紫水晶(アメシスト)≫と言う名前ではありません」
それ相応の力はありますがね、とシュオンが答える。ソフィアは、依然その場から動かない。
―――否。動けない。
「なら―――どれ程の金額でお譲りいただけますか?」
にやりと、公爵は不気味に嘲い、≪紫水晶(アメシスト)≫…ソフィアを指す。
「…え?」
「どれ程の金額を積めば、≪紫水晶(アメシスト)≫をお譲りいただけますかな?」
問い返す公爵に、シュオンははっきりと
「いくら大金を積まれても、譲ることは出来かねます」
そう答え、その後に。
「それとも…僕の家が、エインズワーズがそこまでお金に困っているようにお見えですか?」
アイスブルーの瞳を更に冷たい色に変え、シュオンが鋭く言う。
「それに、彼女は≪紫水晶(アメシスト)≫なんかじゃない。ソフィアという、立派な名前を持っています」
「…なら、今此処でこのアメ…ソフィアを奪ったら、取り返しますか?」
「当たり前です。僕の一番大切な人ですから」
柔らかくしっかりとした受け答えで、しかしその表情(カオ)には“ソフィアを呼び捨てにするなこのクソ公爵”と、しっかり書かれている。
「それにあなたには、奥様と娘さんがいらっしゃるでしょう?」
シュオンのその言葉を聞いた直後。公爵の目がぎらりと光った。

100月波煌夜:2012/07/15(日) 15:46:57 HOST:proxyag027.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ごめん反応遅れた!

うん、全然問題ないんだけど、
「侯爵」ね!
公爵だとシュオンの父上と同じになっちゃうから!


公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の順番だから!



な、直せる?(´・ω・`)


…あとシュオンの受け答えが素晴らしすぎた…!本当原作を凌駕してくれるな…!

101ピーチ:2012/07/15(日) 16:22:41 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ああぁぁああ!?ごめん!間違えた!!

次からは絶対に「侯爵」で行くから勘弁!

あ、シュオン様の台詞で侯爵にスイッチ入っちゃうんでw

いやいやいやいや!原作を凌駕するほどの才能など持ち合わせとらんw

102ピーチ:2012/07/15(日) 17:08:21 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜狙われた“人形”・後編〜

「あぁいたよ!ずっと前の話だけどなぁ!!」
いた、と言っていることから、恐らく出て行かれた、辺りが一番受け止めやすいだろう。
「でもなぁ、お前のせいで出て行ったんだよ!!!」
そう叫んで、右手に何かを持ち、構える。それは。
「…あぁ、そうだった。ちょうど、そこにいる従僕(フットマン)は、剣術が半端ないと聞きましたが」
そういって、構えたそれ―――とてつもなく長い“刀”をヒースに向ける。
「実は私は、刀を得意とするんですよねぇ…」
言った瞬間。
勢い良く駆け出し、その刀を。
「そ…っ!?」
シュオンが、小さな声をあげる。
―――ソフィアの首筋を狙いとし、侯爵の刀が宙を舞う。
しかし、それでもソフィアは何の反応も示さない。
侯爵は。
彼女の、首筋ぎりぎりの所で刀をピタリとあてがり。
「…どうせ。幸せを呼び込むのは、この紫色の瞳(め)だけだ。だったら…」
ソフィアの身体が、今まで以上にびくりと強張る。そして。
“―――しあわせを呼ぶのは、その瞳なのだろう?なら、その目だけを抉りだしてしまえば良いのではないか?”
あの頃の、ことを。名も知れぬ伯爵の家に“保管”されていた頃の記憶が、頭を過(よ)ぎる。
―――…どうせ、自分はただの“人形”。現に、こうして自分を奪いに来た“人間”が此処にいる。
「だったら…この目だけを抉りだせば良い」
ニタリと笑い、その刀をソフィアの瞳に近づけた。
―――瞬間。
「させねぇよ」
そう言った、侯爵の持っていた刀を弾き飛ばした人物―――ヒースの黒い双眸は、彼の静かな怒りを示していた。
「わりぃけど、御嬢様はお前みたいな奴の願いは叶えない。実際、カークランドの現宗主が証明してくれたよ」
剣の鋭い切っ先を侯爵に向けながら、敬語など一切使わずヒースが言う。
「―――何がどうなってるのか知らないけど…弱いものいじめは関心しないわね」
そう言って、長く深い闇色の髪を揺らす天音が、ヒースに小さく呟く。
「…え、マジかよ…?」
「えぇ。その可能性は高いと思うわよ。つまり…」
そこで一度区切り、天音が再度言葉を紡ぐ。
「目には目を…って言うでしょう?刀には?」
「…刀、を」
そう言って、ヒースが昇を顧みる。
「…天音、お前何言った?」
「別に。刀なら、昇が使いこなしてるわよって言っただけ」
にっと笑う彼女を見て、昇がため息を吐きながら右手を天へとかざした。
「わりぃけど。そこの黒髪にも、しっかり協力して貰うぜ…?」
言ったと同時。侯爵の刀が、昇の右目に向かって空(くう)を切った。

103月波煌夜:2012/07/15(日) 17:55:07 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp
>>ピーチ


遥か昔のブッドレア伯爵の台詞を引用してもらえるとは……!
さすがピーチだー!(`・ω・´)

予想の斜め上を行ってくれる!

104ピーチ:2012/07/15(日) 18:08:58 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あははー♪あたし引用は大好きなのだーw←意味分からんww

よ、予想の斜め上…じゃあ次は真上を行くよう頑張るぞー!!

…まず斜め上さえも行ってないけどね、絶対…

105ピーチ:2012/07/15(日) 19:09:54 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜≪紫水晶(アメシスト)≫の力〜

「―――っと…」
この程度は、予想の範囲内。しかし。
「刀もなしに…どうやって俺を打ち負かすんだぁ?」
そう。昇が刀を準備しようとした所に、侯爵の刀が飛んで来たのだ。
そのため、まだ昇の手に刀はない。
「ちょっと待てよ、急すぎねぇか?」
「…何だと?」
昇の言葉に、ほんの一瞬だが、侯爵の手が止まる。しかし、昇には。
「…時間、どーもありがとうございまーす」
そう言って、昇の手に長い刀が握られる。
「な…っ!?」
侯爵は、驚きのあまりに声が出ない。ヒース達もまた同様。
「こーら黒髪、手伝えつってんだろうが」
「黒髪言うなっ!」
怒鳴りながらも剣を構えるヒースを見て、昇が天音に、軽く目配せする。
不意に、りん―――と言う音がする。
この音は、と、思わずヒース達が音の出所を探る。
それは。
「……ほら。これで、準備は終了よ?」
「…サンキュ」
昇が、ふっと笑った。そして。
―――ふっと、音がした。彼が、刀を振った時の風の音が。
その切れ目から。
陰(いん)を住処とするモノ達が、一斉に溢れ出す。
そこに、天音の声が重なった。
「彷徨える魂よ…今還れ。己の行く道へ」
そう囁くように呟いて、天音が鈴をりん…と鳴らす。直後。
「…サンキュー」
「どういたしまして」
二人の会話が聞こえた後、今までの暗い“気”が消え去り、“聖”の気が満ち満ちていた。
「…え…」
侯爵が、呆然と呟く。それを合図とし、昇が怒鳴り声を上げた。
「んじゃ―――反撃と行かせて貰おうかぁ?」

106ピーチ:2012/07/16(月) 00:01:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜紫の瞳〜

―――此処は、何処だ?
そんな考えが、侯爵の頭を過(よ)ぎっていく。
なぜ、こんな奴に負かされる?
そう。彼は≪紫水晶(アメシスト)≫と称される、ソフィアを奪おうと此処に来たはず。
それなのに。
「んー…黒髪、止め刺していいよ」
「だから黒髪言うなと何度言ったら…っ!!」
そう言い、侯爵を打ち負かした青年達―――ヒースと昇が軽く腕組みをしながら彼を睨んでいる。
「ちょっと待って」
突然、彼らの行動を黙ってみていた少女―――天音が声をあげる。
「「あ?」」
二人揃って問い返すが、天音からすれば、そんなものどこ吹く風。
「…一つ伺いたいんですが」
厳かな口調で問う天音に、侯爵の方が思わず引く。しかし、何とか威厳を保ちながら
「何だ?」
とだけ返す。
「さっき、そこの金髪君のせいで家族が出て行ったって仰ってましたよね?あれ、どういう意味ですか?」
金髪君と言われたシュオンが、ほんの少しだけ不機嫌そうな表情を浮かべた。
「……以前、パーティであなたにお会いしたと言うようになりましてね」
そこで一度区切り、それを紡ぐ。
「その後になってから、もう一度逢いたい、と言うようになったんですよ。…で、ある日一枚の書き置きだけで家を出て行ったんです」
「…………つまり」
黙って話を聞いていたシュオンが、にこやかに笑いながら、しかしその右手には爆弾と思われる明らかに危険な物体。
「僕が何をしたわけでもなく、ただ単にあなたの勝手な逆恨み、と?」
にっこりと笑い、左手にはいつの間に取り出されたか、小さな玉薬。
「―――ところで、爆死と新しい毒薬の実験台(モルモット)、どちらがいいですか?」
……絶対にどちらも嫌な選択肢を、この青年は選べと無言で言っている。
「そ、その…すみませんでした―――!!」
シュオンの恐ろしい笑みや声音を聞き、侯爵が青ざめながら退散して行った。
「…シュオン、それは?」
「ん?あぁ、ちょっと、玉にして濃度を濃くしてみたんだ。凝縮させてみたいなぁ、って思ってさ」
親友のヒースの問いに、シュオンはぱっと花が咲いたかのような笑みを浮かべ、楽しそうに話す。
しかし。
「………ソフィア」
未だに小さく、小刻みに震えている彼女を見て、シュオンのアクアブルーの瞳が心配そうにソフィアを覗き込む。
「…大丈夫よ。慣れてるもの」
青ざめながらも小さく言うソフィアに、天音達が話が見えないような表情をしている。それを見て、彼女は小さな声で、話し出した。

107ピーチ:2012/07/17(火) 22:54:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜“紫”色〜

「……私のこの目の色、紫一色でしょう?」
唐突に言い出したソフィアの言葉に、三人は思わず彼女の瞳を見る。
ころころと感情が変わっていたその瞳は、今では何の感情もない。
しかし、見る者を吸い込んでしまいそうな真っ直ぐな瞳。
「この色…紫ってね、私の一番嫌いな色だったの」
「…え?」
ソフィアの言葉に、思わず天音が問い返す。こんなに美しい色が、嫌い?
「この瞳のせいで、私は“しあわせを呼ぶ人形”として、色々な貴族の家を転々として来た」
淡々と語る彼女の瞳は、話す内にどんどん堅くなっていき。
「―――小さい頃から強いられて来たそんな生活に、“人”としての感情をしまい込もうとした。それで、髪を二つに縛るようになったの」
そう言って、彼女は己の二房の髪を指す。
「きつく縛って…感情を消せるようにって」
「何で?」
「………え?」
唐突に言った天音の言葉に、ソフィアが問い返す。
「何で、わざわざ感情しまい込む必要があるの?あなたは、れっきとした人間でしょう?」
天音の言葉に、ソフィアがしばし硬直する。
―――今までの貴族と同じように、願いを叶えるよう言われる。そう、思ったから。
しかし。
「人間に感情は付きもの。それをわざわざ、消す必要はないでしょ?」
そう言って優しげに笑う彼女を見て、いつの間にかソフィアの瞳には大粒の涙が溜まっていて。
「……私、何かした?」
一瞬だが、本気で思案顔を浮かべる天音に、柊一と昇が呆れ返りながら説明した。
「あのなぁ…こーゆー場合は、普通嬉し泣きだろーがっ!」
「そうそう。人なんだからね?」
二人の説明を聞き、天音があぁと呟いた。

108月波煌夜:2012/07/17(火) 23:11:36 HOST:proxy10024.docomo.ne.jp
>>ピーチ

侯爵雑魚だーww


天音ちゃん優しいな!超優しいな!
月波まで嬉し泣きしそうだ…!(きめぇ

109ピーチ:2012/07/17(火) 23:23:34 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うん!侯爵雑魚だよーww

うーむ…天音は単純に自分の幸せを自分で逃がしてるというただの鈍感娘だったりするw

人が言われて嬉しい事とかを、気付かずに言ってるタイプw

それでたまーに人を泣かせるというねw

110ピーチ:2012/07/17(火) 23:42:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜違わないもの〜

「―――じゃあこれで、紫も嫌いな色じゃないわね?」
悪戯っぽく笑いながら問う天音に、ソフィアが泣き笑いのような笑みを浮かべる。
「えぇ。…もう、大丈夫」
嫌いな色じゃ、ない。
そう思った直後。シェーラが、何かを抱えながらぱたぱたと走ってきた。
「ソフィア様ー!でしたらこれ、着けてくださいよー!!」
そう言った彼女の手から現れたのは、紫色の宝石。これは。
「……アメシス、ト…?」
ぼんやりと呟いた天音の横で、シェーラが胸を張って答える。
「はいっ!これを着けたら、ソフィア様の瞳と、全く同じ色に見えるんですよー」
「見えるんじゃな」
「見えるんじゃなくて、実際にそうなんだよね」
ヒースが言いかけた言葉を遮り、シュオンがにこやかに言う。
ソフィアの首から下がったその宝石は。
「―――………同じ、だ…」
呆然と呟いてしまうほど、その宝石と瞳は、一分と変わりがない。まるで。
「アメシストの紫色を…そのまま流し込んだみたい」
何気なく言った天音の一言が、ソフィアの瞳を震わせる。
「紫って」
「…紫?」
唐突に言った天音の言葉に、ソフィアが髪をいじりながら相槌を打つ。
「そう。紫ってね」
――――――高貴の色…って言われてるのよ。
その天音の言葉が、ソフィアの耳に余韻のように残った。

111ピーチ:2012/07/18(水) 23:37:26 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜紫×紫〜

「高貴の…色?」
問い返すソフィアに、天音が首を縦に振りながら答える。
「えぇ。日本では、昔は暗いの高い人が身に着けていた色なの」
そう答えた天音に、ソフィア達は変な所に食いついて。
「……え?日本?」
呟きながら、彼女はそれをどこかで聞いたことがある、と思案する。そこに、天音が
「あ、そっか。ここでは、日本の方が異界になるんだっけ?」
と呟いた。
「「え?」」
「「異界?」」
……前者がソフィア、シェーラ。後者がシュオン、ヒースである。
「えぇ。まぁ、言葉は通じるみたいだけど」
笑いながら答える天音を見て、四名はいかにも不審そうな表情を浮かべる。
「じ、じゃあ…どうやって此処に来たの?」
「……私達が追ってた妖が開いた、扉があってね。そこを強引にこじ開けた」
天音のとんでもない一言に、一同の表情は驚愕の色に染まる。まさか、あの妖を追ってるだけでも信じられないと言うのに、こじ開けた?
「まぁ、こっちじゃ携帯も使えないしねぇ…」
苦笑気味に呟く柊一に、天音が同情の声をあげる。
「全くよ。まさか、使えないとは思わなかったわ。そのくせ、充電切れになるのは早いのよね」
「確かに」
柊一の言葉に、昇が続ける。
「あのさぁ…今ここでそれ言ってても、無駄だと思うけど?」
「…そうね。どうする?帰る?」
天音の一言に、ソフィア達がえっと呟く。
「うーん…確かにそろそろ帰らないと、奥平さんも心配してそうだしなぁ…」
「………ここは任せたわよ。柊」
「…はい?」
天音の言葉に、柊一がピシリと音を立てて固まった。

112ピーチ:2012/07/19(木) 20:42:58 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
訂正

暗いの高い人 ×

位の高い人  〇

113ピーチ:2012/07/19(木) 22:10:02 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜新たなる来訪者〜

「ち、ちょっと天音さん?何で俺がんなこと…」
「いいわよね?」
「…方法は?」
まず何を任されたんだ俺は、と呟く柊一に、天音は。
「とりあえず、連絡とれない?奥平さんと」
「いや、無理だろ。唯一の連絡手段なかったら」
携帯を指しながら、昇が口を挟む。
「―――あぁもうっ!!どう説明するのよ!?」
天音の半分自棄が混じった言葉に、昇があっさりと
「うん。お前が何とかしてくれ」
口が上手いからお前は、と言い放つ昇に、天音の怒号が飛ぶ。
「そう言うあんたが何とかしなさいよっ!?」
彼女の怒声に、ソフィア達が呆気に取られている。無理もない。今まで四人とも、クールな天音しか知らなかったから。
「…あ、ごめんなさい。ちょっと、ね…」
はっと我に返った天音は、ばつの悪そうな表情を浮かべながら、しかし少しだけ、笑った。
「…何か、意外な一面見ちゃった…」
シェーラが、大きな青灰色の瞳をきらきらと輝かせながら、天音を見つめる。そして。
「やっぱり可愛いー!!」
そう言ったと同時。シェーラが、突然天音に飛び掛った。
「え?わ…っ!?」
咄嗟のことに驚いた天音だが、しかし条件反射で彼女を避ける。
そのため。
ベシャ、と言う鈍い音が聞こえ、シェーラが見事に顔面から激突。
…目の前にあった、壁に。
「いったぁ…」
半分涙目になりながら、シェーラがぼやく。
「あ、あー…ごめんなさい?」
天音がそう言って、苦笑混じりに彼女を見る。大きな青灰色の瞳は、涙で一杯になっており、しきりに目を擦っている。
「…お前なぁ…」
ヒースが、半ば呆れながら彼女を見る。
「だってしょうがないじゃない!!可愛いんだから!!」
シェーラはそう反論するが、ヒースはもう相手にもしていない。
「あのなぁ…お前一番最初にもそうやって御嬢様に抱き付いてたろ!?」
二人が言い合いをしている中、天音が一言。
「…びっくりした」
それだけ、呟いた。
「…まぁ、邪気の欠片もないわけだからねぇ…」
苦笑しながら、柊一がそう呟く。それに対し
「当たり前でしょ…?生身の人間よ…?」
と、天音が若干青ざめながら言う。
―――直後。
「―――……へぇ?こんな所に居たんだ?」
そういった声が聞こえ。瞬間。天音の顔色が一瞬で変わり、咄嗟に、声の主を探す。
彼女が視線を向けた、その先に。
「……何で?何であんたがここにいるの!?」
―――一人の少女の悲痛な叫びが、辺りに木霊した。

114ピーチ:2012/07/21(土) 09:33:14 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜殺害〜

「何でって、そりゃあ…」
突然現れた青年は、ニタリと笑いながら。
「―――主人(あるじ)に命じられたからに決まってんだろ?」
そう、言って。
―――とてつもなく長く、細い槍のようなものを、
「見つけ次第…殺せってなぁ―――?」
彼女目掛けて、思い切り刺すような素振りをした。
「――――――っ!!」
咄嗟のことに、天音は当然避けられない。やはり、素早さでは柊一に劣るか。彼なら、条件反射で避けるだろう。
「あま…」
突然のことに、昇が言いかける。しかし。
「大丈夫だよ」
「へ?」
小声で呟かれたその声は、まるで彼女の安全を確信しているかのようで。
「し、柊一…?」
「あの天音が、そう簡単に殺されるわけないだろ?」
その声で、彼がはっと我に返る。
直後。
ザン―――と、肉を裂くような音が聞こえた。
青年の持つ槍にかかって、浮いているその物体は。
―――力なく腕と頭(こうべ)を垂れ、ぐったりとしている、天音だった。
「……あ…」
突然目の前で起こったことに思考がついていかないソフィア達を前に、青年がちっと舌打ちをする。
「やっぱ…一筋縄じゃ行かねぇってことかぁ…」
さすが、主人(あるじ)が警戒するだけある、と、青年が笑い。
……するりと、その槍から彼女の肢体が滑り落ちる。
当然、天音の身体は横倒れに―――
ならなかった。
すたんと降り立ち、その左手には紅い扇を構えている。彼女が刺されていたはずの場所には、傷どころか、傷跡一つない。
「え……?」
ソフィアが、思わず呟く。それを他所に、天音は。
「…いきなり現れて、随分なことしてくれるじゃない?」
そう言って。不敵に笑った少女は、すっと扇を振り上げた。

115ピーチ:2012/07/21(土) 10:42:05 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜式紙〜

「―――乱れし刻(とき)を更に乱し客よ」
扇をすっと振り、それを再び天へと掲げる。
その中心部に、黒い渦が巻き上がり、それが扇を突き抜け、黒き龍へと変化する。
「…やべ」
そう呟いた青年の耳に、しかし別の声が聞こえてくる。
「暗き、深海の底に眠りし龍の宝庫…」
「へ?」
彼が、聞こえた方を見る。そこに居たのは、男にしては少し長いくらいの髪を無造作に括り、両手を組み合わせた青年―――柊一が、何やらぶつぶつと唱えている。
「根の底の国に居座る住(すみ)の民(たみ)よ。我が命(めい)を受け、我がためにその身を果てよ」
「その中の更に深く眠る神龍よ。我が眼前に出で立ちし者を、その場に止めんことを為せ」
二つの声が、不協和音のように青年の耳に木霊する。しかし。
「あら…式紙に音は通用しないんじゃなかったかしら?」
“式紙”。天音のその言葉を聞き、柊一と昇が目を見開いた。

116ピーチ:2012/07/21(土) 19:57:15 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜降臨者〜

「し、式紙…?」
思わず、柊一がそう繰り返す。
「えぇ。…まぁ」
そう呟いて、天音がふっと笑う。
「そろそろ、終わりにしましょう?」
すっと紅い扇を掲げ、静かに唱え出す。
「…聖なる、天からの贈り人よ。我先にと、鎮めの舞を舞わんが如く」
静かな詠唱が、辺り一面に響き渡る。そして。
ふわりと、不意に天井の辺りが淡い光に包まれ始める。
「…え、えぇ!?」
シェーラは驚いて悲鳴にも似た声を発するが、ソフィアは逆。驚いて声も出ないようだ。
そこに。
微かな、笑い声が聞こえた。それも。
―――淡く光っている、その天井から。
大人のような笑い声ではなく、まるで幼い子供が家の周りを走り回っているかのような笑い声。
「―――それは、幾度として死に値するモノ。生かしてはおくな」
不意に、彼女の口調が変わった。
詠唱をしているからではない。本能的に、それを察知する。では、詠唱が終わったのか。しかし、良く見ると。
「…柊一」
「え?」
昇が、突然柊一の服の袖を引っ張り、天音を指す。
「……あ…!?」
彼の見た、天音は。
―――長く、闇以上に深い闇色の髪は。金のそれに等しい程の輝きを放ち、彼ら一人一人を見据える。
「………久方振りだな。裏会の人間ども」
そう言った天音は、ふわりと癖のない、伸びやかな金の髪を靡(なび)かせ。
「…えぇ。確かにお久しぶりですね。しかし」
「何度仰ったら分かるんですか?それを器にするのは止めて下さいと?」
明らかに不機嫌な声音で、二人が言う。それに対し、彼女は。
「別に、悪くはないだろう?わざわざ、そこのモノを連れに来たんだ。文句を言われる筋合いはないはずだが?」
「それならそれで、用件だけ済ませればいいでしょう?」
「わざわざ天音に憑依する必要もない」
髪の色は変わる。声音も口調も、何もかもが。今までの、どこか物静かさを思わせるその表情は、どこか自信に満ち満ちていて。
「……まぁよい。この者は、我の気に入ってる存在だからな。こんな所でくたばられても困る」
「…それ、絶対にご自分のお都合しか考えられてませんよね?聖天使様?」
聖天使、と言われ、言われた方はいささか機嫌を悪くする。
「立場を考えよ。かつては天津神に通じると、その名を轟かせた一族の末裔よ。我には、フキルと言う名がある」
「はいはい。十分理解致しました。連れて行くなら連れて行く、そしてさっさと離れて下さい。フキル様?」
投げやりな態度で、柊一がそう言い放つ。それを見て。
「……我が神に進言すれば、すぐに通ることくらい知っているだろう?我なら、何を進言すると予想する?」
それを聞いて、柊一がぐっと唇を噛む。下手すれば。
「まぁ、今はいいだろう。二度目はないと思え」
そう言い、逃げ出せずにいた青年の首根っこを掴み、“それ”は眩しい程の軌跡を残しながら上へと上がっていった。
そして、天音の身体がふらりと前かがみになる。
それを、傍にいたヒースが咄嗟に支えた。
「お、おい?大丈夫か?」
さすがに心配したか。ヒースが腕の中で昏倒している彼女に呼びかける。
「うん。大丈夫だよ。多分、すぐに起きるから」
そう言って、柊一がヒースに言う。
「ごめんね、いろいろと厄介な問題ばっかり運んでて」
純粋に向けられた謝罪に、ヒースが言葉を失う。
「い、いや…別に構わねぇけど…」
そう呟きながら、ヒースが天音の身体を柊一に預ける。
「じゃあ…起きるまでしばらく、寝かせて貰ってていいかな?」
柊一の問いに、シュオンがいいよと答えた。

117ピーチ:2012/07/21(土) 22:19:24 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
すっげーーーーー疲れたんですけど・・・・・・・・・・・・・


マジスか???

ごめん・・・かんけいないことを・・・・

118ピーチ:2012/07/22(日) 10:13:41 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜負担〜

「―――…あ、れ…?」
目を覚ました天音は、どこか見慣れない風景に、思わず己の目を疑う。しかし。
「あ、起きました?」
その声を聞いて、ある程度のことは理解できた。
「大丈夫ですか?気分とか、悪くないですか?」
そう尋ねるのは、メイドのシェーラ。小鹿色(フォーン)の髪に、大きな青灰色の瞳。それを見て。
「えぇ…大丈夫だけど…」
そう、言葉を濁す天音を見て、シェーラが心配そうに言う。
「や、やっぱ、気分が悪いとか…」
「あ、いや、そういうことじゃないわ」
慌てて訂正を入れ、その後に呟く。
「ここって…もしかしてあなたの部屋?」
「え?あ、はい。そうですよー」
大丈夫だと悟った途端、シェーラがいつものように明るくなる。
「でも、あの二人もびっくりされてましたよ。いきなり倒れられて」
「え?」
あの、二人が?
あり得ない。無意識の内にそう思ってしまった天音は、しかし自分を何とか納得させる。
―――そう。自分を心配するなど、あり得ないわよ。
だって、今まで何度も同じようなことがあったのだから。
彼女がそう思った直後。
「あ、どーぞー、起きられましたよー」
シェーラが、誰かを招き入れるような声をあげた。まさかと思って見ると。
…その、まさかだった。
「大丈夫かー?」
「こりゃまた、災難だったねぇ…」
それぞれが思い思いのことを言い、天音に同情の眼差しを向ける。それを見て、天音は
「…何が、あったの?」
そう尋ねる。すると。
―――とんでもない答えが、返ってきた。
「……聖天使様に憑依されたのって言ったら、多分天音くらいだろうねぇ…」
「―――…は?」
思わず、天音が言葉を失った。

119ピーチ:2012/07/23(月) 08:52:19 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜帰り道〜

「ま、また…!?」
「うーん…認めたくはないだろうけどけどねぇ…」
苦笑しながら、柊一が軽く唸る。
「ちょっ…それって意味ないじゃない!?何のために結界張ったと思ってんの!?」
天音の抗議も虚しく。昇が晴れやかに、あっさりと言い放つ。
「無意味だ。諦めて解け」
「そ…んな勝手な…!」
「はいはいはい、それはいいから。とりあえずさ、もう気配はないみたいだよ?」
「へ?」
「え?」
前者は昇、後者が天音である。
「さっきのが最後………さぁて、帰ったらまず、三池の弟を尋問にしとかないとねぇ?」
そう言った柊一は。
……表情こそにこやかなものの、その瞳は一切笑っていない。むしろ。
「……あんた、その内とんでもないことになるわよ…?」
いささか退(ひ)きながら、天音がぼそりと口にする。
「やだなぁ。別に怒ってなんかないし、大丈夫だよ?」
そう言ってる最中(さなか)にも。
……彼の手の甲の血管が恐ろしく浮き出ていることには、気付かないふりをしよう。
「………帰るんですか?」
シェーラが、小さくそう呟いた。
それに対し、天音が。
「ん…そろそろ帰らないと、私達も色々とあるからねぇ…」
苦笑しながらそう呟いて、シェーラ達四人に向き直り。
「まぁ…色々とお世話になりました」
そう言って、浅く頭を下げる。
「あ、黒髪君。色々とごめんね?」
「だから黒髪じゃねええぇぇぇえええ!!」
怒鳴り散らすヒースに、天音が静かに訂正を入れる。
「……ヒース君、だったっけ?」
「…覚えてるならそっちで呼べ」
「じゃーなー、黒髪ー」
「黒髪言うなあああぁぁぁあああ!!」
「……帰りましょうか?」
「うん…」
苦笑しながら、柊一が天音の言葉に頷く。そして。
「昇。帰らないなら置いてくわよ?」
そう言って、天音と柊一がさっさと歩き出す。
「あ、おい待てよ!」
昇の言葉を黙殺しながら、彼女はもう一度シェーラに
「さっきは本当にありがとう。おかげで、そこに居る黒…ヒース君も戻ってきたからね」
黒髪、と言いそうになったのだろう天音が、ヒースの形相を見て訂正を入れる。その後に。
「じゃあ…色々と助かったわ」
それだけ言って、彼女らがすっと踵を返す。
やがて。
―――黒い、渦が浮かび上がり。その渦の中に、三人の姿が溶け込んでいった。

120ピーチ:2012/07/23(月) 16:25:13 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
はい終わりましたコラボ小説w

多分次は気付いたらつっきーが書くと思いまーすw

121月波煌夜:2012/07/23(月) 17:30:01 HOST:proxy10079.docomo.ne.jp
>>ピーチ


すいません最近来れてませんでした!


完結おめでとう\(^o^)/
そしてありがとう!
超お疲れ様ですっ(;´д⊂)


なんか気になる伏線が一杯出てきたな(・∀・)


…ところで、天音ちゃんファンになって良いですか?(ぉい
だってクール娘好きなんだもん!



つ、月波のターンですか次は(^^;;
もうちょっと待ってね!
あと、質問とかまたするかもだけどよろしく!


とりあえず、本当にお疲れでした(`・ω・´)

122:2012/07/23(月) 17:58:21 HOST:zaq31fbd18b.zaq.ne.jp
完結したんかいな!?

それはちょっと驚きやわ…。

123ピーチ:2012/07/23(月) 20:55:46 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

おぉっ!久々の登場ー!!

どーもでーす!こちらこそありがとー!!

え、天音ファンになってくれる!?それこそありがとうだー!!

質問ならお任せ!←答えられる分だけw

おつかれーい!←あほ。

りんりん>>

うん、完結しちゃったw

つぎはつっきーの話になると思う!

…あたしの最悪文だとつっきーの文章も哀しくなるかもだけどね((泣

124月波煌夜:2012/07/23(月) 21:07:24 HOST:proxyag053.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ピーチの神文章の後に書くとか何の羞恥プレイだこれw


っていうかストーリーも何も思いついてないしね!キラッ☆
……なんかないですか?(酷ぇ

125ピーチ:2012/07/23(月) 21:48:13 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやいやいやいや!!あたしの文章なんかが神文章だったら世界の神様はどーなるっ!!

あたしの方が恥掻くって絶対・・・((泣

ストーリー…あたしのキャラ達(主要メンバー三人)がマルグリット王国行ったから次はソフィア様ご一行様方に日本においでいただくとか?←訳分からんw

んで、天音ちゃん宅の前で妖に襲われかける…とか?

…ごめん、死にかけシーンしか浮かんでこない…←酷っ!

126月波煌夜:2012/07/23(月) 23:05:46 HOST:proxyag120.docomo.ne.jp
>>ピーチ


○| ̄|_←土下座


すみませんごめんなさい月波にはあいつらを自然に日本に連れて行ける程の技量は御座いません本当にごめんなさい°・(ノД`)・°・



……なんかもうストーリーバランスとか起承転結とか完全無視で、行き当たりばったりで良いなら書き始めちゃおっかな(^^;;


あ、ちょっと質問良い?

あの三人の外見と、簡単な性格をよろ\(^o^)/

あと天音ちゃんはいつも着物をお召しになっているの?
あと舞踊ったりはしない?←着物少女のイメージ

とりあえずこれだけ。


うん。本当にすみませんでした(つд`)

127ピーチ:2012/07/24(火) 13:06:13 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやいやいやいや、つっきーならフツーに日本まで運んで行きそうw

ストーリーバランスは簡単に合わせちゃいそう…w

質問(回答)

天音…外見→くるぶしを超える程に長い上に闇以上の深さを持つ黒髪(髪は縛らない)と、同色の瞳。基本的には深藍の着物

性格→基本クールで泣いたりすることが少ないけど、たまに降りてきた殺された両親のことで泣く。柊一、昇、奥平(と、闇夜という別の組織)にはたまに子供っぽい態度を取る。

柊一…外見→肩よりも少し長いくらいの黒髪を後ろで一つに括っている。黒い髪と同色の瞳。基本的に黒系統の服装が多い。

性格→穏やかで怒ることが少ない。たまに自分を庇って他界した妹が夢に出てくることがあり、その時は決まってボーっとしている(天音達が心配するほど)。かつては天津神に通じる一族だと信じられ、多少の陰陽術も使用可。

昇……外見→肩につかないくらいの短い髪に、灰色がかった黒い瞳。柊一同様、基本的に黒系統の服装が多い。

性格→怒りっぽい時とそうでない時の差が激しい。剣、槍、刀、鎌、短剣、弓などを扱うことを得意とし、それら全てに魔力を有する。多少口調がきついものの、柊一や天音のことをそれなりに気遣っている。

ごめん、これくらいしか思いつかない。これでいいかな??

128月波煌夜:2012/07/24(火) 15:42:33 HOST:proxy10051.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ありがとうございますありがとうございます…!

や、ピーチになら普通にできても月波には到底無理なんだー(;´д⊂)



天音ちゃん髪長っっ!

あれだね、皆色々と苦労してるんだね(´・ω・`)

昇くんの剣って特殊なの?妖切れたりするのかな?

あと柊一くんは天音ちゃんと同じような力持ってるってことなのかな?

129ピーチ:2012/07/24(火) 16:06:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやいや、つっきーだからこそフツーに出来ると思うんだけど…

うん、天音ちゃんに限らずあたしのキャラ(主人公)はそれなりに長いよ!

うん!皆苦労してるのっ!!分かってくれてありがとうっ!

あー、昇君の武器は基本的に何でも斬るよw妖でも幽霊でも←さすがに霊を斬ることは仕事上できないけど…

昇君の特技はそれぞれ家族から倣った+元々の自分の特技デスネw

む…柊一君は…まぁそんな所でしょー←チョーテキトー女w

鈴使うってとこは一緒。←親戚だからネw

後は扇を使うか陰陽術を使うかの違いダネw

質問(答え忘れてた所の回答)

天音は基本的に扇振っただけで舞踊ってるって勘違いされるから、それでもいいけど…実際の舞を踊ることもあるよw

130月波煌夜:2012/07/24(火) 17:26:24 HOST:proxyag119.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ほうほう\(^o^)/


ありがとう!
またなんかあったら聞くと思いますごめんなさい!でもよろしくね!



とりあえず、『黒の騎士』がもうちょいだから、それ完結したらってことで(..)
先に言っておくけど超残念だからね!ね!


……で、タイトルの案ない?(ぉい

131ピーチ:2012/07/24(火) 19:32:10 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

どーいたしまして!

いーのいーの、聞きたいことあったら何でも聞いて!←答えられることのみw

残念なんかじゃなーいっ!!つっきーの文章は神文章なのー!!

た、タイトル…!?

うーん…あたしが『紫の乙女』だったからさ、つっきーは『紫の歌』ってどう?

後はあたしみたいに『紫の乙女 〜〜』みたいな?←「〜〜」の間に何か入れるw

132月波煌夜:2012/07/24(火) 20:25:10 HOST:proxy10074.docomo.ne.jp
>>ピーチ


や、それだとピーチのお話の要素がなくなっちゃうじゃないか!
紫の乙女、もなんかちょっと申し訳なかったのに(´・ω・`)


でも毎回サブタイつけるのは良いねー(・∀・)




あ、あと話的に、『紫の歌』の割合が多くなっちゃうと思うんだけどごめん(つд`)

133ピーチ:2012/07/24(火) 20:43:02 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやいやいや!あたしの要素は特にナシだからいーのっ!

紫の乙女ってあたし結構好きだったぜぃ☆

サブタイはあたし的にも気に入ってるw←思いつくときはw

じゃーさ、あたしが紫の乙女、だったから…

つっきーが鈴とか扇とかの後にいろいろ繋げるのは?

…はい、テキトーでございます申し訳ありません…((泣

あたしも割合としては天音が多くなっちゃったから全然いーよー^0^

134月波煌夜:2012/07/24(火) 22:47:50 HOST:proxyag033.docomo.ne.jp
>>ピーチ


『鈴が歌う奇跡の旋律』

……駄目??


や、こんな真面目な話じゃないと思うんだけどね!
鈴プラス歌ということで(^^;;



あと、最初の一回ぶんはとりあえず書き終わったんだけど、悪ノリした結果天音ちゃんオンリーの描写のみという凄いことになりましたw
黒髪和風美少女の外見書くの楽しくて←

次はいつになるか分かんないけど、載せちゃう?

135ピーチ:2012/07/25(水) 08:08:19 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ぎゃあぁぁぁぁ!?凄いっ!凄すぎるっ!!

めっちゃネーミングセンスあるじゃんっ!!

載せて載せてー!不定期でも何でもいいからー!←あほ。

136月波煌夜:2012/07/25(水) 10:38:53 HOST:proxy10014.docomo.ne.jp
>>ピーチ


じゃあとりあえず、短いけど載っけるね!


…先に謝っときますごめんなさい調子に乗りました(つд`)
あと真面目なの最初だけだから!タイトル詐欺だから!

137月波煌夜:2012/07/25(水) 10:44:28 HOST:proxyag027.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――開幕――』







全てを呑み込む宵闇よりも深い、濡れ羽色の髪が静かに波打つ。


銀に透き通る月光を浴びて一際艶めく見事なその黒髪は、極上の絹糸の如き滑らかさ。


―――さああああっ


突如吹き抜けた微風が、深い藍色の着物の袖を、この上なく優雅に膨らみはためかせる。

―――揺らめく蝋燭の灯りに照らされ、その人物の姿が浮かび上がった。
女性と呼ぶべき年齢ながら少女のあどけなさをも残した、怜悧で整った顔立ち。

長く繊細な睫(まつげ)が陰を落とす、黒曜石のように澄み渡った瞳。

清らかな白菊の花弁にも似た、しっとりとして瑞々しい肌。


その少女は美しく、しかし無心に舞い続ける。


指先で鮮やかな紅の扇を広げ、弧を描く所作は流れる水のよう。
凛と背筋を伸ばし、足を運ぶその様は月下に咲く一輪の花のようでもあった。



―――りん―――……



―――そのとき、玲瓏たる鈴の音が、静寂を破って涼やかに響いた。



「…………!」



少女が舞を止め、星のない夜空に唯一、煌々と輝く満月を真っ直ぐ振り仰ぐ。



「……これ、は……」



ふ、

珊瑚の色をした唇から漏れる吐息。


小さな呟きが、静まり返った深闇に儚く溶け込み、僅かな余韻を残した。

138なめ:2012/07/25(水) 10:52:05 HOST:host204.nabari-mie.ed.jp
わぁ〜
もう、気になりますぅ。
また早く投稿してください!!

面白くて、最近みだしました

139ピーチ:2012/07/25(水) 13:41:23 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

やばいやばいやばい!!つっきー天才っ!!

宵闇は思いつかなかったー!?

やっぱり天才以外の何者でもないよっ!!神様ぁぁ!!←え…(退き

続き待ってるよー!!

140月波煌夜:2012/07/25(水) 15:05:23 HOST:proxy10087.docomo.ne.jp
>>なめさん

こんにちはー!
コメありがとうございます(o^_^o)

宜しかったら、原作である月波のグダグダ小説『紫の乙女と幸福の歌』と番外編『紫の乙女と愛の花束』、
ピーチの天才的作品『鈴扇霊』もよろしくお願いします\(^o^)/←宣伝



>>ピーチ

キャラ壊しの天才でごめんね!
ここぞとばかりに日本系の描写をやってみた。
紫の歌じゃできないし!
勝手に色々いじってごめんなさい°・(ノД`)・°・

目に余るとこあったら言ってねヾ(^▽^)ノ


続きはもうちょいお待ちください……下手な上に遅いって…

141ピーチ:2012/08/10(金) 20:16:18 HOST:nptka304.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

まーったくキャラ壊しの天才なんかじゃなーい!!

キャラ生かしの天才ではあるw

下手じゃないからいいのだー!!

でも更新は待ってるというねww

142彗斗:2012/08/12(日) 18:28:37 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
お〜すごいです! やっぱり私とは違いますね〜本当にこっちが脱帽しよっとww
ソフィア嬢の方も凄いですが何してても凄過ぎ……Σ(o_o:)

ピーチさん>>
凄まじいぐらいにキャラの設定が濃いですね! こう言うのは結構好きです(天音ちゃんとか…)
この小説の様に私も滑らかに出来たらいいのにキャラ達が絶対にそうさせてくれない…(泣) ←出演者を欲張って過ぎた結果

143ピーチ:2012/08/12(日) 18:53:10 HOST:nptka402.pcsitebrowser.ne.jp
慧斗さん〉〉

凄まじい!?濃い!?

むー…そんなつもりはなかったのに…

慧斗さんのコラボの方が面白いよー!

144月波煌夜:2012/08/12(日) 19:01:28 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

いやいや、月波はいつも彗斗さんの神文章に脱帽させて戴いておりますよw
あれだけの人数を同時に、自在に操れるのはほんと才能ですよ!羨ましい!



>>ピーチ

楽しみにしてるよ!
月波のは無視しちゃって構わないからねっ(*^_^*)

あ、あとピーチ考案のユーリエとソフィアの隠れ裏話も、そろそろ頑張ります←

145彗斗:2012/08/12(日) 19:41:19 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
いや、現実視点で言いますと才能はおろか色んな物が苦手なんですわww
勉強も努力も友達づ作りも…と、いろんなものが苦手で苦手で…
好きだと言えば音楽しかないと思ってるww
つまり才能の一片も無いって事でww

ピーチさん>>
いやいや…そんな事はあり得ないと思うけど…キャラが多過ぎてキャラの口調が違うシナリオ間違えたとかで結局の所、一話如きに2、3時間掛かっちゃってるんだよww
意外に小説書くのには四苦八苦しておりますww

146ピーチ:2012/08/12(日) 21:14:46 HOST:nptka201.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

ありがとー!頑張るよー!

え、無視しちゃっていーの…?

慧斗さん〉〉
まーったく同感!!

なのに出来は最悪w

147ピーチ:2012/08/13(月) 15:43:17 HOST:nptka207.pcsitebrowser.ne.jp
つっきーの許可が降りたので、新・コラボを載せたいと思いまーす


紫色の鈴

「あ、なた達…!?」
そう呟いた少女―――神代 天音は、目の前の出来事に思わず息を飲んだ。
今彼女は、隣が自宅で、ついでに彼女が管理をしている神代神社の本堂に居たのだ。
―――“本堂”に。
そこに突然、見ず知らずの集団が降ってきたら、どんな反応をすればいいのだろうか。
「あ、えっと…」
そう呟いた少女の青灰色の瞳に、見覚えがある。
あれは。
「お久しぶりですー」
苦笑気味に笑いながら、その青灰色の瞳の少女が言った。
「…久しぶりね…」
驚きの色を隠せない天音の目の前に居た少女、それは“あの時”以来、もう二度と逢うことはないと思っていた、あの少女だった―――。

148月波煌夜:2012/08/13(月) 16:09:21 HOST:proxyag067.docomo.ne.jp
>>ピーチ


キタ―――!
日本編キタァ―――!(うぜぇ
やばいやばいピーチさすがすぎる!
全身全力で応援してます(≧∀≦)



>>彗斗さん

月波も勉強とか努力とか人付き合いとか大の苦手ですよ!(キリッ

いえいえ、彗斗さんは才能に溢れていらっしゃいますから!
……それにしても2、3時間も掛けて下さっているとは初耳でした…。
月波みたいに20分掛けないでさっさか適当にやるのもアレですけど、無理はなさらないで下さいね!
一読者としては非常にありがたいことですがm(_ _)m

149ピーチ:2012/08/13(月) 16:20:16 HOST:nptka302.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー>>

きたよ―――!!駄文がきたよ―――!!

酷すぎる時は目をちゃーんと洗ってね!!←目を腐らせないように!

ってゆーか、読まない方が目のためだよ!!

150月波煌夜:2012/08/13(月) 16:22:05 HOST:proxyag073.docomo.ne.jp
>>ピーチ

神文章がきたよー!
むしろ気分爽快、視界クリア、目薬の効能があると思うよ!

151ピーチ:2012/08/13(月) 22:04:48 HOST:nptka304.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー>>

か、神文章…!?じゃあつっきーはどーなるー!?

…ほんとにね、目薬準備しててね!

152月波煌夜:2012/08/13(月) 22:25:24 HOST:proxy10080.docomo.ne.jp
>>ピーチ

え?ゴミ文章ww


いや目薬は一生必要ないくらいだと思います←
あ、ガン見しすぎて目が乾くかもだけどそれだけだぜ!

153ピーチ:2012/08/13(月) 22:33:57 HOST:nptka106.pcsitebrowser.ne.jp
紫色の鈴

「―――で、何であなた達がこんな所に…」
天音がそこまで言った直後。
「天音ー」
「居るかー?」
…あの声は。
思う暇もなく、本堂のドアが、がらりと開かれた。
そこに、居たのは。
「…不在だって言う紙でも貼っておけば良かったわ…」
額を押さえながら、天音がぼそりと呟く。
その後に、彼女は疲れきった声音で、その名を呼んだ。
「…柊も昇も、この人達のこと知ってるわよね?」
そう。今の二つの声は。
「あれ?確かその人達…」
「あの、異界の…」
そう呟いて、後者―――飛鳥井 昇が声を張り上げた。
「黒髪!!」
それを聞いて。黒髪と称された青年―――従僕(フットマン)のヒースが、即座に怒鳴り返した。
「俺の名前はヒースであって、断じて黒髪なんかじゃねぇ!!」
その言葉に、昇が。
「あ、そーだったな。わりぃ」
と、悪びれた様子など全くないが一応謝っている。
「ちょっと…それより―――」
天音が言った直後。突然畳に黒い渦が現れ、そこから、まるでゴミを捨てるかのように、二つの影が現れた。

154ピーチ:2012/08/13(月) 22:39:58 HOST:nptka205.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー>>

いやいやいやいや!!つっきーがゴミだったらあたしの文章って地球に存在してないし!!

…こんな駄文を読んでくれてありがとう。ほんとにありがとう。

155彗斗:2012/08/13(月) 22:47:03 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
いや、あのもうこう言うのは慣れましたのでお気になさらずww
気が付いたら「あっ…もう夜の3時!?」みたいな事もしばしばですのでww(本当に時間関係は疎くて疎くて……ww)

ピーチさん>>
まさかあれで終わっていたとは……初めから読み直していてビックリしました。
…でもあれですね?
ゴミを捨てる様になんてww (←また変な所にはまってる)

156ピーチ:2012/08/14(火) 15:34:35 HOST:nptka407.pcsitebrowser.ne.jp
慧斗さん>>

あれ?中途半端だった?←だったらごめん!

ゴミを吐き出すように…が正しい表現だったと今さら思うw

157彗斗:2012/08/14(火) 15:37:44 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
ピーチさん>>
ちょww
それはどっちにしてもゴミが前提だww

でも作者さんがチェンジするとは考えつかなかったなぁ…
やっぱピーチさんは天才なのかもね

158Mako♪:2012/08/14(火) 22:06:24 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
彗斗さん>>
ピーチは天才なのかもじゃなくて、天才なの!
私とは違う次元のお方ですよ(←意味不ww)

ピーチ>>
なんか日本編キターーー!!!
月波さんとのコラボ第二段!サイコー☆
頑張れ!
月波さん>>
うわぁ!!
見事な表現ですね☆
早く続きが読みたい!

皆様、楽しみにしております。

159Mako♪:2012/08/14(火) 22:08:06 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
彗斗さん>>
ピーチは天才なのかもじゃなくて、天才なの!
私とは違う次元のお方ですよ(←意味不ww)

ピーチ>>
なんか日本編キターーー!!!
月波さんとのコラボ第二段!サイコー☆
頑張れ!
月波さん>>
うわぁ!!
見事な表現ですね☆
早く続きが読みたい!

皆様、楽しみにしております。

160月波煌夜:2012/08/14(火) 22:56:58 HOST:proxy10018.docomo.ne.jp
皆さんはみんな天才ですよ!←突然



>>ピーチ
いやっほーい!
天音ちゃんって何気に人間味がある子だよね(`・ω・´)

コラボしてくれてありがとう。読ませてくれてありがとう。



>>Mako♪さん
ありがとうございます!
いやあ神作品にサンドされることになっちゃいましたよ恥ずかしい←
月波のはお待たせしてしまうかと思いますが、どうぞよろしくです!

161ピーチ:2012/08/15(水) 19:03:12 HOST:nptka103.pcsitebrowser.ne.jp
慧斗さん>>

あははw確かにゴミ前提w

まこ>>

いやいやいやいや!!あたしの文章力が天才の域だったら他の神様どーなんの!?

つっきー>>

いやはや、こちらこそコラボの許可してくれてありがとう!

こんな駄文に肩入れしてくれるみんなに感謝しないと!!

162ピーチ:2012/08/15(水) 22:34:51 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

「わ…ととっ!?」
そう叫びながら、とてもとても小柄な少女が飛び出してくる。
金とも赤とも取れる色のくるくるカールした艶のある髪と、服装。その二点から、育ちが良いことだけは伺える。
その小柄な少女を、間一髪で支えた影があった。長身の、無表情の青年。その表情は、恐らく本気でキレている時の天音といい勝負だろう。
柊一と昇がそんなことを思っている中、小柄な少女が青年に向かって怒鳴り散らす。
「く、クロードっ!!もっと受け止め方というものがあるじゃろう!?」
その怒鳴り声を聞き流しながら、青年は無表情で対応する。
「申し訳ありません。ルイーズ様の体勢に、少しばかり無理があっかと」
「それとこれとは話が別じゃ―――!?」
…勘違いをされないように、先に言っておこう。ここはあくまでも、神代神社の本堂。間違っても異界への道を簡単に開けるわけではない。
ましてや、こんな集団が飛び出してくるはずがないのだ。
そんな天音達の思考に全く気付かず、ヒースと青灰色の瞳の少女―――シェーラが声をあげた。
「る、ルイーズ王女!?」
「クロード殿!?」
呼ばれた二人―――小柄な少女はルイーズ、長身の青年はクロードと言うらしい―――は、同時に二人の方を向く。そして。
「そなた、ここは何処じゃ?」
突然、ルイーズがシェーラとヒースに問いかける。それに対し、二人は。
「あ、いや…俺らも良く分かんなくて…」
ヒースの返答を聞きながら、シェーラが天音達の方を向く。それに気付いた天音が。
「―――日本よ」
短く答え、それ以上のことは全く説明しない。それを聞いたシェーラが。
「え?日本って…」
その言葉を繋ぐように、彼女の後ろに居た長い銀の髪に紫色の瞳を持つ少女―――ソフィアが敏感に反応する。
「貴方たちが言ってた…」
「えぇ、ここがその日本。…まぁ、あなた達からしたら、ここは異界になるわね」
ソフィアの言葉を遮るように言った天音が、訝しげに問う。
「ところで―――何であなた達がこんな所に居るの?異界の戸は、そう簡単には開かないのよ?」
天音の問いに、ソフィアと、彼女の隣に居た青年達―――シュオンとジル―――が答える。
「いや、何でって言われても…」
「オレ達も、いきなり変な穴に吸い込まれただけだぜ?」
「…もういいわ」
呆れたようにため息を吐きながら、彼女は隅に置いていた携帯の電源を入れる。
直後。
突然、その携帯の着信音が鳴り響いた。かけてきた相手を確認して、天音がそれに応答する。
「もしもし?」
その一言から始まり。
「―――え?めぐみが?ゆうきは来ないの?」
そんな声が聞こえたり、
「……それってまさか―――…ちょっと?私はめぐみとは属性違うのよ?あっちは妖術師でしょ?」
挙句の果てに。
「――――――なーんで、私まで狙われなきゃいけないのよ…分かった。あんたが来るまでの間なら、何とか時間稼いでおくから」
そんな訳の分からない会話を終え、天音が外に出る。と同時に。
「―――柊、昇?」
二人の相棒の名を呼び、その後に。
「ちょっと…本堂(ここ)を護っててくれる?」
そう言った直後。神社の周りに、とてつもない妖気が渦を巻いた。

163ピーチ:2012/08/16(木) 06:57:20 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

「 ……やば」
小さく呟きながら、彼女は長い髪を揺らめかせる。
「―――ゆうきが来るまで、稼げない……かもなぁ…」
天音の声に反応するかのように、一つの人影が、彼女の前に現れた。
「……待ってたわ……めぐみをかたどった、人形さん?」
「うるっさいわね…」
めぐみ、と呼ばれた少女が、天音の言葉に敏感に反応する。しかし。
「―――天音?」
「そいつって…」
突然の声にはぁっとため息を洩らし、天音が簡潔に答える。
「えぇ……神矢 めぐみ。…妖術師の、ね―――?」
その答えに対し、二人―――柊一と昇がそれでも小さく身構える。
―――神矢 めぐみ。
天音が中学生の頃、尤も仲の良かったうちの一人。お互いに特異な能力を持ち合わせていることも、関係があるのかも知れないが。
「でも」
今の彼女は、“本物”ではない。
「そうでしょう?……わざわざ、必要以上の妖気を振りまくくらいだから、よほどのことよね?」
その問いに、めぐみの身体が突然、痙攣する。しかし。
「―――えぇそうよ。アクア様の再誕生のために……」
そこで区切りながら、しかし彼女の身体は素早く動き。
「あんたにも、餌になって貰うわ」
そう言って、天音の背後にすっと回りこむ。
「わ…っ!?」
間一髪の所でそれを避け、崩れそうになる体勢を何とか立て直す。
「分かってるの?私は、めぐみとは属性が違うのよ?」
「分かってるわよ、それくらい。でもね?アクア様の一部にさえなれば、そんなもの関係なくなるわ。だから安心して?」
「安心させる場所が違うと思うんだけど?」
直後。
「根の底の国に、古き年より祀られしモノよ。聖の光(こう)によって、その身を浄化させよ」
突然、小さな、しかしはっきりと聞こえる良く通った声が、めぐみの身体に見えざる縄を巻きつけた。

164ピーチ:2012/08/16(木) 07:36:01 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

「……ゆう、き…」
「ごめん、遅くなって。みなみと秋奈さんも呼んできてたから」
突然、現れた女性―――神園 ゆうきが、短く言う。
その他に二人―――神村 みなみと、神水(かみみず) 秋奈がゆうきに何かを伝える。
「―――分かった、ありがと。……ねぇ、天音」
「いいわよ。……昇」
いきなり呼ばれた昇は、めぐみを凝視しながら何だ、と声だけで応じる。
「あの二人―――黒髪君と、もう一人。あの二人に渡せる剣、ある?」
「……あぁ。確か、ジルって奴が剣は持ってたから」
「じゃあ」
―――何でもいいから、黒髪君に渡しててくれる?
その言葉に、昇が気だるげに、しかし一本の剣を生み出す。
それは、彼特有の魔力のこもっている剣(つるぎ)。
「…いざとなったら、自分達で守らせるつもりか…」
呆れ半分に呟く昇の言葉に、天音はあっさりと。
「当たり前でしょ?これから―――」
めぐみを、助け出さないといけないんだから。

165ピーチ:2012/08/16(木) 09:42:48 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

天音の言葉を聞いて、それまで黙って聞いていた柊一が口を開く。
「……めぐみちゃんを助け出すって…?」
「…今のめぐみの状態、分かってる?」
天音の問いに、二人がはぁ?と呟く。
「前にね、めぐみの妖術師としての能力、それから」
「―――生まれ持った異形の能力」
「……それを狙ってた妖が居てね。そいつを封じ込んだ後に、あれの第一眷属みたいなのが逆恨みして、その妖を再び生み出そうとしてるの」
「そのためには、めぐみの能力は必要不可欠。それだけじゃ完全にはなれないから、天音の能力を取り込もうって所よ」
上から、天音、ゆうき、天音、ゆうきの順だ。
「…って言うか、この話は前にもしたわよね?」
「うん。聞いた」
天音の確認を兼ねた問いに、柊一があっさりと。
「―――じゃあ、話は早いわ。柊、お願いがあるんだけど…」
「りょーかい」
軽く答え、右手を掲げる。そこに。
―――細身の、長い刀が生まれる。
それが、合図になる。
「……お願いします」
途端に、天音の口調が丁寧になる。そして、柊一の答えは。
「―――任せとけ。……みんなまとめて、薙ぎ払ってやるよぉ……」
彼の言葉と共に、めぐみの身体が突然、力を失った。

166月波煌夜:2012/08/16(木) 13:31:19 HOST:proxy10021.docomo.ne.jp
>>ピーチ

すげえ!
クロードとルイーズ、完璧にコピーできている!

っていうか、クロードどんな受け止め方したの…?(笑)



な、なんか複雑になってきたね(^^;;

167ピーチ:2012/08/16(木) 14:13:54 HOST:nptka407.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー>>

マジ?良かったー!

あー、クロードは…ルイーズ王女の襟首の辺りをてきとーにひょいって感じでww

168ピーチ:2012/08/16(木) 15:16:54 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

“―――みんなまとめて、薙ぎ払ってやるよぉ…”
言った直後。めぐみの身体ががたん、と前かがみになり、そしてそのまま倒れこむ。
それを見て、柊一が。
「―――やっりィ…」
にっと口端を吊り上げ、あくどい笑みを浮かべる。
―――数秒程、時を戻り。
彼が自分で言った通り、めぐみの目の前に剣(つるぎ)の切っ先を向け、左肩から右足に向かって斜めに斬りつける。その直後に、めぐみが倒れたのだ。
これは、つまり。
「……んで?後はどうする?」
柊一の言葉に、天音が。
「…後は、私達の方で処理します。ありがとうございます。……莉織さん」
天音の言葉を聞き、ゆうきが訝しげに繭を顰める。
「…ねぇ、あま―――」
「まぁいい。用がある時は呼べ」
気が向けば、出てきてやる。そう言い残し、彼の身体から無数の光が放たれる。
「…………柊?大丈夫?」
「ん…大丈夫」
それを確認した直後。
「天音!!」
「へ?」
いきなり大声で呼ばれた―――と言うより、半ば怒鳴られた―――天音は、驚いて声のした方を向く。
「……あいつらやべぇぞ」
「あ、あいつらって……」
「あの、異界の連中が!」
昇の言葉に、天音の顔色が変わる。
「何で、どうしたの!?」
「知るかっ!?俺に聞くな!」
とにかく、と、天音がゆうきの方を向く。
「ごめんゆうき、めぐみの意識が戻るまで、こっちに居ていいから!ほんとにごめんっ!」
「う、うん……大丈夫だけど…」
ゆうきが答えるか答えないかの内に、天音が一気に走り出した。

169ピーチ:2012/08/16(木) 15:51:23 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

三人が、見た光景は。
―――つい先程までは“何も”居なかったはずの本堂の中に、浮遊霊や性質の悪い妖、更には天井ぎりぎりのところに頭がある鬼など、それはそれは色々なものがいた。
ヒースは必死に、ジルは楽しそうに、ついでにクロードは無表情でそれぞれの剣撃を繰り広げている。
それを見た天音は。
「……な……っ!?」
何かを言おうとして、しかしそれが音にならない。
そんな天音の様子に気付いたか、昇が気まずげに。
「……これ、まさか……」
直後。
ひゅん―――と音がして、天音達の真横に、そしてヒース達の真横に風が吹いた。
そして、溜まっていた人外のものの大半が、その風によって掻き消える。
―――否。風ではなく。
「…これ、は…」
壁には、一本の矢が刺さっている。ではやはり。
「ごめん天音ちゃん!何かいきなり増えてきて……」
「あ…………文芽さん!?」
「まさか…とは思うけど、これ全部姉貴の仕業じゃねぇよなぁ…?」
昇の言葉に、文芽と呼ばれた女性―――昇の、四歳年上の姉―――はぶんぶんと首を横に振る。
「ううん。ただ…これの、ね…訓練してて」
「結局は姉貴が原因じゃねぇ!?」
「……ごめん」
自分の弟に怒鳴られる文芽を見て、天音がすかさず助け舟を出す。
「昇?文芽さんだって悪気があったわけじゃないのよ?現に、自分でこうやって片付けに来たじゃない?」
「悪気があってやってたら俺は一生姉貴と口聞いてねぇよ!?」
「文芽さん?気にしなくていいですからね?」
昇の訴えを華麗に受け流し、笑顔で文芽にそう言う。
「うん…ごめんね、壁に穴開けちゃって」
「大丈夫ですよ。それくらい」
「俺は結局無視!?スルー!?」
昇の絶叫に対し、天音が厄介そうに呟く。
「分かってるわよ。無視もスルーもしてないって」
それより、と言いながら、天音が文芽の左腕を指す。
「どうしたんですか?これ」
「え?あぁ……ちょっと、厄介な妖にやられちゃって」
そう言っている彼女の呼吸が、心なし速い気がする。顔色も、あまりいいとは言えない。
「大丈夫ですか?ちょっと休んだ方が……」
天音が言った直後。
唐突に、文芽の全身の力が抜け、そのまま、壁にもたれかかった。
―――意識は、ない。

170月波煌夜:2012/08/16(木) 18:49:38 HOST:proxyag064.docomo.ne.jp
>>ピーチ

おお、男三人頑張ってる!
シュオンはこういうとき足手まといだよね☆


昇くんのお姉様大丈夫ですかー?

171ピーチ:2012/08/16(木) 20:14:41 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あは、クロードの登場は自信がない……((泣

シュオン様は…爆弾投げさせよーかなと思案中w

あの昇の姉ながらに、全く似てないからなー…

まぁ、何とかなるさっ☆←軽っw

172月波煌夜:2012/08/16(木) 21:28:17 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp
>>ピーチ


いや大丈夫だよ!
クロード、あの感じでいけばぜんっぜん大丈夫だよ!

シュオンはやっぱり爆弾なのね…。
おうち破壊しないようにっヽ(*`Д´)ノ

173ピーチ:2012/08/17(金) 09:13:33 HOST:nptka401.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

だ、大丈夫?

あはは、もし破壊されたら、天音のことだから請求書突き出すだろうから安心して!

あ、あのさ、慧斗さん感謝祭に出てたヒースの台詞使っていい?

174ピーチ:2012/08/17(金) 11:23:59 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

「お、おい姉貴!?」
「文芽さん!?」
昇と天音が、同時に叫ぶ。その声に反応したか、そうでないか。それは定かではないが、文芽が唐突に立ち上がる。
「あ……やめ、さん…?」
天音の声に、彼女はふっと笑う。
「いいわね、器があるって」
言った直後に、目の前に居る三人―――ヒース、ジル、クロード―――を凝視する。
そして。
「オ前ラモ、餌ニナレ」
突然、彼女の周りに突風が巻き起こる。それを見て、柊一が。
「……天音、風属性(ふうぞくせい)の妖とは、相性悪いんじゃ…」
「そんなこと、言ってる暇ないわよ…」
持ち替えた扇をすっと開く。
「山比古神(やまひこのかみ)よ、水比古神よ。火愚槌神(かぐつちのかみ)よ」
そこで区切り、紅い扇を天へと掲げ。
「―――人の身に移りし妖を、今この緋扇に宿し力で……」
『今この緋扇に、封じ込めよ―――』
途端、文芽が―――正確には文芽に憑依した妖が―――普通の人間には有り得ない悲鳴を上げ始めた。
「どうする?このまま封じ込まれるか、もしくは上に上がるか」
天音の問いにも、彼女は全く反応しない。否。出来ない。
「……情けをかけようとしたのが間違いだったわね」
―――失せろ。
その一言で扇から無数の光が放たれ、それと同時に文芽の身体が動かなくなる。
「とりあえず―――浄化は任せたから。柊」
「…りょーかーい」
苦笑しながら応じる彼を見て、天音も思わず苦笑を洩らす。
「まぁ…少し横になってれば大丈夫よ」
どうせだから家(そっち)で休ませれば?
天音の言葉に軽く頷き、昇が文芽を担いでいった。
「…いくら軽いからって、担ぐのはどうかと思うわよ…」
聞こえないことを理解しながら、天音が小さく呟く。苦笑を交えた声で。

175麻利:2012/08/17(金) 17:38:32 HOST:zaq31fbd592.zaq.ne.jp
やっほー!ピーチ!

176月波煌夜:2012/08/17(金) 18:47:25 HOST:proxy10047.docomo.ne.jp
>>ピーチ

請求書か!
さすが天音ちゃん、抜け目ない!
…お金は腐るほどあるんだろうけど、日本円はどうするんだシュオン。


いつもながら呪文かっこいいね!
月波もあれこれ考えてみたんだけど、いいかんじに和風にならなくて(^_^;)


あ、ヒースの台詞?
どうぞどうぞ(≧∀≦)

177ピーチ:2012/08/17(金) 23:36:17 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
麻里さん>>

やっほー!お久っ!

つっきー>>

うん、天音は自分の利になることはへーきでやっちゃうタイプ…の、つもりw

うーん…どうするんだろ、日本円w

いやいや、呪文とか超のつく適当さだからね?つっきーならフツーにスルーしてかっこいい呪文考えそうだからね?

センキューベリーマッチ!←意味分からんw

ほんとにありがとうございますぅ!!

178ピーチ:2012/08/18(土) 00:15:13 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

「あ、天音ー」
「へ?」
今、聞こえた声は。
「めぐ、み……大丈夫だったの?」
「うん、ゆう…じゃない、龍因様に大体の事情は聞かせてもらったから」
恐らくゆうき、と言おうとしたのだろうめぐみが、慌てて訂正を入れる。しかし、それを訝しんだ天音が。
「りゅう…いん?」
「あはは…こいつのこと」
苦笑気味に笑いながら、めぐみに対してだろう殺気に満ちたゆうきの視線に、思わず天音が肩を揺らす。
あの、滅多に怯えることのない天音が。
「ど……どう、したの?ゆう―――」
「あ――――――!!」
天音の言葉を遮るように、めぐみがとんでもない大声をあげる。
…これは、本当にさっきまで憑依されて眠っていた人間か。
一瞬、本当に一瞬だが、そんな考えが頭を過(よ)ぎってしまった天音である。
「ご、ごめん!こいつのことは、今だけでいいから“龍因”って呼んでくれない?あたしの弟子が居るから!」
「……めぐみの、弟子?」
「うん、妖術の」
「んで、どう言うわけかゆうきだけは本名を伏せてるってこと?」
天音の的を射た問いに、めぐみが苦笑しながら。
「……うん」
それを見た天音が、はぁっとため息を吐いて。
「…分かったわよ。ただし、今だけよ?」
「うん、ありがと!」
彼女の返答は早かった。一瞬、了解を取り消そうと思った程だ。
「…で、聞きたいことがあるんだけど」
直後。
「おいっ!姉貴!?」
そんな声が聞こえ、それはいつしか、段々と近付いて来ていて。
「………何か、とてつもなく嫌な予感がするのは、私の気のせいかしら?」
咄嗟に尋ねた天音に、二人は苦笑を零しながら。
「…絶対、気のせいじゃないと思う」
「―――やっぱりぃ?」
瞬間、天音の瞳に、とてつもない殺気が宿った。
…ように見えたのは、気のせいか。
「あいつ…用件済んだら半殺しにしてやる…!!」
「やめれー!?」
有言実行―――不言実行でもある―――の彼女の言葉に、思わずめぐみとゆうきが同時に叫ぶ。
やると行ったら必ずやるのだ。この少女は。
全身から触っただけで瞬殺できそうな程の殺気を発し、長い闇色の髪を翻しながら、神代 天音と言う少女が本堂の外へと出て行った。

179月波煌夜:2012/08/18(土) 10:25:17 HOST:proxyag082.docomo.ne.jp
>>ピーチ

やめれ―――!?
ああ天音ちゃんがっ!
人格変わったよキレちゃったよ!
でも大丈夫、ブラックな美少女もポイント高いよっ!((こら

180ピーチ:2012/08/18(土) 14:46:51 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

―――声の聞こえた方を見て。
さしもの天音も、この時ばかりは怒りが収まった。
「おい姉貴!いい加減にしろって!!」
「うるさいっ!私は呪われてるのよ!?近寄らないで!!」
「……文芽、さん…?」
呪われている。その言葉を聞いて、天音が呆然と文芽を凝視する。
「お、天音、丁度良かった!姉貴止めてくんねーか?」
「え?」
彼女の手に握られているのは、長く細い、一本の弓矢。その先が、何か黒っぽい色に染まっている。
「姉貴の奴、弓の先に毒塗って死のうなんて考えやがって…」
「それを喉に突きつければ、あっけなく逝く……ってわけ?」
自分で言ったことに対し、天音は不敵に笑い。
「そんなこと、死んだってさせるもんですか。…昇あんた、これが済んだら覚悟してなさいよ」
「―――はい?」
「とにかく―――」
未だに、昇に両手首を掴まれながらも離せと喚いている文芽を見て。
「―――今、楽にしますから。少々お待ち下さい」
ふわりと微笑んで、昇に向き直る。
「……自信はないけど、ね。……今から、舞う」
その言葉に、昇が灰色がかった黒い双眸をこれ以上ない程、見開いた。

181ピーチ:2012/08/18(土) 14:49:23 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あは、めぐみ&ゆうきは天音の本性を知ってる中学時代の大親友だから☆

半殺し、を聞いた時点で、頭の回転速い二人が血相変えたワケw

182ピーチ:2012/08/18(土) 17:37:50 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

「ま、舞うったってお前…」
「この扇と着物。これがあれば何とかなるわよ」
平然と返す天音に、昇が血相を変えて。
「その扇が普通の扇だったら問題ねぇよ!でも、それには妖が封じてあるんだろ!?」
「それはそれ、これはこれ」
「な…っ!」
反論するより早く、天音が扇を軽くはためかせる。
―――君を想えば、雪が舞う
舞が始まった途端、めぐみ達やソフィア達が集まってきた。
恐らく、今までとは全く違う天音の声に驚いて、だろう。
―――今一度と、その願いも適わず
―――毎夜(まいや)の如く、是(これ)を舞う。
「……昇、あれって…」
いつの間に来たのか、真横に居た柊一が昇に向かって問う。
応えは。
「あぁ…俺は一応、止めたぞ?」
「…昇が、止めないわけないもんね…」
苦笑しながら、しかし軽やかに舞う彼女を、ただ見つめている。
―――君への想いを打ち明けし瞬間(とき)
―――櫻の舞を、この恋歌に乗せ
―――逢えないと、分かる君を待ち続く。
昇が、ふと姉を見る。そこには、先程まで暴れていた姿はなく、ただただ天音の舞いに魅入っている。
―――我がこの恋、死者になりとも変わらずや
―――松の木で、君に贈る舞いを見せ
紅い扇を額よりも少し高い位置で振ったり、下の位置に落としたりして、なるべく声を張る。
―――上手い下手だと共に笑い
―――届かぬ恋を、雪乗せる。
彼女が舞う度に、長い黒髪が波を作る。
―――さよならと、その一言は、いい淀み
―――君より先に、ここで待つ―――
終わった直後、天音のかざしていた扇がパタンと音を立てて地に落ちる。
「お、おい天音、大丈夫か?」
「大丈夫。…まだ、終わりってわけじゃないもの」
「「…へ?」」
昇と柊一。二人の声を無視して、彼女は文芽の元へと向かう。
そして。
「―――…この姿では初めてお目にかかります。…月姫(つきひめ)様」
「……え…?」
「お分かりになりましょうか?……舞姫の生まれ変わりにございます」
舞姫。それは。
天音が、前世(まえ)の頃に仕えていたと言う、三姫(さんき)の内の一人。

183ピーチ:2012/08/18(土) 17:58:00 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

―――舞姫。それは。
天音が、前世(まえ)の頃仕えていたと言う、三姫(さんき)の内の一人。
なら、今彼女が言った“月姫(つきひめ)”とは?
彼女もまた、天音同様に仕えていた姫の類(たぐい)だと言う。
その彼女の生まれ変わりが、文芽?
“―――危険だから。だから絶対、見つけたとしても話しかけたりはしないで?”
以前、天音が言っていたことを思い出す。
「ねぇ、天音…」
「星姫(ほしひめ)様はすぐに見つかりました。しかし、あなた様を見つけることが、今の今まで、出来ていませんでした」
「……本当に、舞姫様…?」
「…はい」
『この者は、未来の私のようなものです』
不意に聞こえた声にはっとして振り向くと、その後ろにふわふわと浮かんでいる人影―――舞姫の姿が在った。
縛っていない長い黒髪に、同色の瞳。着物の色や手にしている扇の色は違うが、それでも瓜二つと見ていいだろう。
「唄姫(うたひめ)様……私達の主は、元気に相棒(パートナー)と上手くやっていました。しかし…」
『……星姫様は、既にこの世を去っていたとのことです』
「それでも、みんなそれぞれに自分達のことを話していました」
二人の声が、重なる。
「『真実を明かしていないのは、あなた様だけです』」
「…………真実を、ちゃんと言いましょう?」
『この者なら、分かってくれるはずです』
「……本当に、分かってくれるの?絶対?」
「…はい。絶対です」
それからしばらく、彼女はしばし考える素振りを見せ。
「分かりました。文芽が起きたら、説明するわ」
その答えを聞いて、二人が微笑む。
『そうですね』
「なんでしたら、私が傍に居ましょうか?」
天音の言葉を聞いて、彼女―――月姫はふわりと笑い。
「えぇ。是非、お願いします」
そう言った。

184ピーチ:2012/08/18(土) 22:20:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

半刻程過ぎた後。目を覚ました文芽に、天音が手っ取り早く説明を始める。
「―――つまり」
自分の前世は天音と同じ“唄姫”と言う人間に仕えていた三人の姫の内の一人だと言うことか。
そう確認すると、天音は。
「はい。良かったです、文芽さんが理解の速い人で」
「いや、理解が速いって言うかね?」
天音ちゃんの説明が真実味がありすぎるのよ?と呟く文芽。
しかし、当人はそんなの全くの無自覚で。
「まぁ…いろいろとごめんね?じゃあね」
簡単な謝罪を述べた後、早足で去っていく彼女を見て、しかし天音は未だに肩の力を抜いていない。
「……月姫様。この話はまた後日、日を改めて連絡しますので」
天音の言葉に、彼女は。
―――そうですね。連絡、待っていますよ。
それっきり、月姫の気配が完全に消える。それを認めて、ようやく肩の力を抜く。
「―――……で?あなた達はどうするの?このまま帰してあげましょうか?」
……当然、それを望むと思っていた、天音が甘かった。
「わたしはもう少し探検してみたいぞ。この世界を」
「………………は?」
「あ、いいですねー!あたしも回りたいです!いろいろと!」
……ちょっと待て。今この二人は何と言った?
探検したい?なぜ?
「ソフィア様はどう思いますか?」
「そうね……それも面白そうね」
「やーっぱりー!ね、ね、ユーリエさんは?」
「うーん……いいんじゃないかしら?別に」
ちょっと待て、と言う天音の言葉も、盛り上がっている女性軍には全く届かない。
「ち、ちょっと待てシェーラ!お前何考えてんだ!?」
「ルイーズ様、それは如何(いかが)かと……」
唯一止めようと試みる二人を、天音に限らず昇達は手をたたいて称賛したい気分になった。
「何でー?いいじゃん別に?心配なんだったらヒースもついて来ればいいわけだし」
「なぜじゃ?この世界のことはよう知らんが、危ないことは少なそうじゃしな」
反論する二人の後に聞こえた言葉に、天音ががっくりと肩を落とす。
「シュオン、一緒に行かない?」
「もちろん、ソフィアだけなんて絶対ダメだよ」
「あら、私だけじゃないわ。シェーラやユーリエや、ルイーズ王女も一緒だもの」
「シェーラやユーリエが一緒ってことは、ヒースや害虫がついてくる可能性も少なくないんだよ?ヒースはともかく、害虫をソフィアの傍に置いておくなんて、僕には絶対考えられない」
ふつふつと浮き上がってくる怒りを何とか押さえ、しかし別の所に吐き出す。
「………そう言えば昇、私さっきのこと、まだ済んでなかったわね」
「……はい?」
「半殺しにしてやる」
一言。本当に一言だけを発し、パキポキと指の関節を鳴らす。
「や、え、ちょ…俺が一体何をしたぁ―――!?」
本能的に危機を察し、いち早く昇が逃げ出す。こう言うことは、逃げるが勝ちだ。
「……おーい、天音ー」
ふっと聞こえた声に、天音の足が止まる。
「この人達…結局どうするの?」
「あぁ…」
呟いて、彼女はクロードやヒースといい勝負になりそうな、仏頂面の見本のような仏頂面で問う。
「帰りたい人が居るなら、先に帰すけど、どうするの?」
「全員参加ですっ!」
「おいこらシェーラ―――!?」
「おいおいシェーラちゃん、オレ様先に帰りた―――いえ何でもないっす喜んでお供させていただきます」
そんなやりとりを聞いているだけで、天音は額に手を置く。頭痛でもしてきたのだろうか。
しかし、顔にはそれを微塵も見せず。
「く、クロード殿!いいんですか!?」
「ルイーズ様が残ると仰っていますから」
「そう言う問題じゃないですよ!?」
「あーもう分かった!面倒だからみんな一緒に居て!それでいいでしょう!?」
―――結局、八人全員が日本に残ることになったことは、言うまでもない。

185月波煌夜:2012/08/18(土) 22:52:08 HOST:proxy10006.docomo.ne.jp
>>ピーチ


“〜姫”の名前がいちいちツボな月波でした☆




…ピーチよ。
おぬしは神かッ!

すげえ、月波も一遍には制御したことない八人を同時に…!
ルイーズとシェーラが探検したいって言い出したり、
ソフィアとユーリエが追随したり、
ストッパー役のヒースとクロードだったり、
シュオンのソフィア馬鹿とかジルの害虫呼ばわりとか、
あと何だかんだで真面目にルイーズ優先させちゃうクロードとか!

月波は今猛烈に感動しているっっ!



ところでこいつらが日本歩いたらどうなるんだろね。
やたら目立つ外国人かコスプレイヤーの集団みたいだよね←
ルイーズは和菓子制覇しそうだ…

186ピーチ:2012/08/18(土) 23:16:43 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あははー、舞姫・唄姫・月姫・星姫?

うん、舞姫と唄姫以外はてきとーw

しかも月と星は双子だというちょーてきとーな設定w

むぅ…あたしは暗黒神だ!わはは←迫力なさすぎw

うん、服はてきとーに三人プラス天音の知り合いのを使わせるから安心!

うん、シュオン様の毒舌(?)にプラスして、天音もかなーり手痛いこと言うよ、多分w

和菓子の制覇…これだ―――!!

ありがとー神様ー!!

187ピーチ:2012/08/18(土) 23:17:04 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あははー、舞姫・唄姫・月姫・星姫?

うん、舞姫と唄姫以外はてきとーw

しかも月と星は双子だというちょーてきとーな設定w

むぅ…あたしは暗黒神だ!わはは←迫力なさすぎw

うん、服はてきとーに三人プラス天音の知り合いのを使わせるから安心!

うん、シュオン様の毒舌(?)にプラスして、天音もかなーり手痛いこと言うよ、多分w

和菓子の制覇…これだ―――!!

ありがとー神様ー!!

188ピーチ:2012/08/18(土) 23:44:11 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

「じゃあ、色々とごめんね。厄介な問題ばっか運んできて」
「ううん、いいのいいの。気にしないで」
めぐみの言葉に対し、天音は柊一と昇を交互に見て。
「…………いつものことだから」
はぁ…っと小さくため息を吐く天音に、二人がささやかに抗議する。
「や、ちょ、天音?俺達が何かしたわけじゃないよね?」
「いくら何でもそれだけはごめんだぞ?」
「分かってるわよ、冗談だから」
悪戯っぽく笑みを浮かべる天音に、二人は内心、ぜんっぜん大丈夫じゃないからね(な)天音?とそれぞれに思っているだろう。
「ん…まぁ、また今度暇な時、今度は女子だけで遊びに行こ?」
「うん、連絡待ってるからね?」
「あは、りょーかい」
半ばふざけながらめぐみ達が出て行く。
直後。
「あたし買い物行きたいなー」
「そうね…私も行きたいわ。ねぇシュオン、一緒に行かない?」
「うん、全然良いよ」
「クロード!お菓子がある所を探すぞ!」
「はい。ですがルイーズ様、身体のことを考えて、なるべく少量に致してください」
「う、うるさいわあぁぁぁ!!」
みんなそれぞれに話していた所を、天音が大声で黙らせる。
「ねぇ、買い物行くのはいいけど、どこに行くの?」
「「「「……へ?」」」」
天音の言葉に、女子軍が声を揃えて大合唱。…たった一言だが。
「コンビニとかスーパーとか…どこに行きたいの?」
天音の問いにしばし話し合ってから、ルイーズが。
「そなたの進める場所に連れて行け」
……明らかに命令口調である。
それに対し、天音は。
「あ、そう言えば私、今日用事があるんだったわ。そこの二人にでも連れて行ってもらって」
明らかに気分を害したように、平然ととんでもないことを言う。柊一や昇に勇気があれば、恐らく二人はこう言っているであろう。
自分達にばかり余計なことを押し付けるな、と。
…天音が相手では、一生をかけても言えないようなことではあるが。
「いやいや天音?」
「お前の指定だろ?」
努めて棘のないような言い方を心がける二人。しかし、それに全くと言って良い程気付かない天音は。
「…あの我侭お嬢の相手をするだけで疲れるわよ…」
「失礼ながら、我侭お嬢ではなく、ルイーズ王女です」
なぜ名前を出さずともルイーズだと分かったのかは不明だが、この口調は。
「…どっち道、我侭に変わりはないわよ?ねぇ、黒髪君もそう思うでしょ?」
「俺は黒髪じゃねぇヒースだ!ついでにルイーズ王女が我侭なんて思ってねぇし!!」
極僅かな人間の話を聞きながら、それを聞いている者達が、つまらなさそうに一言。
「結局―――どこに行くの?」
ソフィアの言葉で、天音があ、と洩らす。そして。
「……分かったわよ。適当に連れて行くから」
そう言った直後。ルイーズが独自の勝利のポーズ(天音にはそう見える)をしたように見えたのは、気のせいだろうか。

189ピーチ:2012/08/19(日) 13:55:43 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

「……ねぇ、金髪君?あなた、その白衣はどうかと思うわよ?」
恐らく部屋で実験でもしていたのであろうシュオンの服装を見て、天音が小さく呟く。
「……今初めて、ヒースの気持ちが分かった気がするよ」
なるほど。ヒースはこう言った気分だったのか。
「はぁ?」
ヒースが、きょとんとして聞き返す。
「黒髪、って呼ばれてる気分が分かったよ。なんとなく」
シュオンの言葉を遮る形で、天音が柊一達に声をかける。
「ねぇ、何か服貸してあげてくれる?この人に」
「……天音お前、俺らの普段の服装知ってて言ってるだろ…?」
「いいじゃない?…間違っても、奥平さんの服だけはご遠慮願いたいし」
天音の言葉に苦笑しながら、柊一がとりあえず服持ってくるからと言って、家に帰る。そしてなぜか、昇もそれについて行く。
―――数分後。
「とりあえず、これでいいかー?」
「……何でもいいから。とにかくそれに着替えて」
そう言って、自分は一度、本堂を出て行く。
しばらくしてから。
「ねーヒースー、あんたまた荷物持ちよろしくねー」
「何で俺だけはそうやって簡単にこき使えるんだよ!?」
「え、だってヒースだから」
「答えになってねぇぇぇぇええ!!」
「ヒース、あんまりうるさいと迷惑になるわよ」
「ソフィア、ヒースのことで口挟む必要ないよ。当然ジルもね」
「おいシュオン、それどう言う意味だァ…?」
「簡単に言えば害虫がソフィアに近寄るなってこと」
………………。
「…行かないなら、今すぐ帰ってもらうけど…」
「え?あ、行くっ!行きますっ!」
条件反射で答えたシェーラは、しかし天音を見て。
「かっわいい―――!!」
「え、わ、ちょ…」
…今回は、条件反射で避けることは敵わなかった。避けようとした天音に、しかしシェーラは素早く飛びつく。
「かわいー!今まであの…」
「……着物?」
「そう。多分それです!あの格好しか見たことなかったから余計にかわいー!」
「………天音、大丈夫か?」
シェーラが可愛いと言った、彼女の服装は。
全身が真っ黒な服の胸と背中の辺りに、大きな十字架が描かれている。
…………それだけ、の、はずなのだが。
「……行きましょうか?」
疲れ切った声を出し、しかし天音は引き攣った笑みを向けた。

190月波煌夜:2012/08/19(日) 14:08:24 HOST:proxyag076.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天音ちゃん始め皆様、子守御苦労様です…。


女性陣はドレス+メイド服だけど大丈夫?
着替えさせるなら長いスカートが良いかもだけど←
短い丈のスカートは、若い女が脚を見せるなんてふしだらだーっていう先入観があると思うんでw

191ピーチ:2012/08/19(日) 14:24:18 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いや、天音達の場合ね、慣れてるの。面倒なことは←その面倒なことに子守も入ってるw

あ、そっか!

……スカート…!?

天音は着物か、黒系統の服(しかもズボン系)しか持ってないよー!?

…よし、借りる!

192ピーチ:2012/08/19(日) 14:42:34 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

「―――おいちょっと待て天音」
「え?」
「……まさか…とは思うけど、女性軍はその服装のままなわけないよね?」
「―――……あ…」
柊一の言ったその服装、とは。
シェーラやユーリエはメイド服だし、ソフィア、ルイーズは質の良いドレスのようなものだ。
…まさか、こんな格好で外に連れ出せるはずがない。
「…男だったら柊達の服使わせたのに…」
非常に残念なことに、天音は私服と言うものを全くと言って良い程持ち合わせていない。あるにしても、黒系統の服がニ、三着だけだ。
「どうしよ……まさかこんな格好で外には出したくない…って言うか、出せないし…」
サラリと失礼なことを言う天音。それに対し、昇が。
「……小夜とか、飛湘辺りに頼めば?闇夜の長(おさ)でもいいし」
その言葉を聞き、その瞬間に今まで部屋の隅においてあった携帯が、彼女の手中に納まる。そして、その一瞬後には、既に会話が始まっていた。
『はーい、飛湘でーす』
「もしもし、あおり!?天音だけど!」
『え、どーしたの?』
「ごめん、ちょっとわけありで…」
そこまで言った時。天音の携帯を、昇が取り上げる。
「あのさ、ちょーっとこっちで色々あって。わりぃけど、服四着くらい貸してくんねぇ?」
『は?服!?……ちょっと待って、何であんたになってんの?』
「取り上げた。……それより」
『分かった。服ね?』
「あぁ」
途中で、昇の握っている携帯を奪い返し、あおりに追加注文を出す。
「あ、できれば長いスカートかワンピース、お願いできる?」
『うん、じゃあ、あたしが神社(そっち)行くから』
「ごめんね、お願い」
そこまで言って、天音が携帯をしまう。
「悪いけど―――もう少し待っててもらうことになったわね」
そう言った天音の口元が、微かに歪んだ。

193ピーチ:2012/08/19(日) 15:20:35 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

「…………」
天音の口元が僅かに歪んだ直後。柊一達二人の表情も、一瞬で強張った。
「俺、外の確認してくっから。おめーら二人は、中の方守ってろ」
「え?あ、ちょ、柊も連れて行きなさいよ!?私は大丈夫だから!」
「大丈夫だって。どーせこの真昼間だ。居るとしてもそこら辺逃げ回ってる奴だけだよ」
そう言うなり、昇がさっさと外へ出て行った。
天音の心配も知らずに。
「……昼夜動ける妖だったら、どうするのよ…!?」
しかし、天音のその心配も束の間。戻ってきた昇の話では。
「何かおっかねぇのが居なくなったら引越ししてた、だと」
………………つまりあれか。夜に動き出す妖はたくさん居る。
故に、昼間に終わらせておこうと、そういうことか。
天音が、そこら辺に居た妖に、なら余計な気配を表すな!と怒鳴ろうかと本気で思案し出した直後。
「あっまねー?」
いやに暢気な声が聞こえ、ひょこっとあおりが顔を出す。
「あ」
「持って来たよ、服。でも四着って、何に……」
そこまで言って。あおりがピシリと音を立てて硬直する。
「……つまり、あおりの間の前に居る人達の分だけど…借りてもいい?」
「い、良いけど…知り合いから借りたのとかもあるから、終わったらなるべく早く返してね」
「うん、ごめんね…」
「いいよ、別にー」
「…じゃあ、四人ともとりあえず着替えて。終わったら行くから」
そう言って、天音達が外に出る。
そして、天音と共にが出たあおりが、突然話題を変える。
「そう言えばさ、さっきそこで引越し中の妖見たよ。あれは笑ったぁ」
あの顔であんなにびびってるんだもん、とあおりが苦笑を洩らす。
「…どんな顔してたの?」
「熊と蛙と猪とカマキリを足して二で割ったような感じ」
「……それは、素直に凄いわね」
確かに、その顔で妖を恐れるのは、笑えなくもない。多分。
「あのー…」
「「…あ」」
声のした方を向いてみると、そこには小鹿色(フォーン)の髪に、青灰色の瞳の少女が立っていた。
「一応、みんな着替えましたけど…」
「……じゃあ、行く?」
「はいっ!」
天音の問いに、シェーラが元気良く答えた。

194月波煌夜:2012/08/19(日) 19:04:06 HOST:proxyag089.docomo.ne.jp
>>ピーチ

妖の中にもかわいーのいるんだね!見かけ非常にアレだけど!
……妖って、見た目も中身も色々なのがいるのかな?


天音ちゃんもお友達も、本当申し訳ない…。
あれだね、ルイーズは超だぶだぶになりそうだけどね!一応着れれば問題ないよね!

天音ちゃんは私服もクールなのね(≧∀≦)

195ピーチ:2012/08/19(日) 19:12:59 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あはは♪熊と蛙とカマキリを足して二で割った…我ながら凄いと思った。今←え

だいじょーぶ。幼き頃から良くこき使われてるから。皆さん!←もちろん天音にw

…うん、多分ルイーズ王女のことだから文句だらけになりそうw

クールって言うか…有彩色は似合わないと本人がかってに思い込んでくれてるw

196月波煌夜:2012/08/19(日) 19:18:48 HOST:proxy10067.docomo.ne.jp
>>ピーチ


天音ちゃん、女王的存在…!?
他の色も可愛いよ!


ルイーズは子供だから、困ったらお菓子あてがっておけば静かになるんで←

197ピーチ:2012/08/20(月) 09:31:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

女王というより、それこそ我侭?w

でもまぁ一応、天音と柊一が幼馴染、昇と柊一が小学校で知り合ったってことにしてるw

柊一達小学校一年の時(天音まだ幼稚園)昇に対しての当たりがめちゃ酷かったからネw←余談w

うん、ルイーズ王女には和菓子与えとくw

198ピーチ:2012/08/20(月) 11:34:32 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

「……ごめんね、あおり…」
そう言って、ただひたすらに平謝りする少女、神代 天音。それを見て、面白そうに笑いながら答える少女、飛湘 あおり。
「いーのいーの、あたしがついて行きたいって言ったんだから」
「……だよね、そうよね…」
半ば放心状態で呟く天音に、あおりが苦笑を洩らした。
「こーら、んなこと心配する必要ないから!ね?」
「……うん…」
「天音、天音ー!?」
突然聞こえた、あおり以外の声。それに驚いて思わず振り返る。
「……着いたよ?」
天音の様子を注意深く伺っていたのだろう。遠慮気に、天音達の前に居た青年、天神 柊一が呟く。
「あぁ、うん。分かった…」
柊一の言葉を聞いて、まず最初に、ルイーズがクロードを引き連れて仲へ入っていく。
「……ここ、どこ?」
見慣れない建物を前にしたソフィアが、小さく呟く。それを受け、柊一の横に居た青年、飛鳥井 昇が答える。
「コンビニ」
……さすが、適当に連れて行くと言った天音だけあるだろう。いくら知らないからとは言え、明らかに適当そのものだ。
「ねー、ヒースー?先入っちゃうよ?」
「…勝手にしろ」
「うわ、ヒースって冷たいね」
シェーラとヒースのやり取りを聞いていたシュオンが、大袈裟に言ってみせる。それに合わせて、ソフィアも。
「本当。ヒースってそんなに冷たい人だったのね…」
と呟く。
「……いいから、中入れば?」
昇の言葉に、ようやく一同が店内へと入って行く。そして、中に居た店員が。
「あ、天音ちゃん、この間はどうもね」
「いえ、また体調が悪くなられたら、いつでも言ってくださいね?」
「ありゃ、じゃあ真夜中でもいいのかな?」
「えぇ。そちらが起きてさえいれば」
中に居た店長と思われる年配の男が、冗談交じりに言ったことに対し、天音はさりげなく受け流す。それを見て、柊一が。
「……知り合い?」
と思わず呟いてしまう。それを聞いた店長(多分)が
「うん。この間偶然会った時に、色々とあってね」
人当たりのよさそうな男が、笑みを浮かべながら答える。それに同情するかのように。
「結構厄介なモン連れてたから、軽い厄除けしただけよ。それだけなのに、なぜか気に入られたみたい」
その会話を中断させたのは、どう頑張っても押さなく見えてしまう少女―――ルイーズの大声だった。
「これ!これが欲しい!!」
彼女が取ったものは。
「「「…和菓子?」」」
思わず呟いてしまった三人に、ルイーズは笑顔のまま。
「何かは知らんが、これが欲しいっ!」
「……すいません、これいくらですか?」
「…二百八十円です」
…………ここに居る限り、これが続くのだろう。なぜか簡単に予想のついてしまった天音は。
「……お金、貸そうか?」
「……非常に助かります」
「これもこれもこれもー」
二人の会話など耳にも入っていないかのように、ルイーズが次々とお菓子を取ってくる。
……和菓子ばかりを。
「―――合計で二千八百九十円です」
恐らくルイーズは、店内にある和菓子全ての種類を取ったのだろう。店員までもが思わず苦笑している。
そこに。
「ねーねー、ヒースー?これ可愛いと思わない?」
「はぁ?何で俺に…」
「だって、ヒースに似てるんだもん」
「…………は?」
「あたしの誕生日にくれた、くまさんのヒース」
「ま、まだそんな名前…!?」
「……すいません。これもお願いします」
シェーラの指していたくまのぬいぐるみを手に取り、天音がレジに持っていく。
そして。
「いる?」
「え?え、いいんですか?」
「えぇ。私はこんなの使わないから」
それに、と天音が呟き。
「前に、あなたにはかなりの無理をさせてたからね。そのお詫び」
「あ、ありがとうございます…」
その後に、天音はソフィアを見て
「あなたは?いいの?」
そうだった。ソフィアも、あの時ヒース同様に取り憑かれていたのだった。
「じゃあ…シェーラと同じものを…」
―――そんなこんなで。
「だーいじょーぶ?」
あおりの軽い声に、天音が思わず苦笑を洩らす。
「うん。ありがとね」
「いーよいーよ、あんたが店長と知り合いだったお陰で、半額だったんだから」
そう言ってしばらく雑談していた二人だったが、不意に柊一達を振り返る。
「……気をつけろ」
―――来るぞ…!!

199月波煌夜:2012/08/20(月) 15:52:27 HOST:proxyag009.docomo.ne.jp
>>ピーチ

コンビニか!

天音ちゃんたち本当ごめんなさい!うちの子たちが大変御迷惑をお掛けしまして……っ!
半額だったとはいえ遠慮ないセレクトを…!

「ヒース」を覚えててくれたとは思わなかったよっ(*´д`*)

200ピーチ:2012/08/21(火) 17:55:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

そっ!コンビニ!

だいじょーぶ!基本的に我侭言ってたのはルイーズ王女のみだから!

天音は何気に知り合いが多いw

シェーラちゃんの久万さん好きを思い出してついw

201月波煌夜:2012/08/21(火) 18:05:20 HOST:proxyag019.docomo.ne.jp
>>ピーチ

愛されてるね天音ちゃん←


サラッとルイーズのワガママ設定も上手く組み込むピーチ天才すぎる。
月波は上手くいかなくて(^^;;

202ピーチ:2012/08/21(火) 19:14:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

―――来るぞ……!
昇の言葉通り、彼が言った直後にぼこりと地面が盛り上がった。
「わ……っ!!」
柊一が、思わず均衡(きんこう)を崩す。が、すぐに立て直した。
「大丈夫?」
「うん。何とか」
苦笑を零しながら、柊一が答える。
「ったぁく…ただでさえ土の妖(モン)は面倒だってのに…」
昇が、ぶつぶつと文句を言いながらも軽く右手を掲げる。
そして。
―――我が手に宿りし能力(ちから)を生かしし神よ。
詠唱を始める彼の下がった左手から、黒々とした光が。
上がった右手からは、輝かしい光が。一点の光が交じり合い、金と黒の混合色が浮かび上がる。
―――悪しきモノは冥(くら)き奈落の底に、聖なるモノは悪しきモノを払い除ける力を、我に与えよ。
―――汝(なんじ)、我が命に従(したご)うてからに、冥き底と明るき上を見晴るかせよ
詠唱が終わったと同時。彼の掲げていた先から、金に等しい光が放たれた。その先に居たものは。
“……貴方に、私を従える程の力量がおありですか?”
眩(まぶ)しい程の金の髪と、同色の瞳。金のそれをきっと瞠り、彼女―――恐らく彼が呼んだ女神か何かだろう―――は昇を見据える。
その問いに、昇の返答は。
「…………あなたを呼び出した。それだけの力量を、嘘とお見受けするか?」
言外に、絶対従える自信がある、と言っている。
それを受け、彼女は。
“……分かりました。ただし、私に出来ることは彼らの動きを止めることだけです。後は、あなた方で仕留めて下さい”
「分かった。……頼む」
昇の言葉に、彼女はふわりと笑い、ゆっくりと左手を掲げる。
そこから、一筋の光が放たれ。
「…柊一、天音。今だ」
彼の言葉に、天音がはっとして詠唱を始める。柊一は、ただ黙ってそれを見つめている。
「…根の底の国のモノよ」
小さく、しかしはっきりと聞こえる済んだ声が、地面を荒らしていた妖の耳に届き、それが悲鳴を上げる。
しかし、そんなことを気にする程、彼らは優しくはない。
「…………今この手に、我が力の全てを捧げる。…妖を、潰せ」
すっと突き出された左腕から、反射的に黒々とした何かが飛び出してくる。それを見て、柊一が。
「…これって、まさか…」
呟きかけた言葉を、天音が遮り。
「えぇ。この間の妖から盗んだ業(わざ)」
黒々としたものが完全に消え去っていた後、天音が平然と言ってのけた。
―――これで、完全に終わったと、思った。

203ピーチ:2012/08/21(火) 19:16:04 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うっそだー!!

さらっと取り込めればどんだけ幸せなことか……!!((泣

204ピーチ:2012/08/21(火) 21:58:43 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

「やっぱ凄いねー」
ぱちぱちと拍手を贈るあおりに、天音は苦笑しながら。
「…それ、誰に言ってるの?」
「全員」
「「「誰が!?」」」
あおりの言葉に三人が同時に怒鳴る。あおりは予想の範疇(はんちゅう)だったらしく、軽く耳を塞ぐ。
「はーいはい、三人とも凄いわよ?あたしなんか、できることって言ったら場所視くらいだもん」
「……その場所視のお陰で、私は何回救われたのかしら?」
「それはまぐれー」
あくまで自分のことは眼中に居れず、あおりが面白そうに言い募る。
「でもさー…」
直後。
突然、ギャアァァァと言う叫び声が聞こえ、四人がはっとして振り返る。その後ろに居た八人も気付いたようで。
「な……何、これ…!?」
「も、もしかして…あの時みたいな化け物じゃ…」
ソフィアとシェーラが呆然と呟く。
それを視て、天音が鋭く怒鳴る。
「みんなどいて!そのままじゃ、あなた達が死ぬのも時間の問題よ!?」
天音の声を聞いて、シュオンが真っ先にそれを促す。どうやら、天音の言わんとしていることを理解したらしい。
「安全な場所……って、どこかある?」
「……その、木の下」
「え?」
「今すぐ結界張るから。だから今すぐ…」
天音に最後まで言わせず、シュオンが頷く。
「分かった。…と言うことだから、みんな」
その一言で、指定された木の周りに集結する。
全員が集まった直後に、周りのピンと空気が張り詰める。
「……あおり。場所、どの辺か分かる?」
「ちょっと待って」
そう言って、あおりの瞳の色が変色する。
昼と夜とで違う猫の如く、能力(ちから)を使う時のみ、彼女の瞳が漆黒から青に近い藍に変わるのだ。
…どちらも似ているせいで、大した変わりもないように見えるが。
言ってから数秒。地に右手をつき、じっと様子を伺っていた彼女の顔がすっと上がった。
「右斜め上から左斜め下への移動。今居る場所が、あんたが結界張った木の真後ろ」
「っ……!」
場所を受けた天音が、すっと扇を取り出す。
―――己の血で染めた、紅い扇を。
そして。
「―――」
小さく呟いた声は、周りの者にも、妖自身にも届くことはなかった。

205ピーチ:2012/08/22(水) 18:02:44 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴

―――やがて。
「……天音、今、何やった……?」
昇の言葉が、心なし堅い気がしないでもない。
が。
「……別に、ただ妖を潰しただけよ」
そう言って、平然とした態度で“それ”が居た所に歩み寄る。
「あま……っ!?」
「大丈夫よ。さっきので気配も何も、跡形もなく消し去ったから」
柊一の言葉を遮り、天音が平然と答える。
綺麗な顔をしていながら、とてつもなく恐ろしいことを、あっさりと言って退けるはただ一人。
…………この少女、神代 天音ただ一人である。
「…………んー、どうなんだろ…」
「…何、探してるんだ?」
「あいつ、集合体だったから…まだ、残りが居ないかと思ってね」
天音の言葉に対し、柊一が苦笑しながら呟く。
「まぁ…居たら居たで面倒だしね」
「えぇ。でも、もう居ないからいいわ。…ごめんね、みんな」
そう言ってソフィア達の周りに張った結界を解き、帰ろうと促す。
「……で、満足したかしら?」
「へ?」
「まだ他に、行きたい所とかある?」
ただ、危険は絶対のつき物よ、と苦笑しながら呟く天音に、ルイーズが言う。
「これ、おいしいな!今度うちの料理長に作らせよう」
「……この子は、まさかまだ他にも行きたい所ある…?」
「あ、いや……」
「じゃあ、僕達はそろそろ帰ろうか」
シュオンの言葉に、ソフィアが同意する。
「そうね、さすがに長い間邸を開けるわけにもいかないし…」
今度はソフィアの言葉に、シェーラとヒースが。
「そうですね」
「ほんとはもうちょっと居たいけど…仕方ないですよね」
「……じゃあ、みんな帰る?」
天音の問いに、一同が揃ってはい、もしくはうんと答える。
「じゃあ、今から異界の戸を開くから…間違って違う世界に飛ばされないようにね?」
「…………は、はい…」
それを想像したのか青ざめるシェーラに、天音は薄く微笑んで。
「大丈夫。あなた達なら、ね?」
その次の瞬間、真正面に一筋の光が現れた。
直後。
「還れよ。元の国へと…己が故郷(いえ)へと、今還られよ」
呟いた、瞬間。
―――異国の彼らの身体がふわりと浮き上がり。そのまま、その光に呑まれていった。

206月波煌夜:2012/08/22(水) 18:15:05 HOST:proxy10024.docomo.ne.jp
>>ピーチ

なんか迷惑かけるだけかけて帰っていったなあいつら…w
皆ほんとごめんね!
バカ共がお世話になりました!


…力使うときに瞳の色が変わるっていいよね…(ぉい

207ピーチ:2012/08/22(水) 18:33:24 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやいや、前はこっちが迷惑だけかけて帰ったから!お詫びと思えば何のその!

バカ共じゃないしw

うん、あおり特有の能力w←何気に気に入ってるw

208麻利:2012/08/22(水) 19:12:26 HOST:zaq31fbc2fe.zaq.ne.jp
続き気になる〜!

209ピーチ:2012/08/22(水) 19:36:01 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
麻利>>

ごめんっ!続きないっ!

終わりました…

210麻利:2012/08/23(木) 12:56:58 HOST:zaq31fbc2fe.zaq.ne.jp
終わったんだ・・・。

結構面白かったよ!

続きは、書く気無いの?

出来たら、その後のストーリーも見たいな!

211:2012/08/23(木) 12:57:10 HOST:zaq31fbc2fe.zaq.ne.jp
終わったんだ・・・。

結構面白かったよ!

続きは、書く気無いの?

出来たら、その後のストーリーも見たいな!

212ピーチ:2012/08/23(木) 13:05:38 HOST:nptka202.pcsitebrowser.ne.jp
麻利さん、燐さん〉〉

ごめーん、次はつっきーの話だからさー

ごめんね!

213月波煌夜:2012/08/23(木) 13:44:49 HOST:proxy10085.docomo.ne.jp
ごめんなさいピーチの後は駄文が引き継ぎます本当にごめんなさい。


月波のターンは、とりあえず番外編が完結したら始め(てみ)ます(`・ω・´)
連載始めたら始めたらでピーチのキャラを盛大にぶち壊すのは目に見えてるから、早めに修正頼みます((こら

214ピーチ:2012/08/23(木) 14:09:29 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

つっきー間違えてる!

ピーチの後は神作品が引き継ぎます、の間違いだョ!!

うん。修正必要ないね。←

連載始まったら絶対に一文字一文字が輝き出すよ!!

楽しみに待ってまーす!

215:2012/08/23(木) 14:27:49 HOST:zaq31fbc2fe.zaq.ne.jp
私はこんなコメントを書いた覚えはありませんが。

>>211

216:2012/08/23(木) 14:34:21 HOST:zaq31fbc2fe.zaq.ne.jp
麻利の間違いだと思うので、削除依頼を出して置いてください。

217にゅるにゅる:2012/09/07(金) 21:43:14 HOST:softbank126048082020.bbtec.net
どうも!
一気読みさせていただきました!
お二人様は神ですか!?
私はこんなにうまく書いたことなんて…ううぅぅぅっ…←
これからちょくちょく読みますね^^

218月波煌夜:2012/09/07(金) 22:40:22 HOST:proxy10040.docomo.ne.jp
>>にゅるにゅるさん

初めまして!
いえ、ピーチは神ですが月波は地を這う虫ケラです\(^o^)/
ありがとうございます、是非ピーチとついでに月波が執筆の本編もよろしくお願いします←

あと、もう少ししたら月波の低俗な文章が発生しますのでお目汚し注意です(・∀・)

219ピーチ:2012/09/07(金) 22:48:41 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
にゅるにゅるさん>>

初めましてー!

お二人は、じゃなくてつっきーのみが神様ー!←自分は虫以下の存在w

つっきー>>

そんなに謙遜しなくても……((汗

……つっきー?お目汚し注意はあたしの小説じゃないかなぁ?

220心愛:2012/09/16(日) 13:12:37 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いや、このへんできっちり謙遜しとかないと言い訳が…(*_*;


ではでは、長らくお待たせしましたがここあのターン開始です!
とても残念なことになること必須ですがね!
それから新作も動き始めるのでゆっくり行きます、重ね重ねごめんねピーチ(´・ω・`)



あ、元月波だよー!
心愛で、ここあ、って読みます←

221心愛:2012/09/16(日) 13:13:28 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――開幕――』







全てを呑み込む宵闇よりも深い、濡れ羽色の髪が静かに波打つ。


銀に透き通る月光を浴びて一際艶めく見事なその黒髪は、極上の絹糸の如き滑らかさ。


―――さああああっ


突如吹き抜けた微風が、深い藍色の着物の袖を、この上なく優雅に膨らみはためかせる。

―――揺らめく蝋燭の灯りに照らされ、その人物の姿が浮かび上がった。


女性と呼ぶべき年齢ながら少女のあどけなさをも残した、怜悧で整った顔立ち。

長く繊細な睫(まつげ)が陰を落とす、黒曜石のように澄み渡った瞳。

清らかな白菊の花弁にも似た、しっとりとして瑞々しい肌。


その少女は美しく、しかし無心に舞い続ける。


指先で鮮やかな紅の扇を広げ、弧を描く所作は流れる水のよう。
凛と背筋を伸ばし、足を運ぶその様は月下に咲く一輪の花のようでもあった。



―――りん―――……



―――そのとき、玲瓏たる鈴の音が、静寂を破って涼やかに響いた。



「…………!」



少女が舞を止め、星のない夜空に唯一、煌々と輝く満月を真っ直ぐ振り仰ぐ。



「……これ、は……」



ふ、

珊瑚の色をした唇から漏れる吐息。


小さな呟きが、静まり返った深闇に儚く溶け込み、僅かな余韻を残した。

222ピーチ:2012/09/16(日) 13:31:26 HOST:nptka204.pcsitebrowser.ne.jp
心愛さん〉〉

やっほーい!コラボ開始ー!

おぉ!?早速天音が動いてるよー!

あ、あいつらをあんなに上手く動かしてくれて……!

感謝ですー!

223心愛:2012/09/16(日) 15:44:39 HOST:proxy10016.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いや、これから大惨事になるよ…?



『邪気眼少女』と、今からスレ立てる『ソラの波紋』と並行するんで更新遅くなります…。

平日は、一日一回どれか更新できればラッキーって感じかな←

ここあは受験生に突入する前に、さっさと心残りを片付けねばならぬのだ…!

224ピーチ:2012/09/16(日) 16:42:40 HOST:nptka203.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

いやいやいやいや!大惨事はないでしょ!?

平行か!楽しみだよー!

225心愛:2012/09/21(金) 18:59:08 HOST:proxy10035.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――黒猫は告げる――』





処(ところ)変わって―――



「あら……?」


プラチナを伸ばしたように輝く銀髪を二つに結い上げる、淡い紫の瞳を持つ少女が窓に歩み寄る。


「シュオン!」


ぱっと顔を輝かせた少女が振り返り、部屋の中の人物の名を呼んだ。


「なあにソフィア」


眩い純金の髪、暖かみのあるサファイアブルーの双眸。

その美しい青年―――シュオンが、穏やかな微笑を浮かべながらソフィアに寄り添う。

この場に吟遊詩人でもいたのなら、詩の一つや二つを綴らずにはいられないに違いない。
そんな、一枚の絵画のように、非常に麗しい光景だった。


「見てシュオン、猫よ!」


ソフィアが嬉しそうに、外を指差す。

にゃあ、と可愛らしく一鳴きする声は、彼女の言葉通り、間違いなく猫のもの。

二又に分かれた黒くつやつやした尻尾を揺らめかせ、つぶらな目でこちらを見上げる。


ソフィアがそろそろと手を伸ばし、すぐ近くにあった猫の頭を撫でた。
気持ち良さそうに喉を鳴らすそれに、ソフィアはにこにこと笑って。


「可愛いわねー」


「そうだね。……ところでソフィア」


なに?と彼女が猫から手を離したその刹那。

シュオンはキラキラした至極の笑顔を浮かべて、言った。


「―――オスかな?メスかな?」


「ま、待ってシュオン、その手に持ってる爆弾は何に使うの!?」



マルグリットの実権を掌握する、王国中の貴族の筆頭エインズワーズ公爵家次期当主様の嫉妬の対象は、猫にまで及ぶらしかった。






*゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。**゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*






「……猫、か」


にゃー!と鳴きながら何処からか走ってきた猫が、こちらを見るや特徴的な尻尾をしゅるりと動かして地面に座り込んだ。

漆黒の髪に、鋭い眼光を生み出す同色の双眸。
無駄を削ぎ落とすかのように鍛えられた長身。

ヒースは猫の前で立ち止まり、

「黒猫って……確か、不幸を呼ぶんじゃなかったっけか」

「にゃー」

「迷信だけど……ってあれ、そういや御嬢様と反対だな」

「にゃー」

「じゃあ本当なのか?」

「にゃー」

「ま、どうでも良いけど」

と、そこで、ヒースは猫を見下ろして冷たく言う。

「残念だったな。俺は何も持ってねえし、にゃーにゃー可愛く鳴いたって拾わねえもんは拾わねえよ」

「にゃー」

「こういうのは、一旦懐かれっと面倒だからな」


ヒースは、すがるように鳴く猫を黙って背を向けて振り切り、



「……………ミルクで良いか?」



全然振り切れてなかった。

226ピーチ:2012/09/21(金) 19:41:06 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ねーこーだーよー!?

シュオン様ぁー!!猫にまで嫉妬しちゃだめー!!

………二又に割れた尻尾の猫ってまさか……

227心愛:2012/09/21(金) 20:55:49 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp
>>ピーチ

要するに、ここあは猫が大好きだってことだね!


ちなみにヒースは、「うるさいから嫌い」とかぶっきらぼうに言いつつ、小さい子供とか動物とかは結構好きで世話焼いちゃうタイプw
良いお父さんになるよ!(笑)



天音ちゃんたちのご登場はもうちょいお待ちを<(_ _)>

228ピーチ:2012/09/21(金) 22:00:30 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

おおいヒースっ!好きなら好きであっさり白状しなさい←え

お、天音達そろそろ登場?

229心愛:2012/09/22(土) 16:15:28 HOST:proxy10055.docomo.ne.jp
>>ピーチ

それができないのがヒースなんだ!(≧∀≦)


天音ちゃんたちをお借りします…(ふかぶか
残念なことになること必須だけどね!((しつこい

230ピーチ:2012/09/22(土) 17:20:06 HOST:nptka307.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

ヒース優しすぎだよー!

天音逹ならどーとでもお使い下さいw

な、何かとんでもなくレベル高そうな気が……!

231心愛:2012/09/24(月) 21:07:45 HOST:proxy10056.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ちょっと質問なんだけど、
天音ちゃんは基本ソフィアと同じ口調で良いのかな?「〜わ」「〜よ」「〜かしら」とかでNGある?
それから、三人とうちのバカ共の間で決まってるお互いの呼び方があったらお願いしますw
黒髪は承知してるよー(・∀・)

232ピーチ:2012/09/24(月) 22:30:40 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

OK!天音の口調はソフィア様と一緒ww

……うちの三人とここにゃんキャラんぼ間での呼び名……

ヒースは黒髪君←何か定着させちゃってごめん><

シュオン様は金髪君もしくは金髪(主に昇と天音が使用)

それ以外はあんまりない……

柊一と昇はヒースに黒髪って呼ばれてる←柊一は気にしてないけど昇はたまに怒るww

天音は………特に決めてないけど、ヒース辺りから結構色んなあだ名つけられてそう、てきとーに決めていいよww

はいほとんど適当ですねすみません><

233心愛:2012/11/06(火) 23:19:30 HOST:proxyag051.docomo.ne.jp
>>ピーチ

……(土下座中)



え、えっと、とりあえず更新しますはい。すみませんほんと。謝るしかないですほんと。

234心愛:2012/11/06(火) 23:20:32 HOST:proxyag051.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――異世界のモノ、現る――』




ヒースの背後―――



彼が背を見せた瞬間、尻尾を揺らめかせる猫の眼が、禍々しい光を湛えてギラリと輝いた。


小さな体が、みるみるうちに膨れ上がる。
間抜けな獲物を掻き裂こうとでもするように、凶悪に歪む口元から尖った牙が、手足からは鋭利な針の如き爪が覗く。


猫―――だったモノは助走の勢いを生かして音もなく跳躍、ヒースへと飛び掛かり、



「―――……なっ……んだよこれっ!?」



間一髪。
敏感に不穏な気配を察したヒースは振り返ると同時に後方へと飛び退く。

何もない空(くう)を、彼を引き裂かんと繰り出された爪が抉(えぐ)った。



《フニャァアアアア゙ア゙ア゙ア゙!!》



最早原形を留(とど)めずに蠢(うごめ)く、耳障りな奇声を撒き散らしている黒い影にも似た『何か』。



「ちょっ」



咄嗟に身を捻り、無心で剣を突き出す。



経験に裏付けされた勘は正しく、ほぼ紙一枚分という距離で何とか爪の軌跡を回避した。



しかし、



「……嘘だろ!?」



正確無比に突き出された剣先は、まるで影を切断しようとしたかのように『ソレ』をすり抜けた。


ヒースは舌打ちをしながらバックステップ、遠心力を利用し無駄のない動きで剣を彼の下へと戻す。



「効かない……っつうことは……」



敵は驚く暇さえも与えてはくれない。
感情の起伏を乱したら終わりだと、相手の攻撃をさばきながら必死に念じる。


直接攻撃を与えてもびくともしない、この常識外の化け物を撃退することは、ヒースが処理できる範囲を遥かに超えている。



「くそっ……」



ヒースだけなら良い。

けれど此処で何とかして仕留めてしまわなければ、屋敷の人間たちにまで危害が及ぶだろう。

兵士たちを呼ぶ? ……無駄だ。

ヒースとほぼ互角の力を持つジルを筆頭にしたエインズワーズ兵は確かに強いが、彼らはヒースと同じく剣の腕前に頼っているにすぎない。
おそらく数で圧倒することも不可能だろう。


こうして時間を稼いでいてもどうしようもないということは分かっている。
けれど人外のものが相手では、己の剣技も意味をなさないのだから他にどうしようもないのだ。


体力には人一倍自信があるヒースにだって、いつかは限界が訪れる。



そうしたら―――



『彼女』の笑顔が瞼の裏に浮かび上がる。



何も知らずに、今も無邪気に、晴れやかに笑っているだろう『彼女』。



「……くそ……っ」



ぎり、と噛み締めた歯が軋む。



シェーラを守ると誓った。


ソフィアを守ると約束した。



「……どうすれば……っ」



ヒースは獣のように唸る。



隠すべくもない焦燥感が滲む低い声色。


それが空気を震わせ、波紋のように広がるその前に―――





「―――……そこまでよ」




―――りん……―――



凛然たる声と共に、


涼やかな鈴の音が、響いた。

235ピーチ:2012/11/07(水) 20:04:00 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

いやいやいやいや!? 土下座いらないからね!?

こーしーん!! うわぁ、ヒースやばいかっこいい!!

間一髪ってこと自体凄いよ! 天音(らしい)の登場もさすがだよね!

236心愛:2012/11/07(水) 21:24:03 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp
>>ピーチ

よ、よかった…(^-^;



天音ちゃんはソフィアと同じ言葉遣いで、でも結構キツいことも言う。クールビューティーだけど表情はそこそこ動くイメージ。
昇くんはヒースと似たような喋り方、ポジション。でもヒースよりは明るいし融通利きそう。天音ちゃんを怒らせてとばっちり喰ってるイメージ。
柊一くんはシュオンと似た話し方だけど一人称「俺」。
穏やかで天然、でもたまにすごい鋭い。



以上がここあの三人に対する大まかな印象なんだけど、ずれてるとこもあるだろうから訂正よろしく!

あと、天音ちゃんは、ソフィア黒バージョンみたいに、人をからかったりボケたりできるかどうか。
それから皆さんは甘いもの…お菓子類は平気ですか?

ということをお聞きしたく存じます(^-^)/

237ピーチ:2012/11/07(水) 22:16:04 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

性格みんなぴったりだよー! 確かに昇と柊一は毎回必ずとばっちり喰うよw

昇はどっちかって言うとうるさいし柊一は後ろで苦笑してる感じ?←え

天音は……からかえないボケられないごめん! あと三人ともお菓子類とか甘いものは嫌いってことで!

…女の子が甘いもの嫌いって珍しいよね←

何かこう考えてみると何気にここにゃんキャラとかぶりまくってる気がする←え

238心愛:2012/11/08(木) 12:02:57 HOST:proxy10053.docomo.ne.jp
>>ピーチ

りょうかい!
これからも、なんかあるごとにちょこちょこ聞くと思うけどよろしくね!



ここあなりに天音ちゃんを動かしてみたんだけど、おかしいとこはばんばん言っちゃってください(´ー`)
あと呪文らしきものは適当にやりましたごめんなさい。残念ながらこれがここあの限界だった…!

いやあ、ピーチの偉大さが身にしみて分かるね(*´д`*)

239心愛:2012/11/08(木) 12:03:58 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――咲乱華(さきみだれしはな)――』





風を纏う髪は漆黒。
美しく冴えた深い闇の双眸が、すう、と細められる。

絶対零度の眼差しに、冷たく研ぎ澄まされたエキゾチックな顔立ちの持ち主は。



「……お、お前……っ!」



神代 天音(かみしろ あまね)。


妙な縁があって、ヒースたちと一騒動―――いや、二騒動あった少女だ。




《グルルルルル……》




“異形”が攻撃の手を休めて地面に降り立ち、天音を前にしてじりじりと後ずさる。


まるで、この可憐な一人の少女を畏(おそ)れてでもいるかのように。



「………………」



ヒースの声が届かなかったのか、それとも単に無視したのか。
どちらとも取れる真剣そのものの表情で、天音は猫―――否、“異形”と対峙する。


刹那の空白の後―――



すっ、
天音が鮮やかな紅色をした扇を取り出し、彼女を濁った赤い眼球で睨みつける異形へと翳(かざ)した。



「―――……燦爛たるは仮初めの紅鏡」



桜の色をした唇が淡い音を紡ぐ。



「深淵に眠りしは銀雪の氷輪」



決して大きくはないのに不思議と耳に残る、心地良い、流れるような詠唱。



「虚しく吼ゆる哀しき獣よ。我、其の枷を解き放つ」



瞼を閉じる彼女の、足首にさえも届こうかという長さにまで伸ばされた、黒檀のように艶やかな髪がふわりと広がる。



「此の夜の果てに帰する刻」



悪しきモノを常闇(とこやみ)へと誘(いざな)い囚うかの如く、瞳が強い光を湛(たた)え、

華奢な指先は、扇を空高く天へと掲げた。




「―――汝、散り逝く華となれ」




―――ざあっ―――!



「わっ」



ヒースは慌てて飛び退く。


庭園の花々が散らせた無数の花弁が、少女と“異形”とを包み込むように、勢い良く舞い上がった。


くるくると廻り、揺らめき、踊る花片たち。


それは妖精の輪舞のように、幻想的な光景で。



「……な、何が……っ?」



やがて風に流されて、視界を覆い潰していた大量の花びらが捌(は)け、ひらひらと降り積もる頃。



「………………」



いつの間にやら、あの“異形”の姿は綺麗に掻き消えており。


後に残っていたのは、深藍色の着物の褄先(つまさき)と袖口をはためかせる、少女ひとりだった。


視線が合う。



「…………………」



とっさのことに言葉が出ず、ヒースは口を開きかけて、また閉じる。



「…………………」



「……………………」




くる。



「いや一言くらい何か言えよ!?」



無言で背を向けて立ち去ろうとした天音に、ヒースが突っ込んだ。


非常に億劫そうに、髪を片手で後ろに払いながら彼女が振り向く。



「……何、」



「ちょっと待て」



ヒースは何か言いかけた天音を遮り、



「お前のお陰で助かった。礼は言う。ただ……お前今また『黒髪君』って言おうとしただろ」



「そうだけど?」



当然のように、天音。



「やっぱりまだそのネタ引っ張ってくんのかよ……。他に呼び方ってもんがあんだろが」



「……あぁ」



納得したように頷いて。



「そういえば、『黒髪君』の他にもちゃんとした名前があったわね。そっちの方が良いってこと?」



「……な、なんだ。分かってんじゃねえか」



意外そうにたじろいだヒースに、天音は「えぇ」ともう一度頷き、真摯な瞳を向けた。




「勿論よ。……黒目君」




「どちくしょ―――――!?」



「五月蝿いわね……」と苛立たしげに眉をしかめる天音の顔には冗談の色はなく、完全に本気で言っていたということが分かる。



―――ある意味シュオンよかよっぽど酷くねえかこいつっ?



いつも一方的にからかわれ、遊ばれている悪友の姿を思い浮かべ、ヒースはわなわなと震えた。

240彗斗:2012/11/08(木) 18:14:19 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
ピーチさん>>
凄くお久しぶりです!! 物凄く長い間見ないうちにここまで進んだのか……!?

もう私が次に来た頃には終わりが近かったりして……!?

もっと急いで此方も更新せねば(汗)

心愛さん>>
大変長らくお待たせいたしました! そろそろ本気で更新しないと……(汗)

新キャラの考案に凄く時間を喰ってしまって……心愛さんの世界観に沿った作者泣かせのオリジナルキャラが三人、やっと出来ました(泣)

241ピーチ:2012/11/08(木) 20:39:03 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

お、おかしいとこが何一つない…さっすが神様! 詠唱だって凄く凄い!!←どういう意味だ

黒髪&黒目君来たー! ま、まさかの冗談抜き…さすが天音だw

ヒース相変わらずだ! かっこいいときと遊ばれてる時の違いがある意味見所ある←おい

242心愛:2012/11/08(木) 23:17:46 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

ここあのターンはまだ始まったばかりです(´ー`)
のろのろとカス以下の駄文を垂れ流しておりますが、宜しかったらまた見てやって下さいな(^-^)/

おお、三人も!
楽しみに待ってます(*^_^*)




>>ピーチ

ほんと?
…よ、よかったあー…


それぞれ「紅鏡」が太陽、「氷輪」が月の別称の一つらしいけど何かかっこいいよね!日本語ばんざい!
あと、「此の夜」は、ほんとは「此の世」にするつもりだったんだけど、天音ちゃんをリスペクトということで、イメージ的に「夜」にしてみましたよー(≧∀≦)


天音ちゃんは素で酷いこと言うのね…。
ヒースは相変わらずですw


次は最大の不安要素、男性陣二人組だよー…。がんばる!

243ピーチ:2012/11/09(金) 06:57:19 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ほんとほんとー!←

な、何かあたし以上に詠唱が……((泣

天音は無意識に人喜ばせて無意識に止め刺すからね! 微妙に夕紀ちゃん的な?

男二人組みだー! あ、どっちかって言うと柊一は立場的に弱いから! たまに一番強くなるけどね!

244ピーチ:2012/11/09(金) 07:02:01 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

ごめん補足!

男二人組みに関しても昇は天音とほど一緒でヒースのことは黒髪もしくは黒目君です←

柊一は一応ちゃんと全員の名前憶えてるからヒース含めそれで呼んでるよ!←

245心愛:2012/11/09(金) 16:17:56 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp
>>ピーチ

補足ありがとう!

柊一くんはなんか可哀想であんまりいじめられん…(ぉい
一応やってみたんだけど、また何かあったら遠慮なく言ってください!
早いうちになんとかしなきゃだし←

246心愛:2012/11/09(金) 16:18:34 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――遠い世界で、彼らは出逢う――』





「天音っ?」



突如として割り込んだ若い男の声に反応し、天音がゆっくりとそちらへと視線を投げた。



「ったく、此処にいたのかよ」



駆け寄って来た、精悍な印象を与える風貌の青年―――昇(しょう)が天音の姿を認めるなり、一瞬だけ浮かんだ安心したような表情を崩して毒づく。



「はー……。急に走り出すからびっくりしたよ。幸い、無茶はしてないみたいで良かったけど」



同じく、二人と同年代であろう、昇の隣に並んだもう一人の青年が、こちらは怒る様子もなく苦笑した。
その彼、柊一(しゅういち)の温和な性格が滲み出る笑みにも目もくれず、天音は冷え冷えとした一瞥と共に、この上なくシンプルな一言。



「―――遅い」



「そりゃないよなっ? 歩いてる人に道聞いて、何も知らない異界でお前探しながら必死に走ってきた俺らに言うことじゃないよなっ?」



「……昇が一人勝手に聞き込んでる間に、最終的に異形の場所から此処を突き止めたのは俺なんだけど……」



天音はさらりと髪を梳き、



「やかましい。特に昇、あんたの声は五月蝿いのよ。鼓膜が破れたらどうしてくれるの?」



ぴしゃりと言い捨てる天音を前に、昇は顔の筋肉をひくひく痙攣させながら。



「俺はこの胸にこみ上げる怒りを何処にぶつけるべきなんだろうなぁっ!?」



「何か言った?」



「いえ何でもないです俺が悪う御座いました」



天音に妙な迫力が籠もった横目で見られた昇は、慌てて口をつぐんだ。
ついでに柊一も黙り込む。



「……おーい」



三人のやり取りを傍観していたヒースは、そろそろ良いかと半眼で声を掛けた。



柊一と昇がやっとのことでヒースを視認し、



「あー! 黒髪じゃん!」



「だっから誰が黒髪だ誰が!」



声を上げるや彼を指差した昇にヒースは早速突っかかる。



「俺にはヒース=ユーゼルっつう名前があんだよ! 何回言えば分かるんだっ」



「黒髪・ユーゼルな。覚えた覚えた」



「あれ、意外と語呂良いね」



「……なあ殺して良いか? こいつ殺っちまって良いか?」



「俺に聞かれても。そういうことは天音に言ってよ」



「お、やるか黒髪……って待て柊一っ!? お前今なんつったっ?」



「……悪いけど、それは駄目。勿論柊一も」



「へ」



きっぱり言い切った彼女を、昇、それから柊一が信じられないものを前にしたときのようにまじまじと見た。



「……あ……天、音?」



「何を馬鹿みたいに驚いてるの? 二人とも私の所有物で家来みたいなものなんだから。いなくなると不便じゃない、色々と」



「あ、あーうん。分かってたよ。分かってたけどさ……」



とても微妙な顔で、昇。



「天音……? えーともしかして、怒ってたりなんか……?」



「五月蝿いのは嫌いだって、言ってるわよね?」



「「すみませんでした」」



「お前らにプライドはないのかっ?」



真顔の天音に頭を下げる大の男二人。



……こりゃ駄目だ、とヒースは直感した。

この面々は一見常識人のようで―――
……とにかく、放っておいたらいつまでもこのままなのは間違いないだろう。



「……で? お前ら、これからどうするんだよ。あの化けもんを追いかけてきたんだろ? じゃあもう用はないのか?」



天音がぴく、と柳眉を動かす。



「そう、なんだけど」



「何か引っ掛かるんだよね」



「まだ残ってるってことか? この近く?」



「そこまでは分からないけど、そんなに遠くはない……と、思う」



「俺もそんな感じかな。いまいちはっきりしない」



「どうする?」



霊感とかそういう類のものには無縁なヒースは黙ってそれを聞いていたが、



「……じゃあさ。ちょっとで良いから、茶でも飲んでかないか? その化けもんみたいなのもそのうち出て来るかもしんねえだろ」



「でも」



「お前らが来たって知れば、御嬢様も……あいつも喜ぶだろうし。ちょうど午後から客人が来るから準備してたんだ、三人くらい変わんねえだろ」



三人は顔を見合わせた。

247ピーチ:2012/11/09(金) 18:35:34 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

すっげー!! 柊一と昇の口調があたし以上だ! 一人で大笑いしてた!←

あ、ちょこっと訂正&補足

天音は柊一のことは「柊」って呼んでます。ついでに二人のことは家来扱いしてるように見えるかもだけどそんなことないよ!

……ごめんね、表現分かりにくくてごめんね

それと、天音は男性軍(シュオン様とかヒース、ジルも?)には毒舌吐きまくってるけど女性軍にはめっちゃ優しいよー←

…そして、その天音の毒舌を内心で冷や汗だらけで止めるのが柊一ね。こいつは誰に対してもフレンドリー

んで、昇もフレンドリーだけど、ヒースのあだ名に関しては弄り倒してるって言うw←ひでぇ

ごめんね何か多くてごめんね!?

248心愛:2012/11/09(金) 19:21:42 HOST:proxyag067.docomo.ne.jp
>>ピーチ

……やっちまったぜ……((((゜д゜;))))


データ残ってたんで、とりあえず軽い訂正バージョンをば↓
大変失礼しました(;O;)

249心愛:2012/11/09(金) 19:22:56 HOST:proxyag067.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――遠い世界で、彼らは出逢う――』





「天音っ?」



突如として割り込んだ若い男の声に反応し、天音がゆっくりとそちらに視線を投げた。



「ったく、此処にいたのかよ」



駆け寄って来た、精悍な印象を与える風貌の青年―――昇(しょう)が天音の姿を認めるなり、一瞬だけ浮かんだ安心したような表情を崩して毒づく。



「はー……。急に走り出すからびっくりしたよ。幸い、無茶はしてないみたいで良かったけど」



同じく、二人と同年代であろう、昇の隣に並んだもう一人の青年が、こちらは怒る様子もなく苦笑した。
その彼、柊一(しゅういち)の温和な性格が滲み出る笑みにも目もくれず、天音は冷え冷えとした一瞥と共に、この上なくシンプルな一言。



「―――遅い」



「そりゃないよなっ? 歩いてる人に道聞いて、何も知らない異界でお前探しながら必死に走ってきた俺らに言うことじゃないよなっ?」



「……昇が一人勝手に聞き込んでる間に、最終的に異形の場所から此処を突き止めたのは俺なんだけど……」



天音はさらりと髪を梳き、



「やかましい。特に昇、あんたの声は五月蝿いのよ。鼓膜が破れたらどうしてくれるの?」



ぴしゃりと言い捨てる天音を前に、昇は顔の筋肉をひくひく痙攣させながら。



「俺はこの胸にこみ上げる怒りを何処にぶつけるべきなんだろうなぁっ!?」



「何か言った?」



「いえ何でもないです俺が悪う御座いました」



天音に妙な迫力が籠もった横目で見られた昇は、慌てて口をつぐんだ。
ついでに柊一も黙り込む。



「……おーい」



三人のやり取りを傍観していたヒースは、そろそろ良いかと半眼で声を掛けた。



柊一と昇がやっとのことでヒースを視認し、



「あー! 黒髪じゃん!」



「だっから誰が黒髪だ誰が!」



声を上げるや彼を指差した昇にヒースは早速突っかかる。



「俺にはヒース=ユーゼルっつう名前があんだよ! 何回言えば分かるんだっ」



「黒髪・ユーゼルな。覚えた覚えた」



「あれ、意外と語呂良いね」



「……なあ殺して良いか? こいつ殺っちまって良いか?」



「俺に聞かれても。そういうことは天音に言ってよ」



「お、やるか黒髪……って待て柊一っ!? お前今なんつったっ?」



「……悪いけど、それは駄目。勿論柊も」



「へ」



きっぱり言い切った彼女を、昇、それから柊一が信じられないものを前にしたときのようにまじまじと見た。



「……あ……天、音?」



「何を馬鹿みたいに驚いてるの? 昇も柊も、いなくなると不便じゃない、色々と。当たり前のことでしょう?」



「あ、あーうん。分かってたよ。分かってたけどさ……」



とても微妙な顔で、昇。



「天音……? えーともしかして、怒ってたりなんか……?」



「五月蝿いのは嫌いだって、言ってるわよね?」



「「すみませんでした」」



「お前らにプライドはないのかっ?」



真顔の天音に頭を下げる大の男二人。



……こりゃ駄目だ、とヒースは直感した。

この面々は一見常識人のようだが、それは見せかけだけなのかもしれない。

とりあえず、放っておいたらいつまでもこのままなのは間違いないだろう。



「……で? お前ら、これからどうするんだよ。あの化けもんを追いかけてきたんだろ? じゃあもう用はないのか?」



天音がぴく、と柳眉を動かす。



「そう、なんだけど」



「何か引っ掛かるんだよね」



「まだ残ってるってことか? この近く?」



「そこまでは分からないけど、そんなに遠くはない……と、思う」



「俺もそんな感じかな。いまいちはっきりしない」



「どうする?」



霊感とかそういう類のものには無縁なヒースは黙ってそれを聞いていたが、



「……じゃあさ。ちょっとで良いから、茶でも飲んでかないか? その化けもんみたいなのもそのうち出て来るかもしんねえし」



「でも」



「お前らが来たって知れば、御嬢様も……あいつも喜ぶだろうし。ちょうど午後から客人が来るから準備してたんだ、三人くらい変わんねえだろ」



三人は顔を見合わせた。

250ピーチ:2012/11/09(金) 21:06:05 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

……………………ごめんね何かわざわざやり直しなんかやらせちゃってごめんね!?

やばい凄い!! キャラそのものだー!!

多分柊一と昇の「すみませんでした」はプライドなんかよりも自分の身の安全を優先したものだね←おい

ヒースの突っ込みも面白いー!

251心愛:2012/11/09(金) 23:00:13 HOST:proxy10053.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いや、なんか落ち着けない性分なので←

それはよかった(*^_^*)
……やっぱり命>プライド?(笑)

ヒースはいつも通り平常運転w




あとあと、皆さん紅茶とか飲める?緑茶じゃないとダメ?(←勝手なイメージ)

それから天音ちゃんがブチギレたらどうなるのか気になるんだが…

252ピーチ:2012/11/10(土) 09:35:23 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

わーごめんなさーい!!

うん。プライドなんかよりも命、だろーねあの二人は。

紅茶は別に飲めるよー

………天音が切れたらほぼ一瞬で部屋の中の物が粉々になる。もしくは建物一個余裕でぶち壊す。←おい

253心愛:2012/11/10(土) 10:39:59 HOST:proxy10026.docomo.ne.jp
>>ピーチ

マジデカッ!?

殺傷能力はんぱないね天音ちゃん! 昇くんと柊一くんが恐れるわけだ!

…え、えっとそれは、霊的な力で破壊するってこと?

254心愛:2012/11/10(土) 12:27:51 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――集う者たち――』





「わー! わ―――! わぁあ―――!」



「うるせえ落ち着け黙ってろ」



「すっごいお久しぶりですっ! 会いたかった―――!」



大きな青灰色の瞳をこれ以上ないくらいにキラキラと輝かせるメイドの少女。


シェーラは柔らかな小鹿色(フォーン)の髪を揺らしてぱたぱたと走り出し、



「やっぱり可愛ぃぃぃぃいっ!」



「…………え」



さっ。



「にゃぎゅっ?」



「わっ!?」



天音は―――思わずというように、突進してきたシェーラを避けて、隣に立っていた柊一を盾にした。


ぼすっとそのままの勢いで、シェーラが彼にぶつかる。



「ま、またやっちゃった……。ごめんなさい、大丈夫?」



「ふへー……いいんれすよー」



赤くなった鼻をさすりながら、シェーラがえへへと笑う。



「あ、そちらのお二人もお久しぶりですっ! ぶつかっちゃってすみません」



「俺らは天音のオマケかよとか突っ込んじゃいけないんだろうな多分」



「あはは……。久しぶり」



昇、柊一と握手を求めてにこにこしているシェーラを見て―――ヒースはむっつりと口元を引き結びそっぽを向いていた。



「………………」



「何をそんなに不機嫌そうに……あぁ。もしかして二人に妬(や)いてるの? 黒髪君」



「はっはあ!? んな訳ねえしっ……ってか結局黒髪なのかよ俺はっ!?」



「慣れちゃったから直すのも面倒なのよね」



「うぇへへへ……クールな美人さんって素晴らしいよねぇ。あたしなんかもう見てるだけでしあわせー」



「ええと……有難う?」



「俺への対応と全く違うような気がするんだがっ!?」



によによと顔面を完全崩壊させてしまっているシェーラを見て、天音は少し困ったように首を傾げた。



「―――やっぱり君たちだったんだね。急にお客様が増えたって言うから、誰かと思ったけど」



「……こんにちは」



二人ぶんの足音が聞こえ、人好きのする笑顔を浮かべたシュオンが庭園へと現れた。

警戒してか彼の背後に隠れるようにしていたソフィアも、安心したように出てきてぺこっとお辞儀をする。



「金髪君」



「……髪の色で人を呼ぶのはどうかと思うのだけど……」



「で、そっちはソフィア……ちゃん、よね。お邪魔してるわ」



「私は名前なのっ?」



ソフィアが驚いたように紫の双眸を丸くする。



「貴女だけじゃないわよ。ちゃんと覚えてるもの。まずそっちはシェーラちゃん」



「えへへ、そうでーす」



次に天音は視線をずらし、真紅の髪を持つメイドの女と、傍らに立っていた大地色の髪の男―――ユーリエとジルを見やって。



「それから、貴女はユーリエ……ちゃん、で良いの? それとも『さん』?」



「え? え、ええと」



急に振られたユーリエが口ごもっている間に、ジルがけらけらと笑った。



「アッハハお嬢ちゃん良く見てみろって、こいつは『ちゃん』が通用するよーな年じゃな―――」



「……ジル?」



「―――くもないかもしンねェな、うん」



にっこりと怖すぎる微笑を向けられたジルは目を泳がせながら誤魔化した。



「じゃあユーリエ『さん』で」



「うん、それが良いかも」



「で……最後に茶髪君。ね、全部合ってたでしょう?」



「完璧ね」



「うん。僕の呼び方以外はパーフェクトだと思う」



「俺の『黒髪君』もいい加減嫌なんだが」



「いーじゃーん。これ以上ないくらいぴったりだもん」



「わ、私、意外とまだ『ちゃん』でいけるのかしら……?」



「オレの呼び名に関してはノーコメントかよッ!? 今明らかにおかしかったよなァ!? 三人はまともだったのになんでオレだけッ?」



「男に生まれたからには天音に逆らう方が無茶だから、諦めた方が良いと思うよ?」



「諦めって肝心だよな」



「ヒースみてーなこと言うんじゃねェよッ!」



何処かで聞いたような台詞と共に悟りきったように微笑む二人を見て、ジルは戦慄の色を走らせた。

255ピーチ:2012/11/10(土) 13:23:48 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

マジデスッ!!

殺傷能力ならある意味お任せあれだよ←

うーん…基本的に霊的な力かなぁ…

ジルの呼び名受けた! それと柊一達の言葉! あれ絶対言うかも!

やっぱり神様がキャラを動かすと違うもんだねぇ←おい

256心愛:2012/11/10(土) 14:25:37 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp
>>ピーチ

破壊神光臨w

好き勝手やってすみません(´ー`)


あ、天音ちゃんすげえ…
あとの二人は、そういう破壊的かつ霊的な能力はないの?

257ピーチ:2012/11/10(土) 15:19:44 HOST:nptka103.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

うん、天音が切れたら本気出した柊一でないと止められないからね←

いや、破壊能力は持ってないけど霊的な力はあるよー

258心愛:2012/11/10(土) 17:31:41 HOST:proxyag081.docomo.ne.jp
>>ピーチ

柊一くんもすごかった!

天音ちゃんは怒ると無表情になるんだっけ?
一回軽くキレてもらおっかなーと思ってるんで←

259ピーチ:2012/11/10(土) 17:46:06 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

柊一は地味に凄いからね←

うん、天音は無表情になる=キレるだからw

柊一も一回マジギレしたことあるよーまだ載せられてないけど←おい

260心愛:2012/11/10(土) 18:15:32 HOST:proxyag120.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――新たな招待客――』




「……それで? 本来のお客様って誰?」



白く塗られた樫で出来た椅子に腰掛けながら、天音が問う。



「ええと」



「あ、ちょうどいらっしゃいましたよ!」



言葉に詰まったソフィアの代わりに、シェーラが嬉しそうに叫んだ。


同時にシュオンが立ち上がり、人影に向かって声を掛ける。



「姫君、クロード殿! こちらです!」



「おお、シュオンではないかっ」



赤みの混じる輝かしい金髪、小柄な体躯に若草色のドレスを纏う天使のように愛らしい少女が、ぱっと顔を綻ばせて駆け寄ってきた。



「お会いできて光栄です、姫君」



「うむ! わたしも嬉しいぞ」



身長差を埋めるように軽く膝を折ったシュオンに、少女―――ルイーズが大仰に頷いた。



「訪問状はきちんと受理されたようじゃな」



「はい。姫君の御要望通り、お菓子もたくさん用意してあります」



「ほう! それは楽しみじゃ! 具体的には何が」



「ルイーズ様」



「む……わ、分かっておるわ。最初に挨拶じゃろう?」



傍に控えた従者(ヴァレット)の青年にたしなめられ、ルイーズは唇を尖らせた。



「クロード殿もお久しぶりです」



「はい。ロード・シュオンも御機嫌麗しく」



その従者、艶のある黒髪を風に泳がせた長身の青年クロードが、完璧な姿勢で一礼。



「ロード・シュオン、ロード・ヒース、そしてレディ・ソフィア。本日は私のような者までお招き戴きまして大変恐縮です。……シェーラはどうでも良いが」



「何それひどーい!」



「こら、クロード。……久しいな、ロード・ヒース、ソフィア嬢、シェーラ嬢も」



「お久しぶりです。クロード殿、王女殿下」



ヒースが紳士的な仕草で礼をし、それに倣うソフィアもドレスの裾をつまんで挨拶をする。



ルイーズは笑って、



「堅苦しい挨拶はなしだといつも言っておるではないか……む? そちらの二人も、この前会ったような気がするが」



「あ、は、はい! その節はどうも!」



「いぎっ?」



ルイーズに視線を向けられたユーリエは、愛想笑いをしながら慌てて「あ? 誰だっけかこのガキ」などと漏らしていたジルの首を掴んで無理矢理頭を下げさせた。



「やはりそうだったか。そなたたちも、今日はよろしく………え?」



と、言いかけたルイーズの紺碧の瞳が、ようやくのことで天音たちを捕らえた。



「ああーっ!?」



「……貴女だったの、我儘王女……」



耳を押さえてげんなりとしている天音を指差し、ルイーズは驚愕にぷるぷるとうち震えながら。




「菓子をくれた女とその家来ではないかっ!」




「ルイーズ様。その覚え方には少々、いえ多大な問題があるように思われます」



クロードは仏頂面で、頭痛でもしたかのように息を吐き、額に手をやった。



「……家来って」



「第三者からはそう見られてんのか俺ら……」



「む? 違うのか?」



「同じようなもんじゃね?」



「うっせーよ黒髪!」



「はあ!? だから黒髪じゃねーし! お前こそ黒髪だろ!」



「黒髪にだけは言われたくねーよ!」



「ふざけんな! 絶対お前の方が黒髪だ!」




「……びっくりするくらい低レベルな争いね……」



「本人たちにとっては大事なことなんだろうね」



「話題入れ替わってますしねー」



「……呼び方くらいであんなに熱くなれるものなの?」



「らしいなァ……」



「天音もそうだけど、昇は怒りっぽいからね」



「……柊?」



「い、いや何でも」



「楽しそうでよいなぁ」



「ロード・ヒースにもこのような一面があったのですね」



結局、ヒースの茶々から始まった『どちらが“黒髪”の称号により相応しくないか』という内容の罵声飛び交う口論は、天音が「どっちでも良いから黙ってくれる?」と冷ややかな声を出すまで続いたのだった。

261ピーチ:2012/11/10(土) 20:01:16 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

うるさいからやめろ……あいつなら言いかねないw

我侭王女も久しぶりの呼称だー!←

262心愛:2012/11/10(土) 21:00:05 HOST:proxy10005.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天音ちゃんはキレると無表情ね、分かった←


こっちのキャラバカみたいに多いから大変だわ(^-^;
ピーチ、ほんとお疲れ様ですすごいね…!


今回は、二人が家来に「見える」だけなんだよってとこと、昇くんがヒースに黒髪って呼ばれると怒るって要素を入れてみました(≧∀≦)


我儘王女ーw

263ピーチ:2012/11/10(土) 21:30:06 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

キレると無表情w←

見えるだけ、ね。おっけー

我侭王女ーw

264ピーチ:2012/11/10(土) 23:11:11 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

あ、ごめん質問いーですか←

ソフィア様達とうちの天音達との肝試し的なのなんかある?

いきなりごめんね!?

265心愛:2012/11/11(日) 11:02:43 HOST:proxy10037.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、しばらくしたら肝試し(もどき)は入れるつもりだよーw

それまでが長くなりそうなんだけど(´ー`)

266心愛:2012/11/11(日) 15:47:11 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――新たな招待客――』




「……こほん」



ルイーズが空咳をして喉の調子を整える。



「この前は初対面じゃったというのに自分の紹介もできなかったからな。改めて、わたしはマルグリット王国の第三王女、ルイーズ=リィ=ユリア=ローエンシュタイン。そしてこの無愛想な男がわたしの騎士をやっているクロード=ヴィスエルじゃ」



「前回はルイーズ様が大変お世話になりました」



「いえいえ」



三人を代表してか、柊一がにこやかに応える。



「うむ、礼を言うぞ………って、あああっ!?」



「今度は何……」



ルイーズはサッと青くなり、クロードの黒装束を引っ掴んで。


「し、しまった、わたしとしたことが! 部外者にはみだりに身分を明かしてはいかぬと父様に言われておるのじゃった……! 今からでもクロードやイルゼの目を盗んで王宮の外で遊ぶときのように、リィルと名乗っておくべきか……っ?」


「今の発言につきましては後でじっくりと言及させて戴くこととして、既に名乗ってしまったからにはその心配は無用ではないかと」


「そ、そうか?」


気を取り直したらしいルイーズは、次に天音たちに目を向ける。



「そなたたち、名を何と申す」



「……神代 天音。それからこっちが飛鳥井 昇で、そっちが天神 柊一よ」



心底呆れ果てた眼差しをルイーズに注いでいた彼女が、それでもルイーズの偉そう且つ今更な問いにきちんと答えてくれる。



「……そういやこの前もそうだったけどさ、何で俺らの紹介まで天音が?」



「面倒だからまとめて言っただけだけど?」



「ほう。では、天音、昇、柊一とやら。これからも何か、危険なことがあったらよろしく頼む」



「そんな機会がなければ良いけど……って言いたいところだけど、そうも言ってられないのよね」



肩をすくめる天音、



「おう。任せときな、ちびっ子」



「昇、ちびっ子はちょっと……。ええと、よろしく」



昇、柊一も流石と言うべきか、一国の王女が相手でも萎縮した様子はなく、むしろ堂々としたものだ。


「お、おい、お前ら……」


「気にするでないぞ。このようにわたしと対等に向き合える者とは珍しい」


内心冷や汗たらたらのヒースに、ルイーズは嬉しそうに言う。



「それで、そちらの二人は」



「わ、私はユーリエ……です。エインズワーズのメイドで」



「……王女って貴族よか偉いんだよなァ? ほんとにこのアホそーなガキがむぶッッ」



「そして、コレが兵士のジルです」



貴族嫌いが発動しているジルの口を思いっきり塞いだ上にギリギリと首を絞めながら、ユーリエが当たり障りのない返答をする。


「……ねぇ、茶髪君死にそうじゃない? 顔色すごい悪くなってきたけど」


「大丈夫よ天音ちゃん。こいつは馬鹿みたいにしぶといの。ちょっとやそっとでは死なないから」


「なら良いんだけど」



「良いのっ?」


「……ああ、なるほど」


ルイーズは得心したように、ぽん、と手を打った。



「さては恋人同士か、そなたら。仲がよくて羨ましいことじゃのう」



「「はっ?」」



ユーリエと、解放されたジルの声が重なった。



「ルイーズ様。その様なことは面と向かって言うものでは御座いません」



「や、あ、ちっ違……っ」



「ゲホッゲホッ……ッはぁァああッ? ばっ、何言ってくれちゃってンのクソガキ目ェ腐ってンぎゃあああああ!?」



「貴方は黙ってなさい……!」



「おー。出た、ナイフ」


「照れてるユーリエは可愛いわね」


「ですねー」


「こっちまで危ないのが傷だけどな」


「おお! こ、これはすごい!」


「彼女は手品師の類なのでしょうか」


和やかに笑いあう面々。



「この世界の人たちって、頭がイカレてるのかしら……?」



「大丈夫、天音も十分変わっ」



「何か、言った?」



「別に何もっ?」



「本当、すごいコントロール能力だね……。あのナイフ、全部ユーリエって人が信じられないくらいの速さで投げて、しかも的確な場所に落としてるよ」



「お前の目はどうなってんだ!?」



感心したように呟く柊一に、昇が恐怖を感じたように後ずさった。

267ピーチ:2012/11/11(日) 15:47:25 HOST:softbank126048082020.bbtec.net
ここにゃん>>

もどきw←

我儘王女の覚え方がすごいよね←今さら

268ピーチ:2012/11/11(日) 16:59:13 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

コメントが遅かった←

そっか、シュオン様達含め、今三グループくっついてるんだっけ?

天音と柊一も一応両思いだよー、今までと同じように接してるだけで←関係ない

269心愛:2012/11/11(日) 22:06:42 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp
>>ピーチ



(゚□゚;)

マ ジ で ?

え、嘘天音ちゃんと柊一くんくっついてたの!? 超初耳だよ!

な、なんだと…。天音ちゃんも柊一くん相手には照れたりなんだりするのっ? ますます可愛いじゃないか!

あれ、とすると昇くんは独り身?←



あと、ソフィア&シュオンペア、ヒース&シェーラペア、ユーリエ&ジルペア、ルイーズ&クロードペア全員くっついた後の話だよ!
いちゃこらは今のとこ控えめにしてるけどね!
シュオンとソフィアは婚約中なう。

270ピーチ:2012/11/12(月) 06:49:12 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

マジだよーw

いや、昇にもちゃんと居るよ思い人w

……それコラボに載せたいと思ったあたしがバカなのだ←当たり前だ

271心愛:2012/11/12(月) 12:29:53 HOST:proxy10017.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――お茶会――』





「ほぉぉおおおお―――!」



「ルイーズ様、淑女たる者、涎を垂らしてはいけません」



テーブルに置かれた幾つもの皿の上、陽光を浴びてつやつやと輝くのは木苺やベリーのタルト。
アーモンドチーズケーキにドロップケーキ、杏子の砂糖漬け(ブリザーヴ)。
他にも趣向の凝らした焼き菓子の数々が美しく並べており、甘党のルイーズはたまらず身を乗り出す。



「ほっ……本当に食べてもよいのかっ」



「勿論です、姫君。遠慮なくどうぞ」



「では遠慮なく全…………わ、分かっておる。分かっておるからその目をやめろ」



「……全……?」



「どうぞお気になさらず、レディ・ソフィア」



食い意地の張った主をその視線だけでたしなめたクロードが、不思議そうに繰り返したソフィアに告げる。



「これは何じゃっ?」



「ビスケット・サンドウィッチです。二枚のビスケットの間に、アイスクリームとジャムを挟んだものですよー」



「……相変わらずの腕だな、シェーラ」



「えへへ、そう? クロードは意外と甘いもの好きだもんねー。あたしが作ったやつとかも良く食べてくれたし」



「なっ……そうだったのか!? 初耳じゃぞ!?」



「常識的な範囲内でのことです。……シェーラ、余計なことを言うんじゃない」



「はぁい」



なんとも洗練された手付きでテーブルを整えるシェーラはのほほんと笑った。



「うっわ甘そ……」



「見てるだけで胸焼けしそうなんだけど……」



顔をしかめた昇と天音に、「ええっ?」とシェーラが食いつく。



「二人とも、お菓子駄目なんですかっ?」



「そうね……。甘いものはちょっと」



「俺も苦手かな」



頷く三人に、続いて「なんじゃとっ!?」とルイーズまで大きな声を上げた。



「菓子が苦手だなんて……! そんなの人間ではないわ!」



「お言葉ですが、ルイーズ様。面妖な能力をお持ちとはいえ、此方の方々には確かに血が通っているように見られます」



「ただの比喩じゃぞっ!?」



「……そ、そんな人がヒース以外にいたなんて……!」



「ほら見ろ」



珍しくシェーラをやり込め、ふっと満足げに笑うヒース。



「お前らと初めて気が合ったな」



「黒髪君と気が合っても嬉しくないわね。微塵も」



「何てこと言いやがるこの女尊男卑女ッ!?」



髪を片手で梳きながらクールに言い放つ天音と、すぐにムキになるヒース。



「じゃあ皆さんには、すぐに紅茶をお淹れしますね! うーん、甘さ控えめだとすっきりしたハーブティーも良いかなぁ」



シェーラは指を頬に当て、うーんと首を捻った。

272心愛:2012/11/12(月) 12:30:54 HOST:proxy10017.docomo.ne.jp
>>ピーチ

マジでか!
じゃあここあが書きたくなったときにはまた改めて質問するわ!

273彗斗:2012/11/12(月) 19:23:37 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
なんか、ヒースは回を追うごとに言い返す口調がエスカレートしてる感じがするけど気のせいなのかな?

それに……天音ちゃんも相変わらずですね(笑)

弱まる所を知らないのはある意味、一種の化物って感じですねーww

いつ見ても思うけど……黒い発言する部分の再現が上手すぎるっ!!

274ピーチ:2012/11/12(月) 20:23:29 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

マジだよ!

りょーかーいw←

……ここにゃんが終わってから、もう一回コラボ駄目かな?←

275心愛:2012/11/12(月) 22:54:57 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

ヒースエスカレートしてますか!
特別意識はしてなかったのですが…確かに(笑)
ここあもヒースもこなれてきたのかもです(*^_^*)

いえいえ、天音ちゃんはクールに黒くカッコよく!を目標に必死に頑張っております(^-^;
でも思いっきり可愛いとこも書いてみたいな(≧∀≦)




>>ピーチ

もっちっろっんっ!!
またまた長い間お待たせすることになるけど頑張るから!また月末試験だけどギリギリまで粘るから!
あとここあはこれ一本きりで他書く気サラサラないんだけど、それでもよろしいの?
なんか楽して楽しませてもらっちゃって悪いなぁ(*´д`*)

276ピーチ:2012/11/13(火) 06:46:02 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

あっりがとーう!!

いや、何かソフィア様達だったらアイディアが出てくれまくってるから!

うん、あたしが我侭言ってるだけだから全然一回でもいーよー←

277心愛:2012/11/13(火) 16:16:49 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとう…!
そんなにソフィアたちを好きになってくれて本当にありがとう…!((号泣

楽しみにしてるね!



引き続き、ちょっとでも訂正あったらよろしくです(´ー`)

278心愛:2012/11/13(火) 16:19:24 HOST:proxyag053.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――お茶会――』





「あの、シェーラとヒースも……ユーリエとジルも、座らないの?」



その四人へと、椅子に収まったソフィアが遠慮がちに声を掛けた。



「座りますよォー? あーオレ様超腹減ってき」



「ジル、仮にも使用人が主人と一緒にテーブルを囲むなんて言語道断よ」



「えぇーッ?」



ユーリエの言葉に、ジルが不満の声を出す。



「そうですよー。それに今日はお客様もいらしてるんですから、特にちゃんとしないと」



困ったように笑ってジルを諫(いさ)めるシェーラ。


ヒースも『馬鹿かこいつは』とでも言いたげな呆れた目でジルを見やった。



「いや……わたしは」




「……其処の人たちも座れば?」




ルイーズを遮ったのは天音だった。



ひんやりと冷たい、澄んだ氷のような声。



「そんな所で突っ立っていられても気分が悪いだけよ。……そうでしょう?」



退屈そうにカップの縁を指先でなぞりながら、何でもないような口調で言う。



「……天音ってそういうとこ優しいよね」



「すっげー分かりにくいけどな」



「柊、昇。後で覚えてなさい」



ちらっと視線を上げて、二人を睨む。



「う、うう……天音ちゃん、可愛いだけじゃなくて優しいいい」



「シェーラちゃん、感動したのは分かったから抱きつくのはやめてあげて」



目をうるうるさせて今にも天音に飛びつかんばかりのシェーラを、ユーリエがしっかりと捕らえて嘆息。



「天音さんの言う通りよ。良いでしょう? シュオン」



主催者であるシュオンは「えー」と不服げに。




「シェーラとユーリエは良いとして……男二人も?」




「お前まで女尊男卑かよ!?」



「お茶が不味くなりそうだし……」



「ひでェ言われようだなおいッ!?」



「……シュオン?」



上目遣い気味の紫の瞳に、ちょっと責めるように見つめられたシュオンは。



「分かったよ……。冗談だってば。ジルはともかく、ヒースとは昔から何度も一緒に食べてるしね。今更な話でしょう?」



「良かった」



「本気に取るなんて、ソフィアは心配性だなぁ。そういうとこも好き」



「……もう」



ソフィアの銀に輝く髪を撫で、優しく微笑んだまま―――ぼそっと一段階低い呟きを落とした。




「……ヒースと害虫の癖にソフィアに誘われるなんてムカつくし」




「「絶対そっち本音だよなッ!?」」




「……この中で一番権威があるのは金髪君? それともあの子?」



「王女殿下を抜かせば表向きにはシュオン様、裏ではソフィアちゃんでしょうね」



「ソフィア様は凄いんですよ! シュオン様の唯一のストッパーなんです!」



「ふぅん……」



「それ聞いてどうする気だ天音……」



唇に妖しい微笑を載せる少女に、隣の昇が顔を引き攣らせた。

279ピーチ:2012/11/13(火) 17:34:05 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

いえーいっ!←

うわぁい、ジル何も知らんねw

天音は企んでる……?

280心愛:2012/11/13(火) 19:31:55 HOST:proxy10025.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天音ちゃんのあれはあんまり深い意味はないけどねw
お借りしてる子だから黒さのさじ加減が難しい←


でねでね、『鈴扇霊』の本編、さらーりと流し読みさせてもらったことがあるんだけど…天音ちゃんって炎に何かトラウマある感じだよね?

あと、妖って幻覚みたいなの使えるのいる?


ラストあたりに使えないかなーと思ってるんだけど…( ̄〜 ̄)

281ピーチ:2012/11/13(火) 20:27:13 HOST:nptka305.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

流し読みしてくれた!? 感謝!

いや、炎にトラウマあるって言うか、出てきた人にトラウマある?←

な、何かごめんね分かりにくくて←

282心愛:2012/11/13(火) 21:10:14 HOST:proxyag063.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「雅さん」かな?
炎から、その人とか特定の出来事を連想した…とかそういうことでもなく?(~_~;)

や、ここあが読解力ない上に勝手に突っ走るからいけないんで!

じゃあ難しいかなー(^-^;

283ピーチ:2012/11/13(火) 21:18:32 HOST:nptka104.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

あ、ごめんあたし説明力ないよね←

うん、炎からの連想で思い出した人だよある意味←おい

284心愛:2012/11/14(水) 18:05:55 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp
>>ピーチ

あ、それならよかった←

もしかしたら使わせて戴くかもー(*^_^*)



それから、お二人は両思いとのことですが、柊一くんは天音ちゃんの容姿を褒める言葉をサラッと言える派?
天音ちゃんは全く照れたりすることはない?


ということを、これ以上大切なキャラ様方を破壊する前にお聞きしたく存じます(*^-^)ノ

285ピーチ:2012/11/14(水) 19:08:07 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

良かった?←

おっけーw

容姿かぁ…無意識にあっさり言ってのけるみたいな?

天音はその無意識聞いて照れ隠しにそっぽ向いたりする←

286心愛:2012/11/15(木) 23:01:12 HOST:proxy10038.docomo.ne.jp
>>ピーチ

かわええ(=°ω°=)

なんだこの初々しいカップル!素敵すぎるな!


でも再現できる気がしないのでほどほどのところで止めておかなくては←


ありがとー(^^)/~~~

287ピーチ:2012/11/16(金) 06:58:53 HOST:nptka303.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

何かいいよね!

天音と柊一と昇と相手の子はどっちもさらさらカップル目標←おい

288心愛:2012/11/16(金) 12:28:40 HOST:proxyag075.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――お茶会――』





「ところで姫君、その白いものは……?」



「んむ?」



ルイーズの小さな手の中のものを見て、シュオンが不思議そうに尋ねる。


緩やかな楕円状の球体。
雪のように真っ白なそれに「はむっ」と彼女がかぶりつけば、かなり柔らかいようで、引っ張られるまま素直にみょーんと伸びた。



「それってまさか……」



「ん、んー」



「はい。あの不可思議な体験をした際に、そちらの方にルイーズ様が戴いたものです。それを研究させて、我が国流に新しく作り出したとか」



主の口元についた白い粉を拭いてやりながら、クロード。



「我が国で採れる原料と技術では無理があると料理長が泣くのを、王族権限で無理矢理屈伏させまして」



「……っぷは! だってとても美味なのじゃぞっ? 外は柔らかくてもっちりしていて、中に甘い……豆? のようなものが入っているのじゃ! あれは何というものなのかの?」



「……大福」



「ダイフクっ? そうか、これはダイフクというのか!」



ルイーズは無邪気な笑顔で。



「天音とやら、礼を言うぞ! こんなに美味い菓子に巡り逢えたのは、そなたのお陰なのじゃからなっ」



「……コンビニの大福でこんなに大喜びされると、何だか複雑な気分ね……」



天音は微妙な表情をしていた。



「他にも色々貰ったが、これが一番わたしの舌に合っていたからな! 料理長をこき使ってでも半ば厨房に閉じ込めてでも何としてでも開発したかったのじゃ」



「そんなに美味しい?」



「うむ! 美食品の中では五指に入る出来じゃな!」



苦笑する柊一に、ルイーズは拳を握って力説する。


「……面白いわね」


「うちのシェフにも頼んでみる?」


「まんまるで綺麗……! ね、ヒースっ」


「まあ、見た目は悪くねえな」



「俺ら、この国の文化に変な影響与えちまったんじゃ……」



「……考えないようにしましょう……」



明らかにこの世界にはミスマッチな物体に興味津々な様子のソフィア達を見て、天音は力なく笑った。



「あんなに豊富な種類の菓子が店にあるとは、そなたたちの国はよい所じゃな! 少し羨ましいぞ」



ルイーズの声に、皆が一斉に反応して喋り出す。


「あのお店、こう、ういーんって扉が勝手に開いてましたよねっ? それともあたしの見間違いかなぁ」


「興味深い発明だね」


「……自動ドアのことか?」


「妙に中が明るかったし……。品物の包装も凝っていたわ。見たこともないものがたくさんあって驚いた」


「凝って……る、の? あれが」


「最初に落ちた場所は、あの店とは全く違う雰囲気じゃったな。あれは屋敷か?古めかしいような造りの」


「そのようですね。時代の流れを感じさせます」


わいわいと盛り上がる面々。


「あの服も変わっていたわね。軽くて、凄く楽だった」


「ドレスとは大分素材もデザインも違ったよね。僕たちが貸してもらったやつは、いつものと比較的似てたけど」


「ちゃんとしたドレスなんてめったに着ないし、メイドの衣装に慣れちゃったから私はそこまで新鮮味はなかったかも。でも面白かったわ」


「うむ、重いドレスは大変じゃぞ。コルセットはきついし、中から蹴飛ばしながらも優雅に歩いているように見せかけるのは至難の技じゃからな。あのような服がマルグリットにも普及すればよいのに」


「……ルイーズ様……」


奔放が過ぎる王女の哀れな教育係は溜め息をついた。



「ねねね」



「…………」



「あーまねちゃーん」



「え」



無関心を決め込んでいた天音が顔を上げる。

289心愛:2012/11/16(金) 12:30:26 HOST:proxyag093.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――お茶会――』





「ね、天音ちゃんはドレス着てみませんかっ?」



「…………」



突拍子のないシェーラの台詞に、天音が絶句した。



「……一応訊いておく。……なんで?」



「ぜええっったい可愛いからですよ!」



ばんっとテーブルに手を付いて身を乗り出すシェーラに、天音が微妙に己の身体を遠ざけた。



「その変わった服も可愛いけど、見てみたいですドレスの天音ちゃん! 落ち着いたトーンで黒髪に合ってフリル控えめでシルエットが綺麗に出るソフィア様系の……うぇへ」



「にやけてんじゃねえよ」



「おーねーがーいーでーすーかーらー!」



生ける日本人形の如き純和風の容姿を持つ天音だが。



「案外似合うんじゃねーの?」



「そうだね。天音って服にあんまりこだわらないし。折角可愛いのに勿体ないよ」



昇と―――それから微笑む柊一にさらりと言われ、天音は、う、と一瞬言葉に詰まったように見えた。



「……余計なお世話よ」



沈黙と動揺を誤魔化すように小さく言い、ぷいっとそっぽを向く。



「とにかく。悪いけど、それは遠慮しておくわ」



そう断られたシェーラはと言うと、



「……うん! あたし、満足!」



目を横線にして、ぺっかー! と顔を無駄に輝かせていた。
それはそれは嬉しそうに。



「え?」



「いえ何でもないです! すっごく残念ですよ! あー残念だなぁー…………や、やばいやばいやばいでしょちょっと無自覚っ? これで無自覚なのっ!? 可愛すぎるぅうううううう」



「何言ってるの? この子」



「いつもこんな感じだから、気にしなくて良いんじゃないかしら」



不可解そうに首を捻る天音に、ソフィアが苦笑してみせた。



「……おい」



「…………」



「シュオン」



「…………あー、今日もソフィアは可愛いなぁ」



「聞いてんのかよっ!?」



ヒースの呼び掛けにも気づかず、ほわほわした笑みでソフィアを眺めていたシュオンは、



「やだな、聞いてたよ。この世界に本当の平和なんて存在しない。存在しないんだよね」



「全ッ然聞いてねえ―――!?」



「で、何」



「悪びれもしねえしっ!? ……別に、大したことじゃないけどさ」



天音の方をちらっと見て、声を潜(ひそ)めた。



「お前、あの女のことは口説かねえよな……と思って」



「そうだね」



「それっておかしくねえか? いつも初対面の女は何処の誰だろうと大概モノにしとくのに」



「ちょっと、品のない言い方はやめてよ。ソフィアに誤解される」



嫌そうに眉をひそめたシュオンを見て、ジルも口を挟む。



「確かにな。あのお嬢ちゃん、口は悪ィけど美人なのに」



「………」



かちゃん、とカップがテーブルにぶつかる音がした。

不安げに俯いたユーリエの赤い髪が彼女の表情を覆い隠す。



「……いっいや美人だけど同じ美人でもオレのタイプとは全然違うしッ」



「……ジルのタイプの美人って?」



「へッ? や、そりゃあ……そのー……」



たちまち赤面してしどろもどろになるジル。



「と、ユーリエといちゃつき始めた害虫は置いといて」



シュオンはとても輝かしい笑顔で、



「これからの僕とソフィアの人生に関係のない人に媚び売っても仕方ないし」



「うぉい」



「冗談だけどね」



「お前の冗談は冗談に聞こえねえんだよ!」



いきり立つヒースを「どうどう」と落ち着け、



「だって彼女、どんな手練手管を使っても落とせそうにないもの。最初に会ったときから僕のことをヒースとジルと同列に扱える程の人材を、無駄に骨を折ってまでわざわざ口説く趣味はないなぁ」



「……今すげえ失礼なこと言われたような気がするんだが」



「気の所為じゃない?」



それに、と視線を滑らせ、天音と柊一を視界に映して。
透けるサファイアの瞳を僅かに細めた。




「……想い人がいる女性に、一時的とはいえ手を出すほど、野暮じゃないよ」




「あ? 何か言ったか?」



「何も?」



シュオンはくすりと笑った。

290ピーチ:2012/11/16(金) 18:10:52 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

大福ー!あたしも大好きー!

シュオン様鋭いね! 天音が絶句する所、何気に見て見たい←おい

柊一と天音のやりとりも凄かったー!

291心愛:2012/11/16(金) 19:40:25 HOST:proxyag062.docomo.ne.jp
>>ピーチ

大福大福w


…だ、大丈夫?
そこまでおかしくなかった?

いやぁ、天音ちゃんと柊一君のやり取り(?)で結構悩んじゃって←
ここあの女の子キャラはシャイで赤面症の傾向にあるのでそのままの勢いで天音ちゃんのイメージをぶっ壊してはならぬ!と……大丈夫、だよね…?(汗)

292ピーチ:2012/11/16(金) 19:48:19 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

お久しぶりです。天音です。あのバカ(作者)がまたも放り出してテスト勉強なんか始めたので、代わりに私が。

相変わらず文章力高いですね。私達の個性をしっかり生かしてくれて。

あの作者では絶対にこんなに上手い小説なんて書けませんよ。

それでは。

293心愛:2012/11/16(金) 21:24:25 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天音ちゃんやふー!(←イミフ)


慰めをありがとう…!
ピーチにテスト頑張るよう伝えてくれ!

ここあも月末だわやべえ←

294ピーチ:2012/11/16(金) 22:03:03 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

お久しぶりです飛鳥井です

……心愛さん、あの天音がそんな優しい言葉かけるわけ…いっいや何でもないです聞き間違い!! 痛い、痛いから天音!?

…柊一に頼むのが一番ですよ?

295心愛:2012/11/16(金) 23:35:42 HOST:proxy10032.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天音ちゃん何したのっ?
昇くんに何しちゃったのっ?


……OK。柊一くん、頼んだぞ!

296彗斗:2012/11/17(土) 01:41:46 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
……コイツは驚いたな、まさか下手すりゃ、サエリヤよりもリアスよりも腹黒そうなあのド変態が……夢にも思わなかったぜ。

おっと、名前を出さなけりゃ同じ様な口調の奴らが多いから(あのアホの所為でな)分らねぇだろうな。俺はギ―ク、そのまあ……作者に遊ばれてる可哀そうな神様とでも言っておこうか……ん? 何か自虐的になってるだって? ……気のせいだろ…多分。←図星

こうしてほっつき歩いてみるのも良いもんだな。今回は特に注意視しとかなくちゃいけねぇ奴の意外な一面が垣間見えた……様な気がしたが幻か? 気のせいか? それともげn((殴

はいはい、そういう風に言い回すの止めようねー? (グッ……ふ、不意打ちとは卑怯な……このアホ作sy((蹴 グホッ!? byギ―ク)

何か言ったかな〜? そろそろ監獄に帰ろうか? 目を離したすきにどっか行っちゃうんだから……それじゃ、ギ―クが世話になりました〜ww(だ…だから扱いが妙に俺だけ酷いってい((殴&蹴 ゴフッ!? byギ―ク)

297ピーチ:2012/11/17(土) 08:14:32 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

一応伝えておきました。天神です。今はテスト消えろと叫んでますよ。

……昇の件については、気にしないで下さい

そりゃねぇだろ柊一!? 俺何で無害なのに殴られなきゃいけないんだよ!?

298心愛:2012/11/17(土) 15:21:42 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>彗斗さん


……(・∀・)ガンバ!


完全なる手探り状態ですがちょっとずつ頑張っていきますよ(*^-^)ノ



>>ピーチ

殴ってたんだ!
なかなかにバイオレンスなのね天音ちゃん!


ありがとうございました柊一くん(笑)

消えろ消えろー!

299心愛:2012/11/17(土) 15:23:22 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――お茶会――』





「……天音」



「何?」



「気の所為だったら良いんだけどさ。なんか……さっきから変な感じしないか? こいつら以外の誰かに見られてるような……」



釈然としない表情の昇の言葉に、天音は黙って瞼を閉じ。



「言われてみれば……。でも、妖の類はいないはずよ?」



「だよなぁ」



霊感の強い天音がそう言うのだから、きっとそうなのだろう。


けれど……何か、引っ掛かる。



「おい黒髪」



「……忍耐って、大切だよな……」



額に青筋を立てて呻くヒースを綺麗に無視し、昇が続ける。



「なんか、違和感とか感じないか?」



「は? いや、別に。神経質すぎんじゃねえのお前」



「おかしいわね……。確かに誰かの気配みたいなものを感じるのに」



「え? 皆して何言ってるの?」



一人、きょとんとした顔をした柊一が首を傾げる。



「その人、さっきからずっと其処にいたけど」



「は?」



「そ……その、人?」



「ま、まさか」



シェーラとヒースがはっとして息を呑む。
ソフィア、ジル、ユーリエも何かに気づいたように顔を見合わせた。



「そのまさかだよ」



シュオンは―――『彼』の方を向いて、にっこりと笑った。




「ね、レイフォード?」




『やっぱりっ!?』




「うわあああああんっ!」




涙の粒を撒き散らしながら走っていく、仕立ての良い執事服を着た茶色の髪の青年の背中を、ソフィアたちは半ば愕然として見送った。



「何だったの、あの人……」



「? 使用人じゃろう? 今更何を驚いておる?」



「あの方、気配の消し方が達人並みでしたね。私でも気づくのにはかなりの時間を要しました。敵兵であったなら非常に恐ろしい相手となったことでしょう」



「そうだったのか?」



幾つ目かも分からない“大福”片手に―――摂取した砂糖の量は常人の致死量を軽く超えているのではなかろうか―――ルイーズがぱちくりと瞬(まばた)く。



「僕が呼んだときから其処に控えてたんだけど。ヒースたちは気づかなかった?」



「お、お前絶対わざとだろ……」



「まさか」



ヒースの非難がましい視線を受け流して、シュオンはルイーズとクロードに微笑みかける。



「流石は姫君、そしてクロード殿。上に立つ者とそれを支える者としての、素晴らしい観察眼をお持ちですね。……ちなみにあれはうちで雇っている執事のレイフォードです」



「恐れ入ります」



「……わたしは喜ぶべきなのか?」



「喜ぶべきですよ! 黙ってるレイさんを自力で見つけ出すなんて、あたし一度もできたことないんですから!」



「な、何だか彼が哀れに思えてきたな……」



ルイーズは同情が籠もった眼差しでレイフォードの消えていった屋敷を見る。


続いて、シュオンは好奇心と感心とが入り混じった目で柊一を見て、



「君、凄いね。あの驚異的なまでに影が薄いレイフォードを一発で見抜くなんて。一体どんな修行を?」



「どちらかと言うと、柊の場合はただの勘だと思うわ」



「しかも根拠なしのな」



二人に言い切られ、「……そう?」と困ったように笑う柊一。



「すぐ傍にいても全然気づかれないって……影薄いって一言で片付けられるのか?」



「執事というより、忍者みたいな人ね」



「ニンジャ?」



「えっと、どう説明したら良いのかな。忍者っていうのは……」



親切な柊一に説明してもらい、ルイーズは「ほー」と深いブルーの瞳を輝かせた。

300ピーチ:2012/11/17(土) 18:38:29 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

メッセージもらったよー! ありがとー!

……そーなんデス。殴られちゃったんです昇君。それも単純に憂さ晴らしも混じって←

よし柊一偉いぞ! 小さい子に教えるのは当たり前だからね!

…絶対、天音とか昇は教えないだろーけど←おい

301心愛:2012/11/17(土) 20:24:36 HOST:proxyag071.docomo.ne.jp
>>ピーチ

なにげに300突破おめ!


殴られてたのか…w

今回、柊一くんの鋭さってものを出すためにレイさんを利用したここあでした←
強く生きろ、レイさん(キリッ

302ピーチ:2012/11/17(土) 22:04:17 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

自分で立てたスレで300行ったの初めてだ!←ここにゃんのお陰だし

殴られてたんです…

柊一は確かに根拠ナシだ! てかあたしもレイさん使わせてもらおうと思ってたのだが←おい

303心愛:2012/11/18(日) 10:53:29 HOST:proxy10016.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――決断――』





「暗くなってきたね」



赤く染まり始めた空を見上げ、シュオンが呟いた。



「天音、妖の方はどう?」



「この近くにいるのは確かだと思うけど、はっきりとはしないわね」



「どうすっかなぁ。これ以上無意味に時間潰してても仕方ないし」



異界の三人が話し合いを始める。



「それではルイーズ様、そろそろ」



「ええー! まだ遊び足りん! せっかくシュオンと会えたのに」



「…………」



「く、クロードっ? 誤解するでないぞ、わたしはもうシュオンのことは何とも思っておらんからなっ? 今はその……っ」



「おー、クロードがやきもち妬いてるよーぷくく」



「俺にはいつも通りにしか見えないんだが……」



無表情で押し黙ったクロードに慌てて弁明するルイーズを見て、シェーラが楽しげに笑う。


対照的に、とても珍しいことにシュオンは複雑そうに顔を曇らせていた。



「屋敷の中に入れてあげられたら良いんだけど……」



「けど?」



首を傾げるソフィアに、シュオンは溜め息をついて。




「……今、母上がいるんだよね……」




『………………あー』




「何?」



「む?」



エインズワーズ家の面々が、天音とルイーズを見て一様に頷いた。



「奥様……ぜーったい喜んじゃいますよねー……」



「これ以上被害者を増やす訳にはいかねえな……」



「金髪の『母上』ってのがどうかしたのかよ」



「レディ・アゼリア? よい母君ではないか。彼女のことで何か?」



『…………』



ソフィアたちは気まずそうにサッと目を逸らす。


シュオンがこほん、と咳払いした。



「とにかく僕としても、姫君は勿論、何の罪もない人を飢えた猛獣の檻に放り込むような真似はしたくないってことだよ」



「どんな人なのよ……」



「……それだけは訊かないでくれるかな……」



呆れた眼差しの天音から逃げるように、シュオンまでもが視線をずらす。

304心愛:2012/11/18(日) 10:54:54 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――決断――』





「―――じゃあさ」



口を開いたのは昇だった。
屋敷の裏側、生い茂った木々の辺りを指差す。



「俺らはあそこの森とか探索してみても良いか?」



「それは構わないけど。どうして?」



「出て来ないってことは、俺らが追ってる妖もどっかに隠れてたりするかもしんねぇし」



「確かに、ただ待ってるよりは色々歩いてみた方が効率的ね」



天音も頷く。


では決定か、と思われたとき、柊一が何気なくこう言った。



「暗くなってきたし、軽い肝試しくらいならできそうな森だね」



「……キモダメシ?」



「うん。墓場とか、幽霊みたいなのが出そうな気味の悪い場所に行かせて度胸があるかどうか試す遊び」



ルイーズはキラキラと目を輝かせた。



「面白そうではないか! わたしはやってみたいぞ、キモダメシ!」



「ですが、姫君には危険かも」



「その御心遣いは無用です。私がルイーズ様を、この命を賭けてでも必ず守り通しますゆえ」



「く、クロード……」



思わず頬を染めるルイーズを、クロードはこの上なく真摯な顔つきで見つめながら、



「それに、ルイーズ様は御一人でも並みの暴漢にも引けを取らない程の豪傑でいらっしゃいますし」



「余計なことを言うでないっ!?」



「ねーねークロード、あたしはー?」



「何かあったら手は貸すが、お前にはロード・ヒースがいらっしゃるだろう」



「え、あ、あー……はい」



「だってー。クロードは冷たいなぁ。ねーヒース、あたしのこと守ってねっ!」



「ばっ……わ、分かったから抱きつくな!」



「オレ様は暇潰しできンならどーでもいーけど。幽霊って剣で斬れねェのかな」



「……な、なんか……暗すぎない? あそこ」



「あ? まさかユーリエ、怖いワケじゃねェよな? 仮にも元暗殺者(アサシン)だろお前」



「ちっ……違うわよ! 怖くなんてないから目を瞑っていても全然平気なんだから!」



「目ェ瞑ンのは怖がってる証拠なんじゃ……」



「ソフィア、怖かったらいくらでも抱きついて良いんだよ?」



「なんでそんなに嬉しそうなの……?」



……どうやら全員で行くことが決定したようだった。



「……なんか、面倒なことになってない?」



嫌そうに顔をしかめ、はあっと息をつく天音。



「柊、あんたが肝試しとか言い出すから……」



「俺っ?」

305心愛:2012/11/18(日) 10:59:46 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いや、ここまで進んだのはほぼピーチのお陰じゃないか!
本編じゃないコラボでこんだけいくってすごいよね(〃▽〃)


レイさん使ってくれますか!
書きやすい&いじりやすいレイさんをどうぞよろしく!

306ピーチ:2012/11/18(日) 12:03:56 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

確かに! コラボでここまでいくってどんだけソフィア様達好きなんだよあたしって感じだよね!

………シュオン様の母上…

や、やめてあげてね! 絶対シュオン様のお母さんが痛い目遭うから!

柊一が余計なこと言ったー←おい

307心愛:2012/11/18(日) 15:29:09 HOST:proxyag053.docomo.ne.jp
>>ピーチ

本当にありがとうございます…!


天音ちゃん可愛いから危ないよねって返り討ちか!(笑)
ちなみに母上はシュオンもソフィアもシェーラもヒースも歯が立たない『紫の歌』隠れ最強キャラです←

…一応母上も女だから、何かあっても容赦はしてあげてね天音ちゃん…!


柊一くんの天然が悪い方に向いた?←

308ピーチ:2012/11/18(日) 18:13:18 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

あはは、返り討ちかなー

でも天音とか柊一達がどんな反応するか見てみたいかも、これリクにしていーですかね←おい

…隠れ最強キャラか! 天音が太刀打ちできるかなぁ…

柊一は基本的にどっちもだよー、いい方にも悪い方にも行く←

309心愛:2012/11/18(日) 20:16:22 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
>>ピーチ

…クソ重い課題増えたぜ☆


うっわあどうしよう。
どっちのイメージも壊さない程度に絡ませて…(汗)



あ、次から肝試しなんだけどペアでドキドキ☆とか全然ないよ!わいわいやってるだけだよ!
どうもすみません(~_~;)

310ピーチ:2012/11/18(日) 20:31:53 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

まじか、課題嫌い←

いや、天音達は基本を動かさなかったら好きに壊していーよ←

わいわい楽しみww

311ピーチ:2012/11/18(日) 21:29:59 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>

何かごめんちょー今更だけど←え

ジルが幽霊って剣で切れるのかなーって言ってたじゃん?

あれ昇が召喚(?)した武器だったら出来るよー

312心愛:2012/11/20(火) 12:16:31 HOST:proxyag062.docomo.ne.jp
>>ピーチ

わいわい一回だけだけどね!
肝試しターンみじかっ!

ほ、ほんとに斬れるんだね幽霊……。




そろそろ天音ちゃんキレさせるよー(=°ω°=)
上手くできるか分からんがw

313心愛:2012/11/20(火) 12:17:12 HOST:proxyag062.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――肝試し――』






「……ひゃわっ」



「シェーラっ?」



木の根元につまずき、メイドの少女の身体がぐらりと傾く。
気づいたソフィアが悲鳴を上げると同時。



「ったくお前はいつもいつも……。危なっかしいったらねえな」



苦々しく眉を寄せたヒースが、危なげなく彼女を抱き留めた。



「ヒース」



「足、痛めてないか? おぶってやっても良いけど」



「……え、い、いいよっ」



カッと顔を紅潮させ、シェーラが「大丈夫」とぱたぱたと両手を振る。



「そうか?」



その一連の流れを見守っていたシュオンが、ヒースの言葉に便乗してにっこり笑う。



「ソフィアも大丈夫? お姫様抱っこで運んであげようか」



「……ばかっ」



みるみるうちに赤くなり、ぷくっと膨れるソフィア。


「それとも、皆の前じゃ恥ずかしい?」



「そういう問題じゃないっ」



そして、



「………! …………っ!」



「ユーリエ……マジで怖いのかよ……」



女性陣では最年長のはずのユーリエが、ジルの背後に隠れるようにしてがくがくと膝を笑わせていた。
金の瞳を涙で潤ませ、ひくっと喉を引き攣らせて。



「しっ仕方ないでしょっ? 標的がはっきりしてれば良いけど、もし暗殺術が通用しないお化けだったら……っ?」



「おいおい。いつもできるだけ殺すなっつってンのは何処の誰だよ」



「だって……!」



呆れたように首を横に振ったジルは、



「……ん」



おもむろに、彼女に向けてポケットに入れていた左手を差し出した。



当然、意味を図りかねてユーリエはぽかんと呆ける。



「……へ」



「手! 貸せっつってンの! 察しろそンくらい」



チッ、といかにも面倒くさそうに舌打ちし、頑として顔を思いっきり前に向けたままぶっきらぼうに言う彼。

ユーリエは瞳を純粋な驚きに見開き。

それから、強ばっていた頬を、少しずつ緩ませていく。



「……うん」



初々しい雰囲気を醸し出す彼らのさらに前方では、



「おっばけおっばけー! 早よ出て来ぬかー」



「ルイーズ様。そのように歌っておられては幽霊も逃げてしまうのではないでしょうか」



「わたしの歌に誘われて出て来るかもしれぬではないか」



調子の外れた歌を唄っていたルイーズが尊大に胸を張る。


クロードは頭痛に耐えるように額に手をやりながら、



「……どんなに凶悪な死霊でさえも断末魔の悲鳴を上げて消滅すると思われますが」



「どういう意味じゃっ!?」



ぽかぽかとルイーズに腹を殴られてもクロードは眉一つ動かさず、仏頂面で溜め息をついた。



最後に。



「…………」



「あ、天音?」



「天音さーん?」



一行を先導する天音が、後ろから聞こえてくるうざったいカップル共と小五月蝿いガキの声の所為で『無』としか言いようのない表情になっているのに気づいた昇と柊一が恐る恐る彼女に笑いかける。



「…………」



天音は見るからに苛々(いらいら)を募らせていた。


星月夜を映す泉のように澱(よど)みのない黒の瞳はこれ以上ない程冷たく凍りつき、暗黒の闇を秘めるその見事な髪は、彼女の内から溢れ出る不穏なオーラにゆらゆらと揺らめく。



「え、ええと天音? なんか近いような気がしない?」



「……そう、ね……。そうかもね……」



「……ひっ」



無表情のまま、唇の端だけを、く、と持ち上げた幼馴染みの姿に、柊一が思わず己の本能に従って距離を取る。



「……こりゃ確かに『肝試し』だわ……」



天音を見ながら昇が恐ろしげに呟いた、


そのとき―――




《―――……フハハハハッッ!》




最悪の―――主に相手にとって―――タイミングで、“ソレ”は現れた。

314名無しさん:2012/11/20(火) 21:33:46 HOST:EM114-51-219-252.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

わっほーいっ! 天音がキレたー!←喜ぶな

いやぁやっぱり天才様が動かすと我がキャラながらとってもかわいく見える、黒いはずの部分までもが←おい

315心愛:2012/11/21(水) 16:47:25 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――少女の逆鱗――』





「ひっ……!」



怯えたソフィアがシュオンにしがみつき、ユーリエとシェーラが身を竦ませる。


男性陣が一斉に身構えた。



《ククク……愚カナ。マンマト誘(おび)キ出サレオッテ……》



それは大の大人でも思わず身震いせずにはいられない程に、あまりにも恐ろしい声色だったが。



「……………」



「天音ちゃんっ?」



全く物怖じせずにすたすたと進み出た天音に、シェーラが慌てて声を掛ける。



「あ、危ないですよっ! 早く戻っ―――」



「あー、天音のことは心配いらないから」



「え、で、でもそんな、女の子一人……っ」



「いや……あれは最早『女の子』じゃない」



遠い目をする昇。



「そう、言うなれば……鬼?」



『鬼ぃっ!?』



―――美しき修羅が、今、異形と対峙する。




《フ、ッフハハハハハ!! ツイニ、ツイニ解放サレタ……! 我ガ貴様ラ人間ドモヲ皆殺……》



それを天音は、見た。



顔は青白い炎を纏った髑髏(ドクロ)で、巨大な体はヘドロのような濃紫の粘液で出来ている、酷く醜い異形の化け物を、見た。


いや、正確には、寧ろ一種の感動を覚える程の完全なる無表情を保ったまま、『あ゙あ゙あ゙?』とか、“あ”に濁点をつけた音を連続で発しそうな、そんな凄絶な目で、睨んだ。



「あわわわわ……」



シェーラが異形ではなく天音に、心底恐怖したように狼狽える。



「す、凄い化け物じゃなー! あれがキモダメシとやらをすると出てくるお化けなのか?」



身長差の為天音の形相に気づかない呑気なルイーズを、適当な返事をしながらクロードがさらりと天音から遠ざけ、彼女を庇う姿勢を取る。
……まだまだ若いとはいえ流石は最強の騎士というべきか、彼の判断はこれ以上なく正しいと言えた。



この場での最重要危険人物は、得体の知れない化け物よりも、間違いなく。



「ああなった天音は誰にも止められないんだよね……」



「お前が止める気ないんだったら仕方ねぇな。巻き添え食らわないようにだけ気を付けないと」



相棒二人も早くも達観した面もちだ。



《コ、殺シテ……》



天音は、無言で、異形を睨み続ける。
先程よりも鋭く、地獄をそのまま宿したかのような闇色の瞳が、化け物を捕捉して離さない。
静かな怒りを叩きつける、瞳。
長い長い黒髪を夜風に揺らめかせる彼女の背後には、どんな鬼神や悪鬼羅刹であろうとも裸足で逃げ出すであろう壮絶な表情をした夜叉の幻影が見えた。



「しゅ、シュオン……私、本当に怖いのは何なのか分からなくなってきたかも……」



「大丈夫だよソフィア。いざとなったらヒースとかジルとかそこの人とかが剣で何とかしてくれるって」



『いや絶対無理だから』



おそらく国でもトップレベルの実力のヒースとジル、それから二人と同等、もしくはそれ以上の腕を持つ昇という男三人が、少女一人相手に声を揃えて降参する様はなかなかに見ものだった。



「ほ、ほらユーリエなら暗器使ったりとかッ」



「私は女の子を傷つけるのはちょっと……」



「ちょ、オレ残して逃げンなよッ!?」



「むしろ刃物如きで何とかできんのかあれ……?」



……それでも今回の妖はなかなかにしぶといらしく、今にもガクガク震え出しそうな様子だったが、それでもとても頑張って持ち直し、気を取り直したように、“天音に”怯えて後ずさる面々に、言った。



《フ、フフ……。ソノ怯エタ顔、サテハ我を畏(おそ)レ……》



殺してやる。
この面倒なときに、さらに面倒事を持ち込むようなら、今すぐ完膚なきまでに殺してやる。
いやもう面倒でなくても殺してやる。

……という、目だった。



《ア、ア、アレ? 此処ハ平和ナ人間ノ世界ダヨナ? ナノニナンデコイツ全然、》



「………………」



《ア、イヤ、ゴメンナサイ大人シク帰リマス、ダ、ダカラソンナ睨マナ……》



すっ、
無慈悲たる少女の翳(かざ)す紅い扇が天高く掲げられた、その刹那―――

316心愛:2012/11/21(水) 16:51:29 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp
>>ピーチ

せっかく褒めてもらったのに自分からぶち壊すというw

…毒吐くより無言のが怖くないですか?

というわけで好き放題やっちゃいましたごめんね!

317ピーチ:2012/11/21(水) 19:03:33 HOST:nptka207.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

……あーなった天音は止まらないぞー…

暴走族よりも暴走族やってくれそー…

318心愛:2012/11/21(水) 21:21:51 HOST:proxy10045.docomo.ne.jp
>>ピーチ

あ、あれ、やりすぎたかと思ったんだけど…大丈夫だった?

ここあ、天音ちゃんが本気でキレてるとこ見たことないんで←

319名無しさん:2012/11/22(木) 20:05:17 HOST:EM114-51-202-35.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

全然大丈夫! むしろ天音だからあんくらいやってくれそう!

うーん…天音が本気でキレるとこねー…

機会があったら鈴扇霊に載っけとくねー←

320心愛:2012/11/22(木) 22:31:02 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そ、そっか!
これは許容範囲か!

OK、それでは遠慮なくw

321心愛:2012/11/23(金) 10:01:17 HOST:proxyag088.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――邪魔者、再び――』





「はーっはっはっは!」



突然、惨劇が展開される直前の緊迫感を、高らかで軽快な、換言すれば妙に雑魚の雰囲気漂う笑い声が引き裂いた。



腕の動きを止めた天音が怪訝そうに辺りを見回す。



「……誰」



「まさか」



シェーラがはっと息を呑む。



「ソ、……レ? ファー……ええっと……あ、ソルファール侯爵……!」



「いかにも!」



その命知らずの馬鹿、もとい―――ソルファール侯爵は胸を張り、



「此処で会ったが百年目。今度こそ、目的を果たしてみせますよ」



かと思えば、



「……そう、元はと言えば三年前のこと―――」



目を閉じ、一人勝手に自分の話に入ってしまってしまった侯爵に、シュオンはふわりと華やかな微笑を浮かべる。



「……教育(おしおき)が足りないようですね?」



「待て待て待てぇっ!?」



笑顔でポケットの中に手を入れたシュオンの腕をガシッと掴む。



「離してヒース。そいつを殺せない」



「落ち着け! 大人になれ! この森爆破したって何にもなんねえし、侯爵とは一応表面上の付き合いってもんもあんだろ!?」



「お嬢様だって吹っ飛ぶぞッ!?」



「じゃあ生きたまま脳髄だけ引きずり出す。それなら文句ないでしょう?」



「死ぬからな!? それ百パーセントの確率で死ぬからな!?」



超シャイニングな笑顔で、セルリアン・ブルーの瞳だけを底なし沼のように澱ませるシュオン。



「僕とソフィアの楽園を脅かそうとする者は許す訳にはいかないよ。ありとあらゆる手段を駆使して死すらも霞む恐怖と苦痛と絶望をじわじわと身体と精神に刻み込んでこの世界に生まれてきたことを後悔させ」



「分かった! 分かったから!」



「あら。気が合うわね、金髪君」



「「ひッ」」



昇と柊一が揃って悲鳴を上げる。



「あれ、君も同意見?」



「えぇ。今私、ちょっと虫の居所が悪いのよ。たまりにたまったストレスの発散を邪魔してくれたお礼も兼ねて、代わりにあの人に栄えある犠牲者一号になってもらおうかなって」



「なるほど。なら、目的は同じだね?」



「そういうこと。金髪君ごときとなんて屈辱だけど、此処は手を組みましょうか」



「うん、その暴言は特別に聞き逃してあげる。……何かあっても権力と財力で握り潰すから、証拠隠滅なら任せて」



『結託したっ!?』



最凶コンビの誕生に、両者それぞれの恐ろしさを知るメンバーが一斉に青ざめた。

シュオンの策略と天音の殺傷能力、ついでに爆弾の威力も付加すれば。



「人ひとりどころかこの国滅ぶぞおいッ」



「クロード殿、マルグリットの危機ですよ!? 今すぐに《イルファーレ》、いや、王立騎士団ごと出陣の申請を!」



「……仰る意味が分かりかねますが……」



真顔で困惑するクロード。



「まず手始めに、この森の木を全部吹っ飛ばしても構わない?」



「構うよ! 大いに構うよ! 何サラッと言ってくれちゃってんの!?」



「うん、別に構わないよ。屋敷はちょっと困るけど」



「えええええ!? 森なくなっちゃうんですかっ!?」



「そ、そうよシュオン! そんなのだめ!」



「でも、近々伐採して、このあたりにソフィアと二人で暮らす新しい屋敷を建てるつもりなんだけど」



「……え」



「早く結婚したいね、ソフィア」



「……う……うん」



「……いや待て。何かちょっと良い雰囲気のところ悪いけど、それじゃ爆弾と変わりねえだろ!? 俺たちまで死ぬって!」



「でも、あの人ひとり殺す程度じゃ物足りないし」



「それ最早殺人鬼の台詞だよなあっ!? おいお前ら何とかしろよ責任取って!」



「……ご、ごめん」



「謝るな! 諦めるな! もっと自分を信じろ!」




「―――そして、その時からのことだった。妻のみならず、いつも私を慕っていた娘が―――」



《ア、アノー……》



喧騒の外には、一人で喋り続ける侯爵と、すっかり存在を忘れ去られた哀れな異形が残された。

322名無しさん:2012/11/23(金) 14:09:21 HOST:EM114-51-192-34.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

え……まさかのシュオン様と天音が手組んだ!?

……天音は、キレると留まることを知らないからね…

323心愛:2012/11/23(金) 15:23:19 HOST:proxyag083.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天音ちゃんつええ←


…そんなわけで侯爵って大地色の瞳らしいけど髪の色は?

324ピーチ:2012/11/23(金) 19:17:57 HOST:nptka301.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

天音は強いよー←

侯爵はねー…赤茶系の髪←何か気持ち悪いよね

325心愛:2012/12/02(日) 18:56:00 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――邪魔者、再び――』





「……ソルファール? 聞いたことがあるような……」



事態についていけず首を傾げていたルイーズの呟きを、侯爵が耳ざとく拾って唐突に声を上げた。



「おお、これはこれは第三王女殿下。正式に挨拶申し上げるのは初めてかと存じます。陛下からソルファール侯の名を賜っている者です、以後お見知りおきを」



一礼する侯爵に、ルイーズは「うむ」と頷き。



「くるしゅうない……で、何故こんな所に? 此処はエインズワーズの敷地であろう?」



「よくぞ聞いて下さいました」



その一言で、彼の声色がガラリと変わる。



侯爵に鋭い視線を投げられ、ソフィアはびくっと震え上がった。




「この間の報復を―――今一度、そちらの《紫水晶(アメシスト)》を我が下に、と思いましてね」




「……なッ」



「………!」



ルイーズが驚愕に目を見開き、冷静沈着を絵に描いたようなクロードでさえもが息を呑む。



「な、……んじゃと?」



「殿下には御理解戴けないかもしれませんが……どうしても、私には《紫水晶》の幸福の力が必要なのです」



侯爵は悩ましげに額に手をやり、



「最後の手段である《紫水晶》の強奪が失敗しても、妻と娘は帰って来ぬまま。一人悶々と暮らしていたところに―――」



やはり彼の事情を知らないルイーズは良く分かっていない様子だったが、侯爵は構わず言葉を続ける。



「王城の舞踏会で、レオンハルト王太子殿下にお会いしたのです」



「……は? 兄様と?」



「ええ」



まるで嫌な予感でもしたかのように、ルイーズは片頬を痙攣させた。



「我らが寛大なる第一王子はこのように仰いました―――『シュオンに報復を果たしたい? それなら絶好の機会があるぞ。私の妹のルイーズが近々エインズワーズ邸に遊びに行く予定になっているのだが、その日なら流石の奴も油断しているだろう。……ははっ、面白い報告を期待している』……と」



聞いてもいないことを勝手にぺらぺらと喋り倒してくれる侯爵。



「…………シュオン」



「何でしょう」



ルイーズはにっこりと眩しい笑顔で、同じく穏やかに微笑んでいるシュオンに言う。



「あの馬鹿兄を殴るときには是非とも誘ってくれ」



「はい、姫君。必ず」



「こらこらこらあっ!? 次期国王陛下になんちゅーことをっ!」



「でも、そろそろ僕あたりがレオン殿下の息の根を止めておいた方がマルグリットの為になるんじゃないかと思うよ。本気で」



「激しく同感じゃ。しかし、そうなったらわたしが女王にならなくてはならぬのがいささか面倒じゃのう」



「危険なことを仰らないで下さい!」



晴れやかな笑顔で世にも恐ろしい発言を繰り出す二人にヒースが突っかかる。



「……お、王太子様がそんなことを……?」



「というより、シュオンに返り討ちにされる侯爵が見たかっただけなんじゃ……」



「成程。王太子殿下の道楽好きにも困ったものですね」



順番にシェーラ、ソフィア、クロード。



「ねえジル、大丈夫なの? 確かあの人、かなりの刀の使い手だったはずじゃ」



「大丈夫だろ。こっちにゃオレ様とヒースにお前、それからそこのでかい奴と男二人……に加えて、何よりもお怒りのシュオンとお嬢ちゃんもいることだし」



「そ、そうね……。シュオン様はソフィアちゃんに何とかしてもらうとして、天音ちゃんが手加減できるかどうかの方が問題かしら」



「天音とあの人だけでも、核ミサイルとピコピコハンマーくらいの戦力差だよな」



「? かく……?」



「えー、それは、ええと……」



前回あまりにも簡単に倒せてしまったことも手伝ってか、なかなかに和やかな会話である。



それを聞いているのかいないのか、侯爵は声を張り上げて。




「ふふふ、念の為に、今回は我が兵士たちも連れて来たのです!」




『おおーっ』




「それを早く言えええッ!?」



侯爵の背後の草木の陰から、ぞろぞろと武装した男たちが現れた。

326心愛:2012/12/02(日) 18:59:17 HOST:proxyag112.docomo.ne.jp
>>ピーチ

久々の更新で申しわけない←

赤茶系いいじゃん!了解!

327ピーチ:2012/12/02(日) 19:04:45 HOST:EM114-51-189-14.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いやいやいやシュオン様もルイーズ王女も何言ってんの!? 冗談抜きで怖いからね!?

………ソルファール侯爵ごとき、天音の逆鱗に触れたら多分一瞬で焼死が溺死か絞殺か生き埋めか最悪解体されて終わるね←おい

328心愛:2012/12/02(日) 19:59:41 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp
>>ピーチ

……天音ちゃんはやっぱりシュオンと似たとこがあるみたいだね☆

シュオンは口では色々言ってるけど、基本自分の手は汚さずに陰湿な手口で攻めるけどね!

329心愛:2012/12/02(日) 20:02:15 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――決戦――』






「ちょ、待っ……表の兵は何やってんだよ畜生!」



「親切に道を教えてくれたが?」



「あの馬鹿共がぁああ!?」



自らも愛刀を抜き放ち、侯爵は勝ち誇った笑みを浮かべる。



「しかし、大人しく《紫水晶》を渡すのなら武力は行使しませんよ」




「……話は、お終(しま)い?」



侯爵の発言を華麗なまでに無視、苛立ちを隠す気もない天音が無表情のまま口元だけを綻ばせ、その漆黒の瞳をすっ、と細める。



「ちょうど良かった。どうせやるなら派手にやらなくちゃね」



続いて笑むシュオンを見て、ヒースがサッと青ざめる。



「やべえって、確実に死者出るぞこれ! こんな人数じゃとても守り切れねえから!」



「ま、守る対象が変わっちゃったね……」



「くそ、折角俺が必死こいて『つい逃がしちゃったけど……やっぱり僕の花に近寄る悪い虫にはそれ相応の報いを与えるべきだと思わない? ねえ、ヒース』とか言い出したシュオンの機嫌取って、これからの表面上の関係に影響ないようにお咎めなしにしてやったっつーのに、これで死人でも出てそれが明るみに出たりなんかしたときにゃあ俺の努力が全部水の泡じゃねえかぁ……!」



「……君も、苦労してるんだね……」



「……は、は……」



柊一の同情と共感が入り混じった微笑に、ヒースは力ない笑みを返した。



「そうだね、まずは昨日完成したばかりの―――」



「シュオン、だめ」



ソフィアにじっと見上げられ、シュオンがたじろぐ。



「……う……でもソフィアが」



「だめ」



「わ、分かったよ……。ソフィア、こっちに。ついでに君たちも」



「行動早えなおい」



自分の出る幕がないと知るや、さっさとソフィアたちを促して避難を始めるシュオンに、ヒースは苦い顔をする。



「……其処を退(ど)け」



確かな威圧感と共に、侯爵はずいっと一歩踏み出した。



「この場からって言うんならいくらでも退くさ。でも、御嬢様たちの前からってことなら」



無意味に喧嘩を売る真似はしたくないけれど、これだけは言わせてもらう。


ヒースは挑発的に口端を上げ、



「金輪際、お断りだね!」



「……それは残念だ」



侯爵はふっと息を吐いた。



「だが私としても、無意味な戦いはしたくない。女性を怯えさせるのは趣味ではないのでな」



その決然とした台詞は、睨みをきかせている天音のド迫力に怯えて一歩下がりながらの言葉でなかったならば格好良く聞こえたかもしれなかった。



「そんなわけで、シュオン様。この従僕に粗暴な振る舞いをやめるよう言って戴けますか? 平和的にもう一度話し合いを―――」




《待テ……!》




『え? まだいたの?』




突如として割り込んできたのはあの髑髏型の異形。


ヘドロを撒き散らしながら屈辱にプルプル震えていたが、彼らの酷く冷たい反応をなかったことにしたらしく。



《……………ク、クク、コレハ、コレハ凄イ負ノ感情……!》



「な、何あれ気持ち悪っ」



正直な感想と共にユーリエが後ずさる。



見る間に異形はひゅん、と影のような形状になり、



「……え?」



『…………あ』



ソルファール侯爵の身体に、吸い込まれた。



《……オ、オオ……! 力ガ……力ガ湧キ出テクル……! ッフハハハハハハ!》



高笑いする侯爵―――否、彼を乗っ取った妖。



「憑依……!」



「面倒なことになったわね……」



異界の三人の表情が引き締まる。



「天音」



「分かってる」



彼女の首の動きに合わせて、暁闇を秘めた髪が広がる。


なめらかで、艶やかで、―――残酷な、輝き。



「取り敢えず、ストレスの発散は後回しよ。すぐにあれを何とかしましょう」



「あ、ああ……」



「う、うん……」



“後回し”ということは、彼女の溜まりに溜まった怒りの被害に遭うのは―――と瞬時にその答えを出してしまった二人は、身構えながらも曖昧な愛想笑いを浮かべて頷いた。

330ピーチ:2012/12/03(月) 20:24:27 HOST:EM114-51-83-65.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

うん、多分天音はガキの頃から色々面倒事ばっか持ち込まれてたから耐性ついたのかも←

柊一達がんば!

憑依か! あたしがやると面白くないからなぁ……

続き気になるよー! 待ってるよー!

331心愛:2012/12/04(火) 17:12:28 HOST:proxy10006.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――迎撃――』





「……だ、旦那様……?」


戸惑った様子の兵士にこわごわと声を掛けられたが、侯爵を乗っ取った妖は案外平然とした対応を見せた。



《何デモ、ナイ。……オ前タチ、ヤッテシマエ!》



「は、はいっ!」



「いや気づけよ!?」



ヒースの叫び虚しく後方に下がった主人の命を得て突撃を始めた、従順な彼らの前に立ちふさがったのは、



「天音、柊一。此処は俺に任せてくんねぇか? お前らは後に備えて体力温存してろ」



「……仕方ないわね」



「任せたよ?」



いつの間にやら、淡い月光を彷彿とさせる美しい剣を右手に構えた昇。



「剣を向けられたのならば取るべき行動は只一つ」



「く、クロード……? おぬし、物凄く張り切っておらんか……?」



「そんな事は御座いません」



漆黒の大剣を携えたクロード。



「……ッしゃあ! まとめてオレ様がお相手してやんよ!」



「ジル……気をつけてね?」



「ハハッ、誰に向かって言ってンの?」



喜々として愛用の剣を振り回すジル。



「ひゅうひゅーう! ヒース頑張ってー!」



「っ……せえな黙ってろ!」



最後に、シェーラの緊迫感に欠ける声援に体勢を崩しかけたヒースだ。


短く舌打ちし、ヒースは横に並んだ三人に聞こえるように。



「分かってると思うけど、間違っても殺すなよ。意識飛ばすでも、戦意を喪失させるだけでもいい。上手く手加減しろ」




『……え?』




「こいつら殺す気満々だったっ!?」



ヒースは驚愕する。



「冗談冗談、分かってるって黒髪」



「黒髪違う!」



ひらひらと手を振る昇はともかくとして。



「ハァァァア? なにソレ、つっまんねェーの」



「つまんないとかそういう問題じゃないからな!? クロード殿も分かっていらっしゃいますよね!?」



「……承知」



唇を尖らせるジルに続き、渋々といった雰囲気を漂わせたクロードが頷いた。



「ったく……じゃ、」



「やりますか!」



ひゅうっ、と口笛を鳴らして真っ先に躍り掛かったのは、やはり元暗殺者(アサシン)の男、ジル。


鋭い踏み込みと共に、異常なまでに軽い体重と一流の身のこなしを生かして空高く跳躍。



「いっくぜぇぇええええ!」



驚いて彼を見上げる敵兵を剣の柄で一気に殴り飛ばす。




「……なんだ」



ひゅん、と小さく剣先を振る昇。
その動作だけで、相手の気力を根刮(こそ)ぎ奪ってしまいそうな強烈な凄み。

不意に上げられた灰色がかった黒い瞳が、雄叫びを上げて突進してくる男たちを映し出したその刹那、昇は動いた。



―――迅(はや)い。



滑るような動き、疾風の如き剣閃。


次々と襲い来る攻撃を、正確に弾き、逸らし、叩き落とす。



「黒髪たちくらいかと思ってたけど……全然弱いじゃん」



口元には余裕の笑み。




「……これは、なかなか」



クロードは彼に感心したように呟く。



「ルイーズ様の騎士として、負けてはいられませんね」



振り、合わせ、流す―――“戦神”の太刀筋には一切の無駄がない。

一人一人の剣の軌跡を完璧に読み切っているからこそ為せる技。

背後からの攻撃でさえも、全く振り向かずに受け流す。



「……さっすがクロード殿……!」



ヒースは上半身を大きくねじり、戻す勢いで突きを繰り出す。


鞘を使った横薙ぎの一撃で数人を地に沈めると同時、フェイントで鋭い蹴りを見舞う。



「ふっ……」



「ロード・ヒース」



ジルを視界に入れたクロードが、短く一言。



「此処は私たちに」



「……はい!」



尊敬の対象であるクロードに言われ、ヒースは力強く頷いた。
彼がヒースの力量を認めてくれたという事実が、単純に嬉しい。



「って訳で黒髪! 行くぞ!」



「黒髪言うな黒髪! 言わなくても分かってる!」



「こういうときは黙って頷いときゃあ良いんだよ空気読め黒髪が!」



目指すは侯爵。

視線、それからついでに罵声を交わし、ヒースと昇は兵の間を駆けた。

332心愛:2012/12/04(火) 17:18:28 HOST:proxy10005.docomo.ne.jp
>>ピーチ


サービスの一環で昇くんの描写を長めにしてみた((いらねーよ

それにしても、皆強いって設定だから自キャラと昇くんの力量のさじ加減が難しいー(~_~;)

333名無しさん:2012/12/04(火) 22:24:14 HOST:EM114-51-92-224.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

おっ、昇が活躍してる!←

いや、昇は基本的に最悪の状態になるまで手出ししないから適当に弱くしちゃってください←おい

334心愛:2012/12/06(木) 23:03:47 HOST:proxyag087.docomo.ne.jp
>>ピーチ

あ、そうなの?←
ヒースに勝負申し込んでたくらいだし結構ケンカ好きなのかと……ってうちのバカ共と一緒にしちゃ失礼だよねすみませんでした(T^T)

じゃあ最後のトドメをお願いしようかなー←

335ピーチ:2012/12/07(金) 06:52:06 HOST:nptka303.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

いや、何て言うかケンカ好きっていうより自分より強い人見て手合わせしたくなった的な?

336心愛:2012/12/07(金) 18:08:51 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp
>>ピーチ

なるほど!
じゃああくまで受け身で、雑魚ズにはやられたら倍返しってことで?
……侯爵にも昇くんが積極的になる価値はなさそうですな(・∀・)


次はこっちのキャラが目立っちゃうけど、ちゃんとその後はお三方を立てるんでお許しをm(_ _)m

337心愛:2012/12/07(金) 18:15:59 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――闘うもの、護るもの――』





「……ほわぁー! クロードってやっぱり凄かったんだぁ」



「ヒースもジルも、昇さんも全然負けてないわね」



「うむ。王立騎士団の御前試合でもなかなか見られぬほどの腕……クロードを抜かせば匹敵するのはクラウスくらいじゃろうか」



シェーラにルイーズ、それから狙われている当人であるソフィアも、こちらの明らかな優勢を察して安心したらしくのんびりと高みの見物を始める。



「この様子だと、侯爵―――じゃないけど―――が取り押さえられるのも時間の問題だね」



「……いや」



シュオンの言葉に、柊一が小さく頭(かぶり)を振って異を唱えた。



「案外、そうとは限らないかもよ?」



「そうね」



ぱたん。と音を立てて、天音は手にした扇を閉じながら。



「柊の言う通り、前とは違って憑依している妖が身体を操作しているから、前みたいに簡単にはいかないと思うわ」



「そっか。じゃあやっぱりあの侯爵だけは厄介だね―――あ」



「ヒースと昇さんだ!」



黒髪の青年二人が、何やら口論しながらも肩を並べて侯爵に向け疾走。
行く先を阻む兵士たちを文字通り蹴散らしながら順調に進んでいく。



「クロード殿が指示を出したみたいだね。確かに、大人数相手の戦闘はジルの基本戦術に合ってるし、クロード殿御自身も良く慣れてる。妥当な判断じゃないかな」



シュオンの発言に、ユーリエも頷いた。



「ジルは元々個人を狙うより、好き放題暴れるのが得意ですからね」



「……ヒース、大丈夫かなぁ」



不安そうに声を揺らしたのはシェーラ。

いつも脳天気な彼女の暗い表情に、ソフィアが驚いたように瞬いた。



「心配? らしくないわね」



「だって、ヒースって慎重なように見えて、無茶するときは一人で物凄い突っ走っちゃうんですもん」



「ふぅん。誰かさんに似てるような似てないような……ね、天音?」



「……さぁ。検討がつかないわね」



言いながらも少しだけ気まずげに、天音がついっと視線を逸らす。



「とにかく、黒髪君だけならともかく昇もついてるから。そこまで心配する必要はないんじゃない?」



「……はい!」



シェーラが笑い、こくんと頷こうとした、そのとき―――




「「―――危ないっ!」」




柊一、そしてシュオンが血相を変え、ほぼ同時に声を上げた。


戦力が分散した瞬間を狙ったのか、死線を潜(くぐ)り抜け突如として一人の兵士が彼らのすぐ目の前に出現。


彼が目をつけたのは、



「……王女様!?」



この場で最も幼く、最も弱そうに見えるルイーズ。


二人よりやや遅れて気づいたユーリエがすぐさまナイフを握り締め、ソフィアとシェーラは悲鳴を呑み込んだ。



「……失礼!」



抵抗しないルイーズにぴたりと剣の切っ先をあてがい、



「そちらのレディ―――《紫水晶》の身柄と引き換えに致しましょう」



「……へえ。王族である姫君に刃を向けるなんて、それだけで重罪なのに」



「随分と横暴な真似をしてくれるじゃない」



シュオンが呆れたように微笑み、天音が冷めた声で言う。

しかし彼らの眼差しは、その間も油断なく反撃の機会を窺っていることを物語っていた。

しかし、



「……そう慌てるでない」



落ち着いた様子で、捕らわれたルイーズが笑う。



「そなたには『あれ』とお相手願うことになるからな」



「………?」



視線を逸らさず、口元の笑みを深くして。



「よりにもよってこのわたしを選ぶとは……。運が悪かったとしか言いようがない」



言い切ると同時、

すっと瑠璃(ラピスラズリ)の瞳を細める。

それだけで『やれ』と命じた。



―――殺気が満ちる。



鷹を思わせるジェード・グリーンの双眸が、闇の中冷ややかに煌めいた。



「もうよい。戻れ」



「はい」



ずるりと崩れ落ちた敵兵を一瞥、彼女の騎士が恭しく腰を折って立ち去る。



「……大丈夫?」



「うむ」



余裕の笑みで天音に頷いてみせ、それから意味深に胸元に手をやるルイーズ。



「この程度、慣れっこじゃ」

338ピーチ:2012/12/07(金) 19:47:14 HOST:EM114-51-188-250.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

すげぇやっぱルイーズ王女凄いっ!

……何気に、ヒースと昇って仲いいよね←

339心愛:2012/12/07(金) 20:41:54 HOST:proxy10035.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ルイーズは多分、クロードが間に合わなくても自力でぶちのめしたと思うけどねw
…にしても、ソフィアとシェーラ以外の面子は、人質に取られそうになっても何とかしちゃいそうな人たちばっかりじゃない?←


天音ちゃんはクールだけど無茶するときはしちゃうっていうイメージがあったんだけど大丈夫だよね( ̄〜 ̄)?


ヒースと昇くんセットはとっても動かしやすいです!ここあの主観で!
似てるとこがあるからなのかなぁ。
何気に良いコンビかも?

340彗斗:2012/12/07(金) 22:36:46 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
クロード早っ!? ルイーズ王女の為なら何だってするのがやっぱりクロードですねっ☆
 
それはさて置き……クロードの実力がここまでとは正直な所、思っていませんでした(汗)

それじゃここまで強いクロードさんにはこっちで「奴」の相手でもして貰おうかな……?

341ピーチ:2012/12/08(土) 09:30:37 HOST:EM49-252-80-29.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あ、確かに。自分で何とでもしちゃいそうw←

…ソフィア様もシェーラちゃんも、何気に人質取られても問題なさそうじゃない?

ばっちぐー! 天音は一人で突っ走る傾向ありww

確かに似てるよね、ヒースと昇! 自分でも動かしやすそうって思える!←

342心愛:2012/12/08(土) 16:48:40 HOST:proxy10067.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

“イルファーレの戦神”様は最強なので!( ´∀`)

ルイーズとの信頼関係的なものがもっかい書きたかったんです←



>>ピーチ

ソフィアが捕まったらシュオンが黙ってないだろうねw


…そんな息ぴったりのヒースと昇くんは次で活躍してくれるはずでぐふぅ。

343ピーチ:2012/12/08(土) 17:01:17 HOST:EM49-252-145-12.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ソフィア様が捕まったらシュオン様、シェーラちゃんが捕まったらヒースが黙ってないだろうねw←

まじですか! どーぞヒースたちを目立たせてやってくれ!

344心愛:2012/12/09(日) 20:37:00 HOST:proxyag060.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――闘うもの、護るもの――』






「あれか」



視界に入るは、悠然と赤茶の髪を靡かせる侯爵の姿。



……この男に指示を仰ぐのは少々癪だが、仕方ない。


ヒースは昇をちらりと見やり、



「で? どうすれば良い」



「動きを止める」



昇は真っ直ぐ前を見据えたまま、短く一言。



「できるのはそれくらいだな。後は天音たちの仕事だから」



「了解……っと」




《……貴様ラ》




放つ気迫が凄まじい。
あの侯爵の身体とは到底思えない程の圧倒的なオーラを纏い、異形の化け物は二人に対峙する。



《我ニ、逆ラウノカ》



「ああ」



刀身を鞘から抜き放ち、ヒースは挑発するように鈍く光るその先端を『ソレ』に向けた。




「俺たち二人が、お前の相手だ」




「―――……あ。そういや黒髪」



唐突に何かを思い出したように昇に言われ、出鼻を挫かれたヒースは半ば逆ギレ気味に応じる。



「黒髪じゃねえっつの! ……んだよ」



「言ってなかったけどさ」



昇は人の良さそうな笑みを浮かべ、




「俺は基本ノータッチってことで。ヤバくなったら助けるから、あとよろしく」




「……はああああっ!?」



《ナラバ、排除スルノミ》



昇の無責任な発言に食ってかかる暇も与えず、刀を携えた妖はヒースたちに向かって突進。



「ちょっ」



とっさに身を翻して避けながらも、ヒースは額に青筋を立てて怒鳴る。



「何でだよ!? 明らかに此処は二人で協力してって流れだっただろうが!?」



「これ如きに二人がかりってのも可笑しい話じゃねぇ? それとも一人じゃ無理?」



飄々とした昇の台詞に、



「い、言ってくれるじゃねえか……!」



酷く単純なヒースはすぐに引っかかった。


剣の柄をぐっと握り直し、



「分かった、」



重心を左足に乗せ、一呼吸おいてから強く地面を蹴る。



「そんなに言うなら―――俺だけでやってやるっての!」



凝縮した空気が破裂するような跳躍音、妖との距離が瞬時に零になる。



―――ギィッンッッッッ



短く、鋭い剣響が空気を切り裂きながら木霊する。


剣と剣が正面からぶつかり、その反動で身体が後方へと弾かれた。



「……っ!」



足元から砂埃が舞い上がる中、すぐさま体勢を立て直して肉迫。


衝撃で流れた剣先を制御し、再び振りかぶる。


続けざまに、そして際限なく続く剣戟。



―――強い……!



相手の攻撃の起点となる箇所だけを目で追いながら、ヒースは舌打ちした。


前回の侯爵の動きの比ではない。
何倍、何十倍という速度、そして精度。


斜めから打ち下ろすように、下から抉るように、横から払うように。


瞬きすら許さない銀光を紙一重で見切り、捌(さば)くのが精一杯だ。



「くそっ」



突き終わりの瞬間に斜め上段から突き下ろす。
直後、それと交叉して相手の剣が真下から跳ね上がった。



……追撃のチャンスは皆無か。



それをやっとのことで弾き返してなお、異形の動きは止まらない。

防がれるのをあらかじめ悟っていたかのように衝撃を受け流し、大地を蹴って瞬時に迫ってくる。


苦し紛れに空を切った刃を寝かせ横に薙ぐが、



「……っは、」



そのまま数メートル後方に着地して、ヒースは荒い息を吐いた。
一日に何度も酷使した所為で力が入らなくなった腕はぶらりと垂れ、こめかみを熱い汗が伝う。



《終ワリダ、小僧》



ざっ、と足音。



《覚エテオケ。我ヲ阻ム者は、皆―――》



「いや」



ひょい、とヒースは肩をすくめた。



「まだ終わりにするには早い」



そして、異形―――否、その“背後”に向けて、ヒースはほんの少し口の端を上げる。




「……別に、まだ全然ヤバくなってねえけど?」




―――……二の太刀は、不要。




「はっ、黒髪の癖につまんねぇ意地張るなって」




楽しそうに笑う声。




―――昇の刃が、相手の得物を一閃の下に弾き飛ばした。

345ピーチ:2012/12/10(月) 20:30:00 HOST:EM114-51-154-71.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

やばいヒースがめっちゃかっこいい!←

昇は相変わらず何ていうか………自由人?(おい

346心愛:2012/12/10(月) 21:44:37 HOST:proxyag068.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ヒース負けかけてたけどねw

猫さんとマジ勝負した後だし仕方ないw


最後の最後で昇くんにいいとこ取られてるヒースでした←


次からは天音ちゃんと柊一くんに頑張ってもらう方向に持ってこうと思います!
どうなることやらー(~_~;)

347ピーチ:2012/12/11(火) 22:45:59 HOST:EM49-252-224-226.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あの猫さんと真剣勝負した後だから仕方ない! ヒース頑張った!

天音達がどんな暴走を繰り広げてくれるのか楽しみだw←こら

348心愛:2012/12/12(水) 18:04:28 HOST:proxy10016.docomo.ne.jp
>>ピーチ

暴走…よりはしばらくマジメトーンかもしれないw

ここあがとあるシチュを書きたいばっかりに天音ちゃんにはちょっとだけ可哀想な目に遭わせちゃいますがごめんね天音ちゃん!

349ピーチ:2012/12/12(水) 18:44:23 HOST:nptka401.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

マジメトーンか!

全然いいよー←

あ、そういえばソフィア様逹って天音のこと何歳くらいだと思ってる?

350名無しさん:2012/12/14(金) 19:04:21 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――そして、決着の刻は来たる――』





「……ふーっ」



最後の一人が崩れ落ちるのを確認してから、ジルは長い息をついた。
戦うのは好きだけれど、これだけの人数を相手にして一人も殺さない方が骨。
後からじわじわと精神的な疲労が襲ってくる。



「あちらも決着がついたようです」



そのジルと全く同じことをしていたというのに汗一つかかず、クロードが昇とヒースが消えた方角を見やってさらりと言う。


あっそ、とジルは腕を組み、



「……なァ」



「はい」



明らかに格下であるジルにぞんざいに話し掛けられたにもかかわらず、クロードは素直に彼に向き合って。



「如何されましたか」



「兄さん、アンタただもんじゃねェな」



ジルは皮肉げに片頬を歪めた。



「いかにも育ち良さそーな顔してっけど、血の匂いがプンプンしてやがる。今までにそりゃあもう、もっの凄い量の血を浴びてきましたっていう匂いが、アンタの身体には染み付いてる」



クロードは表情を動かさない。
黙ってジルを見下ろすだけ。



「オレ様も似たよーなことしてきたから分かるンだよねー……アンタ強ェだろ、それも滅茶苦茶に」



にやっと嬉しそうに笑うジル。



「兄さん、今度手合わせしてよ」



彼の言葉に、クロードは少しだけ、驚いたように眉をぴくりと動かした。

それから、普段は引き結んでいる口元を僅かに緩め。



「……はい。ルイーズ様にお暇を戴けたならば」






*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。:*・゚゚・*






《……オノレ……》



「「……っ?」」



血走らせた目を上げ、二人を睨み付ける異形。

その姿は未だ侯爵のものにも関わらず、異様なまでの迫力を放っている。



《オノレ、オノレ……ッ! 矮小ナ人間ドモガ……!》



怒りに顔を歪め、そう絞り出すように吐き捨てたソレは、



「! 待っ」



二人を振り切って身を翻し、瞬く間に森の奥へと消え去った。



「はあ!? 意味分かんねえし! ……あーくそ、とにかく」



「―――天音っ!?」



そのとき、何処からか漆黒に艶めく長い髪を靡かせる天音が飛び出した。
着物の袖を風に煽らせ、瞳に強い意志を光らせ、消えた異形を追い、真っ直ぐに駆けていく。



「ばっ、天音っ? 何しっ」



「二人とも無事っ!?」



サッと青ざめた昇を遮り、またも新たな闖入者が現れる。
戦いの様子を遠くから眺めていた者たち、そして彼らに合流したクロードとジルだ。




「……昇、天音が」




ぽつりと漏らしたのは、いつになく険しい顔つきをした柊一。
その短い言葉の節々には、確かな焦りの色が見える。



「分かってる」



昇は頷き、柊一の後について駆け出しながら全員に向けて声を張った。



「天音を追うぞ! あの厄介娘、また一人で無茶やらかす気だ!」






*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*






木々の間を走っているうちに開けた場所に出、天音は足を止めた。
注意深く、ぐるりと辺りを見回す。



「見失った……?」



先程まで背が見えていたのに。

無意味に時間を潰していても仕方がない。素直に柊一たちと合流するしかないかと踵を返したとき、




―――突然、彼女の視界が、痛い程に暴力的な―――鮮烈な紅(あか)色に染まった。




「……あ、……?」



そして、燃え盛る火炎の中に、ゆらりと浮かび上がったのは―――人の形をした、黒い、影。



呼吸が、止まる。



……嘘。


だって、……だってこの人が、こんな場所にいるはずが。



大きく見開かれた瞳が、『それ』を映し、揺れる。



「……ぁ…………あ…………っ」



熱い。



熱い。



―――……あつ、い!




思考が停止すると同時、記憶に灼き付いた声が甦り、彼女を容赦なく責め立てる。



全身から血の気が引き、脚が震え、唇が戦慄(わなな)く。



直後、




「―――――――っっっ!」




細く、白い喉から迸った声なき悲鳴が、夜の帳(とばり)を引き裂いた。

351心愛:2012/12/14(金) 19:08:59 HOST:proxyag109.docomo.ne.jp
上の名無しさんになってしまった人はここあです(´ー`)



>>ピーチ

最近忙しくて駄目だわーw

そんな中の重要シーンなんだけど、焦ったせいかいつにもまして上手くいかなかった(~_~;)


それから天音ちゃんごめんねぇええええ(T^T)

352心愛:2012/12/14(金) 19:12:40 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp
>>ピーチ



追加!
年齢不詳のお姉さんだと思ってるんじゃないかなw
少女って表現出てくるんで「女性と呼ぶべき年齢ながら、幼さを残した顔立ち」ってことにしてるんだけど…
昇くんや柊一くんに取ってる不遜な態度から二人と同年代、じゃあ自分たちより上か?みたいな←

353ピーチ:2012/12/14(金) 19:27:49 HOST:nptka203.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

さっすがここにゃん!

え、何これ何でこんな神文章になっちゃってるの!?

年齢不詳か! だったら次のコラボで使わしていただきます♪

天音のことだから多分年齢関係ないけどね!←おい

354心愛:2012/12/14(金) 23:09:37 HOST:proxy10033.docomo.ne.jp
>>ピーチ

え、そ、そう……?
妄想加速しすぎて天音ちゃんをぶっ壊してないか心配だったんだけど大丈夫…?


じゃあ次もこのまま突っ走っちゃうよー!
天音ちゃんと柊一くんで是非ともやってほしいシーンがあるのよね←

355ピーチ:2012/12/14(金) 23:36:31 HOST:EM1-114-162-231.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

全然!! むしろいい!

天音と柊一だったらいっくらでシーン思いつくよねー!←

356心愛:2012/12/15(土) 23:11:46 HOST:proxy10051.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――二人なら、きっと――』





「……天音っ!」



深い森の中響いた、余りにも弱く、か細い声。


昇と柊一が血相を変えた。


只事ではないということは、部外者であるソフィアたちにも十二分に分かる。


天音の身に何があったのか。



人が通った跡を探しながら走ること数分。

一行を先導していた柊一が、突然立ち止まった。

全員が息を呑む。



「火……!?」



視界を埋め尽くさんばかりに激しく燃え上がる炎。
瞬く間に木から木へと移り、彼らの周りに円を描くようにして広がっていく。



「嘘だろッ!?」



「こっ……こうしてる場合じゃないわ、早く逃げないと!」



ジルとユーリエが退路を探し始める中、



「シェーラ! ぼさっとしてんじゃねえ、お前もさっさと逃げろ!」



ヒースに怒鳴られ、一人ぼうっと突っ立っていたシェーラはやっとのことで我に返り。



「天音ちゃんは!? あたしたちだけ逃げるっていうのっ?」



うっと言葉に詰まったヒースが何か言い返す前に、



「……っ天音!」



「柊一さん!?」



木陰にうずくまる少女を見つけた柊一は、一切の躊躇もなく炎の渦へと飛び込み、彼女へと駆け寄った。



「危な―――」



「……皆、落ち着いて」



落ち着いた声音で、シュオン。
知的に澄むアクアブルーの双眸で、柊一と昇、そして辺りの炎をぐるりと見回す。



「この火、何かおかしい」



「シュオンの言う通りじゃ」



火の粉が舞い飛ぶ風に髪を踊らせ、腕を組むルイーズがちらりと彼女の従者を見上げた。



「焦っていても埒が明かぬ。……クロード」



「はい」



「く、クロードっ!? あんた何やってっ」



主の命を受け、クロードが迷わず火焔へと近づき、その真っ只中へ手を突っ込んだ。


蒼白になるシェーラに、クロードは普段通りの無表情で「案ずるな」と返し、



「……やはり、この炎は全く熱を持っていません。何か違う物の様です」



「え?」



彼の信じられない言葉に、ソフィアたちは恐る恐る炎の上に手を翳し。



「ほんとだ……」



「熱く、ない……?」



《見破ラレタカ》



声の方へと目を向ける。



「侯爵……!」



異形の化け物をその身に宿す侯爵が、この場にそぐわない酷薄な笑みを浮かべていた。



《予定ガ狂ッタガ……我ガ唯一ノ脅威、ソノ小娘を封ジテシマエバ、此方ノモノ》



確かに、妖に物理的な攻撃が効かないのは、すでにヒースが実証済みだ。
頼りになるのは、天音と、そして―――




「―――させない」




良く通る声。

穏やかな眼差しに、彼の内に内包された僅かの怒りを孕ませ、柊一が妖を見据えた。
思わずといったように、妖が黙り込む。



「天音」



屈み込み、小刻みに震えている彼女の顔を覗き込む柊一。



まるで示し合わせたように、場が水を打ったように静まり返る中、



「もう分かったでしょう? これは幻覚だよ」



「……そ……っなの、分かっ……」



天音は歯を懸命に喰い縛り、首を振る。
唇から漏れるのは弱々しい吐息ばかり。
美しい瞳に恐怖を滲ませ、



「でも……っ」




「俺がいる」




きゅっと手が握られた。
まるで幼子のように無防備に、天音は目を見張って彼を見る。



「俺がついてる」



彼女を優しく見つめ返し、柊一は微笑んだ。



「いつもそうだけど……。一人で抱え込まないで。もっと俺を頼ってよ」



一人じゃない。



「いけるね? 天音」



二人なら、きっと。



長い長い沈黙の末―――




「―――……誰に向かって、ものを言ってるの?」




小さく、天音はくすっと笑った。


あくまで素っ気ない動作で手をするりと解いて立ち上がり、異形を振り仰ぐ。




「―――よくも、この私を侮ってくれたわね」




不敵な冷笑。




「覚悟して。……その下品な口、今すぐに塞いであげる」

357心愛:2012/12/15(土) 23:17:00 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
>>ピーチ

書きたかったシーンその一!
弱る天音ちゃんを励ますかっこいい柊一くん!←ここあの主観です


次は悪ノリに悪ノリを重ねた詠唱と、書きたかったシーンその二ですやっほい( ´∀`)!

358心愛:2012/12/16(日) 09:26:33 HOST:proxyag053.docomo.ne.jp
>>ピーチ

質問いいー?
柊一くんって天音ちゃんと同じような力持ってるんだよね?
それ使うときって、両手を胸の前で組む……で、いいの?
鈴は使わないの?



あと、やりすぎじゃボケって場合はどんどん言ってね(・∀・)

359ピーチ:2012/12/16(日) 13:16:51 HOST:EM114-51-148-75.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

やばい凄い! あの天音をここまで上手く動かすことってあたしぜったい無理だよー!

天音と同じような力+で結構持ってるからね柊一は←

柊一の家系の鈴は漆黒ですはい。似たような使い方してるからね

どっちか言うと柊一は右手で鈴持ってそれを天に掲げるって感じかな←おい

360心愛:2012/12/16(日) 19:15:20 HOST:proxy10015.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――夜凪乃唄――』







《……面白イ》



異形が、嘲弄とは似て非なる純粋な笑みを浮かべた。



《人間如キガ、今の我ヲ止メルトイウノカ……》



背筋を伸ばし、真っ直ぐな眼を向けてくる天音に、異形が言う。




《ナラバ小娘。貴様ノ意思ヲモッテ、我ヲ見事倒シテミセヨ》




「えぇ。言われなくてもそうさせて貰うわ」



挑戦的に微笑み、それから昇が念の為にソフィアたちを安全な場所へと誘導しているのを横目で確認した天音は、



「……柊」



不意に、隣に立つ柊一に小さな声で。




「後ろ、向いて」




「え?」



「早く」



苛立ったように語尾を強める天音に、柊一は不思議そうにしながらも素直に従う。


すると、



―――とんっ



背中に触れた重みと体温。

驚いた柊一が、首を後ろへと向ける。



「……天、音?」



「別に、深い意味はないから」



少し下方に、彼女の後頭部。

ぴったりとくっついた背中に体重を預け、何とも居心地が悪そうにそっぽを向いている。



―――やがて、柊一の顔がふわりと柔らかく綻んだ。



「……そっか」



「そうよ。……何か文句でもあるの?」



まったく、素直じゃない。


柊一は思わず笑みを零す。



「ううん。それは残念だな、って思っただけ」



「……五月蝿い」



やや迫力に欠ける一睨みを背後へ投げる天音。


それから―――自分が今為すべきことへと思考を入れ替える。



すっと息を吸い、




「―――……宵に煌めく残月、静寂(しじま)に響くは微かな鈴鳴り」




りん―――




辺りを取り囲む炎の中心、背中合わせに寄り添う二人。

紅と黒の鈴が、優しく涼やか調べを奏でた。




《…………ッッ》




妖がびくりと反応する。




「永却(とわ)の記憶(ねがい)は儚く遠く」




「束の間の夢幻(あい)に只溺れゆく」




彼らの夜風に靡く髪を彷彿とさせる漆黒の鈴が、柊一の手によって天へと掲げられる。




「さまよい、いざよい、ゆらめく彩葉(いろは)」




「雪華に堕ちた罪の色、紅(あか)く黒く、尚暗く」




「心、翼、躰(せかい)を染める」




天音が手にした深い紅の扇が月明かりに照らされ、闇に浮かび上がる灯の如く、ぼう、と妖しげに霞んだ。



《コノ、力……小娘、……貴様ラ……ッ》



妖がよろめき、苦しげに呻く。




「乱れ咲け虚城の夜桜、断罪の刻を祝せ」




「舞い踊れ棘(いばら)抱く蝶、贖罪の巫(かんなぎ)を導け」




美しき唱和。
静かなる二人の言葉が波紋のように広がり、森の奥深くへと沁み渡る。




「鵺(ぬえ)吼ゆる玉響(たまゆら)、泡沫の繚乱は狂おしき微醺(びくん)」




「此なるは魂(みたま)に手向けし鎮歌(しずめうた)、空葬の烙印を受けよ」




《……ッアアアアアアアアアアアアア!!!》




突然異形が発狂したかのように絶叫し、髪を振り乱し、喉を掻きむしって苦しみ始めた。
紅蓮の猛火が一段と激しく燃え上がり、異形を覆う。




「鬼火の制裁にて―――」




「常世の呪縛に囚われし者よ」




《コノ、我ガ………ソンナ……ソンナ、コトガ……ッ!》




炎の中、カッと濁った目を見開き、消滅の淵で慟哭を撒き散らす異形の姿を見ても、それでも天音は怯まない。
扇を握り締める手に力を入れ、前を見据え続ける。




「其の総(すべ)てを賭し―――」




そのとき。
ちらり―――まるで示し合わせたように、天音と柊一、両者の間で一瞬視線が交わされた。
天音が何事もなかった風を装い顔を逸らし、それに柊一がふっと微苦笑。



そして。




「「―――汝が終焉を告げよ」」




―――厳かに響く二人の声が、重なった。

361心愛:2012/12/16(日) 19:23:18 HOST:proxy10015.docomo.ne.jp
>>ピーチ


…中二病って怖いね!((キラキラ


書きたかったシーンその2、背中合わせで戦う男女!
いやー、「お前に背中は預けるぜ」みたいなシチュに持ってくにはうちの子たちは貧弱が過ぎるので…
ある程度同等の身長、実力じゃないと映えないもんね!


そんなわけでここあは完全自己満足お腹いっぱいですが、直すとこ言ってくれたら書き直すよ(´ー`)
っていうかありすぎるよねうん←

362ピーチ:2012/12/17(月) 20:29:02 HOST:EM114-51-182-122.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

…………凄いの一言でございます。←

確かにいいかもね! 背中合わせ!

……直すどころか、このまま続けちゃってくださいな←おい

あ、二人の呪文もらっていいでしょうか? もしだめだったら言ってねー!

363心愛:2012/12/18(火) 11:59:25 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp
>>ピーチ

………ま、まじで………?

それならよかったんだけど……いいのね? 本当にいいのね?(゚Д゚)


ええもちろん、あんなんでよかったらいくらでももらっちゃってください!
ただ、中二心に響く漢字組み合わせて造語作ったり勝手に意味分からんルビ振ったりしてるので気をつけて(・∀・)


これで一応終わり……な流れだったんだけど、『あの人』が出てきてないんでもうちょい続くよー(^^)/

364ピーチ:2012/12/18(火) 18:25:39 HOST:nptka104.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

あああありがとうございますー!

色んなありがとうー!←おい

らじゃー! 楽しみにしてまーす!

365心愛:2012/12/21(金) 19:13:41 HOST:proxy10023.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――幕は閉じる――』





《覚エテオケ……》



おぼろげな声。



《貴様ラノ事、我ハ決シテ忘レヌ……。ソノ顔、ソノ姿、コノ報イ……》



苦しそうに荒い息を吐きながらも―――けれど妖のその表情は柔らかく、憑き物が落ちたように晴れやかなものにも見えた。



《何度、デモ……イツカ、コノ世界ヲ……我ノ物ニ、シテ……》



「お断りよ」



天音はぱたん。と扇を閉じて冷たく告げる。



「仮に、もしそんなことがあっても―――私たちがまた送り還すから。何度でも、ね」



そのときは特別に相手にしてあげる、と薄く笑う天音。



《……最後マデ、良ク吠エル小娘ヨ……》



声を立てて笑い、異形は穏やかに瞼を閉じた。
その身体が、ふっ、と完全に弛緩する。



りん―――



鈴の音色。
それはまるで、妖に安らかな眠りを告げる旋律であるかのようで。



間を置いてから、ソフィアがこわごわと声を発した。



「終……わった、の?」



「あぁ。そうみてぇだな」



昇が首肯し、すぐさま天音と柊一の元へと駆け寄る。



「お疲れ」



「昇もね」



「えっと……お前はもう、大丈夫なのか?」



彼らに割り込む形で、天音へと遠慮がちに尋ねたのはヒースだ。
彼にしては、それなりに気を遣っているようにも見える。


対する天音は額に手を当てて俯き、ふう、と哀しげに息を吐いた。



「……これは、思った以上にショックね。黒髪君如きに心配される程、私は落ちぶれてはいないつもりだったんだけど……」



「こっちがショックだよ畜生!」



途端にいつにもまして凶悪な目つきになったヒースがゲシゲシと傍に立つ木を蹴る。



「……天音さん……」



「もう大丈夫よ。見苦しいところを見せたわね」



「そんなことっ」



何処からか「何で御嬢様には普通の対応できるんだよ……!?」という怨念の籠もった呟きが聞こえたような気がしたがそれには構わず、ソフィアが困ったように視線を彷徨わせる。

ソフィアだけでなく、他の面々も複雑な表情をしていた。

この彼女が取り乱す程の、何か深く、厳しい事情をどうやら天音は抱えているらしくて。

正直に言えば気になるし、自分たちで彼女に何かしてあげられることが、もしもあったならしてあげたいとも思う。
けれど、それについて口に出しても良いものなのだろうか。
変なことを言って、余計に彼女を傷つけてはしまわないだろうか。


そのとき、



「天音ちゃん元気になって良かったですー! もー、走って行っちゃったときはどうしようって思ったんですよ?」



シェーラがおどけたように言い、ぷくっと膨れてみせた。



「昇さんも柊一さんもすっごく心配してたんですから。一人で無理しちゃ、めっ、ですよ!」



彼女は場を明るくするのが異様に上手い。

ソフィアたちはふっと気が抜けて、安心したように笑った。


―――彼女が望まないのなら、何も訊かないことにしよう。


だって、きっとそれは、自分たちの役割ではなくて。



「天音?」



「分かってるよね?」



「……分かってるわよ……」



じとりと据わった目の昇と、笑顔で釘を刺す柊一。
今日は同じことを言われてばかりね、と天音は不承不承頷いた。



「で」



「アレ、どうしましょうか?」



彼らが次に見たのは―――妖が消えた所為でそのまま地面に転がっている侯爵の死体―――訂正、身体。



「処分するのが妥当でしょう」



完全なる無表情のクロードが重々しく告げた。



「生かしておいても価値はありません」



「そうですね。僕も同じ意見です」



「ちょ、ちょっと待てって! クロード殿も落ち着いて下さい!」



「クロード、シュオン! 罰を与えることは必要としても、それはあんまりではないか!」



「ですが」



「ですがも何もない。民を殺めるなど、決してわたしは許さぬからな」



この場の最高権力者であるルイーズが強く言う。
さらに、



「シュオン。許してあげて」



「ソフィア……」



「この通り、私は無事なんだから。酷いことはしないで」



それで、想い人に甘い二人は完全に黙る。

366心愛:2012/12/21(金) 19:19:12 HOST:proxyag115.docomo.ne.jp
>>ピーチ

冬休みになっても忙しいここあです…。
学校燃えr(ry


早めに終わらせてピーチに引き継いで、自分のスレ進めようと思ってるんだけど厳しいわー←
ほんとすみません(つд`)

367彗斗:2012/12/22(土) 02:20:18 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
侯爵〜!? この二人に処分されてたらただ事じゃ無かったねこれw

色々な私用が込み入ってコメントが書けなかったのですが今回久々に書く事が出来ました☆

これからコメントする回数も多くなるかと思いますので宜しくお願いします!

368ピーチ:2012/12/22(土) 14:51:52 HOST:EM114-51-6-93.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ごめんなさい何かすごくごめんなさい!!

いや、別に嫌だったら無理に引き受けてくれなくてもよかったのに……

ほんとごめんね!?

369心愛:2012/12/22(土) 18:18:01 HOST:proxy10011.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

ありがとうございます!
確か彗斗さんは受験学年…ではありませんでしたっけ…?

彗斗さんが遊びに来て下さるのはとっても嬉しいですけど、無理はなさらずに(・∀・)



>>ピーチ

あ、あれ!?
言葉のチョイスがまずかった!?

嫌じゃないよ全然嫌じゃないよ!
忙しいのは確かだけど、スキマ時間見つけて書くのは結構好きなことだからむしろ嬉しい悲鳴と言いますか。
恐れ多くも天音ちゃんたちを書かせていただくのが嫌だなんてそんなのあるわけないじゃないか!(くわっ
ただ、散々待たせた挙げ句に内容残念な亀更新で申し訳なくて…m(_ _)m

370ピーチ:2012/12/22(土) 23:23:21 HOST:EM49-252-13-47.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

よ、よかった……!

嫌なのに無理して付き合ってくれてるんじゃないかと思った←

天音達なら永久に健在だよ! 天音はいつまでも女王だよっ!←おい

371彗斗:2012/12/23(日) 15:49:46 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>

大丈夫! 私は一応余裕ですので☆

全く話が浮かばなくて……ちょっと前までは更新を控えていたんですがね……ピーチさんや心愛さんの小説を見て「無理矢理でも何でも良いから書こう!」とがむしゃらに全ての作品に手を付けている所ですw

良かったら見てみて下さいね☆

372心愛:2012/12/23(日) 20:36:42 HOST:proxy10029.docomo.ne.jp
>>ピーチ

そんなわけないない!

…天音ちゃん最強女王伝説☆



>>彗斗さん

ならよかったです(・∀・)

なんか、全く手が着かなかった回を無理矢理にでも終わらせると、次からは意外とすらすら出てきたりしますもんね!



このコラボも一応山場は越えたので、そろそろ邪気眼少女やソラの波紋も再開できたらいいなーと思います!
ごめんねピーチ…やっぱりコラボ完結はもうちょい待ってー…!(^-^;

373ピーチ:2012/12/24(月) 14:04:39 HOST:nptka207.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

いーよここにゃんさえ迷惑じゃなければ!←

むしろありがとうー!

…あ、質問いーですかね?

374心愛:2012/12/24(月) 16:50:14 HOST:proxy10002.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――嵐、来襲――』






「とにかく。兄様に唆されてとはいえ勝手に侵入し、さらにソフィア嬢の身柄を狙ったのだから、野放しにしておくのも問題じゃな」



「でも可哀想ですよー……。天音ちゃんはどう思います?」



天音は「そうね」と考える素振りを見せる。
そして―――次の瞬間には、誰であろうとも思わず見惚れないではいられない程に温かく、麗しい微笑を湛えて言った。




「―――それなら、私が満足するまでひたすら殴る、ってことでどう?」




「「ではそれで」」



「うおおおおいっ!? 落ち着け落ち着いて考えろ! この女絶対殺すまで殴るぞ!?」



揃って即答する真顔のクロードと笑顔のシュオン。

ヒースが二人を、柊一が天音をとそれぞれ必死に説得を開始する中、地面に転がる侯爵がもぞもぞと動いた。



「私、は……何を……? 《紫水晶》は……?」



「あ? 寝ぼけてンじゃねェよオッサン。早いとこ出てきな、じゃねェと面倒だしオレ様が殺っちまうよ?」



「ひいっ」



「ジル、台詞が完全に悪役なんだけど」



真っ青になり尻餅をついて後ずさる侯爵に剣先を突きつけ、ちらりと冷たく見下ろすジル。



「ンなの元からだろ。オレ様もお前も」



「……そうだったわね」



ユーリエがくすりと笑む。



「此処にいると、自分がしてきたことをつい忘れそうになるわ」



「……同感」



ハッと笑い声を漏らして肩を竦め、ジルが侯爵から刃を退いた。



「くっ……またしても……! こんな野蛮な者たちに負けるなん―――」




「お父様っ」




「あなた!」




『………はい?』



侯爵を遮る、新たな二つの声に全員が振り返る。


ザッと音を立てて地を踏み締めたのは、ランプの明かりで足元を照らした二人の女。
赤とも茶とも取れる豊かな巻き毛を背中に垂らした彼女らは眉を釣り上げ、侯爵を見つけるやぱたぱたと駆け寄って。



「お、お前たち、どうして此処に」



「それはこっちの台詞です!」



「誰だあれ」



「さぁ……。あの人の家族、じゃないかな」



昇の呟きに、柊一が首を傾げる。



「お父様こそ何をしているのですかっ」


「王太子様があなたの居場所を教えて下さって、馬車で慌てて駆けつけたの。すぐに見つかって良かったけれど……。まさか、本当にこんな馬鹿なことを……」



どうやら二人は、侯爵の妻子であるようだった。

娘の方と思しき若い女性が、「でも……」と苦笑する。



「こんなことになったのも、元はと言えば私たちの所為だものね……。お父様、私たちが悪かったわ」



「もう心配はいらない。帰りましょう、私たちの家へ」



「お前たち……っ」



侯爵の目にじんわりと涙が浮かぶ。


長らく別れていた家族の再会。
それは一つの感動のシーンのようにも思えたが、


侯爵へとそっと手を差し伸べようとした母娘の瞳が、不意に『彼』を映し出した、その途端―――




「「きゃあああああシュオン様―――――っっ!」」



「こんにちは、親愛なるレディたち」



すかさずソフィアにヒースの後ろへ隠れるよう囁いて、完璧外面を装着したシュオンがにっこり微笑む。
暗い闇の中でさえも、彼の美貌は健在だ。
キラキラ輝く粒子を身に纏い、



「まさかこんな所でお会いできるだなんて……。お二人とも、相変わらずお美しい。今日の僕は神に愛されているようですね」



「金髪君、頭でも打ったの?」



「ええと……シュオンは基本、他人には猫を被ってるから……」



「シュオン様は真性の女タラシなんですよー」



「はぁ」



呆れ顔の天音に、ソフィアとシェーラが小声で解説する。

そして、



「ぅぅ、く……っ」



「…………うん…………」



しくしくと膝を抱えていじける侯爵の肩を、ヒースが慰めるようにぽんぽんと叩いた。

375心愛:2012/12/24(月) 16:59:40 HOST:proxy10001.docomo.ne.jp
>>ピーチ

じゃあそろそろ並行し始めようかなーw


…まさかの侯爵妻子登場です。
ほら、ここあって悪役も最後までちゃんと扱うからね!異形もね!

…ちょっと前に思いついただけだけどね!


質問どーぞ( ´∀`)

376名無しさん:2012/12/24(月) 20:30:26 HOST:EM114-51-208-89.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

まさかの侯爵の妻子登場w

優しすぎるもんねここにゃん!

何気天音の言葉がうけたw

多分三学期に入ってから授業で物語を書いたりするのがあると思うんだけど、このコラボ使ったらだめだよね……?

377心愛:2012/12/25(火) 09:10:50 HOST:proxy10017.docomo.ne.jp
>>ピーチ

女王天音ちゃん復活?←



授業で物語…!?
なんて素敵な学校だ!

や、ここあは全然構わないよ?
構わないんだけど…先生とか同級生が話分かんなくてもいいの?
せっかくピーチの才能が色んな人の目に触れるチャンスなんだから、どうせだったら一本書き下ろしたら…?
それにうちのあんなアホたちが我が物顔で登場したら引かれるんじゃ(;゜ロ゜)


…そりゃあ嬉しいけどさ! 嬉しいけどさっ!

378心愛:2012/12/25(火) 17:51:54 HOST:proxy10045.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――嵐、来襲――』





「ルイーズ様。いつものこととはいえ、仮にも一国の王女がふらふらと外を出歩いているなどと部外者に情報が行くのは避けるべきです。此処は身を隠しましょう」



「そなたの言い方には少々引っかかるが、承知した」



クロードに誘導され、ルイーズが森のさらに奥の方へと消え去る。



「ああんシュオン様、お名残惜しいですわっ」



「それは僕も同じです……が」



くっついてくる二人をやんわり押しのけ、シュオンは申し訳なさそうに微笑んだ。



「今の僕は婚約者がいる身ですので」



ヒースの背後のソフィアがびくっとする。



「……そうでしたね……」



二人はしょぼんと目に見えて落ち込み、肩を落とした。



「ごめんなさい。つい調子に乗ってしまいましたわ」



「ですから」



にっこり笑い―――シュオンは柔らかな視線で彼らを指し示した。




「どうせ触れるなら。あちらの二人なんて、如何です?」




「「は?」」



我関せずを決め込んでいた昇と柊一がその顔を上げる。

二人ともすらりと背が高く、さらに方向性は違うにせよ東洋風の魅力を持つ文句なしの美形である。



女性方は彼らを見た途端にぱああっと目を輝かせ、



「「きゃーっステキー!」」



「えぇっ!?」



流石に抱きつきまではしないものの、彼らに密着しては「何処から来たのか」「今いくつか」などと質問責めにする二人。


それを見て、



「………しくしくしく」



侯爵がさらにだばだばと滝のような涙を流し、



「……………」



「あ、天音っ? これはその、違うってっ」



慌てて弁解する柊一にも耳を貸さず、天音は磨きが掛かった「つーん」をかましてそっぽを向き続ける。



やがてたっぷり堪能した後、二人は「ふぅ」といかにもしあわせそうな表情で身体を離して。



「私、とっても満足しました」



「それは良かった」



「全然良くねぇよこの金髪っ!?」



昇が笑顔を崩さないシュオンに噛みつく。


「えへっ?」とちょっと可愛らしくちろっと舌を出す娘。
続いて夫人がおっとりと頭を下げる。



「夫共々、非礼をお詫びしますわ」



「本当にな!」



「それではシュオン様、そちらのお二人もまた! ご機嫌ようー!」



「うう……」



ある意味逞しい親娘は「格好良かったわね!」「私はあの大人しそうな方がストライクで」「えぇーっ? 私は背が高い方の」などと興奮気味に雑談を交わしながら侯爵をずるずると引っ張って退場。



「すげえ……あの人たち、俺らのこと最後まで見なかった……」



半ば呆然として呟くヒースに、シュオンが面白がるように。



「ソルファール侯爵夫人とお嬢様は美形好きで有名だからね。当然と言えば当然じゃない?」



「「どういう意味だコラ」」



見向きもされなかった男二人が額にピシッと青筋を立てた。



「暗い中だったのじゃし、良く見えなかったのかもしれぬな。わたしはそなたらもなかなかの二枚目だと思うぞ」



「王女殿下……!」



茂みの中から出てきたルイーズが苦笑する。
ヒースが少し涙ぐんでいた。


そして、


「いつまでも遊んでないで帰るわよ」



「天音……い、今のは俺たちが悪いんじゃないよね? どうして怒って」



「どうして私が怒るの?」



「ごめんなさい」



「だからもっとプライド持てよお前!」



不思議そうに首を傾げる天音の瞳が冷たく凍っているのを瞬時に察した柊一が流れるように謝罪。

昇も青くなって顔を引き攣らせていた。



そこへ、さらに。



―――またも、新たな闖入者の声が響く。




「―――シュオン? そこにいるの?」




エインズワーズ家の面々が、皆一様に『げぇっ』という表情になった。

379ピーチ:2012/12/25(火) 23:23:58 HOST:EM1-114-215-92.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

天音女王復活伝説w←え

小学校の時にもやってるよー! 教科書めくってて見っけて一人で舞い上がってたよー!

…………柊一達まで餌になったか!

あれ、昇にもちゃんとした人は居るはずだけどw

次のコラボで出せたら出すね!

380心愛:2012/12/26(水) 15:33:14 HOST:proxyag103.docomo.ne.jp
>>ピーチ

大丈夫、昇くんのことはちゃんと承知してるよ!

ただ、天音ちゃんを美人美人言っといて男二人の美形ぶりは書いてなかったなーって思ってちょっと強調してみただけですw

381名無しさん:2012/12/26(水) 21:18:52 HOST:EM114-51-172-214.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

よかった大丈夫か!←

うん、まぁ一応みんな美形キャラ頑張ったけどね!(おい

382心愛:2012/12/26(水) 23:16:51 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp
>>ピーチ

美形美形ー!
美形万歳!

…なんか美形ばっか書いてるからレイさんにとばっちりが行ったのかなーとか思うけど気にしない(´ー`)
美形って言い切れない自キャラはなかなか他にいな……あ、ジルがいたか((こら

383ピーチ:2012/12/27(木) 13:57:25 HOST:nptka204.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉

美形万歳ー!←

いや、あのね、ジルもレイさんも結構美キャラだと思うよ?

384心愛:2012/12/27(木) 19:16:17 HOST:proxyag093.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとう!
奴らが聞いたら絶対喜ぶよ! 特にレイさんは号泣して喜ぶよ!

まあ容姿は並以上だろうけど突出してないから他キャラに埋もれちゃうんだよね…(^-^;

385心愛:2012/12/27(木) 21:08:28 HOST:proxy10003.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――災厄、来襲――』






「クロード殿! 姫君をすぐに目の届かない場所へ!」



シュオンが余裕を消し血相を変えて叫ぶ。



「む、今の声はレディ・アゼ」



「承知しました」



「なっ!? 何故ゆえっ! はーなーせー!」



おそらく状況は分からずとも主の身への危機を察知したのだろう、ひょいっと暴れるルイーズを軽々抱きかかえてクロードが再び姿を消す。



「そこの黒髪二人、そいつ連れて早く逃げろ!」



「は?」



「ユーリエ、シェーラちゃん、お嬢様もっ」



涼しげな夜風が吹き抜ける中、ダラダラと冷や汗を流すヒースとジル。



「ソフィア様、あっちに行きましょう!」



「ほ、本当に逃げきれるかしら……?」



「大丈夫、いざとなったら私が何とかするわ。……多分」



慌てて先導するシェーラに怯えるソフィア、そして何処から取り出したのか、鈍く光る包丁を不安げに眺めているユーリエもクロードの後に続く。



「……何の騒ぎだこれ」



「天音、何か嫌な予感がするんだけど……。言われた通り逃げた方が」



「嫌。何だか知らないけど、逃げるだなんて冗談じゃないもの」



「……これだからトラブル抱え込むんだよ……」



一人で何かやらかすよりは良いけどさ、と昇が呆れたように頭を振ったとき。




「―――もう、探したじゃない」




ソルファール兵を従えた貴婦人が姿を現した。


ゆるやかに波立つ淡い黄金色(オフ・ゴールド)の髪に穏やかな新緑色の瞳。
シュオンに瓜二つの甘い美貌は少女のように若々しい。

エインズワーズ公爵夫人アゼリア。



「は、母上……? そちらの人は……?」



「貴方を探している途中で知らない人たちが大勢倒れているのを見つけたから起こして話を聞いたのよ。この人はお願いしたら護衛に付いてくれたのだけど……。災難だったわね」



「今の方が断然災難ですけどね」



「あら、何か言ったかしら?」



「いいえ、何も」



一見にこやかな笑顔の応酬。
ただし、鉄壁であるはずの息子の方は微妙に強張っているような。



「それで? ランディから今日はお客様―――ルイーズ姫がいらっしゃると聞いていたのだけど」



もしかしなくても、ルイーズ目当てにこんなところまでやって来たらしい。



「残念ですが、母上。プリンセス・ルイーズなら既にお帰りになられました」



「……そうなの?」



シュオンの嘘に、アゼリアは不思議そうにぱちぱちと瞬き。



「ソフィアとシェーラとユーリエは? 一緒ではないの?」



「ソフィアたちは先に屋敷へ戻りましたよ。途中で会いませんでしたか?」



さらりと嘘を重ねるシュオン。
三人挙がった名前を「ソフィアたち」で片付けてしまうところは流石と言うべきか。


アゼリアは信じたのか信じていないのか、「ふぅん……」と指先を尖らせた唇に当て面白くなさそうに辺りをぐるりと見回し、




「……まぁ」




「やっぱこうなるか……!」とヒースが頭を抱え、「お、オレあっちの方散歩してくるわ!」とユーリエらがいる方向へジルが駆け込む。
シュオンの微笑に、ピシッ、と最早取り繕えない亀裂が入った。



アゼリアは頬に手を当て、これ以上ないという程にその表情をぱああああっと輝かせる。



「まぁまぁまぁっ! そこの貴女」



「……私?」



眉をひそめ、柊一と昇を伺う天音。



「あぁなんて可愛らしいのかしら……! この年になってこんなに美しい子と巡り逢うことができるだなんて、わたくしの人生もまだまだ捨てたものではないわね。そのオリエンタルなドレスもとっても似合っていてよ!」



「母上。彼女は客人ですから……あと下手に手を出したりしたら後で聞いたソフィアが悲しみますし、まず彼女自身が黙っていませんのでほどほどに」



シュオンの忠告も何処吹く風よと聞き流し、アゼリアは天音に近づいて、キラキラッと熱を纏った煌めく瞳で背の高い彼女を見上げた。

386ピーチ:2012/12/27(木) 22:58:29 HOST:EM49-252-69-209.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

とうとうアゼリア様のご登場だーいっ!

………女性群のみならず男性群まで青くなるのが凄いよね←

387心愛:2012/12/28(金) 16:06:04 HOST:proxy10050.docomo.ne.jp
>>ピーチ

最強母上アゼリアさん登場ーw
ちょっと口調がリリスと似てる(;゜ロ゜)


あと二回で完結予定だよ!
良かった年内に終わりそう…(´ー`)

ラスボスはアゼリアかとか考えちゃいけない←

388ピーチ:2012/12/28(金) 17:36:26 HOST:EM1-115-30-179.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

最強最強w

あと二回か! じゃああたしは来年から始めようかなー

ラスボスNOだよここにゃん!

389彗斗:2012/12/28(金) 23:47:13 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
アゼリア様のご登場w(←これはラスボス登場の場面と似た所を感じるのは私だけ?ww)

一体どれだけ他人を怖がらせたら気が済むのやら……(シュオン様が逃げだすジルを道連れにした所が一番ウケたww)

390心愛:2012/12/29(土) 15:48:23 HOST:proxy10009.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――貴婦人は微笑む――』





天音の全身を舐め回すように熱っぽく見つめ、ほうっと吐息を零すアゼリア。



「何て綺麗な髪……! 触ってみても良いかしら」



「は?」と一瞬唖然とした彼女の返事も待たずに手を伸ばし、アゼリアは心底恍惚(うっとり)とした表情で髪をさらりと一束掬い取る。



「あぁ、手触りまで最高なのね。ずっとこうしていたいくらい」



目の前の理解不能な生き物に、天音がどう対処すべきか迷っている間に。



「肌も黒に良く映える眩しい白……。堪らないわ。ねぇ貴女、今夜はわたくしととっても楽しいことをして遊ばない? 大丈夫、乱暴なことはしないから」



「はーはーうーえ! ですからそういう不埒な―――」



つつつつつ。


指先で首筋をなぞられ、ぞわっ、と全身に鳥肌が立つ。


天音の頭の中に、正当防衛、というシンプルな単語が浮かぶ。


この際殴り飛ばしても誰にも咎めることはできないのではなかろうか。
きつい言葉を浴びせたり怪我しない程度に振り払ったりしても、このタイプの変人には通用しない。そう天音の本能が告げていた。

やむを得ない。

混乱が過ぎ去り、理路整然とした思考の末に一つの結論を出し、天音が拳を握りかけたとき。




「あの」




苦笑する柊一が、遠慮がちに声を発した。



「……天音が困ってるので」



空気が凍る。


シュオンとヒースが信じられないものを見たときのように目を見張った。


まさか、果敢にも―――柊一は完全に自然体だが―――このアゼリアに対抗しようとする者がいるとは。



「……別に、困ってないわよ」



不満げに響いた声は天音のもの。

むっとしたように柊一を睨む。



「……ふふ」



するり、と指先が離れた。


微笑むアゼリアが天音から距離を取る。



「素敵な騎士(ナイト)様ね」



くすくす笑って柊一を伺い見た後、



「残念だけど……この続きはまた今度」



「その『今度』が二度と訪れないことを祈ります」



「つれないのね。そこも可愛い」



冷ややかな目つきの天音に、性懲りもなくにこにこする。



「母上、冷えた風は身体に障ります。そろそろ中へ」



「はぁい。シュオンったらすっかり口五月蝿くなっちゃって」



ぷんっ、と息子に膨れてみせたアゼリアはそのまま放置していた兵士に向き直り。



「ああ、貴方、申し訳ないのだけどわたくしを屋敷まで送って行って下さる? そうしたら他の皆と一緒に帰ると良いわ」



「は、はい」



「『お願い』なんて嘘だろ絶対強制しただろ……」



ぼそぼそ呟くヒース。



「貴女、お名前は?」



「……天音です」



「天音さんね、可愛い響き!」



明らかに引いている天音もものとせず、



「またお逢いしましょう!」



ドレスの裾を翻し、災厄の具現化とも言える貴婦人は優雅な微笑を残して歩き去った。



「すげぇ、あの人俺らのこと最後まで見なかった……」



何処かで聞いたことがあるような台詞と共に、昇。



「母上は無類の女性好きだから……。嫌な思いをさせてごめんね」



「金髪君に謝られると気持ちが悪いんだけど……」



天音相手に素で謝るシュオンが、次に瞳に微かな尊敬の色を滲ませて柊一を見る。



「柊一さん、だよね。また母上絡みで何かあったら是非よろしく。君しか頼れる人がいないんだ」



「え? 何で俺?」



「やっぱり自覚なしかよ!」



俺でも何となく分かったぞ、と昇が呆れたように。



続いて「良いんじゃねえの?」とヒースが笑った。



「何しろあのお前が『はーはーうーえ!』だもんなー、此処はそっちの黒髪に頼るしかねえだろ。……ははっ、すっかり可愛げも何もなくなっちまったと思ってたけど、珍しいもん見させてもらっ」



「あはは、この僕を困らせることができるのはソフィアと母上だけだからね」



「まっ待て超楽しそうに笑いながら爆弾取り出すんじゃねえマッドサイエンティストかお前は!?」



「そうだけど?」



「そうだったぁー!」



突如として始まった、あまりに不毛な追いかけっこ。

天音が「……帰っていい?」と小さく呟いた。

391心愛:2012/12/29(土) 15:59:31 HOST:proxy10009.docomo.ne.jp
>>ピーチ

最強最強ーw

ここあの中での隠れ最強天然男・柊一くんに撃退していただきました!
ひねくれ者のシュオンが認めるってことは物凄いことだよ(o^_^o)



>>彗斗さん

ラスボスですね!

あ、ジルはすでに逃亡しております。シュオンはアゼリアに「やばっ」と引き攣っただけです、分かりにくくてすみません!



残り一回、ピーチや、これからに繋げつつ綺麗にしめられるように頑張りますっ( ´∀`)

392ピーチ:2012/12/29(土) 16:15:30 HOST:EM49-252-63-97.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

最強ーw

…うん、まぁ柊一も色々凄いからね。ある意味←

あのシュオン様が認める母上も凄いw

頑張れ! 何とか頑張って繋げられそうなところ繋げるから!

393彗斗:2012/12/30(日) 11:28:40 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>

おぉ……柊一君強っ……アゼリア様をこんなにも簡単にw

シュオン様が認める位だから、相当な物なんだろうねw(色んな意味で)

それと……思いっきり話が変わりますが、正月が近づいているって事である事を企画している最中なのです☆

一月一日深夜12時丁度に更新を予定してますのでお楽しみに☆

394心愛:2012/12/30(日) 11:38:17 HOST:proxy10044.docomo.ne.jp

鈴が歌う奇跡の旋律
『――さよならは言わない――』





「ふー。やっと行ったか?」


「あ、生きてたんだ。ドヘタレ害虫」


「はァ!? 何その言い草!」



木の陰から続々と出てくる彼ら彼女ら。

その中で、ソフィアがそっと申し出た。



「あの……もう、帰ってしまうの?」



「えぇ」



「も、もしかして奥様に何かされちゃったからですか!?」



「……それは関係ないわよ……」



涙目ですがりつくシェーラをさり気なく遠ざけながら、天音が苦笑した。



「また遊びに来てよ。君たちがいると、ソフィアが喜ぶんだ」



「ふふ。次までに、三人専用のカップを用意しておこうかしら」



「おー、さっすがユーリエさん! グッドアイディアです!」



仕方ない、とでも言うように天音は肩を竦め、



「……何かあったらね」



「はい!」



彼女の返事に、黙って聞いていたソフィアも安心したように微笑んだ。



「王宮に来てもよいぞ! 国を挙げて歓迎しよう」



「ルイーズ様、それは激しく有難迷惑と云うものなのでは」



「なんじゃとー!?」



むきゃー! と暴れる王女を諫めながら、クロードが三人を流し見て。



「達者で」



「どうも」



柊一が穏やかに笑みを返す。

続いて、昇が笑って手を振った。




「ヒースもまたな!」




「だっから黒髪言うな! 俺はヒース=ユー……………………………………え?」



ピシッ、と硬直するヒース。



「お湯でも掛けたら解凍できそうだね」



「……あ、悪い。俺としたことが間違えた。じゃーなー、黒髪ー」



氷漬けにされたようにカチコチに固まっているヒースをよそに、三人は歩を進め。




「―――また」




轟音、吹き荒ぶ突風。


巻き起こる黒い渦の中、振り返って薄く微笑んだ天音の唇が確かにそう動いた―――ような、気がした。


やがて三人の姿がその中へと完全に溶け込み、そして―――




「……行っちゃったか」



ふっと息をつく間もなく。



「こうしてはいられません!」



メイドの少女が元気に声を弾ませた。



「天音ちゃんのイメージに合うドレスを作らなきゃ! あーもう柊一さんに好みを聞いておくんだったー!」



一人無駄な使命感に燃えるシェーラの火の粉は、他の誰かにまで飛んでくる。



「ユーリエさん、天音ちゃんの代わりにモデルお願いします! 体型近いから絶対いける!」



「え」



続いてルイーズが、んー、と伸びをして。



「わたしたちも帰るか。早速料理長にもっと美味いダイフクを開発させて、今度あやつらに振る舞えるように!」



「畏まりました。料理長に『すぐに逃げろ』と連絡を入れておきます」



「何を言うか! クロード、そなたもわたしと一緒に味見役を務めるのじゃぞ。たまにはそなたも息抜きをするべきじゃ」



「……それが、ルイーズ様のご意志でしたら」



ルイーズの我儘に、クロードが表情を和らげた。



「あの人たちに関わるとトラブルがつきないけどね。たとえ魑魅魍魎が攻めてきてもこの星が粉々に爆発しようとも、僕はソフィアだけを守るし愛し続けるよ」



「しゅ、シュオン……! 恥ずかしいから……っ」



「この星爆発しても生きてるつもりなのかよこいつら」



ジルがじとーっとした目で呆れたように言う。



「まぁ、日常も良いけどたまには刺激も必要ってことで。毒薬みたいにね」



「お前の求める刺激はヤバすぎンだよ!」



「ちょっとヒースー? 起ーきーろー!」



シェーラに揺さぶられ、はっとようやくヒースが我に返った。



「……ま……間違ってねえし全然間違ってねえし!」



わなわなと震え、



「あの野郎、言いたいだけ言って帰りやがって……! 次逢ったら覚えてやがれぇ……っ」



頬を凶悪にひくつかせて天を見上げる。




「ふざっけんな、俺の名前はヒースだっての―――――――ッッ!!」




「ヒース五月蝿い」



何処までも哀れな従僕の叫びが、森の奥に木霊した。

395心愛:2012/12/30(日) 12:23:44 HOST:proxy10058.docomo.ne.jp
>>ピーチ

繋げちゃってくださーいっw
あ、でも無理に詰め込まなくていいからね!


>>彗斗さん

最強対最強?(笑)
いいですねー、イベントのときに更新するのはここあの夢だったり←
でもどうにも忙しくて一度も叶ったことがないという(^-^;



おめでとうヒース! やっぱりオチはお前のものだ!


次っていうかこの関係がずっとずっと続いていくことを願いまして。
…というわけで、
大変お待たせしましたありがとうございました楽しかったです!


ここあ編完結をここに宣言いたしますっ(つд`)

396ピーチ:2012/12/30(日) 16:07:51 HOST:EM114-51-157-47.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

繋げちゃいまーすっw

ナイスここにゃん! 天音のドレスはあたしも考えてたっ!

…ドレスのデザイン、どんなのがいい?←

397心愛:2012/12/30(日) 18:06:37 HOST:proxyag105.docomo.ne.jp
>>ピーチ

……どんな感じがいい?(逆に


雰囲気変えずクールなブラック系で攻めるのもいいけど面白みがないよね…。
イメージ壊さない程度の意外性があった方がいいかなぁ。


作者様のリクエストがあればここあが適当に描写を量産してお手伝いしますよっ(〃▽〃)
わくわく←

398ピーチ:2012/12/30(日) 18:22:37 HOST:EM114-51-44-25.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

聞かれたっ!

うーん……黒と真逆の白とか?

天音的にあんまりふわふわしてない大人しめのドレスみたいな?

わ、我儘だけどできる?

399彗斗:2012/12/30(日) 23:41:43 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>

完結おめでとうございます☆

オチはヒースで締めちゃったのねww やっぱりヒースの物かなぁ……オチの類は全部w

ピーチさん>>

心愛さんの続き、頑張って下さいね☆ 続きの更新も楽しみに待っていますので!

さてさて、これからどうなるか色んな楽しみがあるねww(ヒースのオチとか昇君と柊一君の扱いとかw)

その他にも、お正月の特別書き下ろしストーリーもお楽しみに☆(因みに人数を絞ってますので大体五話ほどストーリーがあります)

400ピーチ:2012/12/31(月) 15:20:15 HOST:EM114-51-4-198.pool.e-mobile.ne.jp
慧斗さん>>

とりあえず駄文ぶちまけてみる←

駄文なので目隠しもしくは目薬のご用意を!

ここにゃん>>

めっちゃ遅れたけど完結おねでとー!!

401心愛:2013/01/01(火) 10:47:34 HOST:proxyag104.docomo.ne.jp

あけましておめでとうございます!
今年もよろしくです(〃▽〃)



>>ピーチ

……オーケイ、白ね白!

マーメイドスタイルでいこうか。
髪はそのまま流してもいいけど、結い上げてアップにしてもいいよね!

裾が床まで届く長いドレスの生地は眩しい純白のシルクサテン。
人魚(マーメイド)の名が示す通り、身につける者のスタイルを十二分に生かす何処か大人びたデザインだ。
銀糸や真珠で繊細な装飾を施してあり、所々に襞(ドレープ)、胸元には透けるシフォンレースを重ねている。

初々しくて清楚な雰囲気を……

……はい気持ち悪いね!(笑)
まあ適当に必要なとこだけ拾ってくださいなw
必要あればもっと書くけど(ぇ




>>彗斗さん

ヒースは使いやすいので!
荒々しいツッコミ締め(そんな名詞はない)ならこいつにお任せあれーw

402ピーチ:2013/01/01(火) 14:12:40 HOST:EM1-114-84-225.pool.e-mobile.ne.jp
明けましておめでとうございます!

今年もどうぞよろしくお願いいたします!

ここにゃん>>

あああありがとうー!!

よし、早速駄文ぶちまけてみる!←

403ピーチ:2013/01/01(火) 14:22:10 HOST:EM1-114-84-225.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




―――安らぎの唄を、今君に。




優しく紡がれた言霊はどこまでも響き、




冥(くら)い空を、照らす光となった。

404ピーチ:2013/01/01(火) 15:12:22 HOST:EM1-114-84-225.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「………?」
 ふっと、銀の髪を二つに束ねた少女が顔を上げた。
 その手にはそこそこに厚い本が載せられ、その約半分のところに、ソフィアが栞を挟む。
「今の声……」
 そう呟いて、窓の外を見る。
 そして、予想通りの顔ぶれが揃っていたことを認めたソフィアが、楽しそうに笑った。
「やっぱり―――天音さんたちだわ」
 そう言って、彼女は庭まで足を運んだ。




 突然の訪問者に、真紅の髪を持ったメイド―――ユーリエが困惑気味に対応していた。
「あ、天音ちゃん!?」
「あ……お久しぶりね、ユーリエさん」
「え? えぇ……っていやそうじゃなくて!」
 なぜ、彼女らが此処に居るのか。
 また、何かしらかの妖を追ってきた?
「違うわよ、今回は私的な用事」
「私的?」
 少女の言葉に、ユーリエが首を捻った。
「えぇ、この前の…………あの馬鹿男に取り憑いてた妖に関する、事後処理みたいなもの」
「はぁ………?」
「まぁ、一応事情は説明したから」
 天音の言葉を遮るように、彼女の傍に居た青年が笑った。
「悪い、すぐ済むからちょっと通してな」
 そう言って軽く跳躍し、昇がユーリエを超えていく。彼の纏っている着物の裾が、ふっと翻った。
 それに倣い、天音たちも苦笑気味に彼に続く。
「あ、ちょ………」
 行ってしまった。
 事後処理だからすぐに済むとは言っていた。だが。
「…ソフィアちゃんかシュオン様に、言った方がよかったのかしら……?」
 彼女は色々な事情からエインズワーズのメイドとして働いている。ある意味、ユーリエの今の主はシュオンやソフィアだ。
「天音さんたち、今来てたでしょう?」
 涼やかな声が、背後から聞こえた。




 静かな森に足を踏み込んだとき、ふと少女が辺りを見回した。
「…………?」
 空気があまりよくない。前の妖のせいもあるのだろうが、それだけではない。
「天音?」
「空気が悪い」
 天音の言葉に、柊一と昇、それから今回たまたま同行していた彼らの友人―――飛湘あおり(ひしょうあおり)がえ、と呟いた。
「あたし、初めて来たからよく分かんないけど……そんなに悪いの?」
「あぁ……かなり、な」
 あおりの言葉に言葉に昇が短く答える。
 そこに、幾つかの足音が聞こえてきた。
「え…………」
「あーっ! やっぱり天音ちゃんだったー!」
 そう叫んだ少女を見て、天音が瞠目した。
「シェーラちゃん……?」
「えへへ、お久しぶりですー」
 シェーラの言葉に、はっとしたように天音が答える。
「え、えぇ……久しぶり、ね」
 つい先ほどユーリエとは会ったが、そう言えばそれ以外の屋敷の人間とはまだ会ってなかったなと今更思う天音である。
 とそこに、ほぼ初対面のあおりが問うてきた。
「天音、この子誰? かわいーね」
「え? あ、この子は……」
 天音の言葉を遮るように、シェーラが大きな青灰色の瞳を輝かせて。
「かっわいーっ!」
「へ?」
 突然のことに思考がついていかないあおりに、シェーラがすかさず飛びかかった。
「…あの世でお元気に」
「こらこらこらぁっ!?」
 縁起でもないこと言うんじゃない! と憤るあおりに、天音が苦笑してみせる。
「気に入られちゃったわね。シェーラちゃんに」
 当のシェーラは、次にそう言った天音を見て言った。
「今日もお仕事ですか?」
「え? あー…仕事っていえば仕事かな……」
 それを聞いたシェーラが、キラキラと眩しいほどの笑顔で、言った。
「じゃあ、その前にこっち来てくださいよー!」
「―――は?」
 こっち、とはどっちだ一体。
 そんな天音の心の叫びも虚しく、メイドの少女にがっしりと腕を掴まれた天音が、そのままずるずると森の外に引っ張り出された。

405ピーチ:2013/01/01(火) 17:49:14 HOST:EM1-114-84-225.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「………シェーラちゃん?」
「はい?」
「……どういった経緯で、此処に来ることになったのかしら?」
 天音の問いに、シェーラがからりと笑う。
「やーだなー、だって今度天音ちゃんが来たら、ぜひとも着てほしいのがあったんですよー!」
「…………………」
 嫌な予感がする。とてつもなく嫌な予感がする。
「あ、三人ともちょーっと待っててくださーい」
 そう言って天音を部屋の一角に引っ張り込んだ。
「…着てほしいのって?」
「あー………」
「多分、『あれ』だよな……」
 二人して若干青くなる昇たちに、あおりが首を捻った。
 ―――数分が経過した頃。
「はーいっ! お待たせしましたーっ!」
「や、ちょ、シェーラちゃ…………!」
 シェーラが、絶対に出たがらない天音の背を押しながら言う。
「―――あま、ね………?」
 深藍の着物を纏っていたはずの天音が、対極とも言える純白のドレスを身に纏っていた。
「やっぱり似合うー! 人魚(マーメイド)をイメージしてみましたー!」
 裾が床まで届くほどの長いドレスの生地は天使を思わせるシルクサテン。
 人魚(マーメイド)の名が示す通り、身に着けた者の美しさを更に生かすどこか大人びたデザインになっている。
 繊細な装飾は銀糸や真珠で施してあり、しかし天音はどこか居心地の悪そうな表情をしている。
「…どうせ、似合わないんだから……」
 一人でぶつぶつ言っている天音を見て、柊一と昇は揃って言葉を失っていた。
「………何よ」
 彼女の頬に僅かに走った朱を隠すためか、ふいとあらぬ方を見やる天音。当然、そんなことに気付くはずもない柊一が、ふわりと笑った。
「似合うと思うよ」
 彼の言葉を受け、天音が目を瞠る。続いて、昇とあおりが言った。
「確かにな」
「似合ってるよー」
「……うるさい」
 口先だけのお世辞ならいらないのに、と呟く天音に、シェーラが言った。
「口先だけなんかじゃありませんよっ! 似合ってますよ!」
「…ありがと……」
 にこにこと笑っている少女の気を暗くさせるわけにはいかないだろう。それは、いくら何でも可哀そうだ。
「あ、そうだっ! 柊一さん、こーいうの好きですか?」
「え?」
 突然話を振られた柊一が、驚いてシェーラを見る。そして、彼女の言葉の意味を悟って。
「あー……いや、それは…」
 言い澱む柊一に、シェーラがきょとんと首を捻った。一方の柊一は、天音の視線の威圧を受けて言葉が出ない。
「ま、まぁとりあえず、ね……」
 苦笑する柊一の視線を追い、やっとのことで彼の真意を図ったシェーラが、小さく苦笑した。
「すいません、ちょっと場が悪かったみたいですね」
「あら、どういう意味かしら?」
 さすがに気分を害したような声音の天音の耳に、またしても聞き慣れた声が聞こえてきた。

406心愛:2013/01/02(水) 17:27:07 HOST:proxy10058.docomo.ne.jp
>>ピーチ

皆さん再びようこそ!


そして天音ちゃん可愛いよ天音ちゃん(=°ω°=)
初々しいカップルだなうらやましいぞちくしょう!

407ピーチ:2013/01/02(水) 17:41:06 HOST:EM114-51-35-42.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

またまたお邪魔しちゃいました!w

初々しいというかいつもの調子のままというかw

昇の想い人登場だーいっ!←

408心愛:2013/01/02(水) 22:22:54 HOST:proxy10044.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ようこそあおりちゃん!

ひらがなの名前っていいよね!
…昇くんとのラブイベント期待(こら

409ピーチ:2013/01/02(水) 23:34:52 HOST:EM114-51-61-171.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

お邪魔してます初めまして飛湘あおりですっ!

いや、何か天音とか昇とか天神さんとかと違って何の力もないんですよあたし

でもまぁ、前に少しだけ発揮してることもあったかも………?

410心愛:2013/01/03(木) 10:25:40 HOST:proxy10028.docomo.ne.jp
>>ピーチ

あおりちゃんいい子そうだよね!
シェーラが気に入っちゃったのも頷ける!

あ、シェーラは基本いくら可愛くても中身がアレだったら懐かないので。動物みたいな嗅覚で瞬時に察知してるので。


力使うときに瞳の色が変わるんだよね(・∀・)?

411ピーチ:2013/01/03(木) 10:39:41 HOST:EM114-51-25-253.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

イエス!←おい

シェーラちゃんまさかの動物並み!?

………うん、鈴扇霊キャラの中で柊一と同様に素直で優しい子だよ。天然はないけどねっ!

412ピーチ:2013/01/03(木) 11:02:57 HOST:EM114-51-25-253.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「やっぱり君たちだったんだね、ユーリエから話を聞いて、まさかと思ったけど」




「……お久しぶりね、ソフィアちゃん、金髪君」
 渋い顔をしたシュオンに見向きもせず、天音が続けた。
「それから黒髪君に茶髪君」
「だっから俺は―――」
 言いかけたヒースが、天音の服装を見てぽかんと口を開ける。彼の視線を追った天音が、何とも居心地悪そうに呟いた。
「―――変態」
「いや何でだよ!?」
 思わず怒鳴ったヒースに、昇がぽんと肩を叩いて言う。
「諦めろ、黒髪」
「うるせぇ! 黒髪に黒髪言われる覚えはねぇよ!」
「あ? 誰が黒髪だって? 黒髪如きが黒髪言うなっ!」
「馬鹿言うな絶対お前らの方が黒髪だ!」
 顔をしかめた天音が、しかし次に笑顔で、とんでもないことを始めた。
「ねぇ、昇?」
「なん…………ですか天音さん」
 瞬時に伸ばした爪を、振り向いた昇の首に素早くあてがる。
「次うるさくなったら、どうなるか分かってるわよねぇ?」
「はい俺が悪うございましたもう二度とうるさく致しません」
 半ば青ざめる昇に、天音が「分かればいいのよ」と呟きながら。
「……黒髪、もう黙ってろ。死にたくなけりゃ黙ってろ」
「だから黒髪言う………分かった。黙っとく」
 天音の恐ろしいまでの視線を受け、昇のみならずヒースまで青くなる。
 それまでの成り行きを見ていたジルが、苦笑しながら言った。
「ま、まァ落ち着けお嬢ちゃん。いっくら何でもマジじゃねェよな?」
「あら、脅しのためだけにこんな面倒なことすると思う?」
「マジかよッ!?」
 笑顔の天音を見て、柊一があらぬ方を見ていた。不審に思ったソフィアが、彼に声をかける。
「……柊一さん?」
「あー…無表情も十分すぎるくらい怖いんだけどねぇ……」
 苦笑しながら、柊一が呟いた。
「…………笑顔の天音も、それに引けを取らないくらい怖いんだ」
「………………………なるほど」
 先ほどからずっと笑顔の天音を、柊一がさっと視線から外す。
 ソフィアも、意味が分かって苦笑していた。

413ピーチ:2013/01/03(木) 11:21:30 HOST:EM114-51-137-117.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「……ねぇ天音」
「何?」
 あおりの呼びかけに笑顔で応じる天音。この笑顔が偽物でないと分かっているあおりは。
「昇とあの黒髪の子って、どっか似てるよね」
「だっから黒髪言うなっ! 俺にはヒース=ユーゼルっつう名前があるって何回言えば……っ!」
 ヒースの言葉に、あおりが一瞬きょとんとし、そしてふわっと笑った。
「そっか。ごめんね、ヒースくん」
「―――…………へ?」
 今、この少女は何と言った。素直に名前で呼ばなかったか。
「…今、なんつった?」
「え? ヒースくんって言ったけど?」
「初めてまともに呼ばれた……っ」
 素直に感動するヒースに、あおりが首を捻る。
「どうしたの?」
「さぁ? 普段私たちが黒髪君としか呼ばないからじゃない?」
「それ酷くない? さすがに」
「いいのよ、黒髪君だもの」
「どういう意味だよっ!?」
 平然と言ってのける天音に、ヒースが激しく突っかかった。
「って、天神さんは? 黒髪って呼んでたの?」
「いや柊は……」
 ……………………。
「何て呼んでたっけ?」
 柊一が彼らを呼ぶことの方が少なかったから、今思えばよく分からない。
「いや、名前で呼ぶことはなかったけど、憶えてはいるよ?」
 思わずと言ったように苦笑した柊一に、天音と昇が目を見開いた。
「すげー! え、男の方も覚えてんの?」
「まぁ無理ないわね。私は基本、どうでもいいことは憶えないから……」
「オレらはどうでもいいのかよッ!?」
 天音の言葉に、ヒースより早くジルが突っ込んだ。
 柊一が苦笑する。
「とりあえず、さ…俺たち、仕事で来てるんだけど……」
「え?」
 ソフィアが驚いたように目を丸くする。
「えぇ。だからこの服も、できれば早く着替え…………」
 言い差して、ふっと天音が黙り込む。そして、シュオンやヒース、ジルを見やり。
「………人生最大の屈辱、ね」
 小さく呟いた言葉が聞こえたせいか、柊一たちが苦く笑う。
「あーまーねー」
「いくら何でもそれは……」
 その傍で、未だに意味が理解できていないあおりが首を捻っていた。

414心愛:2013/01/04(金) 18:11:39 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天音ちゃん可愛いよ天音ちゃんー!

あおりちゃんがいい子すぎるw ヒースよかったね!
柊一くんのこっちメンバーの呼び方はここあもスルーしてたよすみません(・∀・)


シュオンはどうでもいい人には外面笑顔の応対だから、渋い顔するってことは身内に認めたんだね(´ー`)!

415ピーチ:2013/01/04(金) 20:30:45 HOST:EM1-114-144-142.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あっりがとー!

あおりは人の名前で遊べないタイプw
柊一の呼び名は適当に決めちゃっていーですかね?

あ、あれ? そうだったのシュオン様ごめんなさいっ!

あ、それと今書いてる短編の闇色ってやつ読んでみてくれないかなー←

416心愛:2013/01/04(金) 21:27:19 HOST:proxy10045.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いやいやなんでもピーチのお好きなとおり!


いや、シュオンは天音ちゃんたちのこと(ソフィアが喜ぶからという理由も含めつつ)ちゃんと認めてるからね!?
ちなみに本編で、シェーラ相手に猫被ってたときの態度から、普通に接するようになる過程とか、結構苦労してちょっとずつ変えてたんだw
気づいてなくてもそれをサラッと書けてるピーチすごいよ!

417心愛:2013/01/04(金) 21:29:26 HOST:proxy10045.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いやいやなんでもピーチのお好きなとおり!


いや、シュオンは天音ちゃんたちのこと(ソフィアが喜ぶからという理由も含めつつ)ちゃんと認めてるからね!?
ちなみに本編で、シェーラ相手に猫被ってたときの態度から、普通に接するようになる過程とか、結構苦労してちょっとずつ変えてたんだw
気づいてなくてもそれをサラッと書けてるピーチすごいよ!


あ、短編かー(~_~;)
全部は読めないかもだけど、ひとつの話のまとまりくらいにならちょっとお邪魔しようかしらw
なんかこれ読めよ!っていう話があったらお願い(〃▽〃)

418ピーチ:2013/01/04(金) 22:53:10 HOST:EM1-114-144-142.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

いーのあたしの好き勝手でいーの!?

あ、よかった安心w

……ごめんなさい全く気付いてませんでした。

あ、短編はできれば「櫻の相談所」って題名のやつ読んでくれたらとってもありがたい!

…ほんとに、無理に読まなくていいからね!?

419ピーチ:2013/01/04(金) 23:23:13 HOST:EM49-252-44-128.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




 静かな森に再び足を踏み入れ、天音がすっと目を細める。
 闇を秘めたその髪は彼女の歩幅に合わせて小刻みに揺れ。
「……やっぱ、完全には浄化されてないか」
 深藍の着物の裾をはためかせた天音が、小さく息を吐いた。
「………また、何か出てこなきゃいいけど…」
 刹那。
「下がれっ!」
 唐突に叫んだ昇が、ざっと数メートル後方に飛び退った。
 同時に突風が吹き荒れる。
「―――っ!」
「ちょ…何これ、何でいきなりっ!?」
「知らないわよ」
 あおりの言葉にぴしゃりと返し、天音が正面を見据えた。
「…………………誰?」
 人ならざるものだと言うことくらい、もうソフィアたちにも十二分に分かる。
 それを肯定するように、天音の背後に白い何かが伸びてきた。
「――――――っ……!?」
「天音さん!?」
 伸びてきたそれは、白い糸だった。その更に後方に、巨大な蜘蛛の姿が認められる。その蜘蛛の糸が、彼女の手足の自由を完全に封じる。
「な…………っ」
 ―――極上ノ獲物、我ガ物ト
 醜く嗤ったそれは、その糸を天音の首に巻き付ける。
「…………………あ……っ…!?」
「あま…」
「どけ、柊一」
 怒気を孕んだ昇の声が聞こえ、直後に淡い月光をそのまま映し出した大鎌を構え。
「天音を離せ」
 まさに無としか言いようのない表情でそれだけを厳かに告げる。そして。
「あ……」
 勢いよく跳躍し、鎌を大きく振り上げて彼女に巻き付いた糸を無造作に薙ぎ払った。
 しかし、糸は細い割に中々強度があるようで、簡単には切れない。
「くそ………っ」
 力任せに引き裂き、切れた瞬間に重力に逆らえない天音が勢いに乗って倒れる。
 しばらくむせ込んだ天音に、慌てた柊一が駆け寄った。
「大丈夫?」
「何とかね。………私自身は」
 最後に小さく呟かれた言葉に、あおりが首を捻る。どういう意味だ。
「……まずいかもなぁ…」
 苦笑気味に、天音が笑った。そして。
「―――これだけ、霊力吸い上げられたらね……」

420匿名希望:2013/01/05(土) 01:00:45 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
面白い小説ですね。
さて・・ウンコでもするか

421匿名希望:2013/01/05(土) 01:12:47 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
>>1
ピーチさん?女性ですか?
ドクター・ゲロさんが貴方の事好いてるそうです。
一度お付き合いしてみてはいかがでしょうか?

ドクター・ゲロこと20号といいます。
非常に格好いいです。

422匿名希望:2013/01/05(土) 01:34:35 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
>>1さん

20号が貴方の乳首を吸い取りたいと申しております。
これがいわゆる吸収というやつです。

423匿名希望:2013/01/05(土) 01:40:31 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
近々ドクターゲロというジジイのアソコが
貴方のハンバーガー(パイ)を貫く予定で御座います。

パイズリ期待しております。

424匿名希望:2013/01/05(土) 01:41:10 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
私は人の気持ちを理解できる人間であります。

425匿名希望:2013/01/05(土) 10:47:45 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
面白いですね

426匿名希望:2013/01/05(土) 11:02:02 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
ドクター・ゲロが貴方にホレています。
ピーチさん

427匿名希望:2013/01/05(土) 12:13:43 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
「「「

428ムツ:2013/01/05(土) 14:53:51 HOST:softbank220024115211.bbtec.net

 ピーチ&心愛さん》

 どうもぉー! コラボって聞いて読んでみましたぁ〜!

 どんな風なのかなって思って読んだら、両方それぞれの話しを読み込んでて凄いなぁと思いましたぁ〜…

 ハッキリ言ってお二人を尊敬しますね(*^^)v!

 これからも投稿をお待ちしてマース!!

429心愛:2013/01/05(土) 17:39:07 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp
>>ピーチ

昇くんかっけえ(´ー`)


短編、もうちょい後からでもいいかな?
どうせならじっくり読ませてもらいたいので!

テスト前一週間きってるのにまず冬休みの課題がぱっぱらぱーなので(つд`)

あ、今すぐじゃないとってときは言ってね!



>>ムツさん

はじめまして!
そうなんですよー、ピーチはよく読み込んでくれた上にキャラを最大限に生かしてくれちゃうのでもう感謝感謝です(o^_^o)
ここあのお目汚しターンは終了しましたので、ピーチの美麗見事な神文章をどうぞお楽しみにヽ(≧▽≦)/

430ムツ:2013/01/05(土) 17:57:47 HOST:softbank220024115211.bbtec.net

 心愛さん》

 ピーチの神様文には頭も上がらないですよねぇ〜…(イヤハヤ…

 何より、自分の話と他の方の話ををくっ付ける部分が上手い(^-^*)!

 それぞれのキャラの品立てとか上手いとしか言いようがないですよねぇ〜

 ヤッパリあの神的才能憧れます(#^.^#)!

 そして、心愛さんの文を読み易くしてる、あのお心遣いにも一目置きます(´∀`*)!

431ピーチ:2013/01/05(土) 22:45:46 HOST:EM49-252-3-97.pool.e-mobile.ne.jp
ムツ>>

いや、ここにゃんなら分かるけどあたしのを尊敬されたら大惨事なるよ……?

ここにゃん>>

あーいう強引なことは武力頼りの昇ならではw←

読ンデ下サルノデシタライツデモ!(おい

432心愛:2013/01/06(日) 10:57:40 HOST:proxy10006.docomo.ne.jp
>>ピーチ

色んな武器使えるっていいね!
ヒースあたりに弓とか使わせたら力任せにやって大惨事になりそうw


そ、そう…?
申し訳ない(~_~;)
邪気眼少女だけ更新したらまたちょっとお休みします(^-^;

433ピーチ:2013/01/06(日) 19:14:24 HOST:EM114-51-207-43.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

色んな武器使うw

ヒースー! 気ぃ付けろー!←

434心愛:2013/01/07(月) 10:10:17 HOST:proxy10004.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うちの戦い担当は剣バカばかりだということに今気づいたw
クラウスあたりなら無難にこなしそうだけど……うーん。

オールマイティー昇くん!(急に)

435匿名希望:2013/01/07(月) 13:57:09 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
何の話ですか・・?
もう少し分かりやすくお願いします。

ウンコしたくなってきました。

436名無しさん:2013/01/08(火) 14:45:55 HOST:EM114-51-155-248.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

た、確かに!←

クロード殿もあっさりこなしそうじゃない?

ルイーズ王女辺りも力任せにやってくれそうなイメージある←

437ピーチ:2013/01/08(火) 17:00:39 HOST:EM1-114-186-134.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「あれだけ、霊力吸い上げられたらね……」
「………え?」
 今、彼女たちは何と言った。自分たちの耳がおかしくなければ、霊力を吸い上げられたとか何とか。
「……何でもないわよ。とにかく、」
「お前はしばらく隠れてろ」
 突然の昇の言葉に、天音が目を見開く。
「な……っ!?」
「ろくに力も残ってないんだ。自分自身を護れるかどうかさえも怪しいのに」
 これで自分を捨てられたら、こっちが困る。
 自分の考えに思わず苦笑した彼に、天音が渋い顔をする。
「大丈夫だって言ってるじゃ………」
「霊力吸い上げられたくせに無茶言うな」
「…………………っ」
 ぐっと押し黙る少女を横目で流し見、昇が言った。
「柊一。今回天音の代わりな」
「俺ってピンチヒッターみたいなものなんだ?」
 苦笑する柊一に同じように苦笑を返し、次に天音を見る。
「あおり。場所確認してくれないか」
「分かった」
 そう言ってふっと目を閉じ、彼女が全神経を研ぎ澄ます。
 やがて、ゆっくりとその漆黒から藍へと変化した瞳が開かれ。
「………三百メートル前方。結構動きが速い」
 蜘蛛のくせに生意気だ、とあながち見当違いなことを言うあおりに苦笑し、柊一がすっと漆黒の瞳を細めた。

438たっくん:2013/01/09(水) 12:20:06 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
毎日、勉強ばかりで参ります。
学生って辛いですね〜ホント

80点以下赤点ですからね

439たっくん:2013/01/09(水) 12:20:36 HOST:zaq31fa4b53.zaq.ne.jp
>>1
時々、荒らしとかくるんで気をつけて下さい。

ウンコします。

440たっくん:2013/01/12(土) 17:40:54 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
つまらないスレに来てしまったようだ・・・
期待していたのだが・・残念だよ

441たっくん:2013/01/12(土) 17:41:48 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
しょうのないスレなので
ウンコさせてもらいます。

ババスレ御苦労様

442ff:2013/01/15(火) 16:12:32 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
>>1さんの
スレ臭いです。ウンコさせてもらいます。
ババスレにはウンコがつきものですからね

443ff:2013/01/15(火) 16:13:12 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
ウンコスレ最高です!

444ff:2013/01/15(火) 16:14:04 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
矢沢は体臭だけど
ウンコのほうはどうかな?

身体2回洗えよ

445ff:2013/01/15(火) 16:14:47 HOST:zaq31fa5b92.zaq.ne.jp
それにしてもこのサイトは
体臭人の集まりか?

それとも馬鹿の集まりか?

まともなのはいないのか?

446矢沢:2013/01/15(火) 16:28:20 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
たっくん、idと文章の癖でバレバレよ。

447ピーチ:2013/01/20(日) 19:54:17 HOST:EM1-114-13-197.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「あ…………っ」
 思わず叫びかけたシェーラを、ヒースが慌てて止める。
 いつの間にか召喚された月光を映し出す剣を構えた昇が、勢いよくそれを払った。
「危な…」
 天音の腕すれすれのところを剣が動き、それを見たソフィアたちが息を呑む。
 右の手首に巻き付けた漆黒の鈴を持ち直し、柊一が軽く天へと掲げる。
「―――忘れ亡(な)き夜を、天(そら)へと掲げよ」
 流れるような詠唱。強さを感じさせない穏やかな言霊が、彼の振る鈴と共に辺りへと放たれた。
「我、汝を招くもの」
 りんと一鳴りした鈴が涼しげに舞う。それを見て、あおりが小さく呟いた。
「……天音もだけど、やっぱ凄い…」
「確かにな」
 あおりの言葉に賛同し、昇がすっと黒曜の双眸を煌めかせる。
「―――……あいつの邪魔、すんなよ」
 ひゅっと月光を映し出した剣を一振りし、青年が軽く息を吐く。
「天神さん。二十秒後、背後に居ます」
「了解」
 術を執り行っている間でも、彼の耳には人の声もしっかり入る。恐らくこれが、天音と柊一の決定的な違いだろう。
「っと…」
 小さく笑んだ柊一が、ふっと軽く跳躍する。今まで彼が居た場所に、様々な動物の一部を併せ持った妖が飛び込んできた。
 それを見て、柊一が鈴を通した紐を引きちぎる。
「……って天神さん!?」
「大丈夫だよ」
「え?」
 慌てたあおりを、昇が軽くいなす。彼女の瞳が、なぜだと問うていた。
 小さく苦笑した彼は、ついと柊一に視線を投げる。
「天音と一緒。……あいつも、たまにあれをばら撒いて拘束だ結界だと色々使ってる」
「………なるほど、ね…」
 昇の言葉を受け、あおりが妙に納得した表情になった。よくよく考えれば、こうやってばら撒くのだからよびがあって当然だろう。
「さて―――」
 勝ち誇った笑みを浮かべたじゃあと呟いた。
 そして、左腕を前に突き出す。
「―――行け」
「あ…………っ」
 思わず叫びかけたシェーラが、何とかそれを押し留めた。
 青年の腕から飛び出した見たこともない生き物―――恐らく、彼らの言う『妖』だろう―――に、ソフィアたちが半ば青ざめる。
 あおりは表情を変えないが、心配に及ばないであろうはずの天音が、一番血相を変えていた。
「ちょ……、柊!?」
「ごめん、でもあれだけ小さいのが居ても面倒だからさ」
 大丈夫だよ、こいつら言うことはちゃんと聞くし。
 そう言って笑った青年に、天音が怒鳴る。
「そうじゃなくて!」
 思わず叫ぶ天音に、柊一が静かに返した。
「分かってるよ。下手すれば、仲間を呼ぶことになる」
 そう言った直後に、四人がはっと背後を顧みた。
 彼らにつられて同じ方向を向いたシュオンたちも、さすがに息を呑む。
「な、何あれ……っ」
 さも気持ち悪そうに呟くユーリエに、天音が短く返した。
「妖よ。このまま行けば、確実に此処に来る」
「えっ」
 同時に声を上げた女性陣が揃って後退する。
 でも、と天音がふっと笑い。
「このまま野放しにするわけないでしょ……ねぇ、みんな」
 呼ばれた三人が振り返る。彼らに、天音が言った。
「二手に別れましょう、その方が早いはずよ」
 そう言った天音が闇を秘めた髪を翻し、何かを言いかけたとき。
「―――お前一人ってのはぜってぇ駄目だからな」
 うっと言葉に詰まった天音が、進めていた歩を止めた。
「もちろん黒髪たちはこっちで守ればいいけど。俺らはそうもいかねぇだろーが」
「だから黒髪言うなってっ!」
「黒髪君。その目つきいい加減改めないと、戻らなくなるわよ?」
 天音に指摘されたことに対し、ヒースが更に怒号する。
「だっから俺はヒースだって言ってんだろーがっ!」
「まぁとにかく」
 ヒースの叫びを綺麗に黙殺した天音が、ちらとシュオンを見やる。
 それを受け、シュオンが口を開いた。
「どうかした?」
「金髪君、確か毒薬作ってるのよね?」
「毒薬と爆弾なら任せてよ」
 にこやかに答えるシュオンに、天音が僅かに考える素振りを見せ。
「―――今すぐに妖に一瞬で致命傷を与えられる爆弾を作れる?」
「いや、無理だねさすがに」
 とうとう天音までが爆弾に頼るようになったかとヒースが頭を抱える。
「じゃあ毒は?」
「難しいかな、結構時間もかかるし」
 そう、と呟いて、天音が小さく息を吐き出した。

448亜琉火 ◆3nVukVtXzY:2013/01/20(日) 22:51:25 HOST:p49183-ipngn101sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
はじめまして*
亜琉火です><*
えと、おもしろいです!頑張って下さい!
私も小説書きたいです><///
あと、おもしろいですって言ったかw
これからよろしくお願いします…*

449心愛:2013/01/22(火) 20:23:05 HOST:proxyag070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

「なき」を「亡き」にすると一段とカッコよくなるよね(´ー`)

うん、いくらシュオンでもすぐに一から作るのは無理ですよね! 常備してるやつならともかく!
そして天音ちゃん、相変わらずの容赦のなさw

450ピーチ:2013/01/23(水) 20:37:35 HOST:EM1-115-14-104.pool.e-mobile.ne.jp
亜琉火さん>>

はじめましてー! どーもでーすここにゃんの神作品にも是非目を通してみてねー!

書けるよ小説! あたしでさえ書けるから!←

ここにゃん>>

えへ、ちょっとこだわったw←

あ常備してるやつがあるんだ!?

天音は毒舌ですから基本!(おい

451亜琉火 ◆3nVukVtXzY:2013/01/23(水) 21:56:11 HOST:p49183-ipngn101sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
はいぃ!((ピシィw!
アリガトウデス*
これから宜しくです♪それと、
タメ、呼び捨てOKです!マジメは
嫌いです…;;
それでは!応援してます><**
>ピーチs

452ピーチ:2013/01/25(金) 06:24:15 HOST:EM114-51-162-116.pool.e-mobile.ne.jp
亜琉火>>

こっちこそよろしくねーw

あたし全然真面目違うよっ! 紛うことなき不真面目ものだよっ!

453亜琉火 ◆3nVukVtXzY:2013/01/25(金) 16:54:37 HOST:p49183-ipngn101sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
え!ホントですか?w
私は真面目って言われますが
勉強中に手紙を回しているバカですw
さらにダジャレ好きのバカですww
こんな私ですが、
よろしくお願いしますね*;;;

454ピーチ:2013/01/27(日) 14:32:16 HOST:EM49-252-73-193.pool.e-mobile.ne.jp
亜琉火さん>>

ほんとほんとw

真面目ぶってるだけの大馬鹿ーw

ダジャレは興味ないけどー←

455亜琉火 ◆3nVukVtXzY:2013/01/27(日) 20:41:53 HOST:p49183-ipngn101sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
えー!そう見えませんが(ー△ー)

そーですよ*ホントバカですカラ^^

ははっ!友達にダジャレ言ってみたら
「ウザイ」って言われましたぁ♪
もう慣れたです;;
>ピーチ

456ff:2013/02/01(金) 23:57:25 HOST:zaq31fa4cca.zaq.ne.jp
↑ほんとアホだね君
そんなアホな君にいい贈り物があります。

457ff:2013/02/01(金) 23:58:11 HOST:zaq31fa4cca.zaq.ne.jp
>>454
真面目な人ほどアホなんだよ

458ff:2013/02/02(土) 00:00:39 HOST:zaq31fa4cca.zaq.ne.jp
>>1さん

あんたのスレつまらないけど
その反面、なかなか面白いから削除だけは勘弁してあげます

459ピーチ:2013/02/03(日) 11:28:11 HOST:EM1-114-222-30.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「じゃあさ」
 唐突に発された言葉に、一同が柊一を見た。
「天音と俺、昇とあおりちゃんが分かれるのは?」
 柊一の言葉の意味を正確に理解した三人が、揃って顔を見合わせる。
「そうね…じゃあ、私は向こうに回るから。どっちかが私の方に来る?」
「じゃああたしが……」
 言いかけたあおりを遮り、昇が口を開いた。
「いや、俺が天音の方に行く」
「え?」
 思わず問い返すあおりに、昇が苦く笑う。
「柊一にはお前の場所視が必要だろ? 天音は一人で突っ走ると周りを忘れる」
 それこそさっきみたいなことになりかねない、と言った昇の選択は正しいだろう。
「分かったわ。…柊」
「へ?」
 唐突に呼ばれた柊一が呆けた声を上げる。天音が苦笑しながら言った。
「あおりを怪我させることだけはしないでね? もちろん、自分も」
 天音の言葉を受け、柊一がしばし呆然を彼女を見る。そして、やがて笑って。
「分かってる。飛湘だけは無傷でいさせるから」
 そう言った後に、柊一が昇に向かって微笑んだ。
「昇も、天音のこと頼んだよ?」
 柊一の一段低くなったような声音に、昇がさっと青ざめる。
「わ、分ぁってるよそんくらい!」
「だよね、まさか昇が天音に護られるなんてことないよね?」
 ―――自分無傷で天音が傷だらけだったら容赦しないからね?
「ない! 絶対ないからっ!!」
 笑顔の裏に隠された言葉を正確に読み取り、昇が叫んだ。
「い、行くぞ天音!」
 そう言って疾風の如き速さでその場を離れた昇をしばし見送り、あおりが不審げに問うた。
「……天神さん?」
「ん? どうかした?」
 笑顔で応じる柊一に苦笑しながら、あおりが問う。
「…昇に、何か言ったんですか?」
「まさか」
 言ってはいない。それは間違いない。ただ単に無言の圧力をかけただけで。
 音になっていない彼の黒い感情を僅かに察知したあおりが、無意識に己が身を震わせた。

460心愛:2013/02/03(日) 16:27:24 HOST:proxy10057.docomo.ne.jp
>>ピーチ

久しぶりの更新ーヽ(≧▽≦)/


ああ、昇くんはやっぱりこういうポジションなのね!

柊一くんはやっぱり真の最強なんじゃないかと思うここあですw
あれ、おかしいな……一瞬彼の中にシュオンブラックバージョンの影が見えた気が(^-^;

461ピーチ:2013/02/03(日) 17:23:46 HOST:EM49-252-157-193.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

久々の更新でございますー!←

そうなの! 昇はどうあってもこのポジションなの!

天音のことになったら性格真っ黒になっちゃう柊一君ですw

下手すればシュオン様よか酷い腹黒さ←

462心愛:2013/02/03(日) 17:40:11 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
>>ピーチ

おっと、それは聞き捨てならないなぁ。
シュオンの腹黒は王国一だぜ?(張り合うな


でも、こういう優しげ(シュオンも猫被ってるときは)キャラが実は腹黒っていいよね!
しかも好きな女の子のことになると……ってやつ!
天音ちゃん愛されてるなー(*´д`*)

463ピーチ:2013/02/03(日) 17:47:38 HOST:EM49-252-157-193.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




 しばらく気配のする方に足を運んでいた二人が、足を止めた。
「…ここた辺、かしらね」
「え? あ、あぁそーかもなっ」
 ―――自分無傷で天音が傷だらけだったら容赦しないからね?
「ぜっったい悪意だろ、お前…」
 思わず、今ここには居ない青年に対して愚痴る昇である。
「―――……」
 りんと一鳴りした紅い鈴の音が、辺りに木霊した。
「……っ、昇!」
「避けろ!!」
 唐突に発された言葉に、天音が後ろを顧みる。そこに、漆黒の闇を纏った影が迫っていた。
「わ……っ」
 思わず飛び退る。今まで天音が居た個所に、影と淡い銀の剣が躍りかかった。
「…さすがね……」
 思わず呟いた彼女に、昇がぶっきらぼうに言い放つ。
「俺のできることっつったら、こんぐれぇだろうが」
 あとは、神を呼び出す際の依り代程度か。
「お前らが出来るようなことが出来ないんだ。せめてこれくらい、自分のものにしたっていいだろ?」
 そういってにっと笑った青年に、天音が小さく笑い返した。
「…かもね……」

464ピーチ:2013/02/03(日) 17:53:08 HOST:EM49-252-157-193.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

そ、そんなに酷いのか……←

普段は温厚で優しいけどねっ!

ごくごくたまーに腹黒柊一が登場しちゃいますw

いやでも基本的に男女で分かれると女子優先するよ二人とも!←

あおりも愛されてるぞー、一応!

465心愛:2013/02/03(日) 21:17:28 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp
>>ピーチ

役割分担w
バランスがいいパーティだね(^-^)人(^-^)


微ブラックもまたよし!
そうだよね、あおりちゃんも愛されてるよね!

466亜琉火 ◆3nVukVtXzY:2013/02/04(月) 21:16:32 HOST:p49183-ipngn101sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp
やっぱり面白いですなぁ〜*
さすがでス**
ピーチ
お?はじめまして♪よろしくお願いします♪
心愛

467ピーチ:2013/02/09(土) 10:01:34 HOST:EM114-51-170-28.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




 突如現れた妖を前に、昇が月光の剣(つるぎ)の切っ先を向けた。
 天音は、現状況では彼の補佐という役割が大きいだろう。
 ―――ソノ娘、寄越セ
 厳かに告げられたその言葉に、昇は皮肉気に片側だけ口端を吊り上げ。
「やなこった」
 挑発気味に言い放った。
「こいつは俺らの仲間なんだ。……今は、客だけどな」
 最後尾の言葉が掠れ、天音には聞こえない。尤も、聞こえていたら否応(いやおう)なく彼女が前に出ていただろうが。
 ―――ナラバ
 彼の挑発を真に受けてしまったそれが、音もなく飛びかかった。
 ―――貴様ラヲ、排除スルノミ。
 刹那。
「え?」
 唐突に囲(かこ)われた自分の周りを見て、昇が目を瞠った。
「その方が、やりやすいんじゃない?」
 不敵に笑った少女が、闇を秘めた漆黒の髪を揺らす。
 しばらく呆然としていた昇が、やがてにっと笑い。
「あぁ」
 そう言った彼の月光を秘めた剣が、それの目前へと迫った。




「天神さん?」
 唐突に呼ばれた柊一は、はっと我に返った。
「え? あ、何?」
「やっぱり気になります?」
 苦笑するあおりの言葉に、柊一が言葉に詰まる。
「うーん……どうだろうね、二人とも無事だとは思うけど」
 何しろ、昇には無言の圧力―――悪く言えば脅しだが―――をかけておいたのだ。天音が怪我をすることは、可能性的には低い。
「ま、大丈夫じゃないかな」
 そう言って薄く笑った柊一に、あおりも笑みを返した。
「そうですね」
「……でもさ」
 不意に思ったことを、柊一が何気なく呟いた。
「あおりちゃんは、心配じゃないの?」
 ぴくん。
 彼の言葉を聞いたあおりの肩が、僅かに震え出す。それを受け、柊一があ、と呟いた。
「え、えーと……やっぱり、心配?」
「あったりまえですよっ!!」
 突然怒鳴られた柊一の足が、無意識に後ろに下がった。
「二人とも強いんです。それに関しては心配なんかしてません。でも天音ときたら、自分の力の強さ自覚せずに一人で突っ走って結局周り巻き込んで! あたしだけじゃなく昇まで危険な目に遭ったら…」
 勢いよくまくし立てたあおりが、しかし別の気配を察して黙り込んだ。彼女の黒曜の瞳が、藍へと変わっていく。
「……天神さん」
「何匹くらい、居る?」
 彼も察したのだろう、あおりが言うより早く、柊一が問うた。
「かなり居ます。……本当にここ、あたしたちが来る前平和だったんですか?」
 かなり失礼な質問である。傍に居たシュオンたちに聞こえていなかったからよかったようなものの、もし聞こえていたら。
「あ、あーうん。…たぶん」
 思わずそう答えてしまう柊一である。
 しかしその後、とにかく、と呟いて。
「あおりちゃん、下がってて」
「え?」
 問い返したあおりに、薄い笑みを返した柊一が言った。
「そいつら、一掃してくるから」
 冷笑を一つ零した青年が、漆黒の鈴を右手にかけた。

468心愛:2013/02/09(土) 18:02:43 HOST:proxyag087.docomo.ne.jp
>>ピーチ

瞳の色が変わるっていいよね!(しつけぇよ


平和、だったのかなぁ…?
なんか妖さんが頻繁にいらっしゃったり日常的にシュオンが爆発起こしたりジルがユーリエに殺されかけたりしてるけど、ほんとに平和、なのかなぁ…?

469ピーチ:2013/02/14(木) 05:34:44 HOST:EM114-51-138-2.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

わーごめんなさいーっ!!

妖除きさえすれば平和だよ!

微笑ましいんだよ!←

470心愛:2013/02/14(木) 18:25:01 HOST:proxyag104.docomo.ne.jp
>>ピーチ

大丈夫、少なくともシュオンは刺激を求めてるから!

妖が頻繁に出没する世界だって、死にはしなければ面白いものじゃないw

ここあも日本が舞台のファンタジーを書いてみたいものだ←
そういう短編もやってみたいんだけど、紫の歌のリクとか(忘れてないよ!)オスヴァルトの話とかもたまってるからなぁ。
夢で終わりそうな予感(~_~;)

471ピーチ:2013/02/20(水) 05:55:17 HOST:EM1-114-47-35.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

大丈夫? よかった……!

だよね面白いよね! あたしも一回でいいから会ってみたいw

あたしは別世界を舞台にしたファンタジーも書いてみたいなー←

472心愛:2013/02/20(水) 22:57:51 HOST:proxyag068.docomo.ne.jp
>>ピーチ

もう書いてるじゃん! 紫の歌で!(笑)

ここあは一番異世界ファンタジーが書くの楽らしいw
妄想癖があるからだな、うん。


百鬼夜行←
可愛いやつなら会ってみたい! そしてペットにしたい((こら

473ピーチ:2013/03/02(土) 10:49:02 HOST:EM49-252-90-230.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

確かに! でも駄文w

あたしもかなり酷いよ、妄想癖w

分かる! 分かるよあたしもペットにしたいもん!

だって餌をやる必要がないから!←おい

474ピーチ:2013/03/02(土) 10:51:34 HOST:EM49-252-90-230.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

確かに! でも駄文w

あたしもかなり酷いよ、妄想癖w

分かる! 分かるよあたしもペットにしたいもん!

だって餌をやる必要がないから!←おい

475心愛:2013/03/02(土) 19:08:45 HOST:proxy10030.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いやいやいや!
本編を超えた名作だよ!

エサいらないのはいいねw
そのぶん首輪とかすり抜けちゃいそうですが←



告知ー!
10日あたり、紫の歌本編スレでちょこっと動きがあるかも?
よかったら気をつけてやっててくださいなw

476ピーチ:2013/03/02(土) 21:38:45 HOST:EM49-252-124-211.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

本編超えてない!

あんなんで本編超えられたら怖いよ!←

特にここにゃんの神作品を読んだ後だから特に………っ!

477心愛:2013/03/03(日) 18:34:17 HOST:proxy10053.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ほんとだよー!
本編を優に超えた素晴らしさだよ!


や、ここあのはただの駄作だからね?

478ピーチ:2013/03/03(日) 18:42:55 HOST:EM114-51-64-43.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「夢現(ゆめうつつ)、結(ゆ)いし赤玉、白貫(しらぬき)の座を冠する者」
 静かな流れるような詠唱が、優しい言霊が放たれる。
 それまで黙っていたソフィアたちが、驚いたように目を瞬かせた。
「柊一さんも、天音さんと同じようなことが出来たのね……」
「まぁ、どっちかって言えば天神さんの方が始めたのは早かったわね」
 あおりの言葉に、シェーラがえ、と零した。
 それを受け、あおりが苦笑気味に答える。
「そりゃそうでしょ? 天神さんの方が先に生まれてるんだから」
「………あの」
「ん?」
 突然呼ばれ、あおりが首を傾けた。
「…天音さんたちって、何歳なんですか?」
「へ?」
 聞いてなかったの? と問い返したあおりに、シュオンが口を挟んだ。
「聞いてないっていうか、聞く暇がなかったいって言った方が正しいかな」
「………あぁ…」
 あいつ、また自分のことだけやってさっさと帰ったんだな、という彼女の胸の内は、誰も知らない。
 苦笑気味に、彼女が言った。
「天音とあたしが二十歳で、天神さんと昇がその一つ上」
「二十歳?」
 確かに大人びてるけど、本当に大人だったんだー。
 そんなシェーラの呟きを拾ったあおりが、苦く笑った。
「見た目だけよ? 天音も昇も、あたしも」




 ざん―――。
 一瞬の閃光が走り、銀の剣についた血を払った昇がふぅと息を吐いた。
「大体、これで全部だろ」
「……そう、かしらね…」
「え?」
 問い返した青年に、天音が不安げに言った。
「まだ、残ってるような気がするの。…それとも、私の気違いかしら」
 少女の言葉に、昇が腕を組んで辺りを見回す。
 だが、これと言って不審な気配はしない。
「お前にしては珍しく、変なところで五感が働いたんじゃねぇの?」
 そう言った青年が身を翻しかけた、刹那。
「―――え……?」
 天音の声に振り返った昇が、思わず目を瞠った。
 ―――ソノ霊力、我ガタメニ
 そう言ってにぃと嗤った『蛇』が、彼女に迫る。
「っ………!」
 咄嗟に扇を構えたが既に遅く、天音の腕に紅い筋が走る。
 刹那。
 蛇の形を保っていたものが音を立てて崩れ、原型を留めない『それ』に成り代わった。
「え…」
 呟き、茫然と空を見上げた少女の眼前に、『それ』が躍りかかった。

479心愛:2013/03/04(月) 15:40:05 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ

久々の更新きたぜー!


そうだよね皆さん二十歳超えてるもんね!
うちのバカが年上相手に好き放題しててすみません…。
敬意ってものを知らないのよ…。


天音ちゃんたち、いつもピンチに陥ってる気がするよ!
がんばれー!

480ピーチ:2013/03/05(火) 05:11:53 HOST:EM49-252-6-237.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

久々の更新だぜー!←

だいじょーぶ! 四人とも同い年として扱ってるから!

敬意を知らないのはこっちも同じだよ!

そーなの天音達はピンチに陥らないと話が進まないの!

481ピーチ:2013/03/05(火) 05:33:56 HOST:EM49-252-6-237.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「え…」
 茫然と呟いた彼女の瞳が、音を立てて凍り付いた。
「し………」
 ―――力、寄越セ…
 そう言った『それ』が、天音に向かって襲い掛かる。
「―――凛然(りんぜん)たるは、紅き眼(まなこ)」
 突然、鈴を転がしたような声が響いた。
 ―――ナニ……!?
「憎き骸(むくろ)を血に染めて」
 僅かに赤みがかった薄い膜が、青年を包み込む。
「―――我先に、彼(ひ)へと行(ゆ)く」
 りん―――
 左手で扇を払い、右の手首に巻き付けた紅い鈴を微かに鳴らす。
 その瞳に、今までなかった色が浮かび上がっていた。
「昇…………っ!」
 宿主の意を受けたかのように、薄い膜が音もなく消え去った。




「……?」
 唐突に、あおりが首を巡らせた。
「…? どうかしました?」
 シェーラの問いに、あおりが苦笑を返す。
「ううん、ちょっと…」
 刹那。
「あおりちゃん!」
「え?」
 慌てたような柊一の声が、耳朶を打った。
「昇か天音に、何かあったかもしれない」
「………え?」
 何か、とは。
「…まだ、分からない。から、行ってみよう?」
 促した柊一の後に続くように、あおりが走りかける。だが、不意に止まって。
「貴方たちも来て?」
「え?」
 突然言われたシュオンたちが思わずと言ったように問い返した。
「あたしたちの手の届かない場所に居られたらまもることさえできないでしょう?」
 早口にそれだけ告げると、あとは任せるというかのように駆け出した。

482心愛:2013/03/05(火) 16:55:55 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp
>>ピーチ

すみませんほんとうちの子敬意払わない上に足手まといで!

ファンタジーのくせに特殊能力持ってるのソフィアしかいないし不安定だし(つд`)
魔法使えるミレーユなら加勢できるのかな…?


護衛よろしくねあおりちゃん…!

483たっくん:2013/03/07(木) 15:01:46 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
そういえばさっき言い忘れたが・・俺の銀行の口座に
100円振り込め
いつも世話になってるんだからそれくらい当然だろう。

それと夕ご飯おごってくれるって話どうなったの?
待ってるんだけど・・ではまた後日

484たっくん:2013/03/07(木) 15:04:10 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
ちゃんと俺に金を恵めよお前
でないと面倒見てやらないからな

それと以前話してた1991年のカードダス20
お前らが買うんじゃなくて俺に買ってくれよちゃんと
そのくらいしろよクソスレ名人

485たっくん:2013/03/07(木) 15:04:58 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
カードダス買ってくれよ
1988年〜1991年のな

新作はいらないからな
ちゃんと覚えとけよ俺の言う事

486ナコード:2013/03/07(木) 18:01:17 HOST:i118-17-185-78.s41.a018.ap.plala.or.jp
>>483 >>484 >>485
貴方の言動はこのスレ内に有るまじき物ですよ?
言葉の意味分かりますか?
何なら国語辞典片手に考えてみて下さい。
『迷惑』の意味を。

487ピーチ:2013/03/12(火) 15:31:20 HOST:EM1-114-198-155.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

大丈夫だよ全然問題ないよ!

あおりは場所視以外では特別な力持たないからなぁ…

まぁ、ソフィア様たちを護るためなら何とかなるさ!←

488ピーチ:2013/03/12(火) 16:12:25 HOST:EM1-114-198-155.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「……二人とも、大丈夫かな…」
「多分、どちらか一方はやられてる」
 あっさりと返す柊一の言葉に、あおりが目を伏せた。
「ですよね…」
「でも、急げば何とかなることも、あるかもしれない」
 自分の勝手な、ともすれば希望よりも儚い思い。
 それがあるから、迅速に動くことが出来た。
「それに……」
 柊一が、死ぬほどの致命傷を負ったとも限らない、と言おうとした直後。
「――――――…っ……!?」
 唐突に、柊一とあおりの足が止まった。
「…? どうしたんですか?」
「……まずい、かも…」
 困ったように苦笑して、言いたくなさそうに声を吐き出した。
「………やられた方、分かった」




「昇………っ!?」
 今の妖は、確か。
「―――あ…」
 人の命(み)を喰らうと言われている、蛇道(じゃどう)。
 だが、なぜそんな凶悪なものがここに。
 一瞬考えたが、今はそんなことを考えている暇はない。
 回復を促す言祝(ことほ)ぎが、あったはずなのに。
「―――君が為にと、言わずして……」
 少女の口から放たれた言霊が、辺りに木霊した、その時。
「天音、昇!」
 突如として聞こえた声に、天音が目を瞠る。
「……え………?」
「天音、大丈夫!?」
 あおりの問いに対し、天音は首を振る。
「私は大丈夫なの。でも、昇が……」
 天音の言葉に、少女が目を瞠る。柊一が額に手を置いた。
「やっぱり昇だったか……」
 僅かに遅れてきたソフィアたちも目を瞠った。
「昇さん……?」
 シェーラの呟きを拾ったあおりが、微動だにしない青年に近寄った。

489心愛:2013/03/12(火) 18:46:38 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp
>>ピーチ

昇くーん!
致命傷じゃないよね、ねっ?

あとやっぱり真っ先に駆けつけるのはあおりちゃんですよね分かります!

490ピーチ:2013/03/13(水) 05:07:00 HOST:EM114-51-28-190.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

昇は大丈夫! しぶとさも取り柄の一つだから!←

やっぱりって感じだよね! あおりにはこれからもーちょい頑張ってもらいますw

491ピーチ:2013/03/13(水) 05:47:04 HOST:EM114-51-28-190.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「昇………?」
 あおりの呟きに、返ってくる声はない。
「どうしたの? いつもなら答えるでしょ?」
 何だよ、と。ぶっきらぼうで、でもどことなく優しい口調で。
「返事くらい、しなさいよ…………っ!」
 少女の瞳から大粒の滴が零れた。それに構わず、あおりが昇を揺する。
 半ば叫びながら呼べば、彼はうるさそうに耳を塞ぐのに。うるさいと言って、本当に迷惑そうに。
「昇…、」
 刹那。
「眠れ―――目覚めんとする厄鬼(やっき)」
 穏やかさを思わせる声が、耳朶を打った。
 はっと顔を上げると、柊一の苦笑気味の表情が映る。
「そんな顔しないでよ、俺が昇に怒られるから」
 青年の言葉に、あおりがえ、と呟いた。
「でも……」
「大丈夫だよ。どんな手段使ってでも叩き起こす」
 場を明るくさせようと、あえて彼がそんなことを言っていることは分かる。だが、どうやって。
「問題ないわよ。柊なら」
 力なく発された言葉に、あおりが天音を見た。酷く痛々しげで、己を蔑んでいるかのような。
 しかし、やがて扇を手に、天音がソフィアたちの傍へと駆け寄った。
「……あの類の妖はね、群れで行動することが多いの。…一匹だけ紛れ込んだような、馬鹿げた妖じゃなければ」
 天音の予測が正しかったのだろう。
 しばらくしても別の妖気が感じられることはなかった。
「あの…天音さん」
「何?」
 いつもと、なんら変わらない表情。穏やかで、でもシュオンやヒースには意地悪く。
「昇さん、大丈夫ですよね?」
 シェーラの言葉に、天音が軽く目を瞠った。しばらく考え込むような素振りを見せ。
「―――大丈夫、かな…。私が言えたことでもないけど」
 自嘲気味に、天音が笑った瞬間―――。
「昇っ!」
 唐突に、あおりの声が聞こえた。それを聞いたソフィアたちが、何事かと前を向く。
「……あおり…?」
 彼女を見つけた青年が、億劫そうに身を起こしている。
「……あ」
「無事…だったみたいね」
 ほっと安堵したように呟かれた言葉にシェーラたちも知らずの内に頬が緩んだ。
 これで、無事すべてが終了―――と思ったのだが。
 そうは問屋が降ろさなかった、らしい。
「ばかぁっ!!」
 唐突に響き渡った、甲高い声。
 昇のみならず、回りまでもが一斉に耳を塞ぐほどの金切り声だ。
「昇のばか……っ! 本当に、死んだかと思ったんだから…っ」
 そう言ったあおりが、彼にしがみついた。
 突然のことに事態が呑み込めていない昇も、これには驚いたようだ。
「え? ちょ、あおり……?」
「勝手に死ぬなんて、絶対許さないから」
 軽く睨んで威嚇したつもりが、涙のせいで台無しになっている。
 それを見た柊一が、苦笑しながら言った。
「まぁ、昇も帰ってきたし、とりあえずこれを何とかしよう?」
 柊一の言葉に、一同が彼の指す方を見る。
 大きな残骸となって残っていた蛇道の姿が目に入った。

492彗斗:2013/03/13(水) 16:10:03 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
ピーチさん>>
お久しぶりです☆ 受験から返ってきた彗斗です!

ほぼ一か月ぶりに読ませてもらいました……何故か凄くあおりちゃんの気持ちか分るのは何故だろうか……

まぁ、それはそれとして……私の作品の復帰作一発目にアクアさんを起用させていただきました☆

なんかもう間違ってる気しか起こらないので添削宜しくお願いします!!

493心愛:2013/03/13(水) 23:03:26 HOST:proxy10042.docomo.ne.jp
>>ピーチ

どこかで聞いたような評価!



よかったね昇くん…!
コラボで死んだら死んでも死にきれないよね…!

女の子にあんまり心配させちゃだめだぞっ?

494名無しさん:2013/03/15(金) 05:41:56 HOST:EM49-252-224-96.pool.e-mobile.ne.jp
慧斗さん>>

久しぶりー!

あおりの気持ちかー…あたし分からないながらに書いてた←おい

アクアさん起用してくれてありがとう! 何かもう良すぎて言うことなっし、みたいな感じだったよ!

ここにゃん>>

だよねどっかで聞いたよね!←

とりあえず死の淵から這い上がってきた根性男ですw

女の子を心配させちゃうの! ピーチキャラはなぜか!←

495心愛:2013/03/16(土) 10:59:50 HOST:proxy10067.docomo.ne.jp
>>ピーチ

罪な奴らだぜ男性陣…w

でもやるときにはキメてくれるよね(*^-^)ノ
昇くん然り柊一くん然り。

496ピーチ:2013/03/16(土) 20:59:43 HOST:EM114-51-179-122.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

こんなキャラがいーなーとか思って作ったら自然とこんなのが出来上がってたw

やる時だけね! あとはちょこちょこ天音に怯えてるだけね!←

497ピーチ:2013/03/16(土) 22:05:04 HOST:EM114-51-179-122.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「…これ、は……」
 珍しく困惑するようなそぶりを見せた天音が、小さく唸る。
「あっちに持って行ったら、今度こそ面倒になるわね……」
「じゃあ、どうする?」
「何か、話が見えねぇけど…」
 天音と柊一の言葉に、昇が渋面を作る。
 彼を見て、天音が気まずそうに視線を泳がせる。
「? ………天音?」
「……ごめんなさい」
 突然の言葉に、昇が目を瞠った。
「へ? え、天音?」
 彼女が謝る理由が分からない。
 しばらく悩んでいた昇に、柊一が大まかに説明をした。
 曰く。
 昇から見てどこか様子がおかしかったらしい天音の目の前に、蛇道が襲い掛かってきた。
 それを見た昇が、条件反射で飛び出したために天音は無傷だった。
 柊一の仮定と昇の言葉を組み合わせたらこうなった。
「嘘だろおい……」
 思わず呟いた昇である。条件反射だか何だか知らないが、まさか本気で自分が天音を守ったとは。
「いや、守ったとまでは言えないか……」
 いささか疲れたように肩を落とした青年に、柊一が穏やかに笑った。
「昇、ありがとう。天音を守ってくれて」
「え?」
「でもさ」
 表情を強張らせ、柔和な面立ちの青年が苦笑する。
「………飛湘を泣かせろとは、言ってないよ?」
「う……っ」
 柊一と昇が互いに苦笑している傍で、天音だけが浮かない顔をしていた。
「天音? おーい、あーまーねー?」
 あおりの声ではっと我に返ったらしい天音が、再び沈鬱な表情になる。
「天音ー? 昇のことだったら気にしなくていいよー?」
「―――は?」
 ちょっと待ていくら何でもそれはあおりが決めていいことなのか。
「だって昇ほどタフな人も珍しいし。ちょっとやそっとのことじゃ問題ないよ、死にさえしなければ」
 からりと笑ったあおりのその性格は、恐らく昇から学んだものだろう。いや、学んでいいと言えるものでもないが。
「それに、あんまり後悔ばっかしてると昇に嫌われるよ?」
「……そう、ね…」
 苦く笑った天音に、あおりが笑みを浮かべる。
「…そういえば」
 唐突に聞こえたシェーラの声に、天音たちが彼女の方を向いた。
 小鹿色(フォーン)の髪を揺らした少女があおりに言う。
「あおりちゃんって可愛い名前ですよねー」
 天音ちゃんも可愛いけどあおりちゃんも可愛いー
 そんなシェーラの言葉に、あおりが苦笑した。

498たっくん:2013/03/18(月) 12:25:04 HOST:zaq31fa59a5.zaq.ne.jp
>>1
とっとと俺に金よこして消えな

オークションでドラゴンボールの当時物(レトロもの)買うんだよ
早く100円出せよカス

クソスレ立ててる暇があったら
俺にカードダス20の一枚でもおごってくれ
頼んだぞ

499心愛:2013/03/18(月) 17:24:35 HOST:proxyag096.docomo.ne.jp
>>ピーチ

空気読めないシェーラだねw

うん、天音ちゃんもあおりちゃんも可愛いよ! 響きが素敵!

500ピーチ:2013/03/19(火) 05:34:24 HOST:EM114-51-37-149.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ごめんねシェーラちゃん何か天然らしきところがありそうで!←

天音は普通に考え付いたけどあおりは面白いエピソード(?)があるよ!

501矢沢:2013/03/19(火) 13:55:10 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>498
加虐者たっくん。
僕は被虐者矢沢です。
君は、死ぬ。病気で。ざまみろ。

502矢沢:2013/03/19(火) 13:58:38 HOST:ntfkok217066.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
ピーチのおしり

503たっくん:2013/03/19(火) 14:34:49 HOST:zaq31fa59a5.zaq.ne.jp
早く白人女性のヌード写真買ってくれ
金出せ金
とっととよこせクソガキ

大人をなめるなよ

504たっくん:2013/03/19(火) 14:35:39 HOST:zaq31fa59a5.zaq.ne.jp
>>1
クソガキにゃ白人女性の魅力なんて分からなねぇーよ
お前らはその辺の小娘で充分

505心愛:2013/03/19(火) 20:23:06 HOST:proxy10051.docomo.ne.jp
>>ピーチ

大丈夫、シェーラは天然だよ! ばっちりだよ!


ほう、あおりちゃんとな?←

506ピーチ:2013/03/19(火) 22:01:08 HOST:EM114-51-160-122.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

よ、良かった……!

そだよー! これから昇の悪事(?)をばらしていくよー!←

507心愛:2013/03/20(水) 10:15:14 HOST:proxy10056.docomo.ne.jp
>>ピーチ

悪事…
女の子に向かってそれはないかもだよねw
あおりんごー(*^-^)ノ

508ピーチ:2013/03/20(水) 19:28:51 HOST:EM1-114-57-214.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

あ、昇だけじゃなかった、柊一もだった。

女の子にむかってそれはないよねw

ちなみにその後、なぜか昇だけが容赦なく殴られたっていう更に酷い裏話があったり←

あおりんごーw

509ピーチ:2013/03/20(水) 20:14:12 HOST:EM1-114-57-214.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「ありがとう、シェーラちゃん多分、『あの』言葉よりも先に可愛いって言われたの、初めてだわ」
 苦笑気味に笑ったあおりの言葉に、少女が首を捻った。
「何でですか? 可愛いのに」
 シェーラの言葉を聞いた天音の肩が、傍で小さく震え出す。柊一と昇は、どこか気まずそうな表情であらぬ方を見ていた。
「? 昇さん、柊一さん?」
 呼ばれた二人が苦く笑いながら顔を見合わせる。
 それを見たあおりの瞳に、ほんの一瞬殺気が満ちた。
「教えてあげましょうか? あたしの名前を聞いた昇が、最初に何て言ったか」
「え?」
 傍で黙って聞いていたソフィアたちも、興味を持ったらしく無言で集まってくる。
 それを見て苦笑したあおりが、辺に晴れやかな笑みを浮かべた。
『―――あおり? 何かあおりんごみてぇだなー』
「……って、言ったの」
 ねぇ? と笑顔で確認するあおりに、昇が降参と言うかのように片手を上げた。
「だから悪かったって! それに、俺だけじゃねぇだろ?」
「あ、そうだったね。ね、天神さん?」
 少女の問いに対し、是を唱えるかのように青年が苦く笑う。
「と、ところで天音! これどーする?」
 話題を切り替えた昇が、天音に言った。それを受けた天音が再び思案に暮れる。
「……先に私が戻って、私が着いた頃に柊たちが送る…としか、方法なんて浮かばないわよ?」
「あ、じゃあそうする?」
「え?」
 あまりにもあっさりとした返答に、思わず天音とあおりが問い返す。柊一が笑った。
「でも、天音が先に戻るんじゃなくて、俺たちが先に戻る。それでいいだろ?」
 もうしばらく残っててほしそうだしね、と言う彼の言葉に、天音がソフィアたちを振り返る。
 そしてしばらく考えた後、やがて諦めたように息を吐いた。
「じゃあ、そっちは頼むわ。気配は一瞬で消せるはずだから」
「うん」
 答えた柊一が小さく何かを唱える。瞬間、漆黒の突風が巻き起こった。
「じゃあ、俺たちはこれで」
 穏やかに笑った柊一が、シュオンにそう告げた。それとほぼ同時に、昇が片手を上げる。
「ヒー……じゃなくて黒髪も、」
「俺の名前はヒース=ユーゼルだっつってんだろーがっ! 何回言えば……っ」
「あーはいはい分かった分かった」
 まるで子供のけんかである。
 軽く嘆息した柊一と昇の姿は、今度こそ見えなくなった。

510心愛:2013/03/20(水) 23:18:35 HOST:proxyag095.docomo.ne.jp
>>ピーチ


殴ったのか! あおりちゃん容赦ねえ!

そして柊一くんもという…←


でもあおりんご可愛いよー?

511ピーチ:2013/03/23(土) 09:56:27 HOST:EM1-114-3-215.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

殴っちゃったの! あおりはある時は情け容赦の欠片もないから!←

柊一はどっちかって言うと口でさんざん怒られたって感じかな

あおりんご…本人はなぜか嫌ってる呼び名ですw

512心愛:2013/03/23(土) 18:52:30 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いいじゃん可愛いじゃんあおりんごー!

容赦ないんだね…あおりちゃんもやっぱり、天音ちゃんのお友達だよね(どういう意味だ

513ピーチ:2013/03/23(土) 22:00:06 HOST:EM49-252-247-164.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

お久しぶりです飛湘です!

……心愛さん、あたし小学校の時に男子にそれ言われて条件反射で殴りまくっちゃったんですよ?

そんな忌まわしいあだ名はできれば封印したいんです!←

514心愛:2013/03/24(日) 00:01:40 HOST:proxy10056.docomo.ne.jp
>>ピーチ

お久しぶりですあおりちゃん!

あおりちゃんある意味天音ちゃんより豪快じゃないかい!?

大丈夫だよ可愛いよ!

515ピーチ:2013/03/24(日) 00:17:54 HOST:EM49-252-247-164.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ある時ある意味天音以上に強いあおりですw

可愛いかなー…自分で言うのもなんだけど←

516ピーチ:2013/03/24(日) 13:24:12 HOST:EM114-51-148-79.pool.e-mobile.ne.jp
紫と紅と黒




「わ……っ」
 着地の際に均衡を崩した柊一が、反射的に腕を前に出した。
 それを見た昇が意外そうに目を見開く。
「珍しいな、寝不足か?」
 茶化すような口調の青年に苦笑を返し、柊一が黒曜の瞳をすっと細めた。
「―――始めるよ?」
「いつでも」
 対する昇も不敵に笑い返す。
 静寂が満ちる。
 もしここに立つのが彼女だったら、あるいは自分以上に手早く済むかもしれない。
 尊大な様子を思わせる、でも繊細な少女を思い浮かべ、柊一がくすりと笑む。
 刹那。
 ―――来た。
「―――立ち還る山代の燐光を帯たるもの、真実我が姿に成り代わりて」
 向こうから送られた、光に包まれた蛇道の姿が、朧に浮かんで容(かたち)を持ち始める。
 柊一が蛇道を処分する間に、昇が群がってこようとする妖たちをその大剣で切り刻む。
「躯(むくろ)を葬る死刑人(しけいびと)、断末の雄たけびを聞き届け」
 鈴を一鳴り鳴らした青年の漆黒の髪が、不自然に揺らめいた。
「―――臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前」
 瞬間―――。
 昇が相手をしていた妖たちが、仄白い燐光を帯びて霧散した。
 それを見た柊一が鈴を括った腕を下げ、昇がふてぶてしく笑う。
「こっちは終わったよ……天音、飛湘?」
 青年の言葉を聞いた昇が、小さく笑った。

517心愛:2013/03/24(日) 18:39:14 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
>>ピーチ

可愛いともさ!
林檎ちゃんって名前もあるくらいだし!


昇くん柊一くんお疲れ様です!
あとは天音ちゃんたちだね(・∀・)

518たっくん:2013/03/25(月) 11:31:23 HOST:zaq31fa52d6.zaq.ne.jp
    【貴方のサイフでフィギュアをおごってもらう】

単刀直入に言いますが、18号のフィギュアを私におごって下さい。
貴方のおこづかいで。

もし買って頂けない場合は、 18号のこと諦めます。
フリーザに乗り換える事にします。フリーザのほうを好きになります。

私がフリーザを好むか、人造人間18号を好むかは
>>1さんのサイフにかかっているのです。
貴方が私にフィギュアを買ってくれるかどうかで
その後の展開が変わりますよ。

それにしても何故18号のフィギュアだけ入手できないのだろうか・・?
何度入札しても落札できない。

超サイヤ人孫悟空およびフリーザのほうが比較的簡単に入手する事ができます。
この文をご覧になってもし、18号のほうを愛せよとおっしゃる方がいらっしゃいましたら
フィギュアを私に譲って下さい。お願いします。
寸法20cm以上希望。最低でも20cmは欲しいです。

でなければ即フリーザに乗り換えますからね
フリーザでも別にいいんですよ私は
元々好きだったのは、超サイヤ人覚醒時の孫悟空ですから。
フリーザ戦のエピソードです。

さあ>>1さんはどうするか?
おごるのか、おごらないのか?さあどっちだ?
また来ますから返事はその時で結構です。

519たっくん:2013/03/25(月) 11:31:52 HOST:zaq31fa52d6.zaq.ne.jp
返答次第では
フリーザに乗り換えますからね。

520たっくん:2013/03/25(月) 11:46:55 HOST:zaq31fa52d6.zaq.ne.jp
>>1
サイフから金出たか?
もうそろそろ返事くれないと
フリーザになっちまうよ

521ピーチ:2013/03/25(月) 20:53:57 HOST:EM1-114-34-228.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

そーだね後は女子軍だね!

まぁ、後始末だけだから大丈夫だと思うぞ!←

522心愛(ピーチの代理です):2013/03/26(火) 17:05:32 HOST:proxyag106.docomo.ne.jp
紫と紅と黒






「っ…………」
 ふっと瞳を見開いたあおりが、天音に笑みを向ける。
「終わったみたいだよ、天音?」
 それくらい、この親友ならすぐに感づくのだろうが、一応。
 声に出さないのと声に出すのとは、やはり重みが違ってくるのだ。
「えぇ」
 僅かな安堵が、声音から感じ取れる。それに気付いたあおりが苦笑する。
 何だ、口では何だかんだ言ってもやはり二人のことを気にかけていたのか。
 そんなことを思ったとき、少女の声が聞こえた。
「えーっ!」
「へ?」
 唐突に聞こえた声に二人が同時に振り返る。
 シェーラが不満そうな表情で天音たちに問うた。
「もう帰っちゃうんですか? シュオン様がいいって言えば、ちょっとくらい上がって……」
「………ごめんなさい、それだけは遠慮しておくわ」
 彼の母の存在を知ってなおあの邸に足を運ぼうなどとは、到底思えない。
 それを彼女の表情から読み取ったシュオンが苦笑する。無言で謝っているようだ。
「? 何で?」
 ただ一人意味が通じないあおりが、天音を見た。あの強情の塊のような彼女をそうまで言わせる人物など、そう居ないだろう。
 そう思っての問いだったのだが、天音をはじめとし、それぞれが視線を逸らす。
「え? ちょ、天音っ?」
 一人置き去りにされたようであおりが焦った。柊一たちも知っているだろうが、あの天音がこの状態では、二人が口を割るとはまず思えない。
「……何なら、あおりだけ直に会ってみれば?」
 少女の提案に、ソフィアたちはもちろん、シュオンとヒースもさすがに言葉を挟んだ。
「え、ちょ、止めとけって! これ以上犠牲者を増やすわけには……っ」
「それに、喜ぶのは母上だけだしね…」
「分かってるわよ」
 二人の言葉に冗談だと返し、天音が僅かに苦笑する。
「まぁ、私たちも色々とあるから……ごめんね?」
 シェーラにそう言って、天音はソフィアたちを顧みた。
 ソフィアたちもシェーラと同様のことを思っているのだろうが、彼女たちがそれを口にすることはあまりないのだろう。
「…それに」
 さすがに疲れたように、しかし妙に晴れやかに彼女は言った。
「―――もう、定期的にこっちにも来た方がいいみたいだから」
「え?」
 天音の言葉を受けたソフィアたちの瞳が僅かに輝いた。
「だから、今回は帰るわ。またね」
「…はいっ!」
 元気よく答えたシェーラの言葉を聞き届け、天音とあおりの周りに突風が吹き荒れる。
 そして、薄い微笑を湛えた天音と、軽く手を振ったあおりの姿が、闇に呑まれた。

523心愛:2013/03/26(火) 17:07:05 HOST:proxyag106.docomo.ne.jp
>>ピーチ


移動しておきましたw

また遊びに来てね四人ともー!
遊びじゃなくてどちらかといえば仕事っぽいけどー!

524ピーチ:2013/03/26(火) 22:09:19 HOST:EM114-51-188-154.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ごめんなさいわざわざごめんなさいー!

今度ネタを拾ったときは(え?)完璧な遊びで連れてくるから!←

525心愛:2013/03/27(水) 12:58:29 HOST:proxy10029.docomo.ne.jp
>>ピーチ

おお、それは楽しみだw

いつでも遊びにおいでー(`・ω・´)

526ピーチ:2013/03/28(木) 07:05:29 HOST:EM114-51-160-221.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

じゃあ次は頑張って遊ぶために連れて行くから! 足りない頭で考えて!

じゃーいつでも行きまーす←

527心愛:2013/03/29(金) 09:23:19 HOST:proxy10049.docomo.ne.jp
>>ピーチ

足りなくないだろむしろ満ち足りてるだろ!


いつもいつもすみませんなぁ(つд`)
ここあは気楽に待ってるよw

528ピーチ:2013/05/15(水) 11:56:35 HOST:zaq31fa543a.zaq.ne.jp
貴方のスレは最高です!
感動しました!こんなにも素晴らしいスレがあるとは・・・

でも所詮はアホ女かな?


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