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紫の歌×鈴扇霊
350
:
名無しさん
:2012/12/14(金) 19:04:21 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――そして、決着の刻は来たる――』
「……ふーっ」
最後の一人が崩れ落ちるのを確認してから、ジルは長い息をついた。
戦うのは好きだけれど、これだけの人数を相手にして一人も殺さない方が骨。
後からじわじわと精神的な疲労が襲ってくる。
「あちらも決着がついたようです」
そのジルと全く同じことをしていたというのに汗一つかかず、クロードが昇とヒースが消えた方角を見やってさらりと言う。
あっそ、とジルは腕を組み、
「……なァ」
「はい」
明らかに格下であるジルにぞんざいに話し掛けられたにもかかわらず、クロードは素直に彼に向き合って。
「如何されましたか」
「兄さん、アンタただもんじゃねェな」
ジルは皮肉げに片頬を歪めた。
「いかにも育ち良さそーな顔してっけど、血の匂いがプンプンしてやがる。今までにそりゃあもう、もっの凄い量の血を浴びてきましたっていう匂いが、アンタの身体には染み付いてる」
クロードは表情を動かさない。
黙ってジルを見下ろすだけ。
「オレ様も似たよーなことしてきたから分かるンだよねー……アンタ強ェだろ、それも滅茶苦茶に」
にやっと嬉しそうに笑うジル。
「兄さん、今度手合わせしてよ」
彼の言葉に、クロードは少しだけ、驚いたように眉をぴくりと動かした。
それから、普段は引き結んでいる口元を僅かに緩め。
「……はい。ルイーズ様にお暇を戴けたならば」
*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。:*・゚゚・*
《……オノレ……》
「「……っ?」」
血走らせた目を上げ、二人を睨み付ける異形。
その姿は未だ侯爵のものにも関わらず、異様なまでの迫力を放っている。
《オノレ、オノレ……ッ! 矮小ナ人間ドモガ……!》
怒りに顔を歪め、そう絞り出すように吐き捨てたソレは、
「! 待っ」
二人を振り切って身を翻し、瞬く間に森の奥へと消え去った。
「はあ!? 意味分かんねえし! ……あーくそ、とにかく」
「―――天音っ!?」
そのとき、何処からか漆黒に艶めく長い髪を靡かせる天音が飛び出した。
着物の袖を風に煽らせ、瞳に強い意志を光らせ、消えた異形を追い、真っ直ぐに駆けていく。
「ばっ、天音っ? 何しっ」
「二人とも無事っ!?」
サッと青ざめた昇を遮り、またも新たな闖入者が現れる。
戦いの様子を遠くから眺めていた者たち、そして彼らに合流したクロードとジルだ。
「……昇、天音が」
ぽつりと漏らしたのは、いつになく険しい顔つきをした柊一。
その短い言葉の節々には、確かな焦りの色が見える。
「分かってる」
昇は頷き、柊一の後について駆け出しながら全員に向けて声を張った。
「天音を追うぞ! あの厄介娘、また一人で無茶やらかす気だ!」
*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*
木々の間を走っているうちに開けた場所に出、天音は足を止めた。
注意深く、ぐるりと辺りを見回す。
「見失った……?」
先程まで背が見えていたのに。
無意味に時間を潰していても仕方がない。素直に柊一たちと合流するしかないかと踵を返したとき、
―――突然、彼女の視界が、痛い程に暴力的な―――鮮烈な紅(あか)色に染まった。
「……あ、……?」
そして、燃え盛る火炎の中に、ゆらりと浮かび上がったのは―――人の形をした、黒い、影。
呼吸が、止まる。
……嘘。
だって、……だってこの人が、こんな場所にいるはずが。
大きく見開かれた瞳が、『それ』を映し、揺れる。
「……ぁ…………あ…………っ」
熱い。
熱い。
―――……あつ、い!
思考が停止すると同時、記憶に灼き付いた声が甦り、彼女を容赦なく責め立てる。
全身から血の気が引き、脚が震え、唇が戦慄(わなな)く。
直後、
「―――――――っっっ!」
細く、白い喉から迸った声なき悲鳴が、夜の帳(とばり)を引き裂いた。
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