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紫の歌×鈴扇霊

1ピーチ:2012/06/22(金) 18:16:24 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここでは主につっきーの小説とのコラボ小説を書こうと思いまーす。

荒らしはスルーでーす。

2ピーチ:2012/06/22(金) 20:00:36 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜瞳が持つ奇跡〜

「―――ソフィア?」
ソフィア、と呼ばれた紫の瞳を持った少女が、声に反応して振り返る。
「どうかした?シュオン?」
同じくして、シュオンと呼ばれた彼も、彼女に向き直る。
「それはこっちの台詞だよ・・・どうしたの?ボーっとして」
シュオンの問いに、ソフィアはその澄んだ瞳を、ほんの少しだけ震わせた。
「何か・・・ヒースの声が聞こえたような気がして・・・」
それで外を見てみたら、ヒースと見知らぬ人間が三人、居たと言う。確かに。彼女の部屋から確認できる。
「でも、大丈夫じゃ―――」
シュオンがそこまで言った時。
「失礼しまーすっ!!!」
そう言って、半ば叫びながら、ドアを蹴飛ばさんばかりの勢いで開けたのは、ソフィアの専属メイドのシェーラ。彼女の持つ青灰色の瞳が、何もない空(くう)を見回している。
「あら・・・どうしたの?そんなに慌てて」
「あの・・・ヒースが」
「大丈夫じゃないかな。ヒースのあの剣術があれば」
笑顔でそう言って、しかし半ば強引にヒースの話題を切り離そうとするシュオン。
―――刹那。
「―――え・・・?」
ソフィアとシェーラの短い悲鳴が、ソフィアの部屋に響き渡った。

「―――何だ、お前ら」
そう言って、包帯を巻いた方の腕を庇いながらも、剣(つるぎ)の切っ先を見知らぬ人間に向けているのは、従僕(フットマン)のヒース。
「何・・・って言われても、ねぇ・・・」
困惑気味に剣の切っ先が向けられている少女が後ろを振り返る。彼女の長い黒髪が、その動きに合わせてゆっくりと踊る。彼女の視線の先には、大学生くらいの二人の青年。三人に向かって、ヒースの持っているその剣の先が、鈍く光っている。
「何をどう説明したらいいのか・・・」
「此処に来た理由は?」
ヒースは、間髪入れずに目の前の少女に向かって尋ねた。
「んー・・・ここに迷い込んだ経緯(いきさつ)話せばいいの?」
「・・・あぁ」
「・・・じゃあ」
そう言った後、彼女はこう切り出した。
「それは省かせて貰います。単刀直入に言いますけど―――この邸の中に異形のモノが入り込みました。入れていただけませんか?」
「・・・はぁ?」
そう言った彼女の瞳は、真剣そのもの。しかし。
「イギョウ・・・って何だよ?」
ヒースの問いに、少女がほんの少しだけ、苛立ちを露にした口調で答えようと、した。
「だから・・・」
そう言った瞬間。
どこか部屋の一室で、誰かの短い悲鳴が木霊した。

3ピーチ:2012/06/22(金) 20:38:20 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜突然の来訪者〜

「い・・・」
「な・・・に、これ・・・」
ソフィアとシェーラが、途切れ途切れになりながら言葉を発する。
彼らの目の前にいた『それ』は。
「少なくとも・・・こんなモノ見たのは、初めてだね・・・」
さすがのシュオンまでもが、少し青ざめながら言った。
そう。真っ黒な毛皮を持ち、しかしその瞳は全てが紅(あか)。その体躯は異常なほど細長く、尖った爪や牙は、人間の身などあっさり切り刻めるだろう。
「良く分からないけど、下手に刺激はしない方がいいかも・・・」
シュオンがそう言った直後、『それ』が動き出した。
「うわ・・・っ!」
その声が聞こえた少し後。その黒い獣の後ろに、うっすらと人影が映った。

「今の悲鳴・・・」
「遅かったか・・・」
くそ・・・っと舌打ちした青年の前にいる少女が、苛立たしげに言った。
「・・・今の悲鳴、聞こえたわよね?もう、ただ事じゃないの」
「だからって・・・どこの誰ともつかねー奴を、ほいほい入れられるかっ!」
「私は神代 天音」
「・・・へ?」
「あの異形を追って来たんだけど・・・ここであなたに足止め食らわされて、その隙に逃げられたのよ」
彼女―――神代 天音は苛立ちを露にして言った。
「それに、“奴ら”は危ない。中に人がいるなら、その人達は外に避難させた方がいい」
天音の横にいた人物―――彼は天神 柊一と名乗り、もう一人は飛鳥井 昇と名乗った―――はそう言って、何やら鈴のようなものを手にしている。
「・・・そ、れは・・・」
さすがのヒースも、ここまで言われると自分が悪者になると思ったのだろう。ゆっくりだが、すっと剣をおろし、
「わぁったよ。ただし、少しでも不審な動きしてみろ―――その時点で斬りつけるぞ」
と、乱暴に言い放った。
「・・・分かったわ。ありがとう」
そう答えると同時、ヒースがくるりと回れ右をしながら、歩き出した。

4ピーチ:2012/06/23(土) 08:20:19 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜〜

「ったた・・・」
そうぼやきながら、シュオンが己の右腕をさすっていた。良く見ると、そこに三本の赤い線が走っている。
「シュ、オン・・・」
「だ、大丈夫ですか!?」
言葉を失っているソフィアとシェーラを見て―――主にソフィアだが―――シュオンは小さく笑った。
「うん。大丈夫だよ、これくらいで済んだから」
「で、でも、手当てした方が・・・」
シェーラのその言葉とほぼ同時。部屋のドアが勢い良く開いた。

「・・・随分と、広いのね・・・」
「・・・あぁ」
「天音・・・」
辺りを見回している天音に、昇が小さくその名を呼んだ。
「分かってるわよ・・・ねぇ」
「あ?」
突然呼ばれ、ヒースは首だけを後ろに向けながら答える。
「あの部屋―――誰か使ってる?」
「・・・え?」
彼女が指したその部屋は。
「―――御嬢様・・・」
ヒースがそう呟いた瞬間。天音が勢い良くそのドアを開け放った。

5月波煌夜:2012/06/23(土) 21:57:53 HOST:proxy10082.docomo.ne.jp
>>ピーチ

新スレ立てお疲れ様!
ああソフィアたちが動いてるよー( ´艸`)

シュオンがソフィアしか見てないのとか、上手く特徴押さえててくれて嬉しい限りです←

続き気になるよー!
これからも応援してるぞ(`・ω・´)

6ピーチ:2012/06/24(日) 00:30:34 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜扇〜

「あ、あれ・・・?」
さすっていた手を止め、慌てていた体勢のまま、シュオン達が呆然と、開け放たれたドアの先にいる少女―――恐らく、三人よりもいくらか上だろう―――を、見つめている。
「・・・見つけた」
それが、彼女が最初に発した言葉だった。
そう呟いて、少女は手にした紅い扇をかざした。
「え?」
事情が飲み込めず、三人揃って問い返す。
「お、おいっ!お前何やって―――」
慌てて飛び込んできたヒースが、即座に少女の手首を掴む。しかし、彼女はそれを、ものともせずに振り払った。
「緋扇(ひせん)に宿りし、時の守官(しゅかん)よ・・・」
小さく一言、そう呟いた。しかし、その声は小さいながらも、どこか威圧感がある。
そして。

「あ、あれ・・・?」
そう呟いた青年のアイスブルーの瞳が、天音の視界を一瞬かすめた。しかし、その瞳はすぐに消え失せる。なぜなら。
「・・・見つけた」
そう呟いて、彼女は手にした扇をかざした。
「え?」
青年達が、状況が飲み込めないように、首を傾ける。
「お、おいっ!お前何やって―――」
そう叫びながら、飛び込んできたヒースが慌てて天音の手首を掴む。しかし、天音はそれを振り切って小さく呟いた。
「緋扇に宿りし時の守官よ―――」
その直後に扇を大きく振りかぶり、その後再び、小さく呟く。
「―――この扇に、新たなるモノを封じ込む力を与えよ」
天音がそう言い、扇を天へと掲げた直後。シュオン達は目を丸くした。
―――消えていたのだ。あの、獣が。

7ピーチ:2012/06/24(日) 00:39:20 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あーっ!コメありがとー!!

あ、忘れてたけど、4番の書き込みの最初は紫の乙女 〜影にいるモノ〜 だよ!!

書き忘れてた。ゴメン・・・

そろそろかなー・・・多分そろそろ、ヒースが暴れ出す頃かもーww

まぁ、作者様として、行き過ぎの場合は注意お願いしますっ!!

8ピーチ:2012/06/24(日) 02:21:43 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜三人だけの確信〜

「・・・間違いないわね・・・」
そう呟いて、少女はふっと扇を一振りする。その一振りで、今まで開いていた扇が閉じる。それを認めてから、彼女も扇をしまう。
「んー・・・これってやっぱり、奴らの?」
「えぇ・・・多分、ね・・・」
「おい・・・それってまずくねぇか?」
「え?」
「だって考えて見ろよ。俺達だって、ここがどこだか分かんないんだぜ?」
そう言った青年は、黒みがかった灰色の瞳で、辺りを見回している。もう一人の、少女と同じ瞳を持つ青年は、あの獣がいた所にだけ視線を向けている。
「―――ダメだ。やっぱりこう言うのは、飛湘とか氷見野さん辺りの専門家に聞かないとなぁ・・・」
「あ、ねぇ」
突然、彼ら三人だけの会話に、シュオンが割り込んできた。
「え?」
「何か良く分からないけど・・・一応、僕達を助けてくれたんだよね?」
「・・・結果的には、そうなるわね」
そう答え、天音は彼を疑わしげに見据えた。その視線に気付いたシュオンが、
「あ、自己紹介がまだだったね。僕はシュオン。で、こっちにいる、この男がヒース。それから・・・」
「あたしはシェーラですっ!で、こちらの方があたしとヒースの主・ソフィア様でーす!!」
「・・・・・・」
勝手に話に割り込み、ソフィアの紹介までもを奪われたシュオンは、顔こそ笑っているものの、そのアイスブルーの瞳は、更に冷たさを増したように深い色になる。
「・・・神代 天音です。こっちにいるのが天神柊一で、こっちは飛鳥井 昇です」
それを悟ったソフィアが、
「・・・まぁとにかく、助けてくれてありがとう」
と、短く礼を言った。しかし。
「まだよ・・・」
天音が、小さいながらも良く透き通る、その声で言った。
「・・・え?」
彼女の、深い闇以上の深さを秘めたその漆黒の髪が、風に揺れるように小さく波打っている。
「・・・天音」
「わかってる。・・・ここら辺、ちょっと破壊されるかも」
ちょっとじゃないかな・・・とぼやきながら、天音がシュオン達の方を向く。
「とにかく・・・一度、外に出てもらえませんか?」
「え?」
「ここは危険です。先程の妖を見ただけで、もうお分かりでしょう?」
「・・・!」
天音の言葉に押され、みんなが部屋を後にする。
たった一人、ヒースを除いて。
「・・・ねぇ、あなたも早く―――」
天音が言った、その直後。
―――黒き豹が、彼女に猛然と襲い掛かった。

9ピーチ:2012/06/24(日) 10:14:32 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜器〜

「わ・・・っ!!」
小さく叫び、天音が咄嗟に避ける。
数メートル先まで飛び退り、そのままその場に着地する。
「・・・何の、つもりよ?」
そう尋ねた天音を見ても、ヒースは無表情のまま、感情を露にしない。
「―――天音」
唐突に昇が声をかけたが、天音はそれを見ることなく返答した。
「分かってるわよ。・・・あの人が、憑依されたことくらいね」
「まぁ・・・一応その手に関しては、天音と俺が一番良く理解してるかも」
柊一がそう呟いて、天音の方を見た。
「・・・で、どうする?このまま滅する?」
「冗談じゃないわよ。悪いのは彼じゃない。あれを器と定めた、あいつが悪いんだから」
罪のない人間を殺す理由がどこにある。そう言って、天音がきっぱりと断言した。
「彼は殺させない。一応とはいえ、私達を中に入れてくれたんだから」
「・・・そうだな」
そう言って、昇が突然部屋を出て行った。しかし、二人とも慌ても騒ぎもしない。彼は彼で、すべきことがあるから。
「さて・・・っと、俺はどうする?」
「・・・とりあえず、昇のサポートに回って」
「了解」
そう答え、柊一も部屋を出て行く。しかし。
「あ・・・っ!!」
天音が、小さく声をあげた。

10月波煌夜:2012/06/24(日) 13:19:39 HOST:proxyag044.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天音ちゃんかっけえ!
黒髪和風美少女ぐっじょぶ( ´艸`)

そして黒豹キター☆
ヒースさんは相変わらず残念な子です…。

11ピーチ:2012/06/24(日) 19:05:29 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

おーっ!天音ちゃんが褒められたー!!サンキュー!!←あほ。

あーでも・・・途中からかなり壊れちゃいます天音ちゃん。

まーそこは運命だからねーww

ちょこっとネタバレしちゃうとねー・・・後でヒースが得意の剣を天音ちゃんに渡さざるをえなくなっちゃうんだよねーww

うん。ゴメンね。ヒース壊しまくって←とゆーか残念にしちゃって。

12ピーチ:2012/06/24(日) 19:16:35 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜闇の豹〜

「あ・・・っ!!」
天音がそう叫んだ時には、ヒース―――正確にはヒースではないが―――が、開いていた部屋の窓から外に飛び出していた。
慌てて、天音もそれを追う。
二人が降り立った場所には。
「―――っ・・・!避けて!!」
そこにいたのは―――先程、部屋を追い出したシュオン達。それに加えて、柊一達もいる。
咄嗟に叫んだ天音の剣幕に押されたか。ソフィアとシェーラがびくりと肩を震わせ、そのまま無意識に後退る。
天音はそんなことお構いなしに、右に構えていた扇をさっと左手に持ち替える。しかし。
「―――させるか」
そう言ったのは。

13ピーチ:2012/06/24(日) 20:27:33 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜〜

「・・・っ・・・!?」
不意に、天音の視界が真っ赤に染まる。その紅が、己の血だと気付くまでに、かなりの時間を有した。
「った・・・」
そう呟いた彼女の左腕からは、真っ赤な鮮血が滴り落ちている。そして、ヒースの持つ剣の先からは、赤い液体が雫となって零れ落ちる。
天音の腕を伝(つた)って、彼女の開いた扇に、鮮やかな紅が彩(いろど)られる。
ソフィアやシェーラが、どんな大声を出したかは分からない。しかし、彼が初めて笑みを作ったのだけは見逃さなかった。
―――品のない、下劣な笑みを。
「・・・ありがとう」
「・・・!?」
「おかげで、ようやく目が覚めたわ・・・」
そう言うや否や。天音が瞬時に、ソフィア達に怒声を浴びせかける。
「安全な場所へ避難して!柊達も一緒だから、問題はないわ!!」
そう言って、自分はそのまま向かってくるヒースの剣をかわしている。
―――刹那。
「・・・え・・・?」
突然、彼の動きが鈍った。そして
「・・・天音。それ、中から追い出そうとしてる」
「へ?」
「その剣持った子が、内側から抵抗してる」
「・・・嘘・・・」
柊一の言葉にそう呟いて、しかし天音は勝利を確信した笑みを作る。
「―――悪いけど」
そう呟いて、彼女は一瞬の隙を突き、ヒースの背後へと回り込んだ。
「それ、あんたの“物”じゃないから。―――返してくれる?」
そう言ったと同時。不意にりん―――と鈴の音がした。それを聞いたヒースは、途端に暴れ出そうとする。それを逃しまいと、天音が彼の首に鈴を巻きつける。
しかし、その鈴は使わずに、彼女は扇を天へと掲げ、小さく囁く。
「―――古(いにしえ)より守られし、光と影」
そう呟き、今度は少しだけ、声を大きくする。
「その共存を望まぬモノなら・・・」
「や・・・・・・めろ・・・」
ヒースが、突然小さくそう言った。しかし、天音は気にする由もない。
「―――桜吹雪の舞にて、闇よりも深き場所へと・・・封印されよ」
天音が唱え終わった途端、ヒースが地面に崩れ落ちた。そして、傍にいた天音が咄嗟に支える。
「・・・っと」
「ヒースっ!!」
そう叫びながら、シェーラがヒースの顔を覗き込む。
「―――・・・もう、大丈夫だと思いますよ。・・・に、してもなぁ・・・」
天音が言わんとしていることを理解したか、昇と柊一がほぼ同時に苦笑を洩らした。
「まぁ・・・確かに」
「あれは凄いよなぁ・・・」
三人がそう言っていた時、ヒースが目を覚ました。

14ピーチ:2012/06/24(日) 21:31:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜黒豹〜

「・・・れ?此処って・・・」
「部屋じゃないわよ。・・・あれだけ暴れ回って、よくそれだけの怪我で済んだわね」
そう言ったのは、間違いなく天音だ。ヒースはその天音を見て、
「・・・はぁ?」
と、小さく疑問を口にするだけだ。
「大丈夫だよ。雑草並みのしぶとさだけが、ヒースの取り柄だもの」
そう言ったのはシュオンである。恐らく、天音達三人に向けての言葉だろう。
「おいシュオン!!どういう意味だよ、それ!?」
ヒースが反論して見せるが、シュオンは一切の同様を見せない。
「え。だってそのままでしょ?」
「少しは気遣いって言葉を知れえぇぇええええ!!!?」
自棄(やけ)を起こしたか。ヒースが、シュオンには到底無理なことを喚き立てる。
「・・・ねぇ、ヒース」
そう言って、シェーラがヒースの顔をじっと見つめた。
「・・・んだよ」
ヒースはそれだけ言って、目を逸らす。
「もう、大丈夫?」
「へ?」
シェーラの言葉を聞いて、ヒースが目を丸くする。
「ちょっと、いい?」
そう言って、天音がヒースの瞳を見つめる。まるで、何かを探っているかのように。
ヒースはと言うと、居心地悪くてたまらないのだろう。それこそ、蛇に睨まれた蛙の状態だ。
「―――無理。分かんないわよ」
そう呟き、天音が昇を見る。
専門家さんは、どう判断する?」
「んー・・・」
指定され、昇がヒースの鴉色の瞳を探るように見据える。そして、
「まぁ、大丈夫なんじゃねーの?」
と、軽く答える。
「・・・じゃあ、大丈夫ね」
「ねぇヒース。一回笑ってみて」
「・・・はぁ!?」
突然シェーラにとんでもないことを言われ、ヒースは大声で返答する。疑問系に。
「も、早くっ!!」
「な、何なんだよ、お前・・・」
ぶつぶつと文句を言いながらも、彼は少しだけ、ぎこちない笑みを作った。その笑みには、邪気などかけらもない。もちろんあの、品のないような笑みも、浮かんではいない。
「よ、かったぁ・・・」
そう言ってしゃがみ込むシェーラを見て、ヒースが状況を飲み込めないような表情をしている。
「じゃあ・・・私達もそろそろ行きましょう?下手したらまた・・・」
「・・・まだ、いる・・・」
「・・・え?」
柊一の言葉に、天音と昇が同時に聞き返す。
「まずい・・・呪詛、受けたかも」
「・・・呪詛・・・!?」
柊一が言ったと同時。突然、目の前に真っ黒い蛇が“降ってきた”。

15月波煌夜:2012/06/24(日) 22:05:36 HOST:proxyag079.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いや、ヒースは元々残念だから大丈夫w安心して暴れさせちゃって!

戦闘シーンも良かったけど、個人的にはシェーラに「笑ってみて」と言われて狼狽しつつもぎこちなく笑うヒースがツボだったぞ!何こいつ我がキャラながら可愛いんだけど( ´艸`)

16ピーチ:2012/06/24(日) 22:21:29 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

え・・・ヒース、そんなに残念だったの!?

まぁいーや!じゃあこれからも暴れて貰う!

あーうん。あたしもシェーラの「笑え」は結構乗り気で書いてたww

でもね!シェーラがわざわざヒースに笑えって言ったのも、ちゃーんと意味があるんだよ!!

ヒースが憑かれた時に、あの変な笑い方したから、笑い方で分かると思ったんだよ、きっと!←きっとって何だww

うーん・・・でもなー、そろそろ、今度は天音ちゃんが大暴走を始める頃だなーww

さてシュオン様達!そろそろ荷物まとめて逃げた方がいーよーww

17ピーチ:2012/06/24(日) 22:58:31 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜呪詛返し〜

「あ・・・っ!!」
そう叫んで、咄嗟に天音が怒鳴る。
「避けて!!下手したら餌にされるわよ!!」
それを聞いたシュオン達が、慌ててその蛇を避ける。
天音達も、何とか避けようとしているが、圧倒的に蛇の数の方が多い。しかし。
「柊・・・」
柊一だけは、その場を動かず、両手を組み合わせじっとしている。一切の動きが、ない。
柊一が行わんとしていることが、天音達には瞬時に理解できた。
「・・・私が、柊の援護に行くわ」
「いや。お前はこっちやっててくれ」
「え?」
そう言って、昇が小さく言った。
「わりぃけど、俺の場合は今は無力に等しい。だったら、柊一一人の援護の方が、ずっと気が楽だよ」
そう言うなり、柊一の周りに寄っている黒い蛇を、一気に払い除けた。それを見た天音は、
「・・・じゃあ、頼むわよ」
そう言って、後はソフィア達の護衛についている。
―――刹那。
 草木(そうもく)深くに呪詛返す
 こちらに参りし悪(あ)しきモノ
今まで一切の動きを封じていた柊一が、不意に小さく言葉を発した。
 我らは要らぬ。受け付けぬ
 ここの草木(くさき)に乗せようぞ
 草木(くさき)に乗せて返そうぞ
ぶつぶつと呟くように唱える柊一の周りには、既に妖しげな風がほんの少し、舞い上がっていた。
「・・・来るわよ。昇」
「・・・りょーかい」
半分おどけながら、昇が答える。
しかし柊一からすれば、彼らの声など、耳にも入らない。
 我らは要らぬ。受け付けぬ
 数を増やして返そうぞ
 我こそは悪しき気魂(けだま)を鎮める者なり。
柊一の周りに集まる風が、段々と大きく、荒くなっていく。
 返しの血花よ 咲き乱れ
 眼(まなこ)に血を帯び呪詛返せ
そこまで唱えた直後、柊一が、その堅く閉じていた瞳を、すっと、ゆっくりと開いた。
 この組み印、今こそ解けしよ。
 ―――今吹き荒れよ。返呪(へんじゅ)の風蛇(かざへび)
直後、今まで柊一の周りでうねり、暴れていた風が、勢い良く邸とは別の方向に飛んで行った。
「・・・いつ見ても凄いわね。ご両親と、どっちが上?」
それを聞いて、柊一が肩で息をしながら答える。
「両親じゃなくて・・・陰陽を受け継いだのは、父さんだけど」
「あら、そうだったわね。ごめんなさい。すっかり忘れてたわ」
「・・・おい。お前ら何とかしろ。この状況」
「え?」
昇に言われ、二人揃って後ろを向く。そこには、シェーラに纏(まと)わりつかれた昇が、うんざりしたような表情でSOSを出していた。
「い、今の何ですか!?え、あなた達何者!?」
「・・・確かに。それは気になるよね」
シュオンも、シェーラのその意見には賛成なのだろう。腕組みをしたような体勢で、天音達を見やる。
「・・・今、君が使ったのって」
「えぇ。この扇」
短く答え、次にこうも言った。
「そこにいる、黒髪君の首に巻きつけたのは、こっちの鈴だけどね」
「な・・・っ!?」
ヒースが、自分を指されていることに気付き、速攻で怒鳴る。
「俺にはヒースって名前がある!!黒髪なんて呼ばれる筋合いはねぇ!!」
・・・そういう問題だろうか。誰もがそう思うだろう。
そして、今の返答の時間。僅か0.1秒。
「・・・じゃあ、ヒース。あなた、自分がどうなってたか、分かってる?」
「・・・え?」
天音の淡々とした口調に、ヒースが一瞬、固まる。
「一回、自分以外の“何か”に憑かれたんじゃない?」
「・・・知らねーよ。気付いたら、お前ら見下ろしてて・・・」
ヒースの言葉に、三人が同時に凍りついた。

18ピーチ:2012/06/24(日) 23:17:40 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

補足→天音ちゃんの仕事上での制服は基本的に着物だよww

着物着て鈴振ったり扇振り回したりする時が一番霊力上がると言うねww

・・・うん。どーでもいいかも。ごめんね。

19ピーチ:2012/06/26(火) 00:22:24 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜対立〜

「―――じゃあやっぱり・・・」
「可能性的には、十分考えられるね・・・」
「どうすんだ?このまま、此処を離れて追ってみるか?」
「・・・そうする?ここは重要件に入れておいて」
「うん。それが一番、妥当かもね」
「んじゃ、決定な」
「おいおいおいおい!?」
三人だけで進んでいく会話についていけず、思わずヒースが口を挟んだ。
「え?」
「何なんだよ!?今の奴!?」
「―――失礼ですが」
ヒースの言葉を完全に無視して、天音が、シュオンとソフィアを真っ直ぐに見据えた。
その彼女の左腕からは、未だに真っ紅な液体が流れている。
「もう、あなた達がこの件に関わる必要はありません。手を引いていただけますか?」
口調そのものはとても柔らかい。しかし、有無を言わさぬ彼女の言い方に一呼吸置いてから、シュオンが首を横に振った。
「いいえ。そう言うわけには行きませんよ」
シュオンの返答に、天音の視線が心なしきつくなった。
「なぜです?本来、あなた方はこんな変なことに巻き込まれる必要はないはずですよ?」
「しかし、その“巻き込まれる必要のない”ことに僕らを巻き込んだのは、他でもないあなた方の方ですから」
天音に負けないくらい、シュオンの口調も柔らかい。しかし、天音もそれくらいで引き下がるはずがない。
「あら・・・人聞きの悪いこと仰らないでいただけます?」
「え?」
「私達はただ、追ってきたモノが偶然こちらに逃げ込んだだけ。ついでに言えば、そこにいる黒髪君がもっと早くに入れていてくれれば、事態は悪化せずに済んだんですよ?」
言っている途中で、“黒髪言うなっ!”と言う声が聞こえたような気がしたが、気のせいにしておこう。
「もし、手を引かないと仰るなら―――」
そう言って、天音がふっとシュオンの背後に回りこむ。これがヒースだったら、簡単には行かないだろうが、シュオンはヒースと違い、全くの隙だらけだ。
「―――ここで、あなたの命が消えますよ?」
残酷に笑い、己の伸ばした爪を彼の首元に巻きつけるようにして、動きを封じる。そして。
「もちろん、あなたの命だけでは済みませんしね・・・?」
と、長い闇色の髪を揺らし、周りを見渡す。
「そうですね・・・どうしても引けないって言うのなら、そこにいる―――紫の目を持った彼女も、この爪にかかることになりますが?」
それを聞いた瞬間。シュオンのアイスブルーの瞳が、一瞬凍った。
その反応を見た天音は、先程よりも更に残酷に笑い、続けた。
「どうします?・・・残念ですが私には、躊躇と言う言葉は・・・一切使いませんよ?」
その言葉で、シュオンが短く息をついて答えようと、した。
しかし。

20月波煌夜:2012/06/26(火) 08:15:12 HOST:proxy10036.docomo.ne.jp
>>ピーチ


おお、シリアスとコメディが上手い具合に入り混じっておる!
黒髪君……字面だけだと真面目っぽいのは何故だw


シュオン、女の子相手だからキレないでねー?
大人になろうねー?

21ピーチ:2012/06/26(火) 23:45:13 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜拒絶〜

「―――っと・・・」
突然、天音がシュオンから飛び退いた。なぜなら。
「・・・さっきから聞いてりゃ勝手なこと言いやがって・・・御嬢様を殺すことなんかできるわけねーだろ!?」
そう言って、手に持っていた剣を前に構え、シュオンの首筋ぎりぎり―――確実に天音の手を狙えるその場所に、それを突きつける。
「・・・へぇ?随分と自信があるみたいだけど。どうして彼女を殺すことはできないのかしら?」
天音の問いに、ヒースは一瞬戸惑ったものの、はっきりと告げた。
「御嬢様が―――≪紫水晶(アメシスト)≫だからだよっ!!」
そう言って、また新たに剣を構える。その隙に。
「―――・・・悪いけど」
「・・・!?」
「敵に隙を見せるのは、どうかと思うわよ?」
それだけ言って、彼女は小鹿色(フォーン)の髪に、青灰色の瞳を持った少女―――シェーラの背後に素早く回りこむ。
「あ・・・っ!?」
「言ったわよね?敵に隙を見せるなって」
そう言って笑みを浮かべる天音を見て、昇が唐突に口を挟んできた。
「あのさぁ・・・んな面倒くさいことせずに、こいつに任せりゃいいんじゃねーの?」
そう言って、彼は柊一を指す。しかし、天音は。
「ダメ。しっかり答えを聞くまでは、私だって引き下がらないわよ」
「・・・そーですかい・・・」
苦笑しながら、それだけ答える。
「・・・悪いけど。これ以上その剣振り回すようなら・・・この女の子、速攻消えるから」
そう言って、天音がシェーラの首筋にその爪をあてがる。
しかし、シェーラは悲鳴をあげなければ悪あがきをしようともしない。ただ呆然と、前を見てるだけ。
そんなシェーラに、天音が小さく何かを囁く。途端、シェーラの表情に感情が戻った。
「・・・なせ・・・」
小さく言った後、ヒースが怒りを露にして怒鳴った。
「今すぐ、そいつを放せ!!」
ヒースの怒声が飛んできても、天音は表情を変えることなく要求する。
「じゃあ・・・その剣、こっちに渡して貰える?」
「え・・・?」
「交換条件。まぁ、別の人借りてもいいけど・・・それだとあなたがうるさいでしょ?」
ヒースの顔から、表情と言う表情が薄れていく。そして
「・・・わぁったよ!ほら」
そう言って、ヒースが自暴自棄になったように剣を投げてよこす。
「んー・・・じゃあ、はい」
ヒースがよこした剣を確認しながら、天音がシェーラを開放する。
「話を戻させて貰うけど・・・今後一切、私達に関わらないで?」
そう言い捨て、さっと天音が踵を返す。それを、ソフィア達はただ呆然と見送っていた。

22ピーチ:2012/06/26(火) 23:49:14 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

シリアスとコメディ、ちゃんと入り混じってる?大丈夫?

うーん・・・確かにww言われて初めて思ったかもww

でもねー、黒髪君はお気に入りなんだよねーww

はい。シュオン様寸前で堪えました。ヒース君途中からぶち切れました。

むー・・・シュオン様は堪えられるタイプかなと思ってのことですが、どうでしょう?

23月波煌夜:2012/06/27(水) 11:01:36 HOST:proxy10075.docomo.ne.jp
>>ピーチ


よしえらい!よく耐えたぞシュオン!
胸中ではどう思ってるか分かんないけどね!

シェーラ人質に取られてマジギレするヒースは、『紫の歌』の方でも結構気に入ってる場面だから再現してくれて嬉しいw

それにしても天音ちゃん声荒げてないのにド迫力だね!
これはあの浮かれメンバーも負けるわww


続き楽しみにしてるよ☆

24ピーチ:2012/06/27(水) 20:54:17 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うーん・・・天音達が目立つとやばいかぁ・・・

うん!じゃあ次はソフィア様を目立たせる!!

そんで、シュオン様は・・・どーしよ・・・

まぁ、テキトーに誤魔化すわww

25ピーチ:2012/06/27(水) 23:33:56 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜一線〜

「・・・っ、おい!?」
「うるさい」
思わず怒鳴りつけようとしたが、それを天音の澄んだ声で制される。
直後。
「―――やっぱり。まだ当分、帰して貰えそうにないわよ・・・どうする?」
「・・・帰す気がないなら」
「それを倒すまで」
不敵に笑った二人を見て、天音も薄く笑みを浮かべる。
「じゃあ―――」
「開始(スタート)」
昇のその声が、火蓋を切った。

「・・・っ、おい!?」
そう言って、天音を怒鳴りつけようとした。が、
「うるさい」
彼女のその一言に、思わず口をつぐむ。
しかし、それも一瞬のこと。すぐに気を取り直して怒鳴ろうとしたが、不意に、後ろから誰かに肩を軽くたたかれた。
「お、御嬢様・・・?」
そう呟いたヒースの黒豹を思わせるその瞳に、紫の瞳が映った。自分の主、ソフィアの瞳の色。
「今は、私達はじっとしていた方がいいと思うわ」
ソフィアの言葉に、ヒースは無理矢理に自分を納得させて黙り込んだ。
「・・・昇」
唐突に、天音が口を開いた。
「あ?」
「できれば、準備しておいてくれないかしら?」
「えー・・・まさか、あれを?」
「えぇ・・・嫌なら、別に構わないけど」
「いいよ、やっとく」
たったそれだけの短い会話を済ませ、昇がふっと片手を挙げる。
「―――これで準備は、終了」
昇がそう言った直後。天音が咄嗟に、ソフィアの前に出た。

26Mako♪:2012/06/28(木) 00:15:51 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
え?天音s、ソフィア様の前にでて、何をするきなんだ!?
気になるぅ!!
更新楽しみにして待ってまーす!

27ピーチ:2012/06/28(木) 20:56:56 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
まこ>>

あっ!つっきー以外のコメが初めてきたっ!!サンキュー!!

あー、天音ちゃんはね・・・そろそろ頑張って更新する!←テスト訂正が溜まりまくりww

うん。頑張ろう。←何の決心だww

28ピーチ:2012/06/29(金) 21:57:45 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜連係プレー〜

「・・・え・・・?」
そう呟いて、ソフィアは己の目を疑った。
「―――これで、準備は終了」
昇がそう呟いた途端、突然天音が彼女の前に飛び出した。
そして、今目の前にいる天音は、誰が見ても分かるほどに目立つ傷を負っている。細い糸できつく巻き上げられたかのような、とても細い傷を。
その傷跡からは所々に紅いものが見て取れる。
「・・・大丈夫か?」
昇が、天音の傷を見てそう尋ねる。
「えぇ・・・問題ないわ。・・・あなたは?大丈夫なの?」
そう言って、彼女はソフィアの方を見る。
見たところ、ソフィアは目立った傷は負っていない。ならば。
「・・・ねぇ、黒髪君」
「だから、黒髪じゃねぇ!!」
「どうでもいいわよ、そんなこと」
ヒースの叫びも虚しく、天音はそんなの気にもせずにソフィアをヒースに押し付ける。
「彼女、だけじゃないけど。彼女と一緒に、あっちにいる二人も守ってて?」
「え?」
問い返したヒースに、天音がふっと微笑んだ。
「今、三人をまとめて守ることができるのは、あなただけでしょう?それとも、できない?」
そう言った天音に、しばらくポカンとしていたヒースが、にっと不敵な笑みを浮かべた。
「・・・んなわけ、ねーだろ?」
それだけ言って、彼は剣を構える。
それを見て、天音が
「・・・大丈夫ね。じゃあ、私はあっちに行くから」
そう言い放ち、天音がすっとその場を離れる。それを見て、ヒースが一瞬慌てたが、それでも剣を持つ手は緩まない。
「何か、良く分かんねぇけど・・・御嬢様、は不用意に動かないようにして下さい」
ヒースの言葉に、ソフィアが小さく頷く。
「シェーラとシュオンも、不用意に動くんじゃねぇぞ」
二人にもそう言って、ヒースは改めて天音に視線を置いた。

29ピーチ:2012/06/30(土) 18:46:14 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜役割分担〜

何の前触れもなく、天音が突然ソフィアの前に飛び出した。それだけならなだしも、その彼女の全身は、たったそれだけのことで傷だらけになっていた。
―――これはもう、偶然でも何でもない。
「ねぇ、ヒース」
とつぜん、シュオンがヒースの名を呼んだ。
「あ?」
ヒースはと言うと、いろいろ考えていた思考をやむなく中断させられ、その声にいささか不機嫌さが見え隠れしている。
「あの女の子、何て言ったの?」
シュオンの問いに、ヒースは少し思案してから、小さく言った。
「―――御嬢様と・・・お前ら二人を守り通せ、だと」
全くふざけている、などと、思わないでもない。しかし。
「こんな所で死なれても・・・後味悪いだけだしなぁ―――?」

30ピーチ:2012/07/01(日) 00:43:21 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜粒子=邪龍〜

そう呟いた瞬間。ヒース目掛けて、何やら“粒子”のような物が飛んで来た。咄嗟に、ヒースがそれを捕らえて剣を振りかぶる。
しかし。
「・・・あれ?」
感覚が、無かった。必ず、何かしらか感じるはずの、あの手応えが。
今度は、飛んで来たそれを手で受け止める。それと同時に、その手に激痛が走った。
「っ・・・!?」
思わず、ヒースが小さく呻く。
手を開いて、そこに。
―――天音の全身に刻まれていた、“細い糸できつく巻き上げた”ような紅い線が、幾重にも走っていた。
「・・・これ・・・って・・・」
「だから言ったでしょう!?“それ”はどこでもいい・・・身体の一部に“確実に”触れるまでは何の痛みも感じないのよ!!」
「な・・・っ!?」
確かに、シュオン達三人を守れ、とは言われた。だが。
「おいっ!んなこと聞いてねぇぞ!?」
「だから今言ったわよ!!」
そう怒鳴りつけ、しかしその“粒子”に瞳の動きをあわせる。
―――刹那。
今までは一つ一つの“粒子”だったものが、まるで崩れたパズルを組み立てるかのように一線に集まってくる。
やがて、“それ”はしっかりとした形を持つものに変わった。
―――とてつもなく大きな、邪龍に。
天音は一度、柊一の背後に隠れる。それを見た柊一がはぁっとため息を吐き、そのままゆっくりと前に進む。
「・・・おい、何やってんだよ?」
ヒースが、あまり声を張らないように、しかし天音にはしっかり届くように尋ねる。対する天音は。
「・・・・・・何でも、ないわよ・・・」
そう呟くように言って、そのままふらりと前に歩みを進める。
「柊・・・大丈夫だから。・・・これは、私が送る」
言うや否や。彼女は何の容赦も無く、その龍を鈴で思い切り締め上げた。

31:2012/07/02(月) 20:28:39 HOST:zaq31fbcb09.zaq.ne.jp
久しぶりに来てみたら、何このコラボ!!?

最強すぎる\(゜ロ\)(/ロ゜)/

最近、読む気ないから読む気なったら読むわ(-_-;)

風邪気味なせいか病んでるので…。

完結まで応援しておきます(p_-)

32ピーチ:2012/07/02(月) 20:34:50 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
りんりん>>

わぉ!とってもとっても久しぶりのりんりんだー!!

・・・え。つっきーのなら分かるけどあたしのが入ってたら・・・つっきーの小説のよさが消えちゃうよ〜((泣

風邪気味!?大丈夫!?

ちゃんと完治させてよー!!

応援どーもでーす!頑張るねー!!

33:2012/07/02(月) 20:40:29 HOST:zaq31fbcb09.zaq.ne.jp
ピーチ>>そんな事ないと思う。

良さとかそんなの関係ないよ。

書きたかったらそれでいい。

書きたかったら書きたいだけ書けばいいんじゃない?

それで相手から批判されれば、それに加えて改善していけば問題ないよ。

って私は思う。

34ピーチ:2012/07/02(月) 20:51:34 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
りんりん>>

そっか〜、そーだよねー(・w・)

うん!分かった!!ありがとう!!

35ピーチ:2012/07/02(月) 20:53:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
〜お知らせ〜

えーっと、明日からしばらく、パソコンそのものが使えなくなるそうなので、しばらく更新できませーん

一応お知らせだけしておきまーす

36玄野計:2012/07/03(火) 12:14:57 HOST:ntfkok244208.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>35
駄作なんて気になるかよ

37ピーチ:2012/07/03(火) 18:53:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
鈴扇霊 〜登場人物〜

・神代 天音(かみしろ あまね)・・・「鈴扇霊」の主人公。紅い鈴と同じ色の扇を使いこなす。彷徨える霊などを行くべき場所へと送り届ける任務を受け持つが、本職的なことは怨霊鎮めと妖退治。神代家伝来の能力を受け継ぐと同時に異能力も生まれつき。裏会の一員。中学生の設定から大学生に。

・天神 柊一(あまかみ しゅうかち)・・・天音の同僚。神代家の親戚一族。天音同様鈴の使い手だが、天音とは違い、真っ黒な鈴を用いる。昔は「天津神」に通じる一族として知られていたらしく、なぜか陰陽術も使える。これも中学生から大学生に。

・飛鳥井 昇(あすかい しょう)・・・天音の同僚。天音達二人とは違い鈴は使わないが、代わりに「聖なるもの」を呼び起こす能力を持つ。それ以外の特技はあまりないが、それを補う形で剣、槍、縄、矢などの特技を持つ。

・奥平 海斗(おくだいら かいと)・・・裏会を仕切っている力量の持ち主。何が元凶か分からないが、天音同様、生まれつき異能力を持っている。

主な登場人物+裏会の長しか載せないけど、とりあえずこれぐらいかな?

後は鈴扇霊の本編見れば分かると思うww

38月波煌夜:2012/07/03(火) 19:38:52 HOST:proxyag068.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ありがとう!
うーん、天音ちゃんだけならノリでいけるかもしれん←
あと、扇と鈴のそれぞれの使い道とか、
天音ちゃんはいつも柊一くんとか昇くんと一緒に行動してるんですかとか、
天音ちゃんの今の服装とか、
詠唱してる呪文みたいなのって場合によって決まってるんですか、とか聞きたい(`・ω・´)


うんごめんね面倒で←


あと“妖”ってどこからかほいほい出没するものなの?



全部じゃなくて良いから、できるかぎりの回答を願う\(^o^)/

39ピーチ:2012/07/03(火) 22:25:22 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うーん、返答(↓)

鈴と扇の使い方→鈴は左手首に巻きつけて振ったり相手に巻き付けたり。(振る時は大抵両手が天を掲げてる)扇も左手に構えてかるーく振る。(力が溜まった時に扇の中心に真っ黒な渦ができる)

天音達が一緒に行動してるか→学校の時にも柊一達が自分達の学校サボって天音の学校来てるから、ほとんど一緒かな←多分

天音ちゃんの服装→基本的に深藍(ふかあい)の着物

詠唱してる呪文→決まってないし、ちょー適当だよーww

妖・・・うーん、主に夜の闇に紛れてとか?それとか、人の負の感情によって開いた異界の戸とか?

これぐらいでいーかな?

40月波煌夜:2012/07/05(木) 17:57:17 HOST:proxy10073.docomo.ne.jp
>>ピーチ

面目ない…(*´д`*)


え、呪文テキトーなの!?
あれで!?
月波はピーチの才能の片鱗を見た…!

あ、じゃあ適当に好き勝手やって良いのかな?←


それから、扇と鈴ってそれぞれどのタイミングで使うの?
なんか決まってる??

41ピーチ:2012/07/05(木) 21:49:51 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ぜーんぜんww

え、あれでって・・・

まぁよっぽど酷い呪文だってことだーww

いやいやいやいや!あたしの才能なんて見えるはずがないんだけど・・・←酷すぎてww

うんっ!どーぞ好き勝手やってくれー!!

あ、鈴と扇を使うタイミングはねー・・・

鈴は基本的にそこら辺彷徨ってる霊を見つけた時で、扇は妖とか死んだこと認めない霊を封じるためだから、基本的に自分の身を守るため??

うん、そんな感じでいーよー←何か適当でごめん。ほんとに・・・

42ピーチ:2012/07/05(木) 23:04:30 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜ジャマモノ〜

天音の突然の行動を見た柊一達は、一瞬顔を見合わせ、その後でにっと笑う。彼女の行動の意味を捉えて。
反対に、シュオン達は。
「な・・・っ!?」
突然のことに声が出ないヒースを見ても、天音は力を緩めない。むしろ、その力は加わる一方だ。
「―――・・・や、めろよ・・・」
一言。たったその一言を言うだけなのに。シュオンやシェーラにはこの上ない程、簡単に言えるのに。
「我が身体は我に在(あ)らず・・・」
突如、天音が小さく何かを呟いた。瞬間、柊一が両手を組み合わせる。
「我が行いを誤りとするモノよ・・・」
「我が声は我の声に在らず」
天音と柊一の声が、ピタリと重なる。しかし、それだけではない。
「我が思考は、我の思考に在らず」
「水の音を聞けよ。雲の声を聞けよ」
二人が二人とも、全く違う言葉を発している。それなのに、その声はとても澄んでいて。まるで、お互いが競っているかのよう。
「天津神よ。我を信じ、我を認めるのなら、その力を我に渡せ」
「我が行動は我の元に在らず」
小さく唱える二人の傍に、小さく黒い、何かの物体が集まってくる。口封じでもしようとしているのだろう。しかし。
「・・・邪魔なんだよなぁ」
そう呟いて、どこから持ってきたか、昇が構えた剣でその黒い物体を切り裂く。その間に、何気なく手元を見たヒースが、
「・・・って、俺の剣が!?」
と叫んでいる。それを聞いて、
「あぁ。わりぃけど今、これ借りてるから」
と、悪びれる様子もなく言ってのけた。
「お、お前なぁ!?」
ヒースも負けじと言い返そうとするが、それよりも早く、昇が言った。
「・・・お前さ、よっぽど強いんだなぁ・・・」
「・・・は?」
「この問題が終わったら、一回手合わせしねぇか?」
昇の思いがけない言葉に、さしものヒースも目を丸くする。
しばらくして。
「・・・あぁ。お前さえ良ければな?」
そういった直後。突然、昇が前方を振り仰いだ。
「―――神の前にして、悪事を働かんとするモノよ」
「闇に紛れし、悪しきモノよ」
二人の声が、重なる。
「神の声を。我に移し・・・」
「汝(なんじ)。仏の本意(ほい)を知れ」
ここまで来ると、もうヒース達には何を言っているのか分からない。昇も同じなのだろう。昇を振り返ると、彼も肩を竦めて見せた。
「我が身体を。我が声を。我が行いを」
「神々よ。仏よ。我に加護を与えよ」
「―――神に、全てを引き渡そう。・・・代わりに、我の身体を依代(よりしろ)とし、その業(ごう)を燃やし尽くせよ」
「天津神。その名を轟かせし一族に通ずる者。その力を唯一受け継ぐ一族。ならば、その力、我が受け継ごう」
二人が同時に言い切った瞬間。龍の首に巻きついていたはずの鈴は、巻きつけるものが無くなったかのようにするりと滑り落ち、天音が同時に膝をつく。
「・・・大丈夫?」
本当は同じ用にきついであろう柊一は、気力で己を立たせていた。
「えぇ・・・でも、ごめんなさい」
大丈夫だと肯定した後、天音が小さく謝った。
「え?」
「私一人でやるはずだったのに・・・結局、柊達まで巻き込んで・・・」
それを聞いた柊一が、しばらく呆然とした後ににっと笑う。
「そんなの、気にしなくていいだろ?仲間なんだから?」
「・・・・・・それもそうね」
そう呟いて、天音が薄く笑う。その笑みが、どこまでも大人のように見える。
「良かったな。・・・って、言いてぇけど・・・」
そう言った昇は、龍が砕け散ったはずの場所を睨みつける。柊一達も、彼に倣って同じ箇所を睨む。
――――――我ラヲ、簡単ニ倒セタト思うナ。
「―――っ!!」
突然、頭が割れそうな痛みが走る。無論これは、霊感が三人の中で尤も優れている天音だけのことだ。
――――――オ前ノ他ニ、ソレ程ノ生命力ヲ持ッタ人間ガイルトハナ・・・ソレモ、二人ト来タ・・・。
「・・・え?」
―――自分以外の、強い生命力の持ち主?
天音が黙り込んだ一瞬の隙を、“奴”は見逃さなかった。
―――刹那。
紫の瞳を持った少女と、漆黒の瞳を持ち合わせた青年が、天音に踊りかかった。

43ピーチ:2012/07/06(金) 00:21:49 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜「紫の瞳」と「天使」〜

「―――っ・・・!?」
天音の、声にならない悲鳴と共に、誰かの声が重なった。
「ソフィア・・・!?」
そう呟いて、シュオンが己の目を瞠る。
とても、少女とは思えない程の力で。それ程の力で、力のほとんどを使い果たした天音の動きを封じる。
「我ラニ・・・逆ラッタガタメニ、コンナコトガ起コッタノダゾ?我ラノ命(メイ)ズル通リニ動イテイレバ、下手ニ命ヲ落トスコトナド、無カッタモノヲ・・・」
そう言って残忍に笑う少女の瞳に見え隠れするものを、天音の漆黒の瞳が捉えることはできない。それ程までに体力的に、精神的に、気力的にも限界に近い。
「待テ・・・コノ者ダケデハ足リナイ。・・・モット、多クノ人間ヲ献上スルベキダ」
ヒースが、否。ヒースの外見だけを見せた“奴”は、にぃっと残酷に笑う。
その笑みは、どんな醜いものよりも醜いと言えるほどの。
「ソウダナ・・・タダデサエ、オ怒リニナラレテイルノダカラ。コノ二人モ、連レテ行クカ・・・」
その言葉を聞き、天音の顔から、表情が消えていく。ダメだ。このままでは。
天音が、思った直後。
「―――今来たれよ。聖界(せいかい)からの使者」
凛と研ぎ澄まされた、力強い言葉が、どこからか聞こえる。その源は。
「幸福を呼ぶ天使よ。我らはそれを望まぬ。それの代わりに、お前達に頼みを託そう」
そう。その言葉を発しているのは、彼の唯一の特技と言っても差し支えのない、昇の、「天呼(てんこ)」の術。
「今の状態(まま)で、この世(せ)が終わるなら、それはこの世界の天命。しかし、我の前にいる者達は天命は、まだ崎のはずである」
凛と響くその声に、思わず奴らの手が緩む。それを見逃すはずのない天音が、思い切り彼女の手を払いのけ、己の首に手を置いている。そして。
「・・・ありがとう」
と一言。かすれた声で呟く。
「礼なんていらねーから。とにかく喋るな」
すっぱりと言ってのけ、昇はそのまま続ける。
「我がために存在する御仏(みほとけ)よ。我に更なる力を与えよ」
そこまで言った瞬間。彼の後ろに、ゆらりと人影が浮かび上がる。
しかし、昇の後ろに浮かんだそれは、人ではなくて。
「―――・・・天使(エンジェル)・・・?」
シュオンの言葉に、柊一と天音が、はっとした表情になる。
そう。彼の背後にいるそれは、真っ白な羽根を持ち、真っ白なワンピースのようなものに身を包んだそれは。
―――天使、だった。
思わず、その場にいた全員が見惚れるような、美貌と神秘さを合わせ持った。
そんな美しさを持った天使は、しかしどこか幼げに笑い。
「―――・・・私を呼び寄せた、この者の意思に。助けたいと言う思うがありました。では、お望み通りの行動を心掛けます」
そう言った天使は。その優しげな笑みを浮かべたままに、ソフィアやヒースを支配する“それ”を引きずり出す。
その後に。
「・・・ありがとう。あなたの心に、感謝します」
それだけ言って、後はふわりとその幼い笑みを残し。獲物を収穫したとばかりにしっかりと、しかし優しく掴むその姿が消えるまで、シュオンもシェーラも、もちろん天音達も。ただただ呆然とし。昇の言葉で、やっと皆が我に返る。
「・・・おーい、そこの二人、大丈夫なのかー?」
その言葉を受け、シュオンが慌てて倒れ伏しているソフィアに駆け寄る。そして一言。
「ヒースの上に倒れるなんて・・・ソフィアが汚れたらどうしよう・・・」
ヒース本人が聞いていたら、「俺はゴミかっ!」と思い切り吠えそうなことを、さらりと口にするシュオンに、シェーラは何とも言えないような表情で、苦笑するばかりだった。

44ピーチ:2012/07/06(金) 00:28:20 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
訂正

まだ崎→×

まだ先→〇

45月波煌夜:2012/07/06(金) 08:38:06 HOST:proxy10082.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天使ー!

ぶふっww ソフィアが汚れたらどうしよう……っ!!

やばいピーチすごすぎだろ!シュオンを月波以上に使いこなしてるじゃないか!
吹いた\(^o^)/


皆さんお疲れ様です!
昇くんは剣得意なのかな??

46ピーチ:2012/07/06(金) 19:03:31 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

天使ー!←なぜ真似るww

あははww笑ってくれたー!!

え、つっきー以上はないと思うww

47月波煌夜:2012/07/06(金) 22:01:08 HOST:proxy10042.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天使天使ー(増やしてみる

いや、月波にはとても思いつかないナイスな一言であった(o^_^o)

48ピーチ:2012/07/06(金) 23:43:47 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

え、何で増えるの!?

うーん・・・つっきーが思いつかなかったのは頭が良すぎるからだよ!絶対!

あ、さっき書き忘れてた。

うん。昇君は基本的に戦いに参加する術を持たない子の設定だからww

「聖なるもの」を呼び寄せる能力は持ってるんだけどね、とんでもなく体力&時間消耗するからよっぽどのことがない限りは使わないのww

それを補う形で、剣とか槍とか弓とか縄とか・・・まぁ他の二人はできなさそうなことを詰め込んでみたww

49ピーチ:2012/07/07(土) 00:07:03 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜“生”“死”〜

倒れたソフィアをシュオンが邸の中へ入れ、彼女の部屋まで運ぼうとする。
同時に。
「・・・あの。良かったら、上がります?」
遠慮がちに尋ねるシェーラを見て、天音達が目を丸くする。
「うん。入れた方が良いんじゃないかな?特に、そっちの髪の長い人は」
シュオンの指す人物を見て取り、柊一と昇が思わず言葉を失う。
「・・・どうする?」
かすれた声で尋ねる天音に、昇があっさりと
「入れてもらえば?」
外に出されるよりかはマシだろ、という昇の意見で、三人が邸の中へ足を踏み込む。
ソフィアと時を同じくして倒れ伏したヒースは。
「ヒースさぁぁぁぁああん!!?」
「どーしたんですかぁぁぁあああ!?」
と恐ろしい程に絶叫されながらも、慕われている兵士に運ばれている。
・・・彼らが叫ぶ度に、ヒースの表情が強張って見えるのは、気のせいだろう。多分。
そして、ヒースも邸の中に運ばれ、とりあえずと言いながら彼の部屋へ運ぶ。
そんな騒ぎが起こっている中。ソフィアの美しい銀の髪が、微かに震えた。
そして。
「―――・・・ソフィア!」
「ソフィア様っ!!」
二人の人間が、同時に叫ぶ。そして、呼ばれた本人は。
「シュ・・・オン?シェーラ?」
と、焦点の定まらない瞳で、必死で空(くう)に目を凝らして見ている。
「・・・天音」
彼女の意識が戻ったことを確認した三人は、しかし天音の言葉で行動を止める。
「ちょっと待って・・・」
「え?」
「・・・黒髪君の意識が戻らないのが気にかかる・・・」
天音の言葉に、昇の表情が一瞬で強張る。
「ま、さか・・・!?」
「分からない。まだ、可能性ってだけの話よ。でも・・・」
感覚は、似ている。
―――生あるものに訪れるものに―――・・・。

50Mako♪:2012/07/07(土) 01:10:14 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
>>ピーチ

え?いやいや、ヒースはあの生命力があるから大丈夫だよね!?
だよね!?
↑この文章打つのに何回もやり直すほどどうようしております。

ヒース!!シェーラを置いて死ぬんじゃないぞー!って勝手すぎますね。すいません☆

ピーチ、頑張ってね☆

51ピーチ:2012/07/07(土) 09:35:51 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
まこ>>

うんっ♪ヒースなら大丈夫!多分!←助けろよww

そ、そんなに動揺するか・・・?

うーん・・・シェーラちゃんがいるからね。勝手に逝くことはないと思うけど←だから助けろってww

はい!頑張ります!

52ピーチ:2012/07/07(土) 09:49:39 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜助ける方法〜

「・・・仮に、この黒髪君がそうなったら。天音はどう対処するつもり?」
柊一の言葉に、天音がふっと視線をめぐらせる。こういった時の彼女の大体の思考は。
「まさか・・・“処分”なんて考えてねぇよな?」
「そんなわけないじゃない」
昇の言葉に力強く返した天音が、でも、と続ける。
「このままじゃ、本気で処分しなきゃいけなくなるかも知れない」
天音が言った直後。シェーラが口を挟んだ。
「処分って・・・どういうことですか?ヒースどうなるんですか!?」
彼女の剣幕に、天音が一瞬、口を閉ざす。しかし。
「ヒース・・・死んだりしませんよね?絶対に大丈夫ですよね?」
「絶対―――ね・・・」
「え・・・?」
そう言った天音の表情が、心なし哀しそうに歪められた。
「ごめんなさい。私・・・“絶対”って言葉は使いたくないの」
「・・・なん、で・・・?」
「―――・・・できもしない約束を、自ら破りに行くようなものだから」
天音の言った言葉に、シェーラがはっとする。
「・・・でも」
まるで、その一言を発するかどうかを、酷く迷ったような。そんな響きが残った、その声は。
「助ける方法は、ある・・・」
―――そう、言った。

53ピーチ:2012/07/07(土) 10:23:30 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜儀式〜

「たすけ、る、方法・・・?」
シェーラが、途切れ途切れになりながら尋ねる。
「えぇ。でも、あなたにも協力して欲しいの」
「え?」
「・・・彼の潜在意識の中に、入る」
天音の言葉を聞き。
「―――は?」
「「え?」」
シェーラのみならず、ソフィアとシュオンまでもが、天音の方を見る。
天音は何気ない表情でどうする、と、その瞳が訴えているし、柊一達は知らん顔を決め込んでいる。
「まぁ本当は・・・私一人の力じゃ絶対に人の潜在意識に入ることなんてできない」
この二人はそれも出来ないんだけど、と呟いて、改めてシェーラを見る。
「それに、今回は私も戦力不足にしかならないから・・・」
「じ、じゃあ、あたしじゃ・・・!?」
「大丈夫」
シェーラの言葉を遮り、天音が呟く。
「あなたなら、彼を説得することができると思うから」
「へ?」
あまりに予想外のことを言われ、シェーラが素っ頓狂な声をあげる。
「ほら、私は結構、手荒な真似してたから・・・」
彼女が言っているのは、シュオンやシェーラに対することだろう。
「それに、あの黒髪君は、あなたには弱いみたいだしね?」
そう言って、天音が悪戯っぽく笑う。
「・・・どう?やってくれない?」
天音の問いに、シェーラは。
「・・・やります」
彼女の言葉に、天音がふっと息を吐いた。

54ピーチ:2012/07/07(土) 17:16:26 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜詠唱〜

―――半刻程過ぎた後。
「・・・じゃあ、始めるわよ」
「・・・はい」
いつもの陽気さはどこへやら。すっかり怯えきった表情のシェーラが、小さく頷く。尤も、彼女の陽気さを知らない天音からすれば、何か思うこともない。
「―――全世に通用する神力を有する神々よ」
天音がふっと唱え出した詠唱に、柊一達の顔色が変わる。それを見たシュオンが、
「・・・どうしたの?」
と、小声で尋ねる。
「・・・あれ、同調(シンクロ)みたいなもんなんだよな・・・」
言葉を失っている柊一の代わりに、昇が呟く。
「生死の狭間を彷徨ってる人間に対して通用する術じゃない・・・下手したら、あの黒髪君だけじゃなくて・・・」
「シェーラ達の命も無いって、こと?」
柊一の言葉を紡ぐ形で、シュオンが続けた。
「そう。でもおかしい・・・天音だって、それくらい分かって・・・」
そう呟いた直後。
「「―――あ・・・っ!?」」
二人の声が重なり、咄嗟に天音達の方を見る。
「・・・遅かったか」
「いや・・・確かに遅かったけど。これはこれで、問題ないと思うよ」
そう呟いて、彼らは既に意識のない天音とシェーラを交互に見やる。
「どうしたの?シェーラ?」
先程から全く微動だにしないシェーラに、心配したソフィアが近寄る。しかし。
「触らないで」
短く制され、伸びかけた手が、反射的に引っ込む。声の主は。
「今の二人に少しでも触れれば、確実に巻き込まれるからね」
二人が発している、その渦に。

55月波煌夜:2012/07/07(土) 18:55:36 HOST:proxy10025.docomo.ne.jp
>>ピーチ

天音ちゃん鋭いな…!
まぁヒースが分かりやすすぎるからってのもあるだろうけどw

シェーラがんばれ!愛の力で!(ぇ

56ピーチ:2012/07/07(土) 20:31:41 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

え、天音鋭いの!?ヤバイ、どうしよう・・・←つっきーキャラを目立たせないと!

うん!シェーラちゃんにはちょっと努力して貰おうと←え・・・

あのー・・・ちょーっとシェーラちゃんを傷だらけにして宜しいかな?←後でヒースに謝罪させるから!

57月波煌夜:2012/07/07(土) 21:04:34 HOST:proxyag071.docomo.ne.jp
>>ピーチ

お、怪我するの?
別に構わんよー(酷ぇ
女の子なんで顔はできるだけ勘弁w

58ピーチ:2012/07/07(土) 22:08:10 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜闇と意思・前編〜

―――そこは。辺り一面が、真っ暗だった。しかし。
「・・・あなただけは見えるみたいね」
そう言って、気のせいか重く感じる身を起こし、隣にいる少女―――シェーラの姿を捉えて呟いた。
「それから―――あなたもね?・・・黒髪君?」
この言葉に反応する人間と言えば、天音はただの一人しかいない。ヒースだ。
しかし、今の彼はその声に反応しなければ、天音を見てもいない。つまり。
「・・・その彼から、離れてくれる?」
そう言って、天音は左手首に下げた鈴をしっかりと掴む。だが。
≪・・・イイノカァ?≫
不意に、ヒースよりも頭一つ分だけ上に、ゆらりと黒い影が現れる。ただでさえ暗いはずの周りが、いくらか明るく見えるほどに。
・・・その影が、暗すぎた。
「・・・ヒー・・・ス?」
突然聞こえた声に、天音が驚いて振り返る。ヒース―――彼を縛り付けているもの―――も驚いて、天音よりも後方を見る。そこには。
「・・・シェーラ、ちゃん・・・!?」
そう。確か、彼女はシェーラと名乗ったはずだ。自分の記憶があべこべになっていなければ。
「あ・・・っ!!」
天音が小さく叫ぶも、シェーラにその声は聞こえない。すっと天音の横を通り抜け、ヒースの傍へと歩み寄る。
それを見たヒースの顔が、にぃっと歪む。
「・・・っ!?」
いきなり、シェーラの歩みが止まった。そして、彼女の首に何かが下がっている。
≪イイナァ・・・コウヤッテ自分カラ来テクレル人間ハ・・・≫
その声を聞き、シェーラが突然ぱたりと動かなくなった。
「・・・彼女に、何したの・・・!?」
≪別ニ。タダ、コレヲツケタダケダ≫
そう言って、その黒い影が何かを生み出した。
≪コイツヲツケルトサァ、何デモ思イ通リニナルンダヨナァ≫
そして、シェーラのツインテールにまとめた髪を無造作に引っ張り上げ。
≪コノ女ヲ利用スルコトダッテ出来ル≫
その歪ませた顔を更に醜く歪ませ、残忍に笑った。

59ピーチ:2012/07/07(土) 22:12:06 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

どーもでーすっ!!←テキトーすぎだww

あー、顔はナシっ!さすがに!

うん。ちょっと髪引っ張られたりするけど←え。

後は手足にちょっとかすり傷作ろうかと←人のキャラに傷ばっか作るな

60ピーチ:2012/07/08(日) 00:36:13 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜闇と意思・中編〜

その笑みを見て、天音は一つ、たった一つだけ確信したことがあった。
「あなた・・・その黒髪君と波長が合ってないでしょ?」
そう言って、天音がふらりと鈴を取り出す。それを見た影が
≪・・・イイノカァ?≫
と、ほんの少しだけ焦りを帯びた表情で尋ねる。
「えぇ。構わないわよ」
天音の返答に、ヒースの顔から表情が消える。そして。
「私は、あなたを封じるためにこれを使うわけじゃないもの」
そう呟いて、無造作に引き千切った鈴を一つ、シェーラの方に投げつけた。
≪・・・!?≫
言葉を失うヒースに、彼女はうっすらと笑みを湛(たた)えて。
「これは結界・・・まぁ、一定しか保てないけど」
だから、と言った天音の操る扇が低く唸りをあげる。
「―――今此処で、決着つけない?」
≪・・・面白イ。死ンデ後悔スルガイイ!!≫
そう言って、ヒースの構えた剣の切っ先が飛んでくる。天音がそれを交わそうとした、直後。
≪・・・ッ・・・≫
突然、彼の動きが鈍くなった。当然、天音もそれを逃さない。
彼女の持つ紅い緋扇が、影であり実態を持たない“それ”を封じ込もうとした瞬間。
シェーラの周りを囲んでいた結界―――鈴が、勢い良く無散した。
その破片が所々に当たり、彼女の手足が一気に傷だらけになる。
≪邪魔ナンダヨナァ・・・≫
「っ・・・」
≪コノ際、コノ女一人デモ構ワナイダロウ・・・贄トシテ、主ニ献上シテヤル・・・!≫
そう言ったヒースが、シェーラの乱れた髪を引っ張り、無造作に起き上がらせようとする。
しかし。
≪―――!?≫
彼の中で眠る“誰か”が、表に出ている“黒い影”の動きを止めた。

61ピーチ:2012/07/08(日) 01:02:27 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あ、質問いーかな?

あのさ、エインズワーズ家の隣に、バカでっかい邸作っていいかな?

もしダメだったら速攻拒否っていーよーww

62月波煌夜:2012/07/08(日) 10:40:01 HOST:proxy10019.docomo.ne.jp
>>ピーチ

手足だけにしてくれてありがとう☆


構わないけど、エインズワーズ家の屋敷の周りの敷地は馬飛ばさないと端から端まで辿り着けないくらいバカでかいから注意w
あとエインズワーズ邸よりできるだけ小さめでよろしく!
一応エインズワーズさんちは広大な土地を統べる大富豪なので←

63ピーチ:2012/07/08(日) 13:05:12 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

わーっ!!ありがとー!!←馬鹿でごめん・・・

うん、分かった!なるったけ小さい邸ね!

・・・にしても、馬飛ばさないと端から端まで辿り着けない・・・!?

どんだけ広いんだ、エインズワーズ!?

64ピーチ:2012/07/08(日) 14:28:00 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜闇と意思・後編〜

「え・・・」
そう言ったきり、天音は声が出ない。正確には、言葉が出てこない。
―――・・・そいつに、シェーラに触るんじゃねぇ・・・っ!!
そんな声が聞こえ、天音がはっと我に返る。あの声は、恐らくヒースの声だ。
≪・・・人間如キガ・・・邪魔ヲスルナァ!!≫
そうは言うものの、ヒースの足は、地に根でも生えたかのように、全く動かない。
―――・・・人間如き、だぁ?
「・・・人間如き、ですって?」
力強い声と凛とした響きを持つ声。二人の人間の声が重なる。そして。
「その人間如きに足止めを食らわされるような化け物に・・・そんなこと言われる憶えはないわ」
無情に言い放ち、閉じかけた扇を再び開く。しかし。
―――突然、シェーラの周りが大きくうねった。しかも、タイミングの悪いことに。
「ん・・・―――何これー!?」
・・・タイミング良く、いや、無茶苦茶タイミングの悪い所で、シェーラが目を覚ましたのだ。
「ちょ・・・離れてっ!!」
天音の怒号に、シェーラがえ、と呟きながらも、慌てて彼女の方に来る。
「あ、あの・・・?」
シェーラが、己の全身を見て首を傾げている。いつの間に、こんなに切り傷だらけになったのだろうと。
「あぁ・・・ごめんね。後で説明するから」
「・・・?はい・・・?」
シェーラの返答を聞き、天音がすぐにヒースの方に視線を戻す。
「あの・・・どうしたんですか?」
彼女の発している気が気なため、さすがのシェーラでも少し声をかけるのに有期が必要だった。
「―――彼、まだ戻ってない」
さっき、少しだけ“本物のヒース”が出てきた事を教えると、シェーラがとんでもないことを言い出した。
「じゃあ、あたしが説得します」
「――――――は?」
思わず、固まってしまった天音である。
「ち、ちょっと待って?あなた分かってる?今の彼は・・・」
「分かってます。危険だってことくらいは」
「じゃあ何で・・・!?」
「だって、あたしヒースのことなら良く知ってますもん」
そう言う問題じゃない、と言いたいのを必死で堪(こら)え、天音が口を開く。
「分かってるなら、止めた方がいいわよ・・・」
「・・・お願いします」
結局、シェーラの根気に天音が負けて、ほんの少しだけね、との注意を受けながらシェーラがヒースの傍へ歩み寄る。
「ヒース起きてるー?」
唐突に大声でそんなことを言い出したシェーラだが、その目は真剣そのもの。
「もし起きてるんなら、いい加減出て来なさいよー?」
ソフィア様やシュオン様だって待ってるよー、と言っている彼女はまるで笑っているようで。
「ねぇ、早く戻ろう?」
そういった直後―――。
シェーラの周りに、無数の影が現れた。

65ピーチ:2012/07/08(日) 20:41:51 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜救出〜

「―――あ・・・」
シェーラが呆然と呟き、天音が咄嗟に鈴を振る。その鈴達が奏でる涼やかな音色に、彼女を取り巻いている影の集団が驚いて振り返る。
「今の内よ」
「え?」
「え、じゃなくて。・・・彼を呼び起こすんじゃなかったの?」
天音の言葉に、シェーラの瞳に希望の灯(ひ)が灯(とも)る。
「ヒース!今だったら出てこられるでしょ?あんたが出来ないわけないよね?」
そう、挑発的に尋ねるシェーラの言葉に反応するかのように、ヒースの身体がピクリと痙攣する。
―――・・・ったりめぇだろ・・・が・・・!
そう呟いた青年の声が、どこからか聞こえた。
「・・・もう少し」
天音の言葉に頷いて、シェーラが更に挑戦的に言葉を紡ぐ。
「あ、でも・・・ヒースには無理があったかな?」
その言葉を聞いた瞬間。
「んなわけあるかぁ!!!」
そんな怒鳴り声が聞こえ、全身のバネを最大限に生かしながら飛び起きるヒースの姿が視界に映った。
「―――さて、と・・・」
ヒースが飛び起きたと同時に、とてつもなく恐ろしい殺気を放つ天音もまた、シェーラの視界に映る。
「どうやって謝罪してもらおうかしら?彼女を此処まで傷だらけにしてくれたことに対して・・・」
そう言ってにこやかに笑う天音。だが、その瞳は少しも笑っていない。むしろ、殺気に満ち満ちている。
「まぁ、一番手っ取り早い方法は―――やっぱり、」
ふっと呟き、彼女が手に構えた扇を開く。そして。
「―――・・・桜吹雪の桜色よ。向日葵(ひまわり)の黄色よ。鮮やかな銀杏のオレンジ色よ。・・・真っ白な、全ての始まりの色である白よ」
ふらりと、ゆっくりと扇を振り。静かに、ゆっくりとその力を溜めていく。
―――やがて。
「黒き渦よ。全てを飲み込む闇の色よ。その力を、今こそ解放せよ」
言った瞬間。
「「・・・あ・・・」」
シェーラとヒースが、同時に呟く。
≪・・・覚エテロ・・・!!≫
そう言い捨て、その影がふっと姿を消した。
「―――・・・もう、大丈夫。かな・・・」
「え?」
天音の言葉に、ヒースが何が、と言うように問い返す。天音はそれには答えず、
「ちょっと、ごめんね・・・」
そう言い、両手をヒースの腕の前で交差させる。
「これは応急処置だから。後から、改めて傷の手当てはさせてもらうわよ」
それだけ言って、彼女はシェーラに優しく言う。
「さて・・・もう大丈夫だから、私達は戻りましょう?昇達が周りを固めてくれてるはずだから」
「あ・・・はい」
シェーラの方もそう答え、天音の左手に右手を添える。
「じゃあ・・・あなたも後からしっかり起きなさいよ」
最後にそう言い包め、天音達がものの一瞬で消え失せた。

66ピーチ:2012/07/08(日) 22:58:20 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜約束〜

―――天音達の身体に、離れていた魂が戻ってから数分後。
シェーラが、ばちんと言う音が聞こえそうな程に勢い良く目を開け、左手を腰に、右手を天に突きつけながら叫んだ。
「ヒースが元に戻りましたっ!!」
・・・なぜ、そのポーズをとったのかは分からないが。
「・・・あれ、何の意味があるんだ?」
昇の素朴な問いに、柊一は苦笑しながら、
「さぁ・・・」
とだけ答えた。と言うよりも、それしか答えられない。
「良かったわね。・・・ところでシェーラ。あなた、その手足どうしたの?」
「へ?」
彼女の主・ソフィアの問いに、シェーラが首を傾げながら己の手首や足を見る。
「あれぇ?これって・・・」
「言い忘れてたけど、彼の潜在意識の中でついた傷は、こっちにも出るわよ」
額を押さえた状態で、目覚めたばかりの天音が言った。
「おわ。お前、いつ起きた?」
大して驚いてもいないような昇の問いに、天音は短く、
「今」
とだけ答える。そして。
「黒髪君は・・・まだ起きてないみたいね」
そう呟いてから、彼女はシェーラの方を向く。
「・・・髪、乱れてるわよ」
天音の忠告を受け、シェーラが己の頭に手を置く。
「え、何で!?」
どうやら、彼女は気を失っていた時のことを、綺麗さっぱり忘れているらしい。その方が、楽ではあるが。
「とりあえず、傷口見せて」
「え?」
「その傷は、私の方に移しておくから」
そう言ったと思った直後、ヒースの小さな呻き声が聞こえた。
「―――っつ・・・」
「ヒースっ!!」
突然のことに、さすがの天音も反応が遅れる。いきなり怒鳴られたヒース―――ヒースにはそう聞こえた―――は、
「な、何だよ!?いきなり!?」
と、目覚めたばかりにも関わらず、大声を張り上げる。
「・・・大丈夫?」
「・・・へ?」
あまりに唐突なシェーラの問いに、ヒースは逆に困惑する。しかし。
「ちょっと・・・彼女にはちゃんとお礼言っておきなさいよ。あなたを助けるためにって、わざわざ私の協力要請を飲んでくれたんだから」
そう言って軽くヒースを睨みつける天音。それを見て、え、とシェーラを見るヒース。
「・・・そうなのか?」
「うん、あたしが勝手に言ったことだけどね」
あはは、と笑うシぇーラを見て、天音がもう一つ
「それと・・・彼女がそこまで傷だらけになったのも、あなたの潜在意識の中に潜り込んだからよ?」
と付け加える。
「え、ちょ・・・はぁ!?」
さすがに、それに関しては驚きを隠せない様子のヒースが、再びシェーラに確認を取る。
「ま、マジかよ?それ・・・」
「あ、うん・・・」
そう言ったシェーラの青灰色の瞳に、無意識の内に大粒の涙が溜まっていて。
「し、シェーラ・・・?」
突然泣き出したシェーラを見て、ヒースは何があったとうろたえる。
「よか・・・たっ、もし、帰って来なかったら・・・っ!」
泣きながら、途切れ途切れに言うシェーラの言葉に、ヒースが更にうろたえて。
「わ、分かった!俺が悪かったから!だからその、すいません・・・」
などと、最終的には語尾が聞こえなくなっていく始末。
「じゃあ・・・」
次にシェーラの発する言葉がどんなものか気になり、ヒースだけでなく、ソフィア達までもが耳を傾けている。
「絶対、危ないことしないでね?」
「―――え?」
あまりに当たり前すぎることを言われ、ヒースの目が大きな円形になる。
「今回みたいなことは、絶対しないでね」
そう言って、再び青灰色の瞳を潤ませながら、シェーラがそう尋ねる。
「―――あーもう!分かったよ!絶対とは言い切れねぇけど、なるべく注意する」
ヒースの言葉に、シェーラの瞳から、涙が消え去る。
「それで・・・いいだろ?」
そう尋ねるヒースに、シェーラがうんと答えた。

67ピーチ:2012/07/09(月) 01:41:47 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜あだ名〜

「―――ねぇ、黒髪君」
「だから黒髪言うなっ!」
それだけはどうしても認めないようで、天音の言葉に即座に反応する。
「仕方ないじゃない。名前憶えてないんだから」
天音のあっさりとした返答に、ヒースがはぁっと息を吐き出し
「・・・ヒースだ。これで名前も憶えただろ。今後一切、黒髪だけは言うな」
「・・・じゃあ、黒目君」
「お前なぁ!?」
天音の何気ない一言で。
「あ、いいんじゃないかな?それ」
そう言ったシュオンを筆頭に、ソフィアやシェーラが一斉に喚き立てる。
「えぇ。そうかも知れないわね」
「御嬢様ぁー!?」
「じゃあ、あだ名決定ですねー」
ヒースの抗議も虚しく、シェーラの一言で、シュオンのアイスブルーの双眸がふと細められ。
「・・・そう言えばヒース。そっちの二人のどっちかと手合わせするって言ってなかった?」
「・・・へ?」
そうだ。ヒースが憑かれる前に、昇の方から誘いがあったのだ。それを思い出したヒースが、
「じゃ・・・やるか?」
そう言って、己の剣を構える。
「あぁ・・・別に構わねぇけど、だったら剣交換しねーか?」
「は?」
昇の言葉に、ヒースが目を丸くする。昇は昇で、
「だってさ、今の俺の剣とお前の剣とじゃ、明らかに勝敗が見えてる。百パーセント、俺の勝ち」
ときっぱりと断言する。
「な・・・っ」
言われたヒースは、自分以上の人間など、ジル一人で十分だと内心で盛大に毒づく。
「そうね。確かに、勝敗は目に見えてるわ」
天音が唐突に口を挟み、そう呟いた。
「え?」
「昇が今持ち合わせてる剣は、普通の剣じゃないもの。とんでもない魔力がこもっているようなものよ」
そう言った天音の後を、柊一が繋げる。
「だから・・・昇とやりあうなら、対等にってことで」
苦笑しながらそう言い包めた柊一を見て、ヒースが呟く。
「・・・俺、あんたの方も結構強そうに見えるけどなぁ・・・」
「おいおいおいおい」
ヒースの言葉に、柊一が慌てて答える。
「俺は剣なんて全く出来ないよ。一時期、剣道やってくらいだから」
「へぇ・・・まぁいいや。どうする?やるか?」
ヒースの挑発的な言葉に、昇が
「いいんだな?交換しなくて?」
と確認を取る。
「あぁ、構わねぇけど?」
言った後に立ち上がろうとしたヒースが、なぜかふらりとよろめく。
「っと・・・」
そう呟いたヒースをみて、天音が軽く腕組みをした。あれは、恐らく。
「ちょっとごめんね」
そう言って、何の許可もなしに、突然ヒースの腕を捻り上げる。が
「え、お前、何やって・・・」
そう言うだけで、ヒースは痛いと言って叫ぶことをしない。
「―――やっぱり・・・!」
「どーした?」
「・・・何か、軽い毒盛られてたから。とりあえず私に移しておくわ」
言うや否や。ヒースの意思を完全に無視し、彼の右腕に両手を添えた。

68月波煌夜:2012/07/09(月) 09:26:59 HOST:proxy10056.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ヒース生還おめ!
っていうか一番天音ちゃんが苦労してないか…?大丈夫か…?


ヒースはやっと帰ってきたばっかなのに一戦交えちゃうんだね!
って、え、ヒース負けないよね…?最強伝説・ヒースの体裁が…奴の唯一の取り得が…
これからの番外編の内容が揺らぐぞ!?

69ピーチ:2012/07/09(月) 09:39:21 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

どーもっ!

ううん!今回一番苦労したのはヒースでもなく天音でもなく!

シェーラちゃんでございます!

だってあれだよ?普通の何の能力も持たない女の子が人の潜在意識の中に潜り込むんだよ!?

あ、うん!まぁ、ヒースも楽しませる予定だし。結果的には昇が飛び入り参加してきたジルと共にヒースにやられちゃうつもりだからww

ヒースって剣好きだよね・・・?

70ピーチ:2012/07/09(月) 09:59:52 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜浅毒(あさどく)〜

「へ?」
突然、理解不能な状況に陥り、ヒースが素っ頓狂な声をあげる。しかし、天音がそんなことを気にするはずもない。
「黙ってて。傷口の手当てだけするから」
そう言って強引にヒースの右腕を己の左腕に添えさせる。
「き、傷口って・・・何もねぇだろ?」
「あるわよ。あなたがさっきよろめいたのが、その証拠」
いともあっさりと言い放ち、振り返らずにその名を呼ぶ。
「・・・柊」
「ん?」
「悪いけど、他に何かいないか探してきてくれない?」
同じことを何回もやりたくない、を理由にして、柊一にそう頼む。それに対し、彼は
「うん。いいよ」
特に異論も何も唱えず、あっさりと部屋を出て行った。
「―――うん、まぁこんなものかな」
そう独り言を一ついい、ヒースの腕を再び捻(ひね)りあげる。
「って・・・!?」
短く唸(うな)り、その後すぐに
「何すんだよお前!?」
と、速攻で天音に食いつく。しかし、天音はそれには答えず
「うん。大丈夫ね」
などと、何やら一人で納得している。
「もう大丈夫だと思うわよ。・・・どうせ昇に挑むなら、万全な体調の方がいいでしょ?」
そして悪戯っぽく笑い、ヒースに問う。ヒースは、
「・・・ったりめぇだろ?まぁ、俺が負けるわけねーけど?」
と言って、剣を持ち、外に出る。
「早く来いよ。やるんだろ?」
昇に向かって挑戦的にいい、自分はさっさと外へ向かう。ソフィア達も、やはり気になるのかしっかりとついていく。
「あ、こらっ!行くに決まってんだろが!」
慌ててヒースを追っていく昇と入れ替えになる形で柊一が入ってきて。
「もう、何もいなかったよ」
とだけの報告を受ける。
「そう・・・今から始まるみたいよ?」
「そっか・・・観てみようかな」
まるで、スポーツ観戦のように軽く言う柊一を見て、
「・・・スポーツじゃないわよ」
と、一応天音が注意を入れる。
「分かってるって。じゃ、早く行こう?」
「えぇ・・・そうね」
既に残った二人だけの会話が、そこで途切れた。

71月波煌夜:2012/07/09(月) 11:01:42 HOST:proxyag110.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ジルも参加するんかい!

…これは結構未来を行っている話だったの…!?

ジルは兵士になってるのかな??じゃあ、元暗殺者二人の説明いる?

72ピーチ:2012/07/09(月) 11:06:43 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うん、暗殺者として参加させるつもりだったのだ〜ww←だからバカでっかい邸の設定を尋ねたww

・・・うん。結局兵士になっちゃってるけどww

そっちの方が面白そうだし〜ww

是非っ!宜しくお願い致します!!

あ、それと、ユーリエちゃんは未だに結構アブナイ感じの設定にするつもりw←ナイフ飛ばしたりとか・・・

73ピーチ:2012/07/09(月) 11:23:47 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜手合わせ〜

「―――じゃあ、始めっぞ?」
そう言ったヒースは、向かい側に立っている昇に尋ねた。
「あぁ、じゃあ・・・」
そう呟いて、昇が片手を挙げる。そして。
「・・・え?」
彼の右手に、今まではなかったはずの剣が、握られている。
昇が持っているそれはまるで、月光の淡い光をそのまま流し込んだかのよう。それを見て、ヒースは。
「っ・・・いいモン、持ってんじゃん?」
と、しかし不敵に笑う。
「まぁな。これは、俺専用だ」
そう、不敵に笑い返す昇を見て、ヒースがぼそりと呟いた。
「んじゃ、始めようぜ?」
「・・・負けて、後悔するなよ?」
昇の言葉を最後に―――。
――――――試合開始(ゲームスタート)の火蓋が、今落とされた。

74月波煌夜:2012/07/09(月) 12:05:19 HOST:proxyag081.docomo.ne.jp
>>ピーチ


じゃあジルたちが解放されてから1ヶ月後くらいのお話ってことで!


簡単でごめんだけど一応↓


○ジル

元暗殺者。
大地色(焦げ茶系)の長めの髪、山吹色(金色に近いオレンジのイメージ)の瞳。
多分26歳くらい。かなり痩せている。
とにかく戦うことが大好きで、正々堂々とした勝負を好む。
現在はエインズワーズに仕える兵士として修練に励んでおり、結構楽しんでいる様子。
超のつく鈍感であり、長い間相棒だったユーリエが抱える、彼への想いに気づく様子はゼロ。

一人称は「オレ」または「オレ様」。口調は……うーん、小さい「ぇ」とか「ぁ」はカタカナになるという独特のもの。詳しくは番外編を見てくれ!



○ユーリエ

赤い髪に金の瞳を持つ美人。
すらりとした体型で、泣きぼくろがある。

元暗殺者。
暗器の扱いを得意とし、よくその類い希な技術を生かしてナイフやら針やらを投げつけてはアホなジルに制裁を加えている(脅すだけで実際には傷つけないが、本気でキレると子供っぽくなり手や足が出る様子)。
しかし本来の性格は温厚で優しいお姉さん。
現在は過去の傷を乗り越え、再びメイドとしてエインズワーズ家で働いている。
25歳(本人覚えてない)。



で、二人の扱いなんだけど、ソフィアとシェーラ、ヒースは超寛大なので全部許して、普通に仲良くやってる。

シュオンもユーリエは許してるけど(女の子にひどいことはできない)ジルをヒース以上にこき使ったり毒を吐いたりしたりしつつもそれなりには認めている様子。




やー、まさかこの二人をピーチに書いてもらうことになるとは思わんかったw

なんか分かんないことあったら遠慮なくどーぞ☆

75ピーチ:2012/07/09(月) 12:17:59 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜弱点〜

剣と剣を交し合う、言葉には表しにくい音が響き渡る。
「・・・っと」
「避けてばっかじゃ・・・試合になんねぇよ」
そう言って一瞬の隙も与えず、相手の至る所を狙って剣を突きつけているヒースに対し、彼の相手である昇は
「まぁな。・・・でも」
と、途中で言葉を切る。
「あ?」
ヒースは、区切られた言葉に対して不満そうに聞き返す。
「なんつーか・・・やっぱり、先に知るものって相手のやり方だよなぁ、と」
瞬間。
カラン―――と音がした。そして。
「―――・・・え?」
ヒースの掌に収まっていたはずの剣が、ない。
「お前さぁ、無意識の内に剣の握りが甘くなってんの。だから、俺如きにやられたわけ」
その指摘を受けたヒースが、思わず自分の両手を見る。滑り落ちた剣を持っていたはずの両手からは、いつの間にか力が抜けていて。
「どーする?その腕、結構堪(こた)えてそうだけど・・・まだやるか?」
昇の問いに、ヒースは
「・・・るに、決まってんだろ・・・」
と、力強く返す。
「よし」
ヒースの返答を聞き、昇が己の剣を、ヒースに投げてよこした。
「へ?」
「それ使えよ。んで、そっち貸せ」
命令口調でそう言って、左手でヒースの剣を渡すよう催促する。
「・・・ほらよ」
ヒースも諦めたか。彼の剣を握り、自分の剣を投げる。
「―――んじゃ」
改めて、開始(スタート)。

76ピーチ:2012/07/09(月) 12:23:12 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あああああありがとう!!ほんとに!!

・・・え、シュオン様がまさかのジルをこき使ってる的な?

じゃーさ、ソフィア様のことはジルはヒースと一緒でいい?←御嬢様

んで、ユーリエちゃんはシェーラちゃんと一緒でいい?←ソフィア様

ごめんね。何か質問ばっかで・・・。

77月波煌夜:2012/07/09(月) 12:45:11 HOST:proxy10053.docomo.ne.jp
>>ピーチ

呼び方一覧(今決めた)


○ジル

「シュオン」
「お嬢様」(ヒースの「御嬢様」は固さを出したくて決めたからね)
「ヒース」
「シェーラちゃん」

全員にたいして敬語はなし。
ごーいんぐまいうぇいです。


○ユーリエ

「シュオン様」
「ソフィアちゃん」(お嬢様っていうよりは可愛い年下の子って感じに捉えてる)
「ヒースくん」(ひらがなよろしく)
「シェーラちゃん」

シュオンにだけちゃんとした敬語\(^o^)/



ヒースがんばれー!

78ピーチ:2012/07/09(月) 13:09:56 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

さんきゅー!これ元に頑張るぞ☆

そろそろジルを登場させるつもりw

79ピーチ:2012/07/09(月) 14:01:26 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜乱入者〜

「おーっと」
そう呟きながらも不敵に笑った昇を他所に、ヒースは額に汗を浮かべながら。
「っそ・・・」
と、荒い息を吐き出す。
「あれ?さっきの威勢はどーした?」
カン―――と音がして、二つの剣が交じり合う。
ふっと笑みを浮かべ、昇が小刻みに剣を揺らす。その度に剣が振動する。剣を握るヒースの手にも、それが伝わる。
「ちょっと昇?あんまり本気出さないでよ?」
軽く注意を促す天音に、冷静な昇の言葉が返ってくる。
「ダメ。勝負は常に真剣に。・・・じゃ、ねーの?」
昇の言葉に、天音がうっと言葉に詰まる。そしてヒースも、
「・・・だな。手加減なんか、絶対にすんじゃねぇぞ・・・」
そう言って、剣を持ち直す。
その時。
―――カラン、と音がして、剣が滑り落ちる。
「「・・・え?」」
ヒースと昇。二人の声が、見事にシンクロした。
滑り落ちた剣は。
「な、んで・・・?」
昇が、空っぽになった両手を呆然と見ている。そこに。
「ちょーっと無理しすぎなんじゃねーの?ヒース?」
そう言った青年は、昇がヒースから借り受け使っていた、弾き飛ばされた剣を持っている。
焦げ茶色の、少し眺めの髪に金を連想させる山吹色の瞳。見た目の年齢よりもかなり痩せて見える彼は、いつの間にか昇の背後に立っていて。
「じ・・・ジル!?」
思わず、ヒースが青年を見て大声を出す。
「お、お前・・・他の兵士と一緒に居たんじゃ・・・」
「まァな。でも、こっちでまた面白そうな音が聞こえてきてよぉ」
来てみたら、案の定ヒースが居た、とのことだそうだ。
「なーんか・・・こいつみてっと暗殺者(アサシン)の頃の血が疼くなぁ」
「やめろ。こいつ馬鹿みたいに強いからやめろ」
「なーに言ってんだよ?オレ様の強さ知ってんだろ?見くびってんの?」
いやそうじゃなくて、と言葉を濁すヒースだが、あっけに取られている昇を見て、小さく言った。
「・・・悪い。勝負に水差しする奴がいて」
「・・・いや、それは構わねぇけど」
そう言って、昇はふっと笑い、
「やっぱり、勝負は一対一、だよな?」
と問うた。

80ピーチ:2012/07/09(月) 15:11:57 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜二人の善人〜

「あっそ」
そう呟いて、如何(いか)にもつまらなさそうに剣を返すジル。
「ったくよ・・・最近、全く楽しみねーよなァ」
「―――ジル。そんなに楽しみたいなら、今すぐ炎の中にぶち込んであげようか?」
満面の笑みを湛え、しかしとてつもなく恐ろしいことをさらりと言ってのけるシュオンを見て、ヒースが
「やめろ。それこそやめろ」
と、焦りまくりながら言う。
「あはは、冗談に決まってるじゃない?」
・・・冗談に聞こえないのが恐ろしい。
「・・・シュオンさァ、何かあっさりと酷いこと言うよなァ」
「え?僕は全然、酷いこと言った覚えなんてないけど?」
にこやかに、しかしはっきりと「自分は何も言っていない」アピールをするシュオンに、ジルが冷めた視線を送る。
「なァ、お嬢様ァ?シュオンに何とか言ってくれよ?」
そう言いながら、ジルがソフィアの方に視線をやる。
「・・・炎の中にぶち込むって言うのは、さすがにどうかと思うわ」
まだ毒薬を口の中に投与した方がマシよ、との意見を述べるソフィアに、シュオンは。
「あ、そうだね。じゃあ、今夜にでも、ジルを実験台にして試してみようかな。新しい毒薬の威力」
ぱっと花が咲いたように、明るい表情になるシュオンに、ヒースが慌てて
「や、やめろおぉぉぉぉおおお!?」
と叫んでいる。さすがのジルも、
「うひゃー・・・シュオンが本気でしないわけねーわな」
と呟いている。
「・・・で、俺はどーすりゃいーの?」
「・・・さぁ。待っとけば?」
昇と柊一が呟いた直後。
「―――何の音?さっきの」
そう言って、出てきたのは。
―――真っ赤な炎を思わせる紅蓮の髪に、美しい金の瞳。すらりとした身体は何一つ無駄がなく。
「ゆ、ユーリエさん!」
そう言ったのは、乱れた髪を整え終えたばかりのシェーラ。そして、ユーリエと呼ばれた彼女はゆっくりとシェーラの方を向いた。

81ピーチ:2012/07/09(月) 20:43:24 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜強さ比べ・前編〜

「シェーラちゃん・・・どうしたの?その髪」
何気なく尋ねるユーリエに、シェーラが言葉を濁しながら
「あー・・・ちょっと、いろいろありまして・・・」
と苦しい誤魔化しを試みている。
「・・・そう。あら?あなた達は?」
そう言って、今度は天音達の方を向く。
「ちょっと・・・いろいろあった人達で」
シェーラがそう答え、天音達は気付かぬふり。
「・・・で、ヒースくん達は何をしてるの?」
「あー・・・ちょっと、な・・・」
ヒースが答え、その後あっと声をあげる。
「え、お前、結局またやんのか?」
「へ?」
ヒースが、左手で腕組みをした昇を指差し、そう尋ねる。
「あ、あぁ・・・別に構わねぇけど・・・」
「じゃあ、もうしばらく相手して貰うぜ・・・」
そう言って、ヒースが再び剣を構える。それを見た昇が
「・・・あぁ、後で泣いて後悔するなよ?」
と言って、同じように剣を構える。
「・・・じゃーな。頑張れよー」
ジルは、つまらなさそうにそう言って、傍にあった木にもたれる。
これは、初めてじゃない。
―――開始(スタート)を知らせる声は、要らない。

82月波煌夜:2012/07/09(月) 21:02:33 HOST:proxy10080.docomo.ne.jp
>>ピーチ

おお…!
まだ月波が書いてない未来の話も無理なく完璧に仕上げているだと…!

もうこの出来事、これからの番外編にもちょこっとだけ自然な感じでいれちゃお(`・ω・´)


それにしてもジル、迷惑極まりねーなw

83ピーチ:2012/07/09(月) 22:05:17 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あぁぁぁ!!ごめん!マジごめんっ!!

どーも未来系書くのが好きで・・・←自分のでもノートには実際に書いてないやつばっかw

え、入れてくれるの!?ありがとー!!

・・・あ、ジルね。まぁジルにも後々ヒースに協力して貰う予定だからw

84ピーチ:2012/07/10(火) 22:35:14 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜強さ比べ・中編〜

試合(ゲーム)が始まってから三十分程が経過した頃。
「っ・・・!?」
今まではある程度の余裕があったように見える昇の剣が、ヒースの剣に勢い良く弾き飛ばされる。
(こいつ・・・)
そう思った後、彼が考えたのはただ一つ。
―――完っ全に俺の弱点掴みやがったな・・・。
昇が自覚している、ただ一つの弱点。それは。
―――間合いが近すぎる時に、その姿を捕らえられなくなること。
今のヒースは、昇の背後に回り込んでいた。当然、昇の視界に映るものはない。
「―――っは・・・」
面白い。
喉の奥で呟き、昇の灰色がかった黒い双眸が、カッと見開かれた。

「・・・っ!?」
今までは、少しの余裕があった昇の表情が、突然崩れた。
「・・・え?」
ヒースの今居る位置は、昇の背後。完璧な真後ろ。その時、今まで焦りの表情しかなかったヒースの顔に、僅かな笑みが漏れた。
「―――分かった」
今までは余裕の笑みを崩さなかった昇のそれが、突然崩れた。
つまりは。
「お前さ―――後ろ弱いんだ?」
そう言って。ヒースが昇の掌に収まっている剣を弾き飛ばした。

85ピーチ:2012/07/11(水) 17:55:58 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜強さ比べ・後編〜

「うわ・・・っ!」
突然のヒースの反撃に、思わず昇の体勢が崩れる。
仮に、単なる遊び(ゲーム)だとしても。真後ろを取られたら打つ手がない。
「・・・しゃーねぇなぁ・・・」
今、彼の手に握られている剣は、ヒースのもの。
そして、ヒースが使っているものが、昇のもの。
―――本当は、こんなことはしたくないけれど。
小さく言い訳をしながら、剣を大きく振りかぶる。
「お前・・・何考えてる?」
ヒースが、いぶかしみながら小さく尋ねる。あれほど強かった彼が、突然こんなに甘くなるはずがない。常に真剣勝負だと、そう言ったのは昇自身だ。
「・・・悪いな」
そう呟き、昇の手がふっと緩む。当然、ヒースの額を狙っていたそれは。
―――なす術もなく、彼の額に落ちて―――
「あ・・・っ!?」
―――来なかった。
「・・・へ?」
落ちる寸前、ヒースの剣を弾き飛ばした何かが、“彼”の掌に収まっていた。
「・・・ジル?」
「ちーっと、油断しすぎなんじゃねェの?ヒース?」
そう言って、“それ”を妖しく黒光りさせているジルが持っているものは。
「・・・悪かったな」
ばつが悪そうに呟くヒースに、ジルがにやりと嘲(わら)う。
「んじゃ、そろそろ仲間に入らせてもらおうかァ?」
言ったと同時。ジルが光らせていた剣を、昇に向けた。

86月波煌夜:2012/07/11(水) 19:16:19 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp
>>ピーチ


すげえ…!
数百単位のプロの兵士を捌くヒースが苦戦しておるよ…!
昇くん最強だな\(^o^)/


ジルの口調もパーフェクトだね!さすがピーチ!

87ピーチ:2012/07/11(水) 22:14:01 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あー・・・またつっきーキャラが目立ってなーい・・・((泣

ほんっとごめんね!!後から目立つ予定なの!ヒースが!!

もーちょいのご辛抱を!←タメと敬語を合わせんなw

88ピーチ:2012/07/12(木) 18:34:14 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜対決・前編〜

「え、何、お前も入んの?」
「いーじゃん。お前だって卑怯な手使ったわけだし?」
ジルの容赦ない一言で、昇がうっと言葉に詰まる。やがて。
「・・・わぁったよ、ただし。こっちは一人なんだから、二人で攻めるのはナシな?」
そう確認を取った昇に対し、ジルが不満そうに表情を歪めた。
「えー?俺様もっと派手にやりてェなァー」
「文句言うな。それにこいつ、かなり強いぞ」
ヒースの言葉に、ジルがにやりと嘲(わら)う。
「俺様に勝てる奴がいるわけ・・・シュオン除いているわけねーだろー?」
律儀に訂正を入れ、再び笑い出す。そんなジルの言葉に、昇は。
(あの金髪に負けた?嘘だろ?)
心の内でそう呟き、彼の言う金髪の青年を見据えた。
―――同時。
「うわっ!?」
突然、昇の視界に、細身の剣が映った。慌てて、それを払った。
が。
「ざんねーん」
ジルの言葉が、頭上から降りかかった。

89ピーチ:2012/07/12(木) 21:11:17 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜対決・中編〜

「ってぇ・・・」
右肩を押さえて小さく呻き、しかし痛みを思わせぬ動きで剣を構える。
「へェ、案外やるじゃん?」
ジルが、昇の動きを見ながら軽く呟く。
昇は、ジルの言葉を無視しながら、勢い良くその構えた剣を光らせる。
しかし。
「お前さ―――段々、いい加減になってねぇ?」
ヒースが呟き、ジルがきりつけた箇所とほぼ同じ位置を斬りつける。当然、今まで押さえていた痛みが倍になるわけで。
「・・・っ!!」
昇が、声にならない悲鳴を発する。それを見て、さすがに天音達も
「ちょっと・・・大丈夫!?」
と、駆け寄りながら尋ねる。
「・・・馬鹿、言ってんじゃねぇ、よ・・・こんぐれぇで、くたばるかっての・・・」
言いながらも。昇は大量の血が吹き出ている右肩を、爪跡が残る程に強く抑えている。
「この場所・・・まさか・・・」
「平気だって、言ってんだろーが・・・」
そう言って、彼が左手で剣の刃を握る。その直後。
―――真っ赤な、鮮血が散った。
「―――っ・・・・・・!!」
息の止まるような感覚に見舞われた昇のその傍では、ジルが己の剣を見て満足そうに笑っている。
「あー、この感じいいなァ。最近、まるで忘れてたぜー」
笑いながら、心の底から満足そうに笑い、改めてそれを振りかぶろうとする。
が。
「・・・おい、もう止めとけ」
不意に、ジルの腕を誰かが掴んだ。ヒースだ。
「あ?邪魔すんの?」
「お前はやりすぎ。殺していい、なんて条件があったか?」
ヒースの言葉に、ジルが心底つまらなさそうに剣を下ろす。が、次の瞬間。
ジルが目を輝かせながら、昇の後ろにいる人間―――柊一を誘(いざな)った。

90ピーチ:2012/07/12(木) 21:30:47 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜対決・後編〜

「なァ。お前、俺様とやんねェ?」
ジルの言葉に、柊一が少し遅れて反応する。
「・・・え?俺?」
「そ。お前が俺様に勝てたら、そいつのことは見逃してやるけど」
「は?」
ジルの言葉の意味が理解できず、思わず柊一が聞き返す。
「だーかーらー。俺様に勝てなかったら、そいつをぼろぼろにするってこと」
それを聞いて、柊一の顔から、表情が消える。同時に、昇も。
尤も、昇の場合は。
「馬鹿止めろ!そいつ尋常じゃねぇぞ!?俺に軽く習ったことがあるくらいのお前が勝てるわけねぇだろ!?」
そう。自分を囮(えさ)に、柊一を殺しかねない。あの男なら、ほぼ百パーセントの確率で。
「絶対無理だって!悪いこと言わねぇから止めとけって!!」
しかし、昇の抗議も虚しく。
「つまり・・・俺が受ければ昇は安全ってことだよね?」
柊一が、そう確認する。つまり。
「・・・やるんだなァ―――?」
ジルの嬉しそうな声に、柊一は薄く笑う。
「うん。まぁ、俺は剣術とかって皆無だけど」
「だから止めろって!!」
昇が言いかけた時、天音が素早く口を挟む。
「動かないで!傷口移すから!!」
そう怒鳴られ、昇がしぶしぶ大人しくなる。
そんなことをしている合間にも。
「・・・んじゃ、始めるぜ?」
にやりと嘲(わら)うジルに対し、柊一もふっと不敵な笑みを浮かべ。
「―――容赦は、してね?」
―――それが、試合開始(ゲームスタート)の合図になる。

91ピーチ:2012/07/13(金) 07:38:07 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜“確実”と“不確実”・前編〜

“―――容赦は、してね?”
柊一が自分で言った通り、間合いも剣の振り方も全てがバラバラ。しかも、ほとんど攻めることがない。ただ避けるだけ。
「へェ・・・こういう所はシュオンそっくりだなァ」
そう呟き、しかし鋭い切っ先を思い切り突きつける。
「―――でもな」
口の端を吊り上げながら、ジルが言う。
「避けてばっかじゃ、俺様を倒すことはできねェぜ?」
言って、容赦なく柊一の持っている剣を弾き飛ば―――
「・・・え?」
―――されなかった。今でも、彼の掌に納まった剣は、しかし少し刃が欠けている。
さすがの昇も、驚いて目を見開いている。ジルもまた同様。
「・・・へェ?さっすが俺様が見込んだだけあるなァ・・・」
ジルが満足そうに呟き、手招きをする。
まるで、柊一に挑戦するかの如く。
「んー・・・悪いけどさ」
手首を軽く回しながら、柊一がふっと笑う。
「俺・・・確実に勝機が回ってきた時しか、手を出さないような性格だから」
そう言い、近寄ってきたジル目掛けて、思い切り剣を振り下ろした。

92ピーチ:2012/07/13(金) 08:00:15 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜“確実”と“不確実”・中編〜

「げ・・・っ」
ジルの小さな声が、やけに響いて聞こえるのは、周りが恐ろしい程に静かな証拠。
もちろん、その声は柊一の耳にも入った。が
「大事な仲間をあんなにされてまで―――俺も黙ってる程、優しくないから」
そう言った柊一の横顔に、心なし狂気に満ちたものが見えたのは、気のせいだろうか。
ぼんやりと思いながら、しかし身体は素早く反応する。
「おわっ」
そう小さく叫び、ジルが咄嗟に己の剣で避ける。しかし。
―――速い。
繰り出す剣の速さ(スピード)が、今までとは比にならない程に、速い。
そして。
「―――っ・・・!?」
思わず、ジルが右肩を押さえて剣を取り落とす。
同時に。
柊一がやっと覚醒したかのように、はっとした表情になり、慌てて尋ねる。
「あ、ごめん・・・大丈夫?」
尋ねる柊一に対し、ジルが脂汗を流しながら答える。
「・・・バーカ。んなこと言ってっと、その内俺様に殺されちゃうぜ?」
「あ、それなら大丈夫」
「「へ?」」
柊一の言葉に、ジルともう一人―――ヒースが、驚いて問い返す。
「一応、天音以上にすばしこいつもりだから。俺」
そう。彼には感覚がある。
剣術はゼロでも、その並外れた感覚がある。
・・・単に、それを「危険察知用アンテナ」と呼ぶ者もいるが。
「結構、妖とかで鍛えてたし」
「・・・あんたの場合、鍛える鍛えないの問題じゃないと思うわよ」
天音の抗議に、柊一が小さく苦笑した。

93ピーチ:2012/07/13(金) 18:48:47 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜“確実”と“不確実”・後編〜

「まぁ、ね・・・」
苦笑しながら呟く柊一を見て、天音もつられて苦笑する。
「とにかく・・・そっちの彼もかなりの傷負ったみたいね・・・」
「いや。天音の方が酷いでしょ、絶対?」
いささか表情を引き攣らせながら、柊一が真っ青になった天音に抗議する。
「これくらい、大丈・・・」
そこまで言って、天音が小さく呻く。その隣には、柊一同様、慌てた昇の姿が映る。
「・・・れ?」
ジルが、驚いた様に目を見開く。
「・・・? どうしたの?」
ジルの声を聞き、シュオンが尋ねる。
「いや・・・何であいつが平気で動けるんだろうと・・・」
彼の言う“あいつ”とは、明らかに昇のこと。確かに、昇はジルにかなりの傷を負わされたはず。
「天音が移してくれたんだよ。自分に」
二人の会話を聞いていた昇が、話に割って入る。
「・・・彼女に、移した?」
黙って成り行きを見守っていたソフィアが、唐突に尋ねる。
「あぁ。俺の傷を自分に移してくれたわけ。だから俺は平気なの」
代わりに天音が酷い目見てるけど、と、少し声を後して言う昇に、天音が呟く。
「・・・それは大丈夫よ。ただ、そっちの人の傷も同じ場所よね?」
「いや止めろ。マジで危ねぇから」
天音の考えていることを察した昇が、すぐさま止めに入った。

94ピーチ:2012/07/13(金) 22:02:36 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜傷口〜

「大丈夫だって、これくらい・・・」
言いつつも、天音が肩を押さえる。その後。
「・・・利き腕じゃないし・・・」
と言うので、昇が大声で怒鳴る。
「そう言う問題じゃねぇよ!!お前の傷口が悪化したらどうすんだ!?」
そう喚く昇の隣で、柊一は静かな怒りを爆発させていた。
「本当にいい加減にしようね?天音?」
「・・・じゃあ、軽い消毒でもさせとけば?」
さすがの天音も柊一の気迫に押され、思わず無言で降参する。
「それならあたしが出来ます!」
元気良く言いながら、シェーラが勢い良く手を上げる。その横で、ヒースが無言でシェーラを軽く睨んでいる。
「そう、ね・・・じゃあ、私達は帰らせて貰おうかしら?」
「いやいやいや」
「え?」
昇の慌てた声に、天音が問い返す。
「悪いけどさ、天音の傷の痛みが引くまでいさせてくれないかな?」
柊一の言葉に、天音の顔色がさっと青ざめる。
「ちょ・・・冗談じゃないわよ!!何で・・・」
「うん。いいよ、別に」
「あ?いいのかよ、シュオン?」
「だって、ソフィアとかヒースを助けてくれたのって、この人達だよ?」
シュオンとヒースの会話が、途切れ途切れに聞こえる。
天音がそう思った直後、昇が慌てた声で何かを言う。
「―――あ、天音!しっかりしろよ?」
「・・・うるさい、わよ・・・」
心にもないことを言いながら、天音がふらりと立ち上がる。それを見て、シェーラが彼女を支える。
「だ、大丈夫ですか?」
シェーラの言葉に、天音が薄く笑いながら答える。
「えぇ・・・大丈夫」
結局、天音達がエインズワース家で休むことになったのは、言うまでもない。

95ピーチ:2012/07/14(土) 22:20:20 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜怪我の後〜

半刻ほど過ぎた後(のち)。
「・・・もう、大丈夫だけど?」
そう呟いた天音を他所に、昇がぶつぶつと呟く。
「あっれー?ここの傷口、もう塞がったのかー?どー思う?柊一?」
昇の問いに、柊一も同じくぶつぶつと答える。
「いや、まだ塞がってないと思うけどなぁ・・・」
「・・・私が残ったら、そっちの傷も移すわよ?その内」
「よし。帰ろう!」
慌てた声で叫び、柊一が勢い良くドアを指差す。
「いやいやいやいや」
柊一の言葉に勢い良く反対し、立ち上がりかけた天音の両肩を掴んで座らせる。
「った・・・」
「もーちょい休んどこうな?天音?」
「な・・・っ!?」
天音が言いかけた言葉を昇が制し、そのまま続ける。
「それに、こっちにまだ“いる”かも知んねぇんだからよ?」
昇の言葉に、柊一の表情が真剣になる。同時に、天音は表情を翳(かげ)らせる。
「もしそうなったら・・・私だけが足手纏いね?」
わざとおどける天音を見て、柊一が優しく言った。
「別に・・・天音は普段からやりすぎなんだから、たまには休んどけって、な?」
柊一の言葉に、天音が俯き加減になりながら答える。
「・・・えぇ。でも、もし危なかったら、私も参加させて貰うわよ?」
天音の言葉に対し、二人がふっと笑った。
「足手纏いにならないように・・・な?」
そう言ってから。

―――≪紫水晶(アメシスト)≫。
今は、あのエインズワース家に保管されてるとか。
なら。
今から、それを拝借しに行こうか・・・。
所詮は、ただの“物”に過ぎない。人間の資格すらない。ただ、幸せを運ぶだけの人形なのだから。
≪紫水晶(アメシスト)≫を使って、必ず、幸福を呼び込ませてやる―――。
狂気に歪んだ一人の男の影(シルエット)が、まるで蝋燭(ろうそく)の炎のように、ゆらゆらと揺らめいた。

96月波煌夜:2012/07/14(土) 22:38:20 HOST:proxyag087.docomo.ne.jp
>>ピーチ


やっぱり天音ちゃんが苦労してるじゃないかーっ!

大丈夫ですかー(つд`)


おおう、侯爵の影が…w
いい感じに雰囲気出てるな(・∀・)

97ピーチ:2012/07/14(土) 22:41:51 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやいや、天音からすればいつも通りの出来事だからw←え・・・

へーきへーき!帰ったら他の裏組織に属してる友達が治療してくれるもん!

うん、公爵の影は出したんだけどね・・・名前に出てくる「ウ」が書けないから・・・

とりあえず名前変えて「ソルファール」ってしてもいいかな?←ごめんね、勝手で・・・

98ピーチ:2012/07/15(日) 11:13:20 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜狙われた“人形”・前編〜

「―――ところでさァ」
唐突に、ジルが話題を振る。
「そっちの黒髪、俺様に負けたわけだよな?」
そっちの黒髪、と言いながらジルが指したのは、昇の方だ。
「…飛び入り参加の奴に負けたのは、屈辱だな」
昇が、ばつが悪そうにふいと顔を背ける。しかし。
「でもまぁ、そっちの黒髪には勝てたから。それでいいや」
と、ヒースに向かって軽く言う。
「だから黒髪言うなぁっ!!」
「でーも俺様もなァ、そっちの如何にも優しそうな奴に負けたのは屈辱だなァ」
そう言って、今度は柊一の方を見る。
「いや。俺、優しくないし?」
ジルの視線に気付き、慌てて柊一が言う。
「あーあ、お前みてーな奴をぼろっぼろにすんのも面白そうだと思ったのになァ」
「いやいやいや。それ冗談抜きで怖いからね?」
下手したら妖よりも怖いかも、と苦笑する柊一に、昇が賛同の意見を述べる。
「まぁな。多分、お前があいつの剣もろに受けてたら、俺以上の怪我負ってたかも」
「…それは遠慮したいな」
真面目に青ざめながら、柊一がぼそりと呟く。それに対し、
「それにしても、お前だったらジルさえも打ち負かすかと思ったけど…油断でもしてたのか?」
ヒースの問いに、昇が軽く腕組みをしながら答える。
「ん…油断って言うより、ちょっとあれ、って思ったのかな」
「はぁ?」
「いや、最初にお前とやった時と比べて、明らかに隙だらけだったから。そんなの、どうぞ狙って下さいって言ってるようなもんだろ?」
昇の言葉に、ジルが思い出したようにあぁと呟いた。
その直後。
「―――失礼しますよ?」
たったそれだけの断りを入れて。一人の男が、ソフィアの部屋に入ってきた。

99ピーチ:2012/07/15(日) 15:26:27 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫の乙女 〜狙われた“人形”・中編〜

「―――…ソルファール、公爵?」
「おや。お久しぶりですね、シュオン様」
年齢(とし)は明らかにシュオンの方が下。しかし、貴族の位としては、圧倒的にシュオンの方が上である。
「…どうかしたんですか?わざわざ部屋の中ま―――」
で、入ってこようとは?とシュオンが尋ねる前に、ソルファール公爵と呼ばれた男が、大地色の瞳でじっと何かを見据える。その先にいる者は。
「―――やっと、見つけた」
そう呟いた後。にやりと嘲(わら)い、視線の先にいるものを指す。
「失礼ですが、この少女が≪紫水晶(アメシスト)≫ですよね?」
柔らかい物腰で尋ねる公爵の言葉に、指された少女―――ソフィアはピシリとその場に硬直する。
「…≪紫水晶(アメシスト)≫と言う名前ではありません」
それ相応の力はありますがね、とシュオンが答える。ソフィアは、依然その場から動かない。
―――否。動けない。
「なら―――どれ程の金額でお譲りいただけますか?」
にやりと、公爵は不気味に嘲い、≪紫水晶(アメシスト)≫…ソフィアを指す。
「…え?」
「どれ程の金額を積めば、≪紫水晶(アメシスト)≫をお譲りいただけますかな?」
問い返す公爵に、シュオンははっきりと
「いくら大金を積まれても、譲ることは出来かねます」
そう答え、その後に。
「それとも…僕の家が、エインズワーズがそこまでお金に困っているようにお見えですか?」
アイスブルーの瞳を更に冷たい色に変え、シュオンが鋭く言う。
「それに、彼女は≪紫水晶(アメシスト)≫なんかじゃない。ソフィアという、立派な名前を持っています」
「…なら、今此処でこのアメ…ソフィアを奪ったら、取り返しますか?」
「当たり前です。僕の一番大切な人ですから」
柔らかくしっかりとした受け答えで、しかしその表情(カオ)には“ソフィアを呼び捨てにするなこのクソ公爵”と、しっかり書かれている。
「それにあなたには、奥様と娘さんがいらっしゃるでしょう?」
シュオンのその言葉を聞いた直後。公爵の目がぎらりと光った。

100月波煌夜:2012/07/15(日) 15:46:57 HOST:proxyag027.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ごめん反応遅れた!

うん、全然問題ないんだけど、
「侯爵」ね!
公爵だとシュオンの父上と同じになっちゃうから!


公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の順番だから!



な、直せる?(´・ω・`)


…あとシュオンの受け答えが素晴らしすぎた…!本当原作を凌駕してくれるな…!


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