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紫の歌×鈴扇霊

522心愛(ピーチの代理です):2013/03/26(火) 17:05:32 HOST:proxyag106.docomo.ne.jp
紫と紅と黒






「っ…………」
 ふっと瞳を見開いたあおりが、天音に笑みを向ける。
「終わったみたいだよ、天音?」
 それくらい、この親友ならすぐに感づくのだろうが、一応。
 声に出さないのと声に出すのとは、やはり重みが違ってくるのだ。
「えぇ」
 僅かな安堵が、声音から感じ取れる。それに気付いたあおりが苦笑する。
 何だ、口では何だかんだ言ってもやはり二人のことを気にかけていたのか。
 そんなことを思ったとき、少女の声が聞こえた。
「えーっ!」
「へ?」
 唐突に聞こえた声に二人が同時に振り返る。
 シェーラが不満そうな表情で天音たちに問うた。
「もう帰っちゃうんですか? シュオン様がいいって言えば、ちょっとくらい上がって……」
「………ごめんなさい、それだけは遠慮しておくわ」
 彼の母の存在を知ってなおあの邸に足を運ぼうなどとは、到底思えない。
 それを彼女の表情から読み取ったシュオンが苦笑する。無言で謝っているようだ。
「? 何で?」
 ただ一人意味が通じないあおりが、天音を見た。あの強情の塊のような彼女をそうまで言わせる人物など、そう居ないだろう。
 そう思っての問いだったのだが、天音をはじめとし、それぞれが視線を逸らす。
「え? ちょ、天音っ?」
 一人置き去りにされたようであおりが焦った。柊一たちも知っているだろうが、あの天音がこの状態では、二人が口を割るとはまず思えない。
「……何なら、あおりだけ直に会ってみれば?」
 少女の提案に、ソフィアたちはもちろん、シュオンとヒースもさすがに言葉を挟んだ。
「え、ちょ、止めとけって! これ以上犠牲者を増やすわけには……っ」
「それに、喜ぶのは母上だけだしね…」
「分かってるわよ」
 二人の言葉に冗談だと返し、天音が僅かに苦笑する。
「まぁ、私たちも色々とあるから……ごめんね?」
 シェーラにそう言って、天音はソフィアたちを顧みた。
 ソフィアたちもシェーラと同様のことを思っているのだろうが、彼女たちがそれを口にすることはあまりないのだろう。
「…それに」
 さすがに疲れたように、しかし妙に晴れやかに彼女は言った。
「―――もう、定期的にこっちにも来た方がいいみたいだから」
「え?」
 天音の言葉を受けたソフィアたちの瞳が僅かに輝いた。
「だから、今回は帰るわ。またね」
「…はいっ!」
 元気よく答えたシェーラの言葉を聞き届け、天音とあおりの周りに突風が吹き荒れる。
 そして、薄い微笑を湛えた天音と、軽く手を振ったあおりの姿が、闇に呑まれた。


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