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仮投下スレ

1名無しさん:2015/07/15(水) 00:22:03 ID:YFA/rTa20
作品の仮投下はこのスレでお願いします

698 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:38:09 ID:f4EOfDks0

【針目縫@キルラキル】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、全身に細かい刺し傷複数、繭とラビットハウス組への苛立ち、纏流子への強い殺意
[服装]:普段通り
[装備]:片太刀バサミ@キルラキル
[道具]:腕輪と白カード、黒カード:不明支給品0〜1(紅林遊月が確認済み)、喧嘩部特化型二つ星極制服@キルラキル
[思考・行動]
基本方針:神羅纐纈を完成させるため、元の世界へ何としても帰還する。その過程(戦闘、殺人など)を楽しむ。
   0:ホル・ホースの結末を見届けてから、放送局へ向かう。
   1:紅林遊月を踏み躙った上で殺害する。 ただ、拘りすぎるつもりはない。
   2:空条承太郎は絶対に許さない。悪行を働く際に姿を借り、徹底的に追い詰めた上で殺す。 ラビットハウス組も同様。
   3:腕輪を外して、制限を解きたい。その為に利用できる参加者を探す。
   4:何勝手な真似してくれてるのかなあ、あの女の子(繭)。
   5:神羅纐纈を完成させられるのはボクだけ。流子ちゃんは必ず、可能な限り無残に殺す。
[備考]
※流子が純潔を着用してから、腕を切り落とされるまでの間からの参戦です。
※流子は鮮血ではなく純潔を着用していると思っています。
※再生能力に制限が加えられています。
傷の治りが全体的に遅くなっており、また、即死するような攻撃を加えられた場合は治癒が追いつかずに死亡します。
※変身能力の使用中は身体能力が低下します。少なくとも、承太郎に不覚を取るほどには弱くなります。
※疲労せずに作れる分身は五体までです。強さは本体より少し弱くなっています。
※『精神仮縫い』は十分程で効果が切れます。本人が抵抗する意思が強い場合、効果時間は更に短くなるかもしれません。
※ピルルクからセレクターバトルに関する最低限の知識を得ました。

699 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/21(木) 21:39:16 ID:wovwAFeU0
仮投下終了です。
後続に投げる部分が大きいので仮投下させていただきました。
ご指摘あればよろしくお願いいたします。

700名無しさん:2016/04/22(金) 12:23:58 ID:YeNIN2iYO
投下乙
飯テロだこれ
ホル・ホースがんばれ、超がんばれ
本投下は大丈夫だと思います

702 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/22(金) 19:11:17 ID:cX1Mtorg0
感想ありがとうございます。
これから先、指摘がなければ、明日の午後には投下したいと思います。

703名無しさん:2016/04/23(土) 09:28:28 ID:ajVFhJeI0
投下乙です
無事ではないけどとりあえずホルは命の先延ばしはできたかな?
縫の制限を解かれでもされない限りは他参加者への害が増えないように言いくるめようとしているのも流石か
内容には問題ないと思いますが、本投下の際は空条親子の下りは何とかした方がいいと思います
3部アニメのみ視聴ですと意味が通じませんし

704 ◆X8NDX.mgrA:2016/04/23(土) 17:14:09 ID:MXAB8YRA0
>>703
ありがとうございます。
該当する箇所を削除したものを投下しました。
また指摘等あればお願いします。

705 ◆45MxoM2216:2016/06/17(金) 00:57:50 ID:oto35/Kk0
一旦仮投下します

706Ice Ice Vampire ◆45MxoM2216:2016/06/17(金) 00:59:27 ID:oto35/Kk0
「ふむ、5分少々……といったところか」

G-6に位置する映画館。
しかしそこはすでに映画館としての機能を失っていた。
カウンターの奥、ストア商品棚の下、コンセッション周り、休憩室、劇場。
そういった人が隠れられそうな所はことごとく破壊され、劇場に至っては壁に大きな穴が空いている。
映画館内に人っ子一人いないことを確認したヴァニラ・アイスは、休憩がてら自らに課せられた制限を確認する際、意識して映画館を破壊しながら制限を確認したのだ。

敬愛し忠誠を誓うDIOに関すること以外には氷のごとし冷静さをもつ彼がなぜそんなことをしたかというと――――


「これで劇場に隠れ続けるような手は使えんな」

彼は映画館に参加者が殺し合いもせずに立て籠もることを警戒したのである。
ホテル程の設備はないとはいえ、映画館というものは存外入り組んだ構造をしている。
さらに劇場の中では多少騒ごうが外に音が漏れることはない。
もし映画館に殺し合いに乗った強者と乗っていない弱者の双方がいても、運が良ければ鉢合わせることなくニアミスすることもあり得る。
3日間という時間制限がある以上、戦いもせずに逃げ回るネズミは害悪でしかない。
直接的な脅威になりうる堅牢な『要塞』にはならなくとも、こういった施設を破壊することは後々必ずプラスに働くと踏んだ彼は、制限の確認と施設の破壊を併行して進めることにしたのだ。

「妙な感覚だな、慣れ親しんだスタンドの使い心地が変わるのは」

そして彼はクリームにかけられた制限を概ね理解した。
5分少々暗黒空間に入り続けていると、何の前振りもなく唐突にクリームが解除される。

強制的に解除されたすぐ後にもう一度スタンドを発現させようとしても、数瞬のインターバルを置かなければ暗黒空間には入れない。
逆に5分少々の時間制限が訪れる前にスタンドを解除すれば普段通りの使い心地というわけだ。
先ほどクリームの優位性にものを言わせたがむしゃらな攻撃で同盟相手を失ったばかりなことだし、インターバルを挟みながら周りを確認しつつスタンドを使うこと自体はやぶさかでもない。
やぶさかでもないが……。



「あのド畜生女がぁあああああああああああああああ!!!!」



近くに転がっていたゴミ箱を蹴り飛ばす。
中のゴミをまき散らしながら壁に激突しこぎみよい音を立てて砕け散るプラスチック製のゴミ箱。
その光景を見てもはらわたが煮えたくるような激情は鎮まらない。
ヴァニラ・アイス本人にとってやぶさかではなかろうと、彼にとって自分のことなど二の次にすぎない。
それより問題なのは――――。


「手をかけたな……!DIO様のスタンドに!DIO様の『世界』に!!」


クリームに制限がかけられている以上、DIO様のスタンドにもくだらん制限がかけられていることは想像に難くない。
その可能性を自らの制限を確認することで改めて認識したヴァニラ・アイスは激怒した。
自分のスタンドに手をかけられるのは構わない。
だが、DIO様のスタンドにコソ泥以下のこすっからい細工を施すなど到底許されることではない。
もし、もしも『世界』にかけたくだらん制限のせいで、自分も知らないその能力を他の参加者が暴くようなことがあれば――――

「ゆ、許さん……!DIO様は全ての頂点に君臨するお方!そのDIO様の能力を知る人間など存在してはならない!」

707Ice Ice Vampire ◆45MxoM2216:2016/06/17(金) 01:00:32 ID:oto35/Kk0

もちろん、能力を知られただけでDIO様が不覚をとることなど万に一つもあり得ない。
しかし、DIO様の神聖なるスタンドの秘密をゴミカス共が知ってしまうかもしれない……。
それだけでヴァニラ・アイスが激昂するには十分すぎる理由だった。

「どれだけDIO様を馬鹿にすれば気がすむのだ!あのドグサレがぁあああああああ!!!!」

例え劇場の壁が壊れていなくとも外に聞こえるのではないかと思える程の叫び声。
下等生物とDIO様を同等に扱うあの忌々しい地下通路といい、くだらん制限といい、腹立たしいことこの上ない!

「ハァ――――!ハァ――――!」

だが、ヴァニラ・アイスは逆上しても心の奥底の冷静さを見失わなかった。
制限も確認し、最低限の休養も取った以上、これ以上ここに留まる理由はない。
日中は自由に動けないからこそ、その時間を無駄に過ごすようなことは愚策だ。
日が沈むまでにやれることはやっておかなければならない。

さっさと地下通路を通り、展示物を確認しつつホテルへと向かう――――

「それにしても……」

――――前に、ふと劇場のスクリーンに目を向ける。

『21世紀、世界の麻雀競技人口は1億人の大台を突破ーー』

「なぜ麻雀の映画が?」

そこには数時間前にとある少女が訪れた時と同じように、学生服を着た少女たちが卓を囲んでいる姿が映し出されていた。




「なんだこれは?CDディスク……ではないようだが」

映画館とホテルを繋ぐ地下通路。
そこには『第四次聖杯戦争の様子』『ジョースター一行の旅の風景』『本能寺学園の歴史』といった題名の付けられたDVDが等間隔で並べられ、その下にはタッチパネルが設置されていた。
DVDは透明なケースに入れられており、そのケースを同じく透明な箱に入れるという中々に厳重な保管をされている。

1980年代の人物であるヴァニラ・アイスは当然DVDのことなど存在すら知らないし、タッチパネルも馴染みの薄い代物だった。
僅かな間困惑したが、近くに案内板のようなものを見つけたので確認する。

『参加者と関係のある映像をDVDにして集めました。
DVDの下のタッチパネルに腕輪をタッチさせればDVDを持っていくことができます。
ただし、持っていけるDVDは腕輪一つにつき一枚なのでご利用は計画的に』

「ふむ、DVD……それに、タッチパネルというのか」

案内板にはDVDの利用法について懇切丁寧な説明が載っていた。
これだけ丁寧に説明されれば、DVDの存在はおろか電化製品そのものに馴染みのないような人間でも理解できるだろう。

「なるほど、どこぞの馬鹿がテレビを破壊でもしていない限り、どちらから地下通路を通っても映像を見れるようになっているというわけか」

映画館にあった映像を閲覧できる機材は壊していないし、ホテルならばテレビの1つや2つあって当然だ。
このままホテルへ向かっても日が沈むまでには少し間がある。
ホテルに誰もいなかった場合はこのDVDを見て他の参加者の情報を集めるのも面白い。
幸い自分は範馬勇次郎の腕輪も持っていることからDVDを2枚持っていける。

クリームで箱を破壊して無理矢理すべてのDVDを持っていくことも考えたが、すぐにその考えを頭から振り払う。
あの淫売が用意した腕輪を呑み込めない以上、同じくあの雌豚が用意したこの箱にもクリームは通用しないと考えるべきだ。
忌々しいが、現状自分はあのクサレ脳ミソの掌の上にいることは認めざるをえない。

708Ice Ice Vampire ◆45MxoM2216:2016/06/17(金) 01:01:07 ID:oto35/Kk0

「だが、覚悟しているがいい。
DIO様が優勝なされた暁には、貴様のようなアバズレをあの方は見逃しはしない」

自らの命すら供物として割り切る狂信者。
どのDVDを持っていくか物色しながら、彼は歩き出す。
狂気の忠誠を誓う帝王の元へと少しずつ少しずつ近いづいていることにも気付かずに――――。

【E-6/地下通路/一日目・午後】


【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:ダメージ(小)
[服装]:普段通り
[装備]:範馬勇次郎の右腕(腕輪付き)、ブローニングM2キャリバー(68/650)@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:双眼鏡@現実、不明支給品0〜1(確認済、武器ではない)、範馬勇次郎の不明支給品0〜1枚(確認済)、ブローニングM2キャリバー予備弾倉(650/650)
[思考・行動]
基本方針:DIO様以外の参加者を皆殺しにする
   1:さて、どのDVDを持っていくか。
   2:ホテルへ向かい、DIO様の館にも赴く。
3:日差しを避ける方法も出来れば探りたいが、日中に無理に外は出歩かない。
4:自分の能力を知っている可能性のある者を優先的に排除。
   5:承太郎は見つけ次第排除。
   6:白い服の餓鬼(纏流子)はいずれ必ず殺す
[備考]
※死亡後からの参戦です
※腕輪を暗黒空間に飲み込めないことに気付きました
※スタンドに制限がかけられていることに気付きました
※第一回放送を聞き流しました
 どの程度情報を得れたかは、後続の書き手さんにお任せします
※クリームは5分少々使い続けると強制的に解除されます。
強制的に解除された後、続けて使うには数瞬のインターバルが必要です。

※映画館の内部は破壊されましたが、倒壊などの危険はありません。

【施設情報・地下通路】
『映画館』⇔『ホテル』間には『映像資料集』が展示されています。
参加者と関わりのある映像をDVDにして展示しています。
DVDを持っていくには下のタッチパネルに腕輪をかざす必要がありますが、一度腕輪をかざすと次からはその腕輪は反応しなくなります。
当然他の腕輪を使えばさらにDVDを持っていくことも可能です。
また、かなり丁寧な説明が案内板に書かれているため、機械に疎い人物でもDVDの仕様を理解できると思われます。

709 ◆45MxoM2216:2016/06/17(金) 01:02:30 ID:oto35/Kk0
仮投下終了です。
なにか問題点や疑問点ございましたら、ご指摘お願いします。

710名無しさん:2016/06/17(金) 21:00:04 ID:iB6KjuCI0
仮投下乙です
特に問題はないと思います

711夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 15:56:57 ID:/gRdK6EA0
遅れてしまいましたが、仮投下します。

712夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 15:57:27 ID:/gRdK6EA0
自動車の形に変化したコシュタ・パワーの運転に大分慣れてきたなと長身の男はふと思った。
人智を超える力と強靭を併せ持つ指先が硬い地面をえぐり続け大きな穴を形成していく。
地面を掘る長身の男は平和島静雄、その傍らには小柄な少女の壊れた人形のような遺体があった。
静雄は埋葬作業による疲労からではない溜息をつくや、今も車の中で眠り続ける少女の事を思う。

一条蛍。
相容れない敵である折原臨也と同行した、最初の仲間であった越谷小鞠の大切な後輩。
纏流子の強襲で傷浅くも倒れ未だ目覚めぬ少女。
小柄な少女の、蒼井晶の遺体を見つけたのはたまたま。
過去いくつもの死体を見てきた静雄でも無残な遺体をそのままにするのは気が咎め、蛍が眠っていることもあり、
簡単にだが弔うことに決めた。


土を被せ、瞑目する静雄。
流子との戦闘の合間に言われた蟇郡の警告が脳内に響く。


――俺が守っていなければ、一条は既に3度は死んでいた


口元を引き締める。
蛍を守れるのか、いやそれ以前に鬼のような自分を見て恐慌してしまわないだろうか……。
怒りに流されて害を撒き散らせてしまわないだろうか……。
不安に胸を押されるようだ。苦悩から汗が一滴流れる。だけどこれ以上喪わない為に折れる訳にはいかない。

「セルティ……」

数少ない友人の名を思わず呟く。彼女は放送では呼ばれていない。
でも縋るつもりはなかった。
彼女は彼女で苦難にぶちあたっている可能性があると思い至ったから。
同時に彼はここに来て漠然とだが仲間が必要だと思った。
せめて自分が戦っている間に同行者を避難させてくれる人を……。


「は……」


漏れた声に含まれるは自嘲。
静雄でさえも殺意と殺意が渦巻くこの地でそれは贅沢とも言える望みかも知れないと思ったから。


「……!」


何かを叩く小さな音。音の発生源は少し離れた所。
停めてある車のドアからだ。
こんこん、とまた音がした。
駆けつけたい衝動を抑え静雄は振り向く。
車の方から軽い緊張が感じられた。静雄は僅かに身をこわばらせ向こうの反応を待つ。

713夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 15:58:14 ID:/gRdK6EA0

「……」
「……」



音なくドアがゆっくり開けられる。
車内にいた少女は背を屈め、ドアを盾にするようにゆっくりと静雄を見ようとする。
怯えている。小鞠とは反応の差はあれどこちらを警戒しているのは静雄の眼に明らかだった。
静雄は土をかぶせた遺体を意識する。
予想はしていたもののこのタイミングはまずいと彼は内心慌てた。説得する為の言葉も思いつかない。
小鞠を宥めた時に使ったボゼの仮面を出そうと思ったが、余計不審がられるとその考えは却下。
見た目にも静雄は慌てていた。


「……」

少女、一条蛍は姿勢をそのままに目をぱちくりさせ、息を強く吸うと顔を出した。


「平和島、静雄さん……ですね?」
「……ああ」


蛍の視線は静雄の傍らの土の盛り上がりに移った。


「……」
「見ていました」


覗きこむような視線。怯えが少々感じられるものの明確な拒絶は感じられない。
互いにすぐに言葉を発せられず、気まずい生暖かい風のような沈黙が訪れる。
質問と視線に対し静雄の眼差しはすべてを受け止めるかのように真剣だった。


「あの……」
「……」


呼びかけに対し、更なる問を促すように静雄は頷いた。


「その人は平和島さんの知ってる人ですか?」
「……いいや知らない子だ」


蛍は視線を落とした。
目をつむり、しばし何かを考えた後、静雄の全身を観察する。
静雄自身はあまり意識はしてないが、服はあちこち破れ土砂や自らの乾いた血で汚れている。

714夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 15:58:45 ID:/gRdK6EA0

「……っ」


蛍の瞳孔が開き、右手で胸を押さえた。
気絶する前の状況を思い出したのだろう、静雄にはそう判断でき間近にならない程度まで慌てて近づいた。


「蛍ちゃん」
「……大丈夫、大丈夫です…………」


荒い呼吸を繰返しながら、汗をかきながら何かに耐えるかの様にドアにもたれ掛かる。
静雄は蛍の手を背に当てながらいいかと訊いた。
蛍は顔を向けないまま頷いた。

-----------------------------------------------------------------------------------------


停まった車の中。



「平和島さん、ごめんなさい……」
「謝らなくてもいいよ、責められるのは俺の方だよ」


一瞬、否定するような表情を蛍は向けるが、後悔の混じった静雄の表情から心中を察し、黙った。
実は蛍は蒼井晶の遺体を発見する数分前から意識を回復させていた。
ショックからか流子に強襲される前の記憶が曖昧だった事からか、ゆっくりと走行する車内にいたからか
蛍は静雄をある程度見続ける余裕ができていた。


「……ディオって人とは遭っていないんですよね」


蛍の何度目かの問いに静雄はただただ頷く。
良かったと蛍は思い涙を一滴こぼした。今度こそ言葉でなく心で実感できたから。
もともと蛍は静雄と臨也との諍いの最中でも、静雄が加害者である断定はできず揺れていたのだ。
その上負傷した身体を押して蛍を保護し、見知らぬ少女まで弔う静雄を敵意を持ったまま接し続けられる訳がない。
それに耐えられそうに無いくらいに疲れた。
――今でも折原臨也への親しみを失った訳でも、彼から教えられた疑惑を全て払拭出来たわけでは無い。
だがそれを抱えていて尚、静雄との和解を前提とした対話を彼女は求めたのだ。

「……」
「……」
「蟇郡さん……達は?」


静雄が明らかに嫌悪していた臨也の名は蛍は出さなかった。
彼の表情が苦痛に彩られる。


「蒲郡とあいつは放送で呼ばれたよ、れんげちゃんは呼ばれていない」
「そうですか……」

"あいつ"が臨也であるのはすぐに解った。
嫌でも認識させられる喪失へのショックと、宮内れんげが存命である安堵が心中で交じり合い苦い気持ちをこみ上げさせる。
蛍は続いてラビットハウスにいる仲間達の事の行方を尋ねた。
放送で呼ばれていないのを知りもっと安心した。思わず安堵の息を吐いた。

715夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 15:59:14 ID:/gRdK6EA0
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情報交換を兼ねた談話の締めくくりは以下のやり取りだった。


「分校に行きたいです」
「解った」


運転に集中する静雄を他所に蛍は車外を時折見回していた。
警戒していると言ってもいい。
臨也を殺害し、蛍に一生消えないだろうトラウマを植えつけた纏流子は死んでいないと推測していたから。
そんな彼女へ、若干不安そうに静雄は顔を向けずに言った。


「……あいつに会わなくていいのか?」


研究所に安置されている折原臨也の事である。


「気にならないと言っちゃうと嘘になりますけど……い」


今はと言いかけて、それを押し留めた。
あの時の臨也の言動は明らかに静雄を破滅に導こうとしていたと今の蛍に判断できるもの。
押しとどめなければ、あそこまで混沌とした感情に任せて不仲な理由を訊いてしまいそうだった。
折原臨也が一条蛍の命の恩人である事は変わりはない。
必要も無しに臨也への悪感情を抱いてしまいそうな質問は止めた方がいいと思えた。


「……悪い、巻き込んじまって」


それを知ってか知らずかの静雄の乾いた声。横顔を見ると渋い表情。
蛍は色んな感情をこり固めたかのようなその一声で、もうこの場で二人の関係を知ろうとする気は失せてしまった。


「……」
「……」


気まずい沈黙を抱えながら車は分校へ向かう。
程なくして旭丘分校の正門前へ到着する。


車から降りた二人は正門へ向かおうとした。


「あの平和島さん?」
「車をカードに戻したほうがよくありませんか?」
「……そういや、そうだな」

盗まれる可能性を思い至った事もあって、静雄は車に手を触れると漠然と戻れと念じた。
車は一瞬で縮小し、1枚の黒いカードへと変化していく。
静雄は珍しく気味悪そうに手にしたカードを見つめた。


「どうしたんです?」
「これ知り合いの持ち物なんだけどな……」

静雄の表情がどこか途方に暮れたように変化する。
蛍は曖昧に笑った。静雄は蛍の方へ顔を向けた。
恐怖の色はほぼ消えていたが、視線はやや彼の顔から外れていた。
仕方がないなと彼は思った。

716夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 15:59:45 ID:/gRdK6EA0

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二人は校門をくぐり、しばし歩みを進める。
先に分校内の惨状に気づいたのは静雄だった。
察知したのは焼き焦げた僅かな匂いと血臭。
そして程なくして蛍が分校の破壊跡を発見する。
分校に危険が及んでいると判断した彼は蛍を遠ざけようと声をかける。


「蛍ちゃんはここで……」
「……」


拒否。一人校内に行こうとする静雄を、蛍は服を掴んで止める。
静雄はここで二人しかいない事を改めて気付かされる。


「きっと死体があるぞ」
「……が、ガマンします」
「殺人鬼がいるかも知れねえぞ」
「…………その時は」

咎めるような静雄の忠告に蛍はたどたどしく返答する。
大きく息を吸う音がした。


「いっしょに逃げて下さい!」


蛍の必死と取れるの願いに我ながら不謹慎にもあのなあと静雄は思ってしまった。
二人は表情を変えずにしばし黙った。
ままだったが、やがて渋面ながらも静雄を黒いカードを1枚取り出し。
蛍に渡した。


「これは?」
「どこかの国の土産のトーテムポールのような仮面だよ」
「?」
「死体を直にみるのはきつからよ、見ないように気をつけてくれ」
「なんで……」
「それ小鞠ちゃんも気に入ってたと思うから……やるよ」


静雄の返答が淀んだのは誰かの所有物の可能性に気づいたから。
蛍はというと元の形に戻した仮面に怯えることもなく、しげしげと見つめ
やがて抱きしめるかのように両手で抱え、静雄に付いて行った。

717夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 16:00:53 ID:/gRdK6EA0

-----------------------------------------------------------------------------------------


空は既に夕暮れ。
校舎内の探索を終えた二人は途方にくれた顔で手頃なサイズの岩に腰掛けていた。


「……」


蛍は赤カードから出した蜜柑の皮の匂いを嗅ぎながら、蜜柑の実を口に放り込む。
彼女が校舎内でかろうじて嘔吐しなかったのは注意を払っていたのと匂いのきつい果物を現出させたからだ。
静雄は青カードから缶コーヒーを出すや、勢い良く中身を飲み干した。


「私はここでれんちゃんを待った方がいいのでしょうか?」


蛍は静雄ほど虚無感はなかった。
静雄は空き缶を片手で握りつぶし、ほぼ球状になったそれを適当に放り投げた。
返答はない。何枚かの黒カードが擦れる音がした。


「何なんだったんだ、あいつはよ……!」


静雄は見つけたのだ、許せない敵と認識していた衛宮切嗣の死体と彼の遺品である黒カード等を。
ある程度は心に整理つけていた蛍と違って、静雄は切嗣に対する敵意は以前強いままだった。
見つけ次第、締めあげて小鞠殺しの真相を明らかにさせてぶちのめすつもりだったが。
何者かに惨殺されていたのを発見し目標の一つを失って途方に暮れたのだ。
やり場のない感情を、蛍を避難させた上で建物に対しぶつけようとしたのだが(死体に当たり散らすような真似はしたくなかった)、
蛍に大声で止められた事もあって、それはできなかった。


「平和島さん、そろそろいいですか?」


手持ちぶたさにいじっていたカードを静雄に見せる蛍。
回収するだけ気を回せたのは、暴れようとする静雄を止めた直後、頭が冷えたからに過ぎない。
今、蛍がこうして回収品の確認できているのも、彼女が物事に集中したのもあった。


「ああ、頼む」
「えい」


蛍が念じるとカードは1羽の蝙蝠へと変わった。
羽根をパタ付かせて低く飛空するとすぐに蛍の横に止まって大人しくなった。
その様子に二人は和んだのか、表情を和らげてもう1枚のカードに注目した。


「えい」
「……?!」


次に出たのは同じくカード。
ただそれは1枚のカードではない。
数十枚ものカードのセット、いわばデッキ。
所謂、トレーディングカードという名称のそれは種別こそ特定できないものの二人とも知っている玩具であった。


蛍は首をかしげながらも蝙蝠に手を伸ばしてカードに戻す。
カードの裏面を見て、効果を確認する。

718夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 16:01:27 ID:/gRdK6EA0

「……」


彼女は次にカードデッキを黒カードに戻し、裏面を見る。


「……ルリグ?」


裏面には"詳細はルリグカードから訊くこと"との文面があった。
蛍は戸惑った、それを察した静雄が近づく。
少し迷いながらも蛍はデッキを静雄に渡した。
静雄はわりと慣れた手つきでカードを検分していく。
イラストが少女である以外はありがちとも言えるカードゲームであるのが二人には見て取れた。
やがて静雄はデッキの底に近い位置にあった、仰向けに寝たドクロを彷彿とさせる帽子を被った少女のイラストのカードを発見した。
そのカードはあきらかに他のカードと雰囲気が違っていた。
静雄は小声で寝ている少女に呼びかける。
カードの中の少女は身を捩らせつつ、眼をこすりながら目の前の青年に声をかけた。


「切嗣さん……アンタは……」
「?!」

2人の息を呑む音がした。

「……切嗣さんじゃ……ないですよねー」

緊張を感じ取ってか、ルリグ――エルドラは困ったように頭をかいた。
場の空気が一変した。


-----------------------------------------------------------------------------------------



「あの人は上手く行ったら私らルリグに悪いようにしないって言ったんですよ」
「……参加者にはどうこうするとは」
「言ってなかったですね」

しばしば頭に血管を浮かばせながらも、静雄と蛍とエルドラの情報交換は進んでいる。
あの後、切嗣の他に状態の悪いランサーの死体も見つけて、人目のつかない場所に移動させている。
埋葬しなかったのは、悪感情からの拒否感があった……からでなくエルドラが死体から力みたいなのを感じると発言したからであった。
後で調査してから弔うに事にした。
更に魂が封じられたカードからも微小だが力が感じると言った事から、こちらは回収する事にした。

当初エルドラは飄々とした感じで会話を進めようとした節があった。
だが2人の真剣さを察してか途中から真面目に対応していた。


「衛宮さんは誰に殺されたのかも」
「解らないですね、嫌われたのかカードから出してもらえなかったですし」
「……どうしてでしょうか?」
「冗談めかしてですが、正義の味方みたいですねって言ったのがまずかったのかなっと……」
「何だよ……それ!」


静雄の怒りに任せた足踏みが地面をたたき、陥没させた。

719夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 16:01:56 ID:/gRdK6EA0


「……悪ぃ、続けてくれ」



若干の怯えが交じる2人の顔を見て、静雄はバツが悪そうに片手で頭を抱えた。



「マジで殺し合いが行われてるんですね?」


外見に似合わないくらいの真剣なエルドラの問いかけに蛍は強く頷いた。
静雄はこの殺し合いの今後に思いを馳せ、上空を見上げた、陽はさらに沈んでいる。
つられて蛍も夕空を見上げた。
静雄は呻くようにエルドラへ言う。


「お前最初はこの殺し合いはセレクターバトルと同じようなものだと言ってたよな」
「ええ」
「違ってるて言うのかよ」
「私は繭から一方的に言われただけですからね」
「……」
「セレクターバトルとそう変わらないわ、と」


蛍は首を下げ、意を決したかのように口元を引き締め、腕輪を起動させた。
腕輪に参加者名簿が浮かび上がる。


「エルドラさん、この中であなたの知り合いはいますか?」
「どれどれ……!」
「どうした」
「いやあ……もう、ますますわけが解りませんねえ……」

720夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 16:07:01 ID:/gRdK6EA0
----------------------------------------------------------------------------------------


蛍が再び校舎に入り、戻ってきた後。


「平和島さん、ラビットハウスへお願いします」
「おう」
「近くにルリグがいたら知らせるっすよ」

今からだと次の放送までには間に合わないだろう。
だがそれを承知の上で3人は向かう事にした。
蛍は約束を果たそうとし、仲間と合流するために。
れんげへの書き置きは校舎に残してある。
静雄は蛍を守りつつ小鞠殺害事件を調査した空条承太郎と対面し、自らのけじめの一つと、蟇郡が果たせなかった小湊るう子を救出するために。
エルドラは小湊るう子、紅林遊月からある確認をとるために。
車に乗り込みつつ静雄は蛍の顔を見た、蛍は僅かに視線を逸らした。
2人はそれに内心少し後悔した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



【F-4/旭丘分校前/一日目・夕方】

【平和島静雄@デュラララ!!】
[状態]:東條希への苛立ち、全身にダメージ(中)、疲労(中) 、やり場のない怒り(小)
[服装]:バーテン服、グラサン
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(8/10)
    衛宮切嗣とランサーの白カード
    黒カード:ボゼの仮面@咲Saki 全国編
         縛斬・餓虎@キルラキル
         不明支給品0〜1(本人確認済み)
[思考・行動]
基本方針:あの女(繭)を殺す
  0:蛍を守りたい。強くなりたい。
  1:ラビットハウスに向かい、承太郎と話しあう
  2:小湊るう子と紅林遊月を保護する
  3:テレビの男(キャスター)とあの女ども(東郷、ウリス)をブチのめす




【一条蛍@のんのんびより】
[状態]:全身にダメージ(小)、精神的疲労(中)、静雄に対する負い目と恐怖(微)
[服装]:普段通り
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(10/10)
    黒カード:フルール・ド・ラパンの制服@ご注文はうさぎですか?、カッターナイフ@グリザイアの果実シリーズ、ジャスタウェイ@銀魂、越谷小鞠の白カード 折原臨也のスマートフォン
    エルドラのデッキselector infected WIXOSS、蝙蝠の使い魔@Fate/Zero、ボゼの仮面咲-Saki- 全国編、裁縫道具@現地調達品
[思考・行動]
基本方針:れんちゃんと合流したいです。
   1:ラビットハウスに向かって、承太郎らと合流する
   2:何があっても、誰も殺したくない。
   3:余裕ができたら旭丘分校でれんちゃんを待つ
[備考]
※空条承太郎、香風智乃、折原臨也、風見雄二、天々座理世、衛宮切嗣と情報交換しました。
※『越谷小毬殺人事件の真犯人はDIOである』という臨也の推理(大嘘)を聞きました。現状他の参加者に伝える気はありません。
※衛宮切嗣が犯人である可能性に思い至りました。
※参加者の時間軸がずれている可能性を認識しました。
※旭丘分校のどこかにれんげにあてた手紙があります。内容は後続の書き手さんにお任せします。
※エルドラの参加時期は二期でちよりと別れる少し前です。
 ルリグの他に魔力や微弱ながらも魂入りの白カードも察知できるようです。
 黒カード状態のルリグを察知できるかどうかは不明です。

721 ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 16:07:31 ID:/gRdK6EA0
仮投下終了です。

722名無しさん:2016/07/16(土) 00:32:42 ID:q7uniV0Q0
仮投下乙です
特に問題はないと思われます

723 ◆WqZH3L6gH6:2016/07/16(土) 15:03:15 ID:sma/YgdE0
本スレでの投下が完了しました。
状態表を主に一部修正しました。

724 ◆DGGi/wycYo:2016/07/19(火) 19:43:00 ID:4O4Oo8p20
一応こちらにも
本スレの方で状態表を修正しました

725 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 06:54:33 ID:Ac9S5Cso0
仮投下します。

726ろうたけたる ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 06:55:05 ID:Ac9S5Cso0
拾い上げると、それはサングラスをかけた中年男の魂が封じられた白カードであった。


「……桂さん」
「ああ……」


足早に南方を目指していた桂小太郎とコロナ・ティミルが橋を渡ろうとした際。
水面に浮かぶ光るものを発見したのはつい先程。
それは長谷川泰三の白カード。
桂と親交があり、コロナも桂から話に聞いた男。
1回目の放送に名を呼ばれ彼の死を受け入れているが、
いざ死の事実を目の当たりにすると、度合いは異なれど2人ともやるせない気分に陥らざるを得ない。



「どうしますか?」


コロナの問いを聴きながら、桂は周囲を見渡すが長谷川の遺体は容易に見つけられそうにない。


「先に急ごう」


桂は一先ず捜索を諦めると、カードを懐に仕舞いコロナを促した。
淀んだ気持ちを少しずつ吐き出すかのように、両者は南西の島へ繋がる橋へと走って向かった。



「……カードの絵って固定されているんですかね?」
「……証明写真のように至極普通に写っているから、そうだろう」


白カードは死亡者それぞれの感情をまったく写さない。
参加者の誰々が死んだという証にしかなり得ないように思えた。
実際は各地に点在するパソコンを使えば情報を得られるが2人には知る由もない。


「友奈さんと犬吠埼さんのカードも拾えばよかったですかね……」
「……」

結城友奈と犬吠埼姉妹のカードはそれぞれの遺体の下に置いてきている。
2人は無言になり、並走を続け橋を渡る。
空は赤く染まり始めていた。

727ろうたけたるおもい ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 06:56:16 ID:Ac9S5Cso0
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「どうしたんですか桂さん」

コロナは息を切らせながら問いかけた。
桂は黒カードを変化させたスマートフォン素早く効率よく操作している。
それは斃れた勇者の遺品であるスマートフォンだった。
いま2人がいる場はE-4南西のある民家。
桂の提案で休息を取る事にコロナも異論はなかった。
放送ギリギリで目的地に着くのは避けたかったから。
好奇心もあり彼女は桂が操作するスマートフォンを覗き込た。
彼の慣れた手つきに軽く感動を覚えながら、コロナはある一文を見て声を上げる。


M:『東郷美森は犬吠埼樹を殺害した』


「それは……」
「……騙りかも知れん」


友奈を単独行動へと駆り立てたチャットの一文。
桂も樹の事は聞いているが、あえてそれのみに囚われず、他の記録をチェックしていく。


D:『犬吠埼樹を殺したのはホル・ホース』


「あれ?」
「順番通りならMの後に送信された文だが……」


桂は表情を変えず思考する。


「今は置いておこう。コロナ殿、三番目の文に心当たりはないか?」
「……はい。覇王はアインハルトさんだと思います」
「単純に捉えるとRはアインハルト殿の協力者と言う事になるな」
「せめて発信者が誰か解ればいいんですが」
「姓か名の頭文字か、あるいは本名か……うむ」
「?」

桂はコロナに顔を向け、スマホを手渡した。


「コロナ殿、発信して確認を取ってくれ」
「え、桂さんの方が」
「いや、もし俺の名からだと確認が取りづらい。下手すれば二つ名でさえ同じになってしまう」
「……解りました、やってみますね」

728ろうたけたるおもい ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 06:57:10 ID:Ac9S5Cso0
----------------------------------------------------------------------------------------

チャットに書き込みして30分が経った。
新しい書き込みはまだない。


「コロナ殿、このゲームに見覚えは無いか?」
「ウィクロスっていうんですか。ないです」

コロナはスマホの画面に映るカードゲームを見て答える。
まったく心当たりがない。


「そうか……どうしたものか」
「そのゲームが何か?」
「ゲームはこれだけなんだ」
「?。桂さん、遊びたい訳じゃないですよね?」
「……まあそうだが。ゲームを入れるにしてももっと知名度の高いのを入れるべきではと思うのだが」
「……現実逃避でゲームにする人はいてもおかしくないとは思いますが……。そう言えば」

疑問に思うコロナ。桂はスマホを操作しWIXOSSのゲームの説明を読み、プレイ画面へと進める。
そしてゲームスタートとは別の項目をクリックした。

「ん。ランキングがあるだと?」
「え」

ランキングは得点が表示されるものではなく、どれだけ運営が用意した対戦相手を倒せたかが表示されるものだった。


「……7人か」
「プレイする人が本当にいるなんて」
「名無しか……特定できんな」


桂は先のゲームプレイヤーの推理を諦めつつも更に操作を続ける。
やがて画面にプレイヤーキャラにあたるルリグの姿が現れた。
桂は質問するかのように顔をコロナへ向けたが、彼女も首を振って否定。
ルリグの姿は頭にターバンを巻いた、肌の色がダークグレーの、白のレオタードのような衣装を着た少女だった。
それは桂達は知る由もないが、数時間前勇者の力を行使したウリスに似ていた。


「この子がクロ……」
「……何かあるな」
「参加者でこの子を……このゲームを知ってる人はいるんでしょうか……」
「いたら手がかりになりそうではあるが」


もし2人が勇者の姿を見ていなければ、注目まではしなかっただろう。
興味を引いた理由の1つはクロの雰囲気が勇者か、あるいは少々繭に通じる幻想的なものがあったからだ。
桂の指が震えた。

「…………」
「桂さん」


コロナはプレイをさせないように咎めるように言った。
だがその口調はゲームセンター行きを止めた時のように強くない。

729ろうたけたるおもい ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 06:58:11 ID:Ac9S5Cso0

戦闘者の役割を忘れていない桂の姿を見て、コロナは思わず視線を落とした。
時間にして18時間未満経過。DIOらとの戦いに敗走を余儀なくされた上に、これまで協力者や仲間も少なからず喪っている。
にも関わらず主催打倒に繋がる情報は現状何一つ得られていない。
今のままではゲームに翻弄され、流されているだけだとコロナは実感した。
アプリWIXOSS。クリアしても殺し合いの打開にはならないだろうが、少々なりとも興味を出せるものをここに来て発見したとなれば。


「わかりました桂さん。もう止めません」
「そうか」


桂は柔らかさを感じる声を上げ、画面を切り替えた。
コロナはそのままプレイをすると思っていただけに少々呆気にとられた。
けど続ける。


「桂さん」
「?」
「後で皐月さん達にそのこと伝えましょうね。他の人にもですけど」
「む」
「こんな状況でゲームを勧めるなんて、普通は不真面目に見られちゃいますから」


----------------------------------------------------------------------------------------

放送まで1時間を切った。
2人はスマホの機能は大体チェックした。
もっとも肝心な機能のも、今。
実体を伴わない花弁が舞う。
緑色の桜の花びらと、どの花とも判別できぬものと。


勇者スマホの力を行使した桂は羽織を着用していた。
その羽織は勇者の戦闘服に酷似している。
それ以外は先程までの服装と容姿のまま。


勇者スマホの力を行使したコロナは、友奈の勇者服と同じデザインのものを着用していた。
ただその色彩はコロナのバトルジャケットと同じ紺色を中心としたものだった。
容姿は髪の色以外に違いはない。その色はアインハルト・ストラトスと同じ緑がかったもの。



「友奈さんの口ぶりだと他の人は変身できなさそうだったのに……」
「……」


戸惑うコロナと若干厳し目の表情をする桂。
黒カードの裏の説明文を見て、疑問に思った2人が試しにと使ってみた結果がこれだ。
コロナは掌を開いては握りを繰りかえす。
2人の感想は多少の違いはあれど共通していた。
未知の力が自らの肉体を増強させていると。


「…………桂さん」
「どうした」
「ちょっと手合わせ願えませんか?」

730ろうたけたるおもい ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 06:58:48 ID:Ac9S5Cso0
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2人は走る。先程とは明確に早い速度で。


「魔法は強化されない?」
「ええ、他の能力はかなり強化されてはいるんですが……」


申し訳無さそうにコロナ。
桂はコロナのいう魔法や魔力をあまり理解はできないというか、しきる事はできない。
だが彼女が得意とする技術は勇者の力と同時に扱うのは困難なのは手合わせしたからか理解はできた。


「DIOのような相手と戦っても単独では……」
「僅かな隙を狙われては、か」
「……アインハルトさんならもっと上手く扱えると思うんですが」
「強いんだな」
「……はいっ」


桂のその言葉は自分とアインハルトに向けられたもののように聞こえた。


「……ところで桂さん、神威と針目縫と、あとアザゼルって人と交渉するって本気ですか?」
「奴も、皐月殿から聞いた針目縫も、多分アザゼルという男も性格的に主催に反感を持つのは予想できる」
「だけど……」
「それ以上、殺し合いを加速させるつもりはない」
「それは分かるんですけど」


コロナからしてもこれだけゲームが進行しているだけに足止めの意味でも、
対主催戦の準備という意味でも、あえて敵対戦力と部分的に協力するという行動は否定できない。
だが、神威とアザゼルはまだしも針目縫と交渉となると不安が強かった。
コロナも皐月から針目縫に関して情報を聞いている。
会話は可能だが、交渉は無理な性分だと。
アザゼルに至ってはもっと情報が少ない。

勇者の力はコロナ同様に桂の身体能力も強化できている。
だが、その強化はコロナのと比べて明らかに見劣りするもの。
コロナから見て単独で神威やDIOと戦っても勝ち目はないと思えたし、桂も否定はしていない。
彼女の心は不安で占められていた。


「……なに。直接面前に出て会話しようとは思わん」
「え?それなら、いいんですが……」
「それも皐月殿と、放送後に連絡してからのつもりだ」
「解りました」


一先ずコロナは安心した。



「まあこの力、移動には便利だろう」
「……ですね」

たなびく桂の長髪を見ながら、ようやくコロナは笑った。

731ろうたけたるおもい ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 07:00:26 ID:Ac9S5Cso0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【F-7/万事屋銀ちゃん付近/一日目・夕方】

【桂小太郎@銀魂】
[状態]:胴体にダメージ(小) 、勇者に変身して移動中
[服装]:いつも通りの袴姿
[装備]:風or樹のスマートフォン@結城友奈は勇者である
    晴嵐@魔法少女リリカルなのはVivid 、
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(17/20)、青カード(17/20)
    黒カード:鎖分銅@ラブライブ!、鎮痛剤(錠剤。残り10分の9)、抗生物質(軟膏。残り10分の9)
    長谷川泰三の白カード
[思考・行動]
基本方針:繭を倒し、殺し合いを終結させる
1:万事屋へと向かう。
2:コロナと行動。まずは彼女の友人を探し、できれば神楽と合流したい。
3:神威、並びに殺し合いに乗った参加者や危険人物へはその都度適切な対処をしていく。
  殺し合いの進行がなされないと判断できれば交渉も視野に入れる。用心はする。
4:スマホアプリWIXOSSのゲームをクリアできる人材、及びWIXOSSについての(主にクロ)情報を入手したい。
5:金髪の女(セイバー)に警戒
[備考]
※【キルラキル】【ラブライブ!】【魔法少女リリカルなのはVivid】【のんのんびより】【結城友奈は勇者である】の世界観について知りました
※ジャンヌの知り合いの名前とアザゼルが危険なことを覚えました。
※金髪の女(セイバー)とDIOが同盟を結んだ可能性について考察しました。
※勇者に変身した場合は風か樹の勇者服を模した羽織を着用します。他に外見に変化はありません。
 変身の際の花弁は不定形です。強化の度合いはコロナと比べ低めです。


【コロナ・ティミル@魔法少女リリカルなのはVivid】
[状態]:胴体にダメージ(小) 、勇者に変身して移動中
[服装]:制服
[装備]:友奈のスマートフォン@結城友奈は勇者である
    ブランゼル@魔法少女リリカルなのはVivid 、
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(16/20)、青カード(17/20)
     黒カード:トランシーバー(B)@現実
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを終わらせたい。
1:みんなの知り合いの話をしたい。
2:桂さんと行動。アインハルトさんを探す
3:桂さんのフォローをする
4:金髪の女の人(セイバー)へ警戒
[備考]
※参戦時期は少なくともアインハルト戦終了以後です。
※【キルラキル】【ラブライブ!】【魔法少女リリカルなのはVivid】【のんのんびより】【結城友奈は勇者である】の世界観について知りました
※ジャンヌの知り合いの名前とアザゼルが危険なことを覚えました。
※金髪の女(セイバー)とDIOが同盟を結んだ可能性について考察しました。
※勇者に変身した場合は友奈の勇者服が紺色に変化したものを着用します。
 髪の色と変身の際の桜の花弁が薄緑に変化します。魔力と魔法技術は強化されません。


[全体備考]
※結城友奈、犬吠崎風の死体の周辺に散らばっていた黒カードは回収されました。
桂及び皐月・れんげの所持するスマホが風か樹のどちらであるかは次以降の書き手に任せます。
※勇者スマホにアプリゲームWIXOSSがインストールされています。内容は折原臨也のスマホのと同一です。
※桂とコロナが少しばかり模擬戦をしました。
※友奈か風か樹のスマホでチャットに書き込みをしました。
 内容は次回以降の書き手さんにお任せします。

732 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 07:03:04 ID:Ac9S5Cso0
仮投下終了です。
チャットの書き込みは丸投げなので、まずかったら今晩追記します。
タイトルはおもいが付いている方です。
問題点や疑問点がありましたら、ご指摘をお願いします。

733名無しさん:2016/08/01(月) 17:57:55 ID:qMgSr6kc0
仮投下乙です
勇者ヅラと勇者コロナで戦力は大幅にアップしたけど、肝心の散華を把握出来てないのは怖いなぁ
友奈が黙ってたのがここで響いてくるとは…
チャットについては個人的に問題はないかと思います

一つ指摘ですが、>>727で「いま2人がいる場はE-4南西のある民家」とありますが、C-6からF-7を目指してる桂達がE-4にいるにはあり得ないかと思います

734 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 23:17:21 ID:Ac9S5Cso0
>>733
感想とご指摘ありがとうございます。
E-4をE-7に訂正して本投下します。

735 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/01(月) 23:34:21 ID:Ac9S5Cso0
投下しました。
仮投下の際、ヅラの方針4を裏付ける文が抜けていたので、本スレの>>667に投下しました。

736管理人:2016/08/04(木) 23:47:55 ID:???0
■第三回放送案募集テンプレ

アニメキャラ・バトルロワイヤル4thの第三回放送案(リレーSS)を募集します。
以下をよく読んだ上で第三回放送案を仮投下スレで投稿してください。
他の人の投下に割り込まないように気をつけて下さい。
後に修正要求される可能性があるのでトリップをつける事をお勧めします。

今回は死亡者と3エリア分の禁止エリアの発表を行います。

放送案の内容に企画の進行に問題がある内容の場合は修正要求されます。
問題の度合いによっては修正要求の前に破棄になる可能性もあります。
もし修正作業が修正期間までに間に合わないと本編投稿作品も含めて自動的に破棄になるのでご注意下さい。


【募集期間】08/05(金)00:00〜08/18(木)23:59の14日間。
      修正期間は08/19(金)00:00〜08/20(土)23:59までの2日間の予定です。
      募集作品と本編投稿作品の修正の有無によっては修正期間無しとし、前倒しで投票を行う可能性があります。
      修正期日の翌日の00:00から23:59に投票を行います。
      投票で1位になった作品がアニメキャラ・バトルロワイヤル4thの第三回放送SSとして採用されます。

      募集期間中の放送前のパートの予約投下は08/05(金)00:00〜08/11(木)23:59まで可能です。
      修正は二日間までです。
      
      
     
※補足
第三回放送話は参加者残り24名という事もあり終盤一歩手前、
とはいえクライマックスにはまだちょっと遠いというという後半ながらやや不明瞭な局面です。
主催サイドの新キャラを出すのは構いませんが、現在のゲーム・参加者達の状況をよく把握した上で
今後の進行の阻害になりうる扱いに困るキャラ、設定等を出してしまわないようご注意下さい。

放送前の本編パートの投稿も内容次第では放送案投稿の支障になってしまう恐れがあるので、慎重にお願いします。

737 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/18(木) 23:40:54 ID:fIO4wV760
放送案を投下します。

738第三回放送 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/18(木) 23:41:25 ID:fIO4wV760
白い部屋と多数の大きな窓に覆われた部屋。
朧気な少女――繭は頭上にある巨大な時計を見上げていた。
午後5時58分。舞台となる会場の上空の陽は殆ど落ちており、夕日は端っこで消えかけの炎のようになっている。
陽光に弱い人外も外出が可能だろう。
そして繭が主軸となり回っているゲームはいよいよ佳境に入った。
今しがた一人が命を落とし、場合によっては5名以上の死者を出すであろう集団戦が部隊の南方で起こっている。
楽しみだ。懸念は定時放送中に決着が着いてしまう場合くらいであろう。
繭はためらわず、放送を開始した。


『今晩は。三回目の定時放送の時間よ
 忙しい方もいるでしょうけど、最低でも名簿と禁止エリアの確認はしておいた方がいいわよ。
 繭、つまらない結末は見たくはないもの。
 まずは禁止エリアの発表よ』


【B-7】
【C-3】
【G-7】



『午後9時になったら、今言ったエリアは禁止エリアになるわ。
 エリア内に留まっている子は時間までに離れなさい。
 それから、自分の支給品確認や禁止エリア予定地を調べてみるのもいいかもね。
 それじゃあ次は死んでしまった参加者の発表を始めるわよ』


【衛宮切嗣】
【東郷美森】
【リタ】
【結城友奈】
【犬吠埼風】
【アインハルト・ストラトス】
【ジャック・ハンマー】
【神楽】
【本部以蔵】
【ファバロ・レオーネ】
【坂田銀時】
【ホル・ホース】
【宇治松千夜】
【東條希】
【香風智乃】

739第三回放送 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/18(木) 23:42:18 ID:fIO4wV760


『全部で15人よ。残り24人。
 ふふ……ここまでやる気があるなんて驚いたわ。今夜中に決着がつきそう。
 でもね、決着がいつになるにしても優勝した子にはご褒美を上げるから心配しないで。
 次は正子――午前0時に放送を始めるわ』




放送が終わった。


「……」


繭は一息をつくと、椅子状になった窪みに腰を下ろし考える。
放送数分前に協力者の一人から忠告された繭自らによる白カードの確認と黒カードの確認。
繭は遅くとも優勝者が決まる瞬間までに、カードに封じられた参加者の魂を手元に集めなければならない。
でなければゲーム終了後、予定していた取っておきの遊びができなくなる。それではつまらない。
黒カードに関しては自分の力がちゃんと支給品に影響を及ぼしているかの確認である。
ひとつ妙な動きをしているのがいる。所持者が死んだこともあり放っておこうかと思ったが。
枷を外す所謂、意思持ち支給品が増えても難儀だ。
密かに手を打つか、もしくは臨時放送でもするか。もしくは……。


「……まあ、9時を回ってからでいいわよね」


繭は歩く。協力者たち、ヒース・オスロとテュポーンらの元へ。



「クロがそののままで、シロもシロのままでいてくれればよかったのだけど……」



足取りは重い。まだ身体は健全とまではいかないようだ。
でもヒースらの協力があってこその肉体。このまま時間が経てば……。
そう奮い立たせ、繭は未練を打ち切り、さらにそれを強調するかのように呟く。


「あのシロはタマ、クロはユキ……。
 わたしの知るシロとクロじゃないもの。
 ねえ……もうひとりの繭……。あなたはいまどうしてるの?
 わたしはね、呪いながらしあわせになるの。
 シロとクロが消えてしまった代わりに動けるようになった、このわたしで。
 バハムートといっしょに」

740 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/18(木) 23:42:58 ID:fIO4wV760
放送案投下終了です。
タイトルは明日までに。

741第3回放送  ◆DGGi/wycYo:2016/08/19(金) 00:00:06 ID:l6AyPUO.0
「…………」

白い部屋。
男は静かに、グラスに注いだワインを口にする。

「随分と早いペースだ」
「…………」

少女は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべ、そっぽを向いている。

「開いていた71の窓は、今や24まで減った。それに……」

男――ヒース・オスロは、個人的に目をかけている見知った参加者――風見雄二の窓を注視する。
あくまで目をかけているだけだ。特に優遇しているわけではないが、彼が今置かれている状況は――

「いや、君には関係のない話だったね」
「…………」

「この世の中は3割の悪意、1割の善意、6割の偽善で出来ている。そして、偽善は簡単に悪に変わる」
「……何が言いたいの?」

ようやく少女――繭がその口を開く。

「君は私を信用していないんだろう?」

繭は再び、その口を閉ざす。

「まあいい。さて、そろそろ時間だ」

オスロは読み上げる内容を大雑把にまとめた紙を手渡し、繭はそれを引っ手繰るように受け取る。

そして、窓の向こうへと言葉を投げかけた。





『――午後六時、三回目の放送よ。まずは次に禁止エリアになる場所の発表からいきましょう』






『午後九時を過ぎたら、何度も言うけれどそこには入れないわ。死ぬつもりなら知らない。次は脱落者の発表よ』



【衛宮切嗣】
【東郷美森】
【リタ】
【結城友奈】
【犬吠埼風】
【アインハルト・ストラトス】
【ジャック・ハンマー】
【神楽】
【本部以蔵】
【ファバロ・レオーネ】
【坂田銀時】
【ホル・ホース】
【宇治松千夜】
【東條希】
【香風智乃】


『――全部で15人、残りは24人よ。次はまた6時間後、深夜0時。今度は私の声を聞ける人は何人かしら、検討を祈るわ』






「随分と手短だったじゃないか」
「あなたには関係のないことでしょう」

二人は対峙する。もっとも、オスロの傍にはもう一人、白髪の青年が立っているが。


(しかし……目を付けられるのが思いのほか早かったようだ)

オスロが思い出すのは、数時間前に掛かってきた一本の電話。

「安心したまえ、君の目的は果たされる」

少しばかりの挑発を含んだ声。
それに対し、繭も口を開く。


「――――――」

742第3回放送  ◆DGGi/wycYo:2016/08/19(金) 00:01:14 ID:l6AyPUO.0
時間オーバーしてましたね。
もし通るのでしたら修正版で禁止エリアの追記をします。ダメでしたら破棄します。

743名無しさん:2016/08/19(金) 00:13:05 ID:WF1wRqz.0
お二人共投下乙です

◆DGGi/wycYo氏の投下については、ほんのわずかですが募集期限を超過しているので通しというのは難しいと思います

744 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/19(金) 23:58:16 ID:Rb.Xymeg0
第三回放送案のタイトルは修正前と後も変わらずタイトルは
『第三回放送 -あの思いは漂着-』です。
明日に修正版をここで投下させていただきます。

745 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/20(土) 17:22:23 ID:TNaq16Tg0
修正版投下します。

746第三回放送 -あの思いは漂着- ◆WqZH3L6gH6:2016/08/20(土) 17:24:24 ID:TNaq16Tg0

朧気な少女――繭は素足のまま白き砦の中を歩き、時折口元に笑みを浮かべながら思い出し考える。
彼女の殺し合いの第一回放送より少し前、第二回放送より少し前と同じく死んでいった参加者の事を考える。


魔術師殺しは愚かだった。
参加者の中でも最強格の怪物相手にあれだけ渡り合える底力がありながら、
自らの悪謀に足元を掬われ、情けない痕跡を残すのみの最期を遂げたのだから。
その上、優秀な支給品に分類されるWIXOSSルリグデッキ『ブルーリクエスト』を
自らの好悪から持て余してしまうとは。
ルリグに与えた力に興味を持ち、どう立ち回るか少々注目していただけに拍子抜けだ。
正義の暗示を持つルリグを引き当ててあれだとは。あの願いを持っていて……嗤う。


車椅子の勇者は油断が過ぎた。
想定した通りの動きを見せ、途中までプレイヤーとして期待以上の働きを見せていたのにも関わらず
一度の油断から力を奪われ、強奪者に対しまともな抵抗もできないまま、セレクターに引き摺られ、呆気ない最期を向かえたのだから。
もし優勝に積極的なプレイヤーらしく、黒カードをよく確認しカード裏の説明の意味を理解できていれば、
もう少し有利に動けただろうに。
とはいえ彼女はよかった。特に力を奪われてからの焦りはこちらにも伝わり、心に響いた。
今際に銀の勇者に対し何も言い残さなかったのはちょっと不満だったけれど。


ゾンビの魔法少女は不運だった。
同行者に恵まれず、同行者を全て喪った後に親愛の情を抱いていた騎士の躯を見つけてしまったのだから。
彼女も焦りに支配されず所持カードを念入りに調べていれば、あの最期は回避できていたに違いない。
とはいえ、どこか達観していてつまらなそうだった彼女が必死になる様はそれはそれで良かった。
それに彼女の体質は一参加者として見たら懸念があっただけに、不具合が生じ参加者にそれを見られる事がなかったのは
こちらにとっては少しばかり幸いだった。


桃色の勇者は無力なはずだった。
彼女は優秀なプレイヤーとなった二勇者とは逆の、無能なゲーム破壊希望者として想定していた通りの動きを見せ、
こちらはおろか、プレイヤーに対してもほとんどダメージを与えることなく、何も成せずに死んだと思えた。
なのにどういう訳か、優秀なプレイヤーのひとりを自死に追いやる影響を与えていたとは。
彼女の本意ではないにしろ、残った黒カードの行方を考えればこちらにとっては望まない結末だった。
それにあの戦いはどこか違和感を感じた。調べる必要があるかも知れない。


元隻眼の勇者、魔王ゴールデンウインドはサプライズの塊だった。
彼女は車椅子の勇者と違って、当初は積極的なプレイヤーになるのは期待していなかった。
だけどいざ蓋を開けてみればプレイヤーとなってからの働きはこちらの予想をはるかに超えたもの。
彼女の妹の死の影響は実にこちらに有利に働いていてくれている。
悪魔化の薬を入手していた事も含めてサプライズの連続。
大半の参加者とは別の意味で有意義な存在であった。
桃色の勇者を殺した直後自ら命を絶った事を除いてだが。


覇王はちょっと力の強い反ゲーム派の一人として、ただ殺されて終わると思っていた。
武術家にも関わらず彼女の嘆き、苦悩は大半のセレクターと同質のもの。
意外ではあったが、それだけに嫌いでは決してなかった。
最初の放送で暴走したのもプラス材料。今頃いいカードになっているだろう。

747第三回放送 -あの思いは漂着- ◆WqZH3L6gH6:2016/08/20(土) 17:25:17 ID:TNaq16Tg0
ピットファイターも不運であった。
支給品に恵まれず、目標を早々に喪った影響がマイナスに働いていたのは、早くに伝わっていたから。
にも関わらず彼はゲーム進行によく貢献してくれた。彼もまた良かった。


夜兎の少女は面白くない意味で滑稽だった。
兄と和解できたと勘違いして満足気に逝ったのだから。
友人の死を知る事がなかった事もあり、面白みのある参加者ではなかった。


柔術家は最後まで道化だった。
修業によってついたらしい過剰な自信が徐々に確実に崩される様は、セレクターの苦悩を見ているのと同様にこちらから見て痛快なもの。
ただ、予想外の動きをした時は面白くなく、素直に良いと思える参加者ではなかった。


アフロ男は拙速に過ぎた。
あの緑のルリグの急かしに完全に流されなければ、あんな最期は避けられたのに。
追跡するにしてもゾンビの少女の遺品くらいは回収すると思っていたのに。
賢い男だと思えていたけれど、結局は初見通りのばかだったのだろう。


白夜叉と皇帝のスタンド使いは力尽き、斃れただけ。
彼らの行動と感情は最初から最後まで、出した結果を含めてもこちらを楽しませる類のものでは決してなかった。
殺し合いではなく、ただの人間観察として見れば人によっては面白かっただろうけど。
どの道、死んだ今これ以上思いを馳せることはない。できれば忘れていたい男達。


甘味屋の弱い方は命を無駄に捨てた。
あれだけあの柔術家が身も心も削って守ろうとしていたのに。
でもあそこで死んでくれたのはこちらにとって好都合。
反ゲーム派の回復役が一人いなくなってくれたのだから。
イレギュラーのセイクリッド・ハートに対し調査できる余地も生まれた。


あのアイドル巫女も不運だった。死ななかったら反ゲーム派内に混乱が広がっていたのに。
彼女は非力だったけどこちらにとって非常に都合のいいプレイヤーだった。最後の最後まで。
友達を見殺しにした時開き直れば良かったのに、実に残念。


「ふふ」


死んだ参加者を一通りに思い出した繭は上機嫌で目的の部屋に向かう。


「……」


今、繭の心に湧き出る感情は他者の不幸を喜ぶ愉悦ばかりではない。
愉悦とは真逆の特定の参加者に対する不快な感情も
そして彼女もよく分からない得体の知れない感情もあった。
だが、それらは繭の喜びを上回るものではない。
故に繭はこのゲームを止めるつもりはない。
憂さ晴らしをし、生を謳歌できるようにする為に。

748第三回放送 -あの思いは漂着- ◆WqZH3L6gH6:2016/08/20(土) 17:27:06 ID:TNaq16Tg0

繭は顔を少し上げた。視線の先は開いた窓一つ。
彼女は立ち止まる。ゲームの一場面を鑑賞する為に。



「あら?」


その声は驚きと興味に彩られていて。

-------------------------------------------------------------------------------------------------



白い部屋と多数の大きな窓に覆われた部屋。
朧気な少女――繭は頭上に浮かぶ巨大な時計を見上げていた。
午後5時59分。舞台となる会場の上空の陽は殆ど落ちており、夕日は端っこで消えかけの炎のようになっている。
陽光に弱い人外どももこれなら外出が可能だろう。
そして繭が主軸となり回っているゲームはいよいよ佳境に入った。
今しがた一人が命を落とし、場合によっては5名以上の死者を出すであろう集団戦が舞台の南方で起ころうとしている。
楽しみだ。懸念は定時放送中に決着が着いてしまう場合くらいであろう。
繭の口端がわずかにつり上がっていた。


「……」


うさぎ小屋の少女は迂闊だった。
もっともあの場で殺されなくても、あの不安定な状態だとそう遠くない時期に命を落としていただろう。
協力者いわく元より最弱クラスの参加者。生きていても死んでいても大して影響はなかったと思える。
毒にも薬にもなれなかった、そんなちょっと面白い程度の参加者だったなと繭は位置づけた。

繭は放送を開始した。


『今晩は。三回目の定時放送の時間よ
 忙しい子もいるでしょうけど、最低でも名簿と禁止エリアの確認はしておいた方がいいわよ。
 繭、つまらない結末は見たくはないもの。
 まずは禁止エリアの発表よ』


【B-7】
【C-3】
【G-7】


『午後9時になったら、今言ったエリアは禁止エリアになるわ。
 エリア内に留まっている子は時間までに離れなさい。
 それから、自分の支給品確認はきちんとやっておいた方がいいわよ。
 あと時間が来るまでに禁止エリア予定地を調べてみるのもいいかもね。
 思わぬ所で得るものがあるかも知れないのだから。
 これは繭からのアドバイスよ。
 次は死んでしまった参加者の発表を始めるわよ』

749第三回放送 -あの思いは漂着- ◆WqZH3L6gH6:2016/08/20(土) 17:28:29 ID:TNaq16Tg0
【衛宮切嗣】
【東郷美森】
【リタ】
【結城友奈】
【犬吠埼風】
【アインハルト・ストラトス】
【ジャック・ハンマー】
【神楽】
【本部以蔵】
【ファバロ・レオーネ】
【坂田銀時】
【ホル・ホース】
【宇治松千夜】
【東條希】
【香風智乃】


『全部で15人よ、15人。残り24人。
 ふふ……ここまでやる気があるなんて驚いたわ。今夜中にも決着がつきそうよね。
 でもね、もし長引いて決着がタイムリミット寸前になったとしても、優勝した子にはご褒美を上げるから心配しないで。
 次は正子――午前0時に放送を始めるわ。また放送が聞けるといいわね』




放送が終わった。


「……」


繭は一息をつくと、椅子状になった窪みに腰を下ろし考える。
放送一時間前に協力者の一人から提案された繭自らによる黒カードの確認と白カードの確認。
繭は遅くとも優勝者が決まる瞬間までに、カードに封じられた参加者の魂を手元に集めなければならない。
でなければゲーム終了後、予定していた取っておきの遊びができなくなる。それではつまらない。

黒カードに関しては自分の力がちゃんと支給品に影響を及ぼしているかの確認である。
黒カードは参加者の枷である腕輪と白カードと比べて、仕様上及んでいる力は少ない。
だが、それでも強弱に関係なく意思持ち支給品の自由を奪う事には成功している。
ただひとつ、高町ヴィヴィオの支給品でパートナーであったセイクリッドハートを除いて。

繭は参加者の意思と力が及ばない範囲での支給品の自律行動はできないようにしている。
なのにあのデバイスは単独で助けを呼び、つかの間だが宇治松千夜の救命に成功していた。
千夜がどう転ぶか解らなかった事もあり、これまであえて介入はしなかったが。
さらに枷を外す意思持ち支給品が出てくるか解らない今、参加者への干渉を極力避けつつ
何とか原因を調査する必要があるだろう。
能力制限が解除されると厄介な支給品もある。


そして腕輪と白カード。
腕輪については第一回放送前にある懸念が生じたが、今は放置していいだろう。
あれから何の変化もない。

750第三回放送 -あの思いは漂着- ◆WqZH3L6gH6:2016/08/20(土) 17:30:01 ID:TNaq16Tg0

白カードについて気がかりが2つある。
1つは開始時に見せしめとしたアーミラの白カードが、会場のどこかに落ちて行方が解らなくなっている事。
もう1つは魂喰いとやらを行ったキャスターの白カードの詳細。

アーミラの白カードは今は無くても、今後特に大きな影響はないがあって困るものでもない。
形式上非参加者である彼女の白カードは回収するに躊躇する理由はない。捜索は協力者に頼むか。

そしてキャスターの魂喰い。協力者の一人からどういうものか聞いている。
そうなってしまったものだったら諦めるしかないが、キャスターが死んだ後も聞いた通りのままだと困る。
死んだ参加者は生前の強弱経歴に関わらず、等しく非力な魂になって封印されなければいけないから。
よって同化とやらをされた魂2つの有無と、自らの能力の欠点を知る為にもできるだけ早く調べておきたいが、
当のカードは参加者の一人が所持している。
よりにもよってこちらの秘密の幾つかを知る反ゲーム派のセレクターが。


繭も少々のイレギュラーは覚悟していたが、シロが支給品にされたことも含め、
これだけ積み重なると何もせず放置する訳にも行かない。
密かに手を打つか、臨時放送でもするか。もしくは……。


「……まあ、9時を回ってからでいいわよね」


3つの区域が禁止エリアとなり、南方での大戦の決着が付いていると想定される時間帯。
強豪含め消耗した参加者が多数になった現状なら、隙はある。


「……」



繭は歩く。協力者たち、ヒース・オスロらの元へ。



「……クロの」


それはシロと対になる原初のルリグの名前。
繭は自らの長髪を手で撫で、髪の色を見た。


「……クロがそののままで、シロもシロのままでいてくれればよかったのだけど……」


髪の色は昔と違って薄緑。足取りは重い。
寝たきりだった頃よりはずっとましだけれど、身体はまた健全とまではいかないようだ。
能力とバハムート無しで敵対者と遭ったらと思うと寒気がしてしまう。


「早く健康になりたいのに、あの人は……。あんなことを……!」

751第三回放送 -あの思いは漂着- ◆WqZH3L6gH6:2016/08/20(土) 17:35:27 ID:TNaq16Tg0
やや強く踏みしめる。
ほとんど力が入ってないはずなのに地面が一部陥没した。それは繭の異能がなせる現象。
そしてこれは協力者に対する不満の表れ。でも強く叩くようなことは考えていない。

繭の今の身体と増強された異能はヒース・オスロの協力があってこそのもの。
恩義もあるが、生き続ける為にも彼の存在は必要。
このまま時間が経ち、健康になるまでは。
そう奮い立たせ、繭は不満と未練を打ち切り、さらにそれを強調するかのように呟く。


「あのシロはタマ、クロはユキ……。
 わたしの分身で大事で必要な子達だけど、わたしの知るシロとクロじゃないもの」


ヒース・オスロと会ってから、しばらくして繭の知るシロとクロは消えてしまった。
繭は最初こそ小さい喪失感を覚えるのみだったが、日に日にその思いは強くなり、
やがて行動に支障が出るほどの大きなものとなった。
それは協力者の一人の提案が実行されるまで続いた。


「でもいいの。わたしの目に届く所で居続けてくれれば、それで」


その提案は別のシロとクロを攫ってくる事。
繭はそれで自らの欠落を埋められるか不安だったが、杞憂だったようだ。
ここに原初のルリグがこの世界に連れられた時、繭の欠落感はほぼ消えていた。
それどころか2人のルリグの記憶も一部流れ込んできたくらいだ。
もっともそれは現状ゲーム開催への少々の助力にしかなってないが。


「ねえ……もうひとりの繭……。あなたはいまどうしてるの?」


その呟きは別の繭に問たものではなく、行方を知ろうとするものでもなく。
自虐を込めた、別の自分への哀れみの言葉。
繭は1枚のカードを出す。ドラゴンの寝顔を写している、バハムートのカードを。
繭がカードを凝視する。ドラゴンの両眼が開き、繭は黒い物体に包まれる。
それは実態を伴わない、ドラゴンの肉体。
だが、もしここに繭以外の誰かがいれば感じ取れるであろう。トップクラスのプレイヤーからも絶大と認識されるだろう力を。


「いい子ね……。もう少ししたら出られるからね。それまで辛抱よ……」


繭は実体の無いドラゴンの体を撫でた。
バハムートはどこか満足気に顔を歪ませるとカードへと戻った。
万が一、敵対者がここに入り込んでもこれなら……。
繭は薄く笑う。

「わたしはね、呪いながらしあわせになるの。
 むかしのシロとクロが消えてしまった代わりに動けるようになった、このわたしで。
 バハムートといっしょにねえ」

そして――

752 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/20(土) 17:36:52 ID:TNaq16Tg0
遅くなりましたが修正版投下終了です。
まずい箇所があったら削ります。
修正しきれなかったら修正前の方を投下します。

753 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/20(土) 17:40:59 ID:TNaq16Tg0
あと本投下は明日中にする予定です。

754名無しさん:2016/08/20(土) 18:09:11 ID:GxaeVx1k0
大幅な加筆修正乙です!
そりゃ旦那の魂喰いは繭にとっても予想外だよなぁ
そしてアーミラの白カードですか、これは驚きの新事実ですね

修正前版の九時を回ってから云々というのはイレギュラーへの対処も含まれていただ
のですね
繭は魂を集めて一体何を企んでいるのやら…

放送後の南の決戦にも注目が高まる中、その後に起こるであろう主催側のアクションも気になりますね

一つだけ質問なのですが、原初のシロとクロを奪われたもう一人の繭というのは、所謂パラレルワールドのようなものという認識で大丈夫ですか?

755 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/20(土) 20:42:00 ID:TNaq16Tg0
>>754
感想ありがとうございます。
もう一人の繭についてはその認識で大丈夫です。

756 ◆WqZH3L6gH6:2016/08/21(日) 10:23:27 ID:KXZLuLqE0
第三回放送、微修正し本投下しました。

757 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/05(月) 05:04:44 ID:IoUHUwsQ0
仮投下します。

758distract ◆WqZH3L6gH6:2016/09/05(月) 05:05:49 ID:IoUHUwsQ0
――の命が尽きてからも彼女は■■を叩いていた。

-------------------------------------------------------------------------------------------------


ラヴァレイは黒カードを猫車に戻すと、担いでいた少女 小湊るう子をそのままそっと乗せた。
るう子は未だ気絶しており目覚める気配はない。
それに対し、今しがた協力者となった浦添伊緒奈――ウリスは疑念を含んだ眼差しを彼に向けた。


「さっさと起こせばいいじゃない」
「……加減を間違えたようだ。しばらくはそのままにしておいた方がいいだろう」
「はあ?貴方がやった癖によく言うわね」
「いやまったくだ」


嫌味を簡単に流すラヴァレイに、ウリスは不満気だったが気持ちを切り替え一旦黙る。
今のるう子の状態は良くない。何より治りかけた風邪も再発し発熱もしている。
放置してもすぐ死ぬことはないだろうが、尋問するにしても思考が纏まらない状態では情報を聞き出しにくいだろうし、
いざ人質として使う時に不便が生じかねない。だが、この状況は一方で好都合でもあった。

ラヴァレイがるう子を起こさないのは人質として気遣っただけではない。
彼がウリスを協力者として誘ったのは嗜好が共通する同類の匂いを嗅ぎとったのもあるが、主因ではない。
一番の理由はゲームの主催 繭と何かしら関係があり、なおかつ殺し合いに乗った者である人物であった事。
ウリスが自分にとってどれだけ有益であるか観察する為だ。
可能であれば一対一で対話それが彼の目的である。


「で、北に行くって言ってたけど、何処に出入り口があるのかしら?」
「地下闘技場だ」
「ふぅん、人はあまりいなさそうね」



ウリスは皮肉げに顔を歪ませた。彼には彼女も体調は思わしくないように思えた。
これまでアザゼルの攻撃を受け続けたダメージが見て取れたから。
ただ、るう子と違うのは痛みに意を介してないように振舞っている事。
所々不満を滲ませながらも、何だかんだで楽しくて楽しくてしょうがないという様子。

ラヴァレイは戦力としては期待できないなと分析し、せめて足手まといにならぬようどうしようかと思った。
ウリスは彼の胸中を他所に軽い口調で続ける。


「ねえ、南東に向かうってのはどうかしら」
「……市街地に出るとしても距離がありすぎる、あまり意味は無いな」
「でも、私の知り合いがいる可能性が高いわよ」
「……紅林遊月か」


アザゼルが繭打倒の手札として注目しているセレクターで、ラヴァレイの協力者である針目縫も少なからず執着している少女。
ウリスもるう子を尋問した際に行き先はラビットハウスだろうと見当をつけている。
ウリスは遊月に対して興味のない対象だが、それでもおおまかな性格は把握していた。
迷惑をかける方向性でのまっすぐな性格。
遭遇したとされる桐間紗路亡き後も、罪悪からかよほどの事が無ければあの家に留まっているだろうと想像できた。
だが、ラヴァレイの方針は変わらなかった。

759distract ◆WqZH3L6gH6:2016/09/05(月) 05:07:46 ID:IoUHUwsQ0
「やはり止めておこう」
「ち」


今のウリスの提案はあくまで軽口、ゆえに彼女も未練はない。
だが、そのままウリスを伴って北へ向うとしたラヴァレイは、それがきっかけである可能性に気づいた。
彼は猫車を操作し逆方向へ向いた。


「あら、止めるんじゃなかったの?」
「気にかかることがあってな」


彼は黙ったまま南へ移動を始め、ウリスも追った。


「気にかかる事って?」
「……闘技場の近くの通路に特別な施設がある。放送局の近辺にも可能性はあるだろう」
「へえ」
「説明せずとも見れば解る」


ゲームの脱落者の情報が提示されている施設『死の瞬間を捉えた道』をウリスに伝えるのは抵抗があった。
しかし有能ではないにしろ折角できた協力者、ある程度でも足並みを揃える必要ありと判断し遠回しに告げた。
どの道、単独行動を取らせる気はないし邪魔になったら処理する腹づもりではあるからこその選択だが。
そして放送局近辺に施設があると思ったもう1つの理由は北東にある『ジョースターの軌跡』の存在。
施設が2カ所確認できていたからこそ向かう。

当初の方針ではゆっくりと北に向かい、放送直後に『死の瞬間を捉えた道』での更新情報を集め。
地下闘技場でしばし休憩しながら駅に向かうつもりであった。
3人は南東へと進む。
しばらくして遠くから何かが崩れる音がした。

-------------------------------------------------------------------------------------------------


3人の男女が無言で地下通路を進んでいる。るう子はまだ目覚めていない。
通路の左右の壁には映像。六時間ほど前ヴァニラ・アイスが通過していた通路。
『万事屋の軌跡』という映像が設置されている場所。
映像を鑑賞したウリスが嫌味たらしく呟く。


「邦画にしては良くできてるわねえ」
「……君の提案を聞いた甲斐があったな」
「嫌味のつもり?」
「まさか」


映像はそこで途切れた。
ラヴァレイが気は良くした様子で猫車を転換させ、ウリスも従う。
思った以上の収穫があった。るう子から強奪した定春は万事屋メンバーと親しい仲。
いざという時の取り引きにも使えるだろう。
彼等が次の放送まで生きてるかはまだ不明だが、死んでいたとしても無駄ではない。
それに神威という男。アザゼルに匹敵するかも知れない力量を持つ彼の存在を知れたのが大きい。
少なくとも警戒が可能となった。

760distract ◆WqZH3L6gH6:2016/09/05(月) 05:08:48 ID:IoUHUwsQ0

「ところでこれから何処に向かうのかしら?」
「……」


腕輪を操作し歩きながらウリスはラヴァレイに問う。
白カードには地下通路についての最新情報が記されている。
崩れる音がして数分後。ウリスがライト代わりに腕輪を操作した際、発見したのはたまたま。
放送局にあった地下通路出入り口が使用不可となったとの通知。
更に放送後に放送局に代わる出入り口が開通されるとの通知もあったのだ。
南東は遠方により選択肢にない。

あるのは地下闘技場と代わりの出入り口。
放送局の代わりなら、元の出入り口とはそう離れていない場所にあるだろう。
場所が放送局と同エリアならアザゼルがいる可能性が高く、地上に出ようとは思わない。
だが、もし別エリアに開通するなら出るのも選択に入れようかと彼は思う。
知り合った参加者の大半が死に、物資も心許ない状況。
放送局へ向かっている参加者との接触や、脱落者の遺品を入手する機会が生まれるかも知れないのだから。


「着いたわね」

そこは放送局の地下にある出入り口だった場所。
ラヴァレイは五感を研ぎすませながら慎重に階段を登る。
ドアに手を当てる。動かない。いつのか定かではないがそこに書かれた文章を彼は確認する。


『この出入り口は使用不可となりました。放送後またの確認をお願いします』

-------------------------------------------------------------------------------------------------

彼女達が斃れていく光景が繰り返される。
それを見るに連れ、自らの至らなさを痛感させられる。
最低。
その言葉よりも下回るものがあると夢の中で、現実の中であるのを少女は悟った

-------------------------------------------------------------------------------------------------

ここは地下通路C-2とD-2の境目。
ラヴァレイとウリスはここで休憩を取っていた。

「つまりアザゼルの、セレクターバトルを利用しての策は無意味と言いたいのかね」
「ええ、繭単独だろうが協力者がいようがそれに変わりはない。
 無限少女になっても繭に支配されるルリグになるだけだし、
 仮に逆らえてもあの竜や協力者をどうこうできるとは思えないしね」
「しかしアザゼルはタマというルリグを利用すれば突破口を開けるみたいな事を言ってたが」


ラヴァレイの疑問にウリスは嘲りの色を見せ答える。
手にはるう子から奪った黒カード。それを元の形に戻し見下しつつ。


「ぷっ、ハハハハハハ。繭は何やら執着していたみたいだけど、コイツにルリグ以上の力も度胸もないわ。
 だってあたしが使っていて観察していたから間違いない。ねぇ、クソッタレさん」

761distract ◆WqZH3L6gH6:2016/09/05(月) 05:10:11 ID:IoUHUwsQ0
「……っ」


ウリスの嘲笑に対しカードの中のルリグ タマは泣き出しそうな顔で頭を下げ何も言えなかった。


「第一、他にルリグデッキが支給されているかも解らないしね」
「……あの竜、バハムートについて何か知らないかね?」
「知らないわ。ああいうのって神話や創作では珍しくないみたいだけど」
「……」

ラヴァレイはその神話についても聞き出そうと考えたが、その辺に詳しく無さそうと察し止めた。

「るぅ……」

タマが見つめる先は未だ意識を回復しないパートナー るう子。


「薄情なヤツね、るうは」
「……ウリス!」


タマは泣き叫ぶ一歩手前まで声を荒げる。
ウリスはそれに怯むどころか愉しげに顔を歪めながら悪意を向け続ける。

「だって、あの子あれほどあんたを取り戻したいって言ってた割には、あたしに達に捕まった時戸惑って何もできないでいたわ」
「そんなのっ」
「嘘じゃない。それにあんたの事頭にないって感じでもあったわ」
「……!」

タマはウリスを睨みつける。だがそれ以上アクションを取ろうとはせず黙る。
ウリスは畳み掛けようとするが、それはラヴァレイに止められた。


「まだ私の質問が終わっていないぞ、ウリス君」
「……はいはい。あんたも楽しんでいた癖に」
「……」

ウリスは弾を黒カードに戻し悪態を付き、ラヴァレイは彼女の肩に置いた手を引っ込めた。
彼の目は笑っている。
苦笑しながらウリスが黒カードを仕舞おうとしたその時だった。


「!」


突如起き上がったるう子の両手がウリスの右腕を掴んでいた。

762distract ◆WqZH3L6gH6:2016/09/05(月) 05:12:15 ID:IoUHUwsQ0
「こ、こいつ」


ウリスはとっさに引き剥がそうとするが動けない。


「タマを、タマを返して……!」
「何今更、いい子ぶってるの?」


殴りつけ離そうとするができない、ウリスはダメージもあり逆に押し倒される。
堪りかねたラヴァレイが事態の収拾に当たろうとする。

その時、放送が始まった。

-------------------------------------------------------------------------------------------------

 次は正子――午前0時に放送を始めるわ。また放送が聞けるといいわね』

放送が終わった。
るう子は黒カードをしっかり手にしながらも項垂れていた。

――アインハルト・ストラトス


桐間紗路に続き、あの時集った仲間がまた逝った事による衝撃は大きかった。
その上、結城友奈や宇治松千夜といった仲間の大切な人が次々と亡くなったのも悲しかった。
両眼からは涙がポロポロと落ちる。

「――」


ウリスがこちらを罵倒しているが、まともに聞こえない。
るう子は顔を上げる。一瞬、ウリスは怒りを滲ませたが、すぐに嘲るような笑顔でこちらに対する中傷を再開した。
しかし、るう子の心には大して響かなかった。
頭痛がし、発熱していることも一因だった。
ふともう一人の同行者へ顔を向ける。
髭面のドレッドヘアーの騎士風の男は、気味の悪い視線をこちらに向けながらも、忌々しげに口を歪めている。

「ねぇ!こいつから取り上げないの?!」
「……」

ウリスの非難に構わず、彼は今後の計画に思いを馳せる。
ラヴァレイにとってるう子の放送への反応は見ものだったが、同時に放送の内容は彼にとっても不都合であったから。
ファバロ・レオーネ、リタ、本部以蔵、坂田銀時、宇治松千夜の死。
そしてアザゼル、三好夏凛の健在。
前の放送の時はこういう事もあると納得させていたが、ここまで変身対象やコネが絶たれてくると、
決して楽観視できる状況ではない。それに脱落者の出るペースが未だに早い。
こうなると情報操作の効果も存分に発揮できなくなってくる。
一刻も早く未知の参加者の情報を収集し、物資も集めなければ。生存できる選択肢がなくなってしまう。
ラヴァレイはゆっくりと2人の少女へ顔を向けるや少女達にとって思いがけない事を言った。


「今は彼女に持たせておこう」
「はあっ?!何考えてんの?」

763distract ◆WqZH3L6gH6:2016/09/05(月) 05:14:11 ID:IoUHUwsQ0
「タマ君が何もできないと言ったのは君だ。ただしこれ以上返す気は無いがね」
「……ラヴァレイ……さん、あなたがるうを……!」
「悪いが、私にも立場というものがある」


咳き込みながら彼を糾弾するるう子に対し、彼は悪びれない態度で返す。


「……君の持ち物を全て没収しなかった理由が解るかね?」
「……」

るう子は睨みつけたまま黙る。カードを握っているのは両手だが痛みに意を返さない。
ウリスは不満タラタラで2人を交互に見つめる。

「君には人質としても、情報源としても我々に協力してもらう」
「……!」
「見返りとしては悪くはないだろう」


るう子はルリグカードだけでなく腹巻きも没収されていない。


「アンタ、優勝を目指すんじゃなかったの?!」
「……」

ウリスの叫びにラヴァレイは虚勢からの笑みを浮かべる。
繭に対し、ゲームのルールに対し、何ら手がかりや抜け道が見当たらなければ、僅かな可能性にかけてでもそのスタンスを取り続けていただろう。
しかし事態は彼の予想を大きく超えて終息に向かい、優勝も不確実なものに思えてきた。
今のアザゼルや針目、DIOには勝機は見当たれれど、神威が健在だった場合遭遇すれば勝ち目はほぼ無い。
機会を失う前に挑戦する必要が出てきた。だから問う、もう一人のセレクターに。


「アザゼルのセレクターバトルを利用しての策は無意味なのかね?」
「…………」

るう子は即答できなかった。
東郷美森から救出されてからのるう子はアザゼルの策に対し、微かな希望を持った。
だが同時に漠然とした不安も抱いている。捕らえられるまでその不安は成功の是非からによる不安と思っていた。
しかし先ほどのタマの悲痛な声とウリスの中傷を聞き、それは違うんじゃないかと思った。
それは桜色の甘い夢の様な――


「すぐに答えられないなら、ホワイトホープは……」
「そのままでは意味はないと思います」
「ほう?」
「るう達セレクターは肉体的には普通の人間。
 だからそのまま繭、もしくは別の犯人の所に行っても倒すとかはできないです」
ウリスが反論するかのように口を挟みかけるが、ラヴァレイが手を振るとウリスは気絶し沈黙した。

「……」

るう子はそれに怖気が走ったが、負けずに続ける。

「だけど交渉はできると思います。ゲームをやめさせるとかじゃなく、多分クリア条件の一つとして」

764distract ◆WqZH3L6gH6:2016/09/05(月) 05:15:52 ID:IoUHUwsQ0

あの時のるう子には言えなかった、心の奥に秘めたカードゲームユーザーとしての推理。


「つまりセレクターバトルは主催のルールの範疇だと」
「そうだと思います。るうが知る限り繭はゲーム崩壊に繋がることは簡単に許容したりしません」


ラヴァレイは得心し密かに歓喜した。
少なくとも闇雲に優勝を目指すよりは生存できる可能性が見えてきたから。
ただそれは皆殺し行為への回避から来る安堵ではなく、こちらが有利になる状況からの喜びに過ぎないが。

るう子は黒カードをホワイトホープに戻すと、ルリグカードを取り除き、デッキを彼に向けた。
吐く息はこれまで以上に荒い。


「何かね?」
「ラヴァレイ……さんの目的はあなたも含めた全参加者の……破滅ですか」


ラヴァレイは一瞬、何世迷い言を言ってるのだと思ったが、その言葉はウリスの事を指しているのだろうと判断し返答した。


「いや、私は元の居場所に戻れればそれで構わない」


嘘は言っていない。だが真実を伝えきってもいない。
彼は元の世界の帰還が目的だが、それは世界を滅ぼすバハムートの力と共にだ。
もし、この舞台でバハムートを得られれば間違いなく殺戮に力を行使するだろう。


「……」
「もし、余裕ができれば君達の目的を手伝うのも吝かではないが」


るう子はラヴァレイが悪党だと思っている。
しかし自己含めた全ての破滅が目的なウリスと違い、自らの保身が目的なプレイヤーなら話が通じると思った。
タマの救助も交渉に踏み切った理由でもある。これ以上、翻弄され何もできないでいるのが嫌だった。
るう子は黙って頷く。言葉には出さない。

「次の質問いいかね?」
「はい」
「セレクターは誰にでもなれるものかね?」
「ルールを覚えればなれます。無限……少女になれるかは人それぞれですけど」
「他のゲームでは代用はできないのか」
「るうが知るかぎりでは無理ですけど、ここではどうだろ?」


ラヴァレイはタマ除くルリグデッキをるう子から回収する。
そして、先程気絶させたウリスを猫車に乗せる。


「ウリス君の事聞いていいかね」
「……いいですけど」

765distract ◆WqZH3L6gH6:2016/09/05(月) 05:17:46 ID:IoUHUwsQ0

気が進まない。ウリスは心はともかく肉体はるう子が好感を抱いた浦添伊緒奈本人のもの。
いくら悪党とはいえむざむざ命を奪わせさせるような行為は許容したくなかった。

「何、悪いようにはならないと思うよ、ウリス君も賢いからね」
「……」


殺されないようにまともな返答をしてほしいとるう子は思った。
るう子は思うままを説明する。
ラヴァレイはそれを聞き、そのままでは使えないなと思った。
3人は向かう、ある地点へ。


「あの竜について心当たりはないかね?ああ、別に似ているものでもいいんだ」
「……ドラゴンならウィクロスにもいますし、あれだけ不思議な現象があったらどこかで同じような存在はいてもおかしくない、かな?」
「……時空を超える力はあるか?」
「カード内の設定、たぶん創作ですけどあってもおかしくないような……」
「伝承だが、私のいた世界のバハムートは時空を超える力があるのだよ」
「えっ」
「恐らく繭はその力を使って我々を拉致したと思われる」
「……何で知ってるんですか?」
「私というか我々はバハムート対策が任務だったからね。ある程度知っていてもおかしくはないだろう」

嘘は言っていない。真実も伝えきっていないが。
るう子も鵜呑みにはしてない。

「そうですか……」
「セレクターバトルはいつから始まったか解るかね」
「何年も前から行われています……ごほっ……」
「……るう子君、水でも飲んではどうかね。このままでは見ていられん」
「……はい」

るう子は足を止め、青カードと黒カードを使い風邪薬を服用する。


「君の思惑が叶うといいな」

一息ついた彼女に掛けられたのは優しい言葉。
上辺だけの、見透かそうとする悪意の込められたもの。
るう子はそれにしぶしぶ頷くと、これまで忘れていた参加者の事を思い出す。

池田華菜と神代小蒔。
宮永咲いわく友人の一人と、直接試合しなかった対戦チームの一人。
池田はまだしも、小蒔については咲さんからどうこうしたいとは言われていなかった。
だが、おおまかな特徴は伝えられていたし、咲さんを喪った直後はなんとか合流し協力しあいたいと思っていた。

なのにるう子はついさっきまで彼女達の事を忘れていた。
タマの事にしても、元いた世界での目標 全ルリグの救出にしてもそう。薄っぺらな物になりかけていた。
少女はウリスを見る。
今のるう子にしてみれば確かに最低と言われても仕方のないたいらく。
だから忘れない。虐められたタマを前にようやく湧き上がった思いを。
こちらが悪く思われてもいい。これ以上何もしない選択を選ばないためにも。
他者の悪意を抑える為にも。たとえ不可能に思えても。

766distract ◆WqZH3L6gH6:2016/09/05(月) 05:19:49 ID:IoUHUwsQ0

るう子はウリスの腕輪を見た。傷一つ無いように見える。
ラヴァレイの腕輪を見た。こちらも傷一つ無いように見える。
最後に自分の腕輪を見る。何度か叩いたはずなのに傷一つ無い。


「ラヴァレイさん」
「?」
「タマが見えるんですよね」
「普段は見えないのか?」
「はい」
「セレクターバトルもセレクターとルリグ以外は感知できない」
「……」

ラヴァレイは興味深げに見るが、これ以上の反応はなく。
様子から推理に行き詰まったと判断し、興味を失い視線を逸らす。
目的地までもうすぐ。
先は『死の瞬間を捉えた道』か未知なる出入口か。


半ば朦朧とした意識の中、彼女は考えた。
白カードは無効化できないけど、腕輪は腕輪を強い力をぶつければ壊せるんじゃないかと。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




【D-2/地下通路/一日目・夜】

【ラヴァレイ@神撃のバハムートGENESIS】
[状態]:健康 、上機嫌、セレクターバトルに強い興味
[服装]:普段通り
[装備]:軍刀@現実、定春@銀魂、ホワイトホープ(タマ除くカードデッキ)@selector infected WIXOSS
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
    黒カード:猫車@現実、拡声器@現実
[思考・行動]
基本方針:手段を選ばず生還し、可能ならバハムートの力を得たい。
0:地下闘技場に向かうか、新しい地下通路出入り口に向かうか。
1:るう子を利用し勝者になるべく立ちまわる。 それが無理なら即座に殺し、優勝狙い。ルリグデッキを探す。
2:ウリスが目覚めれば質問をし、その反応で今後の扱いを決定する。
3:アザゼルと夏凜と神威は殺したいが無理はしない。
3:セルティ・ストゥルルソンか……一応警戒しておこう。
5:本性はるう子とウリス以外には極力隠しつつ立ち回るが、殺すべき対象には適切に対処する。
[備考]
※参戦時期は11話よりも前です。
※蒼井晶が何かを強く望んでいることを見抜いていました。
※繭に協力者が居るのではと考えました。
※空条承太郎、花京院典明、ジャン=ピエール・ポルナレフ、ホル・ホース、ヴァニラ・アイス、DIOの情報を知りました。 ヴァニラ・アイス以外の全員に変身可能です。
※坂田銀時ら銀魂勢の情報を得ました。桂小太郎、神威等の変身が可能です。

767distract ◆WqZH3L6gH6:2016/09/05(月) 05:20:27 ID:IoUHUwsQ0
【小湊るう子@selector infected WIXOSS】
[状態]:全身にダメージ(小)、左腕にヒビ、風邪気味(服薬済み)、体力消費(中)、精神的疲労(中)
[服装]:中学校の制服、チタン鉱製の腹巻 @キルラキル 、タマのルリグデッキ@selector infected WIXOSS
[装備]:
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(8/10)、青カード(7/10)
    黒カード:黒のヘルメット、宮永咲の白カード、キャスターの白カード、花京院典明の白カード、ヴァローナの白カード
          風邪薬(4錠消費)@ご注文はうさぎですか?
[思考・行動]
基本方針:自分が悪く思われてもいいから、これ以上被害を出したくない。繭の思惑が知りたい。
0:どこに向かっているんだろう?
1:悪事を働かない分にはラヴァレイに協力する。ラヴァレイとウリスによる被害を防ぎたい。
2:ゲームの打開方法を模索する。
3:白カードを集めたい。
4:遊月と夏凛さんが心配。あとアザゼルさんも。
5:死んでしまった人の事は忘れない。
[備考]
※チャットの新たな書き込み(発言者:D)にはまだ気付いていません。
※セレクターバトルは主催のゲームの一部と推測。



【浦添伊緒奈(ウリス)@selector infected WIXOSS】
[状態]:全身にダメージ(大)、疲労(中)、気絶、ラヴァレイに対する不満(大)
[服装]:いつもの黒スーツ
[装備]:ナイフ@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(17/20)、青カード(17/20)、小湊るう子宛の手紙
    黒カード:うさぎになったバリスタ@ご注文はうさぎですか?、ボールペン@selector infected WIXOSS、レーザーポインター@現実
         宮永咲の不明支給品0〜1(確認済、武器ではない)
[思考・行動]
基本方針:参加者たちの心を壊して勝ち残る。
0:…………………
1:使える手札を集める。様子を見て壊す。
2:"負の感情”を持った者は優先的に壊す。
3:使えないと判断した手札は殺すのも止む無し。
4:可能ならばスマホを奪い返し、力を使いこなせるようにしておきたい。
5:それまでは出来る限り、弱者相手の戦闘か狙撃による殺害を心がける
[備考]
※東郷美森が犬吠埼樹を殺したという嘘をチャットに流しました。
※変身した際はルリグの姿になります。その際、東郷のスマホに依存してカラーリングが青みがかっています。
※チャットの書き込み(3件目まで)を把握しました。

768 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/05(月) 05:22:26 ID:IoUHUwsQ0
仮投下終了です。
指摘等があればよろしくお願いします。

769名無しさん:2016/09/05(月) 16:27:33 ID:Hk86HAcI0
>>768
るう子が腕輪を壊せるのではないかと推測していますが
確かるう子は咲の死に際に腕輪を壊そうとして失敗していませんでしたっけ

770名無しさん:2016/09/05(月) 21:06:45 ID:jq4GB8Qk0
自分の力じゃ無理だったけど他の超常の力を使えばあるいは、ってことなんじゃないでしょうか

771 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/05(月) 22:18:46 ID:tpqMz1XU0
>>769
>>770さんの超常の力をという〜そんな感じです。解りにくくてすいません。
その辺を含めていくつか微修正し、明日の朝に本投下したいと思います。

772 ◆X8NDX.mgrA:2016/09/08(木) 21:25:22 ID:mah/nPlc0
仮投下します

773Nothing But a Dreamer ◆X8NDX.mgrA:2016/09/08(木) 21:29:06 ID:mah/nPlc0

 瀟洒な印象の部屋がある。
 入り口から見て正面奥に位置する大きな机、それと同じデザインの椅子に、その男は腰掛けていた。
 男は左腕にした時計をちらりと見やると、わずかに目を細めた。

「ふむ、そろそろゲームの開始から十八時間か。
 駒の数も随分と寂しくなったものだ……そう思わないか、ユウジ?」
「……」

 ワイングラスを傾けて、ヒース・オスロは傍らの青年に訊ねた。
 日本人離れした銀色の髪と赤色の瞳が目立つ青年は、表情を変えず無言のまま。
 そのことに気を悪くした様子もなく、オスロは言葉を続ける。

「彼女……繭の知り合いは、まだ三人もいるらしい。
 よほど幸運なのか、はたまた手心を加えているのか……まあ、知ったことではないがね」

 オスロはある目的の元で、このバトルロワイアルをお膳立てした。
 しかし、繭とオスロの目的は同一ではない。
 そもそも、オスロにとって繭は一つの道具に過ぎない。
 異なる世界線から招かれた参加者たちで、開かれるバトルロワイアル。
 そんな、言わば「お遊戯会」の主催者に相応しい者として、繭が選ばれたというだけの話。

「この盤上から、どうゲームが展開していくか……。
 『彼』は生き残ることができるかな?どう思う、ユウジ。はははっ」
「……」

 愉快そうに笑う主人と、能面を崩さない従者。
 ゲームの進捗状況を肴に、オスロはつらつらと話し続けるだろう。
 バトルロワイアルが終局に至るまで、このやり取りは続くに違いない。

「……談笑とは余裕ですな」

 ――第三者がここに訪れない限りは。




774Nothing But a Dreamer ◆X8NDX.mgrA:2016/09/08(木) 21:30:12 ID:mah/nPlc0

「おや、ミスター時臣。お勤めご苦労様」

 男性はドアから悠然と歩き、オスロのデスクへと近づいた。
 その立ち居振る舞いは、誰が見ても紳士であるその男性――魔術師・遠坂時臣は、渋い顔でこう告げた。

「なぜ私に連絡を取らないのです?」
「連絡とは?」

 とぼけた返答をするオスロに、時臣は渋い顔のまま返した。

「この島を隠匿する結界についてです。
 結界の基盤は既に二か所が破壊されています。すぐにでも修復作業に取り掛かりたい」
「ああ、そのことか……」

 面倒くさそうに視線を逸らすオスロ。
 その姿を見て、時臣は更に眉間に皺を寄せたが、何かの言葉をかけるよりも速く、オスロが弁解を始めた。

「連絡をしなかった理由は、その必要がないと判断したからだよ。
 結界は四つの基盤から成り立つのだから、一つや二つ壊れたところで、完全に崩壊するわけではない。
 それにまさか、簡単に崩壊しかねない程度の結界を構築されたわけでもないだろう?
 由緒ある魔術師一族の当主様ともあろうものが」

 あからさまな嘲りを入れるオスロに、時臣は厳しい視線を向けた。
 年齢は四十近いと推察される目の前の男と、時臣が出会ったのはつい数日前のこと。
 数週間前、遠坂家と古くから交友のある、言峰璃正から連絡が来たのだ。



『急にお呼びだてして申し訳ありません』
『いえ、構いませんよ。それで、用件というのは』

 遠坂の私邸にて、時臣と璃正の二人は監視や盗聴にも配慮した上で会談を開いた。

『まず、この件に聖堂教会は関与どころか、認知すらしていない。
 あくまでも、言峰璃正という個人からの頼みだと理解して頂きたいのです』
『承知しました。……わざわざ人払いまでする内容なのですか?』
『ふむ、どう話したものか……』

 いかにも話しにくそうに、老神父は頭をひとつ掻いてから、意を決したように口を開いた。

『数年後の聖杯戦争に際して、準備を進めておられることでしょう。
 その目的は無論、根源への到達を成すこと――だが、もしもの話。
 “聖杯の力を得ずとも根源に到達できる”と聞いたなら、どう思われますかな?』
『な、それは――』

 時臣は瞠目した。
 根源。およそ全ての魔術師の悲願であるはずのもの。
 万物の起源にして終焉、この世の全てを記録し、この世の全てを創造できる座標だ。
 始まりの御三家とされる遠坂、マキリ、アインツベルンは、聖杯を再現することでその奇跡を成そうとしていた。
 時代は流れ、今や根源への到達を真摯に求めるのは、遠坂家だけとなってしまったが。
 その手段の話となれば、どうしても無視はできない。

『私の古い知人に、とある依頼をされたのです。優秀な魔術師を紹介してほしいとね。
 依頼自体は一端の魔術師なら簡単にこなせるものです。ただ、根源への到達の手段を示唆していた辺り……』
『神父が遠坂家と懇意にしていると、知った上でしょうね』

 根源への到達というエサをちらつかせて、璃正神父に遠坂時臣へと話を持ち掛けさせる。
 璃正神父の知人が、時臣が依頼を受けることを望んでいるのは間違いなかった。
 聖杯も無しに根源への到達を成せるなど、眉唾物の話ではあるが。

『……いいでしょう。話の真偽を確かめたい。
 璃正神父、話を通しておいてもらえますかな』
『ではそう伝えておきましょう。くれぐれもお気をつけて。依頼主の名前は――』

775Nothing But a Dreamer ◆X8NDX.mgrA:2016/09/08(木) 21:31:07 ID:mah/nPlc0

(ヒース・オスロ……。魔術結界を張ることを依頼してきたのは其方だというのに、どういうつもりだ?)

 その後、オスロと出会い依頼内容を確認した時臣は、その容易さに拍子抜けした。
 依頼とは、殺し合いを隠蔽するための装置、すなわち結界を張るだけだったのだ。
 それ自体は当然だろう、と時臣は感じていた。
 魔術は秘匿されるべきもの。魔術師の鉄則を厳格に守る身としても、遊戯の隠蔽自体はなんら不自然に感じない。
 しかし、その結界を張り終え、殺し合いが本格始動してからが問題だ。

(セイバーの『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』により病院は倒壊。
 それに、度重なる戦闘の結果として放送局は崩落。
 結界の基盤とした四か所のうち二か所が、既に修復が必要な状態だというのに……)

 確かにオスロの言う通り、結界は基盤の全てが壊されるまで効力を持ち続けるが、それでも限度がある。
 危うい状態で放置するのは、隠蔽という本来の意図を外れている。
 時臣は目の前で悠然と構える男を観察した。
 魔術回路の脈動を感じることはない――つまりは、魔術的素養を全く持ち合わせていない。
 油断のない物腰から、完全なる一般人ではないと見受けられるが、それでも魔術とは無縁の生き方をしてきたに違いない。

(……この男は魔術を軽んじているのだろう。
 大方、結界の重要性もそれほど考えていないに違いない)

 魔術のいろはも知らずに、上からの命令を聞いているだけ。
 結界の修復は頼まれていないからする必要がない――時臣には、オスロがこう考えている怠慢な人間に見えた。

(となると、根源への到達もいよいよ信憑性が薄くなる)

 オスロ自身が殺し合いの主催者に利用されるだけの存在ならば、その口から出た根源への到達はおそらく虚言。
 全ては時臣を釣るための文句だったと考えられる。

「そう睨まないで欲しいな、ミスター時臣」
「これは失敬。しかし、私は魔術師として不十分な結界を放置するというのは看過できない。
 依頼された仕事であれば猶更のこと。それは理解して頂けるでしょう?」

 時臣は半ば高圧的に、結界の修復作業を認可させようとしていた。
 オスロに説いた意図も確かにあるが、それ以上に時臣自身の矜持が、おめおめと退室することを拒んだのだ。
 すると、ため息をついて、オスロは椅子に深くかけた。

「……少し話し合おうじゃないか。今後のことも含めて」
「ありがとうございます」

 時臣はオスロに促されて、机の前にあるソファに腰掛けた。
 オスロが傍に立つ青年に「お飲み物を差し上げなさい」と命じると、青年は時臣に一礼し、足音も立てずにドアから出て行った。
 まるで御三家の一角、アインツベルンのホムンクルスを思わせるアルビノ。
 オスロと同じく魔術の脈動は感じないものの、何か妙な雰囲気を漂わせている。
 時臣の直感は、青年は単なる執事役ではないと告げていたが、今は指摘する理由も必要もない。
 そうこう考える内に、オスロが改めて話を切り出した。

「さて、ご協力には感謝しているよ、ミスター時臣。
 この殺し合いには魔術に関わる参加者もいる以上、君のように優秀な魔術師の存在は不可欠だった。
 とはいえ結界を張り終えた時点で、君から得たい力添えは充分。
 あとは結果を待つだけだ。君の求めるものが、いずれ掌中に収まるときが訪れるだろう」

 暗に結界の修復作業は不要だと告げたオスロ。
 話をはぐらかして終わらせるつもりだと時臣は察知して、別の問いをぶつけた。

776Nothing But a Dreamer ◆X8NDX.mgrA:2016/09/08(木) 21:32:11 ID:mah/nPlc0
「ところで、そもそもこの殺し合いは何が目的なのでしょう。
 集めて殺し合わせるという形態は蟲毒のようにも思えますが、それにしては実力差に幅がありすぎる」

 殺し合いの情景は、時臣も“窓”から観察していた。
 無垢な女子高生から『セイバー』のような英霊まで、多種多様な人選には些か驚いたものだが、殊更それを嫌悪することはなかった。
 魔術や呪術といった世界に足を踏み入れていれば、外の世界から見て残酷に思われる儀式も多く存在する。
 根源への到達の手段としては疑わしいが、この殺し合いも何らかの儀式の側面があると時臣は考えていた。
 ただし、それにしては力の優劣があまりに大きすぎるとも感じていた。

「フ、フフ……」

 問われたオスロはニヤニヤと笑う。
 何を馬鹿なことを質問するのだとでも言うように。

「どれだけ実力に差があろうとも、殺さなければ殺される状況下なら、人は誰でも殺せるさ」

 言われて時臣は、今までに見た死者の姿を思い出した。
 スクールアイドルが麻雀少女を殺した。
 神樹に選ばれた勇者が槍の英霊を殺した。
 喫茶店の店員が快楽殺人鬼(シリアルキラー)を殺した。
 この殺し合いにおける死者は、必ずしも強者に蹂躙された弱者ばかりではない。

「極限状態の中で殺し殺される、その過程に意味がある。
 なぜなら、この殺し合い自体が、根源へと至るための手段なのだから」
「根源へと至るための手段……?」

 唐突に出た核心の言葉に、時臣は疑念を隠せなかった。
 結界の重要性を無視するような無知な男を信用していいのか、と。
 虚言や妄言の類ならば即座に一蹴するつもりで、オスロが続きを語るのを待った。

「不思議に思わなかったかい?参加者が一様に嵌めた“腕輪”を。
 理不尽な殺し合いに従わせる抑止力としてなら、毒物や爆弾でも事足りる。
 それなのに、用意する時間も手間もかかる“魂を吸い取る腕輪”を使う理由はなんだ?」

 一呼吸置いて、オスロは天気について話すかのような気軽さで言った。

「答えは簡単。魂を封じ込めたカードが、根源へと至る鍵となるからだ」

 根源へと至る鍵。
 時臣はオスロの言葉を反芻する。
 遠坂家が追求してきた願望の手がかりが、そこにあると感じて。

「魂とは意志。死ぬ間際のそれはとても強く光り輝いている。
 その強い意志のエネルギーをカードに封じ込める。ここまでは分かるかい?」
「……えぇ」

 この説明を、時臣は簡単に理解することができた。
 魔術師の備える魔術回路は、通常時は普通の人間と同様の神経として存在しており、精神面のスイッチにより反転して機能する。
 つまり、精神と魔力の間には関係性があるのだ。
 わざわざ殺し合わせる理由も、精神を平常時と異なる状態で封じ込めるためだと言われれば納得できた。

「そうして出来た参加者のカードが重要な鍵となり、根源への道筋は開かれる。
 もちろん、その鍵を使用できる者は選ばれている。少なくとも優勝者は確実だろうね」
「……その鍵の使用には資格がいるという訳ですか」

 時臣は冷静に相槌を打ちながら、心中では油断なく思考を巡らせていた。
 必要な資格と、それを得る方法を暗に聞き出せれば、根源への到達ができるのか、と。

777Nothing But a Dreamer ◆X8NDX.mgrA:2016/09/08(木) 21:32:56 ID:mah/nPlc0
「時に、ミスター時臣。WIXOSSという遊戯を知っているかな?」

 とはいえ、全ての思惑が上手くいくとは限らない。
 オスロの唐突な話題転換により、それ以上の追及は難しくなった。

「ウィクロス?いえ、世俗の遊戯には疎いものでして」
「ならば、教えてあげよう――」

 そして、オスロが時臣へと告げたのは、世間の大半が三流芝居と酷評するだろう物語。
 たった一人の少女が、新たな世界を創造して、現実世界にその原理(ルール)を持ち込むなどと。
 しかし、今しがた殺し合いの意味を聞いた時臣は一笑に付すことができない。

「……俄かには信じがたいですな」
「しかし事実なのだよ。信じるか信じないかは別にして、ね」

 オスロは口元に笑みを浮かべている。
 話は一応理屈が通っているので、虚言や妄言と一蹴できないのがもどかしい。
 まさしく「信じるか信じないか」は時臣に委ねられているというわけだ。
 結局、時臣は適当な相槌を打ちながら話を聞くしかなかった。

「そして、その遊戯を創造した少女というのが――おや、ようやくお茶が来たようだ」

 いよいよ核心に迫るタイミングで、話の腰を折るようにオスロは時臣から目を逸らした。
 時臣が反応するよりも早く、銀髪の青年はソファの横に居た。
 気付けなかったのは、魔術師としてオスロの話の続きに興味を引かれていたからだ。

「……おっと、ミスター時臣。ここは一旦退室願おう」

 しかし、青年にティーカップを配ろうとする様子はない。
 オスロの言葉で、時臣は第三者が訪問してきたことを察した。
 改めて振り向けば、やはりドアのそばには幼気な少女が立っている。
 薄緑の色の髪をした少女――オスロが「繭」と呼んでいるその娘の詳細を、時臣はまだ知らされていない。

(あるいは、この少女が?……まさかな)

 この薄幸な雰囲気の少女が、根源へ至る資格を持つのだろうか。
 否定しつつも断定はできない状況に、時臣は再びもどかしさを覚えた。

「やあ、繭。放送は無事に終わったかい?」
「ええ……それより、いくつか相談があるの。
 まずはアーミラの魂が封じられたカードのこと……」

 少女には似合わない事務的な会話に後ろ髪を引かれながら、時臣は部屋を去る。
 最終的に結界の修復は許可されなかったが、それはもはや二の次だ。
 根源への到達、その手段が未だ抽象的であるにせよ明かされた。
 自らの手で悲願を達成するためにも、時臣はその手段をどうにかして知らなければならない。

(白いカードが鍵となる、か……)

 しばしの黙考の後、魔術師が向かった場所は――。




778Nothing But a Dreamer ◆X8NDX.mgrA:2016/09/08(木) 21:33:25 ID:mah/nPlc0


「ふう、繭のお陰で助かったよ」

「なんのこと?」

「此方の話さ。気にしなくてもいい」

「……まあいいけど。とにかく、よろしく頼むわよ」

「もちろん、協力は惜しまないさ」

「それならいいの。それじゃ」

「一ついいかな、繭」

「なに?」

「このゲーム、楽しんでいるかい?」

「――ええ、とても」



※島には結界が張られており、結界の基点が四つ、どこかに存在します。
 既に病院と放送局の二つの基点が破壊されています。

779 ◆X8NDX.mgrA:2016/09/08(木) 21:41:04 ID:mah/nPlc0
仮投下終了です。
指摘等あればよろしくお願いします。

780名無しさん:2016/09/08(木) 21:49:19 ID:sJ4CwdYY0
仮投下乙です。
ゲーム破壊に必要な条件が一つ明かされましたか。
腕輪の謎にも一歩踏み込んだ内容で名実ともに終盤になってきた感じでよかったです。
それだけに今回の繭が不気味。あとどれだけ共犯者がいることやら。
本投下に問題はないと思います。

781 ◆X8NDX.mgrA:2016/09/09(金) 07:00:14 ID:WPRQ5LUg0
>>780
ありがとうございます。
仮投下終了時刻より一日待って、なんらかの指摘も来なければ本投下します

782 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/15(木) 05:42:21 ID:zUQ.LMKE0
仮投下します。

783タイトル未定 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/15(木) 05:43:28 ID:zUQ.LMKE0
ここはC-5 駅。
神威は電車から降りた後、駅構内のベンチに腰掛けていた。
手元には絢瀬絵里に渡された黒カードが数枚。
彼は黒カードを順に元の形に戻し、DIO討伐の前準備を進めていく。

あの時、セイバーからDIOは日没後にDIOの館と落ち合う約束をしていると聞いた
DIOとセイバーが約束を守るなら、セイバーは神威にとって邪魔者になる可能性が高い。
数刻前の彼ならセイバーと再会後すぐに必滅の黄薔薇を折って呪縛を解放していたに違いない。
DIOと彼女との2対1の戦闘に持ち込まれる可能性が見えたとしても。
だが、今の彼にとってDIO討伐は最優先事項であるからして、セイバーとの戦闘は今は望んでいない。
ゆえにどうやってセイバーに対処しようかと考えたが答えは出そうもなく、
黒カードに対多人数向けの武器が確認できたもあって、その時になってから考えようという
いつもの彼らしくもある結論を出し、その考えを打ち切った。

ある1枚の黒カードを戻すとそれは数冊の本に変わる。
本にはいずれもウィクロスカード大全と記されていた。全5冊。そのウィクロスという単語には見覚えがあった。
12時間近く前セイバーに譲渡したカードの束、ウィクロス ルリグデッキ『レッドアンビジョン』。
神威はあの時、有益とは思えなかったから詳しく確認せずにいた。

何気なく初巻を手に取り流し読みしていく。
ざっと内容をみるとカードのイラストと内容が書かれている簡素なものだった。
内容がただそれだけなら、神威は飽きて次の黒カードの点検に移っていただろう。
だが巻末に近いページでのある項目を見つけた時、それは彼の興味を引いた。


『参加者様に支給されたルリグカードについて その1』


それには4ページに渡り、『花代』というルリグの利用方法について書かれていた。
花代というルリグに関連するカードについては別の項目でも扱われていたが、
今読んでいるページはそれまでの遊戯のルールのとは違い、今ここで行われている殺し合いについてのもの。


「スペルは本ゲームでは扱えませんが、形だけならほぼ再現する事は可能です……か」


ルリグの必殺技扱いであるアーツと異なる補助カード スペル。
漠然としか把握していないものの、スペルはカードゲームの範疇にしかない記号と判断しそれ以上考えるのをやめる。
問題はアーツの方。他の巻も開き、読むと花代とは別の支給ルリグの説明があった。
彼女らのアーツは神威から見て、どれも参加者が殺し合いを勝ち抜くのに有益なものと判断できた。


「……って、あの時の友奈ちゃんの技なのかなぁ?」


本能字の乱戦時、いきなり強くなって少なからず神威にダメージを与えた少女 結城友奈。
花代のアーツにはあの時の彼女の変容を髣髴とさせるような説明があった。
セイバーは殺し合いに乗った参加者。余程の事がなければ先程別れた絢瀬絵里らの脅威であり続ける。
意図せずとしてセイバーに切り札を与えてしまった神威はしばし考えこむ。


「……」

784タイトル未定 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/15(木) 05:44:29 ID:zUQ.LMKE0
先の事は解らないし、切りがないと結論付け読書を再開する。
乗っていない参加者とあったら伝えようかなと思いながら。


「……ルリグって沢山いるんだなあ」


その数は軽く50を超えていた。カードゲームの形式上プレイヤーの分身の役割を持つルリグは多種でない方が商品としてもゲームツールとしても扱い易い。
なのにその数は多く、専用カードのないルリグも珍しくなく、その全容はアンバランスそのものに思える。
ゲーム自体ほとんど興味のない神威から見てもそれは異常に見えた。
彼はある事に思い至り、ルリグ達の名称を確認しつつ腕輪を作動させる。
白カードに参加者名簿が映し出された。


「……紅林 遊月と浦添 伊緒奈(イオナ)かあ」


ルリグ一覧で確認できた名前2つ。そして参加者名簿にも確認できる名前2つ。
支給ルリグではないが、もし他の参加者が大全を読めば主催絡みで2人に興味を抱く事はほぼ間違いないと思える。
神威は絵里から離れる前に黒カードを一通り確認すればよかったかなと思った。
聡明そうな彼女になら面白い感じに推理をしてくれそうと期待できたから。
彼は本を閉じ黒カードに戻し、次のカードを検分する。程なくして渡された黒カードは最後の1枚になった。


(これは)


絵里が強調しながら渡していたから覚えがある。
妹 神楽の支給品で遺品となった血痕が多く付着した黒カード。
空っぽに限りなく近いはずの自分に何かが流れるのを感じる。
彼は素早くその黒カードを元の形に戻した。

-------------------------------------------------------------------------------------------------

駅から出て、すぐ近くにベンチがいくつかあった。
神威は真夜中にそこで眠り続ける栗色髪の短めのツインテールの少女がいたのを覚えている。
彼は意識してそちらに足を運ぶ。あの少女の姿はなかった。
だが少女がどうなったかはベンチに残された大量の血痕が答えを出していた。


「あのまま殺されるとはね」


最後に見た時は路上で眠る姿。
血痕の位置から察するに一度目覚めて他のベンチに移動したか、あるいは他の参加者に気遣われて運ばれたかしたのだろう。
もう少し先の方にも大量の血痕が確認でき、壁に落書きのような跡もあった。
どちらにせよ眠り姫は抵抗すること無くあのまま殺されたのだろう事は見て取れる。
信じがたいが最初から生を放棄していたとも取れる有様であった。

「はぁ……」

神威の口からため息が漏れる。そのまま去って目的地へ行こうと思った。
しかし先ほどの黒カードの検分の際、己と妹の不足を認識させられたこともありもう少し調べる事にする。

785タイトル未定 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/15(木) 05:45:09 ID:zUQ.LMKE0

調べれば発見した血だまりの周囲には目立たないが、移動痕と見れる少量の血痕が見つかった。
それを辿ることにする。


「見つけた」


駅前の掲示板の影にそれらは隠されるように安置されていた。
半日前に発見した眠り姫の両断死体とやや小柄な少女の首なし死体が一つ。
そしてそれぞれの遺体の脇に置かれた2枚の白カードと1枚の黒カード。
遺体を移動させた者の意図は人道的なものであるのは神威にも理解はできた。


「……」


次に彼が興味を持ったのは白カード。それぞれには死亡者の顔が映し出されている。
人道的な理由ではないにしろ一度は纏流子の魔の手から助けた少女。
眠り姫の無残な死体に対し哀れみや憤り、嘲りなど自分を揺るがすほどの情は湧かない。
ただどういう人物だったのかというちょっとした好奇心は湧いていた。
それは妹へのささやかでひねくれた対抗心から来たもの。


神威は番傘とは別の支給品を神楽が一度目に止めていたのは知っている。
軽く調べただけで遊具品と判断し、それ以降使おうとしなかったのも。
彼はそれを推測できたからこそ、そっち方面では一歩先を行ってやろうかとぼんやりとでも思った。
骨組みか、殻のみになったバカ兄貴の意地にかけて。


神威は白カードを2枚拾い上げると、黒カードにも手を伸ばす。
黒カードを元に戻すとそれは動物を模したポーチだった。彼はそれは置いていく事にした。
もう1枚はついでだが、眠り姫の白カードがあれば他の参加者から情報を聞き出すには充分かと思ったから。


「そう言えば」


参加者の事を知っているのは何も他参加者や主催のみとは限らない。
人並みの知能を持った支給品なら知っていてもおかしくはないはず。
神威は遺体から離れると神楽の形見の黒カードを変化させる。
その黒カードにもう血は付いていなかった。

-------------------------------------------------------------------------------------------------

「あっ待って。そこに誰かいるみたいだよ」

DIOの館へ走る神威は神楽の支給品であった青のルリグ――ミルルンに呼び止められた。
彼は速度を落とすと、指さされた方向へと向かう。
横切る風景は超常の力を用いた戦闘痕が散見される。ミルルンは驚嘆の声を小さくあげた。


「墓標か……」

786タイトル未定 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/15(木) 05:45:45 ID:zUQ.LMKE0


神威の目前には墓が2つあった。墓前には赤カードと青カードが備えられている。


「藪蛇かなあ……」


ミルルンのバツの悪そうな声を聴きながら、彼は一方の墓が誰なのかを確かめた。


「友奈ちゃんか」


周囲の破壊跡は彼女の力によるものと推測できるもの。
ミルルンは、トーンはさっきと比べ落としたまま神威に言う。

「さっきと比べて強い気配が3つある」

白カードの事かと神威は判断した。
ルリグには同属以外にも魂が封じられた白カードを朧気ながらも察知できる力がある。
先ほどの2枚より強い力があるということなのだろう。
だがどうしたものか。白カードは土中に埋められた状態のようである。
それを掘り起こすのはマズいのではという迷いが少々ながらもあった。それはミルルンの表情にも表れている。
神威は素面で繭のゲーム開始前の説明を思い出していた。


(死んだ人の魂は白いカードに閉じ込められ、永久の孤独を強いられる、か……)


墓とは死んだ人を弔うのに必要なもの。
しかし真の安らぎとやらを与えるには白カードから魂を解放せねばならない。
となると墓が本来の効用を発揮するには、魂の解放が不可欠となってくる。
ミルルンの方を向く、彼女はどちらの選択を強いることもなく神妙な顔で墓を見ている。

神威は墓前の青と赤のカードを丁重に脇に退け、スコップを出して発掘を始めた。
ミルルンから驚きの声が上がるが非難はない。

「……」


実の所を言うと今の神威に主催から死者を救いあげたいという明確な意思はない。
しかし支給品からの提案とはいえ、取るに足る行動理由を与えられれば何もしないと言う訳には行かなかった。
ルリグはそっぽを向いた。神威はあっという間に2人の少女の遺体と3枚の白カードを発掘する。


「おや?」


白カードの1枚。3人の中で一際幼い少女の顔写真にある異変を神威は発見する。
切れ込みが入ったままの白カードを。
彼は白カードを仕舞い、簡単に遺体の検死を済ませると再び遺体を素早く埋葬した。

787タイトル未定 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/15(木) 05:46:41 ID:zUQ.LMKE0
-------------------------------------------------------------------------------------------------

ここはC-7 DIOの館玄関前。
神威は保登心愛の白カードを宙に浮かせると、その端を指で弾く。
カードの端が破れ散った。だが次の瞬間に破損した箇所が音もなく元に戻った。
彼はなおも2度指でカードを弾いた。またもカードを大きく破損させるがまた元に戻る。
彼は次にカードを片手に取り、中心部分を指で弾いた。
音を立ててカードに大穴が空いた。だがそれも同じように復元された。
彼はルリグカードに視線を移した、やろうとする事を察したミルルンはノーセンキューのゼスチャーをし拒否。
神威は手を止めた。


「はー。どーいうことなんだろうね?」
「俺はDIOを倒せればそれでよかった筈なんだけどな」


黒カード確認からここまで神威がやった事と言えばアイテム集めとその考察。
柄にもないと彼は思った。現実から目を背き続けた男が。


「……」


ミルルンは言葉を続けない。今の神威の本質を理解し始めたからこそ。
地下闘技場での一戦が無ければウィクロスカード大全に対し、今と同じくらい注目はしなかっただろう。
もし坂田銀時らによってわずかでも自分を取り戻せなければ、神楽の支給品の価値に気づく事はなかっただろうし、
妹への細やかな対抗心からくる探究心も目覚めなかっただろう。
もし探究心が芽生えなえれば結城友奈ら勇者たちの白カードの異変を発見できなかっただろう。
かつて神威は最終的に主催を屠るつもりで行動していた。その為、参加者で唯一破壊された橋の修復現場にも立ち会えている。
客観的に見ずとも今の彼は対主催に関しかなりの有力者になっていると言える。しかし。


「だったら」
「先約があるんだ。まずはそっちを守らなきゃね」
「うーん。そこまでなら仕方ないかな」



それらの事実は空虚を埋めずに適わず、彼の長所を多く含める残った部分も絢瀬絵里ら対主催サイドとの共闘を拒んだ。

気が付けば日が暮れようとしている。セイバーやDIOがやって来る気配はない。
神威は玄関の方へ向くと館内部に入っていった。
休憩と情報整理がてらにミルルンにウィクロスカード大全を読ませる為に。


-------------------------------------------------------------------------------------------------

神威は館の最深部、DIOの部屋にてミルルンと繭についての情報交換をしていた。


「灰色の服なんて着て、イメチェンしたのかなあ?」
「ひょっとして俺が見た彼女とは雰囲気が違うのかな?」
「幻想的で幼気なとっても大きいカリフラワーみたいな髪をした女の子でしょ。その辺は共通してるけど何か違うんだよねー」
「君はルリグになる前に繭ちゃんとあった事はあるのかな?」
「……遭ったことはないけど、その辺は聞かないでほしいな。言うなと言われたの」

788タイトル未定 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/15(木) 05:47:35 ID:zUQ.LMKE0
「……それはこのゲームでの事かな」
「その前から」
「解ったもう詮索はしないよ。君の正体は俺が思っている通りで間違いは無さそうだし」
「……」


ミルルンは神妙に頷き、神威も納得したように話題を変える。
ウィクロス大全のルリグリストからして彼女も元人間なのだろうと神威は結論づけた。


「違うって言うのは姿じゃないんだろ」
「うん。前は詐欺同然なゲームで女の子を引っ掛けて、それを眺めて楽しんでるって感じだったけど
 話聞く分だと別の人が色々やっちゃってるって感じ。同じ子が計画したとは思えないの」
「俺はウィクロスを作った組織が今回のゲームを始めたと思っているんだけど」
「それ私も考えた事があるけど違うと思う。セレクターバトルが始まる前からウィクロスあったみたいだし。
 バトルが始まった頃から大ヒットした位だから、むしろ繭ぴーが会社を乗っ取ったってパターンが自然かなあ」
「…………彼女の協力者については手がかりなしか。
 君が初めて繭ちゃんに出会った時と、最後に出会った時と違いは無かったかい?」
「う〜ん。髪の色がちょっと濃くなったかもってくらい、かなあ?」
「元は何色だった?」
「白に近い緑だったよ」


別人という線は無さそうだねと神威は推測した。
神威が繭の容姿について尋ねたのはゲーム説明を受けた時は繭から大分離れた位置にいたから。
そのせいか、彼女の顔や髪の色にいたるまで光源の具合によって不鮮明だったからだ。
カードから出てきた竜についてもよく解らないでいた。



「次はこっちからいいかな?」
「……質問内容にもよるよ」
「私が指差している所に何があるか確かめてほしいの?」


部屋には照明などは機能しておらず。光源は腕輪から。
ミルルンが指差した先は神威が座っている寝台よりかなり高い位置にあった。
お安い御用とばかり神威は指の力だけで張り付いたように壁を登っていく。
指したその箇所には棒状の様なものの置き場所、更に上の方にもそれらは確認できた。



「既に持ち去られた後みたいだね」
「えー残念」
「……」



館の探索は神威と流子が半日前にすでに済ませてあった。
よってもし調達するに値する物品があればとうに回収しているはず。
だからミルルンが発見した置き場には元から何も置かれていない。それが事実。
神威とミルルンは興味をなくし、今後について話をしようとする。
どんな物が置かれていたとか、支給品になっている可能性とか、どこかにあるとかいう可能性は考えずに。

789タイトル未定 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/15(木) 05:48:34 ID:zUQ.LMKE0
『今晩は。三回目の定時放送の時間よ』

「!」
「……!」


そして放送が始まった。

-------------------------------------------------------------------------------------------------

放送から30分を大きく過ぎた、館外には未だにDIOの姿もセイバーの姿も見えない。


「まいっちゃうね」
「ああ」


日は完全に落ちた。


「そろそろ俺はこっちに行こうと思うんだけど異論はないかい?」
「ここまで待たせる方が悪いと思うしぃ、いいんじゃない」


ミルルンは異論があっても変える気はないのに?っていうからかうような小言を発するが、
神威はごく自然にスルーすると黒カードの1枚を武器に変える。
彼は武器を片手に館の方を指差すと言った。


「この建物壊そうと思うんだけど、いいかな」
「……。さんせーい」

両者の声には苛立ちがあった。
待たされた事もあるが、神威にとって一番腹立たしいのはそれではない。


――宇治松千夜。

先ほどの放送で呼ばれた黒髪ロングの少女。本部以蔵に保護されていた無力な参加者。
千夜の人物像に関して言えば、彼女は神威にとって心打つ存在では決してない。
恩人を救うべく助けを呼びに行く選択も、そう特別珍しいものでもない。性格的にも相容れないだろう。
だが彼女は神威が知るだけでも多くの人の命によって生かされていたはずの少女だった。

千夜が周辺に救助を呼びかけたのも、元はといえば彼女を助けた本部以蔵を助けるためであったし、
それらに応えた銀時、神楽、ファバロも自分という障害を廃除あるいは無力化するために全身全霊で挑んでいた。
なのに千夜は命を落とした。
あれだけの犠牲を出し、力も出しきった後がこれか?とやり場のない感情の波が神威の全身を駆け巡った。

神威は早足に館へ向かう。館を最後に一目見渡す。
DIOの威圧がなければ贔屓目に見てもリアルお化け屋敷。
悪く見れば猟奇要素のある娼館辺りにしか見えない。
半壊したDIOの館に神威の攻撃が繰り出された。
非力な少女でも持てば超人を殺し得る強力な武器を携えた神威に対し、館が長く持ちこたえられる道理は無く。
5分もしない内にDIOの館は倒壊した。

790タイトル未定 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/15(木) 05:50:11 ID:zUQ.LMKE0

-------------------------------------------------------------------------------------------------

「アーツは使える、それで間違いはないね」
「だいじょうぶ」
「そう」
「……」

神威が向いた先にあるはB-7にあるホテル。
彼が日中推測した通りならあそこにDIOがいるはずだ。
遭遇できるかどうかは自信がない。待機している間時間を大幅にロスしてしまったから。


「……休んでいい?」
「……」


神威はミルルンの要求に黙って頷く。
彼女の表情は沈痛の色が見て取れた。
彼の手にはカードデッキ。一部分が神楽のミスか何かでひしゃげたもの。

「カード大全続き読ませてね」

ミルルンの言葉とともに神威はルリグデッキをカードに戻す。

「ばいばいるーん」
「……」


うるさい子だなと神威は思う。けれど嫌いにはなれない。
軽薄で煩わしく見えたがそれは演技ではなく素なのだろう。
彼に対し悪意のようなものも向けられなかったのも悪印象を抱かなかった一因。
彼は知る由もないが、地下闘技場での一戦がなければ友好関係は築けなかっただろう。
邪念がほぼ失せた現状で対面できたのもお互いにとって幸いだった。


「異能は事前に察知できるか……」


ミルルンはアーツ アンチスペルの能力の一部で発動直前の異能を一つのみ察知できるという。
それに加え アンチスペルは大全の説明通りならどんな異能も一度は無効化できるとの事。
DIOとの戦いの際、彼女のアーツは彼の異能に対するカウンターになり得る。
しかしもしその機会で撃ち漏らしてしまうと、今度はミルルンが標的になる可能性が高い。
なので自分ではなく違う複数人で行動する参加者に持たせるべきと思うが、あいにく参加者の姿はない。
どこまでもままならないなと彼は苦笑した。


「……」


放送後、神威はミルルンに参加者名簿を見せゲームについても教えた。
その結果、パートナーの死を知ってしまい少なからずショックを与えてしまったのだ。
参加者名簿を見せた際にはパートナーである蒼井晶に対して悪態をいくつか付いていたが、
嫌い抜いていた訳ではなかったようだ。ミスだった。

791タイトル未定 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/15(木) 05:53:09 ID:zUQ.LMKE0
神威はさっきのカードデッキの形と元の所持者の事を思い出す。
ミルルンいわく一度元に戻され、カードが何枚かめくられたが自分に気づく間も無く黒カードに戻された。
その際、元の所持者は何かを呟いていたがそれはよく聞こえていなかったとの事だった。
もし仮に神楽がルリグカードの効力に気づいていれば、もっと上手く事を運べただろうか?
自分が妹を殺す羽目にならなくてすんだだろうか?答えはない。
なのでせめて妹と同じミスもしないと心がけようと思った。


「まったくしょうがない奴だなあ……」


ひしゃげたカードデッキの形を思い浮かべ、神威は泣き笑いに似た笑顔でそう呟いた。
彼はホテルへと急いだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【C-7/一日目・夜】

【神威@銀魂】
[状態]:全身にダメージ(小)、頭部にダメージ(小) 、宇治松千夜の死への苛立ち(無自覚、小)
    よく分からない感情(微)
[服装]:普段通り
[装備]:王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)、ブルーデマンド(ミルルンのカードデッキ、一部カードがひしゃげてる)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(24/30)、青カード(24/30)、電子辞書@現実
    黒カード:必滅の黄薔薇@Fate/Zero、不明支給品0〜2枚(初期支給)、不明支給品1枚(回収品、雁夜)
    黒カード(絵里から渡されたもの) :麻雀牌セット(二セット分)、麻雀牌セット(ルールブック付き)、トランプ(ゲームルールブック付き)
                      ウィクロスカード大全5冊セット、アスティオン、シャベル、携帯ラジオ、乖離剣エア
    白カード:蒔菜、ココア、友奈、風、樹(切れ込みあり)
[思考・行動]
基本方針:俺の名前は――
0:DIO打倒の為、ホテルへ向かう。
1:見どころのある対主催に情報や一部支給品を託したい。
2:眠り姫(入巣蒔菜)について素性を知りたい。けど執着はしない。
[備考]
※DIOおよび各スタンド使いに関する最低限の情報を入手しました。
※「DIOとセイバーは日が暮れてからDIOの館で待ち合わせている」ことを知りました。
※DIOの館は完全に倒壊させました。
※ホテルにDIOは潜伏していると思っています。
※大まかですがウィクロスのルールを覚えました。
※ルリグは人間の成れの果てだと推測しました。
※樹の白カードに切れ込みがあるのを疑問に思っています。

※白カードは通常は損壊、破壊する事は不可能です。すぐ復元されます。
 (ジョジョ6部の各種DISCみたいな感じ)
※友奈、風、樹のカードは他参加の白カードより強い力を発しているようです。


・支給品説明
【ブルーデマンド(ミルルンのカードデッキ)@selector infected WIXOSS】
神楽に支給。
蒼井晶の二代目ルリグ、ミルルンが収納されたカードデッキ。
ロワに関する説明はあまり受けていないが、アーツについては聞かされている。
外見は黒猫の髪飾りを付けた団子状の髪型をした、ノースリーブの水色ドレスを着た青髪の少女。
性格は気ままで明るい性格でマイペース。口癖は語尾にるん。
蒼井晶との関係は一見険悪だが、実のところ悪態をつきつつもそれなりに気にかけていた。
参戦時期は2期でウリスがルリグに戻る以前。

792タイトル未定 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/15(木) 05:55:40 ID:zUQ.LMKE0
※アーツ『アンチ・スペル』について。
ゲームにおいてはコストを2払う事によって発動する。
スペルならどんなに強力でも効果を打ち消す事ができる。アーツに対しては無力。

当ロワに置いては最小コスト2払う事によってアーツ以外の異能を事前に打ち消すことができる。
ただし異能のレベルが高いと払うコストが増大していく(最大6)。
エナコストは一時間休憩すると1回復する。
コストが支払えないと消費はせずに住むが、効果も発揮しない。
完全に(累積6)消耗すると、以後六時間は使用できない。
エナが万全(6)ならどんな異能も一度は打ち消すことができる。
ミルルンは使用アーツの特性上、ある程度異能を事前に察知することができる。



【麻雀牌セット(ルールブック付き)@咲-Saki- 全国編】
カイザル・リドファルドに支給。
本部以蔵に支給された麻雀牌セットとは別物。
違いは麻雀について詳細かつ解りやすい良質のルールブックが付属されている。



【トランプ@現実(ゲームのルールブック付き)】
坂田銀時に支給。
材質はそこそこ上等なものが使われている。
すぐに遊べるようルールブックまで付属している。
所有していた人が人なだけにいたずら書き等があるかもしれない。



【ウィクロスカード大全5冊@selector infected WIXOSS】
リタに支給。
初出はinfected3話より。書籍は実在しており旧シリーズ5巻まで発売されている。
ただしこれはアニメ世界でのカード大全で、しかも当ロワ仕様に変更されている。
内容はspread終盤でユキが登場する直前までのウィクロスのカードのデータが収録。
市販のカードのみならず人間が変じたルリグまで記録されているので、内容はとってもカオスである。
一冊ごとに当ロワで支給されたルリグ一体(?)の詳細(正体以外)が書かれてもおり、
アーツの効果やルリグを活用する上でのヒントが書かれている。
現在は花代、緑子、ピルルク、エルドラ、ミルルンの詳細が確認されている。
支給ルリグ タマヨリヒメやセレクターバトル、夢幻少女、原初ルリグに関する情報は記載されていない。


※レッドアンビジョン(花代のカードデッキ) アーツ『背炎の陣』について
ゲームにおいては手札を三枚捨てることにより、敵味方すべてのシグニを消し去ることができる。
使い方次第ではエナを貯める事ができる強力なアーツ。

当ロワにおいては花代がコストを3消費し、セレクターが行動後感覚の一つを失う事により発動させることができる。
いわゆる勇者の満開を再現させるアーツ。効果の詳細は使用キャラによって異なる。
消費したコストは1時間休憩する事により1回復する。



※エルドラのデッキ(ブルーリクエスト 補足)アーツ『ハンマー・チャンス』について
ゲームにおいてはライフクロスがゼロになった時のみ使用できるアーツ。
1レベルにグロウするだけで使用可、コストなしでライフクロスをに2回復させる効果がある。

793タイトル未定 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/15(木) 05:56:14 ID:zUQ.LMKE0

エルドラが手にしたピコピコハンマーで叩けば発動。
当ロワにおいては致命傷以上のダメージを受けた存在に対してのみ効果を発揮する。
エナコストはなし。一度使用した対象には二度と使用できない。一度使用すると6時間は使用不可になる制限が課せられている。
回復はダメージ(大)までが現界だが、対象がどんな状態であろうと生きていれば確実に戦闘可能状態にまで救命・回復させる事ができる。
使用条件はルリグに解るようになっているので、エルドラはある程度ダメージの度合いが解るようになっている。


※支給ルリグ共通
花代、緑子、ピルルク、エルドラ、ミルルンには繭から新しい力を与えられている。
その為アーツ(最低一種使用可能)が単独で使用可能となっている。他にも未発動の力があり?

794 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/15(木) 05:58:01 ID:zUQ.LMKE0
仮投下終了です。
ご指摘等がありましたらよろしくお願いします。
タイトルは本投下までに考えます。

795名無しさん:2016/09/16(金) 01:00:10 ID:lmkcAJRc0
仮投下乙です

アーツの詳細が分かったことでルリグの価値がぐんと上がったなぁ
完璧なDIO様キラーと化したミルルンといい空気気味だったエルドラといいルリグ勢がどう戦闘に関わってくるかが楽しみ

二点ほど指摘ですが、冒頭で「ここはC-5 駅」とありますが駅の位置はC-6です
もう一点は、同じ参加者に2度使用出来ないとはいえ、瀕死状態からの回復が6時間に1度使えるエルドラのアーツ、満開が3コスト(3時間に1回)で使える花代のアーツは少し制限が緩いというか強力すぎるなと思いました

796 ◆WqZH3L6gH6:2016/09/16(金) 09:14:21 ID:vlNGjTew0
>>795
ご意見ありがとうございます。
以下の修正をした上で問題がなければ、今夜11時くらいに本投下させていただきます。


アーツ『ハンマー・チャンス』の再使用は12時間後に変更。
アーツ『背炎の陣』の再使用には6時間経過が条件を追加。
駅の位置を始めとする誤字を訂正。
デッキの破損理由を水たまりに落としたに変更。
トランプを不明支給品(武器)に変更。

797 ◆WqZH3L6gH6:2016/10/03(月) 08:45:47 ID:kY30gObg0
仮投下します。


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