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仮投下スレ

774Nothing But a Dreamer ◆X8NDX.mgrA:2016/09/08(木) 21:30:12 ID:mah/nPlc0

「おや、ミスター時臣。お勤めご苦労様」

 男性はドアから悠然と歩き、オスロのデスクへと近づいた。
 その立ち居振る舞いは、誰が見ても紳士であるその男性――魔術師・遠坂時臣は、渋い顔でこう告げた。

「なぜ私に連絡を取らないのです?」
「連絡とは?」

 とぼけた返答をするオスロに、時臣は渋い顔のまま返した。

「この島を隠匿する結界についてです。
 結界の基盤は既に二か所が破壊されています。すぐにでも修復作業に取り掛かりたい」
「ああ、そのことか……」

 面倒くさそうに視線を逸らすオスロ。
 その姿を見て、時臣は更に眉間に皺を寄せたが、何かの言葉をかけるよりも速く、オスロが弁解を始めた。

「連絡をしなかった理由は、その必要がないと判断したからだよ。
 結界は四つの基盤から成り立つのだから、一つや二つ壊れたところで、完全に崩壊するわけではない。
 それにまさか、簡単に崩壊しかねない程度の結界を構築されたわけでもないだろう?
 由緒ある魔術師一族の当主様ともあろうものが」

 あからさまな嘲りを入れるオスロに、時臣は厳しい視線を向けた。
 年齢は四十近いと推察される目の前の男と、時臣が出会ったのはつい数日前のこと。
 数週間前、遠坂家と古くから交友のある、言峰璃正から連絡が来たのだ。



『急にお呼びだてして申し訳ありません』
『いえ、構いませんよ。それで、用件というのは』

 遠坂の私邸にて、時臣と璃正の二人は監視や盗聴にも配慮した上で会談を開いた。

『まず、この件に聖堂教会は関与どころか、認知すらしていない。
 あくまでも、言峰璃正という個人からの頼みだと理解して頂きたいのです』
『承知しました。……わざわざ人払いまでする内容なのですか?』
『ふむ、どう話したものか……』

 いかにも話しにくそうに、老神父は頭をひとつ掻いてから、意を決したように口を開いた。

『数年後の聖杯戦争に際して、準備を進めておられることでしょう。
 その目的は無論、根源への到達を成すこと――だが、もしもの話。
 “聖杯の力を得ずとも根源に到達できる”と聞いたなら、どう思われますかな?』
『な、それは――』

 時臣は瞠目した。
 根源。およそ全ての魔術師の悲願であるはずのもの。
 万物の起源にして終焉、この世の全てを記録し、この世の全てを創造できる座標だ。
 始まりの御三家とされる遠坂、マキリ、アインツベルンは、聖杯を再現することでその奇跡を成そうとしていた。
 時代は流れ、今や根源への到達を真摯に求めるのは、遠坂家だけとなってしまったが。
 その手段の話となれば、どうしても無視はできない。

『私の古い知人に、とある依頼をされたのです。優秀な魔術師を紹介してほしいとね。
 依頼自体は一端の魔術師なら簡単にこなせるものです。ただ、根源への到達の手段を示唆していた辺り……』
『神父が遠坂家と懇意にしていると、知った上でしょうね』

 根源への到達というエサをちらつかせて、璃正神父に遠坂時臣へと話を持ち掛けさせる。
 璃正神父の知人が、時臣が依頼を受けることを望んでいるのは間違いなかった。
 聖杯も無しに根源への到達を成せるなど、眉唾物の話ではあるが。

『……いいでしょう。話の真偽を確かめたい。
 璃正神父、話を通しておいてもらえますかな』
『ではそう伝えておきましょう。くれぐれもお気をつけて。依頼主の名前は――』


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