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仮投下スレ
751
:
第三回放送 -あの思いは漂着-
◆WqZH3L6gH6
:2016/08/20(土) 17:35:27 ID:TNaq16Tg0
やや強く踏みしめる。
ほとんど力が入ってないはずなのに地面が一部陥没した。それは繭の異能がなせる現象。
そしてこれは協力者に対する不満の表れ。でも強く叩くようなことは考えていない。
繭の今の身体と増強された異能はヒース・オスロの協力があってこそのもの。
恩義もあるが、生き続ける為にも彼の存在は必要。
このまま時間が経ち、健康になるまでは。
そう奮い立たせ、繭は不満と未練を打ち切り、さらにそれを強調するかのように呟く。
「あのシロはタマ、クロはユキ……。
わたしの分身で大事で必要な子達だけど、わたしの知るシロとクロじゃないもの」
ヒース・オスロと会ってから、しばらくして繭の知るシロとクロは消えてしまった。
繭は最初こそ小さい喪失感を覚えるのみだったが、日に日にその思いは強くなり、
やがて行動に支障が出るほどの大きなものとなった。
それは協力者の一人の提案が実行されるまで続いた。
「でもいいの。わたしの目に届く所で居続けてくれれば、それで」
その提案は別のシロとクロを攫ってくる事。
繭はそれで自らの欠落を埋められるか不安だったが、杞憂だったようだ。
ここに原初のルリグがこの世界に連れられた時、繭の欠落感はほぼ消えていた。
それどころか2人のルリグの記憶も一部流れ込んできたくらいだ。
もっともそれは現状ゲーム開催への少々の助力にしかなってないが。
「ねえ……もうひとりの繭……。あなたはいまどうしてるの?」
その呟きは別の繭に問たものではなく、行方を知ろうとするものでもなく。
自虐を込めた、別の自分への哀れみの言葉。
繭は1枚のカードを出す。ドラゴンの寝顔を写している、バハムートのカードを。
繭がカードを凝視する。ドラゴンの両眼が開き、繭は黒い物体に包まれる。
それは実態を伴わない、ドラゴンの肉体。
だが、もしここに繭以外の誰かがいれば感じ取れるであろう。トップクラスのプレイヤーからも絶大と認識されるだろう力を。
「いい子ね……。もう少ししたら出られるからね。それまで辛抱よ……」
繭は実体の無いドラゴンの体を撫でた。
バハムートはどこか満足気に顔を歪ませるとカードへと戻った。
万が一、敵対者がここに入り込んでもこれなら……。
繭は薄く笑う。
「わたしはね、呪いながらしあわせになるの。
むかしのシロとクロが消えてしまった代わりに動けるようになった、このわたしで。
バハムートといっしょにねえ」
そして――
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