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仮投下スレ

714夜へ急ぐ ◆WqZH3L6gH6:2016/07/15(金) 15:58:45 ID:/gRdK6EA0

「……っ」


蛍の瞳孔が開き、右手で胸を押さえた。
気絶する前の状況を思い出したのだろう、静雄にはそう判断でき間近にならない程度まで慌てて近づいた。


「蛍ちゃん」
「……大丈夫、大丈夫です…………」


荒い呼吸を繰返しながら、汗をかきながら何かに耐えるかの様にドアにもたれ掛かる。
静雄は蛍の手を背に当てながらいいかと訊いた。
蛍は顔を向けないまま頷いた。

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停まった車の中。



「平和島さん、ごめんなさい……」
「謝らなくてもいいよ、責められるのは俺の方だよ」


一瞬、否定するような表情を蛍は向けるが、後悔の混じった静雄の表情から心中を察し、黙った。
実は蛍は蒼井晶の遺体を発見する数分前から意識を回復させていた。
ショックからか流子に強襲される前の記憶が曖昧だった事からか、ゆっくりと走行する車内にいたからか
蛍は静雄をある程度見続ける余裕ができていた。


「……ディオって人とは遭っていないんですよね」


蛍の何度目かの問いに静雄はただただ頷く。
良かったと蛍は思い涙を一滴こぼした。今度こそ言葉でなく心で実感できたから。
もともと蛍は静雄と臨也との諍いの最中でも、静雄が加害者である断定はできず揺れていたのだ。
その上負傷した身体を押して蛍を保護し、見知らぬ少女まで弔う静雄を敵意を持ったまま接し続けられる訳がない。
それに耐えられそうに無いくらいに疲れた。
――今でも折原臨也への親しみを失った訳でも、彼から教えられた疑惑を全て払拭出来たわけでは無い。
だがそれを抱えていて尚、静雄との和解を前提とした対話を彼女は求めたのだ。

「……」
「……」
「蟇郡さん……達は?」


静雄が明らかに嫌悪していた臨也の名は蛍は出さなかった。
彼の表情が苦痛に彩られる。


「蒲郡とあいつは放送で呼ばれたよ、れんげちゃんは呼ばれていない」
「そうですか……」

"あいつ"が臨也であるのはすぐに解った。
嫌でも認識させられる喪失へのショックと、宮内れんげが存命である安堵が心中で交じり合い苦い気持ちをこみ上げさせる。
蛍は続いてラビットハウスにいる仲間達の事の行方を尋ねた。
放送で呼ばれていないのを知りもっと安心した。思わず安堵の息を吐いた。


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