[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
メール
|
1-
101-
201-
301-
401-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
Cry for you
1
:
ちんぱる
:2013/05/30(木) 23:48:34
島崎遥香メインの王道恋愛小説を書いて行きます!
2
:
ちんぱる
:2013/05/30(木) 23:49:04
-春-
桜が咲き誇り、キレイに散っていく。
俺はこの景色を何度見たことだろうか。
隣にいたのはいつも彼女だった。
今までも、これからも、ずっと一緒だ。
3
:
ステージ
:2013/05/30(木) 23:49:42
みつけたー!
楽しみです^^
4
:
ちんぱる
:2013/05/30(木) 23:50:54
-7年前の春-
「ヤバイヤバイ!入学式早々遅刻じゃねえか!!」
朝からドタバタうるさいのは、この物語の主人公、神山晴人。
「何で起こさねえんだよ!姉ちゃん!」
「うっさいなぁ、たまには自分の力で起きなさいよ」
彼女は晴人の姉、神山優子。
二人の両親は、10年前に他界。
以来、姉の優子が母親代わりとして、晴人を立派に育て上げたのだ。
だがその立派な息子は、高校の入学式早々遅刻しかけている。
「やっべぇ!行ってきます!」
「晴人!」
突然呼び止められ、思わず前のめりになる晴人。
「何?」
「高校入学おめでとう!」
「お、おう」
「頑張ってね」
「…ありがとな」
「えっ?」
思わず聞き返す優子。
「姉ちゃんのおかげで、俺高校にも行けるから…」
「…晴人」
「何?」
「遅刻すんぞ」
「そうだった!行ってきます!」
「行ってらっしゃ〜い!」
慌てて家から飛び出す晴人。
これから彼には、幸せや悲しみ、あらゆる出来事が彼を待ち受けていた。
「しょっぱなから、縁起でもねえこと言ってんじゃねえよ!」
おっと、失礼…。
それでは、物語の始まりです。
6
:
ちんぱる
:2013/05/30(木) 23:51:41
>ステージさん
見つかっちゃいましたか(笑)
今後ともよろしくお願いします!
10
:
ちんぱる
:2013/05/30(木) 23:59:29
学校に到着すると、すでに校舎には誰もいなかった。
「もう体育館に行ってんのかな…」
そのとき彼の耳は誰かの足音を聞きとった。
「もしかして先生?見つかったらマズイな…」
思わず近くの物陰に隠れる晴人、その足音は確実に晴人に近づいてくる。
様子を見たくなった晴人は、そっと顔を出す。
しかしそこには誰にもいなかった。
「あれ…?」
「何やってんの?」
「へっ?うわぁ!!」
気付かぬ間に彼の後ろには、女性が立っていた。
でも見た限り、先生では無い。むしろこの学校の制服を着ている。
正体を知ろうと、あれこれ考えていると。
「もしかして…君も遅刻した?」
「えっ?ああ、うん…」
すると彼女は、まばゆいばかりの笑顔を振りまいた。
「じゃあ一緒だねっ」
「そうだね…」
いきなり笑い出した彼女に訳分からない晴人だったが、今はそれどころではない。
「ね、これからどうする?」
「とりあえず、体育館行こうよ」
「行くの!?」
「行かないの?」
すると上目遣いで晴人の事を見てきた。
晴人の弱点は何を隠そう、「上目遣いで見つめられる事」なのだ。
「うっ…、分かった行こう」
「よし!じゃあ行こっ」
こうして晴人は彼女、島崎遥香と出会った。
14
:
ちんぱる
:2013/05/31(金) 00:03:40
そうして二人は何事も無く体育館に…、入れるはず無かった。
「なぁ〜にやってんのかなぁ〜?入学式早々」
廊下を歩いていた2人が後ろを振り向くと、女性が立っていた。
「入学式早々、いい度胸じゃない。アナタたち、名前は?」
「あっ、神山晴人です…」
「島崎遥香です」
先生らしき女性は、紙に俺達の名前を書いた。
「神山くんと島崎さんね」
「あっ先生、字が違います」
「えっ?」
「“紙”じゃなくて“神”です。神様の“神”」
「わ、分かってるわよ!」
慌てて書き直す姿から、どうやらこの先生は天然らしいと、晴人は確信した。
「と、とにかく!2人とも入学式が終わったら、生活指導室に来る事!いいね!?」
「はぁ〜い…」
初日からツイていない晴人と遥香だった。
入学式も終わり、2人は共に生活指導室までやってきた。
しかし肝心な先程の教師の名前が分からない。
「あれ?そういや、さっきの先生誰だ?」
「ホントだ、名前分かんないね」
「やっぱあの先生天然かも」
と、軽く小バカにしていると。
「だ〜れが天然よ!」
2人の後ろに先程の教師が立っていた。
「アナタたち、遅刻したくせにいご身分ね!」
「あ、スイマセン」
「まあいいわ、とりあえず入りなさい」
「あのう」と遥香が教師に尋ねた。
「いつになったらクラスに行けるんですか?」
「それは大丈夫、ほんの5分で終わるから」
そして5分後、彼女の言った通りすぐに終わった。
「これに懲りたら、もう遅刻しない事!いいね?」
「はい…」
「じゃあ教室に行ってよし!」
ようやく女性教師からの呪縛から、解き放たれた晴人と遥香。
「じゃあ、私2組だから」
「お、おう」
「晴人くんは何組?」
「俺は4組」
「そっか、じゃあまたね」
「あのさ!」
晴人は思い切って彼女を呼び止めた。
「何?」
「こ、今度さ、良かったらどっか遊びに行かない?」
遥香はビックリしていた、だけど誰よりもビックリしていたのは、晴人自身だった。
本当はそんなこと言うつもりはなかったのだが、気付くと口が勝手に動いていた。
「う、うん、いいよ」
「マジ!?」
「じゃあアドレス教えて」
彼女は晴人に近づき、手を差し出す。
「ん?」
「ケータイ、出して」
「お、おう」
慌てて携帯を取り出す晴人。
彼の携帯を受け取った遥香は、慣れた手さばきで互いのアドレスを交換した。
「はい、ありがと」
「おう」
「じゃあ、後でメールするね」
そう言い残し、彼女は自分のクラスへと向かった。
晴人は小さくガッツポーズを決めると、スキップしながら自分のクラスへと向かった。
しかしクラスのドアを開けると、全員からの冷たい目を一気に浴びることになった。
「あ…、スミマセン、遅れました…」
「君が神山晴人君だね?」
黒板の前に立っていた男の教師が、晴人に尋ねた。
15
:
ステージ
:2013/05/31(金) 00:03:42
でもある程度の展開は知ってるからなんとも・・・orz
22
:
ちんぱる
:2013/05/31(金) 00:13:48
「はい」
「よし、これで全員揃ったね。改めて自己紹介を、僕は…」
黒板に名前を書いていく。
「櫻井翔です。担当は主に公民を担当しています。1年生の担任は初めてですが、皆の夢のために少しでも何か、力になってあげられたらと思っています。よろしく」
クラス中から拍手が起きた。
先生の顔立ちはスラっとしていて、世に言うイケメンとは彼の事を言うのだろうと晴人は思った。
「それでは、まず皆の事を教えて欲しい。これから親睦を深めるためにも、自己紹介をお願いします」
晴人にとって、自己紹介なんてするのは小学校以来だった。
「じゃあ、出席番号1番の"板野"さん、お願いします」
板野と呼ばれた女子は、気だるそうにしながらも黒板の前に立った。
「板野友美です、高1です。よろしく」
まるでメールのテンプレートのような自己紹介だった。
だが、そこに水を差すやつが。
「はいはい!板野さんの好きな男性のタイプは?」
元気良く手をあげる男子がいた。
しかし、「あんた以外だったら」と彼女に軽くあしらわれてしまった。
まさか彼が晴人の親友になるとは、本人たちも思っていなかっただろう。
第一、晴人が彼に最初に抱いた印象は「ウザい」と、最悪のスタートだった。
「次は、出席番号2番の"時多"」
「ども、時多 駿太郎(ときた しゅんたろう)です。中学の頃は陸上部に入ってました、よろしく」
周りの女子たちがざわめきだす。その原因は彼がイケメンだったからだ。
「クールキャラかよ…」
晴人はそのとき彼と仲良くはなれなさそうだな、と思っていた。
彼も、後の親友の1人になるとも知らず。
「次は、神山」
ついに晴人の番が回ってきた。
「え〜と、神山晴人です。部活は特には決めてないんですけど、まあ高校生になったからには、何か始めたいと思っています!よろしく!」
あれ?全然面白くないな…。
後悔が重くのしかかった晴人であった。
「じゃあ最後に、"松井"」
「やったぁ〜!やっと俺の番が来た!」
「さっきのうるさい奴かよ…」
「初めまして、松井大貴です!部活はサッカー部に入ろうと思っています!1年間よろしく!」
大貴はとにかく声がデカかった。
そして時はあっという間に過ぎ、授業終了のチャイムが鳴る。
「それでは、最初のホームルームは以上です。明日から本格的に高校生活が始まるけど、みんな楽しんでください!では!」
櫻井先生が教室から出ると、一段と騒がしくなった。
改めて自己紹介する者、メアドを交換する者。
色々いたが晴人はどれにも当てはまらなかった。
今朝出会った、遥香のことがずっと気になっていたのだ。
「そういや2組って言ってたな…」
彼女に会いに行こうと思った直後、
「ねー!ねー!」
残念なことに一番関わりたくないと思っていた奴に、声をかけられてしまった。
「今日、何で遅刻したの?」
大貴は初対面の晴人に対して、ズケズケと聞いてくる。
彼にとってはそれがあたり前なのだろう。
「まぁ…、ちょっと寝坊して」
すると、晴人に近づく人物がもう一人いた。
「聞いたぞ、お前初日早々、小嶋に捕まったらしいじゃん」
話しかけてきたのは、あの駿太郎だった。
まさか彼から話しかけてくるとは思ってなかったため、晴人はビックリしている。
「お、おう…。ってか小嶋って誰?」
「お前を説教していた先生だよ」
「もう知ってんだ…」
「まあな、人の顔と名前はすぐに覚えるタイプなんで」
駿太郎が軽いドヤ顔で話していると、
「じゃあ歴史とか得意でしょ?」
いきなり大貴がとんでもないものをぶっ込んできた。
「あ、ああ…」
さすがの駿太郎も、対処できず困っている。
結局3人はお互いのアドレスを交換し、友達となった。
24
:
名無しさん
:2013/05/31(金) 00:18:10
消すなよ!
25
:
ちんぱる
:2013/05/31(金) 00:20:37
大貴と駿太郎と別れた後、晴人は2組にやってきた。
しかしアウェー感が尋常じゃなかった。
やはり違うクラスだからだろうかとも思ったが、どうやら1、2組は頭のいい生徒が集まりやすいクラス編成になっているらしい。
つまり、優等生クラスだ。
そんな事とは知らず、晴人が廊下から遥香の姿を探していると。
「あれ?アナタさっきの!」と聞いたことがある声がした。
晴人が振り返ると、さっきの女教師が立っている。
駿太郎によると、名前は確か小嶋。
「えっと、小嶋先生…?」
「わあ!何で知ってるのぉ?」
確かに自己紹介はされていないため、晴人には説明のしようがなかった。
「いや、ちょっと聞いたんで…」
「そっかぁ。あ、ちなみに私の名前は小嶋陽菜。2組の担任です」
晴人は天然が担任って、遥香さんもかわいそうだなと思った。
「あ、そうなんですか」
「もしかして、島崎さんを待ってるの?」
「えっ!イヤ…別に…」
「島崎さ〜ん!」
「なぜ呼ぶ!?」と心の中で、彼女をツッコんだ。思わず目を大きく見開いてしまった。
「はぁ〜い」と新しく出来たであろう友達との会話を止め、廊下に出てくる。
「何ですかぁ?」
「"髪"山くんが待ってるよ」
「イヤ、だから先生字が間違ってます!」
「何の話?」
自分も何にツッコんでいるのか、分からない晴人だった。
そんな彼の存在に、遥香が気付く。
「あっ…」
「イヤ、別に待ってたってわけじゃ…」
「ゴメン、すぐに準備するから待ってて!」
予想外の返事だった。
彼女はクラスメートに「じゃあね」と言って、クラスを出る。
気付くと、小嶋の姿はいつの間にか無くなっていた。
意外と彼女には、キューピットの素質があるのかもしれない。
「行こっか」
「お、おう…」
今朝あったばかりなのに、2人の距離はすでに近くなっていた。
26
:
ちんぱる
:2013/05/31(金) 00:21:40
>名無しさん
だってあなた、さっきから批判的なコメントばかりじゃないですか
まだ物語も序盤なんですから、ちゃんと途中まで読んでから批判してください
29
:
シップ
:2013/05/31(金) 00:34:41
今までの内容は知っていますがこの後も楽しみです!
頑張って下さい!
30
:
ちんぱる
:2013/05/31(金) 00:35:52
>シップさん
一応、最初から書き直すつもりです!
もう少ししたら、新展開しますからおたのしみに!
32
:
シップ
:2013/05/31(金) 07:07:01
楽しみです!
自分のペースで頑張って下さい!
33
:
WBX
:2013/05/31(金) 15:19:12
応援してるので頑張って下さい! あと他の作品の更新も待ってます!
34
:
シップ
:2013/05/31(金) 16:44:55
まだ入れませんね…
どうしたんでしょう…
35
:
ちんぱる
:2013/05/31(金) 19:04:21
>シップさん
もしかしたら閉鎖したんじゃないんでしょうか…
36
:
ちんぱる
:2013/05/31(金) 19:36:33
高校デビューとは一体何だろうか。
晴人は歩きながら、そんな事を考えていた。
確か何年か前にそんな映画あったな…、最終的にまったく関係ない結論に達した。
そのぐらい緊張していた。
女子と一緒に帰るなんて、晴人にとって何年振りの事件だろうか。
「ねぇ、ねえ!」
「ん、うん?」
「聞いてる?」
どうやら彼女は隣で何かを話していたらしい。
しかし考え込むと周りが見えなくなる晴人は、全く聞いていなかった。
「ゴメン…」
「も〜う、あのね小嶋先生が…」
どうしてこの子は、俺なんかと一緒に帰ってくれているんだろうか。
朝たまたま、一緒に遅刻したってだけなのに。
その理由は明確だ。
単に彼女が、晴人のことを気にしているからだ。
だが鈍感な晴人は、全く気付いていない。
「じゃあ…私ここだから」
「お、おう」
「また明日ね」
「じゃ、じゃあな」
とカッコつけて言ってみたが、声は思いっきり震えていた。
家に入る彼女の後ろ姿を見て、ついつい見とれてしまう晴人の後頭部に、突然衝撃が走った。
「いって!!!」
「ハハハー!な〜にやってんだよ!晴人!」
「何だ…、松井か…」
「何だってなんだ!それに俺のことは大貴でいいって言ったろ?」
「分かった分かったよ!それで?一体どういうつもりだ?」
指をボキボキ言わせながら、大貴に近づいて行く。
「は、晴人くん…?い、一旦落ち着こうか…」
「じゃかぁ〜しぃわ!ボケェ〜!!」
2分後
「だからぁ〜、ホントゴメンって!」
「うるせぇ、いきなり人の頭殴っときながら、それで済んだだけ感謝しろ」
大貴は公園の木に吊るしあげられていた。
しかし、「だぁあ〜!」と野性児のように大貴は叫び、何とかロープから脱出する。
「ったく…、んで?何の用だよ?」
「いやお前がそそくさと帰るからさ、何事かと思って」
「何で今日会ったばかりのお前に、そんなこと思われなきゃいけねえんだよ!」
「なんでかなー、お前とはずっと前から友達だった気がするんだよなぁ」
「意味分かんねえよ」
37
:
ちんぱる
:2013/05/31(金) 23:05:49
「あっ!珠理奈ー!」と大貴は突然手を振り出した。
その先には中学生だろうか、その位の歳の女の子がいる。
まさか…、こいつロリコン!?と晴人は思ったが、
「あ!お兄ちゃん!」
違った。
「何やってんの?」
「友達とな!ちょっとダベってた」
大貴の事をお兄ちゃんと呼ぶ子が、晴人の顔を見ると、そそくさと大貴を連れ出した。
「なんだよ!」
「お兄ちゃん、あのカッコイイ人誰!?」
「あ?あぁ神山晴人、俺のクラスメートで親友だ!」
「晴人さん…」
「珠理奈、お前まさか…」
そう、珠理奈は晴人に一目ぼれをしていた。
「紹介して!」
「はあ!?」
「いいから!珠理奈の事、晴人さんに紹介して!」
「ったく、面倒くせえなぁ」
珠理奈にしつこく「紹介して」と言われ続けたので、しぶしぶ紹介することに。
「晴人、紹介するわ、俺の妹」
「あ、そうなんだ」と言いながらも、「だと思った」と心の中でツッコんだ。
「松井珠理奈です!初めまして」
「初めまして神山晴人です、よろしく。元気がいいね」
「ほ、ホントですか?うれしぃなぁ〜」
珠理奈は両手を顔に当て、照れている。
「あの…、は、晴人さんって呼んでもいいですか?」
「ん?別にいいよ」
「は、は、晴人さん…」と言ってみるものの、結局恥ずかしがる珠理奈。
そんな妹の様子を見て、自分まで恥ずかしくなる兄。
そろそろ帰りたいと思っている男。
さまざまな気持ちが、公園内に入り混じっていた。
38
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 17:59:36
「はあ…、ただいまぁ〜」
やっと松井兄妹から解放され家にたどり着いた晴人だったが、彼を迎え入れてくれるものは誰もいない。
「姉ちゃん?ん?」
テーブルの上に手紙が置いてあった。
『今日は遅くに帰りそうだから、昨日作ったシチュー食べてて!それと、ちゃんと私の分も残しておきなさいよ! 優子』
「ハイハイ…」
シチューを温め、テレビを見ながら食べた。
優子はある弁護士の秘書をしており、帰ってくる時間が遅くなることは度々ある。
だから晴人にとっては、一人でご飯を食べることは日常茶飯事だった。
「やっぱ姉ちゃんのシチュー、うめえな」
姉の作る料理の中で晴人が好きなのは、シチュー、オムライス、ハンバーグ、カレー。
この4つが彼の中では、すでに殿堂入りを果たしている。
「さてと、風呂入って寝るか」
何度この言葉を言ったことだろうか。
誰もいないのに、一人で呟くこのセリフが晴人は大嫌いだった。
でも何故か勝手に出てきてしまう。
「はあ、寂しすぎんだろ、俺…」
39
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 19:07:19
翌朝。
「う〜ん…、おはよう姉ちゃん」
「おはよっ、ご飯できてるわよ」
「Thanks!」
「Your Welcome!」
この謎の英語での会話のくだりは、ほぼ毎日起こっている。
「ふわぁ〜、そういやなんか変な夢見たな…」
「…どんな?」
多少ドキッとしながらも、冷静な表情で尋ねる優子。
「う〜ん…」
晴人が見た夢は…。
『晴人くん…』
『しま…、いや遥香…』
『私、晴人が好き!』
『俺もだ!愛している!』
何ていう夢を見たわけで…。
「まぁ…相当変だった」
「何それぇ〜?」
その後学校に行く支度も完了し、家を出ようとすると。
「晴人!」
「ん?」
「今日お姉ちゃん、早めに帰るから」
「おうっ」
「行ってらっしゃい!」
「行ってきます!」
こうしてまたいつもの朝が始まった。
40
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 19:07:50
「あ、島崎さん…」
学校に向かう晴人の前を遥香が歩いていた。
ゆっくりと桜並木を眺めながら歩く彼女の姿は、とても美しかった。
晴人は走って、遥香のもとへと向かう。
「は、島崎さ〜ん!」
一瞬「遥香」と言いかけたが、すぐにごまかす。
「あっ、は、神山くん」
一瞬「晴人」と言いかけたが、すぐにごまかした。
つまり、彼女も同じ夢を今朝がた見ていたのだ。
「お、おはよう」
「おう、い、いい天気だな」
何を言っているのか、晴人自身も分かっていない。
「そ、そうだね…」
ちなみに今日の天気は曇りである。
そのまま2人は何かを話すことも無いまま、隣に並びながら学校へ向かった。
「ねえ、神山くん」
正門の前まで来たとき、彼女が突然口を開いた。
「帰りも…一緒に帰ってくれない?」
彼女はうつむきながら、恥ずかしそうに言ってくる。
「か、かわいい…」と晴人の心の中は、すでにKO寸前だった。
「い、いいとも…」
「ホント!?じゃあ放課後、正門でね」
「おう」
まだ付き合っても無いのに、恋人気分の2人だった。
41
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 19:08:39
教室に入ると。
「おはよー!晴人!」
「朝から、うるせえよ!」
「何イライラしてんの?」
「駿太郎聞いてくれ、コイツな昨日…」
晴人が駿太郎に昨日の出来事を話そうとすると、
「わ〜!わ〜!」
「んだよ!うっせえな!」
「晴人!ちょっと来い!」といい、大貴は晴人を連れ廊下に飛び出た。
「昨日のことは言わないで!」
「何で?」
「イヤ…、だって男が男をつけてたなんて知られたら、完全に俺コッチになっちゃうだろ?」
そう言いながら、大貴は左手をほほに近づける。
「いいんじゃない?ソッチの人でも」
「良くねえわ!」
ちょうどそのとき、授業開始のチャイムが鳴った。
「内閣に不信任決議案を提出できるのは、衆議院だけの特権であって…」
櫻井先生の授業は分かりやすい。
丁寧に図を書いてくれて、なおかつその図を丁寧に説明してくれると生徒達に大評判だった。
「ニュースキャスターになればいいのに…」と晴人は何度思ったことだろう。
「では、今日の授業はここまで」
本日最後の授業が終わり、高校生活2日目が終わりを迎えようとしていた。
「なあなあなあ!」
「もうちょいボリューム、抑えらんねぇのか?」
「晴人さ、今から一緒にサッカー部見学に行かねっ?」
「え?」
「どうせお前、部活何やるか、まだ決めてねえんだろ?」
「ま、まあな…」と適当に答える晴人。
「そういや“なんかやりたい”って言ったけど、何やりたいんだよ?」
「いや、特には…」
「だからさぁ〜!サッカー部見学行こうぜぇ〜!」
「お、おう…」と言いながらも、晴人はあまり乗り気ではなかった。
正直、晴人はサッカーにあまり興味を持っていない。
テレビで試合を見るのは好きなのだが…。
「晴人」と、突然駿太郎から声をかけられた。
「んだよ?」
「本当は乗り気じゃないだろ、お前」
「ギクッ!」
「ギクッ!」というこの音、みなさんは心の中で鳴った音だと思っただろう。
だが実際は、晴人が思わず口から出した音である。
「“ギクッ!”って普通言わねえだろ」
「いやつい…」
「そうなのかぁ〜?晴人〜!」
「だあもう!別にいいだろ?」
「とにかく!今日は俺は先約があるんだよ!」
「おっ!あの子か?」
「誰?」
大貴が話すとややこしい事になると判断した晴人は、ヤツにラリアットをかまし、そのまま教室から出た。
「じゃ〜な〜!」
「痛ぇだろうが!」
「ドンマイ…」
「何で、お前笑ってんだよ!?」
42
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 19:09:13
正門に向かっていると、靴箱で遥香とバッタリ会った。
「あっ、神山くん」
「丁度良かった!」
「ねっ」
室内靴から通常のローファーに履き替え、2人は並んで歩きだす。
「そういや島崎さんは部活とか入んないの?」
「う〜ん、まだ何があるのか分かんなくて」
「そっか」
2人の目の前を、野球部の新入部員たちが通り過ぎていく。
「神山くんは?」
「えっ?」
「何か部活やらないの?」
「う〜ん、俺も特には考えてないな…」
「中学の時は何やってたの?」
彼女に質問されたのにも関わらず、晴人は黙っていた。
「神山くん?」
「ねえ、あそこのドーナツ屋で、何か買おうよ」
「う、うん…」
晴人は急ぎ足で、ドーナツ屋に入っていった。
「私、いけないこと聞いちゃったかな…?」
遥香も慌てて、晴人の後を追い店内に入る。
だがこのとき、彼女はまだ知らなかった…、晴人が抱えている爆弾に…。
43
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 19:13:42
ドーナツを食べながら、晴人は遥香の中学の頃の話を聞いていた。
「島崎さんはさ、中学の時、部活何やってたの?」
「私?吹奏楽部やってたんだ」
「へえ〜、何吹いてたの?」
「フルートって言うんだけど知ってる?」
「ふるーと?」
晴人は全く分かっていない。
すると店に新たな客がやってきた。
一方で理解していない晴人のために、遥香はフルートを吹く真似をしてみせる。
「こういう楽器なんだけど」
「ああ!横笛ね!」
「横笛…、うん、そんな感じかな」
「あれ?違った?」
「ちょっとだけ」と彼女は笑いながら、ドーナツを食べている。
すると、ついさっき来店してきた客が遥香に声をかけてきた。
「あれ?ぱるちゃん?」
「あっ…」
顔見知りだろうか、遥香はかなり驚いた表情を取る。
「誰?」
状況が読み込めない晴人は、彼女に尋ねた。
「同じ2組のクラスメート、私の友達」
「ふうん」
するとその友達は、2人のテーブルの空席に座ってきた。
「何!? 何!? ぱるちゃん、もう彼氏出来たの?」
「ち、違うってば! 神山くんは友達だよ…」
「へえ〜」と言いながらも、にやけながら二人を見ている“友達“。
「あっ、自己紹介遅れましたね!私、島田晴香です!」
「は、はるか…」
「そう!ぱるちゃんと同じ“はるか”なんです!ねぇ〜?」
「う、うん!」
神様というものがもし本当にいるとするなら、あまりにも気まぐれである。
「同じ名前というだけで、こうも違ってくるのか」と晴人は思った。
こっちの“遥香”は、さっきからずっとモジモジして、恥ずかしそうにしている。
かたや、こっちの“晴香”は元気がよく、正直言うと…うるさい。
「今、うるさいって思ったでしょ!」
「へっ!?」
彼女は人の心が読めるのだろうか。
「どうなんですかぁ?」
「い、いやぁ!そんなこと思ってないよ…」
「何で最後の方、声ちっちゃいんですか!」
「ちょっと!晴香!晴人さん困ってるじゃない」
ようやく“遥香”が助け船をくれた。
結局3人でドーナツを食べ、晴香とはその場で別れた。
島田晴香は嵐のように現れ去っていったのだった。
44
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 19:14:57
「ゴメンなさい…晴香が急に」
「いやいや、楽しかったよ!」
晴人は彼なりに、フォローしたつもりだった。
しかしそれが逆効果になるなんて、誰が予測できただろう。
「やっぱ、明るい女の子の方がいいですよね…」
「えええ!!!」
あまりの展開に、晴人は大声で驚いてしまった。
まさかの一言に、動揺している。
「そ、そんなことないって!」
「でも私、あんなに積極的にはなれませんよ…」
「そんなことないよ!」
晴人は肩を掴み、彼女の目を正面から見つめた。
「えっ…」
突然の出来事に困惑する遥香。
しかし晴人は、なおも彼女の瞳を見つめ続ける。
「俺は…、“遥香”ちゃんみたいな子がいいんだよ」
どさくさまぎれに、告白まがいの発言をした晴人。
彼にはそんな気は全くなかったが、心がとってもピュアである遥香は、それを受け入れてしまった。
「ほ、ホント?」
「うん、俺は“遥香ちゃん”みたいに大人しい子も好きだよ…、ん?」
この男はようやく、事の重大性に気付いたようだ。
「あ、あ〜!!!ち、ち、違うんだ!そのぉ〜!違くはないんだけど!違うんだ!」
まだ会って2日だというのに、急展開過ぎる。
読者がどんどん離れて行く気がした。
45
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 19:17:18
晴人がおろたえていると、その様子がおかしかったのか、遥香が突然笑い出した。
「アッハハハハ!」
「な、なに?」
「ねぇ!」
「ん?」
「私も…、“晴人くん”のことが好きだよっ」
その瞬間、晴人の呼吸が止まった。
「苦しい…、何で俺は息を止めてんだ…?」と晴人は思っていた。
疑問に思うことすらおかしい位、当たり前のことを考えている。
理由はひとつ、彼女の突然の告白に、晴人の全思考回路が停止したからだ。
そろそろ、空気を補給しないとマズイんじゃないだろうか…。
「ブハッ!」
やっとした。
「大丈夫?」
「ご、ゴメン!ぜ、全然整理できてないんだけど」
「ウフフ」
「ちょっ!笑うとこじゃないでしょ!」
「ゴメンゴメン、ウフフ」
「もぅ…、かえ…ろっか?」
「うん」といって遥香は、左手を差し出した。
「何?」と聞いてみるも。
「ん!」と言っただけで彼女は手を差し出し続けている。
何故、この男は「手をつないで」という女の子のかわいらしい暗黙のメッセージを理解してやれないのだろうか。
「あっ…、手を繋げばいいのか…」
最初からそうすればいいのである。
そうして2人は、出会って2日という異常な早さで付き合い始めた。
そしてここから、2人の永遠に続くラブストーリーが、本格的に幕を開けるのである。
46
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 19:24:02
-7年前の夏-
時は過ぎ、夏。
「あっちぃ…、夏ってだけで何でこんなに暑いんだ…」
今年もこの時期がやってきた。
晴人にとっては、高校生になって初めての夏休み。
しかし部活に入っていない晴人は、1日中家で無駄な時間を過ごしていた。
「こら!朝っぱらからダラダラしてんじゃねえよ!」
「んだよ、姉ちゃん!」
「これ、買ってきて」と、優子は晴人にメモを渡した。
「はあ?歯ブラシセットに、シャンプーハットだあ?何に使うんだよ、こんなの」
「いいからいいから!駅前のスーパーで安売りしてたから、早く買ってきて!」
仕方なく買い物に出た晴人は、駅前を歩いているとある広告看板が目にとまった。
『渡辺麻友 NEWシングル発売!!』
今をときめく人気アイドル「渡辺麻友」、クラスでも彼女の話題で盛り上がっていた。
数週間前
「なあなあ!昨日の音ステ見た?」
大貴のテンションは、今日もバカなくらい上がっていた。
『音楽ステーション』、通称『音ステ』、人気のある生放送の音楽番組で、毎回いろんな歌手が出ている。
「見てないけど」
「なぁ〜んだぁとぉ〜!お前昨日の放送見てないとは!人生の半分損してるぞ!」
「じゃあ人生の半分は、得してんだな?」
「うっ」
晴人の反論に何も言えなくなる大貴。
「で?誰が出てたんだよ?」
「“まゆゆ”だよ!“まゆゆ”!」
「“まゆゆ”?」
駿太郎はそういうのには疎いらしく、キョトンとしていた。
「最近人気のアイドルのこと」
「ああ、アイドルね…」
「はぁ〜まゆゆかわいいよなぁ〜、何せあの清純そうな表情、そして時折見せる最強のアイドルスマイル!クゥ〜!たまらねえぜ!」
晴人は、大貴がそんな事を言っていたことを思い出しながら、看板を見ていた。
「ったく、アイツのどこがそんなにいいんだか…」
あたかも知り合いのような言い方である。
「さて、買いもん、買いもん!」
晴人は駅前のスーパーに向かった。
47
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 19:51:26
時は少し戻り、都内某所…。
「えっ!?オフ!?」
東京の街の中を走る一台の車の中には、一人の女性が運転していた。
後ろには女の子が座っている。
「はい!社長にムリ言って、明日から3週間ほど休みをもらえました!」
「さすが!ひっさしぶりのオフだぁ〜、やったぁ〜!」
「そのかわり!帰ってきたら、新曲のレコーディングやら、PV撮影やらで忙しいからね」
「うん、分かってまぁす!」
女の子の名前は、渡辺麻友。
先程も説明したが、今をときめくスーパーアイドル。
そんな彼女も一人の人間、たまの息抜きぐらい欲しいのだ。
「そうだ!久しぶりにお姉ちゃんのとこ行ってみよ!」
そういうと、彼女はある所に電話した。
48
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 19:55:55
晴人は駅前のスーパーで、姉の優子に頼まれた買い物をしていた。
「え〜っと、シャンプーハットは買ったし、あとは歯ブラシセットっと…」
スーパーの中を歩き回っていると、見覚えのある顔を見かけた。
「あれ?さやちゃん?」
晴人が声をかけたのは、小学校からの同級生の山本彩。
「あっ、晴人!え!?なんでいんの?」
「いやちょっと買い物にね、さやちゃんは?」
「見たら分かるやろ、アタシも買いもんや!」
彩は幼少期は大阪に住んでいたらしく、関西弁が結構強い。
「晴人、学校楽しい?」
「うん、楽しいよ」
「部活とか入ったりした?」
「いや…」
すると晴人は、何も言わず、ただ黙り始めてしまった。
「もしかして、まだ気にしてるん?」
「イヤ別に、気にしているわけじゃ…」と言うも、黙り込んでしまった。
「仕方ないやん、あれは晴人のせいとちゃうで!」
彼女にフォローされながらも、晴人の心の中は、沢山の鎖で締めつけられていた。
49
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 21:27:01
おつかいを済まし、スーパーから自宅に帰る道中、晴人は昔のことを思い出していた。
彼が中学のとき、起こしてしまったある“事故”。
そのことが語られるのは、まだ先の話である。
「俺のせいなんだよ…」と小さく呟く。
その声が誰かに届くことはなかった。
少し落ち込んで家に帰り玄関に入ると、早速見慣れない靴を発見した。
スーパーに買い物に行く前は、こんなの無かったはずだ。
「ま、まさか…」
嫌な予感とは、まさにこのことである。
おそるおそるリビングに向かうと、晴人の予感は寸分の狂いも無く的中した。
「何でいんだよ…」
そこには、仲良くトランプをする女子2人がいた。
一人は晴人の姉、優子。
もう一人は、ついさっき街中で見かけた顔だった。
「あ!おかえりぃ〜」
「“おかえりぃ〜”じゃねえよ、何でさらっといんだよ!“麻友”!」
神山家に来ていた来客とは、まぎれもなくあの“渡辺麻友”だった。
何を隠そう、麻友は晴人姉弟とにとって“いとこ”にあたる人物なのである。
「何でって、そりゃあオフだからに決まってるでしょ」
「オフだからって、何も俺んちに来ることねえだろ?」
「だってぇ〜最近、優子お姉ちゃんに会えなかったからぁ〜」
「カワイイこと言ってくれるねぇ〜」
この2人は、いつもこうやってイチャイチャするのが恒例となっている。
突然2人は両手をωの形にし、「おしりω!」と声をそろえた。
「だからなんだよ、それ」
別に興味はないが、とりあえず聞いてみる。
「おしりとおしりの誓いよ!」
「意味分かんねえ…」
聞いて後悔する、これも恒例の事だ。
こうして3週間、国民的アイドルの渡辺麻友が、神山家に泊まることになった。
「勝手に、話進めてんじゃねえよ!!!」
50
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 21:27:42
麻友が晴人達の家に来て、3日が過ぎた頃だった。
「ねえ、どっか連れてって」
突然のいとこのお誘い…、しかも相手は、国民的アイドル…。
そんな女の子からのお誘いを断る人間がいるわけ…。
「断る」
いた。
「なんでよ〜!別にいいじゃ〜ん!」
「良くねえよ!俺にだって用事があるんだよ!」
夏休み真っ只中である晴人には、彼女がいる。
島崎遥香、入学式に運命的な出会いをした(本人の思い込み)彼女。
そんな彼女と、夏休みに入って一度も会えていない。
どうやら家族と、3泊4日の沖縄旅行に行ったらしいのだ。
そしてついに昨夜、遥香からの電話がかかってきた。
「もしもし?」
「あっ、もしもし?晴人くん?」
「おう、遥香?」
「うん!」と彼女は元気よく答えた。
「実はね、さっき東京に帰って来たんだけど…」
「何?」
「あの…、明日会えないかな?」
「ま、マジ!?」
「ダメ…?」
「全然!むしろ大歓迎!!!」ということで本日は、遥香との久々のデートなのである。
話を現在に戻そう…。
「何よ!用事って!?」
「なぁんで、お前に言わなきゃいけねえんだよ!」
「い〜じゃん!どうせ大した用事じゃないんでしょ?」
「ムカッ!あんだとぉ!」
「なによぉ!」
一触即発寸前に、家のチャイムが鳴った。
「はいは〜い!今行くねぇ〜!」
インターホンに映る、愛する人に答える晴人。
「だ、誰?」
「お前には関係ねえだろ」と晴人が麻友の方を振り返ったとき、すでに彼女の姿はなかった。
「は〜い」と、なぜか玄関のドアを開けている。
「てめっ!何してやがんだ!」
「…どちら様?」
「あ、あ、あの…、島崎遥香です…」
「しまざき?」
麻友は遥香を睨んでいた。
そんな彼女に怯える遥香。
そこにようやく彼女の王子様がやってきた。
「てめえな!なに勝手にドア開けてんだよ!」
「あっ、晴人くん」
「あっ…、おはよう、遥香」とさっきとは打って変わって、笑顔を見せる晴人。
「ちょっと!あたしを差し置いて何イチャイチャしてんのよ!」
「うるせえな、お前はアッチ行けよ!」
「何よ!」と麻友が晴人の胸ぐらをつかんだ瞬間、
「あぁ〜〜!!!!!!」
突然、遥香が大声で叫んだ。
「な、何?どうしたの?」
初めて大きな声を出す彼女に、晴人は戸惑っていた。
「も、も、もしかして…、わ、渡辺麻友さん…?」
「え、ええ…」
「うわぁ〜!スゴイ!こんなところで会えるなんて!スゴイスゴイ!」
人が変わったように、テンションが上がり出す遥香。
何が起きているのか、全く理解出来ていない晴人だった。
51
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 21:28:13
気付くと、遥香は家にお邪魔している。
「え〜!じゃあ晴人くんとまゆゆって、いとこなのぉ!?」
「そんなに驚くことか?」
「驚くよぉ!」
晴人にとって、この展開は意外だった。
まさか遥香が、アイドルファンだったとは…。
だが、彼女の新たな一面もまた、愛おしく思える晴人だった。
「あ、あの!」
彼女はあこがれの存在である麻友に、勇気を振り絞って話しかけた。
「なに?」
「ま、まゆゆさんって…、その…、“CG”って本当ですか!?」
「えっ…?」
「は…?」
晴人は思った、この子は相当ピュアなんだろう…。
仮に麻友が“CG”だったとして、じゃあ今、ここにいるコイツは一体誰なんだ…。
「遥香…」
「へっ?」
「そんなわけ…、ないだろ」
優しい声でツッコむ晴人であった。
52
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 21:28:45
「じゃあ、俺らは出掛けるから」
遥香の興奮も落ち着いたところで、晴人は家を出ることに。
「ええ〜!!私も連れて行ってよぉ!」
「何でだよ!」
「いいじゃ〜ん!ねっ?“ぱるる”っ!」
「ぱ、“ぱるる”!?」
晴人の声はガッツリ裏返った。
「だってぇ遥香ちゃん、なんか“ぱるる”ぽいじゃん」
「イヤイヤイヤ!意味分かんねんだけど!」
「私は“ぱるる”でいいと思う…」
恥ずかしそうにして答える遥香。
「遥香!?」
何故だか腑に落ちない晴人であった。
53
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 21:29:16
晴人は今、洋服を着ているマネキンの前に立っている。
「いつも思うが、何でこんな肌白いんだ…?」
訳が分からないことを呟く。
「ねえねえ晴人くん、コレとかどうかな?」
一緒に買い物に来た彼女が、晴人に服を見せてきた。
「ん?そっちもいいけど、こっちの柄とかどう?」
晴人的に気になった服を彼女に差し出してみた。
「えぇ〜、こんな派手なの着れないよぉ」
「じゃあ、いいよ」と元の場所に戻そうとすると。
「着る」
「えっ?」
「待ってて」とそう言い残し、彼女は試着室へと向かった。
「負けず嫌いだなぁ」と思いながらも、そんな彼女がまた愛おしい。
「ふぅん、晴人ってセンス良かったんだ」
隣にバカデカいサングラスをつけて、マスクをしている人物がいる。
事情を知らなければ、変質者と間違えられてもおかしくない。
「うっせぇ、てか何でついて来てんだよ」
「いいじゃん、どうせ家にいても、優子お姉ちゃん仕事でいないから、一人だし」
「邪魔すんなよ」
「はいは〜い」
ようやく遥香が試着室から出てきた。
晴人が勧めた洋服を身にまとって。
「ど、どうかな…?」
「か、カワイイ…」
「ホントぉ?じゃあこれにしよっかな」
「じゃあこれください」と晴人は近くにいた店員にそう告げた。
「えっ?」
「俺が払うよ」
「キモっ!!」
男らしさをとにかくアピールしている晴人に、麻友が即答でキツめのツッコミを入れた。
「き、キモイって…、お前な…」
「ささっ!ぱるる!次どこ行こっか?」
「聞けよ!」
そんな二人のやり取りを、遥香は黙って見ていた。
2人がうらやましく、自分の知らない彼を知っている麻友のことが、何故だか許せなかった。
「何なの…?この気持ち…」
初めての“嫉妬”を感じていた。
54
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 21:29:50
買い物も終わり、晴人の家までやってきた。
「じゃあ、私はここで…」
「ええ〜!ぱるるも入りなよ!」
今日1日会っただけで、遥香と麻友はすっかり仲良くなった。
「え、でも…」
「全然構わないって!ねえ?晴人!」
「おう、全然大丈夫だよ」と遥香に優しく微笑む晴人。
「じゃ、じゃあ…」
遥香は恐る恐る家に上がった。
家にはすでに優子が帰っている。
「おっかえりぃ〜、ってお客さん?」
「あ、はじめまして…、島崎遥香です…」
「へえ〜」とニヤニヤしながら優子は、遥香の事を見ていた。
「何、ニヤニヤしてんだよ」
「晴人!」
優子は晴人を引っ張り、遥香に聞こえないぐらいの声で話した。
「アンタ、良くあんなカワイイ子、とっ捕まえたわね」
「ば、バッカ!」
慌てて遥香の方を見る晴人。
彼女は不安そうにこちらの様子をうかがっていた。
「どうぞ!どうぞ!狭いとこだけど、上がってって!」
麻友が何故か、しきっている。
「お前んちじゃねえかんな!」
55
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 21:30:20
「いっただっきま〜す!」
夕食、神山家にはルールがあり、週に1回は晴人が作ることになっている。
これは晴人自ら作り出したルールであって…。
「“いっつも姉ちゃん働いてるから、週に1回ぐらいなら俺が作ってあげるよ”とか言われちゃって〜!」
優子は晩ご飯を食べながら、思い出を遥香と麻友に話していた。
「へえ〜晴人くん、優しいんだね」
「そ、そんなことねえけど…」
「あ〜、照れてるぅ〜!」
優子がすかさず、茶化してきた。
「うるさいなぁ、さっさと食いなよ!」
「はいはい」
その後も会話は弾み、気付くと時刻は夜10時を指していた。
「あっ!遥香、時間大丈夫?」
「あ…」
完全に忘れていたようだ。
「どうしよう…」
「すぐに送ってくよ!」
「ええ〜!せっかくだから泊まってってよぉ〜!」
まだ、駄々をこねる麻友。
「いいかげんにしろよ、遥香のご家族にも迷惑だろ!」
「ううん、ウチなら大丈夫」
「何で?」
「だってママに、『朝帰りになっても、パパには内緒にしておくから。』って言われたの」
この子の母親は何を言ってるんだろうか。
しかも彼女は、母親の言葉の意味を全く理解していない様子だった。
「じゃあ、決定ね!」
「ちょっと、姉ちゃん!」
「いいじゃん、いいじゃん!」
「ぱるる!そうと決まったら、一緒にお風呂入ろっ!」
「はいっ!」
晴人が干渉するスキも与えず、話はドンドンドンドン進んでいった。
優子は自分の部屋に戻り、遥香と麻友は風呂場に向かい、1人リビングに取り残される晴人。
気付くと彼は、皿洗いを始めていた。
「…フゥ」と一息入れ、大きく深呼吸し
「話を勝手に進めるなぁぁああああ!!!!!!!!」
静かな住宅街に、彼の叫びがこだました。
56
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 21:30:51
その頃、風呂場では。
「ん?何か今、声しなかった?」
「そ、そうですか?」
遥香と麻友は仲良くお風呂に入っていた。
遥香の心拍数は今現在、とんでもないことになっている。
憧れのアイドルと一緒に、風呂に入っているなんて、彼女にとって夢のような時間だった。
「ねっ!ぱるる!」
「は、はいっ!な、なんですか…?“まゆゆさん”…」
「フフフ、そんなにかしこまらなくてもいいのにぃ、しかも“まゆゆさん”って、ニックネームと敬語が混ざってんじゃん!」
「あ!ご、ゴメンなさい!」
しかし遥香の緊張は一向に解けない。
「もぉ〜!堅い〜!だったら…」
麻友の目が一瞬キラッと光った。
「コチョコチョコチョコチョ!」
「アハハハハハ!!!!」
「ホレホレ!おしりも触ってやろうかのぉ〜!」
「キャッ!やめて〜!」
このときの麻友は、完全におっさんと化していた。
「うるせえぞ!もうちょっと静かに入れ!」
脱衣所から、晴人の怒鳴り声がした。
「ちょっ!何こっちに来てんのよ!」
「2人がうるさいからだろ!」
「へんた〜い!」
「なっ!誰が変態だ!」
「ねえ?ぱるるもそう思うでしょ?」
「うん!晴人くんのエッチ〜!」
「は、遥香まで…」
ホームなのに、何故かアウェー感を感じる晴人なのであった。
57
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 21:31:22
遥香は風呂から上がり、麻友に下着等を借りた。
「晴人くん」
「ん?」
「お風呂、ありがとねっ」
「お、おう」
笑顔の彼女に、ドキッとしてしまう晴人。
風呂上がりで、髪がまだ少し濡れているせいか、少し色気を感じる。
「何してるの?」
「えっ?ああ、姉ちゃんの明日の弁当作ってんの」
「へぇ〜、晴人くんってホント優しいんだね」
「んなことねえよ、ただ姉ちゃんには、感謝してもしきれねえ恩があるっつうか」
晴人が優子に感謝しているのは、母親代わりに育ててくれたことだけじゃない。
彼が困ったとき、必ず助けてくれたのは姉の優子だった。
「そっか、いいなぁ」
「でも遥香にも弟がいんだろ?」
「うん、歳離れてるけど」
「いくつ?」
「う〜ん、今9歳」
「そっか」
なんてたわいもない話をしてみる。
気付けば、2人きりだった。
テレビでは、ドラマが流れている。
家庭教師が家族を崩壊させるという、なんとも言いようのないドラマだ。
二人はそのドラマには見向きもせず、お互いに見つめ合っていた。
「は、恥ずかしいね…」と遥香は思わず目を逸らした。
実を言うと、晴人達はまだキスもしていない。
お互い恥ずかしがり屋なのだ。
でも、この日の晴人は違う。
「遥香…」
「う、うん…」
「好きだ」
「し、知ってるよ」
「だよな」
「うん」
こんなチャンスはめったには来ない、晴人はこれに懸けていた。
遥香の頭をそっと自分の腕で包み、唇を重ね合わせた。
58
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 21:36:29
「…んっ」
ほんのわずかな時間だったが、二人にとっては永遠に感じた。
「ゴメン…、急に…」
「ううん」と首を横に振る彼女はすごく嬉しそうだった。
「晴人くんに、ファーストキスとられちゃった」
「え、ま、マジ!?」
彼女にとって晴人は“初恋の相手”。
そんな彼にファーストキスされるなんて夢にも思ってなかった遥香は、今にも天に昇っていきそうな感覚だった。
「晴人くん」
「ん?」
「…ってして」
「え?」
「ギュッってして…」
言われるままに、晴人は優しく抱きしめる。
「フフフ」
「なんだよ?」
「晴人くんの身体、あったかぁい」
「そうか?なら良かったよ」
「ぅ〜ん、きもちぃ〜なぁ〜」
「フッ、そうかそうか」
「ふわぁ〜、眠くなっちゃった…」
「じゃあ、もう寝なっ」
「うん」というものの、彼女は晴人から離れようとしない。
「あ、あの…、遥香?」
「…ぅん?」
「あの…、麻友の部屋で寝るんじゃねえの?」
「ぅん…寝るよ…」
眠たそうにしながらも、晴人の質問に答える遥香。
その身体は一向に動かない。
「ちょ、ちょっ!遥香!?」
「すぅ〜…、すぅ〜…」
「マジかよ…」
結局晴人に抱きついたまま、遥香は寝てしまった。
「起きろよぉ〜、お〜い!…ったく」
起こさないようにそっとお姫様だっこをし、遥香を麻友の部屋まで連れて行った。
しかし…。
「な、何だこれは…」
麻友に貸している部屋は、もともと何もなかったはずだったのだが、見事に散らかっていた。
「これじゃ寝かせらんねえじゃねえか…」
仕方なく優子の部屋に向かうも…。
ガチャガチャ!
「アイツ!部屋の鍵閉めてやがる!!」
晴人にとって、マズい状況となっていた。
59
:
ちんぱる
:2013/06/01(土) 21:39:59
仕方なく、自分のベッドに遥香を寝かせる晴人。
「マズイな…、考えれば考えるほどマズイ…」
女の子が自分のベッドで寝ている。
それだけで晴人にとっては大事件だった。
「すぅ〜…すぅ〜…」
彼氏がテンパっている隣で、遥香はすやすやと寝ている。
晴人は、彼女の寝顔に思わず見とれている。
「か、カワイイ…」
「すぅ〜…、フフッ」
よほど幸せな夢を見ているのだろう。
彼女は寝ながら笑っていた。
「晴人くん…、しゅき…、すぅ〜…」
「フッ、俺もだよ」と彼女のほほに、軽くキスをした。
翌朝。
「おっはよぉ〜!」
今日も元気120%の優子が、リビングに下りてくる。
「おはよ〜」
「あれ?まゆゆもう起きてたの?」
「うん!今日は行くところがあってねぇ〜」
「どこどこぉ〜?」
その頃、晴人の部屋では。
「…な、なんで?」
遥香は今、自分が置かれている状況が理解出来ていなかった。
そりゃそうだ。
朝、目を覚ますと、彼氏のベッドの上で寝ていたのだから。
「もしかして…、私…、“しちゃった”の…?」
んなわけない。
なぜなら、その彼氏は、床に敷かれた座布団の上で寝ているからだ。
起きたら、200%体を痛めていることだろう。
「そんな…、“はじめて”を覚えてないなんて…」
そんなことをまだ言っている遥香。
ボーっとしていると。
「っん、んぁ〜!おはよう、遥香」
ようやく晴人が目を覚ました。
「ふぇっ!?」
「何だよ、その“ふえっ!?”って」
晴人には、朝からわけのわからないことをする彼女が面白かった。
「あ、あのさ…、晴人くん…」
「なに?」
「も、もしかして…、私たち…」
「“した”よ」
その瞬間、遥香は強烈なめまいに襲われた。
バタッ
再びベッドに寝る。
「お、おい!遥香!?お〜い!」
「うぅ〜ん…、うぅ〜ん…」
小犬みたいにうめき声をあげる遥香だった。
「あらら、また寝ちゃったよ…」
「晴人〜!」と優子が呼ぶ声がする。
「はいはい! ちょっと待ってて!」
起こすとかわいそうだと思った晴人は、そのままにしておいてあげた。
60
:
シップ
:2013/06/01(土) 23:20:04
気づいたらもうここですか!!
楽しみです!
頑張って下さい!
61
:
ちんぱる
:2013/06/02(日) 00:03:48
>シップさん
ありがとうございます!
とりあえず、溜まってる分は大量更新したいと思います!
62
:
ちんぱる
:2013/06/02(日) 00:05:03
「優子お姉ちゃん!」
「なに?」
「実はね…、昨日の夜、ぱるるが私の部屋に寝る予定だったんだけど…」
「うん」
「朝起きたら、居なかったの」
「誰が?」
「ぱるる」
「うっそ!」
「お姉ちゃんの所に居た?」
「居なかった、って言うか私、部屋に鍵かけてるし」
「何で鍵かけるの?」
「晴人に襲われないためよぉ」と冗談を言っていると、
「誰が襲うか!!」
朝からきれいにツッコミが決まった。
「ねえねえ、ぱるる帰っちゃったの?」
「いや、俺の部屋でまだ寝てるよ」
晴人がそう言った瞬間、2人の表情が固まった。
「えっ?何?」
「晴人…、さすがにアンタ、それは…」
「はっ?」
「サイテー」
「はぁ? 何が? 言っとくけど、何も変なことはやってねえかんな!」
あらぬ疑いをかけられた晴人は、その後2人を納得させるのに時間がかかった。
「あ、ぱるる」
寝ぼけ眼の遥香がようやく下りてきた。
「ぉはよぅござぃます」
「ウフフ、あ行が全部小文字になってるよ」
「ふぇ?」
「さ〜て、朝飯も食ったことだし、そろそろ行こうか?」
「うん」
「また来てね」
「お世話になりました」
「じゃあね!ぱるる!」
「うんっ!」
63
:
ちんぱる
:2013/06/02(日) 00:05:40
「ゴメンね、急にお泊まりさせてもらっちゃって」
「全然、麻友の友達になってくれたみたいだし、こっちこそありがとうだよ」
二人は手を繋ぎながら、遥香の家へと向かっていた。
「あ、あのね…、晴人くん」
「なに?」
「そ、その…、私…、昨日のこと全然覚えてなくて…」
「キスの事?」
「き、キス!?」
彼女にとって、予想していなかった答えが返ってきたので、思わずびっくりした。
「うん、ゴメンな」
「あ、あの、その先は?」
「その先?」
「う、ううん! な、なんでもない!」
「ん?」
晴人には彼女がなぜ顔を真っ赤にしているのかが、分からなかった。
気付くと、彼女の家の前に到着した。
「じゃあ、またね」
「おう」
笑顔で送り出し、来た道を戻る晴人。
「ただいま〜」と遥香の声がする。
昨日のことを思い出し、少しニヤけていると。
「どこ行ってたんだ!!!!!」
突然大きな声がした。
64
:
ちんぱる
:2013/06/02(日) 00:08:52
「えっ!?」
声の主を探すと、遥香の家からだった。
そ〜っと、様子をうかがっていると。
遥香が玄関先でうつむいていた。
「連絡もしないで、どこに行ってたと聞いているんだ!」
「あ、あなた…」
どうやら彼女の父親が相当ご立腹らしい。
「ゴメンなさい…、友達の家に行ってて…」
「本当に友達か?」
父親は感がいいみたいだ。
「う、うん…」
「名前は?」
「え…」
「名前を教えなさい!」
その様子を見ていて、居ても経ってもいられなくなった晴人は、思わず飛び出してしまった。
「ゴメンなさい! 俺が引きとめました!」
謎の男が突然登場したことにより、彼女のご両親は開いた口が塞がらなかった。
遥香は「あちゃ〜」と言わんばかりの顔をしている。
「誰だ、君は?」
父親の声は、彼女に話しかけていた時とうって変わって、ドスのきいた低い声になっていた。
「か、神山晴人です! 遥香さんと…、御嬢さんとお付き合いさせていただいてます!」
まるで結婚報告のような状況だ。
しかも、彼女の家の玄関先で。
68
:
ステージ
:2013/06/02(日) 19:58:22
まだ入れませんね・・・
ホントに閉鎖したんでしょうか・・・
小説は相変わらず面白いですね!
69
:
レッズ
:2013/06/02(日) 20:12:25
お久しぶりです
やっぱりこの作品好きです!
頑張ってください★
70
:
シップ
:2013/06/02(日) 20:32:32
閉鎖してしまったらこちらの小説しかないので頑張って下さい!
71
:
名無しさん
:2013/06/02(日) 20:58:18
これのどこが神AKB小説なのwwww?
宣伝するなら違う場所でやれこっちはいい迷惑なんだよ
72
:
ちんぱる
:2013/06/02(日) 21:05:31
>名無しさん
宣伝?何の話ですか?
僕はそんなことした覚えないですよ
74
:
ちんぱる
:2013/06/02(日) 22:12:08
「付き合ってる?君と遥香がか?」
「は、はい!」
晴人の声は震えていた。
父親はゆっくりと晴人に近づいてくる。
思わず後ずさりしてしまうほどの気迫だ。
「そうか…」
父親の右手が上がり、それが勢い良く振り降ろされた。
「殴られる!」誰もがそう思った瞬間。
父親の手は晴人の肩の上に優しく置かれた。
「えっ!?」
「君が遥香の彼氏か!そうかそうか!それはよかったなぁ!」
なぜか彼女の父親は上機嫌であった。
「ハハ、ハハ、ハハハハハ…」
父親に合わせて晴人も笑ったが、その表情は明らかにひきつっていた。
75
:
名無しさん
:2013/06/02(日) 22:26:06
人が書いてたものを勝手に消すのはおかしい
AKB48妄想小説って名前なんだから妄想で書いても問題ないだろ
ローカルルールにも記載しないで随分とふざけたことしてくれるね
このことはしたらば掲示板運営に報告させてもらうから
76
:
ちんぱる
:2013/06/02(日) 22:31:58
>名無しさん
しかし、あれはあまりにも卑猥すぎる内容じゃありませんでしたか?
ああいう作品は、世間一般的にもあまりいい印象をもたれないと思います。
77
:
ちんぱる
:2013/06/02(日) 22:32:59
でももし、それがあなたにとって
不快に思われたとしたら、申し訳ございません。
今後、気をつけさせていただきます。
78
:
名無しさん
:2013/06/02(日) 22:40:55
そういう部類の作品を載せられるのが嫌ならローカルルールに記載すべき
したらば掲示板というのは、掲示板ごとにルールが違うからちゃんとローカルルールに書いてないと利用者はわかってくれないよ
79
:
ちんぱる(板野友美 速報14位→6/8 1位!)
:2013/06/02(日) 22:43:28
分かりました。
申し訳ございませんでした。
ただ先程のような、あらしの方が立てたスレなどは削除しても構わないですよね?
80
:
名無しさん
:2013/06/02(日) 22:46:25
問題ないですよ
きわどい場合はその人に確認を取るか、運営に報告などすれば大丈夫
81
:
ちんぱる(板野友美 速報14位→6/8 1位!)
:2013/06/02(日) 22:50:26
分かりました。
ご指摘ありがとうございました
82
:
ステージ
:2013/06/04(火) 20:37:16
続きがきになる
83
:
レッズ
:2013/06/08(土) 21:54:14
更新待ってます
84
:
名無しさん
:2013/06/08(土) 22:52:19
続きすごく楽しみです!
更新待ってます
85
:
WBX
:2013/06/09(日) 23:24:22
続き気になります!更新お願いします!
86
:
名無しさん
:2013/06/11(火) 16:37:31
更新お願いします!
87
:
黒蜜もち
:2013/06/16(日) 17:45:29
全部読みした。
ぱるるのかわいさ100%でてますね。
こちらも更新ファイトです。
88
:
ちんぱる(吉本荒野よ、永遠に…)
:2013/06/19(水) 23:23:41
「まあまあまあ、座ってゆっくりしてってくれ!」
なぜか晴人は、遥香の自宅の和室に通されていた。
「はあ…、失礼します…」
「ゴメンね、お父さんが紛らわしいことしちゃって」
奥から愛おしい彼女がお茶をもってやってきた。
「いや、そんなことは…“ないですよ”」
「なんで敬語?」
「いや、だって…」とチラリと父親の方を見た。
「アッハハハ!気にしないでくれ、いつもの通りで構わないよ」
晴人が思ってた以上に優しそうなお父さんである。
島崎浩之(51)、遥香の父親で、大手広告代理店の専務をやっているらしい。
島崎裕子(40)、こちらは遥香の母親で、見た目通り優しそうな人だ。
そして、島崎家には他にも家族が…。
「痛った!」
突然、晴人の足元に激痛が走る。
「ああ〜!こらぁ、ロン!ダメでしょ〜、お客さんの足を噛んじゃぁ」
遥香は彼の足もとにいたチワワを抱き寄せた。
「スマンな、ウチのロンが」
「いや…」
それにしても、浩之は結構関西なまりが強い。
「ウチはな、犬を4匹飼ってんねん」
「よ、4匹もですか」
すると隣でチワワの頭を撫でていた遥香が、説明しだした。
「アメリカン・コッカー・スパニエルが1匹、ポメラニアン2匹、でチワワのロン」
「犬好きなんだ?」
「うん!だって癒されるでしょ?」
89
:
ちんぱる(吉本荒野よ、永遠に…)
:2013/06/19(水) 23:36:26
久しぶりに更新してみました(笑)
いかがでしょう?
90
:
名無しさん
:2013/06/20(木) 06:38:22
更新ありがとうございます!
この小説大好きです!
また更新お願いします!
91
:
レッズ
:2013/06/20(木) 16:38:01
更新ありがとうございます!
92
:
ちんぱる(吉本荒野よ、永遠に…)
:2013/06/20(木) 19:32:26
「もしかして…、犬キライ?」と不安そうな表情で尋ねてきた。
「いや、そんな事無いよ」
「よかったぁ〜」
晴人はどちらかというと猫派の人間だったが、ここは彼女に合わせてあげることにした。
「それより、晴人くん」と突然、浩之が深刻な顔で語り出した。
「は、はい…」と思わず背筋を伸ばす。
「君は本気で、遥香の事を想ってくれているのか?」
「ちょっと、パパ」
彼女の言葉を遮り、晴人は質問に答えた。
「はい、想ってます。誰よりも彼女を…、遥香さんの事を」
浩之は晴人の目をまっすぐ見てくる。
ここは逸らすわけにはいかなかった。
しばらくして笑顔になり、「そうか、なら頼んだよ」と握手してくれた。
そのときから既に、晴人の決意は固まっていたのだろう。
93
:
ちんぱる(吉本荒野よ、永遠に…)
:2013/06/20(木) 21:11:48
>>90
の名無しさん
そうですか、すごく嬉しいです!
>レッズさん
お待たせしました!
94
:
ちんぱる(吉本荒野よ、永遠に…)
:2013/06/20(木) 22:29:40
「け、結婚!?」
神山優子、25歳。弁護士の秘書をしている。
この日は親友の前田敦子からの報告に驚いていた。
「え…あっちゃん、結婚するの?」
「うん…」と顔を赤くしているのは、前田敦子。
優子の高校の同級生で、唯一無二の親友である。
「だれ?だれ?どんな人?」
「喫茶店の店長やってる人なんだけどね、すごく優しくてあったかいんだ。」
「そっかぁ」
「それでね!ハヤシライスが美味しいの!」
「ハヤシライス?」
「うん!その人の得意料理なんだ」
「へぇ〜、あっちゃんがそんな人とねぇ」と親友の幸せを自分のことのように喜ぶ優子。
「優子は?彼氏とか作んないの?」
「へっ?あたし?」
「うん」
「あたしは…、いいよ」
「なんでぇ?優子カワイイし、高校のときだってモテてたじゃん」
「いやいや、あたしは今忙しいから」と何とか話をうまく逸らす。
実際、優子はそのルックスとスタイルから多くの男性にアプローチされたことは何度もある。
しかし、どれも優子の好みには合わなかった。
そんなことよりも大事な弟が高校卒業するまで、養わなくてはならない。
そんな気持ちから彼女はいつからか、恋をするなんて事を忘れてしまっていたのだった。
95
:
ちんぱる(吉本荒野よ、永遠に…)
:2013/06/20(木) 23:38:27
更新しました!
96
:
名無しさん
:2013/06/21(金) 06:35:31
ありがとうございます!
97
:
ちんぱる
:2013/06/22(土) 20:52:53
敦子と別れ、帰り道。
「やっばい、ちょっと飲みすぎちゃったかも…」
完全に千鳥足の優子に近づく不穏な影があった。
「あれ?お姉ちゃん、こんなとこでなにやってんのかな?」
近付いてきたのは2人のチンピラ。
どうやら優子を格好のターゲットにしたらしい。
「何でもないです!アッチ行ってください」
「まあまあ、そんなこと言わずにさ、俺らとイイコトしない?」
「いいです!」
しかし、チンピラは一向に引こうとしない。
「もういい加減にしてよ!」ともっていたカバンを振りまわすと、チンピラの1人に命中してしまった。
「痛ってえなぁ、何すんだテメエ!」
チンピラは優子の頭を掴むと、そのまま放り投げた。
彼女の華奢な体はアスファルトの地面の上に転がってゆく。
チンピラが今にも襲いかかりそうだったそのとき、「何やってるんだ!」と男の声がした。
声のする方を見ると、スーツ姿の男性がそこに立っていた。
「んだよアンタ、アンタには関係ないだろ?」
「彼女を離せ、彼女嫌がってるじゃないか」
「はあ?ウゼえよ!」とチンピラの1人が男性に殴りかかろうとすると、彼はいとも簡単にその拳を避け、相手の体にボディーブローを入れた。
「お、おい!大丈夫かよ!」
「ヤベえ…、逃げんぞ!」とチンピラ共はあっさり退散していった。
「大丈夫ですか?」と優子に手を差し伸べる男性。
「ありがとうございます…」
「あ、血出てるじゃないですか…」
「ホントだ…」気付くと、足の傷から血が出ていた。
アスファルトの上を転がったとき、擦り剥いたのだろう。
「大丈夫ですよ!このぐらい」と笑ってごまかしたが、それは通用しなかった。
「大丈夫じゃないです、早く消毒しないと!」
98
:
ちんぱる
:2013/06/23(日) 12:54:59
結局男性の家に、お邪魔することになってしまった。
男性は「さあ、そこ座って」と救急箱をもってきた。
「スミマセン、何から何まで」
「いえ!それよりあんな時間に、ひとりで歩いていたら危ないですよ」
「はい、気を付けます…」と言い、優子は男性の部屋をまじまじと見た。
一般的な男性の部屋に比べ、とてもきれいで清潔感のある部屋だ。
「よし、これでOK!」
「ありがとうございます、あのお礼に何か…」
「いえ!そんなの結構で…」と言い終わる前に、男のお腹から大きな音がした。
「アハハハ、じゃあ何か作りますね?」
「いや!そんな、お構いなく…」
「こういうのは、ちゃんと甘えた方が女性にモテますよ」と笑いながら冗談を言った。
時刻は12:30を過ぎる頃だった。
99
:
ちんぱる
:2013/06/23(日) 15:29:42
2人は優子の得意料理の一つであるオムライスを食べていた。
「へえ〜、じゃあ櫻井さんって学校の先生なんですか」
「はい、今年1年生を担当することになったんです」
「うちの弟も、今年高校1年生なんですよ」
「そうなんですか、えっと…」
櫻井は優子のことを何と呼べばいいのか分からなく迷っていた。
「“優子”でいいですよ」と彼女が言ってくれるまで、悩み続けるところだった。
「優子さんは、お仕事は何を?」
「秘書です。弁護士秘書をやってます」
「へぇ、それはスゴイですね」
「いえ、まだ出来たばっかりの事務所なんで雑用ばっかですよ」
楽しく話しているうちに、時刻は2時半を指していた。
「今日は本当にありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。ご飯ご馳走になっちゃって」
「また食べたくなったら、いつでも連絡くださいね」と冗談のつもりで言ったのだが
「分かりました」と笑顔で返された途端、彼女の中で何かが始まった。
100
:
ちんぱる
:2013/06/23(日) 19:03:05
「じゃあお世話になりました!」と麻友がようやく出て行く日が来た。
「また来てね!しりり!」
「うん!おしり子お姉ちゃん!」
「いつからお前らは、そんな変態な名前になったんだよ」と晴人が冷静にツッコんだ。
「麻友ちゃ〜ん!」と遠くから走って来る女の子がいた。
「あっ!ぱるる〜!」
遥香は手を振りながらこっちに向かってきたが、途中で思いっきり転んでしまった。
「ちょっ!遥香!?」と思わず彼女のもとへ駆け寄る晴人。
「大丈夫かよ?」
「イタタ、大丈夫…」と目に涙を浮かべる遥香。
「泣いてんじゃん…」
晴人の言葉をよそに、麻友の元へと駆け寄った。
「麻友ちゃん、これ!」と遥香が差し出したのは可愛いリボンで装飾された箱だった。
「なにコレ?」
「クッキー、久しぶりに作ったから上手く出来てるか分からないけど…」
「大事にするね!」と麻友は遥香に抱きついた。
「ホラホラ、早くしねえと柏木さん待ってんだろうが」
柏木さんとは麻友のマネージャーの柏木由紀のことである。
彼女は麻友のデビュー以来、ずっと傍にいて今では母親代わり…。
「今、柏木さんの説明は別によくね?」
それもそうである。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板