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カオスロワ避難所スレ3

435魔女と黒獣:2019/07/21(日) 16:16:20 ID:Jdkw41xY0


【テラカオス・リリカル(元 高町なのは)@魔法少女リリカルなのは?】
【状態】19歳の身体、ケモ耳、すごい罪悪感、テラカオス完成度50%
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:ユーノの安全を最優先
0:黒き獣を殺し、テラカオスとして完成する
1:ユーノくんの身が危ないので今は主催に従う
2:ユーノを傷つけたギムレーは信用しない
  イチリュウチームに戻りたくない
※千年タウクの効果によって、高町ヴィヴィオの存在と日本に世界を襲った大災害が起こる未来を知っています
※ユーノの精液(四条化細胞+キングストーンの一部の力)を全身で受けた結果、テラカオス化汚染が譲渡されテラカオス候補者に。
 さらに風鳴翼の右腕を食べたことで完全にテラカオス化しました。
 特効薬でもフォレスト・セルやツバサの治療でも治せません。
※テラカオス化したユーノから受け継いだ能力として
 あらゆる攻撃を防いでエネルギーを吸収し、威力を数倍にして返す魔力の塊を発射できます
 ただしほぼ暴走状態に陥っており、ユーノ以外の敵味方に関係なく襲い掛かります
 またTCを扱うシャドウの危険を本能的に察知できるようになりました
※ユーノを通してツバサから奪ったキングストーンの能力として「ゲル化」ができるようになりました
 「ロボ化」は不明
※一部改竄されたロックマン・エックスのメモリーを見たことで、主催の殺し合いの目的や救済の予言の意味、蒼の知識を得ました。
 テラカオスに自滅プログラムがあることは知らず、大災害突破後も助かると思い込んでいます



【二日目・22時00分/成層圏 九州ロボ】


【ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド】
【状態】健康、九州ロボのファクター、ショタコン
【装備】九州ロボ、ライトセーバー@STAR WARS、拳銃
【道具】商品(兵器)、、ダークスパーク@ウルトラマンギン、スパークドールズ(ダークザギ)、スパークドールズ(八坂真尋)、モブ兵士×550、
     主催倉庫から持ち出した無数の支給品、力を失ったドラゴンボール、千年タウク@遊戯王
【思考】基本:ヨナ達を奪った大災害を防ぐべくテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:なのはが黒き獣を殺せるよう祈る
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは撃つ
2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
3:真尋キュンprpr(死んだニャル子の分も愛でてあげる)
4:東京へ向かったジャックたちの成功を祈る
5:危なくなったらダークザギを犠牲になのはを沖縄から回収する
※スパークドールズ化した八坂真尋を元に戻すにはダークスパークもしくはギンガスパークが必要です
※千年タクウはなのはから没収しました


【メフィラス星人@ウルトラマン】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、タイム風呂敷、ビックライト、ダース・ベイダーの服とヘルメット、ボイスチェンジャー
【思考】
基本:アナキン達に従い、世界滅亡を防ぐ
0:なのはが黒き獣を殺せるよう祈る
1:尊い地球人が死ぬのは不本意だが、全滅回避のために多少の犠牲は止むなしと考えている
2:なるべく暴力は使いたくない
3:ところで遺跡の前のバサルモスの死体は結局なんだったのでしょう?
4:もう迷わない……主催陣営の一員として世界を守る
※ユーノとなのはに見せたプロジェクトテラカオスの全容とエックスの記憶は
 完成したテラカオスの結末が生きている形に変わっています


【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】
【状態】疲労(中)、19歳の身体、特別性の首輪
【装備】ストームトルーパーの装甲服
【道具】なし
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ……?
0:なのはの身が危ないので今は主催に従うふりをする
  危なくなったら主催を裏切る
1:全てにおいてなのはの安全を優先する
2:なのはを絶対に護るためにも、もっと力が欲しい
3:いかなる理由があってもなのはを悲しませた主催者たちは絶対に許したくないが……クソッ!
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました
※PSP版の技が使えます
※特効薬を使ったことでユーノ自身のテラカオス化は完全に浄化されました。
※一部改竄されたロックマン・エックスのメモリーを見たことで、主催の殺し合いの目的や救済の予言の意味、蒼の知識を得ました。
 ただしテラカオスが大災害突破後も助かることには懐疑的です。
 なお、フォレスト・セルは千年タクウが見せた未来の一見もあり普通に危険視。

436実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:03:30 ID:VUmLQe4I0
第一回にて双方に一名ずつ戦死者が出てしまった、配置が以下のように変更になった。


『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
プニキ          4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
平等院鳳凰        6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト

(代打・代走)
ハクメン
瑞鶴(+メーガナーダ)



『聖帝軍 布陣』

犬牟田宝火        1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
千早           5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
高津臣吾         7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード

(代打・代走)
イオリ・セイ


――では、試合の続きをお楽しみください。


 ◇

カッキーンッ!

「なん…だと……!?」

第二回の始まりは、聖帝軍ピッチャー高津の投球がプニキに打たれるところから始まった。
プロクラスでないとまず捉えられないメジャーリーガーの剛速球。
それを天才バッター・プニキはいとも容易く、まるで呼吸するかのように打ったのだ。
打球はホームランコースであり、轟ッとセンター方面へと飛んでいく。

「ダメだ!届かない!」

高津は宗則の時のようにブルースワローの飛翔能力を使って取ろうとするが、打球は彼よりも遠く早く飛んでいった。

「レイジ」
「君に任せた!」
「おう、任せろ!!」

高津の後方、二塁にいた金色の闇もトランスフォーム能力で髪を伸ばして取ろうとするが間に合わなかった。
極制服なしでは特殊能力を持たない犬室田ならなおさらである。
そこでさらに後ろに居たセンター、スタービルドストライクに乗るレイジが取ろうとする。

「体のどこかに当たってくれ!」

18mはあるガンダムに直径70cm前後のボールをキャッチするのは、レイジの操縦技術をもってしても難しい。
しかし巨大なボディのどこかに当たれば、少なくともホームランだけは防ぐことができる。
そうすれば被害をヒットに抑えるか、ガンダムにぶつかった球を他の選手が取ればアウトに持ち込むこともできる。

「甘いな、その考えはハチミツのように甘いぞ」

しかし、プニキのほくそ笑み、彼が言ったとおりにその作戦は甘かったと聖帝軍は痛感することになる。

「なにィ!?」

球はガンダムの右脇の辺りに当たった。
だが、球は装甲と装甲の凹凸に弾かれるように跳弾し、何回かガンダムの脇の中を跳ね回ったあと、後方へ飛んでいき……そのままフェンスを超えてホームランとなった。

「まるで、曲芸……!」
「フッ……」

プニキはセンター方面にいるガンダムがホームランの障害になると見越しており、ガンダムの装甲の凹凸をあらかじめ狙って、ホームランになるよう計算して打ったのだ。
見事に拳王連合軍に先制点をもたらしたプニキは悠々とベースを巡り、ホームへと帰っていった。

「まさか、あんな化け物バッターがこの世にいたとは……」
「高津さん、気を落とさないでください。まだ一点です。
それにデータも取れました。次の戦いに生かしましょう」
「……そうだな、一回打たれただけで挫けちゃあの世にいる佐々木に笑われる」

プロでもない熊にあっさりと自分の投球を取られ、先制点を許したことに高津は気を落としかけるが、犬牟田の励ましにより立ち直る。
他の選手もまた「これからだ」という気持ちを抱き、闘志を鈍らせることはなかった。


                 拳 1-0 聖

437実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:04:17 ID:VUmLQe4I0


その後、高津はプニキの後に控えていたMEIKO、平等院、翔鶴(+ロックマン)を完封する。

「チッ!」
「殺気がダダ漏れだぞ、俺から見たら次にどんなコースを打とうかわかるレベルだ。
ピッチャーならまだしも、バッターには向いてないな」

「簡単には滅ぼさせてくれないか……」
「さっきの女よりはマシだがおまえも殺気が漏れている、メジャークラスだと動きを読まれるぞ」

「このバトルチップじゃ通用しない」
『他のチップ温存のために使ってみたけど、やっぱりガッツマンとデカオのバトルチップはダメだ』
「道 具 の せ い に す ん な」

三人も本来なら強敵であるが、高津もプロ野球選手であり、バッティング力で宗則やプニキには及ばなかった。




「なんとか、失点を一点に抑えられましたね」
「ああ、巻き返すぞ」

第二回裏のイニングでは四番バッターとしてサウザーが出陣する。
対するピッチャーのMEIKOは舌なめずりをしながら、攻撃態勢に入る。

「へえ、大将直々のご出陣か」
「かかってこい年増女、聖帝サウザーの本気を見せてやる」
「……おまえはMEIKOボールでぶち殺す!!」

年増という言葉が逆鱗に触れたのか、MEIKOは本気の一球・MEIKOボールを投げた。

(最初はコース見極めのために見送るか)

打ってもキュアエースレベルの贅力では殺されてしまう殺人球。
まずは目でMEIKOボールの威力・速さを知るためにサウザーは初球は見送る判断とした。

しかし放たれたMEIKOボールを打たなくても凄まじい風圧を巻き起こし、ボール本体はラオウのミットの中に収まっていくだけのストレートに関わらず、残った風圧がかまいたちとしてサウザーの上半身を切り刻んだ。

「うわ!?」
「「サウザーッ!?」」
「し、心配するな、見た目よりずっと軽傷だ」

かまいたちにより斬られ鮮血を撒き散らしたサウザーであったが、南斗聖拳の使い手として「お師さん」に鍛え抜かれた肉体に助けられ、表面の皮膚が切れただけで済んだ。
これがサウザー以下の耐久力の選手ならもっと悲惨なことになっていただろう。

「大将が見送るなんてつまらない真似すんなよ」

マウンドの上からケラケラと相手を煽るMEIKO。
一方のサウザーはこれが安い挑発だと見抜き、煽りに乗って激昂することはなかった。

(とはいえ、向こうの四番バッターだ。
四番に選ばれるにはチーム最強のバッティング力はあるはずだ)

表面上の態度は世紀末ヒャッハーなMEIKOであるが、内面では計算高さと冷静さを持ち合わせた猛獣も飼っている。
四番バッターとは本来、最高のバッティング力を持ってしかる存在だ。
拳王連合軍でも四番の証はプニキが持っているように、サウザーも最高のバッティング力を持ってなければおかしい。
プロである高津を差し置いて四番の椅子に座っているのだから聖帝が高津以上の攻撃力を持ってなければ筋が通らないのだ。

(だったら、全力のMEIKOボールで仕留めてやる。
このMEIKOおばさんを年増と言って見下したことを後悔させてやるぜ)

MEIKOは別に年増と言われたことを怒っているのではない。
見下されることに何よりも殺意を覚えているのだ。

「さっきの小娘の時とは違う全力全開でいくぜ、黄金の回転を加えた……MEIKOボール!!」

ほぼ直角に曲がるシュート回転(黄金の回転)。
そこにメジャーリーガー級のパワーと漆黒の殺意をミックスした殺人球MEIKOボール。
投げられた殺意の球は真っ直ぐにサウザーへと向かっていく。
なお、普通の野球ならデッドボールだが、カオスロワ式野球ではバッターの殺害に成功した場合はそのままアウトになる。

「あれはヤバイ……」
「サウザー!」

直感でこれまで以上に殺傷力がある球が投げられたと悟ったベンチの聖帝軍。
思わず高津と闇はサウザーの身を案じ、声を上げてしまう。

だが、サウザー自身は至って冷静であった。

(心配するな、闇、高津。
俺だってただ黙って見てたわけじゃない、あのピッチャー女のクセを探っていたんだ!)

サウザーはこれまでの試合の流れをぼうっと見ていただけではなく、MEIKOの投球のクセ、そしてキャッチャーとして高津とバッテリーを組んだ時もMEIKOは5番バッターとしてバッターボックスに立っており、その際に肘や腕の動き方も観察していた。
帝王の星「将星」、南斗鳳凰拳の伝承者の名前は伊達ではない。
常人なら見逃すレベルの超速フォームでさえきっちり視界に捉え、MEIKOの球がどこに来るのかを予測する。

(俺に直撃コースは当たり前として……狙いは心臓か!)

読み通り、MEIKOボールは心臓を屠ろうと狙って投げたものだ。

438実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:04:51 ID:VUmLQe4I0

「面白い、見せてやろう! 聖帝サウザーの本気を!!」

サウザーは心臓を打ち抜かれる前に、MEIKOボールに対抗しようとした。
発生するかまいたちの余波で傷つくが、サウザーをバッティングフォームを全く崩さない。

「む、あれは……!」

キャッチャーとして間近にサウザーのフォームを見ていてからわかる。
あの打ち方は――




「――バント?」




バント。
普通に打つよりは命中しやすくなるが、大きなヒットは絶対に望めない、牽制的な打ち方。
拳王連合軍はそう、タクアンから聞いている。

「アハハハハハ、これが聖帝の本気かよ」

MEIKOの嘲笑も無理はない。
いちおう、サウザーは打ち返しには成功したが、飛んだ球は少し地面をゆっくり転がっただけのゴロであり、それもまたMEIKOの手前に落ちて拾われてしまう。
あとは一塁に届ければサウザーはアウトのハズ。

「まあ、打ち返したことは褒めてや」
「いかん! MEIKO、早く投げるのだ!」
「え?」

それはラオウに呼ばれ、MEIKOが瞬きを一回しただけの僅かな瞬間であった。

バッターボックスに入っていたハズのサウザーが姿を消していた。
サウザーが一塁へ走ったのは誰でもわかるだろう。
だが、拳王連合軍に取って予想外だったのは――サウザーの機動力であった。

「きゃあ!」
「ぐあ!」
「WRYYYYYY!?」
「なッ!?」

MEIKOは驚愕する。
黄色い閃光のようなものが走っているかと思いきや、一塁・二塁・三塁を防衛していた選手すなわち翔鶴・ジョジョ・ディオが順番に弾き飛ばされたのだ。
飛び道具を使ったわけでない証拠に、ベース一つ一つに確実に足跡がついていく。
閃光の勢いは止まるどころか増していき、ラオウが守るホームベースまで「前進制圧」を行わんと向かっていた。

「ラオウ!」

MEIKOは即座にラオウに送球を行おうとする。
その送球もラオウ以外には取れないレベルのかなりの剛速球だったが、閃光となったサウザーがベースを早いように見える。

(彼奴の方が僅かに早いか……? ならば!)

ラオウは閃光となったサウザーに向けて、残った片手で拳の一撃を放つ。
無論、カオスロワ式野球でこの程度の妨害は反則にはならない。

「遅いな」
「うぬうッ!」

ラオウの拳が直撃すれば運が良くても瀕死は避けられない威力だったが、サウザーはこれを体操選手のように軽やかに跳躍して躱し、ラオウの巨体を乗り越えた後にホームベースを踏んだ。
ラオウのキャッチャーミットに球が入ったのは一瞬後であった。

直後、翔鶴・ジョジョ・ディオ・ラオウの順番で体から鮮血が吹き出た。
サウザーはすれ違い様に極星十字拳で選手たちを切っていたのだ。
無論、カオスロワ式野球でこの程度の攻撃は反則にはならない。


「見たか、MEIKOよ、拳王よ、これが聖帝の本気だよ」
「クッソたれ!!」
「ぐぬぬ」


拳王連合軍が侮っていた……いや、まだ正式に野球の試合をしたのがこれが初めてだったため、データ不足というべきか。
サウザーの速度を多くの者が知らなかった。
対カギ爪団戦ではドラゴンハートで強化されたこともあり、世界樹の番人であるレストをも凌ぐ機動性を見せた。
その時の比較対象はドラゴンハート強化前のレストだったが、実はサウザーの方は早さの成長に関しては格段に伸びしろが残っていたのである。
少なくとも能力に頼らないスピードへの素質は強化レストより……いや現状全ての参加者の中でトップと言っても過言ではない。

はっきり言おう、サウザーの足の速さは全参加者最速であると。
彼がバントした後、10秒もあればベースを一周できてしまうぐらい早く、対応が遅れたことに拍車をかけてサウザーの帰還を許してしまったのである。
そして両チームは同点に並んだ。


                 拳 1-1 聖

439実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:05:17 ID:VUmLQe4I0


一点を取り戻したことに聖帝軍側は歓声に湧く。

「流石、サウザーです!
でもまだ同点……あんまり調子には乗らないでください」
「手厳しいな闇……できれば亡くなった亜久里のためにも一人ぐらい南斗鳳凰拳で首を落としたかったが、拳王連合軍の猛者には打撃を与えるだけに留まったか」

先程拳で斬った四人を見るが未だ健在であり、多少の怪我は負ったようだが選手として試合続行は可能だった。

「アイツよくもうちの未来の旦那に怪我を!」
「怒るなMEIKO、こんなものただのかすり傷だ」

『翔鶴!』
「翔鶴姉!」
「大丈夫、肩当てが切れてちょっと切り傷を作っただけ」

『お館様……』
「右腕を斬られたが筋は繋がってる。
危なかった……咄嗟にムラマサブレード出して防御しなきゃ首が飛んでたぜ」
『奴の攻撃はあなたの幻想殺しでは防げない。注意をなされよ』

「WRYYYYYYYYYYYYYYY!!!
悔しいが、スタンドを出す暇もなかった」
『俺とフュージョンして鎧を纏ってなかったら、心臓まで手刀が届いていたかもな』


ラオウは分厚い筋肉の鎧に守られ、他の三人はネットナビと融合して防御力や瞬発力を上げていたため、軽傷で済んだのだ。


「さあ、我々の攻撃はまだ終わっていない、ゆけ千早よ
『ふなっしーならまだしも、おまえに命令されるのは……まあ従うが』

点をもぎ取ったサウザーに続き、千早がバッターボックスに入る。
ちなみにバットは口にくわえて使うようだ。

「くそ、聖帝の次はおニャンコかよ……いいぜ、死を恐れないならきやがれ!!」

聖帝にしてやられたことでイライラのボルテージを上げていたMEIKOだが、ラオウになだめられたこともあり、なんとか気を取り直す。
そして、MEIKOボールを投げたが、これもサウザーに投げたものと同じ、直撃コースの危険球だ。
だが千早は直立不動でこれを避けることも打つこともせず、直撃させたのだ。

「嘘だろ……!?」

MEIKOボールは確かに直撃した。
本当ならば虎は木っ端微塵の肉片になっていてもおかしくなかった。
だが、虎は健在・そして無傷だった。
いつの間にか虎が纏っていた氷でできた鎧にボールは張り付いていた。


「ふう、アタイの最強の頭脳と氷を操る程度の力、それから大阪での経験が生きたね」

MEIKOが投げる前に千早に鎧を纏わせた下手人はベンチにいるチルノであった。
その横で眼鏡を輝かせる犬牟田と共に解説をする。

「君はボールで直接的にも間接的にも選手を殺そうとするクセがつきすぎている」
「そしてアンタの投げる球は黄金比による超回転技「黄金の回転」を使って威力と命中率を底上げしている。
裏を返せば、何らかの手段で逸らしたり、逆に威力を最小限にとどめてからあえてぶつけさせてしまえば良い。
アタイの氷なら、アンタの投げた球の回転をゼロにする芸当も不可能じゃない」
「罠にかかったね。MEIKOおばさん」

千早の氷の鎧は防具としてだけではなく、命中したボールさえも凍らせて氷に閉じ込めてしまい、MEIKOボールの回転を強引にゼロにしてしまうための罠であった。
デッドボールを狙ってくるであろう敵をまんまと、罠にはめたことにチルノと犬牟田はハイタッチをする。

「お、おい……」
「なんで俺たちの時はやってくれなかったんだ?」

サウザーと紘太から恨めしい顔をされたが、それにも理由はある。

「すまない、強度計算やタイミングを図るためにある程度のデータ収集がどうしても必要だったんだ」
「あの鎧着てたら身動き取れないしね」
『どうでも良いが、鎧を解いてくれ〜、寒くて凍え死んでしまう』

氷の鎧にも欠点があり、自由に身動きが取れないのだ。
言うなれば完全防御と引き換えに一切の身動きが取れないアストロンと同じ。
しかしデッドボールには無敵であり、MEIKOの故意の死球をやり過ごせるだけでも聖帝軍は安心して野球に打ち込むことができるのだ。
余談だが、直接触れでもしない限り味方への技術を使った強化・支援はカオスロワ式野球ではOKである。

440実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:05:54 ID:VUmLQe4I0


そして千早の殺害に失敗したということは、聖帝軍のアウトではなくデッドボール。
つまり氷の鎧を脱いだ千早の一塁への進軍を許したのである。

六番バッターはデストワイルダー。
MEIKOは懲りずにデッドボール紛いの殺人球を投げるが、こちらもチルノが用意した氷の鎧で防がれ、デッドボール失敗である。

『なんだよ、まるで学習してねえな?
ゴリ押しでなんとかなるほどチルノは魔力は弱くねえぞ』
「…………」

あまりにもあっさりと進軍する聖帝軍。
二塁に千早、一塁にはデストワイルダーが立った。
そして、次にバッターボックスに立ったのは高津臣吾。

「きやがったかオッサン」
「聖帝軍で野球でならナンバーワン、そう自負するぜ」
「ほう……」

自信満々にMEIKOとラオウに宣言する高津だが、誇張でもない。
実際にプロで野球選手としての技量は聖帝軍トップだ。
大魔神であるササキ様をライバルと言い張るだけの実力は持ち合わせている。

「すぐに……後悔させてやるよ! MEIKOボール!!」
「またこれか……」

何度目かのMEIKOボールが放たれたが、これも死球コースだ。

(個人的にMEIKOとは真剣勝負をしたかったが、向こうにその気がないなら仕方あるまい。
今は俺がピッチャーである以上無理に打って肩を壊すのも面白くない)

高津は致し方なしとベンチのチルノにアイコンタクトを送り、氷の鎧を纏わせるよう願った。


……だが、氷の鎧は千早やデストワイルダーのように纏われることはなかった。
背後からの熱気によって。

(なに!?)

僅か数瞬の間に異常に気づいた高津がチラリと後ろを見ると。
ラオウが気のようなものを放って、チルノの冷気を阻害していた。
これでは氷の鎧を纏うことはできない。
氷のアストロン鎧戦法が打ち砕かれたのだ。

(ヤバイッ!)

この間、僅か0.5秒。
目前まで迫ったMEIKOボール。
しかし高津もプロ選手であり、ギリギリで迎撃が間に合い、渾身の力で打ち返すことができた。
「打ち返すこと」には成功した……

「しまった! これは取られる!」

氷の鎧を纏う前提だったことをいきなり解いたことによる高津のフォームの遅れ、そこから出した無茶な打ち返しにより、打力が出ず、打球はワンバウンドしてMEIKOに捕球される。
ヒットにはヒットなので高津や他の二頭も走りだすが、サウザーと比べれば格段に劣る速さだ。

『くそッ、なんとか三塁へ……!』
「最初はてめーだ! 送球MEIKOボール!!!」
『ご、ご主人様あああああああああああああああ!!!』

千早は虎の俊敏性を持って三塁へ向かおうとするが、その途中、MEIKOからの送球という名前の直撃弾を喰らう。
対象が機敏に動いていたため、チルノの氷の鎧作成は間に合わず、そのまま上半身と下半身が分かれて泣き別れになった。
即死である。

【千早@皇国の守護者 死亡】
※支給品なので放送に呼ばれません


『姐さああああああああああああん!』

デストワイルダーも二塁へ向かうが、虎仲間である千早の死のショックにより速度を緩めてしまう。
その間に内野手の宗則が千早の死骸からボールを回収して二塁に送球、イマジンスレイヤー上条がキャッチし、直後に迫ってきたデストワイルダーに左手のムラマサブレードと、ボールを握った右手の男女平等パンチを叩き込んだ。

「『イヤーッ!』」
『グワーッ!』

幸いデストワイルダーの耐久力が高かったため、千早のように死に至らなかったが、アウトに変わりなかった。

441実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:06:27 ID:VUmLQe4I0

そして、最後の一人である高津は翔鶴が召喚した戦闘機軍団に一塁への進軍を阻まれた。

「くそッ、進めねえ!」
「『アルトリア・ペンドラゴンさんの仇!』」

メジャー入りしたプロ野球選手でさえラジコンサイズの戦闘機を相手にするのは初めてだ。
しかも戦闘機の放つ攻撃一発一発が殺傷力が高く、高津は掃射を避けるのが精一杯であった。
サウザーほどの機動力があれば避けることはおろか、発進前に翔鶴に一撃を与えることも可能だが、高津及びブルースワローでは速さが足りない。
そのまま進塁できず、上条からの送球を翔鶴が受け取り高津もアウトになった。
チェンジである。


「くそ……MEIKO、これを狙ってわざと千早とデストワイルダーを進塁させやがったな」
「ご名答だよ、だが作戦を立てたのはそこにいるラオウだ」
「この男が?」

高津はラオウを見る。

「そう、具体的な手段は知らなかったけど、あの氷娘の鎧を解く方法を思いついたらしいって眼で言ってたからわざとデッドボールを取って進ませてやったんだよ。
まさか体から出る熱気で氷を溶かすとは予想外だったけど、油断したアンタや虎どもに痛い目を見せるには十分だったな」
「……恐ろしいやつだ、拳王め」
「あれがアタシのダーリンの力だよ。
おまえら聖帝軍はアタシのMEIKOボールに震えていりゃ良いんだ」

高津臣吾は、ただの筋肉の塊ではなかった拳王に、恐れの感情を抱きつつあった。
少なくともプロだから勝てる、ということは絶対ないことを自覚するのだった。



(別に俺は作戦など考えてなくて、頑なにMEIちゃんがデッドボールに走るからイライラして熱くなっていただけなんだが……まあ、MEIちゃんが気を良くしただけヨシとしよう)

なお、ラオウがチルノの鎧を打ち破ったのは偶然の産物であり、アイコンタクトは死球狙いはやめろという意味だったが、何はともあれ、聖帝軍は氷の鎧で凌ぐ戦法はできなくなったのである。



「すまんサウザー、俺としたことが」
「落ち込むな高津、まだ次がある」
『姐さん、姐さん……』
「……すまない誰かデストワイルダーのメンタルケアを頼む」


両軍一点ずつもぎ取り、二回が終わる。
次は三回表側からだが、聖帝軍側に新たな死者が出たためメンバーの変更が余儀なくされた。


『聖帝軍 布陣』

犬牟田宝火        1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
高津臣吾         7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード


……ベンチのイオリが出たことにより、聖帝軍側の代打・代走はいなくなった。

442実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:06:51 ID:VUmLQe4I0



【二日目・22時00分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと2時間00分で異世界は消滅。
 それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)


【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのおっさん(高津臣吾)@ササキ様に願いを】
【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
(支給品選手枠)
デストワイルダー@仮面ライダー龍騎


【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【平等院鳳凰@新テニスの王子様】
【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【ハクメン@BLAZBLUE】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】

443破滅の足音:2019/08/12(月) 18:56:27 ID:melOZAog0

「ああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ちっ……!」


テラカオス・リリカル。そして黒き獣シャドウ。
ついに始まった、勇者候補と滅びの化身の戦い。


「……」


それを映像越しに見守るのは主催者陣営のココとメフィラス。


「なのは……」


そしてリリカル――高町なのはの恋人であるユーノのみであった。

世界の命運を決めかねない戦いだというのに、こんな寂れ荒れ果てた地で、観客もこれだけとは。
仮にテラカオスが、リリカルがシャドウに勝利したとして、生き延びた人間達のほとんどは彼女の功績を知ることは無い。
かつてのテラカオス・ゼロ以上に、その存在は認知されずやがては消え行く哀しい存在。


(絶対に、こいつを殺して、私はユーノ君と……っ!!!)


そして待ち受ける運命を改竄されて聞かされているリリカルは、そうとは知らずに勇猛果敢にシャドウに挑んでいく。


「くっ!?」


その勇猛さ、執念、シャドウに対する殺意。
根底にある恋人ユーノへの愛。
それは確かにリリカルの原動力となり、シャドウを押していた。

(馬鹿な、ユーノ・スクライアがこれほどの力を持つなど……!?)

シャドウはこの獣の本当の正体に気がついていない。
元より素体が強力ななのはであり、望まぬ形とはいえバイオライダーの力さえ取り込んだ彼女は強い。
テラカオス化に際して手に入れたエネルギー系統の増幅反射能力と併用すれば、ほぼ全ての攻撃を遮断できるのだから。
いくらシャドウの持つ運命の神槍が強くとも、エネルギー系統に分類されるこれはいくら撃ちこんでも反射される。
そして元の威力が高いからこそ、反射されればシャドウとてただでは済まない。

444破滅の足音:2019/08/12(月) 18:57:04 ID:melOZAog0
(四源の舞で威力を5倍にしたこれが通じないのであれば、現時点で捕縛できている死者の能力ではアレの反射は抜けぬか……!)

早急に、シャドウはリリカルの反射を破ることを放棄した。
単純に強力無比なラインハルトの槍と、周囲の魔力を操れば攻撃力を跳ね上げられるサクヤの舞。
死者スレに侵攻した最初期、不意をつく形でこの二人やディケイド達の魂は運よく捕獲できたものの……
警戒され、カルナから一定時間置きに砲撃を浴びている今では実力者や異能持ちはそう簡単に捕まえられない。
おそらく、攻撃に参加してこそいないが切れ者の死者がいるのだろう。
確実に、取り込まれたらまずい死者の魂を遠方へと逃がしている。
混沌の騎士の妨害に掌握へのリソース、これらを加味すると、現時点でシャドウが行える最大の攻撃は蒼の直撃を除けば、この四源神槍となる。
そしてリリカルは、それを増幅反射できる。
敵の最大攻撃を反射できるともなれば、それは圧倒的にリリカルが有利であるということだ。


「よし、この調子なら……!」
「ええ、行けるわ……!」


メフィラスとココはリリカルの優勢に笑みを浮かべる。
シャドウの苦々しい表情からしても、優勢なのは疑いようも無い。

無論、優勢だからといってリリカルが即座に勝利できるわけでもない。
防御面では最高ランクと言って問題ないリリカルであるが、攻撃面においてはディーヴァ等を下回る。
敗けはないだろうが、こうなってくるとシャドウを討伐するまでの時間が気がかりであった。


(黒き獣の動きが鈍い……おそらくは、ディーヴァがつけた傷が原因ね。
 あれが完治する前に、なのはちゃんが仕留め切れればいいのだけれど……)


敵は、あのディーヴァを打ち破る程の存在。
リリカルが無敵の防御能力を持つとはいえ、なるべくはやく勝負をつけたいというのがココの本音であった。



「コロスコロスコロスゥゥゥゥゥゥ!!!」
「ぬぅぅ……!」



愛の獣が黒き獣を薙ぎ払い、さらに噛み砕かんと牙を光らせる。
転がり逃げる黒き獣。傷は増え、負傷により魂の捕縛が鈍っているのか神槍の黄金の光も弱まっていた。


(なのはさんが優勢……あと数分もあれば、きっと……!)


メフィラスも戦況から、間もなくリリカルの勝利で終わると確信していた。
彼女やユーノに対する後ろめたさはあるが、とにかくこの黒き獣を葬り大災害を防がないことには全てが終わってしまう。
となりで黙ったままのユーノに声をかけることもなく、彼は祈り続けた。


そしてついに。


時刻は22時30分。


……その時が、訪れた。

445破滅の足音:2019/08/12(月) 18:57:59 ID:melOZAog0
パリン…




「え?」



なのはとユーノは……

いや、この場周辺にいた者は確かに何かが小さく砕ける音を聞いた。


「結界が、壊れたのか……?」


無意識のうちに、ユーノはそう呟いた。




「っ! あはは! アハハハハハ! クァハクァハハハハハハハハハァァァ!!!」



それと同時に、シャドウは突然笑い出した。
少女のような、獣のような、竜のような、混沌とした笑いを。
誰もが、背筋が凍りつくような感覚を覚える。

「忌々しい結界が無くなったか……ならば今こそ、ディーヴァから奪った力を使う時だなぁ!」

言うや否や、シャドウの背から禍々しい白い翼が生える。
元はテラカオス・ディーヴァのもの……さらに大元を辿ると、ディーヴァに喰われた真竜VFDの翼だ。


「咲き乱れろ! 凶兆の妖華よ!」


そしてシャドウの咆哮と共に、一斉に黒華が撒き散らされる。
結界が無くなった今、その繁殖は沖縄の外にも伸びることだろう。


「「あ、あの華は……!?」」


ココとメフィラスは見覚えある黒華の再来に戦慄する。
あれを拡散させないために、止む無く大阪をこの世から抹消したというのに。
これでは大阪の犠牲は全くの無意味ということになってしまう。
だが、ココ達の対応も間違っていたわけではないだろう。
全ては彼女達の知識が不足していたことが原因。

真竜やフロワロという名称を把握できたとして、その本質を知らなかった。
ディーヴァがバグったのか7匹になった真竜を全て食い、強力な真竜の能力を奪い、
そしてフロワロは真竜……その力を持つ者を葬らない限り無限に咲き誇るということを知らなかった。
即ち今回の場合、真竜を喰らったディーヴァを喰らった存在……黒き獣を葬らない限りは何度街を焼こうが無意味なのだ。
既に華がある場所には新たな華は咲けない性質も知っていれば、焼かずに何らかの手段で『閉じ込める』手段が取れたであろう。
今となっては手遅れだが、かつてチルノが行った全面凍結の方が対処法としては優れているのだ。

そして、一つの無知は次なる災いを招く。

446破滅の足音:2019/08/12(月) 18:58:42 ID:melOZAog0
「え……?」

何気なく、視界を塞ぎ始めたフロワロを薙ぎ払ったリリカルの腕が、一瞬で腐り果てて地面へと落ちたのだ。

「あ、ああ? あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ ! ! ? 」

激痛にもがくリリカルに対して、シャドウは酷薄な笑みを浮かべる。

「ふん、やはりか。確かにお前は物理は効き目が薄いし砲撃の類は反射するしで強敵ではあったが……
 それら能力を行使しているのは『敵意に反応するお前自身』だ。敵意も何もない、ただ普通に咲くだけの華には反応しきれまい?」

笑いながら、シャドウはリリカルの脚にまで浸食してきたフロワロを見やる。
やはりものの数秒もかからず脚は腐食し、さらにリリカルは悶える。

「まあ、そもそもその様子では、毒への耐性などといったものが備わっていなかったようだがな」

シャドウはさらに歩を進める。

「気に病むことは無い。これは特に強力な劇毒。竜か、竜の力を持つ者以外では相当な毒耐性を持たねばとても耐えきれぬからな」








「ダークザギッ!!! なのはちゃんを回収してっ!!!」




リリカルを取り込まんとしていたシャドウの前に、ダークザギが転移してくる。
如何に強靭な力を持つダークザギとはいえ、蒼への耐性までは持たない。
この場に来た瞬間、彼の死は揺るぎ無いものとなった。

しかし蒼による死は絶対ではあるが、即死というわけでもない。
無耐性のものでも、身体や精神を歪めきられるまでに個人差が存在する。
そして巨体のダークザギは、数秒間だけであればかろうじて生き延びることができた。
その数秒を無駄にすることなく、彼はリリカルを命令通りに回収してみせる。


「くそっ!?」


寸でのところで獲物を取り逃がしたシャドウは転移間際のダークザギに蒼の塊をぶつけるが間に合わず。
結果として自分は貴重な能力を手に入れそびれ、結界が破れたとはいえ軽くは無い傷を負わされてしまった。
これではまだ本州を攻めることはできないし、死者スレの掌握にも時間はかかる。


「やってくれるな……」


蒼と黒華が埋め尽くす沖縄で、黒き獣は休息の時に入る。

447破滅の足音:2019/08/12(月) 18:59:20 ID:melOZAog0
【二日目・22時30分/沖縄県】


【黒き獣シャドウ@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、弱体化
【装備】聖約・運命の神槍@Dies irae 、真竜の翼、他不明
【道具】不明、ラインハルトの魂、サクヤの魂、真竜VFDの魂、他多数の魂、混沌の騎士の魂
【思考】基本:世界の破壊
0:まずはリリカル戦の傷の回復
1:終わったらあの者(テラカオス・ディーヴァ)の魂の破壊を継続する
2:死者スレの掌握
3:本土侵攻に備えて可能な限り参加者間の信頼を挫き、黒フロワロを繁殖させておく
4:混沌の騎士の魂がとにかく邪魔
※シャドウが現れた沖縄ではTC値が増大しています、蒼の耐性者やテラカオス以外が踏み入ると問答無用で即死します
※ディーヴァの捕食した者の能力(魂)も取り込み、行使できます
※死者スレを掌握、しかし掌握途中のため使える能力には制限がある模様。
※死者たちの召喚や使用していた装備なども使用可能、ただし掌握途中の為、制限あり。死者召喚は三人まで。
※死者スレ掌握及びディーヴァとの戦いでの傷を癒すのにリソースを割いているため弱体化中。
 更に死者スレ内の防衛にカルナが投入され、一度はテラカオスとして完成したこともある混沌の騎士の魂に内部から妨害を受けることで掌握速度が停滞。
 完全掌握に9時間以上の時間を要します。
※混沌の騎士のように一度は完成したテラカオスの魂は性質上、取り込めません
※テラカオス・リリカルがなのはであると気づいていません(その手の情報を持つ死者をまだ取り込んでないため)
※沖縄から本州に向けて黒フロワロの侵攻が開始されました

448破滅の足音:2019/08/12(月) 19:00:27 ID:melOZAog0
「――」


「ダークザギ……」



九州ロボに戻ってきたダークザギ。
しかしその身体は瞬く間に蒼により歪められ、その魂ごと粉々に砕け散ってしまう。
そして、彼が命と引き換えに回収したリリカルは……



「ユーノ、君……」
「なのは……っ!」


リリカルは人間態……なのはの姿に戻っていた。
しかしその両手足は腐り果てて、生きているのが不思議な程。
テラカオス化で得た強靭な生命力がかろうじて彼女の命を繋ぎ止めているにすぎない。
そしてそれも、彼女の中に浸食した毒がいずれ削りきることだろう。


「……くっ!」
「……」


ココは拳を叩きつけ、メフィラスは茫然と目の前の惨状を見つめる。
勝てた……いや、まだ認識が甘かった。
黒き獣の恐ろしさを、理解したつもりでしきれていなかった。
おそらく、今回の黒き獣の力はかつての黒き獣を上回っている。
もはや九州ロボに用意されている解毒薬では、なのはを助けることはできない。
即効性の腐食毒、OTONAすら耐えられなかった毒。
完璧に見えた穴のあったリリカルの護り。
今更こうしていたら、ああしていれば。たらればの話は意味が無い。
ただただ無慈悲に、なのはの死が、貴重なテラカオスの死がつきつけられるだけ。
これをシャドウに痛手を与えたのだから意味はあったなどと言えるだろうか?

ココ達は知らない。
イナバ物置に、グンマ―の書物があったことを。
その内容が、不完全な化身は黒き獣の前に敗れ去る予言であったことを。
完成しきったテラカオスではないリリカルではシャドウには勝てない。
書物通りにリリカルの能力がシャドウに奪われていないことだけは、幸いと呼べるのかもしれないが。

449破滅の足音:2019/08/12(月) 19:01:09 ID:melOZAog0
「……消えてくれ、頼むから」


ぽつりと呟かれたユーノの言葉に、ココとメフィラスは素直に従った。
彼が何を考えているのか、嫌でも察しがついたからだ。


(……ごめんなさい)


口には出さず、ココは二人の犠牲者に心中で詫びる。
自分が許されるとは思っていないし、謝罪などまるで無意味だということはわかっている。
だからこそ、せめて今の自分達にできることはただ黙ってこの場を去ること。
愛する存在を失う辛さだけは、わかっているつもりだから。


「ユーノ、くん……ごめ……んね……」
「なのはは悪くない……僕が、僕がもっとちゃんとしていれば……!」

大粒の涙を零しあう二人。
崩れゆくなのはの身体を、ユーノは迷いなく抱きしめる。

「ユ、ユーノ君!? だ、だめ、この毒は……!」
「構わない。君を一人で逝かせるくらいなら、僕は……」
「ユーノく……んぅ……!?」


なのはの口内に、深く深く舌が入り込む。
残り少ない時間を無駄にしないように。
絡み合った舌は、互いの唾液と毒とを等しく馴染ませあう。




「……なのは、愛しているよ」

「うん、私もだよユーノ君……!」





泣きながら、笑顔で。

愛の言葉を口にした二人は重なり合うように崩れ去っていった。


【テラカオス・リリカル(元 高町なのは)@魔法少女リリカルなのは?】
【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】

それぞれ死亡確認

450破滅の足音:2019/08/12(月) 19:02:01 ID:melOZAog0
【二日目・22時30分/成層圏 九州ロボ】


【ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド】
【状態】健康、九州ロボのファクター、ショタコン、罪悪感、シャドウへの警戒(大)
【装備】九州ロボ、ライトセーバー@STAR WARS、拳銃
【道具】商品(兵器)、、ダークスパーク@ウルトラマンギンガ、スパークドールズ(八坂真尋)、モブ兵士×550、
    主催倉庫から持ち出した無数の支給品、力を失ったドラゴンボール、千年タウク@遊戯王
【思考】基本:ヨナ達を奪った大災害を防ぐべくテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:これからどうすれば……
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは撃つ
2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
3:真尋キュンprpr(死んだニャル子の分も愛でてあげる)
4:東京へ向かったジャックたちの成功を祈る
5:危なくなったらダークザギを犠牲になのはを沖縄から回収する
※スパークドールズ化した八坂真尋を元に戻すにはダークスパークもしくはギンガスパークが必要です

【メフィラス星人@ウルトラマン】
【状態】健康、罪悪感、シャドウへの警戒(大)
【装備】なし
【道具】支給品一式、タイム風呂敷、ビックライト、ダース・ベイダーの服とヘルメット、ボイスチェンジャー
【思考】
基本:アナキン達に従い、世界滅亡を防ぐ
0:これからどうすれば……
1:尊い地球人が死ぬのは不本意だが、全滅回避のために多少の犠牲は止むなしと考えている
2:なるべく暴力は使いたくない
3:ところで遺跡の前のバサルモスの死体は結局なんだったのでしょう?
4:もう迷わない……主催陣営の一員として世界を守る

※それぞれ、シャドウの能力の一部(ラインハルト、サクヤ、VFD)及び負傷状態を認識しました
※倉庫内に黒フロワロに対抗できる解毒薬はありません

451破滅の足音:2019/08/12(月) 19:02:35 ID:melOZAog0
――少し、時を遡ろう。

――黒き獣が、希望の一つを打ち砕くほんの少し前の時間に。



「いたわ、イチリュウチームよ!」
「あれ? 千葉よりも近いなっしよ?」
「向こうからもこちらに向かって飛んでいてくれたとみるべきですかなwwww」


都庁より飛び出した、イチリュウチームとの接触及びキュゥべえの野望の阻止を狙うほむら達。
慎重に飛んだ影響もあってか思ったよりも時間がかかったが、安全に接触することは達成できた。
後は悪辣極まりないインキュベーターの手で疑念を抱かれていなければいいのだが……



そう考えていたほむらは、その瞬間にざわりと嫌な気配を感じた。
ドラゴンハートで強化されていなければ、あの魔王マーラをこの目でみていなければ、絶対に心が折れていたであろうほどの魔力。
そして、この嘆きの気配は間違いない。幾度となく経験してきた、魔女の誕生の瞬間。



「な、何故魔女が!? それにこの力、まどかには及ばないけどワルプルギスは超えている……!」
「ひいいぃぃぃぃ!? こ、怖いなっしー!? イチリュウチームや苗木達は無事なっしかー!?」
「……ほむほむ、指示を頼むんですぞ。魔女相手はほむほむしか頼れませんからな」
「この魔力、イチリュウチームの中心部から!? ……危ないけど、このまま突っ込んで!」
「了解ですぞwwwww」

かつてオオナズチはそのステルス能力で倒した狂信者から大量の支給品を奪い取っていた。
今はある程度盗んだ品も整理され、都庁の仲間達やほむら達に分配されているが、その中には当然銃器の類もあった。
思わぬ形で武器を補充できたほむらはこれで以前以上に戦えるようになっているが、彼女の焦燥は強い。
いくら武器を補充し、ドラゴンハートで強力な力を得てもまだまだ強敵は多いのだ。
魔女の誕生の理由はわからないが、戦力面の問題からしてもイチリュウチームとの接触はさらに必須事項となった。
オオナズチも全速力を出し、魔力の発生源へと飛んでいく。

452破滅の足音:2019/08/12(月) 19:03:04 ID:melOZAog0
「ホルゥ! ホルゥ!?」


そしてすぐに、燃える隼とその背に乗る野球選手を見つけ出す。
ステルスを解除した瞬間に驚かれたが、あくまでそれだけ。
いきなり攻撃されることがなかった以上、まだ対話の余地はありそうだとほむらは口を開く。

「驚かせてごめんなさい。その格好……イチリュウチームの人かしら?」
「ハ、ハイ!?」
「と、とつぜん闇夜からまな板の子が出てくるなんてどうなって……なんでもないホル」
「懸命な判断ね。とりあえず、信じて貰えるかわからないけど……私達は都庁の者。あなた達と敵対するつもりはないわ」
「「!?」」


警戒しつつも正体を明かすほむらに対し、ホルスとラミレスは僅かに驚いた表情を浮かべるがやはりそれだけ。
すぐに焦ったような表情に戻ると、ラミレスが口を開いた。

「アア、ヤハリギムレーサンハ正シカッタンデスネ……!」
「んんwwwwwナイスですぞギムレーwwwwそちらがテラカオスを保護していることもネットワークで把握済ですぞwwwww」
「あ、てことはお前がオオナズチホル? ってのんびりしてる場合じゃないホル! そのテラカオス絡みでなんかやばい事態になってるホル!」
「……簡単に説明してもらえるかしら。なんにせよ、火急の状態なのは間違いないわ……! はやくしないと他のイチリュウチームメンバーが危ない!」
「た、助けてくれるホルか!?」
「アリガトウゴザイマス……!」

そしてホルスは慌てながらも、少し前に起きた事件を語る。
バイクに乗っていた三人組を発見し、仲間の6/達が接触を試みたこと。
聞けばホワイトベース組の生き残りだと言う苗木少年は都庁と拳王を憎んでいたが、ギムレーとはやての話から誤解だと説明をすると彼は混乱した。
幼女と白い獣はあまり話に入ってこなかったが、蛮とクリスの説得ではやてから直接話を聞いてみたいという流れになった。
拳王連合の被害者というのは間違いなく、都庁の誤解さえとければイチリュウチームにも協力してくれるかもしれない。
苗木も拳王連合に報復できるだけの力を持つイチリュウチームは味方に引き入れたい。
打算的な思いも0ではなかったかもしれないが、とにかく平和的な接触はできたといえる。

問題はここから。

都庁へと飛行予定だったイチリュウチームは滞空しており、苗木達との顔見せも空で行われた。
そして今まで静かであった幼女、霧切が……
テラカオスたる『ツバサ』の顔を見た瞬間、狂乱状態に陥ったのだという。

「持ってた宝石みたいなものが、一瞬で真っ黒になって割れたんホル……
 そしてそこから一気に魔力が噴き出て……イチローとアナキンに戦えない監督とこの子を連れて逃げろって言われたホル……」

「こ、これは……!」

見れば、ホルスとラミレスの他に、彼らが隠す様に庇っていた少女の姿がようやくほむら達の目にも入る。

「うぅ……」

ぐったりとした様子で汗を流す少女。
その姿は、だいぶ幼さが増しているが確かにかつて指名手配された風鳴翼に瓜二つであった。

453破滅の足音:2019/08/12(月) 19:03:27 ID:melOZAog0
「その子が、テラカオス……『不屈の精神を持つ勇者』かもしれない子なのね」
「そうホル。でも、元々体調悪そうだったのが霧切と対面してからさらに悪化してこんなことに……」
「……オイラ、霧切達のことは知ってるなっしー……
 強力な魔法少女だけど、テラカオス・ディーヴァへの恐怖心が特に強いって確かにキュゥべえが言ってたなし……」

沈み込むふなっしーの言葉に、ほむらやラミレス達は今回の騒動の原因を理解する。

「ツバササンハ、シャドウトイウ存在に敗レタテラカオス・ディーヴァノ残滓ダトイイマス……」
「自分に恐怖を植え付けた存在と再度遭遇して一気に絶望……魔女化してしまったということね……」
「……せめて、苗木はまだ無事なっしか?」
「残念ホルけど、苗木とキュゥべえはもういないホル……
 その、魔女化? した霧切の一番傍にいたせいで……彼女を止めようとして、魔力で消し飛ばされたホル……
 それからなんでかさらに霧切は泣き喚く子供のように暴れて……」
「そんななっしー……」

聞かされたのは、苗木達の死。
いや霧切も魔女化したともなれば、死んだも同然だろう。
説得を目指していたふなっしーの落胆は、計り知れない。
おそらく魔女化した霧切がさらに暴れてしまった原因が、はからずも自分の手で心のよりどころを殺してしまったからであると、
そう察せてしまうだけにより悲しみは深まる。

(……まさか、こんな形で決着がつくとはねインキュベーター……
 人を食い物にし、少女の心がどれだけ繊細で些細なことでも大きく揺れ動くか……その感情の変化を見切れなかったあなたの負けよ)

ほむらは内心で宿敵の死を冷静に分析する。
本来であれば喜んだであろうが、状況が状況なだけにそうもいかない。
わかるのは危険を感じたであろうインキュベーターが逃げる暇もない程に、この魔女の魔力は強いということ。

「……あの魔女の結界内にイチリュウチームが囚われているようね」
「あまり時間はかけれそうにないですな。そしてこの魔女を倒さないと、多分この子は本来の力を発揮できなそうですしwwwww」


不運な幼女は魔女に堕ちながら因縁の相手を弱らせ苦しませる。
希望の祈りは絶望で反転する。自分に近寄らないように、二度と近寄れないようにディーヴァの系譜とそれを守る者は皆殺し。

祈りの結界は崩れた。
黒き獣は愛の獣を腐食させ、やがては本州に牙を剥く。
黒き魔女は残滓とその仲間を苦しめる。
同時刻に起きたプロジェクト・テラカオス、救済の予言を破綻させかねない緊急事態。
生き延びた者達は、どう動くのか。

454破滅の足音:2019/08/12(月) 19:03:59 ID:melOZAog0
【二日目・22時30分/東京〜千葉上空・魔女の結界外】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】
【ラミレス@横浜DeNAベイスターズ】
【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【テラカオス・ディーヴァの残滓『ツバサ』@テラカオスバトルロワイアル十周目】

※ほむらにいくつか武器が補充されています
※霧切が生存している限り、『ツバサ』は立つことも困難です

共通思考:イチリュウチームの救出及び『ツバサ』の護衛


【苗木誠@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【キュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
それぞれ死亡確認

【霧切響子@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】→魔女化

※結界内に残るイチリュウチームのメンバーを全員閉じ込めています。各員の安否は次の書き手さんにお任せします
※霧切を打ち倒さない限り、内部のイチリュウチームメンバーは通常手段での脱出ができません
※魔女化し、ディーヴァの因子を持つ者を極度に弱らせ、またその周囲の存在に無差別攻撃をしかけます
※沖縄の結界が消滅しました
※強さはワルプルギス以上まどか以下

455何が可笑しい!!:2019/08/12(月) 21:09:33 ID:rl3FuA/w0
投下乙...!
面白かったけど、すげー絶望感
中盤までは対主催を支えてくれると思ったなのユーカップルも落ちてドン底のまま絶望死か...

456何が可笑しい!!:2019/08/13(火) 12:13:25 ID:jjdhWbNA0
苗木の最期が十神よろしく台詞がないのは草
まあ次の話で補完してくれるだろたぶん

しかし、なのは組は合流できないまま壊滅
ネオ・クライシスは事実上全滅
ホワイトベース組はひとり残らず皆殺しになったか

457何が可笑しい!!:2019/08/13(火) 12:44:05 ID:RNY/i6/Q0
投下乙!なのは無敵過ぎない?と思ってたら綺麗に穴突かれたなぁ…
なのはといいOTONAといいベジータといい、今期は絶望の中での毒殺多い気がする
苗木達もある程度覚悟はしていたが、イチリュウ逃走不可ってのが地味にきつそう

4589月13日はカイザの日 FOREVER:2019/09/08(日) 17:58:16 ID:zlRsuNk20

『邪魔なんだよ……カイザの日を祝わないものは全て!』

その頃、草加さんを書いていた書き手は今年もまたカイザの日を祝おうとしていた。
……去年も一昨年も三年前も四年前も五年前も六年前も同じことを書いていたが、その書き手にとって大事なことなのだ。

ここまで書いた時点で筆が止まった。
流石に6年も連続で同じ日に同じキャラを書き続けるのにも限界が来たのだ。
大体復活禁止というルールを破ってまで書いてたのだ。
それくらいまでにはカイザの日にこだわっていた。

しかし、現状はどうだろうか?

DMC狂信者だ。
未だにクラウザーさんも復活しないし。
草加と他のキャラに絡ませてもすぐに引き離すし。
他の次元が滅んでいると書かれているのにも関わらず次元連結システム(端的に言えば他の次元からエネルギーを持ってくるシステム)で動くロボット出してるし。
さらにはぽっと出の黒幕まで中に紛れている。

正直この書き手の技量ではもう収拾がつかない。
収拾をつかせる気もない。
だから、今回で終わりなのだ。

元号も変わったし、平成の古参書き手は令和の新時代では生き残れないのだ。


だから、自殺したのであった。


【カイザの日の書き手@カオスロワ 死亡確認】

459何が可笑しい!!:2019/09/08(日) 19:05:45 ID:ZdZMYhbo0
>他の次元が滅んでいると書かれているのにも関わらず

次元が滅んでんじゃなくて歪んでて出られないって書いただけなんだよなあ……

460何が可笑しい!!:2019/09/30(月) 14:08:46 ID:ioq/KqdU0
10期一体何年続いてるんだろう...

461何が可笑しい!!:2019/09/30(月) 19:32:32 ID:RUIUt5PA0
気にするな
他のロワも大概同じやで
進行遅いなりに書きたい人が残ってるだけここは恵まれている

462痛みの唄:2019/10/04(金) 13:24:26 ID:e/bigAbo0

時刻が22時に差し迫った要塞ビッグサイト。
その敷地内の一つにあるテントの内部で、三人の狂信者と一機のロボットバイクは情報を交換していた。
ホモどもが持ち帰ったテラカオスという怪物の情報を探っていたセルベリア。
そして草加もといサイドバッシャーの言葉により、明らかに狂信者としては異質な行動を取っていたゼロ(ルルーシュ)を探っていた切歌とレジーナ。

「蒼の源泉…聖別…テラカオス、そして主催とは違う目的で動くカオスロワちゃんねる……」
「この殺し合いにそんな秘密があったんデスか……」
「信じられないけど、いちおう話の辻褄は合うわね」

しかし、三人の乙女を驚愕させた決定打は、草加の言葉であった。

『ああ、確かに俺は見たんだ。
大災害の発端らしいニルヴァーナの生き残り、ウエムラのビデオレター。
そして証拠を見つけた俺の持ち主を殺そうとした怪物と女を』

草加はセルベリア・切歌・レジーナは信用……否、利用できると思い、あえてパーティー会場で見た真実を語ったのだ。
この殺し合いのそもそもの発端、カオスロワの意味、大災害を唯一防げるテラカオス、そしてカオスロワちゃんねるの闇に蠢くもの。
もちろん、自分が支給品ではなく無機物への憑依能力を得た参加者であること、そもそも持ち主であるバドは狂信者ではないことを隠して話したが。

「なんでさっきは私たちにそのことを隠してたんデスか?」
『おまえたちが、この殺し合いのどこかに潜伏しているカオスロワちゃんねる管理人……長いから“提督”とでも言っておこうか。
切歌たちが提督の手先だった場合は俺が破壊されるだろ』
「あ」
「……なるほど、このビッグサイトの中なら私か切歌たちの誰かが提督の手先だったとわかっても、騒ぎを起こせば狂信者仲間が殺到して提督の尻尾も掴めることに賭けたというわけか」
『流石元軍人さんは話が早い』

幸い、セルベリアも切歌・レジーナも提督の手先ではなかったようだ。

「大災害の原因は誰かが意図的に起こした蒼の源泉の暴走。
それが本当なら許せないデス……大災害で引き起こされた殺し合いでクラウザーさんやマリアは間接的に殺され、調とは離れ離れ、右京さんたち多くの狂信者も死ぬハメになったんデスから」
「切歌、怒りたい気持ちはわかるけど今は抑えて」
「気持ちは同感だ。クラウザーさんほどの素晴らしい歌を歌える方や数万を越える信望者が、ひと握りの者の思惑のせいで殺されたも同然なのだからな」

三人の狂信者は怒りを共有している。
殺し合いを開かれたことでクラウザーさんが死ななければならなかったことが一番頭に来ているようだが、この三人は大災害時にも大切な人々が喪うか、行方知れずになっている。
聖別たるカオスロワを開いたのはベイダーら主催陣営だが、それ以上に犠牲を強いる聖別を開かざるおえない状況に追い込んだのは他でもない“提督”なのだ。
見つけ次第、最優先でSATUGAIしたい殺意が芽生えていた。

「サイドバッシャー、その提督の手先に纏わる情報は他にないか?」
『提督の方はスマホの通話越しで辛うじて男とわかること、女の方は透明になる能力でもあったのか、どっちも声しかわからん。
録音機能なんて都合の良い物は俺の身体にはないが、聞けば一発でわかると思う。
そいつらはまだしも巨大サボテンみたいな緑の怪物は特徴的すぎるからすぐわかると思うが……』
「いちおう狂信者側に属する魔物狂信者(モブ)にサボテンボールとかサボテンダーがいるデスけど……」
『う〜ん、こいつらじゃないな。もっとデカくて汽笛みたいな鳴き声でインドラと吠えていた。
名前はメーガナーダと見えない女に言われていた』
「そんなに目立つならすぐ見つかるハズなのに、ネットじゃそんな怪物の目撃情報は一切無いわね……」
「というより、誰かが見かけても情報を隠蔽するように、カオスロワちゃんねる自体に仕向けられているのだろう。
ますます、このSMSがきな臭くなってきたな」

サイドバッシャーは少なくともメーガナーダの情報は握っていた。
だが一致する存在がカオスロワちゃんねるの掲示板上には一レスも無い。
それはテラカオス化に纏わる情報も同じであり、ふわふわしているものばかりで核心に迫るレスが見当たらない。
何も知らない参加者ならまだしも、テラカオスを少しでも知った参加者からすれば違和感バリバリだ。
共有されるべき情報が便所の落書きレベルにもないのである。
情報操作の線は確かにあるようだ。

463痛みの唄:2019/10/04(金) 13:25:16 ID:e/bigAbo0

「セルベリアおばさん、このことをすぐにディーに報告を!」
「ゼロも提督かその手先の線も捨てきれないわ! すぐにでも調査を!」
「……いやまて、ディーがその提督であるという可能性も捨てきれない」
「信者仲間を、それもクラウザーさんの蘇生を提案したボスを疑うの?」
「提督がクラウザーさん信者を装った偽信者である可能性も捨てきれないんだ。
ましてやディーは狂信者集団を発足してからビッグサイトから一歩も動いていない」
「それは狂信者をまとめるリーダーデスから……」
「だが、人数では桁違いなビッグサイトは前線に比べれば安全圏、カオスロワちゃんねるを管理する余裕もあると取れる。
たまに杜撰な作戦を通したり、そもそも狂信者側の全滅を前提においた作戦さえあった。
第一、神でありながら沖縄の異常気象をクラウザーさんの力だと持て囃しているのも怪しい」

セルベリアはディーを草加の言う提督ではないかと怪しんでいた。
ディーに同調していたドリスコル、突然接触してきたゼロも怪しいが、両方死ぬ可能性がある最前線送りになったので提督である可能性は低い。せいぜい手下止まりだろう。
どのみち、防衛部隊であるセルベリアたちはビッグサイトからは動けないので戻ってくるまで正体を確かめる術がない。

「せめて決定的な証拠さえあれば、他狂信者の賛同も得られて、全力で企みを阻止することもできるが……証拠がない内は逆に情報操作で仲間の狂信者に追われるハメになる」
『メーガナーダはこのビッグサイトはいなさそうだし、提督も手下もビッグサイト以外のどこかにいる可能性もあるがな』
「まだ関東圏内のどこかにいるなら良いけど、過疎地に引きこもってたら最悪ね」
「うう、私としては同じ信者は信じたいデスけど……」

ルルーシュに唆された部分も多いとは言え、他の上層部の人間を信用できないセルベリア。
同じクラウザーを信仰する仲間を信じたい切歌。
ルルーシュへの疑念を捨てきれないレジーナ。
そして三人には隠しているが提督への殺意を漲らせる草加。

しかし、ネットが信用できなくなった以上、提督を探す方法が現状の四人にはなく、ネット以外の追加情報でもない限り捜査の進展はないだろう。
黒幕が存在していることはわかっても、正体と居場所を掴む術がない。

(提督の目的はなんだ?
わざわざ主催に隠れてこそこそ真実を知る者を暗殺し、情報操作を行った。
ならば主催には知られたくない目的があって行動をしているハズ……
テラカオスには主催も知らない隠された力があるのか?)

セルベリアは無言でテラカオス化したと思わしき少女の死体を見るが、答えは出ない。

狂信者たちは提督による水面下妨害も手伝って圧倒的に情報が足りないのだ。
この中では大きな進展を齎した草加でさえ、テラカオスが具体的にどうやって大災害を抑えるのかまでは知らない。
彼女らがこれ以上、真実にたどり着くには答えが不足していた。

「仕方がない、いったん考察は打ち切りだ。まずはゼロの正体と思惑から調べるぞ」
「ゼロは今、最前線デスけど」
「半数のカギ爪団構成員がビッグサイトに残っている。
ゼロに何かされている可能性もある以上、確かめる価値はあるだろう……ん?」


セルベリアが切歌とレジーナに指示を出そうとした時だった。
ただでさえ暗い夜空が、星さえ見えなくなるほど暗くなったのだ。

 ◆

464痛みの唄:2019/10/04(金) 13:25:42 ID:e/bigAbo0


同時刻、ビッグサイトの敷地に地下から侵入できた影薄組もまた、マンホールの傍から異様な空を見ていた。
小町とデモニカを纏う四人は驚きの表情で空を見ているが、影が薄いのと仲魔としてデモニカの中に入っているため、周囲の狂信者がそれに気づくことはない。
というより仮にステルス状態でなくても、狂信者たちも皆唖然として空を見ているため、侵入者が誰であっても気づかないだろう。

『なんだい、こりゃあ……』

何かとてつもなく巨大な物体が、ビッグサイトの要塞を空から覆い尽くしているのだ。

「コイツは……千葉に現れた例の邪竜じゃねえか!」
「それがどうしてこんなところにいるんすか!?」

空を覆う者の正体は狂信者や拳王連合軍に宣戦布告をし、何らかの目的でイチローたちがいる浦安を覆った超巨大竜ギムレー。
それがどういうわけか、ビッグサイトの空の上まで移動してきていたのだ。

ビッグサイトの狂信者たちはすかさずギムレーに向けて対空砲やら魔法、MSなどで迎撃を行う。
無論、影薄組の周りでもそれは同じだ。

『ま、まったく効果があらへんぞ!?』

しかしギムレーには全く効いている様子はない。
影薄組たちからはさほど離れていない位置にいる巨人化した大日本人こと松本、彼と同じ感想を狂信者たちは口にしていた。

そして、狂信者たちへのお返しに邪竜のブレスが放たれんとしていた。
それはワイルドハント率いる狂信者集団すら一撃で全滅させた超高威力攻撃。

「まずいよ……こっちを攻撃してくる!」
「早く逃げないと」

そのブレスの矛先は偶然にも影薄組たちがいたエリアにも含まれていた。
影薄組の五人は急いで周辺から離脱しようとする。

『うわあああああああああああああああああああああああああ!!!』

数瞬後、大日本人の叫び声と共に邪竜のブレスはビッグサイトより東側を焼き払い、大日本人と数千人ほどの狂信者を一瞬で蒸発させた。


 ◆

465痛みの唄:2019/10/04(金) 13:26:30 ID:e/bigAbo0

「よし、少しは黙ったな」

本体である巨竜の上に乗るギムレーは、キノコ雲が上がったと同時に迎撃の手を止めた地上のビッグサイトを見てそういった。

ギムレーがここに単身で来た目的はオシリスの生死を問わない奪還。
オシリスの能力がテラカオス化したなのはの拡大化した能力を止めるために重要なファクターであったし、そうでなくとも洗脳されたり能力だけ抽出されて狂信者に利用されれば対主催にとって危険であるからだ。
そのため、交渉という名の脅迫をしにきたのだ。

案の定、狂信者は反撃をしてきたが邪竜としての能力を解き放ったギムレーには蚊が刺したほどの威力しかなく、止めるには不十分。
あんまりうるさいと狂信者の元締めと話し合いができないので、攻撃で多くの狂信者に消えてもらった。
それが功をなしたのか、狂信者は効果がない攻撃を流石にやめた。
地上の狂信者共がワイルドハントたち同様、恐怖に慄いているのがギムレーにはわかる。
もっとも、多大な魔力が集中しているため、日本を巻き込んだ誘爆の危険があるビッグサイトそのものへの攻撃はできなかったが。
なお、影薄組は存在感が薄すぎたため、ひと握りの対主催が狂信者の巣窟に潜入していたことは流石に気づかず、攻撃の巻き添えを食らわせてしまったことには流石に気づいていないようだ。

「さて、交渉に入るか、スゥー……」

ルフレ(人)としてのギムレーと、本体(竜)としてのギムレーは深呼吸をすると、厳かでドスの効いた口調で狂信者たちに告げた。


『狂信者どもに告げる。

生死は問わぬ、貴様らが捕えたオシリスの天空竜を我に差しだせ。

早急にできぬのならば、貴様らの神と崇めた存在を蘇えらせるカテドラル――ビッグサイトをこの手で粉砕する』


ギムレーの突然の脅迫にビッグサイトは騒然とする。
狂信者どもの恐怖が邪竜であるギムレーにとっては心地良いものであったが、目的は最後まで忘れない。
オシリスは救助対象であると同時に、彼の持つ魔法・罠無力化能力はテラカオス化したなのはを止める可能性がある数少ない存在なのだ。
仮に殺されていたとしても、その能力に狂信者が目をつけないわけがない。
狂信者をこれ以上、のさばらせないためにも、オシリスを取り戻す必要があった。

そしてギムレーの要求から一分経たない内にビッグサイトに設置された外部スピーカーを通して、赤いロボットに乗せると似合いそうな男の声が聞こえた。

『私は狂信者まとめ役をしているディーだ。
……要求を飲んだ場合と飲まなかった場合、君はどうするつもりだ?』

顔は見えないが、焦りの見えない声で質問がくる。
流石に総大将だけにそこらの下っ端よりは冷静を保てるか、などと思いつつ、ギムレーは空から返答する。

『要求を飲んだ場合は、キサマらの居城……この場でのビッグサイト破壊を先延ばしにしてやろう。
我には急用があるのでな、数時間程度は狂信者どもの絶望する顔は後回しにしてやろう。

だが飲まなければ、この場で破壊の限りを尽くす』

ギムレーの一言が数千人規模のモブ狂信者が一斉に失禁するほど、底のない恐怖を与えた。
少なくとも精神的に強くない者や、彼の人となりを知らない限りは、本能的恐怖で逆らえないレベルだ。

『正気か?
ビッグサイトを破壊すれば集めた魔力が暴走し、少なくとも関東は滅びるかもしれないぞ』

真である。
高位の魔法に精通する者ならビッグサイトを破壊するのは危険だと肌で感じられるほどの生体エネルギー(マグネタイト)が集中している。
ギムレーにもそれがわからないわけではない。が。

『知れたこと! その程度の魔力なら我を殺すには不十分だ。
それに我は破壊と絶望を糧に生き、死を司る邪龍!
他の者共の命など知ったことではないわ!』

嘘である。
例え特定の武器以外は鉄壁の耐久力を誇る邪龍とて、ビッグサイトが間近で爆発すればただではすまないことは理解している。
無論、イチリュウチームの仲間を含む他の対主催の命さえ無碍に散らす気はない。

しかしこの場は引いたり弱みを見せたら負けだ。
嘘をついても邪悪の仮面を被ってでも、味方の運命を左右するかもしれないオシリスを取り戻さなくてはならない。


『……なるほど、断らせていただく』
『なに…?』

ギムレーの言葉による脅迫では、ディーは揺らがなかった。
今度は少し語気の強い形でディーは言葉をぶつける。

『貴様にオシリスを返したところで、後に牙を向いてくるのは明白。
最悪、オシリスを返した直後に契約を破棄して襲いかかってくる可能性さえある。
何より、クラウザーさんを蘇生させるためのビッグサイトを襲撃したことは、クラウザーさんに中指を立てたことと同じ。
万死に値する行為だ』

466痛みの唄:2019/10/04(金) 13:27:15 ID:e/bigAbo0

次にディーは、攻撃の手を止めていたビッグサイト中の狂信者に呼びかける。

『狂信者たちよ、SATUGAIを再開せよ。クラウザーさんが見ているぞ。
あの方のために命を捨てられぬ不届き者にクラウザーさんの歌を聴く資格はない!』

実質的な交渉の打ち切り宣言と同時に、邪龍ギムレーの体に再び無数の攻撃が放たれる。

(やれやれ、狂信者の愚かさからして予測ができなかったわけじゃないが、まさかここまでとは)

様々な攻撃が全て巨大な邪龍の体に命中するが、ギムレーは本体も人間体のどちらも涼しい顔であった。
地上に蟻のように群がっているモブ狂信者どもには確実な怯えが見え、ほとんど全ての攻撃がうろたえ弾であった。
一部は本能的な恐怖に負けて逃げ出している者もいる。
ビッグサイトにいる兵力がいくらあってもギムレーを倒すにはとても足りない。

(だが、諦めるわけにはいかない、オシリスは戦力としても仲間としても、見捨てるわけにはいかないからな!)

ギムレーは攻め方を変えた。
ビッグサイトからは遠い位置にいる狂信者やトーチカなどの建造物はブレス攻撃で焼き払う。
今、できるだけ破壊と死を齎せば、あとで仲間と攻め込んだ時に楽にビッグサイトを陥落できるだろう。
さらに……

「お、おい! あの龍ゆっくりと落ちて来ていないか?」
「まずい、ビッグサイトが、クラウザーさんが潰されてしまう!」

今の焦るような言葉は名も無きモブ狂信者が放ったものだ。
ギムレーはビッグサイトに対しては徐々に空から接近する形で無言の圧力を仕掛ける。
ゆっくり落ちることで交渉に応じなければビッグサイトをそのうちに潰すというポーズであり、仮に倒したところで、落下したギムレーがビッグサイトに直撃し、結局狂信者は終わるのだ。
ほぼ全ての狂信者がこの事態に焦る。
しかもだんだん近づいていくことで流れ弾がビッグサイトに当たるのを恐れて攻撃の手も緩めていった。

「さあ、根比べと行こうかディー。
早くしないとビッグサイトが僕の手で潰されるよ」

爆発の危険があるのでビッグサイトを本気で潰す気はないが、そうでなくとも狂信者など「いつでも潰せる」ことを仲間や対主催に示さなくては行かない。
潰されないにしろ、ギムレーの体がビッグサイトに少しでも触れたら狂信者は敗北したも同じ、全国の狂信者の士気は間違いなく急下降するだろう。
現状でも「もうダメだあ、おしまいだあ」という声が狂信者の中から聞こえる。

その絶望が、ギムレーにとっては心地良かった。


 ◆

467痛みの唄:2019/10/04(金) 13:27:36 ID:e/bigAbo0

混乱するビッグサイトの中、その玄関口にて。

『はあはあ……危うく全滅するかと思ったよ』
「助かったぜ、こまっちゃん!」

小町ら影薄組は、ギムレーからの攻撃を回避していた。
一撃でも喰らえば全滅確定の攻撃ではあったが、小町が咄嗟にCOMPから出て距離を操る程度の能力を使用。
自分を含めた五人をビッグサイトの玄関口まで引き寄せることで回避したのだ。

ビッグサイトの混乱もあり、影薄組は尚の事、小町の姿はまだ見られていない。
見られたとしても小町がいたところの兵隊は全滅しているため、潜入は結果的に気づかれてないだろう。

「まずいですね……あの竜がだんだんここに落っこちてきています」
「黒子くんはホント病的なまでに冷静っスね……」
「ここぐらいしか逃げ込む場所がなかったとはいえ、どうするの?!」

ちなみにギムレーが対主催である影薄組の存在に気付かなかったとはいえ、向こうから攻撃を受けたのは事実。
ビッグサイトも潰す気であるようだし、現状は味方として見ない方が良いだろうと影薄組は胸中で思った。
そんな竜にモタモタしているとビッグサイトを潰すと言われているのだ。
施設が潰れれば狂信者どころか都庁軍も聖帝軍もイチリュウチームも関東にいる参加者は問答無用で全滅してしまう。
そうなる前になんとかしなければならなかった。

「あの邪竜をここを潰す前に倒すという選択はないな。
単騎でここにこれるぐらい戦闘力はかなりのものだろうし、倒してもここに落っこちまう」
「小町さんが戦ったら狂信者に存在がバレて潜入作戦がおじゃんになるっす」
「戦闘そのものを避けた方がいいみたいだね」
「じゃあ、あの邪竜が落ちる前にクラウザーの蘇生手段を探して制圧、それが出来次第すぐにビッグサイトを離脱するのはどうでしょうか?」
『あたいは黒子の案に賛成だ。当初の目的に添ってるし、狂信者を倒して全員生き残るにはそれしかない。
ビッグサイトが外だけじゃなく、内側も混乱している今がチャンスだ。
早いとこ探し出すよ!』

予想だにしてなかったギムレーの出現はピンチと同時にチャンスを影薄組にも齎した。
混乱によってまだまだ時間がかかるかと思った狂信者本拠地心臓部への近道ができたのだ。
ここから蘇生手段を探したり、エネルギーと溜め込んでいる何かを奪うか壊すかすれば影薄組は目的を達成でき、狂信者がなくなれば次の大災害から世界を救う道が大きく開ける。
時間との勝負ではあるが、確かに希望への道もできたのだ。

 ◆

468痛みの唄:2019/10/04(金) 13:28:01 ID:e/bigAbo0

「ええい、カトンボか喧しい!」

ギムレーの周りにはいつかしかMSなどの無数の飛行可能な兵器が蝿のように飛び回り、上面から攻撃を加えていた。
下や横からの攻撃だとビッグサイトが巻き添えになってしまうため、ギムレーの巨体で流れ弾が飛ばない上からの攻撃に切り替えたのだ。
確かに巨大すぎるギムレー(竜)は基本的に攻撃を避けられないが、だがそこらの量産機のビームが何千発打ち込まれようと、蚊が刺した程度の打撃にしかならない。

「邪竜の鱗」はダメージ半減に加え、即死攻撃と反撃を無効化。
守備・魔防50に加え物理攻撃半減スキルにより確実に物理ダメージが1/4にされる。
とにかく硬い。 半端無く硬い。少なくとも防御力と抵抗力だけなら残存参加者でも1、2を争う硬さであろう。

「僕を倒すのなら、ファルシオンを持ってくるか、サイヤ人でも連れてくることだな! 消し飛べ!!」

最強の武器である「邪竜のブレス」と絶対命中効果を持つ「赤の呪い」。
そしてルフレ譲りの攻撃上昇スキルである「華炎」に確率上昇スキルである「神の器」の効果によるダメだしで攻撃はほぼ必中。
瞬間火力に関してはイチローナッパやフォレスト・セルの例もあるので最強とまでは行かないが、上位クラスには違いない。
それら反則級スキルの一斉砲火により、狂信者の機体郡を殲滅していく。

「弱い、弱すぎる……!!
さあ! 考え直すなら今だぞ、ディー! オシリスを返せ!」

狂信者を焼き殺しながら徐々にビッグサイトに近づいていくギムレー。
一方のディーは沈黙を続けており、返答がいつになっても返ってこない。

(……本気でビッグサイトが、クラウザーの蘇生手段を失ってもいいのか?)

表面上は余裕の顔を見せているが、内心では反応がまるでないディー相手に不安を覚えている。
流石にビッグサイトを破壊してしまうと大爆発を起こしてしまうので、現状での破壊は本位ではなかった。
しかし、そうこうしている内にギムレーの肉体とビッグサイトが接近する。

(考えが読まれたか……?
いや、交渉は引いたら負けだ。
ビッグサイトの内部の破壊はまずいだろうが、表面を傷つけるぐらいならば……!)

やろうと思えば翼で撫でて壊せそうな距離にまで近づいたビッグサイト。
ギムレーは狂信者にもっと揺さぶりをかけるためにビッグサイトに傷をいれんと、翼の一枚振りかぶる。




「な、なに!? この寒気は…なんだ!?」


瞬間。ギムレーに悪寒が走る。
否、悪寒ではない。
何か一気に力を奪われるような、毒を盛られた感覚が直下から感じたのだ。

さらに邪竜の翼の内、一枚が地上から飛んできた青い閃光とともに、切断された。

「なん……だと……!?」

切断された翼は幸いにも、近くの海に落ちてビッグサイトに被害は出なかった。
ギムレー(竜)はここにきて初めて痛みによる悲鳴をあげ、ギムレー(人)は驚きを隠せなかった。

邪竜の防御力については、先ほど説明下通りの鉄壁であったハズ。
その鉄壁がただの一撃で、破られたのだ。

目の前の、蒼い大剣を握る銀髪の半人半魔の女によって。


 ◆

469痛みの唄:2019/10/04(金) 13:28:01 ID:e/bigAbo0

「ええい、カトンボか喧しい!」

ギムレーの周りにはいつかしかMSなどの無数の飛行可能な兵器が蝿のように飛び回り、上面から攻撃を加えていた。
下や横からの攻撃だとビッグサイトが巻き添えになってしまうため、ギムレーの巨体で流れ弾が飛ばない上からの攻撃に切り替えたのだ。
確かに巨大すぎるギムレー(竜)は基本的に攻撃を避けられないが、だがそこらの量産機のビームが何千発打ち込まれようと、蚊が刺した程度の打撃にしかならない。

「邪竜の鱗」はダメージ半減に加え、即死攻撃と反撃を無効化。
守備・魔防50に加え物理攻撃半減スキルにより確実に物理ダメージが1/4にされる。
とにかく硬い。 半端無く硬い。少なくとも防御力と抵抗力だけなら残存参加者でも1、2を争う硬さであろう。

「僕を倒すのなら、ファルシオンを持ってくるか、サイヤ人でも連れてくることだな! 消し飛べ!!」

最強の武器である「邪竜のブレス」と絶対命中効果を持つ「赤の呪い」。
そしてルフレ譲りの攻撃上昇スキルである「華炎」に確率上昇スキルである「神の器」の効果によるダメだしで攻撃はほぼ必中。
瞬間火力に関してはイチローナッパやフォレスト・セルの例もあるので最強とまでは行かないが、上位クラスには違いない。
それら反則級スキルの一斉砲火により、狂信者の機体郡を殲滅していく。

「弱い、弱すぎる……!!
さあ! 考え直すなら今だぞ、ディー! オシリスを返せ!」

狂信者を焼き殺しながら徐々にビッグサイトに近づいていくギムレー。
一方のディーは沈黙を続けており、返答がいつになっても返ってこない。

(……本気でビッグサイトが、クラウザーの蘇生手段を失ってもいいのか?)

表面上は余裕の顔を見せているが、内心では反応がまるでないディー相手に不安を覚えている。
流石にビッグサイトを破壊してしまうと大爆発を起こしてしまうので、現状での破壊は本位ではなかった。
しかし、そうこうしている内にギムレーの肉体とビッグサイトが接近する。

(考えが読まれたか……?
いや、交渉は引いたら負けだ。
ビッグサイトの内部の破壊はまずいだろうが、表面を傷つけるぐらいならば……!)

やろうと思えば翼で撫でて壊せそうな距離にまで近づいたビッグサイト。
ギムレーは狂信者にもっと揺さぶりをかけるためにビッグサイトに傷をいれんと、翼の一枚振りかぶる。




「な、なに!? この寒気は…なんだ!?」


瞬間。ギムレーに悪寒が走る。
否、悪寒ではない。
何か一気に力を奪われるような、毒を盛られた感覚が直下から感じたのだ。

さらに邪竜の翼の内、一枚が地上から飛んできた青い閃光とともに、切断された。

「なん……だと……!?」

切断された翼は幸いにも、近くの海に落ちてビッグサイトに被害は出なかった。
ギムレー(竜)はここにきて初めて痛みによる悲鳴をあげ、ギムレー(人)は驚きを隠せなかった。

邪竜の防御力については、先ほど説明下通りの鉄壁であったハズ。
その鉄壁がただの一撃で、破られたのだ。

目の前の、蒼い大剣を握る銀髪の半人半魔の女によって。


 ◆

470痛みの唄:2019/10/04(金) 13:29:19 ID:e/bigAbo0

突然の襲撃を受けたビッグサイトに対し、セルベリアは出撃を余儀なくされた。
ギムレー相手にはエースと言えど切歌たちで勝てる見込みは薄い。
そこで竜殺剣ドリスを持つセルベリアが向かうことになったのだ。

ビッグサイトの屋上からギムレーの翼に飛び乗ったセルベリアは、乗っていた翼を一枚切断した直後に邪竜の背中に飛び乗った。

「貴様はいったい!」
「クラウザーさんを信望する者、セルベリア・ブレスだ」
「この強さ……狂信者でも上位クラスの者か……!」
「この竜の上に平然と乗っている人間……おまえがこの竜にとって大事なキーマンであると見た。
 クラウザーさんのためにもSATUGAIさせてもらうぞ」

ヴァルキュリアが使用する槍の代わりに、ドリスを人間の方のギムレーに構えるセルベリア。
人間体ギムレーもまた周辺の雑魚は本体の竜に任せて、攻撃の妨害をしてくるセルベリアとの一対一の戦いを選択する。

(あの蒼い剣、竜を殺す力に特化しているのか!
あの剣のせいで僕の力は……厄介なものを!)

剣から帯びる力からギムレーはセルベリアの剣が竜殺しの力を持っていることを理解する。
これは大正解であり、竜殺剣ドリスはあらゆる竜の力を弱める剣。
難攻不落な結界を切り裂き、人知の及ばぬ存在であっても不死身であっても、それが竜であるならば殺せるレベルまで強引に引き下げる魔刀なのだ。
余談だが、ギムレーとは違うベクトルでチート能力の持ち主である竜が、都庁で創られた竜殺剣によって討たれている。
それほどまでに竜殺剣はドラゴンにとって危険なのだ。

(だが……戦闘力を完全に奪うまでの力はないようだ!
さっきは油断したが、今度はそうはいかない!)
「赤の呪い&華炎付き、ダークスパイク!」

利用できる限りのスキルで強化した闇の針をセルベリアに向けて放つ。
だが、それらはセルベリアにあっさりと躱され、次の瞬間には肉薄されていた。

「なに!」

そして次の瞬間には回避する余裕もなくギムレーの右腕が鮮血を撒き散らしながら宙を舞い、さらに追撃の蹴りがギムレーの腹に入り、床もとい竜の背中に叩きつけられる。

「くっ……! おのれえ!」
「遅いな、その程度の迎撃速度ならば見切るのは容易い」

更なる追撃を交わすために迎撃に闇の魔法を使うが、セルベリアはその攻撃を軽々と躱し、射程外まで逃げられてしまう。
戦いは仕切り直し……いや手傷を負わされただけギムレー側が大きく不利であった。

幸いなのはギムレーは右腕も切られても冷静な判断力を失ってなかったということだ。
次なる攻撃に備えて数秒で戦力分析を行う。

(スキルがほとんど発動していなかった……あの蒼い剣、ファルシオンよりも数段危険じゃないか!)

ファルシオンとは、邪竜に対して有効打を与え封印できる剣である。
だがセルベリアの持つ竜殺剣ドリスはそれ以上の性能を誇っているようだ。
ドリスによって攻撃に必中効果や攻撃上昇スキルはほとんど力を失っていた。
第一、普通に装備の持ち主ならばギムレーの背中に乗っただけで闇の力に引き裂かれて瀕死の重症を負うが、セルベリアは剣に保護でもされているのか、全くダメージを受けていない。
少なくとも今のギムレーの戦闘力は首輪をはめられた時と同じくらい能力が制限されていると見ていい。

(だが……それだけなら、僕の鉄壁の防御力がこんなに簡単に破られるハズがない。
あの女自体も、防御力を無効化するスキルを持っているとみた!
あと接近されたらきっついニオイがした。能力を底上げする強化系の何かを使ったな!)

471痛みの唄:2019/10/04(金) 13:29:45 ID:e/bigAbo0

その推測は正しく、セルベリア自身もまた、スキルやアイテムで強化をされていた。
まずセルベリアはドリスコルから借りた時間が進行しないシミュレーターや、倉庫にある悪魔の能力を永続的に上昇させる「力の香」「魔力の香」「体力の香」「速さの香」「運の香」を限界まで使い、レベルや能力をカンストさせるまでに強化。
そして体内に埋め込んだマガタマで「貫通」を手に入れたため、耐性の無視が可能になった。
ところが「貫通」のスキルが突破できるのは耐性だけで、高防御を貫くスキルではない。


しかしセルベリア自身もそれを知っており、自身が持つ戦闘力をより完璧にするための布石としていた。
そこで手に入れた特殊能力(パーソナルポテンシャル)、その名も『貫通攻撃』である。
『貫通攻撃』こそ防御力を完全無視し、どんなに硬くした相手でも被弾すれば紙のように貫くことができる。
反面、こちらは「貫通」と違って耐性は貫けない。

だがスキル「貫通」とポテンシャル『貫通攻撃』をかけ合わせれば、ギリメカラのような物理反射系防御を主体とした敵でない限り、防御力などあってないようなものと化す。
物理反射系の敵とあってしまった場合もヴァルキュリア固有の槍ビームで対処すればいいため、多くの敵を屠ることができる。
ここに竜殺剣まで加わればドラゴンキラー・セルベリアの完成である。

そしてもう一個、補足するとすれば……

「攻撃が全く当たらない……素早さに差がありすぎるのか!」

ギムレーのファルシオンなどの竜特攻武器以外の弱点を上げるとするならば、「機動力」の低さである。
低いと言っても格段に遅いというわけではないがこれは意外と大きく、手練からの攻撃はまず避けられず、攻撃に関しても追撃が間に合わないこともしばしばだ。
ギムレーはその弱点を必中や鉄壁のスキル構成で補い、回避がほぼいらないほどの反則級の命中率と防御力・火力を確保していた。
ところが完璧だと思われた戦闘スキル構成も竜殺剣で抑えられ、セルベリア自身のスキルで神装甲は一気に紙装甲に。
高い火力もまた、当たらなけらばどうということはない。
鍛えてなかった機動性の無さがここでは仇になってしまった。

「ぐっ、がはっ!!」

よって狂信者を追い詰めていたつもりが、今では一方的に追い詰められることになった。
僅か数分の間でほぼ無傷のセルベリアに対し、ギムレーは為す術なくボロボロにされていった。

 ◆

472痛みの唄:2019/10/04(金) 13:30:16 ID:e/bigAbo0

「一人で来たのが失敗だったな。」

竜の背中に倒れ伏すギムレーを見つめながらセルベリアは呟いた。
ギムレーは既に両腕を切断され、片足をもがれ、治療でもしない限り継戦は不可能であった。
少なくとも人間体のギムレーの方は敗北したのである。
本体はまだ残っているが、地上の狂信者との戦闘に手を裂かれており、そもそも加勢したところで戦闘が自分の背中で行われているため自分自身を撃つ危険があるため迂闊に手が出せなかった。
とはいえ、思考を司っている人間体が傷ついている分、本体もまた攻撃の手が明らかに緩まっていた。
おまけにドリスを持ったセルベリアが背中に乗っている分、邪竜の方も防御スキルを抑制されてモブ狂信者による打撃を受けていた。
人間に換算すると蚊に刺される程度の攻撃が、今にはキラービーの針に刺された並みの激痛となっている。


「クックック……」
「何が可笑しい?」

深い手傷を負わされても不敵に笑うギムレーをセルベリアは気味悪いと思う。
この笑いはテラカオス化した仲間を殺そうとした結果、仲間からの信頼を失ったことへの自嘲か?
最強だと疑わなかった自分がこうもあっさりと反撃を受けて無様に転がっていることへの失望か?
否。

「いや、気づいたのさ。
これだけボコボコにして、なぜトドメを刺さない? セルベリア・ブレス」
「……」
「おまえたち狂信者は恐れているんじゃないか?
僕を殺せば竜の方が落下してビッグサイトを本当に押しつぶし……クラウザーの蘇生手段を失わせてしまうことを!」
「……!」

よく考えてみれば、ギムレーを殺すだけなら人間体でなくても本体の竜の首を落とせばいい。
少なくとも今のセルベリアの能力ならそれが可能だ。
だが彼女は竜自体の攻撃も(初撃を除いて)、控えていた。
人間体に関しても手足はもいでも首や心臓のような急所は狙わなかった。

「おまえの目的は僕を殺害することじゃなくて時間稼ぎか制圧……リスクがある内は殺せたくとも殺せないハズだ!」
「……」

セルベリアは沈黙を貫いていただ、微かに眉が動いていたことをギムレーは見逃さなかった。
図星のようだ。
おそらく戦闘をしている裏で、ビッグサイト内部ではギムレーを追い返す手段か蘇生する装置をどこかへ移動する手段を考えているのだろう。
セルベリアがここに送られたのは竜への有効打を持つという他に、時間稼ぎができるということもあったのかもしれない。

(向こうが時間稼ぎをしたいのならば、それを利用してやる。
このワンピースに出てきそうな体型の爆乳脇みせ女を倒す策を考えるか、もしくはイチリュウチームに逃げる作戦が思いつくまで、こっちも時間稼ぎをさせてもらう)

セルベリアにも何かしらの弱点があるかもしれない。
もしくは逃げ道はあるかもしれない。
前者はともかく、後者はオシリスを助けられない状態でイチリュウチームの戻るとはやてがうるさそうだが、竜に関して共通の弱点となる装備があるのなら情報を持ち帰るだけでも損はない筈だ。
そのためにもまずは唯一無事な口を動かし、敵であるセルベリアとの対話を試みる。
この際、どう思われても構わない。
策が閃くまでの時間を稼ぐことが大事であった。


 FIGHT
 ESCAPE
⇒TALK
 AUTO 
 

「大災害以降、あらゆる蘇生魔法が使えなくなったというのに。
おまえたち狂信者は本当に死者が、クラウザーが生き返ると信じているのか?」
「『さん』をつけろ」
「げふっ!」

473痛みの唄:2019/10/04(金) 13:30:44 ID:e/bigAbo0

ギムレーの腹にセルベリアの蹴りが入る。
これもまた死なない程度に手加減されているが、いつタガが外れて本気の蹴りになるかわからないので(不本意ながら)ギムレーはクラウザーをさん付けで呼ぶようにした。

「蘇生は可能だ。
詳細は話せんが、実際に冥府への扉を開くことができた。
その時はクラウザーさんを見つけらなかったがな」
「ほう、眉唾じゃなきゃだが、それはすごい。で、今は開けないのか?」
「一度の発動に大量の生贄が必要なのだ、一度開いたら大量の生贄を狩りなおしていく必要がある。
専門家の見立てだと生き返れるのは一人だけ。クラウザーさん以外は生き返れると思うなよ」

あくまで重大な内容は話さない範囲でセルベリアはギムレーに向けて話す。
話にはいちおう応じてるようだが、警戒は一瞬たりとも怠っておらず、ギムレーに剣は向けたままだ。

「随分、熱心なようだけど、クラウザー…さんがそれで喜ぶと思うのか?」
「それは生き返してみないことにはわからんし、喜ばれるなら我々は感無量。
嘆かれたら大人しくクラウザーさんに土下座した後に自分をSATUGAIするさ」

「……それに、私たちが生きがいを見つけるにも、死にがいを見つけるにもクラウザーさんの歌が必要不可欠だからな」
「おまえたちはそこまでしてクラウザーさんに頼らないと生きていけないのか?」
「否定はしない。
狂信者というのは元々ファンであった者の他にも、多くが大災害や殺し合いで大切な物を失った者だ。
私も日本に難民としてやってくる前は一軍人だったが、祖国も守りたかった人も全部失った。
もはやクラウザーさんの歌なしでは生きていくことも死ぬことの意義も見つけられない。
おまえたちが殺した天子も同じだ。
クラウザーさんという希望があったからこそ、あの方一人のために命を投げ出せた」

セルベリアはいつしか狂信者の信仰の意味について熱く語っていた。

「それが手を血に染めることであってもか?」
「それが例え手を血に染めることであっても、人は希望なしでは生きていけない。
狂信者とは本質的に弱者だ……おまえのような強者にはわからんだろうが、何かにすがらないと生きていけない。
強者ならば仮に殺し合いが終わった後の世界でも生きているだろうが、狂信者は違う。
クラウザーさんがいなければ、殺し合いがあろうがなかろうが、生ける屍となり死ぬことに意味も見いだせなくなる。
だからこそクラウザーさんからは何を言われようとも構わない覚悟で生き返さなければならないんだ」
「他の者から大切な者を奪ってもか?」
「そうだ。
狂信者は悪と罵られても構わないし、恨んでくれてもいい。
だが、全ての希望であるクラウザーさんを否定させたり、蘇生を妨害することだけは絶対に許さん」
「うへえ……すごい狂信ぶり」
「褒め言葉として受け取っておく」

ギムレーはセルベリアの狂信ぶりに驚く。
ヒャッハー集団なので全員がセルベリアみたいな理想を掲げて殺しをするタイプとは思えないが、理性を持ちながら「狂っている」者もいるようだ。

「フンッ、大層な御託だけど、殺し合いを使って利益を得ようとする奴に良いように利用されているだけじゃないか?」
「なに?」
「盲目的にクラウザーさんに尽くしているみたいだが、視野の狭い奴は利用されるよ……殺し合いを利用して利益を得ようとする奴……周りに身に覚えがないかい?」



「…………」
「あれ? って、ぎゃああああああああああああ!!」

直近に喋った言葉が何かの逆鱗にでも触れたのか、近くにあったギムレー(竜)の鱗を強引に剥がされた後に四方を囲むように閉じ込められた。
鱗でできたテントの中にはセルベリアも一緒だったが、中で仲間の狂信者にも見せられないほど凄惨な拷問でもするつもりなのか?

(ヤバイ、地雷踏んだか……?)

セルベリアの表情には鬼気迫るものがあった。
比較的冷静だとはいえ所詮はイカれた狂信者。
一度プッツンさせてしまえば、暴走して殺しに来ることは目に見えている。
言葉選びをミスしたと思ったギムレーだったが、それを後悔する前に、重い物がドンッと落ちた。



「え……?」
「おまえを殺すのはもう少し先だ。
テラカオス、カオスロワちゃんねる、聖別……この中で聞き覚えのある言葉はないか?」

ギムレーの目の前に落ちたのは半分に割れた魔理沙……テラカオス化した参加者の骸。

ギムレーの誤算は、狂信者であるセルベリアが情報交換を求めてくるとは思わなかったことだ。


 ◆

474痛みの唄:2019/10/04(金) 13:31:03 ID:e/bigAbo0

一方その頃、影薄組の眼前には黄泉レ○プマシンがあった。
影が薄いという天然潜入スキルのおかげでここまで誰にも気づかれずに近づくことができたのだ。
だが、ここで障壁にぶち当たる。

「参ったな……」
「どうしたの? 早くこの機械を止めようよ」
「それが……この機械を停止させるには狂信者の上層部の生きた網膜が必要みたいなんです」

黄泉レ○プマシンを稼働させたり安全に止めるには、網膜認証式で生き残っている上層部の人間……すなわちディーやセルベリア、ドリスコルの網膜が必要だったのだ。
ドリスコルは都庁に出撃、約二名は戦死しているため、影薄組は実質ディーかセルベリアを生きたまま捕まえないといけない。

『破壊はできないのかい? バーンと爆発させるんじゃなくて配線を切って故障させる程度に』
「ダメだ、配線が複雑すぎてどれを切れば良いかわかんねえ!」
「やめた方がいいっす、素人が超巨大な時限爆弾を解除するようなもんすよ」
「しかも、上層部が全員死亡しても自爆する仕組みになっているようです」
「なんでわかるの黒子くん?!」
「そこに説明書が放置されてありました……あ、さっき言った方法以外の止め方は書いてないですよ」

ハッカーや技術者を連れてこなかったこと――というか極制服なしだと戦闘力も潜入能力も発揮できない犬牟田しかいないのだが――がここにきて仇になってしまった。
影薄組がどうしても狂信者を挫きたいのならばこのビッグサイトにいる上層部の二人の内一人を連れてこないといけなくなった。

『仕方がない、セルベリアは邪竜と戦っているようだから戦い終わるまで待つか、部屋という部屋を洗いざらい探してディーを見つけるしかないね』

小町の言葉により、一行は仕方なく手の付けられない蘇生装置をあとにしビッグサイト中を探索してディーを探すことにして、生け捕りにするために。

そこで一行は何かを発見する。

「待って小町さん、格納庫の方から何か出てくるっす!」
『なんだいアレは? やけにデカイが……』

窓の外には赤くて巨大な何かが稼働していた。
 
 ◆

475痛みの唄:2019/10/04(金) 13:32:06 ID:e/bigAbo0

わざわざ傷つけて鱗を引っペがしたのは、二人にとって不都合な存在に情報を交換していることを気づかせないため。
漏洩に危険を防ぐために即席のテントを作ったのだ。

その中で二人は情報交換をし、お互いが知りえない情報を知り得たのだ。


「大災害の原因は蒼という未知の物質で、二度目の大災害が世界に迫っている……テラカオスは滅びを吸収して防ぐための存在。
一見すると意味不明な怪文書・救済の予言はテラカオスによる世界救済を確実なものにする手段。
主催は滅亡を防ぐために殺し合いを開催したが、「提督」はそれを利用して滅びの力を手に入れ、宇宙の絶対的な支配者になろうとしているかもしれない、か」
「提督に行き着く鍵は『悪魔』『科学都市ニルヴァーナ出身』、ここまでわかれば正体をしぼり込める!」

オオナズチが都庁にイチリュウチームが合流してから教えれば良いと思ったためか、竜殺剣や艦むすの件をドラゴンネットワークでギムレーに教えなかったため、流石にセルベリアが今、手に持っている剣が黒幕もといサーフ・シェフィールドが
使っていたものとは見抜けなかったが、尻尾を掴むための布石としては大きな前進であった。

「沖縄の異常気象も、原因は蒼によるもの……クラウザーさんの怒りだというディーの言葉はやはり間違っていた」
「これはクラウザー…さんの復活を望む君たち狂信者にとっても由々しき事態だろう。
復活させたところで二度目の大災害でクラウザーさんごとお陀仏だ。
しかも冥府の入口である死者スレも進攻を受けているときた」
「クラウザーさんもこのままでは……」

セルベリアも狂信者が暴れている裏で世界滅亡が目前に迫っていることまでは知らなかった故、衝撃を受ける。
このまま無軌道に生贄を狩り続けたところで誰にとっても未来はない。
先ほどセルベリア自身が述べた希望も黒幕に利用された挙句に失うことになるだろう。

「言っておくけど、僕がここに来た目的はあくまでオシリスの奪還であってビッグサイト破壊やクラウザーさん蘇生阻止じゃない。
関東を根こそぎ滅ぼす誘爆も不本意だし、本当は耐えられない。
君相手に僕一人では勝てないのは十分に分かった。
セルベリア、オシリスを返してくれないか。
せめて捕まえたという名目でビッグサイトに入れるか、ここは見逃してくれないか?」

ここでギムレーはセルベリアに交渉を測る。
オシリス奪還は絶対、ビッグサイトに入れれば狂信者の中に黒幕が紛れている場合は捜索ができ、見逃してもらっただけでも有用な情報を味方に持ち帰ることができる。

「馬鹿な貴様は敵だぞ、ビッグサイトに入れるわけがないだろう。
ちょっと対話したからって信用を得たなどと誤解するんじゃない!」

ビッグサイト侵入に関してはピシャリと言い放たれた。
まあ、侵入して黒幕探しならまだしも蘇生手段をついでに破壊される危険があるので当然と言えば当然である。

「……だが、一つ言っておくと、おまえが探し求めていたオシリスの天空竜はここにはもういない」
「じゃあどこに? 生きているのか?」
「残念だがもう死んでいる。加工された兵器は都庁との戦闘に投入された。
今頃、多くの魔物をSATUGAIしているだろう」
「そうか……」

彼女の話に嘘がなければオシリスはこの世にいないようだ。
だがそれは都庁及びドリスコルの部隊の手元にあるらしく、オシリスの力だけならばイチリュウチームと合流してから都庁と共に取り戻すことも可能。
ひょっとしたら既に合流した都庁かチームが狂信者から奪還した可能性さえある。
ビッグサイトに執着する意味は、現状では、なくなったのだ。

「では、見逃すのは……?」
「おまえが撤退したという体を取るならば、見逃してやってもいい」
「トホホ……この邪竜ギムレーが負けを認めろというのか」
「私情はない。
ここでおまえが私に打ち負かされ、やむなく退却したという形をとらないと内通を疑われ、私は他の狂信者から疑われる。
そうなるとディーの真意も探れないし、最悪ビッグサイトに提督が潜んでいた場合は警戒されて逃げられる、我慢しろ」

セルベリアは退却に関しては了承した。
蘇生したクラウザーさんが大災害で結局死に、黒幕が嘲笑うぐらいならば、目先のSATUGAIは後回しである。

476痛みの唄:2019/10/04(金) 13:32:46 ID:e/bigAbo0

「言っておくが私は、私たちはクラウザーさんの蘇生は絶対に諦めたわけじゃない。
黒幕さえ討伐し、大災害さえどうにかなったのならば次はお前たちだ。
次は勝てると思うな。我々はされに対策を洗練し強くなり、最後の一人まで戦うつもりだからな」
(……ああ、僕もおまえらを許したわけじゃない。
ここは負けを認めるが、次に敵として戦った時は根絶やしだ)

ギスギスした空気ではあるが、情報交換と交渉自体は恙無く終わり、セルベリアは鱗のテントから出ていこうとする。
本当に見逃してくれるようだ。





「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!?」

セルベリアが邪竜の背から飛び降りようとした瞬間。それは起こった。
突如、ギムレーが竜体・人間体含めて苦しそうに叫び出したのだ。

「ギムレー!?」

セルベリアが咄嗟に振り返るとギムレーの体から鮮血が噴き出していた。
それは器である人間ルフレだけでなく、今彼女が足場にしている本体である邪竜ギムレーからも…‥



『時間を稼いでくれてありがとう、セルベリア』
「その声は……ディー!」

セルベリアが地上の方を見ると、真紅の鎧をまとった異形……ディーの真の姿であるウィツァルネミテアがビッグサイトを背に顕現していた。

『ようやく、私の切り札であるネオ・ジオングスーツが完成したよ』

ネオ・ジオングスーツと名付けられた機械鎧をウィツァルネミテアは纏っている。
その大きさは元々のウィツァルネミテアとアーマー(ハルユニット)の分を含めて100mにも及んでいる。
ただそれだけではない、アーマーの背部からは光る黄金色のリングのようなものが出ていた。

『見せてもらおうか、サイコシェードの性能とやらを』

光輪・サイコシェード発振器から放たれた目に見えない力がギムレーの肉体を引き裂いていく。
しかもセルベリアの手元に竜殺剣があるとはいえ、彼女相手以外にはまだまだ堅牢な防御力を持っているにも関わらず、スキルや防御力が全く機能していなかった。
一方で、おそらく射線上に立っているハズのセルベリアは無傷。
この超常現象に二人は思わず同じことを口走る。

「「これはいったい……!?」」
『これが私の真の力……願いを叶える力。
それに思念に感応して力を増大させるサイコ・フレームの共振が呼び起こした奇跡の力だ!』

ディーもとい大神ウィツァルネミテアの隠された能力は「あらゆる願いを叶える力」。
その気になれば不老不死や、凡人に神の知恵を授けることさえ可能にしている。
そしてホモ共が乗っていたユニコーンガンダムに搭載されていたものと同じサイコ・フレーム。
乗り手の精神次第では大多数の機械へのハッキング、果てはコロニーレーザーや超巨大隕石さえMS一機で跳ね返してしまう奇跡を起こせる機構。

477痛みの唄:2019/10/04(金) 13:33:25 ID:e/bigAbo0

「バカな……そんなもので……神の出来損ないと機械如きに……ギムレーがやられているというのか?」

ギムレーは口惜しそうに呟く。
だが実際、抗う術もなく、ギムレーはたった一体の異形に追い込まれていた。

『ああ、今の願いはクラウザーさんを敬わない者の完全抹殺。
それをサイコシェードで実現しようとしているのだ。
故に仲間である狂信者を傷つけずに、君だけ殺すことも可能。
さらに相応の思念さえあればあらゆる耐性や防御力、スキルさえ無力化してSATUGAIもできる』
(だから私は影響を受けないと言いたいのか…?)

セルベリアが影響を受けていないのは、ひとえに彼女が狂信者であり、意図的にディーが殺さないようにしているためである。
実際のネオ・ジオングも相手武器だけ破壊してパイロットや機体にダメージを与えなかった。
サイコシェードによる攻撃を受けてもギムレーだけ殺してセルベリアだけ助けることも可能なのだ。

「だが、神とはいえ所詮は一人……混沌を食らう邪竜相手にここまでの力が出せるわけが」
『私だけの願いじゃないさ……おまえが先ほどまで見下ろしていた地上を見てみるが良い』
「……これは!」

ギムレーは竜側の瞳を持って、眼下を見る。
そこには先ほどまで絶望の表情を浮かべていた大量のモブ狂信者たちが……


……今では希望の表情を浮かべて、処刑されるギムレーと執行人のディーを見つめている。

「この思念は希望!? バカな!
こいつらは邪竜である僕を全く恐れなくなったというのか!?」
『そのとおりだ。君は我らDMC狂信者に絶対的な恐怖を与えに来たつもりだが。
セルベリアのおかげで、皆が希望を持てたようだよ』
「私が……」
『ありがとうセルベリア。
君がたった一人でギムレーをレ○プしてくれたおかげで、我々は強大な力を持つ邪竜にさえ優位に戦えると証明してくれた。
狂信者の絶望は裏返って大きな希望になった!』

ギムレーはビッグサイトに来た時に圧倒的な力で狂信者の多くを絶望の淵に叩き落とした。
だが竜殺剣を持ったセルベリアというイレギュラーにより、逆に圧倒されることになった。
それを見ていた観客である大量のモブ狂信者は強大な敵にさえ勝てる「ショー」を見たことで希望を持ったのだ。
今や狂信者のボルテージはギムレーがここにやってきた以前の倍ぐらいに膨らんでいる。
希望と絶望は裏返った時の落差が激しく、一度絶望しかけた彼らがセルベリアの活躍により希望側に裏返されたのである。


『正直、モブ狂信者は何人いても弱い。大半は素人の寄せ集めばかりだからな。

だが、このサイコフレームの力さえあれば彼らの数は力となる。
しかも死んだ者の残留思念さえサイコフレームは力にできる!
数千数万の狂信者の想いによってネオ・ジオングと私は最強の兵器に昇華されたのだ』

モブ狂信者は膨大な数があるが、いくら鍛えても上位のネームド参加者を越えることはできない。
端的に言えば一斉に襲いかかっても理不尽級ならばまとめて皆殺しにさえできるだろう。
しかし、だ。
思念には物理的限界がなく、思念が大量かつ統一されているならば、サイコフレームの放つサイコフィールドはより強固なものになる。
塵も積もれば山となり、それが邪竜の力をも凌いでしまったのだ。

478痛みの唄:2019/10/04(金) 13:33:50 ID:e/bigAbo0

「これが絶望の思念だったならば……く、邪魔を! 身動きが取れない!」
「「SATUGAIせよ! SATUGAIせよ!」」

ギムレーはなんとかサイコフィールドから抜けだそうとするが、モブ狂信者たちの砲撃が逃走を阻む。
先程まで失いかけていた士気は、もはや取り戻した分を越えて爆増していた。

「待てディー! ギムレーを殺したら……!」
『ビッグサイトへの落下なら心配するな、そうはさせないように完全消滅させる。
セルベリアはそろそろ脱出したまえ、サイコフィールドはともかく、ギムレー自身の消滅に巻き込まれるぞ』
「くっ……!」

セルベリアとしては黒幕である提督を探すための鍵として、内通者となるギムレーは殺したくなかったが、ディーや狂信者は聞く耳持たないだろう。
むしろ内通していることを明かしたら彼女も裏切り者と見なされてサイコシェードによって潰されるため、竜殺剣をディパックにしまいこむ素振りさえできなかった。。
クラウザーさんの蘇生に貢献することもなく、黒幕に一矢報いることさえできないまま死ぬのは不本意であった。
ギムレーの存在は惜しいが見捨てるしかあるまい。

「…………すまん、所詮は敵同士だ」

セルベリアはギムレーに振り返ることなくビッグサイトへ降りようとする。


「ははは……本当に大した狂信だよ……もはや神にさえ崇められるクラウザーが羨ましい。
勝利の差は信望の差か……これに関しては敗北を認めてやってもいい……」

去りゆくセルベリアにしか聞こえない声で、ギムレーは自嘲げに彼女に向けて呟く。
セルベリアの足が降りる直前でピタリと止まる。

「だが、おまえたち狂信者の目は信仰で曇りすぎている。
このままだと提督に足元を掬われるだろうな。

クラウザーへの信仰をやめろとはいわない。
だが、蘇生や救済の予言を完遂する前に提督を見つけだして必ず殺すんだ。
でないと、狂信者だとうと何だろうと関係なく……クラウザーを含んだ全てが未来を失う……」

セルベリアはそれだけ聞くと、ビッグサイトへ降りていった。

「皮肉だな……最後に黒幕殺しの役目を任せるのが狂信者になるなんて……」

ギムレーは自嘲する。
もはや体はサイコフィールドの重圧でくしゃくしゃになっており、人間だったらとっくに死んでいるレベルである。

(僕はどこで間違えたのか……
チームの誰かを連れて来るべきだったか?
いや、セルベリアの話を信じるならばオシリスの骸は都庁にある。
そのままチームとは別れずに都庁へ向かうべきだったか。
いや……誰かと相談したりせずになのはを殺そうとした時点で……今更だな)

瀕死の身で自身の行動を省みるが、たらればにしかならない。
ただただ悔しかった、この悔しさは対主催が大災害と提督を打ち破ってくれると信じないと晴れない。

「エラーを取り返したかったが、ここで退場か……こんなところではなく、チームが優勝するのを見届けたかったよ」

最期の言葉は、邪竜ギムレーの本心からの言葉であった。




無論、それらの言葉はディーには届いていない。

「坊やにひとつだけ言っておこう……
君は間違いなく強敵だったが、我ら狂信者の希望(きょうき)を侮りすぎのがいけないのだよ」

ディーはサイコフィールドでギムレーの巨体を東京湾の沖にまで誘導し、果実のように潰した後、大爆発を起こさせた。
その爆発はビッグサイトに被害を与えることなく、ディーは右腕を振り上げて狂信者たちに高らかに勝利宣言をした。
そのままウィツァルネミテアは鎧ごと格納庫へしまわれていった。


【ギムレー@ファイアーエムブレム 覚醒 死亡確認】


 ◆

479痛みの唄:2019/10/04(金) 13:34:49 ID:e/bigAbo0


画して、邪竜に勝利した狂信者であるがセルベリアの面持ちは晴れていなかった。
竜殺剣ドリスを片手に一人物思いにふける。
思い返すはつい先ほど死んだギムレーの遺言、このまま狂信者が進んでも未来はないということ。

(いったい提督はどこに潜んでいる……もっと情報を、誰かヒントを教えてくれ……!)

セルベリアの中で焦りが募っていく。
しかし完全な味方と言える存在は切歌やレジーナだけ。
あとは提督の疑いがあり、最悪モブ狂信者でさえある可能さえあるのだ。
手詰まりか? そう思った矢先である。

「!」
「チィッ!」

瞬間、背後から殺気を感じたセルベリアは咄嗟に竜殺剣で防いで凌ぐ。

「おまえは……小野塚小町!? なぜここに!」

セルベリアに剣を向けたのは、サイファーを持った小町――かつて自分を敗北に追い込んだ相手である。
小町はどこかで拾ったローブを被っていたが、その顔と特徴的な赤い髪に爆乳を見間違えるハズがなかった。
両者は殺気と戦意を込めて、竜殺剣とサイファーで鍔迫り合い、ついでにお互いにでか過ぎるバストをぶつけあう。

「セルベリア・ブレス……!」
「小町ちゃん!!」
「もうひとりいる!」

追撃するように、エンシェントソードを握ったあかりが側面から襲いかかるが、セルベリアは冷静にヴァルキュリアの槍を左手に具現化して防ぎ、剣と槍の二刀流による回転切りで小町とあかりを突き飛ばし、戦闘を仕切りなおす。

「セルベリア! なんでおまえさんが悪魔の力と竜殺剣を持っている!!」

小町が怒りと共に発した言葉。
その怒りの理由は世界に神々を殺して大災害を招いた悪魔がこの世に数点しかないハズの竜殺剣を持っていたからである。

 ◆

「ぐはッ!」

格納庫にて、ネオ・ジオングスーツを脱ぎ、人間体に戻ったディーは血を吐いていた。

「大丈夫ですかディー?」

心配そうな面持ちで、狂信者の技術主任であるサーフは倒れそうになったディーの体を支える。

「これは願いを叶える力の代償か……君の技術のおかげでできるようになったとはいえ。
よもや自分に使って代償を支払うことになるとはな」

実はウィツァルネミテアの願いを叶える力とは簡単に行えるわけではなく、代償があって初めて行使できるのだ。
例えば不老不死の願いならば死ねない代わりにスライム同然の姿と知性になってしまい、神の知恵が欲しいならば自我を失う必要がある。
だから他の狂信者や敵対者にも、この力はいままで殺し合いで使ったことはない。
もちろん、クラウザーさんの蘇生は不可能である。

そして「ギムレーをSATUGAIする」願いを叶えるためにディーは自身の魂の力を代償にし、サイコシェードを通して願いを叶えたのである。

「サイコフレームと数多の狂信者による思念の後押しがなければ、ギムレーより先に私が死んでいただろう。
それだけに完成を急いでくれた君や狂信者たちの熱いクラウザーさん愛に感謝しなければなるまい」

どれか一つでも欠けていたらネオ・ジオングスーツは究極の兵器とは言えないのだ。
余談だが、このサイコシェードのエネルギーをクラウザーさんの蘇生装置に回すことはできない。
精神を扱うため、エネルギーが不安定すぎるためである。

「サーフ、次にこのスーツを使用できるのはどれくらいかかる?」
「やむを得ない事態だったとはいえ急ごしらえと無理矢理な稼働でサイコフレームはガタガタ。
確実に稼働させたいなら早急なメンテナンスが必要です。見積もって三時間は必要かな?」
「二時間で終わらせてほしい」
「はい」
「まだ完成には至ってないことを気取られたら戦いは厳しくなる。
イチローたちも後に復讐にビッグサイトにやってくるのは目に見えている。
その前に完成させてほしい」
「わかりました」

ネオ・ジオングは辛うじて動かせるだけで完成はしていない。
しかし、完成したら最後、残る参加者を皆殺しにさえできる超兵器となりえるだろう。
相手の実力に関係なく、先に撃てれば敵の殲滅を約束できる核兵器……いや、味方だけ影響を受けないようにすることができるだけ、核兵器よりも有用な兵器を手に入れたのだ。

ただし、乗り手であるディーの魂を弾丸にしてしまうが。

480痛みの唄:2019/10/04(金) 13:35:13 ID:e/bigAbo0


「しかし無茶をしてくれますね。
一度失った魂の力は戻らない……最悪、あと一回でも使うと死ぬ可能性さえある」
「クラウザーさんの蘇生が叶い、あの方の敵を滅ぼせるなら構わんさ」
「あなたがいなくなったら誰が組織を率いるんです?」
「セルベリアに任せるよ。
狂信者敗北時の自爆にこそ反対されたが、それは彼女が真面目な証でもある。
引き継がせるなら最も信頼のおける人物だ」

ディーは自分がいなくなったあとのことも考えており、跡目としてセルベリアを推していた。
彼本人としてはセルベリアを信用しているのだ。

「……私は引き続き、司令室から狂信者たちに指令を出す」
「医務室にはいかないのですか?」
「時間が惜しいし、どうせ魂の傷は治らん。
君はスーツのメンテナンスを急いでくれたまえ」
「了解しました」

ディーはそれだけ言うと、ヨロヨロと自室へ戻っていった。
見送ったサーフは作業に戻りつつ、静かにほくそ笑む。



(せいぜい、手のひらで踊ってくれよディー)

この男こそ、クラウザーを間接的に殺害した元凶であることをディーは知らない。

(ネオ・ジオングスーツ……悪いが僕にとって有益になるように細工させてもらったよ。
僕や翔鶴に深海棲艦はもちろん、九州ロボに野球チームやテラカオスには効かないようにセットさせてもらった。
思念を操るとはいえどうせ機械だ。僕には制御可能だ)

他の参加者はもういらないので一掃されても構わないが、自分や自分にとって有益になる存在まで根こそぎ殺されるとサーフにとってはよくないので、予め細工を施されていたのだ。
なお、ギムレーはひとりで行動していたためプログラム的にはチームから脱退したと認識されたらしく、もし誰かがついてきていたら、チームにまだ残留されていると見なされて死なずには済んだかもしれない。

(ギムレーがひとりでやってきた時は流石に冷や汗かいたが、なんとかなかったな。
さて、ギムレーのせいでカオスロワちゃんねるが手付かずだ……1時間で戦況がどこまで変わったか調べねば)

サーフは凝った肩を鳴らしつつ、巨大スーツの整備を深海棲艦たちに任せて、自分は秘密の部屋でカオスロワちゃんねるの管理運営に戻った。
自分にネットのチカラで状況をコントロールせねばなるまい……そして不都合な情報は早急にシャットダウンせねば。と思いながら。



サーフと入れ替わるように、格納庫のとある通気口から三人の男女が現れた。
だが彼らは格納庫の狂信者たちに存在が気づかれることはない。
ステルス体質だから。

「……あれですね」
「ウィツアルなんとかは乗っていない、今が破壊のチャンスっす」
「モモは爆弾になりそうなものを探してこい。
俺と黒子はあの機体を調べて壊しやすいポイントを探す」

日之影、黒子、モモの三人はネオ・ジオングアーマーを破壊するために格納庫まで潜入してきていた。
あの兵器の威力はギムレーとの戦闘で目の当たりにしてきた小町たちは、黄泉レ○プマシンの停止と合わせて破壊を決意した。
那由多の狂信者の精神を得たサイコシェードとディーは最悪フォレスト・セルさえ殺害を可能にする超兵器だ。
フォレスト・セルが喪失したとなれば救済の予言は完遂失敗であり、世界は大災害によって滅ぶ。
そうならないために破壊を決意した。

幸い、使ってすぐに格納庫にしまいこんだところからして、機体は未完成かなんらかの事情により長く使うことができないだろうと影薄組は予測。
そこでセルベリアを拘束する班とネオ・ジオングを破壊する班に別れたのだ。

小町とあかりによるセルベリア捕縛からの黄泉レ○プマシンの停止。
日之影・黒子・モモによる超兵器の破壊。
果たしてうまくいくかは「神」にさえわからない。


 ◆

481痛みの唄:2019/10/04(金) 13:35:47 ID:e/bigAbo0

一方その頃、切歌とレジーナコンビはギムレーによる混乱を生き延びていた。
しかし一緒についていたサイドバッシャーは粉々に破壊されていた。
ギムレーの攻撃による流れ弾の直撃を受けたのだ。

「サイドバッシャーが!」
「また仲間を喪ってしまったデス……」

相手は支給品の機械とはいえ、仲間の死に悲しみの感情を覚える二人の少女。




(クックック、俺が真理と結婚する前に死ぬと思うなよ)

どっこいサイドバッシャーを破壊されても草加は生きていた。
厳密にはサイドバッシャーが破壊された直後にベルトであるカイザギアに憑依し、死者スレ送りを防いだのだ。

(おのれギムレー……と言いたいところだが、セルベリアたちが倒してくれたからヨシとするか。
やっぱり俺を傷つける奴は死ぬべきなんだ。

……それはともかく、あのネオ・ジオングスーツとやら異様に強かったな。
もしかしてグレートゼオライマーより強いんじゃないのか?)

ベルトさんみたいになった草加が新たに目をつけたのはサイコシェードを持つ、ネオ・ジオング。
あれに憑依すれば提督をぬっころして全世界を掌握することも不可能ではあるまい…と草加はみていた。


(決めたぞ、次はアレに憑依する! 切歌! 早く俺をひろ……ぷぎゃ!?)


野望を燃え上がらせていた草加入りカイザギアは何者かに踏まれて大破した。

「いてててて、なんかやけに硬いゴミ踏んでもーた」
「あなたは……」
「まっちゃん! 生きてたんデスね!」
「ああ、なんとかな。
クソ竜の攻撃を受ける直前に脱出して致命傷だけは避けたで」

松本はまだ生きていた。
直感でまずいと思った松本は大日本人との接続を切って項から脱出。
巨人の変身者特有の再生能力で死は回避したのだ。

「それよりも再会を喜んでる暇はあらへん!
すぐにビッグサイトの中に向かわへんと」
「え……どうして?」
「脱出する時、空中から一瞬見えたんや。
赤毛のツインテールがビッグサイトの玄関口にいたところ
……アレはたぶんネット上で名が上がってる乳神や」
「乳神……小野塚小町が!?」

松本の言葉に切歌もレジーナも驚く。
彼は偶然にも移動の為に一瞬だけしか召喚されなかった小町の姿を目撃したのだ。

「まさかギムレーの方は陽動……?」
「可能性は0じゃあらへん。
なんにせよ乳神は敵や、すぐに見つけ次第殺害せんと浜……クラウザーさんの蘇生装置が破壊される危険があるで!」
「そんなの許せないデス! ビッグサイトに急ぎましょうデス!」

482痛みの唄:2019/10/04(金) 13:36:15 ID:e/bigAbo0

新たなる敵の出現に切歌たちはビッグサイトへ急ぐ。
幸い、施設からはさほど離れていない。
仮に小町が何をしようとしてもまだ間に合うはずだ。

(クラウザーさんの蘇生を誰にも邪魔させないですよ、邪竜にも乳神にも!)
(クラウザーさんが蘇らないならマナのいない世界で私はどうやって生きていけばいいの? そんなの辛すぎるよ)
(浜田の蘇生のためにはどうしても装置が必要なんや! 邪魔する奴は死んでもらうでえ!)

それぞれの想いを抱きながら狂信者たちは走る。




(くっそう、やってくれたな松本めえ! ネオ・ジオングに憑依できたらいの一番に殺してやる!)

どっこいカイザギアを破壊された草加はしぶとく生きていた。
厳密には切歌たちには見えない霊魂となって彼女たちの周囲を漂っている。

(だが、切歌たちが俺が死んだと思い、ビッグサイトの中に向かっているなら好都合。
このまま格納庫の近くまで案内してもらってネオ・ジオングに憑依する……計画は完璧だ)

執念深い草加は何度壊されても諦めることなく、ネオ・ジオングの憑依と自らの蘇生への野望を燃やす。

(次はあれに憑依するか!)

彼が目につけたのは切歌のもつ鎌「イガリマ」だ。
超兵器憑依までの繋ぎとしてとり憑くにはちょうどいいだろう。

(さあ、俺の能力で    ピシッ      あれ?)

だがイガリマにとり憑いた瞬間に異変は起こった。
草加自身の霊魂が砕け始めたのだ。

彼は忘れていた……テラカオス化によって得た無機物への憑依能力を使えば使うほど、魂の力を失っていくことに。
眼魂・サイドバッシャー・カイザギアと憑依を短期間に繰り返した結果、彼の魂の寿命は急激に削れてとうとうゼロになってしまったのだ。


(そんな……俺がこんなところで……誰か助けてくれ!

こんなの嫌だ……全部全部、乾巧のせいだああああああああああああああああ!!!)



誰にも聞こえない叫び声をあげながら、誰にも知られることなく913の男は消えた。
消滅した時間が22時9分13秒だったりはしない。






【草加雅人@仮面ライダー555 消滅】
※物語がどのような結末を迎えても復活できません
※今年から913の日はなくなりました

483痛みの唄:2019/10/04(金) 13:37:06 ID:e/bigAbo0




【二日目・22時30分/東京都 ビッグサイト内部】

【ディー@うたわれるもの】
【状態】魂のダメージ(中/回復不可)、首輪解除
【装備】刀
【道具】支給品一式、クラウザーさんクローン×300、ネオ・ジオングスーツ
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、もしくは世界をSATUGAI(無理心中)する
0:戦況をチェックしたいので司令室に戻る
1:黄泉レ○プシステムをさらに盤石にするため、引き続きマグネタイトは回収する
2:ネオ・ジオングスーツが完成次第、サイコシェードで会場から非信者を一掃する
3:蘇生が不可能だと判断した場合は黄泉レ○プシステムを暴走させて世界を粛清する
4:自分が死んだ場合はセルベリアにまとめ役を引き継がせる
※首輪解除によりウィツァルネミテアの力をある程度解放できますが、空蝉であるハクオロの死体が見つかってなにので完全には実力を発揮できません
 また、蘇生関連の能力制限だけは首輪とは別の力が働いていると見ています
※パワーアップのためにネオジオング@機動戦士ガンダムUCを改造したスーツを開発中です
※沖縄の異常気象をクラウザーさんによるものであると思っています
※現存する組織のうち、あと三つ滅ぼせば黄泉レ○プシステムを起動できます
※サイコシェードを使うたびに願いを叶える力の代償として魂がダメージを受けてしまいます、これは回復できません
※ネオ・ジオングスーツがサーフにとって都合が良い人物は死なないように細工されていることは気づいてません


【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2】
【状態】健康、瑞鶴の提督、支給品扱いで首輪なし、全マントラ網羅、マスタキャンセラ常備(万能以外無効)
【装備】違法改造スマホ、四次元ポケット@ドラえもん(ディパック代わり)
【道具】カオスロワちゃんねるのサーバー、カピラリア七光線銃、結婚指輪
    深海棲艦イロハ級×200、深海棲艦鬼・姫級×10
【思考】
基本:蒼の源泉の力を手に入れる
0:ひとまずカオスちゃんねるのチェックに戻る
1:今は狂信者のフリをしてディーに従う
2:瑞鶴を操り、拳王連合軍に野球の試合を早急にさせる
3:真実を知った者は消す、そして殺し合いを加速させるものを助長させる
4:年増女(セルベリア)とシスコン仮面(ルルーシュ)は特に警戒
5:狙われると面倒なのでギリギリまで正体は隠す、必要のない戦闘は避ける
6:死んだ祐一郎の才能に嫉妬。ロックマンと翔鶴は必ず使い潰す
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※古代ミヤザキの末裔であり、蒼や蒼の源泉・テラカオスなどについて全て知っています
 ナノマシンに仕込まれたプログラムにより完成したテラカオスならば乗っ取ることも可能
 予言の中にある『歌』も所持
※悪魔化ウィルスによりリアルヴァルナへと変身可能
 サイヤ人の肉を食べたことで全スキルを網羅し、戦闘力が大幅増加しました
※まだ榛名によって都庁の軍勢に自分の正体が告発されたことを知りません


【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】己の拳、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
1:ネオ・ジオングを破壊する
2:小町や仲間を全力で守る
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:めだかに変わって世界を救わなきゃならないのが先代生徒会長の辛いとこだな。
※予言やテラカオスの真実を知りました


【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
1:ネオ・ジオングを破壊する
2:狂信者の暴走はクラウザーさん信者である私が絶対止める!
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:……多少落ち着いたっすけど、拳王連合軍だけは絶対に報いを受けてもらうっす
※予言やテラカオスの真実を知りました

484痛みの唄:2019/10/04(金) 13:37:28 ID:e/bigAbo0


【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】健康、首輪解除、超冷静、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】ウィンチェスターM1912、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】死出の羽衣@幽々白書
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
1:ネオ・ジオングを破壊する
2:仲間を全力支援、パス回しが僕の役目
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:平和な世界でみんなとバスケがしたいですね
※予言やテラカオスの真実を知りました


【二日目・22時30分/東京都 ビッグサイト屋上】

【セルベリア・ブレス@戦場のヴァルキュリア】
【状態】人修羅化、首輪解除
【装備】マロガレ@真・女神転生Ⅲ、竜殺剣ドリス@セブンスドラゴン
【道具】支給品一式、四条化した魔理沙の死体1/2
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、自爆はしたくない
0:小町を倒す
1:ビックサイト防衛部隊を指揮する
2:大災害の元凶である提督だけは絶対に殺す
3:自爆による心中は反対、最後まで諦めたくない
4:サーフに謎の違和感
5:最悪の場合はディー達を……?
  そろそろ、あいつらヤバイ気がしてきた
6:ゼロという男に対しての疑念
7:このままだと狂信者にも未来はないか……
※マガタマを取り込むことで人修羅化し、物理攻撃を無効化する敵にも物理攻撃でダメージを与える貫通のスキルを得ました。さらにポテンシャル『貫通攻撃』と重ねて防御力そのものも無効化できます
※竜殺剣を所持している限りは竜や龍に対して特攻ダメージを与えられます
※自爆による無理心中の件には納得がいっていない様子です
※ギムレーとの情報共有により、殺し合いの目的や救済の予言の意味、黒幕の存在を知りました


【小野塚小町@東方Project】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
    あかりのCOMPの中
【装備】サイファー@ストライダー飛竜
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:セルベリアを倒して捕獲する
1:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
2:何か必要があるまではCOMPの中に待機する
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:もう二度と仲間を置いて行こうとしない
5:時が来たらヘルヘイム扱いされた都庁の長ダオスを倒す演技をして世間の混乱を収める
6:悪魔の力に竜殺剣……セルベリアは何かを知っている!?
※ダオスとの情報交換で、カオスロワちゃんねるの信憑性に疑問を持っています(フェイ・イェンにもたらされた情報より、少なくとも都庁の悪評は天魔王軍による仕業だと理解しました)
※予言やテラカオスの真実を知りました
※小鳥発案の偶像計画のため、表向きは都庁の敵のフリをしています


【赤座あかり@ゆるゆり】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】エンシェントソード@Minecraft、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】マムルの肉@風来のシレン
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する!
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者に殺し合いをやめさせる!
1:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
2:都庁のみんな、あかりたちが戻ってくるまで無事でいてね……
3:世界の危機を前に主人公かどうかは関係ない! 世界のために頑張ってる人全員が主人公!
4:まさかセルベリアが大災害の元凶……?
※予言やテラカオスの真実を知りました

485痛みの唄:2019/10/04(金) 13:37:51 ID:e/bigAbo0



【二日目・22時30分/東京都 ビッグサイト近く】


【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】
【状態】決意、首輪解除
【装備】シンフォギア「イガリマ」、イグナイトモジュール@戦姫絶唱シンフォギアGX
【道具】支給品一式、クロエの首輪
【思考】基本:SATSUGAI、自分の生きた証として絶対にクラウザーさんを蘇らせる。
0:侵入した小町の阻止・SATUGAI
1:みんなの希望であるクラウザーさんは必ず蘇らせる!
2:風鳴翼については大いに失望
3:同じ狂信者仲間としてレジーナを大事にしたい
4:フィーネになってしまう自分の危険性を考慮し、クラウザーさんが蘇り次第、自分の命を断つ
5:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
6:サイコマンへの疑念
7:提督は見つけ次第SATUGAI
※自分が新しいフィーネになると思い込んでいるのは勘違いです
 よって、自分がフィーネになると勘違いしている時期からの参戦です
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません。


【レジーナ@ドキドキプリキュア!】
【状態】健康、首輪解除
【装備】ミラクルドラゴングレイブ、電子星獣ドル、シンフォギア「シュルシャガナ」
【道具】支給品一式、ギラン円盤
【思考】
基本:クラウザーさんの復活
0:侵入した小町の阻止・SATUGAI
1:クラウザーさんの為にすべての人や魔物をSATSUGAIする
2:切歌に友情を感じている
3:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
  ついでにサイコマンも警戒
4:提督は絶対に許さない
※月読調のギアの装者になりました
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません


【松本人志@現実】
【状態】ダメージ(中/回復中)、DCS状態+大日本人化、首輪解除
【装備】浜田雅功人形
【道具】支給品一式、メトロン星人人形、グラコスの槍
【思考】基本:浜田の蘇生
0:小町を殺し、蘇生装置を守る
1:狂信者のフリをしつつ、浜田蘇生の機を伺う
2:残り三つの組織が壊滅する寸前にビッグサイトの内部に侵入し、蘇生方法を奪って浜田を蘇らせる
3:浜田を生き返せないようなら一人でも多くの参加者をあの世に送る
※巨人の脊髄液@進撃の巨人を取り込んだことで大日本人に変身できるようになりました
 DCSの効果などで原作の大日本人よりは遥かに強いです
※深雪によりビッグサイトの中にある黄泉レ○プマシンの位置を把握しました
※浜田の魂が消滅したことに気づいていません

486何が可笑しい!!:2019/10/06(日) 00:33:04 ID:YGO.fsHI0
投下乙です
ここでギムレーがやられたか……
戦力面でも考察面でもかなり痛手だけど、セルベリア達に与えた影響は相当大きい
監視の屍兵消滅でアナキンも気が付くだろうけど、どうなるやら

487 ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:10:42 ID:RpHoSSuk0
投下します

488死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:11:26 ID:RpHoSSuk0
『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
プニキ          4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
(考え中)        6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト

(代打・代走)
ハクメン
瑞鶴(+メーガナーダ)




『聖帝軍 布陣』

犬牟田宝火(負傷中)   1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
高津臣吾         7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード


               拳 1-1 聖

――――――――――――――――――――――――――――――――――――



第三回の攻防が始まる……まずは表・拳王連合軍の攻撃。
ここでもメジャーリーガーでもあった高津のピッチングが猛威を振るった。
まずは剛速球で上条・シャドーマンタッグことイマジンスレイヤーを完封。

『アイエエエエエエエエエエ!
 プロの投球はニンジャ反射神経やニンジャ運動能力を凌ぐと言うのか!?』

敗れたジョジョに続いてディオとデューオがクロスフュージョンして挑む。
ザ・ワールドによる時間停止は対抗手段を持たぬ高津には有効……かに思われた。

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!?
球が重すぎて全然動かないぞ!!」

無駄無駄ラッシュの如くバットを叩き込むが投球はビクともしなかった。
投げられた際のパワーが桁違いであり、ディオの腕力では力不足だったのだ。

「こ、こうなれば…奥の手のデューオーバーヘブンで……」
『やめておけ、まだ試合も中盤なのに倒れてしまうぞ。
回復のアテも少ない、後にはイチロー・ドラゴンズの奴らも控えているのに最悪ここで再起不能になるのは勿体無い』
「くっ……今は機ではないということか」
『そういうことだ、使いどきは今じゃない。見送ろう』

リオレウス戦で発揮されたディオ最強の技「デューオーバーヘブン」による一分間の時間停止ならば、千を越えるバットのラッシュで高津の球を飛ばすこともできるだろうが、使用には極大クラスの疲労というバックファイアがデカすぎた。
一発のために博打を打つよりも、戦場に長く残り時間停止能力を安定して使い続けるために、ディオは「勝つために逃げる選択」をしてあえてアウトになることにした。


そして、打席は一巡し、一番バッターに戻る。
ということは高津と互角かそれ以上の実力を誇るメジャーリーガー・ムネリンに打順が巡ってきたということだ。

「あなたの球は見切った!」
「チッ!」

ムネリンはベンチにいる間に高津の投球を研究し、どこに当てれば良いのかを学習。
そして、見事にクリーンヒットさせたのだ。
しかし、狙いはホームランのような大きい当たりではなく、ワンバウンドさせてからのゴロだ。
ただし……

「ぐあッ! ヘルメットに土が!」
「計算通り」

球は高津の目の前で落ちたが、その際にマウンドの土が飛散し、それが高津を襲った。
ジェットマンのスーツに守られている高津には土によるダメージこそなかったが、視界は土で覆われ見えなくなってしまう。
それにより捕球できなくなった隙にムネリンは一塁へ走る。

「取らなくちゃ……!」
「……待て、犬牟田!」

ショートの犬牟田がゴロになった球を取ろうとするが、高津が慌てて静止する。
高津の静止よりも早く捕球してしまった犬牟田だったが、そのボールはグローブの中で未だに高速回転していた。
それは運動エネルギーという形で犬牟田に襲いかかる!

「なに!? 勢いがまだ死んでな……」
「かかりましたね」
「うわああああああああああああああああ!!」

一時間ほど前に闇がヒロインXを殺害した時と同じように、死にきっていない莫大な打球による運動エネルギーが犬牟田を襲う。
そのまま、腕の中の球に数十m地面を引きずられ、血しぶきと土煙を上げた。

489死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:13:01 ID:RpHoSSuk0

「犬牟田ーッ!」

高津の悲痛な叫びがスタジアムに木霊するが、ムネリンは何の感傷も抱かず……むしろイチローラブの障害をまた一つ取り除けたとして、喜々として一塁を越え、二塁へ走ろうとする。
このまま三塁まで、あわよくば一発ホームインを目指そうとするが、残念ながらムネリンの期待通りの進軍にはいたらなかった。
彼が二塁へ向かおうとした時、セカンドの闇のグローブに野球ボールが入ったのだから。
そして彼女に送球はしたのは死んだと思われたショート・犬牟田である。

「なん……だと……?」
「ゲホッ……! 死んだと思った? 残念、対策済みでした!」
「ふう、アタイの氷がギリギリ間に合って良かったよ」

犬牟田は血まみれのボロボロでこそあったが、確かに生きていた。
本当ならドラゴンハートの補正ありでもバラバラになりかねない一撃であったにも関わらずだ。
その理由は三塁にいるチルノが、先程も披露した氷の鎧による防御を犬牟田が吹き飛ばされる寸前に施し、彼の命を守ったからである。
更にボールも止まったところで近くにいた二塁の闇へ渡したことでムネリンの進軍も阻止できた。

「無事で良かったぜ犬牟田」
「イタタタ……ちょっと計算ミスがあるとすれば彼のパワーを侮って怪我をしてしまったことですね。
すいません……血が止まるまでベンチで休ませてもらいます」
「わかった無理をするな、それで良いなサウザー」
「ああ、了解だ」

相棒の無事を喜ぶ高津。
一方、辛くもムネリンの攻撃を止めた犬牟田だったが代償として手傷を負ってしまった。
ある程度治るまで戦場に立つのは危険であるし、犬牟田自身も負傷者が残り続けるのは危険であるとして退場することになった。
代えの選手もいない聖帝軍はショートと一番打者を欠いた状態で戦うしかない。


ムネリンの次はクロえもんであったが、ブラックホール打ちにこだわりすぎた結果、打てないまま三振してしまい、ムネリンの進軍の甲斐無く拳王連合軍の第三回攻撃は無得点で終了となった。

「俺、いちおう元から野球選手なのに扱いわるくねえか!?」




第三回・裏

「ダメか……!」
「あのメスゴリラの妖怪、氷の壁をぶち破ってきやがった!」
「フンッ」

スタービルドガンダムに乗ったレイジと、妖精王クラスの魔力を得たチルノでさえMEIKOのボールを捉えることはできなかった。
レイジはガンダムによる質量とビームサーベルのパワーを使って突破口を開こうとするが、MEIKOボールの威力はビームサーベルの出力よりも上であり、逆に突破され。
チルノは氷を使った防御や、投球の減速を狙うが、圧倒的パワーと殺意の前ではどうすることもできず、三振を許してしまった。
既に投球の余波(というかデッドボール万歳なMEIKOの投げ方)によりガンダムもチルノもダメージを少なからず負ったが、むしろ四肢がしっかりと残って生き残っているだけ、実力者の証左でもあった。

ツーアウトにより聖帝軍も拳王軍と同じく、打順が一巡した。
ただし、一番目のバッターボックス入って犬牟田がリタイアしているため、二番打者の紘太こと鎧武・極アームズが入ることになった。

(さっきは手も足も出なかったが、犬牟田が考案した作戦で行くしかない)

選手としては今試合は退いた犬牟田だが、ベンチ送りにされても休んでいるわけではない。
その頭脳でチームのために敵のデータを研究し、作戦として提供しているのだ。
紘太もまた、バッターボックスから出る前に作戦を受け取っている。

「へへ、ぶっ殺してやるぜ、MEIKOボー……」
「今だ!」

鎧武はMEIKOがボールを投げる前に、クラックから一本の槍を召喚し、バットと持ち帰る。
槍の名前はバナスピアー……ライバルであるバロンこと戒斗が使用する槍である。
更に槍を手にとったと同時に、MEIKOの足に黄色いバナナ状のエネルギーが絡みつく。

「なに!? フォームが……!」

絡みついたエネルギーにはさしたるダメージはない。
だが、この妨害がMEIKOが投げることに至って大事なものを奪うことになる。
MEIKOボールに圧倒的殺傷力を与えていた「黄金長方形のフォーム」それによる「無限の回転」が失われたのだ。

『極スカッシュ!』

先ほどのまでの勢いを失った状態で投げられたMEIKOボールに鎧武はバナスピアーによる必殺技、スピアビクトリーを放つ。
眼前まで来た球は剛速球でこそあったが破壊力は薄く、見事にバナナのエネルギーにクリーンヒットした。

「クソッ!」
「これが俺たち聖帝軍の力だ!」

490死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:13:58 ID:RpHoSSuk0

悔しがるMEIKOを尻目に打ったと同時に走る鎧武。
ボールの飛んだ先はレフト方面……即ちプニキが待ち構えているが、熊はボールが来てもまったく取ろうとする気配がない。
それもそのはず、プニキはバッターとしてホームランを取ることだけにしか興味がなく、打つこと以外の能力も極端に低い。
犬牟田は試合の中でそれを見抜いたために、他の選手たちに飛ばすならレフトであると指示を出したのだ。

「それぐらいは予測済みです!」

されど長らくプニキと付き合ってきた拳王連合軍には、熊が守備ができないことなど織り込み済み。
レフトへボールが飛ばないように、ショートのムネリンが射線をカバーするように配置されている。
元々そういう作戦であり、ムネリンは高くジャンプして打球を取ろうとする。

『イチゴチャージ』
「悪いな! 犬牟田の方はアンタがレフトを守るために動くことも予測済みだ」
「空からクナイが、イタタタ!」

走行中の鎧武は次なる手としてイチゴアームズの力であるクナイバーストを発動。
空から無数のイチゴクナイの雨が降り注ぎ、ムネリンにダメージを与える。
ムネリンを殺すには威力が足りないが、打球を掴ませないことには成功し、飛んでいったボールは放物線を描いてレフトに落ちた。

……え? 守備妨害の反則じゃねーかって?
カオスロワ式野球という名前の決闘にそんなルールはない。

ちなみにプニキは持ち場に落ちたボールを拾いに行こうともせず蜂蜜を食べている。


「こさせません!」

鎧武の次なる障害として艦載機を発進させた空母艦むす、一塁守備者の翔鶴およびクロスフュージョンしたロックマンが襲いかかる。
だが、鎧武は艦載機の攻撃に怯まず、前進しながら火縄大橙DJ銃を召喚しオレンジのロックシードをセットする。
するとオレンジ状のエネルギーが銃から発射されて無数の艦載機を飲み込んだ。

「沈め! ロックマン、翔鶴!」
『危ない! アイアンボディを!』
「はい!」

エネルギーは艦載機を全滅させた直後に翔鶴とロックマンを飲み込み、あたりを閃光に包む。
二人は直前に動けなくなる代わりにダメージを微量に抑えるアイアンボディのチップによる防御を行い、ほぼ無傷で攻撃をやり過ごす。
だが、その隙に鎧武には一塁を踏ませてしまった。
拳王軍にとって幸いなのは、この間にセンターの平等院がレフトのプニキに代わって(ついでに熊にゲンコツをして頭にタンコブを作らせた)球を拾って二塁に送球。
鎧武の二塁進行だけは防いだことか。

次にバッターボックスに入ったのはMEIKOから今試合始めてヒットを取った金色の闇。
再びラオウ同様に首から下がマッチョな体型となってMEIKOに挑む。

「また、それか……だがさっきこそ面食らったが、ダーリンの打ち方の欠点はわかっている」
「くッ……!」

ラオウの相棒であるMEIKOは、彼の癖や体格の都合上、打ちにくいコースがあることを知っている。
MEIKOはそこを的確に突き、闇からツーストライクをもぎ取った。

「次はど真ん中だ、イクぜ」

このど真ん中とは、心臓狙いということである。
次の一撃で闇を討つつもりである。
そして全力全開のMEIKOボールが放たれた。
嵐のような投球が、闇に襲いかかる。

実際に球は手に持つバットと筋力だけでは抑えきれず、闇を押しつぶそうとさんとした。


(なるほど……先ほどより格段に威力が増している。
ラオウの筋力を真似たところで打つのは困難ですね)

一方の闇は、文字通りの意味で死球が迫っているにも関わらず冷静であった。
なぜなら闇にはまだ討つ手があったのだから。

「これで、どうですか」
「髪の毛!?」

闇のトランス能力は全身に及ぶ。
髪の毛をラオウのような豪腕に変えて打つこともできるのだ。
闇は新たに作った髪の毛パンチで真上から打ち込んで、胸を抉るハズだった野球ボールを近くの足元にめり込ませた。
足元と言っても殴られた野球ボールは数mほど下の地中までめり込んでいるが……とにかくヒットである

「畜生ッ!!」
「やるな……」

MEIKOが叫び声とラオウの呟きと共に、ヒットを確信した闇と鎧武はマウンドを走る。
ラオウは地中に埋まったボールを掘り起こそうする。

「今度こそ突破は……」
「させない! 走れ、闇!」
『邪魔を!』
「ありがとう、コウタ」

一塁の翔鶴が再び、妨害のために艦載機を発進させ、ガンデルソルなどのバトルチップによる攻撃も加えようとするが、先に一塁を発った鎧武が火縄橙DJ銃による攻撃で翔鶴の攻撃を迎撃し、召喚したガンデルソルも破壊。
その内に闇はトランス能力で元の女性の姿に戻って一塁を突破する。
ロックマンは翔鶴を守るために防戦……すなわちインビジブルのチップを使って回避することにした。
怖気づいたのではない、聖帝軍の副リーダーである闇に懐に入られたら危険を察知したからだ。。

491死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:14:39 ID:RpHoSSuk0

「惜しい……あと数瞬とどまっていれば首をはねられたものを……」

ロックマンの勘は大当たりであり、暗殺者としては一級である金色の闇は一撃で殺害するつもりであったようだ。


場面は三塁へ走る鎧武に移る。
二塁にいたイマジンスレイヤーは、クラックから王の財宝の如く取り出した無数の武器で足止めに成功。
鎧武は彼に右手によるタッチを許さないように二塁をふみ、三塁へ向かう。

「滅ぼす……」
「それはこっちのセリフだ! 俺は大阪やたくさんの人々を殺害したおまえらを絶対に許さねえ!」

その前に鎧武はセンターから前面へと走ってきた平等院の相手をすることになった。
ショートにいるムネリンはどうしたって? 彼は直接殴り合う戦闘は専門外だから……

「平等院!」
「ジョジョ、助太刀は無用だ。
おまえはMEIKOからボールを受け取るためにも二塁から動くな!
あと一人でもアウトに追い込めば、スリーアウトでチェンジになる」

平等院は今にも持ち場から離れそうになったイマジンスレイヤーを制止し、鎧武との一対一の戦いを選ぶ。
鎧武はすかさず、火縄橙DJ銃による砲撃を放つ。
フルーツのエネルギーが立ちはだかる平等院に向かうが、彼はこれを待っていましたと言わんばかりに弾き返す。

「散れ……」

平等院が返すのは光る球(デストラクション)。
フルーツエナジーは光球となって鎧武に跳ね返る。

「まだだ!」

鎧武はここで単純な単純な防御力とパワーなら極アームズより上なカチドキアームズに変身し、光る球を耐える。

「ぐう! うおおおおお!!!」
「来るか!」

光る球はカチドキの鎧を破壊し、中身の紘太にも決して低くない打撃を与えたが、進軍を止めるには至らなかった。
鎧武はその身を再び、極アームズによる白い鎧に変えて突進してくる。
その手には大剣モードに変えたDJ銃……ロックシードを装着したところからして斬撃で決めるつもりか。

「滅びよ!」
『極オーレ!』

鎧武が放つオレンジ色の光・火縄大橙無双斬と、培ったテニヌの力を行使した平等院のラケット。
二つの全力がぶつかり、爆発を起こした。





結果としていえば、DJ銃は平等院の渾身のラケットひと振りによって折られ、平等院に届くことはなかった。

492死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:15:16 ID:RpHoSSuk0

……だが!


カチャッ

「!!」
「この距離ならラケットは振れないな!!」

鎧武の腕にはこっそりと召喚したブドウ龍砲なる銃が握られており、それが平等院の胸部を捉えていた。
鎧武はラケットを振って直接叩くことができないほど肉薄していたため、迎撃や防御は間に合わない。
次の瞬間にはブドウ龍砲が火を噴き、平等院の胸を貫いた。

いかな、人間を超越したテニヌプレイヤーといえ、攻守はラケットに依存している。
ラケットかそれに近しいものを振ることができない状況に追い込まれては戦闘能力は激減する。
それに気づいた鎧武は火縄大橙無双斬自体を囮にし、弾かれることをあえて念頭に入れてわざと振らせ、そこで産まれた隙に銃を叩き込むんだのだ。

「平等院……!」

未だに地面から野球ボールを掘り起こす作業をしていたラオウは倒れた平等院を見て、確かに言葉を漏らした。


「ラオウ、すま「トドメだ!!」」

平等院を確実に葬るために鎧武はさらに2、3撃追加で頭に向けて銃弾を放つ。
平等院の死体は、頭が粉々のザクロのようになった。



【平等院鳳凰@新テニスの王子様 死亡】



「貴様ら……!」
「よくも平等院を!」

平等院を殺した直後に聞こえてくる拳王軍からの怨嗟、そしてロックマンなど遠距離攻撃できる存在が、鎧武に向けて一斉射撃を放つ。
だが鎧武は慌てた様子はない。

「ここまでは作戦通りだ、あとは……」

後方を見ると一塁から二塁へ向かう闇の姿が見えた。

「よし、ここで一気に!」

闇は鎧武が平等院を下したと見るや、再度トランス能力を使用。
今度はサウザーのような細身のマッチョな体型になった。

『あの体型……まさか!』

シャドーマンがひと目で闇の肉体がサウザーに近いものに変わったとわかった時、嫌な予感を感じた。
そしてその嫌な予感は見事的中する。

以前に拳王軍から点を奪った時のように、闇はニトロエンジン付きの改造車の如く爆走を開始。
トランスによってサウザーと同じ速度を闇は手に入れたのだ。

『「アイエエエエエエエエエエエエエ!」』

二塁のイマジンブレイカーがどこぞのゴールキーパーのように闇に吹っ飛ばされて宙を舞った。
ジョジョとシャドーマンはサウザー化した闇に命を取られないだけで精一杯であった。

「闇!」
「さっきのお返し……捕まってコウタ!」

サウザー闇の速度は圧巻の一言であり、既に鎧武の背後まで迫っていた。
そこで紘太はあえて変身を解き、身軽になった体が闇の小脇に抱えられた。

「よっしゃあ! このまま二人でホームインするぜ!」

紘太と闇はこの状態でホームインし、一気に二点稼ぐつもりなのだ。
カオスロワ式野球のルールなら無論問題ない。
過去に二人でポジション守っていた守備もいたし。

「させるかよ……ダメだ、止められねえ!」

三塁のクロえもんが阻止に入ろうとするが、失敗して上条同様に吹っ飛ばされる。
紘太を抱えているせいか僅かに遅く、片手が塞がっている分だけ攻撃力も落ちているが、それでも高速の移動はできていた。
ロックマンたちの援護射撃もまた、すいすいと躱していく。

このままホームベースへ走りたい、闇。
だがベースの近くにはやっと野球ボールを手にしたラオウがいた。
まだベースは踏むには数瞬だけかかる。

(拳王がベースを踏む前に……!)
(同じチャンスは二度とないかもしれねえ、勝負に出るぞ闇!)
(ええ!)

493死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:15:45 ID:RpHoSSuk0

三塁を二人で踏んでしまった以上、戻るという道はない。
前進制圧しか道は残されていなかった。
ラオウが先に踏むか、闇たちが先かの勝負であった。

スピードは僅かであるが、闇の方が上だ。
しかし、拳王には剛拳があった。


「受けてみい、このラオウの無敵の拳・天将奔……」

ラオウは奥義の一つである天将奔烈を放とうとする……が、撃てなかった。
その射線上には三塁で倒れているクロえもんがおり、敵に当たろうが当たるまいがクロえもんが巻き添えになってしまう。


「……ただのブラフ! このまま押し通……」
「図に乗るな小娘が!」
「がッ!」

闇はかつてサウザーがラオウを突破した時のように高くジャンプして乗り越えようとするが、ラオウは同じ手は二度と食うかと、蹴りで闇を打ち落とす。
闇は寸でで髪の毛を盾のように硬化させて防いだが、ダメージを受け落下。
さらにボールを持っていたラオウに触れられたことでスリーアウトが確定した。
だがラオウの表情に喜びはない。

「……あの背が低いガキがいない!」

本当なら闇と一緒に倒れているべきの葛葉紘太の姿がなくなっていた。

「ここだぜ」
「いつの間に……」
「悪いが、アンタが闇に触れる前にベースを踏ませてもらったぜ」

ラオウが振り返ると、そこにはベースの上に立っていた紘太がいた。
彼は闇によって投げられ、ベースへと帰還を果たしたのだ。
他の者の目では紘太がスリーアウトになる前に踏む瞬間をはっきり捉えている。

すなわち……聖帝軍がまた一点をもぎ取ったのだ。
聖帝軍側ベンチからは歓声が沸き立ち、拳王軍側は平等院の死も含めて落胆の声が上がった。



               拳 1-2 聖


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

494死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:16:12 ID:RpHoSSuk0

時刻は22時27分。第四回表。
拳王軍の打者はラオウ、聖帝軍ピッチャーは高津。

高津はラオウに関しては以前の打席で食らいついてくるような危険性を感じていたが、それでもピッチング自体を放棄するわけにはいかない。

(ラオウ、おそらく一番危険な男だろう。
しかし、負けるわけにいかないし、負ける気もしない!)

高津の士気は最高潮であった。
犬牟田が、サウザーが、闇が、聖帝軍の者たちが死力と絆を持って拳王軍の罠を突破していく様に、これ以上ないくらい熱意を感じたのだ。
最初からプロ野球である高津が燃えないわけにはいかない。

(あの世で見てろ、ササキ。
俺は必ず、聖帝軍を優勝させて世界を救う!
おまえが大魔神軍で到達できなかったステージに、代わりに行ってやる!
だから、まだ魂が無事なら応援していてくれ……
ライバルである俺が強ければ戦ったおまえの株もあがるんだからな)

先に旅立った強敵(とも)に、心の中で誓いを立てつつ最高のコンディションで高津は剛速球を投げた。






「聖帝軍、貴様らは」
「!!」

「 貴 様 ら だ け は こ の 拳 王 が 絶 対 に 許 さ ん ! ! ! 」
「ッ!?」


相対していたラオウから発せられた強烈な殺気。
憤怒憎悪怨恨激情憤怒憎悪怨恨激情憤怒憎悪怨恨激情。
そのラオウの目は、覗いてしまった高津の士気が一瞬にして奪われかけるほどであり……

次に高津が目にしたのは、フォームが見えないほどの速さでバットを振ったラオウ。
そこで高津の意識はブラックアウトした。



【高津臣吾@ササキ様に願いを 死亡】



全ては一瞬の出来事であった。
ラオウがボールを打った瞬間、打球は高津のジェットマンのヘルメットすら突き破って彼の頭部を粉砕し、高津の血を帯びた野球ボールは聖帝軍の誰も捉えるころができまま、観客席に巨大クレーターを作った。
ホームランである。

聖帝軍が次に理解したのは拳王軍に一点取られてしまったことと、ピッチャー高津の死であった。


「た、高津さああああぁああああぁああああん!!」

ベンチから犬牟田の悲痛な叫び声が上がったのは、ちょうど22時30分の出来事であった。




               拳 2-2 聖

495死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:16:40 ID:RpHoSSuk0



『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
プニキ          4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
考え中          6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト

(代打・代走)
ハクメン
瑞鶴(+メーガナーダ)




『聖帝軍 布陣』

なし           1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
考え中          7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード



【二日目・22時30分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと1時間30分で異世界は消滅。
 それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)


【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
(支給品選手枠)
デストワイルダー@仮面ライダー龍騎

【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
※負傷により退場


【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【ハクメン@BLAZBLUE】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】

496エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:21:44 ID:IfalQ6jE0
6/らに安全と判断され苗木・霧切・キュゥべえはアウラのドラゴンの背に乗り、空でイチリュウチームとの平和的な接触が果たされるかに思われた。


「その娘と……ツバサを会わせるなあ!!」


それが二人と一匹を見た時のアナキンの、焦りと怒号の混じった第一声である。
元ジェダイの騎士にしてシスの暗黒卿、アナキンはフォースの力によって接触してきた苗木・霧切・キュゥべえの心を読んだのだ。
内二人は個人的復讐や生存に関する打算的な思いがあったのは確かだが、少なくとも世界の破滅――大災害を招きたがるような者ではなく、接触は有益と判断できたが、問題は残る一人である霧切。
彼女の心は崩壊しかけており、トラウマの原因であるツバサを引き合わせたら最後、確実に崩壊することがわかった。
絶望したら魔女になる魔法少女ならトラウマの火に油を注ぐことになる。

だが、アナキンの忠告は遅く、霧切はイチリュウチームに匿われているツバサを見てしまい……発狂、ソウルジェムは一瞬で真っ黒に染まり、砕けた。

「やめるんだ、霧切さ――」
「キョウコ……なにを、きゅっぷい――」

今にもツバサに飛びかかろうとした霧切を苗木は抑えつけようとするが、彼は触れた瞬間に彼女から溢れ出る魔力で一瞬にして蒸発。
せめて彼がダイヤの指輪に似た魔法石の効果を知っていれば結果は変わったかもしれない。
続いて近くにいたキュゥべえもまた、蒸発した。
キュゥべえは人間と違い、心や感情を理解できないために、ツバサを会わせた場合のリスクを予測できなかったのだ。

『キュゥべ……苗木ク……うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』

自らが原因で、親友二人を殺してしまったことにも魔法少女の絶望を加速させる。




私はただ、この世界の謎を解いて希望を見出したかっただけなのに――




その思考を最期に、霧切響子は絶望で死んで、魔女として生まれ変わった……
そしてイチリュウチームは咄嗟の判断で脱出できたラミレス・ホルス・ふなっしー、そしてツバサを除いて脱出不能の結界の中に閉じ込められた。

 □

魔女誕生による魔力だけで100名近いアウラの民が命を落とした。
姫巫女であるサラが民の死を嘆くが、クリスとシマリスは彼女を立たせようとする。

「なんてこと……また、多くの民が」
「サラ! 悲しみたいのはわかるが、手を止めてる場合じゃないぜ!」
「あの魔女をやっつけないと、ぼくらは全滅でぃす!」
「ええ……わかっています」

魔女の誕生から30分が経った。
幸いというか、ここまで生き延びたイチリュウチームのメンバーは猛者が揃っていただけに、ある者は直感的に回避し、ある者は優れた耐久力で、ある者は強い運に助けられ、またある者は野球による技術によって誕生時点で死亡したメンバーはゼロであった。
だが、そこからが真の戦いの始まりであった。

497エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:22:35 ID:IfalQ6jE0


霧切が巨大な魔女……宙に浮いている落書きのような希望ヶ峰学園のような見た目をしたソレは、体から出す魔力の結界でイチリュウチームを閉じ込めていた。

イチロー、ナッパ、6/、クリス、シマリス、ガレオン級のような火力に優れ、または遠距離攻撃ができるものは魔女に攻撃をしかける。
仲間になるかもしれなかった少女を攻撃するのは気が引けるが、アナキンと蛮の見立てによると魔女化した時点で霧切は既に死に、魔女は呪いの集合体でしかないと教わり、殺すことこそ霧切のためだと言われたため、仕方なく総攻撃を開始することにした。

レーザービーム、ジャイアントストーム、クルミボール、バレットパーティー、無数のクルミと火球が魔女に直撃する。

「……む、無傷!!?」
「なんて堅牢な結界なんだ! 俺のレーザービームさえ通用してない!」

だが魔女を守る結界は……彼らの総攻撃すらものともしなかった。
基本的に火力が控えめな胡桃使い二人、まだ発展途上のシンフォギア装者であるクリス、モブドラゴンならまだしも、イチローの魔王すら一撃粉砕せしめる投球やスーパーサイヤ人の攻撃さえものともしないと言えば、どれだけ規格外な結界かわかるだろうか?
更に言えば自分たちを閉じ込めている結界そのものにもイチローは既にレーザービームを投げたが、通用しなかった。
それと同じレベルの防御結界が魔女にも敷かれているのだ。

そして、魔女側からも反撃のロケットみたいな形状の魔弾が地上のイチローたちに降り注ぐ。
ロケットの威力はガレオン級たる大型ドラゴンが一発で消し飛ぶレベルであり、サイヤ人でもない限り直撃は死を意味していた。

だが前線に立つイチローたちはバット・エネルギー弾の乱射・胡桃・銃弾によって迎撃や回避に転じ、雨あられのように降り注ぐロケットを死人を出さずに切り抜けた。

「……こんな状況じゃなきゃ良い野球の練習になるんだけどね」
「言ってる場合か! アンタやナッパの攻撃でもダメって……どうすりゃいい! このままだとジリ貧だぞ!」
「焦るな6/、今度は一点集中で攻撃してみよう、どこかに弱点はあるハズだ」

なんとか戦線を奮い立たせようとするイチローであったが、彼自身もまた形成が不利であることは理解していた。
ドリスコルが乗るグレートゼオライマーでさえレーザービームの直撃には耐えられなかったであろうが、今度はそのレーザービームが直撃しても倒れない敵が現れたのだ。
宗則のようなホモ愛……もといメジャーリーガーのようにレーザービームを爆発する前に受け止められる存在もいなくはないが、直撃を受けて無傷な敵はこれが初めてである。

(この戦い……真正面からじゃ勝てないかもしれない、どうにか脱出口を見つけてくれ蛮!)




「はあ!」

イチリュウチームの後方ではアナキンがおり、双剣でイチローたちが迎撃しきれなかった魔女のロケット攻撃を斬り払う。
さらにその後ろでは蛮・はやて・サラの三人に数名のアウラの民が、穴を掘っていた。
塹壕作り……ではない。塹壕程度では魔女の攻撃で地面がめくれ上がってしまう。
魔女霧切から発せられた結界は地表のみで地下には及ばないのではないか?、と考え、地下から脱出口を作ろうというのだ。
結界の外に出れば、閉じ込められている時よりは希望があるし、最悪イチローでも倒せない敵から逃げてしまうことも可能になる。
魔女も都庁の勢力と合流できれば対処法もあるかもしれない。
首輪を外しているとはいえイチローたちの体力は無限ではないので、急ぐ必要があった。


「メタグロス、コメットパンチだ!」

蛮の指示によりメ6/から借りたメタグロスから放たれる強烈なパンチによって地下に大穴が空いて行く。
何発か打ち込み続け硬い岩盤やコンクリを砕いた結果、どこかの地下鉄トンネルへの道が開けた。
それはおそらく、結界外の場所にも繋がっている。

「やったで! これで皆を外に……」
「待て!」

脱出路が見つかったことにはやては喜び外へ踏み出そうとするが、蛮が制止をかける。
実際、蛮の直感通り、はやてのぬか喜びとなった。
明かりを灯すとその地下通路に繋がる道にも魔女による結界が敷かれていたのだから。

「そんな……」
「やはり異形となった彼女を討つ以外、道はないのでしょうか……」

どうやら結界は魔女を中心に、障害物に関係なく一定範囲内に設置されるようだ。
無理に突破しようとすれば苗木たちと同じく蒸発するだろう。
はやてとサラ、蛮、ついでにメタグロスは苦い気持ちを抱きながら仲間に報告するために、溜息を吐き肩を落とすように地上に戻った。

498エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:23:18 ID:IfalQ6jE0


一方、地上。

「……耐えきるだけならなんとかなりそうな気もする」

そう呟いたのは6/である。

「何を言ってるでぃすか、どうみてもピンチでしょうに!」
「待て待て、冷静に状況を考えてみろ」

一見、状況を呑み込めてように見える台詞だが根拠はある。

「確かに攻撃力や防御力は理不尽だが、肝心要の攻撃は大味だ。
アウラの民やまともな装備がないサラとはやては流石に苦しいが、他の面子なら防いだり弾いたりするのは余裕だ」

実際、魔女の攻撃はロケットらしき砲弾を乱射してくるだけ、避けるだけなら一定の実力があれば苦労はしない。

「外の様子はわからねえが、結界から脱出したラミレスやツバサたちは確実に生きている。
あいつらが都庁に辿りつき、都庁の連中が狂信者の攻撃を凌いで勝利していれば、救援も来てくれて外側から魔女をやっつけてくれるかもな。
となるとイチローやナッパで倒せねえ、蛮たちの脱出路を探す作戦もダメなら、俺たちがとる道は持久戦!
敵も魔力は無限じゃないだろうし、耐えきることなら勝機は見える!」
「そうですか……そう思うと少し気が楽になるでぃす」
「そうだ、最後まで希望を捨てちゃいけねえ!」

6/の持論は多少強引かもしれないが、シマリスや他の仲間にも光明を見せた。
都庁同盟軍からの救援が来るのなら、手数が限られているイチリュウチームよりは魔女を退治する手段があるかもしれない。
攻撃も脱出もダメだとわかったならば、それに絶望するよりは、終わらない戦いはないことを信じて耐え忍ぶ道を選べば希望も見えたのだから。









――そう、うまくいくかしら?






6/は油断していたわけでも、魔女がロケット以外の攻撃を持っている可能性を忘れていたわけではない。
相応の覚悟、注意、予測を立てたからこそ皆の前で希望を口にしたのだ。
彼の不幸は魔女のもたら絶望は予測を遥かに上回っていたことにある。

499エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:23:52 ID:IfalQ6jE0

「な、なんじゃこりゃあ!」
「6/! うわああああ!」

突如、6/の足元に魔法陣が現れたと思いきや、彼を中心に新たな結界が現れて仲間たちを押しのけるように追い出した。

「俺の周りに結界が!」
「助け出すんだ!」
「クソッ! 伝説のスーパーサイヤ人になった俺の力でもビクともしねえ!」
「ソウルエッジとソウルキャリバーでもダメだ!」

イチローたちは大慌てで結界に閉じ込められた6/を救い出そうとするが結界は割れる気配を見せない。
当の6/も内部から胡桃を投げて対抗するが、抵抗は無意味だと言わんばかりに胡桃を弾く。

「これは魔女の攻撃……!? どうすれば……」
「6/! 後ろだ!」
「え?! がッ!!」

仲間の忠告も虚しく、6/は閉じ込められ呆然としていた隙に何者かに羽交い絞めにされた。
彼を捕まえたのは魔女が生み出す『使い魔』であり、それらが地面から複数這い出て結界の中の胡桃使いを捕えた。
使い魔はいずれも禍々しい落書きのようなタッチで描かれた霧切に似ていて、いずれも6/レベルの腕力では追い払うことはできなかった。

そして使い魔の産み主である上空の魔女霧切から声らしきものが発声された。


――オシオキターイム!


……ノリノリの青狸みたいな声で。



『胡桃千本ノック、行きます』


使い魔がそう告げると、本当にいつの間にかの内に一体の使い魔の恰好が野球のユニフォームさながらとなり、6/から奪った千個の胡桃でノックを始めた。
明確な殺意と共に打ち出された球は動けなくなった6/に、正確無比に向かっていく。

「げふッ、ぐあああ!」
「6/、やめろおおおおおおおおお!!」

6/の顔や腹に打球が命中し、肉体を抉りながら流血させる。
そこから魔女の言った「オシオキ」とは「処刑」のことだと察した仲間たちは彼を助けるため(特にナッパは)自身の消耗を度外視して助け出そうとするが、結界は一切の揺らぎを見せなかった。

外にいる仲間たちの頑張りを嘲笑うように、内部での胡桃ノックはさらに威力と速度を増していた。
もはやノックというより速射砲であり、一秒間に何発打っているかわからない胡桃はいずれも6/に全弾直撃。
200発目までで歯の八割が折れて、400発目で両目を失明させ、600発で左足が複雑骨折し、800発目で選手生命である右手を失った。
そして900発目までに6/は悲鳴を発することもなくなり……

迎えた最後の1000発目では、全身から血を垂れ流すボロボロの革袋のようになっていた。

「6/……そんな……」

6/の死に仲間たちは失意を覚える。
もう何度目かわからない喪失のショックがイチリュウチームの心を抉った。








「か、……勝手に殺すなよ」

500エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:24:29 ID:IfalQ6jE0


「6/!」
「生きてた! まだ生きてるでぃす!」

否、死んだと思われた6/は、まだ生きていた。

「この俺が、げほッ、胡桃で死ぬことはあっちゃならねえ」

胡桃使いである6/は胡桃を受けながらも、飛んでくる胡桃の角度を計算し、僅かな微動で最もダメージの少ない部分にあたるよう調整していた。
それでも虫の息だが、千本ノックを確かに凌いだのでである。

「嘆くなよナッパ、シマリス。
俺は志半ばで倒れたハラサンや仲間たちのためにも、選手が野球をしないまま死ぬわけには行かねえんだよ!
必ず、イチリュウチームが優勝して、預言も完遂して、ツバサが世界を救うところを見てやるんだ!」

血反吐を吐きながら苦し紛れでも、声を絞り出す6/。
彼の宣言には一欠けらの闘志の鈍りも見せなかった。
そんな彼が仲間の視線を受けながら負傷も無視して立ち上がろうとする。

今、彼は東京と千葉の県境で最も目立っていた。
不屈の闘志を持つ野球選手◆6/WWxs901s氏にイチリュウチームとアウラの民の皆が注目していた。







『ハイ、通行の邪魔です』
「ぎゃッ!!?」

千本ノックを乗り越え、皆の注目を浴びていた6/の闘志は虚しく。
いきなりやってきたリリーフカーに高速で衝突され、彼の肉体は胡桃のカスか肉片かわからないくらい粉々になった。
彼の死と一緒に、彼を閉じ込めていた結界も消えた。


【◆6/WWxs901s氏@カオスロワ書き手 死亡】


「うおおおおおおおおおおおおお、よくも6/をおおおおお!!」
「許せない、でぃす!!」

ナッパとシマリスは6/を殺された報復として、霧切似の使い魔たちを拳や胡桃で殲滅していく。
流石に魔女より格段に戦闘力が低いことや、無敵の結界に守られなくなったこと。
何より6/殺害後は全く無抵抗にだったため使い魔たちはものの数秒で全滅した。
だが全滅した端から、魔女の中からまた新しい個体が生み出されて補充されていく。

「ナッパ、シマリスやめろ! 弾と体力の無駄だ」
「ナッパ様、親友を奪われた気持ちはわかりますがここは抑えて」
「うっうう……」
「チクショォォーーー!!!」

蛮とサラに制止され叫ぶナッパとシマリスは攻撃の手を止める。
使い魔をいくら潰した所で、本体の魔女には一切の打撃を与えることもできないのだから。


『うふふふ、味わってくれたかしら?
私は受けた絶望と悲しみ、そこから生み出された呪いを』

501エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:25:12 ID:IfalQ6jE0

ふと、聞き覚えのある声がどこからか聞こえ、イチリュウチームは振り向く。
声を発したのはすぐ近くにいた霧切似の使い魔…だが、ただの使い魔ではなく、白と黒のクマみたいな顔のマスクを被り体格も高校生相応、明らかに特別仕様と思われる者からだった。
警戒しつつ、アナキンは声をかける。

「おまえは他と違って知性があるみたいだな」
『ええ』
「喋れるってことはまさか響子ちゃん本人やんか……?」
『それは違うわ。
私はしいていうなら魔女となる寸前の霧切響子の残留思念を色濃く受け継いだ使い魔、コピー品みたいなものよ』

敵意を持っているとはいえ相手と意外な形でコミュニケーションが取れると思わなかったイチリュウチームは驚く。
ちなみに本体である魔女霧切も空気を読んだのかは謎だが、攻撃の手を止めていた。

「コピー品でも構わない、話し合いができるなら君にどうしてもお願いがある。
僕らをこの結界の中から出してくれ」
「オイ、何を言ってんだイチロー! こいつは6/を殺し――」

いちおう仲間を殺した怨敵である魔女との交渉を図ろうとするイチローにクリスは批判をするが、イチローは手で制した後、話を続ける。

「僕らは大災害で世界が滅ぶ未来を回避するために、どうしても都庁にたどり着いて、野球もしなければならないんだ。
大災害が着てしまえばTCという物質で響子ちゃんも含めて何もかも滅んでしまう。
6/を殺されたことは心が痛いが……もし逃がしてくれるなら攻撃したりしない、それぐらい大災害回避は僕らに取って急務なんだ」

なんとか残留思念と言えど響子に善意があることを信じて、訴えかける。

『ふふふ……世界を救いたい?

ふざけないで。
こんな腐った世界にうんざりしたから彼女は魔女に身を堕としたのよ。
何もかも滅んでしまえばいいんだわ、こんな絶望しかない世界なんて。
それに霧切響子は人としてとっくに滅んでいる……自分ごと世界が滅びてくれるなら嬉しいわ』
「くっ…!」

現実は非情、交渉は決裂である。
更にマスク越しでもわかるレベルで使い魔は凄む。

『彼女はこの世界の謎を解いて希望を見出したかっただけだった。
だけど世界は彼女が想像した以上にエゴに塗れて醜かった』

この使い魔の力なのか、彼女の背後に映像のようなものが映る。
そこに映るのはクライシス帝王、姫川友紀、安倍総理、Wゴロー、ハクメンそして食人鬼としての風鳴翼。
全員の瞳が、方向性は違えどむき出しの狂気に満ちていた。

『この世界の人たちは我良しなら他人はどうでも良い連中ばかり……
己の欲望のためならそれまで共にやってきた仲間を平気で裏切ったり、名声のために危険に晒すことも厭わぬ人。
無軌道な破壊と、自分が得をするために規則と合理性を盾に他者を食い物にする連中。
そして自分勝手な正義のために食い荒らす化け物ども……』
「待て、世界は悪い奴ばかりじゃない!
こうなったのも、殺し合いを仕向けた黒幕がいるからなんだ!」
『全部黒幕とやらが悪い? いいえ。
黒幕はきっときっかけに過ぎない…大災害と殺し合いで漸く、隠されていた人の本性が暴かれたのよ。
どうせ皆殺しにするんだから黒幕だろうが誰だろうが、関係ない』
「勝手な理屈を言いやがって! ただ自分が悲しい目にあったから他人も不幸にして良いと思ってんのか!」


イチローとクリスが反論すると映像には存命時の南光太郎、霊烏路空、矢車想、風鳴弦十郎、デカオの姿も映るが……いずれも無残な死体へと変わっていく。

「う……これは、総司令まで!?」
『確かに良い人もいたわ。
だがそういった人ほど悪人どもに利用され、騙され、殺される。
善人も心変わりしていつかは悪人になるかもわからない。
世界の闇に悶え苦しめられるぐらいなら善人も諸とも殺してあげた方が温情よ』
「だが滅ぼすことで助けになるなんて思い込みは――」
『そして……魔女となった霧切響子が最も許せなかったのは』

サラの意見を遮るように、最後の映像が流れたが、それはツバサを中心に守るように囲う、イチリュウチームであった。


『彼女の仲間や人々をたくさん殺した、食人鬼を善人だと思っていたあなたたちが匿っていたことよ!』

502エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:25:43 ID:IfalQ6jE0


「「!?」」
「待てよ、今の翼先輩は…ツバサは違うんだ、生まれ変わって食人鬼じゃなくなったんだよ!」
「それに理性を持ったテラカオスは必要不可欠、僕らの世界にはどうしても彼女が必要なんだ」
『誰がなんと言おうと罪人は罪人として裁かれるべきよ。だのにあなたたちは匿った。
主催による放送もあったのだから食人鬼のことを知らないとは言わせないわ。
信頼していた人を殺していった風鳴翼が英雄になることなんて私は認めない。
罪人の力を借りてでも助かりたい人々も世界も滅びて然るべきよ!』

霧切響子にテラカオス・ディ―ヴァの残滓であるツバサがどのような経緯で心身ともに生まれ変わったかなど、知る由もない。
否、仮に知ったところでツバサ一人に頼らざるをえない人々と世界に絶望するだけだろう。

「頼む話を聞いてくれ、それには深い事情があるんだ」
「諦めるんだイチロー」
「アナキン!」
「こいつは響子の残留思念、あくまで精神状態をなぞっただけの偽物でこれ以上は深い思考はできない。
ツバサを呪い、僕らを呪い、世に呪いの言葉を投げかけるスピーカーでしかない」
『ご名答よ、私はもちろん魔女が考えを変えることはない。そもそも彼女は自我だって残ってないのだから。
ただ呪いだけが残っている。
あなたたちが苦しむところを見たいというね』
「くっ……」

苦虫を噛み潰したような顔をするイチリュウチーム。
説得は無意味とわかったが、さりとて6/を一方的に処刑した隠し種を持っている。
その気になれば、全員先ほどのように結界の中で一人残らず皆殺しもできるのだ。
隠し種の正体がわからないと全滅である。
ではどうすればいい……そう考えていたイチリュウチームの足元に何かが落ちてきた。

落ちてきた物体の正体はウィザードライバーと、インフィニティリングだ。
持ち主と大半の指輪は吹き飛んだが、ベルトとこの指輪だけは破損を免れたらしい。

「これは苗木くんがつけていたベルトの…なんのつもりや?」
『ゲームをしましょう。
そのベルトには魔女と同じ魔力を込めた…それを嵌めて仮面ライダーになれば、変身者は結界の外へ出られる』
「一人だけ助けてやるっちゅうことか」
『話はまだ終わってない。
インフィニティスタイルの力さえあれば、今の弱った風鳴翼なら簡単に倒せる。
そして翼を殺して来たのなら結界を解いて、他の全員も逃がしてあげる』
「なんやて!」

これは取引だった。
ツバサをイチリュウチームの誰かが結界の外に出て殺しに行けば、ツバサ以外の全員を助けると言うのだ。
だが……

「できるわけねえだろ!
ツバサは仲間だし、世界を救えるかもしれない混沌の化身だ。
殺しちまったら世界を救えねえ!」
『あら、そう。
従わないなら魔女の呪いであなたたち八人を20分に一人、ランダムにオシオキしていくわ』
「魔女の呪い、オシオキ…さっき、6/を殺したアレか」
『あなたたちは予言の完遂のために化身の他にも野球をしなければいけないのよね?
残るメンバーは外に出た二人を含めても10人……あと最低2人死んだらチームで野球はできなくなるわね。
おっと、そこのモブドラゴンたちで人数を稼ごうなんて思ないでね。
彼らなんてイチリュウチームがいなくなったらオシオキなしでも全滅するから数に入れてないわよ。
それからツバサを殺さずにベルトを持ち逃げしたり、ベルトをつけたまま魔女に反抗したら即全員オシオキよ。
変な考えは起こさないことね』

ツバサを守ろうとすれば今度は野球チームが一つ壊滅する。
究極の選択であった。

『このゲームは化身か野球か、どちらかしか選べないのよ』
「ひ、卑怯でぃす!」
『彼女も食われて死ぬか魔法少女として生まれ変わるか、選択を迫られたわ。
突き詰めるとどっちも絶望だったわけだけど……あなたたちも同じ絶望を味わいなさい』

使い魔はほくそ笑みながら消えていき、そして魔女からの再度のロケット乱射と次のオシオキへのカウントダウンが始まった。

(く……どうすればいい、ツバサもチームも大事だ。片方だけ選ぶなんて僕にはできない…!)
(テラカオスは他になのはがいるが、どう見ても制御できてるようには見えない…不屈の勇者たるテラカオスを探しだすより大災害の方がきっと早い)
(だが野球チームの作り直しも難しい、考えている内に選手は減っていく……これまで以上に最悪の自体だな)

イチローが、アナキンが、蛮が、その場にいるイチリュウチームの対主催たちが戦いながら打開策を考える。
その窮地に比例して使い魔から託された希望を追い求め絶望の波にのまれた少年の忘れ形見、インフィニティリングが妖しく輝いていた。




 □

503エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:27:18 ID:IfalQ6jE0

その頃、結界の外側。
都庁からの救援として来たほむらは、オオナズチの背に乗り、空から重機関銃による射撃を魔女に向けて試みていた。
しかし、銃弾は結界は貫けず、蒸発するだけであった。
一方で結界の外への反撃も一切なかった。
ほむらは機関銃をリロードしつつ、オオナズチに話しかける。

「これだけ撃ってなぜ、反撃してこないのかしら?」
「一瞬で捻りつぶせる羽虫だから今は反撃する必要がないと思っているのか、それとも攻撃できない事情があるのかどちらかでしょう。
ほむほむが言う魔法少女の呪いが形になったものならば、何も考えてないって線もあるかもですなw」
「慢心か秘密か白痴か……いずれにせよ、それが私たちの付け入る隙にはなりそうね」

ほむらの盾の中には死した貴虎が所持していたN2爆弾が三つある。
起爆コードがなければ意味ないハズだが、これは出征前の天才ハッカー犬牟田がほむらが千葉へ旅立つ前に解除してくれた。
威力が高すぎるため、世界樹の前では使えず、魔物たちもこのような武器を嫌うので防衛戦闘には使えなかったが、生存者がほとんどいなくなったこの場所なら大丈夫だろう。

「この爆弾を三つ同時に発破すれば、あの魔女を倒す、もしくは大きな打撃を与えることもできるはず」
「結界の中で生きてるであろうイチローたちは大丈夫なんでしょうな?」
「そこは任せて、爆風がチームを傷つけないように調整するのには自信があるわ。
…問題なのは、この堅牢すぎる結界ね」
「ラミレス氏が言うには、このまま攻撃を続けてほしいそうですが、結界の穴を見つける前に弾薬そして中のチームは持つんでしょうな?」


魔女から町一つ分、離れた場所のとあるビルにはラミレス・ホルス・ふなっしー・ツバサがいた。
ふなっしーは怪我と消耗が激しいツバサとホルスを介抱し、ラミレスが双眼鏡を使って遠くから巨大魔女とほむらオオナズチたちの様子を見ていた。

「ラミレス監督、ほむらに攻撃させてるけどアレは意味あるなっしか?」
「弾の無駄遣いホル、仲間は気になるけどツバサだけでも都庁に送り届けた方が良くないホルか?」
「都庁ハマダ、狂信者ト交戦中。迂闊二向カウノハ危険デス。セメテ都庁ガ勝ッタトイウ報告ガアルマデ待ッタ方ガ良イデショウ。
ソレ二、ほむらサンタチ二攻撃サセテイルノハ無駄ジャナインデス」
「どういう意味なっし?」
「一見無敵二見エル結界モ、ドコカニ穴ガアルハズ。ソレヲ見極メル為二撃タセテイルノデス」

よく見るとほむらたちは適当に弾を撃っているのではなく、一か所に火線を集中したり、結界の違う場所を攻撃したりしている。
僅かにでも穴が開いたら、その穴にほむらは時間停止の魔法を使ってN2爆弾を魔女本体へ叩き込み、ダメージを負わせる作戦なのだ。
仮に失敗しても都庁の戦力と合流したときに、結界の特性を知ることができただけでも重要なデータとなるだろう。

「ンン?!」
「どうしたホル!?」
「今、確カニ弾丸ガ、バリアノ中ヲ通ッタ様二見エマシタ」



「オオナズチ、今確かに……」
「見えましたぞw たったの一瞬ですが結界が弱まって、たったの数発ですが魔女に弾丸が直撃したところを!」

撃ち続けていたほむらとオオナズチは、刹那の瞬間だけ結界が弱まり、魔女に命中したところを。
もちろんワルプルギスの夜以上の戦闘力を持っているであろう魔女霧切相手に機関銃程度では大したダメージにはなりえないが、結界が貫徹したことが大事であった。

この時刻はちょうど6/が魔女と使い魔にオシオキされた時間と一致する。
実はオシオキの瞬間だけ内部の対象者を確殺するためにエントロピーが集中するため、一瞬だけ結界が弱まるのだ。
ラミレスが言った通り、一見無敵に見えても相応の弱点が存在するようだ。

その事実にほむらはラミレスたちはまだ気づいてないが、ただの刹那の内でも結界を破った事実に、イチリュウチーム救出の希望を見出し、今度は武器を変えるなりして検証を続けるのだった。

504エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:27:51 ID:IfalQ6jE0




【二日目・23時00分/東京〜千葉・魔女の結界内】


【霧切響子(魔女)@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】

※外観は宙に浮いている劇団犬カレー作画の希望ヶ峰学園、結界の防御力はイチローのレーザーさえ貫徹できないレベルです
※呪いの力で20分毎に一人、イチリュウチームのメンバーを強制的にオシオキ(処刑)できます
 即死耐性は無効化、どんなに強くても結界の中にいる限り、強制的に殺されます
 オシオキから逃れるためには代表者を一人決めてウィザードライバーとインフィニティリングを装備し、結界の外にいるツバサを殺害しないといけません(殺害しなかった場合は結界の中のメンバーが全員オシオキされます)
※ただし、オシオキ中は結界の力が僅かに弱まる模様
 この瞬間のみ結界を貫けるかもしれません



【イチリュウチーム】

【イチロー@現実?】
【ナッパ様@ドラゴンボールZ】
【サラマンディーネ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
【アナキン・スカイウォーカー@STAR WARS】
【八神はやて@魔法戦記リリカルなのはForce】
【美堂蛮@GetBackers-奪還屋-】
【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
【シマリス@ぼのぼの】

【生存アウラの民】
スクーナー級×200、ガレオン級×15

※アウラの民はオシオキの対象外
 イチリュウチームが全滅すると守り手や指導者がいなくなって自動的に全滅します
※ギムレーの手で屍兵化されていたアウラの民は、ギムレーが死亡したため消滅しました。


【二日目・23時00分/東京〜千葉上空・魔女の結界外】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】
【ラミレス@横浜DeNAベイスターズ】
【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【テラカオス・ディーヴァの残滓『ツバサ』@テラカオスバトルロワイアル十周目】

505 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:28:17 ID:IfalQ6jE0
投下終了です

506隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:42:14 ID:O9KqTJGo0
ネオ・ジオングスーツ始め多くの起動兵器が深海棲艦により整備を受けながら眠る、東京ビッグサイトの地下格納庫。
そこには影薄キャラ特有のステルス能力で今まさに破壊工作を行わんとする三人の潜入者がいた。
セルベリア捕縛に向かった小町・あかりとは別行動を取っていた影薄三人組である。

「倉庫から爆弾を見つけてきたっす」
「罠の類もチェックしてみましたが、あの辺りの道を通っていけば問題なさそうです」
「ありがとよ二人とも、よし始めるか」

日之影たちは狂信者の新兵器破壊に必要な爆薬の用意や、工作活動前の下調べをしていた。
いかな存在感が薄い、忍者よりも忍んでいる連中とはいえ、油断は禁物。
食人海豹ぼのぼのにはステルスを見切られたこともあり、破壊には慎重を要した。

準備を終えた三人組は爆弾を抱えて警報などの罠を踏まないようにネオ・ジオングに接近していく。

(気づかれてないっすよね)
(ここで整備を行ってる奴ら、生気を感じないゾンビみたいで気持ち悪ぃな)
(まるで見てくれは生き物みたいなのに機械のようです)

黙々と作業を続ける謎の異形たちに影薄たちは小声で感想をこぼす。
都庁にも魔物という異形がいたが、こちらはまるで幽霊であり魔物と比べても異質であった。

影薄たちはまだ知らない、彼女たちはかつて艦むすと言われた人造巫女たちの慣れの果てであることを。



狂信者を束ねる神のために作られた赤い巨大鎧に影薄たちが肉薄する。

(近づくとやっぱでけえな……100Mはあるぜ)
(こんな大きいものを複数しまい込める場所を、二日足らずでビッグサイトの地下に作りこめちゃう狂信者のメカニズムも脅威っす)
(さあ、登ろうとましょう。装甲部分はともかく、内側からなら小さな爆薬でも有効なハズ)

三人がネオ・ジオングのあまりの大きさに驚きながらも、いざ登ろうとする。
だが、いざ登ろうとした瞬間。

「ッ!?」
「日之影さん!」

日之影は背後から気配を感じ、咄嗟に振り替えるとそこにはゴーグルとイヤホンをかけ、大きな篭手を三人に向けて振りかぶっていた少女型深海棲艦――集積地棲姫がいた。
明らかに整備のための行動ではなく、攻撃の準備。
迷っていれば自分も黒子もモモ死ぬ。
そう感じた日之影は彼女がこちらを攻撃する前に、先に拳で彼女の腹部を貫いた。
ドラゴンハートで格段に強化された拳は直撃ならば深海棲艦を一撃で葬れるクラスだ。

『ケンゾウシタ…シンヘイキ…ハ……ヤラセハ……シナイ………ッ!』

血なのかオイルみたいなのかよくわからない液体を腹の風穴から流しながら、集積地棲姫は格納庫の床に倒れ伏した。
そんな哀れな彼女の轟沈に感想を挟む暇もなく、周囲から砲口を向けられていることに気づく。
いつの間にやら影薄たちは格納庫中の深海棲艦に包囲されていることに気づいた。

「ひ、日之影さん……」
「これはまずいかもしれません」
「ああ……こいつらの対応があまりにも早すぎる。
どう考えてもこのゾンビもどきたちは俺たち影薄が『見えている』
ひょっとすると罠に嵌ったのは俺たちかもしれねえ……」

深海棲艦がどうやって影が薄いステルス存在を見抜いたのかは、日之影たちにはわからない。
ただわかるのは、彼女らの視線が当てずっぽうではなく真っ直ぐに影薄たちを捉えていること。
いつぞやの海豹のようにちゃんと見えていたということである。

「散開ッ!!」

深海棲艦の誰かが発砲するよりも早く日之影は他の2人に指示を出し、三者は格納庫の中でバラバラになって逃げだした。
この指示は的確であり、直ぐに深海棲艦による集中砲火が襲い掛かった。
ドラゴンハートとデモニカスーツのおかげで身体能力が上がっていたことも幸いにして、三人とも負傷せずに済んだのだ。
日之影は拳で、黒子は銃で、モモは刀と雀力で迎撃し、イロハ級程度の深海棲艦を倒していく。

507隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:42:43 ID:O9KqTJGo0

「やばいっす、まさか潜入に気づかれてしまうなんて……敵がどんどん来てしまうっす!」
「僕たちだけじゃなく他の場所にいる小野塚さんや赤座さんも危ない!」
「仕方がねえ、こうなりゃスピード勝負だ。
俺と黒子がけん制するからモモはよじ登って爆弾でこの赤デカいのをぶっ壊せ!」



「そうは……させないデスよ!!」
「チッ!」

強引にでもネオ・ジオング破壊を進めようとする影薄たちに、処刑鎌の連撃、飛翔する回転鋸、大きな槍がそれぞれに襲い掛かる。
日之影は槍を白羽取りし、黒子は散弾で鋸を迎撃、モモは防ぎきれなかったが雀力を防御に回すことでダメージを最小限に減らした。
デモニカスーツはところどころ避けてエロい感じになったが。

「モモ!」
「だ、大丈夫、また裸に逆戻りしそうな悪寒がするっすけど……」
「騒ぎを聞いて駆けつけてみれば」
「やはり侵入者がいたデス。まっちゃんが言った通りだったデス!」
「ビッグサイトはやらせへんで!」
「クソッ、厄介な連中がきやがった」

格納庫に馳せ参じたネームド狂信者は、狂信者のエースであるシンフォギア装者である切歌。
切歌と同じくシンフォギアの使い手となったレジーナ。
そして巨人への変身能力を得た「元」お笑い芸人・松本である。
強者である日之影だからこそ、三人の強さは周囲の深海棲艦の比ではないと。

「良いかい、切歌?
深海棲艦たちは影の薄い彼らを捉えられるように事前にセンサーを改造しておいた。
彼女たちが攻撃した先に敵がいる。そこを狙って攻撃するんだ」
「ありがとうデス、サーフ博士」
「なんや? 兄ちゃんは戦わへんのか?」
「……クラウザーさんを想う気持ちは確かだけど、科学者だけに戦闘は専門外なんだ。
僕は後ろに下がらせてもらうよ……君たちの武運を祈る」
「ええ! 任せて!」

切歌たちの後ろには黒髪Ⅿ字の研究者サーフもいた。
どうやら彼は戦闘はろくにできない代わりに深海棲艦に影薄が見えるように改造したらしい。
そそくさと物陰に隠れてしまった。

「博士……ということは技術者か!」
ちょうどいい、あいつを捕まえればディーやセルベリアを捕まえるまでもなく、黄泉レ〇プマシンをなんとかできるかもしれねえ!」
「何をぶつくさと、ネオ・ジオングとサーフ博士はやらせないデス!」
「お嬢ちゃん! 邪魔をすんじゃねえ!」

「何発撃ちこんでも無駄やで、生贄は殺害や」
(銃弾が効かない……!)

「アンタたちなんかにクラウザーさん復活阻止をやらせるもんですかあ!」
「私たちだって……負けられない理由があるっす!」

サーフを捕まえようとする日之影を止めるように切歌のイガリマが襲い、日之影は拳で押収する。
松本は黒子を狙い、黒子は銃で撃つが、ドーピングコンソメスープで得た鋼のボディと巨人化能力者特有の再生能力でビクともせずに吶喊する。
一方でレジーナはモモと相対し、ツインテール状のパーツに括り付けた鋸と斬鉄剣をつばぜりあう。
そして周辺からは絶えず放たれる深海棲艦の射撃。
ものの五分足らずでビッグサイトの格納庫に暴力という嵐が吹き荒れた。

508隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:43:46 ID:O9KqTJGo0



少し離れた物陰に隠れながらサーフは戦闘の様子を伺う。

(これは正直まずいな……)

その表情はこの殺し合いが始まってから初めてと言えるぐらい、渋い顔をしていた。
彼はカオスちゃんねるのサーバーと繋がっている違法改造のスマホで掲示板及び、各参加者のナノマシンから得た殺し合い全体の情報を見ていた。

サーフは殺し合いを表向きの主催であるベイダーたちにやらざるえないよう誘導した元凶である、インターネットや隠蔽工作を通じて殺し合いを裏から操っていた黒幕と言っても過言ではない。
だがそんな黒幕や支えてきた掲示板にも、全能でないが故の限界や穴はある。
彼はついさっきまでギムレー急襲のためディー専用兵器の製作を急がねばならず、その間は掲示板を見ることができなかったのだ。
彼が掲示板を見てない間に情勢は対主催だけでなく、彼にとっても悪化していた。


まず、一つが貴重なテラカオスの内一人が死亡し、残る一人や貴重な野球チームも魔女によって今まさに風前の灯火ということだ。
主催陣営がテラカオス化したなのはを黒き獣へのカウンターとして投入し、敗死させてしまった。
敗死までは予測できたが問題はツバサの方だ。
ツバサの近くで霧切が魔女化し、ツバサが魔女の力によって弱体化。
イチリュウチームも魔女の結界に閉じ込められてしまったのである。
自分が神になるための礎であるテラカオスはもちろん、イチリュウチームの全滅も予言が完遂できないため、サーフにとっても面白くない。
せめてなのはが黒き獣に勝っていれば……または霧切が魔女化しなければ、どちらか片方だけなら許容できたが、不運が最悪のタイミングで一片に来てしまったのである。
この未来がわかっていたなら人質であるユーノを主催より先に拉致するか、霧切をツバサに合わせないように計らっていた。


次に都庁に送りこまれた狂信者たちの戦況。
掲示板やナノマシンなどの情報を統合すると、ドリスコルたちはそれなり追い込んだが敗北したらしい。
全滅してないはずの現地の狂信者からの情報が途絶えているのでなんともいえないが、少なくともルルーシュが提案した人質作戦は無意味であったようだ。
一部偽物が混じっていたとはいえ非情にも人質にした魔物ごと攻撃したとある。
ここで問題なのは送り込んだ天龍がやられたということだ。
オシリスの天空竜のスキルを受けついだ天龍が一撃でやられるとは思わなかった。
あらゆるスキルを無効化するが故に、超性能を誇るグレートゼオライマーと組めば、余程の戦下手でもない限り負ける可能性は低い。
となると、オシリスのスキル無効化能力をさらに無効化する切り札が都庁にはあったということか?

(まさか……竜殺剣?
もしくはそれに類するものを都庁が手に入れたということか?)

サーフの脳裏に思い浮かんだのが、計画実行前に警告に来た真竜をなます切りにした竜殺剣ドリス。
だがドリスは狂信者からの信頼を勝ち取るためにセルベリアに献上した。
他の剣は存在しないハズだが、なんにせよチートドラゴンさえ葬れる何かが都庁同盟軍にあるのは確かだ。

(さらに現地に向かった深海棲艦たちからの応答は途絶えてる。
大半は死んだからわかるが、生き残ってる深海棲艦……特に戦況の監視係を任せていた867号から応答がないのがおかしい。
いったい都庁で何が起きているんだ? 遠巻きの情報しかない掲示板だけじゃ足りないぞ)

天龍とともに送り込んだ深海棲艦からも来るべき報告がこない。
天龍と共に全滅しているならまだわかるが、一部が生き残ってるから尚更送ってこないのが不可解なのだ。
この際、戦の勝ち負けよりも、何が起こってるのかわからないから怖いのだ。

(都庁でいったい何が起こってるんだ?
新たなに深海棲艦を送り込んで調査させるべきか……何か嫌な予感がする)

サーフはまだ知らない。
送り込んだ深海棲艦の一人が都庁の力と使徒の歌で浄化され、艦むすとなり、黒幕の名前をバラしたと。




そして何より問題なのは、目の前でも起こってる出来事。
小町たち、影薄組の襲来である。

(ナノマシンの信号からこいつらだけ都庁を離れて真っ直ぐこっちに向かってきていたから潜入してくるだろうと予期はしていたさ……ただ)

ディーにこそ伝えてないが影薄たちがビッグサイトに向かっていることをサーフは読んでいた。
だからセルベリアの防衛計画に便乗する形で潜入してくるだろう地下には信者以外は通れないゲートを作り、念の為にネームド狂信者も用意された。
深海棲艦にもナノマシンからの信号を読み取ることで見えない影薄組の位置がわかるようにもした。
一見、穴のない作戦に思われたが……

509隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:44:23 ID:O9KqTJGo0

(まさか、奴らの中にクラウザーの信者がいたのか……普通にゲートを突破されてしまってた。
そしてサイコマンンンンンンッーーー! 何が完璧超人・始祖だよ!
クソの役にも立ちゃしない、殺されるにしても30分程度は持たせろよ!)
直衛のサイコマンは暗殺であっさり轟沈。
ゲートもモモがクラウザー信者だったためにくぐり抜けられてしまった。
せめてサーフがネオ・ジオング作りに着手してなかったり、サイコマンが時間を稼げば、何らかの対応は取れたが後の祭りである。

影薄組にはビッグサイトの深部に入られ、格納庫では日之影たちが切歌と、屋上では小町がセルベリアと戦っている。



こうして彼がサーバーを覗いてない僅かな間に不運が重なり、黒幕でも看過できない問題が一片に重なってしまったのである。

(僕がすべてを手に入れるためのゲーム『カオスロワ』で勝つにはここからどうしたら良い?
貴重なテラカオスも野球チームも保護したい。都庁で起こってる事象を調べたい。
入り込んだ影薄組もなんとかしないといけない!)

涼しい顔を装いつつも、額には冷や汗を流す。
なんとか平静になるようこらえているが、もはや掲示板をいじるだけではどうにもならない事態になっている気がするのだ。

(まずは目の前のことからだ。
いっそ、必要機材と最低限の戦力だけ持ち出してビッグサイトから逃げるか?)


サーフとしてはネオ・ジオングスーツが破壊されてDMC狂信者が敗れても構わない。
ビッグサイトは狂信者を装えば安全地帯だったが、影薄組に侵入された以上、これからも安全である保証はない。
ネオ・ジオングのサイコ・フェードは強力無比で「計画にいらない存在」を駆逐する分だけ楽になるが、破壊されても計画自体に大きな支障は出ない。
狂信者の存在意義もこの男にとっては殺し合いの促進と落ち着いて殺し合いを管理できる安地、ついでに邪魔な奴らを一掃する手段程度の価値しかない。
もちろんクラウザーへの敬意など皆無だ。

(しかし、自爆を嫌がっていたセルベリアはまだしもディーがヤケを起こして黄泉レ〇プマシンを爆破させる危険もある。
影薄どもも黄泉レ〇プマシンが上層部が全滅すると自動で自爆する機能を知らずに二人とも殺して僕もろとも自滅させてしまう可能性もある……そうなると計画は水の泡だ。
やはり逃げずにネオ・ジオングは守るべきか)

マシンが爆発すれば貯められたエネルギーが一気に暴発させて関東中の参加者を皆殺しにする。
ビッグサイトにいる自分は支給品などで逃れたとしても、テラカオスやイチリュウチーム、下手をすると九州ロボやフォレスト・セルのような器まで全滅したら、自分ごと世界は大災害に飲まれてゲームオーバーである。

サーフは知らないが、影薄組は上層部を全滅させたら自爆してしまうことを知っているのでディーかセルベリアのどちらかは残すだろう。
だが依然としてディーは勝てない戦いなら無理心中を選ぶ考えの持ち主なので、兵器を守らなくてはならない。
切歌・松本のようなエース級狂信者は数えるほどしかおらず、ネオ・ジオングという切り札を失えば、狂信者は今度こそ勝機を失ってしまうだろう。
とはいえ戦闘に加担すれば魔女に襲われているテラカオスと野球チームを失ってしまうかもしれない。

狂信者を見捨てて逃げるか、それても狂信者の助けとなるか、サーフはジレンマに陥っていた。

510隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:44:50 ID:O9KqTJGo0




「……あなた、ひょっとしてマナさんが言っていたレジーナさんじゃないっすか!」
「あなた……マナのことを知ってるの!? 会ったことがあるの!?」

レジーナと争っていたモモは、ここで相手がかつて共に戦い亡くなったマナの探し人だと知り、刀を構えつつも声をかけた。
レジーナもマナのことを知りたいがために鋸を構える程度にとどめた。

「マナさんは……共に戦う仲間のプリキュアだった。
けども狂信者のラージャンに殺されてしまってっす!」
「え……嘘よ!」

マナを殺したのは自分を仲間として引き込んだ狂信者そのもの。
その事実にレジーナは衝撃を受ける。
本当だとすれば狂信者のマッチポンプもいいところだからだ。

「レジーナ、敵の話に乗せられちゃダメデス!」
「そうやそうや!」

切歌たちは、モモの出鱈目(ラージャンがマナを直接殺したことは知らないため)を信じるな、と言うがレジーナの、耳には届いていない。
一方のモモは続けて切歌や松本にも口を出した。

「あなたたちもクラウザーさんを真に信望してるならよく聞いてください!
このバカげた殺し合いは、それを開く原因となった大災害をたった一人の……竜殺剣を持った悪魔によって招かれた!
そいつが間接的にクラウザーさんを殺したも同然なんですよ!!」
(なんだと!?)
「これは……大災害を瀕死の状態で生き延びた竜の神様が、自分の消滅をも厭わずに告げた真実っすよ!」

モモの出した言葉に狂信者はもちろん、隠れていた黒幕さえも震撼させた。
大災害を竜殺剣を持った悪魔の情報……それはニルヴァーナの生き残りが全滅した現状では自分しか知らないはずだ。
徹底した情報隠蔽も行ったハズなのに、いったいどこから漏れたのか。
サーフはそれを知るとために耳が離せなかった。



【二日目・23時00分/東京都 ビッグサイト格納庫】


【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】己の拳、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ネオ・ジオングを破壊する、そのために格納庫にいる狂信者連中を倒す
1:クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
2:小町や仲間を全力で守る
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:めだかに変わって世界を救わなきゃならないのが先代生徒会長の辛いとこだな
5:俺たちのステルス能力が通じない? なぜ?
※予言やテラカオスの真実を知りました


【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、デモニカスーツ@真・女神転生SJ(ところどころ裂けた)
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具、爆薬
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:狂信者と対話をする
1:クラウザーさんへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
2:狂信者の暴走はクラウザーさん信者である私が絶対止める!
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:……多少落ち着いたっすけど、拳王連合軍だけは絶対に報いを受けてもらうっす
※予言やテラカオスの真実を知りました


【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】健康、首輪解除、超冷静、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】ウィンチェスターM1912、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】死出の羽衣@幽々白書
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ネオ・ジオングを破壊する、そのために格納庫にいる狂信者連中を倒す
1:クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
2:仲間を全力支援、パス回しが僕の役目
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:平和な世界でみんなとバスケがしたいですね
※予言やテラカオスの真実を知りました

511隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:45:14 ID:O9KqTJGo0


【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】
【状態】決意、首輪解除、イグナイトフォーム
【装備】シンフォギア「イガリマ」、イグナイトモジュール@戦姫絶唱シンフォギアGX
【道具】支給品一式、クロエの首輪
【思考】基本:SATSUGAI、自分の生きた証として絶対にクラウザーさんを蘇らせる。
0:侵入した小町の仲間をSATUGAIする
1:みんなの希望であるクラウザーさんは必ず蘇らせる!
2:風鳴翼については大いに失望
3:同じ狂信者仲間としてレジーナを大事にしたい
4:フィーネになってしまう自分の危険性を考慮し、クラウザーさんが蘇り次第、自分の命を断つ
5:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
6:サイコマンへの疑念
7:提督は見つけ次第SATUGAI
8:え? あの影薄い人が言っていたことって確かサイコバッシャーが……!
※自分が新しいフィーネになると思い込んでいるのは勘違いです
 よって、自分がフィーネになると勘違いしている時期からの参戦です
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません。


【レジーナ@ドキドキプリキュア!】
【状態】ショック、首輪解除 変身中
【装備】ミラクルドラゴングレイブ、電子星獣ドル、シンフォギア「シュルシャガナ」
【道具】支給品一式、ギラン円盤
【思考】
基本:クラウザーさんの復活
0:ステルスモモからマナのことについて聞く
1:クラウザーさんの為にすべての人や魔物をSATSUGAIする
2:切歌に友情を感じている
3:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
  ついでにサイコマンも警戒
4:提督は絶対に許さない
5:狂信者がマナを殺した……?
※月読調のギアの装者になりました
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません


【松本人志@現実】
【状態】ダメージ(小/回復中)、DCS状態+大日本人化、首輪解除
【装備】浜田雅功人形
【道具】支給品一式、メトロン星人人形、グラコスの槍
【思考】基本:浜田の蘇生
0:小町たちを殺し、蘇生装置を守る
1:狂信者のフリをしつつ、浜田蘇生の機を伺う
2:残り三つの組織が壊滅する寸前にビッグサイトの内部に侵入し、蘇生方法を奪って浜田を蘇らせる
3:浜田を生き返せないようなら一人でも多くの参加者をあの世に送る
4:? 何言ってるんやコイツ?
※巨人の脊髄液@進撃の巨人を取り込んだことで大日本人に変身できるようになりました
 DCSの効果などで原作の大日本人よりは遥かに強いです
※深雪によりビッグサイトの中にある黄泉レ○プマシンの位置を把握しました
※浜田の魂が消滅したことに気づいていません


【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2】
【状態】健康、瑞鶴の提督、支給品扱いで首輪なし、全マントラ網羅
    マスタキャンセラ・オートソーマ常備(万能以外無効、戦闘終了or逃亡成功時全回復)
【装備】違法改造スマホ、四次元ポケット@ドラえもん(ディパック代わり)
【道具】カオスロワちゃんねるのサーバー、カピラリア七光線銃、結婚指輪
    深海棲艦イロハ級×190、深海棲艦鬼・姫級×9
【思考】
基本:蒼の源泉の力を手に入れる
0:物陰に隠れ、ステルスモモの話を伺う
1:今は狂信者のフリをしてディーに従うが、旗色が悪くなったらビッグサイトから逃げる
2:瑞鶴を操り、拳王連合軍に野球の試合を早急にさせる
3:真実を知った者は消す、そして殺し合いを加速させるものを助長させる
4:年増女(セルベリア)とシスコン仮面(ルルーシュ)は特に警戒
5:狙われると面倒なのでギリギリまで正体は隠す、必要のない戦闘は避ける
6:死んだ祐一郎の才能に嫉妬。ロックマンと翔鶴は必ず使い潰す
7:都庁に向かった深海棲艦たちはいったい何をしてるんだ?!
8:可能であればイチローチームとテラカオス・ディ―ヴァ(ツバサ)を助けに行きたい
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※古代ミヤザキの末裔であり、蒼や蒼の源泉・テラカオスなどについて全て知っています
 ナノマシンに仕込まれたプログラムにより完成したテラカオスならば乗っ取ることも可能
 予言の中にある『歌』も所持
※悪魔化ウィルスによりリアルヴァルナへと変身可能
 サイヤ人の肉を食べたことで全スキルを網羅し、戦闘力が大幅増加しました
※まだ榛名によって都庁の軍勢に自分の正体が告発されたことを知りません
※ナノマシンからの信号を通じて深海棲艦は影薄組のステルス性を無視して攻撃できます
 また、深海棲艦が攻撃した場所を辿ることによって切歌たちも攻撃ができます

512クラウザーさん、やっと復活するの巻:2020/03/15(日) 19:05:04 ID:.3MasLDc0
「新バンドを組んじゃいかんのか?」
 巨人小笠原の一言がきっかけだった。
「構わないだろう」
 それにアンドリューW.K.が答えた。
「……そうだ、俺達6人の友情は不滅だ!」
 シンが主人公らしい台詞を叫ぶ。
「『僕は野球をやってるカス共を殺せればいい』」
 球磨川がカッコつけて言う。
「そう、そして私達が……」


「「「「「『正義だ!!!』」」」」」


 こうして正義の名の下に根岸崇一と野比玉子症候群予備軍の四人と球磨川はド派手にバンドを結成した。
 復活方法とは前の話に書いてある通りだ。
 そして、復活のエネルギーが少し余ったので死んだDMC狂信者達も復活した。
 初ライブの会場は東京ビッグサイト。コミケ会場だ。


【四日目・0時00分/東京都・東京ビックサイト】
【根岸崇一@デトロイト・メタル・シティ】
【状態】クラウザーさん
【装備】ギター
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
0:黒幕のサーフを殺す
1:新DMCと復活信者共を率いる
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【田井中律@けいおん!!】
【状態】健康
【装備】拳銃@現実
【道具】支給されていない
【思考】基本:主役になる。
0:新バンドの結成だッ!!
1:私が正義だ。
2:けいおん!!の真の主役になり、世界を超越し、完全体になり、私の国を手に入れる。
3:騒音を撒き散らす連中は悪だ。
4:ちなみに私達は正義だ。
5:故に黒幕のサーフも殺す。
6:私達が正義だ。悪は許さん。
7:何度でも言う、私が正義だ。
8:だが、正義なんて言葉、チャラチャラ口にする奴も許さん。
9:もう私達は死ぬことはない、何故ならば正義だからだ。
10:正義は死ぬことはないからな!
11:しかし、本当に死んだらどうしようか?
12:そしたら、また復活するだろう!!
※ドラム担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【巨人小笠原@なんJ】
【状態】アンドリューW.K.と合体中
【装備】バット、ベース
【道具】不明
【思考】基本:今度こそ生き残る!
0:(贔屓されちゃ)いかんのか?
1:(男と合体しちゃ)いかんのか?
※ベース担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【アンドリューW.K.@現実?】
【状態】健康、巨人小笠原と合体中。
【装備】自前のギター
【道具】支給品一式
【思考】
基本:復活祭とか言うパーティーに参加する。
1:しかし、なんか快感だ!
※ギター担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

513クラウザーさん、やっと復活するの巻:2020/03/15(日) 19:05:18 ID:.3MasLDc0
【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
【状態】健康、ケツが真っ赤。
【装備】デスティニーガンダム
【道具】支給品
【思考】
基本:自分が主人公になって黒幕のサーフを倒す
1:しかし、なんか快感だ!
※ドラム(楽器)担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【球磨川禊@めだかボックス】
【状態】健康
【装備】大螺子
【道具】支給品一式
【思考】
基本:???
1:『野球やってるカスどもを殺す』
※ピアノ担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【狭間偉出夫@真・女神転生if...】
【三島一八@鉄拳6】
【蟹座のデスマスク@聖闘士星矢】
【明智光秀@戦国BASARA】
【衛宮切嗣@Fate/Zero】
【デスマンティス@世界樹の迷宮4】
【ラージャン@モンスターハンター4】
【トキ@北斗の拳】
【KBSトリオ@真夏の夜の淫夢】
【比那名居天子@東方project】
【中野梓@けいおん!】
【柊つかさ@らき☆すた】
【その他DMC狂信者だった人たち全員@いろいろな作品】
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

514何が可笑しい!!:2020/03/16(月) 19:59:30 ID:4J8QErSA0
野比玉子症候群患者は復活不可なんだよなあ……(5270話参照)

でもインスピレーション湧いたから、これが通しで良いなら
あくまでルートの一つとしてのDMC完勝エンドを作ってみようかな

515クラウザーさんが復活すると言ったな? アレは多分まだ嘘だ:2020/03/17(火) 08:34:33 ID:rCr6FTDY0
ここは死者スレ。
未だに蒼の使者である黒き獣の影と死者の戦いは続いている。


「という作戦なのさ!」

前話(5289話)におけるクラウザーさん及びDMC狂信者軍団の大復活は田井中律による妄想……および作戦であった。
ご存じの通り、この世界の律はテラカオス化する前からデフォルトで狂ってるので雑でツッコミどころ満載で粗が目立つのも仕方がないことなのだ。

しかし、この作戦は狂った思考の持ち主であるネームド狂信者には意外と大受け。
一部修正すれば絶対に不可能ではないのではないか、という結論に至った。

「サーフが黒幕なのは死者スレでは既に周知の事実」
「狂信者すべてが復活すれば全員がサーフ処刑と大災害対策に動ける!」
「だがこの作戦にはクラウザーさんと(能力的な意味で)頭のおかしい技術者が必要不可欠だ」
「頭おかしい技術者には光裕一郎がいるじゃないか」
「「「それだ!!!」」」

死者の中には間違いなく今期最強の技術を持つ裕一郎さんがいる。
彼ならばごく短時間で黄泉レ〇プマシンを再現し、現世へ戻ることも不可能ではない……多分。
クラウザーさんはもちろん、蘇った時に狂信者たちを統制する必要があるので裕一郎さん以上に必要不可欠な存在である。

「だが、クラウザーさんも裕一郎も広い死者スレのゴタゴタの中で行方不明だ」
「ならばナイトである私と狭間が探してこよう」
「もうサーフは師匠とは思わん、カルナの前に突き出して尻穴に槍を突き刺してもらわないと気が済まない!」

ナイトと魔人皇は作戦の要である、行方知れずのクラウザーさん・裕一郎を探しに向かった。



「ところでりっちゃん、クラウザーさんや俺たちの復活のためのエネルギーはどうするんだ?」
「ああ、それならそこらじゅうにあるじゃねえか?」
「そこらじゅう……ああ、なるほど狂信者以外の参加者の魂を破壊して私たちの復活のためのエネルギーにするのですね?」

律の後ろには、ロープで縛られた罪のない死者の魂たちが怯え震えていた。

「……なるほど、やることは現世のそれと変わらないってことですね!」
「そうさ、残酷だが世界を守り、クラウザーを復活させ、私が目立つには仕方ないことだぜ」

つまるところ、ここにいる集団は現世でもやらかしていた狂信者の横暴を働こうというのだ。
復活エネルギー確保のために、味方以外の死者を虐殺するという忌まわしき暴力を。
その暴力を、ここにいない狭間と天子、律の作戦に乗り気じゃなかった狂信者を除いて賛同し、現世のように死者スレを血に染めようとしていた。


「そう、そして私達が……」


「「「「「『正義だ!!!』」」」」」







「何が正義だ! このバカモノども!!!!」

声高々に上げた根っこまで邪悪系狂信者と律達だったが、そこにブチ切れシグナム率いるまともな参加者軍団に包囲され、全員御用になった。

そして、カルナに尻の穴に槍をねじ込まれて魂を喰らわれ、宝具ブッパのエネルギーになりました。


「そんな、私が正義のハズなのに……」
「随分、尻の穴の小さい正義だな」

ドスッ

「アッーーーーーーーーーーーーー!!!(迫真)」


今日も死者スレは地獄です。

516クラウザーさんが復活すると言ったな? アレは多分まだ嘘だ:2020/03/17(火) 08:35:03 ID:rCr6FTDY0




※以下のキャラたちの魂が消失しました
 物語がどのような結末を迎えても復活できません

【田井中律@けいおん!!】
【三島一八@鉄拳6】
【蟹座のデスマスク@聖闘士星矢】
【明智光秀@戦国BASARA】
【衛宮切嗣@Fate/Zero】
【デスマンティス@世界樹の迷宮4】
【ラージャン@モンスターハンター4】
【トキ@北斗の拳】
【KBSトリオ@真夏の夜の淫夢】
【中野梓@けいおん!】
【柊つかさ@らき☆すた】

※そもそも5270話において蒼の力で消滅しています
【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
【球磨川禊@めだかボックス】
【巨人小笠原@なんJ】
【アンドリューW.K.@現実?】


【二日目・23時30分/静岡県・富士樹海・死者スレ内部】
※根岸崇一(クラウザーさん)、狭間偉出夫、比那名居天子は復活していません
 すべて田井中律の妄想です


【カルナ@Fate/Apocrypha】
【状態】宝具ぶっぱで常に魔力消費
【装備】自身の槍、黄金の鎧
【道具】不明、同盟の悪魔将軍・アタル兄さん、正気に戻ったシグナム
【思考】
基本:使命に従い、死者スレを守る
1:罪人を魂喰いで魔力をチャージし、宝具コンボでシャドウであった者の影から死者を守る
2:オレの宝具は尻に刺す道具じゃないんだけどなぁ……
※死者スレにいる罪人(特に酌量の余地がないもの優先で)を魂喰いすることで魔力を補っています
 ただし、罪人だけの魂ではあと7時間しか持たず、それ以上は善人の魂を消費しなければいけません
 死者スレで魂喰いされた存在は物語がどんな結末を迎えても、二度と復活できません
 魂がないのでサイボーグ化復活も不可

517何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 19:36:02 ID:mjsv5bok0
魂消滅させるなら全員やれよ……省いた奴贔屓したいの?

518何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 20:13:56 ID:rCr6FTDY0
逆だ
全員消したらヘイトだと思われるだろ

519ズガン:ズガン
ズガン

520何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 20:31:34 ID:PWXnNpKQ0
アレはゴタゴタになった辻褄合わせのために仕方なくそうするしかなかったって言ったでしょうに・・・
嫌なら他に良い案を出せば良かったでしょ

521ズガン:ズガン
ズガン

522何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 21:52:33 ID:PWXnNpKQ0
付き合いきれん
おまえさんが単に狂信者が嫌いなだけじゃんか
文句があるなら似たようなことになってた他の組織にも言えよ

誤解なきように言っとくけど俺は全部好きだが

523何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 22:19:33 ID:VLoSqlOw0
クラウザーさんなんて適当にズガンされた奴なんてほんとどうでもいいし、それを無理に持ち上げてる寒い連中としか思えないね>DMC狂信者

524何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 01:28:40 ID:ECkbG7Io0
この人に賛同する訳じゃないがやっぱし十期が長すぎるんじゃなかろうか
だから展開を伸ばしてしまうようなキャラにイライラするのかも
俺もあんま書いてないから偉そうなこと言えんし今まで書いてた人の作品を踏みにじりたい訳じゃないが
とてももう終わる気配はないし下手をすれば十年後もまだやってるくらいなら多少強引でも総集編的に纏めて終わらせても良いんじゃないか
何より十期が続くにしても莫大な主要キャラの多さや設定の膨大さと今はその辺のロワより書き辛いのもカオスロワの醍醐味が損なわれてると個人的に感じるし

525何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 06:22:51 ID:c3f9lxSs0
とてもとても悔しいけどリアル的な意味でも一年以内の完結は難しい
>>524の言うことはごもっとも、そもそもパロロワ界隈自体が色んな意味で限界だ
……賛同だけど、ちょっとお願いがある


どうしても書いてみたい話自体はまだまだある、他の人も今は展開上書けないけど書きたい人もいると思う
そこで総集編的最終回を投下をする→年表の詳細を作るように、最終回を補完する過程のSSや、もしくは別ルートで進行する物語を後から書ける形にしたい

むしろ10期を書かせてください! お願いします!

526何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 09:47:41 ID:j5nb41Ds0
なんか色々あったみたいなところ申し訳ないんだけど、予約って大丈夫?
都庁、都庁攻め主催者、ルルーシュなんだけど

野球さえどうにかなれば(+試合時間分のシャドウの足止め』頭の中ではエンディングまで駆けることも考えつくんだけどね……
そこは野球詳しい人ほんとお願いします

527何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 09:53:26 ID:c3f9lxSs0
自己リレーで良ければ…

528何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 10:05:23 ID:Koy1tj3Y0
妄想ロワみたいなダイジェスト化(ただしキャラの死亡が雑な処理となる)なら書けない展開自体はない

529何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 10:14:15 ID:Koy1tj3Y0
展開は考えてても俺が書くとどうしても激長文化して時間がかかるのよね...
それはそうとして予約乙

530何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 17:28:56 ID:Z//SRRsg0
形は何であれ10期に一旦一区切り付けて11期開幕でも良いかもね
パロロワに人が居ないのと書き手が分散して両方爆死するかもしれんけど

531何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 21:56:31 ID:.pHcVXxQ0
>>526
野球はともかく、シャドウの足止めなら一応考え付いてはいる
フロワロは別個に対策いるけど、シャドウ本体だけなら野球2試合分くらいなら
十分止められる予定
ただ、都庁がジャック達の奇襲を凌ぎきれた場合の前提なんで、そちらの話次第では駄目になるかも
今影薄の方も考えていることあったけど、様子みつつシャドウの方を深く考えるべきかな

532何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 22:01:29 ID:zGtsbc2M0
もうそこまで持て余すのなら殺して良いんじゃないか?

533何が可笑しい!!:2020/03/19(木) 00:34:49 ID:r37Z8KYU0
ぶっちゃけシャドウやサーフが必ずラスボスである必要はない
流れ次第ではアナキン、拳王軍、魔女霧切、あと現状は対主催の誰かさんなどのチャートも俺の中にはある

534何が可笑しい!!:2020/03/19(木) 02:15:48 ID:LUWjuyzg0
サーフは書き手も読み手も皆が大好きな人気キャラだし、ラスボスしかありませんな。

535何が可笑しい!!:2020/03/20(金) 08:18:49 ID:JK847PXA0
>>531
黒フロワロはともかく、シャドウ本体はなのはのおかげで消耗はしているから
拳王軍VS聖帝軍の試合までは何もしなくてもなんとかなりそうだな

536何が可笑しい!!:2020/03/22(日) 07:17:30 ID:AZs7FRig0
拳王軍、聖帝軍で予約

537何が可笑しい!!:2020/03/22(日) 14:54:51 ID:hk/25/v60
>>536
トリ付け忘れてますぜ

538ズガン:ズガン
ズガン

539 ◆lgy5dogjeQ:2020/03/22(日) 23:23:36 ID:AZs7FRig0
トリ忘れてたので再予約>>536

540 ◆BkO6szdC.M:2020/03/24(火) 22:33:06 ID:8FR1VR0.0
やっべ自分もトリついてなかったですね…
でも投下はなかったようなので予約していた都庁、主催、ルルーシュで投下

541 ◆BkO6szdC.M:2020/03/24(火) 22:34:03 ID:8FR1VR0.0
(……)

都庁、世界樹。
その奥地で取り残された男、ルルーシュ。
彼はその頭脳を持って考える。
考えねば死ぬ。
しかし彼はそういった死線を潜り抜けて生き延びてきた。

(……都庁の戦力、竜は削れたようだが逆に言えばそれだけ。狂信者共はドリスコルを含め大敗したか)

戦況はそう判断せざるをえなかった。
自分達の作戦にミスは無かった筈だ。単純に相手の力量がそれを上回った。

(救助した魔物が半ば監視されているこの状況、潜り込んだことにも勘付かれた可能性が高い……)

そして自分達の存在がばれているかもしれないことにもたどり着いた。
ルルーシュとて戦えないことは無いが、あの大軍とグレートゼオライマーすら退ける連中だ。
仮にギアスを使ったところで対処しきれず、そもそも何名かはギアスに対して耐性すらあるかもしれない。

(そして、今の歌にあの榛名という女……)

何より、今まさに自分の前で起きた奇跡。
そこから導き出される、僅か十数秒後の必然。
ルルーシュの思考がまとまり行動に移るまで、僅か数秒。彼の思考速度は次の現象よりも早かった。
つまり。



「お見事だ、都庁の者達よ」


「「!?」」



自らその正体を、同盟軍に晒したのだ。
当然、場は混乱する。榛名の登場でただでさえ混乱しているのだから。
その隙をついて、攻撃される前に次の言葉を紡ぐ。

「我が名はゼロ。どうしても諸君らに伝えたいことがあり、悪いが魔物に扮して入らせて貰った」

「狂信者共を利用したことも詫びよう。私の他に……何名か狂信者も紛れてしまっているが、それももう問題ないだろう」

「後は……彼女達が始末してくれる」


ルルーシュの言葉に、共に潜入していたカギ爪団の面々は憤慨する。
裏切ったのかと、即座に飛び出てこの男を始末したかった。
しかしそれはもう、叶わない。ルルーシュの言葉通りに彼らは鎮魂歌が終わった時点で詰んでいた。


「……撃て!」


魔物の中から、少女の掛け声。
直後、救助された魔物の一部が同じく救助された魔物の一部を撃ち抜いていく。

「榛名さん!」
「あ、あなたは!?」

そして、魔物の中から現れたのは海兵のような格好の少女。そう……駆逐艦と呼ばれる少女であった。

(理屈はわからないが、要はサーフの持ち出した兵器はあの歌で浄化されたということらしい)

(ならば必然的に、紛れ込んでいたイ級とやらもその影響を受ける。この結果は当然のことだ)

さらに数名の駆逐艦が飛び出し、潜伏していたカギ爪団を蹴散らしていく。
同士討ちを避けるために密かにつけていた識別基準が仇となり、彼らは混乱の最中で全員が抹殺されるのであった。

542続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:34:54 ID:8FR1VR0.0
そして、少しして混乱が落ち着いた頃。


「……お前は、狂信者ではないというのか?」
「ああ、大丈夫だよダオス。ゼロは信用できるから。あたしに耳打ちで作戦全部教えてくれてさ。
こりゃ大変だって報せに来たところでなんか凄い現場に出くわしたわけだけど」

ルルーシュは既にギアスの支配下においたさやかに命じていた。
「絶対に俺が都庁に疑われない言動を心がけろ。それ以外は全てお前の自由だ」と。
ルルーシュとしては狂信者に潜伏していたのも、敵対しているのも、協力者が欲しかったのも、全て事実。
ここまでくれば身の安全のためにギアスも含めて正直に打ち明けてもよかったのだが、
何しろルルーシュも知ってのとおりここの連中は仲間意識が強い。
明確な害を加えたわけではないが、絶対遵守という人の精神を捻じ曲げる真似は反感……下手をすれば殺意を買う。
だからこそそこだけは伏せ、彼女への命令も極力今まで通りに過ごせるものにしておいた。
万が一の時の手段としてやはりギアスは隠しておきたいという思いもあったが。

「……榛名、と言ったな。この男、ゼロの言葉は本当なのか?」
「榛名も堕ちていた頃の記憶は不完全、全てを把握し記憶しているわけではありませんが……彼が一部狂信者から警戒されていたのは確かでしょう」

そしてここに深海……否、艦むすの証言も加わる。
全てが真実ではない。全てが嘘ではない。混ざり合った情報は非常に手強い壁になる。

「……ここに来るために、狂信者を欺くために、結果として多くの魔物を犠牲にしてしまった」

「……本当に、申し訳ない」

ルルーシュはその場で頭を下げる。
これも偽りではない、一部は本当の気持ち。
状況から都庁の犠牲はやむを得ないとは思っていたが、それ以前は元々可能であれば平穏な接触も考えていたのだ。
こうなってしまえば当初の予定通りに切り替えた方が早いし、何より忌々しい狂信者のフリもしなくてよくなる。

「……そこまでして、我らに会いに来た理由とはなんだ?」
「はい。……この殺し合いの真の狙い。主催者が計画したプロジェクト・テラカオスについて」


ルルーシュが重々しく口にした言葉に、同盟軍の誰もが反応を示す。
テラカオス。その言葉を知っている者は一握りしかいない筈なのだ。

「主催者の計画を何故……?」
「偶々、ではあったのですが。粛清されたらしい安倍首相の妻は善人であったらしく……
一縷の望みをかけて、参加者にことの真相を纏めたファイルを送信していたようです。
残念ながら、それが発覚したのか彼女も粛清されてしまったようですが……」

再び、嘘と真実を混じらせる。
大切なところはしっかりと真実を伝え、今は関係ないところは嘘を伝える。
ルルーシュも言葉を選びながら、慎重に信頼を勝ち取っていかねばならない。
最終的な目標、ナナリーの為に。
そしておそらくこの後語られる、サーフの正体を聞く為にも。







しかしルルーシュの計画は、思わぬところで中断を余儀なくされた。

543続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:35:36 ID:8FR1VR0.0
突如、空間に妙な裂け目が生まれる。
直後、その裂け目は大きくなり……中からは謎の存在が現れた。



その手に、何かを持ちながら。


「!!!」


怒涛の勢い。世界樹に予期せぬ来訪者、その3。
ミヤザキの巫女たる榛名。彼女は今や巫女まどかも認める協力者。
偽りの狂信者たるゼロ。彼もさやかの話と今後の話を合わせれば協力者なのかもしれない。
さて、この三人目は?

いや、三人目ではない。


追加の100名もご登場だ。



「おや? これは偶々なのか願いを叶えてくれたのか。いや、スキマ転移が座標指定できないと考えるより最速であの二人と戦えるお膳立てg


ドッ!



早口を言い切る前に、スキマより現れた仮面ライダー……
biim兄貴は密やかに戦ってみたかった相手の一人であるレストの拳で心臓を貫かれて死んでいた。
その死の速さは、まさに彼が好む最速であったかもしれない。
あまりの速さに残る100人もパニックを
起こすが、次の瞬間には彼らも兄貴の後を追う。
躊躇いの無い瞬殺、つまりは一緒にやって来た100人も殺すべき敵。
魔物達は示し合わせるでもなく、次々に群がりあっというまに喰らい尽くす。

「……ゼロ、これもあなたの作戦か?」
「ち、違う! こんな連中、私も見たことが無い!」

感情の無い声と共に手についた血を振り払うレストを見て、すかさずルルーシュは本当のことを口にする。
そしてすぐさま元深海勢の駆逐艦にも(見えないが)視線を送る。
自分達が元の姿に戻れた実感もまだ無いまま、怒涛の展開となる現状に彼女達の理解も追いついてはいないだろう。
しかし駆逐艦、子供故にこの状況下で嘘は口にできない。ただ勢いよく首を縦に振り続ける。


「こいつが持っていたのは、N2爆弾!ほむらが回収したものと全く同じだ!なっ……起爆まで30分を切ってる!?」


奪い取った物を見てレストの顔は青ざめる。
空間転移で進入してきた敵が持っていた代物は、かつて仮面ライダー斬月が持っていた爆弾と同じ型。
鍛えられたダオス達ならば耐えられないこともないが、世界樹は少なからず傷を負う。

「くそ狂信者連中め、最初から私も始末するつもりだったか……!」

ルルーシュも当然N2爆弾に対する知識を持つ。
このタイミングで内部にこんなものを持ち出してくるとなると、恐らくは潜伏させていた狂信者が密かに連絡を入れたのだろう。
保身の為に都庁に鞍替えした瞬間、恐らくは灰色だった自分は黒となり、すぐさま狂信者からの粛清を受けかけた。
こう考えるのが一番辻褄があうと同時に、ある悪寒が彼の全身を支配する。

「ま、まさか……」

そしてそれは、ダオスとまどかも同じく。
爆弾の脅威はあるが、僅かに猶予あり。襲撃者も迅速に葬った。しかしその襲撃者は、いきなり内部に転移してきたのだ。
氷竜が倒れ、彼の分の結界が消滅したことが原因なのか。本当にゼロの始末目的かどうかはわからないが、とにかく侵入を許した。
そして相手が狂信者であるならば、101人で済むわけがない!


「あっ……!?」


まどかは思わず叫ぶ。
今、この上層部には残された世界樹のほぼ全戦力が集結している。
だからこそ敵も処理できたが、もし他の場所に、例えば戦えない子供の魔物やきらり達の避難している場所に向かわれたら?
守りは固めているが、N2爆弾を持ち出されたのだ。絶対は無い。

「ごめんレストさん、お願い!」
「わかった!」

たまらずまどかはレストを護衛につけ、避難場所へと跳べる樹海磁軸を目指す。
かかる時間は僅かに十数秒。万一があってもまだ間に合うはず。



その願いは、直後打ち砕かれる。

544続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:36:12 ID:8FR1VR0.0
「そ……んな……」

がっくりとまどかは膝をつく。
その瞬間、彼女の膝は生暖かくぬめる血の海に沈んだ。

避難所は、地獄そのもの。
無数の魔物の亡骸、一人たりとて生存者がいないとわかる程の蹂躙具合。
むせ返る血の臭いは、さながらカオスロワの縮図のようにすら見えた。
無価値無意味無慈悲に彼らは殺されたのだ。

「……どうして、だよ……っ!!!」

そして亡骸の中にある二人の姿を見つけた瞬間。
まどかもレストも、自分の手を握りしめて、血を流した。
その程度の痛みはなんでもない。魔物達が、この二人が味わった苦痛の恐怖に比べれば。

大きな犠牲を払いながらも聖帝軍と共に助け出せた、間に合った筈の少女は首を刎ねられ。
そんな少女の亡骸を抱きしめながら、守るという誓いを果たせなかった戦士の無念はどれ程だったことだろう。

「……」


魔物達はもはや原型を留めず修復は難しい。
もっと、はやく気がついていれば。後悔の念を抱きながら、損傷が少なかったきらりと魔雲天をレストは修復する。
魔力の無駄遣いと言われようが、彼はこの二人をこのまま放置できなかった。
自分とサクヤのような……それと違い、間に合った筈の二人。
もう直接的な戦力とはなり得ない彼らが、魔物が、どうして犠牲にならなければならないのか。
狂おしい程の、影薄に出会う前の状態かそれ以上の憎悪と敵意の感情がレストの中に渦巻く。


「……っ!?」


だが、彼は直後に冷静さを取り戻す。
血溜まりの中で、必死に生存者を探していたまどかの手がいつの間にか止まっていたのが目に入ったのだ。
そして彼女の全身…いや世界樹全体から自分以上の強い怒りを感じ取ってしまった。

「ま、まどか!?」

「……まだ、いる」

ぽつりと呟かれた言葉。
それは生存者のことではなく、外敵のことであるとすぐに察しがついた。
まどかの背から伸びる魔力の翼は世界樹と繋がり、今の彼女はより深く世界樹の現状を理解し力を振るえる。
かつての魔王マーラ戦でも全方位攻撃を可能とし、そもそも地下に向かう際は敵位置を確認してから向かっている。

侵入者は、知らなかった。いや知ることができなかったというべきか。
温厚なまどかではあるが、怒りが限界を超えた際の攻撃に容赦は無くマーラが消し飛ぶ程であり。
世界樹そのものを用いて攻撃できるということを。
致命的な失策は、100人単位という人数の多さ。
まどか、世界樹からすれば土足でそれだけの人数が踏み荒らせば嫌でもその位置を完全に把握できる。

「……許さないっ!」
「まどか落ちつくんだ!君は手を汚さなくていい!僕が…」

静止を振り切り、世界樹とまどかがシンクロする。
こうなってはもはや誰も止めることはできない。
巫女の鉄槌が、異物に下される。

545続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:36:55 ID:8FR1VR0.0


中層に転移していたメガへクスは、ぞわりと嫌な気配を感じた。
本来感じない筈のもの、これは2度目の経験だ。そしてこれが最後の経験ともなる。

「なっ、なんだ!?」

ヘルヘイムのような…いやそれ上回る異様な速度で周辺の根や枝に葉が荒れ狂う。
たかが植物などではない。明確な殺意と尋常ではない魔力の込められたそれは、無数の刃と槍となり瞬く間に兵士を肉塊に変えていく。
メガへクスも応戦するも、全方位からの殺意には流石に分が悪い。
絡みついた根はそれぞれがあらぬ方向へと動き、彼の身体をバラバラにねじり切り、さらに全身を滅多刺しにした。





「こ、これは……!」

下層に転移していた紫はしかしまだ生きていた。
下層は他の階層と比べて空間が広かったのが幸いし、無数の根が兵士を葬る中で紫は回避が間に合ったのだ。
とはいえ流石の賢者も焦る。
この攻撃は罠の類ではなく、明らかに現在進行形で自分達に向けられている敵からの攻撃。
地下で魔物を葬ってから、まだ数分すら経っていない。それなのにもう自分達の侵入がばれたというのか。
とにかくわかるのは、今やこの世界樹内部全てが攻撃範囲ということのみ。

(これはいけませんわね……一度、退かなければ。スキマでの侵入が可能とわかった以上、この部屋に拘る理由はない……!)

爆発までの猶予は無い。
しかし下層に爆弾を仕掛けることは最早不可能である以上、作戦は変えざるをえないだろう。
根が伸びないであろう上層部に狙いをつけて、紫はスキマでの緊急撤退を行う。






「え?」


紫の…侵入者達の誤算と不運はいくつか存在する。
内部状況の未把握、作戦実行の為に引き連れた300の兵士。
彼女達も奮戦はしてきただろうが、乗り越えた明確な死地は疲弊した安倍首相戦のみ。
対して都庁の軍勢は、拠点から動かない故に次々に難敵に遭遇し、犠牲を払いながらもこれを乗り越えてきた。
ドラゴンハートの恩恵も加わり、殺し合いの中で影薄を筆頭に生き延びた参加者達はみなが精神面を含め大きく成長した。
参加者と主催者。成長という一点においてこればかりはどうしようもない。

最速退場した兄貴の骸が貪られるのを見つけた瞬間、紫は驚くと同時に頭に強烈な痛みを覚える。

「がっ!?」

スキマから出ると同時に、魔王に頭を掴まれたのだとはわかる。
だが何故こうも迅速に敵と見なされた?僅かでも喋ることが許されるなら、話術は自分の得意分野だったというのに。
鷲掴みにされた頭部に魔力が流されているのが嫌でもわかる。洗脳でもするつもりか?
妖怪の賢者もまた妖力でもってこれに抗ってみせるが、思考を掻き乱されるのは避けようがない。
頭の激痛に耐えながら、なんとか現状を把握し打破しようとする頃には、彼女の身体は宙に浮いていた。
紫を鷲掴みにしたまま、ダオスは世界樹の外へと飛び出していたのだ。
一瞬だけ、紫は外にいたセルの姿を目の当たりにする。
なんと恐ろしげな出で立ちか。なんとしてでもこいつだけは滅ぼさねば。

(私をセルの餌にでもするつもり?けれど私ならば、たとえセルの触手を受けたとて耐えきれる筈。
口内に入れられた瞬間、脱出と共にセルの体内にN2爆弾をしかければ……)

そこまで思考を巡らせ、紫の意識は消失する。
魔力と握力で頭に激痛を送られ続けながらにセル打倒の考えを巡らせる紫は、賢者と呼ぶに相応しい力の持ち主だろう。
確かに、アルルーナ等ならば世界樹を傷つける愚か者に相応の報いを…女であれば性的な陵辱を考えたかもしれない。
だが現在彼女の生殺与奪を握るは魔王。彼は敵対者に対して微塵の容赦も見せることはない。
そして何より、榛名とゼロというキーパーソンかもしれぬ者まで現れたのだ。
腹立たしいが…所詮は無数の『狂信者の一将』に過ぎないだろう女に、余計な時間をかけるつもりなどハナから皆無。


「ダオス、コレダーッ!!!」


掴んだ女の頭を地面に叩きつけると同時の爆光。ゼロ距離のそれは賢者を塵も残さず消しとばした。
奥義でもって完膚なきまでに迅速に息の根を止めたダオスはすぐさま引き返す。


紫達の不運は、タイミングが最悪であったことに他ならない。
特務機関ではなく、一山幾らの狂信者と思われては、最初から対話も何もありはしない。
せめて、狸組がもたらした主催陣営名簿に彼女達の情報が載っていれば、或いは?
しかしいくらイフを考えたところで、もう彼女達が動くことはない。




546続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:37:29 ID:8FR1VR0.0
「……っ!!!」

スコープで状況を直前まで確認していた ジャックは歯を噛み締めて声を抑えていた。

紫が殺された。

相手は魔王。そして紫を殺しながらすぐ様に引き返して行くその様。ここから推理できるのは……

(都庁の感知能力が我々の想定を遥かに上回り、彼女の…いや彼女達の潜入が露呈したというのか!?)

早過ぎる。
ジャックとしてもこの認識だが、実際の問題としてこれ以外は考えられないというのが、彼の導き出した結論だった。
紫がスキマによる逃走もできなかったとなると、他の二人の生存も厳しいだろう。
作戦は失敗?いや違う。まだ自分がいる。やり遂げなければならない!

(それこそが、手向けでもある……)

三人は死んだ。冷静にそう判断し、ジャックは最後の準備に入る。
確かに予定は狂ったが、三人はしっかりと都庁の中に置き土産を残している筈だ。
起爆寸前のN2爆弾3個。今から何処かに運ぼうとしても間に合いはしない。
デイバッグの中に入れても、意味はない。
元より自分が要。侵入がばれてしまっては、もう一刻も猶予は無い。
すなわち、今から防御の暇も与えない程の速攻を仕掛けるしか道は残されていない。


「総員退け!これより、最後の攻撃を行う!」



ジャックの勇ましい声に、それぞれの機体の中で兵達は敬礼した後にその場から距離をとる。
打ち倒さねばならない災厄、その力はまさに人智を超えた存在。
世界樹全体ならともかく、災厄を倒すとなると、いくら兵が武装したところでなんの役にも立たない。
ジャックと、この用意に時間のかかる最強のオーバードウェポンしか勝機は無いのだと、理解していた。

兵士の一人は、改めてこの超兵器を目の当たりにして冷や汗を流す。
これを考えた奴は、絶対に頭が狂ってるとしか思えなかった。

その姿ーー潔し!!!

何も知らない者がみれば、馬鹿みたいな大きさの鉄筋コンクリートの柱そのものだ。
対安倍首相に使ったマルチプルパルスもふざけているが、それ以上のインパクト。

「……よし」

ジャックは柱…『マスブレード』を目標に向けてセットする。
一度きり。チャンスは一度きりだ。
ジャックがこの無骨な柱を決戦の武器に選んだのには、いくつか理由がある。
もちろん威力は説明不要なレベルだが、マルチプルパルスには流石に及ばない。
とはいえあれは紫の協力があったからこそできた芸当であり、ジャック一人ではとても全弾命中は難しいのだ。
そしてその他のオーバードウェポンもあるが、威力はマスブレードを下回る。
何より、一撃必殺を狙うならばこれ以上の武器はない。
相手のセルはACではなく超巨大な怪物。何をしてくるかもわからない以上、戦闘は最短最速で済ませなければならない。
相手の防御よりも速く、これであいつを叩き潰す。
ジャックのその意志に呼応するように、爆炎を吹き上げながらチャージは進む。


そして。

547続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:38:15 ID:8FR1VR0.0
「っ!!!」


ガクンとジャックの身体が、いや機体そのものが揺さぶられる。
マスブレードの推進力はもはや、そちらが本体だと言わんばかりの圧倒的なもの。
常識から逸脱した超兵器。故に、常識から逸脱した災厄を討つことも可能となる!



「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」



オーバードウェポンは当然、使用者への反動も尋常ではない。
それでもジャックは吠え、コンマ1秒も逃すまいと災厄へと挑んでいく。
紛れもない決意の顔。背負う者の顔。
バーダックやベイダー卿からひかれるような、ゲイヴンなどという馬鹿げた存在ではない。


(必ず、成し遂げてみせる……!!!)


そう、散った仲間の為。この世界の為。
彼はまさしく勇者であった。





「……幕を引くとしよう。飛んで火にいるなんだったか」
「こそこそ用意してたつもりだろーが、俺の元拠点の様子が変わってりゃ気づくってもんだぜ?」
「にしゃぁ……」



ーー攻撃目標は三人に増えていた。そしてその三人はそれぞれが爆炎の魔力を纏ったかと思えば、それを災厄の口の中に入れて混ぜ込む。
直後に吐き出されたのは、ジャックの視界を埋め尽くす程の煉獄の炎。
魔王の、神の名を冠する樹の、そして魔神の一閃は深夜の関東地方を一瞬で真昼の様に照らし出した。


(アナキーー)


刹那。敗北を悟ったジャックは最後まで未来を危惧したまま、この世から全ての痕跡を残さずに消えてしまう。
超火力兵器諸共に、超々高火力の熱閃は全てを消し飛ばす。
ジャックの敗北を認識するよりもはやく、最終着弾地点の首相官邸跡地にいた兵士も一人残らず消えていく。
ニャル子の生首も、何もかもを飲み込んで。


「狂信者どもの拠点の一つを消せたようだな。だが次の問題は…」


ダオスはこの世から完全抹消された首相官邸跡地を一瞥した後にすぐに引き返す。
彼や神樹、それにセルにとって。今し方熱閃で葬ったのはネームド狂信者の一人程度の認識でしかない。

まさか、この殺し合いに深く関わっていた存在だとは夢にも思わない。
形こそ違うが、共に世界の破滅に抗おうとしていた存在だとは気がつくことはない。

もしかしたら、彼らが対話できる…共に戦う未来もあったのかもしれない。

だが全ては遅すぎた。
最良の未来は崩れ果て、そして無慈悲に時間は進んでいく。

548続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:38:48 ID:8FR1VR0.0


世界樹内は騒然としていた。
目まぐるしい状況の変化もだが、何よりもきらり達の惨殺の事実は大きな衝撃と悲しみを与えた。
涙を隠すこともしないカヲルはせめてレクイエムの一つでも捧げたかったが、それさえ許されない。

まどかの怒りで侵入者は一人残らず世界樹と魔物の養分となった。
しかしその置き土産というか、切り札まではそうはいかない。
起爆寸前のN2爆弾。それが三つも見つかった。
この場に犬牟田かほむらがいれば爆発前の対処もできたかもしれないが、今となってはそれも不可能。

しかし、この未曾有の危機すらも。
この場の者達にとっては、通過点に過ぎない。
狂おしい程の怒りと同時に、それに匹敵する怒りを覚える存在、この殺し合いの黒幕。
その名を聞いてしまったのだから。

「…時間がないね。手荒だけど、こんなものに構っている時間も惜しい。神樹、頼むよ!」
「お、おう。まさかとは思ったが、確かにそれが一番早いかもな!」

レストが両手でN2爆弾を縦に積み重ねて持ち上げる。
様々な能力を持つ彼だが、このように『同一物なら質量を無視して絶対落とさず縦積み9個までなんでもかつげる』という妙なものまである。
そして爆弾を持ち上げた彼を、さらに神樹が持ち上げる。

緊急時の対応は、いかに迅速に行えるかが鍵だ。
そしてこの作戦は本来であればとんでもない外法だが、もはやこの世界の無事な地域が残り少ないことが幸いした。
つまり。


「うらああああああ!」


圧倒的巨大かつ、マッチョになりさらに飛距離を伸ばした神樹がその投擲力でレストを世界樹の遥か上空に発射。
投げられる側に凄まじい衝撃だが、丈夫さは随一かつ担いだものを絶対に落とさないから問題もない。
そして高空より、かつて桃子にも語られた投げレベル9999withドラゴンハートのレストの豪速球が炸裂する。

「…狙い目は北海道と青森の間かな」

もう人の残っていない東北地方目掛けて、躊躇いなく3個のN2爆弾が綺麗にまとめて投げられる。
着弾後、凄まじい爆発が起きるが世界樹からは遠く離れている。これで置き土産も処理できた。


「っ!!」


遠方処理の完了を目視し、魔法で帰還しようとするレスト。
しかしあまりにも高く投げ飛んだ彼は、地上の状況を見て愕然とする。
ああ、やはりこの爆弾『程度』はもはや脅威ではなかったのだと認識する。

海上。バラバラにされているが、巨大な龍の翼骨が見える。あれはまさか邪竜ギムレー?
あれ程の存在が殺された?狂信者にはまだ武器があるのか。影薄達は大丈夫なのか?
千葉方面。かなりの魔力を感じる。まさかイチリュウチームとほむら達にも何かあったのか?
関西方面。毒々しい色の花が咲き乱れている。ウォークライの話にあった、より強力なフロワロか。
そして……沖縄。以前よりも強く感じる混沌の気配。ノーデンスの話にあった黒き獣が、あそこにいる。

(本当に、時間がない……!)

同時期に発生している、無視できない異常事態。
達成感に浸ることも、悲しみに暮れることも許されない。
拳を握りしめたまま、彼は絶望の情報を持って世界樹へと戻ることとなった。

549続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:40:00 ID:8FR1VR0.0


仲間の死を悼むことも許されない中、世界樹内はさらに混沌とした混乱に陥る。
テラカオスを保護していたイチリュウチーム、その大戦力であっただろう邪竜ギムレーのまさかの死亡。
そればかりか、ほむら達が向かった千葉方面に渦巻く大きな魔力。下手をすれば残りのチームメンバーも危ういのかもしれない。
西からはフロワロに黒き獣が迫っている。
これらの問題は、予言の一節たる野球に大きな影響が出てくる。

『黒いフロワロは、俺が生み出せる赤いフロワロとは比較にならん!耐性の無い者が触れたが最後、あっというまに腐り果てるぞ!
幸い俺達は世界樹とドラゴンハート、二重の恩恵で防ぐことができるがイチリュウチームの人間はそうもいかん…!』
「なんとか、侵食をとめられないんですか!?」
「今までの情報を統合すれば、この能力は真竜を捕食した風鳴翼のもの。そして方角を考えると……」
「彼女は黒き獣に敗れ、その力を奪われた。つまり今フロワロを操っているのは黒き獣だろう」
『フロワロを完全に消すには、生み出している真竜の力を葬るしかない。しかし黒き獣を倒せるのは、テラカオスだけ……』

ウォークライが語る黒いフロワロの脅威。
しかもそれは事実上完全な破壊はできないという絶望的な状況だ。
侵食より早く、イチリュウチームを助け出し、ドラゴンハートの力を与えて速やかに野球の試合を完結させなければならない。
すぐにでもイチリュウチームの追加救援に向かいたいが、もう世界樹も戦力はあるが頭数が減り過ぎた。
計画と防衛の両面からダオスとまどかが動けないのが痛すぎる。

「よ、よくわからないけど、それなら私達が!」
「まだ夢を見ているようだよ。でも、今の時代でグンマーの人と手を取るのは、きっと司令官も望んでいることだろう」
「大丈夫。心配しないで頼ってくれていいのよ?」
「たとえどんな危険な任務でも、今度こそやり遂げるのです!」

そんな中で、カヲルの歌で浄化された数名の駆逐艦が名乗りをあげる。
まだまだ子供。そんな見た目でありながら自ら死地に赴こうとする姿は、まさしく一人の戦士であった。

「……かつての我が一族は、このような者達を虐殺したのか。改めて自分達と戦争の愚かさを突きつけられた気分だ」
「……いくら僕らの一族が硬くても、こんな子達を殺し続ければそりゃ精神を病むでしょうね」
「え?」
「……案ずるな。かつてと同じ愚策はとらぬ」
「グンマーの戦術は知っているんだろう?君達には、二人の巫女を守って欲しい。使い捨て同然に前線に出したりなんかしないからね」

奮起する駆逐艦に対し、ダオスはその頭の上にぽんと手を置くと諭すように静止をかける。
レストも屈み目線を合わせ、死地に向かわず防衛の方を手伝って欲しいと呼びかける。
かつての時代において、凄惨極まる戦争を繰り広げたミヤザキの艦むすとグンマーの剣と盾。
それが永き時の果てに争わずに済んだ。
これは機械の身ながらに最期まで共に戦ってくれたフェイの功績も大きいだろう。


「………」


そんな光景を目にした榛名は、その瞳を潤ませていた。
かつての時代、あの子と一緒にこの光景を実現出来ていれば、どれだけよかったか。
悔しくはある。あの悪夢の日、自分以外の姉妹は悪魔化ウイルスを打ち込まれることなく、無残にそのまま殺された。
自分のように、使徒のもたらす奇跡で元に戻れるかもしれないということもない。
あの子とも、姉妹とも、もう2度と笑いあうことはできない。
それでも、今こうしてグンマーの子孫達は過去を乗り越えようとしている。艦むすに、ミヤザキに歩みよってくれている。

「……みんな、ごめんなさい。榛名は不甲斐無い巫女でしたが、どうか今一度一緒に戦ってくれますか?」

榛名の言葉に、駆逐艦達は揃って頷いた。
彼女達も深海棲艦に…強い後悔を遺していた娘達。その想いは榛名と全く同じだ。


「……戦艦榛名以下数名、ただいまより貴方達の指揮下に入ります!」


びっ!と乱れぬ敬礼をして見せる艦むす達。
ミヤザキとグンマー。かつて協力し、やがて対立した彼らは、今再び手を取り合った。
ノーデンスの語った過去を、乗り越えて。

550続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:41:06 ID:8FR1VR0.0


「それでは改めて……よろしいでしょうか?」

突然の襲撃、予期せぬ犠牲者、そして迫る脅威。
未だ悲しみと焦燥の感情冷めやらぬなか、榛名はゆっくりと口を開く。
この殺し合いを開く羽目になった、根本的な原因。首謀者の正体を。

「本来、榛名達がもっと早くに手を取り合えていれば、今のこの惨劇も起こらなかったのかもしれません……」

「ですが、榛名達の時代の頃からでも次の大災害は遥か未来の話。今この時代の大災害は、人為的に招かれたものなのです」
「それは我々も把握している。少数を率い神々を抹殺した、竜殺剣と悪魔の力を持つ者なのだろう?」
「は、はい。驚きました、榛名達がいなくとも既にそこまで…」
「生き延びた上位神が遺した情報だ。しかし、彼女でもその正体までは辿りついていなかったのだ」
「そうでしたか。概ね、その内容で間違いはありません。榛名達や過去の技術を復元させたのは、ミヤザキの末裔なのです……」

榛名の言葉に、何名かがぴくりと反応するが口は挟まない。
諸悪の根源とも言えるミヤザキの末裔。その正体はもうすぐそこなのだから。

「…その末裔、堕ちた榛名達の提督の名はサーフ・シェフィールド。彼こそが、今代の大災害の首謀者です。
その目的はかつての思想を歪めたもの。生まれたテラカオスを横取りし、自分自身がその力を手中におさめるつもりなのです。
彼はビッグサイトに狂信者として潜伏し、ネット上の掲示板を掌握。榛名達を戦力とし、内部情報の収集や外敵の排除を命じました」
「…自らは表に出ず、身を隠し続けるか。現在位置はわかるか?」
「いえ。ビッグサイト内からは動いていない程度しか。逆に、榛名達の現在位置と生死はあちらに筒抜けでしょう。
元々榛名は堕ちている時は867号と呼ばれ、戦況の定期的報告を命じられていましたから」
「ちょ、ちょっと大丈夫ですの?こうしてあなたが元の姿に戻って正体を明かしたなんて知られたら…」
「それは大丈夫です。榛名達は元々、提督への絶対服従をしないからこそ、悪魔化ウイルスなるものであの姿に貶められたのです。
流石にその状態で後から埋め込まれた生死の判別までは誤魔化せませんが、榛名の意思で彼への報告は断固拒否していますので」
「と、盗聴機とかは大丈夫なんですか?」
「はい。榛名も驚きましたが、この姿に戻れるなんてサーフの想像外だったのでしょう。
意志のない絶対に従順な兵器だと思い込み、盗聴や遠隔解体等の機能もつけていません。いくらでも生み出せる動く兵器程度の認識……」

少し悔しげに吐き出された榛名の言葉。
艦むすは確かに兵器かもしれないが、少なくともこうして榛名達は会話ができる。
それをまるっきり戦争の道具としてしかみない、それこそかつての後期ミヤザキの提督のようなサーフという男に誰しも怒りを覚える。
しかし相手はただ冷血なだけではない。神々の油断を狙い、綿密な計画を立ててこの災害を引き起こした切れ者だ。
榛名の言葉通りならば、これから先の動きもある程度予測がつく。

「……敵が報告がないことを怪しむ可能性が高いな。しかし生存はしている、普通に考えれば我らの捕虜になったと考えるだろう。
自爆機能が無いならば、敵の取る策は証拠の隠滅のため、新たな大群を率いてここにやってくる可能性も否定できん」

ダオスの言葉に、一同に緊張が走る。
多大な犠牲者を許してしまった、3度目の狂信者の襲撃。
いよいよ戦力、そして何より止まらぬ犠牲で心身の疲労で限界が近いこの時に更なる襲撃に耐えきれるのだろうか?
いくら榛名達が加わったとはいえ、敵は少数で神々すら殺す男なのだ。
確実に勝てる保証など、ありはしない。




「….ならば、微力ながら私も力を貸そう」



そんな時に声を響かせたのはゼロであった。

551続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:41:57 ID:8FR1VR0.0



「ゼロ、どういう意味だ?」
「元より私の目的は、この殺し合いの目的であるテラカオスのことを貴方達に伝えることだった。
しかしこうして、更なる根底…黒幕とも言えるべき男の正体まで聞かされては、私の情報の価値も下がっただろう。
私が貴方達と敵対する存在ではないという証拠にはなったと思うがそれまで。私がここに留まるのはデメリットしかない」
「?」
「だが、私が今この場を飛び出せば、それは少なからず貴方達の助けになる筈だ。
何しろ私も狂信者から見れば、信者を偽った許されざる裏切り者。殺害優先度は先程の襲撃から見ても上位の筈。
つまり、私と貴方達が二手に分かれることで、連中も戦力を二分する必要が出てくる。
貴方達の防衛力は今更説明はいらないだろうし、私もこう見えて腕は立つ。そこらの狂信者を引きつけ数を減らすくらいはわけはない」

ゼロの言葉には、納得できる部分もあった。確かにゼロが身の危険を冒してまで伝えてくれた情報も、
集まった各対主催チーム、ノーデンスと榛名の話を統合すれば、情報の旨みは少ない。
やはり主催陣営もテラカオスを目的とした一枚岩ではない存在だったことが確定したくらいか。

「仮に私が狙われなかった場合、それはそれで私はより多くのまともな対主催の者達に、より深く正確なこの殺し合いの真実を伝えられる。
貴方達はここから動けない以上、仲間を増やすことはできない。これはこれで、貴方達の手助けができるだろう?」
「……うむ」

ダオスが小さく声を漏らせば、ゼロも一礼し踵を返す。

「…改めて、感謝しよう都庁の者達よ。そして、貴方達の武運を祈る」

脱ぎ捨てたオーバーボディを再び着用し、彼は足早に去っていく。

残された者達は、止まらぬ悲しみの連鎖の中でも立ち止まれない。
幾つもの難題。次に為すべきことは何か?

【二日目23時30分/東京都 新宿都庁世界樹内部】

【都庁同盟軍】
【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【レスト@ルーンファクトリー4】
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【音無小鳥@アイドルマスター】
【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【エリカ@ポケットモンスター】
【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
【榛名@艦隊これくしょん】
※まどかの所持品に駆逐艦×4が追加されました
※全員がギムレーの死亡、イチリュウチームの窮地、関西の黒フロワロを把握しました
※ゼロとの邂逅で、プロジェクトテラカオスの存在を知りました。ゼロ=ルルーシュには気がつけていません
※さやかのギアスは残ったままですが、命令により普通にしている限りは気がつかれません


【biim兄貴@現実?】
【メガヘクス@仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル】
【八雲紫@東方Project】
【ジャック・O@ARMORED CORE LAST RAVEN】
それぞれ死亡確認
※連れていたモブ兵士も全員死亡
※死亡時の攻撃が苛烈だったため、彼らの支給品の回収や再利用は不可能です
※首相官邸跡地は完全消滅しました

552続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:42:36 ID:8FR1VR0.0



世界樹の入り口から、一体の魔物が飛び出す。
正しくは魔物に扮した者。その最後の一人たるルルーシュである。

(くそ、くそ、くそぉ……っ!)

彼は湧き上がる殺意と怒り、そして焦りに蓋をするのに必死だった。

(深雪、この愚かな兄を許してくれ……)

ドリスコル達が敗れ、おそらく都庁の全ての戦力があの部屋に集まっていた。
その様子から覚悟は決めていたが、やはり作戦途中で愛する妹は殺されてしまったらしい。
当然最後の妹すら奪われたルルーシュの悲しみは並ではない。下手をすれば、あの部屋で自爆覚悟で暴れていたかもしれない。
それをしなかったのは一重に榛名の情報。
そして、さやかから聞き出した情報があったからに他ならない。


(だが深雪、ナナリー……お前達の為にも、兄はここで倒れるわけにはいかないんだ!)


(まずは、サーフをDMC諸共に殺す!奴さえ死ねば、テラカオスは都庁か協力者が手にする可能性が高い。
そうすれば沖縄の黒き獣も止められ、死者の魂が脅かされることも無くなる!)


ルルーシュの瞳は憎悪に燃えていた。
最初に榛名からその名前を聞いた時点で怒りは頂点に達していたが、その後はさらに臨界突破した。

黒幕、カオスロワちゃんねるの疑惑を最初から理解していたルルーシュにとって、榛名の解説の半分は不要だった。
むしろ気になったのは、ミヤザキの艦むすとグンマーの巫女。この関連性だ。
あの場のやりとりから、都庁の者は全員これを理解していると見て間違いない。
そう判断し、彼らが知らないサーフの話に食いついている隙に、ルルーシュはさやかから情報を聞き出していたのだ。
太古の大災害、それからの戦争、残された救済の予言の内容…
どれも信じられないような内容だが、ルルーシュの脳内からはこれらの詳細などもはやどうでもよくなっていた。



大災害の化身。沖縄の黒き獣は今、死者に狙いを定めて襲っている。



この事実が、ルルーシュに最も強い絶望と焦燥を生み出した。
死者の魂が狙われる。以前見た沖縄の異常気象、あれだけの力を持つ黒き獣に襲われたら。どうなるか。
考えるまでもない。生きている状態ならまだしも無防備な魂など完全に破壊されかねない。
当然、その中にはナナリーも含まれる。

(あれだけの戦力、知力、そして情報。救済の予言は都庁連中に頑張って貰うほかない。俺がいなくとも、彼らは止まることはないだろう。
さやかから情報は手に入ったし、火薬庫の真ん中に留まり続けるのは愚策だからな)

ボロを出す前に危険地帯を抜け出したが、先程の都庁に対する言葉は、ルルーシュとしての本心も含まれていた。
忌々しい狂信者を葬り、ナナリーと暮らす世界の為に奮戦してくれる都庁には感謝しかない。
面倒ごとは任せて問題ない。彼らが動いている限り、狂信者もサーフも一裏切り者にばかりかまけてもいられない筈。
その隙を突き、この溜まりに溜まった憎悪の感情を叩きつけてやる。


(……当然、クラウザーの魂も例外ではない。奴らがこの真実を知れば、テラカオスを生むよりも自爆を選ぶだろう。
そう、それを阻止する意味でも、俺の行動に誤りなどない……!なり振りなど構っていられるか!)


「クラウザーさん……」

「ふん、貴様らでも少しは役に立つか?」


戦意を失って立ち尽くしていた僅かばかりの狂信者をギアスの支配下に置き、都庁を難なく後にするルルーシュ。
理性と憎悪の狭間で揺れ動く彼の今後がどうなるかは、まだわからない。

ルルーシュは生き延びた代わりに己より大切な妹の危機を知る。
都庁は守るべき者を守れず更なる絶望を知る。
主催は後に頼りになる仲間の死を知る。
誰も幸せにはなれない。ナイトメアはまだ続く。




【二日目23時30分/東京都 新宿都庁世界樹外部】

【ルルーシュ・ランペルージ(ゼロ)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態】健康、ゼロの服装、妹への欲求(絶極大)、非常に激しい悲しみと怒り、半暴走
【装備】ガウェイン@コードギアス@反逆のルルーシュ、スマホ@スマホ太郎 、魔物のオーバーボディ
【道具】支給品一式 、魔理沙の死体半分、ギアス支配狂信者×15人
【思考】基本:ナナリーを生き返らせる
0:サーフを手段を選ばず殺す
1:ディーが自爆する前に蘇生手段を奪い、自分のものとしてキープする
2:ギアスの使用は慎重にする。
3:身の安全の為、都庁に戻ることは控える

※明恵夫人経由でテラカオスプロジェクトを知りました。
※さやか経由でノーデンスの残した情報等を知りましたが、ナナリーの危機の為完全に記憶できていない可能性もあります
※黒き獣の襲来により蘇生が不可能な現状も知りました
※主催者の襲撃を自分の抹殺に動いた狂信者だと思っています
※黒幕がサーフであることを知りました

553目指せ完結:2020/03/24(火) 22:43:02 ID:8FR1VR0.0
投下終了です

554 ◆lgy5dogjeQ:2020/03/26(木) 23:16:23 ID:jRE2DRx20
投下します

555未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:17:08 ID:jRE2DRx20
異世界横浜スタジアム。
拳王連合軍 VS 聖帝軍。
現在2対2、四回表、二打席目。

本来ならば拳王軍4番プニキの打順が回ってくる頃ですが、ここは聖帝軍側がタイムを申請しています。

理由はピッチャーであり、聖帝軍守りの要であった高津臣吾が死亡退場したことにより、交代のピッチャーがいないことに起因しています。
拳王軍側はこれを受諾し、10分までなら待つことを約束しました。


 〜 〜 〜

「高津さん……」
「泣くな、犬牟田……」

先ほど拳王の前に沈んだ高津……そして亜久里、千早の遺体が入った死体袋の前で犬牟田は嘆き、他の聖帝軍の者たちも悲しむ。
聖帝軍側ベンチはお通や状態だ。

「残酷なようですが今は勝つための手立てを。
タイムも有限ですし、瑞鶴の話が本当ならば負けた方が異界に取り残されて全滅します。
高津さんたちの犠牲を無駄にしないためにも負けてはならないのです」

一行の中で比較的冷静に見える金色の闇は、悲しみで思考を止めるより、頭を働かせろと言った。
非情なようだが元々暗殺者故、こんな時に思考停止するのはまずいことを理解しているのだ。
無論、仲間の死を悲しんでいないわけではない。

「だけど、高津さんほどのピッチャーがこのチームにはもういない。
他にピッチャーに適正がある人は……」
「それならば私が投げましょう、肉体に関してはモーフィング能力で高津の真似ができる。
技術は試合やこれまでの彼の戦闘を見ています……100%の再現や、彼がまだ見せていない投球技術に関してはどうにもなりませんが……」
「次点で南斗で鍛えてきた俺ぐらいだが、テクニック再現はともかくピッチャー向けの肉体に構成し直すなんて技は持ってない。
最善策で言えば闇だけが適任だろう」
『ちょっと待て、闇が抜けた二塁の穴はどうすんの?』
「おまえがやるんだデストワイルダー。レフトの方は機動力があるガンダムに任せる」

ピッチャーは体の形を自由に変えられる闇が最も適任とされた。
しかし肉体はともかく、高津に比べれば格段にピッチャーとしての能力は劣る。
これは闇本人や他の聖帝軍の面子さえもわかっていた。

「しかし、よりによって次の打席はアイツかよ」

ばつの悪い表情でレイジが拳王軍側のベンチを見るとタイム明けをハチミツを貪りながら待っていたプニキがいた。
バッティング技術に限定すれば拳王軍最高レベル、下手すればカオスロワ野球界において最強のバッターだ。

「あいつらの方もけっこう死人が出てるハズなのに悲しむ素振りすら見せず呑気に飯なんか食ってやがる……味方を味方とすら思わない態度……絶対に許せねえ」
「気持ちはわかるけど、こらえて紘汰」

殺しあう敵とはいえ狂信者と同レベルか、最悪それ未満の死んだ味方の扱いに紘汰は怒りを覚え、チルノは彼を宥める。
ちなみに拳王軍側は既にマウンドに出ているプニキを除くと、一部がベンチの奥へと身を隠し、残りが余裕すらあるかのような表情でこちらのベンチを見ている。
実際問題、聖帝軍は既に稼働できる選手が7人しかいないのに対し、拳王軍はまだ10人も残っており、まったく消耗していない選手もいる。
同点でも主力ピッチャー不在の聖帝軍相手では余裕すら感じてくるのだろう。
今思えば、タイムに10分もの時間を許したのも優勢故の余裕だったのかもしれない。

「あのホームランぐまか…策を練らないとまずいか」
「向こうが10分も与えてくれたんです、そんなに長くタイムを取らせたことを後悔させてやりましょう」



一方その頃、拳王軍側ベンチ。

556未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:17:46 ID:jRE2DRx20

「あいつらモンキーのように今のところ、しどろもどろしてるだろうぜ」
「ヤクルトの高津さんともっと野球がしたかったのは俺的に残念だが、良い気味だ。アルトリ…ヒロインXや平等院を殺した罰を受けやがれ」

ベンチから反対の聖帝軍に向けて嘲笑うかのようにクロえもんとディオが中指を立てたが直に怒る翔鶴と上条によって止められた。

「やめなさい、敵とはいえ向こうもヒトなんです。無暗に相手を挑発することは許しません」
「そうだぞ、俺たちまでゲスな真似をするつもりはない」
「しかしジョジョに翔鶴! 奴らは世界を滅ぼすヘルヘイムの味方だぞ」
「へ、マナー講習のつもりかよ。
どうせ試合を始めた以上は皆殺しにする奴らなんだから礼儀もクソもねえ。
野球のルールだけ守ってりゃいいんだろ」

ディオはやや不服、クロえもんは超不服な様子で止めに来た2人に意見する。
翔鶴はさらに言い返そうとするが……

『いや、ディおじさんたちが正しいよ』
「彩……ロックマンさん!?」

翔鶴の持つPET……光彩斗もといロックマンが仄暗くドスの効いた口調で会話に割り込んだのだ。

『敵に敬意を払って丸く済むなら殺し合いなんて起きない。やるだけ無駄さ』
「でも、しかし!」
『そもそもヘルヘイムや聖帝軍は多くの人を殺した……彼らは殺してきた罪のない人に謝罪なんてしたのか?
少なくともカオスロワちゃんねるで彼らが謝罪する書き込みなんて一度も見たことがないよ』
「それは……」
『わかったかな翔鶴、悪党に情けも敬意もいらないんだ』

普段は優しいロックマンの言葉に翔鶴は驚く。
彼の妹として止めるべき発言だが、『義理の妹』がそれを阻害した。

「ここはロックマンの言う通りよ翔鶴姉」
『インドラ』
「瑞鶴?!」
「どのみち殺すのならばマナーだなんだ言っても意味がないじゃない。
下手なモラル自体が敵に付け入れられる隙を与えてしまうわ。
そんなことより敵をいかに倒すかを考えた方が先決よ」
「しかし……」
「翔鶴姉が気に入れないなら兵法の一つとして割り切ってみたらどうかしら?
敵を挑発してミスを誘発する……的なね」

瑞鶴は拳王軍は知る由もないが、彼女はサーフに復元されてから暗殺者として生きてきた身。
殺すべき者たちへの敬意など無意味だと知っていた。
(若干不本意ながらも)ロックマンの意見に賛同する。

『勝つための兵法……納得だね!』
「ええ、そうですねロックマンさん(アンタのために言ったわけじゃないけど)」
「2人がそう言うのなら……」
「だろ! 相手は所詮敵なんだ、遠慮も容赦もいらねえ」

翔鶴もロックマン・瑞鶴両方からの意見に流された。
賛同を受けたクロえもんは敵である聖帝軍へのヘイトを続けた。

一方、その様子に眉を潜めるのは翔鶴・ロックマン以外のネットバトラーとネットナビの二組。
他の者には聞こえぬように小声で会話をする。

『ロックマンの奴、さらに苛烈な性格になった気がする。
戦闘のストレスもあるんだろうが、それ以上にダークチップの影響だろうか』
『お館様、警戒をしてほしい。なるべくダークチップを使わせないように気を遣うんだ』
「ああ」
「……クロえもんに同調してた俺が言うのもなんだが、色々すまん」

ロックマンに現れた攻撃性はダークチップを使ったものによる影響と上条とディオたちは断定。
同じ仲間として注意の目を光らせることに。


「……ふん」
「イチローさんイチローさんイチローさん」

そんなやり取りをハクメンは横目で見つつ、ムネリンは相変わらずイチローラブで試合の行方以外は興味なしであった。

557未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:18:41 ID:jRE2DRx20


一方、ラオウとMEIKOは――ベンチ裏のロッカールームにて仲間の死体を弔っていた。
横倒しにしたロッカーを棺桶の代わりとし平等院とヒロインX(彼女は性質上、死体が残らない仕様だが)を眠らせている。
そしてラオウはその前に座り、黙祷を捧げるように静かに胡坐をかいて座り込んでいる。

聖帝軍は拳王軍は仲間の死を悲しんでないと思い込んでいるが、そんなことはない。
MEIKOの指示により、敵に弱い面を見せないためにわざと表向きは悲しみを見せないようにしているのだ。
ラオウにしてみればムギちゃんの次くらい長い付き合いだった平等院の死は大きなものであった。

「ダーリン……」

悲しみを察しているMEIKOはラオウの背中を恋人のようにそっと抱いた。

「……ムギちゃんや平等院のためにも我々が負けるわけには行かん。
必ずや聖帝軍を討ち倒し、皆殺しにするぞ」
「ええ、あなたが望むのなら」


 〜 〜 〜

そして、試合は再開された。
聖帝軍はピッチャーを金色の闇に変更し、レフトはセンターにいるガンダム一機に任せる形で空白となる。


「行きます」

ピッチャーとなった金色の闇は第一級を投げる。
だがそれはただの高津を真似ただけの投球ではない。
ファーストの鎧武、サードのチルノからさらに支援を受けていた。

「これが打てるか!」
「高津が生きていたら気に入らなかっただろうけど」
「こちらは素人ですからね」

野球ボールに紛れて放たれたクナイと氷柱の弾幕が、プニキを襲う。
ダメ押しに野球ボールの周りは氷でコーティングされており、打とうとした滑る仕様だ。
常人ならば……否、そこらの野球選手では到底打つこともできない弾幕である。

「どこまでもどこまでも甘いな」

だがプニキは攻撃に臆することなく、ニヤリと笑うと。
目にもとまらぬ速さのバッティングにより自分に向かってきた弾幕をすべて打ち返した。
さらに氷で滑るハズのボールもプニキの技量の前では意味もなく、難なく弾幕ごと打ち返すのだった。

「なに!?」
「うわああああ!」

打ち返された弾幕はベンチにいる犬牟田以外の聖帝軍に襲い掛かった。
氷柱やクナイが選手たちに刺さり負傷するも、手練れ揃いである聖帝軍の者を殺すには威力が足りなかった。

……ただ一人、身体的に恵まれておらず、装甲に守られてもいない、一般人であるイオリ・セイを除いては。
スタジアム右側で無惨な屍となったイオリが横たわっていた。

「イオリ!」

親友の死にレイジは言葉を上げるが、その直後にコクピットで警報がなる。
プニキの打った野球ボールはイオリが消えたライト側を狙っていたのだ。
コースはもちろんホームラン。

「させるかあ!!」

友の死を嘆いている暇もなく、レイジはガンダムのバーニアを吹かしてボールを阻もうとする。
そして、ボールはガンダムの装甲部分に当たるが、これは拳王軍にとっても聖帝軍にとっても、レイジにとってもプニキにとっても既視感のある光景だった。

「馬鹿め。ライトにいるガキでは俺の打球を取れないのは想定済み。
おまえがカバーに入るのは予測がついていた!」
「なッ、またさっきの曲芸を!」

ボールはガンダムの装甲の凹凸を何度から跳ねたとあと、観客席の方へ向かう。
もはや魔法じみたプニキのバッティング技術に聖帝軍は戦慄を覚える。
そしてガンダムに後ろへ飛んで行ったボールを追いかける余力はなく、他の選手も打ち返された弾幕による負傷で追いかける余裕はない。
拳王軍の三点目獲得、ホームラン記録の更新。
プニキはさらにニヤリと嗤った。


「一度、言ってみたかったんだよね……狙い撃つぜ!!」
「!!?」

プニキが勝利を確信した瞬間、観客席側から放たれた一条のビームが野球ボールに命中し、威力が死んだボールが落ちた。
ボールが落ちた場所は観客席ではなく、スタジアムの内側だ。ホームランにはならない。

プニキがホームランを逃したことは衝撃であるが、それ以上に驚かせたのはプニキのホームランを止めた存在であった。

「おい、なんでアイツがあそこにいるんだ!? あのガキはあそこでくたばってるハズだろ!」

ホームランを背後にある巨大なビームライフルで止めたのは――イオリ・セイ。
弾幕で死んだはずの少年が、観客席の方にいた。

558未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:19:10 ID:jRE2DRx20

「ふふッ……トリックさ、ライトにいる死体をよく見てみろ」
「あれは……マネキン人形!?」

からくりを解説すると、イオリは最初からライトには立っていなかった。
一流のガンプラビルダーであるイオリはガンプラ技術を応用してドームに放置されていたマネキンを自分そっくりの顔を人形に貼り付け、機械に強い犬牟田が簡単に動く程度の仕組みをもった機械をつけることで偽装をした。
よく見ればすぐ気づく代物だが、一般人であるイオリの存在を過小評価……特にプニキは気が付かなかった。

次にビームライフルだが、これはスタービルドストライクから外したものを観客席に放置。
レイジ的には野球の試合では腕が塞がって邪魔なうえ、置く場所が他になかったから置いていただけだが、閃いたセイはこれをホームランボールを迎撃するための対空砲にこっそり改造。
犬牟田のコンピュータによる予測ではプニキが何の特殊能力も持たないライト側を狙うのは予測済み。
そこでビームライフルの存在を悟られないように弾幕を張り、もし打たれても可能な限り速度を減らし、イオリの動体視力でも狙えるレベルまで遅くなった球をビームライフルで撃つ作戦だったのだ。

「最初の弾幕は俺に打たせないためじゃなくて、俺に大砲の存在を気づかせないための……罠!?」
「イオリは確かに俺たちに比べれば格段にひ弱だが、その才能を生かすガンプラ愛と発想力があった。
自分の能力に驕り、イオリをただの能無しと高を括った時点でおまえの負けだよ」
「俺が…ロビカスでもないただのガキに負けただと……」

サウザーの言葉を受けつつ、プニキはホームベースの上で立ち尽くす。
それだけに炉端の石にも等しい子供にホームランを阻止されたのがショックだったのだ。

「何をやってるんだプニキ! とっとと走れ!」
「ええ?」
「タッチされるまではまだアウトじゃないだろ!」
「あ、そうだ!」

ホームランこそ逃したが、聖帝軍がキャッチする前に地面にはついているのでヒットではある。
敵に捕まる前に塁を踏めば、アウトにはならないのだ。

「こうなりゃ塁を踏んでどうにか汚名挽回を……!」

そして(焦りのせいで名誉挽回を言い間違えるミスをしつつ)、プニキは一塁へ走る。
が。

『プニキさん足遅ッ!』
『ああー……ありゃバッティングばかり鍛えて他のトレーニングをまったくやってなかった口だな』
『あんなにハチミツばかり食べてたら太りもする……ブッタファック』

ネットナビたちがツッコミを入れたくなるほど、プニキの足は赤子のダッシュレベルで遅かった。
おそらく走力はカオスロワ球界でも最低レベルであろう。

「一塁が遠い、もっとハチミツを……!」

走って疲れたのかプニキは試合中にも拘わらず腰に抱えていたハチミツで栄養補給をする。
だが、彼がハチミツを口にすることはなかった。
白い悪魔がやってきたからだ。

「え……?」

プニキの行く道を遮るように巨大なガンダムが立ちふさがる。
そのマニュピレーターには野球ボールが握られ光輝いていた。

「うわああああ! お助け――」
『ビルドナックルッ!!』
「うおるとッ!?」

スタービルドストライク最高の武器であるビルドナックルが容赦なくプニキに向けて振り下ろされた。
ズドンという音と重みもと共にプニキは即死し、ガンダムの拳が地面から離れた後にはアウトという結果と潰れて焦げた熊肉のハチミツ漬けだけが残った。


【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー 死亡】

559未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:19:47 ID:jRE2DRx20


「プニキ……!」
「正直、あんま好きな奴じゃなかったが……これはまずいね」

性格はともかく最高のバッターであったプニキの死は拳王軍のベンチを騒然とさせる。
聖帝軍が守りの要を失ったのならば、拳王軍は攻撃のエースを失ったのだ。

「やったなイオリ!」
「いや、僕だけじゃない、レイジやみんなの援護がなければこんなに上手くいかなかったさ。
……さて、ダミー人形はバレたし同じ方法はもう通用しないね」
「スタービルドに乗ってくれ、久しぶりに相乗りだ」
「うん」

観客席にいたイオリはライトのポジションには戻らずレイジが操縦するガンダムに乗り込んだ。
レフトだけでなくライトが空白になってしまうがイオリの脆弱さやガンダムの機動性を考えれば、レフトやライトをガンダム一機に任せた方が安全だろう。
また、一つのポジションに二人いることも、カオスロワ式野球ではなんらルール違反ではない(超人血盟軍の前例もあるしね)。

こうしてワンアウトとなった拳王軍の次の打席にはMEIKOが立った。
聖帝軍は先にプニキに行った弾幕攻撃は行わなかった。
打ち返された時のダメージがデカすぎると学んだからだ。
ただし、味方の支援がまったくなくなったわけではない。

「高津の投球なんてとっくに見切……クソ、氷で滑って飛距離が伸びない!」
「取ったぜ! これでツーアウトだ!」

チルノによる氷のコーティング自体は続行。
MEIKOは二回の空振りの上で三度にヒットをたたき出したが、当たった瞬間氷で滑ったため、飛距離と制球性を維持できずに一塁側に飛んでいき、紘太にキャッチされてしまう。
あっさりと取られたため呆気なく感じるが、これはMEIKOが弱いのではなく、それだけプニキのバッティングセンスが異常だったのだ。



だが、真の恐怖はここからである。

「任せたぞハクメン」
「……応」

亡き平等院に代わって6番センターに選ばれたのはハクメンである。
白い侍の姿に闇ははっと気づく。

(まさか……私たちの恩人であるフェイ・イェンを殺したという『お面野郎』……!?)

闇は直感と、相手が放つ隠し切れない強者のオーラでハクメンの正体を看破。
レストの話では刀を持っていたことと仮面ぐらいしか特徴がわからなかったが、レストと一対一で交戦して互角に戦える実力者の数は限られている。
となると移動した距離や時間を考えるとレストが戦った男としか思えないのだ。

「我は空、我は鋼、我は刃
我は一振りの剣にて全ての「罪」を刈り取り「悪」を滅する!!
我が名は「ハクメン」、推して参る! 」

ベンチにいる時は隠していたオーラが発揮される。
呑気な性格のサウザーもハクメンの実力に気づいたのか、口には出さぬものの玉のような汗を出す。
(こいつはプニキやラオウ以上にヤバいかもしれない)と。
サウザーと闇はアイコンタクトで合図を送り、さらに闇は左右や前方を見渡すふりをして仲間たちに目線の暗号を送った。
(こいつはまずい相手だから特に警戒しろと)

「投げる前に一つ、聞きます。
スカイツリーの辺りでネギ色の髪をしたロボットを斬りませんでしたか?」
「葱…? ああ、あの時のか」

闇は単刀直入にハクメンに問いかけると、やはりフェイ・イェンと縁がある存在であった。

「それからどうしたんですか?」
「世界を蝕む『凶』を狩るためには邪魔だから切り捨てたまでのことよ。
『凶』を守る者は例えどんな理由があれ悪鬼同然、消えてもらう他ない……必要な犠牲だ」
「マガトだかなんだか知らんが、必要な犠牲だと、貴様ァッ!」

フェイ・イェンは聖帝軍にとって恩人である。
そんな彼女を無惨に殺した怨敵が目の前にいたことに、サウザーや聖帝軍の選手は怒る。
まさかの遭遇に加えて拳王軍の手先だったという事実が怒りをさらに燃え上がらせた。

「もういいです……拳王軍はやはり芯の中まで腐っていた。
その真実があればあなたたちを気兼ねなく殲滅できますから」
「フンッ、なんとでも言うがいい。
『凶』に甘えなど不要、隙を見せれば何もかも滅ぼされるだけだ」


拳王軍は必ずここで全滅させる、その決意を新たに聖帝軍は制圧前進を開始する。

560未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:20:13 ID:jRE2DRx20

「ッ!!」

そして闇は投げ、チルノは投球に再び氷によるコーティングを施す。
その投球は高津が今まで投げた中でも最高クラスの速さである。

「ズェアッ!!!」

だが、その投球は本気なら惑星破壊も可能なハクメンの前では非力。
当て身の要領で弾き、そして打球は刹那の瞬間に紘太(鎧武・極アームズ)の肩当てに命中した。
その速さと威力は高津の脳を炸裂させたラオウの時の倍以上の威力を誇る。

「うわああああ!」
「紘太!」

幸い、吹き飛んだのは肩当て部分だけだが、かすっただけで立つことも維持できなくなるダメージが紘太を襲い、地面に倒させた。
なお、ハクメン自身が野球に関して素人だったので弾は鎧武に当たった直後にゴロとなってヒットどまりだが、これがホームランコースだったらプニキ以上に危険なバッターとなるだろう。

「させるかよ!」
「遅い! ズェアッ!」
「早いッ!サウザーの3倍以上はある!」

動けなくなった紘太の代わりにボールを取りに行くビルドストライク、そして三塁のチルノはバルカンと弾幕で一塁への進軍を阻もうとする。
だがそれらは全て切り払われ足止めにさえならなかった。
速度に関しても時を斬って移動できるハクメンは残像が置き去りになるレベルで、誰も捕らえられず、しかもほぼ無消費。
もはやBLACK RXですら軽くあしらえる論外レベルの強さ、それがハクメンであった。

(おまえたち自身に『凶』はない。
だが、世界の秩序のためには必要な浄化の邪魔をするなら話は別だ。
障害となるなら撫で斬りにさせてもらう!)

そのような想いを抱きつつ、時を斬りながら進むハクメンは最初のターゲットに見定める。
一塁を守る仮面ライダーは被弾で倒れており、首を落とすにはまたとないチャンスだ。
次に塁を進みながら二塁の虎、三塁の大精霊、最後に聖帝の首を順に落とすことで、聖帝軍の戦力を壊滅させる。
そうなれば六回裏終了を待つまでもなく試合は終了し、凶狩りとヘルヘイム討伐及び死者スレの黒幕を撃破に時間を割くことができる。

止まった時の中で刀を構えて突進しようとするハクメン。
その速度は最大速度であり、これで突進すれば確実に鎧武が細切れの肉塊と化す














――そのハズだった。

ツルッ

「ピャッ!?」

561未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:20:46 ID:jRE2DRx20


ハクメンが容赦ない奥義が発動しようとしたその瞬間、ハクメンの足が滑り転倒、そのままツルツルと、しかし猛スピードで正面方向に体が滑って行った。

(いきなり足場の摩擦が消え……いったい何が!?)

0.1秒足らずの高速思考の中でハクメンは自分が転んだ原因を探る。

(これは……氷!?
目に見えないほど薄い氷の床が一塁までの道に敷き詰められている!?)

その正体はチルノが秘密裏に仕掛けた氷の床。
氷精としてパワーアップの限りを尽くしたチルノが力の限り設置したトラップだ。
いかなハクメンとて、移動は足を使う以上、勢いがついたまま走れば確実に転倒するレベルだ。
ならばジャンプすれば良いだろという話になると思いきや――

(あの弾幕射撃は私を足止めするためではなく、罠と魔力の動き悟らせないための囮!
弾幕の際に発声した土煙が罠の隠れ蓑にしたか)

ハクメンにしてみればチルノやガンダムはおろか、聖帝軍など蟻を踏み潰すより簡単にできる存在だ。
せいぜい機動力でレストさえ上回っているサウザーなら多少手こずるだろうか、という相手だったハズだ。
しかし、それは直接的に対決すればの話。
個々の技能とそれを掛け合わせるチームワークさえあれば、彼を罠にハメることは可能だった。

(だが、浅い! もう一度時を斬って……――)

それでもハクメンはあきらめず地面に刀を突きたててブレーキをかけて再起を図る。
だが時を斬る能力が終了した直後、それができなくなる事態に陥った。
再び時を止めようとした瞬間、ハクメンの関節という関節が一瞬で氷に阻まれて、一切の身動きが取れなくなった。

「氷が!」
「アタイの罠に引っかかった以上は、逃さないよ!」

こうなれば、「時を斬る」動作は不可能。
それでもハクメンが魔力を解放すれば体に張り付いた氷も足場の氷も一瞬で解けるだろう。

「うおッ、あぶねえ!」
「この私が……」

だが、この瞬間の場合、ハクメンが力を解放するよりも氷に摩擦を殺されてスリップしたままスタジアムの壁面に激突する方が早かった。
それだけハクメンは、自分でも制御できるなくなるほど早く動きすぎたのだ。
あまりの運動エネルギーはハクメン自体をも傷つけ倒れさせた。
ちなみにスリップした結果、紘太さんがいる一塁はギリギリで躱した。

「トドメだ、本日二回目のビルドナックル!!!」
「ぐふうッ!!」

更にレイジは野球ボールを持ったビルドナックルを動けなくなったハクメンに叩き込む。
いつものハクメンならば避けたり防ぐことなど造作もなかったが、今は倒れた状態で態勢が悪く刀も衝突した際に手放していた。
お見舞いされたビルドナックルは直撃し、拳王軍にスリーアウトをたたきつけた。

「やったね、レイジ」
「いや、頑丈な鎧だぜ、仕留めきれなかった」

ハクメンは直撃をもらいはしたが、生きていた。

「気絶……してるの?」
「もう一つおまけにビルドナックルを叩き込もうと思ったが、やめにした。
こいつはとっくにタッチされてアウトだし、もう一回やったら反則になるだろう」

ハクメンは鎧に僅かな罅が入る程度しか目に見える負傷はなかったが、伸びているか倒れたまま動かなかった。
ハクメンはこの後、他の拳王軍の仲間に担がれ――六番センターのポジションを控えの選手であるメーガナーダに交代したため、今試合では退場扱いとなった。

562未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:21:18 ID:jRE2DRx20

 〜 〜 〜

次回、四回裏。

               拳 2-2 聖

『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
瑞鶴           4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
メーガナーダ       6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト




『聖帝軍 布陣』

-             1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番ピッチャー
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番センター
デストワイルダー     6番セカンド
-             7番レフト
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード

 〜 〜 〜

「まさかプニキを失い、期待していたハクメンがああもあっさりやられるなんて」
「MEIちゃん、気を落とすな。
だが認めよう、聖帝軍は今まで戦った中で最強の野球チームであると!」

先ほどはラオウのホームランと高津の抹殺で歓声に沸いていた拳王軍だが、今度は打って変わって拳王軍の方がお通やムードであった。
そんな中でコソコソと光兄妹は内緒話をしていた。

『翔鶴聞いてほしい……もしもいよいよって時は僕にダークチップを使って欲しい』
「彩斗兄さん……あれは……」
『わかってるさ、でもあのチップは戦局をひっくり返す力を秘めている。
僕らが負けて拳王軍が負けてしまえば元も子もない。
……これ以上、仲間の死を見たくないんだ』
「…………」

ロックマンの悲壮な覚悟に翔鶴は何も言い返せなかった。
ロックマン自身もこれまで以上の窮地を肌で感じ取っており、全滅するぐらいなら悪の心を得た方がマシではないかとさえ考えだしていた。

『(最悪、僕が完全に悪の心に染まったら、ジョジョやディおじさんたちがデリートしてくれるさ)』

それは己の破滅を計算に入れてでも妹や仲間を守らねばならないという、覚悟であった。

563未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:21:44 ID:jRE2DRx20



一方、気絶したハクメンは瑞鶴とメーガナーダによってベンチの裏で介抱されていた。
だが、瑞鶴とメーガナーダは黒幕の手先、その黒幕が喉から手が出るほど欲しいテラカオスを殺す力を持ったハクメンに何もしないわけがなかった。

(本当なら殺しておくべきだけど、この後の都庁の連中やイチリュウチームとの試合を考えたら、まだ生かした方が得策ね)

ハクメンを殺せるまたとないチャンスであったが、拳王連合軍自体も度重なる戦いで戦力が激減している。
今回の試合でこそ遅れを取ったとはいえ、単純な戦力でみれば今殺してしまうと拳王軍まで壊滅する恐れがある。
拳王軍自体は壊滅しても良いが、愛する姉翔鶴まで死んでしまうのはいただけない。
自分と翔鶴が生き延びるのに必要な肉壁なのだ。

(でも、何もしないのも後々まずい……だから)

瑞鶴は治療するフリをして、超小型の爆弾……今まで暗殺のために使ってきたスマホで起動するリモート爆弾を罅の隙間か鎧の内側に入れていき、包帯で固く覆った。

(これでよしと、いざテラカオスや提督さんを殺そうとしたらいつでも起爆できるわ。
流石のハクメンも中身までは鎧ほどの防御力はないだろうし、この爆弾で殺せなくとも手傷は確実に受けるでしょうね)

ハクメンは完全に気を失っており、巧妙に鎧の内側に埋め込まれた異物にはそう簡単に気づくまい。
気づかれて摘出されても気絶に追い込んだ聖帝軍のせいにするだけである。

入り口はメーガナーダに見張っており、ラオウたちに気づかれた様子はない。
瑞鶴の治療に見せかけた工作は完了である。

「ありがとうメーガナーダ、こっちの『仕事』は終わったわよ」
「インドラ〜もぐもぐ」
「あれ…? あなた何食べてるの?」
「インドラ♪(熊肉のハチミツ漬け)」

うっかり仲間の死体を食べてしまったメーガナーダくんは、ペットの躾がなってないと拳王軍に怒られた瑞鶴ごと仲間たちの前で土下座することになった。



【二日目・23時00分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと1時間で異世界は消滅。
 それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)


【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
(支給品選手枠)
デストワイルダー@仮面ライダー龍騎

【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
※負傷により退場



【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】

【ハクメン@BLAZBLUE】
※負傷により退場
 また鎧に罅が入り、瑞鶴が持つ違法改造スマホで起動するリモコン式の爆弾を罅から入れこまれました

564 ◆lgy5dogjeQ:2020/03/26(木) 23:22:19 ID:jRE2DRx20
投下終了です

565 ◆gmrRot5lNM:2020/04/01(水) 08:53:05 ID:4yb.AVWk0
小町、あかり、セルベリア、ディーで予約します

566 ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:18:44 ID:eTGa3rlc0
予約分を投下します

567死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:19:48 ID:eTGa3rlc0
いつぞやの新宿都庁地下で繰り広げられた赤い影と青い閃光のぶつかり合い。
それが今度はビッグサイトの屋上で再び繰り広げられていた。

「セルベリアァ!!」
「小町ィッ!!」

赤い機械刀サイファーと青い竜殺剣ドリスが激しくぶつかり合う。
一太刀、二太刀、三太刀。互いが攻め手は防ぎあう。

最高位の完璧超人さえ一撃死させた切れ味のサイファーと、それを傷一つなく耐えきるドリス。
その硬さからセルベリアの持つ大剣が間違いなくオリハルコン製であることは間違いないと小町は戦いながら見抜く。

(邪竜をあっさりと倒したところからしても本物の竜殺剣みたいだ……
この世界の摂理を守っていた真神を殺した竜殺剣の形状がどんなものかまでは知らないが、そんなに沢山あったら都庁のドラゴンはとっくの昔に絶滅している。
都庁にあるものはレストが造り上げたものだし、この世界に大災害を招き入れた悪魔が使った剣である可能性が濃厚だろう)

小町は思考を巡らせる。

(だとしたらセルベリアが世界を滅ぼした悪魔なのか?
さっきまでは人間だった覚えがあるが、悪魔の力を隠してただけ?
剣を仮に拾っただけならどこで手に入れて竜殺しの力を知った?)

だが、彼女が考える間もなくセルベリアは矢継ぎ早に攻撃を繰り返してくる。
思考のリソースを考察につぎ込む時間がない。

(とっちめて、聞き出すしかないか…!)

とにかく、勝たねば……そう思って小町は剣を振り、牽制の銭を投げる。

「喰らえ!」
「喰らうか! 『距離を操る程度の――」

セルベリアが剣と槍の二刀流による全力全開の突進を放つ。
小町は以前戦った時と同じように距離を操る程度の能力もとい間合いを支配する能力で、突進を防いでから隙ができたところにサイファーの一撃を加えようとした。

「ッ!」

しかし、小町は直感でこれが能力で防げないと思い、剣による防御も選択。
避けている余裕はなかった。
実際、突進撃の前になぜか能力が発動せず、小町に突進が命中。
サイファーで直撃こそ躱したものの、突進力自体がかなりの衝撃であり、腕の筋肉に多大なダメージ、さらに床に転がり追加ダメージ。

「ゲホッ、どうして能力が」
「追撃する」

血反吐を吐きつつ、今まで自分を強力に守っていた能力が発動しなかった理由を疑問に持つが、セルベリアは屋上の床に転がり込んだ小町に容赦ない追撃を加えようとする。

「させない!」

そこで主人公――隠れて攻撃の機会を伺っていたあかりは遠距離からエンシェントソードの雷による援護を行い、小町への追撃を防ごうとする。

「そこか!」
「居場所がバレてる、わああああ!」

あかりが攻撃してくるより早く、槍から出る光線が放たれ、あかりの頭部に命中し、その体はビッグサイトの屋上から落ちようとしていた。

「あかりぃぃぃ!!」

小町は急いで落下しそうになったあかりの下へ能力を使った瞬間移動を用い、助け出した。
飛行を行いながら小町は彼女の無事を確かめる。

「あかり!大丈夫かい?」
「か、かすっただけ、ヘルメットがなかったら即死だった」

ビッグサイトから落ちたのは焦げて穴が開いたデモニカのバケツヘルメットのみ。
あかりは寸前で躱したこととヘルメットがダメージを吸収したことで死を免れていた。

「墜ちろ!」

安堵も束の間、セルベリアは飛び続けている小町たちに向けて槍ビームを発射して機動を制限したのち、さらに自分も小町に向けて飛び立ち、剣と槍による叩きつけ攻撃を行う。

「クソッ、防げないなら避け――られない!? がはあ!!」
「いたあああああああああい!!」

あかりを抱えながら小町は回避行動に移る。
攻撃を能力で弾くのは不可能だとわかっていたために、今度は能力で攻撃の範囲内から出ようとした。
だが、できなかった。
まるで何かの力に引っ張られるように回避ができなかった。
小町は咄嗟にサイファーによる防御を行うが、サイファー自体はともかく、伝わった強い打撃の振動は小町をビッグサイトの屋上に墜落させて叩きつけるには十分だった。
そこへ槍ビームが飛んできたが小町もあかりもすぐに態勢を立て直して追撃を躱す。

568死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:20:23 ID:eTGa3rlc0

「畜生、防げない攻撃と避けられない攻撃をしてきやがる!」
「あかりの存在も見抜いてるみたい! 普段なら嬉しいけど今は嬉しくない!」

小町の距離を操る程度の能力を無効化し、影薄の位置さえ把握している感知能力。
単純に能力が上がっただけでは説明がつかない、セルベリアの謎多き強さに二人は焦燥する。
その様子を見てセルベリアはほくそ笑む。

(ああ、おまえたちを倒せるように、スキルやポテンシャルを死に物狂いで手に入れたからな。
悪魔化で手に入れた『貫通』、必中攻撃を可能にする『後の先』、そして度重なる改造手術で手に入れた『心眼』。
これらを手にしてる以上、今までの戦術が通用すると思うな)

ギムレー戦にも使用した耐性を無視する『貫通』。
いくら小町の能力でも攻撃の反射に応用することはできないので、間合いに入れば確実に発動し、能力による回避を無効化する。
『貫通』一つでは回避に能力を使われると意味がないので、格闘攻撃ならば絶対必中を可能にするバトルポテンシャル『後の先』の出番となる。
ちなみにポテンシャルが彼女が本来持っている『ヴァルキュリア』『リーダーシップ』『実験体』『戦車嫌い』の他に一つしかつけられないので、ギムレー戦で使った『貫通攻撃』との併用は不能。
ただし、小町の能力ベクトルはギムレーの逆で回避力が高く防御力は並であるため、防御力を無視するポテンシャルをつける意味はなく、確実に当たる攻撃の方が難敵であった。
『心眼』は敵の不意打ちを無効化する悪魔の力で、影薄に敵意があるなら場所を見抜き、アドバンテージを無効化する能力である。
セルベリアはこれらの能力を利用して、小町たちに対して有利に戦いを進めていた。


『セルベリア・ブレス殿!』
「マクギリス……血のスカーレット小隊か!」
『救援が遅れてすまない、このアグニカ・カイエルの遺産であるバエルを手に入れるために時間がかかった』

そこに割り込むように上空からガンダム・バエルを筆頭にしたMSの小隊がビッグサイトに向かってくる。
このスカーレット小隊とやらは今まで東京の外側にいた狂信者の一団であるが、ビッグサイトの一大事(ギムレーのこと)を聞いて遅刻ながらも駆けつけたのだ。

『侵入者に見せてやろう……このクラウザーさんの守護者になりうるMS、バエルの力を……!』

MSの数は12機、いずれもストライクフリーダムとかダブルオーガンダムとか高性能機ばかりである。

「こんなところで死んでたまるかよォ!! 死歌『八重霧の渡し』」

万事休すと思われたその時、小町は咆哮と共にサイファーに霊圧を込めると、一枚のスペルカードを出したのちに、剣を振るう。
するとプラズマと霊圧を合わせた紫のエネルギー刃がセルベリアと後ろから迫ってくるMS軍団に向けて無数に放たれた。

「避けきれん……ぐゥ!!」

その刃の弾幕……否暴風雨は強化されたセルベリアをもってしても避けきれるものではなく、仕方なくドリスを盾にした防御に切り替える。
しかし直撃はせずとも漏れたプラズマや霊圧がセルベリアを炙って軽くないダメージを与え、衣服も粉々にした。

そして、セルベリアよりも小回りが利かず、ドリスよりも硬くはないスカーレット小隊の方々は。

「バエルッ!?」

切り裂かれて爆散して全機、花火になった。
ナノラミネートアーマー? PS装甲? 流石に霊的属性を持った攻撃は防げません。
幸いなのは施設まで爆風が届かなかったことである。


「血のスカーレット小隊、全☆滅!」
「30秒経たずにか!?」

上の二台詞はその様子を見ていたビッグサイトの外側にいたモブ狂信者の言葉である。


【マクギリス・ファリド@機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ 死亡】

569死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:21:28 ID:eTGa3rlc0



「く……小町たちは!?」

セルベリアは衣服ボロボロだが、経験と肉体改造の成果によるものか彼女自身は軽傷。ドリスは無傷である。
刃の嵐が過ぎ去った後、彼女がドリスの影から顔を出すと、小町たちが屋上から姿を消していることに気づく。
セルベリアはすぐさま、ビッグサイトに備え付けられた通信機を使ってディーに通信を飛ばす。

「ディー、侵入者が現れた。侵入したのは乳神、例のステルス集団も一緒だ」
『屋上にもか?』
「屋上『にも』?」
『君が乳神が戦っている間にネオ・ジオングアーマーが保管されている格納庫にもステルス集団が現れ、切歌たちが交戦している』
「奴らの狙いはネオ・ジオングアーマーか? ということは小町は囮?」
『もしくはそれを含めたすべて……我々にとっても欠かせぬものが含まれるかもしれんな……』
「……黄泉レ〇プマシン!」

おそらく小町たちはクラウザーさんの蘇生手段を破壊しにきた。
更に都庁への報復手段を絶つためにネオ・ジオングアーマーの破壊にも来たのだろう。
マシンは当然のことながら超兵器だけでもやられれば、狂信者の敗北は確定である。

『クッ、ビッグサイト内部の監視カメラが現在進行形でやられている、格納庫の戦況も気になるが乳神がマシンを破壊する可能性がある。
 申し訳ないがセルベリア、位置を教えるから君が今すぐ彼女をSATUGAIしてくれないか?』
「ああ、そのつもりだ……」
『では、君のためにモブ狂信者の救援を送ろう』
「やめておけ、奴らの実力は切歌クラスのネームド狂信者でないと太刀打ちできない、犠牲が増えるだけだ。
 私なら無駄な損害も出さずに奴を殺せる! 他の狂信者にはビッグサイトの封鎖を徹底させて小町の討伐は私にやらせてくれ!」
『ならば私がそちらの援護に』
「ビッグサイトの狭い通路じゃウィツァルネミテアにもなれないだろ!
仮に貴様が捕まってしまったら装置を停止させられる……そうなれば一貫の終わりだ」
『しかし……』
「いいか、小町のレ〇プは私一人でやる!貴様は指令室を引きこもって身を守るんだ」

セルベリアがディーの救援を渋ったのは、小町を一人で討ちたいから……という私闘のためではない。
ディーが例の裏切り者……カオスロワちゃんねる管理人である可能性が濃厚だからだ。
疑心により背後から撃たれる不安があるためである。

『……君がそういうのならやり遂げたまえ、監視カメラが壊された順番からして北側にいるようだ』
「了解だ」

セルベリアは小町が隠れているらしい北側に向けて全速で駆けていった。




一方その頃、小町はあかりを抱えつつ、監視カメラを銭投げで壊しながらビッグサイトの中を飛んでいた。
ビッグサイトの中に入っていったのは態勢を立て直すためだ。

「考えたね、小町ちゃん。
 ビッグサイトの中ならマシンもあるし、大火力の攻撃は狂信者もできなくなる!」
「いや……条件はこっちも一緒だ。
 さっきやった八重霧の渡しを無暗に使ったら壁を貫通してマシンに直撃、そんで関東がお陀仏になるかもしれねえ。
 どこか、大技を使っても大丈夫そうな場所はないか?」

セルベリアや狂信者は間違いなく追ってくるため、どこかで最適な迎撃ポイントを探さねばならない。
監視カメラ破壊は居場所がバレてしまうが、小町はそれも計算済みであり、自分たちがどんな罠を張るかにさえ気づかなければ十分である。
むしろビッグサイトに潜り込んだことをアピールしないとセルベリアが格納庫の側に向かって日之影たちが危険に晒されてしまう。
格納庫へ向かって日之影たちを合流したところで無数の狂信者に一点集中攻撃を受けてマシン停止&超兵器破壊どころではなくなってしまう。

「それにしても、セルベリアが竜殺剣を持っていたとは……」

小町が気になるのはやはりヴァルキュリアが竜殺剣を手に入れていた事実。
邪竜をもいとも簡単に倒していたため、戦法さえどうにかすれば神々を殺すことも可能だろう。
ただ悪魔だと仮定した場合、最前線に出て身を危険に晒し、そもそも参加者として殺し合いに参加する必要性には疑問が残るが……
少なくとも悪魔本人でなくとも、関連性があるのは確かだろう。
捕まえて聞き出す必要もあるし、件の悪魔だったら殺すことになるかもしれない。

「まさか奴が世界を滅茶苦茶にした悪魔、もしくは手先なのか?」
「……あかりはそうは思わないな」
「なに? どうしてそう思うのさ?」

あかりの言葉に小町は首を傾げる。


「だってさ、あそこまで必死にクラウザーさんに尽くしている狂信者なのに、クラウザーさんも危険に晒す大災害や殺し合いを起こすと思う?」

570死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:22:08 ID:eTGa3rlc0


あかりの理論はクラウザーの信者ならば、彼の安全を第一に考えるから世界を滅茶苦茶にしないというものだ。

「だったら、狂信者というのがそもそもの演技だとしたら?」
「それもありうるかもしれないけど、狂うほど大好きだったのに、演技なんてできるものなの?
 少なくともセルベリアの『大好き』は『本当』にあかりには見えたの」

あかりは小町よりは一歩退いた場所からセルベリアとの戦いを見ていたため、小町よりも冷静に彼女のクラウザーへの熱愛ぶりが見えたのだ。

「狂信者はモモちゃんやまどかちゃんと違って許されないことをいくつもしてるし、狂信者になる前からしょうもない悪党だった人もいるかもしれない。
 でもね、クラウザーさんへの愛だけは共通してると思うの。
 自分が死んじゃっても良いから、大好きなあの人を助けたい……あの愛は本物だと思う」
「確かに……」

狂信者とは散々戦ってきた影薄組だからこそ、クラウザー愛に狂った集団であるのには納得がいく。
セルベリアもその中の一人だ。

「……ひょっとして悪魔が生きて裏から殺し合いを操ってるとしたら、狂信者こそ利用されているのかも。
 セルベリアはそいつから剣を渡されて、いざという時の囮に使われているのかも。
「替え玉……なるほど、そういう可能性もあるっちゃあるわけか」

黒幕の悪魔が生きていて、セルベリアの狂信を利用して悪魔に改造し、竜殺剣を渡すことでスケープゴートに仕立て上げられた可能性もある。
いざ狂信者が潰れても、セルベリアを黒幕と誤解して討った対主催が偽りの勝利に浸っている間にトンズラかまされる危険もあるわけだ。

「だがあくまで推論だ。
 竜殺剣の出どころを聞くにしろ、マシンを止めるにしろ、大前提として捕まえなきゃいけない」
「それもそうだね」
「今のセルベリアは地下で戦った時よりも格段に強い。
 ドラゴンハートで強化されベジータを倒して大幅にレベルアップしたアタイと同じかそれ以上に。
 むしろ首輪も外れてヴァルキュリア化に制限がなくなった分や距離を操る程度の能力が効かない分、アタイの方がたぶん不利だろう」
「何か逆転の秘策はないかな……どんな手を使ってでも彼女を止めないと」

見ていない内に相当な強敵となったセルベリアを倒すのは至難。
しかも捕まえなくてはならないということは殺すよりもずっと難しい。
手立てを探して小町とあかりは探索する。

「ねえ! あれ使えるんじゃない?」
「おお、あれならセルベリアを捕まえられるかもしれん。
 ついでにセルベリアが本当に狂信者か悪魔かを確かめられるな」

少し遠くからセルベリアの気配も感じ、時間もあまり残されていない中。
二人はとある一室を発見すると、ニヤリと悪そうに笑った後に入っていった。



数分後、セルベリアも痕跡を追う形でその部屋に入ろうとする。
部屋の中は電気を消しているためか薄暗く、小さく狭い。
戦略的には大きな価値はない資材置場だったハズだ。
それを思い出した直後、部屋を覗き込んだセルベリアに向けて紫のエネルギー刃が放たれる。

「――八重霧の渡し、とやらか!」

しかし、セルベリアはこれを冷静にドリスで防御する。
攻撃が止んだ後に槍ビームで応戦を考えたが、小町の後ろ側にはマシンがある配置であり、万が一ビームの威力が壁を何枚も貫通しようなら大爆発である。
一方、マシンの特性を相手が知ったか知らずかわからないが、小町の方は方角的に飛び道具を使い放題である。
一見小町の方が有利に見えるが、そうではない。

(ここに逃げ込むとは……墓穴を掘ったな、小野塚小町!)

資材置場は一方通行になっているほど狭く、小町の機動力を生かせない。
入り口はセルベリアが塞いでいるので、能力を使った脱出も不能。
トドメに影薄であるあかりの存在も心眼で見えているため、小町の後ろで奇襲の機会を伺っているのがバレバレである。

「クソッ、来るな来るな!」
「もうだめだぁ、おしまいだぁ」
「私のレ〇プを受けろ小野塚小町」

小町はやけくそ気味にエネルギー刃を飛ばすが、ドリスの防御力の前では効果は薄い。
ならば飛び道具が使えないセルベリアが取る戦法は一つ、ドリスを盾にヴァルキュリアの槍によるランスチャージで小町を討つ!
単純だが、「貫通」「後の先」の力で間合いに入りさえすれば逃げられない小町を確実に死に至らしめられるだろう。
狭い部屋に逃げ込んだのはまたとないチャンスなのだ。

571死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:22:51 ID:eTGa3rlc0

そしてセルベリアはヴァルキュリアの力を最大限に引き出す。
ヴァルキュリア人のみが出せるラグナイトの青白い輝きが、電灯を落とした暗い部屋を明るく染めた。
そして全力のランスチャージを放つ。

「きゃん!」
「小町ちゃ……」

エネルギー刃はドリスに全て塞がれ、セルベリアは小町に肉薄。
小町は剣で槍を防ぐが、衝撃に腕が耐えきれず剣を取り落としてしまう。
背後であかりの動きが見えたが、心眼で見えているセルベリアには脅威ではない。
次に小町ごとドリスによる一撃で諸共ミンチにするつもりだったのだから。
能力で剣を拾うのも間に合わないだろう。

「これで終わりだ!」
「いや、まだだよ、撃てあかり!」
「うん!」

セルベリアがドリスを片手で振りかぶった瞬間、あかりは突如自分の髪についている左側のお団子ヘアー素手ではがしたと思いきや、投擲した。

「お団子ミサイル!!」

なんとあかりのお団子ヘアーは爆弾(ドラゴンハートの影響…か?)になっていたではないか。
だがセルベリアならばその程度の攻撃は避けられる……ハズだった。

セルベリアは回避行動を取らなかった。
いや、正確には取る必要がなかった。

なぜなら、お団子ミサイルが発射されたのはセルベリアにではなく、彼女の上、天井にあるダクト部分。
そこには小町が持ってるハズの光剣サイファーが隠されていた。

(なに!? なぜあの赤い剣があそこに!? ハッ)

今しがた小町から弾いた剣をよく見ると、床に転がってるのはサイファーではなく、あかりが持っていたエンシェントソード。
そして天井に隠されていたサイファーは小町の距離を操る程度の能力で数瞬後にセルベリアを斬るだろう。
セルベリアの回避は間に合わない。
ここは一方通行になるほど資材が敷き詰められた狭い部屋。
小町と同じようにセルベリアが避けるにはスペースが不十分なのだ。

(やられた……!
 あの恐ろしい切れ味の赤い剣を小町が持ったままと思い込み、剣を落とさせただけで油断した。
 部屋を暗くしたのも影が薄い奴の武器と持ち替えたのを悟らせないためか!)
(あんたの目は影が薄い存在は見抜けるようだが、意志も何も持ってない罠や道具には効かない。
 そして防御は竜殺剣に頼ってるところからして、攻撃に関してはアタイの距離を操る程度の能力を無効化できても、防御に関してはできないようだな!)
(あかりのことを見てくれているのは超嬉しいけど、見えてるからこそ利用させてもらったよ!)

読みあい合戦の結果、小町はサイファーでセルベリアを斬ることが可能になった。
しかし、それはあくまで攻撃の話。
セルベリアには勝利のために自分の命すら捨てる覚悟があった。

(もう躱すのは間に合わないか。
 だったら、相討ちになっても構わない!
 自分の命と引き換えに小町に引導を渡す!!)

セルベリアが身を守る術を捨てれば小町たちを殺す可能性がまだ残されていた。
そして、ヴァルキュリアは渾身の一撃を叩き込もうとし。

「なに!? ぐはあああ!!!」




結果としてドリスは小町たちの頭ではなく、資材置場の床に落ちた。
セルベリアの右腕にはサイファーが刺さり、さらに蹴りでヴァルキュリアの槍も落とさせた。
小町は距離を操る程度の能力でサイファーをすぐに引き抜くと自分の手元に戻し、更に床に落ちたドリスや槍を没収し、サイファーと共にそれをセルベリアの喉元に近づける。
背後にはあかりが拾ったエンシェントソードで狙っており、ここでセルベリアが何か抵抗すれば二人により袋叩きにされるだろう。

「アタイの勝ちだな」
「勝ちだと……よくもまあ、そんな卑怯な真似を使って言えるものだな!!」

勝ち誇り笑顔のである小町に丸腰になったセルベリアは怒号を浴びせる。
それもそのはずだ。
小町たちの直接的な勝利に繋がったのはサイファーを隠した隠蔽作戦によるものではない。



小町は豊満な胸の谷間に、一枚のCD……DMCのファーストアルバムを挟んでいた。

572死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:25:53 ID:eTGa3rlc0



「それは、デトロイト・メタル・シティ トリビュートアルバム〜生贄メタルMIX〜!
 クラウザーさんの名曲を詰め込んだ聖典を信望者である私が斬れるわけないだろう!!」
「CD如きにそんなに怒らんでも……」
「CD如き! それは魂がつぎ込まれたクラウザーさんのアルバムだ!
 盾にされたら攻撃などできん!」

小町とあかりはビッグサイトを逃げ回る中で、資材置場と同時にこのCDを発見。
本物の狂信者じゃなきゃ攻撃できないんじゃないか?と思って小町のデカすぎる胸に挟み込んでみたのだ。
半ば期待していなかったが、ラグナイトの光で見えてしまったセルベリアはこれに気づき、踏み絵を前にした某宗教徒と同じでドリスを振り下ろせなかったのだ。
爆乳脇見せおばさんにとっては屈辱極まりない敗北である。

「クッ、殺せ。どうせなら煮るなり焼くなりレイプするなり好きにしろ。
 だが貴様らの思い通りにはならんぞ!」
「あたいとしてもそうしたいところだがね、……ええと強姦以外は。
 あんたら狂信者はあまりにも人を殺しすぎた。
 大好きな奴が死んだだの、殺し合いの恐怖に負けただのは言い訳にもなりゃしない。
 少なくとも誰かの大切な人を一人でも殺した奴は全員地獄に墜ちりゃいいんだ」
「……ッ!」

けらけら笑っていた小町だが、今度はベジータを殺した時に見せた冷徹な表情に変わる。
まとう冷たく黒いオーラはまさに死神のソレであり、一瞬仲間のあかりでさえ圧倒された。

「狂信者は全員地獄に墜ちるべきか……否定はしない。
 だが地獄に落ちてもまだ、クラウザーさんが生き返るなら満足だろう」
「なに?」
「私や他の多くの狂信者が、大災害発生時かそれより前に生きる希望を失っていたものだ。
 貴様らは殺し合いが終わったら帰れる故郷や温かく迎える家族がいるだろうが狂信者にはそれがない。
 切歌は家族は失い、天子は帰るべき天界を失い、狭間はイジメに苦しんでいた。
 かくいう私も大災害で故郷も滅び、敬愛する方も行方不明。
 日本がどうなろうが殺しあいがどうなろうが関係ない抜け殻だ……死んでも生きてても待ってるのは虚無だけ。
 そこを救ってくれたのがクラウザーさんの歌だったのだ。
 ところが、今度は殺し合いの中でクラウザーさんが奪われた
 また絶望を味わった多くのファンが彼を生き返らせるための狂信者と化した」

セルベリアの言葉に、あかりは怒りで眉をひそめながら言葉を浴びせる。
このままセルベリアを刺し殺さんと思わせるかのような怒気をはらんで。

「自分たちが可哀想だから、周囲の連中を巻き込むの?
 クラウザーさんを希望を満たすためだけの道具にしてるじゃない!
 そんな自分勝手が到底許されるわけがないでしょ!!」
「そんなのはわかってるんだ、クラウザーさんの名誉に我々が泥を塗ってることも!
 だが狂信者は皆、心が弱く、彼の歌がないと生きていけないんだ。
 彼を彼の歌を真に愛してるからこそどうしても生き返したいのだ。
 世間に蔑まれても、クラウザーさんに死ねを言われても構わない。
 我々の生き甲斐にして死ぬ意義を作ってくれるクラウザーさん蘇生だけは阻止させない!」

セルベリアはやがて泣きはらしながらも、信念を曲げなかった。
これに対して小町やあかりも少し落ち着いた様子で彼女に言葉をかける。

「……もはやヤンデレの域だね」
「大した信望ぶりだが、その狂信を誰かさんに利用されてるかもしれないのによ」

573死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:26:28 ID:eTGa3rlc0


「なに? 利用だと?」
「ん?」
「貴様らも何か知ってるのか?
 殺し合いの目的、カオスロワちゃんねるの裏や、救済の予言、テラカオスについて」
「「!!?」」

セルベリアの言葉に、小町とあかりは眼を見合わせる。

「小町ちゃん、このセルベリアさんは筋金入りの狂信者……つまりシロ。
 世界を滅茶苦茶にした悪魔でも、その手先でもないと思うよ」
「てめーにゃ色々聞きたいことがあんだけどさ、まずはこの竜殺剣の出どころを教えな」
「おまえたちも私や切歌のように、殺し合いの裏を調査してたのか!?」
「ああ、ひょっとしたら手前に剣を渡した奴を狂信者をぶっ潰す前に斬っておかないといけないかもしれねえ」

まさか三人の女たちは敵同士でありながら、独自に殺し合いを調査していたことを知らなかった。
セルベリアは少し考えた後に提案をする。

「情報交換に応じるが、いくつかの条件がある。
 一つ、武器を返せ。
 二つ、黒幕を殺すまでは休戦協定だ。
    終わるまでお互いを攻撃しないし、クラウザーさんの蘇生手段だけは手を出すな。
 三つ、黒幕を殺したら休戦協定は解除。再び敵同士だ。
    小町! あのずるくて勝ち方だけは絶対認めん、私との決闘をやり直せ!」
「なんか、随分おまえさんに有利な条件じゃないか?」
「飲まないなら別にいいぞ。私も情報を吐かず、狂信者仲間も呼び寄せる。
 私も死ぬかもしれんが、おまえたちも黒幕を取り逃がして酷い目にあうだろうな」

小町はしばし考えた後、あかりに視線を向ける。
あかりも敵であり、潰す予定だった狂信者と手を組みことには悩んだが、最終的には小町の判断を信じるとうなづいた。

「わかった要求を飲もう。もっと取り返しのつかない何かが起こる前の、必要な情報交換と一時休戦だ」






しばらく時間が経ち、23時過ぎ。
ディーは指令室の椅子に座りながら格納庫とセルベリアの戦況が気になっていた。
両方とも監視カメラが細工等で破壊されているため、どうなっているかがわからないのだ。
わかるのは黄泉レ〇プマシンが無事であることだけである。

「セルベリアはああ言っていたが、やはり私も前線に出るべきだろうか……」

ビッグサイトの廊下は無理だが、格納庫の方はウィツァアルネミネア化しても暴れられるスペースがある。
超兵器のアーマーを今、失うのはまずい。
かといってセルベリアがやられればマシンを守る存在が誰もいなくなる。
そうなれば詰みだ。

「アーマーかセルベリア、どちらかがやられれば、いよいよ自決でも考えるか」

上層部が全滅すればマシンは自動的に自爆して、関東を焼き払う爆弾と化す。
最後に残った上層部の人間が死ねば、ほぼ全ての参加者を巻き込んで日本を粛正の炎に巻き込める。
ディーにとってはクラウザーさんが生き返らないことは、世界を滅ぼした方が良いと同義であった。
そう考えていた時に備え付けの通信機ごしにセルベリアからの通信が入った。

『ディー、なんとか小町を仕留めたぞ』
「それは本当か、セルベリア!」
『ああ、真っ二つにSATUGAIした』

画面には赤毛の少女らしい死体の顔が見えた。
本当に真っ二つにされたようで断面はぐちゃぐちゃであり、生気を失った瞳には絶望の色が覗く。

574死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:27:18 ID:eTGa3rlc0

「セルベリア、君自身は大丈夫か?」
『腕に怪我はしたが、軽傷だ。
 このまま格納庫で切歌たちの援護に向かう』
「わかった、私はこのまま侵入者を逃がさぬようビッグサイトの封鎖を続ける。
 必要なら増援もありったけ送る、今後の戦いに欠かせないアーマーとサーフ博士たちを守ってくれ」
『お心遣いは嬉しいが私一人で十分だ』
「そうか、だが無理はしてくれるなよ」

セルベリアの勝利報告に安堵した様子でディーは通信を切った。


なお、通信を行った廊下では。

「よし、これで当座は稼げるだろう」
「魔理沙……悪いね、成仏しなよ」

通信で見せた死体は小町のものではなく、ディパックに眠っていた魔理沙の死体だ。
彼女の亡骸を資材置場の塗料で赤く塗って誤魔化したのだ。
放送が流れれば小町の生存が気づかれてしまうも、一時間程度稼げれば、黒幕討伐の時間には十分であろう。


「しっかし、天魔王軍の件で臭いとは思ってたけど本当にカオスロワちゃんねるが黒幕が殺し合いを操っていたツールになってたなんて」
「必要以上に悪者扱いされてた魔物や聖帝軍のみんなも、黒幕の情報に踊らされてたんだね!」

小町たちは都庁を出発した時間の都合上、カオスロワちゃんねるが危険であることまでは知らなかった。
元々信頼できる情報が少ないと思っていた程度には認識していたが、セルベリアの口から本当に危険な掲示板であったことに驚く。
そして一方のセルベリアも世界に大災害を招いた悪魔が竜殺剣を持っていたなど知らない情報もあったため、黒幕の正体にたどり着くことができた。

「黒幕の名前はサーフ・シェフィールドって奴か」
「なんか聞き覚えがある……モモちゃんも使ってる雀力を発見した科学者だったかな?」
「サーフは私に悪魔の力を植え付け、世界に一つだけだったハズの竜殺剣を渡した。
 サイドバッシャーが言っていたニルヴァーナ出身の科学者であることも合致する。
 おまけにオシリスの肉体から艦むすを作ってもいた……クロ確定だ、少なくとも黒幕の手先程度は確実にある」

討つべき敵を見定めた、三人はサーフがいる格納庫へと足を進める。

「ところでセルベリア。ディーって奴や、他の狂信者には通信でこのことを伝えないのかい?」
「いや、狂信者の中にサーフと結託した仲間が隠れている可能性もある。
 狂信者でも信頼できるのは切歌とレジーナぐらいだ、今はおまえたちの仲間と交戦していて通信どころではあるまい」

サーフの正体はわかったが、サボテンみたいな悪魔と謎の少女の行方は不明。
他にも仲間がいる危険をセルベリアは考慮し、今は仲間内にも秘匿するのだ。

575死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:27:55 ID:eTGa3rlc0

「幸い、格納庫には奴の研究室もある。そこから仲間を炙り出せる手がかりがあるかもしれない。
 上手くいけばサーフの悪行を狂信者や世間に知らしめて奴を追い詰めることもできる」
「一つ質問だが、あたいらはあんたらが邪竜を殺した兵器を破壊しようとしてんだが……もし格納庫につく前に壊されても文句を言うなよ?」
「あれを改造したのもサーフだ、奴に有利に働くように兵器自体が細工されてるかもしれん。
 だったら壊してくれても良い……まあ、壊せればだがな」
「言っとくけど黒子もモモも日之影もめっちゃ強いぞ。舐めてもらっちゃ困るね」
「忘れない内に私からも言っておくが、私たちは本来敵同士……下賤な黒幕を殺したら次は貴様たちと殺し合いだ」
「ま、まあまあ、今はまだダメだよ」

あくまで黒幕を殺すまでの同盟。
それが終われば敵同士として再び殺しあわなければならない。
互いにサイファーとドリスを向けあう程度には、まだお互いを許してはいないし、許す気もないのだ。
緩衝材としてあかりがいないと、再び二人は戦いを始めるだろう。


「というかさっさと乳からクラウザーさんのアルバムを出せ、不届き者!」
「ええ? だっていちおう休戦協定だし、おまえさんには武器を返したんだから保険としてこれくらい良いだろ?
 きゃんッ、こら! 勝手に揉むんじゃない!」

小町は未だに生贄メタルMIXのCDを谷間に挟んだままだった。

「私も一度やりたかったが、畏れ多くてできなかったんだぞ!」
「……泣いて言うほどかい」
「このおばさん、けっこう天然な人なんじゃ……」


そんなこんなで、一時的にだが対主催と狂信者の、有り得ないハズの同盟が生まれた。



【二日目・23時15分/東京都 ビッグサイト内部】

【セルベリア・ブレス@戦場のヴァルキュリア】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、右腕負傷、人修羅化、首輪解除
【装備】マロガレ@真・女神転生Ⅲ、竜殺剣ドリス@セブンスドラゴン
【道具】支給品一式、四条化した魔理沙の死体1/2(髪を赤く塗った)
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、自爆はしたくない
0:格納庫へ向かいサーフの悪事を暴いて粛正する
  そのため一時的に影薄組と同盟を組む
1:自爆による心中は反対、最後まで諦めたくない  
2:最悪の場合はディー達を……?
  もしディーがサーフの仲間なら躊躇なく殺す
3:ゼロという男に対しての疑念
4:黒幕を討伐したら休戦を解除し、小町たちと戦う
※マガタマを取り込むことで人修羅化し、物理攻撃を無効化する敵にも物理攻撃でダメージを与える貫通のスキルを得ました。さらにポテンシャル『貫通攻撃』と重ねて防御力そのものも無効化できます
※スキル『心眼』も装備、不意打ちやステルス攻撃が効きません
※竜殺剣を所持している限りは竜や龍に対して特攻ダメージを与えられます
※自爆による無理心中の件には納得がいっていない様子です
※小町たちとの情報共有により、殺し合いの目的や救済の予言の意味、黒幕の正体全てを知りました


【小野塚小町@東方Project】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】サイファー@ストライダー飛竜、乳の谷間に生贄メタルMIX
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:格納庫へ向かいサーフの悪事を暴いて裁く
1:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
  が、今はセルベリアとの休戦協定により後回し
2:何か必要があるまではCOMPの中に待機する
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:もう二度と仲間を置いて行こうとしない
5:時が来たらヘルヘイム扱いされた都庁の長ダオスを倒す演技をして世間の混乱を収める
※予言やテラカオスの真実、カオスロワちゃんねると黒幕の正体を知りました
※小鳥発案の偶像計画のため、表向きは都庁の敵のフリをしています

576死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:28:27 ID:eTGa3rlc0


【赤座あかり@ゆるゆり】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
    頭のお団子左側消失
【装備】エンシェントソード@Minecraft、デモニカスーツ@真・女神転生SJ(ヘルメット消失)
【道具】マムルの肉@風来のシレン
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する!
0:格納庫へ向かいサーフの悪事を暴いてやっつける!
1:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者に殺し合いをやめさせたいけど
  今はセルベリアと休戦だから後回し
2:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
3:都庁のみんな、あかりたちが戻ってくるまで無事でいてね……
4:世界の危機を前に主人公かどうかは関係ない! 世界のために頑張ってる人全員が主人公!
5:日之影さんたち大丈夫かな…?
※予言やテラカオスの真実、カオスロワちゃんねると黒幕の正体を知りました
※ドラゴンハートの影響(?)でお団子ミサイルが使用可能になりましたが、残弾はあと一発だけです



【ディー@うたわれるもの】
【状態】魂のダメージ(中/回復不可)、首輪解除
【装備】刀
【道具】支給品一式、クラウザーさんクローン×300、ネオ・ジオングスーツ
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、もしくは世界をSATUGAI(無理心中)する
0:セルベリアや切歌を信じ、指令室に残る
1:黄泉レ○プシステムをさらに盤石にするため、引き続きマグネタイトは回収する
2:ネオ・ジオングスーツが完成次第、サイコシェードで会場から非信者を一掃する
3:蘇生が不可能だと判断した場合は黄泉レ○プシステムを暴走させて世界を粛清する
4:自分が死んだ場合はセルベリアにまとめ役を引き継がせる
5:ドリスコルたちが死に都庁攻略が失敗した情報が来たが、セルベリアたちの士気をくじかないために今は秘密
※首輪解除によりウィツァルネミテアの力をある程度解放できますが、空蝉であるハクオロの死体が見つかってなにので完全には実力を発揮できません
 また、蘇生関連の能力制限だけは首輪とは別の力が働いていると見ています
※パワーアップのためにネオジオング@機動戦士ガンダムUCを改造したスーツを開発中です
※沖縄の異常気象をクラウザーさんによるものであると思っています
※現存する組織のうち、あと三つ滅ぼせば黄泉レ○プシステムを起動できます
※サイコシェードを使うたびに願いを叶える力の代償として魂がダメージを受けてしまいます、これは回復できません
※ネオ・ジオングスーツがサーフにとって都合が良い人物は死なないように細工されていることは気づいてません

577 ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:28:54 ID:eTGa3rlc0
投下終了です

578 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/04(土) 18:19:36 ID:QMxyXi8Y0
投下乙です
予断を許さないけど、爆乳ズが一時的でも同盟組んだのは熱い

そして内心被ってなくてほっとしたけど、
自分も狂信者格納庫組+日之影、モモ、黒子で予約します

579 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:24:22 ID:gjWG0zdY0
予約していたビッグサイト格納庫メンバーで投下します

580 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:25:00 ID:gjWG0zdY0
ネオ・ジオングの眠る格納庫……
そこで行われていた攻防戦は、影の薄い少女の叫びにより待ったがかけられた。

「どういう、こと……?」

まずはレジーナ。
彼女はマナの件もあり、完全に戦闘状態を解除していた。

「何を言ってるんや嬢ちゃん? 悪いが殺害――」
「ま、待って欲しいデス松ちゃん!? 今の話は……」

松本は我関せずに攻撃を再開しようとするが、それを切歌が止める。
彼女もレジーナを同じく、既に戦闘状態を解いていた。
それは失ってしまったサイドバッシャーが遺した話と関係があったからこそだ。

「……」

そしてそんな二人の裏で、深海棲艦達も動きを止めていた。
彼女達の攻撃が無ければ、影薄達の完全な位置は補足できない。

「……しゃあない、ちょっとだけやで?」

こうなってしまえば、渋々ではあるが松本も戦闘を止めざるを得ない。
殺害は容易いが、あくまで自分はまだ狂信者のフリをしなくてはならないのだ。
彼女達が攻撃を止めたのであれば、自分もそれに従わなければ後々面倒になる。

「……少しは、話を聞いてくれるみたいっすね」
「お、おい大丈夫なのか?」
「ごめんなさい。でも、どうしてもこれは伝えなきゃならないことっすから」

そしてモモも戦闘状態を解いた。
敵地の中心で、本来なら自殺行為だ。
日之影も心配するが、モモは構わずに狂信者達へ対話を試みる。

きっと今この場に、都庁に残った仲間達がいれば猛反発を受けたことだろう。
みんな自分を守るために、庇いながら狂信者を倒そうとしてくれたかもしれない。
それでも。それでも彼女は、対話を試みたかったのだ。

「この大災害、クラウザーさんを間接的に殺したも同然の存在は――」
「ま、待って! それも気になるけど、マナを……マナを殺したのが狂信者っていうのは本当なの?」
「本当っすよ。……そっちの大きい人、さっき松ちゃんて呼ばれていましたけど、もしかしてダウンタウンの?」
「そ、そうや。あの松ちゃんやで?」

いざ裏の悪について語られると思っていたが、先にレジーナの大切な人の話が先か。
そう思っていた矢先にまさか自分が呼ばれるとは思っていなかった松本は、思わず正直に答えてしまう。

「……あなたの相方の浜ちゃんさんも、少し関係してくるかもしれません」
「な、なんやて!?」
「少し、長くなるかもしれないっす。それでも、どうか聞いてください。
 私達が、みんなが戦ってきたこれまでを……」

決意の表情で口を開くモモに、狂信者の誰もが耳を貸した。


(くそ、そんな下らない話なんてどうでもいいんだよ! 何処だ、何処から僕の情報が漏れた!?)


ただ一人、物陰でサーフのみが焦らされているのみ。
当然誰も気がつかずに、ステルスモモの独壇場が始まる。

581 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:26:42 ID:gjWG0zdY0
「……思えば全ての始まりは、クラウザーさんのゲリラライブ会場だったのかもしれません」
「どういうことデス?」
「クラウザーさんのライブは、何よりも昂ぶって嫌な気分を吹き飛ばせるっす。
 だから、一人の男性が道中で保護した女の子と、その場で疲れている様子だった女の子の二人を招待した。
 その男性が……浜ちゃんさんでした」
「なっ……!?」
「浜ちゃんさんがライブに招待した女の子二人は、鹿目まどかさんと桃園ラブさんだったっす。
 そして……いつまでも続くかに思われたクラウザーさんのライブは、予期せぬ形で終わりを迎えることになった」

一息をついてから、モモは口を開く。

「ライブハウスが、怪物に襲われた。この時に……クラウザーさんや多くのファンは命を落としてしまいました。
 そんな中で浜田さんはその身を挺して、まどかさんを守り抜いたそうっす……」
「浜田……」

相方の死の真実に、松本は小さく声を震わせる。
まさか相方が隠れクラウザーさんファンだったのにも驚きだが、その最期はさらに驚きだった。
なんの因果だろう。まさかクラウザーさんと同時に命を落としていただなんて。
それも女の子を庇って死んでしまうだなんて。

「この時、ラブさんは運よく別室で仲間のプリキュア、美希さんにマナさんとの合流を喜んで無事だったそうです。
 そして浜ちゃんさんに守られ、唯一生き延びたまどかさんに、怪物はトドメを刺そうとして……
 そんなところを、プリキュアと魔法少女の皆さんが駆けつけて、クラウザーさんを殺した奴に天罰を与えたっす」
「よくやったデスよマナさん達! ……もう少し早くついていれば、浜ちゃんも助けられたかもと思うと、悔しいデスが」
「ええんや。浜田が、自分で選んだんやからな……」

切歌の寂しそうな声に、松本は首を振る。
勿論相方が死んだのは悲しい。もう少し早く駆けつけていればと思ったのは、自分も同じだ。
だがそれでも……浜田の死に様に、何も感じなかったわけがない。
子供を庇って命を落としたということは、逆に言えば子供を盾にすれば浜田は最初の一撃を凌げた可能性が高い。
そして駆けつけたプリキュア達に助けられ、今も元気にしていたかもしれない。
浜田は、自分の命よりも見ず知らずの少女の命を選んだ。
相方の自分と生きて合流するよりも、だ。
それが悔しくもあり、そして誇らしくもあった。
丸くなった、優しくなった……色々言われていたが、確かに浜田は誰かを想って行動できる男だったのだから。


「こうしてまどかさんは、お友達の魔法少女とマナさん達プリキュアに助けて貰えたわけですけど……
 今度はここに、巨大な氷の竜……都庁の魔物がまどかさんを狙って襲撃をかけてくる。
 竜は圧倒的な強さで、誰も敵わずにまどかさんは為す術なく連れ去られるっす」
「おいくそドラゴン、浜田が守った子に何してんねん!?」
「マナ達がいても勝てないだなんて……というか、そのまどかって子狙われすぎじゃない?」

気がつけば、松本もレジーナもモモの語る話につっこみを入れる程度には緊張感を解いていた。
直前までSATUGAIをしようとしていたなど、誰に分かるだろうか?

(この流れだと、もしかしなくても……)

そんな中で、切歌だけは嫌な汗を流していた。
クラウザーさんのライブ会場に集まった面子、そして都庁の竜の襲撃。
これはその場にいた誰かから聞かなければ、この影の薄い少女には絶対に分かりえない情報だ。
それを知っていると言うことは、つまり生き延びた誰かと交流があるということ。
それはつまり……

582 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:27:40 ID:gjWG0zdY0
「彼女達は急いで竜の後を追おうとしました。そしてそんな時……私達は出会ったんすよ。
 たまたま傍にいたオオナズチとも協力することになって、空から竜の帰還場所である都庁を目指したっす。
 そう……マナさん達プリキュアとほむほむさん達魔法少女、彼女達と私達は一緒に動いていたんです」
「マナ……」
「あまり、その先を聞きたくないデス……」
「? どうしてや?」

浜田が守った一人の少女。
そこから生まれた、プリキュアと魔法少女と影薄の縁。
嘘をついている様には、誰にも見えなかった。
モモも恐らく、それを見越して丁寧にこれまでを語っているのだろう。

「そしてついに都庁に辿りついた時。番人には、麒麟さんがいたっす。
 それを……んっ、なんとか退けた後に、怒った本物の番人さんが現れて、私達全員があっという間にのされたっす。
 至近距離からの不意打ち斬鉄剣も効かなくて、正直あそこで死んだと思ったくらいっすよ」
「硬い都庁の番人、こっちでも警戒すべきSATUGAI対象になっていた男の人デスね?」
「そ、そいつ!? そいつがマナを殺したの!?」
「お、落ち着いて欲しいっすレジーナさん」

どうどうとレジーナに待ったをかける。
彼女はじりじりと迫る大切な人の死の真相に、気が気ではなかったのだ。

(やっぱり、この人達はまだ……完全には狂いきれていないんすね)

そんな様子を見て、モモはやはり対話を試みて正解だったと思う。
レジーナは、こんなにもマナを気にかけている。
切歌も武器をおさめ、先程の言葉からしてもうマナがどうして亡くなってしまったかも察しているようだ。
松本は少し怪しいが、相方の死の真相を聞かされた時に漏れた声は、本当に悲しみの混じったものだった。
みんな、誰かを想う気持ちがまだ残っている。
本当にクラウザーさんを想うなら……或いは。

改めて決意を固めて、モモはゆっくりと口を開く。


「……番人さんは、加減をしてくれていました。だから、この時には誰も死んでいないっすよ」
「え? どうして、向かってくる敵には都庁の連中は容赦しないって……」
「ある人にお願いされていたからっすよ。そのある人が……まどかさんっす」
「え? え? だってその子は攫われて、でも都庁の番人はその子のお願いを聞いた……?」
「まどかさんは、グンマ―の血を色濃く継いだ人だったんす。だから、都庁の竜は攫って、安全な世界樹に匿おうとしてたんです」
「!!」

その場の誰もが衝撃を受ける。
都庁の竜は、少女を攫いこそすれ危害を加える気は無く、それどころか保護対象としていた。
そうなると、彼女を奪還しようとしていたプリキュア達とは――少なからず、利害が一致している。

「勿論、私達の誰もが驚いたっす。でもやっぱりあの頃は、お互い完全に信用しきるということも皆さんできなくて……
 とりあえず、時間も時間だったすから。仮眠室で一度休もうということになったんす。
 そして……っ、みんなでこれからどうしようかと考えている矢先に、二つの事件が起きました」
「……っ」
「……当然、知っているっすよね? 狂信者の中には、魔物もいたって。
 潜伏していた狂信者、ラージャンとデスマンティスが、寝込みを襲ってきて……
 ――警護していた都庁の魔物を殺した後、マナさんと美希さんをっ、下半身だけの姿にして殺したんすよ……!!!」


「そん……な……」

583 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:28:28 ID:gjWG0zdY0
ついに告げられたマナの最期を聞いてしまい、レジーナは膝から崩れ落ちる。
切歌はそんな彼女をそっと支えるが、その表情は酷く沈んでいた。
無理もないだろう。こんな世界でも友と呼べる存在と出会えたというのに。
そんな彼女の大切な人を奪ったのは他ならぬ自分達狂信者だったのだから。

切歌もレジーナも、予想だにしていなかった。
聖帝軍が逃げ込んだという現在ならばともかく、この段階から都庁内にそれほどの人間が集まっていただなんて、わかるわけがない。
狂信者にとって都庁は、大量の生贄が内包された極上のクラウザーさんへの供物にすぎなかったのだから。


「マナを、狂信者が殺した……マナを、狂信者が……」


震える声でレジーナは同じ言葉を何度も呟く。
その姿は狂信者では無く、ただただ大切な人の死を嘆く一人の少女でしかなかった。
松本を含めた誰もが、口を噤み黙ってしまう。

「……」

だがやがて、ゆっくりとレジーナは立ち上がる。
涙をボロボロと零し、その全身を震わせながら。


「……狂信者は、許せないっ……!」


ギリッと歯を食いしばる少女。そこには明確に、狂信者への敵意があった。


「でも……それでも、それでも……
 クラウザーさんが、それに切歌が、私を救ってくれたのも確かなの……っ!」


同時に、クラウザーさんや切歌への想いも。
確かに狂信者はマナを殺した。だがそれにより空虚になったレジーナを立ち直らせたのも、クラウザーさんと切歌だ。
相反する感情を抱きながら、レジーナは葛藤する。
もはや狂信者に手は貸したくない。でもクラウザーさんには生き返って欲しい。
どうすればいいのか、わからない。


「……私も、狂信者達は許せないっすよ。マナさん達だけじゃない、他に沢山の人を殺している。
 みんなの大切な人を……それぞれのクラウザーさんのような人を、殺し続けているんすから」
「……」


トーンを落としたモモの声に、レジーナも切歌も松本も、誰も反論ができない。
できるわけがない。クラウザーさんの為に、己の命を含むあらゆるものを犠牲にしているのだから。


「……でも、それは私達も同じことっすけどね」
「え?」
「私達だって、沢山の狂信者……あなた達にとっての大切な人を、殺しているっす。
 クラウザーさんさえ亡くならなければ、こんな殺し合いさえ無ければ、もしかしたら語り合うこともあったかもしれない人達を……」

揺らぎ、表情も霞んで見えにくくなるステルス少女。
しかし狂信者達は、彼女が静かに泣いていることを察せられた。

584 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:29:43 ID:gjWG0zdY0
どうして対話を持ち出したのか、当の本人もわかっていないだろう。
ただ、クラウザーさんのファンの一人として……
切歌達から、クラウザーさんに対する『本当の』想いを感じ取れたからなのかもしれない。


「……レジーナさん」
「な、なに?」
「あなたはマナさんを狂信者に殺された。だけど、横の切歌さんと松ちゃんさんを殺そうとはしていないっす。
 それだけ……クラウザーさんと、二人も大切なんすよね?」
「……うん」
「……やっぱり、話してみようと思って正解だったっすね。
 クラウザーさんを真に思うなら――どうか、私達に手を貸して欲しいっす!」
「!?」

まさかの言葉に、誰もが絶句する。
今、この影の薄い少女は何を口走った?

「……勿論、私も……都庁には、もっと狂信者への殺意が募っている人も大勢いるっす。
 こんな提案をしたなんて後でわかったら、私も一緒にとっちめられるかもしれないっすね」
「と、当然デスよ!?」
「それでも……目前まで迫っている危機を防ぐには、少しでも多くの協力が必要なんです。
 信じられないかもしれないっすけど……次の大災害は、もうそこまで迫っているっす。
 それに、このままではクラウザーさんの身も危ないんすよ……!」
「なっ!?」

そして続け様の爆弾に再度絶句。
根っからクラウザーさんの復活を望む切歌達にとっては、無視できない発言だ。

「クラウザーさんが危ないって……どういうことデス!? 答えやがれデスよ!?」
「……これも、順を追ってちゃんと話すっすよ。
 さっき言った二つの事件……実は、狂信者に襲われる前に別の人からも襲撃を受けていました。
 それが――風鳴翼という女性っす」
「……ふん、そいつのことはよーく知ってるデスよ……」

ここに来て、自分のよく知る名を聞いた切歌は露骨に渋った表情をする。
食人鬼に成り果て、心底失望した女性の名を今になってまた聞くとは。

「私達も、殺されかけました。門番さんが庇ってくれなければ、絶対に食われてたっす。
 とてつもなく恐ろしい食人鬼……でも、そんな彼女も犠牲者だったんすよ」
「ど、どういうことデス?」
「……この殺し合いの目的は、テラカオスを生み出すこと。その為に、日本中にテラカオス化の為のナノマシンが撒かれて……
 風鳴翼さんは、運悪くそのテラカオス候補に選ばれてしまったんすよ」
「!!!」


――テラカオス

ついに出たその言葉。
知りたかった真実が、聞けるのかも知れない。
相も変わらず物陰に潜むサーフを含め、誰もがステルスモモの言葉に耳を傾ける。

585 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:30:54 ID:gjWG0zdY0
「私達は彼女に襲われた後、都庁の中で色々考えていました。
 大元は、私達と一緒に行動していた騎士様が遺した言葉だけだったっすけど……
 色々な理由から、都庁にはどんどんと人が集まって、みんなが断片的にこの殺し合いの情報の断片を持っていたっす。
 そして……聖帝さん達の協力もあって、救済の予言の正体にも辿りつけたんす。
 そんな時でした。まるで自力で予言を解いたみんなを確かめるように、竜の神様が降臨したんすよ」
「りゅ、竜の神様デスか?」
「はい。残念なことに私は直接は会えなかったっすけど――第二真竜・ノーデンスという名前だったそうっす」






(っの……やってくれたな、クソ真竜があああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)



その名前を聞いた瞬間、サーフは心中で激しく叫んだ。
タバサの情報により、サーフは真竜に関する知識も得ていた。
第一真竜・アイオト
第二真竜・ノーデンス
第三真竜・ニアラ
第四真竜・ヒュプノス
第五真竜・フォーマルハウト
第六真竜・ヘイズ
別称グレイトフルセブンスと呼ばれはするが、6体しかいない、馬鹿しかいないと散々な言われようであったのは記憶に新しい。
現に第三はひげのおっさんに殺され、第五は野球チーム所属した後に爆散した。タバサの言葉も、間違ってはいないだろう。
しかし彼女は同時に警告もしていた。第一と第二だけは、他とは次元が違うと。
竜殺剣が無ければ勝つことは絶対に不可能とまで言われた。
だからこそ、多額の研究費と時間を費やして、ついに現代に竜殺剣ドリスを復元したのだ。
なお材料は、オリハルコンに唯一竜殺剣が無くても抹殺可能で専用曲もついぞ貰えなかった哀れな第六真竜だったりする。

そしてタバサの言葉通り、竜殺剣の威力は凄まじかった。
あの計画実行の日、真っ先に現れたのは第一真竜・アイオトだ。
彼は厳かに、計画を止めるようサーフに冷静に言い放った。
そんなアイオトを、ドリスは一撃で狩り殺してみせたのだ。
実に他愛ない。上位神、真竜といえどこの程度かと、サーフはアイオトを嘲った。


『忠告を無視し、私を滅ぼす。それがお前の選択か……
 それも道の一つだ。しかしそれが正しいかは誰にもわからない。正しき道など、元からありはせぬのだから。
 私は既に役目を終えた者。影より、お前とノーデンスの子らがどう動くか、見定めるとしよう……』


だというのに、アイオトは一切その態度を崩さず、余裕さえ感じさせた。
腹が立ち、そのままなます切りにして完全に消し去ってやった頃には、戯言と聞き流していたが……
まさか、片割れのババアが生き延びていたとは。
あの時、ノーデンスは現れなかった。それでいて何故、感づかれたか。

(枯れた老害の分際でやってくれる……! あいつ、自分を囮に僕に竜殺剣を使わせたっていうのか!?)

サーフはすぐに答えに行きついた。
アイオトはサーフの前に姿を現すことで、竜殺剣を使わざるを得ない状況を生み出したのだ。
現役引退したとはいえ真竜。通常手段ではまともな傷も与えられず、もたつけば武道や他の神々に囲まれる。
確実最短の抹殺の為に持ち出した竜殺剣。まさかそれが、遠方の同族に黒幕の情報を伝える鍵とされるとは。

(あの時、唯一討ち損じたミザールを念の為に大和を利用して始末したっていうのに……!)

586 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:32:11 ID:gjWG0zdY0
これは完全にサーフの計画外だった。
大災害を生き延びた神々は、ミザールくらいだと思い込んでしまっていた。
そのミザールも、言語を理解できる存在が現代にはいない。だからこそサーフは彼が都庁にぶら下がっても危機感を覚えることはなかった。
後で念の為に殺しておこう。その程度の認識だ。
何故この時、ミザールが都庁にぶら下がったのか。そこまで考えを巡らせるべきだったか?
いや、誰もわからないだろう。ノーデンスが呼び寄せたと推測するにはあまりにも情報が少なすぎた。
せめて都庁が、巨大な世界樹になる前であれば。或いは擬態していたノーデンスも見つけられたかもしれない。

(いや、今はそんなことを考えている場合じゃない……!)

都庁に現れた神々の生き残り。しかし彼女はニルヴァーナにはいなかった。
だから完全には黒幕の正体には至っていない筈。
しかしアイオトの計略によって、竜殺剣の持ち主だということは感づかれている。

影薄や都庁の連中は、竜殺剣に対する知識など持たないだろう。
だから、ノーデンスの情報でも黒幕には辿りつけなかった。


だが。


今、この場でその情報を再度話されると、状況は一変する。





「ノーデンスさんは、過去にもあった大災害と戦争の歴史、救済の予言についての情報を残してくれました。
 そして最後に、この馬鹿げた殺し合いを引き起こした、諸悪の根源とも言うべき存在の情報もくれたっす!
 黒幕は、悪魔の力と竜殺剣を持つ――」







「逃げろっ!!!!」





いつでも動けるようには身構えていた日之影が、力の限り叫ぶ。

それに、モモの反応は遅れた。
誰もが自分の話をしっかりと聞いてくれている。だから、もう戦いになることはないと思っていた。
あれだけ注目を集めれば、ステルスはとっくに機能していない。

切歌とレジーナも、反応が遅れた。
最初こそ戯言だと思っていたが、とても嘘をついているようには見えなかったステルス少女の言葉。
彼女が改めて黒幕の特徴を口にした時、二人の思考は殺意に支配されてしまった。
彼女達の方が、話している当のモモより先に黒幕の正体に気付いてしまったから。


いつの間にか、三人を遠巻きからぐるりと包囲するように構えていた深海棲艦からの一斉砲撃に、反応が遅れたのだ。
彼女達は話を聞いていたわけではない。ただ、提督の指示に盲目的に従っていただけ。
サーフがモモの話を聞きたいから微動だにしなくなり。モモと切歌達が邪魔だと判断したから、沈めにかかるだけ。それだけの存在。

587 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:33:05 ID:gjWG0zdY0
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ! 伏せやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「!?」




そんな中で。

ただ一人――松本だけは動けた。
いや、正しくは彼も反応は遅れていた。
しかし少女達と違い、圧倒的な巨体を誇る大日本人の身体は、ただ倒れ込むだけで巨大な防壁となった。


「……!」


松本の身体が壁となり、深海棲艦の砲撃が少女達を殺すことは叶わず、仕損じたことに深海棲艦も僅かに顔を歪める。
何故、咄嗟にこんな真似をしてしまったのか。砲撃を浴びながら、松本はわけがわからなかった。
自分はただただ浜田の為に動いていた。こんな少女達を庇う義理などない。

その筈だったのに。
浜田が命を賭して救った少女が、この影の薄い少女達と今も頑張っているのだと知ってしまったためか。
或いは、狂信者の筈なのに自分なんかを信じ、浜田の死すら悔やんでくれた切歌に、ほんの少しでも心を許してしまったのだろうか?



――考えをまとめる前に、松本の項にどこからか伸びてきた骨のような刃が突き刺さった。



「ち……俺も焼きが回ったわぁ……」
「松ちゃん!?」


項は大日本人の弱点。内部にいる松本本体を、的確に刺し貫いていた。
一瞬で視界が真っ赤に染まる松本は、自嘲するように吐き捨てながら、ゆっくりと沈んで行った。


「浜田……ごめん、なぁ……」



【松本人志@現実】 死亡確認



「まっちゃああああぁぁぁぁぁぁぁん!!!」


崩れ落ちる巨体、響く少女の絶叫。


「くっ、そ……!」


凄まじい速度で、深海棲艦を薙ぎ倒していく英雄。
再開された戦乱の中で、舞い上がる土煙。
その中に、それはいた。

588 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:33:41 ID:gjWG0zdY0
「オオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ!!!」



松本の項から刃を引き抜く、黒き悪魔――リアルヴァルナが。


(くそ、くそくそくそ! どいつもこいつも、僕の邪魔ばかりしやがって……!)


松本の咄嗟の行動により、深海棲艦の奇襲による少女達の抹殺は失敗してしまった。
深海棲艦も当然強化改造してあるとはいえ、姫級は数が少ない。
かといって他の型では、あの影の薄い英雄の前では紙切れのごとく吹き飛ばされている。

再度攻撃を仕掛け、少女達を殺してから相手取る?
ネオ・ジオングスーツを守らねば、ディーが暴走する危険性もある。



――ヴァルナがそう考えた瞬間、ネオ・ジオングスーツが轟音をあげながら瓦解した。




(なっ……!?)



馬鹿な。そう思った時にはもう遅かった。
一か所を爆破されたのではない。内部から複数個所を同時に爆破された。
これではもう、いくら自分でも復旧させるには途方もない時間を要する。


(っ……!)


それを確認したヴァルナが選んだのは――逃走。

僅かばかりの深海棲艦を日之影への足止めに残し、それ以外の深海棲艦と共に急いでその場から逃げ出した。
切歌達に正体がばれた。ネオ・ジオングスーツまで破壊された。
こうなってしまえば、もう狂信者のふりをして潜伏などしていられない。


(まだだ、まだ……!)


リアルヴァルナの姿のままの逃走。
これはこの後、他の参加者と出会ってもサーフと結びつかせない為でもあった。
切歌達も誤解し、ヴァルナは黒幕サーフの操る一悪魔に過ぎないと考えるかもしれない。
たとえ少しでも自分の計画の維持に使えそうなことは実行する。


そして黒き悪魔は、この場の脱出には成功する。

この場でただ一人、その後ろ姿を確認している存在に気がつかずに。

589 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:34:12 ID:gjWG0zdY0
「……夜叉鬼・リアルヴァルナ、ですか」



ネオ・ジオングスーツの残骸の上から観察していたのは、影薄の黒子であった。
彼はモモの対話が始まった時から、ひっそりと一人でネオ・ジオングスーツに登っていたのだ。
対話はモモが。万一の時は日之影が守ってくれる筈。ならば残った自分は、冷静に本来の目的を果たそうと。
結果として、彼の行動は見事に決まった。
狂信者の誰もがモモの方に注目し、一言も発していない黒子はいつも以上に強力なステルス状態となっていたのだ。
探知可能な深海棲艦も、サーフ自身の命令によって動くことも許されず、続く攻撃命令もモモ達少女三人のみに対してのみ。

仲間にも敵にも悟られることなく、黒子はネオ・ジオングスーツの破壊工作を完了。
そしてその場では起爆せず、もし狂信者がモモの説得に応じたならば爆破を控えようと考えた矢先、事態は動いた。
モモ諸共、狂信者さえ葬ろうとした深海棲艦と悪魔。
松本の行動は黒子にも予想外であったが、そんな彼すら一撃で殺してみせた黒き悪魔。
黒子は冷静に、自分はここで死ぬかもしれないと覚悟を決め、死ぬ前に役目を果たそうと起爆したのだ。
それが幸いにも敵に逃走の選択をさせ、黒子や仲間達は命を繋げた。


「便利ですね、デモニカのエネミーサーチにデビルアナライズ機能……」


だが黒子はそこで止まることをしていない。
黒き悪魔を視界におさめると、冷静にデモニカの機能を起動したのだ。
デモニカは某国が作った最新鋭の機能満載のクールでクレバーなスーツだ。
ヘルメットデザインに目を瞑れば、対悪魔装備としてこれ以上優秀なものは無いと言っても過言ではないかもしれない。
アプリ・エネミーサーチは黒き悪魔がゾンビもどきと共に格納庫から確かに出て行ったことを確認し。
そしてデビルアナライズ……悪魔の名前やスキルを読み取れる機能で、消え去る前に出来る限りの情報を解析したのだ。



「モモ、無事か!?」
「わ、私は平気っすけど……松ちゃんさんが……」
「松ちゃん……どうしてデスか……!」
「ゆる、さない……!」


姫級の頭を叩き潰し、日之影が格納庫に静寂を取り戻す。
彼はすぐにモモ達に駆け寄るが、その表情は様々。
茫然、号泣、憤怒。
モモは、危うく落としかけた命を狂信者に救われた。
その事実を日之影は複雑に思いながらも、残された狂信者の少女達にも声をかける。

590 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:34:59 ID:gjWG0zdY0
「おい、なんだってんだ今のは……!?」
「……竜殺剣は、サーフ博士が持っていたデス。今はセルベリアおばさんが使っていますけど……」
「あいつが、あいつが仲間のふりをしてた、提督……? マナや、クラウザーさんや、松ちゃんが死ぬ原因を作った奴なのね……!?」


「――セルべリアおばさんに、悪魔の力も植え付けていた。さっきの話通りなら、あいつはセルベリアおばさんを囮にするつもりだった!
 どこまでも、どこまでも許せないデスよ、サーフ……! 絶対に、SATUGAIしてやるデス……!」
「――あいつだけは、絶対に殺してやるぅ!!!」


切歌とレジーナの並々ならぬ殺意は、日之影さえもたじろがせた。

「よ、よくわからないっすけど……黒幕は、ここにいたってことっすか!?」
「ええ、そうデス。あなた達も、全ての情報を持っていたわけじゃないんデスね……
 そっちの神様以外にも、生き延びていた人はいるんデス。
 サイドバッシャーは言っていたデス。黒幕には仲間がいる。丸いサボテンみたいな悪魔に、女の部下……」
「さっき少し見えた悪魔も、サーフの手下!? サーフはあいつらと逃げたの!?」


「……さっき逃げた悪魔の名前は夜叉鬼・リアルヴァルナという悪魔のようです。
 スキルは全ては解析できませんでしたが、厄介なものは確認できました。
 BSデストロイア・状態異常の無効化。マスタキャンセラ・物理や属性攻撃の無効化。そして、オートソーマ。逃げると体力が全快するようです。
 わかりやすく言うと、殴られても完全に掠り傷すら負わなくなったレストさんのようなものですね」
「な、なんっすかその反則バケモノ!?」
「いえ、彼とは違い吸収までは無いですし、無効も前に都庁を襲ってきた魔人皇の反射の劣化版。それに何より無・万能耐性は空です」
「なるほど、厄介な相手ではあるが、つけいる隙は十分あるってことか」
「ええ。ですが、あのゾンビもどきもいます。このまま僕らで追撃をしても、勝てるかは微妙です。まずは小町さんと合流を目指しましょう。
 ……あなた達は、どうするんですか?」
「……」

冷静に戦局を判断する黒子の視線は、切歌とレジーナに向いていた。
彼女達は紛れもない狂信者で、都庁の……影薄達の敵だ。
それでも、黒子はモモと同じように彼女達にも言葉を投げかける。


「……恥を忍んで、お願いするデス。あいつを……サーフをSATUGAIするまでは、停戦を願いたいデス……
 そして、さっきの話の続きを。クラウザーさんが危ない、その理由を教えて欲しいデス……!」
「……わかったっす」


深々と頭を下げる切歌に対し、モモは真剣な表情で頷き返す。
絶対に相容れない存在であった筈のファンと狂信者は、ゆっくりと手を取り合った。

591 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:35:33 ID:gjWG0zdY0
【二日目・23時30分/東京都 ビッグサイト格納庫】

※ネオ・ジオングスーツが黒子の手により破壊されました


【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】己の拳、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:情報交換しつつ、まずはこまっちゃんと合流
1:クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させるつもりだったんだが……
2:小町や仲間を全力で守る
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:めだかに変わって世界を救わなきゃならないのが先代生徒会長の辛いとこだな
※予言やテラカオスの真実、黒幕の正体を知りました

【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、デモニカスーツ@真・女神転生SJ(ところどころ裂けた)
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:切歌、レジーナと情報交換する
1:クラウザーさんへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させるつもりだったっすけど……
2:少しは話のわかる狂信者がいたのは嬉しいっす
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:……多少落ち着いたっすけど、拳王連合軍だけは絶対に報いを受けてもらうっす
※予言やテラカオスの真実、黒幕の正体を知りました

【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】健康、首輪解除、超冷静、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】ウィンチェスターM1912、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】死出の羽衣@幽々白書
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:デモニカの機能をフル活用して、悪魔一味の動向に警戒する
1:クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させるのは後にしますか
2:仲間を全力支援、パス回しが僕の役目
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:平和な世界でみんなとバスケがしたいですね
※予言やテラカオスの真実、黒幕の正体を知りました
※黒子のデモニカにのみ、リアルヴァルナの一部情報が記録されました


【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】
【状態】サーフへの殺意、首輪解除、イグナイトフォーム
【装備】シンフォギア「イガリマ」、イグナイトモジュール@戦姫絶唱シンフォギアGX
【道具】支給品一式、クロエの首輪、形見の浜田雅功人形
【思考】基本:SATSUGAI、自分の生きた証として絶対にクラウザーさんを蘇らせる。
0:この影の薄い人と情報交換して、確実にサーフはSATUGAIするデス!
1:みんなの希望であるクラウザーさんは必ず蘇らせる!
2:風鳴翼については……
3:同じ狂信者仲間としてレジーナを大事にしたい
4:フィーネになってしまう自分の危険性を考慮し、クラウザーさんが蘇り次第、自分の命を断つ
5:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
6:サイコマンへの疑念
7:松ちゃん……ごめんなさいデス……
8:ネオ・ジオングスーツは守れなかったデスけど、今はそれどころじゃないデス!
※自分が新しいフィーネになると思い込んでいるのは勘違いです
 よって、自分がフィーネになると勘違いしている時期からの参戦です
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません。
※モモとの会話により、黒幕がサーフであると確信しました


【レジーナ@ドキドキプリキュア!】
【状態】サーフへの殺意、葛藤、首輪解除 変身中
【装備】ミラクルドラゴングレイブ、電子星獣ドル、シンフォギア「シュルシャガナ」
【道具】支給品一式、ギラン円盤
【思考】
基本:クラウザーさんの復活
0:準備が出来たらずぐにでもサーフを殺しに行く
1:狂信者にこれ以上手は貸したくないけど、クラウザーさんは復活させたい……
2:切歌だけは信じる
3:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
  ついでにサイコマンも警戒
※月読調のギアの装者になりました
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません
※モモとの会話により、黒幕がサーフであると確信しました

592 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:36:37 ID:gjWG0zdY0
「はぁ……はぁ……!」


黒き悪魔は疾走する。
これからどうするべきか?


「テイトク、カゲウス達ハカクノウコカラ動イテイナイ。十分キョリハトレタヨ?」
「そうか……それならまだ、手はあるかな……!」


逃げつつも、深海棲艦のヲ級と合流し次の策を練るヴァルナ。
このヲ級はサーフの道具欄にはいないが、しかしビッグサイト内で動き回っていた個体……
瑞鶴ほどではないが、彼女の不在時に備えて用意しておいた特別優秀な個体だ。
既にサーフの研究室から、最低限の道具を持ち出してくれている。


(切歌、レジーナ、それにあの影薄達に正体がばれたのは痛いが……まだ間に合う。
 奴らさえ死ねば、竜殺剣の件があろうが都庁の連中はまだ僕の正体にまでは辿りつけないだろう)

(問題なのは、ネオ・ジオングスーツの破壊を許してしまったこと……
 あの馬鹿なディーのこと、下手をすりゃそれだけで自爆しかねないからな)

(だが切歌達に影薄達も、それだけは阻止したい筈だ。あいつらがディーを倒すことに賭けるか?
 いや、それよりもこのまま僕がディーを殺してからビッグサイトを抜けるか?)


正体がばれてしまったのは予定外だが、まだその人数は少ない。
最良は狂信者達と相討ちになって全員死んでくれることだが、そうもいかないということもわかってはいる。
まず鍵を握るのはディー。

彼をどうするか。

黒き悪魔は、まだまだ知恵を働かせる。


【二日目・23時30分/東京都 ビッグサイト内通路】

【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2】
【状態】リアルヴァルナ形態、瑞鶴の提督、支給品扱いで首輪なし、全マントラ網羅、動揺
    マスタキャンセラ・オートソーマ常備(万能以外無効、戦闘終了or逃亡成功時全回復)
【装備】違法改造スマホ、四次元ポケット@ドラえもん(ディパック代わり)
【道具】カオスロワちゃんねるのサーバー、カピラリア七光線銃、結婚指輪
    深海棲艦イロハ級×140、深海棲艦鬼・姫級×5、深海棲艦ヲ級、最低限の道具
【思考】
基本:蒼の源泉の力を手に入れる
0:ディーをどうするか……
1:可能な限り、切歌達と影薄はビッグサイト内で始末したい
2:瑞鶴を操り、拳王連合軍に野球の試合を早急にさせる
3:真実を知った者は消す、そして殺し合いを加速させるものを助長させる
4:年増女(セルベリア)とシスコン仮面(ルルーシュ)は特に警戒
5:狙われると面倒なのでギリギリまで正体は隠す、必要のない戦闘は避ける
6:死んだ祐一郎の才能に嫉妬。ロックマンと翔鶴は必ず使い潰す
7:都庁に向かった深海棲艦たちはいったい何をしてるんだ?!
8:可能であればイチローチームとテラカオス・ディ―ヴァ(ツバサ)を助けに行きたい
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※古代ミヤザキの末裔であり、蒼や蒼の源泉・テラカオスなどについて全て知っています
 ナノマシンに仕込まれたプログラムにより完成したテラカオスならば乗っ取ることも可能
 予言の中にある『歌』も所持
※悪魔化ウィルスによりリアルヴァルナへと変身可能
 サイヤ人の肉を食べたことで全スキルを網羅し、戦闘力が大幅増加しました
※まだ榛名によって都庁の軍勢とルルーシュに自分の正体が告発されたことを知りません

593 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:38:00 ID:gjWG0zdY0
投下終了です
タイトルは『ビッグサイト狂走曲』で

594 ◆e2JqZMvQtM:2020/04/09(木) 05:48:36 ID:iGIW.KCk0
待ってました 乙です
とうとう暴かれたサーフの正体と急速構築されていく包囲網
ドリスコルが行った外道作戦を知らないこともあって影薄たちが狂信者とまさかすぎる共闘路線を築くとは…
何よりも意外だったのは暴走一択だと思った松本さんが綺麗な最期を迎えたことですな
ジェットコースターみたいな展開でした 良い意味で


聖帝軍、拳王連合軍 予約します

595 ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:33:27 ID:wdKB.9Y60
聖帝軍、拳王連合軍を投下します

596悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:34:39 ID:wdKB.9Y60
四回裏 聖帝軍の攻撃です。
バッターボックスには四番サウザーが入ります。

「さっきはしくじったが、今度はそうはいかねえぞ!」

マウンドの上に立つMEIKOは二回裏でサウザーに得点を許していた。
同じ失敗は犯さないと、殺意を漲らせる。
四回表で得点王になると思われたプニキとハクメンが脱落していることも焦りを感じているようだ。
だからこそサウザーから得点はもちろん、命すら奪うつもりで戦いに臨む。

そしてお決まりの無限の回転を生み出すフォームから、殺人MEIKOボールが飛び出す――かに思われた。

「案ずるな。今度はバントで稼ぐみたいなチンケな真似はせんよ。    雷 霆 ッ ! !」
「ッ! 躱せMEI――」

サウザーはMEIKOが投げる寸前に、スカイツリーの戦いでカギ爪のヨロイにも穴を空けた雷を彼女の頭上に放つ。
投げるより先に攻撃することでフォームを崩す、紘太がとったものと同じ戦法である。
違いは足止めに留まった紘太と違い、雷は投げた直前のMEIKOでは避けられないほど、速く威力が高かったこと。

「うおぉおおおおおおお!!?」
「MEIKO!!」
「この球なら……ヒットは狙えるな!」

雷に打たれたことで黄金の回転、MEIKOボールはただのストレートになった。
サウザーは打つ。
その弾丸は、ライトにいるディオの足元に落ちて爆発した。
時を止めるザ・ワールドの発動が間に合わない速度での落下だった。

『ザ・ワー……ダメだぁ間に合わない!』
「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!?」

ディオの体が宙を舞ったと同時に、神速のサウザーは走り出す。
一塁にはロックマンを持つ翔鶴の姿がPETとダークチップを手に身構えていた。

『来るよ! サウザーを仕留めるためにダークサウンドを使うんだ!
 これを使えばサウザーと言えど……』
「ええ、わかりました!」

サウザーは聖帝軍のリーダー。
倒せば確実に相手チームの戦力はガタ落ちする。
しかし熱斗には確実に劣る翔鶴のネットバトラー技量からして、どうしても普通のチップではサウザーを捉えられない。
そこで超性能であるダークチップを予め用意し、あとはスロットインするだけ……


――熱斗の死のきっかけを作ったハゲ頭を殺したくて殺したくてしょうがないんだ!!


――正義や優しさは辛うじて失われていないが、憎悪という悪の心が宿ったか……!』


――そんな……私のせいで彩斗さんを……あああ!」


「……しまッ!!」
『翔鶴?!』

かつてダークチップの弊害を知らずにロックマンの心にダメージを与えてしまった時のトラウマ。
それがスロットに入れる直前で蘇ってしまい、チップはスロットに入りそびれて地面に落ちてしまった。

597悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:35:20 ID:wdKB.9Y60

(何かをやろうとして仕損じたのか? 命取りだな)

走るサウザーの視点から見ても今の翔鶴・ロックマンは隙だらけであった。
拳王連合軍でも主力であろう二人を葬るまたとないチャンスであった。
サウザーの容赦のない手刀が翔鶴の喉元まで迫る。

「あ……」
「翔鶴姉ッ!」
「極星十字拳」







「させるかッ! デュ―オーバーヘブン・ザ・ワールド!!!」

翔鶴の首が撥ねられるであろう直前、ディオは時を一分以上停止させるスタンドの奥の手を発動。
ボールを拾った直後にサウザーの下へ駆ける。
停止した時の中で動けるのはディオとデューオのみ。
サウザーの神速もここでは意味がない。

「二回裏の時は間に合わなかったが、今度はそうはいかん!
 このまま、一回タッチすればアウトだがな……」
『サウザーを確実に倒せるまたとないチャンスだ』

ディオは狙っていた。
サウザーが再びバッターとして現れた時に倒せるように、いつでも奥の手のデュ―オーバーヘブンを温存し、発動の時を待っていた。
ザ・ワールドの九秒間だけでは間に合わない……しかも、時が停止しているせいで自分の投げた球を味方の誰もキャッチできない弊害があり、捕球したら一々歩いていくしかなく、距離によっては九秒でも間に合わない。
だが一分もあるならドームの端から端まで到達することも可能である。

「チップを借りるぞ、翔鶴。俺たちにとっての幸運の剣だ」

ディオは翔鶴から拝借したソードのチップをPSVITAに(無理矢理)挿入すると、腕から一本の光剣が伸びる。
そして溜めに溜めた後にサウザーの胸を刺す。

「チッ、流石南斗最強の男……鉄板みたいな胸板だ。
だが無駄だ、多少の時間をかければ無防備なおまえなど」

サウザーの胸筋は異常に硬かったが、ディオには時間がある。
あらん限りの力を込めて、剣はズブズブと胸に沈んでいく。
そして。

「無駄ァッ!!」
『一分経過・時間停止解除!』

スタンド能力の制限時間が来る直前に光の剣はサウザーの胸を貫いた。

「がはッ!!」
「サウザー!!」
「くッ……」

サウザーは左胸と口から血を吐き出し、地面に膝を折った。
ディオも奥の手使用による代償で消耗しクロスフュージョン解除と同時に倒れた。
何が起こったのかわからない翔鶴と、ベンチにいる闇の悲痛な叫びが聞こえた。

「フッ、やってやったぜ……」
『ディおじさん、ボクらを助けてくれたの?』
「勘違いするな、熱斗……はもういないが、最高のネットナビである貴様を倒すのはこのディオだ。
こんなところで妹共々無様に死ぬことは許さん」



「……ああ、惜しかったな」
『な……』
「なにぃ!?」

そのまま血を出しながら死んでいくと思われたサウザーは、生きており、再び立ち上がった。
驚愕と絶望の表情でディオはサウザーを見る。

598悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:35:50 ID:wdKB.9Y60

「心臓を貫いたのに、なぜだ!?」
「残念だが俺の心臓は右にある。生まれついての特異体質なのだよ」

常人ならば左胸にあるべき心臓が右にある。
故に殺しきれなかったのだ。

「さて、これが普通の殺し合いなら動けなくなった貴様にトドメを刺すところだが」
『「……!」』

聖帝を打ち損じたディオとデューオは最期の時を覚悟する。

「俺は貴様にタッチされたからアウトだ。命拾いしたな」
「このディオが恐怖を感じるとは……不覚」

サウザーは既にアウトであり、これ以上攻撃はできない。
同時に周りにいる拳王連合軍の者もルール上攻撃はできないことも意味していた。
ディオはがくりと気絶し、サウザーは悠々とベンチに戻っていった。



「サウザー大丈夫ですか!?」
「痛たたたたたたたた……まさか時間停止できる奴がハクメンの他に複数いたなんて。
正直、死ぬかと思ったわ」
「こっちの心臓が止まるかと思いました。
犬牟田、応急処置をするので包帯をもってきてください」

拳王連合軍の前では余裕ぶってはいたが、実際はかなりの痛手である。
死なずとも胸部や肺に穴が開いているので重傷には違いない。
ぶっちゃけ心臓が無事なだけで常人ならとっくの昔に死んでいる傷だ。

「サウザー、怪我は浅くないです。五回表からはベンチで」
「いや、ダメだ。俺が負傷退場すれば拳王連合軍の士気を上げてしまう。
お師さんにヤワな鍛え方はされとらん。退かずに戦場に残るべきだ」
「サウザー……」

怪我は大きいがサウザーは試合に参加をし続けることにした。
彼の熱い想いを受け、聖帝軍も彼を止めはせず、応急処置に留めた。


一方の拳王連合軍は。

『ダメだ、ディオの疲労とダメージは限界だ。退場するしかない』
「MEIちゃんは無事か?」
「少し痺れたがなんとか……アルティメットアーマーはおしゃかになったがな」

ディオはベンチに運ばれ、MEIKOは負傷はしたが鎧が引き換えになったおかげで一命はとりとめていた。
とはいえ控えの選手がいないのでライトは空白になった状態で試合を続行しないといけない。
焦げて大破したアルティメットアーマーを脱ぎ捨て、マウンドに立った。
次の打者はイオリ。ただし、ガンダムにレイジと相乗りしているため、操縦桿を握る担当が変わることで打者になったという形で挑む。

イオリはサウザーや犬牟田からは無理して打たなくて良いから、とにかく自分たちの身と貴重なガンダムを守れと言われて立つ。
イオリ自身は実際に指示通り、スリーストライクになるまで打たず、防御に徹し、生き延びた。
ガンダムが受けたダメージも最低限度。
だが問題はMEIKOが投げるボールの方であった。

「なんだろうなイオリ、MEIKOの投げる球がさっきよりも遅く感じたんだが」
「うん、なんだか変な感じだった。僕の腕じゃ打つのはまだ大変だけど、避けるだけならなんとかなるレベルだった」



(どうしたというのだMEIちゃん? 受けた衝撃の量が明らかに減っているぞ)

MEIKOボールの威力減衰はバッテリーを組んでいるラオウさえ気づいていた。

599悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:36:42 ID:wdKB.9Y60



そして次の打席にデストワイルダーが入る。
今度は先のようにデッドボールを狙うのではなく、正攻法で打つ戦いで挑むつもりであった。
そして投げられたMEIKOボール、だが、デストワイルダーはこれを打った。
打球は大きく右側に寄りすぎてファールボールになってしまったが、かなり大きい当たりであり、ホームランもあり得させる飛距離であった。

「……ッ!!」
『おい、どうした? さっきよりも明らかに弱いぞ?』
「チッ、吠えてろ猫。戦いはこれからだ!」

あまりにも力を失っているMEIKO。次の球もファールであった。
いったいどうしたものかと拳王連合軍も聖帝軍ベンチも騒然となる。
答えを最初に出したのはシャドーマンであった。

『なるほど、見えてきたぞ』
「何が?」
『いくつか複合的な理由があるが……
具体的には疲労と、アルティメットアーマーの喪失、感電ダメージだろう』

お館である上条にシャドーマンは持論を説く。

『我々拳王連合軍は先に相手チームの方が倒れてしまうので、短期の試合しかしたことがない。
MEIKOはここまで激しく長期の戦いはしたことがなく、慣れないタイプの試合で疲れが出ている』
「でも俺たちのはダイジョーブ博士のマシンでメジャーリーガー級の能力を……」
『体力とスタミナ管理は別だ。そんなものはペース配分を間違えれば簡単に崩れる』

『次にアルティメットアーマー……MEIKOは殺し合いが始まってから一度も脱いでない。
そんな馴染みきった「重さ」が急になくなった時、どうなると思う?』
「思ったように体を動かせないってことか」

『だが、先の二つまでならMEIKOの超人的センスならどうにかなっただろう』
「一番の問題は……サウザーにやられたダメージということか!」
『おそらくMEIKOは――感電が抜けきってない状態で投げている!』
「!」
『感電は肉体の神経系に打撃を与える。思ったように動けない程度にはな』

シャドーマンが上条にMEIKOの身に起こっている何かを説明したのち、聖帝軍ベンチでも遅れてMEIKOの異常の原因がわかったようだ。

「なるほど、MEIKOは疲労と鎧の消失、感電によって力がでないみたいだ」
「疲労はともかく鎧を剥がしてびりびり感電させた後、弱めるなんて単純だけど思いつかなかったぜ」
「しかも自分が点を取れなくとも後へと繋げる先見性の良さ。
流石はサウザー、天才最強であるアタイも見直したわ!」
「えッ…あ、うん。
恐れ入ったか、この聖帝軍の知略に〜!(棒読み)」
(絶対深く考えずに放った攻撃が、たまたま相手の核心を突いただけだコレ……)

サウザーの活躍を褒め称える聖帝軍の面子と、褒められて久しぶりにイチゴ味モードで鼻が高くなるサウザー。
一番人となりを理解してるがために、ジト目で聖帝を見ている闇。


反対に焦るのは拳王連合軍の面子。
特に上条とシャドーマンであった。

「まずいぞ、早いとこMEIKOをピッチャーから交代させないと」
『感電も手伝ってMEIKO自身が自分の疲弊に気づいてない可能性もある。タイムの申請を――』

「MEIKOボール!!」
「待て、MEIちゃん!!」
「『しまったッ!?』」

イマジンスレイヤー、そしてラオウの制止が入るよりも早く、MEIKOボールは投げられてしまった。
それでも常人が無暗に打てば死ぬであろう文字通りの殺人球だったわけだが、デストワイルダーならば問題なく打てる球ではあった。

『俺の腕力を教えてやるよ』

洗練されてないMEIKOボールをデストワイルダーはフルスイングで打った。

『100t!! 高津の時のお返しだ!!』

打球はMEIKOの方向へまっすぐと飛んでいき、100t越えのそれは取ろうとした彼女の右腕を粉砕した。
MEIKOの右腕だった血と肉がマウンドの上に散らばる。

「ぐわああああああああああああああああああ!!!」
「MEIKO!」

MEIKOが倒れ、野球ボールは彼女の血肉に混ざって転がった。
ヒットを確認したのち、デストワイルダーは走り出す。

600悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:37:22 ID:wdKB.9Y60

「よくも仲間をやってくれたわね!」

瑞鶴は弓矢から召喚した艦載機を飛ばして一塁へ向かうデストワイルダーを止めようとする。
しかし、デストワイルダーには秘策があった。
デストワイルダーはなんと地面に潜り込んだではないか。

「地面に潜り込んだ?」
『いったい何が……?』

翔鶴は警戒してチップをいつでも使える準備をしていたが、突如消えた相手に困惑。
だがデストワイルダーはすぐに姿を現すことになる。
彼女のすぐ真後ろ、腕だけが出して一塁ベースにタッチする。


「はっ!」
『これで一塁はOK』

すぐさま翔鶴はバトルチップ、ソードを向けようとするが、彼女が攻勢に入るより早くデストワイルダーは再び姿を消す。

「これはいったい……」
『よく見て! そこらに何かキラキラしたものが落ちてる』
「これは――鏡の破片!?」

翔鶴が鏡の破片を発見した直後、今度はデストワイルダーの腕は二塁に現れ、塁にタッチだけして鏡の破片に消えていく。

これはミラーモンスターが使える固有能力。
鏡の世界であるミラーワールドへの通行である。
デストワイルダーは攻守交替前にこっそりと鏡の破片をバラまいており、いざ自分が走る際に能力を活かせるように用意していたのだ。

『「アイエエエ……姿が出てこないと攻撃ができない!」』

イマジンスレイヤーが嘆くような声を出すのも無理はない。
鏡の世界にさえ潜ってしまえば、誰も攻撃はできない――ラオウやハクメンでさえそれは同じである。
そして誰にも攻撃されることなく、塁だけ触れて進軍しようというのだ。

「猫が……汚え真似をしやがって!」

右腕は粉砕されたものの、辛うじて生きていたMEIKOは意識を手放す前に左手でボールを拾って送球し、三塁にクロえもんに届けようとする。

「よし、これで……三塁への進軍は止めることが……」

イマジンスレイヤーはデストワイルダーの進行を止められたことに安堵する。
いくらな鏡の世界を移動してもルールはルールなので、セーフになる前にボールを送られた塁に進むことは許されない。




その一瞬の油断が、イマジンスレイヤーにとっての命取りとなった。

601悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:38:00 ID:wdKB.9Y60





『お館様…後ろだ!!』
「なに!?」

三塁に行ったとばかり思われていたデストワイルダーは(ミラーワールド側の)二塁周辺に留まっており、背後から塁を守るイマジンスレイヤーにフェイント奇襲をかけたのだ。
これには聖帝軍側も驚く。

「待て、デストワイルダー!」
「そんな作戦じゃなかったハズ」

サウザーと闇の戸惑う声が聞こえるが、デストワイルダーはあえて無視した。


(この時をずっと待っていた……聖帝軍の皆には本当に申し訳ないが俺にとっては野球より仇討ちだ。
俺のご主人様である新城直衛を殺した恨み、ここで晴らさせてもらうぞ!)

デストワイルダーの目的は最初から聖帝軍に点を与えることではない。
真の目的は主を殺めたイマジンスレイヤー・上条とシャドーマンを葬ることであり、復讐の機会を文字通り虎視眈々と狙っていたのだ。

『「クソッ、ムラマサブレード!!」』

反応が遅れたイマジンスレイヤーもまた、咄嗟にチップをスロットインし、召喚した刀で反撃。
虎の二つの爪と忍者の刀が交差する。

黒猫がボールを受け取った瞬間と同時に、一つの因縁に決着がついた。



100tを越えた虎の爪の直撃は、イマジンスレイヤーに大打撃を与えた。
上条の胸に大きな爪痕が残り、血しぶきが飛び出す。
――しかし、皮一枚の差であるが殺すには至らなかった。
クロスフュージョンで生み出された甲冑が彼を致命傷から守ったのである。

だが。

「シャ、シャドーマン……」
『ガガ……申し訳ないお館様。拙者はここまでのようです……ガガガ――』

高いダメージはイマジンスレイヤーのクロスフュージョンを解除し、デストワイルダーはすかさず二撃目を叩き込んだ。
その結果、ネットバトラーである上条は直感的に躱したものの、避けそこなったPETには直撃し大破させた。
そうなればシャドーマンが命を失うのは自明の理であった。

『お館様、あなたとの旅と時間、誠に有意義なものでした……どうか生き延びて――サヨナラ!!』

ティウンティウン……――
シャドーマンの入ったPETは彼に遺言を残すだけの猶予を与えた後に、爆発四散した。

「そんな……シャドーマン……」

上条は親友を守れなかった後悔を覚えながら、地面に倒れて意識を失った。

『殺せたのは片割れだけか……』

シャドーマンを葬り上条を倒したデストワイルダーも無事ではなかった。
その胸には深々とムラマサブレードが刺さっており致命傷だ。
刺し違えたのである。

『すまない、主様、姐さん、ふなっしー、聖帝軍の皆……』

デストワイルダーは聖帝軍のベンチを一瞥し、謝罪の意味を含めた視線を向けた後に爆散してこの世から消えた。
拳王軍・聖帝軍、双方からの悲嘆の声が聞こえる。

その中でも特にロックマンは倒れた仲間やシャドーマンの死に大きな精神的打撃を受けていた。

『そんなシャドーマンが……せっかく大災害を生き延びたネットナビ仲間だったのに……!
ディおじさんやMEIKOおばさん、ジョジョまで傷つき倒れるなんて』
「…………」

兄の嘆きを間近で聞く翔鶴は、何も言えなかった。

602悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:38:45 ID:wdKB.9Y60



「これ以上の損失は痛いわね……宝玉輪を使いましょう」

拳王軍一同がベンチに入った時、瑞鶴はダメージを追いすぎた拳王軍を集団全回復させることができる宝玉輪をディパックから取り出す。
ルール的に既に退場済みのハクメン・ディオは無理だが、今なら上条とMEIKOを戦線復帰させることも可能であると考えたからだ。

「待て、それはまだ使うな」
「どうして? 今もったいぶってる場合じゃないでしょ?」

だがラオウは使用をやめさせる。
不服な瑞鶴にラオウはその理由を解いた。

「聖帝軍側を見てみろ、応急手当以外は誰も回復していない。
傷を治す術や道具がないのだろう」
「それが?」
「ここで我らが傷を治したら対等の戦いができなくなる。
それでは面白くない。
人数もちょうど六対六、今ぐらいがちょうどいいではないか?」

一瞬、ラオウが何を言いたいか瑞鶴にはわからなかった。

「拳王さん、これはスポーツじゃないわ!殺し合いよ!」
「殺し合い以前に野球だ。
それに聖帝軍を倒した後には、ヘルヘイムにイチローチームにドラゴンズも控えている。
聖帝軍は今まで戦った中で間違いなく最強の野球チームだが、同時に回復なしで挑まなければならぬ壁だ。
この壁を乗り越えられぬようでは、他の連中に勝つのも夢のまた夢」
「なんて……底抜けな野球脳なの」
「褒め言葉か?」

思わず本音が漏れしまうほどのラオウの野球脳ぶりに呆れる瑞鶴。
だが攻めのプニキ・守りのMEIKOを失ったりと拳王軍が不利なことには限らないので、何人かラオウに反対してくれれば回復を実行できたが。

「俺はラオウに賛成だ。
奴らも高津さんが死に、サウザーも負傷している。向こうもだいぶ疲れてるようだし十分やれるだろ」
『宝玉輪みたいな貴重な回復アイテムはせめて向こうが使ってくるまで温存した方が良いと思うね』
『瑞鶴の言いたいこともわかるんだが、敵も何か隠し種を残してないとも限らんしな』
「僕もラオウくんに賛成です。
イチローさんに勝つためには試練を自分たちに与えて強くなる必要があると思いますから」
『インドラ(賛成)』
「ちょっと! なんでメーガナーダまでそっちにいるの!?」

残念ながら野球脳にすっかり侵されている武人気質な拳王軍のほとんどがラオウを支持。
命欲しさよりもプライドを選んだのだ。
これでは瑞鶴も諦めざるを得ない。

「わかったわ。でも相手が何かで回復したら使わせてもらいますからね!」
「よかろう」
「ビッグサイトで提督さんも待っているんだから、余計なプライドのせいで死ぬわけにはいかないんですからね!」

渋々退いた瑞鶴だったが、そんな彼女に翔鶴は一声かける。

「大丈夫よ瑞鶴」
「翔鶴、姉…?」
「勝つための手立てはこの手の中にあるから」

瑞鶴に表情を見せぬまま、翔鶴はバッターボックスに向かう。
次は5回表。拳王軍の攻撃だ。
二塁を担っていたデストワイルダーがいなくなってしまったため、聖帝軍は仕方なくここは空白とした。
中央の穴はセンターのガンダムに補ってもらうしかあるまい。

603悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:39:28 ID:wdKB.9Y60

(む?さっきまでと雰囲気が違うぞ。この女)
(野球が得意な気はしなかかったですけど、この目つきは……こちらは二塁までいなくなってますし、警戒するに越したことはないですね)

纏うオーラが変わった翔鶴に、バッテリーを組んでいたサウザーと闇は特に警戒する。
そして闇はボールを投げる中、クロスフュージョンしているロックマンと翔鶴は、融合しているが故に周囲には聞くことのできない心の中の会話を交わす。

(……彩斗兄さん)
(翔鶴?)
(私がもしダークチップを使うことを躊躇わなければ、サウザーを轟沈させることができて、ディオさんやジョジョさんも傷つかず、シャドーマンさんも死ななかった。
でも、ダークチップを使いたくなかったのは兄さんが悪の心に染まってしまうのが怖かったから、どうしても手が震えていました)

一球目、乾いた音と共にワンストライク。


(……でも気づいてしまったんです。
仲間が傷つき倒れ、死んでいくことに悲しむ兄の表情は見たくないと。
悪の心を持たれるより悲しまれた方がずっとずっとココロが痛かったのです)
(翔鶴……)

二球目、緊張の中ツーストライク。
翔鶴に大きな動きはない。表向きは。

(だから仲間を守り、あなたを悲しませないためにダークチップを使わせてもらいます。
クロスフュージョンをしているなら、私も心に影響を受けるはず)



(一緒に悪に堕ちましょう、ロックマン)
(……ああ、二人でね)

三球目直前、翔鶴の目に漆黒の殺意が宿ったことを、敵味方共に確認した。
闇が投げる直前にダークチップをスロットインした所を目撃したベンチのデューオは声を荒げて止めに入ろうとするが、クロえもんに止められる。

『駄目だ、ダークチップを使うなんて』
「止めるんじゃねえデューオ!!」
『しかし……』
「あれは奴らの覚悟の上の行動だ。その覚悟を俺たちが踏みにじっちゃいけねえ!」




『「ダークサンダー!」』

翔鶴は電気玉を射出した。
闇は電気玉を避けてから投げようとするが。

「この電気玉、追尾してきて……きゃあああああああああ!!」
「闇ぃーッ!」

ダークサンダーにはホーミング性と、一定時間の感電麻痺効果を持っている。
そんな力の入りようがない体勢で打てば球速が出るわけもなく、翔鶴は遅くなった球を打とうとするが、その前にチルノは翔鶴の目の間に氷の壁を張って打つことを妨害しようとする。

「よくも闇を……打たせないよ!」
「無駄ですね、ダークソード!!」
「なん……だと!?」

翔鶴はバットから持ち替える形でダークソードを召喚し、その広い範囲と高い威力で氷の壁ごと、野球ボールを打った。
砕けた氷がチルノに襲い掛かる。
氷の要請なので氷属性の攻撃、しかも自分が生み出したものは効かないが、無数の氷の礫に紛れたボールをキャッチし損ねてしまう。

「しまった! ボールが!!」
「あれは俺たちが取りにいく!」

センターのガンダムがバーニアを吹かし、レフト側に落ちた打球を取りに向かった。
翔鶴はその隙に一塁へ走り出すが、今度は鎧武が迎撃態勢に入っている。
平等院をも殺害した仮面ライダー――簡単には通してはくれないだろう。

『「ダークステージ!!」』
「なんだ……足元が毒沼に!」

敵地をダメージトラップに返るチップの力により鎧武のいる一塁と周辺が一瞬で毒沼になった。
毒沼は酸をかけたように鎧武の具足を溶かしていく。

「あっ、足が……」
「止むを得ん、一塁を放棄しろ紘太!」
「すまない」

鎧武をジャンプをして一塁から離脱する。
その間、翔鶴は対大尉戦でも見せた飛行能力を駆使して毒沼の影響を受けずに通過。
毒沼にプカプカ浮いている一塁ベースに軽くタッチし二塁を目指す。

604悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:39:57 ID:wdKB.9Y60

「うおおおおおお、させねえ!!」

二塁へ向かう途中、打球を拾ったガンダムがこちらを阻止するために向かってくるのが見えた。
球を握る手ににはプニキやハクメンと打倒したビルドナックルが輝いている。
翔鶴はまずダークサンダーを放つが、アブソーブシールドに吸収されて効かない。

『どうやらあの盾、エネルギー弾は吸収するシールドみたいだ』
「だったらこれはどうですか!ダークトルネード・スロットイン!」

突如翔鶴の周りに竜巻が発生し、ガンダムを避ける間も与えないまま呑み込んだ。

「わあああああああ」
「か、風は物理攻撃!アブソーブシールドじゃ吸収できない!」

コクピットの中でもみくちゃになるレイジとイオリ、情け容赦のない竜巻はガンダムの装甲をガリガリと削り、二塁の前でその巨体をズシンと倒した。

「プニキさんの仇です。ここでトドメを……くっ……!」

倒れたガンダムを討てるまたとない機会と思い、翔鶴は容赦なくトドメを刺そうとする。
しかし、次のチップを選ぼうとした瞬間、翔鶴の腕にずきりと痛みが走った。

「これがバグ…!」

ダークチップ使用を決断する前に兄であるロックマンから教えられたのだが、ダークチップは心を悪に染めるデメリットの他にダメージや挙動をおかしくするバグも存在する。
ダークソードなら勝手に前進。ダークバルカンなら混乱。
ダークサンダー、ダークトルネードならチップ選択時にダメージ。
ダークステージなら選べるチップが一枚減少する。
などという風に、ロックマン及び翔鶴自体もダメージを受けるのだ。

ちなみに一回使う度にHP上限が1ずつ減るというものもあったりするが、二人ともダイジョーブ博士の魔改造&裕一郎さんのぶっ飛んだ技術でHPがめちゃくちゃ高くなってるのでそんなに苦にはなってない。

「くっ、うおおおおおお!!」
「しまった!」

動揺で翔鶴の動きが止まったのを見て、レイジはコンソールを動かし、ビルドナックルを叩きつけた。

「ダメージなし!!? なんて硬さだよ!」
「防御されていたとはいえ、あんな細い体のどこにあんな力が!」

翔鶴は直撃を肩当てで防ぎダメージはなかったが、触れられてしまったのでアウトではあった。

「ふっ、私もまだまだですね」
『大丈夫、初使用でこれだけ使えたんだから、今度はもっと効率よく相手をいたぶれる』
「そうですね、敵を殲滅して皆殺しにできるぐらい、チップの使い方に慣れなくては」

さっそく、ダークチップによる心の汚染はロックマン、そして繋がっていら翔鶴に現れていた。
ことの深刻さに頭を悩ますデューオ、その横では瑞鶴がぼそりと呟いた。

「そう……それでいいのよ翔鶴姉……あなた自身が生き延びるためにも」

605悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:40:52 ID:wdKB.9Y60



「大丈夫か、みんな!?」
「麻痺はもう抜けました…やれます」
「俺も大した怪我じゃない」
「俺もガンダムも動けるがイオリが……」
「死んだの!?」
「いや、僕はまだ生きてはいるよ……ただ、足の骨を折ったみたいで動けない」
「イオリは残念だが退場するしかあるまいな」

イオリは先の攻撃でコクピットの中で右足を折ったため、退場となった。
犬牟田に抱えられてベンチに戻る前にイオリは闇に野球ボールを渡した。

「闇さん、これを使って」
「これは……?」
「次のバッターは高津さんさえ容易く打たれたムネリンだ。そのボールはあの人への対抗策になる」


拳王軍側の次のバッターは川崎宗則。
この男は守備のみならず高津からも度々、打球を勝ち取った男でもある。
高津亡き後、技術では劣る闇がピッチャーでは勝てるハズがない。
……そう考えていた時が拳王軍にはありました。

結果だけ先に言ってしまうと、この回のムネリンは見逃し三振でバッターアウトになってしまった。

「おい! なんで打たなかった宗則!?」
「うてませぇーーーーん! だって相手の野球ボールには……」

某バナージみたいな絶叫を上げたムネリンが指をさしたのは闇が投げていたボール。
それはイチローの凛々しい笑顔をプリントされた野球ボールであった。
イチローラブのホモがこれを打ってしまうとイチローの顔に傷がつくと思って打てなかったのだ。

「聖帝軍の野郎ども汚え真似しやがって!
てかおまえ、殺してでもイチローを取り戻すんじゃなかったのか?」
「顔は別です!」

このあと、憤慨するクロえもんからげんこつをムネリンはもらうことになった。



「あれを見ているとやはり愛などいらんと思うわ」
「それに関しちゃ俺も同感だぜ、聖帝軍の大将さん」

あまりのホモホモしさに敵ながら呆れかえる聖帝と、バッターボックスに入ったクロえもん。
闇は五回表、三番目の打者であるクロえもんを相手に投球を投げた。

「さっきまでは高津さんに翻弄されたが、今後はそうはいかないぜ!」

クロえもんの打法は得意としているブラックホール打ち。
ただ、今度の打ち方は以前よりも早く真空が発生し、さらにチルノによるボールの周りに張られた氷の幕も剥がしていった。

「アタイの氷が!」
「同じ手法がいつまでも通用すると思うなよ!」

そしてクロえもんは打った。
彼の周辺が激しい暴風に襲われる。
元々が野球選手だけに制球力は抜群。
予測では横浜スタジアムの電光掲示板に直撃するコース

606悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:41:27 ID:wdKB.9Y60

――そのはずであった。

「残念だったな」
「え? 畜生ーーーッ!!!」

打った直後にキャッチャーであるはずのサウザーが彼の目の前に回り込み、飛ぶはずだった彼の打球をキャッチしたのだ。

「ブラックホールによる吸い寄せによるホームランを狙うのは予測ができた。
後はバットの動きを見て俺が先に取れば良いだけのことよ」
「暴風はどうした!?」
「俺が風より早く動けば問題はない。先入観と打球自体の攻撃力が低かったのが貴様の敗因だな」

クロえもんの失敗は、サウザーが言った通りラオウやムネリンがやったような打球の攻撃力不足(決して低いという意味ではない)に、キャッチャーがバッターの後ろから動かないという先入観。
何よりもサウザーの異常な速さについてこれなかったことだろう。

これにてスリーアウトにより拳王軍五回表の攻撃は終わる。
次は聖帝軍の攻撃である五回裏だ。




聖帝軍側のベンチにて。

「はあはあ……」
「くッ……」
「みんな疲れが溜まっているようですね」
「頑張れみんな、あと一息だ。
次は五回裏。仮に一点でも勝ち取り六回表も防衛しきれば我らの勝利は確定になる!」

聖帝軍の疲労、消耗はピークに近づきつつあった。
もはや稼働できる選手は5人しかおらず、他は負傷退場か死亡している。
サウザーも元気にふるまっているが、胸の穴は簡素な応急処置で出血を防いでいるだけだ。



ならば拳王連合軍は余裕かと思えばそうではない。

拳王連合軍も動ける選手は一気に6人まで減り、ピッチャーであったMEIKOも負傷退場。
その他の選手はほぼ全員気絶している。
総合的な消耗具合は聖帝軍と大差がなくなってきている。

何より拳王軍が聖帝軍に対して危惧していることは。


「まずいですね、彼らは試合の中で急速に成長してきてます」
「さっきのサウザーの芸当……最初からやれば多くの打球も取られてただろうに、今まで使ってこなかった。」
「インドラ?」
「つまりねメーガナーダ、サウザーは今まで打った直後に取るなんて技はいままで使えなくて、成長によって今使えるようになったのよ」

聖帝軍の試合中の成長は凄まじく、消耗してなお強敵に感じるのだ。

「気を抜くな皆のもの、あと一息だ。
六回表までに聖帝軍が覆せぬほどの点をもぎ取れば我らの勝利は見えてくる」
「「おう!」」「インドラ!」

ラオウの言葉に残った4人と1匹は戦意を高める。
そしてチラリとベンチで眠るMEIKOを見た。
右腕を失った傷の痛みで苦しそうだが、眠っている。

「待っておれMEIちゃん、うぬが休んでいる間に必ず拳王軍を勝利させてみせる!」

それから聖帝軍側のベンチを見て、彼らと仲間たちに宣言した。

「さあ、天よ刮目せよ、本当の戦いはこれからだ!」




【シャドーマン@ロックマンエグゼ 死亡確認】
※デストワイルダーは支給品のため死亡者リストに乗りません

607悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:41:52 ID:wdKB.9Y60


               拳 2-2 聖

『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
瑞鶴           4番レフト
(考え中)        5番ピッチャー
メーガナーダ       6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
             8番セカンド
             9番ライト




『聖帝軍 布陣』

             1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番ピッチャー
サウザー         4番キャッチャー
             5番ライト
             6番セカンド
             7番レフト
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード




【二日目・23時00分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと30分で異世界は消滅。
 それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)


【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】

【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
※負傷により退場



【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】

【ハクメン@BLAZBLUE】
※負傷により退場
 また鎧に罅が入り、瑞鶴が持つ違法改造スマホで起動するリモコン式の爆弾を罅から入れこまれました

【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
※負傷・気絶等により退場

608 ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:42:33 ID:wdKB.9Y60
投下終了です

609迷走のヨルムンガンド:2020/04/20(月) 09:58:32 ID:kH8RENa20
テラカオス・リリカルによる黒き獣討伐に失敗した九州ロボの主催陣営。
焦燥の中、成層圏で待機するココとメフィラス星人を待っていたのは、更なるバッドニュースであった。

指令室で受け取れる情報に、ココは動揺を隠せなかった。

「ジャックたちが全滅した…!?」
「ええ…兵隊含めて一人残らず皆殺しにされたようです。
 問題のフォレスト・セルは未だ健在…ほぼ無傷のようです」

元々、攻めるには少なすぎる戦力であるとジャックも言っていたが、決して弱者ではない――むしろ装備も含めれば理不尽級に匹敵するだろう四人が、フォレスト・セルに少しの打撃も与えられずに全滅するとは二人も思わなかった。
主催四人が弱いのではない、あまりにもフォレスト・セルと都庁の軍勢が強くなりすぎていたのである。

「なんてこと…これでは紫が守りたかった幻想郷も…」
「博麗結界が消滅したため、たったいま消滅しました。
 元々、カオスロワのために住民や妖怪は追い出していたようですが、彼らが帰れる場所はもうありません」

博麗結界は殺された紫と博麗の巫女がいないと維持できない結界だ。
博麗の巫女の方はどこかから調達するなりすれば良いと紫は言っていたが、スキマ妖怪たる紫はそうはいかない。
幻想郷として結界に囲われていた場所もこのままでは黒フロワロに飲み込まれるだろう。
都庁の軍勢は何も知らずに戦っているだけなので、ココらはジャックたちが殺されたことを恨みはしないが、せめて彼らが真実に気づきフォレスト・セルだけでも大人しく死んでくれたら…という考えが頭によぎる。





ちなみにココたちは、大災害を引き起こした黒幕の正体を未だに知らず、フォレスト・セルも古代グンマ―が遺した世界を滅ぼすための装置であると未だに勘違いしている。
なぜなら唯一の情報収集テーブルであるカオスロワちゃんねるが、真の管理人であるサーフの手によって重大な情報が届かないようになっているからだ。
首輪には盗聴装置もあるが、都庁の軍勢やネームド狂信者は首輪を既に解除しており、また首輪を解除していなかったルルーシュやモブ狂信者もディーがいずれ敵対するであろう主催に情報を渡さないために集音スピーカー部分だけ埋めたりして、完全には行き渡らないようにしている。
さらに自分たちは全ての真実を知っているという「思い込み」が、ココとメフィラスに真実の更なる追及をやめさせていた。

「フロワロの進軍、歪んだ器であるフォレスト・セルは健在、狂信者も戦況をひっくり返せるネオ・ジオングアーマーの存在……そしてアナキンとテラカオスがいるイチリュウチームの前には魔女の出現、ついでで拳王連合軍と聖帝軍が神奈川で行方不明」
「我々はこれからどうしたら良いんでしょうか…二人と兵士550人しかしないのに、いったいどこから手をつければいいのやら」

問題は黒き獣のフロワロやフォレスト・セルだけではない。
主催が問題に着手している間に状況は大きく動いていた。


拳王連合軍は聖帝軍は何らかのアイテムを使って横浜スタジアムから忽然と姿を消したらしい。

狂信者は邪竜すら簡単に捻りつぶせる超兵器を開発し、下手をすればテラカオスや救済の予言を叶える存在をまとめて皆殺しにすることも可能になった。
フォレスト・セルさえ抹殺できる代物だが、そう主催に都合よく動くとは思えない。
きっと狂信者は自分たちとクラウザー以外は全滅させるだろう。

イチリュウチームは魔女化した霧切の襲撃を受けて全滅の危機に瀕している。
全滅すれば貴重なテラカオスと野球チーム、そして潜伏中のリーダーであるアナキンを失う。
そうなればテラカオスと救済の予言を実行できる者がいなくなって大災害により世界は破滅である。

もはや黒き獣やフォレスト・セルを叩いただけでは、世界は破滅しかねない重大事件が各地で起きていた。
ココとメフィラスは情報を見ながら迷って、迷って、考え抜いた結果、次の行動を決定した。


「九州ロボを伴って千葉へ向かい、魔女を討伐。
 イチリュウチームとテラカオスを確保し、アナキンを救助しましょう」
「ココ嬢、他の問題はどうするんです?」
「限られた時間と人材で他の問題をクリアするためにも、最初にイチリュウチームとテラカオス・ディ―ヴァを助ける必要があるのよ。
 狂信者の超兵器も一度以上使ってビッグサイトにひっこめたところからして、まだ未完成か発射に大きな制限があると思う。
 黒フロワロは本州の人間が多く死ぬでしょうけど、九州ロボに格納されている一般人だけでも世界の復興自体は可能。
 九州ロボのフルパワーならフォレスト・セルに勝てる可能性もあるかもしれないけど、相討ちや負けて数少ない器足りえる巨像を失うのもまずいので今は保留」

610迷走のヨルムンガンド:2020/04/20(月) 10:00:21 ID:kH8RENa20

黒フロワロ放置はココたちでは止める手段も情報もなく、放置する他あるまい。
間違いなく多くの参加者が死ぬことになるが、もはや野球チームと巫女、歌に器とテラカオスが残りさえすれば、九州ロボで眠っている住人による聖別後の復興が約束されるので、残酷だが致し方ない判断とした。
狂信者に関してもココが思っていたこととだいたい合っており、すぐに動かせず連射できない事情があったのだ。

「だけどイチリュウチームだけは本当に猶予がない。
 あそこが全滅すれば代わりの野球チームを用意する時間もないし、あのチームには条件次第では惑星破壊攻撃も可能なイチローやナッパなど都庁の軍勢にも勝てる見込みがある戦力が残されているわ。
 むしろ、一番安全に手を組める対主催勢力はここしかないわ」
「場合によっては手を組むと?」
「世界のためになるなら降伏してアナキン共々傘下に下っても良いと考えてるわ」
「傘下って…まあ、確かにテラカオスの完成度具合を考えれば参加者と争う意味も、これ以上殺し合いを強制する意味もないですが」
「あそこは人格的にも世界を滅ぼそうと考えている人物はいないし、安心して殺し合いの真実を打ち明けることもできる」

だがここでメフィラスは疑問を浮かべる。

「しかし、私たちがイチリュウチームの救助している間、他の問題はどうします?
 他は諦めるとして、フォレスト・セルと狂信者の超兵器は健在で放置は危険だと思いますが…」

ココは神妙な面持ちで答えた。

「ええ、だからテラカオス・ディ―ヴァと『器足りえる巨像』――この九州ロボを融合させ、パワーアップさせるわ」
「なんですと……?」
「そしてパワーアップしたディ―ヴァで、DMC狂信者、フォレスト・セルを一掃する。
 そうしたら後は野球チームに試合をさせてテラカオスの成長を促し、黒き獣を倒して救済の予言を完遂させればいい」


救済の予言の一説にもある器足りえる巨像とは、テラカオスを強化させるためのツールである。
生物と機械、グンマ―とミヤザキの違いはあるが、フォレスト・セルと九州ロボは元は姉妹品である。
仮にミヤザキの血を引いていた裕一郎の腕前が本物なら、テラカオス・ディ―ヴァとも融合して強化し、世界を救う邪魔をするものを一気に倒せるはずとココは睨んだのだ。

「机上の空論です!
 ロックマン・エックスが映像で言っていたとはいえ、融合でどこまでパワーアップできるかは未知数ですし。
 最悪、貴重なテラカオス・ディ―ヴァや九州ロボまで失うでしょう。
 九州ロボのファクターでありリンクしているあなたへの影響も計り知れません!」
「部の悪い賭けなのは承知の上よ、でも私たちには戦力も手札ももう残されてない。
 何も知らない都庁の軍勢がいつ、千葉へと向かってテラカオスを討伐……もしくは助けるつもりでフォレスト・セルの口の中に突っ込まれ、テラカオス因子を浄化されようものなら世界は一貫の終わりよ!
 残された時間じゃ次のテラカオスが生まれるのは望み薄、だったら私の命を犠牲にしても良いから、テラカオスと救済の予言を達成する者を守るべきよ!」
「それは確かに……」

ココの考えは理想も入り混じった空論なのは確かだが、実際に(フォレスト・セルの危険がなくなったことを知らなければ)打てる手は限られているので僅かでも可能性がある方に手を伸ばすしかない。

溺れる者は藁をもつかむのだ。


「待ってください制御はどうするんですか?
 巨像は制御する巫女がいて、初めて真価を発揮するという話ですが」
「私なら祈りの巫女が務まる…と言いたいところだけど、たぶん違うわね。
 こっちも賭けにはなるけど、候補は一人だけいるわ」

ココはモニターに、参加者の中で確実に巫女になれる存在を映す。

「拳王連合軍の艦むす…翔鶴!」
「裕一郎が九州ロボと共に作った最後の遺産……ミヤザキの巫女である彼女にかけるしかない」

ミヤザキの血を継ぐ裕一郎が、先祖に仕込まれた遺伝子によって無意識に造り上げた機械の巫女・艦むす。
ココの中で巫女足りえる存在は彼女しか考えられなかった。

ちなみに既に会場には瑞鶴や榛名など別の艦むすも存在するが、瑞鶴はサーフの工作で存在が隠蔽されており、榛名は深海棲艦から蘇ったばかりでココは知らず、そもそもエントロピー量が翔鶴と比べれば低いため、目に入らなかったのだ。

611迷走のヨルムンガンド:2020/04/20(月) 10:00:22 ID:kH8RENa20

黒フロワロ放置はココたちでは止める手段も情報もなく、放置する他あるまい。
間違いなく多くの参加者が死ぬことになるが、もはや野球チームと巫女、歌に器とテラカオスが残りさえすれば、九州ロボで眠っている住人による聖別後の復興が約束されるので、残酷だが致し方ない判断とした。
狂信者に関してもココが思っていたこととだいたい合っており、すぐに動かせず連射できない事情があったのだ。

「だけどイチリュウチームだけは本当に猶予がない。
 あそこが全滅すれば代わりの野球チームを用意する時間もないし、あのチームには条件次第では惑星破壊攻撃も可能なイチローやナッパなど都庁の軍勢にも勝てる見込みがある戦力が残されているわ。
 むしろ、一番安全に手を組める対主催勢力はここしかないわ」
「場合によっては手を組むと?」
「世界のためになるなら降伏してアナキン共々傘下に下っても良いと考えてるわ」
「傘下って…まあ、確かにテラカオスの完成度具合を考えれば参加者と争う意味も、これ以上殺し合いを強制する意味もないですが」
「あそこは人格的にも世界を滅ぼそうと考えている人物はいないし、安心して殺し合いの真実を打ち明けることもできる」

だがここでメフィラスは疑問を浮かべる。

「しかし、私たちがイチリュウチームの救助している間、他の問題はどうします?
 他は諦めるとして、フォレスト・セルと狂信者の超兵器は健在で放置は危険だと思いますが…」

ココは神妙な面持ちで答えた。

「ええ、だからテラカオス・ディ―ヴァと『器足りえる巨像』――この九州ロボを融合させ、パワーアップさせるわ」
「なんですと……?」
「そしてパワーアップしたディ―ヴァで、DMC狂信者、フォレスト・セルを一掃する。
 そうしたら後は野球チームに試合をさせてテラカオスの成長を促し、黒き獣を倒して救済の予言を完遂させればいい」


救済の予言の一説にもある器足りえる巨像とは、テラカオスを強化させるためのツールである。
生物と機械、グンマ―とミヤザキの違いはあるが、フォレスト・セルと九州ロボは元は姉妹品である。
仮にミヤザキの血を引いていた裕一郎の腕前が本物なら、テラカオス・ディ―ヴァとも融合して強化し、世界を救う邪魔をするものを一気に倒せるはずとココは睨んだのだ。

「机上の空論です!
 ロックマン・エックスが映像で言っていたとはいえ、融合でどこまでパワーアップできるかは未知数ですし。
 最悪、貴重なテラカオス・ディ―ヴァや九州ロボまで失うでしょう。
 九州ロボのファクターでありリンクしているあなたへの影響も計り知れません!」
「部の悪い賭けなのは承知の上よ、でも私たちには戦力も手札ももう残されてない。
 何も知らない都庁の軍勢がいつ、千葉へと向かってテラカオスを討伐……もしくは助けるつもりでフォレスト・セルの口の中に突っ込まれ、テラカオス因子を浄化されようものなら世界は一貫の終わりよ!
 残された時間じゃ次のテラカオスが生まれるのは望み薄、だったら私の命を犠牲にしても良いから、テラカオスと救済の予言を達成する者を守るべきよ!」
「それは確かに……」

ココの考えは理想も入り混じった空論なのは確かだが、実際に(フォレスト・セルの危険がなくなったことを知らなければ)打てる手は限られているので僅かでも可能性がある方に手を伸ばすしかない。

溺れる者は藁をもつかむのだ。


「待ってください制御はどうするんですか?
 巨像は制御する巫女がいて、初めて真価を発揮するという話ですが」
「私なら祈りの巫女が務まる…と言いたいところだけど、たぶん違うわね。
 こっちも賭けにはなるけど、候補は一人だけいるわ」

ココはモニターに、参加者の中で確実に巫女になれる存在を映す。

「拳王連合軍の艦むす…翔鶴!」
「裕一郎が九州ロボと共に作った最後の遺産……ミヤザキの巫女である彼女にかけるしかない」

ミヤザキの血を継ぐ裕一郎が、先祖に仕込まれた遺伝子によって無意識に造り上げた機械の巫女・艦むす。
ココの中で巫女足りえる存在は彼女しか考えられなかった。

ちなみに既に会場には瑞鶴や榛名など別の艦むすも存在するが、瑞鶴はサーフの工作で存在が隠蔽されており、榛名は深海棲艦から蘇ったばかりでココは知らず、そもそもエントロピー量が翔鶴と比べれば低いため、目に入らなかったのだ。

612迷走のヨルムンガンド:2020/04/20(月) 10:02:09 ID:kH8RENa20

「メフィラス、私たちに残されている時間は残り少ない。
 私と九州ロボが先に千葉へ向かい、魔女の討伐…倒せなくとも足止めはする。
 その隙にあなたは横浜に向かって、翔鶴を九州ロボに連れてきて」
「方法は?」
「拉致、交渉…方法は問わないわ。
 殺し合いの真実を話しても構わないし、降伏を要求されたらそれでも良い。
 とにかく巫女の確保と、拳王軍に野球をさせることが最優先よ。生きてたらだけどね」
「仮に九州ロボと翔鶴が融合できたら、魔女やフォレスト・セルにも勝てるでしょうか…?」
「オッズの見えないギャンブルだけど、私たちには賭けを降りることも負けることも許されないのよ。
 ジャック、バーダック、幽香、紫、織莉子、キリカ、デウス、ビアン博士、大尉、風魔、新城、クラウディウス、ヤン、メディア、黒、クルル、biim、メガヘクス、あとニャルなんとか。
 これまで死んだみんなの犠牲を無駄にするわけにはいかないわ」

この場にいないアナキンを除く、最後の主催たちの方針は決まった。
ココ及び九州ロボはテラカオスとイチリュウチームの救助。
メフィラスは翔鶴の確保を行い、九州ロボに送ること。
少なくとも二人にはそれしか生き延びる道はないと思えた。

「さて、出発……する前にやるべきことがあるわね」





九州ロボが千葉方面へ向かう前に、ココとメフィラスは今までスパークドールズと化していた八坂麻尋をダークスパークで人間に戻し、さらにかつて九州ロボ上で労働力として使い冷凍睡眠させていた無数のモブ参加者たちを、今は使わなくなった脱出艇ASO-3に搭載。
さらにこれまでの激しい戦いで傷つき、戦意を失い、かつ人格的に問題がなく裏切らず無益な殺生をしないモブ兵士もといストームトルーパーにASO-3に乗って九州ロボを降りる許可を与えた。

「さよなら麻尋キュン、大災害を乗り切った後の世界でも生きていてね…」

これからの戦闘で九州ロボが被害を受けない可能性は限りなく低い。
本州の人間は戦闘や黒フロワロで最悪全滅に追い込まれることもありうる中、未来の復興を担う人材まで失うわけにはいかない。
そのため、麻尋やモブ参加者たちをASO-3に乗せて最も被害が出にくいと思われる日本海側に退避させることにしたのだ。
麻尋含めた彼らは殺し合いが終わるその時まで冷凍睡眠で眠らされ続ける。

またモブ兵士は一般人の護衛と同時に、テラカオス生産に必要なファクターであるストレスの生産装置もとい定時放送を行わせるため、彼らに放送に必要な機器とベイダーの服とボイスチェンジャーを渡しておいた。
これなら九州ロボが轟沈しココ、メフィラス、アナキンが死亡しても放送は続けられるだろう。

「それじゃあ、行くわねメフィラス」
「ココ嬢、ベイダー卿…アナキンと共に生きてまた会えることを願っていますよ」
「ええ、ありがとう」

ワープ装置の上に立ったメフィラスはココの最後に見るかもしれない笑顔を見た次の瞬間には、神奈川県に降り立っていた。
直後に九州ロボは成層圏から千葉へと降下していく。
その九州ロボの背中は、どこか乗り手と同じように、悲壮な覚悟を写していた。

613迷走のヨルムンガンド:2020/04/20(月) 10:02:37 ID:kH8RENa20





【二日目・23時30分/成層圏 九州ロボ】


【ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド】
【状態】健康、九州ロボのファクター、ショタコン、罪悪感、シャドウへの警戒(大)
【装備】九州ロボ、ライトセーバー@STAR WARS、拳銃
【道具】商品(兵器)、モブ兵士×500、ダークスパーク
    主催倉庫から持ち出した無数の支給品、力を失ったドラゴンボール、千年タウク@遊戯王
【思考】基本:ヨナ達を奪った大災害を防ぐべくテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:九州ロボで魔女霧切に襲われているテラカオスとイチリュウチームの救助に向かう
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは撃つ
2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
3:世界のためならイチリュウチーム相手に真実を打ち明けることや降伏することも視野に入れる
4:真尋キュン、どうか生きていてね…
※シャドウの能力の一部(ラインハルト、サクヤ、VFD)及び負傷状態を認識しました
※倉庫内に黒フロワロに対抗できる解毒薬はありません
※カオスロワちゃんねる一派の工作により、榛名が打ち明けた黒幕の真実にまつわる情報が入っておりません
※九州ロボから脱出艇ASO-3を失いました


【二日目・23時30分/神奈川県 横浜】

【メフィラス星人@ウルトラマン】
【状態】健康、罪悪感、シャドウへの警戒(大)
【装備】なし
【道具】支給品一式、タイム風呂敷、ビックライト、とりよせバック
【思考】
基本:アナキン達に従い、世界滅亡を防ぐ
0:ミヤザキの巫女たる翔鶴の確保、そのために拉致または交渉を行う
1:↑が上手くいったら早急に九州ロボのココと合流する
2:尊い地球人が死ぬのは不本意だが、全滅回避のために多少の犠牲は止むなしと考えている
3:なるべく暴力は使いたくない
4:ところで遺跡の前のバサルモスの死体は結局なんだったのでしょう?
5:もう迷わない……主催陣営の一員として世界を守る
※シャドウの能力の一部(ラインハルト、サクヤ、VFD)及び負傷状態を認識しました
※カオスロワちゃんねる一派の工作により、榛名が打ち明けた黒幕の真実にまつわる情報が入っておりません




※スパークドールズ化の解けた八坂真尋、九州ロボに奴隷として働かされていたモブ参加者と50人ほどのモブ兵士がASO-3ごと日本海に降りました
 また、放送はここにいるモブ兵士が行うので九州ロボが破壊されても、主催が全滅しても以後の放送自体は継続されます

614目指せ完結:2020/04/20(月) 10:03:37 ID:kH8RENa20
>>610 >>611
間違えて連投してしまったみたいなので>>611はカットでお願いします

615創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:09:34 ID:3k2I6frk0
ゼロを送り出し、ようやく束の間の時間を得た都庁同盟軍。
しかしそれは断じて平穏な時間ではない。

「ダオスさん、カヲル君達はみんなの弔いに向かうみたいです……」
「……我々以外、残った戦力は全てそちらの護衛に回せ」

沈痛な面持ちの小鳥に対して、ダオスは苦々しげにその言葉を口にする。
なんとか狂信者の三度目の襲撃も、返り討ちにすることはできた。
しかしその犠牲は、あまりにも大きすぎた。

元々世界樹は力有る魔物が取り戻し、弱き魔物を匿う意味もあった。
そんな匿うべき魔物と助けられた少女達は、一人残らず殺されてしまった。
それだけではない。魔物を引っ張ってきた三竜、その最後の一人である氷竜までもが命を落としたのだ。

「ピイィィ……」

狂信者に捕まってしまい、肉盾にされていた魔物……新たな匿うべき存在も増えはした。
しかしその数と犠牲の数は決して釣り合うことはない。
自分達が捕まってしまったばっかりに、魔物の長たちは命を落としたのだとわかるだけに、助けられた彼らの表情も暗い。

遺体を弔うのも時間がかかるし、四度目の襲撃が無いとも限らない。
戦える魔物はいよいよ数が減り、これ以上の犠牲は絶対に避けねばならない。
だからこそダオスは、カヲル達をほぼ全ての戦力を連れた状態で弔いに向かわせざるを得なかった。


「……外は、私と神樹が見張りますわ」
「今度は容赦しねぇ。エリカが危険と判断したなら、躊躇わず黄昏撃ちこんでやるぜ」


確実に、狂信者も減っていることだろう。
そして力のない参加者は、小町の呼びかけで迂闊にはここを攻めない筈。
一時的に外敵排除の任はエリカと神樹に任せ、十数分だけダオスは世界樹の中で生存者達と顔を向きあわせる。


「……残ったのは、我々だけとはな」


ダオスの表情は晴れない。
無理もないだろう。カヲルの護衛についた魔物達、それにアルルーナとウォークライ。
彼らを除いた、人の参加者は……

「今はね! 大丈夫だって、聖帝様もゼロも絶対戻ってくるから!」
「ほむらちゃん達も、だよ」
「……影薄の子達もね」
「ええ、絶対に。でも確かに今は、私達だけなんですね……」

回復の要たるさやか。世界樹の巫女にして予言の一角まどか。自由に動ける最後の戦力レスト。
そして天ぷらに鎮魂歌やオーバーボディに気がつき、縁の下からこれまで同盟軍を支えてきた小鳥。
ダオスを含めても僅か5人。あまりにも、数が減り過ぎた。

616創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:10:08 ID:3k2I6frk0
仲間を弔いたいというカヲルと魔物達の気持ちはよくわかる。
外の警護、緊急時の長距離移動を考えると神樹とエリカは常に世界樹の傍で気を張らねばならない。
わかっている。わかっているが、たったこれだけの人数で新たに生じた問題を解決できるのか?


「お言葉ですが提督、微力ながら榛名達も」
「て、提督とは私のことか?」
「はい。まどかさんをそう呼んだら、現在のグンマ―勢力を指揮しているのは貴方とお聞きしましたので。
 榛名達艦むすにとって、命を預ける人のことは提督や司令官とお呼びするのが流儀なのです。
 ご、ご迷惑でしたか……?」
「……いや、好きに呼んでくれて構わない。そうだな、お前達もいたのだ。よろしく頼むぞ」


ここで、現代に蘇った古代ミヤザキの巫女、榛名も声をあげる。
追従するように4人の駆逐艦の少女も名乗りをあげた。
これで追加で5人。計10人となった。


「榛名ちゃん、私達が使っていたこのカオスロワちゃんねるも、黒幕の手で操作されているというのは本当なの?」
「はい。テラカオスに関する情報は勿論、サーフにとって不都合な情報は全て自動で消されるようプログラムされています。
 真実を広める、テラカオス誕生の阻害になるような書き込みに対しては、逆探知からの機器爆破までもが可能です」
「ひええぇ……操作ってそこまで根深いんですか!? ダオスさんが前に止めてくれなければ、私も危なかったんです」
「天魔王軍の情報操作を、さらに悪辣にした形だな。
 文明にかぶれすぎた人類にとって、情報の発信元を支配するということは半ば世界を支配しているとすら言えてしまう」

榛名の語るカオスロワちゃんねるの真の姿に小鳥は震えあがり、ダオスは忌々しいと吐き捨てる。
一体、どれだけの人間がこのカオスロワちゃんねるに踊らされ、消されてきたのか。もはや数えることは不可能だろう。

「しかし、いくら掲示板を操り電脳世界を掌握しているとはいえ、そこまでのこと。
 サーフとやらは安全地帯に引きこもり、外敵の排除もお前達に任せてきたのだったな?
 ならば我々が今直接見聞きしているような情報は、奴は絶対に持ちえない。掲示板の情報ではやがて不足することだろう」



「――労せずに全てを得ようなどと言う愚か者には、いずれ然るべき末路を迎えてもらうとしよう」



誰もが身震いするような殺気を放ちながら、ダオスは打倒黒幕の決意を固める。


「しかし現状、許し難い者であるのは間違いないが、全てにおいて優先すべき事項でもない」
「あれ、そうなの? あたしとしてはそのサーフって奴はぜぇったいにぶっ飛ばしたいんだけど?」
「予言の内容を思い出すのだ。いくら敵がミヤザキの末裔とはいえ、あらかじめ最良の戦士と勇者たるテラカオスは用意できまい。
 我々は黒幕の正体を知った以上、奴を始末するまでは予言の完成を行うことはない。
 ならば残された手段は、奴自身も表舞台に出てきて野球チームと接触するほかないだろう?」

617創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:10:50 ID:3k2I6frk0
ダオスの言葉に、一同は成程と声を漏らす。
榛名の告発により、少なくともグンマ―の巫女、器、歌は警戒して予言の実行を遅らせる。
サーフ側からすれば、ミヤザキの巫女、器、歌があるため痛くはないように見えるが、
グンマ―側が最良の戦士と勇者を獲得してしまうと、そのまま保護することに繋がる。
こうなるとサーフは野望を達成できず、結果として残る二つは自分で確保しに向かう必要が出てくるわけだ。

「そっか、いくら掲示板を支配しても現実を支配しているわけじゃないから、生きた野球選手たちは自分の足で会いに行かなきゃいけないんだね」
「その通り。たかが電脳世界だけで全てを支配できるなどという甘いことは無い。
 そして勇者を匿うイチリュウチーム。ほむらと合流できれば我らと共に動けるだろう」
「サウザーさんの聖帝軍もですね。あの人のスピードは、多分僕やマーラをも上回っている。拳王なんかに負ける筈がないさ」
「うむ。つまりサーフが野球チームに接触をすれば、やがて我らと接触することにも繋がるということだ。
 よって現時点で優先すべき問題は、その野球チームを脅かしかねない各地の異常事態となる」


黒幕以外の問題。これは黒幕とはまた違う意味で厄介なものしかない。
優先すべき問題であることはわかっていても、どうにも手の出しようがないものばかりなのである。


「まずは千葉方面の大きな魔力だが……」
「実はあたしさ、その魔力ちょっと感じれるんだよね。その……魔女の気配なのよ」
「魔女、ですか?」
「はい。あたし達魔法少女が戦って来て、やがて自分自身もそうなっちゃうみたいですけど……
 ほむらの話じゃ、無茶な魔力の消費や絶望しなければ、すぐには魔女にはならないみたいなんですよ。
 んで、魔法少女と魔女について熟知しているほむらはいきなり魔女化しないだろうから、他の魔法少女がなっちゃったんじゃないかなって」

さやかの言葉に、まどかも頷いて見せる。

「うん、この感じはさやかちゃんの言う通り、魔女だと思う。ほむらちゃんなら、対抗策も思いつくかもしれないけど……」
「魔力の方角的に、ほむらはこれと遭遇した可能性が高い。援軍を送りたいところではあるが……
 対魔女戦においては、ほむらの方が遥かに戦い慣れしている。さらに言えば、おそらく近隣にはイチリュウチームもいる。
 イチローのレーザービームは、私のレーザーと比較しても遜色のない……いや、精密性と瞬間的破壊力は彼の方が上手の筈。
 レーザービームが通用するなら、倒せる相手。通じないのであれば、仮に私が救援に向かったとして無駄になるだろう」

第一の問題。千葉の魔女
しかしこれは正体がわかっても、相手の情報が不足しすぎている。
援軍を送っても勝機は見えず、逆に強敵とはいえ付近にはほむらにイチリュウチームもいる。
犠牲が出る可能性もあるが、勝機も存在する。こうなれば、彼らの勝利を願うしかない。
さらに野球選手を脅かしかねない相手、第二第三の問題としては拳王軍と狂信者がある。
だがこれも、サウザー達と小町達が既に討伐に出発しており、これも彼らにしか成しえないミッションだ。
こちらも下手な援軍は無意味というか、送りたくても送れない。

618創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:11:51 ID:3k2I6frk0
「黒きフロワロ、ウォークライによると腐食花とのことだが、これは黒き獣を倒さねば滅ぼしきれない。
 現状で取れる手段は防御のみとなるが、ドラゴンハートの力があれば無力化はできる。
 魔女の撃破後、速やかにこの世界樹にイチリュウチームを招くほか手はあるまい」
「さっきの魔女をほむら達が倒せれば、事実上対策はできるわけだね」
「ただ、ドラゴンハートの恩恵を受けられない私のような一般人は……」
「……面倒だけど、最悪は昏倒させて世界樹の地下にでも放り込むしかないかな」

第四の問題、黒きフロワロ
この華は事実上、完全な対策が取れない。
ドラゴンハートか世界樹いずれかの加護で防げるため、何らかの理由でここまで退避させる、
回避策をとることしかできない。モブ参加者達がここをヘルヘイムと誤認している為、彼らの犠牲は覚悟がいるだろう。


「そして沖縄の黒き獣本体。これは言わずもがな、テラカオス以外では対処ができぬ上、場所も遠い」
「……」
「……つまり、対処せねばならぬ問題はあるが、我らでは解決のしようも無いということになる。
 我らにできることは、各地で戦う仲間達の無事を祈ることと、そしてやがて彼らが戻ってくるこの場所を守り抜くこと。
 魔女及び狂信者の動向を確認しつつ、迫るその時に備えて力を蓄えるのだ」


冷静に戦況をまとめても、分かったのはもはや自分達にはここを守ること以外何もできないということ。
誰もが歯がゆさを覚えるが、ダオスの言う通り拠点の防衛こそが最善手であるということも理解できる。
落ち着いて準備や対談、そしてフロワロの毒にも対抗できるとなると、ここはビッグサイトに並び、地上の最後の拠点の一つでもあるのだ。

「私もそろそろ頂上に戻ろう。榛名達はまどかの護衛に加えて、小鳥に黒幕の情報やビッグサイト内の情報を教えてやってくれ」
「かしこまりました」
「さやかとレスト、それにカヲル達も戻ったら休むように伝えてくれ。疲れは相当の筈だ」
「休んでる場合じゃない! って言いたいけど、話聞いてるとほんとあたしらじゃすぐに対処できないし、仕方ないのかぁ……」
「…………それじゃあ僕は、お風呂にでも入ってきます。アースマイト一族は数秒入るだけで全快できるんで」
「数秒ってカラス以下じゃん! ちゃんと身体洗ってんのあんた!?」
「し、失礼だなさやかは。洗ってるし、確認の為とかいって僕のお風呂覗かないでよね?」
「誰が覗くかぁ!」


各々が、自分に出来ることをするために散開する。
神樹とエリカ、そしてダオスは外敵対策。魔女への注意も怠らない。
まどかは世界樹内部の様子に気を配り、きらり達のような犠牲を二度と出すまいと誓う。
榛名達はそんなまどかを守りつつ、まどかと小鳥にミヤザキの話をする。
さやかは密やかにゼロからの命令を守り、ゼロに関する話以外は彼女の意思で決めて動く。
そしてレストは水魔法と火炎魔法で作った簡素な浴場へと向かう。
さやかへの冗談のつもりなのか、入浴中の札までぶらさげて。

仲間達の勝利を信じて、救援は送らない。
帰るべき場所を守るために、世界樹の人々は戦い続ける。






それに集中していた為か、ダオスが頂上に戻るほんの少し前。
世界樹の枝の一つから、光が昇ったことは神樹も誰も気がつくことはなかった。





--

619創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:12:33 ID:3k2I6frk0
――同刻、日本海ASO-3


「ココさんとメフィラスさんはそろそろ目的地についたかな?」
「おそらくは。我らは、我らの仕事をこなそう」

そこには、数人のストームトルーパーが慌ただしく動いていた。
彼らは主催者陣営の所謂モブ兵士の中でも、特にココ達から信頼されている者達だ。
カオスロワ後の人員の護衛、放送の継続を任されたといえば、その度合いもわかるだろう。

「次の放送、俺がやるよ。うわ、わかっちゃいたけどまだこんなに死人が……」
「震えているが大丈夫か? やはり私が代わりに……」
「いや、大丈夫。放送までに慣れて、ちゃんと動じない主催者らしい放送をしてみせるよ」

誰にも知られることはないが、彼らも自分達にできることをして戦っていた。
現在も日本で戦い生き延びている猛者たちに比べたら、遥かに弱い彼ら。
それがたった50人。どこかの勢力に目をつけられたら、一貫の終わりだ。
それでも彼らは職務をこなす。たとえ自分達がどうなろうと、未来の大災害だけは防がなければならないのだから。


「九州ロボへの連絡パスコード、これであってます?」
「ああ、大丈夫だ。あの獣に動きがあれば、すぐに伝えねば……」


そんな彼らの業務の中には、沖縄の黒き獣の監視もあった。
撒き散らす蒼の影響で至近距離までは近寄れないが、そこは科学班が遺した優れた産物がある。
対象との距離があっても、拡大鮮明化できる小型カメラその他機能を積んだ小型ドローン。
これを用いて、身のすくむような怪物である黒き獣の様子を逐一チェックしているのだ。
九州ロボも人員が減り、魔女との戦いに赴くとなるとそちらに集中する必要がある。
その為、彼らは命令されずとも進んでこの怪物の監視をしているわけである。


「対象、テラカオス・リリカルから受けた傷を再生中の模様」
「くそ、なんて速度だ。これでは彼女達の犠牲が無駄になってしまう!」
「フロワロ、海を渡り既に大阪があった地域まで浸食中!」


兵士達は、誰もが黒き獣を恐れた。
ディーヴァにリリカル、二体のテラカオスを返り討ちにしたばかりか、動かずに日本の生命を刈り取りにくる極悪さ。
果たして、あと何時間でこの獣は本州に向かってしまうのか。それがただただ不安だった。
そんな時だ。
黒き獣を観測している計器の一つが鳴り響く。

「な、なんだ!?」
「た、対象の上空に超エネルギー反応! これは――宇宙、いや、成層圏から猛スピードで迫っています!?」
「エネルギー体捕捉! こ、これはそんな、馬鹿な!?」






「「だ、第三真竜ニアラ!?!?」」






--

620創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:13:23 ID:3k2I6frk0
「むっ!?」


休息していた黒き獣シャドウは、すぐにその異変を察知した。
遥か上空から、自分を狙った『何か』が迫ってきている。
シャドウがその場から大きく飛びのいた、次の瞬間。



竜の嘶きと眩い閃光、そして大爆発。沖縄の大地はフロワロと共にさらに酷く消し飛ぶこととなった。



「こ、これはまさか、真竜メテオ……!? 馬鹿な、ディーヴァの中に既に多すぎるくらいに存在するというのに!?」



『クァハ……』

『キサマか。我らを喰らい、力を奪い、食物連鎖の頂点に達したと自惚れている痴れ者は……』



それをやってみせたのは、左右非対称の翼を持つ金色の巨竜。
既にディーヴァに敗れ、そして今やシャドウに取り込まれている筈の真竜ニアラその人であった。

「9体目だと……どうなっているんだ一体。だがしかし、所詮は第三真竜……今の私の敵ではない!」

少しだけ驚愕の表情を浮かべるシャドウではあるが、ディーヴァ越しに取り込んだニアラ達の醜態は知っている。
この真竜は力はあるが、傲慢中の傲慢。感情を持たぬ者を忌み嫌い、感情豊かな人間に執着し続けた結果が悲惨な末路。
メテオの奇襲も回避できた以上、ここから10体目以降が現れてもなんら問題ない。

「行け、我が尖兵よ!」

適当な死者が、シャドウの傀儡として蘇る。
ニアラ程度なら、これで十分だ。

「や、やった! よし、今度こそ活躍してイチロー選手と『去ネィ!』

しかしシャドウの尖兵は、喋りきる前にニアラの左翼から放たれた威光に貫かれ、爆発四散した。


【斎藤佑樹@現実?】 消滅確認
※シャドウの尖兵の為、放送で呼ばれませんしキルスコアにもなりません


「馬鹿な!? いくら適当とはいえ、私の力を授かった死者がこうも容易く……ならば、私自ら、第七真竜の力で葬ってくれる!」
『……マガイモノの力、試してみるか?』


「――プリズマティックストリームッ!」
『――真竜ブレスッ!』


シャドウの口から、VFDの力である虹色のブレスが吐き出される。最強の真竜の放つ、開幕の全体攻撃。第三のブレスなどとはものが違う。


――直後、ニアラの口からも放たれた虹色のブレスが、VFDの虹を貫いた。


--

621創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:14:09 ID:3k2I6frk0
「な、なんだ!? 何が起きているんだ!?」
「わからない! わからないが、一つだけ確かなことはある! 第三真竜ニアラが、黒き獣を押しているんだ!」


映像で見ていた兵士達は皆が混乱状態。
無理もないだろう。
突然、黒き獣めがけて降ってきた謎のエネルギー。
何かと思えば、まさかの9体目の真竜ニアラ。
一瞬感じた希望は絶望に早変わり、頼むからこれ以上黒き獣に力を与えないでくれと願わずにはいられない。
かと思えば、ニアラは黒い尖兵を一撃で爆砕し、さらには黒き獣のブレスすら打ち破って見せたのだ。
明らかに、優勢。あのニアラが。
これで混乱しない者がいるなら見てみたい。

「し、信じられん。蒼を纏う黒き獣が測定できないのはわかるが、ニアラの能力まで測定不可能域だ!」
「しかし一体どうやって? テラカオスでなければ、ダークザギクラスでも戦場に立てるのは十数秒が限界の筈なのに」

測定不可能。人智を超えた域、まさしく神の如き領域の戦闘能力。
何体ものニアラが降臨しているこの世界だが、この9体目はその全てを遥かに凌駕していた。
とはいえ兵士の言う通り、超理不尽……それこそこの世界の上位存在でさえ、蒼には抗えない。
彼らは知らないが、第二真竜が耐えきれないものを格下の第三が耐えきれるわけがないのである。


そんな兵士達の疑問に答えたのは……



『……なるほど、そういうことか』


「っ! 黒き獣、ブレスを返されましたが無傷です!」
「ニアラのブレスも黒き獣のブレスで削られている。纏う蒼の壁までは貫けなかったということか」
「しかしこの口ぶり、黒き獣は異様なニアラの強さの理由がわかったのか?」


『クァハ……流石に、この一撃で頭を吹き飛ばさせてはくれぬか。だが、我の力がこの程度だと……』
『茶番に付き合うつもりはない』
『なに?』
『今のブレスの威力、到底本来のニアラには真似できまい。姿を現せ、マガイモノ』
『……ふん』




『――思ったより、早くばれたね。ウォークライから聞いただけじゃ、真似しきれなかったかな?
 風鳴翼に姿は似ているけどその禍々しさ、お前が黒き獣だな……!』
『ただの獣ではない。我が名は黒き獣シャドウ!
 今の姿はお前達の禁術、エーテルリンクか。都庁で死んだニアラの一部を取り込んで化け奇襲を仕掛けてくるとはな……』


ニアラの姿が光に包まれたかと思えば、次の瞬間には真竜の姿は消えていた。
代わりに黒き獣と対峙しているのは女装男――都庁のレストであった。

622創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:14:47 ID:3k2I6frk0
「なっ……ニアラでは無く、ニアラに化けていた都庁軍の!?」
「成程、中身が奴ならばさっきの測定器の振り切りも納得できるが……なんでまたニアラなんかに?」
「皆、馬鹿にしがちではあるがニアラもまた宇宙を駆ける真竜の一員だ。
 奴は宇宙空間まで瞬間的に飛翔し、そこから正確に敵対象目がけての超急降下爆撃が可能。彼はそれを利用し、沖縄の黒き獣を狙ったのだろう」

兵士達はなんとか戦況を理解しようと、必死に頭を回転させる。
そして黒き獣の言葉もあり、おおよその見当はついた。
レストが用いるエーテルリンクは身体の一部を誰かに模したものであったが、それはテラカオス化進行に際して手に入れた能力。
人型を維持し身体の部位をそれぞれ違った魔物に変化させる……より応用の効く万能性を得る前、本来の術はどうであったかと言えば答えは簡単。
取り込んだパーツの持ち主と、全身全く同じ姿になる。つまり今回は、ニアラそのものに変化したのだ。
そして兵士の言う通り、宇宙空間からでも獲物を捕捉しピンポイント爆撃できるニアラの能力を使用した。
しかし汚染された宇宙までは飛び立てず成層圏止まり、メテオが不完全な威力であり黒き獣への打撃にはならなかった。
ここまでは推理できたが、それでも兵士達の疑念は尽きない。
むしろ正体がわかったからこそ、余計に混乱してしまう。

「しかし、結局最大の謎がわからんぞ! どうして彼は、蒼の空間を耐えきれている!?」
「奴はわざわざ黒き獣を……そもそも、どうして黒き獣という名称を知っているのだ!?」
「黒き獣は先程、自らをシャドウと名乗っていました。状況整理の為、このままシャドウの観測を続けます!」

兵士達は、理解が追いつかない戦いの観測を続ける。
それが、きっと後の世の為になると信じて。


--


「ふむ、何故お前がここにいるのか、何故まだ無事でいられるのかはわからんが……お前が馬鹿なことだけはわかるぞ?」
「なんだって?」
「全ての根源たる蒼、TCの前には完全な属性耐性、バステ耐性、防御無視耐性、即死耐性を持つお前であってもまるで意味をなさない。
 もしお前がテラカオスとなった状態で我が前に立ち塞がっていれば、私を倒す可能性は数パーセントはあっただろうがな」
「……僕の耐性、エーテルリンクの知識、テラカオスになりかけたこと、全部知っているんだね」
「ああ。……お前のその格好、未練がましくしがみついているサクヤの魂を取り込ませてもらったからな」
「っ……!!!」
「あれも実に愚かな娘だ。お前をテラカオスにさせていれば、私を倒せたかもしれないというのに。
 挙句、取るに足らない魂を庇いこうして私に取り込まれるのだからな」


にたりと黒い笑みを浮かべるシャドウに対して、レストは奥歯を噛みしめる。
確かにテラカオス化できていれば、シャドウも倒せたのかもしれない。
だがあの状態の自分がテラカオスとなっていれば、確実に世界樹の仲間達も襲い殺めていただろう。
既に血に塗れた道を歩んできた自分を正してくれた少女の行動を愚かとされるのは、我慢ができなかった。


「悔しいか? だがお前には何もできんさ。お前は何も出来ぬまま、自らの力を過信して、ここで朽ち果てる。
 いや、むしろ喜ぶべきだろう。お前達の祖先のグンマ―の民は、蒼によって滅ぶことを望んでいたのだから」
「悪いけど僕は、この災害が起きる前から生命の理を捻じ曲げることを街ぐるみでやったこともある異端者だよ?
 過去のグンマ―なんて知るか。僕は僕の意思で抗う!
 小町さんにほむら、サウザーさん、みんなはきっと乗り越えてくれる。だから予言完成最後の障害のお前は……」



「――死者を狙い、フロワロを撒くお前は! この場で僕が倒すっ!」


「あはははははははは! 自惚れが過ぎるぞ、グンマ―の盾風情が!」

623創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:15:20 ID:3k2I6frk0
高笑いをしつつ、しかしシャドウは恐ろしいまでの殺気を放つ。

レストは知る由も無いが、シャドウは少し前にテラカオス・リリカルに痛手を負わされている。
そしてダークザギの献身により、リリカルを取り込むことにも失敗した。
表面上の傷は回復しているが、完治はしておらず能力も吸収できていない。
目の前の自惚れた男を消すことは容易いが、新たなテラカオスに襲撃されては危ないという認識もシャドウの中にはある。
面に出さない苛立ちと焦燥。
蒼の前では無意味だが、逆に蒼以外にはリリカル以上の耐性と能力を持つこの男の魂を、絶対に取り込んでやろうという強い意志があった。


そんなシャドウが身構えるより先に、レストが動く。
鞄に手を入れた彼は、4つの竜の一部を取り出す。
それは大災害前からずっと持ち続けた、今となっては大切な友達の形見。
そして万が一ダオスに何かあった時の為にとずっと隠しておいた、切り札でもあった。


「――エーテルリンク・地幻竜プロテグリードッ!」


叫びと閃光、今度は金色のニアラではなく、四幻竜の一角たる巨大な紫竜にその姿を変えるレスト。
嘶き、天を仰げば辺り一帯に無数の雷撃が降り注ぎ、宙からは隕石までもが次々に襲い来る。


「――エーテルリンク・火幻竜フレクザィードッ!」


天からの暴力が止まぬ中、素早く変身を解除しすぐさま次の鱗を取りこむ。
今度はカヲルも知る、この殺し合いの中で命を落とした紅蓮の竜へと変化する。
羽ばたき一つで辺りは焦熱地獄と化し、その口からはシャドウの体躯の十数倍はあろう大火球が連続して放たれる。


「――エーテルリンク・水幻竜アクナビートッ!」


三度目。ニアラも含め、使用された四幻竜の鱗はレストの身体から排出されると同時に粉々に崩れ去っていく。
たった一部分だけで、その全身を元の竜以上に変化させ人の身に余る攻撃をしているのだ。素材にも術者にも多大な負担がかかる。
長大な尾を持つ水竜はその場で一度回転すると同時に、全てを呑みこむ濁流と4機のビットを同時にシャドウ目がけて叩きつけた。


「っ……エーテルリンク! 風幻竜セルザウィードォッ!!!」


最後は、かつての一番の友。竜と結婚できる世界であれば、もしかしたかもしれない大切な存在。
彼女から貰った、その身の一部を使った大切なお守り。今となってはまさしく形見そのものであるそれも、取り込まれてやがて消える。
あの時と同じように。守りたいものを守る為、意を決しての最後のエーテルリンク。


『神の力、思い知れっ!』


風幻竜そのものの声と共に、周囲に暴風が吹き荒れる。
これまでの三幻竜の攻撃も止み切っていない状態で、もはやシャドウの姿はどこにも見えない。
そして駄目押しと言わんばかりに、竜の口から神の息吹が吐き出される。


--

624創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:15:56 ID:3k2I6frk0
「うおぉぉぉ……」


戦況を見ていた兵士の一人は感嘆の声をあげた。
撮影された映像には、まさしく天変地異と呼ぶに相応しい光景が広がっている。
圧倒的な戦闘力を持つが、多数の敵や広範囲攻撃を苦手としていた男の奥の手。
素体の戦闘力に、竜の殲滅力が加わった超理不尽な怒涛の天災。

「さっきのニアラのブレスでシャドウを上回れたんだ。これならもしかして……!?」

理由はわからないが、ニアラのブレスはシャドウのブレスを打ち破っている。
明らかにそれを遥かに上回るこの天変地異ならば、シャドウとてただでは済まないだろう。
兵士達もにわかに活気づく。

「恐ろしく、そして頼もしい攻撃だが、さっきのやりとりは……」
「ん、どうしたんすか先輩?」
「先程彼は、こう言った。予言の最後の障害と。まさか、都庁の者達は……」



『――この程度が切り札とは、笑えるぞグンマ―の遺物よ?』


沸き立つ兵士達の耳に、拾われたシャドウの冷たい声が届く。


次の瞬間、災害の波の中から黄金の一閃が放たれる。
シャドウの持つ聖約・運命の神槍の一撃は、的確に風幻竜の頭部を狙っていた。


『くっ!?』


ぎりぎりのところで解除される結合。
レストは元の人間サイズになり、黄金の光は対象を失って虚空を貫く。
一手遅れていれば、レストは致命傷を負っていただろう。
テラカオス化によらない通常のエーテルリンクは全身変化の代償もとてつもない。
莫大な魔力の消耗、強化変化されてなお多大なダメージを負えば、身体は灰になって崩れさってしまうのだ。



「嘘だろ……」


映し出された光景に、兵士達は誰もが絶望する。
文句なく完璧な攻撃だった。
それだというのに、未だ荒れ狂う天災の中からはゆったりと無傷のシャドウが歩み出てきたのだ。



--

625創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:16:26 ID:3k2I6frk0
「くそ、やっぱり……」

息を荒げつつも、レストはシャドウを睨む。
手の中で砕け散る風幻竜のお守り。もう同じ攻撃は二度と使えない。
それでなくとも、無茶苦茶な短時間での5連続エーテルリンクによる攻撃はレストの体内魔力を半分以上持っていった。
仮に素材が無事であったとしても使えず、そもそもシャドウの様子からして何度今の天変地異を引き起こしても無駄なのは明らかだ。


「私はテラカオス・ディーヴァ……お前も知っている風鳴翼の各属性耐性を奪っている。加えて、この蒼の力もある。
 故に、私を倒せる者はテラカオス、かつ私を上回れる接近戦技能を持ち、このフロワロの猛毒に耐えきれる者のみ。
 もっとも、私にはジョン・フレミングが遺した格闘術もあるがな?」


言葉通り、一切の傷を負っていないシャドウは口の端を僅かに吊り上げる。
テラカオス・リリカルはまさに類稀なる戦闘技能、そして防御力を誇っていた。
しかし彼女はフロワロの猛毒への耐性を持たなかった為に敗れてしまった。
レストも属性攻撃だけでなく接近戦は得意とするところであり、猛毒を含むあらゆるバステを受け付けない。
だがテラカオスでない以上、蒼をその身に纏うシャドウを攻撃することはできない。

テラカオス以外を殺す蒼に、テラカオスすら殺せる猛毒。
この反則とも言える能力の組み合わせにより、シャドウはまさしく不滅の存在であった。
第三のテラカオス・サーシェスならば可能性はあったかもしれないが、
彼の能力は周囲の情報を取り込んでの環境適応。ホルスの黒炎に間に合わなかった点からして猛毒へ間に合ったかは怪しい。
勝算があったのは安倍総理かもしれないが、彼は既にその魂を砕かれている。

「やはり警戒すべきは、あの者のみだが……お前が我が尖兵となれば、魂を破壊できる確率は飛躍的に上昇する」

過去のテラカオスでは、シャドウを倒せない。
しかしディーヴァが抵抗し、遠方で勇者として覚醒した『ツバサ』であれば、どうなるかわからない。
彼女もまだ道半ばの存在。今はシャドウの勝ちでも今後どうなるかはわからない。
だから、抹殺する。唯一の不穏因子は、絶対に排除しなくてはならない。
ディケイド達は敗れたが、目の前のこの男を尖兵にできたならば、たとえ護衛がいようと、葬れる可能性が非常に高い。

死者スレはカルナ達の抵抗により、まだ上質な死者の入手が困難な状況。
そんな時にまさか、垂涎物の尖兵素材が向こうからやって来ようとは、まさに嬉しい誤算だ。


「お前は私に敗れはしたが、その力が酔ってしまう程強いことも認めよう。その力、私が存分に活用してくれる」



「――誰が、敗れただって……!?」

「む、まだ立ち上がれるか? だが、お前のつまらぬ災害程度では――」



「ルーンアビリティ、鋼身之構・瞬迅! エーテルリンク火竜の猛攻! 飲食無敵の秘薬ゥ!」


しかしシャドウにとっての極上の得物は、まだ諦めずに抵抗を続ける。

626創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:17:31 ID:3k2I6frk0
鋼身之構、マーラやハクメンにも使用した鋼体付与。
瞬迅、攻撃に限らずあらゆる行動速度を倍増させる。
火竜の猛攻、亡き偉大なる赤竜の力。攻撃力を倍増させる。
無敵の秘薬。誇張した名前だが、体力攻守全てのステータスを倍増させる最終調合薬。

「無駄だ。いくら私に全ての攻撃が通用しないから、自己強化ならどうにかなるとでも?」

「まだだっ! 右手にグングニル、アビリティ、アクセルディザスター! 武器種とアビリティの適合!」

シャドウの言葉を意に介さず、レストは己が持ちうる全ての手段を講じて自己強化を続ける。

「瞬迅の速度増加で2倍! 火竜の猛攻で2倍! 秘薬で2倍! アクセルディザスターの回転で3倍! 適合ボーナスで1.5倍っ!」
「愚かな! まさかお前、強引に倍率の暴力で私の蒼を破ろうというのかっ!?」

身体を捻り、パワーを36倍まで引き上げたレストの姿を見てシャドウの顔が若干引きつる。
超理論、そして攻撃動作。間違いなく、命知らずなこの男は自爆特攻をしかけてくるつもりなのだ。
絶対の蒼が破られるわけがないと思っていても、それでもこの気迫には恐れ入る。


「『四幻』は無駄じゃない!――彗光『四源』の舞っ! サクヤの力でさらに40倍だっ!」
「き、貴様っ!?」


そしてその言葉を聞いた瞬間、初めてシャドウは焦りの色を浮かべる。
先程の四幻竜の攻撃は、これの補助。サクヤの能力を発動させる為に使われた布石。
効かないからと、蒼で直接打ち払うことをしなかった。結果、四幻の力はまだ周囲に残ったまま。
ダークザギの例があるように、強大な力は蒼の中でもしばらく残り続ける。
普通の魔法の乱射では使えなかったであろう四源の力を四幻が可能とした。
グングニルに宿るは、かつてハクメンが危険を感じ取った光の遥か上を行く破壊力。

2×2×2×3×1.5×40= 1 4 4 0 倍 ! ! !


「つ・ら・ぬ・けえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「だが、四源の力が使えるのは私も同じこと! 迎えうて、聖約・運命の神槍よっ!!!」


回転しながら自らを槍としたレストの神槍の一撃に、シャドウも四源の力を神槍に宿して迎撃する。
リリカルにも見せた、シャドウの最高火力状態。
互いの右腕が握る神槍に、より一層の力が籠る。


そして……


互いの槍は激しくぶつかり合い、やがて粉々に砕け散った。


シャドウはリリカル戦での経験もあり、押し負けることを理解している。
だから、神槍と頭部、心臓部。武器と致命傷を負わされる可能性のある場所に特に重点的な蒼の壁を張っていた。
グングニルは聖約・運命の神槍を瞬間的に破壊するも、突き進んだシャドウの心臓を守る蒼に触れて砕け散ったのだ。

627創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:18:03 ID:3k2I6frk0
(馬鹿な、蒼で覆ったラインハルトの槍が……!?)

決死の特攻を受けてもシャドウは無傷。
しかし、自分にまでは届かずとも蒼の力を得た神槍は破壊されたという事実。
絶対の蒼が確かに『貫かれた』という受け入れ難い事実。


それは、一瞬の隙だった。


「――そしていつもの正拳突きで、4倍だああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


見落としていた。何故、この男の左腕に装備されていた筈の盾が無くなっているのか。
装備を槍に持ち替えた時にしまった。一体何故か?決まっている。左手でも攻撃をしかけるためだ。

繰り出されるは、レストの必殺の一撃。
対象の防御を貫通する破壊の拳。
生み出される衝撃波と拳、二段階の一点集中突破攻撃の威力は1440のさらに4倍


 5 7 6 0 倍


「っ、ここだああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「がっ!?」


咄嗟に弱点部分を更に蒼で守るシャドウ。
しかしレストが狙ったのは、意外な場所。
他に回したが故に守りが薄くなった、シャドウの右肩の付け根であった。









――絶対の存在の右腕が、ばらばらに千切れ飛んだ。

628創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:18:36 ID:3k2I6frk0
「――――――――ッッッ!!!!!!」



絶叫が双方の口からあがる。
まさか自分が『破壊』されるとは夢にも思っていなかったシャドウの叫びは当然のこと。
そして、いくら蒼を力づくで破る程の常軌を逸した強化を施したとはいえ、その拳は蒼の塊を殴り抜けたのだ。
さしものフォレスト・セルの蒼抗体もこれは許容限界。
全身に蒼の汚染が広がることこそ防いでいるが、直接シャドウの体内に触れたレストの左肘から先は砕け散ってしまう。

(蒼に、僕の腕という存在を歪められたか……! 僕の腕は、今も昔も『最初から存在しない』から、再生のしようもない……!)

かつて右腕を吹き飛ばされたが、今度は左腕。同じように治療できるかと言えばそうもいかない。
蒼に直接触れる暴挙を犯した左腕は存在そのもの抹消された。いわば部分的な魂の抹消ともいえる。
どんな回復魔法を使おうが、どんな宝具を使おうが、二度と蘇ることはないのだ。

とはいえ、お互いが片腕を吹き飛ばしあった。
激しい痛み分け……いや、テラカオスでないものが黒き獣にこれだけの打撃を与えたのだ。むしろ勝利したとも言えるだろう。
もはや言葉も発せずにただ遠方から見守っていた兵士達は、そう考えていた。




「――やって、くれる……! グンマ―の遺物如きが、滅びに抗うなど、許されない!」



観測していたストームトルーパーも。
腕を永久に失う痛みを食いしばっていたレストも。
確かにその声と姿を捉えた。


「我が名は黒き獣シャドウ! テラカオス以外に、私は、蒼は、自然の摂理は倒せない……!」


そこには、憤怒の形相のシャドウがいた。
神槍こそ持っていないが、砕かれた筈の右腕は確かにそこにあった。

真竜ニアラと同じように、混沌のエネルギー……凝縮された蒼そのもので形作られた新たな右腕が。

(く、そ……真竜7匹分の、外見を犠牲にした超速再生……竜殺剣が、あれば……)

実はレストも、この光景は可能性の一つとして考慮していた。自分自身、ニアラの力を借りたのだから。
歪に、しかし通常使用には影響がでない右腕の再生。まさしくニアラと、真竜と同じ。
背にも真竜の翼を生やしている以上、作り上げた竜殺剣・天羽々斬ならばシャドウを倒せたかもしれない。
だが、ニアラの力を使わなければ沖縄のシャドウに奇襲はできなかった。天羽々斬を持っていてはニアラの力が使えない。
両方の力を持って挑むことは、不可能。決死の覚悟で臨んだが、一手届かなかった。

(だけど、これでいい……僕の目的は達せられた。あとは、みんなが……)

自分はシャドウに負けた。自分の持つ全ての技能を使って勝てなかった。
エスケープで撤退し、シャドウの情報くらいは持ち帰りたい。
だが通常の破壊では無く、蒼による抹消はレストも初めて経験する激痛と虚無感。
意識が混濁し、魔力消費をしないエスケープの発動さえ時間を要しそうだ。
だがその僅かな時間の間に、自分は今度こそ本当の蒼を受けて死ぬ。


(……みんな、ごめん)

629樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:19:58 ID:3k2I6frk0

「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」





突如、少女の絶叫が二人の耳に届く。
あらん限りに絞り出されたその声は、注意を引きつけるには十分であった。


「この、声は……!?」
「っ!!?」


そしてシャドウは既にその翼で空へと退避行動を取っていた。
災害の、理の化身が再びその身に危機を感じる異常な事態。


それは間違っておらず、絶叫を掻き消す光の波動がシャドウの直前まで立っていた場所を呑みこんだ。


「ぬぅ、この威力は……!?」


「レストさん、大丈夫っ!?」
「標的確認……あれが、かつてのテラカオス・ゼロも打ち倒したという黒き獣!」


「まどか、それに榛名……どうしてここにっ!?」
「グンマ―、それにミヤザキの巫女だとっ……!?」


海上から破壊光線を放ったのは、榛名に担がれた状態で弓を構えるまどか。
榛名は艤装を外した身軽な状態で、海を駆け抜けている。
まさしく高速。二人が姿を確認した次の瞬間には既にレストの元まで辿りついていた。


「っ、その腕は……!」
「こんなの、掠り傷さ……それより、どうして……」



「――どうしてお前達まで、この場所に来れるっ!?」



死にかけた獲物に対する救援。
リリカルとダークザギに近い状態だが、大きく異なる点がある。
獲物はテラカオスではなく、救援はダークザギ程圧倒的な存在ではない。
ちっぽけな災害に呑まれて潰える筈の存在が、こうして三人もまだ目の前に立っている。
不覚にも片腕を一度飛ばされた怒りもあり、シャドウは獣のごとく吠えた。

630樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:21:44 ID:3k2I6frk0
「この男は、元来の膨大な体力で耐え真竜の力で奇襲したのだと、まだ理解できる。
 だが何故だ! お前達がこのタイミングでここを訪れ、耐えきれるわけがない!」

レストにとってもシャドウにとっても、それは最大の謎だった。
九州ロボに乗る主催者以外は、沖縄というある種の安全地帯に接近するだけでも相当な時間を要する。
その謎に対する回答をしたのは、まどかを担いだ榛名だ。


「たとえどれだけの年月が流れ、街並みが変わり、そしてミヤザキの大地が器となろうとも。
 この海だけは、無くなることはありません。この星からも、榛名達の記憶からも……
 サーフが一部狂信者に持たせていた帰還用の道具を、榛名が使わせていただきました」


キッとシャドウを強く見据える榛名。
彼女は本来であればビッグサイトに帰還する道具を、かつての故郷近海を対象に使用していた。
本来の砲を外し、代わりに背負ったまどかの重さなど微々たるもの。
深海棲艦時からして都庁前線部隊の誰も寄せ付けず、ダオスと神樹の攻撃すら軽々かわしていた彼女の本来の速度が本領発揮。
瞬く間に沖縄に到着し、砕かれる寸前であったグンマ―の盾を救って見せたのだ。

「旧時代のミヤザキの巫女が、今になってグンマ―と手を取り合うだと?
 愚かな。お前達人間のエゴ、手を取り合わなかったからこそ私は生まれたのだ。今更間に合うものか!」
「いいえ。今度こそ、必ず。その為に、榛名とまどかさんはここにいるのです」

シャドウの言葉に臆することなく、榛名も凛とした声でシャドウを否定する。
小さく舌打つシャドウだが、それは榛名の言葉に対しての苛立ちからだけではなかった。
海上に転移し持ち前の高速移動で駆けつけた、これだけではまだシャドウの疑問に対する完全な答えにはなっていないのだから。

「どうして僕が、黒き獣を攻撃しに行ったってわかったんだい……?」
「レストさん、私が世界樹と繋がっている時は誰がどこにいるか把握できるの忘れてた? お風呂から急にいなくなったら慌てるよ?」
「その後は、提督が推察なさいました。急に飛び出しながら、浴場前に突き立てられた剣。それを使えない理由。
 考えられたのは、真竜の力の行使。千葉方面に向かうなら、神樹の投擲で事足りた筈。残された向かう可能性のある場所は、ここしかないと。
 提督はかなりご立腹でしたよ? どんな手段でもいいから、あの馬鹿者を連れ戻せと叫ばれていました」
「勿論、私達も怒っているからね?」
「勝手は榛名が許しません!」
「はは、流石ダオスさんだ。まいったね……おかげで、君達にまでこんな……」
「ううん、いいんだよ……」

慈愛の表情で、レストの癒えぬ傷痕を撫でるまどか。
蒼による傷は癒えないが、その他の部位は世界樹の癒しが包み込む。


(この力……やっぱりまどかと、それに榛名も……)


腕の喪失感は残るものの、随分と楽になると同時にレストは全てを察した。
まどかの使ったこの力こそ、まさに彼女と榛名がこの場にいる理由なのだから。


「それだけでは、まだ説明がつかぬ! 何故お前達は……!」


唯一、未だに理由がわからないシャドウ。
それはどこかで認めたくないという思いもあったのかもしれない。
古代のグンマ―とミヤザキの対立。人のエゴ。
それが巡りに巡って生まれたのが自分であり、この世界は一度滅んで然るべきだと確信しているからこそ。

631樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:22:27 ID:3k2I6frk0
「……私は、弱い。巫女としても、人としても。沢山の人に支えられて守られて、ようやく今この場所にいるの。
 いつも人と人がわかりあうことは難しいかもしれないけど、それでも話し合って、一緒にいてくれる人達もいるんだよ?」

「戯言を。一個人の友人程度ならば、そうであろう。しかし、人と言う種で見た場合は、そうはいかないのだ」

「人だけじゃない。動物、魔物、機械……この世界には色々な人がいて、わかりあえないことも多くて、でもみんな必死に生きている。
 この予言の聖別は……辛いけど、その垣根も超えて、手を取り合うこともできた」

「己の利、生き延びたいという欲からであろう。滅びを逃れれば、同じことを繰り返す」

「クラウザーさんの歌は、殺し合いの前から色々な人を惹きつけていたよ。それに、生きたいって思うことの何がいけないの?」

「滅びを是としたグンマ―の末裔とは思えぬ言葉だな。思想がミヤザキに偏ったか?」

「私は私。それに、グンマ―の人が本当に全員揃って滅びたいって思っていたと思うの?
 ミヤザキの人もそうだよ。本当に全員がグンマ―の人を滅ぼしてまで、テラカオスの制御だけを考えていたと思うの?」

「何?」

「……ノーデンスさんは言ってた。グンマ―は、テラカオスの研究を途中で放棄したって。
 途中まで研究を続けていた人もちゃんとグンマ―にいたの。そしてそれの集大成になる筈だったのがセルちゃん――フォレスト・セル。
 世界を浄化する世界樹を生み出す核にして、テラカオスを強化する器の役割も持った子……」

「そしてエゴの果てに、機能を歪められ偽りの救済神と成り下がった。テラカオスを封殺する奴は、お前達には破滅をもたらす魔神だろう」

「――私ね、ずっとそれが腑に落ちなかったんだ」

「……は?」

「セルちゃんは可愛い子で魔神なんかじゃないし、器としての能力もなんかおかしいなって。
 確かにセルちゃんの口の中で舐められると、身体に蒼の抗体を滲みこませてくれる。
 そのおかげで私達はここにいられる、大きな恩恵を受けているっていうのはわかるんだけど……」

「グンマ―が器の中に隠していた抗体……なるほど、手を取り合っていた頃に生み出された産物というわけか。
 だが所詮は抗体。たとえ私が周囲に放つ蒼には耐えられたとして、私に直接触れればその男と同じ末路を辿る。
 そして私を相手に耐えられぬ程度では、来るべき時には微塵も耐えきれないぞ?」


巫女とのやりとりの中で、ようやくシャドウは彼女達が何故この場所で生きていられるかを理解する。
グンマ―がまだ自然死派に傾く前に生み出された蒼への対抗策。
元々蒼による災害は自然現象。自然に対する知識と理解のあるグンマ―の民に、際限の無い進化を続けるセルが組み合わされば、不可能ではない。
もし研究が続いていれば、全人類を舐めまわして抗体を得るつもりだったのか。
だがそれも一時しのぎ、肝心の災害に耐えきれないのであれば、まるで無意味な研究成果だろう。


「グンマ―の人も、ミヤザキの人も、最初は同じ想いだった筈なんだ。今度こそ、もっと犠牲を減らして大災害を乗り切ろうって。
 その為の予言、頼らざるを得ないテラカオスを殺し合い以外の方法で強化する計画。
 でもセルちゃんの抗体は、守りを固めるだけ。それも完成したテラカオスは全部吸収できるんだから、最後には必要無くなっちゃうよね?」

「む……?」


まどかの言葉に、シャドウは眉を顰める。
気にも留めていなかったが、確かにミヤザキの器・九州ロボと比較すればグンマ―の器による強化は見劣る。
フォレスト・セル自身の戦闘力に力を割いているのかもしれないが、セルも抗体を持つがテラカオスではない以上蒼の直撃は耐えきれない。
こうしてテラカオス以外の存在に攻撃される対黒き獣用の能力なのかもしれないが、それはテラカオス以外の強化。
元々なりかけのテラカオスすら蒼には強い耐性を持つ。念の為なのかもしれないが、他の予言の強化に比べれば恩恵は薄い。


「――その理由は、舐めまわし抗体は器のセルちゃんの本当の力じゃないから」

632樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:23:31 ID:3k2I6frk0
「なんだと……!?」

「きっと、研究を続けていたグンマ―の人は気付いちゃったんだと思う。
 研究を中断させられる。自分達の命も危なくなるくらい、自然死派の勢いが強くなることに……
 だから、副産物の舐めまわし抗体を研究成果として表に出した。神様達にも、それが本当なんだって思いこませるくらいに」
「この抗体が、副産物だって……?」


流石のシャドウも混乱する。そればかりかグンマ―陣営のレストすらも。
蒼の空間で耐えきれる抗体。たとえ大災害は耐えられないにしろこうしてシャドウと対峙する余裕は出てくる代物だ。
ノーデンスすら蒼に耐えきれなかった以上、神々から見てもこれはとてつもない研究成果なのではないだろうか?
それが、表向きのもの。それでは神々にさえ知られることの無かった、最初期のグンマ―が遺した研究成果とは一体何なのか。


「もし本当の能力も教えちゃってたら、いずれ自然死派に対策を取られるか消されちゃう。
 だから舐めまわしだけを公表して、自然死派の人はその流れで自然にお尻からテラカオス因子を吸い取るように後からセルちゃんを改造した。
 本当の力は神様も知らない。予言に書かれることもない。だけどいつか、本当のセルちゃんを察せられる人が現れる。
 研究を続けてきた人は、それを祈り願って最期の時まで頑張っていたんだと思う。そして今……その祈りは、届いたんだよ」
「ヒントも無しに本当のセルの能力を察しろだなんて、なんて無謀なんだ。でもまどか、もしかして君が……?」


「違うよ。私はまだまだセルちゃんを知れていなかった。でも、レストさんももう聞いている筈だよ?」
「え?」







「――サウザーさんに、祈りは届いていた」







「セ、セルちゃんと前の穴で繋がって、世界樹の力を注がれると凄く気持ちよくて、力が満ち溢れるの……!
 念の為にお尻も弄ってもらって、本当にもう……♪」
「は、榛名はかつての提督に身を捧げていますので、お尻だけ……」




顔を真っ赤に染め上げ、もじもじとするグンマ―とミヤザキの巫女二人。
しかし羞恥の感情こそ見えるがそこに嫌悪の感情は見えず、まどかの方に至っては少し艶めいているようにすら見える。

「ま……まどか……その、何と言えばいいのかわからないんだけど……」
「あ、安心してレストさん。ちゃんと小鳥さんが一からちゃんと教えてくれたから、これが大事なことだっていうのはわかっているよ?」
「しかし、本当に恐ろしい器でした。提督のことを考え続けなければ、榛名は違った意味でまた堕ちていたかも
 それに前も後ろも捧げて身を捩るまどかさんと一緒にいたら、なんだかいけない扉も開いてしまいそうで……」
「榛名さんもぬちゃぬちゃだったけど、とっても綺麗だったよ?」

(ぼ、僕が一人で飛び出したせいで、あちこちにとんでもない飛び火が……)

まさかの事実とまどか達の行動に、全身から汗を噴き出させながらレストは眩暈を覚えて全身を震わせる。
この場を生き延びたとして、自分は小鳥かほむらに殺されるのではなかろうか?
そして神々さえ気がつかなかったフォレスト・セルの本来予定されていた使い方に感づいたサウザーの洞察力にも震えていた。

633樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:24:07 ID:3k2I6frk0
「ふ、ふざけるな! そんな下らない、人間の色欲から生まれたような力で――」

シャドウも明かされた真なるグンマ―の器の使い方に吠える。
これは公に出来る筈もないし、したところでテラカオスや巫女も流石に渋るに決まっている。
誰が好き好んで、得体の知れない醜悪な化物に開発されることを望むだろうか。
まどかは最初期のグンマ―の計画をあえて隠したと言っていたが、実際のところは黒歴史過ぎて無かったことにしたかったのではないか。
シャドウはそう考えるが……

「ふっ!」

まどかの弓から放たれる光を目にし、その考えは吹き飛ばされた。
あまりの内容、そして抗体を得た連中程度の攻撃ならば余程過剰な倍率をかけられない限り耐えられると、油断していた。

「がっ!? な、なんだ、その力は……!?」

堪らず呻くシャドウ。
放たれた光の矢は、歪に蘇ったシャドウの右腕に、小さな風穴を開けていた。
先程受けたダメージよりは弱いが、それでも再び蒼を貫かれたのだ。
何より問題なのは、今度は直接攻撃ではない。光を用いた遠距離攻撃――何発も攻撃可能だということだ。


「蒼の抗体。抗う力は世界樹の核が生み出す。
 セルちゃんの本当の能力は、この世界樹の核……セルちゃんの遺伝子を直接体内で受け取ることで、勇者に蒼に抗う力を宿すこと。
 舐めただけじゃ、足りない。もっと深く世界樹の力を受け入れ、人の力と交わった時……」


引き絞られる光の弓矢。
淡い翠緑の光は自然の柔らかさを感じさせる。
しかしそこに宿る力は、明らかに従来の巫女のそれを上回っていた。


「――蒼を貫く力になるっ!」


解き放たれる光を前に、シャドウは緊急回避。
転がりかわす無様なものだが、直弾するわけにはいかない。
光が通りすぎた後は、一瞬とはいえ周囲の蒼が霧散していたのだから。


「くっ……! 勇者に対しての蒼を破る矛に守りを固める盾……本当のグンマ―の矛と盾だとでも言うのか!?」


シャドウは歯噛みする。
最初期のグンマ―とミヤザキは、確かに手を取り合っていた。
自然死を考える前に、制御を考える前。やがて対立した両陣営が協力していた時は、何を考えていたのか。
おそらく、行動的で何事にも挑んでいく気質のミヤザキの者はこう言ったのだろう。

『テラカオスをずっと強化できる、そしていつかテラカオスにすら頼らずに済むような、蒼を破れるような力を作ろう!
 蒼だって結局はエネルギーの一つ。少量なら問題ないんだし、打ち破ることもできる筈だ!』

無謀だ。自然の摂理に人が敵うわけもない。しかしその後のミヤザキの者も制御を考える以上、結局は大多数が無謀な挑戦者という意味では同じだ。
そしてそれを受けて、自然や災害の力に詳しいグンマ―の民は同調した。
世界を浄化しつつ、役目から滅びるわけにはいかないと進化を続ける世界樹の核に目をつけ、世界樹に蒼を記憶させその抗体を構築させ始めた。
どれだけの年月がかかるかわからないが、大災害も当分先。猶予はあるのだと、これからも研究を続ければいいと考えていたのだろう。
結局は、その者達の数が少なすぎたのだろう。少数は異端とされ、やがて埋もれて消える。
人間のエゴには勝てなかった、日の目を見ることのなかった、確かに存在していた両陣営の協力の証。
それが今、蒼の化身であるシャドウを追い詰めていた。

634樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:25:11 ID:3k2I6frk0
「――だがっ! それは研究段階で秘匿された、未完成のもの! それだけで自然の摂理を破れるなどと思いあがるなっ!」
「うっ!?」


しかしシャドウもただ黙っているわけではない。
蒼に抗い貫く力。それは信じがたい脅威ではあるが、完成したわけではない。
単純な威力だけでみれば、先程の拳の方が遥かに上。とても大災害をテラカオスに頼らず貫くには力不足。

「それにいくらお前の力が増そうと、お前は巫女でありテラカオスではない。テラカオス程の脅威はない!」
「あ、当たらない……!?」

そしてその力を現在行使しているのは、争いの淀みから生まれた化身ではなく巫女。
それもほやほや、新米巫女。レベルが上がり莫大な魔力を宿そうと、戦闘技術はあまりに未熟。
蒼を貫く力を光に変え放つにしても、それは直線的な攻撃ばかり。命中精度に問題があった。

「そんなプロトタイプ、まさしく古代の遺物などに大災害は勿論私を破ることもできはしない!」
「!!」
「貫けぬ程の、濃密な蒼を受けて消え去るがいいっ!」

そして光の矢をかわしたシャドウは、その手に蒼の力を集中させて放出する。
撒き散らされる蒼程度は耐えられても、これだけの濃度の蒼を直弾すれば魂諸共に砕け散るしか道は無い。
惜しい力の持ち主だが、この姿の原型……基準としたディーヴァの気質がシャドウにも影響を出しているのだろう。
油断はせず、危険な相手は全力で叩き潰さねばならないと。


「っ、させません!」
「な、貴様ぁ!?」


しかしシャドウが放った蒼の塊は空振りする。
まどかを担いでいた榛名が、急旋回しかわしてみせたのだ。
目標を失った蒼は海へと命中し、海水を歪めてこの世から抹消するに留まった。

「馬鹿な、艦むすがその力を発揮できるのは水上だけの筈……はっ!?」

遅れてシャドウは気がついた。
先程の戦闘、レストは水幻竜の能力で沖縄全体に対して濁流を放っている。
未だ残るその水が、榛名の高速移動を可能としていた。
陸地に残る水を全て吹き飛ばそうにも、そうすれば今度は海が残るだけだ。結果は変わらない。

「おのれ、小賢しいっ!」
「海はどこまでも広く、大きい。いかに蒼といえど、化身のあなたの力では海を全て消し去ることはできません!
 そして榛名達、金剛型高速戦艦は実戦を重視して造られた巫女! 海上であれば、そう易々と捉えさせはしませんよ!」

続け様に蒼を放つシャドウだが、発射速度に対して榛名の反応速度は明らかに上。
そして榛名自身は攻撃を行わない、敵の動きを読み切り回避に専念しているために余計に手強い。
元々戦艦の砲撃程度では傷も負わないだろうが、今の榛名の装備品は担いだまどか。
そしてそのまどかは蒼を貫く矢を放つ。
海上を高速で動き回り、細かく削ろうとしてくる巫女の連携の前に、シャドウは防御に回るしか手が無かった。

635樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:25:44 ID:3k2I6frk0
「私には再生能力もある! かわしつつ合間で射る命中精度の悪い矢の傷など、すぐに癒える!」

身体を翻し、矢をかわしてみせるシャドウ。
お互いが強力な一撃を持つが、当たらなければ意味が無い。
しかしシャドウの蒼は無限に湧き出るものであり、数時間も経てば大気中の蒼でも抗体は摩耗し無くなるだろう。
少し面倒だが、持久戦に持ち込むべきか。


「なら、威力があればいいのかなっ!?」
「ぬおっ!?」


そう思ったシャドウの背後から、かわした筈の矢が威力を跳ね上げて投げつけられた。
完全にはかわし切れず左腕を掠めるが、そこは大きく抉れることとなった。

「おのれ、貴様まで……っ!」
「まどかが時間を稼いでくれたおかげで、僕も動けるようになったよ」

そこには、片腕を落としても尚戦う気のレストが立っていた。
彼は彼で榛名やサウザー程では無いが、常人離れした移動速度を持つ。
榛名達の動きから外れた矢の数本をすぐに回収し、それをシャドウ目がけて投げることで挟撃の態勢に持ち込んだのだ。

「確かにまどかは戦闘技術に関してはまだまだ未熟だ。だけどそれは君にも言えることじゃないかな?」
「どういう意味だ……!」
「蒼という絶対的な存在に守られて、攻撃もできる。だからそれに頼り切り、動きにも時々無駄が見える。
 僕がここに来た時から傷を負っていたし、蒼をなんらかの手段で対処できれば君はそこまでの強さじゃない」
「貴様ぁ!」

先にこの男を消すべきか。こちらも惜しい能力ではあるがあまりに危険。
しかしそう考えれば、巫女達の攻撃が背後から飛んできて回避を余儀なくされてしまう。

「鬱陶しい、何故抗う巫女共……!?」
「おっと、背中を見せてくれてありがとう。僕にはまだ右腕と両脚があるからね。
 あと三回くらいは、君のどこかを吹き飛ばすことができるんじゃないかなぁ!」
「おのれぇ……!」

かといって巫女の方ばかりを警戒すれば、こちらの男は再び拳に力を込めてくる。
まさか、ありえないとは思うが先程と同じ攻撃を今度は腕以外に受けたら?
その威力は身を持って知っている。


「まどか! 榛名! こいつは軽い攻撃じゃ倒せない! 君達はそこでゆっくりとしていてくれ!
 今度こそ、僕がこいつを止めて見せるから!」
「貴様など、力を溜めさせなければ取るに足らん相手! 巫女にも劣る者が大層な口を!」


そして本気なのか、レストは移動しつつ、残された部位のいずれかに力を込めるような動きを見せ始める。
巫女達も彼を信頼しているのか、射撃の雨が止んだ。
これは好機と、シャドウは今度こそ自惚れた盾を完膚なきまでに砕かんと襲い掛かる。
やはりどう取り繕っても片腕を失い、攻撃能力は激減している。
力を溜めきる前に回避行動を取らざるを得ず、シャドウに一切の有効打は与えられない。

636樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:27:00 ID:3k2I6frk0
「やはり口だけのようだな!」
「……聡い彼女なら、きっとわかってくれる筈さ」

紙一重でシャドウの攻撃をかわしていくレスト。
殴りつけた腕は砕けたが、シャドウからの直接攻撃を受けても砕け散る。
力を溜め切る前の拳や武器ではシャドウの纏うだけの蒼も貫通できないため、ひたすらに回避するしかないのだ。

「ふん、そちらの浅知恵など通じぬよ。お前に他の手があるのかと思ったが、その様子も無い。
 ならば無駄と分かっていながら私に挑む理由は一つ……時間稼ぎであろう?」
「!!」

突如、シャドウが反転し蒼の右腕を構える。
レストに別の打つ手は無く、唯一の手段も溜めが必要。
それならば問題ないと、背中を向けたのだ。
屈辱の行動だが、シャドウの読み通りレストにはもう打つ手は残されていない。さっきのような真似も一発限りだ。


「ならば、巫女に攻撃させるしかない。――命中精度など関係ない、溜めた広範囲攻撃をな!」


振り向いたシャドウの視線の先には、魔力を溜めて身構えているまどかと榛名の姿があった。
気付くのが遅れ、レストを葬ることを優先していれば自分にあの攻撃が飛んできていたことだろう。
しかし敵の策をシャドウも読み切り、攻撃の最中で同じく蒼の力を凝縮し解き放てるようにしてあった。
同じ力を溜めた攻撃。しかし戦闘技術の差から、まどかはまだ高速移動しながら力を溜めることはできない。
また急に動けば、溜めた魔力が暴発する可能性もあるため、榛名の機動力も若干低下する。


「今度は回避などさせん! グンマ―とミヤザキがわかりあえるなどと抜かすならば、望み通り二人仲良く消えるがいい!」


シャドウの右腕から、特大の蒼が放たれんとする。
対するまどかはまだ溜めの段階。構えを解くにしても僅かな時間を要する。
その時間で、蒼は巫女二人を容赦なく呑み込めてしまうだろう。








「――今だっ!!!」





その時、レストの絶叫が響く。
巫女への攻撃指示。しかし彼なら間に合う攻撃も未熟な巫女では間に合わない。
読み違えたことが、彼の稚拙な策の敗因。
背後からあの大きな力も感じられない。やはり彼の方はは既に万策尽きていた。
ニヤリと笑い、シャドウは巫女に蒼の洗礼を浴びせさせる。








「っ――――――!?」

637樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:28:15 ID:3k2I6frk0
その瞬間であった。
溜めていた蒼が霧散した……いや、それ以上の大事が起きた。

叫び声をあげることもできない程の、予期せぬ激痛。

また殴られた? いや違う。さらに強烈な痛みにして不可視の攻撃。

巫女の攻撃? これも違う。のんきにまだ溜めている。

では一体、誰が……?

……外傷ではない。内側から受けた痛み?


「まさ、か……」


ようやく絞り出した声と共に、シャドウは膝をつく。

シャドウの敵は、目の前の三人だけではなかった。

攻撃の正体、それは……








--



「レスト様……私などの為に腕を犠牲にされたあなたの想い、無駄にはいたしません!」



慌ただしい戦場のど真ん中で、角を生やした金髪の少女が涙を零しながらも舞っていた。
彼女はかつて、シャドウにその魂を取り込まれていた存在。
その能力は四源の力。『味方全体の攻撃力を5倍にする』というもの。
有用故に破壊されることなく取り込まれ、その力はシャドウに振るわれていた。

しかしあの時、レストはシャドウにその力をあえて使わせることで、その力の発生源を見極めていた。
そして人間以外なら、その魂をあるべき場所に帰せる自身の魔法タミタヤの力を込めてシャドウを殴り抜いていたのだ。
元からシャドウを倒す気など皆無。全ては、その魂を取り戻すと誓いを立てていた少女の為。

そしてそれは、単なる自己満足だけではない。

シャドウから解放された魂が帰る場所は死者スレ。シャドウの影から吹き飛ぶように吐き出された彼女は、主人のこの行動の本当の意味を察した。
彼が何を想い、無謀極まりない行動をしたのか。それは属性さえ揃えば彼女は『誰であっても攻撃力を5倍にできる』からだ。

638樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:30:01 ID:3k2I6frk0
それが何を意味するかといえば、この光景が全て。



「ええい、時間がないのだ! 罪人共はそこに横一列に並んで尻を向けろ!」


贖罪の女騎士は、声を張り上げながら罪人達を綺麗に並べていく。


「これが決まれば、もうこれ以上罪人を捕える必要もない。ここで我々全ての力を解き放つのだ!」
「総員、構えよ!」


覆面の戦士は冷静で的確な判断で戦況を把握する。
類稀な統率力を持つ悪魔の将は死者の戦士達を従えて指示を出す。


彼らは全て死者。戦いで敗れ散った者達。
死者には安らかな眠りを……そうはいかないのが、大災害を前にした聖別の定め。
生前も、そして死後も彼らは戦い続けた。
この世界に、休める場所などはない。
迫りくる蒼の脅威のため、魂だけとなっても尚も戦わなければならない。


「……君の力、闇の力以外が必要らしいけど、別に闇の力を強化することもできるんだろう?」
「あ、あなたは……?」
「ふん、我以外がもたらす破滅など認めない。この世界を破滅させるかどうかは、我が決める。
 ほら、お前達も悔しくは無いのか? 英霊に頼り切り、世界を滅ぼせる力を持つ我らがただ指を咥えて眺めるだけでいいのか?」


軍師の姿をした邪竜の言葉に、大罪人にまでは選ばれずとも邪悪とされた存在達も奮い立つ。
このまま何もせず蒼の好きにさせるのは、悪の名折れ。
邪竜の敷く布陣に従い、彼らも力を溜めつつ眼前の敵を睨んだ。

死者達は、様々な理由で命を落としてきた。
不運な者。止むをえなかった者。どう考えても自業自得な者。
聖も邪もいる。そしてそんな死者達は、今この時確かに一人の男の後ろに勢揃いしていた。
彼らの想いは、垣根を越えて一致した。

――死者を、舐めるな――

「さぁ、カルナ! 思いっきりこの罪人の尻に槍を!」

「……わかった」


罪人の尻が穿たれる。吸収されるエネルギー還元された魂。
続け様に何人もの尻に槍がささり、魔力は限界を超えて満ちていく。
そしてその場に、多くの死者が思い思いに解き放った力を吸い寄せ生み出された四源の力も。




「――梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)」



やがて、使用者自身も経験したことが無い程の超熱の劫火が放たれる。
続けと言う悪魔の将の号令に、集まった死者達の蒼への叛逆がやがて影の全てを呑みこんだ。

639樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:30:35 ID:3k2I6frk0
--


「か……!」


「小町さんは言っていた。この戦いは死者もひっくるめた総力戦だってね。
 だから、君の力を削ぐと同時に死者の力になれる彼女を早く救うべきだと思ったのさ。僕個人の肩入れもあったけどね」


死者からの威力を跳ね上げた一斉攻撃の前に、影を伸ばしていたシャドウの力はついに押し戻され、そのダメージは本体にまで及んだ。
再生は十分可能と言いたいが、いわば体内を思いっきり掻き乱されたのだ。動くことはできない。


「愚か、な……たとえお前達が、私を消そうと……私は、お前達がいる限り……っ!?」


そして立ち上がろうとしたシャドウは、そのまま崩れ落ちて力が入らなくなる。
完全に予期していない、威力の限界を超えたカルナ達からの一斉砲撃。
それだけでなく、巫女が集める光の質が変わったのも大きな原因だった。


「りゅ、竜殺剣……っ」


矢の代わりに、蒼を貫く力を纏った竜殺剣・天羽々斬が弓につがえられている。
リリカルを殺す役に立った真竜の力が、ここにきて大きな枷となった。
真竜の力を切り離そうにも、取り込みすぎた上に死者からの攻撃のせいでそれもできない。




「私達は、滅びの未来をみんなと一緒に変えてみせる。
 あなたが、生まれる必要のない世界をきっと……だから、今はどうか眠って……!」





「……憶えておくがいい……私は所詮、摂理の意思の一つに過ぎない。まだ、お前達の勝ちでは――」








撃ちだされた『青』く輝く剣は滅びることがない筈の『蒼』を貫き、消滅させた。





【黒き獣シャドウ@テラカオスバトルロワイアル十周目】 消滅確認

※囚われていた死者の魂の行方がどうなるかはわかりません



--

640樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:31:32 ID:3k2I6frk0
「やった……の……?」


極限まで魔力を高めた一射を放ったまどかは、不安げにその言葉を口にする。


「はい、大丈夫です。まどかさん達の……みんなの勝利です!」


それを聞いた榛名は、頷くと同時に彼女に勝利を告げる。


大地は崩壊していくが、異常気象は収まった沖縄。
そして砕け散っていくフロワロの花が、何よりの証拠であった。


「や、やった! やったんだね!」
「あぁ……まさか、力を削ぐどころかあれを倒してしまうなんて、本当に驚きだよ……」


シャドウが完全に脱力したのを見計らってから飛び退いたレストは、爆風に焙られこそすれ、無事であった。
右腕で、蒼に打ち勝ったという確かな証拠の傷一つない天羽々斬を拾い上げて、まどか達の功績を讃える。


「レストさん、その腕は……」
「魂全部砕かれるのに比べたら軽傷だよ。まどか達のおかげで、まだみんなの手伝いはできそうだ。本当にありがとう」
「信じられません、いくら当時のグンマ―の盾以上に頑丈だからと、黒き獣の本拠地に単身で乗り込むなど……」
「いや、僕も少しは考えたんだよ? ただ、全てを呑みこみ消滅させる蒼とはいえ……
 蒼は絶対的で、シャドウの破滅を望む禍々しさは時間と共に増していたけど、荒れ果てた大地とフロワロは健在で全てを壊してはいない。
 それはあいつが意図的に弱めているか元からなのかはわからないけど、とにかく沖縄の蒼の嵐は抗体があれば耐えきれるんじゃないかって踏んだんだ。
 戦闘空間でしばらく耐えられるなら、あとは賭けさ。サクヤを救いだして、彼女がすぐに死者の力を底上げして反撃してくれればってね」

詰め寄られたレストは、正直に自分の計画を口にする。
死者が抵抗力を上げることで予言完成までの時間稼ぎができればと思っていたが、まさか二人の巫女が救援に駆けつけるとは夢にも思っていなかった。
予定外、しかし予想以上の成果を得ることができた。……ある意味での、彼女達の犠牲の上に。


「そうだったんだ……よし! 無事、じゃないけど、レストさんを連れ戻すダオスさんとの目的も達成できたし急いで戻ろう?」
「……まどかさん、流石にこのまま担いで帰ると榛名でも時間がかかりますよ?」
「というよりまどか、君が榛名に担がれているのってもしかして、まだ甘い機動力を榛名に助けてもらうだけじゃなくて……」
「う、うん。セルちゃんが凄すぎて、まだ足腰に力が入らないの。お尻も前も気持ち「それじゃあ帰りは僕の魔法を使おうか!」あ、そうだね!」


聞きたくない言葉を言わせないようにしながら、レストはまどかと榛名に触れてエスケープを使って世界樹に帰還する。
正直戻るのはダオスに何を言われるかわからなかったし、殺されるかもしれないという恐怖もあったのだが。

巫女の力により、黒き獣は討たれた。
しかし獣の言う通りそれは大災害の脅威の一片に過ぎないし、他の問題はまだ残っている。
予言を完成させ、大災害を防いで初めて勝利したと言えるのだ。

三人はこの後世界樹に戻り、仲間達と残りの問題について再び話し合うことになる。
戦いは、まだ終わらない。


--

641樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:32:11 ID:3k2I6frk0
「……」


転移魔法で三人が帰還したところまでを、多くの兵士達がモニター越しに凝視していた。
誰もいなくなった沖縄。
これまでの蒼の嵐に加えて戦闘の余波で、とても普通の人間が住める場所ではなくなってしまったものの……

そこは、ようやく静寂を取り戻していた。


「――黒き獣の、消滅を確認。同時に異常気象とフロワロも消滅……」



「――黒き獣が、シャドウが討伐されました!!!」



一人の兵士の震える声を皮切りに、全ての兵士が歓声をあげた。
もはや見守ることしかできなかった彼らではあるが、黒き獣の討伐は悲願の一つであったのだから無理もない。
誰もが口々に喜びの言葉を口にし、巫女の奮戦にそしてシャドウの動きを大きく鈍らせたリリカルの功績を讃える。
これまでの多くの犠牲は、決して無駄では無かった。
一部では戦意を喪失した兵士もいたが、今回の一連の映像はそんな彼らも勇気づけるものとなった。



しかし、同時に彼らは冷や汗も流すこととなる。



「さっきの様子を見てれば明らかだ。都庁の面々は予言を解き、かつフォレスト・セルの能力も完璧に把握していた!」
「それに、ミヤザキの巫女まで一緒ってどういうことだ!?」
「わからんが、これだけは言える! 彼らも、世界の滅びを回避しようという一点においては我々と同じ気持ちだ!」


狼狽える兵士達。本来であればありがたい情報も、少しばかり遅かった。


「おい、急げ! はやく九州ロボに! ココさんとメフィラスさんにも連絡を取るんだ!」
「くそ、目が離せなくて連絡が……!?」
「間に合ってくれ……!」


ASO3の兵士達はひたすらに慌てふためく。
まさか自分達のような存在が、こんな大事件の目撃者になろうとは。
連絡も、放送も、何もかもが遅れても誰も咎めることはできないだろう。
彼らは祈る。勘違いして飛び出してしまった上司にあたる二人が無事であることを……



【三日目・0時15分】

642目指せ完結:2020/05/06(水) 22:33:10 ID:3k2I6frk0
仮投下終了。問題点などがあれば適宜修正します

643 ◆jSXGNRSMwM:2020/05/07(木) 23:18:40 ID:7kEX4nLE0
【三日目・0時15分】

【東京都・新宿都庁世界樹入口】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康、魔力消費(中・回復中)真・世界樹の巫女、首輪解除、蒼への叛逆(中)、テラカオス化耐性(完全)、性知識入手
【装備】世界樹の衣、竜殺剣『天羽々斬』、榛名(蒼小耐性+テラカオス化完全耐性)
【道具】支給品一式 その他不明、サクヤのスマホ、セルのモンスターボール
【思考】基本:自分も戦い、みんなで生き残る
0:他の問題も、ダオスさん達と話し合わないと!
1:クラウザーさんのためにも、DMC狂信者の暴走を止める
2:ほむらちゃん、前もお尻も甲乙つけがたいんだね!
※巫女の祈りにより、魔法少女に近い存在へとなりました
※ソウルジェムなどはないので、肉体が致命傷を負えば普通に死亡します
※衣装はアルティメットまどかのものを2Pカラーにした感じです。戦闘力もそれの劣化版
※世界樹の王@世界樹の迷宮に加えてフォレスト・セルと同じスキルが使用可能です
※ダオス直伝のハイパーまどかビームを習得しました
※竜殺剣は所持しているだけでも竜やそれに近い種族に特効性能を持ち、結界や再生などの特殊能力も無効化することができます
 テラカオス・ディーヴァや真竜などには特に高い効果を発揮します
 また巨大な外見に反してとても軽いため、小柄な少女でも振り回したり投擲することができます
※器のセルの能力を手に入れ、蒼への叛逆能力を手に入れ能力値が上昇しました
 蒼に対する通常よりも高い耐性及び蒼に有効な貫通攻撃が可能ですが、本来はテラカオス用のため完璧な力ではありません

【レスト@ルーンファクトリー4】
【状態】ダメージ(大)、魔力消費(大)各種超耐性、ソウルアーマー・サクヤ、首輪解除
    ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)蒼による左腕喪失
【装備】最大錬成世界樹ノ剣、最大錬成防具、草原のペンダント
【道具】支給品一式、封じられた闇核、三竜の逆鱗、ファガンの卵 、小鳥印の青汁×沢山、減った材料
【思考】
基本:サクヤのためにも、人間としてこの殺し合いを終わらせる
0:正直帰るのは怖い……
1:同盟軍の味方と共に大災害回避のために動く
2:あわよくば竜と結婚できる世界を作りたい
3:DMC狂信者、拳王連合軍は絶対に許さない
4:ありがとう、サクヤ……
※ブリーフ博士の技を覚え、首輪解除が可能となりました
※現時点で、フォレスト・セルとの長時間のリンクは不可能です
※ゲートリジェクト(異空間移動)使用不可
※ネット上に『変態オーバーロード』の一人として動画を晒されました
※所持していた道具の内、切り札クラスの素材を全て使用しました
※左腕は蒼による消滅のため、どのような手段でも再生は不可能です

【静岡県・富士樹海・死者スレ内部】
【カルナ@Fate/Apocrypha】
【状態】宝具ぶっぱしていないけど、存在するだけで魔力消費
【装備】自身の槍、黄金の鎧、多くの死者達
【道具】不明
【思考】
基本:使命に従い、死者スレを守る
1:シャドウは消えたが、死者スレの警戒は怠らない
2:……いつから、尻に槍を刺すことになったんだろう?
※死者スレからは相変わらず動けません
※シャドウの脅威が去った死者スレがこの後どうなるかはわかりません

【日本海のどこか・ASO-3内部】
【主催モブ兵士(ストームトルーパー)@テラカオスロワ10期】
【思考】
基本:ココとメフィラスに代わり、放送や脅威の監視を行う
0:九州ロボ及びココ達に事の顛末を報告する

644決戦へのプロローグ:2020/06/01(月) 08:30:24 ID:L8Ca.emg0
ここは異界の横浜スタジアム。
両軍2-2で第五回裏。異界横浜スタジアム消滅まであと30分――


拳王軍はMEIKOが抜けたピッチャー枠を補うため、チェンジ前に誰が代わりの投手になるか協議をしていた。

「本来ならレーザービームを投げられる僕がMEIKOさんの代役が務まるんだけど、MEIKOさんと違って戦闘は苦手なんだですよね……」

メジャーリーガーであるムネリンは一見するとピッチャーには最も適役に思えるが、カオスロワ式野球においては野球の上手さだけが勝利に繋がるとは限らない。
カオスロワ式野球では打者から投手への妨害・攻撃もルール的にはOKなので、MEIKOはそれで打撃を受けて退場する羽目になった。
MEIKO自体もアルティメットアーマーに守られていたがために致命傷を回避したようなものなのに、サウザーの雷霆が飛んでこようものならムネリンではひとたまりもない。
打者も投手も捕手もできるムネリンがいなくなれば拳王軍の野球における戦力はもちろん激減する。

「だったら、私がいくわ」
「え? 瑞鶴さん?」

ムネリンの代わりに立候補したのは瑞鶴だった。

「瑞鶴、あなた投手なんてできるの?」
「提督さんから仕込まれていてね、MEIKOさんほどじゃないけど自信はあるわ」

サーフは、野球選手不足という事態も考慮して、いざという時のために瑞鶴に野球を教えていた。
一通りのポジションはこなすこともできる。

『だが、聖帝軍も疲弊しているとはいえ一筋縄ではいかないよ』
「ええ、でも私には秘策がある」
『秘策?』
「お願い、私と“最凶の野球ボール”を信じてみて」

瑞鶴もまた適当に言ったわけではなく、何か勝利への策があって物を言っているのが目から見て取れる。
その眼差しを見て、ラオウは言った。「うぬに任せるぞ」と。


そしてバッターボックスに立ったのはスタービルドストライクことガンダム。
ビームサーベルを構えている。
マウンドに立ったのは瑞鶴、しかしその手にはちょっと変わったボールが握られ……

「なんだありゃ?! ってセンターにいたサボテンの怪物じゃねえか!?」
『インドラ』

訂正。
かなり変わった巨大な球を瑞鶴は持ち上げていた。
ぶっちゃけ球の正体は夜叉鬼・メーガナーダである。
明らかに投手より大きい球、しかも意思持ち支給品とはいえさっきまで選手として出てきた者がボールの代わりとして出てきたことにレイジは面食らう。

余談だが瑞鶴が涼しい顔で巨大なこの悪魔を片手で持ちあげているのはメーガナーダが軽いのではない。
瑞鶴の膂力がそれだけ凄まじいのである。

「いったい何のつもりなのだ拳王軍?
布陣的にもレフトはおろかセンターまでいなくなって外側ががら空きじゃないか……」
「捕手が2人分いらないくらい自信があるんだと思う。
レイジ! 見た目のシュールさに騙されないで!」
「おう、全力で挑むぜ」


「あなたたちに打てる? 私と提督さん、最高のペットを!
いきなさい! メーガナーダ!!」
『インドラ!!』

瑞鶴は巨大なメーガナーダをボールとして投げた。
だが、その球速はMEIKOに比べれば明らかに遅い。
しかも大きいため、ビームサーベル(バット)を振れば確実に命中する。

(遅え! だがヒットしても殺された亜久里のケースもあるし、警戒はしとくべきか?
とにかく最初は様子見も兼ねて振るだけ振って見よう)

メーガナーダは人間から見ると大きいが、平均18mはあるMSから見るとさほどでもない。
むしろ打つにはちょうどいいくらいの大きさだ。
レイジは警戒はしつつも、ビームサーベルを振った。


――雷変のモクシャ――
――マハザンダイン――


「なに!?」

レイジがビームサーベルを振った瞬間、飛んできたメーガナーダの殻が開いた。
複数のエイリアンでも入っているかのようなおぞましい姿を晒すと同時に、風の魔界魔法を使用。
当たりかけたビームサーベルは風の刃の衝突で弾かれ、それだけでなくガンダム自身にも襲い掛かる。
レイジは咄嗟にアブソーブシールドで防御するが、物理的な要素が強い風は吸収できないためか、盾は切り刻まれて破壊された。
その間にメーガナーダというボールはラオウが両手でキャッチをした。

645決戦へのプロローグ:2020/06/01(月) 08:30:58 ID:L8Ca.emg0

「レイジ!?」
「慌てんなイオリ、俺もガンダムもまだ大丈夫だ。
……クソッ、攻撃能力を持ったボールか!」

レイジがガンプラバトルで、そしてこのカオスロワで実戦経験を積んでいなかったら、今の一投だけでガンダムは撃墜されていただろう。
ラオウから悪魔を返された瑞鶴はすかさず、2投目を投げる。
レイジは今度は悪魔が届く前に、機銃による先制攻撃を仕掛けることにした。

「バルカンを喰らえ!」

――雷変のモクシャ――

「ぜ、全然効いてねえ!」

――狩る――

「ぐゥ!!」

しかしメーガナーダは今度は殻を閉じ、命中した弾丸は全てBLOCKという文字と共に金属屑と化した。
殻を閉じた状態のメーガナーダは物理攻撃を一切無効化するのだ。
おまけに体格が非常に大きいため、ピッチャーである瑞鶴の防壁として後ろの彼女を守ってもいる。
レイジは再びビームサーベルを振ろうとするが、攻勢はメーガナーダ側にあり、拳をガンダムが握っていたビームサーベルに向けて放たれ破壊された。

「このサボテンエイリアン、良いパンチをしやがるぜ……見た目よりずっと機敏だ」

再び、ストライク。
そしてあまり間を置かずに三投目が投げられる。
レイジはここで壊れたビームサーベルの柄を投棄した。

「こいつでやるしかねえ! ビルドナックル!!」

ガンダムの右腕が光り輝く。
直撃であればハクメンをも気絶に追い込むスタービルド最大の技、ビルドナックルで立ち向かうつもりなのだ。




「ブオオオオオオオ!!」



だが、ここでメーガナーダは咆哮共に空中で高速回転する。
発動した技の名前はパワーチャージ、そしてマッスルボンバー。
前者は次の攻撃の威力を二倍にし、後者は自身の質量を使って暴れまくる物理技だ。
それがガンダムの右拳ごとビルドナックルを砕いてからラオウの両腕に収まった。
ガンダムおよびレイジのアウトである。

「クッソおおおおおおおおお!!!」
(無駄よ、あなたたちも今までの戦闘や、ドラゴンハートで強化されているのは知っている。
でも、私とメーガナーダは提督に極限まで強化されているし、特にメーガナーダはスーパーサイヤ人になれるベジータの肉も喰らってきた。
内包するパワーはそこらのガンダム以上よ)

右腕が破損したガンダムに代わり、次にチルノがバッターボックスに立つ。

しかし……

「こいつ……氷属性攻撃が効かない!」

お得意の氷を使った技でメーガナーダを氷漬けにしようと試みるが、メーガナーダは凍らない。
それもそのはず、メーガナーダは殻を開けた状態では火炎・氷結・衝撃・地変攻撃が無効になるのだ。
ちなみに閉じた状態では物理攻撃が無効である。
そして三投目にてメーガナーダから容赦ない攻撃が放たれた。

――次の魔法攻撃を強化するマインドチャージ
――からの高等火炎魔法マハラギダイン

「うわああああああああ!!」
「チルノ……!!」

氷の妖精にとって弱点とも言える火炎魔法が容赦なくチルノに直撃する。
当然、氷柱で作られた弾幕やスペカ攻撃も諸共溶かされてしまい、聖帝軍はチルノの死を覚悟した。

646決戦へのプロローグ:2020/06/01(月) 08:31:32 ID:L8Ca.emg0

「……あたいはまだ生きてるよ」
「チルノ!」
「だが、その体は……」

チルノは妖精の力を使って、メーガナーダの莫大な威力をもつ火炎魔法を防いでいた。
だが、その代償として大人の体を持っていたチルノの体は熱で溶け、または魔力を使いすぎたがために、子供の姿に戻っていた。
そのような代償を払いながらもチルノは生還はしたが、聖帝軍はこれでツーアウトである。

「アイツとたたかったときに、何かをつかみかけてたのに、あたいってば、さいきょーしっかくだ!」
「気負うな、チルノ、俺がヒットやホームランを取ってやる」

余談だが、大人化が解除された影響なのか、チルノの知力が元の⑨に戻っていた。
最後にバッターボックスに立ったのは鎧武。
刀をバットの代わりにして挑む。

――BLOCK  ――BLOCK

「クッ!」

しかし……チートライダーの一人である鎧武・極アームズのあらゆる召喚武器をもってしても、メーガナーダの硬い殻を突破することは叶わず。さらに。


――黒きバクティ
――ヴィラージュの剣

「うおおおおおおおおお!!!」

メーガナーダの必殺技の一つである、某草加似の男をも葬ったワラスボ状の食らいつき攻撃が放たれる。
鎧武は嵐のような攻撃の前に刀を全力で振って対抗。
甲冑の何ヵ所かをかじられてボロボロにはなったもの、攻撃を凌いだ。
ただメーガナーダを打つことは叶わず、スリーアウトとなってしまう。

「轟沈させる気で投げたんだけど、流石にやるわね……」
「ぐふッ……伊達に死線を生き延びちゃいないぜ」

瑞鶴はあわよくば三人を抹殺するつもりでメーガナーダを投げたのだが、三者ともメーガナーダを打てないなりに生き延びた。
ここまで生き延びたのは決して運だけではないという証左であろう。
少なくとも舐めプしたり、ゴリ押しして勝てる敵では確かであると、瑞鶴は警戒を強めた。

「ものの五分でチェンジ……まさか、誰も打つことができなかったとは」
「サウザー……」
「闇よ、俺は仲間たちを責めてるわけじゃない。ただ、あの瑞鶴とメーガナーダという奴らは侮れんということだ」
「幸いなのは僕らは後半裏の攻撃権があと一回だけ残されていること、三人の奮闘のおかげでメーガナーダに関するいくつかのデータを手に入れたこと、六回表が終わるまでになんとか対抗策を考えてみるよ」
「任せたぞ、犬牟田」

瑞鶴・メーガナーダへの対抗策はベンチの犬牟田に任せ、聖帝軍は守備に入る。
拳王・聖帝・両軍にとっても最終回になるであろう第六回が始まる。





               拳 2-2 聖

『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
瑞鶴           4番ピッチャー
        5番レフト
メーガナーダ       6番野球ボール
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
             8番セカンド
             9番ライト


『聖帝軍 布陣』

             1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番ピッチャー
サウザー         4番キャッチャー
             5番ライト
             6番セカンド
             7番レフト
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード

647決戦へのプロローグ:2020/06/01(月) 08:32:33 ID:L8Ca.emg0


【二日目・23時35分/神奈川県・異界横浜スタジアム】

【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
※メーガナーダの火炎攻撃により、元の姿に退化しました

【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
※負傷により退場



【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】
※メーガナーダを野球ボールとして使っています


【ハクメン@BLAZBLUE】
※負傷により退場
 また鎧に罅が入り、瑞鶴が持つ違法改造スマホで起動するリモコン式の爆弾を罅から入れこまれました

【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
※負傷・気絶等により退場

648目指せ完結:2020/06/01(月) 08:35:43 ID:L8Ca.emg0
短いですが以上です
本当は決着まで書きたかったのですが、リアルで体調を崩し気味なのでやむを得ずできあがってた五回裏までを投下

投下や予約がなかった場合は出来上がり次第、決着となるSSを投下しようと思います

649 ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:28:29 ID:Y1vKgW0.0
投下します

650死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:30:23 ID:Y1vKgW0.0
聖帝軍と拳王連合軍の試合も最後の回を迎えました。
2-2、両陣営負傷者・死傷者多数。
泣いても笑ってもこれが最後です。

〜 〜 〜



(倒れたMEIちゃんや、平等院のためにも……)

万感の想いを胸に最初にバッターボックスに立ったのはラオウ。
高津を仕留め、プニキ以外でホームランをたたき出した存在。
この横浜スタジアムにおいて気絶したハクメンを除くと、間違いなく最強の強打者である。

ラオウは見極めのために二球まではあえて見逃し、相手の投球の癖を覚えた。
高津のそれと比べると流石にお粗末な闇の技術――次で確実に打ち取ることができるとラオウは核心。
そして次の三球目を打とうとし。

「今だ! 雷霆!!」
「ぬう!?」

突如、キャッチャーのサウザーがMEIKOにも放った雷霆を放つ。
しかし雷が向かう先はラオウではない……キャッチャーがバッターがヒットを出すまで直接攻撃することは(流石に野球にならないから)反則だ。
だから雷を浴びたのは――野球ボールの方だ。
野球ボール自体は絶縁体なので雷を浴びても焦げるだけ……だが聖帝軍には氷の妖精であるチルノがおり、ボールを氷で覆えばコーティングされた部分が帯電するようになる。
すなわち、闇の投げた球は雷球となったのだ。
これを打ってしまったラオウはバットを通して感電することになる。
それも巨大なロボットの装甲すら溶かす電撃をその身に受けた。

「ぐおおおおおおおおおおおお!!!」
「ラ、ラオウ!!」
『ラおじさん!!』

拳王軍ベンチの方から思わず悲鳴が飛び出す。
しかしラオウは負けじと吠える。

「ぬおおおおおおお!
 聖帝軍、媚びぬ退かぬ省みるはおまえたちだけだと思うなよ!
 我ら拳王軍にも負けられぬわけがあるのだーー!!」
「なに!? この雷球を強引に打つつもりか!?」
「総員警戒態勢! 身構えて!」

ラオウは電撃で痺れ、肉体が一部焦げても打つことを決行。
まさかダメージを無視してでも打とうとするラオウにサウザーも虚を突かれ、闇は急いで仲間たちに警戒態勢を敷かせる。

そしてラオウは人並み外れた根性と筋力で、聖帝軍が生み出した雷の球を打った。
向かう先はど真ん中ホームランコース。
初速が早すぎてサウザーがクロえもんの時に見せた、打った直後にキャッチする芸当は使えない。
感電ダメージのせいで高津殺害時ほどの球速は出ていないが、それでもかなりの速度が出ており、ギュンと闇が反応できない速さで彼女の
頭上を通り抜ける。


「俺に任せろ!!」

センターには聖帝軍の守護機神であるスタービルドストライクが待ち構えていた。
ラオウの打球がホームランを勝ち取るにはこのガンダムを突破しなければならない。

「ビルドナックルを失ったてめえに何ができんだ!」

ラオウの打球の威力はガンダムをも凌ぐ。
おそらくガンダリウム、PS装甲、ナノラミネートだろうが耐えられる代物ではない。
ビルドナックルくらいしか対抗できる手段がないというのが、クロえもんの発言の意図であった。

「ああ……ビルドナックルが一つしかなければな!」

ガンダムの左拳が光り輝く。

「まさか……」
「もう一つの――ビルドナックルだ!!」

スタービルドストライクは両腕ともビルドナックルが打てるのだ。
レイジはラオウが打った球に対し、光り輝く拳を叩き込み、ホームランを阻止せんとする。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

ぶつかり合う出力全開のビルドナックルと破壊の野球ボール。
一瞬にして行われた攻防――その結末は……

「ビルドナックルが……負けた!?」

イオリや聖帝軍の顔が一瞬、曇る。
ラオウの打球がビルドナックル及びガンダムの左腕を削り、パーツを壊しながら抉っていく。
威力で勝ったのはラオウの打球であった。
このままでは打球はガンダムを貫通して観客席へと入り、ホームランとなってしまうだろう。

651死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:30:57 ID:Y1vKgW0.0

「だが……威力は減っただろう!!」

それでもレイジは、反撃の証たるガンダムのパイロットは諦めない。
操縦桿を力いっぱい動かし、ガンダムの姿勢を即座にボールを背にするような形に変える。

「これならどうだ!!!」

ボールが観客席に入る寸前、ガンダムが吹かしたバーニアの火がボールに直撃する。
これがビルドナックルとぶつかり合う前なら、噴射した炎など意味なく観客席に入るだけだったが、今のボールは全力のナックルとかち合ったため、勢いが落ちている。
結果、炎に煽られ、ボールは観客席にギリギリで入ることなく、ガンダムの足元に落ちた。
一方、ヒットはともかくホームランは失敗すると事前に感じ取ったラオウは既に走り出していた。

「紘太!!受け取ってくれ!!」

レイジは急いで一塁方面に、ボールを一塁方面に蹴って渡す。
紘太はボールをキャッチしようとする。
そんな紘太にラオウは奥義である天将奔烈を放たんとする。

「させんぞ、天将奔……」
「俺の仲間に手を出すな!!」
「なに!?」
「紘太! こいつは俺が止める! おまえはボールを手に入れることに集中しろ」

だがその前に、後ろからキャッチャーであるサウザーが追跡してきていた。
サウザーからの攻撃にラオウは寸前で回避行動を取り、喉元を割かれるような致命傷は回避してものの、天将奔烈は不発に終わった。
そしてサウザーの援護を受けた鎧武は一塁ベース上で球をキャッチしようとする……が。

「一塁はなんとしても奪わせてもらう!!」
「うお!?」
「なッ!?」

鎧武のグローブにボールが収まりかけた寸前、ラオウは地面を蹴って大地を揺るがした。
奥義でも何でもないただの力技だが、その振動はベンチにいた味方やマウンドに出ている敵を跳ねさせるには十分であり、最も近くにいたサウザーや鎧武は一瞬、足を取られてしまう。

「しまった!!」

特にボールをキャッチする寸前であった鎧武は想定外の振動により照準がズレて、ボールはグローブに当たっただけで手中に入らず、ポトリと足元に落ちた。
鎧武は急いでそのボールを拾おうとし、ラオウはその前にスライディングをする。
サウザーはラオウの背後から手刀を叩き込もうとし――


「残念だが、セーフだ…!」
「くッ……」

先ほどディオにやられた傷もあってサウザーの手刀はラオウの分厚い筋肉で覆われた背中を心臓まで貫くこと叶わず、ラオウは鎧武がボールを拾うより先に一塁ベースを踏んだ。
幸いと言えるのは、ラオウがこれ以上進軍できないことだろう。

防衛は完全な失敗ではなかったと聖帝軍は思うようにし、それぞれ元の持ち場に戻る。

652死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:31:35 ID:Y1vKgW0.0


『すまねえ、俺がキャッチできてれば』
「レイジのせいじゃないよ、いや、僕がもっとビルドナックルを強化できていれば……」
「気に病むな、ホームランを打たせなかっただけで戦果だぞ、よくやったぞレイジ、そしてイオリ」

サウザーは両腕がなくなるほどボロボロになったガンダムを見上げつつ、少年二人をほめたたえた。
少年二人はにこりと笑う。

『よーし、このまま戦うぞ』
「え? レイジはボロボロのガンダムのままで戦うの? 修理ぐらいは……」
『イオリの腕を信じてないわけじゃないが、もう試合終了まで時間がねえ。
 バルカンと足は無事だから壁や砲台ぐらいにはなる』
「大丈夫かな……?」
「無理はしないで、レイジ」
『おう』


イオリや闇らの心配を他所にレイジは半壊状態のガンダムのまま、試合を続行。
次の打順は瑞鶴であったが、瑞鶴は闇の投げた球を全て見逃し三振した。

「勝負を挑んでこない……!?」
「悪いけど、今の私はピッチャーよ、肩を壊すわけにはいかないの」
「なるほど……六回裏を見越した温存戦略ね」

闇は瑞鶴の目的を理解する。
瑞鶴の今のポジションはピッチャーであり、無敵の野球ボールであるメーガナーダを投げられる唯一の投手だ。
先に聖帝軍を完封させた存在がいなくなるのは拳王軍にとって痛手であろう。
まだ六回裏が残っている以上は、メーガナーダは必要不可欠な防衛装置である。
故に瑞鶴および拳王軍はワンアウトも必要経費と見て、瑞鶴は防御と温存に徹させるようにしたのだ。
そして目論見通りに瑞鶴は下がるが、彼女は自信満々に次の打者を喧伝する。

「次は私のご自慢のペット、メーガナーダよ!
 あなたたちにこの子の進軍を止められるかしら!」
「GURARARARAARA……」

鉄壁の防御と暴力と暴食の悪魔、メーガナーダ。
瑞鶴の後ろで四本の腕を器用に使ってバットを高速で振るメーガナーダに闇の投球は通用しない……かに思われた。

「インドラ〜♪」
「え?」

いざ、闇が投げた後にメーガナーダは何を思ったのかボールを打たずに、闇がボールと一緒に投げた「何か」を食べだしたではないか!

「ベイダーら主催から、配布された基本支給品……その中にあった携帯食料よ」
「俺、戦極ドライバーとロックシードのおかげで腹減らないから取っておいたんだけど、まさか役に立つなんてな」
「ひ、卑怯な……!」

食欲に負けて携帯食料に気を取られるメーガナーダ。
もちろん、ボールはそのままキャッチャーの手の中に納まり、ワンアウト。

「メーガナーダ。めッ! 食べちゃダメ!」
「インドラ……」
「ひんやりしたかきごおりはいかが〜♪」
「インドラー!」
「コラコラコラッー!!」

瑞鶴はペットを躾けようとするが、三塁ではチルノが能力で作った即席のかき氷で、メーガナーダを挑発。
口からすっかり涎を垂らし、集中力を失ったメーガナーダの攻略は大して苦ではなく、メーガナーダはボールを打てないまま見逃し三振、ツーアウトとなる。

このあと瑞鶴とメーガナーダは激おこぷんぷん丸な仲間たちにメチャクチャ土下座した(二回目)。

653死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:32:15 ID:Y1vKgW0.0


そしてツーアウトの中、時間的にも後がない拳王連合軍のバッターボックスに立ったのは、ロックマンとクロスフュージョンした光翔鶴である。

「ッ……!」
『翔鶴さん、かならず打とう。
平等院さんたちの犠牲を無駄にしないためにも』
「ええ必ず聖帝軍を殲滅します!」

(気張れ、闇、みんな。必ずここで奴らの攻撃を食い止める!)
(ええ)

翔鶴のバッターとしての実力は高津なら完封できるレベルであったが、それは昔の話。
ダークチップを解禁した翔鶴の攻撃性は、ドラゴンハートで強化された聖帝軍でさえ危険なレベルだ。
何より聖帝軍はダークチップのことをよく知らないので全く攻撃を予測できない点もある。
サウザーは闇や仲間たちにここを最後の正念場にしようと、視線を送った。

「ダークサンダーを!」
「無駄だ、雷霆が闇への攻撃を防ぐ!」

先の時のように翔鶴はダークサンダーで闇への先制攻撃を図ろうとしたが、サウザーの呼び出した雷がそれを防ぐ防壁となり、闇の投球を許した。

「喰らいなさい!」
「アタイたちのがったいこうげき!」
「聖帝サンダーボールだ!」

闇は全力のボールを投げる、チルノは投げられた球に霜を張り、サウザーはそれを雷霆による電撃でコーティングした。
打とうとすればダメージ必至の魔球。
ラオウはこれを根性と鬼耐久力で突破したが、翔鶴にはこの電撃を耐えきれるほどの防御力は恐らくない。
PETが感電でもすれば彼女の力を大きく後押しするロックマンが機能停止するという作戦でもあった。

「翔鶴!迷わずに打て!」
「『ラおじさん!!』」
「ようやっと、策を思いついたわ! 剛掌波ッ!!」
「ラオウ!? おのれぇ!」

ラオウはこれに対し、一塁から剛掌波を放ち、翔鶴を援護する。
だがこの気の波は決して聖帝軍を狙ったものではなく、飛んでいく野球ボールの方を狙ったもの。

否、正確には野球ボールの近くを横切っただけ。
ボール自身の軌道などは変わったりしていない。

ただし、打ちだした気はボールの表面に付着し帯電していた氷を溶かして剥がす程度の威力はあった。
付随されていた感電効果がなくなったのである。

「……見切った!」

翔鶴は早いだけになった闇の投球を打つ。

「させるか!」

そこへ今度はサウザーがクロえもんの時にも見せた、打たれた直後の球を速さにものを言わせて取る荒業で対応しようとする。
だが、翔鶴は打ったと同時にチップをスロットイン。
彼女の足元にラッパのような物体が現れた。
それはサウザーが前面に回り込むより早く音を鳴らすと。

「なに!? 動けん!?」
「私たちまで!?」

突如としてサウザーや全ての聖帝軍の動きが止まってしまった。
ヒットした打球はゴロで大きい当たりではなく、ピッチャーである闇の足元に転がったが拾うことさえできない。

「ラッパ型ウィルス――ダークサウンド」
『その音色は聞く者の動きを封じてしまう代物さ』
「ぐッ……貴様らは動けるのか……!」

彼女が使用したものは音が鳴っている間は敵の攻撃や移動を強制的にできなくするダークチップだ。
一方、翔鶴とロックマンが味方と判定した存在には効かない反則的代物だ。
その気になれば目の前の動けないサウザーを簡単に殺すこともできる。
が、翔鶴はそれをせずに一塁側へ向かう。

「なに? 殺さないつもりか?!」
「運が良かったですね、このチップはバグのせいで強制移動させられる仕様のようです」

ダークサウンドは副作用として端のパネル(地形)に強制移動させられてしまう。
また、先にサウザーを殺してしまうとそれ自体が隙となって音が鳴りやんだ直後に闇が一塁に送球をしてアウトを取られてしまう。
既にツーアウトである拳王軍は、あと最低一点を取るまではアウトになるわけにはいかないのである。
そして誰もいない二塁へ走るラオウと、一塁へ飛ぶ翔鶴。

654死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:32:53 ID:Y1vKgW0.0


「まずい!」

一塁へ向かう寸前に翔鶴はダークソードを召喚する。
ダークサウンドの音色はもうすぐ終わるが、その前に鎧武を仕留めようとする。
鎧武の防御や回避行動は間に合わない。

「平等院さんの……」
『――仇だ!』

憎悪による鬼気迫る表情で翔鶴とロックマンは仲間を殺した男を殺さんとする。



そして非情なる闇の剣が、仮面ライダーを唐竹割にした。

「みんな、すまね――」

鎧武もとい紘太は、翔鶴相手に何もできなかった自分を許せぬまま、ターバンごと左右に真っ二つになった躯を晒した。
そして翔鶴はその死骸ごと踏みつけるように、一塁を走破した。
その後、近くの壁に当たることで漸く移動に関するバグも止まる。
同時に漸く、ダークサウンドの音色は止まり、聖帝軍はやっと迎撃行動に映れたのだ。

「紘太……クッソがあ!」

仲間の死にレイジは激昂する。
もはや両腕を失ったガンダムではトーチカぐらいにしかならないのはわかってるが、それでも仲間の死を弔うために、僅かな効果しかないとしてもバルカンをラオウや翔鶴に向けて放った。
二塁へ向かう翔鶴はこれを冷静にアクロバット飛行で回避。
一方、ラオウは――

「北斗神拳奥義 二指真空把!」
「な、バルカンの弾を指で受け止めやがった!?」

二指真空把とは敵側から放たれた飛び道具を二本指で受け留め、かつ相手に投げ返して反撃する技。
ケンシロウは矢などを受け止めるために使ったが、野球選手として成長したラオウは片手でガンダムのバルカンの弾を受け止めた。
サイズが色々おかしいが、実際に二本指で受け止めたのだから仕方ない。
更にラオウはお返しと言わんばかりにレイジに向けてバルカンを投げ返した。

その弾丸は、ラオウの超剛腕も相まってガンダムが撃った時よりも格段に速く、威力を増して元の持ち主であるガンダムのコクピットをぶち抜いた。

「がッ――」

弾丸が装甲を貫徹し、内部のレイジに直撃。
そしてレイジの上半身は弾けた水風船のようにバラバラになって血と肉片をコクピット中に飛散させた。

「レ、レイジィィィーーーーッ!!」
「よせ、イオリ! 飛び出すんじゃない!」
「嫌だ、君が死ぬなんて……ラリー・フォルクみたいな死に方をするなんて……!」

沈黙したガンダムのコクピットに空いた穴から夥しい血が流れたことからして、相棒の死を悟ったイオリは泣き叫びながらベンチから飛び出そうとする。
犬牟田が止めなくては、試合中であることを無視してガンダムに駆け寄っただろう。

「紘汰、レイジ……」
「どうすれば!」

戦場でまだ生きているチルノ・闇は仲間の死に涙する暇も許されない。
三塁に迫るラオウ、二塁には既に翔鶴が迫っている。
拾ったボールは闇の手の中だが、闇の見立てでは三塁のチルノがキャッチするより、ラオウの方が早い。
おそらく無暗に三塁に投げれば、キャッチしようとした隙にチルノがラオウに殺されるだろう。
誰もいなくなった二塁に投げるなど論外だ。
チルノに至っては闘気だけで氷を溶かしてくるラオウへの打開策が浮かばなかった。

655死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:33:35 ID:Y1vKgW0.0

「チルノ! 上へ飛べ! 闇! ボールはまだ投げるな!」
「「サウザー!?」」
「ラオウは……北斗神拳の使い手は南斗鳳凰拳伝承者である俺が倒す!!」

迷う妖精と暗殺者にサウザーは指示を飛ばす。
知能が減退したチルノは「サウザーの力を信じる」程度に思って、ラオウとの交戦を回避。
三塁を拳王に明け渡した。
一方で闇はサウザーが何を思っているのか理解する。

カオスロワ式野球では捕球した選手がタッチする以外に、走者が死亡してもアウト扱いになる。
ここでサウザーに送球すれば、ラオウと翔鶴はそれぞれ三塁と二塁に踏みとどまることになり、ホームインによる点の獲得は防げる。
ところがこれはほんの一時しのぎにしかならない。

翔鶴の次の打者は一番バッタームネリン。
プニキやラオウほどでないにしろ、強打者であり、闇程度の腕では確実に打たれホームランでもされれば目も当てられない。
さっきは球にイチローの顔を描く奇策で凌いだが、次は通じる保証はない。

ならばと、サウザーはあえて防御を切り捨て、ここで決着をつけることにしたのだ。
ラオウさえ殺せれば、拳王軍はスリーアウトチェンジ扱いとなり、向こうの士気も間違いなく削ぎ落とすことができる。
勝つための制圧前進なのだ。
もっとも問題として、この策はラオウが三塁に留まったら意味はなくなること、だが。

「南斗と北斗、どちらが上か決着をつけるために俺と戦えラオウ!」
「ふん、そんな安い挑発など……」
「ほう、そこで三塁に留まるなどと安全策を取るならば拳王は南斗聖拳の者の決闘の申し出から逃げた腰抜けとして未来永劫、恥の歴史として残ることになるが?」
「ぬう」

サウザーはここで舌を使ってラオウの高いプライドを刺激し、戦わせるように仕向けたのだ。
拳士である以上、戦いを逃げることは許されない。
それが北斗神拳と因縁のある南斗聖拳の長から叩きつけられたものならば、猶更だ。
故にラオウもまた、確実な安全策を捨てて三塁を蹴った後にホームベースに向けて走り出した。

三塁とホームを繋ぐ一本の細い白線。
その上で聖帝と拳王の最後の戦いが始まった。

「ぬおおおおおおおおおお!!!」
「はああああああああああ!!!」

ラオウとサウザーはぶつかり合う前にまず互いに闘気を高める。
これだけで周辺の地面抉れていく……それだけで、2人が人類の領域を突破せんとしている証左だ。
次にサウザーは背筋を伸ばして脚を閉じ、手を猛禽類の爪のような形にし両腕を水平に広げた十字のような構えをとった。

「南斗鳳凰拳奥義 天翔十字鳳!! 」
「鳳凰拳に構えだと?」
「フフ 帝王の拳 南斗鳳凰拳に構えはない!! 敵はすべて下郎!!
 だが対等の敵が現れた時 帝王自らが虚を捨てて立ち向かわねばならぬ!!」

本来は「防御の型」である構えをとらない南斗鳳凰拳だが、己と対等な敵が現れた時に立ち向かう為に必殺不敗の意を込めてこの構えが使われる。

「すなわち天翔十字鳳 帝王の誇りをかけた不敗の拳!!」
「早ッ……――」

サウザーはそのまま跳躍し空中から相手に襲いかかる。
これまでの強化と死闘によって機動力が圧倒的に強化されていたこともあり、ラオウは拳で抵抗するもその身体に触れることが出来ず、いつの間にか首に鳳凰の斬撃を見舞われていた。
ブシュウとラオウから鮮血が飛び出すが、 致命傷である動脈を切るには分厚い筋肉が邪魔でまだまだ浅い。

「もう一撃だ!」
「ぐぬう!!」
「ラオウ君!」「ラオウ!」「拳王さん!」「インドラ!」

656死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:34:08 ID:Y1vKgW0.0

再び、ラオウの首筋、先ほどと同じ場所にまた一閃が入る。
今度はより多くの出血を出すことができた。

(くッ、これまでのダメージのせいもあるのか、思ったような力が出ない。
 だがおそらく、あと一発叩き込めば動脈を絶ち、ラオウを落とすことができる!
 あの世で見ていてくれ、先に逝った者たちよ……手向けは拳王の首級だ!)

先に亡くなった者たちへの想いを胸に、サウザーは拳を振るう。
どれだけ拳を振るっても圧倒的速さを誇るサウザーに拳が届かないラオウ。
しかしてラオウの速さではサウザーの攻撃から逃れることもできない。

(この拳王がここで倒れるというのか……? 天の道を行くこの俺が……)

本能で確信していた。
奥の手たる天翔十字鳳を出したサウザーにこのままでは負けると。
あと一撃首にもらえば命を断たれると。


そんなラオウの頭によぎったのはこれまでの試合や戦いで散った者たちの顔……



(思い出すのだ、ラオウ。
 おまえの弱さのせいで、どれだけ涙を流したかを。
 ムギちゃんや平等院たちの犠牲を、おまえは無駄にするのか?)

                        ――否

(拳王連合軍に勝利の栄光を与えぬまま、消えるつもりか?)

                        ――否

(主催やヘルヘイム、ギムレーやナッパをこのままのさばらせておくつもりか?)

                        ――否

(おまえの野球はこんなものか?)

                        ――否

(ならば、悲しみと怒りを力に変えるのだ)










                        ――応

657死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:34:45 ID:Y1vKgW0.0





サウザーの手刀がラオウを捉えかけたその瞬間。
ラオウは脳内で『何かがカッチリと噛み合った』感覚を覚えた。
そして、ラオウはサウザーの、聖帝軍や拳王軍の視界からもフッと消えたのだ。

「なにィ! ラオウが消えた!?」

まるで透明人間のように、どこぞの影薄組のように相対していたラオウが消えた。
同時にサウザーの手刀も空振り、空を切る。

「奴はどこへ……」

サウザーは間髪入れず、殺気を辿ってラオウを探す。
だが、痕跡を辿ることもできず――




「――がはっ!!」
「サ、サウザー!!」

ラオウが消えたと思われた数瞬後に、サウザーの胸は背後からの一本の剛腕に貫かれた。
今度は右胸…すなわち、心臓をも穿った致命の一撃。耳に響くは闇の悲鳴。
サウザーは口と腕を引き抜かれた穴から大量の血を吐き出した。
それを成し遂げのは消えたと思われた、ラオウである。

「い、いったいなにを……」
「北斗神拳究極奥義“無想転生”を俺はたったいま会得した、おまえはそれに敗れただけのことよ」



無想転生とは深い哀しみを知った者のみが体得できる北斗神拳の究極奥義。

「無から転じて生を拾う」という意味合いを持ち、実体を空に消し去りあらゆる攻撃と回避を無効にする技。
平たく言えば「無敵状態」になり、そこから放たれる一撃を相手は防ぐことが出来ない。
あらゆる攻めを無想のまま回避し、無想ゆえに誰にも読めず防げないカウンターを放つ。

ラオウは人間の限界以上にまで鍛え上げた上で北斗神拳を極限まで極めてつつ、深い哀しみを仲間の死を知ったことで体得したのだ。
そしてサウザーの奥義である天翔十字鳳と速さを打ち破ったのである。

「……さらばだ! 聖帝」

ラオウはサウザーを打ち破った後、トドメの一撃を喰らわさんとする。

「させません!」

サウザーへのトドメを阻止すげく、闇がボールを片手に無数の髪を鎌のように変化させてからラオウへの特攻をしかける。
手数にものを言わせた面制圧に近い範囲攻撃。
せめてかすりでもすればラオウはアウトになって攻撃権を失い、サウザーは助かるかもしれないと思ったゆえの行動であった。

「待て、闇!」
「全ての攻撃を避けられて…」
「無駄だ、無想転生に死角はない」
「もう後ろに……!?」

だがラオウは再び無想転生ですべての攻撃を躱し、かつ敵に見えないことを利用してほぼ一瞬で背後に回り込む。
それから闇が防御や回避の態勢を取るよりも早く、ディスコードフェイザーでさえ打ち破った超・剛掌波を放った。



「闇……なぜ……俺を助けようとした……?」

心臓を破られた以上はどう足掻いても死ぬ。
ラオウの一点は許してでも安全策として闇とチルノさえ生き延びれば、ほんの僅かでも勝てる可能性はあったのかもしれない。
だが、闇は安全策を選ばず、サウザーを助けようとしてしまった。
故に今、拳王に諸共殺されようとしている。

「……私も退かぬ、媚びぬ、省みぬをやってみたんですよ。
 好きになってしまった人を見殺しに、したくなかったのですから」


「ははは、やはり愛などいらぬな」

サウザーの最後の笑顔は、自嘲とも微笑みともつかないものであった。
そして超・剛掌波の、凄まじい闘気の奔流により、2人の肉体は粉々の肉片へと変わった。
さらに勢いの止まらない奔流はちょうど後ろ側にあった聖帝軍ベンチにも直撃する。

「認められない、こんなシュラク隊や鉄華団並に悲惨な結末なんて!」
「ごめんなさい高津さん、僕らはここまでのようです」

ベンチに残っていたイオリや犬牟田は逃げる事もできぬまま、肉体がベンチごと爆発四散した。

658死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:35:14 ID:Y1vKgW0.0



「そんな……」

最後に生き残ったチルノは翔鶴の艦載機に撃ち落され、翔鶴に身体を踏みつけられていた。
サウザーや闇への援護ができなかったのは、拳王と聖帝が戦っている裏で翔鶴に撃たれたからである。

「あなたで最後、これで終わりよ」
「まだアタイは死んじゃ……がふッ」

倒れたチルノを冷酷に見下す翔鶴に、チルノは悪あがき的に弾幕を放とうとするが、その前に頭をソードで貫かれた。
妖精ゆえに即死ではないとはいえ致命傷には違いない。

「と……とちょうのみんな、ふな…っしー、アタイたち聖帝軍のかたきを取って」
「心配しないでください」
『全員皆殺しにして一匹残らず地獄に送ってあげるからね』

チルノの氷の肉体は、ガラス細工のようにピチューンと砕け散った。

そしてラオウ、翔鶴がホームベースを踏み、二点獲得。

さらに聖帝軍選手全滅により、六回裏を待たずして、この試合は終焉を迎えた。



               拳 4-2 聖

               ゲームセット



〜 〜 〜


眩い光に包まれると、拳王連合軍生き残りの9人とネットナビ2体、それから悪魔一匹は元の横浜スタジアムに戻っていた。
大半が気絶していたため、瑞鶴はすぐさまメーガナーダに命じて気を失った選手を近くの施設に運び宝玉輪を使用して傷と意識を回復させた。
MEIKOなどの気絶していた面子は、自分たちが眠っている間に試合を勝ち越したことをあるものは喜び、あるものは嘆いた。
あと、ハクメンは思いのほか、頭にダメージが言っていたのか、鎧や肉体の傷は修復されるも、未だに気絶していた。

ただ一人、ラオウは窓から横浜スタジアムを眺める。

どうやら異界で全滅した聖帝軍の血がどういう原理か注がれるらしく、大量の血が横浜スタジアムに流れこんだ。
そして花火のような魔法陣が空に浮かび上がるが、ラオウと瑞鶴以外はそれに気づかず、ラオウもまた深くは考えなかった。

ただ、闇夜に輝くあの光こそ聖帝軍の魂の輝きなのだろうと。
敵ではあったが、野球の試合に関しては、まさに強敵とも言うべき集団であったとラオウは認識している。


「聖帝軍……おまえたちは強敵だった」


ラオウはそう言いながら疲れた体を癒すべく炭酸水を飲み干した。
余談だが、この「強敵」は「とも」は読まない。そのまんま「きょうてき」のままである。




【サウザー@北斗の拳】
【金色の闇@ToLOVEるダークネス】
【アリーア・フォン・レイジ・アスナ@ガンダムビルドファイターズ】
【葛葉紘太@仮面ライダー鎧武】
【犬牟田宝火@キルラキル】
【イオリ・セイ@ガンダムビルドファイターズ】
【チルノ@東方project】

全員 死亡   聖帝軍――敗滅

659死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:35:44 ID:Y1vKgW0.0





【三日目・0時00分/神奈川県・横浜スタジアム近く】

【拳王連合軍】

【ラオウ@北斗の拳】
【状態】超強化、首輪解除、決意
【装備】なし
【道具】支給品一式、その他不明、ムギのスタメンメモ
【思考】基本:ダース・ベイダ―たちを倒す
0:少し休んだらヘルヘイム討伐に向かうぞ!
1:その次はイチローチームとドラゴンズだぞ!
2:それからビッグサイトも攻略して東京を平定するぞ!
3:東京を平定したら最後は主催(九州ロボ、死者スレ、沖縄のシャドウ)だぞ!
  それまで待っていろ!
4:平等院たちの死は悲しいが拳王たる我が立ち止まるわけにはいかんぞ!
5:聖帝軍はまさしく強敵(とも)だった……
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました
※都庁をヘルヘイムであると誤解しています
※哀しみを背負ったことで無想転生を習得しました。


【MEIKO@VOCALOID】
【状態】超強化、修羅化、首輪解除、強烈な悲しみと殺意
【装備】なし
【道具】支給品一式、ノートパソコン@現実
【思考】 基本:『真の黒幕』及び主催者共の皆殺し
0:次はヘルヘイムの奴らを皆殺し
1:ラオウへの特別な感情 どこまでもついていく
2:ハゲ(ナッパ)を見かけたら嬲り殺す、仲間がいたら皆殺し
3:恐ろしい敵だった……聖帝軍
※『無限の回転』を習得しました
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました
※アルティメットアーマーは破損したため、破棄しました


【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【状態】超強化、悪の心(中)、深い悲しみと憎悪
【装備】ロックバスター、サイトパッチ&試製甲板カタパルトのデータ
【道具】なし
【思考】基本:殺し合いを終わらせる、翔鶴を傷つける存在を殺す
0:次はヘルヘイムだ!
1:熱斗が死ぬ原因を作ったナッパとギムレーは絶対にこの手で殺す
2:翔鶴さんは絶対に失いたくない
3:僕に従姉妹(?)ができたぞーーー!
4:まだ顔を合わせていないサーフ博士を信頼
5:勝ててよかった……ダークチップ様様だね
※PETの中にいます
※ダイジョーブ博士の残した装置で強化されました。全ステータスが格段に上昇しています
※ダークチップ使用により悪の心に大きく汚染されました


【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【状態】超強化、悪の心(中)、深い悲しみと決意
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、熱斗のPET(ロックマン入り)、シンクロチップ、チップ各種(プリズム・フォレストボムは確定)、熱斗のバンダナ
【道具】ダークチップ一式
【思考】基本:殺し合いを終わらせる、彩斗を傷つける存在を許さない
0:次はヘルヘイム攻略を目指す
1:熱斗を殺す原因を作ったナッパとギムレーは絶対にこの手で殺したい
2:ダークチップを使ってでも彩斗と仲間を守る
3:瑞鶴に謎の親近感。私に血の繋がらない妹ができた?
※熱斗とロックマンより、二人の過去についての話を聞き、自身を光翔鶴と名乗るようになりました
※超強化の影響によりステータスが大幅上昇しました
※クロスフュージョン状態でのダークチップ使用により悪の心に大きく汚染されました


【川崎宗則@現実?】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンズへのヤンデレ的怒り
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式
【思考】基本:イチローを倒してでも、マリナーズに連れ戻す
0:ヘルヘイムを倒して早くイチローさんに会いたい
1:イチローさんをNTRするドラゴンズを許さない!!
2:どんなことをしてでも(最悪殺してでも)イチローさんを取り戻す!
3:イチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさん
  イチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさん
  イチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさん………………
※強化しなくとも腕前と戦闘力はメジャーリーガーです


【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【状態】超強化、首輪解除、非常に強い悲しみと黒い殺意
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式 電車ごっこロープ
【思考】基本:主催者たちに野球で挑んでぶっ殺す!
0:なんとか勝てたな……次は頑張る
1:敵は全員倒す、俺たちは絶対正しいはずだ!
2:イチロー選手をドラゴンズの魔の手から助け出したい
3:みんなには隠してるが、仲間を殺したホワイトベース組が全滅したことには超メシウマ状態w
4:てゆーか風評被害に踊らされるクズは死ね、氏ねじゃなくて死ね
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました

660死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:36:06 ID:Y1vKgW0.0


【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【状態】超強化、首輪解除、本気モード、 悲しみとショック
【道具】他人のデッキ(「ぬばたま」デッキ)
【思考】基本:あのAA
0:シャドーマン……
1:ネットバトラーの一員として主催やマーダーと戦う
2:恐ろしい敵だった聖帝軍……
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました


【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】健康、超強化、首輪解除
【装備】PSVITA(デューオ入り)、十徳ナイフ
【道具】支給品一式×3、シンクロチップ、治療道具、その他不明
【思考】基本:ネットバトルとベースボールを極める
0:ヘルヘイムだ!
1:殺し合いを終わらせた栄光を手に入れる
2:ジョジョより優越感を得る
3:熱斗やシャドーマンが死ぬ前にネットバトルを挑みたかった……
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得て、デューオとクロスフュージョン可能になりました
 新技として一分時間を止められるデューオーバーヘブンを習得しましたが、一度の使用によって強烈な疲労を伴います


【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【状態】超強化、HP満タン
【装備】ジャスティスワン、ザ・ワールド
【道具】なし
【思考】基本;とりあえず、ディオたちを見守る
0:ヘルヘイムに向かうぞ
1:九州ロボ及び主催者を殺す
2:ダークチップに汚染されてしまったロックマンと翔鶴が気がかり
3:シャドーマンたちの犠牲は無駄にしない
※ベジータの持っていたパソコンから情報を抜き出し、ヘルヘイムの情報を得ました
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さとPSVITAの筐体を得ました


【瑞鶴@艦隊これくしょん】
【状態】健康、最終決戦仕様
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、違法改造スマホ、結婚指輪
【道具】モンスターボール(メーガナーダ@アバタールチューナー2入り)、宝玉輪@女神転生シリーズ
    石ころ帽子、妨害電波発生装置、裏世界転送マシン
【思考】
基本:提督さん(サーフ)に従い、彼の理想である艦むすの楽園を築く
0:作戦に従い、拳王連合軍についていく
1:拳王連合軍にヘルヘイムを倒した後にイチリュウチームへ試合をするように仕向ける
2:拳王連合軍が優勝したらサーフと合流し、翔鶴姉も連れて行く
3:提督の目的の邪魔をする奴は容赦なく殺す
4:翔鶴姉を光の呪縛から解放したいが、ロックマンを殺すのは全ての野球の試合が終わってからにする
5:ハクメンは要警戒、必要ならば鎧の裏に仕込んだ爆弾を起爆する
6:提督さんは大丈夫、よね?
※サーフが生みだした艦むすで、ケッコンカッコカリ済みです
※『器』であるメーガナーダはミヤザキの『巫女』である瑞鶴か翔鶴にしか操れません
※裏世界転送マシンは二チームを野球ができる裏世界へ飛ばし、他参加者の妨害や乱入を防いで野球ができます
 裏世界が崩壊するタイムリミットは最大三時間。使用もあと一回だけ。
 負けたチームは崩壊する裏世界に取り残され、死亡します。(移籍などのケースはどのように扱われるか不明)
※改造により少し前の翔鶴と同じくらいの戦闘力を有しています


【ハクメン@BLAZBLUE】
【状態】気絶中、unlimitedモード、鎧にひび割れ、テルミ限定で現実逃避
【装備】斬魔・鳴神
【道具】支給品一式
【思考】基本:『悪』を全て滅する
0:(気絶中)
1:全ての『凶』への対処のためにも拳王連合軍と手を組む
2:世界の平和のためなら力による東京をやむを得ない
3:主催及び世界に災いをもたらす者を『刈り取る』
4:風鳴翼は滅する
5:東京の『凶』、千葉の『凶』は警戒を続けるが後回し
6:悪魔将軍を殺した窒にいる何者かを警戒
7:テルミ? まだ死んでないさ
※unlimitedモードに入りました
※沖縄の『凶』(シャドウ)の気配を察知しました。能力から他の参加者よりも具体的な位置がわかります
 また、具体的な倒し方を知らないため、日本の生き残った戦力を全て集めれば勝てると思っています
※鎧に罅が入り、気絶中に瑞鶴が持つ違法改造スマホで起動するリモコン式の爆弾を罅から入れこまれました



※全員、宝玉輪により試合の負傷が全回復しました

661カオスロワ10期 最終話:2022/07/17(日) 20:39:25 ID:5mMrN5JU0
「カオスロワ10期目を終わらしちゃいかんのか?」
 巨人小笠原の一言がきっかけだった。
「構わないだろう、もう2年以上止まってるしな」
 それにアンドリューW.K.が答えた。
「……そうだ、俺達7人は止まったカオスロワ終わらせた英雄だ!」
 シンが主人公らしい台詞を叫ぶ。
「『僕らは人気キャラだから、何をしても許されるからな』」
 球磨川がカッコつけて言う。
「やはり、彼らを復活させたのは正解だったな」
 彼らを復活させ、いつの間にか寝返ったサーフ博士がほくそ笑む。
「そう、そして私達が……」


「「「「「「「『大正義だ!!!』」」」」」」」



 こうして、カオスロワ10期目は終焉を迎えた。
 もう誰も彼らの凶行を止める手段を持っていなかったのだから。

 後に
 根岸崇一。
 巨人小笠原。
 アンドリューW.K.。
 シン・アスカ。
 田井中律。
 球磨川禊。
 そして、サーフ・シェフィールドの7人はカオスロワの英雄としていつまでも語り継がれるのであった。

【テラカオスバトルロワイアル 第10期 未完】

662カオスロワ11期OP:2022/07/17(日) 20:39:55 ID:5mMrN5JU0
「カオスロワ11期を始めちゃいかんのか?」
 巨人小笠原の一言がきっかけだった。
「構わないだろう」
 それにアンドリューW.K.が答えた。
「……そうだ、俺達はカオスロワを初期から支えた英雄だ!」
 シンが主人公らしい台詞を叫ぶ。
「そう、そして私達が……」

「「「「11期の主催者だ!!!」」」」

まず見せしめとして根岸崇一とサーフ・シェフィールドが殺された。

こうして、カオスロワ11期が始まった。

【巨人小笠原@なんJ】
【アンドリューW.K.@現実】
【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
【田井中律@けいおん!!】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
1:ロワを主催する。


【根岸崇一@デトロイト・メタル・シティ 死亡】
【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2 死亡】


【テラカオスバトルロワイアル 11期開幕】

663なにっ11期の投下がまるでない:2022/08/26(金) 22:45:52 ID:XPbhAFRo0
「待てよ、物語はこれから面白くなるんだぜ」

話は停滞している間にカオス・ロワ10期の主催の座を奪い取った宮沢鬼龍が不敵な笑みを浮かべて呟く。
そしてカオス・ロワの停滞を防ぐべくとある手段を取った――


「コモドドラゴンを放てっ」

こうして全会場にコモドドラゴンの軍勢が投下された。

【三日目・0時00分/成層圏 九州・ロボ】

【宮沢鬼龍@TOUGH】
【状態】健康
【装備】不明
【道具】不明
【思考】
基本:しゃあっロワ・運営!
※他の主催陣は猿空間送りにされたと考えられる

664「東の牧場のマグニスだ…」(リマスター版):2022/09/18(日) 22:25:00 ID:YnY3VC.o0

そう呟いた青年の首に丸太のような太い右腕が伸びる。
右腕を伸ばしたのは赤いドレッドヘアにいかにも凶暴そうな顔つきの男。

50㎏以上はあるであろう青年の身体が地面から浮きあがる。
男の右腕の親指と人差し指の二本だけで持ち上げられたのだ。
人間以上の筋力はあるであろう男。

そして、男は小枝を折るように……。

「マグニスさま、だ」

青年の首をへし折った。

コキャ……という小気味良いが周囲に響き渡った。

「豚が…」

マグニスさまと名乗った男は直後に青年のデイパックから支給品を物色した。
中には核ミサイルしか入っていなかったが、マグニスさまは特に気にすることはなく装備した。

マグニスさまの行動原理は簡単。
『カオスロワで優勝する、そして、人間という劣悪種の殲滅』。

ただ、それだけである。

【一日目0時・北海道】
【マグニスさま@テイルズオブシンフォニア】
【状態】健康
【装備】核ミサイル
【道具】支給品一式 不明支給品
【思考】基本:優勝する
1:マグニスさま、だ。豚が…

【パルマコスタの市民A@テイルズオブシンフォニア 死亡確認】
死因:首コキャ

665主催陣の友情物語:2022/11/20(日) 00:26:40 ID:.lfPauC.0
「コモドドラゴンをロワ会場に放っちゃいかんのか?」
巨人小笠原の一言がきっかけだった。
「いや、駄目だろ」
それにアンドリューW.K.が珍しく反論した。
「……そうだ、俺達にはコモドドラゴンなんて必要ないんだ!!」
シンがとても主人公らしい台詞を叫ぶ。
「でも、このコモドドラゴン達どうすんの?」
田井中が女子高生らしい疑問を投げかける。
「サーフと一緒にTOUGH世界に放っちゃいかんのか?」
「「「それだ!!!!」」」

こうして大量のコモドドラゴンは復活しようと画策していたサーフと共にTOUGH世界に放たれた。
何故彼らがサーフの目論見に気付いたのかは、彼らの不滅の友情がサーフの裏切り・不義を許さなかったからである。

【一日目/0時10分・主催本部】
【巨人小笠原@なんJ】
【アンドリューW.K.@現実】
【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
【田井中律@けいおん!!】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
1:ロワを主催する。


【宮沢鬼龍@TOUGH 死亡】
【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2 死亡】
死因・大量のコモドドラゴンに捕食
※TOUGH世界に大量のコモドドラゴンが放たれましたが、カオスロワには影響ありません。


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