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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

292名無し募集中。。。:2016/05/05(木) 16:56:27
アゴが前に出てる方が胸や!

293名無し募集中。。。:2016/05/05(木) 23:18:13
まさしく

「完璧な胸」

だなw

294名無し募集中。。。:2016/05/06(金) 07:39:27
おや?ミヤビのようすが…
http://scontent.cdninstagram.com/t51.2885-15/13151276_1776602252570096_1911435629_n.jpg

295 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/07(土) 02:48:28
ミヤビは肉体を強化するために顎と胸に鉄板を埋め込んでいた。
この手術さえしなければより女性的な身体になっていた、と言うのは本人談だ。
そんなミヤビに並の手段でダメージを与えられないのは明白だろう。

「お手本を見せてあげますからね……エリポンちゃん、準備は?」
「は、はい!大丈夫です!」

アイリとエリポンは坂の上で、しっかりと立ちながら武器を構えていた。
普通の人間ならばすぐにでも転げてしまいそうな急斜面ではあるが、ゴルフで鍛えた彼女らには平気なのだ。
これくらいで安定感を失うようでは良いショットなど打てるはずもない。

「じゃあ帝国剣士のみんな〜手筈通りにお願い〜」

遠距離攻撃の手段を持たぬサヤシ、カノン、アユミン、オダはそれぞれが小さな球を3つずつ持たされていた。
その球がまさに、アイリとエリポンが得意するゴルフのボールだ。
アイリの出した合図とともに、手に持ったボールを二人に投げつけていく。
つまり、計12個の球が飛んでくる形になるのである。

「私が11球打つ。エリポンちゃんは1球をしっかり!」
「はぁ〜〜い!!」

いつもふにゃふにゃとした顔をしているアイリがカッと眼を見開き、愛用する棍棒を振り上げる。
彼女の眼にはヒト、そしてモノの弱点がハッキリ見えるという特性があった。
ゆえにミヤビのどこを狙って打ち付ければ良いのか手に取るように分かるのだ。

(人体急所から顎と心臓を除いた全てのポイント……一つ残さず打ち抜くよ!)

本心から来る強い殺気はシミハムの無でさえも消し去ることが出来ない。
神話上の雷神であるトールが操るようなイカズチがアイリから放たれ、
ボールよりも速いスピードでミヤビの急所にブチまけられる。

「ぐっ……アイリも本気なんだな……そっちがその気なら!!」

脇差を鞘から抜き、すべてのボールを打ち落とそうとミヤビは構える。
武器の刀身こそ短いが、だからこそ俊敏な動きで複数箇所への同時攻撃にも対応することが出来るのだ。
彼女の実力であれば問題なくこなせるような容易い仕事であったが、ここでアクシデントが起きる。
突如、ミヤビの目に光が差し込まれたのだ。

「ま、眩しい!?」

この光の正体はオダのブロードソード「レフ」によって反射された太陽光だ。
常に大嵐を巻き起こすマイミとの相性は最悪だったが、今はその懸念要素をシミハムが消してくれている。
そのためミヤビの視力を一時的に奪うことが出来たのである。
そんなミヤビにアイリのボールが容赦なく襲い掛かる。

「まったくもう、世話が焼けるなぁ」

このままミヤビにHITして終わりかと思いきや、その前にモモコが立ちはだかった。
そして足で床をバンと叩くことで、謎の強風を巻き起こしたのだ。
こうして起きた風の壁は思いのほか厚く、すべてのボールが空しくも落とされてしまった。

「う……モモコが助けてくれたのか……」
「どう?頼れるでしょ?」
「(借りを作るのは癪だが仕方ない……)あ、ありがとう」
「どういたしましてっ」

モモコとミヤビが会話を交わしているうちに、もう一球のボールが飛んできた。
それはエリポンがアイリより少し遅れて、鞘入りの打刀でスッ飛ばした一撃だ。
これもアイリの攻撃同様に防いでやろうとモモコは強く足を踏む。

「頼れるお姉さんがまた守ってあげるからね〜…………ぐえっ!」

風圧を発生させてガードしようと思ったが、なんとエリポンの打球はその壁すらも突き抜けてしまった。
流石に球の勢いはかなり殺されたようだが、モモコのお腹に当たること自体は成功する。

「モモコ!?攻撃をもらうなんて珍しい……」「痛ぁい……手抜きしたつもりは無いんだけどなぁ」
「という事は、あのエリポンって子のパワーはアイリよりも優れているって事か……」
「それは確かだろうね。なんか腕の筋肉とか凄いし。
 でも大丈夫。いくら強いと言ってもマイミやクマイチャン程じゃ無いんだから。」

296 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/07(土) 02:51:18
研修生の診断テストはとても楽しかったですよ〜
結果の詳細はネット記事や次週のハロステで見てもらいたいのですが、
個人的にはとても納得な受賞でした。
現場を驚かせたメンバーが賞を取るのは良いですね。

>>294
あれ!?いつの間に……

297名無し募集中。。。:2016/05/07(土) 03:15:25
服の上からならどんなに無乳でもブラのおかげで多少はあるように見えるもの
頑張って盛らなくてもね

298 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/07(土) 17:24:36
「まぁ〜、あなた凄いじゃない!」
「エリのボールが……当たった……」

アイリに褒められたエリポンはなんとも言えぬ嬉しさを噛み締めていた。
決定打では無いとはいえ、あの食卓の騎士に攻撃が届いたことに感激しているのだ。

「そこのあなたも、さっきの光はナイスアシストですよ〜」
「ありがとうございます!」

いつもは冷めた風なオダ・プロジドリもアイリに評価されるのは嬉しいようだ。
まだ気を抜けない状況だと言うのにニヤけが止まらない。
そんなオダを見て、アユミンは面白くなさそうにつぶやく。

「エリポンさんにボールを投げたのは私なのに……」
「あら、そうだったの?ごめんなさい。じゃあアユミンちゃんも敢闘賞ね。」
「えへへへっ、どうも。」
「でもみんな油断しちゃダメよ。 モモコの"空気の壁"がある限りは我々の攻撃は通用しないんですからね。
 せめて気を間際らせるような手段でもあれば……」

ミヤビを狙おうにもモモコがそれを防いでしまう。
ならばまずモモコを排除する手段を考えねばならないだろう。
そしてなんと、それをやってみせる策がKASTには用意されていた。

「はいはーい!それなら私たちに任せてください!」
「サユキちゃん?どうすると言うの?」
「名付けて"人間大砲"……ウチのアーリーの馬鹿力でカリンを船まで飛ばしちゃうんですよ。」
「まぁ!そんなことが出来るの?」
「出来るよね?アーリー?」
「うん!リンカなら軽いから余裕やで。」

アーリーはトモのように両足でしっかりと柵を掴んでいた。
ゆえに両腕はフリーの状態。
これならばカリンをぐるんぐるんに回して向こうまで吹っ飛ばすことが出来ると思ったのだ。
カリンの実力でベリーズに対抗できるとは思えないが、
ちょっとだけモモコの気を逸らすことくらいなら出来るはず。

「というワケでカリン!ちょっくら行ってきてよ!」
「……いやいやいやいや」

299 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/11(水) 02:47:35
人間大砲役に任命されたカリンは、思いっきり首を横に振って拒否の意を示した。
決してベリーズだらけの船に乗るのが怖いわけではない。
ハル・チェ・ドゥーが今まさにそうしようとしているのに、
ここでカリンがビビってしまったらKASTの名折れだ。
ではアーリーの投げる力が足りず、船に到達する前に海に落下することを恐れているのか?
それも違う。カリンはアーリーの力を信じている。
遠心力を最大限に利用したジャイアントスイングならば必ず目的地に届くと確信しているのだ。

「じゃあいったいなんだって言うのよ。」
「……酔っちゃう。」
「なんだって?」
「アーリーに強く振り回されたら気持ち悪くなっちゃうよ……
 ひょっとしたら朝ごはんを戻しちゃうかもしれない……」
「はぁ……」

十分強い戦士だというのに変なところで気にするカリンに、サユキは少し呆れてしまう。

「あのねカリン、あなたはマナカって人と一緒に空を飛んでたでしょ。」
「う、うん、ちょっとだけね。」
「あれで平気だったんだからどうせ今回も平気でしょ」
「そうかなぁ……全然違うと思うけど……」
「はい!早くしないと船が行っちゃうよ!決断する!」
「あ、そうだ!サユキが飛ばしてもらうのはどう?」
「私は重いから飛べないの。」
「え?ダイエット成功したってあんなに自慢してたのに。」
「アーリー!やっちゃって!!」

サユキの指示によって、アーリーはカリンの足首を徐ろに掴み出した。
そして例によってぐるんぐるんに回しては、ベリーズのいる船までぶん投げたのだった。
緊急事態ゆえにカリンの意思は二の次だ。

「いやああああああああああああ!!」

どこかの猫のキャラクターのように体重はリンゴ3つ分……とまではいかないが、カリンは軽い。
そのため、あっという間に船のある位置まで達してしまった。
後は甲板に着地して、モモコを惑わすような行動を取るだけだったのだが……

「乗せてあげないよ!!」

一部始終を見ていたミヤビが飛び上がり、
タイミング良くカカト落としをぶつけることでカリンを海に落としてしまった。
まさに100点の迎撃だったが、ここでモモコがcha cha……ではなく茶々を入れ出す。

「うわぁ〜……あんなか弱い子にそんな仕打ちするなんて引いちゃうなぁ……」
「立ち向かってきた相手に全力で応えて何が悪い!?
 それにか弱い子を蹴落とす事ならモモコだってチサキちゃんにやってたじゃないか!」
「語弊がある。」
「難しい言葉を使うな!」
「チサキちゃんはか弱くないって言いたいの。」

300名無し募集中。。。:2016/05/11(水) 07:54:25
キティ!

301 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/12(木) 12:56:35
「うわっ……カリンが落ちた……」

サユキとアーリーは「しまった」という表情をしながら互いの顔を見合わせた。
まさかこうも簡単にあしらわれるなんて思ってもいなかったのだ。
そしてそんなカリンを、あのオカールも心配していた。

「大丈夫か?アレ……カリンって泳げるの?」
「えっと、人並みくらいなら泳げると思います……たぶん。」
「まぁそうだよな。泳げないのはウチの大将くらいのもんか。」
「え?マイミ様って泳げないんですか?意外……」
「沈んじゃうんだよ。筋肉と鉄の塊だから。」
「あー……」

走りと自転車が得意なマイミも、泳ぎまでパーフェクトとは行かなかった。
それが出来たら単身で船まで乗り込んでいただろうに実にもったいない。

「ねぇキー、人間大砲の作戦はどうするの?……」
「うーん、いくらアーリーが船まで投げても、ああなっちゃったら意味がないよね。」
「じゃあ辞めようか。」
「いや、その必要はないだろ。」
「「オカール様!?」」
「要はミヤビちゃん……じゃなかった、ミヤビに迎撃されなきゃいいんだろ?
 じゃあさ、俺を船まで飛ばしてくれよ。逆に怪我させてやるぜ。」
「オカール様が砲弾になるってことですか!?」
「せっかくだから、人間大砲と同時に"人間魚雷"もぶっ放しちまうか。」
「「人間魚雷?」」

302名無し募集中。。。:2016/05/14(土) 01:01:17
あの人かw

303 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/15(日) 10:07:06
次回更新は明日になりそうです……

304名無し募集中。。。:2016/05/15(日) 11:20:55
外伝書くなら前スレの方に貼った方がいいのかな

305 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/16(月) 14:33:19
外伝は前スレと、このスレのどちらでも大歓迎ですよ!
前スレに書く場合はこちらで宣伝してもらえると嬉しいです。

306 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/16(月) 22:56:10
「なんだ?……」

一部の箇所で「泡」が大きく広がっていることにミヤビは気づいた。
細かな泡の集合体はまるで真っ白いあの雲のように見える。
橋の全体を覆うほどには大きくないが、向こう側が見えにくくなっているため
何が行われているのか判別がつかない。

「あれは確か……」
「モモコ、知っているのか?」
「うん。だってうちのマナカちゃんを苦しめた張本人なんだもん。」

察しの通り、この泡を発生させたのは新人番長のリカコ・シッツレイだ。
彼女の扱う固形石鹸は菌以外の何者も殺せぬほどに弱いが、
味方をサポートする能力においてはなかなかのものを持っている。
例えば、泡の向こうにいる銃撃手の姿を隠すことくらいは簡単に出来るのである。

「弾丸!」

泡壁から2発の銃弾が飛んできた。狙いはミヤビとモモコだ。
いくら二人が強者とはいえ、撃ってくる場所もタイミングも分からぬ攻撃までは避けられない。
これは喰らうのも止むなしと思ったところだったが、
三節棍を振り回して弾丸を弾いたシミハムのおかげで、なんとか助けられる。

「団長!流石です!」
「助かった……あぁ、一安心。」
「いやモモコ、安心なんかさせて貰えないみたいだぞ……」
「げっ!」

ミヤビとモモコを狙う銃弾は2発程度では終わらなかった。
今まさにバン、バン、バンと連続で襲いかかって来ている。
発砲の勢いで泡の壁がかき消されるのではないかと期待したが、
リカコが発生させるスピードの方が上回っているため依然姿を確認出来ない。
故にベリーズも、このガンナー達が本業でないことには気づいていないだろう。

「マーチャンさん\(^o^)/すごい〜\(^o^)/」
「もう!全然見えないから撃ちにくい!!……もう覚えたからいいケド。」

一人目の銃撃手は帝国剣士のマーチャンだった。
銃自体はその辺で調達した安物ではあるが、
なんでもすぐ覚える天賦の才で、見事に扱えているのである。

「マホです……ごち。」
「メイメイさんんんんんんんマホの真似似てる(^o^)(^o^)(^o^)」

そしてもう一人。
ただの拳銃をライフルのように構えているのはメイ・オールウェーズ・コーダーだ。
番長きってのスナイパー、マホのモノマネをすることでその腕前までも再現しているのである。
格上・食卓の騎士の演技は1秒が限界だが、後輩のマネならいくらでも続けられるため
まだまだミヤビとモモコを追い詰めることが出来るのだ。

307 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/18(水) 12:59:06
マーチャンとメイによる射撃はとても有効だった。
アイリとエリポンも継続してボールを打ち続けているため、ベリーズも自由に動くことが出来なくなっている。
更に鉄球を握ったマイミが投球のタイミングを虎視眈々と狙い続けているので、
そちらにも注意を払わねばならない。
船が橋から十分遠ざかるまで防衛し続けるのはなかなかに骨の折れる作業だった。
そんな攻防を続けている中で、サユキが海面で起きた異常に気付き出す。

「あ!誰か浮かんできた……カリンかな?」

船に近いところで何者かが海中から浮上してきている。
先ほどミヤビに蹴り落とされたカリンが上がってきたのかと推測したが、
カリンにしてはやや身長が高すぎていた。

「え!?……ハル……なの?」

浮かんできた者の正体はハル・チェ・ドゥーだった。
白目をむいているし、明らかに気を失っている。
泳ぎが得意だと息巻いていたというのに、今の姿は溺れているようにしか見えない。
何故ハルがこんな目にあったのか、そして何故カリンは上がってこないのか、
その理由は、海中の支配者であるチサキが動いたからに他ならない。

(あの人は確かマナカちゃんを刺したカリンって人……許せない!)

チサキは両手で海水を包み込み、水鉄砲のような形でカリンの脚へと噴出させた。
チサキは極度の緊張しいなため、並の人間より汗をかきやすくなっている。
そうして発せられた粘着性の強い汗が海水と混ざり、
動きの自由を奪う粘液へと変化するのだ。

(え!?両脚がくっついて、動かない!?)

所詮は汗なので痛みのようなものはまるで無い。
それに粘着性だってトリモチほど強力ではないため、振り解けば簡単に取り外すことが出来る。
だが、魚群の前でそんなワンアクションに気を取られるのは命取りだ。
チサキの指示を受けた魚たちはカリンのお腹へと次々と突撃していく。

(〜〜〜〜〜〜!!!!)

こんなことをされたら口の中に含んでいた空気を吐き出さざるを得ない。
外に出て空気を補給しようにも魚が壁を作って邪魔をする。
いくら戦士として強かろうと、海の中で魚に敵うはずがないのだ。
結果としてカリンもハルと同様に溺れてしまう。

(ふぅ……緊張したけど、2人目も倒したぞっ!)

308名無し募集中。。。:2016/05/18(水) 20:02:26
チィちゃんなかなかやるなw
そういやラジオで水泳得意って言ってたなぁ

309名無し募集中。。。:2016/05/18(水) 21:38:10
不忍池でアトランティスにロビンマスクが負けた時みたいだなw

310名無し募集中。。。:2016/05/19(木) 02:24:32
前スレで外伝始めさせて頂きました
よろしくお願いします

311 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/19(木) 08:49:11
さっそく見させていただきました!感想は向こうの方に書いています。
「始めた」ということは続きもあると言うことなので、
期待して待ってます。

312 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/19(木) 12:56:57
ちょっぴり調子に乗りやすいチサキは、水中戦ならば自分は無敵だと思ってしまった。
確かに魚を操る能力は便利だし、チサキ自身も泳ぎが大得意。
相手が帝国剣士だろうと、番長だろうと、難なく勝利を収めることが出来るだろう。
ところが、数秒後にはそんな自信も吹っ飛ぶことになる。

(え!?あれはなんだろう……)

チサキが目にしたのは、魚雷の如き速度で海中を突っ切る「人間」の姿だった。
船へと向かっているので本来ならば止めなくてはならないのだが、
その泳力はチサキどころか本物の魚さえも越えているため、どうにも出来ない。
おそらくは魚群で壁を作っても1匹残らず弾き飛ばされてしまうだろう。

(怖いなぁ……近づきたくないから放っておこう。
 そろそろ苦しくなってきたし、息継ぎしなきゃ。)

人間である以上、酸素の補給は必要。
それはチサキも例外ではなかった。
また大量の空気を肺へと送り込むため、海面から顔を出そうとするチサキだったが……

「ぎゃ!」

その矢先に何者かに顔を踏んづけられたため、残念なことにチサキは気絶してしまった。
こんな海のど真ん中で誰が踏んだのかと言うと、人間大砲としてアーリーに飛ばされたオカールだった。
オカールの全体重がチサキの顔面にのしかかったのだ。

「おーーーい!!飛ばしてくれたのはいいけど全然船に届いて無いじゃねぇか!!
 たまたま都合の良い足場が有ったから助かったけどよぉ!!」
「ごめんなさーい!だってオカール様は重……」
「わーーー!言うな言うな!分かったからそれ以上言わなくて良い!!
 こっからは自力で船に飛び移ってやるよ!」

オカールはチサキの顔を蹴り上げてJUMPし、船の甲板に飛び移ろうとした。
ベリーズとしては勿論そんなことを許せるわけが無い。
先ほどカリンを落としたように、ミヤビが迎撃へと向かう。

「オカール、ここは通さないよ。」
「ミヤビちゃん!望むところだ!!」

313名無し募集中。。。:2016/05/19(木) 13:32:52
JAUPきたー

314名無し募集中。。。:2016/05/19(木) 18:53:51
エイヤサ!

315 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/19(木) 21:02:03
強い殺気を持てばシミハムの「無」をも打ち破ることが出来る。
……というのは先ほどアイリが実践してみせた通りだ。
そして今、同様のことをオカールが見せつけようとしている。
凶暴性が具現化されたような狼の群れが出現し、ミヤビの全身にドンドン噛み付いていく。
生身の体はもちろん、鉄で出来た顎や胸板さえも砕かんばかりの勢いだ。
普通の人間であればSHOCK!に耐え切れずにぶっ倒れてしまうところだろう。
しかし、ミヤビは怯まない。
オーラは所詮オーラ。本当に怖いのはオカールの両手に装着されたジャマダハルだということを理解しているのだ。
短い脇差を構えては、空中からの両突きを見事に防ぎきる。

「甘い!そんな攻撃で乗り越えられると思うな!」
(チッ、殺気も出してないのにこの強さかよ……じゃあ次はこうだ!)

ジャマダハルを脇差に当てた衝撃を利用して、オカールはまた高いところへ跳び上がる。
この時のオカールは「サクッと世界羽ばたく、そんなPowerはいかが?」とでも言いたげな顔をしていたため、
何かしでかすであろうことを感じたミヤビは最大限に警戒した。

「さすがミヤビちゃん、隙を見せないねぇ……
 でもこの攻撃は隙とかそういうの関係ないから!!」

オカールは自身が落下するのと同時に、下方向へと無数のラッシュパンチを繰り出した。
その手数は尋常じゃなく、もはや人の目で捉えることが不可能なくらい多い。
しかも一撃一撃がジャマダハルによる鋭い斬撃であるので、
小さな脇差では到底防ぎきることが出来ないだろう。
言うならば考えなしのスピードとパワーのゴリ押し。
このやり方がオカールには一番合っているのだ。
ところが、こんな状況だと言うのにミヤビは冷静だった。

「まともにやり有ったら怪我しちゃうな……一対一の勝負ならね。」
「!!」

ミヤビに攻撃が届くよりも早く、オカールの身体が宙に浮いたまま停止してしまう。
本来ならそんなことは有り得ないのだが、この現象の理由にオカールはいち早く気づいた。
身動きを奪う「糸」の存在をはなから知っていたのだ。

「あーうっとおしい!モモコだろコレ!」
「せいかーい。分かっちゃった?」
「ミヤビちゃんはこんな卑怯なマネしないもんね!」
「まぁ!卑怯とは失礼ね。」

気づけばオカールはミヤビとモモコの2人に囲まれていた。
橋からの攻撃をシミハムが(汗だくになりながらも)一手に引き受けたことで、この状況を作り出したのだ。
いくらオカールが強いとは言っても、食卓の騎士2人が相手では分が悪い。
このまま糸を操られて海に落とされてしまうのがオチだろう。
だが、この状況でもオカールは絶望などしていない。
そもそも1対2の戦いとは思っていなかったのだ。

「来るぜ、魚雷がよ!」
「「!」」

オカール達のいる反対側からバシャンと言った大きな音が聞こえてた。
そしてその音を出した主は、まるでトビウオが跳ぶかのように船へと乗り込もうとしてきている。
顔に負けず劣らずの魚っぷりに誰もが驚かされたことだろう。

「『確変"派生・海岸清掃"』からの〜〜『確変"派生・ガーディアン"』!!」
「「ナカサキ!!」

316名無し募集中。。。:2016/05/19(木) 23:24:46
ナカサキ成長したな
もはや別人のようw

317名無し募集中。。。:2016/05/20(金) 00:06:39
でもナカサキって確か前は
・戦場で銃撃されてもすべて弾いたり
・バーサーカー状態のミキティ転ばしたり
・勝つためには自分の頸動脈切るほどの覚悟を見せたりと
特別派手な勝利や見せ場はなくても地味にすごいことしてた気がする

318名無し募集中。。。:2016/05/20(金) 00:12:51
“魚雷”っていうくらいだから船の動力部分を破壊してから乗り込むのかと思ってたw

319名無し募集中。。。:2016/05/20(金) 08:19:20
気づかれる前に「魚雷が来る」と教えるオカール
不意を衝く作戦かと思いきや一瞬でも身構える時間を与えてるw

320名無し募集中。。。:2016/05/20(金) 10:54:58
>>318
しーっ!w

321 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/20(金) 12:17:27
船に突撃した時のナカサキは強い殺気を放っていたため、
他の食卓の騎士の例に漏れずオーラが具現化されていた。
ナカサキのオーラと言えばいかにも弱そうな奇妙な怪物であったが、今は違う。
なんと、その怪物の容姿がウロコやエラの生えた半魚人風のグロテスクな生物に変化していたのだ。
それだけでも帝国剣士や番長、KASTらに衝撃を与えたというのに、怪獣は更にもう一段階変化する。
ナカサキが『確変"派生・ガーディアン"』と叫んだのに連動して、全身を鎧で覆った騎士のような姿になっていった。
このようにオーラの形をコロコロと変える食卓の騎士は初めて見るので、一同は戸惑いを隠せないようだ。

「ナカサキが本当に凄いのは生身の肉体の方ですけどね〜」

アイリがそう言ったことで視線はナカサキの身体に集まる。
するとどうだろうか、普段は頼りないと思っていたその筋肉が全身パンパンに膨れ上がっているではないか。
刃さえも跳ね返してしまいそうな程にカチカチになったその筋肉はまさに鎧そのもの。
このように己の筋力を自在に操作することがナカサキの必殺技である「確変」なのである。
瞬間的なパワーであればキュート随一、だというのはマイミも認めている。

「水泳時には泳ぐための筋力を、白兵戦では戦い抜くための筋力を強化出来るのがナカサキの強みだ。
 私にはあの芸当はとてもじゃないが出来ないな。日々の訓練の賜物だろう。」

ナカサキのオーラの意味に気づき始める者も、チラホラ現れ始めた。
要するに、あの怪獣達は主人であるナカサキの状態をリアルタイムに表現しているのだ。
攻撃、防御、移動、踊りなどの様々な用途に合わせて筋肉量を操作するのに対応して、
怪獣も姿形を自由自在に変えていく。
今のナカサキはイメージ通り、ガーディアンとして戦うために、船の甲板に足を踏み入れた。

「まずいよミヤビ!ナカサキにまで加勢されたら大ピンチになっちゃう〜!」
「白々しいぞモモコ……ガーディアンならベリーズにもいる事は分かってるだろうに。」

ミヤビがそう言うのと同じタイミングで、船の入り口からとある人物が出てきた。
そいつが何者かなんてことは一目瞭然。説明要らずですぐに分かる。
それは何故か?理由は簡単だ。
こんなに巨大な女性は有史の中でも彼女くらいしか存在しないからである。

「クマイチャン!!」
「ナカサキ……ここは通さない!!!」

322 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/20(金) 12:18:30
不意打ちの有効性よりもその場のカッコよさを重視しちゃったということでご理解くださいw

323名無し募集中。。。:2016/05/20(金) 13:51:27
ライバル対決きたー!今も引き分け続けてるのかな?

「確変」はかつてのあの能力(名前ど忘れ)が進化した力なんだね

324名無し募集中。。。:2016/05/20(金) 14:09:19
確変はかつても確変だった気が・・・
ちなみにほぼ同じ原理で体の一部のみを変えることもできた吉澤さんのはたしか白熊化だったかな?

325名無し募集中。。。:2016/05/20(金) 16:44:51
ナカサキvsクマイチャン!
はじめの一歩の一歩対宮田みたいにあれからずっと引き延ばしになってたりしてw

326 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/21(土) 13:05:30
いつもの日常ならばブランチでも食べたくなるような昼下がりに、
クマイチャンのような巨人が出現したので若手らは凍りついてしまう。
威圧感で言えば他のベリーズも変わらないのだが、
自称176cmという規格外のサイズが更にビビらせているのかもしれない。
特に過去に直接対峙したことのあるサヤシや番長たちにとっては、心臓を鷲掴みにされる思いだ。
そんな化け物が相手なのだから比較的小柄なナカサキはすぐに吹っ飛ばされてしまうと思われたが、
全てを薙ぎ払わんとするクマイチャンの長刀を二本の曲刀で見事に受け止めていた。

「よく止めたね……私が出てくるって予想してた?」
「何千回剣を交えたと思ってるの?クマイチャンの攻撃を見切ることなんて簡単なんだからね。」
「ふふっ、そうこなくっちゃ。」

話し口調だけみれば同年代の会話のように見えるが、その表情はどちらも冷徹そのものだった。
クマイチャンに至っては殺し屋のような目をしている。
お互いに強い殺意を持ちながら、鍔迫り合いを続けていく。

「あの分だと決着が着くのは当分先ね。オカール。」
「なにが言いたいんだよ、モモコ。」
「残念だけどナカサキにはオカールに加勢する暇は無いってこと。
 そろそろ海に落としちゃおうと思うんだけど、覚悟はできてる?」
「……しょうがないな、落とすなら落とせよ。」
「あら、やけに素直なのね。」
「時間は十分に稼げたからな。」
「!?」

本来時間を稼ぎたいのはベリーズの方だったはず。
船が橋から十分に離れればそれだけでミッションは完了となるからだ。
では何故オカールがこのような発言をしたのか……その理由はすぐに分かる。

「団長!!大丈夫ですか!?」

327 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/21(土) 13:06:31
前作も名前は確変でしたね。
今作では強化する部位を器用に選べるようになりました。

328名無し募集中。。。:2016/05/21(土) 13:45:27
確変の弱点は解消されてるのかが気になるところ
されてるとしたらどのように?
前作では白熊でも比較的対処はされてても克服とまではいってないくらいだったが・・・

329 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/22(日) 16:53:34
オカールの発言とほぼ同じタイミングで、バキッと言う破壊音が聞こえてきた。
その先ではベリーズの団長、シミハムが腹を抑えて苦しそうにうずくまっている。
近くに鉄球が転がっていたので、モモコは誰の仕業なのか瞬時に理解することが出来た。

「マイミか……」

モモコやミヤビ、そしてクマイチャンがキュートに応対している間、
シミハムは橋からの遠距離攻撃を全て三節棍で弾き飛ばしていた。
超人的な反射神経と巧みな戦闘技術がそれを可能としていたのだが、
1人で戦う時間があまりにも長かったため、ひどく消耗してしまったのである。
相手が格下だけならば疲れた身体でもなんとか踏ん張れただろう。
しかし、橋にはマイミがいる。アイリだっている。
いくらシミハムと言えどもそれらの強者の攻撃をただ受け続けるだけというのは辛かったようだ。
そして結果的に、マイミのブン投げた鉄球に棍を折られ、腹に強烈なダメージを負ってしまったという訳である。
この成果には帝国剣士、番長、KASTらも歓喜する。

「凄い!やっぱりマイミ様とアイリ様は凄いっちゃ!」
「それもそうやけど、これはカナたち若手勢の力も通用しとる証拠やで!」
「遠い存在と思ってたけど……ベリーズの足首を掴めるところまで来てたのかもね……」

ただの一撃のおかげで、連合軍の士気は上がりに上がっている。
逆にテンションが落ちているのはベリーズとカントリー達だ。
モモコはしまったという顔をしながら頭を抱えている。

「やっちゃったなぁ……ミヤビ、次どうする?」
「……」
「ミヤビ?」
「遊び過ぎたんだ……」
「ミヤビ?どうした?」
「これ以上調子に乗らせる訳には行かない!!本気だ!本気で相手してやる!!」

ミヤビがそう言った瞬間、この空間にいるすべての者は無数の刃によって全身を切り裂かれてしまった。
もちろん本物の刃でないことは言うまでもない。
これはミヤビの凶暴凶悪な殺気が形となった諸刃の剣なのだ。
弱者だろうと強者だろうと、相手だろうと味方だろうと関係なく、鋭い刃物で八つ裂きにしていく。
あまりにリアル過ぎる苦痛に、帝国剣士、番長、KAST、そしてカントリーの面々は戦意を喪失してしまった。
これだけでも十分脅威なのだが、ミヤビはまだ動きを止めなかった。
オーラは所詮オーラ。
相手を真に屈服させることが出来るのは自分の腕だけである事を理解しているのである。

「オカール、遊びは終わりだ。」

ミヤビはオカールに絡みついた糸を、脇差でスパスパと切断していく。
自身を宙に浮かせていた糸が切れたということは、オカールの行き先はただ一つ。
容赦なく海へと落ちていくのだった。

「うわああああああああ!」

330名無し募集中。。。:2016/05/22(日) 18:54:02
戦いが始まってしばらく経つけど船と橋との距離はどのくらい離れてるんだろう?

ところで過去ログ置き場にアクセスしてもトップページいっちゃうんだけどどうやって読むの?

331 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/23(月) 12:43:54
船と橋は、声が聞こえて表情も確認できる程度にしか離れていません。
作中では大して時間が経ってないってことになりますね。

で、まとめサイトですが恐らく消されちゃってますね……
長期間放置しちゃってたので、仕方ないとは思ってます。
近いうちに復旧しますね。

332名無し募集中。。。:2016/05/23(月) 13:11:29
勝手ながら自分が読み返したいときにお世話になってるのを貼らせてもらうと
ここと
http://ifs.nog.cc/ookami-bc.hp.infoseek.co.jp/txt/kingdom.html
ここ
http://www29.atwiki.jp/masao001/
でマーサー王は大体読めるかと

333名無し募集中。。。:2016/05/23(月) 15:24:52
ありがとう

334 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/24(火) 01:06:02
過去ログの紹介をしてくれてありがとうございます。
そのページをもとに、また過去ログwikiを復活させます。

335 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/24(火) 12:57:05
更新は夜になりそうです。

336 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/24(火) 23:03:01
オカールを落とした勢いそのままに、ミヤビはナカサキの背後にまで回り込んだ。
本来ならば一騎討ちの真剣勝負に水を差すなんて気が引けるのだが、
緊急時ゆえにそうせざるを得なかった。

「先に謝る!クマイチャンごめん!」
「「!?」」

ナカサキは両手の曲刀でクマイチャンの剣を受け止めるのがやっとだったので、
背後からくる脇差を防御するために手を回すことは出来なかった。
だが、ナカサキにはこんな状況でも使える防御法が残されている。

(背中の筋肉を強化する!)

背筋を一瞬にして逞しく膨らますことによって、
脇差程度の刃ならはね除けられる身体に変化する。
これもナカサキの必殺技である「確変」の応用だ。
全体の筋肉量のバランスから、腕の力がやや落ちるのが難点ではあるが、
いつどんな時でも自由にガードを固められるのは非常に効果的だ。
おかげでちょっとやそっとのダメージなら無視することができる。
もっとも、ミヤビの攻撃が「ちょっとやそっと」に当てはまるかと言うと、そうでは無いのだが。

「はっ!!」

ミヤビは通用しなかった脇差をそこらに投げ捨て、
その代わりに自らの顎でナカサキの背中に斬りかかった。
ミヤビの顎に仕込まれた鉄製の刃は通常の刀の何倍も鋭いため、
硬くなった背中もバターのように切断し、大量の血を流すことに成功する。
端から見れば非常に馬鹿らしい光景かもしれないが、これが何よりも効くのだ。

「あ……あぁ……」
「いくら防御力を強化しても私の刃は防げないよ。
 まぁ、"海岸清掃"や"JUMP"、"Steady go!"で場を掻き回されたら流石に面倒だったけども、
 クマイチャンとの決闘中だったからそんな余裕は無いよね。」
「ミヤビ!ナカサキとは私が戦ってたのに!」
「だからさっき謝ったじゃないか。」
「もう!」

ここまでの一連の流れを見て、マイミはひどく絶望していた。
せっかく善戦しかけていたというのに、
ミヤビが少し本気を出しただけで連合軍が壊滅状態になったことがSHOCK!だったのだ。
大半の若手は殺人オーラにやられ、オカールは落とされ、ナカサキも今まさに船から追い出されようとしている。
残る戦力はマイミとアイリのみ。一体どうやって戦えと言うのか?

「くそっ……せめて私が泳げれば……!!」

337名無し募集中。。。:2016/05/25(水) 01:15:58
オカール普通に落ちたのかw
何しにいったんやw

338 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/25(水) 13:00:37
マイミにはもう、投げるつけるための鉄球は残されていなかった。
つまりは連合軍には攻撃の手立てが無いということになるのだが
諦めきれないマイミは自分たちの足場に拳を叩きつけて、橋の破片を生成していった。
これらを投げることによってギリギリまで攻撃しようと考えているのだろう。
だが、そんな戦法が通用しないのは火を見るよりも明らかだ。
これまでは若手戦士らのサポートが有ったからこそ、やっと一球だけぶつけられたというのに、
それらの支援抜きでどうやってモモコやミヤビ、クマイチャンを倒しきることが出来ると言うのだろうか。
せめてアイリの協力があれば可能性が見えてくるかもしれないが、キッパリと拒否されてしまう。

「今回は諦めましょう。 ベリーズを倒しきるには戦力が不足しています。」
「何故だ!まだ勝負はついていないだろう!」
「海に落ちた仲間を救出するのが先決だって言ってるんですよ。
 ナカサキはきっと平気でしょうけども、ハルとカリン、そして糸まみれのオカールが無事である保証はありません。
 勝てるかどうかも分からない勝負に固執して、次回以降の勝率を落とすのは馬鹿げてます
。」
「くっ……でも、その次回があるかどうかは……」
「ありますよ。」
「えっ?」
「ベリーズにリターンマッチを申し込みましょう。 お願いすれば、きっと聞いてくれます。」
「え?え?え?」

マイミは困惑するしかなかった。
言葉の意味自体は理解できるのだが、アイリがこんな提案を自信満々に言い放つ理由が分からないのだ。
ベリーズは敵なはず。そんな敵がこちらの有利な案を聞き入れてくれるのだろうか?
マイミの頭の整理がつくより先に、アイリがモモコにお願いをし始める。

「モモコー。今日は私たちの負けです。
 でもやっぱり諦めきれないので、いつか再戦しませんかー?」
「しょうがないなー。いーよー。」
「????????」

マイミの頭上にはクエスチョンマークが大挙して押し寄せていた。
何故アイリはこんな提案を出来たのか?
何故モモコはそれを簡単に承認しているのか?
全くもって分からない。

339名無し募集中。。。:2016/05/25(水) 14:27:42
しかしせっかくのチャンスをここまで何もできなかったとなると作戦立てたカナナンが責められるのではないか

340名無し募集中。。。:2016/05/25(水) 15:19:42
あぁ薄々そうじゃないかと思ったけどやっぱりそうなのねwそれならまだ「彼女」が出てこない理由も納得だわ

341 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/26(木) 13:08:13
彼女とはいったい誰のことなんでしょうねw
心当たりがありすぎて……

342 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/26(木) 21:07:57
ベリーズにはアイリの声に耳を傾けるメリットは無いように思えた。
全てを無視してこのまま船を進めたとしても、何もおかしくは無いはずだ。
だと言うのに、モモコはリターンマッチの依頼を受け入れている。
ミヤビやクマイチャンも頷いていることから、モモコが独断で決めたというワケでも無いらしい。
こんなうまい話があるのだろうか?
甘い罠に気をつけるべきでは無いのか?
いつもは同僚に簡単に騙されるマイミも、今回ばかりは疑いにかかった。

「ひょっとして、私たちを油断させている間に王やサユに危害を加えるつもりじゃないか……?」
「それはないよ!」
「!?」

突然クマイチャンが大声を出して否定したので、マイミは驚いた。
そしてその驚きが止まぬうちにミヤビが言葉を続けていく。

「今すぐ2人をどうこうするってことは無いよ。約束していい。
 だって、そんなことをしたら私たちの目的が果たせなくなるからね……
 少なくとも、リターンマッチが終わるまでは丁重におもてなすつもりだよ。」
「!!!……ではそのリターンマッチは、いつ行われるんだ!!!」

今のマイミは非常に興奮していた。
考えがまとまらぬうちに次々と新情報が降ってくるので、相当混乱しているのだろう。
そんなマイミとは対照的に冷静なモモコが、海面に浮かぶチサキを糸で作った網で救助しながら返答する。

「こっちも準備があるからすぐにいつとは言えないけど……
 場所と日時が決まったら必ずこの子たちを寄越すから、今度は虐めないであげてね。」

この子たち、とはモモコの部下であるカントリーの面々のことだ。
連絡役として有効活用するつもりなのだろう。
しかし再戦が決定したとは言え、いつどこでやるかも未定。
その上、伝達はベリーズの配下によって行なわれるというのは怪しいどころの話ではないが、
マーサー王の命が助かるかもしれないという希望の言葉を、マイミは信じたいと思ってしまった。

「本当に……無事でいてくれるのか……」

343名無し募集中。。。:2016/05/26(木) 23:41:08
帝位継承の時といい再戦好きやなw

344名無し募集中。。。:2016/05/27(金) 06:18:10
マイミだけが知らない事情がありそうだw

345 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/27(金) 08:10:40
ここはノーコメントでw

346名無し募集中。。。:2016/05/27(金) 10:32:49
>>345
ノーコメントw

>>332
確か前読んだ時に何話か抜けていたような気がする(どこかはうろ覚えw)から作者さんに保管して貰えると嬉しいな

347名無し募集中。。。:2016/05/27(金) 11:07:05
まだ途中までしか読んでないけど確かにちょいちょい抜けてるね

348 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/27(金) 12:58:10
ベリーズの船が見えなくなってから四、五時間後。一同は宿の大部屋を借りて、そこに集まっていた。
橋の上の戦いで気を失った戦士たちも、ボチボチと目を覚まし始めている。
ミヤビに斬られたナカサキを除けば、負傷者は殆ど居ないというのは幸いであったが、
部屋の中のムードはひどく暗かった。
いくらマーサー王とサユの無事が保証されたとは言え、やはり敗北は悔しいのだ。
その中でも特に落ち込んでいるのはカナナンだった。彼女は色々と抱え込みがちな性格なのである。

「挟み討ちも、橋からの攻撃も、カナの考えた作戦はみーんな失敗しちゃいました……
 ごめんなさい、本当にごめんなさい……」

頼んでもないのに土下座までするものだから、みんな困り果ててしまう。
誰もが声をかけにくいと思っている中、オカールがカナナンの肩をポンと叩きだす。

「確かに負けちゃったけどさ、あの作戦は結構面白かったぜ?アチコチ飛び回ってよぉ。
 モモコの奴が焦るのは久々に見たし、それにシミハムなんかはほぼ倒したようなもんじゃん!
 あともう一歩だったと思うけどなー。」
「じゃあなんで負けたんですか!やっぱり作戦の詰めが甘いから……」
「なんでかって、そりゃやっぱりミヤビちゃんが強いから……
 おっと、ミヤビの奴が意地を見せたからじゃないかな。」

オカールの言う通り、ミヤビが殺人オーラを出した時点で若手戦士は無力化されていた。
何故その殺気を最初から放たなかったのかは分からないが、
それに対抗出来ない限りは結局キュート頼りになってしまうのである。
では帝国剣士、番長、KASTは居るだけ無意味か?
少なくとも、連合軍のリーダーであるマイミはそう思っていない。

「殺気を出すのはな、実は結構疲れるんだ。」
「えっ?……」
「だってそのためには敵を殺す思いで臨まなくてはならないだろう?
 そんなのは疲れる。出来ればずっと笑っていたい。
 そして、そう思っているのはベリーズも同じはずなんだ。」
「!」

つい昨日までは、ベリーズ戦士団は極悪非道な性格に変貌してしまったと思っていた。
だが橋の上の戦いを経ることで、そうでないことを知ることが出来た。

「ベリーズだって、今のキュートのようにリラックスする時間帯があるだろう。
 そこを上手く利用して、若手のみんなが活躍できるような作戦を練ることが出来るのは、
 カナナン、君だけなんだ。」
「!!」
「今はまだ上手くいかなくたって良い。
 リターンマッチの時に初めて成功すればそれだけで良いんだ。
 マイが居ない今、私たちの頭脳は君しかいない。やってくれるな?」
「はい!!」

カナナンの表情が明るくなるのと連動して、周囲の雰囲気も良くなっていく。
自分たちもリターンマッチまでに強くなれば、貢献できることを理解したのだろう。
だが、そのリターンマッチはいつ開催されるのだろうか?
みんながそう思ったところで、何者かが部屋の扉を叩きだす。

「どうもー、カントリーのリサ・ロードリソースでーす。」

349 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/27(金) 12:59:39
>>332のwikiの方はスレッドそのものを載せているので、
多少見にくいかもしれませんが、話自体は網羅されていると思いますよ。
いつか時間の取れる日に話の部分だけを抽出したいですね……

350 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/27(金) 13:01:27
あーやっぱり網羅はされてないかもです。
早めに動けるようにしますね。

351名無し募集中。。。:2016/05/27(金) 13:55:38
連絡早!w

前作保管は気長にまってます

352 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/28(土) 14:30:52
連合軍たちの集う大部屋のど真ん中にリサが居るというのは、なかなかに異様な光景だった。
リターンマッチについて連絡するためにここに来たというのだが、
オカールにはそれよりも先に聞きたいことが、一つだけあった。

「なぁ……どうしてそんなに全身ずぶ濡れなんだ?泳いできたのか?」
「泳いだっていうか、泳がされたんですよ。」
(モモコにか……)
「なんでも次の戦いのアイデアを船での移動中に思いついちゃったみたいで……
 チサキちゃん程じゃないけど私も泳ぎには自信がある方ですから、伝言係を頼まれたんです。
 『今すぐ行きなさーい』って言われた時は『嘘でしょー!?』って思いましたけどね……」
「そのチサキちゃんって子に泳がせればいいのにな。意味わからん。」
(さっきアンタが蹴ったんだよ!気絶するほどにね!)

とりあえずリサがここまで来た経緯は判明した。
次に気になるのはやはりリターンマッチの日時と場所だろう。
リサ・ロードリソースはその件について、出し惜しみなく伝えていく。

「開催日はあさっての正午。場所はプリンスホテルです。」
「「「プリンスホテル!?」」」

日時が思ったより近かったことにも驚いたが、
それよりもホテルという意外すぎる施設が会場であることに一同は驚愕した。
そんな所で戦えるのか、一般人たちに迷惑はかからないのか等、様々な質問を投げかけたが、
リサは「行けば分かります。」の一点張りだ。
橋の上に続いて、またしても怪しすぎる開催地ではあるが、決まった以上は向かうしかない。
ところが、戦士の中にはそもそもその場所をイメージ出来ていない者も何人か存在していた。

「ねぇリナプー、プリンスホテルってどこにあるの?」
「アユミン知らないの?……あっ、そうか田舎の生まれ……」
「田舎じゃない!ただこの辺の地理に詳しくないだけ!」
「うーん、プリンスホテルはシバっていう公園の近くにあって、ここからそんなに遠くないんだけど
 湾岸線を回るよりは湾を船で突っ切った方が楽なんだよねー。
 あー、船乗りたーい。アイリ様、船用意してくださいよー。」
「えっ?船?……急に言われても困っちゃいますね……どうしようかしら……」

キュートのアイリを顎で使おうとするリナプーに、連合軍だけでなくリサ・ロードリソースまでも衝撃を受けた。
ひょっとしたらこのリナプー・コワオールドこそが一番の大物なのかもしれない。
はじめは困った顔をしていたアイリだったが、
何かを閃いたのか、途端に真面目な表情に変わっていく。

「いや、よくよく考えてみれば有りますね。心当たり。」
「え!本当ですか?」
「この辺りに常駐して警備任務にあたっているマーサー王国兵に頼めば、船の一つや二つは用意してくれるかもしれません。
 もしも船に乗れるなら、次の戦いに備えてゆっくり休むことが出来ますね。」

プリンスホテルは比較的近い距離とはいえ、馬を足にして移動するとなるとやはり疲れてしまう。
目的地に時間通り到着したとしても、戦うにはスタミナ面で不利になるだろう。
だが、船を使えば「眩しすぎるalong the coast」や「海岸線、縁取るように続くこの道」を走る必要が無くなる。
つまりリナプーの案は楽をしたいように見えて、後のリターンマッチのことも考慮していた(かもしれない)案だったというワケだ。
話の流れを理解したマイミは、リーダーらしく流れをまとめていく。

「となると明日の夕方ごろまでは休養できそうだな。
 アリアケに2日滞在し、その翌日のプリンスホテルでリターンマッチ……
 それがベリーズとの最終決戦、ということか。」

353名無し募集中。。。:2016/05/28(土) 21:00:20
リナプー流石・・・w

354名無し募集中。。。:2016/05/28(土) 21:09:52
踊らされてるなぁ

355名無し募集中。。。:2016/05/28(土) 22:06:00
何気に気になるのは海に落ちたメンバーをどうやって回収したのか
切られはしても意識はありそうなナカサキが動けない3人を引きずって泳いだとか?

356名無し募集中。。。:2016/05/29(日) 02:43:50
船からのお使いならマナカの方がよかったんじゃ・・・
飛べるから濡れることもないし

357名無し募集中。。。:2016/05/29(日) 02:53:16
カリンに腹刺されたばかりやん

358名無し募集中。。。:2016/05/29(日) 03:19:58
いやー、船の上でチサキを見守ってる描写もあったし
この物語の世界の中なら戦うとかじゃなく普通に動くくらいなら大丈夫かなと

359 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/29(日) 16:27:49
落ちたメンバーを助けたのはアイリです。
満足に動けて、且つ泳げるのは彼女だけなので。
ナカサキも多少は動けたかも。

リサが伝言に向かったのも、マナカだと先日の負傷が残っているからですね。
あと、今連れてる鳥たちが連合軍を怖がっているという理由もあります。

360名無し募集中。。。:2016/05/30(月) 00:41:59
いかんw続編が始まったことによって前作を最近また読み返したから
この世界じゃちょっと切られたくらいなら平気だろって気分になってしまってるw
新人は確かに厳しいかもだけど食卓の騎士なら(特にナカサキは)まだ動けそうだなって思い込みが・・・
鳥が怖がってというのは盲点でしたが、言われてみればなるほど・・・ですね
動物の中でも鳥は特に敏感そうだし

361 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/30(月) 08:44:06
前作は無茶ばかりしてましたからねw
ナカサキが弱くなったというよりは、ミヤビの斬撃が強かったという解釈でお願いします。

362 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/30(月) 12:59:41
「それじゃあ、確かに伝えたので私は帰りますね。」
「待ってくれ!!」

帰宅準備を始めるリサ・ロードリソースをマイミが引き止めた。
彼女にはどうしても確かめておきたい事が有るのだ。

「マーサー王とサユが無事だと言うのは、事実なのか?……」
「事実です。 お世話係りである私が言うんだから間違いありません。」
「そうか、君が2人の世話を……」
「ただ、なんらかの理由で私が無事に帰れないとしたら……その時は保証出来なくなっちゃいますけどね。」
「……なるほど、分かった。無事に帰すよ。」
「では、失礼します。」

元より連合軍はリサを人質にとるつもりは無かった。
そうして得られる利益よりも、ベリーズを刺激して被る不利益の方が大きいと考えていたのだ。
こうして伝言係り兼お世話係りであるリサを解放した数時間後、
今度はアイリがとある少女を連れてくる。
童顔ではあるが身長が高く、脚もモデルのように長いこの少女は、
アリアケ周辺に駐在するマーサー王国兵の責任者だと言う。

「この子こう見えて凄いらしいんですよ〜、ほら、挨拶して。」
「はい!分かったであります! 私は"タイサ"と言うのであります!!」
「えっ?大佐?あなた、そんなに偉かったの?」
「大佐というか、タイサであります。」
「???」

口調はやけに丁寧だし、常に敬礼を忘れない姿勢も立派だが、
なんだか変な子が現れたなぁと言うのが一同の感想だった。
(自分たちを棚に置いて)こんな少女に責任者が務まるのかとも思っている。
ところが連合軍の中でただ1人、オダ・プロジドリだけは驚いたような顔をしていた。

「えっ?ど、ど、どうして?あなたはアヤ……」
「おっと、静かにするであります。」

タイサは鼻先に指を当てながら、オダに軽く微笑んだ。
理由は分からないが、素性をバラされたくないということを悟ったオダは素直に口を閉ざしていく。

(分かった。ここでは聞かない。でも後でちゃんと教えてね。
 今は何をしているのか、そして、2人は無事なのかを……)

皆が静かになったところで、タイサはマーサー王国所有の船を連合軍に貸し出す旨を説明した。
決して大きい船ではないが、この場にいる全員が乗り込むには十分であるとのことだ。
他にも説明することは山ほどあったようだが、
タイサは急にそれを中断し、近くにいたトモ・フェアリークォーツをビシッと指差す。

「おい、お前生意気だな。」
「???……え?私に言ってる?」
「上官の説明を足組みながら聞くとは何事だ。」
「えーっと、上官って、君のこと?」
「口も悪いようだ。上官に対して敬語も使えないのか。」
「はぁ……こいつ、やっちゃっていい?」

トモがキレているのを感じた一同は焦りだした。
ここで喧嘩でも始められたら非常に厄介だからだ。
マイミとアイリも止めようとするが、それをオカールが更に制止する。
なんでも「面白いからギリギリまで見てようぜ」とのことらしい。

「大体さ、私は果実の国の出身なんだからマーサー王国のアンタを上官と思う気は無いんだけど?
 いや、キュート様は尊敬できるけどさ。」
「国は関係無いであります。人間としての位を言っている。」
「なんでいかにも弱そうなアンタにそんなことを言われなきゃならないの?」
「じゃあ戦ってみるでありますか?」
「望むところだよ!何して戦う!?」

白熱してきた丁度その時、2人のお腹がキュルキュルと鳴り始める。
互いに長い間ご飯を食べていなかったので、お腹が空いているのだ。
そこで、2人は戦う種目を同時に思いつく。

「ちょっと表に出ろよ……良いとこ行こうぜ……」
「ふっ、この辺の店ならタイサの方が詳しいであります。」

363名無し募集中。。。:2016/05/30(月) 14:08:49
大佐はスパイなのかな?

364名無し募集中。。。:2016/05/30(月) 14:46:18
この二人は…ラー○ン対決かよw

そしてオダの「二人は無事」って言葉が気になる…あの子達何だろうか?

365名無し募集中。。。:2016/05/31(火) 05:03:30
ついにタイサが表に出てきたか
本当に王国兵なのかそれとも成りすましているのか・・・

366名無し募集中。。。:2016/05/31(火) 05:17:38
あ、でもアイリが嘘を見抜けるのならグルじゃない限り成りすますのは無理か

367 ◆V9ncA8v9YI:2016/05/31(火) 12:52:29
トモとタイサは「Zwei」という名のラーメン屋に辿り着いた。
どこかの外国の言葉で「ニ」を意味する名を持つこの店は、数多の美食家を満足させたとして知られている。

「早食い勝負……ラーメンを先に飲み干した方が勝者ってワケだな。」
「そうであります。」
「逃げ出すなら今だぜ?さっきからブルブル震えてるじゃん。」
「これは武者震い。神の味を前にして興奮してるのであります。」
「ふん、言うだけあって舌は肥えてるようだね。」

2人がテーブル席空いててもカウンター席に座るのを、一同は窓の外から覗いていた。
特に大食いを自負しているカノンやハルは、この勝負を見届けることが出来るというだけでワクワクしている。

「このお店のラーメンはただ美味しいだけじゃない。だからこそ勝負の題材として相応しいんだろうね。」
「くそー!ハルも溺れたばかりじゃ無かったらありつきたかったぜ!悔しい!」
「あ、ハル!あれを見て!!」
「え!?」

タイサとトモの隣の席に、カリンがチョコンと座った事実にカノンとハルは驚いた。
この勝負は遊びではない。
中途半端な気持ちで席に着いたとなれば大変なことが起きてしまう。

「カリンさん……じゃなかった、そこの君も食べるでありますか?」
「うん!実は私もお腹すいちゃってて〜」
「やめとけカリン。悪いことは言わないから店を出た方がいいよ。」
「何よトモったら!私だってたまにはたくさん食べるのよ?
 店長さーん、ラーメン大盛りをお願いしまーす!」
「「!?」」

カリンの注文にタイサ、トモ、カリン、ハルは天地がひっくり返るほどに驚いた。
これから起こる悲劇を思うと涙が出そうになってくる。

「カリン……私はこいつと決着をつけなくてはならないんだ。
 だから、悪いけど助けることはできない……」
「何言ってるの?……トモとタイサさんも早く注文した方がいいんじゃない?」
「ラーメン、"小"で。」
「こっちも同じものを頼むであります。」
「えーー!?小盛りー!?」

いかにも食べそうな雰囲気の2人が"小"を注文したのでカリンは拍子抜けしてしまった。
ちょっとだけダラシないなと思っていた矢先に、
女性店主がカリンの前に「ラーメン大盛り」をドカンと置き始める。

「おまち!」
「え……?」

とてつもなく大きな器の上に、モヤシが天井近くまで盛り上がっている「ラーメン大盛り」を見て、
カリンは言葉をなくしてしまった。
ラーメンだというのに麺が全く見えないくらいにモヤシが敷き詰められている。
それになんだか全体的にひどく油っぽい。
その匂いを嗅ぐだけでカリンは失神しそうになってくる。

「やっぱり大盛りはヤバイっすね……カノンさん行けます?あれ。」
「さすがの私でも無理かな……よほどラーメン好きじゃないと小盛りを平らげるのも難しいと思う。」

カノンがそう言った丁度その時、タイサとトモの前にもラーメンがドンと置かれる。
大盛りよりは少な目だが、それでも大の大人が食すには厳しい量だ。
少なくとも、タイサやトモのような線の細い女子が食べるようなものではない。

「さぁ、勝負が始まるな。」
「分かってるでありますな?お前が負けたら問答無用で敬語を徹底するであります。」
「そっちこそ、私が勝ったら"お前"って呼ぶのを辞めろ。
 私にはトモ・フェアリークォーツっていう名前が有るんだ。」
「約束するであります。まぁ、どうせ勝者はもう分かりきってるけど……で、あります。」

368名無し募集中。。。:2016/05/31(火) 14:37:46
この世界にも二郎があったかw

369名無し募集中。。。:2016/05/31(火) 22:30:19
二郎ってw健康志向のカリンには絶対無理なラーメンw

370名無し募集中。。。:2016/05/31(火) 23:56:09
やっぱりラーメンは飲み物なのか

371 ◆V9ncA8v9YI:2016/06/01(水) 12:52:58
「始め!」

いつの間にか審判を務めることとなったアイリの合図で、トモとタイサは勝負を開始する。
「Zwei」をよく知る二人が真っ先にとった行動は、器の底に沈む麺と、山のようなモヤシの位置を入れ替えることだった。
これは「天地返し」と呼ばれる技。
麺から先に手をつけることで、時間経過によって伸びてしまうのを防いでいるのである。
技の発動後、勢いよく麺をすするトモを見てカリンは目を丸くする。

「本当に凄い!食べ方がプロ!!私が半熟玉子を食べてる間に食べ終わっちゃいそう!」

自分はトモやタイサのように速く食べられないことは自覚している。
だが、このまま残してしまうのは良くない。
そのためカリンは「チクタク動く高速移動」と「興奮状態による無痛化」を利用して、
サイボーグになることで大盛りラーメンに挑もうとした。

「よしっ!頑張るぞ…………やっぱり無理!!」

そもそもお腹の容量が少ないカリンはあっという間に音をあげてしまった。
いくら高速で動こうとも、いくらお腹の痛みを消そうとも、
食べられないものは食べられないのである。
やはり一部のプロしか太刀打ちできないのではないかと思ったが、
よく見てみるとトモも苦しい表情をしていた。
麺を半分たいらげたところで満腹感を覚えはじめたのである。

「どうしたでありますか?箸が止まってるでありますよ。」
「チッ……奥の手だ、これを使う!」
「なんでありますか!?その液体は!」

トモは小瓶に入った「赤い液体」をポケットから取り出した。
モーニング帝国での選挙戦で使った「リンゴジュース」のように見えるが、それは違う。
今のトモはもうジュースには頼らないと決めているのだ。
ではこの液体は何なのか?
トモは小瓶の中身をラーメンにブチまけながら答え合わせをしていく。

「ラー油だよ!それも激辛のね!!」
「なにぃ〜!?まさか、味を変えるつもりでありますか!?」
「そうさ!味を変えたら食べた物は別腹に入る!だからまだまだ食べられる!」
「な、なるほど……」
「減らすならまだしも加えているんだ。まさかルール違反とは言わないよね?」
「ラー油は調味料扱い……文句は言えないであります……」

ラー油を加えたトモは、先ほど以上のスピードで麺を口に運んでいく。
常人なら一口でギブアップするほどの辛さだが、トモにはこれが丁度いい。

「どうした?置いてくよ!」
「くっ……ならばこっちも奥の手を使うであります!」

372名無し募集中。。。:2016/06/01(水) 13:08:40
連帯保証人の頼みを拒否して拒否して拒否しまくった結果wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
http://waranews.livedoor.biz/archives/1598906.html

373名無し募集中。。。:2016/06/01(水) 15:22:42
ガールを呼ぶのかな?

374名無し募集中。。。:2016/06/02(木) 05:41:10
ラーメン食べるだけですら激闘へと変えてしまう作者さんすげぇw

375名無し募集中。。。:2016/06/02(木) 08:30:06
タイサがんばれ

376 ◆V9ncA8v9YI:2016/06/02(木) 12:56:38
昼にあまり時間が取れなかったので、オマケ更新だけしますね。
ラーメン対決の決着は夜に書きます。


オマケ更新「小一時間前のZwei」

謎の女O「メグさーん、魚いっぱい釣ってきましたよー」
店長「うわっ、凄い数!どうしたの?」
O「なんかよく分からないけど、橋の下にいっぱい居たんですよ。」
O「食べきれないので、ラーメンのダシに使ってください。」
店長「気持ちはありがたいけど、ウチのベースは魚介じゃないし……」
謎の女M「この店が繁盛するためには深淵より出でし闇をイメージした漆黒のスープに変更した方が……」
謎の女U「スープどうこうより酒じゃない?そしたらお客さん増えるよ。」
店長「3人とも帰ってくれない?」

377名無し募集中。。。:2016/06/02(木) 13:01:53
LЯきたー!

378名無し募集中。。。:2016/06/02(木) 16:18:07
メグさん・・・?あのメグじゃないよなぁ

379名無し募集中。。。:2016/06/02(木) 16:38:09
村の後は上か田か…
他にいたっけ

380 ◆V9ncA8v9YI:2016/06/03(金) 03:19:29
紛らわしかったかもしれませんね、メグは村上でも村田でもありませんw
正式な表記はMeguになります。
「Zwei サポートベーシスト」とかで検索すると何者か分かるかもしれません。

ラーメンの決着は夜と宣言しましたが、たぶん昼頃になりそうです、、、

381 ◆V9ncA8v9YI:2016/06/03(金) 12:57:02
タイサは箸を置いて、店外へと出て行ってしまった。
まだ完食していないのに席を離れたものだから一同は驚く。
普通に考えれば「試合放棄」とみなされ、トモの不戦勝となるのだが、
当のトモ・フェアリークォーツの方がそれを認めなかった。

「この状況で逃げ出すような女じゃないでしょ。
 一緒に戦ってきた私が、一番よく分かっている。」

トモの言う通り、タイサの闘志は衰えていなかった。
では何故に店の外へと出たのか?
それは事前に設置しておいた鉄棒で逆上がりをするためだったのだ。

「なにアレ!?いつの間にあんなモノが……」
「いやカノンさん、それよりも回転数の方がとんでもないですよ……!」

タイサは無言で黙々と逆上がりを繰り返し行っていた。
その回数も二回や三回では無い。
数十回もノンストップで回り続けているのである。
超こってりラーメンを食べた後に高速回転をしようものなら気持ち悪くなってしまうのではないかと心配したが、
ことタイサに限っては、こっちの方が調子が良いようだ。

「よしっ!お腹すいたであります!」
「カロリー消費はバッチリってワケね……」

逆上がりが行われている間も、トモは休まずに麺をすすり続けていた。
タイサのことだから、回転中の遅れを取り戻す自信が有るのだろうと推測していてのである。
そしてその予測は見事に当たっていた。
お腹を空かせたタイサが食すスピードは、さっきまで以上に加速していてのだ。
次第にトモのアドバンテージは縮まっていき、残量50グラムといったところで追いつかれてしまった。

「くっ!逃げ切れるか!?」
「いや!ここで追い抜いてやるであります!」

どちらも苦しい時間帯だ。本来ならばラーメンが嫌いになる程の苦痛だろう。
だと言うのに、トモもタイサも、笑みを浮かべていた。
その理由を「ラーメン大好き」以外に探すのは野暮かもしれない。
朝も昼も夜も夕方もずっと思うはお前のことばかり。
四六時中頭の中はしなやかな体 SO ボディライン
適度に濡れたおまえつかんでくちびるにそっと近づける
そうさトモとタイサはラーメン大好き女子戦士だ。

「トモ負けないで!」「トモ勝って!」「あとちょっとだ!」
「タイサ追い越せ!」「タイサすごいぞ!」「完食は近い!」

気づけば周囲には2人へのエールが鳴り響いていた。
トモだけでなく、ここまで健闘してきたタイサへの応援も少なくない。
いや、むしろ多いと言えるだろう。
大歓声の中で、トモとタイサは最後の一口を飲み込んでいく。

「ど……同時か……」
「もう……さすがに限界であります……」

飲み込んだタイミングで、二人は食い倒れてしまった。
椅子から転げて床に寝っ転がったのだ。
その様はまるで、少年同士が喧嘩でもした後のよう。

「……タイサさん、正直言って見くびってましたよ。考え、改め直します。」
「それはこっちもであります。 でも今は、トモと戦えて心から良かったと思っているであります。」

382名無し募集中。。。:2016/06/03(金) 14:59:58
なんやこれw

383名無し募集中。。。:2016/06/04(土) 00:03:24
お前らなにやってんだよw

384名無し募集中。。。:2016/06/04(土) 01:29:40
タイサとトモの歴史的和解w

385名無し募集中。。。:2016/06/04(土) 01:32:22
この人たち・・・(暴力的な量とはいえ)ただラーメン食べただけですよね?w

386名無し募集中。。。:2016/06/04(土) 02:31:42
しかも「小」だからなw

387名無し募集中。。。:2016/06/04(土) 12:08:07
小とはいえZweiラーメンをナメたらあかん…

388 ◆V9ncA8v9YI:2016/06/06(月) 22:41:38
実はラーメン話はあと1話だけ続きます。
最近更新できなくてすいませんが、明日には書けると思います。

389名無し募集中。。。:2016/06/07(火) 01:22:32
大盛りの残りは一体だれが食べるのか・・・

390 ◆V9ncA8v9YI:2016/06/07(火) 13:00:13
トモとタイサの勝負が終わって一件落着と思われたが、難題はまだ残されていた。
それはカリンの注文した大盛りラーメンをどう片付けるか、という問題だ。
サラダを食べるだけでお腹いっぱいになるようなカリンがこの量を完食するのは不可能だろう。
頼りの綱はラーメン大好きトモとタイサだが、激闘の末に食い倒れているため戦力にはならない。

「残しちゃえばいいんじゃない?」
「それはダメ!」

サユキの提案に、カリンはビクビクと怯えながら返答した。
このお店は決して食べ残しを禁止していないし、店主も大体の事情を把握しているのだが、
それでもカリンは「残す」という選択肢を取ることが出来なかった。
この席に座ることによって、"ラーメンの魔物"に取り憑かれてしまったのだ。
そんなものが存在するかどうかは定かではないが、
このまま立ち去ってしまえば周囲から「ギルティ(重罪)」と罵られてしまうような気がしてならない。
故にカリンは八方塞がりとなったのである。
この状況を救うには、仲間である連合軍が食すしかない。
では誰が食べるのか?
アーリーが、サユキの肩をポンと叩いた。

「ダイエットやめろって言われたじゃん、先生に。」
「何!?先生って誰!?」
「私たち女の子は今変化している、サボったり怠けたりしている訳じゃないのに……
 マユは太ってるんじゃなくて変化してるんだよ。」
「だからマユって誰!?ていうかアーリーのキャラ変わってない!?
 そんな演技しても私は食べないからね!!」

トモやタイサですら難色を示す強敵に立ち向かおうとする若手は存在しなかった。
カリンのことは可哀想だと思うが、どうしようもないのだ。
トモとタイサが無理して立ち上がろうとしたその時、1人の朗らかな声が聞こえてくる。

「なんだ、みんな食べないのか?じゃあ私が頂いちゃうぞ〜」

声の方を向いたトモとタイサはゾッとした。
2人のラーメン戦闘力は非常に優れており、
更に他人のラーメンオーラを知覚する能力も備えているのだが、
これほどまでに強力なラーメンオーラを持つ者が身近にいることに、今まで気づいていなかったのだ。

「なんでありますか!この巨大なオーラは!!」
「オーラが大きすぎて気づかなかったんだ……私たちとはモノが違う!!」

カリンの席に座ったその人は、トモやタイサ以上のスピードで麺を啜っては、あっという間に平らげてしまった。
しかもまるで苦しい顔をしていない。終始にこやかだ。
挙げ句の果てに、サイドメニューとしてウニとエビまで頼んでいる。
こんな化け物には勝てないと、2人は心から思った。

「いや〜食べた食べた。ラーメンは昔から好きだったんだ。
 16歳の頃なんて、行列店をずっとずっと並んでたなぁ。」
「マイミ様……」「凄いであります……」

391名無し募集中。。。:2016/06/07(火) 13:33:29
16歳の恋なんてwなつかしいw


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