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( ^ω^) 2012年芸術の秋ラノベ祭りのようです
209
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 00:48:17 ID:g0e4aXm20
(´<_` )「無い方がいいよ? 意外とこれ邪魔だし重いし」
l从・∀・ノ!リ人「えー、でもこんなにフワフワでモフモフなのに・・・」
(´<_` )「触ってもいいよ」
l从・∀・ノ!リ人「ホント!?」
(´<_` )「ああ」
l从*・∀・ノ!リ人「わーい、モフモフー!」
( ´_ゝ`)「ノイタミナ様はもっとモフモフだぞ。凄い数の尻尾があるからな」
(´<_` )「ウカノミタマ様だぞ兄者」
l从・∀・ノ!リ人「すごいかず!? 会ってみたい!」
( ´_ゝ`)「まぁそのうち会うだろ」
(´<_` )「さて、じゃあ移動しようか。ほいっと!」
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/190.jpg
l从・∀・ノ!リ人「おお! 凄いのじゃ! 一瞬で広いところに出たのじゃ!」
( ´_ゝ`)「お、物を出すだけじゃなく瞬間移動も出来るんだな」
210
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 00:50:16 ID:g0e4aXm20
(´<_` )「貰った稲荷が五枚だけだから、さっきのを含めて
あと三回だけだけどね」
(;´_ゝ`)「え? 嘘! あれ無くなったらまた貰えるんじゃないの!?」
(´<_` ;)「一度きりって言ってたじゃないか・・・
まさか兄者、全部使ったのか!?」
( ´_ゝ`)「だって、パソコン無いんだものココ・・・。
回線とか色々揃えたら無くなったわ」
(´<_` )「兄者らしいというかバカというか・・・。
てかこんな所に回線繋がるのか」
l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃい兄者! ちっちゃい兄者! これ何?」
(´<_` )「ん? ああそれは蹴鞠の球だな」
l从・∀・ノ!リ人「けまり?」
(´<_` )「このボールを落とさないように蹴り合うんだよ」
l从・∀・ノ!リ人「面白そうなのじゃ!」
( ´_ゝ`)「よーしやってみるか!」
(´<_` )「兄者大丈夫か? 体育なんて大の苦手だろ」
( ´_ゝ`)「フフ、なめるなよ。俺は外国のFIFA加盟国
サモアからスカウトが来るほどの実力だぞ」
211
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 00:51:20 ID:g0e4aXm20
(´<_` )「またよくわからん見栄を・・・ちなみに何位の国?」
( ´_ゝ`)「204」
(´<_` ;)「・・・かなり下じゃないか。見栄を張るならもっと堂々と張れよ」
(#´_ゝ`)「かなり下じゃない! 最下位だ!」
(´<_` ;)「そこを堂々としてどうする!」
l从・∀・ノ!リ人「兄者! ちっちゃい兄者! 早くけまりしよ!」
( ´_ゝ`)「よーし俺から行くぞー」
( ´_ゝ`)「それ!」
( ´_ゝ`)「・・・」
(´<_` )「・・・ホームランだ」
l从・∀・ノ!リ人「ホームランじゃ!」
( ´_ゝ`)「・・・弟者、頼んだ」
(´<_` )「お前が取ってこい」
( ´_ゝ`)「・・・はい」
212
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 00:53:03 ID:g0e4aXm20
〜一時間後〜
(´<_` )「・・・まさか兄者がここまで下手だとはな」
l从・∀・ノ!リ人「兄者ヘタッピー」
(;´_ゝ`;)「ぜぇ・・・ぜぇ・・・こ、こんなはずでは」
(´<_` )「妹者ちゃんを見習えよ兄者。
兄者が休んでる間にリフティング五十回超え達成したんだぞ」
l从・∀・ノ!リ人「コツは足首を伸ばすことじゃ!」
(;´_ゝ`;)「もう・・・無理・・・。
だって・・・俺が蹴るたび・・・短距離走なんだもの・・・」
(´<_` )「自業自得だな」
l从・∀・ノ!リ人「そろそろお腹が空いてきたのじゃ!」
(;´_ゝ`;)「お・・・よし・・・じゃあ・・・飯にするか・・・ぜぇ・・・」
(´<_` )「ホント体力無いな」
・・・・・・・
( ´_ゝ`)「というわけでここがその店だ」
213
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 00:54:53 ID:g0e4aXm20
( ´_ゝ`)「もう料理も用意してある」
l从・∀・ノ!リ人「わー! 凄いごちそうなのじゃ!」
( ´_ゝ`)「欲しいものあったら何でも言ってくれ。ウカムルバス様に頼んでみるから」
l从・∀・ノ!リ人「じゃあ、ケーキが欲しいのじゃ」
l从・∀・ノ!リ人「・・・わ! 本当に出てきたのじゃ」
(´<_` )「おー凄い。じゃあ俺はとんこつラーメン」
( ´_ゝ`)「じゃあ俺も。満漢全席で」
(´・ω・`)「お前らちょっと手加減しろよ。あとウカムルバスじゃなくてウカノミタマ様な」
(´<_` )「うわ、ついに出てきた」
( ´_ゝ`)「神様なんだからいいだろこれくらい」
(´・ω・`)「神様だからって何でもできるわけじゃないんだぞ」
l从・∀・ノ!リ人「わー! すごい! シッポ!
いちにーさん・・・いっぱいある!」
l从・∀・ノ!リ人「ねー兄者! 触ってもいいかな!」
( ´_ゝ`)「どうかな。俺が触っていいか聞いたらダメって言われたし」
214
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 00:55:54 ID:g0e4aXm20
l从・∀・ノ!リ人「えー」
( ´_ゝ`)「ちゃんと頼んでみたら触らせてくれるかもよ」
l从・∀・ノ!リ人「うん! 頼んでみる!」
l从・∀・ノ!リ人「えっと、神様!」
(´・ω・`)「ん?」
l从・∀・ノ!リ人「モフモフしてもいいですかっ」
(´・ω・`)「いーよ」
l从・∀・ノ!リ人「わーいやったー!」
( ´_ゝ`)「流石だな妹者、なるほどそうすればいいのか」
(´<_` )「え、兄者まさか」
(´・ω・`)「ほーれ右にモフモフ左にモフモフ」
l从*・∀・ノ!リ人「きゃー!」
( ´_ゝ`)「・・・あのっ!(裏声)」
(´・ω・`)「ん?」
215
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 00:57:06 ID:g0e4aXm20
( ´_ゝ`)「モフモフしてもいいですかっ(裏声)」
(´・ω・`)「ダメ」
(;´_ゝ`)「な、何故だ・・・まったく同じことをしたのに・・・」
(´<_` )「次は女装とかやめてくれよ兄者」
( ´_ゝ`)「え、なんで俺の考えてる事分かったの?」
(´<_` ;)「冗談で言ったのにもうやだこの兄」
(´・ω・`)「あ、そうだお前ら、勝手に変なのぼり作ったろ。『流石稲荷神社』とかいう」
( ´_ゝ`)「あ、バレた?」
(´<_` )「あれは流石にやり過ぎたか」
(´・ω・`)「片づけろ! 二人で! 今すぐだオラ」
( ´_ゝ`)「「え、ちょ、おま」」(´<_` )
l从・∀・ノ!リ人「消えちゃった・・・」
(´・ω・`)「ごめんね妹者ちゃん、ちょっと一人で遊んで待っててくれるかな」
l从・∀・ノ!リ人「うん!」
216
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 00:58:19 ID:g0e4aXm20
(´・ω・`)「すまんね、俺も遊んであげたいんだけど、色々と仕事あるのよ」
(´・ω・`)「おもちゃを何個か置いておくから」
l从・∀・ノ!リ人「ありがとなのじゃ!」
(´・ω・`)「さて・・・いってくるか」
・・・・・・
( ´_ゝ`)「ふぅ。やっと片づけ終わった」
(´<_` )「やたら多かったな、いくつ作ったんだよ兄者・・・」
(´<_` )「さてと、はやいとこ妹者ちゃんのところに・・・」
( ´_ゝ`)「! 待て! 弟者!」
(´<_` )「ん? どうしたんだ兄者」
( ´_ゝ`)「見てみろ」
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/43.png
l从・∀・ノ!リ人「おいおとじゃー。おなかすいたぞー、めしはまだかー」
l从・∀・ノ!リ人「なんだあにじゃー、さっきばんごはんたべただろー?」
l从・∀・ノ!リ人「しょぼーん」
217
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 00:59:27 ID:mrJ1IDpQ0
以上!
こんな時間に支援㌧
ちなみにラノベ祭り作品です
ラノベ祭りって何ぞって奴は今進行中のスレに行ってこい
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1353593410/
218
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 00:59:48 ID:g0e4aXm20
(* ´_ゝ`)「・・・天使だ」
(´<_` * )「ああ・・・」
(´<_` ;)「じゃ、なくて! 早くいってあげようよ! 一人じゃ可哀そうだろ!」
(* ´_ゝ`)「天使だ・・・」
(´<_` ;)「こいつ見惚れてやがる・・・」
・・・・・・
l从-∀-ノ!リ人「・・・ウトウト」
(´<_` )「どうした? 妹者」
l从-∀-ノ!リ人「なんだか・・・眠くなってきたのじゃ」
(´<_` )「あれだけ遊んで食べてはしゃいだから、そりゃあ眠くもなるかな」
( ´_ゝ`)「無理するなよ?」
l从-∀-ノ!リ人「ううん、まだ、兄者達と遊ぶ・・・」
( ´_ゝ`)「起きたらまた遊べばいいさ」
(´<_` )「兄者それは・・・」
219
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:00:09 ID:mrJ1IDpQ0
誤爆した! 誤爆した! すみません!
220
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:01:27 ID:g0e4aXm20
( ´_ゝ`)「な? 弟者」
(´<_` )「・・・ああ、そうだな」
(´<_` )「ゆっくり寝て、起きたらまた遊ぼう?」
l从-∀-ノ!リ人「・・・うん、分かった」
l从-∀-ノ!リ人「ちょっとだけ寝るのじゃ・・・おやすみ・・・」
( ´_ゝ`)「あぁ、おやすみ・・・」
・・・・・・
(´<_` )「・・・消えちゃったか・・・」
( ´_ゝ`)「分かってたつもりだろ、弟者」
(´<_` )「ああ」
( ´_ゝ`)「妹と会えるのは一度きり。それもここに妹が来て寝るまでの間だけ」
それでも充分過ぎるくらいだ」
(´<_` )「そうだな」
(´<_` )「本来生まれてきていないはずの妹と、
成長した姿で会えるんだから」
221
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:02:28 ID:g0e4aXm20
( ´_ゝ`)「俺達もアホだよなぁ。お腹の中の妹の為、お守りを買った帰りに交通事故に遭うだなんて」
(´<_` )「ホントだよ。妹より自分の身を心配しろって」
(´<_` )「俺達が本当の兄だって知ったら、喜んでくれたかね? 妹者は」
( ´_ゝ`)「さぁな。それを教えたら俺達即刻クビになってたし」
(´<_` )「尾を持たない外部の魂と、過度の接触は厳禁らしいからね」
( ´_ゝ`)「俺達を神社の案内人として境内に留め
さらに妹者の魂を呼んでもらえただけ、ラッキーか」
(´<_` )「ここで食事をすれば、魂が元気になるらしいから」
(´<_` )「これで元気の無かった、お腹の中にいる妹者が元気に生まれればいいな」
( ´_ゝ`)「母体の母者まで危ない状態だったからこそ、
俺達は祈願しにいったわけだしな・・・」
( ´_ゝ`)「結果、こうして死んだ後もその神社の神様に面倒みてもらったわけだから」
( ´_ゝ`)「マカロニサラダ様には感謝しないとな」
(´・ω・`)「お前わざとやってるだろ、ウカノミタマ様だよ」
(;´_ゝ`)「うわ! また出た! いつの間にかいなくなってて安心したのに!」
222
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:04:10 ID:g0e4aXm20
(´・ω・`)「出た! じゃねーよ。願いを叶えてやったんだからそれ相応の仕事をしろや新米」
(´・ω・`)「とりあえず境内の掃除からだ」
(´・ω・`)「妹との最初で最後の食事を演出してやったんだ!
しっかり恩に報いてもらうからな! オラ!」
( ´_ゝ`)「「え、ちょ、おま、また飛ば」」(´<_` )
(´・ω・`)「ふう・・・あんなかわいい妹を残して逝くなんてな」
(´・ω・`)「・・・手間のかかる兄弟だまったく」
・・・・・・
( ´_ゝ`)「うわ! 無理やり広場に飛ばされた!」
(´<_` )「なんで俺まで・・・」
( ´_ゝ`)「神に逆らうとか流石だよな俺ら」
(´<_` )「一緒にするなバカ兄者」
( ´_ゝ`)「・・・ん?」
(´<_` )「どうした、何か落ちてるのか?」
( ;_ゝ`)「これは・・・いつの間に・・・」
(´<_` )「これ・・・写真? しかも日にちが・・・
俺達が死んでから何年か経った現世の写真なのか・・・」
( ;_ゝ;)「あーくそ・・・。せっかくさっきは泣かずに済んだのに・・・カッコつかないわ。
あのクソ神野郎、余計な事しやがって」
(´<_` )「この人形と笑顔・・・どうやら、妹者はどう思っていたかなんて、
無駄な心配だったみたいだな」
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/198.jpg
223
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:06:21 ID:g0e4aXm20
終わりです
NO.48、190、198の素敵な絵をお借りさせていただきました
ありがとうございました!
224
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:07:14 ID:dyoN2jGQ0
乙!
蹴鞠の兄者汗かきすぎwww
ラストは泣きそうになったわ
225
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:07:36 ID:mrJ1IDpQ0
乙!
二つのイラストの違いを上手く使ったな
それにしても妹者マジ天使
ついでに報告
作品URL
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1353679061/
作品名
('A`)約束と現実のようですζ(゚ー゚*ζ
使用した絵のURL(任意)
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/157.jpg
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/72.jpg
226
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:08:40 ID:g0e4aXm20
大事なことを書き忘れ!
支援、誤爆共々感謝!
227
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:21:07 ID:/TLmgNsQ0
乙!妹者まじ天使
228
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:26:42 ID:PQf8Omd.0
うわあああああああすみませんNo198を描いた者です。
投下する際に全てのイラストに目を通していなかったばかりにNo48とAA、構図が丸被りするという事態となってしまいました。申し訳ありません。
決して意図して真似たものではないことだけは明記させてください…。
>>202
使用していただきありがとうございました!
229
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:30:07 ID:BujgFKe.0
>>225
vip規制されてるからここで言わせてもらおう
ものすごくよかった。乙
230
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:55:42 ID:/TLmgNsQ0
>>225
俺も向こうで規制されてたから、こっちで最大級の乙を!
231
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 01:57:20 ID:g0e4aXm20
>>223
No.48じゃなく43だ!訂正させていただきます・・・
使用させていただいたのはNO.43、190、198の作品です
大変失礼しました・・・(;'A`)
232
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 02:05:15 ID:H48m6N9o0
>>225
すごくよかった、泣いた おつ!
233
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 02:36:56 ID:CoWgozZgO
作品URL
http://jbbs.m.livedoor.jp/b/i.cgi/internet/13029/1353684328/
『(ー@A@)犯罪撲滅科D&Hのようです』
使用した絵
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/45.jpg
234
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 06:17:34 ID:Pd08e3Ag0
ラノベ祭り参加作品を投稿させていただきました
作品URL
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1353703531/
作品名
土曜日に会いましょうのようです
使用した絵のURL(任意)
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/91.jpg
235
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 11:37:38 ID:5jyn46hU0
>>225
157描いたものです
夜勤行ってる間にスレ落ちちゃったようなのでこちらに
他の方の絵と組み合わせて使って頂くのは難しい絵かなと思っていたのですが杞憂でした
きれいなお話にしていただきありがとうございます
236
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 11:37:58 ID:mrJ1IDpQ0
投下後報告が主流のなかあえてスレ立て後報告
作品URL
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1353724193/
作品名
(・∀ ・)と兄弟のようです
使用した絵のURL(任意)
今まで出た絵
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/11.jpg
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/21.jpg
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/5.png
あと一枚使う
237
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 11:51:07 ID:u/2Xswb20
投下します
238
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 11:52:06 ID:u/2Xswb20
今から話すのは、私とブーンの出会いの話。
懐かしくて、少しだけ恥ずかしい昔話。
秋の終わり頃のこと。
その日はなんとなく、本当になんとなく寝付けなかった。
どうしようかな、そう思って寝室を見に行ったのだけれど、
お母さんもお父さんもすうすうと寝息をたてていて。
仕方なくもう一度布団に入ろうとして、けれど、目はすっかり覚めてしまって。
だから、上着を羽織って星を見に行くことにしたんだ。
ξ゚⊿゚)ξ「いってきます」
二人を起こさないよう小さくそう言って、静かにドアを閉める。
夜の町はいつもと少しだけ違って見えて、まるで初めて訪れた地を探検するような、そんな心地。
上を見上げると星がきらきらと光って見えた。
どこへいこう。
少し外に出たくらいで家に戻る気はさらさらない。
もっと近くであの星に手を伸ばしたい。
そう思って、家から少しだけ離れた丘へ向かうことに決めた。
239
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 11:52:46 ID:u/2Xswb20
誰もいない町を歩く。
街灯に照らされ、踏切を渡り、並木道のゆるやかな坂を上って。
街灯は並木のあたりから少なくなって、
いつのまにか月と星の明かりだけが頼りになっていた。
ふう、と一つ。
息をついたらもうそこは、丘の上。
ξ゚⊿゚)ξ「あら?」
( ^ω^)
先客を見つけた。
私と同い年くらいの、星のような、男の子。
膝を立て、後ろに回した両手を地面に突っ張るようにして、夜空を見上げている。
厚手のグレーコート。
その隙間から見える、透き通るように白い肌。
夜風に揺れるさらさらな白髪。
思わず見入ってしまうその容姿に目を離せないでいると、
ふいに男の子が振り返って。
私ははっと息を呑んだ。
( ^ω^)「…お」
男の子の両の瞳は、淡い青色をしていた。
240
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 11:54:05 ID:u/2Xswb20
ξ゚⊿゚)ξ「綺麗な瞳ね。隣、いいかしら?」
こくりと頷いたのがわかったので、静かに腰を降ろした。
男の子と同じようにして、上を見上げる。
星は家の前で見たときよりもずっと輝いて見える。
どれくらい経っただろうか。
ふいに夜空に吸い込まれてしまいそうな気がして、気が付く。
一瞬だったかもしれないし、30分はそうしていたような気もする。
星のような男の子は、変わらず私の隣にいた。
ξ゚⊿゚)ξ「あの星、とても強く光ってるわ」
なんていうのかしら、小さく呟く。
( ^ω^)「フォーマルハウト」
じっと黙って星を見つめていた男の子が、口を開いた。
ξ゚⊿゚)ξ「フォーマルハウト……」
( ^ω^)「だお」
どうやら、そういう名前らしい。
初めて聞く言葉だ。
男の子の言葉は、止まらない。
( ^ω^)「秋の一つ星。地球から見て、16番目に明るい恒星だお」
ξ゚⊿゚)ξ「恒星?」
( ^ω^)「太陽みたいに、自分で光を出して輝く星のこと」
やっぱり、星みたいな男の子だ。
ξ゚⊿゚)ξ「詳しいのね」
男の子はその白髪をふるふると振った。
( ^ω^)「お父さんの受け売り。僕は、星が好きなだけだお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなんだ」
だから、こんな時間に(といっても時計を確認してないから
何時かはわからないんだけど)外に出ていたんだ。
241
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 11:56:34 ID:u/2Xswb20
そんなことを考えて、そろそろ帰らないとなぁ、なんて思う。
本当は、もう少しこの男の子と、話をしていたい。
でもお母さんとお父さんには心配をかけたくない。
ξ゚⊿゚)ξ「私、そろそろ帰らなくちゃ」
立ち上がる。
( ^ω^)「……お」
男の子は視線を星から私に移して、何か言いたそうに口をぱくぱくさせた。
( ^ω^)「おー…」
なかなか言葉にならない。
だから、私から先に言わせてもらうことにした。
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、名前を教えて頂戴?」
( ^ω^)「……!」
男の子は驚いたように細い目を真ん丸く開いて、私をじっと見つめた。
ちょっと、恥ずかしい。
( ^ω^)「ブーン」
ξ゚⊿゚)ξ「えっと、それ…名前?」
ブーンはふるふると頭を振って、ニックネームだと言った。
( ^ω^)「本当は、内藤文哉。文章の文に哉で、ふみやって書くお」
( ^ω^)「弟が、僕の漢字を見てブンと読んで…
それからずっとブーンだお」
242
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 11:56:58 ID:/TLmgNsQ0
支援!
243
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 11:57:30 ID:u/2Xswb20
私はそれを聞いて、首を傾げた。
それじゃあブーンは、
ξ゚⊿゚)ξ「日本人なの?」
( ^ω^)「生粋の日本人だお」
驚いた。
てっきり、私と同じかと思っていたから。
そうなんだ、そう言って私も名前を言う。
ξ゚⊿゚)ξ「私は、ツン。そのまま片仮名で、ツン・エイリー」
ブーンはやっぱり、という顔で私を見ていた。
( ^ω^)「外人さんなんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、生まれは日本だけどね。父も母も、もちろん私もイギリス人」
私はくるくるに巻いてある髪を指で触りながら、答えた。
金色の柔らかい髪は、自分でも気に入っている。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンは、違うのね」
244
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 11:58:21 ID:u/2Xswb20
( ^ω^)「ツンは、アルビノって知ってるかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「アルビノ…ホワイトライオンなら、聞いたことあるわ」
( ^ω^)「僕はそれの、人間版」
そう言うと、にっこりとした細い目が少しだけ悲しそうに垂れた。
ドキッとしたけれど、何も言えずに、ほんの少しの沈黙が流れて。
ぽつりと、アルビノがどんなものか教えてくれた。
ブーンの話はときどき難しい言葉が出てきて半分もよくわからなかった。
だけどきっと要するに、ブーンのような人のことだと思う。
そう、星のような人。
私にはそれで十分。
ξ゚⊿゚)ξ「楽しかったわ、ブーン。それじゃあ私は今度こそ帰らないと」
( ^ω^)「おやすみなさいだお、ツン」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、おやすみ」
くるり、背を向けて歩き出す。
ξ゚⊿゚)ξ(…あ)
大事なことを聞き忘れた。
二、三歩進んだところで足を止め、声をかける。
ξ゚⊿゚)ξ「明日もここにいるかしら?」
ブーンはまだこちらを見ていた。
( ^ω^)「いるおー」
それじゃあと駆け寄って、小指を差し出した。
ξ゚⊿゚)ξ「明日もまた、会いましょう?ほら、指切り」
( ^ω^)「おっおっ、約束だお」
その答えに満足して、それじゃあまた明日、と一言残し。
今度の今度こそ、その場を去った。
245
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 11:59:18 ID:u/2Xswb20
翌日。
ξ゚⊿゚)ξ「ツイてないわねぇ…」
昨日の真夜中のお散歩はなんともあっけなく、両親にばれた。
朝に玄関の鍵が開けっ放しだったこと、私の靴が脱いでそのままだったこと。
一番の失敗は、
ξ-⊿-)ξ「…まさかこんなに寝坊するなんて」
私が大寝坊をやらかしたことだった。
今日は日曜日。
本来なら7時に起きて家族全員で朝ごはんを食べる。
昼はお出かけし、夜は明日の支度をして、眠る。
そして私が起きたのは11時。
うわぁ、と思ってリビングへ行くと見つけたのは一枚の置き手紙で。
内容といえば昨日の夜何をしていたのかを問い詰める文、
起きてこないからお母さんとお父さんだけで出かけるという文、
そして。
ξ゚⊿゚)ξ『今日はお出かけ禁止。家でしっかり反省していなさい』
ξ゚⊿゚)ξ「…あーぁ」
これじゃあまた夜、あの丘に行くのは不可能だろう。
かといって、昨日の今日で約束を破るのも…。
考える。
少し、意地の悪い思考が、広がる。
ξ゚⊿゚)ξ(お父さんもお母さんもいないし、夕方までに帰れば大丈夫よね)
ブーンは多分、あの丘のすぐ近くに住んでいるはずだ。
昨日の口振りからしてたまたま居たというわけではないと思う。
探せば、今の時間でも見つかるはず。
ちらり、と時計に目をやる。
時刻は12時と少し。
お昼は遅い朝ごはんで済ませた。
ξ゚⊿゚)ξ「よし」
あの丘へ、行こう。
246
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 12:00:40 ID:mrJ1IDpQ0
wktk
247
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 12:01:16 ID:u/2Xswb20
明るい町を進む。
まだ光っていない外灯は太陽に遠慮しているかのようで、面白い。
並木道を歩いていると日が差して、葉と葉の間がきらきらと光って見えた。
その様子はまるで、昼の星空のようで。
風が吹いた。
ξ*゚⊿゚)ξ「わ……」
橙や黄色に染まった葉が、目の前を舞う、舞う、舞う。
飛んでくる砂粒に目を閉じるのも忘れてしまうほど、それは、迫力があった。
ふいに、目の前が暗くなる。
「だーれだ」
聞き覚えのある声。
目隠しされた手は、冷たい。
そうか、今、探していた。
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン!」
手を振り払って、そのまま後ろを振り向く。
( ^ω^)「おっおっ、正解だお」
昨日と同じ厚手のグレーコート。
同じぐらいの身長。
そこには、まだ夜じゃないお、と笑う白髪の男の子がいた。
248
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 12:02:00 ID:u/2Xswb20
ξ゚⊿゚)ξ「手、冷たいのね」
急に目隠しされたことに、ちょっぴり腹がたって意地悪く言う。
ブーンはそんなことを少しも気にしてない風に、笑う。
( ^ω^)「手が冷たいのは心が暖かいからなんだお?」
ξ゚⊿゚)ξ「そんなの、聞いたことないわ」
( ^ω^)「それじゃあまた一つ賢くなったおね」
そう言ってまた楽しそうに笑うブーンに、
なんとなく丸め込まれたような気がして、納得いかない。
けれど、それよりも気になるものがある。
ブーンの足元。
ξ゚⊿゚)ξ「それは何?」
( ^ω^)「ほうきと袋だお」
また一枚、桜の葉が舞う。
ブーンは私との間に来たその葉を片手で優しく掴む。
( ^ω^)「こうやって散った葉の、お掃除をするんだお」
掴んだ葉を袋にいれて、ほうきを持ち上げて見せた。
249
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 12:02:44 ID:u/2Xswb20
10分もしない内に、ブーンが持ってきた袋はいっぱいになっていた。
ξ゚⊿゚)ξ「全然減らないのね」
袋はいっぱいになったけれど、目の前の落ち葉に変化は見られない。
( ^ω^)「そういうもんだお」
そのいっぱいになった袋を担いで、ブーンは笑った。
( ^ω^)「さてと」
そう言って、歩き出す。
私はよくわからなくて、とりあえずその後ろへ着いていく。
( ^ω^)「本当は、」
道からそれて、並木の間へ。
がさりと音をたてつつ、伸び放題になった雑草をかきわける。
そこには、平らな石が並んで階段のようになっていた。
( ^ω^)「今日の夜に持っていこうと」
ふらふらしながら降りる私に、振り向いて手を差し出す。
( ^ω^)「思ってたんだけど、おっ」
降りた先にあったのは、それなりの広さがある空き地。
端にはいくつもの枝と、丸まった新聞紙、他にも色々置いてある。
ブーンはその枝を真ん中に集めて、ポケットから四角いライターを取り出した。
ξ゚⊿゚)ξ「…もしかして」
ぱっと駆け寄る。
( ^ω^)「そのもしか、だお」
丸まった新聞紙を開けた。
ころころとしたさつまいもが、二つ。
ブーンはそれをアルミでくるんで、集めた枝と葉の中へ埋め、そのライターで火を付けた。
火はあっというまに燃え上がって。
出来た焼き芋を手に、少し、話をした。
250
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 12:03:24 ID:u/2Xswb20
私はそこで、ブーンについて少しだけ知った。
弟くんの名前とか。
朝よりも、夜に外にいることの方が多いだとか。
その容姿が原因で、ブーンは友達がいないと思っていること、とか。
だから、私は、ずっと貼り付けた笑顔を浮かべるブーンに。
ただ、笑って言ったんだ。
「ブーンと私はもう、友達でしょう?」
251
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 12:04:06 ID:u/2Xswb20
銀杏が舞う空き地で。
ぱちぱちと音を立てる小枝と。
両手の中の焼き芋は。
しばらくの間。
確かに、私たちを、暖めていた。
252
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 12:05:37 ID:u/2Xswb20
私の話は、これでおしまい。
これから何年経った今でも、ブーンは私の隣にいる。
心からの笑顔を、浮かべて。
ξ゚⊿゚)ξ秋風のようです
http://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/6.jpg
253
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 12:07:06 ID:u/2Xswb20
終わりです
◆No.6 の素敵すぎるイラストを使用させていただきました
254
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 12:09:17 ID:mrJ1IDpQ0
乙!
綺麗で心が温かくなる話だった
アルビノブーンいいな
255
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 12:25:58 ID:4scHyIT.0
乙
ほんわかした
256
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 12:30:32 ID:5jyn46hU0
おつ
落ち着いた雰囲気のブーンかわいい
257
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 12:33:12 ID:abPsglt20
( °д° )
258
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 12:35:20 ID:/DRjJl6EO
ふんわかしていい感じ
おつ
259
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 13:06:48 ID:l0qGp8Ic0
>>142
うおおおお流石稲荷の絵使って頂いてありがとうございます!なにこの神社お参り行きたい
それぞれ話がちゃんとまとまって繋がっててすごい。わちゃっとお礼に来るみんなのシーンが大好きです
兄弟かっこええ妹者ひたすらかわいい。大好きな他沢山のイラストとのコラボで非常に嬉しいです!
>>202
う……うわああああ自分の絵でコラボキタワァ(n‘∀‘)η゚・*:.。.
絵柄違うけど流石稲荷も天使妹者も自分だったりします流石兄弟妹大好きなんです……
やべぇ!やべぇ!イラストの使い方が秀逸!やだマカロニサラダ様男前
まさかのしんみり……と思いきや最後の妹者の笑顔でほっこりしましたブワッ(;∀;)
イラスト2枚も使って頂いてありがとうございました
No198さんも構図被りなんてよくあることですお気になさらず!
むしろこういう形でコラボされないかなーなんてひそかに期待してた自分ガイル…そして実現されて狂気乱舞な自分ガイル
ラノベ祭り万歳
260
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 16:25:22 ID:Bmc.1xwM0
vipに来てるやつ面白いな
それにつけても猿の多さよ
261
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 16:29:15 ID:n7oxMqgo0
VIPの規制が憎い
俺の分まで支援は頼んだ
262
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 16:30:51 ID:zWpndBA.0
>>238
自分の絵使ってくれてありがとうございます!なんだこの心が暖かくなる話
はぁぁぁああ!!ありがとうございますありがとうございます!!
ニヤニヤしすぎて変な顔になってきた!
263
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 20:45:20 ID:y72MjMr20
作品URL
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1353252395/145-171
作品名
(-_-)爪'ー`)y‐从 ゚∀从神社の六子さんのようです
使用した絵のURL(任意)
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/160.jpg
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/98.png
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/150.jpg
投下報告です
264
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 20:54:47 ID:cpSk32KI0
IDもすっかり変わって今更感すごいけど天下一武道会の私信をば…タイミング失ったんや…
前スレ
>>881
ドア信さんENDの絵までありがとうございましたっ
ξ゚⊿゚)ξの妄想は具現化したようです
スピンオフクルー?
前スレ
>>915
こういう絵も描けるとは…ありがとうございました!
正直こんな形で使っていいのか迷ったんですけど迷ったらGOって誰かに言われたんでGOしました!
快く使用させて頂き改めてありがとうございました〜
265
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:13:03 ID:GFlG7z5cO
投下報告します
作品URL
http://jbbs.m.livedoor.jp/b/i.cgi/internet/13029/1353411116/1-
(
>>65
から)
作品名
('A`)陰陽師のようです
使用した絵のURL(任意)
ttp://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/175.jpg
266
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:22:30 ID:FN6HLAZc0
投下する
267
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:24:27 ID:FN6HLAZc0
秋の夜長のようです
.
268
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:25:26 ID:l0qGp8Ic0
しえ
269
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:26:03 ID:FN6HLAZc0
爪先の冷たさは、無意識の溜息にかき消された。
('、`*川「はぁーぁー……」
静まり返ったリビング。
日に日に寒さを増す霜月の夜、ペニサスはテーブルに頬杖をつきながら、
一昨日の出来事を思い出す。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
『ごめん、別れてくれないか。他に好きな人が出来たんだ』
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
270
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:27:48 ID:FN6HLAZc0
最後の授業が終わり、放課後、
付き合っていた男子生徒に呼び出された先に待っていたのは、
実にあっさりとした別れの言葉。
一瞬困惑したペニサスだったが、彼の眉をひそめた顔と低い声に押され、
つい、「うん」という了承でもって返してしまった。
('、`*川(たった二ヶ月かあ)
過ごした毎日を思い返して、また溜息を一つ。
手を繋いでいた日々の終わりが、暮秋の末枯れた景色と重なる。
向こうから『付き合ってくれないか』と言われたのは、
まだ僅かに暑さが残る、九月の終わり頃。
図書室での読書に集中している最中だった事と、
自分が誰かと付き合う事はないだろうな、と思い続けていた事もあって、
大いに驚いたのを今でも覚えている。
ペニサスもその男子生徒の事は嫌いではなかった為、二つ返事で告白にOKを出した。
271
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:29:26 ID:FN6HLAZc0
後で理由をそれとなく聞き出してみると、「物静かな雰囲気が気に入ったから」。
ならばそのままでいようと、高校生活は今まで通りおとなしく、相手にも嫌われないように努めた。
休日は誘われるがまま、連れられるがまま、町へ繰り出した。
最初は向こうからの一方的な思いだったが、次第にペニサス自身の思いも募っていった。
高校三年に上がる頃には、自他共に認める立派なカップルになっているかも知れない、と夢見ていた――
が、それはまさしく幻想そのもので、十一月に入った頃から、徐々に関係は疎かなものとなり。
そしてそのまま尻すぼみとなってしまい、彼氏彼女の関係は終局を迎える。
('、`*川(やっぱり私が原因かなあ……?)
相手側に非は無いだろう、もしあるとするならばそれは自分だ。
でも、何がいけなかったんだろう。自分がそのままでいたのが不味かったのか。
272
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:31:00 ID:FN6HLAZc0
疑問は紐解けず、頭に巻きついたま離れない。
両親と妹も寝静まり、あと三十分で日付も変わってしまうというのに、
時が過ぎるのも忘れて悩み続けていた。
秋は太陽の足も速く、夜はすぐに来るが、明けるまでの時間は長い。
加えて空模様は変わりやすく、抜けるような青空になったと思えば、
一日足らずで雲に覆い尽くされる。勿論、雨が降る事もある。
そんな様は、昔からよく人の心にたとえられた。
('、`*川(今夜の空はどうなってるかな)
椅子から立ち上がり、窓を開いて夜空を見つめる。
周りに高い建物がほとんどないお陰で、星の粒が散りばめらた空が良く見えた。
三日月も、都会のビルや電線から解き放たれて、のんびりと浮かんでいる。
273
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:32:35 ID:FN6HLAZc0
('、`*川(そういえば……)
ペニサスは昔読んだ本の中に、月を鏡に見立てた詩があった事を思い出す。
会いたい人が遠くにいる時は月を鏡にすればいい、というような詩だった筈だ。
しかし、今夜は三日月。
欠けた鏡には何が映るのだろうか。
('、`*川(寒い)
ふいに入り込んだ木枯らしに身を震わせ、思わず窓を閉める。
夜風のそよぐ音も、乾いた葉音も聞こえなくなった。
身を翻し、月影に背を向ける。
月の船には、二人は乗れない。船に乗った者は、真下にある深い淵を見る事は出来ない。
手の届かない遠くへ行ってしまうのを、ただ見送るしかないのだ。
また椅子に座り、左手で頬杖をつく。
すると、がちゃん、と扉が開き、一人の少女が入ってきた。
274
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:32:35 ID:G1IxTADI0
支援
275
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:34:48 ID:FN6HLAZc0
*(‘‘)*「……まだ起きてるの?」
('、`*川「うん、ちょっとね? ヘリカルは?」
*(‘‘)*「ふぁー……」
入ってきたのは、妹のヘリカル。ペニサスと目を合わせた後、寝惚け眼で欠伸をし、目を擦った。
流石に深夜は眠たいらしく、しきりに瞬きをしている。
('、`*川「どうしたの? またコーヒー?」
*(‘‘)*「コーヒー……ブルーマウンテンのニュークロップってやつ飲んでみたい……」
('、`*川「眠れなくなっても知らないよ、あとそんなものが家にある訳ないでしょ」
ヘリカルは、はぁーい、と蚊が鳴くような声で返事をし、薬缶に水を注ぐ。
そしてクッキングヒーターで温め始めると、
棚からドリップパックを二つ取り出して、白いカップに乗せた。
276
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:36:06 ID:FN6HLAZc0
('、`*川「二つ?」
*(‘‘)*「あ……えっと、お姉ちゃんはいらない?」
('、`*川「じゃあ貰おうかな」
*(‘‘)*「分かった」
普段はしっかりしているが、ときおり抜けた所を見せる。
この事で良くからかっていた小学生時代の記憶が、にわかに蘇ってきた。
('、`*川「はぁー……」
*(‘‘)*「どうしたの?」
('、`*川「ちょっとね……」
277
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:38:23 ID:FN6HLAZc0
*(‘‘)*「もしかして振られた……?」
('、`*川「またストレートに来たね」
オブラートに包めないものなのか。
そう思いながら重い息を吐き、頬杖を右手に替える。
*(‘‘)*「やっぱりそうなんだ」
('、`*川「何で分かったの」
*(‘‘)*「勘……そんなに落ち込んでるって事は、そうかも知れないな、って……思っただけ……」
('、`*川「そう」
*(‘‘)*「うん……」
妹に相談してみるのも良いかも知れない、と思い立ち、
ペニサスは事の顛末をゆっくりと、包み隠さず話す。
ヘリカルは椅子に座りながら、まだ冴えない頭のまま、話に耳を傾けていた。
278
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:39:44 ID:FN6HLAZc0
('、`*川「……で、こうなって……」
丁度話が終わる頃にお湯が湧き、コーヒーが淹れられる。
ヘリカルは湯気が立ち昇るカップをペニサスの前に置いて、自身も座った。
('、`*川「好きだねー、コーヒー」
*(‘‘)*「ジュースなんて、子供の飲み物だからー……」
('、`*川「あんたもまだまだ子供でしょーが」
*(‘‘)*「そうかもー……」
やはり十分に頭が回ってないらしい。
ミルクと砂糖を入れ、スプーンでかき混ぜる手の動きも、緩慢そのものだ。
ペニサスはというと、コーヒーに手もつけず、どこか遠くを見るような目でぼうっとしていた。
このまま夜の闇に溶け込んでしまえたら楽なのに、と感じながら。
279
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:41:21 ID:FN6HLAZc0
http://boonrest.web.fc2.com/maturi/2012_ranobe/e/143.jpg
('、`*川「なんで振られたんだろ……」
*(‘‘)*「うーん」
ヘリカルは軽く唸り、コーヒーをごくりと飲み込む。
('、`*川「分からない?」
*(‘‘)*「分かんない、けど」
('、`*川「けど?」
*(‘‘)*「……お姉ちゃんが消極的だからっていうのも、あるんじゃない?」
痛い所を突かれ、言葉に詰まる。
確かに今まで、ペニサスが自分から相手に対して何かを働きかけた事は、ほとんど無かった。
280
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:43:48 ID:FN6HLAZc0
('、`*川「それは……」
*(‘‘)*「当たってる?」
('、`*川「……かも」
*(‘‘)*「的中ー」
ヘリカルがコーヒーを一口飲み、ふぅ、と息を吐く。
*(‘‘)*「でもさーその男子も、自分から付き合ってくれって言った癖に、
消極的だからって理由で振っちゃうなんて、随分と自分勝手だよね」
('、`;川「うーん……」
適当な言葉が見つからない。
コーヒーを飲んで多少なりとも覚めてきたのか、ヘリカルは本来の調子で話し始める。
効能だとしても少々早い気がしないでもないが。
281
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:45:19 ID:FN6HLAZc0
*(‘‘)*「お姉ちゃんはその人の事、どう思ってたの? 好きだったんだよね?」
('、`*川「最初はそうでもなかったけど……好き、だったと思う」
頼もしい人で、いつも自分を引っ張ってくれる。自分を好いてくれている。
いつしか好意だけではなく、羨望の眼差しすら向けるようになっていた。
*(‘‘)*「ふーん」
('、`*川「でもまあ、別れちゃった事は仕方ないのかな……」
*(‘‘)*「その男子もお姉ちゃんを手放すなんてもったいない事するよね」
('、`*川「そう? そうでもない気もするけど……」
*(‘‘)*「ほらもっと自分に自信を持とうよ! 次があるって!
今日の淵は明日の瀬って言うし! ね?」
282
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:47:04 ID:FN6HLAZc0
過ぎた事はしょうがない。次へ進もう。
実にありふれた言葉だが、今の傷心には良い薬になるだろうな、とペニサスは思う。
('、`*川「何だかヘリカルの方がお姉ちゃんみたい」
*(‘‘)*「じゃあ今日一日は私がお姉ちゃんって事で」
('、`*川「もう十五分足らずで終わるけど」
*(‘‘)*「あ」
気付けば、日が変わるまであと七分程度しかない。
*(‘‘)*「……もう寝る! じゃ、おやすみ!」
('、`*川「おやすみー……あと」
('、`*川(「今日の淵は明日の瀬」、じゃなくて「昨日の淵は今日の瀬」、の方が正しいからねー)
心の中で訂正。
283
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:49:09 ID:FN6HLAZc0
目の前のカップに手を当て、以前を振り返る。
('、`*川(コーヒー、ね)
先月、付き合っていた男子生徒と一緒に、喫茶店でコーヒーを飲んだ事を思い出した。
砂糖を多めに入れ、ミルクも入った、甘く暖かいコーヒーを。
二人で一緒に飲んでいるだけで、身だけではなく心も温まっていた。
('、`*川(やっぱり……)
誰かと二人で道を歩く為には、変わらないといけないのか。
今まではありのままでいればいい、と思っていたが、そうでは駄目なのか。
カップから昇る湯気を眺め、また思索にふける。
284
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:50:32 ID:FN6HLAZc0
誰かと道を共にするのならば、必ず歩幅を意識しなければならない。
自分が動かずにいれば取り残され、
自分が先に進み過ぎれば相手を置き去りにしてしまうからだ。
相手が、もしくは自分が止まっている事に気付けば、引っ張る事もあるかも知れない。
しかし、それも長く続くとは限らない。
連理の枝と言えるほど仲睦まじくはないのであれば、繋ぐ想いはいつしか枯れ、
その場で朽ちていく。
('、`*川(じゃあ、これからどうすれば良いんだろう)
積極的になれない事に、大した理由はなかった。
自分から動くが故に、相手に鬱陶しく思われるのが怖い。
相手に嫌われる事が怖い。でも、一人でいるのは嫌だ。
285
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:52:23 ID:FN6HLAZc0
それだけだった。
小さな温もりを求めてはいても、胸の奥に根付いた意味のない不安に蝕まれ、
上手く足を動かせず。
相手に嫌われる事で、自分の心にも傷が付く事を恐れていた。
深さの分からない水面に足を踏み入れるには、相当な勇気を必要とするものだ。
強さが欲しいな、と、ペニサスは思った。
痛みを受け入れる強さが。
自分の行動に自信を持てるようになる心が。
自分一人で出来ないのならば、誰かの手を借りてでも。
('、`*川「……寒っ」
夜が更けると共に、部屋も冷え込みもそれなりのものとなった。肌も粟立ち始める。
ふと、目の前に置かれたカップを手に取ると、コーヒーの香りが鼻をくすぐった。
286
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:53:51 ID:FN6HLAZc0
一口、飲み込む。
ミルクも砂糖も入れていないが、今はこのままで飲みたい気分だった。
('、`*川(ふぅ)
ほろ苦さと温かみが口に広がり、仄かなぬくもりが体に沁み渡る。
何故だか、胸の奥に沈み込んでいたものも、溶けて消えていく気がした。
時計テーブルの真ん中に置かれた、時計に目をやる。
明日はもう目と鼻の先だ。
('、`*川(明日は……)
287
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:55:30 ID:FN6HLAZc0
これからの私は、どうなっていくんだろう。
明日の空は、どうなっているんだろう。
今日とどこか変わっている所があるかな。
もし変わっているのなら、それを受け入れていけるかな。
いられると、良いな。
根拠のない、安心感と期待感が入り混じった気持ちのまま、
ペニサスはまた、コーヒーに口を付けた。
秋の夜長のようです
おわり
.
288
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:56:24 ID:7TLyj4qs0
乙!
なんだかほっこりした・・・ペニサスがんばれよ・・・!
289
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:58:05 ID:iwyUzHXs0
おつんつん
290
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:58:43 ID:FN6HLAZc0
№143の絵を使わせていただきました。
ほのぼのとしてて好き。夜の小さなひと時、という感じが気に入った。
ありがとう!
絵を描かれた人、支援をしてくれた人、乙!
ばいぶー( ^ω^)ノシ
291
:
名も無きAAのようです
:2012/11/24(土) 23:59:23 ID:Wfq7V/u60
乙!絵を使ってくれてありがとうございます
寒い夜更けに読むのにぴったりな話
コーヒー飲むの我慢してたのに飲みたくなった
どうしてくれようず
292
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:12:22 ID:Ge1B3FHM0
乙。コーヒー飲もうと思ったけど俺胃が弱かったでござる
とうかするね
293
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:13:07 ID:Ge1B3FHM0
雪を、食べる
.
294
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:14:17 ID:Ge1B3FHM0
ξ゚⊿゚)ξ「ヒヤシンスの匂いがしたら、アナタは止まってしまう」
女は続ける。
ξ゚⊿゚)ξ「雪はアナタを見捨てるわ」
女は男を見つめる。
空には薄い雲が円を描いていた。赤の大地はその薄い雲を仰いでいる。
しかし、それに男が気づくことは無い。
('A`)「それでも探さなくてはならないんだ」
男は続ける。
('A`)「信じるものだって変えるさ」
女が被せる様に言った。
ξ゚⊿゚)ξ「私は、被害者」
その一言は遠くの山にこだました。
やがて暗くなり、冬が来た。赤が青に変わった。
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295
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:15:54 ID:Ge1B3FHM0
男は雪の里で雪の川を歩き、雪を探した。
空は藍色に染まり、月が昇った。月に顔は無かった。
女は男を見つめ、問う。
ξ゚⊿゚)ξ「雪は見つかったの?」
男は昨日見た夢で買ったシガレットに火を点けた。
煙は地に落ち、ごとりと音を立てた。
('A`)「見つかったらこんな所にはいないよ」
ξ゚⊿゚)ξ「そう」
女は地に落ちた煙を拾う。
ξ゚⊿゚)ξ「これは雪では無いの?」
('A`)「これが雪に見えるのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ」
男は女に構わず歩みを進めた。
女が付いてくることは無かった。
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296
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:17:20 ID:Ge1B3FHM0
次の日、男は空気が白んでいる事に気が付いた。
男は白む匂いを肺に詰め込む。
その様子を見た女は、口を開いた。
ξ゚⊿゚)ξ「木が枯れてしまったの。草も、花も死んでしまった」
男は転がっている氷に腰を掛ける。
('A`)「元々死んでいたじゃないか」
その男の声に、氷は涙を流した。
暫く経ち、氷は魚を産んだ。氷はより一層涙を流した。
生まれ落ちた魚を見つめ、女は問う。
ξ゚⊿゚)ξ「なら私達は何故生きているの?」
('A`)「死にきれなかったからだろう」
氷は次第に溶けていった。
魚は悲しみ、自ら命を絶った。
ξ゚⊿゚)ξ「薔薇と一緒ね」
女がそう言うと雲が晴れ、月が顔を覗かせた。
その日の月には顔があった。
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297
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:18:21 ID:Ge1B3FHM0
月は男と女を見下ろし、こう言った。
「薔薇は昨日死んだよ」
その優しげな声を聞いて、女は帰路についた。
残された男は溶けた氷に訊ねる。
('A`)「雪を知ってるか?」
溶けた氷は少し考え、こう言った。
「もっともっと寒くならないと、雪は現れないよ」
男はもう一度溶けた氷に問う。
('A`)「どうすればもっと寒くなる」
溶けた氷は答えた。
「太陽が僕たちの事を見捨てたら」
雪の川は緩やかに氾濫した。輝く光があっという間に平原を覆い尽くした。
溶けた氷は溢れる光に耐え切れず、目を覆った。
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298
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:19:19 ID:Ge1B3FHM0
ある日、冬は風を作った。
生まれたばかりの風が、初めて女の髪を揺らした。
髪から漏れる、甘いヒヤシンスの香りが男の鼻を擽った。
('A`)「雪が見つかりそうなんだ」
男が口を開くと、いっそう穏やかな風が二人を包んだ。
地に落ちた輝きが巻き上がり、女の長い睫毛に纏わりつく。
ξ゚⊿゚)ξ「そうなの。彫刻をアナタにあげないとね」
('A`)「いや、良い」
男は横に首を振った。
('A`)「氷で出来ているんだろう?」
女は縦に首を振る。
ξ゚⊿゚)ξ「いらないの」
男はいつも夢で買うシガレットに火を点けた。
煙は風に運ばれ、次第に水となって降り注いだ。
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299
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:20:25 ID:Ge1B3FHM0
('A`)「ああ。もう氷は十分なんだ」
その男の一言に対し、女はこう言った。
ξ゚⊿゚)ξ「うそつき」
冬が二つ目の風を産んだ。
今度の風は女の髪を揺らさずに、男の髪を揺らした。
遠くの森の香りと透明な氷の香りが混ざった美しい冷気が、ふわりと舞う。
男は転がっている氷を口に含んだ。
('A`)「教えてくれ。氷は俺の何だ」
女は答える。
ξ゚⊿゚)ξ「体よ」
男は暫く黙った後、もう一度問う。
('A`)「氷が俺の体だと言うのなら、雪は俺の何だ」
女は俯き、こう答えた。
ξ゚⊿゚)ξ「人かしら」
男が再び歩みを進めると、雪の川が、しゃりと鳴った。
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300
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:21:40 ID:Ge1B3FHM0
ある日、男は氷に話しかけた。
('A`)「雪が降れば、ここは人になってしまうだろう」
氷はそれを聞いて驚く。
七つ目の風が遠くで驚いた枯れた木を支えた。
「でも、僕たちと人は別だよ」
氷は不安そうに続ける。
「冷えてしまってるのが同じでも、空を殺すなんて」
男は氷の言葉を聞いて、恐ろしい事だと感じた。
七つ目の風がやって来て、男の背中を撫でる。
('A`)「ありがとう」
七つ目の風は頬を染め、こう言った。
「それでも、雪は降るんだ」
次の日、ハーブの香りの中、世界は雪に包まれた。
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301
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:23:09 ID:Ge1B3FHM0
女は天から降りてくる雪を見つめる。
その視線に気づき、雪はジゼルを最初から踊った。次第にそれは女の頭を白く染めた。
ξ゚⊿゚)ξ「見つかったのね、雪が」
男は頷いた。
('A`)「ああ」
女は男の冷えた手を握った。男は手に温もりを感じ、優しく握り返した。
降りしきる雪は速度を緩め、九つ目の風は雪と共に天に感謝をした。
九つ目の風が一通り感謝を終えると、女の髪を揺らした。
ヒヤシンスの香りが雪の涙に混じって男の胸を強く打った。
ξ゚⊿゚)ξ「もうじき、ここは人になる」
男は悲しくなって、問う。
('A`)「友にはなれないのか」
女は答えた。
ξ゚⊿゚)ξ「ええ」
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302
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:24:07 ID:Ge1B3FHM0
男はもっと悲しくなって、また問う。
('A`)「どうして」
女は少しだけ微笑み、こう答えた。
ξ゚⊿゚)ξ「だって、みんな一人じゃない」
すると女は白い息を、ふよりと漂わせた。
その息は次第に雪となり、降りしきる雪と結婚した。
九つ目の風は祝福をした。
('A`)「そうか」
男も白い息を、ふよりと漂わせた。
しかしその息は天に届くことが無く、地に落ちてしまった。
雪が落ちた息を弔う。男の周りから一切の音が消える。
('A`)「なあ」
男は足元に集まる雪に話しかけた。
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303
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:24:57 ID:Ge1B3FHM0
('A`)「ここが人になるなら、お前達はどうなる」
雪は答えた。
「人になるだけさ」
('A`)「嬉しいか」
「それは君たちが決める事だよ」
雪はそう言うと白い息を、ふよりと漂わせた。
その息は天へと上り、新たな雪を降らせる。
世界は青白い冷気の世界へ導かれていく。それでもヒヤシンスの香りは消えることが無かった。
男の声を聞いて、雪の女王が顔を覗かせた。
「人になるのが怖いの?」
雪の女王は男に問う。
男はくぐもった声で一言、ああ。と言った。
すると女王は、
「雪になるのも怖いのにね」
と囁いた。
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304
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:26:11 ID:Ge1B3FHM0
次の日も雪は降り続いた。
しんしんと青白く染まる大地を見て、男は女と繋がっている手に少しだけ力を入れた。
ξ゚⊿゚)ξ「雪は春を待ち望んでいるの」
女は突然口を開いた。
しかし、男は視線を女に移すことは無い。
女は続ける。
ξ゚⊿゚)ξ「でも春は来ない」
男はゆっくりとしゃがみ、雪をすくった。
暖かな雪は、男の指先を次第に凍らせていく。
雪は不安そうにその様子を見ていた。
ξ゚⊿゚)ξ「食べるの?」
女は男に問う。
('A`)「俺だって本当は望んでいるのかも知れない」
ξ゚⊿゚)ξ「春を?」
('A`)「ああ」
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305
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:27:24 ID:Ge1B3FHM0
雪は言った。
「同じなんだね」
男は頭の雪を払う。周りの雪よりほんの少し青白い雪が、ほろほろと大地を染めた。
('A`)「嬉しいか?」
「それは君たちが決める事だよ」
男は雪の言葉を聞いて、笑った。
雪も男の笑顔を見て笑った。
世界を回って戻ってきた二つ目の風が、女の髪を揺らす。ヒヤシンスの香りはしなかった。
「食べなよ」
雪たちは口々にその言葉を発した。
大地はゆっくりと動き始める。青白い神秘が、音を立てて天に上る。
朝の光を浴びて、ジゼルが終わってゆく。
ξ゚⊿゚)ξ「守ってあげる」
女は男の手をいっそう強く握った。
男はその手に温もりを感じ、ついに持っていた雪を口に含んだ。
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306
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:28:26 ID:Ge1B3FHM0
男が雪を飲み込むと、雪の女王が天を覆い尽くした。
「春の祭典を始めましょう」
世界が崩壊する。
「ついに始まるんだ。春の祭典が」
崩壊する世界の中で、雪たちは次々に卵を産む。
('A`)「俺には決められない。君が決めてくれ」
卵は孵り、つがいの鮭は雪を求める。
ξ゚⊿゚)ξ「ええ」
男と女は崩壊する世界を、じっと見ている。
('A`)「悪いな」
つがいの鮭は、雪のいなくなった世界でこう思った。
ξ゚⊿゚)ξ「守るって言ったもの」
ああ、生まれる場所を間違えたのだ。
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307
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:29:18 ID:Ge1B3FHM0
('A`)「教えてほしい。決めた事を」
男は女を見つめた。
ξ゚⊿゚)ξ「分かったわ」
全てが溶け始めた世界で女は天を仰ぐ。
そして、誰にも見えない青白い冷気の中で女が口を開いた。
ξ゚⊿゚)ξ「雪は」
そして、この世界に 緑が生え て
ξ゚⊿゚)ξ「悲し」
その緑が
紫にかわり
ξ゚⊿゚)ξ「く」
ヒヤシンスの
うみが
.
308
:
名も無きAAのようです
:2012/11/25(日) 00:29:58 ID:Ge1B3FHM0
しだいに
かがみのだいちを
はるの いぶきへ
なにもうつさない
いぶき
へ
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