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大河×竜児ラブラブ妄想スレ 新避難所

1まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY:2009/06/16(火) 03:01:04
ここは とらドラ! の主人公、逢坂大河と高須竜児のカップリングについて様々な妄想をするスレの避難所です。
アクセス規制で本スレに書けない、とかスレに書けないような18禁のエロエロ話を投下したい時とかに
お使いください。

221◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/30(火) 16:13:13 ID:???
◆eaLbsriOas@避難所です。代理投稿歓迎。感想、少しだったとしても嬉しいです。ありがとう!
新避難所>>86本スレ>>77「本当はこわいの」の続編です。ちょと長いの。
***


・本当はこわいの その2なの

「いや〜見た見た! やっぱ暑くなったら心霊DVDだよな。お手軽クーラー、風物詩!
 でもこのシリーズもさすがにちょっとクオリティ落ちてきたよな。10本ほとんどモロ合成、
 素人の俺たちにもつっこみどころ満載で、笑うとこのが多かったくらいだし。
 今回唯一、怖かったのはやっぱあれか、線路の……いや! あれもたいしたことなかったな!
 ぜんぜんだ! あれもどうせよく出来た合成……いやイマイチな合成に決まってるし!
 いや〜笑った笑った、なあ大河!」
「……」
「……たい、が?」
「……うん、笑った」
「……そっ、そうだよな? なんかおまえ今、顔固まってフランス能面みたいになってるけど。
 おまえも、わ、笑ってたもんな?」
「……うん、そうだね。笑ったね……」
「そ……よ、よおし、じゃあ、今夜はこれで解散にしようぜ。目疲れたし! 眠くなったし!
 ……ね、眠くなったよな、大河?」
「……」
「ぉぅ……」
「……うん。たぶん」
「おう、そ、そうか! そうだよな! あくびとかも出ちゃうもんな? ふあぁ〜ふ……」
「……」
「あ、あくびってつられたりするよな? 不思議だよな? 移ったり、な?」
「……」
「ほらほら大河、あくびあくび。ほら、あ〜ふ……」
「……」
「……ま、まあ移んないこともあるか。あるよな。……まあでもだ! じゃあ夜遅くもなったし!
 ふたりとも眠くなったし! 今夜はこれでかいさ」
「やだ」
「……や、だ……?」
「うん、いや」
「い……やっぱり?」
「うん、まだ解散しない」
「まだって、おまえ、なんだかんだで、もう夜の1時まわってんだぞ?」
「いいじゃないべつに。充分まだじゃない。私、3時だか4時だかまでいたことあるでしょ?」
「たしかにそんなことも何度かあったけどよ。そりゃおまえあれだろ? たとえばついこないだとか、
 テレビで新作ルパン映画見出したらものの10分でおまえが沈没、俺も頑張ったけどまさかの
 クライマックスど真ん中ラスト10分で耐え切れず轟沈。そのまま二人でド爆睡決め込んで、
 俺がうはぁと飛び起きたら4時10分前だった、とか、そういう場合だろ?」
「そうだっけ? あんま覚えてない」
「そりゃそうだろうよ。記憶もねえだろうよ。大変なんだってそういう時のおまえ。
 まあ起こしても全然起きやしねえ。涎もたらして人事不省、機嫌も悪くならねえくらいボケーっとして、
 偶然なんだかなんなんだか、振り回す拳は俺のレバーやテンプルやチンとか的確に急所突いてくるし」
「えっ? 嘘!? 私あんたのチンP―!とか殴ったわけ!? なんてことさせんのよこのドマゾ変態野郎!」
「いやもうほんと勘弁してくれ。それは拾えねえわさすがの俺も。チンだよチン、ここ、顎!」
「いやあっ! ばっちいっ! 腐るっ! あんたちょっと消毒っ! おっ、オキチドール!」
「オキシドールだろそれ!? 狂った和人形みたいになってんぞ!? ってかだから顎だって!
 ひとの話聞けよ!?」
「それそれ! いいから早くあんたのその、お、オチチドール! よこしなさいよ!?」
「もっとヤバイ人形になってんじゃねえかしかも俺所有!? てかだから顎! おまえ殴ったのはここ!
 顎だっ!こおおおっっっ!? ……痛ぇっっ! な、なんでいきなり殴るんだよっ!?」
「えっ? だってあんた、消毒より先に俺の顎を殴ってウサを晴らせって言うから。
 私が寝惚けてるのいいことに、ほれほれうひひってあんたのチンP―!を触らせたお詫びだからって」
「俺が言ったことが残って無さすぎで竜児くん的にももうどうにもならねえよ……
 寝惚けたおまえに触らすとかもう単なる犯罪じゃねえか。まあ、いいから落ち着いて聞いてくれ、大河。
 おまえはたしかに寝惚けてはいたが」
「ふぁ〜あ……騒いだらなんだか眠くなっちゃった。私、帰って寝るわ。じゃね竜児」
「お、おおおおおぉぉぉぉ……ぅ。な、なんて……なんて雑な女なんだ、おまえって奴は……
 眠けりゃ話は聞かねえわ、誤解したままなのに消毒もしねえで寝るだとか、ど、どんだけ」
「あ、忘れてた。消毒も明日の朝する。あんたもろもろ覚えときなさいよ、この駄エロ犬!
 ふあぁ……っふ。んにゅ。じゃあおやすみなさーい……」
 バタン。カンカンカン……

222◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/30(火) 16:18:35 ID:???
「はああ……ま、まあ、帰ってくれたから良しとするか……? あー、顎いてぇ……」
 ……ガンガンガンガン!
「おう階段!? なんだなんだひでえ!?」
 バッターン!!
「りゅうじぃぃぃっっっ!!」
「バカおまえ大声出すなっ! 大家がってうげぇっ!? ボロ泣き!? なんだおまえどうした大河!」
「やっばまだがいざんじないのおっっっ!」
「……やっぱまだ解散しないの、か? って、えっ、おまえ、なんだ、こっち、近寄って……?」
「だっご!」
 ぎゅむ〜っ!
「うへあっ!? ……だっこ、か? じゃねえよおまえ! なななんだ、どっ、どうした、大河……?」
「……」
「た、たい、が……?」
 んぱっ!
「ふー、落ち着いた! あらやだ鼻水のアーチが綺麗……あんた何その手?」
「へっ? あ、いや。お、俺も抱きしめかえした方が、おまえ慰めてやれるのかな……? とか」
「げ! やめてよ気持ち悪い。私を慰み者にするとかどんだけエロいの!? 欲情すんな!
 あんたってばほんとにオールシーズン不眠不休で発情してるから参っちゃう。どうせなら
 24時間エロってないでテロと闘え、ジャックみたいにさ」
「……怒っていいんじゃねえかな俺怒っていいんじゃねえかな俺怒っていいんじゃねえかな俺……」
「っ? どうしたの竜児、足元睨んじゃって。ぶつぶつ何言ってんの? 大家が死ぬよ? 呪いが床貫いて」
「ねえよ!ってわあバカおまえ顔近ぇよ! ったく罪の無い子どもみてえな表情しやがって……!
 おまえ……ほら、涙。拭いてやるよ……で、どうした? あんなに慌てて、おまえ、なにがあったんだ?」
「……えっ? な、なにもないよ?」
「嘘こけ。あんなに泣いて取り乱してるおまえなんか久しぶりに見たぞ。3日ぶりくらいじゃねえか?」
「短か……」
「……なあ、大河。言ってみろよ。いや、言ってくれよ、何があったのか。どんなことでも隠すな。
 いいか? 俺はおまえの味方だ。たとえ何があってもだ。俺に出来ることならなんだってやってやる。
 俺は誓った。おまえは虎、俺は竜、永遠に並び立つと。なあ、大河。言ってくれよ、お願いだ……」
「……」
「……それとも、そんな俺だから……俺だから……言えねえこと、なのか……?」
「……」
「ああくっそ!! やっぱりそうか!? くそおおおぉぉうっ!! そいつぶっ殺してやりてえ!!
 おまえ怪我は無いのか!? なんてこったちくしょおおうっ!! おまえを送ってやれなくて、
 本当に………………………………………………………すっ…………すまなかったと思う……っ!」
「長っ……へっ、なに、怪我? 怪我なんてないよ……?」
「そうか、ならよく……ねえよ!! くそっ! そいつどんな奴だった!? 覚えてるか!?」
「へっ!? そいつ……?」
「そうだよ、だからそいつどんな……っ! そうか……思い出したくはねえよな、襲われたんだもんな……」
「へっ!? 襲われ……私、襲われてなんかないよ!?」
「いいんだ、大河……今は何も思い出さなくていい……ただ、起きたこと、そのことだけは俺には
 隠さなくていいんだ……隠さないでくれよ、なあ、大河……」
「もーっ! だから襲われてなんかないってば!! ってか、そうね、強いて襲われたって言えば……」
「っ!? なんだ、思い出したのか!? 言えるのか! わかった指さすんだな!? そっちの方向か!?
 ……って俺ぇええええっっっ!? 俺を指さしてるのか!? この家にいた俺なわけねえだろ!?」
「ううん、さっきじゃなくて。チンP―!触らせたのと、あと抱きつかれそうになったこと」
「だから触らせてねえよ!? あと抱きついてきたのおまえだろ!? 冗談じゃねえぞ、ったく……
 なんだ? 冗談……てことは、ほんとに、おまえ、ほんとに、外で誰にも襲われてないのか……?」
「うん!」
「危ない目にあっても、いないんだな?」
「うん! ……うぎゃっ!」
 ぎゅうううううっ!
「よ、よかった……よかったああああ……おまえ、無事だったんだああああぁぁぁ……っ」
「ちょっ!? やだ! やめてよ離して! へ、変態っ! 痴漢! 現行犯! 襲われるっ!
 今危ない目っ! この……っ! う、嘘……っ。な、泣いてるの? 竜児……」

223◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/30(火) 16:19:29 ID:???
「っぐ、泣いて、なんか……あれ俺泣いてるわ……心配すんな、大河、これ、安心して、
 おまえ、無事で……泣いてるだけだ……心配、いらねえ……」
「っ! 竜児……っ」
「わ、わかった。離すよ。悪かった、抱きついたりして……すまねえ、本当に………………すまねえ」
「え、もう……い、いいけど、べつに……あ、謝んなくたって」
「はー、ちょっと待ってくれ。はあ……はあ……っはーっ……よし、もう大丈夫! 落ち着いた!
 すまなかったな、大河。……たい、が?」
「ほら、涙……拭いたげる……」
「あ……お、おう、ありがとよ。……なんだよ、笑うなよ」
「竜児だって、笑ってるじゃない……ほんと、つられてすぐ笑うんだから……」
「いいじゃねえかべつに……ふーっ! さて……そうだ、なんだ? なんかあったぞ? あれ……
 そうそう! 襲われても危ない目にもあってねえんなら、なんでおまえ泣いて帰ってきたんだ?
 あ、いや、戻ってきたんだ?」
「……はあ、仕方ない。言うしかないね」
「おう、そうだよ、言えよ」
「……あのさ、竜児。聞いても……怒んない?」
「おう、そりゃもちろん。おこらねえおこらねえ」
「聞いても、すぐ帰れとか、言わない?」
「おう、言わねえ言わねえ」
「……じゃあ言う。あ、あのね? 竜児……ほんとは、私……ちょと、こわいの……」
「……」
「あのね? ここにいるとね? 平気だけど。外、出て、ひとりになったら、だめみたい……」
「……」
「りゅ、竜児……?」
「んあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!! やっぱそーれなーのねーっ!? 早く言えよ!?
 おまえトイレ一人で行けねえとかで、終わったら顔がフランス能面とかで、こわがってるのなんて
 こちとら最初からわかってんだよ! バレてんだよ! ったく早く言えよこのバカ!」
「うーっ! 怒んないって言った!」
「ああまあいいよ! 怒って悪かった悪かった。さ、じゃあおまえ帰れ。俺、送ってくからさ」
「うーっ! すぐ帰れって言った!」
「だっておまえ、しょうがねえだろ。もうすぐ2時だぞ?」
「うーっ! この……竜児の嘘つきっっっ!」
「いや、だっておまえ……」
「嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つきいいいいいぃぃぃ――――――――っっっ!!」
「わあおまえ睨みながら泣くな泣くな! ウサギみたいに床だんだんするな! 大声もやめろ!
 な、頼むから、な! 後生だ大河! お願いだ! な? 大河。大河、大河、大河……な?」
「うぐ……わ、私、帰んないもん! 今夜はここで寝る!」
「わあやっぱり……! なあ、でも大河、いやそれやばいって。一応ほら、決まりだろ?
 泰子も、だめだよ〜☆って、言ってたろ? な?」
「……『俺はおまえの味方だ。たとえ何があってもだ』」
「あおう……」
「……『俺に出来ることならなんだってやってやる』」
「うおう……」
「……『俺は誓った。おまえは虎、俺は竜、永遠に並び立つと』」
「おおう……け、けっこう記憶力いいのな、おまえ……」
「……嘘つき」
「ぐおう……」
「……う、そ、つ、き!」
「んおぅ……わ、わかった大河。まいった。俺の負けだ。悪かった……ほら、とりあえず、涙拭けよ」
「すんっ……拭いて」
「おう……はい、拭き拭き……これでよし、と」
「……ふんっ。で、なにしてくれるわけ。竜のあんたは虎の私に」
「はああ、誓うんじゃなかった……」
「なんですってえええええぇぇぇぇっっっ!?」
「わあ嘘ごめんすまんごめんっ! だから睨み泣きうさぎストンピングはやめてええええぇぇぇっっ!?」
「ふん! あんたがどれほど後悔しようとあの誓いは一生守ってもらうよ! 一生死ぬまで……いや!
 私は天国行くから地獄行きのあんたはなにがなんでも這い上がって天国の私の傍に来ることね!
 いいこと!? わかった!?」
「わあほんとに永遠だ……わ、わかったよ」

224◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/30(火) 16:20:34 ID:???
「で? わが忠実なる地獄の犬よ! いま、あんたはなにしてくれるわけ?」
「いいよ。とりあえずここで寝ろよ、おまえ」
「えっ……やたっ!」
「おまえ嬉しそうな……でもな、大河。寝ても、泊まりはナシだ」
「えぇっ!? どういうこと……?」
「おまえは今ここで眠ってもいいけど、それは泰子が帰ってくるまでだ。それまでには起こす。
 そして帰ってもらう。おまえも熟睡中で辛いだろうが、俺もおまえにぶん殴られようが耐えて、
 必ず起こす。その途中か、起きれなくて泰子が帰ってきたら、その時は事情を説明して、
 あるいは泊まりが許可されるかもしれねえけど……まあそれは例外だ。期待するな。
 まあ、これが条件……ていうか、俺に出来る限りのこと、ってやつだ、今のところの。
 いいか? それで、大河」
「……うん、わかった。それでいい」
「よし! じゃあ、ふとん敷いてやるよ。泰子の部屋でいいか?」
「あっ、えーと、それはちょっと……酔っ払ったやっちゃん、別な意味でちょっとこわいの……
 申し訳ないけど。万が一起きるの失敗したらの話だけど」
「ああ、いや、言いてえことはわかる。俺も小さい頃、泥酔して帰ってきた泰子に懐かれて
 妙に怖かったなんてことがあった。だから気にすんな。よしじゃあ、ここかなあ……
 居間もけっこう、そうなった場合、泰子に踏まれるなんて可能性もなくはないんだよな……」
「ね、竜児。私、ベッドがいい」
「……え? ベッドって……俺のか!?」
「うん」
「おまえずうずうしいにもほどが……てか、俺のだぞ!? 俺がふだん寝てるんだぞ!?
 いいのかおまえ、それで」
「うん。臭そうだけど我慢する」
「わあもうおまえってほんとにえんりょのないひどいやつだなあ……臭そうとか。清潔だぞ? 一応。
 まあ、いかんともしがたい染みついた匂いとか、もう俺が慣れててわかんねえとかあるだろうが、
 でもまあ、それでもおまえがいいってんなら……いいよ、俺のベッドで寝ろ。俺はふとんで寝るから」
「やたっ!」
「なんだかほんと嬉しそうな、おまえ」
「そ、そう? ふとんが慣れないだけ。だからベッドのが嬉しいだけ」
「わかってるよ、言われなくても。……じゃあほら、俺の部屋、来い」
 すーっ……パタン。
「わ、男くさっ」
「おまえね、部屋入っただけでそうなら、ベッドとか無理じゃねえかやっぱ?」
「大丈夫。鋼の意志で耐えてみせよう!」
「なんだろ、竜児くんちょと傷つく感じ……ほら、じゃあ、ベッド入れ」
「わあ……!」
「歓声みたいな悲鳴とか……おまえほんとに大丈夫か?」
「だっ、大丈夫だってば」
「あ、あー、そんな。顔半分までタオルケット持ってったら、きつくないか、に、匂い?」
「ほんと臭あいっ……やだやだっ……鉄と血で私は耐えてみせよう!」
「ビスマルクに俺のベッド使われるのは勘弁だよ……まあ、おまえならいい……じゃなくて、
 おまえがいいんなら、いいや。じゃあ、そうだな、1時間半くらいで起こすぞ」
「うんっ!」
「よし。じゃあ、おやすみ、大河」
「お、おやすみ、竜児……って、えっ? 出てっちゃうの……?」
「そりゃそうだよ。おまえだってその方がいいだろ? 俺は居間にふとん敷いて仮眠するよ」
「えっ、あっ、そ、そう……うん……そうだね……」
「……電気、どうする? おまえんとこと違って段階ねえんだ。これがふたつ、でひとつ、でまめ球」
「い、いいよ。これで、まめ球で」
「そうか? おまえ……まあ、明るいと寝にくいしな、じゃあとりあえずこれで。おやすみー」
「お、おやすみ、竜児」
 すー……パタン。

225◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/30(火) 16:22:55 ID:???
「はあ……っふあ〜ぁ……さ、て、と、だ……泰子んとこの押入れからふとん出すのめんどくせえな……
 ま、座布団並べてでいいか。俺が爆睡してもまずいし、寝にくいくらいでちょうど」
「りゅ、竜児……っ!」
「おう……!」
 すっ!
「ど、どうした大河?」
「竜児っ、竜児っ」
「どうしたおまえ、両手出して……っ! わかった、だっこだな? いいな? だっこするぞ?」
「うんっ、うんっ、して、して……っ」
 ぎゅ……っ
「ほら……なんだ、どうした大河……。こんなに震えて……こわかったのか?」
「う、うん。お、お外じゃないのに、竜児のうちなのに、こ、こわいみたい……」
「そうか、おまえほんとに……大丈夫だよ、ほら、もう、大丈夫……な?」
「う、うん。大丈夫……お、落ち着いたみたい……ありがと、竜児……」
「よし、じゃあ……離すぞ、だっこは終わりだ。いいな?」
「う、うん……」
「ほら、もう泣くな。拭いてやるから……目、腫れちまうぞ。おまえ、せっかく綺麗なんだからさ……」
「竜児……っ」
「あれ? なんだ、なんでまた涙出てくるんだ……ほら、こわくないって。な?」
「うんっ、うんっ」
「よし……じゃあ、大河。なにして欲しい?」
「えっ……?」
「言ってくれよ、大河。な?……いつもみたいにさ、命令しろよ、この地獄の犬に」
「っ! 竜児……っ」
「なーんで涙出てくるかなこれ。ほら、こわいの止めてやるから。どうして欲しいんだ、俺に」
「……ここにいて、欲しいの、竜児……」
「おう、わかった。ここにいるよ。ずっと」
「あ、ありがと、竜児……っ」
「……なーんてな。おまえがすやすや寝付いたら、俺はむこうで寝ちまうよーだ」
「えぇっ!? なによそれ!? 嘘つき! ひどいっ! 喜んで損した! あんたってば……
 なんで、笑ってるのよ……?」
「……いや、涙、止まったろ? 元気でたみたいだし、おまえ」
「っ!」
「そんな驚くな、こわい思いはさせねえから。大丈夫、ここにいてやるよ。それは嘘じゃねえ」
「……ほんとう?」
「ああ。おまえが寝付いたら、俺もここの床にふとん敷いて仮眠するよ。もし……怖い夢見たら、
 とにかく俺を呼べ。起きちまってても、まだ夢の中でも、どっちでもいい。怖かったら俺を呼べ。
 すぐ起きてやる。夢の中にも出張ってやる」
「……そんなこと、できるの?」
「俺を信じろ。おまえが信じてくれたら、きっと出来る。やってみせる。夢の中だろうと……
 そうか……泰子が出来たんだ、だから……泰子ゆずりの力で俺にも出来る。夢だろうと必ず行く。
 そして怖いのがなんだろうと睨みつける。だから安心しろよ、な。さ、眠れよ。大河……」
「……睨む、だけ……?」
「うん、睨むだけ」
「ぷっ、あはは……っ」
「よし、ようやく笑ったな。いい感じだ。もう大丈夫……さ、目をつぶって……そう……
 おやすみ、大河……」
「……うん。おやすみなさい、竜児……」
「……」
「……」
(ふう……かわいそうに、あんなにこわがっちまって。こいつこわいの、そんな苦手なやつじゃ
 なかったはずだよな……? それにしても……なんだろな、心配すると、妙な気分も吹き飛ぶものかね……
 ふー……っ。心臓うるせえよ。ばくばく言いやがって、おまえだけだよ、盛り上がってんの……)
「……クスクスっ……ふふ……」
「? た……っ」
 すう……すう……
(っぶねえあぶねえ。起こすところだ。なんだ、寝ながら笑ってやがる……ったく、いつもどおりの
 幸せそうなツラしやがって……よかったな、ちゃんと寝付けたな、大河……)
 すー……すー……
(寝てりゃ可愛いもんなんだが……寝顔は好きだとか、言ってやらねえけど。ド変態扱いされるし。
 ……なんだよ、心臓うるせえって。勝手に盛り上がんな。俺は妙な気分になんかなっちゃいねえ。
 妙な気分に、なん、か……だめだ、大河見てるとやばいみたいだ。いればいいんだろ、ここに。
 目をそらせ……ほら、目を……目ぇそれろよこの野郎! 心臓といい、言うこときけよ身体どもが!?)
「んうっ……ううん……クスクス……」
(……寝てりゃ声まで可愛いとか、勘弁してくれよおい……耳もふさがなきゃなんねえのか……?)
「ふふ……おもしろ……覚えちゃった……」
(……寝言か。なにを覚えたんだか)

226◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/30(火) 16:23:56 ID:???
「……『櫛枝実乃梨さま』……」
「はぁ?……っぶね……」
 ……すぅ……すぅ……
(やっべ……思わず声出ちまった。なんだ、なんでその名前が……しかもフルネームに様つきで……?
 大河なのに、みのりん、じゃなく……?)
「……汝、愛を込めし視線、投げよこせば。俺様、ボウゼン。……」
(うげえええええぇぇぇっっっ!? それっ!? これっ!? 俺の禁じられた恋愛妄想箱のっ!?
 櫛枝あての禁じられたラブレターっっっ!?)
「……俺様、汝の愛に応えるべく。報復の愛の視線、ダブルフラッシュ。おお櫛枝、アイラブユー。
 ホールミータイ、ホールミータイ。……」
(ぜんぶ諳んじてるうっ!?」
「……ぷくく……いきなり最初に出せないラブレター書いて……愛かぶりすぎ……」
(しかも的確な批評ぅっ!? ……ほんとにこいつ寝てんのか? 大河のやつまさか……)
「ぉぃ……ぉぃっ……」
 ……すぅ……すぅ……
(寝てるわ。ガン寝だ。やっぱ寝言か……驚きの寝言師だなこいつ……)
「……『実乃梨の季節』……」
(わあ二発目来たあ!?)
「……冬に耐えて。春の到来に喜び。夏の暑さにも負けず。そして季節は今、実乃梨の秋。
 でも櫛枝、君の季節はやっぱり夏。……」
(わーこれ最低のやつだ……がくっ)
「……ぷくく……まんますぎ……しかも意味わかんない……」
(まったくおっしゃる通りでございます……死ねる……)
 ……すぅ……すぅ……
(ったく、なんだこいつの記憶力。一回見ただけでこんな……ひょっとしてまさか、俺の目を盗んで
 ちょくちょく読んでやがったのか!? だとしたら許せねえ……問い詰めねえと……
 あとで起こして……いやいっそ、今、起こしてやろうか? ……かわいそうだが、
 これ以上は、今度は俺がもちそうにねえ……!)
「……『恋は素晴らしい』……」
(おう、三発目……っ!)
「……恋は素晴らしい、たとえ実らなくても……


  恋は素晴らしい
  たとえ実らなくても
  このおのれの本当の大切さは
  ただ恋だけが教えてくれるのだから
  ひたすらに焦がれて、切なく
  想いは届かずに、悲しく
  実ることもなく、哀れに
  そうして

  誰もこのおのれを知るものはないと
  ただおのれだけが知っているのだと
  おのれでおのれの身をかき抱き
  切なく、悲しく、哀れよと
  ひりひりと、燃えるよう
  ぎりぎりの、ところまで
  おのれへのおのれの愛を
  この上もなく強くする

  ただ恋だけが、そうして
  この世にふたつとて、並ぶもののない
  おのれの本当の大切さを教えてくれる

  だから、君よ、にもかかわらず
  僕が君を愛するときは、その
  この上もなく恋によって高められた
  おのれへの愛を、越えて
  この上もなく大切だと恋が知らせた
  おのれへの愛を、越えて
  それよりもなお君が大切なのだと
  おのれよりもなお君が大切なのだと
  それほどに想いたいのだ

  ただ君だけを、僕は
  それほどに想うのだ
  恋は素晴らしい
  たとえ実らなくても
  だから僕は
  君に逢いたい


 ……君に逢いたい……」
(……っ)
「……ちょっと、好きかな……これは……」
(……ちょっと、かよ……ったく、すげえぞ。寝言の魔女め……)
「……竜児……」
(おう!?)

227◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/06/30(火) 16:24:27 ID:???
「……竜児……こんな……恥ずかしいこと……よくも……」
(う、うるせえよ!?)
「……よくも……こんな……恥ずかしいこと……大切なこと……大切な……自分のこと……見せてくれて……
 私を……慰めてくれて……」
(おう……春のことか? あの、おまえが木刀持って夜襲に来て、北村へのラブレターを知られて、
 恥で死にそうに落ち込んでいた……あの、春の……夜の……?)
「……竜児……優しいひと……」
(大河……べつに優しかねえよ、俺は……)
「……わあ……っ!」
(っ!)
「……逢いに、来てくれたんだね……ほんとうに……私のとこに……竜児……」
(な……なんだ、よ。寝言……夢の話か……わかってねえのか……でも、そうか……よかった、
 俺、おまえの夢に行けたか、大河……ったく、こわくもねえのに呼ぶなよ……)
「……なんでここにいるのよ……この駄犬……」
(ぶっ! っくはは……笑えるわ……こ、こいつ、夢の中でも俺を罵るのか……?)
「……ありがと……来てくれて……」
(……おう)
「……あのね……竜児……ほんとは……ほんとはね……私……竜児……ほんとは……」
(おう……ほ、ほんとはなんだよ大河……なんだようるせえぞ心臓! き、聞こえねえだろが……)
「……ほんとは、ね……竜児……」
(お、おう……)
「……ほんとは……こわいの……大好きなの……竜児……」
(……)
 ……すぅ……すぅ……
(え? ええええええぇぇぇぇ……? 大河おまえ、その、大好き……どっちにかかってんだよ!?
 前か? 後ろか? どっちも大問題だぞ!? こわいのが大好きなのか? それとも……それとも、
 あー……だめだ、どうにもならねえ。寝言だ。知りようがねえ……はあ……どっと疲れた……
 いいや、もう、このまま畳で仮眠しよ……)
 ……すぅ……すぅ……
(おやすみ、大河……)
 ……すぅ……すぅ……
(……)
「……竜児、だよ……」
(……)
 ……すぅ……すぅ……
(……バカ野郎この野郎寝れるかっっっ!! どっちなんだよだから!? その竜児だよはなんなんだよ!?
 ちくしょうっ! 大河っ! 俺は……俺だって! 最初から……おまえ……ほんとは……おまえ……
 ほんとは、おまえより、眠かったはずなんだあああああああぁぁぁぁぁぁ―――――――――っっっ!!」
「……やだ……クスクス……」


***おしまい***

228高須家の名無しさん:2009/06/30(火) 18:52:10 ID:???
もう恐山ってレベルじゃねえwww

229高須家の名無しさん:2009/06/30(火) 19:16:29 ID:???
>>220
なんつーか、2ch初心者なのか目くじら立てるやついるんだよなぁ
でも嫉妬に狂ってスレ潰すために言い掛かりつけてくる気ちがいに目をつけていないだけまだマシ
それに2ch長くて言い争いが常な方々もあのスレでは自重してるからな
まあ面白い作品を投下し続ければそんな連中もねじ伏せられます

230高須家の名無しさん:2009/06/30(火) 23:20:10 ID:???
>>220
あんたはいい人だな

231◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/01(水) 00:23:33 ID:???
>>228
ありがとう!
大河の竜児(よめ)いびり……は、とらドラ!ではわりと基本か……

>>229
なんてか、その時正直思ったことは、
「うおいっ、ここにも代理投稿直後の雰囲気潰されてがっくり来てる「ピュア」な書き手
 とやらがいるんだけど!? 「ピュア」な書き手(除く私)かあ!?」
とかでしたw 

ほとぼり冷めるまで荒れる種なんかまいてはいけないと、レスの草稿をいくつかつぶし、
最後にたどりついたのが、代理投稿してくれたひとも悲しんでるはずだとの思い。

そんでまあ、この一言だけ感謝して>>211
さめざめと枕を濡らしたのでございます……嘘です、激怒に心臓バクバクさせながら
エスニック料理食ってましたw 落ち着くよね……タンドリーチキン(ねえよ

>>230
またまた……このおだて上手。なんも出ないよ? まさかまさかの腹黒ですぜ私は。
……ありがとう。

いい人はたくさんいますね……ただ、あんまり奥ゆかしい切ない世界なので、
かすかな好意に異様に敏感になってちょっとしたヤンデレ気分?を満喫中。

232高須家の名無しさん:2009/07/01(水) 08:53:33 ID:???
>>231
別に悲しくはないし普段いる板がキチガイだらけの場所だし
もう2chに8年近くいるから別に気にもしていないよ

233◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/01(水) 21:55:51 ID:???
虎の恩返しってのを考えてたんだよね……。

大河が奥で機を織ると、虎柄グッズを持って出てくるの。

「おまえこれ、機で織れねえんじゃねえか?」
「うるさいわね。あんた細かいのよいちいち。いいからとっとと市で売ってきな、
 この柴刈犬!」

とか。肉を食いたがって、無いとわかると軽くウサギを狩ってきます。


>>232
なんて優しいひと……(ヤンデレ

234228:2009/07/02(木) 00:04:38 ID:???
>>231
イタコ並みに色んなものが降臨してるって意味ですわw

235◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/02(木) 00:24:57 ID:???
>>234
大河のモーレツな寝言がイタコみたいってことですよね?

236高須家の名無しさん:2009/07/02(木) 22:14:15 ID:???
むしろ二人が書き手に降臨してる気がw
あぁー、ギシアン書きてぇ。

237◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/03(金) 11:10:01 ID:???
◆eaLbsriOas@避難所です。代理投稿歓迎。感想ありがとう! 嬉しいんだぜ。
今回は実乃梨と亜美を降ろすテスト。スレチにはならないはず。
***

・あみのり

「おお汝、自販機の狭間にて凍える少女よ、何を思う。ただモノだけが私をかき抱き、
 暖めてくれるとでも? だが、おまえを温めるものはモノばかりではないはず……!」
「っ!……ちっ」
「ねえねえ、あーみん!」
「……」
「はあ……まだ怒ってんのか。まあいいや、そのまま聞いてよ」
「……」
「あーみんってさ、高須くんのこと好きでしょ?」
「っぶべらぶううううううぅぅぅぅ――――――――――――――――――――――っっっ!!」
「おおレインボー……お茶でも虹が出るもんなんだねえ。綺麗に魅せるテクニック。
 さすがモデルさんだこりゃあ、うんうん」
「ッブホッ! ゲホッ! ゴホッ! あ、あんたねえ!? ……っ話しかけないでくれる?
 みの……櫛枝さん」
「……じゃあ、ひとりごと言うよ。……あーみんはさあ、高須くんのこと大好きなんだぜぇ。
 ウヒョー、バーレバレー。恋の香り薫る紅茶ホット……」
「……」
「おお、あーみんが白く固まって……レインボーと来て……わかった! ヨガの眠りだね!?
 あーみんはレインボーウーマン! さあ目覚めるのだ、タケシよ……インドの山奥でっ♪」
「ってコラ! つっつかないでよキモい! つかタケシって誰だよ!? ちょっともう、なに!?
 マジウザイ! あんたの言ってることトリプルくらいでわけわかんないんだけど!? 消えてよ!」
「まあつまり、高須くんのことが好きってのは図星なんだね……」
「ちょっ、なんで決めつけるかなあ!? それもトリプルに入ってるっての!」
「じゃあ、あーみん高須くんのこと、嫌いなの?」
「っそ、そんなの、嫌いに決まってるじゃん! あ、あんな、あんなバカ……嫌いだっての!」
「ピコピコピコピコピコ……ジージジージジジジージー……ピーガガガガッピーイーイーイー……」
「……ほんとキッツいわー。どーしたらいいんだろ、こいつ……」
「ケイサン ノ ケッカ ガ デマシタ。ケッカ ヲ キキマスカ?(PUSH ANY KEY)」
「……亜美ちゃん頭痛い……」
「アーミン ハ タカスクン ノ コトガ カナリ スキデス」
「結果聞きたいなんて言ってねーだろ!?」
「ノンノンノンだよあーみんくん。PUSH ANY KEYはね、何か言ったら結果聞かせるっていう意味なんだよ」
「きったね。もういい。あんたが消えないんなら、亜美ちゃんが消えたげる。じゃね」
「高須くんってさ、バカじゃないよ」
「はあ!? バカじゃんあいつ。バカバカ! ……あんたも。だから嫌い」
「バカじゃない子をさ、バカだから嫌いって女の子が言うのはさ、好き、ってことだよ」
「……」
「あーみんはさ、吹いて虹なんて作んないよ。白く固まったりも、しないよ。他の子だったらさ」
「……」
「そんな顔しないでよ。私さ……あーみんと話したかっただけなんだから。高須くんのこと。
 だって……私もさ、高須くんのこと、好きだからさ……」
「っ! 実乃梨ちゃん……」
「てかさ! シケた話じゃないんだよこれ! ぱーっといきたいんだけど!?」
「ぱーっと……?」
「いかに高須くんがヤバイかって話がしたかったんだよ、あーみんと!」
「あいつが……ヤバイ?」
「うん、そう! あいつ、いいね! 私もあいつで行く! ねえあーみん、あいつってさ、ヤバイよね……?」
「……うん、ヤバイね」
「あのさ、あいつと、ふたりっきり、とかになると、マジヤバくない?」
「っそう! マジヤバイ! ふたりっきりがやっばいんだよねぇ!?」
「おお来たね来たね! ……ふたりっきりになるとさあ、あいつ……ボソっと言うでしょ?」
「それ! 言う言う! ボソっと! やっばいの!」
「ふたりっきりになるとさ、こわい目してんのに、照れて赤くなったりしてさ、そんで、
 ボソっと言うじゃない……なんての、こう……胸を打つようなこと」
「っキャー! それそれ! 赤くなって、こわい目しかもそらすっしょあいつ! それで、
 『えっ、なに? こいつ、どうしてそんなこと私に言うの……? 私に、こんな、素敵なこと……』
 なんてな! キャー! ざけんな! 乙女るっちゅうねん!」

238◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/03(金) 11:10:56 ID:???
「あー、やっぱあーみんもそれなんだねぇ。やられたんだねぇ、うんうん」
「てことは実乃梨ちゃんも!?」
「トーゼンですよ! いやーおっかね! 高須竜児……おそろしい子……ですよ!」
「えっ、なに? それもなんかなの? 亜美ちゃんわかんねーけど、まあいいや! いやーおっかね!」
「てことはさ……ふっ……てことはさ……ふふっ……てことは……ふふふふっ……」
「えっ、なになに? 言ってよ、実乃梨ちゃん! もー亜美ちゃんもったいぶっちゃやーだ!」
「大河やばいよ」
「ヒューキターっっ!! そーれ! タイガーやばいよ!」
「ねえ? だって……ふたりっきりなんて、私、数えるくらいしかないよ?」
「うんうん、私だってそうだよ!」
「それが、大河……毎日だよ? 毎日あの、た、か、す、りゅ、う、じ、と」
「ギャー! ま、い、に、ち。た、か、す、づ、け! やーばっ! タイガーとける! とけちゃう!
 バターになる!」
「おお、ちび黒サンボ、やるねあーみん。……でさ、そうなの。毎日だよ? しかも高須くんの
 美味しいご飯とか食べちゃって、だよ? 夕飯後とか夜遅くまでふたりっきり、とか」
「ウッホウッ! 気ぃ狂うね! それは落ちるって! あんだけ祐作のこと好きなタイガーでも!」
「落ちるよねー。私ら、つぶやき高須喰らったの何発かでしょ? 何発かでこれだもんよ」
「うんうん!」
「大河なんて何発喰らった?」
「えぇ? 一日一発としたって……余裕で二百発は越えてね? おっほ……死ねる」
「しかもほら、ときたま特大のあるじゃん。たとえばほら、文化祭の……」
「福男! あっ、れ、は、やばい! あれはタイガーマジウラだって! 女の子なら!」
「まったくですよあーみんさん。いやあ……走ってもらいたいよねえ、男には。あんな風に」
「もらいたいもらいたい! 私のために、あいつ、あんなに……っ! ズッキューン来るってのこれ!
 一撃だね!」
「てかさーなんかもーさー、春あたりで一撃っぽかったんだよねー、大河」
「あっ、なにそれ、私まだいなかったころっしょ!? 知らない知らない! 亜美ちゃんちょー聞きたい!」
「聞きたあい?」
「聞きたぁいン! お願ぁい、実乃梨ちゃあんっ!」
「もう、しょうがないなあ。ほかならぬ可愛いあーみんのためだ。知らざぁ言って聞かせやしょう!」
「よっ! 待ってました! 櫛枝!」
「あっれ、いつだったかなあ、正確な日付はわかんない。でも4月の上旬? 中ごろ? そんくらい」
「うんうん!」
「まあ、ある日の朝よ。いきなり大河と高須くんがツーショット。登校中」
「ほっほーう、いきなり……ツーショット?」
「やだなあ、あーみんったら。ほら、アベックってことよ。カポー」
「ア、アベック? カポー?」
「もう。だから、ふたりづれ、ってこと」
「いや、それはわかってんだけどさ……ま、いいや。それで?」
「まあその、登校中に見かけた時には、大河たち、『いや、家が近所だったみたいでたまたま』とかって、
 ごまかしてたんだけどさ」
「ふんふん!」
「まーその日から大河がすごいわけよ。めちゃ明るくなってさ、元気になってさ、よく笑うようになってさ!」
「へえ……前は違ったわけ?」
「あっ、そうか。あーみんは高須革命以前の大河、知らないもんね。あーみん知ってる大河は高須革命以降」
「おお、高須革命……コワスギ」
「その前はね、1年の時とかはね、まあなんだろ、ずっと苦虫噛み潰したみたいな顔してたの、大河。
 ずっと苦虫噛んでておまえ、苦虫汁でも売る気かぁ!? マズい、もう一杯! みたいな?」
「うぷ……そっち行かないで実乃梨ちゃん。亜美ちゃんちょっと苦手……」
「あーごめんごめん! そうね、もうちょっとロマンティックに言うと……戦場から帰ってきたら、
 暖かく迎えてくれると思っていた愛する家族などおらず、友人にも街の人たちにも皆に冷たくあしらわれ、
 これ以上傷つくことをおそれるあまり、だれも俺を受け入れてはくれないだろうと
 あらかじめあきらめることでしか自分を守れなくなって、毎日昼から見知らぬ場末の酒場に入り浸り、
 苦い酒とタバコを噛みながら、こうしてこのまま俺は駄目になるのだ、朽ちてゆくのだと、
 汚れたガラスの向こうに降りてくる夜の闇をただ睨むベトナム帰還兵みたいだったの、大河は!」
「……ごめん、亜美ちゃん苦虫でいいや。なんとなく、わかったし」

239◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/03(金) 11:13:15 ID:???
「そう? ちょっと意外……まあ、とにかくそんなだったのよ、大河は! ……まあそれでもね、
 そんな1年のころに私は大河と友達になって……わりと私には、けっこう……きっと、ちょっとは、
 大河は心を開いてくれたけれど。でも、それは私にだけで」
「へえ……それが、高須革命で」
「そう! 今の大河になったの! 基本的にはおとなしいままだけど、明るくて元気で可愛くて、
 ちょっとおてんばなところも魅力の、あーみんと並ぶクラスのアイドルに!」
「……それもちょっと、なんてか、ほかのみんなの印象とは微妙に違うんじゃね的な……?」
「やだなあ、そりゃもちろん、あーみんは超高校級の美女! マジアイドルだよ! だけどさ、まあ、
 そうして大河はいつも楽しそうに、幸せそうに笑う子になったんだよ……うん……そう……
 高須くんの、傍でさ……」
「高須くんの……うん……」
「ふっふっふー」
「な、なによ実乃梨ちゃん、ニヤニヤしちゃって」
「いやあ……あーみんも、高須革命の洗礼受けちゃったクチなんじゃねーの? って」
「えっ? なに? わ、私!? ちっ、ちげーよ! そ、そんなわけ……」
「まあまあ……あーみんもさあ、転校してきてちょっとたってから、ほら、急に可愛くなったじゃん」
「えっ?……かわ……やだちょっと実乃梨ちゃん!」
「ほうほう、両手でおさえて、そんなにほっぺたが熱いのかい? おじさんクラクラ来ちゃうよ……」
「もう! 実乃梨ちゃんってば!」
「ふふ……まあ、いつだろうあれは。夏の旅行……よりはぜんぜん前だね。そう、ストーカー騒ぎ……
 あ、だ、大丈夫かな?」
「へっ? あ、なに? ストーカー? ああ! もち、大丈夫よ! ちょー過去!」
「……うん、よかった。あのストーカー騒ぎあたりからかなあ。……あれ? って思ってさ。
 あーみん可愛くね? って。もちろんもともと美人だったけどさ。なんてか、こう、
 あーみんの本当が見えてきて、ああ、本当に素敵な子なんだなあ、可愛い子なんだなあ、って。
 ……だから、うん、そう。友達に……私は、櫛枝実乃梨は、川嶋亜美と、友達になりたいなあ、
 って……」
「み、実乃梨ちゃん……っ」
「またそんな。若く美しすぎる君が簡単に頬を染めてはいけないよ……あまりこの年寄りを
 惑わさないでくれたまえ……」
「み、実乃梨ちゃん……年寄りじゃねーし」
「おおっとまっすぐなつっこみ。だが、筋は悪くない。ふっふ、鍛え甲斐がありそうじゃて……」
「もうっ! 私、帰るよ?」
「まあつまり、やっぱり、なにかあったんだね。その頃、あーみんも、高須くんと」
「っ!」
「ああっと誤解しないで下さいよ? この櫛枝め、もちろんそのことに興味が無いと言ったら
 嘘になりましょうが、それはまたいずれ、おいおいお聞かせ頂くだけでもありがたき幸せ……。
 もちろんその時には……もし、あーみんが、私に話してもいいと思ってくれた、その時には……
 私も、話せる限りのこと、話すつもりだよ……」
「実乃梨ちゃん……」

240◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/03(金) 11:14:07 ID:???
「またそんな。若く美しすぎる君が簡単に頬を染めてはいけないよ……あまりこの年寄りを
 惑わさないでくれたまえ……」
「み、実乃梨ちゃん……年寄りじゃねーし」
「おおっとまっすぐなつっこみ。だが、筋は悪くない。ふっふ、鍛え甲斐がありそうじゃて……」
「もうっ! 私、帰るよ?」
「まあつまり、やっぱり、なにかあったんだね。その頃、あーみんも、高須くんと」
「っ!」
「ああっと誤解しないで下さいよ? この櫛枝め、もちろんそのことに興味が無いと言ったら
 嘘になりましょうが、それはまたいずれ、おいおいお聞かせ頂くだけでもありがたき幸せ……。
 もちろんその時には……もし、あーみんが、私に話してもいいと思ってくれた、その時には……
 私も、話せる限りのこと、話すつもりだよ……」
「実乃梨ちゃん……」
「それよりさ! まず大河なんだよ! 俺たちのネタは!」
「っそうそう! そうだった! タイガー!」
「あいつらが晴れてカポーとなった暁には……しゃぶるぜ〜? ちょーしゃぶるぜ〜?」
「うっは! 実乃梨ちゃんやば!」
「そう、俺たちも負けちゃいられねえのさ。あいつらと同じくらい、やばくなってやるのさ……」
「うんうん!」
「まずはだから、春の一撃からだよねえ。ツーショット登校前日、大河たちに何があったのか」
「ヒョー! やっばい亜美ちゃんちょー楽しくなってきた!」
「なんかさあ、私ひとりじゃ探るの大変だけど、あーみんとふたりがかりだったら、けっこうあっさり
 イケそうな気がするんだよね……」
「うん、いいね! 実乃梨ちゃんとふたりががりで! きっとイケるよ!」
「おう! あーみんもそう思うかい?」
「うんうん!」
「じゃあさ、これからスドバあたりにしけこんで、ラテりながら作戦会議なんか立てようじゃないの!」
「キャハ! いいねいいね! 行こう行こう! 私、思い切ってメープルシナモンラテ! クリームつけて!」
「おう、甘いのを……奢るねえ、意気込みだねえ。じゃあダイエット戦士の同志である私めも……っと、
 あっ! あひゃあっ! ごーめんっ! あーみん、私バイトだ! もうこんな時間!」
「えーっ!? 実乃梨ちゃんたらひどーいっ! こんなに私たきつけといて!」
「ごめん! ほんとごめん! ぎゃー! あーみんとスドバちょー行きてーっ! でも、私、行かなきゃ!」
「あっ、じゃあ、私も行くよ。帰るし」
「でも私走るから! あーみん、明日! 必ず! 続き話そ!」
「あっ、待って…………明日ね! 必ずだよ! ……もう、実乃梨ちゃんったら……私、走ってもいいのに……」
「…………ごめんね!! あーみん大好きだよ!! 明日ね!!……」
「っ! ……なんて大声。聞かれちゃうじゃない……もう、実乃梨ちゃんの、バカ……っ」


***おしまい***

241◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/03(金) 11:16:38 ID:???
>>236
名無しさん……(←フラグ立った

ギシアン書きなはれはれ。

242高須家の名無しさん:2009/07/03(金) 12:52:06 ID:???
おつんつん

243◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/03(金) 13:05:04 ID:???
>>242
おつんつーん!

代理投稿ありがとうございました! しかし私のペーストミス発覚!!

--
◆eaLbsriOas@避難所です。
ごめんなさい。「あみのり」最後の4レス目冒頭12行、3レス末尾とかぶってました_ノ乙(、ン、)_
私の方のミスです。うまく3レスにおさまんなくて、あせったっぽい。ほんとごめんなさい……ちねる。
--

よかったら代理投稿に付け足してやってください……。

244高須家の名無しさん:2009/07/03(金) 18:23:41 ID:???
>>243
なんかおかしいなと投稿してから気付いた
これからはちゃんと読んでから投稿すっぺ

245◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/04(土) 05:12:23 ID:???
「あみのり」本スレでリクエストがあったので、
重複部分の4レス目上から12行までをカットした修正版を、
みのりんスレに代理投稿お願いします(´;ω;`)ウゥ

--
◆eaLbsriOas@大竜スレ避難所です。リクエストがあったので
みのチワSSを出張投下。代理投稿して頂きました。
--

【とらドラ!】櫛枝実乃梨SSスレ【まったり妄想】
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1244966136/


>>244
これからも気をつけます……てか、基本ドジなので今までのコピペで一度も
ミスがなかったのがむしろささやかな奇跡。

246高須家の名無しさん:2009/07/04(土) 13:56:34 ID:???
>>245
これで性別が女で身長が145cm未満だったら完璧だったのに

247◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/04(土) 14:20:06 ID:???
>>246
またこれ。あとほら、美形で栗色ふわふわロングで腕も立たねーと……
大河道、けわしす。精進……また、次の世界で!(光の渦へ

248高須家の名無しさん:2009/07/04(土) 14:45:22 ID:???
>>247
そこまで贅沢は言わぬ

249高須家の名無しさん:2009/07/05(日) 11:06:18 ID:???
ヤンデレはちょっとやだなあ
まあ書くのは自由だからね
それを止める権利も無いし強制排除する手段も無い
独り言独り言

>>241
朝からお疲れんす

250◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/05(日) 17:38:44 ID:???
>>248
いい心がけだぜ……そうかあ?

>>249
ヤンデレ大河なんて、書きませんよ。原作とアニメからDLした大河が私の標準だし。
てか、そもそもヤンデレがキャラとして誰が模範かとか、よくわかってないし。ねーし。

でも今、並行して2,3本書いているSSの中には、イヴのその後というシチュで
死ぬほど切ない大河を書いているのがあったりはするけれど。

もちろん最後はスーパーアクロバットでハッピーエンドw

251高須家の名無しさん:2009/07/05(日) 18:13:23 ID:???
>>250
ヤンデレうんぬんは独り言だから別にコメントいらんです
でもコメント書く書かないは自由です
新作も楽しみです

関係無いけど俺の作品には誰もコメント書かない件
逆にそれはそれで面白い!

252◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/06(月) 01:37:42 ID:???
ウインブルドン見てたり。大河テニス出来るんだよね……

>>251
むしろ本スレでのヤンデレリクとかがきっかけだったのかしら頭。


そーかここもたくさん作家さん覗いてはくれてるのね……
でもアク禁でもないから本スレやエロパロ板に投稿してしまうのね……
つくづくヘンテコな境遇のタワシ

253高須家の名無しさん:2009/07/06(月) 08:50:12 ID:???
>>252
そりゃあんたの作品読みたいから板登録してんもん

254◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/06(月) 12:28:38 ID:???
>>253
またまた。そんなこと言うと、倉庫から駄作をひっぱりだして来ちゃうよ?
ありがと。

255高須家の名無しさん:2009/07/06(月) 22:30:26 ID:???
本スレでヤンデレ大河リクした者だけど盛大に叩かれててクソワロタw

ヤンデレに縛ったのは謝る。純愛が好きな人のが大多数だしね。
…でもさ、嫉妬タイガーって可愛くないかい?そんだけ竜児を愛してるという一種の愛情表現とも取れる。
まとめでヤンデレタイガーを読んで心臓をマシンガンで撃ち抜かれたような
錯覚に捕らわれたんだ。きもいでしょ?
嫉妬タイガー可愛いよ嫉妬タイガー

256◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/06(月) 22:51:54 ID:???
>>255
ヤンデレのキャライメージがつかめない私。リアルヤンデレは知人にいますが……
包丁あぶないよ?……くわばらくわばら。

たしかに嫉妬タイガーは可愛いですね。木刀ぶん回して半狂乱……包丁よりはマシ、
なのか? まあどっちも逝けますが。

まとめにヤンデレタイガーいましたっけか。後で探してみよ。

257◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/07(火) 10:20:24 ID:???
◆eaLbsriOas@避難所です。代理投稿歓迎。いつも暖かい感想ありがとう!
今回はとうとうアフター、新居にお住まいの新婚さんを召喚。
***

・奥さまは虎女

 奥さまの名前は大河。そして、だんな様の名前は竜児。
 すごく微妙なふたりは、しごく異常な恋をし、ごく普通の結婚をしました。
 でも、ただひとつ違っていたのは、奥さまは虎女だったのです……なんて読むんだよ!?


「ただいまー。大河……大河ぁ?」
「わぁ……っ! おかえりなさぁい、竜児っ!」
 だだだだっどん!ごん!
「痛ぇ……っ! お、おまえさあ、抱きついてくれるのは嬉しいんだけど、突進してくんのやめねえか?
 後頭部の形、変わっちまうよ……」
「っ!? も、もう、愛は冷めたのね……?」
「いやだから、抱きつかれるのは嬉しいって言ってんだろ? 加減でものをだなおまえ……」
「いやっ! 離婚しても私離れないから! ずっと一緒に暮らすんだから!」
「ひとの話聞けよ!? だいいち離婚の意味ねえだろそれ!?」
「うぐ……っ」
「わあ泣くな泣くなおまえ! 愛してるよ、大河!」
「っ! ほ、ほんとう?」
「ほ、ほんとだほんと。ちょー愛してる。冷めてねえ。激アツだ。特に後頭部のあたりが」
「ん……じゃあ、ただいまのちゅう、して?」
「おう……ただいまのちゅう……」
「そ。いつもみたいに、して?」
「……」
「……なに? なにあんた、きょろきょろしてるわけ」
「あ、いや、なんか今すごく、どこかから見られているような感じが……」
「はあ? なに言ってんの。やだもう竜児ったら、ネット中継でこれを見ているおまえの脳を
 逆にハックして北村くんの全裸画像まみれにすることも可能なんだぞスキャナーのこの俺には
 みたいな目してきょろきょろするんじゃないの! だいいち私は誰に見られたって平気よ!
 だって……竜児と、だもん……」
「おう……だが俺は嫌だぞ? そうしてるおまえすげえ可愛いから、誰にも見せたくはねえ」
「は、はう……」
「おうなんだ、まだおまえ震えるのか。慣れねえもんだな……」
「りゅ、竜児が悪いんでしょ! か、可愛いとか、言うから……」
「……ただいま、大河」
 ちゅ。
「っ! お、おかえりなさい、竜児……っ。えと……こ、これだけ……?」
「これだけ? ってなんだよ」
「ちゅ、ちゅう……これだけ?」
「っ! そ、そうだよ、今はこんだけ。これ以上はだめだ」
「ど、どうして……?」
「どうしてもこうしてもねえよ。が、我慢できなくなるだろ?」
「わ、私はべつに……いいけど。こ、ここでも……」
「うえぇっ!? た、大河……?」
「っち、違うの! べつにあのっ、いつもそのっ、帰ってきた竜児にいきなり玄関でとかっ、
 か、かかか考えたこともないから! そ、想像したりあああ憧れたりなんてしてないから!」
「……あ、いや、そこはつっこまねえ。あぶねえ。と、とにかくだ、大河。ここはだめだ。
 ここではすっごいまずいって俺のゴーストがささやいてる。な、大河、とにかく……そうだ!
 メシにしよう! な?」

258◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/07(火) 10:22:06 ID:???
「っあ、う、うん! そうね! ご飯ね! 腹が減っては夜の戦もなんだかだって、言うし!」
「そっから離れねえかな……まあいいや。さ、ご飯にしよう、大河」
「うん! で、どこ食べに行くの?」
「へ? どこに?」
「そう、どこ行くの? だってウチ、ご飯ないよ? お昼にあんた、夕飯の用意はいらないぜ大河
 竜にゃん愛でお腹がいっぱいだからはぁと、なんてメールくれたから」
「竜にゃん以降の記憶はねえが……まあそれでいいんだよ。ほら」
「あっ、エコバッグ! ……でも竜児、エコは食べ物じゃないよ? あと袋も」
「俺おまえのそういうとこほんっとに大好きだけど、概念も布も食わせる気はねえ。
 食材買ってきたんだよ。今夜は俺が作る」
「えぇ!? わーいっ! 竜児のごっはんーごっはんーっ♪ ……あ、でも、すっごく嬉しいけど……
 お仕事で、疲れてるでしょ……? 朝食だって、いつも竜児だし……」
「朝飯作るのはその方が目ぇ覚めるからだ。それに、たしか料理はそれ自体がストレス解消になる、
 って話も聞いたことがある。あと、あらかじめ言っとくが、俺はおまえが毎日4時間くらいかけて
 作ってくれてる夕飯が大好きだ。死ぬほど嬉しくて腹が下る時もあるが毎日楽しみにしてる。
 今夜もおまえの手料理を食べられないこと自体はまあ、残念なんだが、俺が作りたいんだから
 仕方がない。というわけだ、今夜は俺が作る」
「う、うん! えっと、あれ? きょ、今日、何の日だっけ……?」
「は? 何の日?」
「ご、ごめん竜児! 私、忘れちゃって……な、何の記念日だっけ?」
「おう……い、いやだな、大河。おまえと一緒にいれば、ま、毎日が記念日だよ」
「それは嘘!」
「早っ!」
「みえすいたご機嫌とりなんていいからさ。ね、竜児、何の日だっけ?」
「ご機嫌とりじゃねえんだけどな……今日はべつに、何の日でもねえぞ、大河」
「そ、そうなの? なんだ、よかった……」
「そうなの。よかったの。記念日でもねえけど、とにかく俺が作りたくなっただけなの。
 てか、大河。そろそろ抱きつくのやめねえか? いいかげん上がらせてくれよ、俺を」
「あらやだ。そうね。さ、どうぞどうぞ、お上がりになって? いやねえもう遠慮なんかしないで……」
「遠慮しねえよ俺たちの家なんだから……てか抱っこしたまま移動なのかよ!?」
「竜児ったら、エコバッグも私も抱えて大変ねえ?」
「わかってんじゃねえか……何の二人四脚だこれ……ドアあけるぞほら……おう、ナイス誘導だ大河、
 だいぶコツがつかめて……そっちベッドだろこの野郎!? ちっ、じゃねえよ、ちっ、じゃ……
 ソファでもいいとかじゃねえ!? キッチン行くのキッチン! この変態とか言うなおまえが!?
 料理しかしねえよ!?」
「ちっ」
「ち、じゃねえよだから……はー、ようやく着いた。すげえ疲れた」
「……」
「ん、どした?」
「……疲れた、だけ?」
「……そんなわけあるか。楽しいよ、大河……」
「竜児……」
「って、うちゅー、じゃねえよタコちゃんが。それは後。ぶーぶーじゃねえ。さ、メシ作るから。
 上だけ脱ぐわとりあえず……だからさ、大河……わかるだろ、な?……いいかげん腕ほどけって!?」
「やーだ」
「こらぁ、大河……いい子にしろよお願いだから」
「やーだ。私悪い子だもん」
「ったく……ほら、いい子にしてくれたらさ、後でたっくさん、可愛がってやるから」
「は……っ」
「よしふるふる来た。力抜けた。ほーら、抱っこおしまい」
「ひ、卑怯者……っ」
「おう、なんとでも言え。さ、エプロンとってくれ大河」

259◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/07(火) 10:23:23 ID:???
「もぅ……はい、竜児、エプロン」
「おう、サンキュ。……おー、落ち着くわ。で、一応聞こうか、大河。何が食べたい?」
「っ決まってるでしょうが! チャーハン!」
「おまえね……インプリンティングもたいがいにしろよ? チャーハン俺のベストメニューじゃねえんだぞ。
 おまえって奴は俺の潜在能力の1%も使わせちゃあくれねえ」
「だってしょうがないでしょ!? あ、あんたが私をチャーハン漬けにして手込めにしたんだから……」
「チャーハンやばい薬みたいに言うな!?」
「あんた薬混ぜてたの!? 最低!……でも、もう私、それでもいいの……」
「混ぜてねえよ!? あとなんか堕ちたけど幸せオチみたいな言い方やめろよ!? ……てかさ、
 どっちにしろ、買ってきた食材で制限されるんだよ、作れるものも」
「えーっ!? チャーハン作れないの?……なによ、ニヤニヤしちゃって。キモいよ、大好きだけど。
 他のひとに向けちゃだめ。特に女の子には、感じちゃうから」
「俺はバンコランか」
「ううん、性犯罪の気配を」
「やっぱそっち系か……作れるよ、作るよ、チャーハン」
「えっ!? 作れるの? 作ってくれるの? やたっ! ……てか、それならそうと最初から言いなさいよね、
 竜児の意地悪……」
「おまえの拗ねた顔が見たい程度にはな」
「っ!……」
「……よし、満足した。でもチャーハンだけで満腹はさせねえ。あと二三、作らせてもらう。
 ホイコーロー、卵とトマト炒め、ピータン豆腐サラダ、ワカメの中華風スープ、そんな感じでどうだ?」
「えっ!? そんなの作れるの?」
「作れるよ。3秒だよ。3秒は嘘か、まあ、10分でいける」
「わあ、竜児ってすごーいっ!」
「そうだよ。わりとすごいんだよ。だからたまに作らせろよ、な? 冷凍のご飯はあるよな。
 解凍頼むわ」
「はーい!」
「さて、キャベツとレタスから行くか……」
 ジャー、バタン、ガラガラ……、ジャッ、ジャッ!
「おお……ねぇ竜児、あと手伝うことある?」
「おう、解凍終わったら、レンジに豚バラかけてもらう。強で2分。また後で言う。それまでは、
 まあ、俺の後ろにいてくれ」
「うん、わかった!」
 トントントントン……
「……初めてだね、こうして竜児に夕食作ってもらうの」
「だろ?」
「うん……引っ越してきて、一緒に暮らすようになって、初めて」
「だろう? やっぱいいよな」
「うん……」
「これがやりたかったんだよ……ようやくここまで来たって感じ、するわ……」
「うん……」
「やっぱいいよ……俺が夕飯作ってて、おまえが後ろにいてくれて」
「うん……」
「俺たち、告白もしねえで、いきなり家族になったようなもんだったよな……」
「うん……」
「……ようやく、ここに、戻って、これ、た……」
「竜児……っ」

260◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/07(火) 10:24:22 ID:???
 トン、トン……カチャ
「ごめん、大河。10分も嘘だわ……おまえを、抱きしめさせてくれ……」
「竜児っ……竜児っ!」
 ぎゅう……っ
「大河……ああ、大河……長かったなあ……」
「うん……でも、あっという間だったよ……」
「そうだな……でも、めんどくさかったなあ……」
「うん……でも、簡単だったよ……」
「結婚なんて、くそくらえだよ。なあ、大河……」
「うん、うん……」
「結婚なんてしなくてもひとは幸せになれるって、俺たちは知ってる……」
「うん、うん……」
「結婚してても、ひとは幸せになれないことがあるのを、俺たちは知ってる……」
「うん、うん……」
「結婚なんざ、方便だ……俺たちのまわりに関係があるだけだ……ほんとはどうでもいい。
 俺はただ、おまえと一緒にいたいだけなんだ……大河、おまえさっき、いいこと言ってたよ。
 結婚なんざ、しようがしまいが、俺はずっとおまえの傍にいたい。一緒に暮らしたい。
 一緒に生きて行きたいんだよ……大河」
「竜児……っ」
「ただな、大河……そんな俺が結婚するとしたら、おまえしかありえねえ。ありえなかったよ」
「竜児っ、私も……っ」
 ピーッ!
「と、あらやだ、ご飯解凍できた……竜児、豚肉……ほら、うちゅーとか、してないでさ」
「え? えぇ……? キスくらい、いいじゃねえかよ……?」
「だめだめ。キスだけで済む流れじゃないでしょ? キッチンがエロくなるよ、油断大敵!」
「……敵はおまえだけどな、この場合……ま、いいや、豚肉な? 切るわ……なんだ?
 なんだよおまえ、エプロン引っ張るなよ。肩ひも伸び」
 ちゅ。
「っ!」
「……こんだけで、我慢してね?」
「お……おう……」
「あんまニヤつくんじゃないの。ほら、レンジ壊れるよ?」
「ねえよ……てか、おまえが笑ってるからつられたんだろうが……」
「っそうだ! ね、やっちゃん呼ぼうよ!」
「お、おう! そうだな、帰ってきてるかな。メシまだかな。おまえちょっと連絡して……
 てか、いいのか、大河?」
「もちろん! ……だって、あのころにようやく戻ったっていうなら、やっちゃんもいないと」
「おう……あ、いや、そりゃあそうなんだが。そうじゃなくて、つまりその、メシ食ったら、
 なんてかその、すぐに……ってわけには、いかなくなるぞ?」
「あらやだ。竜児ったらすっかり発情期。この新婚エロス犬!」
「どっちがだよ!? 理不尽きわまるわ……」
「……私は、いいよ。今夜はやっちゃんにいて欲しい。大事なことだもの……それも」
「大河……」
「あとね、竜児。私はね、べつにいいの……やっちゃんの目の前で、しても……」
「俺がよくねえよ!?」


***おしまい***

261高須家の名無しさん:2009/07/07(火) 13:48:33 ID:???
はっきり言う。たまらん。
結ばれたあとのデレデレタイガーをもっと書いてくれええええ!

てか並び寝るマダー?

262◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/07(火) 13:49:07 ID:???
代理投稿ありがとうございました!

でもなんか、ヘッダ?の転載をお忘れになられてしまったよーで(´;ω;`)
1レス目冒頭のコレ

--
◆eaLbsriOas@避難所です。代理投稿歓迎。いつも暖かい感想ありがとう!
今回はとうとうアフター、新居にお住まいの新婚さんを召喚。
--

もう、まあ、いいのかな……

263◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/07(火) 15:34:33 ID:???
>>261
ありがとう!
書くひとによってふたりの結婚観や役割分担も違うだろうけど、私の場合はこれ。
一応シリーズにしてときどき書く予定。

冒頭は往年の海外ドラマ「奥さまは魔女」のOPを脳内再生しつつお楽しみ下さい。


で、「並び寝る」の15章は難産中。難産といっても書けないのではなく、
3分岐した形でゆうに1章分は越えて書いていて、ライト&パズルの最中。結局難産だけど。

***

――はい、そこでストップ。集合。君たち集まって。
「はい!」
「へーい……」
――君たち、いろいろやりたいのはわかるけど、収拾つかないし、
あんまり長くなられるのも先生、困るのだけど。
「そう……ですよね」
「えーっ。でも、私は竜児に、いろんな体位で責められてみたいけど……高須大サーカス」
「た、大河……」
「竜児……」
――いやあなたたちね、あんまり感動するような話してないから。
まあ、できる限り君たちの要望には応えるつもりだけど……
「せ、先生……」
「先生……」
――ちょっと。変な感動の環に巻き込まないでくれる!? あと、あなたたちがまた
勝手に漫才してくれるのはほんと嬉しいし、今までもそこからすごく大事なことや
展開が開けたりもしてるのだけど……今回、大ミッションのための細かいミッションが
多い上にそれだから、断腸の思いで切らないと厳しいの。
とくに、逢坂さんの「えっちの王子さま」発言は、活かせないかも……
「ブッフォ!」
「えぇっ!? あれ面白いのに!? はっ、わかった! あんたまた、かわりに私に
 どーでもいいえっちなことばかり言わせる気ね!? このドエロ職人! エロ事師!」
――どっちでもえっちなこと言ってるでしょうよ!? あと先生はエロ小説なんて書いたの
これが初めてなんですから!
「そうだぞ大河! 失礼だぞ、あんなに真面目に書いてくれてるのに。
 先生は俺が泣けば一緒に泣いてくれるし、大河が感じれば一緒に」
――わあわあちょっとタンマ! 高須くんななななに言ってるのかなあ!? デマはナシ!
「だって本当のことじゃないですか!」
「キーボード打ちながら涙と鼻水まみれになって悶えてるなんて、最低よね……」
――うるせえよ!? てか嘘! 嘘ばっかつきやがってこんの……あんたたち解散!
散れ! とっとと持ち場に戻れ!
「は、はあ……」
「けーっ! さ、竜児いこ」
「おう……っておい大河、そっちふとんじゃねえか。アパートの方がよくねえか?
 さすがにまっ昼間からはまずいだろ……」
「いいのよ。どうせ恥かくのこの先生野郎なんだからさ……ね、竜児……」
「お……おう、そうか……そうかあ?」

***

まあ、そんな……というわけで「並び寝る」次章もうしばらくお待ち下さい……

264高須家の名無しさん:2009/07/07(火) 15:37:06 ID:???
すごく…良かったです

265高須家の名無しさん:2009/07/07(火) 15:38:32 ID:???
>>262
そういうの書くのはかえって自己主張強すぎてうざがられるよ
だから省かれたんじゃないの

266◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/07(火) 15:54:25 ID:???
>>264
ありがとう!

>>265
なるほど、そうかも……

一応、本スレのトリップ付き書き手の例は越えないように、
ならってるつもりではあったのだけど、次からはちょっと考えてみます。
最低でも偽トリップと代理投稿のマークだけあればいいのだし。

267高須家の名無しさん:2009/07/07(火) 21:40:55 ID:???
>>263
気長にお待ちします
そういえば今夜は七夕

268高須家の名無しさん:2009/07/07(火) 21:53:49 ID:???
>>266
まあ文句も出てないし今まで通りでいいんじゃないの

269◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/08(水) 03:19:58 ID:???
>>267
ありがとうございまーす。

七夕、◆fDszcniTtkさんのがよく計算できてて切ない版としては完成度高かったですね。

ただ原作補完のラインだと、七夕の時点では、大河が竜児の分の願いことを書くときは
「竜児とみのりんが上手くいきますように」的なのを、なによりまず先に念頭に浮かんで
書いてしまうと思ったり。

もちろんそれは、竜児のことが大好きだから、竜児の幸せを願って。だからそう書いたのに、
なぜかわれ知らずポロリと涙したり。もちろんそれも、竜児のことが大好きだから。


あれでもこれでもないヤツが出来るものかなと、ちょっと七夕で走らせてみたら、
えらいバカスな感じのが出来そうに。私ってお笑い系……? もし出来上がったら投下します。


>>268
SSSは地の文がないから、ものによってはシチュを外から指定しないといけないのとかも
ありますしね……アフターは特にそうかも。まあ感想ありがとうんぬんとかが我ながら、
先にお礼言ってる形になってしまってどうしたもんだと毎回思ってたので、そこらへん難。

270◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 09:34:24 ID:???
◆eaLbsriOas@避難所です。代理投稿歓迎。感想いつも拝見しています。ありがとう!
暑くて寂しい夜に書いてみた。
***

・初夏のベランダ


 ガラガラ……
「ふう……さすがに夜になると外は涼しいな……てかマシか……おう、大河」
 カラカラ……
「なに? まだ起きてたの、あんた」
「そりゃこっちのセリフだよ。もう2時だぞ、大河。早く寝ろ」
「だって、あんま眠くないんだもん……」
「あれ? おまえ眠いからって帰ったんだろうが。12時前だっただろ、たしか」
「うん……だけど、シャワー浴びたら、目が覚めちゃって……竜児こそ、どうしたの?
 あんたもあくびしてたじゃん」
「いや、それがさ。俺もシャワー浴びたら……なんて、おまえみたいに優雅な理由じゃなくてさ。
 おまえいなくなったし、まだ早いだろってエアコン切ったんだよ。省エネ。でさ、駄目だ。
 どうにも暑くて、寝苦しくてさ。窓開けててもほら、ウチ換気悪いんだよ。キッチンの方の網戸、
 ねえし。だめだな片面だと。ちっとも空気抜けていかねえ」
「じゃあ、エアコンつければ?」
「いやあ、もうちょっと我慢するわ。どうしようもなくなるのはまだ先だ」
「……ウチ、涼しいよ?」
「おう、またおまえ、エアコンがんがんつけてんだろ」
「がんがんじゃないよ、寒いもん。28度くらい」
「おう、おまえにしちゃあ、そりゃまた適正な……そうか。まあ、いいんじゃないか? 
 おまえんとこのエアコンにまで文句はつけねえよ。てかさ、でもさ、そんな風に窓開けてたら、
 冷気逃げるぞ。閉めねえとさすがにMOTTAINAI」
「大丈夫だよ。冷気、逃げてないもん」
「逃げてんだよ。閉めたほうがいいって」
「いや。閉めない。逃げてないもん」
「おまえも強情だなあ……よっ、おっ」
「っ! ……なにしてんのあんた。手なんか、こっちに伸ばしちゃって」
「おまえの窓の下から逃げてるはずなんだよ、冷気が……おう、ほら、ほら! 涼しいぞ!
 やっぱ逃げてんだよ、冷気……っ!?」
 ぎゅ。
「た、大河……なんで、握手だ……?」
「な、なんか、つかんだだけ……手、あるから」
「おう……そうか。おまえ、あんま身ぃ乗り出すなよ。気をつけろ。あぶねえぞ」
「う、うん。大丈夫……あのっ! りゅ、竜児も、気をつけてね……?」
「お、おう。ありがとよ」
「……竜児の手、熱いね……」
「そうだろ? 俺はおまえの手、冷たくて気持ちいいもん」
「っ!」
「おまえ熱くて嫌じゃないか? 手、離そうか? そろそろ」
「い、いいの。嫌じゃ、ないもん……あんた、気持ちいいんでしょ? え、遠慮せず私の冷気を
 奪うがいい……」
「おう……ありがてえ、のかな。なんだそれ……。おまえ、顔赤いぞ? 結構、落ちねえように
 ふんばってないか?」
「だ、大丈夫。ふんばってないから……あ、じゃなくて、その、ふ、ふんばってるから……」
「どっちなんだよ……結局なんだ、ふんばってるんだろ? じゃあもう、握手おしまいにするぞ」
「やだ」
「なんでだよ。だっておまえ」
「い、や、だ」
「おう……でもさ、やっぱあぶねえよ。おまえちっこいから、落ちそうに見え」
「シャワーで目、覚めたんじゃないもん!」
「……え?」

271◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 09:35:39 ID:???
「っ……あの、あのね、竜児。わ、笑わないでよ? 笑っちゃいや、なんだから……」
「お、おう。笑わねえよ。なんだ、どうした? 大河」
「あ、あのね……なんか、その……さ、寂しかったの……」
「大河……」
「……ひどい。あんた笑った」
「笑ってねえ。これは微笑んでんの。笑ったうちに入んねえの」
「……じゃあ、なんで微笑んでるわけ」
「それはさ、俺も寂しかったからだよ」
「っ! ほ、ほんとう……?」
「おう、ほんとほんと。……俺さ、ほら、泰子は夜の仕事だろ? だからさ、夜はずっとひとり
 だったんだよ、物心ついてからは」
「うん……うん、わかるよ」
「おう、そうか、おまえも……そうか。でさ、まあ、正直ガキのころはさ、寂しかったけどさ。
 小学の終わりころになったら、さすがにいいかげん慣れて。逆にひとりで過ごす楽しみとかも、
 わかるようになってさ」
「うん、うん……」
「わかるのか。なんか嬉しいもんだな……微笑んでんだぞ? 笑っちゃいねえぞ? まあ、というわけでさ、
 それからはずっと、ひとりの夜に慣れてたんだ。寂しいからって、もう泣いたりなんかしねえ……
 しまった。そう、ガキのころは泣いてたんだよ、ときどき。いや、笑っちまうな、さすがに……」
「ううん……うん……」
「でさ、まあ、慣れたんだよ。ひとりの夜に、慣れた、はず、だった……あれ? ちくしょう、
 見るな……」
「竜児っ……な、泣かないで……っ」
 ぎゅう……っ
「っはあ。あぁれぇ〜っ? ……っ大丈夫。心配すんな。おまえは泣くなよ……」
「うんっ、うんっ。な、泣かないよ?」
「ほんとか……? うわ、やべ、涙目……いや! 泣いてねえ! おまえは泣いちゃあいねえ!
 大丈夫! 泣き虫は俺!」
「……ふふ……っ」
「よし、笑ったな。大丈夫だ。えっと、どこまで話した……ああ、だからつまり……駄目だわ俺!
 ぜんぜん慣れてねえ! ガキのまま! だから……寂しくなっちまったんだよ、お、おまえが
 帰っちまってから……」
「っ! ほ、ほんと……?」
「ああ、ほんとだよ……ああ、いや、だから、違うぞ? おまえのせいとか、言ってるんじゃねえんだ。
 おまえが帰っちまったせいで寂しくなったとか、そういうんじゃ……ねえ。……あれ? ちょっと、
 わかんねえけど、なんだ? どういうこった、何が言いたかった、俺……?」
「竜児っ!」
「たい、が……?」
「私はっ! ……私は、ね? 帰ってきたら、寂しくなったの……あんたの家から帰ってきたら、
 寂しかったの……」
「おう……そりゃあまあ、そうだよな。おまえの家、だだっぴろいし、ひとりだもんな……
 あ、いや、なんだ、その、悪ぃ……」
「謝んなくていいよ……それに、違うの。私も慣れてるの。この家にひとりは、慣れてる……
 だから、そうじゃなくて……寂しくなったのは、そうじゃなくて……あ、あんた、が……」
「おう、そうだ! それだよ! 俺が言いたいのは!」
「竜児……?」

272◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 09:36:18 ID:???
「おまえがいてくれて、よかったよ、大河」
「りゅ、竜児……っ!」
「おまえのせいで寂しさがぶり返したとか、俺は言いたいんじゃねえ。……逆だ。
 おまえがいるから、俺は寂しくなくなったんだ……本当に。おまえがウチに来てくれるから、
 もう俺は、寂しくなんかねえぞって、カラ元気出さなくて済むようになった。本当に、
 寂しくなくなったんだ、俺は、おまえがいるから……だから、おまえがいてくれて、よかった……
 いてくれて、ありがとうな、大河……」
「竜児っ、竜児……っ! わ、私も、なの! 竜児、いてくれて、よかった……」
「おう……そうか。……馬鹿だなあ、泣くなよ、おまえ」
「うぐ。う、うるさい。先に泣いたのはあんたでしょ。馬鹿とか言うんじゃないよ、馬鹿犬……」
「そうだった。馬鹿は俺だ。すまんすまん……なあ、大河」
「な、なによっ」
「……ベランダに出たの、俺、ちょっと期待してたんだよ。おまえの部屋、電気ついてたからさ。
 おまえ、起きてるんじゃないかって」
「っ! ほ、ほんとう……?」
「ああ、本当だ。だから……嬉しかったよ。おまえ、起きててくれて。窓に出てくれて」
「竜児……っ」
「まあ、というわけだ。なあ、大河……俺たち、寂しくなんかねえぞ、な?」
「うん、うん……っ」
「おまえが帰っても、おまえと俺はすぐ傍にいる。ほら、こうやって、手だって伸ばせば届く」
「うん、うん……っ」
「な? 大河」
「うん、竜児……」
「っふあ〜ぁ……さて、寝るか……おう、あくび、移ったな。ちゃんと手あてろよ、おまえ」
「……っあ、あててるでしょ!? ちゃんと!」
「ちょっと遅かったぞおまえ……はいはい、俺うるさいうるさい。さて、じゃあ、寝ようか、大河」
「うん!」
「よし、いい返事だ。さて……じゃあ、手、離すぞ」
「う、うん……ね、竜児……?」
「ん、なんだ?」
「もうちょっとだけ、手、つないでて……」
「……おう。わかったよ。いいよ、大河……微笑んでんだぞ? 笑ってんじゃねえぞ?」
「うん、わかってる。ありがと、竜児……」
「おう……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……なあ、もうそろそろ、よくねえか?」
「やだ」


***おしまい***

273◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 09:56:28 ID:???
迷って結局、ヘッダ1行目を最初期のままいじらないことにしてみた。

代理投稿して下さって、かつ、うぜーと思われた場合は、
「◆eaLbsriOas@避難所、代理投稿」だけでもマークしてやって下さい……
まとめ人さんや、保存庫で奇特にも私の書いたのをおっかける方がいた時の
便宜のために。

274高須家の名無しさん:2009/07/09(木) 10:05:43 ID:???
後に一緒に寝るようになったときはずっと手を握るようになったそうです
でめたしでめたし

275高須家の名無しさん:2009/07/09(木) 13:14:46 ID:YEYAcKpw
後に一緒に寝るようになったときは竜児.Jrも握るようになったそうです
でめたしでめたし…?

276◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 20:25:40 ID:???
エロパロスレのリレーSS、面白いね……
長編書く力のあるひとが粒よりでいるからかな。

>>274
いいネタ出しありがとう!

>>275
安心棒……いいネタ出しありがとう?

277◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:35:41 ID:???
◆eaLbsriOasです。「竜虎並び寝る」15章を投下いたします。
お待たせいたしました。クライマックス、後半です。
竜児大苦戦。まあ、一貫してそうですが。

本スレへの告知誘導のみ、よろしくお願いいたします。

--テンプレ--
◆eaLbsriOas氏のSS「竜虎並び寝る」15章、投稿されました。
ラブエロス注意! ですので、読みたい方だけ
まとめサイトの新避難所のリンクから、どうぞ。
-----------


まとめ人さま、
この章も前回14章同様、行間空けての表現がありますので、
作品庫収録時は、レス末尾と次レス一行目をそのまま離さないで
つなげてやって頂けると助かります。

てか前回もありがとうございました。バッチリです。

278◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:37:53 ID:???
  15

 つながってから、これがもう何度目だろうか。
「りゅ、竜児……っ! またっ! またっ!」
 竜児の方を向こうと必死で細く白い首をのけぞらせ、大きな瞳を困ったように眇めて星を縮めて、大河が絶頂する。
 また、という大河の言葉が、とても可愛いと竜児は感じる。
 またイクの、という意味の、竜児に報告してくれるその言葉が愛しい。
 座るように上体を起こした竜児の眼下で、ミルクのように白く、驚くほどに滑らかな大河の裸体が、絶頂の痙攣に何度も貫かれる。
 跳ねる大河のちいさく丸い尻には、竜児の股間が縫いつけられている。
 絶頂によって、大河の尻は何度も跳ねる。大河の穴は何度もきつく締め付けてくる。
 精液搾取の反射。
 驚くほどの刺激が、竜児の勃起にもたらされる。
 だが喘いでも、竜児はそれでは射精しない。
 射精していないのだ。
 まだ、竜児は一度も。

 * * *

 つながってからの、最初の大河の絶頂。
 月の影を照り返しながら。
 喘ぎ、震え、跳ねて、匂いと汗を空に散らす。
 竜児の腕の下。
 滑らかな腹筋を硬く引き締め、ちいさな乳を揺らして丸くなり。次にはのけぞり、背中と腰を橋のようにして美しい弧を描く。
 見開かれた瞳は宝石のように光を吸い込み、星ぼしのきらめきに変えて散らす。
 瞳は目の前にいる竜児に向けられても、揺れて見ることもおぼつかない。
 薔薇色の唇を大きく開くことさえできず、桜色に艶めく舌をひかえさせて子犬のように喘ぐ。
 絶頂するまでは、きつく竜児の腕をつかんでいた指も、おののいて硬くなり、添えられているだけ。
 大河の身体をただ痙攣だけが支配していた。
 絶頂に何度も貫かれる大河のちいさな裸身。
 ちいさくても、それはたんなる美を越えた崇高なもののように竜児を畏怖させる。
 白く濡れた、稲妻のようであった。
 熱く滑らかな、怒涛のようであった。
 竜児の腕にすっぽりと収まるほどの、ちいさな自然が見せる驚くべき仕草。
 稲妻であり、怒涛であり、そして。
 可愛くて。可愛くて。可愛くて。
 なんと、なんと、なんと可愛いのだろう。
 竜児は涙を流す。
 愛しい大河を苛む激しい快感を想ってしまう。
 大河の快感が竜児の身体に流れ込んでくる。
 それは狂おしいほどに甘く優しいものとなって、竜児の胸をいっぱいにする。
 竜児は涙すら流す。
 おうおうと呻いて、嗚咽する。
 大河に夢中になる。
 大河の尻は竜児を深く求めて何度も跳ねる。大河の穴は竜児を何度もきつく締めつける。
 精液搾取の反射。
 これほどとは。
 股間を波のように襲う刺激に、震える顎をだらしなく落として、喘ぎながら竜児は思う。
 大河の精液搾取の反射を、竜児は最初に指で経験したのだった。
 大河の穴を拡げるその指を、絶頂に何度も締めつけられながら、俺はこのいやらしい穴に挿入するのだと、その時の竜児は期待に勃起が漲るのを禁じえなかった。
 今やその、精液搾取の反射に襲われた大河の中に、竜児は勃起そのものを深く深く根もとまで埋めているのだ。
 大河が上げる甘い声を燃料として激しく漲っていく勃起が、大河を喘がせる絶頂の反射によって何度も何度もきつく締め上げられる。
 これほどとは――

279◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:39:08 ID:???
 絶頂する前に伝えたいことがあるのだと、哀願する大河の可愛らしさによって、竜児が心を取り戻していなければ。もしそうでなく、竜児もまた高まっていたとしたら。
 耐えきれず、確実に射精したに違いなかった。
 それを耐えたのも、また竜児の欲だった。
 まだ果てたくないのだ。
 竜児は大河とのつながりに魅了されていた。
 もっと長く、それを感じていたいのだった。
 大河を感じさせ、何度でも絶頂させて。
 可愛い、可愛いと、何度でも涙を流したくてたまらない。
 長い睫毛にふちどられた目蓋をきつく閉じて、甘い涙を滲ませながら、いまだ絶頂の余韻に震える大河に、竜児は決意して語りかける。
「大河」
「りゅ、竜児……」
 瞳を開いて竜児を見つけて、大河は嬉しいと、ひとつ、安心したように微笑んでみせてから、
「ご、ごめんなさい……」
 なんとびっくり、泣きそうな顔をして謝ってきた。
「おう!? な、なんで謝るんだ?」
「だ、だって、私ひとりで、イっちゃったんだもん……」
 竜児、まだでしょ……? なんて、眉根までひそめて、大河は本当にすまなそうに言う。
 竜児はつい、優しい笑いを鼻から漏らしてしまう。
「なんだよ。気にすんな。おまえがすぐイっちゃう、えっちな子だってのは折り込み済みだ」
「えぇっ……ひど……」
 謝っていたというのに、すぐに大河は唇を蕾に尖がらせる。
 そんな大河の拗ねた顔が、またたまらなく愛しくて。
 竜児は声を甘く低く落として、狙う。
「大河はすぐイっちゃう子だもんな? いっぱいイっちゃう、えっちな子だもんな……?」
 好きだよと言い落とす、同じ声音で言う。
「はっ……はう……っ」
 狙われてしまった通りにへその下をずきずきと疼かせて、大河は甘く吐息してしまう。
「ほら、すぐにそんなふうに感じて。えっちな子だな、大河は……」
 ようは、不意にいじめたくなったのだった。
 竜児は大河をいじめて可愛がりたくなったのだ。
 ふだんの大河が相手なら、それはまさしく虎をも恐れぬ所業であったが。
「あっ、あうぅっ……ひ、ひどい……りゅ、竜児がいけないんだもん。わ、私、えっちな子じゃなかったもん……あっ!」
 大河は涙目になって抗議するけれど、まさにいやらしく竜児の勃起を甘く締めつけて。跳ね返る快感に甘い声すら上げてしまう。
「ほら、すぐそうやって、俺のから精液搾り取ろうとする」
「そ、そんな……っ! っ! か、勝手になるの! あっ! あっ!」
「そんなえっちな声出して、俺の、おっきくしようとしやがって」
「し、してないもん! 声だって、か、勝手に出るの! うぅ、りゅ、竜児の意地悪っ!」
 言い募って、震えながら涙目。竜児の子虎は唇もへの字にして睨んでくる。
 愛しくてたまらなくなって、竜児の方が根負けしてしまう。
 意地悪は終わりだった。
「おまえ、えっちで、可愛くて。俺はたまらないんだよ、大河」
 竜児は顔を寄せ、結んだ桃薔薇の唇を唇でついばむ。
 つんと蕾にしていた大河の唇は、それだけですぐにほころんでしまう。
「りゅ、竜児……」
「おまえの感じるのを、見たくてたまらないんだ」
 言って、もう一度キス。
「おまえのイクところを、見たくてたまらないんだよ」
 その言葉を言われるとあまりにきつく疼いて、大河は震えて、瞳を眇めるようにして喘いでしまう。
 それでもすぐに、伝えたいと、
「りゅ、竜児……わ、私も、ね? 私も、竜児の感じるの、見たいの……」
 疼きに耐えて一生懸命、切れぎれに大河は言うのだ。
「わ、私も、竜児のイクところ、見たい……」

280◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:39:59 ID:???
 これは思いもよらぬ逆襲で。
 竜児は不意にときめいて、のぼせた血が耳や目蓋まで熱くするのを感じてしまう。湧いた生唾を飲み下す。
 竜児とは違って、大河はちいさく、華奢で、美しく、可憐で、可愛くて。だから。
 どうしても、つい忘れてしまうのだった。
 竜児が大河の身体を求めているように、大河もまた、竜児の身体を求めてくれていることを。
 しかし、大河におのれの絶頂を晒すとは、想うだけでもなんと恥ずかしいのか。
 大河に口で愛されてもなお、射精を拒んだおのれの気持ちは、きっとこれだったのだと竜児は気づく。
 俺はやはり、美しくもなんともないというのに。
 もし竜児がそう言えば、大河は違うと言うだろう。怒ってくれさえ、するだろう。けれど。
 今や大河こそがおのれを越えた真実と、わかっていてもなお、俺は――
「竜児……?」
 大河に、呼ばれて。
 大河に竜児と呼ばれるようになってから、俺は自分の名前が本当に好きになったのだと、不意に竜児は思い出す。
 竜児。この、きっと父の臭いをまとわせられた名前。
 求めるにも憎むにも遠くて。他人のようにぼんやりとしか思うことの出来ない、血の父。
 うすうすと気づいて、竜児はおのれの名前に対してもぼんやりとした愛着を持つばかりだった。
 悪くはない。だけど……悪くはない、とでもいうように。
 大河が変えたのだった。
 竜児、竜児、竜児、と。
 なんか他にもひでえ呼ばれ方もされまくったけれど、とにかく、大河が。
 竜児、竜児、竜児、と。
 ちいさな身体に見合わぬ、少し大人びた低い成分をもった、けれどとても可愛い、あの声で。
「大河……もう一度、俺の名前を呼んでくれ」
「えっ? りゅ、竜児……?」
 そう、この、声で。
 まんざらではなくなった。やがてはっきりと好きになっていた。俺の名前。
 俺は、竜児。
 高須竜児。
 そういえば、大河もそんなようなことを言っていた――
「大河、俺はおまえの名前が好きだよ」
「えっ? あっ、なに? 私の……あ、ありがと」
 あまりに唐突で、さすがにきょとんと目を丸くして、でも大河は嬉しそう。そして、
「あっ! わ、私も……竜児の名前、好きだよ……大好き」
 上目遣いに頬も染めて、またも大河はすぐにお返ししたがるのだった。
 ここにもなにか魔法の力があるのだと、竜児は思う。
 愛するものに照り返されて、おのれへの愛にも目覚めるとでもいうような、魔法の力が。
 おのれの名前がそうであるならば、また――
「大河、俺のイクところ、見せてやるからな」
「っ! りゅ、竜児……っ」
「大河、俺はおまえの中で射精して……射精したい。射精する。そして、俺はおまえにイクところを見せる」
「は、はい……っ!」
 大河はまた、柄にもない素直な返事をして。嬉しくて。たまらなくて。ずきずきと。震えて。吐息する。
 竜児は、大河の震えて喘ぐ薔薇色の唇を、薄い唇でまたひとつ、ついばんで、
「動くよ、大河」
 宣言する。
 うん、と、大河はうなずく。
 またもやいつのまにか、ふたりで到達していた深い結合で、大河が痛まないことは確認していた。
 竜児は、ゆっくりとおのれの意志によって慣れない腰を使い始める。

281◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:40:38 ID:???
「はあっ!」
 深いところから引き抜かれて、大河がひときわ甘く吐息する。それだけで竜児は漲ってしまう。けれど。
 腰を使うというのも、またどうにもよくわからないのだった。
 大河の穴はきつすぎるほどで、ともすれば竜児の勃起を押し出しかねないと感じる。
 激しく腰を使うなどというのは、まだ竜児自身にとっても無理だと思われた。
 だから慣れるまで。とりあえず、慎重に。
 先に指で探った時と同じように、大河が悦ぶやり方を見つけ出そうとする。
 指で押すと大河が悦んだ場所を刺激するために、探りながら浅い注挿を繰り返す。
「あっ! あっ! りゅ、りゅうじ、そ、それ、好き! 好きっ! い、いい、いいの……っ!」
 快感に襲われて甘く応えるだけでなく、恥ずかしさを越えてとうとう素直に報告してきた大河のあまりの可愛らしさに驚きながら、竜児は漲りを増した勃起を使う。
 何度も浅く注挿しながら、竜児はときどき、おのれが我慢できなくなって、大河の中に深く勃起を押し込んでしまう。根もとまで、ぴっちりと埋める。思わずため息するほど、大河の穴は良かった。
 大河は深くされるのも好きなのだった。
「あぁっ!」
 悦んで、勃起をぎゅうぎゅうと可愛らしく締めつけて、大河は登ってきた竜児の背中にしがみついてくる。たまらなかった。
「可愛いよ、大河」
「りゅ、りゅうじ……っ」
 瞳の星もとろけさせ、頬も桃色に染めて、大河は竜児を見つめ返してくる。
 愛しさをこめて、薔薇の唇をついばんでやる。
 そして、竜児はふたたび勃起の先端が浅くなるまで、腰を引く。そして浅い注挿を何度も重ねてやる。
 慣れるまでと、とりあえずは、その繰り返し。
 幾度めかの深い挿入の時だった。
 見つめ合っている、時だった。
「あ、あのね、竜児……ま、まだ、イかないの……?」
 そんなふうに、大河は竜児に訊いてくる。すぐに、大河は薔薇の唇を小波にきゅっと結ぶ。
 なにかに耐えるように。
 だから、竜児にはすぐにわかった。
「大河、おまえ……」
 それだけで、大河にも伝わった。コクンとうなずいて、
「ご、ごめんなさい、竜児……わ、私、だ、だめ……ま、またイクの、また…………い、イって、いい?」
 大河はなんと、許可を求めてきたのだった。
 竜児は心底びっくりした。あんまりに大河は可愛すぎた。
 こいつはどこまで俺のものになりたいという。
 驚きに目を見開いたまま絶句した竜児を、許可しないとでもとったのか、何かこらえるようにして、少し不安げな瞳の色で大河は見上げてくる。
「おう……いいよ、イっちゃえ」
「わ、わぁい……んじゃ、ちょっと、お先に……っ!」
 そんな、おバカなことを言って。
 ありがと、嬉しいな、と、大河はお礼をするように目を細めてから絶頂の痙攣に身をまかせる。
 竜児が深く刺さるように恥丘を突き上げ、竜児を何度もきつく締めつけてくる、精液搾取の反射。
 もう絶頂しているのに、さらに刺激される身体。
 大河にはそれを拒めない。
「はうっ! はうっ!」
 少しずつ、おしっこを吹く。竜児の股間をも熱く濡らす。
 大河にはそれを拒めない。
 股間の刺激よりも強烈に、五感から脳へと流れ込むその様のすべてが可愛くて、可愛くて、竜児を痺れさせる。
 背筋がゾクゾクとする。
 駄目なのだった。がまんができそうにない。
 もっと見たくて、たまらないのだ。
 大河がどうなってしまうのか、もっと見たい。
 もっと、知りたい。

282◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:43:45 ID:???
 竜児は大河の絶頂とともに止めていた腰を使って、精液搾取の反射に襲われている大河の穴に注挿を始める。
「んあっ!」
 大河はすぐに反応する。
 反射で締まってきつく狭くなったところを狙うようにして、勃起をぬるっとこじ入れる。
「あっ! う、そっ! そん、なっ! りゅ、りゅ、じ……っ!」
 痙攣すら越えて、大河は瞳を大きく見開き、驚きの声もひときわ甘く、
「わ、私っ! イってるの! い、イってる、のに、そんなっ! やっ! やぁん! ひ、ひど……っ!」
 ひどい、ひどい、と切れぎれに竜児に言い募る。
 すごかった。
 大河の反応も、大河の穴の感触も、すごい。
 竜児は眉もしかめて歯を食いしばって苦しいほどの快感に耐える。
 耐える隙間を見つけて、訊ねる。
「痛いか? 大河……」
「いた、痛く、ないの、おーっ! き、きつい、の! りゅう、じ、お、ちんちん、きつ、い……っ!」
 大河に性器を呼ばれて、竜児は驚くほど漲らせてしまう。
「やん! やん! も、もう……っ! ぐ、ぐって、したら、やあっ! お、おかしく、なる……っ!」
 それなのに、大河の身体は恥丘を何度も突き上げて、竜児を深く欲しがってくるのだ。
 俺の女はなんて可愛い動物なのだろうと、竜児の頬を涙がつたった、その時。
 勃起の裏側にあたる、何かがあることに竜児ははっきりと気づく。
 少し腰の位置を変えて、探るように突き入れる。
 勃起の先端の裏あたりで、その、大河の中にしては不思議と硬い何かをつつく。
「あっ!?」
 はっきりと驚いた成分のある声を大河が上げる。
 その硬いものは、なにかまるで、大河の中に備わったビー球のよう。
「大河……これ、なんだ?」
 勃起でつつくようにして、訊ねる。
「あう! あう!」
「なあ、これ……ここも、気持ちいいのか?」
「う、うん! そこ、おっ! お、奥! わ、わかんない、けど、き、きっと、たぶん」
 し、子宮かも……と、大河は、どこか恥ずかしそうに言う。
「こ、これが……!」
 言って、竜児は絶句してしまう。
 神秘の多い夜ではあった。けれど。
 これは神秘の神秘。
 こんなところにあるものなのか。
 こうして、それに触れることがあるものなのか。
 触れてよいものなのか。
 畏怖の念が湧き起こる。ほとんど感動すら、竜児はしていた。
 われ知らず、けれどすべてを知って、竜児は言っていた。
「大河、大河……きっとこれに射精してやるからな、大河。結婚して、おまえを養えるようになって、そうしたら……俺は、きっと、これに射精するからな、大河……」
 つまり、それは。
 それが意味するところは。
 大河は嬉しかった。
 そんなことまでも嬉しいのだった。
 このひとだからそうなのだった。
 竜児だから。
 ただ竜児だけに、大河は。
 嬉しくて、とろけそう。
 だから、ただただ微笑んで、
「うんっ、うんっ……してね? してね、竜児……っ」
 と、だけ言う。
 大河は微笑めば、竜児もまた微笑むのだった。
 なぜそうなのか大河は知っているのだろうか。
 大河の微笑みは、それ自体が竜児の喜びだから、竜児は微笑むのだ。
 そして、大河の肯定の返事はそれ以上の喜びとなってあふれかえり、竜児の胸をいっぱいにする。
 けれど今は、これだけと、
「じゃあ、いくよ、大河」
「う、うん……っ」
 言って、大河の可愛い応えを得て、竜児はふたたび腰を使い出す。
 今までに得たコツと勘にすがって、徐々に注挿の速度を上げる。

283◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:45:32 ID:???
「あっ! あっ! あっ! あっ!」
 必死で甘く応える大河の声が、速度を上げた注挿と同期する。
 それもまた可愛いのだった。
 竜児は高まっていく。
 竜児はやがて激しく腰をふりたくる。
 大河の身体を信じて、遠慮なく貫きまくる。
 大河の胸の上で、ちいさな乳が薄いプリンのように揺れる。
「っ! っ! ! ! ……!」
 喘ぎ声すら追いつかず、大河は目蓋をきつく結んで、ただただ唇からちいさな桜色の舌を出したまま震えるばかり。
 なにもかも可愛い。
 竜児は高まる。
 おのれも息を詰め、歯を食いしばって汗を散らす。
「し、死んじゃう! 死んじゃう!」 
 かつて知らないほど高められてしまった大河が叫ぶ。
「イって! りゅうじっ! イって!」
 必死で懇願してくる。
 果てることで応えようと、竜児は目すらつぶって、獣のように尻をふりたくった。
 ひたすらに、ひたすらに、ふりたくった。
 けれど。
 竜児は不意に、その動きを止めてしまう。
 驚いたように双眸をかっと見開き、大河の向こうの畳を見やる。だが畳など見ていないのだ。
 息を詰めていた分、ただただ激しく喘ぐ。
 射精はしていない。
 先に竜児の体力の限界が来たのだった。疲れ果てた。いささか情けなかった。
 一方、大河はといえば、動きを止められるのも駄目なのだった。
「あ……っ! りゅ、じ、ご、ごめ、なさい、ま、またっ!」
 切れぎれに詫びて、絶頂してしまう。
 白く激しく美しい、大河の絶頂を眺めて。感じて。
 喘ぎながら竜児は涙を流す。
 涙しながら、竜児は気づいたのだった。
 おのれが大河の絶頂にも、精液搾取の反射にも、射精しなかったのは、耐えていたせいではなかったらしいということに。
 初めて体験するつながりによって、大河の身体によって、知らぬところまでおそろしいほどに高められているのは感じていても、なお、竜児は。
 どうやら俺は、たんに射精できないのかもしれない――

  * * *

 つながってから、これがもう何度目かはわからない。
 けれどそれは、何度見ても素晴らしかった。
 大河の絶頂を眼下にしながら、汗まみれに喘ぎながら竜児はやはり涙を流す。
 初めて遠慮なく激しく腰を使った後も、竜児は体力の回復を待って、注挿を再開した。
 二度、三度と、狂おしく腰を振りたくり、挑戦した。そして。
 挑戦して、敗北するたびに、確信は深まっていく。
 俺は射精できない。
 大河にだけは気づかれまいと、楽しむ素振りすら見せて、竜児は休憩をはさんで体力の回復を待つ。
 それまでに大河からは何度も、射精するよう懇願された。哀願された。
 これが竜児の責めであると、遊びであると意地悪であると、大河には思われた方がいい。
 そう大河には思っていて欲しい。
 勃起が萎えないことだけが、唯一の救いだった。
 大河に気取られまいと、快感に苛まれてとろけきった大河の瞳に微笑みを見せて、ふたたびゆるやかな注挿を開始しながら。
 竜児はまったく困惑していた。

284◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:46:28 ID:???
 なぜだかがわからない。
 驚くほどに高まっているはずなのに、どうしても射精のトリガーが身体の内部で引かれる気配がない。
 下腹部のどこか、勃起の付け根、睾丸の奥あたりに感じるはずの、やはりスイッチを連想させる、あの感覚だけがまったく遠い。
 どうすればいいのかがわからない。
 想像の中で大河を犯し、射精したことなら幾度もあった。なのに。
 想像をはるかに越えて素晴らしい、大河との心と肉のつながりをこの現実に得ているというのに、なぜおのれは射精できない。
 こんなことがあるものだとは思いもよらなかった。
 他の男も、こんな困難に見舞われることがあるのだろうか。
 なにか技術があるのだろうか。
 まったくわからない。教えられても、知らされてもいない。
 やはり、おのれで解決法を見つけるしかないのだ。
 しかも、これこそ、今度こそ、自分ひとりで見つけるほかはない。
 今夜、竜児が学んだ多くのことは、すべて大河とふたりで見出して来たのだった。
 大河を可愛がる方法、大河とつながる方法。
 未熟な竜児に、大河はこの上もなく大切なはずの自分の身体のすべてを捧げてくれた。ゆだねてくれた。
 そうして、すべてをふたりで探り当てて来たのだ。
 だが、これこそ、今度こそ、竜児はひとりで見出さねばならない。なぜなら。
 竜児が射精できないと知れば、きっと大河はむしろ自分に問題があると、大河の身体に問題があると、考えるはずだからだ。
 竜児をひどく罵りもするくせに、もっとも大事なぎりぎりのところで大河はいつも優しい。
 竜児を傷つけるくらいなら自分が傷ついた方がましだと、常に迷わず選ぶような女なのだ。
 しかしその想いは、逆に竜児のものでもあった。
 竜児は自分が優しいなどとは思わない。だが、大河が傷つくくらいなら、おのれが傷ついた方が全然ましなのだった。
 愛しているから、だと思う。
 愛しているから、隠さねばならない。
 けれど、また。
 大河も竜児を愛しているのだ。
 そして大河は竜児よりも何倍も鋭い。
 遅かった。
「竜児、どうしたの……?」
 愛してくれる者から、隠しきれるものなどないのだった。
「大河……」
 大河の眼差しがこわくて、竜児は一瞬、目を泳がしかける。
「竜児っ」
 優しく叱咤されて、竜児は観念して大河の瞳を見て、おのれの目の奥を晒した。
 大河の宝石のような瞳が吸い込む光とともに、俺の心も吸われていくなどと、竜児はつい思ってしまう。
 本当に、そうなのかもしれなかった。
 大河はもう答えを得たのかもしれなかった。けれど。
「どうしたの? 竜児。教えて、私に」
 声音こそ穏やかに、しかし大河はあくまで竜児の口から聞かせて欲しいと、挑んでくる。
 震えていても、喘いでいても、猛獣の瞳。
 場違いにも、竜児はちょっと痺れてしまった。これが俺の女なのだ。
 そして今は、ふたりですべてを生きていく同志。
「おう。どうも射精できないらしい」
 応えて、素直に告白する。大河は震えない。
 竜児が素直に言ったことに対して、大河は微笑んでくれたようだった。まるでご褒美のようだった。
「そう……で、竜児は、どうしたいの?」
 どうしたいの、と来た。
 なるほどと竜児は思う。
 射精をしない、と決める手もあるのだった。
 ふたりは確かにつながることに成功したのだ。
 だから射精をせず、このまま終わるという手もある。けれど。
 竜児には欲もあった。愛もあった。
「さっき言った通りだ。俺は射精したい。おまえに、それを見せたい」

285◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:47:29 ID:???
「……うん、わかった。私も竜児に射精して欲しい。私で、気持ちよくなって欲しい」
 惚れぼれとする猛虎の瞳はそのままに、大河は頬を薔薇色に染めあげた。
「さて……どうすればいいんだろね……?」
 そう言って、大河は瞳を眇めて竜児からも視線をそらし、唇も結んで思案顔になる。
 つまりは、ふたりで見つけようね、ということなのだった、大河は。
 今度こそはひとりで、などと悩んでいた竜児は、また危うくヘマをやらかしかけていたらしい。
 大河が呼ばわるとおり、俺はまったく馬鹿な奴だと、竜児は思う。
 ふたりで生きていくとはどういうことなのか、いまいちよくわかっていない。
 ふたりで生きていくとはこういうことだと、大河の方がよっぽどわかっているようだった。
 おまえがいなければ駄目だと、竜児は思う。
 おまえが愛を教えてくれるのだと、竜児は思う。
「愛しているよ、大河」
「へっ? なに? なによ……っ! あ、愛しているわよ、私だって。……あ、言えた」
 あれほど妙に、言うのに苦労していた言葉を、さらっと言ってしまって大河は気づいた。そしてコロコロと表情を変える。
 やった言えたわーい、と瞳を細めて唇をほころばせ。そうかと思えばすぐに、えーでもこんなん……? と、瞳も眇めて唇もつんと尖がらせる。そしてまた微笑んで……と表情のセットを繰り返す。つまりはまったくいつもの大河であった。
 さすがの鈍で鳴らした竜児も気づく。
「おまえひょっとして、さっき言いたかったことって、愛してるってことか?」
 でもそんな指摘自体がまさに鈍感であるのには気づかない。これまたいつもの竜児なのだった。
「うわあ、あんた。モロに言わないでよ。なんかさらに台無し感が……まあ、そうよ。言いたかったの、それを、あんたに。あーあ、だけどなんかもっとこう、激しくロマンティックな感じで言いたかったな……」
 などと言って、結局、大河は薔薇の唇を蕾と尖らせたところで表情を落ち着かせてしまう。
 べつにおねだりと勘違いしたわけではないけれど、竜児はその大河の唇を、唇でひとつ、ついばんで言った。
「じゃあ、俺がおまえの中でイッた時に、聞かせてくれよ。もう一度」
 そんなことを言われたら、想わずにはいられなくて。大河はまたへその下を熱く疼かせて、つい竜児のものをきゅっと締め付けてしまう。跳ね返ってきた快感に、震えながら切なげに耐えて、
「い、言いたいけど……自信ない」
 恥ずかしいのか、照れたように微笑んで大河は言う。
「きっと私、そんなの……だ、駄目だもん……」
 竜児に射精されたら、私もイクに決まってるもん……と。
 竜児は少し驚いたように眉を上げて、それからまた優しげに(大河にはわかる)目を細めて、もう一度、大河の唇をついばんでくれた。
 優しい竜児、大好きな竜児。
 気持ちよくなって欲しい。でも、どうすれば。
 考えるだけではよくわからないから、大河は訊いてみるしかない。
「竜児は、射精したことあるんだよね?」
「おう……そりゃあ、あるよ。もちろん」
「ん……じゃあ、その方法は使えないの……?」
 すると竜児は、急にどぎまぎして、頬なんか気持ち悪い(でも大河は可愛いと思う)ピンク色にしてみせる。
「方法って、手でこする、とかか? あ、いや、そうじゃねえよな……」
 ほうほう手でこするとは。
 思わず大河は興味津々、詳しく訊きたくなる。
「そうじゃない、ってことは……ほ、他の方法とかも、あるの?」
 すると竜児はいよいよ耳まで真っ赤にして、薄い唇を尖らせて。本当のことを言ってくれる時の顔をして、ぶつぶつと呟く。
「方法ってか……お、おまえなんだよ」
「へ?……わ、私?」
「おう……ほんとにわかんねえのか? わ、わかんねえか……ああくそ、だからな」
 とうとう竜児は目をつぶり、急に痒くなったみたいに頭なんか掻きだして。
 やがて、うしっ、と決意のうなずき。目を開いて大河を見つけて、それでもやっぱり唇を突き出して。なんで不平でも漏らすように言うのだか。
「お、おまえを想って、するんだよ……」

286◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:49:42 ID:???
「え? ……えーっ!?」
 竜児の言葉が腑に落ちて、大河は驚いて、絶句してしまう。
 驚いたけれど、やっぱりずきずきしてしまうのだった。なんだかすごく、嬉しいみたい。
「そんな驚くことじゃねえだろ……。とっ、当然じゃねえか……と、当然、なんだよ」
 当然というわりには何度もどもって、竜児は今度は正真正銘、不服そうに言う。
 大河はなんだか胸もどきどき。
「とっ、当然なんだ……わ、私で、したの……一回、だけ……?」
 ふう、と竜児がついたため息は、観念のため息のようだった。
「何度もしたよ。数もわかんねえくらい。おまえを想って、何度もした……射精した」
「はっ、はうっ。はう……っ!」
 ずきずきがきつくなって、大河は思わず喘いでしまう。竜児はすぐにおちんちんを大きくして、私のあそこは勝手に竜児のを何度も締めつけて、困ってしまう。思わず言ってしまう。
「りゅ、竜児の、えっち……っ」
「……ほんとな。俺も驚いた。おまえにはえっちなんだよ、俺」
 そんなことを言われても、やっぱり嬉しいのだった。
 そう、でも。だけど、すると。
「じゃ、じゃあ、なんで射精できないんだろ……?」
 つながってるのに……と大河は独り言してしまう。
 私を想って何度も射精したというのに、その私とつながってさえいるのに、竜児は射精できないというのだった。
 じゃあ、すると。やっぱり。そんなのやだけど。
「わ、私の身体がいけないのかな……?」
 そんなことしちゃだめなのに、我慢できなくて。つい大河はすがるように上目遣いで竜児の顔を見てしまう。
「いや、それはない」
 一切、躊躇も間もなく、竜児は断言する。
「おまえの身体は最高だよ……まあ、おまえが最高なんだが、とりあえず……おまえの身体は最高だと思う。こんなにえっちで可愛い女、ほかにいるわけねえ。おまえで射精できなかったら人類が滅ぶ」
 いきなり人類の命運とか担っちゃたりして、でも竜児は本気なのだった。大真面目で淀みなく言ってのける。
 そんなの嬉しいに決まってるけど、バカだとも思ったり。
「ほ、褒めすぎ。他の娘なんか、知らないくせに……」
「まあな、確かに他の女は知らねえ。おまえが初めてで……最後の女だ、俺には」
 こんなの駄目。まっすぐ、ほだされてしまう。
 名前を呼ぶのがせいいっぱい。
「竜児……」
 けれど負けじと、大河も一生懸命に言う。
「わ、私も……私もなの。竜児が初めてなの……竜児にしか、あげないの……」
 竜児は嬉しそうに、優しい目(私にはそう見えるの!)をして、微笑んでくれた。
「そうか……じゃあ」
 そこで竜児は言葉を区切って顔を寄せ、またひとつ、薄くて熱い唇で大河の唇をついばんで、
「いっぱいえっちなことしような、大河」
 吐息の届く近さで語りかける。
 大河は驚いて、嬉しくて、声も甘くとろけてしまう。
「りゅ、竜児……っ」
 ずきずきっ! と、大河のへその下が甘く激しく疼く。あまりの刺激に閉じた目蓋の長い睫毛も震わせて大河は耐える。
「これからずっと、たくさんえっちなこと、しような、大河。……ずっと、ずっと、いっぱい可愛がってやるからな、大河……」
 そんなの、嬉しくて。駄目。
「あう……っ、りゅ、りゅうじ……っ」
 あまりにずきずきして、大河はとうとう甘い喘ぎを漏らす。指先までも甘く痺れる。

287◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:50:24 ID:???
 目蓋を開けば、潤んだ瞳に星を揺らして竜児を見つめて、大河は応える。
「う、うんっ、うんっ。う、嬉しい……っ。い、いっぱい、可愛がってね? わ、私、可愛くするから、がんばるから……だから、ずっとずっと、可愛がってね? 竜児……っ」
「がんばんなよ。遅いんだよ。おまえもう、とっくに可愛いんだよ。この世で一番可愛いんだよ、ダントツだよ、おまえは……俺に、とっては」
「竜児……」
「離さねえぞ」
 こわくて優しい眼差しで大河の瞳を捉えて、声音も低く優しくして、竜児はそう言った。
 その短い誓いの一言が、瞬間、誰も――竜児さえも大河すらも思わぬ重さと鋭さを得て、心も身体も貫いて大河の魂に届く。



 かつて愛があったようだった。
 なぜならば離されて、そこが癒えぬ傷となったからだ。
 いつまでも思い出したように血を吹き流す、ふたがれることのない傷があるから。
 先に心の傷があるのだった。そしてそれより先には遡ることができない。
 遡っても、かつて一度も愛などなかったとしか思えない。
 ただ傷が――不思議と血を止めぬ傷が心にあるから。
 私はどうも、もがれては癒えない何かをもぎ取られたらしいと。
 離されてはいけない何かから離されてしまったらしいと。
 大河はときどき他人事のように、血を流す心の傷を眺めてきた。
 へえ、まだ出るものなのねと。
 もう私は痛くないのに。
 不思議、と。
 もがれたもの、離れたものは何なのか。
 愛かと思えば、鼻で笑ってしまうのだ。
 そんなものなわけはない。
 なぜならそんなものは心のどこにも見当たらないからだ。
 ただ傷しか、見当たらないじゃない。



 それは言葉に過ぎない。
 けれどそれは大河が愛する者の言葉だった。
 自分よりも、大切に思えるひとの言葉だった。
 想い人から好かれない私は切なく悲しく哀れだと、恋が否応無く鍛え上げたおのれ自身への愛を越えて。にもかかわらずそのおのれよりも大切だと、心の底から初めて想えた、ただひとりのひとの言葉だった。
 ただ見ているだけで、生きてさえいけると思えたほどの、ひとの言葉だった。
 だから、だというのか。
 魂に届いた言葉はひるがえって、大河の心の傷を焼いた。そして求めていたものが何かを大河に知らせた。
 身体へとひるがえったそれは、大河の唇をわななかせ、瞳から涙となって出た。
 この涙を見ても竜児は驚かない。
 ただひたすらに優しく、愛しさを込めた眼差しで大河を見つめてくれるだけ。
 竜児は幾多もの大河の涙たちから、きっとこの特別な涙を見分けることが出来ない。それでも。
 知らずに、大河すら知らなかった求めているものをくれるひと。
 愛している、私の奇跡。
 竜児。
「竜児……嬉しい」
 ようやく微笑んで、大河が言った言葉は、ただそれだけ。
 離さないで、とも言わないで。なぜなら。
 離さないで、なんて言っても、意味はないから。
 離さないで、と言っても、離れるものは離れることを、大河は知っているから。
 だから。
「私も、離さないよ、竜児……」
 今は、それだけと、誓って。
 いつか、教えてあげると思って。
 こみあげる愛しさにまかせて。
 大河はおのれから薔薇色の唇を竜児の唇に逢わせた。

288◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:54:24 ID:???
 衝撃で取り戻してしまった心。その心から身体を取り戻したくて、唇を唇でついばんだ。
 魔法よもう一度解けてと、竜児の舌に舌を絡めた。
 竜児の言葉に貫かれたように、竜児の身体に貫かれたくて。
 竜児の舌を必死で貪った。けれど。
 なかなか魔法は解けなくて。
 どうして、と。
 大河が焦りを感じ始めた時、竜児が舌を絡めるのを止める。
 駄目、駄目、と。
 大河は竜児の舌を追いかけるけれど、竜児の舌は退くばかり。
 やめてはいや。やめてはいやなの。
 けれど、とうとう竜児は唇を離す。
 大河は悲しくて涙を流す。
「やめちゃいやぁ、竜児……っ」
 懇願する。
 どうしたのだろう。嫌がられたのかと不安になる。
 けれど。
 竜児はちゃんと、愛しそうに大河を見つめてくれていて、
「やめねえよ。舌、出せ、大河」
 そう、命令してくれるのだ。
 だから大河は思わず、
「はい……」
 と返事をして。
 濡れた唇から桜色の舌を出す。
「もっと、口開けて。もっと舌、伸ばせ」
 ずきん、と、来た。
 とうとう、魔法を解除する甘い疼きの呼び声が身体に響いたのだった。
 嬉しくて、大河は別の涙を流す。
 はい、と、
「はひ……」
 口を開けたまま恥ずかしい返事をして、大河は自然と目蓋を閉じて、一生懸命、舌を伸ばす。竜児に捧げる。
「いい子だ」
 なんて、竜児は言って。
 唇と唇が触れるほど近づいて、宙に竜児へと捧げられた大河の舌の裏を、竜児の舌が舐め上げる。
 ずきずきっ!
「はっ! はっ!」
 甘い疼きがきつくて、大河はとうとう喘いでしまう。
 やっぱり竜児は助けに来てくれたのだった。
 魔法を、解きに来てくれたのだ。
 まるでおとぎ話の王子さまのよう。
 なんて素敵なの! 嬉しい! と、そう、素直に思って。
 大河は舌を竜児に嬲られるがままにゆだねる。
 へその下は毒のように甘くずきずきと疼き。
 大河が声をあげるたびに、挿し込まれた竜児が太くきつく漲っていくのが分かる。
 竜児のえっち。
「あっ! あっ! お、おっきい、の……りゅうじ、の、おっきく、なって……っ!」
「おまえが可愛い声なんか出すからだよ」
 だって、竜児なんだもん。
 竜児、大好き。
「あうっ! あうっ! 好きっ! 好きっ!」
 快感に貫かれて、大河は夢中になって竜児にしがみつく。
 それがさらに竜児を激しく勃起させる。漲りを取り戻したそれを、大河の熱く濡れたきつい穴に深く深く挿し込む。ぴっちりと、根もとまで。
 たまらなくなって、竜児も喘いでしまう。
「ああ……大河……っ」
「あっ! 奥っ、深いの! お、おっきい……っ!」
「最高の穴だ、おまえの穴、最高の穴だ……くそっ、この穴に射精してえ……!」
 射精のあの感覚を必死でとりもどしたいと、竜児は大河の奥までぴっちり挿入した勃起を、意志の力で息づくように何度も漲らせる。

289◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:57:14 ID:???
 大河は竜児のいやらしい言葉に身も心も貫かれてしまった。初めてそれとわかる感覚、漲らされて脈打つようにきつくなる快感に苛まれながら、大河は必死で応えた。
「してっ! してっ! 私のに、射精して! 竜児のなの! 私の、竜児の穴なの! 竜児のためだけの穴なの! なにされてもいいの! なにされても! 私の穴、使って! 射精してっ!」
 涙をちぎって叫ぶ、驚くほどいやらしい言葉に、大河の愛があふれる。伝わる。
「た、大河……」
 竜児は涙を流す。
 その愛しい涙を見つけて、大河は一瞬、微笑んだ。
「優しい、私の竜児……遠慮しちゃ、だめ……! 私はあんたのものなの! あんたのものにして! なにしてもいいの、竜児! 私、なにされてもいい! お、おも、おもちゃみたいにして! 私を、おもちゃみたいに使って! 私の身体、私の穴、使って! 私の穴、竜児のおもちゃにして! わ、私、なりたいの、竜児なら、私、竜児の、おもちゃになりたい……っ。だって、あ、愛してるの……っ!」
 喘ぐように一気に告白して、大河は驚いたように瞳を大きく見開いた。見開かれても星を揺らして、涙もとめどなく。
 竜児もまた、眦が裂けるほどに目を見開いて、あふれる涙をこぼす。
 涙して、ただ抱きしめた。
 いったいそうするよりほか、これほどの愛におのれの何で応えられるという。
「大河……」
 大河もまた、せいいっぱい腕をまわして、竜児をきつく抱きしめ返す。
「竜児……さ、お願い、ね? おちんちん、挿して……」
「お……おう」
 うながされて、竜児は応えて腰を使い始める。勃起を引き抜いて、また深く挿し込む。
「あぁっ! りゅ、竜児、好き。愛してるの……」
 引き抜く、挿し込む。
「あっ! 好き、愛してるの……っ」
「好きだよ、愛してるよ、大河……」
 徐々に注挿の速度を上げていく。疲労は完全に消えているようだった。
「あっ! あっ! あっ! りゅ、りゅうじっ! しゅ、しゅき、あいしてるのっ!」
 快感に突き上げられ、大河は舌の根まで甘く震えさせる。
 可愛くてたまらなかった。大河の声は何度でも竜児を漲らせた。
「あーっ! りゅ、竜児……っ! あ、あのね? あの、イけって、ゆって? 命令して、欲しいの……」
 これは初めてのお願いのはずだった。竜児は少し驚いて、訊ねかえす。
「た、大河。イキたいのか?」
 大河はコクンとうなずいて、
「うん。イキたいの……イけって、め、命令して? 竜児……そしてね、私がイったら、その穴、使って……」
 竜児は息を呑んだ。
「っ! た、大河……」
「だめ、腰、止めちゃ……挿して? 挿して? あっ! あっ! そ、そう……っ!」
 うながした注挿に甘やかに応えてから、いっそ大河は微笑んで言うのだ。
「め、命令、してね? 竜児……私、いっぱいイクから。いっぱい、可愛い声、出すから。だからね? イってる時の、私の穴、使って? イってる時の穴で、おちんちんしごいて? イってる時の、私の穴、竜児のおもちゃに、して……」
 こいつをどうすればいいのか。
 たまらなかった。
「うん、うん……わかったよ、大河。するよ。イってるおまえの穴、使うよ……」
「うん……挿して! 挿して!」
 竜児は大河の悦ぶやり方で腰を使う。責めを詰める。
 大河は入り口を何度も擦られるのが好きだった。
「あっ! やっ! やっ! 竜児の、好きに動くの! 私じゃ、なくて……っ」
 大河は奥まで深くゆっくりハメられるのも好きだった。
「あーっ! りゅ、りゅうじ……っ!」
 大河は素早く引き抜かれるのも好きだった。
「あーっ! め、命令っ! 早くっ!」
「だめだよ、大河。我慢するんだ……」
 大河は子宮をつつかれるのも好きだった。
「やぁんっ! やぁんっ! ひ、ひど……っ! だ、だめだってば……っ! め、命令、してっ!」
「だめだ。まだイクな、大河」

290◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:57:53 ID:???
 ぜんぶ、してやる。
「うぐ、うぐ、うーっ! んっ、んっ、んぐ! ひ、ひどっ! ひどいの! も、もう、許して! め、命令してっ! りゅ、りゅうじっ! ひ、ひど……許して、許してっ……あーっ!」
 耐えきれず舌を出して声をあげる以外、ちいさな歯を食いしばって耐え続けている大河の頬を、竜児は手のひらで優しく撫でて、
「可愛いよ大河。俺のおもちゃ。愛している。イけ」
 命令した。
 絶頂をこらえて辛そうに眇められていた大河の瞳が、わあっと花が咲くように見開かれて星を散らした。こらえて硬くしていた薔薇の唇もふわりと開いて、その一瞬の自由に、大河は、
「愛してるの。使って」
 驚くほどはっきりと、そうとだけ言って。
 絶頂した。
 痙攣して、匂いと涙と汗を散らして、大河は白く美しい動物になる。
 淡色の髪雲を従えた、熱く滑らかな動物になる。
 その動物のいやらしい穴に、竜児は漲り切った勃起を突き入れた。
 熱くきつく濡れて狭い穴に、竜児は何度も突き入れた。
「おーっ! おーっ!」
 大河が可愛い獣の声を上げる。
 精液搾取の反射に白い尻を跳ね上げる。何度も竜児をきつく締める。
 切れぎれに放尿して、竜児の股間を熱く濡らす。
 すべて捧げてくれているのだ、この女は。
 途方もない。
 おのれに何が返せるというのか。
 絶頂する大河を貫きながら、絶頂を越えて貫かれる大河の快感が竜児に流れ込んでくる。
 今夜何度もそうしてきたように、またも竜児は涙する。
 涙すら流す。
 そして、気づいた。


 俺は大河の涙を流しているのだと。


 泣きながら、突き入れて。
 竜児はとうとう気づいたのだった。
 大河がすべてを捧げてくれたから、竜児は大河の涙すら流すのだと。
 俺の身体を流れる甘い疼き。身体の奥の知らない臓器に流れ込み散る、毒のように甘い流れ。
 知らぬはずだった。そんな臓器など、俺には無い。
 それがあるのはきっと大河だ。
 大河から、来ているのだ。
 大河がすべてを捧げてくれるから。
 泣きながら、突き入れて。
 いまや今宵の初めてのキスの謎すら解けたのだと思う。
 唇におのれのすべてを込めて。
 大河は最初から竜児にぜんぶを捧げてくれていたのだ。
 だから竜児は大河の涙を流す。
 大河を苛む快感に想いを寄せて、大河を貫く快感をこの身に受け止めて。
 だから竜児は大河の涙すら流す。
 それこそが愛だと思っていた。
 これほどに愛しているのに、なぜ射精できないと思っていた。
 泣きながら、突き入れて。
 竜児にはわかった。愛はそれだけではないと。
 おそらくふたつの愛があるのだ。その両方がないと完成しないような、ふたつの愛が。
 大河が捧げ、俺が受け止める。これは愛だ。ただし奪う愛だ。
 いけないわけではない。それも無くてはならない愛だ。
 けれど、わかった。
 俺はわかっていなかったことが。

291◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 22:59:26 ID:???
 ヒントはいくらでも、そこらじゅうにあったのだ。
 大河のように俺は美しくない。
 大河のように俺は可愛くもない。
 かといって格好良くもない。だから。
 俺は俺の身体が恥ずかしい。
 なにを考えていたというのか。
 身体にまつわる恥も哀れもなにもかもを投げうって、大河は竜児に自分のすべてを捧げてくれていたというのに。
 与えてくれていたというのに。そうだ。
 大河の愛は与える愛だ。
 それが、奪う愛と対になる、もうひとつの愛なのだ。
 泣きながら、突き入れて。
 竜児はついに決意する。
 逆にする。逆にしなければならない。
 おのれのすべてを大河に捧げる。与える。
 おのれのすべてを大河に受け止めてもらう。
 射精ができるかどうかなぞ、知ったことではなかった。とにかく。
 俺のすべてを大河に捧げなければ、愛は完成していない。
 俺のすべてを大河に奪わせなければ、愛は完成しない――
 泣きながら、突き入れて。
「大河!」
「りゅ、りゅう、じ……」
 途切れぬ絶頂に震える大河に呼びかける。
「俺はおまえのものだ、大河!」
 あふれる涙を吼えて散らす。
「俺はおまえに俺のすべてを捧げたい! 俺のすべてを奪ってくれ! 俺の涙を流して欲しいんだ、おまえに! 大河!」
 唐突な上になにがなにやら滅茶苦茶だが、竜児は思ったとおりの思いのたけをぶちまけた。けれど。
 唐突なのに、滅茶苦茶なのに。
 大河は痙攣に抗って、微笑んですらみせて。
「うん、わかった……」
 一片の謎もないかのように応えてくれたのだった。
 わけがわからないが、こいつは最高。
 俺の女は最高の女。
 思って、竜児は、優しさもここまでと、
「じゃあ、いくよ。大河」
 穏やかな声でひとつ、言って。
 大河の返事も待たずに。
 腰を激しく使い出す。
 動物になった大河を追って、おのれも動物になるために。
 獣に、なるために。



 竜児に激しく貫かれて。
 大河は狂おしい快感の中、必死に目蓋を開いて竜児を見つめていた。
 私の甘い声を燃料にして、私を貫く愛しい獣。
 渦巻き貫く毒のように甘い快感も、愛しくて大河が微笑むことを止めることは出来ない。
 喘いで、汗を散らして。私の竜児ったらひどい顔。
 月の影に下から蒼く照りかえされて、竜児の顔はスペースお化け屋敷ライド全開。
 汗が目に入ってぎゅっと閉じ、かっと見開いては私を見つめる竜児の目なんて、血走って、もう。
 殺すぞ――――――っっ!
 犯すぞ――――――っっ!
 奪うぞ――――――っっ! てなもん。
 奪ってくれとか言ってたくせに、奪う気まんまんの鬼畜犯罪者にしか見えない。
 私じゃなかったらきっと気絶モノ。心臓の弱い方はお控え下さい。
 竜児ったら汗だくで、必死で腰をふりたくり、息を詰めたり喘いだりで口も歪んでひんまがり、インコちゃんみたいなイマイチ色の舌も踊らせて、次には歯も食いしばって、まるで間近に警察が迫ってとにかく大忙しの、全力疾走の凶悪逃亡犯。
 もう笑っちゃいそう。だって竜児ったら、まるで。
 全力疾走、の。
 大河は笑わなかった。
 泣いた。

292◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 23:05:39 ID:???
 竜児に向けた大きな瞳は光を揺らす泉になった。
 気づいたのだ。気づいて、とめどなく涙があふれる。
 大河はこの竜児を知っていた。
 私を目指して、死に物狂い。
 ひどい顔して、全力疾走。
「竜児……っ」
 文化祭のミスターコンテスト、福男レース。
 父に裏切られて、だけどミスコンテストで優勝して。
 たったひとりになった私のために。
 たったひとりになった私を目指して。
 私の傍に俺がいてやるんだ、って。
 竜児はレースに参加したのだ。参加して、そして。
 走ってくれた。
 ひどい顔して、死に物狂いで、全力疾走。
 ゴールにいる、私を目指して。
 私の、ために。
 二度と無いと、思っていた。
 あんな素晴らしいこと。
 こんな素敵なひと。
「来て……っ!」
 立ち上がらなきゃ。
 立ち上がれないけど、立ち上がらなきゃ。
 立ち上がって、今度こそ竜児を迎えるの。
 今度こそ、遠慮して座りなおしたりなんかしない。
 今度こそ、私は立ち続ける。
 私のために走ってくる、竜児のために。
 竜児が走ってくる。私のために。
 素直に叫ぶの。何度でも。
「来てっ! 来てっ!」
 そして立って迎えるの。
 ゴールに飛び込んだ竜児の胸に飛び込むの。
 涙を隠さず、甘えるの。
 大好きって、今度こそ言うの。
 今度こそ。絶対。
 そうしないと。絶対。
 こんな素晴らしいこと。
 こんな素敵なひと。
 竜児の熱く濡れた胸に、手をあてた。
 竜児の激しく振りたくられる腰に、両脚を絡めて締めつけた。
 両手を必死に伸ばして、竜児の首にしがみついた。
「来てっ! 竜児っ、来てっ!」
 私を深く貫いて、その時。
 竜児の動きが、ぴたりと止まった。
 止められるのも、駄目なのだった。
 瞬時に大河は高まって、甘い声ひとつ上げずに絶頂しそうになる。
 寸前の反射で締めつけて、跳ね返ってきた快感のあまりのキツさに息も止まって、大河は気づいた。
 驚くほど先の方まで、竜児の勃起がかつてないほど太く凄まじく漲っていることに。

293◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/09(木) 23:07:32 ID:???
「りゅ、りゅう、じ……っ」
 竜児は歯を食いしばって、静かに喘いでいた。
 すべての殺戮に勝利して、周囲を埋め尽くす亡骸をひと眺めする、勝ち誇った獣の中の獣のような目をして、薄暗い部屋のぐるりを見渡して。
 そんな目のまま、大河の瞳に目を落とす。
 そんな目のまま、優しい光を宿してみせる。
 月光の中、凄まじく、美しく、
「来たよ、大河。来た」
 とだけ、言う。
 ふたたび勝利した獣となって、来てくれた竜児。
 大河は痺れてしまう。
 なんて凄まじいのだろう。
 なんて美しいのだろう。
 これがこのひとの絶頂なのだ。
 私の竜児の、絶頂なのだ。
「じき射精する。おまえの舌をくれ、大河。俺に射精されてイっている、おまえの舌を吸いたい」
 こんなものまで、奪われるのだ。
 そんなところまで、奪ってくれるのだ。
 最高の男。
 嬉しくて、とろけて。
 来てくれた竜児を迎えるために、すべてを奪ってもらうために。大河はそっと桜色の舌を竜児に捧げた。
 大河の絶頂が来る。



 絶頂する大河の舌を吸いながら。
 絶頂する大河の穴めがけて最期と尻をふりたくる。
 すでにスイッチは入っていた。
 竜児は瞬時に高まっていく。
 俺の涙を、おまえに注ぎ込むのだ。
 俺の血を、おまえに注ぎ込むのだ。
 獣のように腰をぶつけて、なおかつ愛しいと思うおのれを、どうすればよいのか。
 俺は、魂は、どこにあるという。
 どきどきと鳴る心臓も足りはしない。
 俺の心臓を手に取り出して、大河の心臓にのめり込ませても。
 くっつけ、こすりあわせても足りはすまい。
 なにも及ばない。捧げ足りない。
 だから俺はせめてと、涙を、血を注ぎ込むとでも。
 大河。
 大河。
 妹のように思った女だった。
 娘のように思った女だった。
 そして今は、やはりどんな言葉も及ばない。
 酔った大人の女の声だろうか、窓の外、誰かが遠くで大きな笑い声でわめいている。
 苦しくてたまらない。
 苦しくてたまらないと、大河も瞳をきつく閉じる。
 苦しくてたまらないと、大河も声をあげる。
 大河の目蓋の上に結ばれた雫は、俺の汗か、おまえの汗か。
 美しいおまえ。
 俺の女。


 いま、俺の涙が、大河の中に。
 俺の血がおまえの中にあふれる、と竜児は思った。


(この章終わり、16章につづく)

294高須家の名無しさん:2009/07/10(金) 00:16:56 ID:???
竜児と大河の愛し合う姿にすごく感動した!
時間をかけた?かいあって今回一番地の文が
かがやいていたと思います。

295高須家の名無しさん:2009/07/10(金) 00:28:28 ID:???
おつかれんす
本スレに厄介なの来てるから困る

296◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/10(金) 01:29:45 ID:???
てかなんというか、次こそは終章のはず。驚きの?長編になってしまった……

>>294
感想ありがとう!

14章が内的世界が多いために地の文のスタイルをポエムっぽく変えてわりと
成功していた(自己満足)ので、否応無く現実世界が多くなる(エロい?)15章が、
どうすれば14章に負けないテンションを維持できるのかと、ちょっと迷ったりしてました。

実作業の時間はあまりかかってないんですが、ここで大河と竜児がミッションの他に
何がしたいのか見極めるためもあって、少し寝かしたりもして、それで投稿の間が
空いた感じです。空いた時間にSSSを書き散らしていたという。

一番いい、と言ってもらえてありがたいです。そう読んでいただけて、とても嬉しい。

>>295
ありがとんす!

ああ、見ました。なんかいますね……あれ前のと同じっぽいけど、コピペ?

まあ、告知は、よかったらほどよい頃合で……。

297◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/10(金) 18:05:28 ID:???
大河は胸はちいさいままでおk。

298高須家の名無しさん:2009/07/10(金) 19:43:03 ID:???
ここにもペタンコ信者が!!

299高須家の名無しさん:2009/07/10(金) 21:01:23 ID:???
電車の中で読んでたら気づいたら目的地から2駅も過ぎてた。
くやしいのうwwくやしいのうwwGJした!あと時間返して!

300◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/10(金) 22:04:50 ID:???
>>298
大河にはひとの好みすら変えてしまう魔力があるという……!
というわけでぺたんこ信者ではなかったり。

もとからちっぱい好きのひとは、たまらないのねきっと……!


>>299
ありがとう! 
読んでて乗り過ごさせるとは、くっくっく、作者冥利に尽きるわ……!

時間は書くときに先払いしているらしいよ?(思いつき発言

301高須家の名無しさん:2009/07/11(土) 21:30:20 ID:???
現本スレにレスしようとしたらIP規制が来ました。ということで、こちらにレス
して届くかどうか?

現スレの>>188です

>>213
QHsKY7H.TYさま 
ありがとうごさいます。
前半の大河の勘違いな方向に突っ走っちゃうところが大好きです。
ややパワーダウンはさせていますけれどそのシーンはほぼ残っています。
性交渉的なものはありません。キスが4回のみです。
後半竜児が大河をテイクダウンしてしまうシーンはありますが、
それはある意図に基づいたものでそのつもりはありません。
大河が竜児の心を繋ぎとめるためのシーンとなります。

IP規制も来てしまったので避難所の方で進めてみようと思います。

302◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/11(土) 21:46:21 ID:???
>>301
わぁ、いらっしゃいましまし
このレスは代理投稿希望ってことでしょうか。ど、どなたかがきっと……_ノ乙(、ン、)_

SS本編の方もこちらで進めるとのことですが、本スレへの代理投稿を希望するなら
一応、その旨も添えた方がいいかもしれません。トリップも生成した方がいいのかな……?

303高須家の名無しさん:2009/07/11(土) 22:13:43 ID:???
>>301
すみません。レス先をミスりました。
本スレへは告知しておいたので心配ないと思います。

304高須家の名無しさん:2009/07/11(土) 22:52:41 ID:???
こっちに投下するなら、元々現本スレに投下するはずのやつだから
代理希望出しておいたほうがいいよ。
トリップは複数の人が代理投下するかもだからタイトルだけでおk

できれば代理したいけど携帯からがほとんどなのが悔しい…。

305◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/12(日) 03:51:25 ID:???
結局、今夜は投下無しかしら……

QHsKY7H.TYさんの、逢坂大河〜Remember竜児〜も続き楽しみだよね。

306◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/12(日) 11:08:53 ID:???
なるほど、だからタイトル「 - た い が - 」なのかと感心した……GJ

307高須家の名無しさん:2009/07/12(日) 12:08:44 ID:???
なほるどなっとく

308◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/12(日) 23:23:16 ID:???
ちょっと大河にもらい泣きしそうになった。
QHsKY7H.TYさんぐっじょぶ。

309高須家の名無しさん:2009/07/12(日) 23:28:35 ID:???
本スレに書いたほうが喜ぶと思うぜ?

それとあなたの並び寝ると本編後のニヤニヤも期待してるでがんすよ

310◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/12(日) 23:49:25 ID:???
>>309
クックック、私がOCN全面アク禁にまきこまれているとは知らないようだね……!
というわけで半永久的に避難所暮らし。本スレには書けません(泣

携帯試したら、こちらも一時的?規制_ノ乙(、ン、)_wwwぐったりと草植えるしか

>それとあなたの並び寝ると本編後のニヤニヤも期待してるでがんすよ
ありがとうでがんす!

311高須家の名無しさん:2009/07/13(月) 00:15:05 ID:???
携帯まで巻き込まれてるとは…

もう●買ってしまえ!!!!

312◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/13(月) 02:05:57 ID:???
>>311
まあ、携帯は一時的なものなはずだけど……

●買っても、アク禁抜ける保証はないと、風の便りで聞いたの……ねん

313高須家の名無しさん:2009/07/13(月) 07:58:07 ID:0YmJtPtc
●買ったけど全然使ってないや。Jane自体使ってないし…。

安心しろ!ドシドシ代理投下しちゃるきん!

314◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/13(月) 11:17:52 ID:???
◆eaLbsriOas@避難所です。代理投稿歓迎。感想いつも拝見しています。ありがとう!
暑いので、ぬるめのSSをと思ったら……
***

・今年の夏なの

「暑……ちょっと、近寄んないでよね、あんた」
「……近寄ってねえだろ? 1メートルは離れてるだろ?」
「じゅうぶん近いのよ、あんた犬赤外線出すから。5メートルは離れて」
「遠赤外線みたいに言うな。てか、それじゃ居間の外じゃねえか……仕方ねえ、じゃあ俺、
 自分の部屋行くわ」
「駄目。却下。居間にいろ。許す」
「……ったく。こんくらい離れりゃいいか? はいはい、おありがとうございますっと……」
「……」
「……」
「……あーつーいーっ! もーっ、竜児なんとかしてよ! エアコンエアコン!」
「そんな暑っ苦しい格好してっからだろ。ったくしょうがねえな。窓閉めるか……ほれ」
 ピッ……ブーン……
「ひゃあ! 竜児っ、風向っ、真下向けて真下! ……おっけー! さあ来い冷気! 苦しゅうない!
 ……来た来た、来たよ竜児っ!」
「それはそれは姫、良うござんした」
「うんっ!」
 ……ブーンウンウンウン……
「……なにこれ、うるさ……ねぇ竜児、あんたんとこのエアコン、壊れてない?」
「おう、どうした。冷たい風、来ないか?」
「ううん。冷たいのは来てるけど……ブーンブーンうるさくない?」
「ああ、そりゃ今年からのウチの仕様だ、うるせえのは。掃除もなんも、いろいろしたけど
 だめだった。やっぱ古いんだよ、ウチのエアコン」
「え? なに? ちゃんと聞こえなかった」
 ……ウンウンウン……
「おう……ウチのエアコン古いの! だからうるせえの!」
「へー、古いのってそうなんだ。私の家のって、あれでもかなり静かなのね……」
「は? なんつった? 微妙に聞こえねえぞ?」
「っんもぅ! だから……! いいや、めんどくさ。竜児っ、ちょっとこっち来て!」
「なんだよ、犬赤外線はいいのか?」
「いいの! もう涼しいから! 早くこっち!」
「へいへい……ほら来た」
「そんなとこじゃあんた、涼しくないでしょ? もっと近う寄れ! 苦しゅうない!」
「……はいはい。ほら来た……おう……涼しい……」
「でしょでしょ! うっさいけど!」
「おう、涼しい……な……」
「ん……ねぇ、竜児」
「な、なんだ? 大河」
「……抱っこ、して?」

315◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/13(月) 11:18:49 ID:???
「おう……なんだ、もういいのか?」
「うん、去年ごっこはもうおしまい。ね、竜児……だから、抱っこ……きゃっ!」
 ひょいっ
「ほらよ、膝の上っと」
「わ、腋、持っちゃだめだってば、もぅ……えっ!? 嘘っ!? 嗅いだ!?」
「嗅いでない嗅いでない……でも、こっちは嗅いでいいだろ?」
「えっ……首筋?」
「いや、耳の後ろのとこ」
「えーっ……でも、汗かいてるし……っ!」
「……いい匂いだよ、大河。大好きだよ、おまえの匂いも」
「りゅ、竜児……っ。ね……その、暑くない? くっついて……」
「熱いよ、おまえは。小鳥みたいだ」
「ご、ごめんね。竜児、暑がりだもんね……。でも、くっつきたかったの。離れてるの……いや」
「……いや、俺こそごめんな、大河。さっきは、暑いからくっつくな、なんて言って。ちょっと……
 照れちまったんだよ」
「っ! ほ、ほんとう?」
「ああ、本当だ。辛かったな、去年ごっこ。くっつかないなら去年と同じじゃないの、って、
 おまえに言われて。じゃあ去年と同じにしてみるか、なんてやってみたけど……」
「うん……でも、もう、同じじゃないの……も、もう、変わっちゃったの……」
「……そうか? 俺は、なんてか、そんなに変わってねえ」
「えーっ!? そこは変わってよ、あんた。せめて変わったって言いなさいよね。もーっ!
 竜児ったら、あいかわらず鈍犬ちゃんなんだから……」
「おう……すまねえ。でもさ、ほんとにあんま変わってねえんだよ。その、なんて言ったらいいのか」
「うう! まだ言うかこの……っ。ひ、ひどい……わ、私はこんなに変わっちゃったのに……
 あ、あんたのこと、大好きで……大好きなの、わかって。両想いになれて、こ、こんなに……っ」
「大河……泣くなよ、泣くな……な? ……ふー……これ、問題あるから今まで黙ってたけどさ。
 だから……変わってねえってのは……つまりさ、俺、おまえと出逢った頃から……なんてか、その、
 駄目、だったんだよ……」
「うっく……だ、駄目? 駄目って、なによ……っ」
「……つまりさ、俺、おまえに触りたくてたまらなかったんだよ……出逢ったころから、ずっと」
「え……えぇっ!?」
「ああやべ! やべえよな、やっぱ! 駄目だったか!? 言うんじゃなかったか!?」
「そ、そそそそんんあの、やあ、や、やばっ、やばばああいに、っき、きま、決まっってるるう」
「お、落ち着け大河! どもり方まで変わってるぞおまえ!? ショックだったか。ほら、どうどう……」
「すーはー、すーはー……っすうううっ……はあぁ……おっけー、もう平気。喋るれ……れる……」
「おう、大丈夫か。大丈夫かあ?」
「だっ、大丈夫じゃないっ! さあ続き! 聞かせなさいよ!」
「おう、続き……だからな、ああもう言うわ! ずっと我慢してたんだよ! 最初のころから、
 おまえに触りたくて、くっつきたくて! おまえの寝顔見て、キスしたくなって我慢したことも、
 何度もある! ん、だ、よ……ずっと、しちゃいけねえって、ぜんぶ、我慢してたんだよ……俺は」
「あっ……あっ、あっ、あっ、あんた! あんた、だって、みのりんのこと好きだったんでしょ!?
 そ、それなのに! それじゃあ、あんた、あんた、ふ、ふま、ふまたた!」
「ふ、ふまたた……?」
「ち、違うっ! ふ、ふた、ふたまま!」
「ふ、蓋ママ……?」
「わわわわかってるでしょ? あんた! だから、そのっ、みのりんのこと好きで、そ、それで、
 わ、私のことは……え? 寝顔で……え? 寝てて、触りたくて、くっつきたくて、キスしたくて……
 えぇ!? あ、あんた、ずっと、最初っから……最初……えぇ!? さ、最初っから、ずっと、
 あんた、私のこと、やっぱり、そんな、え、え、えええ、えっちな目で見てたわけ!?」

316◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/13(月) 11:19:35 ID:???
「おう……えっちってか……まあ、そうだよ」
「そうだよって、あんた……こ、このっ! えっち!変態!ドスケベ!エロ犬!ふたまた野郎!
 あ、言えた……じゃなくて、なんで!? なんであんたそうなのよ!?」
「な、なんでって……おまえが可愛いかったからに決まってんだろ」
「え……えーっ……そ、そんな、そんなの。だ、だって私、ち、ちびだし……」
「なんだそれ。可愛いじゃねえか」
「うう……む、胸も無いし……」
「好み変わっちまったじゃねえか、おまえのせいで」
「えーっ、ど、どしよ……く、口、悪いし」
「声が可愛いんだよ、おまえ卑怯なんだよ」
「ら、乱暴者だし……」
「マゾじゃねえがどうしても嫌いになれねえ」
「わーん! ど、どうしよ……ど、どうしても、駄目。どうしても、どうしたって、う、嬉しいの……っ!」
「大河……」
「さ、最初からなんて、あんた、ただのえっちで、ドスケベで、ふたまた野郎で、最低なのに……
 さ、最初から、なんて、私、嬉しい……」
「ただのえっちって、おまえね……。俺はさ、櫛枝のことだって本気だった。でも、どうしてもおまえのこと、
 可愛いって思うのもやめられなかった……やめられるわけがねえ、おまえ可愛いんだから。
 だけどおまえは北村のことが好きで、だから、俺は我慢したんだ……おまえに触りたくても、
 キスしたくなっても、我慢した。ずっと、なんとか我慢し続けた……」
「竜児……」
「もちろん、櫛枝のこともある。北村への俺の思いもある。でもな、大河。俺が俺の欲を我慢できたのは、
 きっと、たぶん……結局は……おまえのことが大事だったからだ。おまえの想いを大事にしたかったからだ。
 他の誰かのことよりも、俺の欲よりも、おまえの……あれ? おかしいな……そんなこと、あるのか?
 そんなことだったのか……? あれ? いくらなんでもおかしいぞ。だって、だけど、それじゃあ……」
「りゅ、竜児……?」
「だけど、それじゃあまるで……俺、おまえのこと、最初から……」


 最初から、愛していたのか……?


「っ!……う、そ。……嘘っ! 嘘っ! 嘘っっっ!」
「……なあ? 嘘っぽいよなあ? さすがにそんなの、出来すぎてるよなあ。でも、でもさ、考えたら
 そうなった……どうしても、そうなる。おかしいのに、ありえねえのに……俺、おまえが可愛くて、
 だけど俺、おまえが大事で、だから俺、ずっと我慢できて、だから俺、最初から、おまえのこと……
 あ、愛してたんだ、大河……っ!」
「りゅ、竜児……っ! わ、私もっ、私も、なの! きっと、最初から……っ」
「……と思ったけど、そういやそんなことして単純におまえに嫌われたくないって俺の欲もあったな。
 落とし穴だ」
「ズコー!」


***おしまい***

317◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/13(月) 11:27:08 ID:???
>>313
ありがてえ……た、たのんだ、ぜ……_ノ乙(、ン、)_バタ...ッ

318高須家の名無しさん:2009/07/13(月) 12:50:43 ID:???
>>313
2chするならJane使おうぜ!

>>314-316
去年ごっこわろた
オチもわろた

しかし地の文無しの会話だけでここまで丁寧に情景を描けるとは…
俺も見習わなければならないね

319高須家の名無しさん:2009/07/13(月) 12:56:50 ID:???
代理してきたぞい。

いいねいいねー。会話だけでここまでニヤニヤできるとは思わなんだ。
ふははは、これで夏の暑さにも負けねぇ!

320◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g:2009/07/13(月) 19:00:49 ID:???
竜児、たぶん嗅いだね……

>>318
感想ありがとう!

>見習わなければ
恐縮です……(私 
恐縮でーすっっっ!(梨本

会話SS、音声ドラマ(ラジオドラマ、CDドラマ)のホン書く要領と近そうです。
音楽使えないから、長い間だけはとれないのが欠点ですけど。


>>319
ありがとう!

季節ネタを大事にしたいタワシ。そうすればほら、この同じ暑さの中を
大河と竜児も過ごしてんのか……なんてなごんでみたり。


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