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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第101話☆

1名無しさん@魔法少女:2009/11/24(火) 05:30:44 ID:sxkgTGY6
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所の5スレ目です。


『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

『注意情報・臨時』(暫定)
 書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
 特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
 投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。

前スレ
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説第100話
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1249470848/

952名無しさん@魔法少女:2010/01/27(水) 12:35:32 ID:b6W5P3NU
す、すげえ投下ラッシュ!
GJだ!

953名無しさん@魔法少女:2010/01/27(水) 13:00:36 ID:RroOszTk
PSPなのはで、リインフォースとはやてのやりとり

リ「(いずれリインⅠは壊れるので)早く後継機を作ってください」
は「まあ、マリーさんに相談して前向きに考えようかー。末っ子ができるんやね」

子供をせがむ夫婦の会話に見えた

954名無しさん@魔法少女:2010/01/27(水) 18:29:46 ID:i5zJD08.
>>896
遅レスになるがオットーを忘れているのは聞き捨てならない

955名無しさん@魔法少女:2010/01/27(水) 19:26:28 ID:nX7xdL8o
>>954
あれは見た目まで男の子だけど、雷光は見た目が女の子だろ?

956名無しさん@魔法少女:2010/01/27(水) 19:27:16 ID:1kfpzkf.
>>954
ボクッ娘の一般的なイメージの『見た目は文句なしに女の子だけど一人称が僕』にあてはまるという意味では正しいかもしれない

957名無しさん@魔法少女:2010/01/27(水) 20:33:15 ID:d9fMe4M6
すべての投下SSにGJを。
管理局の秘密慰安所から、変態まで幅広いなぁ。
秘密慰安所勤務の方はどんなルートで採用されたんだろう?w
特に男性www

958名無しさん@魔法少女:2010/01/27(水) 20:36:29 ID:1hH5Cihc
>>955
ディードがツインブレイズの試し切りをしたいそうです。
聖王教会の裏まで来るように。

959名無しさん@魔法少女:2010/01/27(水) 21:02:39 ID:7fxmtNdA
ヨコハマ氏GJ!
はやてエロは少ないので投下嬉しいね!
しかも意外なシンクロニシティではやてが攻め側に回るパターンが続けて、とはwww
面白かったよ、エロかったよ。

だが、だがしかし……しかしだよ?



なんで本番がないの!?www

いやおかしいだろwww
ここはほら、今まで我慢させられたヴィータが狂ったようにはやてにドライブイグニッションして、がっつんがっつん腰が砕けるくらい振りたくるところじゃない!?
いやほんと、それだけが超残念だったよwww

960名無しさん@魔法少女:2010/01/27(水) 21:33:41 ID:1hH5Cihc
ヨコハマ氏GJ

やはりフタは最強であると再確認した。
そしてはやてはエロイなぁ。

961B・A:2010/01/27(水) 22:00:32 ID:rFRoD3QI
今日できっちり1ヶ月ぶり。
投下いきます。
ここ最近は、投下多いですね。
嬉し限りだ。



注意事項
・sts再構成
・非エロ
・オリ展開あり
・基本的に新人視点(例外あり)
・後半はずっとなのはのターン(ただし、ティアナ視点)
・言葉のドッジボール(または肉体言語)
・ティアナフルボッコ
・タイトルは「Lyrical StrikerS」

962Lyrical StrikerS 第9話その2①:2010/01/27(水) 22:01:51 ID:rFRoD3QI
第9話 「たいせつなこと」B-part




レジアス・ゲイズ中将による査察を無事に乗り切ったその日の夜、陸士108部隊より一本の報が機動六課へと届けられた。
かねてより内偵していた密輸組織のもとに、先日のホテル・アグスタ襲撃事件で強奪された物らしき物品が運び込まれたというものだ。
地上本部の首魁とも言うべきレジアス中将の迫力から解放され、気を緩ませていた機動六課の面々に取って、それは正に青天の霹靂であった。
更に間の悪いことに、部隊長である八神はやては夕方から外出していて不在。
主戦力であるフォワード部隊も、スターズ分隊が半ば機能停止状態にあるという有様であった。
部隊が稼働してから初となる不完全な状態での緊急出動。そのような状況の中、臨時の総責任者を担うグリフィスの判断は早かった。
彼ははやてとの通信が繋がるのを待たず、本来ならば休息中である交替部隊に緊急の招集をかけたのだ。
そして、交替部隊の隊長であるシグナムとレリック事件捜査主任であるフェイトと共に出動させ、
現地の陸士108部隊の捜査員と合流させて密輸組織を急襲することを選んだのである。

「急げ、テスタロッサ。作戦は一刻を争う」

「はい、シグナム」

シグナムに急かされ、フェイトは両足のストライドを広げて自分の先を逝く同僚の跡を追う。
午前中の訓練でスターズの3人が抜け、部隊長であるはやても不在な今、最高階級である自分がしっかりとしなければ、
隊員達に入らぬ不安を与えることになる。だというのに、フェイトの胸中は穏やかではなかった。
寧ろ、上手く立ち回らねばならないという思いが強過ぎて、気持ちだけが空回っている。
これではいけないと頭を振るが、持って生まれた気質はどうすることもできず、さざ波を打つ鼓動を鎮めようと
握り締めたバルディッシュの鋭い痛みがジンワリと右手に広がるだけだった。

「あ、フェイトさん、副隊長」

ヘリポートへと続く渡り廊下へと差しかかったところで、訓練着に身を包んだエリオと出くわした。
家族同然の少年の登場にフェイトは思わず足を止めてしまい、先行していたシグナムがそれに気づいて踵を返す。
怒られるかとフェイトは身構えたが、シグナムは非難の目で一瞥を暮れただけでエリオに向き直り、
エリオの汗ばんだ赤い髪に手を添えて詫びの言葉を漏らした。

「すまないな、約束していた稽古は明日に延期だ。テスタロッサ、先に行くからすぐに済ませろ」

含みのある言葉を残し、シグナムはヘリポートへと駆けて行く。
小さくなっていく好敵手の背中を見送ったフェイトは、どこか気恥しげにエリオの矮躯へと視線を向けた。
空き時間を利用して自主練習でもしていたのか、頬はほんのりと紅く染まっていて、シャツが汗ばんでいる。
これから出動することを気遣って遠慮がちに距離を取っているが、こちらを見上げる表情には目に見えてわかるくらい、
気恥ずかしい喜びの笑みが浮かんでいた。

「気を使わせちゃったみたいだね。エリオ、自主練してきたの?」

「はい、少しでも早く、一人前になりたくて…………………」

語尾が弱まり、朗らかだった笑みが陰りを見せる。
何かを思い詰めるような表情。
何かを言いたそうにしているが、エリオはフェイトを見上げたまま口を小さく開閉させるだけで、その先を口にしようとしない。
そうしている間にも刻一刻と時間は過ぎていき、フェイトの胸中の焦りは増していく。
彼に一言謝って、シグナムの後を追うか。
柄にもなくそんな思考すら頭を過ぎった瞬間、エリオは上擦った声でフェイトに懇願した。

「フェイトさん。今夜の出動、僕も同行させてもらえませんか?」

「えっ?」

唐突に切り出された要望に面食らい、フェイトは目を白黒させる。
今回の出動でスクランブルがかかっているのは自分と交替部隊だけで、エリオ達は有事に備えて隊舎で待機していなければならない。
スターズ分隊が機能していない今、ガジェットが出現した際に迅速な対応を行う為だ。
聡明なエリオならばそれを理解しており、いつもならば文句も言わずに持ち場で待機しているはずである。
こんな風にわがままを言うのは、彼と出会って初めてのことだ。

963Lyrical StrikerS 第9話その2②:2010/01/27(水) 22:02:32 ID:rFRoD3QI
「お願いします、僕も連れて行って下さい」

「エリオ………………」

「わがままだっていうのはわかっています。けど、試したいんです。僕の…………僕の力を………………」

喉を絞る様に懇願し、エリオは視線を俯かせる。
一瞬、フェイトは彼が何を言っているのか理解することができなかった。
エリオは自己顕示欲や競争心というものとは無縁だと思っていた。
彼はいつだって素直で物分かりがよく、物事に対する分別もできていて、子ども特有の身勝手さやわがままも持ち合わせていない。
物分かりが良すぎて子どもらしくないところは考えものだが、争いを好まない生来の優しさは彼の美徳だとフェイトは思っていた。
そんな心優しい少年が荒事を担う武装局員に志願したのは、一重に恩人であるフェイトの役に立ちたいという一心からであった。
矛盾しているかもしれないが、彼は誰かを傷つける力を欲してはいない。
降りかかる火の粉を払い、大切なものを守るための力を振るう騎士。
それがエリオの理想の騎士像であり、そうなることが彼の夢であった。
だが、先程の願いはただ純粋に、自分の力を試したいという野心からくるものであった。
エリオらしくない、貪欲な一言だ。
けれど、フェイトは先程のエリオの言葉を喜んでいる自分がいることに気がついた。
自分の意見を口にせず、ただ黙って言うことを聞いているだけの子どもだったエリオが、如何なる心境の変化があったのかはわからないが、
悩み、焦り、そこから抜け出そうと自分なりに考えて、他人に迷惑をかけることも承知で我を貫こうとしている。
それは大人になるための階段を、たった半歩ではあるが踏み出した少年の切なる願いであった。
先日のシグナムへの弟子入りもそう、彼の中で今、戦いたい、強くなりたいという競争心が少しずつ大きくなっているのだ。

「そっか、エリオも男の子なんだね」

そっとエリオの頭を撫でながら、フェイトは彼の背丈が少しだけ伸びている事に気がついた。
急を要する非常時に不謹慎なことかもしれないが、フェイトはエリオの成長に喜びを禁じ得なかった。
こんな時でなければ、きっと手放しで喜んで抱きしめていたことだろう。
だが、今は一刻を争う非常時だ。エリオのわがままに付き合っている時間はないし、
心身ともに未熟な騎士見習いを“人間同士”の戦いの場に連れて行く訳にもいかない。
武装局員ならば誰もが通らねばならない、自らの魔法で犯罪者を傷つけねばならないという試練を体験するには、
彼は余りにも幼く覚悟も出来ていないのだ。何の心構えもなく現場に連れて行けば、
彼が思い描いているベルカの騎士が正義の味方であるという理想を打ち砕く事にもなりかねない。
エリオの願いが強ければ強いほど、それを裏切らなければならないという罪悪感は募っていく。
その思いを悟られぬよう抑えつけながら、フェイトは静かな声音でエリオを諭す。

「エリオは強くなったよ。私もびっくりするくらいの速さで、どんどん強くなっている。
でもね、今は一緒に行けないんだ。私達が留守の間、もしもガジェットが現れたら、
それをやっつけに行く人が必要でしょ? 今のエリオのお仕事は、街を守るために隊舎で備えること。
それも立派なお仕事でしょ?」

「それは……………はい、その通りです」

「だから、今夜は良い子でお留守番していて。その代わり、ティアナ達のことをお願いして良いかな? 
目が覚めてもまだ本調子じゃないと思うし、キャロと一緒にフォローしてあげて欲しいんだ」

964Lyrical StrikerS 第9話その2③:2010/01/27(水) 22:03:11 ID:rFRoD3QI
「はい、わかりました………………わがまま言って、すみません」

納得できないながらも、エリオはフェイトの言葉に頷いて一歩だけ、後ろに下がる。
言葉では到底、表現し切れない葛藤がエリオの胸中で渦巻いているのだろう。
渡り廊下を駆けながら、フェイトはこれで良かったのかと自問する。
エリオは戦いたがっていた。その思いが示す形は、結果を残したがっていたティアナと似ているように思える。
なのはに聞いた話では、ティアナは殉職した兄の無念を晴らすために執務官を目指しているらしい。
普通の少女として過ごしていたティアナは、死んだ兄を兄の上官から侮辱されたことで
今までに築いてきた平凡な人生を全て捨て、魔導師として生きる道を選んだ。
だが、思いとは裏腹に現実は空回りばかり。
士官学校には入ることができず、職場では自分と同等かそれ以上に優秀な人間に囲まれて過ごす日々。
自分を周りと比較すればするほど、焦りは増していったはずだ。
このままではいけない、もっと頑張らなければと。
その結果が、きっとホテル・アグスタでの誤射であり、今朝の訓練での暴走なのだろう。
さながらコインが裏返る様に、エリオもまた暴走してしまうかもしれない。
職務とはいえ彼の思いを抑え込むことは、果たして正しかったのであろうか?
歯痒い思いに駆られながら、フェイトは渡り廊下を駆ける。
自問の答えが返ってくることは、決してない。







何故、こんなところに立っているのかとティアナは自問する。
半日以上眠っていた体はすこぶる調子が良い。体力・魔力ともに有り余るほど全身を漲っていて、
思考もいつになく冴え渡っている。元々、余り重さを感じないクロスミラージュも、いつも以上に軽く感じてしまう。
だというのに、吐く息は重く心情は明るくない。
横顔を殴る夜風の冷たさも不快で、気持ちは一向に高揚してこなかった。
自分が立っているのは、普段から訓練に使っている海上訓練施設だ。
夜間訓練の時間も過ぎているため、広い空間は真っ暗な夜の闇に包まれている。
それでも、ここに立つと毎日の辛い訓練の内容を克明に思い出す事ができた。

「少し、待っていてね」

先を歩いていたなのはが立ち止まり、仮想ディスプレイに指を走らせる。
すると、周囲の空間が蜃気楼のように歪んで夜の闇が朽ち果てた廃墟の街へと変化する。
昼間の訓練で、比較的多用される風景。
クラナガンの郊外を模して造られた仮想現実は、ティアナにとって苦い思い出である。
ここは、今朝の訓練で撃墜された街だ。
病み上がりの自分がどうして、なのはと共にここを訪れているのか。
事情を知らない者が見れば、撃墜された自分が師にリベンジを挑もうとしているように見えるかもしれない。
だが、意外にも誘ってきたのはなのはの方だった。彼女は医務室のベッドで悶々としていた自分を
半ば強引に引っ張りだし、人目を避けながらここまで連れ出してきたのである。

『模擬戦をしよう』

ただそれだけ、その言葉にどんな意味が込められているのかもわからぬまま、ティアナは訓練施設へと連れて来られた。
緊急出動がかかったのか、隊舎の中は慌ただしく自分達を気に止める者もいない。
断ることもできたはずであった。だが、拒絶の言葉を口にしようとすると、医務室で語り合った名前も知らない局員の言葉が脳裏を掠め、
舌が思うように動いてくれない。
自分はきちんと、彼女と向き合っていなかったのではないのだろうか?
図星とも言えるその問いかけを思い出すと、ティアナの思考は淀んだ泥の底へと沈んでしまい、沈黙したままなのはの背中を追うことしかできなかった。

「ルールはいつもと同じ。ティアナはわたしに一発でも入れることができたら勝ちだよ。
けれど、今日はいつもと違って被弾してもやり直しはなし。時間無制限、勝利条件を収めるか、
わたしが納得しない限りこの戦いは終わらない。そして……………………」

まるで死刑を宣告する裁判官のように、なのはは仄暗い光の宿った瞳でこちらを見据える。

965Lyrical StrikerS 第9話その2④:2010/01/27(水) 22:03:59 ID:rFRoD3QI
「わたしは、君が泣いても撃つのを止めない」

陶器に反響するような無感情な宣言。
その一言は、今までの何よりも決定的だった。
心が硝子のように砕け散っていく錯覚。
兄の遺体に縋り付いた時よりも、兄の上官に亡くなった兄を侮辱された時よりも、ホテル・アグスタでミスショットをしてしまった時よりも、
今朝の訓練で撃墜された時よりも、それは鋭く重い痛みを有していた。
見捨てられた。
兄の無念を晴らすために、今日まで頑張ってきたのに。
才能を持たない凡人でも、エースになれると証明したかったのに。
自分は決して、無力じゃないと示したかったのに。
その全てを、今日まで自分を支えてきた全てを否定されたような気がした。

「私は………………………」

震える指先に力がこもる。
慣れ親しんだ引き金の感触。
高揚していく意識。否これは激昂だ。
吐く息が赤く燃えているのではないのかと錯覚してしまうくらい、怒りが全身を支配している。

「私は………………私は…………………」

向かい合った教導官を見据えたまま、意識の一部を内面へと向ける。
深く、深く、どこまでも深く。病み上がりの体や潜在魔力量の差などどうでも良い。
今、自分の頭を支配しているのは、彼女に一矢報いたいという激情だけだ。
いや、一矢などでは気が済まない。
堕とす。
エース・オブ・エースを、この薄汚い凡人の手で完膚無きまでに堕としてやる。

「私は、間違っていない!」

《Standby, ready》

《Set up》

純白の衣装が風になびき、夜の帳を染め尽くすように桃色と橙色の魔力光が迸る。
悲しみとも取れる虚ろな瞳と、怒りに彩られた歪んだ瞳。
果たして、その視線が交差しているのか、それは神のみぞ知ることであった。

「さあ、今朝の続きだよ。お話しよう」

「あなたを倒して、あたしは自分を証明する!」

両者の魔力弾が、冷たい大気を引き裂いて激突する。
誰のためでなく、ただ己の納得を得たいがための決闘。
戦いは、かくも静かに、しかし激しい戦鐘を打ち鳴らしながら始まった。







することもなく愛竜と共にロビーで待機していたキャロは、唐突な魔力のうねりを受けて小さく呻いた。
膝の上に鎮座していたフリードが、主の異常に何事かと鎌首をもたげる。
キャロはそれを何でもないように手で制すると、小さな手で慎ましい胸を擦りながら、一番近い窓へと歩を進める。
生憎、そこからは夜の闇しか見えなかったが、馴染みのある魔力の波長にキャロは誰が魔法を行使しているのかすぐに察することができた。
なのはとティアナだ。
いつの間に目を覚ましたのか、ティアナがなのはと共に魔法を使っている。
それも、離れた場所から察知できるくらいの魔力の使用量だ。
訓練はおろか、実戦ですらここまでの魔力を放出している2人は見たことがない。

「キャロ!」

同じく異変を察知したのか、エリオがロビーへと駆け込んでくる。
寮に戻って着替えていたのか、ネクタイはヨレヨレで上着のボタンも掛け違えている。
だが、焦りと驚愕の表情には鬼気迫るものがあった。

966Lyrical StrikerS 第9話その2⑤:2010/01/27(水) 22:04:37 ID:rFRoD3QI
「エリオくん!?」

「なのはさんとティアさんが、戦っている! あれは模擬戦なんかじゃない、ただの弱い者いじめだ! すぐに止めないと!」

「う、うん。いくよ、フリード」

早口で捲くし立てるエリオに気圧されながらも、キャロは訓練施設へ向かおうとするエリオの後を追う。
いったい、なのはとティアナの間に何があったのか。
今朝の模擬戦の事か、それとも数日前の誤射の事か、それとも自分達の与り知らない確執があの2人にあったのか。
何れにしても、仲間として放っておく訳にはいかない。
だが、外へと飛び出した瞬間、1人の幼女が立ち塞がり、2人は慌てて両足にブレーキをかける。

「ヴィータ副隊長!?」

「すみません、気をつけます!」

機械的に謝罪したエリオは、そのままヴィータを避けて駆け出そうとする。
瞬間、小振りの鋼が鼻先に突きつけられ、再びたたらを踏んでしまう。
“鉄の伯爵”グラーフアイゼン。
ヴィータの相棒。いや、肉体の一部と表現しても良いだろう。
自分達など比較にもならぬ程の時間を共に過ごしたその鉄槌が今、打ち砕くべき敵ではなくこちらに向けられている。
それが意味することは1つ。
この先には行くなという、彼女の意思表示だ。

「何をするんですか、副隊長!」

「エリオ、それにキャロ。悪いけど2人の…………なのはの邪魔をさせる訳にはいかねぇ」

「何を言っているんですか、2人は今………………」

「知っているさ、言われなくてもな。でも、これはあいつらが始めたことだ。無関係なあたしらが口を挟んで良い話じゃない」

「無関係って……………同じ部隊の、仲間なのに………………」

「仲間同士で私闘なんて間違っています。それにティアさんは病み上がりなんですよ、ケガでもしたらどうするんですか!」

「……………………………………」

エリオの放つ正論に返答できないのか、ヴィータは無言のまま2人から視線を逸らす。
一瞬、キャロの目に彼女の悲痛な表情が映り込む。
立ち位置の違いからかエリオには見えなかったようだが、キャロは確かに見た。
その表情はまるで、世界中の人間から置いてけぼりにされた幼子が浮かべる慟哭のようで、酷く見覚えのあるものだった。
既視感の正体に思い至ったキャロは小さく息を呑み、思わず数歩後ずさる。
こちらの動揺に気がついたエリオが何事かと振り返るが、今のキャロに返事を返す余裕はない。
知っているのだ。
涙を堪え、自分の無力感に苛まれながら歯を食い縛る嘆きを。
目の前の現実を前にして、どうすることもできず成り行きに任せるしかない理不尽を。
何故なら、それはかつての自分が浮かべていた表情なのだから。
まだ竜召喚をコントロールできなかった頃、主の身を守る為に本能の赴くまま暴走し続けるフリードを、自分はただ見守る事しかできなかった。
自分に悪意があった訳でも、フリードに害意がある訳でもない。身を守る為の行い、誰かに求められたが故の行為。
その結果として、巻き起こされる悲劇と惨劇。
主の心の底の不安や恐怖心を受けてフリードは暴れ回り、自分のことを守ろうとする。
その心にあるのは、ただただ純粋な思慕と防衛本能のみ。
護りたいという願いに、決して間違いはない。
だからこそ、辛かった。
正しいが故に、どうしようもなく間違った行為に涙し、それを止めることができなかった自分の無力さが許せなかった。
そんな風に己を責めていたかつての自分が、目の前の深紅の騎士の姿へと重なる。

967Lyrical StrikerS 第9話その2⑥:2010/01/27(水) 22:05:42 ID:rFRoD3QI
「あたしがしていることも、なのはがやっていることも、みんなに迷惑をかけるってことはちゃんとわかっている。
わかっているけど、けどよ………………どうにも………………どうにもできねぇんだ!」

「副隊長………………」

「不器用なんだよ、あいつ。あんな風に、真正面からぶつかることでしか相手と分かり合えないし、
自分の気持ちも伝えられねぇ。相手の力も気持ちも、全部受け止めないと気が済まねぇんだ。
例え、それが原因で相手に自分の気持ちが伝わらなかったとしても、破滅しちまったとしても構わねぇって思っている。
それがなのはなんだ。それが、高町なのはなんだ! だからっ!!」

突き付けられていたグラーフアイゼンが光と共に収縮し、ヴィータの手の中へと消える。
次の瞬間、彼女は徐にその場で膝を折ると、自身の白い顔が泥で汚れるのも構わず、頭を大地へと押し付けた。

「頼む、このままあの2人を戦わせてくれ。ちゃんと責任は取る。だから、見逃してくれ! お願いだ!」

突然のことにキャロとエリオは動揺し、言葉を失う。
あの気位の高い副隊長が、自分達のような年端もいかない新人に頭を下げる。
特にエリオは、同じ騎士として尊敬しているヴィータが土下座までしてなのはを庇う姿を前にして、
傍らのキャロを上回る狼狽を見せていた。

「ふ、副隊長。止めてください! どうしたんですか、いったい!? なのはさんに、いったい何が!?」

「それは……………………」

「言えないことなんですか? 納得できませんよ。ティアさんは、今傷ついているんです。
なのに、どうしてそれを放っておかなきゃいけないんですか!? 仲間なのに、友達なのにどうして無視しなきゃいけないんですか! 
何でみんな、どうして……………どうして仲良くできないんですか!」

「エリオくん!」

今にも怒りを吐き出さんとするエリオを止めようと、キャロは震える少年の腕を押さえる。
途端に、指先に鋭い静電気の痛みが走り、反射的に手を引っ込めてしまう。
よく見ると、エリオの体から青白い火花が弾け、赤い髪が僅かに逆立っている。
感情の昂ぶりに引きずられて、彼の変換資質が勝手に発動しているようだ。
暴走と呼べるほどのものではないが、無意識の内に抑圧されている彼の感情が出口を求めている証拠だ。

「答えてください、副隊長! なのはさんはティアさんに何をしようとしているんですか!?」

「っ……………………誰にも言うんじゃねぇぞ。あいつは、なのははなぁ…………………堕ちているんだよ、一度」

「なのはさんが?」

「堕ちて……………」

意外な告白に、2人は目を丸くする。
エース・オブ・エースが地に堕ちた。
それは決して有り得ない話ではないが、エースとして華々しく活躍するなのはの姿しか知らない2人からすれば、
とても想像することができない光景であった。
高町なのはは誰よりも強く、気高く、優雅で頼もしい存在だ。
曰く、逆境に置かれてこそ眩い光を放つエース。
曰く、絶望に置かれても諦めない不屈のエース。
あのフェイト・T・ハラオウンですら、高町なのはに関しては手放しで絶賛し、褒め称えていた。
そんな一流魔導師からも一目置かれるエースの中のエースが、一度とはいえ地に堕ちたことがあるなどと言われても、
すぐには信じることができなかった。

「詳しいことは言えねぇ。これはなのは個人の問題で、勝手に踏み込んで良いものじゃねぇ。
けど、これだけはわかってくれ。あいつは、自分と同じ思いをみんなにして欲しくないって思っている。
自分みたいに堕ちたりしないよう、基礎を固めて徹底的にぶん殴って鍛え上げようって考えている」

「それとあれが、どう関係あるって言うんですか!? 教導なんてものじゃないですよ。
ティアさんだけが傷ついて、一方的で……………あんなの、ただの暴力です」

「それは……………………」

「堕とすんですか?」

唇を歪めるヴィータに向けて、キャロは問いかける。
2人の問答を聞いていて、漠然と思い浮かんだ推論。
自分自身の実体験に基づく確信を。

968Lyrical StrikerS 第9話その2⑦:2010/01/27(水) 22:06:42 ID:rFRoD3QI
「エリオくん、わたしね、今でも竜召喚が怖いんだ。制御に失敗すれば、みんなを傷つけちゃうかもしれないって。
初出動の時に成功するまで、何度も失敗して色んな人を傷つけてきたから。だから、わたしは竜召喚が怖い。
凄く怖いから、絶対に制御しなくちゃいけないって理解している。多分、なのはさんもそれと同じことを思ったんじゃないかな? 
堕ちるのが怖いから、絶対に堕ちないようにしようって。一番、その怖さをわかってもらうためには………………」

「圧倒的な力で、完膚無きまでに殲滅する。痛みを知らないと、その痛みの持つ意味を理解できないから? 
そういうことなんですか、ヴィータ副隊長?」

「………………すまねぇ」

「あんまりだ………………そりゃ、ティアさんにだって悪いところはあったかもしれません。
けど、そこまでやらなきゃいけないくらいの問題ですか? 向かい合って、話し合えば済む問題じゃないんですか!?」

「話し合いじゃ済まないから、戦っているんだよ。なのはさんもティアさんも、自分達のしていることが正しいけど間違っているってこと、
ちゃんとわかっていると思う。だから、ぶつかり合わないと納得できないんだよ、きっと。わたしにはまだわからないけど、
思いを口にするだけが言葉じゃないと思う」

大き過ぎる夢を目指して足掻く教え子と、羽ばたく翼を折らせまいとする教導官。
夢の為に全てを投げ打つと覚悟を決めているティアナ。
夢を守る為に教え子を落とすまいとするなのは。
どちらの言い分も正しく、それ故に向かい合えば互いに否定し合うしかない。
その痛みが、苦痛が何よりも如実に思いを物語る時もある。
思い当たる節があるのか、エリオもそれ以上反論しようとしなかった。
どうすることもできない。
自分達にできることはもう、事態の成り行きを見守ることしかないのかもしれない。







続け様に放ったショートバレットが桃色の誘導弾によって撃ち抜かれ、獲物を追い詰める猟犬の勢いで迫って来る。
ティアナは即座にその場を飛び退き、右手のクロスミラージュで誘導弾を迎撃。
左手は撃鉄を引いてカートリッジをロードし、反撃の準備を行う。
その瞬間、降り注ぐ誘導弾の数が一気に倍へと増えた。
視界の全てを埋め尽くす桃色の閃光。
殺到する誘導弾を捌き切れず、ティアナは激痛にのたうちながら地面を転がった。
だが、クロスミラージュに準備させておいた術式はまだ生きている。
転がりながらも引き金を引き、噴煙の向こうにいる教導官に向けて誘導弾を飛ばす。
まともに照準も付けていないが、ティアナは渾身の力を込めて弾体を制御し、明後日の方向へと飛んでいたクロスファイアーシュートの軌道を
立ち塞がる教導官へと向ける。すかさず、彼女を取り巻いていた魔力弾の渦が攻撃をかき消し、相殺されなかった何発かがこちらへ牙を剥く。
防御魔法を唱える暇すらない。反撃に転じようとする度にティアナは地面へ叩きつけられ、神経を焼き切られるかのような
魔力ダメージの苦痛に顔を歪ませる。そんなやり取りがもう何度も繰り返されていた。
なのはは本気だった。
手加減など一切せず、圧倒的な火力と弾幕でこちらを攻め立て、呵責のない一撃で余力を刈り取っていく。
膝を突こうが倒れようがお構いなしに魔力弾は降り注ぎ、一片たりとも休む暇はない。
そんな魔力弾の豪雨を前にして、ティアナの攻撃はそよ風のようなものであった。
真正面から狙っても撃ち落とされる。
クロスファイアーシュートで死角を狙おうと足を止めれば集中砲火を受ける。
自動追尾のバレットFを使えばデコイとなる魔力球をばら撒かれて軌道をかく乱される。
砲撃や接近戦など、そもそもしかける隙がない。
模擬戦を初めて25分、全ての攻撃手段を封じられたティアナは今、無様に背中を見せて逃げ回ることしかできなかった。
とにかく逃げる。
砲撃魔導師であるなのはにとってこの訓練施設は全てが射程圏内。
どこに隠れても狙い撃ちに合う以上、ダメージを少しでも減らす為に走り回るしかない。
己の負担も省みず、両足を魔力で強化してひたすら走る。
右手ではアンカーの操作、左手は囮として放った幻影の制御。
動き回りながらフェイクシルエットを使うのは非常に困難なことだったが、使わなければ逃げられない。
とにかく逃げて、遮蔽物の多いところから狙撃する。
勝ち目があるとすればそれしかない。
だが、そんな儚い希望すら撃ち抜かんと、白衣の悪魔は詠唱を告げる。

969Lyrical StrikerS 第9話その2⑧:2010/01/27(水) 22:07:56 ID:rFRoD3QI
「ディバインバスター」

直後、桃色の閃光が頭上に降り注いだ。
回避できたのはほとんど奇跡だ。疲労が限界に達して両足の強化が解け、瓦礫に足を取られなければ、
今頃はなのはの砲撃の餌食になっていた。あれを食らっていれば、間違いなく昏倒していただろう。
そして、この一瞬はチャンスでもある。
どんな魔導師であろうと、砲撃魔法の前後には必ず隙が生まれる。
ここに来るまでにばら撒いておいた誘導弾は3発。
魔力ダメージを受け過ぎてリンカーコアが悲鳴を上げているが、ティアナは構わず制御を続行した。
こちらの意図に気がついたなのはが迎撃のためにカートリッジをロードするが、もう遅い。
左脇腹を狙った1発がアクセルシューターによって撃ち落とされる。
右太腿を狙った2発目がデバイスで切り払われる。
危機を脱し、再び攻勢へと転じるなのは。
彼女は気づいていない、遙か頭上から猛スピードで最後の1発が迫っていることに。
気配を察知した時は既に遅く、誘導弾を戻す暇さえない。
刹那、なのはの純白の姿が淡い桃色によって覆い尽くされ、飛来した魔力弾が弾かれる。
彼女の愛機レイジングハートが、全方位防御魔法を自動詠唱したのだ。
命中すれば確実に有効打を与えられる一撃。しかし、今の自分の魔力では彼女の堅牢なバリアを打ち破ることができない。
この模擬戦の勝利条件は、なのはの防御を抜いて僅かでもダメージを与えること。
Bランクの自分の攻撃では、小石がぶつかった程度の感覚でしかないだろう。
たちまちの内に誘導弾で周囲を囲まれたティアナは、自分でも驚くくらいに冷静な思考で退路がないことを把握する。

「終わりだよ」

そう宣言するかのように、桃色の魔力弾が光を増す。
ほとんど無意識に、ティアナはその数を追っていた。
32発。
一気に勝負をかけに来たのだろう。そこにはなのはが制御できる最大の数の魔力弾が揃っていた。
遂に訪れた瞬間を前にして、ティアナは引きつった笑みを漏らす。
この瞬間を待っていた。
徹底的に追い詰められ、もう後がないこの状況で、なのはが尚も全力で挑んでくるこの瞬間を。

「抜き打ち、結構自信あるんですよ、あたし!」

振り上げた銃口が火を噴くのと、アクセルシューターが降り注ぐのはほぼ同時であった。
全身に走る激痛。
意識が焼かれ、魔力が根こそぎ奪われていく。
力尽きた体がグラリと傾き、地面が急速に近づいていく。
これは賭けだ。
満身創痍の体でなのはの攻撃を捌くことはできない。
だが、一滴でも魔力と意識が残っていれば、自分は魔力弾を制御してみせる自信があった。
先ほど、抜き打ちで放った最後のクロスファイアーシュートに秘められた秘策。
それは強烈なジャイロ回転によるバリアの一点突破であった。
超高速で飛翔する魔力弾は轟音と共に大気を引き裂き、瞬く間になのはとの距離を詰めていく。
戦闘者としての勘がそうさせたのであろう。なのはは咄嗟にデバイスの自動詠唱ではなく自身の手でバリアを紡ぎ、飛来した魔力弾を受け止める。
鉄壁ともいえるなのはのバリアが、飴のようにぐにゃりと形をへこませる。
未だ勢いの衰えない螺旋運動が侵攻を阻害するバリアを少しずつ削っていき、なのはの顔に苦痛の色が浮かぶ。
傷ついた体に、僅かだが活力が戻って来た。
通じている。
自分の魔法が、自分の戦術がエースを追い込んでいる。
この戦いで、初めてティアナの顔に喜びと呼べる笑みが浮かぶ。
しかし、それは長く続かなかった。
突如として爆音が空気を震わし、土煙を上げる。
その向こうから現れたのは、未だ傷1つ負っていない高町なのはの姿だった。
彼女はバリアを自ら爆発させ、その破壊力で魔力弾を相殺したのである。

970Lyrical StrikerS 第9話その2⑨:2010/01/27(水) 22:08:37 ID:rFRoD3QI
「そんな……………………」

その時、ティアナは感覚ではなく現実として己の敗北を確信した。
今の自分では、彼女には勝てない。否、この先、何十年も努力を積み重ねたとしても、彼女には敵わない。
持って生まれた才能の差は血の滲むような鍛錬で覆せると思っていた。
生まれついての潜在魔力の差は戦術の工夫で補えると思っていた。
努力すれば必ず報われると、今日まで信じてやって来た。
なのに、この人はその全てを否定する。
凡人の努力も工夫も、一握りの天才の前には塵芥に過ぎないのだと。
自分が積み重ねてきた鍛練の日々が、全て無為なものへと叩き落とされていく絶望に、ティアナは心が凍りつくような錯覚すら覚えた。
だが、それで戦意が衰えたのかと問われれば否だ。
不思議だ。
今までなら、こんな絶望を前にすればきっと諦めて地に屈していたはず。
なのに、今は意固地なまでに反骨心が湧き上がってくる。
今なら問える。
ずっと抱いてきた疑問、心の内に秘めていた想いの全てを、彼女にぶつける事ができる。

「どうしてですか? こんなに強いのに………………あたしなんか、手も足も出ないのに。
どうして………………どうして、あたしを六課に呼んだんですか!?」

低く、擦れてしまった声で、ティアナはハッキリと疑問を口にする。
自分のような不必要な足手まといを、どうして手元に呼び寄せたのかと。

「あなたは強い。どんな逆境も覆してみせるエースかもしれない。けど、あたしは違います。才能なんてありません。
レアスキルなんてないし、魔力だって飛び抜けて高い訳じゃない。あたしが10人、束になってかかってもあなたには勝てないと思います。
けど、だったら……………どうしてご自分で戦わないんですか!? 使えない新人のサポートなんかしないで、自分で戦えば良いでしょう! 
あなたならミスショットもしない、あたしなんかよりももっと上手く立ち回って、素早くレリックを確保できる。
あたしなんて必要ない。そうでしょう…………………答えてください、高町なのは一等空尉!」

それは立ち塞がる理不尽への怨嗟なのか、それとも不甲斐ない自分への慟哭か。
叫び散らす本人すら、どちらの感情がより強く出ているのかわからなかった。
では、なのははどうか?
同じ部隊の同僚でも教導官でもなく、1つの絶望としてこの場に降り立った彼女には、その言葉はどのような形で届いているのか。
答えは、一筋の光で返って来た。

「甘ったれないで。そんな泣き言、通じると思うの?」

頬に走る鋭い痛み。
長距離から正確にこちらの頬を掠めた誘導弾が、背後の壁にぶつかって消滅する。
地の底から響くようななのはの言葉は、今朝の模擬戦の時とは明らかに違う感情が込められていた。
失望ではなく怒り。
落胆ではなく憤怒。
先程までとは比較にならない殺気が全身から滲みだし、空間すらも圧迫しているかのような錯覚がティアナに襲いかかる。

「君が何を思おうと、卑屈になって無茶をしようと、それは勝手だよ。新人なんだもの、悩むことだってあるし、
それに気がつかなかったのはわたしの監督不行き届き。わたしの失態だよ。けど、自分なんか必要ないなんて言わせない。
必要ない人間なんて存在しない。そうやって自分の可能性を狭めるのなら、わたしは君を許さない。
自分を蔑ろにする人間を、わたしは絶対に許したりしない。ねえ、わたしの言っていること、間違っているかな?」

「あなたはいつも正しい。真っすぐで、眩しくて………………凄く傲慢です。何も失ったことのないあなたじゃ、
挫折を知らないあなたじゃ、あたしの気持ちなんて絶対にわかりっこない! あたしには誇れるものなんて何もない。
スバルやエリオやキャロみたいな才能があたしにはない。だったら、死ぬ気で努力しなくちゃ、夢を掴むことなんてできないじゃないですか!」

「………………そう。そんな風に考えていたんだ。なら、夢半ばで倒れても本望だよね?」

《A firing lock is cancelled》

レイジングハートから発せられる無情な宣告。
それは魔力ダメージという枷を取り払い、物理的な破壊をまき散らす禁断の呪詛。
即ち、非殺傷設定の解除を意味していた。

971Lyrical StrikerS 第9話その2⑩:2010/01/27(水) 22:09:22 ID:rFRoD3QI
「な、なのはさん?」

「ファイア」

無慈悲に撃ち出される32発の魔力弾。
どれか1発でも食らってしまえば手足が千切れ、そこで自分の運命は終わる。
現役の管理局の局員とは思えない残虐な行為。しかし、実際に目の前で起きている出来事が現実逃避を許さない。
どうしてと問う暇さえなかった。
理由も是非も問えず、悲鳴を漏らす時間すら与えられない。
そんな状況の中で、ティアナは半ば無意識のまま両手のクロスミラージュに編み上げた魔法の構成を叩き込み、
マガジン内部のカートリッジを手動で炸裂させていた。
自分でも驚くくらい冷徹な思考と滑らかな指の動きだった。
このまま何もしなければ死んでしまうという認識によって呼び覚まされた生存本能が、思考よりも先に肉体を操作しているのである。
そして、その動作は紛れもなく日頃の訓練の延長。高町なのはによって延々と繰り返された射撃訓練の時と同じく、
クロスミラージュの銃口は向かってくる魔力弾へと狙いをつける。
銃声は3発。
右に1発、左に2発。
32発もの魔力弾を撃ち落とすにはとても足りない。
だが、これで良い。
撃ち落とすのは自身に害を及ぼすものだけで良いのだ。
3発だけ撃ち落とせば、後は勝手に軌道が逸れていく。
直後、派手な爆発音が背後で轟き、粉塵が巻き上がる。

「…………っ、生きている」

我に返ったティアナは、自分のやったことを思い出して呆然と立ち尽くす。
あれだけの弾幕を潜り抜けるなんて、自分でも信じられない。
ふと振り返ると、そこには破壊の跡は一切見られなかった。
物理破壊設定で撃ち出されたはずの魔力弾が、どういう訳か魔力ダメージに設定されていたようである。
ならば、さっきのはなのはの芝居ということなのだろうか?

「嫌だよね? 何もできずに倒れるのは、嫌だよね? 自分が望んで起きた結果なら納得できるなんて嘘。
負けたくない、倒れたくない、死にたくない。だって、自分には果たさなきゃいけない夢があるから。
そうでしょう? 君の夢は君の命で釣り合うものなの? それで納得できるの? 精一杯頑張ったから、
それで良いなんて思える訳ないよね。ましてや、する必要もない無茶をして貶めて良いものでもない。
その思いがどれだけ崇高でも、堕ちたらそこまでなんだよ。それで二度と飛べなくなったら、もう夢は叶わないんだよ」

この人は何を見てきたのだろうかと、疑問が浮かぶ。
高町なのはは不敗のエース、挫折とは無縁の存在だと思っていた。
なのに、彼女の発する言葉の1つ1つが重い。挫折を知らない人間では決して発することのできない重い言葉。
鋭いナイフのように切りつけてくるなのはの言葉は、ささくれ立ったティアナの心を無残にも切り裂いていく。
その痛みは吐き気がするくらい気持ち悪いものなのに、戦意だけは湧水のように後から後から湧き出てくる。
受け止めなければならない。
彼女の言葉を、思いの全てを。

「まだ、終わってません……………………初めに言いましたよね、自分を証明するって。
この程度で堕ちたりしません。あなたの全力だって受け止めます。どんな逆境も、理不尽にだって抗います」

一歩ずつ、白衣の教導官へと歩を進めていく。
この瞬間、ティアナの脳裏から死んだ兄の無念を晴らすという動機は消えていた。
先日のミスショットの件を挽回するという意地も、エースを倒して実力を証明するという野心も消えていた。
ただ純粋に、自分と彼女の実力差を知りたい。
彼女の全てを受け止めて、そこから学べるものを奪いたい。
失態に失態を重ね、教導官からも見放され、自分を追い込み、ティアナは初めて自分の為だけに戦う決意を固めた。
なのはもその思いを汲んでくれたのだろう。彼女の内側からこれまで以上に膨大な量の魔力が迸り、
レイジングハートの先端に桃色の羽根が形成される。
初めて見る姿だ。
ジリジリとした焦燥感は、今までにない恐怖を呼び起こす。
間違いなく、これから繰り出される一撃は彼女の最強の一手だ。
射撃か砲撃か、意表を突いて突撃か。
その答えはすぐに出た。
カートリッジの炸裂と共に、彼女の周囲の空間から二色の光がレイジングハートの先端へと集束を始めたからだ。
その大半がなのはの魔力光と同じく桃色の光。だが、僅かではあるが自分の魔力光と同じ橙色も含まれていた。

972Lyrical StrikerS 第9話その2⑪:2010/01/27(水) 22:10:00 ID:rFRoD3QI
(集束砲!?)

なのはが撃ち出そうとしている砲撃の正体に気づき、ティアナの背筋に電流にも似た寒気が走る。
通常、魔法を使えば周辺の空間に魔力の残りかすが残る。それは時間と共に霧散していくものだが、
熟練の魔導師の中にはそれすらも利用して大規模な魔法を行使する者がいると聞く。
それが集束スキルだ。
使用済みの魔力残滓をかき集めて魔法を編めば、当然のことながら自身の消耗は最低限で済む。
しかも、周囲で激戦が繰り広げられるほど、魔導師の数が多いほど、行使された魔法が大規模であるほど、
自身の限界を超えた魔法を行使することができるのである。
ただし、スキル自体の習得難度に加えて大規模魔法の詠唱に伴う肉体への負担、何より霧散していく魔力残滓を
都合良く集める事が出来るような状況が限られていることから、習得している者はほとんどいないと言われている。
実際、ティアナも訓練校の教科書で呼んだきりで、その使い勝手の悪さから習得を諦めた経験がある。
なのはが如何なる理由からこの技を身に付けたのかは知る由もなかったが、彼女が放たんとしている砲撃はこちらの想像を絶するほどの威力になることだろう。

《Count nine》

静かに告げられるカウントダウン。
残された9秒でティアナが取った選択は、真正面からの撃ち合いであった。
教導官であるなのはが、何の考えもなしに大威力砲撃を仕掛けるはずがない。
間違いなく、自分の前後左右には設置型のバインドが仕込まれているはず。
かと言って、消耗し切った今の体で彼女の砲撃に耐えられる自信はない。
ならば、万に一つの可能性にかけて迎撃するしかない。
例え競り勝つことができずとも、軌道を逸らすことさえできれば良い。

「クロスミラージュ、カートリッジロード」

《Load Cartridge》

装填した左右のカートリッジが同時に弾ける。
恐らくは、自分が制御できるギリギリの弾数。
これで勝てるのかという不安は、奥歯を噛み締めて払拭する。
敗北をイメージするな。狙うは必勝、立ち塞がる壁は撃ち砕き、乗り越えるのみ。
この9秒間で今日までの自分の全てを、この砲撃に注ぎ込む。

《Count three, two, one……zero》

「いくよ、ティアナ! これがわたしの全力全開!」

「…………っ!? なのはさん!」

「スターライトっ!!」

「ファントムっ!」

交差する2つの視線。
ティアナの背筋に戦慄が走る。
なのはの瞳に初めて闘志と呼べるものが宿る。
撃ち合えば、双方共に魔力は0。そうなれば、後は意地の勝った方が勝利者である。
2人は目を閉じることなく、有りっ丈の思いを込めて引き金に指をかける。

「ブレイカァァァっ!!」

「ブレイザぁぁぁぁっ!!!」

轟音と共に撃ち出された桜色の砲撃が、呆気なく橙色の砲撃を飲み込んで視界を埋め尽くしていく。
それが、この戦いでティアナが見た最後の光景であった。
戦闘時間、合計37分39秒。
後にティアナは、自分がなのはと単独で戦った教え子達の誰よりも長く、恩師の猛攻に耐え切ったことを知るのであった。






                                                         to be continued

973B・A:2010/01/27(水) 22:11:55 ID:rFRoD3QI
以上です。
次話に備えてエリオの出番を増やしたらこれだよ。
ティアナ編完結は次回に持ち越しです。
スバルがメインに舞い戻るのはまだ先かなぁ。
ちなみに、時間をかければフルドライブでなくともSLBは使えることにしました。
リミッターって魔力の制限だけですし、A's2話でデバイスモードでSLB+を放っていたので。

974イクスピアリ:2010/01/27(水) 22:19:30 ID:tMVltBtg
なのはさんパネェっす
でもそれと戦えるティアナもパネェっす

B・Aさんはほんと表現とかうまいなぁ



投稿しようかと思ったけどこんな良作のあとになんてとても……

975名無しさん@魔法少女:2010/01/27(水) 22:26:59 ID:PTO7s./k
したらばでの投下関連メモ

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好きな名前(「なのはエロパロ避難所」とか)=http://jbbs.livedoor.jp/otaku/12448/  
を入力して上書き保存。一端ギコを閉じて、再起動。
このスレが「したらばJBBS」内に出現するはず。あとはお気に入りに登録するなり何なり。

976名無しさん@魔法少女:2010/01/27(水) 22:29:16 ID:1hH5Cihc
>>973
GJ、お見事。
なのはVSティアナは、ほんっと、落としどころと言い心情変化と言い、力量試されるわ。
ああ、俺はケツまくってその描写から逃げてるけど。

>>974
おいおい、今のティアナの戦い見てなかったのかい?
諦めちゃいかんぜ? 書きなよ投下しなよ抗いなよ。
書き続けりゃあ、良作の誉れは後からついてくる。

977名無しさん@魔法少女:2010/01/27(水) 22:35:06 ID:PTO7s./k
B・A氏GJ
この後の展開で、ティアナがスッキリしてるか否かでちょっと道がわかれそう、ですかね
ライトニング二名の活躍も楽しみにしてます

>「わたしは、君が泣いても撃つのを止めない」

ナニヲスルダァー

そして、次スレ建てときました

☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第102話☆
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1264598753/

間違ってテンプレ誤爆・・・スンマセン

978イクスピアリ:2010/01/27(水) 22:57:49 ID:tMVltBtg
良作続きのなか恐縮ですが投稿します

注意
・なのはポータブルのネタバレあり

・改変箇所あり

・合い言葉はなのフェイフェ…ゲフンゲフン雷刃たん

・微エロ?
ここでの基準が分からないので読んだ方は教えてくださると幸いです

979雷刃がいる風景 〜始まり〜:2010/01/27(水) 23:00:50 ID:tMVltBtg
雨が降る海上にて対峙する二人の少女がいた

一人は白き衣装を纏い手には杖を持つ亜麻色の髪の少女

一人は黒き衣装を纏い手には斧を持つ水色で末端が黒き髪の少女

白き衣装を纏う少女――高町なのはは相棒たる杖――レイジングハートを叩きつける

黒衣の少女が吹き飛ばされ体勢を立て直した瞬間桜色の輪が少女を拘束した

「な、なにこれ!?」

「全力全開!」

少女が見上げた先には集う桜色の魔力

「スターライトブレイカー!」

放たれた集束砲が少女を貫くと少女は海へと墜ちていく
それを見届けたなのははレイジングハートを下げる

「終わったかな」

《反応消失。恐らく倒したかと》

「なのは!」

そこに金髪に黒衣の少女――フェイト・テスタロッサが駆けつけ二人は言葉を交わしその場を去っていく


後になのははこう語る


――あの時ちゃんと確認するべきだったの

980雷刃がいる風景:2010/01/27(水) 23:05:50 ID:tMVltBtg
海鳴市上空
少女を倒したなのはは最後の反応のあったこの地に自ら志願しこの場にいた相手と戦った

肩で大きく揺らし息を整えるなのはの前には消えかけているなのはに似た少女がいる

「ああ……私は消えるのですね。」

「うん……ごめんね。」

なのはの言葉に少女――後にマテリアルSと呼ばれる事が判明する―は穏やかに答える

「なに、強い戦士と戦って破れたのです。生まれた甲斐はありましたとも。」

「うん……ありがとう。」

マテリアルはなのはをまっすぐに見る

「もし、次に見える事があれば、今度はきっと決して砕け得ぬ力をこの手にして、あなたと戦いたいと思います。」

「ん……待ってる、とは言えないけど。」

「次に私と戦うまで、あなたの道が、勝利に彩られますように。」

目を閉じマテリアルは告げる

「それでは……さらばです。」

加速する消滅

「ああそれと……」

「えっ?」

「彼女を宜しくお願いします。根は良い子なので末永く頼みます。」

軽く頭を下げマテリアルは消えていった

「なんだか不思議な子だったな。」

そう呟いたなのは
エイミィやリンディ、クロノのやり取り、遠くからこちらに向かってくるフェイトを見てふとなのはは思った

(あの子を頼みますって……あの子って誰だろう?)

そんな事を思いながらなのははフェイトと共に自宅へと帰って行く

981雷刃がいる風景:2010/01/27(水) 23:09:22 ID:tMVltBtg
闇の欠片事件と後に呼ばれるようになる今回の事件を解決した後フェイトはそのままなのはの家、高町家にお泊まりする事になった

「お風呂気持ちよかったね〜」

「うん、そうだねなのは。」

髪を拭き終えた二人はなのはの部屋に向かう
徹夜であった事と次の日が日曜日であるためそのまま寝るためである

(なのはと一緒……なのはと一緒……)

頬を赤く染めたフェイト

(駄目だよなのは……そこは恥ずかしいよぉ)

一体何を想像してるのか段々フニャっと顔が緩む

「ふぇ、フェイトちゃん……」

「どうしたのなのは?」

そしてなのはから声をかけられるとすぐに戻るフェイト
まさしくマルチタスクの無駄遣い

「……あれ。」

なのはが指さした場所はなのはのベッド

――ただし明らかに人一人分膨らんでいた

恐る恐る近づく二人
意を決し同時に布団を捲る
そこには――

「待ってたよお姉さま!」

水色で末端がダークブルーという特徴的な髪色をしたあの少女が何故か裸でそこにいた


「な、なんで裸なのーーー!?」

「えっ!そっちからつっこむのなのは!?」

叫ぶなのは
さり気なくレイジングハートが防音結界を展開
バルディッシュもそれに協力し強化するなか事態は進む

「お姉さま!僕が暖めてたから暖かいよ!だから早く使って!」

バムバムとベッドを叩く少女

「というか何でいるの!確かリインフォースさんは構築体(マテリアル)は消えたって言ってたのに!?」

「そうだね。でもそれはもう僕には関係ない。今の僕は君が…じゃない、お姉さまが集束砲で僕を撃ち抜いた時あまりの威力に防衛構築体のプログラムから弾かれた人格と身体データだけ。゙元゙力のマテリアル、雷刃の襲撃者という存在。」

瞳を輝かせ少女――雷刃の襲撃者はなのはを見る

「お姉さまは僕を゙砕け得ぬ闇゙とは違う形で確固たる存在にしてくれた恩人!だから僕は全てをお姉さまに捧げに来たんだ!」

「ええっと……どうしようフェイトちゃん!助けてよ!」

フェイトに助けを求めるなのはだがフェイトは顔を俯かせ肩を震わせていた
そして顔を上げ言い放つ

「ぽっと出のどこの誰かも分からない癖に……なのはをお姉さまなんて言うな!」

「え、あの、フェイトちゃん?」

「私がなのはを一番好きなんだ!」

襲撃者に組み付き追い出そうとするフェイトだが当然襲撃者も黙っていない

「僕とお姉さまの仲を邪魔するな!」

「あなたこそ私となのはの仲を邪魔しないで!」

取っ組み合いになりフェイトが襲撃者の髪を引っ張ったり逆に襲撃者が引っ張り返したりしいつの間にかフェイトのパジャマまで脱げる

「二人とも!」

キャットファイトは続く

「二人とも止めてよ!」

なのはの中で何が溜まる

「止めてってば!」

叫んだ瞬間飛んできた枕がなのはの顔面を直撃
しかし気づかず続ける二人


ブチッ


なのはの目から光が消え手をかざす

「きゃっ!」

「な、なにこれ!」

フェイトに襲撃者が覆い被さる形で二人の手首と足首がバインドされる

「二人とも……」

にじりよるなのは
その手には見慣れない道具を持っている

「な、なのはそれって……」

「お母さんの部屋から見つけたの。」

「む、無理だよお姉さま!そんなに大きいバイブで貫かれたら僕裂けちゃう!」

ジタバタと二人は逃れようとするが現実は非情である


――少し、頭冷やそうか





チュンチュンと鳴く鳥の声になのはは目を覚ます

「んっ……」

伸びをし周りを見回す

右にはフェイト、左には襲撃者
ベッドシーツには赤い斑点が幾つもある

「……っ」

股に走る痛みに顔をしかめるなのはだがクスッと微笑む

「頼まれちゃったし……何より私自身も気になるしね。」

幸せそうに眠るフェイトと襲撃者

「これからが大変だね……」

そう言ったなのはは再び寝転がると二人を抱き寄せ再び眠るのであった

982イクスピアリ:2010/01/27(水) 23:15:15 ID:tMVltBtg
以上です


なのはポータブルの襲撃者が可愛いすぎてつい考えたのを煮詰めていったらこうなってました

注意書きしたからネタバレ大丈夫……だよね?


雷刃のいる風景(雷刃たんシリーズ)は思いついたら色々書く予定ではあります



場面がとびとびなのは完全な力量不足+繋ぎのシーンが浮かばなかったんです……orz

983名無しさん@魔法少女:2010/01/28(木) 01:27:45 ID:unGGZzs2
B・A氏GJ
教導管の言葉が、酷く重い
文章だからこそ表現できる重さってやっぱりあるんだな
イクスピアリ氏もGJ
見た目蒼髪のフェイトで僕っ娘がなのはをお姉さまと呼ぶ・・・破壊力やべぇな
そして武力用途に使われるレイジングハートに笑ったw
>ネタばれ
ストーリー性の強いRPG系列って訳でもない(よね?)し、注意さえありゃ良いと思う・・・ぜ?

984名無しさん@魔法少女:2010/01/28(木) 02:39:33 ID:T4ULXje6
面白かったけどこのティアナ凄いな。
非殺傷設定でなのはがぶち込んできた時点で俺だったら幻術で逃げる。
それで自分が前回の作戦でやったことに関しては悪いと思うし、訓練でボコられるまでなら許容できるが、
殺されかける意味がわからんとか、あいつ頭がおかしいからどうにかしてくれって部隊長に言うw

985Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2010/01/28(木) 06:46:05 ID:cFEMACEs
投下が多い……多すぎる……だから一つだけ言わせてくれ。
全ての職人に、至高のGJを。

という訳で短いの投下。
・非エロ
・フェイト&なのは

986ちいさなまほう 1/2:2010/01/28(木) 06:46:52 ID:cFEMACEs
「わたし……いつも思うんだ」
「どうしたの、なのは、改まって?」
穏やかな風が吹く屋上。
フェイトはフェンス越しに海鳴りの街並みを眺めながら、ぽつんと呟いた。
隣には、なのは。友達になってから、もう次の春が巡ってこようとしている。
暖かくなりかけた、弱々しくも一生懸命な太陽の下、二人は街を見下ろしていた。

「フェイトちゃんと友達になれて、本当に良かったな、って思ってるの。
あんなにいっぱいぶつかりあって、それでいっぱいお話をしたのは、初めてだったから」
「えっ……」
かぁっ。顔が赤くなる。
なるべくなのはの方を見ないように、顔をあさっての方向にそらしながら、ぼそりと喋る。
「えっ、えっと、私なんかのどこがいい、のかな?」
誰かに認められた、それよりも嬉しいことがこの世にあるだろうか。
何度も何度も、対話を試みてきてくれた。こちらがいくら拒絶し、刄を向け続けても。
それは、簡単にできることではない。怖いとか、やっぱりやめようとか、そんなことは露ほども考えない。
フェイトは、そんななのはを不思議に思うところがあった。
「……んもぅ」

最初になのはが口を開いた時、出てきたのはため息だった。
ぐいっ、と両頬を手で押さえられ、無理矢理に顔を向き合わされた。
フェイトより少し背の低いなのはが、背伸びをして目線を合わせてくる。
その目は、いつもよりちょっぴり真剣で、いつもよりちょっぴり怒っていた。
「フェイトちゃん。『私なんか』じゃないよ。フェイトちゃんは、もっと自分を誇っていいんだよ!」
なのはの透き通るような、真ん丸の瞳は、思わず吸い込まれていきそう。
栗色の髪に結わえられたリボンは、かつて渡した黒い色。
ほのかに、ミルクみたいな甘い匂いが漂ってくる。
「それに、わたし言ったよね? 『ちゃんと相手の目を見ること』って」
「あ、ご……ごめんなさい、なのは」
気迫に押されていると、なのははにっこりと微笑んだ。
それはまるで天使のようで、見た人の心を柔らかく解してしまいそうだった。
「……羨ましいな」
そんな言葉が口を突いて出たのは、なのはが一瞬、眩しく見えてしまったからだった。
自分にはそんな笑顔はできない。一抹の寂しさが、胸を掠めた。
今まで、戦うことしか知らなかった。排除することばかり考えていた。
だから、どうやって笑えばいいのか、分からなかった――そう、なのはに出会うまでは。
少しずつ、一歩ずつ、笑みを浮かべられるようになってきた。
でも、なのはみたいに笑えない。見た人をほんわかな気持ちにできる、温かい表情を、作れない。
「ねぇ、フェイトちゃん。わたしもね、フェイトちゃんが羨ましいんだよ?」
「……え?」

突然、羨ましいといわれ、フェイトは面食らった。
ゆっくりと目を閉じて、なのはは自らの胸に手を当てた。
「背もわたしより高いし、髪もサラサラできれいな金髪だし」
「そんなことないよ。なのはは可愛いし、髪だって」
目を細めて、なのはが語る。
フェイトが口を開きかけた時、なのはは先に言った。

987ちいさなまほう 2/2:2010/01/28(木) 06:47:28 ID:cFEMACEs
「わたし、ドンくさいから……足とか全然追い付けないし、ボールを投げたら変な方に飛んでいくし……
わたしより運動いっぱいできるじゃない?」
自分の弱さを認めて、相手の強さを認めている。なのはは、そんな女の子だ。
少女は手を後ろに組むと、フェイトに向かって囁いた。
「それに」
「それに?」
フェイトが聞き返すと、なのははぽっと頬を染めた。
ちょっと言いにくそうに一度言葉を切り、また続ける。
「フェイトちゃん、格好いいもん」

フェイトは息を呑んだ。
鼓動が高鳴って、力が溢れてくる。
今まで言われたことのない言葉だった。なんで? どうして?
そしてなのはは目を開くと、ぺろっと舌を出した。
いたずらっぽい、無邪気な子供そのものの顔。
「わたしだって、まだまだフェイトちゃんには敵わないんだよ」
言い終るか終らないかのうちに、フェイトはなのはのてをしっかりと握り締めていた。
口を突いて出てきた叫びが、心を吹き抜けていく。それは、覚えたことのない感情だった。
「な、なのはだって格好いいよ! 私の憧れだよ!!」
瞬間、見つめあう二人。
気恥ずかしくなって手を離すと、今度はなのはが目を逸らした。
「わ、わたしが憧れなんて……買い被りすぎだよ」
今度はフェイトがなのはの顔を引き戻す番になった。
そして、目を見てはっきりと言う。
「なのは……私は、なのはが誇りだよ。なのはを友達に持てたことが、すごく幸せだよ」
頑なに拒んでも、打ち負かしても、立ち上がってきた不屈の精神力。
最初は警戒だった感情は、受容の心に変わっていった。
尖り鋭かった、痛みにも似たものを、いとも簡単に溶かしてくれた。
最後まで諦めず人に訴え、そして理解するまで向き合う。
その強さ、その勇気を、格好いいと呼ばずに何と呼べばいいのか。

きょとん。フェイトが言い切った直後、なのはの目はまさにそう謳っていた。
でも、やがて満面の笑みになって頷いた。
「うん、うんっ! わたしも、フェイトちゃんが友達で、すっごく幸せだよ! ありがとう、フェイトちゃん!」

少女の手が、フェイトの手を掴んだ。
そうかと思えば、なのはらしいスピードで走り出して、振り向いた。
「遊ぼうよ、校庭で! わたし、フェイトちゃんのこと、もっともっと知りたい!」
――私もだよ、なのは。
小さな呟きは、快活に跳ねる栗色の髪を揺らす少女には、届いていないみたいだった。
でも、何度でも言おう。
初めて友達と呼んでくれた、高町なのはに、沢山伝えよう。

真っすぐな気持ちを、何度も、何度でも。

988Foolish Form ◆UEcU7qAhfM:2010/01/28(木) 06:49:03 ID:cFEMACEs
こんな短いのに相棒と合作って一体。
それでは皆々様方、次スレでお会いしましょう。

989名無しさん@魔法少女:2010/01/28(木) 07:39:57 ID:LGOaO6B2
>>988
ぐはっ……リリカル濃度危険値まで上昇ッ!
いいね。GJです

990名無しさん@魔法少女:2010/01/28(木) 09:10:54 ID:/q5.v/gk
>>988
あぁ・・・いい友情話だなぁ
GJ

991名無しさん@魔法少女:2010/01/28(木) 18:44:50 ID:Xfd.TZ4k
そろそろ埋めた方がいい?

とりあえず、>>991ならヴィータは俺の嫁

992名無しさん@魔法少女:2010/01/28(木) 19:35:41 ID:e.xbNuco
じゃあ>>992ならシャマルさんは俺の嫁

993名無しさん@魔法少女:2010/01/28(木) 19:50:20 ID:Nmu0jNns
>>988
これは良い埋め
すごく…リリカルです…GJ!

994名無しさん@魔法少女:2010/01/28(木) 20:03:25 ID:gt2W63XQ
最近、活気が戻ってきた感がありますな
というわけで>>994なら俺はフェイトそんの子を孕む

995名無しさん@魔法少女:2010/01/28(木) 20:21:20 ID:4UV2g15k
>>994
何かおかしいぞwww

996名無しさん@魔法少女:2010/01/28(木) 20:29:26 ID:sF30SVTQ
>>994は俺っ子なんだよきっとw

996なら、雷刃ちゃんは俺の妹!!

997名無しさん@魔法少女:2010/01/28(木) 20:46:00 ID:lthTVRNs
1000ならマテリアルズは八神家入り!

998名無しさん@魔法少女:2010/01/28(木) 20:52:50 ID:.w/y90Ew
998なら次スレでクロフェ雷刃の3Pが投下される。

999名無しさん@魔法少女:2010/01/28(木) 20:55:54 ID:nFNSKcxg
999ならディエチとはやてとルーは俺の嫁。

1000名無しさん@魔法少女:2010/01/28(木) 20:57:29 ID:TJcHmhyE
1000ならユーノはなのはの嫁!!




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