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アクエリアンエイジ小説書きALLスレ

1元大佐</b><font color=#FF0000>(HClalalg)</font><b>:2003/05/18(日) 11:59
アクエリアンエイジの小説を書いたりするスレです。
リレー小説の続きもこちらで。

-注意-
18禁やそれに相当するものを貼りつける場合、予めその旨を書き込んでください。
個人、団体への誹謗中傷等は固く禁止します。

リレー小説の続きについては下記スレを参照してください。
アクエリアンエイジ萌え隔離スレ 3発目(html化)
http://game.2ch.net/cgame/kako/1034/10349/1034944014.html

26元大佐(亡霊)</b><font color=#FF0000>(HClalalg)</font><b>:2003/06/17(火) 19:14
>>24
詳細やってきました。例のスレ参照です。

27藤咲:2003/06/21(土) 02:49
「………」
 俺は美鈴さんが護符を変化させた鳩に合図を送ると、秋成に目配せして別れ教会の正面に向かって歩き出した。これで俺が配置につけば準備万端…と思った瞬間、
カシャーン! ドガッ!
 ガラスが割れる小気味良い音と鈍い音が聞こえてきた…秋成早過ぎ。

「!?」
 いきなりステンドグラスを割り飛び込んできた男が、イエス像にぶつかりながらも見事に着地しこちらに仕掛けてきた。
「危ないっ!」
「レダ!?」
 反応が出来ないぼくと襲撃者の間にレダが咄嗟に自分の体を割り込ませた。
 まるでスローモーションの映像を見ているかのように男の拳がゆっくりとレダの鳩尾にめり込んだ…。
「ちぃ!次は外さんぞ、皐月…!?」
 男は忌々しげに俺を睨み付けるとレダを振りほどいて攻撃を再開しようとしたが、レダがそうはさせじと男の腕を掴んで離さない。
 さらに呆然としているぼくに向けて略式の詠唱…『転移』を唱えた。
「なっ、レダ!」
「………」
 最後に見たレダは苦痛に絶えながらの笑顔だった…。

「やれやれ、俺の出番は無しか…」
 阿頼耶識の能力者と思われる連中に連行されるWIZ-DOMの能力者(レダとかいう女以外は雑魚)を横目に俺は物足りなさを感じた。
 さてこれから、

A、町を1人でぶらつく。
B、誰かとデート。
C、神社に帰る。
D、最寄のゲー○ーズに行く。

28藤咲:2003/06/21(土) 02:53
とりあえず拉致ってみました…。
果たして「逆襲の皐月」な展開になるのでしょうか?w
それとも…。

>>26
お疲れ様です…あ、霊体は疲れないのかな。

29素敵な名無しさん♪:2003/06/21(土) 23:41
やっと続きキター!!
と叫びつつ選択は>>30に任せます。

ところでここって工口おっけ?

30素敵な名無しさん♪:2003/06/28(土) 01:23
30がなかなかこない様なのでここは1つAで。

3130:2003/06/28(土) 18:43
スマソ…sage忘れた…吊ってくる。

32C'est la vie.</b><font color=#FF0000>(eYZfeJt6)</font><b>:2003/07/03(木) 16:25
>>28
オツカレー

誘拐事件やわー
さっちゃんさり気に心狭いコやから悠が心配やわ(w

>>29
sageて、オブラートに包めば多分大丈夫じゃないでしょうか。

33藤咲:2003/08/15(金) 01:26
「・・・しまった」
 阿頼耶識の連中と別れ町をぶらつくことにした俺だったが、所持金が千円しかないことに気付いた。
(ねぇねぇ、それで何か美味しい物食べようよ♪)
(私としてはメガミマガジンが欲しいのだが・・・)
(じれっテーナ!)
「黙ってろ!!」
「ああん?」
 頭の中の奴等に怒鳴りつけたつもりだったが口に出してしまったらしい。
 目の前には柄の悪い2人組が1人の女子高生に絡んでいる・・・のか?
「・・・続ければ」
「な、舐めるな!」
 俺の言葉に激昂した1人がナイフで切りかかってきた。
(右に避けて足を払え)
「こうか?」
 言われたとおりにやってみると見事に相手が転ぶ・・・流石俺。
「テメェ!」
 お次が来た。
(腕を取って一本背負い)
「無茶な・・・」
 そうは言いつつも見事に相手を地面に叩き付けた・・・メダルも狙えるな。
(すぐ調子に乗るんだから・・・)
 電波を無視して女子高生を見ると何とも複雑な表情をしてこちらを見ていた。
 セーラー服にポニーテールか、ポイントはそれなりに・・・っと、とっとと退散しないといけないような予感が。
「あっ、あの、ありがとうございます」
「いや成り行き上・・・それじゃあ」
 踵を返して立ち去ろうとしたが何故か少女に腕を捕まれた。
「お礼に食事でもご馳走します!」
 金欠の身としては嬉しいその言葉に俺は、

A、ありがとう。
B、食事だけかな?
C、遠慮しておくよ。
D、カレーだ。カレーが食べたい!

34藤咲:2003/08/15(金) 01:44
頑張って完結させないと・・・。

>>29
エロ・・・寸止めばっかりの石橋悠さんは一線を越えられるのか?

35素敵な名無しさん♪:2003/08/18(月) 21:53
無難にA。
そういや千円しか持ってなかったんだったな…。

36C'est la vie.</b><font color=#008800>(eYZfeJt6)</font><b>:2003/08/26(火) 03:46
「ありがとう」って呟いた。
 いや、どの「俺」か定かではないが。
 今話し手に回っている俺的にはセーラー服+ポニテに加え、黒ニーソが
高ポイントである。 
 ……いろいろ情けない男になってるな、俺。
 しかし空腹には勝てない。 メガマガより飯だ、でも体裁も……
 そんな風にあれこれ考えているとさっきより一層強く少女に腕を引っ張られ、
俺はそのまま走り出していた。
「早く!」
「なんだよおい?」
「警察が来るでしょ、今日平日なのよ? 捕まったら美由貴にどやされる!」
 なるほど……この娘、サボりか。 「ミユキ」が誰かは知りやしないが、俺自身
自分の本名も知れないような人間、職務質問でも受けたらヤバい事になるだろう。
 まず遙さんにどつかれるのは間違いあるまい。 なるべく神社のみんなにも心配
はかけたくないし。
 そして俺も自主的に少女を人込みに連れ込んだ。
 さて、俺のほうが主導権を握ったわけだが、どこへ逃げよう? 

A, ソバヤー(゚Д゚)ノ がどっかにあったな……少し探す事にはなりそうだけど。
B, ジンジャー(゚Д゚)ノ まで行っちゃうか……多少遠いけど。
C, モヨリノビル!(゚Д゚)ノ にさっさと隠れるか……なんか青いマークついてるけど。
D, ホテルー(゚Д゚)ノ 折角女子高生連れてるんだしな……約束どおりご馳走になるか。

37C'est la vie.</b><font color=#008800>(eYZfeJt6)</font><b>:2003/08/26(火) 03:50
あ、しまった。「往来でナイフを抜いた香具師がいたら、そりゃ警察も来る」ってこと
説明して無いや。 ゴメソ。

38素敵な名無しさん♪:2003/08/26(火) 12:36
皐月戦で出番が無かったのでCで。
青いマークって(☆)よね?

39藤咲:2003/09/05(金) 01:33
(―――――やばい)
 取り敢えず最寄のビルに隠れてみたのはいいが何故か嫌な予感がした。
 まるで遙さんから鉄建制裁を受けるような・・・。
「ふぅ、結構足速いんですね」
 そんな俺の胸中とは無関係に少女はにこやかに笑い掛けてくる――可愛いかも。
「そうかな・・・で、此処は何の建物?」
「あっ、看板が出てる。何々・・・『世界の人形展』。入ってみません?」
「・・・そっちが入場料もってくれるなら」
 少女の悪戯っぽい笑顔につい頷いてしまう俺。
(遙殿という人がありながら・・・)
(本当はロリコンのくせに)
(浮気性ー!)
 まともな奴はいないのかよ(涙
「大人2枚・・・さ、行きましょう」
「あぁ・・・」

 展示会場の中は薄暗く不思議な感じがして、さっきまでいた外とは別の世界だった。
「へぇ・・・結構リアルなんだ」
 少女がまるで実際の人間かと見紛う様な人形を見て驚きの声を上げる。
「そう言えば・・・君の名前は?」
「え、私の名前? ―――真由美。私の名前は真由美です」
「真由美ちゃんか・・・うっ!」
「どうしました!?」
「い、いや、何でもないよ」
(何だったんだ今のは?)
 その時の妙な感じはすぐに収まった・・・。

 そんなこんなで半分くらい見終わった頃、

A.展示されている人形が襲い掛かってきた。
B.いかにもWIZ-DOMな連中に囲まれた。
C.真由美が後から抱きついてきた。
D.突然意識を失った。

40素敵な名無しさん♪:2003/09/09(火) 12:55
無難にWIZ-DOMに襲われる展開で…B
そろそろクラリス様キボンヌ

41素敵な名無しさん♪:2003/09/10(水) 03:29
俺的にもクラリス様キボン

42</b><font color=#008800>(1Q1lBXpY)</font><b>:2003/09/12(金) 22:08
マント、とんがり帽子、杖、水晶球…。紛れも無くWIZ-DOMの連中だ。
「真由美ちゃん! 俺の後ろに…って、あれ?」
俺はすかさず真由美ちゃんを庇おうとしたが、彼女は俺が言うより早く臨戦態勢を取っていた。
この反応の早さ、彼女も能力者というわけか。では一体何の目的で俺に近づいたのだろう?
しかし、そんな事を深く推察する間もなく、俺達を囲っている少女達の一人が笑い声を上げる。
「あっはっは!まんまと罠に引っ掛かったわね!石橋悠!」
罠? やはりこれは待ち伏せされていたという事か?
それにしても俺は成り行きでここに来ただけだし、真由美ちゃんがWIZ-DOMの手先というわけでもなさそうだ。
まあ何にせよ、今はこの最悪の状況をどうにかしなければいけないのだが…。
今度は暗がりの奥からまた別の少女…いや、女性が姿を現す。
「お手柄ねぇ、ミルサちゃん。でもここにおびき出すには、ちょお〜っとタイミングが悪いんじゃないかしら?」
「あ、いや。ホントは向こうが勝手に来ただけで私は何もしてないんですけど…」
どうやら罠というのはハッタリだったらしい。
しかし女性の方はそんな言い訳を無視し、真由美ちゃんに語りかけた。
「お久しぶりねぇ、藤宮真由美さん?」
「そうね。まさかこんなとこであなたに会うなんてね。クラリス」
どうやら真由美ちゃんと女性――クラリスは知り合いらしいが……。
「ふふふ。やあねぇ、『こんなとこ』だなんて。こう見えてもここはWIZ-DOMの拠点の一つなのよ?
 もっとも、今日は真由美さんに満足して頂ける程の準備はないかもしれないけど」
「どうぞお構いなく。あたしも暇じゃないですから」
その雰囲気から察するに、決して友好的ではないようだ。
「それでね。今日のところはこのままお引取り願ってもいいかな、なんて思ってるのよ。
 そっちの彼さえ渡してくれさえすれば…ね。」
そう言ってクラリスは微笑むが、その微笑の奥からは底知れない威圧感が漂っている。ここは…。

A.ガンガンいこうぜ。WIZ-DOMも今日で終わりだ!
B.みんながんばれ。俺は逃げる。
C.めいれいさせろ。真由美ちゃん、逃げるんだ!
D.いのちをだいじに。和平交渉をしよう。

43素敵な名無しさん♪:2003/09/18(木) 00:09
cですなー。真由みんのパンチラキボンヌ

44C'est la vie.</b><font color=#008800>(eYZfeJt6)</font><b>:2003/09/22(月) 11:57
―めいれいするといいよー
―お前は……マインドブレイカーだろ?
―攻撃は最大の防御ってやつだな。
 体は「石橋悠」の命令を聞かずに目の前の少女を動かしていた。
「行けっ」
 対象の同意を得ぬ強力な精神支配に衝き動かされた女子高生は
些か短すぎる気がしないでもないプリーツスカートの裾を空間に流し、
眼前の非秩序社会人たちの群れに突撃する。
 その速度は一般的な女子高生のそれではないし、温かみを喪った
彼女の目の色もそれを俺に伝えている。
 ……なんだよ、コイツ化け物か?
 そして、その化け物が突進してくると言うのににこにこと場違いな
笑みを浮かべている女性、クラリスとやらもまた充分な化け物だ。
―笑ってられる時間も終わりだ
 瞬間、クラリスの横っ面に向けて真由美のローファーを履いた白
い脚が飛んでいた。

―色気が……無いな。
「ベージュでないだけマシだろ」
 これは俺と、ひとつの魂からの真由美の青いパンツに対する見解である。

 それは兎も角として、真由美のハイキックはクラリスの静かな挙動の
前に空振りに終った。 無論、今の蹴りを避けるのはクラリスの前動作を
踏まえる限り不可能なように思える。
 人外の光景に俺は一瞬固まり、その一瞬のお陰でもうひとつの人外に
出会う羽目となった。
 不破皐月である。
 奴は今回もにこにこと、ょぅι゛ょ臭い顔で俺に細い銃口を突きつけていた。
 前回と違うのは彼の目の奥に、明らかな怒りが宿っている事である。
 画にすると彼の額に血管が浮き出ているような感じだろうか。
「お早い再会でしたね。
 女の子の魅力はきちんと見定めないと、愛想尽かされちゃいますよ。
 あちらの怖いお姉さんとは一度杯を交わした事がありますけど、決して
格闘屋さんではないと思いますけど」
 皐月が真由美にかけたのであろう呪詛が、今頃になって流れ込んでくる。
「徒恃秋葉待風之命/空養朝露催日之形」
 真由美はパンチラなままその場に固定され、クラリスが一歩下がった形である。
「さて、先輩……レダ=ブロンウィンの所へ案内していただけますか?
 彼女がいないとうちのチームはまともに動かないんです。
 あ、レダに何かあったらその場で阿羅耶識が一番酷いやり方で消滅、と
思ってくださっても結構です。 よろしいですね、選択肢はありません」

A, わかった。 神社へ案内しよう(そして道中で返り討ちにしてくれる)
B, 舐めるな小僧、マインドブレイカーの拳を味あわせてやる。
C, やかましい、あの魔女も含めてこの世の女は全部俺のものだ、
   文句があるならかかって来い!(ハーレムコース分岐)
D, クックック、もう遅い、今頃は神社の中でWIZ−DOM出身の
  新人性奴隷が一人、色々と仕込まれてる頃だろうよ(キティーク)

45素敵な名無しさん♪:2003/09/22(月) 23:57
舐めるな小僧!
・・・と言いたいがここはあえて
・・・D(ぼそっ)

47藤咲:2003/10/05(日) 01:03
「クックック、もう遅い、今頃は神社の中でWIZ−DOM出身の新人性奴隷が一人、色々と仕込まれてる頃だろうよ」
「・・・腕の一本でも吹き飛ばしましょうか?」
 う〜ん、これ以上何か言うとやばいな・・・さて、どうするか。
(こういう時の為の『能力』だろ?)
 なるほど・・・まずは真由美ちゃんに電波送って次に・・・。
「幾ら考えても無駄ですよ。もう1度言います、選択肢はありません」
 本当にそうかな(ニヤリ
「まあ冗談はさて置き、君は一つ大きな勘違いをしている。まずは真由美嬢の太ももを見たまえ」
「人の話聞いていますか?」
「あの太ももは見る分には素晴らしいが直接肉体を使った戦闘に適しているとは言えない。更に見た目は普通の女子高生という事から彼女の能力は大体推察される、分かるかね?」
「あなたが腕を無くしたいという事は分かりました。いきますよ・・・っ!?」
 皐月が引き金を引こうとしたが彼の指は全く動こうとはしなかった。
「更に俺にはこういった事も出来る・・・真由美、茶番は終わりだ逃げるぞ、破ッ!」
「・・・りょーかい!」
「バイバイ、さっちん。それからレダとか言う人は大事な人質だから勿論無事だ」
 悠により皐月の呪詛から解放された真由美はすぐさま『能力』を使い壁に大穴を開け、悠を掴まえると急いで外に飛び立った。
「流石だ真由美ちゅわん、電波の感度抜群」
「はぁ・・・上の人達に何て言おう。勝手にWIZ−DOMに喧嘩売っちゃったし、こんな奴に・・・」
「そっちこそWIZ−DOMの連中で俺の『能力』を試そうとしたくせに。とりあえず俺がイメージした神社に向かってくれ」
「はいはい、ところで支配は解いてくれるの?」

A.「出来るだけ早く」
B.「・・・身の安全が保障されたら」
C.「えーっ!」
D.「さて、どうしようかな?(ニヤリ」

48素敵な名無しさん♪:2003/10/16(木) 09:19
Dだよねぇ・・

4948:2003/10/16(木) 09:19
ごめっ、あげちゃった。

50素敵な名無しさん♪:2003/12/01(月) 20:06
続きまだかな…。

51C'est la vie. </b><font color=#008800>(eYZfeJt6)</font><b>:2003/12/25(木) 22:56
PCぶっこわれ保守ん

52素敵な名無しさん♪:2004/07/11(日) 11:33
遥か昔か

53素敵な名無しさん♪:2004/07/26(月) 23:12
SS,張らせていただきますね

54フェンリル突発SS:2004/07/26(月) 23:14
−目が 醒めた−
ゆっくりと開けた視界に、見慣れた天井が入ってくる。
少しの期待と大きな不安を胸に隣を見る。
やっぱり貴方は居ない。
上半身を起こし腕を上げ背を伸ばし、一息ついた後に浴場へ向かった。
シャワーのコックを捻り、降ってくる飛沫を顔で受け止める。
中に水が入らないように横にした耳の上を、水流が流れる。
その耳を、私の長い髪を伝い、背中を濡らし尻尾を伝う。
ざあっという音だけが聞こえ、冷たい水が夏の朝の暑さでぼうっとしてた頭を冷やしてくれる。
コックを閉じて、また回りを見回す。
何度も繰り返した行為、やっぱり、居ない。
……もう、どれくらい経つのだろう
貴方が居なくなったのは、突然だった。
何度嫌だって言っても、面白がって尻尾で遊んでた。
暑苦しいって言ってるのに、ぎゅうっと抱きしめて頭を撫でてくれた。
『馬鹿イヌ』なんてふざけた呼び方をしながら、ずっと傍に居てくれた。
なのに
「……どうして、居ないんだよぉ……」
俯いて一人呟く。
寂しかった。
寂しくて、哀しくて、悔しくて。
消えてしまいたかった。
護って欲しくなんかなかった。
残されて、こんなに哀しい想いをするのなら。
なのに、こんなに苦しいのに、忘れたいのに。
愛しいという気持ちが、変わらなかった。

55フェンリル突発SS:2004/07/26(月) 23:15
暫くシャワーを浴びた後、体を拭きながら部屋に戻った。
ポツンと置かれた机の上には、組織からの復帰要請の手紙。
「……一緒じゃなきゃ、ヤダ」
本日二度目の独り言を呟いて、洋服入れの中から久しぶりに貴方の服を取り出す。
ごろんと床に転がって、それを思いっきり抱きしめ顔に埋めた。
もうずいぶんと薄くなってしまった、貴方の匂い。
まだ暫くは一緒に居させてと、そう思ってるんじゃないの?と聞かれたこともあった。
違うよ。
信じてる。
まだ会えないだけ、貴方はここに、私の所に戻ってくる。
絶対に教えてあげないけど、今でも貴方の夢を見るんだよ。

そう

こんなに長く 遠く 離れていても

まだ 信じてる

56素敵な名無しさん♪:2004/07/26(月) 23:18
すいません、上げちゃいました……
なんとなくサーガ1終わってからサーガ2でマスターと再開するまでの間のフェンリルを書きたくなったので書き込ませていただきました。
ぱっぱっと書き上げちゃったものなので、イメージとのズレとか納得出来ないところもあるかと思いますがどうか御容赦を……
続き、というか再会した所も考えはしたのですけどうまくまとまらなかったので省きました。
またフェンリルを発作的に書きたくなったら、ということで。
では失礼しました。

57素敵な名無しさん♪:2004/07/27(火) 02:06
>>56
ハァハァスレより飛んで参りました。
乙です。
下手なんてご謙遜を……とてもよかったです。

58素敵な名無しさん♪:2004/08/06(金) 04:06
久々の小説乙ですー。

59素敵な名無しさん♪:2004/09/21(火) 16:54
age

60素敵な名無しさん♪:2004/11/02(火) 21:13
魁冶×望の小説キボン

611/13 ねこ:2005/02/18(金) 18:01:02
謝罪 長いです。掲示板の管理人様に深くお詫びいたします。
    本文は「半角46字で折り返す」状態で書かれております。
    読む方は各自で適当に(メモ帳に貼り付けるなどして)調整して下さい。
    (少しでも行数を減らしたい為このようにしました。ご了承下さい。)
    最後に、このような稚拙な文章を読んで下さる皆様に感謝いたします。


「吾輩は猫なのにゃ」

 夜空は冷え冷えと澄み渡り、十三夜の月が天頂に輝くころ。高くそびえるビルの群れもすっかり眠りこけ、ほの暗い陰を落としている。
 今その陰の間を、小さな影が横切った。一瞬だけ月の逆光に入ったその姿に誰も気が付く者はなく、仮にいたとしても「カラスか何かだろう」と気に留めることはなかっただろう。
 再び影が月の前をよぎった。しかしまた、その姿、すなわち漆黒の軽装に身を包んだ“少女”を捉えた者は、誰一人いなかった。
 町はただただ、静寂を守っている。


 カチリ、とブーツのかかとを小さく鳴らして、1つのビルの屋上に少女は着地した。他よりも一際高いこの摩天楼の屋上は周囲の様子を調べるのにうってつけであった。さらに緑化計画とか何とかで屋上に常緑樹が植えられているから、多少のことでは外からそれと悟られる事は無いのだった。
 振り向いて屋上の縁に足を掛け、下界を見おろす。眼下に広がるオフィス街の夜は人もまばらで、閑散としている。
 そして彼女の正面に佇む小さな建物。アテネのパルテノン神殿を彷彿とさせる象牙色の太い柱に囲まれたこのマルセイユ近代美術館が、今夜の目的地であった。
 ――その瞬間。車のヘッドライトが夜の闇を切り裂き、屋上に立つ少女を照らし出した。
 ゆうに腰まで届くゴールドブロンド。幼ささえ感じさせる顔つき。やさしく、しかし鋭い瞳。光の中でなお闇に溶ける黒い衣装。
 ――彼女こそが、現在世間を騒がせている大怪盗、シャ・ノアールなのである。

622/13 ねこ:2005/02/18(金) 18:02:43
 ライトが彼女を照らしたのは、ほんの一瞬だった。荒々しい走行音と共に車が過ぎ去るのを確認してから、シャ・ノアールはその場を離れる。
(9時40分。 少し早すぎたかしら)
 腕時計をちらりと見て、心の中で呟く。
 本日の犯行予定は10時ちょうどのハズだったから、進入は10分ほど後でいい。早めに進入しても悪い事はないが、万一巡回の警備員にでも見つかっては面白くない。
 シャ・ノアールは屋上の中央まで歩いて、月を見上げた。
 胸の奥で鼓動が早まるのを感じる。興奮。そう、盗みをする時にはいつも感じている、熱いリズム。このスリルのみが彼女を駆り立てる唯一の原動力なのだった。
「あなたはだあれ?」
 ――その声は突然屋上に響いた。
 ハッとしてシャ・ノアールは振り向く。そういえば今日は屋上に人がいないことを確認していない。不注意だった。大怪盗としてしてはならないミスであった。
「…あなたはだあれ?」
 もう一度。屋上の木々の間からひょっこりと顔を覗かせた少女が誰何の声を上げた。
 月の下で透き通るように輝く銀髪の中から飛び出た、白い異形の耳。それはまるで虎を思わせる。
(……ダークロア!)
 その耳でシャ・ノアールは確信を持った。ダークロア所属の白虎のワータイガー。間違いない、敵。
 先程とは違う理由で鼓動が高鳴る。緊張。冷や汗が背中をつたう。相手は戦闘特化のダークロア。まともにやり合って勝てるわけがない。十中八九、殺されるだろう。
(逃げるか?)
 それもある。必死になれば逃げられる可能性はある。地の利もあるし、人の多いところまで行けば敵はもう追ってこない。自分の命を守る為には、それしかない。しかし、しかし――
 しかしそれは、今日の盗みの失敗――そして大怪盗シャ・ノアールの名前が死ぬ事を意味する。
 一度失敗したら、二度と夜の世界で生きていくことは出来ない。 ――何より彼女自身のプライドがそれを許さない。ならば、ならば……
 めまいがするほど心臓が激しく響く。笑う膝を止めることは出来ず、乾いた目はただ目の前の少女を凝視することしかできない。
 『それ』がもう一歩踏み出す。
 それに反応してドクン、と銅鑼のように大きく心臓が跳ねた――が、それはただ一度きりだった。
 ワータイガーの少女が自分に向かって歩み寄ってきているというのに、シャ・ノアールは逃げるでも戦うでもなく、そして怯えて立ちすくんでいるのでもなく。ただ、ただただ無心にそれを受け入れた。
(なんだろう。 警戒心が溶かされたみたい)
 とてとてと数秒もかけずに手の所まで歩いてきた少女は、首を傾げて。
「遊んでくれるの?」
 ――と。
 確かにそう、言った。

633/13 ねこ:2005/02/18(金) 18:04:32
 ぎゅちん、と不思議な音と共に、クレセントの鍵は割とあっさり動いた。
(――チョロイわね)と、多少不満げに、シャ・ノアールはゆっくりと窓を開く。防犯用なのか保温用なのか窓は二重になっているが、どちらにせよ彼女の障害ではなかった。
 場所はマルセイユ近代美術館の正面。三階吹き抜けの大きなホールが覗くガラス張りの壁の、その右上。換気用なのだろう上部のその窓は、彼女にとっては格好の進入スポットだった。
「美術館の入り口のマドが、こんなに簡単に開いていいのかなあ」
 シャ・ノアールのすぐ後ろで、ワータイガーの少女――“ブランシュ”と名乗った――がつぶやく。
 あのねえ? と前置きをして、シャ・ノアールはそれに答えた。
「簡単にって言うけれど、コレ、れっきとした超能力なのよ? わかる?」
「わかる。 えすぱー?」
「そう、エスパー。この世界には、超能力対策をした鍵なんて無いのよ。今のところ、ね。
 だいたい……」
 彼女はそこで一度言葉を切り、外れかけた鍵への念力を一旦停止させて振り向いた。
「壁を垂直に登ってくる侵入者なんて想定する方がおかしいわよ」
 ――と、壁にピッタリと張り付いたブランシュに向かって。
 一見ツヤツヤして滑りそうに見える壁にも、微妙な凹凸がある。彼女はそこに爪を引っかけ、その力だけで全身を支えているのである。
 ブランシュ自身は特別何ともないつもりなのだが、普通に考えて、かなり異様な光景である。
「そうかな?」
「そうよ――と、開いた。楽勝っ」
 一応トラップがないかをもう一度良く確認して、窓を開ける。
「最後にもう一度だけ確認するけど――本当に付いてくる気なの?」
 無駄と知りつつも、訊かずにはいられない。
 しかし返ってきたのは、何も考えてなさそうなブランシュの笑顔と、肯定の頷きだけだった。
 ……はあ。とため息をついて、シャ・ノアールはブランシュを置いていくことを諦めた。

644/13 ねこ:2005/02/18(金) 18:06:21
「あのね、お姉ちゃんはこれから大切なお仕事なの。わかる?」
 数分前。自分と遊ぼうというブランシュをいさめて、シャ・ノアールはこう言った。目線を合わせて、さりげに頭などを撫でつつ。
 その言葉に、ブランシュは首を横に傾げて、
「お仕事?」
 と聞き返した。
「そう、だから今は一緒に遊ぶことが出来ないの。わかるよね」
「そのお仕事って……E.G.O.のお仕事?」
 彼女の小さな口から漏れるその言葉が、一瞬にしてシャ・ノアールを氷漬けにした。
「わかるよ。お姉ちゃん、E.G.O.でしょう?」
「…………」
 不意打ちのように言われたことが、ではない。この至近距離で言われたことが、ではない。 ――彼女のことをE.G.O.だと認識していること。その事こそが、シャ・ノアールにとって致命的だった。
 しかし彼女の予想に反し、ブランシュはこう言った。
「大丈夫。今はおなかがへってないから、お姉ちゃんは敵じゃないよ」
 大丈夫と言われても、それじゃあ空腹になったら敵なのかと尋ねたくなる……が、訊かなければ良かったと後悔する気がして、何も言わなかった。
「ねえ。 私も連れて行って?
 そうすれば一緒に遊べるよ??」
 と、無垢な笑顔で。
 ……そうは言われても。と、シャ・ノアールは考える。しかし無下に断って機嫌を損ねたら、ひょっとしたら自分の命がないかもしれない。
「あのね、お嬢ちゃん? お姉ちゃんはね、これからバトルに行くんじゃなくて、そこの美術館に泥棒に行くの。 わかるかな?」
「……おじょうちゃんじゃ、ない。“ブランシュ”。それが私の名前」
 と言うブランシュに、シャ・ノアールは僅かに顔を曇らせた。
(ブランシュ……偽名ね。…まあいいでしょう)
 E.G.O.の中でも新参で内部に精通もしていないシャ・ノアールは、ダークロアの中でも五指に入るほどの実力者であるブランシュという名前を、今はまだ、知らない。
 シャ・ノアールは笑顔を作り直した。
「……じゃあブランシュ。 さっきも言った通り、私はバトルをしに行くんじゃないの。だから、あなたが来ても面白くも何ともないのよ?」
 この言葉に、ブランシュはしばらく黙り込んだ。そしてシャ・ノアールは、次第に、彼女の耳と尻尾がピンと立っていくのに気が付いた。
 ――嫌な予感。
「面白そう。私も行く」

655/13 ねこ:2005/02/18(金) 18:07:44
 結局彼女を納得させることができず、いい加減時間もピンチになってきたので、不承不承連れて行くことに合意したのだった。
「どうしたの? 大きなため息」
「……何でもないわよ……あ、窓はちゃんと閉めなさいよ。鍵は開けたままで」
「わかった」
 シャ・ノアールは超能力で壁に張り付いたままそれを見守る。
 出来れば空中浮遊が出来ればいいのだが、彼女の能力では何かしら接地面がないと体を支えることが出来ないのだった。
「じゃあ、次」
 先程と同様壁に爪をかけたブランシュに、シャ・ノアールは説明を始める。
「一度1階に下りるわ。このホールは3階吹き抜けになっていて目立つから、モタモタしてるとすぐ見つかるわ。一瞬でここから見えるあの廊下まで。音を立てずに。 ――できる?」
 ブランシュはこの問いに、「かんたん」と答えた。
(何だろう。すっごい不安なんですけど……)
 とも思うが、時間もないし、いざとなったら置いて逃げればいいわけで。
「OK,じゃあ……Show-Timeを始めるわよ!」
 言うと同時に、彼女は編み上げた超能力の糸を伸ばし――その先端は目的の廊下近くの壁に見事命中した。
 そしてその糸が持つ弾力と重力で一気に加速。ビュンと風を切って目標に下降する。一瞬にして床が目前に迫る。シャ・ノアールは空いた手からも糸を伸ばし、目的の廊下の天井に接着――それを強引に巻き取る。
 フワリ。落下の速度が完全に死んだところで全ての糸を解かすと、彼女はもう廊下の上で浮いていた。
 靴音も静かに着地――この間、1秒たりともかかってはいない。
 ある映画を見て考え出したこの糸、『トラピーズ・オブ・モンキー』。慣れるのに時間こそ掛かったものの非常に使い勝手が良く、重宝している。
 さて、とシャ・ノアールは振り返った。
 目を疑った。
 …ブランシュが、真っ直ぐこちらに飛び落ちてくるところだったのである。
(ッ馬鹿!!!!)
 心の中で叫ぶも、飛び下りたものは止まらない。それはシャ・ノアールが何かを考えるよりも速く落下し、ブランシュの体はシャ・ノアールのすぐ側の床に叩き付けられて……
 ……………………
 無音、だった。
 4本の足は落下の衝撃を一分の隙もなく吸収し、それに耐えた。舞い上がった彼女のスカートがゆっくりと地面に吸い込まれていく時間の空白を待って、ブランシュは立ち上がった。
「……ぁ……」
「どうしたの、お姉ちゃん?」
 へんなかおー、とでも言いたげな顔をしてみせるブランシュ。
(さすがはネコ科、ってことかしら……)
 驚いたことは事実だが、いつまでもこうしてはいられない。
「ん。行くわよ」
「りょーかい!」
 返ってきた言葉に、(スリルが無くなるんだよなあ)等と愚痴りつつも、何か別の感情が胸を熱くしていることに、シャ・ノアールは気付き始めていた。

666/13 ねこ:2005/02/18(金) 18:08:36
 管制室でロックさえ外してしまえば、後は楽な仕事である。美術館の奥まったところにある特別展示室に、目標のそれはあった。
「なにこれ……石?」
 ガラス越しにしげしげとそれを見つめながら、ブランシュは呟く。
 ガラスケースの鍵を開けながらシャ・ノアールはあきれた声で、
「石はないでしょ石は。水晶よ。最近フランスで見つかった、貴重な水晶の原石ね。 どう、綺麗でしょう?」
 ブランシュはもう一度良くそれを覗き込む。底はどう見てもただの石――原石だから、だろう。そしてその上に燦爛と輝く、水晶……にしては何かが妙だった。
「普通の結晶だったら無色透明。向こうが透けるただのガラスと同じに見える。 でも、これは違うでしょう? 実はこれ、いくつもの細長い結晶が密集して1つの形になってるの。だから、光が乱反射して向こうが透けて見えない……と、開いたっ!」
 パチン、と指を鳴らして喜び、早速お宝を取り出す。両手に余るくらいの石の塊の上に、実際の水晶はピンポン玉よりも小さい。
 ――スルリ。
「こうしてみると、霜みたいに見えるでしょう? だから付いた名前が……するり?」
 ふと見ると、石の底面から細長い紙の帯がスルスルと伸びて、元の台座に続いている。
(……しまった)
 と思う間も無く、それは瞬く間に水晶と、そしてシャ・ノアールの腕に巻き付いた。
(トラップ!)
 慌てて腕を引き抜こうとするも、それは縄か鎖のように頑として動かない。
「ザ・クラウン・オブ・ベアー!!」
 ばいんッ!!
 念力を圧縮してぶち当ててみたが、紙はゆるくたわんだだけで、全く効力があったとは思えない。
「ちぃッ!」
「お困りのようね!」
 ――声は唐突に響いた。同時にダウンっ!という荒々しい音と共に、展示室の扉が開かれる。
 扉の向こうにはスポットライトが皓々と光を放ち、シャ・ノアールとブランシュを照らし出す。
 そしてライトの中を割って、一人の女性が姿を現した。
「悪行もここまでね! シャ・ノアール!!
 この特捜刑事“氷上純”が来たからには、きっちりお縄を頂戴するわよ大泥棒っ!!」
(うああああああよりによってこの人がああああああああ!!!!!!!!)
 氷上純。E.G.O.の内部に疎いシャ・ノアールにさえ幾度となくその名前が耳に入ってきた、優秀な刑事にして、超一級の戦闘能力の持ち主。正義を愛し悪をくじく、最強の女。
(何だって私がここに来ることがバレたのよっ!?
 …………まさか!!)
 ある1つの可能性に気が付き、シャ・ノアールはブランシュを見上げる。スパイ。有り得る。何らかの形で手を組んでいるのではないか――そういえば初めて会った時のタイミングも、名前も、最初から何かとことん怪しい。
 しかし予想に反し、目線の先でブランシュは、
「…ワナ。まったく、これだからニンゲンは……」
 と、忌々しげに眉をゆがめて、シャ・ノアールに巻き付いた紙の束を見ていた。
 そして、刃物を思わせる鋭利な爪を走らせ、それを切り裂いた。
 さッ! と音を立てて紙は両断された。
「そこのあなたも、後ろでコソコソ式神を操るんじゃなくて、堂々と出てきたらどうかしら?」
 と、氷上の斜め後ろ。一見それとは分からないように細工されている小部屋――ロッカーだろうか――に向けてブランシュは声を投げた。

678/13 ねこ:2005/02/18(金) 18:10:48
「3人とも何好き勝手に話し合ってるのよ! 主役は私よ、ワ・タ・シ!!」
 と、一方的に宣言。
「ちょっ…」と口を挟もうとしたブランシュには小声で「バトルをしに来るんじゃないって言ったでしょう。勝手に付いてきたんだから私の言うことを聞きなさい」と早口で言って黙らせ、小声でいくつかの指示を与える。
 再び声を張り上げて、
「それじゃあ、始めるわよ!!」
「何を――」と問い返す氷上の無粋な声を無視して、
「One! Two! One-Two-Three-Four!!」
 かけ声と共に胸元から取り出した一枚のカードを投擲、狙いはシャ・ノアールたちを照らすライトのケーブル。
 ぶつんっ、と歯切れのいい音がして辺り一面が闇に覆われた。
「うあ暗ッ!」
「ライトをやられた! 後ろに逃がすな、入り口をふさげ!」
「わかった! 薫は灯りを!」
「……いや、待て!!」
 突然の暗闇に軽い混乱に陥る2人だったが、すぐに『それ』の姿に気付いた。
 展示室には割と大きな天窓があり、そこから明々と月光が入り込んでいた――そしてその自然のスポットライトの中で、展示台の上にスッと立った少女。逃げるどころかむしろ目立つ場所に立っている。どこから取り出したのかマイクを抱え、綺麗な声を響かせる。
「本日は、シャ・ノアールのShow-Timeへようこそ! お客様は、暴走・オブ・正義! の氷上純様ー!」
「お、私、正義だって、正義!」
「褒められてねーよ」
 あきれ顔で突っ込む安倍薫。
「もうお一方。 オールドミス・フロム・阿羅耶識! 安倍薫様――!! 私たちはお客様を歓迎いたします!!」
 と、口上を述べるシャ・ノアールの足下で、小さな影が動く。氷上の安倍薫が見えない位置から、囁き声。「マドは強化ガラスだから一瞬で割るのは無理。割れても枠が狭くて怪我しそう。次の行動に移るよ」…と。
 無言の返事をかえし、、彼女はマイクを構え直す。
「では世紀の美少女大怪盗、“シャ・ノアール”のマジックをとくとご覧あれ!!!!」
 腕を前に伸ばし、ピシリと人差し指が天を指す。
 ――そして。
「ジャグリング・オブ・ピーヘン!!」
 しゅボッ――!
 閃光。
 光線が。照明が。プリズムが。一瞬の輝き。ライト。光の帯が、目まぐるしく部屋の中を駆けずり回り、絶えることの無い千変万化の様相は万華鏡のようであった。
 視野が暗闇に慣れていた2人は一度に入り込んできた膨大な光の情報を解析しきれず、一気にパニック状態に陥った。そして同時に流れ出す大音量の雑音。ベースとドラムがおどろおどろしく鳴り響くそれは、音楽と言うにはほど遠い、獣のうなり声のようであった。
「目を焼かれた! 薫、見えるか!!??」
 うるさい音に負けじと氷上は声を張り上げる。
「見えるわけねーだろ!!!!」
 さらに混乱に拍車をかける、エコーがかったシャ・ノアールの声。
「お楽しみいただけてますでしょうか?
 今回は特別に、E.G.O.カラーと阿羅耶識カラーの、夢のコラボレーションを御用意しました!!」
 そして悪夢のような時間が始まった。

689/13 ねこ:2005/02/18(金) 18:11:38
 赤と白の強力な閃光が置き換わり焚き出され、一瞬の休む間もなく2人の瞳に攻撃を仕掛ける。
 単調なだけの繰り返し。そして残酷なほど鮮明なフラッシュ。剥き出しになった視覚に激しく衝撃を叩きつけ、断末魔を思わせる奇怪な音楽も相まってただただ膨大な不快感を刷り込んでいく。
「さらにさらに! ブランシュのチームカラー、グリーンを混ぜてみましょう!!」
 2人には、もはやそれが人間の声には聞こえなかった。
 赤!! 白! 緑! 赫! 皓! 翠! 赫!
白! 緑! 赤!! 白! 緑! 赤!!!
皓!! 翠!! 赤!!! 白!!! 緑!!!
 不快とかそういう次元の話ではない。存在・自分が今どこに立っているのかさえ判断できなくなる、悪魔のような光のマーブル。瞬間が重なって永遠を構成する無限地獄。
 ――と、自分を苦しめ続けたサタンの声は、突然エンジェルボイスに変わった。
「お楽しみいただけましたでしょうか?
 本日のShow-Timeはココまで! 次回またお会いしましょう!!」
 バァン! と扉が勢いよく開かれる音。
 そして、
「One-Two-Three-Four!」
 の掛け声と同時に、世界がまた元の暗闇に戻った。
 騒がしいシャ・ノアールの声と荒々しい音楽も、眼を侵す無慈悲な光彩も、まるでそれらが嘘であったかのように気配すら見せない。
 沈黙に支配された展示室の中で、ただ冷え切った体を流れる汗と激しく鼓動する心臓だけが異常を必死に訴えている。
 すっかり気が動転し、何故自分が地面に這いつくばっているのかさえ正確に分からない。氷上純は頭を押さえながらフラフラと立ち上がる。
「うっあ゛〜〜。
 目がチカチカする…耳もキンキンするう゛〜」
「畜生……小娘が……!
 お、追うぞ、氷上……!」
 そうは言っても、光の世界から突然暗闇の中に放り込まれた2人の目に映るのは漆黒の空間のみであった。
「薫……光……」
 わかった、と安倍薫は指を組み、『灯』を発生させる呪言を唱える。
 ……が、点かない。 相変わらず目は何の情報も入ってこない、暗闇状態。
「薫、光を――??」
「今やっている! 糞ッ何故点かない!?」
 繰り返す。繰り返す。
 呪文を代える。式神を使う。――が、どれも上手くいかない。効力を発揮した手応えはあるのに、どれ1つとして目に光が入ってくるものはない。
 ゾクリ、とある1つの可能性に至る。
 極度な刺激が与えられたことにより、一生目が輝きを失うというケース。それがどのくらいの確率で起こるのかは分からないが、そんなことは問題ではない。万一でも自分の目が使い物にならなくなったら――
 ついに至った最後の可能性に絶望し、安倍薫は手で顔を覆いその場に膝を突いた。

6910/13 ねこ:2005/02/18(金) 18:12:15
 ……?
 違和感。指先に、何か変な感触。
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
 『それ』が何なのかに気が付き、一気に顔に血を上らせる。そして『目の上に貼り付けられたカード』をベリッと勢いよく剥がす。
 情けないくらいにあっさりと視界が戻った。
 そこには自分が生み出した無駄にたくさんの光源と、目に紙を貼り付けていまだ喘いでいる氷上純の姿。
「畜生! 愚弄しおって!!!!」
 怒りにまかせて氷上の目隠しを剥がす。
「痛ッ……あ、見えた。 そっかあ、それで真っ暗だったんだな。
 ……ん? 紙に何か書いてある。『なかなか楽しかったです。お宝はしっかりいただいていきます。 シャ・ノアール』か……。
 いつもの犯行声明のカードとはちょっと違うが……薫? どうした??」
「おのれ小娘ども〜〜〜〜!!!!
 追うぞ氷上ッ!」
 完全に逆上した薫は、カードをビリビリと破き、息を荒げて言った。
「でも、もう逃げた後だろ。 今からじゃあ、間にあわないんじゃないか」
「奴が進入してから全ての出入り口に監視用の式神を配置しておいた。まだ一枚も破られていないから、奴らはまだ館内にいるか、そうでなくとも式神の瞳に姿を捕らえられている…!」
「何ッ! 本当か!?」
「無論だ。 …顔が分かれば、警察の力で捕まえられるよな?」
「おう! 奴は大泥棒だ。何十人だって調査に使えるだろ!!」
 実際は、シャ・ノアールの捜査要請をした段階で氷上はE.G.O.から大目玉を食らうことになるのだが。
「決まりだ。今から虱潰しに探し出すぞ!
 何としてでも探し出してその首引っこ抜いてやる!!」
「お、おう! 殺人は禁止だが、捕まえるのには協力するぞ!」
 と2人は声を掛け合い、足早に展示室を出て行った。

7011/13 ねこ:2005/02/18(金) 18:12:54
 ……2人が出ていって、しばらく後。
 無人なはずの展示室のロッカーの扉が、カチャリと動いた。
「ふぅ、さすがに2人入るには狭すぎたわね」
 そう言って、シャ・ノアールは余裕の表情で立っている。
「狭いとは思わなかったけど……カビくさいのがちょっと……」
 と、ブランシュ。
 んっ、と大きく伸びをして、
「でもお姉ちゃん? 何ですぐに逃げ出さないで、隠れるようなことをしたの?」
 と尋ねた。
 いい質問ですと言わんばかりに指を立てて、シャ・ノアールはニヤけた口を開く。
「私がこの部屋のトラップをあらかじめ発見できなかったことから、安倍薫の能力は私のよりもずっと強力だってことがわかるでしょう」
「そうだね」
 うなずいて肯定するブランシュ。
「さらに、あいつが罠を仕掛けるタイプの人間だってのも分かってるから、この部屋以外にもトラップがあるだろうコトは予測できる。
 さて問題。 自分が発見・解除できない罠はどうするか」
 なるほど、と呟いてから、
「仕掛けた本人が解除するのを待つ」
「ご名答。
 ……さ、それじゃあそろそろ行きましょうか。あまりモタモタしてると見つかっちゃうかもだし」
 と会話を交わし、2人は展示室を後にした。
 ――そして今度こそ、この部屋は無人になった。

7112/13 ねこ:2005/02/18(金) 18:13:38
 夜の町。
 ビルの屋上は風が強く、シャ・ノアールの長髪をかき乱す。流れる髪を耳に掛けながら、彼女は嬉しそうに笑う。その手には、しっかりと戦利品が握られていた。
「それにしてもブランシュって、ひょっとして有名人なの?」
 月明かりの下で爪の手入れをしている今夜の相棒に声をかけた。
「さあ。知らない。 ひょっとしたらむかし戦ったことがあるのかもしれないけど、覚えてない」
 まるで気の無い返事が返ってきた。それに物足りない思いを感じつつ、シャ・ノアールは話を繋ぐ。
「へえー。 でも氷上たちの反応を見るまで私、“ブランシュ”って偽名だと思ってた」
 ぴくっと耳が動いた。
「ギメイ…?
 なんでウソの名前を言う必要があるの?」
 いやぁ最初に会った時には私も緊張してて何でもかんでも疑ってかかっていたのだ。 …とは口が裂けても言えないシャ・ノアールは、戦利品の宝石をブランシュに手渡す。
「……石。」
「あはは。そっか、そこで気付くべきだったか」
 自嘲気味に笑ってみせる女泥棒を横目に、ブランシュは宝石を月光にかざした。僅かな光でも無数の細かな面が反射しあい、キラキラと輝く。
 キレイだ。 ブランシュは、初めてそう思った。
「その宝石、『ジュレ・ブランシュ』って名前なの。あなたと、同じ名前」
 もう一度大きく、虎耳が大きく跳ねた。
「じゅれ・ブランシュ?」
「そう。 私がこれを盗むと分かっててブランシュと名乗ったと思ったの」
 そう言い訳したシャ・ノアールの顔をしっかり確認した後、ブランシュはゆっくりと、『ジュレ・ブランシュ』に視線を戻した。同じ名前。不思議な感じ。
「……気に入ったのなら、それ、あげようか?」
 これは良いことを思いついた、という顔でシャ・ノアールが提案した。
 ブランシュはしばらく間をあけて考えるような素振りを見せたが、やはり思ったままにキッパリと答えた。
「石。」
 シャ・ノワールの驚いた顔。そしてすぐにそれは大爆笑に変わった。
「あっははははは! そりゃそーだ。
 ブランシュにしてみれば、ネコ缶貰った方がよっぽど嬉しいもんね!」
「………!」
 今度はブランシュの目が丸くなった。
 声も出ないほどビックリしたような面持ちで、ポツリと口を開く。

7213/13 ねこ:2005/02/18(金) 18:14:46
「……そういえば、おなか空いた」
 ガクリ。肩を傾げるシャ・ノアール。
 期待して損した、と思うシャ・ノアールの頭に、面白い企画が閃いた。ネコ缶で釣って、ブランシュを連れ帰ってみてはどうだろう。ひょっとしたら飼うことも出来るかもしれない。
「ねえ、ブラン…」
「ごはん食べる。 かえる。
 バイバイ、お姉ちゃん」
 一方的にそう言って屋上のフェンスに向かって小走りで駆けていくブランシュ。慌ててシャ・ノアールは声をかけた。
「あ、ねえ!?」
 フェンス手前で振り返って、一言。「なあに、お姉ちゃん?」
 何、と訊かれて返答に困る。考えがあって呼び止めたわけでもないのだ。
「あ……と……。 ま、またね!」
 ブランシュはこの言葉を聞いて、ワンテンポ遅れて頷いた。
「またね」
 それだけを残して、ブランシュはフェンスを飛び越え、地上数十メートルの世界から姿を消した。
(「またね」、か……)
 最後に交わした言葉は、きっとこれで良かった。
 ネコは気まぐれな動物だから、しっかりとした約束ほど当てにならない。ならば、こんな頼りない再会の約束で充分だ。
「さて、と」
 シャ・ノアールはジュレ・ブランシュを厳重にしまい込み、軽く助走をとった。そして魔力の糸、トラピーズ・オブ・モンキーを真夜中のビル群の彼方に向けて投げ放った。


次回予告
 ブランシュがダークロアトップの実力者だと言うことを知り驚愕するシャ・ノアールは、反省文30枚を書いている自宅謹慎中の氷上純を訪ねる。そこで彼女は、阿羅耶識の壮絶で凶悪な計画を知ることになる。
 E.G.O.とブランシュ、信じるべきはどちらなのか。悩むシャ・ノアールに、安倍薫が怒声を響かせた。
「式神のエサ代がシャレになんね――んだよ!!」
 次回、『100万回死んだ猫』。
(絶対書けません、念のため)

737/13 ねこ ごめんなさいいいいい:2005/02/18(金) 18:40:05
 ブランシュの言葉に促される形で音もなく扉が開き、、スポットライトを割る形で一人の女性が部屋に入ってきた。
 腰まで届く長い黒髪、時代錯誤な平安装束。
(…とりあえず、隠れていた能力者を暴いたことからブランシュがスパイの可能性はゼロになったけど…)
 と、シャ・ノアールはうんざりした顔で考える。
(氷上のバカ、まぁた阿羅耶識の口車に乗ってるしなー。もう、これだからあの人は……)
 氷上純。優秀なのは間違いないのだが、なまじ正義感が強いだけに他人から騙されやすく、しょっちゅう暴走している、とE.G.O.の末端まで噂が轟いている。
 そもそもE.G.O.のトップが仲間であるシャ・ノアールを捕まえろなんて命令を出すわけ無いのだから氷上の行動はそれだけでおかしいのに、挙げ句阿羅耶識の登場である。まず奴が黒幕と見て間違いない。
「……陰陽師“安倍薫”と申す。
 よくぞ我が隠形を見破った」
 と、ブランシュを睨みつけて名乗る。
「ニオイでわかる」
「……まあ、それもそーよね」
 即答したブランシュに、納得して答える氷上。
 安倍薫はチッ、と舌打ちをして懐から数枚のヒトカタを取り出し、戦闘態勢に入る。
「正直“シャ・ノアール”がダークロアの小娘を飼っているとは驚いたが……まとめて捕まえてやるよ、覚悟しな!!」
(なるほどねぇ、じゃあ“シャ・ノアール”がE.G.O.の一員だって事はバレてたわけだ…… それを知っていて氷上に協力を仰ぐ阿羅耶識もムカつくけど……E.G.O.の諜報員は論外ね。何やってるのかしら)
 シャ・ノアールが胸の中で毒づいていると、嬉しそうに指先を舐めながらブランシュが一歩踏み出す。
「オモシロくなってきたね。 どんなヤツでも、このブランシュが八ツ裂キにしてあげるよ」
「……ブランシュだと!?」
 安倍薫と氷上はにわかに色めきだつ。
「……おい、氷上。 少々荷が重いぞ」
「し、知るかよ。 ……泥棒は泥棒、絶対に捕まえる! 正義の為に! そうだろ!?」
 そう言って取り出した愛用の銃を構える。
 ブランシュは大して驚いた様子もなく、むしろ淡々と、そして挑戦的な口調を返す。
「テッポウか。 いいよ、どこからでも撃ってきなよ」
「いい覚悟だ!! いくぞ、泥棒ども――」
 今まさに戦いの火蓋が切って落とされる瞬間。

「ストップ・ストップ!! スト――ップ!!!」

 良く通る大声は、美術館中に響いた。

75素敵な名無しさん♪:2006/02/08(水) 20:07:05
     ∩___∩
     | ノ      ヽ
    /⌒) ●   ● |   釣られちゃったよ。。
   / ////( _●_)// ミ 
  .(  ヽ  |∪|  、\     
   \    ヽノ /´>  )
     |      / (_/


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