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アクエリアンエイジ小説書きALLスレ

655/13 ねこ:2005/02/18(金) 18:07:44
 結局彼女を納得させることができず、いい加減時間もピンチになってきたので、不承不承連れて行くことに合意したのだった。
「どうしたの? 大きなため息」
「……何でもないわよ……あ、窓はちゃんと閉めなさいよ。鍵は開けたままで」
「わかった」
 シャ・ノアールは超能力で壁に張り付いたままそれを見守る。
 出来れば空中浮遊が出来ればいいのだが、彼女の能力では何かしら接地面がないと体を支えることが出来ないのだった。
「じゃあ、次」
 先程と同様壁に爪をかけたブランシュに、シャ・ノアールは説明を始める。
「一度1階に下りるわ。このホールは3階吹き抜けになっていて目立つから、モタモタしてるとすぐ見つかるわ。一瞬でここから見えるあの廊下まで。音を立てずに。 ――できる?」
 ブランシュはこの問いに、「かんたん」と答えた。
(何だろう。すっごい不安なんですけど……)
 とも思うが、時間もないし、いざとなったら置いて逃げればいいわけで。
「OK,じゃあ……Show-Timeを始めるわよ!」
 言うと同時に、彼女は編み上げた超能力の糸を伸ばし――その先端は目的の廊下近くの壁に見事命中した。
 そしてその糸が持つ弾力と重力で一気に加速。ビュンと風を切って目標に下降する。一瞬にして床が目前に迫る。シャ・ノアールは空いた手からも糸を伸ばし、目的の廊下の天井に接着――それを強引に巻き取る。
 フワリ。落下の速度が完全に死んだところで全ての糸を解かすと、彼女はもう廊下の上で浮いていた。
 靴音も静かに着地――この間、1秒たりともかかってはいない。
 ある映画を見て考え出したこの糸、『トラピーズ・オブ・モンキー』。慣れるのに時間こそ掛かったものの非常に使い勝手が良く、重宝している。
 さて、とシャ・ノアールは振り返った。
 目を疑った。
 …ブランシュが、真っ直ぐこちらに飛び落ちてくるところだったのである。
(ッ馬鹿!!!!)
 心の中で叫ぶも、飛び下りたものは止まらない。それはシャ・ノアールが何かを考えるよりも速く落下し、ブランシュの体はシャ・ノアールのすぐ側の床に叩き付けられて……
 ……………………
 無音、だった。
 4本の足は落下の衝撃を一分の隙もなく吸収し、それに耐えた。舞い上がった彼女のスカートがゆっくりと地面に吸い込まれていく時間の空白を待って、ブランシュは立ち上がった。
「……ぁ……」
「どうしたの、お姉ちゃん?」
 へんなかおー、とでも言いたげな顔をしてみせるブランシュ。
(さすがはネコ科、ってことかしら……)
 驚いたことは事実だが、いつまでもこうしてはいられない。
「ん。行くわよ」
「りょーかい!」
 返ってきた言葉に、(スリルが無くなるんだよなあ)等と愚痴りつつも、何か別の感情が胸を熱くしていることに、シャ・ノアールは気付き始めていた。


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