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トンデモネタに対する突っ込み用情報ソース備忘録

1ミケ:2006/02/03(金) 20:48:10 ID:zcGeqzE6
表の議論を見てて立てたくなりました。
探すのに苦労したソースや頻出するネタに対する突っ込みソース(著書、論文、ウェブページ)
を簡単な解説と引用をつけて列挙するスレ。

表は、メインとミラーの入れ替えで、過去ログを探しにくくなりましたし、
Yahoo!とか再評価掲示板とかで示したことがあるソースをまた探すのはきつい。

これを引用するようにすれば既出ネタで血圧を上げる心配もありません。
また、同じネタに対して異なる複数の論点での反論がある場合も、
ここのNo.○○と××と△△を見よ。
見たいな感じで『フクロ状態』を軽減できるかもしれません。

106ミケ:2015/06/13(土) 13:39:32 ID:P0ev.7kw
>>103-105の続きで、
コリン・パターソン博士の“keynote address”について理解するために必要な前提知識(>>105-106)の続きです。

さて、分岐分類で>>105で述へたような問題が起こることを予見していたのかいないのか
……は、調べてないので分かりませんが、
分岐分類が生まれたのと大体同じくらいの時期に、
分岐分類とはまったく真逆の方向に割り切った分類法が生まれています(まあ真逆というのは個人の感想です)。
それが「表形学」[Phenetics]・「表形分類」[Phenetic classification]。
これは、進化の歴史を完全に無視し、比べる形質も選ばずに使えるだけ使ってしまって、
とにかく前提なしに(見た目で)分類わけしてみよう、というやり方です。

多くの形質を使ったら良い感じに客観的(自然分類)っぽくなるんじゃね?という考えでしたが、
厳密にこれを適用しようとすると、収斂の結果の形質なども全て含まれしまうので、
やはり人間の認識と乖離してあまりうまくいきませんでした。
が、そこで生まれた手法は例えばDNA系統樹の作成法に応用されるなど、今も受け継がれています。
(膨大な情報を使って樹形図を作る方法が、DNAやアミノ酸の膨大な配列情報を使って樹形図を作る方法として応用された)

そして、分類学の3つ目の学派「進化分類学」[Evolutionary classification]。
代表するのはエルンスト・マイア[Ernst Mayr]。
たまごちゃん (^-^)ノも書いてますが、
これは伝統的な分類と分岐分類の手法と表形分類の手法を良いとこ取りしようぜ、という方法です。
コリン・パターソン博士の“keynote adress”の一週間前にサイエンスに掲載されたという論文も
要旨を読むと「良いとこ取りしようぜ」と書いてありますね。
もうちょっと書くと、分岐学のように、進化の分岐の順番は考慮しよう、
でも進化の歴史では、自然選択によって急激に形質が変化した場合あるのでそれも考慮しようというもの。
しかし、それは、分岐分類や表形分類が割り切った“問答無用の統一基準”を捨てることでもあります。
急激に形質が変化するという状況も要因も変化の程度も“場合による”あるいは“見方による”わけですからね。

まあ、種の定義に“完璧”なものがないのと同様、分類も全部完璧にはできないということです。

さて、コリン・パターソン博士はどの学派だったかというと、体系学を専門としていましたが、
その中でも、分岐学、とりわけ1980年代に現れた
変形分岐学[Transformed CladisticsまたはPattern Cladistics]と呼ばれる学派の先導者でした。

これがなかなかウェブ上で日本語の説明がなかったのですが
英語版のWikipediaの記述を訳しておきます。
『変形分岐分類学者は、
共通祖先の共有や(プロセスとしての)進化論などの想定・前提から自由であるべきであり、
実証的(empiricalな)データのみに基づくべきだ、という立場を維持している。』
プロセスとして代表的なのはダーウィンの「自然選択」ですね。
そう、進化分類学者(マイヤー)が考慮しようと主張していた「自然選択」です。
これを意識的に除外して分岐図の作成を進めるので
「アンチ・ダーウィニスト」や「非進化論」を自称していたらしいです。
ただ、それは、研究手法として進化を前提にしないというだけであり、
進化がなかったと主張しているのではないわけですね。

107ミケ:2015/06/13(土) 14:20:04 ID:P0ev.7kw
>>103-106の続きにしてまとめです。
創造論者がしばしば引用するColin Patterson博士の“keynote address”

まずもう一度簡単に前提とすべき知識をまとめます。
「分類学」:生物を分類し、場合によっては同じグループにまとめたりして整理する学問。
「系統学」:生物の歴史・系統関係を研究する学問。
「体系学」[Systematics]:生物の類縁関係や分岐を研究する学問。分類学と系統学にまたがる。
「分岐分類」[Cladistic classification]:生物の分岐順序だけを基準に分類する方法。
「表形分類」[Phenetic classification]:生物の形質だけを根拠に分類する方法。
「進化分類」[Evolutionary classification]:分岐順序に加えて進化の度合いや形質の状態等も考慮した折衷案。
「変形分岐学」[Transformed Cladistcs、Pattern Cladistics]:進化のプロセスを前提とせずに分岐学をやってみようという方法。研究手法上前提としないだけであって進化そのものは否定しない。
「エルンスト・マイヤー」[Ernst Mayr]:進化分類の立場をとる学者で、1981年に論文を書いた。
「コリン・パターソン」[Colin Patterson]:体系学者にして変形分岐学の立場をとる学者で、1981年に体系学者に向けてトークをした。

「コリン・パターソン博士の“keynote address”」:
1981年、ニューヨークのアメリカ自然史博物館において
“Systematics Discussion Group”へ向けられたコリン・パターソン博士のトーク。
タイトルは“Evolutionism and Creationism”だが、
進化論と創造論がテーマというわけではなく、分類学・体系学に関するトークだった。
このトークでパターソンは、
1981年のサイエンス誌に発表された分類学に関するマイヤーの論文(と進化分類学)を意識し、
過激で極端ななトークを展開した。
そのトークを聴衆に紛れた創造論者が隠し録音し、創造論者の出版物として出回ったもの。

さあ、ここまで整理できたところで、“keynote address”の実際の内容をまとめてみました。
そのトーク全体の原稿は、リンネ学会のHPで公開されています(>>104で紹介)

Evolutionism and Creationism(進化論と創造論)
ざっくりまとめ

1981年にマイヤーが「体系学」に関する論文をサイエンスに発表した。
その論文は「分岐学」「表形学」「進化分類学」のそれぞれの特徴を述べ、
マイヤー自身のオススメも述べたものであるが、
「(変形)分岐学者」であるコリン・パターソンにとっては特に進化分類のあたりが承服しがたいものだった。

コリン・パターソンの考えるところに拠れば、
進化分類学では、分岐だけでなく分岐してからの各枝での変化の内容も考慮する。
つまり、共通祖先からの進化と分岐、そして分岐後の進化の内容を前提に考察しなければ実行できない。
一方、(変形)分岐学では、基本的に変化の質は考慮せず、
マトリックス(表)をつくって計算して機械的に分岐図を作成するので
進化を前提にせずとも分岐図を作成し、分類することが出来る。

進化分類学の前提は、先入観をもたらすのではないか?
あるいは、そうしてできた分類は、データによって修正(反証)できる方法論なのか?
進化の理論を前提にすると、本来は何もないかもしれないところに
“その理論にしたがって階層構造を作ってしまう”かもしれないのではないか?
[※DNAデータなどは4つの変数、ATGCしかないので、ただ眺めているだけでは階層構造を認識できないかもしれない]
そういう分類って科学的に有意義な方法論と言えるのか?
(あくまで分類学と体系学に関して)
パターソンはそう考えたようですね。

そして、このEvolutionism and Creationismというトークの中で、
そうした進化分類学の立場を、(変形)分岐学の立場から、
あくまで体系学(生物の関係性を議論・研究するという学問)における影響という観点で、
ガレスピー(ダーウィン以前の創造論の特徴を記述した)や
オーエン(進化を否定した昔の博物学者)を引用しつつ、
ダーウィン以前の創造論になぞらえて批判した。

というわけです。

その中で、
・自然選択等のプロセスを考慮しないという意味で
・Discussion Groupなので議論を進めるためにより極端な立場で話すという意味で

あえて、反進化論という言葉を使って自らを表現していますが、
しかし、進化がなかったとは言ってないわけです。

以上まとめでした。

当時はまだDNA配列そのものを分析する手法も未発達で、分子データはわずかしかありませんでした。
現在の知識を持ってPDF全文を読んでいくのも面白いです。
今後さらに面白いと思ったところを書くかもしれませんが書かないかもしれません。

108ミケ:2018/06/22(金) 14:08:05 ID:hmI6xcyU
「科学と疑似科学とを判別する」スレッドのレスNo.77において
「ダーウィニズム(自然選択説)は反証不能ではないか」という発言がありました。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/5329/1524257541/77

これについてはよく言われる間違いであり、
当スレッド>>12においてNATROMさんが既に
自然選択説が反証可能であることを述べておられます。
>>12では、反証の方法(反証可能であること)が述べられたリンクが紹介されておりますが、
その内容については

>>93で紹介した創造論者イチャモンへの回答テンプレ集
Talk origins
Index to Creationist Claims
ttp://www.talkorigins.org/indexcc/list.html
において
CA211. Evolution can not be falsified.
ttp://www.talkorigins.org/indexcc/CA/CA211.html
CA211.1. Karl Popper said Darwinism is not testable.
ttp://www.talkorigins.org/indexcc/CA/CA211_1.html
の中にまとめられています。

和訳は
ttp://seesaawiki.jp/transact/d/CA211%20%bf%ca%b2%bd%cf%c0%a4%cf%c8%bf%be%da%c9%d4%b2%c4%c7%bd
ttp://seesaawiki.jp/transact/d/CA211%5f1%20Karl%20Popper%a4%cf%bf%ca%b2%bd%cf%c0%a4%cf%b8%a1%be%da%c9%d4%b2%c4%c7%bd%a4%c0%a4%c8%b8%c0%a4%c3%a4%bf

実際はこれらの多くは進化論全体(生物が進化してきたことを含めて)の反証を視野に入れたものですが
進化論全体の中の自然選択説(メカニズム)の反証としては
CA211のResponse1の
「iii.突然変異の累積を阻止するメカニズム」
がギリギリ該当するかと思います。

ちなみに
ポパーが「自然選択説は反証不能」→「やっぱり反証可能」と意見を変えたことは出て来ますが
実際にどうやって反証するのか、これらのまとめの中には出てきません
(「Natural Selection and the Emergence of Mind」を検索すれば読めますが)。

個人的には
「メカニズムとしての自然選択説の反証可能性」
「自然選択による進化の個別事例の反証可能性」
としてはこれではやや不十分に思います。
もっとがっちり述べることができますので、この機会に書いておきます。
(おそらく字数制限に引っかかるので数レスに亘っての説明となります)

109ミケ:2018/06/22(金) 14:13:42 ID:hmI6xcyU
>>108参照
「メカニズムとしての自然選択説の反証可能性」
「自然選択による進化の個別事例の反証可能性」についてのお話。

自然選択説の反証の方法の説明が一番手っ取り早いのは
前述のCA211の例「突然変異の累積を阻止するメカニズム」のように
「それが起こりえないこと」を示すこと、すなわち、
自然選択説に必須の構成要素・前提を否定することです。

まず自然選択による進化の構成要素を整理してみましょう。
自然選択による進化は
・生物の個体間である性質に差があり
・それら異なる性質がそれぞれ遺伝するものであり
・かつその性質の差が繁殖成功度に差をもたらし
・それによってより繁殖成功度の高い遺伝的性質が集団に広まりその生物集団全体の性質(の平均値)が移動することによって起こります。
・さらに突然変異によって新たな性質が供給され上記の過程を繰り返すことで、もっと大きな変化も生じることになるわけです。

これらを満たしたときに、自然選択による大規模な性質の変化が起こるわけで
逆に言えばこれらが否定されれば自然選択説は反証されるということです。
どれを否定するのでも構いません。
生物の個体間に差がないことを示せれば、そもそも自然選択による進化は起こらないと言えます。
これを証明できれば自然選択説は反証できます。
生物の個体間に差があっても、その差が遺伝に起因するものでなければ、自然選択による進化は起こらないと言えます。
これを証明できれば自然選択説は反証できます。
「突然変異の累積を阻止するメカニズムを発見できれば反証になる」というのはこの最後の部分の否定ですね。

「科学と疑似科学とを判別する」スレッドのレスNo.77において
「自然選択説が反証不能ではないか」と疑問を呈したKenさんご本人が
体色の変化が自然選択であることを反証する困難さの例として
【紫外線量に影響される人間の肌】を挙げておられますが
上記観点から考えると
この例は逆に自然選択説が反証可能であることを示す好事例なんですね。

(実際のヒトの肌の色は遺伝の影響も受けますが)
もし環境でしか変化しない性質であれば、
自然選択に必要な前提条件
・それら異なる性質が遺伝するものである
が満たされていないことになり、この性質について自然選択は起こりません。
その性質が自然選択によって変化したという言説は反証されるわけです。

※実際には、人間の肌の色は遺伝と環境の両方の影響を受けるので自然選択で変化しえますが、
環境の影響しか受けない性質の場合は自然選択にかかりません。>>92も参照。

110ミケ:2018/06/22(金) 14:15:10 ID:hmI6xcyU
>>108参照
「メカニズムとしての自然選択説の反証可能性」
「自然選択による進化の個別事例の反証可能性」についてのお話。

>>109の続きで
このような、自然選択の構成要素の否定による反証は工業暗化の例で実際に試みられています。

たとえば、(捕食者への保護色として有利であったという説明に対して)
「蛾の止まる場所から考えて、黒だろうが白だろうが効果がない」という反論がありました。
それを確かめるため、蛾の止まる位置や数種の鳥が黒と白のどちらを食べているか等詳細な実験を組まれ
結果として鳥の捕食圧が暗化個体の頻度変化の主要因であると結論付けられました。
この実験の結果如何では、工業暗化が鳥の捕食圧による自然選択の結果だという仮説は反証されていました。
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%A5%E6%A5%AD%E6%9A%97%E5%8C%96#%E6%8D%95%E9%A3%9F%E5%AE%9F%E9%A8%93

「工業暗化は、保護色による自然選択の結果である」は、上記のように反証可能であり、
間違いであれば反証できるデザインで実験が組まれ、結果として反証できずに、支持される結果となりました。

工業暗化についてもう少し語りましょう。
黒いことが保護色以外の別の点で有利なのかもしれません。
たとえば黒い色は温度を吸収するのに有利です。
あるいは、別の点で有利だったものが遺伝子の多面発現としてたまたま黒い色を発色する場合も考えられます。
このような場合、自然選択によって黒くはなりますが、上記のデザインでは反証できません。

では、「自然選択によって黒くなった」自体を反証することはできないのでしょうか?
いいえ、やはり同じように自然選択の前提の成立条件を疑った実験があります。
たとえば、蛾の黒化は、煤煙に含まれる化学物質によるものではないか、という反論がありました。
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%A5%E6%A5%AD%E6%9A%97%E5%8C%96#%E5%8C%96%E5%AD%A6%E7%9A%84%E8%AA%98%E7%99%BA%E8%AA%AC
もし繁殖成功度の違いよりも
煤煙に含まれる化学物質によって引き起こされた程度のほうが重要であったとしたら
自然選択によって黒化したとは言えません。

もっと極端にいえば、
上で述べた日焼けの例のように
黒くなるか白くなるかが遺伝的ではなく後天的に決まることを示すことができたなれば
「どのような利点かはともかく、自然選択によって黒くなった」ということ自体も反証できるわけです。

以上が、方法の説明が手っ取り早い「自然選択説に必須な構成要素を崩す」ことによる反証です。

111ミケ:2018/06/22(金) 14:22:07 ID:hmI6xcyU
>>108参照
「メカニズムとしての自然選択説の反証可能性」
「自然選択による進化の個別事例の反証可能性」についてのお話。

次は、方法はややこしいですが
自然選択説が反証可能であることが一目で分かる事例を挙げましょう。

「分子進化の中立説」
勉強していて、勘の良い人であれば、この一言だけで十分でしょう。
この中立説そのものと、その周辺の研究成果が、
自然選択説が反証可能であり実際部分的に反証されてしまっていることを示しています。

しかしこれだけではこのスレッドの趣旨に添いませんので解説します。
Wikipediaより「中立進化説」
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E7%AB%8B%E9%80%B2%E5%8C%96%E8%AA%AC

分子進化の中立説は
「分子レベルの進化は自然選択に対し有利でも不利でもない中立なもので、それが集団中に広まるのは偶然によって決まる。」
というもの。
分子レベルの変異は、偶然によって集団に広まる:遺伝的浮動による進化であるというもの。
Wikipediaより「遺伝的浮動」
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%BA%E4%BC%9D%E7%9A%84%E6%B5%AE%E5%8B%95

中立説は、発表当時ダーウィンの自然選択説を否定するもののように受け取られて論争を引き起こし、
結果として
「分子レベルの進化は遺伝的浮動が主因(中立説)である一方、表現型レベルの進化は自然選択説があてはあまる」
「自然選択による進化が起こることを否定するものではない」
というところに落ち着きますが、
これはとどのつまり、
「分子レベルの進化も自然選択によるものである」という仮説が反証され敗れ去ったことを意味します。

自然選択説そのものが反証不能な理論であれば、
中立説がいかに分子データを集めてきたところで
「分子進化も自然選択によるものである」と強弁できるはずです。
反証不能であるとはそういうことです。だからこそ反証不能な理論は科学的には価値がないのです。
ところが実際には、
分子レベルの進化のメカニズムにおいては中立説(遺伝的浮動)に譲ることになったわけですから
この点だけでも自然選択説が反証可能な論理構造であることが分かります。

さて、といっても具体的にどのように反証されたのか?
その方法論はやや複雑です。
ちょうど今、
第一掲示板でハーディ・ワインベルグの法則がどうのこうのという話が出ていますが、
メンデルの法則の再発見ののち、
その遺伝法則に基づいて集団の中の遺伝子が世代を経てどのようにふるまうか、
この記述に数学が大きな役割を果たしまして(H・W法則はその先駆けと言ってよいでしょう)、
木村資生の頃には自然選択とメンデル遺伝を織り込んだかなり高度な数学モデルが登場していました。
そして木村の時代には分子(アミノ酸)配列のデータもそろい始めたところであり、
大体の分岐年代の分かっている生物同士の配列の違いを比較することで、
配列の変化速度が推定できるようになってきたところでした。
そうして集めた変化速度のデータを前述のモデルに当てはめると
自然選択がかかって「いない」と仮定しないとデータに合わなかったわけですね。

そうしたデータを積み重ねて、
最終的には中立説、
形態はともかく分子レベルの進化のほとんどにおいては自然選択ではなく遺伝的浮動が大きな役割を担っている
という主張が認められるに至り、
分子進化までも自然選択による変化であるという仮説は反証されたことになるわけです

112ミケ:2018/06/22(金) 14:32:21 ID:hmI6xcyU
>>108参照
「メカニズムとしての自然選択説の反証可能性」
「自然選択による進化の個別事例の反証可能性」についてのお話。

>>111の続きです。
中立説が成立するまでの過程で発展した数学的モデルと、
現在では当時よりもさらに進んだ分子生物学的知見をあわせて
さらに自然選択説を反証したり検証したりする手法も出てきています。

たとえば同義置換(アミノ酸の変化を起こさない=中立だと確定している塩基置換)や
偽遺伝子(何らかの要因で今では遺伝子として発現しなくなった=どう変化しても中立な遺伝子)がある
ということが明らかになっていますので、いわば比較対照として用いることができるようになり
それと前述の数学的モデルを合わせ
実際に自然選択による進化だと示された事例や、
逆に自然選択であることが否定された事例もあります。
以前第一掲示板で似たようなことが話題になりました。
ttps://6609.teacup.com/natrom/bbs/17681

字数が余ったので…、ついでなのですが
「科学と疑似科学とを判別する」スレッドのレスNo.77において
「ダーウィニズム(自然選択説)は反証不能ではないか」と発言したKenさんは
数年前に自然選択説に対抗するID論を述べておられました。
同スレッドNo.28参照
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/5329/1524257541/28

当時、自然選択であり得ないような変化速度であれば
つまり自然選択の反証ができれば、(品種改良のような)IDの証拠になるのではないか
とか何とか述べておられましたが、
上記で述べたさまざまな数学モデルや
さまざまな自然選択の反証・検証法に照らせば、IDの証拠にはなりません。

まずそもそもとして、
「自然選択を否定するだけではIDの肯定にならない」という当たり前の指摘は当時もありまして
それに対して当のKenさんは何やら反論を述べていたような気がしますが、
上記のように自然選択を部分的に否定してさらに数式モデルを示して自説の正しさを示した中立説の前では
その言い訳もむなしく響くのみでありましょう。
自然選択を否定するだけでは、IDを選ぶ理由になりません。
自己組織化かもしれないし、遺伝的浮動かもしれないし、未知の宇宙線の作用かもしれません。

また、数学モデルに関連して…
たしかshinok30さんが既に指摘しておられたかと思いますが
正の自然選択がかかったときの自然選択での変化ってものすごく早いんですね。
ものすごく速い進化があったところで、
強い自然選択圧がかかったのだなという解釈こそすれども、自然選択であり得ないということにはなりません。

またブタを例として「生き残り得ないものが見つかったとしたら〜」
という話題も出しておられましたが、
生きているのが不思議なくらいの変な生物なんてものはいくらでもあり
またそんな変な生物の生存を許すような特異な環境も数えきれないほどあるため
一つの生き物をもってきて「〜はあり得ない」などとは到底言えるものではありません。
解説はしませんが示唆的な例を検索ワードとして置いておきます。【マルハナバチ レイノルズ数】で検索してください。

またそもそもの話として…、当時指摘していた方はいなかったかもしれませんが、
品種改良は、人為選択などと呼ばれますが、
原則として良い個性を持つ掛け合わせ、良い性質を受け継いだら次世代に残す、
これ要するに自然選択と同じ工程なんですね。
つまり、きわめて強い自然選択がかかったときと結果は同じなんですよね。
(ベーエの述べた還元不能な複雑さが、もし自然選択でない証拠となるのなら、人為選択もまたそれを達成できない)
そうすると還元不能な複雑さをデザインするには、遺伝子操作するようなラボが必要となるでしょう。
そのようなものがあれば痕跡があるはずですよね。

いずれにせよ
人為的な品種改良を行ったという結論を導きたいのならば、
どのような品種改良を行ったのか
掛け合わせなのか、放射線で突然変異を誘発したのか、遺伝子組み換えをしたのか等をきっちり想定し、
自然選択の構成要素を反証するように
人為選択IDが成立するための構成要素を明らかにせねばなりません。
それができないのが「反証不能」というやつです。

自然選択がその構成要件を否定することで反証できるように、
ID論も、構成要素や成立条件を否定すればID論が成り立たなくなるような、反証可能性
いうなれば、詳しい具体的な説明があるでしょうか。

113ミケ:2018/06/26(火) 02:03:01 ID:hmI6xcyU
一応の補足として……、
>>111-112で述べた中立説が肯定された例は
ID論の場合と異なり
自然選択を否定することで遺伝的浮動が正しいとしているわけではないことを付け加えておきます。

>>111で述べているように

メンデルの法則の再発見ののち、
その遺伝法則に基づいて集団の中の遺伝子が世代を経てどのようにふるまうか、
この記述に数学が大きな役割を果たしまして(H・W法則はその先駆けと言ってよいでしょう)、
木村資生の頃には自然選択とメンデル遺伝を織り込んだかなり高度な数学モデルが登場していると述べましたが
(集団遺伝学の発展のことです)
このモデルの中には、遺伝的浮動と自然選択の両方が織り込まれています。

そのうえでデータと比較して
遺伝的浮動のみのもののモデルのほうが実際のデータに合いそうだ
と、こうなるわけであって
単に自然選択を否定することで遺伝的浮動が正しいとなっているわけではありません。
遺伝的浮動が正しい場合の数学モデルが先にあるのです。

114diamonds8888x:2018/06/27(水) 05:21:54 ID:XYloaAbM
>>113
 淘汰係数というパラメータを使いますから、これが0だとわかれば(着目するひとつの具体的進化過程が)自然選択によるという仮説が反証される。でも進化は起きているので、自然選択以外の原因がある。それが何かは、淘汰係数=0という観察事実だけからはわからない。でも他の状況証拠から、遺伝的浮動が有力な仮説である。

 こんな感じでしょうか? 反証といっても完全否定というよりは連続的数値がゼロに近いということで、自然淘汰の要因は極めて少ない、ということになるのでしょうが。

115diamonds8888x:2018/06/28(木) 05:57:54 ID:XYloaAbM
>>114
>完全否定というよりは連続的数値がゼロに近いということで

 そういえば、「ほぼ中立説」というのがありました。

  太田朋子『分子進化のほぼ中立説―偶然と淘汰の進化モデル(ブルーバックス)』(2009/05/21)

116ミケ:2018/06/30(土) 09:49:29 ID:hmI6xcyU
>>114
返事遅れてすみません。

×
自然選択のモデルに照らして
自然選択の要素をゼロとしないと合わないので
しかし変化しているから自然選択以外の何らかの力が働いている


自然選択+遺伝的浮動のモデルに照らして
自然選択の要素をゼロとしないと合わないので
その変化は遺伝的浮動によるものである

ということです。


>反証といっても完全否定というよりは〜

これは実のところ、他の科学理論の“反証”も同様かと思います。
地動説にしてもプレートテクトニクスにしても
理論丸ごと完全否定できる科学理論のほうが少ないように思います。
このあたりはより高度な科学哲学の範疇で、
私の守備範囲でないのでちょっと自信ありませんが。

117diamonds8888x:2018/07/07(土) 09:32:09 ID:P3QJtzNA
>>116
>理論丸ごと完全否定できる科学理論のほうが少ないように思います。

 そもそも理論に一致する膨大な観測事実が積み上がっているはずなので、それを説明できる新たな理論が確立できないことには従来の理論を簡単に放棄することはできませんよね。新理論というものは旧理論が説明できていた膨大な観測事実をも説明できなければならないのです。地動説や相対性理論が良い例ですね。

118たこ焼き帝国:2018/11/01(木) 11:43:54 ID:W5O20kzQ
ノーベル賞を授かった本庶氏は「ネーチャー」「サイエンス」に載っている論文の9割は嘘で、10年後に残っているのは1割程度だと仰っていました。

119ミケ:2018/12/08(土) 13:38:08 ID:KK8Tfcvg
>>118
それは本庶氏の【研究者としての心構え】です。
それを素人さんが事実であるかのようにそのまま信じ込むのはマズいと思いますよ。

本庶氏はインタビューで研究に対するモットーを問われ、
「マスコミの人はネイチャーに載ったからどうこうなどと言うが、自分は自分の目で確信が出るまでやる」
という文脈の中でそう言ってるわけです。

それを一部分だけ取り出して
「本庶氏が言ってるからネイチャーに載ってるのは9割嘘なんだ」などと信じ込むのは
本庶氏の批判しているマスコミの人たち、、、
「ネイチャーに載ってるから正しいんだ」と信じ込む人たちと同じ間違いを犯しています。

本庶氏の主張の核は、

科学研究に携わる者は
【科学的には、どんな理論もひっくり返り得るのだから
権威ある論文に書いてあるからと言って信じ込んではいけない。
場合によっては自分で確かめなければ。】
それを実践するにあたっての心構えとして
ネイチャーに載っているのは9割嘘だと考えておくということです。

もちろん本庶氏自身、実際そう(9割嘘)だと信じているかもしれませんが、
それは本人が実際に確かめる気概を持っているからこそバランスが取れる見方なのです。

自分で研究も実験もせず、ましてや論文の中身を読みさえしない人が、
単に本庶氏(ノーベル賞受賞者等)が9割間違ってると言ってるからという理由だけで
論文に書かれた内容を嘘だなどと断じたところでそれこそ9割がた間違っていることでしょう。

さて、ところで
たとえば10年前、2008年12月のネイチャーにArticleとして載ったものとして
以下のものがありますが、これらは本当に1割しか残っていないでしょうか?9割は嘘だと判明したでしょうか?

たこ焼き帝国さんに限らず、
このレスを読んでいるあなたはそれを自分の目ならずとも、
文献を追ってどれがいまだ正しくてどれが間違いになったか
それともほとんどが正しいとされているままなのか
確かめる気概があるでしょうか?
ぶっちゃけ私はありませんw

腫瘍:単一のヒトメラノーマ細胞による効率のよい腫瘍形成
Efficient tumour formation by single human melanoma cells

細胞:加齢に伴う中心体の方向性のずれが幹細胞分裂を抑制する
Centrosome misorientation reduces stem cell division during ageing

細胞:mitofusin 2が小胞体をミトコンドリアに結びつける
Mitofusin 2 tethers endoplasmic reticulum to mitochondria

細胞:Ktu/PF13は細胞質での軸糸ダイニン前駆体形成に必須なタンパク質である
Ktu/PF13 is required for cytoplasmic pre-assembly of axonemal dyneins


神経:脳の代謝がアストロサイトによる細動脈調節の方向性を指示する
Brain metabolism dictates the polarity of astrocyte control over arterioles

免疫:ランブル鞭毛虫の抗原変異はRNA干渉によって制御されている
Antigenic variation in Giardia lamblia is regulated by RNA interference

細胞:酵母のシグナル伝達系における情報伝達を改善する負のフィードバック
Negative feedback that improves information transmission in yeast signalling

遺伝:レプリソームはRNAポリメラーゼと衝突後、mRNAをプライマーとして用いる
The replisome uses mRNA as a primer after colliding with RNA polymerase

物性:座屈したコロイド単層における幾何学的フラストレーション
Geometric frustration in buckled colloidal monolayers p.898

神経:神経のパルミトイル化されたタンパク質のプロテオミクス解析から明らかになったシナプスの動的なパルミトイル化
Neural palmitoyl-proteomics reveals dynamic synaptic palmitoylation p.904

遺伝:スプライソソームの切断によってテロメラーゼRNAの3′末端が形成される
Spliceosomal cleavage generates the 3′ end of telomerase RNA p.910

細胞:SUMO化はRad18の仲介する鋳型切り替えを調節する
SUMOylation regulates Rad18-mediated template switch


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