鈴木知事の16日の記者会見での発言
鈴木直道知事は16日、道内の新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めをかけるため、札幌市内の外出自粛や札幌市とその他の地域の往来の自粛を道民に要請すると発表した。ただ、いずれも「感染リスクが回避できない場合」が対象との説明に終始。人の動きを抑える政策を打ち出しつつ、人の移動を促す政府の観光支援事業「Go To トラベル」は継続する意向も表明し、道民には「結局、何をどこまで自粛するのか」との戸惑い、いら立ちが広がった。
「Go To トラベル」についても「静かに食事を楽しみながら温泉に入ることで感染が相次いで確認されているわけではない」と述べ、見直しは不要との考えを示した。旭川市から仕事で札幌市に来ていた自営業の男性(58)は「道民には札幌との往来自粛を求めつつ、『Go To』はそのまま続けるのは矛盾している。どっちつかずの政策で効果が出るのか」と批判した。
一方、知事は飲食業界を支援する「Go To イート」については「4人以下で2時間」という具体例を挙げ、国に制限の検討を求めると強調した。大阪府の吉村洋文知事が15日に同様の提案を行っており、国が検討に応じる流れが既にできつつあった。札幌市厚別区の男性(74)は「国が『Go To』を続ける限り、鈴木知事も苦しい立場なのはわかるが、政策に一貫性がない」と話した。
新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長は先週12日の会見で、感染者が急増する状況を示す「ステージ3」に当たると判断すれば「Go To キャンペーンは当然停止だ」と発言していた。北海道札幌市は「ステージ3」だ。しかし、鈴木道知事は17日、Go To除外を求めない考えを示し、コロナ担当の西村経済再生相もあらためてGo To見直しに慎重姿勢だった。
同会議では、医療提供体制に関する警戒度が、初めて最高レベルに引き上げられた。東京医師会の猪口副会長は「入院患者の引き続く増加傾向にともない、コロナ感染症患者のための医療と、通常医療との両立が困難な状況となった」と、強い危機感を表明。「新規陽性者数の増加を抑制するための対策を強化し、重症者患者数の増加を防ぐことが最も重要」と分析した。 都では先月末から酒類を提供する飲食店などに営業時間短縮を要請。「Go To トラベル」に関しても、65歳以上の高齢者や持病を持つ方に対して自粛を求めており、18日以降は年齢制限なく継続する。対策は取っているはずが、新規感染者の減少にはつながっていない。「Go To-」の全国一時停止が始まる28日を前に、警戒度は最高レベル。感染状況も含めて逼迫(ひっぱく)してきた。猪口氏は「医療的に言えば、とにかく新規陽性者数を減らすしかない」と、悲痛な本音を漏らした。