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+不死鳥+

1日陰:2012/11/02(金) 22:24:58 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
   ++++
 
 「――……何で、俺は生きてるんだろう…――」

 あるビルの屋上に、一人上を向きながら倒れ込んでいる銀色の髪をした少年が、降ってくる雨にあたっていた―――。
 
 雨は少年の目から頬へと伝っていき、コンクリートの冷たい地面に落ちって言った―――。

2日陰:2012/11/02(金) 23:14:41 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第01話  +完全不死の不完全少年+  +其の01+

 百城高等学校(ももしろこうとうがっこう)の西校舎にある1年4組のクラスに、ある日転入生がやって来た。
 10月の末。そろそろ生徒全員が長袖の制服に手を伸ばすといった頃に、その転入生はやって来たのだ。
 1年4組の生徒は、全員長袖の制服に身を包み、自分たちのクラスに担任の星崎・保美(ほしさき・ともみ)と共に入ってきた銀髮の髪をした少年を直視した。
 「――…えぇ〜、この子は前々から話にもなっていた、転入生の『一見・一夜(かずみ・いちや)』君です。みんな、仲良くするように!」
 星崎は笑顔で計29名の1年4組生徒に念押しした。それに対し、28名の生徒が『ハ〜イ!!』と元気の良い、まるで小学生のような返事を返した。
 「……では、一見さん、あの空いている席に座ってください」
 そう言って、教室の一番右端にある、ほかの物よりもズタボロに汚い机に座っている黒髪の少年の隣の空席を指さした。
 転入生の少年、基、一夜は「ホ〜イ!」と言いながら、その空席に歩いて行った。まだ、制服の届いていないのであろう一夜は、藍色のフード付きトレーナーを堂々となびかせながら、歩いていく。そして歩くたびに「カサカサッ」となるPUMAのジャージは、静かなクラスに地味に響く。
 「…ヨロシク……」
 「……………………」
 一夜が席の前についた時。すぐに隣の席の幸村・透流(ゆきむら・とおる)に話しかけた。だが、返事は返ってこない。29人の生徒が、星崎の言葉に28人の声しか返ってこなかったのは、透流が何も言わなかったからだ。
 「………オイ…」
 「…!!?……」
 透流は突然目の前に現れた一夜の顔に驚き、少し飛び跳ねた。
 「…夜・露・死・苦ゥ!!」 
 ニカッと笑っている一夜に、透流は何の言葉も返さなかった。

3日陰:2012/11/03(土) 10:49:18 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第01話  +其の02+

 百城高等学校が昼休みに回った頃…。一夜はクラスの男子と女子に囲まれていた。
 「ねぇねぇ、一夜君って前はどの学校にいたの〜?」
 「一見は何の部活に入んだ?」
 「好きな女子のタイプは〜?」
 …っと、言った具合に一夜は質問攻めにあっていた。一夜が整った綺麗な顔立ちをしているのもあって、一夜を好む女子の方が男子より多い。
 「ん〜、前の学校つっても、いろんな学校にいたしな〜〜…。あと部活には入る気ねーよ。バイトしなきゃイけねーから……。んで、好きな女子のタイプは友達を守れるような強い子かな〜」
 3つすべての質問に答えたあと、軽く右目を閉じウインクを飛ばす一夜に女子全員が「キャ〜〜〜!!」と感激の声を上げた。それを見て男子全員が、「こいつ何ちゅー奴だ…」と呆れるのだった。
 「…ん?ツーか、一見ってバイトしてんのか?」
 男子生徒がそう言うと一夜はニカッと笑い「あぁ」と言った。話によると、両親は二人とも共働きで下に妹がいる一夜が少しでも家計の支えになればと思い、バイトしているらしい。
 「一夜君って、家族思いなんだね〜。うちも両親共働きで、妹もいるけどバイトしようなんて考えたことないな〜〜」
 一人の女子が一夜の机に肘を立て頬杖をしながらニッコリと微笑む。
 「妹さんの名前はなんていうの?」
 一人の女子生徒が何気ない気持ちでそう聞くと「美夜(みや)」と一夜は説明した。
 小学4年生で、運動がとても好きだったと、付け加えた。その他にも家族のこと等も説明してくれた。父は千晶(ちあき)という名前で、工事現場の現場監督ということ、及び自分は父親似という事や、母は未咲(みさき)という名前でデザイナーの仕事していること、妹の美夜は母親似だということなど……。
 「……そういや〜、隣のこいつ、何でこんなズタボロな机に座ってんの?」
 初めての一夜からの質問だったが、その質問には生徒全員が一気に静かになった。

4日陰:2012/11/03(土) 11:50:43 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第01話  +其の03+

 百城高等学校の屋上。そこにはフェンスの間に手をかけながらジッと空を飛んでいる鳥を見ている透流がいた。
 顔には其処らじゅうに絆創膏やらシップやらが貼ったり、手にもぐるぐると包帯が巻いてある。
 「……ここから落ちたら………」
 ものすごく小さな声。風によってなびく黒髪は透流の虚しさをアピールしている。
 「死ねるかな…」
 そう言った途端風がピタリと止まり、学校の屋上に数羽の鳩が飛んできた。
 「…………………」
 透流は何も言わず、フェンスに足をかけ少しづつ上に上がっていく。そして、屋上のコンクリート地面から4mほどの高さにあるフェンスの一番上に座った。
 (…もう……)
 上から眺める下の風景はまさに小さく、飛び降りたら即死にも見えてきた。
 そして透流はそっと目を閉じると、ツゥーーと頬に涙が通った。
 「…嫌だよ……」
 「…死ねるだろうな〜〜……」
 透流にかかった咄嗟の声。
 透流はすぐに声のした屋上の出入り口に目をやった。するとそこには、ジャージのポケットに手を突っ込んだ一夜が居た。
 「なん…で……」
 「この学校は1階1階の高さが無駄に高い、ソレだけじゃなく、この学校はなんでか4階建て、それプラスフェンスの高さなら、確実に死ぬだろ」
 トコトコと透流の真下に歩いていく一夜はニッコリと微笑んでいた。
 「何しにきたんですか…。一見さん……」
 ブルブルと震えた声と同時に透流の目から大粒の涙が溢れた。
 「…別に何ってわけじゃねーけど、…お前、何で死にたいんだ?」
 ケロッとした顔で聞いてみた一夜だったが、その問いに何の回答も返ってこなかった。
 「何でも良いじゃないですか……もう………疲れたんですよ…」
 フェンスを握った手がより一層強くなる。
 「疲れたから死ぬのか?」
 下から上を見上げる一夜は質問してみた。それに対して透流は「はい…!」とヤケクソのような声で答えた。そしてまた、弱い風が吹く。風は一夜と透流の髪を横になびかせる。
 「…………」…透流も一夜も声を出さない。
 「……お前って―――」
 一夜のかけた言葉に透流は後ろを振り返った。

5日陰:2012/11/03(土) 12:22:39 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第01話  +其の01+

 「…………へッ」
 一夜のかけた言葉に透流の涙が停まった。
 「嫌だから、お前って……」
 一夜は笑ったまま、顔の形一つ変えずに次の言葉を発した。
 「スんげぇ強いんだな」
 風が止まり、鳩が飛んで行き、学校の昼休みを終えるチャイムが同時に起こった。
 透流は一夜の言っている意味が理解できなかった。しかも一夜は「あ、やっべ、俺もう教室に戻るは!!」と笑いながら言い去っていってしまった。
 「……………」
 残された透流はただ唖然としていただけだった。

6日陰:2012/11/03(土) 13:39:17 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 [反省]

 ↑の其の01ではなく、其の04でした。(T▽T)

7日陰:2012/11/03(土) 14:23:44 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第01話  +其の05+

 (あの、転校生の子……一体何者なんだろう………)
 透流は一人、家路を歩いていた。それも誰一人通らない静かな山道を。周りが暗くなっていることもあって、足元もまともに見えない。
 透流は山道を抜けた、住宅街に暮らしている。その住宅街に住むのは透流だけなので、登下校はいつも一人だ。
 そのせいで……
 「…っお、透流クンじゃ〜ん!」
 3年のチョイ不良数名に目を着けられてしまった。
 透流自身、登下校構わずいつも同じ場所で待ち伏せまがいな事をする、この者達に嫌気が差してきた。
 今日もいつもの屋根と椅子付きバス停留所で3名の3年生が透流を待ち構えていた。全員耳にピアス、指にはドクロの指輪、両手首には黒いバンダナ、といった具合にアニメにでも出てくるかのような格好をしている。
 「し、東雲(しののめ)先輩……」
 透流は足をピタリと停め3人を見た。3人はそれぞれ透流の前と左右に配置し、透流の逃げ道を奪う。
 「あのさぁ、透流くん。悪いんだけどお金貸してくんない?」
 3人の中のリーダー的存在の東雲・雅哉(しののめ・まさや)はポンッと透流の肩に手を置き目が笑っていない笑を浮かばせる。
 お金を貸す。それはつまり、お金を一時的に貸してもらい、定期的に返すというものだ。返す場合には利子をつけてもいい。だが、この男は「貸して」と言いながら返したことが一度もない。まぁ、そんなもの当たり前だ。この世の中金を借りて金を返す不良がいるなら、「カツアゲ」なんていう言語は存在しない。
 「……い、いくら…ですか」
 少し怯えながらも聞く透流に東雲はウ〜ンと真暗な虚空を見つめ、そして指を5本立て、パーのような手を作り「5万くらい?」と首をかしげて言い出した。
 今透流が持ち合わせている金は3千円程度。全くと言っていいほど足りない。と言うか、5万なんて金を何につぎ込むというのだ…?というのが一瞬透流の思考回路に思い浮かんだ事だった。しかし、今考えなくてはいけないのは、要求されている金、5万をどうやって3千円にしてもらうかだ。
 「ド〜したの、透流く〜ん?」
 考え込んでいた透流にウザイニヤケ顔で、東雲は言った。
 「…あ、あの、い……今、持ち合わせが…なく……て……」
 透流の途切れとぎれの言葉に東雲は「あぁ゛!?」と荒い言葉を上げる。

8日陰:2012/11/03(土) 16:34:42 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第01話  +其の06+

 ぶん殴られる…、死んだかも…、そんな言葉が透流の脳裏を横切った。
 「んじゃぁ〜、今持ってる金全額貰えるかな?」
 東雲は、笑いながら学生鞄の中に手を突っ込みチェック柄の縦長財布を取り出す。
 「………ナァ〜ンダ、3千円ポッチしかないじゃん…。っま、いっか…。ハイ、お前らに千円づつ…」
 そう言って東雲は舎弟の2人に千円づつ渡す。
 見ていた透流はどんどん不機嫌な気分になる。
 「あとは、821円かァ〜。…っま、明日の給食費もいるし、コンだけは残しとくね〜…」
 東雲の舎弟が「雅哉クンヤっさしィ〜」と叫んだ。「まァね〜!」とこれまた叫びながら東雲は言った。
 そして、東雲は透流の財布を地面に落として、透流をすり抜け後ろに歩いて行った。
 「…………………」
 (何で……)
 透流は歯を噛み締め、手を強く握り締めた。
 そのせいか、誰かが自分に近付いてくる事に全く気付かなかった。
 透流は強く握られていた手を開きソッと財布を拾おうとした。…すると
 「…ホラ」
 透流よりも先に、透流の財布を拾い上げた人物がいた。それは、一夜だった。
 「何で…?」と透流が聞くよりも先に一夜は立ち上がり、持っていた鞄を全力で東雲の背中にブン投げた。『バゴォォン!!!!!』という音が静かな山中に響いた。少なくとも透流たちから東雲等までは5mは、離れている。
 (ッな!…この距離で、鞄を…!!それも、あんな音たてて…!!…)
 透流は目を丸くして後ろの光景を直視する。

9日陰:2012/11/03(土) 17:34:06 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第01話 +其の07+

 「…ッァ…ッタァ〜〜………。…誰だよ……一体…」
 「誰だと言われちゃぁ―、教えねーわけにはイカネー!!今日本日より、百城高等学校1年4組新生徒となった…!!!!」
 背中を押さえ、ゆっくり振り返る東雲に、一夜はビスっと音を立てながら左手の人差し指を立て、右手を腰にあて、まさに上から目線の格好で(坂の上なこともあって…)叫ぶ。東雲たちは、そんな一夜を険しい目で視る。
 「一見一夜!!!!!夜露死苦ゥ!!!!!!!」
 ニカッと歯を見せながら笑う一夜は、まさに負けと恐怖を知らないといったような顔をしていた。
 そして、これはもう、東雲等に対しての宣戦布告としか考えられない…。
 「ナぁ〜に…言ってんのボクちゃん…。俺らのこと舐めてんの……」
 目の下を思い切り黒い影を作り、歯を「ギリギリ」と言わせながら、3人は学生鞄を道路に放り投げる。
 「ご愛憎様だなぁ〜!俺は男女両性を舐める気なんてミジンコたりとも持ち合わせてねぇ―!!!」
 一夜は、手をジャージのポケットに入れ直し、3人の元へ歩み寄っていく。東雲たちも険しい表情で一夜に歩み寄っていく。
 そして、これはまさにまずい状況だと直感的に感じた透流は、今の場所から数歩後ろに下がった。
 「一見君とか言ったっけ…君、もしかしてだけど馬鹿?」
 「馬鹿だから学校通ってんじゃん」
 「…ッフ……正論だよ、一見君」
 「またまたご愛憎様。いつまでも一見君とかホザくな初対面」
 「…俺の名前は、東雲雅哉…。百校の3年だよ」
 「……じゃあ、尚更………」
 歩きながら繰り広げられる口論が一瞬止まった。東雲と一夜は向かい合ったからだ。東雲の方が一夜より背が高いのもあって、一夜は東雲の顔を見上げる。
 「全力でブン殴る!!!!!!」
 先ほど笑っていた顔が怒りのものに変わり、ポケットに入っていた手を取り出し、拳を作った。

10ピーチ:2012/11/03(土) 18:10:42 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
日陰さん>>

不死鳥、題名から面白そう←

一見君の「よろしく」の感じがある意味凄いw

……て言うか、一見君強いね←今更

11日陰:2012/11/03(土) 18:58:23 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第01話  +其の08+

 一夜の一言により開始した1VS3の喧嘩。その喧嘩はたった9秒で終了した。勝者は一夜。しかも一回として怪我をせず、勝利を掴んだ。
 まず第一投目として東雲の顔面を思い切りブン殴った一夜。そのまま残り2人の頭を掴み『ガチゴォォォン!!!』という音を立てながらぶつけ合わせ、二人まとめてぶっ倒れた。
 +――――そして所変わって―――――――+
 「――― 一見さんって物凄い強いんですね…。ビックリしました……」
 坂の上の住宅街の並んでいる所に唯一ある公園のブランコの柵に座りながら透流はブランコに座る一夜に言った。
 先ほどの光景を見てそう思わない者は少ないだろう。だが、一夜はそう言われてもなにも考えていないような憂鬱な顔をしていた。
 「……………」
 「……………」
 二人とも黙り込み一切口を開かない。先ほどまでうるさい程喋っていた一夜が、何故か何も喋らない。
 「……あの」 
 「お前は…」
 突然口を開いたかと思うと透流の言葉を遮る。
 「…お前は、《絶対不死の不完全人間》って知ってるか…?」
 『絶対不死の不完全人間』?一体それはなんだと言う様な顔で透流は一夜を見つめる。それに気付いたのか、一夜は薄笑いを浮かべた後、説明し始めた。
 「この世に存在すること自体が神に背いていると言われている人間。……もしお前がそんな人間だったら………どうやって死のうと思う…」
 ニコッと笑う一夜の顔に、どこか面影を感じる透流。
 だが、透流自身そんな人間聞いたことも見たこともない。そして、最後に付け加えられた「お前なら、どうやって死のうと思う」という部分の意味が上手く理解できない。
 「…ッフ……っま、どうでも良いけどな〜!…つーか俺もう帰るわ!」
 そう言うと、一夜は立ち上がり、そそくさとと公園の出入り口の方へ歩いて行った。
 「………」
 「…あと、もう死ぬなんて考えんじゃねーぞ。この世の中には死にたくても死ねない人間が居んだからよ」
 ヒラヒラと横に振られる手を見たあとに、透流はニッと笑い「うん!」と呟いた。

12日陰:2012/11/03(土) 19:03:48 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチさん>>

 コメント有難うございます!

 一夜クンは私的にも気に入っているキャラです!

 ですが、私自身「一見一夜」と並べてみると「…四字熟語に見える」と思うようになってみました…(やちゃったけど、面白いからいっか〜

 まぁ、これからも頑張っていこうと思います(^^♪

13日陰:2012/11/03(土) 19:42:21 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第01話  +其の09+

 翌日、透流は顔の絆創膏や、手に巻かれた包帯をすべて家において学校に行った。いつもの場所には東雲たちはおらず、学校に着くと東雲と東雲の舎弟が顔に絆創膏をして今まで透流から借りた金を全額返済してきた。
 それだけなら驚く言うよりも嬉しいと言う方が良いのだが、クラスの朝の会で星崎に
 「えぇ〜、昨日転入してきたばかりの一見君がご家族のお仕事の都合で転校することになりました…」
 と言われたことには流石に驚いた。まだ1日しか経っていないのになぜ。
 女子の全員が悲しみに暮れ、透流は只々驚いていた。
 (…まだちゃんとした友達にもなってなかったのに……)
 ソッと目を隣の席に写す。まだ真新しい机しか目には入らなかった。
 +――――――――――+
 時間が経ち、大休み。まだ悲しみにくれている女子たちは皆で集まり一夜のことを話し始めた。
 透流は学校の屋上に行き、またフェンス越しに外を眺めていた。
 (……………一見さん)
 ヒューと横に吹く風は暖かい頬には冷たすぎる。
 (あの人は一体何者だったんだろう……………ん?)
 そんなことを思いながら顔を横に向けるとフェンスの網に一枚の紙が結び付けられていた。それも神社なんかのおみくじを木に結ぶような結び方。
 透流はフェンスの下の方に結んである紙を解き、何重にも畳まれていた髪の内側に目を通す。そこには……。

14日陰:2012/11/03(土) 20:37:23 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第01話  +其の10+

 『四人家族を乗せた軽自動車が崖から転落』
 『四人の内、三人の死体が発見され、もう一つの死体は崖下の川に流されたと推測され警察官百人掛かりで捜索中』
 『今回の事件で発見されたのは、四人家族の父、一見・千晶さん、母、未咲さん、長女、美夜ちゃんの三名。只今高校生の一見一家長男である一見・一夜君の捜索に全力を尽くしている』
 
 同じ意味の記事が何枚も貼ってある紙。そして、一見・一夜という一人物の名前。付け加えて記事の日付は六年前。
 透流は言葉を飲み込んだ。記事には、通りがかった野次馬が撮ったと思われる事故直後の写真と、一見一家全員の顔写真が公開されていた。そこには見覚えのある一夜の顔写真もあった。
 「…なッ……!」
 +―――――――+
 『よかったの〜?また颯爽と消えて…?』
 とある街のビルとビルの間。そこには電話越しの女性に笑いかける銀髪少年がいた。
 「良いんですよ、五十嵐(いがらし)さん。今回は1日だけだったし、何より俺はあんな学校興味無いんで」
 『興味とかじゃなくて〜…。はぁ〜〜、もう言いわぁ。それより、この前頼まれてた¨やつ¨、作れたから明日にでも取りに来てくれる?』
 「流石ですねー…。頼んだの一昨日ですよ?凄すぎますよ、¨武器作りの天才伊鈴(いすず)¨さん」
 電話越しの女性は、「別にイイでしょ?それと、その名前使わないでくれる?」と笑いかけた。
 「アハハッ、…まぁ巫山戯話はここくらいにして本題に入りましょうか?」
 『………そうね…』
 +――――――+
 「な、なんで…!?」
 透流は記事の紙をクシャっと強く握り締め、昨日の一夜の言葉を思い出した。
 『絶対不死の不完全人間』
 +――――――+
 「絶対不死の不完全人間…正確には『完全不死の不完全人間』つまり、俺を狙ってんのは一体誰なんですか?」
 ビルとビルの間に差し込む太陽の光は、確かに一夜を照らしていた―――。

15日陰:2012/11/03(土) 21:35:01 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第02話  +守り屋と殺し屋+   +其の01+

 11月に入り、流石に肌寒くなった頃。一人の女子大学生、霧嶋・和泉(きりしま・いずみ)は黒い葬式用の服に身を包んで一つのお墓の前に立っていた。綺麗な茶色の長い髪は顔にかかってうっとおしい。
 墓に掘られていた名前は月文家(つきふみけ)。墓誌に、一番新しく掘られている名前は月文・拳(つきふみ・げん)という名前。歳は、二十一とされている。
 和泉はここに来るまでに買ってきた花束をそっと墓前に飾り、手を合わせ「拳くん…」と呟いた。
 +―――――――+
 自分のマンションへの帰り道。和泉はあるデパートに立ち寄り、ウロウロと本屋を歩き回っていた。
 そして雑誌コーナーに立ち寄り、車の雑誌を片手に取り、中をペラペラとパラ読みし始めた。
 (…何度見ても、車の良さなんてわかんないや……なんでこんなのばっかり買って読んでたんだろう…拳くん)
 ニッコリと微笑む和泉の目に、うっすらと涙が浮かんできた。
 「……ネーチャン、女なのに車なんか興味アンだ〜?」
 突然、和泉に男の声がかかってきた。
 驚きながらも和泉は振り返る。すると、自分のすぐ後ろに銀色の髪をした少年が肩にギターを入れるような鞄を担いで立っていた。
 「……あ、え、えーと…」
 「あぁ、俺は、一見一夜。…っで、ネーチャン、女なのに車なんか興味あんの?」
 和泉は少し戸惑ったのだが、笑う一夜に対して、和泉も笑い返した。

16日陰:2012/11/03(土) 22:28:22 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第02話  +其の02+

 「―――…どう、一夜くん。ここの料理おいしいでしょ?」
 デパート1階にあるパスタ屋さん。店の中は洋風系にアレンジしてあり、少し暗めな店内に客席の机の上に唯一ある電灯。流れている音楽はその店にピッタリだった。そこで、一夜は和泉にパスタをご馳走になっていた。特に理由はないのだが、何故か和泉が行き成り「おごらせて?」と言い出したのだ。
 「おう!めちゃくちゃ美味い!!あり得ないけど、頬落ちそう!!!」
 一夜は皿を持ち上げ、フォークを器用に使いながらドンドンパスタを口に頬張る。見ているととても上気分になる。しかも、先ほどの言葉を叫ぶように言った事もあって、お店の人も顔を和ませる。
 「…でも‥本当に、良いのか…?こんなに…美味いもん‥‥おごってもらって…」
 口をモゴモゴと言わせながら一夜はパスタを飲み込む。
 和泉は「別に良いのよ」と笑いながら自分のパスタのフォークに手を伸ばす。
 「そう言えば、一夜くんって学校はどうしたの?今日お休み?」
 パクっとパスタを一口、口に頬張ったあと、和泉は一夜の顔を眺めながら訪ねた。
 今日は平日。しかも今は真昼間だ。一夜は見るからに高校生なので、そう思うのは当然だ。
 そんな質問に対して一夜は、「仕事がイロイロ忙しくて、まともに学校通えてねーんだよ…」と答えた。
 (仕事…?バイトのことかな…?まだ若いのに偉いな〜…)
 内心そう思っていた和泉だったが口の中にパスタが入っているので言葉にはできなかった。
 サッサとパスタを飲み込み先ほどの台詞を言おうとした時、和泉と一夜の携帯が同時に鳴った。
 二人は驚きと同時に少し笑いながらも携帯に出た。和泉は席を立ち一夜から距離を取る。
 「…モーシモ?……っお、ヤッパ、五十嵐さん!」
 黒いスマホに耳を当て聞き覚えのある女性の声に対し一夜は笑った。電話の相手の女性、五十嵐・伊鈴(いがらし・いすず)は電話越しに『ギィィィィィィン!』と鉄を切断させるような音に負けないような大きな声で『今どこに居んの?!!』と聞いた。
 「今ですか?ウ〜ン、めちゃくちゃ美味いパスタ屋だけど?」
 『…あぁあ、brown(ブラウン)ネ……』
 そうこのパスタ屋の名前はbrown。どうやら伊鈴はこの店のことを知っているらしい。
 「なんスカ、五十嵐さんこの店知ってるんすか?」
 一夜はメニューに書かれている店の名前を見ながら聞いた。
 『ん、まぁね。っで、昼食中悪いんだけど、来てくれる?新しい防御用品作ったから』
 そう言われると、一夜は「ヘーイ」と言いながら電話を切った。

17日陰:2012/11/03(土) 23:16:43 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第02話  +其の03+

 「―――ゴメーン、一夜クーン。今からちょっと用事でき……って、あれ、…?」
 和泉が電話を終え席に戻ってきた時、そこには千円札が一枚、机の上にあるだけで一夜は居なくなっていた。
 和泉が店員に聞くと、電話がかかってきて、切った直後にカバンを持って店を出ていったという。
 「…そんなぁ……」
 和泉はそう言うと残りのパスタを急いで平らげ、千円払ってそそくさとbrownを後にした。
 +――――――+
 所変わって、とある『お屋敷』。その屋敷は山の中に堂々と建てられ、一体どれほどの土地を取っているのだろうと思うほどデカい。
 人などあまり来もしないような所に建てられている屋敷の表札には『不和(ふわ)』と筆で引筆された物がかかっていた。
 屋敷の玄関は大きく開けられており、屋敷の室内がよく見える。そんな屋敷内に響く声が一つあった。 
 「かぁ〜しぃ〜らぁ〜、菓子作ってやったでぇ〜〜。はよ、せぇへんと、架月(かつき)らに喰われてまうでぇ〜〜〜!!」
 屋敷のツルツルとした廊下を水色の長髪をした小さな子供が歩いていた。見るからに小学4年生くらいに見える。
 「…おぉ、光聖(こうせい)〜。今仕事が終わったトコロだ少し待ってろ」
 「フフェーい」
 子供、高凪・光聖(たかなぎ・こうせい)は「資料室」と筆で書かれた部屋のふすまからから顔を出した髭面で左目を黒い眼帯で覆っている男に止められ、資料室の前で立って待つことにした。

18ピーチ:2012/11/04(日) 07:04:59 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
日陰さん>>

題名の意味が理解できた。……気がする←おい

一夜君の絶対不死不完全人間、だっけ? あれって絶対死ねないってこと?

だったら羨ましいかも←

19日陰:2012/11/04(日) 09:38:58 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 ピーチさんご名答!!

 『絶対不死の不完全人間』、正式な名前は『完全不死の不完全人間』とはつまり、絶対に死なないってことですね。

 死んだら生き返る的なお話にしたいんですが、それじゃ面白くない&少し怖い&生き返る直前がなんか思い浮かばない&めちゃくちゃ不気味なので考え直してます。

 あと、これから人が今までより多くなってくるので、気を付けてくださーい!

20ピーチ:2012/11/04(日) 10:24:10 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
日陰さん>>

まじですかw

……この場合、あたしが敬語にした方がいいんですかね←当たり前だ

と言うか、よくこんなの思いつきましたよね←

21日陰:2012/11/04(日) 11:08:59 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第04話  +其の04+

 またまた所変わって、とある大きな株式会社。40階建で、営業者約670名のその会社は、裏ではとある組織を結成させていた。
 +――――――+
 「―― 遅れてすみませーん…!」
 和泉はその会社の最上階にある会議室にヒッソリと足音一つ立てず入っていく。会議室には縦長の四角の机がドンと置いていあり、縦に6つづつ、横に2つづつ置いてある背もたれ付きの椅子。
 「おセーぞ、和泉。…とにかく座れ……!」
 会議室に入った和泉をたしなめ、かつ自分の席の隣を示す男、藤北・欧明(ふじきた・おうめい)。茶髪で短髪、容姿端麗な性格で、整った白い顔に惹かれない女は少ない。
 和泉は、机の横面に座っている欧明の隣の空席に腰を下ろす。
 +―――――+
 「―まず我々『人件保護対策機関』に対しての敵についてもう一度詳しく話しておく…」
 和泉達の向かいに座る、白髪の肩まである長髪を一つ結びにしている男が、皆に聞こえるほどの声の大きさで言った。
 男、天璋院・高野(てんしょういん・たかの)は『人件保護対策機関』という対策機関の総帥代行者だ。その対策機関は、簡単に言えば市民を警護するSPのようなものだ。
 「前々から、我々に対して、敵対する関係であった『人権殺害規程機関』が最近新しい動きを出し始めた」
 高野の言葉に皆は言葉を飲まずにはいられない。
 「…まぁ、今はそんな事より、もまずい事が起こった」
 「まずい事?」皆が皆、高野の言葉に疑問の言葉を発する。
 そして、その後の高野の説明により、皆は今後の方針について、何も聞かずにも理解できた。

22ピーチ:2012/11/04(日) 11:13:32 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
日陰さん>>

和泉さんの職業がいまいち分からん…←人のこと言えるかw

でも何となく凄いってことだけは分かった!←おい

23日陰:2012/11/04(日) 11:33:39 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 もともと、この間担任の先生に「なんで人は死ぬんですか?」と聞いたら、「それが人だからです」と言われて、じゃあ死なない人の話作りテーと思い作ったのがこれですね。

 一夜くんの名前は友達と一緒に考えてました。「一破(いっぱ)」にするか「鋼牙(こうが)」にするか悩んでたところに「一夜でいっか〜」と全く論外な名前で返答。

 まぁ、ボツになった名前はこれから出していこうと考えています!

24日陰:2012/11/04(日) 11:37:02 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 また返信遅くなっちゃった〜〜〜(つд⊂)

 でも、和泉さんのお仕事はこれから良く分かると思うし、関西弁の光聖くんらもろもろこれから詳しく説明していくと思います(多分……(・_・;)

25ピーチ:2012/11/04(日) 12:27:03 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
日陰>>

……担任の先生凄いな←

まさかの論外な名前出ちゃったわけね!?

和泉さん何か警察関係の仕事みたいな?←

26日陰:2012/11/04(日) 13:23:01 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第02話  +其の05+

 夜。午後10時を回った頃。和服を身に付け、腰に赤い鞘のついた刀を拵えていた、男5人が一つの鉄骨ビルの上で下を見下ろしていた。
 「……日向(ひゅうが)、本当にここで間違えないのか…?」
 ビルの上で立っている長髪の少年は胡座をかいて座っている少年に問を放つ。
 「間違いね―っスよ、渦築(うずつき)さん。確かにここで生気の確認されてない人間、いやバケモンが確認されたんすよ〜」
 黒髪で短髪な少年は青色の生地の着物をダラシなく着ている。少年、日向・時輝(ひゅうが・ときてる)はニヤニヤしながら長髪の少年に向けていた目を元の下の方に戻した。
 「にしても渦築。頭(かしら)の言ってた完全不死の不完全人間なんて、どうやって他の奴等と見分けんだよ。俺らの肉眼は機械のセンサーじゃねーんだぜ?」
 今度は赤い髪をした少しロングヘアーの青年が、黒髪の少年、渦築・奈津樹(うずつき・なつき)に愚痴を放つ。
 「俺も知らん。頭領(とうりょう)からしたら『何とかナんだろう』って言われた。だから詳しいことまでは知らん」
 奈津樹は胸の前で腕組をして答える。赤髪の青年、高角・雅日(たかつの・みやび)は「…メンドクセー」と呟いた。
 「何でも、えぇけど、なんでオレも来ることになったん?別にオレは屋敷で菓子作っとたほうが楽しいんやけどな〜?」
 そう言ったのは、あの子供光聖。
 光聖はお菓子作りが得意で、良く「皆んな」のために菓子を作っている。
 「…………渦築………」
 物知らぬヒッソリとしたその声は男の物だが、裏返せば女の物にも聞こえる。
 「ん!…何だ宇田川(うだがわ)?」
 肩まであるなる黒く長い髪を、そのままストレートに伸ばしている色白の男は黒い布で口を隠している。その少年、宇田川・リキヤ(うだがわ・りきや)はそっと人差し指を立て下の人ごみの中を指さす。
 「………あの銀髪の人間。……否、バケモノ、見付けた…………」
 リキヤの一言に残りの4人は人混みの中で唯一目立つ、銀色の髪をした男、一夜を発見した。一夜は携帯で誰かと笑いながら話している。肩にはまだギターを入れるような鞄が担いであった。
 「…なんでアイツだと言い切れる。宇田川…」
 「……アイツ、こっちを見て笑った…………」
 「ソンだけじゃ、いいきれねーだろ?今時、こんな寒い夜の中着物着て刀拵えてるヤツ見付けたら、観ないわけにはイかないだろ?」
 「だったら、ほかのヤツ等に言ってもええんちゃう?オレ等が此処に居るんは本当なんやで」
 次々と言われていく言葉に対して、時輝は「んじゃ、俺確かめてきますよ〜」と言い出し、なんとそこから下に飛び降りた。

27日陰:2012/11/04(日) 13:42:38 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 いや、なんかもうこの際、ボツになった名前は、これから出していくんだな〜、これが(←これがって何?

 あと和泉ちゃんたちは、警察的なお仕事してる人たちだネ。………多分(←オーイ(ーー゛)

28日陰:2012/11/04(日) 16:49:42 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 第02話  +其の06+

 『タンッ!』という音が一定の音を上げ、地面に時輝は降り立った。
 腰に下げてある刀の柄を握り、ヘラヘラした顔つきで、ビルの壁に凭れて携帯越しに喋っている一夜に近付いて行く。
 刀を持った男が着物を着て歩いている、という光景は正に不思議な物だ。だが、その道を通る人は誰一人として時輝に気付かない。
 「…なぁ、完全不死の不完全人間、って死なないって事なん?ホンなら、ドないしてあの銀髪処刑するん?」
 ビルの上。光聖はほとんど身を外に乗り出す。奈津樹、リキヤ、雅日の三人も足の半分を外にだし、一夜と時輝の距離を見る。あと5秒もあれば、時輝は一夜の元に着くという距離になった時。
 『!!!!??』
 (動いた…)
 そう。一夜は携帯で話しながら凭れていたビルの中に入っていった。しかも、一夜は一瞬だけ、チラッと奈津樹たちと時輝を見た後に。その行動には誰一人として気付かなかった者はいなかった。
 「俺たちも動くぞ。光聖、お前は頭領に報告しろ。………行くぞ…」
 奈津樹の言葉に全員が『オウ!』と了解の言葉を返し時輝同様、ビルの下に降り立った。
 そして、一夜の入っていったビルの前で待っていた時輝と落ち合い、すぐに一夜を追って五人はビルの中に入っていった。

29ピーチ:2012/11/04(日) 17:21:40 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
日陰>>

警察的な仕事なんだ…ちゃんとした警察じゃないんだ…

…銀髪って、凄い呼び名だねぇ…←

30日陰:2012/11/05(月) 17:41:27 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
 ピーチ≫

 ちゃんとした警察じゃないんだな…これが……

 あと、銀髪、って言うか変わった髪の毛の男の子大好き…!

31日陰:2012/11/05(月) 18:01:55 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
 第02話  +其の7+

 ビルと言うよりも、デパート、の中に入って行った一夜。そして、一夜を追って同じくデパートに入っていく奈津樹たち一行。
 光聖は片手に携帯を握り、皆より少々遅れて中に入る。
 「……あの野郎…。…完全に俺達に分かっていながら、隠れようともしやしねぇ……。ウザくせぇ…」
 一夜の後ろをひっそりと付いていく奈津樹達。だが、雅日は愚痴をこぼしながら「気付いて下さい」とでも言っているかのように、つけている。
 「…雅日さん、少し静かにして下さい。生気と殺気、出しすぎると他の人に見られますよ?」
 と、言ったのは時輝。雅日は「んだと、コラァァァ……」と怒りながら拳を作った。
 「…おい、行くぞ!あの野郎、呑気にコーラなんか買いやがった……!!」
 奈津樹の言うとおり、一夜はまだ携帯で喋りながら、自動販売機でコーラを買って、物陰に隠れている階段へと歩いて言った。
 一夜が完全に物陰に隠れると、5人はその物陰の曲がり角の方へ歩いて言った。
 そして、曲がり角を曲がり、階段を視野に入れた瞬間――――。

32ピーチ:2012/11/05(月) 18:16:55 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
日陰>>

おわっ、何か続きがめっちゃ気になる!

雅日さん切れると怖そう←

33日陰:2012/11/05(月) 18:21:30 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
 第02話  +其の08+

 『プシュゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!』
 先頭をきって、一夜を追ってきた雅日の顔に、舌にくる何かの液体が飛んできた。残り4人の顔にもその液体はかかり、全くと言っていいほど5人は一体何が起こったのか理解できなかった。だが唯一、この液体はコーラであることだけ理解できた。
 「………っな……!」
 「ククッ…!……バーイ、バーイ!!!」
 呆気にとられてほとんど何も理解できなかった雅日だったが、一夜が笑いながら片手に持っていたコーラの缶を投げ捨てて、背後にある階段を2段づつ上がって行く光景を見て、大体の成り行きが見えた。
 考えるに、一夜が、買ったコーラを雅日達に浴びせた、としか考えようがない。
 雅日は、一夜に「バーイ、バーイ!!!」と言った後に階段をダッシュで上がって行く光景を見て、五秒ほどの間を開けた後、「――…あの野郎、ブチ殺す!!!」と、怒鳴って階段を急いで上がって行った。

34日陰:2012/11/05(月) 18:23:37 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
 ピーチ≫

 雅日クン、コーラぶち掛けられたァァ!

 ヤバい自分でもウケル!!

35日陰:2012/11/05(月) 18:59:09 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
 第02話  +其の09+

 一夜は、階段をダッシュで上がって行き、2階の人ごみへと入りこむ。雅日もそれを追って人ごみの中へと足を入れるが、人が多すぎて無理に中には入れない。もう10時を超えているのにこんなにも人が多いのは売れ残り洋服が割引されて、物凄く安くなって売られているからだろう。
 「…あの、野郎!……」
 「落ち着け、高角…!ここは一本道だ!!あちら側から潜り込めばあいつを捕まえられる!!!」
 奈津樹の判断に急いで階段を上がってきた者達も「賛成」とでも言うような顔をして、グルッと遠回りになる方へ行き、セールの行われている場所の反対側に走って行った。
 +――――――+
 『――…まけた…?』
 場所はデパート2階ではなく、3階の男子トイレ。そこの個室で、一夜はまだ電話を持って、息を整えていた。電話の相手はもちろん伊鈴。
 「…お陰様で…ハァ…何とか……ハァ…」
 一夜はパタパタと手を縦に振りウチワ代わりに仰ぐ。
 『っで、どうだった?…私の作った《超最速スニーカー》の威力は?』
 「どうもこうも…凄いっスヨ……2階の人ごみの中に居たのに、ちょっと全力出したらすぐに便所に着きましたよ………でも、…」
 一夜は壁に立て掛けてあるギターを入れる様な鞄をポンと叩いて続ける。
 「これも込みじゃ、体力物凄くなくなりますよ………」
 『アハハハッ!!…でしょうねぇ!!それ只のギターケースじゃないんだから……なんせ…」
 一夜と伊鈴は同時に鼻で笑う。
 『人を殺す為だけに作られた武器が入ってるんだから―――――』

36ピーチ:2012/11/05(月) 19:50:25 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
日陰>>

コーラひっ被ってるーw

バカだね雅日君達←おい

37日陰:2012/11/05(月) 20:12:47 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
 ピーチ≫

 同感! でも、うけたから、チャラで!!

 それにしても、奈津樹クンが指揮権持ってると、何かいいワ〜〜

38終人:2012/11/09(金) 19:27:34 HOST:i220-99-160-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
 題名に惹かれました

 不死は、面白いです。

39日陰:2012/11/09(金) 19:58:11 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 終人さん>>

 コメント、アザァァァッス!!

 なんか不死って、人気を呼ぶな〜〜

40終人:2012/11/09(金) 21:02:33 HOST:i220-99-160-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
日陰さん>>


 それは、ナイとおもいます。

41日陰:2012/11/10(土) 08:25:46 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 終人さん>>

 いや、それが案外人呼びますよ!

 意外とこういう系の題名ってパワーすごいんですよ←(何の…?

42日陰:2012/11/10(土) 08:56:25 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第03話+  +殺す理由+  +其の01+

 「―――…………」
 黒い空から降ってくる雨は、妙に冷たく一夜の頬に落ちていく。
 『ザァァァァァァ…』
 雨の音は実にうるさくなんとも不愉快に感じる。
 
 一夜は、とある崖の下にやって来た。崖下には小さいながらも魚の住んでいる川が流れている。いつもは意外と綺麗なその川も雨のせいで砂が立って茶色に汚れている。
 ずっと川を見つめる一夜。傘も何も持たずに降り続ける雨を避ける方法は何もない。だが、一夜はそれほど濡れていることに何の違和感もない。
 「………何時までそうしてるつもり…?……風邪、引くわよ…」
 そう言って、一夜の後ろに離れて傘を持っていた黒い短髪の髪の毛の女性、五十嵐・伊鈴が、自分のさしていた傘を一夜に方抜ける。
 「…愛々傘して行くつもり?」
 「車すぐそこにあるんだから、少しぐらい濡れても構わないわよ…。って、言うか今時、愛々傘は無いでしょう〜…」
 伊鈴は傘を肩に置き、お手上げとでも言うように肩をすくめる。
 「…………ッフ…」
 一夜は伊鈴からもう一度渡された傘を受け取り薄笑いを浮かべた。伊鈴はそんな笑い等には全く気づかず、そのまま、自分たちの後ろにエンジンをかけたまま停まっているワゴンの方へ歩いていく。
 「…『伊鈴さん』、有難う……」
 その言葉は雨の音にかき消されてしまった。

43日陰:2012/11/10(土) 09:58:19 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第03話+  +其の02+

 +―――――――+
 「――…つまり俺のことを狙ってんのは、この前のやつら……人権殺害規程機関、つまり、殺し屋…と、」
 「人件保護対策機関――…通称、守り屋……。…簡単に言うと、SPとテロにあんたは狙われてるってこと……」
 伊鈴と一夜は、伊鈴のワゴンに乗ってどこかに向かっていた。
 一夜はワゴンの後部座席で、タオルで頭をふきながら、伊鈴の話に耳を傾ける。
 「…なんか俺モテモテですね!」
 一夜は苦笑しながら何気なく聞いてみると、
 「モテモテも良いところよ……。いつもは敵対心大有りのアイツ等が、今回同じ目標(ターゲット)を狙うということにあたって、手を組む可能性が高い………。そうなると私でも手の打ち様が無くなるわ…」
 と、ちゃっかりとした返答が帰ってきた。
 「…そんなにメンドクサイ奴らなんですか?……殺し屋と守り屋って…」
 少し真面目な顔になった一夜に、伊鈴の「えぇ…」という声が返ってきた。
 「…って言うか、元々、守り屋っていうのは、守る事に特化した部隊……では、なく、守るためならば誰を殺してもかまわないという、殺戮の守護者だった。でも、新総帥が守り屋の頂点をとった時に、守り屋は一転し、守ることに専念する部隊に変わった。その逆に殺し屋の方は、新頭領に変わったとたん攻撃性が増加し、前よりも、殺戮を繰り返す、本物の殺戮部隊になってしまった………。そんな奴らが手なんて組んだら、楽に総理大臣殺しちゃうっての〜〜…」
 最後の部分を抜かせばこの話はギャグセンスのないお話になる。
 「……んな、こワーイ連中に狙われてる俺は、一体何だってんだか」
 一夜はタオルを首にかけ手を肩まで上げ、お手上げポーズを笑いながらとった。
 「『完全不死の不完全人間』でしょ。…今更、意味分かんない事言わないで……」
 伊鈴は前を見ながら言うと、一夜は口角をそっと上げるだけの笑顔を浮かべ、「…ソウっすね……」と答えた。

44日陰:2012/11/10(土) 15:49:49 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第03話+  +其の03+

 +―――――――+
 「…だぁぁぁぁぁぁあ!!モンのスゲェ、腹立つ!あのクソガキ、今度見付けたら死んでもブチ殺している!!!!」
 とあるデパートの1時間無料バイキングエリア。そこにある一つの机の横で、雅日は怒鳴っていた。あのクソガキとは無論一夜のことだ。片手に持っている皿には唐揚げ、スパゲティ、エビフライと炭水化物の食品が多々並べてある。
 「難儀なやっちゃな〜…。たかが、巻かれただけやろ?それにまだチャンスあるやん………このケーキゴツウマ!!!」
 「黙れ、光聖!!貴様は学校にも通っておらぬ、ボンボン小僧だから大人の屈辱というものが理解できんのだ!!少しは成長しろ!!!そして、そのケーキを食わせろ!」
 光聖の言葉に突っ掛る奈津樹。奈津樹の方も雅日と同じような食べ物を皿に乗せている。そして、光聖の皿に置いてあるケーキにはしをのばす。
 「何やねん!ガキやからなんやっちゅーねん!!いつもバクバク、オレの作った菓子食っとるくせに、くだらん事ヌかしたら、もう菓子食わせんぞ!!!つか、人のケーキにはしを伸ばすな!!!」
 光聖は皿を離し、皿に載せた小さなミニケーキをバクバクがっつく。これは光聖がイカっている時の状況だ。
 「…ゴックン!!もう出るぞ!1時間すぎる!!!」
 雅日は皿の上の食べ物を食いほし、ガッと椅子から立ち上がる。

45終人:2012/11/10(土) 18:34:49 HOST:i220-99-160-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
日陰>>

 殺し屋+守り屋=最強って事ですか?

46日陰:2012/11/11(日) 15:37:11 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  終人さん>>

 ハイ、そうですね!  多分…←(オーイ…!

47日陰:2012/11/11(日) 16:08:40 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第03話+  +其の04+ 

 +―――――――――+
 「香々美(かがみ)さん…。次は一体、どこの洋服店に行くんですか〜…?」
 和泉もまた、あるデパートで、両手で抱えきれない洋服店の袋を抱き上げながら、自分の先輩、有北・香々美(ありきた・かがみ)の名前を呼ぶ。
 「そんな嫌そうな声出さないでよ〜。いつもは守り屋で、堅苦しい空気吸ってんだから、休日くらい息抜きさせてよ!」
 「今回は、息抜きじゃなくて、謹慎処分です!!それに、香々美さんの息抜きに私を巻き込まないでください!」
 和泉は、香々美に怒鳴った。
 和泉と香々美は同じ、「人件保護対策機関」=「守り屋」の隊員達である。階級では和泉の方が上だが、自分より年の上である香々美のことを、和泉は「さん」付でいつも読んでいる。なにより、香々美は黒髪の短髪、男から見ればナイスな体をしているので、いろんな意味で自分より先輩だと、和泉は思っている。
 「まぁまぁ、そう言わず…。……何より今は、殺し屋とか、不死者とかいろんな事があって、前以前に息苦しくなったのよ……。少しぐらい、付き合いなさい…!」
 香々美の声が途中から小さくなった。それに合わせ、二人の目線が少し下に落ちる。
 「……不死者って、本当に殺さなきゃいけないんですかね……?」
 「…上からの決定よ。逆らうことは出来ない。…何より、不死者という存在は、私たちの生活にメンドクサイくらい影響するらしいのよ。だから潰す…!」
 「……でも、不死者なんてどう対処するんですか?不死者って言ってるぐらいですから、死なないんじゃ……」
 「死ぬ!不死と言っても人は人。死の輪から外れた人間はただの愚か者よ!!って言うか、そんな奴居たら逆に殺す!!」
 和泉は納得しなかったが一応「…そうですね」と返しておいた。

48日陰:2012/11/11(日) 16:22:44 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第03話+  +其の04+

 「そうですね、じゃなくて、そうなの!!」
 香々美は自分の後ろをゆっくり歩く和泉に怒鳴った。
 +―――――――+
 「いいか、今度会ったら、死んでも殺すぞ、あのクソガキ!!!」
 雅日は自分の後ろに奈津樹と光聖を肩を並べて歩かせ、自分だけが『ギュゥゥゥゥゥゥ』と拳を固く握る。
 +―――――――+
 「…そうですね、……」
 和泉はもう何も考えないように、答えた。
 +―――――――+
 「当たり前だ!次こそはあのガキを潰す!」
 雅日に続いて、奈津樹も拳を固くして意気込む。
 +―――――――+
 「絶対に――」
 +―――――――+
 「――潰す!!!」

49日陰:2012/11/11(日) 17:40:41 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第03話+  +其の05+

 『…………あ゛………?』
 変でスットンキョな声がそこに響いた。
 和泉と香々美は持っていた洋服店の袋をその場に落とし、雅日、奈津樹、光聖の3人は言葉を考えた。
 一体何が起こったのか…。そう聞かれたら、こう返せば良い。「殺し屋と守り屋がはち合わせてしまった」。
 +―――――――+
 「何でお前らがコンナ所に居んだよ!!クソイラつく!!!」
 「巫山戯んな、私だってこんなトコでアンタ等と会うなんて想定外だってのよ。」
 和泉等と雅日等が出くわしてしまった、デパートの最上階にあるスイーツ屋。そこで、和泉たち一行は話していた。
 (……まさか…)
 (こんなところで、殺し屋なんかと会うなんて……)
 奈津樹と和泉の考えがうまく絡み合う。
 「…っで、このミニアイスと、チョコレートケーキにロールケーキと、シフォンケーキ、あとシュークリーム、お願いしますぅ!」
 そして一人だけのんきに、ケーキの注文をオーダーする光聖。それを聞いた女性定員は「はい」と微笑みながら厨房の方へ歩いて行った。
 (…ッチ!…本当メンドクセー奴らと出くわしちまったな!!まさか殺し屋の上の人間に出くわすとか、あり得ないでしょ…。はっきり言うけど、神様って絶対存在しないわよ)
 香々美は和泉の横で、腕組をしてから足をクロスさせる。
 (クソが!…死ぬぐらいウザクせェ!!普通、こんな庶民デパートに守り屋の上層部が来るか普通!!?報告書にも出てるど偉いさんだぞ…!)
 雅日も舌打ち混じりにそう考える。しかも、香々美と雅日の周りだけが暗く重苦しい空気になる。
 「………ぇえ〜と、…光聖…くん、だったっけ……?」
 和泉の言葉に運ばれてきたケーキを口に運ぶ光聖の手が止まる。そして「なんでオレの名前知っとるん?」と首をかしげて聞いた。それに対して「殺し屋の人は…大体、報告されてくるから……」と和泉は答えた。
 「ふ〜ん、そっちの情報もうえぇな〜。教わりたいぐらいやは!!」
 無邪気に笑うその笑顔は何も知らない本物の子供のようだ。
 「……そ、それで、貴方が…」
 「渦築、奈津樹だ。……ッフ、変な名前だろ?」
 和泉が言うよりも先に行った奈津樹。奈津樹はそのまま一人一人に配られた水の入っているコップに手を伸ばす。
 「…そんなことないと思うよ?私はとってもいいお名前だと思うし…」
 「何よりあんたの母親が付けてくれた、世界中に一つしかない名前よ、恥じる必要ないでしょ」
 和泉の言葉に香々美は付け加えの言葉を放つ。そしていつの間にか、重苦しかったその空気が和んでいた。

50日陰:2012/11/11(日) 18:34:17 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第03話+  +其の06+

 「――……あれぇ!!もしかして、この前の車姉ちゃん?!」
 和泉の耳に入ってくる、聞き覚えのある声。和泉は声のした方に顔を向けた。皆もそっちの方に顔を向ける。
 「……っあ、一夜くん!!」
 声のした方にいたのは、ギターケースを肩に担いだ一夜。一夜はスイーツ店の出入口から笑いながら、和泉の方に歩み寄っていった。「誰…?」と耳打ちで香々美は和泉に問う。「…一見、一夜くんって言って、この辺でバイトをしている、高校生です」と和泉が答えた時、丁度一夜が和泉達の机前に来ていた。
 「なに、ナニ?合コン?面白そうじゃ……あ、アンタ等…」
 一夜は雅日たちの顔を見て、少し驚いたような顔をした。そのあと、「どうも」っとニヤッと笑ってみせた。それと同時に、雅日の顔がものすごい剣幕になり、何処からともなく刀が現れた。
 『闇切流抜刀術三の舞・舞風』
 雅日のそこ一言によってその場一体は吹き飛んだ。

51終人:2012/11/11(日) 20:32:14 HOST:i220-99-160-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
日陰さん>>

 デパートで、出会ってるーーー!
最強VS不死身が、ついに始まった!

52日陰:2012/11/11(日) 21:09:30 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 終人>>(この際、タメで…

 ついに始まった!

 書いてるこっちが楽しくなってきた!!

53日陰:2012/11/11(日) 21:33:43 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +その03話+  +其の07+

 一階全体がマルマル吹っ飛ぶほどの爆風。窓は割れ、電球は粉々に吹き飛び、壁は砕け落ちた。

 +―――――――+
 「――…うっわ〜、スッゴイ景色…。さっきまでの景色が思い出せね〜…」
 瓦礫を一つ蹴りながら一夜は呟いた。周りを見ると、瓦礫の下敷きになりながら唸っている人たちがいる。一夜は一番近くにいる人の下に脚を寄せる。
 「…大丈夫ですか?」
 と、聞くと瓦礫の下敷きになっている女性がゆっくりと顔を上げる。女性は肌色の肌をしていて、長く茶色の髪を緩くシュシュで結んで、肩に垂れ下がっていた。
 「………愛生(あい)は…?……愛生…!愛生!!」
 女性は必死に瓦礫をどけようと四つん這いになりながら瓦礫を上げる。一夜は「ちょっとストップ…!今瓦礫どかすから……!!」と瓦礫に手をかける。すると…
 「やっぱ、テメェ不死者なんじゃねぇか…。こんなに皆ズタボロになってんのに、怪我一つもねぇじゃねぇか…」
 軽そうな瓦礫の下から、刀を持った雅日が出てきた。
 一夜はそんな雅日に目もくれず瓦礫の撤去を進める。
 「……ッチ…。そういうシカトが一番……」
 「…!!!?」
 一夜からずっと遠くにいた雅日が、突然一夜の足元までやってくる。
 「イラつくんだよ…!」
 雅日はそう言うと、下から突き上げるように刀を一夜の顔面めがけて飛んできた。

54精霊:2012/11/11(日) 21:42:57 HOST:i220-99-160-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
日陰さん>>

一般人巻き込んでいのーーー!

55日陰:2012/11/11(日) 22:00:36 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 精霊>>

 一般人巻き込んでんの!

 それを助ける一夜くんって設定で良いじゃん!!ってな考えのスレだよ…

56精霊:2012/11/11(日) 22:11:54 HOST:i220-99-160-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
日陰さん>> 

 そうですか。一夜君は優しいんですね。

57日陰:2012/11/11(日) 22:24:14 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第03話+  +其の08+

 『ガグジャン!!!』
 鉛と鉛がブツカリ合う音。そんな音がしたかと思うと、一夜は目の前の光景に驚いた。
 「――…てめぇ、何首突っ込んでんだよ…!!」
 雅日は自分の刀を止めた人物を睨みつける。その人物、香々美は雅日が一夜に向けた刀の剣先を、銀色の銃口で受け止めている。
 「…何スットンキョな質問してんのよ…!。人を守るのは私たちの決め文句なのよ……!!つか早くこの刀下げろ!」
 香々美と雅日は間に一夜を挟んで、引かず引かれずの戦いをしている。どちらか一方が動けば、刀と銃の間から火花が飛ぶ。
 (…あぁ、もうこいつら邪魔…!!)
 一夜は地味に汗をかきながら、片目をつぶり「ギリッ」と歯を鳴らす。
 (クソッ…!こい…)
 「愛生…!!…愛生ぃぃ!!」
 一夜は少しホッとした。あの女性がなんとか瓦礫から這い出て、自分の娘であろうモノの名を呼ぶ。
 「…悪いけど……」
 「あ゛!?」
 「ドケ…!!!」
 一夜はそう言って、瓦礫から手を離し、雅日の腹めがけて足を飛ばした。

58日陰:2012/11/11(日) 22:25:38 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  精霊>>

 そう!一夜くんは優しいの!

 できるものなら私もそういう人と会いたい…

59日陰:2012/11/12(月) 11:33:06 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第03話+  +其の09+

 雅日の腹を蹴飛ばし、なんとか距離を取る一夜と香々美。少しの間だけ三人とも黙っていると「カチャ…」という音が聞こえた。一夜は音のした、自分の後ろの方に目を向けると、香々美が自分に銃口を向けていた。
 「……なんですか、これ…?」
 一夜が銃口を見つめながら香々美に聞く。
 「詳しいことは全く理解できないけど、アンタが不死者ってんなら、私と一緒に来てもらうわ…」
 香々美は銃を強く握る。それを見ていた雅日は「クソアマ、ザケンじゃねぇぞ!!!」と怒鳴る。そんな雅日はほっといて、一夜と香々美は話を続ける。
 「…お姉さん、何者だ…?」
 一夜が問うと「人件保護対策機関、……守り屋よ」と香々美は答える。その答えに少々驚いたような顔をした、一夜だったが、すぐに元の顔に戻した。
 「じゃあ、あのロン毛の姉ちゃんも?」
 第2の質問を聞いて、香々美は少し考えるような顔になったあとに「和泉のこと…?」と聞き返した。そして、少し沈黙を挟んだ後に「…えぇ」と言った。
 「……そっか、じゃ…」
 「……ママァ…」
 一夜が何かを言おうとした矢先、小さな子供の声が聞こえてきた。
 すると先ほどの女性の「愛生ぃ…!!」という声も聞こえてきた。
 「……ねぇ、お姉さん…」
 一夜はそんな光景を見ながら何かを思い出したような顔になった。香々美は「なに?」と聞く。
 「和泉さん達、生きてんの…?」
 ニヤッとしたその顔はいかにも不気味で、場を切り向けるだけの笑には見えなかった。
 「そこにいる殺し屋さんも!!あのガキ一体何処に居んの?つか生きてんの?」
 またも恨めしいほどの笑顔で、一夜は雅日に叫ぶ。香々美と雅日は我に返ったような顔になって、周りに目をやる。
 (…このガキ…!!!?)
 (なんツー奴だ…!!!?)
 雅日と香々美は歯を噛み締め、拳を握り締めた。

60日陰:2012/11/12(月) 16:12:04 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第3話+  +其の10+

 香々美、雅日の二人は一夜をほっといてそれぞれ、探しにでる。
 「――……っま、大丈夫だろうけどね…」
 +――――――――+
 『闇切流抜刀術三の舞・舞風』
 雅日のその一言が一夜の耳には言った瞬間。即座に一夜は光聖、奈津樹、和泉の3人を抱かえ、机を倒して、何とか舞風を食い止めた。
 +――――――――+
 (――…気絶ぐらいでなんとかなったし、机はズタボロだったけど、皆かすり傷で済んでたから結果オーライ…って、ところか……)
 一夜はそんなことを考えながら、無残なそこの端っこに歩いていく。
 +――――――――+
 「――……ん、…あれ……」
 和泉が目を覚ますと、目の前に小さな石ころたちと、瓦礫から飛び出た鉄筋があった。
 「……あ、…光…聖……くん。…」
 頭をキョロキョロさせていると、横に光聖が気絶しているのが目に入った。光聖の口に手をやると確かに息をしていた。和泉はホッとして起き上がろうとするが、自分の足が小さい瓦礫に押さえつけられて立ち上がることもままならい。
 (………冗談でしょぉ……。立ってよ、この体ぁ…)
 先ほどの衝撃のせいか、体に力が入らず、全くと言っていいほど力が入らない。
 和泉が疲れで体をグッタリとさせると、「…和泉!!」という声がかかった。和泉は聞き覚えのあるその声に起こされ、顔を上げる。
 「…香々美さ…」
 「ちょっと待ってなさい、今足のがれきどかすから…!…ちょっとアンタも手伝いなさいよ!!」
 香々美は雅日を呼ぶ。
 二人でなんとか、瓦礫の下から和泉、光聖、奈津樹の3人を引き出す。

61日陰:2012/11/12(月) 16:58:09 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第03話+  +其の11+

 「……………」
 一夜は、吹き飛んだそのデパートの、一番すみに立つ。
 足を滑らせたり、強い風だけでも吹いたら、そこから落ちそうだ。
 「――……てめぇ、そっから動くんじゃねぇぞっ…!」
 雅日は瓦礫の下から気絶した光聖と奈津樹を外に出した途端に、一夜の背中を見つめて言う。
 「……殺し屋の兄ちゃん…」
 一夜は背中を向けたまま、立ち上がった雅日に話しかける。
 「こっから落ちれば……死ねると思う…?」
 顔は見えなかったが、確かに笑っていると感じた。
 「………死ぬなぁ。確実に……だが、……」
 雅日は「ダンッ!」という足音を立てて、
 「てめぇはそこから落ちて死ぬんじゃねぇ!!俺に切られて死ぬんだ!!」
 と、叫んで一夜のところまで刀を構えて歩いていく。
 そこからは、沈黙が続いた。一夜も雅日も、香々美、和泉も何も言わなかった。そして、
 「殺し屋の兄ちゃん、これだけは言っておくよ……」
 あと少しで、雅日が一夜の元に到着するといったところで、一夜が口を開く。雅日は足を止め、一夜の言葉を待つ。
 「…殺し屋も守り屋も、ましてや俺も、神様も、…殺し屋の頂点も守り屋の頂点も、バカみたいな政治家も……全員、同じ空の下、同じ地の上に立ってるんだよ………だから、自分が…」
 一夜は髪をなびかせながら振り返る。
 「人の命握ってるようなフレーズヌカしんじゃねぇよ、糞餓鬼…」
 一夜はニヤッとした不気味な笑みを浮かべてそのまま、後ろ向きに落ちて行ってしまった――――。

62精霊:2012/11/12(月) 17:23:02 HOST:i220-99-160-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
日陰さん>>

自殺?

63日陰:2012/11/13(火) 17:59:02 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  精霊≫

 イヤ生きとる。

 なんか面白いこと起きるだけ!

64日陰:2012/11/22(木) 19:15:38 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第4話+  +「出来ることなら…」+  +其の01+

 +―――――――――+
 『いぃ〜〜ちぃ〜〜やぁ〜〜!!!』
 ふと、自分の妹が、自分の方に、自分の名前を呼びながら、走ってくるのが見える。その妹が浮かべる、笑顔は、思いは、感情は、一体なんなのだろう…。自分の妹のから溢れ出るその愛は、兄に対しての経緯なのか?そんなことを考える自分は一体なんなんだ…?
 「……み…」
 名前を呼ぼうとした瞬間、その妹はサラサラと音を立てながら、風に吹かれてどこかに飛んでいってしまった……――――。
 +――――――――+
 「………………」
 いつもこうだ…。死のうと思って行動に走っても、今の映像が流れて飛ばされかけた意識が一瞬にして戻される。
 (…あぁ〜…。そうだ俺ビルから飛び降りたんだったっけ……)
 目に入った大きなビルと空。自分では確認できないが、多分一夜は大の字で寝ているのだろう、手にコンクリートの冷たい感覚がある。
 一夜は少し目を閉じたあとに、「ッフ…!」と腰に力を込めて、起き上がった。すると「…う、…うそ…」、「なにあの子……」、「い、今普通に上から落ちてきたよな……」とビルの大爆発により集まった野次馬たちが口々にいっていく。しかし、一夜はそんなのそっちのけで、カキカキと頭をかく。
 「…お、おい、君!!!」
 すると今度は交番にいるような警察が慌てて出てきた。まぁ、ビルが爆発して、そこから男の子が落ちてきて、即死と思われていたその子が起き上がって頭をかけば、噂を聞きつけた警察くらい来るだろう。
 警察の男は、一夜に近付くや否や、怪我はしていないのか、と聞いてきた。一夜の方はどの角度から見てに怪我などしていないので、別に、と答えた。唖然とする警察だったが、すぐに気を取り直して、ちょっと署まで来てくれるかいと、切り返してきた。だが、一夜はそそくさと歩いて、人ごみの方へと歩いて行っている。
 「ちょ、ちょっと、君!!?」
 警察の男は身を乗り出して一夜の肩に手をかけようとした。しかし、一夜はそれよりも早く「ッパン!」と手を除け払う。
 「…………………」
 一夜は無言でその場を後にしていった。

65日陰:2012/11/23(金) 09:38:18 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第4話+  +其の02+

 +―――――――――+
 「―――……つまり、殺し屋と不死者に、逃げられた、っということか…?」
 謎の大爆発を遂げてしまった、大デパート。そこの上では、瓦礫の撤去作業と怪我人救出の両方が行われていた。
 和泉たちも警察たちと共に怪我人救出に出向きたいところなのだが、駆けつけてきた欧明に呼び出され、ミニ事情聴取となった。
 「………………」
 「…ハァ―……。…その不死者について特徴は何かあるか、有北…」
 黙る和泉は使えないと踏んだ欧明は、和泉の隣で険しい顔をしている香々美に顔を向ける。
 「…銀髪で、見た目は高校生。名前は……」
 「……一見…一夜……です…」
 香々美が名前のところで少し突き止まると、和泉はそれだけを口にした。「一見一夜…っか…」欧明はそう呟くと、ズボンから携帯を取り出しどこかにかけ始めた。
 「……和泉、一体あの子とどういう関係なの…?」
 香々美は申し訳ないというような顔で聞く。和泉はうつむいていた顔を上げ一夜のことを話し始めた。

66日陰:2012/11/23(金) 18:52:20 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第4話+  +其の03+

 「一夜くんとは、…拳くんのお墓参りの帰りにあったんです……」
 それをはじめに、デパートの事などすべて話す和泉。
 「…あぁ……一見一夜のことが何かわかったらすぐ連絡してくれ」
 話をかけつつ、欧明は電話の相手にそう言い捨てて電話を切る。そのまま欧明は和泉の方に顔を向け「今後一見一夜との連絡接点があった場合、逐一俺に連絡しろ」と言った。和泉は軽く一礼して、頭の中に一夜の顔を浮かばせる。
 「藤北部隊長!!!!」
 和泉が顔を上げると同時に、男の声がかかってきた。3人はその声がかかった方に顔を向ける。するとそこには、一夜が担いでいたものと同じギターケースを持った男が和泉たちの方に走ってきていた。「なんだ、そのケース…?」欧明の言葉に対して香々美と和泉の両方が「一夜くん(あの不死者、が担いでたギターケース…!」と声を上げた。
 「…瓦礫の撤去中に見つけたものです。救出した人たちのものではないと、確認が取れたので持ってきました…!」
 男はそう言うと欧明の前にギターケースを置き、一礼したあとに右廻りをしてまた走っていった。
 「……もしこれが一見一夜のものなら、本部に持ち帰る必要があるな…。和泉、有北、お前たちもここは一旦俺と一緒に本部に帰還するぞ…!!」
 欧明のはっきりした声の誘導ぶりに二人は「はい…!」と返事をして欧明について行った。

67日陰:2012/11/23(金) 19:29:15 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第4話+  +其の04+

 +――――――――+
 「――…つまり、それが不死者、『一見一夜』の物である可能性は大というわけか……」
 守り屋、本部である会社の最上階の一室。そこには守り屋総帥代行である、高野と和泉、欧明、香々美を含めた19人の男女が集まっていた。
 「開けてみないことには分かりませんが、俺の推測が正しければ確かです…!」
 欧明はギターケースを縦に立たせながら高野に言った。高野は「うむ…」と少し頷きながらギターケースを見つめる。
 「まぁ、開けてみなくちゃワっかねぇっつゥことだろ?開けてみましょうぜ?」
 守り屋第7番隊、隊長、国城・剣製(くにしろ・けんせい)はおちゃらけ顔でそう言い切った。その案に皆、賛成のようで、頷くものが多数いる。高野も「まぁ、そうせぬと何も始まらぬからな……。どれ開けてみるか……!」と言いながらギターケースに手をかける。高野はギターケースのチャックを開けていく。そして、全て開け終え、ゆっくりとギターケースをあける。
 「!!?」
 「…これって……!?」
 和泉は驚いた顔になりながら、ギターケースの中を見た。

68精霊:2012/11/23(金) 20:56:13 HOST:i220-99-160-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
日陰>>

 なにが、入っているのか?

69日陰:2012/11/23(金) 21:05:36 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 精霊>>

 なんか、スんげぇもの!!

70日陰:2012/11/23(金) 21:53:14 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第4話+  +其の05+

 ギターケースを見た者たちは、皆中身のものを見て言葉を失う。何故なら中に入っていたのは、ケースいっぱいに詰められた写真だったからだ。
 笑いっている者の写真。泣いている者の写真。怒ってソっぽを向いている者の写真。寝ている者の写真。何かに悩んでいる様な者の写真。上手くいったような顔の者の写真。無表情は顔の者の写真。
 まるで数え切れないくらいの者たちの写真が、そのケースには詰められていた。
 「なに……これ…」
 香々美は写真を束にして見つめていく。他の者たちも、香々美と同じように写真に手をかけ、次々と目を通していく。
 「全部で軽く百はあるな……なぜこんなにも写真があるんだ?」
 高野も地面にしゃがみ写真を見つめる。すると「…ん?これだけ4人で写ってるな……しかも、破った後にもう一度テープで貼り直している…」といいながら、高野は一枚の写真を、写真の山から拾い上げる。その写真を見て、「…一夜、くん」と声を上げる和泉。それを聞いて皆、心なしかその写真に目を向ける。
 写真には、どこかの山と展望、そして4人の家族が笑顔で写っていた。両端には茶髪で腰まである長い髪を解いている綺麗な女性と、黒髪で短髪の若く見える男性がこちらを見てニッコリと微笑んでいる。そしてその二人に挟まれて笑う銀色の髪をした一夜と、その隣で一夜の腕を掴む一夜と同じ銀色の髪をした少女。
 「一体どいつが不死者だ。全員か?」高野の問いに「いえ、こちらの少年です」と香々美は丁寧に答える。
 「……いい手掛りだな…」
 高野はそう言うと、後ろにいた和泉に写真を手渡す。和泉はそれを受け取ると、少し悲しい顔になりながら写真を見つめる。そして何気なく写真を裏返すと、そこには電話番号のようなものがボールペンで綺麗に書いてあった。
 (もしかして、一夜くんの……!?)
 和泉はそう思うや否や、来ていたトレンチコートのポケットから即座に携帯を出し、「ピ、ピ、ピ…!」と音を上げて番号を打っていく。皆は和泉と同じく写真の裏を見る。それを見て、皆は「な、何やってんだ…!?」と叫ぶ。止める者も居たが、止められるよりも早く、鳴っていたコールは停まり『はい?』と一夜の声が漏れてきた。

71精霊:2012/11/23(金) 22:00:58 HOST:i220-99-160-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
日陰>>

電話繋がった!

72日陰:2012/11/23(金) 22:21:24 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第4話+  +其の06+

 「!!?一夜くん!!」
 意外にもすんなりと一夜が出てきたので、和泉はちょっと変わった気持ちで一夜の名前を呼ぶ。
 『あぁ〜…。和泉さん?この番号分かってことは、あのケース生きてたんだぁ〜。ハハッ流石、五十嵐さんの作ったギターケース…!』
 こっちの方も正にノン気で、あのケースが見つかっても見つからなくても良いと言う様な言い方だ。和泉は携帯をスピーカーにして、話を続ける。
 「…一夜くん、今一体どこにいるの?」
 そう和泉が聞くと『今?……あぁぁ、よく分かんね?適当にホッポリ歩いてるだけだから』と言い放った。
 「一体このギターケースの中に入っていた写真はなんなの?それに、…この破られた写真は……」
 『あぁ、それ?それは俺が今までに会って来た人たち…。もう会うわけにはいかねぇから写真に撮っとこうと思っただけなんだけどよ……』
 顔は見えないが、一夜は絶対に笑っている。和泉は直感的にそう思った。
 「……一夜くん、あなたは本当に不死者なの?…殺し屋の人地が勝手に言ったってことじゃ…」
 和泉のその言葉に「和泉…!!!?」と香々美は声を上げる。
 『見たっしょ?俺がビルから、降りるとこ…。……認めたかねぇけど、俺は確かに不死者だよ………』
 「一夜くん……」
 一夜の発言には、どうも引っかかる和泉。
 その後も、一夜は話を続け、皆はそれを真剣に聞き入る。

73日陰:2012/11/23(金) 22:28:41 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 精霊>>

 まぁ、繋がったほうがイイし、

 一夜から「出来ることなら…」聞きたいから繋がらせた!

74日陰:2012/11/23(金) 22:55:26 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第4話+  +其の07+

 「一夜くん……!言っておくけど、私達…人件保護対策機関はあなたの命を狙っているわ…!!…でも、自分から投降してくるなら、命の保証はされるかもしれない…」
 和泉がそう言うと、皆はゴクッと息を飲んだ。
 『言っとくけど、俺はアンタ等から狙われていることも、殺し屋から狙われてることも知ってる……。あと、自分からアンタ等の所に出て行く気は全くない』
 大体は想定できていた返答だ。
 和泉は、話を続けようと口を開くが、言葉を放つよりも早く、香々美が和泉から携帯を奪い、「ちょっとぉ!!!」と怒鳴った。
 「なんでもイイから、さっさと投降してこいってのよ!!つか、不死者なんて一体何世代前の下ネタだってのよ!!!…ちょっと聞いてんの、不死者坊主!」
 香々美はものすごい剣幕で電話越しの一夜に怒鳴る。だが、怒鳴ったまで良いが一夜からなんの返答がない。
 『…………………………』
 全員沈黙。チャラ男がいたら空気を読まず「シケタァ〜」と言うだろう。
 『…………俺だって…』
 やっと口を開いたかと思うと、今度はさっきと性格が一変して暗い感じになっていた。
 『…好きで不死者なんかになった訳じゃない………!!!』
 その言葉に全員肩に何かが乗ったような重さを感じた。

75日陰:2012/11/24(土) 09:53:29 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第4話+  +其の08+

 『俺は…出来ることなら………普通の人間として暮らしたかった……。時が過ぎれば、老いて死ねる…事故っちまえば、大怪我する……全然嫌な……』
 途切れるその言葉は、泣いているように消えてくる。
 『……普通の人間でいたかった………』
 脱力しながらも、言い続ける一夜。
 『和泉さん……』
 不意に名前を呼ばれ、驚きながらも和泉は香々美から携帯をもらい「……なに…?」と聞く。
 『……ありがとう…』
 意外な言葉を言われ、和泉は目を丸くする。それは聞いていた皆も同じだった。
 『パスタ、めちゃくちゃ美味かった。…もし俺がただの人間で、普通の高校生で、一般的な死に方をする奴だったら、もう一回………』
 和泉はユラユラと少し揺れながら「一夜くん…」と呟く。
 『あの美味いパスタおごってくれよな!!!』
 その言葉を最後に、携帯は切れその後携帯は繋がらなくなってしまった―――

76日陰:2012/11/24(土) 12:43:05 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第5話+  +あの日の記憶+  +其の01+
 
 『―――……いまぁ〜、わたしのぉ〜、ねがぁ〜いごとがぁ〜、かなうぅ〜なぁ〜らばぁ〜、つばぁ〜さぁ〜がぁ〜ほしぃ〜………』
 日本全国民が知っている音楽が、綺麗な声で放送されている。
 一夜は夕暮れの中、人で賑わっている商店街に来ていた。この音楽は、5時を知らせるもので、その音楽を聴くと家へ帰る小学生は、一夜もよく見かける。だが、一夜自身この曲は余り好きではなかった。なぜなら、この曲を聴くと、いつも思い出すのだ。妹の、美夜の最後の笑顔を……。
 +―――――――――+
 「一夜ぁ。お母さんが夏休みにお爺ちゃん家、行こうって言ってたよ〜…」
 6年前の夏休みちょっと前の日。部活である銃剣道を続けるために、学年成績上位を目指して勉強している一夜の部屋に妹である自分と同じ銀色の髪をした美夜が笑顔で入ってきた。
 「あぁ゛!?爺ちゃん処に行く?!!…マジかよ……。お袋、俺のこと虐めてんのか…?」
 一夜は真面目に向き合っていたノート&教科書が乗っている机から顔を後ろにそらし、美夜に叫んだ。一夜はどうも母方の父である祖父が好きになれない。理由としては、全くと言っていいほど祖父が祖父に見えないからだ。きっと六十は超えているはずなのに両目とも自分より視力が良く、身体能力が優れまくっていて、物凄く頭が良くて、物凄く喧嘩が強いからだ。いつも祖父の家に行くと、まずは祖父の家にある道場に呼び出されて腕取りで吹き飛ばされる。
 「一夜本当にお爺ちゃんのこと嫌いだよねぇ。お爺ちゃん優しいのにぃ〜」
 (あの凶暴爺が優しいのはお前らだけだ…!!!)
 美夜の無邪気な笑顔に一夜はそう、心の中で断言する。お前らというのは、美夜を含め母の未咲、父の千晶の3人だ。
 「っま、一夜も行こう!!
 一夜は美夜のその一言に嫌々ながらも「ヘイヘイ…」と答えておいた。
 しかし、祖父の家になんて行かなければよかった。行っても、待っているのは出口のない真っ暗なトンネル、そう分かっているならば、一夜も美夜もきっと祖父の家に等いかなかっただろう。

77日陰:2012/11/24(土) 13:37:44 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第5話+  +其の02+

 +―――――――+
 ――……一体、目の前で何が起こっているんだ?
 燃え上がる紅。流れ出る紅。目に映るものは全てが全て紅、紅、紅、紅……。正に紅一色で統一された世界が一夜の目には、入ってきた。
 一夜はボロボロの服の端を力いっぱい握り締める。『ギュゥゥゥゥゥゥゥゥ…!!!』という音が聞こえてくるほどの強さで拳を作る一夜の手から、目の前で倒れている家族たちと同じ、紅い血が垂れてくる。
 なんで…。
 どうして…。
 なぜ…。
 一体…。
 疑問の言葉が一夜の脳裏に横切る。そして、目の前に倒れている美夜を見て一夜の瞳から光が無くなった。
 +―――――――――+
 (――……もう、あの日のことは忘れてたはずなのによ…)
 一夜は夕暮れのオレンジ色に染まった空を見つめて、考えた。あの日のことを詳しく覚えているわけではないが、きっとあの事件で一番の目撃者は一夜だろう。
 「不死者ってほんと不便だよなぁ…」
 ヒュゥゥと横に風が吹く。一夜は目をつぶりながら、頭をかく。
 (…さってと、これからどうしよっかなぁ〜…?この前のことがあって、守り屋も監視強めてるだろうからなぁ〜。下手に問題起こすと、面倒だろう…)
 一夜はそう考えると頭が痛くなってきた。伊鈴は、自分に問題を持ってくるなと言っていたし、殺し屋からも命を狙われていると、メンドクサイにも程がある。一夜は「ウ〜ン…」と考えたあとに顎に手を置き、頭をひねらせて考える。すると、何か思い出したような顔になって、一夜はズボンのポケットから新しく買い直した携帯を取り出し、どこかに電話し始めた。
 「トゥルルルル……トゥルルルル……」とコールが何回がなったあとに『もしもし?』と男の声が返ってきた。

78日陰:2012/11/24(土) 14:57:47 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第5話+  +其の03+

 +――――――――――+
 「―――…言っておくが雅日……。殺し屋とて無関係の者を殺せば、それは罪。…今回、運良く怪我人だけしか居なかったとは言え、今後このようなことがあれば、どうなるかわかっているだろうな……?」
 殺し屋本部。山の中にある、殺し屋の本部である屋敷の一室に白い着物を着て長い黒髪をそのままにし、左目を黒い眼帯で隠したチョビヒゲ男は足元に膝まづく雅日をギロリと睨む。
 「は、はい……。今後は今までよりも気を引き締め、被害者に目を………」
 「ナニ、堅苦シイ事言ッテンノ?アンタ、ソンナ、オ父サンミタイナ奴ヤナイヤロウニィ〜?雅日チャンモ、コウヤッテ自尊心(プライド)壊シテ、頭下ゲトイテクレルンヤゾォ〜?モウイイ加減許シテアゲレバイイジャ〜ン!被害者、居ナカッタンダシィ〜〜」
 すると、部屋の麩を開け、ツンツン頭の青年が腕を組み、ケラケラ笑いながら入ってきた。
 「!!?架月様!!!」
 雅日は入ってきた青年、架月・白紙(かつき・はくし)を見る。
 架月はチョビヒゲ男に近づいていき、ポンと男の肩に手を載せる。
 「ッナ…?叱ル事ガ全テジャナイッショ?ソレニ怒ルト血糖値上ガッテ、早死ニシマッセ?言ットクケド、アンタガ死ンデモ、僕ハアンタノ骨拾イマセンデ?」
 男にニヤッと不気味な笑を見せた後に、架月は雅日に手を差し伸べ「ホレ、早ク立チナ?知ッテイルダロウ?僕ハ3秒デ立チ上ガレナイ人ニ、興味ハ無イ。立チ上ガレナイナラ、ソノ足、吹キ飛バスヨ?」と正に棒読みで不気味なことを言ってきた。雅日はニヤリと笑う架月の顔を見て、架月の手は借りず、自分ですぐに立ち上がった。それを見て架月は「良ク出来マシタ」と言いながら拍手を返した。
 「ツッテモ、ドウスルコレカラ?ソノ不死者、ドッカイッチャッタンデショ?¨アノ子¨出スニモ、ダ〜レモ手ェツカナイカラ厄介ジャナイ?」
 架月がそう言うと雅日は息を飲み、男は険しい顔つきになった。
 「釘寺(くぎでら)は使えん。今は一時的に、大人しくさせてるだけで、いつ一般人を殺すかわかねぇ。まぁ…」
 「殺シチャッタラ、殺シチャッタジャン?アンタ別ニ他人ガ死ンデモナンニモ思ワナイッショ?」
 架月は不気味の一言しか思えない笑を浮かべた。

79日陰:2012/11/24(土) 17:42:33 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第5話+  +其の04+

 +――――――――――+
 雅日が怒られていた頃。一夜はとある男とあっていた。その男と一夜は、もうとっくに廃校となった小学校に来ていた。
 男は薄黄緑の髪をして、水色の瞳をした外国人だった。肌は白く、長い髪は後頭部の下部分で赤い紐で結び、左耳には金色の大きな輪のピアスがされている。男は裾の長い袴のような服を踏まないよう注意して前を歩く一夜を追う。
 「……一夜、一体今回は何の用で俺を此処に呼んだんだ?俺は俺で、色々と大変なんだが……」
 男にそう言われると、一夜は足を止め振り返り、ニッと笑った。
 「………一夜…?」
 「今回は迷惑かけたな¨アミリノ¨!今回は、お前に俺の¨護衛¨を頼みたいんだ!!」
 男、アミリノ・ディラ・ミキフは「護衛?」と聞き返す。
 「っそ!もと『軍事用施設保護番犬(ぐんじようしせつほごばんけん)』であった、お前にしか出来ないことだろう?」
 『軍事用施設保護番犬』。それは外国にある軍事施設を守る軍人ではない者のことだ。アリミノは家族はおろか、友も、尊敬出来る者も居なかった。そんなアリミノを拾ったのが、軍の上層部であった男。その男は、物心も付いていないアリミノに武術を教えこんだ。
 「別に構わないが……。一体どうした…?とうとう誰かに喧嘩売ったか?」
 アリミノにそう言われると一夜は「チョットなぁ……」と言いながら説明し始めた。
 「――…うむ、守り屋に殺し屋、っか……。まぁ昔の好(よしみ)だ。護衛でも何でもしてやるよ!!」
 アミリノにそう言われると、一夜は「サンキュー!!!」と叫んだ。

80日陰:2012/11/24(土) 19:00:26 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第5話+  +其の05+

 +―――――――――+
 「――…槇村(まきむら)よ。貴様の仕事は一体何だ?」
 守り屋本部の第6部隊武屋。その部屋にある、大きな茶色の机に座っている、正に美形の男は細い目で足元に正座しながら冷や汗をかきまくる、第6番隊副部隊長の男、槇村・空(まきむら・あき)。
 「…え、…えぇと……民間人を守り、保護する…こと……です…」
 ショートヘアーである空はアニメのように頭の上に大きな水色の汗を作る。
 「その人件保護対策機関の者が、部下に手を上げる等と、万死に値するぞ…」
 「!!!?…た、た、た、た、隊長!!いや、本当に申し訳ありませんでした!!……でも、アイツ等だって悪かった…」
 「部下に手を上げることなど万死に値する…!」
 第6部隊隊長である、気品に満ちたその男、榊・竜泉(さかき・りゅうせん)は机の引き出しから猟銃を取り出し、空に銃口を付きつけた。
 「ほんと、ゴメンナサ…ギャァ―――――――――!!!!!」
 その声の後に「ダッダッダッダッダ…!!!」という猟銃の発射音が響き渡った。

81日陰:2012/11/24(土) 19:36:08 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第5話+  +其の06+

 +―――――――――+
 「――…榊隊ちょォ〜〜。資料にハンコ貰いにきま………何やってんだ槇村…?」
 ちょっと長い蒼色の髪をした男が、第6番隊武屋に紙の束を持って訪れてきた。だが、目の前に見覚えのある男が、口から魂を抜かしてブッ倒れているのを見て、本題を後回しに、その男は倒れている槇村の頭の前にしゃがむ。
 「……何やってんだよ槇村…。また、こってり絞られたか?」
 「聞いてくださいよ、峰浜(みねはま)センパァァァイ!!」
 「分かった聞いてやるから、その見るからに醜い顔をなんとかしろ」
 +―――――――――+
 「――…つまり、稽古をサボった部下たちを思い切りシバイたら、榊隊長から鉛が飛んできた、と……」
 「そうなんすよ、峰浜先輩!!俺、悪いっすか?!いや、確かに悪いかもしれない!!でも…!!」
 「あァ、もうどっちだァ!!悪いと思ってんのか、良いと思ってんのか!!?」
 男、峰浜・志紀(みねはま・しき)は怒鳴った。
 「つうか、お前のトコの隊長はどうした?うちの辻原(つじはら)隊長が急ぎでハンコ貰ってこいって言ってんだよ…」
 ベラベラと厚い紙の束を横になびかせる志紀。それを見て空は「今隊長いないっすよ…?総帥代行に呼び出されて、どっか行っちまいましたよ?」と言った。それを聞いた志紀は「それを最初に言えや、糞馬鹿後輩愚弄野郎!!!!!」とずっと倒れ込んでいる空の背中を「ゲシゲシッ」と踏みつけまくった。

82日陰:2012/11/24(土) 20:43:15 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第5話+  +其の07+

 +―――――――――+
 「――…して、私を呼んだのは何の用でだ…?」
 真っ暗な空間の中、真ん中だけが明るく照らされている一室に竜泉は来ていた。
 「うむ、貴様を呼んだのは他でもなく、今後、不死者を倒すために人権殺害規程機関との和解をするか否か……。その判断を貴様にも思案してもらいたい」
 その一室の真ん中の明るい所にある机に腰掛けている高野は竜泉にそう言った。高野の隣にはポニーテールをし、顔に斜めの傷跡を造った男、総帥代行補佐官である天草・数多(あまくさ・あまた)が立っている。
 「人権殺害規程機関との和解か……。私としては、不死者不是を殺すことに、人権殺害規程機関という愚物の力を用する必要は無いと考える……。何より………」
 「先日、月文拳が任務中に刺殺されたばかりの事を考えると、人権殺害規程機関との和解には批判の声が上がる可能性が高い……。という心配がありますね、天璋院総帥代行、榊第6部隊隊長……」
 数多の言葉に二人は「うむ…」と頷く。
 月文拳。それは、欧明が隊長として率いる守り屋第5部隊の副部隊長として期待されていた男だ。だが、月文本人に一部隊の副隊長は務まらないと言っていた。しかし、月文が副部隊長に昇進する矢先、任務中に隙きを見せ、殺し屋に刺殺されてしまった……。
 「だが、第8部隊隊員、有北香々美の話では30階建ビルから転落しても生きていたと言う。並みの武器ではそうそう太刀打ちできん…」
 両手の指を交互に組ませ、手に鼻を当てる高野。
 「私としては人権殺害規程機関と和解する等、人件保護対策機関としてあるまじき行為と考える。賛成は出来ぬ……」
 「……そうか…ならば、今後の和解にはもう少し時間を…」
 「ダメよ…」
 唐突にかかったその声に、一同は驚き、声のした方に顔を向けた。

83日陰:2012/11/24(土) 21:51:19 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第5話+  +其の08+

 顔を向けると、そこには白衣姿の伊鈴がこちらに歩いてきているのが見えた。
 「…貴様……!!?」
 「なぜ、貴方がこんな処に居るんですか。五十嵐元総帥代行…」
 竜泉が声を上げる。するとその前に即座に数多が飛び出し、険しい顔をする。
 「悪いんですが、今はそれにお答えする時間は御座いません。ちょっとどいてください……」
 伊鈴は数多に敬語の言葉をぶつけながら、肩に手をおいて横にどけ、前へと進む。
 「一体何故貴様がここにいる。何より前総帥代行の貴様が何故こんな処に出向いている…」
 「何度も言わせないで、その問に答える時間はない。それに今回は情報をあげに来たのよ」
 伊鈴のその言葉に皆は「情報?」と聞き返す。
 「えぇ。今は不死者、一見一夜だけを敵意識しているみたいだけど、敵はそれだけじゃなくなったわ…」
 その言葉に「どういうことだ!?」と叫びながら高野は立ち上がる。
 「……知ってるでしょ?軍の軍士を育てる施設を守る『軍事用施設保護番犬』。そいつらがここ(守り屋)と殺し屋を破壊しようとしてんのよ」
 3人は目を丸めて伊鈴を見る。元々、「軍事用施設保護番犬」と言うものは「軍人教育施設」というところから離れてはならぬものなのだ。何故ならば、その教育施設を守ることが、「軍事用施設保護番犬」の生きる意味だからだ。そんな奴らがなぜ守り屋と殺し屋の両方を狙っているのか…。
 「なぜ、そのような奴らが我々を狙っているのだ…!!?」
 「あっちで軍の噛まされ犬すんのが嫌になったんでしょ?…っで、話はもどるけど、2週間くらい前に、外国人を乗せた貿易船が沈没した事件あったでしょ?それ、その『軍事用施設保護番犬』がやった確率が高いのよ……」
 青い顔をする高野に伊鈴は答える。
 2週間前の貿易船沈没事件。それはかの、ノルマント号沈没事件よりも世間を一時的に震えあがらせた。最初は事故とみられていたその事件だったのだが、沈没した船から、貿易物が消えた空箱と大量の刺殺体が見つかったことかっら事故とは思えなくなった。
 「だが、日本に来て我々を潰したところで奴らに一体何の利益があるというのだ!」
 「解りませんよってのよ!私だってそこにまで耳も目を行き届きませんよぉ〜?……っで、今日本に居る軍犬は8人。そのうちの一人、アリミノ・ディラ・ミキフという青年は、不死者一見一夜の護衛についている。その青年は多分大丈夫よ……」
 また心のこもっていない敬語をする伊鈴。

84ピーチ:2012/11/24(土) 22:03:30 HOST:EM114-51-14-145.pool.e-mobile.ne.jp
日陰>>

久々に一気読みしたら何かとんでもなく話進んでた←

何か一夜君って明るいのか暗いのか分かんないよねw

85日陰:2012/11/24(土) 22:20:13 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第5話+  +其の09+
 
 その後も伊鈴の話は続き、高野、竜泉、数多の3人は、真剣にその話に耳を寄せていた。
 伊鈴の話によると、軍人教育施設を抜け出し、日本にやって来た軍事用施設保護番犬たちが殺し屋と守り屋を潰し、軍の者たちに自分たちの存在意義を見せつけようとしているのではないか、とういう推測があるらしい。
 「あいつらは馬鹿かっ!!?たとえ、我々と人権殺害規程機関を潰したところで軍に己たちの存在理由等示せるわけない!!……だいたい我々は外国にまで領地を広めてはおらぬはずっ!!なぜ情報が流れた!!!」
 「理由としては一つ。一見一夜がアリミノ・ディラ・ミキフに情報漏洩をしたから…………」
 ポリポリと頭をかきながら言う伊鈴。それを聞いて、3人は「不死者って使えない……!」と心の中で毒を吐いた。
 「っま、私が言えるのはこれだけよ…。警備を怠らないよう頑張ってね…」
 それだけ言い残すと、伊鈴は振り返ってトコトコと歩いて行った。
 「っさ、…最後に……!!」
 数多は身を乗り出して叫んだ。
 「あなたは、一体何の味方なんですか?!……我々なんですか…!……人権殺害規程機関なんですか…!!…」
 そう言われると伊鈴は足を止めつぶやくように「決まってるじゃない…」と吐き捨てた。
 「私は不死者一見一夜の味方ですよ」
 と言ったあとに、伊鈴はどこかに消えていった。

86日陰:2012/11/24(土) 22:35:45 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  ピーチ>>

 一夜はどちらかと言うと、無理して笑顔を造って明るく見せてるんだよね…

 そして、和泉さんか伊鈴さんあたりにハグされて、号泣して本当の笑顔を作る的な展開がこれから待ってるやもしれない……(軽くネタバレ

 まぁ兎に角、「これからも頑張ると思うんで、応援、夜露死苦ゥ!!!」←一夜……という事で、今後よろしくお願いします!(土下座ぁぁ!!

87ピーチ:2012/11/24(土) 22:41:48 HOST:EM114-51-14-145.pool.e-mobile.ne.jp
日陰>>

まさかの無理にか…

あたしそんなの面倒だからしない。学校では常に無表情←おい

ネタバレ駄目でしょねぇ!?

88日陰:2012/11/24(土) 22:55:30 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第5話+  +其の10+

 +――――――――――+
 時を遡ること少々。一夜はアリミノと一緒に廃校となった小学校の屋上で季節外れの花火をしていた。
 「…なぜ日本人は夏に花火はするのに、冬にはしないんだ?風向などが夏に比べ荒いからか?」
 線香花火をする一夜にアリミノは聞いた。一夜はそう言われると「ウ〜ン…」と考え込んだ。今まで考えたこともなかった事だったからだ。
 「わかんねぇけど、花火って綺麗じゃん?」
 そう言われ「そうだな」と答えるアリミノ。
 「でも、秋になると空が澄んで綺麗な星がたくさん見えるんだよ………。だからきっと神様が……」
 一夜は燃え尽きた花火を用意した水の入っているバケツにいれて綺麗に輝く星が浮かぶ空を見る。アリミノも同じように空を見る。
 「夏と秋の両方の季節にそれぞれ綺麗なものを用意したんだと思う……」
 アリミノは(こいつ下ネタ野郎だな…)と思いながらも少しニッコリと微笑んだ。そして、ふと小学校の校庭部分に目をやるとそこには白い着物を着た者たちが刀を腰に下げてこちらに歩いてくるのが見えた―――

89日陰:2012/11/24(土) 23:02:10 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 私ネタバレ大好き!! なんか友達とかで、ネタバレは物凄く後が気になるから言わないでくれって言われますね〜←普通だ

 あと、私は学校では普通ですかね……面白い時は普通に笑うし、怒ってるときは裏的な笑みを浮かべるし、泣きそうなときは頑張って笑って泣かないようにしてるし………あれ、もしかして私って笑顔オンリー?←(んなわけねぇだろ…

90ピーチ:2012/11/24(土) 23:03:15 HOST:EM114-51-14-145.pool.e-mobile.ne.jp
日陰>>

確かに花火って夏特有だよね、何でだろ

まず何で小学校で花火!?

91日陰:2012/11/24(土) 23:09:19 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 私の夢で見た幻想(ガチ…

 なんか私と友達数人が学校の玄関から堂々と学校入って花火をしたっていう嘘みたいな本当のことあったんですよ………

 なんか、私って夢に変なもんでてきて良くそれを小説に使うんですよ(なんの特技もない私の唯一の天性と思われる才能……

92日陰:2012/11/24(土) 23:15:55 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  ★☆間違え探しという名の修正☆★

 >>79に「アリミノ」と「アミリノ」の両方が間違って出ていましたが、

 アリミノ◎  アミリノ×  

 なんか「アミリノ」の方が多いですが、正解は「アリミノ・ディラ・ミキフ」です。

 ほんと、すいませんでしたぁぁぁ!!!(地面に頭ぶち込んで土下座…

93日陰:2012/11/25(日) 09:00:45 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第5話+  +最凶に最強+  +其の01+

 「―――…羊が9993匹……羊が9994匹……羊が9995匹……」
 真っ暗な牢獄に青白い月光が差し込む。その月明かりが一番差し込む場所に、手足を鎖で繋がれた青年が、体操座りをして座っている。
 それからも青年は「羊が……羊が……」と数え続け、数が10000になった瞬間青年は顔を上げ「まだ眠れないや……」と言って、また「羊が1匹……羊が2匹…」と数え始めた。
 +―――――――――+
 「何だアイツら…!日本は今でも刀を持った奴がいるのか…?」
 「さっきも言っただろ、アイツらが殺し屋。……1、2、3、……7人か…。そのうちの3人はこの前の奴だな……」
 一夜とアリミノは身を乗り出し小学校の校庭にいる怪しげな者達を見つめる。数は7人。その中の3人は、雅日、奈津樹、リキヤ。
 「アリミノ…早速で悪いが、戦えるか……?」
 「武器にもよるが…あの数なら楽勝だ……」
 「コンバンワァ〜〜〜!!!」
 『あっ゛?』
 真面目に話して二人にかかった、呑気な架月の声。二人はスットンキョな声を出して校庭を変な目で見る。
 「……なんだあの変な奴。…¨タウス¨にも暗殺者や殺し屋も居たがあんなに不抜けた奴らはいなかったぞ…」
 「日本ってのは丁寧な方が多いんだよ………」
 「ソウソウ、日本ニハ、親切ナ方ガ多インダヨォン」
 「!!!?」
 二人は背後から聞こえてきた架月の声に驚き、即座に振り返る。すると、一夜の首に大きく冷たい架月の手が飛んできた。
 「っな…!?」
 「サァテ、死ナナイッテノハ、本当カナァ〜……」
 驚く一夜を他所に、架月は首を絞める力を強める。
 「貴様…!」
 「おぉと、あんたを動かさせるわけにはいかねぇな〜…?」
 アリミノが動こうとした瞬間、背後から雅日の声が降ってくる。
 「――……っぎ、…ガハッ……!!」
 首を絞められてから何分か経った。それでも一夜は死ぬのはおろか、意識も飛んでいない。
 「ウ〜ン、コレハ面白イナ。僕ハ、君ガ一度死ンデ、モウ一度生キ返ルノデハナイカ、ト考エテイタガ……ドウヤラ、違ウヨウダネ」
 架月は困ったような顔で笑顔を作る。
 「っは……っか…じゃねぇ…」
 「ン?一体ドウシタンダイ?言イタイコトガアルナラ、言ッテイイヨ?」
 架月はそう言って、手の力を少し弱める。
 「……バッカ…じゃねぇの…!……絞殺…なんて、とっくに試したに決まってんだろ………!!」
 その言葉を聞いて架月は手に込める力をすべてなくした。一夜はそのまま尻から屋上のアスファルトに落ちた。

94日陰:2012/11/25(日) 09:05:23 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  ★☆間違え探しという名の修正☆★

 またまたゴメンナサイ!

 ↑の「第5話」は「第6話」の間違えでした!

 何度もスイマセン!!!

95日陰:2012/11/25(日) 09:42:12 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第6話+  +其の02+

 「ゲホ……カハ…!」
 「君ハ僕ガ思ッテイタヨリ、賢イミタイダネ?…一体イクツノ死ニ方ヲ試シタンダイ?」
 アスファルトで佇むだけの一夜に、架月は目線を合わせてしゃがむ。
 「…大抵のものは試した。感電死とか凍死も考えたけど、無駄だった……」
 一夜は架月の目を見ず答える。
 「ソウカ。分カッタヨ、君ハ僕ノ考エタ、生キ返ル者デハ無ク、死ヌ手前デ精神ヲ保タセル者ナノカ…」
 「それにプラス、高速自己回復能力だ…」
 一夜はスッと立ち上がり、そう言った。
 架月は「ドウイウコトダイ?」と聞き返す。
 「…人には、自己治癒力ってもんがあるだろ?人は怪我をすると、まず傷口を塞ぐためにカサブタを創る。だが、俺はカサブタを通り越して一瞬にして怪我を完治させるんだ……」
 少し、辛い顔をして言う一夜を見て架月は「……ジャア、ソンナ君ニ、頼ミガアルンダガ?」と言ってきた。「頼み…?」と聞き返す一夜をニッコリと微笑みながら見る架月。
 「ッソ!チョット君ニ相手ヲシテホシイ殺シ屋ガイルンダヨ…」
 架月も立ち上がり、一夜にそう言うと、閉じられていた目をそっと開け、一夜をガン見した。

96日陰:2012/11/25(日) 10:35:02 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第6話+  +其の03+

 +――――――――――+
 サクッサクッと土を踏む音がそこ一体に鳴る。全部で9人の足音は、大きな屋敷を前にして停まった。
 「…ここが、殺し屋…の、本基地…?」
 思っていたのよりも大きく、日本文化の欠片じみていたので、素直に「ここが殺し屋本部」という感覚がわかなかった。
 「ソウ!コレガ我々、殺シ屋ノ基地ダヨ!!サァサァ、入リタマエ!!!」
 架月はそう言うと、大きな木の門を押し開けて、中に悠々と入っていく。
 「…………………」
 「…!……何だよ…不死者…」
 「…いや、殺し屋の人たちがなんで、こんなヤサ男一人にそんなにズタボロにされてんだろうなぁと思ってよ…」
 「ウッセェなぁ!!普通こんな外国人が殺し屋6人をブッ倒せると思うか!!?」
 ギャンギャン喚く雅日だが、それをよそにアリミノは「ップ…」と笑った。一夜も「ハハハッ!そりゃぁ、こいつも並みの訓練受けたわけじゃねェからなぁ!油断したらソラヤられるわ!!!」と笑いながら言った。
 それを見て、ズタボロの服を着た殺し屋一同は、一瞬でイラついた。
 「つうか不死者ぁ!こいつぁ、何者だ!!」
 「俺は一見一夜だ!!それにこいつは、アリミノ・ディラ・ミキフって言う、元軍事用施設保護番犬だ!言っとくがアリミノをなめんじゃねェぞ!!そこらの刀で太刀打ち出来るほど弱くねェからな!!!?」
 殺し屋の屋敷内に入って、ちょっとまでは言い争いをしていた一夜と雅日だったが、屋敷内にある大きな黒い門の部屋の前に立つと、二人は言い争いをやめた。

97日陰:2012/11/25(日) 12:27:47 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第6話+  +其の04+

 架月は、その門の前に立つと振り返り、一夜に言った。
 「イイカイ?コノ中ニハ、¨釘寺・功刀(クギデラ・クヌギ)ト言ウ、最凶デ最強ノ殺シ屋ガイルノダヨ」
 「クギデラ?」と呑気な声で聞き返す一夜。それを聞いてか、聞かずか、雅日は自分から身を乗り出して口を開いた。
 「殺し屋で唯一、共同を嫌い、単独で人を殺め続けた殺戮男。歳は16という若さだが、そいつの手で殺された者の数は軽く50を超えている………。だが無関係の者の殺害も明らかになったことから、牢獄監禁になった男のことだ…。…殺し屋の中でも一目置かれ、守り屋からも最も危ない人間と言われている…」
 一夜はその説明を聞いて「ホへ〜」と呑気な声を上げた。これにはアリミノも「マズい……」と思う。
 「っで、俺は何をすればイイんだ?その男を見せるために呼ばれた訳じゃねぇんだろ?」
 「ウン!話シガ早クテ、有難イ!!…悪インダガ、君ニハ功刀クンノ相手ヲシテイタダキタインダ」
 「相手?…戦えってことか?」
 「アァ!無論只デトハ言ワナイ。モシ、君ガ功刀クンニ勝ッタラ我々ハ君カラ手ヲ引キ、今後一切君ニ関ワラナイ!!ドウダイ?良イ条件ダロウ?」
 確かにいい条件である。だが、もし一夜が負けた場合、どうなるのかアリミノと一夜の脳裏に疑問が浮かんだ。
 「……もし、一夜が負けたらどうなる?」
 そう聞いたのはアリミノ。一夜も似た質問をしたそうな顔になる。
 「ウン。マァ、負ケタラ、負ケタダヨ!想像ニオ任セスルサ!」
 それだけ言うと、架月は門に体の向きを戻し『ギィィィィィィィィィ……』という音を立てて門を開けた。

98日陰:2012/11/25(日) 13:22:03 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第6話+  +其の07+

 その門を開けたところにあるものは黒く鉄錆た棒で仕切られている牢獄。上下左右前後ともに灰色の石垣で出来ているそこは、監獄がひとつと、そこに一人の青年がいるという正に殺風景なものだった。
 監獄の中にいる青年、釘寺・功刀と思われる者は、石垣側に顔を向けて体操座りをしている。座っているせいで床までつく真っ黒の髪はツヤがあって綺麗だ。
 (………アイツが……釘寺…功刀……)
 一夜は門の手前で、まだ足を止めている。こいつが、皆から危険視されている少年。悪く言ってしまえば、皆から軽蔑されている存在の男。
 「………狼が、“9人”来た……」
 功刀は一夜たちに目もくれないでそう呟いた。
 (!!)
 功刀の言葉に疑問を抱いたアリミノ。
 「そのうちの一人は、外国人だね?しかも、物凄く訓練された。考えるに軍事用施設保護番犬かい?」
 その言葉に、一夜とアリミノは眉間に皺を寄せる。
 「…何だあいつ……」
 「生気で、俺らを見捉えやがった……」
 ボソボソと喋る一夜とアリミノ。
 「ん?一人生気の感じられない輩がいるなぁ……。そうか、君が噂の不死者、か…。面白いな、なぜそんな人がこんな処にいるんだい?」
 功刀は一向に背を一夜たちに向けたままで喋っている。
 「…功刀クン!イツマデモソンナ所ニ居ルノハ、嫌ダロウ?少シバカリ外ノ空気ヲ吸ッテミナイカイ?」
 架月はいつもどおり不気味な笑みを浮かべて言う。そして、トコトコと牢屋の鍵穴がある所にまで進み、持っていた縦長で金色の鍵を鍵穴に入れ、牢屋を開けた。

99日陰:2012/11/25(日) 13:26:21 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  ★☆間違え探しという名の修正☆★(もう、いい加減にしろよ…

 「+第6話+  +其の07+」ではなく「+第6話+  +其の05+」です。

 間違えまくって本当にごめんなさい…(´Д`;)ヾ ドウモスミマセン

100日陰:2012/11/25(日) 13:50:46 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第6話+  +其の06+

 +――――――――――+
 「ホンマにあの功刀と、不死者野郎が一騎打ちのサシ勝負するんかい?!!」
 「えぇ…。そうらしいですよ?今道場に二人ともいるらしいですよ?」
 殺し屋本部の台所。そこでは光聖と時輝の二人が、菓子作りの後片付けをしていた。
 「何やとぉぉぉぉぉぉぉ!!!それ先に言わんかいっ!!!」
 「え、ちょ…光聖くん!?…後片付けは…?!……ちょっと、光聖くぅぅぅぅん!!!!」
 +――――――――――+
 「――…おい、…」
 「ん?…何だ?」
 殺し屋の道場に着物を着た者達が集まってきた。全員、道場の真ん中で向かい合う一夜、功刀をざわつきながら見つめる。
 「…もし、アイツが犯られたら……どうするんだ…」
 雅日は隣りで腕組をして立っているアリミノに聞く。
 「…さぁなぁ〜。まぁ犯られたら、犯られただろう?」
 何も思わない顔をするアリミノ。雅日は「おい…!」と少し焦ったように、声を出す。
 「心配するな…。アイツは…一夜は……自分よりも孤独な奴にはやられない…」
 アリミノの自信たっぷりな発言に雅日は少し押されたようになった。

101日陰:2012/11/25(日) 14:17:24 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第6話+  +其の07+

 「……フ…ファァァ…!!……最近寝てないから、眠いなぁ〜……」
 功刀は、くまのできた目を閉じ、グーン…と背伸びをする。何だこの超呑気野郎?と思った一夜だが、言葉に出すのはやめておいた。
 「…あぁ…えぇ〜と、功刀…だっけ?……俺は一見一夜。お前の言ったとおり不死者だ。夜露死苦ゥ!」
 「……ん…。あぁ゛……俺は釘寺功刀……。まぁ覚えなくていいよ?どうせ、どっちか死ぬみたいだし…」
 功刀がそう言うと、一夜は「ん?」と聞き返すような言葉を放った。
 「…あっ…いや…?…んじゃ、そろそろ、始めよっかぁ……」
 功刀は下手な言い回しをして、頭をかいた。一夜は「別にいいけどよぉ……」とマイナス気分な声を出す。
 「まぁまぁ。つーか、……――――」
 ニィィ…と口角を上げる。そして、「ガドガンッ!!!」という音を上げ、地面に脚をめぐりこませ、一瞬にして一夜の後頭部に脚を飛ばした。

102日陰:2012/11/25(日) 15:13:04 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第6話+  +其の08+

 『ドグシャァァ…!!』
 功刀の一蹴りで、道場の壁に吹き飛ばされた一夜。道場の壁が吹っ飛ぶほどの力を込めて一夜を蹴り飛ばした功刀は空中で一回転しながら床に「タンッ」と綺麗に着地する。
 (…ダメダナ……。功刀クンノ、アノ一蹴リヲ喰ラッタラ最後。生キテイル確率ハ、低イ。否、0ダ……)
 架月は赤く細い目をうっすらと開け、壊れた道場の壁を見る。
 (何だアイツ…。まさか、これぐらいで死――――)
 『ドゴォォン!!!』
 呆れていた功刀をよそに、壊れた壁の板の山から、音を立ててはい出てきた一夜。
 頭部と唇が切れて少し、血が出ているが、一夜はそんなの他所にユラユラッと横にふらつき、揺れながら、道場の中に脚を入れる。
 「何でアイツ……!?」
 「…蹴りを喰らった直後。頭部の血管細胞と骨組みを強化して、何とかしのいだんだ……」
 驚く雅日を尻目に、アリミノは口を開いた。雅日はその説明を聞いて、そんなことが可能なのかと考えた。
 「……………ククッ……!!」
 高い声で笑う功刀。一夜はそれに気づいて顔を上げる。髪に隠れて見えるのは左目だけ。
 「…良いじゃねぇか……!…不死者、一見一夜ぁ!!!来いよ!お前だって本気出せよ!?不死者の本気ってのはどんなもんなんだ!!?…あぁ゛!!」
 功刀は膝を少し折り曲げ、両手を開き、笑いながら叫んだ。一夜は横に揺れながらどんどん功刀に近付いて行く。「…フゥ――…」深くため息をこぼす一夜。そして、功刀と少し距離を置いたところで一夜は足を止め『ドガンッ!!!』という音を立て、道場の床に脚を廻りこませ、功刀の胸ぐらにまで飛んでいった。
 そして、一発。本気の拳を功刀の腹に飛ばした。

103日陰:2012/11/25(日) 16:11:08 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第6話+  +其の09+

 『バゴォォンッ…!!!』
 功刀の腹に飛んできた一夜のガチ本気の拳。
 「ガハッ…!」と呻きながら血と唾の両方を吐き出す功刀。髪で両目を隠しながら、功刀を殴る一夜。スローモーショーンのようなその光景は数秒ほど続いた。この光景の終幕は功刀が吹っ飛ばされたことにより、決まった。こちらも一夜と同じように道場の壁をぶっ壊すものだった。そしてこっちも口をアングリと開けて、ただ唖然としかできなかった。
 「……あーれれぇ〜…!皆から軽蔑されてるような子がこんなもんなのかなぁ〜?」
 挑発爆弾発言を笑いながら叫ぶ一夜。その言葉に、反発してかどうかは分からないが、功刀は板の山の中から足をだし、勢いをつけて出てきた。
 「…クハハッ……!いい度胸じゃねぇかよ!!?」
 口から血を出しながらも、叫びまくる功刀。そして、そのまま、またも足に力を込め、「ダッダッダッ!」という音を立て、一夜の方に猛ダッシュしてきた。
 功刀は、一夜の目の前までくると、手を強く尖らせ一夜の顔にその手を飛ばす。だが、一夜の方は膝を曲げその手を最も簡単に避ける。次に一夜は足を上げ、膝を功刀の頭にぶつけた。
 その反動でまたも吹き飛ばされる功刀。今度は人混みの中に吹っ飛ばされ、それを見た全員が全員、またも唖然としていた。
 「…ウソ……!!?だろ…?!」
 「功刀とかいう男の動きをよく見ろ。確かに攻撃は強く、それなりの速さを持っている……。だが、それなりの速さは“それなり”でしかないんだよ。よく見ていれば、すぐに避けられ、そして攻撃ができる…。一夜の攻撃自体それほどのダメージは無いが、それを何度も繰り返せば……」
 また驚きに満ち溢れる雅日にかかったアリミノの声。そして、床に着地する一夜を見てアリミノは続ける。
 「一夜の勝利は確定される…!」

104日陰:2012/11/25(日) 17:04:13 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第6話+  +其の10+

 +―――――――――+
 それからも続く一夜と功刀の殴り合い。だが、その殆どは一夜が功刀の攻撃を避け、功刀が一夜の攻撃を受けというものだった。
 「冗談カ夢カイ、コレハ……?!僕ノ目ニハドウモ、アノ功刀クンガ押サレテイル様ニシカ見エナインダガ……」
 「…架月さん……それは夢でも冗談でもないっすよ…。歴とした……」
 その変な光景をずっと見ていた、架月だったが、流石に雅日にそう言われて珍しく冷や汗を垂れる。
 そして、雅日も同じように頬に冷や汗を垂らし、言葉を続ける。
 「釘寺の…敗北です……」
 そう呟いた瞬間、皆も同感するようにゴクッと息を飲む。何故なら、今目の前にはボロボロになった功刀と一夜が居て、功刀はその場に座り込み、一夜は疲れたせいで息を上げながらも頑張って立っていたからだ。
 「ハァ……ハァ…ハァ……ん…ハァ……」
 息をしていても、喉が痛い一夜。功刀の方も蹴られたりぶん殴られた所が痺れるように痛い。しかも皮肉にも、自分は痛いほどに怪我をしているというのに、一夜は追ってしまった怪我をたった数秒で完治させている。
 「……どうした…。…トドメ……早く………させ…よ……!」
 途切れながらも言う功刀だが、一夜は「悪い、そんな気全然ない……」と小さく答え、振り返り人混みの方に入っていった。
 「…!……待て…よ!……殺さねぇ………ってんなら…俺が……てめぇ……を…………!!」
 力なく立つ功刀の力無い最後の反抗。功刀はそう怒鳴り散らすと、もう一度拳を作ろうとした。だが、その前に一夜が拳を作りそのまま功刀のデコに飛ばした。…っが、てっきり功刀をぶん殴るかと思った一夜だったが、その手は功刀の額につくチョット前に泊まった。
 「…なっ……!?」
 「巫山戯た事言うな、糞餓鬼ィ!!」
 そしてそのまま手を功刀の首に巻き、額と額をくっつける一夜。

105日陰:2012/11/25(日) 17:45:46 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第6話+  +其の11+

 「言っとくが、俺はお前を絶対に殺さない!!なぜなら、てめぇはこれから最高に最幸になれるからだ!!!」
 目の前で叫ぶこの男は一体何を言っているのだ。功刀はまずそれから探りたかった。
 「最凶に最強だか、殺戮男だか、軽く50の人間殺した奴だか、なんだか、知らねぇがなぁ!!16の坊主がんなこと言われて、黙ってんじゃねぇよ!反抗しろや!!自分の言いたい事言えねぇのが………!」
 一夜は功刀のほほを両手で掴み、少し後ろにやり、
 「いっち番、最悪で最低なんだよォ!!!」
 その言葉に心を動かされたのか、功刀の眼に灯る一粒の明かりが一夜には見えた。
 「…ッフ……分かったかよ、クソガキ…?」
 一夜の口元がフッと上がり、頬笑を作った。
 「………………」
 「よし、今回は俺様の圧倒的勝利だ!!宴会やんぞ、宴会!…おーい、殺し屋ぁ!!酒用意しろ!酒ぇぇ!!」
 唖然とする功刀を床に置いて、力いっぱいに立ち上がり、そう叫んだ。
 「…アノ子ハ、変ワッタ子ダナァ?マダ、アノ子ノスベテヲ見レタ訳デハ無イガ……アノ子ニ興味ガ湧イテキタヨ…」
 「……だろうなぁ…」
 圧倒的に負かされた架月。その架月にアリミノは笑顔で話しかける。
 「アイツはただの不死者じゃねぇんだ。……孤独に孤独を重ねて、辛さに辛さを用いて、強くなっている。そんな…凄い奴なんだよ」
 アリミノが笑顔でそう言い切ると、架月は「ソウカモシレナイネ」と本物の笑顔を浮かべながら呟いた―――

106日陰:2012/11/26(月) 18:53:55 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第6話+の+番外編+!! +お酒は二十歳になってから+

 「おら、おらぁ〜〜〜…!もっと酒飲めよぉ〜〜!!殺し屋の旦那ぁぁぁ〜…!!」
 夜も更け、月が綺麗に見える午前1時。
 殺し屋本部に泊る覚悟で酒を頬張る一夜。それに押されて、「じゃぁ、もう一杯…!」と言いながら黒い長髪で、左目を隠しているちょび髭男、殺し屋頭領、不和・秘黒(ふわ・ひぐろ)は酒を入れる盃を一夜の持つ酒の瓶に近づける。
 「うおぉぉい!!アリミノ!!!お前ももっと酒飲めよぉぉ〜!!!」
 「……もう、いい加減酒を飲むのは止めろ…。二日酔いしてしまうぞ…?」
 一夜の隣で普通に酒を飲む19歳の少年は、耽々と言っていく。
 『……………………』
 そして只それを黙って見ているだけの雅日と功刀。架月もその場に居たのだが、架月は独り笑いながら酒を飲んでいる。
 「お、おい不死者……」
 「お前なんで酒飲んでんだよ……?」
 「んぁ…?」
 2人はそれぞれバトンのようにコメントを繋いでいく。一夜はそれを聞いて「あぁ…」と赤い顔をして、2人に顔を向ける。
 「俺ってさぁぁ!!今“22歳”なんだぁぁ!!!」
 ドーンと足を前に広げてそのまま一夜は後ろにひっくり返る。アリミノは一夜の顔を見て「あぁ、コラ寝てるわ…」と他人事のように呟いた。だが、それを余所に一夜の歳を聞かされた2人は『冗談だろ…?!』と声を合わせて呟いた。

107日陰:2012/11/26(月) 19:41:31 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第7話+  +真の敵+  +其の01+

 「――――…不死者野郎ぉぉぉぉぉ!!!!」
 殺し屋の屋敷に響く雅日の怒鳴り声。
 それに驚く殺し屋の者達。
 「一体どうしたのだ、高角!!」
 とうとう痺れを切らした奈津樹が、雅日を追って来た。
 「どうも、こうも、あるかぁぁぁぁ!!!あの野郎『ゴッメーン!君と喧嘩するわけにはいかないんだ、テヘぺろぉ〜』とか言ってどっか行きやがったんだよ!!!?」
 文句を垂れる雅日に奈津樹はため息をこぼした。突然叫んで怒鳴って、歩き回った理由がこれか…と、少し呆れたからだろう。
 「……そうか、貴様もアイツに喧嘩を頼みこんでいたのか…」と肩の力が抜けるような口調で言う奈津樹。それを聞いてか聞かずか、雅日はもう一度「不死者野郎ぉぉぉぉぉ!!」と叫んで屋敷から出て言ってしまった。
 先日、功刀との殴り合いに勝利した一夜は殺し屋との関わりを徹底的に切る、という行為を一切しなかった。それだけではなく殺し屋の者たちと友達の様に振る舞い、今では個人的に「サシ喧嘩」を申し込まれるほどになっている。そしてアリミノにも、その行為は広がり、いつも嫌々言いながら、喧嘩を買っているということになっている。
 「――…ったく、あの不死者野郎どこ行きやがったんだ!!?」
 一夜を探す為、殺し屋の屋敷を出て山道を下る雅日。少しばかり歩いていると、目の前にアリミノが現れた。
 「…!…確かお前…不死者の護衛役だった…―――。……え〜と…」
 「アリミノ・ディラ・ミキフだ。アリミノで良い…」
 アリミノは無愛想にそう言うと雅日の方に、タイミングの整った足取りで歩いて行く。
 「…おい……、え〜と…アリミ、ノ……。不死者野郎、どこに行ったか知らねぇか…?」
 戸惑いながらもアリミノの名前を呼び、聞く雅日。アリミノは雅日の直ぐ目の前に停まると、「一夜なら……――――」と静かに口を開いた。

108日陰:2012/11/26(月) 20:25:05 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第7話+  +其の02+

 +――――――――――+
 「―――…“一夜”ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 「うおぉぉう!!?……って、ビックリしたぁ……誰かと思えば、雅日かよ…」
 ところ変わってとある草むらの堤防。そこで、一夜は一人隣に黒いギターケースを横に並べて寝っ転がっていた。「誰かと思えば、じゃねぇ!!?てめぇ、人の喧嘩をほったらかして……―――」と雅日が言いかけた時、一夜は一人で話し始めた。
 「何でこんな所までワザワザ……。……つうか、今“一夜”って言わなかった…?」
 最初の方の一夜の言い分には、いろんな意味で反発しかけた雅日だったが、次の単語を聞いて少し口ごもる。
 「…べ…別に…良いだろうが!……人が居ないところぐらい………」
 と、顔を赤らめて言い返す雅日。その顔と言い訳に「ップ…」と笑いをこぼす一夜。
 「なんだよ!?」と耳まで真っ赤にしながら雅日は怒鳴った。一夜は「イヤァ〜」とあからさまに笑っている顔で呟くように言った。
 「まぁ、そんな所で立ってないでお前を寝ろよ!」
 一夜はそう言ってギタケースの置いていない方の地面をポンポンと片手でたたく。

109日陰:2012/11/26(月) 20:43:31 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第7話+  +其の03+

 「んっ…ょいしょっと…。……何でお前こんなとこで寝てんだ?」
 雅日も一夜の隣でゴローンッと寝っ転がると、隣で同じく寝転がる一夜に問う。
 「…ん〜〜……。特に理由はねぇけど………何か寝てみたくて…」
 一夜がそう言うと、ゆっくりと横に風が吹く。一夜の銀髪の髪と、雅日の赤髪が綺麗になびく。
 一夜はそれが心地よくてか、どうかは分からないが、ゆっくりと目を閉じ、深い眠りに着いた。
 +―――――――――――+
 『キキィィィィィィィィ!!!』
 突然聞こえる車の急ブレーキ音。それが聞こえたかと思うと、自分たちの体は車体の中で宙に浮き、頭がどこかに強くぶつかった。
 次に下から物凄い風圧に押され、意識がどこかに飛んでいった。その一瞬で一体何が起きたかは分からなかったが、ひとつだけは分かった。
 ―――――――――皆死ぬんだ―――――――――と、言う絶望的な事が……―――
 +――――――――――+
 「!?」
 たった一瞬自分の目の中で起きな出来事。一夜は悪夢のような“それ”が終わると、素早く目を開けた。数秒と寝ていた気がないのに、体はぐったりして、顔には物凄く汗を垂らしていた。
 (……何だ…!?………今の…)
 一夜は上半身を上げる。すると、目の前には日光が反射して綺麗に輝く河と隣で眠る雅日の2つが見えた。
 今のは夢だった。そう思うのに数分を用いたが、そう分かると一夜はホッとした。そして、もう一度体を戻し目を閉じた。

110日陰:2012/11/27(火) 18:55:25 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第7話+  +其の04+

 +――――――――――+
 「―――……クファァァァァ〜〜〜…!!…よく寝たぁぁぁ〜〜…!」
 大きな欠伸をした後に、一夜は一人喜言を放つ。
 「よく、こんな所で寝てたな………俺…(唖然…」
 その隣で一人驚きの言葉を静かに上げる雅日。
 二人は今の今まで(一時間ほどだが…)堤防の草むらで昼寝をしていた。
 雅日は地面から上半身を上げ、一夜と目線を合わせる。
 「!……お前、良く寝たって割には、顔色悪いぞ…?」
 大丈夫かよ…?雅日は一夜に問いかける。一夜自身は全く気分が悪くなかったのだが、言われた通り顔にはびっしりと汗が張り付いて、見るからに気分が悪そうだった。一夜は言われてから気付いたようで「…あッ、マジだ……」と言いながら手で汗をぬぐう。ぬぐい終えると、二ッと作り笑いを雅日に向けた。
 +――――――――――――+
 ――――……ところ変わってゲームセンターやらチェーン料理店の並ぶ大商店街。一夜と雅日の二人は、そこのゲームセンターで暇を潰していた。
 一夜の方は楽しくやっていたのだが、雅日の方はそれとなく付き合っていた。もともと雅日が一夜を探しに来たのは、勝負を申し込んだのにやらなかったからで、ゲームセンターで遊びたかったからではない。
 「―――…なぁ……」
 「ん……?」
 多くのゲームセンターを回り終えた時、雅日は力なく一夜を見た。
 「お前…本当に22歳なのか……?」
 いきなり聞いてきた質問にしてはあまりシックリこない質問だ。
 一夜は少し雅日の問いの意味を考えた後に「…あぁ……!」と首を縦に揺らした。

111日陰:2012/11/27(火) 19:17:42 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第7話+  +其の05+

 「俺さっ……!“6年前の事件”から成長が止まってんだよ……。見た目は全然高校生だけど、一応これでも22歳なんだ……」
 一夜はパチンコ店の前で足を停める。すると店の自動ドアが一夜に反応してゆっくりと開いていく。それに気付いた一夜は薄笑いを浮かべて前に歩いていく。それに合わせて自動ドアが閉じていく。
 「……………6年前の事件…って……何だ…?」
 悪いと思いながらも雅日は聞いた。数秒間、何の言葉も返ってこなかったので、少々諦めかけていると、
 「……6年前…4人家族を乗せた自動車が崖から転落するっていう…………変な事件……」
 という言葉が返ってきた。穏やかに笑っているが、その笑顔にはどこか悲しみが見えた雅日。
 (………………………つか、ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!?何か物凄くメンドクサイ事になってねぇか、オイ!!!…俺はこいつとアン時の決着をつけるためにコノ馬鹿追って来たんだぞ?!!何で慰め役っぽい役やってんの俺?!!!)
 一糸まとわずそんなことを頭の中で叫ぶ雅日。そして、アン時といのは奈津樹、時輝、リキヤ、光聖の4名と共に一夜を追っていた時の事だ。
 (ヤバイ…!…カンゼンッに甘くなってる……。ったく、何なんだよこの野郎?!俺達とすんなり溶け込みやがって…!………何で……コイツ俺達と仲良くしてんだよ……)
 どうもギクシャクする雅日の心。頭の中にグルグルと言葉が回りまくっていると、体が何かにぶつかる事を感じた。

112日陰:2012/11/27(火) 20:44:41 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第7話+  +其の06+

 ドンッと言う効果音と、「あ゛?」と言う低音の男の声が聞こえてくる。
 雅日はぶつかった男を見た。耳にピアス。左目のちょっと下に傷。黒い学ランに赤いTシャツ姿。見るからにバリバリの不良高校生だ。
 「なんだ、てめぇ?」
 男は背を雅日に向けたまま顔だけを後ろに向ける。それと同時に、一夜の目にあと3人ぐらいの学ラン姿不良高校生と、その男達に行く手を阻まれている2人の中学生くらいの女子たちが見えた。
 「…おい、なんだよてめぇらは…?」
 男は背を向けたままだ。雅日も男達に囲まれている女性を見て大体の成り行きを理解した。ナンパかぁ…、雅日はそう口走った。それにキレかどうかはわからないが、男は体を雅日に向ける。
 「なんだよお前。喧嘩売ってんのか…?」
 小太りのその男は雅日に怒りの言葉とあからさまに怒っている顔を向けた。雅日は「別に?」と言いかけた。だがその前に…
 『バゴン…!!』 
 小太りの男の顔面に一夜の左ひじが飛んできた。男は、一夜のひじを喰らうと鼻から血を垂れ流しながら後ろにゆっくりと横転していく。
 雅日は唖然とした。何が気に喰わなくてこの少年(22歳だが…)はこの男に手を上げたのだろうが。しかし、それを考える時間も無く今度は違う男が一夜の背後から「この餓鬼…!!」と言って襲いかかってきた。一夜は即座に振り返り構えるが自分が相手を殴り飛ばす前に、その男は雅日のストレートアッパーを喰らって横に倒れた。
 「ッキャ…!!」女性の小さな悲鳴が上がる。だが、そんなものを余所に次は雅日に他の男の手が伸びる。そして今度は一夜がその男の腹に強い蹴りを喰らわせ、その男もそのまま前に倒れた。
 残る男は一人。だが、その男は雅日と一夜を見て犬が逃げるように「うわぁぁぁ!?」とほざきながらどこかに逃げて行った。
 その場に残される女の子2名と一夜、雅日の4名。一夜は自分の足元でぴくぴくと痙攣する小太りの男を見下すような目で見た後に女の子達に近寄り「大丈夫?」と聞いた。女の子達は怯えながらも「…はい」と答えた。それを聞いて一夜は「そんじゃぁ、早く帰りな?他にもこんな奴らが居るから、下手するとまた捕まっちゃうよ?」と見っこりとほほ笑みながら言った。流石にそれには困る女の子達は「ありがとうございました」と呟くように言って何処かに行った。
 「………どうしたんだよ…。お前?」
 雅日は女の子達の背中を見送る一夜を見た。
 「別に?弱い子たちを怯えさせるやつって嫌いなんだよ…」
 一夜はそう言うと肩にかけてあった黒いギターケースを肩にかけなおして、またどこかに歩き始めた。

113日陰:2012/11/28(水) 18:39:02 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第7話+  +其の07+

 +―――――――――――+
 「―――…ンファァァァァ〜―……んン゛……」
 殺し屋の屋敷の縁側にある廊下で、寝返りを打つ功刀。ここ数日寝ていないことと、ずっと湿っぽい牢屋の中に入っていたことによって、たまっていた疲れが原因となって功刀はグッスリ夢の中。両手両足には白いリストバンド、服は功刀の体に合っていない大きなサイズの寝巻という格好は冬風の冷たいこの時期には寒すぎる。しかし今日は天候も良く、春ではないかと思うほどだ。
 「……んっ?……確かアイツは…」
 道場の方からタオルで汗をぬぐうアリミノが功刀の方に歩いてきた。
 アリミノは廊下に寝そべって寝ている功刀を見て名前を思い出そうと思考を回転させる。
 「釘寺……功刀………だったか…」
 功刀の頭部手前でアリミノは足を停め呟いた。
 「……………なぜ、こんな所で寝ているんだ…?」
 アリミノは目だけを功刀に向ける。
 +――――――――――+
 「……………………」
 青い空に目を向けるアリミノ。その隣で寝がえりをうちながら寝息を立てる功刀。
 屋敷の縁側の廊下は当たる日差しが暖かい。ゆっくりと屋敷を通り抜ける風は綺麗に二人の髪を横に流す。
 (………こんなにも、ゆっくりと太陽に当たったのは…………)
 いつ以来だろうか…。風がやみ少しボサついた髪を整える。アリミノは少し目を閉じ、深く息を吐いた。
 だが。
 気持ち良いと思ったのも束の間。屋敷前の林の中から、先が光る“何か”が和むアリミノ目掛けて飛んできた。

114日陰:2012/11/28(水) 20:14:53 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第7話+  +其の08+

 アリミノを捉え、素早く飛んで行く、先が光る“何か”。
 その何かがアリミノの頭に直撃するという瞬間…――――――。
 「タンッ…………!」
 アリミノは廊下に片手をつき、上半身を空中に浮かし、その何かを避けた。それは廊下に突き刺さり正体をあらわにした。
 (…!……矢…っか…)
 両足を廊下につけた時、アリミノは眉間に皺を寄せながら考えた。確かに廊下に刺さったのは細い矢。
 (…………どこからだ…?……どこから狙っている…)
 静かにキョロキョロと顔をあちこちに向ける。そして屋敷の手前にある林が目に入った。
 あそこか……。アリミノは直感的にそう思い、林の方に掛けて行った。だが、屋敷から出るという瞬間、今度は数十本の矢がアリミノの足元を狙って放たれる。それも華麗にジャンプしながら避けるアリミノ。
 しかし。
 アリミノがすべての矢を避け切ると、今度は寝ている功刀に向かって一本の矢が放たれた。
 「しまっ………!」
 アリミノはすぐに功刀の方に走っていく。だが、またもアリミノの足元に矢が放たれ、功刀への道を阻まれる。「ッチィ…!間に合わねぇ……!!」そう思った時、功刀を狙って放たれた矢は、もう功刀の頭の真ん前に来ていた。そして…
 「グシャッ…………!!」
 生々しい音がそこ一体に広がった。

115日陰:2012/11/29(木) 17:36:00 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第7話+  +其の09+

 「………何コレ?」
 左手で頭を支え、右手で飛んできた矢を掴む功刀。功刀はグシャッと言う音を立てて矢を真ん中で真っ二つに折る。
 「っ……テメェ、起きてたのか…?」
 「アホォ〜……。…3時からやる連ドラ見たくて起きただけだ………」
 欠伸交じりの言葉を呟きながら廊下に座りなおす。
 「つかっ隣でダンダンやられてオチオチ寝られるわけねぇだろ…?」
 「結局起きてたんじゃねぇかよ!!?」
 大きな欠伸をブチかます功刀にツッコミを入れるアリミノ。しかし、そんな二人を余所に林の中からまた無数の矢が二人目掛けて放たれた。
 功刀を狙った屋は屋敷の瓦を壊し、屋敷内の畳に突き刺さる。
 逆にアリミノを狙った矢は、一部分の地面に集中的に突き刺さる。
 「何だ、この矢打ってる奴ら…?知り合いか……?」
 二人が合流すると、功刀がアリミノの横顔を見ながら尋ねる。
 「いきなり矢を打ってくる奴らを知り合いにした記憶はねぇ」
 表情を変えずに言うと「だろうなぁ…」と功刀は返した。
 二人は顔を険しくして林を見る。すると、またも無数の矢が二人を狙って放たれた。
 (……遠距離からの刃物攻撃………。…流石にこっちは分がわりィな……)
 再び二人は、離れ、アリミノは足を地面にこすれ合わせながら考えた。
 (…かと言って……。こっちから近付いて行くのは危険すぎる…………)
 功刀も見事に地面に着地しながら考えた。
 (――――……ったく、まだ日本(こっち)では使いたくなかったが……!!!)
 仕方ねぇ……! アリミノはそう心の中で断言すると、着ていた羽織を無造作に脱ぎ捨てた。

116日陰:2012/11/29(木) 18:05:44 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第7話+  +其の10+

 緑色のとても目立つ羽織が空を舞う。パサッと空中で流されていた羽織が地面に落ちる。すると、羽織で見えなかったアリミノの上半身が現れる。
 「…!?……んだぁ、それ…」
 功刀は驚きと呆れから、顔をひきつらせる。そしてアリミノの上半身をマジマジと直視した。
 アリミノの上半身には黒く光る鎖がギチギチに巻かれていた。アリミノは右手に、鎖に繋がれた黒い左右同じ形の大きなナイフを握り、表情を笑に変える。
 「――――……五十嵐の姉さんに一週間で作ってもらったコノ武器…。もう少しこっちでは使いたかぁなかったんだが仕方ねぇ…」
 ここで使わせてもらう…!!
 グンッ……!!!と、アリミノはナイフを引く。鎖が体から離れ、アリミノの周りを浮遊する。そして、もう一度勢いよく後ろにナイフを引くと、林の方へと投げた。アリミノは鎖に手を持ち返し、地鳴りのような音を立てて、ナイフに円を描かせるようにグンッと鎖を横に引く。ナイフに当たった林の上部分が地面に落下する。ドゴンッ…!!!と地響きをいくつも重ね、大体を切り終えるとアリミノは鎖を引き戻し、飛んできたナイフの柄を握った。
 「…やったか……?」 功刀は、アリミノの後ろで小さな声を上げて聞く。
 「………しとめた感触はなかった…。かすったぐらいしかしてねぇだろ……」
 …そうか……。功刀は表情を暗くする。それにつられて、アリミノもグッと歯を噛み締める。
 「……一体なんだ今の音はぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
 唐突に響き渡った奈津樹の怒鳴り声。それと同時に怒りの表情を顔いっぱいに浮かべた奈津樹が廊下を走ってきた。

117日陰:2012/11/29(木) 19:07:16 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第7話+  +其の11+

 +――――――――――+
 「――――………………こらまた派手にやったなぁ〜……あぁ゛!?」
 派手に壊された屋敷の屋根と、派手に伐採された木を見て、秘黒は感嘆と怒りの表情の感情を混ぜた声を出す。
 奈津樹の叫び声で、こうやって駆けつけてみれば、目の前には現実かどうか分からない光景が作り出されている。
 「………屋根とか畳の矢は俺じゃねぇ…………」
 「林はお前だろうが…。どうしてくれんだアレ?……あ゛?道の埋め立てとかどうしてくれんだよ?きっちり耳そろえて埋め立て金返してもらうぞ……。コラ、オイ…!?」
 「ングッ…!……ふ…不可抗力だ……!!!」
 地面に裸足のまま冷や汗をかきながら立つアリミノと廊下の上でアリミノを見下ろす秘黒。
 「どこの国に、林を無許可で切り落とす不可抗力者がいんだ…コラ」
 「それ以上怒らないで下さい。耳が腐ります」
 「てめぇは黙ってろリキヤァァァ!!つか行き成り横から耳が腐るとか言うなぁぁぁぁぁ!!!!?」
 「黙んのはアンタだ。血糖値高くして死ね」
 「んだとコラァァ!」
 「つか、これ……」
 リキヤは黒い布で口を隠しながら毒を吐く。ついでに数秒ばかり言争いをした後に、リキヤは片手に握っていた一本の矢を秘黒に渡す。
 秘黒はその矢を見て「んだ、これ?」と問い返す。そして、そのまま矢の刃部分に目を向け、巻いてある白い紙を見る。
 「矢文かっ……?!」
 秘黒がそう言うと「そうにしか見えんだろ…?」と呟きながらまた毒を吐くリキヤ。
 「てめぇなぁぁぁ!!?」
 「えぇぇぇと、ナニナニィ〜〜?」
 リキヤは秘黒を無視しながら巻かれた紙をほどき、広げる。そして、その紙に書いてある言葉を見て、リキヤは言葉を失った。

118日陰:2012/12/01(土) 20:00:00 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第7話+  +其の12+

 言葉を詰めるリキヤを見て、秘黒は「どうした?」と無愛想に言いながらリキヤの手元にある紙に目を通した。
 「…!?……オイオイ、こりゃ一体どこぞの野郎が書いた文だ、コラ……!!?」
 秘黒は驚きと怒りを込めながら口角を上げた。
 ―――『宣戦布告する!!!!』
 第一行に荒々しく黒い墨で殴り書きしたように書かれた文字。
 『てめぇら&守り屋は、我々“軍事用施設保護番犬”によって潰される運命にある!!!!』
 次は二行を使って、小筆で書かれたと思われる文字。ビックリマークが異様にデカく歪である。
 『だから精々物陰に隠れて怯えてやがれ!!!!!!』
 そして最後に朱色で書かれたその文字の後に『軍犬計7名より』と書かれていた。
 これは宣戦布告というより、挑発文と言った方が正しい。

 手紙を読み終えた秘黒は、舌打ちをしたあとにリキヤの手から紙を貰い、もう一度読み直すように雑な文字に目を通した。
 「…たくっ…!………このご自制の世の中で、宣戦布告なんてねぇだろうが……!!」
 秘黒は紙を外に放り投げる。アリミノは、ゆっくりと落ちるその紙にスローモーションのように目を向けた。そして、そこに“軍犬”という文字が書いてあることに気づいた。
 アリミノはその手紙に手を伸ばしかけた。だが、その紙はアリミノが触れる前に、一瞬にして残りカスも出ないほどにまで八つ裂きにされ、消えた。
 「……クソがッ…!!…巫山戯やがって……!!!………上等だ…!…」
 秘黒の懐でギラリと光る長い刀。それを木で作られた鞘に、しまい込むと、ギリッと歯を鳴らしながら秘黒は叫んだ。
 「売られた喧嘩はソコまで買ってやる…!!……俺ら殺し屋にこんな舐めたことしたことを後悔させてやらぁぁ!!!!」
 その激怒の声は、夕日が沈んだ暗い外に響いた―――

119日陰:2012/12/01(土) 21:09:30 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第8話+  +合併 一夜の兄+  +其の01+

 「―――…やはり……。貴様達のところにも届いていたか…」
 なぜか早朝に殺し屋の本館に来た高野。隣に数多を座され、自分も胡座をかいて大雑把に座っている。
 高野は、秘黒と茶色の足の短い机を挟んで座っている。その机には殺し屋に送られてきた手紙と、先日自分たちのところに直接郵便で届いた、やはり雑な字の手紙を並べている。
 「…てめぇらのところにも届いったてこたぁ、こりゃ本当に大戦争おっぱじめるつもりらしいな……」
 秘黒はヒゲの生えた顎に手を当てる。
 「あぁ……。…という事で、我々は今、お前たちに銃を向けるつもりはない。だから…――」
 高野は、目を閉じ腕を組む。
 「あの、野郎どもを退かせ…」
 「…あン?……あぁ、お前ら下がれぇ〜…」
 秘黒はピロピロっと、天井に手を振った。
 すると、天井から「ッチ…」とあからさまに舌打ちをしながら、天井の一角を開け数人の着物を着た男たちが出てきた。そして、そのままその部屋の麩を開け、高野の背中を睨むと出ていった。
 「…完全に敵対心剥き出しだな、オイッ……」
 白々しい目になる高野と、苦笑する秘黒。「元々、俺たちは人の背後とって命奪う仕事柄なもんでなぁ〜。…まぁ、水に流してくれや…。……っで、本題だが…」
 「……あぁ。軍犬のことだが…。貴様、今後の事、どう考えている…?」
 秘黒の言葉に続ける高野。今後…。というのは手を組むか否か、と言うことだ。
 先刻前から、この話は出ていたのだが、不死者、一夜が出てきてから話がややこしくなり、その話は遠ざかっていた。っが、先日守り屋と殺し屋の両方に軍犬からの挑発文が来たことから再びこの話が顔を出してきた。
 「…こんなにも堂々とやって来るっつゥ、こたぁ…チョットやソットで敵う相手じゃねぇってことだろうな……」
 「あぁ。手薄で掛かるのは自殺行為、という事だろう…。そこで、やはり出てくるのが……」
 合併、かぁ……。秘黒は心無し気に呟いた。高野は秘黒の言い分に返す言葉がないため「あぁ…」と軽く返事を返す。
 「……………う゛ゥ〜ん……」
 唸る二人の声と、数多の毒の入っていない茶を啜るズズッという音だけがその一室に響いた。

120日陰:2012/12/01(土) 21:56:06 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第8話+  +其の02+

 +――――――――――+
 「―――…守リ屋トノ、協力戦争カァ〜。メンドウナ事ニナッチャッタナァ〜……」
 アリミノの“不可抗力”による、巨大伐採で落ちた木を男数人がかりで運ぶ姿を、見ながら架月は困ったような表情で笑う。
 「面倒もなにも…!これからドないスんねんっ!意味分からん連中を敵に回してもうて……。今後が見えんぞ…?」
 架月の隣でヤケクソのように手作り菓子を頬張る光聖。
 「マァマァ…。デモ、軍犬タチヲ敵ニ回スト、コレカラガ!…メンドウナンダヨナァ…」
 ―――――――(ソウ、奴等ヲ敵ニスルトイウコトハ……――)
 架月は、閉じられた目で虚空を見つめる。
 (――あまりにも、面倒すぎる……)
 グッと顔を険しくして、架月は思うのだった。
 +――――――――――+
 「――――…クファ〜〜〜〜〜…!…眠ッ!?」
 大きな欠伸を零す雅日。結局所持金8円になるまで、ゲーセンで遊びまくった一夜と雅日は早朝の今に至るまで、ずっとゲーセンで遊んでいた。
 「…んあぁ〜〜…!!…楽しかったっ!」
 その隣で、背伸びをする一夜。目頭を作っている雅日からしてみれば、良くこんなにも起きていられるのだろうかと思う。
 「なんで、お前起きてられんだよ……。こちとら、眠くて眠くて、起きてんのもヤっとっだチュウの〜〜…」
 言い終わると、また大きく欠伸をする。一夜は、そんな雅日の顔を見て困ったように笑って見てた。一夜自身、別に眠たくはなかったが、どうも体に力が入らないのが感じた。
 「……さってと、そろそろ帰るか………!」
 雅日が気を取り直してそう言うと、一夜も「…オウッ……」と優しく言って歩きだした。

121日陰:2012/12/01(土) 22:19:43 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第8話+  +其の03+

 +――――――――――+
 「―――…居るか。アリミノ……」
 奈津樹は呟くようにそう言って、一室の麩をそっと横に引く。
 その一室には、薄暗くても目立つ薄黄緑色の髪をしたアリミノが思い詰めたように顔を暗くして座っていた。
 先日、秘黒が何気に落とした文に軍犬という文字があったことに気付いたアリミノ。それからは思い出とも言えない記憶が頭に黄泉返ってしまい、ずっと表情を暗くしていた。
 「……………………」
 黙って背を向けるアリミノを黙って見つめる奈津樹。
 長い沈黙を続けていると「…何だ……。渦築…」とアリミノから言葉が帰ってきた。
 「お前は…軍犬のことを知っているのか……」
 戸惑いも混じっている奈津樹の質問。アリミノは少し考えたあとに
 「俺の……俺がタウスに居た頃の職場みたいなところだ…」
 と重たい口調で答えた。奈津樹はそれだけ聞くと深読みはしないという顔で「そうか……。…それだけ聞ければ十分だ……」と言った。アリミノは驚いたように目を丸くしながら顔を振り向かせる。そこには、麩を静かに締めながら、結ばれた長い黒髪を揺らして座る奈津樹しか映らなかった。
 「………我々は、殺し屋という物を背に乗せている。故に、思い出したくない過去や、考えたくのない未来(これから)がある…。だから、無理に言わなくて良い…。……言える時………言いたい時に…言ってくれ……」
 アリミノの「何で…」と言いたそうな表情を察して、奈津樹は優しい表情と口調で言ってくれた。
 この言葉と表情に、アリミノの記憶を今まで縛っていた〝何か〟が少し解けた気がした。

122日陰:2012/12/01(土) 22:59:43 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第8話+  +其の04+

 +――――――――――+
 「―――……んしょっと……!………重ッ…!!」
 殺し屋までへの帰り道。とうとうダウンした雅日を抱えて一夜は嘆く。背にしょっていたギターケースは、ケース本体を前に垂らし、グースカ寝てる雅日はおぶることにした。…流石に、重い。
 (…まぁ、もうちょいだし……。ちょっとぐらい…)
 一夜は自分にそう言い聞かせながら一歩一歩に力を入れる。だが、その一歩一歩が重々しく、見ていると気苦しい。
 少し歩くだけで、息が切れるのを感じたが、ここでどちらかを落とすわけにはいかない。
 屋敷への山道に入ると、重たかった足がより一層重たくなる。そのうち道に穴でもあくんではないかと、一夜は思った。だが、「こんなのもイイな…」と内心一夜は笑っていた。
 「―――……フゥ〜〜…。…あと少し…っと」
 寒い早朝の中。もの凄い汗をかく一夜にとって、頬に当たる冬風が心地よくて仕方なかった。
 「…着いた…っと……!!」
 門の前で、一夜は呟いた。まだ雅日は寝ている。少しイラついた気がしたが、少し嬉しい気もした。
 「……さてっと………タンダイまぁぁぁぁ〜〜…!!!」
 また“無理”に門を開けた一夜は、無理に大股で屋敷内に入った。だが
 『…………………』
 全く誰の声も返ってこない。一夜は疑問に思いながら足をすすめる。一様廊下までつくと、雅日をゆっくりと横に寝かせ、その横にギターケースを並べる。
 (何だぁ……?誰もいねぇのか…?)
 ぐるぐると頭を回転させ、そこら中を見るが人の気配どころが、足音さえも聞こえてこない。
 「………あぁ、疲れたぁ〜…」
 面倒くさ…。と思った一夜もだらしない格好で廊下に寝転んだ。すると次第に瞼が重くなり、一夜も眠ってしまった。

123日陰:2012/12/02(日) 09:10:51 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第8話+  +其の05+

 +――――――――――+
 殺し屋本館屋敷の門前に一人の青年と一人の少女が現れた。
 青年は高校生のような背丈で、服装もどこかの学校の学生服。黒い漆黒の瞳に、一夜と同じ銀色の髪。少女は、青年よりも背が少し低く、長い黒髪は後頭部でひとつ結びにされている。
 閉じられた門に手を当てる青年は、腕に力を入れて門を前に押す。すると、門はギィィと音を立てながら屋敷の内側に開く。
 「――――……ん?…誰か、来たのか……」
 一夜は音に起きて上半身を起き上がらせる。そして、門のところに立つ青年と少女を見た。
 「!?……何で、アンたら…」
 一夜は咄嗟に立ち上がり、優しく笑っているがなんの言葉も放たない青年と無表情で一夜を見る少女を見張った。
 +――――――――――+
 「―――…それでは今後。協力もしくは……」
 「和解で話を進めるかっ……」
 やっと話のまとまった高野と秘黒。何時間も話し合った結果が「和解」と「協力宣戦」である。
 この決定が決まるまで、数多はずっと茶をすすっていた。逆に殺し屋たち一同は秘黒等がいる部屋の隣で決定がどうなるか聞き耳を立てていた。
 「一体どうなるかと思ったら、結局和解かよ…!」
 聞き耳を立てていた一人の功刀は、部屋の仕切りである麩から耳を外した。
 「まぁ、元から考えられたことだろう…。軍犬が出てきた以上、守り屋も殺し屋も別行動をするのは危険だからな……」
 一様冷静な顔で言った奈津樹だが、その顔にはどことなく呆れがあった。
 「ッマ、大体ハ分カッテタ事ダシネェ〜。………ソウ言エバ雅日クン何処行ッタノカナ?コンナ話ガアッタラスグニ飛ンデキテ、毒吐クノニ」
 架月がそう言うと数人の者たちが、賛同するように首を縦に降った。
 だが、すぐにその部屋に何かが飛んできた。麩や壁を通り越して、物凄い勢いで、何かが確かに飛んできた。

124日陰:2012/12/02(日) 10:10:31 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第8話+  +其の06+

 『ダァァァァァァン!!!!』
 地鳴りのような音が殺し屋の屋敷内に響いた。同時に屋敷の麩やら壁やらが次々に壊れていく。そしてその音に混じって一夜の血を吐く嘆き声があった。
 「…何だ……よ。今の…!!」
 功刀は音のした方に顔を振り向かせる。他の者もビックリして壊れた壁を見た。
 「ガハッ…!…ゲホッ……!!」
 確かに聞こえてくる一夜の呻き声を聞いて、功刀は一夜を探す。すると、壊れた壁のずっと向こうに、一夜が口から血を吐きながら壁に持たれているのが見えた。「どうしたっ!?」秘黒が音に驚いて部屋から出てくる。
 「…おい!?一夜!どうしたってんだよ!!?一夜ぁ!!」
 功刀は倒れる一夜の肩を掴んで、叫ぶ。他の者たちもゾロゾロと一夜に駆け寄ってくる。
 「一夜?…まさか不死者のことか……?!」高野も秘黒を追って部屋から出てくる。一夜。その名前を聞いて、「一見一夜」という名前を思い出したのである。
 「いったい誰にヤられたんだよ!?一夜ぁ!!!?」
 「―――……私だ…――」
 唐突にかかった少女の声に、一同は顔を超えの方に向ける。声のした門の方には長い黒髪をひとつ結びにした中学生くらいの少女がいた。片手には長い木刀を握りしめている。綺麗な白い肌をした、茶色の細い目の、女とも思えない顔でその少女は一夜たちを見た。
 「ゴホッ…!!……一体何のつもりだよっ!?…寿(ことぶき)さん!!!」
 一夜は血を吐きながら少女、寿・司(ことぶき・つかさ)の名前を叫ぶ。寿はそれに答えず、軽いステップで前に歩み寄る。
 「てめぇ……!!!?」
 「そこを退け。貴様も殺すぞ。」
 寿の低い声に功刀は「巫山戯んなっ…!」と苛立ちの声を上げる。だが、寿は足を止めずに一夜の前まで歩いてきた。そして、一夜を鋭い目で睨んだ。

125日陰:2012/12/02(日) 10:38:31 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第8話+  +其の07+

 寿は木刀を強く握る。まるで、今にもその刀を一夜の頭めがけて振り落とそうとしているかのように。
 「――…ストップだ。司ちゃん…」
 寿は青年の声に、一夜に向けていた鋭い目をずっと後ろにいる青年に向けた。
 「他の人間は良いとして。これ以上、僕の大事な弟ちゃんに指定した以上の攻撃を続けるんなら……君を殺すよ?」
 銀髮の青年は、両手を開いて不敵に笑う。「……何だ、アイツは…」奈津樹は咄嗟にそう呟いた。架月は閉じられた目を細く明け、その男と寿を見る。
 「一体君タチハ何者ダイ?一夜クンノ知リ合イカナ?ソレトモ、敵ナノカイ?」
 架月が寿の前に出ながら聞くと、銀髮青年は「敵じゃないさ…」と笑った。
 功刀は架月の背中を見つめながら「…じゃぁ、何者だってんだっ……!」と険しい表情で聞き返す。
 青年はフッと軽く微笑んだ後に、
 「僕は、ソコに居る“一夜ちゃん”の…義兄(あに)なんだ!!!!!」
 『………………ッハ……………………?』
 皆は白々しい目で寿と青年を見比べる。ついでに、何言ってんだこのボンクラ…。と寿は独り言のように囁いた。

126日陰:2012/12/02(日) 11:12:26 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第8話+  +其の08+

 +――――――――――+
 「―――…いやぁ〜!久しぶりだねぇ一夜ちゃん!!」
 「久しぶりに会った義弟を、手下使って痛めつけるか普通…」
 壊れた壁の残骸が、そこらじゅうに散らばる部屋に向かい合って座る青年と一夜。
 「…何だ、結局あの銀髮、一見の兄なのか」
 「それっぽい、話だな…」
 「そんな話、こちらには入ってきていないぞ…」
 「何カ、良ク分カンナイ事ニナッテルネェ〜」
 順番に奈津樹、秘黒、高野、架月が麩と麩の間から、部屋で話をしている二人を見て呟いた。奈津樹等がいる部屋には他にも、寿や功刀、アリミノも居た。
 「つうか、何であんたこんな所にいんだよ。アメリカ行って寿さんと修行するとかホザいてなかったか?時雨(しぐれ)さん…」
 一夜は呆れた顔で青年を見た。青年、凛堂・時雨(りんどう・しぐれ)は愛らしい顔でニッコリと微笑む。まるで、小学生のように。
 「だってぇ、軍犬の話聞いて僕が黙っていると思う?大好きな弟ちゃんがヤバイことになりそうな時に、子供みたいに爪かじって黙ってるのは嫌だしね………」
 一夜は時雨の話を聞いて、少し口を閉じた。血も繋がっていない、好きでもない奴にこんなに親切にされると思うと少し嬉しい気がする。
 「………司ちゃん。殺し屋と守り屋のお頭さん。…入ってきて良いよ?」
 時雨がそういうや否や、麩を勢いよく開け高野が入ってきた。「単刀直入に聞く。貴様は何者で、その不死者とはどんな関係だ」と行き成り問いただしてきた。
 「行き成りだね。あと、何度も言わせないでよ?僕は一夜ちゃんのお兄ちゃん。それだけだよ?」と時雨はまた簡単に返した。

127日陰:2012/12/02(日) 12:55:42 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第8話+  +其の08+

 「………時雨さん。面倒な言い回しは止めてくれませんか…。アンたと俺。本当言うと兄弟って関係でも何でもねぇだろ」
 一夜は手に力を込めながら目をつぶる。どうも意味深な関係にしか見えない。
 「一体、お前等はどんな関係なんだ……」
 秘黒の問いに一夜は数秒教えるかどうか迷った。
 「……時雨さんは…。……凛堂時雨さんは、俺と同じ…不死者だ…」
 一定の声に定められた一夜の言葉に全員言葉を失った。

 「―――…不死者……が二人…っだと言うことか…」
 不安気に聞く奈津樹と、心無し気に頷く一夜。
 「待てっ!そんな話我々は視野に入れておらんぞ!」
 「俺ら殺し屋もだ…。んな情報耳にも入ってきてねぇぞ?」
 秘黒と高野が口を揃えて一夜に言い切る。「………君たちは一体僕たちをどうやって知ったんだい?」一夜が口を開き何か言いかけた時、凛堂は目で笑いながら秘黒たちに問いた。
 「…………我々、殺し屋と守り屋には『禁令物資(きんれいぶっし)』と言われる本がそれぞれの頭領に配布されている…」
 「しかも、そらぁ内容が違う物が2つだ。教科書みたいに上巻下巻というふうに分けられてる。下巻は俺ら殺し屋が上巻はこいつら守り屋が持っている……」
 二人は顔を見合わせると、凛堂に言った。凛堂は「まぁ、そこら辺へんだろうと思ったよ」と言いながら立ち上がる。
 「―――……じゃぁ……上巻と下巻があるのに、何で“中巻”がないのかな…?」
 不意を突かれた様な顔になって高野、秘黒の二人は凛堂の顔を直視した。

128日陰:2012/12/02(日) 14:30:23 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第8話+  +其の09+

 「―――…まさか、中巻が存在するというのか!?」
 「あぁ、存在はしている。だが、その本は本物の『禁令物資』だ。だからその存在を、実物を見た者はこの地球の人口100万分の1。かくい、僕もその一人…」
 問いただす高野にお手上げポーズで凛堂は答えた。
 「だが、そんなもんに一体何が書いてあるってんだ…。まさか、この世界の命運でも握るようなことが書いてあるんじゃ……」
 顎に手を当てながら考える秘黒に「それは大丈夫。中巻は然程大した物を書いた物ではない……」と凛堂は返した。
 では一体何が書いてあるのか…。
 「と言うより、君たちが持っている禁令物資には僕たち不死者のことや、軍犬のこと等…まぁ、いろんな事が書かれていたに違いない!!……そしてこうも書かれていたはずだ…」
 皆が息を呑んで、凛堂を見た。
 「『不死者は世界の神に背かれし禁制の物成。故に殺すべし』…っと。だが、よく考えてみたまえ!そんなことを言っている割に対処法も生存人数も、ましてや何故死なないのかさえも書いていなかったはずだ……ならば、我々の対処法、生存人数、死なない理由を書かれた物資はどこにある…!?」
 不気味に笑う凛堂は、聴くかのように高野と秘黒を見つめた。
 「…答えは一つ。それを握るのが存在価値を永久になくした禁令物資の第中巻物資だからだよ!……だが、逆にここまで言っておきながらその中巻物資はどこに行ったのか?そう聞かれたら僕はこう言い返す。―――…“軍事用施設保護番犬”共の手の中にある…と……」
 皆の動きが止まる。まさかここで軍犬の名前が堂々と出てくるなんて思ってなかった。だが、一番驚いたのはアリミノだった。今の今まで黙っていたが、これを聞いて、今まで沸もしなかった変な感情が込み上げてきた。それはアリミノの強く握り締められた手から血を出させるほどのものだった。
 「……まぁ今日のところは帰るよ…。いくよ司ちゃん、一夜ちゃん?」
 突然かかった凛堂の声に驚いて一夜は「ホへッ?」と変な声を上げた。

129日陰:2012/12/02(日) 16:36:20 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第8話+  +其の10+

 「イヤイヤ、『ホへッ?』じゃなくて…」
 キョトンとする一夜の顔を見ながら凛堂は続けた。
 「こんな所に居たって、一夜ちゃん…。…“本当の力”が発揮できないよ?だから、僕たちと一緒に行こ?」
 凛堂は一夜に手をさし伸ばす。寿は、横目で一夜を見た。
 「てめぇら、どういうつもりで一夜をスカウトしてんだよ…。つか、なんで俺らのこと無視してんだよ…」
 功刀が身を乗り出して凛堂を睨む。寿が木刀を構え直すと「やめなよ司ちゃん…」と凛堂は制した。
 「……っね?行こうよ一夜ちゃん?君は人を見下して上を取る様な人間じゃないでしょ?」
 一夜はハッキリ言って頭が真っ白になってきた。この男は何が言いたいのか全く理解ができない。手下使って義弟半殺しにしたかと思ったら、今度は手を組もうと等と。
 だが、一夜は少し迷っていた。凛堂について行くか、ここに留まるか。きっと、ついて行ったほうが良いだろう。数秒を用いて一夜は考えた。そして決意すると立ち上がり凛堂の下へと歩いて行った。凛堂のすぐ前に着くと体を殺し屋一同に向け、また座り出した。だが、今度は正座をしたあとに床に手を付け頭を下げ始めた。そして、
 「お願いします。ここに置いて下さい」
 と、呟いた。その場の空気が一瞬だけ止まるのを皆は感じた。「どういう事だい?」凛堂の優しげな問いかけに、一夜は頭を上げて答えた。
 「俺は元々アンタが嫌いだ。それに俺は、逃げたくねぇんだ。……皆から…。優しさから…」
 スっと一夜は立ち上がり、顔を凛堂と寿に向けた。二人を見るその綺麗な茶色の瞳は強く輝いていた。
 「俺の運命から。…だから、アンタには着いていかない。ついて行けない。ついて行く訳にはイかない…。だから、帰れ!」
 真剣な眼差しの一夜を見て、凛堂は改めて不敵に笑ってみせた。
 「うん。まぁ君ならそう言うと思っていたよ。それでこそ僕の弟…イヤ……」
 僕の尊敬すべき男よ……。凛堂は一夜を見て、優しく微笑むと「バイバイッ」とまた優しく言ってどこかに行ってしまった―――

130日陰:2012/12/02(日) 17:16:53 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第8話+の+オマケ+

 「―――…おい、一夜……」
 去っていった、凛堂たちの残像でも探すかのように固まっていた一夜に功刀は話しかける。
 一夜はフゥ――と軽くため息をつくと薄く笑いながら勢いよく振り返った。そして
 「メッチャ怖かったぁぁぁぁぁ!!何だよアノ、寿さんの眼!?『今にも切り掛るから、少し黙れ』って言いたそうな眼?!!無いよ!有り得ないよ!?怖いよ!!?」
 バクバクと鼓動する心臓を必死に抑えようとする。
 「……なんだよ、そんなにあの女怖かったのかよ…」
 功刀は呆れからきた変な目で一夜を見下す。
 「怖いも何もあるかぁぁぁぁ!!あの女はなぁぁ……?!!」
 「ンァアア〜〜〜〜…。よく寝たぁぁ〜〜!」
 今まで寝ていた雅日が今頃起きてきた。一夜はそれを見て、開いていた手をもっと開いて自分の背後にメラメラと火を炊かせる。
 「ん?…どうした、いち…」
 「人が心から困ってる時にテメェと言う、糞野郎はぁぁぁぁぁぁぁあ゛!!?」
 「えっ?っはい?…ちょ、え、何?え、ちょっと、一夜?え、おい…」
 「シバキ殺す!!!!!!」
 「はいぃぃぃぃぃぃい?!…え、ちょっと、マジで何?ちょ、ぅワぁぁぁぁぁァあァァあああ゛…!!!」
 そのあと雅日は、コッテリ一夜にぶん殴られたり、蹴られたりして、半殺しにされたとさ☆←
 (「だとさで終わらせんじゃねェェェェェェェェェ!!」――「まだだよ糞野郎。その赤毛むしり取って、チャイナ服の飾りにしてやらァ…」……「え、ちょっと、まじで?何だ…ギャァァ―――――――…」)  完

131日陰:2012/12/02(日) 18:38:15 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第9話+  +一夜と凛堂と寿+  +其の01+

 +今回は、ほんの少し時間を遡ることから始まる+
 まず、一夜や凛堂、寿が初めて会った6年前の秋。
 
 凛堂がバイト先のパン屋から、売れ残りのパンを持って家路についていると。家路にある橋に、ド寒そうな格好をした自分と同じ銀髮の少年が居た。少年、一夜は半袖に半ズボンという格好で橋の凭れに寄りかかっていた。
 真っ暗な夜に光る車のライトを見つめる一夜の目は寂しさや苦しさが混じっていた。
 「………………」
 凛堂は持っている袋の中のパンと一夜を見比べた。「――…ねぇ君……」凛堂は袋の頬に当てる。
 「良かったら……パン食べる?」
 凛堂の優しい微笑みに一夜は目を見開いて「…食べる」と小さく返した。
 +――――――――――+
 「ん…アグッ……ングッ…!」
 凛堂が住むマンションの部屋に一夜は上がって、パンにかじりついていた。
 「美味しいかい?えぇ〜と……」
 「一見一夜……。友達から、字に書くと四字熟語に見えるなって良く言われる…」
 両手にパンを持ちながら頬張る。普通は硬いフランスパンが、一夜の手にかかればわずか5秒で胃の中へと降り立った。
 「ングッ…!……っで、お兄さんはなんツー名前なの?」
 もう一つのフランスパンを頬張りながら一夜は凛堂に聞き返した。
 「…ん?僕は、凛堂時雨。宜しくね?」
 凛堂が最高の作り笑いで言うと「…じゃぁ、もう一人の女の人は?」と一夜がもう一度聞き返してきた。だが、その前に凛堂は「女ぁ?」と首をかしげた。今この家の中には女なんて一人もいない。女の人を思わせるような匂いや、それっぽい物など何一つ飾られていないと言うのに、なぜこの少年はその単語を口にしたのだろう。すると、そんなことを考えている凛堂の心を察したのか一夜は
 「玄関に女物の靴あったから……。少なくともアンタのモンじゃねえだろ…」
 と自分の推測を説明した。それを聞いて「ウンウン。すごい、すごい」とあからさまなほめ方をした。それと同時に家のドアが開き、誰か入ってきた。

132日陰:2012/12/02(日) 19:50:33 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第9話+  +其の02+

 一夜はコロッケパンを口に入れながら振り返る。すると、「おッ!おかえりぃ〜!司ちゃん!」とのんきな声で凛堂は入ってきた小学生くらいの少女を呼んだ。
 「……何だその餓鬼は?」
 少女、寿は部屋に入り、一夜を見つけるなり光の無い目で一夜を睨みつけた。一夜は自分より小さい奴に「餓鬼」と言われ反発しようとしたが寿の右手に握られた少々赤い血が付いた木刀を持っていることに気付き言葉をなくした。
 「一見一夜くん!寒そうにしてたから連れて帰ってきちゃった」
 「犬かそこら辺の動物と一緒にしていないか」
 寿はボーッとした顔で凛堂を見た。「紹介するよ一夜くん。寿司ちゃん!こう見えても剣道全国小学生部門第1位の女の子だよ?スゴイでしょ?」
 「お前が言うなお前がっ!」
 自分の事の様に自慢気に言った凛堂。それに対して少しの怒りを込めて怒鳴る寿。
 「―――…っで、貴様は何でそんな格好をしている。高校生のクセにまだ反抗期を迎えていないなら、家族が心配しているだろう……」
 寿が他人ごとのように言うと一夜は俯いて「家族は死んだ…」と呟いた。「死んだ?」
 「……あぁ。一ヶ月くらい前にあった4人家族転落事故で……」
 一夜は凛堂の問いに答える。凛堂の隣で寿は考えた。確かに一ヶ月前そんな事件はあった。崖から4人家族を乗せた自動車がスピードの出しすぎか何かで誤って崖から転落したというものだ。いつも1時からやっている昼ドラがその日20分も切り上げられて遅く放送されていたのでよく覚えている。
 「…たしか、その事件は3人の死体が見つかってもう一人、長男が警察の手によって捜索中…と聞かされていたが……。まさか、お前その…!!」
 小学生の物言いとは思えない言い方で言いながら、寿はメロンパンから口を閉ざす一夜を見た。
 「……つまり君はその見つかっていないもう一人の被災者というわけかな?」
 「いや。見つかっていないその長男は死んだと推測されている。だから……」
 一夜は再びメロンパンを口に運ぶ。一口、二口とパンを食べていき、最後の一口になるとポイッとパンを上に投げ大きな口でその一口を平らげた。

133日陰:2012/12/02(日) 20:22:04 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第9話+  +其の03+

 「ングッ…!っそ、俺はその死んだと思われる長男。一見一夜。……気付いたら、みーんな死んで、俺だけ生きてた……。確かに死んだ時の記憶は、はっきり頭にこびりついてんのに……ナんでか生きてんだ…」
 「それはつまり生き返ったということかな?それとも…――」
 元々死んでいなかったと言う事かな?
 凛堂がそう言うと、パンの入っていく袋に伸ばされていた自分の手を一夜は止める。
 「―――……分かんねぇ。ただ、俺はもう…――」
 死ねないらしいんだ…。
 凛堂は冷静な表情で一夜を見つめ、寿は驚いたような顔で凛堂と一夜の顔を見る。一夜の顔は今日の今日までいろんな方法を試して死を試してきたと言いたそうな顔だった。
 「―――……つまり、貴様も“完全不死の不完全人間”と言う訳か………」
 完全不死の不完全人間? 一夜は寿の顔をマジマジと見る。
 「こいつも……」
 そう言って寿は隣の凛堂を指さす。
 「3年前からお前と同じく死ねない不死人間になってしまったのだよォ〜…」
 寿の棒読みに凛堂はウンウンと頷く。一夜は唖然とした顔で言葉の意味を考えた。
 この男も自分と同じ死なない苦しみを背負っている。そう思えた瞬間、一夜は曇っていた心が晴れた。

134精霊:2012/12/02(日) 21:45:44 HOST:i220-99-160-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
日陰>

久しぶりに、読みました。対に守り屋と殺し屋が組むのか

135日陰:2012/12/02(日) 21:51:54 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第9話+  +其の04+

 +――――――――――+
 「―――…ん?寝てたのか…?…俺……」
 一夜が目を開けると木でできた天井が目に入った。一夜目をこすり上半身を上げた。どうやら殺し屋の屋敷の一室で寝ていたらしく、布団で寝ていた。
 昨日一夜の義兄、凛堂が来たことによって昔のことが夢に出てきた。
 「…今日は皆、ナンだかウルサイな……」一夜は寝ぼけながらそう言うと、欠伸をしながら立ち上がる。飄々とした一夜の足取りは酒を飲んで酔いつぶれたオヤジのものと似ている。
 一夜が麩を開けると部屋にいながらも聞こえてきた物音がより一層大きく聞こえてくる。一夜は自分と身長がほとんど同じな奈津樹に借りた白い着物の襟から胸元に手を突っ込み、オヤジのように体をかく。
 「…どうしたってんだよぉ〜……!?……今日は日曜だろうが、もうちょっと寝かせろよ…」
 欠伸と目をこする動作を何度も繰り返す。廊下をスタスタと歩いて行き、音のする台所の方に歩いて行く。
 「――…お〜い……。何やってんだぁ〜…?」
 台所の中に入り、壁を触りながら一夜は尋ねる。台所の中には多くの殺し屋一同たちが何かせっせと作ている。「なんだ?」またポリポリと体をかきながら皆の背中を見る。
 「…あっ、一夜さん!」
 そう言ったのは今までに一夜と喧嘩を何回かした男。他の者たちも一夜に目を向け口々に「一夜さん」と呟く。一夜はそれを軽く交わし「何やってんだ?」と聞いた。
 「合併祝いですよ……!守り屋の方々も数人集まって“嫌々ながらもの合併”祝いをするんですよ。なんでほら…」
 一夜の問いにチョコの溶かした物が入ったボウルを持って説明する時輝。そして、コンロの所で気合を入れて何かを作っている光聖を指さす。
 「へぇ〜〜…。んじゃ、守り屋の方々に挨拶しとこうかな…」
 「今は行かない方が良いと思いますよぉ〜…?」
 欠伸をしながら言った一夜に時輝は渋い表情で止めたのだった。

136日陰:2012/12/02(日) 21:54:39 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  精霊>>

 おぉ〜!!お久し振りぃ〜〜!!

 まぁ、ついに始まったね、合併……

 これから話がややこしくなるぞぉぉ〜〜…

137日陰:2012/12/02(日) 22:26:57 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第9話+  +其の05+

 +――――――――――+
 ゴゴゴゴゴッと酷い低音が、殺し屋の屋敷に響きかけている。ずっと睨み合っている雅日と香々美の目と目の間からは今にも火花が散るのでじゃないかと思うほどだ。
 『………………………………』
 黙って睨み続ける二人を黙って見る殺し屋等と守り屋等。秘黒は大欠伸をしたあとに殺し屋と守り屋を挟む机に置いてある湯呑を啜る。一様今回屋敷に来た守り屋、欧明、志紀、竜泉、高野、数多、和泉、香々美、空の計8名にも一つづつ茶の入った湯呑が置いてある。だが、合併したとはいえ殺し屋は殺し屋。毒が入っている可能性があると思うと手をつけるに付けられない。
 「……………あの時の謝罪は………?」
 香々美がやっと口を開く。雅日はそれを聞いてデパートの事件を思い出す。
 「怪我人多数。だが、死者は出ていない。目の前にブチ殺したい奴が居た事を踏まえると、あれは只の不可抗力だ」
 雅日も負けじと自分の言い分を言い放つ。その場に居た、功刀、秘黒、架月、リキヤ、奈津樹、の計5人は胡座をかきながらメンドクサイと言わんばかりの顔で香々美と雅日を見比べる。
 「……いい加減しろ、赤毛野郎。その頭、血でもっと赤く染めんぞ」
 香々美が目に影を作って言うと
 「いい加減にすんのは、てめぇだよ…。古くせぇこと、イチイチごった返すなクソアマ。その首飛ばすぞ」
 と無駄な反発を返す。そしてより一層場の空気を重くしていく。
 「―――…ハイ、ハイ、ハイ、ハイ……!モウ喧嘩ハ御終イ!折角来タンダカラ、オ茶デモ飲ミナヨ、守リ屋諸君!!……心配無イ。毒ハ入ッテイナイヨ?」
 架月のその言葉はこの場を和ませようとするものだった。っが、全く空気は和まない。
 「…ダメダコリャ……。一夜クンデモ居ルナラ、ドウニカ出来ルダロウケドナァ…」
 架月は隣の秘黒に小声で囁く。秘黒も「だな…」と賛同するだけで、この空気を和ませることは考えられなかった。すると、その部屋の空気を顧みず誰かが何か大きな物を手に抱えて入ってきた。

138日陰:2012/12/02(日) 22:49:26 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第9話+  +其の06+

 「―――……ゥオーイ、オーイ!!」
 部屋に入ってきたのは一夜。手元には大きなチョコレートケーキが抱えられていた。
 「一夜くん…?!」和泉は正座しながら入ってきた一夜に驚く。
 「ナニお暗い空気になってんだ、アンたらぁ〜〜〜…!!折角天才少年、高凪光聖様が作ってくれたケーキが完成したんだぞ?!コンナしみん垂れた空気で美味しくケーキを食えるとでも思ってんか?!ほらさっさと空気入れ替えろ!!」
 一夜はそう言うや否やケーキを机の上に置き、部屋の四面、すべての麩を開ける。
 「一夜くん何で……」
 「話は後だ後!!おぉ〜い、時輝ぅぅ〜!皿とかスプーン持ってこぉぉい!!」
 口に手を当て、声を大きくする一夜。それに応えて時輝は「ホイ、ホーイ!」と声を上げた。
 「…それと、雅日ぃぃ〜!」ストンと雅日の隣にしゃがむ一夜。
 「てめぇ、俺に黙ってコンナ美人姉さんと、ちわ喧嘩するとか……。てめぇも隅に置けね…グブホッ!!?」
 切れた雅日が一夜の顎にストレートアッパーを放つ。ついでに香々美からも冷たい目で見られる始末。一夜は愛想笑いを二人に向けると時輝が持ってきた皿を受け取り皆に分ける。
 「さぁさぁ、皆早く食べようぜ!?料理は出来た時が一番美味いんだからよ?!」
 皆はその笑顔に押されて、少し考えながらもチョコレートケーキに手を伸ばした。

139精霊:2012/12/02(日) 22:52:07 HOST:i220-99-160-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
日陰>

スイマセン、、、
最近、忙しくて。(遊んでるけど)
いきなりですがお願いです。お茶の中にドク入れちゃってください。

140日陰:2012/12/02(日) 23:26:20 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第9話+  +其の07+

 +――――――――――+
 「―――……ウエッ…!……食い過ぎたぁ……。口の中、甘い〜〜〜…!」
 「ケーキの4分の1喰ったら、口の中も甘くなるわよ。大体食いすぎっ!私たちの分も食べやがって!!?」
 香々美はフォークを歯と歯に挟みながら一夜に怒鳴る。その物言いに、女性らしさを全く感じられない。
 「…………あ、……あの、一夜くん…」
 和泉は俯きながら一夜の名前を呼ぶ。和泉は一夜にどういういい始で話を進めるか考えていたため、ケーキも殆ど喉を通らなかった。
 「ん……?」大胆に床に寝転ぶ一夜。横目で一夜に見られ、和泉は一瞬頭が真っ白になった。そしてすぐに気を取りなし。
 「その……あの…。……一夜くんは…。えーと…」結局何にも浮かばなかった。
 変な言葉を続けるだけで、和泉は何にも正面な事を言えなかった。
 「……和泉さん…」その和泉に等々嫌気が差したのか、一夜から言葉を発した。
 「………ありがとう……」
 一体何度目の言葉だろうか。言うのは恥で、言いたい時にはそうそう言えないその言葉をこの青年は何回言ったのだろうか。
 だが、一夜にそう言われ和泉は頬を少し赤らめた。香々美はそんな和泉を尻目に「ハハァーン…」と白々しい目に、瞳を変えた。

141日陰:2012/12/03(月) 08:27:03 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  精霊>>

 無理、無理!

 入れられるわけないじゃん?!

142日陰:2012/12/03(月) 09:36:25 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第9話+  +其の08+

 「―――……不死者ってこんなもんなのか…?」
 「なんか予想と随分違いますね………」
 寝転がった一夜を見て志紀と空は呆れしか湧いてこなかった。
 「……マァ、ココ(殺シ屋)デモコノ子ニ驚カサレタ子ハ多イカラネェ〜。君達モ、驚イタダロウ?」
 架月の質問に「は、はぁ〜…」と心無し気に答える二人。その二人の隣で静かにお茶を啜る竜泉と高野。湯呑に入っているお茶は淹れたてで美味しい。
 「っで、お前ら何時まで此処に居るんだ?夜までいるなら布団用意するが?」
 秘黒が茶を啜る高野に聞くと
 「否。長居するつもりはない。ここを少々ばかり拝見させてもらったら御暇させて頂くよ…」
 と静かに答えた。秘黒はそう聞くと「んじゃ、適当に回ってくれ…」とまた適当に言い放った。
 「……んじゃ、そうと決まれば行こうぜ?『天才少年高凪光聖様』が作ってくれたケーキも喰い終わったし…」
 欧明がそう言い切ると、和泉がそうですね、と行って立ち上がった。
 「ソンじゃぁ、俺案内するよ!…一様この屋敷の構図は覚えたし…」
 一夜はそう言うと起き上がり大きく背伸びをした。

143精霊:2012/12/03(月) 09:39:07 HOST:i220-99-160-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
日陰>
 やっぱりそうですよね。無茶ぶりしちゃって、すいません。
 てか、今日、学校じゃないの?俺は、学校休み。チョーうれしいんだけど。

144日陰:2012/12/03(月) 09:47:32 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  精霊>>

 休みじゃなかったら書けないって!

 今日丁度、学校の振替休日ってヤツで休みなんですっ!!

 土曜に嫌な嫌な「じゅぎょうさんかん」と言う物があったので今日は休みなんですよ!(*´∀`*)

145日陰:2012/12/03(月) 12:23:39 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第9話+  +其の09+

 +――――――――――+
 「―――…っで、ここが道場で。そこの道を右に曲がったら大浴場。左に曲がったらトイレ。んで、そのまま真っ直ぐ行ったところにある部屋が資料室。その隣の部屋に…――」
 「お前、ドンだけこの屋敷のこと知ってんだよ…」
 「あっ?」
 屋敷の部屋を淡々と守り屋の者たちに教えていく一夜。その一夜を見て志紀は唖然としていた。殺し屋達一同はその光景を見て、自分たちより屋敷のことを知っているのではないかと思っている。
 「イヤだから。…お前、殺し屋以上にこの屋敷のこと知ってねぇか、と思ってよ……」
 志紀はそう言うと「そうか?」と一夜の呑気な声が返ってきた。
 「……貴様は…」竜泉の静かな言葉に一夜は「ん?」とまた呑気な声を上げた。
 「貴様は、誠に不死者なのか………?……もし誠ならば、なぜ貴様は我々にそう接してくる…」
 竜泉からの突発的な問いに一夜は頭の中でその答えを考えた。意外と他の者も、その質者をしてみたいと考えていた。それを竜泉が聞いたかと思うと、少し皆は驚いた。
 「――…別にぃ……特にアンタらに怨みがある訳じゃないし。…そもそも、アンタらが俺に銃を向けたのは、俺があの場にいたからで、歴とした不可抗力ってヤツだ。別にどうとは思わねぇよ…。……それに…」
 一夜はクルッと振り返り皆に笑いかける。
 「今はこうして、殺し屋と合併してくれているだけで有難いよ。…もし、責任感的なこと抱えてんなら………」
 皆は一夜の顔を驚いたような表情で見つめた。
 「―――…俺の数少ない友達になってくんないかな?…―――」
 一夜のその言葉に皆は驚きを隠せなかった。

146日陰:2012/12/03(月) 13:26:04 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第9話+  +其の10+

 +――――――――――+
 (―――……時雨さん…何考えてんだろ…)
 屋敷の案内を終えた一夜は、屋敷の屋根に寝転んで考えていた。もう日が暮れかかっていて、目には綺麗なオレンジと雲の白が広がる。
 ついこの間、凛堂、寿の二人が行き成り押し掛けてきた理由を、一夜はずっと考えていた。自分勝手で心が読めない男がだ、凛堂は自分と同じ不死者の一夜を「弟」と見ている。そのせいか、ブラコン要素も屡々あるが一応一夜のことは心配している。
 だが、この前は挨拶よりも先に襲いかかってきた。一体何を考えてそんな行動に走ったのだろう。一夜はずっと考えていた。
 (寿さんは、元々武闘派系。俺にイラつく様な事を言われたら襲ってくるのが目に見えてる。…だが、時雨さんは知能派系だ。俺が何か言いかけたら直ぐに口止めするはず…。大体俺は今回何にも言ってないぞ…)
 左右の手を首の下に入れて、頭を屋根の瓦から浮かせる。
 (…だとしたら、今回俺に寿さんが襲い掛かっってきたのは意図的?…何故だ……。それに、時雨さんが帰り際に言ってた……――)
 ―――「“本当の力”」―――
 (――…って何だ?)
 一夜は必死に思考回路を回してこの前のことを思い出す。確かにそこらへんのこと言ってきた気がする。
 凛堂は何かを知っている。しかしそれを一夜にはあえて伝えていない。殺し屋と守り屋の頭領に配布されている禁令物資の中巻の存在を知っていたのは何故だ。時雨はどうして今回に限って寿にストップをかけるのを遅れさせた。
 考えれば考えるほど、分からなくなる。成長が止まった6年間。一夜はあまり頭を働かせなかったため、ここで行き成り頭を働かせると、頭が痛くなる。
 「―――…オイ、一夜ぁ〜!…守り屋様方のお帰りだとさぁ〜。見送らなくて良いのかぁ〜?」
 雅日が門の所から屋根に寝転がる一夜に叫んだ。それを聞いて一夜は、「あぁ、今行くぅ〜!」と言って屋根から地面に降りた。地面に降りると丁度、和泉がブーツを履いているのが目に入った。和泉も一夜が降りてきたことに気付き、ぱっと顔を一夜に向ける。
 「ヨイショットッ!!……じゃあね、一夜くん。また…今度…っね?」
 和泉は立ち上がり一夜に話しかける。ぎこちない表情の和泉に、一夜は優しく笑いかける。
 「オウッ!“また明日”…」その言葉に和泉は驚いたような表情をした。だが、すぐそのあとに一夜と同じく笑いかけて「うん……!」とまた頬を赤らめて言った。
 その顔を見て時雨のことはまた今度でいいかなと思った一夜だった。

147日陰:2012/12/03(月) 14:26:02 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第9話+  +其の11+

 +――――――――――+
 「―――……凛堂…」
 所変わってとあるスーパー。凛堂、寿の両2名はそこで、いろんな物を買い溜めしていた。トイレットペーパーだの冷凍食品だの、家庭商品だの。生活には欠かせないものを、今日行き成り買い溜めしていた。
 「ん?どうしたの司ちゃん?」腰をかがめて、クリスマスツリーを見ていた凛堂は、後ろで大量の袋を抱える寿を見た。
 「………一夜は、もう本力を出しかけている……。どういう事だ………?…貴様の言い分では本力発揮まで最低7年から9年を用いると聞いていたが……。貴様の見当違いか…?」
 年下の少女にそう言われたかと思うと、凛堂は改めて立ち上がり腰に手を当てた。
 「うん。それは僕も考えてる。一夜ちゃんは死んで、今年で6年。本力発揮まであと1年から2年を持たなきゃいけないはず……。でも、見ただろう司ちゃん?」
 一瞬変わった一夜ちゃんの眼……。寿は暗い顔で一度だけ頷いた。
 「……本当に一瞬だが…。彼奴の目が紅に染まった。……早めの覚醒かと思って咄嗟に投げ飛ばしてしまったが……。…構わなかっただろう……?」
 女というものを全く感じさせない口調で寿は言い放つ。それを聞いて凛堂はツリーの上部分を触りながら言った。
 「うん、別に良いよ?どうせ、直ぐに治るし……。でも……――」
 「――……それだけでは軍犬に敵わない…。そう言いたいんだろう………?…問題無い……。彼奴が危なくなったら私たちが……」
 「それじゃ、ダメなんだよ……」
 力を無くした様にツリーから手を降ろす。「何ッ?」と寿が聞き返すと                
 「一夜ちゃんは僕らが思ってるほど自尊心ボロくないんだよ。少し、、一夜ちゃんを甘く見すぎだよ、“司”。あの子は君が思ってるほど簡単な子じゃない…。教えるときにはちゃんと教えなきゃね……」
 溜息混じりの真面目な凛堂の言葉が寿に帰ってくる。寿はこんな凛堂を見たのは久しぶりだ。いつもはケラケラしる此奴も一夜という第2の不死者が関わってくると少し感情が変わるらしい。
 「…だが、どうする……。…もし、覚醒手前で軍犬が現れたら……それこそ…」
 「その時が来たら…その場で対処すれば良い……。それにあの子の周りにはそれなりの人達が居る……」
 凛堂はそう言うと寿から二袋ほど袋をもらい、そのスーパーを出て行った。暗い夜。空に浮かぶ月を眺めて―――

148日陰:2012/12/03(月) 15:29:56 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第10話+  +暴走+  +其の01+

 そこはとある工場。海岸沿いにあるその廃工場に7人の人影が見えた。
 工場の壁には学校の校長が座るような椅子があり、そこには天井の窓から漏れる月明りで輝く長い金色の髪をした青年が腰掛けている。
 「―――…総司令官。…これからどうしますか」
 日本人だろうか。茶色の少し長い髪を一つ結びにしている女性がその金髪の青年の隣で、耳元に囁く。
 「篠原(しのはら)。お前はどう考える……?守り屋と殺し屋に殴り込むか…――」
 アリミノ・ディラ・ミキフ、及び、一見一夜を仲間にする、か………。女性は青年にそう言われると、二択以外の回答を青年に進める。
 「一見一夜を暴走させ、精神的に追い詰める……と、私は考えます…」
 女性がそう言うと青年は声を上げて笑い出した。
 「ッハッハッハ…。お前ならそう言うと思ったよ。……でわ…」
 出て来い。リズ…。そう言うと日本人のような黒髪をした少女が影から出てきた。
 白肌がよく輝くその少女、リズ・コスト・ホリムは笑いながら「行ってきマース!」と額に手の甲を上げて呟いた。
 +――――――――――+
 「――― 一夜ぁぁぁぁぁ!!!稽古手伝えぇぇ!」
 一夜が借りた屋敷の部屋の麩を勢い良く開ける功刀。だが、その部屋に一夜は処らず部屋には静かに畳まれた白い布団があるだけで、他に何があると言えば小さな机とゴミ箱はあるくらい。
 「あれ?」
 「ん?どうした釘寺…」
 疑問の声を上げた功刀の名を呼ぶ雅日。どうやら道場で何かしていたらしく、道場の方から首にタオルを巻いていた。
 「あっ…。イヤ…。一夜が居なくてよ……」
 功刀がそう言うと、雅日は考えながら虚空を見た。

149日陰:2012/12/03(月) 15:52:02 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第10話+  +其の02+

 +――――――――――+
 「―――…オーイ、アリミノォ〜!!」
 一夜は殺し屋屋敷の手前にある森の中でアリミノの名を呼んだ。それに応えるように大きな岩のあるところで居眠りをしていたアリミノが目覚め、ふっと上半身を上げる。
 「……………気のせいか………」
 「気のせいじゃねぇよ!!」
 「イッデッ!!?」
 ボカンという鈍い音がアリミノの頭に降り落ちる。音の正体は一夜の拳。
 アリミノは痛いと嘆きながら頭を抱え、後ろを見る。そこにはフード付き服を着たの最近風な格好をした一夜が立っていた。
 「何すんだよ?!一夜ぁ!!」
 アリミノは頭に来て立ち上がる。頭を片手でさすりながら一夜を見ると、
 「手ぇ出せ、手ぇ」
 と、言われた。一夜の手には包帯が二つとテープが握られている。アリミノが何だよそれ、と聞くとまた手ぇ出せ、手ぇと声が帰ってきた。アリミノは恐る恐る両手を一夜に差し出す。その手には強く拳を作ったせいで、爪が食い込んだ手のひらが、赤く滲んでいた。
 言葉を止める一夜を下目にアリミノも言葉を詰まらせる。気付いてたのか。不意に自分の頭にそんな言葉が浮かんだ。
 「………だな…………」
 「ん?…何だ?」
 小さく聞こえた一夜の言葉。最後まで聞き取れなかったアリミノは、キョトンとした顔で聞いた。

150日陰:2012/12/03(月) 16:18:51 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第10話+  +其の03+

 「馬鹿だなって思ってよ…」
 アリミノの手に包帯を巻きながら呟いた。今度こそ聞こえたアリミノは一気にプチンときた。
 「てめぇ、喧嘩売ってんのか…コラ…!?」
 「自分だけが悪いとか意味不明なこと考えてるから」
 苦笑いを浮かべるアリミノに一夜は小さく答えた。アリミノは笑をなくしそっと一夜を見た。自分より小さい一夜の銀髪だけが目に映る。
 「…馬鹿みたいに一人で歯ぁ食縛りやがて……。嫌いなもんが皿の上に乗ってる幼稚園かよ…」
 包帯が巻き終わり、一夜は素手で包帯を破る。次にテープを切り、包帯の終わりを貼る。
 「ヨシッ!これでオッケッ!……モウやんなよ?」
 一夜はそう言うと岩の上から下に降りる。すると一夜が自分で置いたらしい、水の入ったペットボトルを2つ掴むと、一つをアリミノに放り投げる。アリミノがそれを掴み取ると「少し休んどけ。俺は散歩してくる」と言って、一夜はどこかに歩いて行った。
 「………何だかんだで俺……心配されてんだな…」
 一夜の背中を見ながら、アリミノは頬笑み、またその場に寝っ転がった。

151日陰:2012/12/03(月) 16:53:44 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第10話+  +其の04+

 +――――――――――+
 「―――……流石にこんな所まで来たことねぇから、道図良く分かんねぇな……」
 顔を左右にキョロキョロさせながら一夜は呟いた。天気がいいおかげで木と木の隙間から日光が地面漏れ、道だけははっきり見える。
 すると、道のずっと向こうがキラキラと光っているのが目に見えた。それが何なのか思い一夜はそこまで少々早歩きで向かう。そこに着くと、光っていたものの正体が河である事に気付いた。
 その河は意外にも綺麗で、魚が数匹見えるほどのものだった。こんな所に川が…。一夜は改めて世界は凄いなぁと思った。
 「スゴイな…。夏とか冷蔵庫の代わりに出来てよさそう……」
 一夜は河のすぐ前にしゃがみこむと、冷たい河の中に手をいれる。だが、冷たすぎるのですぐに手を引っ込め、もう一方の手で濡れた手をさすった。
 「うぉ〜……。つめてぇ〜…!」
 手を横に振りながら立ち上がると、魚が一夜のすぐそばまで泳いできた。珍しいことだ。
 もう一度一夜はしゃがみこみ、泳ぐ魚を微笑みながら見ていく。「綺麗だなぁ〜…。魚〜……」一夜はアニメのような口の開き方をする。ついでに一夜の顔の周りにオレンジ色の花が咲く。
 「―――…そう?」
 すると、どこからか高い少女の声がかかってきた。
 一夜が何気に振り返ると、一夜の頭上に何か鋭いものが振り落とされた。

152日陰:2012/12/03(月) 17:51:05 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第10話+  +其の05+

 『ドォォォォォォォォオオォォ゛ン!!!!?』
 砂煙と地鳴りのような音がそこ一体に響いた。

 砂煙が止むと、その中から黒く長い髪を左右で二つに結んだ少女が右手に大きな大剣を握って立っていた。
 「―――…ン〜〜〜…。ちょっと派手にヤりすぎちゃったなぁ。不死クーン!生きてるぅ〜?」
 少女は大剣を地面にさし、腰に手の甲を当て一夜を探す。だが、全く一夜からの反応がない。少女は困ったようにそこらじゅうに目を配る。
 
 「―――……ハァ、ハァ、ハァ、ハァ………!」
 一人息を荒立たせる一夜。大きな木の裏で、一夜は首の後ろを手でさすりながら立っていた。少し切れていたが、直ぐに治った。
 「…なんだあの餓鬼?!?!行き成り斬りかかってくるとか、どういう事だよ…!?つか、何モンなんだよっ!!?」
 一夜は木の陰から少女の背中を見る。
 あの一瞬。行き成りあの少女が上からあの剣で一夜の首を切り落とそうとしたときは、流石の一夜も驚いた。
 なんとか、顔を引っ込め、そのまま足に力を入れて今の場にいるが、見つかるのも時間の問題だろう。
 (兎に角、こっから動かねぇと…)
 「お兄さん見ぃ〜つけた…」
 突然かかった少女の声に、一夜は顔を前に向ける。その瞬間、腹に物凄い衝撃が走った。

153日陰:2012/12/04(火) 18:05:49 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第10話+  +其の06+

 +――――――――――+
 「―――…おい。アリミノ……」
 一人屋敷に帰ってきたアリミノ。雅日は、全く見当たらない一夜がどこにいるのか、玄関でアリミノに問う。すると「まだ帰ってきていないのか…?」と驚いた風に言い放った。雅日はその言葉の意味を考え「会ったのか?」と聞き返した。
 だが、アリミノはその問いには答えず、靴を履き直して立ち上がった。
 「一夜を探してくる。あの野郎、散歩行ったきり帰ってきてねぇんだろ?」
 雅日に横顔を見せながら、アリミノは言った。雅日は「散歩?」と聞き返すため口を開いた。っが、
 『ドガァァァァァァァァアアァアン゛!!!!』
 行き成り地鳴りのような音が屋敷一帯に広がった。それと同時に屋敷の囲いから屋敷を半分にするかのように何かが飛んできた。
 「―――何だっ!?今の!!?」
 雅日は、横に体を向け無残なことになった屋敷をその目に焼き付ける。アリミノは、ダッと外に出て何事かと見る。だが、目の前に映ったのは土が翻った地面と空にまで舞い上がっている砂煙、そして大剣を握ったあの少女が愛らしく笑って立っていた。
 「―――……ん?っあ!アリミノくぅ〜んじゃぁ〜ん!!久し振りぃ〜〜…!!!」
 少女はアリミノに気付いたらしく、大きく手を振りながら叫んだ。アリミノの方は驚いたように目を見開いた。
 「……っな…何でてめぇがここに居るんだよ……」
 驚きのせいか口調が早まる。そしてアリミノはギュッと強く拳を作る。その握り方は手から血が出るほどの物だった。
 「軍犬第七柱。リズ・コスト・ホリウムッ!!!!?」

154日陰:2012/12/04(火) 19:20:58 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第10話+  +其の07+

 アリミノの叫びに少女、リズ・コスト・ホリウムは首をかしげる。まさに「何で?」とアリミノの言った言葉の意味が分からないというかのように。
 「とぼけんじゃねぇ!!?何でテメェ等が日本に来て、ここに居るんだよ?!」
 「何で…?そんなの決まってんじゃん!」
 キミと不死クンを仲間にしにっ!! リズは首を傾げて笑って見せた。アリミノはフザケルなと言いたそうに歯を噛み締める。
 それを見てか見ないでか、雅日がもうダッシュっで外に出てきた。アリミノの隣に立ち、リズを見ると大体の状況を察したように、険しい表情になる。
 「てめぇ、何モンだ……。答えによっちゃぁ、手段は選らべ」
 「…ヤメ……ロッ…!………みや…び…ッ……!?」
 微かに聞こえてきた一夜の声。雅日はその声を聞くと口を噤め、一夜の名を呼んだ。
 「―――…何だ、まだ生きてたんだ…?……っあ!不死者だから死なないんだっけ?!」
 リズは屋敷のずっと向こうを見て独り言のように呟いた。リズの見つめた方には、自力で立ち上がる一夜が居た。しかし一夜は咳と一緒に血を吐き、目の上からは血が流れ落ちている。
 『一夜ぁ!!!?』
 雅日とアリミノの叫び声が重なる。
 「んじゃ、気絶するぐらいにしとこうかなっ!!!!?」
 リズはそう言うと居た場所から一瞬に一夜の場所にまで飛んで行き、一夜の腹にもう一発強い蹴りを喰らわせる。「ガハッ!」一夜はまた血を吐きながら前に倒れ込む。っが、倒れ込むその前に、リズの持っていた大剣の柄尻が一夜のうなじに振り落とされる。
 バタッ。音を立てながら一夜は前に倒れた。リズはそれを見終えると微笑みながら一夜の服襟に手を伸ばす。だが、その前にまたもその場に『ズドガァアァァァアン゛!!』と言う音が響き渡った。

155日陰:2012/12/06(木) 18:54:36 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第10話+  +其の08+

 +――――――――――+
 ――― 一体、目の前で何が起こった。自分は一体どうなって。あの少女はどうなって。皆はどうなったってんだ。

 「―――…………いっつぅ……!」
 一夜は頭を抱えて立ち上がる。目の前に広がる砂煙。一夜は険しい表情で前を見た。すると、砂煙に交じって黒い人影が現れた。一夜は一瞬身構えたが、その人影があの少女でない事に気付くと、すぐに体を休めた。
 「…………何やってんだ……クソ一夜……」
 人影、もとい功刀は怒りの表情と目で一夜を見下ろす。「…ん?……え〜と…功刀さ…ん………?」
 「早く立ちやがれアホ一夜。油断していたからと言っても俺に勝った奴があんな餓鬼娘に負けてんじゃねェよ。脚の関節外して一生立たせねぇぞ…」
 功刀の怒りとしか思えない顔に睨まれて、一夜は内心怯えながらもピンと背中を張る。
 「―――…まったく、また派手に壊しおって。これは、誰が直すと思っておるのだ……?」
 今度は一夜の背後から呆れた表情で腕組をしながら奈津樹が出てきた。「奈津樹ッ!?」一夜が奈津樹の方を見て呟くと、
 「っま、良いんじゃないんですか?あの子たちに修理代頼めばっ?」
 次に時輝がにやにや笑いながら奈津樹に話しかける。そして次々と一夜の周りに刀を持った者達が現れる。「……お前ら…」
 「…さてと……一丁遊びますかっ!」
 功刀のその一言に周りの者は「上等っ!!!!」と叫んで刀を構え直す。

156日陰:2012/12/06(木) 19:43:44 HOST:i121-113-228-192.s41.a018.ap.plala.or.jp
  +第10話+  +其の09+

 「―――…イインデスカイ?」
 「…あん?」
 屋敷の屋根の上。今にも崩れそうな屋根の上で、架月は秘黒に聞いた。目の前には、砂煙が立って視界が悪いが、これから勝負が始まることぐらい容易に予測できる。
 「ダカラ。アノ子タチノ頭領ガ、屋根ノ上デタダ見テルッテノハマズクナイ?」
 架月はしゃがむように座りながら、立つ秘黒に笑いかける。
 「不味いも何もあるか…。あいつらも、勝てない喧嘩を売るほど馬鹿じゃねぇ……それに」
 秘黒は架月に向けていた顔を下で立つ砂煙に目を向ける。
 「…あの小娘は俺が出て行くほど強かねぇだろ?」
 不意に吹いた風が不敵に笑う二人の髪を横になびかせた。
 +――――――――――+
 (―――……………!来るッ……)
 功刀は前を見ながらそう思うと、煙が立って遮られていた視界が一瞬ではじける。それと同時に功刀の目の前からリズが現れ、右手に握った大剣を功刀に向かって振り落とす。
 功刀はそれを上に軽く飛びながら避ける。険しい顔で功刀は無邪気に笑う少女を見る。
 「―――…てめぇ……やっぱ、只の餓鬼じゃねぇんだな…」
 「只の餓鬼が大剣持って殺し屋に殴り込む?」
 「ソラそうだぁ…」功刀は不気味に笑いながら足をリズの後頭部に叩き落とす。

157日陰:2012/12/07(金) 19:00:12 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第10話+  +其の10+

 「ッ―――――――――!!!!」
 前が見えない。功刀の大きな一蹴りのせいで、また目の前に砂煙が立つ。
 そしてまた砂煙が一瞬にして晴れる。今度は自分たちの向こうで剣相手に素手で勝負をしている功刀が目に映った。
 「功刀ッ!」一夜が身を乗り出して叫ぶと、スっと目の前に奈津樹の手が伸びる。反発しかけた一夜だが、奈津樹の「手を出すな」と言いたげな眼を見て口を閉じる。
 「……一夜…」
 「アリミノ…」
 アリミノに声をかけられ、一夜は我に返ったような目になる。
 「…お前は少し下がってろ。不死者とは言え、はたから見れば重傷者なんだぞ……」
 一夜の体にある処々の擦り傷や、滴れ出てくる血を見てアリミノは物言えぬ表情になった。
 「そうだ、そうだ〜。怪我人は下がってやがれ…」
 次に雅日がニヤけた表情で言う。驚くような顔で一夜は雅日を見る。雅日は薄笑いを浮かべたあと、功刀に加戦するかのようにリズの方へ走っていく。それを筆頭に他の者も笑ってリズの方へ走っていく。
 「馬鹿野郎!!…そいつは女でも軍け」
 「だから何だ…」
 最後までその場に残っていた奈津樹が冷静な口調で話す。
 「軍犬だの、なんだのと…御託を並べたところで進める訳がないだろう」
 奈津樹の眼に灯るまっすぐな光。
 「……少しくらいヤンチャをしてもバチは当たるまい」
 奈津樹も優し気な笑みを浮かべると、刀を手にリズの方へ走った。

158日陰:2012/12/07(金) 20:51:12 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第10話+  +其の11+

 +――――――――――+
 目の前で繰り広げられる刃同士の勝負。「キィィィィィン!」と「カァァァァァン!」の音オンリーのその勝負。
 一夜は只々それを見ていることしかできなかった。怪我はすべて完治。普通ならもうこの喧嘩に加戦しているところだ。だが、今ここで加戦したら必ず後でお堅い拳に飛んでくるに違いない。しかし、そのうちそうも言ってられなくなるだろう。
 目の前では確かに物凄い勝負が繰り広げられている。だが、多数対一のはずなのにリズは全く押されていない。逆に押している。スピードが早く剣筋も鋭い。殺し屋たちもそれなりに頑張っている。だが、スピードも剣筋もリザより遙かに鈍い。なんとかリザについて行けているのは、奈津樹、功刀、雅日、アリミノの4名だけだ。
 (―――…ヤベェだろうがコレ!!やっぱ軍犬なんかに、生半可な奴等が敵う訳ねぇ!!!)
 一夜は今にも飛び出しそうな勢いで足を前に出すが、それからが続かない。これは恐怖か?
 (!!!―――……畜生っ!!)
 歯が砕けるほど食縛る。この感情は悔しみか?
 「―――…ハハハハッ!!そんな剣筋で私を倒せるとでも思ってんの?!それともっ」
 ックと苦しみの声を上げる奈津樹の背後にリズは回り込む。「しまッ…!!」奈津樹はそう呟くと、リズの片手に握られた大剣を奈津樹の顔面めがけて放った。「――女だからって舐めてるの?」
 『ガシャンッ!』だが、剣先が奈津樹の顔面に当たる直前、雅日の刀がそれを止める。即座に刀を持ち替え、反撃に出る雅日。リズを数歩下がらせ、間合いを取る。「…すまん。雅日」奈津樹が苦笑しながら言うと、
 「悪いと思ってんなら大股7歩下がりやがれ。俺のアピールが出来ない」
 とそっけなく返す。この返事にも苦笑しつつ、奈津樹は「随分な物言いだな。貴様ァ〜……」と言い放った。
 「他所見したいなら、他所でやってろ。居るだけ邪魔だ」
 ぶっきらぼうに功刀は言って身構えた。それに反応してアリミノも、伊鈴に作ってもらったあのナイフ付き鎖の武器を構える。すると、まるで雷のようにリザが飛んできた。

159日陰:2012/12/08(土) 13:11:09 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第10話+  +其の12+

 アミリノ目掛けて飛んできたリズ。その速さはまるで雷のようで、目ではとても追えない。
 アリミノは足元に来たリズの攻撃を避けるため、鎖を咄嗟に顔の前に構える。刃が来る。かと思ったら、アリミノに飛んできたのはリズの足。一瞬驚いたアリミノだが、すぐに気を取り直し、飛んできたリズの足を鎖に絡める。
 すると、リズは不気味に笑い鎖に絡まった足を引く。それに合わせ、アリミノも前に引っ張られる。「うおっ!?」そういうや否や、アリミノはリズの足に引っ張られてぐるんと空中で回される。その拍子に周囲にいた奈津樹、雅日にぶつかり遠くへ吹っ飛ぶ。残されらのは功刀一名。危険を感じ咄嗟に身構える。だが、それよりも早くリズは功刀の背後に回り込む。
 「―――……しまッ……!」
 「バイバーイ。殺し屋のおにいちゃん…」
 リズは不敵に笑ってみせる。
 「ヤメッ……!!」
 一夜は目を見開いて呟く。今走っても間に合わない。今叫んでも届かない。今後悔しても許されない。今涙を流しても響かない。
 そう思ったとき、一夜の激しかった鼓動が大きくドクンッとなった。
 そして目の中が朱色に染まった。次の瞬間、どんなことがあっても飛ばなかった意識がどこかに飛んでいった。
 「ドゥゥゥウゥウウ゛!!!?」
 大きな竜巻と共に響き渡った音。その音に驚き皆竜巻の起こった方を見る。その場所、一夜のいる場所を。
 「……一夜…?」
 功刀の驚きがこもった声が放たれると、俯いていた一夜の顔が上がる。そして、紅く光る一夜の眼を皆は目に焼き付けた―――

160日陰:2012/12/08(土) 17:35:19 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第11話+  +「自分を捨ててたまるか馬鹿野郎!!」+  +其の01+

 +――――――――――+
 ―――…あれ、此処何処だ……?
 目の前に広がる黒。目を開けてみれば目を閉じていた時と同じ光景が目に入る。上も下も全く理解できない。
 左右に顔を向けてみるが、何があるわけでもない。
 ―――…あぁ…。疲れた……。………寝よ…

 +――――――――――+
 「―――…何だ、ありゃぁ…」
 目の前で竜巻を起こす一夜。その瞳は紅く濁っている。
 一夜は瞳だけを皆に向け、微かに口を開く。
 「……あれが“暴走設定(ぼうそうセッテイ)”…。流石に本物見せられるなんて思わなかったよ…」
 リズは頬に鉛のような汗をたらす。「暴走設定……?」功刀は目を見開く。
 『……フゥー………』
 再び顔を落とし、深く息を吐く一夜。『――ブチ殺(あや)める』一夜は独り言のようにそう言うと、一瞬にしてその場から消えた。
 リズが気付くと、すぐ足元に一夜は潜り込んでいた。(なんていう早さ…!)そんなことを思っているのもつかの間。全てを考え終える前にリズの顔面に硬い一夜の拳が飛んできた。

161日陰:2012/12/08(土) 18:54:23 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第11話+  +其の02+

 「……っなぁ………!?」
 一夜の硬い拳で吹き飛ばされたリズを見て、皆奇声のような声を上げる。なんという腕力。一発全力で女を殴ったからって、目で追えない程の早さで飛んでいくなんて殆どありえない近い。
 『……あぁ…。犯っちゃったぁ〜…』
 ほとんど棒読みのその言葉は、皆を震え上がらせるものだった。「一夜…」起き上がりながらアリミノは目を見開く。
 「―――………チョット、コレハマズインジャナイノォ〜…?」
 着物の裾に手を突っ込みながら架月は秘黒を見る。秘黒本人は顔を険しくして、紅眼の一夜を睨んだ。
 「―――…一夜……。おめぇ…」
 『…沈黙しろよ黒髪。殺すぞ、畜生』
 言葉がおかしい。こんな意味不明な言葉いつもの一夜は使わない。そう思って功刀は感じた。――こいつは一夜じゃねぇ…!――
 「おい…一」
 「サッスガァァ〜!」
 功刀の言葉を遮って、リズの笑いが込もった声が響く。
 『んだ。まだ殺されてなかったのかよ…。頑丈&死ねよ阿呆。何ならこの世に未練残さずに成仏させるぞ。コノ野郎』
 一夜が棒読みで言い終えると、リズはッペと地面に血を吐き捨て、今までに見せなかった本物の笑を一夜に向けた。
 「成仏すんのはテメェだコノヤロウ。可愛い女の子の顔面に拳巡り込ませる人は、成仏してもモテませんよ」
 あからさまな敬語を履くと同時に、強い風が二人の髪を靡かせた。風が止むまで、二人はその場に静止していた。そして、ピタリと風が止むと風とは別に二人の髪が後ろに靡いた。
 『―――…ギィィィィィィイイィィィン゛!!!!?』
 鋼同士が擦り合う音が、その場にこう高く響く。

162日陰:2012/12/08(土) 22:26:32 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第11話+  +其の03+

 『キィィィン!』と『ガァァァァン!』の音がオンリーのその戦い。
 「―――…何その石?頑石?どれともダイヤ?」
 リズは目の前で自分の剣を、両手で握っている石風情で食い止める一夜に苛立っている。
 『イヤ。そこら辺に落てた石ころ。つい3秒前、愛用岩石第97号になった』
 とことん文章及び文内がおかしい。なんで97号。今までの96号どうした。ギャグ漫画か銀●(世代人気アニメ)だったら突っ込みが返ってくるだろう。だが、今の一夜はそんなの興味がないふうにぐっと体を前に押す。
 (!?……なんちゅう怪力だよコノヤロウッ!怒った鬼嫁かよ?!)
 なんとも思えない例えでリズは顔をしかめる。だが、そう思っているのもつかの間。一夜は手に持った大きめのいしを器用に使い、リズと距離を置かせる。
 (ッ――――――!!…これが、篠原さんが言ってた暴走設定…!その本人の意識はなく、違う者の意思が灯る。だがその意思は――)
 人間のモノとは、遥かに違うモノ!!!
 リズは一夜と距離を起きながら考える。
 「……が、あんたか…」
 しゃがみながらリズは呟く。『ハァ〜イィ〜?スんませぇ〜ん!虐めにあった高校生レベルに聞こえませんよォ〜。コノ野郎』口の周りに手を当てて、わざと声を響かせる。
 「ソレが、あんたかコノヤロウ!一見一夜は結局、あんたの被せ者なんだろう?一見一夜にはあんたが!あんたには一見一夜が!パズルのピースみたいに無くてはならねぇもんなんだろう?!でも、それが…!」
 女の子からは飛び出しそうにもない発言が紅眼一夜に真っ向から放たれる。
 「最後にはいりもしない、堅苦しく思い枷になるんだ」
 『やっぱお前も、少し沈黙しろ…』
 リズの言葉を遮って、一夜の言葉と手が飛んでくる。その手はリズの首を掴み、上に上げる。
 「ッ――――――!?…ガハッ……」
 『こいつに俺が?面白すぎて両腹痛ぇよコノ野郎。こいつは俺にとってただのパネル台だ…』
 手に力を入れ直して、一夜は続けた。

163日陰:2012/12/08(土) 22:54:22 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
  +第11話+  +其の04+

 「パネル台…?」
 驚いたように目を見開きながら呟くアリミノ。それを聞いて一夜は目だけをアリミノに向ける。
 『一見一夜。そいつぁ、俺にとってただのパネル台だ。パズルに必要なのはピース。よく考えりゃぁ、ピースをはめ込む板何ざ必要はねぇだろ?俺はこいつのピース。こいつは俺を無理矢理はめ込もうとした只の“板”でしかない』
 一夜はそうとだけ言い終えるとリズの首を絞める力を強める。それに合わせて、リズの呻き声の大きさがボリュームを上げる。
 「!?…止めぬか!!一夜ぁ!」
 奈津樹が刀を持ち直しながら叫ぶ。だが、
 『止める?それは“コイツ”に言えや?!…コイツが昔のコトなんか思い出さなけりゃァ、俺は出てこなかったんだよ。……まぁ、コイツの義兄とかいうのが来てる時点で俺は起きてたけどよぉ?』
 と、言い返してきた。その言い分はまるで自分は悪くないとでも言いたげなものだ。だがその物言いに全員一歩後ろに下がる。
 「―――…だからってなぁ」
 突然かかったその声に、一夜は顔を後ろに向ける。
 「可愛イ、女ノ子ヲ殺ス何テ……」
 光に横切る二つの影。そのどちらもが片手に銀色に光る刀を握っている。
 『成仏してもモテねーぞぉ!‖成仏シテモモテナイヨ?』
 架月と秘黒の声が重なったあとに、「ザンッ!」という鈍い音がその場一帯に響いた。

164夜叉:2013/04/27(土) 19:13:19 HOST:wb78proxy03.ezweb.ne.jp
あげとく

168日陰:2013/05/06(月) 17:00:04 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 もう、本当にアレです……
 一回はPCブッ壊れて投稿できなくなって
 二回目は荒らしが尋常じゃないので止めて……←挫折っぽい……

 もう、マジで本当にごめんなさい……
 「挫折するくらいなら、投稿するなよ」とか思うかもしれないけど
 まぁ……そう言わずに……

 本当にごめんなさい、としか今は言えないです……
 この『+不死鳥+』は、多分……もう何も更新しない気がします……
 で、でも……!
 違う小説とかは多分、投稿します!←もしかしたら、また続編書くかも……
 もぅ本当にごめんなさい……

 by,日陰

169ピーチ:2013/05/06(月) 17:23:53 HOST:em1-115-32-6.pool.e-mobile.ne.jp
日陰>>

挫折くらい誰でもあるよ気にしないで!

「不死鳥」更新しなくなるの? 続き気になるよ!?

……でもまぁ、だったらしょうがないよね! 他の小説頑張って!

投稿されたらまた見るね!

170日陰:2013/05/06(月) 17:55:29 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 >>ピーチ

 いや、もしかしたら、また同じヤツ作るかもしれない←
 今度は一夜君と雅日君の二人が不死者設定で……
 うん……!

 やっぱり、書こう! そうしよう!

 まぁ、私も中学生になってあんまり更新出来なくなるから
 今週の金曜くらいには作りたいなぁ……

 よし……!
 頑張ってみよう!←結局ヤルんかい

171ピーチ:2013/05/07(火) 05:31:25 HOST:em1-114-193-60.pool.e-mobile.ne.jp
日陰>>

雅日くんまで不死者になるの!? まさかの二人!

……あれ何でだろう。一夜くんと雅日くんってあんまり仲いい印象がない

中学生か! 頑張らないとね!

更新待ってるね!←

172りさ:2013/05/07(火) 20:14:22 HOST:p23028-ipngn501hiraide.tochigi.ocn.ne.jp
ガンバ

173日陰:2013/05/11(土) 08:19:15 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ピーチ>>

 大丈夫、大丈夫
 私も仲がイイとは、一度も思ったことないからっ!←オイッ

 でも、あの二人地味に私のお気に入りキャラだからさぁー……
 主役にしてみたいんだよなぁ……うん……
 ってな訳で、遅くなりましたが、今日っ!
 頑張ってみようと思います……
 (忘れてたけど、コラボとかいろいろあるし、私が頑張らなきゃ……)

 りささん>>
 りささん、コメント有難う御座います!
 と言っても、今日から新スレッド立てるんですけどね……((苦笑 
 ご期待に添えられるようなお話を作れるかは、解りませんが!
 頑張りますっ!

174凜×3:2013/05/28(火) 20:47:54 HOST:i220-99-160-178.s02.a018.ap.plala.or.jp
日陰>

お久!
わかるかな?精霊です。

175たっくん:2013/05/29(水) 00:17:40 HOST:zaq31fa58c8.zaq.ne.jp
ブタピーチ
とっとと何か書けよ

176【下平】:2013/05/29(水) 12:15:24 HOST:ntfkok293007.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
【モブキャラ発見】

177名無しさん:2013/05/30(木) 18:09:36 HOST:i125-203-189-99.s41.a018.ap.plala.or.jp
 凜×3さん>>

 おおぉぉ! お久しぶりです、精霊さん!

 本当にお久しぶりです!

 いやぁ、イロイロと合って『+不死鳥+』の更新を一時休止にせざるおえない
 状況に陥り、早云ヵ月……

 今回勇気を振り絞り、新スレを作りました!

 そちらにも、良かったらコメントよろしくお願いします^^

178名無しさん:2013/09/29(日) 22:01:11 HOST:wb78proxy12.ezweb.ne.jp
↑↑↑↑

179たっくん:2013/10/03(木) 16:07:57 HOST:zaq31fa5a9d.zaq.ne.jp
このスレ何ですか?またクソスレ立ててますね〜

不死鳥だの 狂った少女だの 
わけの分からんスレばかり立てて
誰だこんなの立てたの・・?

>>1
無能スレ削除依頼希望

180たっくん:2013/10/03(木) 16:08:54 HOST:zaq31fa5a9d.zaq.ne.jp
     【無能のピーチ&千春ソング】


ババアが死んだ〜 ババアが死んだ〜♪
いい気味だ〜♪いい気味だ〜♪
さよならするのはツライけど
寿命だよ 仕方がない
千春が逝くまでごきげんよう♪

ババンババンバンバン♪ババンと吹っ飛んだ〜♪
いい死に顔だ いい死に顔だ
突如ばあさんがピーチの背中に

寿命だよ 仕方がない
ここは天国 さんずの湯


2 名前:たっくん:2013/10/03 16:04:00 IP:49.250.90.157
ババンババンバンバン ババンババンバンバン♪
いいとこだ♪ いいとこだ♪
さよならするのはツライけど♪
時間だよ 仕方がない

次の回までごきげんよう♪


ババンババンバンバン♪ ババンババンバンバン♪
いい湯だな♪いい湯だな♪
湯気が天井からポタリと背中に♪
つめてぇな〜♪つめてぇな〜♪
ここは温泉 草津の湯 


当スレ削除依頼希望します。

181たっくん:2013/10/03(木) 16:13:41 HOST:zaq31fa5a9d.zaq.ne.jp
>>1
何のスレか知りませんけど
クソスレばかり立てちゃいけませんよ
誰かに荒らされるのがオチですよ

というわけで管理人様・・削除依頼提出希望します。


      【無能のピーチ&千春ソング】

ババアが死んだ〜 ババアが死んだ〜♪
いい気味だ〜♪いい気味だ〜♪
さよならするのはツライけど
寿命だよ 仕方がない
千春が逝くまでごきげんよう♪

ババンババンバンバン♪ババンと吹っ飛んだ〜♪
いい死に顔だ いい死に顔だ
突如ばあさんがピーチの背中に

寿命だよ 仕方がない
ここは天国 さんずの湯


2 名前:たっくん:2013/10/03 16:04:00 IP:49.250.90.157
ババンババンバンバン ババンババンバンバン♪
いいとこだ♪ いいとこだ♪
さよならするのはツライけど♪
時間だよ 仕方がない

次の回までごきげんよう♪


ババンババンバンバン♪ ババンババンバンバン♪
いい湯だな♪いい湯だな♪
湯気が天井からポタリと背中に♪
つめてぇな〜♪つめてぇな〜♪
ここは温泉 草津の湯

182たっくん:2013/10/03(木) 16:14:42 HOST:zaq31fa5a9d.zaq.ne.jp
ピーチのババアは近日、死にますよ
ついでにアーバンかながわも

183たっくん:2013/10/06(日) 01:30:07 HOST:zaq31fa5978.zaq.ne.jp
皆さんピーチのおばさんに
メシをおごってもらいましょう。


  ハヤテBBS住民のサイフから
おこづかいを頂戴します。

ピーチ&千春さん
サイフ用意して待っていて下さい。
飲食店勘定宜しくお願いします。

とりあえず1万円持って来て下さい。

184たっくん:2013/10/06(日) 01:31:34 HOST:zaq31fa5978.zaq.ne.jp
後ついでにクソスレ代
罰金5千円です。
管理人さんの口座にお振り込み下さいませ。

ピーチさんのクソスレは罪です。

185名無しさん:2013/10/13(日) 23:22:35 HOST:em117-55-68-178.emobile.ad.jp
と人間以下の生命体がぼやいていますら
Wwww死ぬのはてめぇだキチガイがああああ

186名無しさん:2013/10/13(日) 23:23:47 HOST:em117-55-68-178.emobile.ad.jp
\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(^_^)/(o≧▽゜)o(゜Д゜≡゜Д゜)?\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o(゜Д゜≡゜Д゜)?\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o(゜Д゜≡゜Д゜)?\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o(゜Д゜≡゜Д゜)?\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o(゜Д゜≡゜Д゜)?\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o(゜Д゜≡゜Д゜)?\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o(゜Д゜≡゜Д゜)?\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o(゜Д゜≡゜Д゜)?\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o

187名無しさん:2013/10/13(日) 23:25:30 HOST:em117-55-68-178.emobile.ad.jp
\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o( ̄O ̄)\(゜ロ\)(/ロ゜)/( ̄O ̄)

188名無しさん:2013/10/13(日) 23:25:43 HOST:em117-55-68-178.emobile.ad.jp
\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o( ̄O ̄)\(゜ロ\)(/ロ゜)/( ̄O ̄)

189名無しさん:2013/10/13(日) 23:25:53 HOST:em117-55-68-178.emobile.ad.jp
\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o( ̄O ̄)\(゜ロ\)(/ロ゜)/( ̄O ̄)

190名無しさん:2013/10/13(日) 23:26:06 HOST:em117-55-68-178.emobile.ad.jp
\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o( ̄O ̄)\(゜ロ\)(/ロ゜)/( ̄O ̄)

191名無しさん:2013/10/13(日) 23:26:16 HOST:em117-55-68-178.emobile.ad.jp
\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o\(゜ロ\)(/ロ゜)/(o≧▽゜)o( ̄O ̄)\(゜ロ\)(/ロ゜)/( ̄O ̄)

192名無しさん:2014/03/29(土) 15:41:17 HOST:wb86proxy01.ezweb.ne.jp
@@@@@@

193名無しさん:2014/05/18(日) 17:51:32 HOST:wb86proxy04.ezweb.ne.jp
 ̄●_〇 ̄

194名無しさん:2014/06/29(日) 01:16:34 HOST:wb86proxy10.ezweb.ne.jp
★★★★★

195たっくん:2014/07/17(木) 08:47:54 HOST:zaq31fa4cc8.zaq.ne.jp
チンポにカビ生えたオッサンの話・・
祖父のお話です。
身体中カビだらけでチンポにもカビがはえていました。
非常にくさかったです

196たっくん:2014/07/17(木) 08:49:00 HOST:zaq31fa4cc8.zaq.ne.jp
ちなみに
コヨミさんも口臭です
彼女はお口が非常にくさいです
ちゃんと歯を磨きましょう。

197たっくん:2014/07/25(金) 13:45:17 HOST:zaq31fa4cc8.zaq.ne.jp
お前らが低レベルやねん
もう少し難易度上げろよ
レベルの低い奴はな〜
いずれチンポにカビ生えた親父と付き合うハメになるんだよ

念の為にこれだけは言っとくけど
私にはキンタマが二個ある
そして貴方達(彼女ら)には卵子が一つあります。
これで計3コになんねん
お前らもエラそうな事ぬかす暇があったら
(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)

お前らももう少し大人になれ

198たっくん:2014/07/25(金) 13:49:37 HOST:zaq31fa4cc8.zaq.ne.jp
>>1
お前らがどうかしてるんだよ?
低レベルのクソガキどもが

お前らなんかにチンポにカビはえたオッサンの
気持ちが分かるか!
とっとと消えろカス

199名無しさん:2014/08/17(日) 16:12:41 HOST:p6012-ipngn100104fukui.fukui.ocn.ne.jp
>>198


 そんな低レベルクソガキ共に喧嘩売ってるお前は、もっと低レベルだけどな?(^▽^)

200アリ:2014/08/29(金) 15:02:34 HOST:219-75-218-166f1.hyg2.eonet.ne.jp
>>たっくん

おまえはチンポにカビがはえる以前に
チンポごと体じゅうカビがはえてんじゃねえのwwwwwwww

201ひとき:2014/08/31(日) 00:26:59 HOST:p6012-ipngn100104fukui.fukui.ocn.ne.jp
>>200


 なるほど(納得)

 アリさん頭良いっすね!

202凪☆:2014/11/26(水) 20:43:36 HOST:ntoknw040136.oknw.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
こんちわ★

203名無しさん:2015/03/27(金) 13:10:55 HOST:google-proxy-66-249-82-225.google.com[om126161116213.8.openmobile.ne.jp]
( `・ω・´)ノ


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