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蝶が舞う時… ―絆―
1
:
燐
:2011/10/12(水) 21:41:12 HOST:zaq3dc00753.zaq.ne.jp
いよいよ第2期startです!!!!
今回は絆とついていますが・・・そこら辺も頭に入れておいてください。
で、ジャンルはですね・・
今回は 純愛×切なさでございます。
決して私の小説を真似、パクリなどはしないでください。
絶対にです!!!
まだまだ初心者ですが・・どうぞよろしくお願いします!!!
302
:
燐
:2012/01/07(土) 17:17:40 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
身体を拭いて、ワンピースを着ていると扉がノックされる。
「夜那?」
その声に私は安心した。
「うん?何?」
私は聞く。
「…昨日はごめんな。俺…やけになってた。
お前に当たってしまってごめん…。」
「いいよ。気にしてないし…。それにあれは誠の意志でやった訳じゃないって分かってるから…。」
私は言う。
「…そうか。良かった…。」
そう言った瞬間、私は洗面所の扉を開いた。
地面には誠が座り込んでいた。
「誠?大丈夫?」
私が問い掛けると誠は顔を上げた。
「うん。大丈夫だ。俺も朝風呂すっかー!!」
誠はそう言って洗面所に消えて行った。
303
:
燐
:2012/01/07(土) 17:53:22 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
私はバスタオルで頭を拭きながらリビングに向かった。
リビングに入ると、誠のお母さんがテーブルにいっぱい料理を並べていた。
「凄い豪華…。張り切って作ったの?」
私は訊く。
「そうよ。せっかくのお正月だもの。」
誠のお母さんは微笑ましい表情で言った。
「そうだよね。あれ?お父さんは?」
私は訊く。
「それがね…お正月なのに会社で飲み会があるって言って昨日の夜から出掛けちゃったのよ。」
304
:
燐
:2012/01/07(土) 19:24:13 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「そうなんですか…。」
私はテーブルの席に座った。
「ま、今日の昼ぐらいに帰って来そうだと思うわ。」
「はい…。あの…純さん達は?」
私は訊く。
「純なら祐也君と仲良く帰って行ったわ。また明日来るらしいわよ。」
「そっか。分かりました。」
そう言った瞬間、後ろから誠の声が聞こえてきた。
「あーさっぱりした。」
305
:
燐
:2012/01/07(土) 20:04:48 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
誠の暢気な声が聞こえて来る。
「もう上がったの?早くない?」
「これぐらい普通だし。てか、お前は長風呂だよな。誰の影響なんだ?」
そう言いながら誠は私の隣に座る。
「分かんないよ。そんなの…。」
私はそっぽを向く。
「はいはい。分かったから。そう言えば母さん…純は?」
「純なら祐也君と一緒に仲良く帰って行ったわよ。」
306
:
燐
:2012/01/07(土) 20:11:35 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「アイツが仲良く…ぷっ。」
誠は腹を押さえて爆笑し始めた。
「笑いのツボにはまったのね。」
対面で誠のお母さんが笑みを浮かべている。
「やべぇ…ガチで腹いてぇ…。」
誠は未だに笑っている。
「笑いすぎだよ…。」
307
:
燐
:2012/01/08(日) 12:41:15 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
私がそう言った直後、家のインターホンが鳴った。
「あら。こんな時間に…誰かしら。」
誠のお母さんは席を立ち、リビングを出た。
玄関で扉が開く音が聞こえた。
「あら憐君じゃない。どうしたの今日は…。」
誠のお母さんの声を確認して私は無意識に玄関方面に向かった。
玄関に向かうと、白のトランクを持った憐が笑顔で立っていた。
「憐…。」
私が呟くと、憐は口を開いた。
「夜那…目を覚ましたんだね。良かった…。」
憐は私に優しく問い掛ける。
でもその問い掛けは何処か悲しく感じた。
「うん…。今日から旅行なの?」
「そうだよ。親戚の家に泊まりに行くんだ。1泊2日の旅に行って来るの。
で、行く前に夜那に少しでも顔出しておこうかなって思って今日は来たんだ。」
「そう、なんだ…。楽しんでおいでよ。帰って来たら三人で騒いで遊ぼうよ。」
私は笑顔で言った。
でも心の中に妙な胸騒ぎはまだ続いていた。
このまま憐を見送ったら駄目な気がした。
308
:
燐
:2012/01/08(日) 13:09:16 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「そうだね。じゃそろそろ行くね。後…お土産買って来るね。じゃ。」
憐は私に背を向けて歩き出した。
「最後に一つだけ聞いて…憐。。」
私は俯きながら呟く。
その声に憐は足を止める。
「何?」
「これ…持っていって…。」
私は服のポケットからミサンガを取り出した。
白の糸と黒の糸が交互に重なっている。
「左手首貸して。」
私が言うと憐はすんなり左手首を私に差し出す。
私は憐の左手首にミサンガを結び付けた。
「御守りだよ。私からの。」
私は作り笑顔で言った。
「ありがとう。明日僕の誕生日なんだ…。明日は夕方ぐらいに帰って来る予定だから
帰って来たらその時は宜しくね。」
憐は笑顔でそう言うとまた歩き出して外に消えて行った。
309
:
燐
:2012/01/08(日) 13:36:40 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
玄関の扉が閉まったと同時に私は地面に座り込んだ。
「憐…。」
昨日から続く胸騒ぎは何時しか私の中で大きくなっていた。
「夜那。」
後ろから誠の声がする。
310
:
燐
:2012/01/08(日) 17:20:47 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「誠…。」
自然と涙は出ない。
不思議だった。
「憐が来てたみたいだけど…何かあったのか?」
誠が訊く。
「ううん。何でもないよ。リビングに戻って御節食べようよ。」
「…そうだな。」
誠は私の右手を握って私の身体がリビングに向かっていく。
誠と居ると私の心が落ち着く。
一緒に居るから分かる安心感。
「…憐の事で気になる事があるのか?」
そう言った瞬間、私の身体が壁にぶち当たる。
私の身体がぶち当たると誠は私に顔を近づけた。
「誠?また可笑しくなったの!?」
私は誠の身体を両手で揺する。
「…大丈夫だ。気にするな。ちょっと本能的になっただけだ。」
誠はそう言ってリビングに戻って行った。
311
:
燐
:2012/01/08(日) 17:54:36 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
…大丈夫。
誠は可笑しくなんか無い。
きっと大丈夫だよね?
私はそんな事を考えながらリビングに戻った。
リビングに戻ると誠は笑顔で御節を食べていた。
312
:
燐
:2012/01/08(日) 18:30:02 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「夜那も早く食べようぜ。」
誠が私に手招きをする。
さっきまでの誠とは全く違う。
さっきまでの事は嘘のようだった。
「夜那ちゃん。一緒に楽しみましょうよ。」
誠のお母さんは私を椅子に座らせる。
「じゃ戴きます!!」
私は手を合わせて言ってお箸を手で持ち、具を用意してある皿に移していく。
「美味しい…。」
一口、口の中に入れるとどんどん食べたくなる。
「良かったわ。喜んでもらえて。」
誠のお母さんは笑顔で言う。
「夜那ってよく食うんだな。」
隣で誠が呆れた顔をする。
313
:
燐
:2012/01/08(日) 21:26:59 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「美味しいんだからしょうがないじゃない!!」
私はそう言って料理を食べ続ける。
「ご馳走様でした。」
隣に居る誠がそう言った。
「もう食べたの?」
「うん。夜那みたいに俺は大食漢じゃないんで。」
誠にそう言われ私は馬鹿にされたように頬を膨らませる。
「何かムカつく…。」
私は目を逸らして言った。
「…食べ終わったら夜那の部屋で待っておく。渡すものがあるんだ。」
「今此処で渡せばいいじゃない。何で態々夜那ちゃんの部屋なの?」
誠のお母さんが訊く。
「母さんには関係ない。俺と夜那の問題だ。」
誠はそう言って2階へ行ってしまった。
314
:
燐
:2012/01/08(日) 21:30:08 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
※お知らせ※
最終回が迫ってきました。
と言っても最終回まではもう少し先です。
最終回は泣けるかどうか分かりませんが・・・。
読者の皆さんが泣けるように努力します!!
では引き続きお楽しみください!!(*^_^*)
315
:
燐
:2012/01/08(日) 21:35:31 HOST:zaqdadc28ab.zaq.ne.jp
「…あの子も夜那ちゃんに逢ってからだいぶ変わったわね。
良かったわ。あの子があの時の事を恨んでなくて…。」
「あの…あの時ってどう言う意味ですか?」
私は訊く。
「えっ?あっ…何でもないのよ。忘れて。ね?それより御節はもういい?
片付けるわよ。」
「えっ…あっ…はい。。ご馳走様でした。」
私は手を合わせて椅子から立ち上がった。
316
:
燐
:2012/01/09(月) 15:37:32 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
あの時って一体何の事?
何か凄く気になる…。
でもあんま気にする事ないよね?
さてとお腹もいっぱいになったし2階に行くか。
でも渡す物って何だろう?
そんな事を考えながら私は階段に上った。
317
:
燐
:2012/01/09(月) 18:54:23 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
自分の部屋の前に着くと、少し扉が開いていて中の光が漏れていた。
私は静かに駆け寄り、扉の隙間から中をそっと覗く。
誠は中には居なかった。
「何コソコソしてんの?」
背後から低い声がして、私は振り返った。
「…誠。」
「さっさと入ってくれ。」
誠にそう言われ私は部屋の中に入る。
「自分の部屋なのに何で誠に指図されなくちゃならないの?」
私が訊いても誠は答えてくれなかった。
「で、渡す物って?」
「これ。」
誠が右手に持っていたビニール袋を私に差し出す。
中身を見ると、お菓子類が詰め込まれていた。
「お菓子…。渡す物ってこれだったの?」
「うん。それ以外にある?」
誠は言う。
「…何か期待して損したかも…。はぁ…。」
私は肩を下ろして座り込もうとした。
「今のは冗談。本物はこっちだ。」
「えっ?何処?」
私は誠の後ろを見た。
でもそこには何もなかった。
「夜那。口開けて。」
誠にそう言われ私は言われるがままに口を開けた。
私が口を開けた瞬間、私の口の中に飴が放り込まれる。
「飴じゃない。どう言う事なの?」
私は頬を膨らませながら言った。
「気づかない?それさっきまで俺が舐めてた飴。」
誠は意地悪に言った。
「えっ…。」
「嘘嘘。冗談に決まってんだろ。」
誠は笑いながら言う。
「嘘…か。本当だったらいいのに…。」
私は地面に蹲った。
「…今度ちゃんとお前にやってやるよ。」
誠は私の頭をポンポンと撫でた。
318
:
燐
:2012/01/09(月) 19:32:33 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「…誠って恥ずかしい事さらっと言うけど恥ずかしくないの?」
私は蹲りながら言う。
「…さぁ?どうだろうな。ま、昔の自分に戻りたくないからそうしてるだけだ。」
誠はそう呟く。
その表情は何処か悲しかった。
どう言う事?とは訊かれなかった。
と言うか訊きたくなかった。
だって誠の過去に触れようとすると誠は答えてくれない。
一体その先には何があるのか私にも分からない。
きっと複雑な事情が絡んでいる。
そう私は思い込んでいた。
「さてとそろそろ初詣行くか。」
誠は笑顔で言う。
「うん!」
私は立ち上がった。
319
:
燐
:2012/01/09(月) 21:37:14 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「後さ…夜那。」
誠はニコニコの笑顔で言う。
「ん?何?」
私は訊く。
「キスしていい?」
誠の言葉に私は思わず動揺してしまった。
「今からするの?」
私が訊くと誠は小さく頷く。
「…うん。だって…夜那が好き過ぎてヤバイからさ。。」
「…いいよ。」
私はそう言って目を瞑る。
「怖いのか?」
誠はそう言った瞬間、誠の唇がそっと私の唇に触れる。
こう言う状況は半年前からまだ慣れていない。
私の右手が微かに震えだす。
誠は私の異変に気づいたのかそっと私の右手を握る。
誠はそっと私から唇を離す。
「夜那って案外素直じゃないな。新たな一面発見だ。」
誠は満足気に言った。
「…恥ずかしいから言えないだけだよ…。」
私はふいに顔を逸らす。
320
:
燐
:2012/01/09(月) 21:42:04 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「恥ずかしい…か。でもその恥ずかしさを晒してみたら少しは変わるかもしれないぞ?」
誠は天井を見上げながら言った。
「晒す?よく分かんないけど…。それっていい事なの?」
私は訊く。
「うん。いい事だと思う…。俺が思うには…。」
321
:
燐
:2012/01/10(火) 15:00:15 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「…そうなんだ。そろそろ準備するね。」
私は部屋の隅にあるクローゼットに向かおうとした。
「じゃ俺も準備する。1階で待っててくれ。」
誠はそう言って私の部屋を出て行った。
私はクローゼットに向かい、黒のピーコートを取り出した。
「これを来よう。」
私は袖に手を通してコートのボタンを1個ずつ留めていく。
最後のボタンを留めて、私はクローゼットの下に置いてあった赤のショルダーバックを手に持った。
私は机に向かい、ショルダーバックのチャックを開け、その中に、携帯と財布も入れてチャックを閉める。
これでいいよね?
そう心で呟き、バックを肩から掛け、部屋を出た。
部屋を出た瞬間、隣の扉もほぼ同時に開き、誠が出て来た。
「さ、行こう。」
誠は笑顔で私に右手を差し出す。
でも誠の右手は微かに震えていた。
「うん。」
私は左手で誠の右手をそっと握る。
322
:
燐
:2012/01/10(火) 17:30:44 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
やっぱり怖いの?
誠は何に怯えているの?
私に怯えているの?
そう聞きたくても訊けないよ…。
「夜那?」
誠が私の顔を覗き込む。
「何?」
「何か考え事か?」
誠は言う。
「うん。でも大した事じゃないよ。大丈夫だから。」
「それならいいんだけどな。夜那って隙有り過ぎ。」
誠は私の頬に手を添える。
「…っ…。止めて…。」
「じゃ…帰って来てからしてもいい?」
誠は私の耳元でそっと囁く。
「…うん。それまで我慢だね。」
323
:
燐
:2012/01/10(火) 17:54:37 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「…うん。」
誠は呟く。
「夜那ちゃん〜!誠〜!」
下から誠のお母さんの声が聞こえて来る。
「ほら行くよ!」
私は誠の手を強引に引き、階段を下りる。
階段を下りると誠のお母さんは白のダウンコートを着ていた。
「神社まで車で送って行ってあげるわ。さっさと行くわよ。」
誠のお母さんは車のキーを片手に玄関に向かった。
324
:
燐
:2012/01/10(火) 22:16:13 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
私と誠は手を繋ぎながら玄関で靴を履いた。
私はベージュのムートンブーツ、誠は黒の中折れブーツを履いた。
「夜那…ガチで可愛い…。」
誠は恥ずかしそうに呟く。
「…誠だっていつもよりカッコイイよ。」
私も恥ずかしそうに言う。
「二人とも出発するわよ!!早く後部席に乗りなさい。」
誠のお母さんに言われ、私と誠は車に乗り込む。
私が先に乗り、誠が後に乗る。
325
:
燐
:2012/01/11(水) 14:37:26 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
誠は右手を離し左手で私の右手を握る。
誠のお母さんは車を走らせて、神社に向かった。
車の走行中、私は車窓から景色を見ていた。
空を見ると雲一つない快晴だった。
「綺麗…。」
私はそう呟くと後ろから誠が私を抱き締める。
「お前の方が綺麗だから。後、初詣行ったら絵馬書こうぜ。」
「絵馬?何それ。」
私は訊く。
「願い事を木の板に書き込んで神社の中の絵馬堂にかけておくらしい。」
誠は私の耳元で囁いた。
「へ〜。誠は何をお願いするの?」
「とりあえず今後の俺達の未来を願い事にするぐらいだ。夜那は?」
誠は訊く。
「私は…まだ決まってない。神社に着いてから考えるの。」
「そうか。…俺…お前に逢えて良かったって思ってる。」
誠は急に私の身体から離れた。
「何でそんな悲しい事を言うの?」
私は訊く。
326
:
燐
:2012/01/11(水) 15:41:02 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「…いや、何でもない。忘れて?」
誠は何処か悲しそうな口調で呟く。
「…うん。分かった。」
私は素直に忘れる事にした。
でも何処か忘れられなかった。
「着いたわよ。私は此処で待っておくから二人で行ってきなさい。
何かあったら携帯で連絡するから。」
「分かりました。」
私はそう言って誠と共に車を降りた。
神社にはそれほど人は混んでなくて、小さな神社だった。
神社の前には何かを配っている人が居た。
私は不思議に思い、誠と共に駆け寄った。
「これ何ですか?」
私は屋台に居るおばさんに言った。
「甘酒よ。正月はこれで乾杯なのよ。無料だから飲んでいく?」
「はい…。」
私はおばさんから甘酒が入った紙コップを受け取った。
「そっちの彼氏はどうするの?」
おばさんは笑いながら言う。
「あっ…俺はいいです。お酒は飲めないんで…。」
「そう?でもこの甘酒は少し普通のとは違うのよ。隠し味を使ってるからね。」
おばさんは苦笑いしながら誠に紙コップを渡す。
紙コップを受け取った誠は一気に甘酒を飲み干した。
「はぁ…はぁ…。物凄く美味い…。この甘酒酸味があって美味い。」
誠の言葉に私も一気に甘酒を飲み干した。
327
:
燐
:2012/01/11(水) 16:41:44 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「この甘酒の隠し味って蜂蜜ですか?」
私は尋ねる。
「あらよく分かったわね。当たりよ。」
「ご馳走様です!」
私と誠は声を揃えて言った。
「ふふ。貴方達息ぴったりね。」
おばさんは笑いながら言う。
「じゃ俺達はこれで失礼します。本当にありがとうございました。」
誠は紙コップをおばさんに渡し私の腕を強く引く。
「あの…ありがとうございました!」
私は慌てておばさんに紙コップを渡すと、誠に引き摺られるように境内に入って行く。
328
:
燐
:2012/01/11(水) 17:16:55 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
境内の中はは入口から真っ直ぐに伸びて行った所に本堂が一つあって、右手側には絵馬堂と白いテントがあり、
左手側には小さな壺みたいなのがあった。
それ以外何もない何処か殺風景な神社だった。
「とりあえずお賽銭しよう。」
誠はそう言って財布の中から100円玉を2枚取り出した。
誠はその1枚を私に渡す。
私は訳が分からず不思議に誠に首を傾げる。
「俺の奢り。今日だけは奢らせて。」
誠はニコニコしながら言う。
「うん。」
私は頷く。
私と誠は同時に賽銭箱に100円玉を投げ込んだ。
私は手を合わせて目を瞑った。
たしか此処でもお願い事するんだよね?
じゃ…死ぬまでずっと誠の傍に居られますように…。
それが私の願いでもあり本心でもあった。
私は目を開けて静かに横を振り向いた。
誠はまだ目を瞑って願い事をしている。
329
:
燐
:2012/01/11(水) 17:46:03 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「これでいい。」
誠は苦笑いをして目を開ける。
「何をお願いしたの?」
私は訊いたが誠は答えてくれなかった。
そう思った時、バックから携帯の着信音が聞こえてきた。
私はバックの中を漁り、携帯を取り出した。
誠のお母さんからだった。
私は発信ボタンを押して携帯を耳に当てる。
「もしもし。」
『あっ、夜那ちゃん?今すぐ車に戻ってきて!』
電話の向こうから聞こえる誠のお母さんの声は何処か焦っていた。
「何で?」
『…今、お父さんから連絡があって…憐君が…事故に遭ったらしいの…。』
その言葉を訊いた瞬間、携帯が手元から地面に落ちた。
えっ…。
事故に遭った?
何で…?
「夜那?」
誠が渡しに駆け寄り、地面に落とした携帯を拾う。
早く行かなきゃ…。
憐の所に…。
でも足が竦んで進まれない。
誠は私の異変に気がついたのか、私をそっと抱き上げた。
330
:
燐
:2012/01/11(水) 17:56:05 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「…嫌だよ…。」
ぼそっと出た私の言葉。
「どーせ何かあったんだろ?で、母さんが車戻って来いって言われたんだろ?」
誠の図星に私は頭を抱えた。
「…憐が死んじゃうよ…。」
私は泣きながら呟くが、誠は何も言わない。
車に戻り、私の身体が車に押し込まれる。
私はしばらく放心状態だった。
車を走らせて何分立っただろうか…。
私はずっと車窓から景色を眺めていた。
憐…。
私は心の中で何回も憐と言った。
誰か助けてよ…憐を…。
ねぇ…誰か…。
「…な…夜那!」
誠の声で私はゆっくりと振り向いた。
331
:
燐
:2012/01/11(水) 18:30:21 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
私の目には涙がいっぱい溜まっていた。
「着いたぞ。」
誠は右手を差し出した。
私はその時手を握る気力すら失っていた。
すると誠は私の左手を強制的に握らせた。
握られた瞬間、凄い力で車から下ろされた。
車から下ろされた瞬間、一瞬バランスを崩して地面に倒れそうになった。
でも危うく誠が私の身体を抱き締める。
「重症だな…夜那。憐の病室まで運んでやるよ。」
誠の口調は落ち着いていた。
「…いいよ。自分で歩けるから…。」
私は静かに誠の身体から離れた。
私は誠の手を握り、身体を引き摺りながら病院内に入って行く。
どうしても足元が不安定で、麻痺してるかのようにあまり感覚がない。
「夜那ちゃん。憐君の病室は708号室よ。と言うか大丈夫?」
誠のお母さんが私に駆け寄る。
「うん…。大丈夫だよ…。気を遣わなくていいから。」
332
:
燐
:2012/01/11(水) 18:48:57 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
私はフラフラになりながらも誠と誠のお母さんと共にエレベーターに乗り、憐の病室に向かった。
憐の病室の扉を開くと憐はベッドに寝かされていた。
私は誠の手を離して、ゆっくりと憐に駆け寄った。
憐のベッドの横には見られぬ機械が3台ほど置いてあり、その中の一つは心拍数を示す機械だった。
憐の口元には呼吸器が取り付けられていて、両腕には包帯が巻かれていた。
右腕には点滴がされていて、見るのがとても痛々しく感じられた。
左手首には私が今朝あげた白と黒のミサンガがつけられていた。
「夜霧憐さんのご家族の方ですか?」
後ろを向くと、30代位の男の医者が立っていた。
「私達は夜霧憐さんの友達です。」
誠のお母さんは軽く医師に説明した。
「そうですか。分かりました。」
医師は軽く頭を下げ出て行った。
「憐…。」
私は憐に視線を戻して軽く憐の右手を握る。
333
:
燐
:2012/01/11(水) 19:01:40 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
その時、憐が少しだけ私に握り返してくれた。
「夜那…。」
憐はうっすら目を開ける。
「憐…!良かった…。」
私は嬉しさの余り、憐の手を握り締めながら涙を零した。
「何で…泣くの…?」
憐は途切れ途切れに言う。
「嬉しいから…。」
「そっか…。後ね…最後になってしまったけど…これ家に帰ってから読んで。」
憐はそう言って私に封筒を差し出す。
私はそれを大事に受け取る。
「ありがとう…。」
私は呟く。
「じゃもう少し寝るね。次起きたらその時は僕を大事にしてね?」
そう言い残して憐は寝てしまった。
334
:
燐
:2012/01/11(水) 20:00:55 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
“大事にしてね?”とはどう言う意味だろう?
「ずっと好きだったよ夜那。さよなら…。」
その声に私は我に返った。
今…憐の声がした。
悲しくて何処か虚しい…。
そう思った時…心拍数を表す機械の数値が0になった。
ピーと言う音が部屋中に響き渡った。
「12時14分…ご臨終です。」
医師が憐の呼吸器を静かに外した。
「嘘…。」
私は再び放心状態になり、地面に倒れ込み意識を失った。
335
:
燐
:2012/01/11(水) 20:23:08 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
――――…。
「此処は…何処?」
ぼやけた視界で私は辺りを見回す。
「私の…部屋?」
私あれからどうしたんだっけ…?
全然憶えてない…。
たしか憐の事でショックになった事は憶えてるが…その後の記憶が全然ない…。
私は横倒れになると枕の横に白い封筒が目に止まった。
「憐…。」
私は白い封筒の表紙を触りながら呟く。
そう言えば家に帰ってから読んでって言ってたな…。
私は封筒の封を手で破れないように剥がして封を切った。
中には白い紙が2枚。
私は丁寧に中から出して、手に取った。
1枚目の紙の端っこには小さく1と書いていた。
2枚目の紙の端っこにも小さく2と書かれていた。
2枚目の紙は触っただけで凸凹していた。
私は1枚目の紙を開き、中の内容に思わず涙が流してしまった。
336
:
燐
:2012/01/11(水) 21:42:37 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
『…夜那と誠へ。夜那と誠がこの手紙を読んでいる頃には僕は居ないかもしれない。
でもそれで僕は満足なんだ。だって僕が好きって言っても夜那はきっと僕に振り向いてくれなかっただろうし…。
ならこのまま君達を応援するね。僕ね…夜那に出会えて良かったと思ってるよ。
僕にとって初めての初恋が夜那で良かったと思ってる…。半年前…夜那に初めて逢った時、
一目惚れしちゃったんだ。それで君が住んでる所を探して僕は隣に引越して来たんだ。
だから夜那の為なら死んだって構わなかった。夜那の為なら全てを捧げるってそう決めたから。
でも…もうそれは遅かったんだね。夜那には誠が居たから敵わなかった。
だから二人を祝福するね。僕はもう諦めるよ。
最後になったけど僕は静かに夜那を見守る事にするよ。ずっと夜那の傍に居るね。
それから、僕の黒い蝶も出来たら預かって欲しいな。一人じゃ寂しがってるから。
じゃあね。
夜霧憐。』
と言う内容だった。
337
:
燐
:2012/01/12(木) 08:02:56 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
私は紙を握り締めてベッドのシーツに涙が零した。
私は右手で涙を拭いながら2枚目の紙を開ける。
2枚目の紙には真ん中に大きい字でごめんね。と書かれていた。
「…夜那。」
私は起き上がって前方を見た。
「誠…。」
私はそう呟く。
「…悲しい想いさせてごめんな…。」
誠はそう言って私をそっと抱き締めた。
誠の身体の温もりが少し憐の温もりに似ていた。
「憐…。このまま一緒に居て…。」
私は明らかに幻覚を見ていた。
憐じゃないって分かっているのに…。
憐はもう居ないのに…。
私は――――…。
「…俺は憐じゃない。目を覚ませ!!」
誠は口を尖らせて言った。
「何言ってるの?貴方の温もりは憐そのものなんだよ?何でそんな事言うの?」
私は誠の頬に両手を添える。
何で思ってない事言うんだろ?私って…。
「…幻覚を見てるのか?じゃ忘れさせてやるから。」
誠は私の左手をそっと絡めて、私の唇を乱暴に塞いだ。
「…っ。」
温かい…。
誠のキスは何処か温かいんだ…。
私の心をゆっくりと満たしてくれる…。
傷を癒されていくような快感になる。
やがて誠は静かに唇を離して私を強く抱き締めた。
「誠…ごめんね…。本当は信じたくなかったんだ…。受け入れたくなかった…。
受け入れたら今度は誠が居なくなるような感じがしてならなかった…。」
「…全部俺の為かよ。」
338
:
燐
:2012/01/12(木) 13:55:30 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
誠は低い声で呟く。
「…ごめんなさい。。」
私は誠の肩に顔を埋めた。
身体の震えが止まらないよ…。
誠は黙って私の背中を優しく擦ってくれた。
「なぁ…夜那。。」
誠は私の背中を擦りながら呟いた。
「…何?…。」
「これ…病院の人から預かってきたんだ。たぶんお前のプレゼントだったのかもな。」
誠は私の右手に小さな袋を握らせる。
茶色の小袋で左右に振るとカラカラという音が鳴る。
私は丁寧に袋を開けて、中身を右の手の平に落とす。
339
:
燐
:2012/01/12(木) 15:19:09 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
中からはシルバーのハートのネックレスだった。
装飾もなにもないシンプルなデザイン。
「付けてやるから。貸して。」
私は誠の問いかけにネックレスを渡す。
誠は黙って私の首元にネックレスを付ける。
その時。誠は私の首の項をそっと舐める。
「ひゃっ…。」
「怖がんな。こんなの挨拶代わりだしな。夜那が嫌がってんならもう止めとくよ。」
誠はそう言って私の耳元を触って立ち去ろうとした。
「嫌…。行かないで…。」
私は後姿の誠に抱きついた。
「何処にも行かないさ。今日憐の葬式だから喪服に着替えて来るだけだよ。」
「喪服?喪服って何?」
私は訊く。
「葬式などに着る黒い服の事だ。夜那はそれでいいかもしれないがな。」
誠がそう言うと私はゆっくりと誠の身体から離れた。
「…分かった。待っとくね。」
私は俯きながら静かにベッドの淵に座る。
340
:
燐
:2012/01/12(木) 15:40:20 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
誠は私を一瞥して部屋を出て行った。
「はぁ…。」
誠が出て行った途端、私の口から出た深いため息。
憐は死んだんだ…。
現実をちゃんと受け止めなくちゃ…。
弱虫だな…私。。
まるで半年前のあの頃と同じ…。
義理のお母さんに逆らえなくて私は日々死ぬという望みを持っていたあの頃みたいだな…。
私はそう思いながら天井を見上げていた。
天井を見上げていると横の窓から温かくて赤い光が私をあてる。
もう夕方なんだ…。そう思った。
まるで赤い妖精が私を悠々と照らしているかのようだった。
「憐…。ずっと私の傍に居るんだよね…?」
私は泣きながら唇を噛み締め、呟く。
「なら…ずっと私の隣で私の手を握ってよぉ…。憐が眠る前だって一度だけ
握り返してくれたように握って…。そして私との絆を表して…くれたらそれでいいから…。」
私は泣きながら居ない憐に話しかける。
それでも答えは帰って来ない。
341
:
燐
:2012/01/12(木) 16:12:16 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
「ねぇ…答えて?答えてくれないと私…泣いちゃうから…。。
泣いちゃうからぁ…。」
私は両手で顔を覆って泣き叫んだ。
「…大丈夫か?」
誰かの手が私の頭をそっと撫でる。
「誠…。うん…。大丈夫……。」
私は涙を拭き取り、笑顔で誠に言った。
何時までも悔やんではいられない…。
笑顔で憐を見送らなくちゃ…憐に喜んで貰えない。
「…誠。私分かったような気がする…。憐はきっと最初から分かってたんだよ。
私と誠が幸せになる事を…ずっと陰で願ってたのかも。。」
342
:
燐
:2012/01/12(木) 17:23:58 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
私の言葉に誠は黙ってしまった。
「…そうか。」
「どうしたの誠?顔色悪いよ?」
私は誠の顔に覗き込む。
「何でもない…。さ、憐に逢いに行こう。」
誠は強引に私の腕を引き、部屋を出た。
343
:
燐
:2012/01/12(木) 18:07:14 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
それから私と誠は車に乗せられて葬式場に向かった。
葬式場に向かうと10人位の人がパイプ椅子に座っていた。
中心には憐の写真が飾られていた。
その写真はとびっきりの笑顔で笑っていた。
写真の下には棺が置かれていた。
そこにはきっと憐の亡骸が入っているんだ…。
そう思っただけで胸が苦しくなる。
私はそっと棺に近づく。
「憐…。」
棺の蓋は閉まっていた。
私は俯いて前から2列目の席に座った。
それから数分後…憐の葬式は始まった。
葬式は順調に進んでいく。
私はずっと俯きながら耐えていた。
やがて最後の項目に入り、憐との最後の別れがやって来た。
憐の入っている棺の蓋が開けられて、私と大勢の人が棺に集まる。
344
:
燐
:2012/01/12(木) 18:20:50 HOST:zaq7a66c4f3.zaq.ne.jp
憐の顔は無表情だった。
両手はお腹の前で握られていて左手首にはミサンガがある。
でも憐の顔は悲しい顔じゃなかった。
嬉しい顔でもない。不思議な顔だった。
「憐…ずっと私の傍に居てね。憐と私と誠は一生の友達だよ。
その絆を心に刻んでこれからも生きていくから。」
私がそう言うと棺の蓋は静かに閉じた。
345
:
燐
:2012/01/13(金) 13:59:36 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
それから憐の棺は火葬場に運ばれた。
憐の親戚の人達が次々と火葬場に足を運んでいく。
私はそれに紛れて火葬場に向かう。
私は必死に涙を堪えて火葬場に向かった。
火葬場は葬式場の隣にあり、私は玄関から静かに入った。
「大丈夫か?」
誠が私の肩に手を置く。
「うん…大丈夫。心配してくれてありがとう…。」
そう言った瞬間、目に溜まってた涙が一気に溢れ出した。
「ずっと我慢してたのかよ…。はぁ…。」
誠は呆れた顔をして私の目元についている涙をそっと右手の人差し指で拭き取る。
「我慢してないよ…。憐をちゃんと見送ったらちゃんと泣くから…。」
私はそう言って誠の身体に抱きついた。
「…もう泣いてんじゃねーか…。…俺だって悲しいんだよ…。
憐は俺にとって初めての男友達だったんだからな…。
たださ…泣いてたら憐も喜ばないだろ?こんな時だからこそ笑うもんだって
夜那が教えてくれただろ?」
誠は泣きながらも笑顔で言った。
「そうだよね…。ごめんね…?憐を見送る事が先決なのにね?
行こっ?憐の所に…。」
私は誠の身体から離れて誠の腕を引いた。
346
:
燐
:2012/01/13(金) 14:22:05 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
「そうだな。」
誠は笑顔で返す。
私と誠は笑顔で憐が居る所に向かった。
憐の所に向かうと、ちょうど棺が窯みたいな所で焼かれる所だった。
親戚の人達が2、3人集まっていた。
その親戚の人達の中の一人が私の所に寄ってきてくれた。
「月隠夜那さんですよね?今まで憐君と仲良くしてくれてありがとう。
きっと憐君喜んでいるわ。本当にありがとうね。」
その人は深く頭を下げた。
「いえ…私こそ憐と出会えて本当に良かったって思ってます。
わざわざ礼を言ってくださってありがとうございます。」
私も深く頭を下げた。
そう言った直後、憐の入った棺は窯の中に入れられ、銀色の蓋がそっと閉められた。
「バイバイ憐…。私は貴方に出会えて良かったです。」
私は静かにそう呟いた。
347
:
燐
:2012/01/13(金) 14:58:03 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
それから30分後。
窯の蓋は開いて、白い骨だけになった憐が居た。
「夜那ちゃん。この袋に骨を詰めて?夜那ちゃんと誠でやった方が憐君も喜ぶと思うの…。」
誠のお母さんに言われ私は泣きながらお骨用の袋に手で骨を入れる。
ポタポタと大粒の涙を零しながらお骨を袋に入れる。
一個一個の骨に重みを感じる。
温かさも…感じる。
「憐…。私の傍にずっと居るよね?これからも見守っていてね。」
私はそう呟くと、誠が私の身体を抱き寄せた。
「…憐の為にも生きなきゃな。」
誠は笑みを浮かべて言った。
「そうだね…。」
私はお骨用の袋の紐を縛り、手に持った。
この袋を持っているだけで憐が隣に居るような気がして嬉しかった。
憐の骨は親戚の人達と私と誠に分けられた。
私は強く袋を抱き締めて、背を向けて駆け出した。
「夜那!」
後ろから誠の声が聞こえたけど私は振り返らなかった。
348
:
燐
:2012/01/13(金) 16:05:31 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
「憐…。」
私は無意識に憐の名前を呼んだ。
憐はもう居ない。
私…何やってんのかな?
きっと誠が居なかったら今頃私も死んでたな…。
「夜那…!」
その声に私は掌を握り締めた。
振り向きたくなかった。
でも身体がふいに動いてしまって振り返ってしまったんだ…。
「…どうしたの?」
「どうしたの?じゃねーよ!…辛いからあの場から逃げたのか?」
誠の言葉に私は笑顔で返す。
「ううん。そんなんじゃない。声が聞こえた気がしたの。
“玄関に来て”って声が…。空耳かもしれないけど…その声で目が覚めた気がした。
何時までも泣いてちゃ憐に悪いし…。」
「そっか。憐ってさ…夜那にベタ惚れだったんじゃねーの?今思えばだけど…。」
誠はズボンのポケットに手を入れながら言った。
「ベタ惚れって?」
「辞書で調べろ。」
誠はそっぽを向く。
「ま、いいや。」
そう言った瞬間、誠の背後から声が聞こえた。
349
:
燐
:2012/01/13(金) 16:27:16 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
「2人とも帰るわよ!」
誠のお母さんに呼ばれ、私は誠の手を握って駆け寄る。
「夜那ちゃんは何時まで経っても真面目ね。それに比べて誠は…。」
誠のお母さんは呆れた表情をする。
「悪かったな。不束者で。」
誠は不機嫌そうに言う。
「あら良く分かってるじゃない。さ、家に帰りましょうか。」
「母さん…。今一瞬逸らそうとしただろ?バレバレなんだけど。」
誠は息を吐いて言った。
「母さんって…昔から嘘とか下手だったよな。まるで夜那みたいだな。」
誠は笑いながら言う。
「さ、夜那ちゃん。こんな不束者さんは置いといて帰りましょうね。」
誠のお母さんは笑顔で私の肩に手を置く。
「誠を置いていかないでください…。」
私は俯きながら答える。
「ぷっ…。夜那は真面目すぎるな…。あんなのジョークなのに簡単に信じまってさ。
やっぱ夜那は面白いな。」
誠は腹を押さえて笑っている。
350
:
燐
:2012/01/13(金) 16:57:45 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
「冗談ならもっとマシなのにしてよ…。」
私は怪訝な顔で呟く。
でもそれでもいいと思った。
いつもの誠だなぁ…って思った瞬間だった。
憐…。
ずっとずっと私の傍に居てくれるよね?
憐の黒い蝶も今は居ないけど…見かけたらちゃんと預かるから。
心配しなくていいよ。
私と誠と憐の絆はちゃんと私の心の中に刻み続けてるから…。
憐が此処に生きた証となってきっと死ぬまで残る。
それからネックレスと言うか…ペンダントもありがとう。
憐の形見として毎日見に付けとくからね。
本当にありがとう…。
私達3人の絆はこれからも続いていきますように―――…。
私はふと空を見上げた。
辺りはすっかり真っ暗になっていて空には星屑が散りばめられていた。
「夜那!そろそろ行くぞ〜。」
誠の暢気な声が私の耳に届く。
「うん!」
私は静かに誠の隣に駆け寄った。
絆…それが私の運命を大きく変える引き金となるなんて…。
今は知る由もなかった…。
To be continued…。
351
:
燐
:2012/01/13(金) 21:14:30 HOST:zaqd37c5e53.zaq.ne.jp
第2期は完結と言うか・・・第3期に続いてます。
第3期は・・・たぶん泣けます。
残酷なシーンが一部含んでいるんで・・・。
きっと私自身も書くのが辛すぎて一時期休むかもしれませんが・・。
最後までお楽しみください(-_-;)
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